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八木(一)
分科員 大河内先生からその話は聞きました、社会保障制度審議会で
政府から
お話があったと。中川先生その他と、スライドというのは非常に大事な問題ですから、そういう権威者とも御相談になってやられること自体はけっこうだと思う。ただ、政治は学問とは違うわけです。いま、狂乱物価があるときにすぐに対処しなければならないわけです。学者的良心で何が一番いいだろうということは、これはいま社会保険審議会厚生年金部会で、去年の年金法審議の際に、実際のやり方についてはそこで聞いてくれということになって、それで聞いてみますと、厚生大臣が言っていますが、それが悪用されてブレーキにされておるわけです。それはこんなに狂乱物価にならないだろうと、去年程度の、去年の初めに予想された程度の物価の上がり下がりであろうということを推定して、それでそういう平常時においてスライドは何が一番いいかということを論議しよう、そういうことで去年約束になったことを、いまそういうところで、それを
理由にして、そこの結論が五月に出る、それから
事務的にやると半年かかるということを、できないという
理由にしておられるわけです。これもおしかり申し上げておきました。
それはそれでいいんです。それから、大河内先生等と御相談になることはいいんです。どんどんやっていただきたい。これはやや恒久的な問題です。その中に緊急スライドがあっても、いまの間に合わないで、たとえば、再来年ぐらいにまたこの物価急騰があったときに、緊急スライド制は、大河内先生その他の御意見を伺って、いまから準備されておいたらいいと思う。それはそれでやっていただきたいと思う。
ところが、いまこれが上がっているんですからね。そんなもの協議をする、検討することでは間に合わないわけです。そのときには、政治家は国民のために勇断をふるわなければならない。それはいま、どれだけの金額を支給すると、金額はちゃんとわかっておるんですから、それに、たとえば一・二なり、一・二五をかければ数字はすぐ出るわけです。それを財政の問題を心配されるでしょう。財政の問題を心配されますけれ
ども、それほど
——それは大ぜいの人数ですから、そんなに少なくはありませんけれ
ども、それほど心配される金額ではございません。これはまた、厚生年金であれば、修正積み立て金方式をとっておるわけでございますから、そこに財源があるわけです、金が。すぐ国庫支出をするというのは、いまの法律上では、そのうちの二割だけ、国からその支払い時に国庫負担をするということになりますから、法律だけでいけば、国庫負担はしなければならないことになりますから、それが全額が
——前の予定されたところ、二〇という数字を申し上げましたが、それは一〇の場合もあります。そのときの財源はあるわけです、厚生年金の積み立て金に。うんとたくさん、十兆ほどある。支払い時の国庫負担が法律的に問題です。必要あれば、このときだけは基金のほうから払って、それから
あと国庫負担を一年後に払うということだってできるわけです。ほんとにやる気ならどんどんできるわけです。数字のほうは一・二、一・二五あるいは一・一、そういうものをかければすぐ出るわけです。
やろうとすればできることは、やはりいま国民の
生活に責任を持っている政治が対処をしなければならない。学者の方は恒久的ないい筋道を論議されるでしょう。しかし、その間にも
生活が圧迫をされているんですからね。そういう点で私は申し上げているわけであります。いま
総務長官のおっしゃるのは、それはそれで進めていただく。しかし、
政府としては物価の上昇に関して緊急なスライド制をとるという
意思をその
方々にお伝えをいただきたいけれ
ども、それ以上に、それとは
関係なしに、それとは別に閣議で、いまのことを御論議を願いたいと思う。
それから、上がることばかり
考えて、それじゃ困るというような
考え方があるといけませんから申し上げます。
このスライド制は問題はありますけれ
ども、いまのところ、上がったら上げる、下がったら下げることになっているわけです。野方図に
政府負担がふえるということとお
考えにならないようにしていただきたい。
田中内閣がしっかりやって物価を安定させれば、それを発動しないで済むわけです。それがうまくいかないで物価が急騰したら、国民のために、どうしてもそれをやらなければならない責任があるわけです。ですから、何でも学者に聞かれることはよくありません。いまこんなときに、たとえば買い占めがある、学者にそれをとめるにはどうしたらいいでしょうと聞いておる前に、あの第五条を発動して、こうやるとか
——やらなければならないのです。行政とか政治というのは即時やらなければならない。学者は学者で大事なことを伺うというのはいいけれ
ども、そうではなしに、決断が必要であります。齋藤君はわかっておるはずです。わかっておるはずだけれ
ども、いままでのありきたりのことを踏襲しようとする官僚機構の、ある
意味ではいわゆるサボタージュ、めんどくさいんです、彼らは。そんなことで国民の
生活が圧迫されたら、たまったものじゃない。ですから、ぼくは、年金局にも、社会保険庁にも熱心な人がいますし、去年、年金法を出したときにはずいぶん
努力をしたことは認めております。しかし、この緊急なときに、それに対応できないような官僚機構ではいけない、対応できないような
内閣ではいけない、対応できないような政治ではならないと思うのです。
どうか国民の政治に対する信頼を回復するために
——いま
官房長官は大体筋が通ったことをおっしゃいましたけれ
ども、少し決意が弱い。
総務長官はやや専門的に交渉されているんで、やや別なこととおっしゃったように、別なことをおっしゃった。そうではなしに、私の申し上げたことをずばりひとつ閣議で御討議を願いたい。そして、自民党も
