○竹入義勝君 私は、公明党を代表し、現下のきわめて悪化した
国民生活の打開と、行き詰まった
日本外交の転換について、
田中総理並びに
関係閣僚に質問をいたします。
現在、
国民の中に充満する
自民党政府に対するふき上がる憤りと不信感、さらに日常生活の先行きの大きな不安の状態に謙虚に心をいたし、責任ある率直な答弁を求めるものであります。(
拍手)
昨年の石油ショック以来の悪性
インフレの激化、
物価の狂騰について、
政府は、いたずらに周章ろうばいするのみで、十分
国民が納得する対策も示さず、危機と節約を訴え、
国民の消費態度に責任を押しつけようといたしてまいりました。
経済界は、口に
企業の社会的責任をもっともらしく唱えながら、生産段階では誇大な減産宣伝を行ない、流通段階においては、
買い占め、
売り惜しみを行なって、生活必需物資の不足と先高機運を盛り上げ、消費者の心理的パニックにつけ込み、続々と便乗先取り
値上げに狂奔をいたしたのであります。
それに対し
政府は、口先の精神的訓辞を述べるだけで、実効ある規制を加えようとしない。
国民は
政府に対し、大
企業と癒着しているとの疑惑を強く持っており、そのような
政府のお説教など信じられないで、
物不足と
物価先高の声に脅かされて、重大な不安におののく毎日の生活を送っているのであります。
総理、あなたは、
日本経済は、
物価騰貴であって、
インフレではないと、繰り返し強弁してこられましたが、事態は悪性
インフレであり、しかも深刻かつ重大な状態になってきているのであります。
わが国の
インフレ、
物価高は、昭和三十六年以来、
消費者物価は、年平均約六%近い、先進国の中で最高の上昇を続けてきたのでありますが、
政府は、
卸売り物価が諸外国に比較して安定しているというだけの理由で、われわれの
物価対策要求を退け、恒常化したこの
インフレ、
物価高を放任し、
国民生活、社会資本の投資をおくらせ、高度経済
成長を至上の政策目標として経済運営を続けてきたのであります。
私は、この間に、
わが国経済の中に基調としての
インフレが根深く定着し、それに海外要因、
過剰流動性、石油問題が複合され、そしていま
消費者物価の暴騰を上回る
卸売り物価の狂騰という、
わが国経済がかつてない
異常事態をもたらしたと指摘をするものであります。
高度経済
成長政策の本質は、総需要の強引な拡大政策であります。
政府は、もっぱら産業基盤整備の公共事業を毎年飛躍的に増大させる一方、民間設備投資あるいは大
企業の輸出に対する過度な優遇策をとり、石油資源をあらゆる部門に組み込ませながら、総需要拡大政策をとってきたのであります。
政府の産業基盤整備に偏重した公共事業政策は、おのずと社会施設、公共サービス部門のおくれを来たし、当然ながら
国鉄運賃、医療、教育にかかわる料金などの上昇を招いたのであります。それに大
企業が生産の拡大の中でつくり上げた市場支配力によって
価格操作され、管理価格、鉄鋼の不況カルテルをはじめカルテルの横行となり、加速度的に
インフレが
深刻化していったのであります。
このような状態を決定的にしたのは、昭和四十六年ニクソン・ショックのとき、
政府は、重大な為替政策の失敗により、六兆円といわれる
過剰流動性を国内にはんらんさせ、さらに、
田中総理の
日本列島改造論で拍車をかけ、さらにまた、事実上の調整
インフレ政策をとり、景気過熱現象が明らかになりながらも、四十八年度予算において、景気刺激超
インフレ大型予算を編成し、しかも金融緩和を放置し、国内景気拡大政策に狂奔したのであります。このことが、
過剰流動性の野放しとなり、大
企業、商社を中心に、土地、生活関連物資の
買い占め投機が横行したことは、いまさら説明する必要がないところであります。
しかも、石油不足が誇大な宣伝であったことは、去る二十一日、大蔵省が、通関実績に基づく
貿易統計で昭和四十八年一年間で二億八千九百六十一万キロリットルに達し、四十七年度に比べて一六・二%も増加していると発表していることからも明らかであります。
したがって、OAPEC石油供給削減宣言に便乗した狂乱といわれる
物価暴騰は、
田中内閣の
インフレ政策と、石油産業の誇大宣伝に対する対応策の無策にその原因があると言っても、決して言い過ぎではないのであります。(
拍手)
もちろん、
