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1974-02-01 第72回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月一日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 櫻内 義雄君    理事 澁谷 直藏君 理事 正示啓次郎君    理事 細谷 吉藏君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       上村千一郎君    植木庚子郎君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       塩谷 一夫君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    田中 正巳君       塚原 俊郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    藤井 勝志君       前田 正男君    松浦周太郎君       松岡 松平君    松野 頼三君       湊  徹郎君    渡辺 栄一君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       赤松  勇君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    辻原 弘市君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       八木 一男君    湯山  勇君       青柳 盛雄君    田代 文久君       松本 善明君    有島 重武君       岡本 富夫君    坂口  力君       小平  忠君    玉置 一徳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会         事務局経済部長 熊田淳一郎君         警察庁長官官房         長       国島 文彦君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁長官官房         長       丸山  昂君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         防衛施設庁労務         部長      松崎鎮一郎君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         大蔵省主計局長 橋口  收君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省理財局長 竹内 道雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         文部大臣官房審         議官      奥田 真丈君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省体育局長 澁谷 敬三君         文部省管理局長 安嶋  彌君         厚生省社会局長 高木  玄君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         厚生省年金局長 横田 陽吉君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林大臣官房予         算課長     渡邊 文雄君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   三善 信二君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業省通商         政策局長    和田 敏信君         通商産業省貿易         局長      濃野  滋君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁次長     北村 昌敏君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         資源エネルギー         庁石炭部長   佐伯 博蔵君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岸田 文武君         中小企業庁次長 原山 義史君         運輸省船舶局長 内田  守君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         運輸省自動車局         長       中村 大造君         労働大臣官房長 北川 俊夫君         労働大臣官房会         計課長     水谷 剛蔵君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         自治省行政局長 林  忠雄君         消防庁長官  佐々木喜久治君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月一日  辞任         補欠選任   小坂善太郎君     塩谷 一夫君   有島 重武君     岡本 富夫君   矢野 絢也君     坂口  力君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算及び昭和四十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず冒頭に、一月二十四日田中総理代表質問答弁において、「私は、かつて日本朝鮮半島合邦時代が長くございましたが、その後韓国その他の人々の意見を伺うときに、長い合邦歴史の中で、いまでも民族の心の中に植えつけられておるものは、日本からノリ栽培を持ってきてわれわれに教えた、それから日本教育制度、特に義務教育制度は今日でも守っていけるすばらしいものであるというように、やはり経済的なものよりも精神的なもの、ほんとの生活の中に根をおろすものということが非常に大切だということで、今度のASEAN五カ国訪問で、しみじみたる思いでございました。」さらにまた、台湾統治にも触れておられますけれども、実はこの発言が、韓国並び朝鮮民主主義人民共和国の中で大きな非難となってあらわれておると新聞は報道しておるのであります。韓国においては、外務大臣後宮大使抗議をする、あるいはまた、大使館に抗議申し入れが大衆からある、あるいは朝鮮労働党機関紙においてもこの問題が糾弾をされておる。このことについて、総理は現在どういう所見を持っておられるか、お聞かせ願いたい。
  4. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 去る衆議院会議において、竹入公明党委員長質問に対して私が答えたことにお触れになったわけでございますが、この問題が、真意が伝えられず誤解を受けておるとすれば遺憾でございまして、この際、明確にしておきたいと思います。  統治時代の問題その他を前提としての答弁ではなく、ASEAN五カ国訪問デモ等に対する、日本人商社活動企業活動日本経済進出の態度、経済協力状態等批判に対しての答えをしたわけでございます。でありますから、そのときの引用に、日韓問題、それから台湾問題等引用したということ言わずもがなであったかもしれませんが、言わんとするところは、経済的な問題もさることながら、経済的な協力とか技術的な協力というようなものよりも、目に見えないより精神的なお互い理解協力、こういうものがいかに重大であるかということにウエートを置いて発言をしたわけでございます。  両国民お互い同士が心の触れ合いができるような状態、真に心から理解ができるようなもの、そういうものを大前提としない国際経済協力というようなものは、理解を得ることもむずかしいし、また、いろいろ誤解を起こすもとともなるし、でありますから、過去の例に徴してもわかるとおり、真に心の底から理解をされるような状態対外経済政策、また対外経済協力政策を進めていかなければならないという新たな立場に立っての反省と、謙虚な立場真意を述べたものでございますから、これが全然別な角度から評価をされるということは考えておらなかったわけでございまして、この際、明らかにいたしておきたいと思います。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ことに経済的なものよりも精神的なもの、こういうことを言っておられます。ところが、朝鮮統治歴史というものは、経済的なものもありますけれども、むしろ精神的なものが非常な圧迫になってあらわれておったことは、総理みずから御存じでしょう。ことに義務教育制度のお話をされております。これは、朝鮮の方々に皇国臣民であるということを教育した、朝鮮歴史を教えないで日本国歴史を教えた、そうして、神社に参拝をすることを拒否した学校は廃校にした、こういういわば忌まわしい歴史を持っておるわけです。それをわざわざ引用して、それは角度は違うとはおっしゃいますけれども、これを引用すること自体が、やはり長い統治歴史反省がなかった、こういう批判を受けてもいたしかたないじゃありませんか。  私は、そのことがきわめて重要であると思う。そういう考え方東南アジア諸国を回って、そうして相互連帯というか、協力だと言っても、その一番基本的な精神的な問題がまだ払拭されていない。ですから、その点については、はっきり総理はお取り消しになったらどうですか。
  6. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私も、いまあなたの質疑を受けて、公式の席上でもって述べておるわけで、言わずもがなであったかもしらぬが、日本が過去の歴史において国際的な経済協力とか、いろいろな問題で述べられるということになれば、その功罪というものに対して明確な判断をされているものというと、日韓関係とか、日台関係とかというものは、これはわれわれ大正の生まれでございますからすぐ思い出すわけでございます。あなたも大体そうだと思うのです。私は、しかも戦後第一回の訪韓議員団なんです。  そのときに、日本韓国統治中に、いま、いいといって心の中に残っているものは、小学校先生が、教えている内容は、あなたがまた個別に指摘されれば別ですが、なるほどそうだなということはよくわかります。すなおに理解できますが、小学校先生愛情というものは、大学先生や中学の先生と違って、やっぱり先生に対する心からの尊敬と愛情はある。ですから、朝鮮半島から、日本が残した銅像とか胸像とかを全部撤去しても、最後に残るとすれば、小学校先生とか、それから幼稚園の先生とか、そういう人だけでしょうということをまず第一に指摘されたのです。  第二は、ノリ千葉県が先じゃなく、朝鮮半島からノリ栽培技術日本が輸入してきたのが歴史的な事実だそうでございますが、ただ、あの当時、朝鮮イワノリというのは非常に塩けも多いし、うまいし、私も好きだし、そういう意味で毎日毎日塩の多いイワノリを一緒に食べたわけですよ。そのときに、第二に言えるとすれば、ノリ技術韓国に持ち込んで、そしてそれが韓国イワノリというものをつくった。その人自身も不勉強だったかもしれませんよ、歴史的な事実を。私も、千葉県からノリ栽培方法の技師が行ったことは聞いて知っておりますが、その前の歴史朝鮮半島を通じて日本ノリ栽培が輸入されたということは、この間、専門家意見を聞いて勉強したのです。そういうふうに向こうから指摘をせられたことを、私は思い出してそのまま述べただけでございます。  だから、その前提とするところは、いろんな鉄道をつくったり、ダムをつくったり、工場をつくったりするような技術的なものよりも——それは指摘をされたように、経済進出とか経済侵略とかいわれやすいものである。そうではなくて、真に心から理解をし合えるような、いわゆる両国民信関係というものを大前提にすることが先だ、これにウエートを置かなければならないということを述べたことは、前の質問とずっと、前段から後段に結びつけて読んでいただけばわかることであって、全くそういうことは理解できることだと思います。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は義務教育——学校先生個人愛情、これはいまでも持っていただいていると思うのですよ。ところが問題は、あなたの発言はそうでないでしょう。日本教育制度、特に義務教育制度、この日本教育制度というものは、日本歴史を押しつけた、天皇の臣民を押しつけた制度でしょう。ですから、先生個人愛情であるとか、そういうものについてこの文章からは全然語られていない。ですから、率直にもうはっきりお取り消しになったらいいですよ。あなたはノリの話をした。いやしくも総理があちらこちらで聞いたことを、何か頭にひらめいたらぽっぽっと発言なさっておる。そういうのがやっぱり誤解を招いておる。しかし、いまのノリの問題は別として、教育制度の問題、義務教育制度の問題としてお取り上げになっておるわけですから、これが、ことに精神面としてお取り上げになっておるわけですから、私はこの際、はっきりお取り消しになったほうがいいと思う。
  8. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私はあなたの質問に対して、本会議誤解を受けておるとすれば、それは心と心の触れ合い相互信頼、目に見えないお互い信頼というものが大前提でなければ、経済的な協力というものは、やってもメリットなんかありませんよということを言ったことは事実なんです。ですから、本会議質問に答えたというのは、私がASEAN諸国へ行ってきて、ASEANデモを起こされたじゃないか、それは日本企業活動が悪いからだよという質問に対してそれは引用したのであって、だから、その引用の中が舌足らずであり、字足らずであったということであれば、あなたがちゃんと衆議院予算委員会という場所で質問をされて、懇切に私は真意を述べておるわけですから、これでちょうどあわせれば、なるほどよくわかったということで御理解をいただける、こう思いますよ。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現実に抗議が起こっておるわけでしょう。糾弾をされておるわけでしょう。しかも、この文章からいくと、これはやはり精神面に対して与えた日本教育制度、それはよかったんだということになるでしょう、どう読んでみても。あなたは制度としてお取り上げになっておるわけでしょう。ですから、これははっきり、重大問題ですからね、端的に率直に、これは間違っておったと取り消されたらいいじゃないですか。これは真意を伝えていない発言だった、そんなむずかしいことじゃないでしょう。
  10. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 取り消すのと同じぐらいな趣旨の発言を、あなたの発言に対してここで答えている。ちゃんと答えているでしょう。(「取り消したらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、真意はこのとおりですと、こう言っているのですから、国会における真意が、私が舌足らずであったら、心と心の触れ合いお互いが真に理解をするようなものを前提にしなければ、双方のお互いのこれからの長きにわたっての友好関係は拡大するものではありませんので、経済進出というようなものにウエートを置かないで、ほんとうに心の触れ合いというものを——それは義務教育制度をそんなところでもって論ずるはずはないんですよ。義務教育制度をやるなら、日本義務教育制度をいいと思うか思わぬかという質問があれば答えるのでございまして、そうではなく、全然そういう前提がない質問に対して答えておって、ただ引用したにすぎない。その引用が舌足らずであって、時間もあるでしょう、あそこでは。与野党はもっと短く短くとも言うし、一問でも落ちたら再質問するぞという過程において、ちゃんと答えなければならないという制約があるじゃないですか。その中で述べて、そしてあなたがそれに対して再質問をせられるから、真意はこういうものですと言えば、ちゃんと理解していただけると思うんですよ。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 真意とは違う発言なんですよ。この文章から見ると、真意とは違うのです。もしあとから、心と心の触れ合いが物の問題よりも重要であるとおっしゃるならば、この発言そのものは、あなたの真意とは全然違いますよ。  だから、あなたは誤解をされているとおっしゃるけれども、向こう誤解と言ってない、これがやはり田中総理の底流にあるものだ、こういう考え方をしておるのですよ。だからこう受け取るのですよ。ですから、率直にお取り消しになったほうが、私は長い将来のためにいいと思いますよ。
  12. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いままで間々申し上げておりますとおり、こういう質問に対して引用したものでございまして、そうして義務教育制度などと言ったそういう本会議の記録、発言の部分だけが誤解を受けておるとすれば、遺憾でございますとちゃんと言っているでしょう。そして、その真意はこうでありますと、こう言っておるのですから、それで私は理解できると思いますよ。それは理解ができると思いますよ。(多賀谷委員「取り消せば」と呼ぶ)いや、取り消すことも一方法でしょうが、権威あるあなたの質問に対して誠意をもって答えておる、これはもう国会における手段であります。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうもこのはっきりした文章から見ると、やはりあなたのおっしゃるのとは違いますよ。この文章が実際向こう新聞に掲載されて糾弾をされておるわけですから、あなたのおっしゃるのとこの文章は違いますよ。ですから、お取り消しになったほうが、私は将来のためにいいと思うのですよ。そんなにこだわる必要ないでしょう。
  14. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 本会議議事録海外にも行きますし、あなたの貴重な御発言に対する予算委員会速記録も公開されておるわけでありますから、ここであらためてひとつ明確に申し上げます。  竹入委員長の本会議における質問についてお答えするにあたり、朝鮮統治時代のことや台湾のことを引用したのは、これからの日本人海外における活動に際しては、経済支配意思など毛頭ないことはもちろんであるが、経済的な協力よりも国民的理解前提とし、心と心の触れ合いが最も大切であり、精神的理解を得られるものでなければ、親善を拡大することはむずかしいことを強調したものでございます。この発言朝鮮統治時代を想起させたとすれば、それは私の真意ではございませんので、真意理解されたいと考えます。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総理は、すでに用意をした原稿をはっきり明確にお話しになりました。これは実際上は、この文章そのものは、取り消したと同じものだろうと私は思いまして、それを確認をして、次の質問に移りたい、こういうように思います。
  16. 田中武夫

    田中(武)委員 関連して補足いたしますが、あなたがいまお読みになったといいますか、これは完全に本会議発言を訂正というか、直したことは明らかです。したがって、メンツにこだわって、あなたが取り消すと言わなくとも、取り消したものとわれわれは確認いたします。よろしいですね。
  17. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 本会議制約をされた時間内において発言をしたわけでございまして、それが誤解を生んでおるということは、遺憾でございますと明確にいたしております。その真意は先ほど述べたとおりでございます、こう述べておるのでございまして、あなた方がどのような断定をされるかは、それは自由の意思でございまして、憲法の定めるとおり承知いたします。
  18. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、次の質問に移りたいと思いますが、昨日は東京地裁で、沖繩密約漏洩事件判決がありました。この事件は、国民国家の機密とは一体何であるか、あるいは国民の知る権利はどういうものか、きわめて重要な民主主義の根幹に触れる問題として国民問題提起をし、国民は考えたわけであります。  そこで、この判決に対して、田中総理はどういうようにお考えになっておるか、お聞かせ願いたい。
  19. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 非常に国民注視をしておる中での事案であり、しかも、裁判所の判断が行なわれたわけでございまして、われわれもなおこの判断は尊重して——個人としては尊重いたしております。まだ、内閣としてこの問題に対してどうするか、というような問題を議論しておるわけではございませんが、非常なめんどうな問題であろうと思いました。しかし、この判断国民的注視の中で行なわれたものである。まあ判決文全部をまだ読んでおるわけでもございませんが、新聞に報道されておること等はしさいに読みながら、この判決の事実というものに対しては、私はすなおな立場でこれを考えておるわけであります。
  20. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうしますと、国家としては、政府としては、結局控訴という手続はとられない、こう考えてよろしいですか。
  21. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、私たちのところではなく、検察当局がどうするかという法律上の問題でございますが、まだそういう問題に対しては何も聞いておりませんし、法務大臣がどのような報告を受けておるのか。ただ、個々の事案でありますから、政府はこれを指揮するというような立場にございません。だから、これは検察当局が判決をしさいに検討しながら、最終的に決定をすることになると思います。
  22. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 国益を守るというのは、国民の利益を守るということであって、時の政権の利益を守るということではないと思うのです。そこで、やはり政府はうそを言ってはいかぬわけです。あるものをないと言ってはいかない。ですから、われわれは従来密約は保護に値しない、こういうことを主張してまいりましたが、この判決も、密約について疑義のある解釈をしております。この点につきましては、これは国民の負担になる問題でありますから、この予算委員会において同僚議員から、この密約につながる問題として質問をいたしたい、こういうように思いまして、私は先に進みたい、かように思います。  まず、最近、公正取引委員会は連日のように活躍をされ、実に四日に一回ずつ摘発や勧告をされております。  最近の全国的規模における値上げのやみカルテルについて、事案をごく簡単に御説明願いたい、こういうように思います。
  23. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 おもに昨年の十一月以降において臨検検査を行ないました主要な項目だけを申し上げます。このほかにも小さいものございますが、いま御指摘の全国的規模のものということでございますので……。  まず一つには、石油製品そのもの、これはただいま審査中でございます。  それから石油化学関係におきましては、中低圧ポリエチレン、ポリプロピレン、高圧ポリエチレン、塩化ビニール樹脂、この四品目のうち、初めに申した二つは、すでに勧告を受諾するという段階にいっておりまして、あとの二件は、最近勧告を行ない、近いうちに受諾を求めることになっております。  なお、審査中のものでございますが、アルミ関係におきましては、アルミの地金、アルミの圧延製品、アルミサッシなどを縦に一貫して検査を行ないました。  他に特殊鋼関係がございます。これは勧告を行ない、すでに審決に至っております。  なお、最近でございますが、全国規模のものとしては、牛乳それから即席ラーメン、これ言うまでもなくただいま審査中のものでございます。
  24. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一、二点、主要な品目についてお聞かせ願いたいと思いますが、基礎素材であるし、また、かなり国民生活に影響のあるこのアルミ圧延、サッシ等の製品について調査が行なわれたわけですが、これはどこに問題があったわけですか。
  25. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 アルミ関係は、ただいままだ審査中でございまして、勧告も出しておりません。審査中の事件につきましては、新聞発表の段階とは異なりまして、そのことについて、事実についての有無及び法令の適用について意見を申し上げることはできませんが、もともとは、これらも主としてはやはり価格カルテルを行なった疑いがある、こういうことでございまして、その内容は、いま審査中のために、事件になってしまいますと、内容に私が触れるわけにいかない、こういうことでございますので御了承を願います。
  26. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私どもが新聞で知るところによりますと、アルミ精錬において、十二月一日から地金を二十万五千円であったのを二万五千円上げておる、十二月の二十一日さらに七万五千円を上げておる。わずか一カ月のうちに実に十万円、すなわち三十万五千円に上げた。この一カ月のうちに五割アップしておるわけです。そうして公取が入った。そこで今度は、さすがに気がひけたと見えて、この十万円の値上げに対して一万円だけ引き下げることを決定しておる。  この経緯について、一体十万円げたのが妥当であるのか、あるいは、さらに一万円下げた根拠は何か。これは公取が答えられぬとするならば、通産大臣から御答弁を願いたい。
  27. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 アルミサッシ業界に対しまして、十二月二十一日に、八社及び社団法人日本サッシ協会の本部及び六支部に対しまして、住宅用サッシ等の価格引き上げに関連して立ち入り調査を公取が行ないました。ただいまのお話のように、現在調査中であります。住宅用アルミサッシの価格は、四十八年上期までは標準タイプで、窓当たりメーカー出荷価格が約四千三百円程度でありましたが、九月ごろから上昇基調に転じて、十月五千円、十一月五千五百円、十一月七千二百五十円となり、安定期に比して約三千円、一七〇%の大幅上昇となっております。  それで価格上昇のおもな原因は、おそらく原材料であるアルミの型材が四十八年の年初は一トン当たり三十万円程度でありましたものが、一月には三十六万から三十七万、十二月には五十五万と、年初に比して八〇%の大幅引き上げとなったためであろうと推定しております。しかし、これらにつきましては、ただいま公取当局におきまして取り調べ中でございますので、その結果のわかり次第、われわれのほうで適切な措置を行ないたいと思います。
  28. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一番問題はやはりアルミ精錬所、この値上げが、この圧延さらにまた製品へと転嫁をされておる、こういうように考えざるを得ないわけです。  そこで、このアルミニウム精錬について、これは電気代が上がったということ、あるいは操業が落ちたことによる固定費が上がったということを新聞では理由にしておるようです。一体十二月現在、それから一月現在におけるC重油の電力会社に納めておる値段は幾らですか。
  29. 山形栄治

    ○山形政府委員 お答え申し上げます。  C重油の中でも、電力に納めておりますものはサルファ分のわりあいに少ないものでございまして、大体において一万一千円、若干それを上回る程度であろうと現在思っております。
  30. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 十二月と一月、それからその前……。
  31. 山形栄治

    ○山形政府委員 お答え申し上げます。  十二月と一月におきましては、値段は動いておりません。
  32. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 アルミが値上げをする前は幾らですか。
  33. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 六月一日の値段を申し上げますと、C重油はサルファ分一・六%が七千七百円から九千七百円ぐらい、これはキロリットルでございます。それが十二月一日には一万一千三百円から一万三千三百円ぐらいになっております。
  34. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 電力の燃料費の占める割合は……。
  35. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大体初めの安いときには、油の値段によって非常に違いますが、二〇%台であったと思います。それが六〇%台に上がり、いまそれがさらに上がってきておるのではないかと思っております。
  36. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 二〇%のものが六〇%になったということでありますが、コストに占める割合を聞いているのですよ。
  37. 山形栄治

    ○山形政府委員 コストに占める比率でございますが、ほぼ二五%程度でございます。
  38. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大体二〇%ですから、それが上がるわけですから、結局二五%ぐらい、こういうことであります。  そこで、私はいろいろ調べてみるのだけれども、アルミが、まず重油が上がることによってアルミ地金が非常に上がるという理由が非常に乏しいと思うのです。かなり水力の自家発電を持っておる。それから問題は、電気代は上がっていない、電気料金は上がっていない、一体何が上がるのだ、こういうことになる。いまは電力会社の話をしたのですが、電力会社のほうは、結局コストは上がっておるかもしれませんが、アルミ精錬所に売る電力は上がっていなないはずですね。ですから、アルミ精錬所としては、いわゆる買電は上がっていない。でありますから、水力は上がっていない。三井アルミのように石炭を使っておるところも上がっていない。そこで、上がっておるとするならば、自家発電の重油をたいておるところが上がっておると見なければならぬ。しからば、一体どのくらい重油をたいておるのか。  私は、日本軽金属の有価証券報告書を見てみました。そうすると、ここはかなり火力発電所を持っておるわけですけれども、大体一トンについて一キロリットルぐらいしか買ってない、ずっとの平均が。ですから、なぜ十万円上げるのか全く見当がつかない。電力料金は上がっていない。しかも、電力料金が上がったことを前提にアルミを上げたのか。電力料金も上がってないのに、なぜアルミは電気を使うからというのでアルミ地金を上げたのか。これを一体通産省としてはどう考えておるのか、御答弁願いたい。
  39. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 アルミ業界が十二月末に値上げをしました七万五千円の内訳でございますが、その中で三万円につきましては、電力、重油等のカットによりますいわゆる生産減でございます。これは、二〇%カットを受けて、それに相当する二〇%程度の減産があるであろうという前提で考えておるわけでございます。それから二番目は、先ほど御指摘がございましたが、自家発電のための重油でございますが、これの値上げが、約七千円が一万四千円ぐらいに上がるということで、この分が三万円と計上いたしております。なお、三番目に副資材等でございますが、ボーキサイト、苛性ソーダその他修繕費等が値上がりをいたしますので、この分を一万五千円、合計して七が五千円の値上げを必要とするという計算をしておるわけでございます。  ただ、私どものほうでこれを見てみますと、まず二〇%の減産を前提とした固定費の増加でございますが、実際には十二月は一〇%程度の減産でございます。それから、一月以降も電力カットは一五%でございますので、この二〇%の減産を見込んだ上の値上げというのは、やはり過大ではないかと考えておるわけでございます。
  40. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 電力が二〇%——飯塚さん、そこにおってください。電力が二〇%カットされますと、生産が二〇%落ちるのですか。
  41. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 電力並びに重油の削減が二〇%といたしますと、ほぼそれに見合ったアルミの減産というふうに考えていいかと思います。
  42. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 業界が業界紙に、上げた理由を書いております。  まず第一の点が違うのは、これは「軽金属通信」ですが、大体一〇%カットされると、地金は生産面で十三から一四%の減産、二〇%の場合は二四から三五%の減産になるんだ、こういっておるわけですね。ですから、その点がまず第一、通産省の見解と違うということ。それからもう一つは、現実に一体幾ら減産になっておるかといいますと、これはあなたのほうから出された資料ですけれども、十二月が十一月に比べまして三・七%。一月が、これは計画ですよ、みずから計画したのですが、八・五%の減産になっておる。でありますから、どれ一つとっても合わないのです。しかも、いまお話がありましたが、電気代の自家発電分が三円であったのが六円に計算しておる。しかし、電力の占める燃料費というのは二五%ぐらいなんです。それを値段が上がったから、いままで三円であったから六円だ、これは全く、重油が上がった額をそのままはね返らせておる。しかも、買電の電力は御存じのように値上げをしていない。水力も値上げをしていない。そして十万円も値上げをする根拠というものはきわめて乏しい。そうすると、またこの一万円を下げた理由もわからぬ。一体どういうように把握されておるのですか。
  43. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 七万五千円の値上げの中で、減産分によります値上げ要因として三万円を業界は計上しておったようでございますが、しかし、現実にこんなに生産削減が行なわれていない。この分を業界としては一五%程度のカットと考えて、これは十二月だけとりますと生産はそれほど減っておりませんけれども、一月以降、電力、石油類のカットが十五%で行なわれるであろうという前提で、これが続くということを考えて、約一万円分ぐらいの値下げということにしたように聞いております。
  44. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 アルミ会社が出しておる計画が、実は八・五%しか十一月に比べて削減になっていないのです。これはアルミ会社が通産省に出した計画ですよ。値段を上げるときには一五%カットになるから、新聞発表によると一七ないし一八%生産制限になるといいながら、実際は、みずからが役所に出したのが十一月に比べて八・五%しか——十二月でないですよ、十一月に比べても八・五%しか制限を受けていない。制限というよりも生産が落ちていない。そうして上げるときには二五%ぐらいだ。しかし、二五%ぐらいの生産削減でなくて、実は一七、八%でしたといって一万円下げておる。これはもう全然私は根拠が薄いと思う。  それから、電気代の値上げというのが、ぼくはどうしても解せない。これはどういうように考えておるのか。エネルギー庁ではアルミの自家発電と買電との比率がわかりますか。
  45. 山形栄治

