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1973-12-03 第72回国会 衆議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月三日(月曜日)     —————————————  議事日程 第二号   昭和四十八年十二月三日    午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑    午後一時三分開議
  2. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  3. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。勝間田清一君。   〔勝間田清一君登壇〕
  4. 勝間田清一

    勝間田清一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、田中総理福田大蔵、両大臣演説に関連いたしまして、両大臣に質問をいたしたいと思うのであります。  まず、今日のインフレと異常な物価騰貴を招いた原因と、田中内閣の政治的な責任であります。  田中総理は、通常国会以来、わが党議員の鋭い追及にもかかわらず、日本インフレではないと言い続けてまいりました。また、去る特別国会においても、金融引き締め政策の効果がやがてあらわれて、この秋には安定に向かい、結局、消費者物価は年率五・五%増に押えられるだろうと答弁いたしてまいったのであります。  しかるに、今日の物価の騰貴は、御案内のように、まさに異常というほかはございません。消費者物価の上昇は、この十月で一四%をこえました。卸売り物価に至っては、二〇%を突破いたしておるのであります。そして石油危機に直面してからは、すべての物価が一斉に暴騰し、国民は戦後最大生活危機に追い込まれているのであります。  OECDが本年の年次報告で、日本は世界一のインフレ国であると指摘したのも、当然といわなければなりません。社会主義国消費者物価が、二十年間にわずか一%の上昇率にすぎないことは別といたしましても、本年六月までの、アメリカは過去一年間に五・九%、西ドイツが七・九%、カナダが八・一%であることに対して、日本が一四%の上昇率を示したことは、まさに脅威といわなければならぬのであります。(拍手)  なぜこのように日本が世界一のインフレ国になったのか、ここに問題があると思うのであります。われわれは、物価騰貴インフレは、池田内閣以来の高度成長政策と、自民党体質そのものに内在する基本的矛盾であるときびしく批判してまいりました。(拍手)しかし、それにいたしましても、過去十年間の年間平均消費者物価騰貴率は五・七%であります。それが田中内閣になって以来、卸売り物価消費者物価がともに異常な高騰を続け、石油危機に直面するに至って、ついに社会不安にまで発展いたしたのであります。  一昨日の演説におきまして、田中総理は、企業過剰流動性物価騰貴一つの理由にあげてはおりますが、主としてその原因を輸入原材料値上がり、世界的な不作による農産物価格高騰、そしてこのたびの原油の供給削減輸入価格高騰という、いわば対外的条件にそれを求めているのであります。これは、田中内閣政策の失敗を隠蔽するものであり、しかも、いささかの反省もないことを証明するのであります。(拍手)  この意味において注目をすべきなのは、福田大蔵大臣が、海外における物価高騰の影響もあるけれども、何よりも国内需要の急速な拡大によると指摘したことは、原因が田中内閣の内政にあったことを示唆するという意味において、田中総理考え方と相対立する考え方であると思うのであります。(拍手)  私は、原因を次の五つに要約できると思うのであります。  その一つは、日本経済は、すでに昨年八月ごろには明らかに回復期に向かっていたにもかかわらず、田中内閣独占企業の圧力に屈して、鉄鋼、塩化ビニール、アルミなどの不況カルテルの延長を許して、生産調整独占価格のつり上げに協力してまいったことであります。この誤った政策が、いかに今日の物不足物価値上げに重大な影響を及ぼしているかを見れば、きわめて瞭然であります。(拍手)  その二は、これまた、景気回復期にあったにもかかわらず、田中内閣金融緩和政策をとり、ばく大な信用膨張をはかったのであります。それだけではありません。過剰流動性の横行を許したことであります。このために、大企業や大商社は、株や土地や商品などの投機に殺到いたしまして、史上最高超過利得、いな、不当利得をむさぼったことは、今日明らかな事実であります。(拍手)  その三は、田中内閣円切り上げ対策に失敗したことであります。特に、百七十億ドルにのぼった外貨を減らすという名のもとに、公共事業費を一挙に三二・二%も引き上げ、十四兆二千八百億円に達する大型の、いわゆる調整インフレ予算を強行し、財政を通じて積極的にインフレをあおったことであります。(拍手)  その四は、田中総理が以上の大企業優先インフレ政策を強行する中で、日本列島改造論をぶち上げて、十七の新幹線、三本の本四架橋同時着工等インフレムードをいやが上にも盛り上げかことであります。(拍手)  そして最後に、反省を願いたいと思いますのは、政府は国鉄の運賃、米、麦、電力等の一連の公共料金大幅値上げをはかって、政府自身物価値上げの先頭に立ったことであります。(拍手)  世界的農産物の不作、輸入原材料値上がり石油供給削減等外的条件は、あくまでもこうした田中内閣政策の失敗の上に上積みされたのであって、田中内閣政策こそきびしく批判されなければなりません。  総理は、国会の施政方針演説の劈頭においてこう言いました。私は決断します、実行します、そして結果について責任をとります、こう豪語いたしたのであります。私は、田中総理は過去一年五カ月の結果についてどのような反省をしているのか、その結果についてどのような責任をとるのか、国民の前に明確にしていただきたいと思うのであります。(拍手)  田中総理は、いま石油危機を救いといたしまして、内閣改造をもって自己の責任を回避しようといたしております。しかし、政治に対する国民の信頼を回復して、国民の協力を求めて、直面する戦後最大危機を打開しようとするならば、責任者がまず責任をとるべきであります。(拍手)そして、日本経済も外交も、ここに大きく転換する道を開くべきであります。私は、ここに田中総理の反省を求めると同時に、その政治的責任を追及せざるを得ません。  私は、このたびの内閣改造以来、田中総理福田大蔵大臣の言動に注目いたしてまいりました。そして日本列島改造論に対して、田中総理福田大蔵大臣との間には、その考え方において、相いれない対立のあることを発見せざるを得なかったのであります。  特に、一昨日の演説におきまして、福田大蔵大臣は、資源の不足から、「従来のような高い成長の持続を困難とする新しい局面を迎え」たと述べ、「物価の安定、国際収支均衡維持に加え、資源及び環境面からの制約」を十分配慮して、日本の生産を適正な成長に維持することが基本的に大切であると思うと演説されたのであります。これは言うまでもなく、成長率一〇%を基調といたしております列島改造論とは、考え方において根本的に違うのみならず、対立する議論であります。(拍手)  また、田中総理就任最初記者会見において、日本列島改造論をあくまでも推進していく旨を強調したのに対して、福田大蔵大臣は、日本列島改造計画を含めて、すべてを白紙に戻すことを条件に大蔵大臣を引き受けたと述べました。また、日本列島改造論は閣議の決定を経たものでもなく、全く田中総理個人的意見にすぎないと述べられておるのであります。(拍手)  われわれは、田中内閣の閣内不統一はともかくといたしまして、今後の日本経済日本列島改造論で進められるのか、福田蔵相の言う安定成長で進められるのか、経済政策の混迷こそ最大の不幸といわなければならぬのであります。特にこの問題について、私は、両大臣の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)  日本列島改造論は、資源問題から見ても実現不可能におちいっていることは、もはや今日明白であります。日本は、いままで年間二〇%の伸び率で資源を輸入しておりました。田中総理列島改造論によれば、昭和六十年の石油消費量を、現在の実に四倍、七億五千万キロリットルを予定いたしております。電力の需要も、現在の三・五倍の二億三千六百万キロワットアワーを予定いたしております。全く現実を無視した暴論といわなければならぬのであります。(拍手)  列島改造論は公害をばらまくだけでなく、そしてそれが年率一〇%の成長率に立っていることから見ても明らかなように、高度成長政策田中版以外の何ものでもないのであります。これがまたインフレ物価高最大の元凶であることは、すでに指摘したとおりであります。  したがって、目下のインフレ物価対策に真剣に取り組もうとするならば、日本列島改造論を、まずくずかごの中に投げ捨てることであると思うのであります。(拍手)そして新全総計画、国総法も撤回すべきであると思うのであります。(拍手)十七にも及ぶ新幹線計画本四架橋三本の着工計画も、この際再検討すべきであります。田中総理の答弁を求めたいと思います。  政府は、物価対策を進めようといたしておりますが、この際大切なことは、政府みずからがその範を示すことだと思うのであります。家庭の主婦を責め、買いだめをするなと言い、「節約は美徳」であると宣伝しておられますが、政府が率先して米の値を上げたり麦の値を上げるのでは、だれでも物は上がると考え、安いうちに買おうという生活防衛に出ることは、当然といわなければなりません。だから、物はある、何割増産しているということを宣伝することももとより間違いではありません。しかし、もっと大切なことは何か。きょう買わなくともあす上がることはないという、物価安定に対する社会的信用を回復することであります。(拍手)この意味で重要なことは、政府が上げないということであります。そして、政府が上げないということは、物価安定をすべての政策に優先させる決意と決断がなければなりません。  二、三日前に内田経済企画庁長官は、家庭の主婦が鉄道料金値上げをやめろと言ったことに対して、それならば鉄道会計が赤字でもいいかと反論されました。しかし、この内田長官考え方は、物価安定をすべての政策に優先させるという態度ではありません。同時に、それは、全く私企業と同じレベルのものの考え方であります。(拍手)  いま、各種すべての物価が一斉に値上がりをしようといたしております。その理由は、原材料が上がる、人件費が上がる、石油と電力の不足で操業率が落ちる、だからおれの会社の製品の価格は上げなきゃならぬ。これを放置したら一波は万波を呼び、日本はおそるべき悪性インフレに転落するのであります。その結果は、日本経済はパニックで暴力的に解決する以外に道はないのであります。これは、国民最大の不幸といわなければなりません。(拍手)  したがって、重要なことは、いま物価騰貴悪循環をどこで断ち切るかということであります。それは唯一に政府態度にかかっているのであります。  この意味で、今日国の財政は、四兆をこえるような裕福な状態にあります。三月決算を見ても九月決算を見ても、日本企業は膨大な利潤をあげておるのであります。私は、まず、今日の財政規模の中で、政府はすべての公共料金をストップすることを要求いたします。(拍手)三年間にわたって公共料金をストップすることこそ、今日の悪循環を断ち切る政府の唯一の道であると思うのであります。(拍手)したがって、すでに決定した鉄道料金、米麦の消費者価格値上げも、この際撤回すべきであります。  政府が次になすべきことは、大企業、大商社の売り惜しみと買いだめを禁止いたしまして、その独占価格を引き下げることであります。  政府は、最近あわてて買占め売惜しみ防止法の改正を行ない、指定物資の拡大、業者への立ち入りの検査、売り渡し命令などができるようにしようといたしておるようであります。しかし、これはさきの国会で社会党はじめ四野党が共同提案による買占め売惜しみ規制法案がすでに主張いたしておったところであります。(拍手)灯油も昨年並みの量があり、紙にいたしましても、絶対量は増産されていることは確実であります。政府は、いまこそ野党の主張を正しく受け入れて、正常な流通を阻害している、社会不安等を引き起こしている悪質な大企業、大商社を取り締まるべきであります。  それにしても、私は政府独占企業に対する態度についてきびしく批判せざるを得ないのであります。  