○青柳
委員 従来の慣例からくれば当然そういうことだろうと思います。したがって
裁判官会議がいつ開かれたというようなことは公表はしないでしょうけれ
ども、
新聞等でわかりますので、ことしの希望者は全部採用されたとか、あるいはされない人間が出たとかいうようなことはその時期になっていち早くわかると思いますが、前回お尋ねしたときに採用の定員は百人くらいまでは余裕があるという
お話がありましたので、九十一人ならばその
範囲内ですから、
全員適任者であれば採用されることになるのではないかということを私
どもは期待しているのですが、ここ数年来新任希望者で採用をされなかったという方が十四、五名あるようでございます。もっとも、その後、翌年になって採用されたという例もあるようでありますが、いずれにしてもたまたまその採用されなかった人の中に青法協の会員が多数を占めておったというようなことから、やはり思想、信条あるいは特定
団体に加入しているという事実が採用拒否の主たる理由になっているのではなかろうかという疑問を持たれて、最高裁は正しいことをやっておらぬというようなこと、そして採用すべきであるという要求を貫徹しようというような運動も続けられてきた例もありますが、ことしもそういう点を懸念している
人たちはないわけではないのです。そういうことはしないということを修習生の代表が言質をとるというか、そういうことにこたえてもらいたいというようなことを言っても、書面を出しても受け付けられないとか、それに回答する限りではないというようなことで、ちょっと取りつく島がなくなっているようであります。そのことはもう国会でも私
どもが繰り返しお尋ねをして一定の回答をいただいているわけですが、あくまでもそういう理由で採用が拒否されるということのないように、これはそういうことで採用を拒否するということはありませんとおっしゃられたこともあるし、またそういうことは人事の問題だから答えるべき事柄ではないというような
お話も聞いたこともあるのですが、少なくとも国家
行為が憲法違反であってはならないという
一般論はだれでも言明できるわけですし、しなければならないし、またそれを聞いても私
どもはそれだけではそれほど安心ができないという不信感もあるわけです。私
どもは、いずれにしても過去の苦い経験からしてそういうことがかりそめにもないことを強く要望したいと思います。そのことだけ申し上げまして、最高裁の方々にはお帰りをいただいてもけっこうでございます。
次に、
法務省にお尋ねをいたしたいと思います。
実は、三月十八日の各紙の報道によりますと、札幌の地方
裁判所で在日朝鮮人の柳さんという方が国を相手に裁判を起こしておったのですが、それに勝訴されたということが載っております。時間の
関係がありますし、
法務省当局ではその経過はつぶさに知っておられると思いますから概略だけを申し上げますけれ
ども、この柳さんという方は昭和八年に、現在五十四歳の方でありますからまだ青年の時代に
日本にやってこられた。郷里は朝鮮の慶尚南道、南朝鮮に属しておりますが、つまり韓国というところに属している地域でございますが、そこで生まれて、
日本にやってきた。そしていろいろと苦労された結果、三十四年に函館でパチンコ店を開業し、その事業にも成功され、また在日朝鮮人総連合の函館の支部の
委員長という社会的地位にもついておられたそうでありますが、この方の弟さんがやはり郷里の慶尚南道のほうから昭和三十九年に
日本で勉学しようとしてやってこられた。この方は高麗大学を卒業した後
日本にやってこられて北海道大学教養学部
研究生となり、大学院にも合格をしたのでありますが、
日本に来たときの入国手続が違法であって、いわゆる密入国ということで逮捕されて、結局退去を強制されてしまった。現在は朝鮮民主主義人民共和国に行かれているようでありますが、この密入国なるものに先ほど申しました柳さんが協力をした。いわゆる幇助をしたというようなことで、略式ではありますけれ
ども罰金五万円を受けたというのであります。これは出入国管理令の二十四条の一項四号ルという条項、それと罰則に当たるわけですね。そこでルによって法務当局は国外退去処分に付した。つまり退去強制をきめられたわけでありますが、これははなはだしく不当であるということで行政
訴訟を起こして、その裁判に勝った。裁判が始まったのは昭和四十二年ごろでございますから、だいぶ長い口頭弁論を経てこういう結論になったわけであります。この
判決の理由はいろいろ詳しくあるようでございまして、私
どもその謄本を取り寄せることができればもっと正確なことがわかると思うのですが、要するにこの出入国管理令二十四条一項四号ルに該当することは事実だけれ
ども、したがって退去強制事由にも当たるんだけれ
ども、しかし長年
日本に居住し、
日本人妻と一緒になり、そして在日朝鮮人としての生活が安定をしているのに、その生活を奪って強制退去を命ずるということはあまりにも残酷な措置であり、正義の観念にももとり、人道にも反する、そういうことでこの退去強制処分というものは認められないということのようであります。
これは結論的には正しい
判決だというふうに私個人としては
考えておりますが、法務当局とすればこれに対してどういう見解を持っておられるか、お尋ねいたしたいと思います。