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楢崎委員 この計画計算書ができた
段階で、防衛駐在官は派遣をされております。しかも、何回も明らかにしたとおり、この研究は続けられておる。防衛駐在官が知らないはずはない。したがって、この問題も含めて、私は、防衛庁が知らぬ存ぜぬでは通らない問題ですから、どうしても会社の責任者を呼ばなくてはわからないということを言いたいわけです。
それからさらに、先ほど明らかにしたとおり、防衛装備国産化懇談会には、防衛庁の最高幹部が出ておる。そして、そこにおける結論が、さっき読み上げたとおりです。
原子力潜水艦は持つべきである。そして、
原子力潜水艦について、
原子力潜水艦用の原子炉以外は、全部技術研究開発計画、現実に進めておる装備は全部原潜向けです。それを私はいまから明らかにしたいと思うのです。
ちょっと長くなりますけれども、御理解をいただくために、その背景を明確にしておく必要があろうと
思います。
この
昭和三十三年五月
段階、原潜に関してどういう時代であったかというと、
アメリカは二十八年にたくさんの原潜を建造しておりますけれども、その
内容を当時はほとんど明らかにされなかった。で、平和利用の面で三十三年三月から
原子力貨客船サバンナ号の建造に着手したのであります。ソ連は、三十二年十二月、
原子力砕氷船レーニン号が進水をいたしております。
わが
日本の場合は、
原子力船の開発がようやくその緒につき始めたときであります。すなわち、三十二年十一月二十九日、
原子力委員会は
原子力船専門部会を設置、
原子力船開発のために必要な研究題目とその方法について諮問をいたしております。この答申は同年十二月に出されておる。三十三年十月には、社団法人
日本原子力船研究協会が設立をされております。そして、いよいよ
原子力船の開発に乗り出すわけであります。そしていよいよ
原子力第一船の「むつ」が、基本計画は三十八年、基本設計は三十九年、着工四十三年十一月、完成四十七年六月となるのであります。そして、三十五年五月のその時期は、防衛庁の発注で、川崎重工の神戸造船所で、戦後初めての潜水艦が建造されつつあった時期であります。そして、その第一号「おやしお」は、三十二年十二月二十五日起工、三十四年五月二十五日進水、三十五年六月三十日竣工であります。このときの船型は、いわゆる鯨型であります。ただ、旧海軍ではなかったシュノーケル装置をつけたわけであります。
さらに三十八年には、防衛庁技術研究本部の潜水艦担当者と造船メーカーの技術者たちが研究
委員会を設け、原潜の研究調査に乗り出しております。そして三十九年六月十日、ただいま申し上げた防衛装備国産化懇談会が持たれて、さっき言ったとおりの、持つべきであるという結論になっておる。ただ、世間をはばかってそれは公表しなかった。そして、いよいよその
関係者たちが積極的に原潜に匹敵する船体構造や耐圧鋼材、船殻ですが、工作法などの開発研究に着手をして、やっと国産のティアドロップ型、涙滴型潜水艦、原潜と同じです、「うずしお」が四十三年九月二十五日に起工をし、四十六年三月竣工をしております。
そして四次防の中で、どういうことが技術研究開発の課題になったかというと、まず、普通の推進力の潜水艦だったら必要のない、緊急性のない、いわゆる特殊鋼、航法システム、潜水艦救難艇、シンスなどの開発計画が盛られております。御存じのとおりです。船殻鋼材はNS90の研究開発、これは来年度持つ二千二百トン型のティアドロップ型潜水艦につけます。
このNS90というのは、どういう鋼材であるかというと、ちょっと説明をいたしておきますが、いままであるやつは鋼材が63であったわけですね。そうしてこれが90になる。どういう点が違うかというと、いまの63というのは、
アメリカのいまの原潜に匹敵する。しかし、今度開発されたNS90というのは、ちょうど
アメリカでいま開発中のHY130、これにほぼ匹敵するはずであります。つまり、