政府は、このたび石油需給適正化法案並びに国民生活安定緊急措置法案を用意いたしておるようであります。その中で独禁法骨抜きにして安定カルテルを認めることは重大な問題といわざるを得ないのであります。(拍手)  公正取引委員会通産省が覚え書きを交換し、通産大臣または主務大臣の指示、監督に基づくからと称して、事業者または事業者団体の行なう共同行為を許すことは、単に独禁法骨抜きにするだけではありません。政府の指示に基づく標準価格という美名のもとに大企業独占価格を、しかも高い水準に引き上げ、それを公認すること以外の何ものでもないのであります。(拍手安定カルテルは、また、官僚と独占企業の癒着を一そう助長いたします。そうして、生産から流通の末端に至るまで独占企業支配体制を全面的に確立することを意味するものであります。したがって、安定カルテルは、消費者をのけものにした国民不在政策といわなければならぬのであります。(拍手)  政府は、さきに公取委員会の主張を退けて、一部の再販維持価格の取り消しを中止させました。われわれはこうした一連の独禁法骨抜き独占擁護政策に断固反対するものであります。(拍手)いな、むしろ進んで、経済民主化をはかるために独禁法の強化、それこそわれわれが要求するものであります。  インフレ物価高騰に対処する基本方策として、金融上、財政上、総需要抑制のための政策を実行しなければならぬことは当然であります。特に石油供給削減政府の予測する一六%で済むか、あるいは石油連盟の主張する二三%で済むかは別といたしまして、相当きびしいものであり、かつ長期のものにわたるであろうことは明らかであります。このことは、当然に、今後におけるわが国のGNPの伸び率が著しく後退し、ゼロまたはマイナスにまで転落することは、もはや明らかであります。  それだけに総需要抑制に注目しなければなりません。しかしながら、国民の生活の立場から見るならば、何が抑制され、何が確保されるかということが今日の最大関心事であることは明らかであります。(拍手)  この意味で、田中総理が、物価騰貴一つの原因に、わざわざ五十兆円の勤労所得とその消費購買力をあげたことに私どもは警戒を払わざるを得ません。これが所得政策をとるための伏線であるならば、われわれは断固反対であります。  百貨店の売り上げ高、あるいは勤労家族の今日の家計調査を見れば明らかなとおり、確かに購入額は大きく増大いたしております。しかし、この購入額の増大は、物価値上げに見合ったものであって、実質的な購入量は停滞いたしておるのであります。(拍手)そして、むしろ今日それを問題にするならば、あの株でもうけた金は二十五兆円、土地の値上がりでもうけた金は六十兆円、なぜこれを問題にしないのか。(拍手)私は、ここに田中内閣の反省を求めざるを得ません。したがって、われわれは、勤労大衆にしわ寄せする所得政策には断固反対であります。  もし、国民総支出の中で五〇%を占める個人需要需要抑制のための協力を求めるならば、大企業不当利得と、その交際費に対する重税と、高級奢侈品に対する物品税引き上げと、それと並行して国民に対する安定貯蓄への利子の引き上げ減税等優遇措置を講ずべきであります。(拍手)  総需要の抑制の重点は、国民総支出の中で二〇%を占めております財政需要、特に一般公共事業費の圧縮であります。同時に、二五%を占めている民間投資をどこまで押えるかということであります。  通産省は去る三十日に、四十八年度民間設備投資減額修正基本計画をまとめたといわれますが、これは一通産省だけの問題ではありません。主務官庁が管掌するあらゆる産業に及ぼさなければなりません。政府は、はたして今後いかなる計画と方法、手段をもって、この民間設備投資抑制をはかっていくのか、明らかにされたいのであります。  また、一般公共事業費も四十八年は二割八分と増額いたしましたが、これを四十九年においてどこまで圧縮するのか。また、四十九年の一−三月のいわゆる繰り延べ措置を講ずるだけでなく、これに対する減額修正もこの際行なうべきではないか、こうした点について政府の答弁を求めたいと思うのであります。  総需要抑制政策の中で国民が注目をいたしておる問題は、減税社会保障費の確保の問題であります。  四十八年度のわずか三千三百五十億円の勤労所得税減税も、春闘で戦い取った貴重な賃上げも、異常な物価騰貴によってすでに帳消しにされたのであります。人事院は本来、公務員給与物価等の間に五%の差を生じた場合には、一回以上勧告しなければならぬ義務を持っております。これがスト権を奪った条件でありました。したがって、今日年率にして一〇%以上の物価が騰貴している際に、インフレ手当を要求するのは当然といわなければなりません。(拍手)同時にまた、大幅な減税を行なわねばならぬことも道理といわなければならぬのであります。  わが党は、少なくとも標準家族二百万円まで無税とすること、勤労未成舞家計補助のためにパートで働いている家庭婦人等に対しても免税の措置をとることを要求いたします。  しかし、愛知前蔵相のいわば二兆円減税構想も、最近きわめて怪しくなってまいったと伝えられております。政府は、四十九年度においてどのような減税措置を講ずるのか、これを明らかにしていただきたいと思います。  減税とともに重要なことは、いわゆる社会保障関係の充実であります。  インフレ物価高最大犠牲者である老人、母子、心身障害者並びに病人等の一連の社会保障対象者に対して、恩給、年金はもちろん、医療保障社会扶助等一連保障費に対して、インフレによって受けた減価を補償することは国の責任であります。いな、それだけではありません。年金における賦課方式の採用、物価だけでなく賃金の値上がりにも応じたスライド制の採用、こうした社会保障の抜本的な解決こそ、今日断行さるべきであります。(拍手)  予算について、私は最後に一言したいと思うのであります。それは防衛費削減であります。  国民は、かつての大豆危機のときもそうでしたが、このたびの石油危機にあたってほど、国の安全とは何かという問題について深刻に考えさせられたことはないと思うのであります。ある人は、日本経済は世界三番目と聞いていたが、今度ほど日本経済が砂漠の上に建てられた楼閣にすぎないことを知らされたことはない、こう語ったのでありますが、このことは、世界七番目という日本の軍隊についても同じように指摘されることであります。(拍手)  アメリカ軍事同盟を結んでおりましても、いざとなれば大豆一トンに不安を感ずることをわれわれは経験いたしました。また、このたびのように石油危機が差し迫ってくると、千何百機の飛行機も、何万トンの軍艦も、何の役にも立たないことが明らかになりました。日本にはかつて、軍事費には手はつけてはならないという軍国主義がありましたが、いまこそ、日本国民の重大な危機に立って、防衛費は大幅に削減さるべきであります。(拍手)第四次防衛計画は直ちに中止さるべきであります。(拍手)  それにつけても、私は、国内資源の問題について、二つのことを指摘せざるを得ないのであります。  その一つは、食糧政策であります。田中総理は来年度三十万ヘクタールの農地の転用を計画していると伝えられているのであります。もし事実とすれば、これこそ大きな不動産会社をもうけさせて農業を破壊する暴挙といわなければなりません。(拍手)どうして本年度の五倍に当たる農地転用が必要なのか、どうしてそれが可能なのか、全く理解に苦しむところであります。  自民党内閣農業政策は、米をつくるな、つくらなければ一反歩三万円、金をやるという政策にあらわれております。この政策は、結局重化学工業のために、農村から安い労働力をしぼり出そうという政策でありました。しかし、今回の三十万ヘクタールの農地転用政策は、農民から最後の農地まで奪おうとする農村破壊政策といわなければなりません。(拍手)なぜ大不動産会社や大商社が買い占めているあの膨大な土地を吐き出させようとしないのか、なぜ農地を保護し、農民に協力して、食糧の自給度を高めようとしないのか、私は、田中総理にその回答を求めたいのであります。  もう一つのことは、石炭政策であります。私は社会党石炭対策特別委員長として、池田内閣以来今日まで、歴代の自民党内閣エネルギー国内資源として石炭産業の持つ重要性を強調いたしてまいりました。しかし、政府は幾たびかわれわれに約束しながら、石油資本電力資本の圧力に屈して、石炭山を閉山させて、ついに五千万トンから二千万トンにまで、今日、山をつぶしてきたのであります。そして、いまになって、石炭専焼炉をどうするの、石炭の液化や石炭ガス化をどうするの、だから、労働者にもっと働いて増産してほしいと要求している態度こそ今日反省していただきたいと思うのであります。(拍手)十数年塗炭の苦しみをなめてきた石炭労働者に対していかなる優遇措置を講ずるのか、石炭経営のあり方をどう抜本的に改革するのか、石炭を不動の産業にするために、エネルギー産業の中で石炭をどのように位置づけするのか、こうした基本的政策を確立することがすべての政策の前提であることを強調いたしたいと思うのであります。(拍手)  政府は、石油削減を受けて、いまさらのごとくアラブ外交を修正し、近く三木副総理を特使としてアラブ諸国を訪問させようといたしておるのであります。世界は、この日本の外交を、石油ほしさの変身として受け取っているに違いないと思います。それだけに、三木副総理アラブ訪問石油ほしさ陳情訪問であってはなりません。また、伝えられるように、援助と協力の美名に隠れて金で解決をするという態度であってはならぬのであります。  第一次中東戦争始まって以来、広大な領土をイスラエルによって武力占領され、パレスチナ人民の正当な権利がじゅうりんされてまいりましたアラブ諸国にとって、その当然の要求が完全に実施されることに対して、日本がいかに有効に行動するかにかかっているのであります。  社会党は、アラブ連盟事務総長の招聘に応じて、今月早々アラブを訪問いたします。言うならば、中立外交を支持し、非同盟諸国外交を支持した戦後二十数年の成果にこそ、それがあらわれていることを御銘記願いたいと思うのであります。(拍手)  田中総理は、また、近く東南アジア諸国を訪問すると伝えられているのであります。そうした旅行以前に、アジアには残された未解決の問題が山積していることに気づかなければなりません。ソ連との間のシベリア開発問題、北朝鮮との国交回復、中国との間の航空協定並びに平和条約の締結、南ベトナム民族解放戦線との国交回復並びに全ベトナムに対する経済援助、そして中ソを含む全アジア平和保障体制確立などは、どれ一つとってもきわめて重要であり、緊急であります。キッシンジャー構想を欧州にまで行って売り込むようなひまがあるなら、われわれはこうしたアジアの問題にこそ今日真剣に取り組むべきであります。  特に、金大中事件に対する田中内閣態度はきびしく批判されなければなりません。(拍手)数時間前にすでに報道されたように、ついに韓国の金政権は総辞職いたしました。KCIA長官李厚洛氏は罷免されました。きわめて当然といわなければなりません。田中内閣は、この際、日韓閣僚会議を取りやめるだけでなく……。
  5. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 勝間田君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  6. 勝間田清一

    勝間田清一君(続) 従来金首相との間にとり続けてまいりました不明朗な一切の取引をこの際白紙に返し、新しい観点に立って日韓の外交を再検討すべきであります。この重要な段階に立っての田中総理答弁を求めたいと思うのであります。(拍手)  要は、このたびの石油危機を通じて、日本外交は根本から問い直されたと思うのであります。冷戦を背景に、安保条約を軸としてアメリカに追従する外交は、もはや破綻したことは明らかであります。
  7. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 勝間田君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  8. 勝間田清一

    勝間田清一君(続) そして、世界は、緊張緩和を背景に、平和共存、民族自決、資源自主、この原則に立って大きく進歩の方向に前進いたしておるのであります。日本は、いまこそ、世界のこの大きな動向にふさわしい自主外交に転換すべきであります。そして、この道は、日本の憲法の原点に返って、日本が平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、平和と文化を通じて国際社会に名誉ある地位を占めたいという決意をもって日本外交を進めるべきであると思うのであります。(拍手)  田中総理の所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
