○正森
委員 そこで、私は、大統領緊急措置第四号、これを
中村法務
大臣にも知っていただきたいと思いますが、この法律によってわが国民が処罰されようとしておる。これは、全国民主青年学生総連盟及びこれに関連する諸団体と接触したりいろいろした者を処罰するということで、もう非常に広い構成要件、しかもその
関係のことを報道したってだめだ、それが死刑、無期もしくは五年以上の懲役になるというきわめて過酷なもので、わが国の
憲法体系からいえば当然許されないことですが、韓国にはお国の事情があるとしてこれにかりに目をつぶるとしても、こういう規定があるのですね。「本措置宣布以前に第一項ないし第三項で禁止した行為を行った者は、一九七四年四月八日までにその行為の内容の全部を捜査、情報機関に出頭して隠すことなく告知しなければならない。上記期間中に出頭、告知した行為に対しては処罰しない。」、こう書いてあるのですね。そうすると、この法律は一体いつ施行されたのかといいますと、第十二項に「本措置は一九七四年四月三日二十二時から施行する。」、こうなっているのです。そうすると、わが国の通念からすれば、一九七四年四月三日二十二時以前の行為については処罰されないはずであります。これは、四月三日にデモが行なわれて、その日の夜に緊急に
会議を開いて施行しているのですから、それ以前は何人もこんな法律があるとはわからないわけですね。ところが、この法律の非常にけしからぬといいますか、トリックは、この第四項に「本措置宣布以前に第一項ないし第三項で禁止した行為を行った者は、」つまり四月三日の二十二時以前でもそういうことを行なった者は、つまりその時点では明白に犯罰でも何でもないわけです。犯罰でも何でもないことについて「四月八日までにその行為の内容の全部を捜査、情報機関に出頭して隠すことなく告知しなければならない。」、つまり犯罰でもないことについて告知義務を課されておるわけですね。つまりいまの卑俗なたとえで言えば、過去に妻以外の女性とどんなことをしたことがあるというようなことは全部
報告しろ、そして「上記期間中に出頭、告知した行為に対しては処罰しない。」、だから逆に言えば、本法は一九七四年四月三日二十二時から施行するのだけれ
ども、四月三日二十二時以後にこういう行為を行なった者は当然のこと、その以前のことを告知しなかった者は、告知しなかったということで死刑または無期もしくは五年以上の懲役に処すると、この法律はこういうことになるのですよ。そういう解釈しかおそらく解釈のしようがないと思うのですね。これは実に重大なことじゃないですか。過去のことを告知しなければならない、そうすれば処罰しないというような、一見自首する者は処罰しないという寛大な措置をきめているように見せかけながら、そのことによって逆に、四月三日二十二時以前でもそういうことをやった者は
報告しなかったということの理由をもって全部処罰する。これは罪
刑法定主義の原則である犯罪不遡及を
ほんとうに巧妙に破るもってのほかの法律であり、文明国として断じて許されないことであるといわなければなりません。
いま中江次長が犯罪事実について言いましたが、うしろに傍聴の方もおられるがよく覚えておられるでしょう。柳寅泰に接触したというのは昨年の暮れのことであります。つまり当時としては犯罪でも何でもない。四月一日にデモのことを聞いた、四月一日とは三日より前であります。四月三日にデモの写真を写してビラをもらった、写真を写しデモでビラをもらったのですから、日中のことであります。二十二時以前のことであります。何ら犯罪ではない。だから私は、犯罪の容疑事実は何かということを聞いたのです。四月三日の二十二時以後の連行される五日までの四日とか五日の朝にやったなら、非常に不当な法律ですけれ
ども、まだ外国の主権の範囲内だということはいえるかもしらぬ。しかし法律も何も出ていないときに、そんなことは外国人でやるのはあたりまえじゃないですか。それを韓国が二十五日に逮捕したときに、文明国としたら恥ずかしくて言えないようなことをわが国に、これが被疑事実だとして麗々と言う。そんな国が一体法治国ですか。そういうような国によってわが国の国民が二人軍法
会議に処せられようとしている。それに対して断固として抗議するのはあたりまえじゃないですか。安原
刑事局長、この緊急措置第四号を
刑法学的にあなたはどう思いますか。私の
指摘するのは当然でしょう。