政府はそれなりに、総需要の抑制など、しかるべき対策に努力しているのでありましょう。しかし、この石油ショックに始まる
日本経済の危機を、不測の事態と、あたかも天災のごとくとらえようとする今日の
自民党政府の基本姿勢では、問題は解決し得ないのであります。
政府が、今回の事態を突発的な石油供給の削減によってはからずもやってきたとする無反省な姿勢に終始し、台風が通過すればまた再び従来の生産第一、
成長第一の経済姿勢に戻りたい、戻れるような準備だけは残しておこうとして、従来の誤った政策の根本的な転換をなし得ないことこそ、危機を生み出す最大のものではないかと私は言いたいのであります。(
拍手)
この緊急事態を収拾するのは、あくまでも
政府に課せられた重大な責任であります。私は、ここに
総理の真意を確認する意味において、次のことをただしたいのであります。
われわれは、
物価と物の流れについて、買占め売惜しみ防止法、石油需給適正化法、
国民生活安定緊急措置法により、
国民生活を安定させるための強力な行政権限を
政府に与えました。
総理は、これら諸法律を機動的に運用することを言明いたしましたが、その具体的な今後の方策について、確たる
総理の見解を伺いたい。それによって必ず
物価を下げることを確約すべきであり、もしそれが実現しないときは
政治責任を当然とるべきでありますが、この点はいかがでありましょう。(
拍手)
これには、
物価は必ず下がると言っておられる
福田大蔵大臣もあわせて御答弁を願いたい。
第二点は、わが党は、最近、極端に品不足の洗剤について、東京都内の実態を調査いたしました。その結果は、流通段階における
買い占め貯蔵が行なわれていることが明らかとなり、そのことが摘発されました。
自民党大会における
総理の決意からいうならば、立ち入り
調査権限を持つ
政府は、当然、
国民の強い要望にこたえ、このような調査をすべきであり、また、その実態を
国民の前に公表すべきであると思いますが、その意思がおありかどうか、お答えをいただきたいと思います。(
拍手)
第三点は、かねてからわが党が主張し要求している国会の
物価対策についての調査機能を強化するため、
物価特別委員会並びに関係調査室を大幅に拡充することが緊急に必要でありますが、
総理は
自民党総裁としてどのように考えておられるか、御答弁を願いたい。
第四点として、独禁法の強化のための改正、公正取引
委員会の拡充強化について、
総理はどのような見解と決意をお持ちか、伺いたいのであります。
第五点として、
国民生活の窮迫の中にあって、利益を不当に拡大した
企業に対し、不当な利益を臨時利得税で吸収すべきであると思いますが、この際、重ねて質問をいたしたいと思うわけでございます。
第六点、昭和四十九年度
予算案が、総
需要抑制型であり、
短期決戦型であるというからには、
列島改造計画のたな上げを
国民の前に宣言し、さらに、昭和四十八年度予算中繰り延べた公共事業費の再繰り延べあるいはたな上げを決意しておられるかどうか、明確に御答弁を願いたいと思います。
第七点、公定歩合の引き上げ、預金準備率の引き上げなど
金融引き締めは、この
インフレが終息するまで続行すべきであると思いますが、この点のお答えをいただきたいと思います。この場合、
中小零細業者に対しては、別途の金融措置を講ずべきであると思いますが、この点もあわせてお答えをいただきたいと思うわけでございます。
第八点として、
政府は総
需要抑制の施策として、
国民の貯蓄誘導策を積極的に推進しておられますが、その結果集められた預貯金をどのように運用しようとされておられるのか。また、すでに過去十年間において半減した預貯金の価値を見るとき、預貯金利率を大幅に引き上げるべきであります。また、勤労者の財形貯蓄に対しては、
物価上昇分を含めた割り増し金制度を導入し、貯金減価の補償をなすべきであると主張するものでありますが、これは
総理並びに
大蔵大臣もあわせて所見を明らかにしていただきたいのであります。(
拍手)
以上八点、明確な答弁を求めたいと思います。
国民福祉優先の経済運営への転換は、すでに
国民的合意として要求されております。
四十九年度予算
政府案で見る
