○板川正吾君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
議題となりました
発電用施設周辺地域整備法案について、反対の
討論をいたします。
反対
理由の第一は、本
法案は、
政府が
発電所建設に反対する
地域住民の真意を理解せず、悪税といわれる
電源開発促進税を新設し、札束で
住民の反対運動を切りくずし、
原子力発電所の
建設を促進しようとするものであります。このやり方は、いかにも思いつきの金権万能的発想で、人間の尊厳を無視する悪法であるという点であります。(
拍手)
私は、
政府や電気
事業者が、もし円満に
電源立地を促進しようとするならば、
原子力発電の安全
確保や公害防止を万全にし、誠意をもって忍耐強く
地域住民と話し合い、納得と信頼を得ることが先決であると存じます。
しかるに、本
法案は、
電源立地の
地域が過疎地帯であり、
住民の権利意識が弱いという弱点につけ込み、安全性に問題のある
原子力発電や、公害の発生源となり得る火力発電を、
交付金をえさに、安直に
建設しようとするものであり、その人間軽視の考え方にわれわれは強く反対せざるを得ません。(
拍手)
反対
理由の第二は、本法による
電源開発促進税は、目的税というが、結局は、国民大衆の
負担に転嫁される悪税であるという点であります。いかなる名目であろうとも、新税は悪税であります。
御承知のように、
政府は、このたび、
電力九社の一斉値上げを認め、国民は、電気料金の大幅値上げによって、年間一兆五千億円にのぼる金額を直接、間接に
負担することになりましたが、その際、従価税である電気税が、自動的に六百億円も増徴された上に、新たに
電源開発促進税として、平年度三百億円を増税されるのであります。
このように、一般消費者に直接課税される電気税や電気料金に織り込まれる
電源開発促進税は、本来、生活費に課税せずという原則に反するものであり、
政府は、昨年一兆八千億円をこえる膨大な税の自然増収を得ながら、狂乱物価にあえぐ国民にさらに新税を課するということは、国民生活を破壊するものとして、断じて容認することができません。
反対
理由の第三は、本
法案の真のねらいが、石油価格の高騰、
電力不足に名をかりて、安全性に疑いがある
原子力発電所の
建設を促進しようとする点であります。
現在進められております軽水炉型
原子力発電の安全性については、日本学術
会議をはじめ、多くの良心的学者間において、数々の問題点が指摘されておるのであります。
すでに現在稼働中の発電用原子炉の六基中、実に五基までが故障または事故の実績を持ち、稼働率が四五%に落ち込んでいるものもあり、この十年間三十七件、四十七、八年の二年間だけでも十四件という、頻発している故障、事故の中には、万一その処置を誤れば重大な事故につながるおそれなしとしないことが指摘されているのであります。
さらにまた、原子炉の事故防止上重要な装置である緊急炉心冷却装置の有効性については、いまだに、国際的論争が続き、決着がついておりません。また、放射性廃棄物の処理方法についても、処理
計画すら立っておらず、これはトイレのないマンションだといわれており、さらに環境放射能の
規制基準も確定いたしておりません。
このように、
原子力発電の安全性には、まだ多くの不安な要素があり、したがって、
政府は、当面、安全性の
確保に全力を注ぐべきであり、いたずらにその
建設を急ぐべきではありません。
反対
理由の第四は、
政府は、国内にあるエネルギー資源の
開発を放置しておきながら、せっかちに
原子力発電の
建設を進めようとする点であります。
われわれも、
電力供給力の増加が国民生活の
向上や国民経済の進展に不可欠であることは承知しております。しかし、だからといって、直ちに、今後の発電はすべて
原子力にたよろうという結論にはならないのであります。
なぜなら、御承知のように、わが国はまだ未
開発の水力発電可能量を二千五百万キロワットも持っており、さらに、夜間余っておる
電力を揚水発電に利用すれば、千五百万キロワットの発電余力があるはずであります。
さらに、
政府は、石炭火力発電等についても根本的に見直すべきであります。
政府はこうした国内エネルギーの
開発にまず全力を注ぐべきであり、安全性に問題があり、しかも、アメリカに一〇〇%依存する濃縮ウランを使用する
原子力発電の
建設をなぜ急ぐのか。石油ではアラブに振り回されたが、
原子力燃料では、今度はアメリカに振り回されることになるのではないか、この点、全く理解に苦しむところであります。(
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反対
理由の第五として、私は、
政府の
原子力行政に対する国民の不信感に基本的な問題があることを指摘しておきたいと存じます。
政府がいかに、
原子力発電は安全である、
政府は責任をもって厳重に監視しているのだから安心してほしいと宣伝しても、科学技術庁における汚職事件、放射能測定データの捏造事件、放射性物質のずさんな管理事件が相次いで起きている現状や、原子炉
設置に関する公聴会
制度がいまだに法的根拠を持っておらず、重要なデータはすべて企業の秘密として公開されない、このように、企業の利益が国民の安全より優先するという、
行政と企業の癒着がある以上、どうして国民は
政府のことばを信用することができましょう。
また、わが国における
大気汚染、水質汚濁等の公害、環境破壊の歴史を見ても、
政府が過去において真剣に国民の健康と命を守ってきたならば、今日、世界に冠たる公害日本列島はなかったはずであります。
したがって、
政府は、公害問題の経緯を謙虚に反省し、
原子力発電についても、いたずらにその
建設を急がず、
原子力基本法に示された自主、民主、公開の原則をきびしく守り、国民の信頼を回復するよう努力すべきであります。(
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最後に、われわれは決して
原子力の平和利用に反対するものではありません。
原子力発電が、その安全性について国民の理解と信頼が得られるならば、わが国エネルギーの
安定供給に大きく寄与するものと期待するものであります。
しかし、日本は、世界で唯一の原爆被爆国であり、しかも地形、地質、人口密度等の立地条件が、アメリカ、英国、ソ連等の諸国と異なり、その安全性の
確保には、念には念を入れるべきであります。単に、外国でやっているから心配はないはずだとか、そして安直な決断をもって、性急にその
建設を進めるべきではありません。
したがって、新税を課し、安全性が確認されないまま
原子力発電を促進しようという本
法案は、すみやかに撤回されるよう強く要望して、反対の
討論を終わります。(
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