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1974-04-12 第72回国会 衆議院 文教委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月十二日(金曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 稻葉  修君    理事 坂田 道太君 理事 塩崎  潤君    理事 西岡 武夫君 理事 松永  光君    理事 森  喜朗君 理事 小林 信一君    理事 山原健二郎君       有田 喜一君    上田 茂行君       河野 洋平君    田中 正巳君       楢橋  進君    羽生田 進君       萩原 幸雄君    林  大幹君       深谷 隆司君    三塚  博君       山崎  拓君    馬場  昇君       長谷川正三君    有島 重武君  出席国務大臣         文 部 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         文部政務次官  藤波 孝生君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省体育局長 澁谷 敬三君         文部省管理局長 安嶋  彌君  委員外出席者         文教委員会調査         室長      石田 幸男君     ————————————— 委員の異動 四月十二日  辞任         補欠選任   久野 忠治君     萩原 幸雄君   八木  昇君     馬場  昇君 同日  辞任         補欠選任   萩原 幸雄君     久野 忠治君   馬場  昇君     八木  昇君     ————————————— 四月十日  私学に対する公費助成増額等に関する請願外六  件(阿部喜男紹介)(第四一五一号)  同外二件(安宅常彦紹介)(第四一五二号)  同外九件(井岡大治紹介)(第四一五三号)  同外一件(上原康助紹介)(第四一五四号)  同外五件(大柴滋夫紹介)(第四一五五号)  同外一件(勝間田清一紹介)(第四一五六  号)  同外一件(木島喜兵衞紹介)(第四一五七  号)  同外一件(島本虎三紹介)(第四一五八号)  同(竹村幸雄紹介)(第四一五九号)  同外一件(楯兼次郎紹介)(第四一六〇号)  同外四件(中村重光紹介)(第四一六一号)  同外四件(成田知巳紹介)(第四一六二号)  同外一件(芳賀貢紹介)(第四一六三号)  同外三件(長谷川正三紹介)(第四一六四  号)  同外三件(広瀬秀吉紹介)(第四一六五号)  同外二件(古川喜一紹介)(第四一六六号)  同(細谷治嘉紹介)(第四一六七号)  同外二件(堀昌雄紹介)(第四一六八号)  同外二件(村山喜一紹介)(第四一六九号)  同外二件(森井忠良紹介)(第四一七〇号)  同外五件(山口鶴男紹介)(第四一七一号)  同外九件(山崎始男紹介)(第四一七二号)  同外二件(広瀬秀吉紹介)(第四二二四号)  同外二件(堀昌雄紹介)(第四二二五号)  同外二件(八木一男紹介)(第四二二六号)  同外三件(渡辺三郎紹介)(第四二二七号)  同外一件(阿部喜男紹介)(第四二四四  号)  同外一件(井岡大治紹介)(第四二四五号)  同外二件(勝間田清一紹介)(第四二四六  号)  同(柴田睦夫紹介)(第四二四七号)  同(田中美智子紹介)(第四二四八号)  同(多田光雄紹介)(第四二四九号)  同外一件(田邊誠紹介)(第四二五〇号)  同外十件(多賀谷真稔紹介)(第四二五一  号)  同外五件(成田知巳紹介)(第四二五二号)  同外五件(長谷川正三紹介)(第四二五三  号)  同外二件(細谷治嘉紹介)(第四二五四号)  同外二件(武藤山治紹介)(第四二五五号)  同外三件(湯山勇紹介)(第四二五六号)  私立小・中・高等学校振興法制定に関する請願  (有田喜一紹介)(第四一七三号)  大館市立真中小学校統合反対に関する請願  (栗田翠紹介)(第四二五七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公立義務教育学校学級編制及び教職員定数  の標準に関する法律等の一部を改正する法律案  (内閣提出第四六号)  文教行政基本施策に関する件(四月十一日の  日本教職員組合争議行為等に関する問題)      ————◇—————
  2. 稻葉修

    稻葉委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松永光
  3. 松永光

    松永委員 わが国教員団体の中で一番大きな団体といわれておる日教組は、ここ十年近くの間毎年のようにストライキを打ってまいりました。しかもわが国憲法、その憲法に基づく地方公務員法に明確にストライキをしてはならないというふうに規定がしてあるのに、それを知りながらあえてストライキを毎年のごとくやってきたのでありますが、このことはまことに遺憾なことであると存じます。  しかし、ことしは人確法が成立を見まして、この一月にさかのぼって教員給与平均年額約十一万三千七百円余り増額されることが決定を見、そしてさらに来年一月からは一〇%その上に上積みされるということが予算措置によって明確になっておる。そのように教職員の職務の重要性に着目して、教職員の地位を引き上げるための具体的な措置がなされたばかりでありますから、よもや地方公務員法違反するストライキ日教組がやるとは私ども考えておりませんでした。やるぞやるぞとは言っておりましたけれども、実際にはやるはずはないというふうに期待をしておったのですけれども、私どものその期待はみごとに裏切られて、全国的な規模で、しかもまる一日間のストライキがなされたのでありますが、大体このストライキ参加した人員はどの程度であるのか、各都道府県ごとに明確にしていただきたいと思います。
  4. 岩間英太郎

    岩間政府委員 このたびのストライキはまことに遺憾でございますけれども、現在までに私どもが把握しております規模は、四十七都道府県中の四十三都道府県で、人員は約二十七万人となっております。ちなみに昨年の四・二七の半日ストでは四十三都道府県で約二十六万人の参加でございまして、それをやや上回るような規模になったことはたいへん遺憾でございます。
  5. 松永光

    松永委員 日教組組合員、これはその大部分が直接小学校あるいは中学校等において子供たちに対して教べんをとっておる人たちであります。したがって、法治国家の国民として法律は厳正に守らなければならない、自分の好きな法律であろうときらいな法律であろうと、少なくとも法律として有効に存在している以上は守らなければならない、こういうことを教えるべき立場にあるのが日教組組合員であると思うのです。その日教組組合員がみずから法律を無視してストライキを打って、どうして自分の教え子に対して法律を守れということを教えることができるであろうか、こう考えますと、二十七万人もの人が、昨年よりも一万人も多い人たちストライキ参加したということはまことに言語道断といわざるを得ないのでありますが、文部省としては、このストライキ参加しないように、ストライキをやめるように具体的にはどのような措置をとってこられたのか、この点を伺っておきたいと思います。
  6. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御指摘になりましたように、私も、今度の運動は単なる労働運動ではない、政治的色彩のきわめて濃い運動だ、こういう判断いたしているわけでございます。同時にまた、単に公務員として政治活動が制限されているよりも、教育基本法規定しておりますように、教育公務員は特に政治的活動を自己規制しなければならない、そういう職種である、かように考えているわけでございます。裁判官でありますとか自衛官でありますとか教育公務員でありますとかいった方々は特に政治活動を自己規制しなければならない性格のものだ、かように考えているわけでございます。教育基本法にも「学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」と明定されているわけでございます。学校は教師も含めました一体となった学校をさすものだ、かようにも考えておるわけでございます。したがいまして、こういうような考え方先生方理解してもらいますために、いろいろな手段を通じましてその徹底をはかってまいったわけでございます。文部広報につきましては特に一人一人の先生方に受け取ってもらうというような方途も講じたわけでございましたし、また特に教育長に集まっていただきまして、関係者に対してそれぞれの府県教育委員会理解を求めるための努力を要請したわけでございまして、また組合関係者に対しましては常にこれらの考え方は申し上げてまいってきているわけでございますので、文部省考え方組合の幹部には十分承知されていることだ、かようにも考えておるわけでございます。
  7. 松永光

    松永委員 そういたしますと、スト参加した二十七万人の人たちは、自分たちの行なうストなるものが法律上許されない違法なストライキであるということを十分に知りながらストライキ参加した、そしてまた組合の幹部なる者は違法なストライキであるということを十分承知の上、ストライキを共謀し、あるいは場合によってはそそのかしたりあおったりしたのではなかろうかというふうに疑われるわけでありますが、けさの新聞によりますと、警察庁では、日教組本部並びに十数県の、県または都の教職員組合事務所等について家宅捜索をされたように載っておりましたけれども、その家宅捜索をした県名個所数、それからその根拠、いかなる犯罪の嫌疑に基づいて家宅捜索をしたのか、そこらのところを警察庁の方が来ておるならば明確にしていただきたいと思います。
  8. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。違反の容疑は地方公務員法六十一条四号違反ということでございまして、捜索実施いたしました府県は、東京北海道岩手山形埼玉山梨愛知三重広島福岡長崎大分の十二の都道県で、それぞれ裁判官捜索、差し押え許可状によって関係組合事務所等八百七十カ所を捜索して証拠品を差し押えたのでございます。  その内容でございますが、東京では日教組本部東京教組関係で百二カ所、北海道では北海道教組本部など百四十一カ所、岩手県は県教組、同高教組関係で九十七カ所、山形県は高教組関係で九カ所、埼玉教組本部など百二十一カ所、山梨県が教組本部など八十三カ所、愛知県が愛知高教組本部など三十三カ所、三重教組本部など三十一カ所、広島教組本部など九十八カ所、福岡県が福岡県教組本部等五十三カ所、長崎県が県教組本部等五十四カ所、大分県が県教組本部等四十八カ所実施いたしました。まだ引き続き捜査中でございます。
  9. 松永光

    松永委員 この十二の都道府県に限って捜索をされたのはどういうわけですか。先ほどの岩間局長答弁によりますと、四十三都道府県ストライキが行なわれたのに、その中で十二の都道府県に限って強制捜査をされたのはどういうわけですか。
  10. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 日教組本部の指示によって争議行為実施したわけでございますが、その県等において、その末端の争議行為の態様、規模、そういうものを考え、また捜査上の技術的な問題もあって、疎明資料として差し押え許可状がとれるという県が、いま言ったような十二ということにしぼられざるを得なかった、こういう事情でございます。
  11. 松永光

    松永委員 ストの行なわれた四十三都道府県全部じゃなくして、その中で特に大規模にやられて、そしてその影響が特にひどいところ、そういうところについて強制捜査をされたというふうに理解するのですが、そのとおりですね。  そこで、そういう理解のもとに申し上げるのでありますが、実は地公法三十七条そして六十一条、これはずっと前からあるわけでありまして、また地公法三十七条そして六十一条四号なるものが、一部の少数の学者等は、憲法違反の疑いがあるなどということを言ったりしておったのでありますけれども、去年の四月、最高裁の大法廷で、合憲であるという判決がなされた。そこで、昨年も二十六万人からの半日ストライキがなされた。ところが去年は、この地公法六十一条一項四号に基づく厳正な法の運用をせずに、ことし厳正な法の運用に踏み切られたについては、何か事情があるのでしょうか。これは当然のことをやったのでありますから、実は去年がよくなかったので、言うなれば、去年がこの法の厳正な運用について欠けるところがあったわけであって、ことしは当然なことをしたのだというふうに私は理解しますが、去年とことしとその処置を違えられて、ことしは厳正な法の運用をするということにされた、そのいきさつといいますか事由といいますか、そういうものがありましたならば、おっしゃっていただきたいと思います。
  12. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 いまお話のございました昨年の最高裁判決は、四月二十五日になされた、昨年の日教組争議行為は四月二十七日になされたということでございまして、判決のあった日と争議行為実施がきわめて近接しておりましたので、この法律違反でありますあおり行為等は、その判決の出る前に大部分なされたという事情もあり、その他の事情も含めて、昨年は捜査に着手するのをいわば見送った、こういう実情でございます。
  13. 松永光

    松永委員 この地公法六十一条四号を正しく運用されるということは当然なことであって、今回の処置は私は当然なすべきことをなされたのだというふうに理解をするのですが、しかし法の真の目的というものは、いたずらに刑事被告人をつくり上げたり、あるいは刑罰を受ける人をつくり上げたりするのが真の目的じゃないのであって、結局、違法なことをさせない、やらせないというのが真の目的だろうと思うのです。そうであるならば、事前に合憲なることが最高裁の大法廷判決で確定し、かつ、まる一日ストなどという、きわめて重大な影響を及ぼす違法なストについては、これは地公法六十一条四号で処罰の対象になりますぞ、いままでは二時間ストとか三時間ストとかいうことでやや時間も短かったし、あるいは最高裁判決もなかったということでもあったら、多少は目こぼしをしておった点もあったかもしれぬが、今度はそういうことは絶対ないぞ、こういうことできびしく事前警告をして、そして違法行為犯罪行為未然に防止するという措置というものも私は必要であると思うんです。そういう点について、きびしい警告とかそういうものをされたのかどうか、抜き打ちであったのかどうか。まあ、学校先生でありますから法律はちゃんと知っていらっしゃる、最高裁判決があったことも知っていらっしゃる、自分たちがなすことが法に違反する行為であるということも知っていらっしゃるから、あえて警告などをしなくとも、人に教えをする先生という立場人たちなんだから、わかっているはずだという考え方もあるでしょうけれども、しかし罰則規定の存在というのは、その罰則規定が存在することによって違法行為事前にやめてもらうというところに真の法の目的があるとするならば、十分わかっておる先生であるとしても、警察当局ではきびしい警告などをしておく必要があったのじゃなかろうか、こういう考え方も実は成り立つだろうと思うんです。そこで、警察庁においては、まる一日のスト、しかもスト目的に掲げているところが政治的な事柄についてのストライキ、いわゆる政治ストであり、法に違反するストであり、しかもそれがまる一日という、きわめて大がかりなストであるということであるわけで、こういう大がかりになればもう許されませんぞ、厳正な法の適用をやるぞということを事前警告をして、そうして犯罪行為未然に防止する措置も必要じゃなかったろうか、こういう考え方も成り立つと思うのですが、その点についてどういう措置をされたか、おっしゃっていただきたいと思うんです。
  14. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 いま言ったようなお考えも確かに理由があると思いますけれども、私ども、そういうような警告措置は一般的にいって監督行政官庁がすべきものであるというふうに考えておりましたので、私どもは具体的にそういう警告はいたしておりません。
  15. 松永光

