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1973-12-03 第72回国会 衆議院 本会議 第2号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
四十八年十二月三日(月曜日)
—————————————
議事日程
第二号
昭和
四十八年十二月三日 午後一時
開議
一
国務大臣
の
演説
に対する
質疑
—————————————
○本日の
会議
に付した案件
国務大臣
の
演説
に対する
質疑
午後一時三分
開議
前尾繁三郎
1
○
議長
(
前尾繁三郎
君) これより
会議
を開きます。 ————◇—————
国務大臣
の
演説
に対する
質疑
前尾繁三郎
2
○
議長
(
前尾繁三郎
君) これより
国務大臣
の
演説
に対する
質疑
に入ります。
勝間田清一
君。 〔
勝間田清一
君登壇〕
勝間田清一
3
○
勝間田清一
君 私は、
日本社会党
を代表いたしまして、
田中総理
、
福田大蔵
、両
大臣
の
演説
に関連いたしまして、両
大臣
に質問をいたしたいと思うのであります。 まず、今日の
インフレ
と異常な
物価騰貴
を招いた原因と、
田中内閣
の政治的な
責任
であります。
田中総理
は、
通常国会
以来、わが
党議員
の鋭い追及にもかかわらず、
日本
は
インフレ
ではないと言い続けてまいりました。また、去る
特別国会
においても、
金融引き締め政策
の効果がやがてあらわれて、この秋には安定に向かい、結局、
消費者物価
は年率五・五%増に押えられるだろうと答弁いたしてまいったのであります。 しかるに、今日の
物価
の騰貴は、御案内のように、まさに異常というほかはございません。
消費者物価
の上昇は、この十月で一四%をこえました。
卸売り物価
に至っては、二〇%を突破いたしておるのであります。そして
石油危機
に直面してからは、すべての
物価
が一斉に暴騰し、
国民
は戦後
最大
の
生活危機
に追い込まれているのであります。 OECDが本年の
年次報告
で、
日本
は世界一の
インフレ国
であると指摘したのも、当然といわなければなりません。
社会主義国
の
消費者物価
が、二十年間にわずか一%の
上昇率
にすぎないことは別といたしましても、本年六月までの、
アメリカ
は過去一年間に五・九%、西ドイツが七・九%、カナダが八・一%であることに対して、
日本
が一四%の
上昇率
を示したことは、まさに脅威といわなければならぬのであります。(
拍手
) なぜこのように
日本
が世界一の
インフレ国
になったのか、ここに問題があると思うのであります。われわれは、
物価騰貴
と
インフレ
は、
池田内閣
以来の
高度成長政策
と、
自民党
の
体質そのもの
に内在する
基本的矛盾
であるときびしく批判してまいりました。(
拍手
)しかし、それにいたしましても、過去十年間の
年間平均
の
消費者物価
の
騰貴率
は五・七%であります。それが
田中内閣
になって以来、
卸売り物価
、
消費者物価
がともに異常な
高騰
を続け、
石油危機
に直面するに至って、ついに社会不安にまで発展いたしたのであります。 一昨日の
演説
におきまして、
田中総理
は、
企業
の
過剰流動性
を
物価騰貴
の
一つ
の理由にあげてはおりますが、主としてその原因を
輸入原材料
の
値上がり
、世界的な不作による
農産物
の
価格
の
高騰
、そしてこのたびの原油の
供給削減
と
輸入価格
の
高騰
という、いわば
対外的条件
にそれを求めているのであります。これは、
田中内閣
の
政策
の失敗を隠蔽するものであり、しかも、いささかの反省もないことを証明するのであります。(
拍手
) この意味において注目をすべきなのは、
福田大蔵大臣
が、海外における
物価
の
高騰
の影響もあるけれども、何よりも
国内需要
の急速な拡大によると指摘したことは、原因が
田中内閣
の内政にあったことを示唆するという意味において、
田中総理
の
考え方
と相対立する
考え方
であると思うのであります。(
拍手
) 私は、原因を次の五つに要約できると思うのであります。 その
一つ
は、
日本経済
は、すでに昨年八月ごろには明らかに
回復期
に向かっていたにもかかわらず、
田中内閣
が
独占企業
の圧力に屈して、鉄鋼、塩化ビニール、アルミなどの
不況カルテル
の延長を許して、
生産調整
と
独占価格
のつり上げに協力してまいったことであります。この誤った
政策
が、いかに今日の
物不足
、
物価値上げ
に重大な影響を及ぼしているかを見れば、きわめて瞭然であります。(
拍手
) その二は、これまた、
景気回復期
にあったにもかかわらず、
田中内閣
が
金融緩和政策
をとり、ばく大な
信用膨張
をはかったのであります。それだけではありません。
過剰流動性
の横行を許したことであります。このために、大
企業
や大商社は、株や土地や商品などの投機に殺到いたしまして、
史上最高
の
超過利得
、いな、
不当利得
をむさぼったことは、今日明らかな事実であります。(
拍手
) その三は、
田中内閣
が
円切り上げ対策
に失敗したことであります。特に、百七十億ドルにのぼった外貨を減らすという名のもとに、
公共事業費
を一挙に三二・二%も
引き上げ
、十四兆二千八百億円に達する大型の、いわゆる
調整インフレ予算
を強行し、財政を通じて積極的に
インフレ
をあおったことであります。(
拍手
) その四は、
田中総理
が以上の大
企業優先
の
インフレ政策
を強行する中で、
日本列島改造論
をぶち上げて、十七の
新幹線
、三本の
本四架橋
の
同時着工等
、
インフレムード
をいやが上にも盛り上げかことであります。(
拍手
) そして最後に、反省を願いたいと思いますのは、
政府
は国鉄の運賃、米、麦、
電力等
の一連の
公共料金
の
大幅値上げ
をはかって、
政府自身
が
物価値上げ
の先頭に立ったことであります。(
拍手
)
世界的農産物
の不作、
輸入原材料
の
値上がり
、
石油供給
の
削減等
の
外的条件
は、あくまでもこうした
田中内閣
の
政策
の失敗の上に上積みされたのであって、
田中内閣
の
政策
こそきびしく批判されなければなりません。
総理
は、国会の
施政方針演説
の劈頭においてこう言いました。私は決断します、実行します、そして結果について
責任
をとります、こう豪語いたしたのであります。私は、
田中総理
は過去一年五カ月の結果についてどのような反省をしているのか、その結果についてどのような
責任
をとるのか、
国民
の前に明確にしていただきたいと思うのであります。(
拍手
)
田中総理
は、いま
石油危機
を救いといたしまして、
内閣改造
をもって自己の
責任
を回避しようといたしております。しかし、政治に対する
国民
の信頼を回復して、
国民
の協力を求めて、直面する戦後
最大
の
危機
を打開しようとするならば、
責任者
がまず
責任
をとるべきであります。(
拍手
)そして、
日本
の
経済
も外交も、ここに大きく転換する道を開くべきであります。私は、ここに
田中総理
の反省を求めると同時に、その
政治的責任
を追及せざるを得ません。 私は、このたびの
内閣改造
以来、
田中総理
、
福田大蔵大臣
の言動に注目いたしてまいりました。そして
日本列島改造論
に対して、
田中総理
と
福田大蔵大臣
との間には、その
考え方
において、相いれない対立のあることを発見せざるを得なかったのであります。 特に、一昨日の
演説
におきまして、
福田大蔵大臣
は、資源の不足から、「従来のような高い
成長
の持続を困難とする新しい局面を迎え」たと述べ、「
物価
の安定、
国際収支
の
均衡維持
に加え、資源及び
環境面
からの制約」を十分配慮して、
日本
の生産を適正な
成長
に維持することが基本的に大切であると思うと
演説
されたのであります。これは言うまでもなく、
成長率
一〇%を基調といたしております
列島改造論
とは、
考え方
において根本的に違うのみならず、対立する議論であります。(
拍手
) また、
田中総理
が
就任最初
の
記者会見
において、
日本列島改造論
をあくまでも推進していく旨を強調したのに対して、
福田大蔵大臣
は、
日本列島改造計画
を含めて、すべてを白紙に戻すことを条件に
大蔵大臣
を引き受けたと述べました。また、
日本列島改造論
は閣議の決定を経たものでもなく、全く
田中総理
の
個人的意見
にすぎないと述べられておるのであります。(
拍手
) われわれは、
田中内閣
の閣内不統一はともかくといたしまして、今後の
日本
の
経済
が
日本列島改造論
で進められるのか、
福田蔵相
の言う
安定成長
で進められるのか、
経済政策
の混迷こそ
最大
の不幸といわなければならぬのであります。特にこの問題について、私は、両
大臣
の明確な答弁を求めるものであります。(
拍手
)
日本列島改造論
は、資源問題から見ても実現不可能におちいっていることは、もはや今日明白であります。
日本
は、いままで年間二〇%の
伸び率
で資源を輸入しておりました。
田中総理
の
列島改造論
によれば、昭和六十年の
石油消費量
を、現在の実に四倍、七億五千万キロリットルを予定いたしております。電力の
需要
も、現在の三・五倍の二億三千六百万キロワットアワーを予定いたしております。全く現実を無視した暴論といわなければならぬのであります。(
拍手
)
列島改造論
は公害をばらまくだけでなく、そしてそれが年率一〇%の
成長率
に立っていることから見ても明らかなように、
高度成長政策
の
田中版
以外の
何もの
でもないのであります。これがまた
インフレ
と
物価高
の
最大
の元凶であることは、すでに指摘したとおりであります。 したがって、目下の
インフレ
と
物価対策
に真剣に取り組もうとするならば、
日本列島改造論
を、まずくずかごの中に投げ捨てることであると思うのであります。(
拍手
)そして新全総計画、国総法も撤回すべきであると思うのであります。(
拍手
)十七にも及ぶ
新幹線計画
、
本四架橋
三本の
着工計画
も、この際再検討すべきであります。
田中総理
の答弁を求めたいと思います。
政府
は、
物価対策
を進めようといたしておりますが、この際大切なことは、
政府
みずからがその範を示すことだと思うのであります。家庭の主婦を責め、
買いだめ
をするなと言い、「節約は美徳」であると宣伝しておられますが、
政府
が率先して米の値を上げたり麦の値を上げるのでは、だれでも物は上がると考え、安いうちに買おうという
生活防衛
に出ることは、当然といわなければなりません。だから、物はある、何割増産しているということを宣伝することももとより間違いではありません。しかし、もっと大切なことは何か。きょう買わなくともあす上がることはないという、
物価
安定に対する
社会的信用
を回復することであります。(
拍手
)この意味で重要なことは、
政府
が上げないということであります。そして、
政府
が上げないということは、
物価
安定をすべての
政策
に優先させる決意と決断がなければなりません。 二、三日前に
内田経済企画庁長官
は、家庭の主婦が
鉄道料金
の
値上げ
をやめろと言ったことに対して、それならば
鉄道会計
が赤字でもいいかと反論されました。しかし、この
内田長官
の
考え方
は、
物価
安定をすべての
政策
に優先させるという
態度
ではありません。同時に、それは、全く私
企業
と同じレベルのものの
考え方
であります。(
拍手
) いま、各種すべての
物価
が一斉に
値上がり
をしようといたしております。その理由は、
原材料
が上がる、
人件費
が上がる、
石油
と電力の不足で
操業率
が落ちる、だからおれの会社の製品の
価格
は上げなきゃならぬ。これを放置したら一波は万波を呼び、
日本
はおそるべき
悪性インフレ
に転落するのであります。その結果は、
日本経済
はパニックで暴力的に解決する以外に道はないのであります。これは、
国民最大
の不幸といわなければなりません。(
拍手
) したがって、重要なことは、いま
物価騰貴
の
悪循環
をどこで断ち切るかということであります。それは唯一に
政府
の
態度
にかかっているのであります。 この意味で、今日国の財政は、四兆をこえるような裕福な状態にあります。三月決算を見ても九月決算を見ても、
日本
の
企業
は膨大な利潤をあげておるのであります。私は、まず、今日の
財政規模
の中で、
政府
はすべての
公共料金
をストップすることを要求いたします。(
拍手
)三年間にわたって
公共料金
をストップすることこそ、今日の
悪循環
を断ち切る
政府
の唯一の道であると思うのであります。(
拍手
)したがって、すでに決定した
鉄道料金
、米麦の
消費者価格
の
値上げ
も、この際撤回すべきであります。
政府
が次になすべきことは、大
企業
、大商社の売り惜しみと
買いだめ
を禁止いたしまして、その
独占価格
を引き下げることであります。
政府
は、最近あわてて
買占め売惜しみ防止法
の改正を行ない、
指定物資
の拡大、業者への立ち入りの検査、
売り渡し命令
などができるようにしようといたしておるようであります。しかし、これはさきの国会で
社会党
はじめ四野党が
共同提案
による
買占め売惜しみ規制法案
がすでに主張いたしておったところであります。(
拍手
