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渡部(一)
委員 ただいまのお話は、閣僚
会議の結論でお話が出ておるのは私は伺っております。ところが、民間
建設の問題でいいますならば、民間
建設の問題について、各省庁からメンバーが出られて、これがいいかどうかと協議したようなのも知っております。しかし、繰り延べになった件数はきわめてわずかで、ほとんどその要請は通じてないように伺っております。いまおっしゃったのは、明らかにお話だな。ですから、それはきき目を発揮してないんですよ、要するに。きき目を発揮していない。
総理、私はこれは立場が違いますから、こういう言い方をするのは御容赦いただくとして、本気でないのだな。大企業に対決するときだけ
田中内閣はばかに弱くなる。
消費者金融の引き締めなんかになると非常に張り切ってなさる。弱い者に対するとべらぼうに強い。ところが大企業に対すると、腰が抜けるぐらい弱くなる。こういうように私には見えるのです。ようございますか。というのは、銀行あるいはその他の問題について、私、その不愉快な例を
一つ、これは具体例で申し上げなければならない。
もう時間がなくなりましたから一ぺんで申し上げますが、いま勤労者財産形成貯蓄と、
消費者の信用というものを縮めるために、こうしたものに非常に熱を持っておられ、ここのところでまた半年の定期というものをつくられて、一%上げて、そして六兆円も出たボーナスの相当部分を回収しようという
計画でいらっしゃることは、私もいろいろなところから伺っておるところであり、また、御
計画も一部こうやって資料等にしていただいたところであります。
ところが、その六兆円の
消費者のボーナスのほう
——この間から、トイレットペーパーの値上がりをはじめ、めちゃくちゃに上がっておりますし、家計にはものすごい穴があいております。率直に言ったら、ボーナスをもらったとたんに、行く先はもう全部きまっております。こちらの庶民のほうはさまっておるのです。ところが、そこのところで、財形貯蓄をやりなさい、これはもうかるよ、やがて家ができるのだよという御説明で、ここにいらっしゃって速記をしていらっしゃる皆さんや
委員部の諸君の中にも、ずいぶん入っていらっしゃる方があるようであります。そちらで
数字を申し上げてくださる前に、私は時間を省くために申し上げますが、十月末現在で、この財形貯蓄の契約をなさった方々の総人数は二百四十三万八千九百六十一名であります。そしてその残高は千百四十五億六千八百八十四万七千円であります。そうしますと、どういうことになるかといいますと、一人当たり大体四万円ぐらいを拠出していらっしゃる勘定になるわけであります。荒く見まして四万円ないし五万円。そして、それが十カ月ないし一年半にわたって拠出されているわけでありますから、十カ月といたしましても、一人四千円ずつぐらい納めていらっしゃるわけであります。まことに少額といえば少額です。この財形貯蓄はどうなったか。この間
消費者物価の値上がりは幾らいったかというと、一四・七%だそうです。
政府が発表されたかなり控え目な
数字でも一四・八%です。そしたら、これは値下がりしたも同じです。千百四十五億というのは、いまは九百億ぐらいにしかならない。しかも、ここで財形貯蓄を月々四千円ぐらいしかできない人というのはどういう人かを考えながら行政をやっていただきたいのです。どういう人なんだ。これを納めた人の顔が映るような行政をやっていただきたいのだ。この二百四十四万人の人々はどういうつもりで貯金したのか。貯金したら自然に給料から天引きしてくれるから便利だというのが
一つ。それと一緒に、この人々は、財形に入っていると将来家が買えるのだそうだという話につられてしまう。ところが、実際にやってみたらどういうことになったのか。家がつくられたのは、当初のあれで百億です。百億ということは何かというと、千百四十五億のたった一割です。そして二千人です。人数でいうと何ぼになるかというと、この
人たちの中で二千人というと千分の一です。
〔櫻内
委員長代理退席、
委員長着席〕
千年待ったら家ができる順番が回ってくるのです。千年たったらいまの
物価は何%になるか考えていただきたい。一年間に一五%ずつ上がったらどんなことになるか。こんな調子でいったら五年で倍です。十年で四倍、十五年で八倍、二十年で十六倍です。そして、しかもそのとき、一人当たりにどれくらいのお金が貸されているかというと、事業主に対して五百万円貸されていることになっている。ところが、二十年たってこの財形の家にありついたとき、この金額が幾らになっていますか。先ほど申し上げたように十六分の一です。五百万円の十六分の一といったら、いまの価格でたった三十万円じゃないですか。そうしたら私は、この財形の
意味するものは、犬小屋をつくる制度でしかないと思う、こんなものは。これは犬小屋
政策です。
インフレ問題のときに一番気をつけなければならぬことは、弱い層、お金のない層、貯金しかたよれない層に対する手厚い保護です。こんなことは経済学の常識の常識の常識であると私は承りました。だから私はきょう申し上げているのだけれども、これに対してどうして保護の手続をとられないのか。数日前も、財形貯蓄の問題について、ある議員がおっしゃっておられました。ドイツにおいては、六年預けておくと、預けた金の十六倍になると、その方は言っておられました。プレミアムをつけるというぐらいは当然なことだ。ところが何にもつけない。この財形貯蓄に貯金されている二百四十四万人の人に対して、どう説明をされるおつもりなのか。私がこの財形の話を知ったのは、それこそテレビで知っただけの話です。変わった名前ですけれども、よろしくというコマーシャルから始まりました。これは変わっているのは名前だけじゃないんだな。中身は残虐きわまりなきものですね。