運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-03-04 第72回国会 衆議院 予算委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月四日(月曜日)     午後六時七分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 櫻内 義雄君    理事 澁谷 直藏君 理事 正示啓次郎君    理事 細田 吉藏君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君      稻村左近四郎君    上村千一郎君       植木庚子郎君    大野 市郎君       奥田 敬和君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       笹山茂太郎君    塩谷 一夫君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       田中 正巳君    中村 弘海君       羽田  孜君    藤井 勝志君       松浦周太郎君    松岡 松平君       湊  徹郎君    村田敬次郎君       渡部 恒三君    渡辺 栄一君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       赤松  勇君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    辻原 弘市君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       八木 一男君    湯山  勇君       田代 文久君    寺前  巖君       岡本 富夫君    安里積千代君       小沢 貞孝君    玉置 一徳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会         事務局経済部長 熊田淳一郎君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         大蔵省主計局長 橋口  收君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         厚生大臣官房審         議官      三浦 英夫君         厚生省環境衛生         局長      石丸 降治君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 高木  玄君         厚生省保険局長 北川 力夫君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         食糧庁長官   三善 信二君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         中小企業庁計画         部長      吉川 佐吉君         運輸大臣官房観         光部長     高橋 寿夫君         運輸省航空局技         術部長     中曽  敬君         郵政省貯金局長 船津  茂君         郵政省簡易保険         局長      野田誠二郎君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         自治省行政局選         挙部長     土屋 佳照君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   田代 文久君     松本 善明君   寺前  巖君     山原健二郎君   小沢 貞孝君     安里積千代君   小平  忠君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   青柳 盛雄君     田代 文久君   玉置 一徳君     小沢 貞孝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会における参考人出頭要求に関する件  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算及び昭和四十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、理事会協議に基づきまして、田中内閣総理大臣に対し質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいま委員長がお述べになったように、理事会協議によって、各党がなぜ執拗なまで証人喚問要求しておるかという点について、総理総裁としての田中さんに認識をしていただく必要がある。そういうことで、若干の質疑というか、所見を述べたいと思います。  その前に、これは与党内の連絡の不十分だったと思うのですが、五時の招集に対して一時間待たされたことについては、たいへん遺憾です。しかし、これについて、もうこれ以上とやかくは申しません。  そこで、総理あるいは自民党総裁としての田中さんにも関連をすることになりますのでお聞きを願いたいのですが、御承知のように、去る二十五日から六、七の三日間、物価集中審議ということで、問題の大企業団体等代表者二十三名を参考人として出席を願って、いろいろ質疑を行なったわけであります。その場合に、総理はこの場におられなかったが、テレビの放映あるいはまた新聞等を通じて、大体のことは把握しておられると思うのです。われわれがなぜそのように、証人喚問ということについて執拗なまで要求をしているかということについて、簡単に申し上げたいと思います。  三日間の参考人招致で明らかになった事実は、一つ物不足便乗値上げのからくり、いわゆる悪徳商法の実態、あるいは行政とこれら企業団体との癒着及び企業代表者社会的責任欠如と申しますか、ルール等に反するといったような、いわゆる企業代表責任ある答弁なり、あるいはそういったことが行なわれなかったという点が一つであります。  しかし、その審議の中で幾つかの重要な点において、参考人は、先ほど来申し上げておりますように、言を左右にし、故意に事実を隠し、あるいはうそ答弁を公然と行なったのであります。  社会党の各委員質問について言えば、小林質問に対する昭和石油松浦質問に対する伊藤忠日商岩井楢崎質問に対する石油連盟日商岩井住友化学多賀谷質問に対する軽金属製錬会の代表者等のあの答弁態度及びその内容、あるいは見え透いたうそをぬけぬけと言っておる。特に、わが党が重視いたしておりますのは、通産省石油業界癒着の中における石油やみカルテル通産省が関与し、いわば共犯であるという印象を強く持っております。このことにつきましては、別に土曜日に社会党といたしまして見解を発表したところであります。  わが党の調査によれば、四十六年の石油やみ価格カルテル及び四十八年の石油生産制限やみカルテル実行行為に、通産省が加担した事実は歴然としたものがあります。これは、先ほど申しましたように、われわれの調査結果は別に発表をいたしております。しかも通産大臣が、石油連盟密田参考人国会答弁国会外において取り消しを強要し、陳謝文をとったというか、出させたというか、このような行為は、まさに行政府の立法府に対する公然たる挑戦であります。国権最高機関である国会への重大な軽視行為であると言わざるを得ないのであります。  すなわち、これら一連の通産省の動きは、四十六年の石油連盟独禁法違反石油値上げ共犯から免れる、あるいはのがれようとする欺瞞行為であり、特に、四十八年の石油連盟生産制限やみカルテルについての公取委の告発事件については、通産省共犯責任が波及することをおそれたからであろうと思います。なりふりかまわずに通産省が終始ろうばいをし、このような行為をとったところに、通産省石油業界癒着を裏づけるものがあったというべきでありましょう。  この点、いわゆる行政と大企業癒着、あるいは大企業のモラルの欠如、こういう点につきまして、行政最高責任者としての総理の所感を伺いたいと存じます。
  4. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 総予算審議中、公聴会以外の手段をもって政府以外の意見を聞いたということは、例のないことでございます。この例のないことを国会ではおやりになったわけでございますが、これは事態が非常に重大であり、国民生活を擁護するために、真にやむを得ざる手段として国会がおとりになった手段でございまして、行政府としましても深い関心を持ちながら、これが国政調査権の遂行の過程を見守っておったわけでございます。  私は、新しいこの国政調査権発動という結果、大きなメリットがあったと思います。  それば、社会的な責任ということに対して、企業も目ざめたということが大きな収穫であったと思います。  私は、国権最高機関としての国政調査権というものの大きさというものを、企業国民各層も十分に認識をし、評価をしたことば、この三日間の成果だと考えておるわけでございます。  また、行政府としましても、いろいろな事実が指摘をされ、この三日間の審議の結果、行政府が至らなかった面がありとせば、これを正すことに努力を傾けなければならないわけでございますし、いろいろな問題が指摘された結果、将来、行政運営上に大きな一つの指針も与えていただいたところもございます。  そういう意味で、この三日間にわたる真摯な国会国政調査権発動という事態から、行政府が将来どのような姿勢、どのような行政を迅速果敢に行なわなければならないか、また、取捨選択を迫られる場合ありとしても、その軽重をタイムリーに決定をして、行政責任を果たさなければならないというような面で、大きな示唆を得たつもりでございます。  私は、非常に困難な状態、戦後初めてともいうような困難な状態に対して、民間もまた行政府も、いろいろな面において全く完ぺきだったとは言えないわけでございまして、この三日間の結果ということを踏まえて、将来、国民のためにあるべき行政、また民間、私企業といえども、政府が所管する面につきましては、十分な行政権を行使しなければならない、こう思います。違法性を指摘する、しないということだけではなく、妥当性という問題の面から見ても、行政の重さ、その任の重さを、しみじみたる思いで感じておるわけでございます。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 いま、行政府責任者として、総理という立場で私の質問お答え願ったのですが、いまの御答弁で決して満足はいたしておりません。  重ねて申しますが、参考人として出てきた石油連盟密田会長のこの場における発言、そして通産省に呼びつけられたのか、出頭したのか知りませんが、その取り消し陳謝ということには、大きな矛盾があります。こういう国会軽視、あるいは日商岩井のごときは、質問者個人のところへ参りまして、あの問題について説明したいから等々申しまして面会を求めたり、あるいは説明資料を持ってきたりということは、言語道断であります。こういうことは、とうてい参考人としてはらちのあかない問題であります。  したがって、今度は自民党総裁としての田中総裁に、このような問題を十分に考えていただいて、自由民主党といえども、証人喚問について、その実現をはかるよう努力せられるように要求をいたしますが、いかがでしょう。
  6. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国会運営は、国会自身でおやりになっておるわけでございます。私も総裁ではございますが、これは国会に対しては、総裁というよりも、三権の一翼をになう行政の長としての立場で御質問に答えておるわけでございます。  ですから、私が提案をしたいという小選挙区法でも提案に至らないわけでございますし、これは国会のほうが国会運営に対しては、私よりもはるかにお力をお持ちなわけでございますし、われわれも、その立場では尊重いたしておるわけでございます。ですから、これはひとつ国会で十分御審議をいただいて、御相談をいただくということでございます。  しいて個人的な意見を求められるとすれば、これは田中さんもおわかりになるとおり、この法律の成立の経緯というものがございます。これはいろいろこの法律は、証人証言等に関する法律というのは、過去に使われたことがございます。隠退蔵物資処理委員会、その隠退蔵物資処理委員会一から不当財産取引調査特別委員会に移ったときに、メモランダムケースの有力なる法律としてこの問題ができたわけでございまして、当時は、国会でもあまり賛成がなかったわけです。これは四権思想に基づくものであるというようなことでいろいろな問題があり、新憲法との条章で競合しないか、国政調査権限界というものと、まあ御承知のように、新刑事訴訟法がその後二十三年に出たわけでありますが、それよりもちょっと前にこの法律が出たわけです。新刑事訴訟法は、御承知のとおり、犯罪でもって訴追を受ける前にある人でも、黙秘権それから不利な証言をしないでいい、また弁護士は、当然官選弁護人をつけなければならない。そういうものに対して、この法律がどうもきびし過ぎるというような意見があったことは、あなたも法律家としてよく御存じのとおりであります。  それで、その後不当財産取引調査特別委員会から行政監察委員会になったときは、メモランダムとしての目的が一つあったわけです。これは非日活動委員会という一つ法律前提とした法律であったということでございまして、そういう問題からあの行政監察委員会廃止になり、同時に、この法律廃止の議論があったけれども、そのまま現在に至っておるということで、その後、この法律発動は一件もなかったわけでございます。ですから、こういうものは国政調査というものと……(田中(武)委員「そんなことはない、あったよ」と呼ぶ)私の記憶では行政監察委員会以外で、証人証言等に関する法律が適用された……(田中(武)委員決算委員会田中彰治も何回もやったよ」と呼ぶ)いや、それはやはり証人証言等に関する法律じゃなかったと思います。(田中(武)委員「いや、いや」と呼ぶ)まあまあ、そこはいいです。  いずれにしても、それはその後国政調査権というものの限界という問題で、今日まで使われなかったということでございまして、私は、この法律制定時代からの経緯承知しておるだけに、私個人にしいて学問的意見を求められるとすれば、この法律の適用は慎重であるべきである、このような考えを持っております。  しかし、これはもう私の個人的な意見をあえて申し上げたわけでございまして、これはもう、国会の御相談を拘束するものでも抑制しようとするものでも全くないことを、念のため申し添えておきます。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、大体の予定時間がきめられておりますので、あまり時間をとりたくはないという点で申し上げておるわけですが、三権分立というような問題が出るのならば、申し上げねばならないと思うのです。  それは、法務大臣はおられませんようですが、一応済んだことしか申しませんが、法務省の刑事局長委員長に対する文書で云々、あるいは最高検の次長検事公正取引委員長、いわゆる告発人との間に何の連絡もなく記者会見をした問題等々、こういう司法の態度を究明せねばなりません。しかし、それはこの場ではいたしません。  それで、これらの問題を含めて、最後社会党の考え方を述べて、そして委員長に要請をして終わりたいと存じます。  社会党は、国政調査権に基づいて、あくまでも問題の参考人証人として国会に再喚問して真相をさらに究明するとともに、物価引き下げのために真に実効性のある独禁法など関係法令改正強化、及び不当利得を吐き出させるための税の新立法等々と直ちに取り組み、提案をしてまいりたいと存じます。  そこで、最後委員長に要望といいますか、要求をいたしますが、これは委員長が土曜日示されました、理事会において云々というこのことばの中に含まれておるとは思いますが、少なくとも当委員会において締めくくり総括質問に入る前に、言いかえるならば予算審議中に、ひとつ精力的に理事会等協議を続けてまいりまして、そうして結論を出していただくよう提案し、委員長善処方を要望して、私の、社会党意見を入れての質問を終わります。
  8. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの田中君の御要求理事会でよく研究いたしまして、結論を出したいと思います。  次に、林百郎君。
  9. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、日本共産党革新共同代表いたしまして、田中総理として、行政最高責任者である田中総理、並びに与党である自民党最高責任者である、自民党総裁としての田中さんの立場、この立場に対して質問をいたしたいと思います。  第一に、行政最高責者としての田中総理に対する質問でございますが、三日間の大企業代表参考人としての集中審議の結果、今日の物価の狂騰が、全く大企業によって人為的につくられたものであるということが明白になりました。  特に重要なことは、それが行政府と大企業癒着によってなされたのではないかという疑惑が一そう深まってきたことであります。この疑惑を解明し、政府責任を明らかにすることは、予算審議そのものとしてもきわめて重要だと考えるに至りました。  特に具体的には、石油業界政府との癒着についての重大な疑惑が生まれてまいりました。  たとえば、わが党の荒木議員質問によりましても明らかになったごとく、昭和四十八年十一月二十日付で共同石油が出した通達によりますと、通産省が各元売り業者に対し、十二月以降二二%の減産を行なうようにとの指示をしたからということで通達を出しております。共同石油代表者もこのことを認め、明言しております。要するに、共同石油が十二月以降二二%の減産を行なうという通達は、これは通産省指示に基づいて行なったものであるということが通達にも明記してありますし、ここでもそのことを明言いたしました。ところが、資源エネルギー庁は、そのような指示を出すはずはないとこの場で言っております。明らかに矛盾した答弁が行なわれております。これは、共同石油通産省のいずれかが偽りのことを言っておるのであるか、または業者が通謀の上で値上げをはかったのではないかという疑惑を深めておるのであります。  また、先ほど田中委員も触れておりましたが、昭和四十六年二月石油業界カルテルは、通産省の指導のもとになされたものであるということを、石油連盟密田氏は参考人として述べておりますが、その後国会外で、この国会での陳述がうそであったという取り消し発言をしております。これもはなはだ疑惑に満ちたものでありまして、国会を軽視したものと言わざるを得ません。  これら大企業代表行政当該責任者との矛盾した言明は、このまま放置できない重大な問題だと思います。また、予算編成前提となる今後の予算の執行についても、重大な影響があることだと思います。行政か大企業かのいずれかがうそを言っているということ、このことは重大な問題でありますので、行政最高責任者である総理がこの問題について、どのような責任ある措置をとられるか、その点を明確に答弁されたいと思います。
  10. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、この問題、新聞報道承知をいたしております。おりますが、すなおな評価をいたしますと、その後密田石油連盟会長から通産省に、あれは間違いであったということを述べておられるということは、そのまま認められるのではないかというふうに私は考えます。それは新聞にも、あれは、四十六年なら通産大臣田中だっただろう、こういって、でっかい字が出るわけですから……。私はかまいませんよ。しかし、私が通産大臣になったのは七月ですから、一日は私もたなざらしになっていたわけです。しかし翌日になったら、そうじゃない、田中は七月に就任したんだからそうじゃなかったなあという、そういう間違いはあると思うのですよ。これは国会で今度、これも国会審議のやり方ですから、政府が申し上げる段階じゃありませんけれども、私は、与党責任者として考えると、国会国府調査権発動をするという場合、やはりあらかじめ質問の条項を示して——これはとっさに聞かなきゃわからぬということになると、これはもうまるで検察庁がやるようなことになってしまいますから、国政調査権というのはもっと高いところで、国民代表して国民利益を守るというために、違法性の追及よりも、とにかく国民生活をよくしなければならないための国政調査権発動、こういうことが前提でございますので、違法性があれば告訴もできますし、告発もできるわけです。  ですから、そういう意味で、私は、あそこでもって端的にお聞きになられたということに対して、端的にこうお答えになっておる。で、中には、私の党のいろいろな委員の諸君からの話を聞いてみると、なるほど総理大臣大臣というものは、こういう雰囲気の中でもって端的にお答えになって、あれ、毎日お答えになっているんだからたいへんだということがわかりましたと、私たちはたった一日、八時間やってみても非常に緊張して、あとから考えてみると、もっともっと懇切な説明もできたと思うし、もっと正確な答弁もできたと思うのだけれども、やっぱり異様な雰囲気であり、たたみ込まれますと、国会議員さんというのはやっぱりおそろしかった、そうすると、やっぱりふるえ上がって、あまりほんとのことを言えなかったと、こういう話も聞いてみますと、私は案外、だからこれから……(発言する者あり)まじめな話です。そういうことは、私は、やはり国民は、真実を述べて正すべきは正しながら、やっぱり将来妥当な行政が行なわれるように、また国民利益を守られるようにということを望むための、国政調査権発動であるということであって、私は、現時点において、通産省が違法の行為をやっているというふうには、全く考えておりません。通産省が違法な行為をやっておれば、これは通産省といえども、公取の、独禁法によって捜査を受けるわけでございますし、私は、少なくとも行政権の一部であるといわれておりながらも、三権の外にあるような制度になっておる独禁法、この対象としては、政府地方公共団体もちゃんと受けるわけですから、そういう意味では、通産省がもしか何かをするとすれば、公取との間の了解事前了解というものがなければそういうことは行なわないというのが行政——役人というものは、そういうところは非常に賢いわけです。これは、そういう違法なことは絶対にしない。  ですから私は、そういう意味から考えて見ましても、密田氏の思い違いであろうということを、すなおにそう判断をしております。  これは、もし具体的な問題があれば、私も元通産大臣でございますから、現通産大臣もおりますから、これは、ひとつ中曽根通産大臣から明確な答えをしてもけっこうです。
  11. 林百郎

    ○林(百)委員 理事会で約束された時間がありますので、できたら通産大臣責任ある答弁も聞きたいと思いますが、遺憾ながら限られた時間の範囲の質問でありますので、総理に集中いたしたいと思います。  私、率直に言って、いま田中総理答弁を聞いておりまして、はなはだ不本意だと思います。何か、国会におけるわれわれの質疑が行き過ぎたものであるかのごとき感を与える答弁をされておる。そして、私の率直にあなたに質問している質問に答えておらない。  私は、たとえば共同石油が、通産省通達によって二二%のカットをしろといわれているから、そのつもりでいてくださいといって通産省通達を使っておる。さらには密田氏が、昭和四十六年のやみカルテルは、通産省相談の上でありますと、平気で大企業がこうやって通産省の名前を使うことができる、そういうことが許されているというところに、国民の側からいえば、大企業行政との間の癒着が、これはもう否定し得べきもないところにきているのではないか。その責任をお感じになりませんかどうかということを私は聞いているんですよ。国会質疑がどうであったか、どうでなかったかということは、これはおのずから国会のわれわれがきめることなんです。あなたに、行政最高責任者としてその点を聞いているのです。
  12. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 通産省に、違法な行為はないということを確信いたしております。
  13. 林百郎

