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1974-03-07 第72回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月七日(木曜日)    午前十時一分開議  出席分科員    主査 渡辺 栄一君       正示啓次郎君    渡部 恒三君       田邊  誠君    八木 一男君       浦井  洋君    木下 元二君       新井 彬之君    坂井 弘一君    兼務 板川 正吾君 兼務 大原  亨君    兼務 柴田 健治君 兼務 中村 重光君    兼務 福岡 義登君 兼務 森井 忠良君    兼務 山口 鶴男君 兼務 平田 藤吉君    兼務 安里積千代君 兼務 小宮 武喜君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君  出席政府委員         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         厚生大臣官房長 曾根田郁夫君         厚生大臣官房審         議官      三浦 英夫君         厚生大臣官房審         議官      福田  勉君         厚生大臣官房会         計課長     木暮 保成君         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 高木  玄君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         厚生省援護局長 八木 哲夫君         社会保険庁医療         保険部長    柳瀬 孝吉君         社会保険庁年金         保険部長    出原 孝夫君         自治省行政局長 林  忠雄君  分科員外出席者         大蔵省主計局主         計官      梅澤 節男君         厚生省環境衛生         局水道課長   国川 建二君         通商産業省立地         公害局工業用水         課長      柴田 益男君         自治大臣官房審         議官      山本 成美君     ————————————— 分科員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     左藤  恵君   多賀谷真稔君     田邊  誠君   八木 一男君     横路 孝弘君   木下 元二君     栗田  翠君   山田 太郎君     近江巳記夫君 同日  辞任         補欠選任   栗田  翠君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   左藤  恵君     塩谷 一夫君   田邊  誠君     多賀谷真稔君   横路 孝弘君     八木 一男君   津川 武一君     多田 光雄君   近江巳記夫君     小川新一郎君 同日  辞任         補欠選任   多田 光雄君     荒木  宏君   小川新一郎君     新井 彬之君 同日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     浦井  洋君   新井 彬之君     坂口  力君 同日  辞任         補欠選任   浦井  洋君     木下 元二君   坂口  力君     大橋 敏雄君 同日  辞任         補欠選任   大橋 敏雄君     北側 義一君 同日  辞任         補欠選任   北側 義一君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     瀬野栄次郎君 同日  辞任         補欠選任   瀬野栄次郎君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     山田 太郎君 同日  第一分科員板川正吾君、大原亨君、森井忠良  君、第二分科員柴田健治君、山口鶴男君、平田  藤吉君、安里積千代君、第四分科員中村重光  君、小宮武喜君及び第五分科員福岡義登君が本  分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計予算厚生省所管  昭和四十九年度特別会計予算厚生省所管      ————◇—————
  2. 渡辺栄一

    渡辺主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十九年度一般会計予算及び昭和四十九年度特別会計予算中、厚生省所管を議題といたします。  この際、政府から説明を求めます。
  3. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 昭和四十九年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算概要について御説明申し上げます。  昭和四十九年度厚生省所管一般会計予算総額は二兆八千六百八十二億九千四百二十二万九千円でありまして、これを昭和四十八年度補正後予算額二兆一千九百十三億七千七百万三千円と比較いたしますと、六千七百六十九億一千七百二十二万六千円の増額でありまして、三〇・九%の増加率となっております。  また、これは昭和四十八年度当初予算に対しまして三七%の増加率となり、国の一般会計予算増加率一九・七%を大幅に上回りますとともに、国の一般会計予算に占める割合も一六・八%と過去最高のものとなっております。  申し上げるまでもなく、最近におけるわが国の経済情勢はまことにきびしいものがあり、明年度予算もまたこうした情勢に対応して編成されているのでありますが、幸い厚生省予算につきましては、国民的要請の高まりを背景としつつ、各方面の絶大な御理解と御協力によりまして、前述のとおりかなりの成果をおさめることができたのであります。この機会に各位の御支援に対し衷心より感謝申し上げますとともに思いを新たにして国民の健康と暮らしを守る厚生行政確立につとめたいと存ずるものであります。  明年度予算の編成にあたりまして、私が特に留意いたしました点を申し上げますと、第一は、最近の物価高の中で最もそのしわ寄せを受けやすい生活保護世帯年金受給者あるいは低所得層等暮らしを守るということであります。こうした観点から生活保護基準及び社会福祉施設処遇費の二〇%引き上げを行ないますとともに、厚生年金国民年金年金額物価にスライドして増額するほか、各種福祉年金手当大幅引き上げを行なう等思い切った予算措置を講じたところであります。  第二は、広範かつ多様な国民生活各般ニードに迅速かつ適切に対応することであります。こうした観点から老人心身障害児者等に対する社会福祉拡充医療供給体制整備看護婦等マンパワー対策医療保険制度充実、あるいは原爆被爆者戦争犠牲者のための対策等につき、国民各層の期待にこたえる厚生行政の実現を目ざし最善の努力をいたしたところであります。  なお、懸案でありました社会保険診療報酬につきましても、各方面の御理解と御協力を得まして実質一七・五%の改定を行なうこととなりましたことを申し添えたいと思います。  以下、主要な事項についてその概要を御説明申し上げるのでございますが、ただいま主査からのお話もあり、また委員各位のお手元に資料を配付いたしてございますので、お許しを得て、説明を省略さしていただきたいと存じます。  何とぞ本予算案成立につきましては、格別の御協力をお願いいたす次第でございます。
  4. 渡辺栄一

    渡辺主査 この際、おはかりいたします。  ただいま齋藤厚生大臣から申し出がありました厚生省所管関係予算重点事項につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 渡辺栄一

    渡辺主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔齋藤国務大臣説明を省略した部分〕  以下、主要な事項につきましてその概要を御説明申し上げます。第一は、生活保護費であります。  生活扶助基準につきましては、最近の国民生活水準の動向、消費者物価推移等を勘案し、前年度当初に比し二〇%引き上げることといたしましたほか、住宅、教育、葬祭の各扶助につきましても所要改善を行なうこととし、生活保護費として四千四百三十億一千四百万円余を計上いたしておりますが、これは前年度予算に比し八百四十五億六千八百万円余の増額であります。第二は、社会福祉費であります。  老人福祉につきましては、後にも申し上げますが、老齢福祉年金を月額五千円から七千五百円に引き上げる等大幅に改善いたしますとともに、寝たきり老人のための家庭奉仕員制度拡充老人クラブ活動及び老人就労あっせん事業強化など、生きがいある老後を実現するための施策を推進することといたしております。  心身障害児・者の福祉につきましては、特別児童扶養手当の抜本的な改善重度重複障害児・者に対する手当創設身体障害者福祉モデル都市拡大などの施策を講じますほか、国立総合リハビリテーションセンター設置を進めることといたしており、また、重症心身障害児・者のための施設につきましては、その整備とあわせて特に入所者介護体制充実に意を用いた次第であります。  このほか、母子世帯、低所得層あるいは同和等に関する施策についても所要措置を講じたところでありますが、社会福祉施設整備費につきましては、公共事業費等の一般的な抑制にもかかわらず、特に四〇%程度の増額を行なうとともに、入所者経費については生活扶助基準と同様二〇%の増額を行なうほか、運営費についても職員処遇改善中心所要経費を計上いたしたところであります。  以上、申し上げました施策に必要な社会福祉費として、総額四千三百十一億四千八百万円余を計上いたしており、前年度に比し七百四十二億七千二百万円余の増額となっております。第三は、社会保険費であります。  まず、社会保険国庫負担金でありますが、厚生保険特別会計及び船員保険特別会計への繰り入れに必要な経費として三千十三億八千三百万円余を計上いたしております。  このうち、厚生年金につきましては、年金額実質価値を維持するための物価スライド制実施に要する経費を含めて千二百一億三千万円余を計上いたしております。  また、明年度におきまして、日雇労働者健康保険法の一部を改正し、家族療養費給付率引き上げ高額療養費新設等を行なうこととしておりますが、これらに要する経費を含めて百五十八億四千二百万円余を計上したところであります。  次に、国民年金国庫負担金でありますが、国民年金特別会計への繰り入れに必要な経費として五千八十四億一千八百万円余を計上いたしております。  このうち、拠出制国民年金につきましては、厚生年金同様物価スライド制実施いたしますのに必要経費をも計上いたしております。  また、福祉年金につきましては、年金額をそれぞれ五〇%程度引き上げますとともに、所得制限及び恩給等との併給制限緩和をはかるほか、本年一月から新設されました老齢特別給付金を五千五百円に引き上げることとして所要経費を計上いたした次第であります。  国民健康保険助成費につきましては、療養給付費補助金など総額七千九百億四千四百万円余を計上いたしておりますが、このうちには、臨時財政調整交付金三百五十億円のほか助産費引き上げに要する経費が含まれております。  このほか、児童手当国庫負担金につきましては、対象児童年齢延長及び手当額引き上げを行うこととして四百七十九億一千八百万円余を計上いたしております。  以上、申し上げました社会保険費総額は、一兆六千五百十四億円余でありまして、前年度に比し四千九百四十八億八千四百万円余の増額であります。第四は、保健衛生対策費であります。  まず、難病対策につきましては、調査研究費及び治療研究費対象疾病拡大増額をはかるとともに、専門的治療を行なう医療施設整備を計画的に実施することとして二百十九億六千五百万円余を計上いたしております。  次に、原爆障害者対策でありますが、特別手当健康管理手当等各種手当につきまして、額の大幅引上げを行ないますとともに、所得制限緩和などを行なうこととして百六十億七千七百万円余を計上いたしたところであります。  医療供給体制整備につきましては、救急、休日・夜間、僻地医療等中心に多様化する地域住民ニードにこたえるため必要な施設整備を進めますとともに、医療情報システム化をはかる考えであります。  また、ガン、脳卒中、小児医療等専門医療確保につきましては、国・公立医療機関中心に引き続きその整備につとめますとともに、新たに精神障害回復者社会復帰施設整備精神神経発達障害に対する研究体制検討等を行なうことといたしたところであります。  さらに、医師看護婦その他の医療従事者確保のため、僻地医療従事医師に対する修学資金貸与制度創設臨床研修のための教育病院設置などを取り上げましたが、特に看護婦確保対策といたしましては、新たにナースバンク設置院内保育施設拡充をはかる等かなりのくふうをいたしたところであります。  このほか、結核、精神等対策費を含めて保健衛生対策費は、総額二千百七十四億七千八百万円余でありまして、これは前年度予算に比し三十六億九千五百万円余の増額であります。第五は、戦傷病者戦没者遺族等援護費であります。  戦傷病者戦没者遺族等に対する年金につきましては、恩給法の改正に準じて二三・八%を引き上げますとともに、旧防空法による防空従事者満州事変戦没者の妻及び父母等に対する援護拡充をはかることといたしました。  また、戦没者遺骨収集につきましても、九地域対象に積極的な推進をはかるなど、戦傷病者戦没者遺族等援護費として五百五億八千九百万円余を計上しておりますが、これは前年度に比し九十五億五千六百万円余の増額であります。第六は、生活環境関係費であります。  まず、水道施設整備関係費につきましては、水質水量両面にわたる水道供給体制確立のため二百六十四億九千百万円余を計上いたしました。  また、廃棄物処理施設整備につきましては、引き続き計画的整備を進めることとして百七十六億一千五百万円余を計上いたしておりますので、生活環境施設整備費は合わせて総額四百四十一億六百万円余となり、前年度予算に比し五十一億一千六百万円余の増額となっております。  次に、消費生活安全確保対策につきましては、食品及び医薬品の安全性確保という見地から、監視、情報収集体制強化試験検査体制拡充整備等について所要経費を計上したところであります。また、血液対策合理化をはかりますとともに麻薬覚せい剤対策強化などに要する予算確保にもつとめたところであります。  以上、昭和四十九年度厚生省所管一般会計予算概要を御説明申し上げました。  次に、昭和四十九年度厚生省所管特別会計予算大要について御説明申し上げます。第一は、厚生保険特別会計についてであります。  一般会計から三千四百十七億七千百五十二万九千円の繰り入れを行ない、各勘定歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。第二は、船員保険特別会計についてであります。  一般会計から七十五億三千八十九万三千円の繰り入れを行ない、歳入一千八十二億三千六十二万二千円、歳出八百三十五億九百五十八万六千円を計上いたしております。第三は、国立病院特別会計であります。  病院勘定は、一般会計から百二十三億八千二百六万八千円の繰り入れを行ない、歳入歳出とも一千百十六億一千百七十七万一千円を計上いたしております。  療養所勘定につきましては、一般会計から百九十一億五百三十九万二千円の繰り入れを行ない、歳入歳出とも一千四十八億九千八百三十万三千円を計上いたしました。第四は、あへん特別会計であります。  歳入歳出ともに十一億八千四百四十二万五千円を計上いたしております。第五は、国民年金特別会計についてであります。  一般会計から五千八十四億一千八百四十九万二千円の繰り入れを行ない、各勘定歳入歳出予算を計上いたしております。以上、昭和四十九年度厚生省所管特別会計予算について、その大要を御説明申し上げました。  何とぞ本予算成立につきまして格別の御協力を賜わりますようお願いする次第であります。     —————————————
  6. 渡辺栄一

    渡辺主査 以上をもちまして、厚生省所管説明は終わりました。     —————————————
  7. 渡辺栄一

    渡辺主査 審議に先立ち、念のため申し上げます。  質疑者が多数おられますので、質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いしたいと思います。  なお、政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に要領よく簡潔にお願いいたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。田邊誠君。
  8. 田邊誠

    田邊分科員 政府は、異常な物価高の中で、これに対応して、犠牲をこうむっておる人たちに対して十分な手当てを講ずることが当然の成り行きでありますが、二月二十六日に生活安定に資するための緊急特別措置についてということで閣議決定いたしまして、生活保護世帯及び社会福祉施設入所者または老人心身障害者母子世帯等に対して特別な給付金支給することをきめました。平均二千円ということでございまして、まことに内容は乏しいものであります。ちょっと数字をお伺いいたしまするけれども、私のほうで先に言います。この内容生活保護保護者に対するところの特別一時金は、対象者は約百十四万人、それに要するところ経費十五億四千万、第二の社会福祉施設入所者処遇改善のための特別一時金、対象者約百五十七万人、所要経費七億九千万、第三番目、老人心身障害者母子世帯等に対する給付金対象者約四百十四万人、所要経費百三億五千万円といわれておりまするけれども、そのとおりですか。
  9. 高木玄

    高木(玄)政府委員 そのとおりでございます。
  10. 田邊誠

    田邊分科員 第一の生保の被保護者に対するところの特別一時金は一人当たり一級地二千円、二級地千八百円、三級地千六百円、四級地千四百円ということでございまして、したがって、四人世帯の場合、一級地であれば八千円になる、こういう計算のようですが、そのとおりですか。
  11. 高木玄

    高木(玄)政府委員 そのとおりでございます。
  12. 田邊誠

    田邊分科員 ところが、これを単純計算をいたしますると、百十四万人に対して十五億四千万円であるとすれば、一人平均は、単純に割りますると千三百五十一円である、これはどういうわけでしょう。
  13. 高木玄

    高木(玄)政府委員 これは生活保護基準一つとしてこういう特別一時金を出しますので、まず第一に国の負担は八割でございますが、残り二割は都道府県なり市が負担する、こういう生活保護の従来のルールどおりでございます。  それから、生活保護には御存じのとおり級地区分一級地から四級地までございますので、それらを平均いたしまして計算いたしております。
  14. 田邊誠

    田邊分科員 そうすると、これは国でもって全額出すという、こういう話でございましたけれども、これに地方自治体が上積みをしなければならぬ、こういうことになりますね。
  15. 高木玄

    高木(玄)政府委員 これは、生活保護法従前から国が八割負担し、それから保護実施主体であります都道府県なり市が残りの二割負担する、従前生活保護ルールどおりやっております。  それから、いま、この特別措置のうち生活保護を受けておられる方々に対する特別一時金と社会福祉施設入所者処遇改善のための特別一時金、これはいずれも国の負担は八割でございます。  それから第三の緊急生活資金給付金、これは全額国庫負担でございます。
  16. 田邊誠

    田邊分科員 したがって、これはどうもその辺が国民に対しては明らかでございませんで、これは全部国が持っているといわれておるのですが、これはあくまでも生活保護法に基づく措置ですか。
  17. 高木玄

    高木(玄)政府委員 私どもは、生活保護法の八条に規定いたしまする厚生大臣の定める保護基準一つとして措置した、こういうふうに考えておる次第でございます。
  18. 田邊誠

    田邊分科員 そういたしますと、これは通例やるべきことをやったにすぎないわけでございまして、われわれとしてはこの緊急の事態に即応して国民に対して政府が特別な措置をしたものとは見受けられないわけですね。
  19. 高木玄

    高木(玄)政府委員 生活保護世帯及び社会福祉施設処遇改善のための特別一時金は、これは年末においても実施いたしましたが、それと全く同様の措置を今回同じやり方で講じたということでございます。
  20. 田邊誠

    田邊分科員 それはそのあとの施設に対して与えるものとこれも同じである。これはそうすると生活保護法に基づくものではないわけですね。
  21. 高木玄

    高木(玄)政府委員 社会福祉施設入所者処遇改善経費、これは普通措置費と呼んでおりますが、措置費と同様に八割の国庫負担をしているわけでございます。
  22. 田邊誠

    田邊分科員 そうすると、特別養護老人ホーム一般収容施設通所施設保育所、すべてこれは同じ比率ですか。
  23. 高木玄

    高木(玄)政府委員 これはいずれも措置費支給対象になっている施設でございまして、措置費同様八割の国庫負担となっております。
  24. 田邊誠

    田邊分科員 そのことはあらかじめ決定をする際に各地方自治体に対しては相談をされておるわけですね。
  25. 高木玄

    高木(玄)政府委員 これは年末におきましてもすでに実施をいたしておりますし、このことは地方公共団体十分承知しておることでございます。
  26. 田邊誠

    田邊分科員 そうしますと、これは地方自治体に対しては特交等を通じて何らかのめんどうを見るということになるのですか。
  27. 高木玄

    高木(玄)政府委員 この措置費県負担分は、すでに予算化しておる中から支弁するものもございますし、新たに予算措置を講ずる向きもあるかと思いますが、それらの財源については地方交付税において措置される、こういうことでございます。
  28. 田邊誠

    田邊分科員 今度の緊急特別措置といいますけれども、第一の生活保護世帯に対するところのもの、第二の社会福祉施設に対するものは、これはいままでの例に従ってやっておった措置でありますから、いわば第三の福祉年金等に対するところ措置とは、考え方においても、その具体的な措置のしかたについても、法的根拠についても違うのじゃないかと思いますが、どうでしょう。
  29. 高木玄

    高木(玄)政府委員 先生のおっしゃるとおり、第三の福祉年金等受給者に対する措置は、これは全く新しいものでございまして、全額国庫負担実施いたしております。  それから社会福祉施設につきましては、年末は、収容施設につきまして一人一律千円という措置をいたしたわけでございますが、今回は、これを四つの段階に分けまして、重い方々を収容する施設については二千円、普通の収容施設については一人当たり千五百円、それから年末には全然措置しませんでした通所施設保育所を今度新たに取り上げたわけであります。
  30. 田邊誠

    田邊分科員 中身についても少し年末における措置比率と違いますので、われわれは相当思いつきではないかと思っておるわけです。それと、せんだっての予算委員会においても私が質問をいたしましたとおり、各施設は相当なやりくりをしながら、しかも赤字をかかえておるという状態ですから、言うなれば天井から目薬という形でございまして、直接人体にクロマイ等を打つような状態ではありません。ですから相当きき目は少ないわけであります。しかもこれを見ますと、三月二十五日までにこの福祉年金受給者については市町村の窓口に申請書を出して、希望者に対する支給という実質的にはなる。こういう形でありますから、結局は手続漏れ等から給付を受けることができない人たちがたくさんできるのじゃないかといわれていますけれども、これはどのくらいの予想を立てているのですか。
  31. 高木玄

    高木(玄)政府委員 今回この緊急生活資金給付金支給対象になっておりますのは、各種福祉年金受給者、それから児童扶養手当特別児童扶養手当受給者でございまして、これらの受給者台帳は市町村に全部ございます。したがいまして、市町村が現在持っております受給者台帳を転記してこの緊急生活資金給付金支給者の名簿をつくるわけでございますが、市町村段階では確実に全部把握いたしております。したがいまして、それらの受給者に市町村から何らかの形で連絡がまいりますので、受給漏れはまず生じないというふうに考えておりますし、また都道府県に対しましても、せっかくのこの措置でございますので、受給漏れの起きないように、くれぐれも厳重に注意して指導いたしております。
  32. 田邊誠

    田邊分科員 そうなれば、あえて三月二十五日までに期限を切って窓口に申請書を出すという、そういう煩瑣なことをやらなくても、これは別の形でもって支給はできるはずですね。もしそういったことでもって期日までに取りにこられなかった人たち等があれば、その次の年金支給期にそれをお上げするということも決して不可能ではないのですから、期限を切って申請書を出させるということは、これは結果的には支給漏れができるというおそれが出てくるわけでありまして、これは政府措置としては必ずしも適切でない、私はこういうふうに思っておるわけですけれども、どうでしょう。
  33. 高木玄

    高木(玄)政府委員 この緊急生活資金給付金の財源は四十八年度の予備費に求めております。したがいまして、予算の年度区分から申しまして三月中にこれを使わなければならぬわけでございますので、そういった一応の期限を設けたわけでございまして、この事業のむずかしさはきわめて短期間に非常に膨大な数の方々にこのお金を渡すというところにあるのでございまして、そういった当年度の予備費であるということから年度内にこれを使い切らなければならぬ、こういう制約があるためにそういう期限を付しておる次第でございます。
  34. 田邊誠

    田邊分科員 そんなことはありませんよ。三月二十五日までに申請書を出したから、必ずしも三月一ぱいに金が渡るわけじゃないでしょう。それは申請書を出そうが出すまいが、あなたのほうでもって調べてその人数が的確に把握できるというのだから、それに対して支給する措置をとればよろしいわけであって、あえて希望者を募るようなそういう措置は必要ない。それは年度末までに払わなければならぬ、そういう制約があるというようなことについてここでもって云々する必要は、あなたの答弁の中からは出てこない。ですから、これは結果を見なければわかりませんけれども、支給漏れができたときの政府の責任は一体どうするのかということになってくるわけですから、やはり何らかこれに対する措置はもう一度考え直してもらいたいと思います。
  35. 高木玄

    高木(玄)政府委員 先ほど申しましたように、本年度の予備費でございますので、年度内に支給決定をいたさなければならぬわけでございまして、そういった点から二十五日までに申請を出すようにというふうにいたしておるわけでございます。
  36. 田邊誠

    田邊分科員 だから、それは二十五日までの状態を調べて、それでもって人数を把握すればいいわけであって、何も二十五日までに申請書を出さなくてもこと足りるわけですよ。あなたのほうはその支給の中身について確定をしたわけでしょうから、確定は現在の市町村の中にある名簿を見ればわかるわけですから、そんなことはできる。そんな詭弁を弄したって困りますよ。なぜ申請書を出さなければならぬのでしょうか。出さなくてもいいでしょう、ちゃんと人間が把握できるのですから。
  37. 高木玄

    高木(玄)政府委員 やはりこれは会計のいろいろな法規に従いまして、年度内に支給決定だけはしなければならぬということで、そのようにやっておるわけでございます。
  38. 田邊誠

    田邊分科員 それとは関係ない。それはひとつ大臣一考を願いたい。
  39. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これは御承知のように昭和四十八年度の予備金の支出でございますから、三月三十一日まで一ぱいに差し上げる、こういう仕組みでございます。  そこで、その申請書を出すということなんですが、法律的な手続としてはそういうことなんでしょうが、そういう年金受給者はもう確定しておりますから、こちらのほうから出向いていって差し上げて、そのときに受け取りをいただけばいいのですから、そこは便宜にやらすつもりでございます。いずれにせよ、やはりせっかくですから年度内に使いませんと、むだになっては申しわけありませんので、そういうやり方にして支給漏れのないようにいたしたい、かように考えます。
  40. 田邊誠

    田邊分科員 それで大臣、あなたがこの間の私の質問に対する答弁で若干、何か六%で三カ月で一八%だ、全部で二五%になるような話をしておりましたけれども、そんなへ理屈みたいなことを言ってこの問題に対処されることは私は好ましくないと思うのです。そういった理屈を言われるならば、私のほうも、消費者物価が年間に二五%上がって、それでもって生活保護基準が二五%でいいなんというはずは、あなたも専門家の立場でいままでやってこられたのだから、考えられないと思うのです。生活保護基準は、これは少なくとも物価が上がった分だけ上げればこと足りるなんというものではないわけです。一般家庭に対するところ比率は年々変わっていまするけれども、以前の五四%から五二%やっても、食費がその四分の三を占める状態の中でもって、特につい最近の物価の非常な高騰の中における状態というものは、野菜等の値上がりが非常に大きな影響を及ぼしているということをいわれておるわけでありまして、そういった面から見れば、食費に与えるところ物価の高騰の影響は非常に大きいということになれば、これはただ単につじつまを合わせて、二五%になったからそれでもって十分だというふうな考え方は、私はとってつけた話だろうと思うのでありまして、要はできるだけしてやりたい。実際に赤字を生んでいることについて、私がついせんだってもかなり詳しいお話をしておるわけであります。これは一つ一つ私はずっととっておりまするけれども、ただ単に野菜が三六・二%上がったというのじゃなくて、その中でもってネギは一八・六%、ゴボウは二五・七%、そういう一年間の値上がりの状態というものを実はずっと調べてまいりますると、これはどうしてもまかない切れない状態ですね。これは三級地におけるところのある施設状態ですけれども、六千八百円足らぬ。社協でもって調べたところは一万円以上足らない、こういう報告が出ておるということですから、まず生活保護家庭なり入所者に対するところの補てんという意味からいえば、これはあくまでも足らない面であるけれども、いまの予算上から見ればその程度しか実はやれないのだ、こういう言い分じゃないかと私は思うのですよ。あなたが何か外部の方々と会ったときも、いや百三十億であって、それ以外に医療費改定等で二百億以上必要だ、それに文教関係の単価アップ等があって四十億必要であって、四百三十億ある予備費はこれでもってからっぽになるのだという話をしておったけれども、私はそのほうが幾らか切実性があると思うのですよ。私はそういう観点で今度のことは措置さるべきものであるというふうに思うのです。  したがって、そういった観点でいけば、まだ不確定要素はあるけれども、自然増収が最終的には二千億以上、これは補正後においてもあるだろう。大蔵大臣も幾らかあるように見えますという答弁をしているわけですから、そういった点から見れば、あなたのほうは最後のぎりぎりまでこの問題に対しては努力をするというかまえでなければならないと私は思うのですよ。したがって、大臣が、何かせっかくこれだけの努力をしたのだから、もうおれとしてはこれ以上はさか立ちしてもできないというふうな形でなくて、あなたもいまちょっとかぜ引いておって何か注射を打っておるようだけれども、天井から目薬じゃなくて、近くからひとつ緊急に即効性のある注射でもしてあげよう、こういう気持ちがあれば、この問題については最後まで厚生大臣の立場でもって努力をされる。努力の結果がどう出るかわかりませんよ。わからぬけれども、せっかくあなたのほうはこういう一つの穴をあけられた。私は穴をあけたことに対して評価はいたしますよ。しかしこれだけじゃ幾ら何でも足らぬじゃないか、こう言っておるのでありまして、そんなに私はものの考え方が、これに限って見れば、行って帰るほど違うわけじゃないのであります。したがって大臣がこの問題に対して、いまできるとはあなたは判断できないでしょうけれども、しかしこういういろいろな面におけるところの要求が出てきておるわけですから、それに対してはひとつ最後のぎりぎりまでこれに対する努力をするということは、当然しかるべきことじゃないかと思うのです。どうですか。
  41. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 田邉委員がいみじくも仰せになりましたように、物価が上がった、その程度扶助基準を上げればいいのだ、私もこういう考えは持っていないのです。しかし、昭和四十八年度の予算からいいますと、もうぎりぎり、ないのですね、実際のところ。そこで、私も、泣くような気持ちで、物価と調整をとる、まあ納得できるような説明がある程度できるかなというところで、この二千円という一時金、三カ月で計算すれば一八%になる、一月計算にすれば六%になる、そうすれば物価と調整もつけられるということでいたしたわけでございまして、これが最良の案であるというふうには私も考えておりません。苦しい予算の中で、しかもまた物価の上昇に悩んでおる人々の生活も考えれば、まあこの辺で四十八年度はしんぼうしていただけないだろうか、こういう気持ちで出したわけでございまして、四十九年度の将来の問題については、私どもできるだけの努力をいたす考えでございます。四月一日になりますと、御承知のように二〇%の扶助基準が上がるわけでございますが、今後とも私は、物価の動向とにらみ合わせながら、扶助基準の改定については努力いたします、こうたびたび申し上げているのです。というわけでございまして、昭和四十八年度の財政の苦しいことも十分頭にお考えいただいて、私どもの措置に御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  42. 田邊誠

    田邊分科員 あといろいろと八木委員や大原委員等からも質問があると思うのですが、私は、厚生大臣の立場でいえば、それは予備費を全部使い果たすことについてはいかがかと思いますけれども、しかし私は、それは他の大臣なり大蔵大臣がどう言おうとも、今年度ひとつ幾らかでも余裕財源があり予備費が残る、これから先も租税収入において見込まれる面があるといったら、全部ひとつもらいたいというような気持ちと決意でもって臨んでもらわなければ、今後にも対処できないと思うのですよ。来年度以降についても私はいろいろ意見があります。しかし、この状態の中でひとつ救ってやろうという、この気持ちと、決意と、決断があれば、私は、政府のいわゆる福祉問題に対する取り組みの姿勢、こういった点から見ても国民が納得するのではないかというように思うわけですから、これは一つ小さい穴があいたわけですけれど、ひとつ人間が通れるくらいの穴まであける、押し込むというようなつもりでなければこれはならぬわけでありまして、手を差し込もうと思ったけれどそれが手を差し込めないような小さな穴、何かもらおうと思ったけれど引っ込めざるを得ないような穴ではなくて、これはやはり国民が、なるほど政府はこれだけの施策をしてくれたかと、目で見、からだで感ずるような、そういう状態というものを私はつくってもらわなければならぬというように思っておるわけでありまして、これはひとつ、ここでもって終わったわけではありませんから、そういう認識でぜひ厚生大臣は取り組んでもらう。方法はありましょう、いろいろな方法はありますよ。三月三十一日までの社会局長の話を私ちょっとさっきとりましたけれども、これは少なくとも四十八年度の予算、もちろん四十九年度の予算、これらを考えあわせて、いろいろなできるところ措置については、ぜひひとつやってもらいたい。こういうような考え方に立っているわけですから、私も、大臣も御承知のとおり、実はいろいろな理屈を押しておったり理論を言う立場ですけれども、このことについては私は、あえてそんなへ理屈でもって問答しようと思ってないのです。したがって、そういった面におけるところの最後までの努力をひとつ大臣にしてもらう、こういうように私は確信をしておるのです。何か決意のほどがありますか。
  43. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 御承知のように、もう本年度の予備費はないのでございまして、もうほんとうにないのです。ないわけでございますから、いまの段階で幾ら熱意はありましてもこれ以上ふやすということはできない、こういうふうに、これははっきり申し上げておきます。
  44. 田邊誠

    田邊分科員 私の発言について、今日ただいまのところはそれは無理かもしれませんけれども、いま言ったように、これは余裕財源も出てくる。いろいろな政府が使う道があるでしょうけれども、私はそれらをこれに振り向けてもらいたいということを強く要求しておきたいと思います。  それと、四十九年度の話がちょっと出ましたのですが、保護基準二〇%、もうこれはいまではいけませんな。これは足りません。予算編成のときはあるいはこの二〇%でかなりいいなあと思ったかもしれません。大体あなたのほうは、現在の物価の値上がりを見れば、生活保護基準は二〇%要求なり二二%要求なんというものではなくて、これは三〇%以上の要求をしなければならぬ立場ですよ。幾ら要求してどうなったかなんということをここで聞く時間的余裕はありませんけれども、しかし、いずれにいたしましてもそういう状態ですが、これは現在の物価状態ではもう上げなくちゃなりませんね。これは手直しせざるを得ないですね。どういうふうにしますか。
  45. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 来年度の扶助基準につきましては、二〇%のアップということでまいりまして、その後の物価の動向に応じて、物価がうんとまた上がるということであれば改定のときは早くなるだろう、こう私は思います。しかし、どの程度上がるが実際のところわからないのです。御承知のように二月の中旬の卸売り物価などは非常に鎮静化してまいりましたね。そういうふうな状況でございますから、まず二〇%上げてまいりまして、その後の物価の動向に応じ臨機応変の措置は講じます、こういうのが私の考え方でございます。
  46. 田邊誠

    田邊分科員 つい最近の物価状態は東京において二四%になったということは御承知のとおりでありまして、消費者物価は二カ月、三カ月、四カ月卸売り物価の上がる動向にずれてくるわけでありますから、したがってこれから先物価が鎮静をするなんということは断じて予測できない。いろいろと石油や電力等の値上げを見込んでみれば、こういったことについてあなたがもう一度この時期においてこの基準については考え直す、再検討するという必要はありましょう、これは。現実にそうですね。何も二〇%にきめたから、まだ予算が通らぬから、通ってからとにかく少したってもう一度考え直そうなんという、そういうことであってはこれはならぬのですよ。ですから、百歩譲って二〇%で発足するかもしれない。しかし、追っかけて五月なりにはもうすでにそのあとを改定をする再改定をしなければならぬ、そういう状態というものが現実に物価の動向できているでしょう。これは早急にやりますね。
  47. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 二〇%という予算面上の扶助基準のアップについては見直す考えはございませんが、四月になり五月になり、物価の動向に応じ、その状況に応じ臨機応変の措置を講じます、こう申し上げておるわけでございます。ですから、五月になったらやります、六月になったらやります、こういうことを申し上げておるのではありません。物価の動向に応じ臨機応変の措置を講ずる、これは御信頼いただけると思うのです。昨年の十月だってちゃんと私は五%アップをしておるわけです。十二月だって一時金の支給もいたしておるわけです。ですから、いかに厚生省が物価動向をにらみ合わせ臨機応変に措置を講じてきたかということをどうか御信用いただいて、その点はひとつ行政府におまかせいただければしあわせだと思う次第でございます。
  48. 田邊誠

    田邊分科員 時間がありませんから、あとはひとつあとの委員にまかせますけれども、この生活保護基準引き上げの問題と年金引き上げ、改定期の繰り上げ、それからスライドの実施等、当面政府がやらなければならない措置が山積みしています。この中であなたができることは必ずやる。これはもうできることがたくさんありますから、ぜひひとつやってもらうということでもって、一々申し上げませんけれども、できることはやりますね。
  49. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 こういうふうな問題は、これは法律に関する問題がたくさんございます。したがって、できるものはやるか、それはできるものはやります。やりますけれども、先般の予算委員会の一般質問でお答えいたしましたように、いまの段階ではいずれもむずかしい、こう申し上げておるわけでございます。
  50. 田邊誠

    田邊分科員 したがって、その具体的な法律案の審議等もありまするから、その中でもってわれわれは国会の意思をまとめる、こういう考え方も持っておりますので、それに即応してひとつ政府も考えを新たにしていただくということを強く要求しておきます。
  51. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いまお述べになりましたこと、非常にむずかしいものばかりでございますから、その点も十分御理解いただきたいと思います。
  52. 渡辺栄一

    渡辺主査 田邊君の質疑は終わりました。  次に、八木一男君。
  53. 八木一男

    八木(一)分科員 厚生大臣政府委員に質問をいたします。  いま田邉委員の御質問に対して大臣はある程度誠意を示したようで、しかしながらほんとうの決心を固めていない、このような答弁をしました。田邉委員や、また予算委員会大原委員や私に対していろいろと質疑応答で答えられましたけれども、誠意を示しているように見えて、この狂乱物価のときに多くの国民が生活を破壊をされていることを認識をされながら、ほんとうにそれに対処をするという決意が非常に足りないと思うわけであります。いま質疑応答を伺っておりましたけれども、大事なことだけれども非常に困難だと言われる。困難というものをここで乗り越えなければ、国民の生活が破壊をされるわけであります。そのような、いままで狂乱物価のないときに比べればごくわずか前向きの姿勢を示したようでございますが、国民の生活は、あなた方の、前に比して少し前向きになったということでは、これは守れないわけであります。狂乱物価の世の中では、政治的にほんとうに大きな強力な方針に従ってやっていく必要があろうと思うのです。その決意が非常に足りないことを遺憾に存じました。たったいまからでも、決意をさらに固めて問題に対処をしていただきたい、要求をしておきたいと思います。  まず第一に、昨年の十二月十九日に予算編成の大綱がきまりました。経済見通しの大綱がきまったわけであります。ことしの一月十九日に同じくそれが確定をされました。そのときに厚生大臣はどのような抵抗をされたか。抵抗をされたのではないと思うわけであります。十二月十九日に経済見通しと予算編成の大綱の方針がきまったときには、その十一月の末に発表された全国の消費者物価水準、それを参考の大きなものとしておられたわけであります。十一月の末に発表されたものは、これは十月の全国平均であります。ですからまだ一四%台であります。それを十二月十九日に確定をされて一月十九日にきめるときに、たとえば卸売り物価やあるいは通関の指数や、あるいはそういう問題については、経済見通しを変え、そして予算は確定をされたわけでございますが、卸売り物価で変える状況のあるときに消費者物価のほうについては一つも変えない。そしてその経済見通しに基づいて予算を確定をされた。このような態度が全くけしからぬと思うわけであります。閣議であなたはそういう点について国民の生活を守る立場から主張をされたのかどうか、主張をされたけれども、ほかの閣僚が無理解でつぶれてしまったのか、どっちか、明確に正直にお答えをいただきたいと思います。私は主張されたんではないというふうに想像をいたします。
  54. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 予算が最終的にきまりますときに、経済企画庁長官のほうで数字の微調整をいたしたわけでございまして、微調整の結果、消費者物価指数のほうには動きはない、こういうわけでございますから、けっこうでございますから、それ以上私は何も発言をいたしてございません。
  55. 八木一男

    八木(一)分科員 そんなことで国民の生活が守れますか。消費者物価が上がれば国民の生活が圧迫をされる。特にあなた方が大きな任務を持っておられる、生存権のぎりぎりで生活をしておられる方の生存権が侵されるということはあたりまえでありましょう。消費者物価指数がそれから大きく上がったというのは、どんなにぼんやりしても政治家なら知らないはずはない。そして一月十九日に卸売り物価のほうについては調整をしているわけであります。なぜ消費者物価について調整をしないか。それに基づいて四十九年度の予算を変えないか、そのくらいの主張をしないで国民生活を守る責任を果たしたということは言えないわけであります。あなたは主張しなかった。正直でよろしい。責任をその点で果たしておられなかったわけでございますから、その責任を果たさなかったことを深く肝に銘じられまして、これからでもおそくない、これからでも責任を果たすのだ、そういう気持ちで問題に対処してもらわなければならないと思う。いろいろやるけれども困難でございますというようなことは一切吐いてはならない。困難を全部突破して国民生活を守るために前進をする。それで刀折れ矢尽きてそれができないときには、おれはここまでやったけれどもできない、できない相手はだれだということを明らかにして対決をする、そしていれられなかったなら、いれられない田中角榮に、おまえがやってみろ、おれはこれだけやっているのに、それをやらせようとしない、おまえがやってみろ、やれないならおれの言うとおりにしろ、言うことを聞けというぐらいの態度で迫っていかなければならないと思う。その決意をひとつ伺っておきたいと思う。
  56. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いつもながらの強い口調による激励、まことに敬意を表します。私も終始一貫今日まで福祉社会建設ということに熱意を持って私は私なりに最大の努力をいたしたつもりでございます。でありますからこそ明年度の厚生省の予算も、一九・七%という一般の伸び率の中にあって、三七%という伸びを見せることができた。しかもその内容というものは最近における物価動向に対処するものでございまして、私は全力を尽くしたつもりでございます。まあそれはいろいろ不十分だとか何か言われる御意見、これは私は大いに傾聴いたしますが、私は全力を尽くしてやったつもりであるということだけはっきり申し上げておきます。
  57. 八木一男

    八木(一)分科員 全力を尽くしたと言われるけれども、結果にあらわれていない。そこにいま全力を尽くしたというようなことばはお使いにならないほうがいいです。全力を尽くしたつもりだったけれども、足りなかったと言わなければいけない。  いま言ったように、一月十九日の予算確定のときに、あなた正直に申しましたけれども、国民生活を守るための努力をせられなかった。これは正直でよろしい。あなたほかで一生懸命やっておられる。主観的には一生懸命やっておられるのですから、私どもはそれは評価しますけれども、世の中の事態は個人的に二、三年前より一生懸命やられたということでは責任が果たせない状態になっておるということをひとつ認識をしていただきたいと思うわけであります。  ところで、いまのこの二月の末に発表される、ずれて三月一日になりましたけれども、その消費者物価指数、これは一月の全国平均が出るわけです。それが出た即時に対処するということを先日予算委員会で御説明になりました。対処らしき「た」の字くらいのことを何かいま閣議で決定された。対処されるのはいいけれども、これでは全く少ないということは先ほどのことでわかっております。去年の消費者物価指数が上がる経済見通しは五・五であります。五・五の一年間の年度平均であなた方は考えておられる。後に一四と見通しを変更されましたけれども、最初は五・五消費者物価指数が上がるとしてこの四十八年度の予算を組まれた。それから毎月猛烈に累増しておる。十月に五%生活保護基準を上げたと言われた。この十月に上げたものは、九月二十一日に決定して、八月末の全国の消費者物価指数をもとにしている。末に発表された全国消費者物価指数をもとにしておられる。これは七月の全国平均です。ですから、十月に五%対処したと胸を張って言われるけれども、そのときにその五%がとんでもない低い数字であった。その前に、十月にしか対処をされなかったが、もう四月から始まっております。四十八年の四、五、六、七、八、九とその間に最低生存権が侵されておる。十月に対処したけれども、その率は非常に少なくて、十月もさらに侵されておる。十一月、十二月、ずっとそういうふうに侵されているわけであります。それを全部計算に入れて、そうしてこの前申し上げましたけれども、一月の東京の数字、十二月の全国の数字しかわかっておりませんでしたから、ごく控え目に見てその数字が横すべりになる。そういうことを計算して私の試算しましたところで、当然、たとえば全国平均一級地生活保護世帯のことで、一世帯の四万円をこえなければ最低の生活を埋めることにならない。数字を申し上げました。申し上げたのですから、社会局も計算されたと思う。正確に計算されたら、どんなに政治的にひん曲げようとしても四万円以上の数字が出てきます。特に三月一日発表された数字ではそれを上回るというような状態であります。そういうことですから、一世帯四人世帯の東京の一級地のものが四万円をこえるとするならば、一人平均で一万円、少なくともそれだけはせなければならぬ。それ以上せられるべきですよ。だけれども、少なくともそれだけはせられなければならぬ。それを一級地の一人当たり二千円という程度で、それで全力を尽くしたということにはならないと思う。そこで、少なくともその点については重大な反省をせられまして、今後全力を尽くして努力をせられる。予備費がどうのこうのというのだったら、先ほど田邉委員も言われましたように、四十八年の自然増収があります。ある程度あることは福田大蔵大臣も確認をしておる。まだ数がわからない。まだ数がわからないからそれが使えないというような、そんな紋切り型の政府では国民の期待を全く裏切るものであります。あることはわかっておるのですから、それを全部投入してこれに充てるということをしていただかなければならないと思う。いままで主観的には努力をされたと思いますが、国民生活の立場から客観的に見たら、この狂乱物価の時代にほんとうに不十分にしか対処されておらないのですから、その責任を痛感をされて、もよりの閣議、あしたでもあさってでもいいです。そこで、断じていまの、この前きめたものは少な過ぎる、これを再度改定をして、低所得者階層に対するこのような措置を、金額を急速にふやさなければならないということを職務を賭して主張され、実現をされる必要があろうと思う。それについてひとつ、もう絶対にそれは決意はしていただかなければなりません。決意ができないということであれば、私の力ではできない、たとえば田中角榮がやれば、あれはそれほど熱心じゃないかもしれないけれども、権力を持っているからできるかもしれない、ほかのかわりの者でやり切る者にかわってもらいたい、しかし私はこれをやっているのだから、私の主張に基づいて私がそれをやることに同意を願いたいということで、強力な主張を閣議で職務を賭してやられるかどうか、ひとつ伺っておきたいと思います。
  58. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 御承知のように本年一月の東京の消費者物価指数、さらに全国の消費者物価指数が二三・一%と、こう出てまいったわけでございます。そこで、それに対応しまして、四月になりますと二〇%アップになるわけでございますから、最近における、一−三月における物価動向に対応した一時的な処置を講じなければならないというので、厚生省としては、やはり私は思い切った措置だと思うのです。思い切った措置だと思います。そういうふうな措置として……(八木(一)分科員「方法は思い切っても内容が全く問題にならない」と呼ぶ)内容とおっしゃいますけれども、二千円というのは、一カ月の額に換算しますと一八%になるわけですが、それは一、二、三の三カ月に割りますと六%になるわけです。したがって一四%、去年の十月の五%、一九%、それに対して二五%のアップ、こういうことになるわけでございまして、もう昭和四十八年度の予備費というものはないのです。何ぼ私ががんばってみてももうないのです。そういうわけでございますから……(八木(一)分科員「補正予算を組めばいいんだ」と呼ぶ)そういうことを言いましても、先般も大蔵大臣言われたように、自然増収がどのくらいあるかわからないわけでございますから……(八木(一)分科員「角榮にやらしなさい。角榮に補正予算を出させなさい」と呼ぶ)私としては昭和四十八年度の予算内においてなし得る最大限の努力をしたということをどうか御理解をいただきたい。これは八木委員、心の中でわかっておられると私思うのですよ。よくやったと思っておるのじゃないかと思うのですよ、ほんとうを言うと。ない中でよくやってくれた、まあわずかではあるにしてもやってくれた、こう思っておるのじゃないかと思うのですが、まあ人の心の中までのぞくわけにはまいりませんから、これ以上は言いませんが、私なりに四十八年度の苦しい予算の中で最大の努力をしたということだけはひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。     〔発言する者あり〕
  59. 八木一男