  9. 田中角榮

    ○内閣総理大臣(田中角榮君) 勝間田君にお答えをいたします。  第一は、物価騰貴原因とその責任等についてでございます。  演説でも申し上げましたように、その要因の第一は、海外における物価高騰影響、特に世界的な不作による農産物価格高騰でございます。第二は、外為会計の大幅払い超に加え、輸出から内需への転換をはかるための金融緩和策がとられた結果、企業過剰流動性が生じ、急速な国内需要拡大につながったことであります。第三に、賃金、給与の所得の上昇によりまして、先ほども御指摘がございましたとおり、個人消費が拡大をしたことなどの要因が複合して生じたものであると考えます。その上、今次の原油の供給制限と輸入価格上昇物価問題の解決を一そう困難なものにしておると考えるのでございます。  物価高騰抑制するためには、総需要抑制をはかることが基本であることは御指摘のとおりだと思います。そのため従来からの財政執行の繰り延べ、金融引き締め等の総需要抑制措置をとってきたところでございますが、これらの措置は、その効果が末端まで浸透し、物価動向に好影響を与えるまで堅持することはもとより、石油情勢の進展など今後の事態の推移に応じましてさらに強化する考えでございます。来年度予算の編成にあたりましても、物価動向に十分配慮をし、慎重に対処してまいりたいと考えます。  また、個別物資の需給調整につきましても、特に生活必需物資を中心として緊急増産、出荷指導、投機的取引の防止など機動的措置を講じておるところでございます。  さらに、今次の石油供給削減等の事態に対処しまして、必要物資の安定的供給を確保するため、今国会石油需給適正化法案国民生活安定緊急措置法案等を提出することといたしておるのでございます。  政府物価の安定を当面する最重要課題として、これら各般にわたる物価対策を総力を結集して推進をしてまいりたいと考えます。  列島改造論についてでございますが、間々申し上げておりますとおり、列島改造論は私の私的な論文のたぐいでございます。その中には、昭和四十五年度を基準といたしまして、一〇%成長すればどうなるか、八・五%成長の場合はどうか、七%の場合はどうか、五%の場合はどうか、これらの数字を試算数字として国民の前に提供し、これらに対して検討を求めたわけでございます。しかし、昭和六十年に人口が一億二千万人に増加することを前提にいたしますれば、三大都市圏への人口集中を放置したままで水、電気が不足し、住宅難や交通混雑が一そうひどくなり、ゴミ処理、流通施設なども能力を突破して、環境水準や社会生活水準が一そう悪化することは明白であります。他方において、中核都市や農山漁村の整備を行なって、人口や産業を定着させるとともに、巨大都市における人口や産業抑制して、国土の均衡ある発展をはかることが私の構想の骨子となっておるのであります。  言うまでもなく、この国土総合開発構想は短時間に実現できるものではなく、昭和六十年展望に立って着実に施策を積み上げていくべきものでありますから、短期的な景気動向に即してその実施のテンポを調整すべきこともまた当然であります。総需要抑制を緊急課題とする現状においては、大規模プロジェクト等の実施テンポをスローダウンさせることが必要であると考えておるのでございます。  新幹線本四架橋についてでございますが、新幹線につきましては、年間三百万台ないし四百万台の割合で車がふえ、道路整備が追いつかないのが現状でございます。国土の八五%が山岳地帯であるというわが国の地形、地勢上の特性から見て、大量高速輸送機関として鉄道の整備が必要なことは言うをまたないところでございます。  また、本四架橋につきましては、学識経験者によって十分論議の末、決定されたものでありまして、本州、四国を一体化し、瀬戸内海の汚染を防止する上でも必要な計画だとしておるのでございます。  しかし、新幹線本四架橋も、昭和六十年展望の長期的計画によってその実現をはかるものでございまして、先ほど申し上げましたように、当面経済情勢の推移を見ながら、その建設工程について慎重な配慮を加えてまいることもまた当然だと考えております。(拍手)  公共料金凍結と安定カルテルの問題について御発言がございましたが、公共料金につきましては、従来から極力抑制的に取り扱ってきたところでございます。現に、国鉄運賃の改定を本年度末とし、米の政府売り渡し価格を本年度内据え置いておるのでございます。しかし、恒常的に公共料金を据え置くということは、結果として財政負担を増大させることになりまして、予算規模を極力圧縮せよという現下の要請に相反することにもなるのでございます。政府としては、鉄道運賃、米麦の売り渡し価格を白紙に戻す考えはございません。  物価抑制のため、たとえば国が標準的な末端価格を定めた場合に、所管大臣の行政的指示、監督に基づきまして、業者がこれを取引先に守らせるよう協力することは必要かつ有効でございまして、このような協力措置独禁法に抵触するものだとは考えておりません。  減税についてでございますが、昭和四十九年度におきまして、所得税について課税最低限の大幅引き上げ、税率の緩和を含む減税を実施したいと希望いたしております。その総額を二兆円、こういっておるわけでございますが、この減税案の来年度における実施の細目等につきましては、来年度の予算規模、国債発行額等を総合的に勘案をして最終的に決定することとなるわけでございます。現在、大蔵省で鋭意検討をしておるところでございます。できるだけ国民の要望にこたえられるようなものにしたいと考えておるのであります。  また、減税の恩典を受けない階層に対する施策につきましては、従来から社会保障の面で配慮をしてまいりましたが、四十九年度予算におきましても、生活保護、福祉年金その他の給付の改善について十分考慮してまいりたいと考えます。  防衛費削減、四次防の計画を中止せよとのことでございますが、間々申し上げておりますとおり、日本の防衛力は最小限のものを目標といたしております。しかし、防衛は国の基本であり、国民の生命、財産を守り抜くため最も重要なものでございます。(拍手)その意味で、四次防を中止する考えはございません。  また、農地転用計画についての御発言にお答えをいたしますが、市街地区域内における農地だけでも二十八万八千ヘクタール余存在することは御承知のとおりでございます。地価の上昇を押えるには、まず土地の供給をふやすことが肝要でございます。宅地、公共用地等の需要に応じて必要な用地を円滑に供給するために、三十万ヘクタールを一応の目標として農地転用を考えておるわけでございます。もちろん、その実施にあたりましては、食糧生産に支障が生ずることのないよう、優良農地を十分確保してまいりたいと考えます。  念のため申し添えますと、現在でも一般農地の公共用地その他への転用は、年間おおむね六、七万ヘクタール程度が実施をされておるということでございます。  次は、石炭対策について申し上げますが、石炭につきましては、現在エネルギー調査会等で勉強をいただいておりますので、この協力を得てまいりたいと考えておるのでございます。  石油危機に伴うわが国外交についてでございますが、政府は近く三木総理アラブ諸国に派遣をいたしまして、わが国の中東紛争に対する態度を先方に十分説明して、理解を求めるのみならず、アラブ諸国の事情を十分に聴取し、わが国とアラブ諸国との友好協力関係の長期的観点からの確保につとめたいと考えておるのであります。  韓国の政変についてでございますが、韓国は事実上の内閣改造を行なったと聞いておるのでございます。しかし、この改造によって日韓友好関係は全く不変でございます。日韓閣僚会議につきましては、年内開催の方針に変更はございません。  最後に、今後の対ソ、対韓、対中国、対ベトナム等に対する外交方針に対しての言及がございましたので、一括して申し上げたいと存じます。  先般、訪ソをいたしました際、ブレジネフ書記長との会談におきまして、北方領土四島の返還問題が平和条約締結によって解決さるべき問題であることにつき確認を見ておるのであります。今後とも国民の支持を背景に、ねばり強く対ソ交渉を継続していく所存であります。  シベリア開発につきましても、ブレジネフ書記長との間に、互恵平等の原則に基づき推進をすることに基本的合意を見ておりますので、これを契機に当事者間の交渉が一そう進展することを期待しておるのであります。  現在の朝鮮問題の国連審議、南北話し合い等の進展ぶりにかんがみまして、北朝鮮とは文化、経済等の分野における交流を積み上げていく所存でございます。  また、日中間の相互理解は、国交正常化以来、格段の深まりを見ており、貿易協定は近く締結の運びとなっており、航空協定その他の実務協定につきましても、できる限り早く締結にこぎつけるべく、せっかく努力中でございます。  日中両国間の平和友好関係を強固にするための日中平和条約の締結につきましても、中国と十分話し合っていく所存でございます。  ベトナムにおいては、南ベトナム共和国政府に加え、最近ベトナム民主共和国との外交関係を設定いたしました。したがいまして、わが国は南北両ベトナムの政府に対して、人道上その他経済復興のための援助を行なうことにいたしておるのでございます。  中ソを含むアジアの平和保障体制の確立は、御趣旨としてはけっこうでございますが、これを大きく前進させるためには、まず中ソ両国がそのいわゆる対立を解消し、話し合いができるような情勢が醸成されることが大きな前提と考えざるを得ないのでございます。  残余の問題につきましては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
  10. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  私は常々申し述べておるのですが、経済成長発展ということは、これは目的ではない、あくまでも手段であります。これを手段として、いかにりっぱな国づくりをするか、こういうことだと思いますが、いまやわが国は、とにかくアメリカ、ソビエト、日本といわれる工業力をたくわえるに至っております。しかし、その反面におきまして、あるいは公害の問題でありますとか、過密過疎の問題でありますとか、あるいは住宅の問題、あるいは社会福祉施設の立ちおくれの問題、いろいろ政府といたしまして国民から解決を要請せられている問題が山積しておる。あるいは吹き出もののように吹き出しておると言ってもいいくらいでございます。  そういうことを考えますと、私は、政府経済政策のあり方というものは、いままでのような成長重視政策から、この成長というものはいかなるためにあるのか、その原点に立ち戻りまして考え直さなければならぬ時期に来ておる、つまり、成長よりも福祉社会建設重点の方向へ大きくかじの切りかえをしなければならぬと、さように思うのであります。  そういう国づくりをやっていく、そういうことを考えますると、やはりこれはこま切れの施策ではいかぬと思う。やはり国土を全部見回しまして、総合的な計画がなければならない。これはだれしもそう考えられると思うのであります。  そういう考え方に立ちまして、政府には新全国総合開発計画がすでにあります。それから田中総理の頭の中には日本列島改造論というものがあるわけであります。この考え方、私は、いま日本の置かれておる立場からいたしますると、さような総合開発的考え方というものはぜひ必要である。したがいまして、私は、日本列島改造論、田中首相の構想であるこのお考え、この考えの思想といたしましては、私はこれに賛成をいたすものであります。(拍手)  ただ、私は一昨日も申し上げてきた。わが国の経済政策の運営というものは四つの点を主としてにらまなければならぬ。一つは、何としても物価の問題であります。一つ国際収支の問題である。さらには公害の問題、さらには資源の問題、この四つの点を十分にらんで、これとの均衡において成長の高さをきめていかなければならぬ、かように思うのであります。まあ、田中首相も用意深く、かりに一〇%成長とすれば、かりに五%成長とすれば、こう言っておりますが、私は、一〇%成長というような高さは、これはむずかしいんじゃないか、かように思います。いずれにいたしましても、その四つのかなめを十分見まして、これと均衡のとれた成長率をきめていかなければならぬ、かように考えております。  次に、勝間田議員から、物価騰貴原因につきまして私と総理との間に見解の相違があるんじゃないか、そういうお話でございますが、私はあるとは思いません。