    ○林(百)委員 通産省に違法の行為があった、なかったではなくて、通産省通達だ、通産省の指導だということを、大企業や石連がかってに使うことができる、国会で問題になって初めてあとで取り消している、こういうところに、行政企業の大きな癒着があるではないか、この点に国民疑惑を持つのは当然ではないか、この点で行政はえりを正すべきではないか、ということを私は聞いているんですよ。  次の質問に移ります。遺憾ながら時間の制限がありますから、この点はわが党の同僚委員からさらに質問が続けられると思いますが、次の問題に移ります。  それは、与党である自民党総裁としての田中さんにお聞きしたいと思うのです。ということは、この証人喚問の問題について、自民党の首脳部の方々は、総裁である総理協議の上でこうしたというようなことが、しばしば新聞に発表になっておりますので、これは与党である自民党総裁としての立場、これを免れることはできないと思うのです、証人喚問の問題で。そこで、そういう立場で私はあなたに質問したいと思います。  証人喚問の問題は、これはもう言うまでもなく、憲法の第六十二条に規定されております。国政調査権に基づく証人喚問権は、もうこれは憲法に明記されているところであります。この立場に立って、われわれは二十八日の予算委員会理事会以来、他の野党の同僚諸君とともに、自民党理事諸君に対して、大企業代表を、参考人から証言法に基づく証人に切りかえて、集中審議の中でなお解明されずに終わった諸問題について、さらに突っ込んだ審議を続行することによって、集中審議の有終の美をもたらさなければならない、そして国民の期待にこたえなければならないということを理事会で強調してまいりました。これまで自民党の諸君は、あえて予算委員会理事とは限りませんけれども、自民党の皆さんがまず参考人として呼ぶ、参考人が不誠実なときには証人に切りかえるということを、しばしば言われておりました。ところが、参考人への集中審議が終わりますと、前言をひるがえしまして、われわれ野党の一致した要求に対して、党に持ち帰って相談をして返事をするとか、あるいは最大限の努力をするというようなことを述べられまして、実際には証人への切りかえに反対をされて、遺憾ながら予算委員会理事会も、実際は実のある審議がなされませんでした。また、この問題に対する予算委員会自身の審議も、中断をせざるを得ないような事態をもたらしておるのであります。  言うまでもなく、さきの三日間にわたる集中審議の中で明らかになってきました、大企業の横暴で不誠実な態度に対して、国民の怒りは一そう押えがたいものとなってきております。これは、総理が率直に国民の声を聞いていただければわかると思います。企業代表の声ばかりでなくて、国民全般の声を聞いていただけばわかると思います。  特に、各企業代表参考人であるということをよいことにして、すでに述べたごとく、政府と大企業癒着の実態や原価の公開など、重要な問題になりますと、言を左右にして答弁を拒否してきたのであります。密田石連会長のごときも、平然としてうそを言うような態度をとっております。これに対して国会は、当然さらに一そうの究明を行なう責任があると思います。こうした事実と経過は、参考人ではなくして、陳述の拒否や虚偽の陳述を許さないという、証人喚問に切りかえることの必要性が一そう明確になったことと思います。もはや現時点においては、証人喚問は当然行なわれなければならないとわれわれは考えております。  ところが、自民党の諸君が、証人喚問問題について荒舩委員長提案がありましたけれども、しかし、それにもかかわらず、実際は、いまなお証人喚問問題の解決を故意におくらしているばかりか、まず参考人不誠実な場合は証人に切りかえるという当初の態度、言明すら投げ捨てて、いまや自民党の首脳部の方々は、絶対に証人喚問はやらないとまで言明するに至っております。このことは、憲法に保障されている国政調査権、また証言法で明記されている証人喚問を、人民裁判などと称して国民に誤解を与えることと相まって、このような不誠実な態度は、これは国民を欺瞞することになりますし、国民への重大な挑戦になるといわざるを得ません。このことは、同時に、国会の権威と憲法に保障されておる国会審議権をじゅうりんすることになるわけであります。  私はこの立場で、議会制民主主義を守るという立場から、真剣に与党総裁である田中さんに質問しているわけでありますから、誠実に答弁を求めたいと思います。  それで、われわれはこの国民の期待にこたえて、何としても予算審議を尽くして、その円滑な進行をはかるためにも、また、自民党がみずからの身のあかしを立てるためにも、誠意をもって、行政当局と企業との間に明らかにいろいろ食い違いを示しているような場合に、当該行政責任者企業代表の両者を証人として喚問して真実を明らかにするということは、緊急な要務であり、国会の責務だと思います。この点について、証人喚問するという保証を、与党である自民党総裁としての田中さんに、責任ある答弁を求めたいと思います。これは自民党の身をあかすためにも、明らかにするためにも必要だ、こういうように私は考えております。
  14. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほどもお答えをしましたように、二つの結論を申し上げます。  一つは、これはもう全く常識的なことでございますし、国権最高機関である国会運営上の問題でございますので、この結論国会でお出しになるものである、こう申し上げておきますというのが、公式どおりの私の答弁でございます。これは私が、では、多数党であれば何でもできるかといったら、何でもできないのです。できないのです。多数を持っておったって、とにかく皆さんとちゃんとお話がつかなければ、ちゃんとしておるのですから。ですから、毎日毎日十時からずっとお待ちしているのですから。ですから、そういう意味で、それはそんなに、多数党の総裁だから何でもできるというふうに考えておりません。民主主義者として、議会制民主主義を守るという点では人後に落ちない。与党総裁としてもまた同様である。明確にいたしておきます。  ただ、成立の経緯をずっと知っておりますから。この法律昭和二十二年十二月公布のものでありますから、これは占領軍政策の中で、有名なメモランダムケースのものでございます。これは先ほどもちょっと、いやな発言でございましたが、私は事実を申し述べたつもりでございますが、この法律の裏づけには、非日活動委員会法という法律があって、その法律が出ないで済んでしまった。あなた方にはたいへん御迷惑になったけれども、その後、この法律にかわって団体等規制令という、とにかく非常にあなた方には御迷惑になったですな。そういう手段に変えられたという経緯を持っておる法律でございますので、この法律は、もう行政監察委員会廃止のときに廃止をすべきだという議論があったわけです。その後新刑事訴訟法が二十三年、ちょうど一年おくれて出まして、そうして現行の新刑事訴訟法は二十四年一月一日から施行したわけです。  そういう意味で、この法律は憲法に背反するおそれがあるということが一つあります。これは四親等内の血族、三親等内の姻族が刑事訴追を招くおそれのある場合のみ証言を拒否することができる。しかも、それに対しては、国会は告訴をしなければならぬということで立件をされた者もあるのです。しかし、この法律の精神は、いわゆる親告罪であるということで免罪になった人もあるわけです、歴史の上では有力な政治家が。そういう経緯がありまして、このまま使われますと、これは最終的になると、国会でこの法律が使われると必ず多数横暴に使われるようになる。そうなってくると、これは議会制民主主義の破壊に通ずるという議論がまじめに行なわれたわけです。それなら野党の党首を呼びましょうとか、労働組合の幹部を呼びましょうという提訴があって、そういうことになっては困るのでというので、国政調査権にはおのずから限界をつくって、約二十年間この法律は使われないできたわけでありますから、そこらは、国会でその後の状態と憲法の条章と十分考えながら、刑事訴追を受けるということで法律に基づいて調査をされておるのです。  その後、新刑事訴訟法という、九十九人の罪人をのがしても一人の無事の民を罰するなかれ、これがメモだといわれた新刑事訴訟法が施行された後でも、この法律はずっと学会でも問題があるわけです。そうでしょう。拒否権、それから黙秘権という犯罪の容疑者にも与えられておるものが、国政調査権において黙秘権もない、ここにおいては、とにかく証言拒否する場合には、確実に罪を認めて、告訴を前提とする証言拒否をしない限り道はないのだという、この法律はそういう意味で非常に問題があるということで、ですから、それは歴史の経緯があるのです。それでその後、各党ともこの法律の実行というのをしないでずっときたわけです。  ですから、これがどこで一体使うのかという問題、それは自民党がやると思いませんよ。思いませんが、そういう歴史的な経緯を持ちながら本日に至っておるという立場から考えますと、この法律の適用は非常に慎重でなければならないという考えは、私は二十年間依然として変わっておりません。しかし、これは個人として、議員としての考え方であるということを、ひとつ御理解賜わりたい。
  15. 林百郎

    ○林(百)委員 時間でありますが、これで結論を申しますが、ちょっと委員長に希望が……
  16. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 時間は倍たっておりますから、林君の発言を許しません。
  17. 林百郎

    ○林(百)委員 そうですか。それならけっこうです。
  18. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、山田太郎君。
  19. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私も、公明党を代表いたしまして、与えられた時間は短時間ではございますが、総理に対して二、三の質問を行なっておきたいと思います。  御承知のように、このたびの狂乱物価鎮静の目的のために、具体的な例をあげながら、大商社あるいは石油業者、関連の石油化学製品業界あるいは洗剤等々、具体的な例をあげながら、石油ショックを利用しながら便乗値上げの点、あるいは価格の操作をして値上げをはかった点等を追及してきたわけでございます。御承知のとおりでございます。  ところが、先ほど総理のお話の中に、国会議員というものはおそろしいものだ、こわくてほんとうのことを言えなかったというふうなお話もありましたけれども、これがもし公の場所でそういう人たちが言うたとしたならば、やはりほんとうのことを言うてなかった、あるいは言えなかった、あるいは言うまでに至らなかったというふうな点が明らかになることでございまして、これはゆゆしき問題だと思います。  しかし、きょうはこの点はさておきまして、私ども公明党の同僚委員から数多くの具体的な質問を申し上げた中にも、なぜ証人喚問しなければらないかというふうな具体的な例は多々あります。しかし、一つ二つあげますならば、やはり商社の脱税行為に対して、直ちにそれを否定するかのごとき言辞を弄し、そうしてこの集中審議の場所においては、ただ平あやまりにあやまっておきさえすればいいと……。われわれは、海外法人等を利用しての利益隠しのからくり等、物価鎮静の目的に取り上げてきたわけです。ただ、商社なりあるいは大企業なりをやっつけさえすればいいなどという、そういうけちなつもりじゃありません。この点は御承知のとおりです。  その中で一、二申し上げれば、やはり日商岩井などの場合、みずから自社の文書であり、書かれている事実を認めながらも、なぜこんな数字を書いたのかわからないなどと、具体的事実を否定するかのごとき答えをなさったり、あるいは海外法人を利用しての、そのからくりに対しての明確な答弁を避けたりするという点は、非常に残念なことであり、やはりこれも当然証人に切りかえるべき当然の理由があるものの一つと考えております。しかし、きょうは与えられた時間もわずかでございますし、理事会において証人喚問への切りかえ問題などについては、引き続き理事会でもって誠意をもって、分科会の終わるまでに結論を出すということにきまっておりますので、この点はあえてきょうは取り上げません。  しかし、先ほど行政府の不明朗な点とかあるいは不行き届きな点等々の質疑内容がございました。そのときに総理の御答弁の中に、行政の任の重さを深く感じているわけでございますというお答えがありましたけれども、やはりここには、その言わんとなさることはわかりますけれども、少し、一つでも二つでも、具体的にどのようなことをなさろうとするのか、その点をひとつお聞きしておきたいと思う点が一つでございます。まず、この点をお伺いしておきたいと思います。
  20. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 当面する最大の緊急課題は物価の抑制ということでございますし、国民生活安定のために物価抑制をばからなければならないということで、諸般の施策を実行いたしてもおりますし、また新立法等に対しても各党で御相談いただいておったり、いろいろやっておるわけでございます。それだけではなく、国会でもって三日間も審議がせられたわけでございますし、これらで御疑問のあるような点について、違法性があれば、これは国税庁が当然税を捕捉するために調査も行なうでありましょうし、また独禁法の問題があれば、独禁法の番人であるところの公取調査をいたすでございましょうし、また違法行為があれば、当然行政の上でもたださなければならぬわけでございます。  そういう意味で、私は、国会でもって行なわれた国政調査権発動というものは、それなりに必ず国民生活のためにプラスをもたらすものだ、またそういうふうに行政というものは運用せられなければならない、このように真に考えておりますので、まあ、いままででも法人の持つ土地に対しての二〇%重課をお願いしたり、また、その後国民生活安定法案をお願いしたり、石油の規制法をお願いしたり、いろいろなことをやっておるわけです。そういうような問題はこれからもやってまいりたい。価格の問題は、これはもう国民生活に密着するものに対しては標準価格をきめて、指定品目にしなければならないものがあればそれをやりますし、だから、いま石油が上がっておっても、灯油はちゃんと押えておるわけでありますから、そういう問題に対する具体的な問題を掘り下げながら、まず国民生活を安定せしめ、そして不当な利得がありとすれば、これを吸収するためにどういう処置があるかというようなことを、いまお互いに検討しておるわけです。政府も誠意をもってこれに対処したい、こう考えております。  しかし、現実問題としては、その先を見越して値上げをしたけれども、その後政府は、一万一千円も石油が上がっているにもかかわらず、三月の初めになっても上げないので、もうそれを吐き出して、一日八十億ずつの赤字が出ておるというような結果も出ているわけでございます。ですから、そういう過程の中で、国民生活の安定と物価の安定にどう寄与できるかという具体的な問題を、品目別にわれわれはいま調査をして、具体的な対策を立てるために懸命の努力を払っておるわけであります。
  21. 山田太郎

    ○山田(太)委員 石油業者が、一日八十億の赤字を出しているというふうなお話もございましたが、この点には異論もございます。また、この点は機会を改めて申し上げたいと思います。  しかし、先ほど総理が申されたことは、この集中審議を通して、いかに行政の任務が重いかということを深く感じております。それでは、どのようにその感じられた点を、具体的に一つでも二つでも生かしておいきになりますかと申し上げたときに、いままでのやってきたこと、あるいはいままでやろうとしていることをおっしゃったことだけで、何ら変わりはないわけですね。深く感じていると言うだけで、じゃ、集中審議を注目し、よく聞き、それを感じた結果は、何ら、何の具体的な面にも出てこないというふうな結果になるのじゃないですか。
  22. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そんなことはありませんよ。ですから、まあ石油だけでもとにかく上がっていることは事実でしょう。八千円のものが一万一千円上がって約二万円になっていることは事実なんです。世界の国々はどうしているかというと、西ドイツでも、イギリスでも、フランスでもみんな石油価格を上げておる。八千円、九千円上げておる。しかし、日本は上げないでおるということだけは事実なんです。それで、しかも石油業界は、二百六十億だというようなことを言っておるようですな。それで通産省は、とにかく上がったものをやると四、五百億になるだろう。しかし、そこからこういろいろなものを、支出をしたものや何か考えるとどんなにしても三百億か三百五十億。そうするとあなた方は、それを千億ある、こう言っているわけですから、そうすると、すでにほかの国が十一月に上げているものを、一月、二月引っぱっている。これは先出しとかあと出しとかいう問題のやり方はございますが、いずれにしても、もうすでに最高千億以上もうけたなと思っても、それを吐き出してなお余りあるほど企業には赤字が累積しているわけです。にもかかわらず、国会でもって三日間もあなた方が懸命な努力を続けられて調査権をやられたわけですから、政府は簡単に石油の値段なんか上げられるものじゃない。また、早とちりをして上げてしまったなどというのじゃこれはたいへんだから、少なくとも皆さんの言われる、皆さんが試算をされたものの額をこえてそれが倍になるぐらいまで押えられることにしたならば、それはつぶれるところはあるかもしらぬけれども、これは相当なものだということでやっているからこそ、今日もちゃんと押えてきておるのでありまして、これは、何にもしていないと考えるのはおかしいじゃありませんか。そうじゃないのですよ。そうしてその前に、いわゆる石油が上がったら電力はどのくらい上がる、電力がとにかく上がったなら、この上なお物価が上がっては困るので、その場合でも絶対に物価が上がらないような、国民生活の必需品はどれだけ押えてからでなければやれないかというくらいまで徹夜をしておるのです。それはやはり、三日間皆さんがおやりになった国会審議の結果、政府が謹聴し、これにこたえておるのだと、これは誠意でなくてなんであるか。こういうことは、ひとつすなおに評価をいただきたい。
  23. 山田太郎

    ○山田(太)委員 時間がないですから、その点については、あるいはあと出しだ、前出しだなんという点も、これは締めくくり総括でまた論議していきたいと思います。  そこでもう一点、総理大臣御自身もわが党の委員質問に対して、初めて認識を新たにした。たとえば海外法人の例のからくり問題などですね、初めて認識を新たにしたとか、あるいはその他の集中審議のときを通じても、初めて認識なさった点も多々あるという点も伺っておりますが、しかし、一例をあげただけでございますけれども、やはり証人にするならば、これらの点がより一そう明らかになるということは、これはだれが考えても当然のことでございます。また同時に、その点から考えても、政府みずからも一証人として特定の業者喚問して、そして狂乱物価における価格操作を明らかにしたほうが、今後の行政においてもたいへん役に立つんじゃなかろうかということを考えるわけですが、その点について、ひとつお伺いしておきたい。今後の行政についてより一そう明確になるから、価格操作のからくり等々もより一そう明確になるから、これからの行政においてそれがより一そう役に立つということ、この点を考えられて、やはり特定の業者証人喚問したほうがいいんじゃないかという、こういう常識が国民の中のコンセンサスになっておるのも——意見が違うかもしれませんよ。だけど、私の知る範囲内ではそうなっております。その点についてのお考えをお伺いしておきたい。これが一つ。もう時間がないからまとめて言います。  それから、やはり先ほどからの質問にもありましたけれど、政府が大企業を擁護する姿勢が国民の目にも当然不信と不安を与えていることは、これは事実でございます。このことは、この際総理としても、あるいは総裁としても明らかにさせておくべきことではなかろうかと思うわけです。この二つの点についてお伺いして。質問を終わりたいと思います。
  24. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま、国会の御審議の過程において、いろいろ新しい知識を得たということは、前にも申し上げたとおりでございます。これは海外支店とか、いろんなものはまた別でございますが、そうじゃなく、通達をお読みになられたときに、私も驚いたんです、千載一遇であるというような。これは、とにかくちょっと私も驚いたわけでございまして、こういうようなものに対して行政が、やはり皆さんから御指摘を受けるまで、いかに機構が膨大になっておるにしても、そういう問題が、やっぱり御指摘を受けるまで行政部内でもって把握できなかったというようなものに対しては、これは、これからほんとうに、もっと広範な、新しい視野と立場と角度から行政を執行していかなければいかぬなということをしみじみと考え、また決意を新たにいたしたわけでございます。  それから、その他のいろいろな機関を通じての問題これは違法性があれば、行政機関の中で、その衝をあずかる行政機構がございますから、そういう機構で当然処理が行なわれ、税に対して脱漏があれば、それを捕捉するにやぶさかではありませんし、また、政府が及ばないところであっても、独禁法の問題に対しては公取が権限を発動することになりますし、いろいろなものに対して、倉庫法とかそれから通関の問題とか制度の問題とかいう問題に対しては、いろいろな勉強をさしていただきましたので、これは新しい事態に対応できるような行政の対応策ということは十分とらなければいかぬ、こう考えたわけでございます。  それから第二の問題で、商社だけではなく、基幹産業がいろいろな何んでもやっておるということは、これは私たちも知らないわけじゃないんです。このごろはもう宿屋もやっているし、花屋もやっているし、散髪屋からどこまでもやっていて、中小企業の圧迫になっているという陳情も受けているわけですから、そういうものが、今度の集中審議の結果相当程度明らかになった。これは結局、株式か自己資本に対して無制限に、担保力があれば貸し出しができるというような、金融の節度というものを、これは一律、画一的な締め方よりも、やはり企業別の節度というものが必要なのではないかという問題に対して考えております。  それから、いかに引き締めても時価発行をやる、転換社債をやる、いろんな問題がございますから、これに対する問題も、やはり理論だけではいかぬ、これは実情に合わしたものを考えなければならないというようなことを、政府部内としては勉強もすると同時に、銀行局長通達も行ない、銀行局もそれに対して検査をやるというぐらいな真ちに反応を示しておるわけでありますから、これらの問題に対しては政府は非常に努力をしておる、国会の御審議に対して直ちに反応しておるということを、ひとつ御理解いただきたい、こう思います。  それから証人の問題は、先ほどから述べましたように、これはよくひとつ国会で御審議いただきたいのです。これは、ただ私もさっきずっと、国会におけるあれですからよく調べましたら、確かに行政監察委員会廃止後、衆議院の決算委員会等で例がございます。ございますが、そのときに、この法律というのは、ちょうどいまと同じような議論が何回も行なわれた結果、国政調査権発動としては、慎重でなければならないという結論になったことは事実なんです。それはなぜかというと、多数党がこれを使った場合に一体どうなるのか。これは直ちにそういう例が出てきて、必ずそれはおかしくなって、もうそれなら自民党は多数なんだからとにかくこれをやりましょう、やった結果、判断は国民に総選挙でもって訴えればいいじゃないですかという、それは暴論だというような何回も何回も事態を経由をして今日まで来ておるわけでありまして、国会国民を処罰をするところではないと思うのです。処罰をするのは、法律に基づいて行政府が行なうことになっているわけですから、真実を追求しながら国政調査を遺憾なく行なうというところに国政調査の大目的があるわけでございますので、そこらは、行政府の長である私のあれよりも、これはひとつ国会で、議会制民主主義をいかにして守るべきか、その中にこの法律はどのように慎重に配慮すべきかということを、十分お考えいただくということで御理解をいただきたい、こう存じます。
  25. 山田太郎

    ○山田(太)委員 どうも時間が来ましたので、これから質問は続けません。ただ一言だけ。  国会は大業者、大企業等を処罰するところではない、これは当然のことでございます。しかし、国政調査権のもとに今日のこの狂乱物価を鎮静させるためにどうしても必要な集中審議を通して、どうしてもこれは証人でなければならぬというものはやはりあるわけです。先ほど冒頭に言うたとおりです。  そこで、最後に私が委員長に申し上げておきます。  先ほど冒頭に申し上げましたように、あくまでも特定の業者に限ってもちろんけっこうでございますけれども、先ほど申し上げた理事会での申し合わせどおり、この分科会の終わるまでには結論を出すということでございますが、特定の業者は、どうしても証人喚問していただきたいことを要求し、善処を委員長にお願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  26. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 理事会で善処いたします。  次に、安里積千代君。
  27. 安里積千代