社会保障関係費は、対前年度三六・七%の伸び率であります。もともと低い前年度予算額に対する伸び率でありますから、一般会計に占める割合を見なければなりませんが、昨年の一四・七%に対し一六・九%で、わずか二・二%の伸びにすぎません。その割合は、日銀の国際比較統計等から見ましても、欧米先進国の二分の一以下にすぎないのであります。しかも、その三六・七%の伸び率のうち一九%は医療費で占められており、また、当然増経費を取り除けば、とうてい福祉優先とは認められないのであります。(
拍手)もし
政府が真剣に福祉に対処しているというならば、四十八年度中の
消費者物価上昇による目減り分や、四十九年度、
政府自身が見込んでいる九・六%の
物価上昇、一七・五%の医療費上昇分をあらかじめ予算化する配慮があってしかるべきであります。
現在の
インフレの中で最も深刻な生活をしいられているのは、福祉施設にいる人たち、年金生活者、生活保護世帯の人たちであります。四十九年度
予算案の福祉施設入所者に対する生活諸費は、現状より二〇%増額はしたものの、一人一日当たりの食費は、児童は約六十円の増額で三百五十六円、寝たきり老人の場合、約六十円増額して三百五十八円、養護老人の場合は、約四十七円増額して二百八十四円程度でありますが、これで育ち盛りの子供や弱りきった老人に必要な食生活を維持できるとお考えになっているのかどうか。
また、その生活保護世帯の扶助基準が、四人世帯で最高六万円になっておりますが、これで最低生活を維持することができるとお考えでありますか。
老齢福祉年金五千円を七千五百円に引き上げたことは、昨年からきまっていたことであり、新しく福祉を充実したものではありません。(
拍手)この金額が、老人生活にどれほど足しになるとお考えになっておられるか、
総理の率直な見解を伺うとともに、いままでの、もともと救貧的な低い基準からの積み上げ計算を抜本的に改め、あらためて憲法に示す
国民の健康的、文化的な最低生活を保障し得る生活基準を算定して、大幅の増額をし、施設入居者の生活費とともに
物価にスライドすべきでありますが、この点もあわせてお伺いをいたしたいのでございます。(
拍手)
政府が福祉元年の看板とした五万円年金が、その受給対象者があまりにも少数であるのと、長年の勤労にたえて老後の安息を期待した人々の生活を保障するに足りるものでないことは、きわめて明らかであります。拠出年金である厚生年金などは、昨年四野党が共同提案した年金改正法に基づき、直ちに修正賦課方式に改め、国の支出を増額して、少なくとも六万円年金を実施し、
物価のみならず賃金水準にスライドするなど、その充実を要求するものでありますが、
総理の見解を承りたいのであります。(
拍手)
さらに、児童手当は当然第一子から対象とすべきであり、手当額も五千円に引き上げるよう、制度の改正を要求するものでありますが、どのように考えておられるか、
総理の御所見を伺いたいのであります。(
拍手)
次に、
政府の二兆円減税は、
課税最低限を標準四人世帯で初年度百五十万円にいたしました。しかしながら、今回の減税は、三千万円前後の高額所得者まで累進課税率を緩和し、給与所得控除の上限をなくすなど、いわゆる金持ち減税となっております。
これを標準四人世帯の収入別課税軽減額で見ますと、収入百五十万円で二万九千四百七十八円、二百万円で四万五千二百九十六円、これが五百万円になると二十四万二千をこえ、一千万円になると九十一万一千円をこえるというように、高額所得者ほど大幅に減税されるということがきわめて明らかであります。給与所得者の実質所得の格差をますます拡大させることになっているのであります。これでは、全く高額所得者のためのものであり、
インフレの被害をきびしく受けている者を無視した減税であるといわざるを得ないのであります。
物価の異常な上昇を加味して生計費に課税しないという原則によれば、当然二百二十万円まで
課税最低限を引き上げ、高額所得者の税負担は従前どおりとするべきであると考えますが、これに対する
総理並びに
大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。(
拍手)
また、法人税の大
企業に対する税率の引き上げは、配当軽課税率の後退、大
企業優先、資産所得者優遇の租税特別措置の温存とあわせ、大
企業、産業優先の現行税制の本質を変えていないのであります。欧米水準から比較しても、大
企業の税率は最低四二%に引き上げ、規模に応じて実効率を累進的に上げるべきであり、租税特別措置はこの際全面改廃をすること、交際費課税の強化、広告税の新設など決断すべきときであります。