    ○山形政府委員 まことに恐縮でございますが、手元にいま資料を持っておりませんけれども、アルミの自家発電の比率は一般の産業より断然高いと思いますが、しかし、大観いたしまして、それは買電の比率のほうが多いのではないかと私は考えております。
  46. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 自家発電をわりあい持っておりますね、日本軽金属は。なぜ日本軽金属を取り上げるかというと、住友化学であるとか昭和電工というのは、あるいは三菱化成というのは、ほかの製品をよけいつくっておるものですから、なかなか統計が出てこないわけです。  そこで日軽金を見ますと、これで、この四十上年度下期でこの購入量と自家発電の割合を見ますと、大体四分の一が自家発電、あとの四分の三は買電ということになっておる。比較的自家発電々多く持っておる日軽金でもそういう状態。ですから、その買電のほうは値段を上げていないのに、しかも、この値段を上げるのが、十ドルぐらいの油になるだろう、そのときは電力も上がるし、それから石油も上がるだろう、全部予定をして、そうして十二月に、一月から上げますといって、七万五千円じゃないのですよ。十二月一日からは二万五千円上げているのですからね。ですから十万上げておる。こういうことが一体許されるかどらか。
  47. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これははっきり答弁してください。
  48. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 御指摘のように、アルミ地金の値上げにつきましては非常に大幅でございますので、私どもは現在、これにつきまして内容を調査いたしておりますが、妥当な価格で販売が行なわれるように指導をしてまいりたいと思っております。
  49. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 飯塚基礎産業局長、研究研究って、わかっているんだもの。そんなばかげた、答弁にはならない。答弁やり直せ。責任ある答弁しなさい。だめじゃないか、そんな。
  50. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 自家発電につきましては、日軽金で御指摘のように四分の一ということでございまして、購入電気料のほうは上がっておりません。したがって、重油の値上げというのは、自家発に関係するものだけしか影響はないわけでございますが、いずれにいたしましても、今回の七万五千円と二万五千円、両方合わせました十万円の値上げの中身につきましては、現在調査はいたしておりますが、十分中身を検討した上で、積極的に指導をしてまいりたいと思うわけでございます。
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 日軽金のほうは水力のほうが多いんですよ。日軽金は自家発電といいましても、火力よりも水力は倍以上なんです。水力は上がっていないのです。ですから買電は上がっていない。上がっているのは自家発電の重油だけですよ。その重油も、値段が上がったからそのまま倍率が電力にかかるわけじゃないのです。固定費が非常に多い。ですから実に微々たるものが、石油が上がることが予想されたその倍率でものが上がっておる。そういうことは私は許されないと思う。一体どういうように考えたらいいかですね。どういうようにあなた方は指導するのですか。
  52. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 現在、アルミの値上げにつきましては厳重に調査中でございまして、また一方におきましては、公取の側におきましても、アルミサッシ等についても手入れをしているところでございまして、相協力いたしまして、便乗値上げがあれば厳重に指導して引き下げるようにいたします。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 このトン一万円下げたときは、役所は入っておるでしょう。役所はタッチしておるでしょう。これはちょっと行き過ぎておるというので現実にタッチしておるでしょう。指導しておるでしょう。ですから、一万円下げさしたときも役所はタッチしているのですよ。それでなぜ一万円で終わったか。すでに十一月、十二月、一月重油が上がっていないというでしょう。ところが十二月一日から、重油が上がりますからというのでアルミは上げておる。操短をしますからと、すでに二万五千円上げておる。そうしてさらに架空なものとして七万五千円上げておるわけです。そうして役所が入っていろいろ協議をして、指導をして一万円下げさしておる。こういうことが一体、今日総理大臣をはじめとして、物価を何とか下げようというので一生懸命やっておるときに、しかも、これは御存じのように寡占体制の企業でしょう。日軽金と住友化学と昭和電工と三菱化成と三井アルミ。ですから最も寡占体制のある企業、これか話し合って——あるいは話し合いでないというかもしれませんが、要するにこの五つできめておるわけです。そして値を下げるところも、私は、どうも話し合わなければ値が下がらぬと思う。また値を下げておる。  ですから、これに対して総理は一体どう考えられておるのですか。一月はとにかく上げたのですよ、十万円。二月から九万円にしたのです。こういうことが一体許されますか。
  54. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御指摘のように、値上げをするにはそれなりの理由があるわけでございますが、その値上げが、便乗値上げであるか不当値上げであるかというところに問題があるわけです。そういう意味でいま公取も介入しておりますし、通産省も調査中でございますから、この調査を可及的すみやかに終結することによって理解が得られるように、価格の安定、物価対策に資するような方向で処置したい、こう考えております。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣、御存じのように、公取は話し合ったかどうかということしか調査しないのですよ。公取が調査をしていますという。公取は、話し合いを進めたかどうかということで、その価格が高いかどうかということは公取に残念ながら権限がない。だから、公取も調査をしておりますことですし、では解決にならぬですね。
  56. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは言わずもがなのことでございますが、公取もいまやっておりますし、もちろん公取は公取法の権限以内のことをやっておるわけでございますが、しかし、公取がやっているということは、相当きくということはあなたもよくわかっているでしょう。ですから、公取もいまやっておるし、あわせて通産省もやっておりますし、これが生活必需品であるということで調査が可及的すみやかに行なわれて、妥当な価格まで引き下げが行なわれるということになれば目的は達成するわけでございますし、また、それをやるには法律権限も与えられておる面もございますし、そういう面で、政府は鋭意実効があがるような調査を進めてまいりたい、こう言っておるのでございまして、公取がやっているから公取のやっているのを待っておる、こういうことではございませんので、通産大臣が先ほどたびたび立って御答弁申し上げておるとおりでございます。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、通産省が日本経済新聞に発表しましたね。要するに、油が十ドルになった場合には各製品はどの程度上がるか。これは四十五年度の産業連関表を使ってコンピューターではじいたわけです。  これによりますと、たとえば昨年の八月、これは一番差のあるところをとりました。昨年の八月は三ドル二十五セントですね。そうして四十九年の一月にもし十ドルの油が来た場合、このデータによりますと、アルミ製品で六・五%しか上がらぬ。これは役所が出したのですよ。私が計算したんじゃないのですよ。ほかの要因を入れなければ、六・五%しか上がりませんという意味でデータを出しておる。これはアルミだけではありません。全部出しておる。せっかく役所がこういうものを出しておる。もちろん、いろいろな事情も変わっておると言うけれども、四十五年度の産業連関表では大体そう違いはない、今日入れても。ですから、石油製品であるとするならば、いま問題のポリエチレンならポリエチレンでも、油が上がればナフサがこのくらい上がるだろう、ナフサがこれだけ上がればポリエチレンはこれだけ上がるのだという計算なんです、全部。それはあらゆるデータは役所はもうすでに計算してあったわけですから、それをぽんとコンピューターに入れたわけです。そして出てきた数字が、アルミの圧延で言いますと六・五%、こういう状態なんです。しかも去年の八月に、三ドル二十五セントが十ドルになったと仮定をしてもと、こう言うのですよ。ましてや、いま役所は、油は絶対に十ドルには値上げをさせないと言っておるわけです。ですから、五ドル十三セントにするのか幾らにするのかわかりませんが、たとえ十ドルになってもこの程度しか上らぬ、こういう状態です。それを何ですか、いまの全体的な状態は。これは一体経済企画庁長官は、こういう数字をもってどういうふうに対処しようとしておるのか。
  58. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、物価が上がらないように措置すること、言うならば下げることを措置することが、私の任務だと実は心得ております。  したがって私は、具体的に物資は所管していない、産業は所管しておりませんけれども、ありていに申しますと、私自身が通産省の事務次官に電話をかけて、いろいろ末端の消費物資等について、標準価格等の形成をしようと思ってだんだん上にさかのぼっていくと、これは、コストの上昇分をそのままその生産価格に組み入れたり、あるいはまた、先取り値上げというような要素なしとせず、それらの分を上から洗い直してほしいということを、実は厳重に申し入れておるわけでございまして、たまたま、ここに答弁用紙じゃございませんけれども、私、書いたものを読みますと、コストの上昇分の安易な価格への転嫁を自粛することはもとより、これまで便乗的に上げ過ぎた分があれば、それを値下げさせる方向で通産省はまず指導してほしいということを、私は経済企画庁長官としての使命に基づいて申し入れておるわけでございまして、そういう実績をだんだん反映さして、そして生活関連物資等につきましても価格上昇を押えてまいろう、こういう態度をもって臨んでおります。
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 原油が三ドル二十五セントが十ドルになって三・〇七六倍になったと仮定して、ここに石油製品が二・〇二倍、電力が二六%、セメントが一五%、それから問題の合成繊維等が一一%、合成樹脂が八・七%、こういう状態ですよ。これは役所がちゃんとつくったわけですから。三倍に原油が上がったと仮定して、ずっと見たらこういう状態ですよ。ですから、これで倍になるものは石油製品以外にはないのです。原油が三倍になったとき、石油製品がようやく三倍、あとは、電力をはじめとしてみんなずっと三〇%台。こういうデータをせっかく役所で若い職員が一生懸命になってつくっておるのに、これは一体どういうふうに使うのですか。
  60. 小松勇五郎

