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1974-02-07 第72回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月七日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 櫻内 義雄君    理事 澁谷 直藏君 理事 正示啓次郎君    理事 細田 吉藏君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       上村千一郎君    植木庚子郎君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       笹山茂太郎君    塩谷 一夫君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       田中 正巳君    塚原 俊郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    前田 正男君       松浦周太郎君    松岡 松平君       松野 頼三君    湊  徹郎君       渡辺 栄一君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    赤松  勇君       岡田 春夫君    多賀谷真稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       八木 一男君    湯山  勇君       和田 貞夫君    青柳 盛雄君       瀬長亀次郎君    松本 善明君       新井 彬之君    鬼木 勝利君       正木 良明君    安里積千代君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 奧野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長     亘理  彰君         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         内閣総理大臣官         房広報室長   斎藤 一郎君         内閣総理大臣官         房総務審議官  佐々 成美君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       丸山  昂君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 田代 一正君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁長官         官房長     吉瀬 維哉君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         科学技術庁計画         局長      安尾  俊君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         科学技術庁原子         力局長     牟田口道夫君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      森  整治君         法務省民事局長 川島 一郎君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局長 橋口  收君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 竹内 道雄君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君         国税庁長官   安川 七郎君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業大臣官         房長      増田  実君         通商産業省通商         政策局長    和田 敏信君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省立地         公害局長    林 信太郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         通商産業省機械         情報産業局長  齋藤 太一君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         運輸大臣官房審         議官      原田昇左右君         運輸省船舶局長 内田  守君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君         運輸省航空局長 寺井 久美君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省道路局長 菊池 三男君         自治省税務局長 首藤  堯君  委員外出席者         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     南部 哲也君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月七日  辞任         補欠選任   辻原 弘市君     和田 貞夫君   荒木  宏君     瀬長亀次郎君   岡本 富夫君     正木 良明君   鬼木 勝利君     新井 彬之君 同日  辞任         補欠選任   和田 貞夫君     辻原 弘市君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算及び昭和四十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。  この際、大平外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。大平外務大臣
  3. 大平正芳

    大平国務大臣 シンガポールにおけるゲリラ事件が起こりまして以来、外務省といたしましては、全世界の公館、並びに公館を通じて日本人在外営業所事務所等に対しまして、不測の事態が発生あるべきを考えて、厳戒体制に入るように要請いたしておりましたやさきでございますが、昨六日午後五時五十五分、在クウェート日本大使館占拠いたしましたアラブゲリラグループから、外務省に対しまして直接テレックス交信が入りました。したがって、大使館占拠はこの直前に行なわれたと推定されます。  その内容は、パレスチナ解放人民戦線、日本赤軍占領地息子たち組織クウェート日本大使館占拠した、日本政府シンガポールの四人の同志をクウェートに運ぶために、シンガポール飛行機を送ることを直ちに、そして公に指令すべしというものでございました。  わがほうは、政府といたしましては、人命尊重を第一の主眼といたしまして、政府首脳相談の結果、これに応ずることといたしまして、本七日午前三時五分、日航特別機を羽田から出発していただいたわけでございます。その旨、昨晩九時四十五分に、クウェート大使館占拠中のゲリラにも伝達いたしました。  人質になっておる日本人は、大使館員商社職員等を含めまして十六名でございまして、全員、現在無事でございます。  クウェート政府との関係におきましては、クウェート政府に対して、これら日本人十六名ばかりでなく、その家族につきましての安全の保障を求めたところ、あらゆる努力を尽くして日本人の生命の安全の確保につとめるということ、そして、クウェート政府は、事実、全力をあげてその対策に腐心していただいておるわけでございますが、問題は、シンガポールゲリラを乗せた日航機クウェートに着陸させていただけるかどうかということが問題でございまして、私から先方外務省に対して直接電話でお願いをし、総理からは、先方総理に対しまして親電を発出していただいたわけでございまするけれども、クウェート政府といたしましては、これに遺憾ながら応ずることができないというのが、いまのクウェート政府立場でございまして、この問題をどのように処理してまいるかが、一つのただいまの問題点でございます。  シンガポール事件との関連でございますが、クウェートに起こりました事件の経緯、経過につきましては、全部シンガポール政府並びに日本大使館、そしてシンガポール政府を通じまして、シンガポールのフェリーボートにおりまするゲリラ組織に伝えられておるわけでございまして、シンガポール政府といたしましては、彼らを安全に飛行機、飛行場に連行いたしまして、安全に出国せしめるということにつきましては了承をし、そのための具体的な方法を綿密にいま検討されておると承知いたしております。  私がここに参る直前、九時十五分に、再びクウェートゲリラ組織から外務省交信がございまして、われわれの最後の警告は、明八日の午前五時、日本時間で申しますと、時差の関係がございますけれども、その五時までとする。午後五時でございます。午後五時でございますから、日本の時間で明八日の午前十一時までがわれわれの警告の最終の時間であるという交信が入っておるのが現在の状況でございます。  政府といたしましては、いまさしあたって解決しなければならぬ若干の問題がございますので、鋭意これに対処いたしまして、この事件解決全力をあげておる最中でございますので、御了承をいただき、御鞭撻をちょうだいいたしたいと思います。
  4. 荒舩清十郎

  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 重大な事件であります。事、人命に関することでありますから、これが早急に、人命をそこなうことなく解決されることを私どもも望むわけであります。したがって、批判がましいことはこの際避けたいと思いますが、若干お聞きしておきたい点がございますから、以下二、三点についてお伺いをいたします。  クウェート側日航機の受け入れをいまもって拒否しておる、その理由はどういうところにあるのでしょうか。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 問題の平和的な解決にとって、クウェートに着陸を認めることが得策ではないと考えるということでございまして、言いかえれば、シンガポールにおきまして犯人無事飛行機に乗り込みまして、行き先がきまりまして、安全に出国したということが保証されれば、ゲリラ組織との間に話し合いの道がついてくるのではないかと考えられておるのではないかと想像されます。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、シンガポール・シージャックの場合は、犯人要求に対して、日航機の派遣は、武装解除といいますか、武装を携帯しないことという条件をつけられておったためにいろいろと解決が長引いた。今度の場合は、日航機犯人を乗せるについて、日本側はその種の条件はつけておられませんか。無条件でありますか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 わがほうは、仰せのように、この事件の収拾のために、また新たなハイジャック事件を惹起するということは忍びないところでございますので、シンガポール政府が安全に出国を保証するという限りにおきましては、武装解除の上、乗り込んでもらいたいという主張を終始続けてまいったわけでございます。しかしながら、ゲリラ側はこれに終始抵抗を続けてまいった次第でございます。  クウェート事件が起きまして、事態が非常に緊迫性を帯びてまいりまして、シンガポール政府並びに日本現地当局も、いま言われた武装解除しないままでも出国を認めようという態度になってまいりましたので、ただいまは非常事態でございますので、そういうラインで処置してまいろうと思っております。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 事柄が微妙でありますから、答弁できにくい点はよろしゅうございます。犯人に武器を携行さして乗せるということが、クウェート側が拒否をしておる一つ理由ではないのですか。それはどうですか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことは、先方から聞いておりません。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あくまでも望みを捨てずに交渉を続けられると思いますけれども、時間的な制約もこれあり、もしクウェート側了解が得られない場合には、一体どのような措置を考えられておりますか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 クウェート側了解を重ね重ね求めてまいりながら、それに次ぐ代案につきましても、いろいろ検討を重ねております。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 時間の制約がございますから、緊急にやはり措置されなければならないと思います。成功を祈りたいと思います。  そこで、大使館に閉じ込められておる十六人の方々の中に民間の方がおられるようでありますが、こういう方々は、たまたまそのときそこに居合わせた方でございましょうか。それとも、何か外務省に出向されておる民間の方でございましょうか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 たまたま所用のため大使館においでになっておった方でございまして、出向職員ではございません。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、若干の懸念もありますので、要望をいたしておきたいと思います。  どうも経過をたどってみますと、シンガポール事件クウェート事件は、やはり関係があるように思うわけです。  というのは、シンガポール事件の場合は、条件をつけて、そのためにその解決が長引いておった。今度は、日本大使館員の問題ですから急に条件をはずされた。どうもその辺に、何とも若干割り切れないものがあるし、また、人命というのは、何人であろうとこれはひとしいものであります。で、大使館員に火が移ってきたから緊急にそういう救出の措置がとられる。ではシンガポール人人質である場合はどうなのか。これはやはり国際的に悪い印象を与えるのではなかろうか。  それからまた、問題がクウェートシンガポール日本と、これは偶然の一致かどうか知りませんけれども、日本への石油輸入ルートの上でその事件が起こっておるという問題は、何としても印象的であります。  あるいは、昨年十一月二十二日でございましたか、日本政府が出しましたいわゆるアラブ寄りといわれる声明が、はたして本ものであろうかどうか、さらにまた、パレスチナ問題を、どうもあのジュネーブ中東和平会議は素通りしていきそうな感じがする、そういうことに対するいわゆるパレスチナ人の心配がそこにあらわれておるのではなかろうか。したがって、そのパレスチナ問題解決を素通りして片づけようというこの中東会議主導権を持っておるアメリカに対して、アメリカと非常な同盟関係にある日本に対して、何らかアメリカに対して牽制をしてもらいたいというような、そういう意図もあるのではなかろうか。  さらにまた、パレスチナ人への救難のためのいわゆる金額による援助はやっておるけれども、問題は、結局そうではなしに、ほんとうにこのパレスチナ問題に対する日本の理解と申しますか、政策が問われておるのではなかろうか。もちろん、昨年十一月二十二日の声明の中にはパレスチナ問題も含まれております。「パレスチナ人国連憲章に基づく、正当な権利が承認され、尊重されること。」という一項が入っておりますけれども、ほんとうに、真からそのパレスチナ人問題の建設的な政策行動日本が示してくれるのであろうか、そういった懸念等々もあるのではなかろうか。  したがって、これは、今後のアラブ政策と申しますか、中東政策、あるいはパレスチナ問題に対する日本政策というものも同時に問われておると思いますゆえに、その点はひとつきちんとした政策をこれからも追求し、行動であらわしていっていただきたい。あわせてこれを要望いたしておきます。  クウェート問題については、以上要望申し上げまして、予算質問に入りたいと思います。  まず第一番に、核防条約の問題についてお伺いをいたしますが、昨年十二月十四日に科学技術庁長官記者会見をやられて、核防条約については、私見であるけれども、という断わりはあるが、非常に慎重論だ、いまあわてて批准しなくても、核燃料用ウランが供給されなくなるような情勢ではない、そういうことを言われたことが新聞に報道されておりました。しかし、これは表向きのことばであって、実は、聞くところによれば、あなたは、自分の目の黒いうちは核防条約批准には絶対に反対だというような意向を漏らされているやに聞き及びますけれども、科学技術庁長官のこの核防条約に対する批判点は、一体どういうところにあるのか、お伺いをしたいと思います。
  16. 森山欽司

    森山国務大臣 核防条約につきましては、すでに署名を終わっております。そして署名の際に、政府から、将来批准に際しまして考慮しなければならない事項につきまして、軍縮、軍事管理問題あるいは核の管理協定保障協定問題等、それらの問題についてさらに検討を進めてやろうという基本方針でございます。  新聞記者会見で、たまたまこれについてどう思うかというお話がございました。かねてから、核防条約はきわめて重要な問題でございますから、私は、この結論が出るまでの間にいろいろな意見を持っておったけれども、特に今回私が閣僚として入った以上は、役所の立場においても、さらにこの問題を検討しなければならないのであるから、いま直ちにこの問題についてどういう考え方かと急に言われても、これは返事はできない。しかし、とにかくこの問題については、きわめて重要な問題であるから、慎重な態度をもって臨みたい、こういう答えを、たまたま記者会見で、新聞記者の方がお一人だけおられた席で、そういうことをお話いたしたわけでございます。そういうことでございますので、事情、御了解を願いたいと思います。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 慎重に取り扱うことは、何の問題についてもそうなんですよね、この問題に限らず。あなたは、いま現在の時点において、調印はしたけれども批准に手間どった。その手間どった理由はわかっておりますよ、外務省声明を出しておるから。  いま批准に対する条件は整ったとお思いでありますか。
  18. 森山欽司

    森山国務大臣 昭和四十五年二月三日の核兵器不拡散条約……(楢崎委員「それは知っております」と呼ぶ)署名の際の日本国声明において、将来、本条約批准するにあたって強い関心を払うべきであろう事項については、先ほど申し上げましたように、正確にいえば、軍縮及び安全保障問題……(楢崎委員「わかっておりますよ」と呼ぶ)その次に原子力平和利用問題がございます。……(楢崎委員「それは整ったとお思いかと聞いておる」と呼ぶ)その中で、前半の軍縮及び安全保障問題につきましては、当面私の範囲外といたしまして、原子力の平和利用問題につきましては、これはその冒頭にもありますように、「わが国がこの条約の第三条にもとづき国際原子力機関との間に締結する保障措置協定内容は、他の締約国が個別的にまたは他の国と共同して国際原子力機関との間に締結する保障措置協定内容に比して、わが国により実質的に不利な取扱いとなることがあってはならない。日本国政府としては、この点を十分考慮したうえで条約批准手続をとる考えである。」こういう項目がございます。その項目に沿って、昨年の十一月の中旬に、EURATOM並み内容でやろうかという基本的な話し合いが、抽象的に話がそこまでいった。  さて、具体的にどうするかということになりますれば、それに基づいて国内体制も整備していかなければなりませんし、また具体的な内容を詰めていかなければならないというような段階にあるわけでございまして、そういう意味においては、まだはっきりした、いつ、どういうふうに進めるかというようなめどがついておらないわけでございますから、私は、科学技術庁長官といたしましては、なおかつこれらの問題を詰めて対処をいたしたいと考えております。  政治家立場で、先ほど先生から、目の黒いうちは云々というおことばがございましたが、そういう点については、私自身はどこからそういうあれが流れたのか、つまびらかにいたしません。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎委員 委員長、ちょっと注意をしていただきたいのです。われわれに与えられた時間は二時間、これは質問者に与えられた時間であって、政府がかってにする時間ではないのであります。したがって、質問者の要点に答えてください。いまの答弁を聞くと、まだ批准条件は整わない、そう聞こえましたが、そうですか。イエスかノーでいいのです。
  20. 森山欽司

    森山国務大臣 保障措置協定措置につきましては、なお予備交渉内容を詰める必要があり、かつ、それに伴って、国内措置等の整備をさらに進める必要がある段階でございます。したがって、なお検討を要するというふうに考えております。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ただいまお聞きのとおり、科学技術庁長官としては、まだ批准の時期ではない、そういう判断のようです。  で、お伺いしますが、再検討会議準備会はいつ開かれるのですか。
  22. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 再検討会議は明年の五月、日はまだはっきりきまっておりませんが、五月中にジュネーブで開催される予定になっております。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 準備会です。
  24. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 失礼いたしました。  準備会議は、一応ことしの二月以降、三回くらい開催するのではないかということで、まだ日にちははっきり確定いたしておりませんけれども、大体そのようなことで、ジュネーブからニュースが入っております。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 お聞きのとおり、この二月から準備会が始まるという。この準備会に参加して発言をするためには、批准をすることが前提の条件になっておるのですか、外務大臣。
  26. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 条約の再検討会議には、条約の加盟国でなければならないということがNPTの条約本文にございます。準備会議についてどの範囲に参加を認めるかということは、昨年の国連総会のときに、再検討会議の準備の話し合いを始めようということでいろいろ意見はございましたが、現在のところ、やはりそのNPTに加盟している国がこの準備会議に入るということで話が進んでいるようでございます。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、やはり批准をするということが、この再検討会議準備会にも参加する条件のように、いま事は進んでおるということであります。  たしか、昨年十二月の十一日、総理は参議院において、この核防条約批准を求める案件を今国会に提出するという積極的な答弁をなさいました。新聞が大々的にこれを報道した。ところが一月二十一日の本会議における施政方針演説の中では全然触れられておりません。もっとも外務大臣の演説の中には少しあったような気もいたしますが、総理の昨年の十二月十一日に答弁されたそのお考えは、まだ変わりませんか。今国会に提出するという、そのお考えです。
  28. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 昨年、細川参議院議員の、質問に答えて私が申し上げたわけでございますが、この条約には調印をしておるわけでございますし、いつの日にか、必ず批准を求めなければならない重要な案件であることは申すまでもございません。その後いろいろな折衝も行なわれ、私は、原則的に、できるだけ早い機会にこの条約批准手続をとりたい、こういう原則的な気持ちを述べたわけでございまして、この国会をめどにして批准手続をとりたいという気持ちには変わりありません。  ありませんが、しかし、先ほど森山科学技術庁長官が述べましたとおり、まだ国際的にも準備会議段階もございますし、まだ日本が平和利用という大原則を前提にして、国際的にも詰めなければならない問題もありますので、そのような国益を守るという立場から、可能な限り最善の努力を行なう、その上、条件が整い次第、できるだけ早い機会に批准手続をとりたいという基本的な姿勢には変わりありません。(楢崎委員「今国会は」と呼ぶ)ですから、今国会に出したいという気持ちには変わりはないわけです。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、いまのところ、まだ田中内閣としての意見は統一されていないわけですか。
  30. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 まあ国益を守るために、いろいろな条件が満たされなければならないという問題が前提にございます。ですから、そういう問題をできるだけ早い機会に整えたいという努力を続けておるわけでございます。そのいろいろな条件が具備し次第、できるだけ早い機会に——できるだけ早い機会というのは、この国会、いま開会中でございますから、そういう意味で批准の手続をとりたいという基本的な考え方には変わりはありません、こう述べておるわけであります。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎委員 閣内は統一されておりますか、それで。今国会でぜひ批准したいというふうに、閣内は統一されておりますかということを聞いておるのです。
  32. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 内閣を代表して私が述べておるのでございますから、こういう問題に対しては、その方向で、方向はお互いが了としておるわけでございますが、しかし前提条件がありますので、国益を守るために、前提条件を具備するために、最善の努力をいたしましょうということで、いろいろ努力をしておるわけでございます。ですから、その努力の結果、条件が満たされ、国益が守られるということになれば、実現をするというふうに御理解をいただきたい。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、まだ条件は整っていないという判断ですね。条件を整えるためにいま一生懸命やっておるということであれば、いま批准のための条件は整っていないということになりますが……。
  34. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 進行形と御理解をいただきたい。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これはもう御承知のとおりでしょうが、四十五年の二月に調印されて、今日まで批准が延ばされているわけですね。なぜか。いろいろな条件がある。総理のおっしゃるとおりです。そのうちの大きな一つの懸案の中に、非核保有国に対する安全保障の確保についての条件がまだないということが一つ入っております。これは外務省の発表の声明の中にもある。つまり、この条約批准をすれば二十五年間核兵器を持てなくなる。国際法的にそれは拘束される。これでは核兵器に対するフリーハンドをなくすことになる。したがって、非核保有国である日本の安全保障としては、むしろ核防条約批准する道を選ぶよりも、いまのままにしておいて、つまり、現在政府がとっておる防衛政策、それは何か。  一つ、対米依存による核の保障である。これは日米安全保障条約の堅持しということ。いま一つは、核を除いた他の通常戦力を維持していく、そして、その前提としては、核の製造能力、運搬能力は潜在的に保有する。すなわち、日本は核武装する必要はないけれども、その気になればX年以内に核武装できる能力を身につけておき、それを背景とした国際的な発言力を身につけておくことである。こういう現状の防衛政策のほうが有利ではないか、こういう判断が、やはりその基礎に部分的にあるために、この批准がおくれておるのではなかろうか。その点については、どうですか。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 いま言われました核防条約批准にあたりまして、満たされるべき前提条件ということの意味において、いま御提示になりましたような御意見が国会の内外にございますことは、われわれも承知いたしております。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ところが、これは単なる意見ではなしに、現実の動きは具体的にその方向に向かっておる。  まずユニホームの中に、いま申し上げたような防衛の選択をとるべきであるという意見がある。私はそれを防衛庁の部内資料によって明らかにすることができる。二番目に、昨日岡田委員によって明らかにされた米空軍ベーシック・ドクトリンの採用である。三番目に、自衛隊の装備は有事核装備体制に入っておる。その中身は核、非核両用兵器の採用であります。具体的には、ファントムや、あるいはナイキJや、あるいは四次防で採用する二千二百トン型の潜水艦涙滴型であります。あるいはまたターター、アスロック、ダッシュあるいは百五十五ミリ自走りゅう弾砲、PS1、HSS2、全部その気になれば直ちに核装備できる。また、技術研究開発計画の中でも、私がかつて指摘しました三次防の中におけるAAM、四次防の中におけるUSUM、水中空中水中ミサイル、これは原潜につけるやつでありますけれども、それを検討の議題にしたことがある。すべて現実はその方向に動いておると思います。  で、この際ちょっとお伺いをしておきますが、外務大臣、核防条約の一、二条は、非核保有国が核兵器を持つことを禁じ、あるいはまた、他の条で原子力の軍事利用を禁止しておる。で、核防条約では非保有国が原潜を持つことは禁じていないかどうか、すなわち、原潜は条約でいう平和利用に入るか、それとも軍事利用に入っておるのか、明らかにされたい。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 原潜と申しますと……。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 原子力潜水艦です、原子力潜水艦。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 核防条約におきましては、軍事利用を禁ずるということと承知いたしておりますが、原子力を推進力とする艦船というもの、単に推進力としてそれを利用することが、核防条約に抵触するかどうかという御設問でございます。  私は条約論の専門家でございませんので、たいへん恐縮でございますが、その点につきましては、事務当局から答弁さしていただきます。
  41. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 原子力の兵器あるいは核爆発という形で移転し、取得し、製造するということを禁止するのが核防条約の趣旨でございまして、それを制御された形で平和目的に使うという場合には、禁止されていないものと解釈いたします。
  42. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっとあなた、何言っておるのですか。原子力潜水艦を私は具体的にあげておるのです、どうかと言って。ほかのこと聞いているのじゃない。
  43. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 私、申し上げておりますのは、核防条約との関係で禁止されておりますのは、核兵器あるいは核爆発装置の製造、取得あるいは移転ということでございまして、それに該当しない、つまり制御された形で原子力のエネルギーを使う……
  44. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういうことを聞いておるんじゃないのですよ。原子力潜水艦は、核防条約で非核保有国が持てますか持てませんかと言っているのですよ。それを聞いているのです。
  45. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 私、核防条約との関係でお答え申し上げておるつもりでございますけれども……
  46. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どうなんですか、原子力潜水艦。——どうしてわからないのですか。核防条約では、非核保有国は、原子力潜水艦を、これから核防条約批准した後持てますかと聞いているのです。わからぬなら、わからぬでいいです。
  47. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 原子力潜水艦関係では何ら規定はございません。私申し上げておりますように、核兵器あるいは核爆発装置についての移転、製造あるいは取得について禁止しているわけでございます。
  48. 楢崎弥之助

