運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-01-28 第72回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年一月二十八日(月曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 櫻内 義雄君    理事 澁谷 直藏君 理事 正示啓次郎君    理事 細田 吉藏君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       上村千一郎君    植木庚子郎君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       笹山茂太郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    田中 正巳君       塚原 俊郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    藤井 勝志君       前田 正男君    松浦周太郎君       松岡 松平君    松野 頼三君       湊  徹郎君    渡辺 栄一君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       赤松  勇君    石橋 政嗣君       岡田 春夫君    多賀谷真稔君       辻原 弘市君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    八木 一男君       湯山  勇君    青柳 盛雄君       田代 文久君    松本 善明君       有島 重武君    坂口  力君       小平  忠君    玉置 一徳君       塚本 三郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 奧野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         内閣審議官   粟屋 敏信君         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会         事務局経済部長 熊田淳一郎君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         科学技術庁原子         力局長     田宮 茂文君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      森  整治君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         大蔵省主計局長 橋口  收君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省理財局長 竹内 道雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君         国税庁次長   吉田冨士雄君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省管理局長 安嶋  彌君         厚生省年金局長 横田 陽吉君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業省貿易         局長      濃野  滋君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         通商産業省機械         情報産業局長  齋藤 太一君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁次長     北村 昌敏君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岸田 文武君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         運輸省自動車局         長       中村 大造君         労働省労政局長 道正 邦彦君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 一月二十八日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     石橋 政嗣君   谷口善太郎君     青柳 盛雄君   不破 哲三君     田代 文久君   岡本 富夫君     有島 重武君   安里積千代君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     阿部 昭吾君   田代 文久君     不破 哲三君   玉置 一徳君     塚本 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算及び昭和四十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、委員長から一言政府に申し上げます。  各党理事から、前回までは、委員質疑に対する政府答弁が長過ぎるとの意見が多いのであります。答弁は要点をつかみ、短時間に簡潔明瞭にお願いいたします。  また、出席時間を厳守されるよう、特に要望いたします。  これより総括質疑に入ります。石橋政嗣君
  3. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、日本社会党を代表いたしまして質問をいたしたいと思います。  いま、国民皆さん方が一番関心を持っておられる問題といえば、やはり物価の問題だと思うのです。そこで、私もこの問題を中心に据えまして質問をいたしてみたいと思います。  いまさら申すまでもないことでありますが、日本物価はまさに天井知らずといっていいような状態であります。一年の間に卸売り物価が一一二・六%も上がる、消費者物価は、東京都二十三区で、これは総理府統計局統計によるわけですが、二〇・四%も上がっておる。まさに異常というか、まさしく狂乱物価ということばが掛け値なしにぴったりという感じであるわけです。田中内閣が発足するまでは、卸売り物価は大体年率一・四%、そういう状態であったわけですから、この一年間で二十年分以上上げてしまった。東京におけるこの消費者物価値上がり、四十七年の一年分を一カ月で上げてしまった。ほんとうに考えただけでもおそろしいような状態が、私たちの目の前に現出しておるわけです。  総理は、盛んに先進資本主義国家インフレというものをことさらに口にされるようでありますが、確かにインフレは、現在、先進資本主義国家における共通の病弊という一面を持っておりますけれども、それにしても、日本のこの物価高は群を抜いておる。これはさきに発表されましたOECDの年次報告にまつまでもないことであると思うわけです。とにかく、物価の上がり方は話にならない。  ちょっとその一例をあげてみたいと思うのですが、この総理府統計局調査によりましても、一年の間に二三二・六%、一カ月の間に一一・七%も上がった品目があるわけです。それはくぎです。これで完全にマイホームの夢はくぎを刺された、こういう解説をしておる新聞記事がございました。ちり紙においても一八九・五%一年の間に上がっておる。政府調査でもかくのごとし。しかも、この狂乱物価ともいえるような物価高特徴一つは、つくられた物不足というものを伴ってやってきたということです。店頭から次々に灯油がない、トイレットペーパーがない、小麦粉が姿を隠した、砂糖がなくなった、洗剤がなくなったといったような現象がまずやってきて、奥さん方を大恐慌におとしいれる。一部には、ささやかな抵抗といいますか、買いだめといったような現象も見られたわけです。やがてそれらの品物がまた店頭に顔を見せたときには、いま申し上げたように、たいへんな値上がりという状態をもたらしてきたわけであります。これが一つ特徴であろうと思うのです。この経過を見ただけでも、現実に品物はもうあらわれてきておるわけですから、この物不足というものが、人為的に、操作によってつくられたものである、値段をつり上げるために買い占め売り惜しみによってもたらされたものである、こういう結論を出しても、決してこれはもう言い過ぎでもないと私は思います。  しかも、奇々怪々なのは、その大騒ぎのもととなった石油危機なるものでありますが、振り返ってみると、どうも政府業界が手を組んで、ことさらに騒ぎ立てたといったような印象が強くてならないのです。石油が減らされる、入ってこなくなる、そういうことを盛んに言い立てて、火に油を注ぐような結果になったのじゃないか、こういうような感じがしてなりません。  そこで、最初にお尋ねしておきたいのは、昨年一年間に実際にどれだけの原油輸入されたのか、前年に比べて減ったのかふえたのか、このことをまずお尋ねしておきたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昨年一年間は、暦年にいたしますと約二億八千万キロリットル程度入っておりまして、一昨年よりはふえております。しかし、需要のほうは一昨年に比べて昨年はさらに増大しておりまして、住宅もふえ、テレビの台数もふえ、自動車もふえておりまして、そういう需要との見合いを見ますと、比率としては見合っておる数字になっておるのであります。
  5. 石橋政嗣

    石橋委員 大蔵省通関統計通産省統計も出ているわけですから、正確に数字をお述べになったらいかがですか。知らなければ、私、これを読みますけれども、知らないはずはないので、抽象的にただふえておりますというようなことでなくて、これだけ重大な問題になったのですから、去年はどれだけ入りました、一昨年はどれだけ入りました、どれだけふえておりますと、明快にひとつお答え願いたいと思います。
  6. 山形栄治

    山形政府委員 お答え申し上げます。  昨年は通関で二億四千九百五十五万四千キロリットル……(「一昨年だろう」と呼ぶ者あり)一昨年でございます。一昨年は通関で二億四千九百五十五万四千キロリットル、通産統計によりますと、二億三千八百三十四万六千キロリットルでございます。昨年の四十八暦年におきましては、通関で二億八千九百六十一万六千キロリットル、それから通産のほうの統計で、これは速報的な要素が入っておりますが、二億八千六百十二万九千キロリットルでございます。
  7. 石橋政嗣

    石橋委員 どちらの数字を見ましても、暦年ですが、四十八年は一昨年、四十七年よりもはるかに上回った量が入っているのです。にもかかわらず、いかにも原油輸入が大幅に減るかのごとき大騒動を巻きおこしたことが、この物価高の発端になっているわけです。しかも、買い占め、売り、惜しみに拍車をかけているのです。私は、この点についての政府責任、どのように感じておられるのか。第一、減る減る、入らない入らないという情報は、一体どこから来ているのです。石油連盟でしょう。みずからの手で正確な情報を把握しようという努力もしないで、業界情報に基づいて一緒に騒ぎ立てる、人心の不安をかき立てる、こんなことで政治家といえますか。どこに政治があるかと私は言いたいのです。  しかも、問題なのは、いまだに、いつもの例だそうですが、大蔵省通関実績通産省統計の間には差があるのです。通産省のほうが少ない。どうも一番この業界とのくされ縁というものをにおわせるのは通産省です。私は、いまのこの業界にあやつられて政府騒動の火種をあおったということについて、まず総理責任感じ方を最初にお伺いしておきたいと思います。
  8. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 品物輸入輸出統計には幾つかございます。御承知のとおり、通関統計もございますし、また速報による統計もございますし、また各省で調査をする統計もございますが、まあ通関統計で述べるよりも、常に速報値で申し述べますという枕をつけて述べておるわけであります。なぜかというと、速報通関統計の間には、短いときでも約二週間、長ければ約三週間以上の日時の差があるということでございまして、私は、できるだけ通関数字を目標にするようにという指示をしておるわけでありますが、いままでの統計のとり方が速報値をとったりしておるということは、御承知のとおりでございます。  ただ、二億八千万キロリットル入ったものをどうして二億七千万キロリットル、まあ二億七千五百万キロリットルかもしらぬというような前提で、政府がいろいろな施策をしたかという御指摘だと思いますが、これは、大体四十六年対比四十七年、四十七年対比四十八年、二〇%程度ずつ対前年度比伸びておりまして、ことしの原油輸入は大体三億一千万キロリットルと四十八年予想しておったわけであります。それが中東戦争直後たいへんな混乱がございましたし、現地からの報道ぶりを見てもおわかりになるとおり、たいへん混乱をし、当時、船積み中のもの、また船が行っても積めないというような事情、いろいろな事情がありましたので、結果としていま申し上げたようなことになったものと存じますが、これは作為的に、また通産省業界の癒着というような問題から出たものでないということは、理解をいただきたいと思います。  まあしかし、石油は多くなるというときではありませんから、少なくなる可能性の多いときに、万般の対策をとらなければならないという立場で正確を期したということが先にあることは事実でありますが、故意にとか、そういうものでないということは、ひとつ十分御承知をいただきたい。ただ、ほんとうに正確な数字をつかまなかったというために、それが売り惜しみ買いだめ、また物価の引き上げに影響をもたらしておるとすれば、自今、十分慎重にしなければならない。その責任感じております。
  9. 石橋政嗣

    石橋委員 責任をお感じになっておられるということですから、これ以上申し上げません。通産省が実際は実情を把握しておったのではなかろうかと思われる節ございますが、これはいずれあとの質問の中で明らかにしていきたいと思います。  こういう重要な情報の入手、これはあくまで政府自身の手でやるべきです。そしてそれは、やろうと思えばできるはずであります。伝えられるところによれば、大蔵省がこの通関状況を、総動員してもっと早くつかむという方法だって考えられるでしょうし、場合によっては、海上保安庁が海上交通安全法に基づく通報を収集して、そしてはじき出すという方法だってあるといわれております。とにかく、国民に不安を与えないようにするという政治の要諦、このことをしっかりと踏まえてこれからはやっていただきたい、このように要請しておきたいと思います。  とにかく、この物価問題につきましては、国民はいま怒り、悲しみ、そしてこれからどうなるのだという不安にとりつかれておるわけです。総理としては、これらの多くの人たちに対して、いつまでにどのようにして物価を安定させるつもりなのか、親切丁寧に説明をする義務があると私は思います。いままでの施政方針演説や本会議における答弁などをお聞きしておる限りにおいては、国民のだれ一人として納得をしておりません。安心もいたしておりません。私は、そういった不安にとりつかれておられる多くの人たちを代表してここでお尋ねをするわけでございますから、ひとつ、よくわかるようにお答えを願いたいと思うわけです。  もう一つ物価の安定のためにどうするかということと同時に必要なことば、すでにこのインフレ物価高生活の基盤を崩壊させられてしまっておる人たちもおるわけですから、この人たちに対しては、どういうあたたかい手を差し伸べるつもりなのか、このことについてもあわせて御説明を願う必要があろうかと思います。とにかく懇切にお願いしたいのです。総理一人がわかっておったってだめなんですから、国民全部がわかったわかったと言うように、お答え願いたいと思います。
  10. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 簡明直截にお答えをしなければならぬわけでありますが、それほど単純な問題ではございません。でございますから、簡明直截に時間をとらないように、しかも、おわかりになるようにということで、そういう意味お答えをいたします。  まず、物価問題は国際的な問題であるということは、もう石橋さん述べられたとおりでございます。国際経済ということであり、日本が原材料のほとんどすべてを海外に依存しておるという事実を考えてみれば、これはもう申すまでもない事実でございます。しかも石油については、アメリカにおいては、外油にたよるものわずかに四%、しかも対前年度比石油増産量二〇%をこしておるにもかかわらず、物価は騰貴をしておる。西欧諸国またしかりでございます。そういう状態で、まず物価高要因は、一つには国際要因日本は特にそれを受けやすい状態にあるということは、これはもう事実であります。  それからもう一つは、ドル切り下げに対応して、国内的な問題として国際収支改善を必要とした。これはもうアメリカとの間の直接の貿易が三〇%、それから間接一〇%近くを含めますと、約四〇%。これも今年度の例を引くのはあまり正しくないかもしれませんが、今年度の貿易は約九百億ドルをこしておるわけでありますから、この四〇%というと、四、九、三十六、少なくとも三百億ドル以上ということであって、たいへんな数字である。だから、このような状態から見て、日米間の貿易不均衡を直さなければならないということは、もう申すまでもないことであります。それだけではなく、他の国においても日本との貿易アンバランスに対して、西欧諸国からも指摘をせられておりましたので、国際収支改善をはからなければならない。時を同じくして、ドル切り下げという事態に行なわなければならないということがあったわけでございます。  これに対して、日本には中小企業零細企業という特殊な階層があります。まあ常識的に考えてみても、半年間や一年間に三〇%の国際競争力を培養することは、これは不可能な状態でございます。でありますので、まず考えなければならぬのは、国内的に中小企業対策であり、零細企業対策である。これは与野党とも一致した見解であったことも申すまでもありません。中小企業対策零細企業対策を行ないながら国際収支改善をはかるとすれば、どうするかといえば、輸出内需に転換する以外にありません。方法があるならお示しいただければ、また参考にいたします。輸出内需に転換する以外にありません。そういう意味で税制上、財政上、金融上の格段の施策がとられたことは申すまでもございません。また、皆さんの中では、これでもまだ中小企業対策不足であるという御指摘もあったわけでございますから、これはその状態において当然とらなければならなかった施策だと考えております。  また、第二の問題として指摘せられるのは、御承知のとおり……(「何の質問に対する答弁だ」「的確な答弁をしてくださいよ」と呼ぶ者あり)だから、物価はどうして高騰しているのか、その原因をつまびらかに述べろ、こういうことでありますから、そう述べざるを得ないのであります。  石油だけで上がっているのではないのです。ですから、そういう意味で、とにかく国内的にはそういう体制をとらざるを得なかった。時あたかも、そのドル切り下げという問題があったために、御承知のとおり、企業手元流動性が拡大するような状態があった。そこには、政府施策よろしきを得なかったという御指摘は確かにあると思いますが、そういう問題と中小企業対策をあわせて行なわなければならなかったということは事実でございます。  第三の問題として起こってまいりましたのが石油問題でございます。石油の価格が上がる、石油の量が削減をせられるということになれば、電力に影響し、生産需要のバランスがくずれる、そういうために、いわゆる買いだめ売り惜しみの法律を成立せしめていただいたというのでございます。  そういう状態でございますが、しかし私は、国際的に見て、日本はGNPの一〇%以上の輸出力を持っておるわけでありますし、もう一つの重要なポイントは、国民生産の中に占める国防生産軍需生産のウエートを考える場合、日本が最も優位な立場に立っておることは、これはもうだれもわかることでございますから、石油の一〇%、一五%というような削減によって、長期的に見れば、これは問題は確かにありますから、対応策はとらなければなりませんけれども、短期的に見て、国民が必要な生活必需物資を生産できないような状態ではないわけでございます。こういう原則に立っておるにもかかわらず、政府はいろいろな数字を述べて国民の支持と協力を求めてきたわけでございますが、やはり感じの上で、石油が減れば生産は縮小される、供給は落ちる、それで物は上がる、いわゆる先高という見通しのもとに、いまのような現象が起こっておるということは事実でございます。  これを、政府はなぜもっと調整をし、ちゃんとしなかったかというと、ここが、戦後の日本の経済は自由経済を原則とし、国民の発意というものを前提にしながら、政府は補完的、調整的に政策を行なっていくという立場で今日を築いてきたわけでございます。でありますので、そういう事態が起こりましたときには、真にやむを得ず買いだめ売り惜しみの法律の成立をお願いをし、後に石油需給適正化法案、国民生活安定法案という二法の成立を願ったわけでございまして、政府は、これからはこれらの法律を駆使することによって国民に実情を理解していただき、そして、どの国に比べても日本生産能力もあり、流通経路にも品物はあります。御指摘によると、とにかくパンクするような倉庫もあるじゃないかという御指摘もあるわけでございますから、そういうものを正常な流通経路に戻すようなために、行政的に全力を傾けてまいるということによって国民の理解を得、そして物価を安定的に導いてまいろうという考え方でございます。  いつごろかということでございますが、できるだけ早くということでございまして、上期を目標にし、夏ごろ、まあ少なくとも電力というのは、夏は電力需要というものに対してはピーク時でございますから、そういう事態までにはやはり政策を完ぺきにしていかなきゃならない。しかし、外要因もあるんですから、いつ人事をやるんだ、いつどうするんだというようにはお答えできるものではない。これは、そういうことだけは十分おわかりになると思うのであります。ですから、私も可能な限り一日も早くというところにウエートを置いておるということを、ひとつ御理解いただきたい。
  11. 石橋政嗣

    石橋委員 いまお答え願った程度のことは、私も本会議におきます質疑応答をつぶさに検討しておりますので、よくわかっているんです。逆に後退しているぐらいです。それではだれも納得できない。安心もいかない。だから、私はもう少し詰めた質問をしようと、こういうわけです。これはいまからやります。  その、やる前に申し上げておきたいんですが、私は、できるだけ総理なり政府が示しました物価対策というものを俎上に上げて、あるいはその物価安定を目的にして組まれたという来年度予算案そのものを爼上に上げて、いわば政府ベースで質問をしたいと思うのです。そうしなければかみ合わないと思いますから。極力、五十歩、百歩譲って政府ベースでやりたいと思います。  しかし、そのために前提があるんです。その前提として、ちょっと本論に入る前にお尋ねしておきたいのは、政府の示した来年度経済見通しと来年度予算案との関係であります。どうもこれが一貫性がないような気がしてならないのです。経済見通しは経済見通し、それと関係なしに予算は組む、こんなことでは、政府ベースで私、質問しようと思っても、これはやれないわけですから、ただしておきたいと思います。  予算編成の前提として、この経済見通しというものがなされておると思うのですが、その経済見通しを立てるにあたって積算の根拠になった数字、いろいろなそういった数字が、予算案作成後大きく変わっているんじゃないかという疑問からこれを見出したわけであります。非常に変動の激しい時代ですから、あり得るわけです。ところが、あまりにもこの誤差が大きいような気がしてならない。  そこで、特に主要な要因についてお尋ねしたいんですが、この経済見通しが、昨年の十二月二十一日でしたね、閣議で決定されます段階において、原油の供給量をどの程度と押えたのか、原油の価格をどの程度と見たのか、これで原油輸入額もはじき出されるわけですが、輸入額がどれくらいと見たのか、為替レートは一体一ドル三百円という計算をなさったのか、国際収支の見通しは、したがってどういうふうになされたのか、鉱工業生産指数についても、どういうふうな変化が生ずるであろうと分析したのか。まずその点をお尋ねしておきたいと思います。
  12. 内田常雄

    ○内田国務大臣 石橋さん御承知のとおり、経済見通しは年末に予算を編成をいたします際に、一応の翌年度の見通しを立てまして閣議了解をいたします。これは昨年に限ったことではございません。例年そうでございますが、しかし、こうして翌年その国会に提出いたします予算案が決定されますときに、正式にその経済見通しの決定をいたすわけでありまして、毎年そうでございますが、、その間は、たとえばGNPの財政関係への配分というようなものは、閣議了解の段階ではきめてないわけでありますが、予算がきまった後に、それをその翌年の一月の閣議決定のときにきめる。  ところが、昨年の暮れから本年の一月の閣議決定の間に、いま仰せられますように、幾つかの大きな変動がございました。  第一に、それは石油の価格が非常に大きく引き上げられるであろうという想定と、それからまた若干の数量についても緩和があるだろうということが大きな原因でございました。その数字は先ほど中曽根通産大臣も言われましたが、私どもは、四十九年度におきましては、大体入着して活用できる輸入額を二億六千万キロリットルないし二億六千五百万キロリットルぐらいに見ておりましたが、それは二億七千万キロリットルということで見直しました。また価格は、これもいろいろな移動の要素がございましょうけれども、初めは四十九年度一バーレル当たり六ドル見当で見ておりましたのを、九ドル見当に実は引き上げてみました。その結果、国際収支にばかなり大きな変動がございまして、当初の閣議了解の段階で、四十九年度に私どもが見積もっておりました石油のための支払い外貨は約百億ドル程度でございましたが、それを百五十億ドル程度に増額見直しをせざるを得ないことになりました。その結果、国際収支全体にもかなりの変更を一これはまあいずれもみな円計算でなしにドル計算でいたしましたけれども、輸出入の関係でも貿易収支はかなりの黒字も見越しておりましたけれども、その黒字の幅をぐんと落としますとともに、貿易外の収支もございまして、それらを改算をし直しました結果、経常収支におきましては、閣議了解の段階では十一億五千万ドルくらいの黒字に見ておりましたのを、これを今度は逆に四億五千万ドルくらいの赤字として改算をせざるを得ないということで見直しました。  ただし、国際収支は、そのほかに一番大きな変動要因といたしましては、御承知の長期資本収支がございます。日本からの海外投資とか、あるいは外国からの外貨の導入でございますが、四十八年度におきましては、御承知のように、この資本収支に非常に大きな赤字要因がございましたのを、四十九年度におきましては筋の通った外貨の導入は認めていく、また逆に、筋の通らない外貨の持ち出しを認めない、こういうような長期資本収支の政策を大蔵省におきましても立てることになりましたので、長期資本収支の面におきましては、これは赤字でございますけれども、ある程度の赤字の圧縮が見られるわけでございまして、差し引きいたしまして、国際収支全体では、これは閣議了解の段階よりもその赤字額をふやして改算をいたしております。それだけ日本の外貨が減ることになるわけであります。  もう一つは、石油輸入価格が引き上げられますので、当然それは卸売り物価等に影響いたしますので、その卸売り物価の改算も実はいたしてございます。  さようにいたしまして、さらにいろいろな精細な計算をいたしました結果、GNP全体の増加額というものは、これは閣議了解の段階よりもあまり移動はございません。若干の増加になりますが、いわゆる微増でございまして、閣議了解の段階では、これは円計算でございますが、百三十一兆三千億円というのが、見通しのときのGNP総額でございましたが、それを改算の結果は百三十一兆五千億円、こういうことになりました。鉱工業生産も四十八年の段階から若干ふやすことになりまして、四十九年におきましても若干鉱工業生産はふえるわけでありますが、四十八年をふやしました結果、四十八年に対する四十九年の鉱工業生産の増加率というものは、やはり一%程度であろう、したがって、明年度における国民生産の実質の伸び率というものは、最初に私どもが想定いたしましたように、四十八年度に比べますと、二・五%くらいの実質の増加にとどまる、こういうことでございまして、これを要するに、全体の動き方が微調整で終わりましたので、予算に変更を加える必要はない、こういう次第でございます。
  13. 石橋政嗣

    石橋委員 よくわかりやすいように御説明願いたいとお願いしているのですが、どうもわざとわかりにくく言っておるのじゃなかろうかと思うのです。  去年の十二月二十一日に経済見通しを閣議できめているわけなんです。それに基づいて十二月二十九日に予算案が閣議で了承されて確定しているわけなんです。ところが、非常に変動の激しい時期でありますから、いよいよこの予算案を審議しようとしておる現時点で一カ月後を振り返ってみると、非常にこの数字が動いておる。予算編成の前提となった経済見通しに大きな変動が出ている以上、このままで予算の審議に臨んでよかろうか、こういう疑問を私たち持つわけなんです。そこのところをしっかり答えてもらわぬといかぬのですよ、だいじょうぶならだいじょうぶと。だいじょうぶじゃない。だから具体的に数字だけびしびしと言ってください。この十二月二十一日の経済見通し作成の段階で原油の供給量は、いま二億六千五百万キロリットルというふうに見た。これを三億七千万キロリットルに一月十九日に修正されておる。これはわかります。その際、一バーレル当たりの原油の価格を幾らと計算なさったのですか。しかも、いまはどれだけに変わっておるのですか。そのことによって、国際収支にどの程度の金額の誤差が生まれるのですか。それから為替相場は当時日銀の介入点は一ドル二百八十円であったわけですが、いまは三百円に変わっております。この点については、経済見通し作成の段階においては一ドルどの程度と予定して計算なさったのですか。こういうことを聞いているのですよ。
  14. 内田常雄

    ○内田国務大臣 そのことをお答えいたしたわけでありますが、少しこまかく入り過ぎたので、もう一度お尋ねの数字だけはっきり申し述べさしていただきます。  原油輸入の数量につきましては、石橋さんが確認されたとおりでございます。  単価につきましては、四十九年度のその見通しをつくります際は、一バーレル当たり六ドル台として計算をいたしてまいりましたが、それを九ドル台として改算をいたしました。これは根拠に基づくものがございます。その結果、支払い額は、閣議了解の段階で私どもが想定をいたしておりましたのは百億ドル程度でございましたが、それが当然百五十億ドル程度に増加をいたします。それだけ国際収支の支払いがふえる、こういうことに相なります。  国際収支の総額を申し上げますと、輸入は、了解の段階では三百八十九億ドル程度に見ておりましたのが、今度は四百三十七億ドルぐらいの支払い増加になる。しかし、今度輸出のほうも当然いろいろな価格が上がりますので、輸出のほうも了解の段階では四百四十一億ドル程度に見ておりましたのが四百七十一億ドル程度によけいに見積もってまいってきております。  最後に、お尋ねの為替レードでありますが、もちろんこれは私どもが閣議了解の段階では一ドル二百八十円見当で計算をいたしておりましたが、一月に入りまして一ドル三百円に、これは変動相場でございますから将来いろいろ変わるでありましょうけれども、なりましたので、一応三百円と計算いたしましたが、これはまた石橋さん御承知のとおり、日本アメリカとの関係では一ドルが三百円になりましたけれども、アメリカを除く他の諸国との、たとえばイタリアとかフランスとか英国とか、その他の通貨の関係では円は減価をいたしておりませんので、この輸入の総額について全部を一ドル三百円として計算をする必要はございませんので、輸入額の約四分の一ぐらいを一ドル三百円として計算する、こういうことにいたしております。しかし、いずれにしても、国際収支のほうはすべてドル建てで、これは明年度の経済見通しで直接予算に響かしておるものではございませんけれども、ドル建てでそのままにあの表示をいたしておるわけでございます。
  15. 石橋政嗣

    石橋委員 いまあげられた数字だけ見てもずいぶん大きく動いているのです。予算編成の前提となる経済見通し、そのときの基礎的な数字として為替相場が一ドル二百八十円、原油の供給量が二億六千五百万キロリットル、単価が一バーレル当たり六ドル台、六ドル台なんという言い方も実に不正確で、経済企画庁長官にふさわしくないと思うのですけれども、とにかくそれが、原油の供給量もふえておるし、単価に至っては、はるかに十ドル台まで上がっている。為替相場も一ドル三百円にはね上がっておる。これだけ動いておるのに、名目成長率も変わらなければ、実質成長率も変わらない、消費者物価指数も変わらない。どういうことですか、これは。こんなことで私は予算の審議にそのまま入るわけにいかないと思うのですよ。この基礎的な数字が違えば当然違ってくる。租税収入だって変わってくるはずだし、工事事業量だって当然変わってくるはずだし、根本から変化が出てきておる。それを目をつぶって押し通していこうというのでは、これは国会を冒涜するものですよ。当然修正されるべきである。  その修正は、それでは国会でやってくれとおっしゃるのですか。そこのところはどうなんです。これはあなたの問題じゃない。私は総理にお聞きする。
  16. 内田常雄

    ○内田国務大臣 こういうことを、石橋さん、御理解をいただきたいのでありますが、石油輸入量が緩和をされる見通しもあり、また、そのかわり単価が上がってくる、したがって、外貨の支払いはふえます。つまり、輸入総額がふえるわけであります。輸入総額がふえるということは、これはGNPの計算におきましては、それだけ控除項目がふえることでありまして、輸入がふえただけはそれだけGNPの総額からは落とされることになりますので、輸入がふえましてもGNPの総額にはそれほどの影響は与えない、こういうたてまえ、これはまあ世界的な計算で、そうなるわけでございますので、したがって、総額の百三十一兆数千億円というものには大きく響かないわけであります。
  17. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 予算が経済見通しを前提としておる、これはお話しのとおりでございます。したがいまして、経済見通しが違えば予算も違ってくべきじゃないかという御疑問のあることは私もわかります。  私どももしさいに点検いたしましたが、まあ、とにかく微調整の経済見通し修正でございます。したがいまして、一々検討いたしてみましたが、予算を修正する必要はない、そういう結論に到達いたした次第でございます。
  18. 石橋政嗣

    石橋委員 途中の説明が省略されているのですよ。必要はないという結論が、納得いくような説明がないじゃないですか。これだけ数字が変わっているのに予算を動かす必要はない——必要はないんじゃない。いまさら動かせないというのでしょう。
  19. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 一番大きく変わったのは卸売り物価でございますが、これが公共事業費に関係してくる。まあ公共事業費の検討を要するわけです。それから消費者物価は変更ありませんから、福祉、そういうような問題には関係はございません。  それから国際収支が動いてきておるという関係があります。それは外為会計、こういう方面に関係があります。  それから二百八十円が三百円になったという為替レートの関係、これはもともと三百八円で計上しておりますので、これは予算の修正の必要はない、こういうことでございます。
  20. 石橋政嗣

    石橋委員 ここで食い違いが明らかに出てきているのですがね。  経済企画庁長官は二百八十円、日銀の介入点で計算したと言う。いま大蔵大臣は三百八円と言っていますが、両大臣の間で明らかに食い違いが出ているのですが、これはどういうことですか。
  21. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 予算といたしましては、予算基準レートとしてきめられております三百八円で計上しておるわけです。これは流動性でありますから、いつ幾らにするか、こういう問題がありますが、一応基準の三百八円を採用しておる。そういうことですから、これが二百八十円が三百円になろうが、三百十円になろうが予算には関係はない、こういうふうに申し上げているわけでございます。
  22. 石橋政嗣

    石橋委員 経済見通しは十二月二十一日の段階では二百八十円、現在では一ドル三百円と経済企画庁が言っているのですよ。予算はそんなこと関係なしですか。経済見通しとは関係なしでおやりになるのですか。何のための経済見通しですか、これは。
  23. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 石橋さんの御指摘はよくわかるのですが、予算は予算で、幾らで計上するかというのは、防衛庁とか、それから日銀とかの関係は、一体二百八十円でやるのか三百円でやるのかというと、変動相場制下におきましても、日本でいま固定レートとしてきめておる一つの目標は三百八円だったわけです。御承知のように三百六十円から三百八円に一応引き下げたわけでございますから、だからドル建ての予算は全部三百八円で計上しておる。というのは、三百八円は円に直して計上しているわけですが、実質的な支払いが三百円で行なわれる場合もあるし、二百九十円で行なわれる場合もございます。その場合は三百八円で日銀に払って、日銀からそのまま三百八円と実際に支払った差額は、国庫に返納になるというのが予算のたてまえでございます。でございますから、去年度もそういう状態で予算は計上し執行されてき、ここでも問題になったけれども、御理解をいただいたわけです。ですから、それは現段階においても、変動相場制においては、日々変わるものをその数字で計上できるはずはないのであって、だから、予算にドル建ての予算を計上する場合には、三百八円レートで計上するのは、これはもうどこでもやっている当然のことでございます。しかし、この予算の額とは別に、予算額そのものと経済見通しとの関係というと、経済見通しは実勢レートでもって見なければならぬわけでございますから、変動相場制下において、二百八十円の場合は二百八十円で試算をして一つの結論を出す。それが三百円という介入点ということになれば、三百円にこの数字を入れかえて、そして収支じりがどうなるかということを再計算してみるわけでございます。でございますから、そういう意味で、経済見通しに調整を必要としたということは事実でございます。  経済見通しと予算との関係に対しては、これは申すまでもないことでございますが、予算は国会の議決でなければ執行できないことでございまして、しかし、その予算を編成する過程において、かつては経済見通しというような性格のものはなかったわけでございますが、戦後は、変動も激しい、また国会の御要請もあるということで、予算をつくる前には経済見通しというものを閣議で了解をして、それに基づいて歳入をはじき出す。経済見通しというものは、これは動くものでございまして、法律できめてもどうにもなるわけでありません。動きますが、しかし国会で、こういうようなおおむねの見通しでございますので歳入額はこうだと思われます、その歳入欠陥額はこうだと思いますから、この部分だけは国債によりますということで、国債は無制限に出ては困るというので財政法四条のワクはかけてあるわけでございまして、だから、予算とそれから経済見通しの間には、これは予算をつくるときには、経済見通しというものが基礎になってつくられるべきであるし、また確かにそうではございますが、しかし、経済見通しにはこれはもう変動はあるわけでございます。ただ、大きな変動があるということになれば別でございますが、現在の状態では微調整ということでございまして、政府はもう決定し、国会に提出をする閣議決定の段階においては、予算とそれからそれのもととなった経済見通しは適合して符合しております、こう述べるわけでございまして、言うなれば、その後の国際情勢の波動に対応して、計算はしさいに何回も何回も再計算を行なって、最終的に予算と経済見通しが合理的な状態で国会の御審議が仰げる、こういうことをひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  24. 石橋政嗣

