運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-02-22 第72回国会 衆議院 本会議 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十二日(金曜日)     —————————————  議事日程 第十二号   昭和四十九年二月二十二日    午後一時開議  第一 割増金付貯蓄に関する臨時措置法案(内     閣提出)  第二 印紙税法の一部を改正する法律案内閣     提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を   求めるの件  学校教育水準維持向上のための義務教育諸   学校教育職員人材確保に関する特別措置   法案(第七十一回国会内閣提出)(参議院   回付)  日程第一 割増金付貯蓄に関する臨時措置法案   (内閣提出)  日程第二 印紙税法の一部を改正する法律案(   内閣提出)  所得税法及び災害被害者に対する租税減免、   徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法   律案内閣提出)、法人税法の一部を改正す   る法律案内閣提出)及び租税特別措置法の   一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説   明及び質疑     午後一時四分開議
  2. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件
  3. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) おはかりいたします。  内閣から、日本放送協会経営委員会委員伊藤義郎君、河原由郎君、田部長右衛門君、長谷慎一君、花村仁八郎君及び村井八郎君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。      ————◇—————  学校教育水準維持向上のための義務教育学校教育職員人材確保に関する特別措置法案(第七十一回国会内閣提出)(参議院回付
  5. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) おはかりいたします。  参議院から、第七十一回国会内閣提出学校教育水準維持向上のための義務教育学校教育職員人材確保に関する特別措置法案回付されております。この際、議事日程に追加して、右回付案議題とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  学校教育水準維持向上のための義務教育学校教育職員人材確保に関する特別措置法案参議院回付案議題といたします。
  7. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 採決いたします。  本案参議院修正同意するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、参議院修正同意するに決しました。      ————◇—————  日程第一 増割金付貯蓄に関する臨時措置法案内閣提出)  日程第二 印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出
  9. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 日程第一、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案日程第二、印紙税法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。     —————————————
  10. 前尾繁三郎

  11. 安倍晋太郎

    安倍晋太郎君 ただいま議題となりました二つの法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案について申し上げます。  この法律案は、経済現状に即応する臨時措置として、割増金付貯蓄取り扱いを認めることにより、貯蓄の増強に資することとしようとするものでありまして、そのおもな内容を申し上げますと、  第一に、割増金がつけられる貯蓄といたしましては、預貯金金融債合同運用指定金銭信託及び生命保険等としております。  第二に、割増金付貯蓄取り扱いを行なうことができる金融機関といたしましては、預金を受け入れる金融機関、債券を発行する金融機関信託銀行及び生命保険会社等としております。  第三に、割増金付貯蓄条件といたしましては、割増金付貯蓄につけられる割増金及び利子または配当合計額は、割増金をつけない場合の利子または配当総額範囲内とするとともに、最高位割増金金額は、割増金付貯蓄一口の金額の一千倍以下とすることとしております。  また、割増金をつける当せんの数は、総くじ数の三分の一以下とすることとしております。  なお、このほか、割増金付貯蓄取り扱いに関する具体的な細目は、大蔵省令で定めることとしております。  第四に、課税上の特例といたしまして、割増金については、所得税を課さないこととしております。  第五に、この法律は、時限立法といたしまして、二年間に限り、効力を有するものとしております。  本案につきましては、審査の結果、去る二月十九日質疑を終了し、討論を行ないましたところ、日本社会党を代表して佐藤観樹君、日本共産党革新共同を代表して小林政子君、公明党を代表して田中昭二君及び民社党を代表して竹本孫一君から、それぞれ反対の旨の意見が述べられました。次いで、採決いたしましたところ、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対しましては、全会一致をもって附帯決議を付することに決定いたしましたが、詳細は会議録に譲ります。  次に、印紙税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、今次の税制改正の一環として、最近における経済取引推移等に顧み、印紙税負担適正化をはかるため、その税率及び免税点引き上げるとともに、納税手続を合理化するなど、所要規定整備を行なおうとするものであります。  すなわち、まず、現在二十円の一律定額税率とされている金銭等受け取り書のうち、売り上げ代金受け取り書について、最低五十円から最高二万円までの階級定額税率を採用することにいたしております。また、これに伴い、中小企業負担軽減するため、受け取り書免税点現行の三倍に引き上げることにいたしております。  次に、現在すでに階級定額課税が行なわれている不動産譲渡契約書手形等について、高額部分負担引き上げを中心として、その税率の見直しを行なうことにいたしております。  また、その他の文書で引き続き定額課税が行なわれる合併契約書預貯金証書等につきましても、それぞれその定額税率引き上げをはかることにいたしております。  以上のほか、印紙税納付計器使用制限を若干緩和するなど、所要規定整備合理化を行なうことにいたしております。  本案につきましては、審査の結果、一昨二十日質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  12. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 両案を一括して採決いたします。  両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  13. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  次に、人的控除につきましては、基礎控除及び配偶者控除をそれぞれ三万円、扶養控除を八万円引き上げて、各控除一律同額の二十四万円とすることといたしております。  これらの改正により、給与所得者課税最低限は、平年分で、独身者の場合では、現行の四十五万円から七十七万円に、夫婦と子供二人の場合では、現行の百十五万円から百七十万円にそれぞれ引き上げられることになります。  以上の改正にあわせて、所得税累進構造を緩和するため、課税所得二千万円以下の部分について、税率適用所得階級区分現行の約一・五倍に拡大することといたしております。  これにより、昭和四十九年度における所得税一般減税総額は、初年度一兆四千五百億円と、空前の規模のものと相なるのであります。  さらに、退職所得者税負担軽減をはかるため、三十五年勤続した場合の退職所得非課税限度を一千万円に引き上げることとし、昭和四十八年度に引き続き退職所得控除引き上げを行なうことといたしております。  以上のほか、白色申告者専従者控除現行二十万円から三十万円に引き上げ、また、少額貯蓄非課税制度非課税限度額現行の百五十万円から三百万円に引き上げるとともに、生命保険料控除及び損害保険料控除控除対象限度額引き上げるほか、寄付金控除のいわゆる足切り限度額を大幅に引き下げる等、所要改正を行なうことといたしております。  また、災害被害者負担軽減するため、災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律によって所得税軽減または免除する場合の所得限度額を倍額に引き上げることといたしております。  次に、法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  まず、法人税基本税率は、法人税法上三五%と定められておりますが、租税特別措置法規定により、昭和四十九年四月末までの間の暫定措置として一・七五%が加算され、現行は三六・七五%と相なっております。昭和四十九年度税制改正におきましては、法人税負担水準適正化をはかる見地から、法人税法規定改正により、これを四〇%に引き上げることといたしております。  次に、中小法人に適用される軽減税率は、中小企業現状にかんがみ、特にこれを据え置くとともに、その適用所得範囲を三百万円から平年度七百万円に引き上げることとしておりますが、さらに、内部留保充実に資するため、同族会社留保所得に対する課税についての定額控除額を五百万円から一千万円に引き上げることといたしております。  このほか、申告及び納税手続簡素化のため、中間申告書提出不要限度額を五万円から十万円に引き上げることといたしております。  最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  まず第一に、法人税基本税率引き上げに対応して、配当課税率を二六%から平年度三〇%に引き上げることといたしております。  第二に、資源の節約、消費抑制道路財源充実等の観点から、二年間の暫定措置として、揮発油税につきましては、その税率を一キロリットルにつき現行の二万四千三百円から二万九千二百円に、地方道路税につきましては、同じく四千四百円から五千三百円に、自動車重量税につきましては、営業用自動車を除き、その税率原則として現行の二倍に、それぞれ引き上げることといたしております。  第三に、株式売買損失準備金繰り入れ限度額引き下げ特定合併をした場合の割増し償却制度廃止等、既存の特別措置整理合理化を行ない、また、交際費課税の強化をはかるため、交際費損金算入限度額引き下げを行なうことといたしております。  第四に、貯蓄の奨励、勤労者財産形成及び住宅対策見地から、少額国債非課税制度及び勤労者財産形成貯蓄非課税制度等非課税限度額引き上げるとともに、確定申告を要しない配当所得限度額引き上げることといたしております。また、勤労者にかかる住宅貯蓄控除制度及び住宅取得控除制度控除額引き上げ等を行なうことといたしております。  第五に、公害防止に資するため、金属鉱業等鉱害防止準備金制度の創設を行なうとともに、公害防止準備金制度適用期限を延長することといたしております。  以上のほか、中小企業対策技術振興資源開発農林漁業対策私学振興宅地対策等に資するため、それぞれ実情に応じ所要措置を講ずることといたしております。  以上、所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げた次第であります。(拍手)      ————◇—————  所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)、法人税法の一部を改正する法律案内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  14. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山田耻目君。   〔山田耻目君登壇
