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1974-04-03 第72回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月三日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 平林  剛君    理事 加藤 六月君 理事 木部 佳昭君    理事 橋口  隆君 理事 山下 元利君    理事 井岡 大治君 理事 松浦 利尚君    理事 野間 友一君       愛野興一郎君    片岡 清一君       羽生田 進君    三塚  博君       粟山 ひで君    山崎  拓君       山本 幸雄君    吉永 治市君       金子 みつ君    中村  茂君       山中 吾郎君    石田幸四郎君       和田 耕作君  出席政府委員         経済企画政務次         官       竹内 黎一君  委員外出席者         大蔵省銀行局総         務課長     米山 武政君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長) 伊部恭之助君         参  考  人         (全国地方銀行         協会会長)   伊原  隆君         参  考  人         (全国相互銀行         協会理事)   増田 庫造君     ————————————— 四月二日  高物価物不足から国民生活を守るための緊急  対策に関する請願金子満広紹介)(第三二  五四号)  同(神崎敏雄紹介)(第三三一二号)  同(中島武敏紹介)(第三三一三号)  同(東中光雄紹介)(第三三一四号)  同(正森成二君紹介)(第三三一五号)  同(三谷秀治紹介)(第三三一六号)  同(村上弘紹介)(第三三一七号)  国民生活緊急安定対策に関する請願外一件  (近江巳記夫紹介)(第三二五五号)  同(村上弘紹介)(第三三五一号)  同(松本善明紹介)(第三四六四号)  中小業者経営安定のための物価抑制等に関す  る請願外三件(近江巳記夫紹介)(第三二五  六号)  同外一件(瀬野栄次郎紹介)(第三二五七  号)  同(伏木和雄紹介)(第三二五八号)  同(荒木宏紹介)(第三三四八号)  同(瀬崎博義紹介)(第三三四九号)  同(野間友一紹介)(第三三五〇号)  同外一件(有島重武君紹介)(第三四六六号)  同(浦井洋紹介)(第三四六七号)  同(神崎敏雄紹介)(第三四六八号)  同外五件(小濱新次紹介)(第三四六九号)  同(津金佑近君紹介)(第三四七〇号)  同(庄司幸助紹介)(第三四七一号)  同外二件(瀬野栄次郎紹介)(第三四七二  号)  同外三件(林孝矩紹介)(第三四七三号)  同(平田藤吉紹介)(第三四七四号)  同(東中光雄紹介)(第三四七五号)  同(松本善明紹介)(第三四七六号)  同(増本一彦紹介)(第三四七七号)  同(伏木和雄紹介)(第三四七八号)  同(三浦久紹介)(第三四七九号)  同(三谷秀治紹介)(第三四八〇号)  同(村上弘紹介)(第三四八一号)  物価値上げ反対に関する請願瀬野栄次郎君紹  介)(第三二五九号)  生活必需品の投機・買占めに対する規制強化等  に関する請願東中光雄紹介)(第三三〇九  号)  同(平田藤吉紹介)(第三三一〇号)  同(正森成二君紹介)(第三三一一号)  建築資材価格引下げ等に関する請願浦井洋  君外一名紹介)(第三三一八号)  同(林孝矩紹介)(第三四六五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 平林剛

    平林委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として、日本銀行総裁佐々木直君、全国銀行協会連合会会長伊部恭之助君、全国地方銀行協会会長伊原隆君、全国相互銀行協会理事増田庫造君、以上の方々の御出席をいただいております。  この際、一言あいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  御承知のとおり、物価問題は国民生活にとってきわめて重要な問題であります。本委員会におきましても、物価安定対策について鋭意努力いたしておるところでございますが、本日は各位から御意見を承り、調査参考にいたしたいと存ずる次第であります。何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  なお、議事の進め方といたしましては、最初佐々木参考人伊部参考人伊原参考人増田参考人の順序でお一人各十五分程度意見をお述べいただき、その後委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず最初佐々木参考人にお願いいたします。
  3. 佐々木直

    佐々木参考人 それでは、当面の経済情勢につきましての所見と、この間に処して日本銀行金融政策を進めております運営方針について御報告申し上げます。  最近の経済情勢を見ますと、昨年初来の金融引き締め、特に昨年末の公定歩合大幅引き上げ並びに窓口指導強化などに伴いまして、金融面では、このところ引き締まりの度合いが一段と強まっておるように思われます。  企業手元流動性水準は、昨年末以降、さらにことしに入りまして一段と低下し、最近では全体といたしまして、過去の最も金融が引き締まっておりました時期の水準にまで落ちてきております。マネーサプライト、すなわち現金通貨並びに預金通貨伸びも、こうした企業金融の引き締まりを反映いたしまして、著しく伸び率が鈍化いたしております。また日本銀行券も、平均残高で見ました前年比の伸びが昨年の初まりから秋ごろまでにかけましては、二六、七%の増加率で推移しておりましたが、このところ、去年の十一月ぐらいからはっきり増勢が鈍化いたしまして、先月三月は、月中の平均残高伸び率が二〇%にまで低下するに至っておるのであります。  実体経済面では、これまでは引き締め効果浸透を示すような動きがなかなか出てきませんでしたが、本年に入ってからは各種指標がそろって鈍化を示しておりまして、ようやく金融引き締め実体面に及んできたことが明らかになってきたように思われます。  たとえば、石油ショック直後に広範囲にわたって見られました各種商品に対する仮需要は、このところ全く影をひそめ、ものによっては需要減退に伴って荷余り感も出てきております。商品市況は、反落ないし弱含みを示すものがふえてきておるのであります。  機械の受注建設受注は、このところ連続して減少を示しておりまして、最近の企業設備投資鎮静は、非常にはっきりしてきたものと思われます。また、自動車耐久消費財その他値がさの品物の売れ行きも悪くなっているようであります。  労働需給の面でも、求人倍率の低下などの形で、総需要抑制効果があらわれてきているように思われます。  このような需給面動きを反映いたしまして、一ころのような異常な物価の高騰はあらたまってきておりまして、卸売り物価は二月中旬に前旬比持ち合いとなって以後、二月下旬は〇・三、三月上旬は〇・四、同じく三月の中旬は持ち合いというようなことで、ここ一カ月ほどはかなり落ちついた動きになってまいっております。  消費者物価につきましては、今後もこれまでの卸売り物価上昇影響が尾を引く上に、春闘による賃上げなどがサービス価格などに直接影響するということもありまして、まだ楽観はできないと思われますが、総需要抑制によりまして卸売り物価が落ちついていけば、いずれはよい影響が出てくるものと考えております。  私どもといたしましては、以上のように、最近ようやく緒についてまいりました総需要落ちつき傾向需給緩和傾向を定着させまして、今後は少なくとも国内需給関係の逼迫から物価上昇するというようなことのないよう、最大限の努力を傾けていくことが一番大事なことであるというふうに考えておるのであります。  私のほうでは、四半期ごと短期経済観測というのを各企業からアンケート調査でつくっておりますが、最近のこのアンケート調査によりますと、需給関係はなお過去の引き締め末期に比べましてタイトでありまして、また今後の賃上げ消費にどういう影響を及ぼすかなどを考え合わせますと、まだまだ需給緩和傾向が自律的に進むと見るのは困難でありますので、当分の間、現在の引き締めを続けていく必要があると考えております。  今回の場合は、かりに今後総需要落ちつきが定着しましたとしても、海外の要因石油電力価格等上昇影響など、需給関係以外の物価上昇要因、これも相当ございます。そういうことで総需要抑制策によってこういった要因に対処してまいりますことは困難でありますけれども引き締めが心理的に影響を持っておりますことを考えますと、このおもしをはずした場合、やむを得ないコスト上昇に口をかりた安易な値上げを許すことになりかねません。こういった観点からも金融政策運営には十分注意をしていく必要があると思われます。  こういう点を考えますと、いま申し上げましたように最近各種指標が比較的落ちついた動きを示してきたということから直ちに引き締めの手綱をゆるめるということは適当ではない、こう考えておるのであります。昨年の初め以来の引き締めはすでにかなり長期化しておりますが、以上のような情勢から見まして、私どもといたしましてはあくまでも物価安定を第一の課題といたしまして、当分現在の引き締め基調を堅持していくことが大事であると考えておる次第でございます。今後ともこうした引き締めを進めていきます上で財政面からの協力はぜひとも必要でありますが、この点、政府においても四十九年度予算緊縮方針で編成されたほかに、四十八年度の財政支出についてはすでに執行繰り延べ方針を進められ、四十九年度上期についても引き続き公共事業等の契約の抑制方向で検討されていることは、われわれとしても大いに意を強うしておるところであります。  以上のような考え方に立ちまして今後引き締めを続けていくわけでありますが、その場合、個々企業業種に対する引き締め効果の及び方はどうしてもある程度跛行的になってまいりますので、これにどういうふうに対処するかということは重要な政策課題であります。これまでの引き締めの過程で、総体としての流動性過剰の状態はおおむね解消したと思われますけれども、そうした中で、相対的に資金繰りの逼迫している企業と、まだ余裕を残しておる企業とが見られることは否定できません。もちろん現在の経済体制のもとでは、単に一定の企業手持ち資金が多いからといって、その企業資金繰りまで立ち入って余裕資金を直接吸収するということは困難でありますけれども、私どもといたしましてもできる限りそのような跛行性の是正につとめておりまして、大蔵省とともに金融機関に対し選別融資方針を強く指導しているのもそうした目的によるものであります。具体的には金融機関融資に際し、資金的に余裕のある企業に対しては貸し増し抑制することはもちろんでありますが、極力貸し出しを回収させます反面、電力のように現在特殊な問題を持っておる公共的な性格のものにつきましては緊急資金供給を行なわなければなりません。こういうものに対しまして、いまのようにして他の面で節約した資金を振り向けていく、こういうふうに指導しておるのでございまして、今後とも強い引き締めのもとでこのような選別融資方針を続けていけば、次第に資金の偏在は是正されていくものと考えております。またこうした強い引き締めの中で中小企業などが不当に引き締めのしわ寄せを受けるようなことがあってはなりませんので、私どもとしてはそういうことのないよう、これまで以上にきめこまかく運んでまいる所存であります。  最後国際収支問題でありますが、昨年春以来、長期資本大幅流出超中心にわが国の国際収支がかなりの赤字を続けていることは御承知のとおりであります。これに加えまして、最近は原油代金大幅増加ということもありまして、貿易収支は一月、二月と赤字に転化いたしております。今後引き締め浸透に伴いまして国内物資需給が全体として緩和してまいりますと、ある程度輸出が増加する可能性もございます。すでにその徴候も見られるのでありますが、他方輸入面では石油価格大幅引き上げ影響が大きく出てまいりますので、当面貿易収支がどのような姿になるかは、なお見通しが立てにくい状況でございます。ただ昨年の赤字が、ただいま申し上げましたように長期資本流出超過中心になっておりますので、当面は資本収支大幅赤字をなるべく減らしていくということが対策中心になると考えておりまして、国際収支が大幅な黒字を続けた時期にとられました資本流入抑制流出の促進のための措置で現在の国際収支状況に照らして適当でないものは逐次手直しを行なっております。こうした手直し効果は実際にかなりあがってきておりまして、今後ともそうした方向を進めていきたいと考えております。ただ、こうした措置を進めます場合、それが国内金融引き締めしり抜け要因にならないよう、資本流入については、金額、対象業種企業等をきめこまかく調整する必要があり、すでにそうした方針で進めている次第でございます。  以上のような状況のもとで、一ころかなりドル不足基調にありました東京の為替市場は最近ではおおむね需給がバランスしている状態でございまして、為替相場も一時一ドル三百円程度でありましたものが、最近は二百七十円から二百八十円という水準にまで戻ってきております。今後も資本収支の面での改善が続けば、為替市場はまず安定した推移をたどるのではないかと見ております。  以上、最近の国内経済情勢と当面の政策運営について所見を申し述べましたが、私どもといたしましては、繰り返すようでございますが、金融引き締めが総需要落ちつきを定着させ、物価の安定をもたらすよう、今後とも格段の努力を尽くしてまいる所存でございます。  以上で報告を終わります。
  4. 平林剛

    平林委員長 次に、伊部参考人にお願いいたします。
  5. 伊部恭之助

    伊部参考人 本日は、全国銀行協会連合会会長が参議院の予算委員会出席をいたしておりますので、副会長の私がかわりまして金融政策物価問題につきましてわれわれ銀行界立場から一言述べさしていただきます。  今日、物価抑制日本経済の最大の課題となっておることは申すまでもございませんが、銀行界にとりましても今日のインフレは非常にゆゆしい問題でございます。と申しますのは、インフレ国民経済に非常に大きな損失をもたらすばかりでございませんで、特に信用を基礎といたしております銀行にとりましては、インフレによる通貨価値の動揺は経営基盤そのものをゆるがすおそれがあるからでございます。したがいましてわれわれ銀行界といたしましては常日ごろから物価の安定につきましては国の御方針にできるだけ御協力を惜しまない姿勢でまいったわけでございますが、今回の非常に強い引き締め政策につきましても、目下同様の御協力姿勢で臨んでおる次第でございます。  現在とられております金融引き締め政策は昨年の年初から始められたものでございまして、すでに皆さま御存じのとおり、公定歩合は昨年一カ年中に五回も引き上げられました。現在の九%と申します水準は、明治三十八年以来実に六十八年ぶりの非常に高い水準でございます。また預金準備率も昨年初めから今年初めにかけまして五回引き上げられました。それによりまして、一兆三千億円近くの資金金融市場から吸収されたものと見られておるのでございます。さらに、いまもお話にございましたように、日本銀行窓口規制によりまして、たとえば都市銀行貸し出し増加額は、本年の四月−六月期まで、実に五期連続前年同期比マイナスになっております。かかるきびしい金融引き締め政策によりまして、いずれの銀行も、取引先顧客借り入れ申し込みのおそらく二割ないし三割ぐらいしか貸し出し要求に応じられない現況にあると存じておりますが、この際は、政策協力することが何よりも大切だというふうに考えまして、取引先顧客各位には非常な無理を申し上げておるのが現状でございます。  その結果、ここへまいりまして、実体経済鎮静化のきざしを見せてまいりました。特に今回は、個人消費需要からだんだんと落ちてきておりまするのが非常に特徴的でございまして、たとえば自動車でございますとか電機製品というような商品の売り上げ不振や、百貨店売り上げ伸び悩みに見られまするように、高額の商品奢侈品ぜいたく品といったようなものが中心になりまして、消費が減退しております。  一方、企業投資活動はどうかと申しますると、まず設備投資は、新規の着工工事規制がございまするし、建築規制というようなものもございまするから、こういった行政的指導による面もございまするが、やはり基本的には、金繰り面から新しい投資を控えざるを得なくなっておるという企業がふえておるのでございます。また、在庫投資も、全面的に金が苦しいために投げ売りをするというような現象にはまだ立ち至ってはおりませんが、少なくとも先高見込みの仮需要というようなものはほとんどなくなっておるのではないかという、注目すべき現象となっております。このように、総需要抑制によりまする経済活動鎮静化という点におきましては、金融引き締め効果ははっきりと出てきておると申せるかと存じます。  しかし、究極の問題でございまする物価抑制観点から見ますると、まだ問題は解決されてはおらないのではなかろうかと思います。確かに、卸売り物価は二月中旬以降ほぼ横ばいを続けておりますし、消費者物価も、三月には騰勢が若干衰えが見えるのではなかろうかと存じます。しかし、今後は、すでに実施済み石油製品の第二次価格引き上げの今後の余波、あるいは今後の大幅賃上げの帰趨、予想される電力料金引き上げ等、いろいろとコストアップ要因がメジロ押しに並んでおるわけでございます。これをうまく乗り切りませんと、実体経済面で景気が悪くなる一方、おさまりかかりました物価上昇が再発いたしまして、いわゆる不況下の高物価現象といったような状況に入ってまいりますきざしが出はしないかと存ずるのでございます。  このような非常にむずかしい事態をいかなる方策で乗り切るかというような大きな政策は、国家の重要な政策として先生方にお考えいただきたいことでございまするが、この点につきましては、われわれ銀行界も非常な関心を持っておるわけでございます。  われわれといたしまして、その際まずお考えいただきたい点は、これからあらわれてくる物価上昇要因は、需要供給関係からくるものと申すよりは、どちらかと申しますと、避けられないコストアップによりましてもたらされるものであるということでございます。もちろん、このようなコストアップ要因が、先ほどもお話に出ましたように、必要以上の物価上昇となってあらわれないようにするためには、需給面からも価格を上げにくい状況をつくっておくべきであるということは言うまでもないと存じます。その意味では、実体経済にはすでに引き締め効果はあらわれておりまして、銀行窓口から見ましても、苦しさを訴えるお客の数がだんだんとふえておるのでございますが、私どもは、お客さまの現状企業の実態に対してきめこまかい配慮を加えておりながらも、当面は現在の政策に沿う運営をいたすのが私どものつとめだというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、前に申し上げましたようなもろもろのコストアップ要因を全部総需要抑制策で吸収しようということに相なりますると、場合によっては失業、倒産というような非常に好ましくない問題が生ずることも考えられるのでございまして、いずれにいたしましても、今日の物価上昇要因は非常に複雑多岐にわたっておりまするので、金融政策によって達成し得る範囲、財政政策によって解決すべき分野企業のビヘービア、国民消費のパターンや賃上げの節度といったような点にまたねばならない分野、あるいはまたさらに新しい価格体系のもとで省エネルギー、省資源型産業構造へやはりだんだんと転換していかなければならぬ業界の問題等日本経済の各セクターがそれぞれの役割りを果たさないと、これからの物価安定はむずかしいのではなかろうかと存じております。  そこで、最後金融政策に立ち戻りまして一言先生方に申し上げたいことは、すでき引き締めの圧力が相当強くきいておりますので、この点に非常にきめこまかい御配慮をお願いしたいということでございます。  このうち、特に問題になりまするのは、企業倒産でございまして、本年に入りまして倒産件数は前年同月の二倍近くに上がっているばかりでございませず、負債総額が四十億ないし五十億といったかなりスケールの大きなものが出始めておるのでございます。ただし、現在のところ、こういった倒産先は、自分の資力を無視して業容の拡大に走りましたり、あるいは不動産やレジャーブームにつられましてこれらの分野に安易に乗り出したり、もともと経営自体に何らかの問題がございましたところが大部分でございまして、銀行から見ましても、滞貨資金とか赤字資金等うしろ向き資金需要がまだ一般化するといった状況になっておるわけではございません。しかし、今後四−六月にかけまして金融引き締め効果が本格的に浸透してまいりますると、いわゆる黒字倒産的な現象があるいは出はせぬかというおそれもないではないのでございます。  もちろん、私ども引き締めのしわを受けやすい中小企業に対しましては、その置かれております立場を考慮いたしまして、すでに全銀協ベースでも、中小企業特別救済融資制度を発足させましたし、また、個々銀行といたしましても、十分にこういう点に配慮を加えておるつもりでございまするが、あまり金融引き締めが長引きますと、やはり倒産の多発は避けられないばかりでなく、今後の経済の発展に好ましくない姿が出てくるということも考えられまするので、先ほど申し述べましたような観点から、金融政策効果と限界ということもひとつ御認識いただきまして、よろしくお願い申し上げたいと存ずるのでございます。  どうもありがとうございました。
  6. 平林剛

    平林委員長 次に、伊原参考人にお願いいたします。
  7. 伊原隆

    伊原参考人 ただいま日本銀行総裁並びに伊部会長から一般的なお話がございましたので、私は、全国地方銀行六十三行ございますが、その地方銀行窓口から見まして、あるいは地方銀行の頭取さんたちが皮膚に感じておるというふうな点を中心にいたしまして、申し上げさせていただきたいと思います。  第一点は、石油の危機によって起こりましたいわゆる狂乱物価というふうなものと金融政策との効果の判定でございます。全体的に日本銀行総裁からお話がございましたように、私どもは、窓口から見ておりまして結論から申しますと、いわゆる狂乱物価の問題につきましては、金融財政面からのいわゆる総需要抑制策効果をあげまして、これが鎮静したというふうに判断をいたしております。  個々現象につきまして申し上げれば、非常に各地区にわたりいろいろな現象がございます。しかし、一般的に需要が非常に落ち込みまして、消費者方々の態度も、地方の百貨店その他におきましても、初めは非常なぜいたく品というふうなものが売れた、昨年の春ごろ絵が売れたとか貴金属が売れたというふうなことからだんだんに変わりまして、一時買いだめの風潮もございましたけれども、最近では非常に落ちつきを見せておるというふうなのが現状でございます。企業のほうにつきましても、自動車産業というふうな非常にすそ野の広い産業が不振でございますので、そういう点ではある程度心配な感じもいたしますが、落ちつきを見せてきておる。それから、一時は値上がりを待ちますために買いだめをしておいたというふうな在庫がふえておりましたのが、そういうものではなくて、逆に売れなくなったための在庫、たとえば繊維製品等につきましては、四国でございますとか北陸でございますとか、そういうふうなところに違った意味の在庫の増加というふうなものが出てまいるというふうなことでございます。また、観光客等も非常に平日は減ってきておる。あれこれいろいろな現象をとってみましても、一時のような仮需要とかインフレムードはすっかり鎮静をいたしまして、市場はむしろ売り手市場から買い手市場に変化をしておるというふうに判断をいたしております。  それの一つの指標でございますが、いわゆる企業間信用が、過去の歴史から申しますと、引き締めのときはいつでも非常にふえたのでございますが、今回の引き締めの場合はなかなかある意味ではあまりふえなかった。最近におきましても、大企業が非常に資金繰りが苦しいということで、第一次の下請等に企業間信用を伸ばしていく。ところが、第一次の下請さんのほうは、第二次の下請さんのほうが支払い条件をよくしなければ、現金とかそういうものを持ってこなければ売らないというふうなことで、間に立って非常に困っておるという状況が最近まであったのでありますが、それがまた企業間信用の膨張が第二次の下請のほうにまで及んできた。これはいいことではございませんけれども、世の中が売り手より買い手のほうが強くなってきたということの一つの証拠であるように思います。  そういうわけで、例は悪いと思いますけれども狂乱物価につきましていつ火がつくかもしれないというふうな異常乾燥の状況はもう終結いたしまして、むしろ空気は非常にしめっておると申しますか、何かあったらまたぱっと火がつくであろうというふうな状況はなくなったというふうに判断をいたしております。しかし、他面、いま伊部さんがおっしゃいましたように、倒産が各地区に非常にふえてきております。北は北海道から南のほうに至るまで、倒産の件数並びに金額等も非常にふえてきておりまして、私ども地元の地方銀行といたしましては、中小企業方々がことに連鎖倒産というふうなことがございませんように万般の配意をいたしております。現段階におきましては、幸いなことに、それほど社会的な問題が起こるほどの事態には相なっておりませんけれども、今後きめのこまかい金融引き締め政策が実行せられなければならないというふうに考えております。地方銀行といたしましても、自分自身が地元の銀行でございますから、地元の中小企業さんに対する融資につきましては非常な配慮をいたしておりますし、それから県でございますとか市でございますとか、地方団体がいわゆる制度融資というふうなものを活用いたしまして、これまた万一の場合に備える方策をとり、また地方銀行といたしましても、総額一千億円の特別融資のワクを用意する。また商工会議所等でも、小規模の事業の方にお金をお貸しするというふうなことで、また政府機関もそうでございますが、あらゆる処置をいたしまして、中小企業の方がことに連鎖倒産にならないようにという配慮はいたしておる次第でございます。  しかし、いま申し上げましたように、第一段の総需要抑制策の目的といたしました狂乱物価鎮静するということの効果につきましては、各地域の現象から見まして、一応そういうことが達せられたというふうに私どもは判断をいたします。したがいまして、現在の段階では第二の段階と申しますか、総裁がいま言われましたように、おもしをかけると申しますか、総需要のほうから来る物価の問題につきましては一応の成功をおさめたというふうに考えるわけでございますけれども、これからは石油の原価の高騰というふうなことから価格を変えていくということが必要な事態になり、あるいは電力の値段を上げていくというふうな事態になっておるわけでございますが、これを金融政策からどういうふうに円滑にやっていくかということが大事な問題だと思います。  私どもは、新しい価格への移行と申しますか、そういうものはできるだけ自由市場の原則で均衡を得るのがよいというふうに考えております。ほかの国々も、石油の値上がりその他につきましては逐次価格に織り込んでおるわけでありますから、正しい円の価値と申しますか、国際通貨における円の価値を見出しますためにも、やはり自然の市場原理で価格が落ちつくところに落ちつくということが均衡状態を長持ちさせるゆえんであるというふうに考えるわけでございます。さしあたりの問題といたしまして、この狂乱の物価からそういうものに移行いたしますにつきましての必要なる統制ということは、国民生活の点から配意をしなければならないとは思います。したがいまして、自由市場原理によりまして価格が逐次新しい価格体系に移行をするというふうなことを可能ならしめる背景といたしましては、私どもはやはり総需要抑制といいますか、金融引き締めというふうなことを維持していくことが大局的には必要ではないかというのが地方銀行のみんなの意見でございます。もう再び仮需要が起こって燃え上がるようなことは万々ないとは思いますけれども価格を改定いたしてまいります場合におきましてあるいは心理的にまたああいうことが起こるというふうなことがあってはならないという意味で、警戒的と申しますか予防的と申しますか、そういう意味では金融引き締めを続けていくべきであるというふうに、私ども総裁と同じ意見でございます。  それから第三の問題としては、総裁も言われました国際収支あるいは為替相場の問題でございます。これは地方の中小企業その他にもいろんな影響を及ぼす政策でございますけれども、今後為替相場がどうなるかとか国際収支がどうなるかというふうなものは非常に不透明な点が多いと思います。しかし国内引き締めもありまして、中小企業さんでも輸出のほうに相当力を入れ始めておるというふうな事情がありますので、また輸入品の値も上がりますが、価格面で輸入品の値段も上がっておるというふうなことから考えますと、貿易の収支は、もちろん石油の問題を含めて考えますと簡単ではございませんけれども、なおそのほかに資本の収支ということも総合して考えてまいりますれば、日本の国際収支は均衡していくのではないかというふうに考えまするので、できましたら、物価政策とのからみ合いでできるだけ円の為替相場は強く維持をしていただくほうがいいんではないかというふうに考えます。為替相場が少し強目にあるほうが、輸入物価上昇を相殺いたすことができますし、また企業の合理化努力というふうなことにもつながるように思うわけでございます。現実に中小企業さんで為替相場が強過ぎるために輸出が非常に困難だというふうな事態はいまのところさしあたり見当たらないような気がいたしますので、むしろ国民生活への物価抑制という見地から為替相場を強く維持せられるような方角を私どもは望んでおるわけでございます。  それから第四に、これはお尋ねがあると思いますが、物価金融政策と申しますと、物価との関連における金利の問題でございます。いずれお尋ねがございましたら申し上げたいと思いますが、私どもといたしましても、預金者にこういう際にできるだけお報いするということにいろいろくふうをこらしておるわけではございますけれども、やはりこの段階になりますと、預金の金利の問題は貸し出しの金利の問題を考えなけれ角いけませんし、貸し出しの金利の問題となりますと、国債あるいは地方債等の金利の問題を一緒に考えるというふうなことになり、郵便貯金との関係、あれこれいろんな問題が出てまいりまして、一部分だけをやってまいるということはなかなか困難ではないかというふうな所見でございます。地方銀行といたしましても、できるだけ地域の預金者の方にお報いをしたいという趣旨でいろいろとくふうをめぐらしておりますけれども、現段階におきましてはすべてのいろんなことを考えた上、処置をすることがいいのではないかということでございます。  それから第五に、地方銀行といたしましていろいろ現状におきまして苦労しておる点を一つだけお聞き取りを願いたいのでありますが、総需要抑制のための引き締めということでございますから、各金融機関とも融資のワクあるいは融資でございませんでも、資金のワクが非常に窮屈でございます。その中におきまして地元の中小企業さんにどういうふうに奉仕をしていくか、それが県の制度融資とか市の制度融資とかというふうなものを含めまして融資の要望が非常に強いというのが一つでございます。  もう一つは、一番苦心をいたしておりますのは、地方公共団体のことに土地の先行取得の問題でございます。地方銀行は地方公共団体の指定金融機関をつとめさせていただいておるわけでございますけれども、開発公社でございますとかいろいろな名前はございますけれども、学校の用地あるいは道路用地というふうなものにつきまして先行取得と申しまして土地を買っておくということがたてまえになってきております。ところが最近では、民間のほうの土地の売買は、土地に対する融資抑制によりましてほとんど動きがなくなったわけでございますけれども、この広い意味の地方公共団体の公社等の土地の取得につきまして、金融が非常に大きいということでいろいろ苦慮いたしております。土地の値段が上がることということはインフレ心理にも非常な影響がございます。それからいろいろな点で、地方公共団体の方とお話しいたしますと、行政の責任として土地が適正な値段で先々手に入ること、それから必要な場所、たとえば学校を建てる場合等に、必要なときに必要な場所に適正な値段で入るということが確保せられれば、いまの先行取得というふうなことは事実上そう必要ないのだがというお話でございまして、それらの点につきましても、どうか御配慮いただきたいと思います。  また私ども地方銀行が提唱しておりますように、土地の売買には交付公債というふうなもので流動性の造出を封鎖するというふうなことも一つの案ではないかということでいろいろと提唱をいたしておる次第でございます。どうかこの点もあわせて御高配をいただきたいと思います。  私ども地方銀行といたしましては、各地域で一生懸命でいたしておるつもりでございますが、なかなか至らない点もございますので、各地で先生方にいろいろ御指導を賜わっておりますことをこの機会に厚くお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
  8. 平林剛