    ○安里委員 すでに三政党の代表者の方から、今回の審議にあたって証人参考人の問題、なぜ証人として喚問しなければならなかったかという具体的な問題につきましても質問がございましたので、私は重複を避けまして、若干の意見を申し上げておきたいと思います。  ただ、総理の御答弁の中におきまして、しいて証人という問題を、刑事問題に関する証人とすりかえるというよりは、それと結びつけまして、国会におきまする証人の問題の、いかにもことばをつとめて避けようとされる弁解は、いただけないものがあったと思っております。  そこで、民社党は、本来議会制民主主義を堅持します立場から、たとえどのような反対意見がありましても、審議の拒否はやらないという原則的立場に立っております。ただ、今回の審議におきまして、証人問題でこのように審議が滞ったという結果を来たしたことは、たいへん残念であると思って考えております。  そこで、そのいきさつなんか抜きにいたしまして、私は、この結果、三つの点におきまして、マイナスと申しますか、遺憾な点があると考えております。  一つは、国の最高機関でありまするところの国会の権威というものが、非常に傷つけられているという感じを受けるのであります。と申しますのは、最高機関でありまするがゆえに、そこから生まれまする国政審査権でもございます。しかも、いまのこの国会は、異常なインフレ、物価高という、しかもその中には業者の不当な、あるいはまた国民をだました問題があり、議会までもだましておるというような具体的な事実もあらわれてまいっております。そういうことに対して、国民代表する国会として真剣に真実を明らかにして、そして改むべきものは改めるという徹底的な審議を尽くす、これが避けられた。避けるというよりは、つとめてそれを回避する、と言うのは語弊があるかもしれませんけれども、証人にすることを回避した、こういうことによりまして、国会というものが、最高機関としての権威というものが、私は証人喚問ということがはばまれたということによって、そこなわれたという感じを第一に抱くものであります。  二番目には、なぜ多数党でありまするところの与党やあるいは政府筋が、証人として呼ぶことに対して消極的だったかということに対しまして、率直に証人としていろんなことが明らかにされるならばまずい点が出てくる。そこによくいわれまするところの、政府筋やあるいは与党筋と大企業との癒着の問題これがあるからだというような疑惑というものを国民に与えておる、私はこう考えております。これはたいへん残念なことだと思っております。  三番目には、国会はこの重要な時期に対しまして、手続上の問題でごたごたして審議が進まない。これは一体ほんとうに国会は、議会は、国民のことを考えているのか、こういうところの不信感というものを、私は心あるところの国民の中に与えておるのじゃないか、こういうような感じを抱くのであります。  そこで私は、この三つの点を、今後の審議の段階におきましても、あるいはまた、これからの行政府の措置につきましても、万全を期さなければならない、こう考えております。与えられた疑惑や、少なくともいままで調査された、審査された中におきましても、行政府のまずさもあります。あるいはまた、明らかにうそだと思われるようなところもあります。こういったことに対しまする、今後の審議の中において、それを明らかにすることによって国会の権威を高め、国民疑惑を一掃し、そして議会がほんとうに重要なる時期に対して、国民のために物価を押え、インフレを押え、何とか国民生活を安定せしめるために一生懸命やっておるんだということを、これは議会も政府もともに真剣に考えなければならぬ、こういうふうに私は思うわけであります。  そこで、いま私の意見を申し上げたのでございまするけれども、この三つの点に対いまする、行政責任者としての総理のお考えをお伺いしたい。とともに、これは議会の運営委員会運営に関係する問題でございまするから、今後のあり方に対しましても、委員長のお考えをお聞きいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  28. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国会は、国民のための審議の場であるということに対する高通なお考え、これは原則的に全く賛成であり、敬意を払っております。民主主義でございますから、手続きは、民主主義を守るために非常に重要な問題であるということも理解いたしております。しかし、とにかく国民が、国会審議というものを毎日毎日待っておるということを考えてみると、いっときでも一分でも多く真実探求、また国民のためになる議論が続けられるということが望ましいという、いまのあなたの御発言に対しては、心あら敬意を払いたいと存じます。  ただ、証人という問題は、その面だけでもって御議論がありますから、ここで言わずもがなでございますが、一言申し上げておきますと、やはり国政調査権というものでこの法律告発しなければならないということになっておりまして、これは新刑事訴訟法よりも一年も前にメモランダムケースとして、あまり国会では賛成なかったわけですが、まあ、あの当時としてはどうにもならないような状態法律になったケースのものであることは、これはもうだれでも承知していることであります。それで、それをいろいろ適用した結果、これは検事の役目と同じような、行政との紛淆が起こるというような問題もあったわけです。そういうことで、新刑訴の精神との問題もありますし、憲法上の問題もありまして、とにかくこの法律はどうも三権というよりも四権思想という、そういうような議論も真に行なわれたことは事実でございます。そういう意味で、破防法ができたとき、この法律を適用しなさいという議論も十分あったのです。これは与党の中から、これをひとつ思い切って適用して、根こそぎにという、そういう歴史になって今日になっていることは事実なんです。  そういう意味で、私はこの問題に対して個人的な意見法律成立の経緯から今日までを考えると、違法性がある、しかも行政権発動しない、行政権発動を促すために国会国政調査権発動するという立場になれば別でございますが、ただ真実を述べさせるというだけをもって、本法を適用するかどうかというものに対しては、個人的には私は慎重でなければならないという考え方を、立法府の議員として私はすなおに述べておるわけでございます。議会制民主主義を守ろうという考えにおいて人後に落ちるものではありません。私は、そういう意味で、まじめにそう考えておるわけでございます。しかし、この法律の適用いかんは国会運営の問題でございますので、これは、ひとつ皆さんの間で十分慎重に御審議をいただきたい、こう申し上げておるわけでございます。  まあ最後に、できれば皆さんが、どうもこれは真実述べておらぬというふうにお感じであったら、政府に決議文を突きつけまして、政府はこの事情を調査の上、国会に報告すべし、こういうことになれば、これは政府は努力をいたします。そこらが権限紛淆になるということで、過去に問題があったという事実を、私は指摘をして述べておるわけであります。
  29. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 安里君が、委員長に対して運営方針を御質問なさったようでございますが、長い間、予算委員会を通じて皆さまの非常な御協力を願いましてありがとうございますが、今後も誠心誠意円満な運営をはかっていきたいと考えております。どうぞ御協力をお願いいたします。
  30. 安里積千代

    ○安里委員 私は、いま総理のおことばを聞いておって、法律論を戦わしたくございません。ただ、異常なこの時期において、ほんとうに真剣に物価を押え、何がこうならしめたかということに真剣に取っ組むことに対して、どうも非常に認識が足りないのじゃないかというような感じをいたしまして、もっと私はほんとうに真剣に取り組む気持ちがあってほしいことを申し上げまして、終わります。
  31. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて総理大臣に対する質疑は終了いたしました。  これより一般質疑を続行いたします。  寺前巖君。
  32. 寺前巖

    寺前委員 私は最初に、日本時間で三日の午後八時四十五分、パリ郊外のオルリ空港周辺でトルコ航空のDC10、エアバスが墜落した、史上最大の死者三百四十五名という大惨事が起こっている問題について、外務大臣並びに運輸大臣にお伺いをしたいと思います。  最初に、私は心から、犠牲にあわれた方々に対して哀悼の意を表したいと思います。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕  そこで、まず最初に、一体この事故の原因と現状はどのようなものであるのか、その事実報告と、また、日本人の被害者の方々に対して、政府はどのような措置をとられるのかをお伺いしたいと思います。
  33. 大平正芳

    ○大平国務大臣 三月三日、現地時間の十二時四十分、パリ郊外におきまして、トルコ航空九八一便DC10機が墜落いたしまして、乗員、乗客合計三百四十五名全員が死亡いたした模様でございます。この中には、日本人とおぼしき者が四十九名含まれておりますが、うち二名は、まだ未確認でございます。  政府としては、パッセンジャーリストによりまして、エージェントを通じまして出てまいりましたリストについて、一々確認を急いでおるわけでございますけれども、まだ二名は未確認でございますけれども、名前は、日本人だと推定されております。  外務省におきましては、在仏大使館から三日夜半、事故に関する電話連絡を受けまして、同館から電話によりまして、犠牲者の氏名、身元等の情報収集につとめて判明いたしました情報は、逐次代理店等を通じまして御遺族その他関係者に伝達中でございます。  在仏大使館は、事故発生を知るや、直ちに館員は現場に急行いたしまして情報収集につとめておりますが、四日午前八時には館員三名が、遺体、遺品等の確認の措置等につき、フランス側当局と打ち合わせをいたさせております。犠牲者の遺体、遺品等は広い範囲に飛散いたしておりまして、焼けただれた遺体の確認はきわめて困難な模様でございます。トルコ航空の支店、代理店は東京にはございませんし、また、在パリの同空港支店にも責任者が不在の由でございますので、トルコ航空会社との連絡はきわめて不十分であることはたいへん残念でございますが、トルコ大使館に訓電いたしまして、トルコ航空側による本件処置ぶりについてただいま問い合わせ中でございます。在仏大使館には援護体制強化のために連絡事務所を設置いたしまして、万全を期するよう訓電済みでございます。  トルコは、国際航空条約等一切加盟いたしていないわけでございますので、これからの補償問題等につきましては、航空会社と乗客との間の運送契約が一つのめどになるのではないかと考えておりまするけれども、日本側並びにトルコ側の弁護士の確定次第、この問題の話し合いにできるだけ早く入っていただきたいものと期待をいたしておりまするし、その選定等につきましては、政府といたしましても、できるだけ側面から御援助を申し上げるつもりでおります。  以上、簡単でございますが、現状を御報告いたします。
  34. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 ただいまの御質問に対しましてお答えいたします前に、三百四十五名にのぼる多数の犠牲者の方々に対して、心から哀悼の意を表したいと存じます。  いま外務大臣から御報告がございましたとおりでございまして、私ども、外務省の公電あるいはその他の報道機関の報道を集約いたしまして、状況をつかまえているわけでございますが、三十九名といわれる日本人の中には、東海銀行ジェット・エア・サービス株式会社主催によるさつき会の入社内定者のヨーロッパの研修旅行ということであるようでございます。  その内容は、すでに新聞等において御存じかと思いますけれども、東海銀行十六名、トーメン入社予定者が十五名、中央信託銀行六名、千代田生命一名、添乗員一名、世邦旅行者という方が二名、そのほか三井航空サービスの方が一名、東京航空サービスの方が二名のようでございまして、内容につきましてまだ未確認の方もあるようでございます。  以上が、大体今日まで知り得た状況でございます。
  35. 寺前巖

    寺前委員 私は、遺族の方々、被害者の関係の方々に対して手厚い措置ができるように、政府として積極的に乗り出していただくことを心から期待をいたします。  同時にまた、原因の問題についても、一トルコ航空の問題ではございませんので、十分政府として検討していただく必要があるということの要望を最初に申し上げたいと思います。あわせて、日本でも近くこのエアバスが運航するという話を聞いております。昨年の十一月の三日にはアメリカのニューメキシコ州の上空で右エンジンが爆発をして窓ガラスが割れて、そうして乗客の一人が機外に吸い出されるという事件もあったように聞いております。  そういうことから考えても、私どもはこのエアバスの運航については慎重でなければならないと思うのですが、日本で現在エアバスの計画はどのようになされているのか、報告をしていただきたいと思います。
  36. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 エアバスといわれますものの中に、これは俗称だそうでございますが、いろいろな機種があるようでございます。  たとえばボーイング747、それからロッキード一〇一一、それから今度問題の起きましたダグラス10、先生いま御指摘のアメリカで何か問題を起こしたというのはいわゆるダグラス10、今度の問題を起こした飛行機と同じ機種だそうでございます。で、このエアバスというのは、在来機に比べまして安全性もより高い、それから騒音量が非常に低い。また、空港あるいは航空路の混雑緩和対策とか、あるいは増大する輸送需要に対する対策等を考えますと、その有効性も認められて導入をされたわけてございます。現在すでに東京——沖繩間を、日本航空が四十七年の八月からボーイング747というのを就航させておるわけでございます。全日空も、御指摘のように同区間にロッキード一〇一一というのを実は三月十日から就航させる予定になっております。また、四月以降は新規に東京——札幌あるいは東京——福岡間等の国内幹線を中心に、両社ともエアバスを就航させる計画を持っておるわけでございます。まあ大阪空港につきましては、このエアバスは地元の理解を得つつ実施させる必要があるので、地元の御了解なしに就航させるということはさせないつもりでございます。  運輸省といたしましては、先ほど述べましたように、安全性の向上、それから騒音対策、空港、航空路の混雑緩和、輸送力の確保等々の面から有効なものであると思っておりますけれども、さらに、検査でございますとか、あるいは運輸省自体の点検でございますとか、すべての面におきまして核心を突きとめて、その上で、いま申し上げましたような計画を実施させる予定でございますが、いままでの日本航空が就航させておりますボーイング747東京——沖繩間も、四十七年八月以来、いろいろな点で問題になるようなこともまだありませんし、ただ、安全の面において、運輸省は監督の立場から確信が得られましたならば、予定どおりの就航をさせる予定でおります。
  37. 寺前巖

    寺前委員 すでに東京——沖繩間なりに日航、あるいは全日空が近く就航される予定だということをいまお述べになりました。安全性について有効であるというふうに思っているが、核心を突きとめるために、もう一度やりたいというふうにおっしゃっているわけですが、聞くところによると、今度の東京——札幌なり東京——福岡なとで使われるのはダグラス10だという話も聞いておるわけですけれども、問題になったのは、二つともダグラス10で問題になっておるようです。私は、ロッキードの問題についても、ボーイングの問題についても、ダグラス10の問題についても、もう一度安全性というのは十分検討してもらう必要があるんじゃないかと思う。  特に日本の場合、安全性という問題を考える場合に、乗員、乗客の面からの安全性の問題と同時に、空港の存在地域が非常に過密地域の中にあります。そうすると、墜落をするという事故が起こった場合に——今度のパリの場合は周辺が森であるという事情下にあったようですが、日本の場合は、住宅地域にその落下という問題が生まれてくるという問題もこの空港問題をめぐってはあると思うのです。  そういうふうに考えてくると、安全性の確認というのは、一つは、乗務員、乗客の側からの安全性の問題と、空港の所在地をめぐっての安全性の問題と、両面から検討する必要があると思うのです。  そこで、私は大臣にお聞きしたいと思うのですが、核心を突きとめるためにさらにやりたいというのは、具体的にどういうふうに安全性を点検しようとしておられるのか、それが一点と、もう一点は、いま私が言いました二つの面からの安全性についての確認はどのように考えておられるのか、二つの点についてお聞きしたいと思います。
  38. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 その前に、私、先ほど日本人乗客は、御承知のとおり三十九名と申し上げましたが、これは四十九名の間違いでございますから、訂正させていただきます。  御承知のように、言うまでもなく飛行機は、これは私は、すべて、もう輸送機関というものは安全が第一、安全を除いて公共輸送機関はあり得ないというふうに確信をしております。そういう面からいろいろな点で、技術的なものは後ほど政府委員から答弁させることにいたしまして、今度DC10を四月から、入れるというじゃないかというお話でございますが、これはDC10は、まだずっとおくれるわけでございます。日航が入れますのがたぶん五十一年ごろからじゃないかと思いますが、まだその辺はつまびらかにいたしておりません。しかし、DC10である、ないにかかわらず、安全性の確認というのはやらなければならぬ。御承知のように、いままでの、在来の飛行機に比べまして、計器でございますとか、いろいろな面はずいぶん発達しているそうでございますけれども、いまおっしゃるように、飛行機そのものもさることながら、狭い日本の上を飛ぶわけでございますから、そういう点においても、これはもう、片一方でどうこうという問題じゃなくて、両方が両々相またなければいかぬ問題だと思います。森があるからどうこうという問題ではないと思います。  したがいまして、そういう点等につきましては、十分、まず機の安全ということが第一でなければならぬと思っております。  その点検等につきましては、あるいは機の内容等につきましては、後ほど政府委員から答弁さすことにいたしたいと思っております。
  39. 中曽敬

    ○中曽政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げましたとおりでございますが、今回導入されますエアバス、一応近々はボーイングの747SR、ロッキードの一〇一一でございますが、これはいずれも各メーカーが過去の製造経験、幾多の飛行機をつくっておるわけでございますが、そういった製造経験の蓄積を踏まえまして開発いたしました最新鋭機材でございます。そして、機体構造や操縦系統等の重要部分につきましては、かりに異常が発生いたしましても他の部材がこれを補う、あるいは、予備システムを二重三重に備えておりまして、これをもって安全を保つといういわゆるフェールセーフシステムというものを各所に採用しております。と同時に、慣性航法装置、それから高度警報装置、それから自動航行装置といったような新しい技術も取り入れておりまして、在来機種に比べまして、格段に安全性が高くなっているというふうに私どもは判断しておるわけでございます。  このエアバスに対しまして、ただいま先生御質問になりました確認のしかたは、どのような確認のしかたをしているかということでございますが、われわれといたしましては、航空法上の規定に基づきまして、次に申し上げますような措置を講じておるわけでございます。  まず第一番に、これはいずれも米国でつくられました飛行機でございますが、米国の製造工場へわれわれのほうで出向きまして、検査官を派遣いたしまして、そうして設計審査等につきましても、まずたんねんにやっております。そうして一機一機でき上がりますと、この一機ごとにいわゆる耐空性検査と申します安全の検査を実施しております。  さらに運航方法とか整備方法につきましては、技術上の基準というものを設けまして、これは実は航空法に基づきまして、運航規程、整備規程と称する名前でございますけれども、こういったものを定めさせまして、これをわがほうで審査をする。これは大臣認可事項になっておりますけれども、そういった過程を通じまして、安全性の確認をやっておるということでございます。  さらに第三に、運航従事者あるいは整備従事者の訓練とか資格の取得のことにつきましては、質、量ともにこれが確保できるように、われわれのほうで計画を審査するというふうなことをやっております。  第四に、エアバスの就航にあたりましては、航空法上の事業計画変更認可という手続が必要でございますけれども、こういった手続につきまして、安全に関係いたします路線ごとの設備とか、あるいは人員配置の状況等につきましての事業計画の内容を綿密に審査することにしております。  それから第五に、運航開始にあたりましては、事前に運航管理及び整備関係の施設等につきまして、実地の検査をやるというふうにしております。  それから、もう一つつけ加えさせていただきますならば、地上の航行援助施設というのがございます。主として無線保安施設でございますが、これは第二次空港整備五カ年計画に基づきまして、鋭意現在整備を進めております。そういった航行援助施設整備と相まちまして、機材のそういった運航面あるいは整備面、そういったものについての安全性の審査をやりまして、安全確保に万全を期したいというふうに考えております。  以上でございます。
  40. 寺前巖

    寺前委員 私が聞いておるのは、新たな事態が起こっている、この際に、われわれは、輸送第一主義になって、安全性の確保を欠くということになったらたいへんな問題だ。したがって、今日の時点において、もう一度安全性の問題について二つの面から考える必要があるのではないか。  それは、飛行機そのものの問題と、空港をめぐるところの問題と、両面から、もう一度再点検する必要があるのではないかということに対して聞いているので、その点に対して、再度お答え大臣から聞きたいと思います。
  41. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 御指摘のように、二つの問題があると思います。  これは、まず飛行機そのものが安全でなければならぬ、これは先ほど申し上げたとおりでございますし、飛行場等におきましても、いまいろいろな面で、騒音の問題をはじめ、指摘をされておるわけでございますが、そういう点につきましては、それを補うものは一体どういうものがあるかというようなこと等についても、今後管制の問題でございますとか、あるいはまた、飛行機のさらに厳重な点検、調査でございますとか、そういうものを繰り返しつつ、この狭い日本の周辺の、もし万々が一のことに対します安全を確保してまいらなければならない、かように考えておる次第でございます。
  42. 寺前巖