  15. 山田耻目

    山田耻目君 ただいま提案のありました所得税法の一部改正につきまして、私は、日本社会党を代表いたしまして、数点、根幹となる問題につきまして、総理大蔵厚生の各大臣に質問をいたしたいと存じます。  一つは、インフレ期における税の構造減税のあり方に対する基本的な認識、その姿勢についてでございます。  いま、国民は、戦争直後を除き、かつてない破局的なインフレに直面をいたしております。もちろん、その要因の一つ外的条件のあることは否定をいたしませんが、しかし、今日の狂乱的な物価高騰の主役は、政府が長年にわたってとり来たりました経済高度成長政策と、それをしっかりささえてきた成長型財政とががっちりとからみ合い、根をおろしてきたところにインフレの主因があるのであります。このことは、いまや、国民たれ一人として否定をし得ない明白な事実でございます。  端的に申し上げて、現在の爆発的インフレは、この二年来の政府為替政策失敗景気政策失敗に加えまして、列島改造論にあおられた土地、株、あらゆる商品の買い占め、投機を野放しにしてきた誤った経済運営の必然的な結果でございます。(拍手石油ショックがこの田中インフレの充満したガスに点火をいたしまして大爆発を起こしたものと見るべきでございます。田中総理は、みずからきびしい反省をいたすべきが当然でありましょう。  この過酷なインフレの影響をどう食いとめるかが、いわゆる福祉優先への転換について最大の焦点であることは、もはや申すまでもございません。  物価上昇は、働く者の実質所得を減価させ、消費貯蓄を切り下げていくだけでなく、名目賃金上昇がそのまま実質増税になってはね返ってくるのであります。さらには、老人母子生活保護世帯にとって、低い社会保障に加えまして、インフレがストレートにこれに作用し、まさに低い所得物価上昇のダブルパンチを受けることになるのであります。  それだけにはとどまらずに、インフレは、それ自体が大衆課税的な効果を持っているのであります。土地や株を持っている資産所得者は、労せずしてもうけがころがり込み、土地成金株主長者を生み、インフレ利得を通して、富める者と貧しい者との不公平や格差がますます拡大されているという実態でございます。ところが、所得再配分の機能を果たすべきわが国の税制は、勤労所得には重く、かえって大法人高額所得者、とりわけ資産所得や不労所得に対し不当に軽い税の構造になっているのであります。本来、正しい意味での累進構造がゆがめられているのであります。  ここで一例を示してみましょう。  東京都の新財源構想委員会報告書によりますと、全国申告所得一千万から二千万円までの者で、所得税住民税合算税率は二一・五%でございます。二千万円以上の者になりますと一七%と、高額所得者になるにつれて税負担は減っていくのであります。所得が二百万から三百万の人に対しては一五・二%の税率であることから見ましても、税の累進制は一体どうなっているのか。納税義務感というものは、徴税の公平、公正、その上にのみ存しておるのだということを見忘れてはならないのであります。累進制を故意にひん曲げたのは一体だれなのですか。  田中総理、あなたが総理になられて一年有半、極端にそのひずみがあらわれ始めたと見るのは、私一人の見方ではないのです。  本年度政府税調報告書を見ますと、昭和四十七年度で二百万円以下の所得を得ている者は、給与所得納税者全員の八七・四%、二千十三万人の多数にのぼっており、本年度は二千九百六十万人と推計されるのであります。  この多くの勤労国民は、インフレに苦しみ、税の重課と不公平をなじり、ゆがめられた累進構造を正しい本来の姿に引き戻すために、悲痛な怒りに満ちた声はますます強大なものとなりまして、何らかの行動に発展するのではないかと、私、心から憂慮いたすのであります。  総理、あなたが昨日、労働四団体に言われたことばには裏づけがないのです。あなたがよく言われる決断と実行の政治哲学は、見せかけのものであってはなりません。多くの国民が、なるほどとうなずいてくれる税制に対する基本的な姿勢を、この際、明確に示していただきたいのであります。  今回の税制改正においても、画期的といわれておりますけれども、いま私の指摘した問題点については、全然反省をいたしていないのであります。先進諸国では例を見ない最低法人税租税特別措置による大企業優先の投資促進的な措置、加えて、個人税制においては、土地譲渡所得高額利子配当に対する優遇措置など、資産所得に対する過度の優遇措置が依然として持続されているではありませんか。この大企業金持ち優遇税構造が一そうインフレを加速さしたことは、間違いのない事実であります。だから、税の構造そのものを抜本的に改革する必要は、いまや不可欠になってきたのであります。避けて通ることは許されないのであります。  今回の大幅減税といわれる一兆四千五百億の減税措置については、二兆円減税足切りにしたなどと、皮肉は私は言いません。しかし、減税によっては救済をされない老人低額所得者、身障者、母子生活保護世帯などに至りましては、生存権すら奪われようとしている現状であります。目に見えない社会的犯罪といわなければならないのです。このインフレ弱者を具体的にどう救済をしていくのか、厚生大臣、その内容を明示していただきたいのであります。(拍手)  第二に、ただいま大蔵大臣より、画期的なものとして大幅減税提案がなされました。税構造の上では何らの変わりばえのしない、従来の延長でございます。むしろ、一部は改悪となっているのです。その実体は何なのか。高額所得者優遇のための改正なのであります。その中身は、次のとおりになっているのです。  税をかけない課税最低限は、現在では標準世帯百十五万円でございます。これを、昭和四十九年、ことしから百五十万円に引き上げるというものであります。  課税最低限とは何ですか。人的控除給与所得控除合算額であります。この給与所得控除は、もともと今日まで定額制でございました。年収六百十六万円をもって限界といたしまして、控除限度額は七十六万円で押えられていたのであります。それを今回の改正で、六百十六万円の限界も七十六万円の限度額も全部取っ払ってしまって、そうして青天井としてしまったのであります。  結果、どうなります。四人家族標準世帯年収二百万円の人は、わずか四万五千二百九十八円の減税にしかなりません。年収七百万円では、四十八万五百二十五円の減税となるのであります。年収一千万円になりますと、七百万円の倍近い、九十一万一千四百五十円の大減税となるのであります。さらに、二千万円では二百一万千二百三十円、三千万円では二百八十六万八千六百三十円と、まさに天井知らず減税額はふえていくのであります。  高額所得者だけが日本国民ではありません。なぜ、このようなメリットを特別に高額所得者に与えなければならないのか、私は理解に苦しみます。許しがたい法の改悪だと思うのであります。しかも、物価高で苦しむ低所得者は、今後、インフレメカニズムを通して、名目賃金が上がっていけば、またしても実質増税効果が働き、ベースアップ分は帳消しになっていくことは、目に見えて明らかなのであります。これに比べて高額所得者は、ベースアップをしなくても、減税分だけで実質的にベースアップ分をカバーする結果となるのであります。  したがって、インフレ抑制のためには、税制それ自体を総需要抑制装置として働かせる必要があるのであります。その機能として、年収一千万円以上の階層に対しては逆に増税をする、もしくは増税効果が及ぶように対処することが当然と思うのでございますが、率直な見解を伺いたいと思います。  大蔵大臣にいま一点お尋ねをいたします。  給与所得控除が、勤労者所得を得るための必要経費だとするならば、事業を行なうために要した必要経費と同列に見るのが当然というべきであります。したがって、人的控除分そのもの課税最低限であります。これが生計費非課税原則相当する額に当てはまるべきものなのであります。  ところが、現在の課税最低限は、いま大臣説明しておりましたように、人的控除に、必要経費相当であるべき給与所得控除を加えて、さらにその上に社会保険料まで加えて、標準世帯百五十万円といたしておるのであります。何が画期的なのでございますか。一体サラリーマン課税最低限とは何なのですか、私にはさっぱりわかりません。原理、原則を明確にお示しいただきたいのであります。  特に人的控除部分は、改正案では、基礎控除配偶者控除扶養控除、それぞれ控除額を二十四万円に引き上げてまいりました。四人家族に直せば九十六万円となります。九十六万円が生計費に見合うとすれば、ボーナスを含めて月八万円の生計費となります。これでは生活実態と著しくかけ離れた低い水準であり、勤労者が人間として認められていない証左といわなければならないのであります。(拍手)  総理府統計局消費支出を見ますと、全国勤労者世帯平均支出は、昭和四十八年、去年の十月までの一年間、約百五十一万円の支出でございました。昭和四十九年は、これから推計いたしてみても、物価上昇に伴う支出増加を三〇%とすれば、百九十六万円となります。いま平均世帯構成はおおむね三・五人程度でございます。四人家族で推定をいたしますと、どう低く見積もっても二百万円をこえる生計費がかかることは明瞭なのでございます。  さらに、給与所得控除必要経費であるとするならば、経費実額控除に道を開き、納税者の選択によって実額控除申告制を認めるべきでございます。この主張は納税者の本来の権利だと思うのでございます。もしそうなれば申告者が多過ぎて困るといわれるのならば、それは給与所得控除必要経費控除として低きに過ぎるということの証左にほかなりません。  納税者基本的人権を保障する上からも、必要経費の実額控除制を採用すべきであると私は思いますが、大臣見解を承りたいのでございます。(拍手)  以上、大筋三点について申し述べましたが、今日の税制最大問題点は、総合累進課税構造がずたずたにひん曲げられており、東京都の調査でも明らかに示されておりますように、完全に高額所得者優遇逆進制となっておるのであります。これに加えて、住民税の低い課税最低限、悪平等な均等割制度で、低所得者は一そうの逆進的負担になってくるのであります。