)灯油も昨年並みの量があり、紙にいたしましても、絶対量は増産されていることは確実であります。
政府
は、いまこそ野党の主張を正しく受け入れて、正常な流通を阻害している、
社会不安等
を引き起こしている悪質な大
企業
、大商社を取り締まるべきであります。 それにしても、私は
政府
の
独占企業
に対する
態度
についてきびしく批判せざるを得ないのであります。
政府
は、このたび
石油需給適正化法案
並びに
国民生活安定緊急措置法案
を用意いたしておるようであります。その中で
独禁法
を
骨抜き
にして
安定カルテル
を認めることは重大な問題といわざるを得ないのであります。(
拍手
)
公正取引委員会
と
通産省
が覚え書きを交換し、
通産大臣
または
主務大臣
の指示、監督に基づくからと称して、
事業者
または
事業者団体
の行なう
共同行為
を許すことは、単に
独禁法
を
骨抜き
にするだけではありません。
政府
の指示に基づく
標準価格
という美名のもとに大
企業
の
独占価格
を、しかも高い水準に
引き上げ
、それを公認すること以外の
何もの
でもないのであります。(
拍手
)
安定カルテル
は、また、官僚と
独占企業
の癒着を一そう助長いたします。そうして、生産から流通の末端に至るまで
独占企業
の
支配体制
を全面的に確立することを意味するものであります。したがって、
安定カルテル
は、
消費者
をのけものにした
国民不在
の
政策
といわなければならぬのであります。(
拍手
)
政府
は、さきに
公取委員会
の主張を退けて、一部の
再販維持価格
の取り消しを中止させました。われわれはこうした一連の
独禁法骨抜き
の
独占擁護
の
政策
に断固反対するものであります。(
拍手
)いな、むしろ進んで、
経済民主化
をはかるために
独禁法
の強化、それこそわれわれが要求するものであります。
インフレ
と
物価高騰
に対処する
基本方策
として、金融上、財政上、総
需要抑制
のための
政策
を実行しなければならぬことは当然であります。特に
石油供給
の
削減
が
政府
の予測する一六%で済むか、あるいは
石油連盟
の主張する二三%で済むかは別といたしまして、相当きびしいものであり、かつ長期のものにわたるであろうことは明らかであります。このことは、当然に、今後におけるわが国のGNPの
伸び率
が著しく後退し、ゼロまたはマイナスにまで転落することは、もはや明らかであります。 それだけに総
需要抑制
に注目しなければなりません。しかしながら、
国民
の生活の立場から見るならば、何が抑制され、何が確保されるかということが今日の
最大
の
関心事
であることは明らかであります。(
拍手
) この意味で、
田中総理
が、
物価騰貴
の
一つ
の原因に、わざわざ五十兆円の
勤労所得
とその
消費購買力
をあげたことに私どもは警戒を払わざるを得ません。これが
所得政策
をとるための伏線であるならば、われわれは断固反対であります。 百貨店の
売り上げ高
、あるいは
勤労家族
の今日の家計調査を見れば明らかなとおり、確かに
購入額
は大きく増大いたしております。しかし、この
購入額
の増大は、
物価
の
値上げ
に見合ったものであって、実質的な
購入量
は停滞いたしておるのであります。(
拍手
)そして、むしろ今日それを問題にするならば、あの株でもうけた金は二十五兆円、土地の
値上がり
でもうけた金は六十兆円、なぜこれを問題にしないのか。(
拍手
)私は、ここに
田中内閣
の反省を求めざるを得ません。したがって、われわれは、
勤労大衆
にしわ寄せする
所得政策
には断固反対であります。 もし、
国民
総支出の中で五〇%を占める
個人需要
に
需要抑制
のための協力を求めるならば、大
企業
の
不当利得
と、その
交際費
に対する重税と、
高級奢侈品
に対する
物品税
の
引き上げ
と、それと並行して
国民
に対する
安定貯蓄
への利子の
引き上げ
、
減税等
の
優遇措置
を講ずべきであります。(
拍手
) 総
需要
の抑制の重点は、
国民
総支出の中で二〇%を占めております
財政需要
、特に
一般公共事業費
の圧縮であります。同時に、二五%を占めている
民間投資
をどこまで押えるかということであります。
通産省
は去る三十日に、四十八年度
民間設備投資減額修正
の
基本計画
をまとめたといわれますが、これは一
通産省
だけの問題ではありません。
主務官庁
が管掌するあらゆる産業に及ぼさなければなりません。
政府
は、はたして今後いかなる計画と方法、手段をもって、この
民間設備投資抑制
をはかっていくのか、明らかにされたいのであります。 また、
一般公共事業費
も四十八年は二割八分と増額いたしましたが、これを四十九年においてどこまで圧縮するのか。また、四十九年の一−三月のいわゆる
繰り延べ措置
を講ずるだけでなく、これに対する
減額修正
もこの際行なうべきではないか、こうした点について
政府
の答弁を求めたいと思うのであります。 総
需要抑制政策
の中で
国民
が注目をいたしておる問題は、
減税
と
社会保障費
の確保の問題であります。 四十八年度のわずか三千三百五十億円の
勤労所得税
の
減税
も、春闘で戦い取った貴重な賃上げも、異常な
物価騰貴
によってすでに帳消しにされたのであります。人事院は本来、
公務員給与
と
物価等
の間に五%の差を生じた場合には、一回以上勧告しなければならぬ義務を持っております。これが
スト権
を奪った条件でありました。したがって、今日年率にして一〇%以上の
物価
が騰貴している際に、
インフレ手当
を要求するのは当然といわなければなりません。(
拍手
)同時にまた、大幅な
減税
を行なわねばならぬことも道理といわなければならぬのであります。 わが党は、少なくとも
標準家族
二百万円まで無税とすること、
勤労未成舞家計補助
のためにパートで働いている
家庭婦人等
に対しても免税の措置をとることを要求いたします。 しかし、愛知前蔵相のいわば二兆円
減税構想
も、最近きわめて怪しくなってまいったと伝えられております。
政府
は、四十九年度においてどのような
減税措置
を講ずるのか、これを明らかにしていただきたいと思います。
減税
とともに重要なことは、いわゆる
社会保障関係
の充実であります。
インフレ
と
物価高
の
最大
の
犠牲者
である老人、母子、
心身障害者
並びに
病人等
の一連の
社会保障対象者
に対して、恩給、年金はもちろん、
医療保障
、
社会扶助等一連
の
保障費
に対して、
インフレ
によって受けた減価を補償することは国の
責任
であります。いな、それだけではありません。年金における
賦課方式
の採用、
物価
だけでなく賃金の
値上がり
にも応じた
スライド制
の採用、こうした
社会保障
の抜本的な解決こそ、今日断行さるべきであります。(
拍手
) 予算について、私は最後に一言したいと思うのであります。それは
防衛費
の
削減
であります。
国民
は、かつての
大豆危機
のときもそうでしたが、このたびの
石油危機
にあたってほど、国の安全とは何かという問題について深刻に考えさせられたことはないと思うのであります。ある人は、
日本
の
経済
は世界三番目と聞いていたが、今度ほど
日本
の
経済
が砂漠の上に建てられた楼閣にすぎないことを知らされたことはない、こう語ったのでありますが、このことは、世界七番目という
日本
の軍隊についても同じように指摘されることであります。(
拍手
)
アメリカ
と
軍事同盟
を結んでおりましても、いざとなれば大豆一トンに不安を感ずることをわれわれは経験いたしました。また、このたびのように
石油危機
が差し迫ってくると、千何百機の飛行機も、何万トンの軍艦も、何の役にも立たないことが明らかになりました。
日本
にはかつて、
軍事費
には手はつけてはならないという
軍国主義
がありましたが、いまこそ、
日本国民
の重大な
危機
に立って、
防衛費
は大幅に
削減
さるべきであります。(
拍手
)第四次
防衛計画
は直ちに中止さるべきであります。(
拍手
) それにつけても、私は、
国内資源
の問題について、二つのことを指摘せざるを得ないのであります。 その
一つ
は、
食糧政策
であります。
田中総理
は来年度三十万ヘクタールの農地の転用を計画していると伝えられているのであります。もし事実とすれば、これこそ大きな
不動産会社
をもうけさせて農業を破壊する暴挙といわなければなりません。(
拍手
)どうして本年度の五倍に当たる
農地転用
が必要なのか、どうしてそれが可能なのか、全く理解に苦しむところであります。
自民党内閣
の
農業政策
は、米をつくるな、つくらなければ一反歩三万円、金をやるという
政策
にあらわれております。この
政策
は、結局
重化学工業
のために、農村から安い
労働力
をしぼり出そうという
政策
でありました。しかし、今回の三十万ヘクタールの
農地転用政策
は、農民から最後の農地まで奪おうとする
農村破壊
の
政策
といわなければなりません。(
拍手
)なぜ大
不動産会社
や大商社が買い占めているあの膨大な土地を吐き出させようとしないのか、なぜ農地を保護し、農民に協力して、食糧の
自給度
を高めようとしないのか、私は、
田中総理
にその回答を求めたいのであります。 もう
一つ
のことは、
石炭政策
であります。私は
社会党
の
石炭対策特別委員長
として、
池田内閣
以来今日まで、歴代の
自民党内閣
に
エネルギー
の
国内資源
として
石炭産業
の持つ
重要性
を強調いたしてまいりました。しかし、
政府
は幾たびかわれわれに約束しながら、
石油資本
や
電力資本
の圧力に屈して、
石炭山
を閉山させて、ついに五千万トンから二千万トンにまで、今日、山をつぶしてきたのであります。そして、いまになって、
石炭専焼炉
をどうするの、
石炭
の液化や
石炭
の
ガス化
をどうするの、だから、
労働者
にもっと働いて増産してほしいと要求している
態度
こそ今日反省していただきたいと思うのであります。(
拍手
)十数年塗炭の苦しみをなめてきた
石炭労働者
に対していかなる
優遇措置
を講ずるのか、
石炭経営
のあり方をどう抜本的に改革するのか、
石炭
を不動の産業にするために、
エネルギー産業
の中で
石炭
をどのように位置づけするのか、こうした
基本的政策
を確立することがすべての
政策
の前提であることを強調いたしたいと思うのであります。(
拍手
)
政府
は、
石油
の
削減
を受けて、いまさらのごとく
アラブ外交
を修正し、近く三木副
総理
を特使として
アラブ諸国
を訪問させようといたしておるのであります。世界は、この
日本
の外交を、
石油ほしさ
の変身として受け取っているに違いないと思います。それだけに、三木副
総理
の
アラブ訪問
は
石油ほしさ
の
陳情訪問
であってはなりません。また、伝えられるように、援助と協力の美名に隠れて金で解決をするという
態度
であってはならぬのであります。 第一次中東戦争始まって以来、広大な領土をイスラエルによって武力占領され、
パレスチナ人民
の正当な権利がじゅうりんされてまいりました
アラブ諸国
にとって、その当然の要求が完全に実施されることに対して、
日本
がいかに有効に行動するかにかかっているのであります。
社会党
は、
アラブ連盟
の
事務総長
の招聘に応じて、今月早々
アラブ
を訪問いたします。言うならば、
中立外交
を支持し、非
同盟諸国外交
を支持した戦後二十数年の成果にこそ、それがあらわれていることを御銘記願いたいと思うのであります。(
拍手
)
田中総理
は、また、近く
東南アジア諸国
を訪問すると伝えられているのであります。そうした旅行以前に、
アジア
には残された未解決の問題が山積していることに気づかなければなりません。ソ連との間のシベリア開発問題、北朝鮮との
国交回復
、中国との間の
航空協定
並びに
平和条約
の締結、
南ベトナム民族解放戦線
との
国交回復
並びに全ベトナムに対する
経済援助
、そして中ソを含む全
アジア
の
平和保障体制確立
などは、どれ
一つ
とってもきわめて重要であり、緊急であります。
キッシンジャー構想
を欧州にまで行って売り込むようなひまがあるなら、われわれはこうした
アジア
の問題にこそ今日真剣に取り組むべきであります。 特に、
金大中事件
に対する
田中内閣
の
態度
はきびしく批判されなければなりません。(
拍手
)数時間前にすでに報道されたように、ついに韓国の
金政権
は総辞職いたしました。
KCIA長官
の
李厚洛
氏は罷免されました。きわめて当然といわなければなりません。
田中内閣
は、この際、日韓閣僚会議を取りやめるだけでなく……。
前尾繁三郎
4
○
議長
(
前尾繁三郎
君) 勝間田君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
勝間田清一
5
○
勝間田清一
君(続) 従来金首相との間にとり続けてまいりました不明朗な一切の取引をこの際白紙に返し、新しい観点に立って日韓の
外交
を再検討すべきであります。この重要な段階に立っての
田中総理
の
答弁
を求めたいと思うのであります。(
拍手
) 要は、このたびの
石油危機
を通じて、
日本
の
外交
は根本から問い直されたと思うのであります。冷戦を背景に、安保条約を軸として
アメリカ
に追従する
外交
は、もはや破綻したことは明らかであります。
前尾繁三郎
6
○
議長
(
前尾繁三郎