    八木(一)分科員 いま田邉委員も御発言になったように、心の中では思っておられるけれども、壁が厚くてできない。大蔵省の壁か内閣自体の壁か、その背景にあるつまらぬ金持ちの連中の壁か、そういうことはできないというのでしょう。だから、あなたその気持ちがあるのなら、全力を尽くしたという気持ちがあるなら、——それは気持ちはいいです。気持ちがあるのだったら、自分でそれを突破しておやりなさい。自分でそれをやらなければならないと思って、力がないと思ったならば、これは力をつけるために、こんなやつがじゃましてできないのだと天下に声明して辞表をたたきつければいい。これは田中角榮がじゃまをした、福田赳夫がじゃまをした、背景の独占資本がじゃまをした。そういう場合に国民の世論が沸騰して、そのようなじゃまをした要件を取っ払う。ですから、あなたはほんとうに必要だと思っているのでしょう。必要だろうと思っていままでさんざん努力をした。努力をしたことは、ほんとうにこれからも努力を続ければ、私どもも評価をします。しかし、これからも努力を続けないと、あなたが主観的にいままでにないことをやったと自負心を持っておられても、国民生活はあなたの主観的な満足とは全然反対に破壊されたままになるわけです。いまはそういう時代です、経済的に見て、生活的に見て。ですから、主観的ではいけません。客観的に、どんな困難があってもそれをやり切るということでなければいけません。さっきのような数字でごまかそうとするのはもう絶対におやめなさい。そんな一八%になるというのは三カ月のものでしょう。一カ月六%という計算でしょう。二千円を一八になる、そんなことでごまかそうという精神が大体いけない。二四%上がっておるんでしょう。そうして四十八年度は五・五消費者物価が上がるとして組んだんでしょう。十月に五上げたんでしょう。そうしたらまだ一〇・五です。二三・幾つだったら、一〇・五に六%加えても一六・五でしょう。二四から一六引いた八は、ほんとうの生活が押し詰められているわけです。それは一月、二月、三月だけです。十二月や十一月や十月や、四月から九月までの間はどうするんだ。そんな、数字をごまかしてしっかりやったようなことを言うこと自体が間違いだ。数字は言ってもいい。これはほんとうの最低生活を守るのには少ない数字だ。これだけ差があって、それだけ皆さんの健康を圧迫しているんですと正直におっしゃい。そうしたら、厚生大臣は微力ではあるけれどもそれを変えようとして努力をしている、それをブレーキをかける連中をみんなの世論の力で変えていかなければならない、国会の追及の力で変えていかなければならない、これは社会党の私どもやっておりますが、与党の良心的な方々も、国民生活を考えられれば、それがわかったら奮起をされるはずです。あなたがいいかげんな数字で十分に対処しているというようなことを言うから、専門外の人は、そうかいな、それではまあよかったということになる。そんなうその数字、うその説明はするものではありません。これは上げてもダウンをしているんだということをはっきりと自民党の各位説明をして回って、足りないから私に力をかしてくれ、そういう要請をされるべきだ。野党の委員たちにもそういう要請をされるべきです。十分に対処をしましたなんというのは、これから口が曲がっても言ってはいけない。不十分だ、足りない、申しわけない、みんなが応援してください、一生懸命にやりましょう、何とかして難関を突破しましょう、私も命がけでやります。そうしてそれをほんとうに実行される、そういう態度でなければならないと思うのです。厚生大臣にぜひこの決意を固めていただきたいと思うのです。簡単でけっこうですから、ほかの数字を言って、二〇%来年から上がるとか、そんなかってな弁解は抜きにして、そういう決意をもって対処するという決意を披瀝していただきたいと思うのです。
  60. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 数字は言うなということでございますから数字は申し上げませんが、最近における物価高というものは、ほんとうに低所得の方々、私たいへんだと思います。先ほども田邉委員がお述べになりましたように、野菜が上がっている、ニンジンが上がっている、ゴボウが上がっている、ほんとうにたいへんだと思います。そういうことは十分理解し、できるだけの努力をいたさなければならないという気持ちで一ぱいでございます。しかも財政という都合もありますので、そこで非常な制約を受ける。ことしの予備費はもう四百億足らずきりないわけで全部使い切ってしまっておるという状況でございます。そういう中で、何とかひとつこれでごしんぼういただきたい、こういう気持ちでございまして、あなたは大きな声を出されますが、私はきょうはかぜを引いておりますから、低い声で答えているのですが、声の高低とは別に、熱意においては同じだ、こういうふうにお考えいただければけっこうだと思います。
  61. 八木一男

    八木(一)分科員 もう堂々めぐりになりますから、絶対に強い決意でやっていただかなければならぬということを強く要求いたします。これでごかんべんいただきたいということを、いまつけ加えられたが、そういうことは一切これから言ってはなりません。あしたもあさっても、とにかくこの一日、二日、三日、四日、最大の努力をしていまの壁を突破する、そういう決意でやっていただかなければならない。これは強く要求します。これは国民の要求であります。個人の要求ではありません。断じてやられるということを強く要求をしておきます。  それから具体的な問題に入ります。この間、社会保障制度審議会の十一月十九日の建議について説明しました。あのとき、厚生大臣はきわめて不十分にしか理解していられなかった。ほかの大臣はほとんど理解がなかった。あれも即時閣議を開いて研修会を開いてくれと言ったのですが、やったかどうか知りませんけれども。あれは、十一月十九日という、いまの狂乱物価のまだ初めのころに出されたもので、あれだけ強力なものがいわれているのです。ですから、その精神をやはりくんで、それを拡幅してやられる。タイムラグのものが最後にありますけれども、これを閣議で、わからぬやつがいたら、おまえこれを読んだのか、これを読まないで、くだらぬことをぬかすな、黙れ、齋藤厚生大臣の言うとおりに賛成しろということで、あれも活用してやっていただきたいというふうに思います。  それから次に、具体的な問題で申し上げます。年金の再計算期について、昨年の年金の審議のときに、あなたは最初五年だったのを四年より短くするという態度だった。私は速記録を全部持っていますが、時間がありませんから、速記録をあとで、それを正確に申し上げますからね。少なくとも二年でせなければならぬ。あのときは、こんな狂乱物価を私も想像しませんでした。その点は不明を国民にわびなければならない。あの当時の状態で、最低二年で改定しなければならぬという主張をしました。何回かやりとりがあったところを、二年ではちょっと早過ぎるように思いますけれども、その再計算期を非常に詰めなければならないということをはっきりと答弁をされているわけです。ところで、それからの経済状態のいろいろな物価のあれです。私の主張の二年ということを訂正します、私の物価に対する不明をわびて。これは少なくとも一年でしなければならぬと思います。あの当時あなたは、まあ四年より短くするということで、あなたの原案は三年でありました。私は二年を主張しました。そうしたら、二年ではちょっと早過ぎるように思うけれども、何とかそういうことで考えてみます、努力をしますということでした。去年のお返事では、二年と三年の間で、二年に近いところまであなたは約束しておられる。速記録がありますよ、ううんと言って。時間がないので、いいかげんやったら、今度は速記録で、ほかの委員にやってもらいます。二年ではちょっと早いと思いますが、最低限その期間を短くすると、ちゃんと速記録があるのですから、あなたのことばでちゃんと載っているのですから。だからそれを、インチキなことを言っちゃいけませんよ。それですね。ところが、物価がこれだけ上がったのですから、その私の主張の二年というのは、不明をわびて一年にします。あなたの約束も、二年プラスアルファというような答弁ですから、この狂乱物価のことを考えたら、少なくとも一年、あるいは一年プラスアルファということにならなければならないと思う。そのくらいのところ年金の再計算期をやらなければならない。それについての意見をひとつ伺いたい。
  62. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先般、昨年でございます、年金法の改正の際に、四年では長そうだ、二年では短そうだ、こう申し上げたことは、私も記憶に新たなるところでございます。二年にするとは申し上げたことはございません。その点ははっきり申し上げておきます。速記録をごらんいただければわかると思います。二年ででは短過ぎる、四年では長過ぎる、こう申し上げているのです。  そこで、そういう……(八木(一)分科員「速記録がありますよ。うそを言うんじゃない。ぼくは速記録を持っているのですからね。でたらめ言うな。二年では少し早過ぎるが、その趣旨に従って短くしたいということを言っているのです」と呼ぶ)それはそれといたしまして、私はその気持ちは変わりません。四年ごとに財政再計算をやるということは、私はやはり長過ぎると思います。しかし二年でやるというのはどうであろうかという気持ちがしておったわけなんです、昨年は。特に最近、物価がこういう狂乱の物価になってきましたね。こういう狂乱のときに、はたして財政再計算をやって、こういう長期にわたる年金制度のようなものをこういう狂乱の中でやることがむしろ適当であるかどうか、こういう一つの要素が入ってきたと私は思うのです。八木先生は、こういう狂乱の物価だから一年に縮めろとおっしゃる。けれども、冷静に考えてみますと、年金という長期にわたるものを、こういうふうな狂乱の波の高いときにやることがむしろどうであろうかという感じがしているのです、実は率直に言いまして。これはいろいろな御批判のあるところだと思います。八木委員のように縮めろというのはどうもちょっと無理のような気が私はしているのです。ですから、私は去年の国会で答弁いたしましたように、四年ではほんとうに長過ぎると思います。二年ではちょっと短かそうだ。二年半か三年かというところだったのでしょう、表面的な気分はね。ことばでは言ってませんよ。お互いの気分はその辺だったはずですよ。二年半か三年、その辺が気分なんです。それは気分ですから速記録には出ていません。出ていませんが、そんなところだったのですが、そこにもう一つ、これは八木委員のような年金の大家にまじめにお考えいただきたいのですが、こういう狂乱の物価の中で長期にわたる、しかも年金というのは生活の設計の大きなささえになるのですね、福祉年金とはちょっと違いますから。そういうものをこういう際にやることが時期としていいのかどうか、こういう問題が一つ加味されているのではないか、私は率直に言いましてこういう感じがしているのです。しかし、私ははっきり申しますが、心の中では二年では短か過ぎる、いまでもそう思っています。
  63. 八木一男

    八木(一)分科員 この前のときに二年ではちょっと短か過ぎると言っておられます。だから、そのことは、初めは三年という気持ちを持っていたけれども、主張に対して二年のほうに考えなければならないけれども、まだその時点では二年ではちょっと短か過ぎる、そういう答弁です。これは全部速記録に載っています。だから、いまあなたがおっしゃったように二年半か三年というようなことで考えておられる。ところが狂乱物価ですから、年金の問題について私は断じて早く考えなければならない。あなたは狂乱物価だから長期間のなんとかと言われるけれども、再計算期というのは一回で終わるわけじゃない。あなたはそのときの約束で、少なくとも三年ぐらいの状態で何回もやるというわけであります。ですから、長期間でも、次の、たとえば私の主張によれば一年だけれども、去年のベースでは二年、あなたの考え方では二年半か三年というのは、その次にまた来るわけです。ですから、長期間だって、物価の変動しているときにやったならば困るじゃないかという考え方は間違いです。その次に二年半か三年でまた考えられるのですから。それで二年半か三年の間に物価が急落するなんということは、こんなものはいまのときに考えた人がいれば、これは気違いかばかです。ですから、これは当然狂乱物価で早くやらなければならないということです。ですから、この前の私の主張は一年だ。しかし、あなたはこの前のときで二年ではちょっと早過ぎるというのは、この状態では、一年ではちょっと早過ぎるという答弁に変わるのが当然の論理的な道です。少なくとも急速に年金の再改定をやる。時間がかかるといつも事務的なことを言いますから、年金局長いますか。そういう態度で、厚生大臣の約束で、厚生省の約束だから、即時再改定についてその準備を始める。準備が間に合いませんでしたというようなことをこれから言われないようにちゃんと準備を始めて、再改定期を、私の主張では一年、ことし。あなたが反省をされて一年半になるかなんか知りませんけれども、少なくとも来年はやらなければならないことになる。二年、そういうことで準備を始める。厚生大臣はそれを指導されて推進をされる、そういう約束を願いたい。
  64. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題は、いま申しましたような狂乱物価情勢ということも考えてみなければならぬ問題でございます。そこで、今後の物価の動向あるいは賃金の動向、一般消費者の生活水準の動向等をにらみ合わして慎重に考えなければならぬだろうと思います。しかも、それには八木委員のような専門家の御意見も十分尊重しなければなりませんし、社会保障制度審議会でございますとか、社会保険審議会とか、やはり各方面の意見も聞いて、十分慎重な態度で臨んでいくのが一番望ましいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  65. 八木一男

    八木(一)分科員 時間がありませんから、社会保険審議会とか社会保障制度審議会をいい意味で活用していただきたい。ぐずぐず出して、それの結論が出ないから提出がおくれましたなんということにはならないように。それに諮問をするなら即時諮問し、そうしてその準備がそういうことでおくれないように、あしたでもそういうことについて諮問をしなさい。そういうことを要求しておきます。事務的におくれたなんというのは、年金局、絶対に許しませんからね。そういうことを即時やる。  それからもう一つ、ちょっともとへ戻りますが、制度審議会の建議。年金その他の自動スライドのタイムラグの問題で、あなた方は社会保険審議会の、厚生年金部会にスライドについて意見を聞くことになっているからといま言って、その結論が五月に出て、それから事務的に十一月になると実に熱意の一つもない態度をとっておられる。世の中変わっているのですから、厚生年金部会をすぐ招集して、それは賃金の読みかえその他の主張があるからすぐいかないというなら、それはそれでやってください、しかし、いまこれだけの狂乱物価年金実質価値が減っているのだ、一年に一回というそんなばかなことでは間に合わないのだ、タイムラグを縮めるために即時意見があったら出してくれ、しかもそれはぐずぐずじゃだめだ、三日間ぐらいで出してくれ、出してくれなければ厚生省独自にやるのだということを制度審議会でも保険審議会でもすぐやりなさい。あしたでも開いてもらって、それでタイムラグの問題が大事なときに急速に答申を出せないようなそんな審議会だったら、その点だけは審議会のことを抜きにしても厚生省独自にやったらいい。政府独自にやったらいい。緊急な問題ですからね。少なくとも私は一カ月に一ぺんずつ改定すべきだと思うのですけれども、厚生年金国民年金が年四回支給になっていますから、それに合わせて前の四半期に対して次の四半期にどれだけ消費者物価が上がったならば、その間は政府の方針の物価スライドでよろしい、それを即時に年金支給期ごとにスライドをする、そういう方式をすぐに確定をされなければならないと思う。いつも言うように、何百万人で計算して事務的に間に合いませんというような遁辞は許されません。それは物価スライドですから、方式を私は申し上げているのじゃない。前にきまっているものに、たとえば三〇%上がったら、一三〇なければ、それで数字が出る。それができないというなら、それは厚生省が全然能力がないかサボタージュです。社会保険庁も。端的に前にきまった数字に一三〇をかける、一二〇をかける、一三〇をかける、そんな計算ができないような日本人はどこにもいません。そういうことで三カ月ごとの自動スライドをやる。そして一年たったときには当然物価よりも賃金のほうがはるかに上がり方が多いのですから、賃金スライドでやる。そういうことを進められなければならないと思う。厚生大臣、それは積極的に進めていただきたいと思う。変な弁解でできませんというのじゃなしに、そのために最大の努力をするという御答弁をひとついただきたいと思う。
  66. 横田陽吉

    ○横田政府委員 スライドの実施につきましては、実は厚生年金部会ですでに二回御審議いただいております。幸いこの月曜日に第三回目の審議がございますので、先生の御意見の趣旨も十分お伝えいたしまして、審議に御協力を願いたいと思います。
  67. 八木一男

    八木(一)分科員 横田君、そんな抽象的なことでなく、三カ月ごとにスライドをする。制度審議会に、十一月十九日の答申においてタイムラグを縮める——賃金スライドがわれわれは主張ですよ。だけれども、年間の間は賃金スライドにはいろいろな統計の問題があるから、全国消費者物価指数のことで、これは一年に対して一年に対応するというようなへ理屈は言わないで、前の三カ月に対して次の三カ月が上がったら、それだけの分すぐ自動スライドで上げる、そういう方針をとりたいと思う、それに対して直ちに答申を出してくれ、あるいは部会ですから正式の答申じゃなくて意見を出してくれ、三日間くらいで意見を出してくれ、それでなかったら厚生省独自でやるのだ、そういう方針でそういう意味の諮問をする。しますね。保険審議会も制度審議会もすぐあしたにでもやってください。
  68. 横田陽吉

    ○横田政府委員 厚生年金部会で御審議をいただいておりますのは、法律できまっておりますスライドを実施するにつきましてのスライドの内容の問題でございます。ですから、先生いまおっしゃった三カ月に一回というふうな問題になりますと、これは新しい立法の問題でございますので、したがって、この新しい立法をするかしないかという点については、私どもはただいま御意見を伺ったばかりでございまして、それをするというふうなことをいまの時点で申し上げることは非常に困難でございます。
  69. 八木一男

    八木(一)分科員 だから急いでやらなければいけないというのだ。いままでに考えておかないといけないわけだ。予算委員会の総括質問で厚生大臣も言っているわけだ。それから何日たっている。今晩徹夜でも考えて厚生省の原案をつくって、制度審議会とそれから保険審議会の厚生年金部会に諮問なさい。そしてこれに関する限りはタイムラグの問題があるから、ゆっくりでは困ります、三日以内に意見なり答申を出してくれ、それでなければ政府独自でやる、そういう注文をつける。お出しなさい。あしたはそれをやりますか。
  70. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先般の予算委員会の総会で御質問がございましてお答えいたしましたように、いろいろ検討いたしてみました。せっかくの八木委員のお話でございますから、私ほんとうに検討したんですよ。検討してみましたが、どうしてもできない。できないというのを、これをやれ、こう言っても、やりようございませんですよ。これはほんとうに率直に、三百五十万の人の恩給証書みたいなものでしょう、それをどうやってやるんですかな。これはほんとうに、三月ごと、四月ごとと言われましても、できないですよ。というわけでございますから、八木委員だって御承知だとぼくは思っているんです、ほんとうに、できっこないということを。わかっていて、ただいやがらせみたいにはおっしゃらぬで、できないというのは私じゃないんですよ、役所ができないんですよ。三百五十万ですよ、たいへんなことですよ、口では言いましても。というわけで、非常に困難であります、こう申し上げているとおりでございます。
  71. 八木一男

    八木(一)分科員 厚生大臣、熱意をもって御答弁になってよかった。できないというのは、大体、年金局長や社会保険庁の長官以下なまけておる。それは、厚生年金部会にかけているように、ほんとうのスライド方式に賃金の読みかえをするといったら、それはむずかしいですよ。これは十一月からやったらいい。それまでの問題は、いまきまっている金額に、二〇上がったら一二〇かければいいわけだ。一・二の計算ができないような日本人どこにいますか。厚生省の役人はそれができないんですか。そんな計算できないようなお役人だったら、これは無能力ですよ。社会保険庁のメンバーも年金局のメンバーも、全部やめてもらいなさい。一二〇かける計算ができない、だから国民に対してもできない、そんな無責任な国家公務員ってあったもんじゃない。やる気がないんですよ。やる気がないから、三百万人もいるからできないということを言っているんです。厚生大臣はりっぱな政治家だからわかるでしょう。やる気がないことをしかりつけなさい。断じてそういう方法はできるんだ。きまった数字に一二〇、一二五をかけることができないというのは、そんななまけた日本人は一人もいないですよ。厚生省の社会保険庁と年金局だけがなまけている。それができないというなら、全部人員を入れかえなさい。そういうことでやっていただくことを強く要求します。最近の機会でまたやりますからね。横田君も——保険庁の長官いるかな。(出原政府委員年金保険部長がおります」と呼ぶ)その二人とも、そんなものができなかったら、あなた方は国家公務員としての能力がない。日本人全体の能力も低下しているんでしょう。国家公務員がそれができないというんなら、全部まとめて辞表を出しなさい。——答弁要らぬです。次の質問に移ります。
  72. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いまの御意見の中に、保険庁なり年金局の諸君が能力がないようなおしかりをいただきましたが、そんなことございませんよ。りっぱな人ばかりでございます。(八木(一)委員「能力がないよ」と呼ぶ)とんでもない話でございますから、そのおことばはひとつ返上させていただきたいと思います。
  73. 八木一男

    八木(一)分科員 もういいです。進みます。とんでもない無能力で、それなら、それをメンツのために返事したいというなら、それを解決をしてやります、厚生大臣を補佐してやり抜きますという返事ならよろしいけれども、それがそうじゃない返事で、弁解であったら拒否しますからね。そうしたら、ますますあなた方の無能力やあるいはほんとうにやる気力のないことをあらわすことになるから、弁解は無用です。やるというなら返事してください。
  74. 横田陽吉

    ○横田政府委員 弁解ではございませんで、御説明を申し上げます。(八木(一)委員「説明だったら弁解だ。時間がないからいいです」と呼ぶ)  物価スライド制と申しましても、これは既裁定の問題とか、あるいは新規裁定の問題とか、あるいは長期間拠出をした年金と短期間の年金受給者との間の問題とか、そういった各受給者間におきましての公平の問題というものを十分に解決いたしませんと、年金額の新たな水準の設定はできないわけです。スライドアップいたしますと、それは一つ年金の新しい水準になりますから、そういったことを考えますと、せっかくの御意見ではございますけれども、ただ単におしなべて何%をかりにかけ合わせてというふうな、そういったスライドのやり方は、責任のある私ども行政官としてはきわめて困難でございます。
  75. 八木一男

    八木(一)分科員 そういうへ理屈を言って厚生大臣の意欲をそいでいる。とんでもないですよ。いろいろな不公平だとかなんとかいいますけれども、いままであるものに一二〇をかける。いままで不公平があるとすれば、物価について実質的にそれが残るだけの話だ、一二〇をかけるのは。いままで不公平があるということを残していたのが間違いだ。それは同じですよ。物価が上がらなければ同じだけの実質価値のものがいっているんでしょう。二〇上がって、一二〇にしたならば、同じになるわけです。国の政治が悪くて、それで物価が上がったからそれが変動したんだ。変動したからもとに戻す。不公平があるというんなら、物価が全然安定しておって、それでいままでやっても不公平は同じでしょう。ほんとうに国民の立場で考えなさいよ、技術的なことじゃなしに。不公平があるんなら、一年目のときに直せばいい。それまでの不公平が、ぼくはそんなにあると思わないけれども、あるというんなら、それはあなた方の怠慢だ。不公平がある状態で、それを理由にして、年金実質的価値が下がって、そして予定生活がダウンするということは、これはあなた方の言う理屈の一億倍にも当たるような許しがたいことです。そんなへ理屈で、自動スライドはできない、三カ月ごとにできないということの遁辞は許されません。それを続けていけば、あなた方がほんとうにやる気がないんだ。へ理屈で厚生大臣を牽制し、内閣を牽制し、国民をごまかして、国民年金生活者の予定生活の悪化されることを見のがそう、それをやるのは自分たちの仕事がめんどくさいからほうっておこうということになる。くだらぬへ理屈は言わないで、いま言ったとおり、すぐに三カ月ごとの自動スライドができるようになさい。  次に、通算措置の問題です。  昨年、通算はことし出すと言った。障害者やあるいは遺族の通算について、欠陥があるから、それは通算通則法で出す。ところが、これは厚生省は全く、年金局かどこの局か知らぬけれども、なまけておる。通算措置を相談しなければならない各共済組合に一つも連絡していない。これは共済組合法の審議のときに、社会保障制度審議会で一々確認したら、責任者は一つも知らない。厚生省は十二月までは一つもしていない。ぼくがわんわん言ってから一月におくればせにやったらしい。何ですか、その大なまけは。そのなまけたことを責任を感じて、一週間以内ぐらいに通算の通則法の改正案を出しなさい。それは厚生大臣に出していただきたい。またへ理屈を言って、いろいろな調整がなんとかというんでしょう。ですけれども、通算通則法というのは、大体厚生省が大なまけのために原資移管方式をとっていない。じゅずつなぎ方式といって、期間だけを通算して、過去の年金がさいふの中で通算されるようななまけた方式をとっておる。そのなまけた方式が偶然あなた方の怠慢をカバーするに役に立った。なまけた方式だから、期間だけを通算すれば、遺族や障害も通算にすぐになる。緊急ですから、いまなまけた方式でよろしい。期間だけ通算すればそれでばちっと出るわけです。原資移管方式ではない。ですから、それは即時に各共済組合の関係の責任者に年金局長かだれか責任者、年金局長がなまけていたら厚生大臣、全部あなたがやってください。全部集めて、通算通則法の障害と遺族のそれをやらなければならない、ことし法案を提出をしなければならない、一週間以内で問題をまとめてくれと、事務的に連絡されて、来週の閣議には厚生大臣はそれを提案をする。閣議決定を文句言うやつは論破する。それを出す。そのことを確約を願いたい。
  76. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 遺族年金の通算制の問題については、私もこれは解決しなければならぬ問題だと考えております。幸いに共済組合等におきましても、厚生年金と同じようにだんだん、資格要件というんですかな、が統一される方向に向いております。まだ全部は統一されておりません。これはそんなようなことで、国民年金厚生年金、共済年金、いろいろありますが、私はやはり通算制というものを実現することは必要だと思っているのです。ですから、先般の国会でも私は、できるだけ早い機会に、できることなら次の国会にといったふうなこともお答えいたしました。私はそういう気持ちをほんとうに持っているのです。(八木(一)分科員「ことし出しますね」と呼ぶ)ところが、これをやるにはそう簡単にはやはりいかないのです。(八木(一)分科員「いきますよ」と呼ぶ)いかないのですよ。そこで、あなたが非常に熱意を持っていることは私はよう承知していますが、法律をつくるとなると、一週間以内とか一カ月以内とか、それはあなたもせっかちだと思うのですよ。やはりものというものは……(八木(一)分科員「急がなければ一年おくれるのです。一年おくれたら障害者や遺族はどうするのです」と呼ぶ)まあ言うほうは簡単でございますが、つくるほうはやはりそう簡単じゃないのですよ。というわけでございますから、次の改正の機会には必ずやるべきものである、私はさように考えていますよ。率直に私はそう思っているのです、心から。ところが、資格要件がいままでばらばらだったでしょう。だんだん公務員年金もやっと厚生年金並みになってきたわけだ。そういうわけで、そろそろ機は熟してきた、こう思っているのです。ですから、一カ月とかなんとか、あなたもそうせっかちなことをおっしゃらぬで、もう少し気持ちをゆったり持っていただいて、私の熱意も考えて、ひとつ御協力のほどをお願い申し上げたい、こう思っておるわけです。
  77. 八木一男

    八木(一)分科員 大きな声ばかりでなく、やさしく丁寧に申します。熱意をお持ちでしたらこれはすぐできるのです。通算通則法というのはむずかしくて、厚生省の人も年金局以外は一つも知らぬのです。だから、むずかしいですと厚生大臣に御進講申し上げると思う。こんなものはすぐできるのです。通算通則法をつくれという提起から、その審議も全部ぼくは十数年前からやっています。いまの年金局長よりも詳しく知っているわけです。ですから、じゅずつなぎ方式というなまけた方式なら、期間だけを通算すれば、あとはこの期間、国家公務員共済組合法だったらその条件でいくわけだ。この期間、国民年金法だとその条件でいくわけだ。この期間、厚生年金法だとその条件でいくわけだ。条件を変えることにならない。期間通算だけやれば、それで一発でいくのです。それを原資移管方式というほんとうに誠実なものをやれば時間かかります。それを大体老齢のほうもやっていられないのですから、なまけた方式でやっているのですから、なまけた方式が偶然に幸いしますから、それでやれば一発でできるのです。そんなものは共済組合の担当者は文句を言うはずはない。改良してやりましょうと言えば、はいときまるわけです、よほどばかじゃない限り。ばかだったら、自分でわからないから、一回各省に帰って相談しますという、そういうのもいるかもしれませんが、それではあしたまでに相談してこいと言えば、三日あったらできます。そしてそれを閣議に出されて、閣議で総理大臣以下通算通則法のわかる連中は一人もいません。これは必要なことで、断じてしなければならないし、去年約束したんだ、出させてくれと言ったら、わからないから文句を言うはずがない。わからぬで文句を言うやつだったら、わからぬで文句をぬかすな、わかっているのか、国務大臣の資格ないじゃないか、わからぬで議論するな。総理大臣以下わからぬやつは断じて押える。来週の閣議で決定して出してください。来週には提出しますね。
  78. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、八木委員と私の気持ちは同じなんです。これは次の改定の際には必ずやらねばならぬ問題であろうという認識、必要性、それについてはあなたと同意見でございます。一週間以内に出すとかなんとかということはできません。はっきり申し上げておきます。手順というものがあるのですから。けれども、気持ちが一致すれば国会の審議の場においてはいいんじゃございませんか。ひとつその点は御理解いただきたいと思います。
  79. 八木一男

    八木(一)分科員 せっかく半分熱意を示して、半分なまけるのは困るのですよ。一週間ではむずかしいというのなら、厚生省の能力も考えて、今月中にかんべんしてあげます。四月の初めに出しなさい。出さなければ、昨年あなたは約束しているのですからね。それで、約束したことを厚生省は十二月までなまけて各省に伝達を一つもしていないのですから、これはその連中の重大な責任ですわ。公務員としてのたいへんな怠慢の行為ですからね。あなたはそれの責任をとらせるか。これから半月一生懸命やればできるのですから、その責任をとらせないようにがんばらせてやらせるか、どっちかにしてください。三月の末までに出なかったら、これは関係者は全部責任をとってもらうように追及しますから。あなたは、かわいい、それまでまたほかのことでは熱心な省内の人でしょうから、その人の失敗もカバーできるようにさせてあげてください。やればできるのです。三月末までに決定して、これは私も各党に連絡します。この問題は一週間ぐらいの審議であがります。本年に法律になります。そういうふうにやってください。  それから次に、国民年金法の福祉年金が少ないことは言わなければならないのですけれども、全体の問題等、大原委員がもちろんおっしゃるでしょうから、予算委員会の総括や一般で言ったことをかみしめてやってください。この前言い残したことを少し言っておきます。今度は社会局長。  生活保護の四級地が一級地に対して七割ですね。全国の地域別の消費者物価指数でこの間私は精密に計算しました。消費者物価も、たとえば宮崎県の町村ぐらいのところと東京都の比較、それが一〇対七ではありません。一番差の多いときでも一〇対八・六ですね。こんなもの行政措置で変えられる。四級地なんてものはなくしなさい。三級地も二級地に統合する。これは行政措置でできるのですからね。厚生大臣はかぜだそうだから、ぼくも非常に同情して、いまわりとおとなしくやっているんですけれども、あなたしっかり答えて、もう厚生大臣答弁しないで済むように、四級地はもうことしからやめる、四級地は三級地に、三級地もやめて一級地と二級地にするというような姿勢で、少なくとも四級地はことしからやめる。三級地に統合する、そういうことをやってください。積極的な答弁を願います。できないというような変な弁解になると、時間の関係でいけません。
  80. 高木玄

    高木(玄)政府委員 現在、生活保護法級地区分は四つになっておりまして、四級地は一級地を一〇〇とした場合に七三になっております。現実には現在なお一級地一〇〇に対しまして七〇以下の町村も現存しているのは事実です。生活水準その他が七〇以下の町村が現存しているのも事実です。しかし、先生おっしゃるように、この級地地域間の格差というものが、非常に都市化傾向とかあるいは交通機関の発達等によりまして縮小しつつあることは事実でございます。したがいまして、この四級地につきまして、現在の四つの区分が妥当であるかどうか、また級地間の格差九%が妥当であるかどうか、また級地そのものを四つに分けるのが妥当であるかどうか、こういったことにつきまして、昨年来厚生科学研究費をもちまして、専門の学者に研究を依頼しております。引き続きまして、四十九年度におきましても専門学者に検討を依頼することになっておりまして、その結論を待って前向きに対処してまいりたいと思っています。
  81. 八木一男

    八木(一)分科員 いつごろできますか。
  82. 高木玄

    高木(玄)政府委員 四十九年度中にその学者の方々の研究結果をいただきまして、それに基づいて検討してまいりたい、かように考えております。
  83. 八木一男

    八木(一)分科員 そんなぐずぐずしたものは間に合わない。何とか学者の方の研究会も、三月中に結論を出してくれ、四月から四級地はやめるんだとやってください。学者は熱心でいいんですけれども、理屈を一生懸命たんねんにやるために時間がおくれてしようがないんだ。時間がおくれている間に最低生活の人の生存権が侵される。だから、ぶつ続けに一週間でもやってくれ、そういうことで三月中にその結論を出して、四月一日から四級地を三級地に直す——三級地をダウンするのじゃないですよ、四級地をそのまま三級地の基準に入れる、そういう方式を推進してもらいたい。簡潔に、推進するがどうか伺っておきたい。
  84. 高木玄

    高木(玄)政府委員 率直に申しまして、三月中に結論を出すことは非常にむずかしいと考えます。と申しますのは、やはりこの級地区分生活保護の基本問題の一つでございまして、これは慎重に対処してまいらなければならぬと思いますので、その専門の学者の結論を得次第、社会福祉審議会等の御意見も聞いて検討してまいりたい、かように考えております。
  85. 八木一男

    八木(一)分科員 基本問題というのは根本的に考えなさいよ。生活保護は、健康で文化的な最低生活を保障しなければならない、それに差があるのはおかしいんだけれども、物価地域的に差があるということで、一、二、三、四級が定められている。その後地域間の格差は少なくなったというのはあなたおっしゃっているとおり。だれがそんなことを、少なくなっていないなんというようなことを言う学者はいるはずはない。だからぼくは三級地も二級地に統合したいと主張したいけれども、少なくとも四級地を三級地に統合するようなことについて、学者の一人でも半人でも反対するはずはない。だからその研究は、三級地を二級地に統合することは続けてやってもらったらよろしい。四級地は直ちにこの四月から三級地のほうに繰り上げる、そういうことをしたいんだが、一週間ぐらいで結論を出してください、そういうことを言いなさい。学者というのはまじめだけれども時間がかかるんです。わかりきっていることでも時間がかかる。そのわかりきった中の一番わかりきったことぐらいは判断できると思う。四級地を三級地に引き上げて統合したい、それについて一週間ぐらいで結論を出してくれ。社会福祉審議会にも即時に、もう前もって招集を御用意願っていて、そこでやる。制度審議会もぐずぐずさせません。大河内先生に私言いますから、一発できめるようにしますから。全部前もって審議会に招集を依頼する。三月中に少なくとも四級地は三級地にする、そういう結論を出すようにすぐ努力してください。厚生大臣、努力をさしてください。そんなぐずぐずしていたらほかの弁解になりませんから、断じてやらせる。やらなかったら社会局長は、そんなものはほんとうに役立たぬということでやらしてください。要求だけしておきます。  それからもう一つ、今度の一時金で、四級地は七割にしているでしょう。何ですか、これは。あれだけ生活費がぐっと上がっているときに、一級地二千円で四級地は千四百円。こんなものはすぐ変えられるでしょう。少なくとも四級地を三級地に合わせる、あるいは三、四は二級に合わせる。これだけ生活費が上がっているのに、ほんのスズメの涙のそういうインフレ福祉手当を出そうというときに、ここまで級地の差をつける。全くあたたかい心やほんとうに政治に対処する気持ちがない。これは全部級地を上げる。こんなことは厚生大臣がほんとうに一生懸命、私に答弁するときぐらいに一生懸命やれば、大蔵大臣も総理大臣もすぐ賛成しますよ。これは数日中にやってください。特別なことをやるのですから学者に聞く必要もない。すぐそれに対処する。三級地の一時金は、一時金自体が少ないから、これは多いと言っているのじゃないのですよ。いま少なくともあれを何倍かにしなければならないわけですから。それでも問題があって、何倍になったときもこれを上げる。四級地は三級地に、三級地は二級地に合わせる、そういうことをやっていただくように厚生大臣にひとつその努力を要望しておきます。ひとつ簡潔に、努力をされるという御返事をいただきたい。
  86. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 今度の措置は御承知のように従来の例によって行なったものでありますから、これを改める考えはございませんが、一級、二級、三級、四級地という級地の問題は、最近における交通事情等も変わってまいりましたから、やはり相当改める必要は私はあるのじゃないか、私は学者じゃありませんが、実はそんな感じを持っているのですよ。そこで、あなたはきょうは、一週間一週間とだいぶ期限を切ることがお好きのようですが、それもやはりそう簡単にいかぬのです。これは国民生活に関係するのですから、こういう点については私は前向きに何とかしなければならぬと思うのです。いまのような制度をいつまでも続けていくことがいいかどうか、こんな四級に分けてやっていくことがいいかどうか、私はやはりこれは考えなければならぬ問題だと思いますから、四十九年度中には決着をつけるようにいたします。
  87. 八木一男

    八木(一)分科員 四十九年度中に決着では、はなはだ不満ですけれども、部分的に三級を二級に改めるということは四十九年度でもいいですけれども、四級を三級に合わせるのはことしじゅうにやっていただくように強く要求しておきますし、特にその中でいまの一時金の問題については、即時それを変えてもらう、上げてもらう、そういうことをしてください。少なくともそれだけの返事はしてください。
  88. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 それは従来の方式でやることにいたしまして、すでに予備金支出も決定をいたしたわけでございますから、それはできませんが、根本的な一級、二級、三級、四級地の問題、四級に分けているのを三級にするというのがいいのか、あるいは一級、二級に二段階に分けたのがいいのか、いろいろな問題があると思うのです。そういうような問題については四十九年度中に決着をつけるようにいたしたい、こう申し上げておるわけです。
  89. 八木一男

    八木(一)分科員 はなはだあれだけれども、私の言ったのをかみしめてもらって、一時間後ぐらいに、その消極的な態度を改めて、私の言ったとおりにするというふうにかみしめて考えてください。考えて推進してください。  それからいまの最後の一時金について、上げる。これはさっき田邉委員の質問にもこれからの努力を強く要請された。あなたもやる、努力をする。私は猛烈に、なまいきかもしれませんけれども、断じてあなたは職を賭して、命を賭してやらなければいけないということを申し上げた。その大きな命題からは一万分の一ぐらいのことです。そんなこともできない。できるという返事がすぐできない。決意のほどがほんとうに疑われますよ。これはすぐやる。閣議できまっても、そのくらいのことはすぐやるということをしてもらいたいと思う。  なおたくさんの問題がございますが、福祉年金がたいへん少ない。これは前に申し上げたから、かみしめて多くするようにしてもらいたい。  それから老齢特別給付金が昨年度の八割の比率が七割ちょっとに下がった。こんなとんでもないことは、厚生省はなまけて大蔵省にも要求しなかったようだけれども、これは反省されて、委員会審議中にあなた方が各党に要請をされて、自分の誤まりを正してもらうように自民党、社会党等に要請されて、これを八割、どんなことがあってももっと上げなければいけない。八割には回復する、そういうことを厚生省全員で、これは児童家庭局長おられるけれども、あなたが陳情の先頭に立って、自民党、社会党、共産党、公明党、民社党の全議員に、われわれの怠慢であります、これは国会の中で御修正を願うように御努力を願いたいと全員に陳情をしなさい。私のところに来なかったら……。これは年金局長です。  それから児童家庭局長は、特別児童扶養手当で二級に拡大をしない。それで一級の二重障害にちょっとプラス・アルファをつけたけれども、これはいいことです。いいことだけれども、金額と人員とはこんな天地雲泥の相違がある。ちょっとの金額でほかの大事なことをごまかそうとする。もう全く怠慢きわまる。児童家庭局長も、これを国会審議中に修正していただくように、各議員全部に陳情なさい、あしたでも。私のところも来なければ、あなた方、ほんとうにしなかったことになりますから、徹底的に追及しますからね。陳情に回る。各党委員に、ぜひ直していただく、そういうことをやられる。  そういうことを要求して、さらにこのインフレの問題で、この一時金の問題を飛躍的に増大させるために厚生大臣は命がけで努力をされる。努力ができなかったら、私はできないけれども、田中角榮君に、おまえさんやってくれ、あるいは内閣改造しても、この点は、このときは交渉して野党が厚生大臣になってやるようにしてくれ、そのくらいのことをおやりなさい。  それから次に、三カ月のインフレの問題、これは年金局長に強烈に言っておきましたけれども、年金局、社会保険庁、改心をして断じてやるという態度で準備をされるでありましょうし、そのことについて厚生大臣は実現をするようにほんとうに責任をもって、政治責任を、政治の生命を賭してやっていただく、そのことを強く要求しまして、その他社会保障全般について、はなはだまだ程度が少ない。先ほど田邉委員の言われましたように、生活保護というのはそのようなスライドだけでは足りない。いま、昭和の二十七、八年のときよりも一般生活水準というものは支出が下がっている。これは急速に上げていかなければならない。来年の二〇%はその意味ではとんでもない少ないということを認識をされて、これまたそれが変わるように、よくなるように推進をしていただく等、強く要求をいたしまして、たいへん荒っぽい声で申し上げましたけれども、その点はおわびをしてもけっこうです。八木一男はなまいきだけれども、これは国民のために一生懸命にやっていることをぜひ胸にきちっとしまっていただいて、そしてその意味で国民のために御推進を願うことを強く要求をいたしまして、質問を終わります。
  90. 渡辺栄一

    渡辺主査 八木君の質疑は終わりました。  次に、大原亨君。
  91. 大原亨

    大原分科員 第一の質問は、今回政府がやりました生活安定の緊急特別措置の問題ですが、その支給対象の範囲の中で老齢特別給付金受給者が漏れておるわけですね。これは対象になっていないわけです。福祉年金対象になっております。七十歳以上は対象になっておりますが、老齢特別給付金対象者は、六十七歳以上の人は対象になっていないわけですね。これはぜひ対象にすべきではないのですか。これは第一の問題ですが、いかがでしょう。
  92. 高木玄

    高木(玄)政府委員 今回の生活緊急資金給付金は、市町村で把握できるということが非常に短期間に処理されなければなりませんので、それが非常に大事な要件になっております。ところで、先生ただいま申されましたいわゆる谷間の老人の特別老齢給付金でございますか、これは現在裁定事務が進捗中でございまして、市町村にはまだ台帳はございません。したがいまして、市町村で現実に把握できませんので、今回はこれを対象にいたさなかった次第でございます。
  93. 大原亨

    大原分科員 しかし、市町村で把握しようと思うと、大都会等はかなりむずかしいですけれども、しかしいまはその宣伝はかなり行き届いておりますから、いままでの質疑応答で明らかなように一定の期限をきめてやるわけです。つまり、谷間の問題、定年の問題とか高齢者の問題等で議論したわけですから、一定の期限を付して資格要件のある者を告示すればできない話ではないではないですか。そんなことはもう少し根拠のあることで言ってくださいよ。そういう点はもう少しやはり公平にやったらどうですか。
  94. 横田陽吉

    ○横田政府委員 いわゆる谷間年金受給者でございますが、年齢階層で申しますと、拠出制年金との関係等もございまして、したがって、今回は七十歳以上の本来の老齢福祉年金を受けておられる方だけを対象にしたほうがよろしい、こういうふうな考え方で処理したわけです。このあとで、拠出制年金を受けておる者でも相当低い者に対してはというふうな御意見もございましたが、そういった場合にも同じようなお答えをいたしておるわけでございます。
  95. 大原亨

    大原分科員 拠出制年金の場合には、また別の議論があります。それはやはりあるわけですけれども、言うなれば、他の年金制度から漏れていて、年齢的にも六十七歳。厚生大臣、あなたはいま何歳ですか。(齋藤国務大臣「もうちょっと若いです」と呼ぶ)六十七歳といえば、かなりインフレの荒波を深刻に受ける人です。ですから、六十七歳以上の谷間の老人対象者は三月現在で大体何人おられますか。
  96. 横田陽吉

    ○横田政府委員 おおむね百万人でございます。
  97. 大原亨

    大原分科員 だから、六十七歳、六十八歳、六十九歳で公的年金を一切もらっていないで、そして職場からも、日本の定年制の問題もさることながら、六十七歳ですから、この問題について社会局長のように手続上の問題だけでやらぬというようなことはないです。年金局長の御答弁を聞きましても、七十歳というところで線を引かれるわけですが、六十七歳以上出したって、そういうことは議論をしていて、そして不公正でありあるいは妥当を欠くとか、こうすべきだと思ったら、予備金とか自然増収の議論も時間があればあらためてするけれども、そのくらいのことは国会の議論の中で是正したらどうですか。国会で審議をした場合に是正したらどうですか。いままでの質疑応答の中では、これを放任しておくという理由はないですよ。手続なんといったって、谷間の問題は、その該当者にはかなり宣伝されているのです。そうして、一定の告示をして、一定の期限の中で申請手続をとればいいのですから、そんなことについてそういう議論だけで、厚生大臣、あなたは心臓が強いからといったって、国会が通るというふうに考えるのは間違いですよ。建設的な議論は議論として受けとめなければいかぬですよ。いかがですか。
  98. 横田陽吉

    ○横田政府委員 御意見いろいろ承ったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、七十歳以上の比較的経済的に恵まれない方というふうなことで、福祉年金受給者対象というふうに限定いたしたわけでございます。ただ、もちろん昨年の法律改正の際に七十歳になるまで現実に拠出制年金にもつながらず、また七十歳以前であれば福祉年金ももらえない方に何らかの措置ということで、特別給付金の制度を国会の御修正で入れていただいたわけでございますけれども、今回のこの対策の対象といたしましては、一定範囲の老人、しかもそれが経済的に恵まれない方ということを明確にしぼるためには、いま申しましたようなことで福祉年金対象者をこの対象にしたということでございます。
  99. 大原亨

