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1973-12-07 第72回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月七日(金曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 大野  明君    理事 櫻内 義雄君 理事 澁谷 直藏君    理事 正示啓次郎君 理事 細田 吉藏君    理事 辻原 弘市君 理事 中島 武敏君    理事 山田 太郎君       足立 篤郎君    上村千一郎君       植木庚子郎君    大野 市郎君       北澤 直吉君    吉川 久衛君       倉成  正君    黒金 泰美君       小坂善太郎君    笹山茂太郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       田中 正巳君    塚原 俊郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       松岡 松平君    松野 頼三君       湊  徹郎君    渡辺 栄一君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       大原  亨君    金丸 徳重君       小林  進君    田中 武夫君       中澤 茂一君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    中川利三郎君       松本 善明君    三谷 秀治君       岡本 富夫君    矢野 絢也君       渡部 一郎君    安里積千代君       小平  忠君    竹本 孫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 奧野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         北海道開発庁総         務監理官    秋吉 良雄君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁長官官房         長       丸山  昂君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 田代 一正君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         科学技術庁計画         局長      長澤 榮一君         科学技術庁原子         力局長     田宮 茂文君         環境政務次官  藤本 孝雄君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         沖繩開発庁振興         局長      渥美 謙二君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵省主計局長 橋口  收君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 竹内 道雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      岡安  誠君         通商産業省通商         政策局長    和田 敏信君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岸田 文武君         中小企業庁長官 外山  弘君         運輸省海運局長 薗村 泰彦君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君         運輸省自動車局         長       中村 大造君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         自治省財政局長 松浦  功君         自治省税務局長 首藤  堯君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 十二月七日  辞任         補欠選任   前田 正男君     大野  明君   松浦周太郎君     吉川 久衛君   北山 愛郎君     金丸 徳重君   矢野 絢也君     渡部 一郎君   安里積千代君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   吉川 久衛君     松浦周太郎君   金丸 徳重君     北山 愛郎君   渡部 一郎君     矢野 絢也君   竹本 孫一君     安里積千代君 同日  理事澁谷直藏君同日理事辞任につき、その補欠  として大野明君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十八年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年、度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十八年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  この際、田中内閣総理大臣より発言を求められておりますので、これを許します。田中内閣総理大臣
  3. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 最近の物価動向を見ますと、消費者物価卸売り物価ともに依然として根強い騰勢を示し、政府は、現下の物価情勢は憂慮すべきものであると認識をいたしております。物価抑制に全力を傾注したいと考えております。
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの総理発言に対し、辻原君より発言を求められておりますので、これを許します。辻原君。
  5. 辻原弘市

    辻原委員 現インフレ事態に対する統一見解を、昨日私は求めました。それに関連をしてただいま総理から御発言がありましたが、その御発言内容は、従来の総理政府見解の範囲から一歩も出ておりません。したがって、私は、社会不安、物価高騰異常事態インフレに対する政府判断に対してはきわめて不満であります。  特に私が、またわが党がこの見解を求めました理由は、昨日もるる申し述べましたが、単に物価高騰認識する場合と、悪性インフレであるという認識に立つ場合と、そこにおのずから自後の経済政策及び物価対策、諸般の政策にかなりの相違が出ることは事実である。したがって、その前提条件がきわめて大事であるということを主張し、単にことばの解釈、理論的な学説的な定義を求めたのでは決してありません。  この際、なぜ今日の事態をわれわれが悪性的インフレであるという認識をしたかについて、わが党の見解を表明いたしまして、政府見解に対してきわめて不満であるということを表明いたしておきたいと思います。  かいつまんで申し上げますと、まず第一に、インフレとは、一般通貨価値の下落により物価が騰貴することをいうものでありますが、消費者物価卸売り物価が一年定期の預金金利を上回って持続的に上昇する場合は、明らかなインフレーションというべきでありましょう。  第二には、換物思想が先行をし、現実に物不足が生ずるという事態は、国民通貨価値に対する不安感が明らかになったものであり、すでに悪性インフレの段階に入ったものといわなければならない。  第三には、政府が今日のような事態に立ち至ってもなおかつインフレと認めないというのは、従来の政府政策の誤りをみずから認めることになることをおそれての、責任回避の行為であるとわれわれは判断せざるを得ません。  したがって、ただいまの総理見解については、わが党はこれを了承することもできませんし、まことに不満であることを表明せざるを得ません。
  6. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより質疑に入ります。松本善明君。
  7. 松本善明

    松本(善)委員 政府は、いまの見解のように、いまの状態インフレと認めることをどうしてもやりません。しかし、国民のほとんどが悪性インフレ状態になっている、ほんとうに切実な状態になっていると感じております。  ある乳児院の話でありますけれども、昨年までは、二十度以上、二十四時間暖房をやっていた。ところが、ことしになりますと、十度以下になっても暖房を入れられない、あるいは、先月までは授乳時に牛乳を朝晩やっていたけれども、いまは一本に減らしている、あるいは、おやつのプリンを、牛乳で固めるのじゃなくて、水で固めている、こういう事態が起こっておるわけです。それはもうあらゆる階層です。いまの例は一つの例にすぎません。漁民は漁に出られない、あるいは農民は農業用ハウスが重油が来ないで困っている。これは非常に切実な状態になって、言い知れない不安にさらされております。LPガスがなくて、個人タクシー人たちが並んで交通渋滞を起こしているというのも一つの例であります。  私は、主として総理に、いろいろ緊急な経済状況の問題についてお聞きしたいわけでありますけれども、私に対する答えは、国民全部が注目している問題でありますので、率直簡明に国民に対して答えるというつもりでお答えをいただきたいということを、まず申し上げておきたいと思います。  こういう経済状況のもとでいろいろ政府が施策をするについては、国民信頼があるということが非常に重要だということがいわれております。ところが、いま田中内閣支持率はどうか。時事通信によれば、内閣支持率一八%ということです。あるいは東京新聞では、期待はずれだという人たちが八四・三%、こういう状態で、テレビの奥さんたちいろいろ話をしているのを聞いてみましても、田中さんに対する不信というよりは、もう罵倒に近いことばが出てきている。こういう状態総理大臣は一体どう考えられているか。一体こういう信頼のない状態で、どうしようとしておられるかということについての所信を、まず伺いたいと思います。
  8. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 重大な時期でございますから、国民支持理解を得ながら政策を強力に進めていかなければならないということで、努力を積み重ねておるわけでございます。これからも国民理解と協力を求めるべく特段の配慮をしてまいりたい、こう考えております。
  9. 松本善明

    松本(善)委員 十一月の二十八日に、消費者団体が五つ集って緊急声明を出しました。これは地婦連とか主婦連、あるいは日本生活協同組合婦人有権者同盟等々、奥さんたちの代表がたくさん入っている団体です。そこの人たちが出しました緊急声明の中では、列島改造を根本的に改めなければ、生活安定法を出しても信用できないということが入っております。いま、この列島改造ということで、大企業本位のたくさんの金を使うということを政府がもうやめますというふうに言わなければ、いまの事態は解決できないじゃないかという切実な気持ちが、こういうところにあらわれているのだと思うのです。  総理は、この声、この要望に対して、どういうふうに答えられますか。
  10. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 間々申し上げておりますとおり、列島改造論ということばは、私の著書の名前でございます。列島改造論というのは、六十年展望に立って考え得るケースを幾つか並べて、これを国民の前に提供をして判断を仰ぎたい、こういうことでございまして、民主政治家として当然なすべきことだと考えておるのでございます。いまの当面する問題だけではなく、民族の生命は悠久なのでありますから、五年後はどうなります、六十年後はどうなると思います、そういうものに対して、国民に素材を提供し、判断を求めて、その中からコンセンサスを引き出していくというのは、これは民主政治家がやるのは当然のことでありまして、私は、そういう意味で「日本列島改造論」という名の著書を公にしたというわけでございます。  しかし、国土総合開発法案というのは、これは新全総全国総合開発計画というのがもうすでにずっと長く続いておるのでありまして、改定計画が行なわれ、次の改定計画がもうすでに一年余も延び延びになっておるわけでございます。それは、社会的な情勢、いろいろな面が変化してまいりましたので、改定全総というものに対しては慎重にいま調査、検討を行なっておるわけでございます。  しかし、国土総合開発法案というものは、皆さんがお述べになっておるように、地価の凍結とか乱開発抑制とか、しかも、先高を見越して買い集めたというような人たちの土地を社会公共のために効率的に利用するためには、知事が特定地域に指定し、三カ年に限りこの乱開発の停止を求め、最終的には公共の資産としてこれを買い取ることができるという、真にやむを得ない問題を解決すべく、具体的な案として提案をしておるものでございまして、これなくして、東京の過密や大阪の過密や、一朝有事、いわゆる地震や大火災に対して対処できる道がほかにあるとは考えておりません。私は、そういう意味でどうしても必要である、こう考えております。  これは都会主婦の方が列島改造論国土総合開発法というものを一つにしてそういう御議論をなすかもしれませんが、全国降雪地帯などの主婦は、どうしても国土総合開発法を進めてください、なぜ進めないのですか、進めなければ、私の夫の出かせぎはやまらぬじゃありませんかと、こう非常に強い要請が毎日陸続としてあとを断たない、こういう事実も申し上げておきます。
  11. 松本善明

    松本(善)委員 都会主婦だけが、この大企業本位開発政策をやめてくれということを要求しているのではありません。いま日本国民全体が要求をしております。  総理に申し上げておきたいのですが、いままでの答弁が、ずっと本会議以来いろいろなされております。それは国民も知っております。私も十分承知の上で聞いておりますので、繰り返しのようなことは言わないので、質問に率直に、簡明にお答えいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  私は、若干の点を詰めてお聞きしておきたいと思うのでありますが、それは、「日本列島改造論」は個人著書だということを最近言われ始められました。確かにそうであります。七億五千万キロリットルもの、全世界の推定石油輸出量の半分以上も日本が使うというような計画を、だれも本気にいま考えられることじゃない。だから総理も、これは個人的なことだとか、そんなことはできないとかいうことも答弁をされるようになりましたけれども、しかし、解散する前の国会を思い出していただきたい。私も質問をいたしました。総理は、まるで打ち出の小づちのように、日本列島改造論をやりさえすれば、公害も解決をする、物価も解決する、こう言っていたではありませんか。そうして、施政方針演説でもそれを入れ、列島改造予算ということばさえ出た。それをいまになって、いや、これは個人著書でございます。これは一体、いままで総理はでたらめを言っていたのかということになる。当然のことながら、これがいろいろ政府と自民党の政策になっている。あるいは、総理はきのうの答弁では、新全総あるいは国総法も同じ方向のものだということを答弁をされました。  それで確かめておきたいと思うのでありますが、この「日本列島改造論」は、新全総とそれから都市政策大綱に基づいて書いたということをきのう言われましたけれども、新全総延長線上にあり、それからその延長線上といいますか、それを基礎として経済社会基本計画ができ、そしてまた国総法ができている、こういう同一線上にあるものではないかと思いますけれども、総理見解を伺いたいと思います。簡単にお答えいただきたい。
  12. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 「日本列島改造論」というのは私の私的な論文である、ここはひとつ明確にしてください。そうしてその中には、あなたが述べたように、このままに一〇%で成長すれば三百四兆円に六十年はなります、その場合の石油をそのままに使えば七億五千万キロリットルにもなります、でありますから、クリーンエネルギー産業構造の変革や、いろいろなものをしなければなりません、それで八・五%の場合は二百四十八兆円、七%の場合は、と書いてあるのであって、その一番大きな数字だけをとって、ほかは全然削除してしまうというところに、どうもあの本をまじめにお読みになっていないということを、私は一つ言わざるを得ないのです。  もう一つは、新全総と新全総改定という作業の過程において、五十二年までの経済社会基本計画が策定されたものであるということは、事実でございます。ですから、方向としては六十年展望というものに立って一つ数字をはじき出したということは、これは事実だと思います。
  13. 松本善明

    松本(善)委員 あなたは「日本列島改造論」はそういう私論であるということを言いますけれども、経済社会基本計画は、ここにはっきり九・四%の成長率ということを書いています。それから、申しますけれども、たとえば新幹線でいきますと、これを昭和六十年度が七千キロの建設という。列島改造論は九千キロです。そうでしょう。それから高速自動車道路は一万キロ、これは列島改造論経済社会基本計画も同じです。成長率一〇%と九・四%では、ほとんど差はないです。列島改造論は一〇%。一番高いところだけ問題にされるのは困ると言われるけれども、現に経済社会基本計画内容を見れば、この列島改造論の一〇%成長率ということを考えに入れてそしてこの経済社会基本計画ができているということは明らかじゃないですか。そうでしょう。  だから私がお聞きしたいのは、新全総経済社会基本計画、これと列島改造論——列島改造論個人著書であることは、これ見ればわかりますよ。これは同じ方向のものだということをお認めになるかどうかということを聞いている。
  14. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 列島改造論は、私が申し上げておるとおり私の著書でございますし、その経済社会基本計画は私がつくったんじゃありません。これは在野の知識人を網羅いたしまして、長い間検討していただいた結果、答申を得たのでございます。この答申閣議に付議し、これをそのまま閣議了承事項とし、国会にも御提示を申し上げておるのでございまして、その過程において列島改造論が参考になったかならないか、そういうことは、私としては申し上げられるような問題じゃありません。これは、政府が設置をした審議会の結果を政府が採用したということでございます。
  15. 松本善明

    松本(善)委員 閣議決定をして、いま私が述べた数字のように同じ方向でいっているじゃないですか。  私がなぜこのことについて言うかというと、この列島改造論とかあるいは経済社会基本計画でやっていった場合に、これは資源の大浪費なんですね。そこのところをお話をしようと思いますが、新幹線で言いましたならば、いま七百キロの新幹線を、列島改造論で九千キロにする、これは約十三倍です。経済社会基本計画では七千キロにするという。約十倍です。それから高速道路、いま千キロあるのを一万キロにする。これは約十倍です、十年とちょっとの間にこれをやろうとする。新幹線は、九千キロの場合は十五兆円、七千キロの場合は十一兆円、高速道路は九兆円かかります。東名高速の実績で計算をいたしますと、九千キロの高速道路をつくる——これは列島改造論でも、それから経済社会基本計画でも同じです。そのときに、セメントは四千五十万トン、鋼材は千四百四十万トン。これはセメントだとか棒鋼、形鋼年産額の半分以上なんですよ。それから一九八五年までに、列島改造論では、自動車道路建設計画、これは九十九兆円かかります。高速道路の十倍以上です。道路鉄道工業地帯、通信その他の石油パイプライン、こういう列島改造事業ですね、これは政策化されている。それをやっていった場合には、これは資源のたいへんな浪費ですよ。こういうところに物を使わないで、そして国民生活を守ってくれというのが、先ほど私が消費者団体緊急声明として読んだ内容なんですよ。だから、この列島改造を撤回して、高度成長計画をやめるということを宣言してくれないと信用できないということを、奥さん方要求として言っているのですよ。その切実な要求に対して、総理、一体何と考えるか、このことをさっきから聞いているのですよ。逃げないで、率直にお答えいただきたい。
  16. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政治は近視眼的な問題でやれるわけありません。これから十年、百年、二百年後も日本は存在するのであります。われわれも二千年、三千年の歴史に今日を置いておるわけであります。明治から大正にかけて、鉄道は、いまの何十分の一という国民所得国民総生産の時代においても、年間千キロずつ建設をされたのであります。そこに、明治からの今日の日本工業的発展があることは、歴史的に明らかじゃありませんか。ですから、今日の段階においてスローダウンをしたり、計画を一時先に繰り延べたりすることは、これは考えなければならない問題でありますが、昭和六十年を展望したときに、いまの一億七百万人の日本人が一億二千万人になることは不可避の状態であります。いまでさえも、土地がない、物がない、交通は混雑をしておるというときに、一体このような自然発生的なものをそのままやっていけるはずはないのであります。第一、水が不足になります。電力が不足になります。いま東京に居住する人たちの公営住宅は、隣接の千葉県や埼玉県ではこれを拒否するという状態でございます。  そういう実態を前提として、昭和六十年には——国民の意識調査をやれば、八五%が大都市に住みたい、こういうような意識調査の上に立って、このままの状態を放置することはできません。水もできませんし、土地も供給することはできませんし、第一、公害の排除はほとんど不可能になるのであります。それは自動車そのものがもうすでに二千五百万台をこしておるのであります。来年の十二月三十一日になれば、強度の抑制をしない限り、三千万台をこすおそれがございます。そうすれば、いまの住宅を隣の県で拒否をするだけじゃありません。もう大都会に送る電力の用地など提供するはずはありません。そうすると、一体どうして大都会人たちが生活を維持することができるのでありますか。そうすれば、この狭い日本というものを総合的に均衡ある開発をしなければならないということは、これは論をまたないじゃありませんか。  それだけじゃありません。現在の東京や大阪や県庁の所在地のようなところにある、これはちょうど大都市のまん中にある基地と同じことなんですが、工場で公害を起こすようなものは、これは当然移転をしなければなりません。移転をすることによって、公害の分散ではなく、その過程において公害防除の施設をしなければならぬわけであります。その場合、受けざらをつくらずして、大都会から生産工場を移転させることはできないのです。それは禁止をすることはできます。いまでも、地下水のくみ上げを禁止し、昼間何トン以上のトラックの通行を禁止すれば、これは工場は維持できなくなりますから、これはもう確かにまいってしまうと思いますが、そこには相当な人たちが勤務をしておるわけであります。生活の拠点としておるわけであります。そういうことを考えれば、いわゆる国土総合開発法なるものによって、水や土地や交通網の整備をしたり、社会的環境の整備をするという受けざらを用意しないで、どうして一体大都市の過密が排除できるか。  しかも、もう一言だけ申し上げますと、いま一五%の一次産業比率がございますが、アメリカは四・四%、拡大EC九カ国の平均を見れば六%でありますから、好むと好まざるとにかかわらず、少なくとも九%、八%の人たちは二次産業、三次産業へ移動すると思うのです。その人たちがこの混雑しておる大都会に来た場合、その人たちの生産性よりも何十倍、何百倍というような国民公共負担がふえていくということは、これは自動的に計算ができるじゃありませんか。  そういう意味から考えて、私は、日本全体の資源、水も土地も労働力も資源であります、そういうものを均衡ある姿において発展をせしむる、定着をせしむるという考え方は、これは政党政派の別じゃないと思うのです。だれでもが考えなければならない問題だと、真に信じておるのであります。だから、青森県の例を引きますと、農民の六四%が出かせぎ労働者であります。ですから、これをこのままの状態で放置をするわけにはまいりません。私は、そういう意味で全国を総合的に開発をする。これは政党政派の別なく、国民の願望であり、これはわれわれの時代になさなければならない仕事である。現実的な問題と中期的な問題と長期的問題を、全く一つにして議論をするということには誤りがある。私は、少なくとも六十年展望昭和五十二年展望、そして現在なさなければならないもの——現在なさなければならぬものは、ある意味においては、逆な政策をとらなければならない場合もあります。私は、そういう意味で国土総合開発の必要性というものを、真に私たちの時代になさなければならない責任だと考えておるのでありまして、これが国民理解を得られないはずはない、私はそう信じておるのであります。
  17. 松本善明

    松本(善)委員 総理の話を聞いていますと、これは主婦の切実な気持ちなどは全然どこ吹く風と……。いま百円化粧品というのがあります。「ちふれ」というんですが、あれでさえ中身を減らさにゃいかぬという状態総理は、長期的展望政策といまの問題とは違うという言い方で逃げようとしておるけれども、そこの資源をどう使うかという問題ですよ。私は、総理答弁を聞いて、いままでの高度成長政策を反省しているなどとはとうてい思えませんけれども、具体的にお聞きしたいと思うのです。  経済社会基本計画は九・四%の成長率、これは維持できますか。いまスローダウンをしても、五年後にその最後の点が同じだということになるならば、これは最後にものすごい成長をやるということです。これは変えるのかどうか、五年後の最後の到達点は同じなのかどうか、これをお答えいただきたい。
  18. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、この計画は、五十二年を最終年度としての中期計画答申いただいて、政府はこれを承認し、国会にも提示を申し上げておるわけでございますが、おおむね九%の平均成長率ということでございます。あなたがいま御指摘になったように、ことしが六%とか五%とかということになれば、後年度が一〇%にも二%にもなるじゃないかという推論は成り立つわけでございますが、その中にも書いてございますとおり、その年度年度の財政事情というものを十分勘案しながら、合理的、効率的な進捗率をきめていくということでございますから、これは計画にあるからこのまま——社会主義経済なら、そのまま押し通すということもあるでございましょうが、そういうことは考えておりません。これは、もうその時点その時点で見直しを行なうということでございまして、理想がどんなに高くとも、現実と即応しないような政策が成功できるはずはございませんので、いまこの計画、まあ答申を得てから半歳余しかたたないときに、もう一ぺん御審議をいただくということよりも、この計画計画といたしまして、予算編成の過程において、公共負担で行なわなければならないものは、効率的に、現状に対応できるような姿勢で予算を組んでまいりますし、また、金融政策その他において、民間の施設投資その他に対しても、平仄が合って、真に当面する政策課題に対応できるような措置を進めてまいりますので、九%を、現にできない状態改定をしなさいというのが発言の趣旨だと思いますが、その計画はその計画としましても、慎重に予算編成の過程においては取捨選択をして、現状に適合する政策を進めてまいりたいと、こう考えます。
  19. 松本善明

    松本(善)委員 現実に破綻をしているものを、計画計画として置いておくというような態度ではなくて、私は、いまの現状を率直に国民に訴えて、そしてあらためて考え直すというのは自然だろうと思うのです。  もう一つ総理にお聞きしておきたいが、新全総です。新全総は、これは八%成長率ということもいわれていますが、列島改造論によれば、あなたの計算では、七・五%の成長率と書いてあります。この新全総成長率を維持してやっていくことはできますか。この新全総を根本的に再検討すべき段階にも来ていると思いますが、この点についてはどうお考えですか。
  20. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 まあ、私の著書にも、五%から一〇%に段階的に示してあるわけでございますし、いまの経済社会基本計画においては、九%平均ということになっております。また、新全総が八%程度ということを、いままでの試算ではそういう数字が出たかもしれませんが、しかし、これはこういう事態もございますので、最終的な決定までにはもっと慎重な態度で検討を進め、最終的な新全総の改訂版を公にするときには、もっと現状認識の上に立っていかなきゃならぬと思います。  ただ、ここで一言だけ申し上げておきますのは、これは社会主義国のように、一次、二次産業だけを国民総生産としてとっておりますものと、自由主義諸国は第三次産業までとっておるわけであります。第三次産業の平均率がどういうふうになるのがいいのかということは、これはなかなか議論の多いところでございますが、いま政府が企図しておりますのは、主要工業国十カ国のうち、日本を除けば九カ国でございますから、この九カ国平均というものを一つの試算のめどとしてコンピューターその他ではじいたものは一体どういう姿になるのかということを、一つの作業段階における問題として取り上げておるわけでございます。そういう面から見ても、三次産業比率が高くなっているということは事実でございます。日本の、特に北海道は五三%以上、三次産業比率が多い。しかも、一次産業比率も全国平均よりも約倍であるというような面から考えて、昭和六十年展望に一体一次、二次、三次産業比率はどのような比率が望ましいのかという問題から、まずそういう面から検討を進めなければならぬという面もあります。  それから、いまのGNPの状態を見まして、実際に物価問題等を考えるときに、一次産業や二次産業という生産部門のGNPと、まあ中国などは一次、二次産業だけでございますし、日本のように三次産業比率のGNPに対して寄与する面が非常に大きいということになると、ただ単に国際統計、IMF統計としてのGNP比較はできますが、日本にほんとうに適合したGNPというものはどういう数字がいいのかという問題もここで洗い直して考えてみる必要があるのだということで、政府内部ではいろいろな角度から検討をいたしております。  そういう意味で、いままでの、ずっとその計算をそのままとってきたGNPのやり方、九%というものがいいのか、八%がいいのかというよりも、もっと国会で、一次、二次産業の比率をこういうふうにして、しかも二次産業の内部は、いままでの重化学中心、多消費型産業でなくて、こういう年次において知識集約的なものにだんだんと移行します、付加価値の高いものがこういうふうになっていく場合に、GNPはこの年度においてこのように変わってまいりますというように、やはりまあ説得力がある、というよりも、だれが考えてもそうだろうという数字を出した、こういうことでいま政府は相当勉強しておるわけでございますので、この問題に対しては、政府が最終的にお示しできるまでの間、暫時ひとつ時間をいただきたい、こう思います。
  21. 松本善明

    松本(善)委員 私は、新全総を検討しないかということを言っている。総理、いま日本はたいへんな時期ですよ。日本総理大臣が何を言うかというのは、世界からも注目をされていますよ。ここでの議論について、その問題をはぐらかして時間をかせぐというようなことでなくて、率直簡明に、政府はどう考えているかということを、国民にわかるようにはっきり答弁をしてもらいたいと思います。私は、あなたの答弁を聞いていると、全然反省している様子はないように思います。  具体的に聞きたいのですけれども、この十一月の十三日に、石油審議会は、十四社、十六製油所に百十三万バーレルの製油設備の新設を許可いたしました。これが建設されますと、四億キロリットルを精製する。現在の二億五千万キロリットルの倍近い石油を精製するという。いまこの石油危機に、これをそのままやりますか。
  22. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あれは、大体昭和五十二年、五十三年の予想をいたしまして需給関係を想定して、その能力を確保しておこう、そういう考えでありまして、その何%を稼働するかということは、需給状況あるいは国内の諸般の情勢を見ながら、当然石油業法によって規制していくべきものであります。あのとおりフルキャパシティーをやるかどうかは、必ずしもあのとおりきまったものではございません。
  23. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つお聞きしたいと思います。  総理、苫小牧の東部の大規模工業基地であります。これは最終規模では鹿島コンビナートの三倍から四倍、これを十九日の運輸省の中央港湾審議会で認可を受ける予定だ。これは認可するつもりですか。こういう大石油コンビナートを認可していく、こういうことでいいのですか。
  24. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 この問題につきましては、管理者から計画の提出が十二月三日にございました。非常に重要な問題でございますから、今日まで、昭和四十七年の四月から、十一省庁連絡会議というものが、北海道開発庁を事務局としまして、いろいろ検討されてきておるわけでございます。したがいまして、その結果を——この十日にその会議がもう一度持たれるようでございます。政府としましては、その十一省庁会議の経過、結論、並びに港湾審議会の慎重な御審議の経過、結論を十分慎重に検討いたしまして、態度を決定いたしたいと思っております。
  25. 松本善明

    松本(善)委員 総理答弁を聞きましても、いまの答弁を聞きましても、ほんとうに大型プロジェクトはやめていく、そうして国民生活を守るという姿勢は、政府の姿勢からは全然感じられません。私は、いま国土計画につきましては、国総法を含めての撤回、そして新全総やあるいは経済社会基本計画を根本的に再検討しなければならない、そして国土政策については、ほんとうに国民の生活を守る、そして住みよい国土をつくるという観点から、あらためて民主的につくり直す必要がある、そういう時期だと思いますけれども、これは総理といつまでやってもとても反省が見られないので、次に移りたいと思います。  国総法について、総理は、これが土地問題解決のきめ手であるかのようなことを言っているけれども、私はあらためてあなたに申したい。  これを見てください。十二月三日のある新聞の全ページの広告です。「新幹線決定に沸く この土地が二十八万円で貴方のもの とんぼ返りもできる」全ベージ使って土地を買えといってやっていますよ。これは、いま日本列島改造論が落ち目だから、全ページ広告しなければ土地が売れないからやっているのだと思いますけれども、しかし、あなたが日本列島改造論を打ち出の小づちのごとく言っていた時期には、こんな広告をしなくてもみんな土地を買いあさったのですよ。いまの列島改造計画あるいは経済社会基本計画でいった場合、新幹線の駅が四十キロメートルに一つずつできるとすれば、駅が二百以上できる。高速自動車のインターチェンジが三十キロに一つずつできるとすれば、三百できる。その周辺がみんな買い占められたのです。これは列島総買い占めになる。それで地価が暴騰したのですよ。あなたに土地問題を語る資格がありますか。この地価暴騰をあおった責任をあなたは何と考えられているか、お聞きしたいと思います。
  26. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そこらが、土地の問題に対するあなたとの根本的な相違なんです。土地は需給のバランスの上に立って地価がきまるのであります。ですから、供給を抑制しておる限り、絶対に地価は下がりません。ですから、机上の論としては、都市を整備するために市街化区域と市街化調整区域をきめた線引きを行ないましたが、線引きの中の農地は二十八万八千ヘクタールもありますから、これを全部転用できるとすれば、六十年までの国民の要請はすべて片づくわけであります。ちょうど千百五十万戸をつくって、土地つきでも、二十八万ヘクタールあれば足るのでございますから、これは全部片づくはずなんです。片づくはずなんですが、どんなことをやってもなかなか市街化区域内の農地は転用されない。これは先高だと思うからでしょう。線の外には一切宅地は許さないということになっているのですから、これは一つの特権としてなかなか売らないのです。そういうところに地価が上がっておるということが一つあることは、何人も否定できない。  もう一つは、立体化をしなければならないということでありますが、立体化は日照権問題その他がある。しかし、外国で全部やっておるものが、理想的な都市づくりが、日本においてできないはずはないにもかかわらず、立体化は反対である。これは大規模の都市改造を前提としない、大規模区画整理を前提としない、都市改造だけを前提として考えているから立体化に反対しているわけですが、ほかの国は全部立体化をして、ちゃんと四〇%以上の緑化を持っておるじゃありませんか。これも反対だ、そうすれば、狭いながらも日本の土地というものを開発して提供しなければならないということになるのであって、これはもう需要に対して供給をふやさなければならぬというのは、全く初歩的な問題と私は思うのです。  もう一つは、今度の国総法に対しまして、国総法を読んでみていただけばわかりますように、あなたがいま指摘したことをそのまま解決するのは国総法に書いてあります。(「それができないのだ、あれは」と呼ぶ者あり)どうしてできないのですか。ちゃんと、知事は、インターチェンジの周辺とか、特定地域に指定することができるようになっているじゃありませんか。そうして特定地域に指定すれば、三年間開発もできないように、移動も禁止をする、いわゆる地価を凍結する法律になっているのです。そうすれば、いま、金融の緩和基調において先高になるだろうと思って買っておった人たちも、そこを全部指定することが直ちにできるわけであります。きのうも、東京湾の横断橋がもしできるとすれば、千葉県で買い占めてある土地があると言いましたが、それこそ、国総法をきょうにでも通していただけば、直ちに千葉県知事が指定すればすべて凍結をして、地主の手は、県知事に対して買い取り請求権を要求するだけしか書いてありません。あれは、皆さんがいままで長いこと言っておられたことを、あの法律の中にはほとんど全部盛ってあるのです。それでまだ抜け道があるとお思いになったら、それに対してもっと強い修正案をお出しになればいいじゃありませんか。そうじゃなく、一年間もずっと御審議をいただいておるのに対して、なぜそんな広告を出さなければならないように、またそういう広告を出せば売れるようなことを野放しにしておられるのか、私にはどうしても理解できないのです。そうでなければ、それに対応するもっときびしく取り押えられるような法律の対案をお出しになる以外にないのです。現憲法下において、国総法というものは、土地問題に対しては相当、これ以上できないと思うぐらいにきびしい規制を含んでおるものである。私は、一坪地主などをやった所有思想、憲法を守る、私権を守るという思想から見れば、これは私権制限が強過ぎるという反対こそあっても、あの法律案が何で通らないのか、理解されないのか、私のほうで理解できないのです。
  27. 松本善明

    松本(善)委員 あなたは、いま、国民の土地についての希望について全然わかっちゃいないですよ。すでに土地は買い占められているのですよ。そうして上がっているのです。すでにうんと上がっているのです。いま私たちの調査では、わずか一、二年で、全国で東京都の二倍の面積の四十七万ヘクタールの土地が買い占められたのですよ。経済企画庁の法人土地所有でも、経済企画庁でも、法人の土地所有は四十万ヘクタールだと認めています。この住宅用地という名目で買い占められた土地の面積で、全国的に判明したものだけでも五百万戸分に近い。この大企業の買い占めた土地を再配分する、そうして住宅だとか、あるいは学校だとか、あるいは病院だとか社会福祉施設だとか、そういうところに使う、もうそういう再配分という問題が問題になっている。それが私たちの共産党がいっている第二次土地改革なんです。これは賛成ですか。
  28. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 再配分をさせよう、しかも、先高を見越して買い占めた者に不当利得を得せしめないというので国総法を出したのですよ。あなたは具体論を何もおっしゃらないじゃないですか。再配分をするためにはどういたしますか。ただで引き揚げるわけにいきません。金を払わなければなりませんよ。一体これだけの土地を、金を払ってごらんなさい、対前年度比二〇%や三〇%増しの予算で済むわけはありませんよ。それは共産党的な考え方で、共産主義的な考え方で全部国有にしてしまうのだということになれば別ですよ。そうでなければ、対価を払ってやらなければいけませんじゃないですか。対価を払ってやれば、膨大もない予算になって、それこそインフレ要因になるのです。そうじゃなく、国総法では、その買い占めた土地を知事がとにかく指定をすれば、三年間凍結になって、売ることも開発することもできないようになっておるじゃありませんか。そして最終的には不当利得をあげられないように、知事に対して買い取り請求権を行使することができるということで、私権制限がきびし過ぎるという、学者に一部反対論の存在することは事実です。ただ、そのときには、あの法律の中で、これを公共の用に供する場合には、半分は交付公債で交付することができるというような修正案でもお出しになるなら、これはあなたのいま言っていることが全部できるじゃありませんか。  そうじゃなく、じゃ、幾らでもとにかく国債を出して国が全部これを買うか、地方公共団体が全部出してこれだけの膨大もない土地を買う、一体いまの時世にそういうことができるとお思いになるのですか。(「買わせたことが問題なんだ」と呼ぶ者あり)そうじゃないのです。国総法をよく読んでみれば、ちゃんと書いてあるじゃありませんか。国総法というのは、金を出さないで一定期間凍結をする、そして社会公共のためにこれを利用するということであの法律が出ていることは、よくお読みになれば十分わかるはずです。そうじゃなければ、あなたの言うように——それは言っていることはいいですよ。大企業にもうけさせない、私もそう考えているのです。もうけさせないために、税金を重課することになっていますし、今度の二法案が出れば、もっと高い税金を、超過利得は全部これを吸い上げられるような法律を、いま御提案をしようとしておるじゃありませんか。そういう問題と、国総法を見てもらってよく読んでいただければ——それはあまり完ぺきにでき過ぎているから憎たらしいという人もありますよ。しかし、これは社会公共のために土地を使うためのほんとうの実体法じゃありませんか。それをよく読んでください。
  29. 松本善明

    松本(善)委員 国総法で大企業の買い占めた土地を収用することができるか。冗談じゃないですよ。  そして私はあなたに申したいが、そんなものを買い取ったらインフレ要因になると言うが、私たちの構想では、交付公債で何年もかかって支払うという考えであります。そんなことはちゃんと考えてあります。問題は、あなたは再三、この国総法が土地問題解決のためだと言うけれども、私たち共産党が言っているような、大企業が買い占めた土地をそういうふうに使うということは、とてもできません。そして、これは条文で言いましょう。あなたの盛んに言われた特別規制地域というのは、十三条では、「土地利用の現況に著しい変動を及ぼすと認められる事業が実施され、若しくは実施が予定されている地域及びその周辺の地域又は急速に市街化が進行し、若しくは進行すると予想される地域について、」でしょう。これは列島改造の、地方中核都市だとか大規模工業基地だとか、あるいは新幹線鉄道、高速自動車道のインターチェンジ、こういうところのことでしょう。これは改造計画、開発計画に付随したものですよ。それを、土地問題解決のための法律だというようなことを言って、そしてこれを推進しよう、これはとんでもないことだ。これは撤回をして、土地問題を解決しようというなら、あらためて私たちに御相談いただけばいいのです。そういうふうにやらなければためだということを言って、私は物価問題について聞いておきたいと思います。物価について、きのう、来年の上期には正常にしたいということを言われた。あなたは、七月の五日には、九月、十月には物価が安定すると言った。十月の十一日には、十二月から来年三月には物価は安定するはずだ。十一月二十八日の記者会見では、いつごろどうなるか言えないと言った。今度は、十二月六日ですね、きのうは、来年上期には正常なものにしたい。一体、こういうことで信頼されますか。  福田大蔵大臣は、石油の問題があるので、物価安定については見通しが立たぬと言われています。福田さんの物価問題についての見通しをお聞きしたいと思います。
  30. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 本会議でお答えしたとおりでございますが、なるべく早く国際水準以下に持っていきたい、こういうことであります。
  31. 松本善明

