○阿部(昭)
委員 私は、
日本社会党を代表し、
昭和四十八年度
補正予算政府三案に反対し、
日本社会党、
日本共産党・革新共同、公明党、民社党四党の共同提案の組みかえ動議に賛成の討論を行ないたいと思います。
まず、討論に入る前に、憲法第六十六条二項の文民に関するわが党楢崎
委員の質問に対して出された
政府の確定解釈について、その取り扱いに対するわが党の
考え方を明らかにしておきたいと思います。
憲法第六十六条二項の文民に関して出された今回の
政府統一解釈については、なおいろいろの疑義があり、今後さらに論議を深め、国会としても解釈を確定すべきである、このことを明らかにしておきたいと思います。
私は、今日の
わが国経済情勢に対する
政府の認識とその
対策における
根本的欠陥を指摘しなければなりません。わが党議員が
政府のインフレ定義を求めたのに、言を弄して明快な
答弁を避けたことは、まことに許しがたい、また政治責任を放棄した態度といわなければなりません。それだけでなく、
わが国経済をインフレと認めるならば、所得政策の導入に踏み切らねばならない、こういった、どうかつするような態度は、もはや
田中内閣が最高の行政責任者としての資格を失ったものといわなければなりません。
〔
委員長退席、櫻内
委員長代理着席〕
卸
物価が前年比二〇%以上も上昇し、消費者
物価も十数%、
国民の生活実態では三〇%以上も、四〇%も上がっている、まさに典型的な悪性インフレの症状であります。今日なおインフレではないと強弁しているのは
田中総理ただ一人であり、
田中内閣の
経済運営、
財政金融政策を信じている
国民は刻々にその数を減じているのであります。
今日のインフレ、
物価高の原因の
一つは、昨年末まで
政府が認めてきた十三件の不況カルテルにあることは明らかであります。
政府が不況カルテルを認めた
関係企業は、不況の名において
価格つり上げを行ない、四十六年三月期決算は爆発的な増収、増益を記録したのみならず、不況カルテルの認可を受けた
関係の
企業が、ばく大な政治献金を行なっているというのであります。ここに
国民の政治不信の根源があります。
〔櫻内
委員長代理退席、
委員長着席〕
次に、本
補正予算に反対し、組みかえ動議賛成の理由を述べたいと思います。
第一に、今回の
補正予算は二つの大きな意義を持つものでなければなりません。
一つは、激化、高進しているインフレ
物価高に苦しんでいる
国民各階層に対する緊急な救済
対策を盛り込んだものでなければなりません。
いま
一つは、四十八年度当初の大型
予算編成、
日本列島改造路線に立つ
予算編成の失敗をきびしく反省をして、インフレ促進型から
国民生活優先の
財政に改めることであります。
当初
予算編成にあたっての三つの課題はいずれも達成できず、言うならばトリレンマ
予算が全く破綻したのであります。今回の
政府案は、この
国民のだれしも認める事実に目をふさいだものであることを強調したいのであります。われわれが言う二つの大きな
方針が欠けている、これが、基本的にわれわれが今回の
補正予算政府三案に対する反対の理由であります。
したがって、第二には、インフレ救済のための施策が不十分なことであります。
生活保護者、年金生活者、また老人ホーム、養護施設等の各種社会福祉施設で生活をしている人々は、この
物価高で食費を切り下げざるを得ないといった窮状におちいっているのであります。
たとえば生活扶助を見ても、当初
予算一四%、補正で五%の
引き上げが行なわれるというのでありますが、これらの人々の生活物資の値上がりは、数十%から二倍、三倍にも達しているのであります。たばこ年金と酷評された福祉年金も、この十月から五千円支給になっておりますが、その実質価値は昨年水準と変わらないといえるのであります。
社会福祉施設は、資材の暴騰で修理も建築も不能におちいり、いわゆる
石油危機は暖房時間の短縮を余儀なくさせておるのであります。インフレの被害を集中的にこうむるこれら
わが国社会保障の低水準に苦しむ人々に対する
配慮が全く乏しいのであります。これが今回の
政府案であります。
第三には、勤労者に対する救済策が欠けていることであります。
春闘で獲得をした賃上げも、いまや実質ゼロあるいは以下に落ち込んでおるのであります。その上、名目所得の上昇は、低所得層に重い税負担を課する現行税制によって、所得税負担は高まっているという二重の打撃を受けているのであります。だからこそ、さしあたって低額の所得税納税者を中心にした
年内減税を実施すべし、これがわれわれの主張であります。
年内減税回避の口実にされている二兆円減税、その内容も次第に後退をしてきている。
年内減税のための財源も、所得税の自然増加分で十分まかない得るものであり、来年度に引き延ばす理由は全く存在をしないのであります。減税がおくれればおくれるほど勤労者への収奪は高まるのであり、
政府の政策は容認することができません。
第四に、
企業倒産の増加にあらわれてきているように、
中小零細
企業の経営困難への
対策が全く不十分であるという点であります。高度成長過程で示されたように、好況は一番おそく、不況は一番早くといった影響を受けるのが
中小零細
企業であり、特にこの年末には倒産が続出する、こう見られているのであります。いわゆる二重構造の底辺部分に置かれている
中小零細
企業、また、いまや全く決定的な崩壊の
状況に打ちのめされておる農林漁業に対する政策転換のための
予算が、全く今回この
補正予算原案の中に
考えられておらないという点であります。
第五には、地方の超過負担解消
対策がなされていない。
福祉
財政と地方
財政の充実とは一体をなすものであるにもかかわらず、保育所建設、学校、下水道建設等々の生活関連、環境整備
関係施設に対する
政府の補助事業は、地方への押しつけ、結局は
国民への負担増加事業となっているのであります。保育所の超過負担訴訟は、まことに恥ずべき
政府行政に対する大きな痛棒であります。金は出さないが口は出すといった現状を改めなければなりません。加えて、総
需要抑制の一環として、保育所建設までも中断させるといった後退的指導は、直ちにやめるべきであります。
政府には、地方
財政の充実の内容も、またその
考えも全く見られないのであります。
最後に、インフレ激化のおもな要因は、
日本列島改造路線推進の大型公共事業の遂行であります。
物価抑制策としての公共事業の繰り延べをしておるのでありますが、
削減するのが今日最も重要な政策であります。道路事業をはじめ港湾、高速鉄道、本四架橋などの大型プロジェクト
計画の
根本的な再検討を行なうのが今日必要な政策であります。
以上、数点にわたって
政府案に対する反対理由を述べたのでありますが、
政府がこの
補正予算を契機に本格的なインフレ
対策、
国民生活優先の
経済運営に前向きに前進する意思があるならば、四党共同の組みかえ動議に謙虚に耳をかすことが、真に
国民のための
予算編成、
経済運営になると信ずるものであります。
この点を指摘して、四党共同の組みかえ動議に対する
委員各位の御賛成を強くお願いし、私の討論を終わります。(拍手)