    平林委員長 次に、増田参考人にお願いいたします。
  9. 増田庫造

    増田参考人 ただいま御紹介いただきました全国相互銀行協会の増田でございます。平素は先生方皆さまにいろいろと御高配にあずかりましてありがたく本席を拝借いたしまして厚くお礼を申し上げます。  さて、本日は、最近の金融経済情勢についての御報告を申し上げる機会をおつくりいただきましてまことにありがたく存じております。  相互銀行窓口から見ました中小企業の最近の動向と相互銀行の現況につきまして申し述べさせていただきます。  最初に、相互銀行窓口から見た中小企業の動向を御報告申し上げます。  御高承のとおり、昨年来の金融引き締め措置をはじめとする一連の総需要抑制政策浸透により、実体経済面では昨今ようやく需要の後退が顕著となってまいりました。  このため、企業倒産も最近では販売不振によるものがその数を増していくなど、かげりが顕現化しつつあり、今後もその傾向が強まることも懸念されます。  これをもう少し具体的に説明いたしますと、業種別では、当初融資規制の対象となっていた不動産業、土木建設業、レジャー関連業種引き締め影響が強くあらわれたのでありますが、その後、石油製品、紙製品、化学繊維などの原材料商、物不足関連種、さらには物価上昇影響を大きく受けた卸、小売り業等に波及しつつあります。  このため業種によっては仕入れ面において現金決済比率の上昇、支払い手形サイトの短期化など支払い条件が悪化する反面、大企業資金繰り難による下請企業の受け取り手形サイトの長期化が顕著となり、このため資金繰りが次第に逼迫の度合いを強めているものもあるのが実情であります。  この結果、資金需要の内容も支払い条件の悪化、原材料不足、物価高騰に伴う増加運転資金、減産、滞貨の手当資金など、もっぱら運転資金に集中しており、設備資金需要は、先行き景況の見通し難もあり、引き締め浸透とともに減退の一途をたどっております。  こうした情勢下にあって、私ども相互銀行としては、日本銀行窓口規制大蔵省行政の選別融資の趣旨に沿いまして、中小企業専門金融機関立場から、次のような融資方針をもって対処しているのが現状であります。  すなわち、大企業向け融資は完全に抑制いたしまして、貸し出しワクの減少を行なっておること。  選別規制対象業種には新規融資をやめましたり、貸し増し抑制するなど、それぞれの規制内容に応じた措置をとっていること。  経済変動によって大きな影響を受けた中小企業緊急資金については、県、市町村の制度融資に協調しまして、可能な限り資金的な援助を行なっていること。  運転資金を重点に、地元中小企業資金需要に対し、極力広範囲に応じていること。  住宅ローンについては、個人向けあるいは住宅専門金融会社向け資金は、極力需要に応じていること等であります。  次に、こうした環境下における相互銀行の最近の融資動向等について、若干の計数をあげ御報告申し上げます。  まず、相互銀行貸し出し平均約定金利の動きでございますが、御高承のとおり、公定歩合は昨年四月以降、五回にわたり累計四・七五%引き上げられましたが、本年一月末現在までの相互銀行の約定金利上昇幅は〇・九一一%で、公定歩合の上げ幅に対する追随率は一九%にすぎません。この結果、相互銀行全体の貸し出し平均約定金利は八・六〇%で、普通銀行をわずかに上回る水準となっております。  これは、一つには相互銀行貸し出しが相対的に長期融資のウエートが高いため、金利の変動に対して敏感に反応しがたいということもございますが、他方、中小企業専門金融機関としての立場上、地元中小企業、あるいは消費者向けの金利引き上げについては、ある程度抑制的に対応せざるを得ないという点も御理解いただきたいと存じます。  次に、融資の量的な問題でございますが、四十八年四月より四十九年二月末までの相互銀行融資量の純増額は一兆三千三百二十一億円、伸び率は一六・二%となっております。これを四十七年の同期と比較いたしますと、金額では約二千六百四十億円の減少、伸び率では八・六%の大幅減少となっております。  これは御高承のとおり、相互銀行も昨年四月以来日本銀行窓口指導の適用を受けておるためでもありますが、年度間通算ではかなりの実績低下になる見込みでございます。  このような引き締め浸透とともに、相互銀行の業容面におきましては、融資量のみならず資金量も法人営業性預金の取りくずしなどから、次第にその増勢が鈍化しまして、本年二月中の増加実績で見ますと、二百六十億円で、前年同月の千三百二十一億円に比べますと、約五分の一に落ち込んでおります。  さらに、まだまとまった計数は出ておりませんが、前期決算においても、貸し出し金利をはじめとする運用利回りは若干の上昇が予想されておりますが、一方、預金金利引き上げによる負担増、物価高騰による物件費の増高などからコストの上昇が見込まれまして、利ざやは次第に縮小するものと見込まれます。  特に、本年上期におきましては、現在の客観情勢を前提とする限り、業績の伸びは一そう停滞せざるを得ないと存じますし、さらに加えて過般来の預金金利引き上げの影響の本格化、ベースアップによる人件費の増加など数多くの経営圧迫要因が控えており、相互銀行の今後の経営見通しは決して容易なものではないと覚悟をいたしております。  ところで、当面の狂乱物価収束のため、総需要抑制政策は依然堅持され、本年四月から六月期も引き続き強力な金融引き締め措置がとられており、私ども相互銀行に対する日本銀行窓口指導ワクも、前年同期のワクをさらに下回る金額、すなわち、二千七百五十億円となっております。  関係当局におかれても、これに対し万全の対策をとられるものと存じますが、世上にいわれておりますように、黒字倒産という好ましくない現象が起きないよう、格段の御配慮をぜひお願いしたいと思います。  もちろん、私ども中小企業専門金融機関としては、前に申し述べました方向中小企業金融の円滑化に最善の努力を傾注する覚悟でございます。  御清聴ありがとうございました。
  10. 平林剛

    平林委員長 以上で参考人意見陳述は終わりました。     —————————————
  11. 平林剛

    平林委員長 質疑の申し出がありますので順次これを許します。加藤六月君。
  12. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 参考人の皆さま方には貴重な御意見を開陳いただきまして、まことにありがとうございました。  私は、自由民主党でございますが、きょうは金融政策における総需要抑制策というものが各金融機関別にどのように行なわれておるか、それがまた国民物価あるいは消費あるいは投資、あらゆる関係にどういう影響を及ぼしておるか、さらには、そういう総需要抑制政策並びに金融政策物価にどういう影響を与えておるかということをお聞きいたしたい、こう思っておったわけでございますが、日銀総裁をはじめ各参考人からそれぞれ総需要抑制政策の問題についてはお触れいただいたわけでございます。また、私に与えられた時間もあまりたくさんございませんので、簡単に質問し、簡潔に御答弁いただきたいと思うのですが、まず佐々木参考人にお伺いいたしたいと思います。  先ほど来貴重な御意見をいただきましたが、その中に金融政策だけでできない要因としていろいろ具体的な例をおあげになりました。私たちも先般の石油値上げ問題についてはほんとうに苦慮しました。その苦慮した内容というのは、まあ政治的に判断するわけでございますけれども、たとえば、CIFベースで五千百円でそれぞれの精油所のシーバースへ原油が届いておった、それが一万九千八百円ないしは二万円、いわゆる十ドル石油になってくる。そこで、石油精製会社その他をつぶしてはいけないという立場での石油値上げという問題を議論しましたが、さらにその奥にある問題としては、この際は石油会社の一社や二社はつぶしてもやむを得ぬのじゃないだろうか、国民全体の物価問題を考えるときにという深刻な気持ちを持ったときがあるわけでございますが、また、冷静に考えてみますと、国民に昭和三十年あるいは昭和二十六、七年ごろの生活程度に引き落とすことをがまんしてもらえるならば、そういう石油会社の一社や二社はつぶしてもやむを得ないという決意を実行することができる。しかし、実際は国民の要求というものは、今日の生活程度、きょうよりかあすの生活程度を充実し、内容をりっぱにしていきたいという強い願望というものがある。われわれ政治家はその願望を無視することができないという立場で、結局石油の、大は輸入会社から精製会社あるいは末端のガソリンスタンドの価格にまで手を伸ばさざるを得なかったわけでありますが、こういう高価格エネルギー体系というものが石油業界だけに実施せられた。これは、今後これに関連する電力とかいろいろな問題に手を触れなくてはならない。また、政府が関与できる、われわれ自民党あるいは国会が関与できる公共料金問題については相当の方法も講じられるわけでございますが、この物価で一番苦しんでおるのは、老人であり身体障害者であり病人でありあるいはまた逆に恩給、年金生活者というのが一番苦しんでおる。次の段階で苦しんでおるのは、農民、漁民、零細企業中小企業の従業員、こういうものが一番苦しんでおる。こういう高価格エネルギー体系に対応できるものは、大企業並びに大企業の従業員あるいは三公社五現業、国家公務員、地方公務員、こういった社会的に責任の大きい皆さん方は比較的こういう——ある場合は春闘をやり、ある場合はストをやり、ある場合は労使談合をし、まあ協調ということばは私使いたくないのですが、そういうことで高価格エネルギー体系についていけると思うのです。いま申し上げました病人、身体障害者、老人あるいは恩給、年金生活者あるいは農業、漁業、中小零細企業というものは、この高価格体系になかなかついていけない。そこで、物価を押えるという名目でその石油製品以外のものを押えたほうがいいのか、逆にこういった問題を含めた大きな政治判断で、単に金融政策だけではなくして、財政政策だけではなくして、国全体の経済国民の生活のかじとりというものを、端的に申し上げますと、十ドルベースの原油時代に、何年間、何カ月間かかって、いま困っておる方々の生活ベースというものを引き上げていくかというところが、これからの政治経済のかじとりとして一番むずかしいところではないか。この格差というものをあまり長い間置いておきますと、この不平不満というものは爆発してくると思うのです。先ほど来の参考人各位のおことばの中に、中小企業の黒字倒産の問題まで触れられ、あるいはまた、その引き締め効果として今後いろいろな現象が起こってくるという内容について触れられたわけですが、要はそういう問題すべてをひっくるめた——まあ石油企業だけは、きのう密田参考人は参議院の予算委員会で、まだまだこれでは不満で、次に値上げしたいと言われておりますが、一応曲がりなりにも十ドル原油ベースに合わせたと思います。ほかの企業は合わせておりません。ところが、合わす能力のある企業と、いま申し上げましたように政治の面でしかその十ドルベースに、生活程度を守っていき、引き上げることができない階層、こういうものがあると思います。総裁にお伺いするのはどうかと思いますが、こういった問題を、単なる便乗値上げとか狂乱物価とかいうことなしに、日本の経済のかじをとっていく立場から見て、格差を是正していくのに、これはもう物価を含み、あらゆるものを含んでですが、大体何カ月間あるいは何年間にこういう格差是正というものを——石油産業だけは十ドルベースに一応曲がりなりにも対応するようにできた、ほかの企業はできていない、さらに恩給、年金生活者、老人、身体障害者、病人というものは全然できていない。このさじかげんをどの程度の期間でやっていったらいいというお考えがおありでしょうか。私の説明、ちょっと誤解があるといけないので、前口上が長くなりましたが、承りたいと思います。
  13. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまの御質問、非常にむずかしい問題でございまして、どの程度の期間で調整ができるかということについて、具体的にお答え申し上げる用意がございませんですが、ただ、ただいま原油価格上昇の問題をお話がございましたが、実は、最近の物価問題というのは、もちろん申し上げるまでもなく日本だけの問題ではございませんで、海外でも非常にいろいろな物の値段が上がっております。最近などは銅の価格が暴騰いたしております。こういうものもやはり、日本のように海外から銅鉱や銅製品を輸入しておりますものにとっては非常に影響が出てくる、また飼料が非常に上がっておるとかいうことがございまして、そういうものを日本の国内物価でどういうふうに調整していくかという問題は、なかなか避けて通れない問題ではありますけれども、しかしながら、それをそのまま写真のように写していくわけにもいかない。したがって、私どもといたしましては、そういうふうな海外の物価上昇影響国内にどういうふうに映していくか、それについての、ただ一つの商品だけの問題としてでなくて、やはり総合的に価格の体系の組み直しが弾力的にできる用意をしておかなければならないと思います。そういうことになりますと、実は金融の面でできますことは部分的なことになってまいりまして、やはりある程度政府の指導というものがどうしても必要になってくるのじゃないかと思います。ただ、その指導があまりに行き過ぎますと、また、さっきちょっとお話が出ましたが、自由主義経済の仕組みに障害を及ぼすこともございますので、その点は注意を要しますけれども、どうも、いまのような世界的な価格の変動期においてはやはりある程度のコントロールというものは必要ではないか、それは、いまのような海外の物価情勢でございますと、いつ終わるというふうな見通しがなかなか立ちませんので、われわれとしてはやはり弾力的な姿勢を用意しておくということが当分の間は必要ではないかというふうに考えます。
  14. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 ありがとうございました。私たちも実はその問題を一番心配しておりまして、資源ナショナリズムの問題の台頭、あるいはまた石油というものが世界戦略上の立場でとらえられて、いろいろとやられておるという問題、これに対応するわが国の場合には、国民生活という戦略戦術でない立場のみで、この石油並びに食糧その他飼料、いま問題になっております銅鉱からすべての問題についてのとらえ方の観点が違うという点等で苦慮をいたしておるのですが、その問題はまた次におきまして、その次に伊部参考人にお伺いしたいと思いますが、政府並びに大蔵大臣が衆参両院の予算委員会で、いわゆる不正会社に対する政府関係金融機関融資問題をいろいろいっておられます。私たちもこれを勉強しておりますけれども、何か近々政府のほうでも案をおまとめになるというように聞いております。すなわち開発銀行あるいはまた輸銀あるいは北東公庫という問題について一つの基準をおつくりになる。しかし大蔵省が独走してはいけないので、それぞれ通産大臣、農林大臣からこうこうしてくれというなにがあったら、開銀、輸銀、北東公庫の融資をストップするということを答弁されております。また私たちもそういう答弁に非常に危惧の念を持ちまして、そういうことをやっていくと、まさに金融独占でなくしても、もう金融独裁だ。私は先般約一週間チリへ行って、アジェンデ政権が打ったでたらめな政策というものをいろいろ勉強してきてなにしたわけですけれども、そういう方向に走らせてはならないという気持ち等もあるわけでございます。ただ、伝えられる政府の考え方というのも相当弾力性はあるように聞いておるわけでございますが、たとえばいま石連が公取の告発を受け、検察庁がこれに手を入れておる。この問題が明らかになってきて、起訴ということ等になってきた場合に、調べてみますと、開銀とか輸銀の関係の問題はそうたくさん問題ないと思いますが、かりに政府関係の三機関が何らかの処置をいま伝えられておる石油会社だけでなしに、たとえば私たちが考えましても、売惜しみ買だめ法に違反した場合だとか、いま石油のほうの場合は独禁法の違反だ、あるいはまた国民生活安定法の課徴金以上の対象になった企業である、あるいはまた公害で摘発を受けた会社あるいは起訴を受けた会社、あるいはまた脱税という問題が起こった会社、こういうものに対し政府がどういう処置をするか知りませんが、もし政府関係金融機関がこれに対してそういう措置をした場合に、市中銀行としてはそういう企業に対しどういう処置をおとりになるだろうかということを承っておきたいと思うわけであります。
  15. 伊部恭之助

    伊部参考人 ただいま加藤先生から、最近特に問題になっております企業のビヘービアに対しまして、政府はいろいろと政府金融機関に対して、そういう企業に対する何らかの措置というものを考えておられるが、民間の金融機関はそういうことをどういうふうに考えるかという御質問をいただきましたが、反社会的行為と申しましても、これは非常に範囲が広うございまして、法に抵触する行為でございますれば、法に従いましてそれぞれ処罰なり制裁が加えられるわけでございまして、われわれ銀行は一私企業でございますので、その行為に対する法律的な制裁は制裁といたしまして、私どもまでがさらにそれに乗りまして金融の根を断つとか、その企業運営上重大な支障になるような金融措置をとるというようなことは私どもといたしましてはどうかというふうに存じておりまして、これは社会通念に従いまして、取引上の問題は取引上の問題としてこれに対処いたしませんと、いろいろ法違反によって生じた問題が相手によりましてはさらに国民経済全体に影響する、あるいは国際的な商道徳にも反するというようなことにも相なりますので、その点につきましては、民間の金融機関としてはそういうことのないような配慮をすることがやはり必要かと存じております。
  16. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 その次に、私はこれに関連してお伺いしておきたいと思うのですが、特に市銀の場合にはいろいろな会社の株を相当たくさんお持ちになっておられる。いわゆる社会的不正を行なっておる会社に対しての銀行のコントロールというものは非常に強い。それは単に持ち株あるいは筆頭株主あるいは三番目くらいの株主、それぞれ生保あるいは市銀によって内容は違いますが、持ち株ということとそれから融資ということと、両方で相当強いコントロール権を持っておられる銀行もあるし、一般的に言えませんけれども、そういう場合に、逆に政府がそういう企業を反社会的な企業であるというにおいを出した場合に、市銀としては、いま申し上げました政府のすることに悪乗りして、市銀も金融の道を断つようなことはいたしません、こうおっしゃいましたが、今度は逆の立場からいいますと、そういう市銀は、ケース・バイ・ケースでいろいろ違いますが、その企業に相当のコントロールパワーを持っておると思うのです。そういう場合には、物価あるいは企業の社会的責任という立場等から、指導ということばはおかしいと思いますが、話し合いをさして、そういう企業姿勢を正す努力というものはされるでしょうか、されないのでしょうか、ちょっと承っておきたいと思うのです。
  17. 伊部恭之助

    伊部参考人 先生の御質問にお答えいたします。  私どもは、企業支配の目的をもって株を持つということは銀行といたしましてはできない法制になっております。しかし、日本の株式市場あるいは日本の株式会社の慣習といたしまして、やはり安定株主というようなことで銀行が法規の許す範囲内において株を持っておるということも事実でございます。融資先に株主としての資格を持っておる銀行も多いことも先生のおっしゃるとおりでございます。しかも、そういう会社が反社会的な行為をもちまして法の裁きを受けましたりあるいは世間の糾弾を受けるということが、いま先生もおっしゃいましたように、程度とかケース・バイ・ケースでいろいろございましょうが、その行為が著しく反社会的であり、企業経営に非常に大きな影響を来たしまして、企業の基盤がゆらぐような問題になると見た場合は、もちろん融資先といたしましても株主の一員といたしましても、経営者に対して反省なりまた私どもの意のあるところを伝えまして、その会社の基盤がくずれぬような注意なり指導をいたしていきたい、こう存じております。
  18. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 時間があまりございませんので、飛び飛びになりますが、もう一度日銀総裁にお伺いします。  総裁は先ほどのなにで選別融資方式というおことばをお使いになりました。われわれは、石油製品値上げに伴ういろいろな激論も党内であり、問題を提起したわけですが、その際政府側は、五十三品目の事前届け出制、政府と相談してくれという内容ですが、本来政府に相談すべきものではないのですが、政府に相談してくれという五十三品目を出しました。また同じく政府は、個々百貨店、チェーンストアあるいは商社に話し合いをしまして、百五十数品目の生活関連品目というものを値上げをしないでほしいという話し合いをし、個々に了承を得た、こういう経過があるわけでございます。日銀としては、特にこういうものは、大企業の製品もあれば、生活関連品目を調べてみますと、中小企業、需細企業でつくっておる、たとえば食卓の茶わんまでいろいろ生活品目の中に入れておるわけです。そういう場合に、物価安定という立場から選別融資方式で、政府がきめた事前届け出制の五十三品目あるいはまた政府個々企業に話し合いをして話をつけた生活関連品目の百五十三品目、こういうものをつくっておるメーカーあるいは問屋あるいは小売店に対し何らかの指導というものを過去にされたり、あるいはこれからしたいというような御意向、これは日銀総裁にお伺いするよりか、逆に伊原参考人増田参考人にお伺いしたほうがいいかとは思うのですが、まず総裁、そういうことをされたり、しようとされるお考えはおありでしょうかどうでしょうか。
  19. 佐々木直

