○
伊原参考人 ただいま
日本銀行の
総裁並びに
伊部副
会長から一般的な
お話がございましたので、私は、
全国の
地方銀行六十三行ございますが、その
地方銀行の
窓口から見まして、あるいは
地方銀行の頭取さんたちが皮膚に感じておるというふうな点を
中心にいたしまして、申し上げさせていただきたいと思います。
第一点は、
石油の危機によって起こりましたいわゆる
狂乱物価というふうなものと
金融政策との
効果の判定でございます。全体的に
日本銀行総裁から
お話がございましたように、私
どもは、
窓口から見ておりまして結論から申しますと、いわゆる
狂乱物価の問題につきましては、
金融財政面からのいわゆる総
需要の
抑制策が
効果をあげまして、これが
鎮静したというふうに判断をいたしております。
個々の
現象につきまして申し上げれば、非常に各地区にわたりいろいろな
現象がございます。しかし、一般的に
需要が非常に落ち込みまして、
消費者の
方々の態度も、地方の
百貨店その他におきましても、初めは非常な
ぜいたく品というふうなものが売れた、昨年の春ごろ絵が売れたとか貴金属が売れたというふうなことからだんだんに変わりまして、一時買いだめの風潮もございましたけれ
ども、最近では非常に
落ちつきを見せておるというふうなのが
現状でございます。
企業のほうにつきましても、
自動車産業というふうな非常にすそ野の広い
産業が不振でございますので、そういう点ではある
程度心配な感じもいたしますが、
落ちつきを見せてきておる。それから、一時は値上がりを待ちますために買いだめをしておいたというふうな在庫がふえておりましたのが、そういうものではなくて、逆に売れなくなったための在庫、たとえば繊維製品等につきましては、四国でございますとか北陸でございますとか、そういうふうなところに違った意味の在庫の増加というふうなものが出てまいるというふうなことでございます。また、観光客等も非常に平日は減ってきておる。あれこれいろいろな
現象をとってみましても、一時のような仮
需要とか
インフレムードはすっかり
鎮静をいたしまして、市場はむしろ売り手市場から買い手市場に変化をしておるというふうに判断をいたしております。
それの一つの
指標でございますが、いわゆる
企業間信用が、過去の歴史から申しますと、
引き締めのときはいつでも非常にふえたのでございますが、今回の
引き締めの場合はなかなかある意味ではあまりふえなかった。最近におきましても、大
企業が非常に
資金繰りが苦しいということで、第一次の下請等に
企業間信用を伸ばしていく。ところが、第一次の下請さんのほうは、第二次の下請さんのほうが支払い条件をよくしなければ、現金とかそういうものを持ってこなければ売らないというふうなことで、間に立って非常に困っておるという
状況が最近まであったのでありますが、それがまた
企業間信用の膨張が第二次の下請のほうにまで及んできた。これはいいことではございませんけれ
ども、世の中が売り手より買い手のほうが強くなってきたということの一つの証拠であるように思います。
そういうわけで、例は悪いと思いますけれ
ども、
狂乱物価につきましていつ火がつくかもしれないというふうな異常乾燥の
状況はもう終結いたしまして、むしろ空気は非常にしめっておると申しますか、何かあったらまたぱっと火がつくであろうというふうな
状況はなくなったというふうに判断をいたしております。しかし、他面、いま
伊部さんがおっしゃいましたように、
倒産が各地区に非常にふえてきております。北は北海道から南のほうに至るまで、
倒産の件数並びに金額等も非常にふえてきておりまして、私
ども地元の
地方銀行といたしましては、
中小企業の
方々がことに連鎖
倒産というふうなことがございませんように万般の配意をいたしております。現段階におきましては、幸いなことに、それほど社会的な問題が起こるほどの事態には相なっておりませんけれ
ども、今後きめのこまかい
金融の
引き締めの
政策が実行せられなければならないというふうに考えております。
地方銀行といたしましても、自分自身が地元の
銀行でございますから、地元の
中小企業さんに対する
融資につきましては非常な
配慮をいたしておりますし、それから県でございますとか市でございますとか、地方団体がいわゆる制度
融資というふうなものを活用いたしまして、これまた万一の場合に備える方策をとり、また
地方銀行といたしましても、総額一千億円の特別
融資のワクを用意する。また商工
会議所等でも、小規模の事業の方にお金をお貸しするというふうなことで、また
政府機関もそうでございますが、あらゆる処置をいたしまして、
中小企業の方がことに連鎖
倒産にならないようにという
配慮はいたしておる次第でございます。
しかし、いま申し上げましたように、第一段の総
需要抑制策の目的といたしました
狂乱物価を
鎮静するということの
効果につきましては、各地域の
現象から見まして、一応そういうことが達せられたというふうに私
どもは判断をいたします。したがいまして、現在の段階では第二の段階と申しますか、
総裁がいま言われましたように、おもしをかけると申しますか、総
需要のほうから来る
物価の問題につきましては一応の成功をおさめたというふうに考えるわけでございますけれ
ども、これからは
石油の原価の高騰というふうなことから
価格を変えていくということが必要な事態になり、あるいは
電力の値段を上げていくというふうな事態になっておるわけでございますが、これを
金融政策からどういうふうに円滑にやっていくかということが大事な問題だと思います。
私
どもは、新しい
価格への移行と申しますか、そういうものはできるだけ自由市場の原則で均衡を得るのがよいというふうに考えております。ほかの国々も、
石油の値上がりその他につきましては逐次
価格に織り込んでおるわけでありますから、正しい円の価値と申しますか、国際通貨における円の価値を見出しますためにも、やはり自然の市場原理で
価格が落ちつくところに落ちつくということが均衡