まさに、いびつといおうか、不公平といおうか、許しがたい制度になっているのでございます。この根本原因は、利子配当分離課税によって高額所得者税率が不当に低く押えられているからであります。  このことについても例を示しましょう。  勤労世帯平均貯蓄額は、昭和四十七年で約百七十万円程度でございます。これに対して、金利、利息を百万円もらう人は、当時、利回り五・五%といたしまして、貯蓄は一千八百十八万円でございます。株の配当百万円もらう人は、一割配当で一千万円相当の株券の保持者でございます。こうした人々は少なくとも年収一千万円以上のクラスでございます。税率は、所得税だけでも五〇%は払わなければならない階層でございます。この上積み税率は、利子所得分離課税を選択すれば二五%、これに少額貯蓄非課税制度をフルに活用してさらに税率を下げていく、こうした仕組みになっているのでございます。配当についても同様なことがいえます。二五%の源泉分離課税が選択できる上に、一銘柄五万円までは一五%の源泉徴収で済むことになっているのです。  さらに、福田財政の悪質なやり方は、昭和四十四年、福田蔵相当時、個人の長期保有の土地譲渡所得分離課税によりまして、一〇%から一五%の低い税率分離課税を行ない、昭和四十九年、五十年におきましても、二〇%の分離課税で済まされるのであります。土地譲渡所得が八千万円以上の場合は、七五%の税を払うのが当然でございます。その上に住民税がかかるのであります。しかし、これが一〇%や一五%の税金で押えられているところに、税制をひん曲げた悪の根源があるのであります。  なお、いま一つ加えるならば、株式の売買利益は一切課税の対象となっていないということであります。極悪非道ということばがございますが、私は、このことのためにできたことばではないかと思います。  こういう制度を野放しにしておいて、インフレ利得をほしいままにむさぼらせておきながら、インフレによる被害者を救済するとして、逆に高額所得者減税を青天井で行なうということは、まさに木を見て森を見ざる無定見さに尽きるといえるのであります。(拍手)  大臣、私はこれまで税構造の基本的な問題に触れてまいりましたが、国民が納得して納税をするためにはきわめて重要な事柄を述べてきました。なぜ総合課税体系の改正に抜本的に取り組まれないのか、その理由を明示していただきたい。所得税の根本改正とは、いま私が指摘した事柄を抜きにしてはとうてい考えられません。
  16. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 山田君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  17. 山田耻目

    山田耻目君(続) 具体的な方法、時期を明らかにお示し願いたいのでございます。  最後に、インフレ弱者に対する具体的な方途として、次のことについて、関係大臣、それぞれお答えをいただきたいと思います。  一つは、私外四名の提出になる、三万円を限度とする所得税の払い戻し措置を、昭和四十八年度中に必ず実行していただくこと。  二つ目には、公的年金受給者に対しては、免税の措置をとるとともに、深夜の労働に対しては、その手当などは非課税とすべきでございます。  三つ目は、老人母子、身障者、生活保護世帯等に対しては、年金及び手当の最低一カ月分以上を繰り上げて支給していただきたいのでございます。  ささやかな善政であるけれども、この程度のあたたかみのある行政すらできないとするならば、私も政治家の一人として、深い悲しみと激しい憤りを腹の底から覚えてくるのです。衷心より御配慮いただくことを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇
  18. 田中角榮

    内閣総理大臣(田中角榮君) 山田耻目君にお答えいたします。  第一は、税に対する基本姿勢でございます。所得税の基本が総合累進課税にありますことは申すまでもございませんが、各種の政策的要請から総合課税とされていないものがあることは、御指摘のとおりでございます。たとえば、利子配当につきましては、貯蓄の奨励、個人株主の育成という見地から、納税者の選択によって分離課税とすることが認められておるのであります。また、土地譲渡所得に対する分離課税につきましては、税制調査会の答申も明確に指摘をいたしておりますとおり、税負担の公平を犠牲にしても、土地供給の促進をはかることが必要であるとの判断のもとに創設をされたわけでございます。したがいまして、現在の制度を直ちに廃止することは適当ではなく、さしあたり、制度の期限到来、すなわち昭和五十年末までの期間に慎重な検討を続けることが適当であると政府は考えておるのであります。  第二は、年金及び生活保護費を一カ月程度前払いすべしという御指摘でございますが、年金受給者につきましては、拠出年金について、年金額の実質価値を維持するために、昭和四十九年度から年金額のスライドを実施することといたしております。福祉年金につきましては、その額を五〇%引き上げるなど、大幅な年金額引き上げを行なうことといたしておるわけでございます。  年金制度は、一定の受給要件に従い、一定水準の給付を規則的に行なうものでございまして、受給権の確定していない将来の期間に対する給付を前払いすることは、制度趣旨から見て適当ではないと考えるのであります。  生活保護世帯につきましては、昭和四十八年度におきましても、物価の動向等を勘案いたしまして、二回にわたる特別措置を行ないましたが、今後も情勢の変化に応じた対応措置を必要とするようなことがあれば、敏速に所要措置を講じてまいりたいと考えております。  また、年収二百万円以下の者に対し、年度内に三万円税額控除の戻し税減税を行なってはどうかという御提案でございますが、現在の経済情勢のもとにおいて、政府は財政金融政策の総力をあげて物価の安定につとめておるところでございます。この意味から、減税年度内に繰り上げて実施することは考えておりません。  残余の問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇
  19. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 給与所得控除最高限度額を廃したことに対する御批判でございますが、この問題は、税制調査会におきましても御指摘のような意見もあり、なかなかむずかしい問題であったわけであります。しかし、給与所得控除は給与所得の多寡によってその処遇を変うべきものではない、そういうことで、最終的には、圧倒的多数の方が、最高限度額の撤廃にこの際——この際というのは、今回この大幅な大減税をやる、そのこの際にこれを実行すべし、そういうことでございます。つまり、他の所得者、つまり事業所得者等との均衡を考慮するとき、それが妥当であると私も判断をいたしたわけであります。  次に、課税最低限必要経費である給与所得控除を加えるのは不当ではないか、こういうお話でございますが、課税最低限というものは、そもそもがこれは法律上の問題ではございません。これは、どの程度所得階層の方が非課税になるのかということをわかりよく御理解願うための参考として例示するものであります。この考え方はもうずっと定着しておる考え方でございまして、いまさら私は御論議を承ることはいかがであろうか、かように考えます。  それから、給与所得者に源泉徴収と申告納税の選択権を与うべし、こういうお話でございます。しかし、今日の源泉徴収制度は、国にとりましては税収を確保するという一面がある、また、納税者にとりましては繁雑な手続を省略し得る、こういう利点もあり、年末に納税額が集中するのを緩和するという一面もあるのでありまして、しかも、諸外国でこの制度は採用され、わが国におきましても定着慣熟しておる制度だと思いますので、これを改正する意図は持ちません。  それから、公的年金につきましてはすべて非課税にすべきではないかという御所論でございますが、これは四十八年度の税改正によりまして、六十五歳以上の老人に対しましては特別控除制度が認められたわけであります。この制度によりまするときには、六十五歳以上の老夫妻におきましては百四十五万円までが非課税になる。今回、四十九年度税制改正が行なわれますると、この額は実に百六十七万円と相なるのであります。でありますので、特殊な高額の公的年金を受ける方、あるいは他に所得があるという方は、これは格別でございますが、大かたこの制度で公的年金受給者は非課税となる、これを制度的に改正する必要はない、かように考えます。  それから、夜勤手当につきまして、西ドイツがやっているように免税にされたらどうだろう、こういうようなお話でございますが、夜勤手当でありましても、給与は給与であります。そういうようなことから考えまするときに、危険手当でありますとか、いろいろなそういう他の手当等に波及する問題であります。さようなことで、これには慎重に対処しなければならぬと考えております。  なお、所得税の基本は総合累進課税でなければならない、しかし、利子配当土地譲渡所得に対する特例、そういうことでこの原則がゆがめられておるというそのお話、私は、所得税の基本は総合累進課税でなければならない、こういうことについては全く山田さんと同じ意見でございます。しかし、総理がるる申し上げましたとおり、この原則だけでいくというわけにもいかぬ問題がある、多少の例外は、これは御理解願いたい、かように存じます。(拍手)   〔国務大臣齋藤邦吉君登壇
  20. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げます。  経済的に弱い立場にある人々の生活を守る最も重要な問題でございまして、厚生省におきましても、来年度の予算編成にあたり最も力をいたしたところでございます。特に生活保護費は、最低生活保障という制度でございますので、物価の動向等を十分に勘案いたしまして、昨年においても二度の特別措置を講じてまいりましたが、来年におきましても二〇%の引き上げを行ない、さらにまた、老人ホームその他の社会福祉施設につきましても、同じように二〇%の引き上げを行なうことにいたしておるわけでございまして、今後とも、情勢の変化に応じ、対応的な措置を臨機にいたしてまいりたいと考えておるところでございます。  また、年金につきましては、拠出制年金につきましては昨年大幅な改正を行ないましたが、さらに本年度におきましてはスライド制をいよいよ実行することといたし、物価動向をにらみ合わせてその引き上げを行なうことといたし、さらにまた、福祉年金等につきましてもそれぞれ大幅な引き上げを行なっておるところでございまして、最低一カ月程度の前払いということは困難であると考えております。しかし、私どもは、こうした経済的に弱い方々の生活を守るということは最も大事なことでございますから、情勢の推移に応じ、最も努力をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  21. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 佐藤観樹君。   〔佐藤観樹登壇
  22. 佐藤観樹