    楢崎委員 答弁になりませんね。原子力潜水艦は、私は具体的にこう申し上げておるのです、批准後、非核保有国は持てるか、国際的な解釈をお伺いしたい。
  49. 松永信雄

    ○松永政府委員 お答えいたします。  核防条約上、原子力を推進力といたします艦船、すなわち、そこの中には原子力潜水艦が入ると思いますが、これは禁止されていないと思います。
  50. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何がはっきりしておるのですか。それはあなたの解釈である。締約国の中にそれは確認されておりますか。
  51. 松永信雄

    ○松永政府委員 この条約の加盟国の間でも、その解釈が一般的であると私は考えております。
  52. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは考えておるかどうか知らないが、それを証明する文献があるか。どのような方法でそれが確認されておりますか。
  53. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 いまの点につきましては、この核防条約が国連総会で最終的に採択される直前に、当時国連代表でございました鶴岡大使が、これについての日本政府の見解を申し述べました。その中に、核防条約によって、原子力の平和利用の面において悪影響が及ぼされないこと、また、この条約は核兵器ないし核爆発、特に軍事利用についての禁止が主眼であって、そのために、先ほども申し上げた平和利用、特に制御された形で原子力のエネルギーを使ういろいろな施設、たとえば高速増殖炉、そういう点については、日本側としては留保するという趣旨の発言をいたしております。それに対して、その会議場で何らの反論はございませんでした。
  54. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなことを聞いているんじゃないのです。それは原潜とは関係ありませんよ。私は原子力潜水艦に限定して聞いている。普通の貨客船あたりに原子力を使う、「むつ」のようなこと、これは許されております。そんなことは知っています。原潜のことを聞いているのです。これはわからぬでしょう、そう日本政府は考えておるだけで。それはちょっとおいておきますよ。  では、日米、日英、日加、それぞれ原子力協定を結んでおりますね。この協定との関係で、日本原子力潜水艦を保有することは抵触しませんか。
  55. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 現行の日米原子力協定の十条の規定によりますと、日本国政府は、米国から供給を受けます特殊核物質、濃縮ウランでございますが、これが原子兵器の研究もしくは開発または他の軍事目的に使用されないことという規定はございます。
  56. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これははっきりしていないのですよ、日本政府が言っているだけで。  ここで私は、日本政府の本問題に関する、これは主として原子力基本法との関係における統一見解が、昭和四十年四月十四日、わが党田中武夫委員質問に対して出されております。一応読んでおきます、これを確認したいから。「原子力基本法第二条には、「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、」云々と規定されており、わが国における原子力の利用が平和の目的に限られていることは明らかであります。したがって、自衛隊が殺傷力ないし破壊力として原子力を用いるいわゆる核兵器を保持することは、同法の認めないところであります。また、原子力が殺傷力ないし破壊力としてではなく、自衛艦の推進力として使用されることも、船舶の推進力としての原子力利用が一般化していない現状においては、同じく認められないと考えられます。」、これが統一見解です。間違いありませんね。
  57. 森山欽司

    森山国務大臣 お答えいたします。  原子力の平和利用に関する昭和四十年四月十四日、衆議院科学技術振興対策特別委員会における政府の統一見解として明らかにされているところは、現時点において何ら変更ございません。
  58. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はいままでこの問題ずいぶん追及してまいりました。特に技術、研究、開発関係で核兵器に関するものがちょっとでもちらちらすると、それを指摘すると、政府はすぐ、思い出してください、それは原案の原案のまた原案の草案ですと言った大臣もおります。そういう答弁でごまかされてきました。それで、四十六年十月二十九日、当委員会であります。当時の西村防衛庁長官は、この私に対してこう答弁されました。原子力を「推進力として原潜をつくる、こういう考えはない。したがって、これに関する研究と申しますか、開発計画というようなものはあり得ないのであります。」そう答弁されております。  これは私は何回も確認してきましたが、もう一ぺん確認をいたしますよ。この考えは、防衛庁はもちろんのこと、民間を通じて、つまり、官民通じてあり得ないということである、そう確認してまいりましたが、間違いございませんか。
  59. 山中貞則

    ○山中国務大臣 防衛庁としては、たとえば戦術核兵器等について、憲法上、将来解釈が許される範囲内の小型のものであっても、非核三原則に基づいて持たない、これははっきり表明しておる政府の見解でありますし、それの変更を加える意思もありませんから、まずこれは確定的なものであります。確定しているわけであります。  さらに推進力の問題としては、ただいま読み上げられました統一見解にあるとおり、原子力基本法第二条における平和利用に限る。ただし、一般の殺傷力その他でない推進力として、これが普遍化しない現状においては、なお、たとえば自衛隊の自衛艦における推進力……
  60. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はそんなことは聞いていないのです。いいですか、もっと冷静に聞いてくださいよ、あなた。
  61. 山中貞則

    ○山中国務大臣 聞いています。
  62. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いいですか。西村防衛庁長官は、原潜に関する研究、開発は行なわないのだ。これは、防衛庁はもちろんのこと、民間もそうだということは、私はずいぶん確認してきておりますが、いまでも変わりませんねと言っているのです。官民通じて変わりないかと聞いているのです。
  63. 山中貞則

    ○山中国務大臣 民間のことはわかりませんが、防衛庁は研究いたしておりません。
  64. 楢崎弥之助

    楢崎委員 民間はどうですか。
  65. 山中貞則

    ○山中国務大臣 知りません。
  66. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、この方針は、官民を通じてそうである、そういう答弁をこれまで、ずいぶん聞いてきているのです。いま民間は知らないということですか。答弁が変わりますよ。
  67. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は防衛庁のことを申しましたので、民間のことならば、ほかの大臣に御質問願います。
  68. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いままで防衛庁長官はそう答弁してきたのです。  じゃ、通産大臣、どうですか。
  69. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛庁の方針に従って私はやっていると思いますから、民間において原子力潜水艦の研究をしているということはないと思います。
  70. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はずいぶん、民間もやらないのだ、政府の方針がこうだからやっておるはずはないのだ、そういう答弁を聞いてきたのですよ。いまの通産大臣の御答弁も、やっておるはずはないというような御答弁でございました。民間でやっておるかどうかというのは、政府は把握されておりませんか、もう一度お伺いします。
  71. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 平和利用で「むつ」のような場合の研究はやっていると思いますけれども、事、軍事利用に関するそういう原潜のような場合の研究はしてないと私は思います。
  72. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はいままでずいぶん調べてまいりました。もはや潜水艦の船殻材料、これはいままでNS63を使っておった。これが来年からいよいよ90になる。これはアメリカの最新の原潜の船殻材料と一緒です。したがって、深くもぐるのも、いままで三百メートルであったのが、四百五十メートルになる。二千二百トン、これはアメリカのタリビー型と同じである。しかも、原潜を持つだけじゃ意味がないのですよ。原潜を持つということは、その意味は、いわゆる核魚雷を持つということです。それなしに意味がないのです。だからUSUMも研究の課題になった。USUMは、いまあるのは、世界じゃただ一つ、サブロックだけです。核兵器です。だから、これほどまで外郭は全部検討してきた。残るは原子炉だけである。必ずどっかでやっておると思っておった。やっておるのです。それを防衛庁は隠しておったのですよ。  川崎重工であります。「二、五〇〇T 八、〇〇〇SHP 原子力潜水艦 原子動力装置 計画計算書 昭和三十三年五月 川崎重工業株式会社」ちょっと総理に見てもらいたいと思いますが、よろしゅうございますか。——これを見ますと、三十三年五月、いまから十六年前です。このときに、すでに二千五百トン型、八千軸馬力の原子力潜水艦を想定をしまして、それにつける原子動力装置の計画計算書を完成しておるのであります。つまり、試設計を終わっておるのであります。実に驚くべき事実であります。  この計画計算書によりますと、「はしがき」にこういうことが書いてあります。一応この段階では実用的に成功した唯一の型式であるPWR、つまり加圧水型ですね、それを採用しているが、今後の開発結果を待ち、BWR、沸騰水型ですね、その他の採用も考慮する予定である、そう「はしがき」に書いてあります。今後ずっと開発、研究を続ける。そうして「あとがき」ではどう書いてあるかというと、この原潜用原子動力装置の試設計により「艦として成立するという一応の結論を得た。」つまり成功したということです。  私がなぜこれが重要であるかというと、いままでそういう事実はないんだと、何回も政府は言ってきた。そんな原潜の研究なんかしてきていない。つまり、これが事実であったら、十六年間、私どもはだまされたことになる。しかも、事は、国の最高政策であります核政策にからむ重要問題であります。しかも、先ほどから明らかになったとおり、核防条約批准を前にしたこの段階である。あるいは日米、日英、日加原子力協定とも触れる問題である。しかも、いま日本核防条約批准をおくらしておるのは、どうも核兵器保持に対するフリーハンドを失いたくないからではないかという国際的な見方もあるのですよ。とすれば、この事実は、やはりそうだったかということを思わせることになるでありましょう。  したがって、これは国内的に原子力基本法との問題もこれあり、あるいは国際的にもたいへんな重要な影響を与える問題をはらんでおると私は思いますから、まずこの川重がこういう計画計算書を完成し、その後も研究を続けておるかどうか、これをまず私は確認をしてもらいたいと思うのです。架空の議論はしたくない。川重にまず確認をしてもらいたい。問題はそこから始まる。同時に、三菱重工に対しても、その事実を直ちにまず確認をしてください。
  73. 山中貞則

    ○山中国務大臣 政府の統一見解は、昭和四十年だと私は記憶しておりますが、防衛庁としては、そういう方針を採用しないということは明らかにしておりますから、その事実関係については、その以前の問題としてあったかなかったか、それはいま事務当局より答弁させます。——事務当局もいまわからないようでありますから、直ちに調査して報告します。
  74. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この問題は事実をぜひ確かめていただきたい。そう時間はかからないと思いますから、それまで私は待ちます。
  75. 山中貞則

    ○山中国務大臣 待つ、待たれないは委員会の決定にまちますが、私のほうでは、直ちにすみやかに調査して報告します。
  76. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 楢崎君に申し上げます。  可及的すみやかに調べて、その結果を報告するようにいたさせます。どうぞほかのことで審議を続けて……。
  77. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、架空な論議はしたくないのです。その事実を踏まえて、それから質問を開始したいのです。重大問題ですから。
  78. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 楢崎君に申し上げます。  二つの会社へ電話しているそうですから、大体十分ぐらい以内にわかるということです。どうぞ。
  79. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これからこれを基礎にして質問するのです。
  80. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それじゃ十分間待っていてください。
  81. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いま電話が一応通じましたが、責任者その他をさがしておりますので、その回答が来るのが、ちょっと時間的にわかりません。なるべく急がせます。
  82. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は資料要求をしておるんじゃない。事実を確かめないと、架空の問題について論議は進められない。だから、事実だけ、まずとりあえず確かめてください。それを言っておるのですよ。しかもこの問題は、普通の政策問題と違うんだ。事、核問題に触れる問題です。何回も国会でやってきて、非常に意見の分かれるところである。だから私は、本問題を素通りして先に行くわけにいかないのですよ、質問者としては。
  83. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まず申し上げておきますが、防衛庁は関知していない。しかし楢崎さんは、ちゃんと資料を持っておられるわけでありますから、その事実があったかどうかについて、事実を知ってからだということですから、その事実を確かめるために、いま電話しているわけでありますから、それの返答が来なければ、私から何とも答弁できません。
  84. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうでありましょう。私も、かつて私の資料をにせものとかなんとかいわれたことがあるから、私が資料を持っておっても、確かめさせなくちゃいけません。したがって、これは非常に重要な問題で、私は、そう時間はかからぬと思う。しばらくの間御休憩をいただきいたのですが、委員長
  85. 山中貞則

    ○山中国務大臣 政府の姿勢は先ほど来申しておりますが、民間の会社とはいえ、具体的に原子力潜水艦の、想定に基づくものとはいえ、試作等の研究を行なっている事実について指摘されましたので、この問題は、事実関係の有無について責任をもって調査の上、報告いたします。
  86. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま一つ御調査をいただきたいと思います。  政府は関知しないと先ほども申されました。昭和三十九年六月十日、防衛装備国産化懇談会第十四部会、これは防衛庁、科学技術庁、防衛産業、学識経験者が参加しております。表題は「潜水艦用新型動力の調査・研究開発に関する意見」これがまとめられておる。その中で、たくさんあるから一部を読みましょう。「原子力機関の重要性、原子力潜水艦の水中高速力と水中巨大航続力とに対応して原子力潜水艦の活動を阻止し、海上防衛の実効を果たすためには、われもまた原子力潜水艦によって防衛することが最も効果的である。」そういう前提のもとに案をまとめておるじゃありませんか。これは事実かどうか調査いただきたい。
  87. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それは事実でありますが、三十九年のことでありまして、四十年に政府が統一見解を出しました。したがって、わが国、そして防衛庁としては、原子力潜水艦の研究、開発を含めて、一切そういうことは当分やらない、いわゆる原子力基本法第二条の問題として普遍的に、全世界のすべての民間、あるいはまた軍用を問わず、すべての推進力が原子力推進に変わった場合でも、日本の自衛艦隊だけは、これはもぐるものも、もぐらないものも含めて、永久に日本だけは旧型のエンジンを使っていくのであるかどうか、そこらの問題はまだ正確にはなっておりませんし、そういう時代が来るかどうかは遠い将来でありましょうから。現時点でいえば、自衛艦には原子力推進を、海上もしくは海中とも装備するつもりはないという方針が昭和四十年にきまったんですから、その三十九年の問題は、もう存在しないということです。
  88. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何言っとるんですか、あなた。四十年にやっと統一見解ができたが、それまでずっと論議を重ねておるんですよ。  中曽根さん、原子力基本法を、議員立法として自民党と社会党が出しましたね。成立、施行されたのは、いつですか。
  89. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 たしか、私は提案者で説明をいたしましたが、昭和三十年ごろではなかったかと記憶しております。
  90. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それからずっとこの問題は議論を重ねておるんです。おおむね統一見解に見られるような答弁が続けられた。そして四十年に、それを集大成したんです。だから四十年までは、研究しようが開発しようがいいなんていうようなことはないんですよ。  山中さん、それ以前だからかまわないんだということは何ですか、それは。しかも防衛庁はタッチしとるじゃありませんか、この懇談会に。それで、こういう意見をまとめておるじゃありませんか。
  91. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いま読まれた文章は、「原子力潜水艦の水中高速力と水中巨大航続力とに対応して原子力潜水艦の活動を阻止し、海上防衛の実効を果たすためには、われもまた原子力潜水艦によって防衛することが最も効果的である。」ここまで読まれたわけです。  「わが国は諸種の制約によっていま直ちに原子力潜水艦を保有することが困難であるにせよ、防衛すべき原子力潜水艦を知らずしては海上防衛は成り立たないのみならず、真実の対潜防衛訓練はできない。」こうなっておりますから、したがって、前段だけではない、後段があるということです。
  92. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたがそこまで言われるならば——いいですか、あなたがそこまで言われるならば、「困難であるにせよ、」から文章は消されておりますね。「防衛すべき原子力潜水艦」までの間に文章が入っておる。その文章を明らかにしなさい。  それから、次の四ページ、そこも三行にわたって消されておる。これを明らかにしなさい。あなたが文章読むからですよ。——残念ながら、防衛庁の文書は、この懇談会が出して削ったところが抜けた文章になっておるからわからないのです。これが原文です。はっきりしてください。
  93. 山口衛一

    ○山口政府委員 お答えいたします。  先ほど先生から、この国産化懇談会の存在につきましてお話がありましたので、直ちに資料を取り寄せまして、内容を、ここに書いてありますことを、そのまま大臣がいま実は読んだ次第でございまして、これ以上、これ以外のものが消されているかいないかにつきましては、いま直ちに調査いたします。
  94. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 消されて何……。そこのところ、もう一回。
  95. 山口衛一

    ○山口政府委員 ただいま大臣の読んだ内容が私どもの現在持っております意見の内容でございますので、それ以外のものがここに入っているかどうかにつきましては現在わかりませんので、直ちに調べます。
  96. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、調べるまでお待ちしましょう。
  97. 山口衛一

    ○山口政府委員 お答えいたします。  非常に古い資料でありまして、実は私のところでいま持っておりますのは、昭和三十九年六月の日付でございまして、このような懇談会の意見書が出ておりますが、現在私どもで所有しておりますのはこれのみでございます。  この中身は、ただいま防衛庁長官がお読みしたとおりでございまして、これ以外のものは入っておらない、意見として私どもに出たもの以外のものが入っているとすれば、それは防衛庁に出ている意見ではないというふうに現在承知しております。
  98. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この懇談会に参加している防衛庁の人は、この中身を知っているのです。だから説明してください。
  99. 山口衛一

    ○山口政府委員 お答えいたします。  この防衛装備国産化懇談会のメンバーとしましては、防衛庁関係で——ただいま先生、防衛庁の現職員で入っている者とおっしゃいましたが、これを読み上げますと、防衛庁関係では、防衛政務次官井原岸高先生、防衛事務次官加藤陽三先生、それから防衛庁官房長……   〔発言する者多し〕
  100. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 静粛に願います。
  101. 山口衛一

    ○山口政府委員 防衛庁官房長三輪良雄さん、防衛庁防衛局長海原さん、防衛庁装備局長伊藤三郎さんでございまして、これが幹事——ただいま、あと読み上げました三人は幹事でございまして、これのみが入っておりますが、いま現職ではこの幹事に入っておりません。したがいまして、この意見の作成には正式には入っていないというふうに考えます。
  102. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 午後零時三十分まで休憩いたしますが、その間において、防衛庁において統一の見解をつくられるように希望いたします。——よろしいですか。  暫時休憩いたします。    午前十一時三十九分休憩      ————◇—————    午後一時十八分開議
  103. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。楢崎弥之助君。
  104. 楢崎弥之助

    楢崎委員 政府側の事実関係に対する御報告をいただきたいと思います。
  105. 山中貞則

    ○山中国務大臣 二つございましたので、休憩時間中を利用して調査いたしましたが、第一点は、調査するまでもなく、いわゆる消してある個所があるかどうかという問題でありますが、これは私どもの文書としては最終的に一部しか、そういう最終文書しかありませんから、過程においてどんな議論が行なわれて、どの個所が消されたとか、そういうものは存在しておりません。これは午前中の答弁と、申しわけありませんが同じであります。  それから民間の会社、ことに川崎重工のはっきりした資料をもっての御質問についての会社からの答弁は、直接電話いたしました責任者の装備局長より答弁させます。
  106. 山口衛一

    ○山口政府委員 川崎重工業の船舶の責任者に電話をいたしまして、その責任者から、この資料を作成したと思われる本人にも確かめてみました。  その結果としまして、川崎重工よりは、会社としましては、これまで、過去から現在に至るまで、原子力潜水艦に関する研究、開発は行なってはいないということは申しております。ただ、この潜水艦の関係の技術者が、技術者個人の勉強としまして、原子力潜水艦についていろいろと検討したことは確かにございます。その計画書というものは、その際のものかもしれないということを会社側は言っておりました。また本人は、確かめたそうですが、その記憶がある、こういうものをつくった記憶があるということを言っておりますが、お示しになられました計画書そのものは現存していない、本人がそう言っておるそうでございます。これは、これまで何回か電話を入れまして、確認を重ねた結果の御報告でございます。  それから三菱重工に聞きましたところ、これは会社としまして、正式に、そういう内部の命令でも出したりそういうことで、研究開発を原子力潜水艦につきましてやってはいないということを申しております。  以上が、私どもがこの時間に確かめました内容でございます。御報告いたします。
  107. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまのような会社側の御返事であれば、私は、会社の責任者を呼ばざるを得ない。この種の研究というものは、いまほかの問題もあげますけれども、最高レベルの研究なんです。相当のプロジェクトを組まなくちゃできないのです。それを一技術者が、研究家がやっておったのだろうという会社の無責任な態度では、私は許せませんよ。冗談じゃないですよ。私は、川崎重工の責任者を参考人として招致をしていただきたい。明確にしなければ、これは重大問題なんです。がかってにやっておるじゃ済まされぬ問題ですよ。だめですよ。
  108. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの楢崎君の御要望は、理事会において研究いたします。
  109. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その際に注文があります。  資料はないと称しておる。そういうことはあり得ない、これほどの研究をやっておって。この計策書は計画計算書なんですよ。計画計算書というものは、どういうものか知っておられますか、山口さん。私は専門家にも見せたのですけれども、これは相当のものだ、綿密な計算をして。だから、この資料がもうすでにないなんということはあり得ない。したがって、資料を私は会社側に請求します。もし会社側が資料を出さないならば、参考人を直ちに証人に切りかえて、資料提出を求めたい、このように質問者は考えておりますので、その点も含めて、理事会でおはかりをいただきたい。
  110. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 そういうことも含めて、理事会で審議をいたします。
  111. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この実物を出してくればわかることですけれども、この中には、今後の開発をずっと進める計画計算書なんです。ずっと進めておる。そういう点も、これは会社を呼ばぬとわからないのです。だから、ただいまの答弁では、私は絶対に納得しません。この計画計算書がそうなっているのですから。この研究は続けられておるわけですよ。しかも、この川崎重工の神戸造船所に防衛駐在官を派遣したのは、何年何月ですか。
  112. 山口衛一