君) 勝間田君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
勝間田清一
7
○
勝間田清一
君(続) そして、
世界
は、緊張緩和を背景に、平和共存、民族自決、
資源
自主、この原則に立って大きく進歩の方向に前進いたしておるのであります。
日本
は、いまこそ、
世界
のこの大きな動向にふさわしい自主
外交
に転換すべきであります。そして、この道は、
日本
の憲法の原点に返って、
日本
が平和を愛する諸
国民
の公正と信義に信頼して、平和と文化を通じて国際社会に名誉ある地位を占めたいという決意をもって
日本
の
外交
を進めるべきであると思うのであります。(
拍手
)
田中総理
の所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。(
拍手
) 〔内閣
総理
大臣
田中角榮君登壇〕
田中角榮
8
○内閣
総理
大臣
(田中角榮君) 勝間田君にお答えをいたします。 第一は、
物価騰貴
の
原因
とその
責任
等についてでございます。
演説
でも申し上げましたように、その要因の第一は、海外における
物価高騰
の
影響
、特に
世界
的な
不作
による
農産物
の
価格
高騰
でございます。第二は、外為会計の大幅払い超に加え、輸出から内需への転換をはかるための
金融
緩和策がとられた結果、
企業
に
過剰流動性
が生じ、急速な
国内需要
の
拡大
につながったことであります。第三に、賃金、給与の所得の
上昇
によりまして、先ほども御指摘がございましたとおり、個人消費が
拡大
をしたことなどの要因が複合して生じたものであると考えます。その上、今次の原油の供給制限と
輸入価格
の
上昇
が
物価
問題の
解決
を一そう困難なものにしておると考えるのでございます。
物価
の
高騰
を
抑制
するためには、総
需要
の
抑制
をはかることが基本であることは御指摘のとおりだと思います。そのため従来からの
財政
執行の繰り延べ、
金融
引き締め等の総
需要抑制
措置
をとってきたところでございますが、これらの
措置
は、その効果が末端まで浸透し、
物価
動向に好
影響
を与えるまで堅持することはもとより、
石油
情勢の進展など今後の事態の推移に応じましてさらに強化する考えでございます。来年度
予算
の編成にあたりましても、
物価
動向に十分配慮をし、慎重に対処してまいりたいと考えます。 また、個別物資の需給調整につきましても、特に
生活
必需物資を中心として緊急増産、出荷指導、投機的取引の防止など機動的
措置
を講じておるところでございます。 さらに、今次の
石油供給
削減等
の事態に対処しまして、必要物資の安定的供給を確保するため、今
国会
に
石油需給適正化法案
、
国民生活安定緊急措置法案
等を提出することといたしておるのでございます。
政府
は
物価
の安定を当面する最重要課題として、これら各般にわたる
物価対策
を総力を結集して推進をしてまいりたいと考えます。
列島改造論
についてでございますが、間々申し上げておりますとおり、
列島改造論
は私の私的な論文のたぐいでございます。その中には、
昭和
四十五年度を基準といたしまして、一〇%
成長
すればどうなるか、八・五%
成長
の場合はどうか、七%の場合はどうか、五%の場合はどうか、これらの数字を試算数字として
国民
の前に提供し、これらに対して検討を求めたわけでございます。しかし、
昭和
六十年に人口が一億二千万人に増加することを前提にいたしますれば、三大都市圏への人口集中を放置したままで水、電気が
不足
し、住宅難や交通混雑が一そうひどくなり、ゴミ処理、
流通
施設なども能力を突破して、環境水準や社会
生活
水準が一そう悪化することは明白であります。他方において、中核都市や農山漁村の整備を行なって、人口や
産業
を定着させるとともに、巨大都市における人口や
産業
を
抑制
して、国土の均衡ある発展をはかることが私の構想の骨子となっておるのであります。 言うまでもなく、この国土総合開発構想は短時間に実現できるものではなく、
昭和
六十年展望に立って着実に施策を積み上げていくべきものでありますから、短期的な景気動向に即してその実施のテンポを調整すべきこともまた当然であります。総
需要
の
抑制
を緊急課題とする現状においては、大規模プロジェクト等の実施テンポをスローダウンさせることが必要であると考えておるのでございます。
新幹線
や
本四架橋
についてでございますが、
新幹線
につきましては、
年間
三百万台ないし四百万台の割合で車がふえ、道路整備が追いつかないのが現状でございます。国土の八五%が山岳地帯であるというわが国の地形、地勢上の特性から見て、大量高速輸送機関として鉄道の整備が必要なことは言うをまたないところでございます。 また、
本四架橋
につきましては、学識経験者によって十分論議の末、決定されたものでありまして、本州、四国を一体化し、瀬戸内海の汚染を防止する上でも必要な
計画
だとしておるのでございます。 しかし、
新幹線
も
本四架橋
も、
昭和
六十年展望の長期的
計画
によってその実現をはかるものでございまして、先ほど申し上げましたように、当面
経済
情勢の推移を見ながら、その建設工程について慎重な配慮を加えてまいることもまた当然だと考えております。(
拍手
)
公共料金
凍結と
安定カルテル
の問題について御発言がございましたが、
公共料金
につきましては、従来から極力
抑制
的に取り扱ってきたところでございます。現に、国鉄運賃の改定を本年度末とし、米の
政府
売り渡し
価格
を本年度内据え置いておるのでございます。しかし、恒常的に
公共料金
を据え置くということは、結果として
財政
負担を増大させることになりまして、
予算
規模を極力圧縮せよという現下の要請に相反することにもなるのでございます。
政府
としては、鉄道運賃、
米麦
の売り渡し
価格
を白紙に戻す考えはございません。
物価
抑制
のため、たとえば国が標準的な末端
価格
を定めた場合に、所管
大臣
の行政的
指示
、監督に基づきまして、業者がこれを取引先に守らせるよう
協力
することは必要かつ有効でございまして、このような
協力
措置
は
独禁法
に抵触するものだとは考えておりません。
減税
についてでございますが、
昭和
四十九年度におきまして、所得税について課税最低限の大幅
引き上げ
、税率の緩和を含む
減税
を実施したいと希望いたしております。その総額を二兆円、こういっておるわけでございますが、この
減税
案の来年度における実施の細目等につきましては、来年度の
予算
規模、国債発行額等を総合的に勘案をして最終的に決定することとなるわけでございます。現在、大蔵省で鋭意検討をしておるところでございます。できるだけ
国民
の要望にこたえられるようなものにしたいと考えておるのであります。 また、
減税
の恩典を受けない階層に対する施策につきましては、従来から
社会保障
の面で配慮をしてまいりましたが、四十九年度
予算
におきましても、
生活
保護、福祉
年金
その他の給付の改善について十分考慮してまいりたいと考えます。
防衛費
の
削減
、四次防の
計画
を中止せよとのことでございますが、間々申し上げておりますとおり、
日本
の防衛力は最小限のものを目標といたしております。しかし、防衛は国の基本であり、
国民
の生命、財産を守り抜くため最も重要なものでございます。(
拍手
)その
意味
で、四次防を中止する考えはございません。 また、
農地
の
転用
計画
についての御発言にお答えをいたしますが、市街地区域内における
農地
だけでも二十八万八千ヘクタール余存在することは御承知のとおりでございます。地価の
上昇
を押えるには、まず
土地
の供給をふやすことが肝要でございます。宅地、公共用地等の
需要
に応じて必要な用地を円滑に供給するために、三十万ヘクタールを一応の目標として
農地
の
転用
を考えておるわけでございます。もちろん、その実施にあたりましては、
食糧
生産
に支障が生ずることのないよう、優良
農地
を十分確保してまいりたいと考えます。 念のため申し添えますと、現在でも一般
農地
の公共用地その他への
転用
は、
年間
おおむね六、七万ヘクタール程度が実施をされておるということでございます。 次は、
石炭
対策について申し上げますが、
石炭
につきましては、現在
エネルギー
調査会等で勉強をいただいておりますので、この
協力
を得てまいりたいと考えておるのでございます。
石油危機
に伴うわが国
外交
についてでございますが、
政府
は近く
三木
副
総理
を
アラブ諸国
に派遣をいたしまして、わが国の中東紛争に対する
態度
を先方に十分説明して、理解を求めるのみならず、
アラブ諸国
の事情を十分に聴取し、わが国と
アラブ諸国
との友好
協力
関係の長期的観点からの確保につとめたいと考えておるのであります。 韓国の政変についてでございますが、韓国は事実上の
内閣改造
を行なったと聞いておるのでございます。しかし、この改造によって日韓友好関係は全く不変でございます。日韓閣僚
会議
につきましては、年内開催の方針に変更はございません。
最後
に、今後の対ソ、対韓、対中国、対ベトナム等に対する
外交
方針に対しての言及がございましたので、一括して申し上げたいと存じます。 先般、訪ソをいたしました際、ブレジネフ書記長との会談におきまして、北方領土四島の返還問題が
平和条約
締結によって
解決
さるべき問題であることにつき確認を見ておるのであります。今後とも
国民
の支持を背景に、ねばり強く対ソ交渉を継続していく所存であります。 シベリア開発につきましても、ブレジネフ書記長との間に、互恵平等の原則に基づき推進をすることに基本的合意を見ておりますので、これを契機に当事者間の交渉が一そう進展することを期待しておるのであります。 現在の朝鮮問題の国連審議、南北話し合い等の進展ぶりにかんがみまして、北朝鮮とは文化、
経済
等の分野における交流を積み上げていく所存でございます。 また、日中間の相互理解は、国交正常化以来、格段の深まりを見ており、貿易協定は近く締結の運びとなっており、
航空協定
その他の実務協定につきましても、できる限り早く締結にこぎつけるべく、せっかく努力中でございます。 日中両国間の平和友好関係を強固にするための日中
平和条約
の締結につきましても、中国と十分話し合っていく所存でございます。 ベトナムにおいては、南ベトナム共和国
政府
に加え、最近ベトナム民主共和国との
外交
関係を設定いたしました。したがいまして、わが国は南北両ベトナムの
政府
に対して、人道上その他
経済
復興のための
援助
を行なうことにいたしておるのでございます。 中ソを含む
アジア
の平和保障体制の確立は、御趣旨としてはけっこうでございますが、これを大きく前進させるためには、まず中ソ両国がそのいわゆる対立を解消し、話し合いができるような情勢が醸成されることが大きな前提と考えざるを得ないのでございます。 残余の問題につきましては、関係閣僚から
答弁
をいたします。(
拍手
) 〔
国務大臣
福田赳夫君登壇〕
福田赳夫
9
○
国務大臣
(福田赳夫君) お答えいたします。 私は常々申し述べておるのですが、
経済
の
成長
発展ということは、これは目的ではない、あくまでも手段であります。これを手段として、いかにりっぱな国づくりをするか、こういうことだと思いますが、いまやわが国は、とにかく
アメリカ
、ソビエト、
日本
といわれる工業力をたくわえるに至っております。しかし、その反面におきまして、あるいは公害の問題でありますとか、過密過疎の問題でありますとか、あるいは住宅の問題、あるいは社会福祉施設の立ちおくれの問題、いろいろ
政府
といたしまして
国民
から
解決
を要請せられている問題が山積しておる。あるいは吹き出もののように吹き出しておると言ってもいいくらいでございます。 そういうことを考えますと、私は、
政府
の
経済政策
のあり方というものは、いままでのような
成長
重視
政策
から、この
成長
というものはいかなるためにあるのか、その原点に立ち戻りまして考え直さなければならぬ時期に来ておる、つまり、
成長
よりも福祉社会建設重点の方向へ大きくかじの切りかえをしなければならぬと、さように思うのであります。 そういう国づくりをやっていく、そういうことを考えますると、やはりこれはこま切れの施策ではいかぬと思う。やはり国土を全部見回しまして、総合的な
計画
がなければならない。これはだれしもそう考えられると思うのであります。 そういう
考え方
に立ちまして、
政府
には新全国総合開発
計画
がすでにあります。それから
田中総理
の頭の中には
日本列島改造論
というものがあるわけであります。この
考え方
、私は、いま
日本
の置かれておる立場からいたしますると、さような総合開発的
考え方
というものはぜひ必要である。したがいまして、私は、
日本列島改造論
、田中首相の構想であるこのお考え、この考えの思想といたしましては、私はこれに賛成をいたすものであります。(
拍手
) ただ、私は一昨日も申し上げてきた。わが国の
経済政策
の運営というものは四つの点を主としてにらまなければならぬ。
一つ
は、何としても
物価
の問題であります。
一つ
は
国際収支
の問題である。さらには公害の問題、さらには
資源
の問題、この四つの点を十分にらんで、これとの均衡において
成長
