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1974-03-29 第72回国会 衆議院 予算委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十九日(金曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 櫻内 義雄君    理事 澁谷 直藏君 理事 正示啓次郎君    理事 細田 吉藏君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       上村千一郎君    大野 市郎君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    笹山茂太郎君       塩谷 一夫君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    田中 正巳君       塚原 俊郎君    中村 弘海君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    前田 正男君       松浦周太郎君    松岡 松平君       松野 頼三君    湊  徹郎君       渡辺 栄一君    阿部 昭吾君       赤松  勇君    多賀谷真稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君       村山 喜一君    八木 一男君       湯山  勇君    田代 文久君       正森 成二君    増本 一彦君       松本 善明君    岡本 富夫君       瀬野栄次郎君    河村  勝君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 奧野 誠亮君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)         厚生大臣臨時代         理       内田 常雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         任用局長    大塚 順七君         人事院事務総局         職員局長    中村  博君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         総理府統計局長 川村 皓章君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         警察庁刑事局長 田村 宣明君         警察庁刑事局保         安部長     綾田 文義君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       丸山  昂君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         科学技術庁原子         力局長     牟田口道夫君         科学技術庁原子         力局次長    伊原 義徳君         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       戸田 嘉徳君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主計局長 橋口  收君         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省理財局長 竹内 道雄君         大蔵省理財局次         長       井上 幸夫君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君         国税庁長官   安川 七郎君         国税庁次長   吉田冨士雄君         厚生大臣官房長 曾根田郁夫君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         厚生省年金局長 横田 陽吉君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   三善 信二君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業大臣官         房長      増田  実君         通商産業省通商         政策局長    和田 敏信君         通商産業省通商         政策局次長   大石 敏朗君         通商産業省貿易         局長      濃野  滋君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省機械         情報産業局長  齋藤 太一君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岸田 文武君         運輸省海運局長 薗村 泰彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君  委員外出席者         会計検査院長  白石 正雄君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      河野 通一君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月十三日  辞任         補欠選任   青柳 盛雄君     不破 哲三君   田代 文久君     谷口善太郎君   安里積千代君     池田 禎治君 同日  辞任         補欠選任   池田 禎治君     安里積千代君 同月十四日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     福永 健司君   田中 正巳君     高見 三郎君 同月十九日  辞任         補欠選任   松本 善明君     中島 武敏君   安里積千代君     佐々木良作君 同日  辞任         補欠選任   中島 武敏君     松本 善明君   佐々木良作君     安里積千代君 同月二十日  辞任         補欠選任   安里積千代君     佐々木良作君 同日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     安里積千代君 同月二十二日  辞任         補欠選任   松岡 松平君     島田 安夫君   湊  徹郎君     關谷 勝利君   渡辺 栄一君     宮崎 茂一君   安里積千代君     稲富 稜人君 同日  辞任         補欠選任   島田 安夫君     松岡 松平君   關谷 勝利君     湊  徹郎君   宮崎 茂一君     渡辺 栄一君   稲富 稜人君     安里積千代君 同月二十六日  辞任         補欠選任   松岡 松平君     地崎宇三郎君 同月二十七日  辞任         補欠選任   湯山  勇君    米内山義一郎君   岡本 富夫君     大野  潔君 同日  辞任         補欠選任  米内山義一郎君     湯山  勇君   大野  潔君     岡本 富夫君 同月二十八日  辞任         補欠選任   高見 三郎君     田中 正巳君   地崎宇三郎君     松岡 松平君   福永 健司君     塩谷 一夫君   安里積千代君     神田 大作君 同日  辞任         補欠選任   神田 大作君     安里積千代君 同月二十九日  辞任         補欠選任   植木庚子郎君     中村 弘海君   安宅 常彦君     広瀬 秀吉君   岡田 春夫君     武藤 山治君   辻原 弘市君     村山 喜一君   谷口善太郎君     正森 成二君   不破 哲三君     田代 文久君   松本 善明君     増本 一彦君   矢野 絢也君     瀬野栄次郎君   安里積千代君     河村  勝君 同日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     福永 健司君   田中 正巳君     高見 三郎君   中村 弘海君     植木庚子郎君   松岡 松平君     地崎宇三郎君   広瀬 秀吉君     安宅 常彦君   武藤 山治君     岡田 春夫君   村山 喜一君     辻原 弘市君   田代 文久君     不破 哲三君   正森 成二君     谷口善太郎君   増本 一彦君     松本 善明君   瀬野栄次郎君     矢野 絢也君   河村  勝君     安里積千代君     ————————————— 三月二十七日  昭和四十九年度一般会計暫定予算  昭和四十九年度特別会計暫定予算  昭和四十九年度政府関係機関暫定予算 は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十九年度一般会計暫定予算  昭和四十九年度特別会計暫定予算  昭和四十九年度政府関係機関暫定予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度一般会計暫定予算昭和四十九年度特別会計暫定予算及び昭和四十九年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して議題といたします。
  3. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 まず、三案について政府より趣旨の説明を求めます。福田大蔵大臣
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 このたび、昭和四十九年四月一日から十日までの期間について暫定予算編成することといたしましたが、その概要について御説明いたします。  まず、一般会計について申し上げます。  今回の暫定予算におきましても、暫定予算が本予算成立までの応急的な措置であることにかんがみまして、暫定予算期間中における人件費事務費その他行政運営上必要最小限度経費を計上することといたしております。  なお、新規の施策にかかわる経費につきましては、教育及び社会政策上等の配慮から特に措置することが適当と認められるもの、たとえば、生活扶助基準等引き上げ社会福祉施設入所者生活費等引き上げ失業対策事業賃金日額引き上げ国立大学の学生の増募等を除き、原則として計上しないことといたしております。  また、公共事業関係費につきましては、新規発生災害にかかわる直轄災害復旧事業費のほか、直轄事業維持修繕費等について暫定予算期間中における所要額を計上することといたしております。  歳入につきましては、税収及び税外収入についての暫定予算期間中の収入見込み額及び前年度剰余金を計上することといたしております。  以上の結果、今回の一般会計暫定予算歳入総額は七千六百十六億円、歳出総額は九千九百九十八億円となり、二千三百八十二億円の歳出超過となりますが、国庫の資金繰りにつきましては、二千五百億円を限度として、必要に応じ大蔵省証券を発行することができることといたしております。  次に、特別会計政府関係機関につきましては、いずれも以上申し述べました一般会計の例に準じて編成いたしております。  なお、財政投融資につきましても、暫定予算期間中に必要となると見込まれる最小限度の額として、国民金融公庫及び中小企業金融公庫に対し、合計三百四十億円の資金運用部資金運用を予定いたしております。  以上、昭和四十九年度暫定予算につきまして、その概要を御説明いたしました。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同くださるようお願い申し上げます。
  5. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 以上で大蔵大臣説明は終わりました。     —————————————
  6. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。八木一男君。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 内閣総理大臣はじめ、各国務大臣に御質問申し上げます。  ただいま大蔵大臣から暫定予算についての説明がございました。その説明の前に、暫定予算を出さなければならなかったその理由の解明がございません。  元来、もし予算案成立ができないときには、直ちに内閣総辞職あるいは国会解散という重大な事項になるわけでございますが、この暫定予算を出さなければならないととも、それに準じた非常に重大な事態であろうと思います。そのことについて、なぜこのような暫定予算出さなければならない羽目に立ち至ったか、それについての政府全体の深い反省がなければならないと思うわけであります。  そのことは、この石油危機の前から始まっておりまして、大きな物価値上げ悪性インフレーション資金過剰流動性を許し、それを放置をして、そして進めてきたいままでの政府の姿勢、あるいはまた、その後に、狂乱物価というときに、それを急速にとめる手だてをしなかったことの責任、また、そのことを国会において、その悪の根源をただそうとするときに、それを根本的にただすための証人喚問を、これは政府自体でございませんけれども、政府与党が実行しない、参考人というようなことでお茶を濁しておる。そしてまた、この四十九年度予算編成にあたっては、その編成時期の最中に、卸売り物価はもちろんでございますが、消費者物価等の異常な高騰があるのに、十二月の十九日にきめた基本方針を、その後の消費者物価高騰にもかかわらず、経済見通しをやり直しをしようとしない。そして、そのような古くなった経済見通し、間違った経済見通しをもとにして四十九年度予算案編成し、それを変えようとしない。その予算について、ほんとう国民のために与野党が検討して、これを修正すべきである、そのような正しい主張に対し、受け答えをしようとしない。  そういうことから、この四十九年度予算の決定はおくれ、いま暫定予算提出しなければならない羽目になったわけであります。  そのことについて、総理大臣やまた大蔵大臣の重大な責任を痛感されての、そのことを反省を深くされての御答弁をいただきたいと思います。
  8. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府は、年度内に総予算成立することを目ざして、国会の御審議を仰いでおるわけでございます。提出までは政府の権限でございますし、責任でございますが、国会運営というものは国会運営でございまして、政府がいかんともなしがたきものでございます。でございますので、国会でお話し合いの上、御審議をいただいておるわけでございます。  御審議過程において、あなたがいま、野党のお立場で述べられたことは、これはあなたの立場で述べられるのは自由でございます。しかし、政府は、提出をした予算最善のものであるということで国会審議をいただいておるわけでございますから、国会の御審議過程において、柔軟に、政府国会の御審議の結果をあらゆる角度から政策に反映させるように努力をいたしてまいりましたが、しかし、予算案の変更につながるものではないという認識で、当初案の審議をいただいておるわけでございます。まあ、三月三十一日までに衆参両院を通過することは望ましいことであるということでお願いをしておるわけでございます。  これはもう、戦後ずっとそうでございますが、しかし、この十年来を見ましても、年度内予算成立したこともございます。また、このごろは、暫定予算が例年のようになっておるということでございます。それだけ、予算審議過程において、めんどうな問題がたくさん起こっておるという事実であろう、私はそう思います。  ですから、本予算が三月三十一日までに通過をしない場合、当然暫定予算の御審議を願わなければならないということでございまして、これは、政府暫定予算を組まなければならないようになったから、それは政府責任である、深く遺憾の意を表せと言っても、立場が違うわけでございまして、これは、政府が出した予算案が三月三十一日までに通過しなかったことは、はなはだ遺憾であるということは申し上げられますが、暫定予算提出したことに対して遺憾の意を表せと言っても、ちょっと、どうも遺憾ながら申し上げられないことでございまして、来年度からは暫定予算にならないで済むように、ひとつこちらも一日も早く提案いたします。できれば十二月に提案しなければならぬということも考えてきたわけでございますが、非常に経済情勢がむずかしくて、十二月末にならなければ経済見通しもきまらなかったというような事情で、一月になってから提案をしておるというような、制度上の問題は、これからも十分検討いたします。そうして、御審議は十分やっていただいて、三月三十一日までに両院予算が通過するように、これから努力いたします。そういうことで、ひとつ御理解をいただきたい。これは国会審議に対して、政府意見を申し述べるということはできませんので、御了解いただきたい。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 関連。  いま八木委員から、暫定予算を出さなければならなくなったことに対する政府自体反省ということをお伺いしたわけなんです。ところが、あなたは何ら反省がない。なぜかといえば、当然年度内予算成立するようにやるべきである。それができなかったというのは、どういう理由があったのか。  これはもう、八木委員も指摘したように、証人参考人等々の問題、異常な狂乱物価大蔵大臣が申しますような状態の中における、いろんな国民生活の問題と関連したことを深く審議するためにおくれたということも事実です。しかしながら衆議院が解散になったあと等の場合はいいとして、ノーマルに開かれており、ノーマルな審議が進められておる中において、このような暫定予算を出すことが、去年もそうであった、そういうことでは困ると思うのです。もっと反省をしていただかなければならない。  同時に、私は、第二補正をやるべきではないか、こう申し上げたのですが、いわゆる不当利得の吸収を、法人税特別付加税として徴収することになりますが、それをどう使うのかをあわせて、しかも、この間に石油製品について、大きな、いわゆる高値安定といったような行政指導をやっておる、そういうようなことをあわせて、もう一度総理は、反省を込めての答弁をなさなくてはいけないと思います。いかがですか。
  10. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほど述べたとおりでございまして、政府は、最善予算案を提案したという立場に立っております。国会の御審議の問題に対して、政府はとやかく申し上げません。ですから、これに対しては、年度内成立をしない場合に、暫定予算提出しなければならない責務を持つものでありますから、法律どおりの処置をとっておるわけでございます。  私が申し上げられることは、先ほどから述べましたとおり、御審議が円滑に行なえるように、できるだけ早く、ますます早く予算を提案するように、将来とも努力をいたしますということで御理解をいただきたいと思います。(田中(武)委員反省すべきだよ」と呼ぶ)
  11. 八木一男

    八木(一)委員 私は、いま田中委員が申し上げたことについて、はっきりとした反省の意思をあらわしておられないのは、非常に遺憾であります。  まず、国会審議の時期を早めるということ、予算案提出の時期を早めるというようなことをおっしゃいました。  それよりも大切なことは、予算について、国会与野党が協議をする。予算提出権政府にございまするけれども、予算というものは、国民生活、そして日本のすべての社会経済を、実質的にこれを進める、そういう非常に重大な問題であります。その問題について、政府が、政府原案はいささかも修正をすることを受け入れようとしないということに、独善的な態度があるわけであります。  わが党の成田委員長は、今国会の本会議の冒頭で、予算について与野党が話し合って、これを国民のための予算にしようということを提議をいたしております。少なくとも、この予算について与野党が話し合う、そして国民のために、よりよい修正をするということがなければならないと思います。そうでなければ、国権の最高機関である国会国民輿望をになっておる国会議員意見が、大蔵省で、行政府でつくったものにひとつも反映をしないということになりましたならば、実際的に官僚政治になる、そういう根本的な問題を包蔵しておるわけであります。  今後、予算について与野党が話し合って、国民のための予算をつくる、そういう態度を正面に持ってこられ、国民輿望にこたえるようにしていただかなければならない。強く要求をいたしておきます。いま、総理大臣大蔵大臣もじっくりと聞いておられました。いささか反省をしておられるものと認定をいたします。  したがって、今後この予算運用なり、いままだ四十九年度予算案は通っておりませんけれども、何らかの形で早晩四十九年度予算案は確定をするわけであります。よりよく直った場合は非常にけっこうでありますが、いま原案のとおり通った場合でも、このような、ほんとう国民の希望に従った修正話し合いをしなかった、大蔵省だけが考えた、あるいは田中内閣だけが考えたものを、そのまま押し通したということについて重大な反省をされて、その運用なり、あるいはその他の法律の問題なりについて、国民輿望にこたえるように野党の意見をよくいれて、今後のこの一年間の政治を推進されることが必要であろうと思います。  そういうことについて、総括的に田中総理大臣から伺っておきたいと思います。
  12. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 予算案は、内閣だけでつくっておるわけじゃございません。政党内閣でございますし、議院内閣制でございますから、これは予算案編成過程におきましては、多数党である与党たる自由民主党と十分な意思の疎通をはかって、与党・政府共同の責任予算編成したものでございますから、政党政治のたてまえに沿って、国民の意思を十分に取り入れて、事態に即応し、遺憾なき予算編成したつもりでございます。  また、第二の段階において、国会審議という、国民を代表される国会における審議ということがございまして、この審議にゆだねておるわけでございます。  まあ政府は、一日も早く通過をせしめていただきたいと考えておりますが、これは、国会でもって慎重審議というお立場でやられるものに対しては、私は多数党の総裁でもございますが、しかし、国会審議国会におまかせをして、なるべく内閣総理大臣が、同一人が与党の総裁であるということをもって、多数決だけで押し通すというようなことをなすべきでない。これは民主政治の本義にのっとっておるわけでございまして、ここらは評価をさるべき問題だと思います。  そうすると、今度、あと国会で、まあ多数党の意見はあらかじめわかっておりますが、この予算編成に対して参画をしなかった少数党の皆さんの御意見というものが、どういうふうに反映されるか。それは、事態は推移をしておるわけでございますから、その間において皆さんが御発言になられたことで、より国民のためになるという場合には、予算執行や行政の執行の過程において十分反映をしてまいる、反映せしめてまいる、それはもう当然考えております。ですから、それはいいことであるということには、すぐ賛成もいたしておりますし、そういう意味では、国会審議過程において指摘をせられたもので、それが真に国民の利益を確保するゆえんのものは、政府は虚心にこれを取り入れておるということでございまして、これは全くすなおに民主政治、議会制民主主義の中のいいことを守って、一歩一歩それで前進をはかり、最終的には、国民の利益を確保するために日夜健闘しておる、こういうのが事実でございますから、そこらは、ひとつすなおに、さらりとお認めいただきたい。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 後段の御答弁は、やや評価をしていいと思う。  前段のほうの、多数党の自民党がきめたんだからというような形式的な論理は、これは国民の前には通用いたしません。どんなに皆さん方がやっても、予算案全体が、ありとあらゆる意味で完ぺきであるということは、人間のやることですからありません。そこで、国民の相当の部分を代表している野党の意見をいれて、予算案について検討して、それを修正をするということが、ほんとう国会を国権の最高機関にする、国民の要望にこたえるという道だろうと思います。  他の質問がありますから、これは後日徹底的に追及をいたしますので、あなた方は追及をされない前に、こういう問題については、野党と予算について話し合う、そして予算修正するのが一番常態である、普通の状態である、原案が一〇〇%完全なることはない、多いか少ないかわからないけれども、修正することがほんとうのやり方であるということを、ぜひかみしめて考え、ただして、あなたのほうから、今度は、予算修正交渉をさしていただきたいということを言えるような民主的な体制になっていただくことを、強く要求をいたしておきます。  後段については、今後野党の意見、野党の意見というのは、国民の要望にこたえた野党の意見であります。それについて謙虚に受け入れられて、予算運営なり法律案の問題についてやっていくという御答弁でございますから、この点は、すなおにとおっしゃいましたから、すなおに評価をします。すなおに評価するかわりに、それは実行をしていただかなければなりません。そのことを、胸にかたく植えつけておいていただきたいと思います。  次に、先ほど田中委員から少し提起をされておりましたが、会社臨時特別税法案が衆議院の本会議を通過をいたしました。そして参議院でも近く、ごく短時間で通過をする情勢にございます。この自民党の提出の会社臨時特別税法案については、われわれ野党はたいへん批判を持っております。わが日本社会党も、その前に自社両党で出せる状態になっておりましたのが、それが自民党の態度が逆行したことについて非常な批判を持っておりますが、とにもかくにも、何らかの形でこの会社臨時特別税法案が成立をするという大勢にございます。  これは、名前は二転三転しましたし、各党で違いますけれども、この狂乱物価のときに便乗値上げをして、国民を苦しめる、そういうものに対して、その不当利得を徴収をしよう。徴収技術上の問題があって、法人税付加税の問題が一番妥当であると私ども社会党は考えておりましたし、自民党もそれをいれられたようでございますけれども、いま、徴収技術上の問題や法案の名前は別として、このような過剰利得、不当利得、そういうものを取り上げようというための法律案であることは明らかであります。そうなれば、そのような過剰利得、不当利得によって物価が値上がりをし、あるいはその他の影響で苦しめられている国民、この国民にこれを還元をするということが、当然この法案としては、この税収の運用としてはなされなければならないと思うわけであります。自民党案では約千八百億円といわれ、他の野党案ではもっと多いわけでございますが、この千八百億円といわれる税の徴収したこの財源は、国民に、特に社会的弱者や、あるいはインフレによって非常に生活を圧迫された国民に返還をすべきものであると思うわけであります。当然そうでなければならないと思うわけでございますが、このことについて、総理大臣並びに大蔵大臣の御答弁を、明確な積極的な御答弁をいただきたいと思います。
  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の会社臨時特別税につきましての、八木さんのお話のお気持ちはよく私も理解できます。  ただ、この税の収入につきましては、これは四十九年度の収入になるわけであります。四十九年度は四月から始まり、そこで一年の経過というものがあるわけでございますが、その年度の経過期間中において、かりに補正予算編成するというような事態がありますれば、その際の財源、こういうことにもなりましょう。また、そういう事態がなければ、年度中はただ単に収入になるということに終わるわけでありますが、いまこれを特定して、どこにどういうふうに振り当てるというふうにきめておくことは妥当でない、そういうふうに思います。かりに補正予算を組むという事態がありとすれば、その時点におきます国政の全体を見回しまして、どういうふうにその時点において調達し得る財源というものを使うかということを、総合的に見てきめるということでなければならぬ、こういうふうに考えます。つまり、財源をこの際特定しておくという考え方でなくて、その時点にいって、国政全体を見回して彼此勘案、考慮する、こういうことじゃあるまいか、さように考えます。  しかし、政府といたしましては、四十九年度予算がもう施行されようとしておるわけであります。この予算案においては、社会保障については相当大きな配慮をいたしておるわけであります。ひとつこの予算をフルに活用させていただきたい。それでまあ、われわれの考えておる経済情勢と違った情勢が出てきたというような際におきましては、またその際の配慮をしなければならぬ、かように考えております。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 いま、会社臨時特別税の税収について、これは社会的弱者、あるいはインフレによって被害をこうむった国民に還元すべきであるということについて、私のその気持ちはよくわかると言われました。それから、ただしそれについては、その時点で総合的に判断をしてということを言われました。これは財政を担当しておられる大蔵大臣として、慎重を期しての御発言であろうと思いますが、当然、その千八百億円の全額を、私の言うとおりにするということについては、これは大蔵大臣は、いま答弁されるのに抵抗があろうと思う。しかし、その大部分について、一番重要な問題として、そのような社会的弱者、あるいはインフレによって被害をこうむった国民に還元するということが、この出された経緯から見て、当然の決着ではなかろうかと思うわけです。  例は非常に悪うございますが、これは例でございますから、ひとつ誤解のないように……。国民が、ある人間が、すりとか、あるいはまたそういうものの被害にあった。その被害にあったのを追及していってそれを取り返すといった場合に、それを取り返しただけではなしに、被害者のほうに返さなければ問題にならないわけです。これは例でございますよ。経済的にはそれと同様なことが起こっておるわけです。片方が便乗値上げをして大もうけをする、不当利得をあげる、あるいはまた、この会社臨時特別税では、不当利得だけではないかもしれませんけれども、非常に大きな利潤をあげている。そしてそのような中で、インフレで国民が生活を切り詰めなければならないという状態になっている。そうしたら、そういうものから取り上げた税金は、そのような被害をこうむった国民に還元をするというのが、第一の眼目でなければならないと思う。  そういう意味で、この特別税の税収について運用されるということを、ぜひ大蔵大臣から、明確にひとつお答えをいただきたいと思います。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 八木さんの御発言、よく理解できますと、こう申し上げておるのです。ただ、いまこの時点で、一般会計の一般財源として繰り入れられるという性格の、この税の使途を特定するわけにはまいりません、こういうことでございます。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 そこで、いま大蔵大臣は、四十九年度予算を施行する、この会社臨時特別税については、補正予算の財源になるということを言われました。会社臨時特別税は、これは三月、九月の決算期の会社に適用するわけでございますから、この三月中に成立をいたしましたならば、三月、九月の決算期の会社が、対象となるものは七〇%をこえると思うわけです。この税収は、最初に六月から入ってきます、二カ月間の猶予期間がありますから。少なくとも六月ごろには六百億円入ってくる、七割の半分が入ってくる、秋になればもっとたくさん入ってくるということで、当然補正予算の財源としてこれは活用できるわけです。  ところで、もう一つ問題があります。四十八年度の自然増収がいま見越されております。一月の収納率から推定をすると、少なくとも二千億円ぐらいの自然増収がある。これは七月の決算できまるわけであります。これも当然四十九年度補正予算の財源として完全に活用できるものであると私は信じておるわけでございますが、その点について、ちょっと伺いたいと思います。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 四十八年度につきましては、租税収納の実績を見てみますと、補正後に比較いたしまして幾らか増収がある、こういう見通しであります。いま八木さんはその額を二千億以上、こういうふうにおっしゃられますが、そこまで私どもはまだ自信を持っておりません。しかし、いずれにいたしましても何がしかの増収がある、こういう見通しでありますが、これはやはり四十八年度の収入になるのでありまして、これが四十九年度の収入というふうにはまいらぬわけであります。四十九年度の剰余金がどうなるか、その剰余金が出るとすれば、その剰余金の額に加算をされる、こういうことに相なります。
  19. 八木一男

    八木(一)委員 技術的におっしゃいましたけれども、一月の収納率から見れば、昨年よりはるかに増した。租税収入にその率をかければ約二千億が出てくることは、もう私が申し上げなくても、専門家の大蔵大臣もよく御存じです。二千億ぐらい想定をされるということです。これは想定をされると、もうほとんど確定みたいなものです。補正予算の財源として、その両方を合わした非常に大きな財源があるのです、四十九年度補正予算を組むといたしましたならば。私は組まなければならないと思います。そういうことを考えると、当然この四十九年度予算案の中で二千六百億円の予備費がございます。この予備費については、これを比較的前年よりたくさん組まれたのは、この狂乱物価の中で非常な問題が起こるであろうということを想定されて組まれたものであります。これは首を縦に振っておられますし、先日委員会でも伺いました。非常にそれは大蔵大臣の先見の明があったことだと思うのです。この先見の明があっても、それを使わなければ何にもなりません。補正予算の財源としてそれだけのものがあるわけでございますから、この二千六百億円の予備費は、狂乱物価の状態で国民生活が圧迫をされているわけですから、四十九年度が開始されましたなら、四月、五月にこれを集中的に、その大部分を、全部とは申しませんが、使って、国民に対して対処をする、そういう姿勢が当然なければならないと思うわけであります。それについて、大蔵大臣の積極的な御意見を伺いたい。
  20. 福田赳夫

    福田国務大臣 昭和四十九年度の予備費は、これは、昭和四十九年度につきましては私どもは短期決戦というふうに申し上げ、いまの混乱の事態を早期に収拾することを考えておるわけでございますけれども、やはり余じんは残る、そういう事態もあろうか、そういうことを考えますと、どういう事態が起こってくるかわからぬというので多額に計上いたしたわけなんです。  私どもは、四十九年度予算の前提となります経済見通し、あれを何とかして実現をいたしたいという努力をいたしますが、万一あの見通しと非常に違った状態が出てくる、そうして社会的弱者といいますか、そういう方々に御迷惑を及ぼすというような事態がありますれば、それはもう財政上においては、そういうものに対処しなければならぬということは当然でございまするから、その点なんかは十分心得ております。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 実は本日、三月の末に発表する消費者物価指数が発表されました。本日九時半に発表されたわけであります。その全国的平均は、対前年度比が二六・三という異常な上昇を示しております。これは二月の全国平均です。そうなれば、いま大蔵大臣がおっしゃった、異常な事態が起こったという状態が起こってきているわけであります。その前から起こっているわけであります。したがって、その意味でも、いまの問題についても対処をしていただかなければならないと思います。  経済企画庁長官に伺いますが、この四十九年の二月の全国平均ができて、四十八年度の平均の物価の上昇率を、経済見通しのときは、あなたは一四%ということを言っていられた。ところがこれを、三月を二月と同率と推定すると、一六%の値上がりに四十八年度はなるわけであります。間違いありませんね。一六%の値上がりになるわけです。ですから、大蔵大臣総理大臣もよく御存じのことですけれども、聞いていただきたいけれども、四十八年度の経済見通しは、この一月の二十一日に出されたものは、四十八年度が一四%くらいあるだろうと推定をされたが、いまの数字で一六%以上上がることになっている。これは二月分が三月に横すべりをして計算をいたします。一六%になる。もっと多くなるかもしれません。  そうなれば一四十九年度は四十八年度に対してどのくらい上がるだろうということで、九・六を想定されている。ところが、基盤の四十八年が変わってきているのですから、この四十九年の想定も変えていかなければならない。数字を変えるということも必要でありますが、変えていったというたてまえで政治の運用に当たられなければならないということになります。四十九年が四十八年度に対して九・六、政府見通しどおりそれだけしか上がらなかったとしても、基盤である四十八年が、一四の推定が一六になったわけですから、九・六にとどまっても、この経済見通しは変わっているわけですから、それだけ対処をしなければならないということを、大蔵大臣はおわかりでございましょうが、ぜひ確認をしていただいて、この四十九年の予算についても、これを、先ほど申し上げた線に従って運用していただかなければならないと思うのです。それについて、ひとつ端的にお答えをいただきたい。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点が非常にむずかしい点なんです。つまり、昭和四十九年度の消費者物価につきましては、これは九・六%の上がり、こういうふうに見ておるわけです。その中で、昭和四十九年度中に上がる、この十二カ月の間の上がり率というものは五・二ぐらいに見ておるわけであります。それの差額は、いわゆるげたといわれるものですが、そのげたが上がってしまった。そこで、四十九年度中に上がるであろうという五・二%、これをつづめなければならぬ、こういう問題になってまいりまして、政府の取り組んでおる物価政策というものに対する負担、おもし、これは非常に重大になってきているわけです。  しかし、それにしても、政府予算編成の前提といたしまして九・六%という消費者物価指数をあげておるわけですから、それが実現につきましては全力を尽くす、こういうのが私どものかまえであります。
  23. 八木一男

    八木(一)委員 大事な質問時間があれですから、簡単に申し上げますが、総理大臣大蔵大臣も頭のいいはずでございますから、とにかく四十八年が一四%上がるとして、それをもとにして九・六という計算をされたわけです。その基盤がこわれたわけですから、ほかのものに全部影響しますけれども、たとえば、一つの政策でいうと、生活保護費は、四十八年は一四%上がる、それに対して二〇%上げるということで政策を決定されたけれども、四十八年が一四じゃなくて一六上がってしまえば、条件が変わってくる。さらに手厚くしなければ、この一月に計画をしたことが実質的に達成できないということになるということを、ひとつぜひ明確に記憶をして、今後の運営に当たっていただきたい。  ところで、非常に大切な時間でございますから、具体的な問題に入りますが、実は、この狂乱物価の中で年金生活者の生活が、予定された生活が非常に圧迫をされている、その問題について、社会保障制度審議会の建議もございました。当委員会の総括、一般あるいは分科会で、私も徹底的に追及を重ねているところであります。先日は四野党の人たちが、社会党の田邊誠代議士を中心にして、厚生大臣と徹底的な交渉を行なわれました。非公式に、私やその他の社会党議員もいたしております。それに対して、政府はどのように対処をしようとしておられるか、ひとつ積極的な御答弁をいただきたいわけであります。  この問題は、春闘共闘委員会、労働組合が非常に要望いたしております。当然、国民全体の立場に立って、労働者の立場に立って、この年金の実質価値を守るためにスライドを実現するということは、国民的なコンセンサスになっているわけであります。そして私どもは、これは賃金スライドでなければならない。そしてまた、この狂乱物価のときに緊急なスライドをしなければならないと主張をしているわけであります。それについて、政府は、国民やそして野党やあるいは国会意見国会における論議、それを踏んまえて急速にこの対処をせられなければならないわけであります。  その前までは、厚生省のほうの年金局の怠慢で、技術的にむずかしいというようなことで答弁をそらしておられました。私どもは、そのような国家公務員の人の技術的にむずかしいということで、政治の課題が動かないことは許されない、どんなことがあっても、これに対処をしなければならないと申し上げているわけであります。  そのことについて、どのような準備をされたか、どのような対処をせられようとしているか、その点について伺いたいと思います。総理大臣と申し上げたいのですが、技術的ですから、厚生大臣代理の内田さんからひとつ伺います。
  24. 内田常雄

    ○内田国務大臣 その問題は、八木さんのおっしゃるとおり、非常に大切な問題であると私は考えます。  でございますから、長年の懸案であります年金に対するスライド制というものが、厚生年金と国民年金については法律の制度上採用されることになりましたし、また、福祉年金につきましては、スライド制ではありませんけれども、もとが低いのだからということで、これも、スライド制とは違った意味で予算引き上げるたてまえのもとで、年金法の改正をこの国会提出をいたしておるわけでございます。  ところが、これも釈迦に説法でございますが、現在法律に導入されました制度は物価スライドでありまして、消費者物価が五%以上上がった場合には、消費者物価が上がった実態を、そのままスライドの中に取り入れることになっておりますので、これを四十九年度から実施することになりますと、四十八年度の、先ほど来論議をされております消費者物価が、前年に比べてどのくらい上がったかというその実績をつかまえて、それをスライドの中に織り込むということになりますと、これは総理府で消費者物価のとりまとめをされておりますけれども、四十八年度の四十七年度に対する消費者物価の上昇がはっきりするのが、これは、その月の分は一月おくれくらいでありますが、年度対年度ということになりますと、どうしてもことしの五月初めくらいになる、こういうことになるわけでございます。  これは、もう齋藤厚生大臣も非常に熱心にやっている事柄でありますが、そうした場合に、二百数十万の受給者を対象とする、そのスライドによる年金額の改定事務というものが、どのくらいかかるかということを事務当局に詰めさしてきたが……(八木(一)委員「簡単に言ってください」と呼ぶ)なかなかそれがむずかしいので、御趣旨はわかるけれども、結局のところ、やはり十一月とか、あるいはそれ以後でないと数字が出ないということで、それで難儀をしておりますと、こういうお答えをいたしておるわけであります。  しかし、それは事務的にいえばそうでございましょうけれども、これはそういう、そのままの線でいきますと、かなりのタイムラグが出てしまいますので、そのタイムラグを埋める何らかのいい方法があるかどうかということを、非常に苦労をして検討をさせておる段階のようでありますけれども、これも、たびたび厚生大臣がここで言明をしているように、いままでの段階におきましてはなかなかいい方法がない、こういうことでおりますと、こういう次第でございます。  しかし、私はそのタイムラグのことをよく認識をいたしておりますから、何らかそのタイムラグの解消についていい方法があるかどうか、これは私も国務大臣の一人として、ことに、いま代理も仰せつかっておるわけでありますから、齋藤厚生大臣も二、三日中には帰ることになりますので、ともども力を合わせまして、このタイムラグを埋めるいい方法について、いろいろ知恵をひとつ出し合ってみなければならない、かようなふうの気持ちでおるわけでございます。
  25. 八木一男