ますます窮状にある
中小企業に対しては、税率を大幅に引き下げると同時に、税の申告方法を簡素化することを要求するものでありますが、
総理並びに
大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。(
拍手)
地価の高騰は、国税庁が発表した、最高路線価格に見られるように、依然として年一六%も高騰いたしております。東京新宿区では、三・三平方メートル当たり八百四十四万円という極限状態に達しております。また、
日本不動産研究所の調査によると、昨年九月末現在、全国市街地平均価格は、半年で一五%も高騰いたしており、特に六大都市の住宅地は、昭和三十年三月末以来で実に四十倍にも達し、
国民から完全にマイホームの夢を奪い去っております。
物価問題の元凶といわれ、諸悪の根源といわれ続けた土地問題について、いまこそ、
政府は、土地対策に手をゆるめることなく、積極的に取り組まねばなりません。特に住宅用地の地価安定と確保に総力をあげるべきであります。
ある住宅
企業の調査によると、三大都市圏で、大手民間デベロッパーがかかえ込んでいる住宅用地は、二万五千ヘクタールに達するといわれていますが、いま、かりに、この
買い占められている住宅用地に建設省の長期構想による理想的な低中高層組み合わせ住宅を建てるとすれば、
総理の専門でありますが、百二十五万戸の建設が可能であります。
そこで、まず
総理にお伺いしますが、このような土地の
買い占めと地価の高騰に伴う不公正を是正するため、緊急地価安定特別措置法を制定し、地価の凍結、空閑地税の創設、あるいは大
企業の保有する土地の再評価と課税措置、大
企業の土地譲渡所得に対する分離課税の強化など、総合的な措置を講じ、断固として土地問題の解決をはかるべきであると思いますが、
総理にその決意がおありかどうか、お伺いをいたしたいのであります。(
拍手)
次に、公害、環境問題について、私は、このときこそ、大
企業の資源大量消費と大量廃棄によって公害列島と化した
わが国土を、公害のない美しい
日本列島に転換する唯一絶好の機会であると確信をいたしております。
石油危機に便乗した環境規制緩和への圧力が各方面に出ていることは、まことに遺憾であります。その中で、
政府が、二十日、
日本版マスキー法の五十年規制の実施を決定したことは、評価するにやぶさかではありません。窒素酸化物にかかわる五十一年規制についても、予定どおり実施すべきことを強く主張するものでありますが、
総理の決意を伺いたいのであります。(
拍手)
さらに、大気、水質等の環境基準は、強化しても緩和することなく、また、総量規制の早期実施等、
公害対策に万全を期すべきであると考えますが、
総理の所信を承りたいのであります。
地方財政を圧迫している
超過負担は、同時に、
国民生活の福祉向上を大きく阻害いたしております。ところが、公営住宅、文教施設等の建設単価の引き上げは四十八年度の補正分を織り込んだものであり、諸資材費の暴騰とあわせ、とうていこの問題を解消するに足りるものではありません。実態に即して
超過負担の解決を要求するものでありますが、
大蔵大臣の所見を承りたいのであります。
総理演説の教育施策の重要性もこれと関連しており、教育施策の根本問題として、小中
学校教育施設の慢性化した不足と不備を解決するためにいかなる決断をお持ちか、
総理にお答えを願いたいのであります。(
拍手)
昨年十二月の
企業倒産件数は、
総理もすでに御存じのとおり、負債一千万円以上で見る場合、九百三十一件を数え、今後さらに増加することは明らかであります。それ以外の小、零細
企業の倒産を加えれば、膨大な件数になることが推測され、まことに憂慮するものがあります。
いまや、失業問題が社会の前面に登場することが懸念されます。当然、失業者を出さないことにまず重点的施策がなされなければなりませんが、
政府は、失業問題についてどのような措置をとろうとしておられるか、また、いかなる
見通しのもとに対策を講じようとなされるのか、
総理の所見を伺いたいのであります。
と同時に、
中小企業対策はきわめて緊要であり、積極的な施策を機動的に運用する必要がありますが、その対策、方針について、あわせて
総理の所見を伺いたいのであります。
さらに、賃金問題に関し、