状態を長持ちさせるゆえんであるというふうに考えるわけでございます。さしあたりの問題といたしまして、この狂乱の
物価からそういうものに移行いたしますにつきましての必要なる統制ということは、
国民生活の点から配意をしなければならないとは思います。したがいまして、自由市場原理によりまして
価格が逐次新しい
価格体系に移行をするというふうなことを可能ならしめる背景といたしましては、私
どもはやはり総
需要の
抑制といいますか、
金融の
引き締めというふうなことを維持していくことが大局的には必要ではないかというのが
地方銀行のみんなの
意見でございます。もう再び仮
需要が起こって燃え上がるようなことは万々ないとは思いますけれ
ども、
価格を改定いたしてまいります場合におきましてあるいは心理的にまたああいうことが起こるというふうなことがあってはならないという意味で、警戒的と申しますか予防的と申しますか、そういう意味では
金融引き締めを続けていくべきであるというふうに、私
どもも
総裁と同じ
意見でございます。
それから第三の問題としては、
総裁も言われました
国際収支あるいは
為替相場の問題でございます。これは地方の
中小企業その他にもいろんな
影響を及ぼす
政策でございますけれ
ども、今後
為替相場がどうなるかとか
国際収支がどうなるかというふうなものは非常に不透明な点が多いと思います。しかし
国内の
引き締めもありまして、
中小企業さんでも輸出のほうに相当力を入れ始めておるというふうな事情がありますので、また輸入品の値も上がりますが、
価格面で輸入品の値段も上がっておるというふうなことから考えますと、貿易の収支は、もちろん
石油の問題を含めて考えますと簡単ではございませんけれ
ども、なおそのほかに
資本の収支ということも総合して考えてまいりますれば、日本の
国際収支は均衡していくのではないかというふうに考えまするので、できましたら、
物価の
政策とのからみ合いでできるだけ円の
為替相場は強く維持をしていただくほうがいいんではないかというふうに考えます。
為替相場が少し強目にあるほうが、輸入
物価の
上昇を相殺いたすことができますし、また
企業の合理化
努力というふうなことにもつながるように思うわけでございます。現実に
中小企業さんで
為替相場が強過ぎるために輸出が非常に困難だというふうな事態はいまのところさしあたり見当たらないような気がいたしますので、むしろ
国民生活への
物価抑制という見地から
為替相場を強く維持せられるような方角を私
どもは望んでおるわけでございます。
それから第四に、これはお尋ねがあると思いますが、
物価と
金融政策と申しますと、
物価との関連における金利の問題でございます。いずれお尋ねがございましたら申し上げたいと思いますが、私
どもといたしましても、預金者にこういう際にできるだけお報いするということにいろいろくふうをこらしておるわけではございますけれ
ども、やはりこの段階になりますと、預金の金利の問題は
貸し出しの金利の問題を考えなけれ角いけませんし、
貸し出しの金利の問題となりますと、国債あるいは地方債等の金利の問題を一緒に考えるというふうなことになり、郵便貯金との
関係、あれこれいろんな問題が出てまいりまして、一部分だけをやってまいるということはなかなか困難ではないかというふうな
所見でございます。
地方銀行といたしましても、できるだけ地域の預金者の方にお報いをしたいという趣旨でいろいろとくふうをめぐらしておりますけれ
ども、現段階におきましてはすべてのいろんなことを考えた上、処置をすることがいいのではないかということでございます。
それから第五に、
地方銀行といたしましていろいろ
現状におきまして苦労しておる点を一つだけお聞き取りを願いたいのでありますが、総
需要の
抑制のための
引き締めということでございますから、各
金融機関とも
融資のワクあるいは
融資でございませんでも、
資金のワクが非常に窮屈でございます。その中におきまして地元の
中小企業さんにどういうふうに奉仕をしていくか、それが県の制度
融資とか市の制度
融資とかというふうなものを含めまして
融資の要望が非常に強いというのが一つでございます。
もう一つは、一番苦心をいたしておりますのは、地方公共団体のことに土地の先行取得の問題でございます。
地方銀行は地方公共団体の指定
金融機関をつとめさせていただいておるわけでございますけれ
ども、開発公社でございますとかいろいろな名前はございますけれ
ども、学校の用地あるいは道路用地というふうなものにつきまして先行取得と申しまして土地を買っておくということがたてまえになってきております。ところが最近では、民間のほうの土地の売買は、土地に対する
融資の
抑制によりましてほとんど
動きがなくなったわけでございますけれ
ども、この広い意味の地方公共団体の公社等の土地の取得につきまして、
金融が非常に大きいということでいろいろ苦慮いたしております。土地の値段が上がることということは
インフレ心理にも非常な
影響がございます。それからいろいろな点で、地方公共団体の方と
お話しいたしますと、行政の責任として土地が適正な値段で先々手に入ること、それから必要な場所、たとえば学校を建てる場合等に、必要なときに必要な場所に適正な値段で入るということが確保せられれば、いまの先行取得というふうなことは事実上そう必要ないのだがという
お話でございまして、それらの点につきましても、どうか御
配慮いただきたいと思います。
また私
ども地方銀行が提唱しておりますように、土地の売買には交付公債というふうなもので流動性の造出を封鎖するというふうなことも一つの案ではないかということでいろいろと提唱をいたしておる次第でございます。どうかこの点もあわせて御高配をいただきたいと思います。
私
ども地方銀行といたしましては、各地域で一生懸命でいたしておるつもりでございますが、なかなか至らない点もございますので、各地で
先生方にいろいろ御指導を賜わっておりますことをこの機会に厚くお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。