    寺前委員 十分に、この事件を契機として、再度検討してくださることを要望して、この質問は終わります。  次に、先ほどここで田中総理に対する質問がなされていたわけですが、通産大臣にお聞きしたいと思います。  先ほどわが党の林議員から指摘をしておった共同石油の問題があります。  二月二十六日の予算委員会において、共同石油の東京支店が、通産省より各元売りに対し、十二月以降二二%の減産を行なうようとの指示が打ち出されたということを文書の中で明らかにしている。ところが、通産省の担当官は、この席において、そういう減産を行なうような指示は出していないという否定の態度を示している。この二つの事実について、一体どのように考えているのか。事実問題です。会社のほうの提起している問題と通産省が提起している問題、明らかに食い違いが起こっている。そこから国民の中に、政府と業界とのこの関係は一体どうなっているんだ、いろいろな疑惑が生まれてくる。さらに、そのときには御指摘はありませんでしたが、同じく二十六日の当予算委員会における質問の中で、ゼネラル石油が十一月十四日に出したところの千載一遇のチャンスの問題これに対して通産省の「ゼネラル石油(株)の各支店長宛文書問題について」という二月二十日付のエネルギー庁から出ているところの文書を読むと、「十一月二十日のエネルギー庁長官の協力依頼、十一月二十二日の通産大臣と業界代表との懇談等の措置の実施に伴い、同社においてもこれを受けて支店等に指示をしており、この頃からはほぼ通産省の指導にそって行動することとなったと認められる。」という文書報告が出ております。ところが、現にゼネラル石油の人は、この問題の時点よりも、あくる月の十二月八日の文書で、好ましい客と好ましくない客との分類による出荷指示の文書が出ている。おかしいではないか。しかもそれを、いつ撤回したのかということをこの場で聞かれたら、二月六日に撤回したという事実が出ている。そうすると、ゼネラル石油の会社がやっていることと通産省認識との間には違いがあるではないか。これはまた、政府と業界との関係問題に対して、国民の中に大きな疑惑を生む内容になっています。  ですから、引き続いて予算委員会でこの問題は検討されることになるでしょうが、さしあたって、私は、さっきの田中総理に対する質問に引き続いて、通産大臣がこの問題についてどのような見解を持っておられるのか、聞きたいと思います。
  43. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 共同石油の件は、昨年の十一月中旬、共同石油の東京支店、横浜支店、関東支店がその特約店に出した通知文の中に、情勢説明として、十二月の生産を二二%カットするよう通産省指示したことと述べたくだりがありましたが、調査したところ、前記支店が、当時発売された業界日刊紙燃料油脂新聞の記事をあやまって理解して通知文に転記したものであり、全くの間違いでありました。もとより通産省からかかる指示は出しておりません。この事実が明らかになりました。共同石油としては、通産省に右を報告し、陳謝するとともに、関係者を処分し、責任を明らかにした旨を報告に来ております。  事情はいまのような事情でございまして、通産省指示したとか、特に文書で通達したということはございません。  それから、ゼネラル石油の問題につきましては、石油部長から報告させます。
  44. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答え申し上げます。  共同石油の問題につきましては、いま大臣からお答え申し上げましたとおりでございまして、十一月二十日付の共同石油の各特約店に対します潤滑油製品の価格問題に対しての通知でございますが、ここにございました通産省よりの十二月以降二二%の減産指示といったことは、全くの特約店段階におきますところの誤解でございまして、十一月九日の燃料油脂新聞、これは業界紙でございますが、この業界紙に書いてございますその下期分の各社生産が、需給面から見て、一律二二%削るのではないか、こういう観測記事が出ておりました。それをうっかり誤って、この支店が特約店に情勢分析として通知をしたものでございます。共同石油としましては、本店からそういった指示をもとより出していない。各支店におきましても、こういった通知を出しているのは、先ほど大臣からお話しいたしました三店だけでございまして、担当者の全くの誤解に基づく通知であるという報告が参っております。  しかしながら、通産省という名を、確かめもしないでその中に出したということにつきましては、申しわけないということで、関係者の処分を含めまして、責任を明らかにしたいということを申し出てまいっております。  ゼネラル石油につきましては、十一月二十日、大臣が業界に対しまして、先般の緊急対策を十六日に決定いたしました後を受けまして、この難局に対しまして協力方要請をいたしまして、それを受けて、業界のほうもこの事態に対処して、もとより政府のそういった方針に対して協力をするということを約束をしているわけでございます。  いま御指摘の、販売にあたりましての顧客の選択についての指示といった点につきましては、ゼネラル石油といたしましては、末端の段階におきましてこういったいろいろ措置をとっていることにつきましては、その責任をとりまして、先般の通産省の灯油に対します指導価格違反ということとあわせまして、責任者に対する内部的な処分もいたしておりまして、今後かかることが絶対ないように、会社側からも誓約をいたしておる次第でございます。
  45. 寺前巖

    寺前委員 いまの通産省答弁を聞いておりますと、第一番目に、この共同石油の問題については、国会の中で追及された問題について、国会が終わって外へ出て通産省との間に謝罪をするとか、関係者の処分をするというふうに、ここの委員会で問題になった段階でそれを明確にし得ない。一体、これはどういうことなんだろうか。外で問題にしていくということでは、これは、国権最高機関としてのここで調査権を発動してやっている問題との間に、私はこれはきわめておかしなものを感じます。  また、第二番目のゼネラル石油の問題について、ゼネラル石油がとっている態度と、そして通産省がとってきた態度と、十一月の二十日、二十二日の段階以後は指導を受けているというふうに理解しているという問題に対しては、はっきりとここで答弁ができない。私は、このようなあいまいなことでこの問題を過ごしていくということは、許されないと思います。  私はそういう意味において、委員長にお願いをしたいと思います。  参考人としてここに出ていただいた方々が、外へ出て他の措置をまた通産省なりとの間にとられるということは、きわめて疑いを持たざるを得ませんので、はっきりと参考人証人に切りかえていただいて、そして、これらの人々が、ここではっきりと、政府当局とそしてそれらの人たちの提起している問題の真実を見つめ、そして私どもが、ほんとうに国民が納得できるような措置をこの委員会がするということが、きわめて大事だと思います。ですから、そういう意味において、委員長の手において、参考人証人に切りかえられることを要望したいと思います。いかがでしょう。
  46. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 ただいま御指摘の二点につきましては、すでに理事会において協議をすることになっておりますので、それをお待ち願いたいと思います。
  47. 寺前巖

    寺前委員 それでは、そのようにさっそくやっていただきたいと思います。通産大臣、けっこうです。  それでは、私は次の問題に移りたいと思います。  最近診療報酬の引き上げ、すなわち国民の医療、いつでもどこでも安心して国民がお医者さんにかかることができるように、そのためには、お医者さん自身が十分に経営が成り立つような状態でなければならない。だから、そういう意味では、保険関係における診療報酬の引き上げという問題は、お医者さんにとっても重要な問題でありますし、国民にとってもきわめて重要な問題だと思います。  ところで、最近、この医療関係の分野においても異常な値上げが起こっているという事実について、厚生大臣、御存じでしょうか。  たとえば、医療関係でエックス線のフィルムをとります。そのフィルムの値段が上がってきている。あるいはまた、医家向け薬品、保健薬といいますか、この分野においても、従来よりも、お医者さんのところに持ち込まれる薬が急速に値上げが起こってきている、こういう事実について、厚生大臣、御存じでしょうか。
  48. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 今回、二月一日付をもって薬価基準の改定をいたしたわけでございますが、これは、御承知のように実勢価格をもとにしてきめるわけでございまして、私どものほうは、昨年の十一月末を基準として薬価基準の改定をいたしておるわけでございますが、その後、いまお述べになりましたようなレントゲンフィルム等が上がっておるという事実は、十分承知いたしてございます。
  49. 寺前巖

    寺前委員 それでは、この間うち新聞を見ていますと、大衆薬の引き上げに対しては、厚生省として値下げを御指導になっているようですが、この医療関係の保険の対象になるフィルムや、医家向けのこれらの薬品の値上がりに対しては、どのような御指導をなさっているのでしょう。
  50. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 大衆薬につきましては、御承知のように、先般来値下げを勧告したり、あるいは据え置きということをお願いしておるわけでございますが、医家向けの薬品につきましても、そういう事態が明らかになりますれば、そういう勧告をいたしたいと考えておりますが、薬価基準の定められている範囲内の値上がりならば、私のほうは勧告することはいたさない考えでございます。  薬価基準を越えて値上がりするという事態になりますれば、実勢価格と薬価基準との関係がございますから、必要に応じて値下げを勧告するということをしなければならぬであろう、かように考えております。
  51. 寺前巖

    寺前委員 中医協で診療報酬をおきめになるときに、薬価基準、要するに、薬の中におけるところの実勢価格、実際にお医者さんが買われるところの薬代と薬価基準との間には差がある。その差は一体何ぼぐらいあると見られるか。三〇%前後としてみて、そのうちの半分が収入として計算することができるという関係の資料を中医協で配られております。ですから、あの診療報酬を検討する場合に、このいわゆる潜在技術料といいますか、この薬価基準と、実際にお医者さんが買われるところの薬代との間に一定の収入があるという前提に立っての審議をしておられるように私は見ているのです。ですから、この分野において薬代が上がっていくということは、医療経営についてやはり一つの問題だと思います。そうしてしかも、この価格が上がっていったら、次の実勢価格に基づく薬価基準の引き上げに、またこれが影響をもたらすという相互関係を持ちますから、私は、この分野におけるところの薬価について目をおおうわけにはいかないと思います。  昨年の五月だったか、健康保険の改正が国会で問題になったときに、本会議大臣は、いまの薬価は適正であるということをお述べになりました。また、五月十日の衆議院の社会労働委員会では、自由競争によって形成される実勢価格によって薬価がきまっているということを言っておられる。ほんとうに自由競争によって薬価がきまっているんだろうか、この保険の点数が、ほんとうにそういう意味において守られていっているんだろうか、適正なものなんだろうか、私は疑問に思わざるを得ないのです。  そこで、まず最初に公取委員長にお聞きをいたしたいと思います。お手元に先ほど私は資料をお渡しをしておきました。お持ちですか。   〔櫻内委員長代理退席、井原委員長代理着席〕 そこに私は、エックス線フィルムの値段が急に上がってきたということをまず指摘しなければなりません。たとえば兵庫県、大四つ切りのフィルム、これはどこでも一緒だというわけにいきませんが、いままで二十五枚単位のもので三千百五十円であったものがいまでは四千二百円になっています。大阪で調べてみると、三千三百円であったものが四千四百六十円と上がってきております。これはどこの地で見てもフィルムの値段がずっと上がってきているわけですが、そのフィルムの値段が上がってきているのに対して、実際にどのような措置がとられているのか調べてみました。  たとえば日本のフィルム産業です。大手といえば、小西六の写真工業会社か、あるいはまた富士写真フイルム株式会社か、この二つが日本のフィルム会社の大手だと思うのです。日本の市場の圧倒的部分をこの二つのフィルム会社が持っていると思うのです。ところが、十二月の二十八日付で小西六の出したところのごあいさつというのを読むと、四十九年の一月二十一日から価格を改定したいという文書が出ております。そうして、あわせて価格表がついています。また一月になると、富士写真フイルム株式会社と富士エックスレイ株式会社が、「富士X−レイ直接医療用フイルム弊社特約店仕切価格改訂のお知らせ」というのが出て、そこでも「一月二十一日より改訂せざるを得なく相成りました。」として、そうしてそこにはエックスレイ販売連合会の「Xレイフィルム定価表」なるものが配られております。小西六のほうにも同じものが入っていたし、富士のほうにも同じものが入っています。  私はこの二つの事実から考えられることは、一月二十一日という日に、一斉に二つの会社が値上げをするという文書を出しているということと、もう一つは、価格が全く同じであるということ、これを考えると、だれが考えても、同じ日に、同じように一斉に値上げがあるということは、考えられない話じゃないだろうか。そこには談合がなければできない話ではないか。私はどうしてもそういう疑いを持たざるを得ないのです。  しかも、エックスレイ販売連合会という組織は、一体どういう組織なんだろうか。そこの連合会の事務局に聞いたら、私どもは懇親会の団体ですと、こう言う。懇親会の団体が定価表を配るということは、一体どういうことなんだろう。しかも、そこの役員名簿を見たら、その役員名簿の中には、相談役として、富士エックスレイ株式会社の沢田達夫という人が入っている。山田隆一という小西六写真工業株式会社の方が入っている。とすると、これはメーカーが一緒になって相談したということを断定せざるを得ないところの内容ではないんだろうか。どこから考えても、これは独禁法違反のことが行なわれているし、こういう形で、いま保険の関係の問題についても値段が変更されていくということに対して、一般大衆薬に対する御指導はあったけれども、この保険にかかわる分野において指導をされないということについてはふしぎでかなわないわけです。  そこで、公正取引委員会委員長にお伺いいたしますが、この二つのメーカーが行なっていると見られるこの事実について、あなたたちはどういうふうに見られるのか、お聞きしたいと思います。
  52. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私が申し上げたいのは、独禁法違反、特に価格協定、これを公開の場で私のほうに申し立てがございますと、通常の場合に、それは証拠が完全に隠滅されるか、あるいはそうではなくて、自発的にその協定を破棄するといういずれかの結果を招くことになります。  また、私ども具体的に、もし事件として取り上げた場合には、そのことについてあれこれ事実があるかないかということを申し上げられないのですが、たまたまいまお話しのこの事件、エックス線フィルムについてだけ申しますと、これは二社独占といってもいいのです。ほかにほとんどありません。輸入もごくわずかで、ないにひとしい。ですから、二社だけで製造し、製造されたものは販売されているわけでございますから、これはかねてから問題とされているいわゆる管理価格、俗称管理価格と称しております。つまり、正体を把握できない、証拠を把握できないものとして今日まで——実際上はあったかもしれません、全く同じ価格表を同じ一月の二十一日から実施するということは。それに基づいて売るということは、これは建て値だと私は思います。御承知のように、それは実勢価格ではなくて、建て値であると私は思います。ですから、実勢価格はあるいは違っているかもしれませんが、同じかもしれません。実勢価格についてまで協定が行なわれていることもあり得るわけです。  ですから、管理価格でございますから、私はこの際、あえてそういうふうなことを申しますが、カルテルというのは、現行の私どもの持っている法律では、証拠がなければ、事実があってもそれは何ともいたし方ない。それがつまり管理価格。これに対しては、これからの問題として、現在、私どもも法律改正を考える場合にそういう管理価格をどう扱うか、これを検討することといたしております。  ですから、はっきり申せば、管理価格に対して現在は無策である。だけれども、いつまでもこれをほうっておくという気持ちはない。何らかの法律的な措置が必要である。法律が必要でございます。いわば証拠がないカルテルをいかに規制するかということでございますから、たいへんむずかしい問題でございます。  しかし、世界的ないろいろな法律を研究した上で、何らかの対策を出さなければならないと思っておりますが、いまここでいえば、こういうエックス線フィルムのように二社独占というものでありますので、これは従来も実はそういう傾向はうかがわれたわけです。うかがわれたけれども、一回も独禁法違反にひっかかっておりません。ということは、証拠の把握がほとんど不可能に近いということでございます。だけれども、証拠がなければ不可能だから、それを野放しにしておいていいことではありませんので、いま私が申し上げたような対策は講ずる必要がある、こういうことでございます。  事実は、実はもう把握しておるのです、はっきり申し上げて。事実は把握しておりますが手が出ないということでございますので、その辺のところはここでいろいろ——あと、なお薬価の問題についても云々ございますが、私どもは、カルテルを押えようとすれば、証拠の把握ができるかどうかという点が問題点でございますから、あらかじめ予告してしまったら証拠の把握はいよいよもって困難になり、私どもの活動はできないということを申し上げておきたい。  実は先刻、この委員会におきまして具体的な事実の指摘がございました。歴然たる証拠をあげて御質問がありまして、これは実は、事前に自主的に破棄されまして、私どものほうで勧告をすることはできませんでした。結果はそういうことになりますので、やはりこれではある程度痛い目にあわしたことになりません。そこで、自主的に破棄される前に、私どものほうに極秘に教えていただけたほうが、私どもとしては対処しやすい、こういうことでございます。
  53. 寺前巖

    寺前委員 いまの公取委員長の話を聞いておったら、事実は把握しているけれども、証拠が握れないからやってないのだ、そういうお話だと思う。事実を把握しているんだったら、事実の把握に基づく、なぜ直ちに調査を開始しないのか、私は疑問でしかたがない。法律的に弱いというんだったら、法律的に直すという問題について直ちにやる必要がある。公取委員会として案を提起したらいい。それから、この事実について事実を把握しておったんだったら、なぜ直ちに行動を開始しないのか、私は疑問を感ずる。  それからもう一つ聞きたい。厚生大臣は、このような事実が起こっている。公取委員長は、明らかにこれはやみカルテルの疑いがあるということをいま言っておられる。二大メーカーがフィルム界の独占をしているという状況のもとで値上げが起こっている。しかも、こうやって、公然と文書が一月二十一日付をもってなされているという事実について、一体だれも気がつかなかったのか。気がつかなかったとするならば、一体厚生省は何を考えているんだろうか。大衆薬のほうで気がついて、この保険関係の分野において気がつかないという原因はどこにあるのか、私はこれについて厚生大臣から聞かなければならないと思う。それぞれ公取委員長並びに厚生大臣から聞きたいと思います。
  54. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 小西と富士と一月二十一日でございますか、同日付をもって上げたということは承知をいたしております。その両社の間に協定があったかなかったか、それは私たちの厚生省では調べることはできませんので、これは公取の問題だと思います。  問題は、私どもの薬価基準と実勢価格の問題が私のほうの問題なんでございます。私どもの薬価基準というのは、非常に自由に形成される実勢価格を基本として改定を行なう、こういうわけでございます。  そこで、今回両社が上げました四千百円が四千八百円とかいうふうに上げたというこの問題については、それは建て値だと私は承知しておるわけであります。建て値であります。したがって、実勢価格がどうなっているか、お医者さんの手元に何ぼで売られているのか、これが私のほうにはいまのところわかりません。そこで、この次の薬価基準の改定の際には、こうした市場価格、実勢価格を調べるわけですから、その際に調べる考えでございます。したがって、その実勢価格が、四千八百八十円というのは建て値改定、建て値が上がったわけです。ところが、お医者さんは何ぼで買っているのかという実勢価格ですね。実勢価格の調査は、毎年期限を切って一年一回調べる、こういうやり方にして、そして薬価基準の改定を行なう、こういう手順をやっておるわけでございますから、この次の実勢価格の調査の際にこの問題がはっきり出てくるだろうと私は思います。しかし、いろいろお話によって、実勢価格、お医者さんのほうにもそういうふうに薬価基準を上回って売りつけられているようだということがわかりますれば、これはもちろん私のほうは随時追跡調査をいたす考えでございます。
  55. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 客観的な事実がありましても、証拠を捕捉しがたいものは、カルテルとはならないのです。つまり、私のほうが行政処分の対象となし得ないということでありまして、事実は事実でございます。それは同じ日に同じ価格でやれば、たとえ建て値でも、申し合わせたに相違ないと客観的に推定されますが、推量では私のほうでは処分はできません。証拠がなければだめです。もちろんこれは物証がなければ自供も得られないと思います。自供はまず得られないでしょう、打ち合わせをしたと言わなければいいわけですから。ことに二社だけというような場合は、寡占といいますか、寡占のうちのおそらく一番極端なものだろうと私は思います。たいていもう少し多いのですけれども……。二社だけ申し合わせすればいいということは、もう両方とも実は自供しなければ、それっきり何もないし、物的証拠というのはない。この価格表は物的証拠にならないのです。価格表があっても、それは証拠とはならない。協定をした証拠がなければならぬ。こういうことでございますから、私どもの審査のやり方は、少ない人間でいかに有効に回転さしていくか。一つの事件、わりに比較的大がかりな事件がありますと、必ず何人かの人間はそれの取り調べに専属、張りつけられてしまう。同時に、何件かをかかえておりますから、相当な人数がかかっておる。一つ片づけると、今度はあきましたら次のやつに取りかかる。ところが、いまこういう非常に価格の情勢のひどい事態でございますから、申告といいますか、私のほうにないしょで言ってくれるケースが多過ぎるのです。大小いろいろあります。ですから、それを全部処理するということは、とうていいまのところ不可能でございます。私がいかに部下を酷使するといわれましても、それはできるだけやりますが、そういうどうしても証拠が得られそうもないものはあと回しにならざるを得ないのです。ですから、私はこれは法律対策として考えざるを得ない。それはしかし、はたしてどういう法律になるかということはいまから明言できません。できませんが、できるだけのことをやりたい。非常にむずかしい問題でございます。  ですから証拠が、客観的事実があるではないか、それをなぜほうっておくのかとおっしゃっても、証拠が把握できるかどうかという可能性を相当下調べで検討しておるわけです。これはもうとてもだめだということになっても、それに反して、相当な立ち入り検査をしながらあと延々と調査していく、これは私のほうの効率を非常に害することになる。したがって、早く言えば管理価格でやっておるものは、悪いことしながら得をしておるということになります。なりますけれども、私どもの現在の体制からはいかんともしがたない事実である、こういうことであります。
  56. 寺前巖