アメリカはいまHY80を使っておる。いよいよ
アメリカと同じ原潜の鋼材になるわけです。
それからシンスの開発計画、これは高性の航空機で採用しているのと同じ原理の慣性潜航航法装置のことであります。これは長時間潜航したまま、つまり、
アメリカでは原潜は数百時間もぐるのですけれども、自分の艦の正確な現在位置を知る。これは、たしか四次防では五十一年までに委託をして実用化を計画しておるはずであります。こういう潜航時間というものは、在来型では不要なんであります。しかも、船型というのは、本来原潜は水中におるのが普通であって、水上に上がるのは一まあ水上にも浮かびます。だから旧来の海軍の場合を見てごらんなさい。潜水艦は全部水上を走るのに都合のいいような船型になっている。それをわざわざ水中が専門の涙滴型、つまりティアドロップ型になるわけですね。
それからエアコンの研究もしておるでしょう。密閉された艦内で、乗務員が吐き出す炭酸ガスをはじめ、微量な各種のガスを適切に処理する装置、長い時間もぐっておるわけですから、これは原潜には絶対に必要なんであります。「うずしお」には新開発の新処理剤のモノ・エタノール・アミンが積載をされておるはずであります。これは約五年間連続使用し得る。在来品は三日間であります。
それから潜水艦の救難艇、これもわざわざ、深いところにもぐる救難艇を、四次防で建造予定の二千七百トン級潜水艦救難母艦にこれを載せる。DSRVというやつです。客観的にすべてがその方向に行っているのです。私はこれを明らかにしておきたい。
なお、これはあとで資料をやってもよろしゅうございますが、私は「むつ」とこの川重の原潜を比較してみた。その結果は、結局、川重で計画計算された原子炉、相違点はずっとありますけれども、それを「むつ」がまねをしたと思わざるを得ません。もちろん、「むつ」の場合は原子炉は三菱でありますけれども。
それで、要するに私が申し上げたいのは、現在の潜水艦千八百トン、五十年につくられる次期二千二百トンの潜水艦、そして川崎重工の想定しておる
原子力船、これを比較したら、性能において、五十年に建造される予定のティアドロップ型に匹敵するのですね。だから五十年、来年つくられる二千二百トンの潜水艦にちょうど川崎重工の原子炉ははまるのですよ。これはあとで資料をやりたいと
思います。だから、これは会社が、一研究員がかってにやっておるんだろうというような問題じゃない。
しかも山口さん、ユニホームはどういうふうに原潜を位置づけしているか。おたくの文書にあるのです。おたくでは、通常兵器と核兵器の中間に
原子力潜水艦を位置づけしておるのですよ。だから、
日本でもし核装備が行なわれるならば、まず原潜からだというのは専門家の常識であります。したがって、いよいよ核装備に踏み出したと思わざるを得ないのですよ。もうすべては整った、原潜建造は。あとは意思決定だけである。だから、かってにやっておるんだろうでは済まされない。しかも、もしかってにやっておるとすれば、どういう問題が起こりますか。完全に川重は国の基本
政策に堂々と挑戦しておることになるわけでしょう。そして国内法規、あるいは国際法規を無視した、いわゆる商売上の死の商人の本質を明らかにするような反国民的な計画ですよ、私に言わせれば。だから、いずれにしてもこれは重大問題であると私は
思います。しかも、こういうふうに見てくると、原発ではプルトニウムが出てまいりますね。それからそれの技術はすぐ原潜に応用できる。「むつ」の場合もそうですよ。いろいろな計画はすぐ応用できる。とすれば、これを並べて考えれば、確かに
原子力船「むつ」なりあるいは原発は、平和利用の面を持っておるけれども、同時に軍事利用の面を持っておるということを、これは明確に示すものであろう、このように思わざるを得ません。
したがって、私は、参考人なり証人が見えたときに
問題点を、まだありますから、明らかにしていきたいと
思います。私は、原潜問題は一応その点で保留をいたしておきます。