    松本(善)委員 総理大臣物価問題についての見通し、ここでもう一度お答えをいただきたい。
  32. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 物価が憂慮すべき段階にあるということでございまして、物価抑制に対しては最大の努力を傾けておるわけでございます。私が、物価に対してできるだけ早い機会にこれを抑制したいということを述べましたのは、真にそう信じておるからでございます。また、政治的な立場にある人が、物価に対しては何年か見通しが立ちませんというようなことで、国民の信をつなぐわけにもまいりませんし、混乱を未然に防止するわけにもまいりません。そういう政治的な基本姿勢からしても、物価というものに対しては正面から取り組むとともに、国民の協力を得なければならないという立場において、一日も早く物価を安定的にと申し上げるということは、当然のことだと考えるわけでございます。  しかし、きょう経済閣僚会議で決定をした一つの参考意見を申し上げますと、ことしの七−九月における物価の急速な状態の寄与率は一体どの程度になっておるのかと申しますと、輸入物価の高騰が四九%、それから国民のトイレットペーパーや塩や砂糖にまでというような不安感からきたものが二六%、需給ギャップと通貨供給量の残高から見ますと、わずかに二六%でございます。そういう意味からいいますと、驚くなかれ、七五%という卸売り物価の押し上げ要因というものは、このようなものであるということでございます。これであるから責任がのがれられるなんと考えておりません。少なくとも、国民が動揺して、ある物に対して買いだめを行なう、売り惜しみを行なうとすれば、それに適切に行政的に対応できない責任を政府は免れることはできないわけでありますから、そういうことに対してはきびしい姿勢を持っております。  こういう数字が、少なくとも今度こまかい物資別に出てまいっておるのでございますので、だから、きのうも申し上げましたように、そういう意味で、暮れや正月に対する品物などについては、政府は安定供給を確保いたします、こう述べましたのは、そういう理由によって述べたわけでございます。ですから、いままでこう段階別で出てきた数字を調整し、誤差、脱漏等を整理して一つ数字として出たわけでございますが、いまは、どういう寄与をしておるのかというこまかい数字を積み重ねておるわけでございますので、LPGでも、またプロパンガスでも、ガルフが三倍にしなさい、これをのまなければならないということでのむということになれば、その間、流通経費を据え置きにしても、最終価格というものは幾ばくかは上がる。これは三倍にしたから三倍に全部するというのではなく、在庫数量やその他いろいろな問題等調整をしながら、これをごく低目に押えなければならないということは事実でございますが、物価に対する海外要因というような、政府だけでは——外交努力もしなければなりませんし、いろいろな問題もございます。しかし、そういう非常に予測しがたいものから来る物価もございますので、目を海外にも転じながら、ここでほんとうに国内、国外、あらゆる面からの物価対策に対して、積極的に真剣に取り組むということで御理解を得たいと思います。
  33. 松本善明

    松本(善)委員 そういう答弁では、とても国民信頼は得られないと私は思います。いま総理に聞かなければならないことはたくさん山積をしておりますけれども、私は、物不足の問題あるいは緊急政策の問題についてお聞きをしたいのですが、時間の問題もありますから、簡明にお答えをいただきたいと思います。  いわゆる物不足の問題で、この間の十二月一日のNHKテレビで、内田経済企画庁長官が、高値に安定した価格をもとへ戻してくれ、こう主婦に言われた。値段は高く上がりっぱなしじゃないか、それを戻してくれと言ったら、大体消費者が買いあさった結果なんだからと言って、何の解決策も示さなかった。ある新聞の世論調査、十一月二十七日にあれされたものでは、トイレットペーパーについて、あの騒ぎが起こったときに、いつもより多目に買ったという人は一三%です。そういう買い方をしなかったという人は六七%です。(「赤旗じゃないか」と呼ぶ者あり)赤旗ではありません。  それで、トイレットペーパー、これはなくなったからといってがまんするというわけにいかないのです。なくなったら困る。消費者はなくなったからがまんしてくださいと、これは言えないでしょう。私は、これは例として言ったわけですけれども、トイレットペーパーは、紙の全生産量のうちの二・二%にすぎない。こんなものが物不足になるということはあり得ないのです。消費者の責めに帰すべきことでも決してないのです。これを、このいまの状態を解決する、私はトイレットペーパーで例をあげて言ったわけですけれども、消費者を守るという観点で、そして売り惜しみをするとか、あるいは物を隠すとか、値段をつり上げるとか、そういう者を規制していく、そういう考え方で臨まなければならない。消費者に責任を負わせるようなことは絶対あってはならぬと思いますが、その点どう思いますか。
  34. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 品物が、いままで安かったものが高い値段でもってくぎづけになるというようなことは、あってはなりません。そういう意味で、通産省も、灯油に対しては、四百円、四百五十円、五百円といわれるようなものを、三百八十円裸で出すということでもって、業界の協力を得て、大体そういう方向にまとまりつつございます。まだ十分に話し合いが浸透していないのが四県ばかりございます。しかし、それは谷を越えてこれを配達するということになれば、百円も百五十円もかかるということもございます。まあしかし、団地に配るとすれば、五十円もかからないというものもあるでしょうから、ともかく裸三百八十円にしようということで、これは灯油だけではなく、今度の二法案を通していただければ、生活必需物資に対しての予告もいたしますし、在庫や生産量等に対しても十分国民に周知徹底せしめていきたいということでございまして、生活必需品の確保ということと価格の抑制、これは厳にやってまいりたいと思います。  いまあなたがいみじくも述べられたとおり、トイレットペーパーというもの——トイレットペーパー、トイレットペーパーと言うのはどうも気になるのでございますが、これは必需品でございますから、また、そういう事件が起きたことでありますので申し上げるわけですが、ほんとうにあなたがいま申されるとおり、トイレットペーパーがなくなるということはないのです。これは故紙を利用してもできますし、きのうも述べましたが、電電公社が、とにかく要らないともいうような職業別電話帳など、電話帳が配られ過ぎて困っておるというものをやめても、八万トンの紙がすぐできるわけでありますから、そういう面で、トイレットペーパーは確保できますということで落ちついたわけでございますが、そのように、あり得べからざることが、なぜ全国的に三日間であのような騒動が起こったのか。  これは御承知のとおり、静岡で小さなトイレットペーパー製造業者に十四日ばかりの営業停止を行なった。そうしたらその下の業者が友人から集めて販売をいたした。それが三日間に東京へ飛び、全国に飛び、特に団地がわっという間にトイレットペーパーになぜいったのかというので、いま調査をいたしております。これは追跡調査をやっております。なぜこんなことになるのか。一体塩がどうしてなったのか。砂糖というのは、十五年間も無配の砂糖会社が、なぜ一体砂糖が不足だというような——まず流言飛語、というよりも、造言飛語だと私は思うのです。そういうことをどこから一体やったのか、これは全精力をあげて、こんなことが起こったらたいへんですから、私は、そういう意味で全国的組織でいま調査を行なっております。それで、この事実は全国民に公表するつもりなんです。そうすれば、これはもう理解が得られないはずがない。あなたがいま述べられたとおりなんだ。二・二%というような、そんなものが確保されないはずがないのです。なぜ団地の方々があんなに急速に殺到したか、けが人まで出たか、このままに放置することはできないということで、これは原因、事情というものに対しては、もって他山の石となすべしということで、これからも各品目別に対して全部国民に、こういう製造工程にあります、こういう備蓄があります、経済経路にあります、なお、高く売った者は私書箱第一号に投書してください、直ちにそこには行きます、しかも、高く売った経路は全部税務調査を行ないます、こう私は述べておるのでございますから、異常な決意をもって臨んでおる、国民理解を得られる、こう考えております。
  35. 松本善明

    松本(善)委員 あなたは、高値に安定させないで、灯油で三百八十円、一生懸命やっているという。しかし、あなたは町の状態を御存じですか。三百八十円で売っているところなんてないですよ。配達料五十円なんというところもないですよ。現にどこの新聞にも出ています、いまの現状がどういうものであるか。そういうことも知らないで、高値安定はさせません。私は、そういう態度ではだめだと思うんですよ。国民がどこで困っているかということをもっともっと真剣に、総理大臣、町を歩いて聞いてごらんなさいよ。総理がそういう姿勢を変えなければならぬ。  それで、私が聞いたのは、そして総理にお願いしたいのは——私の聞いていることにお答えをいただきたい。私は、消費者を守るという観点でこの緊急政策を実行しなければいかぬのじゃないか、このことを聞いているのです。
  36. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ここでひとつ申し上げたいのでございますが、私は、この問題が起きます前から、各国の事情も全部調査をさしたわけであります。アメリカ大統領は輸出の禁止もできますし、それから物価の凍結もできますし、賃金凍結もできるわけです。新聞にもありますとおり、イギリスもフランスも西ドイツも、直ちに政府はいろいろな施策を断行するわけであります。また、国会に提案するようなものがあっても、一日か二日間でもってこれを通していただける。こういう制度と、一体日本はどこが違うのかというと、これは違うのです。これはよその国には、全部、非常の事態における強権発動法が存在いたします。言うなれば日本の総動員法とひとしきようなものが存在するのです。ただ、この発動に対しては非常に厳密な配慮を必要としておるというのであって、その発動が遺憾であったかどうかは、選挙の結果審判を求めるという、ほんとうに民主主義的な体制になっておるわけです。社会主義国は、これはいつでも統制はできますが、民主主義体制においては、準拠法なくして無断にやれるわけはないのです。  そこで、何で一体非常の事態において政府が調整権限が発動できるような法体系をやらなかったのかといったら、やったのです。それは、災害時における混乱を未然に防いだり、ぼろもうけを押えるために法律を出したのですが、私権の制限ということでいろいろな御注文があって、非常に狭い状態の現行法ができたのでございます。これは三十六年か七年でございます。この状態で、大震災などが起こった場合対応できるのかどうか、ほんとうに心もとないので、何とか国会の御意思によって、この法律をもう少し幅広いものにしたい。その法律をみだりにまた拡大解釈をして、法律の精神に反したような場合は、国民から指弾を受けるような制度があるわけでありますから、そういうことでもっと拡大をしたいということでございます。ですから、あなたがいま述べられたようなことは、現在の状態では、業者の協力を求めてやる以外にはないわけであります。もう一つは、税でもって、調査をして、そういう過超ともいうべき利得に対しては厳正な税執行を行なうという以外には、法制上の手だてがないわけであります。  ですから今度は、最小やむを得ない緊急立法で皆さまにお願いしまして、これができたら、これによってやらなければいかぬ。ですから、これはもう一日いっときを争っておるということでございまして、先ほども申し上げましたように、もう国総法さえ通してもらえば、あなた方が、買い占めた土地を全部特定地域に一時指定せよという、そういう四十七年一月一日以後法人が買い占めた土地は、全部一応この地域に指定せよという修正案も出せるわけですから、それを、一年間もずっと御審議がいただけなかった。同じように、この次の緊急立法というのも一日一刻を争う。そして、その法律ができたにもかかわらず、ほんとうに三百八十円の灯油は守れなかったというような場合には、それは法でもって指弾を受けてしかるべし、こう考えておるのでございまして、準拠法のない行為を政府もみだりに行なえないという立場も、ひとつ御理解いただきたい。
  37. 松本善明

    松本(善)委員 総理、いま私は緊急政策についていろいろ聞いているわけです。政治姿勢その他について、あなたの態度ではだめだと私は思いますが、いまの緊急政策は、政府の出しているものではいろいろな不十分な点、これではだめだという点、たくさん私たち感じます。しかし、何とか、いまの事態を乗り切るために、いろいろのことをやらなければならぬと思っているわけです。その点について私は聞いているんだから、聞いていることについて答えてもらいたい。かってなことを言わないでほしいんですよ。短い時間で、私の聞いていることに答えていただきたいんですよ。あなたは言いたいことたくさんあると思いますけれども、それはまた次の機会にしていただきたい。  私がお聞きしたいのは、価格規制その他の規制について、消費者を守る、それから小売り店いじめになってはいかぬ。これは立法していくについての基本的な考え方を聞いているのですよ。これらの法律をつくっていくということについて、このことは当然のことじゃないかということを言っているのですが、それはどうですかということを聞いているのです。
  38. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これはほんとうに、不当利得をきびしく追及することによって消費者を守る、国民大衆を守るということが主眼であります。
  39. 松本善明

    松本(善)委員 小売り店いじめになってはならぬ、これはどうです。
  40. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そのとおりでございます。しかし、そうかといって、小売り店も、わしだけは除外されるんだから、もうけてもいいんだというようなことはお考えにならないように、中小企業庁からも大いに協力を求めてまいりたい、こう思います。
  41. 松本善明

    松本(善)委員 どこのもうけを押えるか、これはなかなか大事な問題です。あなたは小売り店がいかにもぼろもうけしているように言われるけれども、九月期の決算、経常利益金を見ますと、一年前に比して石油八社は三・一倍です。鉄鋼二十六社は五・一倍です。化学三十六社は二・二倍です。繊維十二社は五・九倍です。この物価暴騰の中でもうかっているのは、ばく大な利益をあげているのは大企業ですよ。これを規制するという考え、そういうぼろもうけをさせないという考えでやりますか。
  42. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これはもう品物が不足なのだから、つくれば売れるんだというようなことで、製造業者が不当な利益をあげるということに対しては、それを容認する考えはありません。当然、最終価格を押えるということになれば、これは流通経費もきめなきゃなりませんし、だから私は、いろいろな問題があるようでございますが、一つの例として申し上げたのは、丸棒だったら、途中でもって二次加工、三次加工をやる必要はないわけです。製造業者が直接売ってもやれるわけです。そういうものならば、トン四万円のものなら、どんな経路があっても、三〇%と見れば、四万円のものは、一万二千円加えて五万二千円で渡るはずでございます。では、製造原価が四万円で押えられるのかどうかといえば、今度石油はどのくらい上がっておるか。不況カルテルをやったときの計算も私はしております。ですから、そのときから人件費がどのくらい上がり、石油がどのくらい上がり、ちゃんとコスト計算はできるわけであります。ですから、そういう意味で、それは四万円でなく四万五千円でございます、流通経費というものは、いま野菜は、生産者から消費者までいくのに約二倍半になりますが、これらの二次加工のないものは二倍であります、一、八倍のものもあります、一・五倍のものもある、これは全部計算は出ておるわけでありますから、こういうもので不当な利得を認めるというようなことは考えておりません。少なくとも緊急立法をお願いする限りにおいては、コスト計算をして、こんなにとにかく国民必需品を製造しているんだから、私の会社だけ三割配当いたします、そんなこと許せるはずはありません。そして自分のところだけは年間何十万円の臨時給与を払います、そんなことでもって中小企業が成り立っていくはずはありません。零細企業はどういたしますか。私は、そういうものに対して、今度こそメスを入れるつもりです。  だから、場合によれば、銀行には一〇%の配当制限があったわけですから、ほんとうに国民が必要とするような状態が長期的に続くとすれば、生活必需物資や、ほんとうに社会形成のために必要なものを製造しておるものに対しては、かつて銀行にとっておったと同じように配当制限を行なうということまで考えないで、国民の負託にこたえられると思っていません。  しかし、私は、戦時中の統制のように、がんじがらめの統制にすることは考えていないのです。これは自由主義経済というものの中には、すばらしい成長と今日があるわけでありますから、そういうものをちゃんと容認をして、そうして努力と節約や省資源や、いろいろなものの積み重ねの中で、すべてが国民理解を得られるようにということでなければなりません。そうでなかったら、石油が倍になったら、いまのような状態でもやっていけるはずはありませんから、そういうときに、少なくとも国民全部が、確かに末端価格は一〇%上がったけれども、石油が二倍になっているんだから、その間の合理化の結果一〇%上がるのはやむを得ないと、理解を得られるような状態をつくっていかなければならぬというのは、これは政府の責任だと思っています。これは政府だけでできる問題ではありません。全日本人の協力を前提としなければ可能なことではないと思いますが、これはきびしい態度で二法案の作成に取り組んでおったということだけは、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  43. 松本善明

    松本(善)委員 大企業の利益を押えるかどうかがきめ手になるわけですけれども、政府の考えでいくと、これはこの間公正取引委員会と通産省が覚書をかわした。法案の中には入らないけれども、価格安定カルテルという方向が考えられている。いまも総理大臣は、業界の協力を得てやりたい、それ以外にないと言われるのはそういう意味だと思いますが、これをやっていきますと、どうしても業界の中で生産性の一番低い企業のコストを基準にするということになりがちです、価格算定根拠がね。そうすると、大手で生産コストがほかのメーカーよりも低いというところがうんともうかる。鉄鋼でいうならば新日鉄、こういうところがうんともうかる。一番大きいところはもうかる。カルテルマンといわれている新日鉄の稲山さんは、そうなったらどうだと言ったら、いや、それは当然なんだ、コストを低くするために努力している企業がもうかるのはあたりまえじゃないか、こういうことを言っているわけです。この価格安定カルテルというのは、結局、一番大手がもうけて、高値で安定をさせるというカルテルになりませんか。これについての総理大臣見解を聞きたい。
  44. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 価格安定カルテルはやりません。政府がやろうとしておるのは、政府がある目的をもって行政介入、公権力の意思をもってある一つの指導行為を行なう、そして業界に対して協力を求むる、そういう行為でありまして、カルテルではありません。
  45. 松本善明

    松本(善)委員 これはしかし、そういう実際がどういうふうになっていくかという問題で、実態できまると思います。通産大臣がそう言ったからといって、それじゃ価格安定カルテルができないという保障は決してありません。実際上カルテルを容認していくことになるだろう、これは私だけじゃなくて、いろいろな人の指摘をしているところです。そしてそれがカルテルの突破口になって、そのあとにも残っていく。しかもこれを、出荷停止の権限なんかもメーカーに与えていくというようなことになると、大企業が規制していく、そういうことになっていく危険性を持っているわけです。そういうことについては、総理はどう思いますか。
  46. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 独禁法を除外したカルテルは認めるということになると、あなたの指摘されるような心配があるんです。これはやはり縦も横もカルテルを行なうということになれば、製造原価が非常に低い優良企業というものは、安く出荷できるにもかからず高い値段で出すということになるわけでありますが、そうではなくて、市況の状態や製造の状態等を見ながら、政府がしかるべく調整権を発動しようということであります。今度は、どうしても必要なものを製造するところには石油の増配とか割り当て、まあ石油、最終的にはそうなるかもわかりません。そういう配慮さえも前提として考えておりますので、独禁法は独禁法として厳然として存在するものでございますし、今度は、必要やむを得ざる事態に対処して、政府が行政的な勧告や出荷停止やいろんなことを織りまぜながら最終的な価格を引き上げていかないようにしよう。まあこれは従来からもいろいろあったわけです。非常に安い鉄鋼などが出ておったにもかかわらず、問屋が先高を見越して末端に流さない。そういうことを排除するにはどうするかといえば、行政的に、縦、いわゆる流通経路の何段階かを問わず、最終的なマージンは幾らであるということでおおむね統一しようということもあったんですが、独禁法の問題等で今日まで行なえないできたわけでございます。そこで、売惜しみ買占め法というものをつくっていただきまして、その中間段階でもって、ヘビが卵をのんでいるような状態、流通経路に物資は存在いたします、こう述べたのは、それを吐き出させるためにあの法律をつくっていただいたわけでございます。ですから、今度は、いま御指摘のような、高い状態においてすべてが定着をするということになればカルテルになりますので、そこで、弾力的に会社の事情やいろんなものを勘案しながら、末端まで正常なルートにおいて品物が流れるようにしたい、こういうことを考えているわけです。  それで、あなたが言うように、じゃ、うんと安いコストでもってつくっておるものはどうするかというなら、その場合は、国民の税金でまかなっておる公共用には材料を支給しますから、中間経路を通らないで、そのまま政府や地方公共団体に納めてもらいたいという調整権も当然起こるわけでございます。だから、そういう意味で、あなたが御指摘されるような、ここで御追及を受けるような状態ということを起こさないためにあの法律をお願いしているわけですから、これは十分調整をしてまいりたいというふうに考えます。
  47. 松本善明

    松本(善)委員 これは二法案の審議の中でもいろいろまたわが党の議員もやりますので、いつまでもやりませんけれども、この価格をきめる上での一番問題は、原価がわかるかどうか、国民の前に明らかになっているかどうか。大企業は、みんな国民が困っている中で、先ほど申しましたように非常に大もうけをしておる。原価は幾らで、どれだけもうけているのかということが国民の前に明らかにならないと、こういうことが起こるんだと思うのです。原価を公表する。あるいは在庫が隠されている、物不足で大企業が買い占めているとか、LPガスについてはそういう話があります。そういう在庫を公開さす、そういうことができるようにする考えはありますか。
  48. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 法制の各個条、また適用の状態等、私もまだつまびらかにいたしておりませんが、しかし、あの法律を必要としておるという事態は十分認識しておりますし、あの法律を作成する段階において考えましたのは、結局、あの法律がない現在、どうするかということを想定して考えましたことでございますが、輸入しておる原材料は十分わかっておるわけです。これはもう日報でもってしごく明確な数字になっております。これは国別、業者別、日付別に日本は統計数字をぴしっと持っております。稼働しておる電力の使用料も日数も全部承知しております。ですから、どの程度に原材料は入り、どの程度稼働し、製品がどの程度に出庫されたかということは、在庫調査が行なわれておるわけでございますし、毎月毎月の在庫月報は公にしておるわけでございます。ですから、この品物がどこかにあるんだということはよくわかります。また、税務調査でも行なえば直ちにわかるわけであります。ですから、そういう意味で、これはもうことしの九月の決算では、在庫に対してはすべてのものが税務署に届けられておるわけです、これは小さい業者は別でございますが。そういう意味で、押え得る時点は何段階もあるわけでございます。  ですから、今度、売惜しみ買占めの法律にこの新二法を付加することによって、途中で抱いておるというようなものもなくなると思いますし、また、先高を見越して、これを一年間ばかりの間に中間経路で抱いておって、今度政府が二法を出してうんと低い価格で締められるので、この赤字はどうしてくれるのだというような事態の存在することも承知しております。そういうものがすべて正規な経路に乗るように、乗せるようにということを目的といたしておりますので、主要なものに対しては、どのくらい入ってきて、どのくらい生産をし、どのくらい在庫があって、どれだけが流通経路にございますということは、国民にPRをするつもりでございます。これはもうちゃんとそういうことをするつもりであります。(「原価は」と呼ぶ者あり)  原価の問題は、おおよそのもの、国民理解できるものは、これはもう通産省でも承知をいたしております。承知をいたしておりますが、これは事実みんな違うのです。これはあなたがいま申されたように、大手のコンベア式な新設備でやっているものは非常にコストが安いというのもあります。そのかわりに給与は高い。だがしかし、平炉メーカーでもって、特に中小企業などは、賃金は安いかわりに、金融コストが高いので非常に高くかかっておるということもございますから、これは一律に幾らというわけにはまいりません。でありますから、公定価格をきめることはむずかしいというのはそこにあるわけでございます。戦時中のように、資材から原料からすべて切符でもって配給され、賃金が凍結をせられておった当時とは全然違います。平均的給与は統計数字も出ておりますけれども、これは全部違うわけです。年齢別構成も全部違うわけですから、公定価格をきめなければならないというときになれば、そこまで掘り下げなければならぬので、それはいまの官吏を倍にしなければできないということで、そうではなく、やはり国民のこの事態認識に立っての協力を前提として、政府も可能な限り最大の調整権を発動するということ以外にベストの手段はないのだ、こういうことでありまして、生産原価を一つずつ全部計算をするということは、それは皆さんでもおやきにならない。ですから、これは国民が、不当な利得を得ておらぬ、これが正常な原価と認められるという程度のものは、これは行政府においてもつかみ得ると思います。
  49. 松本善明

    松本(善)委員 私がお聞きしたことに端的にお答えいただきたいのですが、それは大企業について原価を公表させる、公開をさせるというような立法措置をとる考えがあるかどうか、そういうことです。
  50. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、法律で公開をさせるというようなことが一体必要なのか、できるのか、それは非常にむずかしい問題だと思います。それはとても——原価をということになれば、これは銀行が金融コストというものを行別に全部公表しなければならぬ。そういうことが一体どういう効果があるのかということになりまして、だから、法制上はむずかしいと思います。
  51. 松本善明

    松本(善)委員 原価を公開するということは、先ほど申しました消費者団体要求しておりますし、みんな要求しております。アメリカのキーフォーバー委員会が原価を調べたときの議事録の写しがありますけれども、企業秘密ということをちゃんと書いてあります。トレードシークレット、そういうものが議事録についているんですよ。アメリカでさえやっているのです。この企業秘密の中に入って大企業にもうけさせないというやり方をやっていかないと、これは価格統制をやって大企業だけがもうかる。戦争中そうだったでしょう。そういうことになってくる。そこのところの強い決意があるかどうかが、これがほんとうに国民のための価格規制になっていくかどうかということの中心だと思う。その考えはないということですか、あらためてお聞きします。
  52. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 どうもあなたのお話を聞くと、いつでも大企業、こういうことでございますが、昔のように六〇%も支配権を持っているような大企業は、日本には存在しないのであります。東京電力であろうが、新日鉄であろうが、みんな国民が株主になっておるのであって、観念的な共産主義の、昔のような事態で独占資本、大資本、大企業というようなことは、どうも私にはぴんとこないのでありますが、いずれにしても、いま御指摘になったのは、一般の製造業者よりもコストが低く製造ができるような組織、強大なる企業、こういうことだと思います。こういうものに対して、これは千差万別でございますので、これを法律で規制するということはできません。できませんが、ただ、もうかるものは何にでも使って、損金に落としてしまって税金を払わないようにするという抜け道があれば、これはたいへんでございますから、税においてはきびしく調査をいたしておりますので、これはもう抜け道もありません。利益があがれば税として国にちゃんと収納する、こういうことでございますので、法律で原価を出せ、こういうことはむずかしいし、むずかしいものはできないということになるわけであります。
  53. 松本善明

    松本(善)委員 大企業大企業と言うのはおかしいと言われるけれども、十一月二十七日、石油連盟、日石など十三社に公取が調査に入ったでしょう。それから二十九日には塩ビやポリエチレンなどのメーカーに入ったでしょう。あるいは精糖各社にも入っています。大企業が価格のつり上げあるいは売り惜しみをやっている、これはもういままでの事実で明白ですよ。私は、総理のいまの答弁を聞きますと、やはり大企業本位政治をやっている、これを自白したようなものだと思う。それではだめだと思います。  もう一つお聞きしたいのは、価格の引き下げ命令、これはもう奥さんたちみんなの要求です。価格の引き下げ命令。これは横浜で、きのう、おとといですか、奥さんたちがデモをやっている。それは、価格を九月一日以前の状態に戻せというのです。灯油は三百五十円以下で売ってくれ。そういう要求にこたえて、価格の引き下げ命令を立法措置でやるということは考えませんか。
  54. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 原油の値上げがだんだん月を経るに従いまして出てまいりまして、したがいまして、原油の公示価格で上げられた分だけは、やはり価格として将来は見てやらなければならぬ事態になると思うのです。でありますから、そういう場合にはやはりある程度価格が上がっていくということもやむを得ない。しかし、これは合理的なものでなければならない。  今度提出いたします法案の中でも、標準的価格というものをきめる場合には、そういうような購入の原価、そのほか、たとえば適正利潤、あるいは国民経済に対する影響、そういう諸般のものを考えてその標準価格というものをきめる、そういうように法文上もなっております。われわれが自由主義経済を維持して、価格メカニズムあるいは市場機能というものを尊重してやっていくためには、そういう考え方でなければ経済は生きていけないものであります。もし硬直した態度で統制ばかりでやろうという気持ちになると、商品が店頭から姿を消してしまって、かえって消費者が困るという現象が出てくるわけであります。共産主義社会で権力的に上からやるというなら別でありますけれども、われわれが市場経済と国民の協力を求めてやろうという限りには、ある程度の適正な利潤も認めて、再生産可能な方策をしてやらなければならないわけであります。しかし、不当なもうけは許さない、そういう意味において課徴金制度その他も考慮しておるわけであります。  でありまするから、もしそういうような不当な利潤、不当な利益がそこに含まれていると考えられる場合には、引き下げを指示し、これを実行させるように、たしか法文上もなっていると思っております。
  55. 松本善明

    松本(善)委員 まあ総理も言われるし、通産大臣も言われるが、社会主義国だとかあるいは共産主義国だとか言われて、外国の例を引き出してそんなあいまいなことを言っていますけれども、いま日本で問題になっていることについてまともに答弁できないから、そんなことを言うのだと思うのです。私は、そういう不誠実な態度はやめなければならぬと思うのです。価格の引き下げ命令、そういうことを要求しているのは共産党だけじゃないのですよ。地婦連、主婦連、何でもない奥さんたちが、もとの値段に戻してくれと言っているのですよ。それに対して政府は全然こたえる気はない。私はちょっとむずかしいと思います。これは二法の審議の中でもまたやると思いますので、この程度にします。  もう一つ大事なのは、国会が国権の最高機関として、この事態について、やはり証人喚問とか、あるいは資料の提出とか、これは憲法でもきまっていますし、それから法律もできているのです。これを私たち要求してきました。共産党は、もう常設的な調査機構を持って、こういうものはずっと国会はやらなければいかぬと思っているのですけれども、そういう証人喚問なんか要求すると、自民党の皆さんは反対される。  私は総理にお聞きしたいのは、自民党総裁としての田中さんが、これは自民党としても積極的に協力をして、そういうように証人として喚問する、資料も提出させるというふうにしなければならぬと思いますが、その点について総理の考えをお聞きしたいと思う。
  56. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国会は国権の最高機関でございますし、国政調査権を有するわけでございますので、あらゆる問題に対して、各省庁よりももっときびしく、広範にしさいな調査ができる権能をお持ちになっておるということは、もう申すまでもないことでございまして、国会調査を行なうということに対しては、全く異議はございません。ございませんが、参考人招致とか、それからそういう権限の発動というものは、これは国会運営の中でお話の上きまる問題でございます。私が多数を持っておって、いっときも早く通していただきたいとるる述べておる国総法でも、一年有余にわたってどうにもならないのでございますから、国会運営はやはり国会におまかせしておるということでございまして、これは国会でもって十分御相談の上しかるべく措置されるということが望ましい、これはもう私はそういう考えでございます。私がただ自民党の考えだけでやれるなら、もうほんとうに責任をとって、最終的責任は国民判断にゆだねることにいたしまして、それは小選挙区法でも何でもさっと出してさっと通していただくことになりますが、そういうわけにはまいらないのが国会でございますので、どうぞ国会で十分御相談の上、権限の御発動をいただきたい。
  57. 松本善明

    松本(善)委員 結局、いまの証人喚問などについての事態を改善しようという意思はあまりおありにならぬようですね。  個々のいまの緊急な問題について若干お聞きをしておきたいと思うのですが、米軍と自衛隊が、これは一〇%削減からも除外されている。これはたびたび、きのうも聞かれて、中曽根さんが答弁をされたことについては知っておりますけれども、この米軍と自衛隊が使っておる石油ですね、百五十一万キロリットル、これをやめると、農業用ハウスは、いまメロンだとか、いろいろなものが困っていますね、その分の全需要の七カ月分ですよ。漁民がスケソウダラをとりにいくといっても、油がない。これが困っている。その全需要の三・五カ月分です。それから、電力にするならば、全国の三千二百万世帯が使う電気の一カ月分です。ふろ屋もときどき休んでいますけれども、ふろ屋さんの全需要の一年半分です。皆さん、この米軍に対する供給をとめるとか、自衛隊の演習をやめるとかいうふうなことについて全然積極的でない。私はそういう政治姿勢じゃだめだと思うのですけれども、これは改める考えはないかどうか、あらためてお聞きします。いままでどおりの答弁であったら、もう聞いていることですから、けっこうです。この国民の切実な要求にこたえないというんなら、こたえないでいい。お答えいただきたい。
  58. 大平正芳

    ○大平国務大臣 在日米軍の油の使用量は、本年の一月−八月の八カ月におきまして五十五万トンと承知いたしております。政府石油緊急対策をとることになりました段階におきまして、米側に問題を提起いたしたのでございます。米側といたしまして、わが国の事態につきまして理解を示し、すでに節減措置をとられておるやに承知いたしておりますが、事態は、仰せのように深刻な事態でございまして、引き続き日米間でこの問題について調整を進めておるわけでございます。  ただいまの段階で申し上げられますことは、米側として十分理解ある態度でこの問題に取り組んでおりますということは申し上げられると思います。
  59. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私どものほうは、一般官庁営繕についても同じようにやっておりますし、部隊の演習その他についても、同じように一〇%削減を目標に具体案を練っております。一般官庁で冬二十度Cに保つという場合であっても、われわれは、部隊を十八度Cに引き下げておりますので、したがって、防衛本庁を含めて、われわれ自身も、他の官庁と違って十八度Cでがまんしようという姿勢を示しております。  さらに、演習等については、極力移動その他の回数も少なくするし、また、海域、空域等についても、海域等についてはなるべく近いところで、しかも経済速力で空も海も陸も演習をする、あるいは演習の回数等も、実動演習をなるべく指揮所演習等に切りかえる、近距離間の演習場については徒歩で移動する、あるいは演習場について往復の回数を減らすというようなことについて協力しておりますし、それらの通達を、陸海空それぞれの幕僚長通達、並びに、私が指示いたしました陸海空を通じての事務次官通達というもので具体的な実施に入っておりまして、自衛隊については、その使命の重大なことは当然でありますけれども、しかし、一般の考え方としては、憂いも国民に先んじて自衛隊がまず実施するということで、われわれはその具体的な計画を遂行しております。
  60. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つLPガスの問題ですが、これはいま個人タクシー人たちが並んで交通渋滞まで起こしておるという状態で、個人タクシー人たちや交通労働者の死活の問題なんで、緊急の対策を立てなければならぬ。これはLPガスを大企業が買い占めているということをいわれています。これについての緊急の対策をお聞かせいただきたい。
  61. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大衆交通手段を確保するという内閣の基本的な政策もありまして、われわれとしては、バスあるいはタクシーにつきましては、できる限りの油及びガスの供給を割り当て、または融通するように心がけております。  一部のガソリンスタンドにおきまして個人タクシー等の混乱が起こって、まことに申しわけない次第でありますけれども、まあ、いままでガソリンスタンド等におきましては、常連と申しますか、長期契約をやった人にはわりあいに、いままでのそういう関係もあって、契約どおり履行する。しかし、スポット買いで来るのが個人タクシーにはわりあいに多い。そういうわけで、どっちかといえば、長期契約でやっている人よりも、優先順位をあとにされたという気配があるわけです。しかし、個人タクシーの場合でも、あれは生業にしている非常に大事な職務でございますから、そういうことをできるだけ排除して正常に戻すように私たちもいま指示して、いずれ近く正常になると思います。
  62. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つお聞きしたいのは、身体障害者が、車の油がなくて、売ってもらえなくて、病院にも行けない、仕事にも行けない、それから買いものにも行けない、こういう悲惨なことが起こっているわけです。いま、社会福祉の問題というのは、物価問題を解決しなければだめだというぐあいに、こういうところにしわが非常にいっている。少なくもこの身体障害者用なんか、最優先に確保しなければならないと思いますけれども、この点についてはいかがでしょう。
  63. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 内閣の決定でも、先ほど申しました中に医療関係ということもございまして、身体障害者を優先するということは同感でございます。
  64. 松本善明

    松本(善)委員 この優先の問題の中で、ひとつ紙の問題を伺いたいと思うのです。  いま新聞用紙の削減が、ひどいところは、大王製紙の場合、五〇%削減になっているということが報道されています。三〇%の削減は必至だというのです。大体そういう状態になりますと、夕刊が出ないということまでいわれている。これは言論の自由を守り、民主主義を守るという観点では、この新聞用紙の確保というのは非常に重要な、優先的に確保すべきものだというふうに思うのですけれども、この政府の需給調整法の十条で、いま中曽根さんたびたび言われている条項ですが、公益性が強いということで、この新聞あるいは出版用紙、そのための製紙はそこへ入れてそして確保することを貫くということがどうしても必要だと思いますけれども、その点について、総理、どうお考えでしょうか。
  65. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点につきましては、新聞協会からも御陳情がございまして、もっともな話でございます。でございますから、できるだけ言論機関に対する用紙の配当は尊重してもらうように、業界を指導しております。
  66. 松本善明

    松本(善)委員 この言論の自由の問題、民主主義の問題、非常に重要なんですが、この際、ひとつ自由という問題について、総理にちょっと伺っておきたいと思います。  それは、衆議院の本会議で、総理は、韓国は自由と民主主義を目ざす国だということをお答えになっております。これは、総理が、一体自由とか民主主義というものを何と考えているのだろうかということを、国民にいろいろ考えさせる、非常に重大な発言だというふうに私たちは見ているのです。アメリカの上院外交委員会の報告、いわゆるフルブライト委員会ですね、ここでも、市民の自由に対する抑圧は、李承晩時代以来のいかなる時期よりも韓国ははなはだしいと、こういっているのですよ。それから、金大中事件でも日本国民みんな感じました。生命、身体の自由が外国で脅かされる、いまだに犯人も処罰されない、これが韓国です。十一月二十九日には、韓国記者協会が、「報道活動に対する内外の不当な制裁は排撃する」と決議をやった。十二月の五日には、韓国の新聞編集人協会が声明を出して、「言論統制は無謀」と、こういっている。国家保安法だとか反共法だとか中央情報部法、まるで治安維持法下の日本あるいはそれ以上だというような、自由が全くない。それでいま戦われている状態です。これが自由と民主主義を目ざすという社会ですか。総理、その真偽を伺いたいと思うのです。
  67. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 韓国は、御承知のとおり、選挙を行なって、選挙で政府を選ぶという制度をとっております。国民の意思によって政府が選出をされるわけであります。まあそういう意味で、自由主義、民主主義、投票制度を前提としておるということは、もう申すまでもない事実でございます。そして韓国自体の制度、憲法、法律、その他すべての制度を見ても、自由を守り、民主主義体制を確立していくと、こういうことを明確にしておるわけでございます。そういう意味で、世界に百四十五カ国も存在いたしますが、選挙のない国もございます。そういう国々といろいろな比較をしてみても、自由主義、民主主義を守る国である、こう申すのは当然だと思います。  建国歴史なお浅いということから考えて、その過程にいろいろな事態が起こり得ることも、これはあり得ることでございます。しかし、高い理想に向かって、自由主義、民主主義の国を築いていこうという努力を続けておる韓国民の熱意というものは、そのまま評価をすべきである。私は、アメリカの雑誌がどう書いたとか、アメリカの委員会でどう言われているとかということとはこの問題は別な問題であって、隣国であり、歴史的なつながりを持つわが国として、韓国を評価するときに、自由と民主主義の旗のもとに建国に努力を続けておる友邦である、こういう判断は、全くそのとおりだと信じております。
  68. 松本善明