    寺前委員 公取委員長、たとえばエックスレイ販売連合会というのがこういう定価表を配るという段階になってくると、これは事業を示しておるわけでしょう。そうすると、こういう連合会が懇親会ということでいいんだろうか、独禁法に基づいて、届け出を必要とする段階のものになるんじゃないだろうか、そのこと自身においても、私はこれは疑問があると思いますよ。  ですから、ほんとうに公正取引委員会が調べる気になったら、どこからでも調査のしかたはあると私は思う。私はこれは疑いが明らかにあるといわなければならぬと思うのです。その点について私は、しかたがないということで公取委員長がこれを済まされるということについては、理解に苦しみます。それが一つ。  それから厚生大臣は、建て値の改定であって云々ということを言われました。しかし、一月二十一日付をもって、独占的に占めている二大メーカーが改定をやるという行動が起こったというこの事実について、知っていたのか知らなかったのか、私はこのことが大事だと思うのです。二大メーカーがその日をもって行動に移っているという文書と事実が起こっているということにおいて、知ったら、その事実について、これは自由競争のあり方ではない。自由競争のあり方でないということが起こった以上は、厚生省としても放置できなかっただろうと私は思う。だから、あなたたちはこれについて知らなかったのか、はっきりしてほしいと思うのです。
  57. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 一月の二十一日付で両社が上げたことについては、事前には承知いたしておりませんでした。
  58. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私は、いま初めて、一月二十一日付でエックスレイ販売連合会が届け出をしたという話を聞きました。これは実は独禁法上の届け出義務があるのかどうか、私、正直に申しまして、ちょっといまその点はっきりいたしません。任意団体でございまして、法人格もないわけです。これはエックスレイの販売業者の集まりで、この場合には構成事業者は販売業者で構成事業者は三十名ある、こうなっております。しかし、そういうものの届け出があるとかないとかということに関係なしに、独禁法上は問題となし得るわけです。  ですから、いまここで私は、三社メーカーが独占である、その二社が実質的にこれらのものを牛耳っているものだと思います。販売会社が実権を握っているというふうには思いたくはないのです。実際は二社がやっているのだ。そこで、この販売会社のほうを幾らたたいてみても、結局はそのメーカーのほうからこういう値段にしてきたと推量されるのです。  ですから、届け出があった、なかったということはあまり重要なことでなく、従来でも、法人格を有するものよりも任意団体が大部分でございます。それが、懇親の目的だと書いてあって、実際はカルテルの温床になっているというケースはまあ間々あります。間々というか、かなり多いだろうと思います。何しろ会合が公然と開けるのですから、そういう場所で、今度値上げについてはどうしようかというふうな話し合いが行なわれる可能性は十分にある。場合によっては、私はそういう任意団体に対しても解散を命じたし、あるいはこの間の石油化学の関係ではポリオレフィン懇話会は自発的に団体解散の申し出がございました。それはそれで認めることとしましたが……。  いずれにしても、いまいろいろある業界団体というものは、表面上はお互いの懇親の場だというふうなことを言っていますが、しばしばそういうカルテルの温床になることがある。しかしこれの場合は、私は、メーカー三社が非常に強過ぎるから、二社独占であるために、まあそれの言うことを聞いているのじゃないかと推量しますが、こういうことを私が申し上げることは、ほんとうは適当ではないのです。こんなことについて推量を交えたことを言うのは、適当じゃないと思いますけれども、具体的にここにいま問題にされてしまったので、そういうことをあえて申し上げざるを得ない。
  59. 寺前巖

    寺前委員 ですから、公正取引委員会委員長が推測されるとおりですよ。エックスレイ販売連合会というのは、役員の面からも、そういうような二人の大メーカーの代表が入っているし、また、このエックスレイ連合会の中に大メーカーのまさに直系というところの販売会社も入っているわけです。これはまた市場を大きく握っている販売会社ですね。  ですから、そういう面から見ても、明確に、その販売連合会というものが、二大メーカーの意図を体して値段の相談をやっているという結果が、こうやって文書になって出ている以上は、その団体自身も、これは届け出の義務の面からも、調査をやろうと思ったらやることができると私は言っているのです。ですから、この二大メーカーを中心にして、一月二十一日付でもって値上げをするという文書をも出され、現実には、そういう値上げがなされたという事実に基づいて、これは直ちに調べてもらう必要がある。そして同時に、値上げ前の価格に引き下げるように指導してもらう必要がある。厚生大臣は、一月二十一日までは知らなんだ、それ以後知ったら、なぜ直ちに、自由競争の面から見てもおかしいということで、そのことを問題にされないのか。いまからでもおそくないと私は思います。  厚生大臣は、大衆薬に対してあのような指導をされたのだから、この分野においても指導されてしかるべしだと思う。あらためて私は、指導されるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  60. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 厚生省の関与いたしますのは、薬価基準と実勢価格がどうなっているかということを調査することから始まるわけでございます。  先ほどの数字は建て値の改定でございまして、実勢価格がどういうふうになっているのか、四千八百円に上げて、実際はお医者さんの手元にもっと安く入っているかもしれません。ですから、そういう実勢価格の追跡調査はいたすことにいたしたいと思います。
  61. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 立ち入り調査をしてやることは、もうおそらく手おくれだと思います。手おくれでございます。立ち入り調査をして、つまり四十六条による調査であっては、もうこれは証拠は把握できません。しかし、管理価格としまして、あまり明白な、早く言えば、非常に悪口言いますけれども、少しあつかましいんじゃないかというくらいに思うのですね。同じ表を同じ日から実施するということを、富士写真と小西六でございますな、この二社が通達を出すということは、いかにも独禁法をなめ切った態度であるということは間違いない。これまででも実はそういう管理価格はあったわけです。証拠が把握できないからといって、それに甘えて、このようなあつかましいといいますか、そういう行動をとることに対して、われわれは十分警告を発したいと思います。  そういう点では、証拠の把握は私は不可能と思いますけれども、しかし公取として、こういった行動は非常にわれわれとしては、要するに納得できない。根拠はありませんよ、証拠がないのですから。ありませんけれども、外見から見れば、だれが見ても、要するに裏に隠れた打ち合わせがあったとみなされるわけですね。これはわが国だけではありません。やはり世界にちょいちょいある、そういう問題であります。わが国でも幾つかの業界がございますが、しかしこの問題については、そういうふうに厳重なる警告を口頭で、これは文書によってやることは不可能でございますが、口頭によって、両社を呼んで厳重警告をしたい、そういうふうに思っています。
  62. 寺前巖

    寺前委員 公取委員長が厳重に警告をしたいというほど、自由競争でないということは、歴然たる事実だ。自由競争でないことでもって、あなたは薬価基準をきめる場合には、自由競争に基づいてという前提で、昨年の健保論議のときにおっしゃっていました。ところが、現実には、自由競争と思えないという事態が生まれてきている。これに対して、厚生省は黙っているのですか。さきの御答弁だったら、私はそういうふうに聞こえるのですが。やっぱり自由競争でないんだから、そういうやり方について、厚生省としても、たとえそれが薬価基準の範囲内であっても、そういうやり方をやっていることに対して、監督指導する機関としての厚生省が黙っているというのは、私はやはり解せない。国民が納得できなかろうと思うのです。あなたはどう思いますか。
  63. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、そういう疑わしきものがあるということであれば、直ちに私は実勢価格の追跡調査をいたしますと、こう申し上げておるわけでございます。  そして、その協定のように話し合いをして上げているのか上げてないのか、これははっきり出てきますから、それによって勧告するなら勧告する。まず実勢価格を把握する、これがまっ先にやるべきことだと思います。さっそく追跡調査をいたしたいと思います。
  64. 寺前巖

    寺前委員 かなり悪質なようだということについて公取委員長からお話がありました。  私は、大蔵大臣にお聞きしたいと思うのです。  この富士写真フイルムに対して、四十八年九月現在の有価証券報告書を見ると、かなり金融面においてもお金が出ております。小西六についても出てます。たとえば日本開発銀行から二十七億ですか、年金福祉事業団から三千八百六万円、住宅金融公庫から二千八百二万五千円、農林中央金庫から五千万円、これは富士写真フイルムに出ているお金です。あるいはまた、小西六に対しても、日本開発銀行から七億、公害防止事業団から二千五百五十万円とか、厚生年金福祉事業団から三千三百五十五万二千円とか、日本住宅公団から千七百二十三万九千円というふうに、長期、短期の融資が出ております。  私は、こういう二大メーカーでもって市場を握っている中で、だれが考えても不当なことをやっているというふうに思われているこういう企業に対して、金融を今後も引き続いてめんどうを見るということになるのかどうか、大蔵大臣の見解を聞きたいと思います。
  65. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 こういう物価のむずかしい時節に、不正、不当の行動をとるという企業に対しては、私は、これは経済的制裁はあってしかるべきである、そういうふうに考えるわけです。  その方法はいろいろあるわけでございますが、金融につきましても、私は、政府金融というようなものにつきましては、これは停止とか、そういう方針で臨むべきである、こういうふうに思います。ただ、その不正、不当の行為をなしたかどうかということは、会社の名誉にも非常に重大な関係がある問題でありますので、その判定はかなり慎重にしなければならない、こういうふうに考えるわけであります。  そういう反社会的行為をした企業につきまして、どういうルールで、あるいはどういう基準で金融上の制裁を加えるかということについては、いま関係各省と打ち合わせをしておる、そういう段階でございます。
  66. 寺前巖

    寺前委員 時間の都合もありますので次に移りますが、いま保険の分野の一つであるエックス線フィルムの問題についてお聞きしましたが、さらに薬そのものの問題においても、保健薬というものの占めている位置が、医薬品全体の中では八割から占めています。しかも、医療費の四割余り、これが薬という実態にありますから、ですから、薬の問題をここで原価との関係でずっとやはり一定の適正なものにしないことには、保険そのものの掛け金が上がってきますから、そういう意味では非常に重要な問題だと思うのです。  そこで、さらに薬の分野について聞きたいと思うのですが、T・C懇話会というのを大臣は御存じでしょうか。大臣が御存じなかったら担当の局長からお聞きしたいと思いますが、T・C協定とかT・C懇話会というのは市場でよく使われていることばなんで、これについて御存じかどうか、お聞きしたいと思います。
  67. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 薬務局長をして答弁させます。
  68. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 お答えいたします。  T・Cというのは、おそらくテトラサイクリンの意味だろうと存じますけれども、現在テトラサイクリン懇話会というのは、私の承知しております限りでは聞いておりませんのですけれども、そういう団体があるということは承知いたしておりません。
  69. 寺前巖

    寺前委員 たとえば、ここに社会保障研究所の役員をしておられる有名な方ですが、地主さんの本があります。この地主さんの本を読んでみると「大手メーカーの間で、たとえばパス懇話会、ペニシリン協会、ストマイ懇話会、T・C懇話会といった薬品別の製薬業者間の話し合い団体がつくられ、ここで価格に関する協議がおこなわれていることは疑いない。大手メーカーの生産する多くの医薬品には、このようにして一種の管理価格が形成されているのである。」という文書が出ているのです。同じような内容について太田秀さんという人の書いている「くすりの秘密」という本の中にも、そういう問題が出てくるのです。  T・Cといえば抗生物資のことを問題にしているわけですが、この抗生物質の分野においては、昔からこういう協定がなされて、何というのですか、生産調整とか価格調整をやっているということは、これらの分野の人の間では有名な話で、現に文章にもなるぐらいになってきているわけです。ただ、歴史的な時点として、そのT・C懇話会が新たなグループ形成として発展してきているようではありますけれども、歴史的にはこれは非常に有名な話になっているわけです。  そこで私は、この抗生物質の問題について、ちょっとお聞きしたいと思うのです。というのは、抗生物質というのは、いまの医薬品の総生産の中で一六%という額を占めているということがいわれているわけです。すなわち広く使われている薬にクロマイという形でいわれているわけですが、このクロマイが二百五十ミリグラム一単位が薬価基準で二十五円というふうに今日押えられていますが、いままでこのクロマイは実勢価格として六、七円のものであるというのが大体実態であったわけです。それが年末から一月にかけて十円になり十五円になり二十円になり二十五円になって、中には三十五円、目一ぱいになったという事態まで生まれてきているわけです。ですから、お医者さんにとっては異常な値上げを目の前に見せつけられて、しかも、この薬は全体の薬の中で広く使われている薬として、やはり注目に値する薬なんです。  なぜそういうふうになったのか、私どもは疑問を感ぜざるを得ないわけです。原料高なんだろうか。関係者に聞いてみると、原料高というふうにはそう簡単には言えない。それじゃ一体何なんだろうか。関係者の間でいわれているのは、バルクがなくなるといううわさが出てきて、そこから急速に、いまのうちに買っておかなければならないよという話が伝わり、そして、急速に物の値段が上がってきたというふうにいわれているのが、大体の実情のようです。  そこで、私はこのクロマイの問題についてお聞きをしたわけですが、お手元に配ってある資料です。そこに一枚の資料をお配りさしていただいております。ごらんいただきたいと思います。「C・I生産状況表」、この「C・I生産状況表」というのは、クロラムフェニコールの注射液がどのように生産されているかという状況表です。その生産状況表の、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16と左側に番号が打ってあります。暗号数字が書かれておりますので、私は、最初これをいただいたときに何のことかわかりませんでした。C・Iというのですから、これはクロラムフェニコール注射液の生産状況であろうということはわかるのですが、7、8、9、10……がわからなかった。ところが、日本抗生物質学術協議会というのがあります。日本抗生物質学術協議会というのは、予研の方が理事長で、そうしてその会員の中には、学者、それから関係の製薬メーカー、そして厚生省の局長、課長の方々が四十八年の六月の名簿を見るとずらりと名前が並べてあるのです。その日本抗生物質学術協議会というところから毎月のごとくに抗生物質生産量という、こういう冊子が配られているんです。その一部分はそこに抜粋して入れてあります。この冊子を見ると、どこの会社がどれだけの量を生産しているかというのがわかるのです。  これをここの中で当てはめて調べていくと、七番というのが三共だ、八番が山之内だ、九番が藤沢だ、十番が東洋醸造だ、十一番が住友化学だ、十二番が協和醗酵だ、十三番が日本化薬だ、十四番が武田だ、十五番が明治製菓だ、十六番が富山化学であるということが、この数字から想像することができるようになるんです。  そうして次に、それぞれの項の中に書かれているA、B、C、D、E、Fというのは、一体何だろう。これをまたずっと考えてみると、Aはその月におけるところのワクが書いてある。Cが生産ワク、すなわち前月のワクの残がFです。そうしてこのFとAを足したものがCという形であらしれる。そうして、Dというのは、その中でどれだけの生産実績が生まれたか、合格状況を示す。そうしてD1、D2はそれぞれ一般注射とゾルを示す。Eはワクをオーバーした場合に凍結するという数字が出ている。Fはいま言ったとおりです。  こういうことで、この単位はグラムであらわされるところの内容だ。よくよくこの生産状況の表を見ていると、十四番が、すなわち武田が、一月、二月、三月と生産についての凍結をさせられているという事態がその数字の中から出てくるわけであります。  私はこの表を見て、実はぞっとしたのです。生産状況について、これらの十社がまさに日本の抗生物質の七割からを占めると私は思うのです。それらの大手の会社がこのような生産調整をやっているというこの結果表について、これで自由競争で日本の薬がやられているというふうに見ることができるのだろうか。生産調整というのは、一体何のためにやるのだろう。生産を調整するというのは、価格を維持するために生産調整というのをやるということは、だれの目にも明らかだと思うのです。私は、このような生産調整をやっている表が出てきているという事実に対して黙っているわけにいかないのじゃないだろうか。  ここで厚生大臣に、こういう生産調整がやられているというこの結果表について、何のためにこのようなことがやられているというふうに大臣は思われるのか、お聞きしたいと思うのです。
  70. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 ただいまこの数字を実は見たばかりでございまして、生産調整をほんとうに行なわれたのかどうか、実は私も承知してない、いま先生のお話で初めて知ったわけでございますから、先生のお話を十分私も調査をいたしてみます。
  71. 寺前巖

    寺前委員 公取委員長さんに、生産調整をやられているというふうに見られるのですが、どういうふうに思われるか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  72. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ただいま拝見したばかりでございまして、たいへん込み入った表でございます。読み方も、いまちょっと承っておりましたけれども、私、よくはまだ理解しておりません。  それから、数字を横に書いてあるのは、月を追って書いてあるのだ、縦の番号は、それは会社名だとして、月を追った中でいま御指摘があったのは、武田とおっしゃった、武田製薬ですか。(寺前委員「十四番」と呼ぶ)十四番と言われましたか。これだと思うのですが、ほかの分につきましては、数字が毎月変わっておりますですな。ほかの会社の分ですね。もし会社を示すとすれば、武田については、ある部分が横ばい数字になっているのを私は見ました。しかし、ほかのものはかなりふえているのが多いように思うのですが、そうだとしますと、武田一社が生産調整しても、これは業界としての生産調整には何にもならないので、生産制限になりませんから、独禁法上の不当な取引制限に当たる数量カルテルというふうなことにはつながらないと私は思う。武田が何らかの理由でずっと増産をしないでいたという事実は、確かに御指摘のような大体傾向が見られます。その他はそうでないように私は拝見いたしましたが……。
  73. 寺前巖

    寺前委員 これは薬の社会にはいわゆる先発特権というのがあって、新薬を開発した場合には、三年間独占的にそれを維持していくという権利を持っている。ところが、それが済んでいくと、その先発特権を持っているところの社を中心にして生産制限を全体としてやっていくというのをお互いに保障するというふうにいわれているのです。そういうところから、あとから生産をやろうとしても、先発特権を持っているところが、その地位を保持するために、他の会社に対する制限を加えていくということを協定し合うという、そういう疑いがある。そこにちょっとほかの、先ほどのフィルムとは違った形態がこの薬の分野には行なわれているというふうに見られるわけです。ですから、この生産調整については、そういう意味から、やはりこれが生産調整をするというのは、価格を維持するためにこういう制限を他の社に加えながら進めているのだということから、この分野について、厚生大臣は先ほど調べたいとおっしゃっているのですから、私はぜひとも調べていただきたい。特に、今日製薬協という組織がありますが、そこへ行ってもらったらわかります。製薬協のあの建物の中で、C注会とか、CP実務委員会という形でもって会合が開かれております。たとえば、去年の十月の二十四日、C注会があった。そこで価格の相談をやっている会合を開いている。私は聞いている。あるいは、CP実務委員会というのが、十一月十九日にやはりそういうようなことをやっているのだ。価格の動向について話し合うということがやられている。そういうことを考えると、私どもは、これはたった一枚の表ではあるけれども、そこからもたらされているところの疑わしき内容について、徹底的に調べていただきたいということを願うものであります。そうして、いまどんどん値上げになっているところのこの薬の状況についても、大衆薬だけではなくて、保健薬の分野において、こういうふうにして値上げをされていきつつあるという姿に対して、私は厚生省が黙っていないように十分な調査を願いたいと思うのです。  この点について、念のために、もう一度厚生大臣公取委員長にお調べを願いたいということを提起したいと思うのです。
  74. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、たったいまいただいたばかりの資料でございますので、私も判断のしようがございませんから、十分調べてみますと、こうお答え申し上げておるわけでございます。  そこで、薬の問題につきましては、私のほうの考え方は、御承知のように、実勢価格をもとにし七薬価基準というものをきめ、その薬価基準の範囲内においてならば、あと多少お医者さんの手もとでもうかる——もうかるということばもおかしな話ですが、潜在報酬になってもやむを得ない、こういう前提で動いておるわけでございまして、その点は十分御理解いただけると思います。
  75. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私どもの現在の立場から申しますと、これらについては非常に専門的な事柄であり、会社の数も多い。それらについてみんなバラエティーがありまして、いまここで数量カルテルの疑いあり、それから価格カルテルの疑いありと公然とおっしゃられましたので、証拠の把握は、私はまず絶望的だと思います。  ただ、調査につきましては、厚生省のほうでこういうことを実態調査をなされまして、それによってわれわれのほうがやはり反則の証拠あり、違法の証拠ありということになりますれば、調査にとりかかることは考えます。しかし、いまのところでは、私どももいま何らの申告がありませんし、また、こういう特殊な分野について私どもがやるとしますと、しろうとがこういう問題に手を出すのはなかなかむずかしい問題でございますから、厚生省の調査を待って考えたいと思います。
  76. 井原岸高