つまり私は、国内需要が伸びた、これが主たる原因であるということを申し上げたのでありまするけれども、田中首相は、その伸びた事情はどういうんだということを説明いたしまして、海外要因が非常に影響しておる。これは影響しておることは事実であります。違いはございませんです。  次に、勝間田議員から、昭和四十八年度の予算につきましてお尋ねでございます。  つまり、一般国民に対しましては、年度内減税をすべきではないかというお話でございます。また、公務員等政府関係者に対しましてはインフレ手当を出すべきじゃないかというお話でございます。  私は、勝間田議員の言われるお気持ちはわかる。わかりまするけれども、いま何よりもここで重要なことは、インフレそのものを阻止することである。物価対策というものに再優先度を置きまして取り組まなければならぬということであります。そういう見地から、しばし公務員にも国民にも御協力を願いたい、かように存ずる次第でございます。(拍手)  なお、四十八年度繰り越し措置につきましては、これは減額補正をすべきではないか、そういうお話でございまするけれども、客観情勢が非常に激動しておる、そういうさなかにおきまして政府がとりましたこの繰り越し措置、これは時局にかんがみ妥当なものである、かように考えております。  次に、昭和四十九年度の予算につきましてであります。  勝間田議員は、四十九年度予算は非常にきびしい情勢下において編成されなければならぬ、私もそう思います。したがいまして、国民に対しましても、あれやれ、これやれ、こういう要請がありまするけれども、これをそうやっていくわけにいかない。やはり、しばしがまんを願わなければならぬ、かように考えておるのであります。そういうことも考え、また同時に、国民に対しまして、その生活上においても政府の施策に御協力を願わなければならぬ。そういう立場でありますので、政府自身も、積極的にみずからが率先してそういう姿勢に相呼応するという考え方をとらなければならぬ、さように考えるのであります。したがいまして、予算の規模につきましては二三%増ということが言い流されてきておりまするけれども、私はこの規模をもっともっとできる限り圧縮してみたい、さように考えます。  また、二兆円減税ということについてのお尋ねでございまするけれども、この問題はさっき総理もお答えになった。これは増税もある、あるいは公債の発行もある、そういうことから総合的にきめなければならぬ問題だ、こういう話でございますが、私もその総合的にきめるという考え方で目下せっかく勉強中であります。最終的判断はそれらの予算編成上の諸元とともに決定してみたい、かように考えておるのであります。ただ、総理がこの減税計画については非常に御熱心でございます。御熱心でございますので、その御熱心なお気持ちはよく私はわかります。それができるかできないかをも含めまして、私は十分検討してみるつもりでございます。  次に、社会保障費につきましては特別の配意をしなければならぬというような御説でございましたけれども、予算の編成にあたりましては、公共事業、そういうものにつきましては抑制的にやらなければならぬ、そういうふうに考えまするけれども、とにかくこの物価の高い時期である、そろいうようなことも考えまするときに、世の小さい人、弱い人、そういうような立場を考えて、社会保障的な施策につきましては特別の配意をしなければならぬ、かように考えております。  次に、公共事業費防衛費等につきましては、大胆に削減をやれというお話でございまするけれども、公共事業費あるいは防衛費に限りません、物価安定という対策から見まして適当でないというようなものにつきましては、極力これを抑制をする。しかし、物価安定上必要だというようなもの、また社会保障というような見地から必要なもの、そういうものにつきましては特別の配慮を払っていく、そういうかまえであります。  以上、お答えいたしました。(拍手)     —————————————
  11. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 石田博英君。   〔石田博英君登壇〕
  12. 石田博英

    ○石田博英君 私は、自由民主党を代表し、総理の所信表明について、若干の質問を行ないたいと存じます。(拍手)  その第一は、今回の石油危機を誘発した中東戦争に対処するわが国の外交姿勢に関するものであります。  わが国は、今日までも国連の場その他において公正中立の立場を堅持し、一九六七年の第三次中東紛争の解決にあたって、イスラエルの占領地域からの撤退を求めた国連決議に賛成をいたしてきたのであります。それにもかかわらず、アラブ石油産出国がわが国に対する石油供給削減することになったのは、イスラエルを支持する米国とわが国との従来の関係に基づいた誤解によるものと思われます。この誤解を解消してアラブ諸国の理解を求め、わが国の中近東政策を明確にするために、今回政府三木特使を派遣することになったのは、まことに適切な措置であって、この措置に対しては敬意を表するものであります。  しかし、わが国の外交政策が、何か事が起こるたびに、目先の利益にとらわれて変更されるような印象を各国に与えるならば、これは国際信用の失墜に相なるのでございます。  この際、外交政策についての基本的態度をさらに具体的に明確にして、その原則に基づいて、ときどきの情勢に対応した外交の展開をすることが肝要であると考えるのであります。  すでに、わが国は、しばしば、平和に徹するということを申し述べてまいりました。しかし、私の言う基本的原則というのは、もっと具体的なものを言うのであります。  第一は、イデオロギーや体制の違う国家間に相互の理解を求め、平和共存の路線を確立するということであります。  すなわち、東西対立を前提とした冷戦時代の考え方を捨て去るということでございます。昨年、田中総理が、組閣早々、日中国交正常化を実現し、また、先般、みずからソ連を訪問して、両国の親善友好関係を深めたことは、この趣旨に基づくものとして、高く評価すべきであります。  第二は、いわゆる南北問題についてであります。  今日の石油危機にあたって、東南アジアなど、開発途上国の資源開発にわが国が積極的になることについては異存はありませんが、それは、あくまで、開発途上国の発展と民生の向上に寄与することを大前提として行なわれなければなりません。この点からも、政府がみずから言ったわけではないと思いますが、いわゆる資源外交ということばは誤解を招きやすく、かつ、日本中心の印象を与える危険がありますので、慎むべきであろうと思うのであります。  第三は、一切の武力による成果を否定することであり、第四は、世界平和の確保のためには、いかなる国に対しても、その領土、主権並びに独立を尊重するということでありましょう。  また、同時に、従来のわが国の外交姿勢を反省いたしますときに、人事を含めて先進国偏重の体制にあったことは否定できません。この際、この姿勢を大きく改める必要があると信じますが、総理の御所見を伺いたいのであります。  お尋ねしたい第二は、当面の石油対策及び抜本的な資源エネルギー対策についてであります。  今回の石油危機に対処する第一の方法は、むろん、外交努力によって、アラブ諸国に対し、輸出の大幅削減の緩和、撤廃を求めることにありますが、第二は国内対策であります。  われわれは、従来、特に、石油電力等に対して、官民ともに無配慮な浪費を続けてきたことをこの際深く反省し、この姿勢を改めて、浪費の徹底した自粛削減と代替資源の活用をはかることであります。  石油消費の規制は、今回提出されます石油需給適正化法によって法的規制をはかるのでありますが、国民各層の理解と自覚に基づく自主的節約が必要であり、また、国民生活の水準を維持しつつこれをなし得る余地はなお多いと信ずるものであります。  特に、例を暖房用燃料にとりまするならば、十数年前までは、石炭、薪炭など、そのほとんどが石油以外のものによってまかなわれてきたのであります。したがって、これをもとに戻すことは可能であるはずであります。政府はこの種の転換が行なわれやすいように助成するとともに、衆知を集めて、浪費の排除をこまかく指示、徹底すべきであると考えます。  第三は、新しい資源の開発にわが国が参加し、促進することであります。  その一つとして、日ソ協力によるシベリア開発であります。総理は、先般の訪ソに際して、この問題について具体的な話し合いを行なわれたと承っておりますが、その現状と見通しについてお伺いをいたしたいと存じます。  また、現在、この計画の中には米国の参加が予定されていますが、米国の国内事情によってこれが困難になった場合はいかがなさいますか、あわせて御答弁をお願いいたしたいと存じます。  なお、それとともに、東南アジアその他の地域における共同開発の折衝の進展を期待いたしたいと存じます。  さらに、国内においては、水力、特に揚水発電、石炭など、既存のエネルギー資源を見直すとともに、この際、恒久対策として、地熱、太陽熱などの利用のほかに、新しいエネルギー資源の開発として、核融合等の研究に国家資金を惜しみなく投入すべきであると思います。このたび、原子力委員会の核融合研究開発懇談会は、すでに世界的水準に達しているわが国の核融合研究をさらに進めるために、昭和五十四年度までに約四百億円を投入して核融合炉実現一歩手前の臨界炉心プラズマを建設すべきであるという報告をまとめました。この核融合エネルギーは、人類最後の、しかも、永遠のエネルギーといわれるものでありまして、しかも、公害を伴わないものというのであります。政府は、この報告を尊重し、その実現に最善を尽くすべきであると思うのであります。  今回の石油危機は、まあ、いずれやがては解決を見るでありましょう。しかし、このことは、現状が小康を得るというのにとどまって、本質的な、基礎的な条件には変化がないと思うのであります。  その基礎的条件とは、われわれが消費をいたしておりまする石油資源は、明らかに有限であります。しかも、その限界が迫りつつあるのであります。熱エネルギーは、核融合エネルギーによって解決されるといたしましても、それが実用化し、しかも大量供給が可能になるまでの間、既存のエネルギーが現在の消費の拡大にたえられるかどうか。しかも、資源は、石油に限らず、鉄鉱石、金属類、乱伐すれば木材までも、すべて有限であります。  元来、資源も、食糧生産力も、また、廃棄物、排出物その他の許容量も、すべて有限なのであります。われわれは、この有限の世界の中に生きているのであります。それにもかかわらず、われわれは無限の世界に生きているかのごとき放漫な消費と行動を続けてまいりました。  私は、人類文明の未来に横たわる障害として、核戦争、公害、資源の枯渇のほかに、人口の爆発的増加をあげなければならぬと思います。世界の人口は現在三十六億、年間の増加率は約二%でありますが、このまま推移いたしますならば、西暦二〇〇〇年には七十億、二〇三〇年には百五十億に達します。しかも、この勢いはとどまるところを知らないのであります。  地球は、一体この膨大な人口を養うことができるでありましょうか。来年は、世界人口年として、この問題を国際的に取り上げることになっております。このままの勢いで人口が増加し、先進国が成長競争にうき身をやつすならば、われわれは破滅の断崖に向かって全速力で走っていくことになるのであります。  人口の増加率が高いのは開発途上国でありますが、一方、米国人は一人でインド人六十人分、日本人は一人でインド人二十五人分の資源を消費していることも事実であります。人口増加について開発途上国の自制と協力を求めるためには、先進国が、資源の消費について、まずみずから節するという実績を示さなければなりません。(拍手)  この際、わが国も、有限の世界に立つ行動原理に転換し、資源多消費型産業構造を、資源節約型、知識集約型産業中心の産業構造へ改編し、浪費型経済、使い捨て国民生活を改めて、資源節約の中に生活の楽しみと豊かさを求めなければならないと思うのであります。(拍手)  文明、文化とは、決して浪費やぜいたくのことではなく、合理性の追求にあると信ずるのであります。今回直面した石油危機は、われわれが有限の世界に生きている事実を強く認識し、大きく行動と思考の原理を転換することができるといたしますならば、これは、災いを転じて福となす機会であるともいえると思うのであります。(拍手)この点について、総理の御所信を承りたいのであります。  第三にお尋ねしたいことは、物価対策、特に総需要抑制についてであります。  総理の御発言のごとく、物価抑制の根本は総需要抑制であります。