    大原分科員 たとえば生活保護者の中で、七十歳を境にした基準で判断した点がありますか。あるいは養護老人ホームや特別養護老人ホームで、それぞれ段階を設けてやっておるわけですが、それについて七十歳の制限をいたしましたか。社会局長、その点はいかがですか。
  100. 高木玄

    高木(玄)政府委員 老人ホームは、六十五歳以上の老人でありますればすべて入所できることになっております。
  101. 大原亨

    大原分科員 老人ホームが、現在の状況では完全に収容できないわけですから、七十歳で線を引くという根拠は、いままでの質疑応答ではないわけですよ。だから、六十五歳というのは、特定の人を除いては、たとえ働く意思と能力があるというふうに思われても、一つの線ですよ。七十歳で線を引くということはないわけですから、このことについては序の口の議論として私は当然だと思うのですよ。なぜこれを除かれたのかということがわかったならば、関係者というものは納得しませんよ。税金ですから。インフレというぎりぎりの問題を議論しているわけですから、できるだけ公平な原則で、かなり努力をしてあらわれたことについては私は認めますよ。認めますけれども、老齢特別給付金の谷間の老人に対して、私は断わる理由は全然ないと思う。事務当局だけでは議論して範囲を広げて、そこへ来た一定のことで議論しているわけですが、これは質疑応答を通じまして、そのくらいのことは厚生大臣、無理を言っているわけじゃないし、国民の立場から見たらだれでもそうだと思うですよ。拠出年金の議論はまた別にいたしますが、これはいかがですか。
  102. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この範囲をきめますときに、私はずっと項目を書いて拾ったのです。ところが、六十七歳、八歳、九歳というものを入れるか入れないかというので、だいぶ議論がありまして、これは例の五年年金とか十年年金とか、いろいろな、そういう任意加入で入っていただいた人の関係があるわけでございます。そういうふうなこともありましたので、一応福祉年金というのは従来とも老齢福祉年金一本やりで七十歳以上ということできておるのですから、筋としては七十歳以上に線を引くのが適当であろう、こういうことで決着をつけたものでございます。単なる役場の事務の手続上どうのこうのというだけではありません。本来の老齢福祉年金、それから実はもっと申しますと、国民年金の二級障害年金というものもできるようになったのです。実はこれも何とか拾う道はないだろうかということも考えてみた。率直に言いますよ。ところが、これは御承知のように四月ということでいま盛んに認定をしている最中で、これこそはっきりつかめない、こういうふうなこともありまして、それは無理だ。これは実際できないのです。予備金ですから三月中にやらなければならぬ、こういうことでそれは無理だということにしたわけでございます。
  103. 大原亨

    大原分科員 さかのぼっての議論をまたやり出したら切りがないのですけれども、いまの障害福祉年金のことは、二級については対象が把握できないという議論は若干わかるのです。かなり宣伝がいっておってもわかるのですが、これは五年年金、十年年金がかなり時間がたってやり直しでやってきて、しかも六十七歳以上は対象者はわかっているわけですから、税金を払う国民の立場からは、当時どういう意見を持っておろうが、手続について関心がなかろうが、あるいは忘れておろうが、そういうこととは関係なしに全部公平にやるべきだと思う。あなたは勘はいいけれども、とにかく、何というか、かかかとやって、すぐ欠点が出ておるというところがある。いままでの議論で、これは百万人の谷間の人に対してやらない理由はないですよ。老人ホームに入っている人は六十五歳からやっているのでしょう。特別養護老人ホームは当然出すべきです。であるとするならば、家におる場合であっても、収入がない人について六十七歳以上の人に出さないという理由はない。いままで三人ほど言われました。三つほど理由をあげたけれども、それはないと私は思う。これは前向きに考えるというごとぐらいは、あなた答弁しなければいかぬですよ。そんな、国会の議論にならぬじゃないですか。黙ってがんばって、ああじゃこうじゃ言ったら過ぎるという国会であってはだめですよ。
  104. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、この範囲を入れるかどうかということを、いろいろ私も慎重に考えたのです、ほんというと。けれども、やはり五年年金、十年年金の任意加入との関係もありますので、一応本来の老齢福祉年金受給者だけに限りましょう、こういうふうにしたわけでございまして、線の引き方としては七十歳というのがいいところじゃないか、私はかように考えております。
  105. 大原亨

    大原分科員 七十歳で線を全部引いてあれば別ですよ。しかし、そうじゃないでしょう。施設に入る人は、孤老やその他で不幸な人ですよ。しかし、在宅患者でもそういう方はあるのです。だから、六十五歳をこえて一定の収入がないし年金がない谷間の人に対しては、こういうことについてやる場合には、わずかの金ですけれども、やはり公平の原則の上に立ってやるべきですよ。あなたの答弁ではぼくは絶対納得しないですよ。そんながんばっておって、すわっておって時間がたてばいいようなものじゃないですよ。これはあとに残しておきますよ。これは検討してください。もう一回ひとつ答弁してください。
  106. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これは十分に慎重に検討した結果、七十歳以上というふうに落ちついたものであるということだけは御理解いただきたいと思うのです。
  107. 大原亨

    大原分科員 そういう答弁が理解できない。いままでの質疑応答の中で、答弁が答弁になってない、国民理解させる答弁ではない、こういうことを言っているのですよ。社会局長年金局長、あなたがあげたそういう理由は、公平の原則から見て、そんなことは憲法違反ですよ。この無拠出の年金の性格を変えて、社会保障でやはり所得の再配分をしようというときに、一般財源でやる場合には、できるだけ納得できるように最大の努力をすべきだ。国会において議論が出た場合には、それに対してあなたのほうの趣旨というものは、七十歳に線を引くという根拠はないですよ、個人的にも事情が違うし。だから、六十五歳まで働き抜いた人については、いままで、戦前社会保障のないときからの人ですから、いまの段階において私どもがお互いの理解で助け合うということは当然じゃないですか。厚生大臣、この問題は私は了承してない、こういうことを言っておきますよ。あなたは、あなたの答弁でということを言うたけれども、そんなことはだめですよ。納得させる答弁ではないです。  それから、原爆の被爆者の中で、認定患者で特別手当をもらっている人がある。それから病身がちな、いわゆる関連疾病という、健康管理手当をもらっている人がある。そういう人々を対象にして今回この制度を考えなかった理由、これをひとつお聞きいたします。
  108. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 原爆関係の特別手当あるいは健康管理手当というのは、先生御承知のとおり、原爆の被爆者の方の医療につきまして、健康上特別ないろいろな費用がかかる、こういう観点からそういう制度が定められておるわけでございます。したがいまして、原爆患者さんだからまた別にというよりは、原爆患者さんのもともとの手当はそういう観点からやっておりますから、今度の場合にはむしろ一般的な生活保護とかあるいは老齢福祉年金という観点から処理されたほうがいいというような考えに立っておる次第でございます。なお、御承知のとおり、原爆の関係の手当につきましては、今国会で健康管理手当特別手当、それぞれ引き上げを御審議をお願いしておるところでございます。
  109. 大原亨

    大原分科員 その中で、私が言った中で範囲を縮めまして、認定された被爆者、これは約四千名を前後しているわけです。ほとんど固定しておる。白血病、白内障とかガンとかいうのは、固定しているわけですね。ですから、そういう人々は特別手当と医療手当をもらっておるわけです。医療に伴う手当は実費弁償の医療手当特別手当は言うなれば生活保障とのボーダーラインの層なんですよ。だから、病気になれば生活が苦しくなるわけですから、ぎりぎりのそういう問題をもって長い間苦労してきておられる人々に対してはやはり平等にやる。少なくとも認定患者等についてはそういう措置をすべきではなかったのですか。健康管理手当や医療手当——健康管理手当もいろいろな意味があるけれども、特別被爆者を対象にいたしまして医療手当が出ているわけですから、それ以外に特別手当が出ているわけですから、そういう人々は、来年から若干上げるといいましても、年度内の応急措置をやるのが、いままでの言うならば、あと追い払いですよ。そういうものですから、私は、それをはずすというのは公平の原則に反すると思うが、厚生大臣、いかがですか。
  110. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 実際この範囲をきめますときには、あくまでも社会的公正ということを頭に描いて考えましたので、原爆被爆者についてもどうであろうかということも実は慎重に議論したのです。しかし、この問題は、御承知のように従来とも医療保護というものでまいってきておりますので、原爆被爆者なるがゆえにというのではなくて、原爆被爆者であっても、生活保護世帯であったりあるいは老齢福祉年金受給者であったり、さらにまたそのほかの福祉年金受給者であったならば、それで一時金を出すことにして、原爆被爆者なるがゆえに出すというたてまえはとるべきではなかろう、実はこういう結論が出たわけでございます。この点は、先ほどの谷間老人と同じように私どもも慎重に考えたのです。慎重に考えました結果、原爆被爆者なるがゆえにというのはいまの法体系の上からいってちょっと困難ではないか、こういうことにいたした次第でございます。
  111. 大原亨

    大原分科員 私は問題をしぼって言っているのですよ。原爆の放射能やあるいは熱線や爆風による被害の因果関係というのが明確な被爆者があって、そして所得保障の対象として、特別手当というのは、非常に中間的な手当を出しておるわけです。医療と所得保障の境なんですよ。だから、それは、長い間病身であるから生活能力が劣っておる、こういうことで特別な手当を医療手当以外に出しているわけですよ。ですから、これは広島でしたら舟入町というところにある原爆被爆者特別養護老人ホームには出しておりますね。これは出すようにいたしておりますが、認定患者などにはやはり出すべきではないのか。そのくらいな配慮をすることは当然だと思うわけですよ。そういう議論でも、突っぱって突っぱってこのとおりですというふうなことを言うのですか、あなたのほうは。それだったら話にならぬじゃないか。春闘共闘委とかなんとかいっていろいろ話をしておられるようだけれども、しかし、国会でそういう議論が解決できなかったら、じゃ国民は何をしたらいいのだということになる。理屈が通ったことで当然のことが実現できないようなら、四の五の言うて答弁して、それでできないということだったら、国会なんか要らぬのだ。それはいかがですか。あなたは、所得保障と医療保障——医療手当があって特別手当が出ておるのですよ。それは長い間病気をして、その人たちに対して生活保障という国家保障の議論がある。あるからやっているけれども、特別手当という、政府の立場に立ってでも出さなければいかぬということで、これは増額しているわけですから、そういうことについては、当然やるべきことはやって、補うべきは補うべきじゃないですか。
  112. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 でございますから、そういう問題についてどういうところで線を引くかというところで、十分慎重に考えまして、いまのような線に落ちついたわけでございます。しかし、あなたの御意見は私は十分拝聴いたしておるつもりでございますが、いま言うたような線でやったということも私は御理解いただきたい、かように考えておるわけでございます。
  113. 大原亨

    大原分科員 答弁になっておらぬと言うのですよ。生活の問題ではないとあなたは言うのだけれども、ほかの観点から追跡する、こう言うのだけれども、簡単に言えば。そうじゃない、生活問題があるのですよ。生活というものと健康というものは不離一体ですよ。長い間放射能の影響やその他で苦しんだ人がはっきりわかって、ずっと継続して沈でんしているじゃないですか。そういう人々に対してはやるべきでしょう。それは十分議論、検討いたします、こう言うてやるべきだ。それでなかったら、国会なんか要らぬですよ。自民党の代議士会でやればいいのだ。そんなことやったら、いまだって問題があるでしょう、狂乱のインフレはどこから起きておるのだという議論になるですよ。だから、あなたの答弁は答弁にならぬということを私言っておきますが、どうですか。
  114. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 十分承っておきます。
  115. 大原亨

    大原分科員 これは、年金局長もおられませんけれども、ぼくは、大まかな原則的な議論だから、大臣との間でいいのですが、つまりこの狂乱のインフレの中ではタイムラグを所得保障の中ではできるだけ縮めなければいかぬですよ。その点は異議ないでしょう。時間的なずれというものをいま政策上追っていっているわけでしょう。そうでしょう。そういう配慮が必要でしょう。どうですか。
  116. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 基本的には私は、タイムラグはなるべく縮めるというのが望ましい、さように考えています。
  117. 大原亨

    大原分科員 福祉年金について受給者二千五百円の措置をするわけですね。これは別の観点ですが、これは法的な手続はどうなるのですか。法的な根拠と手続はどうなるのですか。つまりいままでの五千円に二千五百円をぽんと積むということはどういう根拠と手続でおやりになるのですか。私は念のために聞いておるのです。
  118. 高木玄

    高木(玄)政府委員 これは、現在の物価高老人とか心身障害者母子世帯方々が非常に苦しんでおられる、特に日常生活物資の購入に役立てるようにということで一時金を出すわけでございまして、これにつきましては、一昨日の五日でございますか、この緊急生活資金給付金支給要綱を閣議決定いたしておりまして、閣議決定に基づいて措置するわけでございます。
  119. 大原亨

    大原分科員 それじゃ今後といえどもこういう対象者に対しましては一時金で閣議決定でできるわけですね。こういう対象者については一時金で緊急措置がどんどんできますね。これはあなた、閣議でやっているのだ。
  120. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この措置は、御承知のように全額国費として行政措置で行なっておるわけでございますから、必要に応じてやろうと思えばできる、こういうものだと思います。
  121. 大原亨

    大原分科員 それは明快。私は意見言っていけないと言っているのじゃない。  それじゃひとつタイムラグの問題で、物価自動スライドを今度は年金でとったわけですね。昭和四十九年の四月からどうするかという議論をいままでの議論のあとを受けていまやっているわけですが、そうしますと、四十九年度の物価自動スライドは十月と十一月、厚生年金国民年金実施の開始の時期は違いますね。物価自動スライドは国民年金は来年の一月ですか。そこで、その計数の根拠というのは、昭和四十七年度を分母にいたしまして昭和四十八年度の平均物価の上昇率を分子にして率を出すわけですね。それが五%をこえたならば、そのこえた分を十月と一月にやるということでしょう。年金物価自動スライドはそうですね。ですから、いまも明快に答弁がありましたが、タイムラグはできるだけ縮めてインフレからの影響を食いとめる。常態の状況じゃないわけですから、ぎりぎりのところではそういうことは年金生活者や預金生活者、生活保護者、ずっとやるということからいうと、四十七年度分の四十八年度の平均物価の上昇率を自動スライド、これは私どもは賃金自動スライドと言うけれども、物価自動スライドの場合といえども四月からやってタイムラグをなくすることが制度上からいっても正しいのです。それは三カ月ごとのスライド制の問題で八木委員が指摘をされた問題とも重なりますが、しかし時間的に見ますと、これは将来九月以降十月ごろにわかる数字をもって四月からさかのぼって一時金を出すということができるわけです。いま福祉年金についてお話しになりましたけれども、緊急的なものについて閣議決定でこういう緊急措置ができるというのですから、そういう手続を考えても、これから四月になって物価がだっとダウンするということはないわけですから、そういたしますと、この問題はさかのぼるということができるということになります。賃金自動スライドの遡及の問題もあるのですが、しかし、物価自動スライドを政府がやっていること自体から考えても、いまの狂乱のインフレのときにはそういうタイムラグをなくするということに賛成なんですから、四月に遡及してやるということは、これは手続上もできないという理由はないと思うが、いかがでしょう。
  122. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 御承知のように、物価上昇率がはっきりわかりますのは五月以後ですね。そこで何%上がるかということがわかる、それに基づいていろいろ計算して十一月にやる、これがいままでのやり方、いままで考えておる方式でございます。そこで何%率が上がったかということがはっきりわかったときに、さかのぼって四月以降から年金をスライドして上げていくということは、法律的に私はやってやれない不可能というものではないと思う。しかし、年金というものは由来そういうものだろうかということも考えてみなければならぬわけです。年金というものについて、あなたのタイムラグの問題というものに関連して、実は私も関心を持って諸外国でもいろいろ例を調べてみたのです。実際のところ、さかのぼって年金支給したという国はどこにもありませんね。ある一定の基準に基づいてそこで裁定をしたときから年金というものはきまっていく、こういうのが年金というものではないか、こういうふうに私は考えるわけでございます。これが一つの考え方なんですが、私はこれは法律的に不可能なんということを言っているのじゃないですよ。しかし、それは行政的にできるかといえば、これは行政的にできません。これは御承知のように厚生年金特別会計法というものによって、保険料その他によってやっていくわけですから、これはそういう性質のものにはなじみません。これははっきりしています。なじみませんが、さかのぼって年金をやるということは、その間に死んだ人はどうするだ、やれ何だ、そんなこと私事務的に言うと、またあなた事務的だと言うから言いませんが、法律的に不可能だということを私は言いませんよ。法律ですから、さかのぼってやろうと思えばできる、金さえあれば。できますが、年金というものはそういうものではないのだ、なじまないのだということだけははっきり申し上げておかなければならぬ。
  123. 大原亨

    大原分科員 時間が来たのですが、まだたくさん残っている。一時金の問題等あるわけですけれども、六割保障の原則の問題等もあるわけです。このものすごいインフレの上昇するときは六割保障の原則がタイムラグと一緒にくずれていくのです。日本では一時金の制度の問題と関係があるわけです。だからいろいろスライドの議論があるのですが、しかし、あなたのいまの答弁は、なじまないとは思うけれども法的にできないという理由はない、こういうことなんです、一つの結論は。たとえば人事院勧告だって、八月に勧告しまして四月にさかのぼるのですよ。これは法律上、憲法上は、本人の利益になることは日本では遡及できるのです。だから、タイムラグ、ものすごい狂乱の物価のときには暫定的にいまの制度についてそういう措置をとることは法律上、行政上できる、私はこういう見解です。やることが政治的にも妥当である。私はこれは当然のことであると思うけれども、その点についての厚生大臣の見解はどうか。これについては全然考える余地がないのかどうか。
  124. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、さかのぼって支給するということは法律的に私は不可能だとは申しておりません。しかし、年金というものの性質からいって、さかのぼって支給するという制度にはなじまないものであろうし、(大原分科員「そんなことない。」と呼ぶ)私は思っているのですよ。と私は思いますし、いまのところそういう考えは持っていないということだけははっきり申し上げておきます。
  125. 大原亨

    大原分科員 それじゃこの問題は、あなたの答弁は矛盾だらけであるから、もう少し整理をして、ひとつ厚生省や政府の中で意見を統一して、国会が終わるまでに、予算委員会が終わるまでにひとつはっきりした答弁を私は要求しておきます。一応この問題は予算委員会の理事会等に報告しておきます。われわれとしてはあなたの答弁がいままでの答弁と一緒に納得できない点はやっぱり国会で決着をつけるということが必要ですから、そのことを申し上げておきまして、私の質問を終わります。
  126. 渡辺栄一

    渡辺主査 大原君の質疑は終わりました。  午後一時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  127. 八木一男

    八木(一)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管についての質疑を続行いたします。平田藤吉君。
  128. 平田藤吉

    平田分科員 上水道の料金問題が各自治体で問題になり始めております。特に人口急増地区で深刻になってきているわけですね。私は、全国でも最も人口の増加率の高い埼玉県の例をあげて、幾つかの点について質問したいと思います。  厚生省のほうにお伺いしたいのですけれども、埼玉県では、上水道問題で深刻な事態を招いているわけですけれども、これまでに給水してきていた上水道に続いて、新たな上水道事業に取り組んでおります。この建設中の上水道と、その建設費が幾らか、知っているかどうかお伺いいたします。
  129. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先生御質問の埼玉県の水道用水供給事業でございますが、従来、各市町村がそれぞれ上水道事業を経営いたしておったわけでございますが、最近埼玉県は三つの水道用水供給事業を経営しておりますが、いずれも広域水道といたしまして、国のほうでそのめんどうを見ておるわけでございます。ちなみに、昭和四十三年度から四十八年度までの事業費並びにそれに対します国の補助について申し上げますと、中央第一水道供給事業につきましては、これは第二次拡張工事でございますが、総事業費十二億円に対しまして、国庫補助一億三千万円、東部第一水道供給事業は、総工費百六億円に対しまして八億三千万円の国庫補助、それから西部第一供水事業に対しましては、総工費百五十七億円に対しまして十三億円の国庫補助を出しております。  さらに、これらの事業の水源対策といたしまして、埼玉県に対しまして千八百万円、それと別途、水資源開発公団に埼玉県分といたしまして一億三千万円の補助をいたしております。
  130. 平田藤吉

    平田分科員 いまの数字は食い違っているようですけれども、三つの水道事業で総事業費は六百六十二億円、中央第一が二百十億円、東部第一が百六十四億円、西部第一が二百八十八億円になっているはずです。そうして、着工から四十八年度までの事業費として、全体で三百五十五億円、中央第一が四十八年分として二十六億、東部第一が四十五年から四十八年までとして百四十一億、西部第一が四十五年から四十八年まで百八十八億、こういうふうになっているはずだが、どこで数字が違っているのですか。
  131. 国川建二

    ○国川説明員 お答えいたします。  先生の御質問は、事業費についての御質問でございますので、いま局長が申し上げましたのは、四十三年度から四十八年度までの事業費を申し上げたわけでございます。先生のおっしゃるような総事業費ということになりますと、中央第一の第二期拡張工事、東部第一の事業、西部第一の事業を合計いたしますと、一部水源施設費をどういうぐあいに見込むかということが未定でございますので、確定分だけを含めますと、その三本で五百六十六億ということになっております。このほかに、水源施設費の負担分と申しますか、これをどの程度財政計画と見込むかということによりまして、六百億を上回る数字になると私は思います。
  132. 平田藤吉

    平田分科員 いま申し上げたように、県での数字というのは総額で六百六十二億円というふうに組んでいるのですよ。この点は、あなたのほうの数字が実際とは合っていないということを示していると思うのです。まあ、いいでしょう。それで、私が聞いていることについてひとつお答えいただきたいと思うのです、時間もないことですから。  その三つの水道事業の補助対象に対して国から出している補助金は何%で、幾らかということをお聞かせいただきたい。
  133. 八木一男

    八木(一)主査代理 政府委員は質問者の御質問に対して、簡潔に答弁をしていただきたいと思います。
  134. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 四十三年から四十八年までの総額で申し上げますと、東部第一が七・八%、西部第一が八・三%。四十八年度の実績を申し上げますと、中央第一の第二次拡張分が一〇・三%、東部第一が九・三%、西部第一が一〇・六%、こういう数字になっております。
  135. 平田藤吉

    平田分科員 私のほうの調査では、全体で補助率は、着工から四十八年度までの分として、平均して八・二%ということになっている。これが間違いないかどうかという点が一つ。それから、たてまえとしての補助率は一体何%で幾らになるのかということをお聞かせいただきたい。
  136. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 これはわれわれのほうはそれぞれの事業についてただいまお答え申し上げましたので、総括的なパーセントにつきましてはまだ試算をいたしておりませんので、おそらくいま先生のおっしゃいましたように、東部第一が七・八、西部第一が八・三でございますので、八・二ぐらいになろうかと思っております。  それから補助率の問題でございますが、一応四分の一の補助になっておるわけでございますが、特に、ただいま先生御質問の埼玉県の水道は広域水道でございますが、広域水道に対します補助率は、水道の基幹的施設に対しまして用水料金が一定額をこえる場合にその四分の一を補助するということになっておりまして、その水道料金の一定額というものは、一立方メートル当たり十四円以上につきましてこの四分の一を補助する、こういう計算になっております。
  137. 平田藤吉

    平田分科員 十四円以上をこえるものについて一定額を補助することになっている。そしてたてまえとしては四分の一、二五%ということになっておる。埼玉の場合はほぼこれに該当すると思うのです。そこで、いま申し上げた埼玉の実情から見て、補助率といえば、あなたのほうの言われた一定額をこえる率になるだろう。そこで、私のほうで計算してみますと、たてまえと実際との差が一六・八%あるんですよ。先ほど申し上げたように二五%に対して八・二%ですから。そしてその金額を計算してみますと、不足分が四十六億六千五百万円になるわけですよ。ほぼそうなると思うのだが、間違いないかどうかお聞かせいただきたい。
  138. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいまちょっとその数字的な的確性につきましてはわれわれも試算いたしておりませんけれども、この埼玉県の広域水道について申し上げますと、十四円をこえる部分について四分の一でございまして、埼玉県営水道の場合には水源から浄水場までの距離が、全国的な平均から見ますと非常に近くて、全国の広域水道に比較いたしますと比較的条件に恵まれているような状況でございまして、したがいまして、その総工事費に対する補助が非常に低くなっておるわけでございますが、ちなみにわれわれのほうで目一ぱい見ました場合の補助率について申し上げますと、十四円をこえる部分について四分の一を見ました場合に、総工事費に対しまして一〇%程度になるのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  139. 平田藤吉

    平田分科員 十四円をこえる部分に対してという、それは法的根拠は何かあるのですか。
  140. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 法律的根拠はございません。
  141. 平田藤吉

    平田分科員 じゃ次に通産省にお伺いしたいのですけれども、埼玉県が特定工場に供給している工業用水道料金はいま一立法メートルについて六円になっているわけですね。これをきめた法的根拠が何かお聞かせいただきたい。
  142. 柴田益男

    柴田説明員 埼玉県の工業用水道料金は、先生おっしゃいましたように、四十八年四月一日から基本料金六円にすることになっております。この基本料金につきましては、工業用水道事業法の中で、効率的な経営のもとにおける適正な価格ということでございまして、それに基づいて決定しております。
  143. 平田藤吉

    平田分科員 一立方メートル六円という計算はどうやって出すのですか、これが一点。それから六円で引き合うのですか、ということが第二点。この点はっきりさしていただきたい。
  144. 柴田益男

    柴田説明員 基本料金はほぼ全国的な平均原価を基準としてきめております。埼玉県の場合には、この料金で経費をすべてまかなうのは無理ではないかというふうにわれわれは考えております。
  145. 平田藤吉

    平田分科員 この六円という計算は何を基準にして出してきているかお聞かせいただきたい。四十八年の四月以前は四円なんですね。この水の値段は何で決められておるのだろう、何が基準で四円だ、六円だときめられておるのだろうということについてお聞かせいただきたい。
  146. 柴田益男

    柴田説明員 この工業用水道は、もともとは地盤沈下を防止するために地下水のくみ上げを規制する、そのための代替水源として布設する、そういう目的で始まったわけでございまして、埼玉県の場合にも現在大量の工業用水のくみ上げが行なわれておりまして、地下水のくみ上げにつきましてはこれは非常に経費が安くて、二円ないし三円程度のコストでできるということでございますので、それを転換させるということになりますと、あまり高い料金ではなかなか転換はうまくいかないだろうということで、地下水くみ上げ料金に若干のプラスアルファを加えましたものを基準料金といたしまして、現在の場合六円でございますが、それで工業用水に転換させる、そういう政策的な趣旨をもって決定しているわけでございます。
  147. 平田藤吉

    平田分科員 埼玉県の工業用水道に対する国の補助率、これと金額は幾らになるか、補助率は何%で金額は幾らか、それから県の補助率は何%で金額は幾らになるか、お聞かせいただきたい。
  148. 柴田益男

    柴田説明員 埼玉県の場合は地盤沈下対策ということで高い補助率を適用しておりまして、現在では四〇%の補助率でございます。補助金額といたしましては、四十八年度までに二十二億五千三百万円投入してございます。県のほうの支出額は、はっきりしたことはわかりませんが、約四%、六億程度かというふうに推定されます。
  149. 平田藤吉

    平田分科員 実際の状況は、あなたは地盤沈下云々と言っているけれども、国が出している地盤沈下対策費というのは、これはつい最近きまったもので一〇%なんですよ。工業用水道に対する補助は三〇%出ておるわけなんですよ。ですからこれを合わせると工業用水道に対しては施設費に四〇%出ているわけですね。しかしこれでは水は売れないのですよ。六円だの四円だのという値段では売れないのです。そこで県は二〇%出しているのです。いまは約三〇%になっています。これはたいへんな負担です。あなた方のほうで大体設定している料金から逆算していくと、かかる経費というのは国でくれない分は県がまかなわなければならないという事態で、三〇%近い負担をいま埼玉県がしているというのが実情です。  そこで自治省にお伺いしたいのですけれども、全国の水道事業起業債の中で政府債の占める比率は何%か、埼玉県の場合には何%か、お聞かせいただきたい。
  150. 山本成美

    ○山本説明員 ただいま平田委員のお尋ねの点でございますが、四十九年度で見ますと起債のワクが総額四千五百億円になっております。その中で政府資金が二千六百五十一億、公庫資金八百六十億、共済組合の資金が九十四億といったようなことになっておりまして、これらを合わせますと、全体のまあ良質の資金と申しますか、これらで大体八〇・一%程度になるという計算になっております。これが全国の数字でございますが、さらにお尋ねの埼玉県の用水供給事業についてでございますが、これは四十八年度三月六日までの実績しか出ておりませんので、ちなみに四十八年度の三月六日までの四十八年度中の許可額を申し上げますと九十六億円でございます。四十七年度が百六億余りでございましたが、それが九十六億内になっております。なお、つけ加えさせていただきますが、これは三月六日ということになっておりますので、一般に起債の許可が年度末ぎりぎりまで殺到いたしますので、さらにこの九十六億円はふえるかと存じます。  以上でございます。
  151. 平田藤吉

    平田分科員 私のほうの調査では、四十六年で当初の計画では全国で五〇・七%なんですね。それで実際は五二・六%になっております。それから四十七年度は五〇%で、実際はやはり五〇%というのが、全国の政府債の実態なんですね。それから埼玉県の場合は、四十六年が四一・五%、四十七年が三八・四%、こういうふうになっているわけですよ。ですから、いまあなたのほうの言われた数字が何を根拠としているのかわかりませんけれども、いずれにしましても、起債のワクで、全国の水準から見るというと、埼玉の水準は低い。なぜ低いのかということをお聞かせいただきたい。
  152. 山本成美

    ○山本説明員 低い、高いの問題についての御質問でございますが、先ほど申し上げましたのは四十九年度の数字を取り上げたのでございますけれども、四十八年度の数字で見ますというと、政府資金はいま全国でまいりますというと、五割、五〇・〇%でございます。四十九年度よりはむろん低うございますけれども、この四十八年度につきましての、三月六日まででございますけれども、埼玉県の分につきまして許可をいたしました九十六億円、これの資金構成が政府資金が五五・五になっております。五十三億三千万でございますので、五五・五になっております。ただ、この点につきましては、先ほども触れましたように、年度末までに政府資金以外のもののウエートが若干増して、そういうふうなかっこうで許可が最終的にきまりますと思いますので、この五五・五というのは若干下がるかと思いますけれども、私どもとしては、政府資金四十八年度の五〇・〇というものと比較いたしましてさして遜色はない、特に政府資金は財政的に弱小な市町村に傾斜をして配るような例になっておりますので、この数字は必ずしも御指摘のような遜色があるものと私どもとしては思っておらないのでございます。
  153. 平田藤吉

    平田分科員 あなたのほうは四十八年の数字を出されたけれども、政府債ですよ、四十八年の三月までしかわからぬと言っておった。ですから、私のほうでは、四十七年度、四十六年度というふうに数字をあげている。四十六年度が四一・五%で、四十七年度が三八・四%だ。全国の数字は五〇%だ。これから見るというと低いじゃないか、政府債の割合が。縁故債その他入れちゃだめですよ。政府債の割合が低いじゃないか、これはどういうわけなんだと聞いたんですが、あなたのほうは答えをはぐらかしている。  私はいま一連の質問をしてきたけれども、いまの答弁で非常に重大な問題がはっきりしてきていると思うのです。工業用水料金を一立方メートル六円に押えるために、施設費の四〇%を国が負担し、その上県に二〇%を持たせ、さらに最近では三〇%持たざるを得なくなっているというような状況をつくり出していることです。  第二の問題は、県の上水道建設補助がいろいろな名目で削られて、二五%補助するたてまえになっているのに実際は八・二%で、減らされている金額は実に四十六億六千五百万円にのぼっているというのが実態です。その上、政府債のワクも全国水準よりもはるかに低いものとなっているということです。  第3は、こうした結果、工業用水道料金は一立方メートル六円なのに、上水道料金は、新設の水道の場合、県が市町村に供給する料金、つまり卸値で何と二十九円四十七銭になってしまうということです。これだと一般家庭の水道料金は五十円以上になってしまうのですね。一般家庭は工業用水道料金の七倍から八倍になる仕組みがつくり出されているわけですよ。  そこで、あらためて通産省に質問しますけれども、工業用水道に県が出さなければならなくなっている二〇%ないし三〇%の負担をなくして、工業用水道料金を適正なものに改めるべきだと思うけれどもどうかということにお答え願います。
  154. 柴田益男

    柴田説明員 埼玉県の工業用水道は最終的には四十四万トンの給水能力で、五十二年度を目標としております。現在給水しておりますのは約その六割程度の二十六万トンでございまして、多分に先行投資的な要素がございます。そういうことと、それからもう一つ埼玉県の特殊事情といたしまして、給水対象が二百八十工場程度を予定しております。大部分が中小企業でございます。地下水を現在くみ上げておるということで、われわれとしては、国といたしましても相当程度の助成をいたすわけでございますけれども、地方自治体からも先行投資あるいは中小企業対策、地盤沈下対策ということでそれ相応の負担というものをお願いしたいわけでございますけれども、それは相当程度赤字になってくるということでありますれば、しかも埼玉県から料金の改定についてもう一度検討いたしたいという話があれば、その時点でもう一度検討いたしたい、そういうふうに考えております。
  155. 平田藤吉

    平田分科員 じゃ、上水道問題で県営上水道事業に対する補助率をたてまえどおりに是正して、そうして起業債の中の政府債の占める比率を正当なものに思い切って引き上げ、そしていまのような状態改善すべきだというふうに考えますが、どうですか。
  156. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 上水道の水の料金と工業用水道の水の料金とを直ちに比較することは非常に困難でございますけれども、われわれといたしましては、やはり国民の生活に非常に密着した必要欠くべからざる上水でございますので、できるだけその料金を安くするように国の補助を特に組み入れていきたいということで、従来も努力いたしておるわけでございますが、今後とも四分の一にできるだけ近づけるよう努力してまいりたいと存じております。
  157. 平田藤吉

    平田分科員 いまいろいろ言われておりますけれども、工業用水にしても上水道にしても、かってにいまの状態が起こってきたのじゃないのですよ。ここのところは考えてもらわなければ困ると思う。首都圏に隣接している埼玉県では、工業出荷額を見ると、四十七年には三兆四千億円となって、四十年と比べて実に四・二倍になっているのですよ。それから人口では、四十年に三百一万人が四十八年には四百五十万人と、約百五十万人も急増しているのですよ。これは代々の自民党政府が大企業本位の高度成長政策を推し進めることによってつくり出されたものなんですよ。その結果は、工業用水の使用量も四十二年度には毎日三十一万八千トン、四十五年度には毎日四十六万八千トン、ばく大な量がくみ上げられるようになった。それは当然ですけれども、県民全体が使用する上水道用水に相当するものなんですね。さらに、工業用水に使う表流水を加えると四十五年度ですでに毎日実に八十七万トンも使うようになっているのですよ。それは当然のこととして地下水の低下、地下水の枯渇、水質の悪化などともに、埼玉県面積の約四分の一に相当する広大な地域に地盤沈下を引き起こしているのです。こうして水資源対策は国土保全の立場からも、また生活環境を守る立場からも急を要するものとなってきているわけです。そこで、県民の強い要求に押されて県政が中央第一水道と中央第一工業用水道の建設に三十八年から取りかかり、四十三年から給水を始めたのです。しかし、これではどうにも間に合わなくなって、いままた新たに三つの上水道建設事業に取り組んでいるわけです。こうして見てくると、上水道を急速に拡大しなければならない原因はその大半が政府にある、つまり責任は政府にあるんだということをはっきりさせてもらいたいと思うのです。  なお、高度成長政策により大企業にしこたまもうけさせ、県民に犠牲を負わせながら、それをさらに拡大しようとしているところに問題があるわけです。高度成長から福祉優先だなどと田中内閣は言っているけれども、これを根本的に改めなければならないと思うのです。わが党は国民の命と暮らしを守る立場からこうした自民党政治と対決して戦うと同時に、いま言われたような具体的な施策改善をするという約束を必ず守ってもらうことを要求して、私の質問を終わります。以上です。
  158. 八木一男

    八木(一)主査代理 新井彬之君。
  159. 新井彬之

    新井分科員 現在非常に物価が上昇いたしておりまして、いろいろのことでお困りになっている方がたくさんいらっしゃるわけでございます。今後の世界の状況を見ましても、あるいはまた日本の状況を見ましても、当然これからは福祉というものを全面的に充実をしていかなければならない、こういうことで本会議等でも再三にわたって提言がなされておるわけでございますが、政府のほうとしてもそれに対しては早急にそういう年次計画を出すというようなことで答弁をされているように私は思っておりますが、きょうは特に父子問題、父子家庭の問題について質問をいたしたいと思うわけでございます。  この問題については去年の六月二十一日の社会労働委員会におきまして、大臣が父子問題についてはこういうぐあいに答弁しております。「社会には、父と子で生活に努力し、非常に苦しい状況に置かれている家庭のあることは、私も十分承知をいたしております。したがいまして、私どもは今日まで、こういう家庭の児童を守るために、保育所にできるだけ入れて心配してあげるとか、あるいは児童相談員とか、そういった方々がいろいろな相談に乗るとかいうふうなことをいたしております。」それからちょっと飛ばしまして、「やはり社会にそういう苦しい環境に置かれておる人がおる限り、そうした問題について何かあたたかい措置を講ずる必要があるんではないかという問題意識は、十分私も持っておるわけでございます。将来何らかの方法において努力をいたしてまいりたい、こんなふうに考えておる次第でございます。」こういう答弁がございますけれども、それからいよいよ四十九年度の予算ということで組まれてきたわけでございますが、この問題についてそれからどのような検討をされたのか、まずお伺いしたいと思います。
  160. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいま御指摘ございましたように、昨年の社会労働委員会で大臣が、いまおっしゃったような答弁をされたわけでございますが、私どもといたしましては、いま御指摘のございました父子家庭というものの実態をさらに見きわめ、それに適切な対応を考えていく必要があるということで、昨年申し上げました際には、昭和四十四年におきます全国家庭児童調査の数字を基礎にして申し上げたわけでございます。五年たちまして四十九年度、ことし全国につきましてさらに全国家庭児童調査をいたしまして、その後における母子家庭、父子家庭、そういった家庭の実態を十分把握いたしまして、適切な措置を講じてまいりたい、かように考えておるわけでございますが、ただいまも御指摘ございましたように、児童につきましては従来まで児童福祉法あるいは母子保健法といったように、いわゆる児童の健全育成、児童の福祉ということをたてまえに施策を進めてきておるわけでございます。
  161. 新井彬之

    新井分科員 いま児童の方についてはそういうことであるということがありましたけれども、ことしに入ってからもいろいろ新聞に出ているわけですね。その中で、たとえて言いますと、一月九日の新聞には、西宮市においては父親と子供二人が心中をしているという記事が載っております。子供は十歳と八歳ですが、これも妻が家出をした、そういうことであとどうしようもないということで無理心中をしている。これも奥さんが蒸発をしたということが原因になっております。あるいはまた、一月二十七日の新聞を見ましても、三歳の長女を育てられないからということで殺しているわけですね。昨年九月妻に家出されて以来、子供の世話に苦労を重ねた。このため、もうこれ以上育てられないと、因果を言い含めて、無理やりに殺しました。自分は死のうと思ったんだけれども死にきれなかった、そういうことを供述しているわけですね。  そういうことで、こういう問題かどんどんなくなってくれば、確かにそれは子供さんの問題というものはないと思いますけれども、やはりそういう父子家庭という問題についての基本的なことをやらないと、どうしてもこういうことがどんどん出てくる。こういうことについてはどのようにお考えですか。
  162. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいま申し上げましたように、いわゆる奥さんに死なれ、あるいは離婚した父と子供だけの家庭というものについての児童福祉の立場から申し上げますと、まずその子供を養育するについて、いわゆる養育上必要な養護施設への入所、それからおとうさんがつとめておられる場合には、日々保育に欠けるという立場での保育所への入所、こういったものが児童を中心とした措置として考えられているわけでございます。  ただいま御指摘のありましたきわめて悲しい事件等につきましては、あるいは児童相談員、あるいは児童相談所、福祉事務所、こういったそれぞれの公的な機関がそれとかかわり合いを持って、そして事前に、未然に防止できれば一番幸いなことでございますけれども、そこまで至らないうちに不幸な事件が起きたということが実態ではなかろうか。そういたしますと、児童福祉の立場から申しまして、現にある制度、現にある仕組みをさらに掘り下げ、深めることによって、こういった不幸な事件を一つでも減らしていきたいというのが、当面私どもが制度として持っておる行政上の考え方でございます。
  163. 新井彬之

    新井分科員 局長はそういう答弁をされますけれども、これは本論ではありませんけれども、保育所一つにいたしましてもいま十二分にあるということはないわけですね。それからまた、その保育所自体の、たとえて言いますと、建設を一つするにいたしましても、国のほうの単価が非常に低いじゃないか。あるいはまたその措置費ですね、保育所を運営する費用についてもどうしようもないんだというような問題等もたくさんあるわけですね。  それはそれで別といたしまして、いま言ったようなことが完ぺきに整っているにかかわらず、そういうことが結局知らないでなっているんだということではない。だからほんとうにこれを充実しなければならないと思うのですね。だからいまのような答弁では私はそれは解決しないと思いますね。  ここに、東京の蒼生会平和荘という社会福祉法人があるわけですけれども、ここは父子家庭を中心にやられているようでございます。そこのケースワーカーである佐々木さんという方、御存じだと思いますけれども、「佐々木さんも四十四年、妻に蒸発され、五歳を頭に三歳、七か月と三人の幼児をかかえて、平和荘の父子療に飛び込んだ一人である。佐々木さんが交通事故にあい入院した時など、寮母もいない寮で、子供たちは二日間何も食べずにいたこともあった。そのため病院にたのみ込み、親子四人で入院した」、こういうようなこともあるのですね。あるいはまたほかの例ですけれども、「妻がいなくなったとき、多くの父親がまず直面するのは、思うように働けないことである。一橋大学を卒業し、中企業の重役までしたことのある吉村豊さんは「父子家庭の父親は、子供がさびしく家で待っていることを考えると残業もできず、子供が病気になれば放っておくこともできず、ついつい欠勤してしまう。欠勤が多くなれば、その職場にもいづらくなり、職を転々としたうえ、最後は、いつ欠勤しても支障のない日雇い人夫に転落するケースが多い。私もその例にもれなかった」と当時五歳の子供をかかえて妻に病死された人生を振り返る。」そういうふうに言っております。  また、現在小学校二年生の長女を残して二年前に妻に蒸発された淵辺さんという方は、「会社など定職につきたいが、休むことが多いので就職できない。」淵辺さんの職業は現在とび職ですけれども、月収が六、七万円しかない。きちんとつとめれば最低十五、六万円にはなる。それから「母親と比べ父親は家計のやりくりがへたなため、内容的には母子家庭の収入五万円は、父子家庭の収入七万円ぐらいに相当するのではないか」こういうことも言っているわけです。  また、生活保護法に基づく宿所提供施設であり父子寮も兼ねる塩崎荘の寮長さんは、「父子家庭の子供は母親がいないため情緒不安定になるケースが多い。ものに感動しない子、極端に内気な子、逆に粗暴だったり、落ち着きのない子。非行化の原因ともなる。子供を中心に考えた場合、母子家庭より深刻です」。それから全国の社会福祉協議会の石黒さんという方は、「父子家庭の父親は仕事から疲れて帰り、炊事が面倒なので、一ぱい飲み屋で子供を連れて食事をするケースが多い。そこで子供たちは飲み屋での父親の会話をまねて子供らしからぬ大人びた話を遊びの中でしている」。  いろいろな指摘があるのですけれども、ただ子供を預かるというような簡単なことではなくて、母子家庭よりもなおたいへんなことなんだ、そういう認識をお持ちかどうか。私はさっきから大臣に聞いているのですよ。局長らが答弁したってしようがないと思うのですけれども。
  164. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この父子家庭の問題につきましては、昨年の国会でも御質問がございましてお答えを申し上げたことを私は十分記憶をいたしております。いまお述べになりましたように、ある意味からいうと、母に蒸発されて父が小さな子供を三、四人もかかえている、こういう生活を考えてみたら、これはなかなかたいへんなことだと思います。経済的のみならず、子供の教育の上からいってもなかなかたいへんな問題である、深刻な問題であるというふうに私も理解をいたしております。  そこで父子家庭という問題なんですが、一般的にこれは昔からそうなんですが、父というものは扶養能力があるんだという経済的な面のみにとらわれがちな傾向がありますから、父子寮というよりもやはり母子寮というものが中心になって今日まできていることは事実でございます。しかし社会が複雑になって、こういうふうないろいろな悲惨な例がたくさん出てまいってきておりますから、何らかの対策というものを講ずる必要がある、この点については私も新井委員と同感でございます。  ただ問題は実態をどうやってつかむか、これが一番むずかしい問題でございます。ケース、ケースによって非常に場合が違っておるわけで、しかも全国的な統計もはっきりしていない。そこで四十九年度におきましては、父子家庭の実態というものをもう少し的確に把握してみたい、こういうことで実態調査に入ってみたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、何とかしなければならぬという点については私も同感であり、非常に深刻なものがある、ある意味からいえば母子家庭以上に深刻なものがあるというふうに、私も十分な認識と意識は持っておるつもりでございます。したがって四十九年度の調査の結果をまちまして、もう少し積極的な対策というものを考えていかなければならぬであろう、かように考えておる次第でございます。
  165. 新井彬之