    松本(善)委員 あなたは、選挙になりますと、共産党が出てくると自由がなくなるとか、自由社会を守れとか、声を大にしてやられますが、この自由社会を守れと言われるのは、こういう韓国のような社会も守る、こういうことですか。
  69. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 どうもあなたと私とは、韓国に対する次元が違うので、ものさしが違う。あなたは初めから、韓国は自由主義、民主主義の国ではないという断定のもとに申されておるのでございますが、私は、いま述べたように、自由と民主主義の旗のもとに高い理想に向かって建国にいそしんでおる、こういう事実は、友邦としてはちゃんと評価すべきだと思っているのですよ。ですから、アメリカの委員会がどう言おうと、アメリカの雑誌や新聞にどう書いてあろうとも、友邦である韓国は、ちゃんと選挙もやって、民主主義と自由を守るために努力を続けておるじゃありませんか。そういうことを私はすなおに認めるのであって、一つの現象をとらえて、あなた、それが定着することがいいのですか、こう問われても、どうもそのままお答えができにくいということは御理解賜わりたい。
  70. 松本善明

    松本(善)委員 私は、たいへんあきれているのでありますが、ついでにお聞きしておきますが、読売新聞のソウル支局が閉鎖をされました。あれはそのままですか。どうなっています。
  71. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだ再開に至っておりません。
  72. 松本善明

    松本(善)委員 こういうことを再開させろ、そういうために戦う、一生懸命やる、それが自由や民主主義を守るということなんですよ。それをやっていない。いまだに再開してない。これは自由のない国ですよ。総理、何と思います。
  73. 大平正芳

    ○大平国務大臣 再開の要求はいたしておりまするけれども、外国のことでございまして、私どもは指示するわけにはまいりません。
  74. 松本善明

    松本(善)委員 総理はどう思いますか。
  75. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 読売新聞という一社が駐在を許されておらないということは、いいことじゃないと思うのです。ですから、外務省を通じて折衝を続けておるわけでありますから、可能な限りすみやかにまた支局が開設できるように願っておるわけでございますし、また、おりを見ながらそういう折衝も続けたい、こう思うわけでございます。  ただ、どこの国にも、国外退去とか、認めない場合もあるわけでありますから、そういうような、日本でも、望ましくない行動があれば、これは国外に出てもらわなければならない、支局を閉鎖してもらわなければならないという場合も、これは当然あり得るわけでございます。しかし、読売新聞がどういう事情でもって支局閉鎖になったか、私も詳細はつまびらかに承知しておりませんが、まああのような段階で支局閉鎖になったことは遺憾であるということで、日韓間では大いにひとつそういうことのないようにしてもらいたいと……。  私は中国に参りましたときも、何でもひとつ日本の報道人というものを、社を問わず入れてもらうということが、日中間の相互理解を深めるゆえんであるということで、できるだけのことをいたしましょうという好意ある発言を受けておるわけでありまして、どこの国でも、体制が違っても、社会主義国であっても、どこの社でもやはり入れるということが望ましいということで、これからもひとつ折衝を続けたい、こう思います。
  76. 松本善明

    松本(善)委員 まあ読売新聞の問題は、一生懸命やらなければならぬと思うのですが、やはりそういうことをやっている国を、自由と民主主義を守る国というふうに考えているという総理の考え方については、私は重大な問題があるということを申しまして、このエネルギーに関する内外の政策について若干お聞きをしたいと思うのです。  日本石油の中東依存は、全需要の大体八五%という状態です。世界の石油の確認埋蔵量を見ますと、六一%が中東だ。北アフリカを入れますと七〇%以上中東です。今後の展望を見ました場合に、中東との関係というものは、一時的に特使を派遣をしたというようなものでは済まないのですね。なぜ今度日本に対してアラブ諸国がきびしい態度をとったか、ここはやはり深く考える必要があると思うのです。  キッシンジャー国務長官が十一月二十一日にワシントンで記者会見をやって、日本のことに触れて、米軍の駐留という事情によってもたらされた困難が日本の場合だ、はっきりそう言っておるのです。アメリカとの軍事同盟がここへ響いているわけですよ。これはもう明らかだと思うのです。  こういう中東との今後のことを考えたりいたしますと、これは平等互恵という立場で、帝国主義的な圧迫だとか、あるいは経済侵略だ、そういうような立場を捨てた、ほんとうに平等互恵の自主的な立場、そういう外交姿勢というものがどうしても必要なんじゃないか。安保条約をやめて中立の日本にしなければならぬということを私たち言っておりますが、それは一時的なものではない、日本の長期の将来のことを考えた場合に、そういうふうにしなければ主権回復も成功しないのではないか。その点についての根本的な考え方を、総理にお伺いしたいと思います。
  77. 大平正芳

    ○大平国務大臣 中東原油に日本が大きく依存しておるという事実は、中東紛争が始まる前からも、現在も、また将来も、大きく変わっていないわけでございます。御指摘のように、速成の手段でもって中東各国と日本の友好関係が目立って改善ができるという幻想を政府も持っていないわけでございまして、仰せのように、不断に努力が必要であると思いまして、今度三木特使の派遣も、これによって大きな成果を幻想するのではなくて、われわれがやらなければならないことを緊急にやる一環の外交的努力として御理解をいただきたいと思います。  それから、わが国とアメリカとの同盟関係が、中東諸国のわが国に対する態度に決定的な影響を及ぼしておるのではないかという松本さんのお考えでございますが、私はさように考えておりません。わが国の中東諸国に対する関係は、これまでも良好でございました。わが国は中東地域におきまして幸いにして手をよごした記録はないわけでございまして、安保条約をアメリカとの間に持っておるからといって、そういう不幸な関係はなかったわけでございます。そういうことではなくて、今度の中東紛争の解決にいたしましても、米ソ両国、とりわけ米国の役割りというものは、御案内のように大きいわけでございまして、むしろ逆に、日米間が濃密な関係にあるゆえをもちまして、アメリカ側に強く紛争の解決に努力を要請することによって、事態の解決を促進する立場にあるのではないかとさえ思っておるわけでございます。
  78. 松本善明

    松本(善)委員 アメリカに依存をしてやっていくというやり方では、私はとてもだめだと思います。アメリカは、この間、十一月二十八日に、モートン内務長官が、日本はアラスカの石油を得ることを期待すべきでない、日米経済協力などといっても、日本が困っても、アメリカから石油を回すなどということは全然考えないということを言っております。  私は、なお聞きたいのは、十月二十五日に、中東戦争のときに、アラブ諸国を脅迫するために全世界の米軍が警戒体制に入ったでしょう。これも、本会議以来いろいろ聞かれておりますけれども、日本に通告なしに警戒体制に入っておる。こういうことを認めていけば、アメリカの戦争に日本は自動的に参加させられるということになりますよ。それについて日本政府は何の抗議もしない。そういうようなことが、日本というのはアメリカと一緒なんだ、アメリカがイスラエルに軍事援助をやっておる、こういう関係がアラブ諸国に響いているのはあたりまえじゃないですか。何で抗議しなかった。この事態については何と考えておるか、お答えいただきたい。
  79. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘のように、十月二十五日アメリカ軍に対しまして警戒体制がとられたわけでございまして、しかしながら、これは日本ばかりでなく、NATO関係国に対しましても、どこに対しても事前の通告はございませんでした。十六日になりまして事後の通報を受けたわけでございます。これは、申すまでもなく、日本ばかりではございませんで、NATO各国にも同様の措置がとられておるわけでございまして、日本だけをシングルアウトして事前通報をしなかったというものでないことは御承知願いたいと思います。  しかしながら、松本さんおっしゃるように、こういう問題安保条約上のそういう義務がアメリカにあるとは思いませんけれども、しかし、当然のこととして事前に御相談があってしかるべきことではないかと私は思うのでありまして、二十六日、即刻アメリカ側にそういう要請はいたしておきました。
  80. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つお聞きしておきたいと思いますのは、この新興独立諸国が、一九六三年、六五年に提出いたしました天然資源の恒久主権決議というのがありますが、国連に出したこの決議、これに日本はアメリカに同調して棄権をしているわけですね。こういうようなアラブ諸国の民族独立の要求、これをさかなでするような態度を根本的に改めなければならぬ、そういうことが必要だと思うのですけれども、この態度は変えますかどうか、伺いたいと思います。
  81. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 お答えいたします。  ただいま御質問にありました国連関係会議における決議におきまして日本が棄権いたしましたのは、決議の内容に、一つ二つ日本の国際会議においてとっておる立場と関係する事項があったからでございます。その一つは、資源保有国たる開発途上国に外国から投資がございます場合に、資源保有国は恒久主権があるという理由から、これに対して、国有化といいますか、資源保有国の都合で国有化する権利があるのだという点が一つでございます。しかも、国有化する場合、その手続といいますか、それは全く資源保有国の法律によって一方的にやるのだという考え方が、一つ日本にとってのみにくいということ。もう一つは、開発途上国が、恒久主権の対象としまして、単に地下資源だけでなく、相当広い水域にわたりまして、その水域の中にある資源も開発途上国の主権の対象に入るのだという点が、国連関係諸会議におきます海洋資源に対する日本の考え方と若干関係がございますので、この二つの点がのめないということから、棄権いたしたのでございます。
  82. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 松本君に申し上げますが、時間が来ておりますから、どうぞ端的にお願いいたします。
  83. 松本善明

    松本(善)委員 いろいろ聞き残している点もありますし、それから石油偏重のエネルギー政策を改めて、そうして国内資源の開発を考えなければいけないというような問題についても聞こうと思いましたけれども、今後各委員会の審議もありますし、それから二法の審議もありますので、そういう中で詰めたいと思いますけれども、私は、やはりきょうの質疑を通じまして、高度成長政策の根本、大企業本位政策というものを変えようという考えはないということを痛感いたしました。それから、いまの対米従属という姿勢、これも変わらないということを痛感いたしました。もちろん、緊急政策、いますぐの国民の要望にこたえる点については、私たちも一生懸命にやらなければならないのですけれども、これはいまだけの問題にとどまらない、長期的な展望日本経済を考えなければならない、日本の外交を考えなければならない重大な問題だと思います。そういうことについて言うならば、田中内閣の姿勢というものはとても国民の負託にこたえるものではない。私は、できるだけ早い機会にこの田中内閣は退陣をして、そうして新しい政治をつくっていかなければならないということをほんとうに痛感をいたしました。  このことを最後に述べまして、私の質問を終わります。
  84. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時八分休憩      ————◇—————    午後一時三分開議
  85. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  86. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、公明党を代表いたしまして、ここで若干の御質問を申し上げたいと思います。  まず、現在の政治信頼を取り戻すことがなければ、この重大な局面を乗り切ることはできないと私は思いますし、その点は総理も御同感であろうかと存じます。私は、非常に不愉快に思っております二、三の点について最初まず申し上げたいと思います。  それは、先日、総理及び大平外務大臣がヨーロッパを回られてソ連に行かれました。そして日ソ共同声明というものを結んで帰ってこられました。その間の御苦労は多とするわけでありますが、日ソ共同声明が日本文とロシア文と大幅に間違っておる、こういう前代未聞というか、空前絶後の失態が起こっているわけであります。それについてどうお考えになっておられるのか、私はまずお伺いを総理にしたいと思うわけであります。
  87. 大平正芳

    ○大平国務大臣 渡部さんが御指摘のように、日ソ共同声明でロシア文と日本文との間に相違がございましたことは、残念ながら御指摘のとおりでございます。これは、共同声明作成から調印に至るまでの時間的制約の中で行なわれたものでございまして、全く事務上のミスでございます。しかし、事務上のミスといえども、そういう問題を起こしましたことにつきましては、たいへん遺憾に思っておるわけでございまして、事後の収拾について怠りなきを期するとともに、事務全体のモラルの維持と確立につとめてまいっておる次第でございます。
  88. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま外務大臣が述べたとおりでございますが、ざっくばらんに申し上げますと、今度の日ソ首脳会談は、お互いに十七年ぶりで隣国である日ソの間で隔意のない話し合いをしようということでありまして、共同声明の必要性ということも、従来この種の会談で共同声明がつきものであるということはわかりますが、話の初めは、とにかくお互いに隔意ない意見の交換をしよう、フランクに話しましょう、言いにくい話でも、国を代表してお互いが話をするんだから、十分ひとつ話をしましょう、それで、共同声明というものがほんとうに時間的に間に合わなければ、飛行機の中でもいいじゃないですか、まあそういう話の過程で、ヤルタ協定などは、署名だけやっておいて、内容はあとから書いたんですというような話までざっくばらんに出ながら、胸襟を開いての会談をしたわけでございます。それで、これは両国の問題でありますから、どちらに責任があるというような問題が起こっては困りますので、そういうところは注意をしながら発言をしたいと思いますが、問題は、共同声明の有無にかかわらず、確認事項になっておるのであります。  それで、複数にするか——諸懸案という複数にするものを、領土問題に限って単数にするという主張を私がしたわけでございますが、しかし、じゃ、安全操業や墓参の問題などは要らないんですかというような話し合いまでざっくばらんに出まして、では諸懸案の諸で、複数でけっこうです、しかし、この中には、領土問題、四つの島の名前をあげまして、これを含むということを確認をして、会談が時間一ぱいかかったということでございまして、こちらと合意をしたソ連の案文にはちゃんと書いてございます。ですから、全く事務的なミスと外務大臣は述べましたが、しかし、両方が合意をしたものを正文として交付をしてくるには、一日間事務当局を残してやってくることがよかったかもしれません。そういう意味で、すなおな立場で、遺憾でございましたし、以後そういうことのないように十分注意をいたします、こう申し上げておるのでございますから、事情は了解賜わりたい。
  89. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、このように、私の調査によりますと、とんでもないほどにたくさん間違いがあります。外務省がお認めになったものだけでも実に三十一カ所、私の調べたものでも、それに加えて十カ所、合計四十一カ所間違いがあります。一つや二つの問題じゃないのです。こんなに間違って、事務上の手続なんて言えますか。ごまかすのもいいかげにしてもらいたい。タイプミスだなんて前は言われたんです。タイプミスなんかじゃない。そんないいかげんな話なんてないですよ。どうしてこんなに間違ったのか。総理と外務大臣はその間違いを承知の上で判を押されたのかどうか、まずそれから伺いたい。
  90. 大平正芳

    ○大平国務大臣 われわれの調印は、日本文、露文、違ったままの状態において調印いたしたことは事実でございました。そういう案文上の相違がある、修辞上の相違があることをわれわれあらかじめ知って調印したわけではございません。ただ、日本文と露文との間には修辞上の相違が多くございまして、これは渡部さんも御理解いただけることと思うのでございます。それからまた体制上の相違もございまして、これは日ソ両国で理解ができる部分もございます。その他の部分につきましては、私が申し上げました事務上のミスにすぎないものと私は判断いたしておるわけでございまして、それにつきましての事後処理につきましては、日ソ双方合意の上、処置をいたしてございまして、国益をそこなうようなことは一切いたしておりません。
  91. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまおっしゃいましたけれども、修辞上の問題点というのはほんの二、三カ所なんです。数をごまかすことはないじゃないですか、ほんとうに。しかも重大なことは、田中総理、これはほんとうに御存じなかったのですか。いま田中総理と外務大臣のお話によれば、田中総理と外務大臣は知らないで判を押したとすれば、判を押さした人はだれなんですか。それほど外務官僚というのは思い上がっているのですか。それほど外務大臣はコントロールがないのですか。四十一カ所も間違えている条約文に——条約文ではないけれども、ある意味で共同声明というのは、いま総理は、ヤルタ協定なんかもそれに類するものだと言われましたけれども、そういうように大事なものです。四十一カ所も間違っているものに総理大臣と外務大臣に判を押さしておいて、その人の責任はどうなっているのです。そして、そういう監督不十分の外務大臣の責任はどうなんですか。総理は外務大臣をまた任命なすったじゃないですか。叱責も何もなさらないじゃないですか。何を処分なさいましたか。この委員会で遺憾で済みますか。私は責任をはっきりしていただきたいと思う。遺憾なんということばで済みませんよ。四十一カ所も間違った文書に調印した日本外交の権威なんかどこにありますか。日米安保の論争をわれわれはここ二十年続けているじゃないですか。わずか一句のために日本がどれくらい不利益をこうむったかという問題が延々と議論されているじゃないですか。ソ連の外交はそんなもので済むわけがないじゃないですか。
  92. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本文とロシア語、両方に日ソ両国の首脳が署名いたしたわけでございまして、その間に、修辞上、体制上、それからタイプのミス等のミスがあったことを申し上げておるわけでございますが、しかし、私が申し上げましたように、共同声明は大事な文書でございまして、これが両国の国益をそこなうようなことがあってはならないし、両国に意見の相違がこれによって出来するということになりますと、事柄は重大でございますけれども、そういうことではございませんで、日ソ双方ともこのミスはミスとして認めて、了解がついておるわけでございまして、意思のそごは一切ないわけでございます。しかし、こういうミスが現実にあったことは隠れもない事実でございまして、もしこれが国益をそこなうというようなことに相なりますならば、仰せのように、私の責任は免れることができないと私も思いますが、さようのものであることは御了解をいただきたいと思います。
  93. 渡部一郎

    渡部(一)委員 国益をそこなうものかどうかというのは、中身を言わなければなりませんが、向こうとの間で意見のそごがないというのは、それは当然のことでしょう、両方が外交官なんですから。しかし、文章も全く違ったものじゃないですか、これは。全然違いますよ。大事な問題点、全部違うのです、総理。たとえば、ここのところに「北洋漁業の確立」と書いてある。おそらくは、櫻内前農林大臣が御討論なすったときも、えらいめんどうなことになったはずです。ここでは「北洋漁業」と、こっちは書いてある。向こうは「太平洋北部地域」となっているのです。何が違うか。櫻内さんに言っていただいたっていいけれども、アリューシャン列島海域を含むか、オホーツク海域を含むかという問題になるんです、これは。違うじゃないですか、これは。全然違うじゃないか。こんな違う文書を当てにされて交渉に行った前農林大臣こそ悲惨ですよ。しかも、櫻内さんのことを言うのは私は気の毒ですけれども、自民党の代議士のことをいま言うのは気の毒ですけれども、ここのところで合議ができた、いろいろな問題について協力することができたというけれども、わがほうには「漁業」が入って、向こうには「漁業」が入ってなかったじゃないですか。それで櫻内農林大臣を出したんじゃないですか。何たるミスですか、これは。継続交渉にも何にもならないじゃないですか。向こうは下僚が出てきた。そうしてその下僚と魚の問題のことを言って、しかもそれで話がまとまらなかった。雰囲気の悪い交渉になっちゃって、交渉になんかならなかったのは、櫻内さんが後に述べられた記者会見で明らかです。こんなばかな話はないじゃないですか。総理が一枚看板にしていられるシベリアの天然資源の共同開発だって、「共同開発」とこっちに書いてあるが、向こうには書いてないじゃないですか。共同じゃないじゃないですか。何が共同開発ですか。共同開発でないんだよ。これほど違う。まだ違いますよ。これは全部中身の問題じゃないですか。ソ連領にいる未帰還邦人を引き揚げさすという話が、日本語ではここに書いてある。向こうの文章ではそうなってない。向こうでは、「かつて日本人であった人」と書いてある。全然違うじゃないですか。北朝鮮や南朝鮮にいる人々の返還問題が入っているのか入っていないかも、この二つがこんなに相違しておったら、わからないじゃないですか。これでも外務大臣なんですか、大平さん。そんな外務大臣を認めておいて総理はどうなさるおつもりなんですか。どう責任追及されたのですか。下僚の一人や二人を譴責処分にしておいて済む問題じゃないですよ、これは。だから、これほどの大きなことを官僚の方が外務大臣と総理に報告をしないで単に判を押さすわけはない。これは想像ですよ。忠臣蔵のように、まるっきり責任をかぶって、どろをかぶってみせて、田中さんと大平さんのあれをかぶったような形になるじゃないですか。どうお答えになるのです、こんなにエラーをして。どうしたのですか、これは。SALTの協定に満足の意を表したと、田中総理、書いてありますよ。SALTの協定は、日本国憲法の上からいって異議がありますよ、こんなのは。どうするのですか、こんなすごいことばかり片っぱしから言って。しかも、両国の最高首脳間の対話が継続されるべきだと日本側に書いてある。向こうは最高なんてどこにも書いてないじゃないですか。最高なんて字がどこに書いてありますか。ないじゃないですか。どうなさるのですか。対話が継続されるべきだという。向こうは首脳というなら、副大臣を日本に出してきて話し合いをすればそれでいいんだ、そんなものは。最高首脳であるところに意味があるのでしょう。その文章すら詰まってないじゃないですか。修正求めてないじゃないですか。外交文書は両方とも正文だというのは、それは確かです。こっちはこっちの立場を主張すればいいのです。一体こんなに大事なところがみんな狂っているものにサインしてくる人がありますか。責任をどうするのですか。私はもうほんとうにどういう答弁を求めていいかわからない、こんな……。答弁することなんかないじゃないか。国民の前にあやまるだけの話じゃないですか。総理、あなたのこの間の外国訪問はこんな結論なんじゃないですか。これはどうなさるのですか。
  94. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、日ソ首脳会談においては有意義であったと思いますし、また、私自身とソ連首脳部との会談に対する記録はこまかく残っております。重要な部分に対しては、本件は両国にとって非常に重要でありますので正確に記録願いたいという前提で話をやっておりますから、そういうものに対する各条項に対する記録は外務省に全部存在するはずであります。そして最後の段階において、ソ連側から共同声明案文の作成に入りたいという提案があったわけでございますが、北方領土問題に対して懸案事項として確実に再交渉を行なうか、もしくは、返還について引き続いて協議を行なうという明確な結論が出ない限り、事務的な共同声明作業に入っても無意味——この無意味だということばが非常に物議をかもして、当時の新聞にも報道されたとおり、激論になったと報道されておるのでございます。そこで私は、無意味であるということの意味を述べたわけであります。それらが画竜点睛という問題に連なるわけでございますが、そこらは再確認、何回も何回もお互いが議論をし、会談を行なっております。その正確な記録は存在いたします。ただ、最終的な共同声明を作成する段階において、飛行機を一時間ばかり延ばして共同声明を発表しようということになったわけでございますが、私は露語を承知いたしておりませんので、日本語は正確に事務当局から私と外務大臣の前でこれを朗読し、調印をしたわけでございますが、その後、安全操業という字句が露文から抜けておるということは、報道で知りました。で、外務省当局の事情をただしたわけでございますが、外務省当局から先方に手交したものの中には明確に安全操業という問題を入れてありますということでありまして、この問題に対しては、露文を印刷するときにその字句が落ちたというのであろうということで、日ソ両国の事務当局間でこの間の事情をお互いに振り返れば十分理解ができるということでありまして、折衝の結果、両国では合意に達して、露文はこれを修正されたということでございます。いまあなたが述べられたような事態が相当個所にあったというような問題に対しては、私はいま承知したわけでございまして、この間の事情は十分ただしてみたい、こう思います。
  95. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題に対しての扱いでありますが、そんなにたくさんあるとわからなかったというようなお話になっていますが、このテキストの欠落部分に対して——これは外務委員理事会において配られたものであります。それでこの点線の引いてあるところは間違っているところです。外務省が認めたところですよ、総理。三十一カ所あるのです。ぼくの加えたのが十あるのです。もう多く言う人は五十カ所とか六十カ所とか申しますけれども、私は、少なくともだれの目にも明らかなのを取り上げたつもりです。ぼくは総理ががんばられて向こうで交渉なさったことを否定しているわけじゃありません。ずいぶん健闘されたのも漏れ伺っております。しかし、こんなひどいのを認めておいて、あとでそのまま知らぬ顔して、たった一カ所、漁業の問題だけについて交換公文をあとからつけ足した。逆に今度は、あとはよいと認めたと同じことですよ。なめられるなんてものじゃない。事実上、資源開発なんかこれではできないですよ、しかも処分が全然行なわれてない。どうなさるのですか。
  96. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そういう文書の上で、早々の間であったということで間違っておるということは、外務事務当局も認めておるようでございますから、それは私も認めざるを得ません。しかし、大平外務大臣が述べましたとおり、そういう事実ははなはだ遺憾でございますし、以後十分気をつけます、こういうことを言っておるわけでございますが、それによって日ソ首脳会談の結果が変更されたり、今後の交渉に支障をもたらしたり、国益をそこなうという面があればたいへんだと思います。私もすなおに考えておるのでございますが、この三つの問題に対しては、露文と日本文が違うというゆえをもってそういうマイナス面は起こらないということだけは確信を持っております。これはもっと、その文章には書いてないような明確な協議も行なわれ、合意に達しておるものもございます。でありますので、私は、国益をそこなうというような問題は起こらないと自信を持っておりますし、日ソの引き続いての交渉に、この案文のゆえをもって支障が起こるというようなことは全くない、こういうことを、自信を持ってそう考えます。
  97. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まことに申しわけないのですけれども、委員長に申し上げるのですが、総理のいまの御答弁は、国益に反するところはないと強弁をなさっておられます。しかし、国益を損ずるところはなはだ多大なポイントが多数ございます。もうただ先ほどからの単なる遺憾の意の表明では私は納得ができない。これについてのお扱いを理事会で協議していただきたいと私は思います。
  98. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいま渡部一郎君からの御発言でございますので、また理事会で相談をすることにいたします。——理事会で協議をいたします。質問はどうぞ続行してください。
  99. 渡部一郎

    渡部(一)委員 このような、私のほうからいえば、まさにソ連側担当官によってだまし討ちにあったような共同声明を結んで帰ってこられて、そして私は日本の国威を損ずることがはなはだ重大であったと思っておるわけであります。そしてこれは遺憾の意の表明で済むことではなかった。私の見解を申せば、外務大臣は外務大臣の職を辞せられるのが当然であったと私は思います。私は、これほどの、しくじってもあやまらない体質ということを問題にしたいと思うのです。  それは、私、総理に聞いていただきたいのですが、現下のインフレの状況などというものは、クリーピングインフレからギャロッピングインフレというような評価も出ているほど、石油問題抜きにしてすら、大問題が起こっているわけであります。これに対する態度を変えるためには、根本的に政府の施策が変わった、一時期を画したという明瞭な意思表示が必要であります。少なくとも前のことはほんとうにしくじっちゃったんだ、その意味国民の協力を求める、それと同時に、深く失敗については責任を意識しているという意思表示が私は必要だと思うのです。ところが、しくじったことはごまかす、責任は感じない、私はそれでは何も問題は解決されぬと思う。そんなことだったら、ここの委員会で審議することすらむだになってしまう。  私は、その意味で、これから先の問題胸の痛む幾つかの問題点を申し上げなければならぬわけでありますが、明瞭な意思表示がないので、私はまず石油問題から、どうなっておるのか、ちょっとお伺いをしたい、こう思っておるわけであります。  一つ目は、石油の需給であります。  通産大臣にまず事の初めとしてお伺いしますが、通産大臣は、需給に対して一〇%カットを業界に対して要求をなさいました。伺っておりますと、昨日は、二〇%くらいカットしなければいけないのじゃないかとおっしゃっております。業者の方はそれよりはるかに大きく、二五%ないしは三〇%、十一月、十二月の油の入り方から見ると、これは非常になめらかに入っておりますので、逆に調整されて、一月から三月ないし四月の間に、  石油はさらに大幅にカットされて、三十数%カットになるのではないかというふうに見通しを立てているのは、石油連盟等の調査でございますから通産大臣はそれを御存じだろうと思います。需給計画としてどういう見通しがあるのだ、まず数字を上げて述べていただきたい。そして、単なる希望的観測はもはや必要ではない、議論するにあたって。最悪の場合はどのくらい、現在予測しているのはどのくらい、そういう点を明示していただきたい。
  100. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 十一月の時点におきまして、メジャーズ等から入ってくる情報を集計いたしました。そのときの数量は、下半期において昨年は一億四千五百万トン入ったけれども、ことしは一億三千四百万トン見当であろう、その数字基礎にいたしまして、大体一六%ぐらい減るであろう、そういう予測で諸般の対策を立てたわけです。しかし、十二月における電力あるいは石油の大口カットについては、あまり急激な措置をとることは好ましくないという点から、一〇%カットということで、その後情勢を見つつ一月、二月のカット率もきめていこう、こういう段取りで始めたところであります。  その後、先日来申し上げましたように、ペルシャ湾が非常に混雑いたしまして、日本から行ったタンカーが全部一〇〇%積めなかったり、あるいは滞船が多かったり、そういう混乱がありまして、一時非常に不安視いたしました。  そういう面から、業者のほうでは三〇%ないし四〇%ぐらいの憂慮すべき数字も出たことはございますけれども、最近のメジャーズからの着荷及び十二月下旬に至るまでの供給関係の数量の報告を見ますと、大体当初予想の二八%カットぐらいの予想でいけそうであります。一月もたぶん半ばぐらいまではその数量でいけるだろうと、いまは観測しています。これは少し甘い観測かもしれません。  それからもう一つは、日本が友好的な扱いを受けないで毎月五%ずつカットが持続していくのではないかと、心配されたことがございます。それが続いていくというと、これは三〇%カットしなければいかぬじゃないかというような議論も一時は出たのであります。しかし、最近は日本もEC並みの扱いを受けまして、十二月は五%カットをやめてもらえる。一月はまだわかりません。そういうような不安定な要因がございますから、確定した数字で幾らということはまだ申し上げられないのであります。しかし、全般を大観いたしまして、大体一月以降は二〇%前後の削減ということを頭に置いて政策を打っていかなければならぬであろうという考えにいまは立っておるわけで、そういうふうな考えで政策も進めております。
  101. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ここで一六%カットの分が一〇%カットということで始め、そうしてもし二〇%前後というただいまのお話の見通しで政策をお立てになるといたしますと、もしも——もしもではなくて、むしろかなり積極的な理由で、アラブ側の五%カットが積み重なってまいるといたしますと、中近東情勢が解決しないということになるといたしますと、この二〇%前後で推移するという見通しは全く甘いということになると思います  外務大臣、この辺をどうお考えですか。あなたは、中近東問題は早急に解決する、こう思っておられますか、それとも、このようなカット率でだいじょうぶだと思っておられますか、お伺いします。
  102. 大平正芳

    ○大平国務大臣 十二月の半ばから和平会談が始まると承知いたしておりますが、十二月の三十一日にイスラエルの総選挙が控えておるわけでございますし、実質的討議は来年に入るのではないかと予想いたしております。  この和平会談の行くえはどうなるかというお話でございますが、さだかな展望を持っておるわけではございません。ただ一日も早く和平の到来を念願しておる立場でございます。  しかし、ただいままで明らかになりましたことは、アラブ首脳会談におきまして、この和平が行なわれて中東問題が解決するまで、石油を武器とする戦術はやめないという原則が打ち立てられておることが一つございます。  そして第二に、その石油戦術の最大限は、七二年のアラブ関係国の石油収入の四分の一減のところに置かれるということが明らかになっておるだけでございまして、その間におきましてどの程度の供給制限が行なわれるであろうかということは、今後の事態の推移によってアラブ諸国が考えてまいることでございまして、ただいまのところ、われわれのほうで展望することはむずかしいことと考えております。
  103. 渡部一郎

    渡部(一)委員 展望もむずかしいと外務大臣おっしゃっておることを——総理、いいですか、展望がむずかしいと外務大臣がおっしゃっておることを、展望しなければならぬのが通産大臣の役だろうと私は思うのです。ところが、油の入る見通しというものは、明らかに中近東のこの問題にもう密接な関係がある。そっちが見通しがつかないのに、二〇%前後でしょうと述べること自体が、もう当てごとというか、推測というか、どうしようもない、計画にならない計画になると私は思うのですね。むしろ最悪の事態を考えて需給計画その他についても最大限の考慮を払ってつくる。要するに、よくないときのほうを当然のこととしてつくっておいて、それより状況がよくなったら、ああよかった、国民の皆さん、油はこれだけ余りましたので、特別にこの辺に渡しますということのほうが、むしろ国民に対して正直じゃないですか。  私は、だから、通産省のこの一〇%カットは、初めからおかしいと思う。国民に正直でない。こういうことをすればどういうことになるかというと、国民は、それじゃ油がなくなりそうだ、政府は、一六%もカットされているときに、一〇%しかカットしろと言わぬ、それなら、先行きもっとカットされるのは当然である、だから買い占めに狂奔しよう、こうなるじゃありませんか。正直にものを言わないこと、そして一番最悪の状態を考慮しないこと、これでは通産省のこの計画の立て方は間違っていませんか。総理、いかがにお考えですか。考え方を私は言っておるのです。
  104. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アラブからの石油は、全輸入量の約四〇%であります。その二〇%が削減をされるということになれば、二、四が八%、約一〇%の削減というふうに、算術的にはなるわけでございます。三〇%になれば、三、四、一二%ということになります。なりますが、去年の輸入量に比べまして非常にことしが伸びたわけであります。この前の予算委員会等で御質問をいただきましたときには、二億四千万キロリットルぐらいの対前年度比にして一〇%から一五%伸びても二億七、八千万キロリットル、二億七千万キロリットルぐらいでこざいましょうと——私はもう少し多いんだろうということを考えておったわけでありますが、今年の下期になってから計算をしますと、このままでいくと三億一千万キロリットルぐらいになるおそれがある。二億八千五百万トンないし二億九千万トン近くも入る。だから、三億一千万キロリットルないし三億二千万キロリットルも入るんじゃないかと言ったら、そんなに入らぬぞ、こう言っておったのが、そういう状態で入ってきたことは事実なんです。  そこへきてアラブの削減という問題にぶつかりましたので、去年の下期からことしにかけての石油の輸入量、消費量というのは急速に伸びておるということで、いろんな問題を検討しましたら、自動車の数だけでも五百万台も違っておったということであります。千九百万台から二千万台になるであろうといっておったものが、八月の末で二千四百万台をこしておる。こういうことでございまして、年間四百五十万台以上も伸びておるというような問題がございまして、そこで、洗い直しを全部やっておるわけであります。でありますので、相当量の一いままでのように年率二〇%以上も伸びるということが可能なわけはないのでありまして、最悪の状態を考えても、七二年度の年度内に入れたものというものは確保できるという数字でありますので、そういう状態で最悪の場合どの程度の事態が起こるのかという、あらゆる角度から洗い直しをやっておるわけであります。  あなたが述べられたとおり、ほんとうに最悪の状態を想定してそれから組み立ててきて、なお外交努力やその他の状態の変化において石油の輸入量がふえるということになるならば、それに付加してやることが望ましい、私たちもそう思っております。思っておりますが、いますぐの段階において最悪の事態ということになると、あなたが言われたことの逆な面から同じ現象が起こることもあり得るわけです。でありますので、緊急の消費の抑制ということでいろいろな措置をいたしますとともに、緊急二法の成立をお願いしまして、やむを得ざれば配給制度になるかもしれませんよ、なっても、必要量は確保いたします、こう述べておるわけでございます。  まあその間にメジャーとの話し合いとか、アメリカとの話し合いとか、いろいろなことを広範にやっておるわけでございまして、アラブの石油削減というものだけを目標として日本石油政策を急激に転換できるわけでありません。でありますので、現状と、これからどのようにエネルギーを転換していくか、産業構造そのものを転換していくか。いま千七百万世帯にもなっておるプロパンガスを、すぐまきにしなさい、炭にしなさいといっても、かまどもないし、いろりも掘ってないというような状態でありますから、そういう新しくできた家屋の状態までいま調査をしておるわけです。でありますので、これからひとつ政府は最大の努力をしながら、国民生活に混乱をもたらさないようにと、このように努力しております。  ただ、あなたが最悪の事態を前提として政策を立てなさいという御忠告に対しては、これは傾聴すべきことでございます。私たちも腹の中にはそう思っておりますが、ただ、そういうことはあまり言うと、また別な意味からの混乱が起こるということもございますので、いろいろ検討をしておるということを申し上げます。
  105. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題については、確かに御配慮がいろいろあることは私もわかっております。ところが、総理がおっしゃることで数字がいいかげんなので私、閉口しておるのですけれども、四〇%アラブの石油が入っているから、そのアラブの四〇%の油が二〇%カットされると八%ダウンですと、さっき言われた。アラブから実際入っているのは、メジャーのほかにもアラブ経由の油があるわけですよね。いつもそれを言われないんだな、総理は。それをぱっとぬぐって、数字をたったったっとお並べになる、そしてみんなをくるくるっと、こういうふうになさる。アラブからの石油は一どうせ数字をあげられるなら、正確に言われる必要があると私は思うのです。そうしないと重大な意味がある。  これは政府のほうでつくられた資料です。メジャーのほうのカット率は何ぼかといったら、カルテックスのカット率は二〇%、エクソンが二〇%、シェルが一七%、モービルが一五%、BPが二〇%、CFPが二〇%、ユノコ、これが二〇%、サウジが一〇%、アラビア石油が十二月三〇%、ADMAが二五%、ファーイーストが三〇%、ジャパンラインが二〇%、ぼかぼか書いてあるじゃないですか。ところが、あなたは、四〇%アラブ直通の石油のことだけ、ここへ二〇%でという言い方をなされた。それじゃもう違うわけですね。事態はもっと深刻なんですね。  だから、アラブからくる油は全体で全輸入量の約八割、その中がほぼ二〇%カットするとして間違いない。しかも、アラブ側の様子から見ると、目が悪い方に出れば、二五%なり三〇%という可能性がきわめて高いことをこの表は示しています。そしてここに、行政指導十二月ないし三月一〇%と、でかく書いてあるのです。その次に、行政指導十二月一〇%、一ないし三月一五%と書いてある。その次に、全業種十二月五%、一ないし三月一〇%、民生用含むと書いてあるのです。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕 私、これ詳しくどうなっているかは存じませんけれども、民生を安定する部分については、油をもう一〇〇%確保する必要がある。そうでなければ、騰貴が騰貴を生む、こういう事態になることはもう明らかだと思うのですね。だから、それに対しての手が打たれているか。  総理は、前は、世の中の不幸の原因は、すべて日本列島改造論で、みたいな言い方をなさった。最近は、石油の需要抑制に関する法律と国民生活安定に関する法律のこの二本をあげて、この二つさえあればという言い方をなさる。これは総理のお話の特色なんで、私は別にそれにけちをつけているわけではないんですけれども、これだけいけば全部うまくいくというのは、少なくとも責任のある方のおっしゃることとしては、すごくおかしげな言い方だと私は思っているわけです。  その証拠は、買占め売惜しみ防止法というのが明確にあります。そうでしょう。買占め売惜しみ防止法というのはどうなすったのですか。いまあれで何をなさっているのですか。あんな名前のいい法律があるじゃありませんか。そしていま石油の買い占め、売り惜しみのものすごいのが始まっているのに、どうそれを発動されたのか、私はお伺いしたい。総理がわからない、忘れておられるのだったら、ほかの方でけっこうです。
  106. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 具体的な問題は関係閣僚から答弁いたしますが、買占め売惜しみの法律は、これは厳密に適用しております。現在すでに相当件数の調査が行なわれ、この問題に対していま最終的な判断をするような状態もございます。ただ、この法律施行の過程において、調査官が非常に少ないとか、もっと広範にやる必要があるとか、特に石油問題が起こってから、これをもっと拡大するためには、地方庁にも委任をしたり、いろいろな問題をいま提起されております。併任されているようなものだけではなく、専門官を置かなければいかぬのだというような問題も政府部内で討議を行なっております。
  107. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そっちのほうの話はまたあとでちょっとさせていただきますが、現物の油の話なんですが、油を仕入れるにあたって三木副総理を派遣された。しかし、アラブに対するいままでの外交というのは、外交技術のもう一つ前のものがある。  たとえば、向こうから外務大臣がおいでになったところが、ある外務大臣は、お話を聞かないで居眠りした。そこで大使は召還などというような話がアラブ諸国にぱっと広まった。日本人が、あの人は真剣になると細い目がますます細くなると弁明につとめたところが、いびきをかいたと言ったなどという話が新聞にすら報道されていますよ、御存じのとおり。まずい話だ。  その次、ヨルダン。ヨルダンの王さまが三年前おいでになった。そうしたら、そのときの総理大臣は、いまの総理大臣でないから申し上げますが、佐藤総理大臣である。アラブとの友好をするために、天皇陸下、皇太子殿下がおいで願えないかと言うた。それに対して、砂漠が多いので環境条件が悪いから、そんなところは問題ではないと言って、けんもほろろに断わった。実は断わることもしなかった。それで向こうから問い合わせがあって、ああそんなことがあったのかといって断わった。  ある王さまのむすこが、先日、文部省の招聘で日本のある学校に留学をした。留学したその方は、アラブ独特のやり方で何部屋かの部屋の提供を求められた。そうしたら猛烈に排除されて、そんなことができるかと言って、けんもほろろに文句を言われた。しかも、学校へ出席しないからというので落第させようとしたため、当人はおこって帰られた。こういう権威ある砂漠の民に、それこそ、何というのかな、すごい扱いをしているのですね。  それで、外務省なんかもうなくしちゃって、それよりも、あいそのいい人を何人か置いてアラブ外交をやり直させたらどうですか。総理、どう思われますか。これは外交以前ですよ。  それからもう一つ、もう時間があまりないと私、思いますから、まとめて申しますが、いま外国から日本に来ておる留学生、これは公団住宅やそういった公的な設備に入れない。日本はこういう人々に六万円ないし七万円ぐらいのお金を出している。ずいぶん補助を出している。ところが、家賃が高い。外国人と見ると値をつり上げるということもある。したがって、その人たちは生活ができない。全部反日家になって帰っていく。ある日本の外務省の職員がフランスの外務省の職員に会ったら、何で日本に行ったフランス人の留学生は全部排日運動の支持者になって帰ってくるんだろう、よっぽどおたくはへたくそじゃないですかと言われた。  これは、大蔵大臣、予算のつけ方は、六万円つければいいというものではない。こういう生活の問題を考えないと、ものすごいエラーがある。そしてこのしわ寄せが全部いま浮かび上がってきた。大臣だって居眠りするときはあると思う。ぼくは居眠りのことについてあまり言うつもりはない。それは居眠りするときだってある。つらければ居眠りするのが人間的で、ぼくはむしろいいと思う。しかし、こうしたことまでが問題にされるような環境条件をつくったのは何か。それは外交の基礎が取引であって、人間信頼の上に立ったものではなかったということについて十分反省すべきであり、それに基づいて施策を立てるべきだと私は思うのですけれども、どうですか。
  108. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アラブに対する外交、国の積極的な姿勢というものが、いままでアメリカや、またヨーロッパやその他の国々に対してよりも薄かったということは、率直に認めます。これはいま東南アジアその他日本の近くにある開発途上国との間にもいろいろなさなければならない問題がございますので、地域的に遠距離にある中東やアフリカやその他の地域との交流というものに対して薄きに過ぎたということがあれば、これはもう認めざるを得ないことでございますし、当然広く目を転じながら外交陣の強化をはからなければならないということは、そのとおりだと思います。特に、特異な状態というものに対しては、外務省にもそういう専門家もおられないということもありましょうから、民間人の登用とか、そういう問題もやはり考えなければならない。私自身が、先ほどの露文の問題を指摘されまして——それはアラブとかアフリカ諸国に入りましたら、百四十五の国の中でほんとうに専門家がおらないという国がたくさんあると思うのです。そういう場合、意思の疎通が完ぺきにできるような布陣ということをやはりまじめに考えていかなければ、国益をそこなうおそれがある、こう考えます。  もう一つ、第二の問題は、これは私はヨーロッパを訪問したときに痛感をしたのでありますが、世界各地とつながりを持っておった国々は、それはマイナス面もあります。旧宗主国としてのマイナス面もあるかわりに、何となくつながっておる、ずうっとつながっておるという大きなパイプがあります。いみじくも言ったわけでありますが、日本と西ドイツは領土問題や植民地問題と関係なかったので、ある意味においては非常にフランクにものがしゃべれるし、これから共同開発等もできるし、現地との協力もできると思うが、どうもものを通商ベースで考え過ぎてしまう。開発輸入とか、そういうものに付随する国際経済協力というものが薄かったために、石油問題が起こってきたときには、一番大きな影響を受けるのが日本と西ドイツだろうということを、私たち二人は率直に話してまいりました。だから共同してやろう、協力してやりましょうということになったのですが、石油というものが無制限に、低廉に入るという考え方、これはもう大きな誤りだったと思います。特に、民間にまかせておった。民間ベースであって、石油を輸入しておる業者が仲介をして、いろいろ国と国とが話さなければならないプロジェクトに対しても、民間企業がこの話を聞いて政府に取り次ぐ、こういうような事態、いま思えば全くおそきに過ぎた、こう思っておりますので、そういう事情を三木特使が行ってひとつ率直に述べて、日本は新しい憲法を持っておりますし、平和主義でございますし、とにかくこれからは、体制のいかんを問わず、かきねを越えてお互いが協力し合うのです、それで経済開発という問題に対しても両国の利益が守られるようにという日本の真意を伝えて、おそまきながらも、これからもひとつパイプも太くし、日本の真意も大いに理解してもらおうということを目標にしておるわけでございます。でありますので、三木特使も、石油問題の打開のために行くというんではなく、日本と中東諸国との間の外交関係というものをこれから十分緊密にし、日本の真意を理解してほしいということで主張してもらうということにしておるわけでありまして、御指摘された数々に対してはうなずけるものがたくさんありまして、直すものは直します。
  109. 渡部一郎