このため、政府は、財政支出の繰り延べ、金融の引き締め、貯蓄の増強による購買力の吸収等の措置を実施し、四十九年度財政規模についても、公共事業等の圧縮を中心とし、極力抑制する方針を明らかにいたしましたが、それらの措置の適切な推進を強く期待しつつ、これに関連し、二、三の要望を述べ、総理の御見解を承りたいと存じます。  その一つは、六兆円といわれる空前の年末ボーナスが物価に与える影響であります。  政府は、すでに、定期預金金利あるいは非課税貯蓄限度の引き上げを決定いたしましたが、このほか、有利な条件の特別国債の発行、勤労者財産形成貯蓄に対する優遇措置拡大が必要と存じます。特に、勤労者財形貯蓄については、税額控除制度、割り増し金制度の導入など、飛躍的な、発展的な措置の検討が必要と存じます。  しかし、政府がすすめて勤労者の貯蓄を増進する以上、その貯蓄の価値が失われないように、物価抑制に対する大きな責任があることをあらためて強く自覚いたしていかなければならぬと信じます。  また、すでに、勤労者を中心に、二兆円減税国民に公約をせられました。これは善政であって、その目標は、事情の許す限りすみやかに達成すべきであります。しかし、これは、適確な吸収策を伴わない限り、新しい購買力となって物価影響することは避けられません。  他面、この減税の恩恵に浴さない、所得税を納めないでもいい人々が七百万人以上にも達しているのであります。この人々は、若年層、独身者のほかに、家族の多い低所得者でもあります。物価が上がった分は減税で補うというわけにはいかない人々であります。財源の余裕があれば、この人々に対する対策を優先的に配慮すべきであると思います。  また、この減税の公約のあとで石油事情の激変があったのであります。その他のすでに決定した政策も同じでありますが、変動に際会した転換は、決して公約違反ではありません。(拍手)これらを勘案し、減税の目標は守りつつ、その実行方法については再検討を要すると思いますが、総理の御見解を承りたいと存じます。  次に、石油危機対策、物価抑制についての基本的姿勢について申し述べたいと存じます。  今日の状態を招来いたしたことについて、その責任の一切が歴代政府高度成長政策にあったという非難があります。しかし、これは必ずしも妥当なものではありません。この高度経済成長の結果、たくわえられた外貨や経済力があったればこそ、この危機に対処し、また新たなる資源開発に協力することができるのであります。(拍手)また、幾多のひずみが伴ったとはいえ、国民生活も向上し、豊かになったことも事実であります。  しかし、その政策の転換がおくれ、その惰性が今日まで続いてきた事実、またその弊害の存在も認めなければなりません。政府は、これに対し深く反省し、思い切って生産第一から国民生活第一主義への政策転換を行なうべきであります。  また、資本主義の弊害の最も大きなものの一つは、自己の勤労によらない多額な所得が存在するということであります。投機、買い占め、売り惜しみ、地価の急騰等による暴利がそれであります。しかも、それがまじめに働いている人たちの所得との間におびただしい格差を招来しているということが重大であります。しかも、それは高度成長政策によって助長されたということも必ずしも否定できないのであります。  われわれの守るべき自由というのは、政治的、社会的な自由であって、決して経済の放漫ではありません。  政府は、この際、税制を改め、土地規制、要すれば私権の制限をも含めて、この社会的不公正の是正に勇断をもって対処すべきであると思うが、総理の御見解を承りたいのであります。(拍手)  石油危機を乗り越え、資源事情を克服し、物価抑制して国民生活の安定をはかるためには、与党たると野党たるとを問わず、互いしに力を合わせ、また国民各層の理解と協力をまたなければ効果は得られません。  政府は、過去を反省し、その責任を自覚し、みずから率先する姿勢を示すとともに、その適切なる措置をすみやかにとらなければならぬことはむろんであります。このたびの各地に見られた買い占め騒ぎの裏には、行政指導や対策が時宜を失したり誤っていたことによる部分も多かったのであります。同時に、政府はあげて、国民とひざを突き合わせ、その声を聞いて、理解を求める努力を惜しんではなりません。同時に、既往を責め、その責任を追及するだけでは、今日の困難の具体的克服にはならないのであります。(拍手国民各層の心からなる協力こそ最大の力であると信じます。  今回上程されました(「まだされていないぞ」と呼ぶ者あり)二つの法案に対し、各党とも適正あるいは厳正な審議を願い、すみやかにこの法案の期待する効果があげられるよう御協力を願うものであります。  これらの点について総理の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
  13. 田中角榮

    ○内閣総理大臣(田中角榮君) 石田博英君にお答えをいたします。  まず第一は、外交の基本的態度についてでございますが、外交の基本的態度につきましては、原則を確立し、具体的に明確にすべきであるとの御指摘はもっともなことでございまして、御提示のあった諸原則は、わが国のこれまでの外交の基本を貫くものとして同感の意を表する次第でございます。  すなわち、私が内閣を組織いたしまして以来、中国とは国交を正常化し、ドイツ民主共和国、ベトナム民主共和国とも外交関係を設定し、社会体制を異にする国家との交流を通じ、東西間の緊張緩和に貢献することをわが外交の基本の一つとしておるのでございます。  南北問題につきましても、まさに相手国の立場に立ち、その発展と民生の向上に寄与することを前提にしなければならず、右を踏まえまして、近く東南アジアの諸国を訪問し、親善友好の実をあげたいと考えておるのであります。  平和憲法をいただき、平和外交の推進を外交の根幹とするわが国といたしましては、武力による領土の獲得及び占領は許容できないところでございます。これこそ歴代自民党政府の戦後一貫した外交の柱なのであります。  なお、人事を含めて先進国偏重の外交姿勢についての御指摘でございますが、先進国に対する外交と開発途上国に対する外交とは相互に密接な関連があり、そのいずれかに偏重するということでは、変革する世界の情勢に対応できなくなっております。それぞれに対する外交を一体として適正な措置を講ずるというのがわれわれの外交姿勢であります。  このような観点から、開発途上国に対する外交実施体制が必ずしも十分でなかった点は反省し、人員、機構の拡充、通信連絡体制の整備を含め、外交実施体制の充実のため諸施策を強力に推進をしてまいりたいと考えます。  石油対策及び資源エネルギー対策等についての御発言がございましたが、石油危機の解消のためには、中東問題の早急な解決をはかることが基本的な道だと考えておるのであります。政府としましては、十一月二十二日、中東問題に関するわが国の態度を明確にいたしましたことは御存じのとおりでございます。また、中東諸国との関係を一そう緊密にするため、近く政府の特使として三木総理を派遣することといたしておるのであります。わが国としましては、今後ともアラブ諸国がわが国の立場を十分理解するよう、一そう努力を払いますとともに、産油国と消費国とが相互に対決することなく、共存共栄の見地に立って、石油の安定的供給及び増産を行ない得るような状況をつくり出すことにつとめることが肝要であると存じておるのであります。このため、わが国としましては、産油国の事情に応じ、工業化をはじめとする経済開発に積極的に協力をしてまいりたいと考えております。  石油電力節約のための御発言につきましては、政府は率先して石油電力の節約を行なうように取り計らっておりますし、特に、一般国民に対しても、不要不急等の問題を含めて石油の節減、電力の節減をお願いをいたしておるのでございます。  また、御指摘のとおり、代替資源の開発につきましては、海外及び大陸だなにおける石油資源の開発を強力に推進する一方、原子力発電の積極的な推進、水力発電の見直し、地熱発電、石炭火力発電の開発及び活用等に対して・いま諸般の政策を練っておるのが実情でございます。さらに、核融合、太陽エネルギー、水素エネルギー等、豊富かつ無公害の新エネルギー技術の開発の促進を行なっておるのでございます。  また、シベリア資源開発についての御発言がございましたが、チュメニの石油開発、ヤクートの天然ガス開発等のプロジェクトにつきまして、日ソ当事者間で交渉が進められております。本件につきましては、日ソの間で、お互いが協力をし合いながら開発をいたそうという基本的な合意がなされておることは御承知のとおりでございます。訪ソの際、ブレジネフ書記長と私との間に、互恵平等の原則に基づき、シベリア開発を推進することにつきまして基本的な合意を見ておりますから、当事者間の交渉は、漸次進展をしておるわけでございます。  また、日本政府としましては、各プロジェクトについて、両当事者が合意をすれば、必要な信用供与や、また政府間取りきめを付与するというように、前向きに対処する方針でございます。また、大規模なプロジェクトにつきましては、日ソだけではなく、米国その他第三国の参加を否定しないことになっておるわけでございます。これらにつきましては、アメリカとの間に、いま米ソ、日米、日ソというような形で、緊密な連絡がとられておりますので、三国共同の形でこれらのプロジェクトが具体するものと考えておるのであります。  次は、核融合の問題についての御発言がございましたが、核融合は、将来にわたって最大の可能性を秘めた無限の新エネルギーであることは御指摘のとおりでございます。幸い今日までのわが国の研究成果は、世界水準に比肩し得る段階にありますことは、そのとおりでございます。今後の研究推進に大いに期待すべきものがあると考えておるのであります。政府は、原子力委員会の考え方に沿って、格段の努力を傾注してまいりたいと考えます。  わが国の産業構造等についての御指摘がございましたが、御指摘のとおり資源エネルギーは有限なものでございます。無限というべき新エネルギーが開発されない限り、エネルギー資源は有限なものという前提に立って、多消費型の産業から省資源型の産業に転換をしていかなければならぬことは、間々申し上げておるとおりでございます。先回の国会でも、重化学中心の工業から知識集約型産業、付加価値の高い産業に転換をしなければならない、それが公害を除去し、日本の新しい産業構造の前提でございますと述べてきたわけでございますが、今次石油危機を契機にして、なお一そうその感を深くしておるのでございます。  それから、物価対策と総需要抑制についての御発言でございますが、現下の経済情勢にかんがみまして、物価問題の解決こそがすべてに優先して取り上ぐべきであるということは、先ほども申し上げたとおりでございまして、政府はこれに全力を投入してまいりたいと考えております。  物価騰貴抑制するためには、総需要抑制をはかることが基本であることも、先ほど申し述べたとおりでございますが、そのため、年初以来、各般の施策に加えまして、財政金融政策、民間設備投資等について、一そう抑制的な運営につとめてまいりたいと考えております。昭和六十年展望の大型プロジェクト等につきましても、当面は総需要抑制との関係から大幅なスローダウンを考慮したいと考えております。  政府は、これら総需要抑制をはじめとする有効適切な物価対策の推進によりまして、物価の安定をはかり、勤労者の貯蓄の価値が失われることのないよう、全力を傾注してまいりたいと考えておるのであります。  次は、減税についてでございますが、減税につきましては、先ほど勝間田君の質問にお答えをしたとおりで御理解をいただきたいと思います。  ただ、後段言及されました、減税の恩恵を受けない階層に対する施策につきましては、従来から社会保障の面で配慮してまいりましたが、四十九年度予算においても、生活保護、福祉年金その他の給付の改善につきまして、十分考慮をしてまいりたいと考えるのでございます。  次は、生産第一主義から国民生活第一主義へということでございますが、四十八年度予算編成の冒頭申し述べましたとおり、戦後の生産第一主義、輸出中心主義ということによって、それなりの大きなメリットはあったわけであります。あの敗戦から今日の経済復興をなし遂げることができました。そして、国民に職場を提供することができたのであります。それで、なお輸出力も培養せられました。先ほども述べたとおり、外貨も相当量保有することができたのでございます。国難ともいうべきこの石油危機に対応して、国民生活に絶対不可欠のものについては、輸入する外貨の余力もございますということを一言にして述べておるとおり、これは戦後の国民のたゆまない努力の成果であることは申すまでもないのでございます。  しかし、先ほども述べましたとおり、輸出第一、重化学中心のというような工業から、知識集約的産業に移行しなければならないということと同時に、国民生活重点、社会保障の充実を重点とした、豊かな、この国に生まれたことを真に喜び合えるような国につくり上げるように方針を変えなければならないということは、前段から申し上げておるとおりでございます。(拍手)  そのためには、これから大きな困難もあると思いますが、国民的な支持と理解を得ながら、政府も新しい国づくりのために全力を傾けてまいりたいと存じます。そのためには国民の声を聞かなければなりません。政府も懸命な努力を傾けますが、政党政治でもございますし、党は国民との第一線にあるわけでございますから、格段の御協力を切にお願いをいたします。(拍手)     —————————————