    八木(一)委員 もっとはっきり、ずばりと答えてください。  きょうの有力新聞にたくさん載っております。いま、あなた方のほうで、これは野党で要求して、こういう方法もあるじゃないかと社会党が言ったことを参考にしてやられているようでございますが、われわれは、基本的に三カ月ごとの緊急スライドを要求する。それに対して政府は、技術的に困難だとかなんとか言っておられる中で、たとえば十一月にスライドするのを繰り上げて、第一案として、八月からこれを実施するということ、あるいはまた、十一月だけれども、さかのぼって四月から、これを十一月の分を払うときに払う、あるいは二月に払う分を十二月に繰り上げる、そういうことを検討していられることは、前から交渉で私どもは知っております。きょう有力な新聞紙に、大々的に報道をされているわけであります。そのことについて、それをほんとうに実行せられなければならない。そういう点を研究し、推進をしておられるなら、ずばりとそういう方法でやっていこう、考えている、これから野党やあるいは労働組合とも相談をして、その国民や労働者の期待にこたえようと思うという、そのことの明快な御答弁をいただきたいと思う。  あなたは厚生大臣でしょう。齋藤君が帰ってくるまで待つというようなことは許されませんよ。そんなことがちゃんとできないような厚生大臣だったら、代理の資格はありません。国務大臣の資格はありません。経済企画庁長官もやめてもらわなければなりません。田中総理大臣は、そのようなはっきりしない厚生大臣を任命した責任をとられて、その人を解職をし、あなたが直ちに兼任をして、きょうの午後でもわれわれの質問に対して答弁をしなければならない。  しかし、内田さんも熱心な人です。そんなことでなしに、いますぐその質問について、積極的に実現をするという御答弁をひとついただきたいと思う。内容については、われわれの意見をいれて実現をする、齋藤君の来るまでにどんどんと作業を進める、そういう態度がなければ厚生大臣の資格はありません。また国務大臣の資格もないということになります。はっきりと御答弁ください。
  26. 内田常雄

    ○内田国務大臣 御激励をいただいたり、罷免の仮辞令をいただきまして、まことに私も恐縮をいたしておるわけであります。  あの新聞もけさ私は見まして、厚生当局にも確かめました。ですから、そのタイムラグを埋めるとすると、観念的にはいろいろのことがあり得るわけでありますけれども、しかし、そのいまの十一月からスライドさせるというのを、それを前へさかのぼらしましても、支給までの事務手続というものは早くなるというものではないというところに、すべての問題があるわけであります。  それでありますから、それは仮スライドといいますか、スライド額の仮決定というようなものを、これは仮辞令ではありませんけれども、仮決定というものはやってみましても、これは、そのいまの二百八十万の対象に一人一人その額をスライドさせるわけであるから、それで検討はしているけれども、これはやり得るという決着がつかないことを、かりにもやりますとは、これは私は、いまほんとうの厚生大臣になりましても言えない。  しかし、私は、ただ八木さんと共通している点がありますことを冒頭申し述べましたとおり、これは物価の情勢等をおさめることが第一でありますけれども、しかし、来年度におきましても、私どもはある程度の物価の上昇というものは、経済見通しでもこれを認めておるのでありますから、スライド制度もそのためには認めてある。そのスライドが役に立たぬようなやり方にならぬように、いろいろな研究を詰めたいという気持ちは、私も熱心な気持ちを持っておりますので、ぜひひとつ、また、私をさらに激励をしていただきたい。私も、これは熱心に国務大臣として詰めてまいりたい、かように考えます。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 内田厚生大臣、それではその年金のタイムラグを縮めるために、私が前から提案をしている三カ月でスライドをしろという問題も含め、厚生省のいま検討をしていられる、この十一月のものを八月にさかのぼらせて実施をする、あるいはまた十一月実施の場合には、この支給額をさかのぼらせて、四月までの分を十一月の分を支給するときに一緒にその差額をプラスアルファして払う、そういう厚生省のいま検討していられることも含めて、全部含めてこれを検討を進める。検討を進めることについて野党とも相談をする。非常に緊急な問題でございますから、少なくとも二週間以内に結論を出すように野党とも相談をし、どんどんと作業を進める。作業を進めるということは、このタイムラグを縮める緊急スライドということを実現するという意味でこの作業を進める。それをしていただかなければならないと思う。それについての、ひとつ御答弁を願いたいと思う。
  28. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いま、一週間とか十日間とかという期限をお与えになりましたが、それは、私はその自信は、正直に言ってございません。ことに、かりにスライドする額をさかのぼらせたといたしましても、これはタイムラグの解消にはなりません。それは支給する額が、たとえば経済見通しのとおりに一四%といった場合には、あなたのおっしゃるさっきの数字だと、一四%ではない、一六%だ、こうおっしゃいますが、それは一四%であれ一六%であれ、その計算をいたしまして、種々の準備ができるのは、それはやはり厚生大臣をはじめ厚生省当局の、これは保険庁でやる仕事だそうでありますが、詰めていくと、かなりあとにならざるを得ないとしますと、タイムラグの解消にはならない点もございます。  したがって、何かタイムラグを解消しなければ、この際意味がないというような考えもございますので、あなたがいろいろな案をおっしゃいました、また三月ごとのスライドというような案は、私は、私ばかりでなしに齋藤厚生大臣も、そのことについては、物価の波動というものがあるから、三カ月ごと波動を追うことが適当であるかどうかわからないので、あなたのおっしゃったことを全部は受け入れませんが、とにかく、私はあなたと同じ気持ちを持つものでございますから、期限を切ったり、あるいは方法を指定されないで、しばらくひとつ、いろいろな研究をさせて激励をしていただきたい、こういうことだけを申し述べておきます。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 そばに立っていてください、時間がないから。  その方法について、野党も国民のために熱心に推進をしているし、知恵もかしましょうということです。だから、厚生省は研究をされる、野党とも話し合う、そして、できるだけ至急にその結論を出すということをやっていかなければならないと思う。  その協議を至急に精力的にやるか、実現するためにやるかという問題についてのみ答弁をいただきたい。ほかの説明は要らぬ。
  30. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは、時期を繰り上げるにいたしましても、あるいはスライドさせる時期を繰り上げるにいたしましても、すべて法律事項であります。これは政府が法律を出します前には、必ずその相談を野党のほうともいたしましょう。しかし、これは見込みがつかないことを御相談をするわけにはいかないので、法律案が出し得るという、そういうことになりましたら、それはぜひ早く通していただかなければなりませんから、御相談をいたさなければならないと私は思います。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 総理大臣に伺います。  総理大臣、先ほど前段に、いろいろな問題について、反省の上に立って、今後の問題については国民の要望をいれて、野党の意見もいれて、それでりっぱな行政を進めたいと言われている。その問題についての一つの大きな問題点、これは政府原案をきめて相談するのではなしに、知恵を出し合ってこのタイムラグを縮める、また、タイムラグが縮まっていないことによる損失をあとから補てんをする、そういう問題も知恵を出し合って早く結論を出す、そういうことをする必要があろうと思う。与野党がこの問題について急速に話し合って、知恵を出し合って国民のために対処をする、そういうことが必要であろうと思いますが、総理大臣、そのことを厚生大臣に命じられて、与野党が熱心に研究し、推進をし、実現をするということについての、そのようなことをぜひやっていかなければならないと思いますが、総理大臣のひとつ積極的な御答弁を願いたい。ぜひ、政治に対する国民の信頼を回復するために、あなたのこの意味における決断をお願いをしたい。積極的な答弁を求めます。
  32. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま、内田大臣からるる申し述べておりますとおり、物価にスライドをし、年金生活者が利益を得るような方法で、政府は熱心に検討を進めております。  あなたが声を大きくされて、何回も同じことを言われるその熱意はよくわかりますよ。同じことをわれわれも考えてやっていますということで御理解いただきたい。  野党と相談するということでございますが、これは、政府がこういうぐあいに熱心にやっていますから、野党も知恵があったら、どうぞ、文書でも口頭でもけっこうですから、政府の施策を円滑に推進せしむるためにプラスになる御発言、御建言は十分やっていただきたい。政府も、実現でき得るものに対しては十分取捨選択をしてまいりたい、こう考えます。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 総理大臣の御趣旨は、野党と協議をして進めるという御意思と確認をいたします。  そこで、時間がありませんので……(田中内閣総理大臣「一方的にきめられては」と呼ぶ)それは当然、善意の政治家で積極的な政治家というのは、そういうことですよ。あなたが善意も積極性もないという政治家なら別だけれども、いまの発言は、そういうことであるということを確認をいたしておきます。  それから、多賀谷委員の御質問がありますからごく簡単に申し上げますが、もう一つ、インフレ福祉手当の問題があります。政府のほうは三つの名前でこれを呼んでおられますが、時間の関係上、端的に申し上げます。  生活保護者や収容施設に入っておる人や、あるいは心身障害者や、あるいはまた老人や、あるいはまた失対の労働者、そういう人たちに対するインフレ福祉手当について、この国会の追及において、あなた方はほんのスズメの涙ほどの対処をせられました。やられたことについてはいささか評価をしますけれども、あまりに額が少ないし、あまりに対象が少ない。それについては、政府は、使う資金が、予備費がぎりぎりであったからできなかったということを、しばしば、間接、直接に言っておられます。しかし、あした、あさってから新年度に入る。先ほどの予備費がたくさんある。予備費を使っても、あと四十八年度の自然増収分がたくさんある。そして会社臨時特別税の財源もある。そういうことを考えたならば、当然、このインフレ福祉手当について、前に予算が少ないからこれしかできなかったと言われた政府立場、それをかみしめていただいて、今度は四月には予算がたくさんある。年度がわりであっても、国民の生活は三月も四月も続いている、去年の四月からずっと続いているのだという対処で、この問題についてもほんとうに進めていただかなければならない。  このことについても、ぜひ与野党が話し合って、ぜひ国民の負託にこたえる、政治の信頼を国民から回復をするというために、話し合いを進めていく必要があろうと思うのです。その点について、ぜひ総理大臣の積極的な御発言を、ひとついただきたいと思う。
  34. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府は、低所得者や恵まれない方々に対しては、四十八年度の予算執行中におきましても、例年に例がないほどの措置を行なっております。予備費の額が少ないからというのではなく、政府がきめましたのは、これは国民の税金を使うわけでございますから、そういう意味で、妥当であるという考えのもとに支出を行なったわけでございます。  来年度は、まあ二日ばかりたつと四月一日になるから、二千数百億の予備費があるからということで、まだ国会成立もせず、いま御審議をいただいているときに、これもどんどん使ってやります、こういうことは、やったらたいへんな問題になります。そういう発言はできません。それは、予備費を使ってまでおやりなさいというあなたの熱意は理解しますよ。それは理解しますが、予見しがたきものでなければ支出はできないという予備費でございますし、それはまた、来年度になって予算で見ておる額でおさまると思いますよ。私のほうでは、物価も押え、いろいろ正常な経済情勢をつくろうと、いま日夜努力をしているわけですから、できると思いますが、あらゆる場合に、国民生活の安定、恵まれない方々に対する手厚い施策ということは、政治理念として、行政をあずかる立場で当然考えていることでございますが、具体的にお示しになられても、はい、そうでございますかと、もし答えれば、そこでまた一本とられるわけですから、そうなかなか申し上げられないのです。  ですから、そこらは、あなたの貴重な発言として耳にとどめておきますということで、御理解を願いたいと思います。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 貴重な発言として胸にとどめていただく……(「耳にだ」と呼ぶ者あり)耳に入ったのは、胸に通じてこなければ人間じゃないです。耳だけの人間になる。胸にとどめておられるということで……。  実は総理大臣は——厚生大臣、何をしている。総理大臣はよく御存じないけれども、きょう発表された指数でまた物価が上がった。これを私が試算をすると、生活保護者の生活は、物価値上げのために、四十八年度は、二月は三月と同じ率と考えて計算をすると、四万三千円の赤字がある。一世帯で四万三千円の赤字があるわけですよ。昨年度は四万四千幾らですから、約一月分赤字になっているわけです。一カ月その人たちに食わずで過ごせという状態になっておるわけです。この前、六十四歳の四級地の人が六十六円というのが問題になりました。この六十六円というのは四十九年度の予算だそうでございますから、四十八年はもっと少ない。そのくらいの食事をしておる人に、一カ月めしを食わないで過ごせという状態になっているわけです。  そのようなことを考えられたならば、形式的なことをおっしゃる時代ではありません。この問題について、この三月には、予備費がなかったから補正予算を出さなければできなかったという状態があります。補正予算を出さないことについては反省をされなければなりませんけれども、とにかく予備費でぎりぎり対処をされた。四十九年になったら、そういう対処をする財源がたくさんあるということで、この問題について対処をしていただくことが政府責任であろうと思う。そのことについて与野党話し合って、この問題についても、ほんとう国民の負託にこたえるように、協議をし、推進をし、善処をし、実現をしていただかなければならないと思う。  いまニュアンスのある、いま四十九年度予算成立していないからと言われました。そのことはわかります。ですから、緊急に四月になって、その問題について与野党協議をして、国民の負託にこたえるということをぜひやっていただきたいと思います。形式的な答弁は要りません。総理大臣、ちょっとこっちを向いてください。総理大臣は、国民の負託にこたえるのは、政府の首班の責任であると考えておられるでしょう。そうして、この狂乱物価に苦しんでおる国民の政治に対する不信を何とかして取り返す、政治に対する信頼を国民から回復するということが、政治家として最も大切なことも御存じでありましょう。また、財政の運用に当たる大蔵大臣は、このインフレ福祉手当やスライドの問題については、厚生省で案を出されたら、全面的に協力をしてまいりますということを予算委員会の分科会で私に明確に答弁をしておられる。財政当局もそのような決意です。どうか総理大臣、この問題について、緊急に与野党協議をし、そうしてインフレ福祉手当についても、スライドと同様に対処するということを、ぜひ進めていただくことを強く要求します。  さらに、官房長官は、先日、賃金スライドを検討することを言われました。このスライドの問題は、賃金スライドが物価スライドよりもはるかにいいことは当然であります。この問題を含めて与野党ともに協議を進め、国民の負託にこたえることを強く要請をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。ぜひよろしくお願いいたします。
  36. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 多賀谷真稔君から関連の質疑の申し出があります。八木君の持ち時間範囲においてこれを許します。多賀谷真稔君。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず、インフレの弱者であるお年寄りの中で、今度の春闘で賃金が上がることが、逆に収入が減るという不安を持っておられる方が、それは六十歳から六十四歳までの層で、厚生年金のいわば在職年金の該当者であります。  一例をあげますと、四万八千円の収入の人、そうして四万円の年金の資格がある人です。しかし、五万円以上の者は全部年金は適用ありません。支給停止になります。そこで、この人は四万八千円ですから、二割、すなわち四万円年金の二割、八千円もらえるわけです。現在の収入四万八千円プラス年金八千円で五万六千円。ところが、これが、春闘でどのくらい上がるかわかりませんが、お年寄りですからあまり上がらないとして、一五%上がったと仮定をする。そういたしますと、七千二百円のべースアップで五万五千二百円になる。そうすると、いままでもらっておった年金八千円が全然打ち切られる、こういう層があるわけです。  しかし、公務員の場合は、現在の公務員共済は、資格ができますと、その支給停止は全然ありません。ただ恩給時代の分が、これは支給が制限を受ける。そうして現在は、共済が六十万円、その他の収入が三百万円、三百六十万円までは何ら制限がありません。今度の法律改正では、七十五万円の共済、三百七十五万円の他の所得、四百五十万円までは何ら制限がない、こういう矛盾をした情勢が出ておるわけです。  これはきわめて重要な問題で、資格があるけれどももらえない。しかし、実際年金では食えない、でありますから働かざるを得ない、働けば年金がもらえない。それで賃金の安いときだけ若干もらえる、賃金が上がればもらえない、こういう層です。  これは、私は非常に矛盾ではないかと思うのですよ。今度のインフレの弱者の一人として、これはどういうふうにお考えですか。時間がありませんから、総理大臣はきわめて博学ですから、総理からひとつお答え願いたい。
  38. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 まあ、専門家から……。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうですか。では厚生大臣。
  40. 内田常雄

    ○内田国務大臣 厚生年金は、もう申すまでもなく退職した者、また年齢六十歳以上の者に出すわけでありますけれども、在職しておっても、その後の給料に応じて、御承知のとおり六十歳から六十四歳までの間、あるいは六十五歳以上の者につきましては、ある控除をしておるという制度、そのことをおさしになっているんだろうと思います。その二割ないし八割しかくれない、こういうかっこうになっておるはずでございます、その人が職場で収入を得ておる限りにおきましては。その矛盾を御指摘になっているのだと思いますが……(多賀谷委員「それは六十五歳まではゼロですよ」と呼ぶ)それは二割ないし八割ということになっておるはずです。それで五万円程度の収入を確保させるということになっておるはずでございます。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 質問通告をしておったんですから、大臣にはっきり教えておかなければいかぬ。六十五歳以上は、収入に関係なく八割もらえるんですよ。ところが、六十五歳未満はこれはもらえないのですよ。
  42. 内田常雄

    ○内田国務大臣 政府委員が出てまいりまして、私の答弁に間違いないと申しておりますが、政府委員にもう一ぺん復習させます。
  43. 横田陽吉

    ○横田政府委員 在職老齢年金の問題でございますが、六十歳から六十四歳までの方につきましては、所得が低い方にだけ年金をお出しするわけでございます。それから六十五歳以上の方につきましては、通常、所得の低い方がほとんどであるというようなことで、御指摘のような支給のやり方をやっておるわけです。それで、この年金と現に受けておられる報酬と合わせまして、昨年の五万円年金の水準に達するような、そういった段階刻み、ないし支給率の停止を講じておるわけでございます。
  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そのとおり、私が申しましたとおりですね。六十五歳未満は、収入の低い人だけが年金を受ける。ですから五万円以上の収入の人は、六十歳から六十五歳未満は資格があってももらえない、こういうシステムになっているのですよ。それで、ちょうどボーダーラインの人は、べースアップがあると逆に収入が下がるという問題が起こるわけです、五万円のボーダーラインで。とにかくとの五万円というのが非常に低いわけです。  ところが、厚生年金のある企業に入りたくないという人、逆に、厚生年金をもらえる企業へ入ったらどうか、非常に低い五名以下あるいはまた自営する人は、こういうことを考える人もあるんですが、これがまた健康保険の関係がある。これは厚生省は、健康保険の場合と厚生年金を一本でとるんでしょう。ですから、自由選択はできない。健康保険に加入しなければならぬ。だから、どうしても厚生年金に入らざるを得ない仕組みになっている。  ですからこれは、私は、時間がありませんが、早急に改善してもらいたいと思う。資格は六十歳というけれども、実際は六十五歳にならぬと資格がない。現実に、昨年の改正以前は、たった三百人しか六十歳から六十四歳までの人で年金の一部を受けた人はいないのですよ。そういう状態で、実際は六十歳から六十四歳までは停止されておるのですよ。これは重大問題ですから、ぜひひとつ早急に改正案を出してもらいたい。これは総理から御答弁願います。
  45. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 在職老齢年金の実態については、確かに御指摘のようないろいろな問題がございますから、これは、実態調査を早急にするということの必要性はよくわかります。  ただ、その前段にある問題、六十歳から六十四歳までの人に対しては、これは既得権として年金を付加しますというのではなく、五万円までなければ生活ができないので、五万円という一つの年金の限度を考えようじゃないかということで実現をしたわけでございますから、ですから、六十歳以上の人は全部働かないで年金だけで食っていればいいんだということになれば、これは年金制度は、とにかく惰民政策にもなるわけでありますから、そうじゃなく、やはり働ける人は働くということが前提でなければ、私はほんとう政策というものは国民的じゃないと思うのです。ですから、働く意欲もあり能力もある、しかし、六十歳以上の人で四万五千円しか収入が得られないという方には、これは五万円までの間の五千円は補償しますというのが、私は第一段階だと思いますよ。  しかし、年金というものの完ぺき性ということを考えていったり、年金の財政事情とかいろいろなことを考えてみまして、だんだん、だんだんとよくなる。それで積み立てをしておるということもありますから、そういうことになれば、収入があっても、ちょうど社会保障費の中で収入があると、生活扶助費はその部分を削られてしまうということではなく、ある意味では、働く意欲があり収入があったら、あっても、生活の内容をよくするためにきめた生活扶助費は、全部やったほうがいいじゃないかという話と同じ話でございまして……(「違う」と呼ぶ者あり)いやいや、いまやはり現実的にそうなりますよ。  ですから、そういう意味で私は、やはり制度の問題として検討し、勉強していく問題ではありますが、これをすぐ改正案を出しまして、全部五万円以上にもなるように——まああなたの言うことは、とにかく年金プラス働いた分は、そのまま本人の収入になるようにすればいいじゃないか、頭打ち五万円としてやることになると、普通ならもっともらえるものが、頭打ちで下がるじゃないか、これを画一、一律的に付加されるようにしたほうがいいじゃないかという御意見のようですが、私は、やはりそういうことを、端的にいますぐ、そういたしますということを述べられるような問題じゃない、こう思います。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が言っていますのは、全面支給せよと言っているのじゃないのです。五万円は、今度の物価スライドというその制度の中にも乗らないのです。五万円というのはもうくぎづけだ、法律改正をせざる以上。だから、この五万円が、今度物価スライドで六万円になるんならまた一つ話がわかるのです。それがないのです、法律は。ですから、五万円はこのインフレで据え置きなんです、法律を改正せざる以上。そういう矛盾があるじゃないかと言っている。しかも、五万円ではちょっとひど過ぎるじゃないかと言っているのですよ。もう少し緩和すべきである、こういうことを主張しておるわけであります。ひとつ十分検討していただきたい。  そこで、いよいよ春闘も山場を迎えておるわけです。政府はかなりきつく処しておられるようですが、私は、いままでの世界の歴史を見て、先進国で幾ら弾圧をし懲罰をかけて、あるいは刑事罰にしても、このストライキというものがやまるわけはないのですよ。  ですから、私は、七〇年の第一回のパブリックサービスに関するILOの合同委員会で報告書が膨大に出ています。この一節を紹介しておきたいと思いますが、「多くの国で、政府は前述したような罰の適用にあたって、重大な困難にであってきた、ということに留意すべきである。ストライキをおこなった公務員について、これらの国の経験が示しているものは、多数のストライキ参加者にたいして刑事罰を科すことは社会的に不可能であると同時に、懲戒措置の強制は政府業務の麻痺を長びかせることに寄与し、公衆にいっそうの苦難をしいることになりうる、ということである。職員団体に〔団体〕罰を科することの主たる障害は、このような罰が団結権および団体交渉権について、ならびに労働関係全体の雰囲気に否定的な効果をもたらすことに関連している。この点については、正常な交渉が、このような罰を加えたのちに長いあいだにわたってそこなわれやすいこと、労働団体の機能を妨げることは非公認ストライキ〔山猫スト〕の慣行を力づけることになりうることが認められてきた。」ですから、私はそういう点を十分留意すべきではないかと思うのです。  そして、私どもがいままでずっと経験をしましたように、四十一年の十月二十六日の最高裁判決、これは東京中郵事件、四十四年の四月二日の都教組の事件、これは最高裁は刑事罰の免責をしたわけであります。そうしてさらに、四十六年の十月十五日の東京地裁の都教組の民事罰における適用除外の問題、この判決のごときは、もう現行法が違憲といわないばかりに判決の主文が書いてある。あるいはまた、四十七年の十一月二十七日の山形地裁の判決、専売公社のごときは公労法の十七条の適用は受けないんだと、初めから断定をしておるような判決、そういう中で、例の、昨年の四月二十五日の最高裁判決が出たわけです。そして、これはまさに逆転をする判決を出した。そうして八対七の評決であったわけです。  しかし、その後、公制審のこの答申というものは、四月二十五日の最高裁判決を否定しているのですね。すなわち、政府がいっている趣旨を否定している。どういう点を否定しておるかというと、政府及びその四・二五判決は、憲法十五条、二十八条の解釈として公務員全体の奉仕論を出してきておる。しかし、そのことは公制審の審議委員の全体の承認とならなかったわけです。すなわち、その争議権について三論を併記したということ自体は、公制審の決定にはならなかったということである。そうして四・二五判決が示した勤務条件法定説、要するに、勤務条件は、公務員の場合は法定で、法律やその他で規定しておるから、団体交渉の拒否という面についてはむしろ逆な答申がされた。そうして四月二十五日の最高裁判決後に、地裁においては、和歌山における和歌山高教組の判決九月十二日、十月四日の熊本地裁の国労事件の判決、みんな最高裁判決と違う判決を出している。まさにこの最高裁判決は、下級審からくつがえっていこうとしている、こういう事情に実はある。そうして、今度の結社の自由委員会における理事会の決定ですね、一三九次報告、これを見ましても、公制審の答申とはまたさらに労働者の権利が拡大された方向で報告が出ておる。  こういうことを考えますと、私は、やはり政府はみずから立法者として、はっきり提案をすべきだと思うのですよ。これは率直に言いますと、裁判所泣かせの立法になっておるのです。かつて、大臣御存じのように、公労法四条三項、地公労法五条三項、職員でなければ組合員及び役員になれない、こういう条文のあったために、非常に苦労して、団交権を制限するとか、あるいは、それは憲法上の組合であるけれども、公労法上の組合でないと言ったり、珍判決が出たわけですよ。それで結局は、最終的に立法が解決をした。  ですから、私は逡巡すべき時期ではないと思う。政府は、今日のゼネストを前にしてルールを確立すべきである。ストライキという現象がいいとか悪いとかじゃなくて、一体ストライキをやっておるその目的がいいかどうかを、国民の判断にまつようなルールに乗せるべきだと思うのですよ。それを、ストライキという現象ばかりをどんどん追ってみても、これは現在のような法制下で解決する問題じゃない。少なくともこの要求をルールに乗せるということが一番大事なことじゃないかと思う。ひとつ、労働大臣並びに総理大臣から御所見を承りたい。
  47. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま内閣国会で同種の議論が行なわれておりますが、これは憲法の条章の中で、もうもちろん団結権や結社の自由、これは当然明記されておることでございますから、これは尊重いたすことは当然でございます。同時に、公共の福祉ということも明文がございます。それでまた、公労法上の問題でいつでも問題になりますのは、いわゆる労働基本権側から見たものの見方と、いわゆる公務員制度という条章から見た見方というものに対しての議論がありますから、下級審ではいろいろな判断が行なわれるということはあるわけです。あるわけですから、最高裁の判例にまたなければならないということです。  ですから、それに対してあなたが、明確に法律を立法したらどうかということは、私はわかります。こういう問題に対して、明確に公務員は、公務員法を準用せられておる者であっても、公務員制度にウエートを置いて、これはもう結社の自由、それからストライキ権は認めないということを明確にすることも一つの手段だと思いますよ。それは民間の労働組合に対して、団結権やストライキ権を認めないなんということを言っているわけじゃないのですから。いわゆる憲法の条章で明定されておる公務員は、いわゆる公共の福祉のためにという問題と、憲法二十九条の私有財産権は、これを厳に確保しなければならぬという明文があります。これは明文がなくたってあたりまえのことなんです。しかし、その私有財産権さえも公共の福祉のためには制限を受けておる。しかし、その制限は法律でなければならぬ。これは労働権の場合だけ、法律の条章や憲法の条章を、労働権だけにウエートを置いて判断をしている人と、それで国家国民全体、憲法全体を見て判断しておる人との間には、確かに問題がありますよ。  ですから、そういう問題に対して明確にすることが望ましいということは、自民党の中でも、これはもう長いことあるわけです。ですから、そういう意味で中途はんぱにしておっちゃいかぬ。だから、国営だったら国営にしてしまえ、そうして民営だったら民営にしなさい、コーポレーションのようなこういうものになったからいろいろな問題があるのだということは、長い戦後の問題でありまして、だから、ここらは、お互いが自分の立場と自分の角度からだけ、この条章だけという労働基本権、団結権だけを主体に述べられておることと、やはり全般を見まして、国民に対する公務員制度をどう見るか、公務員法を準用されている者、そういう者も公務員制度の中に含まれるものとして、これにウエートを置くべきだ、現行法律はそこにウエートを置いて見るべきだ、こういうことは、これは、議論がずっと来た過程を私も承知しております。  ですから、そういう問題に対して、明確な判断を在野の方々に求めるということは逃げ道にもなりますから、政府が明確に国会に、法制上の問題として提案をしてはどうかという御議論は、一つの見識がある御発言だと思います。  もう一つだけ申し上げますと、これはILOとか、いろいろな世界的な問題で、これは相当進歩をしているわけですから、私は、労働基本権の中で、ストライキというものを金科玉条にしておるということ自体に対しても、私も多少二十一世紀近くにまで生きようとしている人間としては、どうも十八世紀、十七世紀の手段を金科玉条だと思っているのはまずいと思うのです。公正な第三者というものの判断にゆだねるという仲裁の制度もあるし、公労委の制度もありますのに、力と力でぶつかり合っている。これは東と西との対立と同じことですね。国連で話をしましょう、こういう事態になっているのだから、賃金に関しては、労働条件に対しては、第三者の公正な判断にゆだねる、これはすべてを拘束するというような制度も新しいものである、私はそう考えているのですよ。だって、国際的にそうなっているものね。力と力で対決することはやめて、話し合いで話をしようというふうになっているじゃありませんか。  そういう意味で、労使というものが敵だというような考え方で、力と力だ、それにはストライキが金科玉条であるということは、どうも私は、そこらは納得しないのです。これはひとつ、私も専門的に勉強しよう、人類のために。そういうことでして、過去のものが、長い世紀これが守られてきたから、これよりもいい制度や手段はないんだということでなく、人類の英知はもっといいものをやはり導き出す、こういうことが必要ではないかということだけ、念のために申し上げます。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 人類の英知はいいのですけれども、やはり漸次公務員の争議権が認められているわけですね。全体の奉仕論を唱えたアメリカにおいても、ハワイとかペンシルベニアでは、公務員の争議権を今度承認したのです。ですから、そういう方向に行っている中でどう解決するかというのを、ひとつすみやかに出してもらう。そして、いまの春闘を、ただ威嚇するだけでは片づきませんよ。ですから、佐々木運輸大臣がくしくも、公労法を改正しなければならぬと、かつて言われたと同じ、そういう見地で対処していただきたい。  このことを要望して、質問を終わります。
  49. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて八木君の質疑は終了いたしました。  次に、増本一彦君。
  50. 増本一彦

    増本委員 共産党・革新共同の増本でございます。  私は、政府に、主として政府関係金融機関のあり方の問題と、二番目に石油と物価の問題について、お伺いをしたいと思います。  政府は、今般、開発銀行、輸出入銀行、北海道東北開発公庫などの、大企業向けの政府関係金融機関の、反社会的企業に対する融資の規制をきめようとされているわけですね。これは、わが党がかねてから主張して、この予算委員会でも強くその実現を主張してきた問題であります。  しかし、伝えられるところによりますと、この政府案の内容では、まだその規制の基準があいまいであって、しかも、規制のしかた自身も部分的である。そのために、不徹底ではないだろうかというように私たちは考えるわけであります。  たとえば、独占禁止法、国民生活安定法や石油需給適正化法、こういう法律に違反し、社会的に大きな影響を与えた企業を対象とする、こういうようになっていますが、これも、起訴や告発が条件になっていて、規制の対象のしぼりが非常に狭くなっている。だから、通産大臣から警告を受けたゼネラル石油や伊藤忠商事というのは入るのか入らないのか、これもはっきりしない。入らないほうにいきかねない、こういう問題があると思うのです。  それからもう一つは、ある企業が規制の対象となるかどうかの判定は、その企業の主管大臣が、行為の反社会性、法的制裁、国益とのかね合いなどを考慮してきめるというようなふうにもなっているようであります。これでは、いわば自由裁量にすべてまかされてしまって、骨抜きになるおそれが十分にあるといわなくてはならないと思うのです。  こういう、いま問題になっているこの大企業向けの、反社会的企業に対する政府関係金融機関の融資規制の問題について、これを決定する段階に来て、総理はどのようにこれに処そうとしているのか、その基準と内容等を含めて、ひとつ、明確な御答弁をまずいただきたいと思うのです。
  51. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 反社会的企業と思われるものに対する、政府金融機関からの締め出しというような問題に対しては、これは非常にむずかしい問題でございます。一口でもって演説することは簡単でございますが、非常にむずかしいの外す。これは、しかも憲法論争が起こってくるのです。これは、一部でもってわあわあと言えば、憲法の基本的人権とか、無差別の原則とかというものを乱るという大きな問題が起こってまいります。これは、行政訴訟に一体勝てるかどうかという問題もございます。  ですから、そういう意味で、国会でもって御発言がございましたし、政府も世論にこたえるということで、コードをきめなければならぬだろう、そういう意味で、各省でもって勉強しようということで、各省連絡の上、勉強しておるわけですが、これは、やってみると非常にむずかしい問題でございます。  なぜかといいますと、政府関係金融機関について設置法や何かに明定があって、そして、刑法第何条によって処罰を受けた者等に対しては、対象とすることはできないというような明文があれば、これはやれます。これと同じことで、京都の何とかという先生は、何年間もいないんでしょう。いないけれども、やめさせることはできない。月給も払っておる。なぜか、憲法の条章を守っておるからだ、こういうことですから、同じことなんですよ。政府関係金融機関が差別融資が一体行なえるかどうかという問題は、京都の大学の先生のときだけは憲法の条章を引っぱり出してきて、月給を払わなければいかぬ、それで、ちょっと悪いことをしたと思われる業者は政府関係金融機関からはずせ、こう言ったら、憲法をかってに読むことになって、そんなことを政府ができるわけはありません。(「すりかえちゃだめだ」と呼ぶ者あり)それはほんとうです。そういう議論があぶない議論なんですよ。民主政治を根底からくつがえすということになるので、そんな議論が国会でもって堂々と行なわれなかったら、たいへんなことになります。私は明確に申し上げる。  もう一つは、公務員の分限令におきましても、起訴された場合には休職になる。起訴された場合は休職になりますし、一審の場合はどうする、二審の場合はどうすると、これは非常に慎重にやって、現在でも、本人が辞表を出さざる限りその職にとどめておく、在籍させておくというようになっておるわけです。  そういうものと比較をしてみるときに、反社会的な企業ということが明定されておって、それに反した場合、どういう条文を適用するというような法律がなくて、主管大臣だけの認定といったら、これは恣意によってやったじゃないか、そういうことを言われますよ、実際に基準がないと。ですから、これを明確にするには、私は法定が望ましいと思う。  法律を制定するということになると、いまの会社利得税というようなものよりも立法技術上はもっとむずかしい、こういうことです。しかし、国民の気持ちにはこたえなければいかぬ。そして、それをもっておきゅうをすえるくらいになって、それでとにかく、以後一切国民のためにやりますという社会慣行ができればいいことだというので、いろいろなことを考えて、皆さんの御意見に対してもこたえられるという広範な立場で、国民的な立場で、いま政府は苦慮しておるわけです。  それだけでなく、今度輸銀の金を使うには、それなりに国益を守って開発するとか、また、その会社でなければ技術的には間に合わない、こういうものもあるのです。しかも、向こうの相手国は、国内においてどういう問題があっても、公入札でぼんぼんと落札をした。落札をしたが、日本の輸銀は、君はちょっとふうさいが悪いし、評判も悪いから金を貸せないのだ、こういうことでは国益が守れないし、国際問題もあるんです。  そういう意味で、大蔵大臣を中心にいろいろ、農林大臣も研究しておりますし、また法務省から意見も聞きましたり研究していますが、非常に高度な問題でございまして、ということで、とにかく簡単に……(「何もない」と呼ぶ者あり)何もないって、あなた方、お出しになれば、そうすれば、では京都の先生にも適用しますよ、こうなるのでして、これは実際はっきりしているんですから……(「企業とは違う」と呼ぶ者あり)企業と京都の先生といっても、企業はまだ自分の金でやっているんですし、京都の先生は国民の税金を払っているんです。(「京都の先生を引っぱり出さなくたっていいじゃないか」と呼ぶ者あり)冗談でしょう。御自分が逃げたいところは全部ふたしておって、そういうことだけでは、真に政治をやる責任がある立場の人が、簡単に述べられることではないんです。  ですから、もうそこらは、やはり憲法をよく考えて、ほんとうに憲法擁護の精神と、国民の利益を守る、こういうことで、ひとつ、いま鋭意努力をしておるということであります。
  52. 増本一彦