    新井分科員 私はだんだんと問題になってくるんじゃないかと思うのです。それは御存じのように最近の離婚件数ですね。これは年度別にずっと出ておりますけれども、四十六年が十万三千五百九十五、四十七年が十万八千三百八十二、四十八年が十一万三千、こういうことで推計されておりますね。もう一つは家出人です。こういう方の捜索願いが出ておるわけでございますけれども、この家出人の状況を見ましても、二十歳から五十九歳までの女性の方、これが四十四年には二万五千二十三人、四十五年には二万七千四百十八人、四十六年には二万八千三十五人、四十七年には二万六千六百六十七人、こういうことで出ているわけです。もちろんこれだけではなくて、おかあさんが死んでしまった、これは病気でなくなってしまったという方もふえていると思うわけでございまして、やはりそういう方にきちんとした施策というものを早くやらないと間に合わないのではないかということが一つあります。  それからもう一つの実態調査からいきますと、これは先ほども大臣が答弁されましたけれども、生活程度が女性よりも男性のほうがすぐれているんだ、こういうことを前提にどうしても考えがちなんです。しかしそれはどんなデータによってお考えになっているかわかりませんけれども、局長、そういうことでデータか何かあるのだったらお示し願いたいと思います。生活の問題ですね、それを聞いてからまた質問したいと思います。
  166. 翁久次郎

    ○翁政府委員 私の手元にございますデータで申し上げますと、ここにございますのは四十四年の全国家庭児童調査でございますけれども、おかあさんがいない欠損世帯の課税されている状況で申し上げますと、生活保護を受けている階層、いわゆる父子家庭とお思いいただいてけっこうだと思いますが、これが一%、市町村民税の非課税世帯が二・九%、市町村民税の均等割を受けているのが一七・五%、所得税を課税されている階層が六一%、大体六割が所得税を払っておる階層である、こういう調査が出ているわけでございます。これだけで何か申し上げるのはたいへん的確ではないと思いますけれども、われわれの手元にあるのではその程度の調査であるということでございます。
  167. 新井彬之

    新井分科員 一応この資料によりますと、これは父子家庭の実態調査でございますが、栃木県と、それから兵庫県の神戸市を除いた地域ですね、そういうところの実態がありますけれども、とにかく四万円未満が栃木県では六九・二%、それから兵庫県では二二・九%、六万円未満が栃木県一五・六%、兵庫県が三一・八%、八万円未満が栃木県が四・一%、兵庫県が二五%、八万円以上というのが栃木県で三%、それから兵庫県で二〇・三%ですね。それに比べて神戸市の場合、神戸市の母子家庭の実態調査からいきますと、四万円未満が一七・八%それから六万円未満が三一・七%、八万円未満が二二・四%、八万円以上が一二・五%、十万円以上というのが一五・六%でありまして、やはりそんなに変わってないわけですね。こういうことで男性のほうが、要するにそれはいろいろの階層がございますから、確かに大きな会社を経営されておるとかいろいろいて、お金持ちの方もたくさんいらっしゃると思いますけれども、いろいろな層があって一律にはいかないのだ。したがいまして私はこういうことからいきましても、ある程度の所得以下の方については、これはやはり児童扶養手当を父子家庭にも適用するのが当然じゃないか、こういうぐあいに思うわけでございますけれども、いかがですか。
  168. 翁久次郎

    ○翁政府委員 児童扶養手当につきましては、御承知のように、母子家庭というのは、大体子持ちの女性が再婚するということは非常にいままでの社会的常識ではむずかしい。それからまた母子家庭のおかあさんのほうが子供をかかえて社会に適応していくためにいろいろの、特に経済的あるいは就業上の苦労が多いということに着目して出ている手当でございます。これも若干横道にそれますけれども、母子寮についても同じような発想できているわけでございます。ただ御指摘のございましたように、最近並びに今後における世の中の移り行きということを考えますと、必ずしも従来の母子家庭と父子家庭との社会的な意識というものの差をそのまま続けていっていいかどうかという点は、確かに問題があろうかと思います。ただ、直ちに父子家庭について同様の措置をとるかどうかということについては、一つの問題として、従来の一般社会の常識もそうでございますけれども、大体父親は再婚するという当時の世間の一応の常識というものが根底にあるわけでございます。ただそれが、子供のために再婚しないという父親が子供をかかえている場合に、どのように制度上対応するかということにもからんでくる問題かと思います。一がいに父子家庭だから児童扶養手当的なものは考えないということを申し上げているわけではなくて、従来のものの考え方並びにこれからの社会全体の動きというものをみきわめながら、やはり制度として対応していくべきではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  169. 新井彬之

    新井分科員 私はだから、従来のものの考え方というものを、いま所得の問題なら所得の問題で言っているわけです。児童福祉法には「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」とありますね。だから、片っ方はおかあさんがついているわけです。片っ方はおとうさんがついているわけです。もちろんこれは再婚をされてきちっとした家庭に戻れば、そういう手当はなくなるわけです。これは母子家庭だって同じじゃないかと思うのですよ。したがいまして、同じ子供さんでありながら、おとうさんといた子供さんは何らの措置がない、おかあさんといた場合にはものすごくいろいろな法的な援護措置があるわけですね。そういうことではこれは一体——児童福祉法では平等であって愛護されなければいけないのでしょう、この精神からいけば。それは児童扶養手当というのは、おとうさんがない子ということで法律でうたってありますから、これに適用するかどうかは別として、何らかの方法で、また別のことで考えていかなければいけない、これは当然つくるという決意がなければいけないと思うのですが、大臣いかがですか。
  170. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 仰せのごとくおかあさんがない場合、おとうさんがない場合、子供にとってみればある意味からいえば同じだと思います。そういう意味においてこういうふうな父子家庭における子供さん方も保育所に入れるようにしなければならぬとか、そういうことをいろいろやっておるわけでございます。そういう意味においては同じでございますが、いま申し述べましたような児童扶養手当といったような制度そのものにはそれぞれの制度の理由があり、いきさつがあってできておるわけでございまして、すべての制度全部を同じにしなければならぬかどうかということについては議論はあると思いますが、そういう子供というものを公平に愛育していかなければならぬ、育てていかなければならぬ、こういう必要性については私は同じであろうというふうに考えておりますし、そういうふうに子供を扱っていくというふうにしていかなければならぬのは当然のことだと思います。
  171. 新井彬之

    新井分科員 そこでいままで、地方公共団体であるとかいろいろのところでそういう施策を行なっているところがありますが、東京都江東区の塩崎荘だとかあるいはまた平和荘、こういう父子寮というものがあります。横浜市にも東神奈川ホームというものがあります。それから栃木県の場合は遺児手当十八歳まで年二千円ずつ、それから障害児は月二万円、東京都においては第一子より月二千円ずつ、愛知県は第一子より一千円ずつ。それから神戸市では高校進学資金の貸し付けをやっております。兵庫県では小口融資三万円の予定で今後それをやるということです。また尼崎では今度自治体としては初めての父子年金を四十九年度、いまの予算で提案をされておるわけでございますけれども、市内に一年以上居住の方で十八歳以下の子供を持つ家庭、父親の所得制限が子供一人の場合は年間百八十三万六千円、年金支給対象家庭の子供一人に対して年間三万八千四百円、二人目からは一人につき一万二千円を加算する、こういうことで初めてそういうものを創設をするようになっているわけです。したがいまして、この問題は別に児童扶養手当制度的な金額だけの問題ではなくて、とにかく父子寮を増設するとか、あるいはまた保育技術のすぐれたホームをつくるとか、あるいはまたホームヘルパーをどうするとか、そういうことで全般的に充実をしていかなければならないと思うわけでございまして、そういうこともひっくるめて、厚生大臣ひとつ検討していただきたい、こういうように思いますが、いかがですか。
  172. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 父親がいなかろうが母親がいなかろうが、子供を大事にしなければならぬ、愛護していかなければならぬ、これはもう当然のことでございますから、児童扶養手当のような女子の経済力の弱さというものを頭に描き、そのほかの社会的な要因を考えて出しておる制度、そういう制度は別として、保育所に入れるとか、そういうことについてはもっと積極的にやっていかなければならぬ問題だろうと思います。したがいまして、もう少し私も実態を調査してみまして、特に大都会などにはそういう問題が多いと思うのです。でございますから、それに適応した児童のそういう収容施設なりあるいは養護施設なり保育所なり、そういうものの増設などについてはより積極的に努力をしてまいりたい、しなければならぬだろうというふうに考えておる次第でございます。
  173. 新井彬之

    新井分科員 じゃ時間が来ましたから、あと一問だけちょっと聞いておきますが、軽症の身体障害者の授産施設で千葉市松ヶ丘町七十五、社会福祉法人千葉アフターケアー協会松ケ丘ホームというのがございます。ここは三十人の収容数を持っておりますけれども、現在二十四名収容されておりまして、保母さんなどが人手が足りなくて、便所の掃除もなかなかできないという問題が一つあります。  もう一つは食費でございまして、現在物価がものすごく上がっておるわけですが、一カ月一人八千六百円が国からおりてくる食費であります。昨年は八千二百円であったのが十月に八千六百円になっておりますけれども、これももうどうしようもなくて、県のほうから昨年特別緊急措置として四万六千円の食費がおりて、ようやく息をついたということがあります。そういうことで、公立に比べて待遇が低いので人手がなかなか集まらない。定員は八名ですけれども、現在六名です。それともう一つは食費の問題ですね。この問題についてお答えを聞いて質問を終わりたいと思います。
  174. 高木玄

    高木(玄)政府委員 いまお話のございました身体障害者の授産施設の松ケ丘ホームでございますが、確かに収容定員三十名に対して二十四名しか入っておりません。この理由は、県に照会しましたところ、人手不足ではなくて、実はこの施設は昨年の三月一日に開設したばかりでございます。そしてこれは、千葉のアフターケア協会が経営しておりますが、結核等の内部障害者の回復後のアフターケアというのが目的で始まったのでございます。当初はこの内部障害者を主として収容するという計画で進めてまいったようでございますが、なかなか入所希望者が集まらないというので、一般障害者も入れるというふうに方針を切りかえてまいっており、近く三十名になるように必ずする、こういうことでございます。  それから、食費は、確かに先生おっしゃられたように、現行の予算単価は八千六百円でございますが、これは明年度予算におきましては九千八百五十円に引き上げることにいたしております。  なお、この食費等のやりくりに施設が非常に苦労しておられる実態がございますので、年末、それから今回、施設に対して特別の一時金を支出するような措置を講じておるような次第でございます。
  175. 八木一男

    八木(一)主査代理 次に、福岡義登君。
  176. 福岡義登

    福岡分科員 私はろうあ対策についてお伺いしたいのですが、その前に、大臣から基本的なことについて一つだけお伺いしておきたいのです。  わが国の社会保障全体、特にその中でも身体障害者関係の福祉行政というのが非常に立ちおくれておるわけでございます。これらに対しまして、厚生大臣として四十九年度具体的にどういう施策を盛ろうとしておられますのか、基本方向だけまず明らかにしていただきたいと思います。
  177. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 身体障害者はもろもろのハンディキャップを受けておる方々でございますから、こうした方々に対する援護については十全の措置を講じなければならぬ、こういうふうに私は考えておるものでございます。そこで、御承知のように、身体障害者の福祉年金等増額をはかるというふうな問題、それから身体障害者のうちで——御承知のように、こういう方々は一般社会において一般人と交流して、一般人と同じように生活をしていくということが一番望ましいことであります。もちろん重度で寝たきりのような方々、これは別といたしまして、そうあるべきものである。そこで、私はぜひこれはやっていかなければならぬと思いますのは、身体障害モデル都市をできるだけ多くつくっていくというのが非常に大事だと思うのです。実は昨年、全国で六都市について、身障者の方々が車いすに乗っても一般の方と同じように町中を歩ける、市役所の中にも入っていける、公会堂に行って音楽を聞くこともできる、そういうふうな施設をつくるための身障者モデル都市をやってみたのです。ところが非常に希望が多いわけです。そういうふうなこともありましたので、来年度は十七カ所でございましたか、身障モデル都市というものをつくる、できるだけ早い機会に各県に一カ所は必ずつくってみるというふうなやり方でやっていくようにしたいものだ、かように考えております。  一般の身体障障害者については、一般人と同じような社会で生活できるんだというふうにする、重度の者は手厚い援護をする、それから生活に苦しい方々については年金その他によって手厚い援護をしていく、こういうふうなやり方で、もろもろのハンディキャップを受けている方々に対してはできるだけの援助をしてあげることが国のつとめであるというふうに考え、努力をいたしておるような次第でございます。
  178. 福岡義登

    福岡分科員 わが国の経済力は世界で二番、国民所得は十六番、社会保障は二十五番という汚名を着せられておるわけでありますが、ぜひ積極的な社会保障、とりわけ身体障害者対策を強力に推進していただくことをまず冒頭にお願いしておきたいと思います。  そこで、ろうあ対策なんでありますが、まずお伺いしたいと思いますのは手話対策、つまり手で話す対策についてお伺いしたいと思います。  各都道府県及び指定都市は、手話奉仕員の養成事業を行なうことになっておるわけであります。一つは、今日まで養成された手話奉仕員というのはどのぐらいあるのか、二つ目には、現在その中で登録されて残っておる者はどのぐらいあるのか、以上とりあえずその二つをお伺いしたい。
  179. 高木玄

    高木(玄)政府委員 手話奉仕員の養成につきましては、都道府県に対しまして補助金を支出して実施せしめておるところでございますが、ただいまお尋ねの手話奉仕員の数、それから登録数、これはちょっと手元に資料がございませんので、至急調査して御報告申し上げたいと思います。
  180. 福岡義登

    福岡分科員 それでは次の問題なんですが、都道府県及び市は手話通訳者設置事業を行なうことになっておるわけであります。そこで、この手話通訳者の設置事業の内容についてお伺いしたいのであります。  全国の都道府県及び市は、これは原則的にいえば全部実施しておらなければならぬのでありますが、すべて実施しておるかどうかということが一つであります。二つ目には、手話通訳者を設置しておる都道府県並びに市はどのぐらいあるのか。それから、その設置されておる通訳者の数はどのぐらいあるか。四つ目には、設置された通訳者の勤務は二日以上とされておるのでありますが、実情はどのぐらいになっておるのか。また、その場合の身分関係はどうなっておるのか、設置通訳者が勤務した場合の報酬はどういう取り扱いになっておるのか。  以上五つの点についてお伺いしたい。
  181. 高木玄

    高木(玄)政府委員 身体障害者のいまお尋ねのような点につきましては一応、地方活動促進費という予算で補助金を流しておりまして、身体障害者のためのいろいろな施策をメニュー方式でやっております。(福岡分科員「それはわかっておるんだよ。幾らおるかだ。わからなければわからぬでいいんだから」と呼ぶ)それで私どもは、現在基準としては手話奉仕員は各福祉事務所に月二回以上置くという基準にいたしておりますので、この線に沿って都道府県措置しておるものと思います。
  182. 八木一男

    八木(一)主査代理 委員の御質問の趣旨に全部きっぱり答えてください。
  183. 福岡義登

    福岡分科員 いまのは答弁にならぬでしょう。私は五つお伺いしておるのですが、一番大切な点は、二日以上勤務するということにされておるが、実際にはどのぐらい勤務しておるのか、その場合の身分はどうなのか、報酬はどうなのか。設置者の数などについてはまたあとで調べてというのはわかりますが、勤務の実態というものがわかっていないことはないでしょう。
  184. 高木玄

    高木(玄)政府委員 この手話奉仕員を福祉事務所に月二回以上設置する場合の報酬は、一応予算上は賃金職員として補助いたしております。  なお、この活動の実態については、実は私どものほうでまだ調査しておりませんので、資料はいま手元にございません。
  185. 福岡義登

    福岡分科員 賃金職員でどのくらい出しているのですか。
  186. 高木玄

    高木(玄)政府委員 この手話奉仕員に対する補助金は四十八年度から実施いたしておりますが、その賃金は千七百円程度でございます。
  187. 福岡義登

    福岡分科員 実情を明らかにしたいと思いまして、事務的なお伺いをしておるのですが、委嘱された手話通訳者かどのくらいあるか——数はわからなければいいのですけれども、勤務条件はどうなっておるのですか。
  188. 高木玄

    高木(玄)政府委員 ちょっといまわかりかねます。
  189. 福岡義登

    福岡分科員 それでは、都道府県は市に対し予算の範囲内で助成をするということになっておるわけですね。どういう基準でどのくらい都道府県は市に対して手話通訳設置事業に助成しておりますか。
  190. 高木玄

    高木(玄)政府委員 ちょっとわかりませんので、調べて御報告申し上げます。
  191. 福岡義登

    福岡分科員 わからぬことばかりじゃないですか。次の話に進めませんよ、実情がわからなければ。どうですか。すでに質問通告してあるわけですよ。
  192. 八木一男

    八木(一)主査代理 高木社会局長、しっかり答弁してください。
  193. 高木玄

    高木(玄)政府委員 申しわけございませんが、その質問通告を私ども承知しておりませんので、突然のことでございますので、答弁いたしかねておる次第でございます。
  194. 福岡義登

    福岡分科員 ろうあ対策について質問するということはちゃんと通告してありますよ。
  195. 高木玄

    高木(玄)政府委員 何かの手違いかと思いますが、私どもは実は聞いておりませんでした。
  196. 福岡義登

    福岡分科員 答弁できないんだから質問できないじゃないか。
  197. 八木一男

    八木(一)主査代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  198. 八木一男

    八木(一)主査代理 速記を始めて。  森井忠良君。
  199. 森井忠良

    森井分科員 それでは私は少しじみでありますが、国民健康保険の問題についてお伺いをいたします。  まず、概括的な質問になるわけですが、率直なところ国民保険事業を行なっております保険者は、それぞれ深刻な財政難でいま困っておると思うわけです。なかんずくこの二月から医療費の値上がり、さらには高額療養費負担の問題、かてて加えて一般的に老人がふえておりますけれども、老人の公費負担制度の確立、そういった問題で、ある意味で国民健康保険というものが曲がりかどにきておるのじゃないか。何らかの形で抜本的な対策を立てないと、非常に困った問題になる。特に、私が申し上げるまでもなく国民健康保険の被保険者は、たとえば社会保険なり、国家公務員あるいは地方公務員、公共企業体等に働いておられる皆さんの共済組合、そういったもの以外の、言うなれば、保険という面から見ますと、ことばは悪うございますが、非常に手間と費用とのかかる加入者が多い、こういう認識に立たなければならないと思うわけであります。しかも私もずっと国民健康保険の推移を見ておりますと、どちらかというと、厚生省の考え方の中に、医療費がかさめばとりもなおさず保険料を上げろ、つまり受益者負担の発想というのが非常に濃く出ておるのじゃないか。現に各市町村別に分析をしてみますと、療養費の高いところ、医療給付の高いところは必然的と申しますか、保険料も高くなっておる傾向が非常に顕著にあらわれております。しかし国民皆保険という立場からすれば、ほんとうはおかしいのでありまして、でき得べくんば、同じ日本国民だから、同額の保険料で同じような給付が受けられる、その前提としては当然医療機関等も、僻地あるいは離島、そういったところも含めて同じように供給が受けられるような医療機関がほしいというような問題もあるわけであります。そういうふうな現状の認識に立ちますと、とりあえず厚生大臣からお伺いしたいのは、いまのもろもろの申し上げましたような事情を勘案をして、国民健康保険というものをこれからどのように運用していったらいいか、まず基本的なあり方についてお伺いしたいと思うのです。
  200. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 国保の財政の苦しい問題、またその周辺のいろいろな問題、お述べになりました森井さんの御意見と私も同感でございます。特に、御承知の老人医療無料化が始まり、さらにまた本年におきましては、高額医療制度を実は五十年度までにやろうと思って考えておったのですが、町村ごとに三カ年計画でやるということはたいへんなんですね。あの町村がやってわしの町村はやらぬのか、こうなるとたいへんだというので、四十八年度が一部やりまして、四十九年度には全町村にやっていこう、こういうふうな仕組みにいたしましたために、国保財政はほんとうに私もたいへんだと思うのです。そういう財政に、二月から今度は診療報酬改定、お述べになりましたとおりです。そこで私どもは、この国保財政の苦しいことに対処して保険料をある程度上げていただく、これは私は御協力をいただかなければならぬと思うのです。より高度の福祉のためには受益者にもある程度の負担はしていただく、これは私はいいと思うのですが、あまり急激な負担増になっては困るではないかということを考えました。そこでこの際国庫負担をできるだけふやすようにしようじゃないかということを考えまして、これは御承知のように現在までは定率四〇%、そのほかに財政調整五%、四五%でございますが、ほんとうを言うと、四五%をできれば五〇%ぐらいにしたいと思ったのです。ということになると、医療費の大体半分は国が見る、そのくらいにしたいと思ったのですが、ある意味からいうと、財政の苦しいことも私わかりますが、同時に、高額医療をやった場合にどういうふうな影響が出てくるかまだはっきりしない要素もあるわけなんです。そういうふうなことで一応金額としては三百五十億というものでひとつ大蔵省と話を詰めようということで、四十九年度はいたしたわけでございます。それは率にいたしますと二・四%ぐらいですから四七・五%近くは国が見るんだというところまでこぎつけることができたわけですが、今後、老人医療のほうは大体すべり出してきていますからこの趨勢でいくでしょう。     〔八木(一)主査代理退席、渡部(恒)主査代理着席〕 問題は例の高額医療が、本年度中にやってしまうということになりましたので、それがどういう影響が出てくるか、その辺をもう少し見定めてから国保の問題にはもう少し本格的に取り組む必要があるのではないかというふうに、いまのところ考えておる次第でございます。
  201. 森井忠良

    森井分科員 五%ふやそうかというような、私が言いたいようなことを大臣に話していただきましたので、この点は高く評価をいたしますとともに、その姿勢はぜひくずさずにおっていただきたいと思うのです。  そこで、いま大臣がお述べになりましたのは、三百五十億の臨時財政調整交付金、この問題だと思うわけです。これは言うなれば新設の予算だと思うわけでありますが、そうすると臨時財政調整交付金は、いまお述べになりました高額療養費負担、これは私ども聞いておりますのは二分の一という形になっておるわけであります。これでは三百五十億要らないと思うわけでありまして、おそらく百二、三十億、残りの二百六、七十億というのをどういうふうにお使いになるのか。ちょっと、保険局長いなくて大臣に数字的なもので恐縮でありますが、お伺いします。
  202. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これは、高額医療の分についてはいまお述べになりましたように二分の一は国が補助していきましょう、そのほかのところは、老人医療無料化だとかいろいろなことをやってきましたから、その財政の苦しいのに見合って、それこそ財政調整をしていこう、こういう考え方でございます。     〔渡部(恒)主査代理退席、主査着席〕 私はほんとうを言うと、こういうものは将来の方向としてはやはり、つかみで三百五十億出すなんというのではあまり感心しないと思っておるのです。ことしはやむを得ないと思いますが、将来の問題としては、もう少し国保の財政をかちっと安定させるような仕組みに持っていかなければならぬ、私はこのように考えております。しかし、ことしは不確定な情勢等もありますから、この辺のところで市町村にもごしんぼういただくきりないじゃないか、こういうふうに考えております。
  203. 森井忠良

    森井分科員 保険局長がお見えになりませんからちょっとむずかしいのでありますが、いま大臣の財政調整交付金に対する考え方をお伺いしたわけでありますが、どうも私、臨時という名前に引っかかるわけですね。先ほど来、高額療養費負担であるとか、あるいは老人医療の公費負担制度であるとか、いってみれば恒久的に続くものであるというふうに私どもも判断をせざるを得ないわけです。そういたしますと、臨時という名前がついておりますし、事実法的な根拠というよりも今度の場合は予算上の措置だと理解をいたしますので、当然法改正等の問題もあるわけでありますが、この点どうでしょうか大臣。ことし限りということじゃなくて、これから将来にわたって延ばす必要があると思うわけでありますけれども、いかがですか。
  204. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 臨時とついておるわけでございますから本年度限りの行政措置、これは法律的にはそのとおりでございます。しかし、それじゃ来年これがなくなるかという御質問になろうかと思いますが、そういうことはあってはならないものだと私は思うわけでございます。そこで御承知のように高額医療の問題等について、ことし全府県に、全町村にやっていくわけですから、その情勢も見合いながら、来年度の五十年度の予算の際には、臨時などというもののとれたような安定した財政補助というものができるようにしなければならぬだろう、私は個人的にはそう考えているのです。しかし制度的にはことしの予算はどうかといわれたら、臨時というのですから本年度限り、これはそのとおりでございますが、そんなものであってはならない。大臣はそのころになるとかわっておりましょうが、ことし限りの予算であってはならないし、これは安定した財政として確立していくようにしなければならぬ。それから行く行くは何年か先には法律の改正までやっていく、そのくらいのことを考えないと国保財政は安定しないのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  205. 森井忠良

    森井分科員 大臣の前向きな答弁で、これは評価をしたいと思いますが、大蔵省の考え方はどうですか。くどいようでありますが、国民健康保険法は昭和三十三年にできている。その間、すでに十数年という年月が経過をいたしまして、いわゆる保険医療制度というものがかなり進歩をしておりまして、もちろん途中で幾ばくかの改正はありましたけれども、国の費用の負担等の大ワクについてはあまり変わっておらないと判断をするわけです。しかし保険医療政策というのはどんどん前に進んでおりまして、先ほど来お聞きのようなことでありますが、この点について大臣は個人的にはとおっしゃいましたけれども、当然大蔵の承認が必要だと思うので、大蔵省の考え方をお聞きしたい。
  206. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 市町村の国保財政につきましては、先ほど厚生大臣からお述べになりました問題等もございますが、御承知のように現在総医療費につきまして四五%の高率の補助をやっておるわけでございます。この四五%という補助は、他の医療保険等と比較いたしますと格段の高率の補助になっておりまして、その背景といたしましては、市町村国保の場合には事業主の負担がないということ、それから被保険者の所得水準が他の被用者保険に比べて低い、そういう背景もあるわけでございますけれども、総医療費の四五%という補助でございまして、それを背景に、たとえば四十七年度までは比較的に市町村の国保財政というのは健全な推移をたどってまいったわけでございます。ただいま御指摘がありましたように、四十八年一月からスタートいたしました老人医療の問題あるいは高額医療の問題、それから今回の医療費の改定、そういう背景を踏まえまして、四十九年度の国保財政につきまして被保険者に過重な保険医療の負担がかからないように、あわせて特に問題があると思いますのは、おしなべて市町村国保財政が問題ということではなくて、財政力に非常に格差があるということでございます。特に財政力の基盤の弱い市町村の国保の財政の健全化をはかるという観点から臨時の補助金として三百五十億、定額の補助金でございますが、四十九年度に計上したような次第でございます。  そこで、これを五十年度以降いかがするかという問題でございますが、現段階において私どもの考え方といたしましては、高額療養費あるいは老人医療、そういった保険医療が市町村国保財政の中で定着していく姿をやはり少し見なければならない。五十年度においてすぐにこれを制度化するとかいうようなことが問題であるほかに、制度の問題といたしますると、財政事務当局の考え方といたしましては、現在の四五%という補助の仕組みは、御承知のようにおしなべて四〇%出す、あと五%という財政調整の仕組みになっているわけでございますけれども、その四五%の仕組みが一体いいのかどうか。つまりほんとうに困っている市町村財政に重点的に財政補助を行なうという観点に立ちますと、現在の四五%の仕組みのあり方そのものも含めまして検討していかなければならない問題である、かように考えております。
  207. 森井忠良

    森井分科員 先ほど厚生大臣は、私が申し上げましたように、国保の制度ができて以来いろいろ変遷を経ているけれども、ここ一、二年の制度の改正というのは、これはそう高く評価してはいけませんけれども、とにかく目ざましいものがある。高額療養費負担の問題にしても老人医療費の無料化の問題にしても、これは国民健康保険法の七十二条にいうところの調整金の時代と——五%の調整金があるわけでありますが、その時代と変わった全く新しいものなんです。ですから厚生大臣が言われますように、もう五%ふやしてもいいぐらいに思っておる、これは法改正も含めて検討するという答弁なんです。これは政府・自民党とされても福祉二年——去年か元年といわれて、ことし二年といわれる限りは、もう当然政策の裏づけがあってしかるべき中身だと思うわけですね。そうすると、様子を見てと言われますけれども、いまから高額療養費負担をやめるわけではなし、あるいは老人の公費負担制度の問題については、あとで私問題にしたいと思いますけれども、いま国がはじいているのは七十です。これは自治体から見ると、だんだん年齢をまだ引き下げる傾向にある。もう早いところでは六十五歳というのがあるわけですから。そうしますといまの大蔵省の答弁というのは私はきわめて不満だし、むしろ後退しているのではないか、こういうふうに考えるわけです。どうですか、この点、もう一ぺん明確な御答弁を願いたい。少なくとも、臨時財政調整交付金というのはことし限りでないという点だけを明確にお答えをいただきたいと思います。
  208. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 先ほど大蔵省として率直な現段階の考えはどうかということなので、きわめて率直に私は申し上げたわけでございまして、五十年度予算の問題につきましては、先ほど厚生大臣のきわめて前向きの姿勢で取り組むという御発言も私うしろで聞いておりまして、いずれ五十年度の予算の問題でございますから、厚生省とよく話し合いをして検討いたします。
  209. 森井忠良

    森井分科員 保険局長が見えましたからお伺いをしたいのでありますが、特別財政調整交付金というのがありますね。この中で低額所得者に対する措置その他あるわけでありますが、いままでその他の中に原爆の医療費の負担分が入っておりましたね。その理由というのはどういうものでしょうか。なぜ原爆の問題だけ特別に見られておったのか、その点の考え方をちょっとお聞きしたいと思います。
  210. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 財政調整交付金には、いま仰せのとおり普通調整とそれから特別調整がございます。それで原爆は、特定の地域でございますけれども、やはり原爆のために当該地域で非常に医療費がかさんでおるというふうな例もございますので、そういう意味合いで特調のワクの一つのファクターといたしまして従来からこの問題を取り入れて、補助金の配分の際に考慮いたしておる次第でございます。
  211. 森井忠良

    森井分科員 時間がないのではしょりますが、来年の十月から高額療養費の問題については強制的に全市町村とも実施をさせるという方針ですね。現在はまばらでありますけれども、厚生省としては四十九年度中には、これは任意であっても全部の保険者にやらせたい、こういうふうに私どもは聞いております。そのとおりですね。
  212. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 そのとおりでございます。
  213. 森井忠良

    森井分科員 そこで、高額療養費負担については二分の一見るのですか。
  214. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 昨年の十月からこの制度ができたわけでございますけれども、国保の場合にはいま仰せのとおり、制度上は五十年の十月からが法定給付になります。その間は任意給付でやっているわけですが、財政的な援助、助成といたしましては四十九年度におきまして二分の一の補助金を手当てをしているということでございます。
  215. 森井忠良

    森井分科員 そうしますと、高額療養費のうちで原爆分についてはどうなりますか。
  216. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 高額療養費の制度は現在の段階では、その高額療養費実施した場合にいまお述べになりました二分の一補助するということでございますので、いまのところこの原爆についてだけ特別なかさ上げをするとかいうふうなことは実はまだ考えていないようなわけでございます。ただ、長期的にこの制度をながめてみますと、高額療養費制度というものは将来相当伸びていくだろうという気がいたします。そういう場合には、先ほどから御議論がありますとおり、やはり市町村の間で均衡のとれた負担をして、また公平な給付をする、そういう見地から申しますと、高額療養費制度につきましても、原爆という例が最も適切かどうかわかりませんけれども、一般論といたしましてはそれでは今後この高額療養費の補助のあり方をどういう形で考えていくかという問題がございますので、そういう中の一環といたしまして制度の実施状況も勘案しながら考えてまいりたいと考えております。
  217. 森井忠良

    森井分科員 おかしいじゃないですか。よく考えてみると、いままでの特別調整交付金は、原爆という言うなれば特殊事情に基づきまして——これは国家補償の精神という要求がありますけれども、いずれにしても他の保険者と比較をしまして、広島、長崎に落ちた原爆による、原爆手帳を持っておられる皆さんというのは一般的、普遍的でないわけですね。そういうことで、いままで特別調整交付金の中で配慮してこられた、こういうことなんでしょう。どこにもあるのでしたら、これは普通調整交付金の中へぶち込めばいい。あえて特別調整交付金へ入れたのはいま私が申し上げましたように一般的、普遍的でなくて、言うならば広島、長崎の原爆に起因をし、それに基づいて手帳を発行して、そして医療の給付をしてきた、こういう観点からいくなら、当然高額療養費の問題についても、やはりこれは国が見るべきではないですか。しかも先ほど大臣からお伺いしますと、三百五十億の臨時財政調整交付金の中で百二十億については高額療養費という形になって、他の二百三十億近い金額についてはおそらくこれから要綱をおきめになるだろうと思うのですが、そうですか。この点についても明らかにしてもらいたいのと、再度、高額療養費のうちこの原爆について今度は一般として扱うということについては、私納得できませんけれども、明確に御答弁願いたい。
  218. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 前段の高額療養費制度の実施の補助に充てる額につきましては、大臣がお答え申し上げましたとおり百二十億円を予定いたしております。  それから高額療養費の補助の問題でございますけれども、先生のおっしゃる点はそのとおりなんでございます、その趣旨は。私が申し上げておりますのは、いまのところ二分の一補助ということで高額療養費制度は財政的な裏打ちをしておる、そういう意味でございますので、この高額療養費制度の補助と、それから原爆なら原爆について特別なプラスアルファをするということとは、区別をしていまは考えておるわけです。ただ、将来のあり方としては、先ほど大臣からもお答えがあったと思いますけれども、老人医療とかあるいは高額療養費とか、あるいはまたこういう特殊な事情とか、いろいろなことが重なってまいりまして、国保財政は一般的に非常に苦しい状態が続くと思うのです。そういう中で国の補助金をどういうふうに効率的に、しかも公平に配分をするかというふうなことを考えますると、やはりそういう段階では、一律二分の一というようなそういう補助のあり方についても、おそらくは議論があるだろう。将来、そういう中で、しかも高額療養費制度の実施がまだ緒についたばかりでございますから、実施の状況を見ながら、原爆というものをどういうふうに取り扱っていくかということを、国庫補助制度の助成全体として考えていくべきではなかろうか、こういう趣旨のことを申し上げたわけでございまして、究極の趣旨において、私は先生の御指摘とそんなに違ったことを考えているわけではございません。
  219. 森井忠良

    森井分科員 大臣、いまお聞きのようなことなんです。私は他に波及をさせるつもりはありませんが、今度政府提出の法案の中に、被爆者に対する援護措置の手厚さというものが少し出てきておりますね。この事情を、保険局長、明確に認識をしてもらわなければならぬと思うのです。だからこそ従来、いわゆる特別調整交付金の中で特に原爆分というのを見ておったのは、先ほど申し上げましたような趣旨が生かされておるわけです。今度、高額分については、これは一般並みだ。もし考えるとしても、臨時財政調整交付金の中の高額分で見ないで、その他のいわゆる臨時の調整の分で見るという発想は、私はやはりちょっととぎれておるように思うのですね。大臣から御答弁いただきたいと思うのです。まさか大臣はこういうことはおっしゃるまいと思うのです。
  220. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 確かに先生がおっしゃる限りにおいては、そのような問題があると思います。ただ、現在、四十九年度予算の上では、高額療養費制度の助成というものは、おっしゃるように一律二分の一ということになっておりまして、これは先ほどから申し上げておるのでございますけれども、実施状況を、これから四十九年度中に全市町村が実施するということでございますから、十分にこれを見た上で考えていくということが一点でございます。  それからもう一つは、先ほどから申し上げておりますとおり、今度の臨時のこの財政調整交付金三百五十億円、これの百二十億円は高額療養費とはいっておりますけれども、こういうものを将来、いかにそういう特殊事情に合ったように公平に配分をするかという問題は当然あるわけでございますから、そういう中でこの問題は考えさしてもらいたい、こういうことを申し上げておるわけであります。
  221. 森井忠良

    森井分科員 これで時間とってもいけませんので……。  時間がなくなりましたけれども、もう一問だけお伺いしたいと思いますが、老人の問題です。国の場合は、去年の一月の一日から公費負担制度ができました。これはどうでしょうか、今年度も三十億ばかり、波及分その他四十八年度分を考えられまして計上しておられます。それ以降について、先ほど指摘してわけでありますが、臨時財政調整交付金の中で操作をするのかどうか、それが第一。  それから二つ目は、端的に申し上げまして、国は対象が七十歳という考えなんですね。先ほど申し上げましたとおり、私が住んでおります広島県の場合は、これが六十八歳でもう公費負担制度を実施をしております。早いところは、申し上げましたように、六十五歳で公費負担制度を実施をいたしております。確かにアンバランスはありますけれども、まじめにお年寄りの問題を考えて、公費負担制度を少しでも若い年齢から実施をしようとするところには何らの配慮がないという形になってきておるわけです。これでは、いま全国的に動いております、老人医療の公費負担制度をなるべく七十歳を六十五歳なりにしようというその動きに水をさすことになる。大蔵省ならともかくとして、厚生省としてはむしろそれは推奨すべきじゃないかと思うのですね。したがって、現状に合わせて、その県なりその市町村の老人医療の公費負担制度の年齢に合わせて措置をする必要がないか、この点についてもお伺いをしたいと思うのです。
  222. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 前段の問題でございますが、確かに四十八年度は三十四億ということで、これは老人医療の実施に伴う経過的摩擦緩和の助成でございます。四十九年度の予算としてお願いを申し上げております三百五十億は、百二十億が高額分、二百三十億がその他の分ということでございます。したがって、四十九年度からの国民健康保険のこの分の助成金の考え方は、百二十億の残りの二百三十億は、四十八年度の三十四億円の延長ということではございません。そういう老人医療が非常にかさんでくるというふうなファクターも念頭に置きながら、現行法定されております財政調整交付金の上のせとして二百三十億円を積みまして全体的に効果的な運用をしよう、こういうことでございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。  それから後段の、老人医療の無料化の年齢引き下げの問題でございますけれども、これは保険局として申し上げるべき問題かどうかわかりませんが、現在のところ、私どもは、国としては七十歳で線を引いてやっておるわけでございますから、この問題についてそれ以上の統一的なことを考えるということは現在のところ考慮されていない、このように承知をいたしております。
  223. 渡辺栄一

    渡辺主査 森井君の質疑は終わりました。  次に、福岡義登君。
  224. 福岡義登

    福岡分科員 事務上の連絡で十分答弁の準備もできなかったわけですが、その事務的な問題は責めてもしかたがないことですから、あとでまた必要な資料はいただくことにいたしまして、ここで考え方なり、答弁していただける範囲のものにしぼってお伺いをしたいと思います。  現在国がやっておられますのは、身体障害者地域福祉活動促進事業といたしまして、既存の事業として七種類、四十九年度新たに二種類の事業を追加されまして、計九種類、いわゆるメニュー化といわれておるそうでありますが、この事業に対して、四十八年度は八十万、それから四十九年度は百三十五万の国庫補助をする、こういうことになっておるわけであります。一つの問題は、このメニュー化にも一つのメリットがあるのかもしれませんが、九つもの事業を一括して取り扱うことは一体どうなのか。都道府県によっては、あるものに力を入れる、あるものには、軽視と言えば語弊があるかもしれませんが、あまり力を入れないというようなアンバランスが出てくる心配もある。きめのこまかい施策をやろうとすれば、それぞれの事業に対してそれぞれの計画を立てるべきが理想だと思うのであります。この辺を将来考えていただきたいと思うのですが、それが一つの問題であります。  もう一つは、補助額が、申し上げましたように、四十八年度八十万、四十九年度百三十五万で、非常に少ないと思うのであります。増額を検討してもらわなければならぬのでありますが、それと合わせまして、八十万、百三十五万の国庫補助の基礎になっておる考え方ですね。どうしてこの金額がはじき出されたのかという点がわかれば、説明をしていただきたいと思う。
  225. 高木玄

    高木(玄)政府委員 ただいまお尋ねの地域福祉活動促進事業の補助金でございますが、先生お話しのとおり、本年度は、二分の一の補助金でございまして、百九十万円の事業規模、来年度はこれを八十万増額いたしまして二百七十万円の事業規模に補助しているわけでございます。これをメニュー化方式をやめて、それぞれの事業を個別に充実させるべきじゃないかという御意見、非常に御趣旨はわかるのでございますが、やはり身体障害者につきましては視力障害者、聴力障害者あるいは言語機能障害者、いろいろの障害者がおられまして、それぞれの地元の身体障害者の団体から要望等もございますし、また、地方の実情もいろいろまた異なる面がございますので、私はやはりメニュー化方式をとり、それぞれの地方で最も要望の強い事業を県が取り上げていく、このほうが現状としては妥当じゃなかろうか、かように存じております。なお、先ほど申しましたように補助額にいたしまして昨年は百九十万でございましたが、来年度は二百七十万に増額した次第でございまして、今後ともこの額の増額についでは一そう努力してまいりたい、かように考えます。
  226. 福岡義登

    福岡分科員 メニュー化方式のメリットも、私も全然認めないわけじゃないのです。しかし、よりきめのこまかい施策をやっていくためには、メニュー化方式をとるとしましてもそれ相当の指導要綱がなければならぬのじゃないか。厚生省の指導としては、片寄ってはいかぬぞという趣旨のことは指導されておるようでありますが、事柄が事柄でありますだけに、将来メニュー化方式をとられるとしましてももう少し具体的な個々の指導というものを考えていただきたいと思います。  それからいまの国庫補助の問題なんですが、二分の一補助ですから、二百七十万なら百三十五万が国から出るわけですけれども、九つに算術平均すればわずかなものなんですね。県がそれを合わせましても合計年間二百万でやるということでありますから、そうたいした事業はできぬのじゃないか。局長増額について努力をするとおっしゃいますので、ぜひそういう努力をお願いしたいと思うのであります。  そこで、手話通訳者の不足を何とか解消したいということから申し上げるわけでありますが、設置手話通訳者ですね、これは二日以上の勤務ということになっておるのですが、これはさっきのお答えで、賃金職員として取り扱っておる、こうおっしゃるのですが、その賃金は一日当たり千七百円、こうおっしゃいましたね。
  227. 高木玄

    高木(玄)政府委員 先ほどの答弁間違っておりましたので訂正さしていただきますが、四十八年度におきましては一日当たり千四百六十円でございます。これが四十九年度には千八百五十円に改めてございます。
  228. 福岡義登

    福岡分科員 わかりました。わかったのですが、千八百五十円になりましても、一般の賃金と比べてみましてこれは問題にならぬ賃金であろう。三千円にいたしましても月額七万五千円ですね。若い人でもそのくらいは取っておるわけでありますから、これはもう全然問題にならぬ。したがって、賃金が安いと人も来ない。といって、手話通訳を相当の金を出して専従通訳として設置することも、実情に必ずしも合うとは私も思わぬわけであります。そこで一つのくふうとしまして、あるいは県なら県、あるいは市なら市でもいいのですが、その職員の中で兼務させる者をつくる。日常は本来の職務をやる、必要によって手話通訳者として任務を遂行する、こういうくふうが積極的になされていけば、この問題は解決すると思うのだが。ですから、一定の数を手話通訳ができるように養成いたしまして、それを市なら市、県なら県の職員からそういうことをやっておけば、一定の通訳数も確保できるし、賃金その他の問題も解決をする、こう思うのですが、そういう方向についてのお考えはないでしょうか。
  229. 高木玄

    高木(玄)政府委員 これまでのところ手話通訳につきましては専従を予定いたしませんで、二回以上程度協力をお願いしてきた、こういう考えでございますが、ただいま先生の御提案につきましては私は非常に御趣旨には賛成でございますので、その方向で努力してまいりたいと思います。
  230. 福岡義登

    福岡分科員 この間病人が出まして、広島県の三原市でありますが、市内に三人通訳ができる人がおるわけです。それは設置された通訳あるいは奉仕員も含めてのようでありましたが、三人ともどこかへ自分の仕事で出かけていって、病人が病院へ行っても話すことができない。困った実情もあるわけですから、ぜひ県市職員の中から一定の、通訳ができるような人を兼務職として配置されるような御指導をお願いしておきたいと思います。  それから委嘱された通話職員があるわけですね。手話通訳のできる人で、あなたはということで県、市が委嘱をしておる。この人も補完的なものであって、中心的には福祉事務所その他に行けば通訳は大体間に合うというような柱を立てていただいて、委嘱通話というようなものは補完的なものであるというように考えていただかなければならぬと思う。同時に、手話奉仕員という制度もあるわけですね。これらもあわせて、緊急の場合に手話通訳がいないために事を欠くというようなことがないようにぜひ善処をお願いしておきたいと思うのであります。  それから、これは通訳のことなんですが、職業関係について善処を要望したいと思いますのは、御承知のようにろうあ者の中に発声なりあるいは聴覚がだめでありましても、からだが元気な人が相当あるわけですね。ですから、適切な職業訓練をやれば相当な仕事ができる人が多いわけですね。ところがいま、通訳の問題もからむのですが、その職業訓練制度というのが十分でない。これは、地域活動要綱の中にもないのですが、ぜひ実現をしていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  231. 高木玄

    高木(玄)政府委員 このろうあ者の職業訓練の問題につきまして先ほど労働省にも照会いたしたのでございますが、労働省の職業訓練校におきましても特にろうあ者の職業訓練は実施してないそうでございます。先生おっしゃいましたように、ろうあ者は五体健全で、ただ聴力あるいは言語機能に障害があるわけであります。したがいまして、ろうあ者の方々は他の身体障害者の方々に比べれば一般の職場に入りやすいということが言えると思います。問題はコミュニケーションに欠けるという点が一番の問題でございます。そういったハンディキャップをしょっているわけでございますが、職業に入るという面においては、ろうあ者は他の障害者に比べれば比較的有利な立場にあるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  232. 福岡義登