    佐藤観樹君 田中内閣は、後世の歴史家から特筆されるでありましょう。   〔議長退席、副議長着席〕 それは、わずか一年半にして、任期半ばにして、二度にわたる経済危機、物価高騰の社会的混乱をもたらし、国民にはかり知れない損害と犠牲を与えた内閣としてであります。  私は、日本社会党を代表して、このような田中内閣の言語に絶する大罪を弾劾するとともに、大企業にこのような横暴を許してきた法人税租税特別措置法について、幾つかの質問をいたします。(拍手)  戦後の企業は、企業こそ国家なりと、政府経済成長第一主義、輸出優先主義の政策と相まって、大きく成長してきました。この成長に大きな役割りを果たしたのが、大企業優遇の税制であります。  現行法人税租税特別措置法には、大企業優遇のために四つの恩典があります。  第一は、法人税基本税率が、つまり社内留保分に対して三六・七五%と、諸外国に比べてもきわめて低いことであります。  第二に、利益から支払う配当には、二六%課税という、法人税より低い課税になっていることであります。  第三に、他の企業から受け取る配当に対しては、支払い配当を除いた部分の七五%は益金に入れなくてもよいという制度であります。  第四に、数々の引当金、準備金、特別償却などのいわゆる特別措置によって、課税の大幅な軽減がされていることであります。  これらの四つの恩典によって、大企業は、社内留保をふやし、他の会社の株を多数保有し、課税をのがれ、巨大化し、独占、寡占体制をつくり上げてきたのであります。今日の悪性インフレは、このような企業の過剰資金がもたらした当然の結果であります。この点について、田中首相の基本的認識をお伺いしたいと思うのであります。  しかし、いまや、成長型から福祉型への転換が要求されている時代であります。国民は、この財源を企業にも公平に負担させるべきだと考えるようになっております。この点に立って、本年度法人税改正を見る限り、きわめて不満であります。  問題の第一は、依然として低い法人税率の問題です。確かに、政府案では、四〇%にすることで、実効税率は四九・五%と、少々高くはなりましたが、しかし、これはあくまで計算上の税率であります。数々の特別措置によって、実際の税率はかけ離れた軽いものです。大蔵省の資料によりましても、四十八年度税率では、資本金一億円以上では三二・五%、資本金百億円以上になりますと三〇・一%と、きわめて軽くなっており、今度の改正でも、これに一〇%を付加した程度という計算が出ていますから、とても実際の税率政府が目標とした五〇%にするというにはほど遠いものがあるわけであります。  いまや、物価上昇率は、昭和二十七年の朝鮮動乱以来の狂乱物価であります。二十七年には、法人税率を三五%から一挙に四二%に引き上げ、景気を引き締めたのでありますが、このような観点からしても、法人税率を四二%以上にする必要があると考えますが、大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思います。  第二の問題点は、支払い配当優遇措置が二%引き上げられ、二八%になりましたが、きわめて不満であります。この配当優遇措置というのは、初め、自己資本率を高めるという理由で設けられたのでありますが、その後自己資本率は下がる一方で、何のことはない、税金のがれの手段となっているのが現実であります。この措置によって、利益の八割以上を配当に回している鉄鋼、電力などは、たっぷりと恩典を受けているのであります。だからこそ、大蔵省が二六%から三〇%に引き上げようとしましたら、鉄鋼、電力など財界首脳から強引に反対され、妥協して、四十九年度は二八%、五十年度からは三〇%にすることでお茶を濁したというのが、今度の改正案の中身であります。  政府は今日まで、この支払い配当優遇措置に対しては、法人税所得税の先取りであるとする法人擬制説を使って擁護してきたのでありますが、いまや日本経済がこのように巨大化した今日、これは全く説得的な根拠を失っております。私は、支払い配当を優遇する何ら積極的理由がない以上、留保分と合算して課税すべきだと考えますが、大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。  第三の問題点は、他の企業から受け取る配当をある限度まで益金に入れないという制度については、今度の改正で何ら触れられておりません。四十七年度法人間の受け取り配当総額は、四千四百九十五億円という巨額にのぼっておりますけれども、このうち、企業の益金として算入され、課税の対象になるものは、わずかの百四十七億円にすぎないのであります。この制度により、法人は、他の会社の株を持ち合い、売買益をかせぎ、おまけに課税はわずかという、大法人にとってはまさに至れり尽くせりの天国であります。この受け取り配当についても、正当に全額を企業の益金に入れ、法人税率を課すべきであると思いますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。  次に、つくられた物不足、石油危機、便乗値上げによって生まれた超過利得に対する課税問題についてお伺いをしたいと思います。  灯油がなくなる、次はトイレットペーパーだ、やれ、石油製品だ、洗剤だと、主婦が町々を狂奔しているとき、企業は、政府の無為無策と相まって、まさに千載一遇のチャンスとばかり、便乗値上げでぬれ手にアワのぼろもうけをしていたのであります。十二月の決算でも、問題企業は軒並み高収益をあげています。石油精製の東亜燃料工業が前期比の一・三五倍、石油化学の昭和電工は四・三五倍、石けんのミヨシ油脂に至っては四・三倍、繊維のレナウンは四・二一倍といったぐあいです。この悪徳商法、便乗値上げによるもうけに税金をかけ、今後の便乗値上げをやめさせ、また、その税収をインフレ最大の被害者である国民に戻すのは当然のことであります。  わが党は、このために法人臨時付加税を課することを提案いたしました。これは、四十九年度の改定予定の法人税率を基準といたしまして、資本金別、所得階級別に五%、一〇%、一五%、二〇%の臨時的な付加税を課し、最高の実効税率を六三・五%にしようとするものであります。ただし、資本金一億円以下で、所得が五千万円以下の中小企業は除外をします。また、二年間の時限立法といたしまして、後、累進税率を適用した法人利潤税にこれを移行、吸収するように考えております。  この付加税方式は、自民党、共産党に代表される超過利潤税方式とは、基本的に違っております。超過利潤方式では、適正利潤を設定し、これを上回った所得重課するというやり方ですが、一体、適正利潤とは何でしょう。適正利潤が法律で何%ときめられるならば、これと一体不可分である適正配当、あるいは適正な給与額をおのずときめる結果になりはしないか。いわゆる所得政策の導入へ大きく一歩踏み出したことになると私は考えます。  所得政策でインフレを克服できないことは、今日のイギリスを見ましても、あるいは他の欧米諸国でも証明済みでございます。わが党は、政府・自民党の経済政策の失敗によるインフレを、その被害者である労働者の賃金を押えることによって乗り切り、責任を転嫁しようとする政策には、くみすることはできません。したがって、所得政策導入をもたらす超過利潤方式の課税はとりません。田中首相は、現在の不当利得をどのように吸収しようとしているのですか。三月期決算に間に合うように提案するか、明確な方針を示されたいと思うのであります。また、所得政策導入は、いかなる形であれ、とらないと言い切れるか、お伺いをしたいと思います。  私はこう考えます。より大きな利益をあげた企業は、それだけ物価引き上げ国民に多大の犠牲をもたらしたのですから、より多くの課税を、しかも累進的に行なうこの法人税の付加方式こそ、最も合理的であり、現実的であり、徴税上からも可能であると確信をしております。  福田蔵相は、わが党の法人臨時付加税方式をどう受けとめられておるか、また、政府の一〇%付加税案、これを考えているといわれますが、一体どれほど具体化をしているのか、自民党案の超過利潤方式に変わったとするなら、それは何ゆえか、実際にそれで課税ができるのか、企業課税回避行為にどう対処できるか、お伺いをしたいと思います。  次に、土地課税問題について二点お伺いをします。  昨今、法人土地所有のすさまじさは、るる述べる必要はないと思います。自治省の固定資産台帳によれば、四十六年全法人が所有している土地は、すでに百二十七万ヘクタール、ほぼ田中首相の出身地である新潟県の面積に匹敵し、民有地の八・八%に及んでおります。この土地によるインフレ利得を吸収するために、大法人の所有地につき、固定資産評価額に基づき、その評価益の二〇%を臨時再評価税として課し、持ち切れない法人は手放させ、土地を庶民の手に取り戻すべきであると考えます。土地再評価税について、土地専門家であられる田中首相のお考えをお伺いしたいと思います。(拍手)  さらに、福田蔵相が四十四年につくった、個人の土地譲渡に対して分離課税を行なっております、その分離課税をやめ、合算課税にすべきであると考えます。立法しましたときには、なるべく個人が土地を手放しやすいようにと考えてのことでありましたが、現実には税金分は買い主のほうに転嫁をされ、土地成金を生んだだけでした。この分離課税は、国債発行の固定化、地方財政軽視とともに、福田財政の三悪の一つであるといわれております。分離課税をやめ、合算課税にし、公正と連帯を絶えず口にされる大蔵大臣は、不明を天下にわびるべきであると思いますが、いかがでございましょうか。(拍手)  いままで私は、法人に対して課税を強化する方策を具体的に提案してまいりましたが、企業に税金をかけるといいますと、必ず経理操作によって利益を隠します。たとえば交際費や寄付金などのほか、各種引当金、準備金を可能な限り積み増しし、税金の繰り延べをはかります。このような操作をなくすために、貸倒引当金、価格変動準備金、退職給与引当金など、実際に取りくずす額の十倍以上も積まれてなお租税特別措置法で認められているというようなものについては、この際、大幅に圧縮していく必要があると思いますが、いかがでございましょうか。  特に、海外投資等損失準備金について、早急に再検討する必要があります。かつて、四十八年の二月には外貨保有高百九十億六千万ドルを誇り、外貨減らしに知恵をしぼっていたのもつかの間、政府の調整インフレ政策と企業の海外進出によって、いまや百二十二億ドルになっております。この間、注意すべきことは、長期資本収支が大幅に赤字になっておることで、これは田中内閣になってから特に日本企業の海外進出が激しいことを物語っております。四十七年だけで投資合計は四十四億八千万ドルに及び、四十六年の何と二・七倍の巨額にのぼっており、いまや日本企業はまさに奔流のような激しさで海外進出をしているのであります。しかし、この結果が、田中首相の東南アジア訪問にあらわれましたように、排日運動となり、アジアの平和に重大な問題を提起しているのであります。このような企業の海外進出を助けているのが海外投資等損失準備金制度であります。すなわち、企業が利益金を海外に投資しますと、投資先が先進国なら投資額の一〇%、発展途上国なら五〇%、資源関係では一〇〇%の額を五年間準備金として積み立てることができる制度であります。これによって、三菱商事の百八十五億円を筆頭に、四十八年九月では、六大商社だけでも六百七十六億円が積み立てられております。今後原油価格の大幅引き上げ日本の国際収支に大きな不安があり、加えて、日本企業の海外進出が、その地域の資源と労力を搾取するだけで、反日行動を起こさせるようなかっこうになっている現在、企業の海外進出は、量的にも質的にも規制していく必要があると思います。このような海外進出を促進する海外投資等損失準備金制度は、少なくも半減すべきであると思いますが、東南アジア訪問でじかに反日暴動に接してきた田中首相の考えをお伺いしたいと思います。  水ぶくれ経済から水を抜くために、企業の使う膨大な交際費に対して課税を強化する必要があります。国税庁の調べでは、四十七年度交際費は、何と一兆三千二百五十五億円、悪名高い本年度の防衛費一兆九百億円をはかるにこえて、一日三十六億円余が、社用族によってクラブやキャバレーで飲み食いされ、ゴルフ場で接待されているのであります。三井物産の交際費が二十億八千万円ですから、雨の日も風の日も毎日五百五十万円ずつ使われている勘定になっております。このたびの改正案では、この交際費に対して、一社当たり四百万円プラス資本金の〇・一%をこえた額の七五%に課税されると、若干強化はされましたが、これくらいではまだまだ使い得で、社用族天国日本の名はほしいままであります。