    増本委員 いまの総理の御答弁は、これは総理自身がおっしゃっていたことから見ても、大幅な後退ではありませんか。総理自身、前に、反社会的企業の行為というのは、社会的悪影響が大きい行為で、反社会的であることを承知してやった行為だ、企業ぐるみの行為だ、こういう適用三原則みたいなものを述べておられるわけですよ。それをやるということで、一部の新聞では、きょうの閣議で決定をするんだということまで報道されている。ところが、いまのお話では、憲法論を持ち出されて、そして、たいへんむずかしいと言う。結局、いまのお話では、おやりにならないという趣旨にもとれるわけですね。  ところが、いいですか総理、ちょっと待ってください。いままでの議論を伺っていても、この企業には、総理も言った憲法二十九条で、私有財産権というのは、公共の福祉に従わなくちゃならぬということになっているわけですね。この企業が取引で適用をする民法の第一条だって、権利の乱用は許さない、公共の福祉に従わなくちゃならぬ、そして取引は、信義、誠実の原則でやらなければいかぬ、公序良俗に反するような契約は無効だということまでいっている。反社会的な企業の活動というのは、そういう内容を持った企業の活動ではありませんか。法律の保護に値しないようなそういう活動をやった企業に、特利の政府系金融機関からの融資はストップして企業の姿勢を正す、これは国民の常識ではありませんか。  そういう点から見ると、いまの総理答弁は、全くいただけない後退した答弁だ、こう言わざるを得ないのですが、どうでしょう。
  53. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 せっかくのあなたの御発言でございますけれども、憲法無視のことなどやれません。ですから、憲法の条章にちゃんと沿って、しかも世論にこたえて、それが行政の範囲内でやってしかるべしだしという結論が出なければだめだし、角をためて牛を殺すで、とにかく、国際契約も無効になる。その商社でなければならないというような功績もあり、しかも国民の生活を守るためにも必要である、そういうものに対して、いわゆる法律に明定されるような条件をちゃんと具備しておって、これが反社会的企業であるということが認定される状態であるならば、それはもう自動的に適用して一向差しつかえありません。  ただ、主務大臣の認定において、なんということでありましたら、労働大臣が、あの人はストライキでもってもう三回も処罰を受けているだけでなく、いろいろなことを何回もやっているから、これはとにかく、中小企業金融公庫政府関係機関からの金融は差しとめる、これはどこまでだって広げられることですよ。感情論と、責任がある政治、行政の上でやることとの間にはおのずから限界がある。それはいずれも、際限を越して、際限のないことをやれません。  ですから、国家利益ということと、法律が一体何を求めておるのか、これらの政府関係金融機関の設置法やその目的とするところとたがわない状態において、しかも、新たに起こった事態に対処できるようなためには、どういうコードをつくるのかということで、いま鋭意検討中である。これは熱心にと言ってもいいですよ。それはあなた方、実際そんな拡大解釈をしたら、一体どこへ何がいくかわからないじゃありませんか。反社会的なものと思われるものは、事の大小にかかわらず、ある一定限度でもって国民が認めるという基準があれば別ですよ、基準がなくて、それをぼんぼんと拡大したら、それこそ、恣意によってだれでも追放できるということになるのでして、そういう問題に対して、遺憾ながら、あなた方のように自由奔放な議論はいたしません。それはまじめに、とにかく実効があがり、しかも憲法の精神に反せず、国益を守り、世論にこたえるということがなければいかぬと思いますよ。(「どういうことをやるというのか」と呼ぶ者あり)だから、いま鋭意検討中である。
  54. 増本一彦

    増本委員 総理、私が伺っているのは、新聞などでも報道されている、先ほど述べたような基準ですね、こういう基準に基づいてまずおやりになるのかどうかということですよ。それで、そういう新聞報道で伝えられている基準では、私は、まだしぼり過ぎていて、国民の期待や要請にこたえ、この異常な経済のもとで先取り値上げ、便乗値上げ、売り惜しみや買い占めと、いろいろ反社会的な企業活動をやって国民の糾弾を浴びた、そういういまの企業活動のあり方、これをコントロールできるかどうかということを、論評を含めて申し上げたわけです。何も自由奔放な、好きかってな議論をやっているわけじゃないのです。  ですから、そういうことで、鋭意検討しているとおっしゃるけれども、それでは、どういうコードをつくろうとなさっているのか、その基準は一体何なのか、総理は、一体胸のうちにどういうことを考えているのかということを伺っているわけですよ。
  55. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ここは、やはり国会という唯一無二の最高の権威機関でもってやっていますから、法律を無視したり憲法を無視したりの議論は、お互いに慎まなければいかぬと思うのですよ。世論にこたえるといっても、憲法の条章を、この条章は厳密に解釈をすべしといったら、これはやはり相当厳密に解釈していただかなければいかぬと思うのですよ。  ですから、不法行為ということがあれば、法律によって処罰を受けるのであります。これはお互いに法治国民ですから、これは、全然、いまの法律はみな無効なりという立場で考えたら話にならぬのでして、これは、少なくとも法律でもって、私的独占禁止法の違反事件があれば、ちゃんと告訴を受けるわけです。裁判にゆだねられるわけです。これはちゃんと処罰を受けるわけです。そうして、とにかく利益があれば、これは税でもってちゃんと吸収されることになっているのです。  そうすると、あと残るものは何かというと、新しい税というのは、きようでも通過するという——これもいろいろな問題がありますよ、立法論から。普通だったらこれはあるんです。国民の権利を制約するときには、あらかじめ予告をしておって、これから将来のものに対してやるのですが、これは、三月三十一日までは黙って、税金は三六・七五でございますといっておって、一日前にぼかっとやろうというのですから、これは、普通なら相当な問題があるのですが、これは世論にこたえて、まあ国民もこれは認めていただけるだろうということで、これは荒っぽい法律を出したわけですよ。これは、法律家からいったら、えらく問題があるのです。あるのですが、まあまあそれは国会の意思の決定によってこれを容認してもらえるだろうと、こういうふうになっているでしょう。  そのあと、一体、反社会的行為ということが、法律で明定されていれば別ですよ。これは、いまの判決を受けた、最終的に決定をした、いろいろな段階があると思いますが、そうでも何でもなく、ただ自民党の考え方で、共産党のあなたの考え方でということになれば、とにかく大企業はみんな反社会的な企業だぞということにもなりかねない。(「それは総理の考えだ」と呼ぶ者あり)いや、そういうことになりかねない。ですから、自由裁量でやるということには、行政権の行使においても、これは相当厳密な解釈をなすべきでございまして、これは異論があれば、憲法解釈というものを大前提にして考えなければいかぬ。  そういうことでございますし、しかも実効があがることでなければならない。実効ということは、一罰百戒でもって、過去のことを忘れずにというんじゃなく、これから反社会的な行為をしてもらわないようにということを目標にしてやるわけですから、そういう意味では、やりましょう、これはひとついい方法を考えましょうと、こう国会で述べたのですから、この国会で述べたことに対しては、重大な責任を感じていますよ。それはできませんでした、なんてことでなくね。ただし、国会で言ったからといって、もう法律無視も何もかまわずやってしまうんだ、こういうことではどうにもなりませんので、国民の権利の制約と国益を擁護しなければならないという二つの大きな問題を考えるときに、これはやはり立法論からいっても、あらゆる角度から完ぺきに近いというものをやはりつくらなければならぬ。そのものでいま鋭意検討中である。  ですから、これは私がいま、どういう状態でということを申し上げられることは、各省大臣の間でも、農林省に関しては農林大臣、通産省に関しては通産大臣という案もひとつ出してみたら、では、その業界の生殺与奪の権はオールマイティとして所管大臣が持つことになる、そんなこと国会が容認するはずはない、こういう議論も出てまいりまして、これは、やはり閣議できめるには、相当国民理解が得られて実効のあがるようなものにしなければいかぬということで、いま鋭意検討中である、こういうことでございまして、むずかしいものほど少しは時間がかかるということです。しかし、これは全然ケースを変えて別なものに当てはめると、すりかえるなという議論があります。すりかえるんじゃないです。行政は普遍的でなければいかぬし、このものだけはいじめてやろう、このものだけはどうしてやろうというようなことを考えたら、これはたいへんなことになります。  そういう意味で、国民が、まあやむを得ざる処置であろうと認められるものでなければならない。場合によっては、それは法律の改正案として国会でもって議決を求めるというくらいな責任ある態度をとらなければいかぬ。行政権はみだりに拡大解釈すべきでないと、いつもあなた方に言われていることをいま私が言っているわけですから。ほんとうですよ。
  56. 増本一彦

    増本委員 私が伺ったのは、その規制すべき反社会的企業、この反社会性というのは、一体どういうものなのかということの総理の見解を、実は一つは伺いたかったのです。  先ほども言いましたように、憲法の二十九条では、私有財産権は公共の福祉に従わなくちゃいかぬということになっている。そうですね。取引に適用される民法でも、権利の乱用はいかぬ、そして、公共の福祉に従って私権は行使しなくちゃいかぬ、取引の大原則は信義、誠実の原則だ、社会的な妥当性を持たなくちゃいけない。そういう基準に立って、ではこの融資規制の上で反社会的企業に対するコントロールというのは、どういう基準で、どういうコードをつくってそれをやろうとしているのか、そしてまた、ほんとうにやる気がおありなのかどうか、それはいつごろになるのかということまで含めて、じゃ、ひとつ所管大臣の福田さんから伺います。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま総理からお答えいたしておりまするとおり、これはそう簡単じゃないのです。なかなかいろいろむずかしい問題があるわけです。  つまり、反社会的行為に対しましては、これはまあ罪刑法定主義といいますか、これは法律によってその制裁というものがきめられておる。たとえば税の問題で違反をした、それに対しましては、税法は、重加算でありますとか、あるいは罰金だとか体刑だとか、そういうものを科しておるわけです。あらゆる法律において、社会規律をきめるという場合におきましては、その違反に対しまして、何がしかの制裁を法律できめておるわけです。  今回の措置は、これは法律でなくて、行政サイドでやろうというんですが、その行政サイドの基準というものをきめる、その場合におきましても、やはり罪刑法定主義というその精神は、これはまあくみ取っていかなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。  そこで、しかし国会において、私どもは行政的な制裁を考える、こういうことを言っておるわけですから、それはやりますきょうくらいは、あなたから御質問があれば、内容までお答えできるようにしたいと思ったのですが、これはなかなかむずかしくて、おそらく結論が出るのは来週くらいになりましようか、大体、だれが考えましても、こういう手順になろうかと思うのです。  つまり、融資の申し込みを受けますのは、これは政府関係金融機関です。その金融機関が、いかなる場合に、金融機関の主管大臣である大蔵大臣、それから北東公庫の場合には、大蔵大臣のほかに企画庁長官、それから北海道開発庁長官、これが入りますが、その場合、大蔵大臣ももちろん入っておるわけですから、大蔵大臣のところへ政府関係金融機関がお伺いを立てるといいますか、協議をしてくる。その協議をしてくるケースをまずきめなければならぬ。協議を受けました金融機関の主管大臣、つまり大蔵大臣は、今度は、申請をした企業を主管する大臣にその旨を連絡しなければならぬ、こういうふうに思うのです。今度は、企業の主管大臣たる各省の大臣が意見をきめて、そうして大蔵大臣に、これはこういうふうな制裁を加うべきである、あるいは制裁を加える必要はない、こういう意見を言ってくる。大蔵大臣も、それに対しまして異存がない、こういうことであれば、その旨を金融機関に通知する、そういう一連の手続になるだろう。これはだれが考えてもそうなると思うのですよ。その二つです。  ですから、その場合に問題がありますのは、いかなるケースの場合に金融機関が、金融機関の主管大臣たる大蔵大臣にお伺いを立ててくるかというケース、そのケースをどういうふうに限定するかという問題です。どれもこれもお伺いを立てるというようなことになりますれば、これは大蔵省が金融機関になっちまうようなことですから、そうじゃない。限定した場合に限られるわけです。その場合をどうするか。これは大体方向は常識的にきめられるわけでありまするが、なお、細目について主務官庁との間に意見の調整な要する点がまだ多々ある。  それから、今度は主務大臣が、企業の主管大臣が、大蔵省からの通報を受けまして態度を決定する、その基準がまた要るわけなんです。その基準につきましても、まだ主務官庁と大蔵省との間に詰めが残っておる、そういう状態でありまして、まあ来週くらいになるのじゃないか、そんな感じがいたしますが、いずれにいたしましても、やる気であるということをはっきり申し上げます。
  58. 増本一彦

    増本委員 同じ政府関係金融機関でも、中小企業向けの金融機関の場合は、現実にもうかなり相当きびしいことがやられているわけですね。  たとえば国民金融公庫などでは、繊維業者にお金を貸す場合、織機ですね、布を織る機械、これが、かりに五十台のうち二、三台が無登録織機を持っているというような場合でも、窓口でのチェックというようなものがあったりする、こういう例はよく聞くわけです。ですから、反社会性とか社会的な影響というところから見ると、大企業と比べて、中小企業向けの金融機関の場合には、現実にもうきびしい、こういうバランスの問題もある、現実の問題として。だから、そのときに大企業にしり抜けになるようなことになると、これは文字どおり規制するといっても、それは実質的には目的を達することにならない。ですから、この点はひとつ、あらためて発表された上で、さらに政府の見解を伺いたいというように思います。  ところで、このような政府関係の金融機関のあり方の問題なんですが、開発銀行から低利の融資を受けて設備投資をしたり、開発をやったりする、そういう企業、特に大企業は、やはり国民の福祉を守るとか、あるいはその企業に関連する中小企業の利益も守っていくというような立場に立って、企業活動をやらなければならないのは当然だというように思いますけれども、そういう開発銀行、その他の政府関係金融機関の融資を受けている企業の企業活動のあり方、こういう点については、所管大臣としていかがお考えになるでしょうか。
  59. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府関係金融機関から融資を受けてやっておる、それはもう限られた場合に限るわけです。すなわち国家目的を遂行する、こういうことでございますが、その国家目的の遂行には、企業として、政府の金をその企業を遂行するために借りておる以上、忠実に実践しなければならぬ、そういう立場にある、かように解釈します。
  60. 増本一彦

    増本委員 ところが、現実には多くの企業でそうなっていない。開発銀行などの政府関係機関の融資をいろいろ受けている企業、特に大企業はたくさんあります。きょうはそのあり方の問題について、少し政府の御意見を伺いたいのです。  たとえば、日本合成ゴム株式会社というのがあります。これは御承知のように、昭和三十二年から四十四年まで日本合成ゴム株式会社臨時措置法という法律によって、政府が十億円の出資をし、開発銀行も四十四年の時点までで六十九億円の融資残高があった。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕 そしてこの臨時措置法が廃止された後も、合成ゴム製造工場建設などの融資をずっと受けてきて、四十八年九月の貸し付け残高が三十六億円。この合成ゴムは、特にタイヤの原材料となるゴムですけれども、このSBRという原材料の市場占有率は昭和四十八年で四六%という大きなシェアを持っている会社であります。  この会社の、合成ゴムの価格体系に非常に不明朗な点がある。私の手元に、四十八年の十一月二十一日付で本社から各支店に、「基準仕切価格改訂の件」というので通達を出した文書がございます。  これを見ますと、いま申し上げたこのタイヤの原材料のSBRというのが、百七十円を三百二十円、キログラム当たりの基準仕切り価格を引き上げる。それが支店長権限で、最低仕切りが、いままでは百三十五円までまけてやってよかったのが、今度百八十五円になった。これで全部の業者に渡っているのだったら、それはそれで高値かどうかという問題だけですけれども、価格をつり上げたことの合理性もさることながら、中小企業には高く、大企業には安く原材料を供給しているわけですね。たとえば、このゴム会社が一番多く原材料を供給しているタイヤのメーカーでは、ファーストクラスのブリヂストンタイヤの場合を見ますと、この仕切り価格が、価格を上げても百八十五円なのに、実際にはキログラム百六十五円の売り値にして、そして百三十四円で差額の割り戻しまでさせるというようなことをやっている。その一方で、はきものなどをつくっている中小零細企業の工場には、支店長権限で、値段を下げても百八十五円だし、もっと零細なところだと、まるまる会社がきめた二百二十円の天井価格で売っている。そのために、そういう中小零細業者は逆に原料高で泣かざるを得ない、こういう状態になっているわけですね。  一体、こういうような企業活動、しかも、政府が法律でてこ入れをして直して、合成ゴムの原材料を豊富に円滑に供給しようということでばく大なお金までつぎ込んで、そうして援助して盛り上げてきた会社がこういう実態。いま大蔵大臣がおっしゃったように、中小企業を含めて、国民経済の円滑な運営に資するというようなそういうあり方に、開発銀行からばく大な融資を受けている企業がなっていない。逆に、低利の融資を受けて、そうして大企業には安く原材料を供給し、中小企業には高い値段で売って、そうしてもうけをふやしているというこういうあり方、これが現実なんですね。  こういういまの実態を踏まえて、これをどうなさるか、どういうようにお考えになるか。こういうことも含めれば、この大企業向けの政府系金融機関に対する融資のあり方というのは、根本的に再検討をすべ雪であるというように私は思うのですが、いかがでしょうか。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 日本合成ゴムは、確かに開発銀行から相当多額の融資を受けておりまするが、開発銀行は、新技術の開発ということで、かなりの融資を行なった時期があるのです。そういう融資を受けまして、日本合成ゴムは、わが国において合成ゴムに成功し、合成ゴム産業というものを定着さした、これは開発融資の非常に大きなメリットの一つでもある。私はこういうふうに考えます。開発銀行融資のおかげで基礎ができたから、また強大になったからというので、その基盤の上に立ちまして、これはかってなふるまいをしていいというものじゃなかろうと思うのです。やはり、むしろ国家の庇護、援助というものに感謝し、社会に大いに奉仕するという考え方で企業というものの運営は行なわるべきである、こういうふうに考えます。  ただ、増本さんがいま御指摘のありました、大企業と中小企業に対する日本合成ゴム製品の販売価格に格差がある、こういうような問題ですね、これは私は実情はよく承知しておりません。合成ゴム二業の主管官庁のほうからお聞き取り願いたいのですが、だから、私はその実情の当否は申し上げません。当否につきましては申し上げませんが、抽象的、一般的な議論として、そんなに国家的庇護を受けたそういう会社、そうだとしてみれば、国家、国民に感謝しつつ、その奉仕という精神で運営されなければならぬ、そういう所感でございます。
  62. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大蔵大臣が答えましたとおり、日本合成ゴムは新技術を開発して、いわゆる天然ゴムの需要を非常に下げて、輸入、輸出関係において日本の国益になって非常に貢献している会社で、あの開発銀行の融資は非常に成功した一つの例だろうと私ら思います。  そういうところですから、できるだけ中小企業その他と同じように均てんさせるという精神は好ましいと思いますが、しかし、企業の商慣習の実態を見ますと、たとえば新日鉄という会社があります。こういうような会社は、政府が保証してやって外国から金を借りたりいろいろやっておりますが、長期安定という面から大口契約をしているところは安い。たとえば、自動車会社とかあるいは船会社、造船会社に鉄板を渡すというような場合には、非常に長期的にやっている、大口でやっておる、そういう意味から、会社を経営維持していくために非常に安定性を持たせるという面から、少し安くしてやるという面は、これは日本の商慣習では十分あり得ることです。ほかのところでもあることはあります。たとえば、セメントなんかにいたしましても、市中でバラで売る場合と、それから大口土建会社と日本のセメント会社が長期契約をしているという場合には、常に会社の需要として安定需要を持っておる、そういう意味において格安にしているという例はあるわけですね。ですから、日本合成ゴムの場合でも、ブリヂストンのようなタイヤの大量メーカーで発注してくるというものについては、ある意味において、特約的価格で安定性を持たしているということはあり得ると思うのです。それを一がいに否定はできない。  しかし、その価格の差というものが非常にはなはだしいかどうか、あるいは中小企業その他の犠牲において行なわれているかどうか、そういう点は、これは精査してみなければわかりませんけれども、格差があること自体を、あながち非難すべきものだけではない、そう思います。
  63. 増本一彦

    増本委員 大口の需要で会社の経営を安定させる。しかし、その中にも利潤は見込まれて、大量の部分はそこで利潤がとれるわけですね。しかし、それに加えて、さらにそれ以上に中小企業に対してはより高い価格で売って、そうして中小企業はそのコスト高で悩まなければならない。そうして中小企業に売って得た分というのは、これはもう、言ってみれば、その企業の超過利得でしょう。若干の差ならば、それは社会的にも肯定される面があるかもしれません。しかし昔の、値上げ一以前の基準仕切り価格が百七十円だったときにも、それを値上げして二百二十円にした段階でも、その前の値上げ価格よりもさらに安い百三十四円という値段で売っている。中小企業は二百二十円で買わなければならない。こういう事態というのは、これは傾斜価格としてもあまりに異常過ぎないでしょうか、これは、所管大臣ですから通産大臣に差し上げます。——ですから、それが政府のてこ入れを受け、十億円もの出資金をかつて受けて、いわば半官半民でつくってきた会社、それが民間の手に移行したからといって、中小企業に対してこういう乱暴なことが許されていいはずがないと思うのですね。  しかも通産大臣、この日本合成ゴム株式会社に関する臨時措置に関する法律を廃止する法律案というのが、国会昭和四十四年に可決されたときに、衆議院が附帯決議までついているわけですね、そこでは、通産省が「強力な行政指導を行なうこと。」ということになっている。これには生産を上げるという意味での行政指導もあるでしょうし、それと同時に、需要家である中小企業などに対する利益を守るという上での行政指導ということも、私は当然通産省の所管としてはあるはずだと思うのですね。私は、この実態を調査し、そしてこういう傾斜価格をできるだけ中小企業に利益になるように押えて、中小企業の利益も守っていくという方向での検討というものが、通産行政としては必要なのではないかというように思いますが、その点はいかがでしょう。
  64. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 一応、事実関係がどういうふうになっているか、適当であるかどうか。調べてみます。
  65. 増本一彦

    増本委員 ついでに伺いますが、いまこの合成ゴムとそれからタイヤですね、これが今度五十三品目の中に入って凍結価格になりました。しかし、こうやって傾斜価格をつけ、中小企業には高く、大企業には安くということになっていて、そこで価格を凍結したから、これではこの凍結価格というのは、高値安定になっているというようにいわざるを得ないと思うのです。事実、タイヤを見ましても、大型用のタイヤの小売り価格は、四十八年の六月から八月には一本一万八千円だったのが、十一月には二万六千円、十二月には三万二千円から三五二千円、そして四十九年一月には三万七千円になり、一月の中旬以降、小売り店の店頭からは姿を消して、四万円にまで上がって予約制になった。  この、先ほどお話ししたブリヂストンについてみますと、四十八年の五月に六%値上げをし、十一月には一五%、四十九年一月に三〇%の値上げをしている。ですから、この数カ月の間に、合計六一%の値上げをしているわけですね。原料は値上げ以前よりも安く買っておきながら、価格はどんどんつり上げる。その価格を下げさせないで、そのままの高値で凍結をしたという、こういう結果にいまなっているのじゃないでしょうか。  その一方で、メーカーからすぐブローカーに入って、そして売られている品物、特に米軍関係ですね、アメリカの軍事基地関係に売るこの同じタイヤの価格を見てみますと、小売りの標準価格の五〇%ということになっている。それでも横須賀の基地や厚木の基地では、ブローカーは一、二月の間に三百万円の利益を得た、こういう話も聞いている。このタイヤの原価というのは、昔から、小売りの標準価格の四分の一が相場だというようにいわれている。  こういうメーカーの不当な利益を押える価格指導をやった上で、価格の凍結ということをやるべきではなかったのか。そして、いまこの段階でも、そういう面での原価計算を含めた、この価格形成についての再検討が必要ではないかというように私は思いますが、この点は通産大臣、いかがですか。
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 タイヤの価格につきましては、たしか一月に価格抑制方を行政指導いたしまして、値上げをしようとするのを押えたか、あるいは上がったものを下げさせたか、どちらかやった記憶がございます。いま係の者がおりませんので、即答はしかねますが、われわれのほうでも非常に重要な関心を持ちまして、これは強く行政指導で価格抑制をやった対象でございます。その値段が適正であるかどうかという点につきましては、いま御指摘もございますから、調査してみます。
  67. 増本一彦

    増本委員 開銀の融資の大口に海運関係があるわけですね。計画造船による開発銀行融資は、いわゆる海運関係中核六社で、四十八年の九月末の残高が五千二百四十五億円、開発銀行の同じ四十八年九月末の貸し付け残高が二兆五千三百四十六億円ですから、この計画造船だけで、中核六社に対して、ほぼ二一%も融資されているわけです。計画造船融資の全体の総額が七千七百四十九億円ということですから、中核六社だけで六五%も占めている。その上、いま利子補給までしているわけですね。この利子補給契約による融資額が、四十七年度で三千八百十一億円。今後さらにふえていくでしょうし、海運会社にこういう厚い保護がされている一方で、この大手の中核六社を中心にした海運会社というのは、計画造船でつくった船を海外に売り飛ばして、譲渡益まで出ていますね。四十七年が六十九隻で百二万四千トン、四十八年が四十三隻で五十八万七千トン、これまでにも、開銀融資で計画造船でつくった船を売り飛ばしたのが二百十四隻、二百四十四万四千トンということになっております。こうやって厚い保護を受けて利益を受け、そしてその利益で、いまでは海外に子会社、ペーパーカンパニーをつくって、そしてチャーターバックもやって、日本人船員の職場まで奪っているという問題も出ているわけですね。こういうような実態から、四十八年の九月期決算では、三月と比べても四五%の利益の増加になっている。四十九年、ことしのこの三月の決算では、さらに六〇%から七〇%の経常利益がふえるだろう、こういうような決算の予測もされているわけです、この海運会社は。  こういう点を見ますと、計画造船のあり方、あるいは利子補給のあり方というものを検討して、こういうところからこの利子補給は打ち切って、その返還をさせるという手だてを考えていくべきではないかというように私は考えるのですが、この点は、ひとつ所管大臣の運輸大臣から、率直な御答弁をいただきたいと思います。
  68. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 計画造船は今後も続けていくのかどうか、こういうような利益をあげておるじゃないか、あるいはまたチャーターバック、売船等によって、計画造船のうらはらになった、そういう問題を御指摘いただきましたが、計画造船は、貿易物資の安定輸送を確保するという目的のために進められてきたことは御承知のとおりでございます。邦船による貿易物資の積み取り比率というのは、これは四十五年の海運造船合理化審議会の答申でございますけれども、輸出目標を五〇%、それから輸入の積み取り目標を五四・三%にしておるわけでございますが、まだまだこの実績を満たすに至っていないわけでございます。日本経済の安定成長をはかるため、引き続き邦船船腹を整備していかなければならぬということは、これはもう私ども、そういうふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、諸外国においても、船腹の整備、商船隊の整備というのは助成して大いにやっているわけでございますが、海運の助成ということは、いま御指摘になったような、売船等につきましては雇用関係等も十分考えまして、経済性のない船は売船ということもやむを得ないと思いますけれども、そういう場合には、金融面ばかりでなくて、雇用関係等も十分配慮の上、指導してまいっておるところでございますし、今後も指導していかなければならぬと思いますが、海運の助成をいまここで、計画造船をやめるかどうかという問題につきましては、私どもは、まだそこまで立ち至っていないというふうに考えております。
  69. 増本一彦

    増本委員 いま運輸省の基準によりますと、税引き利益が資本金利益率の一〇%をこえなければ、利子補給の返還を要しないということになっているわけですね。これでは内部留保を一そう厚くして、そして返さないように返さないようにというように、回避行為を積み重ねていくだけではないでしょうか。  たとえば、日本郵船の例をとってみますと、これはもうファーストクラスですね。トップバッターです。この日本郵船では、税引き利益をうんと圧縮して、そうして決算をごまかし——ごまかすと言うと問題ですが、利子補給を、補給金の返還をさせないように、いろいろ会計操作をやっている。今度はタンカーや不定期船の売り上げ計上方法を、発生主義から航海完了主義に変えようというようなことまで考えているわけです。その上、賞与引当金などの追加の引当金の計上を企てている。発生主義から航海完了主義に変えるというのは、これは企業会計原則の根本を逸脱することになる重大問題だと思うのです。  まず、国税庁にお伺いしたいのですが、一体、この発生主義から航海完了主義に、中核六社の計上方法を変えることを認めようとなさるのかどうか、その点はっきりさしてください。
  70. 安川七郎

    ○安川政府委員 お答え申し上げます。  商船会社から、利益の計上方法につきまして、従前とっておりました、船積み時点を航海の完了主義にしてみたらどうかと、こういう申し出は受けておりますが、これは、従前船積み主義を相当期間継続してとってまいりましたものを途中でにわかに変えますと、相当の利益の変動を見まして、会計の継続主義の見地からいって、私どもは適当でないと、かように考えております。  ところで、継続主義の立場を離れまして、さような商船会社がどのような利益の計上方法、計上原則をとったらいいかということにつきましては、これはいろいろ研究の余地があろうかと思います。すなわち、船積みに伴いますところの運賃収入の収入の時期が、いろいろ商慣習等で非常に変わってきたというような客観的な事情がある、あるいは航海の方法が変わってきた、あるいは陸揚げ、船積みの方法が変わってきたというような基礎的な事実関係が変わってまいった、かようなことがあれば、それはそれ自体として深く検討する必要があろうかと思いますが、少なくとも、ただいま申し出を受けておりますことにつきましては、相当の期間継続してとっておりますために、ただいまのところは、この利益の計上方法をにわかに変更するのは、私どもは適当でないと、かように考えております。
  71. 増本一彦

    増本委員 それから、まだ税法上もいろいろ問題があるのですね。船舶の減価償却を一船ごとに、船一ぱいごとに定率法、定額法を選択できるようにするとか、いろいろな利益の費用価をはかって課税所得の圧縮をはかる。その金で海外にペーパーカンパニーをつくって、便宜、置籍船をふやしたり、タックスヘブンを求めてさらにもうけをふやそうとしている。  このような企業に、開銀融資を続けていくという必要がどうしてあるのか。今後の海運行政を含め、この政府系金融機関の融資のあり方、先ほどの、日本合成ゴムの中小企業向けの高い値段で売りつけているというような問題ともからめて、私はこの際、開発銀行融資のあり方というものを、徹底的に根本から検討をすべきではないかというように考えるのです。毎年、予算成立しますと、日本開発銀行に対する基本方針というものを閣議で決定されますね。ですから、ちょうどこの時期に、開発銀行や輸出入銀行などを通じる大企業向けの融資をきびしく押えるということも、いまのインフレを抑制していく上での、金融的な手だてとしても重大な問題であるというように思うのです。  それからもう一つは、開発銀行や輸出入銀行をはじめとするこうした政府関係金融機関の、これまでの資金運用実績というものをもう一度全面的に再検討する。そうして、大企業本位の運用や不急不要分野での運用は押えていくということもすべきであるというように思うのです。  こういう立場に立っての再検討を、私は強く望むのですが、この点については、ひとつ総理からまず基本的な方向での姿勢をお伺いし、そうして、所管大臣からもその面でのお考えを伺いたいというふうに思います。
  72. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 開発銀行は、戦後の技術開発ということが必要であったということが、一つの目的でございました。また、技術開発だけではなく、戦後の混乱した状況の中で国益を守るために、大型のプロジェクトに対しては、どうしても対象として貸し出しを行なわなければならないということであったわけです。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 その後、地方開発、都市開発というような問題も営業分野につけ加えられてきたわけでございます。ですから、開発銀行設立のときからはだんだんと変わってまいりましたし、現在では、公害融資というようなものとか、社会情勢の変化に対応して、開発銀行の業態、内容も変わってきておるということでございます。  その変わっている中で、海運などに対してはどうかということでございますが、海運は、いまコンテナ化ということを第二段階でやっているわけです。第一段階は計画造船をやったわけです。これはそれなりの理由があったのです。これは補償ということじゃなかったのですが、海運というのは、戦時中みな徴発をしておりまして、全部船を沈めたわけですよ。船を沈めて、国が補償しなければならぬという問題があったのですが、まあ過去のことは過去のことだ、海運国日本として、これからひとつ政府と民間が一体になってやろうという大乗的見地に立って、そして戦時中の補償というものは、一切とにかく補償しない。一体、補償しないで海運国日本の海運事業というものはできるのかという危惧が、国民の中にも相当あったことは事実でございます。  しかし、開発銀行融資により計画造船等をやりながら、膨大もない原材料の海外からの輸入、輸送ということに対しても、その責めを果たして今日までまいりました。また、それと同じように、うらはらになる造船業も、世界で最高の造船業というところにようやくなってきたわけです。すると、今度それと関連のある鉄鋼業も、それによって世界最大というふうになってきたということで、海運だけじゃなく、海運が造船を生み、造船が鉄鋼を生み、鉄鋼が別なものにという波及効果が非常にあったことは事実でございます。  いまも、コンテナ化というようなことで第二段階の開銀融資をやっているわけですが、これは、石油などこんなになりますと、外国船ばかりにまかせておけないのです。非常に不安定であるということでありまして、できれば、日本に対する原材料の搬入だけではなくて、外国航路もできるだけ日本が受け持つというぐらいな、安定的な状態を考えないと国益を守ることはできない、こういう問題があるわけです。  ですから、海運は、海運国日本、原材料のほとんどすべてを外国から入れなければならないという特性から、海運というものは、ただ海運会社の企業内容やバランスだけではとても考えられないものであります。だから、そういう意味で、いま御指摘になったように、助成を必要とするような状態ではないのじゃないかということがあるなら、それはまた融資基準や準則でいろいろ融資基準を変えるとか、そういうことはできると思いますが、海運に対して一般企業と同じように考えるということは、これは物価問題や、これだけの国際的な情勢が起こってまいりますと、別な視野から海運というものを見なければいかぬ。  昔は、海運というのは、私企業というよりも、いわゆる海軍の補完部隊であるということがありましたが——いまそんなこと考えておりませんよ。考えておりませんが、海軍の輸送部隊というようなことよりも、もっと大きな、国民生活の安定、物価問題、こういうことを考えますと、波動する国際情勢の中で、海運というものを一私企業としてだけ律するわけにはいかぬ。  ここらはひとつ、まああなたの言うことをむげに断わるというわけじゃないので、いずれにしても私企業であることは事実なんですから、公平の原則もあるし、とにかく私企業に手厚過ぎるということはいかぬ。かつて戦時中全部、徴発したものを全部海のもくずとした、そういったって、もうそれはそういう状態から脱して、ちゃんと現在の日本の海運体制ができたじゃないか、これ以上は競争させろというお気持ちもわかりますが、しかし、二、三年前も非常に悪いときがあったということでございますし、それが国民生活や物価に直ちに影響するような日本の海運企業であってはならぬ、こういうこともあわせて考えながら、ひとつ、指摘を受けるような状態の特別融資ということに対しては、まじめに検討していくべきだと思います。  ただ、海運の特性、現に開発銀行の融資対象からはずせるような状態にないということは、ひとつ理解をしていただきたい。
  73. 福田赳夫