田中内閣も、国民のために負託にこたえるのだ、やれることはやろうという態度でこの問題を御推進をいただくことを強く両大臣に要請をいたしておきます。
さらに他の問題に入ります。
では次に、部落
解放行政の問題について伺います。
先日の総括
質問でも、
田中内閣総理大臣をはじめ
総務長官にも御
質問申し上げましたし、
官房長官は先年のときにお答えになって、ことしもよく聞いていただきました。
田中内閣が前
内閣より以上に積極的にこの問題に取り組まれるという決意を伺って、非常にその点は評価をいたしたいと
考えております。
具体的にそれをしていただくためにぜひ御推進を願わなければならないことがあります。
総務長官にこの前から、大体御答弁をいただいておりますから、少し重なりますが、あまり重ならないように申し上げます。
一つは、一斉の実態調査を早くしていただかなければならない。いま補完調査を進めるというのですが、それも十分に急速に進めていただくということであります。
昭和四十七年の同和問題の閣僚協議会、これは何か二、三回しか開かれておりませんが、そのときの佐藤
内閣最後の退陣の二日ほど前に開かれたときに、
昭和四十六年の全国一斉調査による事業量というものを報告があったわけです。それが四千七百三十三億という数字であります。この数字がとんでもない少ない数字であるということを、ぜひ
官房長官も
——総務長官御存じですけれ
ども、ひとつ少ない
理由をいま簡単に申し上げますから、聡明な頭で御記憶にとどめておいていただきたいと思います。
四千七百三十三億というと、一般的にいったら、えらい金だというように思いますけれ
ども、とんでもない少ない金だ、問題にならない金だ。というのは、この調査のときに、なまけた府県があって、例をあげると、栃木県などは、同和問題に対処しなきゃならないのに、ひとつも事業は要りませんというような、しませんというような、ほんとにもう怠慢きわまる報告をしているわけです。これは一例です。ほかにもあります。愛知県などは対処しなければならない地区が三十何カ所あるのに五カ所しか報告をしてこない。全くもう実に怠慢な府県があるわけです。それから、府県でいま申し上げましたが、市町村だって、そういう例がございます。ですから、その事業量総体がそういうふうに非常に欠落がたくさんあるということです。
それからもう
一つは、この問題は、四十六年というような少し前の時代に全体的にやられた同和対策事業をもとにして集計してある。その後こういう
方法をやったら非常に有効である。たとえば
——もうおくればせに、非常に
内閣の姿勢は悪いと思っておりますけれ
ども、たとえば、ことしは皆さんの御
努力で大学の奨学金が入りました。そういうものの入ってない時代であります。そういう入ってない時代の事業量で総計している。だから、新しく有効で、しなければならないことが加わっておらないわけです。この点でまた全く不十分だということになります。
その次に、この四七三三というのは、実は国の負担だけではなくて、地方自治体の負担も重ねた、全部合わせた数字であります。ですから、国の負担はそれよりはるかに少ないということになります。
それからもう
一つは、大事な
土地代がほとんど入っていないということであります。ものをやるときに、
土地がいま非常に高いから、金を一番食うのは
土地であります。
土地代が
一つも入っていない。このままでは、
土地代が入ってないから、ほかのものをやろうとしても、できないということがあるわけであります。
それから、その中の最も欠陥は、いささかの、六百九十億円ほどの農林漁業対策費というのが出ております。これは職業に、産業に少し
関係がありますけれ
ども、それ以外は住宅も含めますけれ
ども、いわゆる環境改善費であります。環境改善というのは、住宅を建てたり、隣保館を建てたり、どぶを直したり、そういうようなことであります。ところが、この問題のほんとうの
解決は、みんながちゃんとしたところに就職ができて、自分の能力と意欲を生かして、一生懸命に働く、そして社会にも貢献するし、自分も有意義な
生活を送って、
生活も確立をするということが根本でなければならない。その就職の機会均等を保障する政策は、ここに
一つも入っておりません。
それからもう
一つは、そのもとである、いま国民が全部学問を勉強するような時代になっております。同和地区の子供は高等
学校へ入る率も少ない、ましてや大学に入る率も少ない。したがって能力と意欲を持ちながらそういうことができないんで、その能力と意欲に対応したような職場につきにくいということがあります。その教育の機会均等を保障するということが、やっぱり就職の機会均等につながるわけであります。非常に大事なことです。
もう
一つはいま、そういう勤労者として働く方を多く
確保しなければなりませんけれ
ども、日本の産業構造上、農業、林業、漁業、あるいは零細な商工業というようなことに対応することが多いわけであります。農林漁業で六百九十億出ても、産業対策についても全くこれも不十分です。そのことを
考えると、ほんとうにありとあらゆる
意味で不十分なわけであります。それを埋めるために
内閣、
総理府に要請しまして、いま補完調査をやっておられますけれ
ども、四十二年に全国一斉調査をやった。それから四十六年に全国一斉調査をやった。五十年にはどんなことがあっても全国一斉調査をやらなければならない。いま四十九年度にかかる。これは補完調査をほんとうに熱心にやって、そういう実態を明らかにした上で、政策をしなければならない。それをやられて、それをもって
——それから
考えるのじゃなしに、やられたと同時に即時に完全な総合
計画をつくって、即時に完全な財政
確保をして、それを推進されなければならないと思います。それについて
総務長官の積極的な御答弁をひとつ願いたいと思います。