    佐々木参考人 金融政策というのは、どうも信用の総量を調整するということに重点が置かれるものでございまして、選別融資方針というものはなかなか総体としては広く行なうことはむずかしい性格でございます。しかも、いま私が選別融資と申し上げましたが、結局非常にこのやり方は消極的でございまして、出てほしくないところには金を出すなと言うことはできますけれども、ここへ出してくれということはなかなか言えない。やはり融資先にどの程度積極的に出していくかということになりますと、それは個々金融機関の判断にまかせなければならぬ場合が非常に多うございます。したがいまして、いままで私どもがやってまいりましたのは、たとえば不動産業でありますとかあるいは卸、小売業でございますとか、一般的にあまりそういうところに金がいっては困る、あるいはわりあいにそういうところには資金のゆとりがあるというようなところに対する融資を押えるということをやっただけでございます。できるだけ安い品物をつくってもらうためのきめのこまかい融資ということになりますと、これは中央銀行金融政策ということではなくて、各取引先金融機関配慮ということになってまいると思います。
  20. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 同僚の橋口委員がちょっと関連質問をさせてほしいと言われておりますので、あまりこの問題深入りいたしませんが、増田参考人にひとつお伺いしておきたいと思うのです。全国信用金庫の理事長の小原鉄五郎さんがこういうことを言っておられます。「大銀行は大手商社に金を貸し過ぎている。大銀行は一般預金者から集めた金を大企業融資し、大衆を相手にしていない。悪徳商法の非は商社だけでなく、そこにどんどん金を貸し、買い占めや売り惜しみに使わせた大銀行にもある」、こういうように公然と批判された。これは信金でございますが、信金と相銀とは相当違うわけでありますけれども、先ほど増田参考人から、中小企業や零細企業をうまく守り、育成していく苦心の打ち明け等も、あるいはまた相銀のこれからのこういう金融政策下における苦しみと悩みというものもお教えをいただいたわけであります。この全国信用金庫の小原理事長が言われておるお考えを、相銀の立場から見てどうお思いになるでしょうか。
  21. 増田庫造

    増田参考人 他の種類の金融機関の動向につきまして批判は差し控えたいと私は思うのです。私どもは相互銀行といたしまして、相互銀行はあくまでも中小企業金融機関である、これが社会的な使命と考えておりますので、各相互銀行が地元の中小企業に対して御融資をして、中小企業の育成をしていきたいということを念願にしておりますから、その方向に進んでおります。いまの御批判に対する私の意見はちょっと差し控えたいと思うので、あしからず御了承いただきたいと思います。
  22. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 伊原参考人は、先ほど貴重な御意見をお聞かせいただいた最後に、いま問題になっておる預金の目減り問題にお触れになられました。また、あるグループ、ある方々は、政府を相手に郵貯を中心に訴訟までお起こしになっておられるということであります。私たちは預金というものがいかに重要であり、大切であるかということと、逆に預金したことによってその人の財産が減るというような状態になるということは、これはまた金融立場でなしに、政治家の立場から見ても黙視し得ないたいへん大きな問題だと思うわけであります。それで、それに伴うものとして、貸し出し金利とか、国債、地方債、郵貯の関係等があってなかなかむずかしいというようなお話もございましたが、預金者の目減り問題に対して何かお報いするというか補償するというか、そういう方法論について地銀協会その他で議論されたことはおありでしょうかどうでしょうか。
  23. 伊原隆

    伊原参考人 お答え申し上げます。  先生のおっしゃるように私どもはお金をお預かりしておりますので、それがだんだん実際の価値が減っていくというふうなお話を聞きますたびにほんとうに困っております。お金の値打ちがなくなって、一時は物々交換みたいなことがはやって、原材料を持ってこなければ製品を渡さないというふうなことまであったのですが、円の復権と申しますか、貨幣信認の復権ということは、私ども金融機関のほんとうに念願でございます。  そういう意味で、地方銀行でも長期経営委員会とかいろいろなものをつくりまして、どうやったらこういう時代の預金者といいますか、資金を提供なさる方に報いられるかということを研究いたしておりますが、率直に申し上げまして、ただいま申し上げましたように、資金を提供なさる預金者の方への配慮というものは、資金を利用なさる方、つまり中小企業さんもございますし、いろいろ貸し出しのほうと、それから私ども地方債をたくさん持っておりますが、地方債、国債、そういうほうにどうしてもはね返ってまいります。したがいまして、なかなかその部分だけということにいきませんので、私どもいろいろな議論の中に出ましたのは、六月十日には有利な条件の半カ年定期の期限が参りますから、あれをまたそのまま切らないで延ばしていただくようなことはどうだろうか。それからまた、定期積み金というのがあるのですが、苦しい中を少しずつお金を積んでいかれる方がある。この金利が非常に低いのでございます。四分二厘でございましたか、こういうふうなものをもっと適正な金利に上げたらどうかとか、そういうふうに他に影響しない——しかし定期積み金につきましては、それをたくさんお扱いになっておる金融機関が、たとえば信用金庫さんとかというところに非常にコストアップ影響が出ます。したがいまして、そういう他業界の方のことを配慮しないでやたらに主張するというわけにもいかぬとか、あれこれ考えますとなかなかむずかしい問題になります。  それから、金利が上がりっぱなしでもない、不景気になりましたり世界的な不況が参りますと、いずれ下げる段階もあるのじゃないかと思います。そういうときに機動的に金利の上げ下げをしなければならぬ。あれこれ考えれば考えるほど非常にむずかしい問題だと思います。ただし、いま申し上げましたように、六カ月定期を延ばしていただくとか定期積み金のことをほかの業界が御納得になれば、もうちょっと適正な金利に上げられるのじゃないかというふうな研究をしきりにいたしております。
  24. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 皆さん貴重な御意見をありがとうございました。
  25. 平林剛

    平林委員長 関連質問がありますので、これを許します。橋口隆君。
  26. 橋口隆

    ○橋口委員 時間がございませんし、日銀の総裁は午後おいでにならないと思いますので、総裁にちょっとお伺いしたいと思います。  金融政策効果が非常にきいてまいりまして、物価鎮静化しつつあることは非常に喜ばしいことだと思います。ただ問題は、石油製品値上げ、それからやがて電力料金値上げ、また春闘によるベースアップ、また公共料金の凍結解除等が予想されるわけでございますが、そうなりますと、どうしても新価格体系に移行せざるを得ない。そうなりますと、どうしても政府経済見通しをはるかに上回ってくるのじゃないかと思われます。政府では、卸は一五%、消費者物価は大体一〇%と予想しておりますが、これをはるかに上回ってくると思いますが、その点に対してはどういうふうにお考えになっておりますか、簡単にひとつお答えいただきたい。非常にお答えしにくい問題だろうと思いますが……。
  27. 佐々木直

    佐々木参考人 四十九年度の見通しにつきましては、私どもとして別に具体的な数字を発表できるような用意はございませんが、ただ、確かに御指摘のありますように、たとえば消費者物価をとってみましても、三月の東京の消費者物価はもうわかったわけでありますが、それで考えますと、四十九年度へのげたと申しますか、四十八年度の物価上昇の四十九年度物価水準への影響が一〇%アップぐらいの力を持つことになります。そうなりますと、やはり政府の見通しよりも現実にはもう少し高いところになる可能性があるということは、いままでの数字で推定されるのでございまして、その上さらに私のほうから具体的な数字を申し上げる用意は私どもにはございません。
  28. 橋口隆

    ○橋口委員 まだたくさん質問したい点はございますが、わが党の持ち時間がございませんので、これで失礼いたします。
  29. 平林剛

    平林委員長 松浦利尚君。
  30. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 参考人の皆さん方にはたいへん貴重な御意見をありがとうございました。総裁、それぞれの代表者の皆さん方のお話をお聞きしておりまして、総需要抑制策、特に金融引き締めあるいは財政の協力等によって鎮静化方向にあるというお話があったわけであります。ただ先ほど加藤委員からも指摘をいたしましたが、実は昨年からの狂乱的な物価高というのは、ある意味では銀行側にも責任があったのではないか。逆にいうと、金融がゆるんで貸し出し競争といいますか、企業に対する貸し出しを急ぎ過ぎた。その段階で銀行側にもっと社会的な責任というものがあって、自主的に節度ある金融対策をとっておれば、こういった物価狂乱は防げたんではないか、そういう感想を私たちは持っておるわけであります。そういった意味で、こういった貸し急ぎといいますか、あるいは銀行側の節度ある対応策というか、こういったものについて御反省があるのかどうか、その点をひとつ日銀の総裁、それから都市銀行の代表である伊部さんからお答えをいただきたいと思います。
  31. 佐々木直

    佐々木参考人 確かにいままで数回そういう経験がございますが、金融が非常に緩慢になったときには、とかく金融機関は、資金の運用の責任を持っておりますので、できるだけ有利な運用先を求めるということで、貸し出しを競うという事態が起こっておったことは事実でございます。そういう点は実はおととしの春、そういうことがある程度見受けられまして、したがってそのときに私どもは、実は窓口規制というとおかしゅうございますけれども、あまりみんな貸し出しを競い、したがってそれがまた預金の増加につながるわけでございますから、預金のふえ方あるいは貸し出しのふえ方について、金融緩和期ではありましたけれども、ほどほどにするようにといういろいろ申し入れをしたことがございます。しかし総体として金融政策が緩和方針をとっております中でのそういう指導というのは、なかなかききが悪い。  で、私どもいま問題として持っておりますのは、今後金融緩和の時期がまた来ることが予想されます。そのときにいま御指摘がありましたような貸し出し急ぎといったものが今度は起こらないように、どういうやり方を準備しておけばいいか、その点を現在検討しておる実情でございまして、確かにおととしの春ごろにはそういうことがあったことは否定できないと思います。
  32. 伊部恭之助

    伊部参考人 松浦先生にお答えいたします。  いまお話しのことは、ちょうど四十六年の夏にニクソン・ショックがございまして、いまだかつてない、日本に円の切り上げというような問題が出たわけでございますが、当時はちょうど不況から何とか脱却したいというような時期でもあったところにそういう問題が発生をいたしまして、私どもは、いまだかつてない、円の切り上げという、日本の通貨が非常に高い評価を急激に与えられたということからくる経済の予側というようなものを、非常に経済のない立場であれこれ考えまして、先生のおっしゃいましたことを反省いたしますと、見通しについて非常に、そういう初めての事象で、そして景気がちょうど上昇に向かいつつあるときに、何とかして上昇させようというようなときに、ちょうどそういう問題が起こりまして、これがまた景気上昇を不況のほうへ足を引っぱるのではなかろうかというような空気が一般に強いところへもちまして、私どもも、はなはだ不敏ながら、それを非常に押えて、いや、そうではないのだというような判断が出なかったことを、いまから見ると反省をいたしておる次第でございます。
  33. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 少なくとも金融面からの物価狂乱というようなことの起こらないように、総裁が言われたことを事前に準備をされて、かりそめにも二度とこういうことがないように御配慮いただきたいということを希望として申し上げておきたいと思うのです。  それから、二番目の問題は、実はこれはこの物価委員会でも再三指摘しておるところですが、どうも銀行の大口融資先が商社に結びついておるのです。そこで、これは日銀の総裁、午前中だけだそうですから、日銀総裁にお尋ねするのですが、大体都市銀行が系列商社に対して大口融資をする、これは公取の調査等でも明らかなんでありますが、逆にいうと六社の自己資本比率というのはわずかに三・四%しかない、あとは全部系列銀行からの借り入れだ、こういうあり方は、金融政策上非常に問題があるのではないか。しかも商社が物価狂乱に一役買っておる。特に資源を海外に依存をするわが国においては、確かに商社活動が必要でありますが、その商社活動に見合う資金量よりもよけいな資金がパイプとして流れる。こういう問題について、大口融資先に対する規制、特に系列商社に対する規制ということが、現に相互銀行とかあるいは信用金庫等は法律で規制されておるのでありますが、そういったものが野放しである。そういう点について、日銀総裁としては、どのようにお考えになりますか。
  34. 佐々木直

    佐々木参考人 確かに御指摘のような問題、かねがね実はわれわれとしても問題意識を持っておりまして、かつて金融制度調査会におきましても、この問題を取り上げて検討した時期がございました。ただこれを形式的に押えますことは、一応いろいろやってみましても、実質的に抜けてしまうおそれがありますので、これをどういうふうにコントロールするかということは、もう少し慎重に考えなければならないということで、現在検討いたしております。ただ、商社が、いまの日本の中で、非常に広い活動範囲を持っております。したがって、そういう広い活動範囲からくる資金需要が非常に大きいという点を考えますと、この活動範囲がいまのようでいいのかどうか、そういう基本的な問題から取り上げなければならない点がある。  その点と、もう一つは、実はこれはほかの国でも大体そういう傾向があったのでございますが、大体銀行資金供給というものを商取引に結びつけるということが昔からずっと慣例と申しますかやり方になっておりまして、商業手形を一番優秀な融資先にする。これは背後に商品が動いておりますから、商品の売却によって自然にその手形は落ちてくるということで銀行融資物としては商業手形が一番取り上げられた。日本銀行でも最低の公定歩合は商業手形の割引歩合であった。最近までそうでございました。それはしかし、最近の状況で私ども改めましたけれども、そういうような昔からの、そういう商取引に伴う資金供給のやり方というものが、商社に対する融資を一つ大きくした過去の原因ではあったと思います。
  35. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは伊部さんにちょっとお尋ねをしたいのですが、おたくは住友銀行でございますね。住友銀行の自己資本は三千四百三十六億円なんですね。ところが伊藤忠商事あるいは住友商事に四十八年九月末現在で貸し出しておる総額が約千八百億強なんですね。自己資本比率の約六割近くが、伊藤忠と住友商事だけに融資をされておるのです。そこで、いま大蔵省銀行局あたりで、銀行局長通達によりまして、できるだけ同一企業に対しては自己資本比率の二〇%に押える、それ以上は貸すな。ですから、おたくのように大幅に貸しておるところについては、五カ年間の猶予で整理をしてしまえということが、現実に大蔵省銀行局で議論をされておるのです。私はやはり狂乱的な物価高の中の反省として、銀行から商社筋に大口の融資がされておるということに対する反省から、やはりある意味の規制、このことがいいかどうかは別にして、現実に事務当局として議論をされておるのですね。そういうことについて、具体的に系列商社にあなたのところは、ばく大な融資をしておるわけですから、そういう点についてどのようにお考えになるのかということが一つ。  それから、いま日銀総裁が言われたことについて、都市銀行の代表としてどのようにこれから改めようとしておられるのか、その点をひとつ承りたい。
  36. 伊部恭之助

    伊部参考人 先生の御質問でございますが、全銀協の副会長としてでなく、住友銀行の点についての御質問が中心のようでございますので、その面でお答えを申し上げたいと存じます。  おっしゃいますように、住友銀行の系列の商社もございますし系列外の商社もございまして、商社の活動が先ほどのお話にもございますように、日本特有の企業形態で非常に大きな活動をいたしておるものでございますから、しかも日本の他の企業もそうでございますが、自己資本、特に資本金に比して運用資金が非常に多いという状態でございますので、商社に対する貸し金がいま先生のおっしゃったように非常に大きなものになっていることは事実でございます。それでこの貸し金も、大体私どもの、住友銀行でございますが、貸し出し残高から見ますると、もちろん総合商社が先生おっしゃったように上位を占めておりますが、融資順位において第一位の商社が二、三ございますが、それぞれその商社の全借り入れ金のほうから見ますと、私どもの貸しておる金額は一三%から十数%でございます。しかし、先生のおっしゃいましたように、銀行自身の体力と申しますか資産ということから比べまして問題があるかどうかということになりますと、世界的な銀行経営のベースから申しますと、これはやはり銀行としても考えなければならぬ問題であるということは存じております。しかし、従来の商社の活動、日本の経済のいままでの高度成長における役割りその他を考えますと、そういう経過になってきておりまして、それがいま問題になって監督官庁の事務当局でいろいろと成案を御検討のようでございますが、これは銀行の大口一社制限の問題は過去にもずいぶん議論がございました。それは、その当時は、銀行の健全なる資産をどうやって確保するか、資産の分散をどうやってはかるかというような趣旨からの問題であったのでございまして、今後その問題もそういう点からは非常に大きな意味を持つものだというふうに感じておりまして、もし国家において一つの銀行行政としてそういう線が出ますれば、私どもはその線に沿って御協力申し上げたい、こう思っておりまするが、ただ急激にこれが施行されますると、過渡的の混乱は非常に大きなものがございまするので、その点よく実情を先生方にもひとつ御検討いただきまして、その過渡期の経済運営に差しさわりのないような方途をぜひひとつお取り計らい願いたい、こういうふうに存ずる次第でございます。
  37. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは都市銀行の代表としてもう一ぺんお尋ねしておきますが、大蔵省銀行局でいま計画をしておりますのは、自己資本の二〇%、そしていま申されたような混乱があるといけませんから、五カ年の経過措置を設けるということで、銀行局長の通達を出すべくいま準備の作業中なんですね。その自己資本比率に対しての二〇%というパーセンテージ、この点については異存ございませんね。
  38. 伊部恭之助

    伊部参考人 これは全銀行のそれぞれの貸し金の態様についての知識がございませんからわかりませんが、少なくとも私ども銀行で見ますると、いまのような規則でございますると、たしか一、二社がそれに該当するのではなかろうか、こういうふうにちょっと頭の中で考えております。
  39. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それはそれでけっこうです。  そこで、さらに日銀の総裁にお尋ねをしたいのですが、これも公正取引委員会の総合商社に関する調査報告の中で、この委員会でも実は再三問題になったのですが、商社が金融的な措置をとっておる。商社金融は、四十七年度末で、これは公取の調べでありますが、売りかけ債権、貸し付け金、前渡金の合計が七兆四千億円という膨大なものに達しておるのですね。六社総売り上げ高の二十一兆の三分の一強、これが実は商社金融として出されておるのですね。こういうあり方について日銀総裁としてどのようにお考えになるのか。われわれとしては、こういう商社金融ということは少なくとも改められるべきである、ある程度規制を加えていく必要があるのではないか、銀行の代行的なことはやめさせるべきだということを再三にわたって議論をしておるのですが、この際金融機関の元締めとしての日銀総裁としてのお考え方を、商社金融にしぼってひとつお聞かせいただきたいと思います。
  40. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまの問題は、先ほどから問題になっております商社というものの活動範囲をどの程度にしていくのが適当であるかという問題の一部分にもなるものかと思います。  実は、商社がそういうような金融的な機能を営んでおりますのは、昔の問屋が自分のところの下でいろいろ取引をしておるものに対して金融機関的な役割りをやっておったこと、それがずっといまの商社につながれているように思われます。日本のように中小企業が多い場合には、そういうような親会社的な存在がその中小企業にとって非常にプラスの場合も確かにいままであったと思うのです。いまでもそういう役割りはある程度は肯定されていいのではないかと思います。  ただ問題は、ここまでそれが大きくなってきたことについて、どういうブレーキをかけるかという問題ではないか。したがって、この問題は総体として、商社の業務範囲をどの程度のところでコントロールするのがいいのかという総括的な問題として検討が必要であり、またその検討は必要な問題だ、こういうふうに考えます。
  41. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ありがとうございました。  それから、これからの問題でありますが、先ほど総裁のほうから、公共的な電力あるいは石油、こういったところには公共的な立場融資というものが必要である。ところが往々にして、電力なり石油融資したその融資が、そこをトンネルして系列事業のほうに流れていくのですね。逆に言うと、金融引き締めのしり抜けが起こる可能性があるのです。それほど電力会社あるいは石油関連企業というのはマンモス化し系列化されておるのですね。ですから、いま公共性がある電力だから石油だからということで融資をすると、逆に言うとトンネル的に金融引き締めのしり抜け的な効果が出てくる逆作用の面も非常に心配をされるのです。ですから、そういった面についてのしり抜けにならないように、しりで終わるような手だてというものはどういうことを考えればいいのか、金融としてどういう対策を打たれるのか、融資されることはけっこうですが、そういった面についての手だてがあるのかどうか、その点をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  42. 佐々木直

    佐々木参考人 私が公共的なものとして例をとりましたのは電力でございまして、石油はいまちょっとそういう意味では考えておりません。電力会社の資金繰りにつきましては、実はもうことしの初めから高い原油の支払いが始まっておりますものですから、非常に資金繰りの面で忙しくなっておりまして、一−三月の間にも特別な手当てが必要ではないかという心配もあったのでございますが、ぎりぎりしぼってみて一−三月は特別なことをやらないで済みました。しかし四月からのことになりますと、やはりどうしてもある程度融資が必要でございますが、ただ、問題がここまで煮詰まってきておりますので、不足資金の算出にあたりましては、関係者が全部集まりましてぎりぎりしぼっております。そしてその融資といいますか、資金の調達の範囲につきましても、インパクトローン、それから社債の発行それから手元の切り詰め、それでいよいよ足らないところを銀行貸し増しというふうにいたしておりまして、こういうやり方で資金計画をしぼってまいりますと、資金がほかへ流れる可能性というのは全くなくやっていけるというふうに考えております。
  43. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ありがとうございました。  それからもう一つ。これは実は証券筋からわれわれ社会党のところに連絡のあった内容なんですが、最近の金融引き締めのしり抜けといたしまして、銀行筋がそれぞれ法人が持っておる持ち株を買い取るということが行なわれておるのです。御承知のようにわが国の場合は証券は市場集中主義でありますから、かりにそういうことが市場を通さずに行なわれた場合、その価格の評価、正当かどうか、妥当かどうかという問題もありますし、そういった行為が現実に行なわれておるということは、私はゆゆしき問題だと思うのです。そういう事実について日銀総裁のほうは了知しておられるのかどうか。これは証券筋から出ておる話でありますが、そういう事実があるのかどうか、お調べのところがあるのかどうかをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  44. 佐々木直

    佐々木参考人 実は私どもこのところ約一年窓口指導貸し出しを押えておりますが、これは貸し出しだけではなくて、やはり有価証券投資につきましてもその量があまり大きくなりますことはやはり信用膨張になりますので、実は株式の取得につきましても毎月の増加額をワクで押えておるわけでございまして、そういうワクをこえて取得しておるというようなことには相なっておりません。
  45. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大蔵省からおいでになっておるのですが、この際、いま私が申し上げた関係について早急に調査をしていただきたい。法人の持ち株を市場を通さずに金融機関が買い取る。それから逆に言うと今度は何らかの場合には相手側に、法人側に買い取らせるという義務規定まであるという話まで聞いておるのですが、こういう点について、大蔵省として調査をしたことがあるのかどうか。なければ早急に調査をしていただきたい。そういう事実があるかどうか、そういったことについて早急に調査をしていただきたい。そのことをあわせて二つお答えいただきたい。
  46. 米山武政

    ○米山説明員 さっそく調べてみます。
  47. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは証券筋から出ておる具体的な事実もあるわけでありますが、大蔵省調査をしていただきますし、日銀のほうでもできればそれぞれ各銀行に対してそういったものについての調査を的確にして、かりそめにもそういった金融引き締めのしり抜けが行なわれないようにお願いをしておきたい。  それから、実はこれは日銀の総裁にお尋ねをしたいのですが、過般の大蔵委員会におきまして、先ほど加藤委員も指摘をいたしましたが、預金金利の、預貯金の目減りの問題でありますが、この点に対して政府はどうするのかという質問をいたしましたときに、福田大蔵大臣が、自治体の住民登録によって一家族当たり五十万円までを限度として金利一〇%ということを考えたいという発言が具体的にされておるわけです。期日は六月ともあるいはことしの後半ともいわれておって、期日は非常に不明確なんですが、そういった問題について日銀総裁としてはどのようにお考えになるか、実は大蔵の事務当局のほうからはそんなことは非常にむずかしいのではないかと聞いておるのですが、銀行筋のほうでむずかしいという話なんですが、そういう点についてどのようにお考えになっておられるか、そのことをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  48. 佐々木直