    ○小松政府委員 ただいまの先生の御指摘の資料につきまして、まず若干御説明申し上げたいと思います。  この資料は、先生おっしゃいましたとおり、通産省の調査機能をあげまして、他の条件にしてひとしければ、たとえば労賃が同じであるとか操業度が同じであるという場合に、石油価格の値上がりがどの程度コストに影響を及ぼすかということにつきまして、御指摘のように、四十五年の産業連関表を硬いまして詳細に検討いたしたものでございます。もちろんその中には、そのほかのいろいろなはね返りも計算をいたしたものでございます。理論的に申しますれば、御指摘のように、大体あのような数字にコストはとどまるもの、他の条件にしてひとしければそうなるはずであるという理論計算ができたわけでございます。操業度の低下だとか、人件費の上昇だとか、それからその他の原材料の値上がりだとかいうものは一切入っておりませんので、現実にこのように物が動くというふうに私どもは考えておりませんけれども、一つの物価が、便乗であるかあるいは先取りであるか、その他の条件を判断するにつきましては、一つの標準になるかと思います。  先ほどから原局の局長等から御答弁申し上げておりますように、私どもただいま、アルミその他のものにつきまして、その基準を参考にしながら、一体それがコスト上昇に基づくものであるか、あるいは先取りであるか、便乗であるかということも含めまして、検討をいたしておる最中でございます。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総理大臣、あなた、コンピューターといわれておりますけれども、とにかくいま産業政策局長答弁をされましたように、かなり詳細に、理論的に——他の要因は含めていない、これはあたりまえ。しかし、それに伴って副次的にずっと上がってくるものはやはり入れておるわけです。これは単純じゃないです。そうしていま申しますように、データが出たわけです。  ですから私は、今日この物価に取り組む田中内判としては、これはむしろ公表をして、やはりこの程度に物を押えるという指針を与えるべきじゃないですか。それは若干でこぼこもあり、いろいろあるでしょう。しかし、油がこれだけ上がった場合はこれだけしか上がらないはずだ。しかも、私はいまは、一番大きい原油が三倍上がったときの例を申しました。しかし、現実はそれほど上がっていないのですから。そのときのデータも令部出ておるわけです。  ですから私は、こういうものを活用して、とにかくいまのもう狂騰というか、あるいは相場というか、これに冷水をかけるには、やはりこういうものを政府としてばっと発表して、ほかの要因がなければ、油だけならこれだけですよ。そうすると大衆は、これは当然これだけしか上がらないのだというので、あるいは便乗値上げに対して抗議をする、そういうぐらいにしなければおさまらないのじゃないですか。私は一番これが的確じゃないかと思うのですよ。それはかなり混乱が起こるでしょう。混乱が起こるけれども、せっかく指針をつくって、そうして詳細に、理論的に、そうして長い間ずっと蓄積しておった産業連関表、これをコンピューターにぽんと入れたわけですから、何のためにコンピューターを使ってこれをやらせたか。これだっておそらく数億の金がかかっていますよ。総理は一体どういうようにお考えですか。
  62. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府がそのように努力をしておるという一つの証左にはなります。そして、それを公表するというと、公表すれば、一つのメリットがあると同時に混乱も起こるということは、あなたも産業界出身ですから、そういうところはちゃんと考えて発言しておられる。ただ政府、行政機構は、そういうことを各省で全部やっておるわけです。もちろんこれは、物価問題が重要な問題であるということになれば、各省別でもそういう考え方をもってやっておるわけですから、いま指摘されるようなアルミの製品価格の値上げというようなものが不当であるかないか、また、カルテル行為があったかないかというところまで、公取が出動して調査を行なっておるというような段階でありますから、結局、最終的に通産省が、業界との間に適正なる値段というものをはじき出す基礎になる資料として使うために、そういうものがつくられておるということは事実でございますから、これから可及的すみやかに、できるだけ早く、合理的なものかどうかを調査をいたします、合理的ならざるものであれば、それを引き下げるように努力いたしますという一つの材料として通産省はそれを使っておるということは事実でございまして、それを公表するということ……(多賀谷委員「いや、公表しておるわけです。これで指導するわけですか、これから」と呼ぶ)指導というよりも、いま小松君が述べましたとおり、それは全く単純な算術一算をしたものではない。いろんなものを入れてコンピューターによって出したものでございますから、相当精度の高いものであるということは事実である。しかし、それは四十五年価格を基礎として理論的に積みしげたものを材料として、コンピューターに最終処置を求めたものだ、こう言っておりますから、実際においてそれを材料としていまやっておるのですよ。ですから、そういうものを、四十五年、四十六年、四十七年、四十八年と変わってきた状態、それは、石油価格だけが上がったものではなく、賃金も一〇%しか上がらぬかと思ったものが一九%も上がっているところもありますし、そういうようなものとか、いろいろな情勢を考えながら、少なくとも最終的には、まず国内的に売れるものの価格は、大体こういうものが妥当ですよ、国際価格は、需要と供給とのバランスもございますから、これは別にしても、いずれにしても、これだけの価格で出庫できるはずだというような結論は出るわけでありますから、そういう作業をいま通産省は鋭意進めておるということでございます。
  63. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、この段階で個別的な話をしておるんじゃないのですよ。全体的な物価を押えるには、こういう方法があるじゃないですかと言っておるのですよ。ですから、いまの一番の問題は、石油が上がるからという理由が一番大きいのですよ。ですから、石油が上がった場合は、これだけ上がった場合はこうなるんだ、これだけ上がった場合はこうなるんだと、政府が石油価格はこれで押えますというなら、ぱっと出るじゃないですか。そうして、全体的な網をばっとかけて一応冷却をさせなければ、個別に一つずつやっておったって、何万人役人を雇ったってそんなことはできませんよ。とにかく、ここへ冷水をばっとぶっかけるには、こういう方法だってあるじゃないですか。これは田中さん、あなたが勇気をもってやる仕事ですよ。  ですから、それにはいろいろ若干の理由があるかもしれぬけれども、とにかく標準的な価格ですね。私は統制経済を言ってないのですから、標準価格の目安としてこれを堂々と発表して使って、そうしてやはり一回冷水をかける必要があるんじゃないか、こう言っておるのですよ。
  64. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 尊重すべき御意見だと承知いたします。  私もいま通産大臣ではございませんから、あなたから指摘をされて、ああそういういいものがあるんだなということもよくわかりました。ですから、通産省もいま答弁をし、また作業を続けておるわけでございますから、私たちもまた近く、業界というよりも、いわゆる産業界の首脳に集まってもらって、物価抑制に対しての協力を求めるつもりでございますから、それまで、いまあなたが指摘されたようなもの、私もまだこまかくは勉強しておりません。おりませんが、通産省から説明を求めて、そうして、こういうものが通産省の試算である、議論の余地は幾ばくかありとしても、大筋は、こういう計算は、これは人為的なものではなくコンピューターが出したのだから、それと現在価格との間が違うが、それに対して反論あるものは反論を試みてもらいたい、反論のないものはこれに近づけてもらいたいという、これは有力な武器を与えられたわけでございまして、私も緊急に検討いたします。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕
  65. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 こういう方法しか、いま科学的根拠によって水を浴びせて押える方法はないのですよ。一つ一つ聞いていれば、事情を言うですよ。ですから、私はやはり、これこそ田中総理の勇断が必要である、こういうように思います。総理、おやりになるですね。
  66. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 有力な示唆として受け取りましたと、こう言っておるのですから。二に二を足して四、四から二を引いて二というような答えを、どうもあなたはお求めになっておるようでございますが、あなたがちゃんと提示をされたものを、それはなかなか有力な手段でございまして、十分検討いたしますと……。まあ時間もないのですから、やはりイメージで理解してください。
  67. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がだいぶなくなりましたので、現実の今日のインフレで困っておる層、あるいはまた一番国民がこの物価高に求めている問題こういう点をかいつまんで申し上げたいと思います。  まずその前に、各大臣、福祉国家の建設であるとか、あるいは福祉元年であるとか、それから経済企画庁長官は、いまや高度成長の政策の時代は過ぎて分配の時代だ、こう言う。それから福田大蔵大臣も、公正な新しい社会の発展、糸口を見つける、そういう発言でしたね。  一体、具体的に言いますとどういうことをするということですか。まず大蔵大臣からお聞かせ願いたい。具体的にいうと、一体この経済の転換はどうするのですか。
  68. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、具体論の方向というものは述べてあるわけなんですが、やっぱり成長中心でなくて、健全な社会づくりというところに重点を指向したかじとりをしなければならぬだろう、こういうふうにいま思っておるわけであります。公正な、健全な社会づくりというと、やっぱりこれは社会的公正という筋の通った社会、こういうことを考えておるわけです。  まあ、具体的問題になりますれば、やっぱり、政治の任務というものは何だ、こういうことだろうと思いますが、これはほうっておけば、自由放任社会ですから優勝劣敗、弱肉強食になる、そこで政治権力というものが介入いたしまして、強きをひしぎ弱きを助ける、こういうふうな施策をとらなければならない。当面の問題といたしますと、社会保障政策の推進、そういうようなことは具体的な政策項目として非常に大事な問題であろう、かように考えます。
  69. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 抽象的な話はよくわかるのですが、じゃ、具体的にお聞きしますが、これは総理大臣。  たとえば、第七次道路整備五カ年計画はどうするのだ、十九兆五千億をどうするのですか。あるいは第五次港湾整備五カ年計画、五兆円をどうするのですか。あるいは新幹線鉄道基本一画を一体どうするのですか。こういう公共事業を一体どうするのですか。四十九年度だけではありませんよ。長期的にどうするのですか。これをまずお聞かせ願いたい。
  70. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは政府の方針として、経済社会基本計画で示しておるとおりでございます。五十二年度までの五カ年間は明確に示してあるわけでございます。  ただその後、石油事情その他、世界の事情も動いておりますし、国内的な事情も動いておりますから、こまかい問題に対してはまだ勉強中であるということでございますが、五十二年度までの長期展望、中期展望に立っては経済社会基本計画の線で現在進めております。ただ、その四十九年度分は、四十八年、四十九年、五十年、五十一年、五十二年という五年ですから、ちょうどまん中に当たる四十九年というものは相当上昇カーブになっているわけですが、それは現下の情勢に徴して非常に圧縮をした、まず総需要の抑制、物価の抑制ということで圧縮をしておる。そうすると、それが五十二年度になって四十九年度の圧縮した分が上のせをされて、ちょうどその計画ができるのか。中期に物価が鎮静をするということで、五十年度、五十一年度に上のせができるのかというような問題は、長期計画、中期計画、また現在の段階というものの区分を明らかにしながらやっていかなければならない。  それは言わずもがなかもしれませんが、申し上げると、国民に住宅を与えなければならない。住宅を与えなければならないというから、どんな縮小均衡の予算の中でも、住宅や社会保障には可能な限り最大の努力を行なう。しかし、物価を押えることが最優先であるというなら、半年や一年間——半年、一年間というよりも、三カ月でも、その部分でも押えなければならないということは、これは当然でございますから、そうしなければだめだということになれば、健康のためには、とにかく栄養を与えなければならないが、しかし糖尿病をなおすようなものであって、ある時期には絶食をさせなければならぬというときもあるわけですから、そういう意味で、四十九年度はまず総需要の抑制ということに重点を置いて予算を組み、国民の消費活動その他に対しても抑制をお願いをしておる、こういうことであります。
  71. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 わかりました。短期決戦であるとか、あるいは四十九年度は総需要を抑制するのだ、こうおっしゃるけれども、これでは福祉国家なんかできませんよ、ものの基本が変わらないんですもの。  ただ、この前も石橋書記長が言ったように、ちょっと穴ごもりですよ。これでは基本を変えなければだめなんですよ。基本を変えなければ、経済社会基本計画はそのままにして五十二年までいくというなら、これは何にもならない。一体経済社会基本計画で福祉社会ができますか。できっこない。そういう状態ではない。その失敗の反省の上に立ってないんですよ。経済社会基本計画というのは、昨年二月にすでに閣議決定をされたのですから、これそのものが福祉建設の方向に向いてない。ですから、これは単なる穴ごもりで、そうしてちょっとの間がまんするのだというのでは、これはますますある時期から高度成長になる。私は、基本的にやはり考え方を変えていただかなければならないんじゃないか。これは一時的に公共事業を押えるのではなくて、かなり長期的に公共事業を押えるのだ、こういう転換がなければ、これはできませんよ。
  72. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 性急に考えるとそういう考えになりますが、そうじゃないんですよ。  足かけ三十年間の政治を振り返ってみましても、とにかく第一次の十年間というものは、敗戦経済でもって、生きるにやっとだったでしょう。それから第二次の二十九年から三十九年までは、一〇・四%の平均成長率を遂げながら、とにかく職場を与えて、先進工業国の中では一番に失業率の少ない日本を築き上げたことは事実です。最後の十年間は一体どうかというと、国際経済になって、南北問題に対して、先進工業国として何らかの負担をしなければならないという状態になっていることは事実なんです。そういう過程において、一番最後の足かけ三十年目というところで、今度は相当な引き締め、総需要を抑制しなければ国民生活というものは、名目賃金は上がっても実質賃金はほんとうに国民に恩恵が与えられないというようなことでは困るし、しかも、四十八年度を初年度とする長期の社会福祉長期計画をスタートする、こういったときに、予算は伸びても、物価が上がれば実質的な社会保障の拡大充実にはつながらないんじゃないか、こういうことになっては困るから、今度は四十九年度は安定して、予算の伸びた分だけは実質社会保障が伸びるようにという政策をとる。ですから、予算の中身を見ればおわかりになるじゃありませんか。一九・七%しか伸びておらないのに、社会関係費は三六・七%、生活保護費は二四・六%、社会福祉費は三三・八%、社会保険費が四八・二%、失業対策費が一九%と、ちゃんと伸ばしているわけです。そのかわりに、物価を押えなければ総体が一九・七%に入らないから、そういう意味では、物価を抑制するよりも、物価の上昇を誘発するような先駆的な役割りをなすと思われる公共事業は一時ストップしよう、こういうことです。公共事業というものは完全にストップしたら、それじゃ自動車をやめて自転車にして歩くのか。九州から歩けるわけはないじゃないですか。そういう意味では、それはちゃんと考えなければだめだし、野菜を送るためには鈍行ではだめだから、急行で野菜を送らなければいかぬ。とにかく急行便でもって野菜を送らなければならないというようなことも考えなければならないので、そんな観念論で私たちはやっておるわけではないのです。  ですから、ちゃんと四十八年度も四十九年度も——四十八年度は公共事業費は相当繰り延べをしても、社会保障費はこれを完ぺきに消化するということをやっておるので、そういう意味で、政府の真意をひとつ理解してほしい。
  73. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 社会保障費を上げたからと言われますけれども、医療費の値上げを除くと二五%ですよね。ですから、そんなに実質上上がっているのじゃないのです。  そうして私は、時間もありませんから端的に質問しますけれども、ほんとうに日本の政治の中で、いろいろあるけれども一番おくれているのは、率直に言うとやはり年金です。そうして日本のような財投方式の国はないですよ。保険を全部吸い上げて、そうして産業に使っているような国はないのです。これは一つ一つ私は、言いたいけれども、残念ながら時間がない。たとえばドイツだってそうでしょう。産業基金というようなマーシャルプランから出た基金をもって、これは産業に少しやる。そうしてあとは保険は、御存じのようにこれはみんな自主的管理をしているわけですから、保険財政は全然財投なんかに入っていません。郵便貯金、これは自治体にわずかいっておる、こういうところでしょう。フランスだってそうですよ。イギリスがようやく基幹産業に入れている程度でしょう。日本のような、膨大な財投をかかえ込んで、それを国が権限を持って配付しておる、しかも、産業に持っていっているという国はない。こんな便利のいい国はないのですよ、大蔵大臣。実に大蔵大臣としては予算をしやすい国である。  しかし、一方、国民年金ができたとき、こんな安い金利の運営では将来インフレになったら困る、こう言った。自主管理をさせてもらいたいと言ったら、どう言ったか。いや、パイが大きくなったら分け分を大きくしてやるのだ、だからパイが大きくなるまで待てと言ったのですよ。そうして、全部財投に吸い上げたわけですよ。パイは大きくなった。しかし、一体福祉年金その他の年金が上がったかということですよ。日本の予算は、昭和三十四年、千円で福祉年金が発足したときに一兆四千億ですよ。今日の四十九年度の予算から見ると、それに比例して上がっただけでも、千円は一万二千円になるのです。しかも、日本のは一番気の毒な人に国庫補助金が少ないのですよ。  各年金を見てごらんなさい。一番気の毒な人に一番国庫補助金が少ないのですよ。福祉年金を見てごらんなさい。これは気の毒だ。十年年金だってある。これも気の毒だ。一万二千五百円です。この十年年金の一万二千五百円の人は幾ら納めたかというと、十年間に二万五千円納めた。十年間に二万五千円納めた人が一カ月に一万二千五百円もらう。まあありがたいといえばありがたいのですけれども、あなたは年が多いからだめですよと言われたそれ以上の人は五千円、やっと七千五百円でしょう。国が会計から持ち出す金だって、一万円は持ち出しているのですよ。それ以上に気の毒なお年寄りは七千五百円ですよ。一体こういう国の政策がありますか。私は全然間違っておると思う。それは十年年金だって安い。こんな安い年金はないのですけれども、それでも国の持ち出しがら見るときわめて不公平ですよ。  一体福祉年金についてどう考えておるのか。これは総理の発案ですから、あなたからお聞かせ願いたいと思います。
  74. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 老齢福祉年金は五千円から七千五百円、七千五百円から来年は一万円にいたします。これは一万円といっても、いまもうすでに政府の他の保険に対する支出が一万円なんだから、老齢年金に対しても最低一万円にしなさい、そういう理論的な発想があるということは私も理解します。理解しますが、あのときには納めておらない人、加入できなかった人ということですし、その後の人たちには、確かに金額は一万円——働けないような老人に対して七千五百円しかやらないのに、働いている連中に対して一万円やっているじゃないか、こういう議論もあるでしょうが、そのかわりに、その納付した金額は、その過程において運用され、国家国民のために利益を生んでいるわけです。そういう意味で、私は、ただ単純に数字的な面からだけ指摘をされることは、当を得ないことだと思うのです。  五千円が安かったということを指摘されることが主だと思いますが、五千円を七千五百円といえば、五〇%上げているわけです。ですから、やはり予算というものもありまして、国民の税金がもとであるということで、ものの軽重ということを取捨選択しながらやっているわけです。軽重と言うと、じゃ、老い先短い老人に対して最も重要視しておらぬのだ、こう断定されるかもしれませんが、これはそうじゃないのです。ほかに五〇%も上がっているところはないわけですから、これは最大の重点を置いてやっている、こういうことです。  ただ、去年は、私は理解を得たと思うのですが、御承知のように、スライド制も実現をしましたし、野党の皆さんも、腹の中では、政府もよく踏み切ったな、こういう御理解は私はあると思うのですよ。だって、国民の皆さんから、政府もやったわい、こういうことをちゃんとおほめもあるし、理解も示しているんですから。私は、そういうことで、あなたが野党の立場でもって、もっともっと社会保障を上げなければならないという御激励をいただくことはよくわかりますが、政府も非常に重点を置いて全力投球をやはりしているんだということは、ひとつ御理解をいただきたい。  あと、まだ先進工業国との開きとかいろいろな御指摘があれば、つまびらかにお答えいたします。
  75. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 要は、年金が熟していない、こうおっしゃいますけれども、厚生年金ができたのは昭和十七年ですよ。三十年以上たっておるんですよ。そして、その十九年のときに加入者が八百万人。今日受けておる人は八十万人しかいないのですよ。三十年たって八十万人しかいない。これは一体どういうことであるのか。全然納めていないんじゃないんですよ。これはすなわち政府が脱退手当を出したりして、そうして認識がなかったといえば、それも一つだが、みんなもらって、期限が切れておる、資格がなくなっている、そういう者も全部含んでいるわけですよ。ですから、三十年年金がたって、八百万人昭和十九年にいたのが、たった八十万人しかおらぬという、こういう実態もよく考えなければならぬと思うのですよ。  大臣、とにかく老人ホームに行ってごらんなさい。普通の老人ホームはいいですから、一回だけ軽費老人ホームというところに行ってごらんなさい。これは大体要る費用の半分自分で負担しておるのですよ。ここは実に明るいのです。それは自分が金を出しているからという気持ちがあるのです。ですから、いま二万五、六千円要る措置費の中で、一万三千円でも自分で出したという気持ちが大切なんですよ。だから、あなたは貧しいから、みんな家族がないからただで置いてあげますよという政策は、きわめて冷酷なんです。それをやるならば、本人に年金をやって、その一部を出させたほうがいいのです。私はそういう根本的な政策に欠けておると思う。  日本の政策をずっと見ると、あれも少し外国のまねをする、これもまねをするというように、どれもこれも全く総花的ですよ。しかし基本がない。一番基本は捨てておいて、その上つらの政策だけをとっておる。これは、役人も、自分が局長のうちにいい政策をつくりたい。大臣もそういう気持ちでおる。しかし問題は、一番基本のところが日本はあらゆる点でできていないのです。まず社会保障がそうですよ。一番大切なものを失っておるのです。そうして、一番めんどうを見なければならぬ層を政策に乗せていない。もうすべに国民所得が三千ドルになるのですよ。四十九年度の国民所得は九十九万円ですからね。そうすると、三千ドルにもなって、社会保障の給付が、国民所得に比べてまだ六%なんという国はないですよ。イギリスだって、スウェーデンだって、三百ドルのときにいまの制度がみなできたのです。日本は三千ドルになっても制度ができていないのです。  ですから私は、その基本的なものの考え方、発想をここで変えて、これだけ日本経済が伸びたのですから、そのくらい余裕はあるわけです。やろうとすればできるわけです。なぜおやりにならないのか。これは総理、大事なことですよ。いまの日本経済でできないはずはないですよ。それがどうしてできないのか。これはあなた、七千五百円で五割上げました、そんなことは理屈が通らぬですよ。日本の予算がもう十二倍になっておるのにまだ七倍半であるという、こういう制度はないでしょう。福祉国家へいっても、お年寄りを一番不幸にしている国が大きな顔ができるかということです。総理は親孝行ですから、これはひとつぜひ実現をしなさいよ。(「自分の親だけだ」と呼ぶ者あり)自分の親だけじゃないのですよ、これは。
  76. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いや、なかなかいい発言でございまして、謹聴いたしております。  ただ、あなたがその中でもってお示しになっているとおり、三十年間も歴史があるにもかかわらず、今日そのテンポは先進工業国に対しておそい、こういうことを一つ御指摘になりました。それから、社会保障制度だけでなく、先進工業国といわれるものの模写が多過ぎる、だから、日本に合う、真に日本に適合するような制度というものを洗い直して考え直すときだ。私は、この第一も第二もそのとおり考えております。あなたと同じことを考えております。  これから年金制度や保険制度というものを拡充していかなければいけない。しかもそれは、先進工業国が失敗しているものの轍を追ってはいけないのです。先進工業国だって、経費が多いというだけでもって成功しているわけじゃないのです。それを維持していけるかいけないかというのが、政治の大焦点になっている国もあります。それだけじゃない。現行制度を発足せしめたために、とにかくそれが惰民政策につながって、生産は一向上がらない、物価は一向下がらない一つの有力な原因になっているという国もあります。それだけじゃない。国民所得に対して、保険料と租税負担率というものは限界に達しておって、これ以上いかんともなしがたいというのがございます。中には、五十五歳以上の人に対しては年金を払わなければならないという憲法の規定があるために、とにかく数千万人に払わなければならないということで、たいへんな状態もあるのですよ。そういうものも全部あわせて考えながら、先進工業国のいいところはまねをして、先進工業国がそれによって拘束を受け、たいへん困っているというようなものは、日本はこれからそれを是正していかなければならぬことは言うまでもありません。  私は、ここでもって、一つ申し上げると、老人というのは、確かに三十年もやっておって何で五千円なのか。だから、五千円を七千五百円にし、一万円にしますというときに、ちょうど調べましたら、年齢が延びたのは一体いつかというと三十年前からなんです。三十年前までは五十五歳から六十歳だったのです。それが七十歳になったのは、ちょうど戦後の三十年の間に、どんどん栄養が拡充されたり、新薬が発見されたり、予防医学が発達したり、いろんなことによってこの三十年間で七十年に延び、あと十年たてば八十年になるだろう、こういう状態になると、日本の将来、十年、十五年後の給付額というものは膨大もない金額になる。そのときに、ある程度以上の国民の税負担というものは限界的に押えていって、そして残余の理想的な制度の運営は、国民の税金の負担も大きくしないで押えていけるような合理的な年金制度、保険制度というものを確立しなければならぬというのが、いまの政府の基本的な考えなんです。
  77. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 年寄りが将来多くなるといいますけれども、昭和七十五年、すなわち二〇〇〇年ですよ。二〇〇〇年のときに、日本は六十五歳以上の人が十三・四人。しかし、この十三・四人というのは、いまの欧州のみんな普通の状態なんですよ。いいですか。いまの欧州がこれだけの率をかかえてやっておるのに、二〇〇〇年になったときの日本の人口がそれだからたいへんだたいへんだということは言わないでください。いまの欧州がすでにその率に達して現実にやっておるのに、なぜ日本がやれないんですか。それで、日本はしかもまだ七%台、それで心配をしたって二倍にならないですよ。しかも、いまの欧州がそのとおりである。ですから、何も将来のことまで心配する必要はないんです。そうして、この福祉年金の場合は、だんだん少なくなっていくわけですから、御存じのように。ですから、私は早くこれをおやりになったほうがいいと思うんです。何も将来なんて、将来よりは、現在欧州が苦しんでおる姿が、日本は二〇〇〇年に来るんですからね、昭和七十五年に。そんな心配することないでしょう。どうしてできないんですか。
  78. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それも政府も十分検討しております。検討しておりますが、あなたはいま、少ない老人はどんどん先がなくなっていく。私たちがまたちゃんと年金を受けるような者になりまして、どんどん多くなることは事実なんです。  それより、そこでひとつ私は——多賀谷さん、これは重要なことですからね。私もただでヨーロッパを回ってきたわけじゃないんですよ。ヨーロッパを回ってきたときに、こういうことを言われましたよ。それは、われわれがこのように日本よりもはるかに強い物価抑制政策やら、いろいろなことをやらなければならぬのは何かというと、税と保険料の負担率は限界に達しておる、だからこれ以上上げれば、もうヨーロッパの別の国に若い人は移籍をしてしまうというような状態であって、もう限界である。それでそれらの現行制度というものはどういう制度でつくられたかというと、他に植民地や何かをたくさん持っておって、投資が恒久的に入ってくるという前提でつくられたものである。それが第二次大戦において一つの線を引かれたために、現在どうなっておるかというと、これは日本の四十六年度計算で申し上げますと、租税と社会保険料の負担率は、日本は二四・一%でございます。アメリカは三七・三%、ヨーロッパ諸国が、一番困っておるのはイギリスが四六・三%、西ドイツが四五・一%、フランスが四七・一%、イタリアが三七・八%、スウェーデンのごときは驚くなかれ五七・六%なんです。そういう意味で、若い人が国に定着をしないで、私がいなくても、自分の親は国が、だれかが見てくれるだろうというので、若年労働者がいなくなってくる。そういう意味で、最も完備をしておるスウェーデンや北欧三国において、老人の自殺率は世界で最高である、こういう問題が起こっているわけですよ。ですから、日本の現在の社会保険料の負担率が五・四%、アメリカ八・二%、イギリスが六・五%まではいいけれども、西ドイツ並みにすれば少なくとも一五・五%、フランス並みにするには一九・七%、イタリア並みにするには一四・三%という、いまの日本の保険料の三倍以上払うという率にならなければだめなんですよ。そういうことは一つの限界をもって、先進工業国よりも低い負担率でもって先進工業国並みの社会保障を行なおうというところに、日本人の英知をいま結集しているわけですから、そういうことも十分考えていただきたい。
  79. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働者の負担率は、ドイツを除きますと、大体最高ですよ、日本は。問題は事業主ですよ。しかも事業主は、自分の企業内には案外出しているんですよ、企業内には。日本は法定外福利は多いんですよ。ところが法定内が非常に少ない。たとえば健康保険だってそうでしょう。組合健保だったら、これは大体いままでに千分の七十でした。そうすると、これは七十二になる。千分の三十六ずつ折半ですね、政府管掌は。ところが、この事業主の健康保険組合は、千分の四十以上平均で出しているんです。そうして労働者は千分の二十九。ですから、意外に自分の企業の中では出しているんですよ。そうして事業主負担が、西欧に比べて日本の場合は非常に少ない。まさに企業天国なんですよ。こういう点にやはりメスを入れて——高負担というのは、政府と経営者に言うことばなんですよ。労働者は大体最高水準いっておるのですよ。そのことをひとつよく考えていただきたい。  時間がありませんからもう一つ、今度はいびつな雇用構造。  日本の高度成長の秘密は、いろいろあるでしょうけれども、私は、隠された秘密は日本の雇用の二重構造だと思います。日本で国際競争力のある産業を見てごらんなさい。造船でしょう。鉄鋼でしょう。化学でしょう。造船、鉄鋼、化学は、大体半分が社外工ですよ。社外工、下請。しかも、同じ事業内で働いておるのですよ、問題は。部品をつくるんじゃないのです。そうしてそれらの労働者は、大体災害は一人当たり三倍です。賃金は六割から七割ですよ。こういう労働者が日本では捨てられておるわけです。ですから問題は、私は組合にも責任がある、企業別組合ですからね。自分の本工の組合だけのことは考えるけれども、社外工や臨時工のことを考えてくれないという点もある。あるいは産業別組合ができていない、職能別組合ができていないからそういうことであるともいえる。しかし、これは私は、政策としてどうしても改善しなければならない問題だと思う。  この前、OECDで日本に労働事情の調査に来ました。これは労働省の役人から聞いたんですけれどもね、こう言ったそうですよ。日本の市民は二つに分かれておる、この社外工、臨時工というのはセカンドシチズンである、こう言ったそうですよ。こういう労働者をそのまま政策的に放置しておる。これは私は許されないと思うのです。これに対して労働大臣はどういうように考えておるか、お聞かせ願いたい。
  80. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 多賀谷委員おっしゃるように、鉄鋼、造船、そういうところにおいて、親会社と、あるいはそういう労働者の方々の災害等々の率はおっしゃるとおりでございます。  いま、そこで一つ調べたのをここに御参考に申し上げますけれども、この日雇い労働者とかそういう方々がだんだん少なくなっている。いま勤労者が三千五百万おりますけれども、その率は、昭和三十六年度の八・三%が四十七年度は五・六%。そうして、こういう臨時の長い方々がどうしてそういうことになっているかということをアンケートをとったことがあるのです。  そうしますと、最近は家事などの都合で臨時、日雇いでいたい、こういう者が三六・二%、それから臨時、日雇いだと賃金が高い、こういう方々が一〇%、臨時、日雇いだと気が楽だ、こういう方々が一一・八%、それから年齢や技能などの関係、これが一六・一%、こういうことでして、まず第一は需給の逼迫が非常に多いということ、こういうことが問題でございますから、いまおっしゃるようなことについては将来ともに考えていきたい、こう思っております。
  81. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それはピントはずれですよ。臨時工、日雇いは減っているのですよ、しかし、その企業そのものを下請に出すんですよ、こういうことを私は言っているのですよ。それを、役所が大臣にメモしたのがよくない。そういう認識じゃだめです。私が言っているのは、臨時工は少なくなっている。それは、下請に全部出すのですから。危険な個所は出すのですよ。ですからそのことを言っているわけですよ。ですから、日本には本工員とその他とものすごい格差があるということを言っているのですよ。しかも、最近はこれが公共企業体並びに自治体に移った。それを自治体はみな下請に出しておるでしょう。ひどいのになると委託になる。水道料金は委託、学校の用務員まで委託した。個人の委託契約ですよ。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 これは社会保障も何もないのですよ。個人が、学校の用務員で学校管理を委託されておる。ですから社会保険も何もない。自分は事業主ですよ、たった一人で小使いさんが。こういうばかなことを自治省は認めた。国鉄は駅をそのまま委託した。委託駅だ。  こういうように、率先して日本の労働条件の向上をしなければならぬものが、全部委託制度ですよ。これは私はゆゆしき問題だと思うのです。そうして、最近の合理化というものは全部下請、委託化なんですよ。ですから新鋭工場ほど本工員が少ない。しかも、日本で一番国際競争力のある企業においてすらそうです。この現状は、そこに厚生大臣である齋藤君が職安局長のときに、そもそも規則並びに通達を変えたんですよ。戦後そういうのはなかったのですよ、労働力供給事業だというので。ところが、規則を変えると同時に、品物は、機材は全部親企業から借りてもよろしいと、こういうように直したものですから、だあっと戦後七、八年間なかった下請というのが出てきた。そうして今日は本工員よりも多いところもある。こういう状態。これを労働大臣は一体どう処置するつもりであるか、お聞かせ願いたい。
  82. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 企業の推移でいろいろな事件がありますけれども、私のほうといたしますと、やはり何といたしましても災害防止、そういうところで働く諸君の災害防止、さらにはまた、親企業に安全体制の責任を持たせて、安全衛生の確保につとめる。そしてまた、労働条件、幸いにこういう需給の逼迫のときでございますから、労働条件の改善に大いにひとつ監督指導をはかってやりたい、こう思っております。
  83. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、職安法の規則並びに通達を、もとに返せ、まず第一にこれを提案したい。もう一つ提案したいのは、危険な個所ほど下請なんですからね。あそこは危険だから今度下請に出そうと、こう言う。一体、そういうものの考え方、これは組合も含んでですが、けしからぬと思う。  そこで私は、同一賃金の法案をつくったらいいと思う。私は各国の法律をずっと見てみましたら、やはりあるのですよ。イタリアに作業請負規制法というのがありまして、同一賃金でなければならぬと書いてある。それから同じような問題がある。就業における仲介及び介入を禁止し並びに労務及び業務の請負における労働力の雇用を新たに規制する法律。これは当該企業の従業員たる労働者の受けている正規の賃金及び労働条件を下回らない賃金と労働条件で、親企業と下請企業の両方に連帯して労働契約を結べと書いてある。  ですから、結局日本のように職種別賃金のないところは、企業別賃金ですから、そういう差がある。そうすると、賃金は同じだけ払わなければなりませんよ、それは親企業のほうも責任を持ちますよということになると、おのずから解消される。これはきわめて問題が大きい。ひとつ、総理から御答弁を願いたい。
  84. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 あなたの言わんとすることは、私も学問的には理解をしますが、それは日本の特性というのがあるのです。(「悪い」と呼ぶ者あり)いや、悪くないのです。いい面もあるからちゃんと守られているのですよ。これは、そこらはやはり一方的な学問論だけではなく、また先進工業国はこうしているからといっても、日本にそれがすぐ受け入れられるわけはないのです。ですから、イタリアに確かにそういう法律もあるし、日本においてはそこまでいかないから、最低賃金法を出して最低賃金だけ確保しようと言ったことは十年前であります。イタリアはそのために物価もおさまらぬし、通貨も安定しないし、生産も上がらないしという、一つのマイナス面が露呈していることは事実なんです。  そういう意味で、戦前、官においても、郵政省は請負でもって三等郵便局制度がありましたが、これは今度、戦後は全部郵政省の職員ということで、特定郵便局法によりますが、これは統一をしたことは事実でございます。それだけではなく、占領軍メモランダムによって、いまの失業対策事業の就労者は公務員であります。しかし、そういう面が全産業に適用されるかというと、それはそうじゃない。月給は少くてもいいから、企業の直用は困る、こういう日本人の特性があるのです。ですから、そういう意味で、専門的な部品に対しては、これは下請というよりも、中小企業という特性もありまして、そういう意味で総括的な組み立てまではやれないが、部分的なもので、零細企業は中小企業に、中企業にとだんだんと移ってくるという特性がございまして、それはそう先進工業国のようにはいかない。だから、先ほど労働大臣が述べたとおり、いわゆる年金の問題とか、失業対策の問題とか、危害予防の問題とか、衛生、安全の問題とか、そういう問題等は最小限の統一は行なおう。そして残っておるのは、あなたがいま指摘しておる賃金格差をどうするか。これは失業率が多いどころではなく、労働力の需給のバランスの中でもって解決していけるのであって、賃金が悪く不安全なところに人間が永住するわけがないのでして、そういう意味で、自然に統一をされていくということでなければならない。  これは、一つだけ申し上げますと、西ドイツでも、これは確かに一貫作業をやるという方法をとっているのと同時に、精密なものに対しては、部品部門でもって全然別な会社でやって、そしてメーカーとして最終的な責任を負うのは組み立てを行なうというだけであって、部分的には、下請という制度とはちょっと違いますが、全然別な企業が採用されつつある、それも社会の要請である、こういうことも考えてもらわなければならぬと思います。
  85. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、部品工場のことを言っているのじゃないんですよ。部品工場が部品を持ち込んでやるのを言っているのじゃないんですよ。同じ工場の中で、同じ作業をしておって、そうして賃金が違っている、そういうものは許されないのじゃないか、こう言っておるのですよ。  運輸行政だってそうでしょう。帽子まで親の帽子をかぶって、そうして、ここのマークだけは本工員だけがマークをして、そうして下請は名前のマークだけない、しかし、帽子と制服はちゃんと運送業の本工員の制服をしておる。そういうように乱れておるんですよ、日本は。最近、自治省は何でも下請に出しておる。そうしてほんとうに、委託なんていっても、今度は個人に委託するんでしょう。個人に委託したのは、労働者が事業主ですよ。社会保険だって何もないんですよ。通勤時の災害が保障されたら一体どうしますか、事業主ですから。こういう問題もある。これはひとつ運輸大臣も、国鉄はきついでしょうけれども、こんなことを許してはいかぬですよ。あなたは、共済がもらえるから、ひとつ共済金と、それにいままでの賃金の差額分だけ見ましょう。そうして使っておる。だから国鉄共済はパンクしそうなんですよ。そういうことをやっているんですよ。それが委託駅。何でも親企業だけが、本体だけが助かろうという、そういうものの考え方が根本的に間違っているのです。  ドイツの例は全然問題になりませんよ。大体あそこはみんな同一労働同一賃金ですから、そういうものの余地がないのです、下請なんという余地が。賃金格差がないから余地がないのです。組合も職能別組合ですから余地がない。日本のほうは、企業別組合で非常な賃金差がある。こういうものを許しておくということが本来間違いです。  これは、総理大臣、一番大きな日本の問題点ですよ。あなた、こういうものが詳細にILOでも報告されたら、こんなことをやっておるのか。ですから、日本の労務費というのは安いんです。大体下請の労働者は労務費の中に入っていないのですよ。あなたは経理が詳しいからわかるでしょう。これはみんな経費で落としておるわけです。労務費というのは本工員だけの労務費しか書いてないのです。ですから、こんなに労務費が安いと言う。それで向こうから調べに来ると、それほどでないと言う。しかし、労務費というのは、本工員だけの労務費なんです。あとは全部経費で落としている。こういうことが現実に行なわれておるわけです。ですから、これはひとつぜひ田中内閣としては検討してもらいたい。  その前に、通達はどうされますか。職安法の規則並びにその通達。
  86. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 あれは昭和二十七年に、占領軍がおったときに、日本に合うように法律を直したわけでございまして、これはいまのところ改正する意思はございません。
  87. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 あなたが指摘された、同じ帽子をかぶっておりながら、外から見れば同じ会社の職員だと思っておったら、爆発事故が起こった、造船などで爆発事故が起こったから、何々会社からの職員だと思っておったら、その下請をやっておった小さい会社の者であって、どうも労災とかその他いろいろな問題に対しては完ぺきな保護は受けられないというような問題で、問題が提起されておることは事実であります。事実でありますから、先ほど労働大臣が述べたように、いわゆる労働者の権利や衛生管理、危害予防、そういうものを守るために最善の機構や制度を完備しなければならないということは、これは焦眉の問題であると考えております。  ただ、下請制度というような問題、全部やめたらどうかと言う。まあ学校では学校の用務員か——ビルの管理会社やビル清掃会社というものに下請をしてもいいが、学校の用務員まで下請に出しちゃいかぬじゃないかという御議論と一緒のことをやっているわけですよね、これは。だから、そういうものをもっと制度的に、少なくとも賃金とか身分とか、そういうものに対して画一、一律性を持つべきである、それは、しかしなかなかむずかしいこともあるのです。ここは社会主義と自由主義経済との……(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)いや、だからあなたの言うような社会主義社会化、国営化ということを前提にしての議論をやりますと……(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)いや、特別な仕事、東京都がやっていますね。清掃でも、屎尿のくみ取り作業などは直営ではやれないのです、費用が三倍もかかって。そういう意味で、これはやはり下請に出したほうがいい、請負に出したほうがいいということは、これは国費支弁に基づく行為に対しては、最も安全であり、最も的確であり、最も安くなければいかぬという、国益を守るというものやコストダウンというものと調整過程において解決をさるべき問題でございまして、あなたの言うことはわかりますから、私が事実を述べ、日本状態は現在、いまあなたが言われるように、全部画一、一律にして一つの目標を持ってあらゆる制度を完備しておくことは、これは必要ですよ。黒字のうんとある大会社の健康保険だけやって、あとあぶないものは全部政管健保でもって、税金でまかなえということもあれだし、政府も見てくれない、資力もない者はどうするんだ、安全はだれが保障するんだという気持ちはわかりますけれども、現実を無視して、一ぺんにいろいろなものに飛躍することはむずかしい。それは中小零細企業という特殊な状態と、日本人の生産に対する一つの個性、特性というものもあるのであって、やはり一人でも事業主であり、看板をかけておらなかったら商売をしない、こういうものもあるのでありますから、そういう実態と学問的、先進工業国がやっている制度のプラスマイナス面を十分勘案しながら、やはり労働者の利益を守るためには、前進をはかってまいらなければならないということだけは申し上げておきます。
  88. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 多賀谷君、すでに時間が過ぎておりますから、どうぞ簡潔にお願いします。
  89. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣わかっておってああいうはずれたような答弁をするのか、実態がわからぬで答弁しておるのか、よくわからない。  それで、私はもう時間がないですから、雇用の二重構造についてひとつ再検討してもらいたい。これをひとつ約束してください。
  90. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 俗に賃金の二重構造、労働条件その他の二重構造ということは、指摘をされつつあるということはよく理解しております。それなりに日本歴史もあり、特性もあり、特殊な状況もあるのだということも、私はあなたのことを理解しているのですから、私も政府を代表して現実をやはり述べなければいかぬ。現実を無視した学問上の議論をやるのなら、私は政治の主管者ではなく、大学の教授にでもなりまして——そうでないのですよ。現実を無視してやれないのです。そういうわけにいかないので、そこらは理解していただきたい。それは、いますぐ二重構造というものを全部なくするようにやります、そんなことを言えるような現状にないということだけは、われわれは理解してもらわなければならぬのです。
  91. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 問題提起をしておきます。  これは、人道的な問題ですし、いつまでもこういう状態を放置するということが、私は基本的に、福祉社会とかいいますけれども、現実は捨てられた国民ができるのだということを考えていただきたいと思います。  そこで私は、きょうは幸いにして田中総理大臣、それから三木国務相、さらに大平外務大臣といまの通産大臣、これらは全部通産大臣であって、石炭を手がけた方で、そうしてみな答申をおのおのもらって政策をしたわけです。  そこで、時間もありませんから、一体、石炭政策の失敗ということをよく言われる、口にも出される。それならば一体、どこが失敗であったのか、今後はどういうことを考えておるのか。これをひとつ一人一人から聞きたいですが、時間がないから、田中総理からお聞かせ願いたい。
  92. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 石炭が日本の固有のエネルギー源であり、非常に重要な問題であるという認識を深めております。それで、石炭が戦後の日本経済復興の大きな原動力になったということも十分評価をいたしております。評価をいたしておりますから、石炭企業の整理合理化に対して、石油関税から千億以上の金をつぎ込んでおるということを見れば、御承知のとおりでございます。  しかし、戦後三十年間、世界のエネルギー事情は非常に急テンポに転換してまいりまして、そうして石炭というものは、いま石炭鉱業に従事する労働者は三万人を割ったというような状態でございます。炭労といえば世界に鳴った炭労でありますが、それがそのように縮小を余儀なくされておるということは、事実は事実として認識をいたしております。  しかし、どうしてこうなったかというと、安い石油がいつでもどこからでも買えるというような考え方もあったのでしょうし、いろいろなものもあって、だから石油が二倍になり三倍になったから、今度石炭を見直すとはけしからぬというお気持ちも、また御指摘も私はわかりますが、私たちも戦後ずっと国会議員に席を置きながら、この石炭問題とも取り組んできたわけでありますが、これは政府だけでやるというよりも、民間、学識経験者の意見を聞きながら、そうして慎重の上に慎重を重ねて今日の第五次答申まできたわけでございます。  あのときには、二千万トンを限度にという、二千万トンを下回らないようにとして、私は通産大臣としての最後の仕事として、二千万トンを下回らないということを、いまになってみると、いささかでも前向きだったなということが考えられておるわけで、あれは二千万トンを限度、以下を数字にしたならその責任を問われたなと思いますが、二千万トンを下回らない、二千万トン以上ということに答申を変えてください、異例な陳情を行なって現在の答申になっておるわけですが、その後、事情が変わりました。変わっておるので、また学識経験者から御努力をいただいており、総エネルギーの面からの検討と、石炭鉱業そのものの面からの検討ということを続けていただいております。  石炭を見直さなければならないということはございますが、公害問題からの石炭専焼、混焼というような問題が一つありますのと、もう一つは、石炭鉱山は、外国に見られるような露天掘りと違って、京浜港揚げでもって価格に相当な差があったということであります。そういう意味でありますが、しかし、石油が何ぼに上がったら石炭はペイするじゃないかという問題もあります。もう一つは、立て坑なものですから非常に災害が多い。災害を受けた者にとってはこれは取り返しがつかないという問題があったわけでございます。  そういう意味で、石炭に対しては、政府も非常に重要な問題として、審議会の答申を待って善処をいたしたい、こう考えております。
  93. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がありませんが、フランスのソフレミンが日本の石炭を調査したときに、七千二百万トンというのを出しました。そして、そのときに注意、警告をしたのが、どうも経営者は、計画的なことや経営の介入をきらう自由主義の観念にとらわれ過ぎておる、日本企業の直面する危機を感じていないということを勧告しておるわけです。  いろいろあるけれども、決定的な瞬間はやはり二つありましたね。一つは、石炭の価格を千二百円引きしたときですね。しかし、それでも重油の価格を八千三百円ぐらいにして対抗するかと思ったら、重油の価格は八千三百円から六千円になったという時期、これが一つ。もう一つは、三木さんは山野が爆発したときに政策をつくられたのですが、第三次のときに、私がこれじゃだめですよと言ったら、いや、これは自由民主党の限界であると、こうおっしゃった。私は、ここにやはり問題があったと思う。そこで、四次政策のときですよ。これは大平さんのとき。これがやはり日本を今日にした決定的な失敗だったと思う。  というのは、ドイツは当時統合に向かっておった。私どもドイツへ行ったわけですが、ドイツは、とにかくルールをこのままにしておったらいかぬから、鉱区の統合とかいろいろあるから統合しようというので、ルール炭田は一社をつくったんですよ。
  94. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 結論を出してください。時間を超過していますよ。
  95. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 はい、わかりました。  そこで私は、このときに、何とか統合の方式を考えないかと、こう言った。ところが、それがばらばらになったというのが決定的だろうと思うのですね。ですから、そういう意味において今後どうするか。  そこで、少なくとも通産大臣、私は要望だけしておきますが、ここで一応切りかえて、もうつぶすとか生かすとかというのは、一切管理委員会なら管理委員会で責任を持って、これは生かす、これはもうだめだからつぶせ、こういうような方式をとらない以上、私企業だってやりませんよ。そうして増産の体制に入る。外炭をどうするかという問題は、商社やその他にまかしておったら、また石炭がつぶれますよ。ですから、そういう統一的なものをやらない以上、再建の方法はない、私はこういうように考え、それを申し添えまして、質問を終わりたいと思います。
  96. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて多賀谷君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することといたします。  暫時休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ————◇—————    午後一時一分開議
  97. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭の要求の件についておはかりいたします。  本日、日本銀行総裁の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  99. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 質疑を続行いたします。松本善明君。
  100. 松本善明

