○高橋(俊)
政府委員 告発という問題は、法律の上ではしなければならない。しかし、御存じのとおり、これは実は訓示
規定でございます。しなければならぬという義務を負っているわけではありません。もう
一つの考えなければならない問題は、いわゆるやみカルテル、価格協定であり、数量協定であり、それによって
告発をした例は、昭和二十二年の法律制定以来一件もないわけです。
告発そのものは、全部合わせますと四件ありますが、そのうち三件は占領時代の昭和二十四年のことでございますし、もう
一つは不動産業者の問題であって、価格協定についてあるいは他の協定について
告発するという経験が全くないという事実、そのことに対して、過去はともかく、現
段階でどうするかという御
質問だろうと思います。
実は私
どもはこの問題について、
告発についてはできるだけ、早くいえば論議をしたくないわけです。はっきり申し上げましてね。そういうことを一昨年、四社に対して、あまり回数が多いから、まあたいした回数じゃないのですけれ
ども、三回ぐらいやったのですが、品目が全部違うのです。化学工業
会社に多いわけです。化学の方面は製品の種類が多過ぎる。そのために、あっちでやり、こっちでやりというようなことになりますから。そういう点、それから
事件一つ一つとらえると遺漏がございます。それから価格協定である以上、一部のものだけを
告発するというわけにもいかないであろう。いろいろ難点がございますが、それよりも、私
ども昨年、場合によっては
告発を辞さないと言ったら、その後の業界側の態度というものは貝を閉ざしたように口がかたくなりまして、それまでの場合ではまあまあであったものが、自供もあり得たんですが、自供することがないというふうになってきた。つまり、過去に一回でも経験しておりますと、今度やったら
告発かというふうなおそれを抱くわけでしょう、係官の執拗な取り調べにかかわらず、ほとんどというか全く答えないというふうな事例がふえてきた。ですから、今後もそういうことが十分考えられるわけです。といって、供述が全くなくて、いろいろ取り扱う上には難点がございます。全く供述は得られない。しかもこれは一社や二社じゃないわけですね。大体八社とか九社とかいう団体で共謀してやっている
行為ですから、その共謀の事実を証明しなければならぬ。それで排除命令はやっておりますが、いろいろ
告発という問題になりますとますます
調査を困難にする。そのうちにはおそらく
証拠についても非常にきびしい
証拠隠滅をはかるんじゃないかという疑いもございます。それで、私は実際に、今後
告発をいたしませんとは申しませんが、しかしなまなましい問題についてそういうことを言うことは、むしろわれわれ自身の機能を麻痺させるというような
状態になる。これは事実そうなんです。非常に苦しいところを乗り越えて係官がどうやら勧告の
段階まではいっている、こういう事情であります。そういう
意味で、初めに申しました
告発という問題について、いろいろ公開の席でやるとかやらぬとかいうことを論議するということは私
どもとしてはたいへん苦しい立場になりますので、できることならば御容赦願いたい、こういうふうに考えております。