  14. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 藤田高敏君。   〔議長退席、副議長着席〕   〔藤田高敏君登壇〕
  15. 藤田高敏

    ○藤田高敏君 私は、日本社会党を代表し、勝間田議員の質問に引き続き、いま、国民はこの国会に対し何を要求し、田中内閣に何を抗議しているか、私はこれら国民の立場から、田中内閣の失政と盲点を追及しながら、以下質問を行ないます。(拍手)  いま国民政府に要求する第一の重要課題は、独占企業や大会社に金もうけをさせているインフレ問題と、国民を苦しめている高物価問題を早急に解決せよということであります。そこで、私は、インフレ対策に言及する前提として、まず政府の現状認識についてお尋ねします。  総理は、わが国経済の現状を悪性インフレと見ているのか見ていないのか。一昨日の施政方針を聞いても、先ほどの答弁を聞きましても、インフレだという認識さえないようでありますが、インフレでないとすれば、総理インフレをどのように定義づけるのか、国民の前に明らかにしてもらいたいのであります。(拍手)  福田大蔵大臣は、昭和四十一年の国債発行国会以来の物価論争において、あなたは、インフレとは消費者物価卸売り物価が慢性的に上昇し、貨幣価値が下落して、国民の中に金を物にかえる換物運動が起こる事態をインフレだと定義づけております。田中内閣実現後の状態は、福田大蔵大臣が指摘したこれらの条件が、急速に、しかも大幅に、長期にわたって起こっております。しかも、卸売り物価消費者物価上昇を誘導する形の悪いインフレの状態が続いております。安定成長論者を自認する大蔵大臣の認識と定義づけをあらためて聞かしてもらいたいのであります。(拍手)  インフレは、殺人罪より重い政治犯罪であります。インフレと高物価問題を解決できない内閣は、直ちに退陣に値するものといわざるを得ないのであります。(拍手)  インフレは、言うまでもなく、金もうけできる者と損をする者とをつくります。いま、わが国で、インフレ金もうけの代表的なものは、土地を媒介として営利をむさぼる大企業土地成金であります。和光証券調査によると、東京証券市場上場会社の所有地の帳簿づら価格が二兆九千億であるものが、時価相場では六十一兆円にもなっており、その差額が含み資産となり、その含み資産を担保として、また金を借り、その金で信用膨張をさせながら、地価をつり上げつつ新幹線や高速道路の予定地や工場再配置計画に基づく指定地域の土地買い占めに狂奔し、労せずしてばく大な所得と利益をあげているのであります。(拍手)昨年の長者番付でも、百人中九十五人までが土地成金で占めているではありませんか。この水先案内こそ日本列島改造推進者の田中総理だと言われてもしかたがありますまい。(拍手)  もう一つの代表的な例は、銀行のもうけ高であります。全国十四の都市銀行が、今年九月決算で千三百三十五億円もの利益をあげ、これで十八期九年間も連続してもうけっぱなしであります。このうち、上位七銀行は、この半年間で百億以上、第一位の銀行は百六十億円もの利益をあげ、一日換算にしますと、約八千七百万円ものもうけをしておる計算になっているのであります。  また、政府生産調整カルテルを許可し、操業短縮で独占価格をつり上げさせた鉄鋼を見ても、鉄鋼大手四社の経常利益は、この半年間で一千五百億円、新日鉄では、一社だけで七百八十億円の経常利益をあげ、加えて、特別償却費と公害防止準備金で四百二十六億円の内部留保を行なうほど、独占資本はインフレで史上空前の利益をあげておるのであります。(拍手)  政府は、税金面でも、これら大企業には、特別優遇措置により、取るべき税金をまけてやり、この新日鉄の例では、公表法人税額は、営業利益の二十分の一、純利益の九分の一しか税金を取っていないのであります。なぜこのように独占企業だけを優遇するのか。政治献金に裏づけされている政府と独占の癒着を物語るものといわざるを得ないのであります。(拍手)  その反面、年金生活者、低所得者層、老人ホーム等での生活者や勤労者は、インフレではかり知れない犠牲を受けております。  この田中内閣政策の誤りと貧困は、いまや国民相互の間に、救いがたい貧富の差を拡大し、年間所得十億円もの豊かな生活者の陰に、わずか、四人家族で月十万足らずのサラリーマンの生活や、月五千円の貧しい年金でその日暮らしもできない国民がたくさんいるのであります。この社会悪、この不公平、この不平等政治が、いまやトイレットペーパー騒ぎや灯油問題に見られる爆発的政府不信になってあらわれておるのであります。(拍手)したがって、政府が幾ら声を大にして石油危機を叫び、国民協力を訴えても、もはや国民は、政府の言うことを絶対信頼いたしておりません。このいわば政治不信の責任は一体だれがとるのか。この田中内閣責任をきびしく追及するものであります。(拍手)  政府インフレ物価対策として、八月の三十一日、緊急物価対策を出しましたが、これは大道での将棋と同じで、王手のきめ手のないものばかりであります。たとえば総需要抑制として、道路、鉄道、港湾等、大型プロジェクト等約七千億の公共事業の一時繰り延べ策を出しましたが、これは昨年来からの繰り越しものであり、あくまでも繰り延べであって、削減ではないのでありますから、抑制効果の薄い、全く見せかけのものになっております。  政府が本腰を入れて総需要抑制を断行するというのであれば、高度経済成長の最たる事業として、ことしから五十二年度までの道路投資五カ年計画、十九兆五千億、この計画は、御承知のごとく過去十九年間にわたる投下事業費の一・五倍を上回る膨大なものでありますが、この計画を白紙に返し、再検討するぐらいの英断がなければ、土地の買い占めもあとを断たないし、公害と交通地獄を引き起こしている自動車の生産台数にもブレーキがかかるほどの抑制効果は出てこないと思うが、どうか。  福田大蔵大臣は、現在はストップ・アンド・シンクで、立ちどまって考えるときだと言っておりますが、そうではなくて、インフレ抑制には、勝間田議員も指摘したとおり、日本列島改造計画をストップし、国総法を撤回し、大企業優先政治姿勢を大胆に転換することであります。(拍手)  総理施政方針演説でも総需要抑制を強調しているが、そうであれば、今次の補正予算に、私が指摘する性格の需要抑制策をなぜ出さなかったのか。政府需要抑制とは、大資本家には手をつけず、国民にだけ犠牲を求める耐乏策であり、本来的な需要抑制の効果のあがるものはほとんどなく、全く無為無策であります。  田中総理、あなたは本気でインフレ退治をやる意思があるのかないのか。たてまえ論や演説の問題ではなくて、国民は本音を聞かせてもらいたいのであります。(拍手)  田中総理、残念ではありますが、田中内閣実現の翌月から卸売り物価主導型のインフレに移っております。ある経済学者は、これを田中インフレと言っております。この悪性のインフレ原因は、日本列島改造計画と国総法を撤回する以外に克服することはできません。田中総理にその意思があるかないか、重ねて私は質問するものであります。(拍手)  それと同時に、福田大蔵大臣にお尋ねします。  今回の内閣改造で、あなたと総理との会談では、この日本列島改造計画と国総法は白紙に返すとの合意ができ、そのことを前提としてあなたが大蔵大臣を引き受け、インフレ問題にも対処する決意をしたのではなかったのか。国民はそのように理解しているし、この方針の根本的な転換なくしては、インフレ退治も物価高解決も困難であると確信しますが、総理大蔵大臣との考え方に相違があるのかないのか、明快な答弁を求めるものであります。  次に、私は、大企業独占価格の規制問題と公共料金の問題については、勝間田議員の質問にもありましたので、ただここで簡単に触れたいと思いますことは、この現在の物価高を押える最低の施策として、国鉄運賃の値上げを中心とする全公共料金値上げ消費者米価の値上げをストップすべきであると思うが、その意思があるかどうか。問題は、やれることをやるかやらないかであります。総理考え方を承りたいのであります。  次に、私は、今後の予算編成方針のあり方について、インフレ予算克服の立場から、その方針転換を強く要求するものであります。これまでの予算編成は、いわば日経連・財界予算ともいうべき産業基盤強化のインフレ予算がすべての土台となり、いわば余り財源で福祉予算を上乗せする方式であったと考えます。この方針が日本列島改造計画の上を走る限り、財政インフレ解決はもはや考えられません。  そこで、これからの予算の組み立て方としては、当面、全予算の二五%を目標に社会保障予算ワクを先取りして、生活保護、老人福祉、母子世帯、身体障害者関係、児童福祉、看護婦不足解消、年金、健保等の社会保障費や環境改善費等を優先財源として確保し、そのあと、他の産業基盤関係の予算を上乗せする方式に百八十度の転換をしない限り、インフレ財政からの脱却も不可能であり、福祉元年はまさに福祉が死ぬ福死元年となって、悪循環を続け、インフレの谷間にあえぐ国民は、その生存権さえ守ることが困難になります。  総理及び大蔵大臣にこの方針の転換についての見解を求めるとともに、いやしくも、地方自治体から保育所の超過負担訴訟を起こされているようなぶざまなことは直ちに解消すべきであると思います。所管大臣の意見も含めて見解を承りたい。  第三に、私は、先刻来より指摘してきたとおり、インフレ促進の主たる原因土地問題があります。  ここ数年間に民間企業の買い占めた土地は、国土面積の一%をこえる四十万ヘクタールにも及び、経済企画庁報告でも、全国市街地価格は、昭和三十年からことし三月までに二十三倍にも達したと報告し、田中内閣実現後一年間で三四%以上も値上がりしております。  この土地問題の解決は、わが党がかねてから主張しているように、土地の取得は市町村長の許可事項とするとともに、公共用地拡大のため自治体の先買い権を強化すること、固定資産評価額を基準とする標準地価をこえる譲渡所得に対しては、高率の譲渡税を課する必要があります。また、投機を目的とする土地に対しては土地増価税、臨時財産税の創設を主張しております。  政府は、これらの土地対策に対しても、税制上も何ら積極的施策を講じていないのはどういうことなのか。勤労者の住宅用地の確保問題を含め、これらの諸点について総理並びに関係大臣の意見を聞かせてもらいたいのであります。  次に、私は、インフレの被害救済制度について質問します。  インフレは少数の豊かな人々を一段と豊かにし、貧しい人々を一段と貧しくしています。この立場から、私は、当面、年金生活者の年金制度を積み立て方式から賦課方式へ転換すると同時に、各種年金の一本化への調整期間に先立ち、賃金及び物価スライド制を前提とする、まともな生活のできる、全国一律の最低保障年金制度を創設するとともに、年金には税金をかけないこと、また、現在の年金制の物価スライドの発動は、厚生年金は来年の十一月、国民年金は五十年の一月からとなっておりますが、このインフレ下では全く実情に合わないので、せめてこれぐらいはすべて来年の一月実施に繰り上げ、年金受給者に対するあたたかいお年玉にする意思がないかどうか、政府の見解をただすものであります。(拍手)  第二に、インフレ救済緊急対策は、零細な預貯金者に対しインフレの被害補償をやるべきであります。  政府は、総需要抑制策の一環として預金金利の一%引き上げ策を検討しているようでありますが、いわゆる物価スライド制による預金元本の保証政策をこの際新設すべきであります。その保証対象額は勤労者の平均貯蓄額を一つの目安とし、この制度を三年ないし五年さかのぼって適用してはどうかと考えますが、大蔵大臣の所見をただしたいのであります。