    石橋委員 この問題だけで時間をとられるのは、私は非常に残念です。  そこで、ちょっと結論を急ぎたいと思うのですが、先ほど大蔵大臣の発言の中に、卸売り物価は小売り物価に関係ないとおっしゃいましたが、これはおかしいんじゃないですか。卸売り物価は確かに十二月段階一一・九%アップというのを、一月になって一四・六%に訂正しているわけですね。消費者物価はそのまま据え置いている。そのことが頭にあるものですから、そういうことばが出てきたのじゃないかと思うのですが、これは正確じゃないと思いますので、お取り消しを願っておきたいと思うのです。  そして、いま総理からお答えのあった問題につきましては、今後の予算委員会の審議の中で当然矛盾が出てくると私は思います。その場合には予算の修正権を持っておるという前提で、本論に入りたいと思います。
  25. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、卸売り物価消費者物価に関係がない、こういうふうなことは申し上げません。消費者物価が動いておりませんから、福祉諸政策についての修正は必要はありません、こういうことを申し上げたのです。卸売り物価が動いたから、その関係で、公共事業費でありますとか、あるいはさっき落としましたが、法人税の見通し、そういうものは影響があり得るはずなんです。しかし、しさいに検討いたしましたが、そういう修正をする必要はなかった、こういう結論を申し上げておる次第でございます。
  26. 石橋政嗣

    石橋委員 本論に入ります。  総理施政方針演説の中で、「物価問題の解決は、当面の政治の最重要課題であります。」と述べておられるわけです。大蔵大臣も財政演説の中で同様の趣旨のことを述べられております。私も、冒頭申し上げたように、その点は同感です。  そこで、最初に言ったように、いつまでに、どのようにして、どのような状態に持っていこうとしているのかということが、これからお互いの論争の中で明らかになってこなければいかぬと思う。  まず第一に、いつまでに安定させるのか。このことに関して、年末国会の本予算委員会において、総理は、十二月末、三月末、四ないし六月期の三つがある、目標として、こういう答弁をなさっております。先日、二十三日の本会議では一—三月、四—六月、七月—九月ということはないという答弁が出てきているわけです。目標として一—三月、四—六月、七月—九月ということはない、こういう答弁をなさっておるわけですが、こういう答弁の経緯をずうっと見ておりますと、一応の目標として四月から六月、この辺を頭の中に置いているのじゃなかろうかと思うのですが、またずれるのですか。ここからまずちょっとお尋ねしておきたいと思います。とにかく、いつごろまでに何とかめどをつけたいというその一応の目標ですね、どこに置いているのか、国民が期待を持ってよさそうな時期はいつなのか、これをお答え願いたいと思います。
  27. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 早いほどいいということは、これは申すまでもないのですが、これは御質問をされる石橋さんもよくおわかりになっていると思うのですが、これは何月までというような、まあ人事とか給与はいつから上げるのだとかという問題と違うのでして、国民の協力というものがなければこれはとまらないのです。これはいままでトイレットペーパーというものは六%増、五%増でもって十分まかなっておれたものが、少なくとも七%増しにし、その上なお五%をふやしてもなお足らぬというのは、一カ月分ずつお互いが買っておればいいのに三カ月分ずつみんな買ったら、これはバランスがくずれるにきまっているわけです。ですから、配給をやるような統制経済じゃないのです。いまはとにかく自由経済をもととしてその大前提はくずさないで、そうして国民の支持と理解を得ながら、政府は可能な限り最大の調整を行なうことによって物価を安定せしめたい、こういうのでございまして、石油をとにかく供給をよけいにしてもらいたいという交渉もやっております。石油の値段を下げてくださいということもやっております。ガスに転換をしたいという交渉もやっております。それから産業の構造転換もやっておるのです。また、水力や、とにかく原子力の繰り上げもやらなければならぬ。あらゆることをやりながら物価をとにかく安定させなければならぬという公の責任をここで述べるわけでございますから、あなたとすれば何月、こういうのが一番それはいいことでございますし、私も国民責任を持つものでありますから、これはできるだけ早く、こういうことを申し述べるのが当然でございます。  これは一—三月といえば、そうすれば三月までがまんすればという確かに国民の安堵感はあります。四—六月という場合にもあります。しかし、そうすれば四—六月まで待っておればまた上がるのかといういろいろなことを考えながら、一日も早くということを言わなければなりませんし、同時に私は、ほんとうにこういうときには四—六月までかかるがなあということが腹の中にはあっても、一—三月でもってやりたいと思います、やります、こう言わざるを得ないのだ、こういう問題は。問題の性質と、国民の支持と理解を得なければならない。こういう時期に対して明確に述べるということはむずかしいことでございますが、これだけの予算審議をお願いしておるわけでございますし、とにかく政府に対しての権限立法をさえもやっていただいたわけでございますから、少なくとも四十九年上期には、何とかして物価というものは安定的な状態を維持したいこう述べたわけであります。だから、そうすると一—三月、四—六というのがございますから、そういう意味で四—六、夏までには、夏ごろまでには、こういうことを申し述べておるわけでありまして、六月三十日になったら期限が来たんだ、こういうことでは、ちょっとそういう性質のものではないじゃないですか。そこらは、大政治家である石橋さんも百も承知しておってやっておられると思うのですよ。そういうことで……(発言する者あり)ほんとうですよ。そういう見通しというものは、月給を上げるとか、人事をいつやるかという問題じゃないじゃないですか。国民全体を相手にして、与野党——野党の協力も得ながら——野党の協力を得られればもっと早くおさまるかもわかりません。そういう意味で、政府の真意はひとつ御理解をいただきたい。とにかく上期、夏ごろまでには何とかしたい、こういうことで、ひとつすなおにお認めください。
  28. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、総理がいままでに答弁の中でおっしゃったのをそのまま引用しただけなんです。私が一—三月とか四—六月とか言ったわけないんです。少なくとも、いま国民の多くの人たちは、国会の質疑応答を通じて、田中さんはどうも六月ごろまでには何とかしてくれるらしいという印象を受けているんですよ。もちろん早いことにこしたことはない。総理としても一生懸命努力すると言っている。そうすると、いつまで待てば何とかなるんだろうか、みんなそう思う。一応の目標というものは当然ここから出てこなければならぬ。総理は、それがどうも六月ごろという印象を与えるような発言をいままでなさっているのです。私はそれを確認しようと思っただけで、だから六月三十日になって、物価安定していないじゃないか、やめろと、そうストレートに言うつもりはない。また、言ったってあなたはやめぬでしょうけどね。  そこで、ちょっとことばを変えて、私は見方を変えてみたいと思うのですよ。  夏までに何とか物価の安定をさせたいと総理はおっしゃるが、あなたがいま頭の中で描いている物価の安定というのは、どういうことなんだろうか。たとえば、具体的にいえば、卸売り物価が安定したからもう安定した、こういうつもりなのか、国民皆さん方が一番直接生活につながりを持つ消費者物価が安定しなければ安定といわないのか、両方とも安定して初めて、上昇率が急速にダウンして初めて安定という考え方をとるのか。またその場合のダウンにしても、どの程度までダウンすれば安定したというつもりなのか。あなたが頭の中で描いている安定された時期の状態、それをひとつそれじゃ御説明願いたい。これならできるでしょう。
  29. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国民の皆さまを前にしての公の立場における発言でございますから、真実を述べておるわけです。ですから、そこらは理解していただきたい。  私が頭の中で描いてきた物価というものは、日本は、ほかの先進工業国よりも原材料を他国に仰ぐウエートはうんと高いわけです。そういう意味で、外的要因というのは日本物価に直接影響します。アメリカは、外的要因、外国から仰いでいる石油が四%だというのでありますし、こっちは九九・九%でありますから、これはもう直接の影響の度合いなどというものは算術的にわかるわけです。が、しかし、主要工業国では、総生産に占める軍事費や国防費のウエートというものを当然計算しなければならぬわけです。そういう面を比べると、日本国民生産に占める輸出力及び防衛費やそういうものの比率やウエートを考えると、外的要因を受けるというものが大きいが、しかし国防費、防衛生産というものが国民生産の中に占めるウエートは非常に小さいということのバランスは、これはいろいろな問題はあるけれども、電子計算機にかければ一応の数字は出るわけです。ですから、そうすれば、そこで対応する政策というものが幾つかは考えられるわけでございます。  ですから、私が長期的に見て、これからの日本というものの物価の問題を考えるときには、やはり蓄積のあるなしは、これは相当大きな問題であります。これは、実際このような緊急予算を組みながらも、社会保障費や社会保障施設費などに対しては、年率五〇%も対前年度よりもふやさなければならない。これは笑いごとじゃないです。実際においてはたいへんなことなんです。これもやはり物価押し上げ要因になることは事実なんです。ですから、何十年かの蓄積のあるヨーロッパ諸国と日本とは比較にはなりません。比較になりませんけれども、そういうものまでこまかく比較しないでずっと計算できるものじゃありません。それはきちんと計算をして、それで結局考えてみて、日本のプラスマイナス要因をあらゆる角度から計算をしてみて、先進工業十カ国の平均数字まで長期的に押えられれば、安定ということは文字どおり言える、こういうことを私は自分としては考えてきたわけです。それが、四十六年の下期、四十七年上期、四十七年下期、四十八年の上期、四十八年の下期に入ってからの、この五段階というものは全部、先ほどから述べたように、そのもととなる要因はちゃんと明確にあります。ありますけれども、これだけ五つも六つも重なってきた、複合して起こってきたものを、急速に起こってきておるものを、しかも流通や倉庫には品物があるにもかかわらず、これがどの程度の段階で安定をするのかということになると、これは時間的には、ほんとうにうまくいけば三カ月でも十分やれるはずですし、ほんとうに延びて六カ月、そうでなければもう少しかかるかなというような計算がいろいろできますから、先ほどの御質問に対しては答えておるわけです。  ですから、高値横ばいということになれば、これは下がったことにはなりません。だからそこらがむずかしいところで、私もいま各省大臣と検討を、いろいろ話し合いをしておるのですが、結局、特殊な要因で、日本輸出価格は低過ぎるといわれておったようなものは、国際価格まで引き上げられてくると思うのです。紙などは、いま外紙を皆さん入れておれば五〇%高であります。これはどこから外紙を入れても五〇%高なんですから、日本の紙が安かったんだなということはよくわかるわけです。そういうもののバランス、全部国際価格というものが大体とられて、その上、幅、上下がどのくらいの帯で安定的に長期に見通せるという場合が安定ということになるわけであります。これは第二の段階で、いまのようなものがこれ以上上がらなくなったといっても、倍になってそのまま横ばいになってしまって、これから上がるものもみな、鉄鋼も八万円、九万円、十万円で横ばいで安定したから安定とは私は言えないと思うのです。  ですから、そういう意味で、いま各省別で、少なくとも鉄鋼とか、いろいろ国民が必要とする肥料とか農薬とか生活必需物資とか、そういうものを、過去三カ年間ぐらいをずっと見ながら、それで現在の価格との間に、どれだけ賃金が上がり、どれだけ国際価格が上がり、どれだけ資金コストが上がりというようなものを計算して、これから安定帯というものを、いずれをめどにすべきかということを十分ひとつ検討しよう、こういうことでありまして、私は……(「いまごろやるのですか」と呼ぶ者あり)しかし、それは無理な話じゃありませんか。ですから、そういう意味でいま積極的に——ただ、いつ脅えるかといえば、これはうんと上げ幅がないくらいに、これ以上上がらないように安定させますということになる。それでは国民ほんとうに希望するものにならないわけでございまして、私は、各品目ごとに、いままで異常に値上がりをしたものはここらまで下げなければならぬし、そういう状態を考えながら、一定の幅で長期的な安定が可能なように、しかも、年率の消費者物価というものは五・二%、卸売り物価は四・八%というふうに、げたを除けば見ておるわけでありますから、そういう中で、総体的な品目別なものがその中におさまっていくというような考え方をとっておるわけでございます。
  30. 石橋政嗣

    石橋委員 国民皆さん方にわかるように簡潔にお答え願いたいと冒頭に注文をしておいたのですが、よくわからない。聞いておられる人、ほとんどみんなわからないんじゃないかと思うのです。  ただ一つはっきりしたことは、いまのような高値が横ばいの状態になった、それだけで安定というわけにはいきませんということだけはわかりました。やはりダウンしなければいかぬ。じゃどの程度ダウンした段階を安定というかという私の質問には答えていないが、ダウンしなければ、高値横ばいでは安定と言わないという点では一応はっきりしたと私は思うのです。しかし、そこははっきりしても、それがいつであるか、どの程度のダウンの場合を安定というかということはわからない。というと、いままで何月、何月と言っていたものは、みんなうそだということになるのですよ。全くあなたお得意の勘だけの話で、根拠も何もない。ただばく然と年末と言ってみたり、一−三月と言ってみたり、いまの時点では夏まで、四−六月と言ってみたりしているだけで、特段こういう手を打ったから、それがこの時点ではこういうふうに影響をあらわしてくるというふうに、ちゃんと根拠を持ったものではないということもまたはっきりしました。いわゆる勘の政治をやっておられるということ、これだけが明快になったのですよ。  私、ここで申し上げておきたいのは、とにかくこんなべらぼうな高値というものが横ばいになったからといって物価の安定とは言えない、この点では認識の統一がなされて、私はけっこうだと思うのです。とにかく、一日も早くこれを安定させなくちゃならぬ、ダウンさせなくちゃならぬ。しかし、いまの政府施策でそれが可能か。まあ金融の引き締めや財政面の抑制といったような効果が若干あらわれて、卸売り物価というものはダウンするかもしれぬ。しかし、消費者物価というものが安定するだろうか。特にこの暴騰する生活必需品の標準価格という制度、これ自体からいっても、とても安定はしない。高値安定するということは、これまたあとで具体的な例を引きながら明らかにしていきたいと思うのです。少なくとも総理がおっしゃっているような安定の時期は、当分期待できそうもないということが、おぼろげながらいまはっきりしてきました。せいぜい高値横ばいでもなれば、まあしめたものといわなくちゃならぬようなことではなかろうかという気がする、このことだけ指摘しておきたいと思います。  そこで、この総需要抑制という、一番政府が強調しております、総理が強調しております問題について、問題を移してみたいと思うのです。  施政方針演説の中でこのことは強調されておりますし、財政演説の中でも強調されておるわけですね。とにかく総需要の抑制、これが肝要だ。  そこで、私がいまからやりたいのは、はたして、この総需要抑制という基本方針は確定しているが、一つ一つの項目を洗っていく中で、この方針が貫かれているのか、抑制の効果が期待できるのかどうか、こういう観点でひとつ入ってみたいと思うのですよ。財政の面、民間資本形式の面、輸出の面、国民支出の面、一つ一つ私は当たってみたいと思うのです。  ただ、ここで前提条件として注意しておきたいのは、冒頭にも申し上げたように、私は、平行線にならないようにするために政府ベースでやりたい、ただそういう気持ちがあるのでやるわけで、あなた方が言っている総需要抑制というものを、そのまま全面的に認めるわけじゃないわけです。非常に私どもは警戒心を持っているのです。いまの経済機構そのものをそのままにしておいてこの総需要抑制ということになると、どうしても悪平等になる。結局は、国民の消費という面に全部しわ寄せがいくのではないか、あるいは中小企業零細企業、そういうところの需要を押えることに専念することになるのではないか、一律に抑制という形が出てきますとね。そういう懸念を持っておることだけは最初に申し上げておいて、そして政府ベースでひとつ議論をしてみたいと思うのです。しかし、とにかく物価安定のために総需要の抑制という方向がとられなくてはならぬということは私も認めるわけであります。それが、ただ国民へのしわ寄せになるということを非常に警戒しているというだけで……。  そこで問題になるのは、この総需要抑制という、特に財政面における抑制というものが必要だということを強調されればされるほど、過去一年間の、田中内閣発足以後の財政政策の失敗というものが浮き彫りにされるのではないかということなのです。どうもその点についての反省がないような気がしてならない。なぜこのような物価高をもたらしたかという原因について、年末の国会で総理大臣は、施政方針演説の中で、大きな要因を三つないし四つあげていますね。いまも、さっき答弁になっておられました。一つには国際物価値上がり、二つには過剰流動性、三つには個人消費の拡大、そしてその上に石油の供給制限と輸入価格の上昇、これが物価高の原因だ、こうおっしゃっている。冗談じゃないですよ。これは責任転嫁です。全部外的要因、国際インフレ輸入されているのだと言わぬばかりの態度。国民消費が拡大したのだと、国民にまで責任を転嫁するような態度。せいぜい認めているのは、過剰流動性というところで、金融引き締めの時期を誤ったという点が一つ出てきているぐらいなものだ。これもストレートには言っていませんが……。肝心の財政政策の失敗ということについては一言も触れておらない。もちろん、私はここで責任の追及が主眼ではありません。国民皆さんが求めておられるものは、これからどうしてくれるかということであることは百も承知です。しかし、いままでの失敗を率直に認めないところから、ほんとうに正しい政策が出てまいりますか。そういう意味で私はこれを触れざるを得ない。私は、まず第一に、政府の政策の失敗というものを率直に認めるところから真の正しい政策が出てくる、こう思います。そういう意味政府は明らかに手おくれをやったということを立証するためにも、それから国会における質疑応答というものを形骸化、形式化させないためにも私は必要だと思いますから、去年の一月二十九日、本会議において、施政方針演説に対して私が代表質問いたしましたときの演説をもう一回聞いてもらいたいと思うのです。これは、いま申し上げたように、いかに財政政策の失敗をやっておるか、手の打ち方がおそかったか、そのことを明らかにすることが一つの目標であり、もう一つは、国会の論議というものを形式的なものにしたくないという私の熱願からです。そこで、読ましていただきたいと思うのです。   政府は、来年度予算案の編成にあたって、一  つには国民福祉の向上、一つには物価の安定、  そしていま一つは国際協調の推進と国際収支均  衡の早期回復の三点に留意したということであ  りますが、総理は、あちら立てればこちら立た  ずという関係にあるこの三つの目標を、ただ漫  然と並列的に掲げて、ほんとうに同時に解決す  ることができると思っておられるのですか。私  は、ここで、トリレンマなどということばを使  うつもりはございませんが、二兎を追う者は一  兎をも得ず、まして三兎をや、とだけは言わせ  てもらいたいと思うのであります。   私がこのように言えば、今度は、三目標のう  ちでは、物価の安定、インフレ抑制に一番力を  入れたと言うかもしれません。大蔵大臣は、確  かにそう申しました。しかし、そのようなこと  ばを単純に信ずるほど、国民は愚かではないの  であります。   一般会計十四兆二千八百四十億円、財政投融  資六兆九千二百四十八億円という有史以来の大  型予算、その上、二兆三千四百億円に及ぶこれ  また大型の赤字国債、三二・二%増の公共事業  費、どれ一つをとってみても、四十八年度予算  がインフレ促進予算であることは、あまりにも  明らかなのであります。   問題は、財政の規模や国債の発行だけにある  のではありません。物価に大きく影響する国鉄  の運賃をはじめ、健保、電力、電話等の公共料  金の引き上げ、私立大学の授業料、ガソリン、  灯油、牛乳にみそ、しょうゆと、値上げ計画は  まさにメジロ押しの状態であります。しかも、  国鉄、健保のごときは、昨年廃案になったもの  をそのまま再提出するというのであります。国  会無視もはなはだしいといわなければなりませ  ん。   総理、昨年の卸売り物価が八・五%の上昇率  を示したことを、もっと重視すべきではないの  ですか。何を根拠に物価の安定に最も重点を置  いたと言い、消費者物価を五・五%にとどめる  ことができると言うのでありますか。   総理ほんとうインフレを抑制し、物価の  安定をはかるつもりなら、あなたも施政方針演  説で認めているように、まず第一に、高度経済  成長政策を安定成長政策に切りかえ、財政規模  の膨張を極力押えるべきであります。そして、  法人税の税率を欧米先進国並みに引き上げ、交  際費や広告費に対する課税を強化し、租税特別  措置法の改廃を行ない、一方において、国債の  発行額を削減する等の措置がとられるべきであ  ります。また、公共事業費につきましても、工  事消化能力の範囲内にとどめるべきでありま  す。国鉄運賃や健保の保険料等、公共料金の引  き上げを中止すべきことは言うまでもありませ  ん。これらの点についての総理のお考えをぜひ  承りたいと思うのです。なるほど、物価の安定  に真剣に取り組もうとしているのだということ  が国民によくわかるように、明快にお答えを願  いたいと思います。  これは、ちょうど一年前、去年の一月二十九日の私の演説なんです。あなたがいまおっしゃっているのは、私がこのときやれと言ったことをそのままやりますという施設方針演説なんです。一年間のズレがいまのような状態をはっきり導き出しているのですよ。このことを謙虚に反省することなしにどうして、今度こそは正しい、妥当な施策を施してくれるであろうという期待を持てますか。確かに間違っておった、これが大前提になくてはならないんじゃないですか。それとも、間違ってないというならば、やはりこの日に私が指摘したように、調整インフレを意識的にやったということを裏づける、これならつじつまが合いますよ。政策的にやったんです、国際収支改善、円の切り上げ回避のために調整インフレが必要だったんだ、政策的にインフレをつくったのでございます、現在のインフレ物価高政府施策によるものですというならば、これはつじつまが合います。そうでないとするならば、はっきり間違いであったことをお認めになることが、これからの論議を実あらしめ、施策を妥当ならしめるための大前提になるのじゃないでしょうか。この点についての御見解を承ります。
  31. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御指摘を待つまでもなく、うまくいったところもございますが、うまくいかなかったところもあります。うまくいかなかったことに対しては重大な反省をいたしておりまして、その後必要な施策は次々に実行いたしておるわけでございます。  一つには、国際収支改善は、両三年かかるであろうと言った対米収支は、一年間で改善をいたしました。日米間には紛争がなくなりました。紛争がなくなったからいいようなものの、これはあったらたいへんなことでございます。これはいまの物価高以上に、日米間が、一年間ほんとう貿易のバランスを強制的にとられるようになり、利子平衡税が適用されたような事態をあのまま拡大したならば、日本の経済は四、五年間は戻るだろうというのが当時の専門家の通説でございましたから、その意味では、国際収支は一年間でちゃんとなりました。  それで、まだ御不満はございますけれども、第二の社会福祉の増大というものに対しては、スライド制もできたわけでございますし、私は少なくとも、福祉元年というような、ふさわしいといえるかどうかわかりませんが、熱意は国民に理解がいただけたと思うのでございます。  もう一つは、先ほども述べたとおり、中小企業零細企業というものに対しては、まだあのような状態でも不安があったということは、これは事実でございます、これは世界に例のない特殊な構造でございますから。この中小企業零細企業が、少なくとも三〇%のドル切り下げに対応して、対前年度比三〇%以上の輸出を確保できるような状態を続け得たことは事実でございます。社会的な混乱というものも起こさないで済んだというような幾ばくかのメリットは確かにあったわけですが、しかし、その過程において国際的な要因もいろいろ出てまいりました。  特にソ連、中国、インドというあの大きな穀倉地帯が二年間引き続いて不作である。しかもソ連がアメリカから二千万トンの小麦の買い付けを行ない、カナダ以外からは買わないと言っておった中国がアメリカから八百万トンの小麦の買い付けをあえてやらなければならないというような事態を見ながら、これでは国際物価要因に国内物価が対応できるわけはないということで、公共事業の繰り延べ等を行なったわけでございます。ですから、実際は、いま申されたとおり対前年度比三〇%伸びたと言われますけれども、その間、地方それから国を含めて七%以上の実質的繰り延べを行なっておりますから、そういう意味では、対前年度の一般会計のワクでもって考えますと一〇%程度の大きな繰り延べを行ない、抑制を行なっていることは事実でございます。  また今度は、引き続きその間において、法人の土地に対して二〇%の重課を行なうというような施策もとりましたし、あなたがいま御指摘になったような政策のうち幾つかも実行いたしました。こういうところは、国民のためなら、あなたが指摘される野党の建白もすべて取り入れる、こういうことをちゃんとやっているわけでございます。  そして、なお今日はかかる姿勢で、石油問題が起こったから、四十九年度予算に対してはきびしい総需要抑制をはかっておる、こういうことでございますし、なお四つの法律をつくっていただいて、これから真に物価抑制の責めを果たそう、こう考えておるのでございまして、中小企業とかそれから社会保障の拡大、また国際収支という、そういう四つも五つもの目標を追っておって、そのために財政が先導的役割りをなし、しかもその間、過剰流動性の吸収その他に対して時期を失したというような御指摘があれば、その面に対しては謙虚に反省をいたしております。こういうことを申し上げます。
  32. 石橋政嗣

    石橋委員 とにかく、結論的に申し上げたいことはもうおわかり願ったと思うのです。昨年のこの予算審議の段階において、政府の本年、四十八年度の経済見通しの中で、卸売り物価の上昇率は二%、消費者物価は五・五%という数字を出しておったのですね。それ以内に押えます、とにかくトリレンマの解消というが、その中でも物価の安定には極力つとめて、それが第一のねらいでもあるのです、その目標のもとに今度の予算もできました、こういう説明があったのですよ。それに対して私のほう、社会党としては、おかしい、冗談じゃない、何でこれで物価の安定がはかられますか、逆にインフレをもたらしますよ、ほんとう物価の安定をはかるならば、公共事業費を中心に財政規模ももっと圧縮されたらいかがです、国債依存率も減らしたらいかがです、公共料金の値上げ、特に国鉄運賃、健保料金の引き上げなんというのはおやめになったらいかがです、具体的に私どもは要求した。その時点では全部無視されて、あなたから、心配せぬでもいい、物価の安定はだいじょうぶとおっしゃったのです。ところがどうですか。卸売り物価は三〇%以上も上がる、消費者物価は二〇%以上も上がる、おそらく年度末にはそういう数字が出てくるでしょう。二%が三〇%じゃ、見通しの誤りなどと言えた数字じゃないですよ。五・五%が二〇%以上じゃ、これは見通しの誤りなんというしろものじゃないのです。ごまかし、明らかにごまかしです。こんなことでは何のため国会で一生懸命審議をするのか、問題になるのですよ。なるほどと野党の言うこともほんとうだと思ったら、そのとき直して初めて国会の審議は生きるのです。そのことを私は言っているのであります。少なくとも一年前に社会党が指摘した諸要求を、全部今度は入れようとしている。入れないよりはいい。入れないよりはいいけれども、一年ずれた、一年おくれたためにたいへんな事態を招いている。国民を悲惨のどん底にたたき込んでいる。このことを先に申し上げておきたいのです。  そこで、総需要抑制にからんで、まず第一に財政規模、この点を点検してみたいと思うのです。特に、需要誘発効果の高い一般会計の公共事業関係費を今年度以下に押えた、ここに総需要抑制の方針が財政の中に生かされておりますということを、財政演説の中でも施政方針演説の中でも強調しておられるのですが、ほんとうにこの総需要抑制の方針が生かされているのかどうか。かっこうだけじゃないか、ていさいだけいかにも抑制されているようにつくろっているのではないかという印象を、私はひどく強く持っておるのです。  そこで、具体的にお尋ねいたしますが、この需要誘発効果の一番高い公共事業費ですけれども、確かに来年度の当初予算と昭和四十八年度、本年度の当初予算とただ漫然と比べれば、これは伸びておりません。わずかに減っておるといってもいいと思うのです。しかし問題は、本年度の予算の中では公共事業の繰り延べという措置が講ぜられているということです。昨年の八月の閣議決定によって八%の繰り延べが実施されている。この八%の分を昭和四十八年度予算から引く、公共事業費から引く、そしていま審議を始めた四十九年度予算の公共事業費にプラスすれば、やはり急増じゃないですか。このようなからくりで、いかにも抑制したかのごとくていさいを整えているだけで、実際は減っていない、抑制していない。  国債発行についてもそのことが言えるんじゃないか。現実に四十八年度の国債発行額は、その後手直しを受けているわけなんです。その減額した分を考慮に入れるならば、これまた依存率は落ちていない。どこに抑制の効果が発揮されているんですか。ごまかしじゃないですか。ごまかしでやられたんじゃかなわぬのですよ。そんなていさいだけ整えて、幾らこういうふうにやりましたから、やりましたからと宣伝をしても、実際に抑制してなければ、何の影響もないのですから、逆の影響しか出てこないのですから、国民はまたえらい迷惑をこうむるのです。この点、いかがですか。
  33. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 石橋さんは、昭和四十八年度予算の繰り延べがあるからこれはおかしいじゃないか、こういうことでございますが、繰り延べは千四百億円でございます。それは五%の違いだ、こういうことでありまして、この点から見ましても、物価の点を考えればかなり抑制をしておる、こう見ていいと思います。  それから公債の点でございますが、これは一方において、とにかくいわゆる二兆円減税をやっておる、こういう点でございます。これをやらなければたいへんな公債額の発行減になったわけであります。しかし二兆円減税、これは国民が期待しておる。これをやらないわけにはいかない。そういうことから、公債の発行額は、これは依存度におきましては一六%を一二%に下げるということにしましたが、額におきましても千八百億円の減少をしておる、こういうのですから、これも相当努力をした、こういう御評価はいただいてしかるべきじゃないか、かように考えております。
  34. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、昨年の予算審議の段階に、公共事業費の繰り延べをやりなさい、こんなに公共事業費をふやしたのでは、これは景気を刺激してインフレ物価高をもたらしますと言ったのです。そのことを当時わかっておったのですね。政府は予算成立と同時に措置を講じているわけです。そして八月には正式にまた八%の繰り延べを閣議で決定しているわけなんです。いま大蔵大臣は五%と言いましたが、八月三十一日の閣議決定では、八%をめどとして事業の実施を繰り延べることを確認しているのです。だから私は、八%というものが閣議決定である以上、ほぼその前後繰り延べられておるものという前提でいま発言しているわけですが、いま新しく五%という数字が大蔵大臣の口から出てまいりました。この繰り延べをやったことが効果をあらわしていると大蔵大臣は言うのです。それは私どもも、やれと言ったことですから、そのことをとやかく言っているのじゃないのです。繰り延べられて四十九年度に入ってきて、そして施行されれば、今度は逆の、景気刺激の要因になるじゃありませんか。需要誘発の効果が一番高いと政府もお認めになっているのです。これが逆にまた作用するじゃありませんか。いま四十九年度予算をわれわれ審議しているのですから、四十八年度の効果があったということだけ宣伝されても困りますよ。それは私たちもやれと言った。それを時期を失してやった。やらぬよりはいい。四十九年度でこれを繰り延べられて施行されたら、また同じあやまちを繰り返すではありませんか、こう申し上げているのです。その点はいかがなんです。
  35. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 そのことを申し上げているのです。つまり、千四百億円繰り延べられまして四十九年度予算と一緒に施行される。昭和四十九年度公共事業費は五%の増加になった、こういうことになる。まあ五%の増加である。しかも物価が非常に上昇しておるということを考えると、これはかなりの圧縮である、こういうことなんです。仕事の量で言いますと、昭和四十七年度の水準をかなり下回る、そういうことでございます。ですから、これは需要から言いますとかなりの減少になる。これはしかし、財政だけでどうのこうのというわけにいかぬ。金融政策と相まちますと、これは決定的に総需要抑制的な効果を生ずる、こういうふうに見ております。
  36. 石橋政嗣

    石橋委員 よくわかりました。少なくともいままで、われわれ国民が知らされてきたことは、当初予算をただ漫然と並べて、五千九百万円一般会計は公共事業費が減っているのだ、だから抑制の効果は十分でございますという、そこのところにウエートを置いた宣伝がなされてきている。そうじゃない、実際は。実際は、五%本年度に比べて増だ。この物価高のときに五%程度の増加は、これは抑制だ、こういう正確な説明がいま初めてなされたのですよ。いままでの説明は、五千九百万円四十八年度よりも四十九年度公共事業費は一般会計においては減るのだ、減るのだ、十分に抑制の効果はあらわれるのだ、こういう宣伝がなされておった。それがうそであることだけははっきりしました。
  37. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私どもの説明がうそだと言われると、これは一言つけ加えておかなければなりませんが、四十九年度の予算の執行にあたりましても、これはまたおそらくかなりの額の使用繰り延べ、繰り越しというものが出てくるであろう、こういうふうに思います。これは例年出てくるのです。ことし、いま申し上げました千四百億円、これも例年の繰り越しに属するものも、おそらくかなり入っておるのだろうと私は思う。その辺にけじめがあるわけじゃございません。ですから、石橋さんのいまおっしゃられること、これは多少はそういうことがあるかもしれません。しかし、私どもの説明がこれは間違っておったのだ、ことさらにうそをついておるのだ、こういう御理解はひとつおやめなすっていただきたい、かようなことをお願い申し上げます。
  38. 石橋政嗣