    佐々木参考人 いまの大蔵大臣の発言というのは私全然存じませんでございますが、ただ、そういう金額をきめあるいは一〇%という金利をつけるというようなことは、技術的にはなかなかむずかしいことではないかと思います。金額の面になりますと、名寄せをどういうふうにしてするかというような問題もございましょうし、それからさっき伊原参考人が言われたように、ほかの金利とのつり合いを考えますと、一〇%という金利はなかなかつけにくい。しかしながら、もちろんわれわれとしてはできるだけ預金の条件につきましてはこれを改善していくことが必要であると思います。したがって、昨年の暮れに始められました六カ月定期のああいうようなやり方は、あれの期限がやがてまいりますので、そういう時期にはぜひ何とか考えなければいかぬのではないか、そういうふうに考えております。
  49. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 こういった構想は預貯金をふやすという意味からもぜひ実行していただきたい、積極的に金融機関協力をしていただきたいと思うのです。  そこで、これは実はきょうの朝日新聞でありますが、個人預金がさっぱりだ、この一−三月はほとんど個人預金が銀行に集中してこない、政府もあの手この手で宝くじつきの預金あるいは郵便貯金あるいは保険まで宝くじをつけるというような、まさにギャンブル預金奨励という政策にきておるのですが、結果的に預貯金の高金利の条件下に入ってきておると私は思うのです。これを下げたんじゃ集まらないので、こういう物価高の中ではどうしても物価調整、物価スライドによる預金金利というのは無理にしても、ある程度の金利引き上げ、高金利時代というのがもうきておると思うのです。そういった場合に一番困るのは、こんなことを言うと失礼ですが、相銀の増田参考人も来ていただいておりますが、非常に弱い企業はこういう高金利には耐えられないと思うのです。しかし、好むと好まざるとにかかわらず、そういう時代の趨勢としてきているわけですから、この際一つの提案ですが、日銀の総裁あるいは伊部さん、伊原さん、増田さんから、簡単でけっこうなんですが、それぞれの銀行から出し合って一つの基金というものをつくっていったらどうか、そしてその基金の運用によって高金利時代の弱小企業を救済する措置というものを考えていく必要があるのではないかというふうに思うのですが、その点について高金利時代に即した銀行経営のあり方について私の申し上げていることが非常にむずかしいと思うのですが、構想としてどのようにお考えになるのか、簡単でけっこうですが、総裁以下それぞれお聞かせをいただきたいと思います。
  50. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまの御指摘の考え方というのは実はもう銀行にもございまして、これはまた後ほどほかの参考人からお話があるかもしれませんが、中小企業救済のための貸し出しのワクというものができまして、これは基金ではございませんけれども、その範囲内においてはできるだけいい条件で融資するという考え方が頭を出しておりますので、それはほかの参考人からも御説明があると思います。
  51. 伊部恭之助

    伊部参考人 いま日銀総裁が申されましたように、先般、先生がいまおっしゃったような趣旨で中小企業の特別緊急救済融資制度をつくりまして二千億円の中で非常によい条件で貸し出しをする。その対象は、さしあたっていまネオン業界が電力節減の影響を非常に受けまして弱っておりますから、まず最初としてネオン業界に対する貸し金を具体的にいま考えるというようなことが全国銀行協会のベースあるいは東京銀行協会のベースでそれぞれ行なわれておりますから、先生の御趣旨はそういう点で生きておるのではなかろうかと存じております。
  52. 伊原隆

    伊原参考人 ただいま伊部さんがお話しになりましたように、地方銀行協会といたしましても、中小企業の方に特別のワクとして一千億円のワクを設定いたしまして、特別の安い金利で奉仕をする。そのほか地方銀行は県や市の制度融資というふうなものも努力をいたしております。かたがた中小企業の方に対する金融につきましては十分な配慮をいたしております。
  53. 増田庫造

    増田参考人 ただいま松浦先生のお話のありました高金利に処して高い金利の預金をつくったらどうかというお話でございますけれども、先ほど申し上げましたように、相互銀行の出資実態というものは非常に利幅が少なくなっております。相互銀行は普通銀行さんと違って経費がよけいかかり過ぎるという面がございまして、高金利の預金をつくることにつきましては私は消極的に考えておるのでございます。時代の要請かもしれませんが、もしも相互銀行が高金利の預金を取り扱うことになりますと、これがまた貸し付け金利のほうに連動してくる、はね返るというような状態にもなりかねないのでございまして、なるべくは現況でとどめておいていただきたい。しかしこれは金融機関の競合の時代でございまして、すべての銀行さんがこうした高金利の預金を扱うということになりますれば、当然私のほうも扱うことにやぶさかでないのでありまして、その面において資金の吸収もはかっていきたいという考えは持っております。その点御了承いただきたいと思います。
  54. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もう時間がありませんから二つの点だけ質問いたしますが、その一つは、こういった状況ですから最近の銀行の預金勧誘はちょっと目に余るものがあるのですね。非常に預金勧誘が激しい。そういったものに対してある程度のやはり節度が必要じゃないか。もともと銀行マンというものはスマートでホワイトカラーで非常におっとりしておると思っておったのですが、最近は異常なぐらいの勧誘競争ですね。こういったものについてはやはりある程度節度をもっていくべきじゃないか。少なくとも預金勧誘競争的なことはこの際お互いに業界間で慎むべきじゃないかという点について直接的には伊部参考人伊原参考人からでけっこうでございますがお答えいただきたいと思います。  それからもう一つは、これは日銀総裁にお尋ねをしたいのですが、先ほど伊原参考人価格というのは自由競争原理、自由市場原理を中心にして物の値段、価格というものはきまるべきだということを言っておられるのですが、いま行政指導とかあるいは標準価格とかこういった行政による統制的な色彩の強い価格というものが市場を押えてきておる。これは緊急避難ということなんですけれどもね。しかしこれがわれわれから判断するとどうも長期化するのじゃないかという警戒の念を持っておるのです。ですからこの緊急避難的な措置というのは日銀総裁はどのあたりまでを緊急避難と見ておられるのか、この点をひとつ日銀総裁個人の御意見でけっこうですが、お聞かせいただきたいということを申し上げて、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  55. 伊部恭之助

    伊部参考人 お答えいたします。  先生の御指摘がございましたが、ただいま銀行は本来の姿といたしましてはやはり預金の増強に熱意を燃やしております。経営を拡大していくということは、その間きわめてフェアな、しかも社会に迷惑のかからないようないい意味のサービスの競争その他を通じまして、そういうことが行なわれるということが望ましいとは存じまするが、最近世上いま先生の御質問の御趣旨のようなことも耳にいたしまするので、全国銀行協会といたしましてはその他のいろいろな金融機関としての社会的な責任をどういう形で新しく原点に帰って負うべきかというような趣旨で、委員会を設けまして、いろいろ検討いたしておりまするが、その中にも行き過ぎた競争を排除するというようなこともやはり載っておりまして、いろいろございまするが、たとえば現下の状況にかんがみまして銀行が対外的なたとえばはでな記念パーティーをやって記念品の贈呈をやるというようなことや、記念行事、店舗新設の場合を除きまして、こういうような意味のないパーティーなどをやって、それがやはり過当競争の一つのあらわれになるというようなことはやめようではなかろうかというような自粛措置でございますとか、あるいは預金勧誘に際しまして、預金者、産業界等から非難を受けるような行き過ぎのないように、厳に慎むことにするというようなことを通達を出しておりまして、その点については大いに意を用いておるつもりでございます。
  56. 伊原隆

    伊原参考人 ただいまの松浦先生の預金の問題でございますが、率直に申し上げまして、私どもことに東京の近郊で営業を営んでおります者につきましては、なかなか預金の過当競争というものは頭の痛い問題でございまして、このごろは内部を一生懸命で秩序を立てませんと、いろいろな事故等も起こりますので、内部事務を一生懸命やらなければならない。しかし一方預金の競争が激しいということでは非常に困っておりますので、何とか業界が全体で自粛をしていく方向にまいりたいと思います。実は大蔵省にもお願いをいたしまして、店舗の設置の問題などもお客さま本位で考えていただいて、銀行のほうがおれはここへ出したいというふうなことで、必要のないところへたくさん出てくるというようなことも一つの競争の背景になり得るのであります。そういうような点も実はお願いを申し上げておる次第であります。  第二の価格の問題で私の申し上げた点に若干補足させていただきたいのですが、新しい石油値上げに伴うコストの修正につきましては、どうしてもできるだけ自由価格と申しますか、自由市場原理でやっていきませんと、長もちがしないような気がいたします。たとえば百貨店のほうからそういうふうな物がだんだん隠れてしまうとか、輸出に向いてしまうとかいうふうなこともありますので、自由市場原理が必要だと思いますが、大局的の計数を私政府のほうから伺いますと、この間の十一、十二、一の卸売り物価が三カ月で二割上がってしまった。しかしあと石油の改定、電力の改定、賃金等を含んでもそれほどにはならない、一割以下じゃないか。したがって内に含んでしまっておるので、物価水準全体を押し上げるような理論値にはならないというふうなお話も伺っておりますので、全体を引き締めて狂乱が起こらないようなさっきの総需要抑制を続けながら、だんだんに自由にしていただければ何とかうまくいくのじゃないかというようなことが、私の地方から見た感じでございます。
  57. 佐々木直

    佐々木参考人 いまの経済体制のもとでは、さっき伊原参考人が言われた原則的には、やはり自由に価格というものが決定されるという筋合いと思います。しかしながらただいまもお話がありましたように、去年の秋の石油危機以来の価格上昇は、まことに論外な上がり方でございますから、そういうものをすでに通ってきた今日の原油価格上昇の一般石油製品に対する影響のさせ方にコントロールが入るのは、緊急避難としてこれは当然であって、ぜひやってもらわなければならない点だと思います。しかしそれは主として過去のそういう問題の処理が重点でございますから、やはりこういうコントロールはできるだけ早く、機会を見てだんだん解いていくという筋合いであろう、こういうふうに考えております。
  58. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 どうもたいへんありがとうございました。
  59. 平林剛

  60. 野間友一

    野間委員 どうも皆さん御苦労さまです。  昨年の十二月二十五日、それからたしかことしの二月二十八日だったと思いますけれども大蔵省銀行局長からいわゆる選別融資規制、そういう通達が出されておるわけです。いま日銀総裁お話もありましたけれども、具体的にこの大蔵省方針を受けて、特に抑制すべきそういう融資について、どのような基準を設けて、どのような具体的な指導をされておるのか、チェックされておるのか、このあたりからまずお伺いしたいと思います。
  61. 佐々木直

    佐々木参考人 これはたとえば不動産業の例をとりますと、その不動産業に対する融資伸び率、要するに増加率を幾らにするかというふうに具体的に指導しておりまして、ある場合には、たとえば総体の貸し出し伸び率の範囲内で伸び率を押えるという場合と、それから増加をもっと積極的に押えていくやり方と、その時期、その状況によっていろいろ変えておりますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、結局いまやっておりますことは、みな伸ばすのを押える、いわゆる消極的な面だけが選別方針として打ち出されておるのが実情でございます。
  62. 野間友一

    野間委員 大蔵省の通達によりますとかなり具体的に、たとえば卸、小売り、これは中小企業を当然除くわけですけれども、あるいは土地取得に関する資金とかあるいは積み増し、売り惜しみ等々の投機的利益につながる資金とか、こういうかなり具体的に一定の基準を設けておるわけですけれども、日銀のほうはそれを受けて当然規制をしておられると思うのですが、この点についてはそういうふうにお伺いしていいわけですか。
  63. 佐々木直

    佐々木参考人 私もこまかい一々のあれについてちょっといま承知しておりませんが、日本銀行の場合には、大蔵省が通牒を各金融機関に出しておられまして、われわれは各銀行貸し出しの毎月の増加を見ておりますから、その中でそういう大蔵省から指摘されております業種に対する貸し出し伸び率大蔵省の指導のラインでおさまっているかどうかを、うしろからそれぞれトレースしておるという実情でございます。
  64. 野間友一

    野間委員 先ほど自民党の加藤委員のほうからも若干話があったのですけれども政府系の金融機関については、いま大蔵省のほうで反社会的な行為の基準を設けて、そして貸し出しとか回収等々についていま進められておるわけです。もうしばらくたつとこれは出ると思いますけれども、たとえば法律違反で起訴または告発された場合、それから生活安定法あるいは需給適正化法、これに基づく指示に従わないため公表された場合とか、この法律に基づく売り渡し命令、これが出された場合、その他政府の施策に違反する重大な事実があった場合、大体三つの基準を設けまして、開発銀行あるいは輸出入銀行、これらの貸し出し等々について実施するこういう基準が設けられておるわけです。これは私も予算委員会等々で政府大蔵省のいろいろな機関に問いただしておるわけですけれども、このことはやはり民間の機関においても同じように、このような基準を設けて抑制する必要があるのじゃないかと私は思うわけです。この点については加藤委員と逆の立場ですけれども、といいますのは、商社等、これは昨年、四十七年の暮れから四十八年初めにかけての買い占め売り惜しみ、それからさらに、たとえば伊藤忠商事が、政府が在庫の調査をする、その際に分散化あるいはマークのつけかえ等の指示文書を流しておる、こういう実態から考えまして、いやしくも法律に違反、たとえば石油会社の場合にはやみカルテルの問題、石油だけじゃありませんけれども、こういうふうにいろいろな反社会的な行為をした企業については、単に政府系の金融機関だけじゃなしに、民間の金融機関についてもやはり一定の基準を設けて規制していく、このことは、やはりそれによって買い占め売り惜しみ等々の反社会的な行為をチェックするという大きな機能を果たすと思うのです。先ほど総裁も言われたけれども、確かに金融面でのチェックというのは消極的という話がありました。そういう機能はありますけれども、ここできっちり基準を設けてそうして規制していくということが私は当然必要になってくると思う。この点について日銀の総裁はどのようにお考えになっておられるか。特に民間企業についても、たとえば大蔵省の通達によりますと生活安定法あるいは需給適正化法、これらに違反して公表されたものに対する資金はこれを抑制するということも一つの内容になっているわけですね。この点については、政府金融機関の中でのこの基準の一つにも該当するわけです。この点についてひとつ日銀総裁の御見解を承りたいと思います。
  65. 佐々木直

    佐々木参考人 商社の問題につきましては、実はいますでに融資の面で大蔵省から通牒が出ておりまして、商社に対してこれ以上どんどん大幅に貸し出しを増加するということは行なわれません。そういう意味で総量については一応いまブレーキがかけられておりますが、先ほど伊部参考人からもお話しがありましたように、現実にとにかく動いて経済活動をやっております、そういう企業金融を全然とめてしまうということは、それはやはり適当ではないと思います。また石油関係などにつきましても、実はいま高い価格石油の輸入決済が、例の外貨のユーザンスで決済されておりますけれども、まだ円金融には影響が及んでおりません。ところがこの五月、六月になりますとそのユーザンスの期限が参りますので、そのときに石油会社というのは非常にたくさんの円資金が要るわけでございますが、もし石油会社に何か問題かあるからといってこれに金融をつけないことになりますと、全体の金融運営に非常な混乱を起こすような問題もございますので、やはり企業の正すべきところはいろいろ正さなければなりませんが、少なくともその企業経済活動を否定されない限り、それに必要な資金を最小限度供給するということは、これは必要ではないか、こういうふうに考えます。
  66. 野間友一

    野間委員 私も全面的にという、いま動いておる企業全体についてというふうに申し上げたわけではありませんで、いわゆる反社会的な行為を行なったものについての一つの規制、こういう見地からお話をお伺いしたわけであります。といいますのは、これはくどいようですけれども、あれだけ世論の糾弾を浴びて、そうして通産省が商社のいろいろな基準をつくって、しかもこれから調査あるいは監視をしていくといわれながら、なおかつだぶつく資金をもってそういう投機に走っておる。これは伊藤忠の場合には通産省が初めて投機防止法、これの五条を適用して調査する、こういうことまで、強制調査をやったわけですね。そういう点から考えて、私はまた公取のいろいろな商社の調査の報告を見ましても、金融引き締めによってもまだ過剰流動性は断たれていない、こういう報告内容もあるわけですね。特に私思うのは、たとえばことしのたしか一月二十三日だったと思いますけれども、大量のドル買い七億、これは一位二位全部、商社が占めております。大体そのうちで正常な商いが三億五千万ドルあるいは四億ですか、そのほかはこれはまた一つの投機をしておるわけです。これはかなり金があると思うのです。いろいろ大蔵省に聞いてみますと、なるほど預貯金の取りくずしというものもあるようですけれども、商社の金融をどう規制するかということは非常にむずかしいと思うのです。先ほどからも話がありましたけれども、たとえば株式保有とかあるいは商社金融とか、そういうことによってメーカーはじめすべて系列化していっておる。ですから、銀行窓口には商社が直接出てこなくても、いろいろな自分の系列下、そういうところが借り出して、それが商社に回ってくる、これはいなめない事実だと思う。これらを規制しなければ、総需要抑制あるいは金融引き締めというようなことで一般的、形式的に考えても、なかなかこれはとまるものではない。これに対してどう効果的に規制していくかということがいま非常に大きな問題だと思うのです。これは日銀総裁が午前中に帰られますので、総裁だけに御答弁を願って、あとまた午後にほかの方にはお聞きしたいと思いますので、その点についていかがお考えか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  67. 佐々木直

    佐々木参考人 確かに商社の金融というのは非常にコントロールがしにくい仕組みになっております。おそらく商社の経理担当の人でも個々資金需要に対して具体的にそれがどういうプロセスで出てきているかということまではなかなかトレースできていないのではないかと思います。したがいまして、たとえばきょう総体として幾ら金が必要だといったような最後のしりでの検討が行なわれているということではないかと思います。したがいまして、商社の金融の締め方というのは非常にむずかしくて、現在やっておりますような銀行側からの貸し増しを押えるというやり方が当面としては現実にとり得る手段だと思います。したがいまして、問題はむしろ、先ほども申し上げましたけれども、商社の活動範囲というものをどういうふうに考えていくのか、それから商社の仕事のしかたというものをどういうふうに考えていくのか、いまのように何でもできるという形でいいのかどうかというような基本的な問題についての検討が必要ではないかというふうに考えます。
  68. 野間友一

    野間委員 非常に抽象的なお答えなんですけれども。話を戻しますと、いま私がお聞きしておるのは、反社会的な行動をした場合のチェックですけれども、それについて、繰り返しになりますが、民間の場合にそういう一つの基準で規制すべきだというふうにはお考えにならないのかどうか、その点再度お伺いしたいと思います。
  69. 佐々木直

    佐々木参考人 反社会的なことをやった企業に対して、その企業がまだ仕事はしておるわけでございますから、それに対して、私がさっき申し上げました石油に例をとりましたのは、ある石油会社がもし反社会的な企業であるというふうに指摘された場合、それに対していままでの金はそのまま続けるにいたしましても、今後たとえば石油価格上昇による決済資金需要増加が出てきたときに、反社会的なことがあったということでその決済のために必要な金繰りをとめてしまうということになりますと、その企業としては、成り立っていかないようなことになる。その原因がほかの新しい仕事を積極的にやったために金が要るというのならば、それは押えてしかるべきだと思いますけれども、いままでと同じ数量の石油を輸入するという仕事を続けていることに必要な資金の調達まで押えてしまうということはやはり現実的でないのではないか、こういうふうに思います。
  70. 野間友一

    野間委員 時間がありませんので、質問を次に移していきたいと思います。  いま預貯金の目減りの問題がございましたけれども、確かにたいへんな事態だと思うのです。これは消費者物価の指数から考えましても、たとえば二月で対前年同月比二六・三%、ところが銀行の利率は一年ものの定期で七・二五、二年で七・五ですね。これはまさに貯金すればするほどこれだけ減っていく。いま個人の預金が非常に深刻だという話がありました。だから、こういう事態の中で、これは何度も質問が出たわけですけれども、どうしても預貯金の金利を引き上げるということ、これはいろいろむずかしい問題があるというようなことをいまお話しになりましたが、これは何としても考えていかなければならぬ、こう思うわけです。しかも、ふしぎなことには、特に全国銀行等々の商社に対する貸し出しを見ますと、非常に金利が安いわけです。ある商社の借り入れ金の金利を調べてみますと、年利率大体五%から五・五%以下です。これが総借り入れの大体五〇%以上を占めておるわけです。これは公取のほうも報告書を各六大商社から出させて、その結果についてもすでに文書でまとめておりますし、私、これまた委員会の中でも公取にただしたところが間違いない、こういう答弁もあるわけですね。つまり、これは公定歩合すれすれか、あるいはそのままで商社に金がどんどん流れている、こういうことを私は意味すると思うのです。これは四十八年三月末ですから現在の公定歩合とば違うわけです。おそらくその当時は四・五%くらいじゃなかったかと思うのですけれども。いずれにしても五%から五・五%で、商社の全借り入れの半分はそれだけの金利で全部できておる。ところが一方、中小企業等々については金利が高い。これは政府系の機関であっても非常に高いわけですね。また、いま申し上げた零細な預金者の利率は、まさに割りに合わぬようないろいろな複雑な、不公平な仕組みにはなっておると思うのです。  いろいろ申し上げたけれども、こういうふうに一方では公定歩合すれすれ、あるいは同程度で商社に銀行がどんどん流していく。これは伊部参考人のところと取引のあるある商社ですけれども。ですから、低利でどんどん商社に流れていく。ところが一方、中小企業貸し出しのワクを非常に締められて、そうして倒産や自殺者が出る、こういうのがいまの実態だと思うのです。こういう現象を日銀総裁は一体どのようにお考えになるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  71. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまの金利の水準の問題は、いまお話がございましたように昭和四十八年三月でございまして、実はそれまで引き締めを始めておりましたけれども、まだ公定歩合に手をつけておりませんで、四月に最初の、今度の引き締めの中での公定歩合の引き上げを行ないました。したがって、三月末は公定歩合は四・二五でございます。したがって、標準金利という主として大きな企業に対して貸す金利は、それよりも〇・二五上へきめておりましたから、そのときに四・五%であったんではないかと思います。しかし、現在はもう九%に公定歩合を上げておりますから九・二五になっておって、商社の場合にもそういう調達金利はやはり五%から五・五でなくて九・五とか、そういうことになっておるんではないかと思います。それから、その間において預金金利もずっと上げてまいりましたので、そういう点も三月のときとは模様が違っておると思います。  そういう意味で、われわれとしては、いまもお話がございましたような預金の条件をできるだけよくすることにもちろん今後も努力してまいりたいと思いますので、そういう意味での努力は決して私ども怠ってはならない、こういうふうに思います。
  72. 野間友一

    野間委員 最後に一問だけですが、こういう投機を防止するための融資抑制ということを私強調して申し上げておるのですけれども、その一つの方法として、たとえばそういうのは商社等々についての貸し出し金利、これはどうもやはり公定歩合とかあるいはそれすれすれのものでこういうところにどんどん流れていくということに問題があるのであって、だからそういう場合には金利を上げるということも一つの抑制の方法である、その機能を果たすというふうに私は考えるわけですね。そういう方向もぜひやはり一つの手段として考えるべきじゃないかというふうに思うわけですけれども、その点について……。
  73. 佐々木直

    佐々木参考人 確かに御指摘のような点もあると思います。そういう点も考慮しなければいかぬかと思いますが、当面はやはり量で押えてしまう、金自身を出さないということのほうがよくきくのではないか。いまはそちらのほうに重点がかかっておるのが実情でございます。
  74. 野間友一

    野間委員 ですからその点、これはいま石油ショックによって、いろいろ選別融資規制問題が当面緊急事態になっておりますけれども、短期的にも長期的にもこういう商社金融、特に安く借りたものが系列化のためにどんどん高利で貸し付けがされていく、そして不況になれば自分の系列下の企業を切っていって打撃を与える、こういう機能もずいぶん果たしているわけですね。だからそういう意味で特に商社に対する金利、金融について、これはいま多少前向きな話が総裁にもございましたけれども、そういう方向でぜひ真剣に検討していただきたい。お願いしたいと思うのですけれども、いかがですか。
  75. 佐々木直

    佐々木参考人 どうもいまの金利の点は、制度として中央銀行から打ち出すということはなかなかやりにくいのでございまして、そういう点は取引銀行の中でもあまり好ましくない資金の運用をしているようなところに対して、そのいろいろのケースに応じて判断されるという性質のものではないかと思います。
  76. 野間友一

    野間委員 終わります。
  77. 平林剛

    平林委員長 次に、和田耕作君。
  78. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 先ほど日銀総裁から総需要抑制効果が相当あがっておるというお話がございました。そしてまた全国銀行あるいは地銀、信用金庫のほうでは引き締め効果はあがっておる、これも相当浸透して倒産等の問題が起こっておるという御指摘がございました。日銀総裁のほうは、かなり効果はあがっておるけれども今後のまだ予断を許さない状態があり、心理的な問題もあるので、引き締めは当分続けていくべきだというお話がありまして、市中銀行その他日銀等のほうからは、政府の要請には協力していくという前提を持ちながらも倒産があっていよいよ不況が進行しておるので、何とか緩和をしてもらいたいというニュアンスを持った発言があったと思います。  そこで日銀総裁にお伺いしたいのですけれども総裁もしばしばあまり統制的なことは好ましくないという発言もありましたので、いずれ緩和するような時期を見ておると思うのです。いつやるかということについてはお答えできないと思うのですが、どのような状態になれば総需要抑制をある程度緩和するという時期になるのか、その状態をどういうふうにお考えになっておられるのか、お伺いしたい。
  79. 佐々木直