    福岡分科員 ぜひ職業訓練を進めていただきたいという要望にとどめたいのですが、それと、大臣が先ほど、モデル都市を六カ所やってきた、四十九年度は十七カ所やりたい。その都市の中でろうあ者対策も当然考えられると思うのですが、職業訓練とも関連をさせてぜひりっぱな計画をつくっていただきたい。要望をしておきたいと思います。  時間がないのですが、あと一つだけ要望したいと思いますのは、ろうあ者の自動車運転免許証の件なのであります。道交法八十八条によって、口のきけない者または耳の聞こえない者は欠格要項になっているわけですね。しかし、一定の条件をつくれば、必ずしも全部の人が運転できないと言えないと思うのです。その条件を適当に厚生省あたりでも検討していただきまして、運輸省なりあるいは警察庁なりというところと協議をしていただいて、一定の条件を持っておる人は免許がとれる、そういう配慮をしていただきたいということが一つであります。それと同時に、職業訓練との関係もあるのですが、ろうあ者だけの自動車学校をつくることは不可能だと思いますので、まあ適当な県に一カ所か二カ所は、一定の条件を持っているろうあ者もそこに行けば入れる、そして訓練が受けられるというような制度についても考えていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  233. 高木玄

    高木(玄)政府委員 ろうあ者の自動車運転免許につきましては、昨年の八月に警察庁のほうが大幅に条件を緩和いたしまして、聴力検査に補聴器を使用してもいいということになりましたので、これで相当数のろうあ者が運転免許をとり得るようになると思います。昨年の八月現在では、警察庁では八十名ほどのろうあ者に運転免許を出しておるそうでございますが、補聴器を使用する聴力検査が許されますので、今後はふえてまいると思います。しかし、現在依然として、全く音の聞こえない人には運転免許を出せないわけでございますので、厚生省におきましては聴力言語機能障害センターというものを国立施設で持っております。そこで明年度約六百万の予算を計上いたしまして、ろうあ者の場合には音が聞こえない、したがってうしろから来る車あるいは横から来る車はわからないわけでございますが、その音響を光に変える装置を開発したいということで、来年度六百万の予算を計上いたしまして、国立の聴力言語機能障害センターでその機器の開発について研究いたすことにいたしております。
  234. 福岡義登

    福岡分科員 以上で終わります。
  235. 渡辺栄一

    渡辺主査 福岡君の質疑は終了いたしました。  次に板川正吾君。
  236. 板川正吾

    板川分科員 私は、越谷市立病院の設立をめぐって地元医師会との紛争等について、厚生大臣、自治大臣にお伺いをいたしたいと思います。  私は、人口が日本一急増している埼玉県、その埼玉県内でさらに一番人口が急増しておる越谷市において、市立病院設立をめぐって市の医師会と市当局との紛争があり、国民の医療を担当する立場の厚生大臣に伺いたいのでありますが、しかし与えられた時間が三十分間ですから、時間をむだにしないために、まず実情と問題の背景を説明いたしたいと思います。  越谷市は、人口十八万人、つい十年前までは人口五万人の農村都市であったのでありますが、地下鉄で都心乗り入れが実現したために、東京都のベッドタウンとして急速に人口が増加して、また増加しつつあるのであります。人口が急増しましたが、医療施設、開業医はふえないために、十万人当たり医師の数が四十名弱にすぎません。日本の平均が百十七人、二十万都市の平均が百二十六人に比較いたしますと、三分の一にも足りないわけであります。また、そういった状態でありますから、いわば日本一の医療過疎の町といっても過言ではございません。したがって、医師不足のために、診療を受ける患者の家族は真冬でも朝四時から五時ごろ順番をとるために、診療所、開業医の屋外に立ち並び、その数が毎日百人をこえており、三時間待って三分の診療どころか、何時間待ってもこれはもうお断わりという事態が毎日続いておるのであります。  そこで、越谷市民はやむを得ず隣接の春日部市と草加市の市立病院にかかりに行きますので、春日部市立病院の患者の一〇%、草加の市立病院の患者の二五%が越谷市民であるという実情であります。春日部市では、市立病院の赤字が四十八年で一年間で二億七千万、累計四億六千万の赤字であるために、他市町村の患者が四五%を占めておるという実態であって、その赤字を春日部市民が負担するのはもう限界にきた、よそもの患者はお断わり、こういうほかはないということを、そしてお断わりするということを近々実施するやに新聞等で報道されておるのであります。  越谷市でも、激増する市民の健康を守るために、市立病院をつくるべく歴代の市長が努力して、市ではすでに昭和四十三年、市立病院の敷地として一万坪を確保し、医師会の協力を要請してまいりましたが、ここ数年間地元医師会の執拗な反対で病院建設は進んでこなかったのであります。  地元医師会の反対の理由は、一つは、市立病院は開業医と競合するから、一般外来患者の診察を受け付けるべきではない。また一つとして、市立病院は開業医が紹介した患者のみを扱い、専門病院として高度医療を担当すべきである。市がもしこれを認めないなら医師会は市に一切協力をしない。医師会の協力がなければ市立病院も開業ができない。かりに建物ができたとしても、日本医師会の圧力によって医師が派遣されないから、開業は不可能となるだろうという意味のことを主張しておるのであります。  医師会の反対運動は、市立病院の建設の具体化が進んできた三年前、それまでやってまいりました休日当番医制をやめ、休日は自由診療となり保険扱いをしない、こういうことになりました。同時に、救急医療の指定も県に返上してしまいました。  越谷市は四号国道と十六号国道が交差して交通事故が非常に多いのでありますが、そのため、この数年間患者がたらい回しにあって、とうとい生命を失った例は枚挙にいとまがない実態であります。また、規定の診療時間外は自由診療なら応ずるが保険扱いはしない、こういう医者が圧倒的に多い。自由診療の場合、保険による金額の数倍の診療費を取るといわれております。それは二月一日から診療費の大幅な値上げ後も依然として変わっていない状態であります。これは市からの報告があります。  さらにこの三月から、医師会は従来やってきた住民の集団予防接種をやめる。大臣の前にいま資料を出してありますが、この集団予防接種をやめるとちらしをもって一方的に宣言をいたしました。そして、神戸方式だと称して個別接種にすることをきめたのであります。ちらしをごらん願いたいと思います。  神戸市では国、市、公立病院、総合病院が四カ所もあります。市立診療所が十二カ所もあります。公立医療機関整備をされており、その上、医師の数が十万人当たり百九十五人。これに比較いたしますと、越谷市は市立病院もない、医師の数も十万人当たり四十人弱日本一少ない医療過疎の越谷市で、神戸方式のように個別接種をやる方式をとれば、混乱は必至であるといえましょう。医師会では意見が通らないからといって、市民に当たりちらすという態度は私は好ましくないと思います。われわれも日本の医療制度には幾多の欠陥があることを承知しておりますが、しかし、越谷医師会のように開業医による診療機関の絶対的な不足に目をふさいで、市立病院は紹介患者のみを受け付けよ、高度の専門病院とせよ、しからずんば医師会は一切協力しない、こういう考え方は医療の基本精神を無視しているといわざるを得ないのであります。  そこで、私は厚生大臣にまず質問したいのでありますが、時間の関係もありますから、すでにメモは差し上げてあるわけですから、簡潔に御答弁を願いたいと思います。  第一は、地方自治体は自治法第二条によって、地方自治の基本原則として公立病院を整備し、住民の生命と健康を守る責任と義務があると思いますが、いかがでしょう。これは厚生大臣に伺っておきます。
  237. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 自治体も住民の健康を守るために、必要に応じ公立病院を設置整備するということは必要なことである、かように考えております。
  238. 板川正吾

    板川分科員 厚生大臣は、昨年の十一月に越谷市長選挙がございました際に、保守系の候補者を応援に参りました。この保革対決の市長選挙の際に、一番論争の中心は市立病院の建設問題であったのであります。保守系候補もそのときの公約では、「いつでもだれでもかかれる市立病院」をつくる、こういう公約をいたしておりました。大臣はあの街頭でその保守系候補をさして、この候補者が当選すれば、その公約であるいつでもだれでも自由にかかれる市立病院の実現は私が保証する、こういう意味のことを市民に約束いたしました。私も聞いておりました。今日でもその心情には変わりはないと思いますが、いかがですか。
  239. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 越谷というところは、先ほど来お述べになりましたように、非常な医師の不足で実は私、行ってみてびっくりしました。こんなにお医者さんがいない町かなとびっくりしました。ところが、幸いに私どもの推薦した候補者が、市民病院を建てるのだ、こういう公約をしておりましたから、これはもう非常に時宜に適したもっともなことだ、こう思いました。そこで、市民がいつでもかかれるような市立病院をつくるということだから、もうそういうことであれば全面的に協力しますということを言ってまいっております。それは事実でございます。そこで、その表現のしかたは別としまして、市民がいつでもかかれるようなりっぱな市民病院をつくろうというならば、厚生省においては、いろいろ市町村に対して還元融資の道も講じておるわけですから、私は心情にひとつも変わりはございません。
  240. 板川正吾

    板川分科員 これが当時の候補者が出した市民への公約であって、「二十四時間いつでも誰でも、市民の皆様が病気やけがをされた時、市立病院で診療が出来る様な立派な病院を、一日も早く開院させる事を皆様にお約束致します。」こう言っておりまして、実はこの公約をかかげました候補者に、医師会が全面的に応援したのであります。しかし、それはまた医師会の意思が別にあったことは、あえてここで申し上げませんが、いずれにしましても、そういう趣旨は、大臣は、いまでも変わらない、当然である、こうお考えのようであります。  第三の問題として伺いますが、越谷市の場合、医療の過疎化という実態から考えまして、市立病院は一般外来患者を受け付けよという市民の要求は当然であろうかと思いますが、大臣の見解はいかがでしょうか。
  241. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 一般的に医師会が病院という機能と診療所の機能というものを考えまして、病院というものは紹介患者、まず診療所を通じてから行くようにという、外国などの例を引いて一般的にはそういう主張をなさることはこれは理があるとは思います。しかしながら、越谷のような非常に医療の不足した地帯で、この一般原則といいますか、そういう医療のシステムの一つの考え方をあまりに強く主張しましても、実際市民がそれを理解してそういう行動がシステムに乗るまでには非常な問題があるわけでございます。また、開業医が非常に少ない地帯でその点だけが主張されましても、なかなか運営全体がうまくいかない面もございますので、この点については、私も国立病院を統合するときに、地元医師会の反対を受けて話し合ったこともございますけれども、これはお互いの話し合いの理解の上で逐次進めていく必要があるというふうに思っております。
  242. 板川正吾

    板川分科員 こういうことですか。医療制度の理想として、諸外国でもおもにとられております、一般開業医は診療を担当し、そうして重い病気は専門病院である病院に持っていく、病院にかかる人は開業医なり診療医なりの紹介がなければ受け付けないという制度が外国でとられている。それを主張されることは医師の論理としてこれを否定することはしないけれども、しかし越谷市の場合に、医師の絶対数が少ない、診療する窓口がない、こういう場合にはそういう主張をすることは妥当でない、こういうふうに考えているわけですね。
  243. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 一般的な診療所と病院との責任の分担をやかましく言うこと、これは筋として私はそれでいいと思いますが、それをあまり強行するということは、医師が非常に少ない町村においては実際私は無理だと思うのです。しかし、と申しましても、これは問題は市当局と医師会が協調するということが大前提なんですね。実は私も市長選挙に行ってみましたが、その当時は医師会が全面賛成なんですね。実はその後新聞で見ますと、何かいろいろむずかしい問題が発生しているということを聞いて、いや実はちょっと意外だな、多少政治的ないろいろな問題もあるだろう、こういうわけですから、政治的な問題にまた私も介入するのは好ましくないと思うのです。ですから私として言い得ることは、そういうお医者さんが少ないという事態を市も医師会も両方踏まえてお互いに協調し合って、市民のためにやっていただくということが一番望ましいものだ、一方的に、病院と診療所との責任の分担はこうでなくちゃならぬとか、あまりそういうことをお互いに——言うことも必要ですけれども、あまり言わないで、お互いに協力し合うことができないであろうかということを、最近の紛争を通じてさように私も考えておるわけでございます。したがって紛争中の政治的な意味合いもあるので、あまり一方的に私が言うのもどうであろうかという感じもいたします。やはり両者がもう少し話し合ってみる、そうして越谷市のようにほんとうにお医者さんの少ない都市の住民の健康を守るにはどうすればいいのだということをお互いに話し合うということが絶対必要ではないか、かように考えております。
  244. 板川正吾

    板川分科員 私も、これは市民の医療というのは一方的にできるのじゃなくて、公立病院ができても開業医と協力をしていかなければならぬ、こういう気持ちはわかります。わかりますが、市立病院をつくっていこうというのを、一般外来患者は受け付けてはいけないというのは私はあまりにも、越谷の医師不足という実態の上からいうと無理な主張ではないだろうか、こう思うわけであります。  これは大臣も趣旨には御賛成のようですから、第四問に入ります。これは参考に伺うのですが、市立病院、公立病院ができて、小さい町は別ですが、二十万程度の都市で、開業医がその競合によって経営不能となったような実態があるかどうか、簡単でけっこうです。
  245. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 われわれはそのような事実は聞き及んでおりません。おそらくその病院設立と地元医師会との話し合い、機能の運営、そういうことにおいてそのような影響を与えるということは聞いておりませんし、また事実としてもあり得ないと考えております。
  246. 板川正吾

    板川分科員 わかりました。そういう事実はない。そこで、地元医師会の同意がなければ日本医師会が医師の派遣を阻止するから事実上開業不能となる、こういう主張をしておりますが、そうしたことは可能なんでありますか。実態としてお伺いをいたしたいと思います。
  247. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この問題は、具体的に先生の御質問のような、先ほど御説明にもございましたように、日本医師会を通じてわれわれの反対が伝われば、この越谷には順天堂大学から医療陣を送ると私聞いておりますので、そういうことを阻止できるのだというようなことにつきましては、やはり地元医師会と市当局と十分話し合いまして、そのあとの医療担当をする順天堂大学の先生方が、何も紛争ということとは別に、市民のために医療活動をするためにも、この点について日本医師会が良識として考えても、私はそのような、現状の、越谷医師会と越谷市の話し合いの問題点であるならば、もっと非常にまれなあるいは無料システムというような非常に大きな紛争の事態であれば、いろいろの話し合いは上部団体まであがることも考えられるわけでございますが、私としては常識的な判断として、そのようなことはいままでもございませんし、このケースについてもそのようなことを考えるということは、私は考えたくないわけでございます。
  248. 板川正吾

    板川分科員 そういうことは事実上いままでもなかった、今後もないであろう、こういうことですね。わかりました。  七番目ですが、休日、夜間、早朝は自由診療によって被保険者は保険扱いがされない。いわば自費で払いますから診療費の二重払いをしておるわけです。保険を払い、片方では自由診療でまた払うのですから。この場合、二重払いをした金額を保険者、国ですね、これは返済する、返還する義務がある、こう思うのでありますが、そういう場合にいかなる手続をとったらいいのか、どう指導されておるのか、伺いたいと思います。  それは医師にかかっておる領収書を持ってこい、そうすれば現定の診療費に当たる金額だけは支払うということをやられているところもあるわけです。しかし領収書には治療代あるいは診療代と金額だけ書けばいいのであって、その中身についてどういう治療をしたから幾らだということを書く義務を医者は民法上持たないということになっておるわけであります。書きません。金額だけです。これでは二重払いを返済することが不可能だと思うのです。こういう場合にどうしたらこの診療費の二重払い分を返済することができますか、これを伺いたいと思う。
  249. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいまお話しのとおり、越谷地区では従来からいろいろ医療トラブルがあると聞いております。ただ私どもは現在の皆保険体制またそれを裏づけております現行の健康保険関係の法令から申しますと、保険医療機関は常時保険診療を遂行する義務があるわけでございます。したがいまして、自己が設定した診療時間以外の時間はすべて自由診療であるというようなことがかりに行なわれておりますならば、それは保険診療の面から見ましても非常に大きな問題でございます。かつてそういうことがあったやに伺っておりますが、ただいま伺って非常に驚いたのでございますけれども、今度の改定以後も何かそのようなことがあるということでございますので、私どもは、かりにもそういうことがあってはならぬ問題でございますから、これは十分に関係部局とも連絡をいたしまして、実情を調査いたしまして、厳正な態度で臨みたいと思っております。したがいまして、いまお話しになりました領収書問題というのは本来あってはならなぬ問題でございますので、これはむしろそれ以前の問題を直していく、こういうつもりで善処をするつもりでございます。
  250. 板川正吾

    板川分科員 われわれも実は市の調査を伺って、従来と変わってないと言われておりますから、もう一ぺん調査をして、間違いがあったならばひとつ善処するように指導してもらいたい、こう思います。  次は、大臣と委員長に差し上げてありますが、この資料をちょっとごらんになっていただきたいのです。越谷市医師会は三月二日の日に、二月二十八日付の新聞折り込みのチラシを市民に配りました。それは予防接種実施の変更のお知らせということでチラシを配って——市立病院に反対の趣旨だろうと思うのでありますが、従来市と医師会で協定してやってまいりました種痘などの集団接種を一方的に打ち切ります、今度は個別方式でやります、個別方式というのはすでに神戸市などでやっておるのだから心配はあるまいという意味のこういうチラシを市民に配りました。神戸の方式を見てみますと、さっきも言いましたように、医師の数が非常に多い。しかも市と医師会で話し合いの上に、検診から漏れた人を個別方式で検診をやっているということでありまして、こうした実態の中で、神戸でやっておったものを医師の少ない越谷市でやればいたずらに紛争を起こすだけであります。好ましくないことであろうと思いますが、この点についてどうお考えですか。
  251. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 百日ぜきあるいは種痘等の予防接種が円滑に行なわれるということは、市民の健康上非常に大事なことだと思います。ただ予防接種の仕事は、御承知のとおり、結論として、やはり医師会の協力を得て初めて市町村が実施ができるような状況になっておる次第でございます。ただいずれにいたしましても予防接種の仕事は非常に大事な仕事でございますので、私どもは県を通じまして、何とか医師会と市とが円満に話し合いができるように現在指導中の次第でございます。
  252. 板川正吾

    板川委員 自分の意思が通らないからといって市民を紛争の巻き添えにするというのは、私は好ましい形じゃない、こう思います。  それから、あと二問です。時間の関係もありますから急ぎますが、先ほどもちょっと触れましたように、越谷市では市立病院がない。両隣の市には市立病院がある。春日部市の市立病院に越谷市民が非常にやっかいになって赤字をふやしているという実態の上で、よそものの患者はお断わりという措置は、いわば医療の基本からいいまして好ましくない、これはもう当然であろうと思います。しかし、こういった場合に国の指導方針というのはどういうふうに考えておられるのでありますか、この点を伺いたいと思います。
  253. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 たてまえとしては、このような情報を新聞等を通じて承知いたしまして、これは非常に好ましくないことであるというふうに思っていますが、その後確かめたところ、事実は、市長もそのように決心はまだしておらない。雑談的な意味でそのようなことをおっしゃったということを聞いております。結果的にはやはり春日部市民が五〇%程度でよそからの利用が多い。そして今後その周辺に、まあ越谷市が計画しておりますけれども、その他病院の計画があるなし、そういうことを検討して、場合によっては一部事務組合による医療確保という方向も検討に値するのではなかろうかというふうになりますので、おそらく県当局がこの問題で、具体的に一市の経営だけの病院と多数周辺が利用するということとの関連の行政指導があった場合、そのような面も考えられると思うのでございまして、幸い春日部病院がいますぐそのような措置をするということはないと聞いておりますので、具体的な指導としては当面何もないわけでございます。
  254. 板川正吾

    板川分科員 そういう気持ちがあることが漏らされたものですから、新聞に出たのです。実際はやるまでに至っていないようでありますが、しかし春日部市立病院の四五%が他の市町村の患者であるということになってまいりますと、いま言ったように一部事務組合でやるほかない。しかしそれでも赤字が実はふえるわけでありまして、この公立病院の赤字問題については、国にも対策があるけれども十分じゃない。これはまた時間を改めて議論をいたしたいと思います。  そこで最後ですが、もう一問。  人口の急増した地方都市では、多少の差がありましても、地域住民の生命と健康を守ろうという自治体とこれに反対する地元医師会との紛争があります。住民の医師に対する不信感というのは非常に高まっておると思います。政府はこの際、こうした公立病院を設立しようというときに、一つの指導原則、ルールというのをきめたらいかがなものか。ただ医師会と話し合えというだけでは、ある意味では良識を持った医師会の場合には相互に互譲の精神で話がまとまる場合があります。しかし、とにかく市立病院は外来を一切受け付けるな、それを受け付けるような病院にするなら一切あらゆることに反対だ、こういう地元医師会の態度ではどうも紛争がおさまらない感じがいたします。そこで、私は国として指導原則をきめて、こうした場合無用な紛争を防止するために強力な指導方針を持つべきじゃないか、こういう感じがいたしますが、厚生大臣、見解はいかがですか。
  255. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 市立病院をつくりますときに、間々地元の医師会といろいろ紛議を生じておる例は私も承知をいたしておるわけでございまして、できるだけ私どもは両方話し合いをして円満に解決するようにということを指導しておるわけでございまして、強力な指導原理と申しますか、指導方針と申しますか、そういうものをはっきりきめているわけではございませんが、お医者さんが少ない地域においては、できるだけ医師会も協力するというふうなやり方でいくべきであろう、こういうふうに私も考えておるわけでございます。そこで、具体的にこの越谷の問題は、多少政治的な問題もからんでおると私は承知いたしております。幸いにいま県もこの問題の解決のために乗り出しているということを承知しておりますから、私としては、市当局と医師会両方が市民の健康を守るという大きな前提に立って、お互いに話し合いを続けていただくことが解決への道であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。越谷の医師会が無理解だなどということを私は申しておりません。やはり越谷の医師会もそれなりの立場において主張されておることなんでございましょうし、いろいろな立場があるわけですから、そこはいま県がせっかく仲に入って解決しよう、こういうわけですから、私も十分県の意向も聞きながら、一日も早く解決して市民の健康が守られるような体制ができるように努力をいたしたい、かように考えます。
  256. 板川正吾

    板川分科員 三十分となりましたから以上をもって終わりますが、医師の中には理屈の通った人もおりますし、そうでない人もおるので、実は紛争が続いておるわけです。ひとつ国民の医療を確保するというたてまえから、厚生大臣のこれに対する適切な指導を要望いたしまして、質問を終わります。
  257. 渡辺栄一

    渡辺主査 板川君の質疑は終了いたしました。  次に中村重光君。
  258. 中村重光

    中村(重)分科員 私は、身体障害者の問題等をお尋ねをしたい点があるのですが、その前に大臣、最近厚生行政の中で非常に混乱をしている問題が二、三ありますから、それを関係局長のほうへひとつ指示していただきたいというように思います。  それというのは、これは環境衛生局長の所管なんですが、最近理美容の関係で、だいぶん風俗が変わったというのか、男がものすごく髪を長くする、それでコールドウエーブをやる、女は逆に刈り上げをやるというようなことになりまして、御承知のとおり、前は理容師法と美容師法が一本であったのが今度は別々になっているわけですね。それで、コールドパーマというのは男がやる場合、これは美容の部門か理容の部門か。一方今度は女子がカットをやる場合、これは美容の部門か理容の部門かということで最近非常に混乱をしまして、これに厚生省が一枚加わっているというようなことで非常に反発なんかも出ているんですが、これは非常に情勢が変わったということではありませんが、申し上げたようなことでいろいろな面において変化が来ていますから、理容師法と美容師法をまたもとの姿に一本に戻すほうがいいのか、いま言ったような混乱している問題をいろいろ関係方面の意見を聞いて、これに対する混乱しないような指示をされる必要があるのじゃないか、そのように思います。  それから、クリーニング関係で、御承知のとおり六大商社の中にも洗たく屋まで始めるといったようなことで、零細なクリーニング業者がたいへん困っているわけです。それで、私ども、与野党問わず陳情なんかも受けているわけですが、取り次ぎ店にクリーニング師を置くべきだ、業法をちょっと簡単に改正すればいいのですが、それに対して今度は賛成、反対で、反対をしているのはもちろん大きいほうの業者なんですけれども、これも非常に混乱をしているのです。ですけれども、議員立法でやろうかということでいろいろ話し合いもやってはいるわけですが、これに対しても厚生省としての結論をお出しになる必要があるだろう、こう思います。したがって、その点に対してもすみやかに結論を出すように指示をしていただきたいというように思います。  それから、国の助成を受けている団体が特定政党を支持するという傾向が非常に露骨になってきている。商工会法によりましても、御承知のとおりこれは国の助成を受けている団体ですから、特定政党を支持してはならないということになっているのですね。環境衛生団体等におきましても、国の助成というものが相当つぎ込まれているわけです。今度経営指導員も置くようになりました。わずかですが各県に一人で五万円の手当、二分の一を国が助成するという形になっている。これもさらに環境衛生という面から強化していかなければならぬだろう。五万円なんということではしようがないというように私ども考えておるわけですが、そうなってまいりますと、これがまた特定政党を支持するということになってくるとたいへん混乱も起こる。ですから、それらの団体はやはり公正でなければならないというように思います。その点に対しても、間違いのないように指導するというようなこともひとつ指示していただきたい。  まだいろいろありますけれども、制約された時間ですから、それらの点に対して厚生大臣の御見解を伺ってみたいと思うのです。
  259. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 まず第一点の理容師、美容師の問題でございますが、戦後の頭の髪、理髪というのですか美容というのですか、それをめぐってだいぶ風俗が変わってまいりました。そんなようなことで、私もほんとうはよく知らないのですが、理容師会、美容師会でいろいろ紛議が生じておるようでございます。従来二つの通牒が出ておりますね。その二つの通牒によって認められたような慣行によって、従来のとおりやっていくということがいいのではないかと思います。しかしいまも申し上げましたように、風俗も多少変わってきまして、男でも何か長く伸ばすようなことがはやってきたとかなんとかいうことで、理容、美容との間にいろいろ問題が起こっておりますから、両方の団体の責任者を呼んでこの事態に対処してどうすればいいか、虚心たんかいに話し合いをしてもらおう、こういう態度で問題の決着をつけたい、かように考えておる次第でございます。  なお、クリーニングの問題については、私もあまり詳細は承知いたしておりません。議員提案でこの問題を解決したらどうであろうかといったような動きのあることも承知をいたしておりますが、やはりこういう問題は関係方面の意見も十分聞きながら、慎重に対処していただきたいというのが私の基本的な態度でございます。  それから第三番目の、補助金をいただいておるような団体が特定政党を支持する、こういう問題でございますが、政治活動の自由の原則は、補助金をもらっている団体であろうがなかろうが憲法上保障されていると私は思います。したがって、団体として特定政党を支持するということではなくして、何らか別な政治連盟みたいなものをつくってやるというのではないかと私は思うのです。ということであってみれば、そう青筋立てて議論せぬでもいいのではないかな、こういうふうに私は率直に考えております。しかし国の行政がそれによって乱されるようなことがあってはならぬ、それは基本だと思います。
  260. 中村重光

    中村(重)分科員 最初の二点はきわめて常識的だと思います。ですからやはりそういう方向で指導していただきたい。  この助成を受けている団体の政党支持の問題ですが、これも大臣おっしゃるとおりですよ。政治連盟をつくるわけです。商工会でも団体としてやってはいけないというので、これまでは団体の総会、これから政治連盟の総会に移りますと、こうやるわけですね。そうすると、大臣が後段お答えになりましたように、いろいろ国の行政の上に混乱が起こってまいります。ですから賢明にやらぬというと、これは適当ではない。露骨なことをやらないように、やはり団体そのものの運営もうまくいかなくなってまいります。非常に変化してまいりましたから、そういう点については十分遺憾のないような指導をしていただきたい。  それから、医務局長にお尋ねするのですが、四十九年度の離島医療について、今度はこれならいけるぞというような確信のあるような政策をお打ち出しになる御用意を持っていらっしゃるのか。予算の面については御承知のとおり、離島振興法の中に医療については特に法改正をやりまして強化をいたしておりますが、それに基づいてあなたのほうの行政というものが画期的なものがあるのかどうか、その点いかがでしょうか。
  261. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生御指摘の、画期的ということになりますと、実は僻地医療対策、長年いろいろ手を尽くしてきましたが、非常にきめ手というものがむずかしい。特に離島の問題については、ある程度の人口がございますならば診療所を設置する、しかし、その医師確保が困難だ。そこで、四十九年度新たに手をつけた問題は、僻地医療等に勤務する医学生に、月四万円、年間四十八万円の修学資金を貸与いたしまして、その貸与期間の一・五倍勤務していただくことによって、その修学資金の返済を免除するという制度を新たに設けたのが一つでございます。  それからもう一点は、離島関係に関連あるものとしては、診療船の関係を若干強化してございます。これによって、具体的には離島のそれぞれの御要望のある場面に対応していきたいというふうに考えております。
  262. 中村重光

    中村(重)分科員 またいずれ経済企画庁関係の離島振興の問題をいろいろと議論したいと思います。その際、局長もぜひ出席をしていただきたい。  それでは大臣にお尋ねいたしますが、原爆の問題について、齋藤邦吉大臣が御就任になりましてからたいへん前進をいたしているわけであります。私どもが主張いたしておりますような援護法まではなかなか大臣も踏み切ることはできないようですが、しかし、内容的に前進をしたという点は、実は評価をいたしたいと思うのです。ところが、一般社会保障の関係ですね。昨年福祉元年というようなことで、これから大きく前進をするのだということで期待をされた。大臣としても、年金の問題その他施設の問題等前進をしたと胸を張りたいところでしょうが、物価がこんなに狂乱状態に上昇したのでは調整にもこと足りないという形になっているように思うので、これは人いわく、福祉元年ではなくて、いよいよことしからは福祉後退の元年だなんということを口にする人もある。それほど事態は深刻だろうと私は思うのです。そういう基本的な問題についてお尋ねしたいのですが、何しろ限られた時間ですし、議論をするいとまもありません。したがって、個別の問題について具体的にお尋ねをしてみたい。  母子家庭で一番何とかしてもらいたいと言っているのは、療養費の貸し付け額をぜひもっとふやしてもらいたい、医療費も非常にかさんでいる。それからこれは無利子にしてもらいたいということを言っているのですが、この点はどういうように措置されるのですか。
  263. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御指摘の母子福祉、あるいは寡婦福祉の貸し付け金につきましては、現在無利子のものといたしましては修学資金、それから就業資金、修学支度資金の三つでございます。御指摘の療養資金につきましては、利子が三%になっているわけでございます。修学資金が無利子になっておりますのは、主として教育の面については利子をつけないという従来からの考え方でこうなっているわけでございまして、その他の貸し付け金はすべて利子をつけておるわけでございます。御質問の趣旨はよくわかるのでございますけれども、他の貸し付け金との関連等もございまして、にわかにこれを無利子にするということについては、多くの困難な問題があろうかと思いますけれども、御指摘の点、十分検討いたしたいと思います。
  264. 中村重光

    中村(重)分科員 修学資金等、これは額をふやしていく、利子は無利子だからいいのですが、大臣、療養費ですね。これに利子をつけるというのは無情だという感じがいたしますが、これはやはり無利子にするようにしなければいけないのじゃないですか。いかがですか。
  265. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 貸し付けについて無利子にするということになりますれば、その無利子にしなければならない積極的な理由がなければならぬということが原則だと思うんですね。ということであってみれば、母子家庭に対する療養費について無利子にしなければならぬかどうか。御承知のように、医療保険制度も非常に拡充されてまいってきておりますから、そこまでしなければならないかどうか、相当考えなければならぬ問題があるように私は思います。
  266. 中村重光

    中村(重)分科員 これは議論はいたしませんが、大臣、積極的な理由は、療養費の貸し付けの利子を無料にしなければならぬというのは考えてみてもわかるのじゃないですか。積極とか消極とかいうことよりも、療養費というものは生産的なものが何一つないわけですよ。修学資金の問題は無利子だからいい。これは一面から見ると、生産なんということばを使うべきではありませんが、それなりに前向きの形の貸し付け、しかし、この療養費だけは借りる人は前向きじゃないわけですよ。病気をしたために生活にも非常に苦しんでくるという事態がある。それを、利子まで払っていかなければならぬというのは問題がある。いま局長のお答えになった点、大蔵省と四十九年度予算折衝で苦労された点でもあったので、おそらく大臣はいまのような答弁をなされたと思うわけです。来年度はぜひひとつ無料を実現するということで努力をしていただきたいということを要請しておきます。  それから身体障害者の問題ですが、身体障害者基本法が制定され、これに対して心身障害者というのはたいへん期待を持っておったのですが、この基本法が制定された、これに基づいて特に積極的に心身障害者対策を講じたということで強調できる点がございますか。いかがですか。
  267. 高木玄

    高木(玄)政府委員 基本法が制定されまして、それに基づく審議会が総理府に設置されまして、その審議会からいろいろな答申なりあるいは御意見の具申がございます。それらに基づいて身体障害者対策の充実をはかってまいっておるわけでございまして、最近におきましては、たとえば身体障害者のモデル都市というような制度を新しく始めますとか、あるいは年金額改善されますとか、いろいろな措置が講ぜられておるところでございます。
  268. 中村重光

    中村(重)分科員 私は、心身障害者基本法が制定されたということに対して、厚生省だけじゃなくて、関係各省もそうですが、特にこれを重視していこうというような施策のあらわれということを見出すことができないような感じがするのです。国鉄の問題は厚生省と関係がないと言われるとそれまでですけれども、これは心身障害者の問題ですから、厚生省が積極性を発揮してもらわなければならないのですが、これは少しも変わってないですね。普通列車だけで、百キロ未満ですよ。このごろは新幹線ができて、できるだけ早くというようなことで普通列車は間引きされておるんですよ。そうすると、心身障害者といえども急行に乗らなければならない。特急に乗らなければならない。あるいは新幹線に乗らなければならないということです。そうなってくると、普通列車、百キロ未満というようなことで放置されたのでは、前進しなかったということよりも実質的に後退したということになるのじゃありませんか。身体障害者なるがゆえに疲れる。だからできるだけ早く目的地に着かなければならない。またそうさせなければならないという配慮が当然働かなければならないと私は思う。それならば、急行や特急にも割引制をとる。百キロ未満というのも撤廃する。でき得るならば、身体障害者は疲れるのだから、寝台券の割引もしてやる。心身障害者基本法の中にもこの点は強調しているわけだから、こういう点こそあたたかい思いや力をもって措置していくということが当然ではありますまいか。この点を大臣から、事務的な問題でもありますまいから、あなたからお答えいただきましょうか。
  269. 高木玄

    高木(玄)政府委員 身体障害者に対しましては国鉄、私鉄、乗り合いバス、それぞれ割引制度がございますが、これはそれぞれの事業体の御配慮によって割引制度が行なわれておるわけでございます。そして国鉄につきましては、先生仰せになりましたように、重い身体障害者につきましては介護人ともに五割引、その他の身体障害者手帳を持っておる障害者は、百キロメートルをこえる区間について五割引が行なわれる。先生申されましたように、心身障害者対策基本法二十三条の二項にこの問題についての国鉄の努力義務が課せられておりますので、私どもとしましては、先生仰せられたように、たとえば新幹線なり特急にこの割引制度を適用してもらいたい、あるいは現在認められてない内部障害者についても割引制度を適用してほしい、いろいろ身体障害者の方々からの要望がございますので、それらの趣旨を踏まえて国鉄にいままで申し入れもいたし、折衝もいたしておる次第でございます。
  270. 中村重光

    中村(重)分科員 国鉄に対してこれを守る義務が与えられている。そのとおり。しかし、あなたが何もやっておらぬ、それは国鉄がやることだから知らぬのだとおっしゃるならば、これは私も声を大にしなければならないのだが、申し入れもやっておるというようなことだから、一応の努力はしておるということで認めなければならぬ。しかし、そういうことだけではなくて、私は、そういう思いやりを持った施策を講ずる、そういう努力をなさるということはもう当然だろうと思う。事務的な問題ではない、私はそのように考えます。少なくとも齋藤邦吉大臣のもとでこういうものこそぜひひとつ前進したものを導き出してもらいたいと思います。大臣、いかがでしょう。
  271. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題は、ほんとうに仰せになりますように、私はもうちょっと積極的にやるべきだと思います。新幹線がないときの話の例ばかりやっているのですから、こういうことじゃやはりおかしいと思うのですね。しかし、いつも言うのですが、国鉄が、赤字でございましてと、こう言うものですから、それで昨年はあの運賃法を早く通してくれればいいなと思っておったのです。ほんとう言うと。ところが、こういう状況になってまた料金が半年延びる、こういうことでございましょう。そこであまり無理も言えぬが、これは困ったものだな、こう思っております。しかし、私は心の中でいまのような事態に満足はしておりませんから、今後もう少し国鉄当局と十分相談をして——国鉄のほうはこう言うのです。なるほどそういうことをやる義務はあるというけれども、赤字なんだから厚生省で予算を取って持ってきてくれ、こう言うわけです。厚生省で予算を取って国鉄に渡すようにしてくれ、こう言うんです。それも一つの方法かなという感じも私はしているんです。この問題はもう少し積極的に私は前向きに努力いたします。明年度中に、五十年度の予算にはもう少し何とかはっきり出るように最大の努力をいたします。
  272. 中村重光

    中村(重)分科員 私は、国鉄もそろばん勘定ばかりやるべきじゃない。また大臣も、先ほどおっしゃるように国鉄が要求をしたというようなことで、厚生省で予算を取ってやる、そのくらいの積極性というものが当然あるべきだと思う。  それから、身体障害者の年金支給の範囲の問題なんですが、これも私は旧態依然たるものがあるような感じがしてなりません。これに対しては、足がどうだ、手がどうだというようなことでもってランクをつけているが、脳性麻痺患者、これはもう全身ぐにゃぐにゃでしょう。これが対象にならないというふうなことは私はおかしいと思うのです。したがって、機能障害についての再検討をする必要があるというように思いますが、脳性麻痺をその対象とする必要がないというようなお考え方というものがどういう点にあるのか、その点をひとつお聞かせいただきたい。
  273. 高木玄

    高木(玄)政府委員 身体障害者福祉法におきます障害等級につきましては、ただいま身体障害者福祉審議会の特別部会で審議、検討中でございます。先生が仰せられた脳性麻痺の点、確かに不合理な点がございますので、この点は考えていかなければならないと思っております。
  274. 中村重光

    中村(重)分科員 お役人の答弁ですから、そういたしますと、きっぱりいまの段階では言い切れないのでしょうが、考えていかなければならないということについては、そうしなければならぬという気持ちを十分持って対処する意思であるというように理解をいたします。  それから、身体障害者の家庭の人たちがいつも言うのは、生活保護者に対してはNHKの聴視料の減免措置が講じられている。ところが身体障害者の家庭にはそれがないじゃないか。これはやはり身体障害者が世帯主の場合だけではなくて、特に重症なんかの場合はそうですが、家庭にそういう重症の身障者等がおりますと、家庭全体が暗いわけですよ。また非常に苦しいわけですね。せめてNHKの聴視料ぐらいは減免をしてやるという、これもあたたかい思いやりがなければいけないのじゃないでしょうか。この点御検討なさいましたか。
  275. 高木玄

    高木(玄)政府委員 現在NHKの放送受信料の減免措置といたしましては、身体障害者のいる貧困世帯は受信料が免除されております。それから視覚聴覚障害者あるいは肢体不自由者、これは一級または二級の重度の肢体不自由者でございますが、それが世帯主である場合は半額免除、こういう制度になっております。
  276. 中村重光

    中村(重)分科員 だから、あなたがおっしゃったように免除というのは世帯主の場合。ところが、家族の場合は半額の措置なんというようなものは実際は実施されていない。だから、そういった点、いいことはやはりPRをやって、十分それを生かしていくということになさらなければいけない。同時に、NHKは報道機関なんだから十分宣伝できるわけですし、そういうことについては、こういうものは免除ですよ、これは半額ですよということをひとつやる。同時に、重症の身体障害者家庭は申し上げたように非常に暗いわけだから、これはやはり世帯主と同じように免除にしてやるというぐらいの配慮をしておやりになる必要があるだろう、このように思います。そういうことで努力なさいますか。
  277. 高木玄

    高木(玄)政府委員 御趣旨に沿って努力いたします。
  278. 中村重光

    中村(重)分科員 それでは、もう時間がないようでございますから、保育所の問題についてお尋ねをいたしますが、保母数の基準の緩和、具体的に申し上げますと乳児または二歳児未満の場合はたいへん手がかかりますね。ですから、保母の労働強化というのはたいへんなんです。ですから、いまのように六対一ということではなくて、これを三対一ぐらいに緩和される必要があるだろうというように思いますが、その点はどのようにお考えになりますか。
  279. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御指摘の保育所の最低基準でございますが、これは今日まで過去七回にわたって改善をしてまいっております。乳児、三歳未満児につきましては、ただいまおっしゃったように六対一。ただ、零歳児であって指定された保育所につきましては三対一になってございます。この数も四十八年は千八百人でございましたが、四十九年におきましては三千人にというようにふやしてございます。ただ、御指摘のように最近次第に乳幼児の要保育児童がふえてまいっておりますので、中央児童福祉審議会等のほうでも検討しておられまして、その検討の結果を待ちながら、今後ともこの内容改善等については逐時努力をしてまいりたい、このように考えております。
  280. 中村重光

    中村(重)分科員 零歳児は三対一、承知しているわけです。そこで乳児ということを申し上げた。二歳児ですね、それまではともかく三対一ぐらいにする、これはぜひひとつ五十年度は実現をするように取り組んでいただきたい。  それから、子供さんを二人以上保育所に入れている場合、半額徴収という制度が実はあるわけですね。ところがこれは制約があるわけでして、これは少なくとも全家庭に及ぼすようにされる必要があるのではないか。保育料もたいへん高くなってきている。これはこういう物価上昇の中でたいへんな負担になるわけですから、私は全家庭に及ぼしていくということが必要である。その点はどのようにお考えでありますか。
  281. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御承知のように、保育所におきまする保育料の徴収は原則として費用徴収をするという原則になっておるわけでございます。ただ、低所得階層、特に所得税を納めてない階層等については減免し、あるいは無料にしております。ただいま低所得階層につきましては、御指摘がありましたように、二人以上保育所に通わせている家庭については半額徴収という制度を持っているわけでございますけれども、この点につきましても、従来とも改善をはかってまいりましたし、今後ともそういう全体との関連におきまして改善をはかる必要があろうか、このように考えております。
  282. 中村重光

    中村(重)分科員 それではこれで終わりますが、カネミ油症患者の問題については大臣もずいぶん心を痛めておられるだろうと思うのですが、この間も患者の人たちが大臣に陳情に来られた際切々と訴えておられたのは、例の認定をするお医者さんですね。長崎県の人たちもあの際たくさん来ておりましたが、長崎大学でもなかなかカネミ油症のことについてわかった先生がおられない。むしろこれを敬遠するという形がある。それで認定がなかなか受けられないというようなことはたいへん気の毒だと思うのですが、このカネミ油症の認定について、現在のところ問題があるということが明らかになっているわけですから、これを何とかもっと積極的な形で診断をする、そして認定すべきものはどんどん認定をしていくというような努力を払われる必要があるだろう。大臣が昨年度陳情に対して配慮して、それぞれ通知をされて、百名ぐらいの新たな認定がなされたということは承知をいたしておりますが、しかしそういうことで間に合うような状態ではないということを考えてみますと、その点は大臣としてもいろいろと検討しておられるところであろうと思うのですが、いかがですか。
  283. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 カネミの油症患者につきましては、一昨年の暮れでしたか昨年の春でしたか、診断基準を改定をしてまいったわけでございます。そこで、患者さんの方々、特に離島の方々は、ふだんかかっているお医者さんだけの判断に一任をしてくれといったふうな意向が強いのですね。しかしこの問題はやはり専門的な判断が必要だと思うのです。ですから、ふだんかかりつけのお医者さんだけでは不十分な点があります。しかし、さればといって、専門の先生方だけでやってもらうということでは住民の方々も不安を持つ、こういうことになるわけでございますので、ふだん患者さんを見ておる地元のお医者さん方の意見も十分尊重して、そして専門の方々で判断をしていただく、こういう仕組みに改めたわけでございます。しかしそれについても、患者さんの方々の中にはなかなか不満があるようです。といいますのは、これも極端な例で、全部がそうだということを私言うわけじゃありませんが、専門の方々が、あなたはもうなおりました、こう言うと、逆におこる人がおるというのですよ。なおったのですよ、心配ありませんよと言うと、いやそんなはずはない、こう言っておこる人がおる。まあそれは全部が全部じゃないでしょう。そういうふうな例等もあって、専門の方々が多少、どうもあそこに診察に行くとうるさいなというふうな感想をお持ちの方もないではないと思います。しかしながらそういうことであってはなりませんので、私は今後とも、昨年きめました診断基準の改定に従って、患者さんの意向も、それから患者さんをふだん見ておる地元のお医者さん方の意見も十分尊重して、納得いくような診断ができるように努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  284. 渡辺栄一

