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国務大臣(森山欽司君) 阿部議員にお答えをいたします。
先ほど来の御
質疑を聞いておりますと、原子力の平和
利用と軍事的な
利用というものを、その
利用の目的だけではなくて、原子力発電というものと原子爆弾を何か混同してお考えのようでございますが、そういう素朴な議論はいかがかと思われます。(
発言する者あり)
私から申し上げるまでもないことでございますが、原子力の軍事
利用は、核分裂によるエネルギーを瞬間的に
利用する方法でございますし、それから原子力発電は、核分裂によるところのエネルギーを自由に抑制された形で
利用するということでございまして、原子力発電所が何か大爆発を起こすなんということは全くございませんから、どうか、そういう
基本的な、初歩的なことは、こういう議場で御論議になられないように、ぜひお願いをいたしたいと思うわけであります。(
発言する者あり)
私は、原子力発電所が正常に動いておる場合でも放射能の危険があるというような御
発言がありますが、まことに不可解な感じをいたしております。
まず私から申し上げたいと思いますことは、この原子力発電、原子力の平和
利用というものは、戦後に起こったものでございますし、実用段階に入ってまだ二十年足らずでございます。歴史も短いわけでございますし、技術の歴史的
発展段階といたしまして、イノベーションからテクノロジーアセスメントと、何か放射能というものがあることは事実でございますから、それには念には念を入れて前もって準備をしておく、気を使っていく、そういうことでございますが、放射能の問題について念には念を入れるからといって、だから原子力発電はあぶないんだということはたいへんな間違いでございますから、念には念を入れるから安全だというふうにお考えを願いたいと思っておる次第でございます。(
発言する者あり)
原子力発電所をつくります際には、私から申し上げるまでもないことでございますが、厳重な安全
審査をやりますし、また、いろいろな
法律に基づいて、やかましい許可、認可の手続もありますし、それからまた検査もやるわけでございます。また、この原子力発電所を動かします際に、間違って機械を動かすとか、あるいはまた、機械でございますから、故障というものはあるわけでございます。間違って動かしたり故障がございましても、そういう場合には安全装置が動いて、かわりの機械が動くとか、あるいはまた機械がとまるとかいうことになるわけであります。どうも、機械がとまると、あぶないあぶないと言うのでありますが、機械がとまるから安全なのでありまして、その辺もどうかひとつお間違いのないように願いたいと思います。(
発言する者あり)
それからまた、定期検査というのがございまして、
政府が監督して、一年に二カ月ぐらい検査をいたします。その検査をやりますと、機械のことでございますから、故障とか、その他のふぐあいなところが発見されます。そうすると、そういうものが発見されると、またあぶないと言う。定期検査があるから、これは安全なのでございまして、そういうことがわかってくることが安全のゆえんでございます。
まあ、こういう問題につきましていろいろ各方面で御論議になりますのは、やはり原子力発電所という問題が一般
国民の中にほんとうにわかっていただくまでになかなか時間がかかる。現段階で、
国会でもいろいろな御論議がございますが、私は、これらの御論議は、やはり一度は越えていかなければならない関門であるというふうに考えておりますけれども、もうそろそろ、こういう問題について、この事態の真相というものを各方面においてわかっていただかなければならぬというふうに考えております。
それは、申すまでもなく、最近のエネルギー事情、特に電力事情等を見ますると、
昭和四十六年度は、発電所の
基本建設計画に対しまして建設は八二%、四十七年度が三二%、それから四十八年度は四四%でございまして、もしこのままでまいりますと、来年の夏の電力の最も要るピーク時には、これは局地的にもう停電が起きてくることは、遺憾ながら避けられない。もう
昭和五十三年ごろになりますれば、電力の
供給が
需要に追いつかないということになるわけでございますから、そういう事態を起こさないようにすることが、政治家の任務であり
責任であると思っております。与党の任務であるし、野党もまたそのおつもりになって真剣にこういう問題に取り組んでいただきたいというふうに考えておる次第でございます。(
発言する者あり)
そして、地震があるからあぶないなどと申しますが、普通の建造物の三倍ぐらいの強度で、しかも、そのときどきに起こっているいままでの過去の地震をよく調べて、そういうものを考えて建てておるわけでございますから、
日本は地震国でありますけれども、原子力発電所の建設は全く心配はございません。
