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佐野進君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
報告のありました
中小企業白書について、
田中総理並びに
関係各
大臣の見解をただそうとするものであります。(
拍手)
御
承知のとおり、この一年間、
内外環境の
変化はきわめて激しいものがあり、
わが国経済は、かってない新たな
事態に直面し、きびしい
情勢下に置かれてまいりました。とりわけ、一般的に
経営基盤の弱い
中小企業は、
物価の異常な
高騰、
物不足による原材料の
入手難、
石油危機、
貿易情勢の
変化、総
需要抑制政策等によって甚大な
影響を受け、
経営の
悪化、
企業倒産の
増大という
事態に立ち至っております。
中小企業白書は、このような情勢の
変化について一応の分析を加えておりますが、現象的、表面的な分析以上に出ず、その
基本的、本質的な原因については、何ら触れていないのであります。
私は、今日の
事態の根底には、
政府の高度
経済成長政策の失敗、過剰流動性問題処理の失敗があり、小手先の
対策によって当面を糊塗してきた
政府の政策の誤りが原因になっていると思うのであります。総理は、率直にこの事実を認め、その責任を明らかにすることを求めるものであります。(
拍手)
さて、私は、まず現在の
中小企業の
基本的な問題について、数点、
政府の見解をただしたいと思います。
その第一は、総需要の抑制策と
物価の問題についてであります。
現在、
金融引き締め効果の浸透、総
需要抑制策の継続、
物価対策の不徹底等により、需要の減退、原材料
価格の
高騰、資金繰りの
悪化等に苦しむ
中小企業は、建設、繊維、自動車部品
関係をはじめ各方面に広がりつつあり、その態様もますます深刻の度を加えようとしております。この反面、過去において過大な利益をあげた大
企業は、株価の上昇に見られるごとく、
政府の政策を巧みに
利用し、力にまかせた
企業活動を続けており、結局
中小企業にのみ犠牲が
しわ寄せされようとしております。
さらに、今後無原則的な公共料金等の
引き上げにより、卸売り
物価、
消費者
物価の上昇が続き、
中小企業者はまさに言語に絶する
事態に見舞われようとしているのであります。
一体、
政府は、このような
事態をどのように認識しているのでありましょうか。この際、
政府は、
物価の上昇を阻止するため、公共料金、大
企業製品価格の
引き上げを勇断をもって抑制するとともに、総
需要抑制策については、
中小企業の実情に応じた配慮を加えるべきであります。
なお、インフレの高進、貨幣価値の下落に対処して、デノミの実施、あるいは逆に、五万円札の発行が巷間うわさされておりますが、その真偽について明確な答弁を求めておきたいと思います。
大蔵
大臣、あなたは、昨年末の
物価の上昇を、狂乱と名づけました。そして、その後にとった政策も、いまや破綻せんとしております。あなたはこの現状にいかに対処せんとしておるのか、その決意を伺うものであります。
第二は、
石油危機に端を発した省
資源の問題と、知識集約化についてであります。
中小企業政策の新しい柱である知識集約化に加え、さらに新たな柱として、省
資源、
省エネルギーの
要請が重要な
課題となってきたことは、
白書の指摘するとおりであります。しかし、省
資源の
要請に
対応し、個別の
中小企業者がどう取り組むかは、決して容易な問題ではありません。私は、まず今後の省
資源型
経済における新しい
産業構造のトータルビジョンを早急に明示し、これに立脚した
中小企業の省
資源、
省エネルギー化の具体的な
方法を提示することが必要であると思うのであります。
さらに、現在進められつつある知識集約化政策についても、資金調達力が弱く、人材面でも十分でない
中小企業にとって、
知的経営活動をやりなさいといっても、個別
企業の意欲や行動力だけではどうにもならない面があると思います。省
資源、
省エネルギーの
要請という新たな
事態の中で、知識集約化そのものを新しい観点から見直すべきだと思うのであります。
第三は、
国際経済に関連する問題についてであります。
最近の国際
経済情勢は、
国際通貨体制の問題等々、
わが国経済にも大きな
影響を及ぼし、加うるに、
政府の対外
経済政策により海外投資と輸入の促進がはかられたのでありますが、いまや、総需要抑制と輸入
増大という
事態の中で、各方面に深刻な
影響があらわれており、とりわけ
中小企業は甚大な
影響を受け、一部においては、輸入の急増により、その存立基盤を脅かされようとしております。この際、
政府は、
中小企業基本法第二十二条に基づき、関税率の調整、輸入の制限等必要な
施策を講じ、また、海外に進出した
企業の
製品が、
わが国に逆輸入することにより、一部業種において深刻な
事態を生じておりますが、この問題についても、海外投資に対して適切なる
措置を講ずるとともに、悪
影響を及ぼす逆輸入を抑制すべきであると思います。
以上、二点につき、通産
大臣の所見を承りたいと思います。(
拍手)
第四は、当面の緊急
対策についてであります。
先ほど来申し述べておりますように、今日の
中小企業の状態はきわめて深刻であり、今後一段と憂慮すべき
事態に立ち至ろうとしております。すでに大手冷暖房メーカーである日本熱学工業のような大型倒産が発生し、関連
中小企業者に重大な悪
影響を及ぼしております。この際、
政府は、その
影響を最小限にとどめるため、早急に適切な
措置を講ずるとともに、全
中小企業に対し、今日の
事態に対する緊急
対策として、
政府系中小企業金融機関による十分なる
金融措置の
拡充はもちろん、各分野にわたって積極的な
施策を講ずべきであると思います。
以上の諸点につき、総理
大臣並びに通産、大蔵両
大臣の決意を伺います。
私は、以上のほか、さらに数点、具体的な事項につき、
政府の見解をただすものであります。