    渡部(一)委員 率直な御意見を聞いてうれしく思いますので、それでは総理に少し提言をしておきます。  総理、実は民間ベースで石油の問題なんか話をさせておいて、政府が出ていかなかったのはまずかったとおっしゃいました。確かにそうなんです。北海石油もそうで、総理は行かれてずいぶんひどい目にあわれたのだろうと、私、お察ししておりますし、チュメニもまたそうであります。  ところが、電力会社の油の使い方ですね、これがめちゃくちゃなのは御存じであるかないか、私、知りませんが、ちょっと申し上げておきたいと思います。  それは、電力会社は石油を使うにあたりまして、発電所を回すのに重油をたけば十分なんです、燃すだけなんですから。ところが、原油のなまだきというのをやっているわけですね。原油のなまだき量というのが、だんだん減るんではなくて、だんだん、だんだんふえてきた。それはもちろん公害問題との関連もありますね。しかし、公害問題と関連があるんなら、直脱、つまり直接脱硫法を適用する、あるいは間接脱硫法等を適用して、脱硫システムを進めればよかったはずであります。ところが、その直脱の方式については、全然おくれている。特にけしからぬのは、直脱をやるシステムの装置の一部を外国から輸入しなければなりませんが、通産省がなかなかいい顔をして許可しない。直脱のシステムを持っている工場は二つしかない。いまできているのを入れて三つ。たった三つしかない。それで処理できる量ときた日にはものすごい少ない量でありまして、処理できた量は三百五十七万キロワットアワー程度であります。このところだけ電力相当で申し上げて申しわけないのですが、ところが原油のなまだき量は、昭和四十五年は七百二十四万キロリットル、四十六年は千百万キロリットル、四十七年は一千七百十万キロリットル。四十五年が全発電量の二三%、四十六年が三八%、四十七年が実に五六%というように急上昇しております。これはもう御飯をたくみたいなものであって、ナンセンスを通り越しておる。こういうむだを平然とやらせておいて、そうして直脱のほうは要するに少し金がかかるわけであります。電力のコストにはね返るということで、電力会社を強力に指導しようとしない。これは通産省の怠慢だろう、こう私は思うわけですね。だから、この点は、総理が通産相をおやりになっていた当時からの方針もございますでしょうけれども、いま明らかに公害問題を優先して考えなければならぬときです。電力というものに対して考え方も変えなければならぬ。貴重なエネルギー源として、クリーンエネルギーとしてうんと高く評価し直さなければならぬときです。ですけれども、油をこういう形で、軽油も出てくる。ナフサも出てくる、ガソリンも出てくる、ジェットエンジンの燃料も出てくる、また灯油も出てくるという、そういうものを、タール分のきわめて多いC重油なんかと一緒に全部一発で燃してしまう。これは電力会社の責任と言って差しつかえない。そしてそれを指導した通産省がそんなことをしているのは、政治献金の影響かなどという世間の批判すら私は起こりかねないと思うのです。電力会社の政治献金は、そう思って見ると確かに多い。このなまだきの量に比例してふえておる。そのなまだき分幾つについて幾ら出せと、こう言われたのではなかろうかという下等な予想すらされるほどの量になっている。こういうのはよくないと私は思うのです。総理、この辺もう的確に御指示いただいて、てきぱきひとつ仕事をやっていただきたいものですが、どうですか。
  110. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御指摘の事情が存在しますことはそのまま認めます。これは、公害問題というのが起こったのはちょうど三年前であったということであります。三年前、正確に言うと二年、正味二年ぐらいから国会の大問題になったわけでございます。そのときに、例を申し上げますと、姫路火力があるわけでありますが、姫路火力についていえば、新舞鶴の発電所ができなければ姫路をたかなければならぬわけであります。ところが、姫路は、重油をたくと公害基準を越えることになりまして、これは操業を停止せざるを得なくなるということであります。そのような事態を防ぐためになまだきということになるわけであります。なまだきだけでもまだ問題があるということで、ナフサをたくようにしたわけでございます。  そういうような状態でありまして、脱硫をやるようにということを強く指導しておることは事実でございます。ところが、脱硫装置をつけるには、三分の一の隣接の空地を必要といたします。ところが、現在の発電所には、隣接三分の一という空地が求めがたい。そうすると新しいところに移らざるを得ない。移る間はどうするか。そうすれば、もう隣接敷地三分の一を有するところは脱硫装置を早急につけろ。そして移転をしなければならないところは、原子力発電所と新規発電立地にこれをゆだねる。それまではやむを得ずナフサをたかしめる。ナフサをたけば電力料金にはね返るにきまっておりますから、国会の御承認を得て税法上の特例を認めたわけでございます。それで電力料金を押えた。こういう経緯でもって三年間きておるわけでございまして、ことしは二千四、五百万キロという原子力発電に着工する予定なのが、立地的な問題等もございまして、反対もあり、その一〇%も着工できないというところに、石油問題が起こってまいったわけでございます。でありますので、電源立地に関する特例法、いわゆる市町村財政等に対して貢献するような法律も御審議を願っておったわけでございますが、これも成立を見なかったというような状態で、今日最悪の事態を迎えておるというのが実情でございます。  でありますので、安全性とか、その他、国がほんとうに責任を持たなければならないものは持ちながら、やはり解決すべきものは解決していくということでなければ、どうしても現状のようにならざるを得ないわけであります。でありますので、なまだきが許されないということにもぶつかってまいりましたので、他のクリーンエネルギーの問題とか原子力の問題とか、水力発電所の見直しとか石炭の問題とか、それから、直ちに脱硫装置をつけられるものに対してはつけるとか、そういう問題を総合的にいま通産省及びエネルギー調査会で検討をやっておるという事態でございますので、暫時ひとつ時間をもうちょっとかしていただきたい。そうでないと、電力を押えざるを得ないのです。協力をお願いします。
  111. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、私が通産からいただいたデータがあるのです。いまちょっとめくってお見せしようとしたのだが、どこかへ入ってしまったみたいになっていてお見せできないのですが、排煙脱硫のシステムをつくる年次計画ができているのです。それは審議会できめたのじゃないのです。通産省できめているのです、いまごろ急いでつくる必要はないということを。だから、建設計画はずっとあとになっているのです。実際いうと、二十年も先になっているのです。だから、その二十年も先になっているものを前に持ってこなければ、どうしたってしょうがない。そして、いまの発電所の周辺というものはもう惨たんたる公害でやられているから、皆さんがおこっておられるのも無理もない。だから、安全性についてほんとうの説明のし直しをしなければならないわけですね。だから私は、いまできているのは、審議会の問題ではなくて、通産省がその年次計画をつくり直す、それから公害の問題について、地元民が安心するように、もう全面的につくり直す、その二つを指示していただきたい。審議会の問題ではないと私は申し上げている。それをがまんしてくださいとおっしゃったって、そんなのだめです。がまんできません。
  112. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 石油問題、これはもう好むと好まざるとにかかわらず避げがたき現実でございますから、ここでエネルギー問題に対しては、転換するものは転換、また、年次計画をとにかく強力に進めるということでなければ、電力需要を押えるということになります。押えれば、生産を押える、生産を押えれば供給が不足をする、物価が上がるということになるわけでありますから、これはもう焦眉の問題として、政府として取り組みます。
  113. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では、排煙脱硫の件については非常に積極的なおことばをいただきましたので、もう一つ申し上げておきます。  総理、石炭のガス化の問題です。石炭のガス化の問題は急速に話がのってくるだろうと思う、油のコストが高くなるのですから。それでありますが、現在研究されているのは、政府機関では、工業技術院の公害資源研究所、それから財団法人石炭技術研究所であります。この財団法人石炭技術研究所というのは、石炭会社がつくったものです。しかもこれについては、技術研究はもう全く鎮静化して、ほんの数人、二、三人という人たちがかすかにやっているにすぎません。これは大きな問題です。これに対しての研究体制が全くできていない。これは、一般炭をガス化して都市ガスの一部に使うことはもう十分可能でありますし、その技術はある意味では開発されております。だから、これを実用的技術になるようにすることと、このでき上がった高カロリーガスを一般的な使用に供するためのさまざまなテクニック、具体的テクニックを開発することが必要であります。また、プラズマガス化、こうした酸素、水素の炎を使いましてアセチレンガスをつくるなどというようなやり方と同じやり方でありますが、こうした面も開発する必要があります。また、ガス化による発電も、これは十分検討してしかるべきであります。先ほども言われたクリーンエネルギーもあわせてでありますが、地熱発電であるとか、あるいは海洋発電であるとか、あるいは太陽熱発電であるとか、もう御承知のとおりであります。そちらにお金をかけるのはけっこうですが、一番具体化される石炭ガスに対する費用すら、こんなものはもう全然ないにひとしい。何千万円のランクでない。研究費が百万以下のランクなんです。これはもう本気でないと見られてもしかたがない。  私、きのう、大蔵省の係のある方にこの件についてちらっとお話ししましたところが、そういうものは実施官庁が計画を立てておれのほうへ持ってくれば、うちは予算をつけるのであって、私が口を出すべき問題ではないなどというようなすごい御返事をいただきました。ことほどさようにどこも不熱心なんですね。もう責任はだれかに押しつけて、だれかが言い出したらあとから乗ろうというような、そういう感覚では私は困ると思う。これはもう早急に御指示いただいて、こういう研究体制について抜本的な、もう絶えず、ぱあんとやるというのがほんとうではないでしょうか。  そして、炭坑の閉山のしかたがめちゃくちゃだったために、いま閉山されておる炭坑の坑口は破壊され、中は出水でめちゃめちゃになっております。これを掘り起こすのは、前よりももっと金がかかるといわれております。この愚かな閉山システムというものについても再考しなければならない。炭坑というものは生き物であって、ふたを締めておけば、中はこっぱみじんにこわれるのはきまったことです。それを、水さえ入れておけばいいなんというような閉山のしかたをした。石炭対策特別委員会で数次にわたって各委員から取り上げられたこうしたまともな提言が、何一つ取り上げられないで今日を迎えておる。この点もひとつ強力な御指導をいただきたいと思いますが、いかがですか。
  114. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず第一に、いま最初に御指摘のガス化の研究あるいはそのほかのクリーンエネルギー、特に水の分離による水素と酸素の製造、これらは確かに御指摘のとおりで、通産省としては、来年度、地熱やその他とともに、いわゆるサンシャイン計画という包括的な計画をつくりまして、来年から思い切って大々的に開発を促進していくつもりでおります。  それから第二番目に、石炭の問題につきましては、いわゆる第五次答申というものを忠実に守っていままで遂行してきたところでございますけれども、最近のこのような油の情勢にかんがみ、石炭鉱業審議会において、新しい角度から見直そうということでいま審議が進められておりまして、近く石炭鉱業審議会から中間的な答申のような形で私に対する勧告がくることになっております。その勧告をわれわれ取り入れまして、御趣旨に沿って実現していきたいと思っております。
  115. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まことに遺憾でありますが、この委員会は補正予算を審議する委員会であります。補正予算の中にそれぐらいのことを入れたらいいじゃありませんか。それを何も入れないでおいて、サンシャイン計画というのをつくられたのはけっこうでありますけれども、来年の三月にならなければそういうものは出せない。(「歌の文々じゃないか、サンシャインというのは」と呼ぶ者あり)そんなしゃれた名前をつけるよりも、大事なことは、早く仕事をするということだと私は思うのですね。仕事がのろ過ぎる。こういうことが一つずつ一つずつ国民政府に対する信頼性を欠くことになる。実感がなさ過ぎる。私は、その点十分御反省を求めまして、あまりにもひどい話が多うございますから、これからいよいよ本番の物価の話をさしていただきたい。  その物価の話をするにあたって、いま国民が一番おこっている問題について御回答いただきたい。これは政策的にこうすればこうなるなんというお話が必要なのではない。トイレットペーパーで例をあげて言うなら——私は回答をまず示します。トイレットペーパーは何ぼ何ぼになって、何ぼ何ぼ値上げして、品薄がこう続いて、最後は高い値段になってから安定して、いまは高値になって、もとの値段の二倍半になりました、申しわけなく思っています、こういうふうに言ってもらいたい。それに対して私は全然無能で、何一つ手を打ちませんでしたというふうに言ってもらいたい。そうでなかったら、国民は納得しませんよ。私は、この二日間にわたる予算委員会の審議を聞いて、悲しく思いました。国民の理性と全然違う。国民判断、何がどうなったのだかわけがわからないうちに物が上がる。そして高級な、インフレかどうかなどという議論で時間がいたずらに空費されていく。国民のほうからいったらいやになっちゃう。きょうはトイレットペーパー、あすはおしょうゆ、あさってはお砂糖、しあさっては塩、その次は化粧品、その次は洗剤。連続しているじゃないですか。だから、どういうふうにして何をやったらどうなんだか、示していただきたい。私はそれを強くお願いしたい。もしそれがおできにならないのだったら、自由民主党あげて内閣の座を去られて公明党にお渡しをいただきたい。  まず、きのうの晩ですが、きのうの晩に私がタクシーに乗りましたところ、タクシーの運転手さんが私に言ってくださいました。三十リットルしか入れてくれない、三十リットルで走れると思いますかという話でした。通常でしたら六十リットルぐらいは入れて、途中で軽くもうちょっと給油するというようなやり方をしておられて、六十リットルないし七十リットルくらいを使う。うんと走る人は百リットルをプロパンガスで使う。プロパンガスといいますけれども、実体はこれはブタンだそうでありますが、そういうのを使っておる。ところが、もうきょうは朝の四時半から並んでいる、そしてかろうじて手に入れることができた一値段はいままでの二倍になってしまった。十三円のものが二十八円になっておる。そして、家内あげて並ばなければならない。私の仕事の終わるのは午前一時である。そして朝の四時半に並ぼうと思ったら、少し離れておるのだそうですが、奥さんを先に出しておいてあとから並ばなければならない。しかも四時半に並んでおって切符さえもらえばいいというものではない。朝の八時にはもう入れる分量がなくなる。切符を持っていたってだめになってしまう。商売ができない。個人タクシーを絞め殺す気ですかと、その人は言っておられました。これにどうお答えになりますか。そしてどういう手を打たれたか。まず運輸大臣、突発的な事項でありますから、いきなりお答えを願いたい。運輸大臣はこの問題にどうされましたか、そして通産大臣に何を要求されましたか、関係業界にどう指導なさいましたか、自分はきょうどういう気持ちでここへ来られましたか、そしてそのあと、結局見通しはどうなるのですか、お答えをいただきたい。運輸大臣からお答えをいただきたい。
  116. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 バスあるいはタクシー、これはもう公共の機関として私どもは考えております。国民大衆の足でございますから、これはどうしても確保しなければならぬということで、この深刻な状況を私どもも受けとめております。また、この方々とゆうべも話し合っておるわけでございますが、いま三十リットルというお話がございましたが、まだまだひどいところがあるようでございます。この方々の油を確保するということは、私ども運輸省としても責任がございます。そこで、通産省といろいろ今日までも交渉を続けておりますけれども、実際スタンドに参りますと、いろいろな業者の経営しているスタンド等におきましてはなかなか思うような配給がもらえない。また、その問題については、通産省と十分事務的にも協議しておりますが、私もけさも通産大臣といろいろお話し申し上げまして、この確保について一段と早急のうちに目鼻をつけたいということで話し合いをした次第でございます。
  117. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まことに申しわけありませんけれども、大臣、このいまの御回答はテレビで日本人が見ているのです。早急になんという用語で話のできるものじゃないんだ。何日間で解決するのか。通産大臣にお願いしたら、あしたなりあさってなりは何リットルか来るというふうに約束を受けたのか。それをはっきり言ってください。そんなことでだれが安心しますか。
  118. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 明日あるいは明後日にこういうふうにするというところまで、現段階においてはいっておりません。そこまで話を詰めてもらいたいのは、私のせつない、やまやまな心でございますけれども、実際問題としてそこまでいっておりません。
  119. 渡部一郎

    渡部(一)委員 通産大臣、お答えいただけますか。
  120. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 LPガスは下半期に五百二十万トンの予定でありましたが、一割ぐらい削減されるという情報で、四百六、七十万トンになる見込みであります。しかし、そういううわさから非常に心配を一部に起こしまして、それで一時殺到してきたり、あるいは業者、中間あるいは末端において値を高くつけるとか、言い渡すという傾向が出てきたんだろうと私は思います。そこで、品川、目黒方面で起こったガソリンスタンドの問題等につきましては、その親の供給先のほうを至急調べて、そちらのほうになければ増配しろ、また、自分の系統でない場合には融通しろ、そういうことをきのう私、直接指示いたしまして、いまその手を打っておるはずであります。近くこれは解消すると思います
  121. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そういう言い方をなさるのもわかりますけれども、実際これではまだ解決しませんですよ。もう品川だけじゃなくなりましたよ、これは。もう全地域になりました。京阪神まで広がりました、きょうは。これはもうそんな、増配せよとか融通せよと言って聞く相手でもないのかもしれませんけれども、それでは見通しも何もわかりませんし、今後何日かかるかもわかりませんし、国民に回答になりませんよ。  別の例をあげて申し上げます。総理は最後に御答弁いただきますが、軽油がいまリットル当たり四十五円ないし五十円に値上がりしておりますが、この値で満タンにしてくれないのだそうであります。トラックが動けなくなりました。きょうかかってきた電話では、小田原のかまぼこの業者さんでありますが、トラックがないために魚が運べない、できたかまぼこが運べない。申すまでもなく、これは両方とも腐ってしまうものです。とうとう三百五十円のかまほこを五百円にして売って急場をしのいでいるようでありますが、これもどうしようもなくなって、つぶれてしまうと、業界あげて騒いでおられるようであります。  また大阪では、軽油が値上がりしたのはいいのですが、いままで三、四カ月の手形で商売をしておった。それが現金でなければ注油をしないという。もうこれでは中小企業あるいは運送業者の小さいところほど即時につぶれなければならぬような問題になっておる。だから、トラック業界及び小型の運送業を営んでいらっしゃる方にとっては、これは冗談でなくなってきた。これに対してどういう手をお打ちになっておるのか、お答えをいただきたい。
  122. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 まことに歯切れの悪い答弁で申しわけございませんが、この問題につきましても、ミカンの問題その他、たくさん生活必需物資の輸送等について問題をかかえております。通産省に対しまして、私どもは、その軽油の確保のために全力をあげて、末端に指示もしていただくように、また配給していただくようにいま協議を重ねて、早急にこれを解決をつけたいと思っております。
  123. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では、そんなにおわかりにならないようでは別の話をいたしましょうか。  おとうふ——総理、おとうふか最近小さくなったのを御存じですね。おとうふが最近小さくなったのです。そして値も上がったのです。三十五円ぐらいのところから、あの大豆騒動が起こりました。そして値が非常に高くなりました。いま七十円しているのです。大きさは前の半分から三分の一です。大豆が急上昇して、高値で買ったおとうふ屋さんたちがおとうふをつくっているわけです。そしてとうふの値は上がったままです。いま大豆は、供給はゆるやかに供給されていますけれども、上がったままになりました。一時的急激に起こる品薄、その次に起こる値上げ、高値での品物の出回り、そして高値の膠着、こういうパターンが続いております。  ライオン歯みがきというように、商品名をあげては気の毒ですけれども、歯みがき業界でこれが起こりました。歯みがきが急になくなりました。品薄になりました。二〇%値上げが行なわれました。そして品物がどっと出てきました。もう高い値の歯みがきです。  私が高知へ数日前に行きましたら、おしょうゆの騒動を起こしていました。その騒動の起こった最初は、「おしょうゆ二本まで」という張り紙から始まった騒動です。「おしょうゆ二本まで」とスーパーに張り紙がされました。その「おしょうゆ二本まで」を見たとたんに、町じゅうの人がしょうゆにどっと集まりました。そしてそのとたんに、一時間ごとに張り紙の値段は取りかわりました。しょうゆの値段は二倍半になりました。  また、トイレットペーパーの大騒動は御存じのとおりであります。トイレットペーパーについては、お役所で調べていただいた数字がございます。この数字は、九月が小売りで百六十円ないし百七十円、十月で二百二十円ないし二百三十円、十一月で二百二十円ないし三百五十円、十二月で二百二十円ないし四百円となっております。九月から見て実にこれまた三倍であります。  こういうふうに、品薄、そして品物がない、値上がり、そして高値推移という、こういうやり方に対して、どういう行政指導が行なわれておるのか。国民不満は尽きるところがないのであります。毎日のように皆さまお金を持ってスーパーのあたりをうろうろ、うろうろしている。そして二、三人が一つの商品に寄ったら、「それ、なあに」と奥さん方は言わなければならない。恐怖をもって見ていなければならないという状況になってきました。こういう事態で、総理の仰せになった個人消費の抑制ということができるかどうか、お考えいただきたい。これは油の問題と関係があるかもしれない。だけれども、一つはない。ある面ではない。そして、これに対して、抑制する方法に対して的確に政府は何の手も打っていない。これは二倍だなんといってすましていられるものじゃない。家計を預かる奥さん方にとっては、もう目の色の変わる事態なんです。これで放置すれば、今度はスーパーマーケットの焼き打ちのような、そういうおそるべき事態が昔の米騒動以上の規模で起こることすら私たちは覚悟しなければならぬと思うのです。そのとき、それに向かって対抗できるものは、警察でも自衛隊でもない。国がひっくり返ってしまう。こんなにのんびりされていること自体が問題なんだ。そして、この予算委員会だって、ろくな御答弁がないじゃないですか。下がるのか下がらないのか、もとのところにどうして戻せないのか、政府はどういう手を打たれたのか、これをひとつ、まず通産大臣、大蔵大臣、総理の順でお答えをいただきたいと思います。
  124. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大体、いまおっしゃったようなものは、品物はあるのです。それで、トイレットペーパーその他の問題でも、一部の方面で焦燥感でルーマーみたいなものがちょっと流れると、みんながその気持ちになって、一犬ほえて万犬ほえるというような心理状況が、いま局所的にあるわけです。しかし、それは、石油が不足してきているという情勢から、不安感国民の間に起きてきているんだろうと思います。しかし、この石油の不安だ、不足だという事実は、厳然たる事実でありますから、やはりある特定の物資、たとえば石油類等については、もう不足して足りないということは、一部分に起こることはやむを得ないことで、残念だけれども、これに対して対策を講じなければならぬのです。この間のトイレットペーパーの問題でも、関西で起こりましたので、三万五千ケースあそこへ急送いたしまして、その結果鎮静いたしました。東京でも起こったので、二万ケース急送いたしまして、これも解消いたしました。塩でも同じであります。洗剤でも、京阪、東京を中心に起こりましたので、百三十五万箱の出荷をいたしまして、これも鎮静いたしました。ですから、品物はあるのですから、消費者のほうにおいても、結局は、騒ぐというと、自分たちのほうで高いものをつかまされる危険性もあるわけでありますから、こういうようなものにつきましては、あまり買い急ぎをされないで、そして経済ベースで事態を見ていただけば、十分心配のない措置がとられるのであります。ただ石油につきましては、足りませんものですから、至急にいろいろな行政措置を強化してやっております。  しかし、いずれにせよ、政府にそういう強制的な権限がないのが現状です。強制的な権限なくして行政措置でやるといっても、それは限度がございます。だから、やむを得ず、今回、石油並びに国民生活安定に関する緊急の法律をお願いいたしまして、これで権限を政府にお与えいただいて、需給の調整あるいは必要ある場合には価格の抑制について、かなり強い権力をもって行政措置を実行する。そういうものを背景にしてやるのと、背景がなくしてやるのでは、非常に効果が違うわけであります。そういう点からも、できるだけ早目に二つの法案の御審議をお願いいたしたいと思っているわけであります。
  125. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 生活用物資の値上がりにつきましては、私も通産大臣と大体同じように思いますが、どういうふうにこの事態に対処していくか。物資所管省において、その当該物資について的確な需給の状況等の情報を提供する、それを消費者において信頼していただく、これを信頼しないで行動した消費者は損をする、こういうふうな事態をつくり上げる、これが私は当面必要にして最も有効的な手段である、かように考えております。
  126. 渡部一郎

    渡部(一)委員 中曽根通産大臣、申し上げておきますけれども、一犬ほえて万犬ほゆというふうにあなたのほうから見えるかもしれませんが、国民をつかまえて、一犬ほえて万犬ほゆなんというのはいけませんですね。それはことばづかいの問題ではなくて、精神構造の問題ですよ。なぜ一犬がほえるのですか。一犬じゃないです。人間です、ここでほえているのは。主婦ですよ。あなたは、主婦をつかまえて犬と言われるのですか。これはひどいことを言われる。
  127. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は、集団心理と申しますか、焦燥感にあふれたときの形容詞として漢語を用いたのでありまして、もしその表現が適当でなければ取り消します。
  128. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、一犬の代表でけっこうです。少なくともほえるほうの代表でありたいと、私は思っています。  いま、こういうふうにして三万五千ケース送ったのでトイレットペーパーの値段はおさまったというふうに言われました。しかし、これは値段がものすごく上がってからおさまったわけであります。百円ないし百二十円のトイレットペーパーが、結局、政府が持ち込んできましたのは百六十円から百九十円のものです。ばんと上がったわけですね。そうすると、もうどうしようもないわけですね。いま現実にトイレットペーパーの問題一つにしましても、私は、皆さんがものを御存じないから、こんなことをおっしゃるのかなという感じがしてしょうがないわけであります。結局、騒いで損する人はだれか。それは大企業でしょうか。中小企業でしょうか。消費者でしょうか。生活保護世帯でしょうか。そこを私は考えていただきたいのです。大蔵大臣もいま言われたけれども、騒いだら損する、わかっているのかという層は、その中の一番力のない小企業、零細企業、サラリーマン、主婦、そして生活保護の世帯です。その問題なんですよ。大企業には痛くもかゆくもないのだ。もうかって、もうかって、もうかって、笑いがとまらない毎日なんです。笑いがとまらないのですよ。借金をして会社を経営しているものにとっては、痛くもかゆくもないものだということをわかっていただきたい。だから、どんなに騒いだって、個人タクシーの問題だって、個人タクシーの人々の胸の痛みなんというのはわかりはしない。個人タクシーの悩みは痛くもかゆくもない。ところが、新日鉄は笑いがとまらないというふうになるじゃありませんか。だから私は、この個人タクシーの問題については、あまりにも気の毒ですから、総理、この小さな運送業者と個人タクシーの方々、こういう人たちのプロパンガスの問題については、総理御自分で御指導なさって、直ちにこの問題については、いつまでにこの問題はこう鎮静するということを表示していただきたい。御注文なんですが、いかがですか。
  129. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま行政的に協力を求める以外にないわけでございますが、可及的すみやかに緊急二法の成立をお願いしまして、この法律が成立すれば、当然、必要なものの供給に対しては政府は責任を持たなければならないということになりますし、準拠法も与えられるわけでございますので、しかるべき処置をとりたいと思います。この中で、とにかく流しのタクシーが無制限に走るということが許されるわけではありません。でありますので、二つの問題があると思うのです。最終的には、営業免許を持っている者に対しては一日幾らずつということで、切符でもって、持っていけば必ずこれは受けられるということにならなければなりません。もう一つは、この石油の不足のときに、流して歩いているということは、これはメスを入れざるを得ないのです。ですから、そういう意味で、八車でも十車でも空地にいて、無線がいまついておるのですから、流しは禁止するという程度のことは当然行なわなければならぬということは考えております。この法律が施行されるまでの間どういう措置をとるかという問題に対しては、政府でも至急検討いたします。
  130. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理のその辺のところのスピーディーな御判断をお願いしますけれども、総理、実はこの二法案が通らなくても、やる法律ありますよ。買占め等防止法があり、その中でも対象物資の中に入っているじゃないですか。入っているのです、ここに。買占め等防止法で、大まかな、中間業者のところはこれでちゃんとすぐ締められますよ。何もしてないのだ、まだ。通産省は何もしていませんよ。担当官は二人で、さっきからあわ食って飛んで歩いているだけですよ。二人ですよ、しかも。
  131. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 この問題に対しましては、無制限に入るわけにはいかないということでございますし、走行距離はきまっておるわけでございますから、走行距離の八〇%なら八〇%は受けられるということでなければ、これはもう手落ちになるわけでありますから、これはもう無制限ではありませんが、一定のガソリン量は確保するということにいたしたいと思います。  そうして、それをいま、売り惜しみ買いだめ防止法によってすべてのものを、どこに在庫があるかということはなかなかできないわけでありますので、そういう場合には、私がテレビで申し述べましたように、どこのスタンドは、行ってもこれだけしか入れてくれないということを、中央郵便局私書箱第一号に出してください、そうすれば直ちにその問題に対してはやります。これは東京日本国じゅうにあるガソリンスタンドを全部調べろといったって調べられるわけがありません。ですから、そういう問題に対しては、やはり需要者と官がほんとうに協力ができるような体制になって、中間的に値を上げているような人たちを責めるようなやはり協力体制をとってもらわなくてはいかぬ。そうでなければ、これはもう最終的には、配給価格をきめて完全な統制経済に移行せざるを得ないということになるわけでありますので、現在の売り惜しみ買いだめ防止の法律は、そういう不法な、不当な行為を排除するために、所在を突きとめ、公表するというようになっておるわけでありますが、それよりも、元売りから定期的に幾らずつ流すということはきまっているわけでありますから、そういう場合には、本日はこのスタンドの取り扱い量は幾らでございますという掲示をさせればいいわけです。それで何台かやったものに対しては、ちゃんと帳面につけておく、そうして切符を持ってくる者には、その範囲内において受け取る。そうでなければ、免許者には手帳を交付しておいて、一日の使用量だけはその限度内において供給を受けられるというようなことをしなければ確保できないわけでございますので、いまの売り惜しみ買いだめ防止の法律だけで、すべてあすから供給ができるというものではないわけでありますので——その間手をこまねいているわけはありません。ここでもってこうして御議論をいただいているわけでありますし、通産省も飛んで歩いているということでございますので、これはもう石油業界とも、ガソリンスタンド業者とも協議を行ない、不当なつり上げや供給不足が起こらないような措置はとらなければならない、こう考えております。
  132. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まあ、明瞭じゃありませんけれども、もう総理が一生懸命おっしゃっているんですから、それを信用しまして、早急にやっていただきたい。それから、ガソリンスタンドじゃないのです、この問題は。プロパンガスのスタンドです。  それからその次に、あまり話がたくさんありますので、政府のはかばかしい御答弁がないので、私はほんとうに困りまして、質疑応答する時間がなくなってまいりましたが、大事なことを少し申し上げておかなければならぬと思います。  総理の所信表明演説の中で、物価の値上がりの原因について、この異常な物価の値上がり——インフレということばは避けられましたけれども、ドル不安に端を発した国際物価の値上がり、第二番目は外国為替資金特別会計の大幅払い超、国際収支の不均衡、それから第三にあげられましたのは個人消費の拡大、こうしたことがあげられております。物価騰貴を押えるために総需要の抑制をはかることが大事であるというので、総理があげられておりますことばから引き抜きますと、財政執行の繰り延べ、金融引き締めの強化、民間設備投資及び大幅な民間建築の抑制消費者信用の調整——調整という微妙な言い方をされましたが、消費者のお金を使うのを抑制しようというおつもりなんでしょうか、こうしたことをあげられました。私がおかしいなと思っておりますことは、総理、これはほんとうにこういうふうに言われましたけれども、総理の力のかかっているのは、消費者のところだけじゃないかという気がしてしようがないのです。なぜかというと、財政執行の繰り延べというのはどの程度今予算案に出てきておるか、また、民間設備投資及び大規模な民間建設抑制というのはどのくらいおやりになったのか、こうしたことが、総理のお話の中からは出てこないのであります。それは、物価問題に関して閣僚会議をこの間からなさっておられる。その閣僚会議の中でその問題が取り上げられておる。ところが、取り上げられたその中からは、はかばかしい施策というのが出てこない。だから、公共投資の問題を含めまして、一体、民間投資の繰り延べ等どういう施策を打たれたか、まずその辺から御説明を承りたい。
  133. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まず、予算につきましては、公共事業費の七%繰り延べ、これを実施していることは、御承知のとおりかと思います。  これと並行いたしまして、金融の引き締め政策をとっているんです。これも御承知のとおり、すでに四回にわたって公定歩合の引き上げをしておる、それから量的な規制もしておるわけであります。  また、日本銀行におきましては、不動産金融並びに商社金融、これにつきましては、特に抑制の体制を強化しておるわけであります。それによって相当の効果をあげておる、こういうふうに見ております。
  134. 渡部一郎