総理は労組に対する節度ある行動を要望いたしておりますが、すでに昨年度の
物価上昇は、
総理府統計等をもってしても、賃金上昇分は完全に相殺され、
物価の狂騰、
インフレの高進の中で、賃上げを要求することは当然であります。これに対し、
物価対策に名をかり、不当に
労働者に犠牲をしいるべきではなく、賃上げはあくまでも労使間の民主的な交渉にゆだねるべきであります。この点、
総理の見解を承りたいのであります。(
拍手)
ここで、
わが国の食糧問題の今後について、
総理の見解をただしたいのであります。
わが国の、米を除く主要食糧、飼料は、そのほとんどを輸入に依存していることは、すでに御承知のとおりであります。小麦九五%、大豆九六%、濃厚飼料七二%が輸入されていることが報告されております。世界最大の
農産物輸入国である
わが国が、世界最大の
農産物輸出国の
アメリカにたよっているこの関係は、
アメリカ政府の政策によってつくり出され、また、
わが国政府によって、
日本の工業化のために、農業切り捨て政策が推進されてきたことも明らかであります。
アラブ諸国の石油の生産、供給削減によって、
わが国経済は大ショックを受けたのでありますが、もしこれが輸入食糧において起こされ得ないとは、だれ人も断言できないのであります。
昨年春、国際商品たる小麦、大豆、飼料などの国際価格の高騰によってゆさぶりをかけられた体験は、まだまだ記憶に新しいものがあります。これが、世界の
食糧危機ないしは国際政治のかけ引きに利用されて、供給削減に発展したときの
わが国の混乱を考えるとき、まさにりつ然たるものがあります。ここにおいて、
政府の
日本農業の再建について、真剣な方策が講じられなければならないと思うのであります。
そこで、
総理に、主要
農産物の
自給率高度化のための農業政策の再検討を行なう用意があるかどうか、それはどのような具体的構想か、また、三十万ヘクタールの農地の宅地転用をこの際撤回するかどうか、お答えを願いたいのであります。(
拍手)
昨年の第四次
中東戦争後の
アラブ諸国による石油戦略は、世界各国、なかんずく先進工業諸国に大きな衝撃を与え、従来、ともすれば政治、軍事面においておもに論じられてまいりました国際政治は、さらに、石油など資源をはじめ、食糧、通貨等々新たな要因が加わり、中小国の資源ナショナリズムの台頭と相まって、一段と複雑なものとなっております。
こうした国際情勢の中で、
わが国の外交も、これに対応した適切な再検討が必要であることは当然であります。しかし、
政府のとってきた外交政策は、国際情勢の動向に対し、的確な認識も、また長期的展望も持たずに、依然として日米安保体制での惰性的な対米追随外交を続け、その結果は、相次ぐ矛盾に対して、後手後手と、そのほころびを補修することに奔命してきたのであります。昨年の第四次
中東戦争とその後の
石油危機しかり、また、
東南アジア諸国の対日不信、反日感情の高まり、またしかりであります。
すでに、
わが国の存立が
わが国の平和のみで達成されるものではなく、世界の平和とともにあることは自明の理であり、資源や食糧を世界じゅうに追い求め、利己的な生産拡大と利潤を追求しようとする
わが国の内外政にわたる体質が、すでに国際的に適用しないことを知るべきであります。(
拍手)
したがって、あらゆる国との友好関係を深めていくためには、いずれかの軍事ブロックに属することではなく、等距離完全中立政策に基づく自主、平和、中立外交によらなければならないと確信をいたします。
わが党のいう等距離完全中立政策は、あくまでも、孤立化政策ではなく、世界のすべての国と友好関係を深め、平和の維持に積極的役割りを果たそうとするものであり、いわば全方向修好のための政策であり、
わが国の最善の選択であると思うのであります。
もとより、この中立政策が、いかなる国際紛争に対しても中立という名で無関心を装い、自国のみの安泰をはかろうとするものではありません。民族自決と平和共存五原則に基づく立場を堅持することは当然であり、その原則に照らして
わが国の態度を明確にすることはもちろんであります。
政府が中東問題でとった中立という名の無策外交と根本的に異なるものであることは、言うまでもありません。(
拍手)
私は、
総理に対し、
わが国が等距離完全中立政策をとるべきことを提案するものでありますが、
総理の所信を承りたいのであります。(
拍手)
