○中澤
委員 そこで、大蔵
大臣、この通貨供給量というものをEC蔵相
会議がきめたように、これは本気に考えないと、これだけの通貨の膨張をしてくれば、結局
物価は上がるということは、日銀券の、管理通貨の価値がどんどん下がっているから
物価が上がっていくんですからね。だから、ある意味でいえば、日銀券という、札というものをある程度規制すれば
物価は下がるのですよ。だから、ケインズ経済ばかりもう言ってたってだめなんです。近ごろ学者の中で、欧州の学者諸君も、通貨量制限という問題をいま大きく取り上げているのです。通貨量制限をやらなければいかぬ。それがEC蔵相
会議にもなっているわけです。
そこで、時間がないから、西ドイツがいまやっているような方法で通貨を徹底的に締めていかたければいかぬ。それはあなた、国債を今度千四古億減らしたじゃないかなんて言うけれ
ども、そんなもの、そのぐらい減らしたってどうにもならぬのですよ。私は別にあなただけ悪いと言うのじゃない。これ、原因は
田中さんにあるのですがね。西ドイツはどういうことをやっているかというと、マネーサプライを減らすために、法人税の増徴、さっきの提言を西ドイツはもう現にやっているんだよ。法人税の大増徴をやっているわけです。それから所得税の特別付加税創設を西ドイツはやって、取っているのですよ。それから国債収入の中央銀行凍結をいま始めているのです。入ってきた国債の金を中央銀行が凍結していく、しばらくの間、おさまるまで。これを西ドイツは現にやっている。それから金融政策では、対内、対外債務に対する準備率の引き上げ、公定歩合の引き上げ、これは日本もやっている。それから再割引を停止に近い線までいま削減をやっているのです、西ドイツは。だから、国際
物価指数をずっと各国のを見ても、西ドイツは一番上がっていないですよ、やはり
物価が。八・二くらいです。ほかはみんな一〇、十三くらい上がっている。それが八・二くらいです。それから不動産金融に対して金融統制を始めているのですね。不動産金融が、要するに地価というものは擬制資本だから、擬制資本が次から次と通貨増発になっていく、だから、どうしても不動産金融というものをここで徹底的に締めなければいかぬ、こういうことで西ドイツでは不動産金融の金融統制を、不動産金融というものはなるべく出さない、こういう方針で中央銀行がいまやっているのですね。これは異常事態ですから、総裁、もう常識で問題を考えていてもだめなんです。異常事態にはドラスチックな方法で思い切ったことをやらない限りは、いまの情性で日銀が走っていったならば、どうにもならなくなってくる。だから、マネーサプライを制限するということについては全力をあげなければいかぬ。私はこのように思うわけです。
そこで総裁、忙しいというから、私はこの前も宇佐美さんに警告したのですが、日銀というものの本質的なものは一体何なんだ。この役割りというものは、通貨価値の維持なんだ。通貨価値を維持するための保証人として日銀があるのだ。その日銀が、国債を次から次、一年たてば引き受けては通貨増発をやっていったんではだめではないかということで、宇佐美総裁にも私は当時警告している、だめになりますぞと。
私は、ドイツ人というのはたいへんえらいと思うのですよ。たとえば、私は「健全通貨」という本を見て非常に感心したのですが、学ばなければならぬことは金融マンとしてたいへんありますわ。その中で、西独のレンダーバンクの総裁になって、いまおやめになったけれ
ども、フォッケ博士がこういうことを言っているのですね。「中央銀行は、一体インフレーションを防止する力を持っているのであろうか。しかりと私は答える。そのことは同時に、国家財政が秩序正しく良心的に
実施される限り」前提があるのですよ。ただ日銀総裁にばかり言ったってだめなんですよ。「国家財政が秩序正しく良心的に
実施される限り、中央銀行はその力を持っております。」インフレーションを防ぐ力を持っております。フォッケ博士はこう言っているのですよ。「西独は幸いに、諸外国とは反対に、脅威を感ずるほどの多額の国債を有しておらない。秩序正しい財政と、規律を守る大蔵
大臣とにも恵まれておる。」大蔵
大臣にもフォッケ博士は恵まれておる。これは終戦後、ドイツのインフレを切って再建をやったレンダーバンクの総裁ですね、御承知のように。そういう大蔵
大臣を持っている。そして、「大蔵
大臣は中央銀行をあやまって利用することは考えていない。」「われわれはありがたいことには」今度は大蔵
大臣が国会で演説をしているわけです。「われわれはありがたいことには、唯々諾々としてすぐ外部の要求に応ずるような中央銀行は持っていない。」外部が何だと言ったってそういうことをしない、大蔵
大臣は衆議院の公聴会でこう証言しているのですよ。われわれの言うことなんか聞きませんよ、だからわれわれはありがたいんだと言っておるんだ。全く名コンビですよね。公聴会でそういう証言をしておる。「通貨価値の維持の保証人としての独立性を付与されておる中央銀行は、通貨価値維持がわれわれの
任務なんだ。」
〔井原
委員長代理退席、
委員長着席〕
「その中央銀行は、
政府に対してさえ独立性を保障されているからである。
政府が何と言ったってわれわれは聞かないんだ。通貨価値の維持だけがわれわれなんだ。だから通貨価値の維持が可能なのである。」こういうことを言っておるんですね。これは政治家もえらいが、やはりフォッケ博士も私はえらいと思う。