    ○井原委員長代理 もう時間ですよ。
  77. 寺前巖

    寺前委員 もう時間ですか。それでは最後に締めくくりだけやらせていただきます。  私は、お聞きをしたいことは、まだまだ一ぱいあります。問題は、石油業界だけではなくして、こういう分野を見ても、いろいろな分野で便乗値上げが起こっている。特に医療面というのは、人の命を預かる分野です。この分野における便乗値上げというのは、人の命を食うところの悪徳商業だといわなければならない。そういう意味においては、ほんとうに政府が真剣に、これらの便乗値上げをやっていることに対して徹底的に調査をして、価格を引き下げさせるということがきわめて重要です。そういうふうに思うならば、私はほんとうに原価を公表するという立場から見なかったら、実勢価格云々でこの価格を見ていこうという、いまの薬価のきめ方そのものにも問題があると思います。しかも、この点をあいまいにして、診療報酬が上がったからといって、今度は保険の料金をまた上げるというようなことをやられたら、国民はたまったものじゃありません。だから、昨年の健康保険法のあの改正論議のときに、診療報酬が上がったら、自動的に弾力条項でもって保険料を上げることができるんだ、ああいうきめ方に対して国民の批判が出たのはそこです。  ですから、国民のこの批判にこたえるためにも、はっきりと、この分野に対するところの調査を徹底的にやってもらうことを要望して、私の発言を終わりたいと思います。
  78. 井原岸高

    ○井原委員長代理 これにて寺前君の質疑は終了いたしました。  小沢貞孝君。
  79. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 私は、最初に景気の先行き、これはずっと長い階段の途中の踊り場であって、少し一服状態で、その踊り場を過ぎたらまた果てしもなく上がるのか、踊り場でそのまま平らになっていくのかという、何かいろいろの指標を見ると屈折点に立っている、こういうように見られるわけであります。そこで、大蔵大臣経済企画庁長官にこの先の見通しについてお尋ねをしたいわけであります。  日銀券は、昨年の対前年増加比率二七・九、二七・幾らというようなときと比べて、二〇・一%、あるいは企業の手元流動性比率は一・三二、一・三一、去年は一・二八、一・二二、どうも十二月は〇・八五というように急に下がってきた。こういうようなことは、やはり景気が相当引き締まってきた、こういうように見受けられるわけであります。それから、われわれがまた地方において建設資材等の出回りを見ると、なるほどこれは市況商品についても思惑買い、そういうものがなくなって、たいへん出回ってきた、こういうように、実感としてはなるほど景気はある程度ここで一服状態になってきたごとく見受けられるわけであります。いろいろの指標がそういうことを示していると思います。確かに、市況商品の価格も、これは一々ここで読み上げませんけれども、ほとんどがもう横ばいか下落、こういうたいへんけっこうな事態でありますが、まだこの先たいへん不安ないろいろの問題を控えているわけであります。  これはあとで申し上げるとして、大蔵大臣及び経済企画庁長官、この景気の現時点をどう判断するか。最初に言われた、三月がめどであるというそのめどに差しかかったのか、その後修正されて四、五、六月ごろだ、こういうように言われるが、いまの時点に立って一体どういう見通しを立てるか、それぞれお答えをいただきたいと思います。
  80. 内田常雄

    ○内田国務大臣 まあ、どちらから先にお答えしてもよろしいのでございますが、私から総括的にお答え申し上げます。  小沢さんがおっしゃられましたように、最近の経済の諸指標は、一時と違いまして、物価をはじめ、非常に鎮静の方向をたどってまいってきております。ことに卸売り物価、一両日前に発表されました二月中旬の物価につきましては、小沢さんがお述べになりましたように、十六項目ぐらいの項目のうち、十項目ぐらいは、これは微弱ながら低落の方向を示してまいりまして、二月上旬と持ち合いというようなことになりました。また、私どものほうで常に調査をいたしております設備投資、あるいはその先行きの機械受注なども、最近に至りまして非常にそのペースが落ちてまいってきております。また、日銀券などにつきましても、御指摘のとおり増加いたしておりますが、その増加度合いというものは、昨年の暮れからことしの一月等にかけまして、平均残高などがかなり落ちてまいってきております。また、企業の手元流動性といわれますが、毎月の売買高に対する預金とか現金の手持ち高というものもかなり引き締まってまいりました。これは要するに、総需要抑制策がだんだんきいてまいった、こういうことに私どもは判断をいたしておりまして、かねて私どもが申し上げておりましたように、何とか、できればこの春ぐらいまでには、おそくてもこの夏ぐらいまでには、物価の動乱状況を鎮静させたいという方向に来ているものと判断をいたします。  ただ、これもきっとお話があとからあるいはおありになるかもしれませんが、原油の日本に入着いたしますものが、この一月下旬から本格的に高いものが入ってまいりましたので、いまの石油製品の通産省の規制価格と、それから原油の入着価格とはまさに逆ざやにございますので、これに対しては、当然しかるべき是正の手を打たなければならないわけでございますが、それが万一、他の生活関連資材とか国民経済の基礎物資等に影響をして、その方面の高騰をあおるというようなことになりますと、いま申し述べましたような鎮静化の諸情勢が、またひっくり返ってしまう心配もございます。  それに加えて、国際的には、いろいろ食糧など、あるいはその他の物資につきましても、高いものもまだあるようでございますので、それらの影響がどう出るか。しかし、この高物価、まあ日本ではそういうことばは使わないのですが、世界的にいわれておるインフレの抑制、そういうことが世界的にも行なわれておりますから、いままさに私どもが立っておる状況は、寒流と暖流が交差するようなそういう事態に立っておりますので、せっかく鎮静した状況が、この暖流に押し戻されるというようなことであってはならないと考えますので、私どもはじめ、政府の各部局でそれぞれ力を合わせましてこの状況をさらに進めてまいりたい。  ただ、問題は、ジレンマといいますか、トリレンマといいますか、スタグフレーションの問題とか、あるいは物価、物資の需給などの問題がそれぞれ矛盾の要素を持っておりますので、物価を押えていくあまりに、また他のいろいろの国民生活や日本経済の将来にとって困った事態が起こってまいらないように、そういうことも配慮しながらやらなければならない大切な時点に差しかかっておると判断をいたしております。
  81. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 企画庁長官からお答えしたことで大体尽きるのですが、とにかく総需要を抑制する、それを総合的に進めて三カ月になるわけですが、私は、この政策の効果がやっと表面化してきつつある、こういうふうに見ております。つまり、この二月中旬の上昇〇%という傾向を示したわけでありますが、総需要抑制政策をこの調子で進めてまいりますれば、私は、そう遠くない時期に、もう物価は鎮静化する、もう先高見越しというようなことを考える人がなくなる、こういうふうになると、これは確信をしています。  ただ、その前途をさえぎる阻害要因というものもあるわけなんです。  これは一つは、企画庁長官が触れましたが、原油の価格が高くなった、それにつれまして、石油業界の元売り価格をどうするかという問題があります。それともう一つは、私は春闘だと思っています。この春闘の賃上げ幅の問題もありますが、最も私が憂慮しておりますのは、これが交通運輸機関までストライキとなって波及する、あるいは海運のストというような事態になる、そういうようなことになると、これは相当大きな物価政策へのはね返り、こういうことになってくるんじゃないか。その辺がなだらかにいくかどうか。石油につきましては、政府は全力を尽くそう、こういうふうにいま努力をしておる最中でございますが、春闘のほうは、労使の協力によりまして、これは何とか、こういう大事な際でありますので、良識ある解決という方途が見出せられないものかと、神に祈るような気持ちで念願をしておるわけであります。  いずれにいたしましても、さような阻害要因を順調に乗り切って、総理が、おそくも夏ごろまでには物価を安定させたいというふうに言っておりますが、そのとおりにいたしてまいりたい、かように考えております。
  82. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは阻害要因、私はいま二つ、三つ聞いたわけなんですが、通産大臣ちょうどお見えですから、ついでに私は、阻害要因の一つになろうと思いますから、通産大臣にお尋ねして、それから入りたいと思いますが、二月二十二日の、まず三月中は価格凍結、主要資材三十ないし四十品目、それから財界と総理が二月四日に会っていろいろ話をしたときに、値上げは来月まで——二月ですから、来月までは自粛、つまり三月中は自粛、それからありとあらゆる報道は、三月、四月までは自粛、値上げ待ち、こういうようになっております。通産大臣にお尋ねをしたいのは、主要資材三十ないし四十品目三月中は価格凍結、こういうことですが、その先行きはどうお考えでしょうか。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 三月、四月といわず、できるだけ長期にわたって、できるだけ多くの物資について、価格を引き上げないように、政府全体で努力していきたいと思っております。
  84. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは努力をしたい、こういうことなんですが、前途の阻害要因、いま二つ三つ触れられました。だがしかし、海外市況を見ると、ロイター商品相場指数の推移は、最近は戦後史上最高の記録であります。これは先ほど経済企画庁長官もちょっと触れられたようですが、史上最高であります。二月二十一日史上最高を記録しておるわけであります。こういう阻害要因もあります。  それからまた、原油の値上げがいよいよ現実的な問題になってくると、いま通産大臣は、その先についてはできるだけ押えよう、こう言うけれども、もうあとくびすを接して石油製品、化学製品を上げなければならない、電力も上げなければならない、鉄鋼もアルミも、そういうようなぐあいにくびすを接しておるんではなかろうか、こういうように考えます。それから、よく大蔵大臣が言うように、史上最高の減税だと言う、それもまた実施されよう、こういうような幾つもの悲観的要因があるので、私が判断をするならば、これは限りなくのぼっていく階段の、いま三月は、ちょっと途中の踊り場にいるだけで、四月、五月以降はまた第二次値上げ、去年の十一月から十二月、一月にかけた第二次の値上げが襲ってくるんではないか、こういうように判断するわけです。  この前途の阻害要因について、いま少し解明をして、そういうことはないんだ、こういう自信がおありでしょうか。
  85. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 商品の末端価格につきましては、これは、私はもう言っているのですが、正常の価格じゃないんだ、昨年の暮れに各商品が暴騰をしておる、これは価格が上がったというようならち内の問題じゃなくて、むしろこれは投機相場である、相場である、こういうふうにさえ考えられるわけであります。つまり、経済、物価が先高である、この際買っておけば先が高くなる、もうけが出る、こういうようなことから、各商品について競って値上げをする。その値上げは、経済の原理原則から全く離れまして、投機的な要因、投機相場である。物価というものは、各商品について見ますれば、コストと適正利潤、そういう生産費要因で一つの基準がきめられる、それに対して需給の関係が響きまして、それに若干のフレがある、その程度が適正な物価と思うのですが、そういうコストだとか適正の利潤だとかにおかまいなしに暮れの物価は引き上げられちゃった。つまり水ぶくれであります。たいへんな水ぶくれになっておる。鉄材の主要商品なんかにつきましても、五万円足らずで出ている、それが末端では十一万円もする、こういうような状況でありまして、たいへんな水ぶくれがある。これはなぜそういうふうになったかといえば、先高であるというインフレマインドというものがそうさした、こういうふうに見ておるのですが、先安くなるんだ、こういうふうになりますれば、みんなが、土地にいたしましても、あるいは鉄材にいたしましても、繊維にいたしましても、それを放出するようになる、そこで水抜きができる、こういうことになっていくんだろうと思います。  そういうことで、総需要抑制政策を進めていきますれば、経済は不況になります。しかし物価は先安になる、こういうことになり、各商品とも軒をそろえて下降傾向に向かっていく、こういうふうに思うわけであります。ただ、それを阻害する要因というのが、それは先ほど申し上げたとおりあるわけですが、何とかしてこの阻害要因を順調に乗り切って、そして経済動向を鎮静化という方向へ大きく転換させていきたいし、また、させていくことが可能である、かように考えております。
  86. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 それは、願望を示すものだということに私は考えるわけです。だから私は、先ほど言うように、長くどんどん上がっていく物価の、いま三月にかけては踊り場に少しいるだけで、そのあとはまたたちまち上がるんではなかろうか。たとえば通産大臣が、今月だけ、三月一ぱいだけは重要資材について値上げを凍結する。田中総理が先月財界に要請したのも、三月だけは待てよ、こういうことであります。あるいは、その他生活物資価格を凍結、百貨店、スーパーを指導、これも当面四月末まで、こういうぐあいにみんな言っているわけであります。そのほかに阻害する要因は、ベアもあるでしょう、あるいは海外ロイター商品相場指数の推移が戦後最高というような、こういう要因を考えるならば、いま経済企画庁長官も大蔵大臣も、あるいは通産大臣も言うのは、願望であって、そうはいかない、そのあとはまた限りなく上がる前夜にある、あらしの前の静けさだ、こういうように私は判断するわけで、まだ私を納得させるだけの、この先もだいじょうぶです、こういう御答弁にはなっていない、こういうように考えるわけですがどうでしょう、もう一回……。
  87. 内田常雄

    ○内田国務大臣 ちょうどいま私の手元にロイター商品相場指数が届けられました。これは小沢さん御指摘のとおりまさに史上最高でございますが、先ほど私も触れましたように、日本ばかりでなしに、むしろ諸外国ではインフレということばを使いながらインフレ抑制の努力を続けておりますから、日本で私どもがやっていると同じような、私がさっき例に申しましたような寒流の波というものも、必ずこのロイター相場指数にもアプライされていくことと私は思います。  それから、これは大蔵大臣も同じことを言われると思いますが、私のほうで、たとえば政府民間との資金の揚げ超状況などを見ますと、三月はむろん所得税などの納税期であること、申すまでもありませんが、三月期の決算、それは納税期が六十日あとになります。したがって、三月から五月くらいまでのあとは、財政資金も揚げ超の時期に入りますので、別の手でゆるめさえしなければ、やはり先ほども触れました、企業の手元流動性というものは一そう締まってまいる。つまり、仮需要というようなものは、当分の間、三月とか四月だけでなしに起こる余地はほとんどない、こういうふうに私どもは見ております。  それからまた、石油製品等の逆ざや是正の行政措置をやりましても、それはもちろん石油製品は私は上がることになろうと思います。どれだけ上がるかということは、まだいまの段階で申し述べられませんが、しかし、それは石油そのものがやはりいろんな原材料になってまいりますので、二段階、三段階の間に吸収されていく分野、これはあえて企業が先取りしてもうけ過ぎておったから、それを吐き出させれば、あと半年もつとか十カ月もつとかということではございませんで、たとえば石油製品、それから誘導される石油化学製品などを見ましても、エチレンとか、あるいはプロピレンとかいう段階では、石油が上がるだけ、ナフサが上がるだけ、かりに若干はみ出すものがあっても、今度はその次の製品の段階では、それが完全に吸収されるというようなこと、これはたとえ話でございます。さらにまた卸、小売り等の流通段階におきましても、これは通産省も非常な決意をもって、新聞等で御承知のように、いろいろな団体等を使いまして、そして結局消費者物価といいますか、小売り物価の段階においては、でき得る限り値上げをしないどころか、さらに値下げをさせるような努力もされる、こういうようなことでありますので、願望は願望でございますけれども、ただ手放しの願望ではなしに、いままでやってきた努力を、この際さらに倍加するくらいのつもりでやってまいりまして、国民生活を安定の方向に持っていき得る、こういう考えを持って私どもも進んでおるものでございます。
  88. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは水かけ論ですから、幾ら押し問答してもしかたありません。最初は三月、そのうちに三、四、五月ごろ、こう言ったのだが、確かに三月は、ある程度屈折点に来て長い階段の踊り場状態であるが、そのあとまた急激に上がっていく要因をあまりにも多くはらんでいるのではないか、こう思います。したがって、参議院選挙の前夜、中ごろまではもつかもしれませんが、そのあとはまた爆発的に上がっていく可能性を持っていると思います。これは私は、あと実証によって見るよりほかに方法はないと思います。しかがって、次の質問に入らしていただきます。  農林大臣にお尋ねをいたしたいと思います。いまロイター商品相場指数が戦後最高、こういうように申し上げたわけですが、海外から輸入する農畜産物はもう急騰を続けておるわけであります。  それから、これはもう一々申し上げません。米さえもカリフォルニア米はトン当たり約十九万二千円、政府の買い入れ価格が十七万一千六百円、こういうような状況であります。麦のごときは、一時は日本の半値であったものが、最近はトン当たり小麦が八万三千円という状況であります。  それから第二の要因としては、国内自給度は低下の一方。きょうの日経にあったとおりであります。この間の農水の質問の中で、価格ベースでは自給度が六五%、オリジナルカロリーでは四一%、こういうようにどなたか答弁しているようであります。  それから三番目の要因としては、国内では農業資材が狂騰を続けておる。これは農林省の二月二十八日の発表ですが、一月の農業生産資材は前年同月比三一・八%、四カ月三〇%高騰、いわば農村はいまそういう中におるんではないか。こういうような情勢の中で、まず食管会計の外麦の問題から質問をいたしたいと思います。  これは事務当局でいいわけです。本年度予算には外麦の赤字が、たしか一千百九十九億、食管会計にはそういうように載っていると思いますが、トン当たり幾らで輸入しようとしてこういう積算をされたか。
  89. 三善信二

    ○三善政府委員 外麦の四十九年度予算におきます輸入食糧、特に小麦でございますが、大体数量としまして四百五十一万トン、これは小麦と大麦でございます。それに伴います食管の損失額、通常分として一応一千百九十九億を見込んでおります。この見込みました根拠としましては、外国の小麦は、トン当たり、買い入れ価格を平均六万六千六百九十六円と一応予定をしてやっております。
  90. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 いま事務当局から説明のあったように四百五十一万トン、予算のときの積算の単価は六万六千六百円前後、こういうことであります。六百幾らとか言いました。現在入っているのは八万三千円。間違いありませんか。
  91. 三善信二

    ○三善政府委員 現在の小麦の輸入価格でございますが、最近は上がっておりまして、トン当たり、四十九年一月で一応計算をいたしますと、買い付け価格が八万一千四百円、約八万一千五百円でございます。
  92. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 そうすると、予算で六万六千円何がしと八万一千円ですから、一万五千円の差がすでにあるわけです。一万五千円の違いが、四百五十一万トン輸入するということになると何百億になるでしょうか。ここで千百九十九億という赤字を見込んだが、現在の時点において、すでにトン当たり一万五千円ずつ輸入するものが高くなっている。こういうことになると、四百五十一万トンで幾らになるでしょう。もう計算だけで、六百五十億から七百何十億になる。幾らですか。
  93. 三善信二

    ○三善政府委員 約六百七十億ぐらいになると思います。
  94. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 六百七十億、約七百億と当初の赤字千百九十九億、合計すると約千九百億近くなるわけです。大臣、これは外国の主としてアメリカであります。アメリカから八万何がしの小麦を買ってきて、これで国内に売り渡すのは、たしか四万か四万五千ぐらいだろうと思います。これはあとで……。  そうすると、一千何百億という膨大な金を、アメリカの農民を救うために日本の税金を出している、簡単に言えばそういうかっこうになるじゃありませんか。どうでしょう。この差は、さっきのロイター商品相場指数から見ても、今後ますます拡大するとも、縮まっていく可能性はないと見なければならないと思います。  ついでに申し上げますが、そういう中で国内の食糧自給のために、ことし麦の補助金は一俵当たりたしか二千円、合計百三億の補助を出しただけであります。外国の、アメリカの農民のために一千八百億からの税金を使わなければならない、こういう矛盾した状態にますますこれからもなっていくんではないか、こう思います。どうでしょう。
  95. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お答えの前に、この国際価格は、しばしば変動することのあることも御存じのとおり。ただいまはやはり石油の高騰、それからそういうことに伴ってフレートの高騰等も加わって現在のような状況でありますが、一般的に考えまして、小沢さん御指摘のように、かなりの金額をアメリカに支払っておることは当然なことでございます。それでありますから私どもとしては、国内でできるものは十分に国内でまかなう用意をすると同時に、必要であるけれども、全部を国内で満たし得ないような、いまお話しの麦、四麦を含めてでありますが、飼料作物等については、来年度予算でもできるだけ奨励措置を講じてその生産量を高めてまいりたい、こういう考えでやってまいるわけであります。
  96. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 事務当局へお尋ねします。  ことし約百三億で一俵二千円の補助金を出して、一体何トン増産ができるか、大体のところでいい。百三億で何トン増産ができるか、大まかなところでいいわけです。
  97. 松元威雄

