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湯山委員 総理は、御注意申し上げたいと思う。
教育の問題になると、かあっとなって沸騰してくる。それはほかのことで申しますが、それはよくないことで、
総理が東南アジアへ行ったときに、本
会議でそのことについて質問があったときに、日本人はどうも自分のことばっかり考えている、これは修身をやらないからだということを言われたことが問題になったときに、同じように、これは私が言うんじゃない、向こうで言ったんだというように、声を大きくして言われた。これも、いい悪いの判断はちっともないんです。そこの判断なくて、いまのように簡単に、いや、それは人倫の大綱を示した部分もあるとか、いや、修身をやらないからこうだと、簡単に言う。そこに問題がある。間違っていますよ、これは
総理、東南アジアのは。
総理のことばを裏返していけば、修身
教育をやらないから利己的になっている、修身
教育をやれば、それがなくなるという含みがある。これは論理の上で、逆もまた真なりということになれば、そうでしょう。
そこで、その次です。それじゃ、
総理は、私は修身
教育を受けている、だから私には利己的なことはないんだ、こういうことでしょう、裏返せば。三段論法を言えばそうですよ。いいですか、問題はそこからなんです。(発言する者あり)いや、そうなんですよ。問題は、修身
教育を取り上げるのはそこなんです。だからよく間違いがある。
しかし、その
総理もまた同じような批判を受けている。御存じですか。あなたはタイ国の学生と一月の十日お会いになった。そのとき、タイ国の学生約二十名、そのリーダーはソンバット君というNSCTの書記長です。これは外務省からいただいた資料の一番初めに一番で書いてあるのがソンバット君。このソンバット君が、あなたと会ったあとでどう言っているかというのをお調べになりましたか。これで見ますと、こう言っています。ソンバット書記長は
田中総理とお会いになったあと「
田中首相と話し合ってみて日本人は利己主義だということをつくづく感じた。日本とタイの貿易不均衡の改善を迫ると、
田中首相は、戦後の日本が米国との関係改善に苦労した話を引き合いに出して、タイも自力で改善せよと言い、日本側に
反省は全くない」ときびしく批判しております。さらにことばを継いで「日本が開発途上国の問題解決に真剣に取り組まなければ、タイ学生の抗議の対象は、日本人実業家だけでなく、日本人全体に拡大されることになる」と警告しております。修身
教育を受けたあなたも、また同じように批判されている。だから、あなたが言ったことは正しくないんです。正しくないが、現地で言われたから、言われたとおり言ったんだ、どこが悪いかと、ここに問題があります。いまの
教育はそういう人をなくする。
田中総理がそう言われたら、向こうで言われたら、
ほんとうにそうかどうかということを振り返ってごらんなさい。そうしたら、いまのような批判を直接受けている。その代表のソンバット君に受けている。これは修身
教育のせいじゃない、現地の人がああ言ったけれども、それは違う、それはこうしなければならないいと判断して、そういうことを言うべきか言わざるべきかを判断する、そういう
教育がいまの
教育です。
今度の小野田さんのときもそうです。あのお母さんが漏らしたことばは、私は非常に貴重だと思う。どう言ったかと言うと、
教育はおそろしいという一言です。ごらんになったでしょう、これは。なぜ
教育がおそろしいか。もし小野田さんがああいう過去の
教育を受けてなくて、いまの
教育を受けておったらどうなっていたか。いまの
教育は、どうも日本は負けたらしい、負けたということを聞くというときには、ただだれが言う、よその国に行ったら、だれが言ったとか、上官が言ったとかじゃなくて、自分で
ほんとうかうそか確かめる。自分のからだで、自分の目で、自分の耳で確かめる。これが
教育です。そして、それによって正しい判断をする。なるほどそうだ、日本は負けていたんだという判断をする。そして、それによって、今度は自分がどうすべきか。これは、そうなれば、もうこういうことは意味がなくなった、そこでその呼びかけに応じて帰ってくる。そうすれば、あの人も三十年間苦労しないで済んだ。そうでしょう。
国民もずいぶんいろいろな心配をしないで済んだ。そういう
教育です、いまの
教育は。上から押しつけて、
教育勅語にあるからこうだ、よその人が言ったからこうだということじゃない。
だから、もしあなたがいまの
教育を受けていたら、インドネシア、東南アジアを回ったときに、日本人は修身やらぬからこうだ、利己的だ、はたしてそうかどうかということを判断されて、いやそうじゃないということがすぐわかる。おわかりになるんです、いまのソンバット君に会ったことからでも。そうすると、自分は一体何をすべきか、そういう批判に対して何をしなければならないか、
教育の面では何をすべきか。それはこの前の総括のときに申し上げました。
あなたのすることは、りっぱな文部大臣を選ぶこと、これなんです。即断で、
教育のことに興奮していろいろなことを言われることは、かえって
教育を混乱させます。このことを私は特に申し上げたい。これは日本の
教育を憂え、日本の将来を憂えるために、特にこの
教育勅語に対する御発言や、いまの御
答弁もやはりボルテージが上がっていましたよ。あの東南アジアに行ったときもそうなんです。だから、
教育の問題に関しては、もっと冷静に、そしてもっと将来を見詰めて、興奮しないでひとつ判断して、何をすべきかを正しくわきまえて発言や行動をしていただきたい。お願いでもあるし、要望です。