    ○松本(善)委員 午前中、総理の本会議での発言の問題で若干の質疑が行なわれましたけれども、これについて、私はもうちょっとはっきりしておかなければならぬ点があるかと思うので、若干聞きたいと思います。  総理の言われた趣旨は、朝鮮台湾の問題を引用したのは、心と心の触れ合いが大切であり、そういうことを今後の国際活動でやらなければならぬ、こういうふうな趣旨で言われたのかというふうに思いますけれども、総理は、そうすると、朝鮮で戦前に行なわれました小学校教育はよかったのだ、こういうふうに考えておられるということでありますか。
  101. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そういうことには言及いたしておりません。また、そういうふうには考えておりません。
  102. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし、先ほどの発言では、小学校先生が心から尊敬と愛情を受けているということを引用して、午前中には発言をされました。私は、ほかの人の発言引用したことだというだけでは済まないと思うのです。  といいますのは、一国の総理がこの予算委員会という公の場で引用をするということは、これは総理自身がその問題についてどう考えているかということがあらわれるからです。総理は、この問題を、あるいは軽視をしているかどうかわかりませんけれども、この朝鮮新聞、東亜日報は、侵略根性の発露、韓日合邦美化、日帝の植民地教育、こういって報道しているんです。朝鮮日報は、日帝統治肯定発言、こういって報道しているんです。私は、総理が当時の朝鮮の教育を肯定して、そうして、そういう心のつながりを持って今後の海外活動をやるのだ、もしそういうふうに考えているとすれば、これは成功するようなものでは全然ない。ますます大きな反発を受けることは、もう明らかだと思うのです。  朝鮮の当時の教育は、総理は、朝鮮に敗戦後の当時おられたから、自分で知っているのではないかと思いますけれども、朝鮮語を使えばなぐられる、あるいは子供が罰金を取られる、あるいは小学校日本人の教師はサーベルをつって教育をやる、あるいは発音ができなかったといって子供をなぐるとか、そういう教育がやられていたのです。それをいささかでも美化するようなことがあって、そしてそういう心のつながりを強調するというようなことがあったのでは、私は、今後の日本人海外活動が、決して各回で受け入れられるものではないと思う。私は、それは総理考え方の根本問題に触れるのではないかと思うのです。合邦発言合邦ということを総理は言われました。私はここに根本問題があるのじゃないか。あの朝鮮は、当時の韓国日本という国がなくなって、そして一つの国ができたというものでないことは明らかです。日本がいうならば併呑したのです。  私はここに、韓国併合に関する件、当時の閣議できめました文書を持っておりますけれども、このいわゆる日韓合併といわれている韓国併合の一年前に、何と言って言っているか。「韓国ヲ併合シ之ヲ帝国版図ノ一部トナスハ半島ニ於ケル我実力ヲ確立スル為最確実ナル方法タリ」一年前にこういうことで日本はやっているのです。このいわゆる総理合邦という、これははっきり日本が侵略をして、そして植民地に朝鮮をしていたという時代であります。  総理は、この時代に日本が侵略をしたものであり、そして朝鮮を植民地にしていたということをお認めになるかどうか、お聞きしたいと思います。
  103. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 韓国朝鮮日本に併合した、こういうふうには考えております。これは小学校当時に教わっておりますから、日韓併合ということでちゃんと教わっておりますから、そう思っておりますが、第一、そういうむずかしいことを私は述べようというんじゃなかったのです、ということをさっきから述べているでしょう。しかも、それは統治時代における教育やいろいろなものを正当化すような考え方をもって述べたものでは全くない。そうではなく、発言自体が、日本経済侵略、経済至上主義というようなものに対しての質問でございましたから、そういうものではなく、お互いがほんとうに心から理解し合えるようなことを前提としなければ、物質万能な対外折衝というものはこれからも成功しないし、そういうことでは真に実を結ぶものではないということを述べるために、私が頭のすみにあったことを言ったわけでございます。言ったというのは、引用するのに適当でなかったかもしれません、それは舌足らずであったかもしれませんということも、すなおに述べているわけです。  それは、野党の皆さんから三十分でもって四十五問も質問を受けたこともあるのです。一問でも答えなければ、落ちれば再質問するぞ、こういう通告を受けておりますし、同時に、与党側から、とにかく簡明直截にもっと早くやれ、こういう中で、本会議答弁というのはやってみると、ほんとうにそういうことがよくわかるのですよ。そういう中でもって述べたのであって、私は言わずもがなのことを言ったから、それが誤解を招くならば、それは真意ではありませんから遺憾であります、こう述べているのですから。しかし、それは全然別な問題で、朝鮮問題を議題としてまたここで論争されるというならこれは別でございますが、本会議答弁というものに対しては、先ほど述べたとおり、私の真意は十分理解できると思うのです。
  104. 松本善明

    ○松本(善)委員 私がお聞きしましたのは、総理が、当時の朝鮮侵略、朝鮮を植民地にしていたことについて、誤りであった、そして反省をしているという考えがあるかどうかということを聞いているのです。日中共同声明のときには、総理は共同声明の中で、「過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」こう述べています。朝鮮の人民に対して、当時の植民地時代について反省をし、そして責任を感ずる、重大な損害を与えたことについて反省しているという考えがあるかどうかということを聞いているのです。この点についてお答えをいただきたいというのが一つと、それから本会議発言について触れられたから、午前中の発言はあれは取り消したのかどうか、取り消さないということなのかどうか。取り消したということであるならば、これはそれで終わりかもしれません。取り消したというのか。この二つの点、はっきりお答えいただきたい。
  105. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 本会議発言に対しまして、私が同じ国会内の衆議院予算委員会の正式質問に対して、私の真意を述べて理解を得たいとこいねがったということでございます。  それから、韓国統治時代のことに対しては、いろいろなことがいわれております。  戦後は、もう領土的野心も持たず、真に平和的な外交を推進していくという大方針が立てられておりますから、これはもう言わずもがなのことでございますが、過去の問題、歴史上の問題に対しましては、いろいろの評価のあるところでございます。私たちはそのころまだ未成年者でございましたし——未成年者でもない。とにかくそういうものに対して、戦後、戦前相当長い時期一つの国民として一つの国を形成してきた韓国の方々に対しては、お互いができる限り協力もしなければならぬし、また友邦として、新しい歴史の上でゆるぎない友情関係を確保するために、日本ができるならば、可能な限り最大の協力をしなければならない、こういうことを述べておるのでございまして、いま合邦当時——合邦というか、いわゆる併合当時、朝鮮統治時代の問題に対して、私もまだ必ずしもつまびらかにしておりませんし、勉強もしておりませんし、どうもここで端的に、あなたがそれをいいのか思いのかと聞かれても返答のしようがない。歴史上の事実に対して私かいま明確に答えられるということではなく、新しいスタートをした現状に対して、最大の友好国として日本協力を惜しまない、協力を惜しんではならない、こういうことが韓国に対する政府の考え方であります。
  106. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなたは、歴史上の事実についていろいろ評価があろう、それについては答えられないと言いますけれども、ポツダム宣言で引用されているカイロ宣言では、朝鮮人民は奴隷状態に置かれていたということをいっているのですよ。それから台湾については、盗取をしたということもいっているのです。盗んで取ったということもいっているのです。あなたは同じ本会議発言で、台湾についての統治ということも言いました。これは先ほど日中共同声明を引用いたしましたけれども、一体、中国侵略についても反省をしているのかどうか、それから朝鮮の植民地化をしたことについて反省をしているのかどうか、これを総理はついに言わないということ、これは私はたいへん大きな問題だと思います。  そういうことで日本総理大臣が政治をやっていくということが、国際的に問題になっていった場合に、一体どういうことになりますか。日本総理大臣は反省していない、これについてはいろいろ評価があろう、こう言っている。質問されても答えない。一体それでいいんですか。私は事実は知りませんでしたで、いまの総理大臣はつとまりますか。戦後の日本の政治というのは、戦前のあの侵略戦争を反省した上に立っているのではありませんか。だから、あなたの考え方の根本問題が問題になっているのです。本会議発言の片言隻句ではないのですよ。あなたの考え方が問題だ。だから私は突っ込んで聞いているのです。  もう一度聞きます。朝鮮の植民地化をしたことについて反省をしているかどうか。中国侵略をしたこと、台湾侵略をしたことについて反省をしているかどうか。この点を明確にお答えいただきたい。
  107. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 過去に存在した事実は、歴史的事実であります。これに対して私は論評を加える立場にありません。いま申し上げられることは、過去の歴史に徴して、真に新しい憲法を守り、日本国民がまじめに平和愛好国民として、全世界の信頼を得ながら善隣友好の実をあげるということを、明確に述べておきます。
  108. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理がそういう考えであれば、私は海外での日本に対する批判というものは決してなくならないと思います。ここにはファー・イースタン・エコノミック・レビューという香港で発行されている週刊誌があります。ここでは総理について批判をしている。総理が東南アジアで、日本の兵隊は感謝をされていると言ったことについて批判されています。田中総理は、東南アジアで日本軍が残虐なことをしたことについては一言も触れない。総理日本軍が当時残虐なことをしたということは、いろいろな本で、これは写真入りで、虐殺したり何かしたことがいま出ているのですよ。そのことをみな東南アジアの人たちやアジアの人たちは知っているのです。それについて反省をしているかどうかというと、反省してないじゃないか。感謝をしているとか、それから植民地時代はよかったというような発言がいまの総理大臣から出てくるとすれば、これは大問題だというのが、アジアの人たちの考えですよ。あなたは心のつながりを言われるけれども、そして戦前の教育を引用して心のつながりということを言う。一体、そういう考え方で心のつながりができると思っていますか。侵略者と被侵略者との間に心のつながりができると思っていますか。私は、総理反省されることをもう一度要求いたします。
  109. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 過去の歴史的事実に徴して、新しい憲法が制定せられておるわけであります。政府はこの憲法を守っております。国民もこの憲法を守って、日本を真の平和愛好国であるとして認めております。また、国際的には、そのような大精神のもとに善隣友好の実をあげると同時に、世界の平和に得与してまいらなければならぬということは、明確な政府の答弁であります。
  110. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、そういうような考え方では、どうしても反省しない、侵略戦争についてはどうしても反省するということを言わないという総理考え方、これはアジアの諸国民からものすごい反発を受けるだろう、決して問題はこれで終わらないということを申し上げておきましょう。  そして、私は次の問題を質問するのですけれども、総理のそういうような考え方が、日本海外進出についても出てくる場合もあるし、日本の内政の中でも出てくる。  私は自衛隊の精神教育の問題を取り上げますが、ここでも軍国主義的な教育がなされているという重大な疑惑を持っています。この問題について伺おうと思うのでありますが、この自衛隊は、言うまでもなく、田中総理が最高指揮官ということになっております。このあなたが最高指揮官という自衛隊で、精神教育がどういうふうに行なわれているか。  まず、最初に確かめておきたいと思いますのは、こういうような教育はなされていないかどうか。たとえば、過去の侵略戦争を肯定するような教育、明治憲法を賛美したり、教育勅語を教育理念とするような教育、あるいは現行憲法を否定し、現憲法を擁護する者を敵視するような教育、右翼テロだとか右翼団体を擁護するような教育、野党、特に自衛隊を違憲とすると考えている政党を敵視したり、あるいは、いわゆる反共教育をしたり、そういうようなことがなされていないかどうか、あるいはそういう書物を推薦して読ませるというようなことはないかどうか。これは自衛隊の精神教育の根本であろうと思います。そういうものがないかどうかということについて、また、あっていいのかどうかという問題について、総理のお考えを伺いたいと思います。
  111. 山中貞則

    ○山中国務大臣 総理は最高指揮官であります。しかし、私は自衛隊の隊務の統括者であります。したがって、実務については、まず私が一義的に責任を負いますが、ただいま一応列挙されました内容のことには、すべてそういうことはいたしておりませんということばを初めに御返答として申し上げておきます。
  112. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理に伺いますが、そういうようなことは、あるべきことであるかどうかということについての根本的な考え方を、一言でいいから伺っておきたいと思います。
  113. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 憲法のもと、定められておる自衛隊でございますから、憲法の精神を順守した教育が行なわれておると自信を持っております。確信をいたしております。
  114. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、自衛隊の実際の精神教育の現状、これについて説明をしてもらいたいと思います。防衛庁長官でもいいし、あるいはどなたでもけっこうです。
  115. 山中貞則

    ○山中国務大臣 現状というのはいろいろ幅広い話でありますから、いずれ個々に指摘があるのでありましょうが、基本は日本国憲法であり、そして防衛庁設置法第四条であり、自衛隊法第三条である。そしてまた、自衛官の心がまえ等に基づく日常教育ということに一貫して行なわれていると思います。
  116. 松本善明

    ○松本(善)委員 もう少し詳しく、どういうふうになされているかについてお話をいただきたいと思います。だれか答えさせていただいてもけっこうです。
  117. 山中貞則

    ○山中国務大臣 教育というのを詳しく説明しろということですけれども、いま言ったようなことで教育をいたしております。したがって、自衛官の心がまえ等の中にも、心身を鍛練し、ということまで含めて、教育の準拠すべき心がまえが書いてありますから、いま言われたような質問で、どういう答弁をしていいのかちょっと私、わかりません。
  118. 松本善明

    ○松本(善)委員 人事教育局の責任者に、いまの精神教育は、どういうテキストを使い、どういうことを中心にやっているかということについて説明をしてもらいたいと思います。
  119. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 お答え申し上げます。  ただいま防衛庁長官から御説明申し上げました基本原則にのっとりまして、各幕僚監部では教育の計画を立てます。その中で、精神教育につきましても一つのワク組みをきめまして、それを部隊に指示をする、部隊では、それぞれの各級の指揮官が、部隊の実情、被教育者の素養等を考えまして、教育の計画を立てております。  全体を通じましての重点を申し上げますと、新隊員の教育におきましては訓育を最も重視いたしまして、国民たるの自覚、自衛隊の使命、自衛官としての徳操及び服務上の基本的な事項を理解させるという点に主眼を置いております。また、曹の教育におきましては、内外情勢の認識の上に防衛に対する信念を固めさせる、また、曹としての地位と責任を自覚せしめるということに主眼を置いております。幹部につきましては、自衛隊の使命、幹部の職責に対する自覚、幹部としての徳操を養うということは当然のことでありますが、そのほかに、初級幹部としての必要な精神力あるいは統御力というものを付与することを主眼といたしております。  以上であります。
  120. 松本善明

    ○松本(善)委員 防衛庁長官総理大臣に伺っておきますが、自衛隊の精神教育というものは、これは自衛隊というものがどういう考え方活動しているのか国民の前に明らかにされなければならない問題であって、これについては、いささかの秘密もあってはならないものだ、国民に隠れてこっそり秘密の教育がされているというようなことであってはならないと思いますけれども、この根本の問題について、防衛庁長官総理の御意見を伺っておきたいと思います。
  121. 山中貞則

    ○山中国務大臣 こっそり隠れるようなものは何もないわけでして、したがって国民のために存在する自衛隊、したがって国民のために、いまの一般社会ではやや見られなくなってきた傾向のある、一身を賭して、崇高なる使命を自覚して、そうしてその任務の遂行に敢然として当たる。もっぱら国民のためであり、国家の独立と平和のために身を挺するということが基本になっております。
  122. 松本善明

    ○松本(善)委員 いまの防衛庁長官発言は、自衛隊の精神教育には秘密はないという趣旨であるか、明確にお答えをいただきたいと思います。
  123. 山中貞則

    ○山中国務大臣 秘密というような形で、こっそり教えなければならないようなものはありません。
  124. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理にお聞きしておきたいのですが、同じことです。そういう自衛隊の精神教育には秘密はあってはならないものと思うけれども、その根本的な考え方について、総理の考えを伺っておきたいと思います。
  125. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 憲法を守り、国民のためにある自衛隊でございますから、国民とともにある自衛隊、自衛隊としての、いま防衛庁長官述べられたとおり、特別な任務を帯びる自衛隊というものの持つべき精神教育ということでありまして、国民と遊離をし、国民に秘匿しなければならないような教育というものがあろうはずはないわけであります。
  126. 松本善明

    ○松本(善)委員 大西参事官に説明してもらいたいのです。人事教育局の責任者に説明してもらいたいのですが、自衛隊全体あるいは陸幕、海幕、空幕、そういうようなところで統一した陸上自衛隊、海上自衛隊あるいは航空自衛隊、そういうところに全部にわたるような教材といいますか、精神教育についての教材とかあるいは教育についての参考資料、そういうものがあるかどうか、これについて伺いたいと思います。
  127. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 自衛隊の教育に関する図書あるいは資料は、教範、訓練資料、その他の教育関係の資料というふうに三つに大別をされます。ただいまお尋ねの自衛隊のすべてにわたって適用される資料というものは、教範と各自衛隊ごとの幕僚長が定めております訓練資料と題する資料でございます。  精神教育につきましては、その種の範疇に属する資料はございません。
  128. 松本善明

    ○松本(善)委員 自衛隊全体、あるいは海上自衛隊だけ、あるいは陸上自衛隊だけ、それから航空自衛隊だけで使われるそういうような教範とか訓練の参考資料とか、そういうものは一切ないということですか。
  129. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 ただいま答弁が不足いたしましたが、精神教育につきましては、先ほど防衛庁長官からも御答弁がございましたように、「自衛官の心がまえ」、これは昭和三十六年に作成をいたしまして、精神教育の準拠として使っているものでございますが、これがございます。
  130. 松本善明

    ○松本(善)委員 私が事前にお聞きし、わが党の議員団が資料を要求して防衛庁から答えられたところによりますと、訓育参考資料という銘を打って配っているものは、海上自衛隊にあるが、陸上自衛隊や航空自衛隊にはない、そして海上自衛隊のものにつきましては、一年に三点から数点の訓育参考資料を指定している、これ以外にはないということで資料がよこされました。たとえば四十五年について言うならば、「国旗の知識」、「青年警察官」、「我らかく戦えり」こういうような形で訓育参考資料のリストがある。そういうもの以外にはないということが言われましたけれども、これに間違いありませんか。
  131. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 先ほど申し上げましたように、基本的なものとしては「自衛官の心がまえ」がございますが、教範のように、精神教育の分野では、全自衛隊にわたる規範的な意味での訓練資料というものはございません。それにかえてというわけではございませんが、やはり中隊長等がいろいろ精神教育をやっていく上に参考になるものといたしまして、訓練演習費の中から、幕僚監部あるいは各部隊において適宜市販の図書を買うなり、あるいは部外者に講演を依頼をする、あるいはそれを整理をして使用するというようなことをやっております。  それから、先ほどあとに御質問がございました、先般来御照会がございましてお知らせいたしましたものは、現在部隊でも使っているものをピックアップいたしまして差し上げたわけでございます。
  132. 松本善明

    ○松本(善)委員 もう一度、あとでいろいろやりますが、海上自衛隊の訓育参考資料リストというのを防衛庁からもらったわけですけれども、これは、たとえば四十五年、四十六年、四十七年、四十八年、いろいろずっとやりましたが、その年度で指定をしたのはそれだけだという趣旨かどうか。それからもう一つは、訓育参考資料というのは、これは読んで参考にする、推薦する、こういう趣旨のものかどうか、その点について伺っておきたいと思います。
  133. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 これは、あらためて御説明申し上げるまでもなく、精神教育というものは、いわゆる国定教科書のようなものをつくって、それで右から左に講義をするということになじまないものでございます。したがいまして、いろいろな参考の資料を幹部なり精神教育に当たる者が読みまして、それをこなして、そして自分のものとして教育をするという性質のものでございます。  先ほど申し上げましたように、いま先生から、御照会がありまして私のほうから提出をいたしました書類の項目でございますが、これはそういう意味の資料でございまして、繰り返しますが、教範のように教育の準拠、ずばりそれで教育をするという性質のものではございません。
  134. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは準拠するということではないかもしれないが、こういうものを読んだほうがいいということでいわゆる推薦する、選んで推薦した、こういうことでしょうね。悪い本を集めて配るとか、そういうようなことではなくて、これはいい本だということで配っているのでしょうね。読んで参考になるものだということで配っているのだろうと思いますが、どうですか。
  135. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  136. 松本善明

    ○松本(善)委員 それからもう一つ聞いておきますが、いただきました資料は年度別にもらったのですが、これはこれしかないのですか。年度別に海上自衛隊の訓育参考資料リストというのをもらいましたけれども、これしかないのかどうか、これについて伺いたいと思います。
  137. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 時間の関係で、とりあえず四十五年以降のものを差し上げましたが、それ以前においてももちろんございます。ただ、これは現物があるものとないものがございますので、過去のすべての時期にさかのぼって、何であったかということをお示しすることは困難でございます。
  138. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の手元に海上自衛隊の公報の写しがあります。それの昭和四十五年の四月二十五日のものによりますと、各部隊の長、各機関の長に、「訓育参考資料の配布について」ということで通知をしている。その資料名は、「一 愛国心」「二 愛国心と忠誠の問題」「三 社会主義の歴史と展望」「四 共産主義」あるいは「軍人倫理について」軍人ということばも使われている。そういうものが二十三点配られている。こういう通知がありますか。通達です。     〔委員長退席、井原委員長代理着席〕
  139. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 そういう通達が出ていることを存じております。
  140. 松本善明

    ○松本(善)委員 もう一つお聞きします。  やはり同じ二十五日だと思いますが、通達で、「訓育参考資料の目録について」「各部における資料の整理、活用に資するため、既配布の参考資料の目録を別紙のとおり通知する。」ということで、ここには「愛国心」「愛国心と忠誠の問題」とか「国民同胞感の探求」とか「愛国心について」「社会主義の歴史と展望」「共産主義」それから「民主主義の理念と憲法の基本的人権」とか「共産主義の歴史と展望」「チトー主義、毛沢東主義」「日本共産党戦略戦術」「共産主義運動と警察の立場」「マルクスが日本に生きていたら」こういうのを一々読み上げるとたいへんたくさんありますが、全部で百十四件、これをいままで既配布のものも全部含めて、この時点で「整理、活用に資するため、」ということで「訓育参考資料目録」として、通達として出しています。こういう通達がありますか。
  141. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 そのような通達が出ております。
  142. 松本善明

    ○松本(善)委員 では、その内容をちょっと御紹介をいたしましょう。総理防衛庁長官もよく聞いていてください。これはもう非常にたくさん、私ども全部は手に入りませんけれども、たくさんあるのです。このひどいものだけをちょっと読んでみますけれども、総理、よく聞いていてください。  この「国民同胞感の探求」という本の中にこういうことが書いてある。「支那事変は日本の一方的侵略のように思い込まれているが、これは大きな誤りである。」と書いてある。総理大臣、こういうものが訓育参考資料として自衛隊の各機関、各部隊に配られる、これはいいことですか、総理の考えをお聞きしたいと思います。
  143. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大体、それは民間の出版物でございますが、防衛庁が自分でつくったものではありません。その中にそういうようなことがあるということを指摘されて、四十六年に再点検して整理が済まされていると聞いております。
  144. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうことで言いのがれができるかどうかですね。  「日本教育の理念」というのがあります。これについてはどういうことが書いてあるか。この本は、何と昭和十一年に発行されているものです。これが自衛隊員に訓育参考資料として配られているのです。この中に、一つ読んでみますと、「我が国の教育理念は一言を以つて之を蓋へば教育に関する勅語の聖旨にある。」教育勅語に基づく教育というのが教育の根本だ。それから、「我が国体の道徳的意味は、教育勅語に明示せられてある如くに、「我カ臣民克ク忠ニ克ク孝二億兆心ヲ一二シテ世々厥ノ美ヲ濟セル」にある。」「狭義の忠とは所謂「君の馬前に討死する」的の忠であって、」こういう教育をやっているのですが、これもどうですか。これはいいですか、防衛庁長官総理にも聞きたいと思います。さっきの答弁と一緒に聞きたい。
  145. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そういうことを教育しているわけではないのでありまして、昭和十一年の当時の本だったら、そういうことが書いてあるのはその時代の世相としてあたりまえだと思うのです。また、お互いそういう教育も受けてきたのです。しかしながら、そういうところが入っているという問題について議論が提起されたために、そういうことはいまはやっていないということであります。
  146. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理の考えをちょっとお聞きしておきたいと思うのです。
  147. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それはお聞きにならなくても、私は知らないのです、あなたがいま読んだだけでしてね。それで、それがどういうような観点で、どういうふうに送られたのか。しかも、いまのように、そういう教育をやった戦前の教育との比較に対してはこういうものだという参考もあるでしょうし、十一年のときのものならそういうことが書いてあるのはあたりまえですし、ですから、そういう問題はだれが出したのか、しかもそれはまとめて防衛庁が出したのか、そうではなく本の整理はそういうふうにしてあっても、それは出先でもって購入したものか、防衛庁の意見を全部聞いてからでなかったら私もわからないのですよ。
  148. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなたは十一年のことだと言っている。これは、十一年のはたまたま昭和十一年のがありました。  この「愛国心について」というのを少し読んでみます。この本では、これは昭和三十六年に出ているわけです。いまのものですね。「明治維新以後の教育理念には、その大綱においては少しの謬りもなかったのである。」こういうことが書いてありますよ。それから、「我が国体の要点は、祭政一致皇位の万世一系 君民一体」祭政一致なんだと書いてある。憲法違反ですよ。そういうことも書いてある。あるいは「憲法を守れ、憲法の周りに垣を築けと、やかましくわめき騒いでゐる白蟻や赤蟻達は、果してどこの国民、どういふ人種であらう。」こういうことも書いてある。現憲法に対するはっきりした敵視ですよ。あるいは「右翼のテロは、たとえ間違った憂国慨世の心に発したものにせよ、不惜身命の心底には、強い自己犠牲の精神が動いていることが窺える」右翼のテロの賛美ですよ。あるいは「日教組の首脳部がソ連中共の第五列として大きな役割を演じていることは疑い得ない。こんな連中にうかうか青少年の教育をまかせておくと飛んでもないことになる。」驚くべきことですよ。  「国防と教養」ということについて言うならば、「共産主義と一般の社会主義との主な区別は、社会主義実現の方法として、暴力革命によるか否かという点にある。」そして、そういうことと同じようなことを、わざわざ「日本共産党戦略戦術」こういうふうな本も配られている。  先ほど言ったことと全く違うのです。私が最初にお聞きしたときに、こういう教育をやっているか、またそういうようなことを、書物を推薦して配っているというようなことはないか、こういって聞きました。全く違うじゃないですか。こういうことが行なわれている。先ほど言ったことと全く違ったことが行なわれているということについては、一体防衛庁長官総理大臣は何と考えられているのか。いまやめましたとかなんとかいうものではないですよ。過去にもうすでにこうしてやられている。
  149. 山中貞則

    ○山中国務大臣 松本委員の言われたのは、自衛隊の教育でそういうことをやっているか、そういう教範類があるかということで、そういうものはありませんと言ったので、私たちとしては、そういう教育の規範となるものがあれば、それは「自衛官の心がまえ」というものである。いま列挙されたものは全部市販の、著者がだれかであって、そういう人がいろいろなことを書いている中に、あなたのほうから見てかちんとくるものや、あるいはまた、全体から見てふさわしくないと思われる点を抜き出して言われたのでありましょう。しかし、私どもとしては、そういうものによって全部を教育しているというものではないので、それは各部隊がそれぞれの部隊の本だな等にある書物の中の一つであるということでありまして、それによって教育をしておるというものではありませんで、最初に言ったことと何ら変わりはありません。
  150. 松本善明

    ○松本(善)委員 そんなことはないです。各部隊にあるのではなくて、海上自衛隊が各部隊の長、機関の長に通達として配っているのですよ。そして、これを整理、活用しろといって通達しているのですよ。これを活用するのですよ。あなたが言ったのは、そういうような教育はしていない。私はちゃんと聞いておいた。そういうようなことを、書物を推薦して読ませるというようなことはないか。そんなことはないと言ったじゃないですか。どういうことです。こういうことがいいと思っているのかどうか、はっきり……。
  151. 山中貞則

    ○山中国務大臣 書物を推薦して読ませることがあるかどうか、私はないと言ったという問答はやっておりません。したがって、それらの問題がどのような手段で、どのような経緯であったか、どこまでであったかという問題については、大西君から答弁させます。
  152. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっと待ってください。それはあとからやります。いまは防衛庁長官とやっておきたいのですけれども、これは通達として出されている。先ほど通達があるということを認めました。一体、こういうことはいいと思っているのかどうかということを、総理とそれから防衛庁長官に聞いているのです。これをお答えいただきたい。いま私が聞いたことはそういうことです。
  153. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いいところもあり、あるいはまた不穏当なところもある。しかし、それは消化する者にとって、それがどういうふうに消化されていくかということであって、私たちが強制をしているわけではありません。
  154. 松本善明

    ○松本(善)委員 どこがよくてどこが悪いのかお答えをいただきたい。いまあなたが言ったのです。いいところもあり悪いところもあると言ったのです。だから、どこがよくてどこが悪いか、それをはっきりお答えいただきたい。私が読んだところです。
  155. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 ただいま防衛庁長官から御答弁申し上げる前に、ちょっと経緯を申し上げます。  御承知のように、自衛隊は発足以来すでに二十年たちますが、その当初においては、いろいろ教育上の参考になるものが明確にございませんでした。そこで、幕僚監部におきましても各部隊においてもいろいろな模索をいたしまして、市販の図書等を推薦したり、買ったりした時代がございます。したがいまして、いまから振り返ってみまして、適当でないものがあることは事実でございます。  そこでその次は、ただいまの御指摘の通達でございますが、通達は、海上幕僚監部の防衛部長から出ておると思いますが、防衛部長の下に教育課がございまして、従来出ている資料を整理する意味で出した、そういう事務的な処理だというふうに理解をいたしております。  なお、先ほど防衛庁長官から御答弁申し上げましたように、昭和四十六年の十二月に、沖繩国会の際に御指摘もございまして、また、私どももそういうような資料が散見をされましたので、四十七年に一応総洗いをいたしまして、不適当なものは廃止の措置をいたしております。
  156. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなたはぬけぬけとここへ来て答弁をしているけれども、いままで私たちにはそういうものはないと言っておる。資料としてもちゃちなものをよこしておる。いまあなたの言っておる最初の答弁は、こういうものはないというんですよ。示されて初めてあった。その責任は、国会へうそをつくとか、あるいは国会議員に正しく資料を提出しないとか——これは秘密があるべきものではないということを、先ほど、総理大臣も防衛庁長官も言っておる。その責任は、あとでたっぷり追及するから、いま別のことをやりたい。  防衛庁長官、私が先ほど言った中で、何がいいもので何が悪いものですか、はっきりお答えいただきたい。
  157. 山中貞則