の高さをきめていかなければならぬ、かように思うのであります。まあ、田中首相も用意深く、かりに一〇%
成長
とすれば、かりに五%
成長
とすれば、こう言っておりますが、私は、一〇%
成長
というような高さは、これはむずかしいんじゃないか、かように思います。いずれにいたしましても、その四つのかなめを十分見まして、これと均衡のとれた
成長率
をきめていかなければならぬ、かように考えております。 次に、勝間田議員から、
物価騰貴
の
原因
につきまして私と
総理
との間に見解の相違があるんじゃないか、そういうお話でございますが、私はあるとは思いません。つまり私は、
国内需要
が伸びた、これが主たる
原因
であるということを申し上げたのでありまするけれども、田中首相は、その伸びた事情はどういうんだということを説明いたしまして、海外要因が非常に
影響
しておる。これは
影響
しておることは事実であります。違いはございませんです。 次に、勝間田議員から、
昭和
四十八年度の
予算
につきましてお尋ねでございます。 つまり、一般
国民
に対しましては、年度内
減税
をすべきではないかというお話でございます。また、公務員等
政府
関係者に対しましては
インフレ手当
を出すべきじゃないかというお話でございます。 私は、勝間田議員の言われるお気持ちはわかる。わかりまするけれども、いま何よりもここで重要なことは、
インフレ
そのものを阻止することである。
物価対策
というものに再優先度を置きまして取り組まなければならぬということであります。そういう見地から、しばし公務員にも
国民
にも御
協力
を願いたい、かように存ずる次第でございます。(
拍手
) なお、四十八年度繰り越し
措置
につきましては、これは減額補正をすべきではないか、そういうお話でございまするけれども、客観情勢が非常に激動しておる、そういうさなかにおきまして
政府
がとりましたこの繰り越し
措置
、これは時局にかんがみ妥当なものである、かように考えております。 次に、
昭和
四十九年度の
予算
につきましてであります。 勝間田議員は、四十九年度
予算
は非常にきびしい情勢下において編成されなければならぬ、私もそう思います。したがいまして、
国民
に対しましても、あれやれ、これやれ、こういう要請がありまするけれども、これをそうやっていくわけにいかない。やはり、しばしがまんを願わなければならぬ、かように考えておるのであります。そういうことも考え、また同時に、
国民
に対しまして、その
生活
上においても
政府
の施策に御
協力
を願わなければならぬ。そういう立場でありますので、
政府自身
も、積極的にみずからが率先してそういう姿勢に相呼応するという
考え方
をとらなければならぬ、さように考えるのであります。したがいまして、
予算
の規模につきましては二三%増ということが言い流されてきておりまするけれども、私はこの規模をもっともっとできる限り圧縮してみたい、さように考えます。 また、二兆円
減税
ということについてのお尋ねでございまするけれども、この問題はさっき
総理
もお答えになった。これは増税もある、あるいは公債の発行もある、そういうことから総合的にきめなければならぬ問題だ、こういう話でございますが、私もその総合的にきめるという
考え方
で目下せっかく勉強中であります。最終的判断はそれらの
予算
編成上の諸元とともに決定してみたい、かように考えておるのであります。ただ、
総理
がこの
減税
計画
については非常に御熱心でございます。御熱心でございますので、その御熱心なお気持ちはよく私はわかります。それができるかできないかをも含めまして、私は十分検討してみるつもりでございます。 次に、
社会保障費
につきましては特別の配意をしなければならぬというような御説でございましたけれども、
予算
の編成にあたりましては、公共事業、そういうものにつきましては
抑制
的にやらなければならぬ、そういうふうに考えまするけれども、とにかくこの
物価
の高い時期である、そろいうようなことも考えまするときに、世の小さい人、弱い人、そういうような立場を考えて、
社会保障
的な施策につきましては特別の配意をしなければならぬ、かように考えております。 次に、
公共事業費
、
防衛費
等につきましては、大胆に
削減
をやれというお話でございまするけれども、
公共事業費
あるいは
防衛費
に限りません、
物価
安定という対策から見まして適当でないというようなものにつきましては、極力これを
抑制
をする。しかし、
物価
安定上必要だというようなもの、また
社会保障
というような見地から必要なもの、そういうものにつきましては特別の配慮を払っていく、そういうかまえであります。 以上、お答えいたしました。(
拍手
)
—————————————
前尾繁三郎
10
○
議長
(
前尾繁三郎
君) 石田博英君。 〔石田博英君登壇〕
石田博英
11
○石田博英君 私は、自由民主党を代表し、
総理
の所信表明について、若干の質問を行ないたいと存じます。(
拍手
) その第一は、今回の
石油危機
を誘発した中東戦争に対処するわが国の
外交
姿勢に関するものであります。 わが国は、今日までも国連の場その他において公正中立の立場を堅持し、一九六七年の第三次中東紛争の
解決
にあたって、イスラエルの占領地域からの撤退を求めた国連決議に賛成をいたしてきたのであります。それにもかかわらず、
アラブ
石油
産出国がわが国に対する
石油供給
を
削減
することになったのは、イスラエルを支持する米国とわが国との従来の関係に基づいた誤解によるものと思われます。この誤解を解消して
アラブ諸国
の理解を求め、わが国の中近東
政策
を明確にするために、今回
政府
が
三木
特使を派遣することになったのは、まことに適切な
措置
であって、この
措置
に対しては敬意を表するものであります。 しかし、わが国の
外交
政策
が、何か事が起こるたびに、目先の利益にとらわれて変更されるような印象を各国に与えるならば、これは国際信用の失墜に相なるのでございます。 この際、
外交
政策
についての基本的
態度
をさらに具体的に明確にして、その原則に基づいて、ときどきの情勢に対応した
外交
の展開をすることが肝要であると考えるのであります。 すでに、わが国は、しばしば、平和に徹するということを申し述べてまいりました。しかし、私の言う基本的原則というのは、もっと具体的なものを言うのであります。 第一は、イデオロギーや体制の違う国家間に相互の理解を求め、平和共存の路線を確立するということであります。 すなわち、東西対立を前提とした冷戦時代の
考え方
を捨て去るということでございます。昨年、
田中総理
が、組閣早々、日中国交正常化を実現し、また、先般、みずからソ連を訪問して、両国の親善友好関係を深めたことは、この趣旨に基づくものとして、高く評価すべきであります。 第二は、いわゆる南北問題についてであります。 今日の
石油危機
にあたって、東南
アジア
など、開発途上国の
資源
開発にわが国が積極的になることについては異存はありませんが、それは、あくまで、開発途上国の発展と民生の向上に寄与することを大前提として行なわれなければなりません。この点からも、
政府
がみずから言ったわけではないと思いますが、いわゆる
資源
外交
ということばは誤解を招きやすく、かつ、
日本
中心の印象を与える危険がありますので、慎むべきであろうと思うのであります。 第三は、一切の武力による成果を否定することであり、第四は、
世界
平和の確保のためには、いかなる国に対しても、その領土、主権並びに独立を尊重するということでありましょう。 また、同時に、従来のわが国の
外交
姿勢を
反省
いたしますときに、人事を含めて先進国偏重の体制にあったことは否定できません。この際、この姿勢を大きく改める必要があると信じますが、
総理
の御所見を伺いたいのであります。 お尋ねしたい第二は、当面の
石油
対策及び抜本的な
資源
エネルギー
対策についてであります。 今回の
石油危機
に対処する第一の方法は、むろん、
外交
努力によって、
アラブ諸国
に対し、輸出の大幅
削減
の緩和、撤廃を求めることにありますが、第二は国内対策であります。 われわれは、従来、特に、
石油
、
電力等
に対して、官民ともに無配慮な浪費を続けてきたことをこの際深く
反省
し、この姿勢を改めて、浪費の徹底した自粛
削減
と代替
資源
の活用をはかることであります。
石油
消費の規制は、今回提出されます
石油
需給適正化法によって法的規制をはかるのでありますが、
国民
各層の理解と自覚に基づく自主的節約が必要であり、また、
国民
生活
の水準を維持しつつこれをなし得る余地はなお多いと信ずるものであります。 特に、例を暖房用燃料にとりまするならば、十数年前までは、
石炭
、薪炭など、そのほとんどが
石油
以外のものによってまかなわれてきたのであります。したがって、これをもとに戻すことは可能であるはずであります。
政府
はこの種の転換が行なわれやすいように助成するとともに、衆知を集めて、浪費の排除をこまかく
指示
、徹底すべきであると考えます。 第三は、新しい
資源
の開発にわが国が参加し、促進することであります。 その
一つ
として、日ソ
協力
によるシベリア開発であります。
総理
は、先般の訪ソに際して、この問題について具体的な話し合いを行なわれたと承っておりますが、その現状と見通しについてお伺いをいたしたいと存じます。 また、現在、この
計画
の中には米国の参加が予定されていますが、米国の国内事情によってこれが困難になった場合はいかがなさいますか、あわせて御
答弁
をお願いいたしたいと存じます。 なお、それとともに、東南
アジア
その他の地域における共同開発の折衝の進展を期待いたしたいと存じます。 さらに、国内においては、水力、特に揚水発電、
石炭
など、既存の
エネルギー
資源
を見直すとともに、この際、恒久対策として、地熱、太陽熱などの利用のほかに、新しい
エネルギー
資源
の開発として、核融合等の研究に国家資金を惜しみなく投入すべきであると思います。このたび、原子力委員会の核融合研究開発懇談会は、すでに
世界
的水準に達しているわが国の核融合研究をさらに進めるために、
昭和
五十四年度までに約四百億円を投入して核融合炉実現一歩手前の臨界炉心プラズマを建設すべきであるという報告をまとめました。この核融合
エネルギー
は、人類
最後
の、しかも、永遠の
エネルギー
といわれるものでありまして、しかも、公害を伴わないものというのであります。
政府
は、この報告を尊重し、その実現に最善を尽くすべきであると思うのであります。 今回の
石油危機
は、まあ、いずれやがては
解決
を見るでありましょう。しかし、このことは、現状が小康を得るというのにとどまって、本質的な、基礎的な
条件
には変化がないと思うのであります。 その基礎的
条件
とは、われわれが消費をいたしておりまする
石油
資源
は、明らかに有限であります。しかも、その限界が迫りつつあるのであります。熱
エネルギー
は、核融合
エネルギー
によって
解決
されるといたしましても、それが実用化し、しかも大量供給が可能になるまでの間、既存の
エネルギー
が現在の消費の
拡大
にたえられるかどうか。しかも、
資源
は、
石油
に限らず、鉄鉱石、金属類、乱伐すれば木材までも、すべて有限であります。 元来、
資源
も、
食糧
の
生産
力も、また、廃棄物、排出物その他の許容量も、すべて有限なのであります。われわれは、この有限の
世界
の中に生きているのであります。それにもかかわらず、われわれは無限の
世界
に生きているかのごとき放漫な消費と行動を続けてまいりました。 私は、人類文明の未来に横たわる障害として、核戦争、公害、
資源
の枯渇のほかに、人口の爆発的増加をあげなければならぬと思います。
世界
の人口は現在三十六億、
年間
の増加率は約二%でありますが、このまま推移いたしますならば、西暦二〇〇〇年には七十億、二〇三〇年には百五十億に達します。しかも、この勢いはとどまるところを知らないのであります。 地球は、一体この膨大な人口を養うことができるでありましょうか。来年は、
世界
人口年として、この問題を国際的に取り上げることになっております。このままの勢いで人口が増加し、先進国が
成長
競争にうき身をやつすならば、われわれは破滅の断崖に向かって全速力で走っていくことになるのであります。 人口の増加率が高いのは開発途上国でありますが、一方、米国人は一人でインド人六十人分、
日本
人は一人でインド人二十五人分の
資源
を消費していることも事実であります。人口増加について開発途上国の自制と
協力
を求めるためには、先進国が、
資源
の消費について、まずみずから節するという実績を示さなければなりません。(
拍手
) この際、わが国も、有限の
世界
に立つ行動原理に転換し、
資源
多消費型
産業
構造を、
資源
節約型、知識集約型
産業
中心の
産業
構造へ改編し、浪費型
経済
、使い捨て
国民
生活
を改めて、
資源
節約の中に
生活
の楽しみと豊かさを求めなければならないと思うのであります。(
拍手
) 文明、文化とは、決して浪費やぜいたくのことではなく、合理性の追求にあると信ずるのであります。今回直面した
石油危機
は、われわれが有限の
世界
に生きている事実を強く認識し、大きく行動と思考の原理を転換することができるといたしますならば、これは、災いを転じて福となす機会であるともいえると思うのであります。(