    福田国務大臣 第一に、輸開銀の融資方針を再検討するかというお話ですが、これはもちろん、毎年毎年その融資方針というものをきめるわけです。いま総要需抑制対策をとっておりますから、それに即して融資が行なわれなければならぬ、これは当然そういうことになると思います。  それから、その際に、なおその内容的方面として、大企業への融資は抑圧するようにしたらどうか、こういうのですが、この点は、私はいいお答えができません。どうも大企業、大企業といって目のかたきのようにされますが、これは大企業も中小企業も一体的関係にあるのです。大企業と一体的関係でみんな中小の人も仕事をされておる。もし大企業がふるわなければ、中小企業は根っこから転覆するというようなことにもつながっていくわけでありまして、どうも増本さんの所論をずっと聞いておりますと、大企業ということの一点をとらえまして目のかたきにされますが、そういう考え方はいかがなものであろうか、こういうふうに思います。中小企業につきましては、とにかく中小企業に対する政府三機関というものもある。そういうようなことで特別の配慮をいたしておるわけです。  特に、いまお話で海運融資が問題になっておりますが、私は、これなんかはほんとうにこれからもいよいよ必要になると思います。つまり、わが国は、いま世界最大の造船国です。私は、その造船能力をあげて日本の海運、外航船舶をつくったらいい、そういうふうに思うのですが、つくり手がいない。つまり、そうつくっても採算が合わない、こういう企業であるということなんです。しかし、国でも援助いたしまして、いわゆる自国船比率を上げなければならぬ。これをやらぬとたいへんなことになる。現状はどうかというと、これだけの造船能力を持ちながら、自国船はそうつくらない。そしてこれを輸出しちゃう。全く、敵に塩、というのは適当であるかどうか知らぬけれども、そういうような形になってしまうわけなんでありまして、その辺の御理解は切にお願いしたい、かように存じます。
  74. 増本一彦

    増本委員 私は、四十九年度の開発銀行や輸出入銀行の融資に対する政府基本方針をおきめになる際には、先ほど申し上げたように、今日のインフレの状態をきびしく押えていくためにも、大企業向けの融資の抑制や、それから全面的な再検討、不要不急分野での運用を押えるような方向で、きびしく検討すべきであるということを、特に要望しておきたいと思うのです。  時間もありませんので、石油と物価の問題について若干伺っておきたいと思います。  一昨日、昨日の新聞などの報道によりますと、公正取引委員会が石油カルテルの破棄勧告をしたにもかかわらず。それに同意したにもかかわらず、勧告受諾をしたシェル、太陽石油、共同石油その他の元売り会社が、いまになって審決取り消しの訴訟を起こしているわけですね。こういう悪徳商法をやって、それでもまだ反省がない。こういう事態に対して、まず公正取引委員会はどういうように受けとめ、対処されていくのか、お伺いしたいと思います。
  75. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 けさの新聞などにいろいろ報道されておりますが、私、昨日記者会見の要求に応じましたが、ただ、あまり乱暴なことばを言ったつもりはないのですが、ときどき粉飾されたといいますか、脚色されたものがございます。  しかし、私はもっとまじめに話したつもりでして、およそ、この種の勧告、審決というものをどう考えているか。これはかねてから、しろうとじゃない、初めてじゃなくて、石連としてすでに三年も前から審判をやっておるわけですから、初めて勧告を受けたわけではない。であるから、勧告の意味というのは、通常いう、やさしくいえばアドバイスなんというものではないのです。これは審判を行なうのを省略するといいますか、それにかわって審決の案をそのままあらかじめ被審人に渡すわけです。そうして、ここに書いてある事実は間違いないか、それから法令の適用、主文に書いてある、どういう排除措置か、十分検討した上で返事してください。返事がオーケーである、応諾します、こういうことであれば、それをもって直ちに、そのままそっくり審決にするわけです。審決というのは、当然第一審の判決と同じものとなりますから、これは相当重要視すべきことであります。  それを、何かこう、私ども実際わからないのです。また、高裁に提訴した理由書をこちらはつかんでおりませんから、はっきりしないのですが、何かこう、非常に軽く事を考えて、そこに書いてある事実を認めるか認めないかということを真剣に取り組むというよりも、何か、まわりのことを考えてとか、あるいは告発なんということは予想してなかったということが事実であるとすれば、まことに不謹慎じゃないかと思いますし、また、そのうち、いまのところ六社はすでに提訴しないことにきめております。ですから、十二社の元売り全体がカルテル行為を行なったとして、こちらは告発にまで踏み切ったにかかわらず、そのうちの半分は提訴しない、つまり審決に従う。半分は、まだ一社が残っているからどうなるかわかりません。しかし、聞くところによると、一社残っておるほうも、提訴に踏み切るのではないかということでございますから、ちょうど半分半分に分かれた形になって、分列行進があるわけです。  私としては、これはまことに解しかねることである、理解しがたいという思いですが、御承知のように、この事件はすでに告発済みでありまして、私のほうでは、とり得る最大の措置をとったつもりでございますので、その点は、私どもの意のあるところを御了承願いたいと思います。
  76. 増本一彦

    増本委員 この元売り会社のやり方というのは、言ってみれば訴権の乱用です。裁判を受ける権利を乱用している。このような元売り企業は、それぞれたいへんな悪徳企業です。  たとえば、シェル石油と丸善は、海上船舶用のA重油のカルテル組織である「かもめ会」の幹事会社、しかも港別といって、丸善が全日本漁業協同組合連合会、シェル石油が全日本鰹鮪漁業協同組合連合会をそれぞれ担当して、末端価格の値上げの指導までしてきている。それで、丸善の安岡という第一直需部長が「かもめ会」の部会長です。この十一月に会議を開いて、港別の小型漁船のA重油を、十二月に二万八千円というようにきめたのです。これに基づいて全鰹連や全漁連にA重油を売っているために、ここから買う零細漁民は、一キロリットル小売り価格が二万二千円以上になっている。このやみカルテルによってでき上がった価格を十二月の実勢価格として、今度三月十八日の石油の値上げには、八千九百円の上のせを認めているのです。これでは零細漁民はたまったものじゃない。  そこで、私はまず通産大臣にお伺いしたいのは、このカルテルで価格をつり上げておいて、不正な価格の値上げをやって、それを実勢価格として、それに今度上のせを認めるというようなやり方というのでは、これは国民は納得しないだろうと思います。もっとその土台のところを洗い直して、国民の納得するような価格のきめ方をすべきである。そういう意味での再検討もやらなければならないのではないか。時間がたつに従って、悪徳商法でどういうことをやってきたかという手口がだんだんわかってきた。ですから、こういう今日の時点に立って再検討をすべきだと私は思いますが、いかがでしょう。
  77. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 石油の今回の決定につきましては、移動平均法によりまして、昨年来の大体の総生産費と申しますか、そういうものを割り出して、そして最終的にきめた案は、昨年の上期においてキロ五百円ぐらい利益があがっておったのを二百五十円にこれを下げる。過去六期における平均の利益が三百四十七円でありました。それでも石油企業はわりあいに利益の薄い企業であったわけです。大体普通の工業の半分ぐらいの利益率で推移してきた。それでも三百四十七円、それをさらに二百五十円に切った。それから、下期におきまして約六百五億円の利益があったとみなされた。これを全部吐き出させた。そして将来において二百五十円程度の利益を一応認めてあげよう。これは過去六期の三百四十七円からすれば低い率です。そういう計算を基準にして今度の八千九百四十六円という値段をきめたのであって、その元売り仕切り価格を基準にして、今度はガソリンやA重油やそのほかの等価比率によって値段をきめ、特にA重油と軽油については格安にするように、特別に取り計らってきたわけであります。これは農林省とも協議してやったわけです。  そういうふうな形でやったので、いま御指摘されるような、不当な利潤が入っておる余地はないと私は確信しております。
  78. 増本一彦

    増本委員 農林漁業用の重油というのは無税ですよ。その上に立って、カルテルで値段をつり上げたんだという事実もはっきり残ってきている。それをそのままにして、これが十二月の実勢価格だ。これに八千九百円とかその他の値段を上のせして、これが今日の小売り価格になってきているわけでしょう。  そこで私は、通産大臣のいまの御答弁は納得できません。  しかし、時間もありませんので、農林大臣、いまこういう元売り会社の価格操作、これが全漁連や全鰹連にやられて、そして末端価格をそこにそろえていくのだということで値上げが行なわれたんです。農林大臣もやはり漁民の立場に立って、量の確保だけでなくて、石油の価格問題にももっと目を光らし、漁民の利益を守っていくということで独自の力を発揮さるべきではないか。この点では、農林大臣は、事、石油問題では、農民がハウス栽培の重油で困っているときにも、そしてその値段が上がったときにも、そして今回の漁民のこういう重油の問題でも、価格の問題について、漁民や農民の立場を守って発言をするというようなこともなさらなかった、あまりに寡黙であったというようにいわざるを得ないと思うのです。ひとつ、御所見を伺いたいと思います。
  79. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 決して寡黙ではないのでありまして、通産当局と、まず量については前々から種々御相談をいたし、これは確保できるようになっております。  いま、御存じのように、全鰹連や全漁連——御承知のように、従来大体一年に約五百万トンほど使用しておりますが、半分の約二百五十万トン分は製品の輸入をいたしておりました。そういう関係がございましたので、今日のような状況になりますと、オイルの入手について若干不便なところはあるようであります。私ども、そういうことにつきましていろいろ全漁連、全鰹連とも話し合っておるのでありますが、遠くに運ぶわけでありますので、若干その点は違いますけれども、全漁連の末端価格の値上げ幅は平均八千六百円でありまして、通産省が発表いたしておりますA重油の元売り価格の値上げ幅である八千九百円に比べまして、末端価格をできるだけ押える趣旨で三百円切り下げておるものであります。  しかし、お説のように、こういうものはやはり安定した価格で十分にその量が入りますようには、なお最善努力を続けていくことは当然なことであります。
  80. 増本一彦

    増本委員 時間もありませんのでこれで終わりますけれども、きのうの夕刊を見ていましたら、東邦瓦斯のガス料金の値上げ申請書を、山形資源エネルギー庁長官はおじぎをして受け取っているのですね。こんな姿勢では国民は腹が立つだけですよ。  そこで総理、電力の値上げが問題になっている、ガスの値上げも問題になっている、農民はえさの値上げでてんやわんやだ、こういういまの状態で、どのように国民立場に立ってこの問題を解決していくのか、ひとつその方針と政治姿勢を最後に、はっきりお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  81. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 山形エネルギー庁長官が、おじぎをしているということはなかったのでしょう。それは、そんな……(増本委員「ちゃんと写真に出ていますよ」と呼ぶ)いや、それは受け取るときのおじぎじゃなく、それはまあ、そういう姿勢で行政官がおるということはございませんから、それは、ちょうど頭が下がったときにとったということでございまして、それを、どうもそういうことで——まあ、おじぎでもしていれば、せっかくお持ちになりましたから受け取りますが、そう簡単にはできませんよと言っておじぎしたのかもしれませんが、それをあなたのような見方で、おじぎをして受け取ったというふうにとられることは酷だと思います。私の感じを率直に述べておきます。  それから、石油が上がったということは事実でございます。それで、そういう意味で、石油を使っておる電力やガスというものは、非常に苦しい状態にあるということも事実でございます。しかし、この電力やガスが上がるということになりますと、いま短い間に、短期決戦でひとつノーマルな状態まで物価を安定せしめようという施策に相当の影響がある、こう見ておるわけです。  でございますので、苦しいことはよくわかりますが、なるべくひとつがまんをしておいてもらいたい。というのは、石油価格を定めて、他に五十三品目、百四十八品目というような、国民生活に緊密な状態にある生活必需物資というようなものに対しては、とにかく安定せしめなければならない。安定だけではなく、これはやはり流通もちゃんと確保して、国民の要請に応じながら安定せしめなければいかぬ。それまでにはいままでのものを、先取りというものを、各品目にわたってずっと洗ってこなければいかぬわけです。それで、いまきめた価格でも、まだ、石油は上がっても、実際高いですよというものがあれば引き下げます、こう言っているのです。  しかし、ずっと計算してみると、なるほどきめた価格は安いなと思っても、その場合はがまんしてくださいということを、政府は相当きつい姿勢で物価安定ということをやっているわけですから、石油価格がきまって、いろいろな波動のあるものが一つの落ちつきを見せるということを見定めたいということと、あなたがいま指摘されたように、農林漁業用であっても、いままで上げてしまった、その上げてしまったものに八千幾ら上げて売るというのではありません。上がったものが高ければ、今度の八千九百円上げた石油で計算をして、いままでのものは、この八千九百円をきめるときに全部取捨選択をしましたから、そうすると、八千九百円上げた原油でもってつくられるA重油は幾らです、C重油は幾らです、こうきめておるわけですから、あなたのさっきの話で、うんと高いものにして、その上に八千九百円上げたのだというと、えらいことをやっているなということになるが、そうじゃないのです。  ですから、そこらはやはり、幾ら時間がなくても国民が惑っては困りますから、だから、そういう意味でちゃんと製品価格もきめているのですから、そういう意味で、いままでの波動の中で、先取りをして上げたものが一体幾らあるかというようなことを、全部いま洗っているわけです。そして、その上なお、石油というものを上げてもまあ物価はおさまるな。そして電力が、どういう場合にはどういうふうに一体影響するのか。電力は、電力会社の内容から見ますと、確かにこれは総支出の二〇%が重油代でありますから、これが上がれば、倍になれば四〇%になるということも事実です。それに、春闘で幾らといえば幾らときちっとコストが出るわけですから、これは比較的簡単に数字的には出るわけです。しかし、七〇%、八〇%上げられるわけはないのでして、そこらは融資もする、何もする、いろいろなことをやって、国会でも、ガスに対しては税法上の特例を認めていただく、できるだけ物価に影響しないように。しかし、全然影響しないということはないと思うのですよ、だから、それが一体〇・一%になるのか、〇・〇五%になるのか。その場合、行政的な手段によって、電力は上がっても、いずれにしても物価を押えられるというような、相当こまかい見通しをつけるまでは待ってください。待ってといったって、月給も払えなくなりますよ、いや、それは特別に電力債や外債を認めます、こういうことをやっているわけであります。  政府は、物価というものを最重点に考えて、それは算術的に計上される赤字でも待ってくれ、こう押えていることは事実でございますので、そう簡単に、出てくるものはみな頭を下げて引き受けて、引き受けてまた全部ということじゃない。  頭を下げたということですが、ほんとうに頭を下げたのなら、せっかく持ってくるものは、国民の権利でございまして、これは拒否するわけにはまいりません。行政指導でもってやっていますが、受け取るだけ受け取れ、こう言われれば、これは拒否できません。だけれども、受け取ってもなかなかすぐ許可できませんからというので、頭を下げたのだろうと思いますよ。ですから、そのぐらいのことは、それは政府の長官たる者が、これだけ国会で言っている政府の基本的姿勢に合致しないようなことをするはずがありませんし、局長だけでやれるわけがありません。これは各省でもって全部合意をしてやるのでございますから、これをひとつ考えてください。「(あんな山形なんか置いてはだめだ」と呼ぶ者あり)いや、山形というのは相当な人物でございますから、ぜひひとつ御理解のほどをお願いします。
  82. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて増本君の質疑は終了いたしました。  午後二時に再開することとして、暫時休憩いたします。    午後一時休憩      ————◇—————    午後二時三分開議
  83. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  本日、日本銀行副総裁の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませかん。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  85. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 質疑を続行いたします。瀬野栄次郎君。
  86. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私は、田中総理に対し具体的な質疑をする前に、政府暫定予算提出せざるを程なくなった責任について伺いたいと思います。  次年度の予算は、前年度中に成立させることがたてまえであることは言うまでもありません。来年度予算案審議は、例年になく早く始められたにもかかわらず、十日間の暫定予算編成しなければならなくなった理由は、当面するインフレ、物価狂乱の事態が、大企業のもうけ第一主義の悪徳商法と、それを野放しにした政府・自民党の責任であるにもかかわらず、政府・自民党は自己の責任をうやむやにするため、野党が一致して要求した大企業の代表者を証人喚問する主張を強引に退けたために、予算委員会の空白が続いた結果であります。この点について、総理政府責任をまず明確にしていただきたいと思うのであります。
  87. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほどの御質問にもお答えをいたしましたが、政府予算編成をし、国会審議にゆだねなければならないという責任を持っておるわけでございます。予算審議にゆだねた以上は、国会の御審議にまつわけでございまして、政府の力でいかんともなしがたいわけでございます。これはもう国会の御審議にまっておったわけでございますが、三月三十一日までに成立しがたいという事情になりましたので、暫定予算を法律に基づいて提出をしたということでございます。  これは、とにかく国会の御審議でございまして、証人喚問問題とかその他に対しましては、国会でのお話でございまして、政府がどうすることもできない事項でございますので、政府は、その事態に対処して暫定予算の御審議をお願いするということでございます。  ですから、申し上げられることは、来年度も暫定予算はなるべく組まないように——予算年度内成立をさせたいというために、一月再開劈頭から提出をしておるわけでございますので、来年度もできるだけ早く提案をしまして、そして、国会の御審議年度内に終わるように最善努力をいたしたい、こう申し上げる以外にないわけでございます。  国会は、予算委員会で物価をやられようが、物価をやるために特別委員会さえ設置しているのでございますから、どこでおやりになるかは、これは国会運営の話でございまして、政府が申し上げられる段階ではございません。  いずれにしましても、政府は、御審議のためには可能な限り最大の努力をいたしておるわけでございまして、総予算の重要性は申すまでもありませんから、来年度も予算編成はできるだけ早く行ないまして、各位の御審議年度内に済むようにせいぜい努力をいたしたい、こう考えます。
  88. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 来年度以降は十分対処していくということでございます。政府責任を感じて、来年度以降の予算編成についてはこういうことがないように、十分さらに留意をしていただきたいと思います。  そこで、具体的な問題に私は触れてまいりたいと思います。  まず最初に、自然保護の見地から、栃木県の塩那道路について、総理以下、各関係閣僚に質問いたします。  栃木県那須那須那町と塩谷郡塩原町を結ぶ、栃木県最大の山岳道路といわれる塩那道路の作業道貫通式が、昭和四十六年十月二十日、黒磯市百村の現地で、横川知事ら県関係者と、工事に当たった陸上自衛隊宇都宮駐とん部隊の第一〇四工事大隊及び関係市町で行なわれております。  この塩那道路は、栃木県が那須と塩原の観光開発の道路として、那須町湯本の一軒茶屋から板室を経由して、木の俣、男鹿岳、鹿ノ又岳、口留賀岳、土平から塩原町中塩原の八幡橋に至る全長六十三キロの中で、総延長五十・四キロメートル、すなわち十三里近い延一長になっておりますが、これを昭和四十一年から、自衛隊の協力を得て、那須町と塩原町の両端から着工した山岳道路でございまして、大型ブルドドーザーを現地に空輸し、突貫工事で作業が進められ、六年がかりで約八億八千万を要したというのであります。現在であれば、物価、資材の値上がりで、相当膨大な工事費になっておることは言うまでもありません。現在は、幅員が四メートルであるが、栃木県知事は、五十二年には幅員を七メートルの観光道路に生まれ変わらせると言っておりまして、夢のスカイラインとも称せられ、海抜千百五十メートルから千七百八十メートルの山岳地帯を通っております。さらに、四十六年十一月四日午後三時、塩原町塩原中学校において塩那道路の引き渡し式が行なわれ、竹田東部方面総監から横川知事に引き渡し書が引き渡されておるのであります。ところが、貫通式を行なったその後間もなく交通どめとなって、二年五カ月もたった今日、いつ開通するのかめどが立っていないのでございます。  そこで、農林大臣はこの道路について承知しておられるか、まず伺いたい。
  89. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この件につきましては、保安林解除の問題がございましたので、事情を調べて承知をいたしております。
  90. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 環境庁長官は、この道路については御承知でありますか。
  91. 三木武夫

    ○三木国務大臣 承知しております。この塩那道路を許可したのは、まだ環境庁のできる前の昭和四十六年に、厚生大臣の許可によってこの道路が行なわれたわけでありますが、その後、この道路がいろいろ問題のある道路であるだけに、承知をいたしております。
  92. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 環境庁長官は、承知をしている、この道路は問題のある道路だということをおっしゃいましたが、問題が大ありでございます。  環境庁長官にお尋ねしますけれども、この塩那道路は、先ほど申しましたように、総延長五十・四キロメートルのほとんどが日光国立公園の国有保安林になっております。また、その中にはかなり広範にわたって、特別地域の第一種、さらには第二種、その他は普通地域になっておりますが、得がたい貴重な保安林であります。しかも、一級河川那珂川上流及び塩原のほうは蛇尾川、さらには鬼怒川上流の男鹿川、こういった川の上流に位置をして、宇都宮市をはじめ東京都の重要な都市用水の水資源になる水源涵養保安林内に建設されたいわゆる山岳道路でございまして、県のほうでは、当初山岳道路といっておりましたが、その後だんだんに観光道路、そして幅員も四メートルから七メートルにふやす、こういって今日まで経過しております。四十六年十一月四日、貫通後半年ばかりたった後に県道に編入をされておるのでありますが、いかなる目的による道路であるのか、環境庁、農林省、どちらからでもけっこうですが、御答弁いただきたい。
  93. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 本件の保安林につきましては、塩那道路開設が、当該地域の振興に不可欠のものであるということでございまして、このことは、森林法第二十六条第二項に規定いたします公益上の理由に該当するものといたしまして、指定の解除を行なったものであります。  本件解除にあたりましては、もちろん堰堤を完全にするとか、それから壁、網しがらみ等の保全施設を設置する計画が出されておりまして、この計画が妥当であると判断いたしましたので解除をいたした次第であります。
  94. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この道路は、幅員が四メートルです。総延長が五十・四キロメートルでありますが、道路建設用地の許可は、いつおりて、幾らの面積を許可されておるか。また、解除になった条件をいま若干申されましたけれども、条件はそれだけの条件ですか、再度御答弁いただきたい。農林大臣から……。
  95. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 保安林解除につきましては、私のほうの所管でございまして、あとのことは、私の所管ではございません。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 林野庁長官答弁を求める。
  97. 福田省一

    福田(省)政府委員 解除の条件は、森林法の二十六条の第二項の公益上の理由に基づいて行なったものでございます。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 許可の日にちはいつで、その道路のつぶれ地の面積は幾らか、条件はどうなっているかということを聞いているんだ。
  99. 福田省一

    福田(省)政府委員 解除をいたしましたのは、昭和四十四年八月二十一日、それから四十五年の八月六日、それから四十六年の六月七日、三回にわたっておりまして、面積は六十四・六七四一ヘクタールでございます。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この道路は、いつ県に無償でこれを払い下げたのか。
  101. 福田省一

    福田(省)政府委員 この道路は、四十七年の七月四日に県道へ編入いたしました。
  102. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 防衛庁長官にお尋ねしますが、この塩那道路の建設にあたっては、栃木県の要請により陸上自衛隊が主として行なっておりますが、自衛隊はいかなる目的で、いつからいつまで行なったか、また、延べどのくらいの自衛隊員を使ったのか、何日間を要したか、これらを簡潔に明らかにしていただきたい。大型ブルをヘリで空輸し、一名のとうとい犠牲者がブルともども谷に落ちて殉職されているのであります。御答弁をいただきたいと思います。
  103. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まず、工事期間は四十一年十月から四十六年十一月にわたる五カ年間であります。作業の延べ日数は七百十日間、工事に要した人員は七万四千十八名。ブルドーザー、バケットローダー、コンプレッサー等を使用しておりますが、お話のございましたように、かけがえのない隊員を一人殉職せしめております。  なお、自衛隊がそのような工事を受託をいたします場合の基準は、自衛隊の訓練の目的に合致するものであること、地方公共団体等の正式な要請であること、それがまた公共の利益に合致しておると認められること、そして、特定の個人もしくは特定の団体等を利するようなことのないこと、環境その他についての注意を払うこと等を前提といたしております。  受託工事でありますが、この性格は、自衛隊は橋梁とか、のり面とか、土どめとか、そのようなものは県のほうでやりますということで、まず自衛隊は、どの業者も栃木県当局の要請によって応札するものがない峻険な、二十五度ないし四十度という山岳地帯の工事でございますので、自衛隊自体も非常に困難な工事を行なったわけでありますが、それらのやむを得ない県の要請を受けていたしましたけれども、あくまでもそれはパイロット道路的なものであって、それを一般供用に開始するためには、県のほうが責任を持って行なうべきもの、パイロットとしてただ突き抜けるだけの、橋梁等もやっていないわけでありますから、それらの責任は、直ちに受け取った県が実施すべきであると私は考えております。
  104. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいま防衛庁長官から答弁がありましたように、これは林野庁長官または農林大臣、環境庁長官もよく聞いていただきたいのですが、重要な発言でございます。私も調査しておりますけれども、心証を得るために発言をいただいたわけですが、当初はパイロット事業としてやったのです。突貫工事でやっております。自衛隊員も、ただいまおっしゃったように、延べ日数七百十日、七万四千十八人を要しておる。大型ヘリを使ってブルドーザーを空輸してやったという。まさに自衛隊でなければできないような工事であります。日本一の峻険を貫いております。横川知事は、起点から七キロくらい行ったところに、自衛隊第一〇四部隊塩那の峻険を行くなんて、ぎょうぎょうしく記念碑に彫って、あとあとの記念にしておるようであります。  それはそれとして、私はこの道路を見ましたときに、いま防衛庁長官がおっしゃったように、突貫工事でやった。自衛隊が訓練の目的もあって、いわゆる既定の方針によってやったことは事実であります。それをどうこう言うわけじゃありませんが、土どめ工事やらいろいろなことは県がやるということで、普通ならば国有保安林に道路建設する場合は、国民の血税の保安林です。しかも、この保安林は、昭和三十二年か三十九年ごろから、いわゆる民有地を買い上げた貴重な東京都の水源、または宇都宮市の水源地になるところの源流の国有保安林です。それを、自衛隊は自衛隊の目的でやったのだから、これはこれとして、いわゆる道路をやるときには、保安林内には、先ほど林野庁長官または農林大臣が言ったように、土どめ工事をするなり、さらに石が落ちて、そして災害の要因を起こすとか、いろいろなことのないように、きちっと対策を立ててからやるべきなんですけれども、いま明らかにされたように、パイロット事業、そしてあとは当然県が補修して一般道路にすべきだ。そのとおりになっております。事実。県はその工事がずっとおくれておりますが、これは逐次明かすことにしまして、そういったことで、いわゆる道路をまずつくるだけだというような目的でやったために、今日五十・四キロ、十三里ですよ、こういった長い延長にかかるそのほとんど九〇%近くが保安林、しかも、中には特別地域の一種、二種がある。得がたいシャクナゲの群生地もあります。環境庁はあとでできたから、いまそれを昔のことだとおっしゃるかもしれぬが、それにしても、当時国有保安林なんです。こういったことが、東京都の目と鼻の先の奥座敷みたいなところで行なわれておる。  こういったことを思ったときに、いままでこれが問題にならなかったこともふしぎだが、またこれをほっておいたのでは、災害が起きたり、今後いろいろな問題が起きて、たいへんなことが起きるということで、私はあえて指摘をしておるところでございます。  そこで、逐次申し上げてまいりますが、この塩那道路の西に当たる栃木県塩谷郡の塩原町から矢板営林署管内と大田原営林署管内の百四十二林班に至る、約二十二キロぐらいにわたると推定しておりますが、これは林野庁に聞いてもなかなかはっきりしないのですけれども、相当の距離が、当初計画は四メートルであったけれども、すでにほとんどといっていいぐらい幅員が七メートルになっておる。これはまさに、いわゆる無断で幅員を三メートル広げたということになる。この保安林の解除申請はどうなっていますか、お答えいただきたい。
  105. 福田省一

    福田(省)政府委員 お答えいたしますが、道路は当初四メートルの計画でございました。この辺は、先生御承知のとおり、土壌条件もあまりよくないところでございますし、比較的急斜地でございます。したがいまして、のり面それから盛り土の面、それらを含めまして、幅員は十五メートルとして五十キロの間の保安林の解除をいたしておるところでございます。約六十ヘクタールでございます。
  106. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 要するに、道路を四メートルつくりますと、山が傾斜しております。傾斜しておると、その傾斜した、切り出したものを今度は道路の下に、捨て土といいまして落とすわけです。それが、下の谷まで落ちたりすると災害の要因となる。また、一ぱいいわゆる林木が茂っております。それを無残に木を倒し、削り、そして岩石が谷へ累々と重なっておるところは、もう何十カ所あるか何百カ所あるかわからないのです。そういったことを思いましたときに、いまの長官の説明では、四メートルだから、山の上を切ったのと、切ったどろを落としたのと、この幅が平均十五メートル、その山をつぶした、木を切ってつぶした、それが十五メートル平均だという主張なんです。つぶした道路の捨てたやつを、捨てるところがないものですから、四メートルのところに、横っちょにまた三メートル継ぎ足したので、七メートルになっておるような意味のことを言っておるわけです、専門の立場で聞いておれば。だから、実際七メートルぐらいになってきているのですよ。知事も七メートルにすると、新聞でも明らかに何回も言っておるのですよ。国体があるから、五十二年までに完成したいと言っておるのです。そういったことで道路を掘さくしておる。  そこで、私が言いたいのは、四メートルに許可しているけれども、実際の面積は、谷へ相当どろが落ちて、岩が落ちておりますので、相当な面積が荒らされている。そのつぶれた面積はばく大なものになるわけですよ。環境庁も農林省もこれを知らぬわけはないだろうと思うが、これはどうしてほっておいたのか。これはたいへんな問題だと私は思って、いろいろ指摘をしておるところであります。そこで、さっきつぶれた面積が六十ヘクタールと言うけれども、これは実際は六十四ヘクタールになっておるのですよ。それでも一部分であって、実際は相当大きいのです。それで、私はあとで資料要求するつもりですが、その点を私は指摘しておく次第であります。  だから、こういった保安林の解除のしかた、これに問題がある、こう思うのです。農林大臣、どうですか。
  107. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 国土保全、水源涵養のために大事なものでありますので、もちろん私どもも注意してやらなければいけませんが、解除にあたりましては、まず第一に、重要性の高い保安林は原則として解除しないというたてまえをとっております。これ以外の保安林につきましても、他に適地を求めがたいものについては、必要最小限度の面積に限ること、それから第三には、転用の結果、保安効果の低下を来たさないように防災施設等を設置させる、こういう原則をもちまして解除いたしておるわけであります。  御指摘の場所における、解除後の工事の施行状況が適切でない部面もございますので、必要な保全工事を実施させることといたしまして、解除区域につきましては、栃木県が昭和四十七群から五十一年までの間に、防災堰堤五基、土砂捨て堰堤二基、路肩工事の保全工事、これは総工費十五億一千六百万円だそうでありますが、これをただいま実施されておる次第であります。  また、ただいまお話しの、崩落土砂によりまして被害を受けております解除区域外の林地につきましても、栃木県において復旧・緑化工等経費一億六千万円を実施しておる次第でありますが、なおこれらの工事につきましては、極力繰り上げて実施するように指導いたしております。
  108. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣からいろいろ対策のことは言われましたけれども、それはほんとうに、道路の両サイドの取りつけ道路の一部分でありまして、那須御用邸があって、那須御用邸から見えるところだけは一応きちっと整えてあるという段階で、地元の人も期待をしておったけれども、こんなことでは、五年かかるか十年かかるかわからないと言うのです。  それは、以下あと明かすわけですけれども、そこでこの道路は、設計書も一応あったろうけれども、先ほども防衛庁からお話があったように、自衛隊で掘さくして、パイロット事業でやったために、設計書どころか、いわば出たとこ勝負でやったというような感じのところがありまして、当初の設計よりも相当延長が延びておると思うのです、蛇行していますから。その点はどういうふうに認識しておられますか。
  109. 福田省一

