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田中内閣総理大臣 いま御
指摘になられたことは一番重要な問題でございますし、
政府も異常な
決意をいたしておるわけでございます。海外要因ということで
——日本は資源を海外に仰ぐ国でございますから、海外要因によって資源の輸入価格が引き上げられるということは、これは避けがたいことでございます。避けがたいことでございますが、こういうものに対しては、外交
努力、相互の信頼や開発計画とか、いろんなものを進めることによって、可能な限り
最大の
努力をしていくということ以外にはないわけでございます。これは、資源を仰ぐ国はいずれの国といえども例外ではないわけでございます。
資源多消費型のものはとにかく押えなければいかぬということになれば、これはもう総需要を押える中に当然含まれるわけでございます。しかし、いまの
状態において、
日本は現在品物が不足をしているのかというと、生活必需品というようなものは、これは現実的には確保されておるわけであります。ですから、トイレットペーパーがないといえばすぐ出せるわけでございますし、また、洗剤がないといえば直ちにこれを出せるわけでございます。ただ、灯油のようなものは、いままでのように幾らでも使っておってもいいのだということではありませんので、灯油に対しても、ガソリンに対しても、電力に対しても節約をお願いをして、そしてまあ諸外国でやっておる水準くらいまではひとつ押えるような
努力をしなければならぬし、ということをいまお願いしているわけです。
そうすると現状においては一体どうなのかというと、ほかの国よりも相当な品物がたくわえられておるということは事実でございます。これは数字を申し上げなくてもおわかりになるとおり、在庫投資や民間の投資が十分行なわれておりますし、すでに去年に比べて百億ドル以上の品物が
日本に輸入をされておるわけでございますから、私も本
会議で述べましたように、生産
段階、流通
段階その他に、当面の必要とする物資は十分にあるはずでございます。ただ、先高を見通してというようなことで売り惜しみや買いだめが行なわれないように、買いだめに対してはひとつ御協力をいただくということでございます。それには、
政府が、必要なものは確実にこれを供給いたしますという
決意を表明しない限り、あなたがいま御
指摘になるような危険性がございますので、
国民の協力を訴えています。ただ、中間
段階にあるものがパイプを締めているために流通経路で退蔵されておるというものに対しては、緊急二法によって処置をしたい、こういうことを
考えておるわけでございます。そういう
意味で、当面する問題に対して
——長期的に見たらいろんな問題がございますが、当面する問題で
物価が急激に、ちょうどこの間トイレットペーパーや灯油が上がりましたようにべらぼうに上がるはずはありません。セメントとか鉄材の問題に対しては、これは今度総需要を抑制いたしますから、そういう問題とバランスがとれるようになるわけでございまして、
国民の不安を除去するための施策はもう品目別に明らかにしなければいかぬということで、緊急二法の制定をお願いしているわけでございます。
ここでちょっと申し上げると、結局残るのは総需要の抑制問題にかかってくるわけでありますが、二十六年からずっと四十八年まで見まして、成長率が一〇%を割ったのは、二十九年の四%、三十三年の四・八%、三十七年の九・一%だけでございますが、このときに数字として非常に明確になっておりますのは、民間の設備投資がマイナスになっておる。それから在庫投資がマイナスになっておる。それから民間の住宅建設等が対前年度比の二三%、二八%というものが、三十三年の場合九%に下がっておる。これ三つでもって
国民総生産はどかっと一〇%下がっておるわけです。これはちょうど四十六年、四十七年に見ますと、四十六年の一〇・七%というのが二十九年からの第四番目の低い成長率でございますが、このときにはやはり民間の住宅投資が七・七%、民間の設備投資は一・七%増となり、前年度に対して一二%余も落ちたわけでございます。それから四十五年に対して、民間の住宅建設等は半分以下になっておるわけであります。在庫投資は対前年比五三%減となっています。そしてそのときにおける
政府支出は前年同額でずっときておりましても、
国民総生産は一〇・七%に下がっておるわけでございます。これを四十八年に比べると、この数字がうんと大きくなっておりますから、こういうものを締めていく、正常な
状態になれば総需要の抑制は可能である、こういうことになるわけでございまして、御
指摘のように、現在
世界のどの国に比べても、アメリカを除いては生活必需物資にこと欠くような
日本でないということは、これは事実であります。しかも、
国民総生産の一〇%以上の輸出余力を持っておるわけでございますから、アメリカがやったように、とにかく安定的なものを確保するためには、ある一時期輸出の何%を禁止するという措置がとられるとすれば、これは新しい法律ではそういうことができるようになっておりますが、そうなれば、
国民生活の必要物資は必ず確保できる。これは戦時中とは全く違う
状態にある。また、それを今度緊急輸入するには、それに対応する外貨は他の国と違って十分な保有があるということですから、この実態を
国民の前にこまかく明らかにして協力を仰ぐということになれば、混乱は避け得る、こういう
考えを前提にしておるわけであります。