拍手
)この点について、
総理
の御所信を承りたいのであります。 第三にお尋ねしたいことは、
物価対策
、特に総
需要抑制
についてであります。
総理
の御発言のごとく、
物価
抑制
の根本は総
需要
の
抑制
であります。このため、
政府
は、
財政
支出
の繰り延べ、
金融
の引き締め、貯蓄の増強による購買力の吸収等の
措置
を実施し、四十九年度
財政規模
についても、公共事業等の圧縮を中心とし、極力
抑制
する方針を明らかにいたしましたが、それらの
措置
の適切な推進を強く期待しつつ、これに関連し、二、三の要望を述べ、
総理
の御見解を承りたいと存じます。 その
一つ
は、六兆円といわれる空前の年末ボーナスが
物価
に与える
影響
であります。
政府
は、すでに、定期預金金利あるいは非課税貯蓄限度の
引き上げ
を決定いたしましたが、このほか、有利な
条件
の特別国債の発行、勤労者財産形成貯蓄に対する
優遇措置
の
拡大
が必要と存じます。特に、勤労者財形貯蓄については、税額控除制度、割り増し金制度の導入など、飛躍的な、発展的な
措置
の検討が必要と存じます。 しかし、
政府
がすすめて勤労者の貯蓄を増進する以上、その貯蓄の価値が失われないように、
物価
の
抑制
に対する大きな
責任
があることをあらためて強く自覚いたしていかなければならぬと信じます。 また、すでに、勤労者を中心に、二兆円
減税
が
国民
に公約をせられました。これは善政であって、その目標は、事情の許す限りすみやかに達成すべきであります。しかし、これは、適確な吸収策を伴わない限り、新しい購買力となって
物価
に
影響
することは避けられません。 他面、この
減税
の恩恵に浴さない、所得税を納めないでもいい人々が七百万人以上にも達しているのであります。この人々は、若年層、独身者のほかに、家族の多い低所得者でもあります。
物価
が上がった分は
減税
で補うというわけにはいかない人々であります。財源の余裕があれば、この人々に対する対策を優先的に配慮すべきであると思います。 また、この
減税
の公約のあとで
石油
事情の激変があったのであります。その他のすでに決定した
政策
も同じでありますが、変動に際会した転換は、決して公約違反ではありません。(
拍手
)これらを勘案し、
減税
の目標は守りつつ、その実行方法については再検討を要すると思いますが、
総理
の御見解を承りたいと存じます。 次に、
石油危機
対策、
物価
抑制
についての基本的姿勢について申し述べたいと存じます。 今日の状態を招来いたしたことについて、その
責任
の一切が歴代
政府
の
高度成長政策
にあったという非難があります。しかし、これは必ずしも妥当なものではありません。この高度
経済
成長
の結果、たくわえられた外貨や
経済
力があったればこそ、この
危機
に対処し、また新たなる
資源
開発に
協力
することができるのであります。(
拍手
)また、幾多のひずみが伴ったとはいえ、
国民
の
生活
も向上し、豊かになったことも事実であります。 しかし、その
政策
の転換がおくれ、その惰性が今日まで続いてきた事実、またその弊害の存在も認めなければなりません。
政府
は、これに対し深く
反省
し、思い切って
生産
第一から
国民
生活
第一主義への
政策
転換を行なうべきであります。 また、資本主義の弊害の最も大きなものの
一つ
は、自己の勤労によらない多額な所得が存在するということであります。投機、買い占め、売り惜しみ、地価の急騰等による暴利がそれであります。しかも、それがまじめに働いている人たちの所得との間におびただしい格差を招来しているということが重大であります。しかも、それは
高度成長政策
によって助長されたということも必ずしも否定できないのであります。 われわれの守るべき自由というのは、
政治
的、社会的な自由であって、決して
経済
の放漫ではありません。
政府
は、この際、税制を改め、
土地
規制、要すれば私権の制限をも含めて、この社会的不公正の是正に勇断をもって対処すべきであると思うが、
総理
の御見解を承りたいのであります。(
拍手
)
石油危機
を乗り越え、
資源
事情を克服し、
物価
を
抑制
して
国民
生活
の安定をはかるためには、与党たると
野党
たるとを問わず、互いしに力を合わせ、また
国民
各層の理解と
協力
をまたなければ効果は得られません。
政府
は、過去を
反省
し、その
責任
を自覚し、みずから率先する姿勢を示すとともに、その適切なる
措置
をすみやかにとらなければならぬことはむろんであります。このたびの各地に見られた買い占め騒ぎの裏には、行政指導や対策が時宜を失したり誤っていたことによる部分も多かったのであります。同時に、
政府
はあげて、
国民
とひざを突き合わせ、その声を聞いて、理解を求める努力を惜しんではなりません。同時に、既往を責め、その
責任
を追及するだけでは、今日の困難の具体的克服にはならないのであります。(
拍手
)
国民
各層の心からなる
協力
こそ
最大
の力であると信じます。 今回上程されました(「まだされていないぞ」と呼ぶ者あり)二つの法案に対し、各党とも適正あるいは厳正な審議を願い、すみやかにこの法案の期待する効果があげられるよう御
協力
を願うものであります。 これらの点について
総理
の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(
拍手
) 〔内閣
総理
大臣
田中角榮君登壇〕
田中角榮
12
○内閣
総理
大臣
(田中角榮君) 石田博英君にお答えをいたします。 まず第一は、
外交
の基本的
態度
についてでございますが、
外交
の基本的
態度
につきましては、原則を確立し、具体的に明確にすべきであるとの御指摘はもっともなことでございまして、御提示のあった諸原則は、わが国のこれまでの
外交
の基本を貫くものとして同感の意を表する次第でございます。 すなわち、私が内閣を組織いたしまして以来、中国とは国交を正常化し、ドイツ民主共和国、ベトナム民主共和国とも
外交
関係を設定し、社会体制を異にする国家との交流を通じ、東西間の緊張緩和に貢献することをわが
外交
の基本の
一つ
としておるのでございます。 南北問題につきましても、まさに相手国の立場に立ち、その発展と民生の向上に寄与することを前提にしなければならず、右を踏まえまして、近く東南
アジア
の諸国を訪問し、親善友好の実をあげたいと考えておるのであります。 平和憲法をいただき、平和
外交
の推進を
外交
の根幹とするわが国といたしましては、武力による領土の獲得及び占領は許容できないところでございます。これこそ歴代
自民党
政府
の戦後一貫した
外交
の柱なのであります。 なお、人事を含めて先進国偏重の
外交
姿勢についての御指摘でございますが、先進国に対する
外交
と開発途上国に対する
外交
とは相互に密接な関連があり、そのいずれかに偏重するということでは、変革する
世界
の情勢に対応できなくなっております。それぞれに対する
外交
を一体として適正な
措置
を講ずるというのがわれわれの
外交
姿勢であります。 このような観点から、開発途上国に対する
外交
実施体制が必ずしも十分でなかった点は
反省
し、人員、機構の拡充、通信連絡体制の整備を含め、
外交
実施体制の充実のため諸施策を強力に推進をしてまいりたいと考えます。
石油
対策及び
資源
エネルギー
対策等についての御発言がございましたが、
石油危機
の解消のためには、中東問題の早急な
解決
をはかることが基本的な道だと考えておるのであります。
政府
としましては、十一月二十二日、中東問題に関するわが国の
態度
を明確にいたしましたことは御存じのとおりでございます。また、中東諸国との関係を一そう緊密にするため、近く
政府
の特使として
三木
副
総理
を派遣することといたしておるのであります。わが国としましては、今後とも
アラブ諸国
がわが国の立場を十分理解するよう、一そう努力を払いますとともに、産油国と消費国とが相互に対決することなく、共存共栄の見地に立って、
石油
の安定的供給及び増産を行ない得るような状況をつくり出すことにつとめることが肝要であると存じておるのであります。このため、わが国としましては、産油国の事情に応じ、工業化をはじめとする
経済
開発に積極的に
協力
をしてまいりたいと考えております。
石油
、
電力
節約のための御発言につきましては、
政府
は率先して
石油
、
電力
の節約を行なうように取り計らっておりますし、特に、一般
国民
に対しても、不要不急等の問題を含めて
石油
の節減、
電力
の節減をお願いをいたしておるのでございます。 また、御指摘のとおり、代替
資源
の開発につきましては、海外及び大陸だなにおける
石油
資源
の開発を強力に推進する一方、原子力発電の積極的な推進、水力発電の見直し、地熱発電、
石炭
火力発電の開発及び活用等に対して・いま諸般の
政策
を練っておるのが実情でございます。さらに、核融合、太陽
エネルギー
、水素
エネルギー
等、豊富かつ無公害の新
エネルギー
技術の開発の促進を行なっておるのでございます。 また、シベリア
資源
開発についての御発言がございましたが、チュメニの
石油
開発、ヤクートの天然ガス開発等のプロジェクトにつきまして、日ソ当事者間で交渉が進められております。本件につきましては、日ソの間で、お互いが
協力
をし合いながら開発をいたそうという基本的な合意がなされておることは御承知のとおりでございます。訪ソの際、ブレジネフ書記長と私との間に、互恵平等の原則に基づき、シベリア開発を推進することにつきまして基本的な合意を見ておりますから、当事者間の交渉は、漸次進展をしておるわけでございます。 また、
日本
政府
としましては、各プロジェクトについて、両当事者が合意をすれば、必要な信用供与や、また
政府
間取りきめを付与するというように、前向きに対処する方針でございます。また、大規模なプロジェクトにつきましては、日ソだけではなく、米国その他第三国の参加を否定しないことになっておるわけでございます。これらにつきましては、
アメリカ
との間に、いま米ソ、日米、日ソというような形で、緊密な連絡がとられておりますので、三国共同の形でこれらのプロジェクトが具体するものと考えておるのであります。 次は、核融合の問題についての御発言がございましたが、核融合は、将来にわたって
最大
の可能性を秘めた無限の新
エネルギー
であることは御指摘のとおりでございます。幸い今日までのわが国の研究成果は、
世界
水準に比肩し得る段階にありますことは、そのとおりでございます。今後の研究推進に大いに期待すべきものがあると考えておるのであります。
政府
は、原子力委員会の
考え方
に沿って、格段の努力を傾注してまいりたいと考えます。 わが国の
産業
構造等についての御指摘がございましたが、御指摘のとおり
資源
、
エネルギー
は有限なものでございます。無限というべき新
エネルギー
が開発されない限り、
エネルギー
や
資源
は有限なものという前提に立って、多消費型の
産業
から省
資源
型の
産業
に転換をしていかなければならぬことは、間々申し上げておるとおりでございます。先回の
国会
でも、重化学中心の工業から知識集約型
産業
、付加価値の高い
産業
に転換をしなければならない、それが公害を除去し、
日本
の新しい
産業
構造の前提でございますと述べてきたわけでございますが、今次
石油危機
を契機にして、なお一そうその感を深くしておるのでございます。 それから、
物価対策
と総
需要
の
抑制
についての御発言でございますが、現下の
経済
情勢にかんがみまして、
物価
問題の
解決
こそがすべてに優先して取り上ぐべきであるということは、先ほども申し上げたとおりでございまして、
政府
はこれに全力を投入してまいりたいと考えております。
物価騰貴
を
抑制
するためには、総
需要
の
抑制
をはかることが基本であることも、先ほど申し述べたとおりでございますが、そのため、年初以来、各般の施策に加えまして、
財政
金融
政策
、民間設備投資等について、一そう
抑制
的な運営につとめてまいりたいと考えております。
昭和
六十年展望の大型プロジェクト等につきましても、当面は総
需要抑制
との関係から大幅なスローダウンを考慮したいと考えております。
政府
は、これら総
需要
の
抑制
をはじめとする有効適切な
物価対策
の推進によりまして、
物価
の安定をはかり、勤労者の貯蓄の価値が失われることのないよう、全力を傾注してまいりたいと考えておるのであります。 次は、
減税
についてでございますが、
減税
につきましては、先ほど勝間田君の質問にお答えをしたとおりで御理解をいただきたいと思います。 ただ、後段言及されました、
減税
の恩恵を受けない階層に対する施策につきましては、従来から
社会保障
の面で配慮してまいりましたが、四十九年度
予算
においても、
生活
保護、福祉
年金
その他の給付の改善につきまして、十分考慮をしてまいりたいと考えるのでございます。 次は、
生産
第一主義から
国民
生活
第一主義へということでございますが、四十八年度
予算
編成の冒頭申し述べましたとおり、戦後の
生産
第一主義、輸出中心主義ということによって、それなりの大きなメリットはあったわけであります。あの敗戦から今日の
経済
復興をなし遂げることができました。そして、
国民