  23. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 佐藤君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  24. 佐藤観樹

    佐藤観樹君(続) わが党は、三百万円プラス資本金の〇・一%をこえる額全額を課税対象にすべきだと思いますが、政府見解はいかがでございますか。  わが党案でも、四百万円以上使う中小企業はごく少数に限られているので、中小企業は、政府が言うように何ら困ることはないのであります。政府案は少々前進でありますので、巨大企業の利益がばく大である三月期決算から断行すべきであると考えますが、政府の決断はいかがでございますか。(拍手)  最後に、政治献金についてお伺いをしたいと思います。  昨今政府・自民党と財界との癒着問題がますますクローズアップされていますが、四十八年に国民協会を通して集めた金が約百九十六億円、さらに各派閥への献金もおそらく数十億円に達すると思われます。今後この献金額を四倍にする目標ということであります。国民は、たいへんなインフレで、貯金やさいふの中身が目減りして悪戦苦闘をしているのに、ひとり自民党の台所だけは金の山ができているようであります。政治資金規正法はざる法であることは申すまでもありませんが、何ゆえ企業がこのように湯水のごとく自民党に献金できるのでしょうか。それは、現在の法人税法三十七条の寄付金控除のワクが大き過ぎることにあります。  現行では、資本金の〇・二五%プラス所得の二・五%、これを合計したものの半分まで企業の損金に落とせることになっています。これでいきますと、自民党の献金御三家といわれます鉄鋼、電力、東京銀行協会のうち、東京電力を例にとりますれば、何と十億円まで寄付、献金が可能ということであります。四十八年に電気事業連合会が献金した額は四億円でありますから、いまの寄付金控除のワクがいかに大きな額であるか明瞭であります。  この寄付金控除のワクを狭め、えりを正す決意があるかどうか、現下の経済情勢を踏まえ、総理みずからが献金の辞退を天下に声明する決意はないか、田中首相にお伺いをしたいと思います。(拍手)  以上、私は、現下の悪性インフレを克服するために、法人税租税特別措置法がなし得る役割り、やらねばならない役目について、具体的に提案をいたしてまいりました。せめてこれぐらいは決断をし、実行することが、国民に対して数々の大罪を犯してきた田中内閣の罪滅ぼしの一つであると思いますが、このことを確信をし、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇
  25. 田中角榮

    内閣総理大臣(田中角榮君) 佐藤観樹君にお答えをいたします。  まず第一に、法人税率につきましてでございますが、法人税率につきましては、昭和二十七年に引き上げられて後は、昭和四十五年に暫定措置として一・七五%引き上げ、三六・七五となったわけでございます。ここまでは一貫して引き下げの方向で推移をしてまいったわけでございます。これは、わが国企業の体質を改善、強化し、国際競争力をつけるためにとられた措置であり、民間企業活動を軸としたその後の急速な経済成長と、これに伴う国民生活の向上を実現させる大きなささえとなったものと考えておるのであります。今回、法人税率を四〇%に引き上げることといたしましたが、この結果、地方税込みの実効税率はほぼ五〇%に達し、主要諸外国の水準ともバランスのとれたものとなるわけでございます。法人税負担のあるべき水準としては妥当なものだと考えております。  第二は、超過利得税課税に対する政府の方針についての御発言でございますが、この問題につきましては、このほど野党各党の案が発表をせられておることは承知いたしております。政府与党たる自民党の案も、近く本ぎまりになると思うわけでございます。各党案の間にはなおかなりの相違がございますが、今後与野党間で精力的に意見調整が行なわれることを切に期待いたしておるわけであります。  所得政策について申し上げますが、政府は、現下のきわめて深刻な物価情勢に対処するため、総需要抑制策の厳格な実施、国民生活安定緊急措置法の弾力的運用など、最大限の政策努力を傾けておるところであります。  いわゆる所得政策につきましては、わが国においては、その実施について国民的コンセンサスが必ずしも形成されておりませんので、慎重に考えるべきものと存じております。しかしながら、今後、経済の実勢を無視した高率の賃金上昇が続くならば、物価上昇や失業の増大などを招くおそれも強いのであります。したがいまして、労使双方におきましても、いたずらな便乗値上げや賃金の過度の引き上げは、国民生活を脅かし、経済社会の基盤を危うくすることであることを十分認識して、節度ある行動をとられるよう望むものであります。  次は、法人の所有する土地についての臨時再評価税の御提案でございますが、法人の現に所有するあらゆる土地について強制的に再評価をさせ、その評価益に課税をするということになると、最近において投機目的のために取得をした土地には税負担が相対的に低く、古くから保有し、本来の事業の用に供しておる土地ほど税負担が重くなる等、種々困難な問題が起こるわけでございまして、現在、御提案のような政策をとることは考えておりません。  次は、寄付金に対する課税強化のため、損金算入額を圧縮せよとの御提言でございますが、間々申しておりますとおり、法人支出をする一般の寄付金につきましての損金算入限度は、法人が事業を営んでいく上には、ある程度の寄付を行なうことも必要であるとの見地に立って認められておるものであり、これを引き下げることは考えておりません。  政治資金の明朗化につきましては、本会議でも申し述べておりますとおり、選挙制度その他と関連がございますので、一括検討しておるわけでございます。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇
  26. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 法人税率を四二%まで引き上げよということにつきましては、総理からいまお答えがありましたので、省略いたします。  配当軽課制を廃止すべしという御議論でございますが、こういう意見を出す人が多数おることは、私も承知しております。ただ、この制度は三十六年に導入されたということでありますが、その際に、支払い段階の軽課、受け取り段階の重課というものが両々相見合っての制度であるという趣旨から見ましても、いま、受け取り配当の益金不算入制度や、あるいは配当控除制度、そういう法人税のほんとうの根幹になる諸制度と密接不可分の関係にあるわけであります。  御意見のような配当軽課制度を廃止するということは、これは法人税制全体の見直しということになるわけであります。そういうことでありますので、これは今後私どもも税制調査会に依頼いたしまして専門的な研究をいたしたい、かように考えております。  法人会員の受け取り配当は全額益金に算入すべし、かような御所見でございますが、これも同様の問題であります。そういう御意見をずいぶん私は承知しております。しかし、法人の受け取り配当の益金不算入をやめまして、益金算入とするというようなことになれば、同一の配当原資に二重、三重に課税するというようなことにもなり、これもまた、配当軽課問題と同様に、税制調査会に専門的な研究を依頼したい、かような考えでございます。  ただいま佐藤議員から、社会党提案法人臨時付加税法案についてお話がありましたが、私もこれは承知いたしております。この社会党提案には二つの内容がある。つまり、法人税に累進体系の導入という問題、また、超過利潤に対しまして付加税方式をとる、こういうことでございます。累進税の適当でないことはしばしば申し上げておるのでありますので、ここで申し上げませんが、付加税制方式につきましては、私は、国民感情を端的に表現しておらぬ、こういううらみがあるというふうには思いますけれども、ただいま御指摘のように、これは非常に簡素な税制になるという点につきましては、私は魅力を感ずる次第でございます。  ただ、しかし、この問題は、いま御指摘のように、超過利潤をどういうふうに規定するかというような問題、また超過利潤税あるいは付加法人税にいたしましても、そういう制度を採用した場合に、これが法人経理に及ぼす影響、特に私は消費を奨励するという結果になりはしないかということをおそれておるのでございますが、私の感情といたしましては、何とかこういう際に不当の利益を得た法人に対しまして重課しなければならぬというふうに考えておるのです。しかし、具体的な案になりますと、いろいろ考えておりますが、一利一短がありまして、まだ、責任を持って皆さんに御審議をお願いする、また、その一長一短の短につきまして、ここで皆さんにお答えするだけの自信がつきません。そこで各党にも御依頼を申し上げまして、知恵を拝借するということにいたしておるわけでございます。  また、佐藤議員は、私が前回大蔵大臣をしておりましたときに創設いたしました土地税制につきましての御批判でありましたが、この制度は、負担の公正という見地から見ますと、確かに、お話しのとおり、問題のある考え方でございます。しかし、土地を所有している人がそれを放出しやすくする、また、小口売りを防止するというような見地から見ますと、私は、この制度はかなりの効果をあげてきた、こういうふうに考えておるのでありますが、本年度の、つまり四十九年度税制改正にあたりましても、税制調査会のほうで慎重にこれを審議してくれたのです。しかし、結論といたしましては明快な結論であります。これは負担の公正に欠くるところがあるけれども、この際これを廃止すべき理由はない、かようなことであります。いずれにいたしましても、これは五十年度までの制度であります。したがいまして、いまからよく検討いたしまして、五十年の期限の終了後の土地税制をどうするか、これは次の通常国会において御審議をわずらわしたい、かように考えております。  各種の準備金、引当金は低くすべきではないかというお話でございます。また、価格変動準備金も廃止すべし、こういうような御所見でございますが、この各種の準備金、引当金は、将来の特定の損失または支出に対して認められておるものでありまして、創設当時の目的が達成されればこれはもう廃止するのは当然である。また、積み立て率が過大であるというような現象ができてくるというようなことでありますれば、これを修正する、これは当然でありまして、そのような努力をいたしてまいっております。また、価格変動準備金につきましては、これは今日の物価情勢に対しまして見直しを行なう、そういうふうに考えておる次第でございます。  また、海外投資損失準備金を縮小せよというようなお話でございますが、この問題も、御指摘のように国際収支のさま変わりになった今日の状態におきましては、当然、御所見のような考え方が出てくるわけでございます。この問題につきましては、まず、不動産投資をするというような、そういうようなものが行なわれないように、これは為替政策見地から十分まず配慮しなければならぬ問題でございますけれども、その為替政策の運用でこの問題がすくい切れないという際におきましては、これは再検討を要する問題である、かように考えております。  次に、交際費課税を強化せよというお話でございますが、お話しのとおり強化することにいたしております。ただ、私どもが御審議をわずらわしておる案に比べますと、社会党の御提案は非常にきつくなっておるようでございますが、私どもは、今回の提案程度が妥当なところではあるまいか、さように考えておるのであります。  また、政治資金等の寄付金の課税を強化せよとの御所見でございます。まあ寄付金につきましては、いま佐藤議員が触れられましたような制度になっておるわけでありますが、これは、法人も社会的な存在であり、寄付行為等もあるわけでありますので、これをただいま制度改正をする考え方は持っておりませんです。(拍手)     —————————————