    石橋委員 ただ、はっきりしておきたいことは、例年繰り越され繰り延べられる問題と、いま論議されている問題とは性格が違うということですよ。例年繰り越しが当然のように行なわれているのは、これは能力の問題なんですよ、主として。今度は物価の安定をはかるために政策的に繰り延べをする。従来のとはちょっと性格が違うのですよ。違わなければおかしいですよ、毎年行なわれている繰り越しと同じだというようなことでは。それだったら、総理大臣がわざわざ施政方針演説の中で、財政面では公共事業の執行の繰り延べをやっております、こんなことを得々と言う筋合いのものじゃなくなりますよ。例年と同じようでございます。だから、あなたそこでうそじゃないと言うのなら、総理大臣がうそを言ったことに変わってくるのです、あなたがうそを言わぬというなら。総理大臣が施政方針演説の中で、得々と物価対策一つとして述べているのです。財政面では公共事業の執行の繰り延べをやってます。従来のと同じ、例年並みのものと同じようなことをおっしゃらないでくださいよ、違うのですから。  とにかく、財政の面で検討した場合にも、はたしてこれで抑制が貫かれておるといえるのかどうかちょっと疑問になってきた。少なくとも事前の宣伝に比べるとうんと後退しております。第一、政府の名目経済成長率が一二・九%という段階で、予算の伸び率が一九・七%なのに緊縮だ、抑制だということ自体がおかしいのですよ。これ自体が、いかにいまがインフレであるかということを、もう政府公認で述べている何よりの証拠ですよ。決して財政面においては、そんなに大ぎょうに言うほど総需要抑制の方針が貫かれておるというふうに私は思えません。この辺からも、そんなに早い機会に物価が安定するのだろうかという疑問が出てくるわけです。  ほんとうに総需要の抑制をはかろうとするならば、もっと思い切って手を打たなければいかぬと思う。地方交付税の借り上げなんという、こういうまた小手先細工でやっておったんではだめなんですよ。思い切ってメスを入れる、不急不要部門にメスを入れる。補助金制度にメスを入れるのもいいでしょう。われわれの立場から言うならば、こんなときでさえやはり増額を認めておる防衛費一兆九百三十億円という巨費、ここにメスを入れることも必要でしょう。そういう思い切った措置を講ずることなく、このインフレ時代に財政規模を圧縮する、抑制するなんということは不可能なんですよ。結局、やろうとすれば小手先細工になってしまうんです。交付税の借り上げなんという、こういうごまかしになってしまうんです。そんなごまかししかできないから、財政面から需要を抑制して、そして物価の安定をはかるなんということが、いまのこの政府の姿勢なり経済構造の中からは出てこないということを、私は申し上げておきたいと思うのです。時間がありませんから、次に移ります。  次は、民間資本形成の分、この分で抑制の効果がはたしてあらわれるのかということです。確かに金融の引き締めをしきりにやっておる。公定歩合も五回にわたって引き上げられた。窓口規制も続けておる。しかし、公定歩合の引き上げも、去年の四月から始めているのですね。窓口規制もずっと続けてやっているんですね。それにしちゃちっとも物価安定しないじゃないか。これからだいじょうぶなんだろうか、この疑問はだれでも持つのです。なぜこの金融引き締めの効果があらわれないのでしょう。ここが問題じゃないですか。  これは、大企業中心に手持ち資金が豊富で、金融引き締めの影響を受けないからじゃないんですか。金融機関から金なんか借りなくても、十分に手持ちがあるということを物語っているのじゃないですか。それを一番裏づけたのが、この間の一月二十三日のドル買いです。たった一日で七億四千万ドルドル買いに金が動いている。たまりかねて日銀が調査を命じた。金融機関に、どの企業がこの注文を出したのか。そして吸い上げている。それほどぼろもうけにもうけている。これをほうりっぱなしておいて為替差益でもうけ、土地、株の投機でもうけ、売惜しみ買い占めでもうけて、ぶくぶくにふくれ上がっている状態をほったらかしておいて、幾ら金融を引き締めたって効果があらわれないじゃないですか。どうしてこれを吸い上げるかということこそ本気で考えなければ、何の効果もあらわれてこないということを、一番端的に示したのがこのドル買いです。  どんなに大企業がばく大なもうけをしておるか、これは九月の決算を見ただけでもはっきりします。九月決算で、これは国税庁の調べの資料でございますが、もうけるももうける、ちょっとけたはずれ、会社の申告に基づいて比較してみた場合にも、実態はもっとでしょうが、繊維工業に至っては、去年九月の決算に比べて七・三五倍。いいですか、一年間に収益が七・三五倍ふえているのですよ。石油精製業に至っては四・四倍、鉄鋼業が三・五四倍、製紙パルプ工業が三・四八倍。とにかくもうけてもうけて、もう笑いがとまらぬ。しかも、今度の本年の三月決算はさらにこれを上回るだろうといわれている。空前絶後の決算になろうといわれている。こういう状態を放置しておいて、幾ら公定歩合を引き上げたって、窓口規制を強化したって関係ないじゃないですか。設備投資が進むかもしれませんよ、どんどん。特に政府も、これからは多消費の産業というものを省資源の産業に切りかえなくちゃならぬ、知識集約産業に切りかえなくちゃならぬということを盛んに強調している。そういう面のそれじゃ投資も始めなくちゃいかぬという動きだって出てくるでしょう。それを、こういうぼろもうけにもうけているものをそのままほっといて、ただ金融引き締めだけで抑制することができるとお考えなんですか。いかがです、総理
  39. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 累次にわたる公定歩合の引き上げを中心とする金融引き締めの効果は、総体としてはかなり進行をいたしておる、こういうふうにいま見ております。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕 特に、昨年の暮れ以来はかなり浸透してまいりまして、日本銀行の発行券は、一時は前年度対比二七・九%の増加というところまでいったんです。それが逐次下ってまいりまして、特に、この一月になりましてからは相当減りまして、二三・一%というところまできております。そういう総体の情勢である。  私は、しかしながら金融政策だけで総需要の抑制ができるとは考えておりません。やっぱりこれは車の両輪といわれまするけれども、財政と金融とが一体となって働いて初めて総需要の抑制という実をあげ得る、こういうふうに考えておりまして、先ほど石橋さんからいろいろ御批判もありましたけれども、財政につきましては、私としては、とにかく現在でき得るだけの抑制措置を講じてみた、こういうふうに考えております。これによる需要減少効果というものはかなりのものであろう、こういうふうに思います。これに加えて、いま金融政策が進められておる。  そこで私は、いま量的にはかなり引き締めが浸透してきておるのですが、これを質的局面にさらに強化していきたい、かように考えまして、一方において、生活必需物資というものにつきましては、これは生産を増強するような融資政策をとらなければならない。しかし、他面におきまして、一般ビル等の建築でありますとか、あるいは新規の一般の設備投資でありますとか、あるいは現に進行中でありまする設備投資にいたしましても、これをスローダウンいたしますとか、そういうふうに選別的な融資姿勢、持に土地だとかそういうようなもの、その他の投機性のものに対する融資、そういうものは極力これを押えていくというふうな政策をとる。私は、もう金融政策による需要抑制政策、これもこれからはかなり深刻な影響を及ぼしてくる、こういうふうな判断をいたしておるのです。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕  ただ、ドル日本に入ってきたあのとき過剰流動性が生じた、また金融緩和政策もとられた、そういうようなことからの過剰流動性という要因もある。その全部をいま吸収したとは考えておりません。まだまだこれは吸収政策を続けなければならぬ。しかし、これはもうわずかになってきておる、しかも、それは多少の偏在をしておるというような状態まで追い詰められておる、こういうふうに考えておりますので、この金融の量的かつ質的抑制の政策を進めていきますれば、これは民間経済の動的には相当大きな影響が出てくるのじゃあるまいか、そういうふうに確信をいたしております。
  40. 石橋政嗣

    石橋委員 しわ寄せがどこにいくかといえば、先ほどから指摘されておりますように、弱いところにいくのですよ、中小企業に。肝心の大企業は、豊富な手持ち資金を持っておってちっとも影響を受けない。これをほったらかしておってはだめだと私は言っているのです。だから、その面の対策を述べる前に、盛んにこの民間設備投資の抑制をおっしゃいますけれども、ほんとうに貫いているのですかという例を、私はここであげてみたいと思うのです。  総理は、施政方針演説の中で、「民間設備投資における新規着工の停止などの措置をとるとともに、」云々と、これまた強調されました。ところが、設備投資の抑制どころか、新規の許可をしておるじゃないですか。それもえりにえって、いま一番の問題になっておる石油精製設備、これを、石油危機とこれほど叫ばれておるさなかに通産省は許可しているじゃないですか。総理大臣、あなたの威令は内閣に及んでいるのですか。どういうことなんです。  去年の十一月十三日、通産省石油審議会が十四社十六製油所の日産百十三万三千バーレル、一億八千十五万リットルに及ぶ石油精製設備を昭和五十一年、五十二年度完成分として許可しているじゃありませんか。これはどういうことなんですか。少なくとも、十月六日に始まった第四次中東戦争を契機として起ったいわゆる石油問題、石油危機、それが叫ばれ、原油輸入量のめどもつかないといって大騒ぎし、強力な規制措置まで必要になったというときに、えりにえって本家本元の石油精制設備のこのような膨大な設備を認可、許可するとは一体何ごとです。どこに抑制があるのです。どこに民間設備の抑制があるのですか。私は、この辺の経過をまず担当大臣から聞きたいと思うのです。
  41. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あれは、石油業法に基づきまして長期計画を策定いたしまして、そして五十年、五十一年における日本のキャパシティーを計算して、そして長期計画として許可したものであります。しかし、現実に着工するときには、各工場ごとに着工の許可がまた別に要ります。それらは、将来にわたって、その需給情勢を見ながらやるということであります。  しかし、当面のインフレ対策といたしましては、通産省といたしましては、十二月から約三千億円にわたる民間設備投資の削除をやるつもりで、特に石油、電気を多量に消費する産業について、特に自動車産業等につきましても、設備カットをいたしまして実行しているとおりでございます。
  42. 石橋政嗣

    石橋委員 ここでいろいろな疑問がでてくるのですね。あれほど石油で大騒ぎして、これから輸入の見通しもつかぬ、減るのじゃないかと大騒ぎしているときに、本家本元はこれだけ膨大な新規設備投資を準備している。なあに減るもんかと、御本尊はちゃんと知っておった、通産省もちゃんとそれを知っておった、その証拠になるのじゃないですか。原油輸入量が明らかに減るというような見通しがあるときに、そのさなかに、こんな膨大な設備投資を常識のある者が認めますか。減りはしないということを通産省石油業界も知っておったということじゃないのですか。その点はどうですか。
  43. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 当面の需給関係とは関係なしに、長期計画として五十年、五十一年の将来にわたる分を策定してやったものであります。したがいまして、あの当時の情勢といたしましては、二五%削減のOAPECからの情報等に基づいて、それぞれ適切な行政指導等をやってきたわけであります。
  44. 石橋政嗣

    石橋委員 あらゆる面でこれは矛盾していますよ。私は総理大臣にお伺いしたいと思うのです、通産大臣もやったことだけは認めていますから。あなたは、先ほど私が読み上げたように、この間の施政方針演説の中でも、民間設備投資における新規着工の停止などの措置を、物価安定をはかるためにとったと述べておられるのですよ。一番本家本元の設備投資をやっておるじゃないですか。新規許可をしているじゃないですか。これが第一問題です。  二番目は、いま申し上げたように、石油が減る減るといってさんざん騒がせておいてこれだけの物価高をもたらした。ところが、肝心の情報を流した本家本元は、石油連盟通産省は、減りはしないということを知っておったというこれは証拠ではないか。五十年、五十一年完成、そんな先のことじゃないですよ。ことしは昭和四十九年ですよ。昭和五十年、五十一年完成、一億八千十五万リットル、これだけの石油精製の新規設備を去年の暮れに認めているのですよ。こんなばかなことがなぜ行なわれているのか。しかも、一方においては金融の引き締めと言っている。金融引き締めでそういう設備投資がやられるのだろうか。やるほうは自己資金でやる、これしかない。しかも、これは全部製品価格に転嫁している。これでさらに物価値上がりを招く。どれを考えたって、いま政府が打ち出している政策と矛盾しているじゃないですか。ばかにするにもほどがありますよ。どの一点を押したって、政府がわれわれに向って説明していることと矛盾したことを平然とやっておる。これで物価が安定しますか。私は、総理責任ある回答を求めたいと思います。
  45. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 公共事業の抑制もはかり、総需要の抑制もはかっておるわけでございますから、総需要の中には、当然民間の設備投資の抑制もはからなければなりません。民間の設備投資の抑制というものの中には、ただ一律、画一的なものではなく、将未的展望に立ってなさなければならないものは、抑制をするといっても、抑制のテンポというものを考えながらやらなければなりません。また不要不急というもので、いま現にやらないで済むようなものは、完全抑制をするということでございます。  でありますから、まずビル等に対しては、五千平米以上は完全に抑制をしてもらう、また三千平米以上に対しても自粛をしてもらう、届け出をしてもらう、着工を延ばしてもらうというようなこともやっておるわけです。駅がなくとも交通機関は動くわけでありますから……橋は途中でやめれば、橋は投資効果を生みませんから、これは着工以前のものに対しては着工を全面的に差しとめる、しかし、途中までかけておるものに対しては、どうにもならなければ一年間完成期間を延期するということであって、これは中止をすれば全く投資効果はゼロよりもマイナスに転化するわけでございます。ですから、駅とか、なくてもまあ済むじゃないか——雨が降るから、なくても済むわけはありませんが、そういうものはセメントや鉄材やその他の状況を見ながら完成年次、工程を繰り延べるというような指導をしておるわけです。  しかし、石油に対しては、私も内容はつまびらかにいたしませんが、いずれにしても四十八年度に三億一千万キロリットルを必要とするというたてまえでおったわけでございますが、その後石油の供給が削減されるということでございます。しかし、これが一〇%、一五%削減されるということにしても、五十年、五十一年、五十二年という展望に立って、これは一年や半年でできる設備ではありませんので、まあそういう意味で基本的な認可はする。しかし、こういう状態が起こっておるのでありますから、これは完成年次は五十一年であっても、四十九年度には着工しないとか、五十年度でも材料やそういうものの供給状態というものを見て、工程の中で繰り延べ調査を行なうということになろうかと思います。いまでも設備投資を必要とするものもあります。これは電力などにおいては非常に困っておりますが、設備投資は、石炭専焼火力というものが必要であれば、新たにピッチを上げて設備投資をしなければならぬものでございますし、ダムや水力発電所に対しては、次を繰り上げて工事を行なっておるものでございますし、そういう状態によってのものであるということでございまして、いま御指摘になられたような石油精製施設、石油化学との関連もございますから、そういう意味では、物価状況、社会情勢というものと十分調整をしながら工事認可、工事の工程認可を行なう場合に取捨選択、調整が行なわれるべきものだ、こういうふうに御理解をいただきたい、こう思います。
  46. 石橋政嗣

    石橋委員 これは、だれが聞いてもおかしいと思うのです。私は総理の断固たる措置をここで要請します。そうしなければ、あなたが国民に向って施政方針演説で言ったことと矛盾しているじゃないですか。しかも、予算編成の前提となっておる見通しとも食い違っているじゃないですか。そんなに急速に石油の消費量がふえるという前提に立って予算を組んでいますか。冗談じゃないですよ。こんな膨大な設備をこのさなかに許可するという、そういうことが何を意味するか。私は総理大臣に、ここで許可の取り消しを指示する意思があるかどうか、ぜひやってもらいたい、そのことを要求いたします。
  47. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御趣旨はよくわかりますが、石油というものは、いまの状態と、来年、再来年、これから長期的展望に立ったものは、石油だけでは考えられないわけです。石油精製のものだけではなく、石油化学との関連のものもございます。それから他の産業との関連もあります。自動車やその他いろいろな関連等もございますので、そういう状態で、いま認可をしたものを取り消すというような立場にはありません。  しかし、施政方針演説でも述べましたとおり、民間の設備投資に対しても軽重順位を考えながら、厳にこれを抑制の方針で物価抑制に努力してまいる、こう言っておるのでございますから、着工認可及び工程の判断に対しましては、いま御指摘になられたような事情を十分勘案の上、誤りなきを期してまいりたい、こう考えます。
  48. 石橋政嗣

    石橋委員 昨年一年間の原油輸入量が二億八千九百六十一万キロリットル、四十九年度のいわゆる原油の供給量は、経済見通しで二億七千万キロリットル、いま日本はそういう状態ですね。そのときに、昭和五十一年完成で一億八千十五万リットルの新規設備、これを認めるというのはどういうことなんですか。石油の供給には何の心配もないということなんですか。見通しはどうなんですか。しかも、これが価格に転嫁されて、いま目ざしておる物価のはね上がり、これをさらに助けることになるじゃありませんか。総需要抑制という政府の、内閣の基本的な方針、これとも矛盾するではありませんか。どれから見たって、許可をするなんというのは言語道断。なぜこれがとめられない。とめられないで、物価の安定につとめているなんてナンセンスですよ。
  49. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 百十万バーレルでございますから、キロリットルに換算すると約六千万キロリットルに当たります。それで石油需給審議会におきまして需要供給量も策定して、五十一年、五十二年にわたるキャパシティーを計算して、その程度が適当であるというので答申を得てやったものでございます。  しかし、これはその地元の市町村あるいは県知事さん等の了承を得ているものにつきましてやっておりまして、環境基準あるいは地元との調整等についても、いろいろ配慮しながらこれからまたやるべき要素がございます。そういう面もございまして、着工につきましては、ただいま総理が申し上げたようにいろいろ配慮して、現実的に着工する場合には、われわれは慎重にやっていきたいと思っております。
  50. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、当分この着工は凍結する、許可は凍結する、これだけの措置は最低限とりますか、総理
  51. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私も通産大臣の経験者ではございますが、あまり石油業法はつまびらかではございませんが、これは石油審議会におきまして、年度別にこれだけのものが必要である、地域はこうであるということをきめるということのようでございます。でございますので、工事を行なう場合については、所管大臣の許可を必要とする、こういうことでございますので、工事の申請及び工程の認定に対しては、慎重な配慮を行ないますということを申し上げておきます。
  52. 石橋政嗣

    石橋委員 凍結することを約束してください。
  53. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいま申し上げましたように、現実に着工許可、認可をやる場合には、慎重に取り計らうようにいたします。
  54. 石橋政嗣

    石橋委員 慎重になんという問題じゃないですよ。はっきり明言してください。
  55. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは、すぐ需要に出るというものではなくして、五十一年、五十二年という将来にわたるキャパシティーを計算してのことでございますから、その将来にわたるその時期、時点におきまして、われわれが着工認可等を行なう場合には、慎重にそのときの需給情勢を勘案したがらやっていくつもりでございます。
  56. 石橋政嗣

    石橋委員 納得できませんよ。そんなことを言うなら、昭和五十年、五十一年の原油の供給量は、輸入量はどの程度で、これだけ伸びるのです、だから安心しなさい、心配一切要りません。そういう見通しを含めてはっきりおっしゃいなさいよ、そんなことを言うならば。
  57. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 四十八年におきましては、当初約三億一千万トン程度の輸入が見込まれておりましたが、五十二年段階におきましては約四億トン程度のものが見込まれる。四億トン前後のものが見込まれるという石油審議会のキャパシティーの見通しに基づきまして計算してできたものでございます。
  58. 石橋政嗣

    石橋委員 その審議会の経過じゃなくて、政府として許可をしたというにあたっては、それだけの見通し、予定どおり入るという自信をお持ちになっているんでしょう。それじゃ自信はあるんですか。、予定どおり入ると。
  59. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石油の需給関係から見ますと、その程度のことは可能である、また日本経済の発展状況から見ましても、可能であると算定したものでございます。
  60. 石橋政嗣

    石橋委員 それじゃいま私たちが審議しております四十九年度予算案の前提となっておるこの経済見通しにおいて、二億七千万キロリットルなんという線で押えたのはどういうことなんです。その関係はどうなんですか。ことしは減る、四十九年度は減る、しかし、五十年度、五十一年度になったらまた急速にふえる、こんな計算ですか。とにかく総理、つじつま合いませんよ、これは。政府の政策としても、これは明らかに食い違いがありますし、間違っています。少なくともこの許可を、着工の凍結を総理の口からここで明言していただきたいと思います。
  61. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 石油業法第七条でございますが、「第四条の許可を受けた者(以下「石油精製業者」という。)は、当該事業の用に供する特定設備を新設し、増設し、又は改造しようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。」まだこの許可は受けておらぬわけでございます。ですから、これは審議会が四十九年度、五十年度、五十二年度の長期的な見通しを立てて内示をしておるわけでございますから、この許可は新たに出されるわけでございます。この許可が出される場合、この認許可にあたっては、いまの御発言もございますし、石油事情等もありますので、十分慎重に対処いたしますと、こう述べておるわけでございます。
  62. 石橋政嗣

    石橋委員 慎重に対処するなんという常套語はおやめになったらいかがですか。どうするというわかりやすいことばを使っていただきたいのですよ。  何度も申し上げているように、今度の施政方針の中で一番強調されている物価安定のための総需要抑制という面で、この新規設備の許可は明らかに矛盾しているのです。しかも、これは肝心かなめ、一番大もとの、大騒動の元凶である石油精製設備なんです。これからの供給量という点についても、非常に不安があるといわれておるそのものなんです。それがどんどん確保できる前提に立って設備投資を認める。これはおかしいじゃないですか。
  63. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 山形資源エネルギー庁長官、はっきりした答弁
  64. 山形栄治

    山形政府委員 御説明申し上げます。  石油業法によりましては、毎年、五年間の石油の需給を想定いたす石油供給計画を法律上出すことに相なっております。この四十八年から五十二年度までの石油供給計画につきましては、昨年の三月にこれを決定いたしまして、これを公表いたしておるわけでございます。  で、いま問題になっております設備の許可の問題でございますが、これも石油業法に基づきまして最終的には許可いたすわけでございますが、その前提といたしまして、石油審議会に御審議を願うことに相なっておりまして、これは昨年の十一月の十三日に石油審議会を開いて、五十一年及び五十二年度のものにつきましては百十三万バーレル分を、一応審議会の答申をいただいておるわけでございますが、現時点におきましては、この許可はおろしておらないわけでございます。これは先ほど来、総理及び大臣からのお話のとおり、現下の情勢に応じまして、流動的でございますので、許可をおろさずに今後の推移に応じて判断する、行動する、こういうことにいたしておるわけでございます。
  65. 石橋政嗣

    石橋委員 それじゃ許可はしませんね。
  66. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまの百十万バーレル余のものは、先ほど申し上げましたように、それは四億トン前後のキャパシティーを想定してやった。実際供給計画の量は、三億三千万トンぐらいが一応の供給計画に乗っているわけでございます。そういう面から見まして、キャパシティーを許可するその審議会の答申を得たということ自体は、それほど大きな数字ではないわけであります。しかし、いまのような石油事情にかんがみまして、現実に着工許可を行なう場合には慎重にやるようにいたしたいと思っております。
  67. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 田中武夫君の関連質疑がございますので、石橋君の持ち時間の範囲でこれを許可いたします。田中君。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど来、石油業法、石油業法とおっしゃっております。で、この法律は、私も審議したから、また十二月の八日の私の質問のときにも申し上げましたが、それはわかっております。その経過はわかっております。しかし、石油審議会において、いま石橋書記長が提起いたしましたこの問題に関連をいたしまして、審議会ですから、その際に、じゃ一体、どういう答申を求めるという諮問を通産省がしたのですか。それに対してどのような——当時、石油危機が一番問題になっておったときです。したがって、石油輸入の見通し及びこれを必要とする関連企業のいわゆる需要量等々を、数字をもって資料として出していただきたい。このことを委員長に申し上げます。その資料がなければ、審議をこれ以上進めていくことにも困難であろうと思います。
  69. 山形栄治

    山形政府委員 ちょっと補足的にお答え申し上げますと、石油審議会が審議いたしまして答申いたしましたのが……   〔「そんなことはもういい」と呼ぶ者あり〕
  70. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。
  71. 山形栄治

    山形政府委員 十三日でございますが、政府といたしまして、十一月の十六日に閣議決定で石油輸入量等々を当時きめたわけでございますが、この当時は、OAPECのカットの問題等もございまして、非常に暗い空気でございました。日本以外の各国すべてが非常に強度な削減に入るという動きもあったわけでございまして、当時の動きといたしまして、年度間で二億八千万キロリットルぐらいというのが当時の想定でございました。  いまの、この石油の審議会との関係でございますと、こういう情勢ではあるけれども、四十八年及び五十二年までの石油供給計画に沿って、環境基準とのすり合わせも含めて地元との調整の済んだところを、一応これを審議会としては答申しておこう、全体の申請が二百六十万バーレルという二倍以上の申請があったわけでございますが、これを環境基準その他地元との調整を含めて、百十三万に切って一応審議会の答申をいただいた、こういうのが経緯でございます。  したがって、われわれとしましては、その後の総需要抑制等々の観点も踏まえて、現在許可をおろさずにこれを注目、慎重に取り扱うように、そういう態度で臨んでおるというのが現状でございます。
  72. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと待って……。許可しているのかいないのか、どっちなのか。それをはっきりしなさい。
  73. 山形栄治

    山形政府委員 許可はいたしておりません。  所要の資料につきましては、提出をいたします。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、業法は私のほうがよう知っておるのですよ。だから、現実に許可してたいことはわかっておる。だから、この答申に基づいて今後どうするのかということと、それから掌法に基づくところの石油の需給計画を立てるにあたって、審議会の答申を得るということになっておるんだ。だから、このときにはまず通産大臣が諮問をする。そのときには、それぞれの基礎となるべき数字があったはずです。それがちょうど十一月十三日という一番危機が叫ばれたときに、どのような数字によってそれをやったのか、その其礎を示せと、資料を要求しておるわけなんです。
  75. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 資料は、調査いたしまして、できるだけ早く提出いたします。
  76. 石橋政嗣

    石橋委員 時間がもったいないので、私も進めます。  とにかく、これは納得のできないことなんです。石油審議会の答申があって、許可が妥当という答申があって、それを通産大臣が許可しなかったなんということがあり得ますか。実際には審議会の答申どおりやっているわけです。答申があったら、もうやっておるわけなんです。だから、その許可をおやめなさいと私は要求しているわけなんです。  で、総理大臣に、この点を私は念を押しておるわけですが、慎重にやりたいということは、事柄上、私が言うようなストレートな表現を使わないだけだというふうに了解して、先に進みたいと思います。  そこで、この民間の資本形成の面における総需要の抑制、この中で、金融引き締めというものが非常に強力に行なわれておるといわれるのですが、まだまだ私は不十分だ。中小企業にしわ寄せがいかないような配慮をしながら、一段と窓口規制の強化もはかる必要があるだろうし、場合によっては、公定歩合の再度の引き上げだって検討の対象になるのではないかと思う。これは日銀の問題だと言われますから、要請だけしておきます。  それから、先ほど申し上げたように、大企業はたらふくもうけて、たくさん手持ち資金を持っている。これを吸収しなければ、金融引き締めだけでは効果はあまり期待できません。本気でこれをおやりなさい。そのために、法人税率を思い切って引き上げなさい。それから、私は具体的に要求しておきたいのですが、この法人税率の引き上げということを考えた場合に、不当にもうけている分を吐き出させるということを考えた場合に、三月決算に間に合うような措置を考えてもらいたいのですよ。空前絶後の好況を謳歌する決算が出ようかというときに、手をこまねいて見ている手はないと私は思う。ここのところに及ぶような措置をとっていただきたい。  社会党の立場で言うならば、法人税率の引き上げ、基本税率を四二%以上に引き上げて、その上、多段階税率を導入するという考えを持っていますが、これを三月決算に間に合うようにそういう措置を考えていただきたい。  それから、交際費課税の強化というものも一応おやりになるようですが、もっと私は強化してもらいたい。最近の新聞報道で、四十七年度の国税庁が把握しておる交際費が一兆三千二百五十五億円という。一商社が二十億円以上の交際費を使っておる。こんな状態を放置しておくということは間違いです。私は、この面でも強化をして吸収をはかってもらいたい、過剰利得の吸収をはかってもらいたいと思います。  ほかにもいろいろありますけれども、このことを要望して、次の第三の輸出の問題に入りたいと思うのです。  輸出は、総需要抑制の方針に沿わせることは不可能ですね。これは逆ですね。逆に、原油値上がりというものに見合う分だけでも、輸出を伸ばさなくちゃならぬというふうな状態になってきておるので、これは総需要抑制というふうな大方針とは逆の方向にいくことを認めざるを得ない。このことをまず確認しておきたいと思います。
  77. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話しのとおり、輸出は、これも小さいパーセンテージでありますけれども、総需要一つを形成するわけです。しかし、同時に、これは輸入という問題もありまして、この輸出輸入が相殺されるという見地の問題もあるわけであります。しかし、いずれにいたしましても、輸出が総需要のごく小部分といえども、この一要因であるという、これは間違いない。  そこで、ほかの要因全部を捨象して考えますれば、これは輸出もこの辺で抑制するという考え方をとるべきところでございましょうが、しかし、一面、物価問題と並びまして国際収支という問題があるわけであります。この国際収支がまた容易ならざる段階に来ておるわけでありまして、総需要抑制政策ではありまするけれども、そういう国際収支の観点からいたしまして、この輸出のほうは、これを抑制をするという考えは私はとりたくない、かように考えております。
  78. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、財政需要、民間資本形成の面であまり抑制が期待できないと私は見たわけです、いまの質疑応答の中で。輸出の面でも、これは抑制どころか、逆に作用する可能性も出てきておる。そうすると、総需要抑制、総需要抑制というけれども、一番波をかぶるのは、またねらいは、個人消費の部分じゃないか、ここの抑制を最も強力に考えておるのではないかという気がするのです。やはり賃金所得の凍結といったようなことを考えているんじゃないか。やらぬ、やらぬと言うけれども、ここのところを押えようとしておるんじゃないかという疑念がどうしても去らないんですよ。  そこで、私は、ここで総理にも大蔵大臣にも思い起こしていただきたいのは、物価高の原因の一つに、総理大臣は個人消費の増大をあげているんですけれども、日本における国民総支出に占める個人消費の割合なんというものはちっとも伸びてない。先進西欧諸国に比べても非常に小さいということを忘れないでほしいということなんです。伸びている伸びていると言うが、私は、数字を見る限り伸びているとは思わない。実際に昭和四十七年段階で名目で五二%、実質で四九・八%、四十八年に入ってからも一—三月が五〇・〇%、四—六月が五〇・六%、七—九月が五一・三%、しかも、実質に直すと五一・三%は、このインフレ物価高で四九・三%にしかなっていない。逆に国民総支出に占める国民消費の割合は減っているのですよ。こういう中で、これをさらに抑制しようなんという考えは根本的に間違っている。西欧諸国が六〇%前後の率を保っておるということを忘れないでほしい。そういうことも念頭に置いて、ほんとうに所得政策の導入は考えてない、賃金、所得の凍結は考えてないとここで断言できるかどうか、田中総理にお伺いいたします。
  79. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先進工業国と比べまして、個人消費支出が伸びておらぬということは、数字的には事実でございます。事実でございますが、内容的に見ると必ずしもそうじゃないのです。内容的に見ますと、蓄積がある者と蓄積のない者との開きがございますし、もう一つは、消費支出というものの伸び方、この二、三年来どのように伸びているかという問題もございます。ですから、百十六兆円余の中で個人消費支出が約六十兆円であるということは事実なんです。ですから、その中で、いままで自動車を持っておらなかったものが、一年間に三百五十万台も自動車が伸びるというようなことを、私の列島改造論の中では、昭和六十年に三千九百万台ないし四千万台になるかもしれない、こう書いてあるのですが、この勢いで伸びていけば、六十年どころではなく、五十五年で四千万台をこすというような数字もあるわけでございまして、自動車は、いま注文しても一年間たたなければ入らないというような事実もあるわけでございますから、そういう量的な面と質的な面と、いわゆる年度的な面まで分析をしなければならない。これは事実です。ですから私は、石橋さんが述べられている数字はそのまま認めておりまして、その質的なものや日本の特殊な事情というものも、これはまたお互いが検討していかなければならない問題であることは、事実であるという事実を指摘しておるのでございます。  ただ、私どもが申し上げておりますように、所得政策というものは軽々にとるべきものじゃありません。国民的な合意が前提である。ですから、いま所得政策というものに対して国民的コンセンサスを得られる段階でないということで、私は所得政策に対しては非常に消極的な意見を述べておるわけでございまして、これは私は厳として守っていきたい、そういう考えでございます。  ただ、あなたが先ほどから言われたように、企業の適正な利潤というようなものをいろいろやってまいりますと、形の変わった所得政策になるおそれもありますので、そういうものに対しても慎重でございますと、私は相当学問的にも慎重に述べているはずですよ。  それでもう一つ、超過利得という問題をこう詰めていきますと、これはまあ野党の皆さんも、御自分で提案をされようという意思があってもなかなか御提案にならないというのには、これはどうしても所得政策らしきものを避けて通れないという議論にぶつかるわけです。それはそうでしょう。そうでなければ、これは三月までといえば、これからばたばたっと法律を通してもらえれば三月決算に間に合いますよ。これは間に合いますが、これは重大なポイントなんです。これは三日か四日でもって衆参両院を通してもらうということになれば、三月決算に間に合いますが、もし間に合わないで、このままずっといってしまった場合にどうなるかというと、たとえば、三月三十一日まで払うものはみんな払ってしまうということで、無形資産に転化をするという知恵があるわけです。  これは現に世界でみんなやられていることです。その中には、賃金は、どうせあれするなら二年分上げてしまうとか、前払いしようとか、そのかわりに困ったときには助けてくれよという、こういう労働協約ができて前払いしてしまうという問題も一つ起こります。それからもう一つは、宣伝費にしてみんなこれを使ってしまう。これだって、一番ぶつかるのは、これは広告課税の問題にぶつかってくるわけです。これは無形資産に転化してしまう。もう一つは、配当にしようということです。そうすると、配当は過去三年間の平均配当をこした場合に対しては、いわゆる土地のように重課する制度ができます。これはもっと高い率でも、とにかく九〇%やれということもできるわけです。もう一つは、限度一ぱいの特別償却をしてしまうということもあるわけであります。限度一ぱい特別償却してしまう。そうすると、過去三年間の平均特別償却をこした償却に対しては、これは認めないとか、現実的には、だれが考えても、同じ超過利潤と称されるようなものを吸収する方策はありますが、そのときに賃金に払ってしまう先払いというものを、全然制度なしでやれるかどうかという問題がありますので、政府も非常に慎重なわけでございますし、自民党でも、ちょうどあの政治資金規正法の問題と同じような問題にぶつかっておるわけです。  そういう意味で、非常に苦労しておるんだということでございまして、政府はできるだけこういうものに対しては全党的な、与野党の一致でこれを立法できるようなことが望ましい。そういう意味で、議員立法されるならば超党派立法が望ましい、こう考えておるわけでございまして、私は、いま所得政策を採用するなどということは全く考えておらぬということは、もう間々申し上げておるとおりでございます。
  80. 石橋政嗣