田中総理は、
東南アジア諸国歴訪で、タイ、
インドネシアなど諸
国民の非難と抗議を受けましたが、これら諸国の対日不信、反日感情の高まりの原因はどこにあったのか、その背景にある問題をどう認識しておられるのか、いままでお答えがありましたが、重ねて承りたいのであります。
日本の長年にわたる経済協力が、その本来の目的である相手国並びに相手
国民の期待する経済的自立、民生安定にはたして役立っていたのかどうかを
田中首相は知ったはずであります。さらに、
日本の海外進出
企業が、ただ商品を売りまくり、資源の確保をどうするか、いかに安い労働力を得るかということのみを考え、相手
国民を無視した、思い上がった利益追求主義や、多くの公害、被害を現地に与えたことが、どれほど現地
国民に耐えがたいものであったかを理解したはずであると思うのであります。
総理の率直な所見を求めるものであります。(
拍手)
アジア諸国その他アフリカ、中東、中南米との関係において、
日本企業の海外進出に関して、この際、
総理は、根本的に、従来の経済協力のあり方、
企業の海外における活動等について、厳格な基準を作成するなど、多くの考え直すべき点があると思うのでありますが、その所信を承りたいのであります。
次に、きわめて当面する外交課題について、若干の質問をいたします。
第一は、日中問題についてであります。
日中復交後、第一の実務協定と目されてきた日中航空協定がいまだ締結されていないことは、日中共同声明の精神に反することであります。
政府は、今国会に航空協定の批准を求めることができる
見通しなのかどうか、その他の実務協定並びに平和友好条約の締結の
見通しを明らかにしていただきたいのであります。
第二に、すでにわれわれの指摘のとおり、石油ショックが示すように、
日本外交は、日米安保体制によって、
アメリカの
ワク組みの中という国際的な評価が明らかになりました。日米関係が重要であることは、私も決して否定するものではありません。しかし、真のパートナーとしての関係を確立するため、
総理は、
日米安保条約を解消し、それにかわるべき日米友好不可侵条約締結を真剣に検討すべきであると思いますが、
総理の所信を伺いたいのであります。(
拍手)
第三に、朝鮮問題についてであります。
日韓関係における
日本の経済協力並びに
企業進出は、
東南アジアのそれよりも以上に問題があるといわれております。その実態を調査し、再検討すべきであります。また、
金大中氏事件の公正な解決をどうするのか、
日本の報道機関に対する抑圧などに対しどのように対処されるのか、それぞれ承りたいと思うのであります。(
拍手)
さらに、日朝関係国交
正常化について、
政府の考えを明らかにしていただきたいのであります。
次に、防衛予算はついに一兆円の大台を突破いたしました。昭和三十六年以来の
わが国防衛予算の伸び率は一〇%以上、特に昭和四十四年以降の平均伸び率は一七・二%という驚異的なもので、世界各国を見ても異常な伸び率となっております。
東南アジア諸国から経済侵略の非難を受け、また、軍国主義復活の警戒の目を向けられている
わが国が、ますます不信を増大させることは必然であり、
アジアの緊張緩和に逆行するものであります。
今日、
国民が強く求めていることは生活の安定であり、
国民の
生活防衛こそ最優先されるべきことは当然であります。(
拍手)特に平和憲法との関係、
国民的合意もなく、いたずらに軍事力増強をはかる
政府の姿勢は、きわめて危険なものといわねばなりません。さらに、総
需要抑制を実効あらしめるならば、少なくとも第四次防計画の中止あるいは凍結を直ちに行なうべきであると思うが、
総理の見解を示していただきたいのであります。
総理、いまほど社会的不公正をなくし、社会正義の確立が求められているときはありません。「乏しきを憂えず、ひとしからざるを憂う」とは、
国民の切実な願望でありますが、むしろこれは、
政府が衷心これに徹し、率先実行することが何より肝要であります。もしその自信がないなら、あるいはその実効があがらないときは、敢然、内閣総辞職をもってその責任を天下に明らかにするべきこと、また、その覚悟で今日の事態収拾に当たるべきであることを強く申し上げて、質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣田中角榮君登壇〕