    ○山口政府委員 駐在官の派遣年月日は、いま直ちに調べます。——おくれました。川崎重工の神戸駐在官事務所は、三十三年五月二十三日に開設しております。
  113. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この計画計算書ができた段階で、防衛駐在官は派遣をされております。しかも、何回も明らかにしたとおり、この研究は続けられておる。防衛駐在官が知らないはずはない。したがって、この問題も含めて、私は、防衛庁が知らぬ存ぜぬでは通らない問題ですから、どうしても会社の責任者を呼ばなくてはわからないということを言いたいわけです。  それからさらに、先ほど明らかにしたとおり、防衛装備国産化懇談会には、防衛庁の最高幹部が出ておる。そして、そこにおける結論が、さっき読み上げたとおりです。原子力潜水艦は持つべきである。そして、原子力潜水艦について、原子力潜水艦用の原子炉以外は、全部技術研究開発計画、現実に進めておる装備は全部原潜向けです。それを私はいまから明らかにしたいと思うのです。  ちょっと長くなりますけれども、御理解をいただくために、その背景を明確にしておく必要があろうと思います。  この昭和三十三年五月段階、原潜に関してどういう時代であったかというと、アメリカは二十八年にたくさんの原潜を建造しておりますけれども、その内容を当時はほとんど明らかにされなかった。で、平和利用の面で三十三年三月から原子力貨客船サバンナ号の建造に着手したのであります。ソ連は、三十二年十二月、原子力砕氷船レーニン号が進水をいたしております。  わが日本の場合は、原子力船の開発がようやくその緒につき始めたときであります。すなわち、三十二年十一月二十九日、原子力委員会は原子力船専門部会を設置、原子力船開発のために必要な研究題目とその方法について諮問をいたしております。この答申は同年十二月に出されておる。三十三年十月には、社団法人日本原子力船研究協会が設立をされております。そして、いよいよ原子力船の開発に乗り出すわけであります。そしていよいよ原子力第一船の「むつ」が、基本計画は三十八年、基本設計は三十九年、着工四十三年十一月、完成四十七年六月となるのであります。そして、三十五年五月のその時期は、防衛庁の発注で、川崎重工の神戸造船所で、戦後初めての潜水艦が建造されつつあった時期であります。そして、その第一号「おやしお」は、三十二年十二月二十五日起工、三十四年五月二十五日進水、三十五年六月三十日竣工であります。このときの船型は、いわゆる鯨型であります。ただ、旧海軍ではなかったシュノーケル装置をつけたわけであります。  さらに三十八年には、防衛庁技術研究本部の潜水艦担当者と造船メーカーの技術者たちが研究委員会を設け、原潜の研究調査に乗り出しております。そして三十九年六月十日、ただいま申し上げた防衛装備国産化懇談会が持たれて、さっき言ったとおりの、持つべきであるという結論になっておる。ただ、世間をはばかってそれは公表しなかった。そして、いよいよその関係者たちが積極的に原潜に匹敵する船体構造や耐圧鋼材、船殻ですが、工作法などの開発研究に着手をして、やっと国産のティアドロップ型、涙滴型潜水艦、原潜と同じです、「うずしお」が四十三年九月二十五日に起工をし、四十六年三月竣工をしております。  そして四次防の中で、どういうことが技術研究開発の課題になったかというと、まず、普通の推進力の潜水艦だったら必要のない、緊急性のない、いわゆる特殊鋼、航法システム、潜水艦救難艇、シンスなどの開発計画が盛られております。御存じのとおりです。船殻鋼材はNS90の研究開発、これは来年度持つ二千二百トン型のティアドロップ型潜水艦につけます。  このNS90というのは、どういう鋼材であるかというと、ちょっと説明をいたしておきますが、いままであるやつは鋼材が63であったわけですね。そうしてこれが90になる。どういう点が違うかというと、いまの63というのは、アメリカのいまの原潜に匹敵する。しかし、今度開発されたNS90というのは、ちょうどアメリカでいま開発中のHY130、これにほぼ匹敵するはずであります。つまり、アメリカはいまHY80を使っておる。いよいよアメリカと同じ原潜の鋼材になるわけです。  それからシンスの開発計画、これは高性の航空機で採用しているのと同じ原理の慣性潜航航法装置のことであります。これは長時間潜航したまま、つまり、アメリカでは原潜は数百時間もぐるのですけれども、自分の艦の正確な現在位置を知る。これは、たしか四次防では五十一年までに委託をして実用化を計画しておるはずであります。こういう潜航時間というものは、在来型では不要なんであります。しかも、船型というのは、本来原潜は水中におるのが普通であって、水上に上がるのは一まあ水上にも浮かびます。だから旧来の海軍の場合を見てごらんなさい。潜水艦は全部水上を走るのに都合のいいような船型になっている。それをわざわざ水中が専門の涙滴型、つまりティアドロップ型になるわけですね。  それからエアコンの研究もしておるでしょう。密閉された艦内で、乗務員が吐き出す炭酸ガスをはじめ、微量な各種のガスを適切に処理する装置、長い時間もぐっておるわけですから、これは原潜には絶対に必要なんであります。「うずしお」には新開発の新処理剤のモノ・エタノール・アミンが積載をされておるはずであります。これは約五年間連続使用し得る。在来品は三日間であります。  それから潜水艦の救難艇、これもわざわざ、深いところにもぐる救難艇を、四次防で建造予定の二千七百トン級潜水艦救難母艦にこれを載せる。DSRVというやつです。客観的にすべてがその方向に行っているのです。私はこれを明らかにしておきたい。  なお、これはあとで資料をやってもよろしゅうございますが、私は「むつ」とこの川重の原潜を比較してみた。その結果は、結局、川重で計画計算された原子炉、相違点はずっとありますけれども、それを「むつ」がまねをしたと思わざるを得ません。もちろん、「むつ」の場合は原子炉は三菱でありますけれども。  それで、要するに私が申し上げたいのは、現在の潜水艦千八百トン、五十年につくられる次期二千二百トンの潜水艦、そして川崎重工の想定しておる原子力船、これを比較したら、性能において、五十年に建造される予定のティアドロップ型に匹敵するのですね。だから五十年、来年つくられる二千二百トンの潜水艦にちょうど川崎重工の原子炉ははまるのですよ。これはあとで資料をやりたいと思います。だから、これは会社が、一研究員がかってにやっておるんだろうというような問題じゃない。  しかも山口さん、ユニホームはどういうふうに原潜を位置づけしているか。おたくの文書にあるのです。おたくでは、通常兵器と核兵器の中間に原子力潜水艦を位置づけしておるのですよ。だから、日本でもし核装備が行なわれるならば、まず原潜からだというのは専門家の常識であります。したがって、いよいよ核装備に踏み出したと思わざるを得ないのですよ。もうすべては整った、原潜建造は。あとは意思決定だけである。だから、かってにやっておるんだろうでは済まされない。しかも、もしかってにやっておるとすれば、どういう問題が起こりますか。完全に川重は国の基本政策に堂々と挑戦しておることになるわけでしょう。そして国内法規、あるいは国際法規を無視した、いわゆる商売上の死の商人の本質を明らかにするような反国民的な計画ですよ、私に言わせれば。だから、いずれにしてもこれは重大問題であると私は思います。しかも、こういうふうに見てくると、原発ではプルトニウムが出てまいりますね。それからそれの技術はすぐ原潜に応用できる。「むつ」の場合もそうですよ。いろいろな計画はすぐ応用できる。とすれば、これを並べて考えれば、確かに原子力船「むつ」なりあるいは原発は、平和利用の面を持っておるけれども、同時に軍事利用の面を持っておるということを、これは明確に示すものであろう、このように思わざるを得ません。  したがって、私は、参考人なり証人が見えたときに問題点を、まだありますから、明らかにしていきたいと思います。私は、原潜問題は一応その点で保留をいたしておきます。
  114. 山中貞則

    ○山中国務大臣 楢崎委員のそういう推測というものが、あるいはそういう方向に進んでいるようなふうに見えるのかもしれませんが、私どもは、当時の愛知原子力委員長の国会における四十年の答弁というものが政府統一見解でありますから、それに従って原子力潜水艦の研究、開発などはいたしておりませんし、涙滴型に変えましたのも、三次防から、おっしゃるとおり水中における抵抗の問題を考えて、在来型と変えていったというだけであります。また四次防中の建造も、すべて耐用年数の参ったものを更新するためのものでありまして、二千二百トンにし、涙滴型を採用するということは、決して、それに原子炉を積むという予定の船殻構造、ないしそういう方針をもってあらかじめ船体をつくっておくというような、政府の統一方針をみずからじゅうりんする、そういうことをやっているものではありません。  なお、技術的なこまかい質問がありますならば、事務当局より説明させます。
  115. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いずれ川崎重工が見えて、問題を明らかにした後にまた続けたいと思います。  そこで、一月十日の日にシュレジンジャー国防長官は記者会見をやりまして、アメリカの核政策の転換についてそれを明らかにいたしました。私は、ここにUSISの発表全文を持っておりますが、それによると、たとえばそのシュレジンジャー長官の一月十日の発言の中には、「ア・シフト・イン・US・ニュークリア・デターリング・ポリシー」つまり、米国核抑止政策の転換ということを明確に出しておる。そしてリターゲティング、目標再設定、バリスティックミサイル、つまり米国の弾道弾ミサイルの目標を再設定する。これは私は重大な核政策の転換であると思う。つまり、いままでは核は使えない兵器であった、大量殺人兵器として。これを大都市から目標を選定して、必ずしも大量殺人にならない、使える兵器としての目標再設定なんです。この核政策の転換を外務大臣は御存じですか。
  116. 山中貞則

    ○山中国務大臣 確かに、シュレジンジャー米国防長官の今回の方針については、アメリカの主として大陸間弾道弾というものを中心にしておりましたSALTの姿勢について、第二次SALT交渉の先行きを危惧させるような内容のものであることは間違いありません。  ただ、その前提には、アメリカは多核誘導弾頭というようなものを、ソ連よりすぐれている、開発が進んでいる、実戦配置しているという自信をもって、一千五十四台のランチャー数に、ソ連のほうが四百台余りこえていることを承知の上で合意したと思うのですが、その後ソ連も、最近における研究で、昨年あたり多核誘導弾頭に成功した、実戦配置も間近いということで、そういうようなことを踏まえてのSALTへの問題と、アメリカの戦略体制への再検討が行なわれているものと見ております。
  117. 楢崎弥之助

    楢崎委員 防衛庁長官は、この転換をいつ知りましたか。
  118. 山中貞則

    ○山中国務大臣 日本近海においてソ連がミサイルの発射演習をいたしました。演習と思いますが、試験をいたしました。それらの情報は、明らかに多核誘導弾頭のミサイルに成功したと思われるような情報が得られました。それを踏まえて、アメリカにおいて研究が開始されたものというふうに判断をいたしました。
  119. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いつ知りましたかと聞いたんです、時期を。
  120. 山中貞則

    ○山中国務大臣 日にちまでは覚えておりませんが、昨年十二月ごろで、アメリカのそれに対する態度というものを知ったのは、いまおっしゃったようにシュレジンジャー長官の表明があったときであります。
  121. 楢崎弥之助

    楢崎委員 きのうわが党の岡田委員が出しました「米空軍ベーシック・ドクトリン」これは幹部の学習あるいは参考のために自衛隊は採用した。あなた、あれを読まれましたか。あの中の軽度の核作戦、強度の核作戦、あの内容は、まさにシュレジンジャーが一月十日に核政策転換をやった内容と一緒じゃありませんか。それに気がつきましたか。
  122. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そういう併合性と申しますか、結果的にはそういう傾向になっております。したがって、私としては全文を読んでおりますが、これはアメリカの考え方でありまして、わが日本がそれに対してどうこうするというものではありません。
  123. 楢崎弥之助

    楢崎委員 日本のことはまだ聞いていないのです、これから聞きますから。  つまり、あなたがあれを読んでいれば、当然、七一年九月段階でドクトリンが変わった、その段階で核政策が変わったんですよ。いいですか、なぜ変わったか、背景を言いましょうか。  ちょうど六八年、ジョンソン大統領の時代ですよ、あの米軍がケサン陣地で七十日間くぎづけになった。これは新聞に報道されたとおりです。そして七一年春にニクソン政権になりました。いよいよ海軍、空軍が中心となって、すぐに全面戦争に入るのではなく、限定核攻撃に応じられる能力を展開して、大統領に選択の余地を与えるねらいをもって研究を始めた。これを証明する文書はたくさんあります。そして同じころ、シカゴ大学のハンス・モーゲンソー博士、フルブライト上院議員らは、アメリカ空軍がインドシナで戦術核兵器を使うかもしれないということがニューヨーク・タイムズで報道された。著名な人たちのことばですから、よもやうそはないでありましょう。結局は使わなかった、こういう背景があるのです。  だから私は、きのうの岡田委員の出したこの訓練資料の問題ですけれども、これは明らかに、この核政策の転換というのは、もう一ぺん核を使える兵器にするという転換ですから、これはいままでの米ソ間でいろいろ努力されてきた、たとえば昨年の米ソ戦略兵器制限に関する原則宣言あるいは米ソ核戦争防止協定の方向とは明らかに逆行すると思う。それはどうですか。さっきもそれらしいことをあなたはおっしゃいましたけれども。
  124. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、MIRVのソ連側の成功によって、第二次SALT交渉は難航するのではないかという見通しを持っておりましたが、つい、きのう——おとといでありますか、アメリカにおいて、ソ連の外相との間に第二次SALTも始めるというような話があって、キッシンジャー国務長官が訪ソするというようなことも聞いておりますので、したがって、やはり恐怖の兵器というものをお互いが認識し合っておりますだけに、そういう合意が成立してくれるのではないか、そういうことを私としてはいま願っておりますし、その希望があるように感じます。
  125. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで私は、幾ら参考でも、反対のものでも訓練資料にするのですか、指示しないものでも。内容を指示する、そういうものしか訓練資料にしないのじゃないですか。指示しないものでも訓練資料に、わざわざむずかしい手続をとってやるのですか、どうですか。
  126. 山中貞則

    ○山中国務大臣 内容を指示する、しないの問題よりも、私どもは国家としてアメリカと安保条約を結んでおります。したがって、アメリカにおいてそれぞれ国の方針というものが、陸海空にしても国防省にしても、そういうものが出ますれば、参考資料として高級幹部等に読ませる必要はある、そのように考えます。
  127. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何でも世の中のことは勉強になるのですよ、わざわざむずかしい手続をとって訓練資料にしなくても。何でも勉強できますよ。わざわざむずかしい手続をとって、長官の許可を得て訓練資料にする以上は、その辺にあるいろいろな本と違うはずでしょう。内容自身、勉強したほうがいいが、指示するものでなければ、わざわざ訓練資料としては勉強させないでしょう。そんなごまかしは通りませんよ。  私は、これで時間を費やしたくない。これは岡田委員が保留をいたしておりますから、その際に私も関連をしてやらしていただきたいと思う。その点はよろしゅうございますか。
  128. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 理事会で検討の結果にいたします。
  129. 楢崎弥之助

    楢崎委員 おまかせをいたします。  そこで、三木さんが中近東を回られたときに、日本ことばだけが多過ぎる、行動で示さなくてはならない、それが国の信頼を増す方向だということをおっしゃいました。私もそう思います。だから、日本政策が口先だけでないためには、行動で示す必要がある。  特に私は、核防条約批准を前にして、やはり日本の核政策に対する立場行動で明確にする必要があろうと思う。そのために、この際、核防条約批准問題と関連をして、日本はアジア非核武装地帯設定を提唱してはどうか。その可能性というものは私はあると思うのです。  たとえば、核拡散防止条約の七条、あるいは核防条約署名の際の日本国政府声明、もう詳しくは言いません。それから核兵器をめぐる世界とアジアの現実的な動向、あるいは米ソの核戦争防止協定、現実に進められておる。さらに、中南米非核武装地帯条約などのごときは、もうあと五大国で残されておるのは、核保有国で残されておるのはソ連だけですよ、中国は昨年署名したから。もうソ連も署名するでしょう。したがって、中南米地帯においては非核武装地帯が設定されるのです。だから、いま米ソ核戦争防止協定、それを実効あらしめる、そして、この中南米非核武装地帯の条約の接点としてぜひこれはひとつ御考慮をいただきたい。これはあとで文書を差し上げます。ぜひこれは考慮をしていただきたい。私は文書を出しますから、ひとつ御検討いただきたいと思いますが、どうでしょうか、外務大臣から……。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 文書を出していただきますと、検討するにやぶさかでございませんが、政府といたしまして、アジアにおきまして、ほんとうに効果的な軍縮措置が実現してまいることはもとより望むところでございますけれども、そのためには、米中ソを含む関係各国の積極的な協力を確保することがまず第一の前提条件であると考えておりまするし、そのためには、どういう具体的な措置が、どういう手続で進められていくべきかということにつきまして、アジアの現在の状態に混乱を起こすことなく、そういう手順を踏みつつそういった環境をつくり上げてまいることが、われわれの当面の任務であろうと考えておりますことだけは、前もって御了解を願いたいと思います。
  131. 楢崎弥之助

    楢崎委員 こういう点に対する努力は、わが党もかねてよりの基本政策一つでございますから、協力をしてまいりたい。真剣にひとつこれは取り上げていただきたい。提言をいたしたいと思います。  そこで、問題を変えまして、独禁法と公取委の問題について触れてみたいと思います。  四十七年十一月一日付で公取は、昭和電工、三井東圧化学、三菱化成工業、住友化学工業の四社に対して、独禁法違反事件として注意文書を出しておるそうでありますが、間違いありませんか。
  132. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 いまの四社に対しましては、一昨年の十一月でございますが、注意文書を出しております。
  133. 楢崎弥之助

    楢崎委員 注意文書というのは、独禁法に基づくものでしょうか、それとも任意の行政指導でございましょうか。文書の性格を明確にしてください。
  134. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私たちの考えとしましては、独禁法に基づくものではなくて、しかし公正取引委員会は、独禁法に書いてあるそのものずばりの、つまり違反事件の摘発等を行なう、またそれに対して判定を加えるだけでなくて、それに対して、むしろ予防的な意味での指導を行なうことも権限の中には含まれている、そう思いますので、法律の適用条文はございません。ございませんが、許された行為である、こう思います。
  135. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうですか。この私の持っておる資料では、予防措置じゃないんじゃないですか。  ちょっと必要なところを読んでみましょうか。「下記の私的独占禁止法違反事件において同法に違反する行為を行なってきた。このようにしばしば違反行為を繰り返してきたことはまことに遺憾である。」具体的にその違反事実を書いてあります。すでに違反しておる。一件だけじゃなしに、しばしば繰り返しておる。だから、報告についていろいろな注文をつけておられるでしょう。
  136. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 これは、この場で読み上げても差しつかえないのですが、時間がかかりますから……。趣旨は、いまおっしゃったように、過去において違反事実が繰り返されておる。これらの会社はすべて化学工業会社でございます。化学工業会社でありますために、製品の種類が多岐にわたっております。それで、多岐にわたっております関係上、いずれにしましても、どうかというと、その違反がいろいろ商品を変えて行なわれる傾向があるわけでございます。  今回の石油化学関連を見ましても、一社が二品目から、場合によったら四品目について行なわれておりますが、それと同じような趣旨でございますけれども、しかし、とにかく品目こそ違いながら、同じ会社でたびたび違反事実を繰り返している。ここに指摘しておりますのは、ある会社については四十六年あるいは四十七年というふうなことでございますが、品物はみな違っております。  そういうことで違っておりますが、私ども、これは就任いたしまして二カ月のときにこういうことを考え、また委員会にはかってやったことでございますが、こういった方法は、私ども行政指導といいますか、反省を求める、過去の事実について反省を求め、またさらにこれに対していかなる社内的な措置をとるか、今後そういうことを絶対に起こさないように注意されたい、こういう注意文書でございます。
  137. 楢崎弥之助

    楢崎委員 独禁法の七十三条では、公取委は、「この法律の規定に違反する犯罪があると思料するときは検事総長に告発しなければならない。」告発できるのでしょう、これだけの事実でも。なぜ、その予防措置として注意をするなんという手ぬるいことになるのですか。これほど違反事実をやっておって、しかもしばしば繰り返しておると指摘しながら、なお注意するだけですか。  そこで、この注意文書の中で、「貴社が今後も私的独占禁止法に違反する行為を繰り返す場合には、当委員会としては、厳しい措置をとらざるをえない」とあるが、当委員会におけるきびしい措置とは、一体何がありますか。
  138. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 おっしゃるように、きびしい措置というものの中にはいろいろございます。告発を含め、そのほかにもございますが、しかし、いま一々それを申し上げるということは、私どもの調査の上で、審査の上で、かえって事件審査のために非常に多大の労苦を要する結果になっておる。私どもは、実はこういう予告をすることを、予告といいますか、今後もし犯したならば告発をしますぞ、といわんばかりの書面を出したそのことについては、実は反省しておるわけでございます。こういうふうにやるということは、実際には今度の事件の場合のように、今度違反事実を告発されたら、全くこれは取り返しがつかなくなるというので、非常に緊張して、ほかの会社も同じでございますが、自供を頑強に拒むというふうな結果になる。これは私のほうの職員にとってはたいへんな負担でございます。
  139. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この四社は、このような注意文書を公取から受けて、具体的にどのような対応をしましたか。
  140. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 それに対しまして、住友化学、それから三菱化成、三井東圧、昭和電工、この返答は、それぞれニュアンスは違いますが、大体において共通したものが多うございます。事業部制をとっているということが、結局こういう事業会社にとって、みんな独立した会社を会社の中に幾つも持っておるようなことになって、会社によりましては、権限をその事業部にそっくり委任しているような状態になっている。ですから、それは非常に好ましくないことである。今後は、事業部全員に対して、わがほうの公取委員会の指示を十分認識せしめ、審結の内容を十分検討した上でその事業部の中で徹底をはかる、その中においては、本社その他の部長会議や支店長会議において徹底をはかる、こういうことになっています。
  141. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いわば企業は反省の念書を出しておるわけですね。もうこれからそのような違反行為はいたしません、そのためにはこういうことをいたします、その念書を四社は公取に出した。  念書を出して後、その四社は違反行為がなかったですか。念書を出してから今日までの、その四社に対する違反の回数を言ってください。
  142. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 申し上げます。  昭和電工の場合は、回数としては二回ございますが、うち一回は、この勧告を出した十一月一日以前の行為でございます。ですから一件でございます。それから三井東圧は、ポリプロピレンと塩化ビニール、この二件でございます。ごく最近の事件でございます。それから三菱化成は、やはり二件でございます。それから住友化学は、勧告書の数から申しますと、今回石油化学関係で出しました四件全部に関係しておりますので、勧告件数は四件でございます。しかし、これは事件としては一体としてとらえるのは、かりに検察庁でございますれば、このようなものは一件としてとらえるという慣習になっているそうであります。
  143. 楢崎弥之助