    石橋委員 私が、ことしの三月決算は空前絶後といわれる好況決算、好況を反映したものになるだろう、だからこの三月決算に適用できるような施策を考えろと言ったら、いろいろと抜け道を総理の口から御指摘いただいたわけです。あなた方の謳歌する自由主義経済なるものが、どんなものであるかということがよくわかります。こういう超過利得というものを吸い上げようとしても、そうして逃げますよ、ああして逃げますよ、いまのお話はそういうことですよ。全く抜け道指導係をやっておられるようなものです。そのことは、もちろんそういうことを考えるでしょうが、それをどうして押えていくかということも、あわせてわれわれとしては検討しなければならぬわけなんです。だから、私も具体的な提案を差し控えたわけなんです。とにかく、目標として三月決算に適用できるように考えようじゃないですか。社会党としては、一つ方法として、さっき言ったように法人税率を引き上げる、もうこれでいったほうがいいんじゃないかという考え方を持っているわけですが、もっといい知恵があれば協力してやろうと、そういう含みを持っておるわけなんです。  そこで、政府が貯蓄を奨励なさっておるのですけれども、貯蓄奨励はけっこうだが、いまのこの物価値上がりに見合うだけの金利の引き上げというものが行なわれていないんじゃないか。政府見通しで、昭和四十九年度消費者物価が九・六%と今度数字がはじき出されておる。そのときに金利はどういう状態ですか。銀行の一年定期のものでも七・二五%ですか。これじゃ貯蓄奨励といっても、貯蓄奨励即大衆収奪ということになる。現実に昭和四十七年の、暦年です、個人預金の残高が’六十兆一千八百六十七億円という数字が出てきております。昭和三十五年から消費者物価指数との見合いの中で、どれくらい減価しているか計算してみました。個人貯蓄がどれくらい減価しているか、値打ちがなくなっているか。累計で、昭和四十七年までで二十三兆三千八百八十三億円減価しておる。単年でとりますと、昭和四十七年だけでとりますと、六十兆一千八百六十七億円いま個人預金がある。消費者物価が大体一四%上がると計算をして八兆四千二百六十一億円の減価。たいへんなものです。国民は大切な貯金を盗まれている。三億円事件の犯人はつかまっておりませんが、この犯人はわかっている。この犯人は自民党政府ですよ。政府インフレ政策、物価高によってこれはもたらされたのですから、犯人はわかっている。  こういう状態を放置しておいて、ただやみくもに貯蓄を貯蓄をと奨励してみたって、これはひどい話です。貯金しても損をしないような手当てというものがちゃんと合わさって出てきてはじめて貯蓄奨励が生きてくる。金利を上げるとか、あるいはこの物価上昇に見合って減価した分を補償するとか、そういうことを真剣に考える気持ちはお持ちにならないか、このことをお伺いしたいと思う。
  81. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 この物価情勢の中で、貯蓄する人の心のうちを考えてみますと、私も実に暗然たるものを感ずるわけであります。とにかく消費者物価が二〇%上がります、こういう際において貯蓄をどうするか。石橋さんの議論を極端に進めてまいりますれば、二〇%の利息をつけたらどうだ、こういうようなことにもなるわけですが、そうなりますれば、今度は金利と物価の悪循環ということにもなりまして、これはもうインフレ問題物価問題というものは収拾できません。  そこで私は、貯蓄の問題に対する最大のきめ手というものは、一刻も早く物価を安定させることだ、こういうふうに考えるわけであります。これ以上のきめ手はございません。それに支障のある諸政策というものはとらない、これに国家施策の焦点を集中する、そしてほんとうに一刻も早く物価の安定状態を出現する、これが何よりも国民の貯蓄するその心に報いるゆえんである、こういうふうに考えております。  それで、まあちょうどいい機会でございますから、ちょっと所感を述べさしていただきたいのですが、石橋さんは、私どもの立場に立っていろいろ議論を進めてくださるとおっしゃりながら、いつの間にか、財政は抑制の効果がない、金融のほうもない、したがって、しわは国民大衆にいくんじゃないかというようなお話でございますが、私はそう思わない。これはやはり、財政はこれだけの抑制政策をとってまいれば、偉大なる総需要抑制政策の一環をなすであろう。また金融のほうも、これはまあ新規設備投資は抑制いたしましょう、あるいは既定のものでもスローダウンいたしましょう、そういうことになりますので、がっくりと物の需要というものはその面から減っていくであろう、こういうふうに思うのです。そうしますと、私はもう近い機会に、どうも物の需要は供給よりはうんと下回る。いままで、先は高くなるだろう、高くなるだろうと思ってみんなが買いだめておった。鉄棒にいたしましてもずいぶん買った、そういうのをはき出す、そういう時期が必ず近いうちにやってくると思うのです。私は、そういう意味において、主要資材というものはそう遠くない時期にがたがたと落ちてくる、こういうふうに見でおります。そういうことは、消費者物価のほうにもまたかなりの影響を持ってくる、こういうふうに思いますので、まあそういうことを考えますと、そういう方策をとることが、貯蓄する人にお報いをするゆえんであるとかたく信じております。
  82. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、政府がこういうふうにして物価の安定をはかりますというものをまともに受けて、そしてそれを批判する立場でやりとりしますという意味なんですよ、政府ベースでやりますと言うのは。何も、政府のおっしゃるとおりそれはうまくいくでしょう、それはりっぱですなどと言うつもりはさらさらありません。これから皆さんも全部各論としておやりになりますし、私は、一応総需要の抑制とおっしゃっているが、財政の面で、あるいは金融の面で、はたして効果を発揮するんでしょうか、こういう疑問の立場でお尋ねしているわけなんですよ。私なりにいまのやりとりから通じて判断するところ、財政、民間資本形成、輸出、個人消費、一つ一つ検討してみても、総需要抑制というものが完全に働いて、その面からの物価の安定というものがあまり期待できないのじゃないかという印象が非常に強いのです、はっきり申し上げて。問題を参議院選挙後に持ち越したというだけにすぎないんじゃなかろうかという感じを、いまの質疑応答を通じても私は強めております。  ところで、このほかに、物価安定の施策一つとして、公共料金、鉄道運賃と消費者米価の値上げの実施時期を半年ずらすということを総理はあげているわけですが、これは、もともとわれわれがやれと一年前に言ったことですから、いまさらと言いたいところなんですが、国会の会期を二回にわたって百三十日も延長して強行採決しておやりになった。それを延期する。どういうことでしょうと言いたいだけです。どういうことでしょう。しかも、半年延期しただけじゃ、今度は十月から物価引き上げの要因に変わっていくのですね。物価高要因になることをお認めになったから延期したのでしょう。半年延ばした。十月から今度はまた物価高要因になる。これもまたどういうことなんでしょう。とにかく中途はんぱなんですよ。だから、きちっとほんとう国民が安心するまで、物価の安定が確定的になるまで、公共料金はもう基本的に上げません、こうこなくちゃ、ただ漫然と半年延ばしますなどと言うのじゃ効果はないです。効果はない。いま現にいろいろ物価高要因になる値上げ申請がたくさん出ているのですが、これも極力抑制いたしますなどという程度じゃだめなんです。もう原則としてほんとう物価が安定するまで値上げは認めません。こういう態度がないと、この荒波を私はどうしようもないということになるんじゃないか。この点について、時間がありませんので、もし何か言いたければどうぞ。
  83. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 米の価格並びに国鉄運賃につきまして、これの引き上げの予定があったわけです。スケジュールがあったわけです。これがちょうどことしの三月三十一日、四月一日、そういう時期だった。その辺が、私は、物価政策といたしますと、最大の山場というか、決戦場というか、そういう時期に当たるであろう、こういうふうに考えたわけであります。そういう際に、米の売り渡し価格、また国鉄の運賃、料金引き上げが行なわれるということになりますと、これはまあコスト関係からいいますと、私はさほどのことはない、こういうふうに思うのです。しかし、心理的に見まして非常に大きな影響がある、この時期だけは避けなければならぬ、そういうふうに考えまして、とにかく十月まで延ばす、こういうことにした。  私どもの考え方は、もうそのころまでには、多少のコスト要因の公共料金からの変化がありましても、そういうものは影響しない、そういう状態をつくり上げる、こういうことなんです。総理が先ほどから、おそくも夏ごろまでには経済界を安定させ、物価鎮静の方向を打ち出す、こういうふうに申し上げております。けれども、とにかく物価対策、非常に重要な決戦場、その場面における心理的影響をぜひ回避いたしたいという決断をいたしたわけであります。
  84. 石橋政嗣

    石橋委員 もう一つ総理施政方針演説の中で、いわゆる三法を適用して、「物資の需給調整、価格の適正化、投機的行為の抑制をはかってまいります。」こういうように述べておられるのですが、どうもこの面でもあまり効果はなかったし、これからもあまり期待できないのじゃないか、私たちが懸念したことが一つ一つ裏づけられつつあるのじゃないかという気がするのですよ。  一番わかりやすいのが、最近報道されておりますプロパンガスの問題、あれほどプロパンガスがないない、ないないと言って騒いだのに、日本LPガス協会自体が、ちっとも不自由はなかった、出荷は順調でございました、こういう発表をしているのですね。残ったのは値上げだけ。その値上げも、標準価格という形で、政府公認の値上げで高位安定、高価安定が保証されている。私たち指摘したとおりじゃないですか。灯油は三百八十円、LPは千三百円、こういう標準価格を通産省としてはおきめになったわけですが、そのために、いままでそれより安い値段で売っておったところが全部引き上げた。  その具体的な例も、けさの新聞に出ております。福井県の敦賀市、これは朝日新聞だったと思いますが、LPガスを、それまで千二百円で販売しておったのに千三百円に上げた。宮崎県でも、農協スタンドなどで、灯油を三百六十円で売っておったのを標準価格並みに上げた、福岡でも宇都宮市でも鈴鹿市でもというように軒並み、そして鈴鹿市の業者は、何も一政府がきめてくれた値段より下げることはないでしょうとおっしゃっている。こういうことになることをわれわれはおそれたのです。  結局、品物は十分にあるのに、ないない、ないないと言って値段をつり上げておいて、政府に乗り出させて標準価格をきめさせて、高い値段できめたらそれを守っていってさらに利潤を得よう、こういう結果しかあらわれていない。  紙でも同じです。私は全部これは持ってきたのですが、時間がないので残念です。一月から十一月までの紙の需給関係、流れを全部調べてみたが、変化なし、順調そのもの、チップの輸入状況、輸入実績を見ても変化なし、順調、これは認めるでしょうね。そこからちょっと確認しておきますが、これは通産大臣ですか、大蔵大臣ですか。   〔発言する者あり〕
  85. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 お静かに願います。
  86. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 量的には、御指摘のようにわりあい順調に入っていますが、需要のほうが非常にべらぼうにふえているというのが現状でございます。
  87. 石橋政嗣

    石橋委員 ここに全部数字がございます。需要のふえた分だけ供給もふえております。ちっとも不自由しておりません。ところが、値段のほうははね上がっている。去年の一月中旬と比べるとどれぐらいはね上がっておるか。一四九という数値が出ている。五割高です。  ここではっきり言えることは、ないない、ないないという宣伝をしてつり上げたので、実際はちっともないことはない。さっきのプロパンがそう、灯油がそう、今度の私が例示している紙がそう、万事そうなんです。これをいかんともしがたいという状態では、これはどうにもならぬです。しかし、少なくともいまの政府の姿勢では、こののど首をぐっと押えてダウンさせるということは、これは不可能ですね。どうしたらいいのか、もっと本気で考えてもらいたいと思うのですよ。  公取の機構をほんとうに強化して、ほんとうに活動させる、こういうことも必要でしょう。しかし、一番の心がまえは、政府自身が本気でやる気があるかどうかということなんです。何かといえば、こういう抜け道があるからそれはだめ、こうやろうと思ってもむずかしい、そっちのほうが先ばしってしまって、やる気を全部事前になくしてしまっている。だから疑いも持たれる。やれないんじゃないか、政府のほうが財界、企業からのど首を押えられているのじゃなかろうか、こういう疑いを持たれてもやむを得ない。とにかく、学校のわら半紙がないないと言われた段階でも、ちっとも品物がないわけじゃないのに、突如メーカーが二五%のカットというようなことを言い出す、そして値段をつり上げる、そして業界が、メーカーが出した通達と同じような内容の通達を通産省があとから追っかけて出す、こんなことをやっているのです。  あとで同僚各議員が個々にわたって追及をいたしますから、私はいま問題点だけここであげておきますが、要するに、どんなことを口でおっしゃっても、いまの政府の姿勢からいくと、本気で企業そのものを締め上げて、物価の安定をはかるという意欲は見られないのじゃないかという気がしてならないのです。そんなことはないと言うならば、私は、この超過利得、超過利潤というものを必ず吸い上げてみせる、それを具体的に実行するということで証明してもらいたいと思います。もし見のがすことがあっても、これは意識的に見のがしたのじゃないのだ、だから、その網の目をくぐってもうけた不当利潤というものは必ず吸い上げてみせる、それだけの措置を講じて決意をしてもらいたい。具体的なものなしで、口で幾ら何を言われても、もう国民も信用しませんよ。  時間が来ましたから、私は結論に入ります。いろいろ言っているけれども、いまのままの政策を続けておいて、一体ほんとう物価の安定ができるのだろうか、結論はもうそれ一つです。  ところが、ちょっと私はおもしろいなと注目したものがあるのであります。それは何かといいますと、大蔵大臣の財政演説。「この偉大な経済発展とうらはらをなすかのように、物価の高騰、自然環境の汚染、破壊、過密過疎、各種社会資本の立ちおくれなどの諸問題が、あたかも吹き出もののようにふき出し、一刻も早い果敢な解決をわれわれに迫っていることもまた事実であります。  あれを思い、これを見詰めるとき、いまやわれわれは、静かに、かつ謙虚に過去の歩みを顧み、これからの新しい行く手をさがし求めるべきときであると考えるのであります。  申すまでもなく、経済の成長発展は、それ自体が目的ではありません。われわれの目ざすところは、国民の安らかな暮らしとそのための健全な環境をつくり上げることであり、経済の成長発展はそのための手段にしか過ぎないのであります。」そして、「このような考え方に立つとき、今後の経済運営にはこれまでのような高い成長を期待することはできませんし、また、それは適当でもありません。」と、こう結んでおる点です。私は、この財政演説には注目をいたします。  そこで、あなたの言わんとしておること、これは非常に抽象的なんですが、私は具体的にお伺いしてみたい。こういうふうにこれを翻訳したらどうなんだろう。大蔵大臣、何と言うだろうか。  いまとられるべき経済戦略は、物価の安定という点から見れば、短期決戦が必要ということになるかもしれないが、長期的には、高度成長からどのように安定成長に転換するか、安定成長でやっていける経済体質にどう切り、かえるか、石油多消費の重化学工業中心の産業構造をどう転換するか、そして大企業優先から国民生活優先にどう路線を修正するか、といったようなことだと思うのです。  こういう意味じゃなかろうかと私は思ったんですが、私の考えは、どうですか、あなたが抽象的に言ったことと合うんですか。
  88. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 よく正しく御理解願ったということを感謝いたします。
  89. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、総理とちょっと食い違うんじゃなかろうかという気もあわせてするんです。どうも総理のほうは、もうこのごろあらしがひどい、あらしが過ぎ去るまでちょっと穴ごもりして、その間福田安定、ちょっとやっておけ、大風一過、あらしが静まったら、またおれが出てきて高度成長、積極政策、こういう気持ちじゃなかろうかと。その証拠に、日本列島改造論を固守し、国総法撤回に応じない。どうもそんな感じがするのですが、その辺は、総理、いかがなものでしょう。
  90. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いままで高度成長といわれておりましたが、これも超高度成長とか高度成長と言ったわけではなく、やっぱり国民の所得を上げなきゃいかぬとか、社会保障を拡充しなきゃならぬとか、戦後の敗戦経済から脱却しなきゃならぬとか、それなりの理由を掲げておったわけであります。ところが、政府が企図した、一〇%ぐらい伸びると思ったものが一六%伸び、一五%伸びると思った民間の設備投資が二六%になった。これは結果論において超高度成長であり、超超高度  成長であった、こういうふうになっているわけです。しかし、安定的な成長、国民生活の安定、心の安定、すべて安定が大前提であるということは、もうこれは古今東西みんなお互い同じことじゃありませんか。しかも、内閣は連帯して国会に責めを負うておるのでございますから、これは国民全体を将来長きにわたって安定的に、そうして安定的な国民生活を築くために、安定的な、合理的な財政運営を行なう、こういうことでひとつ御理解いただきたいので、一時穴ごもりじゃないことをここで明確にしておきます。
  91. 石橋政嗣

    石橋委員 もう少し両者の違いを具体的に私は指摘するつもりだったのですが、時間が来ましたからやめます。   しかし私は、福田大蔵大臣の財政演説に注目すると申しましたが、ほんとうは私が言ったような  ことをやるということであれば、まあ大蔵大臣、自民党に籍を置いてはむずかしい。本気でおやりになるならば、自民党を出てわれわれのほうに来なければやれない、このことをつけ加えておきたいと思うのです。  それから委員長、先ほどの資料ですね、これが出てからさらに質問をすることがあり得ることを御了承願いたいと思います。(拍手)
  92. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいまの石橋君の御発言、了承いたしました。  その資料は、先ほど田中武夫君の要求されたことだと考えておりますので、後ほどの理事会で御相談をいたして、期待に沿うよういたします。  これにて石橋君の質疑は終了いたしました。  午後一時に再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩      ————◇—————    午後一時一分開議
  93. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  本日、日本銀行総裁の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  95. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 総括質疑を続行いたします。田中正巳君。
  96. 田中正巳

    田中(正)委員 私は、自由民主党を代表して、最近のわが国における内政、外交について、若干の質疑を行ないたいと思います。  私は、与党の議員であります。元来、与党質問というものはおもしろくない、迫力がない、あるいは八百長であるという陰口をたたかれるものでございますが、私は、現下の日本政治、経済の情勢を心からおもんばかるがゆえに、あえて率直に政府側にいろいろなことをお尋ねをいたします。  また、私は与党の議員ですから、政府のいままでおやりになっていた政策、政治姿勢についても、ある程度一緒になってやってきた私どもでございますので、したがいまして、至らざる点、まずい点があるとするならば、それは共同の責任の一部を感ずるという意味において、反省と自覚を込めて御質問を申し上げますので、政府側においても、冷静に率直なお答えをお願いいたしたいと思います。  さて、わが国現下の政治に求められているものは、それが国政であるだけに、まことに多面的なものだろうと思うのでございますが、やはり何と申しましても、当面の、朝鮮動乱、これを上回るような物価高、そしてそれに伴うところの品不足、流通の不円滑、こうした状況を一日も早くあるべき姿にこれを回復していただきたいというのが、国民の念願だろうと思いますので、とりあえずまず第一に、経済の問題について焦点を向けてみたいと思います。  もちろん、政府もこういったようなことについていろいろとお気づきだと思います。先般の本会議における総理施政方針演説等々にも、このことについてるる触れておるところでございますが、そこでまず第一にお伺いをいたしたいことは、最近わが国の経済が急速に憂うべき姿、あえて言うならば、病的姿に相なったということについて、その原因、理由が那辺にあるかということについて御説明を願いたいと思うものであります。  一般に、経済の問題については、いわゆる内的要因と外的要因があるといわれております。ことに、わが国におきましては資源寡少国であるということから、外的要因が多いということはわかるのでありますが、しかし、すべてが外的要因であり、すべてが偶然的なものではないだろうと思うのであります。こうした見地に立ちまして、ひとつこの際、率直な御判断あるいは御反省を承りたいと思うのであります。  なぜ私がこれを尋ねるかといいますると、これから立てる施策について、やはり過去についての反省と思索がなければ肯繁に当たる政策は立てられないと思いますし、また、いま一つは、世上間々、現在の日本の経済社会体制、これがこのような状態を引き起こした、このような自由主義経済体制ではこの問題は当然の帰結であり、体制を変えなければこの問題は解決をしないという体制論に短絡をする向きがあるのですが、私どもはさような見地に立ちません。今日のこの自由主義経済体制下においても、経済の政策よろしきを得るならば、このような状態は引き起こさないだろうし、また、これは回復することは不可能でないというふうに認識するがゆえに、私はあえてお尋ねをいたします。  総理、一体どうしてわが国の経済状態がこのような姿になったかということについて、率直な御意見を表明願いたいと思います。
  97. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 議院内閣制であり、政党政治でございますから、政府・与党は全く共同の責任、こういうことでございまして、政府が単独に存在するなどとは考えておりません。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕 その意味で、私も率直に申し上げます。これは、野党の皆さんに申し上げると、どうしても反論をするような立場でおとりになっていただいては困りますので、これは、質問は議員であり、答えは政府側でございますけれども、国民が議論をする場でございますから、そういう意味で、ひとつすなおにお聞きをいただければ幸いだと考えるのでございます。  私は、いまの日本の経済情勢、これは非常にたいへんな状態であり、憂慮すべきものであり、一刻、いっときも早く正常なものに直していかなければならない、こういう考え方で、これは政府・与党、また野党、国民各層の理解を得ながら一日もいっときも早く正常なものにしなければならない、こう考えております。  そして、どうしてそういうふうになったのかということをまず申し上げますと、これは、私は、ある意味では必然的な時を迎えたのだと考えておるのです。ある意味では、ここで国民の支持と理解がほんとうに得られて、それですなおな体制が確立され、第二のスタートになるとしたならば、これは天の啓示でもある、こう考えておるわけでございます。そうでなければ、この狭いところに一億一千万人の国民が住みながら、しかも、三十億トンという世界の全石油生産の一〇%、三億トンの石油を使う、そして年率二〇%以上の輸出を伸ばしていくというようなこと、またその輸出の原材料のほとんどすべてが国外に仰がなければならない、これは例を見ないところでございます。  ですから、七つの海を支配をしたという歴史を持つ大英帝国でも、まだまだかつての宗主国として、世界各地に六〇%、七〇%というその資本を支配しているところがたくさんあります。それだけではなく、行政体系は別になっても、クイーンを中心にして英連邦を形成しておりますし、英本国との間には、無関税協定という全く恵まれた情勢にあります。そのイギリスにおいて、しかもあれだけの蓄積を持っておるにもかかわらず、今日の日本よりもはるかに困難な状態を現出しておるのでございますから、私は、そういう意味で、日本というものが無制限に原料の供給を得られるというようなことは安易に考えるべきではないのであって、いわゆる南北問題が提起をされ、国際通貨問題が提起をされた当時、やはり日本が中心になってこういう国際的な問題を順調に解決をしていかなければ、かぶりがあるときには日本が一番大きい、こういうことを考え、政府も党も一体になって努力を続けてきたわけでございますが、まあ率直に申し上げて、明治から長い間、何とか原材料を得て輸出立国、貿易立国としていままで何とかやってきた。六十余カ国を相手にして戦争もやってみたし、破れてもみた。敗戦のどん底に泣いてもみた。しかし、四半世紀の間で今日をつくり得た。言うならば、これは今日のような状態日本がまだ進み得るのだというような状態を、国民的には持ってきたと私は思うわけでございます。  そういう意味で、国内的に石油資源開発会社をつくったときも、こんなことをして一体何になるのだという反対があったわけでございます。いろいろな石油の開発をやろうとしても、石油はいつでも安いものがどこにでもあるじゃないかという議論が経済論を支配しておったことは、過去十数年間の日本のマスコミを見れば明らかであります。そういう中で日本は、しかし、物には限界があるんだということを考える人もあったし、考えなければならない。そのために水資源開発法をつくったり、水の特別会計法をつくったり、いろんなことを知恵を出してはきましたけれども、ここ百年続いた経済理論の転換というものには、なかなか踏み切れないところがあったと私は思うのですよ。  それで、日本がいままで考えてきておったものの考え方は、南北問題を解決するためには、日本を含めた北の主要工業国がいかに南に援助するかということによって世界の均衡をはかり、人類の平和を維持しようかという考え方が先行しておったわけでありますが、今度は、中東戦争を契機にして、まさに事態は逆転したわけであります。持てる国は北ではなく、持てる国は南の国である、それは中東である、こういうことで、石油を有力な武器として使われることによって、主要国はきりきり舞いをさせられておるというのが実情でございます。  しかし、また率直に申し上げて、ASEAN五カ国を回ってきたりいろんなところを回ってまいりましたが、主要工業国だけが困難になるのではなくて、主要工業国の生産が低下することによって南北問題そのものに大きなひびが入って、世界の混乱はより大きな混乱を招く端緒になるおそれさえあるということで、産油国自体もお互いに全世界に目を開けて石油問題を円満に解決していこう、こういうような視野に立っておるわけです。  ですから私は、長く四半世紀も続いてきた自由民主党の前身もしくは自由民主党の内閣にそういう責任が——私は、社会党と交互に政権をやってきたなら、こんなことは述べませんが、何しろ戦後ずっと自由民主党の前身ないし自由民主党の内閣が政権を維持してきて、今日石油が武器に使われるであろうという論文は読んでおっても、今日のように過大なものとして、われわれの生活に直ちに影響を受けるかどうかということに対しての判断ということは行ない得なかったということに対して、これは大きな責任を持つものである。これは政権の維持担当者であるだけに、理由のいかんにかかわらず、結果においてはその責めを負うべきだという考え方を持っております。持っておりますが、しかし、こういう禍を転じて福となすべき一つの好機としてこれをとらえなければならない。私は、そういう意味で、もう一言だけ申し上げますが、日本よりも蓄積の非常に多いヨーロッパ諸国やアメリカにおいてさえ、民間の消費を抑制しながら産業はこれを絶対に守っているというときに、日本は産業を守って、産業を抑制しながら、一般の民間の品物があるにもかかわらず——先ほど石橋さんが指摘するようにあるのです。あるにもかかわらず、まだ不安を起こさせないように、これを確保するために全精力を傾けておるということは、やはりこれは、国民生産の中に占める軍事費や国防費の比率が非常に少ない。国会では常に防衛費のことを論じられておりますが、やはり自由民主党内閣がとってきた最小限の防衛費で日本の自衛を果たしていくという考え方や基本線は、私は間違っておらなかったと思うんですよ。基本線は間違っていると思いません。とにかく、あなたの生まれ育った北海道を見たって、まだまだあそこが一番いいなんというわけにいきませんよ。一メートル四十センチの雪が降ればとにかく二十四時間も三十時間も鉄道がとまっちまう、こういうようないろんな問題があります。  だから、昭和二十年から今日の四半世紀を考えるときに、それは指摘をせらるべきものもたくさんあるでしょう。しかし、私は大筋において自民党の政策は誤りない、これだけは明確に申し上げておきたいと思います。
  98. 田中正巳

    田中(正)委員 総理のいまおっしゃったことは、私、全部が間違っているというふうには思いません。しかし、総理のいまおっしゃったことは、日本の経済の独特なメカニズムに対応しまして、外的要因というものを非常に強調なさった一面があるのではなかろうかと思われるわけであります。  そこで、あえてこの際、言いにくいことですが、いわゆる内的要因と申しますか、国内における経済政策というものにしぼっても、私は幾つかの問題が今日までにあったのではないかというふうに反省させられるわけであります。  第一に、私はこの際議員の諸君とともに考えてみたいと思うことは、日本人があまりにも実は情報感応性が強過ぎるということではなかろうかと思うのであります。これは今日の石油問題に端的にあらわれましたが、従来にもいろいろな問題が、こういったような傾向が、こういうときにあらわれたわけでございますが、第一に私は、「日本列島改造論」というやつについて若干触れてみたいと思うのでございます。  私は、この「日本列島改造論」というものは、政治の究極のイデー、目標としてはきわめて魅力があり、きわめて示唆に富んだものであるというふうに評価するにはやぶさかではございません。しかし、不幸にして日本人が、さっき私が申したように情報感応性が強いものですから、あれだけの大構想というものを一時に、一ぺんに政府がやるのではなかろうかというふうに誤りとられたところに、一つの問題が派生したのではなかろうかと思うのであります。あれだけのことをやるのには、膨大もない金と労力と物資が必要なはずであります。こうしたことについて、不幸な誤解が蔓延をしたというところに、私は一つの問題があったと思うのであります。  さらにいま一つは、従来どうも日本人が経験したことのないようないろんな案件が起こってまいりますといこれに非常に大きく国民動向がバイブレートするということであります。一例をあげていえば、戦後三百六十円できめられておったあの為替平価が、ニクソン・ショックによって円の切り上げが行なわれた昭和四十六年ですか、急に日本人は驚いて、政府もわれわれも一緒になって、いろいろとこれについても対策をやったわけでありますが、この対策も、いま考えてみると、ややオーバーであったのではないかというふうに思われるわけであります。  現に、計数の示すところによりますれば、ニクソン・ショックによって円を切り上げたときに貿易収支は七十七億円でしたが、あれだけの対策を立てて大騒ぎしたにもかかわらず、スミソニアン体制、円がフロートした四十七年のときには八十九億円の貿易収支がありまして、しかも、年末の外貨保有高も著しくふえているということを考えると、ちょっとあわて過ぎたのじゃないかという感じを私どもは持つわけであります。  その上、こういったようなことと相あわせまして、さっきの改造論の誤解にもよるものだろうと思いますが、いわゆる土地に金がくっつき回ってきたということであります。従来土地が、売りも買いもしないで土地本来の目的に利用されておったときには、これは流動性を引き起こさないわけでございますが、これが転々譲渡をすることによって土地が金に化体をし、これが金融市場に入ってきて、これが転々譲渡をする、ここに過剰流動性を生んできたということ、それからさらに、これは国際要因ですが、世界の食糧危機に対応して国際的な物価高を招来した。こうしたかわき切った日本の経済基盤の上に今回の石油問題が起こって、一挙に火の手が大きくなったというふうに私は判断をいたすわけであります。  こうしたことについて、われわれは今後政策を立てるときに、よほど落ちついてやらにやならぬという反省を私自身はしみじみとしているわけでございますが、総理、この点についていかがでございましょうか。
  99. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いろいろ示唆に富んだ御発言、傾聴いたしております。まあしかし率直に申し上げると、政府というものは常に情報も持っておりますし、手足も機構もあるわけですから、これはまあ国際的な情勢というものは、政府のほうが情報網は確かであります。国内的には政府よりも党のほうがさすがでございます。これはピラミッド型にできておるのでございまして、下は末端の党員に至るまで、これはちゃんと議員政党だと各党もいわれておるように——ある政党は別でございますが、大体は、議員政党といわれておるぐらいに、ピラミッド型になっているわけです。ですから、そういう意味で、国内的な問題は、政府がとらえようとすれば官僚的視野に立ってものを見る、判断をするというマイナス面が作用するのです。だから党とも——党は国内的には政府よりもはるかに微に入り細をうがった民心をつかんでおるわけであります。しかし、まあ外国の事情等においては政府のほうが、公館も出先も持っておりますから。ですから、政党内閣制、議院内閣制というものは、人間が考えたやはり一番うまいものです。たいへんうまいことを私は考えたと思うのです。  ですから、私はあなたが言うように、そういう意味政府というものは先取りをして、少なくとも国際要因を的確に把握をして、先取りをして政策を立案すべき責任はある。対外的なものに対して立案がおくれた責任は、これは政府にあると思うのです。これはまっこうからそう思います。しかし、国内的な問題に対しては党のほうが政府よりも専門家なのですから、そこらがうまくマッチをするといい政党ができるだろうと思うのです。よくないよくないといわれながら四半世紀余にわたって政権を国民は維持させておるのだから、とにかく自民党に嘱望していることは事実だと思うのです。  そういう意味で、国際的には、私たちも対外経済調整法というものの必要性を説いたわけです。説いたのですが、対外経済調整法は提案に至らなかったわけであります。少なくともこれだけの国際的な波動があるときに、対外経済が動いていくときに、関税の引き下げ引き上げの権能さえも、いわゆる法定主義であるということだけで政府に委任できないというようなことでは困るので、時限法でもかまわないから、ある時期限って政府に委任していただきたいということも述べたわけでございますが、まあなかなかそれは理解を得るに至らなかったということでございます。そういう意味で、私は必ずしも政府施策が完ぺきであったなどと申し上げられるものじゃありません。完ぺきであればこんな事態は起こらないわけでありますから、それはもう完ぺきだったとは申し上げられませんし、今度の事態が、政府が果たさなければならない責任に対して、幾多の問題を提起しておるものだということは理解をいたします。  あなたの「列島改造論」——列島改造というのはこれは私の論文でございまして、あえて言うまでもございませんが、国土総合開発法というのは、これは共産党だけを除きまして各党一致でもって昭和二十五年に立法されたんです。これはおわかりのとおりでしょう。二十五年に立法されて、その間ずっとこの国土総合開発に対しては立法が行なわれております。そのほとんどが超党派で行なわれておるんですよ。これはもう私は数えると百法近くなると思います。超党派で、この国土総合開発法という基本法には手をつけなかったけれども、列島改造式な方向で行なわれてきたことは申すまでもありません。これが電源開発促進法であり、水の特別会計法であり、港湾特別会計法であり、やがてはそれが港湾の外貿埠頭公団法になるわけでございますし、道路の特別会計法であり、憲法違反だといわれた公営住宅法をつくったり、北海道耐寒住宅法をつくったり、それから山村振興法になり離島振興法になり、鉱工業地帯整備法になり、新産業都市建設法になり、道路を有料にする有料道路法、ガソリン税を目的税とする法律、それから北海道と東北開発法もそうなんです。これは全部国総法に基づいて各種の立法がほとんど議論なく、これはもう与野党間においてほとんど一致でもって通ってきたことは事実なんです。中には、まあ批判を受けた熱海温泉都市建設法、別府温泉都市建設法、軍港都市整備法とか、いろいろなものがあります。そして最後の段階になって、農業というものに対して、農業地帯工業導入促進法になり、産業再配置法になり、国総法の全面改正になってきたのであって、これは四半世紀の歴史が、これを百法近い法律として院議がちゃんときまっておることであって、私が述べているようなものは、これはもうみんな国会の議事録に何らかの形において載っているものでございます。ですから、政府が四国の第二架橋をきめたときも、それから青函連絡のパイロット隧道をきめたときも、何も列島改造と何の関係はないのです。十何年前に、青函隧道はちゃんと着工しているんですから。しかも本四三橋も、私が「列島改造論」などを出さないうちに本四三橋はこれを必要とする。そうでなければ、瀬戸内海や、とにかく大阪、神戸というような、あそこに油の船を入れることができなくなる、そういうことでつくられ、鹿島の問題もそうです。浦賀水道にもう全然船が入らない、こういうことでつくられておるのであって、私は、「列島改造論」というものをどうしろといっても、もう売れたものをどうするわけにいきませんから、新たに再版をしないというぐらいのことはけっこうです。売れないものは何も再版することはありませんからいいですが、私も、日本の歴史はそこから始まっていると思うのですよ。  私は、大蔵大臣のときに、三カ年間、大蔵省にあるいろんな資料をひっくり返しましたときに、その中にさすがなものがあったのだ。ありましたよ。それは三つだけ私はここで申し上げておくのです。それは百年前に三つだけ、これは私はちゃんと申し上げておきます。  一つは、いまの運賃の何十倍もするような運賃をかげながら、年間千キロずつの鉄道を、いまよりもはるかに国民生産が小さいときつくったじゃありませんか。第二は、どんな津々浦々にも雨天体操場を持つ小学校の校舎をつくったのですよ。すばらしい私は投資だと思うのです。第三番目は何でもない。北海道開発に対する太政官布告であります。当時三万九千人しかいなかった北海道開発のために、必要な公共投資は全額国が負担するという鮮烈な政策を行なったために、九十年間でもって五百二十万人になったじゃありませんか。  ですから私は、狭い日本という立場において、水が足らない、土地が上がる——これだけ急速に東京や大阪や県庁所在地に人が集まってくるときに、一番私はおそろしいものは、土地の値上がりや、それから公害とかそういうものじゃないと思うのですよ。魂を失う、ふるさとというものを失う、大都会というものがどのように民族の将来のために大きなマイナスをもたらすかということで、私は「日本列島改造論」を世に公にしたわけでございまして、方向としては誤りだと思わないんだ、私は。そういう意味で、まあいろいろな批判はあるでしょう。批判はあるでしょうが、そういうものをやっぱり提案する義務というのはあるのですよ。  私は、最後に一言申し上げますが、政府は先取りをしてしなければならない責務を有する。民主政治というものは国民の習熟を待って初めて立法化を行なうべきものであって、行政や政治が関与すべきものは最小限にしなければならぬ。それはもうあなたに申し上げるまでもないが、だからわが党は自由民主主義体制をとっているんです。国民のエネルギーの自然的な発動にまつというのが政策の大前提になっているわけです。ですからそれには、そういう面からいうと社会主義政権とは違って、多少時期的には政策がおくれていくというのは、これは民主政治のマイナス面の一つだと思うわけでございますが、そこらを調整して、起こり得た現象に対しては、政治責任を持つ党や政府が遺憾なきを期してまいるということでなければ、政治責任を果たすゆえんではない、こう考えております。
  100. 田中正巳