    松永委員 文部大臣にお尋ねいたします。  先ほど、ストライキは法に違反するからやめなければならないということを個々の先生に文書で伝えるような方法でストを中止するよう呼びかけたということでございますが、この罰則規定があるぞということも含めてストをしないように、あるいはまたストの共謀をしたりあおりをしたり、そういうことをしないようにという警告等をされたのかどうか、その点について大臣から承りたいと思います。
  16. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先生方一人一人に行き渡りますように、文部広報の中に昨年の四月二十五日の判決も加え、またストライキが禁止されているその趣旨も織り込みまして、理解を求める努力をいたしました。同時に、私の記憶では、検察庁かどこかでだいぶ前でしたけれども公務員ストライキについて警告を発せられるような記事を新聞で読んだことがございます、これはよけいなことかもしれませんけれども文部省といたしましては、いま申し上げますように、一人一人の先生方に自粛を求める努力を何回か行なってまいったわけでございます。今回のストにつきましても、先ほど申し上げましたような、一人一人に行き渡る努力もしましたし、また私からの談話も出させていただいて、自戒を求めたところでございます。
  17. 松永光

    松永委員 この検察の手入れについて、一部においては手入れがなされるぞということが相手方のほうにわかっておった、漏れておったということも聞くのでありますけれども、そういう事実があったのかどうか。これは手入れなんというのは事前に漏れてはほんとうの証拠押収等はできないわけであって、漏れておったという事実があったのかどうか、どうして漏れたのか、そういう点について警察庁答弁を求めたいと思います。
  18. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 捜索実施について漏れておったかというような御質問でございますが、私のほうは漏らした事実もなく、漏れたとは思っておりませんが、ただ、御承知のとおり、かなり広範な地域においてそれぞれの府県警察ではいろいろな資料を集めておる、こういう状況を察知した報道機関その他のほうのいわば推測記事的なものが、一部の夕刊に出たという事実はございましたけれども、私のほうから漏らしたというようなことはございません。
  19. 松永光

    松永委員 冒頭申し上げたように、人確法という法律は、これはたいへんな法律なのであって、教職員というのは他の公務員よりも優遇されなければならぬということがはっきり法律の上にうたい上げられて、しかも四十九年一月から約一〇%、五十年一月からさらに一〇%予算措置までなされておる。そして、その後においても、教員給与改善をしていくのだということが実施されたばかりなのに、去年よりもさらに一万人も多い二十七万人がストライキ参加をした。文部省の行き届いた、違法な政治ストはやめなさい、法律違反するものであるということを警告をし、そのことを十分わかっておるのに、二十七万人もの人がストライキ参加した、これはきわめて重大なことであると思うのです。こういうことが過去十年近くの間毎年繰り返されてきて、ことしはまる一日。将来もこのままの状態では繰り返し違法なストが、法律違反するストライキがなされる危険性は非常に多いと思うのです。よほどの措置をして、少なくとも子供に対して正しいことを行なうように、特に法律違反するようなことはしてはならぬということを教える立場にある教員が二十七万人も参加するなどということは、これは世界にその例がないのじゃなかろうかと思うぐらいであります。そこで、文部大臣としては、今後こういう法律違反するストライキをやらせないように、やらないようにしていくためにどういうふうにしていかれるつもりであるか、将来の方針等について大臣に何か考え方があるならば、おっしゃっていただきたいと思います。
  20. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私はたびたび申し上げておりますように、組合を流れている指導精神、それは組合員勤務条件維持改善をはかることにあるよりより以上に、一つの政治的な目的を持って努力されている、こう判断をいたしておるわけでございます。組合員の多くの方々はそんなことは考えておられない。しかしながら組合指導をされている方々の大会における運動方針でありますとかスケジュール闘争でありますとか、その他いろいろなことを見ておりますと、政治的な意図が非常に強い、こういう判断をいたしておるわけでございます。そういう方々から見ますと、いわゆる人材を教育界に導入する法律はあるいは迷惑だったのかもしれません。事実、人事院勧告体制を打倒するのだ、給与というものはおれたちが戦い取っていくのだ、戦い取る過程において団結を強め、団体行動力を強化していくのだ、私はこういうねらいがあると考えます。だからあの法律につきましても、組合指導者の中には強い反発を当初持っておられたわけでございますし、また反発の中には、私が申し上げるような考え方がないわけじゃない、こう思うわけでございます。しかし、スト参加されている先生方みんなそういう気持ちを持っておられるとは私は少しも思いません。大部分先生方法律を守らなければならないと考えながらもそれに参加しておられる。またスト参加しませんと村八分になるのだということで心配される方々もずいぶんあるわけでございます。やはり私は、先生方には自主性を持ってもらわなければならない、事のよしあしを考えて、それに参加するか参加しないかの強い先生になっていただかなければならない、そうでなければ自主性に満ちた子供さんを育て上げることは不可能だ、こう考えているわけでございます。いずれにいたしましても、先生方が自信を持って教育に当たり得るような環境を整えていくことがきわめて大切じゃないか。したがいまして、処遇の改善一つでございますけれども、これは単に条件一つにすぎない、もっともっと先生が活動しやすいようにいろいろな条件をわれわれとしては積極的に努力をしていかなければならない、こういう気持ちを持っておるわけでございます。基本的には、社会から尊敬される先生であり、先生を尊敬する社会であって、そして教育先生方が専念していただける、そういうような体制をいろいろな方面からつくり上げていく努力を今後も積極的に果たしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  21. 稻葉修

  22. 小林信一

    小林(信)委員 まず最初警察庁にお伺いいたしますが、私は警察のほうの仕組みというのはよくわかっていないのですが、今度時間を期して全国一斉に行なわれましたが、その行なわれるにあたっては、警察庁から指令でも出てそして歩調を合わせるのですか、最初そのことをお伺いいたします。
  23. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。仕組みとして、われわれは警察法に基づいて仕事をしておるわけでございますが、警察法の法文によりますれば、各府県警察仕事調整に当たるということになっております。したがってわれわれとしては、今回の事件について具体的に捜査の事実指揮というようなことはいたしておりません。したがいまして、各府県警察で本地方公務員法違反捜査をそれぞれ続けてきておりまして、その結果、いろいろな違反事実がかなりはっきりしてきたという形で捜索、差し押えの許可状を裁判所に求める、あるいは発付を得たというような段階になって、そういう連絡が参ってきておるわけでございます。そういう関係調整するという仕事はいたしております。したがいまして、きのうの捜索も決して同じ時間に行なわれたというわけでもございませんが、大体全国的に行なわれるので、時間をそれぞれ調整をしたという程度でございます。
  24. 小林信一

    小林(信)委員 私は、県警というものは県の独自性があって動いておるものだと思っておったのですが、しかし最近、県警本部長というものはたいがい中央から出ていく。したがって、警察庁から指令一本で動くような機関になって、従来いわれております民主警察というふうなものとはだいぶ性格が違っておるのじゃないかという実は印象を持っておったのですが、今度のこのストに対する一斉の手入れを見ますと、なおその感を深くするものですが、それは私の一つの感じから申し上げたのです。しかし、いまあなたは調整ということを言われたのですが、やはり調整というのは言い方だけであって、厳密な警察庁の指令というものが行なわれてなされるものじゃないかというように考えざるを得ないのです。これは、いまの警察のあり方についての私の一つの感想が出たわけですが、もう一つ、いつもならば、大体きのうストライキが行なわれますと、けさ早朝手入れをするというようなことが常識になっているのですが、きのうはそういう前例というふうなものをなくなして、ほんとうに異例のケースで行なわれたと新聞なんかもみんな一斉に書いております。やはりこの異例なケースというのは、今度の扱い方についてはある一つの感じを、当事者にはもちろん、あるいはこれを見ております国民にも何か特別な感じを与えるのじゃないかと思うのですが、これに踏み切った。これはやはりあなたに聞けば、調整をしたのだから、決して警察庁が指令を下したとは言わぬかもしれませんが、この情勢からあなた方が見て、当日に踏み切ったというのは、何かそこに意図がありますか。
  25. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 先ほどお答えいたしましたとおり、私のほうから指示をしたことはございませんが、府県警察でそれぞれ捜査をいたしておる過程で、証拠隠滅の行為が出るおそれがあり、そういう疑いが非常に強いということで、なるべく早期に実施すべきである、そういうような意見のもとに府県本部長の独自の判断でぜひ当日にやりたい、そういうようなことであのような結果になったのである、こういうふうに承知いたしております。
  26. 小林信一

    小林(信)委員 あなたが独自な見解でと特につけ加えなければならぬほど、何か今度の一斉、だれが見ても軌を一にしたというだけでなく、警察庁の指令の中で行なわれておったということは、これはひいては政府あたりとも歩調を同じにしているのではないかという想像まで出てくるおそれがあると私は思うのですが、きのう私は警視庁へ行きまして、審議官という方にお会いをして、やはりこの問題に触れたのです。どうしてこんなに今回は早いんだ。そうしたら、捜査は早いほうがいいですという回答が向こうからありましたから、私も、それはどろぼうが入ったとか何か事件が起きたとかいうときには、確かにその捜査を早くすることが的確に事件をとらえるためには必要でしょうと言ったら、その審議官が手をあげて、待ってくださいよ、どろぼうと先生とは一緒にしませんよ、というたいへん意外なことばを聞いたのですが、こういうような心境というものが、警察庁あるいはあなたの管下にある人たちにも、今度の問題を通して持たれているのですか、これは一審議官の気持ちだったのでしょうか、あなたからひとつお伺いしたいと思います。
  27. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そのやりとりといいますか、きのうの先生と審議官という人とのその内容について、私はその前後の事情等をよく存じませんが、おそらく審議官としては、単なるどろぼうとは違うのだという意味で、やはりこれは一種の争議行為に対する捜査でありますので、十分慎重に適正な捜査をしているのだ、そういう意味をこめて申し上げたのじゃないかというふうに考えております。
  28. 小林信一

    小林(信)委員 さっき松永委員の質問の中に、あなた方は、法の適用を行なう前に、こういうことをすればこうなりますよということは注意をしたかというふうなことを申しましたら、あなたの答弁の中に、それは監督官庁のすることであるというお答えがあったのです。これは簡単なたてまえの問題のように承りますが、あなたの気持ちの中にも、やはり未然に問題を解決するようにすべきだという気持ちはあると思うのですよ。それがきのうの審議官の気持ちの中にもあったと思うのですが、私はこの問題については、それは同じ法の適用を受ける場合には、どろぼうも先生も差別があってはならない。しかし、やはりそれを包むいろいろな情勢というものを判断をしながらやることは、いかに法の番人であっても私は考えなければならないと思うのですよ。それはきのうまでの私の感じた点で、なおこういう問題はそのこと自体の研究になることですから、以上でその点はおきますが、いままで全国で何カ所あるいは何人に及ぶというような話があったのですが、中に任意出頭を命じた者があるというふうに聞きましたが、そういう事実がありますか。
  29. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私どもまだ詳しい報告に接しておらないのですけれども、若干の府県で、昨日いろいろな状況を聞きたいという形で若干の方に事情を伺ったという事実は承知いたしております。
  30. 小林信一

    小林(信)委員 そのほか、当然その人は組織の中の役職を持っているわけでない、この人には決して問題がないというように見られる人にまで、そういう任意出頭の呼びかけが行なわれておるというふうなことを聞きまして、今度のこの捜査は非常に厳罰をもって当たるのではないかというような印象が持たれるのですが、警察庁当局には何かそういうような考えがあるのですか。そういうことは各都道府県にまかせるのか。
  31. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私どもは、特に被疑者を大きくして厳罰を求めるというような姿勢ではなくて、どこまでも厳正な適正な捜査を進めることによって、地公法違反の真相を解明したいというだけでございまして、特別な意図はございません。   〔「しっかりやれ」と呼ぶ者あり〕
  32. 小林信一

    小林(信)委員 しっかりやれという激励がございますが、異例のケースで行なわれた、つまりその当日に行なわれたとか、すでにもう任意出頭も求められておるとか、非常に大規模であるとかいうようなことから想像いたしますと、何か警察庁の意図というものが、どこかに別なものがあるのじゃないかというようなことも想像されるのですが、そこで、これは私の予想ですが、先生方の今度の行為というものは確かにあなた方のおっしゃるように問題があると思います。しかしその背景、その根拠になるというものは、大臣は広報で丁寧に一人一人に納得するように話をした、こういうことが言われておりますが、やはりこの問題は、そのときにあたって処置しても打開できない困難さがあるものが多いと思います。常時のお互いの信頼感とか接触の度合いとかいうふうなものでこういう問題は解決をされなければならぬ面がたくさんにあると思うのです。ところが一斉に行なわれた。各都道府県警察本部の意図ということよりも、何か国の中心から指令が出て行なわれたというようなものがあれば、たとえそれが違法と感じても、しなければならない何か追い詰められたものが根拠にありますと、そういう措置に対して私どもが悪かったとほんとうに謙虚にあなた方の処置に従うか。従っても気持ちの中ではいろいろな反発が出てくる。それが教育にどういうふうに影響するかというようなことも私は考えるわけですが、いまそういうふうなものが起きれば、最近ばかに教育問題に政府が、ほんとうに何か根拠があって教育問題を取り上げるならですが、何か無理にけんかをしかけるような提案のしかたを、問題の投げかけ方を、総理大臣文部大臣もそうですが、盛んにやっている。世間では、経済政策で行き詰まった自民党が来たるべき参議院選挙に教育の問題でもって方向転換をして、有利な選挙をしようとしているんじゃないかというような、そういううわさまで出ております。これがそんなことにもし出てきますと、大臣はかねてから用意をされておると新聞等で伝えられておりますいわゆる教育の正常化法というようなもの、うわさにいわれております、そんなものを出す機会をつくるために、今度の警察庁のこの計画がなされたというようなものに結びついたら、これはもうほんとうに教育界をただ混乱させるだけであって、さっき松永さんも言われましたが、これは決して処罰するのが本来の使命ではない、いかにこういう問題を、悪いことをなくすかということが問題なんだということを言われたのですが、しかし、それがかえって大きな問題を惹起するようになったら、これは私はたいへんだと思うので、警察のこの問題に対する処理のしかたというものは私は簡単な問題ではないと思うのです。もしそういう結果になったとすれば、警察庁はやはりいまの政治の一翼をかついで、政府の一翼をかついで仕事をしているんだというそしりを受けても私はしかたがないと思うのです。大体新聞等できょうの世論も見ますと、もっとストライキというものに対しては国民的な批判というものをまって措置されるべきではないかというような意向もあるほど慎重を要する問題じゃないかと思っておるのです。  そこで、警察庁山本警備局長がおいでになったので特に私はお聞きいたしますが、あなたの談としてきょう新聞に出ておりますものには「全国各地で公立学校の授業が妨害され、とくに義務教育である公立小、中学校に多大の影響を与えた。」この「妨害」というのは、あなたはどういうふうに解釈をされておっしゃっているのですか。
  33. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私の談話ということで出ておるようでございますが、それは日教組の指示によるいわゆる争議行為によって結局義務教育を受けようとする者が受けられないという結果になったということでございます。
  34. 小林信一