なお、参考のために……。これはよく考えなければ問題ですよ。抽象論であるが、基本的な問題ですよ。こういうことも言っておるのです。「通貨価値の安定は俗受けのする手段によって果たすことはできない。」俗受けのする人気取りや圧力に屈しては、通貨価値の維持はできないんだ。そして、「強固な安定した通貨維持のためには、軟弱な手段によっては保持ないし防衛することができない。」軟弱なことでは強固な通貨価値は維持されないんだ。こういうことも言っておる。
それから、またほかのある会合では、これもまた私は考えなければいかぬ問題だと思うのですよ。「通貨は経済のためにあるのであって、経済が通貨のためにあるのではないんだ。」いいですか、ここに通貨の主体制があるんですよ。「経済のためにある通貨とは安定通貨であり、健全通貨でなければならない。そうでなければ、長期的に見て経済の成長というものはあり得ない。」通貨が健全でなければ、長期的に見て経済の成長はあり得ない。こういうことをフォッケ博士が言っておるんですね。
私はこの前の国債発行のときも、これは大変な事態が来ますよ、だから、あなたは通貨価値を維持するのを唯一の生命にして、
政府がへたな財政政策をやるなら忠告しなさい、こうまで宇佐美総裁に言った経過があるのです。ドイツのヒトラーがあれだけの猛威をふるったとき、当時はこのフォッケも
理事の一人であった。そこで彼は、これ以上
政府が小切手をよこして軍事国債をやったらドイツ通貨は崩壊する。そこで覚書をヒトラーに送った。ヒトラーは頭にきて、おこってしまった。そして直ちに連銀の総裁以下全員罷免しておるのですよ。そこまでフォッケ博士という人は、通貨の番人としてそれを進言しておるのです。
だから、これをあなたが総裁として守らぬ限りは、日本のインフレーションというものはどうにもおさまらない。このごろ、補正予算のとき聞いておれば、
政府と仲よく肩を組んでやっていますなんて、あなたが
政府と肩を組むからこういう事態が来るのですよ。時間がありませんから、これは参考のために申し上げておくが、基本的な精神の問題ですから、よく考えておいてください。
そこで、こういうように事態がだんだん悪化してきてしまった。この原因は、先ほど言ったように三つある。
その第一の失敗は、要するに四十六年度のニクソン・ショックのとき市場閉鎖をやらなかった。これがもう決定的な致命傷になった。これが日本のインフレの出足ですよ。あのとき十日間というものを漫然と閉鎖せずに送った。そして約五十億ドル近いドルを買わざるを得なかった、閉鎖しないのだから。その
損害が、あなたのほうでまだその損金が残っておるでしょう、四千五百八億という。これはだれがもうけました。大体、日本の商社はじめ十大会社でしょう。為替のしりで約五千億損しておるでしょう。これが一斉に土地と株へ、投機に飛び込んでいったわけです。これがまず四十六年度の第一の失敗。あのとき十日間閉鎖していれば、こういう事態出ていないですよ。これがまず第一の失敗。
第二の失敗は、
田中さんが
総理になって失敗している。これはあなたが明らかに失敗しているんだ。あなたがなったとき、あのとき引き締めに転じなければいけなかったのです。あのときばっと締めれば、こんな事態になっていないんだ。それを漫然として、去年の八月になってようやく経済閣僚
会議で八項目、しかも月賦販売を何とかしよう。私は、あれを見て何と情けないことをやっているんだと思った。もうあの前に強硬手段で引き締めに転じていれば、こんな事態にならなかったはずです。これがまず第二の失敗ですよ。明らかにこれは政策ミスですよ。そういう失敗を繰り返して、そしていまのような事態になってきたわけですよ。
総理、私はいよいよ時間がありませんから——あなたはいつもすぐ政治責任、政治責任ということを言うんだよ。しかし、いまこれだけ破局的な事態が来ても、あなたは責任ということを感じ主せんか。あなたが
総理になったとき、非常に高邁な理想で、「新しい時代の創造は、大きな困難と苦痛を伴う」「私は、あえて困難に挑戦し、」「
国民のための政治を決断し、実行いたします。」これが去年の一月二十七日の特別国会のときのあなたの施政方針演説だった。
そこで、だんだんインフレが悪化してきた。参議院でわが党の羽生三七さんがあなたに、いまのようなインフレ、投機が続くようなら、責任をとるべきではないかという
質問をしているわけです、ところが、あたなはこう言っておる。そのような相当な経済状態、これは相当というのはどういう意味で言ったのか私もわからぬが、それが生じた場合は、
政府が責任を負うのは当然であると言っておるのですよ。言った覚えがあるでしょう。速記録に書いてあるのですから。これだけ破局的事態が来て、そうしてなおあなたは責任を感じないというのは、私は全くおかしいと思うのですよ。これはやはり政治家の道徳の問題だと思う。いまどういう心境ですか。まさにこれは破局状態です。このままいったならば、福田さんああ言っておるけれ
ども、石油の
価格が上がったら、またたいへんな事態が出てきますよ。どういうふうに考えていますか。明らかにあなたは、相当な経済状態が、インフレが悪化すれば責任をとると、羽生三七氏に
答弁しておる。どうなんですか。