    福田(省)政府委員 いま御指摘の点につきましては、私のところでも詳細承知いたしておりませんが、当初から計画が相当延びたということのお話もございましたので、現地のほうを十分調査いたしまして、県との連絡をよくとりまして、自後の施策を講じたいと思います。
  110. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 田中総理、あとでまたよくお聞きするわけですが、いま答弁がありましたように、質問通告してから、林野庁からもいろいろ問い合わせがあり、またこちらに尋ねに来ましたけれども、こういったものをあまり調査もしていない、管理もしていないというか、監督もしていないというか、実はこの資料もなかなかそろっていない。放任してある状態なんです、まるっきりとは言わないけれども。それで国民のお山をあずかり、国土保全なんて言っておる。これじゃ申しわけない。愛林週間もやってくる。六月五日には、今度は自然憲章の宣言式まで行なうといって、国民は自然保護ということでいろいろとたいへんに神経をとがらしておるときじゃないですか。  そこで、私はいまいろいろお尋ねしましたけれども、そういったことについて、どうしても現状は延長が延びておるし、相当に破壊をされておりますので、これを調査の上、いわゆる実態を調査した資料を提出していただきたい、こう思うのです。委員長、お取り計らいいただきたい。
  111. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど申し上げましたように、大体の実情を把握して、いろいろなことをやらせておるわけでありますが、こういうところで特に御発言がございましたので、なお調査をいたしまして、委員長のほうに資料を報告いたすようにいたします。
  112. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 栃木県は、道路掘さくによってほとんど土どめの工事をしていない。全然とは言いません。取りつけ道路の両サイドはかなりやっておりますことも私、認めておりますけれども、それはほんの一部であります。そこで、この土どめ工事がほとんどの区間にないために、その土砂、岩石の除去がたいへん問題となっておる。そしてどろを道路下へ落としているということで、自然破壊された森林の復旧等にも、今後どろを処理して復旧するだけでも、ざっと見て十億というのです。私は十億じゃとてもできないと思う。十億だけかかると言っておりますが、こういったことを思いましたときに、全く心配でなりません。総理理解してもらうために、私、写真を見せてあげたいと思います。  ちなみに申しますと、栃木県左地方債は、本年度末残高は三百一億三千八百五万円となっておりまして、二年前の四十六年度末残高百四十四億九千百万円に比べますと、要するに二倍以上にふくれ上がっておる。そして、県の借金は予算規模の伸び率以上に大型化しておりまして、ことしは、四十九年度の地方債の残高はさらにふえて、三百十三億五千六百万円になる、こういうふうな見通しです。  こういう財源の窮屈な中で、県財政から見ても、この復旧だけでも十億円はとうてい困離だと私は思う。もちろん、遅々として幾らかやっておりますけれども、県に対していかなる指導を、農林省また環境庁ではやっておられるか、この辺の実態を知っておられるか、さらにお答えいただきたい。
  113. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御趣旨がよくわかりませんでしたけれども、おそれ入りますが……(「実態を知っておるかというのだ」と呼ぶ者あり)私自身はよく存じておりません。
  114. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私も写真を見て、やはり災害防止、環境の保全からいって、たくさん問題をかかえておる道路だと思います。したがって、これは関係省庁、栃木県も呼びまして、至急、災害防止、環境保全の点から最大限度の善後策を講ずるようにしたいと思っております。それをしなければ、非常にあの道路は問題であるということを承知しておるわけでございます。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣は御存じないということだから、不勉強でけしからぬ問題だが、大いに勉強してもらうことにします。  林野庁長官、この道路、幅員四メートルの道路及び左右両サイドが十五メートルのつぶれ地、この上に立っていた支障木、道路をつくると木を切るわけですから、これを支障木という。この支障木の材積を毎木調査しておるのか、そしてその処分はどうしたのか。四メートルの場合も七メートルの場合も含めて、時間の関係があるからまとめて言ってもらいたい。そして、どろを捨ててつぶした木もある、がけがくずれてきた、それに乗っかって落っこちてつぶれた木もある。これは貴重な国民の血税のかかった木です。それを県に対して当然賠償をするとかなんとか手を打たなければならぬ。こういうふうにしておいて、国の財産を見殺しにしていくことになる。それはどういうことですか。
  116. 福田省一

    福田(省)政府委員 毎木調査の結果は承知いたしておりませんけれども、いま御指摘がございましたように、保安林の地区の外に土砂が出まして、それで立木を損害したり、あるいは土地を漫用したという問題があるわけでございます。そういう点を指摘いたしまして、県から約四百二十三万円の賠償を取っております。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、これはもういろいろ問題があるのですけれども、栃木県知事は、五十二年度を目標に完成したい意向で進めておると言っておりますけれども、かなりこれはいまの調子ならば時間がかかるのですが、昭和四十九年度以降の栃木県のこの道路に要する経費等を見ましても、改良費が八十三億、舗装費が十三億、合計九十六億円を一応見込んであります。とてもこんな金じゃできないと私は思うけれども、一応これだけ見込んでいる。気の遠くなるような話でございます。そして、いまあなたは賠償を幾らかとおっしゃいましたが、実際にはどんどん崩壊していきますし、調べますと、枯損木がまだずいぶん出てくると私は思っておるわけです。それで、当然、これは国としてもきちっと毎木調査をしておかなければならぬわけですけれども、林野庁長官が、当時は長官ではなかったかもしらぬが、長官がこの調査の結果は承知しておりません、こういうことでございますので、地元の営林局にも照会して、電話できのう聞いておるのだが、おわかりない。こういうずさんな国有林の管理ではまかせられない。けしからぬ問題だと思う。  そこで総理、私はあなたに一、二点最後にお伺いするのだが、国立公園内の、しかも特別地域の保安林解除ですよ。しかも、ここには一種、二種がかなりあるのです。シャクナゲの群生地もあります。工事施行後の管理がこんな状態では問題である。環境保全の上での環境庁または国有林を所管している林野庁がこのようなずさんなことでは、大企業の保安林等の解除がいろいろ問題になったときに、示しがつくかと私は言いたい。それでなくても列島改造論のかけ声で、大企業や何かが土地を買い占め、かつ地価が上がり、かつまた全国各地で保安林解除の問題が起こっております。現在、北海道のナイキ問題から札幌の三角山、あるいは京都の笠置山というように、大きな訴訟問題が起きておりまして、小さい問題を入れると枚挙にいとまないほど、保安林解除問題ではいろいろあります。こういったことを考えましたと善に、全国の各地で保安林解除の問題が起きてきます。推して知るべしです。模範を示すべき林野庁、また環境庁がこんなことではいけない。総理の所見を承りたい。
  118. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国土の保全をはかり、自然環境の保全をはかっていくというのは、これは大原則でございまして、自然を愛すということでなければなりません。また政府はその目的を達成するために、適切な行政権を行使しなければならないということは、申すまでもありません。  本件は、私もいま写真を提示いただきましたので、よく理解できました。  こういうところは確かに全国にもあるわけです。海岸線で非常に道路として認定するのもむずかしい、しかし、子供の通学道路として、山を一つ回るよりも、どうしてもこの断崖絶壁に道路を通したいというものもございます。それからまた、非常に離れたところに集落がありまして、短絡線として、将来道路として認定するまでの間、暫定断面で通行の用に供しようということがございます。そういうようなときで、なかなか現地実査もできない、積算もできないし、そしてまた、予算上から見ると非常に大きなものになって、十年計画とか十五年計画になる。そういうことで、地元の要望にこたえられないというような辺地、山岳道路、海岸道路というような場合に、パイロット道路として自衛隊の出動を求めておるというのは、全国各地にあるわけです。各地にございますが、海岸線などは、切り取った土砂をそのまま海中に入れるというような問題がありましたので、だんだんと整備をして、自然環境を破壊しないように努力しな雪やならぬ、こういうことでだんだん整備をしてまいったわけですが、いまの塩那道路は、総延長が約五十キロの余、そのうち三十五キロばかりを自衛隊が執行したわけでありまして、これはパイロット道路としてやったわけです。そこで、これは民間の観光道路というようなものではなく、県が主体であり、地元住民もこの道路開さくに対しては、初めは要請があったわけでしょう。だから、いずれも公益の立場であります。でありますから、道路としては自衛隊がやることでございますし、執行主体は県でございます。そういう点、できればこれは県道に認定して補助工事にでもしたい。いずれにしても、初めのうちは暫定断面でもって通行の用に供しようということですから、それはその限りにおいて、保安林の解除というようなことをやったことは、私は間違いではないと思います。  しかし、いま図面でお示しになったように、また写真で見る限り、これは、もうたいへんなことであるということはよくわかりました。これは海の中でなく、切り取った土砂は全部自然崩壊にまかしておるということでありまして、結局ブルで押したものは、沢地に全部、これを自然に崩落させておるということになります。これは崩落土砂を人工でやっておるような状態がよく見えます。見えますから、そこで問題になったわけでしょう。問題になりましたから、いよいよ林野庁も動いて、堰堤の築造を命じたり、いろいろなこともやっておるわけですが、こういう問題、現状はやはり航空測量を必要とするような状態ではないのですから、現状をやはり十分調査して、そして、栃木県知事は七メートルにしようというのでしょう。七メートルにするというのは、県道に認定をして補助工事にするということが前提であれば、大体六メートル以上、七メートルということでありますから、七メートル道路にするということになれば、やはり計画をきちっとつくって、林野庁に対しまして、あらためて出願をし、そして林野庁は、それに対して、自然環境が保護できるような築造物の築造を命ずる、付帯条件としてそれをつけるということでないと、いまあなたが指摘されたような問題の解決にならないと思います。  ただ、一番最後の、自然林であるから、保安林であるから、道路やなんかを全然つくらないということにはならぬわけです。これはやはり、国民のために保存しようという国土でございますから、道路をつくるほうがいいのか、鉄道を敷くほうがいいのか、自然のままにしておくほうがいいのかというのは、これは比較検討の問題でございますから、そういう意味で、重点を置いて国民の用に供さるべきことは当然でありますが、その目的を貫徹するために、自然保護が全くずたずたになるというようなことは、これは放置できないことでありますので、おそまきながら、これはひとつ計画をきちっときめて、一日も早く自然保護が侵されておることの排除につとめてまいりたい、こう考えます。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 田中総理からいろいろ答弁がありましたが、時間の関係もありますので、いまの件について最後に申し上げますが、この日光国立公園の特別地域は、明治時代から、ただでさえ土砂がくずれて、いわゆる災害の札つきの場所でございます。特に塩原方面にかけては、そういったことで早急に総点検をして、対策を立て、自然破壊を最小限に食いとめて、下流の住民に迷惑をかけないようにしてもらわなければいかぬ。それが国の使命である。  また、ときあたかも自然保護憲章制定国民会議準備委員会では、来たる六月五日の第二回環境週間第一日にNHK大ホールにおいて、全国代表約四千名の参加を得て、自然保護憲章宣言式を挙行するということになっております。そういったとき、国土保全と常に政府は言いながら、こんなことでは全く無策である、こういうふうに私は指摘したい。また、これは今後問題になるわけです。直ちに総点検をして報告をしてもらいたい、かように私は思うわけです。総理もいまおっしゃったが、これは、すぐ総点検をして報告するように命じていただきたい。その点、一言だけ、総理おっしゃってください。
  120. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、そういたします。  それで、これは一点だけ申し上げておきますが、いまの四メートルを七メートルにしてはいかぬということになりますと、かえってこれは崩壊したままになりますから、七メートルにやるなら七メートルにやる、そのかわりに崩土が起きないようにちゃんとする、堰堤は何ぼ入れる。いま、メートル当たり約二十万円にしましても、約五十キロといえば約百億でできるわけですから、メートル当たり三十万円もかからぬと思います。ですから、そういう意味では、山ぎわの排水路をどうするかとか、そういう工法上の問題をきちっと設計上指示をして、環境庁もそれを指示できるように、また林野庁も損害を受けないように、建設省も補助できるように、そうでないと、今度建設省は補助事業としてやった場合には、決算委員会で指摘をされるということを繰り返したなら、これは行政の責任を免れるわけにまいりませんから、そういうことに対しては、ひとつ、関係省と栃木県と十分検討させます。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 田中総理から、そういうふうにするということでございますので、その点は、十分今後対策をしていただくと同時に、資料も提出していただくことになりましたし、環境庁長官も、これに対してはさっそく調査をして、今後対策を立てて報告するということでございますから、ぜひそうしていただきたい。時間の関係があるので、通告しております次の問題に入りたいと思います。  次に、全農問題について、田中総理並びに関係閣僚にお尋ねするわけですが、言うまでもなく、全農は三千七百人の職員を擁し、出資金が九十億円、四十七年度の取り扱い実績は二兆七千億円、全国の総合商社中第五位にランクされ、貿易額を除けば、三菱商事に次いで第二位の位置にあります。  私は過去、昭和四十五年以来七回にわたり、全農に対し農林省の監督指導を指摘してきたところでありますが、昨年十二月十八日の農林水産委員会において、全農問題で、いわゆる黒い霧を中心とした追及をした際に、国税庁は四十七年十一月に調査に入って、目下整理の段階にある、完結はしていないが、本調査のいろいろな問題点につき現在取りまとめ整理中だ、調査過程でいろいろな是、否認事項が出ており、それらについては厳正な処理をする、はっきり言って帳簿、経理、契約その他につき、私どもから見ても十分でない点もあり、今後の最終的な税務処理で全部適正な課税処理をしたいと答弁しておりますが、この調査結果について、国税庁から答弁を求めます。
  122. 安川七郎

    ○安川政府委員 お答えいたします。  全農につきましては、四十七年の十一月から四十八年の四月まで実態調査に入りました。この間、延べ約七百人目を投入いたしまして調査をいたしました。その結果、資料その他を整備いたしまして、去る四十八年十二月二十五日におきまして、その結果を取りまとめ課税処置を完了いたしました。内容につきましては、守秘義務の関係がございまして申し上げられませんが、国税庁といたしましては適正な課税をいたした、かように考えております。  なお、調査に入りましてから相当年数がたちますから、これで一応当面の処理は完了した、かように考えておるわけでございます。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 国家公安委員長にお尋ねしますが、全農に対する捜査をやっておられると聞いておりますが、どうですか。
  124. 町村金五

    ○町村国務大臣 全農につきましては、国会の御審議あるいは新聞報道等で不正があるというお話を聞いておりましたので、警視庁といたしましては、各方面から鋭意資料を収集し、また、これが事件になり得るかどうかということについて、いろいろいま内偵をいたしておるところでございますけれども、いまだ犯罪としての事実の容疑を把握するには至っていないというのが現状でございます。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の関係があるのではしょってまいりますが、関連メーカー等の捜査については、いろいろうわさされているだけでも、丸紅、戸田建設、クミアイ化学、北興化学、銀座瑞穂画廊とか神戸サイロなどが、いろいろ巷間伝えられておりますけれども、このような関連メーカーに対しては、実際に調べたことがありますか、国家公安委員長
  126. 町村金五

    ○町村国務大臣 関係の局長からお答えさせます。
  127. 田村宣明

    田村政府委員 先ほど大臣からお答えをいたしましたとおりでございまして、警視庁といたしましては、情報、資料等を、鋭意、現在収集いたしておりますが、この段階で、どのような方面についてどのような調査等したかということは、まだ申し上げるような段階に至っておりません。
  128. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまは、石油に次いで食糧問題がたいへんな問題、そして当面は畜産危機であります。農家はもうほんとうに塗炭の苦しみにあえいでおります。こういうときに、いわゆる全農の幹部が汚職を起こし、そしてメーカーとの関係においてリベートを取るがゆえに、農機具あるいは飼料あるいは農薬にしても、あるいはまた資材等にしても、ずいぶん高いものを売りつけられて、農民はさらに負担が重くなる、こういったことを指摘したいから、私はこういうことを申し上げるわけで、実際にこの全農の中には、内紛とかなんとかいって、去年も農林大臣がいろいろ言っておられましたが、当時、専務理事でありましたところの吉原専務、これは全農の中でも三番目、ビッグスリーのいわゆる要職にあります。この吉原氏が昨年十一月二十二日、新潟県農協大会で、三常務理事の使途不明金問題全農の腐敗を暴露したことは、皆さん方も新聞を見ておられると思いますけれども、これは新潟日報の十一月二十三日に出ています。これは総理の地元の新潟です。しかも、新潟の経済連、ホクレンに次いで日本でも第二位にランクされる大きなこの経済連の会長もやっておるのです。その点どうですか、公安委員長
  129. 田村宣明

    田村政府委員 同じお答えで恐縮でございますが、警察としては、現在の段階におきまして、犯罪の容疑をまだ把握するに至っておりません。
  130. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私の言っているのは、こういったことがあった、堂々と出ているのだから、そういったことによって捜査をするなり、またはこの吉原専務、また、やめたところの岩下常務、あるいは当時の東京国税局の平岡特別調査官、こういった人たちを参考に呼んで調査すべきだと思うのだが、その点どうなんですか。
  131. 田村宣明

    田村政府委員 犯罪を捜査するのは警察の責務でございます。しかし、情報をいろいろ収集いたしておりますが、その段階から、直ちに捜査に着手をして取り調べをするとか、あるいは帳簿の提出を求めるというようなことにつきましては、直ちにそういうことをやり得るかどうか。やはりある具体的な容疑というものが把握される段階になって、初めて具体的な捜査に入るということでございまして、現在、まだそういうふうな段階には至っていないということでございます。
  132. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私が聞いているところによると、捜査を一応しておるということはわかっています、捜査四課から二課に移っているのですから。六月二十九日の週刊朝日で初めてこのことが活字になった。十月五日の朝日、その後の新聞雑誌でこの問題が扱われるたびに、直接はあまり問題ないような人を、申しわけ的にちょこちょこ呼んで、抽象的なことしか調べていないということで不評を買っている。こんなことではけしからぬと思う。なぜ当事者を呼んで事情聴取をしないかと、私は残念にたえない。この問題は、かなり前から問題になっていたのでありますが、いま答弁があったような、期間をかけても、いわゆる捜査の段階ということでなかなかはっきりしない。怠慢であると思う。  そこで、私は全農の疑惑、黒い霧問題、脱税問題、これは全農をつぶせと言うのではない。全農が堅実に、農林省また大蔵省、国家の援助を得て、農民のために大きく発展してもらいたいし、清潔で、しかも明朗になって、職員たちも喜んで仕事ができるようにしてもらいたいがゆえに、私は指摘をしておるわけです。それで、吉原専務は、全農における金大中事件だ、こう言って叫んでいるではありませんか。  そこで、私はこの問題について、ここに吉原専務がしたためました備忘録を持っております。この中にたくさんありますが、平岡調査官のことばを若干拾いますと、平岡調査官の発言は、「全農織井、井田、笠原の三常務は、俸酬の外に、外部企業から収入を得ていることが調査の結果から判明したので申上るが、この金額は、全農の雑収入として計上し、全農はこれについて納税してもらいたい、職員関係にもあるが、今回は一応職員については問わない事とする」さらに、これは七ページですが、「平岡調査官の申入れは、私と岩下常務に話されたと全く同じく、三名の常務、特に旧全購連から来た人達である。本人もそれぞれ調査をし、話しをしたが、何れもその事実は認めているので、全農で雑所得として納税してもらいたい。」さらに十ページには、「織井常務については数百万との話も聞いたと申しましたところ、青井さんはそれは単位が一つ異なっているだろう、数千万ということではないか」こういうふうに書いてある。次は十五ページですが、「初めは自分の家の近くの銀行、郵便局に送金させていたが、次は住居区域外の銀行、郵便局に送金させ、その次は国税局で調査をするに困った程、遠くの銀行を利用して送金させていた。これは、その会社と銀行の送金経路を調査して確証は出来ている。」以下たくさんありますけれども、おもなところをちょっと申し上げるために私は読み上げたわけです。  総理、ぜひこれを見ていただきたいのです。——それで、私はそういったことを指摘しましたが、これについて、総理、いま見ていただいたわけだが、いろいろ経緯を聞かれたと思うが、全農の問題については、あなたの地元の、いわば日本でも第二位にランクされる経済連の会長でもありますその方が、当時は現職の専務として全農におられた。あなたも病院に入院したときに、いろいろと見舞い客に、あれは新潟県人だ、職やら名誉をかけなければできないことだから、あれはやっぱりさすがに言ったというようなことで、いろいろとおっしゃったことも漏れ承っている。これは私もある人から聞いたわけですけれども、そういうふうに言って、あの新潟日報に発表したことを、まさに壮なるかなと言わんばかりの激励のことばを贈られた、こういわれています。あなたも十分知っておられたと思うが、病気中だったから頭にきておられて、もう忘れられたかもしれんが、そういうことについて、総理はどういうふうに思いますか。
  133. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、全農に内紛があるということは、幾ばくか承知しております。しかし私は、それが不正事項であるのか、どういう問題であるのかということに対して承知いたしておりません。おりませんが、いま、あなたが相当お調べになった、情報を収集されたものをちょうだいしましたので、何かあるということは、そう感じております。  これは、一次産業の農業の中で、農協と双壁をなすような機構です。ですから、これが商社のような状態で、利益を得るために設立されたものでないということは申すまでもありません。これは農民のためにある団体、こういうことでありますから、これがこういう、いわゆる世の中から指弾を受けるようなことがないように、特に農民から理解を得、信頼を得られるような農業団体でなければいかぬということは、もう当然のことであります。これは、その意味では、一般の商社と同じような行為をやっておっても、それは利益を追求するためにつくられたものではなく、農民の利益を確保するためにこそつくられた、これはある意味の任意団体だと思います。そういう面から考えましても、問題を起こさないようにしてもらいたいということを切に望みます。同時に、これは農林省がどのように法律的な指揮監督権があるのか、私もまださだかにしておりませんが、これは政府がその責めにあるならば、これはもう当然行政権の発動もすべきでありますし、これはまあ法律上の権限がないにしても、そこらは行政指導ということがあるわけですから、行政指導して、農民の根本的な利益が守れるように努力しなければならぬ、そう思っております。  私が何か激励したような話でございますけれども、そんなことはありません。それは全然、そういう人が見舞いになんか来ませんし、私は面会謝絶でございましたから、そういう者は来ませんし、そういうところまで内閣総理大臣を巻き込まなくてもけっこうでございますから、まあ、新潟の何か大会でだれか演説したということも、なるほどなと、いま私もよく理解したわけですが、激励もしておりませんし、内容もよくつまびらかにしておりませんが、しかし、いずれにしても、農民のためにある、農民がつくった団体、それがとやかくいわれるような、物議をかもすような状態は、これはもう一日も早く、いっときも早く正してもらいたい、こう思います。
  134. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 総理の、農民のためにある全農をいっときも早く正してもらいたいということばで、私も一応その点は了とします。  時間が迫ってまいっておりますので、農林大臣にも一言触れておかなければならぬ問題がある。  倉石農林大臣は、私が昨年十二月十八日、この全農を愛すがゆえに、何とかして姿勢を正してもらいたい。あなたは、いわゆる農林大臣として、監督すべき立場にある。すなわち農協法の九十三条、九十四条また九十四条の二、九十五条、九十五条の二と三、九十六条、九十七条で直接監督する立場にある。にもかかわらず、私が質問した際に、十月六日の全国農協大会で三橋会長は、朝日新聞に出ていたことは、いわゆる、そのように私も了承しているというふうな答弁をされて、私も憤慨したのでありますが、この吉原専務理事のいわゆる備忘録は、四十八年の暮れ、十二月三十一日の大みそかに三橋会長が吉原氏の家へ謝罪の電話を入れておるし、ことしの二月十二日には、名目上は新東バースの工場へいわゆる出張するということで、吉原氏の自宅へあやまりにわざわざ行っているのです。この点の事実があるのです。私も、あなたがあんな答弁をするものだから、納得ができないので、私もやはりそれなりに国会議員としての立場もあるから、真相を究明したいためにいろいろと電話をかけ、頼んで調査をしましたら、こういうことがわかったのです。まことにけしからぬ。この事実をほんとう総理に報告したかどうか。こういうことが総理の耳に入っているか。何といったって、全国五番目にランクされる、貿易額を除けば第二位にランクされる。しかも、田中総理の地元の新潟の現在の経済連の会長、そして当時はこのマンモス全農の第三番目にランクされる専務理事だったわけです。  そういった面で、農林大臣、時間もないから、あと一問ほかのことで聞きたいので、簡潔に、最後にひとつあなたの答弁を求めたい。
  135. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 全農は、御承知のように全販連と全購連との合併したものでございまして、前々から、この合併当時から内紛があることは承知いたしておりましたが、いわゆる汚職事件というふうなものにつきましては、そう軽々と人さまの話を信用するわけにもいきませんので、昨年の十一月六日から、何しろ全農は全国に数カ所の支所を持っておりますし、ずうたいが大きいのでありますから、本省はもちろんのこと、農政局等の者を派遣いたしまして、ただいまいろいろ調査をしておる最中でございます。  そこで、とにかくそういう内紛の責任を負いまして、三橋会長、関口副会長、それから吉原専務理事辞任いたしまして、いまはみんなで一致して、新しい真崎会長を中心に立て直しをやっておる、こういうことでありまして、その全農の行く先につきましては、大いにわれわれも指導、協力するわけでありますが、事件らしきものにつきましては、いま申し上げましたように、警察も手が入っておるようでありますし、私どものほうは、農林省として監督の立場から手分けで調査をいたしておる、こういう最中でございます。
  136. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 総理と農林大臣から決意がありましたが、もう事実は事実でありまして、全国二千六百万の農家の人、また、五百七十万戸の農家、その頂点にある上部団体の全農です。いわゆる上が腐れば下も腐るのです。そういった意味で、全農に対しては、重大なこの問題をひとつ早く真相を究明し、そして一日も早く清潔にして、そして今後姿勢を正して、全国二千六百万農家のために、私は、本気になって、この畜産危機、しかも農政危機、大事なときに取り組んでもらいたい。  田中総理も、新潟県から百姓のせがれとして出てこられて、今様太閤として今日やっておられる。自分の足元の経済連の会長、元全農の専務理事、火がついているじゃないか。自分の足元の火を消さずして、どこの火が消せるかと私は言いたい。農民のために私は叫んでおきたいのであります。姿勢を正して、真相を報告し、明らかにしてもらいたい、こういうふうに思うのです。総理、決意をお聞きしたい。
  137. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほどから申し上げましたように、いわゆる全農というのは、農民のみずからの利益を守るためにつくられておる団体ですから、それが商社のようにやって、農民の利益が守れないということになったら、これはたいへんですから、これはもう農民の利益が守れるような真の農業団体として成長するように、政府も全力をあげます。  ただ、あなた、何か、私も口が早いですが、あなたもまたまた特に早いものですから、どうも新潟出、新潟出と言って、何か新潟の私に関係があるようなことですが、そうではなく、私もこれはよく知らないのです。いまのあれで、新潟の会長が摘発したんですかな、何か新潟の大会でということですが、私はその事実はよくわかりません。わかりませんが、これは総理大臣といっても、何でもかんでも全部知っているわけではありませんから、ただ、農民のためにつくられた農業団体が内紛を起こしたり、ごたごたやっておったり、それによって農民の利益が侵されたりしては、これはたいへんですから、そういう面では政府も大いにやりますし、農林省もとにかく監督を十分やりまして、それで明朗潤達な農業団体にするよう努力いたしますというのですから、何かこう、非常に口が早いあなたが、新潟、新潟と言うと、何かどうも——私は、そういうことはあまり内容をつまびらかにしておりませんが、大局的に見て、農業団体として、真の農民のための農業団体育成のために、政府は全力を傾けるということを、ここに明らかにいたします。
  138. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間がそろそろ迫っておるので、私も……
  139. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 瀬野君に申し上げます……
  140. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に、私はもう一点……
  141. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 瀬野君に申し上げます。時間が超過しているんだ。だめです。
  142. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それでは、以上で質問を終わります。
  143. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて瀬野君の質疑は終了いたしました。  次に、河村勝君。
  144. 河村勝

    河村委員 まず、中曽根通産大臣にお尋ねをいたします。  私は、昨年の十二月の十六日の石油二法案の連合審査の質疑の際に、あなたにこういう提案をいたしました。それは、ちょうどそのころ、それまで大体安定しておった大企業製品の卸売り物価が上がり方が顕著になっている時期であって、しかも、石油の輸入が大幅に削減をされるであろうという、その後そうでないことがわかったけれども、そういうことが常織になっている時期であります。そこで、私はあなたに対して、現在のような供給力不足、需要超過という条件がある限り、大部分の大きな企業が、コスト増加をすぐに価格に転嫁できる条件が生まれておる。そうすると、いわゆるインフレ利潤ががっぽり大企業には入ってくる。そうなりますと、物価も大きく上昇するし、同時に、働く者の側からいえば、これは完全な被害者でありますから、だから二〇%でも二五%でも、まあそのころはまだインフレがここまで来るとは思いませんからその程度に言ったのでありますけれども、現在では三〇%も賃金が要求される。それはあたりまえのことである。そして、片一方で大いにもうかっておれば、当然それを払わなければならない。そうなりますと、単純な需要超過インフレであったものが、コストプッシュ・インフレに変わってくる。そうなると、非常にたいへんな事態を招くのではないか。だからこの際、政府は、財界その他大企業と話をして、そうして、こういう事態だから、いままでのように価格転嫁によって簡単に利潤を確保するというのではなくて、極端にいえば、大企業は内部留保も厚いのだから、利潤ゼロぐらいのことを覚悟をさせて、そういう合意を遂げる、その上で、労働団体のナショナルセンターとも話をして、そして労働団体の側でもベースアップを抑制する、そういうことをやるべきではないか、そういうことをやる意思はないかということをお尋ねしたのでありますが、そのときあなたはどういう返事をなさったか、御記憶でありますか。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 企業団体等を集めてみて、そういう方向に沿って努力してみたい、たしかそう申し上げたと記憶しております。
  146. 河村勝

    河村委員 それが、正確に申しますと、「所得政策をやる考えはございません。しかし、前段でお話しになりました産業界に協力を求めるというやり方は、この法案が通りましたら、法案の運用等にも関しましてわれわれの考え方を産業界にも伝えて、そして価格の抑制等について協力を求める必要があると思っておりました。したがって、適当な時期にそれを実行したいと思います。」と、たいへん事務的な答弁をされました。しかし、同時に「適当な時期にそれを実行したいと思います。」という返事でありましたが、実際政府がそれをおやりになったのは、二月四日ですね。もうそれまでには企業の反社会的な行動が目に余って、国会でも非常な追及を受け、同時に、狂乱物価といわれるような状態ができてしまったあとですね。ですからこれをおやりになっても、それは意味はゼロとまでは言わないが、ゼロに近い。いわんや、それからあとで労働四団体との会合をおやりになったのは二月二十一日ですね。ですから、もはや手おくれといってもよろしい。  総理、もし十二月の段階で、政府が本気に財界あるいは労働団体とこの問題について取り組んでおれば、その後の様相というものは相当変わったはずだと私は思いますが、そうはお思いになりませんか。
  147. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 早ければ早いほど、早いにしくはないというこで、タイミングを失せず、十一月、十二月、一月というような段階的に、早い時期にいろいろな努力を積み重ねなければならなかったということは、よく理解できます。それはやればやっただけメリットはあったと思います。あったと思いますが、労働問題と賃金問題とかコスト問題というものは、そう簡単にばたばたっと理解が得られるような状態にないことは御承知のとおりです。  今度の春闘でも賃金は上がるでしょう、ある程度。私のほうで言うことはあるんです。この間も、労働団体との会談で、あなたもそう言っていますけれども、各国比較を全部やりまして、ずっと戦後足かけ三十年間の数字を全部やって、実質成長率や、それから名目成長率と賃金の引き上げとか、物価の上昇率と賃金との問題とか、そういうものを全部国際的に調べまして、そしてその結果、結局、コストプッシュの要因の中に賃金というものは避けられないという事態は、イギリスとか西ドイツとか、そういう例をあげたものをちゃんと渡したんです。そしていままでは、まず賃金も上がってきましたが、生産性も上がってきた。しかしここ七二年、三年、四年を迎えれば、確かにもう生産性を上回るというようになりますから、そういう意味では、物価抑制の立場から、ここらはひとつ考えてもらわなければならぬと思います。が、しかし、労使の間で話し合いの結果きまるであろう春闘の賃金を見ますと、そうはいいながらも、相当程度の賃金は確保できると思うのでしょう。その上に、一年前からきめておる政治的なスケジュールによる闘争までやられて、これは国民が泣くだけですよ、だからそれはやめてください、こういうことまで話しているわけです。  ですから、それは去年の十一月のほうがもっとメリットがあったろう、十二月のほうがもっとメリットがあったろうとあなたに指摘されれば、そのとおりだといわざるを得ませんし、私もそう考えます。そう考えますが、なかなかそうタイムリーにばんばんとやれるかというと、国際的な比較も、いろんな数字もやらなければいかぬ、国会にも出なければいかぬと、それはいろいろな理由があっての話でございまして、ですから、それは何も、だからやらぬでよかったとは言っていません。これはほんとうに、あなたが指摘されるように十一月にやればよかった、もう少も押える力に働いたろうということは、御指摘そのままうなずきます。うなずきますが、いまもやっていますということを申し上げて、ひとつ理解を得たいと、こう思います。
  148. 河村勝

    河村委員 ただ時期的に早ければ早いほどいいというような単純なものではなくて、十二月から二月までの間に様相はすっかり変わってしまったんですよ。私が言うのは、そういうことなんです。ですから、ただ時間的な問題ではなくて、実際、対象になる経済状態の質が変わってしまったんですよ。だから意味がなくなったということを私は言っているのであって、同時に、この問題がそんなに簡単なものだとは思っておりません。それはもう思っておりませんが、しかし、何がしかの効果がある、あるにしても、それは十二月にやらなければ意味がなかったということを私は言っているんです。ですけれども、これはもう過去のことですから、いまから言っても、それがこれから先に向けて効能があるわけではありませんから、これはきわめて遺憾な政府の手おくれのために状態を悪くしたということを申し上げるにとどめて、これからどうするかというほうをこれから議論をいたします。  いま私は、これからの物価を鎮静するにあたって、一つの山場に差しかかっていると思います。三月時点で、確かに卸売り物価は、横ばいまではいかないけれども、伸び方が非常に低くなりました。だから、ある転機を求めるなら一つの時期ですね。そこで、平均六二%の石油製品の価格の値上げがあったわけで、国民全体からいえば、せっかく落ちつきかけた状態が、これでまた狂乱物価に戻りはしないかという懸念が多分にあるわけです。そこで、政府としては、六二%の値上げと同時に、五十三品目の物価凍結と百数十品目の生活関連物資の抑制、こういう措置をおとりになったわけであります。  それは私は、いまの段階でやむを得ない処置だと思います。思いますが、しかし、その物価凍結というのは、そういつまでも続けられるものではありません。ですから、政府がこれをおやりになった趣旨も、この凍結を続けていく間に物価の動きを鎮静をさせて、それで新しい価格体系が安定をしてその安定成長の軌道に乗せる条件をつくっていこう、こういうことだと私は思っておりますが、しかし、それには大蔵大臣、私は、これからの経済状態を、やはり需要に対して供給が超過をしている状態を続けていくという条件が要るのであって、そうでなければ、物価を凍結しましても、売り惜しみが起きたり、あるいは凍結後の反動が大きかったり、ないしは、凍結自体がこわれるでしょう。ですから、どうしても供給超過の状況をつくっておかなければならぬということになれば、単なる個別物価だけでなしに、財政、金融全般について相当きびしい政策をとっていかなければならないと思います。  その点、大蔵大臣としては、どういう方針で臨まれますか。
  149. 福田赳夫

    福田国務大臣 物価問題解決のきめ手は、私は全く河村さんと同じです。  やはり供給過剰状態を、とにかく一応つくらなければいかぬ、そういうために総需要抑制政策というのをとっておるわけです。しかし、これは物価対策のほんとうに基本だと思うのです。生活三法という措置もありますが、これは補完的というか、そういう役割りだろう、そういうふうに思います。ちゃんと総需要の抑制というのがきちっといきますれば、物価は完全に克服できる、そういうことを私は確信しております。
  150. 河村勝

    河村委員 経済企画庁長官にお伺いいたしますが、経済企画庁で何カ月も前から試算をされたのを発表しておられますが、それによれば、ここに数字は持って来ておりませんが、石油が三倍上がったら、一体他の物価に対する影響はどうであるか、卸売り物価全体に対する影響、消費者物価全体に対する影響はこうであるというのを、産業連関表を使って出しておりますね。  理論値だから、若干のでこぼこはあるでしょうけれども、それで見ますると、その後の卸売り物価消費者物価の上がりぐあいと対比をしてみますと、理論値に比べて、卸売り物価消費者物価もはるかに高く上がっております。だから、マクロで見れば、とにかく石油製品が今度は六二%上げたけれども、そのほかの物資はもう先取り値上げをしてしまって、石油が三倍上がったら上げなければならぬという理由は全くない。だから凍結をしても、需給の関係さえゆるんでおれば問題はない、そういうことは言えると思いますが、どうですか。
  151. 内田常雄