    佐々木参考人 私ども政策当局といたしましては、現在の政策を当分続けるということが現在一番必要なやり方であるというふうに判断しております。ただ倒産が増加しておる事実も確かでございますし、われわれとしてもその倒産のふえ方またその原因等々につきましては、非常に注意深く見ておりまして、場合によりましては適当な、具体的な救済手段というようなものも用意しなければならぬ場合も覚悟しております。しかしながら総体としての政策運営につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。  では、この政策をいつ転換できるかという問題でございますけれども、時期はもちろんわかりませんが、私どもとしてはいままでのこういう政策というものが総需要抑制、さらに具体的に物価問題につきましては国内需給関係から物価が上がるというようなことのないように、こういう政策が必要であるというふうに考えておるわけであります。したがいまして、今後いろいろな事情が落ちついてまいりまして、国内需給関係あるいは物価のものの考え方というようなものがすっかり落ちついて、心理的な反作用というようなものも金融緩和によって引き起こされる可能性はまずないというふうに考えられたときには、そこで転回が可能ではないか、こういうふうに思っております。
  80. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 物価が安定する、もう再びああいう狂乱物価的な要因がなくなったという判断をしたときに、総需要の問題についての緩和その他のことは考えるというように承りました。その場合の物価の安定状態というのはどのような物価状態をお考えになっておられますか。
  81. 佐々木直

    佐々木参考人 この点はどうもなかなか具体的には申し上げかねるものでありますが、私どもの考え方としては、要するに国内要因国内における需給状況、それから人々の物価についての心理状態、そういうものを見て、それが物価上昇にはつながらないというふうに考えられたときというふうに私は考えております。したがいまして、たとえばまた石油価格が上がるとかそういうような海外の要因国内物価影響があり、それが物価上昇につながりましても、国内情勢が落ちついておれば、そのときには、国内政策立場からは落ちついてきたという判断が可能の場合もあり得ると思います。
  82. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 国際的な物価国内物価影響する率は非常に大きいと思うのですけれども、いまのお話で国際物価については国内でいろいろの対策をする範囲が非常に狭められておるわけで、これは一応おくとして、国内的な諸条件が安定的なものとして確認できればといういまのお話と承っていいわけですね。——その場合に、二月中旬から三月にかけて卸売り物価は一応横ばいになってきた、あるいは消費者物価も三月には横ばいの傾向が出てきたというお話がありましたが、その場合に、今後は物価の安定というのは二月、三月の卸、小売りの状態を基準にしてお考えになるのかどうかということですね。この点いかがでしょう。
  83. 佐々木直

    佐々木参考人 物価水準といたしましては、二月、三月を基準というぐあいにはまだいかないのではないか。まだ今後、たとえば三月の物価などでも、実は石油製品価格上昇が三月十八日からでございましたので、三月の卸売り物価には日割り計算でしか入っておらない状態でございます。したがってそれは四月にまた相当引き上げの原因になってまいると思いますので、まだ基準時をどこにとるかということはいまのところきめにくい状態ではないかと思います。
  84. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そうなりますと、今後石油製品関係値上げがある、電力値上げがある、食料品の値上げがある、一連の重要な影響を持つあれがあるわけですね。少なくとも三月水準よりは卸、小売りとも高い水準ということが当然考えられるわけです。そういうことになりますと、田中総理もこの問題についてはいろいろと答弁をやり変えたりなんかしておられる、いつか、昨年の十月並みが普通の安定物価の基準だなんて言ったこともありますが、そういうことはもう机上の議論であって、少なくとも現在の三月の卸、小売りの物価よりはかなりレベルの高い水準が今後の安定した物価水準だ、このように考えられるべきだと思うのですけれども、いかがでしょう。それでよろしゅうございましょうか。
  85. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま例にとりました石油製品価格上昇の問題、それからやがて実行されるでありましょう電力料金の引き上げ、そういうことを考えますと、ただいまの水準よりはある程度高くならざるを得ないと考えます。
  86. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 実は私は一番小さな政党でございまして、質問時間をいろいろ五分、三分とお恵みをいただいて十五分しかないのですけれども、もうだんだん時間が迫ってくるのですが、あとで午後にまたお伺いしたいと思います。  日銀総裁になおお伺いしたいのは、総需要抑制という問題を全般的に考える前に、先ほどもお話があったとおり、いま電力は非常に困っておるから電力のほうには資金を流してあげる。まあいま一番困っているのは不動産、特に中ぐらいの建築業者ですね。こういう困っている人に対しては、電力業に対しての配慮と同じようなあるいは似かよった配慮ができるとお思いになるか、あるいはそれはしばしもまかりならぬのだというふうにお考えになるのか、その点いかがでございましょう。
  87. 佐々木直

    佐々木参考人 電力の場合にはあの性格からいいまして、それからまた最近の採算の問題等から考えまして、そのよってくる理由が電力会社としてはやむを得ない状態でございますので、特別に——特別にと申しましてもわれわれの今度の窓口指導の範囲内でやってもらうことにはしておりますが、考えたわけでございます。そういうような筋合いから考えますと、ただいま例におあげになったような場合にはそういう特別な考え方というのは適用できないというふうに考えます。
  88. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 総裁はこの半月ほど前に、日本ははっきりスタグフレーションの状態に入っていくんだという言明をなされたことがございましたが、いま伊部さんのほうからもそのことに触れられたのですが、これは金融業界としてはほとんど一致した見解ですか。
  89. 佐々木直

    佐々木参考人 実はスタグフレーションということばの定義が、いろいろの考え方がございまして、そうはっきりしたものではございません。せんだっての私の申しましたのも、記者会見でいまをスタグフレーションと考えるかという御質問がありまして、私は、スタグフレーションということばのとり方が問題だけれども、たとえば四十九年度の日本の経済伸び率政府の見通しでも実質二・五%である。それから先ほどからお話がございましたように、物価がまた二月、三月の水準からある程度上がるということも予想される。それで、いままでの日本の経済の成長から考えますと、二・五というのはある程度停滞的な感じがするものでありますから、英語のスタグネーションというのはそういう二・五という程度の低い成長率をスタグネーションといい、それから物価が上がることをインフレーションというのであればスタグフレーションということばに当たることになるのかもしれない、そういうふうに答えたわけでございまして、問題は、こういう呼び方ができるかできないかという問題よりも、実質的に二・五の成長率がいいのかどうか、それをもう少し何とかする必要があるのかどうか、あるいは物価上昇率をそれ以上上げないで、もっと押え込むことができるかどうか、そちらのほうが大事な問題である、こう考えております。
  90. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 最後にお伺いしたいのですが、先ほどから各委員の質問にありましたとおり、例の貯金の目減りの問題ですね。これは日銀総裁をはじめ金融機関を預かりている方、貯金を預かっている人は、貨幣価値の維持ということを中心に考えるべきものだと思うのですね。実は、きのうもこの問題を公式に提起した全繊同盟の諸君が大阪の地裁に提訴したいきさつを話しておりましたが、同盟全体の集会で、かなり無理があった集会で、この問題については同盟各単産が相当協力して進めていこうという話もありました。先ほど社会党さんのほうからも、共産党さんのほうからも、自民党さんのほうからはまっ先にこの問題を取り上げられたところを見ると、これは単に労働組合だけでなくて国民的な一つの要望になっていくと思う。またこれは当然のことだと思うのです。これに対して大蔵大臣もいろいろのお答えをしているのですけれども金融機関としてはやはりこの問題に限って早急に対策委員会でも連絡会議でもつくって検討すべきだと私は思うのです。この点、日銀総裁と各銀行参考人方々の御意見を簡単でけっこうですからお聞かせいただきたい。私はそういう連絡会議をつくって真剣に取り組むという姿勢が今後の貯蓄の問題についても影響を持つと思うので、あえて申し上げる次第でございますけれども、いかがでしょう。
  91. 佐々木直

    佐々木参考人 この問題は確かに御指摘のとおりでございまして、われわれとしてもできるだけいい条件を考えていかなければならぬと思います。ただ、こういう問題を考えてまいりますのには、すでにそれぞれ、銀行協会にもいろいろそういう委員会がございまして、そういう問題をいつでも取り上げることができるようにもなっておりますので、これのために特に新しい組織をつくるということは現実には必要はないのではないかというふうに感じております。
  92. 伊部恭之助

    伊部参考人 お答え申し上げます。  私もいま先生がおっしゃいましたように、金融機関、人のお金をお預りするその金が目減りをしてまいるということは、全く私個人としては、これはやはり何とかしなければならぬ問題だということを非常に真剣に痛感をいたしておるのでございますが、先ほど来いろいろ議論に出ましたように、これが他のいろいろな金利、利回りに影響をいたしますので、元来預金金利の決定には非常に複雑な法律に基づいた手続がございますのでもおわかりいただけますように、金融機関だけで独自にどうということもできないところに非常に悩みがございまして、私どもといたしましては、各方面に何かいい知恵はないかということを真剣にお願いをしておる次第でございます。
  93. 伊原隆

    伊原参考人 ただいま和田先生のおっしゃいますように、私どもも貨幣の価値の復権と申しますか、何としてもそういたさなければ金融機関としては生命線であるという点につきましては、全く同意見でございます。私ども全国に頭取さんが散らばっておりますのですが、一月に一回ずつ会合を持っております。その会合の中で長期経営委員会という委員会を設けております。そこで一生懸命で研究をいたしております。この問題は少し広い視野で腰を落として勉強すべき問題のように私ども心得ております。
  94. 増田庫造

    増田参考人 ただいまの目減りの問題、まことに同感に考える面もございますけれども、相互銀行といたしますと、総体のわが国の預金が百兆円の中でもって相互銀行は大体十一兆円でございまして、総体に占めるウエートの低い銀行でございますので、他の金融機関あるいは政府におきまして何か名案、対策を考えていただきますれば、相互銀行としてもそれに同調していくにやぶさかでないのでございまして、当面私どもとして何かうまい案というのは考えつかないような状態でございまして、その点はひとつ御了承いただきたいと存じます。
  95. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 時間が過ぎました。それで最後に一言。  私、先ほど今後の物価水準というものについてお伺いしたのですけれども、御答弁がございましたように、現在よりはまだ相当高くなるということが考えられる時期ですから、なおさら目減りという問題については真剣に御検討いただきたいと思います。政府関係機関に対しても、私ども根気よく検討を迫ってまいりますけれども、ひとつよろしく御配慮いただきたいと思います。きょうはどうもありがとうございました。
  96. 平林剛

    平林委員長 この際、午後一時五十分まで休憩いたします。    午後零時五十分休憩      ————◇—————    午後一時五十五分開議
  97. 平林剛

    平林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。片岡清一君。
  98. 片岡清一

    ○片岡委員 けさほどから参考人各位からいろいろ貴重なる御意見を拝聴させていただいたのでございますが、私はそれぞれの参考人のおっしゃいましたように、総需要抑制効果がようやくあらわれて物価の方面もやや鎮静のきみに向かってきたということで、それをたいへん喜ばしいことであると存ずるのでございますが、先ほどからもお話のございましたように、先般三月の十八日の石油の値上がり、ことに昨日でございますか、参議院の予算委員会で石連の会長さんが、この前の値上げでは十分でない、さらに相当の値上げをしていかなければ赤字経営でどうにもならぬ、こういうお話でございます。  そういうことから、次いで電力料の値上げというものも近く行なわれるということになりますと、これが物価にさらに何らかの影響を及ぼすということをたいへん心配するわけでございますが、私はさらにただいま行なわれておる春闘によるところの労働賃金の大幅の値上げ、これが今後の物価の上にどういう大きな影響を及ぼすかということについて私はたいへん心配をするのでございます。  その点について、私は特に伊原参考人に御見解をお伺いいたしたいのであります。といいますのは、伊原参考人は長らく大蔵省で、いわゆる大蔵官僚で行政の面にも通じておいでになる。そして、いま地方銀行協会の会長をしておられる。そういう関係から私はお伺いをいたしたいのでございますが、日本の産業体制というものは六〇年代においては高度の成長を遂げまして、したがってその間消費者物価も毎年五%ないし六%ということで卸売り物価が横ばいであったということで、非常に健全な足取りをしてまいったのでございますが、それはその当時賃金は毎年大体一五%程度アップになっておったということでございます。しかしながら、これらの賃金のアップは、私は高度の経済成長によりまして、製造工業における労働生産性の進展によってその賃上げを十分吸収して健全な形で推移してきたと思うのでございますが、その後日本の高度経済成長が大きなひずみを出してきて、そして大きな反省期に入りました。ことに昨年の石油ショックから一そう、日本の経済成長のあり方についていままでのような無反省な高度成長でなしに安定成長へと切りかえる、こういうことになっておるのであると同時に、日本が資源を外国から輸入しておるという立場からできるだけ資源の消費の少ない産業への切りかえ、省エネルギー、省資源の産業へと切りかえる、こういう方針をいま政府はやりつつあるわけでございまして、これは安定成長の立場と同時に、資源問題を考えましたときに、当然日本としてたどらなければならぬ道だと思うのでございます。そういたしますと、この公害問題等につきましても、銀行融資その他の資金引き締め等があるわけでございますが、その中においてもいままでのようにその産業設備投資のための融資でなしに、融資をするにしてもやはり福祉的な諸施設、社会公共の施設、そういうものに主眼を置いて金融が行なわれなければならぬ、こういうことになっておると同時に、私は、産業のそういう形態から申しまして、日本の産業のあり方からして、いまのようにせっかく芽ばえを出してきた物価がこのまま直ちにおさまるということにはとてもいくまい、やはり物価は今後もある程度どんどん上がっていくものと思いますし、産業の形態からいうてもそういう傾向、いわゆる第三次、第四次産業というものが栄えてくるということになると、それに応ずる物価の高騰、騰貴というものが考えられると思います。そういうときにさらに大幅の賃金が毎年、春闘あるいは一つの闘争の繰り返しによって上がっていくということになると、今後の産業の体制から申しまして、はたして労働生産性がそれを吸収するに足ることになるかどうか、これは私は非常に疑わしいように思われるのでございます。そうなると、そういう賃金の上昇というものが無反省に行なわれるとそれが物価に大きくはね返ってくるおそれがあると思うのでございます。そういう意味において、所得政策をとるなんということはゆゆしき問題で容易に考えるべきではないが、少なくともこういう情勢において、日本の今後の経済体制からも、いままでのような景気のよい賃上げというものはとても考えられぬ、よほど抑制した形において行なわれなければならぬ、かように思うのでございますが、金融を担当せられ、またがって行政を担当せられた伊原参考人がこれに対してどういう御見解をお持ちかお教えを願いたい、かように思う次第でございます。
  99. 伊原隆

    伊原参考人 片岡先生にお答えを申し上げます。  たいへんむずかしい問題でございますが、まず第一に、最近の経済情勢に関連をいたしまして私ども一番初めに申し上げましたように、総需要抑制ということが相当効果をあげてまいりましたので、各地方のいろんな中小企業さんその他の企業のお考えが、何と申しますか売り手市場から買い手市場にだんだん変わってきたり在庫がふえてきた、しかも世論の批評も強いということで値上げをしていくことがなかなかむずかしいような情勢になってきたように思うのであります。したがいまして、ただいまお話がございましたように、石油価格が改定になるということに関連いたしました価格の改定がどういうふうな影響を全体の物価水準に及ぼすかというときにも、その背景を考えてみますと、これは正しいかどうかちょっとわかりませんですが、ある政府の方に伺いますと、先ほど申し上げましたように十一月、十二月、一月ごろの三カ月間の卸売り物価の急騰が年率にいたしまして二割をこえておるということでございます。理論的に今後の石油価格の改定あるいは電力の改定、場合によりましたら賃金の改定の卸売り物価への波及効果を考えても、これは全くの理論値のようでございますが、一〇%にならないというふうなことを伺っております。したがいまして、さっき申し上げましたような全体の空気が異常乾燥のような事態から相当空気がしめってきておって、火が燃え移らないというふうな環境をもう少し維持をいたしてまいりますれば、価格の改定がそれほど卸売り物価全体の水準に、まあでこぼこはあると思いますが、影響を及ぼさないでおさまっていくのではないかなというふうなことを私ども感じております。これは政府のほうが数字を持っていらっしゃいますのでわかりませんが、全体の空気からいいますと、したがって中小企業の方は、原価は上がる、それから賃金も上がる、しかしいままでのように安易に物価に転嫁できない背景になってきた、なかなか売れないということで、経営状況が非常に圧迫されるんじゃないかという心配をいたしております。そういうふうなわけで、新価格体系といいますと何か上がる水準を予想するようでございますが、あまり上がらない水準で国際的な物価影響を吸収し得るような環境を金融引き締めとか総需要抑制で維持しながら、なるべく改定を自由市場原理をも含めてやっていけばいいんじゃないかというふうに考えます。  その中で賃金の問題でございますけれども、仰せのとおりこれから安定成長、成長率も落ちますし、そういうふうな中での賃金ということになりますと、中小企業経営者の方あたりも非常に心配をしておられます。したがいまして、どうか労使の間で良識のある話し合いが行なわれますことを私ども期待いたしております。昔、先生のおっしゃったように私も大蔵省におりますころ会社経理統制令というふうなものを担当させられまして、物価、賃金、配当、給与、そういうふうなものを統制をせざるを得ない衝に当たらせられたのでありますけれども、現在の段階でそういうことをすることは私どもはとうてい不可能でもあり非常に不適当であると考えますので、企業の間で労使の良識ある話し合いができますように、また同時に私どもといたしましても、物価を安定することが第一でございまして、非常な物価高の中で賃金の所得者もたいへん困っておりますから、そういうふうな点を達成しながらまいることが必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  100. 片岡清一

    ○片岡委員 ただいまお話がございましたように、昔のようないわゆる所得政策というものは安易にとることのできないことは当然と思います。しかしながら一般の大衆からいいますと、ようやく物価落ちつきかけておるときに、今度春闘というのがたいへん勇ましいかっこうで、しかもゼネストに訴えるというような、いわば社会の公安をあまり考慮しない、無視したやり方によって高賃金をかちとろうとする。中には所得の低い人たちの立場を考えながらということもあるのですが、相当大幅な賃上げをかちとろうということに対して、やはり一般大衆は非常に心配しておると私は思うのです。いままでのように高度の成長を遂げる場合には何とかそれを吸収する能力があったとしても、そうでない現実の姿においてはたいへん問題になる。したがっていまお話しのように労使の話し合いというものでどこまでも良識をもってお互いにやっていっていただきたいものだということを私は切に思っておるのでございます。これから来たるべき八日、九日、十日と準ゼネストの状態を仕組んでの問題でありますが、そこにおのずから労使の、ことに労働者の側は賃金の獲得ということに対してもひとつ良識を働かして、そして国民大衆が心配しておる段階にならないように私は切に希望をしておきたいと思う次第でございます。  時間もあまりありませんので、次の問題に移りたいと思います。  先ほどから貯蓄の目減りの問題につきまして、これは各党ともたいへん心配しておるのでございます。ことに日本は貯蓄率において諸外国にまさる。大体、英米各国は国民総所得の五%か六%というのが、日本では二〇%貯蓄しておる。なぜ日本で貯蓄がそんなにはやるのかということば、老後の心配やら災害時の心配、そういうことにも問題があるのでありましょうが、とにかく国民が営々としてため込んだ貯金が減るということは、私はたいへん情けないことであると思います。これは、政府としても何か手を打たなければいけない。ことに物価がずっと上がっておる状態、狂乱がそのまま乱舞しておる状態においては、なかなか一定の手が打てないでしょうが、ようやくおさまったというところで、目減りの率も大体はっきりしてきたこの段階において、何か政府において政策を講じなければならぬと思うわけでございますが、同時に、金融機関としてもこれらに対してひとつ十分な配慮をいただきたい。先ほどからいろいろ御意見があり、御見解もお述べになりましたが、いままで金融界では、何か大蔵省の指導あるいは法律的な規制がなければやらないという消極的な態度であったように思われるのでございますが、こういうときにそれぞれの立場において大事な貯蓄をしてもらうということが銀行が存在する第一の前提でございますから、そういう立場からひとつ積極的に預金者を保護する対策を講じていただきたい。今度の宝くじの貯金についてもいろいろ御配慮になっておるようですが、私は、地方銀行都市銀行において、たとえば定期預金制度、半年複利制度というのでございますか、こういうものを自発的にお考えになっておやりになる。そして、できるだけこの目減りについてお考えになる考えがあるかどうか。ひとつ伊部参考人、それから他の参考人の方に一応御意見を承りたいと思います。
  101. 伊部恭之助

    伊部参考人 片岡先生にお答え申し上げます。  いま先生がるるおっしゃいましたように、最近、一応いろいろな観点から鎮静の曙光が見えたとは申しますけれども、なかなか高い物価騰貴、貯金を預かっております私どもにつきましては、先生のおっしゃるまでもなく何とか預金金利の面においてこれにこたえなければ、われわれ自身の経営の上においても、このままでは問題になるのではなかろうかというふうにも思っておりますし、また先ほど来野間先生でいらっしゃいましたか、どなたでしたか、純個人預金の増加が新聞であまりふえてないというお話もございましたが、私ども窓口から見ておりますと、いまおっしゃったとおり、最近は高い奢侈品ぜいたく品を買い控えまして、今後の物価動静をどういうふうにごらんになっておるかというと、なかなか皆さんも御心配と見えまして、不時の備えのための預金というものはやはり無視できない量にふえてはおるのでございます。したがいまして、そういう方々に対してこの目減りをどうするかという問題は、私個人といたしましても金融界としても大きな問題でございます。全国銀行協会連合会といたしましては、そういう気持ちは皆さんお持ちでございますが、それぞれ会員の方々にもいろいろなスケール、いろいろな業態の相違がございまして、なかなか簡単に煮詰まったところまではまいらないのではないかとは思いますが、しかし、先ほども、なかなかやかましい規則があってできないそうだが、銀行だけでもできないものかというお話もございましたが、これはほんとうにいろいろな他の金融資産に影響をいたします。国庫から始まりましていろいろな面に大きな影響が参りまして、その秩序がこわれることが国としても金融行政御担当の各位においては御心配であり、なかなか頭の痛い問題で、そこを何とか知恵をしぼって小口のでもできまいかということで、だんだんと御研究も進んでおるやに伺っております。私どもといたしましては、何かそういう点でいい線でも出しまして、全国銀行協会連合会としてみんなのコンセンサスが得られますれば直ちに実行して、大いに資金吸収をして物価抑制の一助にお役に立ちたい、こう存じております。
  102. 伊原隆

    伊原参考人 片岡先生にお答えをいたします。  伊部さんのおっしゃいましたように、私どもも何とかして大事な貯蓄がふえるように、いろいろとくふうをしておるわけでございますが、こういう際にさしあたりの問題としては、さっき申し上げましたように、六カ月ものの定期を非常に金利を高くしてございますが、六月一日でおしまいということもいかがかとも思いますし、それをあるいは延ばしていただくようなことも大蔵省でも御検討願えるのではないか。  それからもう一つは、いま先生がおっしゃったように、郵便局では定額預金ですか、六カ月ごとに複利になりまして、あとで引き出すときに期限を考えるというのが非常に好評のようでございます。金融界と申しますか、地方銀行等でもそういうものを採用できないかどうかということについても実は研究いたしております。  それからもう一つは、さっき申し上げました定期積金というもの、これは日掛けでお金を集金に参るということが前提なものですから、いま四分六厘でございましたか、平均の年限が二年から二年半ぐらいの期限であるにかかわらず、非常に低い金利がついておる。これを適正なる金利に上げる。そのかわり集金を伴わないで自動振替か何かで、こういうインフレの世の中であるのに、そういうだんだんにお金を積んでいかれる方を優遇するということも、私ども立場としてはぜひやっていったらいいのではないかと考えております。ただし、申し上げましたように、定期積金を集金の形でなさっていらっしゃる他の種の金融機関がおられまして、こちらのコストにはね返りますと、なかなか影響が大きい。そちらのほうの業界の方の御同意を得られるかどうかということが非常な問題でございます。  なお全般的の問題としては、卸売り物価は横ばいないしあまり上がらないにいたしましても、とうも消費者物価の上がりは相当続くおそれもありますので、そういう中で、預金の目減りと申しますか、預金の金利をどうするかというのは非常に大事な問題だと思いますが、その場合には、たとえば大きな借り手でございます国の国債とか地方団体の地方債の金利も、あわせてお金を使われるほうに回るわけですから、お金を使うという立場において相当の金利を払われるという思想的の変化をしていただかないと、金融機関としては利ざやをできるだけ詰めてはまいりますけれども、やはり見返りになります資金の運用面での、資金を提供する方に金利を高く差し上げるという場合には資金を使われる方は高くお払いになるということを国、地方団体等を含めまして、考え方を広く持った思想で根本的に考えていくというふうなことに話が及ぶのじゃないかと思いますので、急にすぐというわけになかなかまいらないというふうに考えております。  それからついででございますけれども、あと相互銀行増田さんからお話があると思いますが、預金の金利を高くすると中小の金融機関の方がいろいろお困りになるという話がちょいちょい出るのでありますけれども、私どもは同じ立場で小さい預金を集めるというふうな場合におきましては、コストというものは大銀行さんがなさっても同じにかかるので、正直に申して小さい金融機関の方が非効率だというふうなものの考え方があるのですが、私はこれには非常に反発を感じておるわけであります。決してそうではないので、同じ立場で同じこまかい預金をお集めになったと仮定すれば、犬銀行さんがなさったら逆にコストは上がるのじゃないかというふうに考えますので、地方銀行にいたしましても、相互銀行さん、信用金庫さんにいたしましても非常に零細な預金を窓口で営々として集めておる、そういうことが大事であるということならばそのコストは高いということになるわけであり、同じ仕事をして片っ方はコストが高く、片っ方はコストが安いならば効率的だといえますけれども、比較する場合には同じ仕事をしての比較でないと、私は中小の金融機関の方に非常に酷な考え方になるのじゃないかということを常々考えておりますので、あわせて申し上げておきたいと思います。
  103. 増田庫造