    楢崎委員 総理、聞いておってください。  公取委が厳重に注意をした。企業は自粛の念書を入れた。なおかつ、違反行為はいま御報告のあったとおりです。平然と行なっておるわけです。総理は四日に財界人を一堂に集められましたね。お説教されたんでしょう。財界人はそれに対してどう対応しましたか。自粛しますという対応でしたか。——うなずきましたからそうでしょう。念書を入れても、なおかつこんなざまです。あなたが説教をして、ことばで自粛しますなんて言ったって、腹の中では舌出しておりますよ。こんなばかな話がありますか。堂々と違法行為を続けておるのですよ。  だから私は、この際、企業の実体はこの独禁法に対してどのように考えておるか、どんなになめておるか、それを明らかにするために、企業が出しておる念書をひとつ資料として出していただきたい。よろしゅうございますか。
  144. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 委員会の御要求とあれば——これは私は若干疑問はございます。企業秘密に属するのか、属さないのかという点、ございますが、そしてまた私文書でございます。正式の公文書でありませんが、私どもの判断で、公正取引委員会としては提出する方向で考えたいと思います。
  145. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは単なる私文書ではないのです。独禁法と関連をした文書なんです。だから、これはぜひ当委員会に出してください。企業というものはどのくらい独禁法をなめておるか、明らかになるはずです。
  146. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ただいま申しましたように、委員会の御要求がございますれば、私どもは提出する用意がございます。
  147. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいま各党の理事と相談いたしました結果、理事会で慎重に検討するということにいたします。
  148. 楢崎弥之助

    楢崎委員 出す方向でぜひお願いしたい。もし、企業のほうから出した文書だから、企業の了解を得るということになれば、私は証人として喚問する。そうしないでいいようにしてください。なぜならば、それを出さないということはいろいろな問題が出てくるからですよ。だから、証人として喚問すれば出さざるを得ないからです。なるたけ証人として喚問しないでいいように、ひとつお取り計らいを願いたい。  そこで私は、この問題は、その念書が出てきてから、いかに事態が、こう独禁法をばかにした方向に——言うならば政府をばかにしておるのですよ。進んでやっておるかは、その念書が出てきてから私は明らかにしたい。この点は一応保留いたしておきます。よろしゅうございますか。
  149. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ひとつ申し上げますが、念書を出す出さないは理事会の相談によってきめることでございますから、いまそれを出すという想定のもとに言われてもちょっと困りますから、理事会によくはかって返事をいたしましょう、それも全部含んで。
  150. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから保留しておきます。その結論が出るまで保留しておきます。よろしゅうございますか。
  151. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 一言だけ申し上げさせていただきたいのは、私どもの調査にあたりまして、実は審査部でこれは不問に付するとか、これは始末書で片づけるという場合があります。つまり、進行中に、すでにその違反事実がなくなった場合には勧告に至りません。そういう場合に、ただ勧告をしないというだけでは済まないから、相当厳重な始末書みたいなものをとるというふうなことがございます。いろいろ行政指導上の都合がございますので、そういった書類を、公表するという前提ではとっておりませんので、言ってみれば公表しないたてまえでわがほうの独自の立場でとっておるものでありますので、でき得べくんば出さないほうが望ましいということは申しました。それは楢崎さんに十分申し上げてあることでございますが、しかし、委員会の請求とあれば、私は拒むべきものではないと思いますので、その点は御了解ください。
  152. 楢崎弥之助

    楢崎委員 先ほど言うたとおりであります。保留をいたしておきます。  そこで、赤松委員からのこの投機防止法三条、五条の問題でずいぶん紛糾をいたしました。つまり、うまくいかないというのは、産官癒着があるからだと私は思うのです。つまり情報が漏れる。倉庫へ何日に検査に行くとあらかじめ連絡が行く。事態は明らかにされたとおりです。なぜなのか、私はそれを二点にわたって明らかにしてみたいのですよ。  一つは、制度的に情報が漏れるようになっておる。あまつさえ、日本の経済政策に対する、産業政策に対する政策誘導を企業側が行なえるように制度的になっておる。それは、企業側から堂々と各省に出向部員と称して、公務員と同じ待遇を受けておる、しかも、公務員法の及ばない——全部悪い人じゃないでしょうけれども、やはり企業側の利益に立って行動せざるを得ない人たちが各省庁の中に派遣をされておる。各省にどのくらい派遣されておるか、数だけひとつここで明らかにしてください。
  153. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。  昨年の五月にこの問題が国会で取り上げられましたときには百三十六人、それが昨年末の十一月で百二十九人になり、本年の一月末で百十九人になり、そして現状は百十九人でございます。お答えいたします。
  154. 楢崎弥之助

    楢崎委員 若干減っておるようですけれども、数としては多い。それは昨年の四月段階でわが党の横路委員、六月段階で参議院で上田委員が追及した後、少ないけれども、だんだん減りはしておる。昨年六月二十一日、参議院内閣委員会で上田委員質問に対して小坂長官は、人事院、総理府人事局、行政管理庁等、この三つで協議の上、廃止の方向で検討してまいりたいと存じますと約束しました。どういうふうになりましたか。
  155. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 御指摘のとおり、人事院、行政管理庁、総理府人事局でこの問題について協議をいたしまして、その結論といたしましては、いわゆる無給の非常勤職員をやめるということをきめ、そしてまた勤務、服務等につきましては、公務員並みの規律に服させるということをきめて、その旨を各省に連絡して、現在その方向で整理を進めておると考えております。
  156. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、その幾つかの、なぜ国の最高政策に関する情報が漏れるか、実態を少しばかり御披露してみたいと思うのです。  まず、石油供給削減に伴う四十九年度経済見通し試算、これに企画庁のその出向部員が参画しておりますね。これが漏れたでしょう、外に。どっかの新聞がすっぱ抜いたでしょう。出向した部員はそのデータをすぐコピーできるのです。おわかりですか。これは企業がほしがるものですよ。  企画庁に例をとりましょう。調査局、月例経済報告をやっておりますね。この出向部員はその報告の作成担当者としてタッチしております。そして幹部会にも出ておるじゃありませんか。幹部会というのは、局長以上でしょう。ここに出ますと、経済政策に対する庁内の各局の考え方が一ぺんにわかるようになっておるんですね、その論議を聞いておれば。あまつさえ、ほかの省庁の主張しておる点も披露されるから、あの省はこう考えておる、この省はこう考えておる、それへ出れば全部わかるのですよ。それから、特に調整局ですか、対外経済協力関係をやっておりましょう。対外経済協力はどこの国にどういうプロジェクトが予想されるとか、企業にとっては一番のどから手が出るほどほしい情報なんですよ。これにもタッチしておるでしょう。それから、問題の価格Gメン、価格調査官ですね。これにはなっていないけれども、これの事務方をやっておるでしょう。だから漏れるのですよ。仕組みがそうなっているのです。そして、これは民間企業だけじゃない。公社、公団、政府関係も出向しています。特に、公共料金の関係では、国鉄とかあるいは電電公社、関係ありましょう。  こういう仕組みになっているのです、総理。もう制度的にそうなっているのです。  だから、私はこの際資料として、いまでなくてもよろしゅうございますから、要求をしておきます。どの省のどの局のどの課にどの企業から何人出向しておるか、課別に資料を正式にお出しをいただきたい。企業の名前ももちろんです。企業別にですね。  そこで私は、総理要求をしたいのですが、私はこれはやめさせなければいかぬと思うのですよ。いまの総理府総務長官の考え方は、そういう者を今度は正式に公務員扱いする、非常勤職員にするというのだから、たまげた話でしょう。これは制度化を定着するのでしょう。だって、小坂岳官は廃止する方向で検討すると言ったじゃありませんか。それを今度は、いよいよ廃止するどころか、逆にこれを制度として定着化する。これはわれわれは認めるわけにいかない。総理の御見解を伺いたい。
  157. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 この問題は、毎国会でもって議論される問題でございますが、賛否両論があるわけでございます。  それは、いままで、いわゆる戦前のように官というものと民間というものが非常に明確に区分をされておったときと、まあ戦後の主権が在民になったということで、官庁はあくまでも国民に奉仕するものである、こういうたてまえになったときに、考え方というものは相当変わってきたわけでございます。  それは御承知のとおり、占領軍メモでつくられた時の経済安定本部というあの状態の中では、あの機構の半分以上は民間人でなければならないという歴史があったわけです。三十年近い歴史をけみしながら今日に至っておるわけでございます。ですから、その中には功罪両面からの問題があるわけです。  ですから、この問題は、これは外国においてもそういう制度はとられておりますし、それから当然のことながら、地方と本省との間には一体であったものが、地方自治の確立ということで身分は別になりました。身分は別になりましたが、地方との間には人事の交流はございます。だから、いわゆる公社、公団と国との間の人事の出向とかいう問題も、いままでいろいろ議論の末、大蔵省から輸出入銀行に出向しておった者は、大蔵省を一応退職して輸出入銀行に配置がえになる、そしてまた輸出入銀行から大蔵省に戻るときには、輸出入銀行を退職して大蔵省に戻る、こういうことをやっているわけです。この問題は、私も大蔵大臣当時からずっと長いこと議論をしておるわけでございます。  ですから、この民間の者——私はこの前の国会でも衆参両院でこの質問を受けて答えているわけでございまして、これはいわゆる全然やめてしまうかという議論も御指摘のようにございます。そうではなく、これを非常勤職員というようなことにしておいて、公務員法の適用は受けるけれども、しかし実際は、足は、またいすは会社にあるというような場合は、これはよくないから、出向させるなら大蔵省を退職して、公社、公団に行って、公社、公団から戻るときにはまた新たに復帰手続を行なうように明確にするか……(「民間のことを聞いている」と呼ぶ者あり)これは民間の問題も、公社、公団の問題も、地方庁の問題も全部一緒に議論をしているわけでございますから……(「問題が違いますよ」と呼ぶ者あり)だから、公務員制度の問題の中でこの問題を、いわゆる出向しているという在来の状態を認むべきか、これを定員化して明確にすべきかという問題は議論の多いところでございまして、いま総務長官が述べたような状態で処理をしているという事実を述べておるわけでございます。  あなたは、そういうことを全部やめたほうがいいという御議論で指摘をされておるということは、いま承知をいたしました。しかし、必ずしもいままでこの問題に対して、あなたがいま指摘をされておるように、民間からの非常勤職員にする出向は全部やむべしという議論は、きょう明確に指摘を受けたと私は理解しております。
  158. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから私は、よく聞いておってくださいと、さっきお述べになっておったから言ったんですよ。昨年六月に廃止する方向で検討すると約束したのですよ。いろいろな問題点をあげた。——なぜ首をこうするのですか。あなた、いつも言うじゃないですか。大臣が言ったことは責任持つと言うじゃないですか。そういうときだけは私は知らぬなんて言って、だめです、あなた。何をやっておるんですか、それじゃいままで。そのときそのとき調子いい答弁をしているんですか。そういうことでは審議は続けられませんよ、何を聞いたってだめだから。約束したって約束を守らないんだから。だめですよ、そんな。総理のさっきの答弁も全然見当はずれの答弁ですよ、それは。承服できませんよ、そういう態度では。
  159. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。  改造前の昨年の五月の時点におけるお話のいきさつは聞いておりますが、われわれといたしましては、その後の決算委員会等における決定の線で、やはり非常勤の職員として無給で働かせるというようなこともいけないし、また、利害関係のある会社の出向者をして、役所の中の関係ある部局に勤務させることもやめようというような基本的な方針、ただいま総理が言われたような方針のもとに協議をしたいきさつでございまして、御了解をいただきたいと思っております。
  160. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま、総理の御方針に従って——では、総理がこれはあくまで残すということで非常勤職員として、公務員法の適用を受ける職員としてあくまでも残すというわけですか。それがあなたの方針ですか。いま長官は、総理の方針に基づいてこういうふうにきめましたからとおっしゃった。
  161. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 事情がよく理解できましたから事実を申し上げますと、この問題は、形は変わっておりますが、予算委員会や決算委員会やその他では常に問題になる問題でございます。私は、一貫してただいま申し上げておるようなことをずっと申し上げております。  しかし、いま楢崎さんが指摘をされたのは、去年の六月ですか、小坂前企画庁長官が、とにかく歴史的に、経済安定本部が現在の庁に三転をしてきたわけです。ですから、出向の職員を一番たくさん擁しておるところは経済企画庁でございます。そういう意味で、経済企画庁に対して、これを廃止したらどうかという御質問があったそうでございます。それで、その質問に対して、経済企画庁は、これを廃止の方向で検討いたしたいと存じますと、こういう答えを明確にしておるそうでございます。しかし、それは行政に支障もあると困りますので……(「何であるのだ」と呼ぶ者あり)当面の事実を述べておるんですから、このぐらいのことはよく聞かなければだめじゃないですか。それで、一挙に廃止をすると行政に支障があると困りますので、その方向で縮小してまいります。そうすると、その縮小の方向において、暫定的にはどうするか、こういうことでありますから、年度予算の編成のときに人数を減らし、しかも制度上不完備であれば、その制度上のものは公務員法の適用を受けられるように、疑念をはさまないように厳重にワクをはめてまいります、こういう答弁をしているそうです。  それで今度の予算には、一挙に廃止はできませんが、人間をしぼって、それを予算化して、国会における小坂長官の答弁の趣旨を生かして予算は組んでございますというのが実情でございます。
  162. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの御答弁によると、これは廃止の方向への暫定的な措置、そして法的な関係を暫定的に明確にする。ところが、公務員法はそうはなっていないのですよ。  非常勤職員というのは一体何ですか。非常勤職員に給料を払える根拠は何ですか。私は、法律論争をいま、しようとは思いません、時間がかかるから。いいですか、公務員法二条六項ですか、一般職と特別職以外には給料は支払わないでしょう。非常勤職員は、そのどっちに入るのですか。だから、そういう問題も含めて、これは非常に議論してきたところですよ。まだ議論は続けます。しかし長くなるから……。  だから、私が言いたいのは、そうじゃないのですよ。私どもに言わせれば、それほどの法的な根拠のない、それを押してでも、無理してでもなぜ置かなくちゃいかぬかというところですよ。そこを私は問題にしておるのですよ。つまり、こういう産官の癒着状態が制度化される、それが情報漏れがいったり、あるいは日本の重大な政策に介入していく、これでいいのかということを言いたい。そこを私は問題にしておるのですよ。  だから、わかりやすい話が、倉庫をいつ調べますというと、すぐわかっちゃう。その部署におりますからわかりますよ。それから標準価格を決定するときだって、大体何日ぐらいにどういうものを指定しようか、これは企業は知りたいところでしょう。そうでしょう。それがすぐわかるでしょう。幾ら投機防止法をつくったって、あるいは国民生活安定法をつくったって、石油需給法をつくったって、全部しり抜けです。いかにしり抜けになっておるかといえば、各委員が精力的に調査して明らかにしたじゃないですか。ここに一つの原因がある。それでもなおあなた方は、制度的に今度はそれを定着させる。何たることですか。これは許せませんよ。まず姿勢を正しなさい。どうですか。
  163. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 楢崎さん、あなたの御指摘のことは非常によく理解しておるのです。理解しておりますから、私たち政府の考え方も、すなおにひとつお聞きいただきたいのです。  あなたのそういう立場での国民の利益を擁護しなければならないというお立場、それは私たちも議員の一人でございますし、当然そうでなければならない。その意味では、民間と官庁との間に明確な区分があってしかるべしである、こういうことでございます。またその議論もよくわかるのです。  しかしこれは、そこまで聞いておらぬということで、あえて耳をふさいではならない問題でございます。これは世界的傾向として、民間との人事の交流というものが、一つのテーマとして検討課題にあることは世界的なことなんです。テンポが非常に早いので、官僚機構が追いついていかないということで、民間との間に絶えず人事の交流というものが必要であり、これを制度化せなければならないということは、裁判官や何かを指名するときでも、必ず民間から入れなさいとか、学者から入れなさいとかいうことは、戦後一貫してとられておることでございます。  そういうものの一環として、経済安定本部の時代から歴史的にずっとこういうことはございますし、地方事務官制度をやめなさいといわれながらも、地方との間に人事の交流もあり、公団間の人事の交流もあります。  ですから、この問題には両論がございますが、最も出向社員の多い——私は、この表を見ても、出向社員の多いのは、歴史的にも現実的にも経済企画庁なんです。その主管大臣である経済企画庁長官であった小坂君が、経済企画庁に関しては廃止の方向がいいと思います、しかし、一度には廃止ができないと思いますので、漸次廃止の方向で整理をしてまいりたいと思います、暫定的な措置としては、これを年度ごとに縮小してまいります、こういうことを述べているのでございますから、ですから政府は、この出向社員そのものに対しては縮小の方向、それから全廃できない状態におけるマイナス部面をどのようにして補完していくかということに対しては、万全な体制をとってまいりたいというのが実情でございます。
  164. 楢崎弥之助

    楢崎委員 特に、この生活法関係は、経済企画庁でまとめるのでしょう。全然底抜けになるのです。私も、もう声が、かぜをひいておってかれました。私の言うことがわかっていると言うが、あなたの答弁を聞いていると、わかっていないのです。(田中内閣総理大臣「わかっている」と呼ぶ)いや、わかっていない。いまの事態に即応して、私は一般論を言っているのではない。アメリカの例とか日本の例、過去の歴史を問題にしているのではない。今日の時点において、これが問題だということを言っている。だから、これをやめなくてはだめですよ。全部筒抜けです。  だから総理、時間も迫りましたから、私は一あなたが暫定措置と言われた。私も、すぐあしたからやめるということができないのはわかっていますよ。だから、それまでの措置でこういうことをしてください。  とにかく最低、本年度でやめる。三月三十一日ですよ。そのための措置として、まず出向部員について、管理責任者、管理方法、罰則など、公務員法には罰則がありますから、そういう管理体系をまず示すということ。次に、出向部員には、出身会社を明示した名札をつけさせてください。三番目に、官庁文書、印刷物の持ち帰り、電話での官庁情報の企業へのたれ込み、官庁の会議、研究会、そういうものには一切出させない、傍聴も一切禁止する。それから、部員の親元企業から公務員にときどきサービスがあるようなこともあるかもしれませんが、そういうことも一切やめる。そうして三月三十一日をもって完全に廃止する。そして、その廃止したことによって仕事に影響するならば、保利長官、総定員法があるかもしれないが、考慮しなければならない。どうですか。
  165. 保利茂

    ○保利国務大臣 前国会でも、ただいま総理から御答弁のように、総理に対する御質問もあり、また小坂前企画庁長官に対して御質問もあった。大体は、皆さん国会側から指摘されて、それは非常に疑問がある。総理は、官民の人事交流というものは、非常にテンポの早い時代であるから、必要だということを強調されております。お話しのように、小坂長官は、やはりこれは廃止の方向で検討しなければなるまいという答弁もされておるようでございます。  そこで、大体は時勢がこういうふうで、何か産業と行政が、国民の目から見て、どうも不当に癒着しておるんじゃないか、その弊害が出ておるんじゃないかという声が非常に強うございますから、それをよく検討しなければならぬということで、人事院、人事局、行政管理庁相談いたしまして、そういう誤解を受けないような扱いを、いますぐ——あなたも認められるように、すぐ全部やめてしまうわけにいかないとするならば、けじめをつけて行政が行なわれるようにしなければいかぬじゃないかというようなことで、大体あの四十九年度の予算編成の前によく相談しまして、そして、ただいま総理が述べられた、あるいは小坂前長官が述べられたようなことを勘案しつつその措置をとっていく。大体、こういうふうに癒着問題が必要以上に疑いの目をもって見られるときでございますから、したがって、行政の姿勢は、一そうその必要は必要として感じながら、姿勢を正す方向にいかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  166. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 楢崎君に申し上げますが……。
  167. 楢崎弥之助

    楢崎委員 わかりました。
  168. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 わかりましたか。
  169. 楢崎弥之助

    楢崎委員 もう時間が来ているということですね。
  170. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 そうです。よくおわかりですね。
  171. 楢崎弥之助

    楢崎委員 わかっています。だいぶ総理から時間を食われましたから、見当違いの答弁で。それは認めてください。  長官、よくわかりました。それでは来年度の予算に出てきておりますね、非常勤職員の予算が。これは削りますよ、当委員会で。経企庁のごときは、四千五百万組んでおるでしょう、来年度予算に。これは削りますよ。よろしゅうございますね。認めませんよ、来年度の予算は。
  172. 保利茂

    ○保利国務大臣 これはお話しのように、いままでは、そういう出向部員に対して、その行政事務の一部をやらせておりながら、国としては何らの報酬、給与も支払っていない……。
  173. 楢崎弥之助

    楢崎委員 企業からもらっている。
  174. 保利茂

    ○保利国務大臣 それはそうなんです。それがいかぬというのです。しかし、さっきあなたが言われたように、一般職や特別職以外には給料の出しようがないじゃないか。御説のとおりでございますから、少なくともその日その日の実費弁償的といいますか、そういう措置を講ぜざるを得ない。そういう措置は講ぜられてあると了解しております。
  175. 楢崎弥之助