    小林(信)委員 私は、そのとおりでいいと思いますが、あなたはそう考えておっても、この「妨害」というものはどういうふうに印象づけられるか、それが問題だと思うのですが、大体先生方ストライキをする場合に、その問題についてはどんな心組みをしておるか、考えたことがありますか。
  35. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 先生方一人一人、それぞれの考え方を持ってやっておられると思うわけでございますけれども、いずれにしろ今回のストについては、日教組本部の指示によって行なわれたという形で、われわれはその地公法違反という法律の面からとらえておるわけでございます。
  36. 小林信一

    小林(信)委員 そういう場合に、先ほどから申しておりますように、法第何条の何に該当するというだけで「妨害」ということばをお使いになっておると、これはやはり警察権というものが正しく行なわれない形になりはしないかと私は心配するのですよ。指令に従ってと言うけれども、さっき大臣もおっしゃったさまざまな心境でやっているわけですが、少なくとも先生たちは一日ストライキを——まあ、いままでの二時間ストライキをやったというような場合に最高裁判決が出たときに、くしくも最高裁判決の中でいわれておりますように、二時間という時間というものは必ずしもそれだけ影響をしたとは考えられない、二時間くらいなら必ずあとで長い時間に取り返すことができるのだという根拠で最高裁判決を出したことがあります。そして学校先生といえどもスト権と同じ憲法に保障されたものがありますね。そういうもので認められている。それを最小限度に制約をすることは必要であるけれども。ただ、観念的に、それを指向するということはいけないというふうに、それは去年の四月の全農林の事件でもってくつがえされた形になうておりますが、私は全農林のあの判決と、そしてその前に行なわれました最高裁のこの問題に対する判決とは、形の上では同じようなものであっても、内容においてはたいへんに違うところがあると思うのです。ただ、それを観念的に適用したりあるいは適用しなかったりするということはおかしいので、それはただ法律をどういうふうに適用したかという問題でなく、もっと教育というふうな問題に大きな影響を与えると思うのですが、「妨害」というこのことばは私は非常に不適当なことばだと思うのですよ。先生たちはこの授業を捨てるということは忍びない。しかも自分が一日行なわなかった授業というものは自分が取り返さなければならぬ、そういう気持ちでもって臨んでおるのですよ。ただ一般犯罪者に適用するような「妨害」ということばは私は非常に不適当だと思うのですが、あなたはなおこの「妨害」ということばには何も問題はないとお考えになりますか。
  37. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 ただいま四・二五判決、その前の四・二判決関係でお話がございましたけれども、われわれとしては、いわゆる四・二判決は昨年の四・二五判決によって変えられたものであるということで、やはり公務員というものはストはできないのだ、そしてそのスト行為を企てあるいはあおり、そそのかしというような形になれば、これはやはり厳正な法の適用によって処罰されなければいけない、こういう立場、そういう気持ちを含めて私は談話を出したということでございます。
  38. 小林信一

    小林(信)委員 そういうときに、問題によって使うことばも私は考えてほしいということなんです。「妨害」といったって、何かしておる人をじゃまするのではないのです。自分がやらなければならぬ仕事を残念ながらほうらなければならないような事情に追い込まれておった。しかし、この授業というのは必ず取り返す、おそらくそういう気持ち先生方はあの行動に出たと思うのです。それをあなたは「妨害」という何かそういう意味の通らないことばを使っているのが、あまりに法の番人ということだけに終始し過ぎる。そこへいけば、きのうの審議官が、私が、そうだ、どろぼうをつかまえたら、すぐ捜査しなければならぬ、それと同じだ、こう言ったら、いや、どろぼうと先生とは違いますよ。この人のほうがよほど人間性があると思った。やはりそういう配慮がなければ、いかにあなた方が法の適用によって問題をなくそうとしても、かえって変な反感が高まるだけだと私は思うのです。  そこで、きのうの捜査ですが、六十一条の四号違反だ、こういうことで臨んでおりますが、その場合に現場に示された裁判所からもらった許可状の中に捜査をする物件というものが出ております。これは相手方に示されるわけでありますが、その物件はおのずから規制をされるものだと思うのです、六十一条四号という問題で捜査をする場合には。その点はいかがですか。
  39. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私、その許可状の内容一々については存じませんが、その差し押え許可が差し押えできる物件については裁判長のほうから具体的に明示されてあるものというふうに考えております。
  40. 小林信一

    小林(信)委員 あなたに聞いてもしかたがないならば聞きませんが、規約、綱領、こういうものまで六十一条の四号違反の被疑ということで捜査できるのかどうか。こんなところまで行ったら、私どもしろうとの考えですが、これは思想調査にも適用できるようなものだと思うのです。あなたもおっしゃっている、扇動したりあおったりする根拠をつかまえようとする場合に、こういうところまで行ったら行き過ぎじゃないかと思うのですが、あなたが知らないというならばやむを得ません。これはおそらくどこの県へ行っても、先ほどあなたは、そうではない、独自性でやったと言っておりますが、同じことで捜査が行なわれておると思うのです。それほど計画的、指令的に行なわれておると思うのですが、いまの問題は私ども今後十分検討いたしまして、行き過ぎである場合、特に教育という問題を考えますと、思想調査というふうなことが一番心配になるところなんですから、私どもも勉強いたしますが、あなたのほうでも勉強しておいていただきたいと思います。  それから、捜査をする場合の押収する物件は、同じ種類のものをたくさん持ってくるということもあるのですか。一つあればいいということになるのですか。
  41. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 その許可状に書いてある対象の物件ならば、それは一部の場合もあるし、そこにたくさんあれば、たくさん指示したとか、まいたとかという証拠になりますから、その場その場における捜査官の判断によって、多数押収する場合もあるし、いろいろと場合によって違うと思いますが、多数押収してもかまわないと考えております。
  42. 小林信一

    小林(信)委員 きのうも、日教組捜査をされたあと、私ども行って現場を見たのですが、話に聞きますと、一種類でも何も差しつかえないものをたくさん押収していったというようなことがあります。こういうことも私どもは初めて出会った問題ですから、未経験なものですから、私にはよくわからなかったのですが、何も大量に同じ本を何百冊も持っていく必要はないんじゃないかという感じがいたしました。  何にいたしましても、私の一番意外だったのはきのう当日行なわれたということなんですが、一方では、今度の争議行為の中で、それが多少でも政府に反映しまして、弱者救済という名前の、年金等で生活しておる人たちにはやはり何とかしなければいけないじゃないかという声がこの国会にも出て、与野党とも一緒になってこれにこたえるような措置が出てきておる。ストライキの問題についても新たな検討ということが余儀なくされておるような情勢であって、そのよってくるところは、やはりこういう行動が残念ながらあったからだ、こう思うのです。  そういうことが徐々に進展をする中で、警察庁は一方的に学校先生だけにこういう問題が及んだ。非常に私は残念に思うのですが、局長さんは、公務員が長い間、それもしかられながら、罰せられながら、人事院勧告を勧告どおり四月にさかのぼって実施せよと、長い間の戦いを続けられましたね。やはりそういうものがあって、あなたもきっとそれを適用されているんじゃないかと思うのです。人事院勧告というものが、最初は十月だとか九月だとかいうふうに、政府のほうでは頑強に抵抗しておったのですが、それが四月にさかのぼって適用されるようになった。日本にはそういう歴史的なものがあるわけですよ。黙っていたのでは、なかなか日本の政治というものは応じてくれない。そういう中で、あなた方に厳重に縛られながら、働く人たち自分たち立場というものをつくってきたわけです。  いまこの人たちが、ある一つのものを政府が理解をして自分たちの思うようにしてほしいというときに、こういう行動もおそらく自分たちは好んでやっておるのではないと私は思いますが、あなたはどういうふうにお考えになっておるか知りませんが、そういうような人間的な考え方、そして置かれておる教師という立場の問題、そういうことも考慮されて、この問題の処理に当たるべきじゃないか。今度のことはまことに過酷であって行き過ぎである。そこから生まれてくるものは、反省をするということよりも、何かそれに対する敵意を起こすようなことになりはしないかという心配をしておるものですが、そういう点についての局長の御意見を承って、私は終わりにしたいと思います。
  43. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 先生の御意見承りましたけれども、繰り返すようでございますが、私としては、公務員であり特に先生である方々は、やはり現行法というものを厳正に守っていって、その上でそういうようないろいろな主張をされるべきじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  44. 小林信一

    小林(信)委員 その点については私は決して異議はないけれども、扱う者にも、一片のそういう理解とか人間的な血というものがあってほしいということを私は申し上げたのです。やはりあなたは何でも罰すればいいという器の中に入っておる点からそういうふうなお答えしか出ないのは残念でございますが、以上で私の質問を終わらしていただきます。
  45. 稻葉修

  46. 山原健二郎

    ○山原委員 警察庁にまず伺いますが、今度捜査をしたのは八百七十カ所、十二県、これが間違いないかということが一つ。二つ目は、この捜査にあたって何名の警察官を動員して捜査を行なったか、この人数を明らかにしてほしい。
  47. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。   〔委員長退席、森(喜)委員長代理着席〕  捜査実施した関係県が十二都道県、それから場所が八百七十カ所、捜索、差し押えに従事した警察官の数は六千八百六十名でございます。
  48. 山原健二郎

    ○山原委員 八百七十カ所、十二県というのは、あらかじめあなた方は予定をしておったわけですか。
  49. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 あらかじめ予定しておったものではございません。
  50. 山原健二郎

    ○山原委員 文部大臣に伺いますが、八百七十カ所、しかも六千八百六十名という警官を動員して行なわれた今回の教員組合に対する刑事弾圧、これに対して文部大臣としてどういう見解を持っておられるか、伺っておきたいと思います。
  51. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど小林委員のお話の点におきまして、教育問題を参議院選挙の一つの課題にしようとしているんじゃないかという式の御意見もございました。私は、いまのわが国の政治課題の中で、物価それから教育の現場を正常にしていく、これは非常に重要な国民的課題だ、こう考えておるわけでございます。二十七万人の先生方が大胆不敵に法律の禁止していることを堂々と破っている、これはほんとに大それたことだと思います。そういう教育現場で次代をになう青少年をわれわれが安心して育てていくことができるのかどうだろうか、日本の将来に対して非常な心配な気持ちを持つわけでございまして、いまの教育現場がもっとうるおいのあるような、教育に専念できるような姿を私たちとしては確立していかなければならない、こう考えておるわけでございまして、参議院選挙などのことは毛頭にございません。しかしながら、教育の現場を正常なものにしなければならないということは、これは国民的な課題だ、国会におきましても各党あげてひとつ御心配いただかなければならない課題だ、こう考えておるわけでございます。警察の行動につきましては、私としてとやかく意見がましいことは差し控えさせていただきたい、かように思います。
  52. 山原健二郎

    ○山原委員 今回の警察の行動について、あたりまえだとお思いですか。教育を担当する大臣として、子供に与える影響とか、いろいろな面から考えて適切ではないとお考えですか。どっちですか。
  53. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私としては、警察が介入しなければならないような事態を避けたいと、就任以来懸命な努力を続けてまいりました。しかしながら、不幸にして二十七万人の方々があえて法律違反の行動に突入しておられるわけでございます。法律を守る子供を育てなければならない先生方がみずから法律を破っていかれる、これで一体法律を守る子供さんが育っていくのだろうかということがたいへん心配でございます。あくまでも先生方がまず法律を守っていただく、そのような姿勢を国内において確立していかなければならない。そういうことにつきましては、国会におきましてもほんとに真剣に御論議をいただきたいものだ、かように思います。  警察の行動につきましては、いま申し上げましたとおりでございます。
  54. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一回聞きますが、そういう違法なことをやったことに対して警察が出たのは当然だと思うのですか。時間がありませんから、文部大臣としてそこだけ聞いておきたいと思います。
  55. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまも申し上げましたように、そういう事態が起こらないように、これまであらゆる努力を私としては払い続けてきたわけでございます。結果としてこういうことになったということでございます。このことについての意見がましいことは私としては避けるべきだ、こう思います。
  56. 山原健二郎

    ○山原委員 今度の日本教職員組合の掲げておる要求、それをあなたは政治ストだというふうに、その面だけを今日まで強調されておりますが、どういうものを掲げておるか御存じですか。
  57. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 統一ストなものでございますから、スト権奪還でございますとか、あるいは四万円の賃上げの問題でございますとか、あるいはインフレとの戦いの問題でございますとか、三つにしぼられているようでございます。二月に臨時大会をおやりになっていろんなことをきめられた中には、さらに教頭職の撤回の問題でございますとか、あるいはまた大管法の制定反対、臨時大学運営措置法の撤回とか、いろんなこともあわせて掲げられておったようでございます。
  58. 山原健二郎

    ○山原委員 大幅賃上げ、それからスト権の奪還、それからインフレの今日の状態の中でたとえば弱い人々に対する対策を立てろとかいうことが統一の主張だと思うのですよ。  それからさらに、これは東京都教組の例でございますけれども、今度のストにあたっての要求をちょっと読み上げてみますよ。一つは「給食費への補助金増額。」二「学用品、教材教具の値下げ。学校配当予算の増額。」さらに「学校建築資材の確保、大企業の売り惜しみ、価格つり上げストップ。」さらに「教職員の定数増。一クラスの子どもの数をへらす。」「授業料、入学金の値上げストップ。」「私学助成金の増額。」「教育費の私費負担軽減。」それから「大幅賃上げ。」「全国全産業一律最低賃金制の実現。」「インフレ福祉手当を身障者、老人、低所得者に。」さらに「年金の賃金スライド制実現。」「中小業者に経営助成金を。」そして最後に「官公労働者のスト権回復。」こういう緊急課題を掲げて、今日の狂乱する物価、インフレ、物不足の中で戦っておられるわけです。この中のどれがあなたの言う政治ストだということになるわけですか。
  59. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 教育公務員が団結権を認められておりますのは、法律にきめておりますように、  「勤務条件維持改善を図ることを目的」とすると書いてあるわけでございます。いまおっしゃいましたことは、ほとんどそれと関係がないような感じがいたします。ことに私が心配をいたしますのは、このようなこと、まる一日のストライキをやるということをきめましたのは、去年の七月の群馬県の前橋大会においてきめておるわけでございます。私は組合ストライキをきめて、そして給与の問題を話し合われること、これは何ら問題じゃございません。適法に大いにおやりになったらいい。労働者と使用者と対等に話し合いができるように、片方には同盟罷業権、片方にはロックアウトの権限が認められておるわけでございます。そういうものとは全く関係がないじゃないかと私は言いたいのでございます。昨年の七月にきめられたことでございまして、今回いろんな共闘等が行なわれておりますけれども、それとは全く性質の違った行動に走っておられるということを私はたいへん心配しておるわけでございます。ことに、いま定数の改善のお話がございましたけれども、定数問題はこの国会において御議論いただいているわけでございます。国民の代表者から構成されているこの国会に対しまして、ストライキをもって圧力を加える。私はそういうことでいいものだろうかどうだろうか、こういう疑問も抱いているところでございます。
  60. 山原健二郎