  27. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 平田藤吉君。   〔平田藤吉君登壇
  28. 平田藤吉

    ○平田藤吉君 私は、日本共産党革新共同を代表して、ただいま議題となりました租税三法の各改正案につき、総理並びに各関係閣僚に質問いたします。  今日、大企業が異常なインフレ物価高をつくり出し、石油危機を悪用して、売り惜しみ、買い占め、便乗値上げによって膨大な超過利得を得ていることは、いまや具体的事実によって国民の前に明らかとなり、強い憤激を巻き起こしているのであります。  しかるに、自民党・田中内閣は、この大企業の横暴を押えて、国民の生活を守る手だてをとらないばかりか、かえって大企業に多額の特別償却や貸倒引当金をはじめ、さまざまな特権的減免措置により、これを助けており、国民の怒りと批判は田中内閣に集中しているのであります。  このような重大なときに、政府が何よりも先になすべきことは、膨大な超過利得を得ている大企業を規制し、投機と過度の設備投資に回るおそれのある超過利得を、臨時措置法など適切な緊急立法によって吐き出させること、物価の真の安定をはかることとともに、税制面では、課税最低限引き上げ、生活必需品にかけている間接税の引き下げなどを行ない、これを国民生活に回すなど、具体的で緊急な対策を直ちに実行することであります。  しかるに、田中内閣と自民党は、恥知らずな大企業の悪徳商法を野放しにして、ぼろもうけをしている大企業を弁護し続け、他方では、便乗値上げによる膨大な超過利得の中から、従来の二倍から五倍をこえる政治献金を得ようとさえしておるのであります。  田中総理は、本会議や予算委員会において、再三にわたり、国民のためにこそある政治は、いまこそ、過去の行きがかりにこだわることなく、反省すべきは率直に反省し、改めるべきは謙虚に改めるなど、思い切った発想の転換と、強力な対策を推進してまいります、などと言ってきました。もしこの発言が偽りでないというのなら、このような大企業べったりの政治姿勢を直ちに根本的に改めて、大企業の横暴を押えるため、超過利得の吸収や大企業本位の特権的減免税の改廃、並びに所得税における人的控除の大幅引き上げをはじめ、真の大衆減税など、具体的施策を直ちに実行することを国民の前に明らかにすべきであると考えるのであります。(拍手)  そこで、私は、まず第一に、国民が強く要求している大企業に対する課税の強化について、総理並びに大蔵大臣に質問いたします。  大企業が悪徳商法によりばく大な超過利得を得ていることは、田中総理みずからも認めているところであります。石油、石油化学製品をはじめ洗剤など、基幹産業から生活関連産業に至るまで、大企業が、石油危機を口実にした便乗値上げによって、隠しても隠しきれないほどの荒かせぎをしていることは、すでに発表された三菱油化などの十二月決算や、新日本製鉄などの三月決算見通しによっても明白なところであります。この不当な超過利得に重い税金をかけてこれを吐き出させることは、国民の圧倒的な世論であります。それでもなお政府は、技術的に困難であるなどという、いろいろな口実を設けて超過利得税を創設しようとせず、国民の世論に背を向けているのであります。  わが党は、すでに二月十二日、大企業租税回避行為をきびしく禁止するなど、真に実効のある独自の案を発表し、院内各党にその検討を要請しているのであります。もし政府が真剣に大企業の超過利得の吸収を考えるならば、わが党が主張するように、資本金十億円以上か法人所得五億円以上の大企業で、昭和四十六、四十七年の各半期の所得を基準にして三割をこえる所得に対して、租税回避行為を禁止して、一〇%から三〇%の累進課税をすべきであります。  その後発表された、また、いまうわさされている自民党案は、大企業の利益隠しを放任し、中小企業にきびしく、大企業ほど有利となるもので、文字どおりざる法といわねばなりません。  また、大企業は、昭和四十五年以降四十八年までの四年間に、土地や有価証券を買い占め、日本銀行の調査によっても、資本金十億円以上の大企業は、八兆円をこえる土地と有価証券資金をふやしているのであります。これが今日のインフレと投機の元凶であり、過剰流動性の実態であることは明白であります。  大企業のほうは野放しにしている政府のいう総需要抑制政策では、今日の異常なインフレを押えることはできず、しかも地方自治体財政や中小企業は極度の金融逼迫によって危機に直面しており、他方、資本金十億円以上の大企業は、膨大な土地、有価証券をほしいままに保有しているのであります。この実態を見るとき、大企業の保有資産に対し、本年一年に限り一〇%の臨時資産税を課するのは当然であります。これによって、悪の根源である大企業の過剰流動性を吸収し、その資金を金融引き締めに苦しむ地方自治体や中小企業に回すことこそ、真に国民の要望にこたえる道であります。(拍手)  総理並びに大蔵大臣は、このような国民の期待と要求に真にこたえるべきであると思うが、どうか、明確な答弁を求めるものであります。  さらに、今日の大企業の膨大な利益と横暴を生み出したおもな原因は、世界にもまれに見る低い法人比例税率と各種積立金、準備金、特別償却などのいわゆる租税特別諸措置であります。  政府は、今回、中小企業を除く法人税税率配当課税率のわずかな引き上げをしましたが、大企業は、すでに述べたように、異常な超過利得と内部留保の積み増しを重ねており、政府措置は、法人課税の強化などとはとうてい言えないものであります。  いまこそ、わが党が年来主張してきたように、大企業に対する法人税率にも高度累進税率を適用し、当面、資本金十億円以上の大企業には税率を四三%まで引き上げるとともに、配当軽課や受け取り配当の益金不算入の措置は撤廃すべきであります。(拍手)また、大企業の膨大な額にのぼっている交際費、寄付金、広告費に対する課税を強化すること、利潤を公然と費用化して企業内部に留保し、大企業を大いに肥え太らせている各種準備金、引当金、特別償却などの大企業向けの租税特別措置を直ちにやめることは、投機資金を吸収し、今日の異常な物価の暴騰を押えるきわめて有効な対策であります。(拍手)  総理並びに大蔵大臣の明確な答弁を求めるものであります。  第二に、私は、自動車関係税の引き上げについて質問いたします。  言うまでもなく、自動車重量税揮発油税など自動車関係税は、第七次道路整備五カ年計画に要する十九兆八千億円の主要な財源となるものであります。そして、この道路整備五カ年計画は、新全総、経済社会基本計画など、自民党政府の超高度成長政策を推進するものであります。このような産業基盤整備に名をかりた超高度経済成長政策こそ、今日の悪質なインフレと物不足による経済危機によって国民を塗炭の苦しみにおとしいれた元凶であり、全国に自動車幹線道路を張りめぐらし、土地投機とモータリゼーションを促進して、自動車事故と光化学スモッグなどの公害を生み出した真犯人ではありませんか。しかも、自動車関係税の引き上げは、事業のために自動車を使用しなくては営業のできない中小零細企業に大きな負担となるのであります。  政府がこれまでの高度経済成長政策の誤りを認めるのならば、この第七次道路整備五カ年計画をいまこそ再検討すべきであって、これを促進するための財源確保をはかる必要は全くないといわなければなりません。(拍手)  私は、第七次道路整備五カ年計画を再検討し、産業基盤優先ではなくて、国民生活優先の道路整備に必要な範囲にその事業規模と内容を縮小し、自動車関係税の引き上げは撤回すべきであると考えるが、総理大蔵並びに建設各大臣はどう考えているか、明確な答弁をお願いいたします。(拍手)  第三に、私は、働く国民のための減税のあり方について、政府の所信をただしたいと考えます。  今日の異常なインフレのもとで、便乗値上げによる超過利得、土地や株をはじめとする商品投機によって大企業や大資産家は巨額の富を得る一方で、勤勉な国民はかつてない生活の危機に直面しています。このような時期にこそ、わが党が主張しているように、国民には大幅減税を実行し、大企業には正しく課税して国民のために使うという立場に立たなければならないのであります。ところが、政府の今回の減税案は、人的控除を若干引き上げただけで、あとは経費の概算控除である給与所得控除を無制限にふくらませ、しかも給与所得控除の上限を取り払い、税率年収三千万円までの高額所得者により有利な、文字どおりの重役減税になっているのであります。  ところが、勤労者のほうは、現在年収百五十万円の人が春闘で三〇%の賃上げが行なわれて百九十五万円となったとしても、所得税は千五百二十二円の減税にすぎず、しかも地方税は減税幅が小さいため、逆に四千八百九十八円以上の増税となるのであります。独身者の場合も、現在収入七十万円の人が三〇%収入がふえると、逆に一カ月二百五十円の増税になるのであります。これをどうして画期的な減税の実施などといえるのでありましょうか。いま、働く国民にとって必要なことは、基礎控除配偶者控除扶養控除など人的控除の大幅引き上げを中心に、夫婦と子供二人の四人家族年収二百万円まで課税最低限引き上げ、農民、中小企業者など、働く国民にとって真の大衆減税を実現するとともに、住民税も均等割をなくし、所得税減税に見合って大幅に課税最低限引き上げることであります。また、今日のインフレのもとで経営に苦しむ中小企業法人については、現行法人税率を五%引き下げるべきであります。  さらに、以上のような来年度減税施策とあわせて、本年度年度減税を実行すべきであります。大蔵省が昨年七月に発表した昭和四十七年度一般会計剰余金調べによっても、税収は当初見込み額を六千四百億円以上も超過していたことは明らかであって、これは当然年度減税によって国民に返還すべきであります。政府は、わが党はじめ野党四党が共同提案しているように、一律三万円の戻し税を実施すべきであります。  総理大蔵大臣並びに自治大臣の明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇
