○柴田睦夫君 私は、
日本共産党・
革新共同を代表して、ただいま提案のあった
宅地開発公団法案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
日本列島改造論をもってはなばなしく登場した田中内閣は、今日、異常な物価高とさまざまな
国民生活の困難を生み出し、
国民の怒りと不安を一そう増大させています。わけても、
住宅対策においては、列島改造で地価高騰をあおっただけで、その無策ぶりを如実に示しました。
今日、
わが国は経済大国といわれながら、
国民の
住宅難は一向に解決されていません。それは、今日でも木賃アパートが急増し、しかも、建設省の調査でも、一世帯当たりの木賃アパートの
住宅水準は一・五室、六・七畳という驚くべき劣悪な
住宅の実情が雄弁に物語っています。にもかかわらず、四十九年度予算における
住宅予算は、全体のわずかに一・四%にすぎません。しかも、公営、公団
住宅の建設は、用地取得難や資材の高騰でますます困難となり、政府は四十八年度戸数を途中で大幅に削減しながら、それさえもなお実現の見通しが立たないような事態に落ち込んでいます。
現在進められている第二期
住宅建設五カ年計画は、もともと九百五十万戸の計画のうち、六〇%を民間自力建設にまかせるという、虫のよい、無責任な計画であります。また、政府は、財形貯蓄と
宅地開発公団の
宅地分譲でマイホームの夢が実現できるかのように宣伝しています。しかし、財形貯蓄によって勤労者が十五年後に準備できる資金が千五百万円であるとされているのに対し、建設省のある試算では、わずか数年後にマイホーム資金は五千五百万円必要であるとしています。これでは、勤労者が
住宅を持てるはずはないではありませんか。
国民の
住宅を建設するのは政府の義務であり、
住宅政策は、当然、大量の公共
住宅建設が土台でなければ、政府の
住宅政策と呼ぶに値しません。同じ資本主義国でも、全
住宅に対する公的
住宅の比率が、イギリスでは五一・九%、フランスでは三四・六%を占め、
住宅問題を解決しているのに、
わが国ではわずかに一七・八%にすぎません。これでは、いつまでたっても
住宅難が解決されるはずがありません。
政府は、この事実を率直に認め、いまこそ、勤労者が安心して暮らせる大量の公共賃貸
住宅の建設を進める
住宅政策に根本的に転換させるべきであると思いますが、総理並びに建設大臣はどのように考えるか、明確な答弁を求めます。(
拍手)
次に、
宅地開発公団法案についてでありますが、政府は、坪十万円で百万戸の
宅地供給ができ、新しいニュータウンのもとで、庭つき一戸建てのマイホームが実現できると、鳴りもの入りで宣伝しています。はたしてそうでしょうか。具体的にお伺いしたいと思います。
第一に、そのような
宅地の取得ができる適地は一体どこにあるのでしょうか。現実に、地方自治体や
住宅公団にとって
住宅用地の取得が困難であるがために、
大都市地域においては公共
住宅の建設が著しく立ちおくれていることは、さきに指摘したとおりであります。政府は、このような実態に何らの対策をとらないまま、個人分譲優先の宅開公団構想を打ち出すこと自体、きわめて無責任であるといわざるを得ません。
宅地開発公団は調整区域の開発に着手するとされていますが、調整区域の開発には、東京都をはじめ多くの自治体は
反対をしているのであります。この自治体の
反対を押し切ってまで開発を行なうというのでしょうか、一明確にお答えください。
さらに、たとえば、政府は、首都圏で行き詰まっている
住宅用地を確保するために、東京湾を埋め立てて大規模な
宅地造成をする構想に基づいて、来年度から
宅地開発公団に調査を開始させると伝えられています。こうした
大都市地域海岸の埋め立ては、自然を破壊し、公害企業を呼び寄せ、水、空気の汚染をひどくし、大都市の膨張の要因となることは明白であります。政府は、あえてこのことに目をつぶり、宅開公団による
宅地開発のために埋め立てを実行しようとしているのか、明確な答弁を求めます。
さらに、伝えられるところによれば、
宅地開発公団は、現在千葉県が行なっている千葉ニュータウン建設事業に相乗りするといわれています。自治体の
宅地開発事業に寄生して、見せかけの
宅地造成をはかるなどというのは、
国民を欺くつもりが、かえってみずからの存在理由のないことを証明しているのではありませんか。
また、個人分譲
宅地が造成されたとしても、それは決して庶民の手の届くものではありません。先ごろ、
住宅公団の洋光台分譲地について五千倍もの異常な競争率で当せんしながら、資金不足のため一六%以上の人々が泣いて辞退しています。この実例が何よりもはっきりと
宅地開発公団のもたらす結果を示しています。総理にはこれらの人々の気持ちがはたしておわかりになっているのでしょうか。
宅地開発公団は、決して勤労者の
住宅、
宅地の要求を満たし得るものではありません。