    ○山原委員 あなたは文部大臣として、今日の国民が教育に対して要求しておることにこたえてきましたか。いま教育に対して父母がどういうことを要求しているか御存じですか。幾ら要求しても、また対等の立場で話し合いができるような状態をあなたみずからつくらなかったでしょうが。  それから、ストライキの問題についてあなたの意見を聞きますと、ストライキは前日にきめたらいい、去年の何月かにきめたのはけしからぬ、こういうことを先日来ずっと言い続けておられます。前日にきめたらいいというお考えですか。ストライキというのは、きめたってやるときもあるし、やらぬときもあるのです。そのときの情勢、それまでに、団結権を保障されているすべての組合員がどれほど血みどろな努力をしておるか、そんなことに対してはあなたはおそらく全く認識がなかろうと思うのです。そして、ただ政治スト政治ストだと、こう言うわけですね。しかし、いま私が読み上げましたこの緊急課題というのは国民がいまほんとうに求めていることですよ。そして、教育に携わる者が団結して、その要求を実現していくために努力をする、あたりまえのことなんです。日本の教育を守ろうという立場でやっているわけですよ。そういうことを何も理解しないで、頭から政治ストだ、違法だ、こういうあなたの見解。  私は、最後に私の見解を述べますけれども、そんな一方的な見解でものごとを判断してはだめですよ。(発言する者あり)自由民主党に尋ねておるのではないので、あまり興奮しないで聞いてくださいよ。今回の刑事弾圧の特徴は、いま小林先生も言われましたけれども一つは、ストのまっ最中に介入をしておるのですよ。(「早い」と呼ぶ者あり)いま早いというお話がありましたけれども、これは私は初めて経験するところです。  それからもう一つは、警察官の動員。異例ですね。私の調べましたところでは、たとえば東京都内のある組合の幹部のところに十名の警察官が入っています。奥さんが一人です。立ち会い人一人ですね。そうして部屋の中をひっかき回す。何が押収されたかもわからないような状態。これがあるのです。  さらにまた、ある一人の組合の役員の捜査。これは、中へ入ってきたのは四名、庭に四名、周囲を取り囲んでおる警察官が何と五十名。大弾圧ですよ。こんなばかなことを私はいままで聞いたことがない。国費を乱費して、一軒の家に五十人もの警察官を動員したり、婦人一人しかいないところに家宅捜索をかけるなんということはいままでなかった異例なことです。これが第二番。  それから、捜索の個所が非常に多いわけですね。さらに、捜索が夜間に入って行なわれている。これなども公務員のこのような事件の場合にはいままでなかったことです。これもたいへん異例なことです。  さらに、これは質問いたしますけれども、あなた方は事前に尾行、それからいろいろなことをやっているでしょう。やっていませんか。これを伺っておきます。
  61. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 前段の問題について、私からお答えいたします。
  62. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっと待ちなさい。文部大臣に聞いていない。警備局長に聞いているんだ。答弁を求めていないのに何で出てくるの。そうして時間をかせいでいるじゃないか。どうして出てきたの。
  63. 森喜朗

    ○森(喜)委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕
  64. 森喜朗

    ○森(喜)委員長代理 速記を始めて。
  65. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 山原さんの御意見を聞いておりますと、国民の間にはいろいろな不満がある。これは私もよく承知しておりますが、不満があるからというて、いかなる手段を弄してもかまわないのだというわけにはまいりませんで、やはり法律は守らなければいけません。山原さんが政権をとったら、法律を無視して大衆動員を幾らでもやるんだというお考えは、私はまさかないだろうと思います。そこはよく御理解をいただかなければならないと思います。  もう一つは、やはりストライキはとことんまで労使間話し合った上できめることでございます。ことしだけじゃないのです。去年の四月のストライキもおととしきめたのです。私は何も一つのことだけをもって判断をしているわけじゃございません。
  66. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 捜索に多数の警察官が立ち会ったりしたことについて不当じゃないかという御質問ですが、それはどの程度の状況でどの程度の人が立ち会ったか、私つまびらかにしませんが、しかし妨害行為ということもあるし、あるいは証拠隠滅のおそれもある、そういうような場合もございますので、十分万全な措置をとったために、ある程度の人がふえるということは、これはやむを得ないと思います。  それから夜間にわたったということ、確かに夜間にわたったのもございます。これは令状の発付がおそくなった場合もございますし、その執行についていろいろ抗議なり妨害等が起こったというような理由もあります。それから差し押え物件が非常に多数にわたるというようなことでおそくなった。いろいろな事情がございまして、決して無理をしてやっているということではございません。
  67. 山原健二郎

    ○山原委員 答弁漏れがある。答弁を求めたのはそれじゃない。尾行とか事前にどういうことをやったのかということを聞いておるのですよ。
  68. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 落としましたが、尾行の関係、これは各都道府県警察のほうでこれまでいま申し上げました地公法違反のいろいろな証拠を集めるという形で捜査を続けてまいった過程において、そういう事実もあったかというふうに考えております。
  69. 山原健二郎

    ○山原委員 地公法違反ということを初めからきめておったのですか。
  70. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 それは、今度の争議行為についてのいろいろな日教組関係の準備状況あるいは会議状況、指令の発出状況というものについては、先ほど申し上げましたように地公法違反の疑いが非常に強いということでございますので、その過程をずっと調べなければやはりこれを立証することはできないというふうに思います。そういうことで、事情についてはきのうやったからきのうの捜査だけで十分ということにはならないというふうに思っております。
  71. 山原健二郎

    ○山原委員 いまの答えは捜査を拡大するつもりを言っておるのですか。
  72. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 いや、拡大ということではございません。先ほどの、これまで事前に尾行などしたのじゃないかというお話に対してお答えを申し上げたわけでございます。
  73. 山原健二郎

    ○山原委員 この警察事前の行動というのが非常に問題なんですよ。たとえばある組合の役員のところへは、右翼の脅迫があるかもしれないから身辺の保護をするんだ、だから逆探知機を電話につけさすとかいうようなことまでやっているのですね。そういう事実を御存じですか。
  74. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そういう事実をわれわれ報告は受けておりませんが、一般的にいって、右翼によって身辺があぶないということで保護を求めてきた方がおれば、それについては警察としてはできる限り安全を確保するための措置はとっておるというふうに考えております。
  75. 山原健二郎

    ○山原委員 保護を求めていない場合でもやるのですか。保護を求めた場合にやるわけですか。
  76. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 保護を求めた場合は当然、求めない場合でも、警察独自の情報網によってそういう具体的な動きが察知されれば、その方の身辺を守るための相当な措置をとるということは当然なことだと考えております。
  77. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省のほうへ今度は聞きますが、臨時休校をしたところがございますか。
  78. 岩間英太郎

    岩間政府委員 私のほうで全部まだ正確に把握をしておるわけではございませんけれども、当時交通スト等の関係で、小中学校約四千二百校、高等学校約六百校におきまして休校措置が行なわれています。
  79. 山原健二郎

    ○山原委員 この臨時休校の措置について、これは地教委の自主的な判断によって行なわれ得るものだと私は思うのですが、これについて、そういうことをしていかぬという意味の通達を出しましたか。
  80. 岩間英太郎

    岩間政府委員 通達は出しておりませんが、そういうことのないように指導はいたしております。
  81. 山原健二郎

    ○山原委員 交通機関がとまるということは皆さんも御存じだったと思うのですよ。学童をどんなことがあっても学校へ行かせるなどという考え方指導したのですか。
  82. 岩間英太郎

    岩間政府委員 何も交通機関を利用しなくても行けるようにいまの小中学校の配置というのはできておるわけでございますから、その限りにおきまして休校にするということは、これは本末転倒と申しますか、ストをやるから学校を休むというふうなことではなくて、あくまでも教育が中心であるべきだという考え方から休校措置はとらないということを指示しておるわけでございます。
  83. 山原健二郎

    ○山原委員 こういうところにも文部省の今度の国民春闘といわれる日本の労働者のストライキに対する考え方が出ているのですよ。小学校、中学校、高等学校もそうですけれども、いま通えるような状態じゃないでしょう。僻地の学校統合などで、二十四キロも離れたところで、無理な統合の中で置かれている子供たち、いるのでしょう。一番知っているでしょう、あなたが。それを、交通機関が全部ストップする、行け。この臨時休校をやった教育委員会に対しては、どういう措置をとるのですか。
  84. 岩間英太郎

    岩間政府委員 これは、格別の措置をとるということではございません。最終的には教育委員会判断というものは尊重しなければなりませんけれども、しかし私どもは、考え方としまして、そういうふうな本末転倒したようなことでなく、憲法で保障されています国民の教育を受ける権利というものを何よりも大切に考えるという立場から申しますと、私どもの指示は当然のことだろうというふうに考えております。
  85. 山原健二郎

    ○山原委員 明快ではないですよ。非人間的な態度とはそのことなんだ。実際に交通機関、目の前にないのでしょう。汽車もとまるでしょう。(「行けるんだよ」と呼ぶ者あり)自動車持っておる者は行けるかもしれぬ。これは自由民主党の考え方だ。行けもせぬのに行けという指示をあなたは出したのですか。臨時休校まかりならぬ、行け。これですか。
  86. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私たちは、ゼネストはやめてもらいたいのです。国民の立場に立ちますと、足を奪われることは困るのです。また組合の中にも、ゼネストに反対されて、ストライキをやらないということをきめられた組合もあるわけでございまして、あくまでも私たちは、国民の立場に立って組合の方もひとつ善処していただきたい、こういうお願いは続けておったわけでございますし、同時にまた、小中学校は大体において歩いて通えるところでございます。私は、熱意のある先生は、かりにゼネストで足がとめられても、前日に学校へ泊まるぐらいの考えを持っていただかなければ、日本の教育は正常化しない、こう考えるわけでございます。その辺に山原さんと私たちの間に、職務を第一に考えるか、子供を第一に考えるか、あるいは自分の要求だけを第一に考えるか、やはり考え方の違いが、私いろいろ御意見伺っておりますと、開きがあるなあという感じを持っております。やはりゼネストは、国民の立場から考えますと、よいことではないと思います。避けていただきたいものだ、こう考えるわけでございます。
  87. 山原健二郎

    ○山原委員 まさにあなたのいまの答弁の中に、あなたの前近代的性格がそのまま出てきているんですよ。まさに今日のストライキに対する考え方ですね。いいですか、都教組判決、四十四年の四月二日、四・二判決といわれる、それから大阪あるいは和歌山等の教員にかかる判決は、ほぼ組合側の勝訴に終わっています。そして都教組判決では、全体の奉仕者ということで公務員に対してストを禁止するということは許されない。こう出ているんですよ。それから憲法二十八条の問題もはっきりと四・二判決では出ておる。ところが、その後全農林の警職法事件について、これは日本政府は最高裁判所の判事を自分たちに都合のよい者を出して、そしてこの判決を四年目にしてひっくり返した。ひっくり返したけれども、それでも裁判官の裁決は八対七なんです。だからこの憲法上の問題を含めて、実際には非常に政治的な態度をあなた方はとられておるけれども憲法二十八条というのは、すべての労働者に対して労働三権といいますか、そういうものを許しているんです。認めているんです。  この憲法の問題、それがどこから来たか。時間がありませんから申し上げますけれども、戦前には日本の教師というのは政治活動をすべて禁止されておったんです。選挙権もなかったんです。そうして政談演説にも聞きに行けないという状態がつくられたんです。これは戦前の教育者に対する考え方ですね。教育者というのは、あっさり言えば政治的には白痴の状態に置かれた。そうして要求された任務というのは、子供たちをただひたすら戦場へ送ることであった。だが、そういう状態の中から、あの破滅的な戦争の終末を迎えるわけですね。その反省に立って日本国憲法というものを作成する過程で、いろいろの意見が出てくるわけです。二度とそういう誤りを繰り返すまいという、こういう中から憲法も生まれている。教育基本法もその中から生まれているわけです。  だから私どもは、教壇の上で一定の政治的見解をもって政治教育をやるなどということを言っておりません。しかし、たとえ教員といえども政治的な自由というのは、これは憲法の保障するところなんだ。その点で、いままでの裁判の結果を見ましても、ほぼ裁判官がこの点については一定の見解を発表してきた。ただ、全農林の警職法事件の最高裁判決が、八対七という形でひっくり返っておるということなんですね。  さらに公務員制度審議会、これにおきましても、こういう事件についての刑事規定は、今後検討を加えることを適当と考えるという状態。私ども、これを認めておるILOわけではございませんけれども、しかし公務員ストライキに対しては、国内においても一定の前進があるわけです。こういうことは私は、行政担当者としても、当然正当に考えるべきだと思います。  さらにもう一つは、国際的な今日の状態ですね。それはもうILO、ユネスコの教員の地位に関する勧告その他、これは皆さんも御承知のとおり、日本の政府機関まで入った、その中で御承知のような決定がなされている。労使間の解決がつかない場合には、たとえ教員といえども、他の労働者の持っておるそういう行為をすることは当然だということになっているわけですよ。だから、流れとして考えてみますと、国際的に見ましても国内の情勢から見ても、あなたのようなストライキに対する頭からの偏見、こういうものは全く古い思想になろうとしているということを考えておく必要があると思うんですよ。(「教育を受ける権利がある」と呼ぶ者あり)  さらに、教育を受ける権利などと言っておるけれども、今度の国会に入りまして、田中総理大臣あるいは奥野文部大臣もしばしば日教組に対する一方的な見解を表明されているわけです。そしてその中から出てきたものは、教育勅語とか軍人勅諭もよかったというような考え方である。そして君が代の問題が出てくるという状態ですね。その中で、いま小林先生も言われたように、いま物価問題や国民生活の問題ではもうたじたじとなっている自民党が、どこかへ国民の怒りの焦点を、争点を、目をそらそうとする。そういう中からこういう問題が出てきているのではないか。それと符節を合わすように、今度警察が直接国家権力をもってこの争議中に介入する、そういう事態が生まれてきたのではないか。今日の動きを見まして、私たちはそういうふうに考えざるを得ないのですよ。私どもは、そういう点ではいま教育の問題ではたくさんの問題がございますから、それをほんとうに解決していく。日教組教員組合の掲げているものもそうなんですね。いま入学期を迎えて、子供学校にやるためには十万円の金が要るとか、ノートが三十円のものが百三十円もするとかいうような問題をほんとうに解決していく、そういう教育行政をやってもらいたいという要望も、今日の教員組合の要求の項目の中にははっきりずばりと出ているわけです。そんなことを一切見ようとしないで、ただ政治ストだ、違法ストだ、これを繰り返すだけでは問題の解決はできません。私はそのことをはっきり申し上げておきたいと思うのです。  今度のストライキ、国民春闘と呼ばれておるこのストライキというのは、これはほんとうに正当な要求を掲げた労働者のたたかいです。それに国家権力が介入をする、弾圧を加えるなどという国が今日の民主国家でどこにありますか。南朝鮮の韓国じゃないんですよ、わが国は。そんな国がどこにありますか。ストライキに対して警察が介入するなんという国が、いまの民主的な国家の中でどこにありますか。こういうことについて、ほんとうに偏見を持たないで考えていくという態度を私は絶対とってほしいと思います。私どもは、今日の国民の切実な要求に基づくいまの春闘を支持しております。そして皆さんが考えておる反動的な考え方あるいは軍国主義復活を目ざすような教育考え方については、これからも断固として反対をしていく。  このことを申し上げて、時間がまいりましたので、私の質問を終わります。答弁は要求しません。
  88. 森喜朗