    田中(正)委員 私は、別に「列島改造論」が悪いというふうに申しておるわけじゃないのでありまして、ただ、これをどういうふうなテンポで、どういう手法でやるかということについて国民によく説明をしないと、誤解からとんでもないリアクションが起こりはしないかということを案ずるがゆえに、一言触れたわけでございます。  そこで、ただいま政府がこうした経済情勢に対応してとられている対策というものは、第一に金融の思い切った引き締め、第二には予算の緊縮、なかんずく乗数効果の大きい公共事業費の極端な抑制、そして第三に国鉄、消費者米価等を中心にする公共料金の一部ストップ等でありますが、これらは、言うなれば、総需要抑制のための政策だと思われるわけであります。  さらに、今日われわれが特に注目しなければならないのは、需給による価格の調節及び競争原理が円滑に働いてこないという、日本経済のメカニズムのいわゆる健全な姿の一時の欠落であります。こうしたことを踏まえて、政府は、売惜しみ買占め防止法、先般の国会では石油二法等、一連のいわゆる非常の経済立法を通じて、経済のオーダーをこの際建て直そうといったようなことを指向しているものと思われるのであります。  私がこの際伺いたいのは、これでいいのか、これだけでいいのか、この種の政策がそれぞれ正しく的確に実行されておるかどうかということについて、逐次今後一つ一つの項目についてお聞きをしたいと思います。  第一に、金融の問題でございますが、これまで数回にわたりまして金融引き締め政策をいろいろおやりになりました。公定歩合の引き上げあるいは選別融資等々のいろいろな政策を行ないましたが、今後この種の政策についていかが取り運んでいくつもりでありますか。今日までのあのような政策で当分けっこうだと思っておりますか、また、今後さらにこれを続けて強化していかなければならないと思っておりますか。これは大蔵大臣からお答え願いたいと思います。
  101. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 金融政策につきましては、昨年一年間、量的規制というような性格の引き締め政策が行なわれた、かように存じておるわけであります。この量的引き締めの影響は逐次出てまいりまして、たとえば、日本銀行券の発行高にいたしますと、一時は前年度対比二七・九%までいったものが、暮れには二五%台に下がってきております。さらに本年一月、現時点におきましては二三・二%というふうに下がってきておるのであります。それから、企業手元流動性という側面から見ましてもかなり窮屈になってきており、これは過去数回の好況時においてとりました金融抑制政策、そのときの状態に比べますると、さらにそれを下回るような流動性の量、こういうふうになってきておるわけであります。私は、企業の流動性の問題は、とにかく七合目、八合目あるいは九合目までくらい来ておる、ただまだ若干の余りがある、しかもそれが偏在をしておる、その偏在しておるものがいろいろな現象を起こしておる、こういうふうに思いますが、今日の金融引き締めの体制を堅持してまいれば、量的の面におきましてはまずまずかなりの効果をあげ得る、かように考えております。  それから、残された問題は、設備投資との関係もありまして、質的の規制をどうするか、こういう問題かと思うのであります。この面につきましては、先般選別融資方式を打ち出しておるわけでございまして、不要不急というようなものにつきましては極力これを抑制する。しかしながら同時に、反面におきましては、生活関連物資等におきまして、これはどうしても一急がなければならぬ、充実しなければならぬという面につきましては積極的にこれを行なう、こういう考え方。それからさらに、量的並びに質的規制を行なうにあたりまして考えなければならぬ問題は、この金融政策を進めますと、かなりこれは経済界に対しまして鎮静的影響を与えるだろうと思う。だんだんとそういう傾向が露呈してくると思うのでございますが、その間におきまして、そのしわ寄せが中小企業にしわ寄せとなってあらわれないかどうか、こういう問題であります。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 この面におきましては、金融の面においてももとよりでありますけれども、財政、つまり予算の面におきましても格段の配意をするということを考えておるわけであります。なお、金融機関自体におきましても、これから先を展望すると、これは非常にたいへんな事態があるいは起こるかもしらぬというような展望に立ちまして、金融機関が、あるいは都市銀行が、あるいは地方銀行が、あるいは信託銀行が相寄りまして、自主的に中小企業対策に貢献したいという努力をいたしておる。私はその努力に対しまして高くこれを評価いたしておりますが、そのような一連の政策をとりまして、中小企業に不当のしわ寄せがいかないように特に配意をいたしていきたい、かように考えております。  いずれにいたしましても、この政策を進めますと若干の摩擦現象というものが起こるに違いないと思いまするけれども、物価を安定させる、その上におきまして、金融政策は財政と並んでその一翼といたしまして非常に重要な地位を占めますので、この姿勢は物価が安定するまでは堅持する、なお、様子によりましてはこれを強化していく、かように考えております。
  102. 田中正巳

    田中(正)委員 確かに、金融引き締めは相当に浸透していることは事実でございましょう。しかし、いま大蔵大臣のおっしゃったことは、言うなればマクロ的見地からの考察であろうと思いますが、ミクロに見ると、いろいろとまだ問題があるということだろうと思います。  さっき社会党の石橋君が指摘なさいましたが、先般のフランスの共同フロート制離脱に伴いまして、東京の為替市場が一時閉鎖をいたしましたが、再開した本月の二十三日にドルの直物出来高が七億四千数百万ドルにも達したといわれているわけであります。一体これはどこからこんな大きな金が、一体だが買っただろうかと思うのであります。今日、国民日本経済の実体というものを非常に心配しているときに、ああいったような取引が起こったということは、きわめて国民にとってショックだったと私は思うのであります。これに対応して日本銀行は、東銀、第一勧銀、住友等の三大為替銀行に対し、貸し出し金の一部の回収をしたということでございますが、これは隔靴掻痒の感のある対策でございまして、問題は、一体だれがどんな金を使ってこのような大きな売買をしたかということであります。確かに実需要は、それはあの日にもあったろうと思うのですが、世上うわさされておったものよりも数億ドル実は多かったといわれておるわけでございまして、これについて、一体大蔵大臣、どういう人がどんな金を使ってこんなばかな取引をしたのか、お調べになっておりますか。
  103. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 七億ドルと申しますが、あれはちょうど土曜に為替市場が休みになり、また日曜日が当然休みでございます。その休みのあとを受けましたものですから、やはりたまって取引があったという面があるのです。ですから、水曜日に為替市場を再開いたしましたという際において、一般の専門家の見方は、あるいは五億ドルくらいのドル買いがあるかな、あるいは六億ドルくらいまでなるかな、とにかく五億ドル内外の取引があるのじゃあるまいか、そんなふうな見方だったのです。ところが、それが七億ドル近くになったというので、一部、一億何千万ドルか、その程度のとにかく投機的要素を持ったリーズ・アンド・ラッグズ、そういうものがあったと思うのです。その状況は一体どうなんだろうかといって調べております。どうも商社——商社がおもですね。それから事業会社が一部ある。それが銀行に委託しましてドルを買った。ですから、大部分はこれは正常な取引でございますが、リーズ・アンド・ラッグズの分がどうも投機的な要素になる、こういうので、そういうことは深く戒めなければならぬというので、いま厳重に調査をいたしておるというのが状況でございます。
  104. 田中正巳

    田中(正)委員 これについては、世上いろいろなことをいわれております。最も私どもの心配するのは、これの買い手がいま問題になっている石油業界あるいは鉄鋼業界であったというふうなうわさが流れているわけでございまして、こういうことになったのでは私はもってのほかだ、こういうふうに思うわけでありまして、大蔵大臣御調査中だそうでございますから、ここでぎりぎり、どの会社がどうのということは私、申し上げませんが、私がこの点について申し上げたいのは、いわゆる金融引き締めの量的規制、そしてマクロ的見地はけっこうだと思いますが、もう少しやはりきめこまかくこれの対策をやっていただきたいということであります。こういったような意味において、今後選別融資の規制の強化等々は、こういったような事実を見ても私はさらに強化する必要があろうと思われるものですから、あえて申し上げたわけでございます。  次に、予算について申し上げますが、昭和四十九年度予算の編成の基礎になった四十九年度経済見通しであります。これについては、先ほど石橋君が相当きわどいところまでお触れになっておったようでありますが、私もまたこの問題についていささか関心を寄せるのですが、こうした予算編成時において立てられた、閣議了解された経済見通しが、予算審議の間のわずか一カ月くらいの間に見通しが変わったという先例がございますかどうか、この点、経企庁長官にお伺いをいたしたいと思います。
  105. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私も閣僚の経験が乏しいものでございますから、あまり昔のことはわかりませんけれども、先ほども石橋さんに申し述べましたように、経済見通しというのは、いつも予算の編成をいたします際の十二月に閣議了解として、次の年度の見通し並びに次の年度について政府が実行すべき政策を取りまとめたものを出しまして了解を受けます。しかし、その際は予算がきまっておりませんから、GNPを幾らにいたしましても、それを財政に幾ら配分するかということは毎年わかっておりませんので、一月に入りまして予算の閣議決定をいたします際に、あらためて経済見通しのほうも、その財政関係に配分する数字を入れまして閣議決定するのが例年のならわしでございます。それは今回だけに限ったことではございません。  ただ、今回はちょうど年末から正月にわたる期間に、先ほども述べましたように、石油の供給見通し、特にその価格について大きな変動の要素が出てまいりましたので、私は、正直にそれを経済見通しの中に織り込むことがよかろう、こう判断をいたしまして、石油輸入価格が高くなることでございますから、これは当然ドル建ての国際収支の見積もりに影響いたします。そこのところをおもに直しましたことが第一点。  それから第二点は、価格に影響を及ぼすことがございますが、そういうことも含めまして最終的な閣議決定をいたしたわけでございまして、この間、何らのごまかしもなければ、また究極的には、予算編成数字に変更を加える必要はない、こういう結論に到達をいたしました。
  106. 田中正巳

    田中(正)委員 こういったようなことについて、別に悪かったと申し上げているわけではございませんで、むしろ、気がついたからこれをはっきりお直しになったという態度については、私はけっこうだと思うのであります。ただ、あれは微調整だ、こう言っているわけですが、必ずしも、微調整であり、予算の編成についてあまり影響がないとは私は言い切れないと思うのであります。  たとえば、いま経企庁長官が言った国際収支の面も、外為関係の編成に大きく影響するでありましょうし、また、物価指数の問題についてももうすでに、最近発表されているものを見ましても、どうやらあれがあのとおり実行され、ああいう趨勢でおさまるかどうかということは私どもとしても心配なわけでありまして、もしあれをオーバーするということになりますと、いろんなひずみが出てくるわけであります。たとえば、事業費単価の問題から事業量をこの際押えなければならぬとか、あるいは法人税収入がおそろしく大きくなってまいって、予算編成の基礎というものを大きくゆるがすことに相なるものだろうと思いますので、私は、微調整であるがゆえにネグリジブルだというふうには言い切れないと思いますが、ここであれこれの議論をしておりますといろいろと時間がかかりますから、私は、御注意をするだけにとどめておきたいと思います。  そこで、この予算、政府の予算説明資料によりましても、対GNPでは、本年度は一三・一%であり、四十九年度予算は一三%であり、わずかに〇・一%しか対GNP比率は落ち込んでおらないということでありますが、なおこれで非常な抑制型、緊縮型予算であるというふうに考える根拠は、一体どこにあるかということをお伺いいたしたいと思います。
  107. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 予算と経済見通しは、数字的には必ずしも一致しない面があるのです。つまり、経済見通しのほうは実際の動きを見て、そしてそれをとらえて前年度と、こういうふうにいたしております。そういうことでございますが、私が強調いたしておりますのは、当初作成いたしました予算、これに比べますと非常な縮減したものになる、こういうことなのであります。  そこで、それじゃ実態は縮減にならないじゃないかというような議論になるかもしれませんけれども、今度は四十九年度を実行してみる、こういうことになると、また自然に繰り延べになるものも相当出てくるわけなんです。そういうようなことを考慮いたしますと、これは私が当初申し上げておりますとおり抑制型である。ことに今度の予算というものは、伸び率にいたしましても、一九七%前年度予算に比べて伸びておる、こういう大型のものでございます。なぜ大型のものになっているか、こういいますと、これは公共事業費つまり主要の資材を使用する面におきましては、非常にこれを切り詰めておるわけであります。しかし社会福祉施設、そういうような一般の資材に関連のあるものにつきましては、今日の社会情勢、物価情勢から見てこれを取り押えるということば妥当ではない、こういうふうに考えまして、そっちのほうをうんと伸ばしておる。そっちのほうが伸びた関係で、物材が全然要らないというわけじゃないのでありまして、これはそれ相応の物材使用の伸びもあるわけでありますから、そういうものを総合いたしますと、物材の使用としてはやはりそう縮減ということにはならないが、主要の資材につきましては、これはかなり大きな縮減になる、そういうことを申し上げておるわけであります。  総括して申し上げますと、生活のほうはそう切り詰めておらぬ、事業活動のほうにつきまして一は思い切った縮減をしておる、こういうふうに御理解を願います。
  108. 田中正巳

    田中(正)委員 予算編成の支出項目、費目の性質によった、こういうことだろうと思うのであります。ある程度私どもわかります。  そこで、いわゆる乗数効果の大きい公共事業費の問題ですが、けさほど石橋君が触れておりましたが、四十八年度予算の繰り延べ額の問題であります。大蔵大臣、四十八年度繰り延べ、一体幾らいたしましたか。
  109. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいままで確定いたしておりますのは、一般会計において千四百億円でございます。その他財政投融資の関係等、それから政府諸機関の関係があります。それから地方財政もあります。それらを総合いたしますと大体一兆円に及ぶ、こういうふうに見ております。
  110. 田中正巳

    田中(正)委員 最初におっしゃった数字、ちょっとわからないのですが、私どもの調べでは、一般会計で八百七十一億、特別会計で千三百二十五億、政府関係機関で千三百三十三億、計三千五百三十億と、われわれがこの本院で直接審議する予算項目だけでこれだけになっておる。それから財政投融資あるいは地方財政等々をひっくるめますと一兆円をオーバーする繰り延べがあった。この点については大蔵大臣と私どもの調べとは一緒なんですが、いずれにいたしましても、一兆円をオーバーする繰り延べの金額、公共事業費系統、これは非公共も入っておるようでございますが、これをこの際、四十九年度に繰り延べですから、実行するということになりますと、これはやはり公共事業費をかなり抑制をしたということについて、抑制効果はここからずり抜けやしないかという心配をするものであります。  そこでお尋ねをいたしますのは、大蔵大臣は財政演説で「予算及び財政投融資計画の弾力的運用に配慮しておる」と言っておりましたが、これは一体具体的にどういうことをさすのか。われわれの想像では、予算執行の時期を繰り延べるということは、いままで政府側でよくとってきた手法でありますが、さらに、場合によっては、四十九年度予算のうち、この種の公共事業等の乗数効果の大きいものについて、さらにまたことしも繰り延べをするということをお考えになっているかどうかということについて、所懐をお漏らし願いたいと思います。
  111. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 昭和四十八年度の予算はただいま繰り延べ中でございます。おそらくこれは会計、財政法上の繰り越し措置として整理をされ、四十九年度の予算の上積みとなって執行し得る状態に置かれる、こういうふうに思いますが、私が昭和四十九年度予算で弾力的な運用をすると申し上げておりますのは、まず、繰り越しになりましたものは、四十八年度に計画が精細につくられ、しかもその中には事業に着手しておるようなものもある、そういうものの引き続きでありますので、四十九年度というこの年度になりますれば、それがまず先発列車というような形で動き出す、こういうふうに思います。そこで、その上にさらに四十九年度予算で盛られた諸経費があるわけでございます。それをどうするか、こういう問題になってくるのでありますが、それらは景気の状況を見まして、これを早目に実行に移すとかあるいはおそ目にするとか、その辺のことは、これはそのときの状況において機宜の措置をとらなければならぬだろう、こういうふうに思いますると同時に、場合によりましては相当景気が落ち込むという公算があるわけであります。おそらく私はそういうふうになるであろう、またそうならなければ、私はこのいまの物価上昇ムードに一大転換というものはこない、こういうふうに考えておるわけでありまするけれども、そういう際に一体どうするかという問題もまたあろうかと、こういうふうに考えますので、それで一般会計では予備費もふやしてあります。まあ、中小企業対策だ、あるいは日の当たらないいろんな階層の人の問題とか、いろいろ出てくるかもしらぬ、そういうことも考えながら予備費の増額を行なう。なお同時に、債務負担行為、これは一般会計のみならず多くの会計においてこれを締結し得るような状態にしてある。こういうことで、景気が少し停滞しても一向それに対して手がないというような状態には置かない。と同時に、景気がどうもまだ大きく鎮静の方向に向かないという際におきましては、あなたから御指摘のありましたような、執行の期限の調整というものにつきましても配意いたしていきたいと、こういうことでございます。
  112. 田中正巳

    田中(正)委員 今日の日本経済の基盤が非常にフラクチュエートしているわけですから、ぜひ大蔵大臣、そういったような機動的な運営をしていただきたいというふうに強く要望をいたしておきます。  そこで経企庁長官に尋ねるのですが、例の経済社会基本計画というものでありますが、私、実は昨日あれを読み返してみたわけであります。とうてい今日の日本の経済情勢では理解ができない、外国の経済基本計画を読んでいるような気がしてしかたなかったわけであります。これもまた、日本経済の今日の状態の把握の問題と実は密接な関係があろうと思います。一時的な、テンポラリーな病的な状態であり、これが平準化するならばあれでいいのだというふうに考える考え方もあろうかと思いますが、どうも今日の日本の経済状勢を踏まえるときに、私は、この昭和四十八年から五十二年までの経済社会基本計画というのは、これはどうあろうとも再検討しなければ、実施するによしない迂遠なものに相なるというふうに思われてしかたがなかったのでございますが、この点について、経企庁長官の所感はいかがでございましょう。
  113. 内田常雄

    ○内田国務大臣 田中さんが御指摘になられましたような計量的な見通しの部分につきましてはお説のとおりでございまして、それにつきましてはフォローアップを実は現在いたしております。ところが、私も読み直してみましたが、あれは昨年の二月の計画でございまして、経済指導の理念につきましては今日でも通用する、まことにいいことが書いてあります。それはすなわち、生産第一主義でも輸出第一主義でもなしに、環境の整備を中心とし、また人間の社会福祉を中心としたようなそういう計画の立て方、またあの公共事業等につきましても、いたずらに産業関連の公共事業をふやすのではなしに、生活関連の公共事業、社会関連の公共事業というものを遂行すべきであるというふうに取り上げられておりますので、そこの点につきましては、私は今日通用する考え方であろうと思います。  ただ、御指摘のように、長期の公共事業計画など広義のものを総合いたしますと、五十二年までの間に九十兆円の支出をいたすことになっておりまして、そのまた年度割り分野等につきましても触れるところがございますが、それは何といいましても、最近物価が非常に高くなっておりまするし、また諸般の環境が違っているところがございますので、そういう計量的な計画の部分につきましては、御指摘のようにフォローアップを重ねまして、そして私はさらにこれに必要な修正を加えるべきものであると考えております。
  114. 田中正巳

    田中(正)委員 確かに経企庁長官のおっしゃるような項目もあるのですが、しかし、通読いたしますると、これはこのままでは相済まぬ、このままでまた五年これをやるというのは、どんなに心臓が強くても私はようやり切れないだろうと思いますので、まあ、いろいろお忙しいところでございましょうが、これについての再検討はぜひおやりになっていただきたいものだし、またやらなければ、この種の計画の権威をそこなうと私は思いますので、この点についても強く要望をしておきます。  次に申し上げたいことは、以上がオーソドックスな総需要抑制策につながるものでありますが、それだけでは、今日の日本経済に対する対策としては不十分であるということは、親近の経済情勢を見ればこれは明らかであります。つまり、経済のメカニズムが正常に働かないところに新しい問題が惹起してきたことであり、これが言うなれば今日の日本経済の病根であるというふうに言っても過言ではないと思うのであります。世上いわれるように、ある意味では今日の物価高、品がすれは、つくられた物価高であり、つくられた品不足だというふうに称せられておるのでありますが、これも私はあながち誤った判断ではないと思うわけであります。  そこで、これらの問題について、いろいろな点についてお尋ねをいたしたいと思いますが、第一に、けさほども話がございましたが、最近この種の問題に拍車をかけたのは石油の需給状況であります。昨年十月から十二月までにおける石油輸入量、これは通関ベースで見ても、通産省のその後の発表を見ましても、少なくともあんな異常な物価高を招来するような状況ではなかったことだけは、これはもう数字の上で立証されたわけであります。極端に言うと、品不足が激しい戦時中だって、一カ月の間に二割も三割も物価が上がったことはなかったわけであります。いかに病的であるかということがよくわかるだろうと思いますが、そこで、こうした誤った、あるいはつくられた石油輸入の見通しなり何なりがどうして出てきたんだろうかということについて、通産大臣に率直なところを承ってみたいと思うのであります。
  115. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中東戦争は十月に勃発いたしまして、OAPECのほうで、日本は二五%十月の中旬以降削減され、十一月以降引き続いてやられる、そういうことで、さらに十二月以降は五%ずつ毎月上積みされる、こういう情報が来たわけでございます。  それで、その後メジャーズからどの程度船が配船され、入荷されるであろうかということを大体十日ごとぐらいに情報をとってみました。そういたしますと、エクソンであるとかモービルであるとかシェルであるとか、日本に入れているメジャーズからの報道は、大体二〇%から多いものは二八%ぐらいという情報であります。それから在外公館から来ておる電報を見ましても、非常に悲観的な情報が多うございました。そこで、十一月になりまして、十一月の十日に、いよいよ石油緊急対策を実施するについて、いままでの情報を全部まとめまして、大体の基礎数量をはかってみましたら、大体予定数量の二八%強減という数字が出てまいりました。  大体そういう数字を基礎にしてわれわれは計画をつくってまいりましたが、さらに事態がきびしくなるという情報もございまして、また、メジャーズからの旬報等を見ますというと、この十月にかなり着荷がよかった、それから十一月におきましても、おそらくいままで着荷のよかった分だけ十二月にかけては上積み削減されるであろうという情報がありまして、その次の、十二月四日であったと思いますが、この時点における数量計算では、大体二一%強の削減の危険性が出てきた。そういう情勢でございまして、あの当時からしますと、むしろメジャーズやあるいは会社筋等の削減率は三〇%以上にも達するというような情報もあって、通産省は過小に見過ぎるという非難が多少あったくらいであります。しかし、われわれのほうは大体一六%ないし二〇%限度であるということを基本にいたしまして、十一月十六日の計画を立てました。大体一六%というのを頭に置いてつくったわけでございます。  しかし、その後実施してみますというと、十二月に入りまして、わりあいに入荷の状況はよくなってまいりました。十二月の二十日過ぎに着荷ベースの旬報をとってみますと、わりあいに着荷が、われわれが考えている以上にいい情勢でございましたので、そこで、実は一月一日から二〇%削減をやろうということで、電気その他全部手配をいたしましたが、これはもう少し様子を見たほうがいいという考え方に立ち直りまして、そして一月一六日実施まで延ばしたわけでございます。この間、正月もありまして、民生に対する影響等も考えて、また着荷の状況等も考えて、われわれはそういうふうに猶予期間をとってその後の情勢を見たわけでございます。  それで、十二月における着荷がどうであったかという計算をしてみますと、二千四百九十五万トン、約二千五百万トン前後の着荷がはっきり出てまいりまして、一応愁眉は開きましたが、われわれが期待している以上に入ってきたわけでございます。しかし一月、二月の需給計画をつくるにつきましては、OAPECの会議であるとか、その後の石油の動向等見まして、幸いに十二月二十五日にOAPECの外相会議によって日本は友好国に指定されまして、そして昨年九月の水準の油を保証してくれるという朗報が入ってまいりました。そういうような情勢も頭に入れ、一月の需要供給数量を大体二千四百万キロリットリという数字で押え、二月は二千二百七十万キロリットル、三月はこの様子をまた見ながら次に策定する、こういうことで計画を策定して進行中でございます。  それで、石油の入荷の見通しはやや明るくなってまいりましたが、しかし現実におきましては、十二月においては二・八日分在庫を食っております。一月におきましても一・四日分在庫を食っております。それで、このままいきますと、二月末には、たぶん五十九日分あった在庫が四十九日分ぐらいに減るという予想でございます。在庫を食いながら実はいまやっぱりやっておるのでございまして、それだけ需要がかなりふえているということでもございます。  そういうような情勢を見通して、来月十一日から行なわれますワシントン会議に対するOAPECの反応あるいはその後来月の二月十四日にOAPECの会議がございまして、石油政策をまた検討いたします。そういう動向等を見合いながら、石油の政策を逐次検討して進めていこう、多少入ってきたからといってゆるめるということばやや安易に過ぎる、そういう考えがいたしまして、ともかくふえつつある分は生活必需品の増産分に回す、それでもまだ多少入ってくるという場合には、減っている備蓄の量を回復する、そういう考えに立って今後も政策を進めていくつもりでございます。
  116. 田中正巳

    田中(正)委員 どうも当時の石油輸入量についての計数が必ずしも正しくなかったし、またこれが経済界に巻き起こした混乱というものは、私は端倪すべからざるものがあった。ということになりますると、やはり通産当局は、この種のものについて、もう少し的確な情報網と的確な計数を国民の前に示さなければならなかったのではないか。当時としてはむずかしいことでもあったろうと私はお察し申し上げます。しかし、こういったような石油輸入量の見通しが、どれだけ国民経済に大きな悪影響を与えたかということを考えるときに、私はきわめて深い反省をしていただかなければならないものというふうに思うわけであります。  そこで、今後の石油の需給見込みでございますが、なかなか国際的にいろいろと変動する要素もありますので、今日はっきりしたことは申せないと思うのでございますが、いかがでしょう、通産省、この際、これだけ石油不足のムードから経済が混乱をし、物価高を招来している今日でありますので、直截的に見て、いま少しく石油の消費については、必要の方面についてはこの際増産に振り向けるという、やや乱暴かもしれませんけれども、そういったようなやり方というものをおとりになることができないかどうかということであります。なるほど備蓄量を三十九日以下に減らしては困るとか、あるいは今後の見通しもまだ不確定な要素があるといいまするけれども、おおよそこの種の経済下における政策要請として、一体どちらが必要かということであります。日本経済が混乱をし、極端に言うならば、暴動まで起こるのではないかというふうに心配されている今日、この際多少リスクをしょっても、生活物資の増産には石油をある程度はたくというような思い切った態度がなければならないと私は思うのですが、この点について、通産大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  117. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は同感でございまして、いま増量でふえている分は、緊要なる方向に増産のために回しております。紙のような例はその例でございます。そして今後もその動向をよく見据えまして、石油が長期にわたって確実に安定的に供給されるという保証が、国際的にもわれわれが認証できる情勢になりましたならば、ある一部の在庫を食っても緊急放出して、生活必需品の増産の方向に向けて、物価を下落させる方向に協力したい、そういう考えをもって毎日ながめておるわけであります。
  118. 田中正巳

    田中(正)委員 どうぞひとつ一文惜しみの銭失いといったようなことが、個人の場合ならそれであるいはけっこうですが、国家社会に関係するだけに、私はそういったようなことについても深甚の御配慮を願いたいというふうに思います。  そこで、量の問題もさることながら、一つお値段の問題があるわけでありますが、けさの新聞を見ますと、サウジアラビアのヤマニ石油大臣が見えまして、この問題についてもいろいろとお話があったというふうに聞いております。二月十一日に開かれるという世界の石油消費国会議、これに日本出席をするようでございますが、一体どういう方針で、どういう態度でこれに出席をなさるつもりでございますか。現在流動的であり、国際的な関係もあるので、あるいはいまあまりはっきり申しにくい点もあろうかと思いますが、これについて差しつかえない程度にひとつ政府側からお聞かせを願いたいと思います。
  119. 大平正芳

    ○大平国務大臣 石油問題は、一つの国あるいは一部の国だけで解決ができるような問題でございませんことは、御案内のとおりでございまして、国際協力を必要とする、とりわけ産油国側、消費国側の協力のもとで解決をはかってまいらなければならぬということは、申すまでもないことでございます。アメリカにおきまして、主要な石油消費国の参集を求めて、この問題について消費国側の意向を聞きたいという要請がございました。具体的な議題につきましてまだ通報に接しておりません力集まる国は米国、カナダ、英国、ドイツ、オランダ、イタリア等でございまして、フランスはまだ態度を表明いたしていないと聞いております。日本といたしましては、国際協力を進めることの必要を感じておりますので、これに参加の意向を表明いたしましたが、しかし、この会合におきまして消費国側と産油国側が対立の様相を来たすというようなことになりますと、ゆゆしいことになりますので、むしろこの会議が産油国と消費国との協調の第一歩となるようなものでありたいと期待し、そういう方向で努力をすべきものと考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、まだ議題の内容等について通報に接しておりませんし、また、政府部内におきましてどのように対処すべきかについていま検討をいたしておりますが、大まかな心がまえとしては、いま私が申し上げたようなところでございます。
  120. 田中正巳

    田中(正)委員 そこで、いま一つ観点を変えましてお尋ねをいたしたいのですが、例の、昨年の国会でわれわれがこれを成立せしめた買占め売惜しみ防止法の施行状況であります。  これはたしか昨年七月に公布、実施されたはずでありますが、その後のこれの実施状況。時間がございませんから私結論から先に端的に申しますと、いかにもスローモーであり、いかにもとろいという感じが実はするわけであります。一体今日までいろいろなことをおやりになったと言いますが、これでは私は、悪徳業者に裏をかかれて、政府はばかにされたという結果にしかならないと思われますが、こういったような点について、政府側では、私の指摘することが、あえて政府を誹謗する、あるいは政府に無理をしいているものであるというふうにお考えになりましょうか。私はもう少しこれについてはテンポを早く実施をしていただきたいし、びしびしとやっていただきたかったものだというふうに思うわけであります。一番これについてパンチ力のあったやり方というのは、ついこの間総理が東南アジアに行くときに、総理が指示をなさいまして、倉庫の検査をいたす、これが実は一番パンチ力があったわけでありますが、ああいったようなことをもうちょっと前に何でおやりにならなかったか。いろいろな政令をつくる、価格調査官を任命する等々の手続に終始をしておったのじゃないかというふうに思われるわけでございますが、一体私のこう申していることについて、政府は何らか反論する余地がありましょうか。
  121. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は代表者というわけではございませんが、代表してお答えを申し上げますが、私もやや田中さんのおっしゃることに同感の気持ち、なきにしもあらずでございます。でありますから、これは経済企画庁がやるということではございませんけれども、物資の主務官庁が大いにやっていかなきゃならぬことでございますので、総理大臣のそういう気持ちを受け入れまして、実は私自身も、あれは役に立たなかったといわれますが、指導奨励の意味で私みずから立ちましたし、それから今日では価格調査官ばかりでなしに、価格調査官がついていけばいいわけでありますから、三百何名という価格調査官の数にこだわらずに、それらがその役所の担当者を連れて——これは延べにいたしますと、現在やっておりますのは何千人になり、それから対象個所は約千カ所ぐらいになり、物資の種類は、御承知のように通産省六品目、農林省六品目、十二品目、これを一カ月間続けて全国にわたってやる、しかも公共団体の協力も得てやるということでやっておりますので、この結果につきましては、遠からず御報告をいたしたいと思います。
  122. 田中正巳

