○
佐藤観樹君 田中
内閣は、後世の歴史家から特筆されるでありましょう。
〔
議長退席、副
議長着席〕
それは、わずか一年半にして、任期半ばにして、二度にわたる
経済危機、
物価高騰の社会的混乱をもたらし、
国民にはかり知れない損害と犠牲を与えた
内閣としてであります。
私は、
日本社会党を代表して、このような田中
内閣の言語に絶する大罪を弾劾するとともに、大
企業にこのような横暴を許してきた
法人税・
租税特別措置法について、幾つかの質問をいたします。(
拍手)
戦後の
企業は、
企業こそ国家なりと、
政府の
経済成長第一主義、輸出優先主義の政策と相まって、大きく成長してきました。この成長に大きな役割りを果たしたのが、大
企業優遇の
税制であります。
現行の
法人税・
租税特別措置法には、大
企業優遇のために四つの恩典があります。
第一は、
法人税の
基本税率が、つまり社内留保分に対して三六・七五%と、諸外国に比べてもきわめて低いことであります。
第二に、利益から支払う
配当には、二六%
課税という、
法人税より低い
課税になっていることであります。
第三に、他の
企業から受け取る
配当に対しては、支払い
配当を除いた
部分の七五%は益金に入れなくてもよいという
制度であります。
第四に、数々の引当金、準備金、特別償却などのいわゆる
特別措置によって、
課税の大幅な
軽減がされていることであります。
これらの四つの恩典によって、大
企業は、社内留保をふやし、他の会社の株を多数保有し、
課税をのがれ、巨大化し、独占、寡占体制をつくり上げてきたのであります。今日の悪性
インフレは、このような
企業の過剰資金がもたらした当然の結果であります。この点について、田中首相の基本的認識をお伺いしたいと思うのであります。
しかし、いまや、成長型から福祉型への転換が要求されている時代であります。
国民は、この財源を
企業にも公平に
負担させるべきだと考えるようになっております。この点に立って、本
年度の
法人税の
改正を見る限り、きわめて不満であります。
問題の第一は、依然として低い
法人税率の問題です。確かに、
政府案では、四〇%にすることで、実効
税率は四九・五%と、少々高くはなりましたが、しかし、これはあくまで計算上の
税率であります。数々の
特別措置によって、実際の
税率はかけ離れた軽いものです。
大蔵省の資料によりましても、四十八
年度の
税率では、資本金一億円以上では三二・五%、資本金百億円以上になりますと三〇・一%と、きわめて軽くなっており、今度の
改正でも、これに一〇%を付加した
程度という計算が出ていますから、とても実際の
税率を
政府が目標とした五〇%にするというにはほど遠いものがあるわけであります。
いまや、
物価上昇率は、
昭和二十七年の朝鮮動乱以来の狂乱
物価であります。二十七年には、
法人税率を三五%から一挙に四二%に
引き上げ、景気を引き締めたのでありますが、このような観点からしても、
法人税率を四二%以上にする必要があると考えますが、
大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思います。
第二の
問題点は、支払い
配当優遇措置が二%
引き上げられ、二八%になりましたが、きわめて不満であります。この
配当優遇措置というのは、初め、自己資本率を高めるという理由で設けられたのでありますが、その後自己資本率は下がる一方で、何のことはない、税金のがれの手段となっているのが現実であります。この
措置によって、利益の八割以上を
配当に回している鉄鋼、電力などは、たっぷりと恩典を受けているのであります。だからこそ、
大蔵省が二六%から三〇%に
引き上げようとしましたら、鉄鋼、電力など財界首脳から強引に反対され、妥協して、四十九
年度は二八%、五十
年度からは三〇%にすることでお茶を濁したというのが、今度の
改正案の中身であります。
政府は今日まで、この支払い
配当の
優遇措置に対しては、
法人税は
所得税の先取りであるとする
法人擬制説を使って擁護してきたのでありますが、いまや
日本経済がこのように巨大化した今日、これは全く説得的な根拠を失っております。私は、支払い
配当を優遇する何ら積極的理由がない以上、留保分と合算して
課税すべきだと考えますが、