    増田参考人 先生の御質問で目減りをどうしたらいいかというお話でございますけれども、午前中の回答にも申し上げたのですけれども、この目減りというものをどうしたらいいのかということは実は私どもも考えつかないのでございます。たまたまわれわれの中に預金金利を高くすることによって目減りを補うというような話も出ておるようでございますけれども、一体預金金利をどこまで上げたらその目減りは埋まるのかということも考えなければならないと思うので、預金金利を上げただけでもって目減りが埋まるかという問題になりますと私は大いに疑問があると思うのでございます。従来の貨幣価値と申しましょうか、その下がり方を預金の利息を上げただけで相済むかどうかということについて私は多少計数的に疑問がございますので、何かいい案があれば私どもの中小金融機関にいたしましても同調して、国民大衆の福祉向上あるいは御利益になることをはかっていきたいと考えることはやぶさかではないのでございます。ただその金利問題につきまして、先ほど午前中にも金利を上げることについては私は消極的であると申し上げましたことは、結局現在の相互銀行経営を申しまするとコスト高になっておりまして、利幅というものが非常に狭まっておる関係で、預金金利を上げますれば当然それがまた貸し出しの金利のほうにはね返ってくる、預金金利を上げたほどはね返らないにいたしましても、結局は貸し出し金利にはね返ってこなければ相ならないというようなことになるのじゃなかろうかと思いますので、預金金利の引き上げにつきましては消極的でありますけれども、一般の金融機関が全部やるということでございますれば、私どももやることにやぶさかでないのでございまして、何かいい案があれば同調してまいりたいと思うのでございます。ただそうした金利問題につきまして、いま国家でもって奨励しております財形貯蓄と申しますか、財産形成貯蓄、これに限って導入する、また一面ではその預金に対して国家が援助するというようなことで、金融機関の犠牲と国家の犠牲において、そうした面でもってやられることがいま最適の方法じゃないかと考えております。  それから先ほど先生のお話の中に中間利払いをしたらどうかということでございますけれども、現に本年できました二年定期につきましては、一年目の中間でもって相当の中間利払いをやるというようなことができましたので、将来どういうプロセスを経ますか、あるいは一年定期も中間利払いができるような案がまたできないとも限らないと思っております。現在私どもはそこまで考えておりませんけれども、だんだんとお預けになる方の御利便をはかる上におきまして、中間利払いということもあり得るのじゃないかとも考えます。今度の商法の改正におきましても、一年決算のものが中間に配当を払ってもよろしいというふうな改正がなされるようでありますので、そういうことと同じような意味にとれるのじゃないかと考えておりますので、今後の改正問題であろうと思っております。
  104. 片岡清一

    ○片岡委員 ただいまいろいろ前向きの貴重な御意見を承りまして、ありがとうございました。この目減りの問題は仰せのように銀行側、金融機関だけの責任ではなしに、これは国家の大きな政策なりあるいは世界的ないろいろの理由からこういうインフレというものが起こったということからすれば、これはやはり国としていろいろな社会政策等の諸施策によってある程度責任を負わなければならぬ問題であると存じます。その問題は立法の問題としてわれわれとしても十分何とか考えていかなければならぬ問題と存ずるのでございます。  時間がもうございませんので、次の問題をもう一つお願いしたいのでございますが、それは先ほど皆さま方からいろいろ総需要抑制、そしていわゆる金融引き締めという窓口業務からたいへん倒産がだんだん起こっておるということでございます。実は私の選挙区におきましても、やはり一生懸命にまじめに輸出をやっておるたとえば綿織物の捺染をやっておる工場、それが東南アジア等もいまの石油ショックその他でたいへん売れ行きが悪くなった、それにかわって国の方針にも従って中東方面へもどんどんそれを売るようにしておる。大体それで一生懸命にやっておるのだが、どうも新しい投資をやるというわけではありませんが、運用資金がたいへん詰まっておるということでたいへん困っておる人が多いようにあちこちから聞くのでございます。そこで先ほど伊部参考人お話でございましたか、特別の救済制度をつくっておるということでございました。中小企業が一番しわ寄せを受けて困るわけでございます。過剰流動性を若干持っておるところでは心配ないのですが、何といってももろに損害をこうむるのは中小企業でございます。そういうところへ、大企業資金の融通を抑制されたその分をできるだけ中小企業にひとつ回していただくということで、中小企業はまじめにやっておりながらたいへん危機に見舞われておるので、こういうものをひとつ積極的に救っていただきたい。そのためにこの特別救済制度というものを、中小企業の手ずるがなかったりして弱っておるそういう連中に十分行き渡るように、ひとつ大いに御配慮を願って運用していただきたいと思いますが、これはどういうふうに御運用になっておるか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  105. 伊部恭之助

    伊部参考人 お答えを申し上げます。  先生のおっしゃいましたように、ことに繊維業界は石油危機というような問題の直接の影響ということでございませんで、一般の需給関係の変調に基づきまして、滞貨をかかえ、あるいはまた国外の市場の関係の輸出が伸びないというようなことで、非常に繊維業界一般は、毛にいたしましても、綿にいたしましても、いろいろと、かつまた機屋段階、糸屋段階、いまいろいろなところに不況の様相が濃くなっております。特に私どものメンバーの銀行でも機屋さんでございまするとか、あるいは大阪の泉州の方面の繊維に関係の深いところでございますとかというような地域の銀行におきましては、そういう中小企業方々の当面のやりくりについての御相談が一番多いのでございます。これは政府におかれましてもいろいろな中小企業金融の制度がございまして、予算上も非常に大きな予算を特に昨今はつけておられまするし、それから日本銀行あたりにおいても私どもは直接窓口でそういった企業方々に直面をしておるわけでありまするから、この非常にむずかしい困難な資金繰りをあえていたしてはおりまするが、しかし非常に、ほんとうの何と申しますか、自己の責任によらないいろいろな情勢で困っておられる方々に対する融資がふえることによって、ワクをふやしてもらうというようなことを大いにそういう場合には考えていただけるような下相談もいたしておりますが、まだそれほど頻発はいたしておりません。  それから、かつまた石油の危機に関連いたしまして、いろいろと困っておられる中小企業方々、先ほど申し上げましたように、たとえばネオン業界は全くこれはほんとうにお仕事がなくなりまして、これはお手あげでございます。こういうものにつきましては、従来の通常の考え方ではなかなか融資がしがたい、またこういう業界がだんだんと出てまいりましたときに、どうしたらよかろうかということが問題になりまして、先ほども申しましたように、私どもの協会の中の都市銀行の十三行が二千億円の資金を用意いたしまして、そしていろいろな有利な条件をもちまして御融資をするという制度をこれから活用しよう、いまネオン業界に対してその第一歩が踏み込まれたというような状況でございます。特に、私どもは中央銀行窓口方々にはよく現状を常に動静を御連絡申し上げながら、われわれの窓口で自己の責任によらない、あるいは営々として何ら経営上の欠陥がないにもかかわりませず、金融だけのためにどうこうということのないような努力をメンバーバンクはみないたしておると存じておる次第でございます。
  106. 片岡清一

    ○片岡委員 まだ御質問申し上げたいことがあるのですが、どうも時間が来たようでございますから、私の質問はこれで打ち切ります。
  107. 平林剛

    平林委員長 次に、井岡大治君。
  108. 井岡大治

    ○井岡委員 参考人方々にいろいろお教えをいただきまして、ありがとうございました。  各参考人から総需要抑制がようやく行き渡ってきて先高見込みの仮需要がなくなってきた、こういうことで一応鎮静に向かっているのではないか、こういうお話でございますけれども、私は各参考人から言われた金融から来る反社会的な問題をやはり私たちは非常に大事に考えるわけです。たとえば商社がこれだけやかましく反社会的として非難されておるのは、反社会的な行為。その反社会的とは何なんだ、こういうことが問題だろうと思うのです。たとえば商社が、わが国のような資源のない国で、いわゆる高度の経済の発展のためにすべての経済行為をやるということは、これは必要なことでございますけれども、しかし、たとえば投機的な問題、こういうものに手を出していったところに商社が反社会的として非難をされる第一の原因があると思います。もちろん買いだめあるいは売り惜しみ、こういうものもありましょうけれども、同時に私はその投機それ自体が問題だろうと思います。したがって、この投機というようなことについてどういうようにお考えになっているのか、この点をひとつお聞かせをいただきたい、こう思うのです。これは伊部参考人にひとつお願いしたいと思います。
  109. 伊部恭之助

    伊部参考人 井岡先生にお答えいたします。  ただいま、われわれ金融機関が商社の融資に対する態度、特に商社の反社会的な行為に対して融資をしておる銀行からその行為についてあるいはその商社に対してどう考えるか、特に反社会的行為というのも一番端的に申せば投機行為である、こういう行為について銀行はどう考えるかというお話でございます。  先生にこういうお話を申し上げるのは非常に恐縮でございますが、何も昨今に限りませず、私ども銀行はこの投機ということが一番金を貸す場合にこわいのでございまして、これは当たればそれは大きな利益が出るのでございますが、一朝うまくいかなかった場合は非常に大きな損害を食う。それで投機行為に対する金融機関の神経と申しますものは、非常にこれは昔から鋭敏でございましたが、昨今こういう時世になってまいりまして、物不足、特に石油危機以来、いろいろなそういった投機と見られるような事象が問題になっておるようでございまするが、私どもといたしまして、何せ商社の融資と申しますものは、午前中もたいへん多いじゃないかという御指摘もございましたが、個々銀行融資をいたしておる分量は商社全体の運用しておりまするいろいろな資金、その中で銀行から借り入れておりまする資金だけを見ましても、一つ一つの銀行の貸しておる金額は一五・六%、一二・三%と非常に小さいものでございますから、そういう金額のものを貸しておる銀行が世界的な活動をやっております商社の毎日毎日の一つ一つの行為をチェックするということは、事実上はなはだ遺憾でございますが、できませんのでございます。  ただし、輸出入にかかわりまする金融、これは何を幾らいつどこから入れるかというような話し合いでがっちり固まった輸入金融もございまするし、何をいつ幾らでどこへ売るかという証憑類を必ず持ってきて貸す輸出金融もございます。こういうようなものにつきましては、これは全くひもつきでございますから、あれどうなった、これどうなった、もう期日が来たじゃないかということでチェックができるのでございますが、一般的に非常に大きな商社活動の全域にわたりまして一銀行が一部分を貸しておるという関係だけにおきましては、なかなかその個々の行為あるいは取引はわかりかねるのでございますが、しかし私どももそれでよしとしておるわけではないのでございまして、必ず半期半期ごとに資料を持ってきてもらいまして、在庫の状態を紙上ではございまするが、時間的な変化を見ましてふえたじゃないかとか、これは何だとかいうようなことはやっておりまするが、遺憾ながら具体的に一つ一つどういうことをやって何を買っていつまでそれを持っておるつもりかというようなところまでなかなかチェックできないのが現状でございます。はなはだ遺憾でございまするが、それが真情でございます。
  110. 井岡大治

    ○井岡委員 一般的に商品ならいいのですよ、私は別に投機だとは思わないのです。売り惜しみだとは思いますけれども、投機だとは思わない。土地なんです。過剰流動性がやかましく言われて、田中さんが日本列島改造、商社が一度に土地の買い占めを始めたわけです。このことは私は昨年日銀総裁がおいでになるときに言おうかと思っておったのですが、私たちの時間がなくなったものですから言いませんでしたけれども、あのときに日銀の総裁に、あなたに過剰流動性というものの吸収をやかましく言うときに、土地の問題をあなた方の立場からどう考えるのだということを言ったわけです。ですから、銀行さんが裏づけのある商品の買いつけ、何かに裏づけがある、これはいいのですが、あの土地買い、これにかなり商社は金を使っておるわけです。この投機が物価を値上がりさした最大の原因なんです。ですから、投機というものについてどういうように分析されているのか、この点を——商品の投機なんか私は考えておりません。この問題を、あなた方が貸し出している商社にどういうように攻めていくのか、吸収するのか、これをやらぬ限りは、私は次にまたお尋ねしますけれども、たいへんなことになると思うのです。
  111. 伊部恭之助

    伊部参考人 あらためて土地の問題についての御質問でございますが、全国銀行協会の副会長といたしますると、個々のメンバーの銀行さんの融資内容を存じませんし、お考えもおそらく私と同じではあろうと存じまするが、実際に商社さんが土地を持っておられるということも事実でございまするので、先生のおっしゃいますことも十分かみしめて私はお答えをしなければならぬと存じまするが、何せ他の銀行のことをよく存じません。私どもがやはり商社に大きな金を貸しておりまするので、その点から、どういう考えでやっておるかということを御説明申し上げることでお許しをいただきたいと思うのであります。  私どもも三、四の大きな商社と取引関係を持っておりまして、個々融資につきましては、土地を買うから貸せというような金につきましては私どもは貸しておりません。そういう点につきましては、非常に長くかかるものでございますから、長期の金ということで貸しておりませんで、短期の貸し金が多うございます。しかし、それじゃどうして商社が土地を持っておるのか、こういうことに相なるわけでございますが、商社の運用資金はいろいろな資金の調達方法がございますので、そういう結果になっているのではなかろうか、こういうふうに存ずる次第でございます。
  112. 井岡大治

    ○井岡委員 押し問答をやっておってもしかたがありませんし、私は大阪ですし、あなたのところの住友商事さんがどんなだということをよく知っておりますから、それをどうこう言おうとは思いません。  そこで問題は、コストアップ要因がある。ですから、これについて注意をしなければいかぬ、これは各参考人から申されたことでありますが、私はコストアップ要因というものはほかにもあると思うのであります。それは、昨年の公共事業費の繰り延べが、政府は当初一兆四百二十七億、こう言っておりましたけれども、ことしの公債発行額が二兆一千六百億あります。そしてそのほかに政府保証債が四千億、前半にこれを六〇%消化をする、こう言っておるわけです。そういたしますと、再びかなり銀行さんがこれの消化に当たらなければならぬでしょう。私は必ずそういうかっこうになるのじゃないか、こう思うのです。そういたしますと、なるほど政府は選別融資についてかなりクレームをつけております。しかし最終的には、優先的、抑制的に取り扱うものの範囲やその抑制程度は必ずしも明確にはしていないわけです。たとえば土地を買うのには使っちゃいけませんよ、あるいは建築をするのにはあまり貸しちゃいけませんよ、こういうことは言ってありますけれども、これを絶対にこうしてはいけない、こういうことではなく、この点については政府金融機関の自主性にまかせておるわけです。そうだとすると、再び過剰流動性が起こらないとも限らない。いわゆる資金がダブついてこないとも限らないわけです、政府の公債の発行によって。そういう際に、私はいま土地の問題、投機の問題を出したのはそこなんです。ですから、こういうものを消化する過程において、物価に与える影響のある融資のしかた、こういうことについてお聞かせをいただきたいと思うのです。
  113. 伊部恭之助

    伊部参考人 国債の消化の問題と、その消化の過程で出る金、その金でまたインフレになり、その銀行融資の態度にどうかかわり合いがあるかという御質問でございます。  まず、国債の買い入れは御承知のとおり発行額の九〇%弱が金融機関が引き受けておるのでございます。その半分が市中銀行ということになっておりまして、これはわれわれからいたしますと資金の吸い上げになるわけでございます。それだけ私ども資金の運用量が減りまして、いま先生のおっしゃいます土地買収の資金などに出るような余力というものがもしありとするならば、それだけ減るわけでございますから、その限りにおきましてはむしろ融資力の制限という形になってまいるわけであります。  この国債の代り金をどういうふうにどの方面に国家がお使いになるかというところに、今度先生の御心配になっておるような問題があるのではなかろうかと存じております。しかし、土地のマーケット、市場でございますが、目下ほとんど大きな土地は動いておりません。それは御承知のとおり不動産業に対する強烈なる融資規制がございます。売りたい人は売りたいのでございますが、買いたい者は金を持っておらぬ、こういうような状況になっておるのが現状でございます。したがって、その国債の代り金がどういうふうに動くかということにつきましては、私ども銀行立場からは直接手の出ない、関与できないことでございますので、その点ひとつ御容赦をいただきたい、こういうふうに存じます。
  114. 井岡大治

    ○井岡委員 そこのところは私とは若干見解を異にしておりますが、それはあえて言おうとは思いません。  ただ問題は、土地が動かない、なるほどいまは動いておりません。しかし、いまおっしゃったように銀行の金を政府が吸い上げるわけです。政府はそれをどう使うか、いろいろ問題かありましょうけれども、そこからまた需要が大きく伸びてきますから、これはインフレ要因の一つになると思う。それと同時に、持っておる商社は、これからあなた方の規制がきつくなってきますから、金繰りが苦しくなってくる。いままでのように流動性を持っておらない。そうすると土地の投げ売りをやるだろうと思う。いまは金を持っておりますから損をしてまで、あるいはこれだけ上がっておるものを買ったときの値段まで下げて売ろうとは考えませんけれども、これは必ず出すと思うのです。そこに私は問題があると思う。したがって、そこから流動性というものあるいはインフレ要因というものが出てくるのではないか、私はそう思うのですけれども、この問題はあえてお伺いしようとは思いません。  そこで次の問題は、もとへ戻りますが、先ほどのお話の中で、これはたしか伊部参考人だったと思いますが、経済活動、いわゆる投機的な問題についてわれわれとしては厳に慎まなければならない、そこで銀行、いわゆる金融機関としての原点に返ってということばをお使いになったわけです。私は過去のことをどうこうというのでなくして、しかし過去のことを考えてみなければ、原点に返ってということばが出てこないわけですから、ここらに問題があったと思うのです。過去にたとえばわれわれは円の切り上げの効果の見通しを誤った。国民は二度いかれておるんです。円でいかれ、石油でいかれておるんですよ。これが物価高になっておるのですから、誤らないようにするために原点に返ってというその原点とはどういうものか、この際明らかにしておいてもらいたいと思います。
  115. 伊部恭之助

    伊部参考人 先ほど原点ということばを使いましたのは、昔は商社というものは、古い、元来貿易を中心にいたしておりました歴史のある商社と、いわゆる問屋、ことに繊維を扱っておりましたような問屋筋が大きくなりました商社というふうに大体歴史的に分かれると思うのでありますが、これは全国銀行協会連合会の副会長としてよりもむしろ、大阪の銀行の人間としてお話ししたほうがおわかりやすいかと存じます。  昔は、問屋金融というものにつきましては、非常に投機を戒めておったわけでありまして、糸の投機でございまするとかその他の投機を非常に戒めて、融資については厳重な査定をいたしておりました。ところが、昔の問屋さんが非常に大きないわゆる商社に成長なさいまして、非常に膨大な規模と、活動範囲が非常に広くなりました。その結果、石油危機というようなものに端を発しまして、いろいろと世上議論があるような行為が出てまいりました。  私どもは、いかにその規模が大きくても、また、いかに活動範囲が広くても、できる限り昔の問屋金融時代の気持ちを何とかしてこれはやはり徹底していく必要があろうかと、こういう意味で、原点ということばを先ほど使ったわけでございます。
  116. 井岡大治

    ○井岡委員 そこで、コストアップ要因というのは、朝から何回も言われておりますように、石油が上がり、また石油を上げてもらわなければ困る、こう密田さんおっしゃっておいでになります。電気がありましょう、おそらくガスがあるでしょう、こういうように言っていきますと、次から次へとコストアップのなにはもうメジロ押しになっているわけですね。そういたしますと、コストアップからくる物価へのはね上がりを金融機関としてどういうように押え込んだらいわゆる物価が安定してくるのか、鎮静した物価をこのまま維持することができるのか、これらについて、ひとつ伊部参考人伊原参考人からお伺いしたいと思います。
  117. 伊部恭之助

    伊部参考人 石油の値上がりに端を発しまして、直接電力でございますとかいうようなものから、だんだんと石油の値上がりが波及をいたしてまいりまして、産業連関表というようなもので見まして、私どもよく存じませんが、終局的にどういう商品にどのくらいその石油の値上がりが原価に響いてくるかということは、必ずしも石油の第二次値上がりそのものではないということは、先生方も十分御承知と存じまするが、しかし、とにかく上がることは、やはりこれはやむを得ぬと存ずる次第でございます。  そこで、いろいろ物価問題に対する抑制策の結果、ある程度上がったところにおいて、その石油問題に端を発したものが一応おさまりまして、一つの価格体系というものができたときに、さて、どういう金融政策なり金融のあり方によって、なだらかな経済成長、物価の安定ということをどういうふうに持っていくかということでございまするが、やはりそのときは、需給関係国際収支関係を基準にいたしまして、中央銀行金融政策に従って私どもは行動をするということに尽きるわけでございまするが、やはりあるときは金利を少し下げまして、設備の拡充なども必要かと存じます。それによって輸出にドライブをかけて、そして国際収支の天井を高めるとか、あるいはまた、それによって輸入がふえまして、物価高あるいはインフレ傾向ということになれば、また金融引き締めるというような、昔の国際収支をめどにいたしました一つの金融政策というものがまたもう一ぺん出てくるような姿が望ましいのではなかろうか、こういうふうに私は存じております。
  118. 伊原隆

    伊原参考人 お答え申し上げます。  総需要抑制によりまして、需要超過からくる物価の上がりというふうなものは一応鎮静をしたと思うのでありますが、いまおっしゃいますように、国際経済に日本の経済がいま非常に深く組み込まれておりますので、原油をはじめそっちからくる値上げをどういうふうな方法で吸収していくか、またその見通しがどうかということが、一番むずかしい問題であると思います。  この問題につきましては、先ほど私どもの考えでは、コストアップを逐次うまく織り込んでいけば、外界の空気を、相当総需要抑制ということで空気に湿度が与えられておりますから、ほかにあまり波及しないで済むようになり得るのではないか、卸売り物価に関しましては、ということを期待をいたしておる次第でございます。こういう苦い経験を経たのでございますので、そのあとの経済をどういうふうに再建というとおかしいのですが、どういう方角づけで進むかということは、先生の御指摘のとおり、たいへん大事な問題でございますので、広い視野からいろいろ御検討を賜わるといいと思います。  一つは、私がさっきちょっと申し上げましたように、為替相場を相当ある程度強いところに維持をしていただくほうがいいんじゃないか。今後、為替が弱いほうがいいか、強いほうがいいか、それが可能かどうかというふうないろいろな議論があると思いますが、日本の国際収支を、資本勘定も含めましてバランスをさしていくことには、それほどむずかしいことはないのじゃないかという気もいたします。たとえば三百円のときと二百七十円のときでは、石油の値段でも一割国内で安くなるわけでございますから、できるだけ為替相場を強く維持をしていただくというふうなことと、総需要抑制を若干続けながら、円滑に新しい価格体系、その新しい価格体系も、あまり上がるという予測をつけますと、また買いだめ等が起こりますので、そうならない——おそらくそうならないんじゃないかと思いますが、その理論的な新しい水準というふうなものを政府も少し一般的にわかるような方法でよく御説明になっておいたらいいんじゃないかなというふうに思います。  それから、土地の問題でございますが、私ども商売を通じて見ておりまして、土地の融資抑制をいたしましたので、民間の土地の売買は非常にとまったことは御存じのとおりでございますが、私もどうも先生のおっしゃるように、土地というものの値段の上がることがインフレ心理に非常な刺激になって、今度スタートしたんじゃないかと思いますし、土地が動くことによる土地の代金がまた流動性に変化をいたす金額は膨大な金額でございます。これに何かくふうをして、先ほど申し上げましたように、可能な限り交付公債とかいうふうなもので少し凍結をしながら、土地の代金を吸収をしておくというふうなことも一つの方法ではないかというふうに考えまして、私ども地方銀行としては、ことに公共企業体の学校用地その他の土地の取得に関連いたしまして、土地問題につきまして非常な重大な関心を持っておりますので、これが落ちつきますように御高配を願いたいと思う次第でございます。
  119. 井岡大治