    渡部(一)委員 民間設備投資は。
  135. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 民間は、その金融引き締め政策によりまして当然そういう効果を生じておるわけであります。
  136. 渡部一郎

    渡部(一)委員 民間建設は。
  137. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 民間建設につきましても、金融引き締めの効果として当然そういう効果はあげております。
  138. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 民間設備投資につきましては、この十二月−三月間におきまして、約二千億から三千億円ぐらいの設備投資の節減をやらせるようにいま手配を進めておりまして、十七日にたぶん産構審の答申がありますから、それでやるつもりです。大体、新規事業は認めない。それから、いままでやってきている継続の事業についても、できるだけ最大限抑制する。特に石炭や石油及び電気を使う企業については、それをかなり重点的に行なう、そういうような方策で、各十二種類の産業部門別にそのカット額をいずれ示しまして、協力を求めるということを進めております。
  139. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまのお話は、閣僚会議の結論でお話が出ておるのは私は伺っております。ところが、民間建設の問題でいいますならば、民間建設の問題について、各省庁からメンバーが出られて、これがいいかどうかと協議したようなのも知っております。しかし、繰り延べになった件数はきわめてわずかで、ほとんどその要請は通じてないように伺っております。いまおっしゃったのは、明らかにお話だな。ですから、それはきき目を発揮してないんですよ、要するに。きき目を発揮していない。総理、私はこれは立場が違いますから、こういう言い方をするのは御容赦いただくとして、本気でないのだな。大企業に対決するときだけ田中内閣はばかに弱くなる。消費者金融の引き締めなんかになると非常に張り切ってなさる。弱い者に対するとべらぼうに強い。ところが大企業に対すると、腰が抜けるぐらい弱くなる。こういうように私には見えるのです。ようございますか。というのは、銀行あるいはその他の問題について、私、その不愉快な例を一つ、これは具体例で申し上げなければならない。  もう時間がなくなりましたから一ぺんで申し上げますが、いま勤労者財産形成貯蓄と、消費者の信用というものを縮めるために、こうしたものに非常に熱を持っておられ、ここのところでまた半年の定期というものをつくられて、一%上げて、そして六兆円も出たボーナスの相当部分を回収しようという計画でいらっしゃることは、私もいろいろなところから伺っておるところであり、また、御計画も一部こうやって資料等にしていただいたところであります。  ところが、その六兆円の消費者のボーナスのほう——この間から、トイレットペーパーの値上がりをはじめ、めちゃくちゃに上がっておりますし、家計にはものすごい穴があいております。率直に言ったら、ボーナスをもらったとたんに、行く先はもう全部きまっております。こちらの庶民のほうはさまっておるのです。ところが、そこのところで、財形貯蓄をやりなさい、これはもうかるよ、やがて家ができるのだよという御説明で、ここにいらっしゃって速記をしていらっしゃる皆さんや委員部の諸君の中にも、ずいぶん入っていらっしゃる方があるようであります。そちらで数字を申し上げてくださる前に、私は時間を省くために申し上げますが、十月末現在で、この財形貯蓄の契約をなさった方々の総人数は二百四十三万八千九百六十一名であります。そしてその残高は千百四十五億六千八百八十四万七千円であります。そうしますと、どういうことになるかといいますと、一人当たり大体四万円ぐらいを拠出していらっしゃる勘定になるわけであります。荒く見まして四万円ないし五万円。そして、それが十カ月ないし一年半にわたって拠出されているわけでありますから、十カ月といたしましても、一人四千円ずつぐらい納めていらっしゃるわけであります。まことに少額といえば少額です。この財形貯蓄はどうなったか。この間消費者物価の値上がりは幾らいったかというと、一四・七%だそうです。政府が発表されたかなり控え目な数字でも一四・八%です。そしたら、これは値下がりしたも同じです。千百四十五億というのは、いまは九百億ぐらいにしかならない。しかも、ここで財形貯蓄を月々四千円ぐらいしかできない人というのはどういう人かを考えながら行政をやっていただきたいのです。どういう人なんだ。これを納めた人の顔が映るような行政をやっていただきたいのだ。この二百四十四万人の人々はどういうつもりで貯金したのか。貯金したら自然に給料から天引きしてくれるから便利だというのが一つ。それと一緒に、この人々は、財形に入っていると将来家が買えるのだそうだという話につられてしまう。ところが、実際にやってみたらどういうことになったのか。家がつくられたのは、当初のあれで百億です。百億ということは何かというと、千百四十五億のたった一割です。そして二千人です。人数でいうと何ぼになるかというと、この人たちの中で二千人というと千分の一です。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 千年待ったら家ができる順番が回ってくるのです。千年たったらいまの物価は何%になるか考えていただきたい。一年間に一五%ずつ上がったらどんなことになるか。こんな調子でいったら五年で倍です。十年で四倍、十五年で八倍、二十年で十六倍です。そして、しかもそのとき、一人当たりにどれくらいのお金が貸されているかというと、事業主に対して五百万円貸されていることになっている。ところが、二十年たってこの財形の家にありついたとき、この金額が幾らになっていますか。先ほど申し上げたように十六分の一です。五百万円の十六分の一といったら、いまの価格でたった三十万円じゃないですか。そうしたら私は、この財形の意味するものは、犬小屋をつくる制度でしかないと思う、こんなものは。これは犬小屋政策です。インフレ問題のときに一番気をつけなければならぬことは、弱い層、お金のない層、貯金しかたよれない層に対する手厚い保護です。こんなことは経済学の常識の常識の常識であると私は承りました。だから私はきょう申し上げているのだけれども、これに対してどうして保護の手続をとられないのか。数日前も、財形貯蓄の問題について、ある議員がおっしゃっておられました。ドイツにおいては、六年預けておくと、預けた金の十六倍になると、その方は言っておられました。プレミアムをつけるというぐらいは当然なことだ。ところが何にもつけない。この財形貯蓄に貯金されている二百四十四万人の人に対して、どう説明をされるおつもりなのか。私がこの財形の話を知ったのは、それこそテレビで知っただけの話です。変わった名前ですけれども、よろしくというコマーシャルから始まりました。これは変わっているのは名前だけじゃないんだな。中身は残虐きわまりなきものですね。そして、銀行はどういうことになるか。財形貯蓄という形で、あるいは半年間の定期という形で年末にどんどんいまお金を集めています。日銀を通してお金を締め上げればいいと、いま大蔵大臣は言われました。金融で引き締めればいい。それは大蔵大臣は日銀に号令なすっておもしろいでしょう。日銀総裁もおもしろくてしょうがないでしょう。銀行から金を巻き上げて持ってこい、ゆるんでいる、その辺にうろうろしている金を持ってこいといって、ふところに入れる。そうして銀行屋さんたちは、いま貸す金がなくなっています。私のある知り合いの銀行の支店長は、十二月に新規に人に融通できるお金は、支店長決裁でできるのは、たった五十万円だと言っています。そこまで締め上げられています。そこへ財形貯蓄の大宣伝が加わります。あるいは半年定期の話が加わります。そうするとどうなるでしょうか。銀行はうれしいじゃありませんか。福田大蔵大臣をはじめとする政府首脳の真心ある御配慮で、彼らは年末にお金がどっと入ってくるのです。だまされたたくさんの民衆からのお金が、がぼがぼと入ってくるのです。そしてあなた方は、そのお金を今度は銀行を通して、庶民から集まったお金をどこへ回すかといったら、大企業に回すんじゃないですか。これは大企業を優待させておいて、そして庶民のなけなしの六兆円のボーナスをねらう、とんでもない作戦じゃないですか。こんな卑劣な手段があるでしょうか。私は財形貯蓄をやっている人に申し上げたい。政府が態度を変えないならば、財形貯蓄は全部お払い箱にして、年末にトイレットペーパーを買い占めたほうがよほどいい。おしょうゆを買い占め、石けんを買い占め、お米を買い、小麦を買ったほうがよほどいいじゃないですか。  あわてた人は損をするのだと、さっき大蔵大臣は言われた。政府の言うことを信用しないやつは損をすると言われた。確かにいままでわれわれ庶民は損をし続けました。しかし、政府が言ったことと反対をやった人は必ずもうかりました。買い占めるなと言ったとき、買い占めた人はもうかったじゃないですか。だから、いま日本で大企業のほうばかり向いている自民党の体質がここに明瞭にあらわれているじゃないですか。財形貯蓄で喜ぶのは銀行じゃありませんか。銀行はもうかっているじゃないですか。また一部の企業家は喜ぶじゃないですか。これによって長いこと労働者を縛りつけることができるのです。雇用関係の安定ということは、御説明にも確かにありました。ところが、庶民はどうです。財形貯蓄にこのなけなしの千百四十五億を納めた二百四十四万人の人々は、ここのところインフレで値打ちが下がるばかりです。インフレで下がってきた。一四・七%も下がってきた。そして来年、まだいまものすごい勢いで下がりつつある。少なくともここ一、二年に関して責任を感じなければならないじゃありませんか。まじめに財形をやってくだすった方々に対して、政府はどういう態度でこれを弁明なさるのか。ところが、総理の所信表明の演説の中に、貯金をされている人は気の毒だなんて一行も書いてない。生活保護のようなもっと落ち込んだ層もあります。いま私の言っておるのは貯金のできる層です。まだいいほうです。まだ意欲のある層です。これは少なくとも自民党の言うことをまともに受けている層なんです。そういう政府を信用しておる日本国民をこれ以上だますのです。千百何十億というのは、金額は少ないですよ、政府全体の予算から見たら。これらの人々をだまさないように処置するということは、政治のほんとうの信頼を確保する最小の手続じゃないですか。その最小の手続に対して、議員が一生懸命にプレミアムをつけろという提言をなすったときに、いまの税体系をこわす、金融体系をこわすから、そんなことはできませんと、えらいあっさり大蔵大臣は言われた。あんな言い方で済む問題でしょうか。私は論理的に言うているのではないのです。庶民の側からの論理で言うておるのです。こんなことじゃ庶民はおこり出すにきまっておるじゃありませんか。私は、もうほんとうにこんな貯金制度、そしてこのような乱暴な財形制度をはじめとするさまざまな預貯金の制度、こうしたものの中で一生懸命に貯金をし、未来のためにと思ってがんばってきたまじめな日本の勤労者の皆さん方に対して、気の毒というより弁明の余地がない感じだ。私は、これは結局総理に伺わなければならないけれども、担当大臣としてまず労働大臣に伺いたいと思うのです。  労働大臣は、こういうみっともない財形貯蓄制度をそのまま認められて今期の補正予算を承認されたのかどうか、伺いたい。今期補正予算の中でその問題について労働大臣はがんばらなければいけなかったはずです。こんなのでは話にも何にもならないと言わなければならなかったはずです。私は、これはあまりにも残虐でなかったか。これはむしろ、もう行政の適不適の問題ではない、残虐、非残虐の問題だ。国民に対して、ぼくはニクソンのことばをかりてここで申し上げるのははなはだ遺憾ですけれども、ニクソンは言うた。インフレというのは現世紀最大の盗賊であると彼は言った。彼を私は決して尊敬はしていないけれども、彼は少なくともそう言うだけの良心と見識を持っておった。われわれは、いま政府として、あるいは議員として、国民の財産を収奪する側に回るか、その収奪したものを返す側に回るかの二つに置かれているのです。  この問題について、それは行政の上からいって、その制度に対してお金をやるとかやらぬとかということを問題にすることが、いままでのシステムをこわすとかこわさぬとか、それはあるでしょう。そんなことがあるのは当然。そういうことをつじつまを合わせるために膨大なる官僚組織があり、仕事の組織があるはずだと私は思っておる。行政は民衆のために奉仕するというのは、その面でこそ奉仕しなければならぬと私は思ってます。  まず労働大臣に伺いたい。あなたはどういう決意でこの問題に対処されるか。
  140. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えいたします。  財形貯蓄が始まって一年半で、二百四十万の勤労者が、おっしゃるとおり千二百億も貯金しておるのです。まだ始まって一年半でして、いまから先、この物価高、それにいかに合わせていくかということが、私たちが貯金した方々を守る問題です。まさにこの内閣物価問題に取り組んでいる一番大事なことです。そしていまから先、それを税法上の優遇措置とかいろんなことを考えて、そして必ず家を持たれるように、当初約束をしたことをやれるように、この内閣でやっていこうと思っておりますから、御了解願います。
  141. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、たいへん熱心な貯蓄増強論者であります。貯蓄は国を興し家を治める、こういうことを常々唱道しているわけです。  ただ、私は、いま渡部さんの御指摘の問題、ごもっともな面をたいへん強く認めます。それに取り組む道というのは、何としてもこの物価高の問題を解消する、これがきめ手でございます。これをやらなければいかぬ。それには、ここまできたこの情勢に対しましては、やはり総需要の抑制です。総需要といえば、国民にも協力してもらわなければならぬわけでございますが、まず率先して政府が財政の抑制をする、また、金融機関に対しましてはその抑制の指導をする、そういうことかと思うのです。とにかくこの問題は非常にむずかしい問題でございまして、根本的には、オーソドックスといいますか、物価抑制しなければ歯切れのいい解決にはならない。この問題に私はほんとうにまっ正面から取り組んでいく、これがまた預金者に対して報いるゆえんである、こういうふうに考えております。
  142. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は、大蔵大臣が言われたのと全く同じ考え方でございまして、物が上がるのは、やはり需要が物を押し上げるという面が非常に大きな要素を持っております。もっとも最近では、総理大臣が申されますように外国の要素もございますけれども、何と申しましても需要を抑制するためには、まず第一に、国が財政を縮めること、それから通産大臣も言われましたように、企業自身がこの際はやはり設備投資をたな上げしたり繰り延べること、しかりしこうして、国民の皆さま方にもどうしても消費の抑制を求めてまいること。これはもう渡部さんが御承知のように、わが国の国民全体の総生産というものは百兆ちょっとございますけれども、そのうちの五二%というものは国民の消費部分でございますから、政府も、また企業も、それはいま申しますような総需要の抑制をさせますけれども、やはり国民が一緒にそのつもりにならなければ、どうしても需要による価格の引き上げというものはおさまらない。  しかし、私は経済企画庁の長官といたしまして、そういう一般論のほかに、個別物価対策もぜひやってまいる。先ほど来あなたがおあげになりましたような個々の品目につきましても、正直者が損をしたり、買い急がなかった者が損をすることがないような、一つ一つの施策もぜひ進めてまいる、こういうつもりで今回この職についたものでございます。
  143. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと渡部君に申し上げますが、約束の時間はすでになにしておりますが、クライマックスですから、もう一問。
  144. 渡部一郎

    渡部(一)委員 委員長の御配慮に感謝をいたしております。  まことに残念でありますけれども、多数のお伺いをし調整をしなければならぬ問題をかかえながら、私は、最後の段階になりましたので、まとめて意見を述げさしていただきたいと存じます。  私は、ただいまの財形貯蓄の問題一つを取り上げて申し上げたわけでありますが、総需要抑制政策というものに対して全面的に否定しているわけではありません。私が申し上げるのは、総需要抑制政策をとるならばとるらしく、むしろ、富める者、権威を持てる者ほど、この総需要抑制の第一に抑制をするべきではないかという姿勢が行政からあらわるべきだと申し上げているわけであります。そうでないと国民が納得をいたしかねる、こういうことを私は申し上げているわけであります。  いま、いろんなおかしげなデータをたくさんつくってきたのですが、もう申し上げる間がありませんから、一つ二つ御紹介いたしますと、生活保護世帯と長者番付の第一位の人々の所得格差というのを私ははじいてみたのです。そうしましたら、どれくらいの差があるかといいますと、いままで、昭和四十三年くらいまでは大体八千倍から一万倍くらいのところなんです。ところが、これがますますひどくなってまいりまして、いま現在は大体三万倍というようなすごい差になってきたわけであります。これはどういうことかというと、一人の収入が年間の最高額で三十八億とか十五億とか、こういうようなすさまじいような金額が出ているわけであります。こういう大きくもうけている人と、生活保護でぎりぎり暮らしている人との差が、だんだんだんだん詰まっていく方向に行政をするということが大事ではないかと、私は一つは申し上げたかった。  それから、いろいろな生活保護で、今度はさらに五%のアップをすることになって御配慮をいただいておるわけでありますが、生活保護のいま一級地の人は五万二千七百九十六円でありまして、どれぐらい上がったかというと、今度は五%上げようというわけでありますが、五%上がってどれぐらい上がるかといいますと、四人を一人当たりの一日の生活費に割ってみますと、十八円何がしであります。十八円ということはどういうことか、私は御認識をいただかなきゃいかぬと思っております。というのは、商品の全面的な値上がりの中で、一人一日とはいいながら十八円を上げてあげることによって、生活保護基準を改定したと述べることは、もうパーセンテージで論ずるべきものではなくて、人間の、それこそ生活基準、生活に対する共感の中から、もっと適正な数字というものをはじき出さなければ、これはナンセンスではなかろうかと私は申し上げたかったのであります。  総需要の抑制政策は、したがって、私に言わせれば、公共事業費あるいは民間諸投資、こうしたものに対する抑制措置が前面に出てきて、そうしてこれこれの金額になりました、これほどまでに抑制したという効果が発揮されなければいけないと存じます。  また、それと同時に、私たち中央におる者がその自分の態度をあらゆる面で改めなければならぬと存じます。たとえば、官公庁における私たち議員の乗っている車を含めて、土躍日、日躍日は乗るのをやめましょうとか、ごく当然のことが当然として言われなければならない。ゴルフに行かれる総理のことを当てつけて私は言うわけではないけれども、ゴルフに行くのに、長駆して車を何十台もそろえて行くなどということについては、多少遠慮があってしかるべきだと私は思う。そうでなかったら、外国に対しても、日本が、油はないと言うこと自体がむだだと私は思うのです。  そこへもってきて、現在一番めんどうくさい問題になっておりますもう一つの大問題は、地方交付税に関してであります。地方の超過負担はいまものすごい金額になっております。きょうは数字をあげてるるお話を申し上げなければいけなかったのでありますが、これまた時間がなくて他の議員のお話し合いに譲りたいと私は存じます。しかし、地方自治体が超過負担でもうめちゃくちゃに苦しんでおりまして、地方自治体の持っている予算というものは、国民生活の一番末端と的確に融合している問題が非常に多うございますから、これは抑制するにも縮めるにもどうしようもないような問題が多いわけであります。  ところが一方、一方的な通達によりまして、最近、昨年度の超過負担に関しては、今年及び来年度において、その超過負担でお金を貸した分について取り上げるというような方針を大蔵省は出しておられるようでありまして、こういうようなのは、まさに現場を知らない机上の計算であった、私は困ったものだと思っておるわけであります。  いま私は、日本経済が成長一本やりから、成長に対して大きなとんざを来たしたところでありますから、ともかくその分配が公正的確である、少なくとも公平に取り扱われているという国民一人一人の実感こそが、政治に道義を取り戻し、社会の混乱を防ぐ唯一の道であろうかと思うわけであります。その意味において、今後十分の御配慮を仰ぎたいと思っておるわけであります。  そしてそれと同時に、この一連の事件に対して対応がきわめておそく、おくれております。たとえていえば、ある小さな、ほんとうの小さな実例を申し上げますけれども、三重県に焼きもので万古焼というのがあります。この万古焼というのは、前のニクソン・ショックのときに、ドルショックのときに、お金を金融公庫や何かから借りました。支払いが今日になっている。こういうような、これからになっております、こういうような問題は、どうしてもすぐ直ちに対応してあげなければいけない。しかし、金融公庫に対してそういう指導があるかというと、ない。  こういうふうに、あらゆる面について、いまや私たちは急速な対応策というものが俊敏に要求されておるのであります。そしてこの危機は、総需要を抑制することは大事でありますが、末端の一番つらい人々にしわ寄せするのではなく、企業の大きなところから抑制していく、そして日本国全体の態度を直していくという態度でしかるべきだと思うわけであります。  この点、十分政治姿勢を改めていただくことをお願いいたしまして、私の質問とさせていただきます。  御配慮ありがとうございました。
  145. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  次に、竹本孫一君。
  146. 竹本孫一

    竹本委員 私は、民社党を代表いたしまして、現下のインフレ物価の問題を中心に、若干の質問をいたしたいと思います。  今回の内閣改造は、この物価問題に取り組む政府の決意をあらわそうとした一つの英断であったと思います。安定路線を主張しておられる福田さんに蔵相の要職を与えられたことは、これは田中さんとして一つの決断であったろうと思います。同時に、経済の破局、インフレの爆発、もしくは恒常的な物価騰貴というものを非常に心配されて、従来の行きがかりや思惑を捨てて入閣をされた福田さん、これも一つの英断であったろうと思います。その意味において、私はお二人の決断に対しては、これを評価するものであります。  ただ残念なのは、本日の予算委員会には愛知ささんの姿が見えないということでありますが、ある意味において、彼はインフレの犠牲であったと思います。私は、十一月二十一日の大蔵委員会におきまして、インフレを押え込む自信ありやいなやということを中心にして、愛知さんに、これが最後の機会でございましたけれども、質問応答をいたしました。これもいま思えば、たいへん痛ましい思い出であります。私は愛知君とは東大以来の学友でございまして、つつしんで学友の冥福を祈って、質問に入りたいと思います。  そこで、総理には、まず最初に一言だけお伺いして、日銀総裁がお見えになっておるので、質問を移したいと思います。一言だけでけっこうなのですが、総理は、この内閣改造をやられて、本会議施政方針演説におきましても、いまや日本一つの大きな歴史的転換期に直面をいたしておるということを申されました。まさにそのとおりでございますが、この第七十二通常国会において国民が期待しておる点も、まさにその点であろうと思いますので、結論だけお伺いしたいのでありますが、この一大歴史的な転換期であるということは、総理政策の軌道修正を行なうという意味でありますか。転換というのは、一体どこからどこへ向けて転換するのでありますか。総理はスローダウンということばをよく使われますけれども、一定の方向に向かっていくのだけれどもスローダウンするのだということでは、これはスピードの問題だけであります。日本物価の問題を心配しておる国民が、いま聞きたいことは、物価はこのまま上がっていくんだろうか、政府政治物価をまだ上げていく方向に進むのであろうか、あるいは方向を変えて物価を押える方向に向かうのであるか、この方向転換があるかどうかということについて、こまかい説明は要りませんが、いままでは、物価をともすれば、あるいは志と違ったのかもしれませんけれども、上げる方向に進んできておった。これからは押える方向方向転換をやるんだ、そういう意味の転換が行なわれるのであるかどうか。さらに、その転換を必要としたということについては、やはり総理として反省をしておられるのかどうかというような点をまとめて、要するに、いままでのままに、ただスピードを落とすかもしれないけれども、物価は、上がり方のテンポが少しゆるやかになるけれども、上がる方向にいくのであるか、あるいは逆に、これを押え込む方向方向転換をするのであるか、従来のやり方は間違っておった、今度は物価を押える方向だということだけ総理から言明していただけば、インフレの定義は別として、国民は、今度は田中内閣物価を押える方向方向転換をやるんだそうだ、そうなれば買いだめも必要でないであろう、売り惜しみも必要でないであろうといったようなムードがだんだんに出てまいります。  そういう意味で、方向転換を意味するやいなやということ、さらに、総理が、新しい豊かさを追求すると言っておられましたけれども、その新しい豊かさとはどういうことをいっておるのか、きわめて結論だけでけっこうでございますが、総理の基本姿勢にかかわる問題としての御答弁をいただいて、次にまいりたいと思うのです。
  147. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 世界も転換期を迎えておりますし、日本は、石油問題を契機として、新たな転換を必要とするときを迎えた、こう明確に判断をいたしておるのでございます。それに適応した施策を、国民支持と協力を得ながら強力に進めなければならない、こう考えておるのでございます。  日本は無資源国でございます。あるものは人口だけでございます。人口と国民の英知と勤勉だけである、こう言っても過言ではございません。それは、過去も現在も将来も変わらないことだと思います。その意味で、外国から資源を輸入しながら、日本人の英知を加えてこれを外国に輸出する、いわゆる輸出立国というのが、明治から百年間の日本の基本でございました。しかし、そのような状態が戦後もまた続いたわけでございます。  しかし、四半世紀の歴史は、みごとともいわれるように日本は復興をなし遂げ、今日を築いたことは事実であります。しかし、諸外国において日本商品のはんらんその他に対して、経済活動その他に対しても批判が起きつつあるときに、私も前にも申し上げましたとおり、日本も、無制限な資源の輸入をはかりながらの輸出中心主義からここで脱却をして、生活中心に転換をしなければならないということを述べたわけでございますが、今度の石油事情を契機として一段とその思いを強くいたしておるわけでございます。有限な資源を無限に輸入することの不可能なことは申すまでもありません。石油は如実にそれを物語っておるわけでございます。ここで、いままで国民の汗とあぶらで築いたところの資源を、国の財産を有効に利用することによって、国民生活の豊かさ、また分配の不公平のないような、新しい国づくりということを考えなければならないということに思いをいたしたわけでございます。  物価に対しては、国際的な要因その他国際通貨の問題南北問題その他いろいろな問題がございますし、そういう面から、国際的な物価問題は別としまして、国内的においては、物価において悩んだり、影響を受けたり、生活を抑制されるようなことのないように、まず物価抑制日本人の働き出す、生産するこの恩恵が、あまねく国民に行き渡るような方向政策目標を定めて施策を遂行しなければならない、このように考えたわけであります。  新しい豊かさということは、私は常に申し上げておりますように、気候的にも地理的にも、世界のうちで、地球儀の中で一番恵まれたところに住んでおる、生まれ育ったのが日本人だと思うわけでございます。でありますので、お互いが同一民族として不公平感とか不満を持たないような、この国に生まれたことを真に喜び合えるということを、私は常に申し述べておりますが、これは物質的だけでありません。あらゆる立場において、やはりこの国に生まれてよかったということは考え得るわけでございますし、思い得るわけでございます。そういうような、福祉中心というか、ほんとうに後代の日本人に引き継いで遺憾のないような日本をつくることに正面から取り組もう、国民の協力を得よう、その新しいスタートにしたい、こう考えたわけであります。
  148. 竹本孫一

    竹本委員 問題は、物価の問題に集約をして、物価を押える方向に回るのでありますかどうですかということでございますが、この問題はあとでいろいろと論議を重ねていただくことにいたしまして、日銀総裁がおいでになっておりますので、日銀総裁に先にお尋ねをいたします。  日銀総裁にお伺いたしたいことは、いまの物価の問題と関連をいたしまして、通貨価値の維持をやるということは、あなたの最大の責任であり、課題であると思うが、どうかということであります。  そこで、ドイツ銀行総裁がかつてこういうことを言ったことがあります。政府は常にかわる、しかしドイツ民族は永久である、そのドイツ人のマルク、その価値の安定は、ドイツ銀行総裁として最大の課題であるということを言ったことがあります。私は、マルクの価値を円の価値の安定に置きかえれば、当然これはあなたの立場であり 使命であると思うのです。まだ十分論議をこれからやるわけでございますが、日本の猛烈な物価騰貴、これは同時に、裏からいえば、円の価値が下がるということである。通貨価値の維持ができないということである。そういう意味において、日銀総裁は、わが国円の、通貨価値の擁護、維持ということについてどの程度の責任感と使命と決意を持っておられるか。  従来、政府が、まあ政府政府の立場もありますから、とかくインフレに押し流されるということ、圧力団体に引きずり回されるということも、ある程度やむを得ない面があるかもしれません。しかし、日銀総裁はそうでない。一個独立の国家の機関として、通貨価値の維持という最大の使命を持っておる。したがって、ときには政府と一戦を交えてでも通貨価値の維持を勇敢に守ってもらわなければいかぬ。しかし、最近インフレが猛烈に進んでおる、あるいは異常な物価の高騰が続いておるといわれながら、日銀総裁が、名古屋の談話か大阪の談話で、金融にばかり引き締めのしわ寄せをされても困るというようなことを言われたことは聞きますけれども、どうも、政府との間にがちっと組んで通貨価値の維持のために戦っておられるという印象は、われわれ受けたことがない。その辺はどうでありますか。
  149. 佐々木直

    ○佐々木参考人 通貨価値の維持、日本でいえば円の価値の維持は、日本銀行の最も重要なる政策目標であります。その点についての認識は、私ども十分に持っているつもりでございます。  いま御指摘がありましたように、いままでそれでは通貨価値の維持についてどれだけのことをやったかという点でございますが、今回の物価の上昇につきましては、ことしの初めから金融の引き締めをやっております。そしていまの状態におきましては、金融の面では量的に相当きびしい状況になっておりまして、私ども戦後数回にわたっての引き締めの経験がございますけれども、今度の引き締めが最もきびしいそういう現実が出てきておる、こう思います。これはいまの激しい物価の上昇のもとにおいては当然のことであるというふうに思っておりまして、この効果はやがて出てくるものと確信しております。  それから、政府との間にどういう話し合いをしておるかということでございますが、これは私ども絶えずいろいろな機会にお互いの意見の交換をいたしておりまして それにまあ表に一々御報告はいたしておりませんけれども、がっちり肩を組んで仕事をしておるという点は、はっきり申し上げられると思います。
  150. 竹本孫一

    竹本委員 日銀総裁が、事態の重要なことを、並びに自分の使命について十分認識をされておる、これは私、疑いません。問題は、その決意と実行の問題であります。いまお話がありましたところによれば、政府と十分緊密に連絡もとっておる、がっちり組み合って協力をしておるということでございますが、われわれの立場からいえば、政府とがっちり組んではいけないのです。あなたはときに政府と衝突をしなければいかぬ。けしかけるわけではありませんけれども、政府インフレ的な財政膨張を行く場合に、それでは困るんだということを言うほうが大事なんですよ。だから、あなたのいまの話は食い違っている。政府とがっちり組んでやっております、それでは困るということを言っているんだ。その点をひとつ間違えないように直してもらいたい。  次に、いまの量的統制がきびしいということも、私によくわかります。しかし、問題はツー・レートだ、おそ過ぎるということですよ。私は、大蔵委員会においても、あなたに、日銀の発動はいつも二、三カ月おくれておりますよということを申し上げております。今回初めて言うわけではありません。総裁も記憶していらっしゃるとおりだと思いますが、たとえば、今度の金融引き締め、あなたの公定歩合の引き上げをとって考えてみましても、ドイツが公定歩合を引き上げたのはたしか昨年の十月でしょう。日本が公定歩合を引き上げたのはことしの四月からでしょう。六カ月おくれておる。ドイツと日本とは事情が違うということもありますけれども、大体あなたのやることは六カ月か三カ月おくれておるということを言うんだ。おくれておっては、せっかくの問題が何にもなりませんし、場合によっては、そのためにひどい引き締めをやらなければならぬようになるんです。だから、決意も、ときには政府とでも衝突してもやるという決意が要るし、決意をしたら実行してもらわなければいかぬ。実行するときに、三カ月、六カ月おくれては何にもならぬ。おくれていないと思いますか。  さらに、円の切り上げの問題についても、昨年の十月、政府の一部から調整インフレ論などというばかな議論が出てきたときに、日銀の中には、まじめに、この際、円を切り上げてでも物価を押えるほうへ回らなければならぬという意見があったでしょう。そのときに一体あなたは何をしたかということであります。その点についてお伺いしたい。
  151. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいま御指摘のありました昨年の秋の問題でございますが、昨年の秋は、御記憶だと思いますけれども、いまもお話の一部にあるのかもしれませんが、円の第二回の切り上げがあるというようなことで、相当大幅なリーズ・アンド・ラッグズ、輸出急ぎ、輸入繰り延べの状況など起こっておりまして、そのために日本の外貨準備は急増いたしております。そういう中で金融引き締めをいたしますということは、結局、さらに輸出をふやす、それから、金融を締めることによりまして、輸出代金がどんどん入ってくることをむしろ促進することになる、こういう点を考えましたので、私どもとしては、そういうさなかにおいて引き締めを行なうことは、国際通貨制度論議の中でのルールについての考え方にも反する、こういうふうに思いまして、あのときにはそういう引き締めをいたしませんでした。それで、ことしの正月になって預金準備率の引き上げをいたしましたが、あのときもそういうような、まだ国際収支の大幅な黒字の中で準備率の引き上げをいたしましたものですから、そのときの政策発動の理由といたしまして、流動性の過剰を是正するためということばを使った次第でございます。
  152. 竹本孫一

    竹本委員 まあ、私は時間がないのでもったいないが、せっかくだから申し上げますが、日本の円の切り上げを避けることができるという前提が根本から間違っているんですよ。それを調整インフレをやって避けようということは、前提が間違っておる。さらに調整インフレなんというのはナンセンスですよ。調整というのは、コントロールすることなんだ。インフレというのは、コントロールがきかないことなんだ。コントロールするという政策と、コントロールがきかないというインフレとを一緒にして調整インフレ、こんなばかなことを考えるのは、よっぽどどうかしていますよ。その結果、ほかの事情がありますが、あなたは金融引き締めをやらなかった。そういう意味で、去年の十月、ちょうど調整インフレ論がいわれて、そういう意味の金融緩和がとられた。そのとき以来、日銀券をごらんなさい。日銀券が大体一七、八%伸びておったものが、去年の十月からでしょう、二〇%に上がった。それからさらに正月から二十数%に上がって、最近におきましては二七%、二六%というようなことで、一番最近は二七・六%くらい上がっておる。これだから、日銀券の増発と日本インフレの進行とは全く相関関係にある。この点は、きのう大蔵大臣の福田さんが、必ずしも貨幣数量説的な意見ではなくて、通貨はあとからしりぬぐいをするものだ、しかし、通貨の増発そのものがまた物価を刺激するという相関関係、相互関係があるんだという御指摘があった。私はこれは正しいと思うんだ。通貨数量説を全部信ずることも間違いです。しかし、通貨数量説を全然無視してよろしいというような考えも間違いである。これは日銀総裁の常識にまつ以外には運用はないのですけれども。  そこで、一つどうしてもお伺いしておきたいことは、この日銀券が二六%、二七%というように上がっていくが、あなたはこの日銀券の増発に対して歯どめを考えておられますか。歯どめの基準は何でありますかということです。私は、ヨーロッパの蔵相会議であったと思いますけれども、大体通貨の増発というものは、経済の実質的成長率、たとえば日本でいえば、一〇%プラス物価の許容される範囲の上昇、たとえばヨーロッパでは四%といっておる。そういうものでなければならぬといって話し合いをしたということを聞いたことがありますけれども、その決定があったかなかったかは別といたしまして、一〇%プラス四%。しかし、日本は自己資本が少ないのだから、もう少しパーセンテージを上げて考えてみても、私は、大体一八%前後が通貨増発の限度で、それ以上増発になるというところに追い込まれたときは、あなたは大蔵大臣その他政府と厳重な話し合いをして、もうこれから先はインフレになるんだ、これ以上余ってはいけないのだということの警戒警報を出してもらわなければいかぬ。あなたは通貨、日銀券の増発に対して一つの歯どめの基準としての何を持っておられますか、持っておられませんか、そこを聞きたい。
  153. 佐々木直

    ○佐々木参考人 通貨の供給量の問題は、日本銀行券の発行残高と、それからいわゆる預金通貨残高とを両方考えなければならないと思います。日本におきましては、小切手の流通がまだあまり一般化しておりませんので、日本銀行券に依存する部分が非常に高い。それで、またこの部分は、国民個人所得、それから個人消費に非常に密接な関連がございます。したがいまして、その額をどの程度にするのがいいかということにつきましては、賃金の水準、それから一般的な消費の動向、そういうものとの関連において見なければならない。それで、私どもは、ことしの初めからの金融引き締めにあたりまして、こういう通貨供給量を押えるということを目標にしてやってまいりました。  しかしながら、ただいま御指摘がありましたように、二七%という日銀券の増発率がだいぶ続きまして、ここちょっと、二六%まで下がってまいりましたけれども、まだ思うように下がってきていないのが事実でございます。ただ、預金通貨を加えましたもの、これはわれわれはM2と呼んでおりますけれども、定期預金まで入れた数字でございますが、これを四半期ごとに見ますと、四十七年の十月から十二月の三カ月間の平均の増加率は、季節調整済みで前期比六・九でございます。ことしの一−三が六・〇、四−六が五・六、七−九が三・一、十月は前月に比べまして〇・六の伸びになっております。したがいまして、こういうふうに総体としてのいわゆるマネーサプライの増加率は、時を追って低くなってきておるということが申し上げられると思います。  ただ、日本銀行券の流通高につきまして何%を目標にしておるかという御質問でございますけれども、これは具体的にシーリング、天井をきめますことは、現実になかなかむずかしいと申さざるを得ません。ただ、いままでの経験で、二〇%をこす増発がありますときには、どうしても引き締めをやって全体の信用収縮をはかり、それを通じて銀行券の増発を落としていかなければならぬ、そういう経験的な判断を持っておることは申し上げられる程度でございます。
  154. 竹本孫一

