○沖本
委員 私は、先に御質問をされた
方々のように、
調停なり何なりの
調停する側のほうの御経験なりあるいはそういう点についての
法律に詳しいほうではなくて、
調停を受ける側、きわめて国民的な
立場に立って、そういう
立場からの御質問を主体にしてお伺いしたいと思います。それはそれなりにいろいろ問題を集めてみたわけで、重複する点も多分に出てくるとは思いますけれ
ども、そういう角度から伺っているのだということで、できるだけむずかしい御回答でなくて、国民が平たく聞いてよくわかるような内容の
お答えを得ていきたい、こう考えるわけです。また、私自身の質問が重なる場合もあります。これはいろいろ集めました資料でダブる場合が起きてくるわけでございますので、その点はお許しをいただきたいと思います。私がいただいたいろいろな資料の中で、飛び飛びにはなっていきますが、まず具体的なものから先に伺っていきたいと思います。
まず、私がいただいた資料で、「簡裁における民事
調停の実態と問題点」というものをいただいております。そこで執務していらっしゃる
方々の中から選んでいただいた問題点でありますので、そういう点を御了解いただきたいと思いますけれ
ども、その資料によりますと、まず
調停委員ですが、現在いらっしゃる
調停委員は、出身階層が中流とか有産者の方が非常に多い。昭和四十八年度東京地裁選任の管内六簡裁三百四十五名の
職業内訳は、
弁護士の方が二百三十三、会社役員が二十三、医師が十、
民生委員二、農協
理事二、その他が三、これは宮司、保険代理業。無職の方が七十二、これは中身は定年退官の簡裁の判事さんであった方、あるいは副検事であった方、教員等がおもになっております。
そこで、これらの
委員の
方々が、いわゆる勤労者階層、低所得者の生活実態をどの程度理解していらっしゃるか。労働者側の
立場からいいますと、たとえば
調停委員控え室での談話の中で、労組のストライキ、現在春闘が行なわれておるわけですけれ
ども、おもに公労協に関して、これを非難するのみで、やむを得ないもしくは支持するような意見、こういうような
お話は全然出てこない。
特に、
弁護士の
調停委員の
方々が圧倒的に多いけれ
ども、例外なく本業の忙しさに追われ、引き受けた
事件については片手間に簡単に
調停を行なう傾向があり、期日は大体午前、午後に開かれるが、その両方を通じて
出頭し
調停をやるようなことはない。午前中または午後に二時から三時を適当にやっているという感じである。若干の例外の方はいらっしゃる、こう述べております。
それから、
裁判所職員との
関係で、どの簡裁でも
調停懇談会というようなものができておるけれ
ども、その
事務的処理の一切は庶務、
調停係にまかしていらっしゃる。これはそのほうが非常に便利だという慣行もあるので、一様にいなめないという点もあるらしいのです。盆暮れの贈りものは最近少なくなったけれ
ども、春秋二回の総会のときには裁判官、庶務係のほか、民事係全員を含めて宴会に招待している、これを述べていらっしゃるのは、深い
意味で、そういうことがいかぬとかなんとかいう
立場で述べていらっしゃるわけではなくて、そういうことになっていくと、
調停委員の方と
職員との間が必要以上に接近してしまうのじゃないだろうか、そういうきらいが出てくる、こういう
意味の言い方をしていらっしゃいます。
それから、
調停委員の方の裁判官への態度としては、
委員の大部分の方がいわゆる権威に弱い点が共通で、
職員にはいばって尊大にしていらっしゃる。裁判官には低姿勢で対照的だ。
それから、忙しいがやむを得ず引き受けているというような言動が日ごろの言動の中にある。その反面、
調停委員という肩書きに魅力を感じておられるような点があり、選任時にはいつでも辞退できるのに、実際にはおやめになる方がきわめて少なくて、再任されていっておるという実態がある、こういうことが出ております。
それから、
調停期日については、
調停担当専任の裁判官の方が配置されている庁はきわめて少ない。大部分は訴訟
事件処理の片手間に当たっておる。したがって、一
日当たり開催件数が多いこともあって、
調停主任として全
事件に関与することなどおよそできない状態だ。それでも、専任裁判官配置庁ではある程度系統的に、そして重点的に指導、関与ができて、全体的にはうまく運営されていっておる、こういう点の開きがいろいろある。
第一回目の期日の
指定、
指定期日の変更等はすべて係の書記が行なっておる。
委員の選任も係書記官が一切行なっておる。終局、いわゆる成立、不成立まではすべて
調停委員が取り仕切る。裁判官は右の終局時にのみ出席して、初めて正式の
調停委員会が構成されて開催される。不成立の
事件に出席した裁判官がみずから再び
調停を試みて、その結果として、一転して成立するという事例が間々あるけれ
ども、これは裁判官が第一回の期日から立ち会っておれば、成立の可能性が高いということを示す例ではないだろうか、こういうこともいっております。
調停の成立時には、まず必ず係書記官が入室し、条項を作成しもしくは案文を点検し、しかる後裁判官を招き入れて、あらためて
出頭当事者の点検、条項の読み上げ、異議のないことの確認をしている。この時点での、書記官の果たす役割は多大である。
委員がみずから条項案文を作成する事は約三分の一くらいで、あとはすべて書記官にまかせている。
それから
調停をまとめる過程で、
委員が当事者とくに本人のみの場合を強引に
承認させることも少なくない。
法律知識に薄い当事者にしてみれば、
委員の言動が大きく影響する。
委員の中には当事者をどうかつしたりして
調停案をのむよう勧告する者もいる。成立という、