    ○井岡委員 土地の問題で、私も同じようなこと、百姓さんが土地を売って、最近の百姓さんのおうちを見たら、どのうちもどのうちもりっぱで、そしてこれはもうたいへんなものだと思う。これはもう私たちびっくりしているわけです。こういうのがやはり問題だと思います。ですから、私は、土地の売却による何らかの措置を講じなければいかぬ、こういう点については全く同感です。  そこで問題は、その新価格体系ということでございますが、やはりいまのような状態の中で、いまの自由主義経済の中で、その人たちにおまかせをする、これでは私は国民はなかなか納得しないのじゃないか。かなり国民は政治に対しても不信であると同時に、御商売をなさっておいでになる方々に対する不信というものも非常に強いものがあります。ですから、そういう意味において、新価格体系をつくるときにはかなり政府主導型でなければいけないんじゃないか、こういうように思うのですが、この点伊原参考人はどのようにお考えか、お伺いしたいと思うのです。
  120. 伊原隆

    伊原参考人 私は結論において、井岡先生のおっしゃいますように、さしあたりそういうことが心理的な関係からいいましても必要ではないかと思います。ただ、先ほど申し上げましたのは、新しい価格が安定的に長持ちをいたしますためには、どうしても市場原理と申しますか、そういうふうなことで需要供給が落ちつくところに落ちつきませんと、なかなか長持ちをいたしません。あまり人為的にやりますと、押えておったものが消えてしまいます。百貨店その他の末端で聞きますと、どうも押えられたものを売り切ったら高いものを売っていくのだとか、押えたものが消えていったり、場合によりますと輸出に向かってしまったりいたすというふうな、どうしても経済的な行動が出ますから、どういう方法か、政治の非常にむずかしいところだと思いますけれども、自然に需要供給で値段がきまっていくという背景づくりをし、しばらく金融引き締め等も続けながら、なるべく落ちつくところに落ちつく方法をとることがいいのじゃないか。それから円の為替相場をきめるにいたしましても、押えておきますと正しい地位がなかなか見出せませんから、長い目ではそういう方法がいいのじゃないか。さしあたりといたしましては、過渡期において必要なる統制ということはやむを得ないし、必要であるというふうに考えております。
  121. 井岡大治

    ○井岡委員 為替の問題ですが、為替の問題は一国間できめられる問題でございませんので、特に最近のような世界的なインフレ傾向にあって、各国が国際収支のバランスをとろう、貿易のバランスをとろうとしておるときには、いまのような為替の制度を変えてしまうということはなかなか困難だろうと思います。しかし、申されたように、円が強くなる、強くならなければいかない、この点については同感でございますが、ただこの際、円が強くなって国民が一番困ったのは、輸入した品物を商社は一個も下げなかったわけですね。したがってこの流動性が出てきたわけなんですから、こういうときに金融機関として為替を安定というか、強力にすると同時に、貿易のバランスをとるために、銀行として、当然設備投資がこれから出てきますから、その場合における原点に返るというのがやはり必要ではないのか、こういうように思うのですが、この点はいかがですか。
  122. 伊部恭之助

    伊部参考人 おっしゃるとおりでありまして、輸入したものが一向市場に出ないで、マーケットの様子を見て上がるまで短期間でも持っておるというようなことがやはり物価にも影響し、ひいては一般の信頼を失うものだということでございましょうが、銀行といたしましては早く回収すべきものは回収する。つまり輸入の金融をいたしておるわけでございますから、輸入のユーザンスというものがございまして、そのユーザンスがきたらそれを早く外へ出す、その買い手がまた金が要るようならば新しい相手に金を貸す、こういうような行き方でできるだけものが早く回転し、われわれの貸し金が早く回転する、こういうのがやはり銀行のほんとうの考え方だろうと存じておりますし、また当然そうあるべきだということでございます。
  123. 伊原隆

    伊原参考人 補足して申し上げますが、為替をせっかく強く保ちましても輸入したものの値段を上げておくというのではほんとうに困るわけでございますが、実際の最近の需要供給を見ておりますと、私、横浜銀行でございますが、横浜港が一時外国から買ったものが一ぱい入ってしまいまして、倉庫が一ぱいになって、はしけを倉に使いまして、倉ばしけというので去年の八月ごろからずっと続いておりました。持っていれば高く売れるだろうということも相当の原因だったと思うのですが、最近になりましてすっかり荷がさばけまして、非常に減ってまいりました。それは、持っていてもそう上がらないだろうということもあるでしょうし、金利の負担もございましょうし、金融引き締めもあって荷が動き始めたのではないかというような現象もございますので、一言御参考に申し上げておきたい。一時は、南米から買ったアンチョビーなんというのがあまり置いておいたので燃えちゃったというような話もありましたが、非常にさばけてまいっております。
  124. 井岡大治

    ○井岡委員 いま伊原参考人が申されたことについて一言だけ。私たち、よく知っておる。実は私たち視察に行って、全部調べました。一番古いのは、四十六年に入った荷が動いていないのです。それで税関長に、これはどうしているのだ、関税法に基づいて放出命令を出しなさい、こういうことを言うと同時に、これは何日にどういうように入ってどう出ていっているのか、滞留しているのは何だ、こういうことを出しなさい、そしてそれに指示を与えなさい、こういうことで、私たちことしの一月だったか二月に、寒い日だったですが、行ってやった。それから動きかけましたということを、この間、先週の理事会に税関長から報告を受けたわけですから、いまおっしゃったことはよく存じております。  そこで問題は、伊部参考人がおっしゃったように、商社はいろいろなものを買っておりますけれども、なかなか動かさないのですね。だから、入ったらすぐわかるわけですから、それを早く荷さばきをさす、そして金を回収する、こういうかっこうを特にとっていただきたい。  そこで、あともう時間がありませんから、一言、私たちが考えておることを、こういう方法はどうだろうかということについて御意見を伺いたいと思うわけであります。  午前中からいろいろ聞いておりますと、どうも私たち、現在のようななにだけでなしに、商社法というような法律をつくって、商社の経済活動範囲、こういうもののラウンドをきめる。そうでないとまた土地なんかに手を出しますから。全国で土地をなにしているのは、言おうと思ったら言いますけれども、三分の一ぐらい持っているのですからね。だから、そういう経済活動分野をきめる、こういうようなことを考えてみたらどうか、こういうように考えておるわけですが、この点について各参考人から一言御意見を伺いたいと思う。
  125. 伊部恭之助

    伊部参考人 商社の非常に多方面にわたる営業活動を少しワクに入れるということを法制化していったらどうかということでございまして、ただいま産業界で電力、ガスというような公益事業や金融、保険業というような場合は、先生のおっしゃったとおり非常に厳重なワクがはめられて、一般的な営利事業とは別な特別法によって動いておるわけでありますが、特定の業種、特に非常こビビッドな活動、また独創的な活動をもって信条といたしておりますような商社の活動そのものは、これはなかなか日本の今後の産業界にとりましても必要な活動力ではなかろうかと思うのでございます。そこで、この活動力を制限をいたしますとこれはまた非常にぎこちないものになるのではなかろうかと存じますが、しかしまた商社自身においても、昨今はあまり営業活動が多岐にわたることについての非常に強い反省があるようにも見受けられますので、私ども金融機関の者といたしましては、もう少し商社の今後のあり方というものを見ながら、またそういう問題が出てまいりましたときにはひとついろいろとものを考えていきたい、こう存じております。
  126. 伊原隆

    伊原参考人 私も伊部さんと同じ意見でございまして、これから日本が国際的な経済の中で生きていきます際に、商社の活動というものが国民生活に福祉的に働くという要素を生かしていかなければならないと思います。したがいまして、最近のいろいろな批判を浴びております点については、おそらく商社の方も、経営陣も非常に自粛といいますか反省をしておられる点も多々あるのじゃないかと思いますので、自主的にそういうことをお考えになってなさることがいいのじゃないかという考え方に立っております。地方銀行といたしましては、いろいろおつき合いもございますが、それほど深いおつき合いもございませんものですから、その程度の考えでございます。  また先ほど横浜のほうは、そういうふうにいろいろ御激励いただいたりした結果であると思いまして、たいへんお礼を申し上げたいと思います。
  127. 増田庫造

    増田参考人 私ども相互銀行といたしますと、大商社との取引はほとんどないのでございまして、その点で見解を述べるのもなんでございますが、商社の営業範囲を規制をしたらどうかというお話もございましたけれども、ある商社マンに聞きますと、小はラーメンから大きいものは原子力までやっているのだというようなことで、何でも手当たり次第に商社が扱うということについてはいささか疑問がございますので、品物によってはある程度制約されるほうがよろしいのじゃないかと考えます。しかし、商社が今日の日本経済を大いに成長させた一翼をになったこともいなめない事実でございまして、あまり制約もできない面もあるかと思いますが、その点はまた適当な限度においての制約がよろしいのじゃなかろうかと思っております。
  128. 井岡大治

    ○井岡委員 いろいろ貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。今後私たちさらに、物価の問題はいま国民の大きな関心事というよりは悲願と申しますか、言いようのない問題でございますから、また皆さんにいろいろお教えをいただく機会を設けたいと思いますが、そのときにはどうかよろしくお願いを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  129. 平林剛

    平林委員長 次に、野間友一君。
  130. 野間友一

    野間委員 午前中に引き続いてお伺いしたいと思います。  いろいろお聞きしておりますと、もっともらしく私には聞こえるわけです。らしくというのは、どうもやはりすっきり納得できない、こういうことです。  狂乱物価の一役を買ったというか、むしろグルーピング、一つの系列の中での頂点にはやはり銀行資本があるということで、午前中の日銀総裁狂乱物価の責任についての発言もあったわけです。しかし、やはり庶民の立場からしますと、こういう狂乱物価に対する銀行の責任の問題、それからやはり庶民にはからい、大企業に甘い、こういう感じを私たちはどうしてもぬぐい去ることができないわけです。そしてこういうことも背景にして、銀行資本が非常に大もうけをされておる。いろいろな資料によりましても、たとえば九月期の決算は、都銀の上位クラス、これは二百五十億から二百八十億の経常利益をあげておりますが、これは御承知のとおりですね。また三月期の決算におきましても、十九期連続して増益というようなことの予測も立っております。これはもちろん持ち株の評価がえ、こういうこともあろうかと思いますけれども、いずれにしても十九期続けて増益、しかもいま申し上げたように経常利益が二百五十億あるいは二百八十億、かなり大きいわけですね。  こういう点についてどうも納得できないというか、銀行資本に対する国民の側の風当たりが強いのは当然だと思うのです。また世界の銀行ランキング、「アメリカン・バンカー」がいろいろ預金高の順位を発表しておりますけれども、これによりましても、たとえば預金高では上位十行に第一勧銀、住友、富士、これが入っていますね。これは年々ランキング入りがふえておる。これについてもすでに御承知なので釈迦に説法なのですけれども、第一勧銀、住銀それから富士銀、ベストテンにはいま三行ですね。あと三菱、三和、日本興業銀行と続くわけです。しかも上位百行の中で日本の銀行が二十四行入っているというのが現状ですね。これについて、いろいろものの本によりましても、まさに世界最大の金融王国、こういうふうにもいわれておるわけなんです。  こういう中で、ある新聞によりますと、いま日本の国民所得の中での預金率、これは約二〇%ですか、これは世界の最高なんです。国民が零細な中で、しかも自分の老後とかあるいは病気をおもんぱかって貯金をする、それをどうして国民に還元してくれないのか、このことについて、新聞にもあるわけですけれども、預金者としての庶民がまず何よりも銀行に要求しておるのは、先ほどからの目減りの問題がありましたけれども、金利がより高くて有利ないろいろな種類の資金運用方法、これがふえることを望んでおるわけです。  それからもう一つは、国民が預金した資金をいかに国民に還元するか、このことだ。まさに私もそうだと思うのです。安い利子で十分な量を伴った住宅ローンあるいは教育資金、こういうものを充実していく。ところが引き締めによりましても、もろにこのしわ寄せ、負担をかぶってくるのは庶民であり中小企業である。  私も若干調べてみたのですけれども、たとえば住宅ローンですね。これは大蔵省の選別融資では、中小企業とかあるいは国民にしわ寄せをするなという方針がちゃんと立てられておるのです。ところが現実に住宅ローン、これが家を建てたくても受けつけてくれない、こういうのが非常に多いわけですね。都銀関係などで若干調べてみますと、あるところでは一支店に一カ月のワクが二千万円。二千万円といいますと、大都市の中では一カ月一件借りられるかどうかというような程度で、まさに少数者しか利用できない、こういうのが現状だと思うのです。しかもある銀行のごときは、すでに二年前に貸したローンの金利のアップを要求して、個別に借り主のところに出てくる、こういう実態も私のほうは報告を受けておるわけです。  この点で、住宅ローンあるいは教育資金、こういうようなものについて、ほんとうに庶民の立場に立って銀行の社会的責任を自覚されるなら、こういう点に力点を置いてもっともっと真剣に考えていただくということが必要になってくると思うのです。ここらあたりについて、全銀あるいは地銀、相銀、お三方にぜひひとつ御見解を聞かせていただきたいと思います。
  131. 伊部恭之助

    伊部参考人 野間先生にお答えを申し上げます。  狂乱物価のそもそもの元凶の一つに金融機関があるのではないかというお話でございますが、話は、昨年あたりの石油危機の前にすでに物不足状態物価が上がってまいりました、そのころからずっと淵源をたどってまいりますと、どういうことになるかということだろうと存ずるのでございますが、午前中も申し上げましたとおり、円の切り上げといういままでになかった事象とこれが日本経済に及ぼすデフレ的な影響、また当時の景気浮揚の必要ないろいろの事情、そういうさなかにございまして、いまでもなかなか見通しは当たらないのでございまするが、あれから輸出が伸びてこうだったというようなことについての見通しが甘かったということについては私、反省をいたしておる次第でございます。  金融機関金融引き締めの中で中小企業あるいは個人の住宅ローン、その他個人の貸し付け金について引き締めのしわを寄せているのではないかということと、それからいわゆる資金の還元の問題、もう一つ金利の問題、それから有利な貯蓄あるいは金融資産の多様性の問題この点についての質問かと存じまするが、金利の問題は先ほど申し上げましたとおり、気持ちにおいては何とか金利を上げて、そして営々として将来の不時の必要のためにためておられる方々の目減りをどうやって防ぐかという金利の引き上げの問題は、これは真剣に、ぜひ前向きに考えなければならない問題ということは間違いない心境でございまするが、先ほど申しましたような他に大きな影響がある、それをどう調整して、そして一金融機関、一銀行の集団でなしに、全体から見てしかるべき特定のものにしろいかなる金利でこれに対応したらいいかというような問題を御検討中であると存じておりまするので、その御配意をいま待っておるわけでございます。  それで、金融資産の多様性につきましても、先ほど伊原参考人がお述べになりましたようにあるいはまた増田さんがお述べになりましたように、中間利払いでございますとかあるいは他の新種預金の創設とかいうような問題も研究はいたしておるわけでございますが、現状におきまして各種金融機関がそれぞれ特殊性のある金融資産を商品として売り出しておりまするので、金利の問題ということを問題にいたしますれば、その他の多様性の問題につきましては日本はすでにかなりあるのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。  それから資金の還元の問題でございますが、中小企業金融につきましてはこまかい数字的な御説明はちょっとここに資料がございませんけれども、しかし住宅ローンにつきましては急激に引き締めているのではないかという御質問でございますが、いまのような引き締め政策が実施されておりまして、ワクがきわめてきびしいことは事実でございます。そしてそのワクの中で中小企業あるいは大企業あるいは個人の資金需要に、全体に対して、先ほど申しましたように二割から三割の対応資金しか供与できないという状況に及びまして、住宅ローンのそれは最近の全増加額のうちでどのくらいの割合になっているかと存じますると、全国銀行をとってみますると、総貸し出しに対する住宅ローンの割合は、残高では約四%でございまするが、昨年の十月から十二月間の増加額では約一一%になっておりまして、これは緩和期でございました昭和四十七年のやはり十月から十二月の間におきまする増加額のシェアでございまするが七・二に比べましてもそう劣っておりません。むしろふえておるというふうに考えておりまして、今後ともこういった姿勢は堅持する方針でございます。  それからその他の商品ローンというようなものにつきましては、やはりこれは総需要抑制という見地から、多少住宅ローンとは変わった考え方で対処をしておるということはお認めいただきたいというふうに存じております。  それから銀行の収益でございますが、先生が御指摘のとおり、外国の資料によりましてもわが国の大都市銀行の世界的な地位が次第に上がってまいってきておりますが、これはここ続いてまいりました日本の高度成長期に、日本の金融機関の著しい成長が世界の他の日本よりもかなり成長率の劣る国の金融機関に比べまして相対的に上がってきたということから、世界的なランクにおいてはかなり上昇を見ておるのではなかろうかと存じます。  ところで、もうけ過ぎてはいないかというお話でございますが、私ども銀行は決してもうけ過ぎてはいないというふうに存じておりまして、他産業との比較でございますが、いろいろな比率を見ますると、都市銀行の平均で総資本利益率は〇・七八%、売り上げ高の利益率が〇・七三%でございます。この売り上げ高利益率は東証第一部上場会社の平均が一・八八%、総資本利益率は東証第一部上場会社の平均が四・六三%でございまして、何しろ規模が大きい、運用資産が大きいということから、収益の絶対額が大きいということはいえるかと存じますが、全運用資産あるいは業容に比べまして、野間先生の御指摘になるようなことはないのではないかと存じております。  また、非常に長い期間増益が続いておるではないかということでございますが、銀行の収益と申しますものは大体できるだけ平均して——大きな波があるようなことでは信用を基礎といたします金融機関の営業、経営の態度として一番好ましくないと存じておりますので、できるだけ利益は平均して毎年、毎期続いていくことを好ましいと存じております。しかも増益が続いているではないかという点につきましては、これはやはり経済成長に乗りまして銀行の規模が大きくなったということから利益も伸びてはおりますが、しかし昨今のような事態に相なりますと、おそらくこの三月期は、公表利益はやはり相当減益になるのではなかろうかというふうに目下考えておる次第でございます。
  132. 野間友一

    野間委員 お二方にと思っておりましたが、時間が私あまりないものですから先に質問を進めていきたいと思います。  いろいろいわれますけれども、しかし現にやはり庶民が銀行窓口に行きますと、ローンは締められるし、あるいはいろいろいま申し上げたように、二年前に借りた金利が公定歩合が上がったからといって追って利息のアップをいってくる、これが現実なんですよ。これまた個別的に申し上げたいと思いますけれども、さらにもう一つの問題として、東京都が制度融資として小規模無担保無保証の融資あるいは小規模企業融資を七%あるいは七・五%でしておりまして、これは都が指定する銀行窓口になっておる。最近銀行窓口でその都のきめた金利を上回って、たとえば七%を九%で貸し付ける、こういうようなでたらめなことを実際やっておるわけです。これはおたくの銀行じゃないのですけれども。三菱大塚支店ですね。これはでたらめだと思うのですよ。いろいろなことをいわれますけれども、結局借りる一般の庶民にしても中小企業にしてもほんとうに弱い立場で、行って、自分でそう思いながら、言われますとこれはやむを得ないということで泣き泣き借りてくる、こういうのが実態なんですよ、正直言って。こういうことがないようにやはり銀行協会としても、都銀、地銀を問わず、きびしいそういう示達なりあるいは規制をやっていただきたいと思うのです。いまあげましたものについてはケリをつけたわけですけれども、正直に申しまして、こういうのがまだあとを断たないわけでしょう。  それについてお伺いをしたいのは、いま企業の社会的責任という観点から、銀行関係におきましても、それに関する基準をつくらなければならないということで、いろいろとやっておられるのは聞いておるのです。ただ、そのよろず相談所にしても、これは東京銀行協会でよろず相談所をつくっておられる。しかし、実態を見てみますと、まさに形だけなんです。たとえば、ここにチラシがありますけれども、本部よろず相談所が銀行会館の中にあります。しかし、現にだれが担当なさっておるかというと、女子の職員が二人と男子が一人、これだけなんです。しかも、東京全体の中でここしかない。宣伝が全くされていない。これが実態なんです。これは、都民の要求にこたえていない。これをもっと抜本的にどう改善していくの力ということと同時に、全国的にこういう機関を大々的に宣伝し、もっと大規模なものをつくっていく、そして、庶民が窓口によっていろいろ規制される。これをチェックする機関として、自主的にこういうものをやっていただきたい、私はこう思うのですよ。これの御用意があるのかないのか。これをひとつ伺いたいと思います。
  133. 伊部恭之助

    伊部参考人 野間先生のいま御指摘の点は、私はぜひ考えなければならぬ問題だと存じます。いま、ある銀行の制度融資問題等もございましたし、それから苦情を伺う窓口を東京銀行協会に設けておりまして、事実そこにも、数多い銀行窓口でございますので、いろいろな苦情が参っており、また私ども銀行を例にとりましても、非常に数が多い人間と窓がございますものですから、非常な苦情がございます。それを対話によりましてできるだけ御納得いただき、銀行の態度で改むべきものは改むべき姿勢をすぐとらしておるわけでございますが、東京銀行協会に窓口が一つである。そして、たいした人間もおらぬのではなかろうか、こういうお話でございますが、銀行協会につきましては、さっそく実情を取り調べまして、これをもう少し拡充するなり、あるいは庶民の皆さま方のお声をすぐそれぞれの銀行に伝えて善処をするような策がまだまだ十分でございませんければ、これはさっそくそういう取り運びにいたしたい、こういうふうに存ずるわけでございます。  全国銀行協会といたしましても、午前中に申し上げましたとおり、社会的責任を遂行する上で、銀行の行為についてとやかく庶民の大勢の皆さま方に苦情がないような一つの態度をとる申し合わせもいたしておりますし、もしそういう問題がございましたら、できるだけ早く御納得いくような形で解決するという申し合わせもいたしておりますが、きょうの野間先生の御指摘の問題につきましては、東京銀行協会、全国銀行協会といたしまして真剣に考えたいと存じます。御了承いただきたいと思います。
  134. 野間友一

    野間委員 私、時間が四十三分までしかありませんので、ひとつ簡潔にお願いしたいと思います。  いま御発言の意思表示がありましたから、伊原さんにお聞きしたいと思いますが、地銀とかあるいは相互銀行でダミーとして不動産会社をつくって、私、あるところを調べてみますと、これはダミーが買い入れて、それをまた転売して、中間省略の場合もありますし、あるいは登記上も移転登記したケースもありますが、三回、四回ころがして、ころがすたびに価格をつり上げていく。これは私はたいへんなことだと思います。  大体、銀行がダミーとして不動産会社をつくられること自体、地銀としてどういうようにお考えになるかということと同時に、こういうころがしの事実について御存じないのかどうか。ころがすたびに地価がどんどんつり上げられて、結局、庶民が手に入れる段階になりますと、非常に高い値段で買わされている。その場合も住宅ローンで銀行が高い金利をとって貸す。こういう悪循環の中で庶民の怒りが非常に出ている。時間がございませんので、簡潔に地銀の伊原さんから御答弁願いたいと思います。
  135. 伊原隆

    伊原参考人 ただいま先生の御指摘のダミーをつくってころがしておる問題というのは、実は私まだ存じませんが、地方銀行といたしましても地所会社をつくるということは多少あったかと思います。しかし、これは大蔵省からも厳重な通達が出まして、最近すっかり改めておるはずでございます。  第二に住宅ローンでございますが、わが田に水を引くということになるかもしれませんが、地方銀行といたしましては住宅ローンを非常に増加をいたしておりまして、たとえば昨年の九月に総貸し出し残高の五%でございましたが、引き締め下にありましても、十二月には五・三%に増加いたしております。自分の銀行のことを申しては悪いのですが、私ども銀行は総貸し出し高の一割をこえる住宅ローンをいたしております。それから住宅ローンにつきましては四十七年の水準に金利を据え置いておる次第でございます。
  136. 野間友一