    楢崎委員 もう最後にします。  やはり来年度も置くというような感じですね。これは、私はまだ詰めたいと思いますよ。別の機会に、予算委員会が開会されている間に、これはケリをつけたいと思います。なお私は、具体的に、それまでの措置として明確に具体案を出しました。これも真剣に検討してください。  そこで、私は、次の問題をやはりやりたかったのですが、もう時間がないそうですから……。  実はこういうことなんですよ。もう一つは、やはり政治献金なんですよ。それは、いろいろいままで総理大臣は言われました。しかし、この数字の結果を見ますと、四十八年一カ年に自民党に寄付された金額百七十九億一千万、ことしは会費が前年度の約二・五倍。この金は、経団連が各企業の資本金、収益に応じて割り当てておるわけでしょう。特に金融関係では四千五百万、鉄鋼では二千二百八十万、電力では二千百四十万、国民協会ですよ、これは。表に出ているだけです。これは前年の三倍から四倍です。しかも許せないのは、インフレへの、値上げをした問題の企業が献金をする率を見てごらんなさい。不動産業は前年度の四十二倍ですぞ、自民党に献金するのが。電線は九倍、食品関係は六・五倍、自動車関係は六倍、貿易関係は五倍。つまり、「列島改造論」から始まった、そしてその土地の値上げに火をつけた、それによってもうかった不動産業は四十二倍。いいですか、この事実を見れば、不当利得なり超過利潤はどこに返されておるのですか。国民に返されておりますか。自民党が取っておるのですよ。テラ銭として取っておるのです。そうではありませんか、この数字を見れば。  私は、もう時間がありませんからこれでやめますが、自治大臣、私は、いまあげた数字を、自分でやってみましたけれども、以上の点についての資料を、整理して当委員会に出してください。特に、インフレ便乗値上げをしていると思われる企業を、整理して出してください。  以上、私は、保留分を残して質問を終わります。
  176. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  177. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  本日、日本住宅公団総裁の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  179. 荒舩清十郎

  180. 正木良明

    正木委員 まず最初に、大手不動産業者が自分たちの買い占めておった土地を放出するという問題がございまして、その土地の放出が実は何件か行なわれました。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕 そのうち、すでに日本住宅公団に、場所で申しますと三つ、放出業者からいいますと、四つの業者からそれぞれ放出が行なわれております。  このことにつきましては、一方に、住宅難の解消のために、どうしても住宅公団が住宅を建設しなければならない、そのためには、どうしても土地が必要であるというので、この放出をされたこと自体は、私は、決して悪いことではないと思うわけであります。しかし、この放出された土地が、実際に日本住宅公団においてきわめて適当な住宅建設用地として利用できるかどうかということについて、われわれが手元で調査をいたしますと、必ずしもこれが適地とはいえない、こういう問題がたくさん浮かび上がってまいりました。田中総理も福田大蔵大臣も、このインフレを抑制するためには、どうしても総需要抑制ということを一番の大きな柱にしなければならぬということをおっしゃっておりますが、このことについては、大筋において私は決して反対ではありません。  しかし、その精神からいうと、これは、しろうとっぽい言い方をしますと、総需要の抑制というのは、むだづかいは一切しない、必要なものでもこの際しんぼうして需要を抑制していこう、政府の支出を抑制していこうということでございますから、その点から考えると、住宅公団が放出を受けた土地が、実際に住宅建設に対して不適地であるというならば、これは、まさに総需要抑制政策に全く反するものといわなければなりません。  したがって、この点について順次質問を進めてまいりたいと思いますので、適宜、建設大臣並びに住宅公団総裁からお答えをいただきたいと思います。  私たちの調べ、ないしは建設省からいただいた資料によりますと、すでに日本住宅公団がこの放出土地について契約を済ましたものは、千葉県の野田市において四十三・八九ヘクタール、横浜市緑区長津田町において二十八・五ヘクタール、埼玉県の飯能市において、これは二つの業者に分かれておりますので、分けますと、一つのほうは三十四・一ヘクタール、もう一つの業者は十三・六ヘクタール、このようになっておりますが、これに間違いございませんか。
  181. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 御指摘のとおりでございます。
  182. 正木良明

    正木委員 これらの土地につきましては、従来住宅公団が土地を購入する場合の、いわゆる商取引における慣習ではなくて、この買い取りの価格は、住宅公団が、先の業者が取得した価格に金利と管理手数料を上のせしたもので購入するということになっておると聞いておりますが、これも間違いございませんか。特にまた、金利については年利一〇%、管理手数料については年四%を上のせするというふうに聞いておりますが、間違いありませんか。
  183. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 正木委員御承知のとおり、昨年の九月、大手不動産業界に、速急に宅地として活用できる分を、持ち惜しみしないで放出するように要請したことは、御承知のとおりでございます。その際、高い値段で放出されたのでは、これは、われわれの行政指導が何にもならぬわけでありますので、その際、ただいま仰せのあったような線で、価格をしぼって、時価よりも安くということで要請を出したことは、御指摘のとおりでございます。  また、ただいま言われましたいろいろな利息でありますとか、経費でありますとかのパーセンテージは、そのとおりでございます。
  184. 正木良明

    正木委員 それと、私があげましたこの三カ所、千葉県野田市、横浜市緑区長津田町ないし埼玉県飯能市のこの放出された土地は、それぞれ市街化調整区域に属するものであるというふうに私は承知をいたしておりますが、間違いありませんか。
  185. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 いずれも市街化調整区域でございます。
  186. 正木良明

    正木委員 これは申すまでもなく、市街化調整区域というのにつきましては、開発については二十ヘクタール以上のものについては特別の措置が講じられることになっておりますけれども、しかし日本住宅公団の場合には、現地の県知事と協議しなければならないことになっております。これが大前提であります。したがって、この市街化調整区域を大規模開発をして、宅地ないしは住宅を建設するためには、どうしても当該県知事の承諾が必要ということになっておるわけであります。  ところが、御承知のとおり、飯能市の場合で申しますと、すでに埼玉県知事は、この大規模開発を不許可にする、いわゆる線引き変更を凍結するという宣言をいたしておるのであります。また、横浜市におきましては、神奈川県知事が、それぞれ大規模開発、人口急増を防ぐために不許可の方針をとっております。また千葉県におきましても、同様のことが行なわれておるわけでありますが、こういうふうに、市街化調整区域の中にあるこれらの日本住宅公団の取得した、放出を受けた土地が、それぞれ大規模開発をするための許可を受けられないということが当然わかりながら、なぜこのような土地を契約したのかということについての経緯をお話しいただきたいと思います。
  187. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 正木委員も御存じのとおり、最近、住宅難がきわめて深刻になっておることは、御承知のとおりでございます。また一面において、公営住宅等、予算消化できないという問題も起きておるわけでございます。  御承知のように、各地方自治体が非常な拒否反応を示しておる。その原因を詳細に分析いたしてまいりますと、結局、自治体の超過負担という問題がありますのと、一面、人口抑制、この人口抑制という原因も、自治体の超過負担という問題とうらはらになっておるわけでございますが、そういう点が明らかになってきておるわけであります。したがって、安い宅地を供給するという要請と、拒否反応を各自治体が示しておるという、この相反した両条件を満たさなければ大量の住宅が供給できないという、きわめてむずかしい情勢にあることは、御指摘のとおりでございます。  そこで、実は私ども、飯能の問題にいたしましても、この三カ所、四カ所の地点につきまして、住宅公団をして各自治体に密接に連携をとることを指示いたしますとともに、やはり制度として、自治体の超過負担を最小限にとどめるという政府の熱意も示さなければならないということで、昭和四十九年度から、いままでもやっておりましたけれども、四十九年度からは、特にその面についての配慮をいたしておりますので、私は、住宅公団は、必ず各府県知事の了承を得られて、開発可能と判断をして購入したものと確信をいたしておるわけでございます。
  188. 正木良明

    正木委員 ここに、私の手元にございますのが、埼玉県知事が発した「線引きの凍結について」という宣言です。この中では、市街化調整区域から市街化区域への変更ということについては行なわない、要するに、それは大手不動産業者の土地の買い占めを追認するということになるから、線引きの変更は行なわないという厳格な宣言が出されておるわけであります。  したがいまして、これは、飯能市の場合、埼玉県知事は、現在においてなおかつこの方針を堅持するのかどうかというわれわれの問い合わせに対しましては、明らかに、いかに住宅公団であろうとも、この飯能におけるところの大規模開発については、不許可の方針であるというふうに言明をいたしております。  この点について、私は、いまの建設大臣のお答えは、きわめて楽観的に過ぎる、何とか埼玉県知事が許可をしてくれるのであろうというような考え方をお述べになったように思いますが、その点はどうですか。
  189. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 実は私、畑埼玉県知事ともお会いしております。しかし、この問題を直接議題にしたことはございませんけれども、とにかく埼玉県、神奈川県は、県として人口急増してたいへん苦労をしておるというような心境も伺いましたし、また私も、国として、庶民が住宅にあえいでおるというこの現実、これもひとつ知事さん理解願いたい、いままでややともしますと、本省と知事さん方とのコミュニケーションと申しますか、そういう面については、今後ひとつ、あなたは社会党の代議士であったけれども、わしも自民党の大臣として、まあそういうことは抜きにして、とにかく庶民の福祉向上のために、こっちも法律的にも、予算的にもお互いの立場が理解できるような線でまとめていきたいから、いろいろと御苦労をおかけするかもしらぬが、御協力を賜わりたいということを言うておるわけでございます。  しかし、その際、畑知事さんから、飯能の土地の開発については云々というような御返事はございませんでした。安易には考えておりません。非常に知事さんの苦しい立場というものも、私ども理解いたしておりますし、その辺のところは、お互いに理解し合えるまでやはり話を突き詰めていかなければならない。安易には考えておりません。真剣に進めてまいりたいと思っておるわけであります。
  190. 正木良明

    正木委員 御熱意は、非常に私はけっこうだと思いますが、それならば、もっとやり方があったわけです。  住宅公団の総裁にお伺いしたいのですが、この同じ地区を、かつて昭和四十六年前半において日本住宅公団が買収に入ったことがありますね。
  191. 南部哲也

    ○南部参考人 数年前に買収に入ったことがございます。
  192. 正木良明

    正木委員 その途中で、昭和四十六年の六月に、この買収を日本住宅公団から打ち切っていますね。どうですか。買収交渉を打ち切っていますね。
  193. 南部哲也

    ○南部参考人 当時は、賃貸住宅の用地としてこれを取得したいということで入ったわけでございますが、賃貸住宅については地元の了承を得られない、賃貸住宅はお断わりだ、こういう話で、途中で放棄したわけでございます。
  194. 正木良明

    正木委員 ここに、この埼玉県の飯能市の中の、今度住宅公団が契約した分は、矢嵐山という地区なんです。このときに、地元では、住宅公団の買収交渉に応じて地主会をつくって、その世話人ができて、その買収交渉を進めておったわけです。ところが、日本住宅公団が買収に入っておって、その話がどんどん進行していたにもかかわらず、日本住宅公団のほうからの打ち切りによって、この買収がさたやみになっております。  ここにございますのが、その矢颪地区の地主会の役員会の報告を各地主にした写しです。この中でこう言っております。「日本住宅公団との交渉打切りについて」として、「かねてより皆様御委任の日本住宅公団関東支所との土地売渡し問題は、大和商事不動産、清水孔晶氏を窓口として、何回となく交渉会議を重ねてまいりましたが、去る六月一日になり、「当該地は、市街化調整区域であり、皆々様よりの請願、陳情にもかかわらず、」これは日本住宅公団が言っておることです。「請願、陳情にもかかわらず、誠に残念ですが、市街化調整区域にただちに編入され開発出来る状態ではないので……」という御返事がまいりましたので御知らせ致します。」日本住宅公団は、その当時、二年半くらい前でしょう、交渉に入っておったけれども、この飯能市の矢風地区は市街化調整区域であって、当分市街化区域になる見込みがないからというので、日本住宅公団から断わっているということが、この地主会の明らかな通知書の中に入っております。  私は、非常に疑問に思うのは、当時、この地元の方々の話を聞いてまいりますと、非常に安い値段で日本住宅公団交渉なさっており、その交渉もどんどん進んでおったということですから、そういうふうな状態の中で、日本住宅公団が、市街化調整区域から市街化区域になる見込みがないからというので、交渉を打ち切ったところ、その後、現在に至るまで市街化調整区域である現地を、再び大規模開発のために大手不動産業者から放出を受けて、当時よりも非常に高い値段でこれを購入しなければならないということについては、きわめて疑問に思うわけです。これはどういう意味ですか。
  195. 南部哲也

    ○南部参考人 二、三年前から非常に用地の取得が、当公団といたしましては困難になってきております。当時、一度断わった土地で、時間の経過に伴いまして、あとでもう一ぺん交渉をするというようなことは、ほかにも全然皆無であるというわけではございません。  そういうようなことで、本件について特に一番問題になったのは、賃貸住宅ではなくて分譲住宅ということになりますと、これはなかなか予算上、当時はそれが実現が不可能であるという問題もございました。もちろん、お話しのような調整区域という問題もございます。県と十分話をして進めていくということで、今回は取得に踏み切ったわけでございます。
  196. 正木良明

    正木委員 日本住宅公団が、賃貸住宅として不適当だからというのであきらめたというなら、今度はどういうことで有望になったのですか。
  197. 南部哲也

    ○南部参考人 分譲住宅ならばというような意見が、非常に地方公共団体に強うございます。  今回の飯能については、県とはそこら辺の打ち合わせはまだしておりません。これは、土地取得について御了解をいただく、開発そのものにつきましては、これから開発計画なりあるいは都市計画的なもろもろの関係は打ち合わせをするということになっておるわけでございます。
  198. 正木良明

    正木委員 これは総裁、実際は総裁はお困りになっているのじゃないだろうかと私は思います。  実は、住宅公団については、すでに、非常にことばは悪いですけれども、持ち腐れの土地というのはずいぶんあるわけです。いわゆる未着工団地というのは驚くほどある。にもかかわらず、見通しが立たないからというので、一たん断わった土地を、再び大手不動産業者からの放出という形で受け入れざるを得なかったというところに、私は問題があるのではないかと思います。  しかもこの土地は、御承知のとおり、この場合、業者の名前を申し上げますと、興和不動産と西武鉄道からいわゆる放出を受けるわけでございますが、それぞれ興和不動産においては、私の調べでは、約四十八ヘクタールその地域に持っております。そのうちの三十四・一ヘクタールの放出です。全部地続きです。西武鉄道においては、約九十九ヘクタール持っております。その中の十三・六ヘクタールの放出であります。いいですか、そういうことになりますと、こういう開発がきわめて不可能の見通しにある状況のもとで、これを日本住宅公団がやむを得ず購入させられたのではないかという疑問が起こるわけです。  時間がありませんので一ぺんに申し上げてしまいますが、なぜかならば、この用地は、実際に調べてまいりますと、きわめて不適地です。  それは、まず第一に、先ほど申し上げたように、市街化調整区域から市街化区域への変更が知事の方針によって凍結されて、きわめて不可能であるということ。もう一つは、この矢颪地区は、大体標高二百十七・八メートルの山地です。しかも、今度日本住宅公団が放出を受けるのは、地図の上でいうと、北側です。したがって、二百十八メートルの標高の頂上を残して、その北側斜面をあなた方は買おうとしているわけです。いわゆる日当たりが悪くて、この前に降った雪がまだ畑地には残っておるというぐらい日が当たらないところです。しかも、水の問題については、これはもう当面解決できないということは明らかなことでありまして、この飯能市の北隣にある日高町には、例のこま川団地がございます。このこま川団地は、水不足のために、家ができたのに入居できなかったような状態です。これを、簡易水道でようやく水をつけましたけれども、いまでも入居者が少なくて、募集中であるというような住宅がこの横にある。そういうような状態の中で、どうしてこれを購入しなければならなかったか。おそらく何らかの政治的意図の押しつけがあったのではないか。それでなくたってたくさん土地を持っておって、建てようと思えば建てられるだけの土地があるのに、また建てられない土地を押しつけられているという状況を感じられてしかたがありません。  そういうふうに、いま申し上げましたのは目立ったものでございますが、まず第一に、住宅建設につきましてはきわめて不適地であるということ。もう一つは、私は変な勘ぐりをしたくありませんけれども、どうしても勘ぐりたくなるのは、民間業者が持っておる限りにおいては、絶対といっていいぐらい、当面市街化調整区域から市街化区域への線引きの変更は行なわれないであろう、したがって、その一部分を日本住宅公団に買わせて、そして、これによって埼玉県知事に、いま建設大臣がおっしゃったような熱意をもってぶち当たって、そうして市街化区域にしてしまう。そうすると、その市街化区域に地続きになるその放出業者の持っておる残地というものが、これを突破口として、市街化区域に変更される可能性も非常に大きく出てくる。もう一つは、住宅公団において取り付け道路、上下水道等々の、いわゆる公共施設を行なわせて、そして残地の地価をつり上げていこうという意図が明らかにあると見ても、この際のことでありますから当然のことではないだろうか、こういうふうに考えるわけです。  したがいまして、こういう問題のある土地というものについて、私は非常に大きな疑問を感じるわけです。こういう欠陥のある土地、しかも一業者の意図を勘ぐれば、というよりも、ごくすなおに考えても、こういう利点、メリットが彼らに残されるということについて、公団側のお考え、ないしば建設大臣のお考えを聞きたいと思います。
  199. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 お答えいたします。  いろいろ御指摘いただいたわけでございまして、たいへん御心配いただいて恐縮でございます。実は私も飯能でしたか、あの新聞をどこかで見たような感じがいたしまして、直ちに計画局のほうに、ずいぶんひどいところ買うじゃないか、どういうことなんだ、水はだいじょうぶか、大体地図を持ってこいというわけで、二千五百分の一の地図の上で実は私、説明を受けました。そして私、かつて地図が生命であったものですから、地図を見ると大体見当つきますので、大体七メートルから十メートル足らずの比高の丘陵地でございます。しかも、飯能の駅から一キロ七百ないし二キロ程度のところでございまして、もしそこが住宅地区として開発されれば、交通の便は非常によろしい。それから、水をたいへん心配したわけでありますが、これは私、確認いたしておりません。事務当局の踏査をしてきたという住宅公団の説明によって、水というものも十分可能であるということ、それから、県とは話していないけれども、やはりその地区の市とは密接に話し合いをした上で結論を出した、こういう報告を実は受けておるわけでございます。  何しろ、住宅情勢がたいへん住宅難のおりでございますので、公団としてもいろいろ御批判はありますけれども、建てたくても建てれないというところも確かにございます。これは先ほど申し上げましたように、地方自治体の協力を得られますれば、直ちにでも着工できるわけでありますが、そういう点の施策が、政府においても十分とは言い切れなかった面もございますので、これからは、四十九年度の予算を通していただければ、その点も、ある程度のめどをつけていくことができるのではないか、こう思いまするし、また、その飯能の団地を開発して残土の分が値上がりするのではないかという面につきましては、実は、ただいま国会で御審議をいただいております国土総合開発法の特別指定地域に指定をすれば、そういうことができなくなるわけでございますので、そういう点もあわせて御考慮をいただきたいと思う次第でございます。
  200. 正木良明

    正木委員 駅が近いとおっしゃいましたけれども、そんなに近くはないのです。しかも西武鉄道、これは単線運転ですよ。いいですか、だからそんなに簡単に、もう一車線ふやさなければ——鉄道を一車線というのかどうかわかりませんけれども、複線にならないわけです。したがって、交通の便がいいといっても、決して便利はよくないのです。  現に、先ほど申し上げましたように、日高町におけるところのこま川団地においては、水不足で募集困難となって、いわゆる住宅公団の立ち腐れ住宅になった。それが、ようやく水道が手当てできたと思ったら、今度は交通の便が悪くていまだに入居者の募集中、こういう状態があるわけでありまして、それに隣接、といっても隣ではありませんけれども、その沿線に属するところのここに大規模な住宅が開発されたとしても、そのために必要な公共施設や、また交通の便、しかもいま、水のほうは御心配ありませんとおっしゃいましたけれども、水のほうはたいへん心配なわけでありまして、いまこの入間川にダム工事をやっておりますけれども、順調に進んだって、何年か先でなければこのダムが完成いたしません。このダムが完成しない限り、上水道については供給不可能という状態がここにあるわけでありまして、しかも、現に、いま飯能市においては上水道の普及率というのは低くて、そのダムのほとんどは旧市街におけるところの飯能市の上水道供給に回さなければならないというような状態があるわけでありますから、そういう点を考慮いたしますと、決していま建設大臣がおっしゃったような、楽観的な見通しでこの問題を処理することができないということになるわけです。  したがいまして、この点については、国総法をつくりさえすれば、そんなことには網をかぶせられるというふうにおっしゃいましたけれども、しかし、現に市街化調整区域とか市街化区域とかきめるという、また都市計画法におけるところのこういう考え方というものが、実はようやく最近になってこれが定着してきたのであって、それを一挙に廃止して、また政府のつごうのいいような形のものにしてしまうということに、一つは問題があるのです。また、いわゆる国総法の問題、これは成立するかしないかわからないじゃないですか。したがって、もしかりにこれを買収するというならば、しかも残地についてそういうふうな、いわゆる開発利益を業者にもたらさないようにするというならば、もしかりに国総法が成立したら、国総法成立後にしたほうがよかったのではないかというふうに私は考えますよ。むしろ、そういう形で現在進められつつあるということについては、そういう残地を残して——残地といったって大規模な残地でございますが、この残地の地価のつり上げということを意図しているというふうにしか私は考えられないわけです。  しかも、ここにおけるところの価格については、当時交渉した価格から比べてまいりますと、べらぼうな価格になっていると私は思うのですが、この価格は坪当たり単価幾らですか。
  201. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 私、報告を受けておりますのは、平均で、個々の一筆一筆の価格までは承知いたしておりません。一応飯能で、たしか平米六千円前後という報告を受けております。
  202. 正木良明