    ○山中国務大臣 現在の戦後の世相の変遷を見て、若者たちが集団をして、そして自衛隊法第三条というものの使命を遂行するのに、集団生活のもとに秩序を、ある意味では強制されて、それに従いつつ任務に精進しているというそれらの諸君には、やはり日本人歴史というものは長いものでありますから、日本人歴史の中でいいもの、日本人のすぐれたるところというもの等は当然継承してしかるべきである。また、それらの精神的な支柱をもって崇高な任務の達成に精進すべきである。そういう点に貢献するところがあれば、それはいいところである、そう思います。
  158. 松本善明

    ○松本(善)委員 私がいま言った、先ほど読みました万世一系の天皇とか、あるいは教育勅語の趣旨に基づいて教育をするとか、そういうようなことがいいんですか。あなたの言われたことは、日本歴史を教えるということ、それは一般的にはそのとおりでしょう。どういう歴史を教えるか、どういう歴史教育をするか、これは非常に重要ですよ。私は一般的なことではなくて、私が先ほど言ったことについて、あなたはいい点もあり悪い点もあると言った。だから、いい点は何で、悪い点は何かということを聞いておる。はっきりお答えいただきたい。
  159. 山中貞則

    ○山中国務大臣 たとえば、教育勅語の問題は、国会の議決によって廃止されておりますから、したがって、教育勅語の中にも、親に孝にとかいうようなことはいいことに違いありませんよ。しかしながら、そういう教育勅語は、自衛隊が教える資料としては不穏当である、そう思います。万世一系の天皇だって、戦前は統帥権は天皇に直属しておりましたが、しかし、いまはそういうことは関係ありません。総理大臣が最高の指揮監督者であります。したがって、そういうようなことを、万世一糸の天皇は続いておられても、わが自衛隊がかつての軍隊のように、統帥権のもとに陛下に直属するものではないということは、国法の定めによって厳然としておりますし、平和憲法によってそういうことは教えるほうがおかしいんでありますから、そういうことはあり得ません。いまおっしゃったような、いけないところはいけないところと私も認めます。したがって、整理もしてあると、さっき申し上げた次第であります。
  160. 松本善明

    ○松本(善)委員 四十五年にわざわざ——これは確かに配付されたのは三十五年、三十六年ごろのものもあるのです。それをわざわざ四十五年の時点で、まだまるで三年ちょっとしかたたない前ですよ。そのときにわざわざ整理をして、いままで配付したもので、これは整理、活用すべきものだということで通達しているのですよ。だから読んだのです。  もう一回聞きます。あなたはあの私が読んだ中で、いいというものがあったというなら御指摘なさいよ。そのことを聞いているのです。私は、あれは全部悪いものだということで言っているのです。また、先ほど総理大臣もあなたも、そういうようなことはあり得るわけはないと言った内容の教育です。  あなたは一体、私が読んだ中で、何をいいと考えているか、それをお答えいただきたい。
  161. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、その本を全部読んでおりませんから、あなたの言われた、いけないと思われるところだけを抜き出して言われた点、これは私も不穏当だと思います。
  162. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理のお考えを聞きたいと思います。いま私が申しましたようなものを配って、そうして各部隊の長、それから各機関の長に配って、そうして読ます、こういうようなことは、不穏当と防衛庁長官も言われましたけれども、自衛隊の最高指揮官ということでありますから、「自衛官の心がまえも」そういうことになっているので、あなたのお考えをはっきり聞いておきたいと思います。
  163. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 自衛隊は憲法の定めるものであり、国民のものである。もちろん、自衛隊は任務遂行をしなければならないわけでありますから、そのために万人、一般の大学や一般の教育よりも、もっと任務遂行のために必要な特殊な角度からの教育も必要であるということは事実でありましょうが、しかし、少なくとも憲法に背反するというような、憲法のワクを越えるというようなことがあってはならないことは、申すまでもありません。  それからもう一つ、教育ということばの中に、旧軍人勅諭のように、いわゆる軍人に賜わった勅諭とか、それから教範とか操典とか、こういうもののように、教育の基本となるべきものに、憲法に背反するものがないということは、先ほどから事務当局も防衛庁長官も述べているとおりでございます。  それから、教養の意味で備えつけるもの、要すればあっせんをし、推薦をしというようなものもあると思います。そういうものの中でも、やはりいま指摘されるような不穏当なものは避けなければならないということも当然だと思います。  それからあとは、結局備えつけ図書として広く勉強をする、自衛隊員といえども国民の一人でございますし、特に広く勉強してもらうというような意味で、自衛隊員が個人で持つもの、隊が備えつけておるものというふうに、相当分かれるものがたくさんあると思うのです。ただ、その中であなたは、少なくとも自衛隊が、また、そのある地位の者が、通達等公的行為をもって推薦をしたり、破棄を命じたり、また新たに購入を命じたり、本省から送付をしたりするものの中に、そのような不穏当なものがあっていいのか、こういうふうに分けて考えなければならぬと思うのです。だから、それには二十年の歴史があるということで、いま参事官が述べたように、ある時期になって指摘をせられたもの、指摘をせられそうなものを考えても、これを除くべきものというものは取捨選択をして整理をいたしました。しかし、整理をいたしたという中で、四十五年に整理をした中でもまだあるじゃないかといえば、それらのものも、御指摘があれば十分通達をし、整理済みの中にもまだ正すべきものがありとせば、これは適宜整理を行ないますということであって、大本に存するものは、憲法に背反するようなものであってはならない、こういうことであることは申すまでもないことであります。
  164. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは、穏当でないものがあるということは、総理防衛庁長官もお認めになったのでありますが、私はいまごく一部をやっただけです。これはいま言われたように、一たんこういう指定をしているものを全部取り消して、そうしてあらためて自衛隊の教育についてやり直す、こういう訓練参考資料などの配付について再検討すべきだと思いますけれども、その点についてはどうお考えになりますか。
  165. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私が再検討してみます。
  166. 松本善明

    ○松本(善)委員 それから、これは再検討して、どういうふうに検討したかということについて、いま答弁はもちろん出ないと思いますので、私はあらためてその点についての答弁があってから、その再検討結果についての質問はしたいと思いますが、そのように委員長、お計らいいただきたいと思います。
  167. 山中貞則

    ○山中国務大臣 再検討には、私もそういうものを全部目を通さなければなりませんから、したがって、そんなに簡単に四、五日で結論が出るものじゃありませんので、いまおっしゃったようなことについて私が全部検討してみましょう、再検討しますと言っているのですから、その結果が出たら、いずれ機会を見て私のほうから報告することにして、それか出なければ——予算委員会最中でなければならぬという時限的な時間を引かれると、とても間に合いそうにありません。
  168. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、この再検討をして、その結果まとまってから、それからにしましょう。  いま申しました中で、市販のものはこういうふうに、ある程度私たちの手に入ります。市販でないもの、これが入らない。これは当然に——先ほど総理防衛庁長官も、秘密があるべきものでないと言われた。当然に資料として提出さるべきもので、たとえば、ここで言いますと、この通達では三角じるしになっている、これが相当あります、幕で出したもの。それから、たとえば「共産主義運動と警察の立場」これは警察が出したのだろうということで警察へ問い合わせましたら、いや、あるけれどもいまは出せないとか、あるいはもうなくなってしまったとか、私は何度も問い合わせたり、あるいは議員団で問い合わせても出ない。こういうことは、自衛隊には配るけれども、国会議員には見せない。国会には出せないというようなことがあっては絶対にならないと思います。ここにあります幕でつくりましたもの、あるいは他の官庁がつくって自衛隊に配付をしているもの、これは全部資料として提出をされたいと思いますが、いかがでしょう。
  169. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまの警察の問題はよく知りませんが、講演等をした場合の、それを本にしたものとかあるいは印刷にしたものとか、そういうもの等は配っております。御要求があれば、それに対して応じます。
  170. 松本善明

    ○松本(善)委員 それからもう一つお聞きしたいのは、自衛隊の教育については秘密がないと、こう言われた。ところが大西参事官は、私たちの議員団が要求したのに対して、これは全然、ほとんど出しません。原資料というものは全く出せないと言っている。そういうことはあってはならないはずなんです。しかも、ないと言ったのです。何度も確かめました。私も直接確かめましたし、わが党の中路議員も確かめた。そういう、国会議員にうそをついて、自衛隊の教育を秘密にしようという考え方、これは許しがたいものだと思いますけれども、これについてはどう考えるか。
  171. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 資料の御要求について取り扱いましたので御説明申し上げますが、どういうものがあるということでリストをお出しいたしまして、現物を出せということであれば現物を出すことにやぶさかでない、そういう気持ちでおりました。
  172. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうじゃないですよ。海上自衛隊の訓育参考資料はこれだけでございますと言って、あなたは紙を出してきた。それ以外のものはいっぱいあるじゃないですか。これはうそをついていたということにはならぬですか。あなたがこれを出してくるならば、こういうものでやっておりますということで出してきているんならば、これは問題ないですよ。いま私から指摘されて初めて、そういう通達がありますと認めたじゃないですか。それについて、あなたは何の責任も感じませんか。私たちをだましたというふうには思いませんか。
  173. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 お答え申し上げます。  先生から御照会がありましたときに、四十五年以降ということで、四十五年以降で手元にあるものの表題をリストアップしてお出しいたしました。その次に、それ以前のものということでございましたが、海上自衛隊の幕僚監部にあるものを集めましてお出しいたしたわけでございます。  なお、お出ししてないものにつきましては、先ほど申し上げましたように、昭和四十六年以降に整理をしたものは海上自衛隊にございませんので、私のほうは出してございません。  ただ、ただいま御指摘がございましたように、その通達というのは、実はその間で私、知ったわけですが、活用するということばは全く適当でない、そういうふうに考えております。
  174. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなたはあとからそこで、活用するということばが適当でないとかなんとか言っていますけれども、私は知っててあなたに聞いているわけです。それで何度も確かめた。これ以外にないのかということを何度も確かめた。あなたはないと言っている。   〔井原委員長代理退席、委員長着席〕 覚えがありませんか。あなたは自分のやったことは正当だと思っていますか。一言だけ弁解聞きましょう。
  175. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 私は、現在海上自衛隊が使っているものということで、幕僚監部の手元にあるものを申し上げたわけであります。したがいまして、そのときにそういう目録との関係をよく御説明をすべきであったと、その点につきましては申しわけないと思っています。
  176. 松本善明

    ○松本(善)委員 全くでたらめなんですね。これはいま使っているものなんということで出したものではないです。四十五年には、先ほど申しました三冊、四十六年には別の三冊、四十七年にどうだ、四十八年はどうだ、各年度ごとの訓育参考資料の指定したリストを出す、そしてこれ以外にはないということを言っている。そういう態度でいれば、自衛隊の精神教育については、国民の疑惑はますます深まりますよ。あなたが実物教育だ。うそを言うというのが自衛隊には通用するんだ。自衛隊の内局の人事教育の責任者は堂々とうそを言っているんだ。これは最高の教育ですよ。なるほど自衛隊とはそういうところかと。  総理、こういう事態、率直に、それで精神教育について説明したことになりますか。こういう、私が出しましたような資料をわざわざ予算委員会に持ち出さなくても、こういうふうになっておりますということを説明すると、そういうあり方が、自衛隊の精神教育のあり方だと先ほど答えたんではありませんか。私は総理に、こういう自衛隊の精神教育のあり方について、秘密を持って国会議員にも隠していこう、こういう姿勢についてどう考えているか、伺いたいと思います。
  177. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いま大西参事官が答えましたのは、いきさつについてよく知りませんが、出せと言われたものはリストアップして出しましたということを言っていますので、その通達に関してのそれに対して、あるものをないと言ったのか、そこらのところは、私は、うちの事務当局のその筋の責任者がうそを言うというような、そういうことはあり得ないと思いますから、したがって、自衛隊はうその教育をしているんだということには承服いたしかねます。
  178. 松本善明

    ○松本(善)委員 私が言うのは、もちろん山中さんはその経緯を知らないから、それがうそであるかどうかということについては、すぐには言えないかもしれない。言えないかもしれないが、率直に全部出していれば、こんなところで問題にならないですよ。質問なんかにならないですよ。私がここで質問しているということ自身が、こうして資料を持ってきて予算委員会質問せざるを得ないということ自身が、自衛隊の精神教育については秘密があるんですよ。われわれにわからない点があるんですよ。警察庁に私が問い合わせたように、これは自衛隊の参考資料の中に入っているから、いつまでたったって出さないのですよ。「共産主義と警察の立場」というものはあるだろう、ありますと言っている。出さない、いまどこへ行っているかわかりませんと言う、そういう答弁がされているんですよ。大きく見てごらんなさい。だれにでもわかるようにしてあるものを、何で予算委員会でこんな時間を使って質問しますか。どう思いますか。今後の問題についても伺いたい。自衛隊の精神教育についての資料は全部出すか、この点もあわせてお答えいただきたい。
  179. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまの、警察官と何とかというのは、それはよく知りません。しかしながら、精神教育に対して、自衛隊がそれを基礎にして教育をするという資料については、全部出します。
  180. 松本善明

    ○松本(善)委員 いま私は海についてやりました。これは全部、陸についても空についても同じなんです。同じことがやられている。こういうことがやられているのですね。  もう一つ重要な問題がありますので、もうちょっと海のことをやりますが、海上自衛隊公報の秘密版の四十五年五月二十六日付のものによりますと「海上自衛隊員現状調査の実施について」ということで、海上自衛隊の「使命観に関すること。」「団結、士気に関すること。」こういうことを調査の対象にしている。そしてその調査を、なるべく勤務場所以外のところで個別に記入させて、投票箱に入れる形式にさせている。そして問題用紙は、用済み後に確実に回収の上、部隊で焼却処分をする。この自衛隊の精神教育について、使命観などについて調査をして、「使命観に関すること。」などというのは、調査をしたら、あとで問題用紙などを焼却処分するなんてことはあり得ないのじゃないかというふうに私は思うのです。こういう通達があるかどうかということをまずお聞きしましょう。
  181. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 私は、現在それを見ておりませんので、調べてお答えいたします。
  182. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、これは調べて答えるということですから、この点についての質問は留保させていただきたいと思います。あと、別の質問をやりたいと思います。
  183. 山中貞則

    ○山中国務大臣 事実あったかどうかは大西君に調べさせますが、しかし、自衛官がいかなる意識を持って、いかなる自覚を持って任務に従事しているかを掌握することはきわめて必要なことであります。また、それを秘密扱いをして処分することも、これまた必要であります。何となれば、その意識がわが自衛隊にとって好ましくないと思われるものであっても、しかしそれはその調査によって、個人の意識が票に記入されて出るということによって、差別的な、あるいはそれを意識した部隊の中の扱いというものを受けるようなおそれが出てきますので、そういうものはだれがどう答えたかはわからない。しかし、意識はパーセンテージその他にとって、私たちの問いかけに対して答えたおおむねの傾向はわかる、こういうものは私はなければならぬと思うのです。
  184. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうことも含めまして、この通達自身があるかないかわからないということですので、私はそれについて——いま防衛庁長官意見についてもいろいろ質問したいことがありますけれども、もとがあるかないかわからぬという状態質問してもしっかりしたものができませんから、これは留保して、あるということがお答えがあってから質問させていただきたいと思いますが、そういうふうにお取り計らいをいただきたい。そして次の質問に入ろうと思いますが、いかがでしょう。
  185. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいま松本君の留保という発言がありましたが、また理事会でよく相談して、適当な処置をとることにいたします。
  186. 松本善明

    ○松本(善)委員 いま海についてやりましたけれども、陸やそれから空についても同じです。  航空幕僚監部が三十六年一月に出しました教材で、9−E−49「精神教育の参考」というのがありますね。これは鍋山貞親という反共チャンピオンですね、この人の講演を速記して、そして教材にしている。この序文はどういうことを書いているか。「その内容は、数十年にわたる氏の体験と研究からほとばしり出た結論であり、まことに迫るものがある。」「このような情勢に処して、なお、過去、現在及び将来について誤りなき認識を把握することは、」「自らの職責遂行上確たる自信をうるために、必須の要件である」こういうことを書いて配っているのです。こういうことはまさに反共教育だ。教材として配っている。こういうことをやられている。こういうものがあったということは認められるかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  187. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 直接そのものにつきましていま記憶がございませんけれども、昭和四十七年に点検をいたしましたときに、いろいろ不穏当なもの等がありまして、それは整理をいたしております。
  188. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは不穏当なものの中に入りますか。
  189. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 内容は私、確認しておりませんし、そのリストを見ておりませんが、とにかく私どもの点検の考え方としましては、特定のものに片寄ったものを教育の資料とすることはよくないということで、整理をいたしております。
  190. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは、反共教育というようなことはやりません、やってはならぬと、先ほどは総理大臣も防衛庁長官も答えました。これは内容的に反共教育です。まさに反共教育です。これは、大西参事官ははっきり答えませんけれども、適当なものじゃないんじゃないですか。防衛庁長官でも総理でも、お答えいただきたい。
  191. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それも私、読んだ記憶も見た記憶もありませんが、いまおっしゃった著者であれは、それはおそらくそういう内容であろうと思います。思いますが、しかし、自由主義、社会主義、共産主義、あらゆるいろいろな勉強をしなければならぬ。そのことはやはり一般教養として必要であります。しかし、そうなければならぬという一方的な概念の注入をしておるわけではありません。現在のわが国の政党は、全部民主主義の議会制度に基づく政党でありますから、したがって、その政党というものを特別に意識してやっておるものではないということであります。
  192. 松本善明

    ○松本(善)委員 防衛庁長官、何を言っているんですか。いま私、読んだでしょう。これは教材なんですよ。参考資料でない。教材ですよ。そして序文では、まさに体験からほとばしり出たもので、「まことに迫るものがある。」と書いてある。これはもちろん航空幕僚監部が出しているのです。そして、「自らの職責遂行上確たる自信をうるために、必須の要件であると信ずる。」どうですか、これは穏当ですか。こういうものはときどき読ましたほうがいいということですか。
  193. 山中貞則

    ○山中国務大臣 一般の民間刊行物はいろいろありますが、もし幕僚監部がそういう推薦か序か何かを書いておるとすれば、そのことは不穏当であります。
  194. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは調べて答弁をされますか、予算委員会で。あればということですか。きちっとしていただきたい。
  195. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ちょっと見せてください——いま拝見いたしました。幕僚監部の序文と確かに見受けられます。その行為は不穏当であります。
  196. 松本善明

    ○松本(善)委員 空も済みましたから陸もやらないといけないと思うのですが、陸については、「陸曹教育用 精神教育」という小冊子、防衛出版協議会、これはPXなんかで売っているんだと思うのですが、これはどういうものか、御説明いただきたい。
  197. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 ただいま御指摘の書物は、民間の出版社が発行したものでございまして、たしか昭和三十二年に初版が出て、重版が昭和四十三年になっているものでございます。
  198. 松本善明

    ○松本(善)委員 自衛隊とは関係ないですか。
  199. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 ごらんになっていると思いますけれども、これは自衛隊から配ったものではございません。しかしながら、これは御指摘あると思いますが、序文に陸幕の第五部長の井本陸将の推薦の文が載っております。
  200. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは内容を見ますと、大体精神教育をするについての教官の指導書なんです。どういう質問をしろとか、どういうふうに教育しろとか、そういうことなんです。  その中のまず一つ読んでみますと、愛国心についてのところですね。愛国心がずっと曇りを生じてきている、その原因ということでいっている中で、「我々日本人は古来から忠誠心にあつく、いわゆる武上道としてはぐくまれて来たが、明治維新以降国家が真の一体となって皇室を中心とする民族国家を形成してからは武士道で唱えた忠誠心は愛国心となり、国を至上のものとして愛し、国のために殉ずることを無上の名誉として考えてきたのであり、これが国家の発展の原動力となってきたのであります。」まさに武士道、それから忠義という、そういう考えが愛国心の基礎であるという考えです。これが推薦をされて指導書になっている、四十三年に重版をされている、こういうことが考えられますか。  それから、「我々自衛官に与えられた使命は、共産主義的独裁の脅威から祖国の独立と民族の平和を守り、」こういうことを書いてある。これがいいと言えますか。当然というなら言ってごらんなさい。総理大臣も防衛庁長官も、そういうことはやるべきでない。(発言する者あり)自民党席から、不規則発言ですけれども、当然だと言う。おそるべきものですよ。それから反共教育について言うならば、「日本が赤化したならば同胞は生活を立てる術すらなくなってしまい、かれらから割り当てられる労働を提供することによって貧困のどん底にあえぐ」こういう教育をやっている。これは一体穏当ですか、防衛庁長官
  201. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これも民間の出版社から出たものでありますが——それは推薦文ですか。(松本(善)委員「推薦文ということですね」と呼ぶ)推薦文というのは書いてありますか。もしあれば、そこのところはおかしいです。不穏当と思いますが、しかし、その内容の個々について私は論評を差し控えます。  私は、武士道というものが日本人の精神的な流れの中の一つであるということは、いまでも変わりはないと思います。ということは、武士道というものを、何も君あるいは天皇陛下というものだけに考えるべきではなくして、いわゆる人間の心がまえの根底というものの一つにそういうものがあった。したがって、いま刀をさしているわけでもありませんし、武士というものがおるわけでもありませんから、そういう武士道というものはありませんが、しかし、人間の心の持ちようというものの一つの中に、日本人独特の精神構造というものがある。それは悪くない面もあると私は思います。  ただ、私がいつも言っているように、「自衛官の心がまえ」という、これがただ一つ、自衛官の精神教育の中心にしておるわけであります。それには、「自衛官は、有事においてはもちろん平時においても、つねに国民の心を自己の心とし、一身の利害を越えて公につくすことに誇りをもたなければならない。」と明確に書いてあります。
  202. 松本善明

    ○松本(善)委員 私はちょっと聞きとがめたのですが、武上道というのは、自衛隊の精神教育の中心にすわっていいという考えですね。
  203. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、武士道というものをもって自衛隊を教えろと言ったわけではありませんし、そういうことが正しいと言ったんではありません。しかし、その武士道というものの考え方は、日本人の独特の、外国にない考え方の一つとして、いわゆる人間の心がまえの一つとして、昔は君に忠、あるいは戦時中は天皇陛下という意味に置きかえられたでありましょうが、しかし、現在もやはり自分の身を処する、責任を遂行するというような面において、日本人独特の精神構造の一つであって、それをすりかえて、憲法に違反するような、あるいはいまの「自衛官の心がまえ」に違反するようなことに置きかえなければ、武士道とけいかなるものであるかということは、大いに勉強してけっこうであると思います。
  204. 松本善明

    ○松本(善)委員 このあれによりますと、まだかくさんの資料が、精神教育についての資料がこの書物の中でもたくさん出てきます、使われているようなものが。たとえば、「陸幕精神教育参考書」とか、それから「愛国心」「国を思う心」「祖国愛」「共産主義批判の常識」「精神教育参考教案」「使命教育教案」「精神教育の参考」「陸幕資料綴」「共産主義の思想と運動」「見方考え方」「共産主義概論」「日本共産党」等々、これはたくさんあります。これは全部提出していただけますか。
  205. 山中貞則

    ○山中国務大臣 整理をいたした後もなお存在しておるものについては、提出いたします。
  206. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理、きょう、いままでの私と防衛庁長官もしくは防衛庁の責任者との、人事教育局の責任者とのやりとりを聞いていて、これはどう思いますか。こういうような形で自衛隊は教育されたり、書物が配られたり、こういう考え方でやられている。総理の所見を伺いたいと思います。
  207. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 さっきからも間々申し上げておりますとおり、憲法の定むるところによって自衛隊も存在するわけでございまして、憲法の精神を守っていかなければならないことは言うまでもありません。  それから教育に関しては、先ほどから防衛庁長官からも述べておりますとおり、明確な教育に対する基本的な考え方は、文書にしていま読み上げたとおりでございます。その他、教育の用に供せられておると思われるもの、また精神修養その他の参考書類として推薦を受けておるもの、また部隊でもって自由に購入し、備品としておるもの、個人か所有しておるもの——個人は何を読んでもいいと思うのです、これはね。ですから、推薦とか、それからいろいろな教材に準ずべきものとして扱われたものに対して、いろいろ指摘し、批判が存するものがあるということは、いま私も聞いておりましてわかります。わかりますが、それには二十年の歴史があって、段階的に整理をしてまいっておりまして、一朝一夕にできるわけのものではないので、だんだんと、ほんとうに国民信頼をされるような自衛隊をつくるべく整理はされておりますということを述べているわけですから、これからもすなおな立場で、真に国民から信頼されるように自衛隊を教育し、訓練をし、その職務の遂行に対しては遺憾なきを期するようにしなければならない、こう考えております。  ただ、一つだけ申しますが、あなたは国会議員の調査権ということで、何でも、各省にすべてのものを要求したら——出せるものは出す、これはあたりまえです。出せるものは出します。出しますけれども、あなたの話を聞いていると、広範であって、二十年のものを全部出せ、これを各省にやられようものなら、各省の人員は倍にならなければできませんよ、実際。ですから、そこらはひとつちゃんと、国会議活動であっても、三権の中にちゃんとした制度があるわけでありますし、法律上のものもあるし、またマル秘文書もあるし、そういうものに対しては、私はやはり明確に文書でもって要求して、いままでの歴史から何からずっとというようなことになるならば、ちゃんと議院の制度のもとでもって要求してもらって、これにこたえなければ、提出をしないという場合には、内閣国会においてその理由を疎明しなければならぬわけです。そうでしょう。(「現にやっているものだ」と呼ぶ者あり)やっているものであるからといって、行政の全部の書類を出せといって、出せるものじゃありません。そういうことは明確にしてもらわないと、責任論が起こってくるのです。あなたは、いまあるものを、四十五年から、三十何年からずっといま使っているものというふうな区別をされないで、過去、とにかく国会議員が全部やって、それに行政府はこたえなければならない、その問題を絶えず国会でもって指弾をされるということになったら、行政は麻痺してしまいますから、そこらは国会でもって、委員会の制度として、ちゃんと法制に基づいて内閣に要求するものと、それから党でもって要求されるものは要求されるものと、それで個人質問資料、勉強資料として要求されるものと区分をされてやっていただかなければ、いまのように、ここで言われたものは、すべてを二十年にさかのぼって打ち出さなければならないということになったら、これはもう行政は麻痺してしまうわけです。ですから、そういうところもひとつ十分区分をされてお願いいたしたい、こう思います。
  208. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理は、そういう非常識なことがやられていると思っていたら大きな間違いなんですよ。リストを出しなさい。そんなことはできるわけでしょう。そんなことができないはずがないですよ。それをやらないで、いいかげんなものを出すから問題にしているのです。きょうは全部出すという話でした。だから、もちろん常識的に、行政を麻痺させることが目的でやっているわけではありませんから、それは資料を得て、そして聞きたいと思いますし、それから、さっき防衛庁長官は、検討したいと言う。それは時間がかかると言いますけれども、いま自衛隊の予算が問題になっているのですよ。その自衛隊の精神教育が、一体自衛隊はどういう教育をされているか。いまあなたも不穏当だと言うことが幾つもありました。そういうものを整理をして、予算委員会の最中にその答弁をする、整理をして、こういうふうにいたします、だから予算は認めてくれというのはあたりまえでしょう。私たちは、自衛隊については根本的に違った考えを持っておるし、反対ですけれども、しかし、大臣としては当然、予算の審議をしているわけですから、それについては私たち考えを改めて、不穏当のところがあるから調べて——徹夜でもすべきですよ、国民の金を使うのだから。そうして整理をして、この予算委員会中に答弁をすべきだと思うのです。  私は、その答弁をされるように委員長から言われて、そしてその答弁をまって再質問をさせていただきたいということを留保して……。
  209. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと待ってください。  松本君の発言でございますが、資料の問題は、これは理事会で協議をすべきことであって、質問を山中防衛庁長官にすることと、私に要求することとは違いますから、間違わないでいただきたい。  山中君の発言を許します。
  210. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ありがとうございます。  現在、整理した後、使用しておるものについては提出をいたします。さらに、それについても舟点検をいたします。ただし、再点検は、その本の全体に目を通さないと、いまあなたがおっしゃったように、こういう個所はどうだ、こういう個所はどうだという場所を発見しなければならませんから、それを期限を切られるとなかなかむずかしい。しかし、私は誠心誠意努力します。そのことだけは約束しておきます。
  211. 松本善明