    ○松元政府委員 四十九年産麦につきまして、事前にいま奨励金を出すことを普及指導をいたしまして、目下どのくらいふえるかを見込みをとっているわけでございますが、現在の見込みでは、作付面積で、四十八年に比べまして、二割と三割の間の増加というふうに見込まれております。(小沢(貞)委員「トン数だ」と呼ぶ)もちろん、これは数量は今後の作柄によって違いますが、荒っぽく申し上げますと、約十万トン程度と存じます。ただし、これは今後の作柄でも違いますし、まだ目下の見込み数字でございますが……。
  98. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 一トン増産をするのに約十億ですか、十億の金をかけて一トンしか——一万トンの増産をするのに十億ですか、計算は違っていませんか。
  99. 松元威雄

    ○松元政府委員 ちょっと私もただいま数字はないのでございますが、申し上げましたのは、作付面積が四十八年は約十五万五千ヘクタールでございます。それに対しまして、二割と三割の間増加するという見込みでございまして、それからなお四十八年の生産量が約四十二万トンでございます。したがいまして、面積の伸びから類推いたしたものでございますから、ちょっと数字は荒っぽいかと存じますが……。
  100. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 大臣、これはその数字で合うわけですか。十万トンを増産するのに百億かけた、こういうわけです。それでは百万トン増産するには一千億かけなければいけない、こういうことになりますか。
  101. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御存じのように、実は単価として出すというよりも、むしろそういう方向に協力してもらうという意味で、政策的なものでそれを計算してみれば一俵二千円に当たる、こういうことであります。私どもといたしましてはことしから、例の生産調整の結果の休耕田に奨励金は出さないことになるわけでありますから、そういう方面に向かって、できるだけいま申しましたような飼料作物に転換してもらいたいということで、奨励金を出すわけであります。そのほかに、もちろんそういうことのために、基盤整備その他の事業を継続してやることが当然なことでありますが、いま事務当局が申し上げましたのは、大体いま四十九年度で私ども見ておりますのは、植えつけ面積十八万ヘクタール程度見ておるわけであります。それの生産量については、いま量を申し上げましたけれども、百三億といまお話がございましたのは、これは奨励金のほかに一俵に二千円を支給するというもの、その他、そういう生産調整をしておる皆さんに小麦等飼料作物に転換していただくための助成金を加えておるわけでありますから、そのようにひとつ御理解を願いたいと思います。
  102. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 私の言わんとすることは、とにかくことしの予定は、予算には約千百九十九億あるが、いまの小麦がどんどん上がっていく状況においては、一千八百億ないし二千億くらいな、外国の小麦を買うために日本の税金を払わなければいけない、そして、外国から高いものを買ってきて国内で安く売るために、税金でそれだけのものを出さなければいけないということは、あまりにももったいなさ過ぎはしないか。私は、いま百億かけて十万トンしか増産ができないというその数字をおしなべていくわけにはいかぬと思いますが、もっと効率的なやり方によって国内に金をかけるならば、外国から四百五十万トン、五百万トン入れる麦を、少なくとも二百万トンとか二百五十万トンとか、半減することができるではなかろうか。また、日本の国内の食糧自給体制を整えなければならないというのは、おそらくいまや国民の声だ、こういうように考えます。したがって、今後ともこういう国内で自給する予算というものは大幅に増額する。いまから取り組まなければ、またことしの冬の取り組みに間に合わないわけであります。これはその点だけ要望しておきたいと思います。  それから続いて、ことしの食管会計を若干分析をしてみたいと思います。  いま私が申し上げたように、輸入食糧の中で、外麦だけで千八百億の赤字になろうとするわけであります。国内米で約四千二百七十六億、だからことしは合計五千五百八十億ばかりの一般会計からの繰り入れであります。だが、これは前提が、国内の消費者米価を九月末、十月からたしか九・八%上げる、こういう前提のもとでこういう赤字を組まれたのではないか、こういうように考えますが、しかし、昨今の一般のベア二五%だといわれるような状況においては、ことしの米価の引き上げもまた二割から三割引き上げなければならないということになるならば、これはもう膨大な赤字になってくるのではないか、私はこう思います。  まずその前に、ことしの生産者米価はいつきめようとするか。農業団体は早くきめてくれ、こういう要請でありますが、まず第一にいつきめようとするか。  それからまた、いまのベアの状況からいうならば、米価は二、三割上げなければならない、二、三〇%上げなければならない、こういう情勢になってくるわけであります。そのときに、消費者米価は九月末、十月の初めから、たしか九・八%という予定でこの予算を組んである、こう思います。消費者米価はそれくらいは、われわれは反対ですが、それくらいはやむを得ないとしても、このあと、二、三割の生産者米価を上げたら、一体ことしの食管会計はどういうようになるだろうか。それをどう対処しようとするか。
  103. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 食管会計につきましては、いま御指摘のございましたように、食管の赤字は五千五百八十億と見込まれております。四十八年度の政府買い入れ価格の大幅な引き上げがございました。そういう結果、この食管の繰り入れが大きくなったわけでありますが、お説のように、政府は消費者米価の引き上げを六カ月延期いたしております。そういうような結果、大幅な逆ざやが生じておるわけでありますが、私どもといたしましては、やはり食管会計の健全な運営をはかりますために、できるだけこういう逆ざやを解消することに努力をしなければならないことは当然なことでございますので、いままでもそういう点で努力はしてまいりましたけれども、ただいまのような情勢にかんがみまして、消費者米価の引き上げを引き延ばしております関係で、おっしゃるように、五千五百億余りの赤字を繰り入れておる、こういうことでございます。  私どもといたしましては、この食管会計の逆ざやを、できるだけ合理的に解消してまいるという努力は当然いたすわけでございますけれども、諸般の情勢にかんがみまして、ただいまとりましたような施策を実施いたしておるわけでありますが、さらに、お話のございました米価の決定につきましては、ただいまのところまだ方針をきめておりません。   〔井原委員長代理退席、委員長着席〕
  104. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 いまちょっと試算をしてみると、先ほど申し上げたように、外国から麦を買ってくるので約一千八百億、二千億になるわけです。ことしの情勢でいえば、先ほど来申し上げたように、農業資材の上がり、肥料の上がり等を考えて、最近の農民の腹づもりでいえば、最低二割、二〇%から三〇%生産者米価を上げなければもう引っ込みがつかぬ、こういう情勢で、かってにここで試算をして、二〇%ないし二五%上がったとするならば、これは一%が百五十億になると思います。二〇%で三千億、二五%ならば四千億以上の負担がかかるのではないか。そう考えると、ことしの当初が五千三百何億、いまの外麦が約一千億で六千億、いまの米が三千億、これをトータルするならば約九千五百億ないし一兆七百億だ。一兆七百億という食管の赤字、それに耐えていかなければならない。消費者米価は十月には九・八%上げるわけでありますが、この消費者米価をさらに二割も三割も上げるというならば、この一兆何千億というものは解消できるでありましょう。  一体、大蔵大臣、これはどういうことになるのでしょうか。一兆何千億になる。一兆をこすと思います。ことしの予定は、この食管会計の予算を編成したときには、たしか四月からの消費者米価引き上げを十月から引き上げるように延ばした。だから、十月一日から九・八%上げるという予定でやっておるはずだと思います。だけれども、いまの向きでいえば、一般労働者は二五%上がる、農民も二五%くらいは最低上げなければ気が済まないということになるし、またいろいろの計算からすれば、それくらいは当然上がるであろう。こういうことになれば、一兆をこすような食管会計の赤字であります。片方には消費者米価を絶対上げてはならぬという要請がある。そういうことになると、一兆円の食管会計の赤字はどういうようにやっていくのですか。
  105. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは御指摘のように、われわれにとりましてもたいへんむずかしい問題でありますが、私どもといたしましては、食管の赤字をこういうふうに多く出して、一般会計の繰り入れでこれをまかなうというやり方、これはやはり財政負担の面から見ましても、それから価格体系上からも問題があることであろうと思いますし、食糧管理の健全な運営をはかるという上からも重大な問題でありますので、私どもといたしましては、そういういま申し上げましたような基本的な立場に立って対処してまいりたいと思うのでありますが、これから新しい米が出てまいります。その生産者米価と、それから六カ月延長しております消費者米価の取り扱いにつきましては、いま申し上げましたようなもろもろの事情を十分勘案して、しかもなお食管会計の健全な運営という立場を考慮しながら対処してまいる、こういうことで考えておるわけであります。
  106. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 農林大臣お答えしたところで大体尽きるわけでございますが、米価は、これは生産費所得補償方式できめる、そういうことになるわけです。その生産費所得補償方式の中で賃金をどう見るか、これはもう御承知のとおり、都市賃金に置きかえてこれを見る。ですから、その面におきましては、都市賃金が二〇%上がりました、二五%上がりましたというその上がりが響いてくるわけでありますが、都市賃金が二〇%、二五%上がりましたその率で米価が上がっていくというわけじゃないのですから、したがいまして、小沢さんのおっしゃるようなその膨大な、一兆何千億というようなふうにはなりませんけれども、しかし、いずれにいたしましても、今日の賃金、物価の上昇傾向から見ますと、米価は生産費所得補償方式によれば上がらなければならぬ、こういうことになるわけです。  それに対してどうするかということにつきましては、これはいま農林大臣がおっしゃられたとおりの考え方で臨まなければならぬ、かように考えます。
  107. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは押し問答をやっていてもしかたがないと思います。いずれにしても、これから外麦はどんどん上がっていく。国内に売るのは四万六千円であります。外国から入ってくるのは、先ほど聞くと八万一千円、ごく最近は八万三千円にもなろうとしているということですから、この傾向はますます続いて、外国の小麦による赤字は膨大になっていく。ことしはだれが何と言ったって、常識から言ったってことしの米価は上げなければいけない、こういうことになろうと思います。そうなれば、常識的に言えば、私がさっき言ったような数字に落ちつくかもしれません。それを単純に計算しただけで一兆になるわけであります。  だからこのときに、消費者米価も最初の予定くらい——これも反対なんだが、それは最初の予算だから、この予算を認めたときはしかたがないと思っても、十月から九・八%だ、あとは絶対に消費者米価は上げない、小麦も上げない、こういうことになれば、一兆円の食管会計の赤字を考えなければならない。これはそれだけの覚悟をしていかなければ、物価の安定ということにはならぬわけであります。経済企画庁長官、どうですか、これを聞いて。そういうことになる、これだけの覚悟をしなければ。
  108. 内田常雄

    ○内田国務大臣 両大臣から答えられたとおりでございますし、数字は違いますけれども、小沢さんが御心配になられるような事態が生ずるわけであります。しかし、それを経済の運営あるいは財政の運営の中で最も手ぎわよく吸収して、そして財政も成り立つし、国民生活も成り立つし、また農民も成り立つ、こういう三つのむずかしいことを私どもはこれから最もうまくやろうと考えておるわけでございます。
  109. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 農林大臣、どうですか。消費者米価は予定された以上には上げない、小麦も上げない、こういう物価を押えるときだから上げない、こういう言明はできますか。物価の安定の問題で、先ほど来経済企画庁や大蔵大臣に私は聞いているわけであります。どうでしょう。
  110. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 さっき申し上げましたように、基本的には、私どもは食管会計の健全な運営をはかるという考えが基礎になりまして、健全な食管の運営をしてまいりたいと思うのでありますが、国民生活に密接な関係のあります生産、消費、両米価等につきましては、政府部内において、それぞれ十分なる検討をした上で対処していきたい、こう思っております。
  111. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 農村問題でもう一、二だけ質問をしておきたいと思います。  飼料稲作の問題がだいぶ論議されたり研究されているようであります。これについて、こまかいことはいいわけです。これはこれからどういうように推進していこうとするのか、こういう一点と、それから、もうこれは農林水産委員会その他でさんざんに論議されましたが、飼料がこれだけ上がって、もはや古古米を払い下げるとか、えさに補助金を出すとかいうようなこそくな手段ではどうにもならなくなってしまった。もはや畜産物は生産品を上げる以外に道がない。もしこれを上げないならば日本の畜産品は総くずれ、つぶれてしまう、つぶれてしまったあとはまた消費者が困る、こういう悪循環を繰り返すだろうと思います。だから、この畜産物をどうするか、それから飼料稲作物をどうするか、これだけひとつ大臣から……。
  112. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 第一の稲作のことでありますが、これはそういう御意見もたくさんございますが、現実に考えてみますと、小沢さん御存じのように、なかなかむずかしい問題でありまして、これは飼料にする米だといって、米にしるしをつけるわけにもなかなかいきませんし、飼料として売却するということになりますと、価格を一体どうするか、食管をどうするかと、なかなかむずかしい問題がありますが、しかし一方において、私どもは飼料についてできるだけ増産したいという考えもありますので、ただいま農林省におきましては、地方のそれぞれの地域で実験的にやってみようではないかということで、そのことに着手をいたしまして検討を進めておるところであります。  それから、その次の問題につきましては、おっしゃるとおりの事情でございまして、外国からの影響が大きく響きまして、今日の飼料価格の値上げ——昨年度はたいへん無理をいたしまして、値上げをしないように助成をいたしたのでありますが、ああいうことを引き続いてということもなかなか困難であろうと思います。しかし、さりとていま御指摘のような状況にございますので、きょうも実はそういう関係者の人々の大きな集会等もありまして、私、事情をよく存じておりますので、これは畜産振興審議会の懇談会をせんだってやっていただきまして、これの御意見も承っておりますが、今月中になるべく早くほんとうの審議会を開催していただきまして、その御意見を徴して善処してまいりたいと思っております。要するに、再生産を確保するというのが旨でありますので、そういう再生産をも放棄してしまうというふうな考えを持たれたんではたいへんなことでありますので、そういうことのないようにできるだけ対処してまいりたい、こういうことでいま審議会等とも十分検討中でございます。
  113. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 要望だけしておきます。自給体制を整えなければならない、これは国家的な、もう国民の声だと思います。それができるような体制をぜひつくっていただくように要望をして、次の質問に進めさしていただきます。  これは事務当局に最初お尋ねするわけです。私は逓信委員会等で一、二お尋ねをしてまいりましたが、簡易生命保険の昭和二十一年以前のものがまだたくさんあるわけであります。月額掛け金が一円十五銭、満期か死んだときにもらう保険金が二百八十二円、こういうものが二百四十三万八千件、これは昭和二十一年以前のものであります。その次に昭和二十二年度だけのものを見ると、月の掛け金が十円、保険金が二千二百円、こういうものが六万三千件。昭和二十三年度の契約のものが、これは月の掛け金七十七円、保険金が一万五千五百円、これは平均してのものです。これが約七万五千件。以下、だいぶそういうものがあるわけであります。  いまどき一円十五銭月額掛け金を掛けて、満期のときに二百八十二円もらうというような世にもナンセンスな話が、郵政省の簡易保険局の中に二百四十万件以上眠っているわけであります。眠っちゃいない、生きているわけであります。それだから大事なことなんです。生きてまだ活動しているわけです。これは私が質問をして、月に一円十五銭の掛け金を集めている郵政省の職員の賃金を計算してみたら、年額約二百万であります。これを一日、一時間でだんだん計算をしていくと、一時間約一千円。私はよく一分間の賃金で言うのだけれども、一分間の賃金が十九円、二十円近い人が、月の掛け金一円十五銭というものを徴収しているとは一体何事であるか。そうしたら郵政省の答弁いわく、その後に法律を改正しまして、そういう少額のものは一年分を前納してもらうかして集めるようにいたします。一円十五銭の一年間の前納分は幾らだと思ったら、これは十三円何がし、これだけの大改善をやりましたと言って、得々として保険局長だかが私に答弁をしたことを覚えているわけであります。これは去年だかおととしの話であります。まだこういうものが眠っているわけであります。  これは、いろいろの問題を私は含んでいると思います。  一つは、こういうものをいまだに整理しないでおるという問題 一つは、一円十五銭の掛け金のようなものをいまだに保管をしておいて、そして、これは国と被保険者との契約でありますが、被保険者については、まるで国家でたいへんな損害を与えたという問題であります。それから事務の簡素化、能率化、こういう幾つもの問題を含んでおると私は思います。  そこで、まず事務当局から、こういう実態であるかどうか、それを御答弁いただきたいと思います。
  114. 野田誠二郎

    ○野田政府委員 先生御指摘のように、終戦直後の異常な経済の激動によりまして、当時の簡易保険の契約が、現在ほとんど保険的な価値のないものになっております。また、先生おっしゃいましたような数字が現在残っておりますが、御指摘のように、昭和二十四年から昭和二十七年まで四年間にわたりまして、この少額契約の整理というのを行ないました。これは契約でございますので、本人の申し出によりまして契約関係を解除する、契約を消滅いたさせる、こういう法的な措置をとりました。それによりまして、約六千八百万件くらいあったかと思いますが、このうちの八五%程度の契約を消滅させました。それから年々減ってきておりまして、二十一年十月以前の、われわれが言っておりますいわゆる少額契約につきましては、御指摘のように、現在約二百四十万件近く残っております。それから二十二年、二十三年度の簡易保険の契約につきましても、御指摘のような件数並びに数字でございます。
  115. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは事務当局は、去年、おととしの質問のときにもそういう答弁をしておるわけであります。ただ、一般の国民が考えてみれば、死んだか満期のときにもらえる額が二百八十円ばかりであります。これは総平均。それが二百四十万件あるわけであります。こういうものをいまだに保管をしたり計算をしたり、大きな事務量をかけてやっている、これは国民から見ればナンセンスなことだと思います。どうでしょう、大臣、これを根本的に整理しなければならない、こう思いますが……。
  116. 原田憲

    ○原田国務大臣 お答えいたします。  この問題につきましては、いま小沢さんから話がございましたように、逓信委員会でもこの問題を私に提起をされまして、私、調べてみましたら、前大臣もこのことを聞いて、そして何らかの検討をしなければならぬ、こういうことをお答えいたしておるということがわかりました。  私は、それ以後、この問題につきましては、具体的に内容、実施時期、対象契約等について、前向きといいますか、あなたが提案をされておる問題についての解決を実際に行なえるように指示をいたして、いま検討を進めておる最中でございます。
  117. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは、私が提起して以来、もう一年以上たっているわけであります。前大臣の時分からであります。これは確かに問題がいろいろあろうかと思います。しかし、これが実現できないネックというのは、やはりこういう非能率なものをいつまでも温存しておいても平気でいられる官僚機構にあろうか、私はこう思います。これは大臣、蛮勇をふるってやっていただかなければならないと思います。一体、物価は当時から比べれば、何百倍上がっているか何十倍上がっているかわれわれにはわかりませんが、一円十五銭の掛け金、二百八十二円もらうという保険、今日は、これは長々ありがとうございましたといって解約するにしても、政府は持っていくわけにはまいらぬ、こう思います。  そういう場合に、国が契約者に対して賠償なりどういう形かの、何金と言えばいいでしょうか、何らかの措置をしなければならない、こう思いますが、その点についてはどうでしょう。
  118. 原田憲

    ○原田国務大臣 いまの問題を含めまして、事務当局にこれの解決方を検討させておるところでございます。
  119. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは非常にインフレの時期で、過去のものを顧みればたいへん重要な問題だと思います。たしか昭和四十二年の何月かと思いましたが、郵便年金でやはり同様な問題がありました。政府が、昭和二十二年以前の契約のものを特別措置によって、打ち切ってもらいたい、年金の繰り上げ支給をいたします、そのかわり分配繰り上げ支払い金も出します、あるいは特別付加金も出します、こういうことをやったことがあるわけであります。額は一万円やったか一万五千円やったか、とにかくやはりこれと同じような少額なものであります。その年金のときにそういう経験があるわけであります。これは、物価が上がってたいへん損害をかけて申しわけない、言わず語らず、そういう意味でもって特別付加金を加えて解約したはずであります。それと同様なことを、額は別としても、同様なことを考えているかどうか。それが国家の契約者に対する損害賠償なり何なりの意味になるのではなかろうか、こう思いますが、どうでしょう。
  120. 野田誠二郎

    ○野田政府委員 私ども、基本的には、現在残っておりますこれらの少額契約が、現在の簡易保険の繁栄の基礎をなしておる契約でありまして、また簡易保険事業に非常な貢献をいたしております。そういうものに対しまして、法的な措置をとりましてこれを消滅させる、こういうことでございますので、年金の特別措置をとりましたときと同じような形で、簡易保険の会計の剰余金の中から応分の特別付加金といいますか、こういうものを、財政的な措置をとりましてこれらの契約者に報いたい、このように考えております。
  121. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 事務的には、大体そういう道が開かれそうであります。  そこで、大臣にこれはお尋ねをしたいわけであります。とにかく、いま二百円ばかりのものを解約をしようという場合に、物価は百倍になっているか五百倍になっているかよくわかりませんが、これは簡単な額では契約者も納得をしないのではないか、こう思います。  これは郵政大臣、蛮勇をふるって、国家が損害を与えた者にある程度補償するような額にしなければならない、こう考えるわけであります。大臣、どうでしょう。
  122. 原田憲