に職場を提供することができたのであります。それで、なお輸出力も培養せられました。先ほども述べたとおり、外貨も相当量保有することができたのでございます。国難ともいうべきこの
石油危機
に対応して、
国民
生活
に絶対不可欠のものについては、輸入する外貨の余力もございますということを一言にして述べておるとおり、これは戦後の
国民
のたゆまない努力の成果であることは申すまでもないのでございます。 しかし、先ほども述べましたとおり、輸出第一、重化学中心のというような工業から、知識集約的
産業
に移行しなければならないということと同時に、
国民
生活
重点、
社会保障
の充実を重点とした、豊かな、この国に生まれたことを真に喜び合えるような国につくり上げるように方針を変えなければならないということは、前段から申し上げておるとおりでございます。(
拍手
) そのためには、これから大きな困難もあると思いますが、
国民
的な支持と理解を得ながら、
政府
も新しい国づくりのために全力を傾けてまいりたいと存じます。そのためには
国民
の声を聞かなければなりません。
政府
も懸命な努力を傾けますが、政党
政治
でもございますし、党は
国民
との第一線にあるわけでございますから、格段の御
協力
を切にお願いをいたします。(
拍手
)
—————————————
前尾繁三郎
13
○
議長
(
前尾繁三郎
君) 藤田高敏君。 〔
議長
退席、副
議長
着席〕 〔藤田高敏君登壇〕
藤田高敏
14
○藤田高敏君 私は、
日本社会党
を代表し、勝間田議員の質問に引き続き、いま、
国民
はこの
国会
に対し何を要求し、
田中内閣
に何を抗議しているか、私はこれら
国民
の立場から、
田中内閣
の失政と盲点を追及しながら、以下質問を行ないます。(
拍手
) いま
国民
が
政府
に要求する第一の重要課題は、
独占企業
や大
会社
に金もうけをさせている
インフレ
問題と、
国民
を苦しめている高
物価
問題を早急に
解決
せよということであります。そこで、私は、
インフレ
対策に言及する前提として、まず
政府
の現状認識についてお尋ねします。
総理
は、わが国
経済
の現状を
悪性インフレ
と見ているのか見ていないのか。一昨日の施政方針を聞いても、先ほどの
答弁
を聞きましても、
インフレ
だという認識さえないようでありますが、
インフレ
でないとすれば、
総理
は
インフレ
をどのように定義づけるのか、
国民
の前に明らかにしてもらいたいのであります。(
拍手
)
福田大蔵大臣
は、
昭和
四十一年の国債発行
国会
以来の
物価
論争において、あなたは、
インフレ
とは
消費者物価
、
卸売り物価
が慢性的に
上昇
し、貨幣価値が下落して、
国民
の中に金を物にかえる換物運動が起こる事態を
インフレ
だと定義づけております。
田中内閣
実現後の状態は、
福田大蔵大臣
が指摘したこれらの
条件
が、急速に、しかも大幅に、長期にわたって起こっております。しかも、
卸売り物価
が
消費者物価
の
上昇
を誘導する形の悪い
インフレ
の状態が続いております。
安定成長
論者を自認する
大蔵大臣
の認識と定義づけをあらためて聞かしてもらいたいのであります。(
拍手
)
インフレ
は、殺人罪より重い
政治
犯罪であります。
インフレ
と高
物価
問題を
解決
できない内閣は、直ちに退陣に値するものといわざるを得ないのであります。(
拍手
)
インフレ
は、言うまでもなく、金もうけできる者と損をする者とをつくります。いま、わが国で、
インフレ
金もうけの代表的なものは、
土地
を媒介として営利をむさぼる大
企業
と
土地
成金であります。和光証券調査によると、東京証券市場上場
会社
の所有地の帳簿づら
価格
が二兆九千億であるものが、時価相場では六十一兆円にもなっており、その差額が含み資産となり、その含み資産を担保として、また金を借り、その金で
信用膨張
をさせながら、地価をつり上げつつ
新幹線
や高速道路の予定地や工場再配置
計画
に基づく指定地域の
土地
買い占めに狂奔し、労せずしてばく大な所得と利益をあげているのであります。(
拍手
)昨年の長者番付でも、百人中九十五人までが
土地
成金で占めているではありませんか。この水先案内こそ
日本
列島改造推進者の
田中総理
だと言われてもしかたがありますまい。(
拍手
) もう
一つ
の代表的な例は、銀行のもうけ高であります。全国十四の都市銀行が、今年九月
決算
で千三百三十五億円もの利益をあげ、これで十八期九
年間
も連続してもうけっぱなしであります。このうち、上位七銀行は、この半
年間
で百億以上、第一位の銀行は百六十億円もの利益をあげ、一日換算にしますと、約八千七百万円ものもうけをしておる計算になっているのであります。 また、
政府
が
生産調整
カルテルを許可し、操業短縮で
独占価格
をつり上げさせた鉄鋼を見ても、鉄鋼大手四社の経常利益は、この半
年間
で一千五百億円、新日鉄では、一社だけで七百八十億円の経常利益をあげ、加えて、特別償却費と公害防止準備金で四百二十六億円の内部留保を行なうほど、独占資本は
インフレ
で史上空前の利益をあげておるのであります。(
拍手
)
政府
は、税金面でも、これら大
企業
には、特別
優遇措置
により、取るべき税金をまけてやり、この新日鉄の例では、公表法人税額は、営業利益の二十分の一、純利益の九分の一しか税金を取っていないのであります。なぜこのように
独占企業
だけを優遇するのか。
政治
献金に裏づけされている
政府
と独占の癒着を物語るものといわざるを得ないのであります。(
拍手
) その反面、
年金
生活
者、低所得者層、老人ホーム等での
生活
者や勤労者は、
インフレ
ではかり知れない犠牲を受けております。 この
田中内閣
の
政策
の誤りと貧困は、いまや
国民
相互の間に、救いがたい貧富の差を
拡大
し、
年間
所得十億円もの豊かな
生活
者の陰に、わずか、四人家族で月十万足らずのサラリーマンの
生活
や、月五千円の貧しい
年金
でその日暮らしもできない
国民
がたくさんいるのであります。この社会悪、この不公平、この不平等
政治
が、いまやトイレットペーパー騒ぎや灯油問題に見られる爆発的
政府
不信になってあらわれておるのであります。(
拍手
)したがって、
政府
が幾ら声を大にして
石油危機
を叫び、
国民
に
協力
を訴えても、もはや
国民
は、
政府
の言うことを絶対信頼いたしておりません。このいわば
政治
不信の
責任
は一体だれがとるのか。この
田中内閣
の
責任
をきびしく追及するものであります。(
拍手
)
政府
は
インフレ
・
物価対策
として、八月の三十一日、緊急
物価対策
を出しましたが、これは大道での将棋と同じで、王手のきめ手のないものばかりであります。たとえば総
需要抑制
として、道路、鉄道、港湾等、大型プロジェクト等約七千億の公共事業の一時繰り延べ策を出しましたが、これは昨年来からの繰り越しものであり、あくまでも繰り延べであって、
削減
ではないのでありますから、
抑制
効果の薄い、全く見せかけのものになっております。
政府
が本腰を入れて総
需要抑制
を断行するというのであれば、高度
経済
成長
の最たる事業として、ことしから五十二年度までの道路投資五カ年
計画
、十九兆五千億、この
計画
は、御承知のごとく過去十九
年間
にわたる投下事業費の一・五倍を上回る膨大なものでありますが、この
計画
を白紙に返し、再検討するぐらいの英断がなければ、
土地
の買い占めもあとを断たないし、公害と交通地獄を引き起こしている自動車の
生産
台数にもブレーキがかかるほどの
抑制
効果は出てこないと思うが、どうか。
福田大蔵大臣
は、現在はストップ・アンド・シンクで、立ちどまって考えるときだと言っておりますが、そうではなくて、
インフレ
抑制
には、勝間田議員も指摘したとおり、
日本列島改造計画
をストップし、国総法を撤回し、大
企業優先
の
政治
姿勢を大胆に転換することであります。(
拍手
)
総理
の
施政方針演説
でも総
需要抑制
を強調しているが、そうであれば、今次の補正
予算
に、私が指摘する性格の
需要抑制
策をなぜ出さなかったのか。
政府
の
需要抑制
とは、大資本家には手をつけず、
国民
にだけ犠牲を求める耐乏策であり、本来的な
需要抑制
の効果のあがるものはほとんどなく、全く無為無策であります。
田中総理
、あなたは本気で
インフレ
退治をやる意思があるのかないのか。たてまえ論や
演説
の問題ではなくて、
国民
は本音を聞かせてもらいたいのであります。(
拍手
)
田中総理
、残念ではありますが、
田中内閣
実現の翌月から
卸売り物価
主導型の
インフレ
に移っております。ある
経済
学者は、これを田中
インフレ
と言っております。この悪性の
インフレ
原因
は、
日本列島改造計画
と国総法を撤回する以外に克服することはできません。
田中総理
にその意思があるかないか、重ねて私は質問するものであります。(
拍手
) それと同時に、
福田大蔵大臣
にお尋ねします。 今回の
内閣改造
で、あなたと
総理
との会談では、この
日本列島改造計画
と国総法は白紙に返すとの合意ができ、そのことを前提としてあなたが
大蔵大臣
を引き受け、
インフレ
問題にも対処する決意をしたのではなかったのか。
国民
はそのように理解しているし、この方針の根本的な転換なくしては、
インフレ
退治も
物価高
の
解決
も困難であると確信しますが、
総理
と
大蔵大臣
との
考え方
に相違があるのかないのか、明快な
答弁
を求めるものであります。 次に、私は、大
企業
の
独占価格
の規制問題と
公共料金
の問題については、勝間田議員の質問にもありましたので、ただここで簡単に触れたいと思いますことは、この現在の
物価高
を押える最低の施策として、国鉄運賃の
値上げ
を中心とする全
公共料金
の
値上げ
、
消費者
米価の
値上げ
をストップすべきであると思うが、その意思があるかどうか。問題は、やれることをやるかやらないかであります。
総理
の
考え方
を承りたいのであります。 次に、私は、今後の
予算
編成方針のあり方について、
インフレ
予算
克服の立場から、その方針転換を強く要求するものであります。これまでの
予算
編成は、いわば日経連・財界
予算
ともいうべき
産業
基盤強化の
インフレ
予算
がすべての土台となり、いわば余り財源で福祉
予算
を上乗せする方式であったと考えます。この方針が
日本列島改造計画
の上を走る限り、
財政
インフレ
の
解決
はもはや考えられません。 そこで、これからの
予算
の組み立て方としては、当面、全
予算
の二五%を目標に
社会保障
予算
ワクを先取りして、
生活
保護、老人福祉、母子世帯、身体障害者関係、児童福祉、看護婦
不足
解消、
年金
、健保等の
社会保障費
や環境改善費等を優先財源として確保し、そのあと、他の
産業
基盤関係の
予算
を上乗せする方式に百八十度の転換をしない限り、
インフレ
財政
からの脱却も不可能であり、福祉元年はまさに福祉が死ぬ福死元年となって、
悪循環
を続け、
インフレ
の谷間にあえぐ
国民
は、その生存権さえ守ることが困難になります。
総理
及び
大蔵大臣
にこの方針の転換についての見解を求めるとともに、いやしくも、地方自治体から保育所の超過負担訴訟を起こされているようなぶざまなことは直ちに解消すべきであると思います。所管
大臣
の意見も含めて見解を承りたい。 第三に、私は、先刻来より指摘してきたとおり、
インフレ
促進の主たる
原因
に
土地
問題があります。 ここ数
年間
に民間
企業
の買い占めた
土地
は、国土面積の一%をこえる四十万ヘクタールにも及び、
経済
企画庁報告でも、全国市街地
価格
は、
昭和
三十年からことし三月までに二十三倍にも達したと報告し、
田中内閣
実現後一
年間
で三四%以上も
値上がり
しております。 この
土地
問題の
解決
は、わが党がかねてから
主張
しているように、
土地
の取得は市町村長の許可事項とするとともに、公共用地
拡大
のため自治体の先買い権を強化すること、固定資産評価額を基準とする標準地価をこえる譲渡所得に対しては、高率の譲渡税を課する必要があります。また、投機を目的とする
土地
に対しては
土地
増価税、臨時財産税の創設を
主張
しております。
政府
は、これらの
土地
対策に対しても、税制上も何ら積極的施策を講じていないのはどういうことなのか。勤労者の住宅用地の確保問題を含め、これらの諸点について
総理
並びに関係
大臣
の意見を聞かせてもらいたいのであります。 次に、私は、
インフレ
の被害救済制度について質問します。
インフレ
は少数の豊かな人々を一段と豊かにし、貧しい人々を一段と貧しくしています。この立場から、私は、当面、
年金
生活
者の
年金
制度を積み立て方式から
賦課方式
へ転換すると同時に、各種
年金
の一本化への調整期間に先立ち、賃金及び
物価
スライド制
を前提とする、まともな
生活
のできる、全国一律の最低保障
年金
制度を創設するとともに、
年金
には税金をかけないこと、また、現在の
年金
制の
物価
スライドの発動は、厚生
年金
は来年の十一月、
国民
年金
は五十年の一月からとなっておりますが、この
インフレ
下では全く実情に合わないので、せめてこれぐらいはすべて来年の一月実施に繰り上げ、
年金
受給者に対するあたたかいお年玉にする意思がないかどうか、
政府