    ○松本(善)委員 もちろん、徹底的にやるには時間が必要だと思います。しかし、予算委員会の開会中に中間報告的な検討とかということは、ある程度できるはずだと思うのです。ただ、この予算委員会の最中、これはもう黙って通り過ぎてしまって、いつのときか全部やりますということでは、私は通らぬと思うのです。あるいはそういう時間的、物理的な可能性があるかどうかという問題についてはありますけれども、しかし、当然予算委員会の開かれている最中に、ある程度のことは中間報告でもしなければならぬ義務があると思うのですが、その点については、長官、どうお考えになりますか。
  212. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、妥当であるか、妥当でないかは、主観も入ります。しかし、あなた方の角度からの主観と私の角度からの主観というものは、公平に照らし合わせてみて、やはり国民全体が見て納得できるものさしの中におさまらなければいかぬでしょう。そういう意味で点検をしますから、それはやはり、点検をするのにいつまでとおっしゃっても、それはなかなかむずかしゅうございます。しかし、せっかくの御要望でありますし、また、私たちの義務でもありますから、相なるべくんば、予算委員会の開会中に間に合うような範囲で、間に合った分だけを報告いたします。  ただ、共産党の皆さんも、正式には革新共同も入れるのですか、それは、自衛隊はけしからぬという、そういう自衛隊を目のかたきにするようなことをあまりおやりにならないように、私からお願いしておきます。
  213. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。  松本君の御発言と山中防衛庁長官発言と、まあ、そういうことを加味しまして理事会でよく検討をして、資料を出すべきものと認めた場合は資料を出す。簡単に、防衛庁長官予算委員会中に出しますとか出しませんとかということは越権のことでございまして、理事会できめることですから。  それから、なお松本君の質問に対しましてよく理事会で相談いたしまして、それで結論を出すことにいたしますから、御了承願います。  これにて松本君の質疑は終了いたしました。  次に、辻原弘市君。   〔松本(善)委員委員長、それはだめですよ、——委員長意見を述べさせてください、いまの委員長発言について」と呼び、その他発言する者あり〕
  214. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 では許します。松本善明君。
  215. 松本善明

    ○松本(善)委員 防衛庁長官はできるだけ予算委員会の最中に検討した結果を報告しようと言っているわけです。防衛庁長官は報告しようと言っているのですから、それは当然に聞いて——それは予算委員長の権限を侵したものでも何でもないんで、答弁をしようと言うのですから、それを聞いてまた再質問をしたいと私は思いますし、それから、資料については委員長の言われるとおりです。それは理事会で御協議をまたいただきたいと思うし、その理事会の協議をまつまでもなく、防衛庁は出すと言っているものもありますから、それはそれで出せばいいと思うのです。だから、そういうふうに処理をしていただきたい。   〔林(百)委員委員長……」と呼ぶ〕
  216. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 よく意味はわかりました。(林(百)委員「わかったでしょう」と呼ぶ)わかった。わかった。  これで松本君の質疑は終了いたしました。(林(百)委員「山中さんは答弁するといっているのですよ」と呼ぶ)もう終了したから、あとは理事会で。意味はわかっていますから……(林(百)委員「むしろ委員長のほうが越権のことを言っているんで」と呼ぶ)越権ではありませんよ。越権ではありませんよ。理事会で相談して結論を出します、こういうことなんです。(林(百)委員「山中さんは出すと言っているし、答弁もすると言っているわけなんですから」と呼ぶ)それはわかっている。わかっている。わかったと言っている。日本人同士だもの、みんなわかる。通訳がなくてもわかる。わかった。(林(百)委員「それは記録にちゃんととってください」と呼ぶ)記録は書いているよ。書いている。書いている。   〔発言する者あり〕
  217. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいま私の発言中、何かまずい点がありましたら、理事会で相談して取り消しますから、御了承願います。わかりましたか。  次に、辻原弘市君。
  218. 辻原弘市

    ○辻原委員 外交の問題からお尋ねをしてまいりたいと思います。  最初に、対中国の問題について、これは総理外務大臣にお尋ねをしておきたいと思いますが、国交正常化からすでに一年以上たったわけであります。今日、中国との国交回復については、私は、おそらくすべての国民のコンセンサスが得られていると思います。同時に、一日も早くその実をあげてもらいたい、一日も早く友好条約を締結してもらいたい、長い暗い両国関係を清算してもらいたいというのが、部分的感情はおのおの国民の中にあるとはいえ、私は、その方針と願望、原則については全く相一致するところだろうと思う。そういう意味におきまして、この友好関係を積み重ねていく、その結果において友好条約を締結するということはできるだけ早くやらなければならぬということも、これは申し上げるまでもないと思うのであります。ところが、その友好条約にいく過程の重要な問題である個々の実務協定について、最近の動きを見て私はまことに残念に思う。  その最も大きな問題は航空協定の問題であろうと思いますが、せんだって発表いたしておりまする運輸それから外務両省の一致した案なるものを新聞紙上で拝見いたしました。私をして言わしめるならば、この両省一致の案なるものも、総理が一昨年九月に向こうに参られて国交回復をおやりになった節の共同声明の原則からいうならば、まだまだ完全にそのとおりの筋の通ったものだとは理解しがたい点があります。しかし、一日も早く航空協定を結ばなければならぬということで、正月、大平外相が向こうに行かれて向こうとの話し合いを詰められた。その結果によってこの提案がなされたということにおいては、私も理解をする。しかし、それが一体現状はどうなのか、自民党与党の中においていまだにその結論が出ない。日中国交回復の実をあげ、友好条約を結ぶということは、これは一政党の問題ではないはずであります。野党のわれわれも、長年これに対してはあらゆる努力を続けてきて、ようやくここに至ったのではありませんか。そういう立場から考えてみると、なぜ一体ここまで与党内部においてもたもたされるのか、なぜそれによって外務大臣が、あたかも後退をせられたような印象を国民に与えるのか、私ははなはだ了解に苦しむのであります。  そこでお伺いをいたしたいが、この一項から六項までの案というものは、少なくとも、あなたが向こうに参られたその交渉の内容はつまびらかにしていただくわけにはいかぬでしょうが、この案ならば航空協定は締結できる、こういう確信のもとにその案を提示されておるものかどうか、まずここから承ってまいりたいと思います。
  219. 大平正芳

    ○大平国務大臣 辻原さんに御理解をいただいておきたいのは、いま外務、運輸両省案の形で与党に御検討をいただいておるのは、航空協定自体ではないのであります。航空協定は、日中間の国家間の協定でございまして、それは遠からず交渉を軌道に乗せなければならぬ手はずになっておるわけでございますが、台湾との間における日台航空路線を、正常化のあとの状態におきまして、それとの関連におきまして、どう維持してまいるかということでございまして、これは、その問題についていま検討をいたしておるということでございまして、このことは行政権の立場でやらしていただくことでございまして、航空協定自体は、国会の御審議をいただかなければなりませんけれども、日台間の航空路線の維持につきましては、民間の協定という姿において維持をすべきであると私どもは考えておるわけでございますので、まずそういう性質のものであるということを御理解いただきたいと思うのでございます。  それから、外務、運輸両省案として提示いたしておる案につきましては、目下検討が急がれておるわけでございまして、遠からず与党の了解が得られるものと期待をいたしております。そして、それが得られますと、さっそく本番である航空協定自体の交渉に入るわけでございまして、この航空協定につきましては、すでに予備交渉というものを去年の四月ごろからやっておるわけでございまして、ある程度問題点も解明されておりますので、それ自体につきましては、私はそんなに多くの時間を要するものとは考えていないわけでございまして、その点はできるだけ急いで仕上げた上で、国会の御審議を仰ぎたいと考えております。
  220. 辻原弘市

    ○辻原委員 二つのポイントをお尋ねしているわけでございます。  正確に申しましょう。日台路線の取り扱いという形であなたが提示をされておるものについて、あなたがこの正月に向こうに参られて、そしていろいろこの問題について折衝を重ねられたというお話でありますが、その得られた感触では、この取り扱いの範囲であるならば、中国との間の了解は十分得られるであろう、こう判断をされて提示されておりますかということ。  それからもう一つは、私がこれを拝見する限りでは、一項は、原則をうたった、いわば共同声明の原則をここに持ってきて、いわゆる日台路線の扱いは、その原則に従ってこれをやるのですよということを明示せられたにすぎない。これが原則である。内容は二項以下にあるわけですから、だから、いわゆる原則と内容というものがばらばらでこれが討議をされたり、ばらばらでこれが検討され、決定を逐次されていくというようなやり方では、これは私は、おそらくこの航空協定の従来の経緯から見て、そういうことは、先方は、中国側は了承はなさるまいと考えるから、新聞に伝えられておりました、あなたは、これを与党内部に対しては一括承認をしてくれという求め方をされておる。まことに私はそのとおりだと思う。あなたの態度を私は支持したいと思う。いまあなたは、そういう形で間もなくこの問題についても結論が出るであろうとおっしゃったが、少なくとも一括これを承認し、いわゆる日台路線の扱いはこれですよという形で、提示したとおりきまる見通しがありますか、こういうことをお尋ねしているのです。
  221. 大平正芳

    ○大平国務大臣 第一点につきましては、あの案でもちまして御了承を得られますならば、中国側の了解を得るようにわれわれは先方にお話しいたしますけれども、見通しといたしまして、先方の了解が得られるのではないかと期待をいたしております。  それから第二点でございますが、六項目それぞれ内容的に連関性を持っておりまして、そういう性質のものであるということを付言して御討議をいただいておるわけでございまして、その点につきましては、与党側にも十分な理解を求めておる段階でございます。
  222. 辻原弘市

    ○辻原委員 第一の私の点については了解をいたしました。この案ならば、中国側は了承せられるであろうとあなたは判断をされておる、そうですね。  それで、これは総理もその点については確信をお持ちになっておられますか。あなたが直接国交回復の正常化への共同声明の当事者なんですから。これは重要な問題ですね。これからのプロセスの中で重要な問題だ。この機会を失するならば、私は、おそらく日中友好条約の締結への道は遠くなるというような感じなんです。やはりいまのタイムにこれを決断をし、早急に締結するということを進めなければ、私は大きな障害を残すと考えるから、あえて総理の御見解もこの際承っておきたい。
  223. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日中国交正常化後、両国の友好親善は幅広く拡大しつつある、こう考えます。それはまあ十億ドルであったものが、貿易が一年間に倍増して二十億ドル、二十一億ドルになったということを申し上げるわけではありませんが、その間、人も物も、あらゆる交流が正常に行なわれておるということでございますし、また実務協定のうち、通商協定その他、また漁業の暫定協定等も円満に行なわれております。  ただ、目玉商品のようにいわれております日中航空協定という問題は、これはいま与党の議に付しておるわけでございます。与党から遠からず、外務大臣の述べたとおり了承が得られるということで本格交渉に入るわけでございまして、私は、日中国交正常化後は、まあ日本人的な端的な考え方からいえば、なぜいままで航空協定さえ締結できなかったのかと言われますが、   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕 これさえできれば、あとはもう非常に順調にいくということでございます。それだけめんどうな問題も含んでおることは御承知のとおりでございます。  ですから、これが協定も行なわれないで、日中平和友好条約が結べなくなるというのではなく、これをできるだけ早く国会の批准をお願いができるように政府も最善の努力をしておりますし、そういうことによって、引き続いて平和友好条約の締結というところまで持っていきたい、また持っていかなければならない、持っていける、こういう考え方で推進をしておるわけでございます。
  224. 辻原弘市

    ○辻原委員 外務大臣に私が尋ねました第二の点について、決して私は与党内部の内政干渉をするつもりもありません。ただ、事がわれわれにとってもきわめて重要な問題でありますから、私の意見を申し上げておるわけです。この内容を見る限り、あくまで一体的なものである。したがって、これを一括あなたがセットとしておやりになるという考え方は、われわれも支持する。裏を返せば、もし部分的に切り離すことがあったならば、これはハチの巣をつつくような結果になる。万そういうことをあなたはおやりになるまいと思いますが、どの方面の意見を求められるにしろ、日台路線の扱いについては、あくまでこの六つをセットとして終始をする、貫くという決意を、私はあらためてひとつ表明をしておいていただきたいと思います。
  225. 大平正芳

    ○大平国務大臣 与党側といま鋭意、事の性質を踏まえて御審議をお願いいたしておるところでございまして、遠からず了承が得られるものと確信をいたしています。(発言する者あり)
  226. 辻原弘市

    ○辻原委員 私が申し上げたような形で了承が得られるものと、いま表明がございました。不規則発言はございますけれども、私は、きわめて重要なお答えとして拝聴いたしてまいりたいと思います。  そこで、この機会に若干、この六つの内容に触れていない部分について、一括してお尋ねをしておきたいと思います。  一つは、旗と社名をそのまま使用するというのは、これは三項、四項ですが、これは従来の経緯から見て、中国側の主張がここまで譲られたということは、今後の日中友好条約の締結に、私は非常に明るい希望を持つものだから、そういう点について、これは、そのことにおいて中国側は了承しておられるのか、そこらの感触はどうなのか、これが一つです。  それから、以遠権の問題については触れておられませんが、以遠権をどう考えておられるのか。  それから、これはせんだって私は新聞で見たのでありますが、運輸当局の発表であったかあるいは観測記事であったか、順調に推移すれば七、八月には初便が飛ぶであろう、こういわれておるのでありますが、その初便というのは、複数になるのか、あるいはいわゆる日航という国策会社の飛行機であるのか、そこらも、これはまたかなり関心のある問題でありますが、明らかになっておりません。  それからもう一点は、台湾の飛行機の取り扱いは、これは少なくとも従来の形に存続するのでありまするが、別会社をつくってやる、こういうことに話がなっておるように聞いておるのでありますが、それらの点については具体的に進展しているのか、結論が出ておるのか、あるいはこの六項目の確定と同時に結論が出るものなのか、ここらの見通しと内容をひとつ承っておきたいと思います。
  227. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまお尋ねの件につきましては、先ほどお答え申し上げましたとおり、本案で対処をいたしますならば、中国側の理解を得られるであろうと私は期待いたしておりますと申し上げたところから御判断をいただきたいと思うのであります。  それから、初便が飛ぶのはいつかということでしたか、第二の……。
  228. 辻原弘市

    ○辻原委員 初便は複数か単数か……。
  229. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日台ですか、日中ですか。
  230. 辻原弘市

    ○辻原委員 日中です。
  231. 大平正芳

    ○大平国務大臣 本件は日台路線の取り扱いをきめたものでございまして、航空協定の交渉は、この措置が終わりましてから始めるわけでございまして、それにつきましては、これから交渉にかかるわけでございまして、予備交渉は若干やっておりますけれども、まだ国会で申し上げる段階ではございません。  それから第二の、二項に関連しての御質問でございますが、あすこに書いてありますとおり、日航は就航しないようにするということ以上には、この段階ではきまっておりませんで、それはどういう会社になるかというようなことにつきましては、本案は触れていないわけでございます。
  232. 辻原弘市

    ○辻原委員 いまのお答えの範囲内で判断をいたしますと、日台路線の扱いについては、この六項目セットで政府としてはあくまで方針を貫く、しかる後に航空協定全体のいわゆる未解決、未交渉の部分についてはやるのだ、したがって、私がお尋ねをいたしましたような点についてはこれからだ、何ら政府としての腹案はきまっていない、こういうことでございますね。  それじゃ私は、次に日ソ問題について質問を進めたいと思いますが、これは昨年末の当予算委員会におきましても、同僚委員から触れておりますが、私は、いわゆる日ソ首脳会談というものの時期あるいは方法等については、率直に申して、いろいろまずい点があったのじゃないかという個人的見解を持っております。しかし、首脳会談において懸案問題を解決し、平和条約の締結に努力をされたという熱意については、私は敬意を表しております。  しかし、問題はこれからであります。一体、どうして北方領土をはじめとする懸案問題を解決して、平和条約の締結までこぎつけるかというプロセスの問題、ここに私は、これは日中もそうでありますが、わが国とこれらの国々との国交の正常化、あるいはあるべき関係についての基本姿勢がやはり問題になると思うのであります。と申しますのは、ただ首脳会談をやった、あるいは政府間のいろいろな協定ができたということで、真に相互信頼に基づく友好関係が生まれるやいなや、ここに私は疑問があるのであります。  はなはだ抽象的な言い方で恐縮だが、不断の友好親善関係の継続、政府は政府として率直におやりになろうし、また民間は民間として、従来のものをより濃密に積み重ねていかれるであろうし、こういうような過程において、初めて真の友好の雰囲気というものが生まれる。これを継続していくことが必要である。私は、昨年の八月、訪ソいたしました際に痛切にそのことを感じました。したがって、あえて私は、いま自分の見解を申し上げて、総理の所見も、これからのお考えも承っていきたいと思うのであります。  その基本姿勢について、何回も積み重ねる必要がある。だから、共同宣言の中には、七四年中に交渉を継続いたしましょう、また総理がこの間も述べられたように、ソ連側首脳部の招待もいたしております、こういうことでありますが、それを、ただ機が熟するということで待つのではなくて、積極的にそういう機会をつくっていくという努力がなくてはならぬ、こう思うのであります。  せんだっての脱漏問題に関連をして、ソ連大使館のスタッフの強化をされたということも新聞で承りましたが、確かに私はその必要があると感じておりました。そういう点からいって、やはりもう少しこれからのプロセスというか、そういうものを明らかにする必要があるし、また、そういう機会を積極的につくっていく、そういうことが非常に望まれる、こう考えますので、総理のお考えをひとつ聞いておきたいと思います。
  233. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私からまず……。  辻原さんのおっしゃるとおりに、外交は不断の努力、間断ない努力が大切であるということ、私も仰せのとおり心得ておるわけでございます。  国交回復以来今日まで十七年たったわけでございますけれども、その間、両国のたゆみない努力で人的な交流も進み、相互理解も進み、貿易その他経済交流も厚みを増してきておるわけでございます。それはそれなりに御評価いただけると思うのでございまして、そういう中で、いま御指摘の日ソ間の懸案という問題を解決していかなければならぬわけでございます。  これからの展望についてというお話でございますが、まず第一に、あなたが御指摘のとおり、この懸案の解決というには、やはり日ソ間の信頼理解が、懸案を解決するだけの厚みとあたたまりを持つというように持っていかなければならぬと思うのでありまして、それまで間断ない努力が要請されておると思うのであります。共同声明にもうたわれておりますとおり、未解決の問題を解決して平和条約の締結をするというのは、両国の合意でございまして、したがって、平和条約の締結をやるにつきましては、懸案の解決がなければならぬわけでございます。ソ連といえども、平和条約の締結をしないとは言っていないわけでございます。したがって、ゴールは見えておるわけでございますので、それに達するためには、あなたの言われる不断の努力をこれから鋭意積み重ねてまいる必要があると考えておるわけでございまして、第一歩といたしまして、総理訪ソの際に合意いたしましたように、本年中にこの問題につきまして継続交渉をするということを取りきめてあるわけでございまして、こういう努力をこれから鋭意精力的に進めてまいることが第一でございます。  それから経済交流、経済協力の問題につきまして、あなたも言及になられましたように、民間におきまして、ソ連当事者との間で事業上のベースでフィージビリティースタディーが行なわれておりまするわけでございまして、このことは政府は無関心ではないわけでございまして、そういう調査団の派遣等には政府の職員も参加させて、十分その間の経過を知悉いたして、承知させておいておるわけでございます。そして民間の間に基本的な契約ができる、それが満足すべきものでございますならば、政府は政府資金の投入等の姿において、これを援助してまいるという手順を踏んでまいるわけでございまして、これは日ソ間ばかりでありませんで、どの国との間にも行なわれているような筋道を、ソ連との間におきましても同じ条件で履修してまいることによって、一つ一つ固めてまいらなければなりませんし、すでに幾つかのものに合意し、すでに小型ながら経済協力が実現いたしておることは御案内のとおりでございまして、いま取り上げつつあるのは相当規模の大きい、信用量も大きいものでございますし、技術的にも非常に問題の大きいものでございますだけに、ずいぶん時間がかかっておりますけれども、これにつきましては、官民とも不断のスタディーが必要でございまするし、たゆまない努力が要請されておると思うのでございまして、そういうラインに沿って政府も努力いたしておるわけでございます。  私ども、全体として見まして、日ソ間の交流、間柄というようなものは、決して不満足のものではないと心得ておるのでございまして、いままでのラインを踏まえて、今後仰せのとおり間断ない努力を重ねてまいらなければならぬと考えております。
  234. 辻原弘市

    ○辻原委員 いま後段で触れられました経済協力の問題でありますが、いまあなたがおっしゃったのは、従来のやり方を踏襲して、いわゆる民間主導型の経済協力に政府が協力をするという形だと思うのです。ところが、私が得ておる感じ、また現実の動き等を見ますと、たとえばシベリア経済開発に基づく五つのプロジェクトにいたしましても、必ずしもいままで言われておるほどには進展をしていないと私は考えているわけであります。  たびたび論じられておりますように、わが国の資源外交の立場からいい、あるいはまた、今後のアジアにおける平和の問題に関連しての立場からいい、シベリアという問題については、わが国は新たな認識を持たなければならぬ段階だと私は心得ておる。そういう点からいたしまして、いままでの民間主導によるいわゆる経済協力、特にその中のウエートの高いこのプロジェクト問題というものは、いまのようなやり方で進展するのか、こういう私には疑問が出ておるのであります。  言いかえますならば、たびたび私どもも感じますることは、なぜ一体、日本政府はもっと積極的に前に向いてこないのだろう、なぜ前に出てこないのだろう、常にうしろに引っ込んでおる、ある場合にはアメリカの鼻息をうかがう、あるいはヨーロッパのあちこちを回って、まあ牽制をしたということばは少しきつくて語弊があるかもしれませんが、田中さん、総理、そういう印象を与えておるのです。そこに私は、この日ソ関係なり、あるいはプロジェクトの進展問題に、もたもたしている一つの大きな理由がある、こう思っております。  個々のプロジェクトについては、お尋ねする時間がありませんが、たとえばチュメニにいたしましても、いろいろ総理がこの前答えておられましたが、その後進展がないじゃありませんか。だれも近ごろでは、当初の勢いのように、いまにも四千五百万キロリットル、これが供与される協定が結ばれる、具体的にバンクローンも動き出しましたなんという感じを持っていないでしょう。まあ長演説になりますからこの辺にとどめまするけれども、政府がもっと前向きにおやりなさい、このことを、私は経済協力について特に御注文を申し上げたいと思います。  それからもう一つは、初めて今度の共同声明と同時期に、いわゆる科学技術の協定あるいは文化協定等々、いままでなかった協定が結ばれて、政府間のそれらの動きが始まっているわけなんです。先ほど私が具体的な動きを示しなさいと申し上げたのは、このことなんです。同時に、民間の従来やっておるのに対しても援助を与え、厚みを増しなさいと言ってある。たとえば、いまシベリア展覧会が昨年の十二月末から五月に向けて行なわれておる。あるいは中国の場合にも中国展が近く行なわれる。それは直接政府が主催するものでないかもしれぬ。しかし事は、やはり両国の重要な一つの行事、関心のある問題ということになれば、もっと政府自体が積極的な姿勢を示すべきである。  一体、これらの催しといいますか、これらの事柄に対して、政府は具体的にどういうことをおやりになっておりますか、お答えを願いたい。
  235. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘の大シベリア展、中国展は、文化展示だけを対象とするものではございませんけれども、いずれも当該国政府の主催、ないしきわめて実質的な協力のもとに進められておる企画でございまして、わが民間が、これに対して協力ないし主催の形で積極的に関与しているという仕組みをとっておるわけでございます。したがって、これに対しまして、政府が各種の便宜をはかる以上に共催等の形で前面に出ることは、私は必ずしも適切ではないと思います。  しかし、あなたの言われる趣旨はよくわかるわけでございまして、前面に出ないにいたしましても、実質的な協力は積極的に進めなければならぬことは当然でございまして、国際文化交流基金をおつくりいただいて、文化予算の拡大をお願いいたしましたのも、そういう趣旨のことを考えてのことでございまして、形の上では前面に出ておりませんけれども、実質的にはあなたのおっしゃるとおりの趣旨で、実質的な成果をあげるような御協力は惜しまないつもりでございます。
  236. 辻原弘市

    ○辻原委員 いま文化交流基金のお話が出ましたが、具体的にそれで援助をされるというつもりですか。あなたのおっしゃるとおりとおっしゃったけれども、まあ、こう申してはなんですが、それは便宜とかいろいろな配慮はあったでしょう。しかし、具体的にどれだけの援助をされておるのかということをお尋ねしたのですが、いまあなたの口から文化交流基金の問題が出ましたから、だから、そういうもの等を、今後必要な場合には、わが国で主催する場合も十分使うのだ、そういう意味においていまお答えになったのですか、どうなんです。
  237. 大平正芳

    ○大平国務大臣 文化交流基金の運用につきましても、必要に応じて、協力の一環として使用する場合も考えてまいりたいと思っております。
  238. 辻原弘市

    ○辻原委員 結論的に申し上げまして——私は、各論をやる時間がございませんので申し上げませんでしたが、要は、いま申し上げましたように、政府間協定もできたのだから、それも一生懸命にやっていただこうし、民間の場合も、いままでの姿勢より一そう政府がやはり具体的な協力体制をしくべきだ、それが、原則的に申し上げました、いわゆる両国間における真の友好、相互信頼、これを積み上げていくものだ、その中において初めて、その友好的雰囲気の中において初めて、われわれ日本国民が切実に要求している北方領土の問題をはじめ、懸案の問題について相互理解が得られるであろう、そのことなくして解決はないということを私は申し上げたのでありまして、心してやっていただきたいと思います。  外交問題は、また後日あれすることにいたしまして、少しく他の問題に具体的に入ってまいりたいと思います。  文部大臣、最近学用品が非常に高騰して、あちこちから痛切な訴えがありますが、その実情をよく御存じか、また、文部省は何らかの対策をやっておられますか。
  239. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 物資、物価の事情が、こういうことになりましてから、昨年、文部省に教育資材班を設けまして、末端でどういう要情になっているか、その把握に努力をしてまいってきております。その結果、問題のある物資につきましては、物資所管の官庁に対しまして協力を依頼してまいったわけでございます。  御指摘のように、学用品につきましては相当な値上がりを示しておりますので、苦慮いたしておるわけでございます。しかし、特に物資が入手できないというような問題は、ざら紙について一部地域についてございました。そこで、これにつきましては、通産省のほうに協力をお願いしたわけでございます。その結果、二月から四月にかけまして、三千トンを三回に分けて、都道府県ごとに定められました二次卸商から需要に応じていただくということになったわけでございます。一しめ千枚七百二十円で渡していただける、公立学校につきましては、市町村の教育委員会ごとに取りまとめまして、この二次卸商から受け渡ししてもらう、そのほかの学校につきましては、学校それぞれが直接受け渡しをするということにいたしたわけでございます。  なお、ノートその他につきましても、通産省で価格引き下げについていろいろと御苦労いただいておるわけでございます。問題のありますつど、それぞれ所管の庁に御協力をお願いするということで進めてまいってきておるわけでございます。
  240. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は、あらかじめ文部省に対して、最近の学用品の価格の動向についてお尋ねをし、資料を求めました。  いま大臣のお口から答えられたあれによりますると、指導課というのが設けられて、きわめて熱心に、かつ迅速におやりになっているようなお話でありますが、決して私は、ここの諸君を責めるわけではないが、まことに残念、かつがっかりしたのであります。それは、私は文部省から最近の学用品の価格の動向についてひとつ資料をもらいたい、こうやりましたら——これは、あとで大臣、あなた御参考に見ておきなさい。いかに不熱心かということが、この資料において明らかだ。ざら紙は四十八年六月ごろ三百三十円、四十八年の十二月——これは私か指定したんです。六月ごろと十二月ごろと比べてどう上がっているかを調べさせた。そうしますと、これは千円。カッコ書きで東京医科歯科大学の何とか資料。それから二番目は、ノートブック五十円が七十円、四十八年十二月、これは東京都の小売り物価指数による。以下鉛筆、絵の具、運動ぐつ、五つ書かれて、いずれも東京都の小売り物価指数による。私の判断では総理府統計だと思うが、こういうものを私は文部省に実はお願いしたんではない。文部省自体が実態調査をされ、それにどういう対応をされているかということをお尋ねしたんだが、私は、ようやくできた課ですから、課の係の諸君を決して責めるわけではないが、文部省全体の姿勢が、一体かほとの値上がり問題に対して——いま得々とさら紙の問題を述べられたが、ざら紙の問題はこれから始めますが、どうも残念なんです。  新学期あるいは学年末を控え、父兄はいま泣いている。そういう中で、これほどしか対応策がないのか。これで一体、どうして物価対策の上で、文部省が所管をする学用品対策がやれますかということなんです。大臣、御所見があれば……。
  241. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先ほど辻原さんから御指摘があって、こういう価格をお渡ししましたという報告を受けました。そうしますと、それは卸の値段じゃないか、やっぱりお示しをするんなら、一般市販の価格を御連絡するのが筋じゃないか、こう申し上げましたら、通産省にも同じようなお話がございましたということでございましたから、それじゃ、価格の問題は、物資の所管官庁のお答えにゆだねたほうが混乱をしないでいいな、こういう話をしたところでございます。  私も昨年来、日用品の問題については、かなり心配をいたしておりまして、しばしば関係者を呼びながら、どういう品物について需給状況がどうなっている、価格がどうなっているということは話し合いをしておるわけでございますので、関係の者も不熱心じゃなしに、かなり心配をしておったわけでございまして、油の問題でありますとか、セメントの問題でありますとか、学用品の問題でありますとか、それぞれのところへお願いをしておるわけでございます。物資の所管の官庁でお世話をいただく以外にはないだろう、かように考えるわけでございまして、通歴省では、学用品の問題につきましては、文化用品課がたいへん熱心にお世話いただいている、かように私としては承知いたしているわけでございます。今後もなお積極的に混乱の起きないように努力をしていきたい、かように存じております。
  242. 辻原弘市