大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
第三の
問題点は、他の
企業から受け取る
配当をある限度まで益金に入れないという
制度については、今度の
改正で何ら触れられておりません。四十七
年度の
法人間の受け取り
配当総額は、四千四百九十五億円という巨額にのぼっておりますけれども、このうち、
企業の益金として算入され、
課税の対象になるものは、わずかの百四十七億円にすぎないのであります。この
制度により、
法人は、他の会社の株を持ち合い、売買益をかせぎ、おまけに
課税はわずかという、大
法人にとってはまさに至れり尽くせりの天国であります。この受け取り
配当についても、正当に全額を
企業の益金に入れ、
法人税率を課すべきであると思いますが、
大蔵大臣、いかがでございましょうか。
次に、つくられた物不足、石油危機、便乗値上げによって生まれた超過利得に対する
課税問題についてお伺いをしたいと思います。
灯油がなくなる、次はトイレットペーパーだ、やれ、石油製品だ、洗剤だと、主婦が町々を狂奔しているとき、
企業は、
政府の無為無策と相まって、まさに千載一遇のチャンスとばかり、便乗値上げでぬれ手にアワのぼろもうけをしていたのであります。十二月の決算でも、問題
企業は軒並み高収益をあげています。石油精製の東亜燃料工業が前期比の一・三五倍、石油化学の
昭和電工は四・三五倍、石けんのミヨシ油脂に至っては四・三倍、繊維のレナウンは四・二一倍といったぐあいです。この悪徳商法、便乗値上げによるもうけに税金をかけ、今後の便乗値上げをやめさせ、また、その税収を
インフレの
最大の被害者である
国民に戻すのは当然のことであります。
わが党は、このために
法人臨時付加税を課することを
提案いたしました。これは、四十九
年度の改定予定の
法人税率を基準といたしまして、資本金別、
所得階級別に五%、一〇%、一五%、二〇%の
臨時的な付加税を課し、
最高の実効
税率を六三・五%にしようとするものであります。ただし、資本金一億円以下で、
所得が五千万円以下の
中小企業は除外をします。また、二年間の
時限立法といたしまして、後、累進
税率を適用した
法人利潤税にこれを移行、吸収するように考えております。
この付加税方式は、自民党、共産党に代表される超過利潤税方式とは、基本的に違っております。超過利潤方式では、適正利潤を設定し、これを上回った
所得に
重課するというやり方ですが、一体、適正利潤とは何でしょう。適正利潤が
法律で何%ときめられるならば、これと一体不可分である適正
配当、あるいは適正な給与額をおのずときめる結果になりはしないか。いわゆる
所得政策の導入へ大きく一歩踏み出したことになると私は考えます。
所得政策で
インフレを克服できないことは、今日のイギリスを見ましても、あるいは他の欧米諸国でも証明済みでございます。わが党は、
政府・自民党の
経済政策の
失敗による
インフレを、その被害者である労働者の賃金を押えることによって乗り切り、責任を転嫁しようとする政策には、くみすることはできません。したがって、
所得政策導入をもたらす超過利潤方式の
課税はとりません。田中首相は、現在の不当利得をどのように吸収しようとしているのですか。三月期決算に間に合うように
提案するか、明確な方針を示されたいと思うのであります。また、
所得政策導入は、いかなる形であれ、とらないと言い切れるか、お伺いをしたいと思います。
私はこう考えます。より大きな利益をあげた
企業は、それだけ
物価を
引き上げ、
国民に多大の犠牲をもたらしたのですから、より多くの
課税を、しかも累進的に行なうこの
法人税の付加方式こそ、最も合理的であり、現実的であり、徴税上からも可能であると確信をしております。
福田蔵相は、わが党の
法人臨時付加税方式をどう受けとめられておるか、また、
政府の一〇%付加税案、これを考えているといわれますが、一体どれほど具体化をしているのか、自民党案の超過利潤方式に変わったとするなら、それは何ゆえか、実際にそれで
課税ができるのか、
企業の
課税回避行為にどう対処できるか、お伺いをしたいと思います。
次に、
土地課税問題について二点お伺いをします。
昨今、
法人の
土地所有のすさまじさは、るる述べる必要はないと思います。自治省の固定資産台帳によれば、四十六年全
法人が所有している