    竹本委員 経験法則でも何でもけっこうですが、歯どめのないということがいかぬということを言っているのです。最近においては、いろいろの条件を総合してみれば減ったとかいう話もありましたけれども、これは経済の動きとか資材の問題だとか、いろいろあるのですから、これは引き締めた結果でもあるのですから、私がお尋ねをしたのは、日銀券の増発というものについて、歯どめ、その基準、原則を持っておりますかということを聞いた。しかしながら、時間がありませんからこのくらいでとどめますが、いま言われたことは、確認をいたしますが、大体二〇%以上をこえれば日本物価騰貴の上において重大なものである、危険信号と考える、二〇%が精一ぱいだ、かように理解してよろしゅうございますか、経験法則上はだ。私は一八%と思いますが、あなたが二〇%と言われるなら、それでもいい。しかし、少なくともそこが歯どめであるということを国民にも理解させ、あなたもわれわれに約束してもらわなければ、日銀券は二六になりました、二七になりました、そんな話を聞いているのじゃない。どこら辺でがっちり押えますかということを聞いているのですから、もう一度、二〇%は、経験法則の上から見て一つの大きな歯どめである、かように理解してよろしいかどうかを伺いたい。
  155. 佐々木直

    ○佐々木参考人 二〇%を境にしてわれわれが問題をどういうふうに扱うかという態度の変更をやらなければならない、それを、いまの線をこえているのに何にもしないでいるというようなことは適当ではない、こういうふうに考えております。
  156. 竹本孫一

    竹本委員 日銀総裁に対して最後の質問でありますが、年末金融の問題についてひとつお伺いをしたいのです。  私は、いま言ったように、通貨の無原則な増発はいけないということで、一つの歯どめをかけてもらいたいということを申しました。それから、同時に私は、通貨の引き締め、日銀券の引き締めだけが日本インフレ対策の主力部隊であるような従来の行き方に反対なんです。これは世界の常識なんですよ。金融一本でやっていけなんということは、世界の常識に反しておる。あなたがそれを非常におとなしくというか、政府に協力的というか、全部それを引き受けてこられたことにわれわれは不満を持っているのです。なぜいままで政府に対して抗議をしなかったかということをいま言っているのです。そういう意味で、最後にお尋ねをしたいのですが、中小企業金融というものは、年末においては非常に、日銀でも、三兆二千億か、全体としての資金不足があるということもいっておられるようだけれども、内容的に考えてみれば、高成長を受けて決算もたいへんなことになる、値上がりによる増加運転資金も要る、最近では資材の配給がうまくいかないので、あるいは電力の制限もありますので、減産、滞貨資金といったうしろ向きの資金も要るであろう、こういうことを考えております。そこらが、たまたま具体的な数字を見ましても、手元流動性は最近においてはひどく下がってきた、一・三カ月といったものが一カ月になった、そのうち一−三月になればもう〇・九三カ月くらいになってしまうというような話も聞いておる。都市銀行、地方銀行、それぞれ三千九百億や二千八百億円ぐらい実質的にもう預金が減って、みんな引っぱり出しておるというような情勢も聞いておる。こういうことをいろいろ考え、また倒産も先月あたりは件数においてはばかにふえておる。三〇%ですか、ふえておる。負債額においては八〇%というようにふえておる。こういう情勢でございますから、金融引き締め一本やりとは申しませんが、金融引き締めに重過ぎる負担をかけておるという政策は、むしろこの辺で反省すべきではないかというふうに考えるのです。  そこであなたにお伺いしたいことは、一つは、これからの金融引き締めというものは、量的な金融引き締めということから質的な金融政策に転換をしていかなければならぬじゃないか。その用意がありますか。  次に、公定歩合をまた上げようというような動きもあるようですけれども、私は、いま総裁も言われたように、金融引き締めの効果はいま浸透しつつあるところなんです。その経過、成果も十分見ないままに、従来の行きがかりで、もう一ぺん締めていこうということを言われるということもどうか、疑問を持つ。  さらに、金融引き締めということになりますと、これは年末金融については通産省にもお伺いしなければならぬのですけれども、本来政府三機関について四千五百億円ぐらい要求したところが、それが千百億円ぐらい削られたというような事情もありますので、年末の金融は中小企業についてはなかなか苦しいだろうと思うのです。そういうあれこれ事情を考えてみると、心理的に公定歩合の引き上げというのは効果はありますけれども、いまは、引き締めの効果、インフレ抑圧の効果はほかの面でやらなければいかぬ。それをいまあなたがまた引き受ける必要はない。そういう意味においても、この年末金融をさらに引き締めの方向へ持っていく、あるいは公定歩合をさらに上げるということは、よほど慎重でなければならぬ。その点をどうお考えになっておるか、お伺いいたしたい。
  157. 佐々木直

    ○佐々木参考人 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、いまの都市銀行を中心といたします窓口指導は相当きびしいところへ来ておりまして、そういう意味では、量的な規制というものは大体この辺がもう、何といいますか、ぎりぎりに近いところではないか、もう絶対にこれ以上何にもないとは申し上げかねますけれども、大体それに近いところではないかと判断いたしております。したがいまして、今後における量的調整は、ただいまお話がございましたような、もっときめのこまかい調整にだんだん移っていかなければならないと思います。ただ、質的規制の点は、これは基準になります質の判断というものが非常にむずかしいところでございまして、これについての国としての判断がまずでき上がることが必要であり、また、金融というものの性格からいいまして、こういう質的な調整には限界があるということを申し上げざるを得ないと思います。  それから年末金融につきましては、われわれとしてはもうかねがね用意をいたしておりまして、各関係金融機関と連絡をして準備を進めてきております。もう七日になりましたけれども、いまのところでは、大体この年末の金融はそうたいした波乱もなく過ぎていくものと思います。政府の今度用意されました年末の中小企業金融機関の資金も、去年の七割五分増になっておりますので、これである程度の需要はまかなわれると思います。  御参考までに、最近十一月に私のほうで中小企業、それから大企業、両方にアンケートをいたしまして調査いたしました数字から申し上げますと、資金繰りの判断で、楽であるという答えの来たものと、苦しいという答えの来たものと両方比較いたしますと、大企業のほうは、苦しいといっておりますものが五十八ほど多いわけであります。それに対して、中小企業の場合は三十四多いということ、それから手元現金、いわゆる流動性につきましても、中小企業のほうが大企業より高くなっておる、こういうことでございまして、中小企業についてわれわれとしても十分用意はいたしますけれども、現状においていま申し上げたような状況でございます。
  158. 竹本孫一

    竹本委員 日銀総裁には質問は以上で終わります。  そこで本論に返りまして、総理にお伺いをいたしたいと思います。  総理が最初に国民に約束されたのは、国民のための政治ということであった。国民のための政治とは、第一に物価の安定、第二に日本列島の改造、第三に福祉の向上であったというふうに思います。  そこで、これからこれらの問題について質問をしてまいりますが、まず物価の問題でございますが、石油危機が来ましたので、どこまでが政府の責任で、どこまでが石油の関係であるかとなかなか明快に言えません。まあその意味においては、政府は助かったような条件ができたろうと思うのですが、しかし大事なことは、私が方向を変えなければならぬではないかということを申しましたのは、石油危機が爆発してきた前からすでに物価は上がっておったのだということであります。いまの物価の値上がりは石油のためだけではない、その前にすでに物価は非常に急激な上昇をしておったということ竹ありますが、総理はそれは認めておられるでありましょうか、その点もちょっと伺っておきたいと思います。
  159. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 過去十年来を見ましても、昨年の上期までは卸売り物価は非常に低かったわけでございますが、卸売り物価が昨年の下期から急速に上がってまいったということで、引き続いて消費者物価が上昇傾向にあるということは事実でございます。それで、石油問題が起こったことを契機にしまして急激に乱調子になってきて、一部のものは、いままでの値上がり率よりも相当高騰しておるというものもあるわけでございます。
  160. 竹本孫一

    竹本委員 内田経企庁長官にお尋ねをいたしますが、先般の経済見通しの修正で、ことしの卸売り物価は一七%、消費者物価は一三%ということになったようでありますが、本来ならばこれは二%、五・五%ということであったと思うのです。ところが、最近の一番近い数字で見ると、卸は一七%をこえて二一・二%である。消費者物価は一三%をこえて一四・二%である。まあ卸の場合には特に二%と本来見ておったものが、改めて一七だけれども、先月は二一・二。というと、ちょうど十倍ですね。まあ約十倍だ。二%のものが三%に狂った、せいぜいいって四%に狂ったというならば、これはまあ見通しにもなるでしょう。計画にもなるでしょう。しかし、十倍も狂うということは、いかにいろいろむずかしい条件があったにしても、見通しの意味をなさぬ、経済計画意味をなさぬ、体をなさぬ、ナンセンスであると思いますが、経企庁長官は一体どういうふうに考えておられますか。
  161. 内田常雄

    ○内田国務大臣 竹本さんがおっしゃられますような状況がことしの五、六月ごろからあらわれてまいりましたので、そこで私は、ほうかむりをすることなしに、新しく就任をいたしました経済企画庁長官として、来年の経済見通しの準備の意味をも含めまして、思い切って改定試算を閣議に報告し、また世間にも発表をいたしたわけであります。しかし、これはいろいろの事情もございましょうが、外国からの要因も非常に強くなっておることを、私がここで持っております数字に基づきまして簡単に述べさしていただきますと、わが国の卸売り物価は四、五月ぐらいから二%、一二%、一三、一五、一七、一八、いま最後におっしゃった二〇のように上がってまいりましたけれども、輸入物価は、同じころからやはり二けたではありながら、わが国が一二の場合には一四、わが国が一三の場合には一八、わが国が一五の場合には二四、これは七月でございますが、八月は輸入物価は二七、九月が二四、十月が二五というふうな上がりをいたしてまいりました。しかし、こうしてわが国の卸売り物価の上昇に及ぼすこれらの輸入物価の寄与率は、私は、当初は、これは今回の経済社会基本計画のフォローアップ作業なんかの途中にも、二〇%ないし三〇%といわれておりましたけれども、最近の七−九月ぐらいの状況から見ますると、けさ総理大臣もおっしゃいましたが、動に輸入物価の上昇が率において高いばかりでなしに、わが国卸売り物価の押し上げの寄与率というものが四九%近くになっておるということも事実でございまして、これらのことをも十分含めまして、私は正直に事態を明らかにし、今日の対策の出発点にいたしたい、かようなことでございます。
  162. 竹本孫一

    竹本委員 正直はたいへんけっこうでございますが、私が言っておるのは、今度改められた見通しがまた倍にもなったり三倍になったりするようなことでは、見通しになりませんぞ、計画ということばに値しませんよということを言っているんですが、今度正直に認めたといわれる。もちろん石油ショックの問題もありますけれども、それこそ文字どおり海外要因ですから、これは別といたしますが、あなたは今度見通しとして改めて出されたこの六%成長論は、確信がある、責任が持てる数字であるかどうか。
  163. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは私ばかりでなしに、総理大臣も大蔵大臣も、本会議におきましても、この席におきましても、すでに申されておるところでございますが、今日の政府経済政策の最大の課題は物価の安定であるということを言われております。私は、その線に沿いまして、微力ながら物価大臣としてもやってまいるつもりでございますので、先ほど竹本委員は、ヨーロッパにおける物価上昇の許容率というようなおことばを使っておりましたので、私は、決してこれは国民に御心配をかけるようなことになってはいけませんけれども、物価が著しく下がるような状況は私はにわかには見通し得ませんけれども、物価の上昇というものがこの半年間におけるような大きな上昇のことはないように、できるだけの諸般の施策を整えてまいる、それを基礎にして今後の、また来年の経済成長の見通しや、あるいはまた、大蔵大臣に財政計画をもお立てを願いたい、かように考えます。
  164. 竹本孫一

    竹本委員 第一、これは先ほど来総需要の問題がいろいろ取り上げられましたけれども、日本のように、財政は大体、最近私が調べてみると、この四十二年から四十八年までにならして一九%の膨張ですね。去年は二四とか、あるいは補正を入れて三三%ということになっておる。三〇%に近くなるというようなことで、とにかく財政は膨張一本やり、さらに、設備投資も今度は二七%ということになっておりますが、これまた最近数年平均してみると一七、八%伸びておる。銀行の貸し出しも、昨年あたりは月に一兆円以上伸びている。財政はふくらむ、金はどんどん貸し出す、日銀券はふえる、設備投資はふえる。これでいて、総理物価を押えることができるはずがない。私は、ここで、もう時間がありませんから、むだな議論をしようとは思いませんが、海外要因というものは三割ぐらいで、国内の総需要というのが五割ぐらい、賃金コストアップその他のコストアップが二割ぐらい。総理、この〇・五と〇・三と〇・二、国内需要というものが五です。それからコストが上がるのが二、海外要因を三と考えておりますが、この議論をやっても意味がありませんからやめますけれども、いずれにしても、財政ものぼり坂一本やり、設備投資もふえる一本やり、金融は貸し出しをふやす一本やり、これでは、物価を押えることができないのはあたりまえですよ。だから、どこかで戦線収縮をしなければならない段階に来ておったところに、天祐神助か何か知りませんが、石油ショックがあったんだから、これを機会に、先ほど言ったように方向転換をやってください。方向転換をやらなければ、物価は暴騰する一方ですよ。  私は、総理にわかっていただこうと思って、きょうは表を持ってきました。総理、見てください。これは国民にも見てもらいたい。皆さんにも見てもらいたい。いいですか。この表を見ればわかりますが、これが消費者物価の上昇率です。ここが田中内閣ができたところです。特に赤にしておきました。こんなに上がっておる。こんなに暴騰ですよ。これは実際の数字ですからね。青いほうは実質成長率成長率はこんなに落ちている。一番最後のこの点だけ、四十九年度の見通しだけは、これはある民間研究機関の数字であって、これは間違うかもしれません。あるいは石油ショックのいかんによって変わるかもしれません。しかしながら、物価というものは、消費者物価はこんなに上がってきておる。これはいま一三%、いま政府の、企画庁の数字を使って書いた表です。実質はこんなに落ちている。スカイロケッティング・インフレーションということばがあるのです。まさにこれはスカイロケッティングだ。インフレーションと言うのが悪ければ、スカイロケッティングな恒常的物価上昇と言い直してもけっこうですが、ものすごい値上がりです。これは何か。  そこで、私は総理にも大蔵大臣にも要望したいのは、やはりこのままの、従来の考えを続けたならだめですよ、方向転換、歴史的転換をやらなければだめですということを言いたいのです。その転換をやる意思があるかないかということを先ほどもお尋ねしたのだけれども、必ずしも明快ではなかったようですが、どうしてもここで転換をしなければ日本の経済が破綻する。私は非常な心配をしている。  大蔵大臣、私は、日本政府の財政というものは、財貨サービスの面から見ればシェアが幾らだとか金額が幾らだとか、こういうことで事務官的に数字ではじいてパーセンテージを出せば、政府の財政が膨張するということの寄与率は少ないと思うのですね。しかし、政府がこれだけ積極的なかまえだぞということを受けて民間が動き、国民の消費もはでになるのですから、ほんとうの意味で総需要を押えようと思えば、やはり率先垂範で、政府がまず物価を押え込むために戦線の整理をやります、収縮をやります——いままでは若干東条戦法で、進め進めだった。この辺で、ストップ・アンド・シンクでもよろしい、戦線収縮でもよろしい、再編成でもよろしいが、何とか方向を変えなければならぬと思いますが、その点について大蔵大臣はどう考えられるかということが一つ。  もう一つ、時間がないのであわせて伺います。  私は、日本の財政のように二四、五%毎年毎年ふくれていくということは、これは間違いだ、東条戦法だと思うのです。そこで私が伺いたいことは、財政にも一定の節度がなければいかぬ。節度には基準がなければいかぬ。調べてみると、たとえば西ドイツ、イギリス、アメリカ等では、財政に、ローリング・システムで、とにかく五年間を中心にした、五年の幅で中期展望を持っている。どこでも持っている。こまかいことは、時間がありませんから申しませんが、中期展望を持っている。その中期展望を持たないでその年その年でやるということは、福祉国家建設という点から見れば、福祉財政は一ぺんふくらして来年縮めるわけにいきませんから、福祉国家に合ったように見通しを長期に持たなければいかぬ。しかし同時に、新幹線にしても高速道路にしても、思いつきでぽんと入ってきては予算がほんとふくれる、しかし来年どうなるかわからないということでは困りますので、それらも含めた五カ年計画というか、中期見通しというものがなければいかぬ。  私は、そういう意味で、第一に、財政が率先垂範で緊縮なり戦線収縮なりの模範を示すべきであると思うが、いかん。  第二は、その模範を示す基準になるために、日本の財政にはいままでにあまりないのですけれども、少なくとも五年なら五年ぐらいの中期展望——ことしだけは、いまだけは、石油ショックがありますから一応例外ですけれども、経済は安定するということを前提にして、これからの財政のあり方としては、五カ年間ぐらいの中期展望というものを持って、収入支出についても大まかな見通しを持つべきだと思いますが、いかがでございますか。
  165. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 今日の事態に直面しまして、財政が先導的な役割りをつとめなければならぬだろう、こういうことにつきましては、私もそう思います。つまり、いま私どもは、長期的な国づくり、そういうことを考えておるわけでございまするけれども、そのやさきに非常な事態に当面しておる、この事態にどういうふうに対処していくか、こういうことでございます。やはり一番大事な問題は、物価問題をどういうふうに克服していくか、こういうことであろう、こういうふうに思います。  物価問題を考える上におきまして二つあると思うのです。コストの面と需給の面。コストの面で大きな問題は、これは外国の物価高の問題でございます。需給の問題といたしますると、供給をふやすことが非常にむずかしい。むしろ、ふやすどころじゃない、減る勢いです。ですから、当面とすると、どうしても供給力にわが国の経済全体を合わせる、こういう姿勢をとらなければならぬ。  そこで総需要の抑制、こういうことになるわけですが、これはお話しのとおりなんです。総需要を抑制しようとする。総需要というのは一体何だ、こういえば、国民の消費は約五割だ、それから財政の需要が二割近く、産業設備需要が二割近く、その他輸出入の差額でありますとか、あるいは民間の住宅需要というようなものもありますけれども、大きなものはこの三つですから、この三つがなだらかに任務を分担する、そういうことだろうと思う。そのためには、どうしても政府が率先してその陣頭に立つ姿勢を示す、こういうことだろうと思う。そういうことでこれからの財政は非常に厳粛な抑制方針でやっていく。そういうことは国の施策の面からいうと残念なことでございますけれども、とにかくこの難局を切り抜けなければならぬ、そういう時期でありますので、そういう姿勢をとっていきたい、こういうふうに考えます。  それから、長期展望を持て、こういうお話でございますが、これは私も大蔵大臣をだいぶやりまして、そういうことを考えてみたのでありますけれども、どうも実体経済の面がかなりでこぼこがある、そういう際に財政長期計画を立てるということが数量的には非常にむずかしいのです。しかし、その財政の背景になるところの経済計画、そういうものはぜひほしい。いま経済社会発展計画がある。この発展計画は、この事態に当面いたしましてかなり基本的に動揺しておるわけでありますけれども、石油問題の帰趨等ともにらみ合わせまして、これを適正なものにする、そしてそれを背景にして財政の長期的運営をはかってまいりたい、かような考えでございます。
  166. 竹本孫一

    竹本委員 総理、ここで私は一つ提言をしたいのですけれども、それは、物価の問題というのは、政府に悪口を言っただけでは解決しませんし、われわれ共同の責任を持たなければならぬ問題でありますし、国民も、先ほど来申し上げましたように、一体来年はどうなるんだろうということについての見通しがほしい。同時に、先ほど来一つ一つきめこまかに物品名をあげて、砂糖はどうだ、LPGはどうだとお話が出ましたが、そういう問題についても、あるいは不満も訴えたい、あるいはいろいろの情報も聞きたい、こういうようなことでありまして、これはある意味においては議会がその機能を果たすべきだと思いますけれども、しかし、消費者あるいは労働組合の皆さん、あるいはその他の農協の皆さんも、言いたいことはあるけれども政府に直接言うチャンスもないということもありまして、いまのままでいくと、一番大事な物価問題について不満が内部にうっせきするばかりである。これを適当に吐き出させることが一つ政治だろうと私は思うのです。  そういう意味で、私も具体的にこまかい案を持っているという意味でもありませんけれども、民社党としては、物価安定国民会議といったようなものをつくって、これを中央、地方につくっていただいて、もちろん、これには、言うまでもなく消費者代表も生産者代表も、一番大事な流通関係の代表も、当然に政府の代表も自治体の代表も入っていただいて、地域地域、あるいは中央は中央で、とにかく物価問題を国民的規模においてみんなで情報の交換もやるし、話し合いもするというような場をひとつ持つことが非常に意味があるのではないかという意味で、われわれは物価安定国民会議を提唱したいと思っておるのですが、これに対する総理のお考えはどうでありますか、伺っておきたいと思います。
  167. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国民理解支持を求めなければこの大問題は解決しないのでございますから、国民皆さんの声を聞くということは非常に重要である、こういうことで、そういう具体的な問題として私書箱も設けたわけでございます。いろいろな問題に対しては直接政府に意見も寄せていただき、また具体的な問題の指摘も願いたい、こういうことでございます。  いま御指摘がございました国民会議というようなものを、いまどうつくらなければならないかということに対しては、まだまとまっておりません。おりませんが、政府には物価安定政策会議というものが設置をされておりまして、在野の有識者を網羅して検討を続けていただいておるわけでございます。このメンバーをどのようにふやすのかという問題もございます。ただ、非常に数を多くするということで持ち時間が非常に少なくなって、全部言いっぱなしになって、それを記録にするということでは実効があがらないわけでございます。ですから、都道府県、市町村、また企業、在野の有識等をどのようにしてこの物価問題に反映せしむるかという問題は、これは十分検討してまいりたいと思いますが、いま、物価政策国民会議というような名のものをつくるという考えは持っておりません。これは政策会議そのものがございますので、これをどのように拡大をするのか、どのような地方の声を反映せしむるようなことにするのか、そういう問題に対しては、物価問題としては広範な立場で国民の声を聞き、理解を得たい、こう思いますが、国民会議というような新しい名前も、このごろいろいろの国民会議というのが出ております。出ておりますが、そういうものをつくる必要があるのかどうなのかに対しては、結論を得ておりません。
  168. 竹本孫一

    竹本委員 これは要望にとどめておきますが、やはり国民的な関心を持たせ、国民的な規模においてみんなが参加しながらこの重要問題に取り組むという姿勢がぼくは必要だろうと思うのですね。それで、いま政府にもいろいろ、私的なものもありますが、委員会があり、政策会議がありますけれども、あれはいわゆる学者の集まりで、政策立案なんですよ。私は、政策立案のことというよりも、国民に情報を知らせる、国民のうっぷんも聞いてやる、そして、経済議会といってもいいかもしれませんが、経済問題物価問題を中心として国民との交流をやるのだ、こういう場をこの際持つことが、政治的に大きな意味があるのではないかと思いますので、やはりあとでよく検討していただきたい。要望をいたしておきたいと思います。  これから私はインフレの問題につきまして、定義の問題がやかましかったけれども、それは一応別にいたしまして、インフレを押えるために何をしたらいいだろうか、また、インフレを押え得ない間に被害をこうむっている人にどういう救済の手を差し伸べたらいいだろうかというような角度で、いろいろとわれわれの考えているところを申し上げてみたいと思います。  その第一は、総需要の抑制についてはすでに議論がありましたから、ここではやりません。公共料金の問題についてでありますけれども、公共料金を三年間押えろと、われわれ野党は大体みな言っておりますが、押えたあとがどうなるかということで総理もいろいろ心配をされておる。それもわかります。しかし、この間、これまた二、三日前だったと思いますが、OECDの、インフレの批判と共通の対策を論議したときの結論も、第一が、これは常識どおり、財政を押えろ、第二は、金融を引き締めろ、第三番目に、物価または公共料金の凍結ということを、OECDのお歴々が集まった会議一つの結論として出しているようですね。だから、これは野党だけが気楽に言っているという問題ではなくて、やはり責任ある人たちも、ヨーロッパにおいては常識として、三カ年なら三カ年という期間を切って、それはいろいろ理屈がある、それもわかります、しかし、とにかく目をつぶって、物価公共料金を押えなければいかぬ、そうしなければ波及効果がたいへんだということで、OECDの皆さんも、公共料金を押える、凍結をするということを第三番目の項目として取り上げておる。  そこで私の提案は、自然増収というのがあります。これはいろいろ理屈があるのですけれども、第一、私は自然増収ということばにあまり賛成でない。なぜかというと、自然増収というと、増収ですから、何か、一つ自然という字がついておるけれども、だれかの努力で収入がふえたように理解あるいは誤解される可能性があるのですけれども、これは私どもに言わせますと、物価がどんどん上がって、賃金もどんどん上がって、そうしていけば、これはおのずから法人税もふえ、所得税もふえるのがあたりまえなんです。だから、自然増収というのはインフレの一環なんです。でありますから、この自然増収というものを逆にインフレを押える方向に使うという意味において、私の提言は、自然増収が四兆円あるか、福田さんこれから御検討していただけば、情勢が変わったので半分になるか、それは一応別にしまして、自然増収の三分の一なら三分の一というものを物価安定基金というものにして、その基金の中へ繰り入れてしまう。そしてその基金の中から、公共料金の値上げをせぬで済むように、そこから補給といいますか補助といいますか、穴埋めをしてもらう。いろいろ考えてみると、今度の消費者米価が上がって一体何千億円プラスになったか、あるいは国鉄の運賃を上げて何千億入ったか。両方あわせて大体三千億程度でしょう。その三千億円の問題で国会は何年間も大騒動した。国鉄運賃で、ことしだけじゃありませんけれども、大騒ぎをしておる。このエネルギーの消耗のむだ、国会論議のむだというのを考えれば自然増収のうちから三分の一だけ別に積み立てて、そこからそれを補給することによって、つまらぬむだな議論もやめる。同時に、公共料金は政府が先頭に立って押えるのだという姿勢を示せば、物価安定にも非常に寄与するところが大であろうと思いますが、自然増収の一定部分を物価安定基金に繰り入れるという制度を確立するということについて、総理並びに大蔵大臣はいかがお考えでございましょうか、お伺いいたしたい。
  169. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 物価安定のために公共料金の凍結をする、そういう御議論の御趣旨はよくわかりました。私も、金さえあればぜひそういうふうにしてみたいなとも思うし、いろいろと考えてみたわけであります。  ただ問題は、金があるかどうかという問題にかかってくるわけなんです。つまり、いま米の問題、国鉄料金の問題、こういうお話が頭にあっての御議論と思いますが、さて、そういう引き上げをしないためのかわり財源を一般会計から補てんをするということになりますと、これを基金にしようが、一般会計にとめ置こうが、問題は金があるかどうか、こういう問題で、これは基金にする、いなの問題ではないと私は思うのです。  さて、そうするとどういうふうなことになるか。かりに一般会計なり基金から、料金のあるいは米価の引き上げをしないためのかわり財源を補てんするということになりますと、それだけ財源が不足してくる。いま自然増収、自然増収とおっしゃいますが、自然増収がありますと、大体その三分の一ぐらい地方に交付しなければならぬということになる。それから残った金はどうなるか、そういうことを見てみますと、大体社会保障費、これの当然増加というのがかなりあるのです。そういう方面にとられる。そうすると幾ばくも余りがない、こういうことになって、観念的には、理論的には物価安定基金というものを自然増収から制度として備蓄をするということは考えられますが、実際問題とすると非常にむずかしいのです。ことにことしはいろいろな要因がありまして、歳出の自然増が非常に多いのです。ことしの問題とすると、とてもその中の幾ばくかをさいてこれを物価安定基金というようなわけにいかぬ。ただ、基金は設けませんけれども、物価安定のためにはかなりの一般財源を使っておる。これは御承知のとおりであります。一つの研究課題にはしますけれども、現実に昭和四十九年度の問題とすると、非常にむずかしい問題である、こういうふうに存じます。
  170. 竹本孫一

    竹本委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁でございますけれども、私は先ほど申しましたように、自然増収というのは、経済学的に見れば、特にインフレ過程から出てくる。インフレ過程だけからじゃありませんが、いまの段階でいえば、インフレを通じての自然増収というものが相当大きい。そういう意味で、インフレがすぐストップできないということになれば、石油ショックを別にしても、ある程度自然増収があると見ていいのではないかという点が一つ。これは金があるかないかの問題があります。それからもう一つは、その金を三分の一、地方に交付金で返さなければならぬ。これはそのとおり。しかしながら、あるから減税に回す、こういうのですけれども、ここで、私は野党でございましてなかなか立場が苦しいのだけれども、減税一本やりでものごとを処理するということが、今後の財政制度のあり方として正しいかどうかということには私は疑問を持っている、率直に言って。それは、庶民は減税だといえば飛びつくし、選挙政策にはいいかもしれぬけれども、しかし、まじめに国の全体のインフレを押えるという立場から考えれば、減税一本やりでいくということ、あるいは減税中心主義でいくということにも、やはり慎重でなければならぬだろうと思うのですね。  そういうことも含めて、入ってきた金のうちの三分の一というものはここで積み立てておく。そして公共料金を上げれば千億円の収入あるいは二千億円の収入というようなことがありますけれども、それの与える影響は、金の面では計算ができない。政府がこんなに上げているのだ、たとえば、今度は、石油の問題並びに生活安定法の問題にも関連しますが、標準価格は高値安定になるのではないかと、皆さんが非常に心配して、深刻な質問が先ほど来出ておる。その場合に、標準価格はなるべく下へ押えなければ、生活安定ではなくて企業安定になる、高値安定になるということをいろいろ御指摘があったと思うのですね。しかし、政府が自分の公共料金をどんどん上げておいて、そして業者に向かっては、標準価格は下げていけなんということが、一体道義的に言えますか。私は、そういう点から考えてみても、政府がえりを正すことが先だと言うのですよ。そういう意味からいえば、公共料金を上げるということは、それによって赤字が千億円解消するとか二千億円解消するという問題以上に大きな問題があるのだから、そういうりっぱな積み立てをひとつ考えられたらどうですかということを、御検討いただくということでけっこうですが、考えていただきたい。私は、いまの政治は大衆政治でありますから、しかたがありませんけれども、率直に言って、良心的にわれわれ野党でもまじめに悩んでおりますよ。こんなに大衆迎合ばかりやってよろしいかどうか、ぼくは悩んでおる。政府ももう少し真剣になってもらいたい。  「米百俵」という小説がありますが、これは山本有三さんの有名な小説ですが、昔、米百俵分けてやれば、みんながもらえる米は、二合か三合か、知れたものだ、これを、ほしかろうけれども預けてくれ、それを別にたくわえて、それで、あれは米沢藩ですか、教育資金にしたのですね。教育基金にして、それで人材が出てきたということは、歴史でも、山本有三さんの小説でも書いてあるが、いま政府に必要なことは「米百俵」ですよ。この「米百俵」の考え方に立って、人気取りにばらまくのはやめて、できるだけ押えておくということが必要ではないか。そういう意味で私は安定基金ということを言っておるのでございますから、ひとつ御検討をいただきたい。  次に、減税の問題も一口だけ申し上げますがそういう意味で私は、減税のあり方についてもよほど慎重でなければならぬ。ただ、最小限度、勤労者の問題については、これは大蔵大臣もいろいろ言われるように、インフレでどうにもならぬ、〇・三の手当もほしいというような大騒ぎもあったわけでありますから、その点は考えて、勤労者のための減税については、従来の考え方を進めていただくのもこの際必要であろうと思います。しかし、全般的に、とにかく国会が始まれば減税が論議され、減税さえやればいいんだというようなイージーな考え方ではなくて、もっときびしい考え方でいきたいものだと思いますが、あらためて大蔵大臣の御意見も聞いておきたい。
  171. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は本会議でもしばしば申し上げておるのですが、減税計画、これは二兆円減税というのがあるわけです。そういう思想がありまして、それでずっと進んできておるわけですが、そのあとで石油危機という問題が起こっておる。そういう事態もありますので、一つ自然増収がどうなるかということが重大問題、それからさらにその後この物価の問題が非常に緊要な問題になってきており、その物価情勢に対しまして財政の姿勢をどういうふうにすべきかという問題がある。そういうことで、どういうふうにするかということをあらためて検討しておるのです。ただ、この問題は総理が非常に御熱心であることは御承知のとおりであります。そういうことも十分頭に置きながらこの問題の最終的結論を得たい、こういうふうに考えておるわけです。
  172. 竹本孫一

    竹本委員 次へ参ります。これは経企庁長官にお伺いしますが、物価の問題です。  いま物価を押えるについて、私は、佐藤総理時代にも、いま物価を押える権限というものが政府に十分整っていないと思うのです、そういう意味で、法的に準備体制ができておるかと言ったら、何とかやっていけますと言ったけれども、やりもしなかったけれども、物価もどんどん上がっておる。  そこであなたにお伺いしたいことは、前の経企庁長官の小坂さんも、私には何の権限もありませんと、たしか言われて、嘆きの一席をやられたようだったけれども、あなたは、いま物価を押えるについて法的な道具は一応そろっておるというふうに考えておられるかどうか。結論だけいただきたい。
  173. 内田常雄

    ○内田国務大臣 そろえようといたしまして、緊急にその成案を実は本日国会のほうにお願いをいたしました。
  174. 竹本孫一

    竹本委員 それでは伺いますが、独禁法で押えられるものと押えられないものとがあると思うのですね。独禁法でどうしても押えることのできないものは何でありますか。あなたが押えようと思うけれども、独禁法では押えることができないものとして何をいま考えておられるか。
  175. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私がいま申し上げましたものは、実は国民生活安定緊急措置法案という法律案でございまして、本日国会に提案の手続を済ませたわけでございまして、これは政府の力だけで標準価格とかいうようなものをつくるものではございません。むしろ国民大衆とともに一つの目安価格のようなものをつくろうという行き方でありますが、しかし、とにかく行政的措置をもって標準価格なり、ある場合にはそれ以上の価格もつくるという法律案でございますが、いま竹本さんがお触れになりました独禁法のほうは、これはもう釈迦に説法でございますけれども、企業自身が、ことに寡占的な地位にある企業が自分たちで相談してある値段をつくって、そして市場原理とかあるいは競争原理というものを殺してしまおうという機能を、独禁法によりましてこれを破壊していって、そして自由市場原理によって、競争原理によって安い価格をつくろうという性質の法律だと思います。私はその独禁法の存在価値も十分認めまして、それによって、その管理価格あるいは価格カルテル等による高値維持が行なわれるようなことがないように、それは公取委員会とともに関心を持ちますとともに、本日国会に提案をいたしました法律案によりまして、また国民とともに一歩進んだ措置をつくろう、こういうことを実は申し上げたいと思うものでございます。
  176. 竹本孫一

    竹本委員 物価の問題、また、それに対する法的な措置の問題、むずかしい問題でございますし、大臣も新任早々でございますから、若干同情して、これ以上言いませんが、ただ私が言いたいことは、野党のほうでは、昭和四十六年に、社会党さんも公明党さんも一緒になりまして、寡占事業者の供給する寡占商品の価格等の規制に関する法律案というのを出してある。  そこで総理、これは私、ずっと前にも言ったのだけれども、独禁法というのは、どこまでも競争を公平、公明正大にやって、いわゆるフェアコンペティションで、公正な競争をやらせることによって価格を下げよう、こういう法律なんだ。ところが、世の中にはもう競争する余地のない品物がたくさんあるわけです。これは独禁法とは関係ないのですよ。そこを間違えてもらっちゃ困るのだ。独禁法でいけば何でもやれると思うのは間違いであって、独禁法でいけない限界がある。そこで私がいま言うのは、独禁法でいけない——今度のできる法律は、石油法にしても、あるいは生活安定法にしても、それはまた今度の新しい情勢の中の新しい法律なんです。だから、基本的に寡占管理価格といったようなもの、そういうものを押える法的な装備は十分でない。それを一体今後どうされるかということをいま伺っておるのが一つ。  それから、時間がありませんから、その関係で今後どうされるかということと、物価安定政策会議というのがありますけれども、そこでは管理価格の疑いのある業種としてビール、医薬品、家電、石油製品、乳製品といったようなものをあげておる。これを、公取であるか経済企画庁であるかは別として、少なくとも政府で、寡占価格に準ずる管理価格の疑いがあるということで安定政策会議で問題を指摘されているのだから、これらのものを押えるためにどれだけの努力をされたか、されるつもりであるか。  この二つをお聞きしたいのです。
  177. 内田常雄

    ○内田国務大臣 ただいまの御質問でおっしゃることはよくわかりました。それは私も、独禁法の価格カルテルの排除だけでは排除しきれないある種の価格が存在することを認めないものはございません。すなわち、それは非常に寡占度の高い企業の製品などにつきましては、たとえば寡占企業価格形成排除法というような法律案をつくる必要があるのではないかという研究が、公取委員会に所属する、独禁懇と俗にいいますけれども、独占禁止懇話会でございますか、そういう方面で検討されているということを耳にいたしております。これは公取委員会というものが政府の外にございます仕組みでございますので、私がともにそれを激励してどうということはございませんけれども、その独禁懇あるいは公取委員会の研究の成果を私は見守っておるわけであります。  また、物価安定政策会議の提案につきましては、もとより、そういう方面のいろいろな御提案を取り上げて、できるものはできるようにいたしたいという趣旨でああいう会議があるわけでありますから、そのことにつきましても十分敬意を表しながら検討いたします。
  178. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いまビールの話がありましたが、これは寡占状態が非常に進んでおる、また、その寡占状態の中でまた二重に寡占状態が進んでおる、こういう状態にあるわけです。御指摘のとおりです。これが価格にどういう影響を及ぼすかということにつきましては、これは大蔵省としても、所管の行政でございますので、かねがね十分注意を払ってきておるのです。しかし、これだけ寡占状態が進み、その寡占の中にまた寡占をする状態が進行するという、こういう状態は非常に異例なことでございますので、これをどういうふうにするか、これは十分検討してみたい、こういうふうに考えます。
  179. 竹本孫一