    正木委員 そうすると、六千円ということになりますと、一坪当たりが一万九千八百円ということになるわけですね。実は昭和四十六年に交渉したときに、地元の人たちに聞きますと、大体坪当たり五千円から七千円で交渉しておった。ということは、価格の問題にしてもこれほど大きな差があるわけです。約三倍になっていると見なければなりません。こういう価格で、しかも、約五十ヘクタールというものが全部が全部利用できるのではなくて、相当残さなければならないところがあるでしょう。  それともう一つ、ここに重要な問題が飯能の場合あります。これは住宅公団は御承知の上であったでしょうか。実はこの地区は全地域にわたって、県立奥武蔵自然公園の地域内に入っているのですが、この点は御承知でしたか。
  203. 南部哲也

    ○南部参考人 保安林が相当あるということは承知いたしまして、それは削除いたしておりますが、自然公園の点については承知しておりません。
  204. 正木良明

    正木委員 承知していない。これは明らかに、地図の上からごらんになってもわかるように、奥武蔵自然公園の地域内に全部入っております。したがって、県条例においては、この面からいっても開発が不可能ですが、どうなさいますか。
  205. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 先ほどお答えした地図は二千五百分の一とお断わりしたわけでございます。やはり相当大きな地域になりませんと、そういう点、これはもう二千五百分の一というと、等高線しか大体載っておりませんので、その点はお許しいただきたいと思います。  ただいま御指摘のことは、実は私もいま初めてお聞きした次第でございます。その点は、さらに住宅公団に確認をさせて、今後の処置を考えたいと思っております。
  206. 正木良明

    正木委員 環境庁長官にお尋ねしますが、これは県立でございますから、環境庁長官は直接の管轄ではないと思いますけれども、こういうふうに自然公園に指定されたところが、たとえば住宅地であろうと開発されるということについては、どのようなお考えをお持ちになっていますか。
  207. 三木武夫

    ○三木国務大臣 県立ですから、環境庁の管轄ではないのですけれども、そういう指定を行なうということは、自然環境として保護したいという県の意図でそういう指定を行なったものだと思います。
  208. 正木良明

    正木委員 だから、これがこわされるのは好もしいか好もしくないかということについてはどういうことでしょう。
  209. 三木武夫

    ○三木国務大臣 県立の自然公園というものは、絶対に永久に自然公園で置かなければならないというものではないでしょうから、その県条例もあることですし、そうなってきたら、県会においても付議せなければならぬわけですから、その土地をどういうふうに使うか、自然公園として保護するか、やはり両方の比較検討を府県においてすべきものだと思います。
  210. 正木良明

    正木委員 住宅公団では、契約の中で留保条件をおつけになっているようでございますが、もし、かりにこれが開発が不可能であるということがはっきりいたしましたら、契約は破棄なさいますか。
  211. 南部哲也

    ○南部参考人 農地の分につきましては、これは例の転用許可を条件として解除条件を全部付してございます。山林の分については、そういう措置はとっておりません。  ただ、実は埼玉県につきましては、市街化区域の中で、すでに公団が所有しております高坂の地区につきまして、同様な問題が起きておりまして、これは逆に市街化区域から自然公園に県にお渡しするというような措置もとっております。  ですから、これらの点につきまして、所有権が完全に公団に移った際には、十分に検討、いろいろと御協議申し上げていきたい、このように考えておる次第でございます。
  212. 正木良明

    正木委員 そうすると、農地法第五条の手続さえうまくいくならば、これは契約どおり、もし開発が不可能であっても、住宅公団は買わなければならない契約になっておるということですね、農地を除いて非農地については。
  213. 南部哲也

    ○南部参考人 契約上はそのようになります。
  214. 正木良明

    正木委員 建設大臣、こういうふうな非常に開発の見込みが薄い、不可能と言ってもいいというような土地をつかまされて、そうして、もうすでに契約が行なわれたわけでありますから、この契約は履行されていかなければならないことになると、これはもう明らかに、私は、将来公団の持ち腐れの土地がまたふえたということにしかすぎないというふうに考えますし、同時にまた、基本政策としての総需要抑制政策に大きく逆行すると思いますが、どうお考えになりますか。
  215. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 御承知のとおり、住宅公団総裁以下、住宅公団法に基づいてその職務を実行するという責任を持って、それぞれの立場で責任を果たしておるわけでございますので、それらの諸君からの報告は、私はこれを信用してきておるわけでございます。  したがって、私、報告を受けたとおりその事案は解決していくもの、そしてやがてそこは住宅地として開発されるものとただいまは考えておるわけであります。
  216. 正木良明

    正木委員 そうすると、いまの大臣のことばですと、非常に強引な手法で市街化調整区域から市街化区域にし、同時にまた、県立奥武蔵自然公園の区域を変更させて、そうしてあえて環境破壊も辞せず、ここに住宅を建設するために邁進するというふうにしか受け取れませんが、どういうことですか。
  217. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 ことばが足らず申しわけございませんが、御指摘のとおり、正木委員のおっしゃることと、私が住宅公団から説明を受けた事案と、その内容がたいへん違っておるわけであります。そういう点につきましては、さらに精査を命じてまいりたいと考えておるわけでありますが……。
  218. 正木良明

    正木委員 公団としてはどういうお考えでしょうか。
  219. 南部哲也

    ○南部参考人 これらの点につきましては、今後の地元市町村並びに県との話し合いということで、開発がどうしてもできないという場合には、先ほど申しましたように、住宅地区であったものについても、公園に変更したりいろいろしております。それから、住宅地につきましても、県との間で、私のほうで所有した土地の二割は、県のほうに譲渡するというようなこともお互いに約束しておりますので、いろいろそういう面で今後話を詰めてみたい、このように考えておる次第でございます。
  220. 正木良明

    正木委員 それはけっこうだと思いますが、こういう自然公園内でそれを開発しようとするならば、二割だけを残してあと八割まで開発するということは、おそらく不可能でしょう。おそらく県との話し合いの中で、自然環境を極力破壊せずに、いわゆる住宅建設が行なわれるような開発をやっていこうとするなら、半分以上は自然公園としてそのまま残さなければならないような状況が起こると私は思います。公団側に立って考えて——私は反対ですけれども、公団側に立って好意的に考えたとしてもそういうことでしょう。  そういうことになると、かりにこれが四〇%しか利用できないということになると、この坪単価というものはたいへんなものになりますよ。私は、こういう形での放出で、はたしていいのかどうかということが疑問なんです。  確かに、われわれが持っておった土地を、この際お国のために放出するのですという美名に隠れて、ほんとうに業者は、実際にそういう形で出しているのかどうかというと、きわめて疑問に思えるようなことが数々あるわけです。しかも、そういう非常にむずかしい条件の中で、建設省並びに住宅公団が埼玉県当局と交渉をし、かりに幾らかでも開発して家が建つということになれば、必ずこれに便乗して、あとに続いて残地の問題もそのような形に持ってくるに違いありません。要するに、外堀を住宅公団に埋めさせて、そうして自然環境の破壊もまた公共施設の充実も公団にやらせて、そうして自分たちがそのあとにくっついていくということになるほか考えようがないわけであります。  その点について、私は非常に危惧を持っておるわけでありまして、今回放出された土地は必ずしもありがたがって、ほんとうに業者の一〇〇%の善意で放出されたというふうには受け取れない節が多分にあるということであります。その点を十分に考慮してもらわなければならないと思うわけでありますが、その点、総理、どうですか。
  221. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 正木さん御指摘のような事情、私も初めて了解したわけでございますが、用地不足のおりからであるということも事実でありますが、買収に対しては非常に慎重な配慮をしなければならないということは、御指摘のとおりだと思います。  ただ、すなおにとっていただければ、私もあなたの御意見を聞きながら、いま業者が放出をするということになれば、これは善意を前提にして放出を受ける。これは要請したのは官側が要請しているわけですから、向こうが持ち込んできているものを買うというのではなく、要請にこたえて売ろうということですから、売らない人よりも善意がある、こう比較論で判断すべきだと思うのです。  しかし、そうかといって、放出をした土地は非常にむずかしい土地である。これは公団に開発をさせれば残地が有利になるというような問題、御指摘のとおりの問題が想定されます。想定されますが、これを押える手はなくはないのです。  いまの御指摘でよくわかったわけですが、そこが公園地区であるというならば、埼玉県の中において、公園地区としてどうしても残したいといえば、それは他に適当なものと交換をしてもいいわけでありますし、代替地として持っているということでなければ、土地問題の解決一つの手段とはなり得ないというわけですから、それは一つの考え方であります。開発をされたとしても、そういう特定な地域だから開発面積が非常に少ない、これはあります。ありますが、東京都内のように、第一種住居地域で六割の建蔽率のものもありますし、多摩川地区のように、二、三年前までは延べ一割しか建てさせないところもございました。いまのちょうどホテル・ニューオータニのところは美観地区であり、緑地帯でございましたから、延べ一割しか建たないわけです。一万八千坪が延べ千八百坪しか建たない土地だったのです。ですから無価値に近い土地だったということが、いろいろな状態でいまホテル・ニューオータニが建っておるということでございますが、まあ時代の要請もあるわけです。  ですからそういう意味で、公園地区というようなものであれば、実際建蔽率が三〇%であっても二〇%であっても一〇%であってもいいわけです。ですから、それは県との許可の状態に応じてそういう問題が解決をさるべきでありまして、都市のまん中にあって六割の建蔽率でなければならぬ、五割利用できるところでなければいかぬということになれば、坪三十万円し、五十万円するというわけになるわけですから、それは経済的比較としていろいろな種類のものがあっていい、私はこう思います。  第三点は残地の問題でありますが、残地は、住宅公団が全然できない場合は住宅を建てる手があるのです。市町村の公社にまたこれを原価で移して、市町村営の公営住宅を建てるということになればできます。もう一つは、県の公社がこれを引き受けて、住宅公団というものが全然利益を得ないで、買収価格でもって県公社との間に話がついて、県がこれを県の理想どおりの住宅用地とするということになれば使えますし、また、他との代替用地としても使えるわけであります。残地はどういうことになるかというと、これは住宅公団が建てて初めて残地が値上がりするわけですから、建てるときには、いまの法律で住宅公団の買収した面積のみを許可すればいいのでございまして、他は民間で持っておる限りにおいて、新しく政策が変更され、法律が変更されない限りできないわけです。  ですから、これはもうどうにもならないのです。民間が持っておって、住宅公団部分だけを住宅用地に転用を認めるが、これを公共用地、または住宅公団に同じ価格で売り払った場合にだけは認めますということは、これは行政権限の中でもって取捨選択と調整ができるわけでありますので、ここらは、あなたがいま御指摘になったように、すなおな面で、もっといいところもあるかもしらぬから、十分比較検討して、国民の税金は利用すべきであるという御指摘は、十分考えなければならぬことでございますが、まあ専門家である住宅公団がこれを取得しておるということには、それ相当な理由もある。  まあ、御指摘を十分頭の中におさめながら、これは代替地に使うのか、また、どのような様態における住宅にするのか、そしてそれでもって、隣に住宅ができても、民間の取得地である限りにおいては用地の転用はできないといえば、そこは、今度別に、また同じ価格で買い得るというようなこともありますので、まあ御注意は御注意として十分腹に入れながら、やっぱり放出を求めるということになると、必ずしも最善の理想的な環境だけを受け入れられるというわけはありません。まあ自分でたくさん持っておっても、自分ではこれから五年も十年も持たなければならぬかもしらぬが、住宅公団なら利用できるなというようなところをきっと放出するでしょうから、そういうようなところは、買う人と売る人とのやっぱりバランスの問題でありますから、その中に不正が行なわれるとか、そういうことがあっては、これは断じて許すことはできません。  しかし、住宅公団や建設大臣が善意で放出に応じたということであれば、その事実はひとつ認めていただかなければならないだろう、そういうふうに、私はここで聞いておりまして、すなおにそう考えたわけでございます。
  222. 正木良明

    正木委員 ですから、総理がいまいみじくもおっしゃったように、今度の放出された土地というのは、企業のほうで持ちあぐねていた土地なんですよ。それを放出して、そうしてその中でも一番いいのを公団が選んだのかもわかりませんけれども、しかし、持ちあぐねていた土地を売ったということは、持ちあぐねているということは、このまま置いておいても開発は不可能であるであろう。同時にまた、もしかしたら値下がりしてくるかもわからないだろう。いわゆる総理がおっしゃっている、その金融引き締めがきいて、土地の値下がりが始まっておりますなんてあなたおりしゃっていましたが、そのことばのとおりならばどんどん値下がりするでしょう。にもかかわらず、そういう持ちあぐねておった土地を放出して、しかもそれを住宅公団が買って、ということは、逆な意味で言いますと、この場合、住宅公団が地価の買いささえをするわけです。値段の買いささえをすると国民の目に映っても、私はしかたがないと思いますよ。そういうふうな形で、しかもその金は業者のふところに入るわけでありますから、それは簡単な金じゃないのですよ、総理。  飯能で言いますと、興和不動産に入るのは二十億二千五百五十万円です。西武へ入りますのが、一万九千八百円で単純計算でいきますと八億七百八十四万円、これだけが飯能の場合だけで業者のふところへぽんと入るわけです。入るということは、これだけまた過剰流動性をふやすことになるわけです。それが大きな問題になる。そのほかも、私どもで調べた単価で申しますと、野田の場合については東急不動産が二十七億六千万円ふところへ入ります。長津田においては六十億円三菱地所のふところへ入るということになる。これはどうしますか、こんな金は。
  223. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほど申し上げましたが、向こうから買ってくれと持ち込んだものを買った場合には、あなたの言うとおり、これは全く王手飛車の議論になると思うのですが、こちらが要請しておりますので、やはり要請しておって、要請にこたえない人もある中にこたえておる。ですから、それはいい土地だけ残して、なるべく自分では開発しても利益のないというところを出したのだろうということになって、それをとにかく知っておって買ったのか、知らないで買ったとすれば能力がないという御指摘になりますが、しかし東京周辺においては、割り当てられた公営住宅が一〇%しかできない。それは何かというと、土地の取得ができないということなんですが、これは毎度御指摘を受けていることは事実なんです。  そういう意味で、住宅公団というものが東京や大阪、名古屋の周辺においてこれだけの住宅不足に対して年に一〇%しか消化できない、そういうときに土地の放出があれば飛びつくということは、これは使命感からいってもやむを得ないという点もあるのです。これは私は何も、総理大臣でございますからといって、政府関係機関をかばっているのではありません。これは住宅を供給しなければならぬ、こういう立場から述べておるのでございますから、ここらをひとつ理解していただきたいと思うのです。  それから、そういう土地でもって、金が出る場合どうするか。これは、金融引き締めというので一番先にとめているのは、新規に土地購入の資金は貸してはならないと書いてある。今度、ものは量から質へ移るわけですから、住宅ローンとかそういうものは絶対に締められないし、これは国民の要望にこたえなければなりませんから、土地に貸し付けてしまった、株式の払い込みやその他株式購入代金として貸し付けた、こういうようなものをこれから回収してまいろう、こういう質的なものを当然考えておるわけです。そうでなかったら、短期決戦でできるなどと言えるわけはありません。これは一年半によって相当締めたと思うのです。私は、四十五年の四月一日現在を基準にして考えますと、最近の一年間で三、四兆円締まったと思いますよ。しかし、まだ私は、貸し出したものが三、四兆円ぐらい多いのではないかと思うのです。そういう場合、新規の貸し出しよりも必ず回収する。それも三カ月、せいぜい六カ月という面で新規貸し出しの抑制と同時に回収しなければ、過剰流動性の金融の引き締めはきくわけがありません。  ですから、その意味においては、どうしても運賃の値上げはできない、そうすると運行もできない、給与も払えないというような問題は別でございますが、そうでないものであって、土地を売ったもの、それは借り入れ金を対象にして売られたものは必ずこれを回収する、こういうことが、金融の質的な引き締めの対象の第一になっておりますから、そういう意味では、これが過剰流動性になるということは考えられないことであるし、これがそうなったら困る。そうなったら大企業に、全部中小企業がとにかく三割、五割とたたき値で売るような状態まで追い込まれて、大企業やそういうものにみな入ってしまうという結果になりますから、そういうことは質と量と両面から金融の引き締めを行なっていきますので、そういう不公平なことは絶対いたしません。
  224. 正木良明

    正木委員 私の手元の資料によりますと、現在住宅公団がかかえておって着工のできないもの、いろいろな理由があります。いろいろな理由がありますが、着工できないものは、昭和四十三年に契約をして、六十六万四千平米、約二十二億円で買いました東京町田の小山田団地。三十九年の四月に契約をしてそのままになっておる阿武山団地、大阪の高槻です。これが六億円。四十五年の四月に契約をして、そのままどうにもできないのが中荻野団地、神奈川県の厚木です。これが十七億円。四十五年の十二月に契約をして、そのまま着工できない大阪箕面の如意谷二団地、これが九億円。四十五年の八月に契約をしてまだ着工のできない日進団地、十八億円、愛知県の日進町です。そのほか大阪府の島本町におけるところの島本団地。このようなものが、まだグラントハイツが残っておりますけれども、これは最近ですから、あえて言わないでおきますけれども、こういうふうに、それぞれ地元との話し合いがつかなかったり、また不適地であったり、また水の便が悪かったり、交通の便が悪かったり、そういうことで事実これだけのものが、すでに私の調べだけでも住宅公団としては着工できないで持ち腐れの土地なんです。これに、それぞれ市街化調整区域であって、県知事が許可を出さないということがはっきりしておるこれらの三つの団地が、再びこの住宅公団の持ち腐れの土地にふえてくるということになるわけですね。これは私は非常に重大な問題であろうと思うのです。  確かに、これは今後努力した結果、これが開発できるかどうかということについて、私もよくわかりません。開発してはいかぬとか、家を建ててはいかぬという意味で申し上げているのではありませんから、できるならしたらいいと思いますけれども、しかし、こういうふうな形でしか放出を受けられないということについては、十分検討の余地があるのではないか。この前総理は、やはりこの予算委員会の席上で、上場会社の保有の土地についての調査をする、そしてそれについて委員会に報告するということをおっしゃいました。  これはおそらく、土地の利用ということについて、何らかの参考資料にしようとなさっておるに違いないと私は思いますが、そういうことになれば、こういう開発が不許可になるであろう、開発の見通しが非常に悪いであろうというようなところではなくて、むしろちゃんと開発できるような土地が実は買い占められておる。そういうものは民間企業としてはかかえて、悪いものから出しているわけですから、いいものを出させるように努力しなければならぬと思うのですが、この点は総理、どうですか。
  225. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それはもうそのとおりでございます。だから、またそこでもって申し上げてもまことに恐縮ですけれども、国総法の中には、御研究になっておると思いますが、これが通していただけるということを前提にすると、知事がそういうところを指定すれば、これは特定地域となって、民間ではどうにもなりません。三年間地価も凍結になりますし、開発もできなくなりますし、県の指定するとおり開発ができるわけでございます。そしてそうではなく、府県に対して売らなければならない、買い取り請求権のみを認めておるわけでありますが、まあ私は、いい法律、いい法律というよりも、どうしてもやらなければならぬ法律を出したつもりですが、あの「列島改造論」というのとごちゃごちゃになってしまって、どうも時を少し失っているような気がしてなりません。政治のむずかしさをこのごろしみじみと感じておるわけでございます。
  226. 正木良明

    正木委員 建設大臣と総裁にお伺いしますが、これは、もしその開発が非常に不可能な状態になったというときには、そのままずっと持っているわけですか。それとも、この契約を破棄するというようなことになりますか。どうなりますか。
  227. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、実はまだ全部契約が完了しておるという段階でもございません。したがって、地元市町村とは密接に話し合いを続けておるという報告を受けておりますが、これから県のほうの意向も、小団としては当然予定に入れておるようでございます。したがいまして、いまここで仮定の場合どうする、こう言われましても、私としては、やはり責任者として、実際行政上の問題でございますので、お許しをいただきたいと思うわけであります。  それと、先ほど来総理からも答弁がありましたが、実は民間デベロッパーの持っております土地を、昨年の七月以来行政措置として強力に指導したわけであります。もう出したくないというのが大かたのあれだったわけでありますが、前金丸大臣、非常にお骨折りをされまして、十六社から七百六十六ヘクタールの実は提示があったわけであります。その中から、建設省の住宅局並びに都市局並びに住宅公団と、それぞれ専門家が検討いたしまして結論を出したわけでございますので、先生御指摘のような点は、全部そうだというふうには私どもは考えたくないわけでございます。
  228. 正木良明

    正木委員 時間がありませんので……。建設大臣、契約が完了しておりませんと言うけれども、契約は完了しておるのです。ただ、留保条件として残しているのは、農地の分だけなんです。非農地については契約は実行しなければならぬのです。その非農地も解放された土地の中のごくごく一部分です。したがって、これはこのまま実行されていくということになると私は思うということですね。それを考えてください。  それともう一つ、非常に重要な問題は、先ほども申し上げましたように、従来の商慣習ではなくて、業者の取得価格、最終的には取得価格に対してそれを買い入れ価格にするわけですね、ある程度の割合をのっけて。その最終価格というものについてお尋ねしたいのと、それとその最終価格の確認は、どのような方法でおやりになったかということをお尋ねしたいわけです。
  229. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 先ほどの答弁のうち、契約未完というのは農地のことでございますので、補正をさせていただきます。  それから、いわゆる昨年放出を要請したときに示しましたいわゆる引き取り価格をどうするかという問題でございますが、これは飯能の場合には西武、興和不動産に名義が変更になりましたときのその売買価格というものが、いわゆる取得価格というふうになっておるわけでございます。
  230. 正木良明

    正木委員 それは幾らだったのですか。
  231. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 それが幾らであったか、私、十分聞いておりませんので、公団から答弁させます。
  232. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま重要な問題ございましたが、いろいろ折衝した結果、これはどうしても宅地改良にできなかった場合どうするかという大きな問題が御指摘ありましたから、これは一公団でもって言い得る問題ではありませんので、私が結論だけ申し上げておきます。  これは、県や市町村と話をしながら、県の開発の中で、他の土地と代替をするという案が一つあります。もう一つは、住宅には不適であるが、これは他の政府関係機関でもって、療養所やその他という、そういうものに使えないかということが一つございます。最終的には国損を来たさない程度、公入札においてこれを手放すということであります。  手放した場合、国損を来たすかどうかという問題ですが、いま土地に関しての問題は、これは公入札でもって、公開入札を行なえば国損を来たすという状態ではないようでございます。ただそのときに、資金の効率的な運用をなぜはからなかったかという指摘が一つ残ります。残りますが、まあ土地の利用というものに対しては、住宅公団では余っておりながら厚生省関係では非常に困っているというような面もありますから、政府関係機関で、こういうような御指摘があったようなものに対しては、やはり年に一回ずつちゃんと出し合って、これを効率的な利用ができるような道を考えていくべきであろう、私はあなたの御質問でそのような示唆を受けましたので、思うがまま、すなおに御答弁を申し上げておきます。
  233. 南部哲也