    田中(正)委員 この物価調査官の任命についても、私は意見があるのであります。今日任命している価格調査官はほとんどその当該物資の、いわゆる業法担当の調査官がこれに任命され、担当しているというふうに聞くわけであります。人間ですから、どうしてもやはり自分が扱っていた業界についてはいろいろな人的交流もあり、そこに情もあるだろうと思うのであります。そういうことを考えるときに、私はこの価格調査官の任命については、ひとつ専門家でない者、確かに専門的な知識は要るでしょう、物資の流通経路その他についても専門の知識が要ると思いますが、この際、いわゆる当該物資についての関係のない他の業法を扱っている役人をこれに任命するということも私は必要であろうと思いますし、また、これだけの大問題なんですから、したがって他の省庁の役人も、場合によっては一時これにできる限り手をかしても私はしかたがないと思うのでありまして、人員的にも、また人選についても、そういったようなことをひとつお考えになったほうがよろしいと思いますが、政府側はこの点についてどのようにお考えになりますか。
  123. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 この問題は非常に重要な問題であるということは理解しております。私はこの問題、国民生活安定法に対しましては、税の問題も考えましたし、それから超過利得の問題も考えたわけでございますので、実際からいって国民の自発的な協力を待つのが本筋でございますが、そんな甘いことではなかなか実効があがらない。日本人のいいところでありまた悪いところで君もございますから、そういう意味で、これも初めは警察と国税庁税務職員が兼ねることを考えたわけです。ところが警察というのは、そうでなくてもたいへんな苦労をしておられるわけです。ですから、そういう面からは警察は除こう。税は、そうでなくてもたいへん税務官吏が苦労しておる、矢面に立っておるということは、これはもうだれでも認めておるわけです。税務官吏は、通報があれば、これはもう現行税法によって調査を行ない、査察を行なわなければならないということは当然であります。違法行為があって警察に通報されれば、警察官は出動しなければならないことは当然であります。ですから、そこはひとつはずそうということになったわけでありますが、しかし、これはほんとう国民が要望するような状態になれば、政府をあげてということになるということでございましたが、とにかく第一の段階は、最も効果的なと考えられるもの、公安もはずしておるわけでございます。  そうすると、いまあなたが御指摘になったように、所管官庁、これは先輩が行っているだろうし、そうでなくても、自分が所管しているものもあるでしょうし、自分が所管していなくても、自分の省のものであることは間違いない。だから、そういう意味で、すべての官公吏というわけにはいかないけれども、ある時期、ひとつ慎重にはかまえるが、しかし、それでもなお物資が滞留しておるということが認められる場合には、これはもう国民的に、政府は決意を表明して、とにかく何百人などということではなく、ある資格者以上はとにかくすべて併任をして一カ月間全倉庫を点検するというところまでやらなければならないということを私は述べておるわけであります。そういうことにならぬうちに何とかならぬのかというのが真剣な私の考えでございます。  政府部内でいろいろな議論をした結果、第一の段階は、いずれにしても、戦後のもっと困難なときでも、あなたからも御指摘ございましたし、先ほども指摘がございましたが、もっともっと困難なときでもこんな売り惜しみ買いだめはなかったわけでありますから、そういう意味で、とにかく第一の段階は三百人、三千人というところでもってしぼろう、それで私は、とにかく最低限千カ所は調査を行なおう、調査書を提出すること、違法行為ありとすれば税務署及び警察に通報すること、ということをやったわけです。  ですから、国会においてこれから御指摘もずっとあるわけでございますし、これはある意味からいえば、全国一斉ということでなければ、どんどんどんどんと親企業から下請企業企業からその下へ、その下へと倉庫を移していけばどうにもならないということで、この間そんな甘いことを言っておって一体ほんとう政府はのがさないのか。国外にでも出さない限りのがさないのです。そんなゆうちょなことで一体押えられるのかと言うから、それは押えられます。いまでもわかるのか、最も国民がわかるようにという質問に対して、私は言いたくなかったんですが、一言だけ述べておきました。日本政府はそんな力はなくはない。それは物資のあるところには必ず付保しておる。必ず保険をつけております。ですから、保険会社に何月何日から何月何日までの付保の一覧表の提出を求めれば、必ず在庫品はわかるわけであります。そこまで私は言っているわけです。国民の理解を求めておるわけであります。そこまでラジオ、テレビを通じ、新聞を通じてやっておるにもかかわらず正常化ができないということになれば、これは全国一斉にやらざるを得ないという決意をしながら、いま政府は体制を整えておるわけでございますので、見ればたいへん御指摘のところがあると思いますよ、いろいろな面があると思いますが、きょうの社会党書記長のお話で、品物はあるのだということは全国にもよくおわかりになったはずです。  ですから、そういうことで、引き続いて与党の代表であるあなたからも何をやっているんだと、こういう御指摘があるのですから、これは政府は発動せざるを得ない、これは当然法の命ずるところによってその責は果たさなければならない立場があるわけでございますので、そういう意味で、千カ所と言ったのは、必ず聞くということで千カ所の調査を命じたわけでありますが、行ってみれば倉庫はきれいに片づけてあって、別の倉庫が一ぱいになっているというに至っては、私はそんなのはほんとう日本人の姿ではないと思っているんです。ごく一部だと思っているんですが、政府は地方庁の——この間の知事会議でもやりましたとおり、地方や町村までおろせば、どこに運び込まれたか、トラックが一日何台通ったとか、すぐわかることですから、そういう問題も含めて、とにかく徹低的に行なえる体制を現在整備しつつあるということを明確に申し上べておきます。
  124. 田中正巳

    田中(正)委員 総理の御決意はわかりましたが、国民は、この点については政府はもっと勇断をもってやってもらいたいというふうに思っているものに相違ございませんので、ひとつ、びしびしとやっていただきたいと思いますが、しかし、こうしたことをやっても、なおかつ世間には、こうした状況に便乗いたしまして、不当な利益を得ている者がおることは明々白々であります。こうした超過利得に対し、これをこのまま放置しておくということは、国民の公正感が許さないというふうに思うものですから、私は、こうした超過利潤は、これを吸い上げるということについて蛮勇をふるってもらいたい、こういうふうに思うわけであります。この超過利潤の吸い上げについては、いろいろと手法がめんどうであろうということを、私ども及ばずながら存じ上げておるわけでございます。しかし、あれやこれやのこまかい議論に終始しておっては、今日のこの異常な経済情勢に対応することができないということであろうと思うのであります。  また反面、超過利得税問題についていろいろと議論がありますが、これが一部に、所得政策に関連するので反対などという議論をするに至っては、私は論外だと思うのであります。やはり企業体に遠慮することなしに、また労働団体にこびる態度があっても、私は、この問題について対処できないと思うのであります。  なぜ私がこれを言うか。超過利得税について、先般の本会議において、超過利得税問題は、ややもすると所得政策につながるから考えものだとか、反対だとかいった政党があったのを、私、本会議で聞いたわけでございますが、こうしたような、企業にべったりしても困りますが、労働団体にべったりしても、私は、今日のこの問題は解決をしないというふうに思われますので、その手法、やり方等についてはいろいろと問題があろうと思いますが、私は勇断を持ってこの問題に対処していただきたい。この問題についての中身に入りますと、もう時間もございませんから、私はこの程度にいたしますが、そうした態度でお臨みを願いたいというふうに思うわけであります。今日、われわれ日本人は、さっき申したようにどうも情報感応性が強すぎるのであります。このエネルギー問題についても、このことが如実に言えたわけであります。  そこで、政府のとってきた施策を見ますと、いわゆるエネルギー削減策をやたらに強調いたしまして、総需要抑制策があとになってしまったという傾向があったのではないかと思われるわけでありまして、こうした不用意な態度というものは、今日の日本人のいわゆる情報感応性が強過ぎるということから見て、はからずも心にないような物価押し上げの結果になってしまったということを、私は、反省しなければならないというふうに思うわけでありまして、今後、政府施策を立てる節に、今日の日本人がきわめて情報に対する感応性が強過ぎるということを踏まえて、ひとつ政策をお立てになっていただきたい。これがある意味では、私は、国民心理を把握した政治だというふうに思いますので、この点についてあえて申し上げておきます。  そこで、若干問題をはずれますが、このようなエネルギー問題がいろいろといわれている今日、発電の問題でございますが、石油資源の問題もあり、あるいはまた、いわゆる資源ナショナリズムも台頭している今日、この際、われわれは次のエネルギーとしていろいろなものを考えなければなりませんが、これに対応して、ひとつ原子力発電というものについて、われわれはもっと努力をしなければならぬと思っておりますが、これについて一体どのようなお考えを持ち、どのような対策をお立てになっておりますか、科学技術庁長官の御所見を聞きたいと思います。
  125. 森山欽司

    ○森山国務大臣 エネルギー危機を支服して、長期にわたるエネルギーの安定供給を確保するために、原子力発電がきわめて重要であることは、御説のとおりでございます。  政府におきましても、かねてから原子力委員会におきまして、昭和六十年六千万キロワット、昭和五十五年三千二百万キロワット、五十五年には全発電設備の一八%、昭和六十年には二五%という予定でやってまいったわけでありますが、およそその半分の千六百万キロワット弱のところで目下計画がとまっておるような状況でございます。  ごく簡単に申し上げますけれども、現在稼働しておるものは五基、百八十万キロワットでございますし、年度内に二基追加されまして四百万キロワットになることを期待いたしております。残り十五基が目下建設中であるわけでございます。しかるところ、昭和四十七年度発電申請がありましたものはわずかに一基でございますし、昭和四十八年度、現在は昭和四十八年度中でございますが、現在までのところでは今年度中に発電申請をするものはゼロになっております。こういう状況になりますと、原子力発電所はつくりますのに約五年かかりますから、三年、五年後、昭和五十一、二年ごろから電力不足というような事態が出てくるのではないかということをひそかに憂慮いたしておる次第でございます。  申すまでもなく、石炭についても、先行きが見えております。水力につきましても、見直しはいたしましても、期待できるところにある程度めどがついていて、どうしても原子力にたよらざるを得ない。原子力が本命であることは事実でございますが、現状はこのような状態でございまして、先般、参議院の本会議におきまして、田中総理から、現下の最重要問題の一つであるというお話がございましたが、まさにそのとおりであろうと思います。  つきましては、政府といたしましても、昭和四十九年度の予算につきまして、安全審査の充実あるいは安全研究を充実するために、約七十億円の従来の予算を百五十億円にふやしましたし、また電源開発税をやりまして、平年度三百億円の予算を計上して地元対策を講じようといたしております。なお、大いに啓蒙宣伝をはかりまして、原子力発電の立て直しのために全力を傾倒する所存でございます。
  126. 田中正巳

    田中(正)委員 大蔵大臣、いなくなったのですが……。
  127. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 すぐ来ます。
  128. 田中正巳

    田中(正)委員 さらに私が心配をしているのは、最近の国際収支の問題であります。  大蔵大臣がいないとちょっとまずいのですが、最近における外貨準備、これは一体幾ら持っているのか。時間がありませんが、私、端的にお尋ねいたしますが、世上百二十億ドル内外だといわれておりますが、さらにこのほかに、政府政府保有の外貨を為替銀行に預託しているものがあるといわれておるわけでありますが、一体こういったようなものは何であるのか、そして今日でもなお必要であるのか、こういったような点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  129. 松川道哉

    ○松川政府委員 ただいまお尋ねの外貨準備でございますが、昨年十二月末現在をもちまして百二十二億四千六百万ドルでございます。  なお、一緒に御質問のございました案件は、おそらく私ども、かつて国際収支の黒字が続いております時代に、この外貨の活用策をいたしましたものが、いま外貨建ての債権として残っておりますが、このことであろうかと思います。この総額につきましては、いろいろな関係から外部へ発表いたしてきておりませんが、昨年中は若干の増加を見たということでございます。(「数字を言わなければだめだ」と呼ぶ者あり)数字は、昨年ふえましたものは、両方足しまして十億ドル程度と御理解いただきたいと思います。
  130. 田中正巳

    田中(正)委員 われわれの聞いておるのは、これは十億だなんというものじゃないというふうに聞いているわけでありまして、どうして一体こういうものを、今日、国際収支が心配だというときになおかつ置いておかなければならぬか、国民は判断に非常な誤りを生ずるのじゃないかというふうに思いますので、これの数字、表へ出せないというのですけれども、おかしい話だと思うのですけれども、一体幾らなんですか。そして、今後ともこういう制度を、これはなお残しになっておく必要があるのですか、どうですか。これについてお聞きしたい。
  131. 松川道哉

    ○松川政府委員 これは大きく分けまして二種類ございます。  一つは、わが国の銀行が海外で金融を調達いたしまして、これを海外で放資いたしておりますものがございましたので、これに充てるべく外貨預託という制度をやっております。これは昨年四十七年、暦年中は二十八億五千万ドルの増加でございまして、今年に入りましてから、初めのころばややふえておりましたが、その後取りくずしをいたしておりますので、差し引き一億五千万はややふえておりましたが、本年と申しましたのは暦年で四十八年でございますが、これだけふえております。  それからもう一つの種類は、スワップと称しまして、輸入金融を、日本にせっかく黒字があるのに外国でつけてもらうのはおかしいということで、これに充てた分が四十七年中に二十二億ドル、四十八年中に八億九千四百万ドルでございます。四十八年中は、これも外貨預託と同じように初めのころはふえておりましたが、その後減少の傾向を示しておりまして、ただいま申し上げました数字はネットの数字でございます。
  132. 田中正巳

    田中(正)委員 いずれにいたしましても、国際収支の先行きというのは、そう楽観をできないということだろうと思います。特に石油の値段が非常に高くなりましたものですから、石油に対する支払いだけで当初より五十億ドルほどよけい払わなければならぬというようなことも伝えられておるわけでございますが、どうもいままでわが国のこの種の問題に対する対策というのは、いわゆる外貨準備があり余ってしかたがないときにいろいろ立てた政策が多かったのですが、これを最近裏返しにしまして、逆の方向をとっていることは私も承知をいたしておりますが、なおかつ今日のそのような対策だけで十分であるかどうかということであります。  特に、私は最近の様子を見ますと、長期資本収支、これについて、どうもこれだけ日本国際収支が心配になってきた今日、なお私は、不十分でなかろうか、もう少し締めていいんじゃないかという実は感じがするわけであります。たとえば諸外国へ行ってゴルフ場をつくる、ホテルを買う、まあいろいろなことを私ども外国で聞くのでありますが、日本も外貨が余ってしかたがないときはともかくとして、ここまでお互いに心配する状況になってきた今日では、やはりこの長期資本収支についても、もう少し選別的に許可の方針を私はきつくする必要があるのではなかろうかと思われますが、大蔵大臣、いかがですか。
  133. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話は、まことにそのとおりだと思います。いまわが国の国際収支は、とにかく外貨手持ちは百二十億ドルある、こういう状態ではありますが、傾向的に見ると、これはたいへん憂うべき状態になっておるのでありまして、この状態を私は物価問題と同じくらい重大な問題だ、こういうふうに考えておるわけであります。  そこでその改善策、どうしたってこれはきちんと立てなければいかぬ。私は、外貨手持ちということは、量ということをそう問題にしないのです。問題にするのは、その傾向である。昨年一年間でとにかく百億ドルの赤字を出す、こういう状態がはたしてそれでいいのか、こういうことを考えると、ほんとうに身の毛のよだつような感じがするわけですが、ともかく外貨が流入してきたおととしから去年にかけての状態、そのときには外貨減らしという政策がとられたわけです。これは完全にひっくり返す必要がある、こういうふうに考えるわけでありまして、その一番の基本は、何と申しましても、これは国内の拡大政策をひとつ一大転換をしなければならぬ。これは物価政策と同じような考え方になるわけです。そうしますと、総需要、つまり金融引き締め政策がとられるわけでございますから、円を外貨にかえようというその円貨がなくなるわけなんですね。そういう問題があります。それから輸入が縮小してくる。輸出は、国内で売れないから、輸出意欲というものが起こってくるというので、これは貿易収支が非常に改善されると同時に、また海外に野方図の投資をするという余力がなくなるという問題があるのです。そのほかに、また技術的に、いままで海外に対しまして投資を奨励するくらいな気持ちの運営でございましたけれども、これを抑制する、お話のとおりであります。選別的にこれを抑制していこうと思います。同時に、海外の投資を、わが国に対しまして、これを門戸を閉ざす、そういう政策がとられたわけでありますが、これは門戸を開く、そういう裏返しの考え方をとりたいと思います。それらが長期資本収支に全部はね返ってくる。  それからさらに、貿易外収支に問題があるのでありますが、昨年一年間を見てみますと、実に十二億ドルの円が旅行者のために外貨にかえられておるのであります。十二億ドル、これは十数年前のわが国の外貨保有高に相当する額であります。それが海外において旅行者によって使用されておる、こういう状態です。その上、さらに胴巻きに入れてどのくらいの円が持ち出されたかということを考えると、これもまたりつ然たるものがあるわけなのであります。そういうことにもまた配意をしなければならぬ。私は、円が二百六十五円の価値であった、それが今日三百円というようなことになってきた、これは非常に慨嘆すべき状態だ、こういうふうに思っておりますが、そういういままでの状態を海外の人が見ておるから、そういうことになる。私は、日本国際収支というものが、これからこれは少し時間はかかる、かかるけれども、石油問題があるにもかかわらず、ちゃんと均衡されるのだという方向へ歩み出しておるということを海外の人がはっきり認めれば、わが国の円の価値というものも安定してくるであろう、こういうふうに考え、一生懸命この問題には取り組んでみたい、かように考えております。
  134. 田中正巳

    田中(正)委員 ぜひこの問題についても、ひとつ慎重な配慮と勇断をもって進んでいただきたいというふうに思います。  そこで、経済問題政府側では短期決戦だ、こういうふうに呼号していろいろとやっているわけですが、ここでわれわれ、そして国民がいま一つ心配している問題があるわけであります。それは春闘の問題であります。  今日、相当激しい春闘が行なわれるということを聞いておりますし、われわれがいろいろと聞いておるところによりましても、一部組合では三〇%、三万円をオーバーすることがなければ妥結をしないといったような要求態度で臨んできているわけであります。もちろん、今日の物価高等々をめぐりまして、労働者の実質収入の落ち込みは、これを何としてもカバーしてやらなければならないということについて、私どもは大いにそういうふうに感ずるわけでございますが、しかし、この春闘が、行き方によってはいろいろな問題を引き起こしまして、政府のいわれる短期決戦に大きな影響を投げかけるものというふうに私は思うわけであります。  由来、政府、労働省は、民間賃金の形成は労使双方の交渉によるものだという態度をとりまして、これについては比較的干渉をしない、まあ言うなれば、インディファレソトな態度をとってきたわけですが、今日、ここまで日本経済が深刻になってきたときに、一体このような従来の態度を踏襲してよろしいかどうかということを政府側に一お尋ねをいたしたいわけであります。  というのは賃金問題、これは単なる労働関係に終始をいたさないわけでありまして、これは必ず経済問題に波及をするからであります。今日の日本の経済情勢は、いろいろと複雑になってまいりましたけれども、石油問題の起こる以前の日本のいわゆる物価高というものは、世上よくコストプッシュとデマンドプルの混合型だ、こういうふうにいわれておったわけでありますが、こうしたことを考えるときに、やはり賃金形成の内容というものも、決して経済には無関係ではない、少なくともここまで日本経済が来たならば、やはりそれ相応の配慮があってしかるべきものだというふうに私は思いますが、この点について政府側はいかにお考えになっているか、お聞きをいたしたいと思います。
  135. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えいたします。  労組が、田中委員のおっしゃるように、異常な物価高を背景にしてオーバーな賃上げを要求されて動いております。そして伝えるところによれば、日本列島を麻痺させる、こういう話などもありますので、私たちは、実は非常に憂慮しながら懸念をしているところであります。  しかしながら、田中委員承知のとおり、賃金決定には政府は介入をするものではございません。従来もしておりません。そういうことからしますと、ただいまここで論ぜられましたように、まさに第二の国難ともいうようなこういう姿を、労使の方々がほんとうに御認識いただいて、広い国民的視野に立って、ひとつ知恵のある解決策、公正な解決策、平和な解決策を実はお願いしているわけでありまして、そういうことについて、御協力できるいろんな問題については、環境づくりに御協力申し上げてやっていきたい、こう思っている次第であります。
  136. 田中正巳

    田中(正)委員 どうもいま労働大臣のおっしゃったことでは、十分だと私は思っていないわけであります。まあ一部には、やたら政府責任論だけ振り回す向きがあるわけであります。政府が悪いのだから月給を上げてもらわなければだめなんだ。政府に対する責任論だけで問題は解決をしない。同時に、また企業は、おれのところはこうやって名目所得は上がったのだ、利潤は上がったのだ、払えるのだから払うのだ、よそはどうでもいいというような態度では、今日の春闘というのは、ほんとうに正しい解決策にはならないというふうに私は思うわけであります。民間賃金の形成についてもかようなことは言えるのですが、この春闘では、公企体の賃金決定が、おそらく仲裁裁定までいくだろうと思いますし、そのあとには、夏には政府のいわれる、いわゆる物価状況が鎮静をせられると言うているころには、いわゆる人事院勧告が出るだろうと思うのであります。こういったような政府関係機関あるいは政府職員そのものの給与決定についても、私は、従来のそれと違った配慮がなければならないのではないかというふうに思われるわけでございますが、こういう点について、一体どういうアクションを政府はおとりになるのか。ただ労使を呼んで話し合いをするんだというだけでは、私は、率直に言うと、話し合いだけに終わるのじゃないかという感じがするわけであります。  いま一つ、私が非常に心配していることは、この春闘は、要求が出るか出ないかのうちに、いわゆるストライキ宣言というか、ストのいわゆるスケジュールというものを組んでいるということであります。私は、賃金の労使交渉について、このような態度というものは、まことにおかしな姿だと思うのであります。一体幾ら使用者側から回答が来るかわからぬうちに、何月何日から何月何日にはどういうストをやるのだ、その次はこういうふうに盛り上げるのだというのは、私は、労使交渉としては、まことにどうもおかしな話だと思うのでありますが、しかし、このようなストというのが、賃金決定以外に日本経済に大きな悪影響を与えるということを私は憂えるものであります。  日本経済の基盤が相当に強固な場合は、ある程度のストライキも、これに耐えるでありましょう。しかし、今日のような、日本経済がきわめて脆弱な基盤に立っているときに、このようなストライキ、ゼネラルストライキ、特に輸送、通信等のストライキというものは、私は、日本経済に大きな悪影響を残し、そしていわゆる物価、経済の鎮静、正常化に大きな悪影響を来たすものというふうに思って心配をしているわけであります。  そこで、私、実は北海道出身なんですが、昨年の国鉄のストライキの節に、実は非常な経済のディスオーダーを来たしたわけであります。農産物、海産物が全然動かない、そのために品物が腐る、物資の往復の流通がないということから非常に困ったわけでございますが、一体これらについて、昨年のあの国鉄のストライキでどの程度の悪影響があったものというふうに把握になっておられましょうか。また、今後こういったようなストに対して、一体政府はどういうふうな対処をするつもりでありましょうか。政府側の決意と所存を承りたいと思います。(「売り惜しみのほうがもっと悪いよ」と呼ぶ者あり)
  137. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 昨年暮れのストライキ、非常に心配しまして、そしてようやく、国鉄はたしか朝六時半、動労が十一時半、そういうわけで片づけたということも、これは年末の物資輸送、こういうものが停滞しますと、人心が、年の暮れでもありますし、いらいらしますし、物価値上げに非常にはね返りがあるということで、公労委の調停そのものを受諾して、解決されたことを、私たちは非常に歓迎しているものであります。いまから先も、大きなストライキによって、こういう国民生活がたいへんなことにならないように、いまでこそ私は、ほんとうに民主主義でここまで伸びた日本の労働組合なり、あるいはこの経営者というものが、いい知恵を出していただくようにいろいろな機会に自重を促し、公正な解決に向かって邁進されるようにお願いを申しているわけであります。
  138. 田中正巳

    田中(正)委員 まあ、この問題についていろいろと国民は心配をしているわけでありますが、どうもその辺から、春闘より売り惜しみのほうが悪いのだという不規則発言があるのですが、このような問題のすりかえが、私は実は問題だと思うのであります。売り惜しみも、私はよくないと思いますが、また、こうしたようなことについてのやはり深甚な配慮というものがなければ、この際、この経済の難局に対応するというような、国民こぞっての態度がなければ、私は、問題が解決をしないというふうに思うわけであります。  当面、いま迫っているこの春闘について、最後にひとつ総理の御所見を承って、終わりたいと思います。
  139. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 非常に重要な発言でございます。  第一には、政府が、いま物価を抑制し、国民生活の安定を守るために法律をつくっていただいたわけでございますから、この法律の適用、施行によって物価の安定に対して最善の努力をまず第一番目にしなければならない責務を有するのであります。  第二には、先ほどから社会党の書記長もあなたも御指摘がございましたが、にもかかわらず超過利潤と認められるものが起こった場合どうするんだということでありますから、これは政府は勉強しております。政府は勉強しておりますが、これは党でも野党でもいろいろ御勉強になっておるということでございますので、私は、こういうときには、国会の立法権というものが行使されることが望ましいと考えておるのです。参議院でもそう答えておきました。これは自分だけということではいかぬのです。どうしても、いまあなたが言われたように、超過利潤ということになれば、もうやりますということになりますと、政府が法制的に考えるものは、何月何日から施行するということになっても、即日施行すればこれは効力を発生するわけですから、これはできます。できますが、三月決算に間に合わせるためにはどうするのかという問題は、国会の審議の問題にすぐからむわけでありますし、これは遡及できるかどうかという問題は純法制議論でございます。そういう問題も含めて、政府は広範な立場から勉強はしております。  これは、いつから取りますよといいますと、では分けてしまおうといって、もうすでにどこかの会社は、前払いを一カ月分やったということが新聞に出ているでしょう。そうなると、これはもう金を使うことを促進する法律案になっちゃうわけです。ですから、そういう場合、持っているものを早く吐き出して国民生活を潤沢にしながらも正常な経済ルートを守っていき、正常な経営状態を維持していくためにというのは、ちゃんと法律で保護されているわけでありますから、どうもその法律をくぐるような、支出を促進するような法律をつくっちゃだめなんです。そうすれば、配当制限とか、それからいまの役員の賞与を制限するとか、前貸しを、貸したということでもっていろんなことをやるとか、それから必要以上の、過去三カ年にわたって平均よりも思い切った留保を行なうとかという場合に、土地のように重課をするとかいうことも出てくるわけでございます。そうすると、それでは、そこで給与をうんと払った場合どうするかということになります。そういう問題がありますので、これは、私はやはり党でもひとつ十分に御勉強になって、できれば早く結論を出していただいて、国会の意思が決定されることが最も望ましい。国会の意思決定は国民の意思決定でございますから、そういう意味では、この事態においては最も望ましい姿だと思っております。  第三点は春闘の問題ですが、春闘にはもう原則的には政府は介入しないということでございますが、しかし、いま第二段目に申し上げましたように、政府も全力を傾けておるのでございますが、これはもう理解と協力を得られなければしり抜けになるわけでございます。そういう意味で、労使の現状に対する真に理解を求めるということもやりますし、同時に、どうしてもそういう状態が維持されない限り、第二に申し上げたような立法処置に訴えなければならないということになりますから、そういう意味で、労使が真に協力できるような体制、日本経済を安定し、ほんとうに労使、というよりも、給与所得者というのは日本の六〇%に近いものが給与所得者であるということは、労使というようなただ名前で分けられるものではないのです。これは国民生活に影響しないはずはありません。ですから、そういう意味で、真に私は、春闘に対して政府は誠意をもって訴えてまいるつもりでございます。
  140. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 時間が来ておりますから、簡単にお願いします。
  141. 田中正巳

    田中(正)委員 というわけで、私どもは今日の日本の経済社会情勢をまことに憂え、国民もまたこれについて、政府よしっかりやってくれという気持ちで一ぱいであろうと思います。われわれも大いに今後とも努力をいたしますが、政府のしさいな御検討と勇断を心より希望いたしまして、私の質疑を終わります。(拍手)
  142. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  次に、赤松勇君。
  143. 赤松勇

    ○赤松委員 先ほど、流通面に対する行政府の決意の一端を総理からお聞きしました。私は、この寒空で洗剤などを買うために行列をなして非常に苦労している庶民の皆さんの気持ちを代表しまして、主として、現在貯蔵され、もしくは隠匿されておる物資に対する行政府の姿勢について質問をしてみたいと思うのです。  内田長官にお尋ねいたしますが、名古屋の京田町倉庫に、十月末に洗剤が千五百四十一トン、十一月には六百二十トン、十二月末には二百二十六トン、さらに一月十日現在四百二十三トン、これが長期にわたって貯蔵されておりましたが、御存じでありますか。
  144. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先刻来、他の委員の御質問に申し上げておりますとおり、政府は現在、規模を大きくいたしました臨検調査をやっておる最中でございますので、一月末日ぐらいに中間報告を取りまとめて御報告できる考えでおります。
  145. 赤松勇

    ○赤松委員 そのほか、エーコープラインという会社が名古屋にあります。この倉庫に、九月末に二百三十二トン、十月末には百三十二トン、十一月末に二十五トン、長期にわたって貯蔵されています。これは昨年暮れの調査でありますけれども、各所にわたって、このような在庫と称して洗剤が貯蔵されています。  ここで私は通産大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、やはり名古屋の倉庫の中に膨大な洗剤が貯蔵されていました。ところが、これを通報によって発見しまして、そしてあわてて名古屋通産局が調査におもむいたわけであります。ところが、名古屋通産局は、この種の調査を行なうために、当日、職員を総動員しまして一応調査をやりました。そして記者会見をやりまして、記者会見の席上、洗剤の貯蔵をついに発見することはできなかった、こういう発表をしています。その日にこれは発見されている。おそらく本省に報告があったと思うのでありますけれども、これはいかがですか。
  146. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いろいろな各通産局で調査をしているということは聞いておりますが、いまの該当事件について、私、まだ承知しておりませんので、よく調査して御報告をいたします。
  147. 赤松勇

    ○赤松委員 運輸大臣にお尋ねします。  運輸省が、海運局を使って横浜の倉庫を検査いたしました際に、前日通告をしております。このため、ほとんど商品、洗剤は搬出されまして、そのからっぽの倉庫を点検した結果、何もなかったという報告が行なわれている。運輸大臣、いかがですか。
  148. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 お答えいたします。  十一月の十日に書類でもって在庫量を提出させております。その書類がはたして正確であるかどうかということを、後日点検をいたしたわけでございます。
  149. 赤松勇

    ○赤松委員 前日になぜ通報したかということを私は聞いているのだ。運輸大臣、いかがですか。
  150. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 営業倉庫は、御承知のように正確な資料に基づいて営業をやっておるわけでございまして、その倉庫の在庫量の報告につきまして、その在庫量がはたして書類の上で明確に出ておるかどうかというわけで、前日に通告したものと思います。
  151. 赤松勇

    ○赤松委員 総理、こういう状態なんです。前日にちゃんと通告をしておいて、そして業者は品物を他に移動させる、そのあとへ役人が行きまして、何もなかったという報告をしている、これが現状なんです。  私は、この際聞きますが、貸し倉庫は倉庫業法に基づいてその検査をやっていますね。いかがですか。——あなた、そこにしばらくいなさい。ぼくはあなたに二、三質問があるから。
  152. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 貸し倉庫は、倉庫業法に基づいてやったものではないようでございます。
  153. 赤松勇

    ○赤松委員 それならどういう法律に基づいてやったの。運輸大臣、じゃ、法律なしにやっているのですか。
  154. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 営業倉庫は、倉庫業法に基づいて調査をやったわけでございます。
  155. 赤松勇

    ○赤松委員 それでは先ほどの答弁、違うじゃないの。私が言ったとおりでしょう。(「言い直したんだよ。」と呼ぶ者あり)まあ、言い直したからいいでしょう。  そこで運輸大臣に聞きますが、マラソンストックというのは、具体的にはその基準は何ですか。
  156. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 竹内港湾局長
  157. 赤松勇

    ○赤松委員 委員長、運輸大臣に質問しているのです。君から運輸大臣に教えてやりなさい。君が出る必要はない。だめだ。君を要求してない。
  158. 竹内良夫

    竹内(良)政府委員 はい、わかりました。ちょっとお待ちください。
  159. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 委員長は発言を許しております。待ってください。おい、港湾局長、港湾局長を指名している。答弁しろ。
  160. 竹内良夫

    竹内(良)政府委員 どうも失礼いたしました。  マラソンストックというものは、私ども存じておりません。  また、先ほど大臣のお答えにありましたけれども、一月の十日に運輸省で調査いたしましたものは、倉庫業法の第二十七条に基づいて、倉庫の一般的なストックの状態を五大都市にわたりまして調査したものでございます。
  161. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 いま港湾局長答弁したとおりでございます。
  162. 赤松勇

    ○赤松委員 適正在庫とは一体どういうことですか。適正在庫の基準は何です。
  163. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 まあ、運輸省としましては、倉庫業法に基づいて倉庫の調査あるいは点検をやるわけでございますが、適正在庫の量等、あるいは期間はどうかという問題等につきましては、運輸省としましてはまあいろいろな——たばこの葉っぱなどは、聞くところによりますと、そこでいろいろな、蒸らしたり何なりすることで一年も、あるいはそれ以上も置いておくこともあるそうでございます。それからそのほかの物資については、一月半というぐらいのところが、物によっては、在庫期間としては適正な期間であるというふうにも聞いておりますが、個々の問題については承知いたしておりません。
  164. 赤松勇