遺伝等の問題について気をつけなければならぬわけでございますが、今日、自然放射能でも年間百ミリレムといわれております。近代の原子力発電所は、発電所の地元でもって人体に与える放射能は五ミリレムということで、自然放射能の一けたも二けたも下の段階でこういうものはつくっておるわけでございますから、これは自然放射能は幾らでもあるわけでございますから、それが遺伝の心配が放射能にあることは事実でございますが、自然放射能の一けたも二けたも下のほうでいま原子力発電所がつくられている現状で、心配だ心配だというのは一体どういうおつもりか、私は理解に苦しむというふうにいわざるを得ないのでございます。(
拍手)
それで、いろいろたくさんお話がございましたが、
基本的にはその
程度にさしていただきまして、総理がお話しになられましたことを若干補足し、かつ、総理が触れられません面について、私からお話しを申し上げたいと思います。
温排水の問題について、少しでも少ないほうがいいことで、このような問題について留意しなければならぬわけでございますが、この問題について
政府が何もやらぬじゃないかというようなお話がありますが、これはとんでもないことでございまして、
昭和四十七年度以来、農林省も環境庁も、通産省も科学技術庁も、このような問題に取り組んでおります。そして、これまでの研究では、排水口付近のモ類や貝類に若干の変化があるかもしれぬが、しかし、魚類等の
生産は、いまのところ目立った変化は認められない。温排水の影響は海域によって異なり、かつ、長期間にわたる観察を必要とする事項も多いから、
昭和五十一年度までの五年計画でひとつ調べようというので、目下鋭意調べておるところでございますから、
政府がこういう問題について何もせぬなんということは、これはまことに心外でございますので、どうかひとつその点もよくお考えになっていただきたいと思っておる次第でございます。
それから、原子力発電所の増加に伴って、放射性廃棄物の処理施設や核燃料再処理工場が増加し、これによる放射能の危険が
増大する、廃棄物の海洋投棄の方法についても、国際的に
安全性が十分確認されているわけでないから、これの危険防止
対策はどう進めるかというお話でございますが、これも御心配は要りません。
たくさんありますから、早口でさっと申し上げまして、あとはひとつお読み願いたいと思っておるわけでございますが、再処理工場のみならず、原子力施設から放出されました気体及び液体の廃棄物につきましては、原子炉等規制法に基づきまして厳重に規制されており、安全は
確保されております。建設中の再処理工場の
審査にあたって、国際基準より低い安全なところで許可しておりますが、さらに一そう排出を低減化するように研究開発につとめておるところであります。
人体に与えますところの放射能につきましては、一般人は許容限度が五百ミリレムでございますが、それに対して三十二ミリレムということでございますから、この再処理工場については全く心配はございません。
固体廃棄物の処理等の問題につきましては、放射性固体廃棄物につきましても、同法に基づき、各施設内に厳重に保管されております。しかし、今後、原子力発電所の増加に伴い、将来にわたって保管するという方法に加え、さらに
安全性を十分確認することを前提とした処理及び処分を行なう必要があると思います。
こういう考え方のもとに、直接環境中に放出されない廃棄物につきましては、海洋処分、陸地処分を組み合わせて実施する方針で、現在、水産庁、気象庁、海上保安庁等の機関により、海洋処分の安全評価のための調査を実施しているところであります。その結果を踏まえて安全評価を行ない、安全を十分確認した上で実施することとしております。また、海洋処分につきましては、現在、国際原子力機関におきまして、国際的な基準づくりが進められており、
わが国もこの基準を踏まえて十分安全を確認する所存でございますから、放射性廃棄物の施設及び核燃料再処理工場等の問題につきましては、全く心配がございませんから、御安心くださいますようにお願いをいたします。
いろいろ問題がございますが、一番最後に、今回の
法律でもって原子力発電所の地元に、何か札びらでほっぺたをひっぱたくような、そういういわれのない御批判がございましたが、そういうことは全くございません。原子力発電所は過疎
地域に建設されることが多いのであります。そのため、地元では、発電所から出る電力は都市に送られて、地元のために一向にならないという不満があります。また、原子力発電所は装置産業でありまして、雇用吸収力に乏しいので、雇用の面でも地元のメリットがない。そこで、今回の
交付金は、これらの不満を解消するために、開発利益を地元に還元しようとするものでありまして、地元の不満を口どめするために金をばらまくなんということは、全く考えていないということをどうか御理解願いたいと思います。
以上、答弁といたします。(
拍手)
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