    竹本委員 日本産業構造が、いま大蔵大臣御指摘のように、異常な形というのか、いびつな形というか、あるいは資本主義の当然の発展の形というか、これはいろいろ議論がありますが、いずれにしても、そういうフェアな競争ができない体制になっておるのでありますから、物価問題のやかましきおりから、特別にひとつ検討していただきたい。要望を申し上げます。  なお、これに関連してビールの問題でございますが、先ほども言いましたけれども、たとえばビールはこの間二十円上がりました。このビールの値上げを監督する法的な体制というものはないのですね。大蔵省国税庁長官が呼んで陳情をすることはできるけれども、命令することはできないのですよ。時間がないから申しませんが、これに類するものはたくさんある。そういう意味で、一つは、ビールの値を上げるのを押えることさえできないいまの体制で、はたして物価問題に取り組む姿勢ができたと言えるか。そのための姿勢の整備をやっていただきたいということが一つ。  それから具体論として、ビールは、いま麒麟麦酒だけが上げていないで、あと朝日とかサッポロとかサントリーとかというものは上げたようでございます。麒麟は、御承知のように、いま一五%の配当をやり、年間には二百億円の利益をあげているのです。しかし、この麒麟が値を上げなければほかの業者がまいってしまう。だから、これはやむを得ずということになるかもしらぬが、とにかく値を上げるでしょう。そうすると、いま二百億もうかっておる、一五%の配当をしておるのに、やむを得ず値を上げたら、またその利益がふえる。これに対して、いまの法人税では超過利得税というのはないのですね、総理。超過利得税はないのです。法人税一般を払えばよろしい。これもあとの研究課題でございますけれども、とにかく上げるということについて押える法的基礎がないということで、ひとつ法的な基礎をつくってもらいたいということが一つです。  もう一つは、麒麟が、おそらく、うわさによれば、三月中には値上げをしようというようなことを考えておるようでございますが、そういう場合にも、政府は、しかたがない、やむを得ませんということで終わるのか、あるいは何かほかの考え方を持っておられるのか、この点だけ伺いたい。
  180. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 麒麟が三月になったら値上げをするだろうという話は、まだ私もキャッチはしておりませんけれども、いずれにいたしましても、こういう際でありますので、業界にはできる限りのごしんぼうを願いたいという気持ちです。相談でもありますれば、そのように指導したい、かように考えています。
  181. 竹本孫一

    竹本委員 法的な整備をやられるときに、制度のあり方として、いまビールを一つ例にあげたのですけれども、ビールのように、もうかってしようがないけれども、ほかの関係もあって値上げしなければならぬ、こういうようなものがこれからまだ出てくる可能性もありますので、一体そういうものに対しては、私が考えると、行政指導で一応押えるというのが一つ、それから独禁法でも改正して企業の分割をやるということも一つの方法、あるいはビールでいうならば、朝日とかサッポロとか、弱いほうを統合させるということも一つの対策、あるいは先ほど申しました超過利得税をかけるという考え方もあるでしょう。しかし同時に、どうにもならない——ここではなかったか、本会議であったかと思いますが、製鉄会社が、一つの会社で七百八十億ももうけるというような問題も出ておるわけですから、そういうようなものについて、特にビールならビールのようなものについては、そういうふうにどうにもならなくなったら、最後の方法は専売でもやる以外にない。私は、むだな広告をやるのも考えものだと思いますが、その広告費を節約する意味からいっても、あるいはその他の企業経営の合理化といった意味からいっても、まあビールのごときは、専売なんというものも一つの方法ではないかと思います。いずれにしても、これをこのまま値上げさして、そのまま超過利得が手に入るということは許しがたい問題だと思いますので、ひとつ検討していただきたいというふうに思うのであります。  そこで、時間がなくなりましたから、まだほかにいろいろ言いたいことがあったけれども、一つだけ、地価抑制の問題について伺います。  先ほど来いろいろ熱心な御議論がありましたし、福田さんは、行政管理庁長官時代にも、地価問題について非常に熱心に検討をされたようでございますけれども、その行政管理庁で、地価抑制をされるという結論を委員会で出されて、これを尊重するということになったようでありますけれども、その考え方はいまもお変わりがないか。また、新しく行政管理庁長官になられました保利大臣は、そのことを押えていく、福田さんと同じように真正面に取り組んでいくお考えであるか。まず、結論だけお伺いいたしたい。
  182. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいまも私は、あの行政監理委員答申の考え方とこれは変わりはございませんです。ぜひああいう線でいってみたい、かように考えています。
  183. 保利茂

    ○保利国務大臣 前長官が、八カ月にわたって、行政監理委員会で、地価対策のための行政機構及び運営のあり方いかんということで、ずいぶん熱心に勉強され、それは十一月に答申になって、ただいま前長官も申しておりますように、熱心にこれを推進していきたいと、私もよく拝見させていただいておりまして、なかなかむずかしいところがあるようでございますけれども、ああいう答申が実現できますならばたいへんけっこうじゃないか、熱意を傾けてまいりたいと思っております。
  184. 竹本孫一

    竹本委員 マイホーム、財形貯蓄の問題等、いろいろ御論議がありましたし、時間もありませんから申しませんが、総理一つ例だけ私は申し上げるが、勤労者が三十年つとめまして、大体退職金でもらえるものはあれこれ合わせまして、まあ中学卒業であれば、四、五百万円、高校で五、六百万円の限度ですね。ところが、私は浜松ですけれども、いま浜松あたりで考えてみても、大体住宅地になるものは坪七万円します。五十坪なら三百五十万円です。建築資材が上がって、建設省もこれから半年のうちに二回も契約価格を改正しなければならぬような時代ですから、建坪一坪について二十万円はかかるでしょう。そうすると、十五坪ならこれも三百万円、合わせて六百五十万円かかるのに、もらうほうは五百万円前後なんですね。  結局、長い一生働いても、マイホーム一つ持てないということが今日の状態でありますので、私はここでいろいろ提案をしたいのですが、時間がないので急いで申し上げますが、一つは地価を押えなければいかぬ。ところが、地価抑制について行政管理庁で出された案は、いろいろまだ欠点をさがせばありますけれども、一つの大きな前向きの案だと思うのです。ところが、国総法を、まあ総理は非常に御熱心でありますが、断わっておきますけれども、私は、国総法の考え方は、考え方としては正しいと思うのですよ。ただ残念なことに、これは十年タイミングがずれている。ほんとうは昭和三十五年ごろ、日本の経済が高度成長に進もうとしたときにあれを敷けばよかったのです。そのレールを敷くのをいまごろになって出して、しかも物価は上がる、土地の買い占めがはやっているところに特定総合開発なんていうから、問題がややこしくなったので、あの構想は総理も自信を持っておられるが、半分はわかる。ただしかし、十年おくれたということが残念だと思うのです。  そこで、あの中で地価抑制に関しては非常にわれわれの考え方に近いものがあるので、私はその点は評価しておりますが、ただ残念なことに、国総法の第十三条は、これは行政管理庁がそういう答申を出された理由でもあるだろうと思うのだけれども、これは法文を読んでみればわかりますが、直ちにこれが東京都内等に当てはまらないようにできているのですね。「土地利用の現況に著しい変動を及ぼす」ような事業が実施されるということが前提で、だから、ほかのことばで言えば、開発が始まって、そして土地の値が上がり始めたときにこれをやると規制ができる、こういうことなんだ。ところが、開発が済んじゃって、旧東京市内になって、もう話は済んじゃったというところの土地が、思惑や買い占めでどんどん上がっていくというものに対しては、条文をすなおに読めば、私はこれは適用できぬと思うのです。そこで私は、国総法の、いまの変な条件がついておるために地価抑制に役に立たないところを修正すべきだと思うが、総理のお考えはどうでございますか。
  185. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そこは、審議の過程において、現状に合うように修正していただいて一向差しつかえありません。それだけではなく、私は、あの法律は、知事が認定をすれば旧市街地のほうの再開発も特定地域に指定できるというたてまえで提案をしておるわけでございますが、その後いろいろな議論を聞いておりますときに、あれだけのものをやるならば明確にやはり明文を置くべきだ、そうすれば、東京の下町のように、とにかく地震が来た場合にどうなるんだということはもうだれもが認めておるのだ、そういうところを指定をして、それでもう大都会の中心では土地を所有するということになれば、何百何十分の幾つという、いまのマンションと同じようになるわけでございますが、土地まで所有しなくても、床面積を提供するということもあるんだ、これは職住近接の場合は、賃貸の場合はできっこないし、それからそうでなくとも、マンションはいま土地つきでない、床面積だけを売り買いできるというものもありますし、いなかに行けば当然土地つきになるということはあたりまえの話だ。  ですから、今度指定した地域をいまの四〇%緑地にしたり、道路に提供したり、何階以上ということになるわけでございますが、そういうふうになった場合には、これを三年以内に行なう、行なうためには、長期、低利の金を提供します、固定資産税は二十五年免税します、まあ十五年でもけっこうですが、イタリアは二十五年やっておりますから。そういうことでもって誘導政策でやる、そうして、それでもなおやらない人がありますなら、やらなければ国総公団か住宅公団が代執行をする、こういう制度を修正案として明確に入れれば、完ぺきなものになるという御意見があります。ですから、それは私は入れてもらって一向差しつかえない。そうすれば土地問題住宅問題というものはほとんど片づくわけであります。まあ農協がやるレンタル制度とか、そういう問題まだまだ修正をすべきところがあると思います。  しかし、国総法というものがなくて土地問題を解決したり、住宅問題を解決することは、これはもう不可能なのでございまして、十年おくれたことは私も認めておるのです。私も、これを都市政策大綱をやったときに出すべきであったと、こういうことは考えております。おりますが、いまの、絶えず述べられる、きのうのような、東京湾に架橋ができれば、そこを買い占めておるところの人はもうけるじゃないかということも、これはあの国総公団ができればもうからなくなるのです。新たにあそこを特定地域に指定しさえすればいいのですから。ですから、いまのように条件がついておる、急激に土地が上がるということではなく、いわゆる土地計画を必要とする地域は、というふうに前提を変えれば、これはもうすべての地価は一ぺんに凍結になるというふうでございまして、私は原案に固執しておりません。
  186. 竹本孫一

    竹本委員 地価抑制というのは、物価抑制のまた一番中心の課題でございますので、行きがかり等にとらわれずに、いま総理がお答えになったように、何としても地価抑制、まず地価を押える、それから改造だということにしなければ、順序が間違ってはたいへんでございますから、これは十分御検討をいただいて善処していただきたいと思います。  時間がなくなりましたので、最後に自治大臣に、いま連絡をいただいたのでございますけれども、ただいま千葉県の館山のいとう屋デパートが延焼中だそうでございますが、犠牲者が何人出るかわからないといわれておる。年末警戒というのは毎年いわれることでございますけれども、この間も熊本において非常に悲惨な、死者が百名を突破する痛ましい事件がありました。今度も熊本の場合と同じに寝具の売り場から火が出たということになっておるようでございますが、年末警戒に万遺憾なきを期するために、自治大臣としては異常な決意が必要であろうと思いますので、自治大臣の決意のほどを伺って、質問を終わりにいたします。
  187. 町村金五

    ○町村国務大臣 いま竹本議員から御指摘になりましたように、きょう十五時四十五分ごろ、千葉県館山市のいとう屋デパート三階の寝具売り場から出火をし、目下延焼中とのことでございます。ただし、ただいま入りました情報によりますると、従業員と客は全員無事避難したということに相なっておりまするので、その点はひとまず安心をいたしておるわけでございますが、いま御指摘のございましたように、歳末ことに雑踏いたしまするデパートにつきましては、ぜひともこういった事態の起こりませんようにということで、さきに熊本の災害のあとそういった通牒等も全国に出した次第でございますけれども、再びかような事件が起きたことは、たいへん残念でございます。なおさら一そう気を引き締めて、かような事態の再発しないようにできるだけ指導してまいりたいと考えております。
  188. 竹本孫一

    竹本委員 終わります。
  189. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。  安井吉典君。
  190. 安井吉典

    ○安井委員 だいぶおそくなりましたけれども、もうしばらくおつき合いいただきたいと思います。  きょう私は、おもに経済問題を中心にした質問にいたしたいと思うのですが、この間の特別国会で、八月から九月にかけて、北方領土返還に関する国会の決議案の作成で、私ずいぶん苦労した一人でありますから、その問題をちょっと総理に伺っておきたいと思います。  ほんとうに御苦労さまでしたし、それから、たいへん交渉でがんばられたそうでありますが、しかし、私どもが結果を知る限りにおいては、平和条約の交渉は、共同声明に先方が領土ということばを入れることを拒んだまま継続審議となりましたし、安全操業については、話がまとまらないばかりか、共同声明のロシア語の正文には「交渉を継続する」ということばが欠落していたことが、当時の、櫻内さんおられますけれども、漁業交渉に行かれてわかって、安全操業の問題も従来と今日の段階では、ほとんど進展なしというふうなことではないかと思います。  きょうは、いま言いましたような事情の中にありますから、この問題について深く触れるつもりはございませんし、先ほど渡部委員から、日ソ共同声明の日本語及びロシア語の正文の食い違いについて詳しく指摘がありましたので、私はもう多くは触れませんけれども、先ほど渡部委員が触れました点のほかに、私どもよく調べてみた中において、本質的な問題でないにしても、たとえば鳩山訪ソ以来「広範な分野において順調な発展を遂げており、」という日本語のことばなんですけれども、その「広範な分野において」ということばは露語テキストにはない。あるいは「従来から実施されている日本人墓地への遺族の墓参」こう日本語にはあるのですが、ロシア語には「従来から実施されている」ということばが落ちている。   〔委員長退席、井原委員長代理着席〕 また、「田中総理大臣は、ソ連邦訪問中に受けた暖かい接遇に対し感謝の意を表明した。」と、こうあるのですが、この「暖かい」ということばがロシア語のほうにはないのですね。どうも初めは「暖かい接遇」ということでお互いに話していたのだが、あとでだいぶ模様が変わったのじゃなかろうかと勘ぐらざるを得ないような、どうも単純な行き違いじゃないようなものがあるような気もするわけでありますけれども、きょうはもう時間が十分ございませんから、その点は触れないことにいたしまして、私は今後の交渉の問題について伺いたいわけであります。  この共同声明の中でも明らかにされておりますように、領土問題を中心とする平和条約交渉は、来年のどのような時期に行ないたいと総理はお考えになっておられるのか、それは向こうへ行かれるのか、あるいはソ連の首脳をこちら側に迎えるのか、また、ブレジネフ書記長らソ連首脳も訪日を約束しているそうでありますが、その訪日の際を次の継続交渉の機会となさろうというお考えなのか、これからあとの交渉の段取りについてひとつ伺いたいと思います。
  191. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日ソの間の交渉は、いま外務大臣が先方へ参るということもございますし、向こうからまたこちらへ来てもらうということもございます。同時に、三首脳の訪日を求めておるわけでございますし、向こうは欣然快諾しておるわけであります。特にポドゴルヌイ国家主席は、大阪の万博に来日を予定しておったのが、途中で支障があって来れなかったわけでございますので、できるだけ早い機会に訪日をしたい、こういうことでございます。  首脳が来日をされるということも一つの機会でしょうが、そうではなく、絶えず日ソ間においてはひとつ交渉しましょう、会談を持ちましょうということになっておりますので、外交ルートでもって話し合いさえつけば、いつの時期でも交渉が進むということを考えております。特にシベリア開発の問題等、具体的なプロジェクトの問題をいま進めておりますので、日ソの首脳の往来というものは、今度訪ソしたというような、非常にかみしもを着た大げさなことではなく、お互いに気楽に、ほんとうにフランクに話すような訪問をしようということに合意を見ておりますので、だいぶ外務省ルートで積極的に詰めていけると思います。
  192. 安井吉典

    ○安井委員 もう少し詳しいお考えを伺いたいわけでありますが、いまお触れになりました経済交渉ですね、チュメニやヤクートや、あるいはサハリン等のエネルギー開発の交渉の問題でありますが、今日われわれが受けているエネルギー危機の段階で、中東諸国にほとんど依存をしているという状況から脱却するためには、供給先を少しでも分散し、多角的な供給を受けるという念願を持つわけでありますが、シベリア開発だとか、あるいはサハリンの開発等に対する日本の協力の問題が、どうもその後はかばかしく進んでいないのではないかというふうな印象を受けるわけです。当時の日ソ交渉の際には、ヨーロッパの各国を歩きながら、総理は、ソ連との交渉を有利にするためのバーゲニングパワーみたいなものをつくろうというふうな御努力をされていたようでありますけれども、それが逆に、いまのソ連からのエネルギー交渉というものを何か実りの薄いものにしてしまったのではなかろうか、そういうふうな印象を受けるわけですが、その辺はどうなのか。そしてこれからあと、いまの重要な問題の交渉を、早急に、しかもわれわれの立場で有利なように解決をする、そういう方向にどんどん御努力をいただくということが大切ではないかと思うのですが、どうでしょう。
  193. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ここで申し上げますが、私がヨーロッパに参りましたのは、ソ連を牽制するためとか、そんなことは全然ないのです。私は率直にソ連の首脳との会談でその間の事情は述べてあります。アメリカとも話し合いはいたしましたし、フランス、イギリス、それから西ドイツとも話をしてまいりました。これは北海開発といってもたいへんなプロジェクトでございまして、ドイツ及びイギリスだけでできるものではない、そういう意味でわれわれも参加をしますということに合意をしてまいりましたが、この北海の石油日本へ持ってくるということを考えておるのじゃありません。これはもうスワップでもって東南アジアや、これからのアジア地域における開発にも参加をしてもらうということであって、お互いが産油国に対応して消費国の会議をつくるというような対抗的なものであってはならないので、ロンボックの問題等に対しても、産油国も全部参加をして貯油もする、場合によれば、油送船は産油国に会社をつくってもらってやってもいいじゃないかというようなことまでざっくばらんに話してきたのです。もちろん、アフリカのガボンの問題も、これも石油の産地でありますが、かつてはフランスの植民地でありますので、ガボン政府から正式な要請はありますが、これは日本とフランスで共同開発を行なおうということで合意をしてきているわけです。しかし、この石油をあえて日本に引く必要もないのです。これはEC諸国が供給を受ければいいのです。そのかわり、フランス石油が持っているものに対しては日本に供給をするというような、海上ふくそうというような問題もありますので、そういう問題もきめてまいったわけです。また、西ドイツもそうなんです。いまイランにおけるデミネックスという西ドイツの国有石油会社と日本との競合があるわけですが、競合するというようなことをしないで、お互いが話し合いをして、スワップでもって均等な供給を受けられるということをやってきたのです。  そういう意味で、日本としては、カナダからもペルーからも、インドネシアからも中東からも、いろんなところから多様化せざるを得ないのであります、九九%入れているのですから。そういう意味で、まだ国論が統一できないような状態にお  いても、このシベリア開発というものに対しては、私は、お互いの利益が守れる立場でひとつ開発しようじゃないですかと、通産大臣のとき言ったのです。これは向こうも高く評価しているわけです。  そしてここではっきり申し上げますが、ソ連側はヤクーチアのガスはモスクワに引きたいという意思はありますが、チュメニの石油を他に引こうという意思は全くないのです。これは明確にいたしておきます。これは、もうソ連にはすでに年間三億五千万キロリットルの石油が産出をしておりまして、ソ連及びソ連の衛星圏に対しての供給は十分である。だから、結局チュメニの石油とかシベリア開発は日本を対象にしたものであるということで、共同コミュニケというものには書いてはございませんが、これは明確な確認として、シベリア開発に対しては一切日ソで行なう、そうして日本を窓口にする、こういう確認をしてあるわけであります。そして他の第三国の参加を妨げないということでありまして、そのときに、あなた方は、いまパルプの工場とかヤクーチアの炭田だとか、そういうものをアメリカと折衝しているじゃありませんか、こういう私が一つずつ詰めた問題に対して、それはすべて日本を窓口として、アメリカが参加をする場合も、日本を窓口としての開発をここでお互いに確認をしようということになっておるわけでございまして、シベリア開発に対する日ソ間の話し合いには、そごもありませんし、政治的なかけ引きもありません。政治的なかけ引きはやらぬことにしましょう、あなたのところは、私に初めに持ってきたときには二千五百万キロリットルから四千万キロリットルと言ったのを、何で一体、八月になって二千五百万キロリットルがピークですと言ったのです、そういうことは窓口が多いので——窓口が二十ぐらいあったようです。日本から行ったのは、みんな違う人であるということで、シベリア開発に関する窓口は一本にします、副首相か首相に一本にいたしまして、日本からだれが来ても異なった答弁をしたり、折衝したりはしません、お互いに資源の専門家じゃないから、日本の専門家とソ連側の専用家と確実につき合わせが行なえるようにいたしましょうということを確認してございます。  それで、これはもうそういう意味で、石油は軍需物資であるということからいえば非常に秘密なものであるが、すべての書類を私の前に提示をして、こういうふうに技術屋も学者も、全部ボーリングし、こうなっておるのです、全シベリアの地図を前提にして一つずつ討議を行なったのですから、そういう問題に対しまして、いまの問題などは、日本はフィフティー・フィフティーでもって輸銀と民間ベースでもってやりますが、アメリカは八対二でありまして、アメリカのほうが条件が非常にきついわけです。そういう意味で、米ソの間でもって接触も行なっておるということでございまして、これから寒い時期をずっとお互いが交渉していけば、いままでよりも相当スピードアップができる、こういうことでございまして、流布されておるような状態では全くないと私は信頼を持ってそう考えております。
  194. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つ、これは新しい問題提起なんですが、サハリンと北海道の一番北の稚内との間に直行航路を開設するような運びができないかということであります。昔は稚泊連絡船という連絡船が常に行き来していた。最短距離四十三キロですから、先ほど問題になった川崎から千葉県へ行くぐらいの距離しかありません。向こうが見えるのですからね、サハリンは。ですから、そういうものを実現できるような努力をすること、それがまた実現できること、それが今後の領土問題その他の日ソ友好関係を促進することになりはしないか、こう思うのですが、これは外務大臣ですか、いかがです。
  195. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま提起された問題は、本年五月に稚内市が関係方面に陳情された趣でございますけれども、その後まだ運輸省には正式に開設の届けが出ていないようでございまして、日ソ間の話し合いが目下停とんしておるように私は承知いたしております。しかし、御指摘のように、日本とサハリンとの間の航路の問題は、確かに大切な課題でございますので、関係者の間で検討が進むことを期待いたしております。
  196. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 いま外務大臣からお答えがございましたが、私どももそのように承知しております。これは海上運送法によりますと、ただ通告のみで航路の設定ができるわけでございまして、そのほか、私どもの関係でない税関の問題だとか、あるいは出入国管理の問題とかいうなうな付随したものはあるだろうと思いますけれども、航路そのものは通告だけで運航ができる、こういうことに相なっておりますから、いま外務大臣がお答えになったとおりでございまして、正式には、まずいろいろな話を承知しておるところまでいっておりません。
  197. 安井吉典

    ○安井委員 サハリンは、これはソ連の内部問題でありますけれども、千島列島と並んで外国人禁止区域になっておるはずです。外務大臣、御承知ですか。そのことが、シベリアと新潟等との航路の開設とは違った性格を持っているのではないか、私はそう思うわけです。ですから、私は、この提言をするのは、千島列島と樺太とはわれわれは全く異質のものだというふうに考えているはずです。それを向こうのほうが、千島列島も樺太もどちらも外国人禁止区域——これは昔、日本の領土であったという経過があるわけですから、そういうようなことで、いま交渉の対象になっている千島列島と同じ性格のものに旧樺太を考えているのではなかろうか、そういうふうな感じを受けるわけです。ですから、樺太を返してくれなどという考え方を持っているわけではないんですから、そういうことからいって、いまのサハリンだけは、もう全くシベリアなんかと同じ扱いにしてください、そういうことを明確にすること、それが問題点をずっと詰めていく一つの道にも通じはしないか、そう思うわけです。ソ連の各都市とは、日本の都市との間の姉妹都市のあれもあるわけですけれども、樺太との間は、たしかネベリスクと稚内市が友好都市です。そういう形で、完全な行き来の状況になっていないわけですよ。ですから、私は、これは日本の外務省の立場からも、いまのような隣同士が十分に話し合いができるようなそういう仕組みをソ連の国内的にもできるようなふうにひとつ要望をしていく、こういうことが大切ではないかと思うのですね。その点どうでしょう。
  198. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この航路の持つフィージビリティーの問題は別にいたしまして、いま御指摘のような問題が隘路になっておるということがあるかもしれないという御指摘でございます。私ども、そこは解明いたしまして、もしそのようなことでございますならば、解消につとめたいと思います。
  199. 安井吉典

    ○安井委員 そこで、インフレ物価高やあるいは石油危機等の問題についてこれから触れてまいりたいと思うわけでありますが、田中首相は、インフレではないということを言い張って、まあ福田さんもそれに調子を合わせておられるわけでありますが、この間の辻原委員質問にもだいぶここで論争が続いたという経過があります。しかし、いま日本の経済をインフレでないというのは、下村博士と田中さんぐらいじゃないかと思いますね。学者先生の意見を聞いたらと、福田さんこの間言われましたけれども、おそらくそうではないかと私は思います。これはやはり最高責任者としてことばに気をつけなければいかぬということもあるのか、これまで言っていたことばをひっくり返せば男がすたる、こうお考えなのか、これはよくわかりませんけれども、この間何か書いてありましたよ、インフレエンザ角榮型という。うまいことを言う人もいるものだと思って私も感心したのでありますけれども、その総理が、インフレではない、インフレではないと言うたびに、現実のインフレの中で苦しんでいる国民のほうは、ああ、この人は苦しんでいる私たちのことがわからないんだな、もうこの人にたよってはだめだな、そういう気持ちが私はどんどん高まってきているのではなかろうかと思います。そのことを、インフレインフレでないかという議論は別として、インフレではない、インフレではないということばを繰り返すたびに、私は何か白けた気持ちになるわけです。国民もおそらくそうじゃないかと思う。ですから、田中内閣支持率が七〇%の大台に乗っていた昨年の段階から、一年足らずで二二・七%というふうに急落をする。さっき竹本さんが、物価のほうはロケット噴射機のように上がったと、こう言いますけれども、どうも田中支持率は、ニュートンの法則に従って低落した、こういうふうな形ではないかと思うわけです。そういうことを、私はきのうの議論、それからこの間うちの本会議の議論の中で感じておりましたので、率直にひとつ申し上げておきたいわけであります。  そこで、今日の石油の危機の問題につきまして、私は、通産省の行政能力と、それから石油連盟等の業者側のモラルが今日ぐらい問われているときはないのではないか、こう思います。通産省のほうも、ちょうどおり悪く汚職事件などが起きたりして、エネルギー庁内の動揺もあったかもしれませんけれども、どうも、十分な資料を整えたり、対応をどうするかというきちっとしたものを持っていないのではないかというようなことを私はおそれるわけであります。たとえば灯油の問題にいたしましても、三百八十円に灯油は押える、しかし実際は、これはもう全く形骸化されていて、その状況に手をこまねいているのが現状ではないか、これは、いままで繰り返し繰り返し言われたとおりであります。しかも、灯油を押えるということは、灯油以外のものはもう手が届かないから、かってになさいというふうに聞こえるわけですよ。だから、プロパンガスについても、ナフサについても、その他の石油製品は全面的に、灯油をしり馬にしていまのうちにやっておけというふうな、そういう形での売り惜しみと、その結果としての値上げ、こういう事態が今日起きておるのではないかと思います。  辻原委員が昨日要求をいたしました石油製品の価格についての資料、私もあの問題を調べていたものですから、通産省にお願いをして資料を出してくれと言った。しかし、とうとう出せませんでした。きのうからいままでかかって石油の製品の価格の資料を国会に出すことができないという状況で、私も驚いたわけであります。先ほどやっと、これだけでありますというので持ってこられたのは、石油製品卸売り価格、これはガソリン、灯油、軽油、A重油、B重油、C重油だけで、ナフサはありません。しかも、よく見たら、日銀調査、日銀の卸売り調査ですよ。通産省にこれしかないのですかね。特にナフサの価格については、私は別なルートからとっておりますけれども、業界で発表しないから通産省は発表できないという、そういう態度ではないかというふうに思います。何も資料を十分に持ち得ないで、行政指導とかなんとか言ったって、おこがましいことではないかと思う。私は、きのうから通産省の皆さんといろいろ接触をしているうちに、そういうふうな気がしてきたわけでありますが、どうでしょう、通産大臣。
  200. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 正直のところ手不足でございまして、御満足のいくことができないのを遺憾に思います。石油につきましては、来る船によってもいま値段がみんな違ってきている。それから油の質によってまた非常に違ってきておる。非常に千差万別の状態で、いま乱高下があるわけでございます。また、その石油の精製会社の能力、大体ガソリンを主とする経営をやるか、あるいは重油系統を主としてやるかによりましても、コストがまた非常に違ってくるわけであります。大体、いわゆるメジャー系はガソリンやナフサ、いわゆる軽いもの系統を多くやり、民族系は重いもの系統をおもにやっておるという傾向でございましたけれども、各社によりまして千差万別であるわけです。公定価格制度があれば、それはある程度原価計算や価格の統一的なお示しもできるのでございますけれども、いまのような状態でございますと、大体上と下とこの程度、しかもまた石油の質によって非常に入荷のものの性格が違いますから、そういう意味で、たいへん恐縮でございますが、なかなか判定しにくいというのが、率直な実情でございます。
  201. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ちょっと一言。先ほど安井さんが、田中総理は、辻原さんの質問に対しまして、現況はインフレではない、こういうふうに何回も答えておる、こういうふうなお話でございましたが、これはそうは言ってないのです。インフレということばが非常にむずかしいものですから、インフレであるともないともお答えいたさない、こう言っているのですから、これは非常に誤解を与えることばでありますので、よくひとつ、誤解のないようにお願い申し上げます。
  202. 安井吉典

    ○安井委員 いまのインフレの議論は、実にこれはつまらぬ議論だと思うのですよ。もうあまり言わぬほうがいいんじゃないですかね。
  203. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 一言だけ。福田大蔵大臣、特に発言を求めて述べたわけでございますが、私が、辻原さん言われたときに、インフレーションであるという御認定であるならば、あえて異をさしはさみません、こう言っておることで御理解をいただきたいのです。そうではないと、インフレーションということばというものは、非常に大きな影響を持つものであります。インフレーションであるという場合に行なわなければならないものは、第一に何が起こるか、これは所得政策に踏み切らざるを得ないわけであります。そういう問題は、インフレーションとうらはらの問題になっておる政策的なものでございますから……。インフレーションであるというなら、どこの国でもやっているのは、みんなそういうことです。だから、そういう問題に対して、私は非常に慎重な発言をしておるというのであって、私がその前言に対してこだわって言っておるものじゃありません。どこの国でも、国内にインフレーションが起こった場合には、所得政策をまっ先に取り上げるということは当然のことなのです。そういう問題もありますし、まだ所得政策に対して私は国民的なコンセンサスを得られるような状態にありませんので、政府はやる考えはありません、こう述べているのでありますから、この間の政府の声明にもございますとおり、国際的インフレ傾向に対して、インフレを招かないために全力を傾けなければならない、こう述べておるのですから、すなおにそういうふうに理解をしていただきたい、こう思うのです。
  204. 安井吉典

    ○安井委員 そうすると、総理インフレと言ったらもうすぐ所得政策、そんな学説で、学者の意見を聞いたらというお話がありましたけれども、それはそんなつながりを持っているものじゃありませんよ。ですから、この問題は、私は、別な質問があるので時間が惜しいから、きょうはいま議論しませんけれども、そういうふうな形で問題を理解しているとすれば、私は、だから経済政策方向が誤ってくるのではないか、こう思うわけであります。それは、日本列島の改造の前に田中さんの頭の改造のほうが先じゃないか、こう言いたいぐらいであります。  それはそれとして、いまの石油の問題でありますが、三大臣がいろいろお考えになっているような問題と違うのですよ、これは。ただ現在の製品価格は、ナフサはこの会社では幾らです、幾らですと、それだけとっていただければいいのですよ。大体これは七円くらいで私どもは押えている、幾つかの会社から聞いてみて。ですから、これは、きのうの正式な資料要求でありますから、ぜひこの予算委員会の間にきちっとしたものをつくってお出しをいただきたい、そのことだけひとつ申し上げておきます。  そこで、石油や電力の問題について、いま各産業別にいろいろな問題が出ている。電力のほうをうんとよこせとか、新聞紙の問題も重大な問題になってきている。そういうふうなさまざまな部門別、業態別あるいは産業別と言っていいのでしょうか、やはりいろいろな角度から問題を整理していく必要があるのではなかろうか、そういう中で優先順位をきちっとつけておく、そういうことでないとたいへんな混乱が起きるし、新しい法律がこれから議論されるわけでありますけれども、その施行にあたっても、やはりそれがまずきめられておかなければならぬ問題ではなかろうか、こう思うのですが、その点についていまお考えはどうですか。
  205. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いま御審議願おうとしている法律が通過しますと、いずれ優先配当ということを実施しなければなりません。そこで、いまその準備のために局内においていろいろ作業さしておるところでございます。この前の緊急対策本部の緊急政策要綱にも、中小企業、農漁業、あるいは医療用、あるいは大衆交通手段、あるいは一般民生、そういうように大体重点項目は大きいところを指示されております。大体そういうものを中心にしてわれわれは国民生活を守っていくということを考えていきたいと思っております。
  206. 安井吉典

    ○安井委員 そういう中でいろいろ心配になるのは、農業の問題だとか、あるいは中小企業の関係であります。最近、ときでもないときに農民大会が各地で開かれています。それは、来年の耕作にあたっての耕作用の石油類、あるいはビニールハウスのためのビニール、あるいは最近では、えさを輸送する船の油がなくてえさが来ないというふうな問題もある。ほとんど大部分を外国にたよって自給を怠っていた日本の農業あるいは畜産業の今日のさまざまな問題点が露呈されているようであります。これらに対して政府としてどういうふうな手をお持ちなのか。  それからもう一つは、中小企業の問題では、先ほどは金融引き締めについてのお話がございましたけれども、資材難の問題もあると思います。大企業の方はぱっと手を打って資材を押えておくが、中小企業はそれができないので、高い資材を使う、そういうふうな状況があるようであります。その点について政府としてどういうふうな対策をお持ちか、この点きょう伺っておきます。
  207. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 われわれが一つの項目として非常に重要視しているのは、食糧の問題であります。食糧というと、当然食糧輸送も含まれるわけでございます。そういう重点項目につきまして、いま各省とエネルギー庁といろいろ協議をしております。そうして、いかにしてその法律ができる場合に重点的に配当していくかということを検討さしているところでございます。  なお、外航船の問題につきましても、飼料とか食糧の輸送という問題につきましては、われわれも重点として取り上げていこう、そう考えております。  中小企業につきましては、これは前に塩化ビニールや丸棒やセメントのときにやりましたような需給協議会、それからあっせん所、これらをつくりまして、いろいろな苦情も受け付け、また卸売りあるいは小売り、あるいは需要者、その間を円滑にするように、いまあっせん所の準備をしております。石油関係のあっせん所は、十二月中にはぜひ全国各府県ごとにつくりたいと思って準備をさしております。
  208. 安井吉典

    ○安井委員 農林大臣、どうですか、農林省として対策は。
  209. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林漁業用は、いまお話のございましたように、石油にたいへんいろいろ関係がございます。機械の動力用、それからまた、いまもお話のありましたプラスチック、そういうようなもの、ビニール、そういうものも必要でありますし、それからまた、これからだんだん寒くなりまして、やはり季節ものでハウス園芸が盛んに行なわれておりますが、そういうのに用います油あるいは電力、そういうようなものも必要になってまいりますので、直接、間接に非常にいろいろ必要なものがございます。  農林漁業用として四十八年度の私のほうで使用いたします燃料油の見込みは、農林業用として大体五百三十万キロリットル、それから水産用が五百八十万キロリットル、小計大体千二百万キロリットルでありますが、そのほか、関連企業が大体五百七十万キロリットルぐらい使っております。それからなお遠洋漁業、これのほうの油が大体六十万キロリットル、こういうふうにいわれております。そこで、遠洋のほうもさることながら、ただいま直接に必要な油等につきましては、通産省と緊密な連絡をとって、万遺憾なきを期するようにやっておるわけであります。
  210. 安井吉典

    ○安井委員 やはりこういうふうな危機的状況の中では、弱いところにしわ寄せがくる、それが常道で、したがって、社会福祉の部門だとか、産業の中でも弱い部門、こういうところに十分配慮をした対策というものが立てられていかなければならぬと思うわけであります。いま中小企業や農業の対策についてお話がございましたけれども、当然、総理にも十分な配慮をしていただけると思うのですが、決意を伺います。
  211. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 中小企業、農業は、一番しわの寄りやすいところである、しかも一番弱いところである、こういうことでありまして、これが確保に対しては万全な体制をとるべきであることは、もう当然でございます。
  212. 安井吉典