(拍手)  第三に、私は、勤労者の減税については、税額控除、戻し税方式によって年内減税の実施と、さらに公労協のインフレ手当の要求に政府並びに関係当局は直ちに応ずることを強く要求するものであります。(拍手)  異常な物価高のもとでは、今年の賃上げ分は人事院方式による計算によっても完全に帳消しとなり、税金は名目所得の上昇のため、年末調整では税の追加払いをしなければならない現状であります。政治責任においてなすべきことをしないでストライキはけしからぬとは、そのまま政府にそのことばを返上しなければなりません。(拍手)  なお、私は、金融引き締めのしわ寄せと資材難に悩む中小企業対策及びわが国農政が直面している基本問題に触れる予定でありましたが、これまた勝間田議員が質問しましたので省きます。しかし、今日の世界的な食糧危機の中で、食糧の自給自足の問題は事国民の胃袋に直結する問題であるだけに、石油危機といえども比較にならない政治の根幹にかかわる問題であることを私は強く警告をし、この立場からも、わが国農業を壊滅させ、地価高騰の暴挙ともいうべき三十万ヘクタールの農地転用構想は直ちに撤回することを強く要求するものであります。(拍手)  次に、私は、今回の中東戦争に端を発した石油問題は、わが国政治の上にきわめて痛烈な教訓を与えたと考えます。その立場からわが国内外政策の転換を政府に強く求めるものであります。  この現実の教訓の第一は、日本アラブ外交が日米安保体制のワク組みの中で終始し、常に日本アメリカ・イスラエルの立場からアラブ諸国に対応してきた、いわゆる金さえ出せば物が買える、あるいは物が売れればよいというようなエコノミックアニマル外交失敗であったと同時に、日米安保外交の敗北と終末を警告したものであったと考えます。(拍手)この現実を通して政府は、日米安保一辺倒の外交方針を転換し、自主中立の平和外交に徹し、当面、特にアジア諸国との友好親善強化に最善を尽くすべきであると考えます。  この立場から、私は第一に、中華人民共和国との関係では、昨年の日中国交正常化の共同声明を基本として、航空協定、通商協定など一連の実務協定の締結を急ぐことを強く要請するものであります。その後の経過と今後の見通しについて聞かせてもらいたい。  第二に、朝鮮人民民主主義共和国に対しては、わが国は一切の敵視政策をやめ、朝鮮は一つであり、いかなる分裂政策にも反対し、南北朝鮮の自主的、平和的統一を支持する立場から、国交の正常化を急ぐべきだと考えますが、政府の見解をただしたいのであります。  なお、金大中事件については、主権侵害もさることながら、金大中氏の人権さえ守ることができない日本外交の姿に対し、諸外国から国際的な不信とひんしゅくを買っております。この際、金大中氏等の再来日をあくまでも実現させ、わが国外交の自主性をこのときこそ内外に発揮すべきであります。  また、この問題の完全解決まで、日韓定期閣僚会議と一切の経済援助は中止すべきであります。(拍手) このことが、南北朝鮮の統一を促進し、全朝鮮民族の願いにも一致する自主中立の外交であると確信しますが、総理、外務大臣の見解をただすものであります。(拍手)  第二の教訓は、資源は全世界の人類の繁栄と福祉のためのものであるという認識から、わが国の資源問題に対する発想の転換と産業構造の転換を求めたことであります。  すなわち、資源の活用は全人類史的立場から、しかも長い将来にわたって計画的に、有効に活用すべきものであること、わが国のように、資源を持たずして最も多くの資源エネルギーを使ってきた国は、特にこの立場から、くたばれGNP、すなわち資源むだづかいの経済体質と産業構造の転換を急ぐべきであります。そのためには、ローマクラブ的発想に代表される省資源産業への転換が必要であり、その直接の出発点に、日本列島改造計画の中止と資源浪費型重化学工業中心の政策転換を位置づけるべきであります。  いま、われわれの周辺は、有毒、有害、ききめのないもの、俗悪なもの、欠陥品などで取り巻かれ、一億総浪費の拡大生産下に置かれております。かかる浪費産業にいまこそ政治は手をつけるべきではないでしょうか。  総理の施政方針で価値観の転換を強調しましたが、これはこれらの営利企業に向けてこそ強調することばであって、これに手をつけないでおいて国民にだけ節約を美徳として押しつけることは本末転倒であります。したがって、この発想と政策転換の勇断があれば、石油問題から起こっている家庭用灯油、中小企業、農漁業用灯油、軽油、A重油等、生活必需物資は十分保障されていくものと考えます。総理及び担当大臣政策転換の決意と生活必需物資確保の見通しについてお尋ねします。  この決断もなくして、今日のインフレ物価高の問題まですべて石油問題にすりかえ、国難来たるのキャンペーンのもとに田中内閣の失政をおおい隠すことは、国民の名において断じて許されないところであります。(拍手)  いわんや、石油危機を口実にして、財界、業界の圧力に屈し、公害企業自体の公害防止対策や政府の監視、指導は絶対にゆるめてはなりません。特に、エネルギー危機の対策として、数世代に影響を及ぼす放射能の危険に目をふさぎ、安全性の確認もないまま安易な原子力発電に走ることは、断じて許してはいけません。  また、石油問題が直接官僚統制への道を開き、物資及び価格統制が即賃金統制に直結する所得政策採用は、これまた断じて許すべきではないと考えますが、これらに対する総理並びに通産大臣の見解を聞かせてもらいたいのであります。  最後に、私は、石油危機に関連して政府が提出しようとしているいわゆる石油関係二法について質問します。  この両法案を通して最も問題になる点は、カルテル行為によって物の量と価格を中心に統制し、官僚統制に道を開く点であります。この法律では、カルテル条項については法律のワク外に出たとはいえ、覚書条項によって実質的には法律的効力を持たせ、独禁法に風穴をあけ、関係業界の談合によって政府が統制価格と需給計画を決定することにしております。現在のようにあらゆる分野でカルテル心理が醸成されている中で、業者がわが子に名をつけるように談合価格を決定するのであるから、その価格は高い水準で決定されることは当然の帰結であります。また、その需給関係においても、業界優先、消費者あと回しとなり、今日のように事態が急激に動いている中では、特に一部の大手メーカーの大口需要取引に効果が及ぶだけで、インフレ、高物価の中にあえぐ消費者と中小企業にとっては、依然として物不足と高い値段を押しつけられる結果となると思うがどうか。  時間の関係で省略をいたしますが、このような官僚統制への道はやみ行為への道であり、見合わすべきだと考えますが、政府の見解をただすものであります。このような統制経済への序幕のレールを敷かないためにも、また、流通面に生活必需物資を正しく流していくためにも、われわれは前の国会において生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律をつくったのではなかったのか。  この買占め規制法の制定にあたり、われわれの提出した法案から、売り渡し命令価格調査の都道府県知事への委任、きびしい罰則規定条項を骨抜きにしたのは一体だれであったのか。また、法律制定後、あれだけ買占め、売惜しみが公然と行なわれたにもかかわらず、調査結果をさぼってきたのは一体だれであったのか。このしり抜け法をこの国会でわれわれの主張どおり法律改正を行ない、国民の民主的な監視の中で運用の実をあげる政策こそ、石油二法に先行してなすべきことではなかったのか。いわゆる買占め規制法強化と石油二法運営との関係についても、総理並びに通産大臣の見解をただしたいのであります。  以上、私はインフレ物価石油、当面する外交問題等について質問をしてきましたが、最後に私は一人の政治家として、三十七年前現職大蔵大臣であった高橋是清大臣が死去した当時のファッショ政治、暗黒政治日本歴史を振り返っております。いまだ田中内閣政治姿勢の中に小選挙区制断念の消えうせない現状を考えるとき、今後のわが国政治の行くえについて、ファッショ政治国民耐乏の統制経済への歴史を再び繰り返させてはならないとのかたい決意を私の心の中に誓いつつ、私の質問を終わるものであります。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
  16. 田中角榮

    ○内閣総理大臣(田中角榮君) 藤田高敏君にお答えをいたします。  現在の経済状況はインフレかどうか、物価騰貴責任、総需要抑制策等についての御発言でございますが、インフレへの厳密な定義はむずかしいと思います。現在の物価上昇が憂慮しなければならない段階にあることは事実でございます。物価高騰抑制をいたすために、政府は、総需要抑制措置の強化、生活必需物資を中心とする個別物資の需給調整の強化、緊急二法案の提出などによりまして、物価抑制をはかってまいるという決意を申し上げておるのでございます。  また、長期的には、経済社会基本計画にのっとり、持続的な安定成長のもとで国民福祉の充実と物価の安定をはかるため、一そうの政策努力を払う所存でございます。  また、列島改造計画及び国総法の撤回問題等に対してお触れになりましたが、先ほども述べましたとおり、日本列島改造ということは、この文字は私の個人的な一つの提案でございます。ただ、国土総合開発というものの推進は、政府及び与党の決定に基づく政策であります。大都市及びその周辺地域における過密、公害問題、及び地方における過疎問題をともに解決し、全国土にわたって健康で文化的な生活環境を整備し、国民の福祉の向上をはかることの必要性は、今日の情勢下においても基本的には何ら変わらないものであります。しかし、このような長期の展望と現下の経済政策とを混同した議論が起こらないよう、政府国民の理解を求むべきことは当然だと考えておるのであります。  国土総合開発法案は、国土資源の有限性に着目し、公共の福祉と自然環境の保全を優先するという原則に立って、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある開発をはかるため、住民の意向をただしながら、地域の諸条件に即応して地方主導型の生活環境開発を進めるために策定されたものであることは、御承知のとおりであります。  さらに、国土の総合開発と表裏一体の関係にある土地問題に対処するため、土地利用基本計画を策定し、これに即して土地取引の規制、土地利用の調整を行ない、地価の暴騰、投機的行為等、異常事態に対処する特別規制地域制度を創設することとしておりまして、地価凍結を含む土地対策の基本法的性格を有するものであります。したがいまして、本法案は、ぜひとも成立が必要である、こう考えておるのであります。  次は、予算編成方針等についてでございますが、国民福祉の向上は、わが国の当面する最も重要な政策課題の一つでございまして、政府は、従来から国民福祉向上のための施策の推進に十分配慮をしておるところであります。四十九年度予算の編成にあたりましては、最近の経済情勢にかんがみ、予算規模を極力抑制する必要があると考えておるのでございます。が、しかし、その中にあっても、財源の重点的配分をはかりつつ、国民福祉の向上のための施策に遺憾のないようつとめてまいりたいと考えます。  それから、全国一律の最低賃金制の新設等についての御指摘がございましたが、先般の年金制度の改正によりまして、厚生年金国民年金について年金額の水準及び最低保障額を大幅に引き上げるとともに、物価スライド制を導入し、年金額の実質価値の維持をはかることとしたところでございます。御承知のように、現行の年金制度におきましては、その対象者の実態や年金による保障の仕組みに差があり、これを無視して全国一律の最低保障年金を設けることは必ずしも適法ではないと考えておるのであります。  石油問題とわが国外交についてお答えをいたします。  このたびの石油問題の発生は、中東紛争とアラブ産油国の石油政策に起因するものでございまして、わが国は、十一月二十二日の官房長官談話に見られるとおり、中東紛争に対するわが国の立場を明確にいたしますとともに、近く三木総理アラブ諸国に派遣して、アラブ諸国の十分なる理解を求めることにいたしておるのであります。  産業構造転換の問題については、先ほどもお答えを申し上げたとおり、資源を持たないわが国でございますので、いままでのように資源多消費型、エネルギー多消費型の産業構造から、省資源、省エネルギー、知識集約的産業に転換のため全力を傾けてまいりたいと思うわけでございます。  それから、公害防止の問題でございますが、石油問題が起こったので公害防止基準というものを緩和してしまうんじゃないかという御心配のようでございますが、中東戦争を契機とする石油供給削減が、わが国経済の各分野に大きなショックを与えておることは事実でございます。