○渡部一郎君 私は、公明党を代表して、ただいま
議題となりました
日本国と
中華人民共和国との間の
航空運送協定の
締結について
承認を求めるの件に対し、
賛成の
討論を行なうものであります。
日中両国の
友好は、
両国の
歴史始まって以来、実に数千年の
歴史を持つものでありますが、
日中両国間はここ数十年にわたり戦争状態にあったことは、まことに不幸なことでありました。
日中共同声明以来、
両国の接触はようやく拡大をし、多くの紆余曲折を経ながら、去る四月二十日、
北京において正式
調印を見たことは、まことに慶賀すべきものであります。日中
友好のため終始
努力をしてまいりました公明党としては、特に深い満足をもって、本
協定の
交渉促進に当たられた
日本国民及び
関係者とともどもに祝意を表するものであります。(
拍手)
しかしながら、本
交渉にあたりましては、種々の難問がありました。まず、新生
中国にとりましても、
日本との間に
航空協定を結ぶということは、国際
航空業務のルールに対して
中国の基本的
立場と理解を明らかにすることであり、
中国外交の大きな試金石になることでありました。また、
日本政府にとっては、
アジア問題に対する基本的な
立場を確立し、
中国問題は、別して
台湾問題であるとの認識を再確認するものでありました。
しかし、これらの困難を乗り越えて
調印の運びになったということは、本
協定の
歴史的な使命、その期待がいかに大きいかを示すものであります。
すなわち、好意的に評価するならば、わが党がかねてより述べておりますとおり、
わが国にとっては、好むと好まざるとにかかわらず、等距離中立平和
外交への実質的な幕あけであり、
わが国外交が多角的
友好関係の
樹立に向かって一歩前進しなければならないときが来たことを示すものであります。
この
協定は、その意味で、戦争の火種を
アジアにおいて根絶し、平和
友好の輪を広げる第一歩となるべきものであります。また、本
協定は、
日中間の
航空距離を短縮するという
実務協定であるだけでなく、とりわけ
日本と
アメリカ、
日本とソ連、また
日本と
アジア諸国の
関係に対し、多大の影響を与えるものであることを認識すべきであります。
そのためには、
わが国の
外交の基本的
立場がもう少し明確にならなければならないのであります。すなわち、
日中共同声明第八項に示されているとおり、
日中両国が
アジアにおいて覇権を求めるものでないこと、とりわけ、米ソ両極の対立を激化させるものであってはならないと考えるものであります。すなわち、本
協定の
調印を契機として、
世界緊張緩和への道をさらに進めるよう、今後の
外交姿勢が明確になされなければならないのであります。
本
協定の審議中、この
協定の
締結に反対する勢力が幾つか散見されたわけであります。その中でも最も顕著なものは、
中国を代表するものは
中華人民共和国であるという基本的な
外交原則にさえ挑戦する者もありましたけれども、これは、積み上げられてまいりました日中
友好、その信頼
関係を破壊し、時代に逆行するものであります。
政府・
自民党は、この際、これに対して十分の配慮と責任を持つべきものであります。また、本
協定について、この
航空協定としての等価値性に疑問を投げかける者もございました。現時点において、日中
友好の長き
歴史の展望に立つならば、この議論は大きく止揚されるべきものでなければならないと存じます。
日中平和友好条約への道は、決して安易なものではありません。すなわち、これは、過去の日米安保のワク組みを再検討すべきものでなければなりませんし、日ソ平和
条約の見通しを縮小するものであってもなりません。
政府は、多角的な等距離中立
外交の一石を投ずることにより、次の連鎖反応を生ずることを覚悟し、決断しなければならないのであります。
一つの前進が多くの反対を引き起こすことについておびえることなく、真の平和と
友好に向かってさらに前進を続けなければならぬのであります。少なくとも、
侵略主義や
軍国主義や植民地主義の疑いを抱かれるような
外交姿勢を強く払拭しなければなりません。
政府は、いま、
日中航空協定締結にあたり、前進の道標を示したのでありますが、
政府のいう信頼と
友好は、次の実質的なステップによって立証されなければなりません。
日台関係は、その
日台関係それ
自体が
日中共同声明のワク組みの中で誠実に処置されるべきことは、その第一歩であり、当然であるといわなければなりません。
日中航空協定を
日中友好関係樹立のための輝けるステップとして、
日中平和友好条約の
締結へ向かって、また、
世界平和のための前進と
努力を希望しつつ、わが党を代表する
賛成討論といたします。(
拍手)