  29. 田中角榮

    内閣総理大臣(田中角榮君) 平田藤吉君にお答えいたします。  まず第一は、超過利得税法案についてでございますが、この問題につきましては、このほど野党各党の案が発表せられておることは、先ほど申し上げたとおりでございます。自民党の案も近く本ぎまりになると存じておるのでございます。これを議員立法にするか、あるいは政府提案とするかというような問題を考える前に、まずその内容をどうすればよいかについて、与野党間で精力的に意見調整が行なわれることを期待いたしておるのであります。  次は、所得税につきましては、標準世帯年収二百万円まで課税最低限引き上げよということでございますが、来年度所得税減税におきましては、特に給与所得者負担軽減を中心に行なうことといたしております。その結果、夫婦子二人の給与所得者課税最低限は、現行百十五万円から百七十万円と、大幅に引き上げられることになるわけでございます。このような引き上げは、従来の課税最低限引き上げのテンポと比べても、まさに画期的な引き上げであると確信をいたしておるのでございます。  なお、住民税課税最低限につきましても、標準世帯で八十六万円から百一万円に引き上げることになっておることは御承知のとおりでございます。  ちなみに、課税最低限につきまして、諸外国の例を見ますと、イギリスは七十九万二千円、西ドイツは八十七万六千円、フランスは百二十六万二千円、最も高いアメリカでも百二十九万円となっておりますので、御参考まで、念のため申し添えておきたいと存じます。  次は、年度内に所得税減税を実施せよということでございますが、現在の経済情勢のもとにおいては、政府は財政金融政策の総力をあげて物価の安定につとめておるところでございまして、所得税年度減税を行なうことは考えておりません。  残余の問題につきましては、関係大臣から答弁をいたします。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇
  30. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 平田さんにお答え申し上げます。  まず、法人税につきまして、いろいろな御所見でございます。  第一は、法人税率を四三%に引き上げろ、こういうお話でございますが、これは先ほど申し上げましたとおり、実効税率において五〇%ということをねらいといたしまして、今回、法人税率を四〇%に引き上げることにいたしております。  また、配当軽課制を撤廃すべしというお話でございますが、これは先ほど佐藤議員にもお答え申し上げましたが、法人税の根幹に関する問題でありますので、いまここで撤廃することはできません。しかし、これは法人税の体系のあり方という意味におきまして、これから税制調査会で専門的に御検討をわずらわしたい、かように考えております。  また、第三には、大企業法人税に累進税率を取り入れろというお話でございます。これも先ほどお答え申し上げたとおりでございますが、法人は、個人と違いまして、その態様が千差万別であります。これに一律の税率を適用するという以外に、公平な課税方式というものは考えられません。  それから、大企業優遇の特別措置をやめろ、こういうお話でございますが、この特別措置は、大企業でありますとか、中小企業でありますとか、そういう区別はないのです。ひとしくこれは適用される。ただ、これは特殊の政策目的がありまして創設したものでありまするけれども、その目的を終わったというようなものにつきましては、逐次これを廃止するなどの整理をいたしておる次第でございます。  また、大企業の保有資産に対しまして臨時資産税を創設すべしというお話でございますが、これは非常に簡単なお話で、いかなる資産にどういう課税をするのか明らかでございませんから、的確なお答えはいたしませんが、しかし、一律に資産に課税をするということはまたかえって不公平を招く面も大きいということは、御了承おき願いたいのであります。  次に、自動車重量税等の自動車関係の増税は、道路計画の財源となっておるが、この税制改正を取りやめ、また、道路整備五カ年計画を再検討せよ、こういうお話でございますが、今回、自動車重量税等自動車関係で税率引き上げを行ないましたのは、もとよりこれは道路財源でもありまするけれども、しかし、同時に、資材の節約、消費抑制、こういう趣旨もあるのでありまして、二年間の暫定措置としておるのであります。その二年間の暫定期限が終わったあとにおきまして、一体、道路計画をどうするか、また、この税をどうするかという点につきましては、とにかく非常に経済の変動の際でありますので、それらの成り行きがどういうふうになっていくかということを見た上、きめていくべき問題である、かように考えております。  また、中小企業に対する法人税率を引き下げろというような所論でございますが、私どもも、中小企業につきましては、税制上特別の配慮をしなければならぬ、こういうことにつきましては、さように考えておりますが、特に今回の税制改正におきましては、一般の法人につきまして税率引き上げを行ないまするけれども、特に中小企業につきましては、その税率を据え置く、また、その適用範囲につきましても、三百万円を六百万円まで引き上げる、平年度におきましては七百万円までにするという配慮をいたしておるわけであります。  四十八年度で自然増収が六千四百億円ある、年度減税をせよというお話でございますが、昭和四十八年度におきましては一兆五千億円の自然増収があるのであります。そのうち、所得税が五千五百五十億円でございますが、これは先般の補正予算におきまして補正歳出の財源とし、残りは公債の発行額の減少に充当した、かように御了承願います。(拍手)   〔国務大臣町村金五君登壇
  31. 町村金五

    ○国務大臣(町村金五君) 住民税の均等割を廃止すべきであるとの御提案でありますが、住民税は、地域社会の費用を住民が広く分任するという性格のものでありますので、これを廃止するということは適当ではなく、今後ともこの均等割の制度は維持すべきものであると考えております。  住民税課税最低限につきましては、住民負担軽減をはかるために、その引き上げをはかることが必要であると考えており、明年度におきましても、標準世帯最低限を百一万円に引き上げることにいたしております。今後とも引き続きその引き上げを検討し、住民負担軽減をはかりまするようにつとめてまいりたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣亀岡高夫君登壇
  32. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 第七次道路整備五カ年計画は、国民生活の向上と国土の均衡ある発展をはかることによって、豊かな人間生活環境の実現を目ざして、昨年の六月に閣議決定を見たものでございます。  すなわち、国土構造の骨格を形成する高速自動車国道から、日常生活の基盤としての市町村道に至るまでの道路網を、環境保全に配慮しながら計画的に整備することによって、国土の普遍的な利用、生活環境の改善、交通混雑の緩和をはかること等を目標として計画されたものでありまするし、また、北海道、東北、北陸、九州、四国等を私、回ってみますると、その地帯の住民の諸君から熾烈なる道路整備に対する要望のある現在、道路計画の縮小は考えてはおりません。むしろ積極的に生活関連道路の整備に力を尽くしてまいるということで昭和四十九年度の予算編成もいたしておることを申し添えます。  終わります。(拍手)     —————————————
  33. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 田中昭二君。   〔田中昭二登壇
  34. 田中昭二

    田中昭二君 私は、公明党を代表しまして、ただいま提案になっております所得税法法人税法租税特別措置法のいわゆる税三法の一部改正案に対し、若干の質問をいたすものでございます。(拍手)  まず、税三法の質問に入る前に、私は、大企業の超過利得に対する課税について伺っておきたいのであります。  現在の異常ともいえる諸物価の高騰は、政府・自民党のこれまでとってきました高度成長、生産第一主義路線によるものであり、その直接の原因が、大企業の石油危機の誇大宣伝と、それに便乗した先取り値上げ、さらに買い占め、売り惜しみ、出荷操作によってより一そうの拍車がかけられてきた事実は、だれもが認めるところでございます。  生活必需品の物不足現象にしましても、わが党の洗剤総点検等によって明らかになりましたように、価格のつり上げをねらった業界の操作による、つくられた物不足等でございます。国民の苦悩をよそに、国民生活を犠牲にしてまで企業利潤を追求するこのような行動は、断じて許すことはできません。(拍手)  そういう意味で、このつくられた便乗先取り値上げによってもたらされた超過利得を吸収する税の創設は、当面、国民の緊急要請ともいうべきものでございます。社会正義、経済公正を貫くためにも、何とか実現しなければならないのであります。しかるに、政府はこの法案作成への熱意があまりにも希薄であることは、きわめて遺憾であります。(拍手)ここで、国民生活無視の企業行動並びにその超過利得に対する政府の対策を伺いたい。  さらに、大法人の中には、ばく大なる利益をあげながら、現行租税特別措置を利用して利益隠匿の動きがあることは、言語道断ともいうべきでありましょう。それでなくても、特別償却、引当金、準備金などによって利益を過小に計上する行為が横行している現状からいっても、何らかの措置をはかるべきであると思うのでありますが、租税回避行為を未然に防止するための措置を考えておられるのかどうか、政府の御決意を伺いたい。  さて、現行税制が、有資産者や大法人の利益を確保し、資本の蓄積をはかることに重点が置かれている反面、サラリーマン、中小企業者などの勤労所得から税収を多く得ようとするなど、税負担公平の原則を大きく踏みにじる課税構造になっていることは、国民の周知のことであります。しかも、毎年所得税減税が行なわれているとはいうものの、その規模はきわめて小さく、相次ぐ異常ともいえる物価高騰によって相殺されてしまい、国民の重税感はいよいよ深刻になっているのであります。  そういう意味で、昭和四十九年度税制改正に要請される最大の課題が、国民税負担を現実に軽減すると同時に、負担の公平を実現し、国民生活、福祉最優先の税制を確立することでありますが、福祉型税制への転換をはかる上で、これら国民的要請にこたえる望ましい税体系のあり方についてどうお考えなのか、お伺いしたい。(拍手)  次に、政府は、今回の所得税減税で二兆円もの大幅減税をしたと言っておりますが、来年度年収二百四十万円の標準世常のサラリーマンの場合、一万四千円余りの減税になるにすぎないのであります。しかも、来年度は、米価、国鉄運賃、医療費、バス等公共料金の引き上げが予定されております。政府主導のインフレ、高物価によって、今回の減税が全くの焼け石に水ともなりかねないのであります。  さらに指摘しなければならないことは、今回の所得税減税において、従来の、上に厚く下に薄い減税、すなわち、年間所得三千万円前後の高額所得者にまで累進税率を緩和し、さらに給与所得控除の上限をなくし、年収六百万円をこす高額所得者層に一挙に一〇%を控除するというような重役減税、金持ち減税がまかり通ってしまったことは、きわめて遺憾であります。  