    ○赤松委員 倉庫業界の常識としては、適正在庫とは、すなわち十日間が一仕切りなのです。十日間が一仕切り。それで洗剤などの緊急を要する物資、つまり早く国民の手元に届けなければならぬ物資等については、花王石鹸の営業部長が、二日在庫して三日目には出荷すべきであると、こう言っております。私は、これは常識的な基準であると思うのです。  それは別として、総理にお尋ねしますが、私はけさ東京都内で三軒、それからさらに埼玉県の上福岡市の西友ストア、これを調べました。そうしますと、洗剤は毎日整理券を出して、先着百名ぐらいまで、朝十時十五分から並んで買ってもらう。いまでも並んで買っている。メーカーは消費者側から指定して買うことはできない。すべてメーカーからの割り当てだと、こう言う。こういう状態がまだ続いているのですよ。これは東京都内だけではないのです。私の言うこと、聞こえますか。——全国的にこういう状況が続いている。これをどのように思いますか。また、どのような手を打ちますか。
  165. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そういう事例が指摘をされることははなはだ遺憾であります。ほんとうに洗剤は、例年からいいましても、全国平均五%増しということで、十分間に合っておったわけであります。それが七%増しの製造になり、なおその上に三%、五%の緊急増産をやっておって、あなたが御指摘されているような事情が起こっておることは、ほんとうに遺憾な状態だと思います。ですから、全国のすべてのものに対して政府が全責任をもってというわけにはまいりませんが、全くそういう事態が今日なお続いておるということはほんとうに遺憾でありまして、政府も、法律を与えられておるわけでございますし、国民生活安定法の施行が行なわれておるわけでありますから、そういう御指摘を受けなくて済むような社会の体制をつくるべく、あらゆる角度からひとつ努力をいたします。
  166. 赤松勇

    ○赤松委員 その点につきまして、あとでさらにお尋ねいたしますけれども、まず洗剤は増産されている——増産されておりますね。これは日本石鹸洗剤工業会の一月二十三日の発表によりますと、各月生産実績は前年同期に比して一〇%ふえてい扇昨年十一月の生産実績は七万五千五百トン、前年同期に比べて一九%ふえている。十一月末の在庫は一万九千七十四トン、大箱七百六十万箱だと、こう発表しております。これがどうして出回らないんですか。なぜ庶民が朝九時、十時から子供を背負って、そして行列をなして買わなければならぬのですか。あなたはこう言いましたね。政治というものは、物を家庭に届けるのが政治だと言った。ちっとも届いてないじゃありませんか。この事態をどう思われますか。
  167. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 適正量以上に製造され、適正量以上に在庫があるにもかかわらず——洗剤などどいうものは急に倍使うものじゃないわけです。そういうものが、これだけ洗剤は増産しておるんです、流通経路にもあるんですと、そう言っておるにもかかわらず、まだ並ばなければ手に入らないというような事態が随所にあることは、私も聞いておりますし、そういうものを直さなければならないということで、政府も法律を与えられておるわけでございますので、これは国民の協力を得なければならないことであります。また政府が、必要なものは必ず店先にあります、また値段は上がりません、こういうことにならなければ、やはり一カ月分、二カ月分買いだめしなければまた並ばなければならぬということになりますから、そういうことのないような状態をつくるということが、まず第一でなければならないということで、これはもう調査官をふやしたり——まあ調査官をふやすだけではとてもだめだというところに、超過利得を吸収せよという問題が起こっているわけですから、そういう問題もあわせて、いまどう対処すれば最もそのような問題が起きないか。特に、洗剤はもう指定物資になっておるわけでありますから、そういう意味でひとつ努力を続けてまいりたいと思います。
  168. 赤松勇

    ○赤松委員 対策等につきましては、後ほどお伺いします。  通産大臣、あなたの家庭ではどうして洗剤を入手していますか。
  169. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 近所の商店から買っております。
  170. 赤松勇

    ○赤松委員 近所の商店に並んで買っているのですか、それとも届けてくれますか。あるいは買いに行っていますか。
  171. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は買いに参りませんが、お手伝いさんが買いに行っております。
  172. 赤松勇

    ○赤松委員 行列して買っていますか、それともいつ行っても買えますか。いかがですか。
  173. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一月の初めは品がなかったそうです。しかし、最近は買いに行きましたら品物は出ておる。洗剤が出てきましたということを私、聞きました。
  174. 赤松勇

    ○赤松委員 いま私が総理に申し上げたように、通産大臣は、品物が出回っているということをお手伝いさんから聞いたというのですね。ところが、私の調査ではまだ出回っていない。この点の対策をあとで聞きますが、総理は、たしか一月七日の閣議でしたか、あなたが強力に指示されたのは。そして東南アジアに出発された。あと通産大臣も行かれまして、通産大臣代理を内田さんがやっておったわけですね。  そこで私、順を追って、あなた御存じないから、そこで留守中の行政の足取りを一度あなたの耳に入れておきたいと思うのです。  一月の七日にあなたの指示のもとに官房長会議を開いて、そしてここで灯油とプロパンガスを指定品目にきめました。それからその際、通産省は、灯油、プロパン以外の品目については、売り惜しみをしているというはっきりとした根拠がなければ、これを検査することは不可能であると言って反対した、こういうことがいわれています。なぜ対象品目、なかんずく洗剤のようなものを即時指定しなかったのか。これは当時通産大臣がいなかったので、代理を内田長官がやっておりましたから、内田さんから答えてください。
  175. 内田常雄

    ○内田国務大臣 総理大臣から、確かに一月七日に、おれのいない間でもひとつ大編隊を組んで、千カ所くらいの在庫調査を行なえ、こういう閣僚一同に対しての申し渡しがございました。おっしゃるように、私が通産大臣代理をお受けいたしまして、そのときまず私の頭にひらめきましたのは、洗剤が足りないといわれているから、洗剤はこれは対象にしなければならないと考えまして、私は即日、総理の出発後みずから通産省局長、課長等を引き連れまして、私が一人でやりましても、東京じゅう、日本じゅうのメーカーや倉庫を歩けるわけではございませんけれども、しかし、これは私がやらなければあとについてこないと考えましたので、まず大手の会社並びに大手の倉庫、それから、御承知のようにあれは問屋系統があまり複雑ではございませんで、大手のメーカーは七割ぐらい、販社といって直接自分の配下に属する問屋を持っておりまして、そこからすぐ小売りに行く仕組みになっておりますので、その系列を私は歩きました。しかし、小売りの二階にまで上がって歩くようなことはいたしませんでした。それはやらないほうがいいから私はやらなかった。  事情を聞いてみますと、昨年一年間には需要の自然増は七%ぐらいであるけれども、生産は一六%増くらいやっている、こういう話でありましたが、しかし、物は現在ないのだから、この際思い切ってひとつ増産をしなさい。資材の原料は十ぐらいあるわけでございますが、そのうち一番足りないのがトリポリ燐酸ソーダというのと芒硝というのが足りないのだ、あとは電気なり油なりというものがカットされたままだ、こういうことでございますから、それを私のほうの通産省からできるだけあっせんするから、思い切って増産に踏み切れという指示をいたしました。そうしましょうということで、大体三割増産という体制をすぐにとってもらいました。しかし、増産をしましても、それがまた倉庫に退蔵されて隠れるようなことになりましては意味をなしませんので、私は、退路を遮断する意味で、直ちにひとつ洗剤を売り惜しみ買い占め物資の指定品目にすべきである、こういうことを命じまして、その退路を遮断したつもりでございます。  いまやその退路の状況を、大編隊を組んで調べさせておるわけでございますが、新聞社などの話によりますと、高値は残ったようだが、最近は洗剤はかなり出回ってきたというような記事が散見をされておりますので、私は私なりのこういう行動をとった効果があると判断いたしております。続いて、洗剤を含む先ほど述べましたような十二品目につきまして、総理の指図どおり、大編隊でいま調査をさせております。
  176. 赤松勇

    ○赤松委員 あなたはサンケイに出回っておるという記事が載っておったから、出回っておるのだろう……(「散見だ」と呼ぶ者あり)散見——ちらちら見えるか。ところが、ちらちら見えないのだ。どこへ行っても見えないのです。たぶんあなたがそういう答弁をするだろうと思って、だから私はそのごまかしに乗らないために、けさほど東京都内を調べたのです。出回っていない。現に出回っていません。ここに国会の職員の諸君もおられる。新聞記者の諸君もおられる。みんな奥さんは苦労しておるのです。そんな答弁をしたら国民に笑われますよ。気をつけなさい。  それで、内田さんのたいへんな努力は私も一応認めるのです。総理は東南アジアへ立たれる。そうしてすく官房長会議を開いて——もっともひとりよがりの感はあったのですけれども、一月の七日にすぐ、官房長会議の決定に従って花王石鹸の丸田社長と会いましたね。そして倉庫に隠していないかというような質問をされまして、いや、全然そんなものはありませんということで、その会見が終わりました。それから川崎工場とか東京東部の花王販売などへ行かれまして、そのあとで記者会見をされました。記者会見の席上で、私の得た心証では売り惜しみは見られず、不安を持った消費者が安全買いをしておるのだと思う、こういうふうに新聞記者に答えられておる。  それで、ここであなたにお尋ねしたいのだが、一体総理の指示というものは、大メーカーの代表の社長に会って、洗剤の有無を確かめるというようなことを、おそらく指示されたのじゃないと思うのですが、行かれた努力は認めますけれども、その程度ですぐ記者会見をして、たぶん消費者が買いだめておるのだろう、だから、こういうことになったのだろうというような軽率な発言をするということは、誤りであると思うのですが、いかがですか。
  177. 内田常雄

    ○内田国務大臣 総理の指示で大メーカーに会ったわけではもちろんございませんが、御承知のように、大メーカーが五つぐらいございます。そのうちで私は、まあいわば通産大臣の代理でございますから、あまりこそこそすることもいかがかと思うわけでございまして、大メーカーの中で代表的なものに、これから行くからあなたの工場の状況、あるいはまた販社、販売会社の状況、あるいはまた直接つながる小売り店等の状況も見せていただいたり、ということで申し入れをいたしましてすぐ私は出かけました。しかし、それはあらかじめのがす用意をして出かけたということでは全くございません。また私は、新聞記者の諸君も私にかなりの方がついてこられましたので、私だけの単純な心証であの状況を話したというわけのものでもございませんが、おっしゃるとおりのような意味の発言をいたしたことも事実でございます。
  178. 赤松勇

    ○赤松委員 あなたが、三〇%増産を約束をさせたから洗剤はすぐに出回るだろう、だから消費者の皆さん、もう間もなく出回るから安心しなさい、こういうことを新聞に語った。ところが、消費者のほうでは、一向に出てこない、内田さんにペテンにかけられた、こう言って、当時たいへん憤慨しておったわけでありますが、その当時メーカー側では、三〇%増産をして、そしてそれをマラソンストックをしないで直ちに消費者の手元に渡すような、そういう措置を講ずるという約束をしたのですか。
  179. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が回りましたのは、おっしゃった通り花王石鹸でございますが、花王石鹸の幹部並びにその下部に属する販社の社長等はそういう発言をいたしました。ただし、その当時すでに品物が各小売り店から姿を消しておりましたから、増産の分並びに増産でなしに、あれは正月休まれまして、ちょうど私が参りました七日ぐらいから工場が動き出しておりましたから、その分は当然販社を通して小売り店に届くはずでございますし、増産分も両三日の間に、あれは、自動車なんかつくりますように、仕掛けをいたしましてから数十日かかるというものではございませんで、全く一日か二日の間に原料から商品になるものだそうでございますので、もう間もなくそれは商店に出てまいる。ただし、全部の商店にあり余るようなことを意味したわけではございませんで、この一週間、十日の間品物が小売り店に全く来なかったという状況はもうすぐなくなります、こういう意味で申しております。
  180. 赤松勇

    ○赤松委員 こういうお粗末な一席があります。国民生活安定法に基づいて、灯油、プロパンガスの標準価格を調査する立ち入り検査員が、調査するために一斉に立ち入り検査をやったわけですね。これは一月十八日です。ところが、決定して直ちに行動に移ったのですけれども、一月十八日の標準価格スタートに間に合わないで、そうして一月十九日に——つまり、御承知のように検査をする場合には証明書が要りますね。その証明書が間に合わなかった。印刷が間に合わなかった。それで一月十九日にようやく印刷をしてそして出動をした。これは総理が指示したその熱意と全然反した、非常に消極的な、業者を擁護して消費者を無視するようなそういう行政が行なわれておるのです。これはどうですか。
  181. 内田常雄

    ○内田国務大臣 御承知のとおり、買占め売惜しみ防止法による立ち入り調査の権限を、一月から地方公共団体にも委任をいたしまして、中央のみならず、これはもう中央の価格調査官というものが、しばしばおしかりをいただいておりますように、わずかに三百何人ということでございまして、昨年の生活二法が制定されるまでは地方委任の規定がございませんでした。それを諸般の政令等を整えまして、一月早々に地方公共団体に委任すろことになりましたが、ただ紙の上の委任だけでもいけませんので、担当官並びに知事会議をもわぎわざ開きまして、その辺の打ち合わせをいたしましたので、地方によりましては、いまの法律による立ち入り検査証というものの準備が間に合わたかったところがあったようでございます。しかし、私が考えますと、価格調査官というものが一人でもついていけば、あとは価格調査官でない補助員であっても堂々とやれるものだと、私は非常に輸気のほうでございますから、考えておるわけでありますが、地方団体のほうの権限行使が初めてでございましたから、その辺、遠慮があったことと思います。決して私どもは、大メーカーあるいは卸売り商を援護して、そうして消費者の利益を無視するというようなつもりは毛頭ございませんでした。
  182. 赤松勇

    ○赤松委員 自民党総裁、あなたにちょっとお尋ねしますが、これが自由民主党がしばしば紙上に宣伝をしました宣伝文です。ちょっとごらんなさい。——あなた、総裁としてとう考えられますか。品物は絶対確保します、国民皆さんに御迷惑はかけません、自由民主党政府責任をもってやります、こう書いてある。羊頭をかかげて狗肉を売るというのはこのことだ。
  183. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そこに書いてあるような、き然たる精神でおることは間違いございません。しかも、いまいろいろな問題がございますが、私は常に申し上げておりますが、戦後の困難な状態の中でも乗り切ってきたのでございますし、ここで石橋書記長述べられたように、これだけ品物もあるじゃないかと政府も間々述べておるわけです。法律も与えられておるわけです。それが行列をしなければならないというような状態が続けば、これは直ちにというわけにはまいりませんが、これは生産の指示を行なう、場合によれば、これは町村の役場に、予備費を使っても、ほんとうに必要なら、とにかく町村役場には一カ月分はちゃんと保存します、そうして家庭通帳を持っていってもらえば一個ずつ売りますというところまでいかざるを得ないわけでありますが、そんなことをしなくてもいいような状態ですから、だから私は、国民の理解がまず前提だ、できるだけ——切符を一つずつやりますと、お互いにわかるように、最後は植木ばちまで指定しなければならないようになるし、たばこを吸わなかった人まで全部切符を持って、おれのたばこを、そうしてそれにまた幾らかプレミアムをつけて友だちに売るというような、非常にいやな思いをした歴史を持っているわけです。ですから、現在はそういう状態を避けながら早く正常な状態を取り戻したい、こういうことをいま全力をあげてやっているわけです。  ですから、あなたの指摘されるような事態がほんとうに続き、それが生活必需物資であるというなら、そこに書いてあるとおり、政府ほんとうに届ける責任を有するということで、それはそこまで考えざるを得ません。倉庫をやったって、倉庫はとにかく毎日のように動かすという——まあそんなこともしないだろうと思いますよ、それほどもうけがないわけですから。ですから、私は、そこまで国民が信頼できないような状態じゃ困るので、とにかく野党第一党の書記長も、なるほど政府があるあると言ったが、君もあると言ったが、つくっているのだ、あるのですね、こういうことはもう全国民の前に明らかにされているわけです。政府は、これだけのものに対してこれだけの増産をやっているのです、こう言っているわけなんですから、政府が最後の手段をもって、町村役場に洗剤は全部配置しますと、そこまでやらなくとも、正常な状態に私は国民の理解を得たい、いまこういう状態でございまして、いま御指摘になられたように、ほんとうにまじめにそう考えております。
  184. 赤松勇

    ○赤松委員 わが国にはことわざがありまして、有言不実行の徒をこじきのおかゆというのです。いうばっかりだ、そういうことわざがあります。まさしくこの新聞広告はそうじゃありませんか。あなた、き然たるき然たると勇ましいことばばっかりここで吐いているけれども、一体いままで何をやったのですか。  さっき私はずっと事実を明らかにして、そうしてあなたの留守の間に政府のとった行動について私はこれを明らかにした。もう洗剤がなくなってどれくらいになります。あなた、庶民の気持ちがわからないんですか。この寒空に行列するんですよ。通産大臣に聞けば、お手伝いが近所で買ってくる。それは通産大臣だから、向こうはないしょで渡すんでしょう。一般の庶民はそんなことできないんですよ。買いに行ったって売ってくれないんです。ないんですよ。この庶民の気持ちを十分に知らなければ、あなたの言うとおり政治はできませんよ。これは参議院選挙に重大な影響を与えますよ。いや、ほんとですよ。これは全力をあげてわれわれも協力して、そして早く出回るようにしなくちゃならぬのだ。だから野党各党とも、そういう隠匿している物資を動員させるために、各党ともみんな努力しているんだ。これは自民党政府責任だ、ほっておけ、大衆が困ってもいいなんというのは一人もありませんよ。みんな協力しているんだ。これを選挙に利用するなんというさもしい気持ちはないです。ですから、ここで私ははっきりした方針を示してもらう。あなたの好きな提案を私はこれからやりますから、この提案をぜひ実行してもらいたい。  それは、むずかしい提案じゃないんです。法律はあるんですから、法律どおりすぐおやりなさいという提案なんだ。倉庫業法や——特にそれではメーカーの倉庫はだれがやりますか。どういう法律に基づいてやるんですか。実は貸し倉庫にあるのは、大体メーカーがつくった品物の二割くらいのものですよ。ほとんどの品物はメーカーの倉庫にある。いままで政府がずっと調べているのは、倉庫業法に基づいて貸し倉庫業者のところを調べている。ところが、一番元凶であるところのメーカーの倉庫はそのままになっている。これ調べたことありますか。あったらひとつ示してください。どうですか。これはどなたでもよろしい。答弁してください。
  185. 森口八郎

    ○森口政府委員 お答え申し上げます。通商産業省審議官でございます。  現在、総理の御指示によりまして、通産省、農林省おのおの六品目について、メーカー、販売業者等の状況の調査をいたしております。この場合に、当然おっしゃいましたメーカーの倉庫等に立ち入って調査をするというようなことになっております。  なお、本調査は売惜しみ買占め防止法のいわゆる三条調査、任意調査でございますが、疑いが濃厚な場合には、直ちに五条の強制的な立ち入り調査に切りかえて実施をするということで、現在実施中であります。
  186. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 調査したのか、これからするというのか、どっちだ。
  187. 森口八郎

    ○森口政府委員 現在実施しつつあります。
  188. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 調査しているのか。
  189. 森口八郎

    ○森口政府委員 現在いたしております。
  190. 赤松勇

    ○赤松委員 それでは、洗剤メーカーの倉庫でいままですでに検査したところは、どこですか。
  191. 森口八郎

    ○森口政府委員 通産省所管の事業所では、大体五百三十事業所孝調査いたすことになっておりますが、現在このうち約三分の一程度の事業所について調査を完了いたしておりますが、洗剤メーカーにつきましては、花王、ミヨシというような事業者について現在調査をいたしたところであります。
  192. 赤松勇

    ○赤松委員 この花王、ミヨシのどこの倉庫をやったの。花王、ミヨシは全国で幾つ倉庫を持っていて、そしてそのうちの何カ所を調べましたか。そしていつやったか、日にちを……。
  193. 森口八郎

    ○森口政府委員 花王、ミヨシの全倉庫については知悉いたしておりませんが、お尋ねの調査いたしました倉庫につきましては、花王石鹸につきましては酒田工場、ミヨシ油脂につきましては東京工場の倉庫を調査いたしております。
  194. 赤松勇

    ○赤松委員 いつやったの。
  195. 森口八郎

    ○森口政府委員 何日ということは、現在手元に資料を持っておりませんので、後日調べて御報告いたしたいと思います。
  196. 赤松勇

    ○赤松委員 それでは、ミヨシ、花王は幾つ倉庫があって、そのうちの幾つやったの。全国に倉庫は何カ所あるの。名前は要らない。
  197. 森口八郎

    ○森口政府委員 幾つあるかということは、先ほど申し上げましたとおり知悉いたしませんので、後日調査の上御報告申し上げたいと思います。
  198. 赤松勇

    ○赤松委員 総理、この状態なんです。いつ調べたかもわからない、これから調べます。それから、全国に花王、ミヨシの倉庫が幾つあるかわからない、しかしそのうちのこれとこれを調べました。それから、ほかにライオンやその他あるのですね。これは全然調べてないのでしょう。それを調べてありますか、どうです。
  199. 内田常雄

    ○内田国務大臣 花王石鹸が一番大手メーカーでございますが、花王石鹸の工場は全国で四つございます。倉庫はその四つの工場にくっついてございます。それから直属の花王石鹸の販社、つまり販売会社は全国で百ございます。東京は百のうち五つか十かあるはずでございまして、あとは全国に散らばっておるはずでありますが、大体そういう程度と私は把握いたしております。
  200. 赤松勇

    ○赤松委員 全くでたらめもはなはだしいのだね。メーカーの倉庫が幾つあるかわからない、いつ調査したかもわからない、しかし調査をしてます。これが新聞の記事に出たときには、当局の発表は、調査をやった、しかし何にもなかった、こういうことになる。  運輸省は海運局を使って調査したが、その結果が出てますか、どういう結果が出ているの。
  201. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 運輸省は一月十日現在における五つの都市内の全事業者、六百十六社ございますが、それに対しまして書類で在庫の報告を求めました。そのうち三十一社に立ち入りまして裏づけの資料をとったわけでございます。立ち入り人員は百三十五名で、十日から十二日まで二日間にわたってやったわけでございます。その結果、合成洗剤におきましては、十五社が三千六百六十二トンを持っております。前年同月は一万二千四百七十トン持っておったわけでございますが、四十九年一月十日におきましては三千六百六十二トンでございます。  以上でございます。
  202. 赤松勇

    ○赤松委員 一体、この総理の指示に従って全国一斉調査をやれという、総理の指示でやっている所管の大臣はだれですか。
  203. 内田常雄

    ○内田国務大臣 各主務大臣でございますが、赤松さんがおっしゃいましたように、一月七日に私ども、官房副長官を中心として打ち合わせました結果、通産省、農林省、それに運輸省、それに経済企画庁も必要に応じ応援出動する、それに地方の支分部局、いま申しました各役所の支分部局、それに地方公共団体の職員の応援を得る、こういうことにいたして、延べ人員は約二千五百人、こういうことでございます。
  204. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 さっきの審議官森口君、ひとつ出てきて、実際に調査したのかどうか、しないのか答えてみなさい。でたらめにもほどがある。
  205. 森口八郎

    ○森口政府委員 補足して御説明させていただきます。  現在約三百七十の事業所について、地方通産局が中心になって六品目の工場、事業場の倉庫等について調査をいたしておりますが、どういう調査の状況になっておるかということは現在取りまとめ中でありまして、両三日の間にこれを一応通産局から聴取をするということになっておるわけでございます。したがいまして、現在倉庫等に立ち入っておりますのは、断片的に私のほうがつかんでおるにすぎませんので、答弁が非常に不十分であったという点について補足さしていただきます。
  206. 赤松勇

    ○赤松委員 自治大臣、これ地方自治体にも協力さしているんだが、地方自治体の実態を言えば、たとえば名古屋市役所で言うと、十八人の職員がこれに充てられている。そのうち兼務職員が実に十人、それで専属職員は八人だ。財政的な裏づけも何にもしない。ただ地方自治体にやれというだけなんですからやりようがないんだ。これは指定都市とそれから県知事にその権限を委譲しているはずなんだ。  そこで私は聞きたいが、いまも通産省の報告を聞くと、メーカーのうちで花王とそれからミヨシだけだ。しかも花王とミヨシは倉庫のうちのほんの数カ所、しかもいつやったのかわからない。倉庫を知らない。こんなずさんなことで、あなた、いま断固たるとか、それから異常な決意とかなんとかって大げさな表現を使っておったけれども、だめですよ、こんなばかな。私は、こういう国民が切実に要求している問題たいへん深刻に困っている問題、この問題をここで取り上げる。これは非常に重大なことで、あなた自身も指示されるほどだから非常に重大なことなんだ。私が冒頭になぜこれを質問するかといえば、全国民が困っておるから私は質問しているんだ。党派を越えているんだ。党派を越えての問題なんだ。私は、こんなずさんなことでこれ以上質問できない。  私は総理に提案する。これをすぐ総理はこの場で答弁をしてもらいたい。それはわれわれがつくった法律、すなわち生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律の第五条「内閣総理大臣及び主務大臣は、前条の規定の施行に必要な限度において、特定物資の生産輸入若しくは販売の事業を行なう者に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所、工場、事業場、店舗若しくは倉庫に立ち入り、特定物資に関し、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。」こういう規定があります。これを即時発動することを約束しなければ質問できません。
  207. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 洗剤に対しては、いま御指摘のような方向で十分の処置をいたします。  これはもう最終的には、洗剤という物を洗うものでさえもこんなものであって、ほかの食べるものとか、いろいろなものがこんな状態になった場合、これはもうほんとうにどうしようもない問題でございます。  ですから、洗剤に対しては、御指摘のとおり生産も行なわれております。流通過程にもございます。にもかかわらず、それがどうしても協力を得られないということになれば、法律の発動をする以外にないんです。法律の発動後でもなお実効があがらなければ、政府は予備費を支出しても、とにかく一カ月なら一カ月分全世帯がまかなえるような洗剤程度に対して、その程度のことができないはずがありません。  いまの御指摘に対しては、政府は緊急にひとつ措置をするようにいたします。
  208. 赤松勇

    ○赤松委員 この買占め売惜しみ防止法の第五条をいつから発動するか。これはのんびりと、その方向で検討するという性質のものじゃないんです。いつからこれを発動するか、いつの閣議でこれをきめるか。——だめだ君は、総理大臣に聞いておるのですよ。(田中内閣総理大臣経済企画庁長官が所管大臣だから……」と呼ぶ)いや、あなたの決意いかんでこれはきまるんだ。
  209. 内田常雄

    ○内田国務大臣 経済企画庁長官は内閣総理大臣を補佐すると書いてございますので、私が申し上げます。——ほんとうにそう書いてあるのでございます、このいまの買占め売惜しみにも。、それで検査、調査には、三条の調査と五条の臨検と両方ございまして、さっき通産省の担当官は、おおむね第一次的には三条の調査をやっておるが、必要な状況によって五条の臨検検査をやっておるというような言い方をしておりましたが、私はいささかふしぎに思っておるわけでありまして、総理大臣の命令によって今度やっておりますのは、それは三条、五条を並行した、一緒にした臨検検査でございますので、その五条によりまして現にやっておるはずでございます。  また、検査の対象になっておる物資は、合成洗剤のみならず、先ほど申しますように、通産物資六品目、農林物資六品目について現に五条の検査をやっておる、こういうことでございまして、その結果は一月末日までに中間報告をしてくれる、こういうことで、私どももその結果の報告を待っておるわけでございます。(「さっきは三条でやっていると言ったよ」と呼び、その他発言する者あり)
  210. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 内田経済企画庁長官、理事諸君の意見で、いつからそれをやるかどうか、こういう答弁を要求していますが、いつからやるか。それで、先ほどの森口審議官の報告では、やるがごとくやらざるがごとく、まるでわけがわからない。予算委員会を冒涜している。
  211. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先ほどの答弁通産省の担当官の声が徹底しなかったようでございますが、いま私が調べましたところ、その三条でまずやるが、それは状況に応じて五条を直ちに発動してやっておるということで、五条についても触れておると、こういうことであります。(「さっきはそうじゃなかったんだ」と呼ぶ者あり)ああそうでございますか。それじゃそれは間違いでありまして、それは一月の十六日から三条並びに——三条というのは主として机上調査でございますが、三条と五条を同時に発動して一月十六日からやっておる、こういうことであります。  品目を申し上げます。合成洗剤、塩化ビニール管、印刷用紙、トイレットペーパー、灯油並びにLPG、それから砂糖、食用油、小麦粉、みそ、しょうゆ、合板、これらについて三条並びに五条でやっておるわけでございます。
  212. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 やっているのかやっていないのか、どっちだ。(「それは一番親分の総理がいまからやると言っている。」と呼ぶ者あり)  ちょっと待ってください。  やっているのかやってないのか、森口審議官、はっきり答弁しなさい。調査しているのか、していないのか、どっちだ。
  213. 森口八郎

    ○森口政府委員 お答え申し上げます。  経済企画庁長官の御答弁申し上げましたとおり、三条及び五条ということで現在立ち入り調査をいたしております。
  214. 田中武夫

    田中(武)委員 関連をしてお伺いいたします。  まず三条による調査をやる、それで効果が出なければ五条による立ち入り検査を現にやっておると言う。やっておるとするならば、いまの答弁はあまりにもあいまいである。  そこで、いつ、何月何日から何々について五条を発動したか、明確に御答弁を願います。そうでなければ、いまのような答弁ができるはずがないのです。五条でやっておるなら、もっと明確にすべきであります。
  215. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 そのとおりです。森口審議官、はっきりした答弁をしなさい。手だけあげたのじゃだめだ。しっかり答弁しなさい。
  216. 森口八郎

    ○森口政府委員 合成洗剤に関して現在調査をいたしておるものを申し上げます。(「五条でやっておるものだよ」と呼ぶ者あり)五条でやっております。(「だからそれはいつだ」と呼ぶ者あり)まず、札幌通産局につきましては、ライオンの系列について全部で七工場、仙台につきましては、花王の系列につきまして七工場、東京については、ミヨシの系列につきまして十五工場、名古屋については、日本油脂の系列につきまして十五工場、大阪につきましては、ライオン、花王、PG、ミヨシの四社の系列につきまして十八工場、広島につきましては、ライオンの系列について七工場、四国につきましては、花王の系列につきまして七事業所、福岡につきましては、ライオンの系列について八事業所を、一月の十八日から一月の二十六日に至る間に実施するということといたしております。
  217. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 実施するということか、実施したのか、どっちだ。
  218. 森口八郎

    ○森口政府委員 現在までに、時日が経過したものについてはすでに実施をいたしております。
  219. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。  通産省の問題ですから、通産大臣から、調査しているかしていないか、それからどういう調査をしたか、はっきり答弁を願います。
  220. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいま森口審議官がお答え申し上げましたように、第五条による調査を実施しております。
  221. 田中武夫

    田中(武)委員 五条による調査をやっておるとするならば、それではその調査結果をここで発表してもらいたい。現にいままでやった——これからやる予定のやつはわからぬとしても、現にやっておるなら、中間報告でもよろしい、法律に基づくところの調査であるので、その結果をここで言っていただきたい。
  222. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 二十六日までに第一次調査が終わりまして、月末までにそれを取りまとめて、本省でそれの報告を作成する、こういうことになっておりますから、できましたら直ちに国会に提出いたします。
  223. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 田中君、ちょっと待ってください。  ただいまの田中君の発言について委員長から申し上げますが、可及的すみやかにその結果を報告させることにいたします。しばらくお待ちを願いたいと思いますが、なお、通産大臣、経済企画庁長官、ただいまの調査をいつごろまでにその結果が発表できるかどうか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  224. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 月末にかけていま全国の取りまとめをやる予定で、来月初めにできるだけ早く御報告申し上げます。
  225. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 それではそういうことでよろしゅうございますか。(「だめだ」と呼び、その他発言する者あり)非常に大規模な調査ですから、来月早々までお待ちを願うということに決定いたします。(「おかしい」「だめだ」と呼び、その他発言する者あり)
  226. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどの委員長の宣言、これは少しわれわれとしては疑義がありますが、これはともかくとして、委員長が言われたのですからそれに従いたいと思います。なお、理事会においてもっと論議をしたいと思っていますので、まずそれを申し上げます。  それから、五条による現に立ち入り検査をやっているなら、一カ所でもいい、二カ所でもいい、現にわかっているのをここへお出しなさい。(「五条と三条は違うのだ」と呼び、その他発言する者あり)
  227. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 そのとおりであると思います。したがって、私が申し上げたことをなお補足いたしますが、この問題につきましては、理事会とよく相談をいたしまして、可及的すみやかに解決をするということにいたします。  なお、第二項の、現に調査をしてあるものでしたら、それを発表願います。してありますか、してありませんか。
  228. 森口八郎

    ○森口政府委員 第一次の調査につきましては、現在すでに終わりまして、本日から、通産局で調査をした結果、いかがであるかということについてヒヤリングを開始しております。資料がまとまりますれば、至急御報告いたしたいと思います。
  229. 赤松勇

    ○赤松委員 調査をした、それで月末にまとめて発表すると言うが、いま田中委員の要求は、第五条に基づいて調査をしたその数件の例をここで示しなさい、その結果を示しなさいと、こう言っておる。決して無理な要求じゃないと思う。委員長、それをやらしてください。できますよ、そんなことくらい。できますよ、もうすでに調査が終わっているのだから。いま調査中のものをやれというのではない、調査を終わったものをやれ、数件ここで示しなさい、こう言っておるのです。
  230. 森口八郎