    ○森(喜)委員長代理 有島重武君。
  89. 有島重武

    ○有島委員 本日の緊急質問の最初に、私は基本的に大臣一つ承っておきたいことがあるわけなんです。  教育目的というのは、教育基本法の第一条にあるわけでございますけれども、その中で、教育目的は、人格の完成を目ざして行なわれなければならない、もう一つは、心身ともに健康な国民の育成を期して行なわれなければいけない、そういうふうになっておる。この個人的な人格の完成という問題とそれから国民の育成という問題、これはどちらが主でどちらが従になるのか、あるいは並行なのであるのか、どのようにお考えになっていらっしゃるか、このことを聞いておきたい。
  90. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 並行的なものだと考えます。
  91. 有島重武

    ○有島委員 そういうお考えのなり方は、この法文の文脈をもう一ぺんよく御勉強していただきたいと言うとたいへん僭越に聞こえますけれども、これは並列ではない。もう一ぺんお調べ願えますでしょうか。断固として並列だとおっしゃるか。
  92. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 並列とかなんとか、ことばはどういう意味でおっしゃっておるのかわかりませんけれども、やはり個人個人として充実した人間になっていかなければならない。それがやはり国民として国を守っていく、育てていく、発展をはかっていく、こういうことに力を合わしていかなければならない。こう考えておるわけでございます。
  93. 有島重武

    ○有島委員 それには違いないですよ。どちらが主で、どちらが従属的な、副次的なものであるか、そういう見きわめ方がはっきりしなければならないと私は思うのですよ。この文脈の中では、落ちついて読めば、人格の完成という個人的な問題、まずこれが主目的です。国民の育成ということは従属的なことになっておる。そのように書いてある。もう一ぺんこれはお調べ願いたいと思うのですよ。ここでもってその議論を長くやろうとは思いません。法文の上で、文脈の上でそういうふうになっておる。これは英文のものもありますけれども、英文でもはっきりとそうなっておる。日本語をこのとおり読んでもですね。そこら辺の御勉強をもう一ぺんやり直していただかないと、これはもうそこから先の話はますます食い違っていく。話にならぬというようなことにもなりかねないわけであります。並行とかなんとか、それは現象的には同時に行なわれていくことである。それは私も大臣のおっしゃる心がわからないわけではないけれども、もう一ぺん落ちついて勉強していただけるかどうか。そういうことをお願いしたいわけなんだけれども、どうですか。
  94. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 教育基本法は日本国憲法を受けておるわけでございます。日本国憲法はあくまでも日本国の憲法であって、世界連邦の憲法ではないと思います。この憲法は人格の尊厳を基調にしております。
  95. 有島重武

    ○有島委員 文脈の点でもう一ぺん勉強していただけますか。
  96. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 常に研さんにつとめます。
  97. 有島重武

    ○有島委員 特にお願いいたします。  このたびのスト問題に限らず、教員ストライキという行為によって迷惑をこうむるのは一体だれであるか、どういう迷惑をこうむるのであるか、どういうふうにお考えになりますか。
  98. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 ストライキもいろいろなストライキがございます。今日行なわれておるストライキにも適法なストライキもございますれば、違法なストライキもございます。私は山原さんのさっきの意見を伺いながら、一体憲法を守る気持ちを持っておられるのだろうかどうだろうかなという疑問を持ちました。私は、やはり憲法を守るということは憲法に基づく法律も守ることだ、こう考えるわけでございまして、あくまでも違法なストライキはやるべきでない。先ほど山原さんはすべてのストライキを是認しておられるようでございますけれども、日本国憲法の前文には「日本國民は、正當に選擧された國會における代表者を通じて行動し、」「ここに主權が國民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」議会制民主政治を基本とすることをうたっているわけでございます。したがいまして、法律を守っていくという根本的な考え方がございませんと、やはり過去のようなあやまちもおかさないとも限らない、こう思うわけでございます。そういう意味においては、法を守っていくという姿勢が傷つけられた。このことは被害は非常に大きい。児童生徒に与える影響も非常に大きい。こういうことを、特に今度の先生方の問題については強く感じているものでございます。
  99. 有島重武

    ○有島委員 いまのお答えでございますと、教員ストライキによって迷惑をこうむるのは、法を守っていくことを仕事としている為政者である、第一番。そういう法を守らない姿を見せつけられた子供たちも、したがって困るであろう、そういうお答えになりますか。
  100. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど申し上げたとおりであります。
  101. 有島重武

    ○有島委員 そのお考えも問題なんだ、これは。
  102. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 児童生徒が法を守る国民として育ってくれなければ、次代の日本を守る国民にはなり切れない。その気持ちを傷つけられたことが一番心配だ。こう申し上げているわけであります。
  103. 有島重武

    ○有島委員 そうすると、歯車を一つはずして先のほうにお答えになった。私は非常に単純に、教員ストライキによって迷惑をこうむるのは一体だれであるか、どういう迷惑のこうむり方をするのかと申し上げたわけだ。直接に迷惑をこうむるのは一体だれなのか、それからそれが一体どういう迷惑のこうむり方をするのか、そう申し上げたのですよ。そうすると、大臣はまず最初におっしゃったのは、とにかく法を守っていく立場大臣としてのお答えがまず出てきた、さっきのお答えでは。だから、その次にその内容にわたって、どういう迷惑をこうむるかというと、子供たちがまずスポイルされるといいますか、という点が困る、こういうわけだ。ということは、やはり文教責任者として困るのだというようなところにそれが要約されていってしまうわけだ。さっきのお答え、そうですよ。あとの言い直されたときには児童生徒の話になりましたけれども、それはやはり順法精神ということに要約されております。それが大臣の一番の中心課題であるということは、いまのお答えで私はお察しすることができる。それはお立場上そうでしょう。しかし、それだけでよろしいのか。先ほどの教育目的ということに照らし合わせて、もう一ぺんこれもお考え直されなければいけないのじゃないかと私は思うのですよ。直接迷惑をこうむるのは、まず児童生徒じゃないですか。どうですか。
  104. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 児童生徒だと申し上げているつもりでございます。
  105. 有島重武

    ○有島委員 そのつもりがお答えのおことばとはちょっとたがっておるふうに聞こえる。またそれは会議録をよくごらんになれば、ほんとうにこれでは児童生徒がかわいそうなんだという発想から出ているのではない、さっきのお答えでは。まず第一番に児童生徒の学ぶ権利、そういうようなことから始まるのじゃないでしょうか。
  106. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、児童生徒が学ぶ時間を奪われたということよりももっと大きな、やはり次代をになう国民として育ってくれなければならないのに、その法を守っていく精神が、先生方の法を破る行動によって非常に傷つけられてきている。すさんだ気持ちがその中に生まれてきている。そのことを心配しているのです。児童生徒が一番の被害者です、こう申し上げているわけでございます。多くの児童生徒は、先生の手ぶり足ぶりから見ならう子供さんたちだってあるんじゃないか、こう心配をするわけでございます。精神的に傷つけられた、そのことを心配しているのだ、こう申し上げているわけであります。
  107. 有島重武

    ○有島委員 わかりました。そうすると授業時間を多少そこなわれたということはさほど問題ではない、それ以上に問題であるのは、国民としての基本的なしつけといいますか、順法精神というものについて、悪いお手本を見せられた、このことが心配なのである、これは子供にとって迷惑であろう、そういうことでございますな。  そこで、やはりさっきの教育基本法に戻っていかなければならないこともあるんだけれども大臣は並列だという御認識だ。そのいずれにしても、順法精神が全くないというのは、これは社会人としても個人としても成り立たない、かたわでありましょう。批判精神というものが全くないようなふうにするのは、これもまたかたわではないかと私は思いますね。そしてそれは大臣はそのとおりだとおっしゃると思うのですよ。そこで順法精神とそれから批判精神と、それが相調和するときもあるでしょう。ところがその調和を破る場合もあるでしょう。調和を破った、そういうような矛盾を子供たちも持つでしょう、いろいろな場合に持つでしょう。うちで何時に帰ってこいといわれる。友達とつき合った、帰ってこられない。やはりうちの一つの家風のようなものを破らなければならない。だけど、親の言うこともちっとは無理じゃなかろうかという批判精神もあるというようなこと、いつでもそういう中に子供たちも立たされている。それでおとなたちの世界もそのようなものがある。そのとおりに、先ほどの大臣が一番最初のお答えのときですよ、教育基本法、これからまたさらに勉強するという話の次におっしゃったこと、順法精神ということがすべてのごとき印象を与えるわけだ。順法精神というのは、人間生活の中のごく一部である、大切な一部には違いないけれども、ごく一部であるということはお認めになりますね。
  108. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、やはり国民みんなが法律は守る、こういう考え方がございませんと世の中が混乱すると思うのです。おれはこの法律は守るけれども、あの法律は守らない、こんなことを個人個人がかってにきめてかかりますと、世の中が混乱してしまうと思います。やはり秩序ある社会でなければ、国民はしあわせな生活を過ごすことはできません。同時にまた、憲法を守るということばがよくいわれるわりには、案外無視したようなことを、先ほど山原さんのように言われたりしますと、はて、憲法を守ることを本気で思っておられるんだろうかという疑問を持ったりもするわけでございます。そういう意味において、やはり秩序はみんなで守り合わなければならないのだ、社会生活をします場合には、これは基本の態度としてお互いに身につけていきたいなという気持ちは持つわけでございます。
  109. 有島重武

    ○有島委員 私も全く同感でございます。私がいま伺っているのは、順法精神がすべてであるというようなお考えではないのでしょうねと、こう聞いているわけだ。
  110. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 ちょっと先まで申し上げて恐縮でございますけれども、批判精神、自立的な判断、非常に大切なことだ、こう考えるわけでございまして、二十七万人の先生方にははたして自主的な判断をもって参加されたのだろうかどうだろうか、批判的な精神があったのだろうかどうだろうか、これを心配しているということを先ほど来申し上げているわけでございます。
  111. 有島重武

    ○有島委員 二十七万人の方々はやはり順法精神でやっていらっしゃるわけだ、おっしゃることであるとですよ。一種の順法精神だ、そういうことだ、いまの大臣答弁では。ということは、いま順法精神と批判精神の話をしているわけだ。順法精神が人間生活の中で大切なものには違いないけれども、それがすべてであるとは思っていらっしらない。それである場合にはちゃんとした批判精神が働くようにしたいものである、そういうように大臣も思っていらっしゃるわけですよね。
  112. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 お話よくわからないのですけれども、順法精神を持っていれば批判精神がない、批判精神を持っていれば順法精神がない、何かちょっとどこにそんな理屈が出てくるのだろうかなと思うのでございまして、批判精神があって法を守っていく、是非を常に考えながらも同時にこの法律を守るべきだという考え方で法を守っていく、私はそうあるべきだ、こう思っております。
  113. 有島重武

    ○有島委員 大臣のおっしゃりたいのは、憲法という基本法がある、それとそれ以下のいろいろなしきたりとがぶつかったときには、その批判精神を働かしてどっちをとるべきか、そしてやはりさらに大きい判断に立って自分が行動できるように、そうして相矛盾したものを何らかの方法で解決していくように、そういうような国民としてのマナーを身につけさしていきたい、そういうお考えでいらっしゃるわけでしょう。
  114. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 批判精神があり、その自分の批判している考え方を実現しようと努力する、いろいろな努力のしかたがあるわけでございますが、その場合にもやはり法は守っていかなければならない。表現の自由も許されているわけでございますので、いろいろと自分の考えを実現する道はあるわけでございます。ただ、ストライキは禁止されているわけだから、ストライキの手段は用いるべきでないということでございます。
  115. 有島重武

    ○有島委員 話がずっと先に進んできちゃったのですけれども、基本問題についてきょうはお聞きしておきたいから言っていたのですけれども、だから全くの順法精神ということだけを表に出すと、それは往々にして盲目的な服従主義にならざるを得ない場合もある。そして戦前の教育勅語のもとにおける教育などは確かにその批判精神の余地が非常に少なく限られたものであったというように私は思いますけれども、現在においても、そういったような暗い時代の反省の上に立って、それで批判精神というものは助長されなければならない。原則的なことをいま聞いているのですよ。大臣もそう思っていらっしゃいますね。
  116. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 自主的な精神に満ちた国民を育てていくわけでございますので、先生自身も常に自主性を持った先生であることがきわめて大切なことだ、こう思います。しかしながら同時に憲法は守ってくださらなければならない。憲法は議会制民主政治をうたっているわけでございまして、国会は国権の最高権威、こう示しているわけでございますので、そこできめられたことはやはり守ってもらわなければならない。しかし、きめられたことを変えたいという場合に、変えたいという意見をいろいろな形において表明していくことはできるわけでございますので、それもまたそれなりに大切なことだと思います。しかし、あくまでも法で許されている手段を通じてそういう意見を公正にし、また力強いものにしていっていただく必要があるだろう、こう思います。
  117. 有島重武