    ○南部参考人 先ほどお話のありました平米六千円というのは、大体金利と管理事務費一四%を入れたものがその額でございます。  ただ、一つ一つの問題につきましては、おのおの取得の時期が違いますものですから、原価は幾らだということになりますと、ちょっとなかなか、直ちにその計算が出るというわけではございませんです。
  234. 正木良明

    正木委員 そうすると、これは飯能の場合だけに限っておりますが、平米六千円、坪当たり一万九千八百円というのは平均価格なんですが、これのもとになる価格というのは、どうなったのですか。どういうふうな確認方法をとっているのですか。その確認があり、平均価格が出てこないと、この平均価格の六千円なんて出てこないでしょう。
  235. 南部哲也

    ○南部参考人 取得原価というのは、要するに西武なり興和が地主から買ったものでございます。それに、先ほど申しました……
  236. 正木良明

    正木委員 それはわかっているのだ。それはどういうふうに確認したのですか。
  237. 南部哲也

    ○南部参考人 これはもとの西武が買いました契約書を徴しまして、これによって確認いたしました。
  238. 正木良明

    正木委員 その平均は幾らになっていますか。——じゃ、もっとまとまったところでいきましょう、ここはばらばらの地主かもしれませんからね。  長津田におけるところの三菱地所というのは、これはどうですか、これの単価は幾らですか。いわゆる公団の購入の単価。
  239. 南部哲也

    ○南部参考人 平米約二万円でございます。
  240. 正木良明

    正木委員 二万円、六万六千円ですね。坪当たり六万六千円ということになりますが、しからば三菱地所の取得価格というのは幾らだったのですか。三菱地所が取得した価格というのがなければ、それが基準になって六万六千円というのは出るわけでしょう。
  241. 南部哲也

    ○南部参考人 三菱地所は、長津田の問題につきましては系列会社の菱和不動産を使っております。したがいまして、私のほうは、菱和がさらにその下に地元の業者を使っておりますので、その契約書を全部洗いまして原価を算定いたしております。洗いました時期がみなそれぞれ違います、地主から買った時期その他が。したがいまして、これらの問題についての三菱の取得原価というものを私どものほうであれしたのは、約三十八億強でございます。
  242. 正木良明

    正木委員 単価で言ってくれませんか。いま単価の話をしているわけですから、単価で話してくれませんか。平均でけっこうですから単価で言ってください。  要するに、私がこの問題をなぜ問題にするかというと、名目的には明らかに最終業者が——最終業者というのは、公団と契約した相手の業者が取得した価格に、金利と管理手数料を上のせして引き取るという大前提があるからです。そのためには、どうしてもそれを確認しないことには、いわゆる業者の言い値の上にそれをかぶせて買ったということになるわけです。そうなってきますと、この放出土地というもののいわゆる意義というものが半減してしまうわけですから、その点をお聞きしているわけです。
  243. 南部哲也

    ○南部参考人 全部平均いたしまして、平米で申し上げますと約一万三千円でございます。
  244. 正木良明

    正木委員 そうすると、九千円というのは、いわゆる金利と手数料ということになりますか。
  245. 南部哲也

    ○南部参考人 要するに差額でございますから、そのとおりでございます。
  246. 正木良明

    正木委員 それでは、時間をとられてしかたがありませんから、委員長にお願いしたいのですが、これの確認された単価というのは、要するに住宅公団が購入すべき平米当たりの単価、それと総額、それと、その単価が算出されるべき基本になる単価ですね。これは、要するに住宅公団が買う以前の、業者が取引をしたときの単価です。これと総額、面積等、これをひとつ資料としてお出しをいただきたいと思うのですが……。
  247. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 理事会で相談の上、要求いたします。
  248. 正木良明

    正木委員 そこで、もう一つめんどうなことがあるわけなんですが、横浜の長津田の場合は、住宅公団が買う前、いまおっしゃったように三菱地所が最終の権利者になっているわけですが、その以前には菱和不動産という会社ですね。  その菱和不動産は三協物産というところを使って買収をしているようです。で、三協物産が一般の地主からこの土地を買い集めましたのは、大体四十四年から四十五年ごろというふうに考えられております。聞いておってくださいよ。いいですか、ちょっとこまかい話になりますから。その三協物産が菱和不動産に売買契約で売っているわけです。このときに、いわゆる一般の地主から三協物産が買った時点と、三協物産が菱和不動産に売った時点とがほぼ同じだというのが、私たちの調査で明らかになっているわけです。もう中には完全に同じ日に、一般の地主から三協物産、三協物産から菱和不動産という形での登記が行なわれているのがございます。そうして、菱和不動産から三菱地所へまいりますのに、これが売買ではなくて、真正な登記名義の回復というのが登記原因でなされておるわけなんです。この真正な登記名義の回復というのは、事実これは決して非合法のものではないと私は思いますけれども、これは聞くところによると、たとえば権利書が盗まれたりなんかして虚偽の登記がなされた、それがあとでわかって、そうして正しい名親人に、権利者にその名義が回復されるというための救済措置として考えられたものであるし、これは最高裁の判例もあるようでございますが、そういうことだそうでございますが、こういう場合に、こういう真正な登記名義の回復というような登記原因がはたして妥当なのかどうか。これは法務大臣、どうでしょうか。なんでしたら民事局長でもけっこうです。
  249. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 最近、この真正なる登記名義の回復という所有権移転の手続がございまして、私も詳しく存じておりませんので、いろいろ問いただしましたところが、まだ最高裁の制度ができる前の大審院の時代から、ずっとそういうような判例が続いてきまして、その結果、法務省としましては、昭和三十九年の何月かに省内でいろいろ検討した結果、そういうような事態については、真正なる登記名義の回復という付記をして所有権移転登記手続をするということになったようでございます。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕  この問題については、なお別途御質問があればお答えいたしますが、そういうように承知いたしております。
  250. 正木良明

    正木委員 この真正なる登記名義の回復という登記原因の使える場合は、大審院判例では非常に狭かったわけですけれども、最高裁判例では非常に広がってまいりました。そこで、いろいろ私も調べてまいりますと、売った者と買った者の両者の合意さえあるならば、真正な登記名義の回復というのは可能だというふうにいわれております。それが一つですね。それが可能かどうかということ。それと、もう一つは、このために登録税が、千分の五十が千分の二十五、半分になってしまう。これは無償でございますから、土地におきましては、譲渡所得税が取られませんし、地方税におけるところの不動産取得税というものもかかってまいりません。ところが実際問題として、登記所には、これがほんとうなのかほんとうでないのかということの審査権がありませんから、両方合憲でこの登記原因で登記申請をしてきたときには、これを拒絶することができない。  こういうふうなものがございますと、何らかの歯どめがございませんと、たとえば私と総理が腹を合わしたら、実際問題として、土地が売買されたとしても、権利が移転しておるのにもかかわらず、二人が合意で真正な名義回復という登記原因にすると、それは可能になるということです。この点はどうでしょうか。
  251. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 お答えいたします。  真正なる登記名義の回復というのは、本来からいえば、判決とかあるいは和解調書とかいう、証明すべききちんとしたそういう公式なものがあれば一番よろしいわけでございますが、判例等から見ますると、名義人が完全に承諾をして、それは私のものではなかったのだ、乙が甲のものであったのだというような意思表示を明確にいたしまして、そうして甲と乙との意思が完全に一致しておればよろしいというようなことで、現在では、お話しのとおり、実際その登記事務を扱います法務局としましては、それを審査する権限も能力もありませんから、そういうような双方の意思の合意のある場合には登記をせざるを得ない、こういうことになっておるようです。  そこで問題は、その当事者の意思が完全に一致した場合には——かりにそれは一致していなくても、たとえば判決にしましても和解調書にしましても、意思が一致しておれば、しようとすればできるわけですね。ですから、同一の結果になるわけで、そういう手続をやっておるようでございます。  ただ問題は、もしそれが間違っていたらどういうことになるかということになりますが、それから先のことは、脱税になりますか、あるいは公文書不実記載の罪になりますか、間違っていたということが明確になった場合にはどうするかという問題が、別途残っておるのではないかというように私は考えております。
  252. 正木良明

    正木委員 ですから、この場合、法務大臣、私は決してこの菱和不動産と三菱地所が虚偽の理由で登記申請をしたというふうに断定して申し上げるわけではありませんけれども、少なくともその同系の会社で、特にこの場合なんか親会社が一〇〇%出資の会社です。こういうときには、完全に腹を合わせてやれることになります。法務省の専門家の報告によりましても、最近このような登記原因というものが激増しておるそうです。  したがいまして、これに何らかの歯どめをかけておかないと、両者が合意をしたという形だけで、この登録税が半分に減額されたり、税金を払わなくても済むというような状態のもとで、いわゆる悪用、乱用されるおそれがきわめて濃いと思うわけなんですが、この点について、何らかの歯どめ措置を講じるというようなお考えは法務省当局におありでございましょうか。
  253. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 お話しの点は、私も同じような考えでございまして、どうも歯どめがなければ困るではないかということを、実は事務当局とも話しておるわけですが、現在のところではそういうような次第で、判例が引き続き続くものですから、法務省としては、どう扱うべきかということを慎重審議を省内でしました結果、昭和三十九年に通達として、そういう場合には、真正なる権利の回復ということを付記して登記をするようにということを全国の登記所に通達をしまして、現在はそういう手続をやっておるようでございます。  いまお話しのような点につきましては、私どもとしましては、今後慎重にひとつ検討してまいりたいと思っております。
  254. 正木良明

    正木委員 どのような内容であったかわかりませんが、実は菱和不動産から三菱地所へ、同じ日にこれだけのものが真正な登記名義の回復という形でやられているのです。いいですか。これが違法ではないことはもちろんであります、両者合意ですから。しかし、実際問題としてこういう事態が起こりつつあるということについては、十分な配慮が今後必要ではないかというふうに私は思うわけであります。現に、菱和不動産が三年も自分のところで持っておって、その間固定資産税も払って、不動産取得税も払って、そうして去年、あの参議院の委員会で参考人が呼ばれて、そうして三井不動産の江戸社長が、放出しましょうというお話があったそのあと、去年の六月に三菱地所へこういう形で名義が移っているわけです。これが実は長津田で放出を受けた土地なんです。これは、私は検察庁ではありませんから、この間にどういう売買の手続があったのかどうかということはよくわかりませんけれども、しかし、こういう形で幾らでも、同系会社が腹を合わせて、両者、買い手と売り手が腹を合わせればできるというような状況というものは、何らかの制約を加えていかなければならないのではないかというふうに私は考えるわけです。これはひとつぜひ御検討をお願いいたしたいと思います。  この点で、私もずいぶん思わない時間をとってしまいました。したがいまして、あともう一つ、厚生大臣と公取委員長にお聞きしたい問題がございます。  実は、けさの新聞を見ますと、医薬品の問題について、十一社に対して、値下げの勧告を厚生省としてはなさったようであります。その点についてお聞きしたいわけでありますけれども、再販売価格維持制度で、いままで値下げ競争を、実は法律的に下ざさえをするというか、そういう形のものが行なわれておって、業者にすれば、そういう国民の健康に直接関係のあるものであるというので、医薬品がそれに指定されて、そうして値下げ競争がそれで防止されたわけですね。これは業者の側にすれば、値下げ競争が防止されるということについては、やはり利潤が確保できるということになりますね。  ところが、いざこういうふうな状態になってまいりましたときに、どんどん再販制度から抜け出して値上げをしておるところがたくさん出てきた。これは厚生省も御指摘になったとおりです。このことについて、あまりにもあざとい商法であるというふうにしか私は考えられません。  それで厚生省や公取に、しからばこの十一社の中のどういう品目がどのように上がったのかということについて、資料を要求いたしましたけれども、どちらもお出しいただくことができませんでした。したがって私は、私たちの足を使って実際に調べた実態表がございます。  これで見ますと、驚くべきことが起こっておるわけであります。大体五〇%から六〇%ぐらいのものが再販から抜け出して、この値上げの時期に値上げをしておる。いわゆる明らかな便乗値上げということになります。この表をちょっと渡してください。——これは皆さん方のお手元ではもうお調べになったものであろうと私は思いますが、大体この表に間違いないかどうか、お答えをいただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  255. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お答えいたします。  ただいまいただきました資料でございますが、これは私、いまいただいたばかりで全部精査しておりませんが、相当値上がりしていると私も承っておるわけでございます。このとおりの金額かどうか私も存じませんが、相当値上がりしているという事、実は否定いたしません。
  256. 正木良明

    正木委員 公取委員長、どうですか。
  257. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 この表をただいま拝見しまして、このとおりであるかどうかは、私、即答はいたしかねますが、最近になりましてこの四カ月間に、値上げを目的として——私のほうではいたずらなる便乗値上げを認めないという強い方針を出しております。そうしますと、自発的に再販商品からはずしていきました。いま、ごく大まかな数字を申し上げますが、医薬品の場合に、八十七品目について申しますと、二〇%未満の値上げをしたのが十一、それから二〇%以上の値上げをした商品数が五十、それから四〇%以上値上げしたのが二十一、六〇%以上値上げしたのが五、こうなっております。  そのほか、ついでに洗剤を申しますが、洗剤についても、これは六十三品目落ちておりますが、そのうち二〇%未満のものが四個、それから二〇%以上の値上げをしたものが五十二、四〇%以上のものが五、六〇%以上のものが二、中には八〇%というふうな極端なものも含まれております。  これが、主としていま脱落したものの多い二品目でございます。それで洗剤などは、もういま現在八商品しか残っておりません。
  258. 正木良明

    正木委員 そうですね。そういう状態が事実起こっているわけです。こういう点について総理、どういうふうにお考えになりますか。
  259. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 再販価格を維持するということで、まあ制度上は、再販の品目として指定した場合は、やはり申請してから何年間ははずせないというようにすべきだと思います。はずしてしまったものは、これは今度また再販申請しても何年間は再販品目にしない、暴落をしてもやむを得ぬ、やはり制度上はそうだと思います。  この実態は、再販というものが重要な制度であるということを知りながら、値上げのために再販からはずすということは、ちょっとどうも納得しがたい。ほんとうにそう思います。きのう、ここでちょっと御指摘を受けましたが、同じような気持ちです。
  260. 正木良明

    正木委員 非常に重要なことをおっしゃいました。再び再販に指定しない方針がいいだろう。これはしかし公取でやるのですから、総理がおやりになれませんから……。  そこで、公取委員長にお尋ねいたしますが、こういう状態のものが、いまおっしゃったように洗剤にも起こっておりますし、化粧品のほうにもずいぶん起こっておるわけでございます。公明党としては、これの詳細な調査をなお進めておりまして、近々それを公表したいというふうに思っておりますが、その点について、また公取委員長にお願いしたいことがあります。いまはけっこうです。  そこで、厚生省からは、これの引き下げ方を業界に相当強く要望なさっておるようでありますし、その中では、九月以前の値段にできるだけ戻すようにというふうにおっしゃっておりますが、この点については、自信のほうはどうでしょうか。
  261. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 実は、この再販契約であったものが、その再販を、値上げを理由としてやめているようでございます。そして、いまお話しのように、この数字が全部そのとおりかどうか知りませんが、私の承知しているところによりますと、最低一〇%とか五〇%とか四〇%とか、そういうふうに、再版をやめますと市場は自由になりますからそういうことをやっている。特に昨年の十二月から、十二月、一月、二月——まあ二月はちょっとですが、一月にかけて非常に再販をやめて値上げをしておる、こういうことを承知いたしたわけでございます。  そこで、先般の、四日の政府と経済界との懇談会もありましたので、そういうふうな空気の中で、この事態を何とか押えなければいかぬということを考えまして、きのう薬務局長に指示をいたしまして、この再販をやめた十一社の責任者を呼びまして、三つのことを指示いたしたわけでございます。  すなわち、薬局で売りますこの再販をやめた——そればかりじゃありませんが、一般の大衆薬については、当分の間値上げしない、これが第一点。第二点は、再販をやめて値上げした胃腸薬とか、かぜ薬とか、こういうものについては、できれば去年の九月ごろの再販をやっておった時代の値段に戻しなさい、それが戻せないならば、見直しをして、理由をつけて八日までに返事を出しなさい。それから第三点には、将来、薬局で売りまする大衆薬についても、値上げの必要がある場合には、規則とか法律とか、そういうものはありませんが、今後は資料を添えて、厚生省に十分相談した上でやるようにしなければいけませんと、この三点を指示いたしまして、あした中に、それぞれの会社がこの薬品についてどういう措置をとらんとするのか、措置を持っていらっしゃい、こういうことを指示しておるわけでございます。そして、あしたの晩、私が直接この十一社の責任者の諸君に会いまして、いま申し上げましたような強い態度を指示いたし、御協力を求めるようにいたしたいと思います。  もう御承知のように、再販というのは、おとり廉売防止ということで始まった制度でございます。その制度を悪用するといいますか、値上げをするときには、とたんにこれをやめて値上げする。これはやはり企業の姿勢として好ましいことじゃありません。しかも、こういう物価上昇のこの際でございますから、私も、あしたの晩は強い態度をもってこの諸君に対してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  262. 正木良明

    正木委員 厚生大臣の非常に前向きな姿勢は評価いたします。ところが、まあ実際問題として、この通達の中にも、「極力」だとか「万一」だとか「当分の間」だとかというようなことばが入っておりまして、あのしぶとい業者が、はたしてこの御決意のとおり、言うとおりになるかどうかというのは、私もあまりいい見通しは持っておりません。おりませんが、しかし努力なさっておることは評価いたします。  そこで、これは大臣と委員長にお願いしたいわけでございますが、その理由を付して業者が厚生省に出しましたものを、まとめてこの委員会に御提出いただけるでしょうか。あしたが済みませんと、いまそのことでは議論ができませんから。どうでしょうか。
  263. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 戻せない人は、いろいろ理由をつけて出すのでしょう。まあ、おそらく企業の秘密ということもないでございましょうから、委員会において提出しろという御要請がございますれば、この予算委員会で資料の要求をあれでございますれば、提出するにやぶさかではございません。
  264. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 正木君に申し上げます。  いまの厚生大臣の答弁のようでございますので、理事会に一応はかりまして、希望に沿うように努力いたします。
  265. 正木良明

    正木委員 それで、公取委員長さん、私の知り得たところでは、実は薬品業界にしろそういう化粧品業界にしろ、この値上げの時期に再販制度から抜け出して、思うさまの値上げをしておるわけでございますが、私は、それは状態として、再販制度に入っておったときに、もう各社の、いわゆる寡占企業の各社の系列がすでにでき上がってしまっている。したがって、今後はこの再販のお世話にならなくても、いわゆる再販類似行為が可能になってきておるというようなことが出てきているのではないだろうかというふうに考えるわけです。  したがいまして、今後非常に重要なことは、一つは、いま総理もおっしゃいましたけれども——私は前提として申し上げておきますが、再販に賛成ではないのですよ。再販制度はもうなくしたほうがいい。そのなくそうという方向、方針については、私は全く賛成なんです。しかし、いまにわかに再販制度というものをはずせないような御事情があるようでございますし、あの去年の八月の通達の中にも、該当する、いわゆる再販として残る品目というのが幾つか指定されておるわけで、医薬品もその中に入っておるわけですから、したがって、総理がおっしゃったように、この際、こういうずるい抜け方をしたものについては、要するにこの品目は、モデルチェンジか何かしますとまた幾らでも変えられますから、抜けたこの会社については、もしかりにその時点において再販制度がまだ残っておるとするならば、その再販の申請があっても受け付けないとか、ないしは、もし受け付けないということになりますと、私が言ったように系列化が進んでおりますから、いわゆる縦のカルテルといわれるようなものが、再販で保証されなくても系列化の中で生まれておりますから、それについては、いわゆる類似行為、やみ再版というようなことが行なわれることになろうかと私は心配をいたします。  したがって、これに対してはどのような措置で臨まれるか。いわゆる再販から抜けたものについては公取の権限が及びませんけれども、しかし、それの類似行為ということについては、公取の権限の及ぶところでございますが、それについては、どのようなお考えでいらっしゃるかをお伺いしたいわけです。
  266. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 この際、再販制度の概要を最初にちょっと申し上げます。  いま一月末現在で残っております商品数が四千九百三十五でございます。前年に比べましてかなり減っておりますが、実は追加が五百六十六商品あって、それから廃止したのが千百四十と、つまり前年は五千五百余りであった、こういうことでございまして、追加が一年間に五百六十六あって、これは、いま制度が生きております上は——もちろん、私のほうは無条件受け付けはいたしませんけれども、つまり同じ品物を銘柄を変えて追加をする場合があるわけです。で、値段だけ上がってくる、こういうのがありますから、それは無条件ではありませんが、制度上は受け付けざるを得ない。しかし、本年の九月以降は、先ほどの合成洗剤、それから歯みがき、浴用石けん、この三品目は全面的に指定を取り消されます。これが発動いたします。なくなります。それから医薬品、化粧品については品目整理が行なわれます。商品数が減ります。  それらの分について、いま御心配になられておるやみ再販、つまり系列化が進んでおれば、あるいは寡占の状態になっておれば、結局末端価格を、同じように指示した高い値段で維持するようにする、それを守らないと何らかの制裁措置を加えるというふうなことが、これがやみ再販でございますから、そういうものにつきましては、私は、これらの廃止後におきまして、特に今回非常に大幅な値上げを目途として廃止に踏み切ったようなところについては、これは、たとえば残るものは化粧品、医薬品でございますが、これにならったりするのがあります。ですから、それらの会社のものについて、もっとも制度上は受け付けざるを得ないわけで、拒否はできないような立場になっておりますが、いずれ制度的に、もっとこれは進めなければならぬというふうに思いますが、少なくとも、やみ再販につきましては非常に厳格な監視をしまして、ことに商品で廃止されたものはわかっておりますから、値上げの幅の非常に大きいもの、そういうものなどについて、特に私どもできるだけの力を尽くして、これを厳重に監視し、やみ再販というのは、これらの非常に悪い癖がついておりますから——悪い癖と申しますか、私どもからいえばあまり感心しない癖がついておるのですから、これを絶対に排除するように努力するつもりでおります。
  267. 正木良明