    ○辻原委員 いやいや、それはいいのです。文部省の姿勢をいまぼくは言っているんだ。いま大臣、熱心にやっておられると言うのだったら、調査をやっておりますか。結果がありますか。一覧表がありますか。通産省は別の話なんですよ、これは。あとで私は、通産省には聞きます、一般分科のときに。文部省自体のあれとして、具体的にどういうことをやっておられますか。
  243. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 文部省が調査しますときには、国立大学でありますとか、あるいは教育委員会でありますとかいうようなところで事情を聞いているようでございます。そういう意味の調査資料は、御参考にこれをひとつごらんいただいたらけっこうだと思います。
  244. 辻原弘市

    ○辻原委員 はしなくも私の資料にも一つ出ているんだ。これは聞いたものをそのままなまで書いてますね。大学で聞いた。そんなものは、毎日の新聞を見ればあるのですよ。われわれが文部省に要求しているのは、文部省が実態調査をして、その把握の上に立って、どういう具体的な学用品対策をやっているか、そのことを尋ねているのですよ。それじゃなぜ、あるなら出さないのですか。だから私は、スタッフが少ないなら少ないとおっしゃったらいいと思うのです。私も知っているのですよ。どういう経過で生まれたかということは知っているんだが、それを、あたかもやっているがごとき答弁をされるから、これを聞いておってごらんなさい、文部省は一生懸命やっておるのに、なぜ出ないのだろうかということになるわけだね。
  245. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私は、ありのままを申し上げたわけでございます。しかし、なおいろいろ問題のお気づきの点につきましてはお教えをいただきまして、積極的になお、大事なことでございますから、将来とも努力を続けていきたい、かように存じます。
  246. 辻原弘市

    ○辻原委員 いま、ざら紙の話をあなた得々としておやりになったが、ざら紙については、そうすると、文部省はどういうことをおやりになって、そして、いまあなたがお話しになった二月から四月までの分の三千トンが出たのですか。文部省がやったのですか。
  247. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先ほども申し上げましたように、価格以外に、品不足で困っているという問題が一部の地域でざら紙について起こったわけでございます。したがいまして、ざら紙につきましては、そういう手配の必要がありますので、通産省にお願いをしてまいったわけでございます。通産省のほうでも、その事情を御心配いただきまして、先ほど申し上げましたように、緊急増産をして三千トンを学校用に振り向けるという手配をしていただいた、それが、私が先ほど申し上げましたようなことで具体的に取り進められているのだということでございます。
  248. 辻原弘市

    ○辻原委員 私どもは、十二月及び一月にそれぞれの実態調査をしております。  それで十二月の段階、すなわち十二月の中旬に、われわれが倉庫の調査、流通の調査をいたしました。そのときに、その倉庫の中には——まあ倉庫名は具体的には避けましょう。これは芝浦にある倉庫です。ざら紙も新聞紙も上質紙もたくさん滞積、積み上げられておったのであります。それで、いろいろ市場末端ではざら紙がないといって騒いでいるのに、このざら紙は一体何事だ、こういうことでいろいろ話を聞きますると、地方の小売り屋さんあるいは卸屋さんから紙不足をたいへんやかましく言われるので、メーカー側と相談をして、十二月、学校用として五百トン準備をいたしましたということなんですよ。  ところが、その後、学校からも教育委員会からも文部省からも、この紙についての話はございません。通産省からも行政指導も何もありません。当時は品がれ、品薄で紙の価格がどんどんどんどん上がっている最中、私は、業者としてはたとえ十枚でも一束でも出さなければ、価格は上がり高売りができる、出さないという心情に立つのも無理からぬことだと思う。そこにもし行政指導があったならば、十二月には五百トンが放出されているはずなんです。倉庫にはなかったはずなんだ。そのときは何にもやっちゃいないですよ。そして、一月になって初めて世間がやかましくなってまいりました。そこであなたが、文部省が通産省にそういう話を持ちかけたんでしょう。通産省もやっと動き出した。  ここで一ぺん通産省にもお尋ねしておきたいと思うのですが、学校教育用のざら紙の緊急対策というものをきめられましたね。それで何か通達もされておるようですが、私の記憶では、たしか一月の二十二日ごろだったと思うのですが、これはいかがでしょう。
  249. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 一月の三十日に、低廉供給すべく各都道府県に所在する幹事卸売り商に具体的にこれを通達し、指示をいたしました。いろいろそれまでに、配給の方法、どういうルートで渡していくか、そういうことを協議しておったわけでございまして、その協議が整って、具体的に指示したわけでございます。
  250. 辻原弘市

    ○辻原委員 いわゆる、協議をしてその対策をきめられた時点はいつですか。最終的にきめられた時点はいつですか。
  251. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 どういうルートで流すかというようなことで時間が手間どりまして、正式に各都道府県に所在する幹事卸売り商に、先ほど文部大臣が申されましたようなルートで、学校長または教育委員会の申し受けがあったら、すぐ出すようにという最終措置が確実に講ぜられたのは、一月三十日の指示でございます。
  252. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで、ふしぎなことがあるのですよ。私は、その一月三十日のあれを新聞で拝見をした。ところが、新聞で拝見をいたしますと、すでに一月十六日に、ここに私は持っていますけれども、一月十六日に業者が集まって、いわゆるざら紙B4対策の件として、各メーカーから代理店、卸と流した内容とこれは全く同じなんです。あなた方のほうでいろいろ協議をしていまお話しのようにきめられた、こう言ったが、そのきまっておる内容は、一月の十六日に業者の間でもうすでに通達が出て流れておる、体制がとられておる。  私がここで言わんとすることは、文部省もいろいろやっております、通産省もやっておりますと言うけれども、それをずっとルートに従って実態調査をいたしてみると、何のことはない、業者が世論に負けて、また、あるいはわれわれをはじめ、いろいろな調査なり、これに対する点検が当時行なわれた、そういう中でようやく放出のあれをきめ、そのまた取り扱い事項を業者間できめ、そのことを追認されただけなんですよ。ここにあなた方のきめられた内容の発表の新聞がある。おっしゅったように、二十二日にいろいろ協議をして三十日に通達を発せられたと書いてある。ここに私が持っておるこの業者の通達というのは、一月十六日に出ているのです。何ら積極的に、この物不足、紙不足の中で、業者に対して行政指導をした結果生まれてきたものじゃない。それをただ追認して、ていさいをつくろって、やりました、やりましたというにすぎないんです。こういう手おくれなことを幾らやりましても、今日国民の期待に沿えるものじゃないということを私は申し上げたいのです。それはどうですか。
  253. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は、何かのお考え違いではないかと思います。私は、イラク、欧州へ参ります前に、一月五日、六日にわたりまして生活産業局長に、これからは学童の教材が問題になる、至急クレヨンとか、あるいはざら紙とか、学習ノートとか、そういう問題について手配をしろ、私が帰ってくるまでにできるだけ成果をあげるようにいろいろ指導しなさい、そういうことを指示して行きました。その留守に、生活産業局長はそういう面についてあらゆる努力をして、内面指導をしてきたはずです。具体的には局長から答弁させます。
  254. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたが指導したということは、あなたがそうおっしゃって出かけられたということは、私は了承しますが……(中曽根国務大臣「ちょっと局長から答弁」と呼ぶ)
  255. 橋本利一

    ○橋本政府委員 ただいま大臣から申し上げましたように、正式の通達の形にいたしましたのは一月の三十日でございますが、私たち昨年の十二月ごろから準備いたしておりまして、また、先ほど大臣が申し上げましたように、大臣外国出張のみぎりにも強く指示を受けておるわけでございます。  その間、いろいろ準備いたしたわけでございますが、まず三千トンの増産をいたしますためには、電力、重油等を確保する必要がある、あるいは生産したものにつきまして、全国にどのように配分するか、あるいは、この配分にあたりまして、幹事会社をどのように選定するかといったような作業も並行してやっておったわけでございます。特に、三千トンと申しますが、かりに千トンを一カ月分として配送する場合にも、十トン車でも百台もの車の準備が要るといったようなこと、要するに、現地におきまして不必要な混乱が起こらないように、しかも、発表すると同時に、できるだけ早く学校のそれぞれのところに配給できるようにといったようなことで、準備を実は進めておったわけでございます。いずれが先、いずれがあとといった問題として私は申し上げたわけではございませんが、そういった混乱を未然に防止しながら、整然とこのデリバリーを行ないたいということで準備いたしておったわけでございます。
  256. 辻原弘市

    ○辻原委員 それじゃあなた、どうして、十二月に業界がそういう手配をしているのを滞貨のままで見過ごしたのですか。大臣がそのことを言って、十二月から準備しておるのだったら、なぜそのことを言わないのですか。実態調査しないのですか。われわれは現物を見ているのですよ。
  257. 橋本利一

    ○橋本政府委員 ただいま御指摘になった倉庫調査ということとは関連なく、ざら紙の需給が非常に逼迫してきておる。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 ことに、先生から御指摘のありましたように、価格につきましては昨年同期の二倍ないし二・三倍にもなっておる。また一方、それぞれの地域から苦情が出てまいっておりまして、そういったことがございましたので、倉庫の問題としては知り得なかったわけでございますが、いずれにいたしましても、教育に関する事態である、重要な問題であるということから、まず増産、増産したものをできるだけ早く、市中価格よりはるかに安い価格で届けたいということで準備しておったわけでございます。
  258. 辻原弘市

    ○辻原委員 私の問いに答えていないじゃないですか。大臣が指示されたことを私は認めましょう、あなた方が熱心に取り組んだことも認めましょう、しかし、結果としてはそういうことになっておるじゃありませんかと言っているのですよ。十二月に業者は、そういう行政指導がありましたならば喜んで出したはずなんです。しかし、何にもおっしゃってこられぬから、われわれは、ごらんのとおり十二月は倉庫の中に積んだままでしたと言っているのですよ。  それからもう一つ、あなたはそれまでいろいろ準備をいたしましたと言いますが、十六日の通達は、もうその時点で各業者を集めて流れているのです。読み上げましょうか。同じなんですよ。なぜ、業者が十六日に手配しているものを、あなた方政府のほうは三十日にしか通達できないのですか。逆じゃないかと私は言っているのです。そういう対策をきめて業者に要請をして、業者がもたもたしておくれましたというのならば、これは業者の理由によるでしょう。しかし業者のほうは、ここにちゃんと書いてあるんですよ。同じことなんです。「更B4対策の件 メーカー側より一月−三月に就いて、従来実績プラス五百トン増加販売決定。之に就いて各地区、流通段階での円滑な供給態勢を要請される。一月分の増加分五百トンの中、東京、大阪に緊急用として斡旋所に夫々五十トン、残四百トンは夫々縦の線にて善処の事とす。価格に就いて、東京地区では公立学校用は区役所、市役所にて入札方式をとって居り、応札価格は一包八百円以内にて卸商を指導する。」云々、以下ずっと同じなんです、あなた方がきめたものと。十六日に出ているんですよ。  私は、だからあと追いじゃないかと言っているんですよ。だからあなた方の通達は、この部分に関しては必要でしょう。それはいわゆる教育関係の問題ですから、私立学校はどうする、あるいはそれぞれの教育委員会はどうする、こういうことについて文部省の通達は要るかもしれません。しかし、これは通産省が出した通達と同じなんですよ。それを言っているのに、あなた、べらべらべらべら、こういうことをやりました、一生懸命やりましたと言われるが、そういう話は通りません。十二月はなぜ行政指導をしなかったかということです。なぜ、十六日に業者から出ているということについて、即刻あなた方は通達をされなかったかということを私は言っている。おくれるだけ価格は上がるのです。高いものを買わされるのです。一日も争うのだ。そのことを言っているんですよ。
  259. 橋本利一

    ○橋本政府委員 大体先生指摘のように、十六日ごろには実態が固まっておったわけでございますが、今回のあっせんの対象といたしまして、原則といたしまして、国立、公立、私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、短期大学、高等専門学校大学及び各種学校、すべての学校を対象としてあっせんいたしたい、つきましては、公立学校につきましては、当該学校を所管する教育委員会、あるいはその他各種学校につきましては学校長から申し込んでいただくといったような手続の必要もございまして、その間、並行して文部省と連絡をとっておった、こういったことでございまして、御指摘のように、できるだけ早くというつもりでやっておったわけでございますが、正式に確定的になったのは一月三十日で、その点はまことに遺憾とは思っておりますが、反面、二月十日までにすでに準備いたしております千トンの分は、各地域に配送を完了する手はずは整っております。  御指摘のように、さらに一段と早くこれが実施できれば、さらによかったというふうには反省はいたしております。
  260. 辻原弘市

    ○辻原委員 具体的な質実をあなた方に指摘しなければ、やはりやったことについての反省がない。私はいけないと思うのです。やれなかったらやれなかったで、決して私は追及しないのです。それを、あかもことばの上でやったかのように、まあごまかすということばは少し失礼かもしれぬけれども、そういう経過があるから私は言っているのです。文部大臣、何かおっしゃりたいことがあれば、どうぞ。
  261. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 通産省のほうでたいへん努力していただいておりますので、経過だけ私からお答えをさせていただきます。  紙の問題は昨年からでございまして、教科書の紙の調達をどうするかということから文部省としても苦慮してまいりましたし、また通産省にも協力をお願いしてまいりまして、それは昨年のことでございまして、いま、十六日ごろに業者がこういう用意をしておったというお話がございましたので、私も思い起こすのですが、半ばごろでございましたか、私が要務当局から通産省との話し合いの経過の報告を受けておりまして、おそらく二次卸商から学校へ渡すことになるでしょう、こういう報告を、通産省との話し合いの結果として私に報告がありましたのはそのころでございます。したがいまして、業界の指導につきまして通産省が、従来からずっと指導していただいておるということについては、ぜひ御理解をいただきますように、私からもお願いを申し上げておきます。
  262. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなた、私の申し上げたことを正確に聞いておいていただきたいと思うのだが、われわれが倉庫で発見したのは十二月分なんですよ。十二月じゅうに要請があれば出しますと、業者はその対応を世論に負けてとっておった。いまあなた方が通産省と相談してなさっているというのは一−三月、一−四月でしょう。話が違うのですよ。まあ、しかしこれは過ぎ去ったことですから、今後のそういう行政対応の上に、大いに教訓として生かしていただきたいと思います。  もう一つ、私は紙の問題について申し上げておきたいと思うのだが、昨年の十一月半ばに、これも私どもはいろいろ調査をいたしました。大手メーカーが卸代理店を呼んで、他の業種と同じようにこういう言い渡しを行なっておる。それは、総理、石油が上がりました、紙は三五%カットです、十一月の半ばにメーカーがこうやったわけです。問題はここから始まっておるんですね。このため、その話を聞いたそれぞれの卸問屋が、これは先高になる、また先行き紙は極端に不足をしてくる、こういうことでストックが始まったわけです。同時に価格の上昇もありました。ところが、先ほど申し上げたように、この時点、十一月の時点、それから十二月の中旬ごろまだ紙がたくさんあった。新聞紙も何もかもたくさんあった。ところが、そういう経緯からざら紙も上がった。上質紙も大幅に値上がりをいたしました。  そこで、上質紙からつくられるノートの末端価格が、先ほどあなたがお話になったように、大体三十枚つづり、去年の六月ごろには五十円ぐらいであったものが、一挙に九十円、百円という暴騰をしておる、こういう結果になったわけですね。当時私どもは、なぜ物があるのにこんなに値段が上がるのであろうということを非常に疑問視をして、メーカーなりあるいは卸の方々に、おかしいではないか、こういうことを強く要請をしておったのでありますが、詰問をしておったのでありますが、その結果が最近きわめて明瞭になっております。  これは通産大臣にちょっとお尋ねをしておきたいと思うのですが、紙の十二月の前年対比の生産率、それから在庫率はもうつかんでおられると思うのでありますが、どうなっておりますか。
  263. 橋本利一

    ○橋本政府委員 お答えいたします。  十二月時点におきます紙、板紙の合計の生産高は百三十八万一千トン、前年同期一五・六%アップでございます。在庫高は四十四万四千トン、前期比七二・三%。ただし、十一月に対して三万トンほど紙、板紙の合計でふえております。  次に、紙だけで申しますと、十二月の生産高が六十九万一千トン、在庫高は二十九万九千トン、生産は前年比六・五%でございます。
  264. 辻原弘市

    ○辻原委員 前月比はどうなんですか。
  265. 橋本利一

    ○橋本政府委員 在庫でございますか。——在庫は前月が二十七万八千トン……
  266. 辻原弘市

    ○辻原委員 いや、率です。ぼくは率を聞いているんです、前月比で。
  267. 橋本利一

    ○橋本政府委員 前月比、数%の伸びかと思います。
  268. 辻原弘市

    ○辻原委員 私の調べた数字によりますと、率からいえば、十二月は十一月に比較をして生産は四・五%程度落ちているようであります。ただし、逆に在庫は一〇%ないし二〇%伸びている。これは十二月の鉱工業生産指数から見たあれです。数字は多少違っているようだが、いま生活局長が言われた点と傾向は相一致している。十二月は生産が落ちた。それは要するに、業者は石油がないから二五%紙の生産をカットしますということが、二五%カットではなくて、実質は四・五%のカットにとどまったということを意味している。それから在庫が一〇ないし二〇%ふえているということは、先ほどから私が申し上げているように、売り惜しみをやったということなんです。在庫の積み増しをやったということなんです。そうして値上げ、高騰をはかったということが、ここにこの数字で結果的に一目瞭然なんです。  その結果が、一体価格はどういうふうにはね上がったかといいますと、十一月の中旬から十二月の初めにかけて、ノートの材料である上質紙は、これは業界によって多少違いますけれども、キロ当たり大体九十五円程度でありました。それが十二月になりますと、一挙にキロ当たり百四十五円、すなわち上質紙キロ当たり五割アップ、五〇%のアップになっておるのです。総理、数字をながめられておりますが、間違っていたらおっしゃってくださいよ。これはわれわれ実際のものを調べたのです。十二月には、従来九十五円のものが一挙に百四十五円。これはあるメーカーの仕切り値から割り出した。  そこで私は、具体的にわかりやすいようにノートを例にとりましょう。学童あるいは学生が使う、われわれが使う三十枚つづりのノートは、先ほど申し上げたように、従来は一冊五十円、いま百円になっています。この三十枚つづりのノートを一冊つくるのに、紙の原価は、このはね上がった百四十五円を使って一体どうなるかという計算をしてみたのです。そうすると、上質紙一枚で大体三十二枚あのノートの紙がとれるそうであります。十二月の上質紙の価格はいま申した百四十五円。これはメーカーの仕切り値でありますから、そこに今度卸への流通マージンが必要になってくる。これを調べたところが、通常のマージンは大体二%ということであります。ところが、この段階における流通マージンは七%。この系列をずっとわれわれは調べてみた。七%です。したがって、百四十五円のメーカー出しにいわゆる卸の手に渡った段階、卸から今度は加工メーカー、すなわちノートならノートの加工メーカーに行くわけだから、その段階の上質紙のキロ当たり価格は百五十五円ですね。そこで、上質紙は千枚で五十五キロでありますから、それを割ってみますると幾らになるかという、大ざっぱな計算で恐縮ですけれども、大体八円二十五、六銭から九円程度、要するに、上質紙一枚が大体九円程度と踏んで間違いがないと思います。その上質紙一枚から三十二枚とれるわけですから、要するに、ノート一冊分の原価というのは、去年の十二月の最も高い五〇%アップのときを計算してみても、これは一冊で八、九円程度ということになるんです。それが、文部大臣、百円なんですよ。もちろん、それには表紙もつけなければなりません。かがりもしなければなりません。だが、一体主たる原料、主たる材料である紙が、最も高値を計算して割り出してみても、八、九円というものが、十倍以上のノートに化けて出るというのは、一体どういうことでしょう。こういうからくりがあるんですよ。  だから、あなた方行政指導をいろいろおやりになっておるが、なぜもっとこういうところにメスを入れないのかということを私は申し上げたいのです。そうでないと、いまはごく一例をざら紙とノートにとったわけでありますけれども、その他、いま私が大臣からいただいた資料を見ましても、軒並みですね。子供たちが絵をかくクレパスにしても、絵の具にしても、鉛筆にしても、ことごとく三〇%、四〇%、最近では運動ぐつに至るまで大幅じゃないですか。二七、八%から三〇%、こういうようないわゆる学用品の暴騰なんです。何か通産大臣、文部大臣、お考えがありますか。
  269. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 学用品につきましては、私たちも一番心を痛めておりまして、特に新学期を迎えまして、小さな子供たちに迷惑をかけてはならぬ、そういうことで、この点については非常に力を入れて、いままで文部省と協力してやってきたところでございます。  それで学習帳、クレヨン、あるいは絵の具、あるいは子供の運動ぐつ、それからランドセル、机、鉛筆、そういうような一々のアイテムにつきまして関係業界に行政指導をしまして、いまわりあいにむずかしいのは絵の具です。顔料とか添加剤その他の問題でやや交渉が難航しておりますけれども、それ以外のものにつきましては、大体一〇%から二〇%値引きせよということで指導をしておりまして、大体了承する方向にいまきております。しかし、これは的確に引き下げさせまして、御期待にこたえたいと思っております。  なお、今後の値上げにつきましてもできるだけ抑制いたしまして、上げさせないように極力努力していくつもりでございます。  いまの紙の原価計算等につきましては、生活産業局長より御報告申し上げます。
  270. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 御指摘のノート類につきましても、通産当局のほうで引き下げに努力する、こう言っていただいておりますので、私としてはそれに期待をかけているところでございます。
  271. 辻原弘市

    ○辻原委員 私が、あえてこまかい計算を持ち出して皆さんに申し上げる意味は、これはあに学用品だけに限りませんが、通産がおやりになっておる行政指導の方向、これは工業製品万般についておおむね見ておりますと、いまも通産大臣がお話しになりましたが、私は御努力をなさることについては多としております。しかし、一〇%というのが一つの目安になっているようであります、大体ですね。いま私はノートの価格で言いますると、原料から計算いたしますと十倍、あまりといえば便乗値上げが激しい。その何を、一〇%下げればいいんだなあというので、業者は先取りして上げるだけ上げているんですよ。どうせまた通産から何かいってくるだろう、一〇%ぐらいかさ置きをしておけ。一〇%下げても、どこやらの海外の買いものみたいに、あらかじめ値切られるであろうということを見込んでおるとするならば、私は一〇%は意味がないと思う。  だから、特徴的なものについては、やはりきちっと原価にメスを入れなきゃだめなんですよ。そうして適正価格に押える、適正な価格に指導をする。どう考えたって、ノート一冊が去年の六月から十二月、半年の間に倍にはね上がるなんということは私は考えられない。倍でなければ採算が成り立たぬなんということはどうしても考えられない。もっと強力な値下げを要請すべきだと私は思う。一〇%下げてどれだけになりますか。わずか一〇%下げたって意味はないですよ。かりに百円に上がっているノートを一〇%下げても九十円でしょう。たいして意味はないのです。やはりそういう強烈な行政指導が今後は望ましいと思います。ひとつ通産大臣……。
  272. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 学習帳につきましては、現行小売り値が九十円ぐらいでありますが、これを七十五円ないし八十円の間におさめよう。一一%から一七%、それからクレヨンにつきましては、二百五十円のものを二百円に、十六色三百円のものは二百五十円に、これらは大体二〇%から一六%程度です。クレパスにつきましても、十二色二百円のものを百七十円に、一五%、運動ぐつは、小学生、中学生用のビニール前ゴムぐつというのでございますが、あるいはバレーシューズ、アップシューズ、こういうものにつきまして二〇%、ノートにつきましては、大体百十円のものを九十円に、一八%、これを目途にいまやらしておるところでございます。
  273. 辻原弘市

    ○辻原委員 まあ、この問題についてはそうくどくは申し上げませんが、国民がいま痛烈に批判をしておりますように、それが結果的には高値安定というふうなことにならざるよう、行政指導を行なうべきであると私は思います。  それからもう一つ、これも私どもの調査に基づくものでありますが、いままでしばしば市中一般の消費者から、肉の値段がたいへん上がりました、しかし港へ行ってみると、倉庫には肉が一ぱいあるじゃありませんかというような通報なり苦情が参っておりました。そこで去る一月二十五日に、私どもはこの港の港湾倉庫を調査いたしてみたのであります。その結果、幾つかの問題点を発見いたしましたから、お尋ねをしたいと思います。  われわれが調査をいたしました対象は、平和島の御存じの流通センターであります。ここには保税倉庫が二つ、それから上屋倉庫といわれるもの、これが十四、合計十六ございました。私どもが主として見ました営業倉庫の中の冷凍倉庫の中には、マトンでありますとか、あるいはエビでありますとか、タコでありますとか、タイでありますとか、いわゆる冷凍食品がうずたかく積まれておる。市民一般から見ますと、なぜこれが市中に出回ってこないのだという疑問が出るはずなんです。しかも、たとえばマトンで申し上げますと、私どもが調査をいたしましたマトンは昨年の六月に倉庫に入れられたまま、エビは昨年の二月に入れられたまま、すなわち長いものでは一年近く経過しているわけですね。一年近く経過しておる。だから、総理がしばしば言われるように、輸入品はできるだけ必要あれば輸入をいたします、大量に輸入すれば値は下がるのです、こうおっしゃっておるが、全部を私どもは調査したわけじゃないけれども、なくともわれわれの調査した食品に関する限り、輸入をして港に陸揚げされたが、それが一般の流通に乗り、一般都民なり市民の手にほんとうに渡るには、少なくても、あるものは一年以上もかかっておる。これでは幾ら輸入を促進してもだめじゃないか、この問題が一つであります。  それからもう一つは、これはいまの法体系では——私は時間があまりありませんから、一々お尋ねせずに私のほうから申し上げましょう。誤っておれば、ひとつ、どなたかからでもけっこうですから指摘をいただきたいと思います。われわれがその倉庫に行っていろいろ聞きますと、この倉庫には何がどれだけ入っておりますか、食品が入っております。これは見ればエビです、しかし数量はわかりません。いつ入って、これはいつ出ますか、そういうことはあまりわかっておりません、こういうことなんです。いまの倉庫業法からいきますると、これは十に業種を分類して、いわゆる生鮮食料品であれば生鮮食料品ということで、一括書類上の手続が行なわれておる。税関では上に上がってくれば、税関で通過するときの値段はわかるけれども、一たん倉庫に入ったら、これはもう税関もわからない。ましてや倉庫業者もわからない。わかるのはその荷主だけなんだということになるのです。しかし、その荷主は一向にあらわれないで、ある場合には一日に三回その荷主、所有主がかわっているのですね。所有主が一日に三回かわっている。言うなれば、倉庫で眠ったままでそのまま売買が行なわれているわけです。これは通常の場合であれば、いわゆる倉荷証券で売買されるから、私はこれも一つの商行為、慣習として絶対いかぬということは申し上げられませんけれども、いま垂挺あたわざるということばがありますが、消費者にとってはほしい、ほしいと思っているものが、倉庫の中で売ったり買うたり、売ったり買うたり、これを称して商慣習のことばで言うと倉内名転ですか、倉中名転、ちょっとしろうとが聞いても——字を書いてもらえばわかるのですが、要するに倉の中で名義を変更するという行為だそうであります。そういうことがあるから、いわゆる流通がすらすら縦の系列におりてこない。横に流通が行ったり来たりしているというこの現実をどうするか。私はいろいろ法律を参考にしたり、いろいろ人の意見を聞いてみたが、ともかく現行法律がそうなっているのですね。しかも、いま私が指摘した中では、これは関税法ですか、保税上屋という倉庫は認めておるようでありますが、これは、しかしながらしばし置くものであって、法律上は三十日以上置いてはいかぬということらしいのであります。ところが、適当に物を買わすというか、名義を変更したりいろいろなことをやりますと何ぼでも置けるという証拠に、こんなに長くこれは置かれておるわけですね。  ここに私は、輸入品の流通の一つの問題がありはしないかと考えるのでありますが、一体、農林省の所管なのか、大蔵省の所管なのか、運輸省の所管なのか、こういう各省の相関連した所管の中に大きな盲点があるのではないか。これも問題点だと思うのですが、どなたがお答えになることが至当か、私にもわからないですから、ひとつどなたからかお答えをいただきたいと思います。
  274. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 御指摘のように、営業倉庫の監督は運輸省でございます。そうして御指摘のように、倉庫の中でいまおっしゃいましたようなことが行なわれておることも事実でございます。したがいまして、私どもでは毎月どのぐらいの量が倉庫に保管されておるということは、統計をとりまして、これがまたなかなかいままでのことを調べてみますと、月末の統計が三カ月も四カ月もかかって動くというようなことで、こんなことでは、将来の統計資料にはなるけれども、とても当座の間に合わぬということで、物資官庁とも連絡をとりまして、指定の物資につきましてはそれを的確に把握し、それをいわゆる指定物資官庁に連絡をとりまして、それぞれの処置をとってもらうことにいたしております。
  275. 辻原弘市