    ○有島委員 今度は手段の問題になりましたけれども、まだ手段の問題入ってないわけなんだ。それで、その判断の根拠ないしは批判の根拠が国際的な一つの常識になっていることから発した批判である、それが国内においては許されないのであるというような、そういった矛盾が今度のストライキの問題にもあるわけであります。それで、そうした矛盾の解決手段として、いまこうしたちょっと悲しむべきことが起こっているわけでございますが、これが児童生徒にどのような影響を将来与えていくのか、これはやはり両面があると思うのですね。それで、力をもっていかぬといわれればそれに従っていくのだというようないき方、これはまあ平素は大体そのとおりであろう。   〔森(喜)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、ときと場合によっては、わが身の犠牲も顧みずに一つの決断をとることもあり得るというようなことも……。だから順法ということだけに固執すれば大臣のおっしゃったとおり、しかし他の一面もあり得るということは、これはやはり大臣としてさらに大きく考えていかなければならない問題であると私ども思います。時間がきてしまいましたけれども、そしてもう一つは、一つストライキが起こった、そうしたら手入れがあった、これはまさに暗黒時代の一つのパターンです。そういうことが児童生徒に与える影響はどうであるか。これも悪いことをすればかつんとやられるというふうに思って、ああやはり法は守らなければいかぬのかというふうな一つ教育効果を持つでありましょう。それからもう一面他のそれこそもっと悪い影響ですな、そういうものも児童生徒に与える場合があるでありましょう。大臣はゼネストについて、これは手段をはき違えておるとんでもない挙である、国民全体の迷惑になるのだ、議会制民主主義をわれわれは守るのだというふうにおっしゃっているけれども、必ずしも大臣と同じような考えである国民が大ぜいいるわけじゃないのです。これはひど過ぎる、どうにか変えてもらいたい、変えてもらいたいけれども一つの権力を持ちあるいは法的権威を持っている、これをなかなか変更もしてくれそうもない、そういったような一つのもやもやしたものが国民の中にかなり広く広まっているという認識もお持ちにならなければならないと思うのです。これは持っていらっしゃると思いますよ。私はこのたびのゼネストについては支持します。そういうような認識を全然持たないで、そして今度の起こってしまったゼネスト、起こってしまった手入れです。これをどのように今度は児童生徒に与える影響を善導していくことができるかどうか。これは教育を、あらゆる機会に、あらゆる場所において行なわなければならないわけですよ。いま一つの事件が起こった。これをどのように善導していくかということが、いまの文部大臣の一番の課題であろうと私は思います。  それで、このストライキ手入れ、こうした一連のパターンですね、こうしたことは教育上からもはなはだ遺憾であると大臣は表明なさるのが至当であると私は思うのです。このストライキがどうであるこうであるということは、もう一つ前段があって、これは教員組合大臣との間の話し合いをさらにさらにお進めになるべきお話である。今度の事件は起こった。それについて、今度は文部大臣として配慮なさるべきことは、やはり教育基本法を守らなければならない立場大臣として次にとるべきことは、さらにもう一つ大きな課題がおありになるのじゃないかと私は思う。そして、このストライキを背景としていま交渉が行なわれている最中ですよ。それで、ここに一斉手入れというような、いま各委員から質疑がありましたけれども、明らかに一斉的な意図を持った手入れが行なわれておる。これは非常に不当性の強いものであると判断せざるを得ない。こういうような問題を含めて、私はこれは教育上きわめて遺憾であると思う。私が遺憾であると思っていることと、それから大臣が思っていらっしゃることの違いはどの辺にあるかといいますと、大臣はもっぱら順法精神順法精神とさっきからずっと一貫しておっしゃった。まるで順法精神が教育できればこれですべてであるというような考えは、まさに今度は、これは戦前の「之ヲ古今二通シテ謬ラス、之ヲ中外に施シテ悖ラス。」というような一種の、確かに一種の真理があるでしょう。それが国際的なものではなかった。しかも、これを破る者は罰した。順法精神を守る者だけが優等生になった。その順法精神の中には二通りのものがあって、たてまえと本音と使い分ける人たち、あるいは目をつぶって、まあしょうがないやという一種の正義の人たち、こういうような状態になっていったその同じ問題が、いまのこの平和憲法下において、この議会制民主主義のもとにおいて、またこの教育基本法のもとにおいても、なお同じことが姿を変えてあらわれだしているのではないか。そのことを深く御反省なさり、洞察していただきたい、そういうことを私は結論として申し上げておきます。
  118. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほどどなたかにもお答えを申し上げましたように、私としては、警察ざたにならないように、文部大臣就任以来あらゆる努力を尽してきたのです、こう申し上げたわけでございます。そのことで私の考え方は御理解いただけると思うのであります。警察ざたになるようなことは教育界としてはまことに不祥事だと思います。不祥事を起こさせないためにあらゆる努力を続けてきたわけでございまして、今後といえどもそのような姿勢で努力を続けていきたい、こう考えます。  第二は、ゼネスト賛成だとおっしゃいました。私はストライキ全部反対だと申し上げたことは一つもございません。適法なストライキは大いにおやりになったらいい、こう考えるわけでございます。あらゆるものをゼネスト、許されていないものまでストライキの手段をとる、これは私は避けてもらわなければならない、こう考えておるわけでございます。おそらく有島さんも、憲法は守るのだというお気持ちを持っていらっしゃるのだろうと思うのであります。それなら違法なストライキを支持されるはずはない、法が禁止しているストライキを賛成だとおっしゃるはずは私はないのだと思うのでございますけれども、さっきのお話を伺っていますと、ちょっと疑問になったところでございます。これはぜひ法は守っていく、憲法は守っていくという姿勢、あくまでも法の適当でないものがございますなら、大いに国会において議論し合う、あるいは選挙で決定をしていくということでなければならない、かように考えておるわけでございます。同時に、また、先ほど国際社会がどうのこうのというお話がございましたが、国際条約、これは日本は当然尊重していかなければなりませんので、日本が加盟しております国際条約に反するようなことは全然ないはずでございますし、また将来ともそういう姿勢で臨んでいくべきだ、かように考えます。
  119. 有島重武

    ○有島委員 最後に、このたびのことは遺憾である、だからそうならないように私はつとめてきたのだ、そうおっしゃる。だからいまのは、私のせいじゃないのだというような言いわけみたいに聞こえます。私はいまはそういうことを言っているのじゃない。それで、二番目に順法精神のことをまた言われました。私は順法精神は大切だと言っているわけです。だけれども、その順法精神がすべてであるというような思い込みがおありになると、これは危険な道に行きますよということを警告申し上げたい、そういうことであります。そうしてまたさらに、今度は順法精神に対して、それに対する批判というものはだれでも持っておる。その批判の根拠が単なるごく一部の利害であるか、あるいはさらに大きな国際的な判断に基づいておるものか、その辺も見きわめていかないと将来国を誤るのではないか。そういう問題も今度は含んでおる、そのことを申し上げたわけです。終わります。
  120. 稻葉修

    稻葉委員長 午後二時に再開することとし、この際、休憩いたします。    午後一時八分休憩      ————◇—————    午後二時二十九分開議
  121. 稻葉修

    稻葉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出公立義務教育学校学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田茂行君。
  122. 上田茂行

    ○上田委員 公立義務教育学校学級編制及び教職員定数の標準に関する法律また公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律及び学校給食法等の一部改正を内容とする、このように非常に盛りだくさんな、各義務教育から高等学校、特殊教育、さまざまな方面にわたる非常に幅広い法律でございますけれども、その中から若干の質疑をさせていただきたいと思います。  まず、義務教育関係の問題から質問をさせていただきたいと思いますが、過去第三次まで義務教育学校教員の定数の改善計画を文部省がはかってこられたということを伺っているわけでございます。その間第一次、第二次、第三次の計画を文部省からいただきました数字で見ますと、学校に行く生徒児童というものが自然に減っておるというその関係から、教職員の数というものがそれほど必要でない、その非常に有利な状況のもとに計画的な改善増というものを過去三回やってこられたわけでございますけれども、過去三回の改善につきまして文部当局がどのように評価をされておるか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。
  123. 岩間英太郎

    岩間政府委員 ただいま先生御指摘になりましたように、いままでの改善はいわば生徒が減少しております時期を利用いたしまして、学級編制の基準の改善でございますとか、あるいは教職員の定数の改善をはかりまして、教育効果の向上に資する、そういう方針でまいったわけでございます。ただいままでに改善をはかってまいりましたその結果、大体学級編制におきましても、あるいは先生一人当たりの児童生徒数にいたしましても、あるいは一学級当たりの児童生徒数にいたしましても、先進諸外国の基準に近いところまで持ってきたのじゃないかというふうな感じがするわけでございます。文部省の責任の一つの大きな柱としましては、教育条件を整備してまいりまして、そうして教育効果を高めていくということが非常に大事なわけでございますけれども、とりわけ学級編制でございますとか、あるいは教職員の配置基準を改善いたしますことでございますとか、そういう点が直接教育効果につながる面が多いわけでございますので、私どもも従来からそういう点につきまして改善努力を進めてきたというのがいままでのいきさつでございます。
  124. 上田茂行

    ○上田委員 いままでの状況ですと、自然減というものが非常に多くあった関係上、文部省関係でもこうした改善については非常にやりやすい面があったということがうかがわれるわけでございますけれども、今回の第四次改善の内容を見てまいりますと、四十九年度を含めたこれからの五年間に児童生徒数が百五十七万人もふえるという予想が立てられておるわけでございますけれども、しかもその百五十七万人のうちの九七%というものがいわゆる過密県、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、奈良、兵庫というようなところに固まっておるわけでございます。こうしたことを考えてみますと、今回六万八千百二十二人の増加をこの四年間にはかっていきたいという計画を立てられておるわけでございますけれども、私たちが非常に懸念をしておりますのは、これはこの義務教育とは少し関係がはずれますけれども、私たちの滋賀県におきましても、ことしにおいてすら高等学校の生徒さんたちが非常にたくさんふえた関係上、学校が定員以上になるというようなことが見られておるわけでございます。一部人口急増地のほうの対策というものに回した関係上、かえっていなかのほうには、すし詰めというような状況にまでは至っておりませんけれども、そういうようなものが少し見えかけておるわけでございます。特に今回のこのような改善をなさる上で、九七%のものが特に過密県に多く生徒がふえるわけでございますので、その面に対する校地の確保あるいは校舎の新増設、あるいはまた学校施設の充実等について、どのような計画を立てられ抜かりなくやっていらっしゃるかどうかというようなことについてお答えを願いたいと思います。
  125. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 児童生徒の急増に伴いまする学校施設の整備の問題でございますが、ただいま御指摘がございましたように全国的な増減という問題もございますが、具体的には個々の町村における増減という問題が非常に大きな問題でございまして、特に児童生徒急増の市町村におきましては小中学校校舎の整備が非常に大きな緊急な課題になっておるわけでございます。  これに対しまして文部省といたしましては、昭和四十九年度の公立文教施設整備費といたしまして千五百十億円を計上いたしております。これは昨年に対しまして約四〇%強の増額でございまして、他の公共事業費につきましては強い抑制措置が講じられておるわけでございますが、義務教育施設を中心とする学校施設につきましてはむしろ積極的に増額をはかっておるというような次第でございます。  事業量といたしましては、小中学校校舎、昨年度約百四十五万平米の事業量を予定をいたしておりましたが、四十九年度は約百六十七万平米、小中学校の屋体につきましては、昨年度三十三万平米の事業量でございましたが、これを三十八万平米にふやすということで、全体といたしましては昨年度の四百万平米に対しまして一〇%増の四百四十万平米の整備をはかることにいたしておるということでございます。この事業量はその大部分が児童生徒急増町村における不足の充足に充てられるわけでございます。そうした措置を急増対策としては第一に講じておるわけでございますが、ほかに、昨年度から御承知のとおり小中学校校舎の国の負担率を急増地域につきましては三分の二に引き上げるというような措置を講じておりますが、本年度は、公私立幼稚園を通じまして、急増地域の幼稚園の整備につきましては、現行の三分の一を二分の一に引き上げるというような措置もあわせて講じておるような次第でございます。  第三といたしましては用地の補助でございますが、四十九年度におきましては、国庫債務負担行為の総額といたしまして約百九十八億円、当該年度の歳出といたしましては六十六億円を計上いたしまして、過去の分と合わせまして約百四十五億円の土地購入費の補助を計上いたしております。本年度は、単価を一九%引き上げまして、平米当たり二万五千円、交付率を現行の五〇%から六〇%に引き上げるというような措置を講じております。  なお、ただいま高等学校についてもお話があったわけでございますが、進学率の向上とか、あるいは社会増の要因による高等学校新設の必要に対応いたしまして、四十九年度の地方債計画におきましては、従来の一般単独事業債の中に別ワクを設けまして六十億円を計上いたしまして、そうした需要に対処するようにいたしておる次第でございます。
  126. 上田茂行

    ○上田委員 今回のこの法案の中で実にさまざまな点について改革がなされておるわけでございます。また学級編制につきましても、それぞれの立場で特殊学級あるいは中学校の複学級等の改革がなされておるわけでございますけれども、従来国民の間に一つの大きな要望があったのは、こういう点ももちろんのことでございますけれども、いわゆる学級編制の標準として、小中学校四十五名程度にするというものを四十名に向かって改善をしていったらどうかというような希望が多くあったわけでございますけれども、どうして四十五名の定員というものを四十名に引き下げるようなことが今回の改善によってなされなかったのか、その理由につきましてお伺いをしたいと思います。
  127. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど御指摘いただきましたように、今回の第四次教職員定数改善計画は、児童生徒が増加するさなかにおきまして、言いかえれば教職員の自然増が見込まれるさなかにおきまして、さらに加えて定数増加による先生の増員をはかろうとするわけでございます。定数をふやしてまいりますには、それなりに教職員の養成も万全を期していかなければならないわけでございます。定数の改善によって先生がよけい必要になる。さらにまた第二次ベビーブームによって先生がよけい必要になる。それに加えていまおっしゃいました学級編制の最高四十五名を四十人に下げますと、また先生がよけい必要になるということになるわけでございます。やはり先生は数をふやすだけではなしに、教育に全く適合したりっぱな先生方を確保しなければなりませんので、そういたしますと、この際は見送らざるを得ないということになってくるわけであります。ことに自然増の地域は、先ほどおっしゃいましたように特定の地域に集中しているわけであります。そういう地域におきましては学校を増設しなければならない。増設するに必要な土地を確保しなければならない。それ自体たいへん困難な状態におちいっているわけでございます。そういう地域において、特に四十五名を四十名に引き下げた結果、教室をたくさんつくらなければならない。現状でも教室をふやしていくのにたいへん苦労しておられるわけでございまして、四十五名を四十名に引き下げることによって、もう一そうその苦労が加わるわけでございます。単に苦労が加わるということよりも、実際問題として設備を整えることが不可能じゃないだろうか、こうも考えられるわけでございます。そういう意味合いをもちまして今回はそれに手をつけることは断念さしていただいたということでございます。将来また適当な時期がきますれば、学級編制改善一つの課題に取り上げるべき性格のものだろう、こう思っております。
  128. 上田茂行