そこでお伺いしたいことは、この上に厚く下に薄い型の減税を改めて、真に国民生活、福祉最優先の税制に抜本的に改めるつもりはないかどうかということであります。(拍手)さらに、わが党がかねてからの主張であります、夫婦子二人の四人世帯で年間二百二十万円以上に課税最低限引き上げるべきであると思うのでありますが、いかがでありましょうか。  同時に、ここで指摘しなければならないことは、政府の税収に対する過小見積もりについてであります。つまり、政府は予算編成にあたり、歳出に見合う税収等を確保し、当年分の自然増収相当部分減税に回すといっておるのでありますが、その減税が自然増収の調整にすぎないばかりか、自然増収自体の見積もりが過小なのであります。  すなわち、昭和四十八年分所得税では、現行法により四兆五千六百十億円の税収、改正による減税額は三千百九十一億円、差し引き、歳入予算額が四兆二千四百十九億円としてありますが、現実は、納税者の収入増等によりまして、税収は、昭和四十八年十二月末で二兆八千七百三十三億円と、好成績であります。前年同期の割合から見てみましても、年度末収入は約五兆円ぐらいになるのであります。そうすると、年度末には当初予算より約七千六百億円の増収となるのであります。この増収分を減税に充てれば、大幅な所得税減税が可能となるのであります。(拍手)  このような事例は、ここ十数年続けられております。この過去の実績から見ても、政府は、いまの見せかけ減税、数字のまやかしはやめて、直ちに国民の要望にこたえるべきであります。(拍手)  そこでお伺いしたいことは、今回の自然増収見積もりが過小ではないかということであり、また、この自然増収という観点からも、大幅所得税減税が可能ではないかということであります。  次に、法人税法の一部改正案でありますが、わが国経済は、高福祉社会実現のために、今日ほど、民間設備投資主導の成長から、生活環境資本や社会保障充実のための財政主導の経済へ転換を急がねばならないときはありません。  ところが、政府は、口では経済政策の転換を言いながら、円切り上げのときと同様に、石油問題の発生で極度な不況の前宣伝をし、法人税増徴についても中途はんぱな改正に終わってしまったのであります。すなわち、基本税率は四〇%にとどまり、配当分に対しては、当初の三〇%から大幅に後退し、二八%にとどまってしまったのであります。この程度引き上げでは不十分といわなければなりません。したがって、この際、わが党の主張するように、基本税率を四二%以上に引き上げ配当分については優遇措置をやめるお考えはないかどうか、伺いたいのでございます。  一方、中小法人、なかんずく年所得三百万円以下の法人については、国際競争力も十分でなく、資源危機の影響をもろに受け、中小企業の倒産は深刻な社会問題を引き起こしかねない現状であります。  また、わが国の法人企業実態から見ると、大法人中小法人に分けて、それぞれ利益が五〇%ずつであるのに、納税は大企業が約四〇%である反面、中小法人は六〇%以上を占めており、中小法人がよけいに納税させられているのであります。  そういう意味で、わが国の法人税の二段階税率実態にそぐわない面が強く、この際、これを改め、実態に合った多段階税率による累進課税を採用し、中小法人税率引き下げるべきであると思うが、どうか。(拍手)  最後に、租税特別措置法の一部改正についてであります。  わが国経済の高度成長が、大企業保護の租税特別措置によってはかられ、反面、企業給与所得者、大企業中小企業の間に大きな格差をもたらしたことは、周知のとおりであります。  わが党は、かねてより現行税制の不合理の根源である租税特別措置の徹底的な洗い直しを主張してまいりましたが、今回それが一向に改められていないことは、非常に残念でなりません。これは政府経済政策の転換がまやかしにすぎないことを実証するものと言えましょう。  大企業のみが将来の不確定経費の積み立てによる税の恩典を受けている価格変動準備金、あるいは株式売買損失準備金など、各種準備金制度は、冒頭に申し述べましたように、利益隠匿の手段に悪用されているといわなければなりません。そこで、この積み立て率などを実態に合わせて引き下げるべきであると思うのでありますが、いかがでございましょうか。(拍手)  また、利子配当の特例につきましても、昭和四十九年度改正政府案で、夫婦子二人の四人世帯で課税最低限を比較してみますと、勤労所得者の場合は百五十万円に対し、配当所得者では三百五十七万円で、その差は二百七万円も拡大したのでございます。このように、額に汗して働く勤労者に重税を課し、働かずして所得を得る配当所得者に税の優遇措置を残すということは、さらに不公平を助長することでありまして、絶対に許すことのできないことでございます。(拍手)  その他、批判の多い医師優遇の特例、そのほか産業優遇の特例についても、さらに延長あるいは手つかずに見送られたことは、政府の税改正への姿勢を疑わざるを得ません。  最後に、会計検査院の指摘によりますと、昭和四十七年分の税徴収不足が約十億円、推計で約二十五億円もあります。反面、法律に違反しての税の取り過ぎが三千五百万円、推計で約九千万円もあります。この事実、件数、金額とも年々増加の一途をたどっておるのでございます。さらには、大企業の脱税が横行し、その捕捉はきわめて困難であり、たまたま摘発されるのは、その氷山の一角にすぎないのであります。  このような事実は、まじめな納税者から見れば許すべからざることでございます。政府は、正直者がばかをみないような税制改正をその政府の責任においてなすべきことを申し述べておきたいのでございます。  以上、具体的な誠意のある答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇
  35. 田中角榮

    内閣総理大臣(田中角榮君) 田中昭二君にお答えをいたします。  企業の超過利得の吸収のための措置につきましては、政府も早急に成案を得たい考えでせっかく検討を続けておる次第でございます。しかし、与野党の間でもこれが立法化につきまして努力が傾けられておることも事実でございます。野党各党案はすでに公にされております。政府与党たる自由民主党におきましても鋭意作業を進めておるのであります。私は、この種案件について、国民の期待にこたえて、与野党間に意見の調整が行なわれることを心から期待をいたしておるのであります。  なお、税法改正案中、各項にわたっての御指摘、御質問につきましては、大蔵大臣及び関係閣僚からお答えをいたします。   〔国務大臣福田赳夫君登壇
  36. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まず、望ましき税体系はどういうことと考えるかというお話でございますが、いま、わが国の経済が毎年毎年こう伸びていく。そういうことに伴いまして、税制をほうっておきますると、どうしても直接税偏重の税制ということになってくるのであります。これは間接税の適当なくふうによりまして直接税の減税を補っていかなければならぬ関係にある、かように見ておるのであります。直接税の減税にあたりましては、物価との関係、この調整はぜひやらなければならぬ問題であります。同時に、何年かに一回ぐらいは税率調整ということも考えなければならぬ、さように考えております。そうして直接税、間接税、それがつり合いのとれた形であるということ、これが私は税体系として望ましき姿である、かように考えておるのであります。  なお、所得税につきましていろいろの御所見があるわけでありますが、所得税をこの際抜本的に改正せよ、こういう御所見でありますが、私は私なりの立場において抜本的な改正を御提案いたしておるつもりでございます。  今回の税制改正におきましては、特に勤労者を中心とした課税軽減に重きを置きまして、大幅な最低限の引き上げと相なるような画期的な税制改正案を御提案申し上げております。今日のわが国の財政の状態から見まして、とにかく百七十万円まで最低限を引き上げる、これは、わが国の経済力、財政力からすればもう精一ぱいのことじゃないかと思います。これをさらに二百二十万円まで引き上げろという御議論に対しましては、賛同することができません。  なお、租税全体といたしまして見積もりが過小じゃないかというお話でございますが、私どもはそうは考えておりませんです。昭和四十九年度経済見通しに即しまして的確に見積もっておるのが、御審議をいただいておるところの予算案でございます。  次に、法人税についてでございますが、まず、税率を四二%とせよというお話でございますが、私どもは、四二%でなく四〇%といたしております。その結果、法人の実効負担率は五〇%、こういうことになりますので、まあ、諸外国の関係等も見まして、つり合いのとれた税制だ、かように考えるのであります。  なお、配当の軽課措置を廃止すべしというお話でございますが、先ほど申し上げましたとおり、この制度を廃止することはできません。これは法人税体系の根幹に触れる問題になるのでありまして——まあ軽課論の御趣旨はわかるところでございます。そういうことも踏まえまして、今後、税制調査会において専門的な検討をお願いしたい、かように考えておる次第でございます。  中小法人税率引き下げよという御議論でございますが、中小法人につきましては、今回一般の法人につきましてはその税率を四〇%まで引き上げるのに対しまして、税率を据え置くことにいたしておるのであります。また、その適用範囲につきましても、今日の三百万円を四十九年度六百万円、五十年度七百万円、かような特別の配慮をいたしておるわけであります。  各種の準備金等につきまして、これを洗い直せというお話でございますが、これは私は田中さんの御所見に同意見でございます。私は、これらの制度は常に実情に即して見直しをしなければならぬというふうに考えておるのであります。今後もこの努力を続けてまいりたい、かように考えておるのであります。  最後に、利子配当の特例を廃止せよとのお話でございますが、この利子配当に対する特例措置は、貯蓄の奨励あるいは個人株主の育成という特殊な見地から創設されたものであります。分離課税を選択することを認めておりますが、税率は、一五%の一般の原則じゃございません、特に二五%といたしておるところに御留意願いたいのであります。しかし、いずれにいたしましても、この制度は五十年度にはその期限が終わるわけであります。したがいまして、これから、その後における措置をどうするかということは検討いたしまして、次の通常国会において御審議をお願い申し上げます。(拍手
  37. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  38. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。    午後三時十六分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 奧野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         郵 政 大 臣 原田  憲君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣 町村 金五君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      茂串  俊君      ————◇—————