の見解をただすものであります。(
拍手
) 第二に、
インフレ
救済緊急対策は、零細な預貯金者に対し
インフレ
の被害補償をやるべきであります。
政府
は、総
需要抑制
策の一環として預金金利の一%
引き上げ
策を検討しているようでありますが、いわゆる
物価
スライド制
による預金元本の保証
政策
をこの際新設すべきであります。その保証対象額は勤労者の平均貯蓄額を
一つ
の目安とし、この制度を三年ないし五年さかのぼって適用してはどうかと考えますが、
大蔵大臣
の所見をただしたいのであります。(
拍手
) 第三に、私は、勤労者の
減税
については、税額控除、戻し税方式によって年内
減税
の実施と、さらに公労協の
インフレ手当
の要求に
政府
並びに関係当局は直ちに応ずることを強く要求するものであります。(
拍手
) 異常な
物価高
のもとでは、今年の賃上げ分は人事院方式による計算によっても完全に帳消しとなり、税金は名目所得の
上昇
のため、年末調整では税の追加払いをしなければならない現状であります。
政治
の
責任
においてなすべきことをしないでストライキはけしからぬとは、そのまま
政府
にそのことばを返上しなければなりません。(
拍手
) なお、私は、
金融
引き締めのしわ寄せと資材難に悩む中小
企業
対策及びわが国農政が直面している基本問題に触れる予定でありましたが、これまた勝間田議員が質問しましたので省きます。しかし、今日の
世界
的な
食糧
危機
の中で、
食糧
の自給自足の問題は事
国民
の胃袋に直結する問題であるだけに、
石油危機
といえども比較にならない
政治
の根幹にかかわる問題であることを私は強く警告をし、この立場からも、わが国
農業
を壊滅させ、地価
高騰
の暴挙ともいうべき三十万ヘクタールの
農地転用
構想は直ちに撤回することを強く要求するものであります。(
拍手
) 次に、私は、今回の中東戦争に端を発した
石油
問題は、わが国
政治
の上にきわめて痛烈な教訓を与えたと考えます。その立場からわが国内外
政策
の転換を
政府
に強く求めるものであります。 この現実の教訓の第一は、
日本
の
アラブ外交
が日米安保体制のワク組みの中で終始し、常に
日本
が
アメリカ
・イスラエルの立場から
アラブ諸国
に対応してきた、いわゆる金さえ出せば物が買える、あるいは物が売れればよいというようなエコノミックアニマル
外交
の
失敗
であったと同時に、日米安保
外交
の敗北と終末を警告したものであったと考えます。(
拍手
)この現実を通して
政府
は、日米安保一辺倒の
外交
方針を転換し、自主中立の平和
外交
に徹し、当面、特に
アジア
諸国との友好親善強化に最善を尽くすべきであると考えます。 この立場から、私は第一に、中華人民共和国との関係では、昨年の日中国交正常化の共同声明を基本として、
航空協定
、通商協定など
一連
の実務協定の締結を急ぐことを強く要請するものであります。その後の経過と今後の見通しについて聞かせてもらいたい。 第二に、朝鮮人民民主主義共和国に対しては、わが国は一切の敵視
政策
をやめ、朝鮮は
一つ
であり、いかなる分裂
政策
にも
反対
し、南北朝鮮の自主的、平和的統一を支持する立場から、国交の正常化を急ぐべきだと考えますが、
政府
の見解をただしたいのであります。 なお、
金大中事件
については、主権侵害もさることながら、金大中氏の人権さえ守ることができない
日本
外交
の姿に対し、諸外国から国際的な不信とひんしゅくを買っております。この際、金大中氏等の再来日をあくまでも実現させ、わが国
外交
の自主性をこのときこそ内外に発揮すべきであります。 また、この問題の完全
解決
まで、日韓定期閣僚
会議
と一切の
経済援助
は中止すべきであります。(
拍手
) このことが、南北朝鮮の統一を促進し、全朝鮮民族の願いにも一致する自主中立の
外交
であると確信しますが、
総理
、外務
大臣
の見解をただすものであります。(
拍手
) 第二の教訓は、
資源
は全
世界
の人類の繁栄と福祉のためのものであるという認識から、わが国の
資源
問題に対する発想の転換と
産業
構造の転換を求めたことであります。 すなわち、
資源
の活用は全人類史的立場から、しかも長い将来にわたって
計画
的に、有効に活用すべきものであること、わが国のように、
資源
を持たずして最も多くの
資源
と
エネルギー
を使ってきた国は、特にこの立場から、くたばれGNP、すなわち
資源
むだづかいの
経済
体質と
産業
構造の転換を急ぐべきであります。そのためには、ローマクラブ的発想に代表される省
資源
型
産業
への転換が必要であり、その直接の出発点に、
日本列島改造計画
の中止と
資源
浪費型
重化学工業
中心の
政策
転換を位置づけるべきであります。 いま、われわれの周辺は、有毒、有害、ききめのないもの、俗悪なもの、欠陥品などで取り巻かれ、一億総浪費の
拡大
再
生産
下に置かれております。かかる浪費
産業
にいまこそ
政治
は手をつけるべきではないでしょうか。
総理
の施政方針で価値観の転換を強調しましたが、これはこれらの営利
企業
に向けてこそ強調することばであって、これに手をつけないでおいて
国民
にだけ節約を美徳として押しつけることは本末転倒であります。したがって、この発想と
政策
転換の勇断があれば、
石油
問題から起こっている
家庭
用灯油、中小
企業
、農漁業用灯油、軽油、A重油等、
生活
必需物資は十分保障されていくものと考えます。
総理
及び担当
大臣
に
政策
転換の決意と
生活
必需物資確保の見通しについてお尋ねします。 この決断もなくして、今日の
インフレ
、
物価高
の問題まですべて
石油
問題にすりかえ、国難来たるのキャンペーンのもとに
田中内閣
の失政をおおい隠すことは、
国民
の名において断じて許されないところであります。(
拍手
) いわんや、
石油危機
を口実にして、財界、業界の
圧力
に屈し、公害
企業
自体の公害防止対策や
政府
の監視、指導は絶対にゆるめてはなりません。特に、
エネルギー
危機
の対策として、数世代に
影響
を及ぼす放射能の危険に目をふさぎ、安全性の確認もないまま安易な原子力発電に走ることは、断じて許してはいけません。 また、
石油
問題が直接官僚統制への道を開き、物資及び
価格
統制が即賃金統制に直結する
所得政策
の
採用
は、これまた断じて許すべきではないと考えますが、これらに対する
総理
並びに
通産大臣
の見解を聞かせてもらいたいのであります。
最後
に、私は、
石油危機
に関連して
政府
が提出しようとしているいわゆる
石油
関係二法について質問します。 この両法案を通して最も問題になる点は、カルテル行為によって物の量と
価格
を中心に統制し、官僚統制に道を開く点であります。この法律では、カルテル条項については法律のワク外に出たとはいえ、覚書条項によって実質的には法律的効力を持たせ、
独禁法
に風穴をあけ、関係業界の談合によって
政府
が統制
価格
と需給
計画
を決定することにしております。現在のようにあらゆる分野でカルテル心理が醸成されている中で、業者がわが子に名をつけるように談合
価格
を決定するのであるから、その
価格
は高い水準で決定されることは当然の帰結であります。また、その需給関係においても、業界優先、
消費者
あと回しとなり、今日のように事態が急激に動いている中では、特に一部の大手メーカーの大口
需要
取引に効果が及ぶだけで、
インフレ
、高
物価
の中にあえぐ
消費者
と中小
企業
にとっては、依然として
物不足
と高い値段を押しつけられる結果となると思うがどうか。 時間の関係で省略をいたしますが、このような官僚統制への道はやみ行為への道であり、見合わすべきだと考えますが、
政府
の見解をただすものであります。このような統制
経済
への序幕のレールを敷かないためにも、また、
流通
面に
生活
必需物資を正しく流していくためにも、われわれは前の
国会
において
生活
関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急
措置
に関する法律をつくったのではなかったのか。 この買占め規制法の制定にあたり、われわれの提出した法案から、
売り渡し命令
、
価格
調査の都道府県知事への委任、きびしい罰則規定条項を
骨抜き
にしたのは一体だれであったのか。また、法律制定後、あれだけ買占め、売惜しみが公然と行なわれたにもかかわらず、調査結果をさぼってきたのは一体だれであったのか。このしり抜け法をこの
国会
でわれわれの
主張
どおり法律改正を行ない、
国民
の民主的な監視の中で運用の実をあげる
政策
こそ、
石油
二法に先行してなすべきことではなかったのか。いわゆる買占め規制法強化と
石油
二法運営との関係についても、
総理
並びに
通産大臣
の見解をただしたいのであります。 以上、私は
インフレ
、
物価
、
石油
、当面する
外交
問題等について質問をしてきましたが、
最後
に私は一人の
政治
家として、三十七年前現職
大蔵大臣
であった高橋是清
大臣
が死去した当時のファッショ
政治
、暗黒
政治
の
日本
歴史を振り返っております。いまだ
田中内閣
の
政治
姿勢の中に小選挙区制断念の消えうせない現状を考えるとき、今後のわが国
政治
の行くえについて、ファッショ
政治
、
国民
耐乏の統制
経済
への歴史を再び繰り返させてはならないとのかたい決意を私の心の中に誓いつつ、私の質問を終わるものであります。(
拍手
) 〔内閣
総理
大臣
田中角榮君登壇〕
田中角榮
15
○内閣
総理
大臣
(田中角榮君) 藤田高敏君にお答えをいたします。 現在の
経済
状況は
インフレ
かどうか、
物価騰貴
の
責任
、総
需要
の
抑制
策等についての御発言でございますが、
インフレ
への厳密な定義はむずかしいと思います。現在の
物価
上昇
が憂慮しなければならない段階にあることは事実でございます。
物価高騰
を
抑制
をいたすために、
政府
は、総
需要
の
抑制
措置
の強化、
生活
必需物資を中心とする個別物資の需給調整の強化、緊急二法案の提出などによりまして、
物価
の
抑制
をはかってまいるという決意を申し上げておるのでございます。 また、長期的には、
経済
社会
基本計画
にのっとり、持続的な
安定成長
のもとで
国民
福祉の充実と
物価
の安定をはかるため、一そうの
政策
努力を払う所存でございます。 また、列島改造
計画
及び国総法の撤回問題等に対してお触れになりましたが、先ほども述べましたとおり、
日本
列島改造ということは、この文字は私の個人的な
一つ
の提案でございます。ただ、国土総合開発というものの推進は、
政府
及び与党の決定に基づく
政策
であります。大都市及びその周辺地域における過密、公害問題、及び地方における過疎問題をともに
解決
し、全国土にわたって健康で文化的な
生活
環境を整備し、
国民
の福祉の向上をはかることの必要性は、今日の情勢下においても基本的には何ら変わらないものであります。しかし、このような長期の展望と現下の
経済政策
とを混同した議論が起こらないよう、
政府
も
国民
の理解を求むべきことは当然だと考えておるのであります。 国土総合開発法案は、国土
資源
の有限性に着目し、公共の福祉と自然環境の保全を優先するという原則に立って、健康で文化的な
生活
環境の確保と国土の均衡ある開発をはかるため、住民の意向をただしながら、地域の諸
条件
に即応して地方主導型の
生活
環境開発を進めるために策定されたものであることは、御承知のとおりであります。 さらに、国土の総合開発と表裏一体の関係にある
土地
問題に対処するため、
土地
利用
基本計画
を策定し、これに即して
土地
取引の規制、
土地
利用の調整を行ない、地価の暴騰、投機的行為等、異常事態に対処する特別規制地域制度を創設することとしておりまして、地価凍結を含む
土地
対策の基本法的性格を有するものであります。したがいまして、本法案は、ぜひとも成立が必要である、こう考えておるのであります。 次は、
予算
編成方針等についてでございますが、
国民
福祉の向上は、わが国の当面する最も重要な
政策
課題の
一つ
でございまして、
政府
は、従来から
国民
福祉向上のための施策の推進に十分配慮をしておるところであります。四十九年度
予算
の編成にあたりましては、最近の
経済
情勢にかんがみ、
予算
規模を極力
抑制
する必要があると考えておるのでございます。が、しかし、その中にあっても、財源の重点的配分をはかりつつ、
国民
福祉の向上のための施策に遺憾のないようつとめてまいりたいと考えます。 それから、全国一律の最低賃金制の新設等についての御指摘がございましたが、先般の
年金
制度の改正によりまして、厚生
年金
、
国民
年金
について
年金
額の水準及び最低保障額を大幅に
引き上げ
るとともに、
物価
スライド制
を導入し、
年金
額の実質価値の維持をはかることとしたところでございます。御承知のように、現行の
年金
制度におきましては、その対象者の実態や
年金
による保障の仕組みに差があり、これを無視して全国一律の最低保障
年金
を設けることは必ずしも適法ではないと考えておるのであります。
石油
問題とわが国
外交
についてお答えをいたします。 このたびの
石油
問題の発生は、中東紛争と
アラブ
産油国の
石油
政策