    ○内田国務大臣 例の産業連関表というものは、昭和四十五年、経済企画庁を中心といたしましてできておりますが、あれは御承知のように、すべての条件を織り込んでいるというわけではありません。したがって、金利の問題でありますとか、生産性の問題でありますとか、あるいは、稼働がフル稼働であるか操短かというようなことによりまして、いろいろの状況は違っておりますけれども、あの連関表に関する限りで見ますると、おっしゃるとおりの結果が出まするので、そこで、先ほど河村さんからもおっしゃいましたように、石油製品を六二%上げてもおおむねの重要製品は押え込めるという、また押え込みたいというような考え方から、物資の所管省とも相談をいたしまして、行政指導ということではございますが、ああいう措置をとった、こういうことに考えていただいていいと思います。
  152. 河村勝

    河村委員 そこで、総理大臣は、いままで夏ごろまで凍結を続けるというようなことを言っておられるようでありますが、凍結解除の条件をどうお考えになるか。私は、少なくとも卸売り物価がただ横ばいになるだけではなしに、これが下降する、下がってくる、そういう条件が続くまで、凍結、それから総需要抑制、両方とも続けていかなければならない、そう考えますが、総理大臣はどう考えますか。
  153. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これも下降線をたどるようになれば非常に望ましい情勢であるということはわかりますが、まあ下降線をたどるということよりも、とにかく物価は安定をして、大きな波動は絶対に起こさない。下がるほうはいいのですが、波動でも、上がる、高騰するような状態を絶対に起こさない、また起きないという見通しがつくまでは、どうしても、物価の凍結というような状態は続けていかなければいかぬし、それから金融の引き締めとか財政政策とか、こういうものも、とにかく長期的に見て、物価の安定ということが確保できるという自信がつくまでは、これはやはり相当程度続くということは原則でございます。ですから、今度は、物価安定ということに全力を傾けるということでありまして、もうだいじょうぶだろうというような安易な考え方のもとでいろいろな政策をやめるというようなことは絶対にしない、こういうことであります。  ですから、もうほんとうに必要であれば、とにかく水ぶくれも取る、仮需要はもちろん押える。それで、ほんとうの物価を安定させるために、あなたがいま述べたように、需要と供給のバランスの上に価格が安定するわけですし、価格がきまるわけですから、需要が足らなくて供給がふえる面に対して、集中的に石油も供給しますし、資金も供給します、こう言っておるわけですから、その後でも、やはりもうこれでだいじょうぶなんだ、これで絶対だいじょうぶだけじゃなくて、不況感があっても困るといっても、そのときにこそ、国民生活のために、真に必要なようなものに、財政が主導でもって、いわゆるアンバランスを是正していくというような慎重な配慮ということを続けていかなければならぬ。それはそう考えております。
  154. 河村勝

    河村委員 私が言いたいのは、それはぴったり需給がバランスがとれれば、それはいいわけでしょうけれども、実際はそうはいかないので、実際は、若干供給超過ぎみでなければ安定はしないのですよ。だから、卸売り物価も若干下降線をたどるというぐらいでなければ安定したとは言えない、そう思うのですが、そうじゃありませんですかね。
  155. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国民の需要に対して、余るほど物を供給できる状態でないのだから、そういう意味では、いまのゼロゼロがつくだけではなくて、物価はとにかく下降線をたどるような状態が現出しなければ、物価の安定ということは言えないだろうということは、よくわかります。
  156. 河村勝

    河村委員 そこで、総理はこの前、新聞報道でありますけれども、日商の総会で、過剰流動性は、これまでの引き締めによって半分ほど吸収されたと思うが、企業によっては、手元の資金を土地などに換物をしてしまったところもある、このため、大蔵省が銀行を通じて行なう検査で、個別企業に、本来の営業とは関係ない土地購入の事実が見つかれば、期限つきで金を銀行に返させるよう指導する。そういう言明があったというふうに報道されておりますが、事実であるか。後段のほうは、大体見当がつきますが、半分ほど吸い上げておるけれども、なお半分ぐらい残っておるのだということでありますか。その辺をお聞きしたい。
  157. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 金融は非常に締まっておる、こう言います。言いますが、締まっておるというのは、これは企業活動の状態からいって、いままでよりも締まっておるという考え方が一つございます。もう一つは、抱いているものはそのままにしておって、営業資金を得ようとすれば詰まっておるという見方もあるわけですから、これは量と質の両面から見なければ、真の金融政策にはならないということは申すまでもありません。  ですから、私も、このところずっといろいろなことをこの二年ばかり検討してきたわけです。土地などが上がったのは、列島改造政策を出したから上がったのだといわれる。列島改造政策を出しただけで上がったなら、下げたらがっと下がるか、こう思って——私は、自分の名前なんて、全然メンツにこだわっていないわけですよ、国益優先ですから。そう思って、やってみたら、必ずしもそうじゃないということがよくわかってきたのです、数字において。  なぜかと言いますと、あなたですから申し上げますと、昭和二十九年から三十九年までの十カ年閥一〇・四%成長率のときは、日銀券の増発は、対前年度比一四%台だったのです。三十五年から四十五年までの十カ年平均一一・一%の成長というときには一五%台だったのです。四十七年のあのドル問題が起こるまでは一五%台で来たのです。一五・九が一番最高でした。それから四十七年の下期から四十八年にかけて二七、二八と、こうどかどかと出てきたわけです。いつもここで申し上げるように、日銀券の帳じりというものと必ずしも関係ありません。ありませんが、一つのめどの指標であることは間違いない。そういうことで、去年は二八・二%まで伸びたものがだんだんと落ちて、二三になり、二二になり、二〇になり、今月は一九・八になる、こういう予測です。  その過程においてどのぐらい一体金が出たのかと思いまして、いろいろ考えてみましたら、まあ功罪半ばと言えるものだなということが私もよくわかりましたのは、土地税制を四十四年からやったわけです。一〇%、一五%、二〇%と、現在一五%でもって、二〇%に入るわけです。この間に一体幾ら土地に金が払われたか。   〔委員長退席、井原委員長代理着席〕 ちょうど十兆円払われた。四十四年に一兆三百五十九億、四十五年に一兆七千億、四十六年に三兆三千五百億、四十七年には三兆二千三百億、この四年間で十兆円です。これはちょうど一兆円の税金が納まったわけです。税率は違いますけれども、数字というものはこのくらい明確でございまして、結局、土地の売買代金として十兆円払われておるということは事実なんです。そこへもってきて、ドルとの問題がございました。それで返済をしないでいいということで貸し増しが行なわれたということは事実なんです。ですから、ある人は十兆円ともいい、ある人は十五兆円ともいい、ある人は二十兆円ともいっているわけです。それを、ずっと金融の引き締めをやってきまして、現在一九・八まで下がってきているということを見ますと、これは年間七十兆円の給与の支払い、七十兆円の貸し出し、合わせれば百四十兆円、ラウンドの数字にすれば百五十兆円近い金が動いている、こういうことは事実です。この中に、結局金融はこういう状態にあるということは事実なんです。ですから、いま確かに手形金融というような正常な金融は非常に逼迫しています。していますが、企業別に見ますと、株になっておる、土地になっておる。十兆円とにかく企業が払ったことは事実なんですから、この払った——四十八年度よりはもっと上がっていますよ、これは。そのうち一体幾ら売っているか、売っていれば土地はうんと下がるわけです。新聞広告は出しているけれども、まだ現に売っていないということ、売っていなければ、そのまま買い越しになっていることは事実なんですよ。そうでしょう。  そういう意味で、今度はもう土地を売って月給を払いなさい。春闘も、土地を売って払いなさいといえば、土地は暴落をしますよ。暴落をしますけれども、そんなこと言っていられないから、これは賃金や手形の金融はつないでやりますから、倒産しなさんなよ。そうでなければ、全部黒字倒産をすることになりますから、倒産はさせない。しかし、企業別に貸し出した金の中で、本来の用に供しておらない金があるわけですから、その金は——いますぐ売れといったって売れないわけですよ。売ろうとしていますけれども、買う人がないから地方へ売ろうとしているわけです。ところが、地方庁に起債をうんと許可すれば、しり抜けになりますから、千億しかワクを認めない。だから、売りたくても売れないというのが現状です。ですから、そういう意味で、これから三月の末、四月の末、五月の末、六月の末まで金は貸しますから、これは土地を売ったりして返済しなさいよ。少なくとも、返済するというたてまえで、つなぎ融資をするのですよという、こういう融資をいまやっているわけですから、そういう意味で、二八・二%が一九%になったから、これは現、実的に私、数字をこまかくそれはなかなか述べにくい状態にあるし、大蔵省の銀行局でもむずかしいと思います。これは系統金融もありますし、雑金融機関があるし、なかなかむずかしい。むずかしいけれども、おおよその数字というのはできるのですよ。私はちゃんと数字を持っているのです。  昭和四十六年の四月一日現在から一五%でもって延ばしたものと、現在とのものの間が大体どのくらいの金融の貸し出し超過になっておるかということはわかっている。これが仮需要になっているわけです。これが引き締まらない以上、真に金融健全化だとはいえません。しかし、これを急に締めればみんな黒字倒産だし、りこうな人が、今度は会社更生法を適用して三年間も寝ていられようものなら、これはえらいとこになってしまいますから、給与は払えなくなる、手形は落ちない、経済は混乱する。しかし、それを持っている会社の株主だけは、三年たてばもうかるというようなことをやらしてはいけませんから、実態に合うように金融をぎっちり締めておるという状態ですから、大ざっぱにいって、半分くらい締まったと見るべきだろう。しかし、これからも締めますよ、私はこう言ったのです。あなた方が、いかに対前年度比、ワクは縮まったといったって、対前年度まで十兆円も十五兆円もよけい借りておって、それは全然別にして——対前年度はそんなにやりませんよ。四十六年四月一日から一五%で引きますよ、こういうことを述べたのでして、私は、現実的に自分の試算した数字の上から見ても、相当換物されたものがまだそのまま帳簿に載っておりまして、その金は全部が返済されておらぬ。ですから、これはやはり返済されるものは返済されて、それで本来の企業の運営資金というものが金融べースで流されるべきだ。だから、その間にはまだ相当の時間が要る、こう見ているのです。
  158. 河村勝

    河村委員 どうも総理、あまり演説を伺っておると時間がなくなってしまうので、簡単にしていただきたいのですが、日銀副総裁、来ておられますね。いま総理が、半分まだ過剰流動性が残っている、こういう話ですが、全般的に残っておるわけではなくて、締まっているところは締まっていて、簡単にいえば、流動性が偏在をしているということだろうと思いますが、日銀でも最近、そうした偏在をしておる資金の流動性の吸い上げを計画はしておられるようだが、実際、その実効ある手段というものは一体あるのですか。総理は簡単にやれるようなことを言っておられるが、実効はどうですか。
  159. 河野通一

    ○河野参考人 御承知のとおり、一年余にわたる引き締め政策の結果、金融面におきましては、あらゆる面で相当引き締めの効果が出てまいっております。  企業の流動性の状態も、総体としては低下をいたしておりますし、先ほど総理も申されたように、マネーサプライ等も一時に比べて非常に落ちてまいっておる。ただ、これはマクロと申しますか、総体としてそういう状態が出ておるということでございまして、ミクロというのですか、個々の企業の状態の中には、まだ破行的な状況が残っておる、そういう破行的なところにはまだ流動性に余裕があると見て差しつかえないようであります。  ただ、遺憾ながら、私どもそれを数量的にどのくらいのものがあるかということは、これは理論的にもそうですし、実際的にもなかなか計算がむずかしゅうございます。こういう一部の企業に残っておりまする流動性の余裕分は、いろいろな形でできるだけ吸収するように努力をいたしてまいっております。具体的には大蔵省においても融資選別の方針を強化されてまいっておりますし、私どもも、それと平仄を合わせる意味において、いろいろな形で個々の企業の余裕流動性については、これを吸収することにつとめております。ただ、現在の制度のもとにおきましては、中央銀行たる日本銀行が直接に個々の企業の金繰りに対して介入して、それをどうしろこうしろということはやれませんし、またやるべきでもないと考えておりますので、市中銀行を中心とした金融機関を通じてそういった過剰のものはできるだけ吸い上げる、また、貸し出しの回収、あるいは新規の貸し出しを抑制するという形においてこれを具体的に進めてもらうように努力をしていただいております。そういう形でございますので、具体的に、それでは一体幾ら過剰なものがあるかということについては、残念ながら、私からは数量的にはお答えを申し上げることはいたしかねます。
  160. 河村勝

    河村委員 そうした全体の引き締めにもかかわらず、なお過剰流動性が部分的にかなりの量で残っているというところまでは常識なんでしょう。  そこで、これは農林大臣と大蔵大臣に伺いたいのでありますが、農業協同組合からの金融が、全体の引き締めのワク外にあって、これが引き締めのしり抜けになっているというのが、一般の常識のようになっております。最近は、特に都市近郊の農協などは土地代金等がありますから、ですから資金量も相当大きい。だから、その影響力もかなり大きいと思うのです。  一体、農林大臣はその実態は知っておられますか。全体の資金量がどのくらいあって、四十八年度で貸し出し増加がどのくらいあって、一体どういう指導をやっておられるか、その点について、まず伺います。
  161. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農協は昨年末、十二月末の貸し出し残高が五兆七千億ほどございます。信連が二兆九千億ほどございます。こういうふうになりましたのは、やはり営農に要する資材等が非常に高騰いたしてまいりましたので、そういう金融面もございますけれども、もう一つは、いまお話しのようなことで、農協資金をねらっておる人たちが、銀行保証などで農協から金を出すというふうなことが行なわれておる。いわゆる迂回融資でありますが、こういうことは、一方において一生懸命金融引き締めをやっておるのに、逆のことになりますので、私どものほうでもその政策に協力をするということで、地方の県知事に通達をいたし、また直接農協にも指導をいたしまして、きびしくそれをやるようにいたしております。たとえば、二十億以上の預金を持っております農協などでは、三千万円以上の貸し出しは、全部報告をさせるというふうなことをいたしまして、この金融引き締め政策に協力をいたしておるんでありますが、最近はそれが徐々に浸透してきております。もちろん、信連も農林中金等も同じ方向で引き締めに協力をするようにいたさせておるわけであります。
  162. 河村勝

    河村委員 これは大蔵大臣に伺いますが、もともと農協は組合員への貸し出しが主体であり、かつ個人を対象にするものですね。いまの状況でありますと、員外貸し出しだけではなしに、個人名義で一般の企業に貸す、しかもそれが、都銀とか地銀が資金が苦しいものだから、お客をあっせんをして、それで債務保証までやって借りに行くという状況があるわけでしょう。これは完全な脱法行為ですね。脱法であるということは、また一面では、そういう実態にあるということですね。都市近郊の農協などは、実際は農業関係への貸し出しというものは、そうないわけですね。しかし資金はうんと持っている。そういう実態があるなら、何か、迂回融資とかなんとかいってやみ融資みたいなことでほっておいて、そのために引き締めがしり抜けになる状態をほっておくより、むしろ、現実がそうであるならばそれを認めて、そういう貸し出しも認めるかわりに、窓口規制なり、あるいは一般の規制のワクの中に入れる、入れて正常に貸し出しをやらせるというほうが、私は本筋ではないかと思うけれども、どうお考えですか。
  163. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま農業系統資金というものは、非常に異常な状態ですね。つまり、農業協同組合が資金を扱う、これは組合員たる農民が零細な余裕資金を農協に貯金をする、こういうことなんですね。ところが、国土の開発でありますとか、それに関連する公共事業を地方自治団体もやる。またゴルフ場だ、レジャーのいろいろな施設だ、そういう大規模な国土開発工事が行なわれる。そうしますと、農地、山林がそれに提供されるということになって、予想もしなかった大金が農業協同組合の組合員たる農家にぼこんぼこんと入っている。ですから、農協にはたいへんな金がこの数年間蓄積される、こういうことになったわけです。  その金を一体どうするかという問題でございますが、いままでは、確かに御指摘のように、金融引き締め政策のしり抜け的状態に置かれておったわけなんです。そこで、融資の抑制というけれども、農協の資金だけは自由に貸し出される、こういうような状態になり、結局、総資金の総供給、これを抑制するという政策が相当阻害されてきた。そこで昨年の十一、二月のころから、これはやはり困難な問題であるけれども、農協資金を規制しなければいかぬ、こういうので、なだらかな形からだんだん始めまして、最近はかなり強化されておりまして、ことに近く農協の検査までやろう、こういうふうにいま考えており、農林省と相談をいたしております。  やはり私は、いまそういう異常な状態をどういうふうに解決するかという問題は、そういう行政指導の面もありますけれども、同時に、農協の資金が上のほうの系統にずっと上がっていく、こういうふうなことになるのが一番いいと思うのです。そのためには、末端農協自身が貸し出しに当たるとかなんとかということを避けまして、そして農協本来の融資はもとよりしなければならぬが、それ以外の資金は、上の系統にだんだん上げて、最終的には農林中央金庫が融資というものも行なう、あるいは融資ばかりじゃありません。いろんな証券の取得だとか、そういう運用を広い立場からやっていく、こういうことが好ましいのじゃないか。そういうことで、農林省といまいろいろ相談をし、実施しつつあるという最中でございます。
  164. 河村勝

    河村委員 総理、けさほども話がちょっと出ておりましたが、こうして引き締めを続けていって、それでこの需給のバランスを安定さしていくということについてお伺いしてきたわけでありますが、電力、ガス等の問題ですね。これは、さっき、他の物価に影響しないような状況を見て考えていくのだというような意味の答弁があったと思います。これはそのままほっておける問題ではないことはよく承知をしております。  しかし、けさほどのことばをやや具体的に言いますと、大体、先ほど私が申し上げたような卸売り物価がやや下降するくらいの安定した状態が生まれてきて、凍結も解除できるというような状況がはっきりするまでは、この値上げを見送る、そういうふうに考えればよろしいわけですか。
  165. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 石油は上がっておるわけでございますから、電力やガスの内容が非常に悪くなっておるということは申すまでもないことでございます、これは算術計算でまいっているわけですから。ですからそういう意味で、物価体系を国民の前に明らかにするためにも、やはり不可避の問題に対しては踏み切るべきだという議論も、世の中に存在することは承知しております。承知しておりますが、せっかくここまでいま努力を続けて、まず国民の最大の問題は物価の安定である、こういうことで、いま取り組みにまつ最中なわけでございます。そういう意味で、物価抑制ということがはかれる、物価の安定がはかれるということとの両立てでこれはやはり見ていかざるを得ないというふうに考えておるわけであります。ですから、公益企業の料金改定については、慎重に対処してまいります、こう述べているわけです。  これが半年延ばせるのか、三カ月延ばせるのか、一年間凍結するのかということに対しても、これはなかなか明確にはできないわけです。だから、物価を凍結する場合には、電力料金やガス料金を凍結するためには、一体一兆円あればいいのか、一兆三千億あればいいのか、半年間凍結するには幾らあればいいのかというところまで、もうあらゆる角度から与党も政府も計算いたしておりますので、やはりそういう過程において、物価安定を第一義とし、そして、その影響が最小限に食いとめられる、そういうことによって、公益企業の料金改定ということによっても物価安定という大命題はくずさないで済むという、いわば自信がつかないと、これはなかなか企業としては迷惑な話だと思います。思いますが、非常に慎重にかまえておるというのが実態でございます。
  166. 河村勝

    河村委員 この際福田大蔵大臣に、ごく端的な御返事だけ伺えばよろしいのですが、預金金利の引き上げについては、現行の金利体系を動かしたくないということが非常に強くて、消極的なようでありますが、インフレによる被害者救済という意味で、ともかく少額の特定の預金について何らか金利を引き上げ、預金金利を引き上げてもいいじゃないかというところまではどうやら踏み切られたように見えますが、具体的にはどういうことになるのですか。私は、少なくともやる場合には、春のベースアップの資金が吸収できるような、そういうタイミングでもってそれをやらなければ、やるにしても意味が非常に薄れる、めんどう見るほうには同じかもしれないけれども、同時にインフレ対策として役に立てようと思えば、そういうタイミングを見てやらなければならないと考えておりますが、どうお考えですか。
  167. 福田赳夫

    福田国務大臣 貯金の利息を上げろ、こういう声は相当各方面にありまして、特に民社の皆さんから御熱心に承るのでありますが、そういう際に、外国じゃ上げておるが、日本は低いじゃないかということをずいぶん聞くのです。しかしこれは誤解であります。つまり、外国のほうは法人預金、つまり経費の要らない手間ひまかからないという多額の預金ですね、これに対しましては十何%という高い利息をつけるのです。しかし、零細の個人、預金、こういうものにつきましては非常に低いのです。五%のものも今日ある。六%のものもある。そういうような状態なんですよ。  そこで、私どもでは相当高いものをつけておるわけでございますが、さて、これ以上上げて二けたにせい、こういうようなお話でございますが、そういうことになると、一般の金利水準を上げちゃう。そこで私どもは、これは非常にでっかい問題だというので、ちゅうちょしておるのです。しかし、零細貯蓄者の立場を考えますと、そうばかり言っておられないというので、あれやこれやと手を尽くしてきておりますが、いま賃上げの話がありますが、これは毎月毎月ベースが上がるわけでありまして、それよりは、その上がったベースを基礎にいたしまして夏のボーナスが支払われる、これが大きかろうと思うのです。特にボーナス期あたりには、お話しのような趣旨で何か考えたほうがいいだろうといって、いまその手法をどうするかということを考えておる、こういう最中でございます。
  168. 河村勝

    河村委員 非常に時間が限られておりますので、二つばかり提案をさしていただきたいと思います。  今度の石油危機を通じて、通産大臣、一番石油関係ではっきりしてきたことは、一つは、やみカルテルのような反社会的な行為が、私企業の社会的責任を自覚しろといっても、千載一遇の好機みたいな時期になればどうしても出てしまうということと、もう一つは、民族系の石油産業の弱さ、この二つだと思うのですね。  ですから、その両方を解決するために、いずれこの民族系企業というのはこのままではおけないだろうと思います。だからこの際、民族系石油産業というものを再編成して、それで、昔でいえば国策会社、政府の出資した会社にする。全体の中で一部分国有のそういうものができても、競争条件は阻害しないのですね。競争さしていけばよろしい。しかし、やみカルテルなんかやろうと思ってもできない、同時に原油の輸入体制の強化にもなる、そういうことを考えておりますが、通産大臣はどうお考えになりますか。
  169. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 昨年来の石油危機以来の諸般の情勢を見ますと、いずれにせよ、石油政策というものについて相当深い検討を加えなければならぬ段階に来ておると思っております。  いま総合エネルギー調査会に諮問をしておりまして、エネルギーのバランスの問題、または経営の問題等についても答申をもらうことになっておりまして、その答申を得まして、どういうふうな対策をとるか、進めていきたいと思っております。いま河村委員が御指摘になったような要素も、一つのいままでの欠陥としてとらえられている要素でもございます。
  170. 河村勝

    河村委員 結論ははっきりしないのですが、そういうことは考えない。具体的には、私の言ったようなことは考えない、そういうことですか。
  171. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ともかくいま諮問している最中ですから、答申を得ましてから、その答申をよく検討してみたいと思います。
  172. 河村勝

    河村委員 科学技術庁長官、もう少し私は原子力の今後の開発について伺いたいと思っておりましたが、時間がなくなってしまいました。  そこで、これから代替エネルギーというものをいろいろ研究開発をされても、当座間に合うものは原子力以外にはないと思います。これの安全性その他の議論がいろいろございまして、もう少しほんとうは伺いたいこともございますが、一つには、やはり原子力というものに対するアレルギーというものがあることも間違いがありません。そこで、そうしたものを解消する一つの手段として、原子力村というのはちょっとおかしいが、要するに、住宅都市を新しくつくって、そこに原子炉からの熱を供給して、それで集中冷暖房をやる、そうすれば、これから入居募集すれば、そういうアレルギーのない人がたぶん入居するでありましょう。現にスウェーデンでファレスタという町、ストックホルムの郊外にあります。これは町のまん中にあるわけではないけれども、少し離れたオーゲスタというところの原子炉の熱を使って、スウェーデンでは冷房は要りませんから、集中暖房をやっているというふうなことで実用化をしております。何か、そういうことを考えれば、積極的にそういう安全性に対する不信感を除くのに役に立つというふうに考えますが、いかがですか。
  173. 井原岸高

    ○井原委員長代理 時間がございませんので、簡潔に頼みます。
  174. 森山欽司

    ○森山国務大臣 ただいまお話のございましたスウェーデンのオーゲスタ原子力発電所が、約三・五キロ離れたファレスタ団地、約九千戸の団地に暖房用の熱を供給する目的で、スウェーデンで最初の原子力発電所として試験研究的な意味をもってこれが建設されましたことは私ども承知しております。私はまだ行ったことはございません。しかし、原子力の利用が、原子力発電ばかりでなく、このように国民生活全体にいろいろ活用されることは、まことに望ましいことであると思います。  御指摘のスウェーデンにおける原子力の冷暖房が、その意味できわめて注目すべきものであり、またスウェーデンにおいて一つの試みと言われましたが、かなり好ましい結果が出ているというふうにわれわれは聞いております。こういう原子力の利用は、原子力発電による地域住民の福祉向上に直接役に立つものでありまして、原子力に関する国民理解を深めるものとして魅力的なものであると考えます。近来のわが国の動向から見まして注目すべき試みであるという点については、全く同感であります。  ただ、オーゲスタの例は、発電目的もさることながら、熱供給を主たる目的とする原子力利用であることなど、わが国と若干事情を異にしている面もありますので、原子力利用の有力な試みといたしまして、今後検討してまいりたいというふうに考えております。有力な御示唆、まことにありがとうございます。
  175. 河村勝

    河村委員 総理、いかがですか。
  176. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私も、いまのスウェーデンの問題これは原子力発電所の中でもって温水を海洋に流すということで、非常に漁業補償等で問題になっているわけです。ですから、ハマチの養殖とか、いろいろなことでもってやっているわけですが、これを三キロ、五キロということであれば、近くに団地をつくるということであれば、当然ここにはそういうことができるわけであります。  私もけさ、新潟県柏崎に東電の大きな発電所計画があるわけで、柏崎の市長が来ましたから、この問題、ちょうどきょうあなたから御質問があるということで、私も勉強していましたから、これを一部、海にばかりやらないで、ここにひとつ団地を一千戸ばかりつくって、新潟は雪が降るのですから、これをやりなさいよ、こう言いましたら、それはひとつ東電と話し合って、市でやりましょう。市はいまちょうど三、四十万坪のことを考えているわけですから、こう言いましたから、それは、新潟県の山の中にあんまり高層なものをつくっちゃだめだぞ、平屋でもいいから、百坪、百五十坪、二百坪、三百坪という一つのものをつくって、そして、そこへ団地にして、スクールバスと同じやつをやれば何でもないから、ひとつやりなさいよ、こう言ったわけで、夢じゃなく、実現の段階に入るかもしらぬということを申し上げておきます。
  177. 河村勝

    河村委員 時間でありますから、一言だけちょっと、外務大臣、これは農林大臣かもしれませんが、緊急の問題でお尋ねをしたいのですが、最近、この三月になりましてから、ソ連の漁船団が、伊豆七島の神津島の南西銭州漁場という非常な漁場ですね。ここへやってきまして、これが大きな一万トン以上の母船がその子供を引き連れて、沿岸漁業をやっておる漁民の中に割り込んで、しかもトロールで、底びきでみんなとってしまう。ところが、この地域はサバなどとれるわけでありますが、沿岸漁業を日本人に対しても一人当たりの制限をやっておる、それからまき網はいけないというような、そういう自主規制をやらしておる。そこにソ連の漁船団が来て、どんどんトロールで魚をとってしまうというので、いま非常な騒ぎになっております。  農林大臣はこの実態を御存じであるかどうか。これはほうっておけない。これは神津島南西五十海里ぐらいでありますから、公海ではありますね。ですからこれを追っ払う。武力——武力はいけないか。要するに、領海侵犯というわけにはまいりませんが、しかしこれは許しがたい問題だと思うので、外務大臣はお聞きであるか。外務大臣、農林大臣からちょっとそのあれをお聞きして、それで質問を終わりたいと思います。
  178. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話しのように、最近、わが国の近海にソ連漁船が進出してまいるのはたいへん著しいものがありまして、このために、わが国の沿岸漁業資源の問題を生じておるばかりでなくて、漁業操業上の危険、それから沿岸海域に設置されております漁具等に被害が発生いたしまして、関係漁民に大きな悪影響を与えておるわけでありますが、昭和四十八年から本年に入って、ソ連漁船団の規模はますます大きくなっておりまして、しかも、近代化された高能率の二千トン級のスタントロール船が十隻余も操業いたしまして、その範囲をだんだん拡大しております。これに伴って漁具等の被害は本年に入りまして激増いたしておりまして、三月二十七日現在で、被害総額は約四千八百万円に及んでおります。今後とも、被害の未然防止につきまして、日ソ両国間でこの点について協議を、前にもいたしたことありますが、協議をいたして、損害の補償等について、外務省を通じて、緊急にソ連側に申し出ることにいたしておりますが、ただいまお話しの銭州は、ここはサバであるとかサンマなどの産卵場でありまして、したがって、わが国の水産庁におきましては、一本釣り以外は許さないでおるところであります。そういうところへ大きな船団が参りまして漁獲をいたすということにつきましては、種々問題があります。そういうことでありますので、日ソ両国親善のためにも、これは外務省を通じて善処していただくように、いまお話を進めようとしております。
  179. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘の事情は、外務省としてもよく承知いたしておりまして、三月十二日、ソ連大使館を通じまして先方の注意を喚起いたしておるところでございます。しかし、仰せのように公海における操業でございまして、ソ連に退去を求めるというわけにはいかないと思うのであります。また、サバは日ソ漁業条約の規制魚種ではございません事情もございます。したがいまして、これをどのようにやってまいりますか、たいへんむずかしい問題でございますけれども、沿岸漁民の方々の御要望をよく承っておりまするし、水産庁とよく御相談をいたしまして、執拗にソ連側に自制を求めてまいりたいと思っております。  損害の問題につきましては、過去におきまして、千葉あるいは北海道沿岸におきましてもこういう損害賠償の提起が行なわれたわけでございますけれども、ただいままでのところ、先方は、責めは日本側にあるということで、好意的な反応はまだ残念ながら示しておりませんけれども、賠償の提起がございましたならば、ソ連当局にこれを差し出してまいるということは、私どもいたしたいと考えております。
  180. 井原岸高

    ○井原委員長代理 これにて河村君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  181. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ここに「大東亜戦争従軍記念メダル発行趣意書」というのがあるのです。ちょっとこれを総理大蔵大臣に——これは大東亜戦争従軍記念メダル頒布全国協議会でメダルを発行して、いま盛んに売っておるわけですね。それで、これに参加しておる団体が、この趣意書によれば二十六団体、相当の全国的な規模である。団体は、軍恩連、それから防衛協会あるいは傷痍軍人の関係ですね。  私は驚き入ったので、ちょっとこの個所を読んでみたい。「(国民精神作興)大東亜戦争従軍記念メダル発行趣意(二万個限定発行) 大東亜戦争は事志とたがい敗戦の憂き目をみた。しかし、祖国の敗戦にも不拘、大東亜は欧米諸国の植民政策より解放せられ、ビルマ、インド、パキスタン、マレーシア、インドネシア等次々独立した。これ一にわが幾百万戦没傷い将兵の熾烈な愛国心による尊い犠牲の賜であります。これを是認しないならば幾百万の英霊は神鎮まり給うことを躊躇せられるであろう。」「大東亜戦争の精神を後々の世まで語り継がねばならない。このことは国家永遠の生命防衛のため誠に重大であります。」「過般、長瀞県郷友会において自主的に標記メダルを作制し頒布するの企図あり、その制作意匠ともに優秀で従軍メダルとして適格であり、茲に、われわれ関係団体全般に頒布することになったものであります。」  私は、これは二つ問題があると思うのですね。一つは、このような趣意書というのは、今日の世の中で通用するのか。つまり、明らかにこれは憲法に挑戦する内容である。つまり戦争賛美、あるいは中国その他の東南アジアに対する侵略を美化している。そしてこれで金を集めて——軍人恩給、これは政治連盟ですね。そして、これは政治連盟が集めろのだから、だからこの目的は、「これにより利益を求めることのみを以て目的とするものではありません。その頒布代金の一部を当該団体に還元し、これを以て軍恩その他諸団体の凡ゆる活動源の一助たらしむるにあります。」「凡ゆる活動源」の中に政治運動が入っているのです、政治連盟だから。しかも、この県の防衛協会の会長を知事がしているところが多いのですね。それから、事務所は、御案内のとおり、郷友会とか防衛協会、防衛庁の施設の中にあるところも多い。  私は、これは非常に問題であると思う。しかもこれは、人格なきいわゆる社団法人の収益行為ですか、という面もこれあり、大蔵省とも関係があろうと思いますから、まず大蔵大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  182. 福田赳夫

    福田国務大臣 初めてこれは拝見しますが、これはメダルでありますから、ちょっと硬貨に似ておりますが、硬貨ではないから、その面で、私ども大蔵省として関係はないんです。ただ、一般的に、戦友だとかなんとか、そういうことから、その時代のことをなつかしがり、その記憶を呼び起こそうというようなことでいろいろな試みがあるんじゃないかと思う。そういうような試みの一つであるかのような感じがいたします。  大蔵大臣といたしましてこれについて所見を述べろというと、硬貨ではありません関係上、どうも述べようがないというのが、率直なところでございます。
  183. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がお聞きしたのは、これはいま問題になっている、人格なき社団法人等のいわゆる収益行為が、税金の対象として問題になっているでしょう。そういうかかわりもあるから大蔵大臣の所見を承ったんですが、大臣に聞きたかったのはそういうことじゃなしに、この趣意書についてどういう見解をお持ちかということですよ。  こういう趣意書で、堂々とですよ、しかもこれの申し込み先は、これは長崎県から発生しているものですから、長崎県の県庁の中の援護課の中の長崎県郷友会、それから長崎県庁別館、長崎県軍恩連盟、自衛隊長崎地方連絡部内長崎県防衛協会事務局、こういうつながりがあって、非常にこれは私は問題があると思う。(発言する者あり)それで私は、不規則発言があって、大蔵大臣のあれじゃないとおっしゃいますが、有力閣僚としての意味も含めて、あなたの見解を聞いている。  というのは、昨日、本会議において、わが党の稲葉委員の質問に関連し、総理が、君が代、国歌の法制化はもちろんのこと、何か教育勅語——私、よくわからなかったんですが、大蔵大臣も聞いておられたと思いますけれども、大蔵大臣はどういう見解ですか、総理のあの教育勅語問題に対する御見解。
  184. 福田赳夫