そして、銀行はどういうことになるか。財形貯蓄という形で、あるいは半年間の定期という形で年末にどんどんいまお金を集めています。日銀を通してお金を締め上げればいいと、いま大蔵大臣は言われました。金融で引き締めればいい。それは大蔵大臣は日銀に号令なすっておもしろいでしょう。日銀総裁もおもしろくてしょうがないでしょう。銀行から金を巻き上げて持ってこい、ゆるんでいる、その辺にうろうろしている金を持ってこいといって、ふところに入れる。そうして銀行屋さんたちは、いま貸す金がなくなっています。私のある知り合いの銀行の支店長は、十二月に新規に人に融通できるお金は、支店長決裁でできるのは、たった五十万円だと言っています。そこまで締め上げられています。そこへ財形貯蓄の大宣伝が加わります。あるいは半年定期の話が加わります。そうするとどうなるでしょうか。銀行はうれしいじゃありませんか。福田大蔵大臣をはじめとする
政府首脳の真心ある御配慮で、彼らは年末にお金がどっと入ってくるのです。だまされたたくさんの民衆からのお金が、がぼがぼと入ってくるのです。そしてあなた方は、そのお金を今度は銀行を通して、庶民から集まったお金をどこへ回すかといったら、大企業に回すんじゃないですか。これは大企業を優待させておいて、そして庶民のなけなしの六兆円のボーナスをねらう、とんでもない作戦じゃないですか。こんな卑劣な手段があるでしょうか。私は財形貯蓄をやっている人に申し上げたい。
政府が態度を変えないならば、財形貯蓄は全部お払い箱にして、年末にトイレットペーパーを買い占めたほうがよほどいい。おしょうゆを買い占め、石けんを買い占め、お米を買い、小麦を買ったほうがよほどいいじゃないですか。
あわてた人は損をするのだと、さっき大蔵大臣は言われた。
政府の言うことを信用しないやつは損をすると言われた。確かにいままでわれわれ庶民は損をし続けました。しかし、
政府が言ったことと反対をやった人は必ずもうかりました。買い占めるなと言ったとき、買い占めた人はもうかったじゃないですか。だから、いま
日本で大企業のほうばかり向いている自民党の体質がここに明瞭にあらわれているじゃないですか。財形貯蓄で喜ぶのは銀行じゃありませんか。銀行はもうかっているじゃないですか。また一部の企業家は喜ぶじゃないですか。これによって長いこと労働者を縛りつけることができるのです。雇用関係の安定ということは、御説明にも確かにありました。ところが、庶民はどうです。財形貯蓄にこのなけなしの千百四十五億を納めた二百四十四万人の人々は、ここのところ
インフレで値打ちが下がるばかりです。
インフレで下がってきた。一四・七%も下がってきた。そして来年、まだいまものすごい勢いで下がりつつある。少なくともここ一、二年に関して責任を感じなければならないじゃありませんか。まじめに財形をやってくだすった方々に対して、
政府はどういう態度でこれを弁明なさるのか。ところが、
総理の所信表明の演説の中に、貯金をされている人は気の毒だなんて一行も書いてない。生活保護のようなもっと落ち込んだ層もあります。いま私の言っておるのは貯金のできる層です。まだいいほうです。まだ意欲のある層です。これは少なくとも自民党の言うことをまともに受けている層なんです。そういう
政府を信用しておる
日本国民をこれ以上だますのです。千百何十億というのは、金額は少ないですよ、
政府全体の予算から見たら。これらの人々をだまさないように処置するということは、
政治のほんとうの
信頼を確保する最小の手続じゃないですか。その最小の手続に対して、議員が一生懸命にプレミアムをつけろという提言をなすったときに、いまの税体系をこわす、金融体系をこわすから、そんなことはできませんと、えらいあっさり大蔵大臣は言われた。あんな言い方で済む問題でしょうか。私は論理的に言うているのではないのです。庶民の側からの論理で言うておるのです。こんなことじゃ庶民はおこり出すにきまっておるじゃありませんか。私は、もうほんとうにこんな貯金制度、そしてこのような乱暴な財形制度をはじめとするさまざまな預貯金の制度、こうしたものの中で一生懸命に貯金をし、未来のためにと思ってがんばってきたまじめな
日本の勤労者の皆さん方に対して、気の毒というより弁明の余地がない感じだ。私は、これは結局
総理に伺わなければならないけれども、担当大臣としてまず労働大臣に伺いたいと思うのです。
労働大臣は、こういうみっともない財形貯蓄制度をそのまま認められて今期の補正予算を承認されたのかどうか、伺いたい。今期補正予算の中でその問題について労働大臣はがんばらなければいけなかったはずです。こんなのでは話にも何にもならないと言わなければならなかったはずです。私は、これはあまりにも残虐でなかったか。これはむしろ、もう行政の適不適の問題ではない、残虐、非残虐の問題だ。
国民に対して、ぼくはニクソンの
ことばをかりてここで申し上げるのははなはだ遺憾ですけれども、ニクソンは言うた。
インフレというのは現世紀最大の盗賊であると彼は言った。彼を私は決して尊敬はしていないけれども、彼は少なくともそう言うだけの良心と見識を持っておった。われわれは、いま
政府として、あるいは議員として、
国民の財産を収奪する側に回るか、その収奪したものを返す側に回るかの二つに置かれているのです。
この問題について、それは行政の上からいって、その制度に対してお金をやるとかやらぬとかということを問題にすることが、いままでのシステムをこわすとかこわさぬとか、それはあるでしょう。そんなことがあるのは当然。そういうことをつじつまを合わせるために膨大なる官僚組織があり、仕事の組織があるはずだと私は思っておる。行政は民衆のために奉仕するというのは、その面でこそ奉仕しなければならぬと私は思ってます。
まず労働大臣に伺いたい。あなたはどういう決意でこの問題に対処されるか。