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石橋委員 国民の
皆さん方にわかるように簡潔に
お答え願いたいと冒頭に注文をしておいたのですが、よくわからない。聞いておられる人、ほとんどみんなわからないんじゃないかと思うのです。
ただ
一つはっきりしたことは、いまのような高値が横ばいの
状態になった、それだけで安定というわけにはいきませんということだけはわかりました。やはりダウンしなければいかぬ。じゃどの程度ダウンした段階を安定というかという私の
質問には答えていないが、ダウンしなければ、高値横ばいでは安定と言わないという点では一応はっきりしたと私は思うのです。しかし、そこははっきりしても、それがいつであるか、どの程度のダウンの場合を安定というかということはわからない。というと、いままで何月、何月と言っていたものは、みんなうそだということになるのですよ。全くあなたお得意の勘だけの話で、根拠も何もない。ただばく然と年末と言ってみたり、一−三月と言ってみたり、いまの時点では夏まで、四−六月と言ってみたりしているだけで、特段こういう手を打ったから、それがこの時点ではこういうふうに影響をあらわしてくるというふうに、ちゃんと根拠を持ったものではないということもまたはっきりしました。いわゆる勘の
政治をやっておられるということ、これだけが明快になったのですよ。
私、ここで申し上げておきたいのは、とにかくこんなべらぼうな高値というものが横ばいになったからといって
物価の安定とは言えない、この点では認識の統一がなされて、私はけっこうだと思うのです。とにかく、一日も早くこれを安定させなくちゃならぬ、ダウンさせなくちゃならぬ。しかし、いまの
政府の
施策でそれが可能か。まあ
金融の引き締めや財政面の抑制といったような効果が若干あらわれて、
卸売り物価というものはダウンするかもしれぬ。しかし、
消費者物価というものが安定するだろうか。特にこの暴騰する
生活必需品の標準価格という制度、これ自体からいっても、とても安定はしない。高値安定するということは、これまたあとで具体的な例を引きながら明らかにしていきたいと思うのです。少なくとも
総理がおっしゃっているような安定の時期は、当分期待できそうもないということが、おぼろげながらいまはっきりしてきました。せいぜい高値横ばいでもなれば、まあしめたものといわなくちゃならぬようなことではなかろうかという気がする、このことだけ
指摘しておきたいと思います。
そこで、この総
需要抑制という、一番
政府が強調しております、
総理が強調しております問題について、問題を移してみたいと思うのです。
施政方針演説の中でこのことは強調されておりますし、財政演説の中でも強調されておるわけですね。とにかく総
需要の抑制、これが肝要だ。
そこで、私がいまからやりたいのは、はたして、この総
需要抑制という基本方針は確定しているが、
一つ一つの項目を洗っていく中で、この方針が貫かれているのか、抑制の効果が期待できるのかどうか、こういう観点でひとつ入ってみたいと思うのですよ。財政の面、民間資本形式の面、
輸出の面、
国民支出の面、
一つ一つ私は当たってみたいと思うのです。
ただ、ここで前提条件として注意しておきたいのは、冒頭にも申し上げたように、私は、平行線にならないようにするために
政府ベースでやりたい、ただそういう気持ちがあるのでやるわけで、あなた方が言っている総
需要抑制というものを、そのまま全面的に認めるわけじゃないわけです。非常に私どもは警戒心を持っているのです。いまの経済機構そのものをそのままにしておいてこの総
需要抑制ということになると、どうしても悪平等になる。結局は、
国民の消費という面に全部しわ寄せがいくのではないか、あるいは
中小企業、
零細企業、そういうところの
需要を押えることに専念することになるのではないか、一律に抑制という形が出てきますとね。そういう懸念を持っておることだけは
最初に申し上げておいて、そして
政府ベースでひとつ議論をしてみたいと思うのです。しかし、とにかく
物価安定のために総
需要の抑制という方向がとられなくてはならぬということは私も認めるわけであります。それが、ただ
国民へのしわ寄せになるということを非常に警戒しているというだけで……。
そこで問題になるのは、この総
需要抑制という、特に財政面における抑制というものが必要だということを強調されればされるほど、過去一年間の、
田中内閣発足以後の財政政策の失敗というものが浮き彫りにされるのではないかということなのです。どうもその点についての反省がないような気がしてならない。なぜこのような
物価高をもたらしたかという原因について、年末の国会で
総理大臣は、
施政方針演説の中で、大きな
要因を三つないし四つあげていますね。いまも、さっき
答弁になっておられました。
一つには国際
物価の
値上がり、二つには過剰流動性、三つには個人消費の拡大、そしてその上に
石油の供給制限と
輸入価格の上昇、これが
物価高の原因だ、こうおっしゃっている。冗談じゃないですよ。これは
責任転嫁です。全部外的
要因、国際
インフレが
輸入されているのだと言わぬばかりの態度。
国民消費が拡大したのだと、
国民にまで
責任を転嫁するような態度。せいぜい認めているのは、過剰流動性というところで、
金融引き締めの時期を誤ったという点が