    福田国務大臣 あれは、私聞いておりまして、教育勅語は、いまは廃棄されておる、しかし、あの中にはいいところがたくさんある、こういう御趣旨の発言だったと思います。
  185. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは、憲法、あるいはそれに基づく教育基本法にまっこうから問題を提起すると私は思うわけですね。  この点について、湯山委員から関連質問がありますので、お許しをいただきたい。
  186. 湯山勇

    湯山委員 教育勅語が衆参両院で廃棄の手続をとられたということは、総理大臣もよく御存じだと思いますが、そういうことを意識しておっしゃったんでしょうか、その点、明確でなかったものですから、その点だけお伺いしたいと思います。
  187. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 質問に特定してございましたから、質問がなければ私は答えないんです。質問に、国旗はどうするのか、国歌はどうするのか、法制の意図ありやなしや、それから教育勅語をどう思うか、こういう質問がありましたから、質問に答えなければ、責任を果たすゆえんでない。質問がございましたから、私の心情をそのまま述べたわけであります。
  188. 湯山勇

    湯山委員 じゃ、いいとか悪いとかという判断ではないんですね。
  189. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 どう思うか、いいところもあると、こう思う、こういうふうに、心をすなおに述べただけ……「(いいところもあるならば悪いところもあるのか」と呼ぶ者あり)悪いところということは、それは私はいいところだけ述べたわけで、いいところもあると……。  廃棄をされたということでありますから、廃棄をされるには、廃棄をされるだけの歴史的事実があって廃棄をされたんです。私も知っております。これは占領軍の強制力によって廃棄されたんです。それだけじゃないんです。忠魂碑は全部排除せよ、無格社に対する小中学校の春秋に参詣することはやめなさい、これは全部、あなたは学校の先生だったからよくわかるでしょう。そういうことで、とにかくあの占領軍メモランダムに対しては泣いた人もあるんです。そういうことをやったんです。事実を述べたんです。
  190. 湯山勇

    湯山委員 総理は、御注意申し上げたいと思う。教育の問題になると、かあっとなって沸騰してくる。それはほかのことで申しますが、それはよくないことで、総理が東南アジアへ行ったときに、本会議でそのことについて質問があったときに、日本人はどうも自分のことばっかり考えている、これは修身をやらないからだということを言われたことが問題になったときに、同じように、これは私が言うんじゃない、向こうで言ったんだというように、声を大きくして言われた。これも、いい悪いの判断はちっともないんです。そこの判断なくて、いまのように簡単に、いや、それは人倫の大綱を示した部分もあるとか、いや、修身をやらないからこうだと、簡単に言う。そこに問題がある。間違っていますよ、これは総理、東南アジアのは。総理のことばを裏返していけば、修身教育をやらないから利己的になっている、修身教育をやれば、それがなくなるという含みがある。これは論理の上で、逆もまた真なりということになれば、そうでしょう。  そこで、その次です。それじゃ、総理は、私は修身教育を受けている、だから私には利己的なことはないんだ、こういうことでしょう、裏返せば。三段論法を言えばそうですよ。いいですか、問題はそこからなんです。(発言する者あり)いや、そうなんですよ。問題は、修身教育を取り上げるのはそこなんです。だからよく間違いがある。  しかし、その総理もまた同じような批判を受けている。御存じですか。あなたはタイ国の学生と一月の十日お会いになった。そのとき、タイ国の学生約二十名、そのリーダーはソンバット君というNSCTの書記長です。これは外務省からいただいた資料の一番初めに一番で書いてあるのがソンバット君。このソンバット君が、あなたと会ったあとでどう言っているかというのをお調べになりましたか。これで見ますと、こう言っています。ソンバット書記長は田中総理とお会いになったあと「田中首相と話し合ってみて日本人は利己主義だということをつくづく感じた。日本とタイの貿易不均衡の改善を迫ると、田中首相は、戦後の日本が米国との関係改善に苦労した話を引き合いに出して、タイも自力で改善せよと言い、日本側に反省は全くない」ときびしく批判しております。さらにことばを継いで「日本が開発途上国の問題解決に真剣に取り組まなければ、タイ学生の抗議の対象は、日本人実業家だけでなく、日本人全体に拡大されることになる」と警告しております。修身教育を受けたあなたも、また同じように批判されている。だから、あなたが言ったことは正しくないんです。正しくないが、現地で言われたから、言われたとおり言ったんだ、どこが悪いかと、ここに問題があります。いまの教育はそういう人をなくする。田中総理がそう言われたら、向こうで言われたら、ほんとうにそうかどうかということを振り返ってごらんなさい。そうしたら、いまのような批判を直接受けている。その代表のソンバット君に受けている。これは修身教育のせいじゃない、現地の人がああ言ったけれども、それは違う、それはこうしなければならないいと判断して、そういうことを言うべきか言わざるべきかを判断する、そういう教育がいまの教育です。  今度の小野田さんのときもそうです。あのお母さんが漏らしたことばは、私は非常に貴重だと思う。どう言ったかと言うと、教育はおそろしいという一言です。ごらんになったでしょう、これは。なぜ教育がおそろしいか。もし小野田さんがああいう過去の教育を受けてなくて、いまの教育を受けておったらどうなっていたか。いまの教育は、どうも日本は負けたらしい、負けたということを聞くというときには、ただだれが言う、よその国に行ったら、だれが言ったとか、上官が言ったとかじゃなくて、自分でほんとうかうそか確かめる。自分のからだで、自分の目で、自分の耳で確かめる。これが教育です。そして、それによって正しい判断をする。なるほどそうだ、日本は負けていたんだという判断をする。そして、それによって、今度は自分がどうすべきか。これは、そうなれば、もうこういうことは意味がなくなった、そこでその呼びかけに応じて帰ってくる。そうすれば、あの人も三十年間苦労しないで済んだ。そうでしょう。国民もずいぶんいろいろな心配をしないで済んだ。そういう教育です、いまの教育は。上から押しつけて、教育勅語にあるからこうだ、よその人が言ったからこうだということじゃない。  だから、もしあなたがいまの教育を受けていたら、インドネシア、東南アジアを回ったときに、日本人は修身やらぬからこうだ、利己的だ、はたしてそうかどうかということを判断されて、いやそうじゃないということがすぐわかる。おわかりになるんです、いまのソンバット君に会ったことからでも。そうすると、自分は一体何をすべきか、そういう批判に対して何をしなければならないか、教育の面では何をすべきか。それはこの前の総括のときに申し上げました。  あなたのすることは、りっぱな文部大臣を選ぶこと、これなんです。即断で、教育のことに興奮していろいろなことを言われることは、かえって教育を混乱させます。このことを私は特に申し上げたい。これは日本の教育を憂え、日本の将来を憂えるために、特にこの教育勅語に対する御発言や、いまの御答弁もやはりボルテージが上がっていましたよ。あの東南アジアに行ったときもそうなんです。だから、教育の問題に関しては、もっと冷静に、そしてもっと将来を見詰めて、興奮しないでひとつ判断して、何をすべきかを正しくわきまえて発言や行動をしていただきたい。お願いでもあるし、要望です。
  191. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私が少し大きな声を出したというようなことであれば、それは体質的興奮ではなく、教育の重要性に対する反応を示したものだ、こう理解されたい。  あなた、この間から質問いただいておりますが、あなたは教育する立場にあった専門家です。しかし、専門家の言うこと、必ずしも正しくありませんよ。それは、教育というものに対しては、私は受けたほうです。私も教えたこともあります。私も学校を経営してもおりましたし、私も教壇に立ったこともあります。しかし私は、あなたのように人生の長さを考えると、教えられるほうが多かった。教育というものは、教える側のものだけではなく、あなたもいまいみじくも言われましたが、教えられる側、国民側の声もすなおに判断すべきだと思うのです。  そういう意味で、戦後の教育というものは定着してきておる。私は、足かけ三十年という歴史の重さは十分承知しております。それなりの評価はしております。しかし、教育というものも、一定の固定したものではない。時代の変遷に伴って、少なくとも正すべきものは正さなければいかぬし、見直すべきものは見直されなければいかぬ。とにかく、あなた方も私たちもそうですが、教育のメモランダムをもらったり、占領軍のあれだけの高圧的な態度のときには、ほんとうに、憲法に優先する占領軍命令というものの非情さに泣いたではありませんか。しかし、それが定着したから、今日のものが一番いいんだということにはならないと私は思う。ですから、絶えず、われわれの経験にも徴し、国際的な事情にも徴して、日本の教育はどうあるべきかということを議論することは一向差しつかえないと私は思うのです。私はそうでなければいかぬと思うのですよ。私も、何も思いつきで言っておるのではありませんよ。私も足かけ二十八年、二十九年代議士をやっておるのです。私は、教育問題は昭和二十一年の総選挙からちゃんと選挙演説の上でやっていますよ。ですから、いやしくも、文部大臣を任命すればそれで足りるのだ、私はそんなふうに考えておりません。内閣は、国民の声を背景にして、教育の正常化ということ、正すべきは正さなければならぬ責任を持つものである。そんな、おまえの言っておるのは思いつきである、そんなことはありませんよ。あなたも同じ時代の教育を受けた人でね、あなたのような、そんな人をきめつけるような人間に私はなっていませんがね。私はあなたのことはよく聞いていますしね。三十年間のあなた方のやっておる教育のいいところも悪いところも、私はすなおに代議士として見てきたのですよ。  ですから、私の言っておることが、全く日本の教育のためにマイナスであって、あなたの言っておることが正しい、それは独断だと思います。
  192. 湯山勇

    湯山委員 総理大臣、何も、私が言っておることが正しいというのではないのです。ただ、言われたことの内容には、いま言ったように、東南アジアの問題にしても、いまの勅語の問題にしても、もう少し慎重にやってもらいたいということを国民のために言っておるので、教育というものは、あなたと同じ道を通って、同じ教育を受ける人は一人もありません。大蔵大臣大蔵大臣で、やはり一回しか通ってない道しかないのです。文部大臣もそうだと思います。だから、それを一括して、どれがどうというようなことを言うつもりはないのです。ただ、総理大臣としては、あなたの発言は影響するところが大きいのです。だから、ひとつ慎重にやっていただきたい。そうしないと、修身を受けない者はみんな利己的で、やればそれがみな直るかのごとき誤解を与えるおそれがある。  そういう意味で、慎重にやってほしいということを申し上げておるわけですから、総理大臣もひとつすなおにそういう点は聞いていただきたいというととです。ただ、総理大臣教育のときには非常に大きな声を出されるから、ついこちらもきつい言い方をしたまでのことで、やはり冷静に御判断になって、それの与える影響をよくお考えいただいて、先ほどのように、教育の問題は重要だとお考えになればなるほど、そういうふうな態度で臨んでいただきたいということですから、これで終わります。
  193. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 湯山委員指摘のとおりでありまして、どうも総理の思想の中に、かつての誤った時代への復古調が見られてしょうがないのです。それが、先ほど読み上げた従軍メダルにしてもしかりでありますけれども、もう一つ、ちょっとそれとかかわり合いを持つ、つまり、かつての誤った時代への反省がないという問題と関連する具体的な問題を提起してみたいと思います。  ここに「ソ連の海洋戦略がわが国の防衛に及ぼす影響」一九七三年という論文があります。これはどういう種類の論文ですか、防衛庁の研究資料だと思いますけれども。そして、これはどういう取り扱いになっておるか、長官は御存じですか。
  194. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ちょっとあまり短過ぎて、もしその該当でなかったらお許し願いますが、たしか、伊藤という当時三佐でありますか、そういう者が防衛研修所におったときに作成した見解、自分の考え方というものの一部が配付された。しかしそれは、防衛庁としても、あるいはまた防衛島その他の審査を経て、公式に考え方として認められた後、配付されたものではありませんで、それは廃棄処分ということを命じてあります。
  195. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた方は、この種のものを出すと、すぐ、個人の研究資料とか廃棄処分にしたとかおっしゃるのですけれども、これは、いいですか、三等海佐ではない、一等海佐伊藤康夫。それで、まずこれの序言のところを見てみると、「本小論は、昭和四十七年度第四室共同調査研究項目と」て研究を命ぜられた「ソ連の海洋戦略がわが国の防衛に及ぼす影響」と同一内容のものである。」と書いてある。  一体だれがこういう研究を命じたんですか。
  196. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 事実関係につきまして、私からお答え申し上げます。  研修所においてはいろいろの研究をいたしておりますが、その中で、個人個人の研究と共同研究というものがございます。ただいま御指摘がございました問題は、研修所で、昭和四十六年でございましたか、全般的な国防問題を研究するために、各国の戦略について共同研究をするということで取り上げたものでございまして、各人がそれぞれ分担をいたしまして研究をいたしたわけであります。  しかしながら、ただいまの伊藤一佐が担当したものにつきましても、そのほかのものにつきましても、最終的にそれを審議をいたしまして、四宝のものとして結論づけたものではございません。
  197. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 聞かないことはまだ言わないでよろしい。だれが命じたのですかと聞いている。こういうテーマで研究せよと命ぜられた、だれがこういうテーマを与えて研究を命じたかと聞いておるんですよ。
  198. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 防衛研修所長でございます。
  199. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛研修所長が、「ソ連の海洋戦略がわが国の防衛に及ぼす影響」というテーマを与えて研究さしたわけですね。間違いないですね。
  200. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 先ほど申し上げましたように、各国の戦略についての研究の中でそういうものを取り上げたわけでございますが、もちろん、伊藤所員がそういうテーマで研究することは承知いたしております。
  201. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 こういうテーマで、じゃないんです。こういうテーマを与えたんですよ、防衛研修所長が。かってに個人研究をやっているんじゃないんです。そう書いてあるじゃないですか。だから、そうなのかどうなのか、はっきり言えばいいんですよ、要らぬことを言わないで。
  202. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 そのとおりでございます。
  203. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 初めからそのとおりとおっしゃればいいんです。何回も出たり入ったりしないで……。  これの一部が、防衛学会の「新防衛論集」に掲載されましたね。それはだれの許可を得て掲載されたんですか。
  204. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 前半の部分が、防衛研修所長の承認を得て掲載されました。
  205. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 廃棄の前ですか。あとですか。
  206. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 廃棄の前でございます。
  207. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官、防衛研修所長の許可を得て、防衛学会なるものが世の中に出しておる「新防衛論集」に載っておるのです。そういう問題についての長官のコントロールというのはないんですか。
  208. 山中貞則

    ○山中国務大臣 その問題は、私が就任してから起こったことではありませんが、研修所は、文字どおり防衛に関する各種の研究をいたします。しかし、それを防衛庁が責任の持てるようなテーマにまとめ上げ、もしくは刊行物とするには、手続を経て、きちんとした責任のあるものにしなければなりません。たまたまその論文は、個人の、先ほどは三佐と申しましたが、伊藤一佐でありましたが、書いたものの前半、これはたいした問題はないという判断をもって、当時の研修所長が許可したと聞きました。後半については、公にすることに問題があるということで、それもひっくるめて、後ほど廃棄処分にしたということであります。
  209. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理、国防会議の議長としても聞いておっていただきたいのですけれども、この考え方を一応世の中に問うておるわけですね。単にお蔵の中に入っているんじゃないのですね。「新防衛論集」の中にこれを出しているのです。しかもユニホームです。一等海佐です。  特に私は問題であると思うのは、この六七ページですけれども、「ソ連の海洋戦略に対応するための平時における防衛力の使命」その中にこういう項目があるのですよ。「わが国の国家海洋政策に防衛力が平時寄与すべき役割り」この中に四点あげて、まず、「日米安保体制の堅持と海上防衛力の充実」これの基礎になっているまたもう一つの資料は、「昭和四十六年度共同調査研究」題目は、「日米の軍事関係のあり方」それから二番目が、「わが国周辺海域における示威、不法行動等を抑制するとともに、わが国に対する奇襲攻撃を抑止する。」三番目に、「次の諸方策により東南アジア諸国との友好親善関係増進に寄与する。」私は、特にこの三番目を問題にしたい。友好親善関係にどのように防衛庁が、自衛隊が寄与するのか。つまり、これは現憲法下、平和時における防衛力の果たす使命とは何かという問題とからんでいるわけですね。  どういうことをあげておるかというと、まず、「東南アジア方面への艦艇による遠洋練習航海は現在数年に一度行なわれているが、この回数を増加し、年数同程度、少なくとも毎年一回実施して相互理解親善に寄与する。」これが一つです。二番目に、「同方面諸国からの自衛隊への留学、研修等を奨励し、支援する。また、これら諸国の艦艇のわが国への親善訪問を歓迎し、来訪時、特に各種の便宜を考慮する。」三番目、「同方面諸国へ派遣する防衛駐在官の拡充をはかる。」四番目、「武器輸出禁止三原則等との関連を慎重に検討する要はあるが、可能な範囲でこれらの輸出を行なう。」友好親善増進に自衛隊が果たす内容として、この四点をあげているのです。  こういう内容について、たとえば練習艦隊を数多く派遣するというこの姿が、東南アジアのほうからどう受けとめられるか。田中総理がせんだって回られたときの、あの一つの反響も考慮する必要がありますよ。これは非常に重大な政策へ自衛隊が介入している。これは研究の範囲じゃないと思うのですよ。こういうところまで自衛隊が一つの見解を示す。どうでしょうか、長官。
  210. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまお読みになったところは、たしか防衛研修所長が承認をして刊行物に載せることを認めた部分以外の、後半の部分だと思うのですね。これは明らかに国の政策、少なくとも防衛庁あるいは総理の判断を仰ぐべき政策、あるいはまた武器等の問題については、国策の定められた方針というもの等がありますから、そういう政策方面に制服の、かりに研修所の部員であっても、その立場において言及し論ずることは、刊行することは、行き過ぎである。したがって全文が、その問題は、防衛庁の見解として取り上げるに不穏当であるということになったわけであります。
  211. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただ、アドバルーンか何か知らぬけれども、ぽっと出して、そんなふうにこの種のことが絶えずあるわけですよね。これはまた後続があるわけですね。後続は、この次の機会にやります。  まだすごいのがあるのです。そして、こういう研究の場合は、いつもこういうことなんですか、長官。「国家段階における基本方針に触れることなく研究する。」と書いてあるのですね。こういうことを許しているのですか、大体研究の場合に。どうでしょうか。
  212. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、そのとおり心がけなければいけないと思うのです。純戦略的に戦術的に、いろいろの外国の軍備とかあるいは戦略体制とかいうものを、絶えず勉強する必要があります。  しかし、国策の基本に関係するような、先ほど私は政策と申しましたが、そういうものに制服の者が、研修所に身分がある時期であったとしても、そういうことに言及するのは、それは少なくとも行き過ぎである。そういうものは制服がきめるべきものではなく、国防会議、そして最終的に総理大臣の決裁を経たあと、国会が承認すべき国の方針でありますから、それらに立ち入って、わが国の政策としての言及をすることは問題がある。したがって、そのような処置がとられたということであります。
  213. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理に一言だけお伺いをしておきますが、この中の武器輸出禁止三原則の緩和と申しますか、それが提起されているわけですよ。これについてはどうおもわれますか。
  214. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 防衛庁の制服の一人が、諸外国の軍事情勢を研究するということは、これは命令が出れば当然研究しなければならない問題であります。しかし、その研究課題に含めて、制服として少なくとも制限を受けるような部面にまで言及をした論文を書いて、これを世に問うというようなことになると、これは防衛庁そのものの判断にゆだねらるべき問題であります。ですから、防衛庁長官はこれを廃棄処分にし、その後、防衛庁の制服としての論文として外部に公にすることは閉ざしたということで、一応処理ができているわけでございます。  その中に、政策の部面にわたる中に、いま御指摘の武器輸出の問題に触れているわけです。これは、その当事者がどう考えようと、政府の基本的な考えは全く変わっておりません。武器は輸出はしない、こういうことでございまして、これは間々今席から申し上げておるとおりでございます。これに対しての、いままで国会を通じて国民に約束をしておる政府の基本的姿勢は、いささかも変更ありません。
  215. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この問題について、もう一つ確認しておきたいと思うのです。わが国でなくて、外国と合弁の会社をつくって、外国で武器の製造に当たる、そういうことは、武器輸出禁止三原則に触れますか、触れませんか。
  216. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そういうものはないと思いますが、武器輸出禁止三原則のほかに、通産大臣が貿易管理令によって、三原則そのものではないけれども、もし武器の輸出に近いものである場合には、通産大臣の承認を要することになって、二重のチェックがなされております。いまのような場合は全く耳新しい、初のケースでありますから、私は、そういうようなことはないと思いますけれども、それはちょっと防衛庁の所管を離れておりますので、通産大臣……(楢崎委員「あなたがかってに答弁しに来ているので、私はあなたの答弁要求してない」と呼ぶ)まあしかし、あなたの質問は山中へと、こういうことに大体なっておりますから、そうつれなくしなさんな。
  217. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これはなかなか、ケース別に考えなければならない問題でありまして、いまの発言は、将来的に慎重に政府も考えなければならぬ問題だと思います。  これは、日本人が外国に個人として渡って、そしてそこで就職し、雇用されて、日本の技術や日本の労働力を提供して、対価を受けて、その会社が兵器をつくるということ、これはあり得ます。これは全然、政府がどうしようもない国民の基本的人権でございます。いまやアメリカへ行って、アメリカでもって爆撃機の設計をやったり、それから原子力の技術家として行動しておったり、宇宙開発をやっておったり、これは、まあそういう例があるわけですから、個人的な問題はどうにもならない問題であります。  それで、相手方との合弁の会社ということが、兵器を製造するという目的をもって設立をされるもの、しかし、これは現地法人であって、日本の法人でないということが問題になるわけです。これは、初めから兵器を製造目的とするもの、軍用飛行機とかそれから戦車とか、こういうものをつくるようなものがないとは言えないと思うのです。ただ、輸銀の資金を使うとか政府資金を使ってやるとかいう場合になると、国内と同じように制限を受けるということになりますから、これはなかなかそうはいきません。ただ、初めは自動車のタイヤをつくる工場だったものが、自動車をつくり、それが戦車になるというような場合はどうなるかとか、なかなかケース別にむずかしい問題を含んだ新しい提案だと思います。  ですから、いずれにしても政府の許可にかかわるもの、認可にかかわるもの、政府資金を使うものというようなものになれば、おのずから武器輸出禁止三原則、これはしないということでやはり整理がされる、このように理解していただいていいと思います。
  218. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、単なる架空的な設問としていま出しているのじゃない。必ずこれは将来問題になる。だから私は、やはり武器輸出禁止三原則を抜けるような形でその種のものが行なわれるということについては、厳重に規制をしてもらいたい、こう思います。  それで、次に外務大臣にお伺いしますが、日中航空協定の問題であります。  いま、御案内のとおり、北京で最終的な協定文案等の実務交渉が行なわれておると思うのです。もし成案を日中の間で得て代表が帰ってくれば、直ちに国会提出する予定でありますか。
  219. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日中航空協定交渉は、仕上がりを見るように希望し、努力をいたしておるところでございます。  これが仕上がりましたあと、どのような手順を踏んでまいりますか、これはまだきめておりませんけれども、私といたしましては、今国会に御審議をわずらわしたいものと希望いたしております。
  220. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 自民党総裁としての田中総理にお伺いするのですが、自民党の党議では、日中航空協定と日台民間取りきめの同時解決ということが党議になっているのですか。
  221. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日台航空というのは、現実の問題として継続をしておるわけでありますから、これは民間取りきめとして運航を確保するということであります。  日中航空協定は、政府間ベースにおける交渉によって妥結を見るわけでございまして、その結果を国会で批准を求めなければ発効しないというものでございます。これは、もう自民党が考えておることもわれ贈れが考えておることも、そんなに大きな差はないのです。これは、政府も自民党と一緒になって、政府・与党一体となってやっているわけでありますから、同時解決、もしくは日台路線のほうが早く片づくということになれば、もっと合理的であるというふうに考えています。
  222. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまちょっと、日台路線のほうが、民間取りきめが、先に解決する可能性のほうが強いのですか。
  223. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 可能性の問題じゃなく、日台の問題は民間協定として現に運航しているわけですから、これは現実の問題として存在するわけです。これが民間の協定として手続が経られれば、それはもうそれで現実的にはきまりがつくわけです。全くきまりがつくわけですから、これは、そんなにむずかしくない問題だと思わざるを得ません。
  224. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理がむずかしくない問題だと認識されているほどに、世の中はそう思っていないと思うのです。  では、具体的に、同時解決ということが党議になっておれば、その党議は、政府の日中航空協定のほうをどの程度拘束するのですか。
  225. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 外交や予算政府の権限ではございますが、議院内閣制であり、政党内閣制でございまして、党の了承を得ないで出すわけにはまいらないのです。ですから、これは調印が行なわれれば、国会に批准を求める案件は、党の了承を得るわけでございます。そうすると、党が了承をする場合には、党が考えておる基本的な問題が、具体的、現実的に処理されたと認められれば、協定は国会提出すべし、こういうことになります。これは皆さんの党も同じことだと思うのです。  そういうことでございまして、批准案件として国会に提案する場合には、自由民主党の政調及び総務会の議を経て、オーケーを得てから提案が行なわれる。そのときには、もう一つの状態が、自民党が望ましいと考えられる状態が現実に起これば、当然自動的に批准案件としてこの国会に提案されます、こういうことであります。
  226. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、何も与党の内部干渉をしようとは思わないのですよ。しかし、伝えられるところでは、なかなか議論百家争鳴のようであります。私が心配するのは、その結果として党議がきまらなければ、実務協定の交渉は成立した、成案はできた、ところが日台路線の、要するに民間取りきめがまとまらない限りは、実際問題として日中航空協定の国会提出なり批准がおくれる、こういうふうになることを心配している。   〔井原委員長代理退席、委員長着席〕 だから、もう少し突っ込んで言えば、どうしても党議がなかなかまとまらぬ。努力されてもなかなかまとまらない。それは時間の問題がありますよ。そうすると、一定の時期に、国際間の信義というものもありますから、いわゆる見切り発車と申しますか、ことばは変ですけれども、意味はおわかりだと思うのです。  大平外務大臣なり総理なり、どちらでもけっこうですけれども、ある決断を要する時期は、ひょっとしたら来るかもしれぬと思うのですね。そういう点については、どのような見解を持っておられましょうか。
  227. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そこらは、自由民主党というのは、長いこと政府与党というキャリアの上に立っておりまして、もっともっと困難な問題もあったわけです。われわれもある一時期、鳩山訪ソに反対しましてね、あったんですが、いろいろ歴史の中で、ちゃんと消化をしておるわけでございます。私はそれをちゃんと言ったんです。モスクワ訪問のときに、私も当時鳩山訪ソに賛成ではなかったですが、その私が十七年ぶりでモスクワを訪問し、日ソの平和友好条約の促進を、あなた方ととにかく話し合うということは一つの歴史です、こう答えてきておるわけでありまして、それは自由民主党と政府の間に、意見の相違というものが調整できないようなものではない、私はそう理解しております。日台路線というものは、現に運航しているわけです。運航しているわけでありまして、今度も政府間取りきめということではないわけです。現に日中の共同声明を行なった瞬間から、現実問題として運航が行なわれております。あとは、これはもうお互いが、いまの運航をどうして続行していくかという既得権の問題、そういう問題は、現実的にどうするかという問題であって、そんなに御心配いただくような問題ではないように、私は現に理解をしております。  いずれにしても、自民党がごたごたしまして、国会にお出しできないというようなことのないように、そのときは、総理大臣であるだけではなく、自由民主党の総裁としても、私はやはり公の責任ということを果たさなければならぬだろう、このように慎重に考えております。
  228. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの総理のおことばは、たいへんデリケートでありますけれども、やはり総裁として、あるいは総理として、一定の段階で決断を要するということを含めて答えられたような、られないような感じですけれども、そのように理解をしておきますが、それでよろしゅうございますね。
  229. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、現にいま、北京において日中間で交渉いたしておる重大な案件でございます。そういう意味で、私の、いまあなたの質問に答えて申し上げていることは、十分理解できることばだ、これは国際的に見ても、大体公の発言としては、ちゃんと理解いただけると思いますから、あなたもどうぞ理解してください。
  230. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次に、先に防衛庁関係をやってしまいたいのですが、福岡県の春日市と大野城市にまたがる百五十五万平方メートルの広大な土地が四十七年六月三十日に返されたわけですね。それで、地元としては、非常な希望を持ってこの平和計画をいろいろ考えている。これに対して、いま大蔵省の管理財産になっておると思うのですが、半分に近い土地を航空自衛隊西部方面隊の基地として、新しい部隊なりあるいは新施設をつくる計画があるやに聞いておりますが、どうでしょうか。
  231. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、完全に大蔵省のほうの所管に移っておりまして、私たちはいま十八万平米、自衛隊の行政財産二万平米、約二十万平米を使用して、ただいまおっしゃったような各種部隊がおります。私どもとしては一応、レーダー部隊でもあり、これはやはり存置したいと思っておりますが、いまおっしゃったような地元の御希望もいろいろあることですし、長年待望していらっしゃいますし、大蔵省がきめることですけれども、私どものほうが半分にも達するような面積を、さらに幅広くお願いしようとは思っておりませんが、ある程度はわれわれも使わしていただきたいと考えております。(楢崎委員「どのくらいですか」と呼ぶ)そうですね、半分とおっしゃったから、まあ三分の一ぐらいでもいただけるかなと思っているのですけれども、そこらは大蔵省の御判断です。
  232. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 とにかく、米軍が基地を返せば自衛隊がすぐ肩がわりをしてとっていく、だから、米軍基地の面積は減っても、それは国民への返還ではなしに自衛隊への返還だと、私はその点は何回も指摘したのですよ。またぞろ、こういうことを計画されるというのは、われわれとしては絶対承服できない、それをお伝えしておきます。  それから次に、例の懸案でございましたPXL、ASWとAEWの問題ですが、いま問題になっているのはPXLのほう、これは昨年調査団を出された。どういう機種が候補機として浮かんでおるのですか。その前に、国産か輸入かというのは、どういう関係になっておりますか。
  233. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、御承知のとおり、国産か輸入かを含めて、すべてその問題は国防会議にゆだねられておりますし、国防会議の専門家会議の委嘱を受けて、私たちが専門家の調査団を派遣したということであります。
  234. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その報告を受けられましたか。
  235. 山中貞則