広く知られているように、今日の土地問題を深刻にしているのは、全国四十七万ヘクタールにも及ぶ大企業の投機的買い占めであります。
国民にとって共有財産であり、また有限である土地を大企業が買い占め、地価をつり上げる、かかる
行為は、多くの
国民を
住宅難、環境悪化で苦しめ、憲法二十五条に保障されている生存権に対する重大な侵害であります。
このような反社会的な土地所有をやめさせ、
住宅、学校、公園など
国民が必要としている生活用地、よい環境のための用地などに回す
措置をとることは、私有財産を、正当な補償のもとに、これを公共のために用いることができるという憲法二十九条の精神を積極的に生かすことであります。わが党のこの主張は総理も否定できないところのものであり、その収用を約束しています。しかし、政府は、一体どれだけのことをしましたか。大企業の買い占めは依然として続いているのでありますが、この事態を総理はどう考えるのか、明確にお答えください。
わが党は、生活用地等の確保、地価安定のため、国または地方公共団体による土地の先買い権の強化、緊急な対策を講ずべき地域において、投機的買い占め地を適正な価格で収用すること、大企業法人などの新たな土地取得を禁止することなどを含む緊急
措置法を制定すべきであると考えます。総理がもし真剣に土地問題を解決しようとするならば、これらは必要不可欠な
措置として実施しなければならないものですが、総理にはこれを実施する考えがおありなのかいなか、明確にお答え願いたい。(
拍手)
第二に、公団と自治体との問題であります。
宅地開発公団が、
宅地開発に伴って行なう公共施設、公益施設を整備する資金については、公団が立てかえて建設するのであるから、ニュータウン建設に伴う自治体の費用負担は解消されるといっています。しかし、現在でも
住宅公団による立てかえ制度がありながら、自治体との折り合いがつかず、団地拒否が生まれています。費用の立てかえは、法に
規定されていませんし、超過負担の原因となる単価、数量、対象の差の処理など全く不明確であります。はたしてこれで地方政財の圧迫を完全に解消できるのか、地方自治体が新公団の事業を受け入れられるようになっているのか、自治大臣の答弁を求めます。
第三に、
宅地開発を困難にしているもう一つの問題は、水資源の不足であります。建設省の広域利水調査第二次
報告書でも、
昭和六十年には、南関東で年十九・七億トン、京阪神で十二・一億トンの水不足が生じると述べています。
昭和六十年を待たずとも、現に首都圏、近畿圏の水不足は生じており、
住宅公団の千葉海浜ニュータウン、埼玉の高麗川団地でも、入居を延期せざるを得ないなどの深刻な状態となっています。
政府は、こうした水不足対策をなおざりにしながら、新公団に
宅地開発を行なわせようとしていますが、水なしでは、大規模な
宅地造成も砂上の楼閣とならざるを得ません。この問題についてどう対処しようとしているのか、建設大臣にお聞きします。
第四に、大都市の
住宅難を解消するために、その周辺において大量の
宅地開発が必要なことは言うをまちません。しかし、大都市への人口集中を放置したまま次々とニュータウンを建設していくならば、都市の巨大化と
住宅難は、際限なく続くことは明白であります。この問題を解決するためには、都市への人口集中の原因である資本の都市集中をやめさせなければなりません。そのためには、事務所、営業所の規制こそ、まず先決問題ではありませんか。
わが党は、かねてから、大都市に新たに事務所、事業所を新増設する大企業から、資本金、床面積に応じて特別の賦課金をかけることを提起してきました。これを財源として、立ちおくれている下水道、公園、災害防止の都市改造などの都市整備を促進すれば、大都市への資本と人口の集中規制とあわせて一石二鳥ではありませんか。総理にこれを実行する意思があるかどうか、その見解を求めます。
最後に、以上の質問でも明らかなように、この
宅地開発公団は、水問題を一そう深刻にするとともに、従来の大規模団地造成の
障害となってきた
宅地問題や地方自治体の過重な負担を改善するものでは決してありません。このような公団を新たに設立する必要は全くなく、
日本住宅公団の組織と機能を根本的に強化すればこと足りるのであります。
わが党は、
住宅難解決のため、当面、大企業の買い占め地を収用し、公共
住宅用地の確保、公共
住宅建設への国の大幅な財政援助の強化を基礎に、公営、公団、公社
住宅を年百万戸建設する五カ年計画を策定し、推進すること、勤労者向け
融資の拡大、勤労者向け
宅地賃貸制度の創設、税の減免など勤労者の個人建設
住宅の助成を強化すること、また、大企業から
住宅負担金を徴収し、公共
住宅建設資金に充てることなどを提起してきました。
政府がこれらの要求を取り入れて直ちに実施に移すことを強く要求して、質問を終わります。(
拍手)
〔内閣総理大臣臨時代理三木武夫君
登壇〕