一つ出てきているぐらいなものだ。これもストレートには言っていませんが……。肝心の財政政策の失敗ということについては一言も触れておらない。もちろん、私はここで
責任の追及が主眼ではありません。
国民の
皆さんが求めておられるものは、これからどうしてくれるかということであることは百も
承知です。しかし、いままでの失敗を率直に認めないところから、
ほんとうに正しい政策が出てまいりますか。そういう
意味で私はこれを触れざるを得ない。私は、まず第一に、
政府の政策の失敗というものを率直に認めるところから真の正しい政策が出てくる、こう思います。そういう
意味で
政府は明らかに手おくれをやったということを立証するためにも、それから国会における
質疑応答というものを形骸化、形式化させないためにも私は必要だと思いますから、去年の一月二十九日、本
会議において、
施政方針演説に対して私が代表
質問いたしましたときの演説をもう一回聞いてもらいたいと思うのです。これは、いま申し上げたように、いかに財政政策の失敗をやっておるか、手の打ち方がおそかったか、そのことを明らかにすることが
一つの目標であり、もう
一つは、国会の論議というものを形式的なものにしたくないという私の熱願からです。そこで、読ましていただきたいと思うのです。
政府は、来年度予算案の編成にあたって、一
つには
国民福祉の向上、
一つには
物価の安定、
そしていま
一つは国際協調の推進と
国際収支均
衡の早期回復の三点に留意したということであ
りますが、
総理は、あちら立てればこちら立た
ずという関係にあるこの三つの目標を、ただ漫
然と並列的に掲げて、
ほんとうに同時に解決す
ることができると思っておられるのですか。私
は、ここで、トリレンマなどという
ことばを使
うつもりはございませんが、二兎を追う者は一
兎をも得ず、まして三兎をや、とだけは言わせ
てもらいたいと思うのであります。
私がこのように言えば、今度は、三目標のう
ちでは、
物価の安定、
インフレ抑制に一番力を
入れたと言うかもしれません。大蔵大臣は、確
かにそう申しました。しかし、そのようなこと
ばを単純に信ずるほど、
国民は愚かではないの
であります。
一般会計十四兆二千八百四十億円、財政投融
資六兆九千二百四十八億円という有史以来の大
型予算、その上、二兆三千四百億円に及ぶこれ
また大型の赤字国債、三二・二%増の公共事業
費、どれ
一つをとってみても、四十八年度予算
が
インフレ促進予算であることは、あまりにも
明らかなのであります。
問題は、財政の規模や国債の発行だけにある
のではありません。
物価に大きく影響する国鉄
の運賃をはじめ、健保、電力、電話等の公共料
金の引き上げ、私立大学の授業料、ガソリン、
灯油、牛乳にみそ、しょうゆと、値上げ計画は
まさにメジロ押しの
状態であります。しかも、
国鉄、健保のごときは、昨年廃案になったもの
をそのまま再提出するというのであります。国
会無視もはなはだしいといわなければなりませ
ん。
総理、昨年の
卸売り物価が八・五%の上昇率
を示したことを、もっと重視すべきではないの
ですか。何を根拠に
物価の安定に最も重点を置
いたと言い、
消費者物価を五・五%にとどめる
ことができると言うのでありますか。
総理、
ほんとうに
インフレを抑制し、
物価の
安定をはかるつもりなら、あなたも施政方針演
説で認めているように、まず第一に、高度経済
成長政策を安定成長政策に切りかえ、財政規模
の膨張を極力押えるべきであります。そして、
法人税の税率を欧米先進国並みに引き上げ、交
際費や広告費に対する課税を強化し、租税特別
措置法の改廃を行ない、一方において、国債の
発行額を
削減する等の措置がとられるべきであ
ります。また、公共事業費につきましても、工
事消化能力の範囲内にとどめるべきでありま
す。国鉄運賃や健保の保険料等、公共料金の引
き上げを中止すべきことは言うまでもありませ
ん。これらの点についての
総理のお考えをぜひ
承りたいと思うのです。なるほど、
物価の安定
に真剣に取り組もうとしているのだということ
が
国民によくわかるように、明快に
お答えを願
いたいと思います。
これは、ちょうど一年前、去年の一月二十九日の私の演説なんです。あなたがいまおっしゃっているのは、私がこのときやれと言ったことをそのままやりますという施設方針演説なんです。一年間のズレがいまのような
状態をはっきり導き出しているのですよ。このことを謙虚に反省することなしにどうして、今度こそは正しい、妥当な
施策を施してくれるであろうという期待を持てますか。確かに間違っておった、これが大前提になくてはならないんじゃないですか。それとも、間違ってないというならば、やはりこの日に私が
指摘したように、調整
インフレを意識的にやったということを裏づける、これならつじつまが合いますよ。政策的にやったんです、
国際収支の
改善、円の切り上げ回避のために調整
インフレが必要だったんだ、政策的に
インフレをつくったのでございます、現在の
インフレ、
物価高は
政府の
施策によるものですというならば、これはつじつまが合います。そうでないとするならば、はっきり間違いであったことをお認めになることが、これからの論議を実あらしめ、
施策を妥当ならしめるための大前提になるのじゃないでしょうか。この点についての御見解を承ります。