    ○山中国務大臣 もちろん、国防会議提出いたします前に、私は責任大臣として、詳細な報告を受けました。
  236. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どういう機種が問題になっておりますか。
  237. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まだ問題になっているわけじゃないのですけれども、国産か輸入かという問題がまず一つあるわけですね。それから、もし輸入をするとすれば、どういうものが対象となるのか、これも限られておりまして、アメリカとフランスとイギリスしかない。現在就航しておるのは、アメリカのP3Cオライオン、それからもう一つ、ボーイング737をPXLに改良しようという計画があるようです。これはまだ計画です。しかし、念のために、一応計画段階でありましても調べております。それから、現在英空軍が洋上哨戒等に実際に使っておりますニムロッド、それから仏の対潜哨戒機であるアトランチック、こういうものの諸元、性能その他について調査をいたして、そのまま作為することなく、正確な判断を願うために国防会議の専門家会議提出をし、すでに第一回目の説明をいたしております。
  238. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これはかつて、四次防の先取りのときにも問題になった機種であります。われわれはこういう装備は必要ないという立場を持っておりますが、特に、新駐日米大使ホジソン氏はロッキードの副社長です。だから、どうもP3Cオライオンに持っていかれるのではないかというもっぱらのうわさですから、その辺は、十分われわれも監視したいと思うのです。  次に移りますが、通産大臣にお伺いしますけれども、一連の独禁法違反問題で、絶えず出てくる行政指導なるもの、行政指導価格決定をこの前出されましたね。それの算定要素と申しますか、原価と申しますか、それと、標準価格決定のときのそれとはどこが違うのですか。
  239. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 標準価格の場合は、国民生活安定緊急措置法でございましたか、そこにいろいろ要件が書かれておりまして、標準生産費等を中心にして算定するようになっていたと思います。行政指導の場合には、さらに幅の広い行政裁量の余地をもって、いろいろ内外の情勢を見きわめ、国民経済の前途等も見きわめて、行政的目的に合うように価格の指導をする、そういう点において、非常に裁量の余地が広いのではないかと思います。
  240. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうも、行政指導価格はきめられて、標準価格はきめにくいという理屈がわからないのです。これは高橋公取委員長も同じ見解だと思うのですよ、いままでの答弁からお伺いする限りは。  そこで、もう一つ聞いておきますが、今度の行政指導価格、これは緊急やむを得ないものという最後の了解点に達したのですか。どうなんですか。
  241. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは、総理と公取委員長ともお話しになりまして、標準価格に移行する条件が熟すれば、なるたけ標準価格に移行することが望ましいし、そういう方面に努力もする、そういう趣旨の話し合いが行なわれて了承された、そういうふうに承っております。−〇楢崎委員 通産大臣の御答弁を承っておると、公取委員長のほうは、緊急性と申しますか、それを中心に述べられたような感じがするのですが、通産大臣のほうは、それにプラスして、標準価格移行への困難性あるいは妥当性をいままでの答弁ではつけ加えられておる。そうすると、なかなかできにくいということになる。もし、言われておるとおり、標準価格へ移行することが前提で妥協が成立したとすれば、いつまでも標準価格に移行しない場合は、公取委員長、どういうことになるのでしょうか。
  242. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私どもは、おわかりのように、もともとこれは標準価格をきめるのが本筋であるという見解でございまして、緊急やむを得ない一種の、これはことばは刑法上のことばでありますから適当じゃありませんが、緊急避難的な場合にだけ了承できる、そういうことでございまして、総理との話の場においても、その原則は認めていただいたものと了解します。   したがいまして、いつまでたっても—— いろいろな理由はございましょう。ございましょうが、たとえば為替レートがどうこうというふうなこと  になりますと、為替レートが固定化するということは、ちょっといまのところ望めませんから、こういう情勢でございますので、その点は問題にならないと思うのです。そうしますと、あとは、原油の価格がまだ非常に流動的で見通しが立ちにくい。そこで、一たんきめた標準価格は、なかなか動かしがたいからという理由でやられるとしますと、行政指導価格は長くやってもいい、標準価格は何とか固定しなければならぬ、こういうふうなことになると、何かよくわからない。  ですから、暫定的なものであるかどうか、そういうことが、私どもがはっきり了承できればいいですが、そうでなければ、これは、そう言ってはなんですが、同じ政府部内でございますから、私は、これは通産大臣に向かっても、あるいは総理一大臣に向かっても、約束が違うじゃないか、至急一に標準価格に移しても一向に差しつかえないじゃ一ないか、こういうことを強く要請しなければならぬと考えております。
  243. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その点は明確になりました。  そこで、もう一つわからない点があるのです。これは公取委員長も指摘されたのですが、かつて、これは田中総理総理になられる前の一年間通産大臣をされている。このときに主として起こった問題ですけれども、勧告操短ですね。勧告操短は独禁法上好ましくないということで勧告を受けたこともあるし、通産大臣にそういう申し入れをされたことがありますね。この点は、通産省はどのように受けとめておられるのですか。
  244. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 たしかこれは、当時の渡邊公取委員長と佐橋通産事務次官の間に口頭の話し合いがありまして、渡邊公取委員長のことばとして、無制限に行なわれるものではない、何か、ある一定の制限的に行なわれ得るものであるというような意味の、口頭了解があったということを聞いております。
  245. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、この点もわからないのですよ。だから勧告操短しないようになったでしょう、通産省は。勧告操短はいけなくて、行政指導という名の勧告価格はいいんだという理屈も、これはどうしても私どもにはわからないのです。だから、先ほどの公取委員長の考え方をわれわれは支持したいと思うのです。  そこで、私がかつて、二月二十六日の物価集中審議で問題にしました、例の四十六年のやみ価格カルテルの審決が昨日出たようであります。  この中で、行政指導という点については、事実関係だけを中心にされた。したがって、直接これには触れられていない。しかし、若干触れて、この行政指導は、法的な権限に基づくものではない、単なるガイドラインであり、やみカルテルの違法性がなくなるものではないという見解が入っておるわけですね。それで、このことは、いわゆる通産省の価格行政指導の法的根拠を、内閣法制局長官も通産省設置法に求められ、そういう見解を出された。しかし、きのうの審決の考え方は、やはり価格の行政指導ができるなんというものは、あの通産省設置法からは出てこないということを、これは私ははっきりきのうの審決は示していると思うのです。その点はどうでしょうか。
  246. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど御指摘になりました石油連盟に対する審決でございますが、そこの第三、「被審人の主張に対する判断」の中の一、「通商産業省の行政指導について」一で、「被審人の主張」が書いてございまして、二で、「当委員会の判断」とございます。そこでは、「通商産業省の前記行政指導は、何ら法律上の強制権限に基づいて行なわれたものでなく、被審人及び会員元売業者に対し、単に原油の値上りに対応して石油製品の販売−価格を引き上げる場合のガイドラインを示したものにすぎないから、これによって、本件決定に基づく違法状態が消滅するものではない。」といっております。これは、もちろん公取の委員長から説明をお聞きいただいたほうがいいと思いますけれども、これは通商産業省の行政指導というものがありまして、それで被審人と会員元売り業者がそれによりましていろいろ会合をして、意思の合致を見て、そこでカルテルができたわけでございます。その場合に行政指導が、そのカルテル、取引制限というものの違法性を阻却するものではないということをいっております。  私が先般の委員会で申し上げましたのは、通商産業省が行政指導をすること自体が独禁法の問題ではなくて、行政指導をやった、その行政指導だけで、それぞれの個々の業者がそれに従って一定の価格を守るということであれば独禁法の問題ではない、行政指導があって、その上に事業者が相互にいろいろ話をして、意思の疎通を見た上で共同行為に入れば、独禁法の問題になるということでございまして、ここではもうすでに、意思の疎通なり意思の合致なりがあったということは前のほうに書いてございまして、そういう場合に、行政指導があったからといって、違法性が阻却されるものではないというのが公取の真意であろうと思います。
  247. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、そんなととを聞いているのじゃないのです。  じゃ、端的にお伺いしますが、その価格の行政指導が通産省設置法でできるのですか。公取委員長の見解はどうですか。
  248. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 通産省設置法には、価格については何も触れておりません。したがいまして、絶対にできないとかいうふうな解釈は成り立たない。私は絶対にできないということは申しませんが、しかし、価格をきめることはできない、これははっきりしております。価格をきめるという権限はない。それは、価格をきめるのは法律を必要とすると思います。そうでなければ、かりにやみカルテルが行なわれまして高値に設定された、行政指導で介入する、それがもしも行政指導で価格がきめられるのでしたら、一割下げた、非常に大幅に上げておいてやみカルテルを下げた、はい、やみカルテルは消えました、こういうことになりますから、そういうことはとうてい許されないのでして、要するに、指導はあくまで指導の範囲であり、それがやみカルテルにつながる場合が多いから、適当でないということを私は申し上げておる。
  249. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、通産省の行政指導なるものが、実際問題としてやみカルテルを誘発あるいは誘導しておるといういままでの事実は、お認めになりますか。
  250. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その辺の事実関係については、たいへんデリケートな問題でありますので、たとえば四十六年の事件について、これは業者側が言っておりますが、途中で行政指導という介入があった、だからカルテルは消滅したのだ、こう言っております。それに籍口して違法性を阻却しようとしておりますけれども、それは認められない。それからそのほかにも、これは勧告というふうな形で、以前のことでございますが、何か誘導的なことが行なわれたという話は聞いておりますけれども、私自身は、事実そのものを認定するに至っておりません。  今度の四十六年の審判につきましても、事実審理は昨年終わっておりまして、それからの取りまとめに時間がかかったということでございますので、こうであるというふうに申し上げるのは、いかにも事実がないのに、証拠をつかまえてないで言うということは無理だ、差し控えなければならぬと私は思いますけれども、しかし、非常にまぎらわしいケースが多いのだということは聞いております。
  251. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 やみカルテルを誘導する、あるいは誘発すると申しますか、そういう媒体になっていることは事実ですよ。いままでの各種のあれを見たって、行政指導がからんでいる場合は。その証拠に、行政指導があったからこうやったのだと言っているのですよ。ところが、行政指導によってやみカルテルをやったといっても、公取としてはその違法性は免れないという見解だけの話であって、事実としては、業者のほうもそう言っておるのだ。つまり、違法性を免れないやみ価格協定を誘導しておることには、まさに間違いないじゃないですか。まさにそうでしょう。
  252. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 もう簡単にお答えしますが、確かに数量の問題とかあるいは価格の問題について、通産省が業者の間に相当程度介入している例は、事実あったように思われます。しかし私は、それはこの場で断言するということはちょっと……。事実、私が手を下して調べたものじゃありませんから、そういうことを耳にする、いわゆる報告もある程度、それに参考人などはそういうことを申し立てておるわけですね。参考人というのは、石油連盟のメンバーです。この場合は石連が被審人でありますから、そのメンバーがそういうことを申し述べている。あるいは会長に対して口頭で指示があった、指示があったと言いますか、たとえば八百六十円にせよ、こういう指示があって、それを会長が全員に伝えた、こうなっておりますね。その場合だけでも、これは独立してカルテルが成立するのじゃないかと私は思いますが、これは前のカルテルが消えてないという感じで、私どもはこの間の審決を下しているわけでございます。
  253. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今度のいわゆる告発事件の、販売数量カルテルじゃなしに、価格カルテルのほうには通産省の行政指導はなかった、販売数量カルテルのほうの場合はあったということを、二十六日密田会長は私に答弁した。そして、元売りの関係も、価格カルテルについては行政指導はなかったということを言いました。  ところが、つい一両日前に有力新聞の報道するところによると、この価格決定に営業委員会の裏の委員会、専門委員会のまたその裏の委員会、あるいはスタディーグループというのですか、そういうところが絶えず通産省に連絡して、お伺いを立てておったという事実が明白になってきておる。しかし、これはいま司直の手によって調べられておるから、それを待たなけばれいけませんけれども、このことだけははっきりしておきたい。  この告発事件の価格やみカルテルに通産省が介入しておった、もしそういうことになれば、この前の二十六日のあの参考人は全部うそを言ったことになる。まずそれが一つ。  それから、私は、そういうことになったら通産大臣は責任とりますねと、かつてここで念を押したことがあります。もし司直の手によって、通産省のその種の行政指導というものが介入しておった事実が明らかになったら、その段階において、私は約束どおり通産大臣の責任を明確にしてもらう。これだけは私ははっきりここで申し上げておきたいと思うのです。  もう一つ、私は総理に注意をしてもらいたいことがある。二、三年前と、ぼかしておきましょう。名前を言いませんが、通産省の政務次官が、赤坂、銀座、柳橋等を、石連のツケによるタクシーを乗り回しておった事実がある。これはお調べになればわかるから、それだけ申し上げておく。つまり政官財の、官財どころか、政もからんでおる。この癒着がこの石油問題にあったということは、私は重大な事実だと思うのですよ。これは、いずれ告発事件の内容の段階で、あるいは明白になるかもしれない。告発事件になってますから、私はそこまででとめておきます。注意を喚起しておきたい。  それから、今度は問題の勧告審決に対して異議申し立て、つまり取り消しの訴訟が起こったのです。私はこれを聞いてびっくりした。いまのところ、新聞の報道では五社、シェル、太陽、出光興産、昭石、共石が勧告審決に対して取り消し提訴を行なった。  それで、まず公取委員長にお伺いしますが、この勧告審決というのは、今度の場合、審判に渡さずに、公取委員会で、この勧告の内容をほとんどそのまま審決とした。間違いありませんね。
  254. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 勧告において示しましたのと、全く同じものでございます。
  255. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 審判手続を省き得る場合は、相手側が勧告を応諾した場合だけですか。
  256. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 最初から審判手続を省き得るのは、勧告審決の場合だけでございます。  それから、ついでに申しますが、途中で省くことができるのは、同意審決がございます。
  257. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 したがって、手続的にも違うのですね。勧告審決と審判審決と申しますか、本審決と申しますか、手続的にも違う。しかも、勧告と勧告審決と同じ内容である。そして、同じ内容である勧告のほうは応諾して、同じ内容の審決のほうは異議を申し立てるというのは、私どもの常識では通らない。これはどういうことなんでしょうか。
  258. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私たちの常識でもわかりません。何とも言いようがありません。
  259. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理の常識ではどうでしょうか。
  260. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 もう一回やってください。あなたのは早くてわからない。
  261. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理よりもおそいです、私のものの言い方は。  いままで公取の見解と総理の見解は、しばしば対立というか、違うというか、問題があったから……。いまの問題について、こんなことあり得るはずがないのです。勧告と勧告審決の内容は同じなんです。そして勧告のほうは応諾しておって、同じ内容の勧告審決にけしからぬと言って異議を申し立てて提訴に持っていくというような行為は、私どもとしては常識では考えられない。公取委委員長もそうおっしゃっておる。総理、どうですかと聞いている。
  262. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 行政権と、行政の中にあっても、私的独占禁止法の番人といわれている公取委員長との、法解釈の違いはあると思うのです。これはあってもいいのです。公取は、私的独占禁止という意味で述べているのですから。私のほうは行政権を委託されておる、法律解釈を行なって行政権を現に行なっておるのですから、その立場で、このような根拠法に基づいて行政権は行使されております、その行政権の範囲はかくかくでありますということを述べるのは、当然なことであります。  いまの第二の問題は、これは妥当性があるかないかという問題に対して、にわかに行政府の長が意見を述べられる問題ではない。法律的に国民に与えられている権利の行使であるということに対して、みだりに批判はすべきではない。
  263. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しかし、立法府としては、われわれの責任において、ある解釈を権威をもって示す必要がある、独禁法の解釈ですから。したがって、こんなおかしなことがあるはずはないのですから、独禁法の七十五条による審決の取り消し訴訟というものは、あの審決には、本審決とか同意審決とか勧告審決とは書いてないけれども、七十七条の審決は、いわゆる本審決と解釈せざるを得ないというのが常識じゃありませんか。なぜならば、文句があれば、勧告を応諾しないで、審判に持ち込む道は開けておるのです。
  264. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 法律の解釈は、これは裁判所が行なうわけです。裁判所にいろいろな案件が持ち込まれます。われわれもいろいろな問題でもって、国会で除名をやったとか、そういう問題に対して、一体憲法違反でないかというものも持ち込んだこともございますが、それは国会でおきめになることでございますということで、裁判所はこれを却下しておるという問題もございますし、法律の解釈上、審決と、いわゆる国民に与えられた裁判を受ける権能、最終審の判断をまつという権能がどう調和さるべきかということは、それを受け付けた裁判所が判定を行なうものであって、われわれが、こういう問題に対して事前にこれを述べるというわけにはまいらないことは、申すまでもないことでございます。  国会で行なわれることは、法条文に対して議論が存在するという場合には、これを改正して明確にするという権能は国会にございます。しかし、それは改正以前の案件に対して遡及されないということもまた事実でございますので、三権の権能にはおのずから限界があるということでございます。
  265. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いま総理のおっしゃられたことは、その点はまことにもっともだと思うのです。いま立法府で、そういう現在の法律に対する解釈ですね、これはやはりその限度があるわけでして、私どもにも限度がある。ですから、上級審、東京高裁にいっていますから。東京高裁にせっかく訴状を出された。五社が出された。あとの一社もあるいは出すかもしれません。これは東京高裁でそれを判示する。これは一つの判例にもなるわけですから、私は、一つの判例としてそれをつくっていただくならば、いい機会ではないかと思います。  しかしながら、おかしいことはおかしいので、私ども公正取引委員会の解釈は、審決をくつがえすに足る、勧告から審決に至るまでの間においてよほど重大な錯誤ですね、まるで審決そのものが違っていたとか、そのほか、受諾するについてたいへんな錯誤や、あるいは重大な、避くべからざる脅迫を受けたとか、何かそんなようなことでもあれば別ですが、そうでなければ、これはちょっと不当——不当といいますか、あまり妥当性を持っていないのじゃないかという感じを申し上げているわけです。
  266. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それで、いま告発中ですから、私もある程度限度があるのは知っています。しかし、非常に疑問だらけ、おかしいですよ、この元売り十二社の一部は。そうして、おかしい点、もう二つばかり言っておきましょうか。  その七十七条によって提訴している。八十条と八十一条を見ますと、裁判所が公取の証拠をいろいろ判断することになっている。そうすると、告発事件を取り扱う裁判所も東京高裁、今度のものも東京高裁、裁判所の判断の材料になるものも同じ材料なんですね。だからこれは、その提訴をどう取り扱うかはまかせますけれども、われわれとしてはたいへんおかしいと思うのです、同じことなんだから。おそらく却下されるんじゃないでしょうか。これは非常におかしいですよ。  もう一つ、この価格カルテルの場合、告発されているのは、元売り十二社の共同行為なんですよ。それに、そのうちの五つは異議を申し立てて、あとのところは、おそれ入りました、そのとおりです。共同行為そのものを問題にしているのに、こういうことは大体あり得るのですか。これもたいへんおかしいのです。おかしい点だけ言っておきますよ。  そこで、公取委員長にお伺いしておきますが、公取委員長は、この取り消し訴訟に対して、何か対抗手段を考えておられるか。たとえば九十条の三号ですか、あるいは九十七条等を含めて考えておられるか。
  267. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 公正取引委員会としては、特に対抗手段は考えておりません。東京高裁からどうせ案件が参りますから、それによって、東京高裁の判断をまつということでございます。
  268. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこでもう一つ、これは通産大臣にお伺いしておきますけれども、出光の取り消し理由、つまり応諾の錯誤の背景に、こういうことが書かれておるそうですね。その筋、つまり通産省でしょうが、その筋の圧力によって、つまりその圧力とは、これを応諾しなければ値上げはしないぞという交換条件なんですね、それによって応諾を強要されたという意味にとれる文言が入っているのです。この真相はどうなんですか、通産大臣。
  269. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は、そういう事実を知っておりません。
  270. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  出光のその文書につきましては、私、内容を承知いたしておりません。しかしながら、いま先生がおっしゃいました、何らかの交換条件を出したのではないか、こういう御指摘でございますが、そういう事実もございません。その事実は、私は承知をいたしておりません。
  271. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が言っているのじゃないのですよ。出光の提訴の理由の中で、応諾の錯誤の背景としてこういうことがあったということを出光興産は言っておるが、全然関係がないといういまのおことばですね。——いいですよ、時間がないから。これもやがて明らかになるでしょう。しかし、そういうことを言っておると、事と次第によっては重大な責任を負わなければならぬようになる。それだけ指摘しておきます。  それで、この点については、田中委員から閣連があるそうですから……。
  272. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 田中武夫君から関連質疑の申し出があります。楢崎君の持ち時間の範囲においてこれを許します。田中武夫君。
  273. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの問題についてもしたかったのですが、時間の関係がありますから、この件について、ということは、いわゆるカルテルと審決及び裁判所への上訴の問題、これはやめます。  一つだけ、これは石油に関連しますから、ここで通産大臣あるいは環境庁長官をも含めてお伺いいたしますが、通産大臣、清水の公害をなくする会というところから、三月十五日に、中曽根大臣あての申し入れ書というのは、御存じでしょうか。
  274. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 記憶にございません。
  275. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、だれかがかわって受け取って、そのままじゃないかと思うのですが、その内容は、私がいままで二回、三回にわたってこの席で指摘いたしました、いわゆる石油審議会の答申と石油業法第七条による許可ですね、これが混同せらておることに基づくものであります。  その一つは、まず、私が先日この委員会において指摘いたしました、東亜燃料清水工場の新工場建設に伴う問題です。そこで東燃は、政府の設備増設の許可を得たということをパンフレットで回しておるわけなんです。ところが、静岡県との間に食い違いがあるわけなんです。これも指摘をいたしましたが、いままで、石油審議会の答申があれば、即、許可だというような行政指導に問題を発しておるわけであります。答申を凍結する、したがって七条によるところの許可を与えない、こういう答弁を、あなたなされたのですが、その後、行政的に何ら手を打っていないから、こういう混同が起こったのではないかと思うわけなんです。その点が一点。  もう一つは、新しい清水工場に公害を出さないように、あるいは爆発に対しての安全対策が、自治体及び住民によって確認せられるよう、こういうことを条件とするということを申し入れておるわけなんです。この安全対策及び公害の点、さらに石油審議会の答申と、いわゆる通産省の大臣の業法七条による認可は別であるということを、ひとつもっと徹底するように、答申にあたって割り当てをすでに認可したごとく、許可したごとく受け取れるような文書は全部凍結するとおっしゃったのですから、そのことを、その会社並びに関係の県及び市、住民代表等にわかるようにしてもらわなくちゃ困る。そこに混同があるわけなんですが、まあ時間の関係もございますから、いろいろありますけれども、こういう申し入れ書なんです。そういう根本は、いま申しましたように、石油審議会の答申と業法の七条の許可ということが混同せられておるし、また、混同せられるようないままでの行政に端を発しておると思います。  したがって、ここで先日あなたが御答弁せられたように凍結する、したがって、すでに許可を与えたような印象を与えておることについては、全部これを取り消すような措置を当然やっておられると思うのですが、やっておられない。さらに会社に対しては、通産省から許可を得たという意味のパンフレットを出しておるが、これは回収するようにしてもらいたい。  以上であります。
  276. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 凍結したということについては、当該企業にそのことを通知しまして、そしてその清水の東燃の場合には、パンフレットに、許可を得て工事を実施するかのごとき印象の文章があったので注意をしまして、会社は非常に恐縮をして、それは回収いたします、間違いであります、そういう回答がありました。  それから第二に、いままで石油審議会の答申がありますと、割り当てが答申として出てきて、大体それがそのとおりいままで許可されてきた、そういうわけですから、業界の者や地元の者もそのまま許可されるものと感じてきたらしい。しかし、その場合といえども、工事着工については一々また認可をしたわけであります。二重の手続がやはり要ったわけです。しかし、今回は、国会でいろいろ御論議もありましたし、その手続はもう判然と分けて、そして凍結をする、そして各企業について着工するときにあらためてまた認可をする、そういうことをはっきりさせてあります。これは、いままでがそういう点がわりあいにルーズであったということを反省して、改めておるわけでございます。  それから、パンフレットの件につきましては、呼び出しまして注意を与えまして、非常に向こうも遺憾の意を表して、善処するということでございます。
  277. 田中武夫

    田中(武)委員 一点だけ希望いたしておきます。  いままで混同せられておった云々ということが間違いなんですね。法律どおりやっていなかったからこういうことになるのです。石油業法をほんとうに通産省が守るならば、立法府から与えられた権限の名において行政を行なうべきである。いまのカルテルないし価格協定の問題も、結局は法を越えての行政指導とか、そこに問題があると私は思う。したがって、通産省の設置法云々でも、法律に定めるということが前提になっておるのですよ。法律による権限なくしてやれないのです。これははっきりしてもらわなければいけない。いままでも私、何回も申しましたが、この石油審議会の答申と七条の許可ということも、これははっきりと法律によってきめられておるわけなんですね。そこに誤りがあるのですから、大いに反省していただきたいことを申し上げておきます。
  278. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それで私は、勧告審決に対する取り消し訴訟を見たときに、とにかく、これはもう煮ても焼いても食えないですね。あいた口がふさがらない。これほど独禁法を軽視し、法をおそれざる行為はないですよ。まさに諸悪の根源たるにふさわしい行為だ。これは、われわれとしても行くえをながめたいと思います。  最近、畜産政策を含めて問題がいろいろ起こっているわけですが、農業基本法を見直す用意があるのかどうか、その点をまずお伺いします。
  279. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 世の中が変わってまいるに従って、持っております法律等も、常に研究をしてまいらなければならぬとは思いますが、現状の段階におきましては、農業基本法というものは、われわれの志向いたしております方向と同じ考え方を持っておりますので、研究は続けておりますが、ただいま、これを改正しようという意思はございません。
  280. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 湯山君から関連質疑の申し出があります。楢崎君の持ち時間範囲内においてこれを許します。湯山勇君。
  281. 湯山勇

    湯山委員 時間が非常に短うございますから、要点だけ簡単にお尋ねいたしたいと思います。  まず第一は、いままさに来年度の畜産物の価格がきめられようとしておりまして、これについていろいろ要請がなされております。特にその中で、昨日は北海道が七百トンの牛乳が放棄された。これは、学校給食用に直せば三百四十万本です。金額にして約三千四百万円。なお北海道の酪農農家では、伝えられるところでは、わかっているだけで三名の人が蒸発している、こういうこともいわれておりますし、あるいは、これもいま上京しておる人たちの情報では、養豚農家が全国で、わかっているだけで四名自殺しているということも伝えられております。なおまた福山市では、先般、一月十日から学校給食の値上げ五円十六銭、これをきめたので、それはとてもできないということで、福山市の学校では不払いという現象も起こっている。それから農林大臣が、日本の養鶏をやる技術は世界一だと言われたが、あの苦しい中で経営改善をやってきて、卵価の値上がりはしないで今日まできておったというのは、つい先般までのことで、いまやその養鶏も、まさに崩壊の手前まできている。牛も同様であって、先般のえさの値上がりを、牛肉の値上がりで吸収するような指導をしておりましたから、結局、牛肉の値段が上がって消費が減退して、いま、愛媛県ですけれども、生体で出荷を控えている牛が約千頭あります。しかし、その牛の値下がりのために、昨年に比べて十万ないし十五万、一頭について値下がり、子牛の値段は一向に下がらない、そういうことで、愛媛県だけで一千頭の牛がたださえを食いつぶしている。これは、やはり全国的では万を数える。もっとあるかと思いますが、そういう状態になっている。  こういうことは、農林大臣は大体情報として御把握になっておられると思いますが、いかがですか。
  282. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説のように、ただいま審議会におきまして、今年度きめまする乳価それから豚価について答申を得ておるわけであります。それに基づきまして、私どもといたしましては、適正な価格を編み出すために努力をいたしております。  最後にお話のありました牛肉でありますけれども、これは御存じのように、消費者のほうでは、一ころ非常に高い、高いと騒がれました。そういうこともありますので、九万トンの輸入の計画をいたしましたが、やはり生産者のことも考えてみまして、最終的には四万トンをリザーブからはずしましたことは御存じのとおりでありまして、現状におきましては、ちょうどいいところを上下いたしておりますことは御存じのとおりであります。
  283. 湯山勇

    湯山委員 そこで、こういう事実から見まして、養鶏、養豚あるいは酪農、すべて畜産というものは非常な危機におちいっている。それがいまの農民の行動であり、それから、牛乳を捨てるなんということはなかなかできないことですけれども、それさえもあえてやって、ひとつ納得のいく価格をきめてほしいという訴えをいたしております。  私は先般、一体日本の食糧自給をどうするかということで検討しましたが、一番むずかしいのはやはり酪農なんです。ここで非常に苦労しましたが、いまもし、こういう状態で日本の畜産というものが崩壊するというようなことがあれば、それはまさに日本の農業の崩壊につながってくる非常に重要な段階であるというように思います。その原因がどこにあったかといえば、これはやはり大きなえさの値上がり、一年前に三万八千円程度であったものが、四回も上がって三万円も上がっている。とにかく倍に近くなったえさの値上がりが原因であって、その値上がりの原因についてはいろいろ述べておられますけれども、農林省のほうで言っておられるのは、これは原料の国際価格が上がったんだ、それから石油の値上がりで海上運賃が上がった、それから円為替の相場が下がって実質値上がりを強めた、国内の物価が上がって、輸送やあるいは包装資材が上がった、こういうことをあげておられます。  問題は、そういうことのしわ寄せを、一体酪農民だけがかぶっていいものかどうか。それによって、酪農が壊滅して日本農業が壊滅する、こういうことになっていいかどうか。その責任は一体どこにあるかということが問題であると思います。特に、酪農をやっておる人というのは、政府の方針に従って、いま農林大臣は、基本法は変える意思はないと言いますけれども、とにかく政府の方針に従って酪農を進めていった。決してこの労働というのは容易なものではありません、休みがとれない生きものですから。それだけじゃなくて、農林省で御発表になっているのを見ましても、周囲から苦情が出た、その苦情の件数は、四十八年で一万一千六百件、これだけ周囲からも言われながら、みずから取り組んできた。こういうことを考えてみますと、私は、この際この酪農を守っていくというのは、これは大きく政府責任であるというように思います。  そういう理解を、農林大臣はもちろんですけれども、総理大臣大蔵大臣もお持ちだと思いますが、総理大蔵大臣から簡単にひとつ、そういう理解をお持ちかどうか承りたいと思います。
  284. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 飼料の値上がりの原因につきましては、ただいまお話のございましたとおりでございまして、私どもはそこで、この飼料価格がこういう高いものを使って生産しておる酪農、畜産等につきましては、それ相当の条件を価格においては組み入れるということは当然なことだと思いますが、幸いにして、御存じのように、振興事業団の答申にもそういうことを指摘いたしておりますので、政府部内でそういうことを十分検討いたしまして決定するつもりでありますし、なおさらに酪農は、御存じのように、ほかのものよりもさらに力を入れて、五十七年の見通しでは、やはり国内における生産を九〇%まで引き上げようというわけでございますので、いままで苦しんでまいりました酪農諸君とともに、さらにこの酪農の振興のためには、一時的な融資をやるとか、もろもろの施策を講じまして、酪農の維持拡大には最大の努力をしてまいりたい、こう思っております。
  285. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本人の食生活の向上と嗜好の変化によって、酪農製品とか肉類とかというもめは、ますます需要が大きくなっていくわけでございます。その過程における現象として今日があるわけでございますが、いままでは、この食年活の質的な改善ということや国民の嗜好の方向というものを見定めながら、国民には、消費者には安い良質なものを提供しなければならない、また生産者には、生産を十分償えるような安定的な状態を確保しなければならないということで、やっとうまくなってきたわけであります。  問題としては、ブロイラー液卵がとにかく需要をオーバーするようになったということでありますから、あとは、海外からの輸入によって、生産者に打撃を与えないように、そして弾力的な行政を行なっていくことによって、消費大衆には良質低廉な安定的なものを供給するというめどがおおむねつきかけるというときになって、石油問題と同じように、飼料の暴騰ということになったわけであります。  そこで、消費大衆の利益も守り生産者の状態も確保して、まずこの急場をしのがなければならないというためには、結局、政府国民の税金というものを使って、三者でやらなければならぬだろうということで、去年は七十万トンも米を出した。これもみな国民の税金であります。そういうことをしまして調整を行なっておるのですが、しかし、三者でどれだけ負担をするかということは、その事態その事態の問題としてお互いが理解できるような状態で目的を達成することに調和点を見出さなければならないということで、政府も生産者の安定度というものに対しては、現状だけではなく、長期的にも、自給自足度を上げられるようにするためにはどうするかということで、対応する現実的な施策と長期的な施策を兼ねて、いま考えておるということでございまして、何でもかんでも全部食管のように、すべてを買い上げるということもなかなかむずかしい問題でございますが、いま、そうでなくともたいへんだというときに、牛乳でも何百トンも捨てるというようなことが、手段としてもそういうことが起こらないように政府が対応しなければいかぬ。  いま、審議会から答申を受けて、ねじりはち巻きでやっているわけですから、そう一日、二日のことを言わぬで、雪の中にみなあけるというようなことをしないで、お互い三者がどうして調和点を得るかということに対して、こうして政府国会も、与野党を問わず非常に積極的なんですから、そういうことを国会もやはり理解していただきたい。もう真にそう思います。
  286. 湯山勇

    湯山委員 時間がありませんから、あと一括してお尋ねいたします。  一つは、倉石農林大臣はさすがに担当大臣ですから、この際物価の問題もあるけれども、しかしこの問題は重要だ、農産物価格については、大蔵大臣や企画庁長官とも話し合って、新たな方向を打ち出したいということを記者会見で言っておられまして、それはそのとおりだと思います。  ただ問題は、いま倉石農林大臣も総理もおっしゃったように、ここまで来ますと、単に担当の農林大臣だけの問題ではなくて、やはり政府全体の問題であるというようなことで取り組まなければ、これはたいへんだと思います。それにつきましては、自民党の中にも、そういう閣僚会議を設けたらどうかという意見があることを存じております。しかし、そうしなくても、政府にはそういう機関があるのです。  それは、昭和四十四年の六月十七日に農政推進の閣僚会議、これが設けられておりますが、四十四年に一回と四十五年に一回、二回開いただけで、今日まで何もやっていない。だから、閣僚会議を設けたからといって解決するのではなくて、これを生かさなければなりません。幸い農林大臣もそういう構想だし、総理もいま、政府全体で取り組むということにはうなずいておられましたから、そういことで、決定まで早急にこれを招集しまして、政府の姿勢でこれと取り組んでいただきたい、取り組むべきだということを、私は一つ申し上げておきたいと思います。  第二点は、やはり答申を得てということで、これは担当大臣としてはそうだと思います。しかし、いま求めておる答申の方式、それらのものは必ずしも妥当じゃありません。少しずつ曲がっていくと、その曲がりはずいぶん大きくなるものであって、たとえば飲用乳と原料乳との差というものは、きめられた当初はわずか七円しかありませんでした。大体保証価格が四十円程度で、飲用乳と保証価格との間は七円くらいしがなかった。それが今日は、保証価格はまだ正式には四十円台でうろついているのに、市乳のほうはうんと上がって、その差は三十三円四十九銭、こんなに開いています。これは、そういう矛盾の積み重ねなんです。  それから豚の場合も、五年前の農家の売り渡し、それを基準にして是正してきています。五年前と、一年にえさが倍にもなるというのとじゃ全然違うわけですから、これはもう基準にならない。こういう矛盾もありますし、また卵価の安定ということもありますけれども、これも、この基金に入っているのは、わずかに全体の二六%しかない、あとの七四%は野放し、これでは、やはりこの制度がよくありません。それからまた、昨年の乳価は、牛を殺すことを前提にして、殺した牛の収入がこれだけあるからというようなことでつじつまを合わしている。これも矛盾があると思います。  こういう計算方式というものは、一番いい例は麦のパリティです。長い間やってきた麦のパリティが、四十七年度の麦のパリティの価格というものは、特に裸麦では、家族労賃がマイナス三十三円になったことは、この前農林大臣にも、農林省の資料でお尋ねしましたから御存じのとおりであって、こういう制度というものにいまこだわっておったのでは、ほんとうの対策は出てこない。  それから、それに当てはめる数値にしても同様です。たとえば、問題になっている家族労賃、乳をしぼる労賃と、その乳を出すための牛の自給飼料をつくるその労賃が違うのです。一方は農村の臨時日雇い賃金のようなものを適用しておるし、一方は製造工業、都市労賃を適用している。これもおかしい話です。しぼる手間賃と自給飼料をつくる手間賃を、そんなに区別するというのは、これは納得できない。そういう問題もある。  それから豚の場合、豚の来年度の試算で見ますと、百キロつくるのに要するえさ代は二万五千三十何円か、そういう計算をしておられます。ところが、今度は四十八年の同じえさ代、これは高松の国税局では、愛媛県の農協中央会へ行って交渉して、申告のときに四十八年度、四十九年じゃありません。そのえさ代は二万八千円が認められているんです。いまからやる四十九年度の農林省の飼料は一万五千三十何円、四十八年度のすでに過ぎたそれで、高松の国税局は二万八千円が妥当と認めている。こういう数字を当てはめても、これはこの酪農の救済にはなりません。  だからそこは、もういまの問題は、酪農の危機は農業の危機である、これを解決することが、やはり日本の国民の食糧を解決する道だという大きな観点に立って、政府全体の問題だと、いま総理大臣がお認めになったし、農林大臣もそう提唱しておられるとおり、やはりそういう観点でぜひ取り組んでいただいて、この酪農、畜産危機を防いでいただきたい。特に、大蔵大臣にお願いしておきたいのは、きのうの委員会での話では、財政当局としての責任はありますけれども、一々その算定方式に当てはめる数字まで、大蔵省と協議しなければ農林省はきめられないということでした。これは責任上よくわかりますけれども、そこまでいくと、国税局ではいままでのものについて一万八千円認めておるのに、こういまのように当てはめて、過去の平均というようないろいろなものをやっていくと、実際これからのですからうんと高いはずなんです。もうすでに、四月一ぱいは全農も上げないけれども、それから向こう三千円上げようと言っている。そういうときに、過去のものとして認められたよりも安いのを適用してきめるなんということにはならないはずなんですけれども、そこは、忠実な大蔵大臣の部下の諸君はそういうふうにやっている。これでは正当な価格はきまりません。  こういうことを考えますと、決意だけ、あれをどうするこうするは申しませんが、そういうことを含んで、いまのような政府全体の態勢でこれをきめるということを、ひとつ総理大臣から明確にお答ええいただけば、私は質問を終わりたいと思いますが、明確にお答えいただきたいと思います。
  287. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 非常に重要な問題でございまして、内閣責任としてこれを決定してまいりたい、こう考えます。
  288. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。一以上をももちまして、昭和四十九年度暫定予算三案に対する質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  289. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより討論に入るのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  昭和四十九年度一般会計暫定予算昭和四十九年度特別会計暫定予算及び昭和四十九年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  290. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立多数。よって、昭和四十九年度暫定予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  おはかりいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  291. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  292. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後六時七分散会