    ○原田国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、いま局長からもお答えいたしましたが、これらのことを含めまして、十分検討を進めて、措置をいたしたいと存じます。
  123. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは大臣、ほんとうに国家が与えた損害に国が報いるという立場で出すかどうかということを私は聞いているわけです。これは考え方の問題の非常に大事なところであります。月一円十五銭いまかけている。二百何がししか保険金がもらえない。これに対して物価は百倍、千倍になっただろうと思います。だから、ある程度はこれはインフレが高進した責任は国家にあるから、それで全額とはいかないが報いる、こういうたてまえを郵政大臣は認めて、何がしかの金を出すかと、こういうことを言っているわけです。
  124. 原田憲

    ○原田国務大臣 年金の際にとりましたことも含めまして、十分考慮をいたすということをお答えを申し上げておりますので、私もそのつもりで、できるだけの措置を講じていきたい、このように思います。
  125. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 それじゃ次に進ましていただきます。  それと関連して、貯金の目減り補償という問題が、去る二月七日に全繊同盟が提起して、今月の半ばごろ具体的に訴訟を起こすようであります。郵便貯金の目減りの補償について、国を相手どって損害賠償要求の民事訴訟を起こすことを決定して、たしか今月十六日ごろ具体的に訴訟手続をとる、こういうようになっておるわけであります。これが提起されてから、マスコミはたいへん報道されて、国民もこれにたいへん関心を持つようになってきたわけであります。  この問題については、はしょって申し上げると、いま保険のときに郵政大臣に申し上げたと同じように、過去の目減りについての補償、これは全繊同盟は訴訟によってやる、こう言っておりますから、過去に損害を与えた補償の問題と、将来インフレの中で目減りしないようなある程度のスライド、金利アップ、こういう二つの意味を持つのではなかろうか、私はこういうふうに考えております。  時間がないので、これは新聞によれば、大蔵省、日銀等においても、この問題について十分検討されておるように聞いておるわけですが、いま検討されておるこの物価スライド、目減り防止、こういうようなことについて、大蔵大臣からお答えをいただきたいと思います。
  126. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いま小沢さんからお話しのような、ドラスチックな目減り対策でありますとか、あるいは過去のものの損害補てん、こういうものは考えておりませんです。とにかくインフレ、物価高というものは、これはたいへん各方面にいろんな影響を及ぼすわけです。ことに金銭債権者、これは金銭的実質価値を減殺する、こういうことになる。逆に、金銭的債務者は、その債務の実質的負担が軽くなる、こういうことにもなる。それから社会の弱者というか、そういうような方々に非常に大きな問題を投げかける。とにかく社会不公正というか、そういう方面に非常な圧力をかけるわけです。  そういうことで、私はどういうふうにそういう問題に対処するかということを考えていますが、これは一つ一つとても対処し切れません。結局、インフレ、物価高という事態を一刻も早く断ち切る、これ以外の対策はありませんです。しかし、そうかといって、ほうっておくわけにもいかぬし、また、対策の考えられるものがあるのです。それは何かと、こういいますれば、これは社会保障の対象階級の人々に対する対策とか、それは予算でもいろいろのことを考えておりますが、この預金者の問題になりますと、物価の変動というのはいつでもあるのですから、いかなる世の中におきましても、物価がもうほんとうにぴしゃっときまって動きませんという世の中なんかありません。少しでも物価の変動があった際にそれをどうするか、こういう問題になりまするが、今日のような激しい物価騰貴のもとにおきまして、その対策として預金者を保護する、そういうためにスライド制をとれとか、あるいは金利の引き上げをいたせとか、いろいろな御意見がありますけれども、これはそう簡単なものじゃないと私は思うのです。  つまり、スライド制をとる、あるいは預金の金利を引き上げる、そういうためには財源が要るわけなんです。その財源を金融機関に持たせる、こういうことになりますれば、これは金融機関はその財源をまたみずから貸し出しに求める、こういうことになってくる。これはひとり貯金金利の問題にとどまらず、国債の問題あるいは債券の問題、いわゆる金利体系全般の底上げ、こういう問題になり、そういうことになれば、日本産業のコストを引き上げるという問題にもなり、これはインフレ対策としてまた逆の傾向を持つということになる。  そこで、そういうスライド制なり金利引き上げの負担を、それじゃその財源を国が負担したらどうだ、こういう説をなす人もあります。そういうことになれば、国がたいへんな額を負担しなければならぬ。納税者の負担、つまり、一部の貯蓄者の損害を補てんするために、一般の納税者がその補てん財源を負担しなければならない、一体こういう理屈があるか、こういう問題にもなり、また財政上の負担、こういう額の問題としてもゆゆしい問題なんです。  そういうことで、まあ一般の金利水準をそう破壊はいたしません、また財政上の負担にもそう影響はない、そういうような程度で考えれば考え得る、こういうことでありまして、私といたしましては、過去のそういう種類の目減りというものを補償する、こういうことは考えてもおらぬし、また、将来に対しましても、スライド制でありますとか、あるいは大幅に金利を引き上げるとか、さようなことは考えておりませんです。
  127. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは時間がないので、一々私、あれしていられないのだが、たとえば四十五年の経済白書の中でも、「三十五年の初めに投資された百万円は、十年間利息を元本に組み入れたとしてもこの間の消費者物価上昇(年平均五・五%)により、三十五年価格に直すと七十三万円に減額している。」こう政府の白書が認めているわけだ。最近の労働白書においても、これは一々読み上げませんが、やはり三十九万円分は失われた勘定になる。しかし、現実の勤労者の貯蓄は大きなロスをこうむったことになると、この労働白書でも認めておるわけです。これは、国自体が膨大な損害を与えたということを認めているわけであります。  そして、もう一つ大事なことは、私は、この預貯金にしておかなければならない人は、株を買うとか土地を買うとか——財産をたくさん持っておる人は、その危険性のある土地を買うとか株を買うとか、そういうことはできるのだけれども、これはやはり貯蓄の動向を見てもわかるように、低額所得者、所得の少ない者だけが、いつも手持ち流動性を確保しておかなければならない、こういうことで、階層間においては、やはり低所得層が貯金をしていて、その人だけが損害をこうむっている、こういう大きな社会的な不公正が生ずるわけです。  それから、これはもう国の白書でも明らかにうたわれているとおり、これはことしの白書でありますが、こういうようにいっておるわけであります。「物価の高騰とその背景」の項の中で、要するに債務者利潤と債権者損失の問題を、これは白書で論議しておるわけであります。その中に、「法人と個人の資産分布については、債務者利潤と債権者損失の発生が問題になる。個人部門は全体としてみるかぎり恒常的な資金余剰部門であり、」個人はいつでも金を持っておる余剰部門である。「その保有する金融資産のほとんどが確定利付債である。これらの元本価値は物価上昇によって年々減少する。恒常的な資金不足部門である法人企業は借入れの返済負担が物価上昇によって軽減される。消費者物価が高騰する一方、卸売物価が安定していたときには、個人の債権者損失が企業の債務者利潤に見合っていたか否かの判定は難しい。しかし四十七年度後半のように両物価がともに上昇するもとでは、債権者損失と債務者利潤がともに巨額に達したことは明らかである。」片方は、法人企業でいつも金を借りているものは膨大な利潤を得、いつでも、さっき言った低い階層で貯金をしておかなければならないものは膨大な損失をした、こう白書でもいっているわけであります。  私は、最近論議されているように、売り惜しみ、買いだめによって、一時膨大な便乗値上げ等でもうけた超過利得税を取れという問題以前に、この問題は非常に重大な問題をはらんでいるのではないか、こういうように考えます。これは、私外国の例等を調べたことはありませんが、インフレ等において大企業が膨大な得をし、零細な貯蓄者は膨大な損失をした、その社会的な不公正、こういうものを、私はいま日本において是正しなければならない、これは蛮勇をふるってやらなければならない段階に来ておるのではなかろうか、こういうように考えるわけであります。  いま大蔵大臣は、そういうことはなかなかむずかしい、こう言っているが、アメリカ等においてだって、ブラジル等においてだって、フィンランド等においてだって、一時的なインフレのときに、そういうものをちゃんとやっているわけだ。そしてまたそれなりに成功しているわけであります。もう一回大蔵大臣から、この問題について……。
  128. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 インフレ、物価高の与える各般の影響、これはもう小沢さんの御指摘のとおりだと思います。だからこそ、このインフレ、物価高というものを起こしちゃいけないし、また、起こってしまったら早くこれを断ち切らなければならぬ、こういうふうに思うのです。  起こってしまったインフレ、物価高に対しまして、その与える影響、これを何とか救済する、これは非常にむずかしゅうございます。  だから、いま御指摘の、金銭債権者は損をする、金銭債務者は得をする、そういうことがある。それをどうやって一体、国民全体に公正に理論どおりに是正できるか、こういうと、これは手がありません。結局、とにかくインフレ状態を早く直す、そういうほか手はないのです。非常な弱い立場にある人、そういうような者に対しまして予算上、いろいろ配慮をする、それ式のことはできます。できますけれども、その失うところの金銭債権の損失を、これは国民全体の金銭債権者に公平に措置する、そんなことはとうていできるものじゃない。そういうようなことで、そういう問題もあります。ありますけれども、私は、とにかく対策の主眼は、これはこのインフレを一刻も早くやめる以外にない、こういうふうに考えているわけです。
  129. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは大臣、インフレが現に進んでいるからこういう問題が提起されるわけです。インフレが進んでさえいなければ、こういう問題は起こってこないわけです。具体的に訴訟して、目減りを国家から賠償してもらおう、こういう訴訟まで起こそうということは、現にインフレが進んでいるからです。  それからまた、大臣が言うのと違って、日銀、政府においては、そういうことを検討しているような新聞記事が実は出ているわけで、法人と個人とは別にして、どういう金利をつけてと、こういう対策を考えようとするのもそういう一環ではないか、こう思います。これは、いま大蔵省から聞いたんだけれども、西ドイツあたりにおいては、定期で三カ月もの二・〇五%、イギリスにおいては二八・三%、そういうような金利を現につけているわけです。  だから、日本はそういうことについて、もっとすみやかに対策を立てて、私はさっき、景気がのぼり段階だから、インフレがどんどん上がっていっちゃって中途の段階にいるが、その次、爆発的になっちゃうかもしれない、そういうことを予想するのも、これは貯金を国民に、給料上がった、ボーナスもらったというのを全部ほんとうに吸収するような対策を立てなければ、私は、そうなっていくんじゃなかろうか、こういうようにも考えるわけです。だからこの問題は、そういう政策的な意味からも非常に重要だ、こう思います。郵政大臣はどう考えておりますか。
  130. 原田憲

    ○原田国務大臣 いま、大蔵大臣がお話しになりましたように、あなたがおっしゃっておることを民間金融機関でもしやったとすると、もろにこれをかぶるのは郵便貯金のほうでございます。郵便貯金は、集めた金を財政投融資資金として使っておる。これの預託利率という問題がございますので、高い金利が預金で求められることは、これは必ず貸し出し金利に及ぶ。民間企業なら、貸し出し金利が高くても、いまお話しのように諸外国ではそういうことをやっておるからということで、それでも借りて仕事をするということでいくかわかりませんが、郵便貯金のほうは、その金が零細なほうへ回っておるのでございますから、この預託利率というものが非常に問題になってくる。そうしますと、大蔵大臣がいまおっしゃっておりますように、それを一体どこで補うのかという問題になりました際に、財政で補う、こういうことをしなければならない。  それじゃ、インフレ下で一番先に財政的にめんどうを見るものは何か。金を預ける人たちはまだ、いわゆる余裕はないのですけれども、まだ金を預ける力があるが、生活保護を受けたり、失業費でその日を送っておるというようなところへ、まず国は財政的な措置をしなければならない。こういうことが一番先ではなかろうかと、こういう問題がからんでまいりますので、いま大蔵大臣は、非常に慎重にしなければならないということをお話しになっておると思います。  私どもでは、昨年より四回金利を上げ、また年末には金利を上げて特別な半年ものの定期預金をつくるというような政策をもちまして、できるだけ国民の皆さん方に、インフレ時代のこの物価対策という面に重点を置きつつ、国民の皆さん方にも損をかけないようにということを考えておるわけでございますが、私は、大蔵大臣とも十分によく相談をしながら対処をしていきたい、このように考えております。
  131. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは大問題だから、今夜ここで決着をつけようとも考えません。時間がないようで、先に進ましていただきたいと思います。  公取委員長はいますか。
  132. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 おります。
  133. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは、大昭和製紙の斉藤社長にここへ来ていただいて、参考人として質問をしたときでありますが、去年の十二月に公取は、コート紙、上質紙の価格協定の破棄、取引先別販売価格をすみやかに交渉してきめる、三つ目、毎月の取引先別販売価格、数量を四十八年十二月以降六カ月間公取に報告するようにと、その他、警告書を添えてそういうように出してあるはずであります。毎月の報告が来ておるか、それから取引先別販売価格をすみやかに交渉してきめる、もう一回やり直せと、こういうことだと思いますが、それは来ておるかどうか。
  134. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 来ております。
  135. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 この間、斉藤社長のここにおける言明によれば、従来の価格をもう一回契約をし直して判をついて出しただけだ、こういうことのようであります。各社みんなそういうことですか。
  136. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私どもはそのようには思っておりません。各社別に価格も違って動いております。はっきり申し上げますと、十二月と一月は来ております。これは翌月の十日までということでございますから、二月はまだ来ておりません。十一月、十二月、一月の価格は十二月に比べて、さらに一月は二割強上がっております。下がっているのじゃなくて、相当な、暴騰ともいえるような値上がりを示しております。  もちろん、これには私どもその原因の究明に当たっておりますが、本来、これは通産省でお調べ願ったほうが適当と思いますが、需給のアンバランスということもありますが、原材料であるパルプ等の値上がりがその前の段階にあって、製品の段階に入ってきたということですね。一月に相当上がった。しかし二月に入って、これは業界の側の調査が、専門の権威あるものと思いませんが、日銀統計ではありませんけれども、二月には弱含みになっております。一月にかなり上がって、二月は価格が少し下がりぎみになっております。そういうのが現状でございます。
  137. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは公取委員長さん、このやみ協定を破棄して、各社それぞれ個別に契約をして、その結果を公取に報告せよ、こういうことは、いま御答弁を聞いていると、逆に、今度はばらばらに値上げ競争に入った、逆の効果しかあらわしていないようにも受け取れるわけです。値下げをしてきたところはないでしょう。どうでしょう。
  138. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 一月分については、値下げをしたところは全くございません。二月は、まだ十日になりませんから報告が来ておりませんが、二月には若干そういうものが出てくるかもしれません。しかし、業界全体としての、これは連合会の調査なんですが、それによると、若干でございますけれども、下がりぎみになっております。
  139. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 時間がないので、私は最後に、公取委員長にお尋ねをしたいと思います。  再販制度は、出版物を除いてみなやめちまったらよかろう、こういうような新聞発表を拝見したこともあります。これは物価特委か何かだと思います。その他、この委員会で、たしか土屋清さんが、それぞれ提言されたこともあろうと思います。それから各政党がそれぞれまた、この独禁法の改正その他の問題について、いろいろの提起をしていると思います。物価集中審議や、あるいはこの予算委員会審議において、公取のあり方等いろいろの論議がなされておりますが、いまどういうような方法で、委員長がこういう点は改正をしたほうがよかろうと思われる点、いまどういうように検討されておるか、最後にそれだけ御答弁いただきたいと思います。
  140. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 時間の関係もありますので、私、簡単に御答弁申し上げます。  まず、これは各党もそういう提案をなされておりますが、価格の引き下げ命令が現在はできません。ですから、こちらが協定の破棄を命じましても、その破棄というだけでありまして、先ほど申したように、紙の場合に値上がりしておる。コーテッド紙でございますとか、上質紙、そういうものは値上がりしておる現状でございますから、このような事態を、たとえば引き下げ命令ということで、引き下げることができるならばいいじゃないかということ。  それから、大企業の問題というのは、大企業ということではなくて、私どものほうでは高度の寡占状態にある、それから、なおかつその中で一社だけがその実勢を支配しているといいますか、実質的に独占に近い状態にある、独占とは申しませんが、独占に近い状態にある場合には、もはやこれは、先ほど、私、ほかの問題にもお答えしましたけれども、一社がきめれば、ほかが必ず追随するということになりますから、これは、やはり構造的な問題として解決をばからなければならぬ場合もあるだろう。それが分割命令である。企業を分割するということが、独禁法上、昔はそういう規定があったわけです。それをもう一ぺんよみがえらせるということが必要ではないかということ。  それから、そのほかに不公正な取引方法というものは景品表示法のほんとうは親元なんです。出どころは不公正な取引方法であるが、景品表示法はすでに済んでしまったことも排除命令できますし、そのほかに、いろいろ不公正な取引方法だけが、罰則の面の中では、直接に罰則が適用されないということがございます。もう一ぺんやって、こちらが排除命令を出して、それに従わない、審決に対して違反するという場合だけがとめられるということになっていますから、これはちょっと、ものごとによっておかしいのじゃないか。たとえば、これはよくありませんけれども、非常に大きな企業が、下のものに対して優越的な地位を乱用した場合に、それは一回だけではもうとがめができないのだというのはおかしいから、これはやはり不公正な取引方法についても独禁法を強化する必要がある。  それから、たとえば商社問題について、株式の保有というふうな面から問題にすべきじゃないかということを検討したい。  それから、過去の事実についても、これは独禁法違反についてはいろいろございますが、はい、終わりましたと言ったら、そこでもう切れちゃうわけです。私どもはとがめることができないのです。これはそれをやられたら、毎度数量カルテルのようなものは、こっちが立ち入りをいたしますと、やめてしまうわけですね。そうすると、排除命令につながらない。だから、何回やっても前がないことになるわけです。前歴がないことになりますから、これは不都合じゃないかということで、やはり景表法にあるような、済んでしまったことに対しても排除命令が出せるのだというふうな改善も考えたらどうだろうかという問題がございます。  そのほかに、罰則の問題が問題になります。しかし、いろいろありますので、罰則の問題はむずかしいのですが、罰則の問題と、さらには証拠の問題です。証拠を行政処分として、少なくとも私は刑事処分については、どうも私どもの力の範囲外でございますので、そういうことについては述べませんが、行政処分としては、いまの厳重な証拠主義というものについて、もう少し何かの形でもって、ある程度推量し得るといいますか、そういうふうなことができないか。証拠を、つまり、もっと情況証拠等によって行政処分ができる。ただし、これは刑事罰にしようとなるとだめでございますね。これは日本のいまの新しい刑事訴訟法のたてまえでは、それをもって起訴するということはたいへん困難であると思いますけれども、行政処分ならどうであろうかという、非常にむずかしい研究課題でございますので、全部を一括これら——ほかにもちょっと、私まだと忘れしているかもしれませんが、大体そんなものがあるだろうと思います。  それらの点は全部洗い直しが必要ですが、さしあたり私どもにとって必要と思われるのは、引き下げ命令とか、高度の寡占事業に対する分割とか、あるいは不公正な取引方法に対する措置、商社等の株式の保有の制限をどう考えるか、こういう問題については、できるだけ早く、ほかのものと切り離しても一応結論を出して、次の通常国会を目標として、ただし、これは皆さんの合意が得られませんければできませんが、私どもの考え方としては、そういうことで、いま独占禁止法研究会という名前で十二月からやって、もうすでに二、三回やっておりますが、今後もそれを続けまして、できるだけ専門的な立場からも、いろいろな問題点ございますから、それを詰めていただきたい、こう考えておる次第であります。
  141. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 あと、通産に紙の行政質問したかったわけですが、時間が参りましたので、また分科会その他でやりたいと思います。  質問を終わりたいと思います。
  142. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて小沢君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  143. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、おはかりいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席発言要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決定いたしました。  次に、参考人に関する件についておはかりいたします。  すなわち、分科会において、財政投融資計画の審査のため、公団、事業団等から参考人として意見を聴取する必要が生じました場合の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  明五日、午前十時より委員会を開会いたします。  なお、午後一時より分科会の審査に入ります。  本日は、これにて散会いたします。    午後十時三十分散会