調停の目的にかなった結果が最も好ましいことであるが、問題はそれまでに至る過程であって、当事者が真に納得して合意したものかいなかにある点を考えれば、権威主義に根ざす一切の強制は排斥されねばならないという点をはっきりいっておるわけです。
それから、代理人
弁護士がついている
事件は、その次回期日が長びく。現在は、次の期日まで大体三週間から一カ月くらいだが、当事者本人のみの
事件の場合、比較的にそれが短い。右の
弁護士代理人の
事件の場合、ある程度の期日延伸はやむをえないとしても早期解決の
趣旨に反することになる。一方、代理人が
弁護士の場合、不必要に事案をこじらせ、合意を妨げる結果になる
事件もあり、
調停には必ずしも
法律専門家を必要としないということもいえるんじゃないだろうか、こういう点も述べております。
それから、一緒にみな言ってしまいますけれ
ども、受付と窓口。
裁判所窓口に見えるかけ込み相談ないし訴えは一
日当たり二件から五件くらいある。そのうち、家庭
事件。離婚、相続を除くと大部分が
調停事件になじむ事案である。また、その
事件種別は現下の経済事情を反映したいわゆる賃料値上げが圧倒的に多い。この相談ないし訴え——口頭についてはその大部分を構内にいる司法書士に引き合わせて
調停申し立て書を提出させている。
この窓口に見える一般市民に対し、手続面を中心に
説明をしているが、間断なく続く受付
事務の合い間にしかやれないのでつい不十分な
説明に終わらざるを得ない。窓口配置の書記官が現状の一名か二名のままでは手不足でこれ以上やれないわけで、相談ないし口頭受理担当の書記官の増員が年来の関心事で要求もしておる。
それから、いわゆる交通事故による損害賠償
事件について簡易書式による申し立てが始められて以来六、七年になるが、申し立ての簡易さから
関係人に好評を得ている。そして、管轄が
改正法案では加害者の住所、事故発生地でも可能とされているというところからますますこの種申し立てが増加するということを、いわゆる書記官というようなこういう
職業の
立場の人で増加するということが予想される、こういう表現をしていらっしゃるわけです。
ですから、あとのほうで締めくくり的におっしゃっていることがあるのですが、
職員問題がここに出てきております。
東京の場合は、新宿で週五日開催、一
日当たり件数平均約十件、担当
職員書記官が一名、台東で週四日、受付が一
日当たり十件、一名です。大森が五日、十五件で二名、渋谷が十五件で二名、中野が四日で十五件、二名、豊島が五日で十五件、二名、北が三日で十件、一名、こういう訴訟
事件にくらべてその扱い面で比重が軽く、とくに裁判官の場合、片手間に処理するもの、という形になっている。しかし、担当書記官にとっては、開催回数が多いこと、
関係人が圧倒的に多いこと、当事者へのサービスが多岐にわたりその限度がないことなどから多忙であり、かつ不十分な処理に終わらざるを得ないのが現状である。したがって、
調停係書記官と裁判官の増員を抜本的に検討し実施されるべきである。右の抜本的にという
意味は、
調停軽視の風潮をなくしてもらいたい。それから、前記交通
事件のほかに公害
事件もその管轄面で緩和、拡張されることから申し立て
事件の増加が見込まれる。
最高裁が
調停制度について、いわゆる訴訟手続と
調停との根本的問題、
調停は非訟
事件という扱いから訴訟
事件はすべて民事訴訟によるべきとする司法
制度の大きな問題に目をそらし、一貫してその奨励拡張の方針を強めてきている以上、その人的措置が大前提である、こういうことを言っておられるわけです。
それから今度、これは物的な設備として、改築庁舎を除いて、老朽庁舎、東京の場合は、新宿、台東、足立、葛飾、江戸川、武蔵野それに日比谷の仮庁舎をふくめてこの
調停室は、その数が少なくかつ貧弱であり、暖冷房設備などまるで地裁の比ではない。
事件数、
関係人の数において最も多い
調停事件という観点からも、右の改善は早急に行なわれるべきである。新庁舎についても、
調停室の数は少ない、予算上やむをえない設計という法廷、いずれも四つの不必要な設置は改め、
事件関係人本位に設計されるべきであった。その改造をふくめて検討してもらうべきではないか、こういう意見を述べられております。
私、具体的にそこの場所に行って実際に見てきたわけではないわけですけれ
ども、これは
調停を受けるほうの
立場からこういう話を聞くと、なるほ
どもっともだということになるわけですけれ
ども、いまいろいろずっと申し上げたことは、今度の改正の中にずいぶん触れてくるようなことになってもいき、また、いろいろな点から
指摘されていっている中身ときちっと合っていくところがあるわけですね。それで、それが具体的に表現されて事実をおっしゃっていらっしゃる。事実の中身を私自体が調査してしさいに合わしてきたということではないわけですけれ
ども、ほぼ横浜のほうに行って勉強したりしておる感覚からいきますと、ほんとうではないかという点も言えるわけであります。そういう点を考えていきますと、この中に
指摘された数点について、あとでもほかの視点から御質問はいたしますけれ
ども、一つずつ
お答えをしていただきたい、こう考えるわけでございます。
そこで、初めの
調停委員の皆さんの現在のいろいろな社会的なお
考え方、こういうものは別といたしまして、
弁護士さんが圧倒的に多いというようなこともありますけれ
ども、いわゆる総会等があって、そこでみな
関係者の方がお集まりになって親睦会を開かれる、あるいはねぎらいの
意味でいろいろなものをいただけるという点を述べていらっしゃるわけですけれ
ども、こういう疑問に対してはどういうふうに
お答えになるわけでしょうか。