    ○上田委員 いまの点に関しましてもう少しお伺いをしたいと思うのですけれども、実は昭和四十六年に中教審から答申が出されております。その中に、学校段階の特質に応じた教育課程の改善をはかっていこうじゃないかという項目が設けられております。すなわち基礎教育を重視するという立場から各学校の段階に、たとえば教育内容の不必要な重複がある、あるいはまた後期中等学校の段階において個人の特性を無視したような画一的な教育が目立ち始めている、また現在、国民の、また生徒の体位が非常に伸びておりますけれども、体力がそれに伴っていないというような問題点をついて、その対策としては、初等教育の中で、たとえば国語と算数そしてまた情操教育というものを重視してやっていく、また高等学校においては多様的なコースを選べるような教育、また途中でいろいろ多様的なコースを変更できるような教育というものを目ざすべきではないかというような答申も出ているわけでございます。また、個人の特性に応じた教育方法というものをいまのうちに改善すべきでないかというようなことも中教審の答申にうたわれておるわけでございます。たとえば学校教育をやっていく上で、いままでのような学級単位だけの勉強を教えるという体制だけではなくして、グループ別の指導、あるいは第二点としましては個別学習の機会を設けることが必要であるとか、あるいは学校の生徒の指導というものをただ単に学年ごとにやるのではなくて、もう少し弾力的な方法を取り入れるべきではないか、また能力に応じては飛び級のようなものを取り入れてやっていったらどうかというようなことが種々述べられておるわけでございます。  このように、ただ単に画一的な形式的な教育という体制から、新しい時代にふさわしいような、個々の人間の創造力やその生徒の特性を伸ばすような教育の方法を取り入れていこうとするならば、いまのようにたとえば一クラス四十五名であるというような方法よりも、もっと少ない人数にこの際改善することによって、徐々にこの中教審答申にうたわれておるような方向に持っていけるのではないかと思っておるわけなんです。  そこで大臣にお伺いしたいことは、このような中教審の答申の実現ということについていかがお考えになっていらっしゃるのか。そして、そういうことを踏まえて、将来四十五名の定員というものをもっと少なくしていこうというような意思があるのかどうかということについてお伺いをしたいと思います。
  129. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御指摘になりました諸問題、すべて問題点だ、やはりそういう方向で解決を考えていかなければならない、こう存じておるところでございます。四十五名を切り下げる、きわめて必要なことでございます。また幼稚園は四十名でございますけれども、四十名も私は無理だと思います。もっと切り下げるべきだ、こう考えるわけでございます。しかしこの際はそれに手をつけることは困難だということは先ほど申し上げたとおりでございます。昨年の十一月に教育課程審議会を発足させていただいたわけでございまして、おおむね二年で結論を出していただこう、こうしているわけでございますけれども、その一つには、学校教育は何もかも覚え込ませるところではなくて、基礎的なものをしっかり身につけてもらおう、またそうすべきところじゃないだろうか、そういう角度からひとつ教育課程をつくり直してくださいよ、こういったこともお願いしているわけでございます。  また、高校教育についてお触れになりましたが、こういう問題につきましても、理科教育及び産業教育審議会から職業課程の高校のあり方についていろいろな問題点が指摘されておるわけでございます。やはりこれも、技術変化の激しいときだから、最初からたいへん細分化された課程を選ばせないで、むしろ三年ぐらいになってからさらにこまかく選択できるようにしたほうがいいのじゃないだろうかというような意見も出ておったりするわけでございます。やはり情勢の変化に対応して学校教育のあり方につきましても積極的にくふうを尽くしていかなければならない、こう考えるわけでございます。同時にまた、学校教育の中でクラブ活動を必修化したり、いろいろなくふうも行なわれているわけでございますけれども社会教育との関連を通じてりっぱな社会人を育て上げていくという配慮も必要ではないだろうか、こう考えるわけでございまして、あらゆる角度からりっぱな人物が育成されていくような改革を加えていかなければならない、こう考えておるわけでございます。  残余の問題につきましては、事務当局からお答えさしていただきます。
  130. 岩間英太郎

    岩間政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたようないろいろな問題点がございまして、私どももそれに対しましては、ただいま大臣からお答え申し上げましたようにいろいろな方策を講じつつあるところでございます。しかしながら、いままではどちらかと申しますと量的な拡大と申しますか、教育の機会をなるべく多くするという方針でまいっておりまして、そのために、先生が御指摘になりましたようなきめのこまかいいろいろな施策というのが、どちらかと申しますとあと回しになっておるということでございます。そういうふうなきめのこまかい施策を講じてまいるということになりますと、ただいま先生も御指摘になりましたように、いまの最高四十五人というふうな学級編制は、これはさらに検討を加えて、将来改善の方向に持っていくべきじゃないかというふうな御指摘でございます。まことにそのとおりであると私どもも考えるわけでございまして、ようやく量的に、あるいはその機会という意味で拡大をしてまいりました教育の内容を、これから高めてまいるという努力をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  131. 上田茂行

    ○上田委員 いまの御答弁を伺っておりまして、量的な拡大というものをやってきた、今後質的な拡大というものが必要であるというふうに理解をしていきますならば、いわゆるいま現状で行なわれておりますような六・三・三制というような制度を、今後絶対的なものとは必ずしも見ていないというふうに私たち理解してよろしいのでございましょうか。
  132. 岩間英太郎

    岩間政府委員 学校制度をどうするかという問題につきましても、先生が御指摘になりました中央教育審議会におきまして意見が出ておるわけでございます。それに基づきまして私どもは、学問的、科学的な基礎に立ちましてそういう問題を判断すべきであろうということで、ただいま研究開発室というものを設けて、そこでじみちではございますけれども基礎的な検討に着手をしているわけでございます。  そういうことで、将来学校制度の問題も私ども一つの課題として念頭に置いているわけでございますが、しかし戦後新しく取り入れました六・三制というのは、いまになってみますと、もうすでにかなりの固まりを見せておるわけでございまして、まだやわらかいうちでございましたら、これはまあいろいろ細工の方法もあったかもしれませんが、いまや鉄筋コンクリートのように固まってきている面もあるわけでございます。たとえば幼児学校をつくったらどうかというふうな御意見などもかりにございましても、いまの東京都のような過密の状態の中で、さらにその小学校と同じ数の幼児学校をつくるということになりました場合には、これはなかなか土地の問題、建物の問題、物理的、どういうような表現をとってよろしいかどうかわかりませんが、既成の事実がすでにでき上がっておる、その中で学制の改革をやるということは、これはかなり慎重を要する、しかもむずかしい問題であると思います。しかし私どもは、絶えず学校制度につきましてもじみちな研究を続けていくということは必要であると考えまして、現在そういう方向で検討を進めているような次第でございます。
  133. 上田茂行

    ○上田委員 次に、先般教頭職の法案がこの委員会でも、また衆議院でも通ったわけでございます。参議院でも絶対通ると思っておりますけれども、もし通りますと、教頭さんが一般の先生と同じように授業を受け持たれる時間というものがきわめて少なく、あるいは皆無になるというようなことを伺っておるわけでございますけれども、そのときに、その授業担当時間が減った分、非常にほかの一般教職員の皆さま方に過重な労働が課せられる面があるわけでございますけれども、将来、教頭を教職員定数の算定上、別ワクで措置しようというお考えでいらっしゃるわけでございますか。
  134. 岩間英太郎

    岩間政府委員 衆議院のこの委員会におきまして、ただいま私どもが提出をいたしておりますいわゆる教頭法案につきまして修正が行なわれたわけでございます。私どものほうの原案では、教育とそれから管理という面が半分半分くらいの割合で教頭先生の職務の中に規定をされておりましたものが、それが管理とかお世話とか、そういう面のお仕事が教頭先生の大部分のお仕事であるというふうに修正をいただいたように私ども理解しているわけでございます。  そういたしますと、これは当然定数法の上でも配慮をしなければならない。と申しますのは、現在、教職員の定数をはじきます場合には、先生方の授業担当時間というものを一応の目安にして計算の基礎にしているわけでございますから、そういうことで教頭先生教育に対する担当時間が少なくなれば、当然それに応じた改善を今後はかっていくべきであるというふうなことが、これは理論として言われるわけでございまして、今後その面につきましても検討し、改善をはかっていくという方向でまいりたいと考えております。
  135. 上田茂行

    ○上田委員 せっかく教頭法案が通るというような状況になりましても、安心して教頭さんが教頭の立場で校長の補佐をできるような立場を確保するためにも、ぜひこうした制度を文部省のほうで取り入れてくださることをお願い申したいと思います。  次に、高等学校関係の質疑に移らせていただきたいと思います。同じく過去二回改善計画が出されておるわけでございますけれども、この間の文部当局の評価というものをお伺いしたいと思います。
  136. 岩間英太郎

    岩間政府委員 高等学校の定数につきましては、これは小中学校の計画に一期おくれまして昭和三十六年に法律ができたわけでございますけれども、その当時、高等学校につきまして学級編制あるいは定数の標準を定めましたのは、これはいわゆる第一次のベビーブームによります高校急増というふうな事態に対処するために、高校の生徒が急増する時期には多少学級編制もある程度目一ぱい見ていく、それから教職員定数も頭をある程度押えていく、しかしながら、高校の急増が終わりました段階で、ふえました先生をいわば利用いたしまして内容の改善をはかっていくというふうな計画を立てたわけでございます。  ところが、第一次のベビーブームは先生も御承知のとおり非常に集中的でございまして、短い年月の間に多数の子供たちがふえていくという状態でございましたから、その際にかなりたくさんの先生が必要でございましたので、そのたくさんの先生が必要であるということを前提にいたしまして、その後の改善もかなり大幅な改善ができたような感じがするわけでございます。そういう意味で私どもは、これは五カ年計画ではなくてむしろ十カ年計画くらいで高等学校の場合には進んでも、小中学校と比べまして改善が相当行なわれているのじゃないかということを当初から考えておったわけでございます。たとえば先生一人当たりの授業実数と申しますのは、小学校の場合には一週間二十六時間、中学校の場合には二十四時間というふうな前提で教職員の数をはじいておりますのに対しまして、高等学校の場合には十八時間というふうなかなり少ない時間をとれるようにしたわけでございます。そういう意味で、現在先生一人当たりの子供の数は十六人くらいから十八人くらいまで、学科によって違いますけれども、その程度でございますから、これは先進諸国と比べましても、先生一人当たりの生徒数という意味では、これはかなり高い水準にあるのじゃないかということでございます。したがいまして、このたびの改善につきましても、小中学校と関連をいたしまして、多少無理な点を手直しをしたという程度で足りるのじゃないか、そういうふうな考え方でこのたびの改善をお願いをいたしておるような次第でございます。第一次のベビーブームと高校急増というふうな特殊な事情がございまして、かなりの改善ができたのじゃないかというふうに私ども評価をいたしておるような次第でございます。
  137. 上田茂行

    ○上田委員 第一次ベビーブームのときに生まれた子供たちがいま結婚をして、またあと何十年か後には子供たちが高等学校に行くわけでございますけれども、あの当時、講堂の中に幾つか部屋を仕切って、そして寒い中を勉強しなければならないというような状況もございましたし、ひどい学校になりますと、廊下に机を並べて勉強しなければならないというような状況もあったわけでございます。そうしたことのないようにぜひお願いしたいと同時に、現在、高等学校に行かれる方は、中学卒業生のうちの八割七分あるいは八割九分程度が行かれるということを伺っておるわけです。そして五十三年には九五%近くが高等学校に行かれるのではないかというようなことまで予想されておるわけです。  そこで、もし一〇〇%のうちの九五%、九六%までが高等学校に行かれるというようなことを予想されますならば、私はこれに必ずしも賛成であるわけではないのですけれども、高等学校も義務化をして、そして中学校、高等学校を合わせての一貫教育というものがもっとやりやすくなるのだから、義務化をするのはいいのではないかというような意見も一方にあるわけでございますけれども、この点について文部当局は現在どのようにお考えでしょうか。
  138. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御指摘のように、現在中学校を終えて高等学校へ進んでいる方々が九〇%でございます。さらにこれが伸びていくだろう、こう思っております。私は、高等学校へ進みたい方々は全部進ませてあげる、これは大切だ、こう考えるわけでございます。中学校を卒業した方々を何がなんでも全部高等学校へ足を引っぱらなければならない、これは避けたほうがいいのじゃないだろうか。先ほど申し上げましたように、それぞれ能力、適性が異なるわけでございますので、能力、適性に応じた進路を選ばせるべきではないか。高等学校教育は受けたくない、それよりも裁縫専門に腕をみがきたい、あるいは料理専門に能力をみがきたい、各種学校へ進むのだ、いろいろな方があると思うのでございまして、それはそれなりに進ませてあげたらいいのじゃないだろうか、こう考えておるわけでございます。現在も高等学校へ進みたい方々の九八・五、六%の方々は高等学校に進んでおられるわけでございます。そういう配慮は今後もさらにもっと充実したものにしていかなければならない、こう考えるわけでございますけれども、ことさら義務教育にして、ほかのほうに進路を選びたい方々までも、かじを高等学校のほうにとらせなければならないということは、私はむしろ避けたほうがいいのじゃないだろうかな、こう考えておるところでございます。
  139. 上田茂行