    渡辺主査 中村君の質疑は終了いたしました。  次に、浦井洋君。
  285. 浦井洋

    浦井分科員 私は、きょうは、保険医あるいは保険医療機関が患者さんを見て、その明細を提出し、そこで審査をし、支払いをするところの診療報酬支払基金のあり方、特に審査の問題を重点にして二、三お聞きをしたいというふうに思います。  診療報酬支払基金の現状についてはいろいろな見方があるだろうかとも思うわけですけれども、こういう意見が非常に強いわけなんです。現在診療報酬支払基金は適正審査をやっておるということになっておるわけですが、実際に審査をされている側にとってみますと、経済審査であるとしか言いようのないむちゃなケースが多々ある。その結果、非常に不当な査定減点をやられるとかいうようなことで、多くの、医学的に忠実であろうとする保険医あるいは医療機関がそのために心理的に非常に圧迫をされて、おびえたりあるいは萎縮してしまったり、要するに医療機関が泣かされておる例が多いというのが現状であるというふうに思うわけです。  こういうことをこのままにしておるならば、これはいろいろ問題のある現在の健康保険制度をますますゆがめていく一つの大きなモーメントになるのではないかというふうにさえ私は思うわけで、具体的に二、三の点についてお聞きしておきたいというふうに思うわけです。  そこで、一番初めに二つほど、原則的な問題についてお聞きをしたいわけですが、むしろ確認事項なんですが、診療報酬支払基金の中の審査委員会が審査をやる基準というのは、私の理解では、健康保険法にのっとったところのいわゆる点数表、それからもう一つは療養担当規則ですか、これに基づいておるというふうに理解をしておるわけですけれども、それでよいかどうか、その点をちょっと確認しておきたいと思います。
  286. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 現在の健康保険法には、四十三条ノ九第四項に、保険者が支払います場合に、これを審査して支払うという規定がございまして、その場合の審査につきましては、療養担当規則と点数表、それに照らし、あるいはまたそれに基づいて行なわれておることはただいま仰せのとおりでございます。
  287. 浦井洋

    浦井分科員 療養担当規則がいまの日進月歩の医学の進歩に必ずしも適応しておるとはいいがたいとは思いますけれども、一応そういうことを確認しておきたいと思うのです。  それからもう一つ確認しておきたいのは、そういう二つの療養担当規則と点数表に基づいてやられている審査というのは、一体審査の本来の目的は、これはあたりまえなことなんですが、査定減点をするためにあるのか、あるいは保険医療機関が自分の良心に従って適切な保険診療を行なうために、そのことを保障し、援助するというためにあるのか、どちらか一ぺん聞いておきたいと思います。
  288. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 これは先生御承知のとおり、支払基金法には診療報酬の審査と迅速適正な支払いということがございまして、それが支払基金の本来の使命であります。でありますから、いま減点ということをおっしゃいましたが、もとより審査の場合には、あるいは先生のほうがお詳しいかもしれませんけれども、事務的なミスがないか、たとえば管掌違いがないかどうか、あるいはまた計算違いがないかどうかというような事務的な問題があろうと思います。それから内容にわたりましても、これは審査委員の方々が専門的な見地から適切な、また公正な医療が確保されておるかどうかということを審査しておるわけでございまして、そういう意味合いで、減点のための審査ということは、結果的にはそういうことになるかと思いますけれども、そういうことじゃなくて、いま申し上げたような本来の趣旨にのっとってやっておるのが審査だろうと考えております。
  289. 浦井洋

    浦井分科員 そういう二つのことを確認して、それを前提にして二、三、現在のあり方を批判しながら、ひとつ制度的な改善を要望したいというふうに私は思うわけです。  まず最初の問題は、少しこまかい問題になるかもしれませんけれども、いわゆる審査をしたあとで各医療機関に出されるところの増減点通知書の問題です。これは、私、ここにサンプルというか、実物を持ってきておりますけれども、医療増減点を通知をされる側の保険医療機関にとっては、きわめて不親切なものにすぎないわけなんです。たとえば管掌番号がある。それから氏名のうち名前がある場合もあるし、姓だけしか書いていないような場合もある。それからそのあとの事由、なぜ増減点をしたのかという事由も記号だけになっておるというような形で、これではいま局長言われたように、固定点数の誤りはある程度これから判読できても、一体内容についてどういうような形で増減点をされたのかということは推理をしてみなければわからぬというのが医療機関の実情であるわけなんです。どういう薬が何日分減点されたのか、どういう注射が何回減点されたのかというようなことが非常にわかりにくい形になっておるわけなんです。この現状について、局長、ひとつどういうふうに考えておられるか聞きたいと思います。
  290. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 非常にこまかい問題でございまして、私も、あるいは先生よりはるかに知識が乏しいかもしれませんけれども、大体次のように考えております。  現在、これは御承知のとおり、四十八年度の推計で申しましても、非常に保険が普及をしてまいりまして、医療が非常に進歩をしてまいりまして、大体四十八年度の基金の取り扱い件数は、三億九千万件以上になるというぐらいの推定が行なわれております。それを限られた審査委員の方々等で審査をやっているわけでございますが、その結果、いろいろ増減点の必要のあるものが出てくる、そういう場合に、従来からいろいろ問題がございましたけれども、やはり統一的な方法で増減点の通知をするということが、診療報酬を迅速に支払うという意味では必要ではないかということで、たしかいろいろ関係方面の要請等もございまして、三十二年の九月審査分からこの書式を一定をして、現在、言われましたような何月分の増減点通知書というものを出しているように承知をいたしております。  なお、その内容につきましては、いま御指摘のとおり、いろいろ受診者の名前、あるいはどのような医療行為、診療行為を受けたか、あるいはその内容がどういうものであったかというようなことがいろいろありますけれども、いま申しましたように、膨大なものについての処理でございますから、適正かつ公正に、しかも迅速に審査、支払いをするという見地から、現在の増減点通知書は、そういった意味で簡潔なものになっているというふうに承知をいたしております。
  291. 浦井洋

    浦井分科員 レセプトの量が膨大である、そしてこれを迅速に支払わなければならぬということで、医療機関に対する通知が不親切になるということは、私は許されぬと思うのです。やはり一枚、一枚のレセプトに保険医療機関あるいは保険医のいままでの知識の集積と、汗とあぶらがこもっているわけなんですから、そういう言いわけはいらぬというふうに私は思うわけです。だから、私は要望したいのですけれども、いま局長が確認をされたように、医療機関が適切な保険診療を行なえるようにやるのが審査の一つの目的でもあるわけなんだから、そういう趣旨に沿って、現状を改善するような考えが基金に当然起こってこなければならぬし、基金を指導監督する厚生省としても、当然そこはやはり考慮しなければならぬのではないかというふうに思うわけですが、局長どうですか。
  292. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 確かに膨大な事務であるということだけで、非常に重要な問題が十分詳細に処理されていないということは、これは私は問題がないことはないと思います。ただ、しかしながら、現在のこういう増減点の通知書につきましても、先ほどもちょっと申し上げましたが、こういうもので適正な審査をして、迅速に支払うという見地から考えますと、これが一番適切であるということで、これは先生も御承知のとおり、関係者の間で了解がついておりまして、その上に立ってでき上がったものでございますので、今後これをどういうふうに取り扱うかは検討はいたしますけれども、要するに適切な審査、迅速、適正な支払い、かつまた、いまおっしゃったような親切な取り扱いというような、かなりむずかしい要素をミックスをして処理しなければならぬ問題でございますから、この点は、十分われわれは今後も検討いたしますけれども、関係者の合意ででき上がったこの現在の通知書というものは、それなりに合意の上に立ったものでありますから、適切なものではなかろうかと私は思っております。
  293. 浦井洋

    浦井分科員 それは理由にならぬですよ。関係者の合意によって話がついたので、やっておるのだということですけれども、この形式が発足したのは、いまあなたが言われたように昭和三十二年でしょう。それからいま何年たっておりますか。その間、世間の情勢も変わっておる。それから保険医療の情勢もやはり変わってきておる。この辺で、保険医療機関の立場に立った、もっと合理的な親切な、そういう増減点通知書みたいなものに改善していくということは、これは無理のない注文だと思うわけです。この点は、ひとつ要求しておきたいと思います。  それから時間があまりないので、次の問題に移りたいと思うのですけれども、次は、現在の健康保険法では、再審査請求——査定減点をされた分については、法的に不服申し立てをするというような形の道がないわけで、そういうことのためにいろいろ保険医療機関のほうから要望も出まして、各地で、基金でもう一度再審査請求をするという方法がとられておるわけです。しかし、それが非常に保険医の要望にこたえておらないという実情がある。この問題についての一番根本のところは、再審査請求を出したところが、レセプト、いわゆる原本というものはもうすでに各保健所のほうへ行ってしまって、基金にないので、これは照合できないということで、ずるずるとおくれるというような事態が非常に保険医の憤激を買っておるわけなんです。  私、ちょっと調べてみたわけなんですけれども、各都道府県によって、再審査請求のやり方、あり方というものが非常にまちまちになっておるわけなんです。たとえばある県では、その月のうちに再審査請求ができるようになっておる県もあるわけです。またある県では、査定減点された患者分について保険証の記号番号、氏名のみで簡単に再審査請求ができるというような制度が確立しておる県もあるわけなんです。ところが一番悪いところでは、新たにもう一度、一回出したレセプトと寸分変わらぬレセプトを作成し直して、そして再審査請求をしなければならぬというようなことで、府県によってばらばらで、全体として非常に各医療機関、保険医の要望にこたえておらない。そういう状況であるわけなんです。  そこで私は、一つ要望をしておきたいと思うわけですけれども、たとえばここに持ってきておるのですが、東京都などは一つの形式をつくり上げて、この再審査請求書というものに記入をして出せばすぐに再審査に応じられるような体制をつくっておるわけですし、あるいは二、三の県では再審査の相談日というものを特定いたしまして、そこでいろいろな苦情を聞いて要望にこたえるというような処置がはかられておる。これはもう必要に迫られてやっておるだろうと思うわけなんです。だから、そういうことも含めまして、医療機関が、この査定は不服なんだ、だから再審査請求をやりたいと思えば簡単にやれるような、しかも、あなたの好きなことばでいいますなら、迅速に、できるだけ早く正しい決着が与えられるような、そういう再審査請求の道を開くような処置を基金に講ずるように厚生省はひとつ指導すべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  294. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 審査が決定をいたしましたあとの、いわゆる苦情処理の問題でございますが、これは現在支払基金のほうでどういう手順でやるかというようなことについてのいろいろなルールをつくりまして、統一的に地方の支部を指導しているというふうに私どもは承知をいたしております。  ただ、各都道府県によりましては、何ぶんにも診療報酬の審査というきわめて重要な、かつまた問題もあるテーマでございますので、いまおっしゃったように、必ずしも統一されていない面があるかもしれません。でございますけれども、しからばこれをどういうふうに統一的にやるか、どういうふうなかっこうの苦情処理が一番適切であるかということは、私どもいろいろな事例を聞いておりますけれども、苦情処理に非常に時間を要するため、保険医療機関のほうで受診者、患者さんに御迷惑をかけるとか、あるいはまた保険医療機関の側の事務の必要以上の煩瑣を招くとかというふうなことはできるだけ避けるべきだと思っております。一般的に聞いておりますのは、再審査請求があってから大体二カ月間ぐらいで決着がついておるというふうなことが平均的な実情だと聞いておりますけれども、その点はなお十分実情をよく当たりまして、より効率的な方法があればそういう点を研究してみたいと思います。
  295. 浦井洋

    浦井分科員 実情を当たって研究をしたいということですが、さっそく実態を調べて、適切な措置を講ずべきだというふうに私は要望をしておきたいと思うわけです。  それから改善の要望の第三点は、これは先ほどもちょっと言ったわけなんですけれども、再審査請求というのは、あなたも言われておるように、基金がいわばかってにルールをつくって、それで統一的にその地方を指導しておるという形で、任意のもの、何ら法的な裏づけはないわけなんです。この実態としては、一度査定減点をされる、そしてそれに対して不服だから再審査請求をする、そうすると同じメンバーで構成された同じ審査委員会がもう一度審査をするということで、これはやはり根本的には公正さを欠いたルールだというふうに私は思わざるを得ないわけなんです。  ここで一つ例をあげてみたいと思うのですけれども、兵庫県のある保険医療機関が昨年十一月分について何と二百十三万二千七百五十円査定減点をされているわけなんです。そこで、医療機関、保険開業医というのは、これはまず営業規模でいいますならばほとんど中小零細企業に入るわけですから、その中で一カ月分について二百十三万何がしも削られる、減点されるというのは大問題です。さっそくそれを再審査請求に出したところが、最近になって何と百十四万五十二円というような復活があったわけです。ということは、前に査定をした内容が誤りであった。しかも、その半分が復活になってる。復活になったということはいいことなんですけれども、しかしこれではあまりにも審査委員会の権威がなさ過ぎるというふうに私は思わざるを得ないわけなんです。だから、私が要望をしたいのは、できるだけ公正さを保証するという意味で、この際何らかの法律的な処置をしていくべきではないか。この不服申し立てに応ずる道を法的に根拠を与えていくということがひとつ考えられないものかということをお尋ねしたいと思うのです。
  296. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 いまのお話によりますと、基金がかってにルールをつくってやらしておるということでございますけれども、順を追って考えていきますと、決してそういうことじゃないと思うのです。これは基金法というものがございまして、先生御承知のとおり、基金は定款をつくる。定款には業務に関係したことを書く。それを受けて定款の中でいろいろな業務面のことをきめまして、今度その定款に基づいた業務規程をつくる。それから業務規程に基づいて今度は理事長が各都道府県を統一的に指導するということでございますから、かってにと言われますと、それはいささかどうかと思います。  それからもう一つは、いまあげられました例でございますが、私も実はまだ寡聞にしてそういう実例について詳しくは存じておりませんけれども、とにかく基金も二十四年から現在まですでに二十五年間の長い歴史があるわけでございますので、その間にいろいろな事例もあると思います。しかし先生も御指摘のとおり、どんどん審査件数はふえてまいります。その中で、どこまでも適正な審査をして迅速な支払いをするということで関係者が非常に努力をしておることも事実でございます。そういう中でたまたまと申しますか、いま御指摘のような例があらわれましたことが事実であるとするならば、これははなはだ残念なことでございます。私は一般的にそんなような事例が頻発しているとは思いません。でございますから、そういうことがないように、もちろん基金を監督するわれわれとしては十分に注意をしてまいりたいと思います。  なお、前段の法的な問題は、私がいま申し上げたようなことで、実態上こういう形が定着をいたしておりまして、ここであえてこれを法律で書くかあるいは法令で手当てをするかどうかということは検討はいたしますけれども、そういうことよりも、いま言われたようなことがないように、審査、支払いが適切かつ迅速に行なわれるということに重点を置いて、その方面に向かって、行政上の指導とかあるいは基金運営上の努力というものをいたしていくことがこの際の先決問題である、このように考えております。
  297. 浦井洋

    浦井分科員 あなたは、基金が努力もしておる、だからこういう事例というのはたまたま起こったことであって、そう多くはない、きわめてまれな例であるというようなことを言われましたけれども、例をあげよといったら、これと同じようなケースが何ぼでもあるわけなんです。そしてそれは法的に、あるいは形は基金、審査委員会、整っておるかもわかりません。しかし実態は、一番初めに私が言いましたように、保険医療機関なりあるいは保険医にとって、やられておることは血も涙もないということで、基金の審査委員会というのは各地の保険医にとっては全く怨嗟の的になっておるわけなんです。これが実際の実情なんですよ。そこのところをあなたは御存じでないわけなんです。だから、もう一ぺん猛省を促しておきたいと思う。  その一つの例として、私はこういうことをあなたに聞きたいと思う。これは厚生省が任命した厚生技官の一人なんです。そして、その人は現在兵庫県の基金で審査委員に任命をされて、いろいろ、とかくのことがいわれておる人物であるわけですが、その彼が審査のあり方に関連してさまざまな暴言を吐いておるわけなんです。代表的なのを二、三読み上げてみます。私が査定減点したものは復活するな。それから、がんセンターからガン以外の病名のレセプトが出されていくのはおかしい。これは全く言っている本人がおかしいですね。がんセンターといえどもガン以外の病名のレセプトが出てくる場合がむしろ多いかもわからぬ。それから三番目には、本人と家族の平均点数の格差は当然減点すべきである。これも暴言です。いま家族は自己負担があるためにどうしても受診日数が低くなる、平均点数が低くなる。そのために出ておる格差、それを低いところにならしていこう、それ以上の本人の分は余分だから、これは当然減点してもあたりまえであるというようなことを言っておるわけなんです。さらに、雨の日あるいは風の日、こういう天候の悪い日にわざわざ来診するような患者さんがほんとうに診療を必要とする患者なんだ、こういうことも言っておる。ということは、天気のよい日に来る患者さんは、来なくてもよい、病気でもない人なんだということを間接的に言っておるのと同じなんです。こういうことがちゃんと公的な場で発言をされておるわけなんです。これが、厚生大臣が任命した厚生技官なんですね。この問題について、私は二時間後にもう一度機会がありますから続けさせていただきますけれども、今回は最後に、こういうことについて、厚生省はこんな方針で指導されておるのかどうかという点について、局長と、それからそのあとで大臣に所見をお伺いしたいと思います。
  298. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 この際申し上げておきますが、支払基金の問題は、現在審査機能の強化と申しますか、あるいは現在の時代に合ったような仕組みをどうつくるかという問題があるわけです。請求関係から申しますと、請求関係の一元化とか機械化とか、あるいはまた審査の関係から申しましても、審査をどういうふうに効率的にやっていくかという問題のあることも、これは先生御承知のとおりでございます。でありますから、相当前からですが、支払基金の根本的なあり方をどのように現在に合うように変えていくかという問題はあるかと思いますので、こういう問題は引き続いて検討させていただきます。  それから第二番目の現場、兵庫県の審査官がいろいろな発言をしたということでございますけれども、私は実はその点につきましてはその詳細をまだ承知をいたしておりません。ただ、現在の地方におります審査官、医療技官、医療専門官というものは、この皆保険下の診療報酬の審査ということについて非常な使命感を持っておりまして、その使命感を持ってこのむずかしい業務の遂行に当たっておることも事実でございます。そういったことが、いろいろな場合にあまり適切でないような発言が生ずることもあるのかもしれません。でございますが、かりにいま先生言われたようなことが一般化しておることであれば、私は非常に問題だと思います。しかし、非常に熱心に審査に当たり、熱心にこういう問題を処理しているあまりそういったことが出たのかもしれぬと思うのであります。でありますが、そういう御注意もございますので、医療専門官、そういった者についての指導監督は十分強化をしてまいりたいというふうに考えております。     〔主査退席、渡部(恒)主査代理着席〕
  299. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 兵庫の厚生技官がどういうことを述べられたか、私は承知いたしておりませんが、私が任命しております技官は厳正公平に、国民皆保険下における医療の実態ということも十分承知しており、診療報酬のあり方等についても十分な理解を持っておる人でありまして、適切なる医療が行なわれるように真剣に努力をしておるということを私は信頼をいたしておるわけでございます。
  300. 渡部恒三

    渡部(恒)主査代理 これにて、浦井君の質問は終わります。  坂井弘一君。
  301. 坂井弘一

    坂井分科員 最初にお尋ねいたしたいことは、一般向けの保育所の建設の際の国庫補助についてであります。  四十八年度の一般向け保育所の建設につきましては、全国で何カ所、金額にして幾ら国庫補助の対象になったでしょうか。まず数字だけ最初にお示し願いたいと思います。
  302. 翁久次郎

    ○翁政府委員 四十八年度におきましては個所数が五百五十一、金額にいたしまして五十八億でございます。
  303. 坂井弘一

    坂井分科員 問題は大阪府でございますが、大阪府に対しましては査定がゼロであったということを聞いておるわけでありますが、全国四十七都道府県といたしますと、四十六都道府県には保育所の国庫補助があった。大阪一つだけはゼロ、これは間違いございませんでしょうか。
  304. 翁久次郎

    ○翁政府委員 大阪府につきましては、九カ所の保育所について国庫負担をいたしまして、そのうち一つ辞退がございまして、その辞退した分について大阪府にどこか希望するところはありませんかという問う合わせをいたしました。時期がおそくなりましたものですから、大阪府のほうであとの一カ所はけっこうですということで、最終的には、四十八年はただいまのところ八カ所でございます。
  305. 坂井弘一

    坂井分科員 お考え違いじゃないでしょうか。私は一般向けの保育所についてお尋ねをしておるわけであります。ただいまのお答えは同和関係の保育所じゃございませんでしょうか。
  306. 翁久次郎

    ○翁政府委員 そういう区分でございますと、大阪府につきましては、一般向けのものについては四十八年度はございません。
  307. 坂井弘一

    坂井分科員 それではお伺いいたしますが、大阪府の一般向けの保育所の建設の実績でございますが、四十五、四十六、四十七年度、つまり三カ年間の国庫補助実績の説明をお願いしたいのですが、数と金額だけでけっこうでございます。
  308. 翁久次郎

    ○翁政府委員 私の手元のは四十七年と四十八年でございますので、お許しいただきますが、その前に一言申し上げたいのでございますけれども、国庫負担対象としての保育所は一般と同和というように分けてございませんので、毎年その総額について、あるいは総個所について負担をしておるわけでございます。大阪府につきましては、四十七年は十四カ所、四十八年は九カ所、そのうち一カ所辞退、こういうことになっております。
  309. 坂井弘一

    坂井分科員 私の調査によりますと、大阪府では四十五年に一般向け十一カ所、三千九十万、四十六年が五カ所、一千三百五十万、四十七年が五カ所、一千六百五十万、こうなっておるのですが、御確認はいますぐにはしていただけないように思いますが、いかがですか。
  310. 翁久次郎

    ○翁政府委員 手元に、おっしゃった照合すべき数字がございませんので、たぶん御指摘のとおりだろうと思いますが、先ほど申し上げました四十七年のうちの一般分は五カ所でございます。
  311. 坂井弘一

    坂井分科員 そういたしますと、四十八年度の補助申請でございますが、一般向けの補助申請は大阪府からはどのくらい出されたのか、それもおわかりにならないでしょうか。
  312. 翁久次郎

    ○翁政府委員 たしか私の記憶では、合わせて三十カ所というように聞いております。
  313. 坂井弘一

    坂井分科員 三十カ所ばかりの保育所の国庫補助申請が出された。同和向けにつきましては九カ所、一カ所は辞退でございますから八カ所が認められた。そういたしますと、先ほどの御答弁によりますと、一般向けはゼロということのようでございますが、一体一般向けがなぜ大阪府だけがゼロになったのか。他の四十六都道府県については、ことごとく一般向けの保育所につきましては査定がなされたようでございます。どういう理由によるのでしょうか。
  314. 翁久次郎

    ○翁政府委員 繰り返すようでございますけれども、厚生省としては、一般、同和というように分けて負担するのではなくて総体で負担をしておるのが厚生省の方針でございます。ただ、御指摘のように、関西、特に大阪府は同和地区が多うございます。それと、国の負担額の中で、同和地区につきましては、同和対策特別立法によりまして三分の二の負担額になっております。大阪府から申請がございました順位につきましても、四十七年、四十八年いずれも同和地区の保育所については最優先の順位が来ております。なお四十七年につきましては、最初の厚生省のきめましたのが、同和地区についてやはり九カ所でございます。ただその後、御承知の四十七年度後半に補正予算が組まれまして、総ワクとしてたしか六百八十になったわけでございます。ふやした分につきまして、大阪府と協議をいたしまして、一般向けについて五カ所その後追加になってふえた、こういうように承知をしております。
  315. 坂井弘一

    坂井分科員 同和向けは九カ所。そうすると、その後追加によりまして、一般向けは五カ所追加した、こういうことでございますか。
  316. 翁久次郎

    ○翁政府委員 そのとおりでございます。
  317. 坂井弘一

    坂井分科員 そういたしますと、大阪府から、それは一般向けが査定がゼロになったから、再申請によって一般向けを復活してもらいたい、こういう手続に従っていまのような一般向け五カ所ということを決定されたんでしょうか。
  318. 翁久次郎

    ○翁政府委員 四十七年につきましては、正確な数字はなんでございますけれども、当初五百数十カ所、その後補正予算によりまして公共事業費、特に社会福祉施設については相当大幅な増額が認められたわけでございます。その増額された分につきまして、厚生省としては、主として保育所充実ということを重点に各県に照会をいたしました。各県から来たものの中から約百八十カ所についてこれを保育所分として割り当てた。それが各県に回ったものでございます。大阪府につきましては、それが五カ所ということになっておるわけでございます。
  319. 坂井弘一

    坂井分科員 私のお尋ねいたしておりますことは、大阪府から再申請が出されたかどうかということについてお尋ねをしておるわけであります。
  320. 翁久次郎

    ○翁政府委員 補正予算を組んだ段階において各県に再申請をしてくれといったことをしたかどうかについては、正確な記憶は、私当時おりませんので、ございませんけれども、手続的には当初おそらく各県から申請のあったもので、負担から漏れたものが各県との協議によって追加された、こういうことではなかろうかと存じます。
  321. 坂井弘一

    坂井分科員 実は大臣もとくと御承知のところでございまして、大阪府の摂津市が国を相手どりました超過負担訴訟、これはたいへん大きな政治問題化しております。すでに訴訟が行なわれておる。そうしたときに大阪府だけが、ただ一府だけが一般向け保育所の査定がゼロであった。これは言うなれば国のある種の報復処置ではないか、いやがらせではないか、仕返しをされた、こういうような意識で受けとめていられるようであります。そのことにつきましては、全国革新市長会に対しましても報告があり、この摂津市の報告を受けまして、これを支持しようという動きがあるやに私は聞いております。少なくとも当初の段階におきまして、過去において毎年実績のある大阪府だけが一般向け保育所がゼロであった。先ほど同和向けの問題が出ましたが、これは九カ所、当初からそういう要請であったものが全額認められておる。つまり、大阪府においては、これは補助率の問題もあるのでしょう、この同和向けを希望するというようなことが折衝の経緯の中であったかのようにも聞いておるわけでありますが、いずれにいたしましても、三十カ所という申請が出されて、それが査定の段階において一般向けがゼロになったということに対して、これは少なからず意図的なものであろう、こういう受けとめ方がされているようであります。まさに、客観的に見まして、このことは、確かに大阪府の言い分あるいは摂津市の言い分が私は理解できるわけであります。大臣はおそらくそういうことはなかったと否定されると思うのですが、この問題につきましてさらに追加訴訟までしようというようなこれまた動きもあるというようにも聞いております。  いずれにいたしましても、国のこうした四十八年度の一般向けの保育所に対する査定につきまして、少なくとも大阪府ないし摂津市との間において、そういう重大なこれに対する見解の相違があるということについては、私はゆゆしき問題であると思う。したがって、その辺につきまして大臣から、これを否定されるならば、ひとつ根拠のある明確な御答弁をお願いいたしたいと思います。
  322. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいまの点については、私どもは全くそういうことは考えておりませんので、時系列的に申し上げますと、国庫負担をきめた時期は七月でございます。摂津市から訴訟が提起されましたのは八月の二十五日でございます。それから、国庫負担の九カ所について一カ所返上がありました際に、大阪府に、一般とか同和地区とかいうことは全然抜きにいたしまして、どこかつけるところはございますかという照会もしているのでございます。それについて、すでに時期がおそくなったので——御承知と思いますけれども、大阪府においてはもう当初事業計画を立てておられたようでございまして、したがって、けっこうであるという返事があったわけでございます。  それから、先ほども申し上げましたように、四十七年につきましては、補正があったために総額として六百八十カ所、四十八年につきましては五百五十カ所、したがいまして、府県によっては実績より四十八年が減っておる府県があるわけでございます。大阪だけが全く減ったというのではなくて、他府県におきましてもそういう事例がございまして、私どもといたしましては、決してそういうことによって差別してものを考えるというようなことでやったのではないということだけは申し上げておきたいと思います。
  323. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これは誤解があるといけませんから、私からもお答え申し上げます。  保育所というのは、各県とも非常に希望が多いのです。そこで、まず第一に、私のほうでかってな順番をきめないというやり方をしております。まずこれだけ御記憶いただきたいのです。一番目、二番目、三番目、順位をきめて出してください、こういうやり方をしております。これが一つ。それからもう一つ、補助金申請にあたっては、一般だとか同和だとかいうことは私らは区別しておりません。一括した保育所の設備の予算の中で配分をする。それがたまたま同和であれば国の補助金は三分の二になるとか、そういうたてまえになっておるのです。これは同和と一般と分けて補助の申請をとっておりません。一括してとる、一括して順番をきめてとる、こういうやり方でございます。まずこの二点を御理解いただいて、それでは去年はどういうふうな順序でやったかと申しますと、先ほど申し上げましたように大阪では三十幾つの申請があって、上から九番目をしてください、こういう御意見によって九番目をとった。九つだけをとった。それがたまたま同和対策であるので補助金が多くなって、総計からいうと一億何千万になって、各府県との調整もとれますということで決定したのが、私が言うのではない、事務的にやったのが七月でございます。ですから、私などはほんとうに報復なんということは全然考えていません。こう言われること自体、私にはどうも理解できない。できません、これはほんとうに。事務的にも七月、県からはちゃんと順位をきめて出してください、こういうふうにきているのです。よその県等はみんなそうやっております。これは、こういうわけでことしはこれきりありませんから、大阪はそれでは九つなり八つなりにごしんぼういただきたい、こういうことをいいますと、そうするとどの程度にいたしますか、一番目から九番にしてください、八番にしてください、七番目にしてください、こういうふうな手順でやっていくわけです。だから、同和でありますと、そうきまると、それは補助金は三分の二、こうなるわけです。大体総計すると一億五、六千万円、そうするとよその県と、よその県は大体一億程度ですから、均衡はとれるではないか、こういうやり方でやっておりまして、時期的にも七月にちゃんときめておりますので、訴訟の起こったのは、確かに私も記憶しておりますが、暑い時分でございましたし、七月から訴訟の動きがあったなどということ、私も全然承知しておりません。ですからそういうことはあらぬ誤解である、こういうふうにひとつどうか御理解をいただきたいと思います。
  324. 坂井弘一

    坂井分科員 折衝の経緯につきましては私はつまびらかにいたしておりません。したがって、その限りにおいては私は何とも申し上げられる立場ではございません。ただ客観的に見まして、一般向けが当初の段階において大阪だけがゼロであった。補正において五つ復活したということは事実なようでございますし、またその理由につきましてもいま何も大阪だけを意識したものでもなければ、全国的にそうしたものをさらにふやそうというわけでふやしたにすぎないんだ、こういう御答弁でございますが、ただ、ここで大臣にぜひこの点についてはよくひとつ誤解のないように、あるいはまたいまのような御趣旨できわめて明快であるならば、それに従って個々の話し合いをしていただきたいと思うのです。ちょっと申し上げます。  大阪府の民生部長さんは「摂津市に限らず、人口急増地帯は保育所の建設に追われており、こんどの厚生省決定は困ったことだし、誠に残念だ。」こう言っております。いろいろあるようでございますが、大阪府の民生部長さんがそのように言われておる。それに対して、説得といいますか、やはり話し合いをしてきちんと解決をせなければならぬ問題だと思う。また、当該市の摂津市の井上市長さん、「国は依然として福祉行政に対する考え方を変えていない。国はあらゆる手段を通じてイヤガラセをしている感じだ。補助が認められなければ、追加訴訟も考える。」こうおっしゃっている。ですから、いずれにせよそうした当該市あるいは府との間において、厚生省は、この問題についてやはり相互の考えを開陳して、そこでもってよく理解を深めるということの必要性を私は感ずるわけであります。一言大臣から伺いたいと思います。
  325. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほどの問題は、まことにあらぬ誤解だと私は思います。しかし、大阪府の民生部長がそうやって不満である。どの点を不満としているのか、それは私もよく承知しておりませんが、こういうことによってせっかく子供を預かる保育所の問題について国と府と大阪市、その他の市といざこざを起こすということは、これは望ましいことではございません。したがって、将来のいろいろな問題もございますから十分話し合いをいたしたいと思いますし、特に人口急増の都市においては実際のところ保育所の要望が非常に多いと思います。ですから、十分、説得とかいうのでなしに、大阪の事情をよく承り、そして国の立場において今後どういうふうにやっていくかというふうな問題について十分話し合いをして、納得の上で保育所の増設に御協力をいただくようにいたしたいと思います。
  326. 坂井弘一

    坂井分科員 次の問題ですが、厚生省が策定いたしました社会福祉施設緊急整備五カ年計画、この中で寝たきり老人等の施設について、その進捗状況が非常におくれているようでございまして、つまり特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム合わせまして、これは四十六年からスタートして五十年まで五年間ですが、四十八年度まで三年間で三一・九%の進捗率、つまりあと四十九年、五十年の二カ年、この二カ年に六八・一%、これだけ達成しませんと、当初五カ年計画が完成しない、こういうことになるわけであります。一体、四十九、五十年、この二年間で七〇%近いものを達成できるのかどうか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  327. 高木玄

    高木(玄)政府委員 老人福祉施設につきましては、ただいまのお話のとおり四十六年度を初年度とする五カ年計画に基づいて整備を進めておるところでございますが、この五カ年計画は、四十六年度は一〇%、それから次の年は一五%、それから四十八年度は二〇%と毎年五%ずつ達成率を引き上げております。したがいまして、四十八年度末までには四五%達成しておれば一応目標を到達しておるということになるわけでございます。  ところで、この老人福祉施設の中で最も重点を置いておりますのは、寝たきり老人を収容する特別養護老人ホームでございますが、特別養護老人ホームにつきましては四十八年末までの達成率が一応五三%でございまして、四五%に比べれば目標を上回る進捗状況でございます。ただし、養護老人ホーム、軽費老人ホームにつきましては目標を下回っておりますので、今後このおくれを取り返して、目標どおり、計画どおりの整備を達成したい、かように考えております。  なお、この社会福祉施設整備計画につきましては、先般社会保障長期計画懇談会から現行五カ年計画について改定すべきであるとの御意見をいただき、具体的な内容も示されておりますので、その計画に基づいてこの計画の見直しもしていきたい、かように考えております。
  328. 坂井弘一

    坂井分科員 おたくからいただきました老人福祉施設整備状況、これを見ますと、四十八年度におきましては当初実施計画二百七十九件、六十三億五千三百万、これに対しまして計画の変更減といたしまして、十九件、三億八千三百万、こうなっております。つまり、事業の中止が非常に多い。事由は何でしょうか。
  329. 高木玄

    高木(玄)政府委員 いまお話のとおり、四十八年度の整備の補助対象が二百七十九カ所のうち十九カ所が年度中の事業を中止しましたが、この十九カ所の個々のものについてどういう理由で中止したか調べておりませんが、おそらく建築単価の高騰によって入札できなかった、あるいは土地の取得ができなかった、こういった点がおもな理由であろうと私どもは思っています。
  330. 坂井弘一

    坂井分科員 大臣、お聞きしていただいたので具体的に申し上げますが、和歌山県の新宮市と東牟婁郡全町村の一部事務組合立の特別老人養護施設、南紀園です。これが当初、総事業費一億三千三百万、これに対します国庫補助が三千百十七万、県費補助が一千五百五十八万、これが出されたのですね。ところが、資材の高騰ですね。やはり建設資材、これが最大の要因だと思います。そういうことで競争入札を三回やったのですが、全部落札できなかった。これはどういう措置をとったかといいますと、やむを得ずこの組合は補助金返上の手続をとりました。無期延期であります。地元はせっかく南紀園ができると喜んでいた。また、当然この種の施設は必要だということは、これは厚生大臣、非常に御熱心なのです。その限りにおいては非常にけっこうであります。もうできるのだ、国の補助までもらった、県費補助もついた、それが返上せざるを得ない、こういう事態に追い込まれた。これらが、大臣、いま私が数字をあげて御確認いただきましたけれども、工事の中止はそういう非常に大きな理由によるものがあるということでございます。したがって、これは何とかしなければ、せっかくの福祉行政、こうした公共福祉施設が絵にはかいたけれども現実にできない、この事態を一体どうするか、これはたいへん大きな問題だと私は思う。こういう点について、大臣一体どうなさるのか、その辺の御決断をお伺いいたしたい。
  331. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この特別養護老人ホームが、せっかく地元が熱心にやろうというのにできない、これはほんとうに私申しわけない、残念なことだと思います。そこで、物価が上昇してまいりました昨年の秋から単価の引き上げをやらなければならぬ、単価の引き上げをやったんです。おそらくその結果でもまだできないんじゃないかと思うのです。そこでこの二月にまた少し単価を上げようということにしてやっておるわけなんですが、おたくのいまお述べになりました南紀園が今度上げればできるようになるのか、具体的に私も知らないのです。でございますから、至急に和歌山県の責任の部長を呼んで社会局長ところで詰めさせます。それで、ことしできないならどういう理由でできなかったのか、来年になったらできるのか、この単価になったらできるのか。やはりそれだけ地元が御熱心にやってくださっているのにただできないというのでは無責任な話でございますから、具体的に当たってみます。これは私もわかりませんから、県の部長を呼んで、やれるのかやれないのか、ことしじゅうにやれなければ来年どうするかとか、そういう問題を至急に詰めるようにいたしたいと思います。
  332. 坂井弘一

    坂井分科員 大臣、実はいまおっしゃいました補助率が二六・二%アップされておるわけです。これは四十七年から四十八年十一月、二回にわたって上げまして二六・二%も上げていらっしゃる。それでもなおかつできない。つまりそれ以上に資材、物価の高騰が激しい、こういうことでございます。一例を申しますと、小形棒鋼が九二・一%も上がったというので、これは四十七年当初に比べまして、四十八年十一月現在倍近くになっている。ですからこれぐらいの補助率のアップではどうしようもないということですね。そういうことが要因なようでございます。  私は一例としていま地元のことを例にとりました。聞いてみますと、やはり全国的にこういうことでもってできないということが非常に多いようでございます。いま一つ福祉施設を例にとったわけでございますが、他にもこのような公共的なまた福祉的な施設の建設が遅々として進まない、返上せざるを得ない、こういう事態が全国に頻発しているようでございますので、和歌山県のことにつきまして、いま大臣が実情をつぶさに聞いてということはたいへんけっこうでございますが、なおやはり全国的にこういう問題を早急に調査されまして、しかるべく建設できるような措置を講じていただきたい。これは最後に大臣にひとつお願いとして申し上げまして、一言大臣からお伺いをして質問を終わりたいと思います。
  333. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 昭和四十八年度におきましては、そういうわけで上げてきておるわけでございますが、来年度においても、これはなかなか容易でない事態だと思います。したがいまして、数を多く望まず、実際にできるものを確実につくるというたてまえで最大の努力をいたします。
  334. 坂井弘一

    坂井分科員 終わります。
  335. 渡部恒三

    渡部(恒)主査代理 これにて坂井弘一君の質疑を終わります。  安里積千代君。
  336. 安里積千代

    ○安里分科員 私はらい療養所、特に沖繩の国立療養所の問題を中心にいたしまして、若干お聞きしたいと思いますが、その前に石油ショック、インフレ、物価高という問題は社会にいろいろな影響を与えておりますけれども、特に弱い者の上にその重圧がかかってきた、こう考えております。厚生関係、医療行政の上にも非常に大きな影響を来たしたものだと思います。  そこで、大ざっぱでけっこうでございますが、今日の事態、ことに物価問題、そういった問題が医療行政の上にどのような影響を及ぼし、また本年度予算におきまして、それに対処してどのような配慮がなされたか、大ざっぱでけっこうでございまするから、大臣からお聞きしたいと思います。
  337. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 昨年来の異常な物価高が続いておりますことはほんとうに遺憾なことでございまして、政府はあげて物価鎮静のためにいま努力をしておるわけでございます。  そこで、それはそれといたしまして、この物価高の影響が厚生行政国民の生活と健康を守るという厚生行政の上にできるだけ影響のないようにしていかなければならぬということが基本でございます。そういうふうな面でたびたび申し上げておりますように、経済的な弱者の生活を守るように努力をいたしますと同時に、医療施設等については特に医療供給体制整備が非常に大事なことでございますから、こういうふうな最小限度の医療施設充実のためには全力を尽くしていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございまして、建築の単価その他についても、予算は出したができなかったということのないように、つくるということであれば、その物価の動向ににらみ合わせてりっぱに建つような予算をつけるようにしなければならぬ、かように考えておる次第でございます。特に国立の療養所だとかそういうものについては、ちゃんと建つように予算を配分する、これを基本として進んでまいりたいと思います。
  338. 安里積千代

    ○安里分科員 療養所に働く者、普通の者と違いましていわば助けを要するところの面に対しましては、政府の配慮というものがより以上に厚くなければならない、こういうふうに考えております。いろいろの需要抑制の中におきましても、厚生関係において一般的に配慮がなされておるということも承知をいたしております。そこで、私は日本におけるハンセン氏病対策というものが、その局に当たられまする方々の、ほんとうに献身的な努力によりまして、非常に成功しておる、そういうふうに私は見ておるわけでございます。ただ、今日の段階においてハンセン氏病対策として考えなければならぬこと、問題になる点としては、一体どういうものがあるだろうか、いろいろな問題があるでしょうけれども、今日の状態において解決しなければならぬ点、あるいは一番重点だと思われるような点としてはどういう点がございましょうか。
  339. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生御指摘のように、わが国はハンセン氏病患者を法律に基づきまして収容するという方針をとりまして、その制度の改善充実につとめて、できるだけ快適ならい療養所における療養ができるように努力してまいりました。発生が逐次減少して、したがって、在所の患者の高齢化が目立ってまいりました。それと同時に施設が老朽してまいることも一つの問題でございます。それから医療機関としての機能、そういうものを含めまして、施設整備ということが当面一つの課題であろうと思うのでございます。  次に、一つの問題点としては、従来ハンセン氏病の患者には、病院全体を医療機関とは申しながら、生活の場とそれから中における狭い意味の医療機関、そういう機能を両方持って、しかも一部の作業を患者が作業をして、それは全体からいけばまた療養のためでもあるというようなことでやってまいりましたが、老齢化してまいりまして、この作業そのものを患者に受け持ってもらうことがむしろ非常にむずかしい問題になってまいりました。したがって、この患者作業をどういうふうにして園の責任における作業に切りかえていくかという問題が重要な課題でございます。それといま申し上げた老齢化に伴いましてハンセン氏病だけでなく——本来ハンセン氏病はハンセン氏病だけで死亡するというのではございませんで、昔は多く結核で死亡したのでございますが、結核の減少はハンセン氏病の療養所においても及んでまいりまして、もはや成人病がこれに対応する病気の一つとなってまいりましたので、これに対応するところ施策充実する、大きく申しまして以上三つの点が私は今後のらい療養所の運営上の問題点であろうと思っております。
  340. 安里積千代

    ○安里分科員 私がお聞きしようと思いましたすべての点を網羅された、こう思っております。  そこで、それらの問題点があるだけに、その問題点に対処する措置というものが必要だ、こう思っております。老齢化の問題のほかに不自由者が非常にふえておるというようなことも耳にいたします。またいまおっしゃいました老齢化の反面、これに対応するいろいろの措置をとらなければなりませんけれども、その老齢化ということは、反面からいいますと新しくお世話しなければならないところの人が減じた。なぜというならば、予防の点あるいはまた程度の点において治療がなされる、こういったような配慮から、形の上においては老齢化が進んだ、こういうふうにも見られるわけでございますが、傾向といたしましてはそのようにとってよろしゅうございましょうか。あわせて不自由者の増加というような問題についても現状についての御見解を承りたいと思います。
  341. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生の御理解で正しいと思います。したがって絶対数の在所患者数は減少してまいっておりまして、新たな入所が、若い昔のような入所がない、少なくなってきておるということで、絶対数の減少の上に平均年齢が上昇してきておるというふうに御理解いただいていいと思うのでございますが、不自由者については病気のための不自由の度合いというのに加えまして、やはり老齢化による不自由という問題も日常生活的には加わってまいっております。この点も含めまして、われわれは不自由者というものをそれぞれの段階で判定いたしまして、それに相応する職員をもってお世話するように逐次切りかえてまいり、今後もその方向で切りかえて職員の付き添いによるお世話ができますようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  342. 安里積千代

    ○安里分科員 らい療養所関係の予算が四十八年度に比較してみましてざっと二〇%程度増加したのじゃないか、あるいは私の数字が間違いかもしれませんけれども、表面から見ますとそのように受け取れますけれども、数字的にどんなものでしょう、らい療養所関係の予算です。
  343. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 らい療養所の関係の予算につきましては、われわれとしてもたいへん今後とも力を入れなければならぬ問題の一つと考えております。厚生省予算全体が一九という中で一二六でございますから、平均的な対策のベースよりはらい療養所の予算についてはわれわれは力を入れ、それを充実したというふうに考えております。
  344. 安里積千代

    ○安里分科員 ただ表面的に金額が上がった、これだけでは私は比較にならないものだと思うのです。前年度よりも何十%上がった、だからこれが積極的な医療行政がそれだけ進展したということはいえないと思うのです。問題は内容だと思うわけです。この内容の詳細についていろいろお聞きする時間もございませんけれども、端的に申し上げまして、物価が上がったということが主体になって、医務局関係などの予算というものはむしろ前年度に比較しますと減じられたという状況じゃないだろうか。だから、数字的にパーセンテージが上がったからといって必ずしもその内容について充実されたのだということはいえないと思うのですが、いかがでしょうか。
  345. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 予算書等にあらわれました医務局の予算の中に国立病院、療養所の——らい療養所は一般会計でやっておりますけれども、特別会計がございまして、やはりこれは診療報酬等の収入が多くなりますから、国からいただきます一般会計の補てん分が減少いたしましたので、見かけ上、医務局全体の予算はそういうものまで含めますと減少いたしておる形になります。しかしながら、内容的には決してその数字のとおり減少したりしているわけではございませんで、内容はかなり充実されております。特に病院経営を除きました医療行政全体の問題、特に一般会計であるらい療養所の比率は、中身の問題の御説明は省きますけれども、整備費にいたしましても、それから患者の処遇にいたしましても、全般としてかなり充実したものと私は理解いたしております。
  346. 安里積千代