    ○安井委員 次に、産業構造の転換だとか、あるいはまた総需要の抑制だとか、そういうことが今度の国会でも繰り返し繰り返し言われました。特に、総需要の抑制という問題については、全くこれは与野党コンセンサスだといってもいいような状況でございます。ただ、そのやり方だとか、そのあとどうするかという問題については、意見の食い違いがだいぶあるのではないかと思うのですけれども、一応、抑制ということについては、同じような方向にあるような気がするぐらいの論議が今日まで繰り返されてきた、こう思うわけであります。  そこで、その産業構造の転換の問題にいたしましても、実はこれはいま始まったわけじゃないので、ずっと以前から何度も何度も繰り返し言われ、政府もそのことを発表してまいりました。とりわけ、重化学工業のような、資源を多消費するような、あるいはまた公害に関係があるような産業から、資源をあまり使わないで、しかも効果をあげるような産業の方向へ、知識集約型産業へというふうなことばは、これは「日本列島改造論」にも書いてあったように思うのですけれども、合いことばのように言われてきているわけであります。しかし、その産業構造の転換が、政府のほうで盛んにおっしゃるように現実にはできているのでしょうか。私は、どうもその点疑問に思うわけであります。  そういう産業構造の転換が、これまで幾度も幾度も政府が繰り返してまいりました行政方針であるわけですから、実は通産省のほうに、どういうふうな形でそういう転換が徐々にでも行なわれているのかどうか、それをわかるような資料をほしい、こういうことをきのうから要求していたわけです。ところが、そこに置いてありますけれども、通産省のいろいろな審議会とか協議会の中の勧告や報告書やリコメンデーションを、こんなにたくさん持ってきてくれました。実にたくさんの提言があるのですね。そういうものはたくさんあるんだけれども、現在、その産業構造の動きを動的にとらえた資料はありません、こういうことで、私のところにいまだに届いていないわけですよ。どんどんかっこうのいいことだけ言われていても、田中さんも通産大臣をおやりになっていたわけですが、現実にはどうなっているかということを、政府ははっきりフォローしていなかったのではないですかね。そういうことが現実にちゃんとやられていたのなら、資料を出していただきたいと思うのですよ。どうでしょう。
  213. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 勉強はしておるのでございますけれども、その知識集約型産業国家というイメージがどういうものであるかという方向が、必ずしも的確にいま世界的にもとらえられていないのであります。一番先進工業国であるアメリカでありますが、アメリカをささえているものは、ある意味においては農産物の輸出でもあります。だから、あの国は、そういう農産物、一次産業に非常に依存しているという面と、あるいは自動車産業のようなもの、それからコンピューター、ああいうようなものに非常に依存しておる。あと大きいもので目につくのは、原子力関係と航空機関係であります。  そこで、アメリカのような二億の民族、あるいはイギリスのような民族、あるいはフランスのような民族、日本のような民族でも、ある程度の重化学工業の基礎なくして、一億とか数千万の人口がある程度の生活レベルを維持していくことはむずかしいんだ、だから、やはり重化学工業の基礎を持って、その根の上に花を咲かせるというのが、知識集約型という形にならざるを得ないであろう。ただ、重化学工業のみに偏重したいままでの日本の体質というものは改革しなければならぬ。  では、どっちへ行くかというと、やはりアメリカの例等を考えてみますと、一つは、コンピュータリゼーションと申しますか、コンピューター化。そういう意味では、コンピューターの強化について歴代の政府は力を入れてきておるところであり、今日もまたやっておるところであります。  それから、各産業をコンピューター化して、新しいノーハウを採用して、マンパワーを減らし、非常に能率的な運営をしていく、そして資源を少なく使ってできるような形の産業に改革していく、それがまた非常に重要なところであります。これは大体ソフトウエアに関することでございますが、このソフトウエアの開発ということが、日本はアメリカに比べて非常に弱い線であります。その点を、自動車なら自動車、鉄なら鉄、造船なら造船、あらゆる部面においてソフトウエアを開発しながら各産業における省資源ということを実行していこう、そう考えておるのであります。  その次は、やはり航空機であります。航空機につきましては、YX等のいろいろな試みも持ちまして、積極的にいま挑戦しておるところであります。それからもう一つは、原子力関係であります。原子力につきましては科学技術庁を中心にしてやっておる。そのほかいろいろ、ファッション産業であるとか、その他具体的に個々的には進めておるのであります。  し、知識集約型国家とは何ぞやというと、そういうイメージを持った国は、いまのところはまだ出てきていない。各国がおのおの局部的に努力しながらそういう方向に進んでいるのが先進工業国家の姿であって、日本もそういう一つの類に入ると思っております。
  214. 安井吉典

    ○安井委員 重化学工業を私は要らないと言っているわけじゃないのですよ。しかし、そういう方向からだんだん移っていくということを、私どもは四、五年前からここで何回も何回も演説を聞かされているわけですが、それがほんとうにそういうふうになっているかどうかということですね。それを伺っておるわけです。
  215. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は、日本のコンピューターの力というものは最近かなり伸びてまいりまして、国内シェアにおいては、IBM等とフィフティー・フィフティーを維持しております。これはヨーロッパのECの国と比べると、ECはほとんどアメリカのコンピューターに支配されておりますが、日本がいまフィフティーのシェアを持っておるというのは、やはりある程度成功をしてきた例で、ヨーロッパがいままねに来ているというような状態でもあります。そのほかの面につきましても、個々的には非常に努力して、成果はあがっておるのであります。
  216. 安井吉典

    ○安井委員 そういう個々的な成果があがっている、それを数字であらわすことができないわけですね、そういうのは。成果があがっているかどうかということをわかっていないのですよ。その成果をきちっと押えていくという努力を全くやらないで、適当に演説だけやっているわけですよ。  それから、ここに、私のところにありますけれども、こんなにたくさんいろいろなリコメンデーションがありますよ。報告書がありますよ。それはみんなあるのだけれども、演説だけで終わっていて、その結果がどうなっているかということをつかんでいないということを、実は私は初めてきょう知ったのです。それを説明する材料が通産省にないというのですね。そのことを私は言っているのです。資料がないなら、これからぜひそういうところまできちっと押えていくような努力をひとつお願いしておきたいと思います。  そこで、産業の転換の中で、たとえば一例を言いますと、クーラーは何でも昨年の夏は百四十万台売れた。百四十万台がフルに動けば、五十万キロワットの火力発電所が三つ必要なんだということを読みました。そのクーラーが、ことしは二百万台。これはどうなっているのか。だから、資源節約型の方向に行こうと言いながら、こういうような方向をそのまま放置してきているわけですよ、今日の政治の中で。その一つの例として申し上げれば、そういうことになるのではないかと思います。こういったような例は実にたくさんある。幾度も幾度もここで演説したことを、やはり完全に行政の中で実施に移す努力を私どもは要求をしておきたいわけであります。  あるいは耐久消費財の問題にいたしましても、家庭電化製品を買う、何年か使ってちょっと故障が起きて、部品だけ取りかえてもらおうといったって、二年もたてばもう型が変わってしまって、そんなものはありませんという。そういう形でどんどん大きなごみ、粗大ごみが出る。夢の島が埋まってしまって、新夢の島、それも埋まって、三番目の新しいごみの島が今度できるそうでありますけれども、ここではどんどんいろいろなことをおっしゃっていても、そういうものに対してブレーキをかけたりする努力を今日まで怠っていたということがいえるのではなかろうかと思う。  だから、「消費は美徳」ということばならわかるのですけれども、高度経済成長の旗振りだと思っていた田中さんの口から、「節約は美徳」ということばをこの間初めて聞きました。ですから、そういうことばがあれば、産業構造といえば大げさかもしれませんけれども、いまの使い捨てシステムによって成り立っている産業構造、そういうようなものもやはり根本的に見直し、それを直さなければ、いかに「節約は美徳」と言ったって、これは美徳になりませんよ。総理大臣が幾ら演説したってだめですよ。節約が美徳になるような生産が、そういうような製品ができてくるような、そういうシステムをつくらなければいかぬと思う。これも非常に大事な問題だと思うのですが、どうですか。
  217. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 非常にその辺はむずかしいところでありまして、たとえばクーラーのようなものは、庶民の夢になっておるわけです。夏になると蒸し暑い日本でありますから、金持ちだけが涼しい部屋にいて、サラリーマンが暑い部屋におる、家庭に一つぐらいはクーラーを持った部屋をつくって子供を置いてやりたいとか、家族みんなでテレビを見たいというのがサラリーマンの夢であって、私は、そういうのはやはり夢をかなえてあげるということを考えるべきではないか、そう思うのです。しかし、家庭で使う耐久消費財も限度はございます。無限に何もかもやれという意味ではありませんけれども、そういうものは、やはりみんなに行き渡るように行政施策からもやるべきである。  問題は、それを補うエネルギー源をどうして供給するかということであります。そういう意味で原子力あるいは核融合とか、いままでにない新しい、もっと知識を使ったエネルギー供給という点にわれわれは力を入れるべきであり、また、いままでなおざりにしておった太陽熱とか地熱とか、あるいは水素の還元とか、そういう問題について、今度はわれわれとしても大きな反省をして、思い切って新しい分野に突入しよう、そうしておるわけであります。  もう一つの反省は、いまおっしゃいました廃棄物の処理の関係がございます。モデルチェンジとか、そういうようなことで部分品がなくなった、そういうことがないように、業界に対しては、大体五年ないし七年ぐらいパーツを用意してアフターケアをやるようにと指導しております。ものによって、短いもので三年ぐらいのものもございますが、大体五年ないし七年ぐらいのパーツを用意しておくように指導はしております。  しかし、その産業廃棄物を再生利用するという点において大いになおざりであった。これはビールのあきかんにいたしましても、あるいはかん詰めのかんにいたしましても、あるいはその他くず鉄の収集、自動車の廃棄物の処理、そういうような資源の再生利用、あるいは新聞紙その他の紙にしてもそうでございます。そういう点について、この際思い切った改革をわれわれはしなければならぬ、そう思っております。
  218. 安井吉典

    ○安井委員 ここでおっしゃるだけじゃなしに、産業の体制そのものを変えていく、そういうふうな方向の御努力を私は要求しておきたいわけであります。  そこで、総需要抑制ということばはコンセンサスだと私は申し上げたわけでありますが、しかし、一口に需要といっても、これはありとあらゆるものがあるわけですね。したがって、何を押えていくのか、それをどのように押えるか、そしてまた、その後の何を伸ばしていくかということ、これも非常に重要な問題で、私どもは私どもなりにこれからも考えていき、提起もしていくつもりでありますが、きょうはその本質論はしばらくおきます。  ただ、具体的に公共事業ですね。これは大蔵大臣に伺っておきたいと思うのでありますが、公共事業は、四十八年度もこれはある程度押えるといいますか、そういうふうなことが必要ではないか。先ほど来繰り返されたように、四十八年度予算こそは、大膨張で調整インフレの予算であった。その役割りを果たしてきた四十八年度予算における公共事業がまだ後半段階にあるわけでありますが、それについてはどのような考え方をお持ちなのか、それから四十九年度の公共事業についてはどういうお考えなのか、その二点だけ伺います。
  219. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 四十八年度につきましては、これは繰り延べ措置をしております。公共事業費のおおむね七%の額であります。  それから四十九年度につきましては、まだその基本的な率、額、そういうものはきめておりませんけれども、これは四十九年度の予算の編成の一つの非常な重点として、公共事業費はこれを抑制する。いろいろな経費を抑制しますけれども、特に公共事業費、これは物の需要を喚起するという性質が一番多いものですから、これは極力圧縮する、こういう考えでおります。ただ、その公共事業の中でも、民生に直結するというようなものがあります。そういうようなものにつきましては、これは特別に配慮しなければならぬだろう、かように考えております。
  220. 安井吉典

    ○安井委員 その四十八年度繰り延べの七%分は、四十九年度にずれ込ませるというつもりですか。
  221. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは繰り延べという措置をとっておるわけであります。つまり、この年度内において繰り延べというたてまえでありますけれども、これはあるいは事実上繰り越しということになるかもしらぬ。そういう場合がありますれば、これは四十九年度の事実上の予算というふうな結果になる、かように考えております。
  222. 安井吉典

    ○安井委員 年度の途中で繰り延べとか繰り越しといっても、これはなかなかたいへんなんですよ。一たん地方に通知がいってしまって、工事を計画するという段階になって途中でストップをかけても、なかなかなんですよ。ですから、やはり年度の当初に、もっときっちりした経済見通し、さらに財政方針、こういうようなものをお立てになるということが、私は非常に大切ではないかと思います。その点だけをちょっと申し上げておきたいと思います。これは簡単なやりとりだけで済む問題でありませんが、一応、時間の関係で、そのことだけひとつきょうは伺ったことにしておきます。  そこで、その総需要抑制の中においては、私は、大規模工業開発プロジェクト、そういうようなものもこの際見直すべきではないかということを、これからひとつ提起したいと思います。  いままで、本会議その他で議論になりましたのは、新幹線だとか、本州−四国三橋、あるいは東京湾の架橋等でありました。しかし、それ以外にも、新全総やあるいは列島改造論の中にも取り上げられているような大規模開発プロジェクト、そういうようなものも同時にいま進められつつあります。それもやはりこの際、公共事業全般の問題とあわせて見直しをすべき段階に来ているのではないか、こう思うわけでありますが、その点どうですか。
  223. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 公共事業と申しましてもいろいろありまして、たとえば非常な奥地、山村にこまかい道をつくるというようなものもあります。同時にまた、逆に、いま御指摘の大規模プロジェクトというようなものもあるのですが、どうしても抑制方針をとる以上、そういう大規模のプロジェクトというもの、これに傾斜がかからなければならぬだろう、こういうふうに考えております。ただ、その一つ一つ、どのプロジェクトということにつきましては、まだ検討を私はしておりませんので、これからひとつ作業に移ろう、こういう段階でございます。
  224. 安井吉典

    ○安井委員 たとえば、いまの新全総の中でも大きく位置づけられている北海道の苫小牧東部開発、むつ小川原開発、鹿児島県の志布志等の大規模プロジェクト、これらもやはり、これは別だという扱いに私はならぬのではないかと思います。特に、これらの大規模プロジェクトというのは、さっき通産大臣が言われましたような、知識集約型というものはわりあいないわけであります。重化学工業が中心で、したがって大きな地域を確保する、公害が出るからそういうことが必要なのであり、公害が出る前提は資源消費型だ、こういうことになっているのではないかと思います。  ですから、産業構造の切りかえということについても、さっき通産大臣が言われましたし、それから総需要の抑制ということを大蔵大臣も言われました。これは総理大臣だって同じだと思うのですよ。そういうことからすれば、それにつながっていく、そのいまお二人の大臣の言われたものにつながっていく形で、いま私が取り上げたような大規模プロジェクトがあるわけでありますから、したがって、今日のような段階では、これの見直しということが、非常に重大ではなかろうかと思います。  たとえば、むつ小川原は、用地八千ヘクタール、工業用地五千ヘクタール、志布志は、埋め立て地三千ヘクタール、苫小牧東部のごときは、用地一万三千ヘクタール、工業用地四千ヘクタール、ものすごく大きなものです。そのうち、いま一番進んでいるのは苫小牧東部開発であります。これの内容は、鉄鋼が六十年代には二千万トン、石油精製百万バーレル、石油化学が百六十万トン等の膨大な計画になっているわけです。  これについて、環境庁は環境アセスメントの作業を進めておられるようでありますが、環境庁長官はお留守だが、政務次官ですね、その問題について伺いたいわけでありますが、おそらく、この苫小牧東部開発計画なるものは、環境庁始まって以来の大規模開発ではないかと思います。将来にわたっての北海道開発庁等がつくった計画は、鉄鋼の大規模プロジェクトと石油化学の大規模プロジェクトというふうに聞いていたわけでありますが、周辺に集落もあることから、鉄鋼のほうは、これは立地の希望もあまりないようだし、これのほうは放棄すべきだというふうに環境庁は結論を出しつつあるということも伺っているわけでありますが、これはもう完全にそういう結論をお出しになったのかどうか。それから鉄鋼のコンビナートを立地させるかどうかということによって、環境事前評価のあり方が大きく違ってくるはずであります。苫小牧市が独自計画をつくっているわけですけれども、それには鉄鋼ということばが省かれているようです。しかし、完全にこれが消えてしまっているのかどうか。開発の終着駅を見通してアセスメントをやらなければならぬというのが常識なんですが、鉄鋼なしのアセスメントでいまいるのか、あるいは鉄鋼を含めたアセスメントという形で考えておられるのか、その辺の事情をこの際伺わせていただきたいと思います。
  225. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 環境庁といたしましては、御指摘の鉄鋼の問題につきましては、現在の昭和五十三年の開発規模を目標といたしております港湾計画の中には入っておりません。したがいまして、私どもがいま検討審査をいたしております環境アセスメントの中には、鉄鋼に関する部分はないわけでございます。  さらに、現在の計画昭和五十三年の開発規模を目標とした計画でございますので、環境庁といたしましては、その五十三年目標の開発規模に関する環境アセスメントをいたしておるわけでございまして、五十四年以降の問題につきましては、確かにそのような構想があることは承知いたしておりますけれども、五十四年以降の問題につきましては、その構想が具体的な計画になりました段階で環境アセスメントをすべきものだと考えておる次第でございます。
  226. 安井吉典

    ○安井委員 ちょっといま申されましたように、環境アセスメントの作業というのは、一たんいま五十三年度で切っておいて、しかし、その後において鉄鋼を立地させるのだというようなことで、敷地はあるのですよね。広大な敷地がそこにあって、それがもう買収されていて、そういう段階にあるものですから、五十三年度鉄鋼なしでいまの作業を終わってしまって、さあ走れ、こういってから後に、広大な敷地がもうすでに買収済みなんですから、鉄鋼が立地をするというようなことになると、問題は全く違ってくるわけであります。ですから、私がいま主張しているのは、最後の終着駅を見越したものでなければいけないということですね。だから、鉄鋼が完全にドロップしたのか、そういう形で結論をお出しになったのかどうかということ、その点です。
  227. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 鉄鋼につきましては、現在全く考えておりません。
  228. 安井吉典

    ○安井委員 そこで、運輸省の港湾審議会にその掘り込み港湾等の計画が付議されようとしており、その港湾審議会を開く前に、十日に十一省庁会議の結果を勘案してからきめると、先ほど松本委員質問に対して運輸大臣の答弁がありました。鉄鋼計画があったときに引かれた青写真の港湾計画をほとんどそのまま引き直して、現在こちらに持ってきているような状況のように聞いています。地元のほうから反対陳情が来ているのは、特にその点であります。ですから、鉄鋼が全くなくなるということになれば、全体的な港湾計画の変更が当然なければならないと思うわけです。防波堤を一、二削るくらいではなしに、規模そのものを縮小するということがなければおかしいのではないか。特に資源消費型、環境破壊型というふうな立地産業を迎えるわけでありますし、今日の総需要を抑制するという重大な課題がある段階であります。   〔井原委員長代理退席、委員長着席〕 それだけに、この点が重要だと思うのでありますが、その点の検討はどうなっておりますか。
  229. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 お説のように大規模なプロジェクトでございまして、経過にいろいろな歴史があるようでございますけれども、これは先生のほうがお詳しいだろうと思いますが、現在、四十七年、昨年の四月から、十・一省庁会議で、開発庁に事務局を担当していただいて、いろいろな面から検討がなされてきたようでございます。さらに、今月の十日に、環境庁をはじめ、そういういろいろな問題の提起があり、またそういう問題について協議がなされるということを聞いております。その経過等も十分ひとつ検討いたしまして、また、十九日にお説のように港湾審議会が開かれますが、もしかけるといたしましても、担当部会の専門家の皆さん方の意見を十分聞いて慎重に対処していきたいと思います。  ただ、先ほど来のお話のように、五十三年までの目標の計画でございまして、これを直ちに六十年度に引き直すかどうかということは、ここで私ども承知しておらないわけでございまして、五十三年度の計画において一応検討をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  230. 安井吉典

    ○安井委員 私の住んでいるところとだいぶ遠いものですから、内容よくわからないのですが、私ども聞いたところでは、このプロジェクトが、内容が縮小されたにかかわらず、港湾計画がそれに比例した縮小になっていないという点、これは用地が獲得されておるから、さらにまた大きな鉄鋼の立地があって、たいへんな公害状況が起きるのではないかということに地元の人たちのたいへんな心配があるようです。ですから、その港湾計画をどうするかということが、今日の段階の非常に重大な点になっているようでありますから、担当大臣としてその点を十分に考慮に入れた決定をしていただかなければならぬと私は思います。  港湾審議会のほうは、この次はいつ開くというふうにおっしゃったわけですか。
  231. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 今月の十九日でございます。
  232. 安井吉典

    ○安井委員 この苫小牧の地は、こんな広大な土地が遊んでいるというふうなことから、工業適地ではないということは言えないと思います。工場適地であることは確かであります。だからこそ、拙速におちいって問題を解決しようとすると、大きく間違ってしまうのではないかと思います。一般論としても、この大規模コンビナートということは、私は、今日まで政府が進めてきたような形では、やめるべきだと思います、そんな大規模なものでなくたっていいはずですから。ですから、公害防止や住民のための地域開発として構想し、進めるべきだと思うわけであります。いずれにいたしましても、総需要の抑制というものが非常に重要な段階に来ている際に、誤りのない対応を政府に強く要求をしておきたいと思います。  それからもう一つ、エネルギー問題として重要な点として、石炭の見直しですね。これはやはりこの際重要な問題ではないかと思います。政府は、今日まで主要なエネルギー源であった石炭をどんどんつぶして、今日の段階まで縮小してしまいました。そしていま石油のエネルギー危機というふうな事態に立ち至っているわけでありますから、私は、その見通しの誤りといいますか、そういうような責任は非常に重大ではないかと思います。外国どこでも石炭の縮小は行なわれておりますけれども、日本みたいにこんなドラスチックなつぶし方をした国はないのではないかと私は思う。そういうような意味での見直しをやはりこの際すべきであり、生産規模も、もう一度見直して拡大する必要があるのではないか。そしてまた、液化やガス化というふうな新しい技術開発の道を切り開いていくべきではないか。そういう点を、この際、通産大臣にひとつ伺います。
  233. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は同感でございまして、いまは第五次答申の線を実施している最中でございますが、石炭鉱業審議会におきましても審議を開始しまして、近く中間答申で、現時点における石炭政策の見直しについてわれわれに勧告をしてくださることになっております。それは、現時点の情勢に立って石炭をもう一回再評価せよという考えに立った勧告であると予想しております。それを待ちまして、われわれも誠実に実行してまいりたいと思います。
  234. 安井吉典

    ○安井委員 きょう最後に取り上げたいのは、自治体問題でありますが、その前にもう一つ、総需要の抑制に関連いたしまして、沖繩の海洋博が一つ爼上にのぼっているという話を聞くものでありますから、その点についての政府のお考えをお聞きしておきたいと思います。  復帰記念だとか、沖繩開発の起爆剤だとか、そういう形で海洋博は位置づけられてまいりました。海洋博ラッシュということで、沖繩はそのためのインフレ物価高、労力、資材の欠乏等、大混乱を生じているというのは、御承知のとおりであります。何しろ、あの小さな島にあれこれ二千億円に及ぶ大規模プロジェクトを持ち込むわけでありますから、そういう事態は当然ではないかと思う。私どもも海洋博問題を根本的に見直しなさいということをいままで主張し、政府にも申し入れをしてまいりました。ところが、その申し入れには全く政府は耳をかさなかった。ところが最近になって、いわゆる総需要抑制ということで、延期というふうなことを言い出して、政府調査団が沖繩へ行った。だから沖繩の人は、一体政府は沖繩をおもちゃにしているのではないか、やると言ったり、やめると言ってみたり、全く沖繩をもてあそんでいるのではないか、三回目の琉球処分だといきまく人たちさえいるわけであります。この間、本会議で瀬長亀次郎君の質問に対して、総理は、検討中というようなお答えがありました。ところが、新聞では、万国博覧会国際事務局、いわゆるBIEの理事会で沖繩海洋博の延期承認という報道がなされています。一体どういうことなんですかね。現段階どうなっているか、それを伺います。
  235. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 沖繩の海洋博につきましては、現地の屋良知事も非常に御熱心で、推進してきていただいたわけでありまして、われわれ政府といたしましても、誠実にこれを遂行しようと思って鋭意努力してきたところでございます。  ところが、このような石油危機に臨みまして、いろいろな物価問題あるいは沖繩経済に対する影響問題というようなことも再検討せざるを得ぬという立場になりまして、先般加藤開発庁事務次官を派遣いたしまして現地の方々の御意見も承り、いろいろな資料を持って帰って中央において相談しようと、そういう考えでおります。しかし、中止するという考えは、目下のところ中央にはございません。まああり得るとすれば、昭和五十年の年内開催はぜひ貫こう、ちょっと時間を繰り延ばす、そういう可能性は検討の対象にはなっております。しかし、それらにつきましても、一応各国に招請状も発していることでございますから、各国に対するいろいろな了解工作等も一応やってからでないと失礼にも当たるところでもあります。そういう意味で、諸般の内外の情勢を見詰めつつ、いま検討を続けておるというのが現状でございます。
  236. 安井吉典

    ○安井委員 BIE理事会がこの間パリで開かれたときに延期を提案して、そのとおりきまったというふうに報ぜられているのはどういうことですか。これは外務省ですか。
  237. 大平正芳

    ○大平国務大臣 条約の解釈といたしまして、もしかりに年内の期間内での延期ということがとられたとした場合にどうかという問い合わせに対しまして、まず差しつかえなかろうという、一つの仮説を置いての解釈上の返事はちょうだいいたしております。
  238. 安井吉典

    ○安井委員 そうすると、政府としての態度はいつおきめですか。
  239. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは沖繩御当局の意見もよく確かめて、そして屋良知事さんの意向等もよく聞いた上で、慎重に政府できめていきたい、そう思います。
  240. 安井吉典

    ○安井委員 私もこの間も沖繩に行ってまいりましたけれども、海洋博をやることで大混乱を政府が生じさせ、いま海洋博を延期するということでまた大混乱を生じさせています。そういうふうな状況を私はいつまでもおくということはいけないことだと思います。いずれにいたしましても、私どもは従来から主張しておりましたように、内容そのものもやはり沖繩の県民本位に考え直すべきではないか、そういうこともこの際申し添えておきたいと思います。  そこで、沖繩の問題のついでですから、海洋博が行なわれるまでに那覇空港の完全返還を果たすという言い方を最近ずっと政府はやってまいりました。もっとも、那覇空港の完全返還、山中さんもいるけれども、返還条約の目玉商品だったのですから、もう返ってきていなければいかぬわけですが、いまだにアメリカは居すわっている。この完全返還についても、外務大臣にもお会いいたしましたときに、代替空港のほうももうすぐかかっているのだし、間違いありません、こうおっしゃったけれども、かわりになる、つまり、P3が移駐するかわりになる飛行場の工事はまだ始まってないのじゃないですか。始まりましたか。それからまた、この際米軍基地全体についても整理統合をするための日米話し合いを進めるから、年内には相当大規模な返還計画を発表することができますよと私事お聞きして、沖繩の人たちも大喜びでいたわけであります。しかし、どうも最近の新聞の報道によりますと、年内はまた見込みがなくなったという意味合いになっているようでありますけれども、それでは、那覇空港といい、あるいは沖繩全体のあの膨大な基地群、この返還計画の進め方といい、約束と全く違うわけであります。その点どうですか。
  241. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御案内のように、沖繩につきましては、本年一月二十三日、それから六月十四日、二回にわたりまして返還計画を発表いたしたわけでございます。那覇空港の完全返還につきましては、嘉手納飛行場等における所要の移転計画の実施が必要でございます。目下米側との間にその具体的細目についての調整が行なわれておりますが、近くこの調整も終わりまして、工事に取りかかる予定であると承知いたしております。  それから後段に言われました全体の沖繩における基地の返還計画でございますが、これはできるだけ早く全体をまとめまして実行にかかりたいということで、鋭意準備してまいったわけでございます。若干おくれておりますけれども、目下鋭意詰めておるところでございます。
  242. 山中貞則

    ○山中国務大臣 四十七年度予算の三十八億の繰り越し経費について、話し合いが大体米側と煮詰まりましたので、十二月には、本月中には工事を、リロケーションを、執行を始めます。四十九年度予算において残額を要求しまして、五十年三月末には、海洋博開催のいかんにかかわらず、P3の移転を完了するという予定——一月末には終了させるという予定で、工事を進めるための予算請求その他もいたしております。  なお、その他の諸問題についても、ただいま外務大臣からお話がありましたが、私の沖繩県民をよく知る立場から見て、あるいは現地をたなごころをさすがごとく知っている立場から見るならば、現在のアメリカ側の考え方に私たちとして承服しがたい点が三カ所ほどございますので、それについて一カ月ほど詰めにかかっております。そのために若干時期がずれてしまったという関係がございますが、やはり返してもらうのは、きちんと納得のできる個所は返還の中に入っているべきだと考えて、外務当局とともに努力をしていることをつけ加えておきます。
  243. 安井吉典

    ○安井委員 たいへん熱心にやっておられるのはわかりますけれども、海洋博で外国の人が一ぱい来るわけですよ。あの金網の中の沖繩を見て一体どう思うか。私は、海洋博が来るまでに沖繩のアメリカの基地は全部返してもらいなさい、そういうつもりで政府にやっていただきたい。いまの交渉されているものは、いつめどが立ちますか。現在交渉中の分についてのめどはいつかということです。
  244. 大平正芳

    ○大平国務大臣 完全な返還につきましては、ただいま山中長官からもお話がありましたように、五十年三月をめどに、急ぎたいと考えております。その他のものにつきましては、遠からず発表できる段階になろうと思っております。
  245. 安井吉典

    ○安井委員 最後に、地方財政の問題でありますが、今度の補正予算の半分は地方交付税ですね。ですから、そういう意味合いで今度の補正予算の段階で非常に重要な役割りを演じていると思うのでありますが、地方財政は、今日ぐらい、物価騰貴、石油危機等の大きな被害者であるときはないのではないかと思います。国庫補助の事業にいたしましても、もともと補助基準単価が低くて、当然国が負担しなければならないところまで自治体が負担をするいわゆる超過負担を生じている上に、昨今の資材不足や物価のおそろしい値上がりで、工事を入札に付しても落札できない、一回で落札したためしはない、こういうふうな状況があるわけです。公営住宅その他では、もうこれはできませんからといって返上するところがたくさんあったはずです。建設大臣も御承知のとおりです。そこで、結局、入札の敷き札を二割も三割も上のせをしてやっと落札、こういうふうなものが大部分であります。  との不当な超過負担の問題は、これまでもしばしば国会で取り上げられてまいりましたし、政府もこれについて何がしかの対策を立てて、自治省、大蔵省の話し合いの調査等も行なわれて、少しずつの措置がされてきたことは私もよく知っております。しかし、この問題が、ことしぐらい強力に自治体の関係者から叫ばれているときはないように思います。最近、相次いで市町村や市町村議会の大会が行なわれておりますが、いつもこれが特別決議であります。沖繩県などは、これは特にひどいような状況を私も見てまいりました。  そこで、こういうものを背景にして、摂津訴訟という形で、大阪の摂津市が、超過負担について国を相手どっての訴訟を起こしている、こういうふうな状況に今日あるわけであります。もう時間がありませんから、私は問題を詰めて伺ってまいりますが、この訴訟の前に、摂津市、そして続いて札幌市、川崎市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、北九州市、福岡市、各政令都市の市長も相次いで国会に対する意見書を提出いたしました。いま続々と全国の各市町村長からの意見書が、超過負担の解消をという要求国会に対して届けられつつあるという状況のように聞いています。これは国会に出される前に政府は態度をきめなければいけないわけですから、閣議で一々おきめになって、その結果に基づいて国会に意見書が送付される、こういう仕組みです。まさにこれは異常な事態だといわなければなりません。  今度の補正予算を見ますと、単価そのものの引き上げ措置と、それから地方交付税による措置と、両面から若干の措置をされていることは、私もよく知っております。しかし、今日起きている異常な超過負担というものを解消するには、とてもおぼつかないものではないかと思います。  現在、大蔵省と自治省の話し合いで、過去で調べたその結果を四十八年度と四十九年度二功年度で解消措置を講ずる、こういう措置がとられていて、その四十八年度はもう終ろうとしておりますが、あと四十九年度の予算の編成が間もなく目の前に来ています。しかし、いままで六項目について過去調査をしてきたその資料に基づいて、四十八年度と四十九年度ということになるわけです。ということになると、いま四十八年のいわゆる田中インフレのおそろしい状況というのは、その資料の中に入ってないんですよ。だから私は、四十九年度の予算編成の中には、四十八年度の異常な事態を含めた措置を当然超過負担の解消として政府はとるべきではないか。それからまた、全体的に超過負担の問題を将来の対策として洗い直すべきではないか。ですから、私がいま取り上げているのは、四十九年度の予算の中における解消措置と、それから将来にわたって超過負担が起きないような抜本的な対策と、この二つに分けて伺っておきたいと思います。これは大蔵大臣、自治大臣もお願いします。
  246. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 超過負担問題につきましては、いまお話がありましたが、昭和四十七年度に実態調査をいたしました。それに基づきまして、四十八年度、四十九年度でこれを解消するという作業を進めておったんです。そのやさきに今回の異常な物価騰貴ということになりましたので、今年度の措置といたしましては、予算の実行の中におきまして単価の改正をする、また今回の補正におきましてその足らざるところを補うというような措置を講じたのですが、いずれにいたしましても、この超過負担問題というのはこれはもう解消しなければいかぬ、そういうふうに考えておりますので、昭和四十九年度予算の編成にあたりましてはそのようにいたしたい、そういうふうに考えております。
  247. 町村金五

    ○町村国務大臣 大体、大蔵大臣お答えになったことでほぼ尽きておると思うのですが、御承知のように、六項目につきまして、本年と明年と二カ年で大体事業費にして一千億円程度の超過負担の解消を行なうということにいたしておるわけでありますが、御承知のように、本年度に入りましてからかなり諸物価の値上がりが見込まれましたので、年度内にすでに二回にわたりまして補助単価の改定を行なうということも実施をいたしておるわけでございます。しかしなお、物価の値上がりによりまして、予定した事業が実行できないというような声を私どもも直接伺っておる次第でございますので、ただいま御指摘になりましたように、十分現状をさらにひとつ洗い直して調査をする、さらに明年度の予算におきましては、そういったものを土台にいたしまして、できるだけ超過負担の解消ということに全力を尽くしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  248. 安井吉典

    ○安井委員 超過負担という専門用語が今日ぐらいみんなの口から出る時期はないと思います。そういう異常な段階ですから、ひとつ真剣に取り組んでいただかなければいけないと思います。  それから、今度の補正予算における地方交付税は、国税三税増加分の三二%、四千二百四十億円であります。ところが、実際に自治体に交付になったのはその半分だけで、残りの半分は、約二千億円——半分だけは自治体に今度配るのですが、残りの半分は、従来からの地方交付税の借入金を返すと称して、頭からピンはねして大蔵省の別な会計に納めてしまった。つまり、自治体は四千二百億円くるのだと思ったら、その半分だけで、半分は大蔵省に取り上げられてしまった。これが今日の状況で、総需要抑制だというふうなことはでいわれるのだろうと思いますけれども、これは自治体の財政もたいへん苦しい状況にあるわけですから、地方交付税の運営を根本から曲げるものだと私は思います。  それからまた、特に自治体の一律需要削減、国も削減するから、自治体も同じ率でやれというのは、私はちょっと間違いがあると思う。というのは、国の予算の中には自衛隊の予算もある。一兆円にわたる自衛隊の予算もあって、それの割合と、自治体にはそんなものないのですから、それとを一律に問題を持ち込むということは間違いであって、住民に直結した福祉が自治体の仕事なんですから、そういう中で、何んでもかでも一律にという考え方はよして、福祉優先というたてまえからなら、自治体財政にウエートを持たせた、そういう考え方でいくべきだと思うわけであります。そういう考え方を私は持っているわけですが、これはいかがですか、自治大臣。
  249. 町村金五

    ○町村国務大臣 このたび計上いたしました交付税の約半額は、御指摘のございましたように、交付税特別会計にこれを繰り入れる。これは地方に全部交付税として配当すべきではないか、こういう御意見のように伺ったのでありますけれども、これは安井委員も十分御承知のとおり、交付税というのは、一律の基準、ルールでこれを地方に配分をすることになっておるわけでございますから、そういたしますると、特に事業をいたしておるところと、していないところと同じような金額が渡るということになるおそれもございますので、むしろ、そういった需要に応ずるためには起債措置でいくのが適当であろうというふうに考えておるのでございます。さらに、ただいま御指摘になりましたような点については十分注意してまいりたいと思います。
  250. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 申し上げるまでもないのですが、国と地方団体とは独立のものでありますから、互いに相侵さず、こういうたてまえをとらなければならぬと思います。ただ、これは実体的には国も地方も相共同して日本の社会の運営に当たるという役割りをしておるわけでありますから、これは日本の国といたしましていま非常に苦しい立場にある、総需要の抑制もしなければならぬという立場にあるとき、国がそういう政策を出した、そうすると、これはもう黙っていても地方団体におきましては、同じ歩調をとっていただくというのは当然だろうと思うのです。今回の補正で、四千二百四十億円ですか、交付税が交付されるわけです。その約半分を地方団体においては借金の返済に充てる。国からの借金であります。国においては五千三百億円の公債の償還を行なう。こういうのですから、額は国の半分以下のものであります。大体常識的な線になっておるのじゃないか、私は、必ずしもこれは不当な措置ではない、妥当な措置である、かように考えております。
  251. 安井吉典

    ○安井委員 ちょっと総理に一言、これで終わります。
  252. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 時間が超過しておりますから……。
  253. 安井吉典

    ○安井委員 この間、私、農家の人とお会いしたら、いろいろ話が出て、もうたいへんな世の中になりました、物価は上がるし、石油はないし、もうどうしようもない、こんな政治は一日も早くやめてもらいたい、そこで内閣の改造、その結果見たら、内閣は改造したけれども総理大臣は同じ人なんですね、こういった人がありました。私は、それぐらい国民のいろいろな声がいまの内閣に対して起きているということを総理にぜひ御認識をいただきたい。もうしばらくの間やはり田中内閣で、自民党の内閣で、あと何カ月かの間は、国民連合政権ができるまでは、やっていただかなければいかぬと思いますから、あくまで国民の今日の実態をはっきりはだに感じた政治をやっていただきたい、そのことだけを最後に申し上げておきます。
  254. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて安井君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  255. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、理事辞任につきましておはかりいたします。理事澁谷直藏君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  256. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  引き続きその補欠選任を行ないたいと思いますが、これは先例により委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。  それでは、大野君を理事に指名いたします。  次回は、明八日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。   午後六時三十五分散会