その第一は、
中小企業関係予算の大幅な増額についてであります。
中小企業白書が、適切な方針を示し、
事態を的確に把握しても、
中小企業関係者がこれにあまり魅力を感じないのは、その裏づけとなる予算があまりにも少ないことに失望するからであります。
試みに、本年度
中小企業関係予算を見ると、総予算の〇・六%にすぎず、昨年度と全く同率であり、さらに、その
内容も、融資のための予算
措置が多く、直接
中小企業者に助成する予算、事業費、調査費等はきわめて少ないのであります。すなわち、各省庁を含む
中小企業対策費千二十億八千三百万円のうち、融資のための予算は八百三億千八百万円であり、直接
中小企業者に助成する予算、事業費、調査費等は二百十七億六千五百万円にすぎないのであります。
もちろん、私は、融資のための予算の重要性を軽視するものではありませんが、
中小企業者のための直接の予算が、これではあまりにも少なく、
白書にいかにりっぱな方針が示されても、十分なる
施策を講じ得ないことは明らかであります。
政府は、英断をもって、この種予算の大幅な増額に踏み切るべきだと思うのであります。
第二は、
小規模企業対策の
拡充についてであります。
この問題については、
政府もようやく積極的に取り組もうとしておりまするが、
小規模企業者の数、事業の態様等からして、質量ともになお不十分であることは明白であります。私は、
小規模企業対策の重要性にかんがみ、
政府の一段の
努力を
要求するものであり、特に、地方自治体との連携、協力、各種団体との指導、連絡の
強化等をはかることはもちろん、民間の指導者、
中小企業診断士、
社会保険労務士、税理士等有資格者を活用し、
小規模企業者の日常の生活に密着したきめこまかい
施策を展開し、その徹底を期すべきであると思うのであります。
第三は、
企業の
社会的責任の問題と独禁法の
改正についてであります。
先般の大
企業、商社の反
社会的な行動を契機として、
企業の
社会的責任の問題が大きな論議の
対象になっております。
白書もこの問題を取り上げておりますが、もう一つ背後にある
基本的、本質的な面の省察が欠けていると思うのであります。
私は、今日の
企業の
社会的責任の問題は、単に
企業の倫理の問題として論ずべきではなく、大
企業、商社の反
社会的行動の背後には、長年の
政府指導による産業政策、これに従属して後退、緩和されてきた独禁政策等によって形成された、
政府、
金融機関、大
企業、商社等が一体となった産業
経済体制、寡占体制、大
企業体制があることを看過してはならないと思うのであります。したがって、
企業の
社会的責任を全うせしむるためには、まず現在の寡占体制、大
企業体制を変革することが必要であります。
この意味からも、すでに、わが党は、独占
禁止法の
改正案を
提出し、その中で、不当な事業能力の格差の排除等について
規定しているのであります。
政府は、
企業の
社会的責任に関する私の指摘を率直に認め、また、わが党
提出の独禁法
改正案に対する
政府の所見を伺うものであります。(
拍手)
第四は、
中小企業者の事業分野の
確保についてであります。
最近の大
企業、商社等の力にまかせた
事業活動は目に余るものがあり、
中小企業者の事業分野に対しても、節度を欠いた進出をあえてし、
中小企業者の
事業活動に重大な
影響を与えております。わが党は、かねてから、産業
経済の秩序ある
発展、
中小企業の健全な
発展をはかるためには、
中小企業者の事業分野を
確保することが必要と考え、すでに今
国会に
法律案を
提出しております。
その要点は、事業者のおおむね五分の四以上、生産実績のおおむね三分の二以上が
中小企業者であり、
中小企業による
経営が適切である業種を指定し、大
企業の進出を規制するものであります。
政府が真に
中小企業の健全な
発展を希求するならば、事業分野の
確保は必要不可欠の
施策であり、今日までこれを放置してきた責任は重大であると思います。この際、
政府はその責任を認識し、わが党
提出の
法律案に賛意を表すべきであります。
第五は、
中小企業の
福祉対策の
強化についてであります。
中小企業が、大
企業に比較して、
福祉面において依然として劣っていることは事実であります。しかし、最近、
中小企業が、大
企業より、生きがい、働きがいのある職場として認識される傾向が強まっており、このような期待にこたえるためにも、
福祉面の
充実、職場
環境の整備をはかることが緊急の
課題になってきております。各般にわたる
福祉対策の徹底は、
中小企業の人材
確保に資するところも大きく、職場離脱や、ひいては
企業倒産の防止にも大きく貢献するはずであります。
中小企業の
福祉対策の
強化について、その実現を強く
要求するものであります。
以上五点につき、総理
大臣、大蔵、通産、労働各
大臣の答弁を求めます。
最後に、
中小企業省設置問題についてお尋ねいたします。
わが党は、多年にわたり
中小企業省の設置運動を続け、再三
法律案を
提出してまいりましたが、ようやく実現の機運が高まり、その設置を総理が
発言するようになりましたことを心から喜ぶものであります。あらためて言うまでもなく、
中小企業問題の解決は、各省庁にわたる
中小企業対策を一本化する以外にないことは明白であります。しかるに、
政府部内においては、なお、行政管理庁をはじめ、その実現をはばまんとする動きのあることも明らかであります。
総理、あなたは、昨年の本
会議場において、また、四月三十日横浜市において、実現すると約束いたしました。決断と実行を売りものにしながら、なおその人気の回復をすることができない現状において、さらにこの約束をほごにするなら、三千万といわれる
中小企業者とそこに働く人たちの失望を招き、その政権の座にとどまることは不可能になるでありましょう。
田中総理の決断を促し、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理
大臣田中角榮君
登壇〕