土地は、すでに百二十七万ヘクタール、ほぼ田中首相の出身地である新潟県の面積に匹敵し、民有地の八・八%に及んでおります。この
土地による
インフレ利得を吸収するために、大
法人の所有地につき、固定資産評価額に基づき、その評価益の二〇%を
臨時再評価税として課し、持ち切れない
法人は手放させ、
土地を庶民の手に取り戻すべきであると考えます。
土地再評価税について、
土地専門家であられる田中首相のお考えをお伺いしたいと思います。(
拍手)
さらに、福田蔵相が四十四年につくった、個人の
土地譲渡に対して
分離課税を行なっております、その
分離課税をやめ、合算
課税にすべきであると考えます。立法しましたときには、なるべく個人が
土地を手放しやすいようにと考えてのことでありましたが、現実には税金分は買い主のほうに転嫁をされ、
土地成金を生んだだけでした。この
分離課税は、国債発行の固定化、地方財政軽視とともに、福田財政の三悪の
一つであるといわれております。
分離課税をやめ、合算
課税にし、公正と連帯を絶えず口にされる
大蔵大臣は、不明を天下にわびるべきであると思いますが、いかがでございましょうか。(
拍手)
いままで私は、
法人に対して
課税を強化する方策を具体的に
提案してまいりましたが、
企業に税金をかけるといいますと、必ず経理操作によって利益を隠します。たとえば
交際費や寄付金などのほか、各種引当金、準備金を可能な限り積み増しし、税金の繰り延べをはかります。このような操作をなくすために、貸倒引当金、価格変動準備金、退職給与引当金など、実際に取りくずす額の十倍以上も積まれてなお
租税特別措置法で認められているというようなものについては、この際、大幅に圧縮していく必要があると思いますが、いかがでございましょうか。
特に、海外投資等損失準備金について、早急に再検討する必要があります。かつて、四十八年の二月には外貨保有高百九十億六千万ドルを誇り、外貨減らしに知恵をしぼっていたのもつかの間、
政府の調整
インフレ政策と
企業の海外進出によって、いまや百二十二億ドルになっております。この間、注意すべきことは、長期資本収支が大幅に赤字になっておることで、これは田中
内閣になってから特に
日本企業の海外進出が激しいことを物語っております。四十七年だけで投資合計は四十四億八千万ドルに及び、四十六年の何と二・七倍の巨額にのぼっており、いまや
日本企業はまさに奔流のような激しさで海外進出をしているのであります。しかし、この結果が、田中首相の東南アジア訪問にあらわれましたように、排日運動となり、アジアの平和に重大な問題を提起しているのであります。このような
企業の海外進出を助けているのが海外投資等損失準備金
制度であります。すなわち、
企業が利益金を海外に投資しますと、投資先が先進国なら投資額の一〇%、発展途上国なら五〇%、
資源関係では一〇〇%の額を五年間準備金として積み立てることができる
制度であります。これによって、三菱商事の百八十五億円を筆頭に、四十八年九月では、六大商社だけでも六百七十六億円が積み立てられております。今後原油価格の大幅
引き上げで
日本の国際収支に大きな不安があり、加えて、
日本企業の海外進出が、その地域の
資源と労力を搾取するだけで、反日行動を起こさせるようなかっこうになっている現在、
企業の海外進出は、量的にも質的にも規制していく必要があると思います。このような海外進出を促進する海外投資等損失準備金
制度は、少なくも半減すべきであると思いますが、東南アジア訪問でじかに反日暴動に接してきた田中首相の考えをお伺いしたいと思います。
水ぶくれ
経済から水を抜くために、
企業の使う膨大な
交際費に対して
課税を強化する必要があります。国税庁の調べでは、四十七
年度の
交際費は、何と一兆三千二百五十五億円、悪名高い本
年度の防衛費一兆九百億円をはかるにこえて、一日三十六億円余が、社用族によってクラブやキャバレーで飲み食いされ、ゴルフ場で接待されているのであります。三井物産の
交際費が二十億八千万円ですから、雨の日も風の日も毎日五百五十万円ずつ使われている勘定になっております。このたびの
改正案では、この
交際費に対して、一社当たり四百万円プラス資本金の〇・一%をこえた額の七五%に
課税されると、若干強化はされましたが、これくらいではまだまだ使い得で、社用族天国
日本の名はほしいままであります。