    ○辻原委員 措置をとっているということは、運輸大臣、私がいま指摘をした、そういう長く保税上屋等に放置されている品物については、所定のごとく動かしておるということ、それからもう一つは、倉内名転等の行為については何らかの規制をしているということ、そういうことを意味しますか、そういうことをやっておるのですか。
  276. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 倉内倉庫の移転につきましては、残念ながら私のほうではそういうことをやる力が、力というよりも指示を与えることができません。ただ、税関あるいはまた物資官庁と連絡をとりまして、そういう事実のあることを連絡、通報するにとどまっております。
  277. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 昨年の夏ごろから、どうも港のはしけがずいぶん重用される、こういう話があるわけです。次いで保税倉庫に物資を滞留する傾向がある。そこで、税関でも調査をいたしてみたのですが、そういう傾向のあることを確認いたし、そこで十一月ごろから保税倉庫にそういう品物が滞留しないようにという行政指導をやってきておるわけなんです。  それで、だいぶ効果はあげておるのでありますが、どうもいまの時勢といいますか、品物を持っておれば先高ということで、どうしても握っておきたいという傾向が顕著に出ておる、その現象としてそういうことになるのではないかと思いますが、保税倉庫に入れたままで、なかなかこれの引き取りを行なわない、こういうものも、行政指導にもかかわらずまだ存在する。この間、住友商事でありましたか、それが大豆を多量に保税倉庫に貯蔵しておるという話がありまして、税関から注意いたしまして、これは上旬中には引き取るということにはなりましたが、そういうこのいまの物価高というか、先高だという見通しのもとに、いろんな変則的な行為がある。その変則的な行為に対しましては、これは機動的にいろんな行政指導をしなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、税関に関する面におきましては、十一月以降相当厳重に行政指導をやっておるということを申し上げます。
  278. 辻原弘市

    ○辻原委員 総理、これは総理もお聞きになっておると思います。いま私が申し上げたとおりの実情でありますよ。これは各省がそれぞれお互いのいわゆる守備範囲があって、その守備範囲の合い間に、国民の側から見ますると、全く納得のいかない事柄が行なわれているように感ずるのです。  何かこれは各省ばらばらでなくて、統一した方法でその対策を練る必要があると思うのですが、あなた、どうですか。
  279. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御指摘のような事情があることは、私も承知しております。  この間フィリピンに参りましたときも、こちらから出ていく品物を早く荷揚げをしてもらいたい、船の運航が悪くて非常に困るのです、こういう指摘を相手国から受ける、相手国の首脳から受けるというような状態でございますから、この港湾施設の問題、荷役の問題、いろいろございますが、各主管官庁が言っているように、荷役施設や、また、はしけの問題とか、いろいろな問題で滞留が多くなっている。滞船期間が延びているということよりも、倉庫に入ったものはいいけれども、船の中でもって二日も三日も滞船を延ばすと、滞船料を払うよりも何かあるのではないか、こういうことを外国から指摘をされるような状態、これは非常に遺憾なことであります。  また、保税倉庫へあがってからまた問題があり、商品倉庫にあがってからまた問題があり、それから今度個人商社の民間倉庫に入ってからも眠っておるということになれば、これはもう需給のバランスがくずれるにきまっておるわけでございます。そういうものが先高ということの大きな原因になるわけですから、倉庫検査というのは、品物となったものが中間経路において退蔵されているというものではなく、やはり港に入ってから、そして市場に出るまでの間に一体どういうような異常な状態があるのかというところにはメスを入れざるを得ない、こう思っております。  これは運輸省だけでできない話ですし、運輸、それから農林物資は農林、通産は通産、それから一番は通関、通関数字が一番的確でございますから、入港と通関との間には、これは運輸省、海上保安庁できちんとわかっておるわけです。通関から保税倉庫に入っておるものも大蔵省でわかっておるわけです。関税局でわかっています。そういうものを統一をしまして、ひとついままでの数字と合わして、一体施設がどこが不足なのか、ほんとうに滞留さしているのか、その間の事情を明らかにして、それはそのために値上がりをもたらしておる、そうすることによって先高見通しということがそういう現象を生んでいるというなら、それに対しては今度はメスを入れるという体制はつくってまいらなければならない、こう思います。  これはもうほんとうに、いまの中間の問題だけじゃなく、確かに五条の問題も出てくるわけです。そういう意味で、製品というだけではなく、これは原材料の場合もそうでありますし、製品として輸入してきているものもありますから、そういう問題、ひとつ関係各省でしさいに詰めます。
  280. 辻原弘市

    ○辻原委員 総合的にその対策をやる、場合によっては五条を発動してもやると、いま総理がおっしゃられたわけなんだが、すでに計画をされている。この間から、あなたが千名を動員して徹底的な一斉点検をやるという中に、これは当然入りますね、千名を動員して一斉点検をやるとあなたはこの間から言われております、倉庫調査を。当然この港における倉庫の点検は入ってまいりますね。当然やりますね。  そこで私は、あなたがこの間から各委員質問に対してお答えになっておる、いわゆる買占め売惜しみ法の三条、五条の関係でおやりになるということ、やらぬよりはいいと思うのです。しかし、いまのような具体的な事例に対しては私は確かに効果があると思うんだけれども、ただ、物が隠退蔵されているのではないかということについて、営業倉庫をいまからやって、いかほどの隠退蔵が発見されるかということに対しては、率直にいって疑問を持つのです。  しかも、この間あなたのお話では、二月の上旬には結果を発表いたします、答えますということを赤松委員質問に対しても言われておったようでありますが、私にいただいた計画によりますと、一月の十六日から一カ月をかけて二月の十六日までこれを継続してやるという計画のようですね。そうすると、結論が出るのは二月の末ですよ。あなたのおっしゃったことと実態はだいぶずれるのです。あなた、二月の初旬には——これは通産大臣もおっしゃっていますが、二月の初旬には調査結果を報告いたします、こう言われているんだが、いま実際にやっているものは二月の末、だから、答えは三月初旬でないと出ない、こういうことになっているようですが、それは急がせるのですか。どうなんですか。
  281. 内田常雄

    内田国務大臣 辻原さんのおっしゃるとおり、一月十六日から一カ月の計画で千カ所近くの個所の立ち入り調査をいたしておりますが、しかし、その途中で中間の取りまとめをぜひ各省にしていただきたいということで、一月一ぱいぐらいの中間取りまとめを二月の初めにやりまして、これはどの程度まで精細なものになるかわかりませんが、中間取りまとめをぜひ発表いたしたいと考えております。ですから、それは中間取りまとめは二月の初めになる、こういうことであります。
  282. 辻原弘市

    ○辻原委員 この間から調査結果が二月の初めだとおっしゃっておったのは、中間の結果ということに訂正されるわけですな。(内田国務大臣「そういう言い方です」と呼ぶ)いやいや、そういう言い方じゃなかった。
  283. 内田常雄

    内田国務大臣 ことばがあるいは足りなかったかもしれませんが、一月十六日から一カ月間の計画でやるということになりますと、最終計算が済みますのが二月の十六日になりますので、二月の初めにはその結果はとうていまとまりませんので、その中間集計、中間状況を二月の初めに取りまとめたい、こういうことで申し上げたつもりでおりますので、そのように御理解をいただきたいと思います。
  284. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国会のやりとりですから、これは明確にしておかなければいかぬわけでございますから、ささいな問題としないで、明確にいたしておきます。  これは私が出かけるときに、千カ所は最低やりなさい、こういうことを命じて出かけたことはおわかりのとおりでございます。千カ所に対して、千カ所はまだ行なわれておりませんということを述べてございます。では幾らやったのか。やっていないのか、やっております。農林省はこういうふうに、通産省はこのとおりやっております、厚生省はこうやっております、そして農林省は、この法律ではなく、また別な法律もございますので、そういう面でやっておるものもございます、では、それは状態はどうなっておるか、こうたたみ込まれて、それはいま通産省は通産局長のところでもって最終的にまとめる段階になっております。いままでやっているものですね、やらないものをまとめられるわけはないのですから。だから、やっておるものをまとめております。  では、いまその通産局長のところでまとめているものはいつ本省にあがってくるのか、来月の初めに、二月の初めにこれを本省に取り上げて、国会にその分だけ報告します、こうちゃんと述べているわけですから、うそも隠しもないことですから、ささいなことでも行き違いがあると、どうもお互いにかみ合いませんから、明確に申し上げておきます。
  285. 辻原弘市

    ○辻原委員 そのことについて押し問答いたしませんが、きょうはもうすでに二月一日なんですよ。こっちが言って初めてやるのですか。  ちょっとその前に、先ほど総理も言われたが、私はわかってきたものから速急に手をつけて、そうして、必要のあるものは五条でやるべきだと思うのです。たとえば、私がいま指摘をいたしましたような港湾における保税上屋、保税倉庫等の食品関係の倉庫、これは即刻やってもらいたいと思うのですよ。それから大豆、またとうふが上がりますよ、いまの状態では。去年大騒ぎをした。いつも手おくれになっているのです。だから、少なくとも大豆なんかは上がっているんだから、これは五条によってやりなさい。  農林大臣、おやりになりますか。総理、どうですか。五条によってやりなさい。もうすでに投機の傾向が入ってきているのですよ。
  286. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林省物資は、御存じのように七品目指定されてあります。そこへ二品目、砂糖としょうゆを追加いたします。大豆は初めから指定されております。いまおっしゃいましたようないろいろな事情を勘案いたしまして、万遺憾なきを期して、ちゃんとやっております。
  287. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。  各省とも、二月の早々に報告を委員会にいたしますということですから、そういうふうに私は覚えておりますが、いかがですか。内田経済企画庁長官、ひとつ返事をしてください。われわれは困ります、それは。これでまとめて……。
  288. 辻原弘市

    ○辻原委員 いまの万遺憾なきを期しますという話なんですが、私は五条によって早急に在庫の調査をやりますかということなんです。すぐやりますか。前の話は三条なんですよ。
  289. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 辻原さん御存じのように、大豆というのは用途がはっきりしておりまして、大手が九〇%以上でございます。したがって、相手国との輸入量、それからその契約に基づいて手当てをしているわけでありますが、よその国から来るものでありますので、契約量と、その途中にありますものと、在庫とをしっかり把握しておりますので、万遺憾なきをと申しましたのは、御安心願いたい、こういうことでありますが、若干もし疑わしきようなものがあれば、もちろんこれは指定物資になっておるのでありますから、法律に基づいて厳重にいたします、こういうお答えでございます。
  290. 辻原弘市

    ○辻原委員 だから、いまの大豆の問題は前向きにお答えになったようでありますが、私の要望は、従来、調査はやる、一般的調査はやる。しかし最近の動きを見ますと、これは非常に問題なんで、総理もうなずいておられるように、だから私は、即刻やはり五条によってやるべきだということを申し上げているのです。その点はここで明確にされることが、私は流通段階におけるそういう投機を防ぐあれにもなるから申し上げておるので、あいまいにすると、またぞろこれは投機が起きますよ。農林大臣がお答えにくければ、総理、ひとつお答えくださいよ。
  291. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 市況のことをよく御存じで、おわかりになっていると思うのですが、昨年大豆不足で、とうふが上がるといわれましたときに、関税定率の緊急措置がないかという声が出ただけで二万トンの大豆を出していただきまして、その上に三万トン出していただきましたが、結局、全国のとうふ屋さんが消化し得たのは二万トンでございまして、われわれのほうには在庫量というのはしっかり把握しておりますし、外国との契約量、船積みの模様等、一切しっかりやっておりますから、その点は御安心願いたいということを申しておるのでありますが、必要があれば、もちろん、御存じのようにこの間お見せしました青いあれで、五条で発動できるのでありますから、一番いいやり方をとって安心のできるようにいたします、こういうことを申し上げております。
  292. 辻原弘市

    ○辻原委員 いまの問題は、おおむねお考え、決意のほどは総理のうなずきと、舌足らずだけれども農林大臣の御答弁によって了承いたしましょう。  そこで私は、この調査の問題についてひとつ提案をしておきたいと思うのですが、冒頭申し上げたように、長い期間をかけて予告をしてやる調査というのは、それは在庫の価格等を調べるのには非常にいいかもしれぬけれども、物がどこにあるのかということを調べるのには、いかにも私はこれは結果としては期待しがたいものである。だから、のんべんだらりこれをやっておったって、幾ばくのものが売り惜しみ、買い占めの目的に、われわれが期待するようなことが出てくるか、はなはだ私は心もとないと思う。  そこで、現実に隠退蔵されているというのは、いままでしばしば新聞等にも出されておりますように、あるものは農家を改造してそこに入れておった、あるものはボウリング場の中に入れておった、あるいは農家の納屋のあれに堆積しておったとか、あるいはガソリンのごときは畑の中にこもをかぶせて隠退蔵されておった、そういうことが隠退蔵の一つのあれなんですね。だから私は、いまおやりになる調査は、それ自体にこれは意味を持たしてけっこうだと思いますけれども、それ以外に、もっと機動性を持って一斉にやれるような方法がないか。それを考えたときに、この前ガソリン騒ぎのときに例の危険物取り締まりで一斉にやりましたね。これは非常に効果があったと思うのです。そこで、いまかりに、隠退蔵がこの間も新聞に出ておったし、テレビでもやっておられまして、政府関係者もテレビの中に出ておられましたね。東京近郊で五十戸ばかりの農家がほとんど最近は倉庫に改造されて、だれが行ってもとびらをあけない、中に何が入っているのかと尋ねても、知りませんということが公然とこれはマスコミで問題にされておるわけですね。そういうものは、しかし、倉庫といったって立ち入り云々の対象にならぬでしょう、いまの在庫調査。ですから、いまの隠退蔵の所在というものは通常の営業倉庫ではない。二千だか三千だかある、いわゆる運輸省所管の営業倉庫ではとても見つかりっこはないというのが、だれが考えてもそうなんですね。  だから、私はこの際、いわゆる火災予防の見地で、消防法を適用するということを政府としては考えてはどうか。あなたはこの間、あらゆる法律を駆使して調査、点検、物価対策に乗り出しますとおっしゃっているのだから、消防法を適用したらどうですか。消防法には火災予防ということがある。政府に私はこの機会に——これは全国一斉にその組織を持っている。ことしの予備費が十億、来年五十億予定しているというのだけれども、この消防団員諸君にそのうちの出動手当の幾ばくを出してひとつやってごらんなさい、責任は町村長もあるのだから。そういう意味で一斉にやれるこれは私は一つの方法だと思う。いかがですか。
  293. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、間々申し述べておりますとおり、法律を政府は与えられておりますし、この法律を行使しながら、物価抑制の責めを負っておるのでございます。でありますから、国会でも毎日毎日このような論戦が行なわれておるわけでございますから、私は、国民は先高を予想しながらこの上なお物資の退蔵を行なうというようなことが、この論戦の間にも漸次急速に行なわれなくなることを期待しておるのであります。  しかし、そういう国民の合意をまちながら、漫然としていわゆる時間を延ばすわけにはまいりません。そういう意味で、人選としましては、この間国会の御指摘もございましたので、専任の機構も設けたり、それからきょう付で地方庁も動けるようになるわけでございます。ですから、これはあなたが御指摘になったように、やれる場合には、なまぬるいことではだめだと私は思っておるのです。  ですから、これはあらゆる法律を駆使しながら、一例を申し述べれば、通常の税務調査を行なうということで、税務署職員が一斉に何日間やることはできます。そういう問題もあわせ、これはもうとにかく短い間に、指定物資に関しましては政府が責任をもっておこたえをできるような、また、こたえるだけではない、物価抑制に実効があがるような措置を、慎重だけではなく、周到な配慮で考えております。それは消防法とか、それからいろいろな面からやれば、これは全国的に一斉にやり得る法律体系を与えられておると思いますので、そういう問題は、政府も真剣にいま検討中であります。(辻原委員「いやいや、私は消防法を言ったのです。抽象的なことではだめです」と呼ぶ)ですから、あらゆる意味で、消防法もありますし、あらゆる法律を駆使すれば、全国一斉に短い時間にやり得るだけの法律的根拠を与えられておりますので、そういうものも含めまして、いま周到な配慮をしております、こういうことです。
  294. 町村金五

    ○町村国務大臣 昨年の暮れ、持に消防機関に対しまして、灯油等の違法貯蔵の事実があれば、これを厳重に査察をするようにという指導をいたしたわけでございます。その結果、相当量のものが発見をされたことは、当時新聞等で御承知に相なったことであろうと思うのでございます。私どもといたしましては、この査察によりまして、灯油等の違法貯蔵は発見をされたのでございまして、このことが、売り惜しみあるいは買い占めといったようなことにも関連をしておるというようなことも、ある程度明らかになったのではないか。  この点は、関係機関に御協力を申し上げるということはもとよりいたしますけれども、先ほど辻原議員の御指摘になりましたように、あらゆる問題について消防法を適用するということは、少なくともこれは無理ではないか、やはり他の法令で措置をすべきものではないか、かように考える次第でございます。
  295. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういうことを言っているからだめなんですよ、それは。あらゆるものをと言ってはいないんだ。消防法の範囲内でできるものが幾つかありますよ。幾つかあるんだから、その幾つかできる範囲のことでひとつ検討しなさい、やれる法律を考えて。
  296. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 消防法の適用は、いま自治大臣が述べたとおりでございまして、拡大解釈をして、いろいろなことを何でもやるというわけにはまいりませんが、時を同じくしていろいろな法律が一斉に行なわれるとして、その間に発見をせられた事象に対しては、各省間通報の義務を課せば、これは結果的には相当な効果をあげるわけでございますから、だから、これはいまの自治大臣の答弁を了とせられたい。  しかし、結果的には、時を同じくしてやれば、いろんな、いまもそういうことを言ったのですが、いわゆる税の問題でも、通常の税務調査を一斉にやる、そのとき消防の、火事がないかというような調査も時を同じくやるということになれば、それはあらゆるところを一斉にやり得る。しかしそれは、目的は、あくまでもいわゆる売り惜しみや買い占めというようなもので、全然他の目標を持ってつくられ、公布し、施行されておる法律を拡大解釈して使うということではなく、結果的にはそうなりますからということで御理解を願いたい、こう言ったわけです。
  297. 辻原弘市

    ○辻原委員 まあ、あらゆる法律を駆使して検討するということでありますから、これ以上、時間もなくなってまいりましたので申し上げませんが、ともかく機動性が必要なんですよ。一斉に機動性が必要なんです。そのことを頭に置いてやっていただきたいと思います。  それから、時間もなくなりましたが、通産大臣に重要な問題について伺っておきたいと思うが、先日来からの当委員会での諸物価値上がりの問題の最大の理由が、石油製品価格の値上げにあるということは、ほぼ明らかになったわけです。そこで、通産省も行政指導をされる、あるいは標準価格を設定するなどということが新聞に報道されておりますが、私は端的に言って、ここに詳細な資料もありまするけれども、予想される三月期決算における石油精製メーカーあるいは化学製品のメーカー等々、工業製品のメーカーの利益率は、新聞の発表しておるのを拝見いたしますと、高いもので二十倍、低いものでも経常利益は三〇%、四〇%立っておるということがほぼ明らかになってきております。しかも昨年十一月半ば、石油メーカーが六〇%から八〇%ぐらいの値上げをしたというのが、その他の製品価格へ大きくはね返っておることは事実である。それだけの値上げをする必要があったかどうか。これはこまかい議論をするひまがありませんが、私は、絶対にないと思うのであります。  したがって、これからの値上げに備えて、通産省が行政指導ということは大いにけっこうであると思いますけれども、それではなまぬるい。この際、石油全製品の凍結を行なうべきじゃないかと私は考えますが、この点に対して、通産大臣はどうお考えですか。
  298. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 石油化学の製品につきましては、きのう関係業界、企業の代表者を集めまして、指摘されました値上げ分の三〇%値引きするように、そういうことを私から強く要請いたしました。業界の人も、あるいは企業者も大体それに応じて努力してくれるという約束でございます。  それから、その後の値上げについては、便乗値上げというような指弾を受けないように、極力値上げを自粛するように言いまして、それについても協力するということでございました。  石油製品、つまり原油から出てくる諸製品でございますが、先ほど申し上げたのは、ポリエステルやポリエチレンの問題です。石油製品につきましては、新しい、一月から入ってくる原油が二十日ごろから入ってきておりまして、そしてその値段は、公示価格が十一ドル六十五セントで、大体十二月から比べると二倍強に上がっておるわけです。しかし、いまの物価状況を見まして、その高い値段にすぐ移行させることはいけない。十二月にある程度の利潤もあがっておる、そういうこともにらみまして、とりあえず現状でいくように強い行政指導をいたしました。この間も関係業者を集めまして強く行政指導をいたしましたが、外国から日本に供給しているメジャー糸の外人の社長等は、かなり強い異議を実は申し立てました。外国の慣習では、新しい油が入ってきたときには、大体それは新しい価格に移行する、そういうことで会計その他をやってきておるというような話でございました。しかし、こういう異常事態であるから、それはわれわれの政策方針に強く従うように要請いたしました。  それで、その新しい値段にいつ移行するか、しかも、それを適正にどの程度にきめるかということは非常な大問題でありまして、いまエネルギー庁をあげて、日夜その計算等をやっておるところでございます。私といたしましては、ともかく国民から疑惑を受けないように、三月期決算におきまして、特に石油関係の諸会社が適正利潤をあげて、そして、いやしくも超過利潤とか不当利潤と思われるようなものがないように配慮しなければならない、そういうことを頭に置きながら、価格とそれから時期を私たちは適正にきめなければならぬ、そう思いまして、現状はいま、ことばで言うと凍結という形になりますが、上げさせないで押えておる、こういう現状で、しばらくはこれを続けていくつもりであります。
  299. 辻原弘市

    ○辻原委員 現状の価格は、これはすでに便乗した価格である、いわゆる石油製品自体。まあ詳細な数字は避けますけれども、ガソリン六〇%、軽油五〇%、A、B重油が五五%、C重油が八五%、平均をとってみても六〇%を上回ります。これだけの値上げがいままでの原油価格の値上がりと、はたして関連を持つかというと、決してそうではない。だれが考えても、少なくとも二倍以上あるいは三倍以上の値上げをしていることは、これは事実なんですから。現状価格が高いのですから、絶対にこれ以上上げさせない。上げさせないで、これから皆さんが引き下げる指導をやる、これがこれからの物価対策の一番きめ手だ。これ以上上がったらたいへんだ。業界の中には、また石油価格が上がるんだから、それを新しい、これからの価格に上のせをするんだなんということがいわれているそうでありますが、もってのほかだと思うのです。時間がないから、それだけのことを申し上げておきます。  きょうは日銀総裁もおいでいただいておりますが、先般も指摘をされておりますように、金がある、金をもうけておるということの事実が、せんだっての七億四千万ドルのドル買いにもあらわれておるのです。また、円安のいわゆる差益がかなり商社のふところにも入っておるだろうということもささやかれておる。過剰流動性というものは、常識的に考えてもまだまだあるのです。これをどう吸い上げるか。われわれは利益を吸い上げる方法もいま検討をいたしております。政府から提案してもらいたいと思っております。同時に、過剰流動性はもはやなくなったというようなことが一部にいわれておりますが、私はそれは間違いだと思う。日銀総裁はどう判断をされ、今後の金融対策の中でこれに臨んでいかれるか、せっかく御出席をいただいたので、お答えをいただきたい。  あわせて、そういう観点から、以後の金融操作、まあ一部に公定歩合の引き上げ等もいわれているようでありますが、そういうことを含めて、今後の金融対策、同時に、中小企業は必要以上に金融が締まっておると思うが、そういうものに対するより一般の金融上の配慮、こういうものもお答えいただきたいと思います。
  300. 佐々木直

    佐々木参考人 過剰流動性、企業の手元の余剰、これがどういうふうになっているかというお話でございますが、昨年じゅうほとんどずっと一年間続きまして、企業の手元の流動性は落ちてきておりまして、十二月末の数字はまだ具体的にわかりませんが、おそらくいままでのボトムにほとんど近寄っていると思います。ただしかし、いま御指摘がありましたように、私の申し上げますのは、これはマクロの数字でございまして、この中に企業別の差が最近特に出ておることは事実だと思います。したがって、収益をあげました部門の手元流動性がほかの部門に比べまして高いということは、これは確かに想像のできるところであります。  ただ、金融政策で、普通の企業が普通に持っております預金とか現金とかというものを直接的に吸い上げることは、正直に申し上げましてできないのでございまして、これは何か、税で取り上げるというようなことがありますれば、非常にまっすぐできるわけでございますが、金融政策でその点を調整することは非常に困難で、したがって、一般的に締めていかなければならない、一般的に締めてまいりますと、部分的に弱いところにしわが寄る、そこのあんばいが非常にむずかしいのでございます。  それで、いまお話がございました中小企業の問題、これはいまのところは、手元の流動性は大企業に比べましてまだ少し高いのでございますが、これもしかし、マクロの計算でございまして、個々の中小企業にはいろいろ具体的な問題もあろうかと思います。したがいまして、私どもとしましては、つい今週の初めに支店長会議を開きまして、支店長から地方のいろいろ具体的な事情も聞いておりました。それで、こういう点はいつも本部と連絡を密にして、具体的な問題があれば弾力的に措置をする。幸い、去年の暮れあたりは政府関係の中小企業金融機関から相当手厚い金が出ておりまして、支店長の報告でも、ある場所では、昨年は一昨年の倍出ておるというような面もあろう。しかし、中小企業の問題は今後できるだけの手を打ってまいるつもりでございます。  最後に、今後の金融政策の問題でございますけれども、一昨日の定例記者会見でいろいろ質問がありましたことに対して私が答えたのが、昨日の新聞に出ておりまして、また公定歩合の引き上げをするというような記事が出ておりますけれども、最近の金融市場は非常に目立って落ちついてきておりまして、たとえば、昨日の一月三十一日の日銀券の発行残高は、昨年の一月末に比べて二一・七%増と、いままでの二六、七%から比べますとずいぶん下がってきております。平均残高では二三ぐらいまで下がってきておる。そういういろんな点で、昨年の暮れに実施いたしました公定歩合の引き上げと準備率の引き上げ、こういうものの効果の浸透を当面見守ることが適当である、こう考えております。
  301. 辻原弘市

    ○辻原委員 終わります。
  302. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて辻原君の質疑は終了いたしました。  田中武夫君。
  303. 田中武夫

    田中(武)委員 資料の提出について、確認をしておきたいと思うのです。  と申しますのは、ただいまの辻原質問の際の、委員長が二月早々云々、こういうことで政府に答弁を求めるような発言がありましたが、それがそのままになっております。そこで、二月早々ということについて、赤松質問の際にも、この時点で明確にできるものを直ちに出せ、こういう要求をいたしまして、引き続いて理事会におきまして、それは二月二日の理事会までに出してもらいたい、そういうように要求をしておったはずであります。  そこで、二月末と言い、それが二月早々に変わってきたわけですが、私は、この時点で、ただいまで調査の結果がどうなっておるのかということを、あすの理事会までにはっきりと示せるかどうか、政府を代表してだれか、確認をいたします。御答弁願います。
  304. 内田常雄

    内田国務大臣 先ほども辻原さんに申し上げましたとおりでございまして、一月末日までの中間報告の概要を実は取りまとめました。あすの理事会には、その概要の数字を御提出申し上げる予定でおります。
  305. 田中武夫

    田中(武)委員 それではどうも……。
  306. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次回は、明二日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十九分散会