    ○森口政府委員 具体的な結果については、現在通産局から事情を聴取いたしておりますので、まだ具体的な結果については知悉いたしておりません。
  231. 赤松勇

    ○赤松委員 総理大臣、ちょっといま私が例をあげました埼玉県にも洗剤がない。「にしとも」ストアという名前をあげました。いま電話がかかってきまして、やはりないのです。ただし、これは「せいゆう」と呼んでくれというのです。こういう電話がありました。あらかじめ訂正しておきます。  第三条と第五条は、これは明らかに違うのです。これは同時に適用しているなんと言っていますが、これはごまかしなんだ。第三条を読み上げてみますと、「内閣総理大臣及び主務大臣は、前条第一項の規定により」、つまり買占め売惜しみのそれでありますけれども、「規定により指定された物資について、その価格の動向及び需給の状況に関し必要な調査を行なうものとする。」というのが第三条なんですよ。要するに、価格の動向及び需給の状況に関してこれを調べる。ところが、第五条は違うのです。第五条は立ち入り検査権が伴うのです。「内閣総理大臣及び主務大臣は、」「これらの者の事務所、工場、事業場、店舗若しくは倉庫に立ち入り、特定物資に関し、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。」こういうのです。明らかに違うのです。三条でおかしいと思ったら五条になるのですよ。それを、三条と五条を一緒にやっているなんていうのはごまかしだ。明らかにごまかしていますよ。  それで、五条でやっているというならば、具体的に、いま調べたその件数だけでも、あるいは内容をここで言いなさい、こういうのです。
  232. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま御指摘になりましたとおり、国民生活安定に対する法律の第三条は机上調査でございます。それから第五条は臨検を行なう、帳薄、書類を調査することができるということになっているわけです。  そうしますと、現在第三条に基づく書類の調査、それから物価の動向等は、これは調査をしていることは当然でございます。しかし、現場に踏み込んで調査をしておりますということでございますから、これは五条に基づいて行なわなければできない行為でございますから、五条の調査も行なっております、こう述べているわけです。  それで、いま述べられることは、先ほど経済企画庁長官が述べましたとおり、会社別に数十工場の名前と系列別に工場の数を述べたわけでございます。その調査の結果は、いま各通産局で取りまとめて本省に報告をするという段階にございますということでありますので、最終的に全部まとめて御報告をするのは来月の初めになるかもしれませんが、少なくともその一部でも、本省へ報告のあったものは、でき次第でも報告をいたすというのが実情でございますから、すなおにひとつ御理解を賜わりたい。ですから、ここで、何日に、どこの通産局が、どこの本社とどこの倉庫と、計何カ所の調査を行ないましたということは申し上げられるわけでありますが、内容はまだ来ておりませんので、こういうことはひとつ十分理解いただきたい。
  233. 赤松勇

    ○赤松委員 総理、たいへんな間違いを起こしちゃだめですよ。あなたがいまおっしゃったのは、国民生活安定法のことなんです。違うんですよ。私の言っているのは違うんですよ。買占め売惜しみのほうだよ。
  234. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 法律の名前を間違って、まことに恐縮でございました。
  235. 赤松勇

    ○赤松委員 その間違いが——さっき総理は、いや第五条でやっていると言えといって、通産省にあなた生意したでしょう。それは非常に簡単に考えているけれども、国民生活安定法だと思い込んでいるからそう簡単に言う。ところが、この第五条、読みましたか。よく見なさいよ。事務所、工場、事業場、店舗、倉庫に立ち入り、帳薄、書類その他の物件を検査させるというんですよ。いいですか、総理、これは検査させた結果を報告するんですね。もしこの第五条に基づいて検査をしたんじゃなくて、国民生活安定法に基づいてやったとか、あるいは第三条でやったということが明らかになると、私どもこれは納得できなくなって、あと追及せざるを得ないのですが、いいですか。訂正しておく必要ありませんか。訂正するならいまですよ。
  236. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 お答えをしますときには、第三条でやったものは机上調査でございますから、これは机上調査の分でございます……。(発言する者あり)この分は机上調査でございます、それから立ち入り検査を行なったものは、これは第五条でなければ立ち入り検査ができないわけでありますから、これはもちろん五条による報告でございますと、こう明確に申し上げますから。どうも名前というのは、上のほうだけ見てまことに恐縮でした。
  237. 赤松勇

    ○赤松委員 報告についてはたいへんぼくら不満です。委員諸君みな不満です。せっかく名委員長がとりなしたんですから、荒舩委員長立場も考え、それで報告の件だけは譲歩しますが、しかし第五条に基づいて一斉に検査をするということをいま、総理が、もう現にやっているという話なんですが、先ほど自民党の質問に対しまして、約千カ所一斉調査をやる考えだ、こういうことをおっしゃいましたね。これは何の法律に基づいておやりになりますか。
  238. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 もちろん第五条に基づくものでございます。
  239. 赤松勇

    ○赤松委員 それでは正確に申し上げますが、生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律第五条に基づいて立ち入り検査をする、こういうことなんですね。——わかりました。せひ断固としてやっていただきたい。  これは洗剤に限らないで、もっと範囲を広げる考えはありませんか。その場合の品目は、調査の対象品目は何ですか、総理のお考えになっている品目。
  240. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは当然政令で指定しておる品目でございます。
  241. 赤松勇

    ○赤松委員 よくわかりませんが、何でしたか、指定品目って。まだ指定してないでしょう。
  242. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは私は、状況に応じて、広げるほうがいいものは拡張指定をいたしたいと考えております。「特定物資」と指定をいたしておるものを原則といたしております。
  243. 赤松勇

    ○赤松委員 あなたの答弁、ぴょこひょこ、ぴょこひょこ出てきて答弁するが、わからないよ。何かピンチヒッターでちょこちょこ出てくるけれども、あなた、から振りばかりしているからだめだよ。  いいですか、指定物資というのは、この法律によると第二条ですね。「生活関連物資の価格が異常に上昇し又は上昇するおそれがある場合において、当該生活関連物資の買占め又は売惜しみが行なわれ又は行なわれるおそれがあるときは、政令で、当該生活関連物資を特別の調査を要する物資として指定する。」こうなっているのですよ。そうすると、政令で指定していますね。していますか、どうですか。これは通産大臣。
  244. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 指定しております。
  245. 赤松勇

    ○赤松委員 いつしました。
  246. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 月日は私、忘れましたけれども、トイレットペーパーとか、たしか洗剤も近くやったはずでございますけれども、日は係官から御説明申し上げますが、指定しておるところでございます。
  247. 赤松勇

    ○赤松委員 わからないというのはおかしいじゃないですか、指定した日にちがわからないというのは。
  248. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 早く答弁しろ、ぼやぼやしないで。
  249. 森口八郎

    ○森口政府委員 家庭用合成洗剤につきましては、今月の二十一日に対象物質に指定いたしております。  現在、指定いたしております品目は、大豆、大豆油、大豆油かす、丸太、製材、合板、印刷用紙、ティッシュペーパー、京花紙、ちり紙及びトイレットペーパー、綿糸、綿織物、医療用ガーゼ、羊毛、梳毛糸、梳毛織物、生糸、絹織物、揮発油、液化石油ガス、合成洗剤でありまして、洗剤は二十一日に追加指定いたしております。
  250. 赤松勇

    ○赤松委員 それでは、洗剤を除くいまの指定物資の中で、現に調査中のものはどれですか。検査中のものをあげてください。
  251. 森口八郎

    ○森口政府委員 全体は十二品目でございますが、通商産業省所管物資につきましては、灯油、LPG、塩ビ管、印刷用紙、トイレットペーパー、合成洗剤という六品目が、現在調査対象物資になっております。
  252. 赤松勇

    ○赤松委員 それでは他の所管のほう、いまの指定品目の通産省関係以外のところ、答弁してください。
  253. 小島英敏

    ○小島政府委員 農林省からお答えいただいたほうがいいかと思いますけれども、その他のものは農林物資でございまして、砂糖、食用油、小麦粉、みそ、しょうゆ、合板、以上六品目でございます。
  254. 赤松勇

    ○赤松委員 いつやったかということです。
  255. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 いつ調査をしたか。(発言する者あり)
  256. 池田正範

    ○池田政府委員 農林省は、ただいま申し上げましたように、大豆、大豆油それから大豆油かす、丸太、製材、合板、生糸、以上七品目を指定しておるわけでございますが、今回の調査につきましては、農林省といたしましては、それぞれ三条の調査を現在実施中でございまして、先ほどちょっと通産からもお話が出ましたけれども、月末で大体調査を終わりまして、来月上句、なるべく早い機会に調査の結果を取りまとめるということで現在やっておるわけでございます。
  257. 赤松勇

    ○赤松委員 第五条でもってやっているということは、一回言ったじゃないですか。うそ言っちゃだめですよ。  委員長、これ以上もう質問できない。
  258. 池田正範

    ○池田政府委員 少しく補完をいたします。  調査をいたします際に、私どもはいつでも五条調査に切りかえられる準備をいたしておりまして、もし、調査をいたしました相手方が平穏な調査に対して拒否をする、これは考え得るわけでございますから、したがって、そういう場合には、当然権限に基づきまして五条調査でやるということで、そういう準備はいたしておりますが、農林省の場合には、大体現在までの調査の結果でございますが、まだ報告途中でございますので詳細わかりませんけれども、五条調査に切りかえたということはないように承知をいたしております。
  259. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行で発言をお許し願います。  いまの答弁を聞いておりますと、六品目だと言っておるかと思ったら七品目だと言うのでしょう。一体五条をいつから、どの品目でやったのかということもはっきりしないのですよ。そういった答弁が明確にできるまでちょっと休憩をして、すぐ打ち合わせてください。それでなければ、一体こんな答弁が通ると思うのですか。七つだと言ったり六つだと言ったり。
  260. 小島英敏

    ○小島政府委員 私が六品目と申し上げましたのは、現在、在庫調査をやっております対象物資が、通産省六品目、農林省六品目、合計十二品目でございます。それから、買占め法の対象になっておりますのは、通産省が十五品目、農林省が七品目、合計二十二品目、そういう意味でございます。
  261. 田中武夫

    田中(武)委員 きちっと一応答弁の整理をする必要があると思うのです。  その一つは、法によるところの指定を農林省関係に幾つ、そして通産省関係は幾つ、これが一つ。さらに、その指定品目に対して、三条で調査をしておる——通産省は五条の立ち入りをやっておる、農林省はまだ五条を動かしていない、それはなぜかということ。それから、いままでに調査したことについて、現時点においてどの程度明らかにできるか。  これだけの答弁を、あるいは資料をまとめて、あらためて赤松委員から質問をするということにして、その資料の提出を求め、そして質問者の了解を得て次の質問に入りたい、このように思います。
  262. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいまの田中君の発言のとおりでけっこうだと思います。したがいまして、その分は保留しておきまして、どうぞひとつ次の質問を続けてお願いをいたします。
  263. 赤松勇

    ○赤松委員 第五条に基づいて検査する場合に  は、証明書が要りますね。
  264. 吉國一郎

    吉國政府委員 法律の問題でございますので、便宜私からお答えいたします。  第五条の立ち入り検査をいたします場合には、第三項の規定がございまして、「前二項の規定により職員が立ち入り検査又は質問をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。」ということになっております。
  265. 赤松勇

    ○赤松委員 そうでしょう。ですから、立ち入り検査をこれだけしましたというだけの報告でなくて、その際に、立ち入り検査をしたという証明に足るものを添えて、私のほうへ資料として出していただきたいことを希望しておきます。そうじゃないとごまかしちゃうのだ。やりました、やりましたと言って、三条でやったか、五条でやったかわかりはしない。
  266. 田中武夫

    田中(武)委員 五条で立ち入り検査をするときには、当然身分証明書を必要とするわけですよ。その証明書はいまあるはずなんです。なければできないわけなんです。したがって、その証明書は直ちにここへ出すことができるものでなくてはならぬわけですが、いかがでしょうか。
  267. 森口八郎

    ○森口政府委員 ただいま至急取り寄せて、お見せいたしたいと思います。
  268. 赤松勇

    ○赤松委員 最後に、総理に念を押しておきますが、先ほど自民党の代表質問に対しましても、あなたは一千カ所検査するということをおっしゃいました。私は、先ほど申しあげたように、この規模をもっと広げて、当面指定品目になっている全品目及びそれが貯蔵されている倉庫の一斉点検を、何日までにおやりになるということを明確にお答え願いたいと思う。
  269. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 突然の御質問でございますから、何日までということを申し上げるわけにはまいりません。しかし、これは重要である。私は、ほんとうなら、帰ってくるまでに、あの短い時間に一千カ所を同時にやるべしということだったのですが、身分証明書の印刷とか、それからそれだけ手が間に合わない、併任の発令がなかなか間に合わないというような問題があって、いま可能な限り最大の立ち入りをやっておるはずであります。そういうものをいま報告書作成中であるということでありますから、引き続いて、千カ所といわず、これは流通経路がとにかく正常化するまで、法律の命令でありますから当然なさなければならぬことであります。そういう立場で理解をいただきたい。
  270. 赤松勇

    ○赤松委員 この場ですぐ返事をしろと言っても無理だと思うのです。しかし、大体めどというものがありますね。総理の御意向としては、いつごろまでに検査をやらせるというめどですか。
  271. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 関係大臣、各省の人員等、十分調査をいたしまして、可能な限り最も早い機会にやりたい、こういうふうに申し上げます。
  272. 赤松勇

    ○赤松委員 あなたはいま、き然としてとか断固たるとかなんとか言っているが、ちっともき然でも断固でもないですよ。関係各大臣と相談をして可及的すみやかに——そんなあなた官僚的な答弁をなさるな、田中角榮という政党人が。お互いに政党人として真剣に論議をしておる中で、各大臣と相談して可及的すみやかにやります。そんなばかな、あなたの一番いけない答弁ですよ、それは。いつもはよくしゃべるのですから、しゃべってくださいよ。
  273. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そのぐらいのこと、よくおわかりになると思うのですよ。この間知事会議をやって、知事に対してはどこまで権限委任をしますか、その場合の費用負担は一体どうするのですか、どこまでにするのですかというような問題をいま詰めているのです。ですから、そういう三条の問題をいまやっておるでしょう。五条に対しては、いま農林省は——私は、とにかくある時期、ほかの少し延ばしてもいいような職員は、全部その仕事を停止してもいいからこの仕事に専心しなさいということを、閣議で了解をしておるわけであります。ですから、農林省はいつから五条のほうの検査をやるのか、何人一体できるのかという話を聞かないで、私がここでいつまでやります、それは無責任なことになるのですよ。早とちりということになるのです。
  274. 赤松勇

    ○赤松委員 総理の御答弁は全く官僚的でだめです、あなたがそういう答弁では。もう福田さんと交代しなければならぬ時期が来ていますよ。私は、ほんとうに憤慨せざるを得ない。重要な問題ですよ。国民自身が非常に困っている状態の中で、可及的すみやかになんという答弁は納得できません。  そこで、私は通産大臣と農林大臣に聞くが、いま指定されている品目、この調査を農林省は三条でやっている。三条でやって、これからぽつぼつまた五条へかかるかかからぬかわからぬが、とにかく一応三条でやってみようというので机上調査をやっているわけだ。それで、五条に基づく検査の結果はいつごろまでか、めどを明らかにしてください。通産及び農林。
  275. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 過般やりましたものにつきましては、いま通産局から報告が来て、本省で取りまとめておりますから、二月の初め、できるだけ早期に御報告いたします。
  276. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほどここでお話がございましたが、農林物資は六品目やっておるわけでありますが、この中で、小麦粉のようなものは食管法で厳重にやれることになっておることは御存じのとおりでございます。ただいまの法律に指定してありますものは、このうち、合板もそうでありますし、食用油もそうでありますが、あと砂糖は、糖価安定法という別個の法律でやります。  したがって、先ほど来三条、五条のお話がありましたけれども、私どものほうでは、それぞれ食管法等によって厳重にやれるものはやりますけれども、指定されておるものにつきましては、とりあえずは三条で調査をいたし、それが納得できなければ、その場で、御存じのように切りかえができるわけでありますので、五条に切りかえて厳重な検査をいたしますと、こういうことで出ておりますが、中間の報告はまだまいっておりません。しかし、大体事務当局に聞いてみますと、できるだけ早く集計いたしまして、二月の初めまでには集計をいたすようにいたしたい、こういう考えでおります。
  277. 赤松勇

    ○赤松委員 さっきも通産の事務当局の答弁があったのですが、その中に、調査については任意調査もやっているという話がありました。任意というのは、おそらく第三条に基づく調査のことがと思います。それから、いまの農林大臣の答弁を聞きましても、とりあえず三条でやるというわけです。これはいつの日かわからない、五条でもって一斉に検査をやらせるという政府答弁がないのですから。ただ総理は、五条を発動して可及的すみやかにという話はありましたけれども、全体としてもう閣内ばらばらで、それこそ何を信用していいかわからない。しかし、まあさっき委員長の提案もありまして、すでに決定したことでありますから、とにかく資料を私のところへ出してもらいたいということで、次の質問に移ります。  農林大臣、十二月の暮れの話でありますけれども、私は千里ニュータウンの調査をやりました。その際に、千里ニュータウンでは十日間しょうゆが切れまして、そしてたいへんな騒ぎだった。トイレットペーパーも千里ニュータウンがトップを切りました。たしか上尾と千里ニュータウンだと思います。その際、社会党は直ちに、十二月二十五日に食糧庁に交渉しまして、十二月の二十六日に一リットルパック三十万本、ヤマサのしょうゆを緊急輸送し、さらに長野のみそを送ってもらいました。これは非常に迅速な対策でありまして、この際、農林大臣に感謝しておきます。  私は、こういうような行政をやってもらいたいと思うのです。やろうと思えばできるのですから。結局、やるかやらないかをいう決断の問題だと思うのです。熱意の問題だと思うのです。だから、行政が消極的な態度で、たとえば総理が指示を残して行った、しかし、そんなことはできるものか、角榮さん、あんなこと言うけれども、そんなことできるもんかいなんて言って、陰でぶつぶつ言っているようではだめなのです。やはり国民の気持ちになって行政と取り組んでいく、これを田中内閣に期待することはほとんどだめだと思いますけれども、なお、いま総理は、き然としてやる、こう言うのですから、あなたは有言不実行のほうだが、不言実行でもってぜひやってもらいたいと思います。  それで、自治体の問題についてはどうですか。  この間、革新市長会を開きまして、ここで、地方自治体にこういう仕事を押しつけることは、政府は、政府の仕事を地方自治体の責任によるものだというような意見が非常に強かったという話を聞いておりますけれども、この際、地方自治体に対しても、人員不足及び財政難で困っているので、この問題については、特別に何か財政的なめんどうを見るという用意はありませんか。これは大蔵大臣及び自治大臣、どうですか。
  278. 町村金五

    ○町村国務大臣 お答えいたします。  本年度におきましては、自治体のこれらの法の施行のために必要とする経費は予備費で支出をしていただく、間もなくその手配ができるというふうに承知をいたしております。明年度におきましては、さらに大体五十億円程度予備費から支出をしていただくということに、関係方面で了解をいたしておるところでございます。
  279. 赤松勇

    ○赤松委員 どれくらいの額ですか。
  280. 町村金五

    ○町村国務大臣 本年はまだ金額がきまっておりませんけれども、大体本年度としては十億円以内で、あと二月の処理に当たっていただこう。明年度は、先ほど申し上げましたように、四十九年度は大体五十億円程度ということを一応予定いたしております。
  281. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 自治大臣からのお話をまちまして善処いたします。
  282. 赤松勇

    ○赤松委員 この点につきましては、同僚の議員から、おそらく本予算の中へ当然これを組み入れて、そして地方自治体にそれだけの仕事をしょわせるのならば、その一お金のめんどうを見てやるということはあたりまえのことなのですから、やがて発言があると思いますけれども、この点につきましては、予算修正の形でも何でもけっこうですが、ぜひひとつ予算上留意していただきたいということを総理大臣にお願いしておきます。あと同僚議員が、この点について質問します。  この際、自民党総裁としての田中総理にお尋ねをしたいのは、当衆議院に昭和二十二年に設置をされました不当財産取引調査特別委員会と同様の、このいまの緊急事態ですから、これに対応するために、これと同様の委員会を設置する考えはないかどうか、もしくは、ただいまの物価対策特別委員会をこの委員会と同様の権限を持たして強化する意思はないかどうか、これをお尋ねしたいと思います。  総理は、私から一期あとでございまして、ちょうどこれは社会党内閣のときですね、できましたのは。したがって、この委員会のときには国会にいらしたと思うのです。だから、委員会の性格は十分御承知だと思うのでありますけれども、ほかの大臣諸公の中でその当時当選されていなかった諸君もおられますから、念のために私から紹介しておきますが、これは議会の決議でできたのです。衆議院の議決によってこの委員会が設置されたのです。  どのような権限を持っておったかといえば、   衆議院に不当財産取引調査に関する超党派的特別委員会を設置し、衆議院議長の指名する三十人以下の委員を以て構成する。   不当財産取引調査特別委員会は、昭和二十年八月十四日以降における公有財産、民間保有物資、過剰物資、隠退蔵物資、連合軍最高司令官より日本政府に移管された特殊財産、遊休物資、過度の貯蔵物資及びその他日本経済の復興に有用な一切の物資の処理、取扱及び取引並びに現存しない物資の虚偽の売買及びその収益につき全面的調査を行うものとする。  すなわち、連合軍最高司令官より日本政府に移管された特殊財産まで調べる。   右調査の目的は、前述の財産に関し、直接又は間接に違法に転換をはかり、不当に私し又は詐欺をなして国民の信託に背いた公務員、会社、・組合その他の団体の使用人及び自己又は他人のため活動する総ての個人の責任の所在を調査するにある。   なお、この調査は以上の者と各省又はその他中央地方政府機関との関係、国会の両院及び議員との関係並びに政党及び公職にあり、又は公職にあらざるも公然又はかくれて日本国民の利益及び財産を奪い、又は奪うのに寄与し乃至公益に反して行動をなした者との関係の調査を含むものとする。  不当財産取引調査特別委員会は、国会の会期中たると休会又は閉会中たるとを問わず、必要と認めた場合には証人の出頭又は帳簿、書類の提出を要求することができるものとする。   右に要する経費はこれを支出をすることができる。   議長は、委員会の申出により必要ありと認めたときは顧問、調査員、経験者、相談員、技術者及び事務補助員を臨時に任命し、その報酬を決定することができる。したがって、私はこの際、物価対策特別委員会ですね、この委員会にこのような任務を与え、かつ、その委員会に所属する調査室に国会職員を百人配置し、さらに費用として、十分に活動なし得る費用、予算を組んで、そしてこの委員会を活用する考えはないか。先ほどから総理の御意見を伺えば、き然としてやると言うのであります。しかし、き然としてやると申しましても、ただいままでの審議の経過から見まして、これを役人、公務員にまかしておくことは、われわれきわめて不安であります。この際、こういう委員会をつくることにどのような見解を持っていらっしゃるか、お尋ねいたします。
  283. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 あなたは昭和二十一年に当選をされましたから、そのときには不当財産取引調査特別委員会の前身である隠退蔵物資処理委員会があったわけであります。昭和二十二年に隠退蔵物資処理委員会が廃止をされて、不当財産取引調査特別委員会に改組されたわけであります。これは有力なメモケースのものでございます。  お互いにわかっているとおり、当時の終戦後の混乱に対して、占領軍メモの尤なるものを前提にして、一部反対もございましたが、この委員会は設置をされたわけでございます。そして同時に、証人と証言等に関する法律も同時成立を見たと思います。その後、いろいろな事績をあげてまいりましたが、また、この国政調査権の発動というものに対して、いろいろ功罪半ば、賛否両論が国論の中にあって、これは占領が終わったと同時に改組されて、この不当財産取引調査特別委員会が廃止をされて、行政監察特別委員会という新たなものになったと思います。まあ、記憶は大体そうだと思います。  そこでは、一般国民も公務員もみな宣誓をされて——証人と証言等に関する法律だけ現在残っておるわけでございます。いま、隠退蔵物資処理委員会と、不当財産取引調査特別委員会、また、改組された行政監察特別委員会も、その後廃止をされて現在に至っておるわけです。しかし、証人と証言等に関する法律は現存しておりますから、各委員会で、この法律に基づいて証言を求めることは当然できるわけでございまして、それは常任委員会制度をとっているということで、占領軍の治下は別として、国会が自主的に各常任委員会で証人と証言等に関する法律を適用すれば、前三特別委員会と同じ国政調査権が行なわれるということで、この委員会が廃止になった経緯があるわけでございます。そういう意味で、物価特別委員会といわず、各委員会において同じような国政調査権が行なえる体制は整えられておる。  あと問題は、費用の問題と委員会の運営の問題だけでございまして、これは国会でおきめになれば、当然予算上の問題は可能である、こう思います。
  284. 赤松勇

    ○赤松委員 午前中から、石橋委員田中委員いずれも、現在の経済情勢の中で不当な買い占め売り惜しみが行なわれておるということを指摘されました。さらに、過剰流動性の問題等につきましてもいろいろ指摘がありました。  そこで、次の証人を本予算委員会に喚問されることを要求いたします。——いいですか、大事なことですから。次の人たちを本委員会に証人として喚問されんことを要求いたします。  氏名を発表します。  ライオン油脂小林宏社長、花王石鹸丸田芳郎社長、キッコーマン茂木啓三郎社長、日産自動車岩越社長、松下電器の松下正治社長、石油連盟の密田博孝社長、新日鉄の平井富三郎社長、石油化学工業協会の鳥居保治社長、日清製粉石井良雄社長、三井物産の池田芳蔵社長、三菱商事藤野忠次郎社長、住友商事柴山幸雄社長、伊藤忠越後正一社長、丸紅桧山宏社長、日商岩井辻良雄社長、以上の諸君を証人として喚問されまして、そして、今日の事態の中で物価を上げざるを得ない、そのコストを上げざるを得ない理由などもただし、なお流通関係等につきましてもただしたいと思いますので、ぜひ御採用をお願いしたいと思います。  右、要求いたします。
  285. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいま赤松君の申し出の件でございますが、証人として本委員会に呼ぶか、参考人で呼ぶかというようなこともあり、また理事会でよく協議しなければならない問題等もあり、なおまた、いまのままで物資の買い占めあるいは売り惜しみ、いろいろな状態等もありますので、よく理事会で協議をいたしまして、なるべく前向きに御期待に沿うような協議をしてみたいと考えております。御了承願います。
  286. 赤松勇

    ○赤松委員 通産大臣に端的にお尋ねいたしますが、通関実績で、一昨年の石油輸入量、それから昨年の石油輸入量、これは二〇%輸入が多くなっていますが、間違いありませんね。
  287. 山形栄治

    山形政府委員 通関統計によりますと、四十八暦年が二億八千九百六十一万キロリットルでございまして、四十七年暦年が二億四千九百五十五万四千キロリットルでございますので、約二割近い増加でございます。
  288. 赤松勇

    ○赤松委員 石油危機がつくられた危機であるということは、ここに明らかになりました。つまり、石油危機はうそであったということ、これは物価値上げのために利用されたということが明らかになっています。いまのエネルギー庁長官答弁にもありましたように、二〇%一昨年より昨年は多く輸入されている。しかも、あのような、石油がなくなる、あるいは電気がなくなるというような大宣伝をやりまして、とうとう物価値上げに成功したわけであります。  いま、物価値上げは二段階戦術をとりまして、まず十月、十一月、十二月は第一段階、それから今度、原油値上げを理由として第二段階に移行しつつあります。したがって、政府物価の見通しは完全に狂ってくる、こういうように思うのであります。私は、きょう日銀総裁に来てもらいまして、日銀が先日発表いたしました統計によりますと、政府物価の見通しと明らかに違います。その点を実は聞きたかったのでありますが、遺憾ながら政府答弁がよたよたしておりまして、私の持ち時間が大幅に食われました。  そこで、お尋ねしたいのだが、日銀総裁、これも幾つか質問がありますけれども、せっかく来ていただいたのですから、一言だけ聞いておきます。  この間七億ドルドル買いをやりましたね。これは勧銀と住友と東銀と、たしか三つだったと思います。この三行を使ってドル買いをやりました商社の名前はわかりましたか、いかがですか。
  289. 佐々木直

    ○佐々木参考人 一月二十三日に約六億五千万ドルドル日本銀行は売却しております。これは政府の外為会計の取り扱い者としての行為でございますが、この場合のドルを売りました先は、日本の為替銀行の全部にわたっておりまして、三行だけではございません。三行が特にドルの買い方が多かったものでありますから、そういう点から、そういうドルの代金がそんなに多額に払えるならば金に余裕があるはずだということで、貸し出しの回収をこの三行について実行したわけでございまして、したがって、私どもとしては、その売却額の総額をもって判定したわけでございます。  したがって、これらの為替銀行がそれぞれの取引先との間で取引をしておるわけでございますが、その個々の取引先は私どもとしてはつまびらかにいたしておりません。
  290. 赤松勇

    ○赤松委員 日銀総裁にいろいろお尋ねしたいが、時間がありませんからもうけっこうです。どうも御苦労さまでした。  次に、労働大臣にお尋ねします。  春闘の性格なんですけれども、これはぜひ総理と一ぺん論争してみたいと思っておるのです。聞くのは労働大臣に聞きますから……。  それは、春闘春闘と一口に言いますけれども、今日、国家公務員、地方公務員、それから民間労働者などが要求しておりまする賃金アップの性格というものは、実は正常な物価状態の基礎の上に立って要求しておるのではないのです。これはもうおわかりになりますね。総理はいつか二〇%程度ならばということを、たしか何かの新聞でおっしゃっておったように思うのです。——違いますか。違えば取り消しましょう。それで、この春闘の賃金要求の性格というものは、あと追い賠償的なものですね。損害賠償ですよ。賃金は上がるが、すぐ物価が上がってしまうのです。そして上がった分をがっぽり取られてしまうのです。あと追い損害賠償的な性格を持っておる。  ことしの三万円要求でも——去年の春闘で三〇%上がったけれども、それは一昨年物価上昇分で、その損害賠償的な要求として二〇%で妥結したわけです。今度三万円出しておるのは、昨年の物価上昇によって受けた損害、これを請求しておるわけですから、だから、何も正常な生活条件にあって、その上に何かぜいたくに要求しておるものじゃないということ、これをぜひ保守党の皆さんを含めて認識をしていただかないと、何か労働者というものはぜいたくな要求をするのだというような、あるいは低所得層はどうなっておるのだ、それに引きかえて何だというようなすりかえ議論が行なわれますから、この点をひとつ御注意をお願いしたいと思います。  そこで労働大臣に、時間がありませんから端的にお尋ねいたしますが、夫婦子供二人の標準世帯が年収百五十万円としましょう。年収百五十万円で、春闘の賃上げが、私は総理が二〇%と言ったと思ったものですから二〇%というふうに計算してみたのですが、二〇%かりに上がっても三十万円です。そうすると年百八十万円ですね。そこで、政府の四十九年度の経済見通しによる消費者物価を九・六% こんな数字にとまらぬことはすでに指摘をされておりますけれども、いずれにしても九・六%というように見てみます。九・六%とかりにしましても、ここで年収百八十万円はマイナス十七万二千八百円になるわけであります。それから貯蓄を一世帯当たり二百万円しておるとして、この二百万円がマイナス十九万二千円になるわけです。そうすると、合計で三十六万四千八百円マイナスになる、こういうことになるわけです。  それから、これを消費者物価が二〇%上昇した、すでに上昇しつつありますけれども、この二〇%で加算いたしてみますと、給与が二〇%上がって百八十万円、そうしてマイナスが三十六万円、貯蓄二百万円のマイナスが四十万円、計七十六万円のマイナスになります。そうすると、かりに二〇%の賃上げをしたとしても、すでにこれほどの大きなマイナスになる。十万円の人が三万円の要求をしている、これは、たとえば三〇%上がったとしてもそのマイナスは著しい。こういうことを十分考えて、春闘をおさめようとすれば、この実態の上に立って春闘をおさめていかなければ、春闘はおさまりません。これは、一部の政党や一部の組織によって扇動されて起こる性質のものではないのであります。あなたは労使が円満とおっしゃるが、買い占め売り惜しみがなくて、物価値上がりがなくて、そうして税金の収奪がなくて、マイホームで生活できる、そういう状況があるならば、だれがストライキなどやりますか。だれが好んでストライキをやりますか。  皆さん、一ぺん春闘のストライキに参加してみなさい。おそらく半日だってよう耐えられぬでしょう。あの冷たいコンクリートの上に、すわり込みなどを一日も二日もやっている。できぬですよ。明治公園まで一ぺんデモをやってごらんなさい。総理、一ぺん自民党のたすきをかけて行ってみなさい。もう一往復すればくたくたですよ。私はもう何度も行っておるからよくわかっておりますけれども、だれもこの寒空にそんなばかなことをやりたくない。やりたくないけれども、やらなければ生活が防衛できない。  だから、いまの春闘の要求というものは生活権の要求じゃないのだ。生活権という要求の中には、少なくとも本を買い、あるいは子供に映画を見させ、そういう教養費娯楽費というものが入っている。しかし、これだけの物価暴騰の中で行なわれる春闘の要求というものは、生存権です。もうぎりぎり一ぱい、犬やネコと同じように、もう食っていけるだけなんだ。そういう性格のものであるから、頭から春闘はけしからぬ、頭から春闘はだれかによって扇動されて起こったものだというような考え方は、改めていただきたいと思いますが、労働大臣、いかがですか。
  291. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えします。  いま赤松委員がおっしゃったように、いまの物価高騰の中における春の賃金改定は、まさに非常に大きな問題を各方面にはらんでいると思っております。それだけに、また私も慎重に、こういうときにこそいまの日本の姿というものをお考えいただきながら、労使が将来伸びられるような姿においてこの問題が円満にひとつ解決できるという、そういう意味ではいろいろな情報なり、ある場合には環境づくりなり、そういうところに一生懸命つとめてまいっておるわけであります。
  292. 赤松勇

    ○赤松委員 先ほど要求しました資料が出された時点で、再質問することをお許し願いたい。これを留保いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  293. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十九日午前九時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時九分散会