に起因するものでございまして、わが国は、十一月二十二日の官房長官談話に見られるとおり、中東紛争に対するわが国の立場を明確にいたしますとともに、近く
三木
副
総理
を
アラブ諸国
に派遣して、
アラブ諸国
の十分なる理解を求めることにいたしておるのであります。
産業
構造転換の問題については、先ほどもお答えを申し上げたとおり、
資源
を持たないわが国でございますので、いままでのように
資源
多消費型、
エネルギー
多消費型の
産業
構造から、省
資源
、省
エネルギー
、知識集約的
産業
に転換のため全力を傾けてまいりたいと思うわけでございます。 それから、公害防止の問題でございますが、
石油
問題が起こったので公害防止基準というものを緩和してしまうんじゃないかという御心配のようでございますが、中東戦争を契機とする
石油供給
の
削減
が、わが国
経済
の各分野に大きなショックを与えておることは事実でございます。しかし、環境
政策
といたしましては、人の生命及び健康を最優先とするものでなければなりません。その
意味
で、従来の基本方針には何ら変更はございません。 また、原子力の開発についての御発言がございましたが、先ほども述べましたとおり、原子力開発が必要であるということは事実であります。そしてそれを推進しなければならぬということもまた焦眉の急であります。しかし、安全性確保については万全の策を講じてまいりたい、こう考えるわけでございます。 なお、当面、
資源
を
生活
必需物資に優先的に供給し、かつ、買占め売惜しみ法の改正強化をはかれば足りるというような御発言でございますが、今回の
石油供給
削減
の事態に対処しまして、
物価
の安定をはかるためには、
生活
関連物資等の
生産
の増強や供給のあっせんを行なうとともに、買占め等防止法の強化をはかることも必要であると思うのでございます。その
意味
で、買占め売惜しみの防止法だけではなく、
生産
及び供給のあっせん等ができるようにいたすために法律を作成し、御審議を得たいと考えておるのでございます。たとえどのような事態が生じましても、
国民
経済
の混乱を未然に防止し、必要物資の安定的供給を確保するためには、最小限の法的
措置
が必要だと考えております。このような見地から、
国民生活安定緊急措置法案
、
石油需給適正化法案
を提出いたす次第でございますから、御理解の上、可及的すみやかに御審議をいただきたいと思うのでございます。 なお、法の運用にあたりましては、極力、官僚統制色になることを避けまして、民間の自主性を活用しつつ、総ワクとしては、
政府
の規制のもとに、
石油
需給の適正化及び
国民
生活
の安定に努力してまいりたいと考えておるのでございます。 残余の質問については、関係閣僚から
答弁
をいたします。(
拍手
) 〔
国務大臣
福田赳夫君登壇〕
福田赳夫
16
○
国務大臣
(福田赳夫君) お答えをいたします。 まず、私と田中首相との間に何か意見の違いがあるのかないのか、こういうようなお尋ねでございますが、結論的に申し上げますると、いささかの違いもございませんでございます。念のために申し上げますが、ものごとが、閣議その他の場で逐一きまってまいりますその決定に至る過程におきまして、
総理
その他閣僚と意見の違いというか、そういうことがあり得ることは、これはもうむしろ違いがあって、意見が述べられたほうがいいのじゃないかとさえ思うのでございまするけれども、閣議その他所定の手続によりまして
政府
の意見がきめられる、その上は、これは私はじめ全閣僚が
総理
とともにその施策を実行する、こういうことでございます。御心配ないようにお願い申し上げます。(
拍手
) 次に、当面の
経済
情勢を
インフレ
と見るのかどうかというお尋ねでございますが、私は、
インフレ
とこの時局を見るかどうか、これはいろいろ議論がありますが、これは学者に御一任したらどうだろう、こういうふうに思うのであります。(発言する者多し)問題は、今日のこの
物価
情勢というものが非常に深刻な、重大視すべき段階に来ておるのかどうか、こういうことだろうと思うのです。私は、そういう問題につきましては、
物価
問題がきわめて深刻な事態にあるわが国といたしまして、
政府
のとるべき施策の最も優先されるべき問題となってきておる、さようなことを考えておるのであります。 次に、列島改造
計画
についてのお尋ねでございますが、これは先ほどお答え申し上げたとおりでございます。 いま、わが国は非常な転換期に際会しておる。これからいよいよ盛り上げられたこの
経済
力をもちまして国づくりをする、その国づくりをやるにつきましては、これは国土を全部見回しましての総合的な構想というものが必要だ、そういう考えで
日本
列島改造というものがいわれておりますけれども、その
考え方
自体につきましては、私は賛成でございます。ただ、それをいかに具体化するか、こういうことになりますと、先ほど申し上げたとおりでございまして、
物価
の問題を考慮しなければならぬ、
国際収支
もよく考えておかなければならぬ、
資源
の問題あるいは公害の問題、それらを踏まえまして、適正な速度で
経済
が
成長
するように、その中の一環といたしましての総合開発でなければならない、かように考えておるのであります。いずれにいたしましても慎重に対処すべき問題である、かように考えます。 それから、次に、来年度の
予算
は福祉中心にこれを編成すべきではあるまいかというようなお話でございまするけれども、当面のわが国の情勢は、ただいまも申し上げましたとおり、
物価対策
というものがいかなる施策にも優先する、かように考えますので、
物価
を刺激するような諸施策、これにつきましては、これは
抑制
的に考えます。しかし、
社会保障
、そういうような種類のものにつきましては、特別の配慮をいたさなければならぬ、さように考えております。 また、具体的な御提案といたしまして、預金の
物価高
による減価を、大
企業
借り入れ金の元本返済を
物価
スライド方式で増額することによって補てんしたらどうだろうか、そういうお話でございます。 私は、預金者の立場を保護する、そういうような見地からいろいろな施策をとっておるわけでございまするけれども、この保護を
物価
スライド方式でやるということになりますると、お話のように、また貸し出し金についてもそういう方式の返済を迫るということにならざるを得ない。そうしますと、大
企業
等におきまして、
生産
のコストを圧迫し、したがって、
物価
を押し上げる要因をつくる、こういうことになりますので、当面の
物価対策
といたしましてはいかがなものであろうか、かように考えるのであります。 結局
物価対策
は、さような
物価
スライド方式で対策にあたるというよりは、真正面から、オーソドックスな
考え方
でございまするけれども、総
需要
を
抑制
し、需給の安定をはかるという取り組み方をいたさなければならないんじゃあるまいか、さように考えておるのであります。 また次に、年度内調整
減税
をすべきじゃないかというお話でございます。 この点につきましては、先ほどお答えを申し上げましたが、私は、いまこの
物価
問題をどういうふうに処理するか、苦慮し、苦悩をいたしておるわけでございます。 今月は多量のボーナスも支払われる、それが
物価
情勢に対してどういう
影響
を及ぼすか、そういうようなことを考えますと、あの手この手をとらなければならぬ、現にとっておるわけでございまするけれども、そういうさなかにおきまして、年度内調整
減税
を行なうということ、そういうことを言われるお気持ちはわかりまするけれども、私は、これが実行に踏み切ることは妥当ではない、さように考えております。むしろこの際は、さようなことをするよりは、国債の減額ということを実行いたしまして、そして対策の一環となすべきじゃないか、かように考えておる次第でございます。(
拍手
) 〔
国務大臣
大平正芳君登壇〕
大平正芳
17
○
国務大臣
(大平正芳君) 日中間の実務協定についてのお尋ねでございます。 日中間には、御案内のように、体制、制度、慣行の相違がございます。実務協定につきまして、鋭意双方において詰めておりまして、遠からず妥結に至りたいと考えておる次第でございます。 第二に、北鮮との正常化を急げという御提言でございます。 この種の御提言は、これまでもたびたび伺っておりますけれども、今日の朝鮮半島に対するわが国の
政策
といたしましては、必ずしも妥当でないと
政府
は判断いたしておるわけでございまして、今日、ただいまとっておりまするように、科学技術、スポーツ、文化等の交流の範囲内において漸次関係を
拡大
してまいる方針をしばらく続けさせていただきたいと思います。 金大中氏の人権の問題についてのお尋ねでございます。 金大中氏は、市民として出国の自由も含めて自由が保障されるという声明を韓国
政府
がいたしておるわけでございます。この種の国際的な刑事事件の実際におきましては、加害者が行くえ不明になったり、うやむやになっておる例が多い中で、金大中氏の自由が回復されたということは、不幸中の幸いであると考えております。 第四に、閣僚
会議
、
経済
協力
の問題についてのお尋ねでございます。 本来、
政府
は金大中氏事件にかかわらず、対韓
政策
の基本は変えるつもりはないと申し上げてまいったわけでございます。
経済
閣僚
会議
、
経済
協力
につきましては、既定方針に沿って対処してまいりたいと考えております。もっとも、内外にわたって対韓
経済
協力
につきましていろいろな批判があることはよく承知しておりまして、そういうことを念頭に置きまして慎重に対処してまいりたいと考えております。(
拍手
) 〔
国務大臣
中曽根康弘君登壇〕
中曽根康弘
18
○
国務大臣
(中曽根康弘君) 総
需要
の
抑制
につきましては、
総理
から御
答弁
がございました。
通産省
といたしましても、第四・四半期の民間設備投資の
削減
について、審議会の議を経て近く発表いたします。
産業
構造の転換につきましても、すでに御
答弁
がございましたが、
石油
をはじめ、
資源
について不急不要のものから重点的に回せという御議論については同感でございます。特に、中小
企業
、農漁業、一般の民生並びに大衆交通手段等につきましては、傾斜的に調整していかなければならぬと思っておりまして、近く
石油需給適正化法案
を御提案申し上げますが、どうぞ御審議を早目にお願いいたしたいと思います。 次に、
所得政策
をやるかという御質問でござ、いますが、
通産省
といたしましては、目下
所得政策
をやる
計画
はございません。 それから、売惜しみ買占め規制法の改正の問題を御指摘くださいましたが、この問題も近く改正法案を出すと聞いております。これは企画庁の御担当でございます。 なお、
独禁法
について、
価格
安定カルテル
について御指摘がございました。今回われわれが行なわんとする
措置
は、
価格
を
抑制
するために、公権力をもって
政府
が誘導、介入いたしまして、民間に
協力
を願うという形で行なわれるものでありまして、
独禁法
の対象外のことであると考えております。 官僚統制を再びやる意思はございません。特に戦時中のようなやみとか、マル公とか、
経済
警察とか、ああいうものは絶対やらない考えでおります。したがいまして、民主的調整という形で今回は進めていきたいと思っております。つまり、業者や
国民
や
政府
が一体になって、総ぐるみで
物価
抑制
に努力してまいりたいという方法でございます。 次に、中小
企業
の年末対策についてちょっと御言及ございました。われわれもこの問題は非常に心配しておりまして、
政府
関係三機関に対して年末は三千四百二十億円の貸し付け規模における増額を行ないます。なお、これは昨年に比べて一・八倍、昨年は千九百五十億円でございます。 なお、民間
金融
機関につきましても、大蔵省と
協力
いたしまして、十月から十二月までに約三兆円の融資を増加するように要請しているところでございます。(
拍手
) ————◇—————
森喜朗
19
○森喜朗君
国務大臣
の
演説
に対する残余の
質疑
は延期し、明四日午後二時より本
会議
を開きこれを継続することとし、本日は、これにて散会せられんことを望みます。
秋田大助
20
○副
議長
(秋田大助君) 森喜朗君の動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
秋田大助
21
○副
議長
(秋田大助君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。 本日は、これにて散会いたします。 午後三時三十人分散会 ————◇————— 出席
国務大臣
内閣
総理
大臣
田中 角榮君 法 務 大 臣 中村 梅吉君 外 務 大 臣 大平 正芳君 大 蔵 大 臣 福田 赳夫君 文 部 大 臣 奧野 誠亮君 厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君 通商
産業
大臣
中曽根康弘君 運 輸 大 臣 徳永 正利君 郵 政 大 臣 原田 憲君 労 働 大 臣 長谷川 峻君 建 設 大 臣 亀岡 高夫君 自 治 大 臣 町村 金五君 国 務 大 臣 内田 常雄君 国 務 大 臣 小坂徳三郎君 国 務 大 臣 二階堂 進君 国 務 大 臣 保利 茂君 国 務 大 臣
三木
武夫君 国 務 大 臣 森山 欽司君 国 務 大 臣 山中 貞則君 出席
政府
委員 内閣法制局長官 吉國 一郎君 ————◇—————