    ○安里分科員 そこで沖繩の療養所の問題に触れたいと思うのでございますが、これは私が申し上げるまでもなく、二十七年間というものは狭い範囲内においてなされておったわけでございまして、復帰によりまして、国立療養所になったということによりまして、いろいろな改善が行なわれたという点を私は認めるものでございます。このような国家的な大事な仕事というものは、国の大きな力でなさなければならぬものだ、こう思うわけです。  問題は、いまいつでもいわれていることでございますけれども、二十七年間の差と申しますか、十分でなかった点を、国立に移管になりましたけれども、その後の処理というものが必ずしも本土と同じようにはなっておらないということが、いま強く指摘をされておるわけでございます。これはおそらく私が具体的に申し上げませんでも、政府とされましても把握をされていらっしゃると思います。ですからここで一々あげませんけれども、ただ皆さん方が実際の実情をごらんになりまして、いま復帰して三年次でありますけれども、その間の格差を是正するということは、なかなか容易なことではございませんけれども、皆さん方ごらんになりまして、どういう点が劣っておる、不十分だ、こういうふうに見ておられますか。それとも、本土と同様に扱っておるのだというふうに単純に見ておられるのであるか、その点お聞きしたいと思います。
  347. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 沖繩のハンセン氏病につきまして、まず基本的に、南方型の様相を持っておるということが基本にございます。ハンセン氏病は寒冷地に発生するほど病状が重いのでございまして、熱帯、亜熱帯等の地帯のハンセン氏病は、学問的にも実態的にもやや様相が違いまして、形にあらわれました姿の上でも軽い傾向がございます。そういうものが基本にございますけれども、われわれとしては復帰後二つの、昔の国立愛楽園と宮古南静園が戻ってまいりましたので、これが運営につきましては、その二十七年間の琉球政府がおやりになりました運営の内容と、それから本土が対応しておりました内容との違いが、患者の処遇その他を含めましてございます。沖繩のほうが処遇上いいような項目の面もございますけれども、全般的にはやはり逐次改善を要するというふうに思っておりますが、処遇などでは、もう復帰と同時に本土と同様の処遇に切りかえまして、患者の気持ちの上でも私はたいへん喜ばれておるというふうに理解いたしております。ただ先生御指摘の沖繩のハンセン氏病療養所の問題点と申しますか、具体的にあげますと、私は沖繩の愛楽園、南静園には約三カ月間ハンセン氏病の調査のために、三十五年の十一月から三十六年一月まで滞在したことがございます。建物、設備その他も十分承知いたしておりますが、機能としては私はやはり本土の療養所と同様に診療機能の面の充実、特に医療関係者の充実ということが今後とも重要な問題だと思います。  それから本土でやっておりました不自由者の付き添いの切りかえ問題というものは、やはりこれは本土と同様にやるべきだと思いますが、最初にお話ししましたように、ハンセン氏病の様相が若干本土と違いますし、そういうことも踏まえまして、不自由者の度合いなども、統計的にとりますと重い患者はやや少のうございます。そういうことで基本的には本土と同じ考え方で、しかし実態には対応しながら不自由者の建物の整備、それから付き添いの人員の確保、それから先ほどお話ししましたいわゆる作業の職員への切りかえ、こういう問題についても、そのような本土との違いと、内容を十分踏まえながら、沖繩のハンセン氏病の患者さんが格差があるというような意識を解消できるような方向で具体的に施策を講じていきたい、こういうふうに基本的には考えております。
  348. 安里積千代

    ○安里分科員 いまお話のありました不自由者病棟の問題は、たぶんあれは四十七年度の予算で着手をされたものだと思っております。ただその後沖繩の事情というものが、例の海洋博あるいは今度の物価高、こういうことで、本土以上に物価問題、資材問題がいろいろ作用した関係がありまして、とうてい当初予定されたような病床規模でもってやることができずに、非常に狭められたものになったと思っております。ですから計画を縮小されて、せっかく建てましても、予定されたところの何分の一ぐらいしか、あるいは現在必要とする二〇%ぐらいかそこらの程度しか収容できないというような状況でないかと思います。この実情については御存じだと思いますが、さようでしょうか。
  349. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生御指摘のように、いま確かめますと、やはり四十七年度の整備については若干計画を縮小した面がございますが、四十八年度の整備費予算につきましても、沖繩は患者数にして、本土との占める割り合いは約一〇%。この不自由者棟の整備等一連の予算につきましても、ハンセン氏病療養所整備予算全体の二四%を沖繩に投入いたしておりまして、そういうことで四十七年と四十八年の関連を考えながら、著しいおくれのないように対処していきたいというのが具体的な考え方でございます。
  350. 安里積千代

    ○安里分科員 必要とするのはおそらく七、八十ぐらいの要求と申しますか、計画でなかったかと思うのです。ただそれは現実にはいま五十程度、これでありますというと必要数を満たしておらない。だから今日の物価高の問題もありますし、縮小されたという点はわかりますが、ただ物価高その他の事情によって縮小するというのではなくて、必要なるところの患者に対します要求をみんな満たすということになりますというと、引き続きこれだけの当初の計画を、もうこれだけのものがこれだけしかできなかったというのじゃなくして、七十八なら七十八、八十なら八十と予定をされて、必要なもの、これはさらに次のときにおいて配慮して、必要を満たすという処置がさらに進められなければならぬのじゃないか、こういうふうに思うのです。できたからいいじゃないかというようなことではいけないのであって、やはり当初の予定どおり内容をもっと拡大していく。これは直ちにはできませんでも、年次的にも拡大していくということが配慮されなければならぬのじゃないか、こういうふうに思うのですが。
  351. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 いまお答えした趣旨も、先生のお尋ねの趣旨と全く同じ考え方で、目的を達成するような努力をしたい、こう考えております。
  352. 安里積千代

    ○安里分科員 それから現地におきまして一番目立ちますのは、また彼らが訴えておりますのは、職員の不足ということであります。どの程度のものを必要とするか、これは外部の私どもからなかなか算出はできませんけれども、ただ表面的に見ました場合におきまして、数字の上で見ました場合においては、本土における療養所の患者数と職員の数、これを比較することが一番単純な比較でございますが、そうした場合において非常に差がある。復帰しました段階で、たしかあれは三十名ほどすぐふやしていただいたはずであります。第二年次はたった四名ふやしたはずであります。しかし相対的に見ましても、本土の場合には三・一人に一人ですか、沖繩の場合には五・三人に一人、単に数字的だけで割り切れる問題ではないと思いますけれども、数字的に見ますと、少なくとも形にあらわれる点は、何としても世話を要する多くの病人でございますが、このように職員の人員が少ないということは、療養しているところの人々にとりましては、先ほど触れました、やはり格差があるのだという感じを抱くわけでございます。そこで、その必要な人員の増に対しまして、本年度どのように配慮をなさっていらっしゃるかどうか、承りたいと思います。
  353. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 復帰を含めまして四十八年度までに三十八名増員をいたしておりますが、四十九年度は十二名の増員を考えております。不自由者の付き添い補導員の関係で十一名、それから医師の不足がやはりございますので、定員の上でどうしても確保する必要がございますから、医師を一名増員いたしております。  相対的に、今後の沖繩の職員の確保につきましては、先ほど基本に申し上げましたように、沖繩のハンセン氏病の態様というものを十分踏まえまして、患者の中でかなりの比率を占める不自由者の度合いというようなものも勘案し、先生御指摘のように、単なる本土の療養所との患者数の比較論でなくて、やはり必要なものは充実する、こういうことを考えまして、引き続き増員につきましては努力いたすつもりでおります。
  354. 安里積千代

    ○安里分科員 一つ一つについていろいろ詳しく申し上げる時間もございませんけれども、問題は職員の数あるいは医療諸施設、まだまだ充実せなければならぬ問題が私はたくさんあると思います。いま人員の増も十二名の予定をされておられるようでございますが、総定員法のワク外にありまして、こういう療養者の方々のほんとうに十分な療養ができ、看護ができるだけの人員というものは、ほかのものを削減しても充実しなければならぬ、こう思っております。向こうからは十二名でも足りない、本年度どうしても二十五名はほしいのだというような要請も参っておりました。全体的から見ますならば多くなるようでありますけれども、これまでの人員の不足から申しますならば非常に足りない問題だと思っております。ぜひこの点は頭に置いていただいて、本年十二名というのでございますけれども、一時にできませんでも、やはりこれを年次的でも充実していくという御配慮を願いたい、こう思っております。  時間がございませんので私は締めくくりますけれども、沖繩が復帰するにあたりまして政府が一番いいましたことは格差是正ということでございました。これは経済的な問題だけに頭が注がれがちでございまして、そのために沖繩の振興開発といったようなことが積極的に進められております。これが逆作用いたしまして、非常に大きな政府の投資、民間投資がなされるということによって、異常なインフレ、本土以上のものを来たしております。それがまた社会福祉面にもしわ寄せを来たしておるわけでございます。それはそれでございますけれども、そういう姿を見れば見るほど、こういった表にあらわれないところの助けを要する人々を考えてみました場合に、経済面、いろいろな面においては本土との格差是正ということはいわれるけれども、われわれ自身はちっとも本土並みになっておらぬじゃないか、これは私は素朴な、純な立場からの彼らの叫びだと思います。ぜひそういった点を考慮されまして、足らざることはもう国民の皆さんと同じように足りませんけれども、本土においてはこれだけだけれども、まだ沖繩はレベルがこれしかないんだといったことが起こらぬように、叫ぶことも、遠いですから皆さんに声が届くのは非常にあれかと思いますが、その点はあたたかい政府の配慮が常に注がれるようにお願い申し上げたい、こう思います。  時間でございますので、以上希望を申し上げまして、私の質問を終わります。
  355. 渡部恒三

    渡部(恒)主査代理 これにて安里君の質疑を終わりました。  柴田健治君。
  356. 柴田健治

    柴田(健)分科員 ハンセン氏病に関してお尋ねを申し上げたいと思います。  国立らい療養所は、御承知のとおり日本に十三カ所ある。この十三カ所の療養所に収容されておるハンセン氏病患者は、昨年の九月一日現在で九千二百四十九名。そして平均年齢が五十四・四歳ということになっております。六十歳以上が三三%、こういう数字が出ておるわけであります。そしてこの九千二百四十九名の患者の治療に当たる医師、またそれを補助する看護婦その他の職員、こういう方々の実態を見ますと、非常に悪いという数字が出ておるわけであります。たとえば全体の医師の定員、これは園長を含めて百二十二名になっておるようであります。ところが現在は百七名であります。充足率が八八%であります。これを医師一人の患者数に割ってみると八十六・四名、こういう数字になる。この数字が厚生省としては正しいと思われておるかどうか、まずその点の見解を聞きたいのです。
  357. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生御指摘の数字は、全くそのとおりでございます。ただ、医師一人当たりの患者数の問題、これは私いろいろ見解はあろうと思いますが、私の考えを率直に申し上げますと、ハンセン氏病の療養所は、先ほども御説明しましたように、全体が療養所でございます。その中に患者が生活の場を持っておりまして療養いたしております。先生この点はもう御存じのとおりでございますから、あまり詳しく説明いたしませんが、したがって、当面医療を受けている外来で通っているとか、入室しているというか、院内に入院している姿の患者数と医師の関係を割り算しますと、八十六よりは少しは減るんじゃないか。在宅的な患者まで入れますと八十六、そういうことが一つありますけれども、結論的に申しますと、やはり医療全体のために医師が不足、特にそれぞれの専門医が不足しているという状態がこの上にさらに質的には加わると思うのでございまして、その点については給与その他の面で、たとえば医師の場合は、管理職でなくても二〇%の調整をつけております。看護婦の場合には二五%の調整額をつけている。これはわれわれ国家公務員の医療関係者の調整額としては最高でございます。二五%の調整額がつく。しかも、初任給でハンセン氏病の療養所に勤務する医師看護婦に対しては、一号俸初任給調整を高めておりまして、その上に申し上げた二〇と二五の調整をして、処遇としては現在われわれのできる最も高い処遇をいたしておりますけれども、なおかつ先生おっしゃったとおりの不足の状態でございまして、それぞれの療養所ごとに、不足する面はお互いに東京なら東京から派遣するということで、沖繩も含めまして対応しておるわけでございます。その他、大学その他からの医師確保についても、若干の予算措置をいたして応援をいただいておるような次第でございます。
  358. 柴田健治

    柴田(健)分科員 医務局長、ハンセン氏病患者の歴史というものをよく踏まえてもらわぬと、たとえば同じ国立療養所でも結核療養所の実態、医師の充当率を見ますと、お医者さん一人当たり患者三十四・二名という率になっている。ハンセン氏病患者のほうの医師の充当率からいうとだいぶ開きがある。二・五倍違う。そして厚生省が毎年医師をふやそうとして待遇改善をせられるが、しかしその底に流れるものは、待遇よりか、いずれだんだん患者は減っていくであろう、日本列島からハンセン氏病患者をなくしていかなければならぬという原則に立って——減ることはわれわれは好ましい姿でありますが、減るからもはやこの病気に対する医師の意欲というものがなくなるのか、研究費がなくなるのか、それともハンセン氏病という、らいというこの病気に対する嫌厭という長い歴史的な先入感がまだ流れておるのかどうか、それをきらっておるのかどうかという問題は、いろいろ総合的に判断しなければならぬ問題だと私は思う。その点をどう厚生省が踏まえておるかということは、今後の医師確保についてよほど考えなければならぬのではなかろうか、こう思います。私は先ほどの安里さんの質問のお答えを聞いておりますと、職員を補充していきたいという。けれども四十一年から四十六年の間を見ますと、就職が三十八名ですね。これは医師、職員、看護婦含めて三十八名。やめるのが六十一名です。これは定年退職その他がありましょう。それから四十八年、昨年を見ますと、四十八年は就職が六名でやめるのが十名です。四十九年度もおそらく定年退職というものがあるでしょう。少々の充足をしても、退職があるということを一方では考えなければならぬ。そうするとプラスマイナスはどうなるのかということを考えたら、ふえる要素はない。ただ委員会でその場のがれの答弁では困るわけです。あそこに入っておる患者の人は、先ほど答弁がありましたが、結核も出るだろう。神経系統の病気も出る。リューマチ、神経痛。ましてあの病気はガン病がはやってくる。成人病というガン系統の病気も出るでしょう。そういうらい以外の病気が出た場合に、結核療養所の皆さんは、まだ他の病院に治療に行ける可能性がある。らい療養所のハンセン氏病患者は、ほかの病院へストレートに行かれるという道はないわけです。そういう点を考えたら、いまの医師のこの員数で夜病気になったら、宿直の当直医がいない、看護婦もおらないということになる。あなたは先ほど、生活の場であり、また一つの集団的な共同社会をつくっておるし、いろいろな人間関係もあるしと、うまいことを言われたけれども、人間はどんなに人間関係がよくても、病気になったらどうにもならない。救うことができない。着るものがなければ貸してもらう、金がなければ貸してもらうということがある。けれども病気だけはどんなに人間関係がよくても助けることはできない。これはあなたは御承知のとおりだと思う。この点を考え、早急に医師職員の充足を考えるべきだと思うのですが、簡単にお答え願いたい。
  359. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 御趣旨には全くわれわれとしても同じでございまして、ただ医師確保は、先生御指摘のように、ハンセン氏病というものに対する医療関係者の理解が、必ずしも一時見られたような状態ではなくなってきている。こういうことについては、これは今後とも重要な根本問題だと私は思うのです。そういう意味からも、医師の研修というようなことで、各病院等を若い医師が研修したりしますけれども、ハンセン氏病のような特殊な疾患に対しては、どうしてもそのような範囲までこれを広げて若い医師確保することもまた困難な問題でございます。したがいまして、この問題につきましては、もし特殊な対策を必要とするということであれば、ハンセン氏病に対する医師確保の特別対策を何か考えなければならないかもしれません。しかし医師全体の増強対策が、まず文部省を中心に無医大県の解消等で、約八千人以上の一学年定員が毎年卒業する時代がやがて来る可能性を持っております。  そういうことも踏まえまして、このような特殊な療養施設における医療というものは、その施設内だけに医師確保してしまうというのじゃなくて、近隣大学、国立病院等との関連を強化して、やはり先生の御指摘のような医療内容確保していかなければならない。どうしても療養所だけに定員的にまた縛って、いつまでもここにいてくださいという仕組みは、医療関係者にとりましては非常にむずかしい問題です。ただ関連した病院なりそれぞれ専門職ごとに、ハンセン氏病療養所と強く結びつける対策に予算が必要であり、また具体的な施策が必要であれば、そういう方向で努力いたしたいというのが私の考え方でございます。
  360. 柴田健治

    柴田(健)分科員 この点は局長も自信を持ってお答え願ったのでありますが、大臣、一言ひとつ見解を述べていただきたい。
  361. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 医師確保ということは、いま全般的に言うても非常にむずかしい問題でございます。特にハンセン氏病患者を収容しておりまする療養所の医師確保するということは非常にむずかしい、特にむずかしい問題であるわけでございまして、若い医者の理解を得ながらやっていかなければなりません。それと同時に、よその病院で働きながら、しばらくこの療養所に行っていただくというふうな制度を考えるとか、やはり何とかしていかなければならぬではないだろうか、かように考えております。若いうち、あなたが入ってもうあそこで一生いなさい、こう言ってもなかなかむずかしいと思うのです。ですからよその国立病院に籍があって、そしてハンセン氏の療養所にもしばらく行くというふうな組織を活用するとか、そういういろいろな手段をやりくって、医師確保にだけは全力を尽くしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  362. 柴田健治

    柴田(健)分科員 全国十三カ所の中で極端に足らないところは、たとえば長島愛生園、定員十五名ということになっておるのが十名しかいない。これは患者数が千二百二十八名おるわけです。これは一人当たりのお医者さんに割ると百二十二・八ということになるわけですね。これはもう非常に無理がある。それから沖繩の愛楽園、これも六百五十一名——あなたはいま全国で一割、沖繩は一〇%と言ったけれども、あなたは数字をよう覚えておかなければいけません。愛楽園がいまのところは現員四名ですね、お医者さんが。これで割ると一人のお医者さんで百六十二・七名という率になる。ほかの病気が出た時分にはどうにもこうにもならぬということですね。こういう点を十分、この十三カ所の中でも一番悪い条件のところから考えてもらわなければならぬと私は思うのです。この点を十分留意してもらいたい。看護婦においてもそうです。六百六十七名という定員は役所流ですよ。現在の実人員は六百七名ですから六十名の不足になっている。  こういうことを考えたときに、このハンセン氏病の患者が歴史的に、制度的に、どれだけ苦しんできたか、どれだけ人間社会から差別を受けてきたか、そういうものをもっと十分踏まえない限り私は解決しない。ほかの難病患者と同じような考え方ではいけないという気がするわけです。ほかの患者の皆さんも、それは気の毒な面——病気になるぐらいつらいことはないのですから、この点だけは十分配慮していただきたい、こう思います。  時間がございませんから、施設については、いずれ私は大蔵のほうへ出て、やろうと思いますが、ただ一つ大臣に聞いていただきたいのは、長島愛生園、光明園の屎尿処理の問題です。これは瀬戸内海の環境保全法という法律ができ、厚生省は責任を、環境庁を含めて持たなければならぬ。それが、あすこの屎尿処理は不完全であります。これが公になると——と言いながら私が公にしておるわけですから……。公になると、あすこはカキの産地です。水産漁業に与える影響まことに甚大、たいへんな社会問題、政治問題になる可能性がある地域であります。私は農林水産委員をしておりますから、その点非常に心配しておる。火をつけて問題にしたほうがいいのか、厚生省がこの際思い切って早く屎尿処理施設をして、未然に厚生大臣としての責任を果たすか、どちらかを選ぶべきかということで私がいま悩んでおる。事務当局に聞くと、二、三年はかかるでしょう、こういうのんびりムードであります。これは何をおいてもこの屎尿処理施設だけはしないと、ハンセン氏病患者と地域住民との感情、そういうものをよく考えて屎尿処理施設をしないと、たいへんなことである。この点について、厚生大臣、一言だけ、どうするかということを見解を述べてもらいたい。
  363. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 実は私、ただいま初めて承った問題でございます。そこで私も、承りながら、これは相当重大な問題であると認識をいたしましたから、関係の局長を通じまして、できるだけ早く十全の措置を講ずるように努力をいたす考えでございます。
  364. 柴田健治

    柴田(健)分科員 次の問題に入ります。  犬の問題ですが、狂犬病予防法があって、都道府県にはそれぞれ県の条例がある。名前は多少違いますけれども、飼犬取締条例とか、いろんな形の名称で条例がつくられて、それでこの任務は、都道府県の衛生部、出先の保健所というこの系列の中で任務を与えておる。今日、いまの大体の登録数を見ると、全国で三百九万頭ほど登録されておるようであります。     〔渡部(恒)主査代理退席、主査着席〕 野犬狩りが、年に大体フル運転でやられておって六十万頭から七十万頭という数字が出ておるようです。現在野犬の数は大体、わからぬのですけれども、推定からいうと百五十万頭以上の野犬がおるだろう、こういわれておる。これは推定です。わかればすぐつかまえるが、わからぬから、まあ推定であろう。年に六十万頭とれるということになれば、大体そういう数字が出てくるだろう、こう思います。  けれども私は、狂犬病予防対策でどうも疑問を持つことは、保健所の任務の中で、予防措置として、公衆衛生の問題としての線がどこまでか。野犬処理をするのにはどの辺までが公安問題として理解すべきか、この点がわれわれも非常に疑問を持つところであります。  たとえば犬が郵便屋さんをかんだ、鶏をとった、ウサギをとった、人畜に危害を加えた場合はこれは公安問題だと思う。任務は警察かということにもなるのではなかろうか。それを全部ひっくるめて、公衆衛生という立場で保健所にかぶせることはちょっと酷ではないか。国のほうは、法律だけは守りなさいと、こういうけれども、金はあまり出さないというような仕組みになって、ただ法律の制度からいうと、都道府県において、登録手数料その他でやりなさいというまことに冷たい投げやりな、法律制度できて以来二十数年の間同じ額で、こんなことで野犬狩りができるとは思えない。一方では犬の問題は農林省がある。狂犬病という病気は日本の国内ではめったに発生しないという歴史がある。大体よそから入ってくる。動物の検疫については農林省が任務を持っている。これも一種の予防だ。これは狂犬病予防としてやってない。農林省の任務は狂犬病じゃない。狂犬病予防なら厚生省が持つべきだ、法律の精神からいえば。厚生省が何でもかんでも持ってやりたいんなら、野ネズミまでやったらどうかという気がする。イタチもやったらどうかという気がする。イノシシもやったらどうかという気がする。これも人畜に被害を与える動物だ。危害を加えるというなら公安だ。病気だといったら、これは狂犬病予防法によって厚生省の任務の管轄に入る。その点の見解にわれわれは常に疑問を持っておる。この点についての見解を聞きたい。
  365. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御指摘のような現状にあることは、われわれも十分承知いたしておるわけでございますが、歴史的経過から申し上げますと、従来、終戦直後にわが国に狂犬病が流行いたしまして、その狂犬病予防の見地から無登録犬及び未注射犬の捕獲業務を行なっておるわけでございまして、これが衛生部局の所管になっております。現状におきましては、大部分が先生御指摘のとおり、保健所でこの業務が行なわれているわけでございます。従来、昭和三十一年以来わが国には狂犬病が発生いたしておりませんので、むしろ最近におきましては御指摘のように保安問題としてこの問題が浮かび上がってまいったわけでございますが、その当時、いろいろその所管の問題がございましたけれども、従来からやっているということで、衛生部局がこの面を担当してまいったわけでございますけれども、近年これらの業務につきまして、やはり保健所の業務が非常に繁雑であるというようなことから、この野犬狩り等の業務につきまして、能率的、効果的にこれを行なうというために、十一都府県、市、これは政令市でございますが、そういった十一の地方自治体におきまして、保健所からこの業務を切り離しまして、犬管理事務所、これはみんな名前がそれぞれ違いますが、犬管理事務所とかあるいは飼い犬指導所というようないろいろな名前をつけておりますが、こういったものを設置いたしまして捕獲業務を実施いたしておるわけでございますが、ただいま先生御指摘のとおり、さらに今後こういった保健所の業務から離しまして、独立の機関としてこういったものを実行してまいりたい、かように考えております。
  366. 柴田健治

    柴田(健)分科員 政令都市十一、私はこの点は、あなたたちは人間がたくさん住んでおる過密都市だけを対象に考えるのはおかしい。犬の野獣性がきびしくなるのは、山に入ることだ。山の多い地域こそ危険性が高いということを考えなければならぬと思うのですね。それから十一というのではなしに、もっと範囲を広げて考えたらどうかという点が第一点です。  それから、私は今後そういう研究課題として、保健所の任務を何とかしてやらないと、いまの都道府県の定員条例、定数からいうて、非常に無理がある。食品公害の問題からみな保健所、何もかもみな保健所にいっている。野犬にほんとうに狂犬病という病気が出るか出まいかということでいろいろやれば、もっと私は研究する余地があると思う。それから動物のすべての実験研究は農林省が持っておるのですから、農林省と提携をしてもっと適切なる指導方針というものを打ち出してもらいたい。これをお願いしておく。  それからもう一点は、この登録業務、それとあわせて予防注射をやるわけですが、年二回やる。三百九万頭、岡山県は大体いま七万頭余りおるのですが、七万の犬を年二回予防注射なり登録ということになると、市町村役場のこれまたたいへんな業務なんですね。それから各家庭においてもそうです。いま大体御主人は出かせぎなり働きに出る。みんな奥さんが犬を抱いたり引っぱったりして行くわけです。年二回というのはなぜかというと、これは薬の関係だと私は思う。生ワクチンを打つか、従前どおりのワクチンを打つかということになるわけです。外国は大体生ワクチンをほとんど使っておる。有効期間は一年半から二カ年もつ。日本だけはなぜ年に二回も注射をしなければならぬのか。この点の研究が厚生省は足らないのではなかろうか、凍結ワクチンにしても生ワクチンにしても。危険性があるとかなんとかいって、研究もせずにただことばの上だけで逃げようとする。もっと研究の金を予算折衝でもらって、年に一回にしたら、どれだけ保健所なり、市町村役場なり、各家庭が助かるかということを考えたらどうか。国は省力化だ、簡素化、合理化だということばをよく使われる。こういう点にもきめのこまかい合理化精神を持ったらどうかという気がするのですね。この点についての研究を直ちにして、年に二回の登録業務、予防注射を、一回に踏み切っていく、それまで研究してもらいたいと思うが、いかがでしょう。
  367. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先生御指摘のように、現在登録業務及び注射業務を年二回定期的に実施いたしておるわけでございますが、その理由は、先生から御説明のございましたように、現在のわが国の狂犬病ワクチンが不活化ワクチンを使っている関係上、免疫を与えるためにはどうしても年二回やらざるを得ないわけでございます。さらに先生御指摘のように、すでにアメリカ等で生ワクチンの開発によりまして、これを年一回というような予防接種に切りかえている事実も存じておりまして、こういった事実にかんがみまして、この動物ワクチンは農林省の所管でございますので、農林省のほうに対しまして、そういうふうなワクチンの開発を依頼しておる段階でございまして、すでに農林省のほうから動物用ワクチン協会のほうに、そういった生ワクチンの開発をやるように、研究費等のめんどうも見ておられるようでございますが、その結果によりまして、開発され次第われわれのほうでも注射回数等の削減に努力してまいりたい、かように考えております。
  368. 柴田健治

    柴田(健)分科員 これは厚生大臣、真剣に研究してやってもらいたいと思うのですね。簡単に大臣の見解を聞いて終わりたいと思います。
  369. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お話しになりましたような点、十分ひとつ慎重に検討さしていただきます。
  370. 柴田健治

    柴田(健)分科員 終わります。
  371. 渡辺栄一

    渡辺主査 柴田君の質疑は終わりました。  次に、山口鶴男君。
  372. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 齋藤厚生大臣に、長い間の懸案であります地方事務官の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。もう長い間の懸案でありまして、要は内閣の決意いかんにかかわる問題でありますので、私は主として大臣にのみお尋ねをいたしたいと思います。こまかい技葉末節の議論はしようとは思いません。そういう点でお尋ねいたしますので、ひとつよろしくお願いいたします。  それから質問に入ります前に、ただいま同僚の柴田君から、たぶんハンセン氏の問題について大臣にお尋ねあったと思います。実は私、長い間超党派のハンセン氏病議員懇談会の事務局長をいたしてまいりました。今回、ハンセン氏病の問題に非常に熱意をお持ちの柴田君が再び国会に議席を持ちましたので、柴田君にバトンタッチいたしまして、私いま事務局長をやめさしていただきました。具体的には柴田君からお尋ねあったと思いますが、どうかひとつこのハンセン氏病対策につきましては、厚生省全力をあげて取り組んでいただくことをお願いをいたしておきたいと思います。  それではちょっとお尋ねをいたしたいと思うのですが、地方事務官の問題は自治法附則八条の問題でありまして、この附則八条が施行されましたのが昭和二十二年の五月三日でありますから、すでに二十七年間という長い歳月がたっているわけであります。当分の間、これを官吏とする、こういう規定がこの二十七年間も実は続いてきた、こういう問題であります。当分の間ということがこのような長い期間続くということはきわめて異例であり、不当なことだと私は思います。その立場からお尋ねをするわけでありますが、この問題につきまして、私の同郷の先輩であります福田さん——昨年行政管理庁長官をいたしておりました。昨年の十月、福田管理庁長官が中心となりまして関係大臣、今回も引き続いて厚生大臣でありますが、齋藤当時の厚生大臣、加藤労働大臣、新谷運輸大臣、江崎自治大臣、これらの関係閣僚が集まりましてこの問題を協議し、地方事務官問題には早急に決着をつけよう、こういうことで意見がまとまったと聞いておるのであります。さらに第七十二国会、今国会でありますが、一月二十五日参議院本会議の代表質問でわが党の和田議員がこの問題を質問いたしました。これに対して田中総理は、本制度は暫定的な制度であるので、昨年十月関係大臣による閣僚会議を開催し、それに基づき各省間で鋭意協議を進めている段階だ、この協議を通じ、できるだけ早い機会に結論を出したい、かように答弁をいたしておるわけであります。これは私はまさに田中内閣としての方針だろうと思うのです。田中総理が田中内閣を代表したこの考え方に対して、田中内閣の閣僚であります齋藤厚生大臣のお考え方をまずお伺いをいたしたいと思います。
  373. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 山口委員お述べになりましたように、この制度は昭和二十二年できて以来ほんとうに久しい問題でございます。実は私もその当時役人をいたしておりましたから、十分そのいきさつは承知いたしておるつもりでございます。そこで私も、当分の間という制度でございますから、これは私は一日も早くこの問題は解決すべきである、この点については山口委員と私は考え方は変わってないと思います。ただ問題は、この廃止したあとにどういう仕組みでやっていくか、これが問題だと私は考えておるわけでございます。そういう意味において、今後どうするか、これが問題が解決しない根本であるわけでございまして、当分の制度であるところの地方事務官制度というものは、なるべく早く解決する、私はこれは望ましいことだと思います。問題は、そのあとどういう機関によってやっていくか、これが一番の問題であろう、かように考えております。
  374. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 厚生大臣としては、それではこの地方事務官制度は廃止をしたい、ただ問題はそのあとの、厚生省でいえば社会保険行政、これを一体どうするかが問題だと言われました。大臣は一体どのような形でこれを運営したらいい、かように考えておられますか。
  375. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 実は私は、確たる意見として外部にあまり申してはいないつもりでおります。事の起こりは、御承知のように職員組合から給与の府県ごとの格差、こういうことから非常に強く起こっていることは御承知のとおりでございます。そこで、私はこの事務というものを考えてみますと、前々から言うておるわけでございますが、国の事務か地方の事務か、特に戦後地方自治法というものが新しい制度に変わってまいりました。すなわちローカルオートノミーとして問題を解決する事務なのか、あるいは国の事務としてこの問題を処理するのが適当であるか、こういう問題は、絶対なんということばを私は使いません。どちらが適当であるかということを考えてまいりますと、社会保険事務所に従事しておられる諸君の仕事というものは、私が申し述べるまでもなく、国の特別会計において厚生年金あるいは医療保険、政管健保でございますね、そういうふうな事務を行なっておるのでございまして、上から下まで一貫して保険料の徴収あるいは給付の事務というものを行なっていく、こういうことでありまして、地方の地域住民としての特殊性を出す余地があるのであろうかどうか、その辺は判断しなければならぬではないか、こういう考え方でございます。  そこで、実は昨年の十月、行管長官が私どもを集めまして、この問題の解決をしたいのだというお話がございました。まさしくございました。そこで、私は率直に申し上げました。この制度は当分の間の制度でありますから、廃止することについてはけっこうでございます。しかしながら、そのあとその事務をどうやっていくか、ただ一がいにこれは地方の自治体に移して、いわゆる地方公務員というのですか、地方吏員としての身分においてやるという前提に立ってのお話ならばお断わりをいたします。事柄の性質に応じて国の機関を、必要によって国の事務とするならば国の機関を新しくつくるとか、そういう問題が起こるであろう、そういうことを含んでひとつ廃止ということについては私は十分考えてみることにいたしましょう、こう申し上げておるわけでございます。そういうわけでございまして、なかなかこれ、山口委員にもいろいろ御意見があるところだと思います。しかし私どもは、一万何千人という職員の身分の問題でございますから、慎重の上にも慎重にしなければなりませんし、社会保険事務所が所管をしておる業務経営の責任というものも、厚生大臣としては果たしていかなければならぬ、こういうふうな問題等もありまして、まだ私は国の機関にしなければならぬとはっきり公式には申し出してはおりません。いろいろな関係がありますから申し出しておりません。しかし、いまの地方自治体の仕事にはなじまないのではないだろうか、こういうふうに考えております。しかし、職員の給与の格差がいろいろありますので、その格差をどうするかという問題もこれまた考えていかなければならない重要な問題でもありますので、いま実は悩んでおるところでございます、こういうふうにいつも答弁を最近いたしておるところでございます。
  376. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 私はただいまの考え方、納得できません。給与の問題ということもあるでしょう。しかし私は、地方行政委員会の委員を十年やってまいりました。国会に来ましてから、まさに地方行政一本やりで私はまいりました。いまこの地方事務官の問題をめぐって、それは職員の間からそういう声もあるかもしれません。大いにあるでしょう。しかし、各都道府県、市町村、こういつた地方自治体から、いつまでもこのように、当分の間という形で変則的な状態を続けるべきでない、あくまでも地方自治の立場からこの問題は処理すべきだ、こういう意見がたくさん来ている。このことを私は、大臣、考えていただきたいと思うのです。  そういう観点から私はお尋ねをいたしたいと思うのですが、かつて厚生省が所管しておりました公害行政、いま環境庁のほうに多く移りました。まだ厚生省に残っているものもありますが、しかしこういった住民の身近な問題は、あるいは住民サービスに属する問題は、できる限り住民の身近なところで事務を処理することが妥当だということで、公害行政をはじめ、たくさんの事務がいまや地方自治体に権限委譲されつつある状況だということは、大臣も否定をなさらぬだろうと思うのです。そうでしょう。そういう中でいま大臣は、地方公務員がこの保険行政については行なうのにはなじまないということを言われました。私はそれでは反問をいたしたいと思うのです。確かに厚生年金と政管健保あるいは日雇健保等につきましては、保険料の徴収から給付まで、一貫して国の事務としてやっている、国の特別会計で処理している、私は存じております。しかし、たとえば政管健保と同じ類似の国民健康保険、これはどうですか。これは厚生大臣地方自治体にこの事務を団体委任して、そうして自治体がりっぱに保険料の徴収からこの支出に至るまでやっているじゃありませんか。それに携わっている公務員は、まさに地方公務員であります。国家公務員じゃありません。そうでしょう。こういった事務が、地方公務員でりっぱに処理できている。  さらに言うならば、さらにたくさんこういう例はありますよ。国が各県知事に対して、この歳入徴収官としての権限を委任して保険料の徴収をやっている、その保険料は国の特別会計だという例はたくさんあるじゃありませんか。さらに齋藤さんは本国は労働省ですね。そうでしょう、御出身は。労働省で、どうですか、失業保険、あれは労働大臣の権限を各県の労働部長に委任しているでしょう。そうして労働部長の指揮監督のもとに地方事務官が仕事をやっているじゃありませんか。労働部長はこれは地方公務員じゃありませんか、どうですか大臣。そうでしょう、違いますか。  こういう点からいって私は、ただいま大臣が言われた保険料の徴収から支払いまで一貫してこれは国の事務でなければならない、地方公務員の仕事としてはなじまない、こういう議論は他のただいま例にあげた仕事からいって成り立たないと思うのです。なぜそれではそういうのは地方公務員でできて、この事務が国家公務員でなければできないのですか。地方公務員になじまないのですか。その点ひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
  377. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 国民健康保険のお話がございましたが、国民健康保険は御承知のように保険者はすでに市町村でございまして、国ではございません。国ではないのであります。市町村ごとに保険組合をつくって、その市町村の組合が地域住民の財政状況に応じて保険料を徴収し、そして給付をする。町村ごとが独立の保険組合でございます。私どものほうは政管健保、全国一律にやっていく制度でございます。厚生年金しかりでございます。労働省のほうは、私労働大臣でございませんから私が申し上げるのもいかがかと思いますが、なるほど労働部長は県の吏員でございますが、その下にいわゆる職業安定課長というのは地方事務官として任命しておりまして、それが任命権者として労働大臣が権限を委任をいたしておる制度でございます。しかも、その第一線にあります安定所は、国家の機関として労働大臣の所轄に属する機関として設立されておる、こういう仕組みになっておるわけでございます。したがって、私の厚生省の所管の行政と違いますのは、第一線の向こうの安定所は直接の国の機関、私のほうは地方の機関でありますが身分が国の公務員である、こういう仕組みでそこの調整をとっている、こういう仕組みになっておるわけでございまして、私どもの全国一律にやる、地域住民の特殊なサービス的なものというものは、そこには出てこない、私はさように考えておるわけでございます。
  378. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 それはやはり、せっかくの大臣のおことばですが、私は矛盾があると思うのですね。とにかく地方公務員にその権限を委任して、働いている人はそれは国の職員である失業保険の例、そうでしょう。とすれば、この健康保険なり政管健保なり厚生年金という問題が、地方公務員に委任をして、地方公務員の指揮監督のもとに何で仕事をやってやれないという理由があるのですか。何で一体仕事ができないという理由があるのですか。さらに森林保険だってそうでしょう、国の特別会計。しかし、これは知事を歳入徴収官に委任している。そうして地方公務員が保険料をりっぱに集めて、そうしてこの特別会計を運営しているじゃありませんか。そうでしょう。そういった形でいまや地方公務員がそれぞれそういった国の特別会計にかかわる問題をりっぱに運営しているという実績がある。そういう中で私は、この保険事務所に属する事務、具体的にいえば厚生年金、政管健保、こういったものが地方公務員ではできないという理由は絶対ないと思う。なぜ地方公務員ではできないのですか。その点ひとつ、ずばりお答えをいただきたいと思うのです。
  379. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど来申し上げてありますように、政管健保における問題それから厚生年金の保険料の徴収、給付の事務、こういうものは地方自治、すなわち地域住民本位の——本位というのは適当かどうか、これはちょっと行き過ぎかもしれません。そういう地方自治の事務にはなじまない。労働省関係の事務と同じように、国家公務員の形において運営するというのが適当である、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
  380. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 私は考えておる、こう言われるのですけれども、しかし大臣、少なくとも大臣は田中内閣の閣僚の一人でしょう。そうじゃありませんか。そして田中総理が少なくともわが党を代表する和田君の代表質問に対して、先ほど私が申し上げたような明確な御答弁をなされておるわけです。これはやはり田中内閣の御方針だろうと思うのですよ。そして早急に結論を出す、それはけっこうだ、こう言われるのですが、あとの形態が問題だと言われる。地方公務員ではどうもなじまない、こう言われる。しかし、いま国が持っておる各種の権限を、できる限り地方に委譲しよう、こういう状態になっているのじゃありませんか。これは佐藤内閣以来、現在の田中内閣も同じ方針を踏襲しているのではありませんか。佐藤内閣のときにはずいぶん府県に対して権限委譲をいたしました。公害の場合も私は具体的に例をあげました。今度田中内閣になってからはそういった地方不信で地方などには権限委譲しない、こういう方針なのでございますか。私はその点はひとつはっきりお答えをいただきたいと思うのです。
  381. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これはもう先ほども申し上げましたように暫定的な制度でありますから、これを解決するように決着をつけなければならぬ、この点については私はよその大臣と意見は違っておりません。そのあとに、それを完全に地方自治体の仕事にするか、国の事務として国家機関として行なうか、それが問題点であるということを申し上げているだけでございまして、廃したいという気持ちには私は一つも変わりはございません。それからいろいろ環境庁その他の例をお引きになってお話しになりましたが、いろいろなサービス事務については自治体の仕事に、特に住民の立場を考えてのいろいろな行政ございますから、そういう方面に委譲するということについては私は一つも反対をしておりません。したがって、社会福祉の関係その他の仕事というものは、ほとんど自治体の仕事としてやっていただいております。食品衛生、環境衛生しかり、厚生省のほうのそのほかのサービスの仕事というものは、ほとんど全部といっていいほど府県にお願いをしているわけでございます。ただ問題は、いま申し上げましたような保険料を徴収する、まあこれは長期にわたってこれを管理し、そして将来の労働者の方々がおやめになったあとのいわゆる厚生年金その他の給付として支出してあげなければならない。長期にわたって徴収し、管理をしていく、これは非常に大事な仕事でございまして、地域の地方自治という仕事ではない、私はさように考えておるわけでございます。
  382. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 大臣は私の意図がよくわからないようですが、何も私は厚生年金や政管健保を各府県ごとに、四十七にばらばらに分割して、それぞれの府県でそれぞれ独立運営をしろという議論をやっているのじゃありませんよ。これは厚生大臣が各都道府県の知事に仕事を機関委任すればいいわけです。そして徴収と、それから特別会計の管理なら管理、まかせられる面だけをまかしていけばいいわけであって、そうして特別会計の管理は、国全体で厚生省がおやりになってもいいでしょう。そして給付の事務は、これは地方公務員でやってもいいわけなんです。ですから、私は四十七にばらばらにせよなんて言っているわけじゃありません。国の統一した事務としてたとえば私が例にあげた森林保険だってそうでしょう、国が統一的な特別会計として運営しているわけです。しかし、その仕事は知事に機関委任して、そして地方公務員が保険料の徴収等をすべてやっているわけです。同じ形に政管健保にしろ、それから厚生年金にしろできないかということなんです。そうすれば私は長期にわたってこれを徴収し、管理、運営していくということは、厚生省の責任においてりっぱにできるはずじゃないか、だから保険料の徴収であるとか給付であるとか、そういった仕事を地方公務員がやってなぜなじまないのか、こう言っているわけなんです。この点いかがですか。
  383. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私も、山口委員が一道一都二府四十三県ばらばらの運営をやれというふうなことをおっしゃっているとは全然思っておりません。でございますから、法律によってちゃんとそういうことを縛ればできないのか、それは私はできると思いますよ、できると思います。ただ、どちらが適当であるか。ですから私は、初めから絶対ということばは使わないということを申し上げているわけです。それは法律でちゃんと縛ってやれるようにする方法を考えろ、これはあると思いますよ。しかし、どちらが一番適切であるかということを考えてみれば、私は国の事務として処理することが経営の責任を果たすゆえんである、こういうふうに考えておるわけでございます。昭和二十二年にあの制度はマッカーサー司令部とのいろいろないきさつでできました。ほんとうにできました。これは非常な議論の末に解決しなかったのです。そのうちにひとつ何とかいい知恵を出そうじゃないか、こういうふうないろいろないきさつがあって、こういうふうな制度ができたということでございます。実は私はあの当時は労働省の関係と厚生省関係と、両方の関係のことで関与しておりました。まあそんな昔のことを私は言うつもりはございませんが、私はどう考えてもあの当時いわれたいわゆるローカルオートノミーというものにはなじまないのではないか、私は終始一貫そう考えているわけなんです。しかしそう申しましても、いわゆる職員組合の方々はいま盛んに……(山口(鶴)分科員「私は職員組合の立場で言っていない」と呼ぶ)いや、私のところに一ぱい来ております。そういう方々から、給与の面からいろいろ来ております。そういうふうなことで、どうしたものだろうかということで、いまどちらにはっきりしたほうがいいのか、このままでしばらくいったほうがいいのか、あるいは国の機関として独立してやるやり方がいいのかということで思い悩んでおるのがいまの心境であります、こう申し上げているのです。しかし、どちらが適当かといわれれば、私はローカルオートノミーではない、国の事務として処理するのが筋ではないかと考えておる、こう申し上げておるわけでございます。
  384. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 いままでの一本調子の議論よりは幾らかあれだと思うのですが、しかし大臣、私は当時の昭和二十二年、どういう経過でこの地方事務官という制度が生まれたか、十年間の地方行政委員会の議論を通じて詳細承知をいたしております。問題は、それまでは知事は官選だったわけですね、そうして昭和二十二年にわが国の歴史にとっては初めての知事公選、こういった画期的な制度ができた。そういう中で当時の各省がいろいろ心配をされて、そうしてこういうような制度ができた。その経過については承知をいたしております。しかし私が申し上げたように、何もばらばらにしろということではない。国として十分長期的に、統一的にりっぱに運営できる方法というものはあるわけです。この事務に携わる職員を地方公務員にしても、りっぱにやれる道はある。したがって大臣、あまり自説に固執をしないで、私はやはり田中内閣としての方針にすなおに齋藤厚生大臣も従っていく、こういう気持ちにひとつなっていただきたいと思うのです。  せっかくあれですから、行管の方にお伺いしましょう。行管としてはこの問題、当時十月に会議がありまして、結論は承知をいたしております。早急に詰めろということです。その後どうなっておりますか。  それから、さらに自治省の行政局長も見えておりますからお尋ねしたいと思いますが、いま私が各種例をあげました知事に機関委任しているじゃないか、こういう形で地方公務員が現に仕事をしているじゃないかという例につきましては、それが間違っているか間違っていないか、またそういう事務を地方公務員がやっておって今日まで重大な支障があったという例がありましたのか、この点をひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  385. 平井廸郎