    正木委員 実は、この系列化が行なわれておるということは、すでに、今回の値上げのときに出されました通達等が私の手元に入っておりますけれども、こういうようなのでも、中外製薬については中外会だとか、タケダ会だとかいうふうに系列化が完全に進んでいる、そういう状態の中で、やはり何といってもやみ再販という問題がおそらく起こってくるだろうと思います。というのは、大蔵大臣の言うことが正しければ相当な値くずれが起こるはずでありますから、そういう状態が起こったとするならば、そういうことが必ず起こってくるに違いないであろうというふうに私は考えるわけです。  したがって、それについて、厳重な監視をするという公取委員長のおことばは非常に頼もしいと思いますけれども、実情として、公取委員長、現在の陣容、予算でそれが可能ですか。
  268. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 現在の陣容では十分——最高に努力いたしましても、そう大部分を規制するというところまではいかないと思いますが、しかし、かなり徹底的にやりまして、そういうものについては何らかのこらしめの方法をとらなければならぬ、そういうことでやりますから、系列についても相当メスを入れていく。まあ系列も非常に完成している会社と、そうでない弱い会社とございます。この差が非常に大きいわけです。だから、完全な寡占体制になっているものは、それぞれがみな寡占でございまして、みんな系列をちゃんと持っておる。しかし、ガリバー型寡占といいますか、一社だけがばかでかいというふうな場合は、これはそういうものが非常に系列が強いわけです、現在でも。そのかわりそうでない群小といいますか、そういう業者の場合には系列も何もない。ですから、再販をやろうとしてもこれは守られない。値くずれのときには、それはもう再販を脱している以上はずっと値が下がる、これは避けられないと思いますが、やはり系列が強化されているとみなされるものについて、やみ再販の監視に重点を置いていきたいと思います。
  269. 正木良明

    正木委員 私は、この際における公取の活動というものについては、大きく評価している一人です。したがって、横のカルテルについても、非常な監視や調査の手が伸ばされておりますけれども、ここというところで、やはり人員の問題等で行き当たっているのじゃないかというような気がいたします。だから、横のカルテルの面におきましても——縦のカルテルということになってまいりますと再販になってくるわけでありますから、そういう意味において、やみ再販というものについても相当な監視体制というものが整備されてこなければならないだろうと思います。  そういう意味で、私はこの際、今後公取の占めるべき責任というものは非常に大きいと思うわけなんですが、総理、人間も予算も足らぬと言っておるわけですけれども、それを何とかしてやるわけにいかぬのですか。
  270. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 四十九年度予算には、人員は多数ではございませんが、人員、予算等、しかるべく計上してあるわけでございます。しかし、この状態を見ますと、公取もたいへんだということはよくわかっておるのです。ですから、そういう意味で、独禁法というものの番人としての公取の権限が適正に行なわれるように、これからも政府も十分予算的、人員的なものは考えてまいりたい、こう思います。
  271. 正木良明

    正木委員 そういう状態の中でございますので、どうかひとつ公取委員長、しっかりがんばってください。  最後に、もう時間がございませんが、一言だけお願いしたいと思います。  外務大臣にお願いしたいのですが、実は時間がありませんので簡単に申しますが、要するに、アラブ外交につきましては、確かにおくれをとりましたと私は思います。そういう意味から、いま世界の様相というものは、いままで大国に対しての外交というものが先行しており、中小国に対する外交というものがどうしても出おくれておったということは、私は否定できない状態であろうと思うのです。そういう中にあって、確かにアラブ外交というものについては出おくれがあったし、手落ちがあったと私は思います。  こういう中で、いまアフリカ諸国に、国連におけるところの人種差別撤廃条約だとか難民条約だとか等々の問題について、これに加盟する国と加盟していない国ということについては、ある意味ではこれを踏み絵にして、そうしてその国のいわゆる人道的、人権的な考え方を見きわめよう、また同時に、それを石油産油国であるアラブ諸国に踏み絵にしろというような形のものが実はあるわけですね。このことは、年末でしたか、テレビ対談でも大平外務大臣は、このことを学者との対談でおっしゃっていらっしゃいました、これに関する問題を。非常に重要な、いわゆる日本が人権尊重の国であるか、人道主義の国であるかということについては、一つは、こういう条約に加盟するか加盟しないかということが大きな問題になっていることはかねてからの問題であります。特に、こういうふうに中小国、特に資源保有国が大きな力を持って国際外交の上に姿をあらわした限り、少なくともこういう問題を事前に先取りして手ぎわよく処理をしておかないと、また日本外交の手おくれになるというような問題が起こるような危惧がしきりにいたします。  したがって、時間がありませんので、これは引き続いてまた外務委員会等で私はやりますけれども、この点についての基本的な考え方、しかも、国内法との関係があって、慎重に検討する検討するというのは、十年前から言い続けて今日まできているわけです。十年もかかれば、私は相当慎重な検討ができただろうと思うわけなんですが、この際、ひとつ外務大臣の決意を聞いておきたいのです。
  272. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せの趣旨はよく理解できます。ただ、わが国といたしましては、条約批准にあたりまして、国内法の整備を十分いたした上で批准するというたてまえを終始とってまいったわけでございます。これはわが国が、条約を尊重する上においてきわめて誠実であるということを意味すると思うのでございます。  いま、人種差別の問題あるいは難民の関係条約の問題でございますが、趣旨は、まことにわが国としても賛成でございますけれども、国内法との関連、とりわけ、憲法あるいは刑法その他ベーシックな法律との関連でどうしても抜きがたい壁があるわけでございまして、全く国内法との関連においての検討で難渋をいたしておることは、正木委員も御承知のとおりでございます。  しかし、国際政治的に見まして、こういう姿でいいかということを問われた場合に、これは確かに、じみちな、まじめな方法ではございますけれども、再検討しなければならないことではないかという問題提起でございますので、私どもといたしましても、いま御提起がありましたような問題につきまして、その意を踏まえて、なお急ぎ検討さしていただきたいと思います。
  273. 正木良明

    正木委員 これはまた後ほどやりましょう。  土地の単価の問題等がございまして、その資料、それから再販価格の問題につきましても、便乗値上げの問題についての資料等々、お願いしてございますが、それはよろしくお取り計らいをいただきたいと思いますし、同時にまた、その資料に基づいてまた再び質問させていただくことになるかもわかりませんので、その点、よろしくお願いいたします。
  274. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  この際、理事の協議により、松本善明君の質疑を許します。松本善明君。
  275. 松本善明

    ○松本(善)委員 前回、私が質問をいたしました自衛隊の精神教育の問題について、防衛庁長官は、点検をして、予算委員会に報告をするということを述べられましたけれども、結果はどうでありますか。
  276. 山中貞則

    ○山中国務大臣 事務次官通達をもって再点検等を命じておりますが、最終的に、全国に散らばっておる部隊でございますので、それらについて、ほんとうに一冊も残っていないか等の点検をいたすのに時間がかかっておりますので、具体的な報告は、いま少し時間をいただきたいと思いますが、せっかくの機会でありますから、ではどのような通達を出したのかということについて申し上げますと、四十七年の二月十六日を起案日といたしました書類で、「教育関係資料の総点検について」という題であります。「教育関係資料については、従来、国会あるいは部外の雑誌等でたびたび取り上げられ、自衛隊の偏向教育等が指摘されており、指摘された資料については、不適当と認められる場合はその都度廃棄又は修正等の処置をとってきた。又、教範及び訓練資料については、昨年来各幕において総点検を実施し、一部を残しほぼ点検を終わっているが、たまたま、昨年十一月二十九日の沖繩及び北方問題に関する特別委員会において、「指揮官心得」及び防衛研修所の研究資料「国内紛争と革命の一般的考察」「暴動鎮圧研究の三項」が取り上げられ、これに関連して総理大臣から総点検のうえ善処する旨の発言がなされた。この問題については、すでに必要な処置をとったが、これを機会に別紙要領(案)により、自衛隊における教育関係の全資料について総点検を実施し、不適当な資料については早急に廃棄又は修正等の処置をとることといたしたい。総点検は各機関に実施させることとし、実施結果について報告を受けることとしたい。なお、本件については、各幕等と調整済みである。」  内容でございますが、「教育関係資料総点検実施要領 一 趣旨 自衛隊創設以来すでに二十年を経、この間に隊員教育の教材等として作成された諸資料はぼう大な数にのぼっているが、これら教育関係資料の中には、自衛隊の成長並びに外的要因の変化等時の経過とともに現在の自衛隊にとってふさわしくなくなったものや、あるいは不用意な表現によって一般国民の疑惑を招くおそれのあるものが散見される。このような資料を放置して部外の疑惑を招くことは好ましくないので、真に国民から信頼される自衛隊を育成するとの観点から、教育関係資料の総点検を実施する。二 点検対象機関 防衛研修所 防衛大学校 統合幕僚会議 陸上自衛隊 海上自衛隊 航空自衛隊 三 点検対象資料 教範、訓練資料、教材等部内で作成された全ての教育関係資料 なお、市販図書等部外で作成された資料で現在教育に使用されているものについては、使用の是非について再検討する。四点検基準(1) 憲法の理念に反するもの (2) 法令に反するもの(3) 「自衛官の心がまえ」に反するもの (参考) 点検基準に該当する具体例として考えられるのは次のようなものである。(1) 海外派兵の容認 (2) 特定の主義思想の否定 (3) シビリアン・コントロールの否定 (4) 軍国主義の是認 (5) 特定の政党を支持し又は非謗すること (6) 非常時立法を前提とするような記述で現在の自衛隊の権限を逸脱するもの (7) 非核三原則に反する記述 (8) 徴兵制の肯定 (9) 仮想敵国の想定」  以上であります。  時間をとって恐縮でありましたが、たいへん膨大な、各部隊に散らばっておりますものを調べておりますので、この際、私がこの方針をさらに徹底させまして、先般の国会において読み上げられました図書中の大部分というものは、やはり問題の、現在、基本的なこういう総点検の基準に示したものに触れておると私も思いますから、今後きれいに整理いたしまして後、報告をいたします。
  277. 松本善明

    ○松本(善)委員 いま次官通達と言われましたけれども、私がこの文書について、事前に説明を受けましたときには、口頭で伝達をしたということで伺っておりますが、これはどのように伝達をされたか、お話をいただきたい。
  278. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 お答え申し上げます。  十二月ごろに、その問題につきまして点検を行なうことを部内で検討いたしまして、参事官会議にもその話を持ち出しまして、幹部の御了解を得ました。それと前後いたしまして、こういう資料について、所管をいたしております陸海空自衛隊の教育関係者を集めまして、その考え方を伝えまして、資料の点検を開始させたものでございます。
  279. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、結局口頭で伝えたということでありますか。
  280. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 伝えましたのは口頭でございます。
  281. 松本善明

    ○松本(善)委員 いま防衛庁長官が言われましたその通達についての点検期間ですね。この点検の期間をきめて、そして実施結果を報告するということになっていたということを聞いておりますが、その点について伺いたいと思います。
  282. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 お答え申し上げます。  点検につきまして各機関に説明をし、すでに点検を行なっている機関もございますけれども、報告につきましては、おおむね六カ月を点検期間といたしまして、実施結果について内局に報告をするということで申し合わせがなされております。
  283. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、二月の十六日にこの方針がきめられたということでありますので、四十七年の二月以降の海幕、陸幕それから空幕の公報を全部私どもしさいに検討いたしました。しかし、これに対応する措置は全くありません。公報で訓育参考資料を通達をしたわけでありますから、これを取り消すということをやるならば、この書物とこの書物は不適当であるということを、各幕において公報をもって通達するのが当然であると思います。全くありません。その後のものについても、調べましたけれども何もありません。  一体、こういうことで済むのかどうか。これは、もし次官通達が正確になされているということであるならば、各幕におきまして当然に通達が出さるべきだ。この問題のやられなかった責任というものは、私はきわめて重大ではないかと思うのです。それは内局がそれについて監督をしなかったという責任もありますし、それから各幕の長がそれを実行しなかったという責任は、もうきわめて重大だと思います。この責任についてどのようにお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
  284. 山中貞則

    ○山中国務大臣 先ほど私が意識してやったわけじゃないのですが、一枚だけ読み落としましたところで重大なことは、「点検期間はおおむね六カ月とし、」というページを読み落としましたので、照合してください。悪意があってやったのではありません。  ただいまのお話のように、確かに、口頭といえども、こういうような事務次官の通達が出されたし、基準が示されておる。これに対して各幕はきちんと処理しなければなりません。できれば、やはり文書によってなさなければならぬと思いますが、それがなされておるのは陸と空であって、海についてはその文書によるものがありませんので、いまその点を点検しておるということが事実であります。
  285. 松本善明

    ○松本(善)委員 陸とそれから空についても調べました。公報ではありません。全くありません。これはどのようなやり方をしたのか、これをお聞きしておきたいと思います。
  286. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 通知の形式はいろいろございまして、陸におきましては、四十七年の一月に通知をもって処理をいたしております。それから空幕につきましては、四十八年の八月であったと思いますが、これも電報で処理をいたしております。  空幕についてなぜおくれたかということでございますが、これはわれわれの総点検は、精神教育の関係だけを対象にしたのではございませんで、教範、訓練資料、その他膨大な資料全部を対象としたわけでございます。したがいまして、空幕につきましては、かなりおくれておったという事情がございます。
  287. 松本善明

    ○松本(善)委員 いま大西参事官が言ったのは、陸については四十七年の一月と言いましたね。おかしな話ですね。この防衛庁で方針をきめたというのは四十七年の二月だというのに、四十七年の一月にやったというのは、一体どういうことですか。
  288. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 これは、そのときの経過を申し上げませんとおわかりにならないと思いますが、この教範、訓練資料、その他の教育関係の資料の総点検は、昭和四十六年二月に国会で質疑がございまして、そのときに、米国の翻訳の不確かからいろいろ紛糾をかもしました。したがいまして、それ以降、各幕におきましては、そういう点を考慮いたしまして、逐次自主的に進めておったものでございます。  それから、ただいまの問題でございますが、その資料が二月十七日にできたというのは、これは四十六年の十一月から十二月にかけて内局と各幕といろいろ相談をいたしておりましたが、やはりこれは文書として残す必要があるということで、その経緯を書きとめた、その書きとめたものを次官の決裁をとったということで日付が前後しております。すなわち、繰り返して申し上げますと、点検というものは二月十七日からスタートしたわけではございません。
  289. 松本善明

    ○松本(善)委員 大西参事官はそういうことを言っていますけれども、二月の十六日に方針をきめて、そしてさっきの参考基準もきめたということですが、それを実行しているかどうかということが問題なんだと思います。方針がきまる前にかってにやりました、それで済むんですか、自衛隊というところは。そのとおりその方針に従ってやったということの点検がなされなければならないんではありませんか。
  290. 山中貞則

    ○山中国務大臣 常時点検はしていたそうでありますが、この正式にまとめてやりましたあと、おっしゃるように、各幕において幕下の全部隊の参考資料等まで含めて、全部整理、破棄をなした報告というものがなさるべきであります。したがって、その措置がとられるべきであります。その点については、私のほうでいましさいに点検をしておる、したがって、その結果はしばらくお待ち願いたいということであります。
  291. 松本善明

    ○松本(善)委員 その破棄の結果は、当然に御報告をいただきたいと思うのでありますが、それについては、またあらためて質問をしたいと思いますけれども、責任の問題なんです。  少なくも、いま認められた範囲でも、海幕についてはやっていない。私は、陸と空についてもきわめて疑問に思いますけれども、いま認められただけでも海はやっていないということです。そういうことの責任は、一体どうなるのかということをお聞きしたいわけです。そして、やってなかった場合には、過去の防衛庁長官も不適当だというふうに考えられた教育参考資料によって、そして教育なんかがなされている可能性があるわけです。誤った教育がなされているということになる。その責任はどうなるのかということをお聞きしたいわけであります。
  292. 山中貞則

    ○山中国務大臣 問題は確かに二つあると思います。  方針が最高方針としてきめられた後、それを確実に実行していたかどうかは、いま調べておりますが、いまの段階では不明確でありますから、もしやっていないとすれば、いまおっしゃったような点があります。すなわち、方針に対して幕がそれをそのまま実行していなかったという問題点が残ります。  さらに、おっしゃるように、それでは、そういう状態であるならば、内局統制も含めたシビリアンコントロールの問題が起こるということも、私も肯定いたします。ただ、前の文書は事務次官限りの決裁で、大臣のところに上げていないようであります。今回は私が大臣の判断をもって、そして事務次官名の通達を出すようにいたしたいと存じます。
  293. 松本善明

    ○松本(善)委員 この問題は、単に防衛庁の中だけの問題ではなくて、自衛隊が——私どもは反対でありますけれども、やはり日本の憲法のもとで、ほんとうに忠実な公務員としてあるのかどうか、一部の私兵になっていやしないかというきわめて重大な疑問に関するものであります。  私は総理伺いたいのであります。防衛庁長官にはあらためて、いまのお話でございますので別の機会に伺おうと思いますが、総理伺いたいのは、この「自衛官の心がまえ」というのが前回でも盛んに問題になりました。これが根本である。この中にも憲法ということばは一言もありません。それから自衛官になりますときに宣誓をいたします、御存じのとおりと思いますが。この宣誓にも、憲法に対する忠誠とか民主主義に対する忠誠というようなことばは一言もありません。これは警察予備隊であったとき、あるいは保安隊であったとき、このときには、日本国憲法を擁護をするということが明確に宣誓の中に入っておりました。この憲法に対する忠誠とか民主主義に対する忠誠というものは、自衛隊員にとっても不可欠のことではないか。日本の公務員にとってはもう当然なさるべきことではないかと思います。私は、これはきわめて間違ったことではないか、この点につきまして、総理大臣がこれをどう考えられるか、また、これを改めて、憲法に対する忠誠とか民主主義に対する忠誠ということを、宣誓の中で明確にさせるということを考えないのかどうかという点を伺いたいと思います。
  294. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私が就任いたしまして、この防衛庁関係法令集をしさいに点検をいたしまして、一般公務員あるいは公安職等、すべて憲法というものが入っておりますが、自衛官の宣誓並びに学生の服務の宣誓等についてそれが落ちておりますので、施行規則を改正いたしまして、「私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、法令を遵守し、」となっておりました中に、「自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、」というふうに直しました。それから学生の服務の宣誓も「私は、防衛大学校学生たるの名誉と責任を自覚し、法令及び校則」となっておりましたものを、「責任を自覚し、日本国憲法、法令及び校則を遵守し、」というふうにすでに訂正をし、改筆がしてございます。  なお「自衛官の心がまえ」については、これはその宣誓とまた違っておりますので、御言い分は私もわからぬでもありませんが、検討はいたしますけれども、宣誓とはまた少し違うのではないか、そう思います。
  295. 松本善明

    ○松本(善)委員 もう一つ総理に伺っておきたいのですが、この問題は、政権交代があった場合に、一体自衛隊はどうなるのかというきわめて重要な理論上の問題を含んでおります。これは、かつて田中総理に対して、本会議でもわが党の岩間議員が参議院でお聞きしたことがありますけれども、あらためて伺っておきたいのでありますが、一九六二年の五月に自衛隊の伊藤という教官が、共産主義政党といえども、合法的手段によって、すなわち現憲法の原理である自由民主主義、議会主義の原則によって、国民の総意を代表して政府を結成するならば、自衛隊は、政治的中立の原則と合法かつ正当な命令の服務規律に従って、この政府のもとに防衛に参加するであろうといった趣旨の論文を書きました。ところが、これについて右翼が連続的に抗議をして、防衛庁内で大問題になった。そして約半年間もみにもんだ後に、この伊藤氏は、教官の資格を取り上げられた。当時の志賀防衛庁長官は、右翼代表に対して、その要望を全面的に受け入れ、もって粛軍につとめるという所信を表明しまして、上司である防衛研修所長の佐伯喜一氏が、同じ雑誌で、「論争」という雑誌でありますが、その雑誌で反論を発表するということがありました。これは総理も御存じのとおりと思いますけれども、このやり方がもし公の方針であるならば、この伊藤氏というのは、当然のことを言ったと思いますけれども、このことについて、総理はどういうふうに考えておられるか。これは自衛隊のあり方とか、それからわが国の議会制民主主義のあり方という根本問題にかかわる問題でありますので、明確にお答えをいただきたいと思います。
  296. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そのような事実が存在していたことは、私も聞いておりますが、志賀防衛庁長官のそのような話は初耳であります。しかしながら、そのようにいろいろな意見のありますことも事実でありますが、わが国における政党は、全部合法政党の皆さんが議席を持っておられるわけでありますから、したがって、民主主義の議会制度というものを守ることを前提として各政党が存在しておるということでありますから、それは論文で個人が言おうとだれがどう言おうと、わが国の現在の議会制民主主義というものを守っていく上の政党というものであります限りにおいて、自衛隊といえども特別職の国家公務員でありますから、その方針に従うということはあたりまえであります。あくまでも民主主義政党であることを前提にしての話であります。
  297. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理、いままでのやりとりをお聞きになりまして、自衛隊のあり方、それから政府がかわりましたときの自衛隊のあり方についての所信を伺っておきたいと思います。
  298. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 自衛隊のみならず、全公務員制度に属するものは、憲法に沿い民主的に選出をせられた内閣の管轄下にある、これは当然のことでございます。
  299. 松本善明

    ○松本(善)委員 これで質問を終わります。
  300. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。  次回は、明八日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時三分散会