しかし、環境政策といたしましては、人の生命及び健康を最優先とするものでなければなりません。その意味で、従来の基本方針には何ら変更はございません。  また、原子力の開発についての御発言がございましたが、先ほども述べましたとおり、原子力開発が必要であるということは事実であります。そしてそれを推進しなければならぬということもまた焦眉の急であります。しかし、安全性確保については万全の策を講じてまいりたい、こう考えるわけでございます。  なお、当面、資源生活必需物資に優先的に供給し、かつ、買占め売惜しみ法の改正強化をはかれば足りるというような御発言でございますが、今回の石油供給削減の事態に対処しまして、物価の安定をはかるためには、生活関連物資等の生産の増強や供給のあっせんを行なうとともに、買占め等防止法の強化をはかることも必要であると思うのでございます。その意味で、買占め売惜しみの防止法だけではなく、生産及び供給のあっせん等ができるようにいたすために法律を作成し、御審議を得たいと考えておるのでございます。たとえどのような事態が生じましても、国民経済の混乱を未然に防止し、必要物資の安定的供給を確保するためには、最小限の法的措置が必要だと考えております。このような見地から、国民生活安定緊急措置法案石油需給適正化法案を提出いたす次第でございますから、御理解の上、可及的すみやかに御審議をいただきたいと思うのでございます。  なお、法の運用にあたりましては、極力、官僚統制色になることを避けまして、民間の自主性を活用しつつ、総ワクとしては、政府の規制のもとに、石油需給の適正化及び国民生活の安定に努力してまいりたいと考えておるのでございます。  残余の質問については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
  17. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えをいたします。  まず、私と田中首相との間に何か意見の違いがあるのかないのか、こういうようなお尋ねでございますが、結論的に申し上げますると、いささかの違いもございませんでございます。念のために申し上げますが、ものごとが、閣議その他の場で逐一きまってまいりますその決定に至る過程におきまして、総理その他閣僚と意見の違いというか、そういうことがあり得ることは、これはもうむしろ違いがあって、意見が述べられたほうがいいのじゃないかとさえ思うのでございまするけれども、閣議その他所定の手続によりまして政府の意見がきめられる、その上は、これは私はじめ全閣僚が総理とともにその施策を実行する、こういうことでございます。御心配ないようにお願い申し上げます。(拍手)  次に、当面の経済情勢をインフレと見るのかどうかというお尋ねでございますが、私は、インフレとこの時局を見るかどうか、これはいろいろ議論がありますが、これは学者に御一任したらどうだろう、こういうふうに思うのであります。(発言する者多し)問題は、今日のこの物価情勢というものが非常に深刻な、重大視すべき段階に来ておるのかどうか、こういうことだろうと思うのです。私は、そういう問題につきましては、物価問題がきわめて深刻な事態にあるわが国といたしまして、政府のとるべき施策の最も優先されるべき問題となってきておる、さようなことを考えておるのであります。  次に、列島改造計画についてのお尋ねでございますが、これは先ほどお答え申し上げたとおりでございます。  いま、わが国は非常な転換期に際会しておる。これからいよいよ盛り上げられたこの経済力をもちまして国づくりをする、その国づくりをやるにつきましては、これは国土を全部見回しましての総合的な構想というものが必要だ、そういう考えで日本列島改造というものがいわれておりますけれども、その考え方自体につきましては、私は賛成でございます。ただ、それをいかに具体化するか、こういうことになりますと、先ほど申し上げたとおりでございまして、物価の問題を考慮しなければならぬ、国際収支もよく考えておかなければならぬ、資源の問題あるいは公害の問題、それらを踏まえまして、適正な速度で経済成長するように、その中の一環といたしましての総合開発でなければならない、かように考えておるのであります。いずれにいたしましても慎重に対処すべき問題である、かように考えます。  それから、次に、来年度の予算は福祉中心にこれを編成すべきではあるまいかというようなお話でございまするけれども、当面のわが国の情勢は、ただいまも申し上げましたとおり、物価対策というものがいかなる施策にも優先する、かように考えますので、物価を刺激するような諸施策、これにつきましては、これは抑制的に考えます。しかし、社会保障、そういうような種類のものにつきましては、特別の配慮をいたさなければならぬ、さように考えております。  また、具体的な御提案といたしまして、預金の物価高による減価を、大企業借り入れ金の元本返済を物価スライド方式で増額することによって補てんしたらどうだろうか、そういうお話でございます。  私は、預金者の立場を保護する、そういうような見地からいろいろな施策をとっておるわけでございまするけれども、この保護を物価スライド方式でやるということになりますると、お話のように、また貸し出し金についてもそういう方式の返済を迫るということにならざるを得ない。そうしますと、大企業等におきまして、生産のコストを圧迫し、したがって、物価を押し上げる要因をつくる、こういうことになりますので、当面の物価対策といたしましてはいかがなものであろうか、かように考えるのであります。  結局物価対策は、さような物価スライド方式で対策にあたるというよりは、真正面から、オーソドックスな考え方でございまするけれども、総需要抑制し、需給の安定をはかるという取り組み方をいたさなければならないんじゃあるまいか、さように考えておるのであります。  また次に、年度内調整減税をすべきじゃないかというお話でございます。  この点につきましては、先ほどお答えを申し上げましたが、私は、いまこの物価問題をどういうふうに処理するか、苦慮し、苦悩をいたしておるわけでございます。  今月は多量のボーナスも支払われる、それが物価情勢に対してどういう影響を及ぼすか、そういうようなことを考えますと、あの手この手をとらなければならぬ、現にとっておるわけでございまするけれども、そういうさなかにおきまして、年度内調整減税を行なうということ、そういうことを言われるお気持ちはわかりまするけれども、私は、これが実行に踏み切ることは妥当ではない、さように考えております。むしろこの際は、さようなことをするよりは、国債の減額ということを実行いたしまして、そして対策の一環となすべきじゃないか、かように考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇〕
  18. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日中間の実務協定についてのお尋ねでございます。  日中間には、御案内のように、体制、制度、慣行の相違がございます。実務協定につきまして、鋭意双方において詰めておりまして、遠からず妥結に至りたいと考えておる次第でございます。  第二に、北鮮との正常化を急げという御提言でございます。  この種の御提言は、これまでもたびたび伺っておりますけれども、今日の朝鮮半島に対するわが国の政策といたしましては、必ずしも妥当でないと政府は判断いたしておるわけでございまして、今日、ただいまとっておりまするように、科学技術、スポーツ、文化等の交流の範囲内において漸次関係を拡大してまいる方針をしばらく続けさせていただきたいと思います。  金大中氏の人権の問題についてのお尋ねでございます。  金大中氏は、市民として出国の自由も含めて自由が保障されるという声明を韓国政府がいたしておるわけでございます。この種の国際的な刑事事件の実際におきましては、加害者が行くえ不明になったり、うやむやになっておる例が多い中で、金大中氏の自由が回復されたということは、不幸中の幸いであると考えております。  第四に、閣僚会議経済協力の問題についてのお尋ねでございます。  本来、政府は金大中氏事件にかかわらず、対韓政策の基本は変えるつもりはないと申し上げてまいったわけでございます。経済閣僚会議経済協力につきましては、既定方針に沿って対処してまいりたいと考えております。もっとも、内外にわたって対韓経済協力につきましていろいろな批判があることはよく承知しておりまして、そういうことを念頭に置きまして慎重に対処してまいりたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
  19. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 総需要抑制につきましては、総理から御答弁がございました。通産省といたしましても、第四・四半期の民間設備投資の削減について、審議会の議を経て近く発表いたします。  産業構造の転換につきましても、すでに御答弁がございましたが、石油をはじめ、資源について不急不要のものから重点的に回せという御議論については同感でございます。特に、中小企業、農漁業、一般の民生並びに大衆交通手段等につきましては、傾斜的に調整していかなければならぬと思っておりまして、近く石油需給適正化法案を御提案申し上げますが、どうぞ御審議を早目にお願いいたしたいと思います。  次に、所得政策をやるかという御質問でござ、いますが、通産省といたしましては、目下所得政策をやる計画はございません。  それから、売惜しみ買占め規制法の改正の問題を御指摘くださいましたが、この問題も近く改正法案を出すと聞いております。これは企画庁の御担当でございます。  なお、独禁法について、価格安定カルテルについて御指摘がございました。今回われわれが行なわんとする措置は、価格抑制するために、公権力をもって政府が誘導、介入いたしまして、民間に協力を願うという形で行なわれるものでありまして、独禁法の対象外のことであると考えております。  官僚統制を再びやる意思はございません。特に戦時中のようなやみとか、マル公とか、経済警察とか、ああいうものは絶対やらない考えでおります。したがいまして、民主的調整という形で今回は進めていきたいと思っております。つまり、業者や国民政府が一体になって、総ぐるみで物価抑制に努力してまいりたいという方法でございます。  次に、中小企業の年末対策についてちょっと御言及ございました。われわれもこの問題は非常に心配しておりまして、政府関係三機関に対して年末は三千四百二十億円の貸し付け規模における増額を行ないます。なお、これは昨年に比べて一・八倍、昨年は千九百五十億円でございます。  なお、民間金融機関につきましても、大蔵省と協力いたしまして、十月から十二月までに約三兆円の融資を増加するように要請しているところでございます。(拍手)      ————◇—————
  20. 森喜朗

    ○森喜朗君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明四日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日は、これにて散会せられんことを望みます。
  21. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 森喜朗君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時三十人分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 奧野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣 町村 金五君         国 務 大 臣 内田 常雄君         国 務 大 臣 小坂徳三郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 保利  茂君         国 務 大 臣 三木 武夫君         国 務 大 臣 森山 欽司君         国 務 大 臣 山中 貞則君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君      ————◇—————