    ○平井(廸)政府委員 先生御指摘のように、昨年の十月の関係五閣僚の協議の結果に基づきまして、事務的にまず問題を詰めるということで、私どものほうとしてはそれを推進する立場にございまして、いろいろな点についてお手伝い申し上げているところでございますが、まずこの問題は、第一次的には関係省である自治省と厚生省運輸省、労働省、各省との間で、改革問題について具体的な問題点について協議を進めていたというたてまえをとっているわけでございます。ただ問題の進展に伴いまして、意見の調整を要する点、その他進行の促進をはかるというような点から必要のつど関係省の官房長会議等を数次にわたり開催をいたしまして、その促進をはかっているところでございまして、相なるべくはできるだけ早い時期にこの結論を得るように、今後とも推進をはかっていきたいと考えている次第であります。
  386. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 ただいまお尋ねの件につきまして、例にあげられました森林保険あるいは国民年金、そういったものにつきまして支障があるという話は、私ども拝聴しておりません。
  387. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 私は、地方自治法が施行されてすでに二十七年、地方自治というものはずいぶん定着をしたと思うのです。そしてまた地方公務員の諸君も、国から機関委任された事務を十分にこなし、そして差しつかえないような運営ができる、こういう状態になったと判断して私は一向に差しつかえないと存じます。確かに大臣御指摘のように、厚生年金にしろあるいは政管健保にしろ、国として統一的な長期的な運用をしなければならぬ、私はそのことは否定いたしません。しかし、このような時代の趨勢を考え、地方自治の成長というものを考えた場合、大もとを、押えるべきところは、国がきちっと押えてもいいですよ。そういう中で、大臣も、そういう法律をやればできないことはないでしょうと言われた。そういう点でくふうをこらせば、政管健保にしても、厚生年金にしても、国の長期的、統一的な運用というものは十分差しつかえなくできる。そしてこの事務は地方公務員がこなして差しつかえない。そしてこれら必要な事務は、それぞれ厚生大臣都道府県知事に機関委任して、そして厚生大臣の指示で統一的な、誤りなき運用を期するということはりっぱに可能である、そういう時代に入っている、かように思うのです。この点大臣の御所見を承って質問を終わっておきましょう。
  388. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 地方自治の尊重されるべきこと、当然のことだと私は思っております。ただ問題は、地方自治の尊重ということは、常に国と地方というものの権限の分配、これを明らかにすることが基本でなければならぬ。国のやる仕事、地方のやる仕事、これをはっきり分ける、これが基本でなければならぬ、私はこういうふうに考えておるわけでございます。そういう考え方からいうて、政管健保の仕事あるいは厚生年金の仕事というものはローカルオートノミーにはなじまない性質のものである、私はこういう考えを持っておるわけでございます。しかし今後ともこの問題は、各方面からいろいろ御意見があることは私は承知しておりますから、そういう御意見も十分承りながら検討を続けることにはやぶさかではない、こういうことを申し上げておきます。
  389. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 先ほど申し上げたように、法律の立て方によっては十分私の意見も——確かにそういう方法はできるでしょうということを大臣も言われた、ただいま検討するということを言われた。地方自治を尊重する立場で、私の提言をひとつ十分念頭に置かれて、田中内閣の方針というものも十分わきまえた上で検討されることを強く要請をして質問を終わっておきたいと思います。
  390. 渡辺栄一

    渡辺主査 山口君の質疑は終わりました。  次に、浦井洋君。
  391. 浦井洋

    浦井分科員 先ほどに引き続いて、基金の審査問題についてお尋ねしたいと思うのです。  先ほど局長は、再審査請求を保健医が出して、何らかの形でそれが決着がつくまで、約二カ月ぐらいで処理を完了しておるというふうなお答えがあったというふうに記憶しておるのですが、私調べましたところでは、たとえばこういう例があるわけなんです。ことしの二月の五日に愛知県の基金の幹事長が保健医とのいろいろな交渉の中で、いままで相当この再審査請求から決着がつくまで時間がかかっておったので、今後は三カ月以内にやりたいということを約束をしておるわけなんです。これがいわば実態なんですよ。だからこれが実態であるとするならば、やはり減点されてから相当長期間保健医は困っておる、減点をされた、しかし患者さんはまだ来ておる、だからこのままの治療ではたして審査が通るのだろうか、非常に不安だ、ときには、こういう治療をやっておったのではあかんのではなかろうか、私は適当だと思うのだけれどもというようなことで、治療を中断をして、そしてその医療機関の診療活動に支障を来たすというような例も私は多々聞いておるわけなんです。だから私は、厚生省なりあるいは基金なりが、ほんとうに熱意を持ってこの保健診療がスムーズに運ぶようにということであるならば、あらためて私は要望したいのですけれども、少なくともレセプトが基金の間にある間に一定の相談日を設けるというようなことを制度化するということが、このいろいろな支障を来たしておる原因を、一定度円滑に進める上でプラスになるのではないかというふうに私は思うわけですが、これについてひとつ保険局長の御意見をお伺いしたい。
  392. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 先ほど二カ月というふうに申し上げましたのは、私ども通常一般的に申し上げまして二カ月ぐらいの期間を要しておるということで申し上げたわけでございます。  それからレセプトがまだ基金にある段階で減点なり何なりの措置をしたらどうだろうかという御意見でございますけれども、確かにいろいろお話を伺っておりますと、現在のような事務の流れが最善であるかどうか、いろいろ問題点はあろうかと思います。これは先生の御承知のとおり、たとえば三月診療月分の診療報酬につきましては、来月始め、四月の始めに請求をいたしまして、来月の半ばに審査をして、それから五月に支払いをするということでございますから、むずかしいということでございます。しかし、レセプトそのものは大体四月の終わりごろには保険者のほうにいってしまう状態でございますから、いまのようなお考えでいくならば、三月診療月分については四月半ばごろに審査をしている段階で、なるべく早く通知がいくように、こういう御提言でございますし、またそれを制度化するということでございますから、これは私どもいろいろ基金とも相談をしてみなければ、そこまで仕事がはかどるかどうか、問題が相当あろうと思うのです。先ほど冒頭にも申し上げましたとおり、膨大な事務であることは先生も御承知のとおりであります。膨大な事務処理をいかに適切かつ効率的にやって、迅速に払って、そうしてまた間違いのある点は指摘をする。その指摘をすることを、いまおっしゃったようになるべく医療機関の方々に御迷惑のかからないようにするということですから、これは相当むずかしい御提言であろうとも思います。でございますが、皆保険下の医療というものは、医療機関も患者さんのほうも、それからまた保険者のほうも、みんなが一緒になって、基金も含めて円滑公正な遂行をはかるのが当然の責務でございますから、そういったいろいろなあげられました例は私ども十分に調査をいたしまして、どういう方法が現在の方法よりもよりベターであるか、こういう点はなお検討を続けてまいりたいと思います。
  393. 浦井洋

    浦井分科員 検討したいということであるわけですが、その前に非常にむずかしい提言であったというお話があった。しかし、件数の非常に多いところ、たとえば京都であるとか大阪、こういうようなところの基金では、私がいま言ったようなことがすでに実行されておるわけなんです。これは局長御存じですか、この実態は。どうです。
  394. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 聞いておりますが、先生が御存じになっているほど詳細に知っているかどうかは、私もよくわかりません。
  395. 浦井洋

    浦井分科員 だから一ぺん厚生省としてもその実態をよく調べて、ほんとうに前向でこの提言を受け入れてやるのかどうか、よりリアルに検討を進めていただきたい。よろしいですか。
  396. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 先ほど申し上げたとおり、膨大な事務の中での問題でございますので、どういうやり方が現在よりもよりベターであるかということについて、今後とも検討を続けたい、こういうふうに申し上げるわけでございます。
  397. 浦井洋

    浦井分科員 いずれにしても、これはひとつ大臣に聞きたいのですけれども、私、二時間前からいまにかけて、いろいろと相当こまかい問題について追及をしたわけですが、一番初めに申し上げたように、適正審査というような形で、実際には保険医療機関あるいは保健医が、不当な審査あるいは減点というようなことで泣かされておるという、そういう例が多々あるわけなんです。だから、これはやはりいまの健康保険制度というものを一そうゆがめる大きな原因になっておるというふうに思うわけです。ところがいまの保険局長のお話から類推をいたしましても、あまり厚生省のほうとしてはそういう基金のこまかい実態を知っておられないという感じがするわけで、はなはだ遺憾に思うわけでございます。そういう点で厚生大臣としては、私が二、三提言をしたわけでございますが、今後これを取り入れてやっていく気があるのかどうかという点について、決意のほどを尋ねたいと思います。
  398. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私も実は具体的にどういうふうになされておるのか、よく承知はしておりません、そこの審査機関において審査してやるわけですから。しかし私は、医療保険の診療報酬の支払いにあたっては、やはり厳正に審査するということが必要だと思うのです。厳正に審査するということは、私は当然だと思うのです。これだけ膨大な診療報酬であり、しかも国費が相当入っておる診療報酬でございますから、厳重に審査をして、適正なる医療が行なわれるようにするということは私は適当だと思います。その審査のやり方についていろいろ改善を加える点があるかないか、私もいまちょっと具体的に判断できませんが、改善を加える点があれば、それはもう改善するにやぶさかでない、かように考えておるわけでございます。  それからいろいろな減点について、二カ月とか三カ月とかかかるのはもっと早くとかいうお話もございました。それも私は必要があったら早くやるようにすることが適当であろうかと思います。要は、こういう診療報酬の支払いに関する事務でございますから、あくまでも適正に行なわれることが望ましいものであり、そういうふうに審査委員の方々は全部やっておられるものである、私はさように信じております。
  399. 浦井洋

    浦井分科員 大臣、それはだめなんですね。厳正な審査をやるのが当然だというような前提の上に立ってこの仕事を進められると、なかなかうまいこといかない。やはり全国の保険医が心おきなく国民の医療を守れるような診療活動ができる、そういう形に沿った基金のあり方でなければならぬ。それに一歩近づける努力をひとつやれというふうに私は要望したいと思う。もう一ぺん大臣に。
  400. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 要するに、国民皆保険下にあって医療担当者が国民の健康を守るために、公正と申しますか適切と申しますか、医療の内容をやっていただくということは最も望ましいことであります。しかし、そういうことであるからといって、いろいろな支払い事務について、適切でないものがあれば、注意をしたり審査をしたり、それは私は当然だと思うのです。究極は国民の医療を全うするということであればあるほど、そういうことも厳正であってしかるべきものである、私はさように考えます。
  401. 浦井洋

    浦井分科員 時間が刻々と迫ってきますので、審査問題はひとつその辺で一たんおくことにしまして、今後さらにこの問題について私も注目し、追及していきたいということを申し述べておきたいと思うのです。  次の問題は老人健診の問題です。老人の健診は、老人福祉法第十条に基づくかっこうでやられておるわけなんですが、一般診査が行なわれる。その中で必要とあれば精密診査が行なわれる。ところがその精密診査の項目が指定されておるために、本人なりあるいは医者のほうで、この検査が必要だと思ってもやれない。あるいはやった場合には、特に六十五歳から六十九歳までの老人の場合には自己負担になるというような、いわば制度的な矛盾が私はあるように思うわけなんです。これについて厚生省は今後、私はさしあたっては必要な精密診査はどんどんやれるようにすべきだというふうに思うわけですけれども、最初に一般的にどのように考えておるか、御意見をお伺いしたい。
  402. 高木玄

    高木(玄)政府委員 老人につきまして一般健康診査を実施いたしまして、その結果疾病の疑いがある場合に、その疾病の有無を確認するために精密診査を実施するわけでございます。これにつきましては三十八年度に精密診査項目九項目で始まったわけでございますが、その後五項目追加いたしまして、現在は十四項目になっておるわけであります「それで現在のところ主要な疾病については対応できるというふうに考えておりますが、なおこの精密診査項目をどうするかという点につきましては、専門の学者の意見を聞いて検討を進めてまいりたいと考えております。
  403. 浦井洋

    浦井分科員 この診査項目を見てもわかりますし、また厚生省のほうでもいわれておるようなんですが、これは老人の十大死因に対応するような形で設けていっておるのだ、こういう話です。事実老人福祉法の末尾にある付表を見ましても、あの記録票の下欄にそういう病名が書いてあるわけなんです。ところが上欄の精密診査のところを見ると、その下欄の診断名を探り当てるための項目が明らかに抜けておると私は思うのです。たとえば肺ガンなんかの場合には、これはレントゲンの単純撮影だけでなしに断層写真もとらなければならぬだろうし、そこに関節炎とかリューマチというような病名が書いてあるけれども、上には検査項目に骨関節のレントゲン写真がない、こういう矛盾があるし、現に地方の医療機関ではこの点で困っておるわけなんです。だから一番根本的には、精密診査項目のワクをはずすということが大事だとは思うわけですけれども、少なくともそういう要望のあるような項目はもっと積極的に、しかも早く精密診査の中に加えていくというような姿勢が必要ではないかと私は思うのですが、どうですか。
  404. 高木玄

    高木(玄)政府委員 老人の主要な疾病、特に死因となるようなものにつきまして、それに対応する精密診査というものが行なわれるわけでございます。したがいまして、その後逐次この診査項目をふやしてまいっております。この点につきましては、ただいまレントゲンの断層撮影のお話もございましたが、こういった点につきまして、今後とも専門家の意見も聞き、また医療機関の設備能力等も勘案しながら、前向きに検討してまいりたいと思います。
  405. 浦井洋

    浦井分科員 その問題について、ひとつ大臣の御意見なり決意なりを一言聞いておきたいと思います。どうですか。
  406. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 局長が申し述べたとおりでございます。
  407. 浦井洋

    浦井分科員 それでは局長の、前向きで検討したい、積極的にやりたい、こういうことばを信用して、この項目についてはおきたいと思います。  次の問題は、大臣、よく聞いておってくださいよ。乳児の医療費の無料化、これの制度化の問題ですが、これはもうすでに大臣も十分御承知のように、憲法なりあるいは児童福祉法の精神、趣旨からいっても、私は当然実施すべきだと思うし、現に地方の相当多数の自治体は、この医療費の無料化の制度化に踏み切って住民に感謝されておる。そしていまになってみると、特に四十九年度の各地の予算を見ると、厚生省が踏み切らないというか、非常に否定的な見解をとっておるために、せっかく発足した制度が足踏みしておる、ないしは後退してきておるというような実情であると私は判断するわけですが、私はあらためて大臣に、この際乳児医療費の無料化の制度化に踏み切るべきである、その気があるのかないのかという点について聞きたいと思います。
  408. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この乳幼児の医療無料化ということにつきましては、全国でも相当の市町村がやっておるということは私はよく承知しております。そこでこれを国の制度としてやるかやらぬかという問題でございますが、これはやはり非常にむずかしい問題でございます。金がよけいかかるとか、かからぬとかいうことのほかに、私どもは乳児につきましては、難病等については公費負担制度を実施をしております。  問題は、乳児の医療については、病気になったときのなおす金を国が持つ、保険で持つということ以上に、実は一番大事なのは健康診断なんです。乳児というのはしゃべらぬわけでございます。母親が一番知っているわけでございまして、病気にならぬように健診をするというところに国はもっとアクセントを置いてやるべきであるというのが、私の基本的や考えなんです。ですから、健康診査につきましては、御承知のように昨年から無料化というものをやりまして、四十九年度は二回でしたか、やるようにしようといったふうに、健康診査のほうにむしろ重点を置いてやるべきではないか、こういうふうに実は考えておるのです。  それからもう一つ、私もいろいろ理屈を述べるのはあまり好きではありませんが、乳児医療無料化ということをやりますためには、小児科の専門の先生というものが相当整備されなければならぬということが第一前提なんです。ところが、御承知のように、小児の専門のお医者さんというのは、全国で三千人きりいないといったふうなことで、責任をもって乳児の医療無料化ということをやるならば、それを受けて立つ体制というものが整備されなければ国としては責任を持てないんじゃないかというふうな疑問もあるわけでございます。  それから市町村においては、無料化ということをやり出しましたのは、昨年の健康保険法改正前から始まったのが多いのです、実は。いわゆる三万円という高額医療制度、これは子供であろうが、おとなであろうが、非常に喜ばれておる制度です。この制度が去年やっとできたばかりなんです。乳児の医療無料化ということを唱え出したのは、その前なんです。というふうなこともありまして、高額医療制度というものができたというふうな医療保険制度の改革、そういうふうな事態を踏まえて、乳児医療無料化というものを国の制度でやっていくかということになると、いま直ちに踏み切ることは困難であろう。しかし、せっかくの御意見であり、全国の市町村も相当やっておることでございますから、こういう問題については、医療保険制度と公費負担との関係において今後とも十分私は研究を続けてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  409. 浦井洋

    浦井分科員 そうすると、いろいろ問題がある。その問題点は、私も十分承知しておるわけなんですが、大臣のお答えを分析するならば、将来にわたっても絶対にやらないというようなことではなしに、いろいろな問題が解決し、条件が整備されるならば、これは考慮するというふうに理解してよろしいですか。
  410. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いつの日かやる、こういうふうに申し上げているのでもなければ、絶対にやらぬと申し上げているのでもない。いろいろむずかしい問題もありますので、今後とも検討を続けます、こう私申し上げておるのです。あまりそっけなく言うと、先生に、それではというようなことでまた出てきてもいけませんから、私は絶対にやらぬ、永久にやらぬというようなことは言うておりません。それからまた、何年か先にやるというふうなことも言っておりません。非常にむずかしい問題がありますので、そう簡単にはまいりません。しかし十分——市町村が相当やっておることですから、そういう例も踏まえて十分検討を続けてまいりたい、こう申し上げておるわけでございます。
  411. 浦井洋

    浦井分科員 時間がだんだん迫ってくるのですが、事務当局にこの点についてお尋ねしたいんですが、これは年に一回ぐらい、昨年もことしも一月の中ごろに婦人団体と厚生省当局が会われて、いろいろな要望を聞かれて、いろいろな返事もしておるというふうに私は聞いておるわけなんです。最近の話では、本年の一月十七日に婦人団体と会われたときに、乳児の医療費の無料化に関する調査を予算内でやるというふうな返事をされたというふうに私は聞いておるわけなんです。ところが四十九年度の予算を見まして、それに該当する項目は何もないわけですし、何ら措置をされておらないというふうに私は思わざるを得ないのですが、一体その約束を履行される気があるのか、気があるならば一体何をこれから調査されるのか、またどういう点が——これは大臣も抽象的には言われたわけですけれども、どういう点に問題点があるのかというような点について、ひとつ事務当局からお聞きしたい。
  412. 翁久次郎

    ○翁政府委員 私、実はその御婦人の団体とお会いしていないものでございますから、どのようなことを事務当局が申しましたか、確とした御返事ができない、まことに申しわけない……(浦井分科員「こういうことを言っておるわけですよ、いま言うたようなことを」と呼ぶ)それで去年実は全国にわたって、市町村、府県で乳幼児医療の無料化の実施状況の調査をいたしました。現在、三十九県六指定都市、約二千七百の町村で実施をしているということはつかんでございます。  なお、現在、中央児童福祉審議会におきまして、この問題も含めた討議がなされていることも承知しております。そこで、四十九年乳児医療の問題について調査をするということについて、どのような答えをしたかについては承知しておりませんけれども、大体の実情は事務当局としてもつかんでおりますし、問題点は先ほど大臣がるる申し上げたとおりでございますので、問題点はこれに尽きるのではないだろうか、かように考えております。
  413. 浦井洋

    浦井分科員 これは局長は出ておられないかもわからぬですけれども、昨年一月にもすでに、四十九年度の中で積極的な方向でこれは進めたいというような返事を婦人団体との交渉の中で示されておる。しかも、もう一ぺん繰り返しますけれども、ことしは一月の十七日には、無料化に関する調査を予算内でやるという返事をされておるわけなんです。これでは御婦人団体を裏切るということになりますよ。何でもっと積極的な姿勢がとれないものなのか、この点についてひとつ、もう一ぺん聞きたいと思う。
  414. 翁久次郎

    ○翁政府委員 もちろん十分調査いたしますけれども、ただいま事務当局の担当者に聞きましたのでも、実はそういうことについては承知しておらないようでございますので、この点は直ちに調査いたします。
  415. 浦井洋

    浦井分科員 聞いておらない、私は聞いたということで、これはここで問答しても始まらぬので、さっそくいままでのそういう団体であるとか、あるいは国会の中でもいろいろな問答がかわされた、こういう実態について、すぐに調査をして私に報告していただきたい、こういうふうに思います。
  416. 翁久次郎

    ○翁政府委員 承知いたしました。御返事申し上げます。
  417. 浦井洋

    浦井分科員 乳児医療の問題については、非常に中途はんぱなかっこうになるわけですが、この辺で一応終わりまして、次に最後の問題としては、健康保険法の第二十三条に基づく政管健保の被保険者の中高年齢者の疾病予防検査の問題について聞きたいと思う。  これは一つの問題は、私が聞いたところでは非常に事務的な手続が煩瑣になっておるために、実際の被保険者がなかなか病院に行けないというような意見を聞いたわけなんですけれども、その点についてはどうですか。
  418. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 成人病検査の手続につきましては、私どもは手続はむずかしいというふうには思ってはおらないのでございますが、ただ昭和四十八年度は四十七年度に比べまして、飛躍的に検査対象人員を増加いたしました。それに、そういう点がございましたので、いろいろ事業所等に対しまして、そういう検査対象になる被保険者の方々のいろいろな名前の問題とか、年齢のチェックの問題とか、早急にお願いするようなことがありましたので、その点でいろいろ事務的に一部混乱といいますか、むずかしさがあったんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。
  419. 浦井洋

    浦井分科員 今後は、円滑にやれるという見通しなんですか。
  420. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 四十九年度は、年度当初から円滑にやれるように、いま各社会保険事務所を指導、指示をしておるわけでございます。
  421. 浦井洋

    浦井分科員 もう一つの問題があるわけです。円滑にその面でやれたとしても、今度はそれを実施する医療機関の側の問題なんですね。たとえば兵庫県では、今後年間にさしあたって八千人くらいはやりたい。ところが、去年の十月からですか、ことしの三月までに消化し得るのが、数として勘定するならば千人に満たないという状況、これをふえんしていくならば、おそらく来年度も同じような状況になるのではないか。そういう点で、いまのところ厚生省の方針としては、国公立病院であるとか、あるいは公的医療機関というような健保病院ですか、こういうようなところを指定医療機関にしておるようでございますが、これはやはり一定の条件を満たすならば民間の病院などにもこの指定は広げて、そしてできるだけ数を多く消化をするということがやられて当然ではないかと私は思うのですが、どうですか。
  422. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 成人病検査につきまして、浦井先生おっしゃいますように、四十八年度は健康保険病院、健康保険診療所、それから健康保険の健康管理センターのほかに、国公立病院、それから日赤、済生会、あるいは厚生農協連の病院というようなところを原則として、ひとつお願いをしようということでやっておるわけでございますが、ただ、先ほど申し上げましたように、四十八年度は非常に検査対象人員を増加いたしましたものですから、地域によりましては、あるいは府県によりましては、健康保険病院のない府県もございますし、それから国公立病院とか、あるいは公的医療機関だけでは十分でない地域も中には出てくるものと思うわけでございまして、四十九年度は地域によりましてそういう点をひとつ考慮して、他の医療機関にもお願いをしなければならないところはするようにいたしまして、円滑に実施をはかっていきたい、こういうふうに考えております。
  423. 浦井洋

    浦井分科員 これで終わりますけれども、いろいろな点を私きょうは質問をしたわけでございますが、やはり何といっても国民の健康が保持され、そしてできるだけ長生きができるというためにこそいろいろな制度があるわけなんで、そういう点でひとつ大臣に思い切った住民の、国民の側に立った施策を要望をして、質問を終わりたいというふうに考えます。
  424. 渡辺栄一

    渡辺主査 浦井君の質疑は終了いたしました。  小宮武喜君。
  425. 小宮武喜

    小宮分科員 大臣、お疲れでしょうが、もうしばらくひとつがまんしてください。  私は、今回の医療費の改定について質問します。  御承知のように、二月一日から総ワク一九%、実質一七・五%という、これまで最高の医療費の値上げが実現されているわけです。したがって、この引き上げによって国民ははたして二〇%といっても、一七・五%といっても、どれくらいの値上げになるか、やはりぴんとこないんです。  そこで、ひとつお尋ねしますが、私が例をあげますから、たとえば家族がかぜで五日間通院したとき、いままでと比べて幾ら負担がふえるのか。今度は歯医者のほうも関係がありますから、虫歯で治療に一週間通院した場合に、いままでより幾ら負担がふえるのか。  もう一つは、今度は手術のほうにいきます。盲腸の手術で十日間入院した場合に、いままでと比べて幾ら負担がふえるのか、ひとつ説明してください、わかりやすく。
  426. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 はなはだ申しわけないのでございますけれども、いますぐに計算をいたしまして、御質問の間に答えを整理いたしまして申し上げます。
  427. 小宮武喜

    小宮分科員 それでは、あとで計算ができてからひとつ答弁願いたいと思う。  そこで、今度の医療費の値上げによって、またまた財政基盤が弱い政管健保がピンチに追い込まれるのではないかというように考えます。そこで、四十八年度の場合は二月からですから、さほど影響はないと思いますけれども、四十八年度の政管健保の場合、幾ら負担増になるのか、収支はどうなるのか。それからさらに、四十九年度でもろにかぶってきますから、四十九年度の政管健保の財政収支はどうなるのか。その点、いかがですか。
  428. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 今度の医療費改定に基づきまして、四十八年度は差し引きの不足額が百十二億円というふうに見込まれて、それだけふえるというふうに見込んでおります。それから四十九年度につきましては、千四百七十七億の増加を来たすというふうに見込んでおるわけでございます。
  429. 小宮武喜

    小宮分科員 四十九年度では、その健保財政は赤字になりますか。
  430. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 大ざっぱに申しますと、昨年の健保改正に基づきまして、ある程度財政的には安定した基盤の上に立ってこの収支が考えられてくるというふうに私ども考えておりますけれども、ただ、四十九年度は今回の二月の大幅な医療費改正がございますので、もしこの改正がございませんければ約四百億ないし五百億くらいの黒字になるという見込みなんでございますが、先ほど申し上げましたような実質一七・五%の医療費の増加、千六百四十一億円国庫補助を控除いたしますと、大体千四百億円から千五百億円が不足になりますので、相当大幅な不足を生ずるわけでございまして、このままでは収支は赤字になる、こういうことになります。
  431. 小宮武喜

    小宮分科員 四十九年度で不足するという千四百七十七億円というのは、結局赤字が出るということに理解していいですね。そうであれば、前国会で弾力条項の問題がいろいろ問題になりましたけれども、それでは弾力条項の発動をいよいよやらなければならぬという事態に追い込まれてきたと思うのですが、弾力条項の発動をしますか、しませんか。するとすれば、上げ幅は幾らでいつから実施するか、その点を……。
  432. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 先ほど申しましたように、昨年の健保法の改正によりまして、一応毎年十六、七%くらいの収入のほうでは増収が行なわれる。しかしながら、医療費の自然増が毎年八、九%ございますので、差し引き七、八%は医療費の改正等の政策的な改定に充て得るようなことになりまして、財政は一応安定的な体質とはなったわけでございます。ただ、来年度の場合、大幅な医療費改定ということによりまして、これは保険料率の昨年の改正によりますいわゆる弾力条項といいますか、弾力的な調整規定というものによる調整を行なわざるを得ないものということで予算の見積もりを立てておるわけでございます。しかしながら、この調整につきましては、そういう安定的な財政体質というようなことも考えまして、かつ被保険者等の急激な負担増ということをできるだけ避けたいという見地から、昭和四十九年度に生ずる赤字は昭和五十年度で吸収するという意味をもちまして、二年度にわたる財政収支のバランスをとってやっていくというふうな考え方に基づいて予算の見込みを立てておるわけでございまして、具体的には現在保険料率が千分の七十二でございますが、これを千分の四ふやしまして千分の七十六まで引き上げるというような見込みでおるわけでございます。  それから実施時期につきましても、昨年の十月に千分の七十から千分の七十二に引き上げましたわけでございますので、一年間は据え置きたいということで、来年度の十月以降、弾力的調整を行ないたいこういうふうに考えておるわけでございます。
  433. 小宮武喜

    小宮分科員 〇・四%引き上げてもなおかつ赤字が残る。その残る赤字は五十年度、二年間で処理するということですね。結局千分の七十二から七十六に弾力的に引き上げた場合に、具体的にそれでは標準報酬月額の十万円の人、十五万円の人、二十万円の人、そういう人は負担が幾らふえますか。
  434. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 十万円の標準報酬の人は、この弾力条項による調整によりまして月に百九十六円、十五万円の人で三百円、二十万円の方で四百円ということになるわけでございますが、来年度の見込みの平均の標準報酬は約九万数千円でございますから、大体百八十何円というのが平均引き上げということになるわけでございます。
  435. 小宮武喜

    小宮分科員 いま言われたように、弾力条項の発動によってもなおかつ赤字が出る。その赤字は四十九年、五十年で処理していくということは、四十九年、五十年にはもう診療費の改定は行なわないということが前提でなければ、その計算はできないはずなんです。それでは、そういうふうに四十九年、五十年は診療費の改定も弾力条項の引き上げもやらぬというふうに確認していいですか。
  436. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 今回の改定がことしの二月でございます。それで従来からの大体の例によりますと、前二回は二年のインターバルで改定いたしました。ただ従来からいろいろ中医協等でも言われておりますとおり、また現在のような動きの激しい社会でございますから、そのような長いインターバルでしか診療報酬を改定しなくていいのかどうか、そういう問題は非常に大きな問題であると思います。  そういうことから考えますと、私どもは現段階では何とも言いかねまするけれども、四十九年度中に絶対にないとも言い切れませんし、またあり得るかもしれないという言い方も言えます。それから五十年度ということになりますと、やはり五十年度ということになって、いまから二年あとといたしましても五十一年の二月でございますから、五十年度にはやはり従来のままのような行き方でいっても、これはもう十分あり得るというふうなことで、いま先生のお尋ねを総合いたしますと、やはりいずれかの年度であり得るのではなかろうかというのが現段階における予測でございます。
  437. 小宮武喜

    小宮分科員 私も、おそらく四十九年度も弾力条項の発動をする、おそらく五十年度も弾力条項の発動せざるを得ないだろうという見通しに立っておるわけです。というのは、いま二年間でその赤字の処理をするといってみても、これはその間診療報酬の改定をすべて一切やらぬということが前提の上に立っての計算なら、それで話はわかります。ところが、もう現に大臣は、中医協に対して、診療報酬制度のスライド制を諮問しているわけですよ。それで大臣は、諮問にあたって、三月末まで何らかの結論を出していただきたいということを諮問しているわけです。そうすれば、今度の診療報酬の改定だけでも、すでにもう〇・四%の弾力条項の発動をやった。また、この結果がどうなるかは別として、診療報酬のスライド制の問題が、もし大臣が期待するように三月末まで答申があった場合、あるいはそうでなくても、一カ月、二カ月ずれても、またいまのままでほんとに赤字を五十年度まで持ち込んで二年間で処理しようとしても、ますます赤字がふえていくことになるのですよ。したがって、私は、そういうような意味では、もうすでに診療報酬のスライド制の問題を諮問しておるのだから、そうであれば私は、少なくともそれを、ことしもう二回ぐらい弾力条項の発動までしなければならぬ事態になると思いますけれども、おそらくまたあとの千分の七十二が七十六に上げたわけだから、一度で、今年度上げれば、これはまたいろいろ大臣の責任問題にもなろうし、おそらくそれを来年に回して、赤字は持ち越したまま来年になって、また弾力条項発動ということになるのが目に見えているのではないか、もう少し正直にひとつ言ってもらいたいということなんです。だから、その意味では、あるかもしれぬというようなぼかし方をしましたけれども、私は、それでは、今回の診療報酬のスライド制の問題が、かりに四十九年度のいつに答申されるかわかりませんけれども、その問題だけに限ってそれが答申がされても、その診療報酬の改定ということはやらないというふうに理解していいですか。
  438. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいまのお話の中で、先ほども申し上げましたが、診療報酬の改定はあるかもしれないし、ないかもしれないというようなことを申し上げたわけであります。ただ、スライドの問題は、これは御承知のとおり、診療報酬にいわゆるスライド方式を導入することについてということで、現在中医協に御意見を伺っている段階でございます。したがいまして、これが、どのような内容のものが答えとして、出てまいりますか、その点私どもも現段階では容易に予測はできません。  それから、もう一つ申し上げておきたいことは、かりにどういう形であれ診療報酬の改定がございましても、反面におきまして、先ほど医療保険部長からも申し上げましたとおり、いわゆる春闘による賃上げ、これがどの程度の幅になるか、われわれの、いろいろのものを見聞したところによりますと、今年度はかなり大幅なものになるのではなかろうかというような予測もあるわけでございます。でございますから、これが大幅なものになりますると、これは標準報酬のこの秋の政府決定に大きくはね返ってくる。それからまた、先般の標準報酬を二十万まで上限を上げましたことによって、そのはね返りのぐあいというものは、健康保険法の改正以前に比べますと非常に大きな収入面のプラスの要因になるのであります。でありますから、そういった歳入面の増加要因がどの程度——診療報酬かかりに引き上げられるということをも含めて、どの程度歳出面の要因を吸収できるかということは、私どもは現在の段階ではなかなか容易には予測できないと思うのでございます。  でございますから、そういったことから、標準報酬がどの程度伸びるか、また診療報酬がどの程度、どのような形であれ、上げられるか上げられないか、その辺は両方の見合いで今後考えていく問題でございますので、いまの段階で、今後毎年度毎年度必ず弾力条項が援用されることがあるということを断定的にお考えいただくことは、まだまだいかがなものであろうかというのが、現在のところでございます。
  439. 小宮武喜

    小宮分科員 いまの答弁からいくと、もう頼みの綱は、今後もう大幅に賃上げをひとつぜひ実現してくれ、それで自然増がふえるようにあってもらいたいという願望がやはり含まれているんですが、そうしたら、今度の春闘あたりでは、ひとつ大臣も先頭に立って、健保の赤字が少しでも埋まるようにひとつ公労協あたりの賃上げについては、ぜひ要求どおり賃上げをやってくれということを、大臣もひとつ、これは労働大臣とか官房長官あたりには言ってもらわなければ困るのですね。それはそれとしていいですよ。しかし大臣、中医協というのはいつ——いま大体二月上旬にでも中医協を再開して、いまの診療スライド制の問題を審議してもらうという意向のようであったようですが、もうすでに三月上旬になっております。何のために中医協の開催がおくれたのかということになると、また春闘関係のことを言われると思いますが、一応、中医協が再開されない理由はどうですか、大臣。
  440. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これは私労働大臣じゃございませんが、春の闘争というものは、日本の置かれている経済事情というものをわきまえた節度ある態度で終始していただきたいということを、私は国務大臣として希望しておるわけでございまして、大幅なる改定などをして、それによって保険料収入が多くなるなんというけちなことを考えるべきものではない、かように考えておるわけでございます。もし保険局長がそういう考えであるならば、厳重に注意をいたす考えでございます。  ところで中医協に対しましては、昨年の暮れ、スライド制の導入について諮問をいたしておるわけでございます。二つの諮問をいたしましたが、一つ診療報酬改定は、十二月三十一日に答申が出たわけでございます。もう一つの諮問をいたしたわけでございますが、これについては、まだ中医協は一回も開催されてないというのが今日までの実情でございます。私としては、厚生大臣が責任をもってスライド制の導入について諮問をした以上、できるだけすみやかなる答申のあることを私は期待をいたしております。どういう形で審議会が今日まで開かれていないのか、私はその理由を知りません。知りませんが十二月に諮問を申し上げたことがいまだに審議の対象になっていないということは、私としてはまことに遺憾なことであると存じております。
  441. 小宮武喜

    小宮分科員 その理由を知らないということですが、これはやはり中医協の今度の答申で、大臣が、支払い側、公益側の多数意見の答申を無視したということで、公益側、支払い側もかなり反発しておりますし、また、特に支払い側では非常に態度を硬化しているというのが私は原因ではないかというふうに考えます。しかし、この問題はまた別の機会にやります。  次は、最近の医薬品の値上がりの問題ですが、これはいろいろな物価問題が、今国会でいろいろ論議されて、最近やはりつくられた物価上昇であり、便乗値上げということが大体明るみに出つつありますけれども、医薬品についても私はその例外ではないと思う。特にそういう意味で、かぜ薬とか胃腸薬あたりの大衆薬の値上がりは非常にひどいということについて、全部が全部便乗値上げとは思いませんけれども、しかしこの大衆薬の値上がりの実態はどうなっておるのか。時間があれば私詳しくやりますけれども、ありませんから、大体その値上がりはどうなっておるか、値上がりの幅はどうなっておるのか、大衆薬について……。
  442. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 大衆薬の中で、値上がりが特に問題にされております昨年の九月から本年の二月にかけまして、特に問題になりました再販を取り下げまして値上げした品目は、私どもの調べました限りでは、一部医薬部外品が入っておりますが、八十二品目、百三十四容量、値上げ幅は大体平均三五・一%という程度でございます。
  443. 小宮武喜

    小宮分科員 それは再販指定を取り下げたやつでしょう。しかし、一般の大衆薬以外に、厚生省が薬価基準で指定した薬も、これは昨日あたりの新聞を見ると、東京都内でも二倍に上がっておるということもいわれておるわけですが、大衆薬以外に薬価基準で示した薬についても、かなり値上がりしておる。その点についてはどれくらい値上がりしておりますか。
  444. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 薬価基準につきましては、先生御案内のように二月一日に実施いたしました薬価基準の告示によりまして、全体といたしましては三・四%の引き下げを行なったところでございます。この価格は薬価調査によります全数調査のほかに、中医協の御意見によりましての経時変動調査を加えまして修正いたしました数値でございます。したがって、その中には基本的な局方薬等で若干値上がりをしたものにつきましては、薬価基準を引き上げたものもございますが、全体として三・四%の引き下げ、そういう価格になっております。ただ、先生御指摘のように、これは昨年の大体十一月ごろまでの経時変動調査でございまして、それ以後のいろいろな情勢によります値上がりというのは若干見られるわけでございます。ただ、薬価基準の性格から申しまして、薬価基準の幅の中での値上がりということは、これは直接医療に支障を来たす要素のものではございませんので、御指摘の点は、おそらくごく一部に見られます逆ざやというような現象の問題であろうと存じますが、そういったものにつきましては目下種々調査を行なっておりまして、これは品目の数としては八千品目ほどの薬価基準の中でごく一部の局方等の基礎的な医薬品でございますので、こういったものにつきましては、いろいろな手段を講じて、薬価基準内におさまるように指導いたしておる段階でございます。
  445. 小宮武喜

    小宮分科員 厚生省もやはり今度の大衆薬の便乗値上げについて、便乗値上げをしたと思われる十一社の幹部を呼んで、値下げの勧告あるいは値上げの撤回を要請していますね。それと二月六日にやって、それが二月八日には回答があった。たちどころにききめがあったわけですが、それほど、わずか一日か一日半かのうちに、いままでの値上げ予定をすぐ撤回してみたり、すぐ値を下げてみたり、そういうようなことを見ると、それは厚生省の指導によってわれわれはやむなく、損はするけれどもやったのだというメーカー側の言い分は必ずきまっておるわけですが、しかし、それから見ると、私はやはり大衆薬の値上げについては、確かに便乗値上げがあったというふうに判断しておるわけです。ところが厚生省がおかしなことには、こういうような値上げをされたことを——再販指定を取り下げて値上げをする、これを厚生省は知らなかったですか。いかがですか。
  446. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 再販の取り下げという行為は、これは公取の御所管でございますが、御承知のように、これは届け出制になっております。それで、一月以内に届け出をするということで、その届け出の書類は私どものほうに写しがくることになっております。したがって、私どもは把握はいたしておりましたが、御指摘のように、多少時期がずれておりたものも中にはあるわけでございます。ただ、いま御指摘のように、わずか二日で値下げをしたではないかということでございますが、十一社呼びましてきびしく注意をいたしましたのは二日前でございますけれども、これは前に申し上げたかと存じますが、すでに一月の初めに業界の会合におきまして医薬品の価格の安定につきましては、私から厳重な注意をいたしましたし、また、一月の二十八日に業界団体に対しまして、すでに公文書をもって、医薬品の価格の安定について指示をいたしております。さらに四日の日には、全閣僚と財界との話し合いがあり、財界も全体として協力を約束しておるというようなことを踏まえまして、さらに大臣の御指示によりまして、特に社会に問題の多い再販を取り下げたという業者を招致いたしまして、注意をしたという段取りでございます。それまでには各社におきましても、その社会的責任を自覚いたしまして、こういった価格の改定ということについては、社内的な検討も相当行なわれておったというふうに私ども了解いたしております。
  447. 小宮武喜

    小宮分科員 今回のそういうような措置は、やはり厚生省としては大臣の指導よろしきを得て、他の省に比ぶれば確かに適切な処置をとったと思います。しかしながら、こういうようにいろんな物価がどんどん上がっておるときに、少なくとも医薬品は上がってはいないかどうかということぐらいは、日常、昨年の十月ごろからでも、ちゃんとやはり——再販指定を取り下げる問題は、いま言われておるようなそういうような仕組みになっております。だから知らなかったと言えばそれまで、しかし、医療行政の元締めとして厚生省が、物価がどんどん上がる場合に、自分の所管の医薬品について、これは上がってはいないかということで調査をし、実態をつかむというのは、私は当然のことだと思うのですよ。だから、その意味では一生懸命やっておるけれども、私から言わせればまだまだ手おくれの感が強い。そういった意味で、たとえば十一社の幹部を呼んで値下げの回答をしましたね。それでまた白紙撤回したのがありますね。しかし、それはメーカーが言うだけで、実際に値下げになっておるのか、その点はどこでチェックしたですか。
  448. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 私どもといたしましては、大衆薬全般の価格につきまして、確かに先生御指摘のように、これは常時経過を追っておく必要があるということで、二月の初めに大衆薬のメーカー主要なもの大体五十社を招致いたしまして、その建て値を全大衆薬について調査いたしますと同時に、全国にモニター薬局を設けまして、主要な医薬品三十一品目につきましての月に二回の追跡調査を行なっております。そのほかに、各県におきましても、問題のありますものについて独自の調査を行なっておるものもございまして、そういったものを総合いたしまして、今後医薬品の大衆薬の価格につきましては誤りなきを期してまいりたい、そのように考えておる次第でございます。
  449. 渡辺栄一

    渡辺主査 先はどの調査の結果を保険局長から……。
  450. 小宮武喜

    小宮分科員 私がこれから質問してから、一緒に答えてください。
  451. 渡辺栄一

    渡辺主査 時間があまりありませんから……。
  452. 小宮武喜

    小宮分科員 ぼくは四、五日前に、院内の第二議員会館の薬屋さんでかぜ引き薬を買うたのです。一カ月ぐらい前に買ったときは五百円かつりがきたのです。今度は千円になっておるわけです。そういうものだから、見たら定価書いてないわけだ。厚生省に電話をかけて、そういうような大衆薬には定価を書かぬでもいいのかと言ったら、書いてもいいし書かぬでもよろしいという返答だったわけです。だからいま薬の定価を書きかえるのに忙しい、だからお客さんに説明をするのが、心苦しいと、良識ある薬局の御主人はそう言っておるのですよ。定価がないもんだから、この前まで五百円かつりが来ておったかぜ引きの薬が、千円払わなければならぬ。そういうことで、値下がりしたのか、やれチェックしたのかといってみたってわかりはせぬでしょう。もっとそういった大衆薬とかそういうものについても、定価ぐらい表示させるようにしたらどうでしょうか。最近よく定価のところを切ってしまって——郵便封筒もそうですよ。定価のところだけ切って売っている。そういうようなことは、あなたたちよりも販売店とか小売り店とかメーカーはちゃんと抜け道を考えるのだから、それをただ机の上だけでモニター制度をつくって、こういうような薬局をつくって監視しますと言ってみたところで、あなたたちのモニターに指定されておらぬところは、どんなことをするかわかりはせぬ。もう時間がないが、その点についても消費者みんなが見て、これは定価幾らだとわかるようなことを考えていただかぬと……。
  453. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 御指摘の点、十分踏まえまして指導いたしたいと存じます。ただ定価の表示につきましては、これは建て値は業者の小売り希望価格でございまして、それをある程度以上強制いたしますと、これは独禁法に触れるというような問題もございますし、末端価格もできるだけ安くしたいというような国民の要望もあるわけでございまして、そういった希望もかなえられ、法にも触れないような形でできるだけ安い価格で販売できるように指導いたしたいと思います。
  454. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 冒頭のお尋ねにお答えいたします。日数の設定が多少違っておりますが、時間の関係上お許しを願います。  第一の例のかぜの場合でございますけれども、乙表の診療所で感冒に急性へんとう腺災が起こったものについて、通院四日間といたしまして、投薬は解熱、鎮痛剤に抗生物質、注射は抗ヒスタミン剤一本という例を取り上げますと、旧点数では二百三十六点が二百八十一点になりまして、一九・一%の増加でございます。  第二の虫歯の場合ですが、通院二日間、即日充てん処置をいたしまして、旧点数百十九点が百四十四点、二一%の増であります。  第三番目の虫垂災でございますが、甲表病院で看護、給食、寝具、それぞれ基準にのっとっておりますものにつきまして申し上げますと、手術は虫垂の切除、入院一週間、抗生物質四日間ということで計算いたしますと、三千二百十三点が三千九百三十五点になりまして、二二・五%の増加でございます。
  455. 小宮武喜

    小宮分科員 これで終わります。
  456. 渡辺栄一

    渡辺主査 以上で小宮君の質疑は終わりました。  次回は、明八日午前十時から開会し、厚生省所管について質疑を続行いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十七分散会