    ○上田委員 いまの問題にもう一度触れてみたいと思いますけれども、種々雑多な能力を持った人たちに、適正なコースを選ばせることが重要であるから、高等学校を義務化するのはあまり好ましくないというお話でございますけれども、もっとそのことを突き詰めてみますならば、高等学校を、大臣が言われますような種々雑多な要求あるいはコースを設けられるような高等学校改善していくのが一つの方法ではないかと思われるわけです。特に私立の学校ですと、六年の一貫教育ということで、中学校、高等学校を合わせた教育を行ないながら、非常に能率的にまた効果をあげている高等学校が私立にあるということを伺っておるわけでございますけれども、義務教育の中で中学校あるいは高等学校を取り入れたならば、それに匹敵するような学校制度というものが確立するのではないかとも思われるのですけれども、その点についていかがお考えでしょうか。
  140. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 現在の高等学校のあり方につきましては、いろいろ議論があるようでございます。現状は、御承知のように、普通科の高等学校が六割、職業科の高等学校が四割でございます。大学への進学率が非常に伸びてきましたので、高等学校へ進む人たちの希望だけで言いますと、むしろ普通科の高等学校を選び、普通科の高等学校に入れなかったから職業科の課程の高等学校に入ったというような方もいたりいたしまして、若干コンプレックスを感じたりする。しかしながら逆にまた、入った結果では、職業科の課程の高等学校を選んでよかった、普通科の課程の高等学校へ入ったけれども少しがっかりしているというような面、逆な比率になったりもしているようでございます。  同時にまた、高等学校のあり方につきましては、高校総合制というのですか、あるいは小学区制度というのですか、入学試験がなしに高等学校へ進むようないき方、そしてその高等学校については、普通科も職業科も自由に選べるような高校制度にすべきだという議論もあったりいたします。私は、これは適当でない、こう考えているわけであります。考えているわけでありますが、同時にまた、職業科の課程が最初から非常にこまかいコースに分かれている、これがやはりこまか過ぎるのじゃないだろうか。最初から選ぶけれども、三年過ぎるうちには違った気持ちになったりするじゃないか。同時にまた、技術革新の激しい時代だから、あんまりこまかいところを学び取るよりも、もう少し技術的なものであっても基本的なものをしっかり身につければいいのじゃないだろうか。こういう議論もあったりしまして、先ほど、理科教育審議会や産業教育審議会で中間答申みたいなことで報告を出していただいていることに触れたわけでございます。いまおっしゃいましたような、いろいろな能力、適性に応じた教育が行なえるようにしなければならない、これもそのとおりだと思います。同時にまた、あまりこまかく最初から入り口を分けてしまって、そして将来社会に出るときに役に立たない、適応できなぐなってしまう、これも困るのではないか。だから、いまおっしゃいました点や、私がいま申し上げました点などを踏まえて、高校のあり方もひとつ改革していかなければならない、こういう考え方を持っているところでございます。
  141. 上田茂行

    ○上田委員 次に、この高等学校改善の中で、高等学校における事務職員というものが非常に足りないとか、あるいは仕事が非常に過重になるというような不満を聞いておるわけでございますけれども、その点につきまして、今回の法案によりますと、通信制課程の事務職員の定数を、六百人に一人当たりを四百人に一人当たりに改善をするというふうにうたわれておるわけでございます。この点は非常に私たち評価をしておるわけでございますけれども、これを通信制に限らずにその他の高等学校にも及ぼすというようなことを今回なぜとられなかったのか、あるいはまた次年度からはこうした制度を取り入れてやっていく姿勢でいまいらっしゃるのか、ということについてお伺いをしたいと思います。
  142. 岩間英太郎

    岩間政府委員 事務職員につきまして御指摘がございましたが、いま高等学校の通信制を除く部分につきましては、どんなに小さくても一人の事務職員は配置される。普通の規模でございますと五人から六人という場合もあるわけでございまして、小学校、中学校に比べますと、かなり充足ができているような感じがしておるわけでございます。そこで、このたびの改善におきましては、小、中学校のほうの懸案の事務職員の配置を重点的に考えるということにいたしまして、高等学校改善につきましては、今回は一般的には一回お休みをさせていただくということにしたわけでございます。先生も御承知のとおり、学校先生はやはり教育に専念をしていただく、そのためには事務職員のスタッフをそろえるというふうなことは、これはたいへん大事なことでございまして、そういう方向で今後とも努力をしたいと思いますが、高等学校につきましては、小中学校との関連で、一回ここで休ませていただくということにしたわけでございます。決して今後の改善を怠るという意味ではないことは御了解をいただきたいと思います。
  143. 上田茂行

    ○上田委員 次に、学校栄養職員のことについて少しお伺いをしたいと思います。  現在、特に四十八年の五月におきますと、公立義務教育学校または共同調理場において学校栄養職員の配置数が五千四百五十六人、その中で、学校給食を単独で実施している小中学校学校栄養職員は三千百四十一人、その設置率が一九・八%、そしてまた共同調理場にあっては二千百五十九人、特殊教育学校は百五十六人設置されているということを伺っておるわけです。単独実施校にあってこのような数字を見てまいりますと、必ずしも十分に学校栄養職員が配置されておるというふうには見られないわけでございます。また、学校栄養職員になられる方々は、非常に勤務が広い範囲にわたるということもありますし、その仕事の割りに比較いたしまして、月給を見てみますと、平均六万一千四百円ぐらいというような数字であるわけでございます。学校栄養職という職業が非常に重要なものでもあり、また前々から、予算の編成前のころになりますと、学校栄養職員の方々がよく陳情にお見えになるわけでございますけれども、そうしたことを考えてみますと、月給が安いということもございますし、また十分に設置されておらないというような面もあるわけでございますけれども、このような現状に対しまして、現在文部当局がどのように認識をされておるのかということについてお伺いをしたいと思います。
  144. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 学校給食は、すでに先生承知のように、学校給食法によりまして、児童生徒の心身の健全な発達に資する、かつ国民の食生活の改善に寄与するという目的で、教育課程の中に位置づけられまして、教育の一環として実施されておるわけでございます。その中でも学校栄養職員の方々は、学校給食におきます栄養に関する事項の専門的な担当の職員であり、その他調理あるいは栄養指導、そういう多岐にわたる職務をになっておられます、いわば学校給食の推進の一つのかなめとなる職員であると思っておるわけでございます。  従来、この学校栄養職員の設置を促進する趣旨で、市町村に年次計画をもって補助をいたしてきたわけでございます。八年間にわたりまして国庫補助を市町村にいたしてきたわけでございますが、非常に配置がアンバランスになっております。いろいろお願いをいたしたわけでございますが、やはり市町村の財政その他のことがございまして、非常にアンバランスになっておる。それから指定都市等、一部の市町村ではかなり給与が高いところもございますが、多くの場合は、本来のその方の資格、学歴あるいは経験年数等に照らしまして、むしろ給与が低くなっておるのが現状でございます。いろいろそういう実態を考えまして、また学校栄養職員の重要性というものを考えまして、今回の法案にいろいろな措置をお願いいたしておる次第でございます。
  145. 上田茂行

    ○上田委員 学校栄養職員を県費負担にするということになるわけでございますけれども、まず第一にその理由をお聞かせ願いたいと思います。
  146. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 今回提案されております法案に、学校栄養士の関係が、大きく申し上げまして三つの要点がございます。  一つは、法律上、学校栄養職員の定数の標準をきめまして、計画的な配置の推進をはかるということでございます。それから、ただいま御指摘がございましたように、学校栄養職員を県費負担の教職員といたしまして、かつ、義務教育費国庫負担の対象にする。それから第三は、以上の二つと関連いたしまして、学校給食法上、学校栄養士を明記いたしまして、学校栄養職員の職務及びその資格を明らかにするということでございますが、いずれも学校栄養職員の職務の重要性にかんがみまして、義務教育の水準の維持、向上にぜひとも必要な職員といたしまして、それから、先ほどの御質問にございましたように、その給与あるいはその計画的な適正な配置、あるいは地位の確立といいますか、現在学校栄養職員は法律制度上特別の何らの規定がないわけでございますが、いずれにいたしましても、そういう趣旨で、義務教育水準の維持、向上に必要な職員といたしまして、それらの措置をとらしていただきたい、こういうことでございます。
  147. 上田茂行

    ○上田委員 今回のこの法案が通ったあとには、義務教育学校あるいはまた共同調理場に勤務する学校栄養職員の全員が、この法案が通ったらすぐさま県費負担となるわけでございますか。
  148. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 昭和四十八年度におきまして公立の義務教育学校及び共同調理場に現実に置かれております学校栄養職員が五千四百五十六人でございます。それに対しまして、四十八年度市町村に国庫補助の対象といたしておりました人員が四千六十四人でございます。今度の標準定数法によりまして、五カ年後にはこの標準定数が六千六百人になるわけでございますが、四十九年度はそれが四千五百七十七人となっております。そういう関係もございまして、現実におられます栄養職員のうち大半は切りかえられるわけでございますが、一部残りました方は、年次計画によりまして逐次切りかえてまいりまして、五十一年度には大体切りかえられる、五十三年度にはほとんどが切りかえられるということになるわけでございます。
  149. 上田茂行

    ○上田委員 学校栄養職員が非常に興味を持っていらっしゃるのは、もう一つ給与の問題でございますけれども、県費負担の職員になることによって、いままでより給料が不利になるような場合も一部あるではないかというようなことも心配している向きがあるわけでございますけれども、この点につきまして、どのように処理なさるおつもりでございますか。
  150. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 先ほどもちょっと触れましたが、多くの場合は、県費負担教職員になるに伴いまして給与が上がるほうが多いわけでございますが、指定都市の一部その他におきまして一般的に市町村の職員の給与がかなり高くなっておる場合がございます。県費負担になりました場合に、県の職員の中に同じく栄養士の方がおられるわけでございますが、普通のそういう切りかえの場合は県の職員としての栄養士の給与との均衡ということを非常に考えるわけでございますが、今回の切りかえの目的、趣旨に照らしまして、給与が下がるという場合があるということは非常にうまくないということで、かねがね自治省と協議をいたしまして、自治省のほうにおかれましても、今回の学校栄養職員の県費負担切りかえの趣旨、目的に照らしまして、普通の場合はあまり自治省としてはやりたくないということでございますが、今回の場合は特に現給保障をするという考え方の協議が大体ととのってまいりましたので、切りかえる場合は原則として再計算方式によるわけでございますが、その場合も現給保障をするというたてまえで指導をいたしてまいりたいと思っております。
  151. 上田茂行

    ○上田委員 現在、国庫負担の対象となっている栄養職員の方もいらっしゃるわけなんですけれども、今回の法律が通りますと、まずまっ先に国庫負担の対象になっている栄養士の方々が先に自動的に県費負担の職員になって、そのあと順次先ほど局長が言われましたような方法で、五十三年度をめどに順次そのほかの方々もいわゆる市町村の負担による栄養職員の方々もやっていかれるということですか。それともそういうことを度外視して、現在国庫負担の方々も市町村にいらっしゃる方々も含めて、それは文部省側の判断によって、その範囲あるいは資格というものを認定されていこうとされておるわけですか。
  152. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 今回提出されております法律案の中に、学校栄養士、栄養職員の方の資格が書いてございますが、これは「栄養士の免許を有する者で学校給食の実施に必要な知識又は経験を有するもの」ということになっておりますが、一方、当分の間、県費負担職員にする場合の学校栄養職員につきましては、そういう人たちであって「政令で定める者」ということになっております。ただいまその政令につきましては、一般の栄養士の方とそれから学校栄養士という点に着目をいたしまして、児童生徒の心身の発育とかあるいはあの年齢段階の栄養とか、そういうことにつきましての知識なり経験を持っている人というふうに考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、今回の場合はそうむずかしい免許資格を要請しているわけではございませんので、ただいま先生御指摘のように、従来国庫補助の対象になっていたといいますか、あるいはいなかったというのは、必ずしも栄養士の方々個人には、どの人が対象でどの人が対象でないということはわかっておらないわけでございますが、標準定数の範囲内におきまして従来おられる方を優先的に切りかえていくという基本的な方針にのっとりまして、あとは県教委におまかせをいたす、基本的にはそういう方針のもとで円滑な切りかえが行なわれるような指導、助言をいたしていきたい、そう考えております。
  153. 上田茂行

    ○上田委員 今後そのような措置をとりながら学校栄養士の問題に取りかかっていかれるわけでございますけれども、今後五カ年間の計画というものがいまございますならば、発表願えればありがたいと思います。
  154. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 学校栄養職員の配置の推進につきましては、当初、いまから八年前に第一次七年計画というのを大蔵省と協議して策定いたしまして、単独校の場合は完全給食を受けております児童生徒五千人に一人、それから共同調理場の場合は一人ということで、その計画どおり年次計画で進めてまいりました。それが昭和四十七年度に完成いたしましたので、昭和四十八年度から、単独校の場合は児童生徒二千五百人に一人、共同調理場は一人という第二次七年計画を策定いたしたわけでございますが、今回の法案提出にあたりまして、単独校の場合は七年計画、すでに一年過ぎておりますから本年度からは六年計画になりますが、それを今度は五年計画に一年縮めまして、単独校の場合は二千五百人に一人、それから共同調理場は、従来補助金の場合は規模にかかわらず一人でございましたが、今度の標準定数では対象の児童生徒五千人以上の場合は二人ということに改善いたしております。それから、従来盲学校、ろう学校、養護学校につきましては特別国庫補助をいたしておりませんでしたが、これを標準定数に入れまして国庫負担の対象にするという改善をはかっております。  この五カ年間で数字的に申し上げますと、昨年度補助の対象にいたしておりましたのが四千六十四人でございましたが、今度の標準法の改正によります計画では、四十九年度四千五百七十七人、五カ年後の五十三年度には六千六百二十二人という計画になっておるわけでございます。
  155. 上田茂行

    ○上田委員 以上、幾つかの点に触れて質疑をさせていただきましたけれども、いま新しい非常な教育に対する要請があり、また一部で旧態依然とした問題もあるわけでございますけれども、個々の生徒の想像力を伸ばし、また個性を生かしながら教育をやっていかなくてはならないという新しい要請にこたえるために、今回いろんな点で定数法の改善がなされておるわけでございますけれども、やはり最大の問題点と申しますのは、予算の上からあるいはまたこれから第二次ベビーブームの関係上非常にむずかしいということを先ほども伺いましたけれども、四十五人の問題を順次引き下げて、もっと創造的な教育をやっていかれるように文部当局にお願いを申し上げまして、質疑を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  156. 稻葉修

    稻葉委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十九分散会