    野間委員 社会的責任の問題について、全銀連では社会的責任に関する委員会をつくられて、多少具体化されておるわけですけれども、いろいろ資料をいただいて拝見しますと、国民の要求の核心についての手だてがなされていない。率直に申し上げて、たとえば記念行事を自粛するとか、あるいはカレンダーとか手帳をどうするとか、あるいは紙の使用節減とか、おどり利息の廃止については、これは一つの前進じゃないかと思うのですけれども、年末年始の虚礼の廃止とか、こういうような部分的なことについては若干の手直しはされていると思うのですけれども、肝心の国民が期待しておるもっと切実なもの、先ほど私が申し上げたように、国民がわずかのかせぎの中で貯金する、それを具体的にどうやって還元していくかということについての抜本的な検討がないと私は思うのです。これでは国民の期待に沿った形でのものになっていない。せっかく委員会を発足されて、若干手直しをやっておられますけれども、私の申し上げたような趣旨に従って、これは都銀、地銀を問わず、具体的にこういう国民の期待に沿うような形で一つの行動基準をつくって、ぜひこれを発表していただきたい、こういうふうに私は要望するわけですけれども、いかがでしょうか。
  137. 伊部恭之助

    伊部参考人 全国銀行協会内部におきます社会的責任に関する委員会というものが、昨年の十一月十九日に第一回の委員会を発足いたしました。委員長が一名、副委員長が一名で、各銀行の常務  クラスが委員で、理事会の下部機構で発足いたしたわけであります。  当面どういうことを考えているかということでございますが、顧客の立場に立った業務内容、取引条件等の改善、社会の福祉に直接かかわり合いのある諸融資の促進、消費者のニーズの把握と相互の意思疎通をはかるための機構等の整備、地域社会に貢献するための方途、営業報告書等の記載方法や内容、配布方法の改善というようなことをまず検討事項として出発したわけでございまして、先生のおっしゃいますことは、こういうことこそ早く具体的に意思を結集しろという御意見かと伺いまして、この点につきましては私どもも真剣に受けとめまして、銀行協会によく伝えて、今後これを具体的に成果のあがるように運営をさせていきたい、こういうふうに存じております。  先ほど申しました紙の問題でございますとかあるいは事務上の問題は、とりあえずすぐできることから始めたということでございまして、これもほうっておきますと、やはり全体の競争がございましてとりとめのないことになるので、こういったことを厳に慎もう。ちょうど物資節約の機運の非常に強まったおりに、さっそくできることからやっていこうということで、照明とか紙の節減とかいろいろなことを始めたわけでありますが、今後はやはりおどり利息の廃止というような実質的な問題にもせいぜい取り組んでいきたい、こういうふうに存じております。
  138. 野間友一

    野間委員 いまの社会の福祉に直接かかわり合いのある諸融資の促進の中に、住宅ローンや中小企業向け融資、それから公害防止融資等ありますけれども、昨年の十一月に発足させながら肝心なところについてはまだ整備されていない、そこに私は問題があると思うのですね。だから、一応世間向けには幾つかのそういう改善をされておる、しかし、ほんとうに国民が期待するところについてはまだ手がつけられていないということで、ぜひ——いま申し上げたように、ローンにしてもあるいは中小企業向けにしても、都のそういう制度に反して高利をとっておるというような実態があるわけですね。こういうことについて、よろず相談所のお話に返りますけれども、東京の設備をさらに拡充するという御答弁をいただいたのですけれども、と同時に、こういうものを全国に設けていただいて、そしてこれらの設備を拡充して、国民に対して宣伝してもらって、だれでもげたばき、丸首で十分利用できる、こういうような体制をぜひとっていただきたい。最後にひとつ御答弁いただきたいと思います。
  139. 伊部恭之助

    伊部参考人 先ほど野間先生の御指摘になりましたような事件が今後起きないような措置は、さっそく会長と相談いたしまして手続をとるつもりでございまするし、それからよろず相談所のような苦情を申し受けます場所も、物理的な拡充でなしに実質的な——いまも部長が責任者としておって各銀行に対してそれぞれ苦情がすぐ伝わるような仕組みにはなっておりまするが、内容をもっと実質的なものにして、御苦情のないようなことにいたしたいということを会長とよく相談いたしまして、実施をはかっていきたい、こういうふうに存じております。
  140. 野間友一

    野間委員 最後に、と申し上げたのですが、ちょっと……。  たとえば、この相談所の案内を見ましても、銀行協会の各支所はずいぶんあるわけですけれども、各支所ではよろず相談を取り扱っておりません、恐縮ながら本部内のよろず相談所に直接来てくれ、こういうことをいっておるわけですね。ですから、広い東京に、しかも銀行会館の四階一つに置いて、しかもそういう小人数じゃとうていまかなうことはできないと思います。ですから、これは全国に設けていただきたいと同時に、各支所においても、やはり気軽に行って十分相談してその期待にこたえることができる、私はそういうふうにやっていただきたい。こういうことです。
  141. 伊部恭之助

    伊部参考人 各地に設けまして御趣旨に沿うようにできるだけ努力をいたしたいと思います。
  142. 野間友一

    野間委員 終わります。
  143. 平林剛

  144. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 最初に、伊部参考人に過剰流動性の問題についてお伺いをしたいと思います。  四十八年度の経済白書に、過剰流動性の問題について触れております。それによりますと、四十七年度について企業手元流動性比率あるいは企業資金繰り、そういうものを判断をしてみると、  ほとんどすべての流動性指標が過去のピークを大幅に上回っている、こういうふうにいわれております。それからまた、流動性の基本である通貨量の伸び率が、実物指標に比較しても高く、過去のピークを大きくこえていることから見ても、四十六年度から四十七年度にかけてのわが国は異常に高い流動性のもとに置かれていた、こういうことが記載されておるわけでございます。  これに対して、日銀の四十八年二月号の調査月報に記載されている「マネー・サプライの増加について」ではこう触れております。「マネー・サプライは四十六年七−九月期ごろから非常に高まっており、そのため流動性過剰の中心は外貨流入のようにもみえるけれども、その後最近までの増加のほとんどは金融機関の対民間信用供与によるものであり、対外資産増加の寄与度はかなり低い。」こういうふうにいわれておるわけでございますが、そういう経済白書と日銀の調査月報を照らし合わせてみますと、いわゆる過剰流動性の主因は、金融機関の民間信用供与が主たる原因ではないか、こういうふうにいわれておるわけでございますけれども、これをお認めになるかどうか。それからまた、特にあのニクソンショック以来景気刺激策がとられたと思うのでございますけれども、その中で、各銀行貸し出し余力が増大をした、その一番の原因は一体何であったのか。そこら辺の問題からちょっとお伺いをしたいのであります。
  145. 伊部恭之助

    伊部参考人 お答えします。  先ほど来申し上げておりますとおり、昭和四十六年の夏ごろ、ニクソン・ショック、戦後初めての平価切り上げの経験、そのときにたまたま景気浮揚策が論議されておって、これが景気浮揚の足を引っぱるのではなかろうかというようなことで、各企業もかなりそういう点についての見通しは私ども金融機関と同じような考え方を持っておりました。いま先生が御指摘になりますとおり、これは数字に出ておりますので、私どものほうの数字を見ましても、おっしゃいますとおり、名目のGNPで昭和四十六年と四十七年を見ますると、前年同期比で伸び率がGNPが一一・二、一七・三となっております。それから市中の金融機関貸し出し残高の伸び率が二二・六、二四・四となっておりまして、GNPの伸び率よりかなり多い伸び率を示しておるわけでございます。残高ももちろんそれをあらわしてふえております。大体それまでは、前年同期比の名目GNPの伸び率と大体同じか少し高いという程度できておりましたので、やはりそういったニクソン・ショック以後の経済見通しの一般に広がっておりました景気浮揚策あるいは景気を何とかしてというような空気に乗りまして、企業金融機関も活発な経済活動を意図したという結果になったのではなかろうかと反省をいたしております。
  146. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そこで、あの過剰流動性によっていわゆる狂乱物価の口火が切られたというふうに根底的にそういう要素があったということが繰り返しいわれておるわけでございますけれども、私いろいろ考えてみまするに、今後もやはり景気浮揚策をとらなければならない場合が出てくるであろうと思うのでございます。そうしますと、また再び過剰流動性なんということになりましてたいへんでございますので、やはり金融機関としましては、いわゆる民間信用供与というそういう問題についてもある程度の秩序を考えていかなければ、再びまたこういう問題が起こってくるのではないだろうかと実は心配をいたしておるわけです。これは過去のいろいろなデータの中から判断をなさるということではありましょうけれども、一面言ってみれば、信用供与というのは、確かに現在の金融制度の基本にはなっておりますけれども、逆の立場を考えていけば、かえって企業資本率というものが低下してくるわけでございますから、いわば各企業が借金政策で商売をやっているということにも反面つながるわけでございますから、ここら辺の金融機関の基本的な考え方を示すということが今後かなり重大な問題になってくるのではないかと思うのですが、そこら辺の御意見を承りたいと思います。
  147. 伊部恭之助

    伊部参考人 今後また景気浮揚策のために金融をゆるめて、そうして信用造出によりまして景気を浮揚させるときに、また同じような問題、特に日本の企業の特色として自己資本の少ないところへまた信用供与で非常な借り入れ資本がふえるという形にもなるし、流動性がまた著しくふえるということになるについては、まさしく従来の高成長期におきましては貨幣蓄積資本が少なかったことから出発いたしました日本の工業界、産業界が急速に高度成長を遂げるには日本特有のいわゆる企業の借り入れ金増加によって大体活動がまかなわれてまいった、これは金融の元来あるべき姿から申しますれば、銀行自身が中央銀行から金を借りて、また企業に貸すというような非常に変則的な姿で日本のこの驚異的な成長が遂げられてきたわけでございまするが、あのような成長が今後やはり日本の景気政策の上で、また再現するというようなことは私どもといたしましてはどうであろう、もうやはり適正な安定成長、しかも自然環境を破壊するような立地上の設備増設もできませんし、いろいろな制約もございまして、日本の経済の体質、内容も変わってまいりまするから、おのずとまた今後の企業に対する金融のあり方もかつてのようなことにはならずに何かまた変わった新しい一つの形になっていくのではなかろうか、またそういくべきではなかろうか、こういうふうに思っておる次第でございます。
  148. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、それに関連してお伺いをするわけでございますが、これは商社の社会的な責任、いろいろいわれております。また本日は銀行の社会的な責任問題も話題に出たわけでございますけれども、やはりいわゆる資金の配分問題についても、これからの経済社会の方向というのは福祉重点でいこうということがまずこれは政策面の上においても徐々に出てくると思うのでございますが、やはり、しかし金融機関におきましても今後のそういうような方向というものを明確にしていく必要があるのではないか、こう私どもは実は考えておるわけでございます。やはり資金配分といたしましても、これはやはりそういった各銀行金融機関の指導者の指導者群と申しますか、そういった方々の意思に大きく左右をされていくわけでございますので、そのためにお伺いをしたいと思うのでございますけれども、公害防止産業とかあるいは住宅産業、あるいは中小企業の体質強化のための金融という姿勢あるいは私どもが特に要望いたしますれば教育重視の教育ローンの強化というような、そういうようないわゆる社会福祉重点の姿勢というものをかなり強く示していただく必要があるのではないだろうか、こういうふうに私どもは考えるわけでございますが、これに対する御意見を伺いたいと思います。
  149. 伊部恭之助

    伊部参考人 お答え申し上げます。  いま先生のお説きになりましたような福祉社会の建設についての銀行役割りというものをもちろん銀行の今後のあり方として、私どもは頭に描いておるわけでございます。ただし金融というものは事態が先へ進みまして、そのあとにその必要な資金が出てまいるというような形でございまするので、やはり国の産業政策として、あるいは福祉政策、社会政策としてそういうような新しい産業の構造なり社会の要請が具体化してまいりますれば、当然金融機関といたしましても、その方向資金を運用するということが必然でございまするし、また、やらなければならぬことであろう、こういうふうに存じておる次第でございます。
  150. 伊原隆

    伊原参考人 石田先生にお答えしたいのですが、一つは、今後また過剰流動性を銀行が貸し進んで起こるのではないかという問題につきまして、私ども地方銀行の田に水を引くわけではございませんけれども、大体六十三の地方銀行は、いただいた預金の範囲内で与信をするという、昔のことばでいいますと、健全経営ということを続けてまいっております。最近は地方公共団体からのお金の需要が非常に強いものですから、ややこれがくずれてきておりますけれども、また正常事態になりましたら、預金の範囲内で融資をするということになれば、国全体としてバランスがとれていくと思いますので、これは日本銀行金融政策の方角づけをそういう方角でなさるというふうにさっき総裁からも伺ったわけでございます。  それから第二の資金の配分でございますが、これまた地方銀行は大体その地域のコミュニティーバンクというと少しきざなことばになりますが、地域に奉仕する銀行といたしまして、従来からそこの個人の方あるいは地方団体あるいは中小企業というふうなことに奉仕をする、小さい規模ではありますが、公害防止のローンを中小企業にお出しをしておるとか、あれこれくふうをいたして、時代の方角と経営姿勢としては間違いのない方角に乗っておるという、個々の問題はいろいろございますけれども、自信を持って実は経営をしておる次第でございます。  ちょっとつけ加えさせていただきます。
  151. 伊部恭之助

    伊部参考人 石田先生にちょっと補足的な御説明を申し上げたいと思います。  都市銀行のいわゆる日銀依存度でございます。これはやはり預金と貸し金のバランスの執行を日銀その他外部の借り入れに依存しておるわけでございますが、これは要するに預貸し金じりでございまして、これをできるだけ自己資金でまかなえるような努力というものが目下都市銀行の最大の眼目であることをちょっと御了承いただきたいと存じます。
  152. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そういう政府姿勢に基づいての金融機関の使命であることは基本的にはよくわかりますけれども、実はこの前の石油ショック以来の海外旅行の問題でございます。これはかなり銀行でローン形式で扱っていらっしゃる場合も多いのでございますが、そういった問題に対しましても、当然これはレジャーが多いわけでございますので、海外旅行というものを石油不足のいわゆる石油を節減するという立場から差し控えなければならぬわけでございますが、運輸省としてはこれに対する抑制策は何も出さなかったわけですね。その陰にはそういう銀行ローン等によります海外旅行の拡大という点にございまして、短期的に調整しようというのは無理かもしれませんけれども、こういった点についての配慮を十分にお願いをしたい、こう思うわけでございます。  それでは一転いたしまして、三人の参考人方々にお伺いをするわけでございますが、政府はいわゆる四月から六月期にかけての財政支出を極端に押える方針をきめているわけでございまして、また日銀においても窓口規制強化いたしまして、都市銀行貸し出し増加額は一月から三月期並みである、こういうようなことをきめて通達をされておるようでございます。しかしながら四月−六月期というのは新聞あるいは雑誌等におきましてもたいへんに資金繰りが悪化するであろう。それには先ほど来お話のあっております電力の問題あるいは十ドル原油の輸入ユーザンスの決済、ボーナスその他納税資金などの資金需要、あるいはまたいわゆるうしろ向きの在庫に伴う資金需要というものが大幅にふえてくるであろう、こういうふうにいわれておるわけでございますので、四月から六月期の融資申し込みというのが相当ふえているであろう、こういうふうに予測されるわけであります。  しかし、現在のこういう物価上昇という状況を見ますると、この四月−六月期においてはそういう対策を立てて、少々資金繰りが窮屈であっても全体的にはやらなければならぬということは私もよくわかるのでございますが、それでは一体金融機関側といたしまして七月から九月期にかけてはどういうようなお考えを持っていらっしゃるか。さらにこういう形態で引き締めをさらに強化したほうがいいとおっしゃるのか、あるいは少々オーバーキルになっているので、多少はゆるめなければならぬのじゃないかという御意見を持っていらっしゃるのか。  それからもう一点は、特にこれだけの四月−六月期の引き締めの中で、これは特に伊部参考人にお伺いしたいのでございますが、いわゆる中小企業向けの融資ワク、大体都市銀行はいま三〇%くらいですか。(伊部参考人「もっとでございます」と呼ぶ)多いところでは三四%ぐらいになっておるところがございますね。そこら辺のワクは十分確保していけるかどうか、この点もあわせて御意見を承りたいと思います。
  153. 伊部恭之助

    伊部参考人 お答え申し上げます。  先生の御指摘のとおりでございまして、四月から六月は八千四百億円のわれわれ都市銀行のワクでございます。いまおっしゃいましたように、需要のほうは決算期で、決算資金、それからまた先ほど来話に出ておりまする高い石油が入ってまいります、その輸入原油の決算資金とか、その他電力の例の問題でございますとかいろいろな貸し金が錯綜いたしておりまして、需要といたしましてはおそらく私どもの許容できるワクの二、三割ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。  そこで、その数字だけを見ますとこれはどうしようもないという感じを実は私ども幹部の者は持っておるのでございます。個々銀行みなそうであろうと存じまするが、大体におきましてできるだけその期日の来たもので回収をしていただけるものは回収をしていただき、それからまたいままで繰り延べ、繰り延べでやってきていただいた方には、新しいものはまた繰り延べていただくとか、あらゆる努力をいたしまして、とにかくこの四月から六月期を越すということにいま全力を傾倒しておるわけでございます。もちろん中央銀行日本銀行とされましても、実に毎日、あるいはそのときどきの市中銀行から見た実際の経済の生きたほんとうの実情というものを常時聞いておられまして、そう何が何でもということでもない、これはやはりというようなときには弾力的なお考えも実はあろうかとは思うのでありますが、一応いまの八千四百億円のワクでとにかくやってみるということ、現在の物価の総需要抑制策最後の仕上げ期かあるいはそれに近づいた現在では、私どもはまずやむを得ぬものとしてやってみる。  問題は、先生がおっしゃいました七月から九月でございます。これは夏場でございまして、決算資金というようなものはあるいはなくなるかも存じません。しかし、今後入ってまいりまする原油の輸入代金でございますとかいろいろな問題がございますから、そのときのまた物価情勢をごらんになりまして、中央銀行がどういう判断のもとにどういう政策をお出しになるか。そのときには私どももまた私どもなりに、きわめて短期間の見通しを率直に申し上げまして、私どもの七月、八月、九月の窓口におけるお客さまの実際の要望、あるいはやむを得ぬ資金、そのワクは一体どのくらいが適当なことであるかということを十分お打ち合わせをした上で御決定をいただきたい、こういうふうに存じております。
  154. 伊原隆

    伊原参考人 中小企業さんに対します地方銀行の総貸し出しの中のパーセンテージは、十二月で六二%でございます。地元でございますので、一生懸命でやるということには変わりはございません。四−六はなかなか苦しいと思います。おっしゃるとおり中小企業さんの資金需要もございますし、またわれわれの特色でございます公共団体のほうの資金需要もあるということでございますが、何とかしてこれをやっていきたいと思います。  それから、七−九はどうかという問題でございますが、これはただいまお話のございましたように、石油に基づく価格の改定がどういうふうに円滑にいきますのか、その辺を見通した上でやることだと思います。それからもう一つは、せっかくの今度の経験でございますから、総需要抑制ということのほかに、ボトルネックになった個別の物資については政府需要供給のお見通しをお立てになるということも必要じゃないか。そして供給力に合ったようなやり方をする。そのゆるめ方も、ワクをゆるめるのか、公定歩合を下げるのか、財政支出をゆるめるのか、いろいろあると思いますけれども、私は、財政のほうの、公共事業等を少しずつゆるめていくとか、金融のほうを一気にあれするというのは、七−九あたりではまだむずかしいのじゃないかというふうに感じております。総合的に考える問題でございます。
  155. 増田庫造

    増田参考人 四月−六月の金融につきましては、相互銀行全体といたしまして二千七百五十億円のワクを日銀から許されております。これは昨年の同期と比較いたしますとわずか四、五%の減少でございますので、大体昨年の四−六と同じような融資ができるのじゃないかと思っております。ただ、先生から今後の七−九をどうするかという御質問が。ざいましたけれども、七−九には少し金融を緩和して、日銀としてはワクをよけい出してくれなければ困るというような考えを持っておるのでございます。と申し上げますことは、私どもの対象としておる中小企業、非常に金融も詰まっておりますし、それから物価上昇影響によりまして経営内容が非常に逼迫しておる面が多分にございます。ことに金融引き締めによりまして、たとえば回収が手形でなされましても、ワクがないために手形が割引できない。それがために自分のところの金融がつかないというようなことで、俗にいう黒字倒産というようなこともあり得ることが危惧されるのでございまして、七−九は金融の緩和を少し望みたいというような希望を私は持っておるのでございます。おそらく日銀は、そこまで緩和というような面はいかないかと存じますが、皆さん方のお力によってその方向に進めていただければしあわせだと思うのでございます。  なお、一般大衆の福祉の問題につきましては、私ども相互銀行におきまして、住宅融資につきましては極力力を入れておりますし、それから私ども中小企業対象の金融機関でございますので、総貸し出しの少なくとも八〇%以上を中小企業に向けなければならないような法制がされておりますから、中小企業には相互銀行あげて御融資をいたしておるつもりでございます。その点は相互銀行に限っては御安心していただきたいと思うのでございます。住宅ローンにつきましても、昨年の同期と同じくらいなものがこの一月−三月になされる見通しでございますので、この点には力を入れておりますし、ことに住宅問題につきましては、相互銀行全体におきまして共同施策として住宅貸し付け会社をつくりまして、そして住宅貸し付けに力を入れておりますことは都市銀行さんと同様でございます。御了承願いたいと思います。
  156. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 時間がありませんので、まだたくさんお伺いしたいのでございますが、最後に一つだけ伊部参考人伊原参考人にお伺いしたいのです。  先ほど相互銀行のほうの増田さんからはいろいろお話を承ったのでございますが、いわゆる貸し出し金利の問題と預金金利の問題、先ほど預金金利引き上げの問題、要望ですか、そういうお話がずいぶん出ておりました。私もある銀行の頭取さんといろいろ御懇談の機会がございまして話を承ったのでございますが、先ほど銀行の収益性の問題も出ましたけれども、それとからみ合わせて御質問をした内容は、貸し出し金利と預金金利の幅というものをもう少し縮め得るのではないだろうか、いま高金利時代でございますから、必然的に私の議論は預金金利を引き上げてもらいたいというような話になるかもしれませんけれども、角度を変えて御検討を願いたいのは、貸し出し金利と預金金利の幅をどこまで理論的に縮め得るのか、そこら辺の御見解を承りたいと思います。私が伺ったあるかなり大きな銀行の頭取さんでございますけれども、いま以上には縮め得る、それで銀行としては十分経営はやっていける、こういうことをかなり大胆にそのときおっしゃったのです。そういう点からも、いまの都市銀行あるいは地方銀行等におきましても、貸し出し金利と預金金利の幅というものをある程度縮め得るのではないか、私はこういう感触を抱いておるわけですが、これらについて御見解を承りたいと思います。
  157. 伊部恭之助

    伊部参考人 貸し出し金利と預金金利の利ざやをもう少し狭めていけないかというお話でございますが、これは銀行の業態、種類、それぞれによりまして、なかなか画一的なお答えができにくい問題であろうかと存ずるのでございます。しかも、特定の銀行をとりましても、なかなかその数字は、経理的に非常にいろいろな要素がございまして、いまの貸し出し金利と預金金利の幅がさらに縮め得るかどうかという問題に立ち至りますると、預金金利と貸し出し金利との利ざやがすなわち銀行の収益ということでないことは、十分先生方御存じのとおりではございまするが、現在のような状況に立ち至りますると、公定歩合が上がりますると、やはり政策の一環としても、貸し出し金利、市中金利は上がるわけでございまするが、この追随して上がる率は、すぐにはなかなか上がらないのでございまして、大体五〇%から六〇%ぐらいの追随率で都市銀行などは上がってまいる。預金金利のほうは期日の来るものから上がってまいるわけでありまして、貸し金のほうも期日の来るたびに上がるのでございますが、このほうはやはりなかなか、追随率から申しますと、そういうふうにすぐ全部がどんどんと上がってまいるという状態になっておりませんことと、それから、現在の状況下におきましては、やはり法人の流動性の非常な極端な減少というものが大きく預金に響きまして、預貸金じりが著しくアンバランスになっております。そして、この高金利時代の、コールマーケット市場、割引市場の金利が非常に高いものでございますから、現在の状況でそろばんをはじきましても、なかなかこの預金金利と貸し金金利の幅をいまここで簡単に狭めてごらんにいれますというわけにはまいらないという感じが私には多いのでございます。
  158. 伊原隆

    伊原参考人 ただいま伊部さんからお話しになったのと大同小異でございます。  われわれといたしましても、できるだけ預金者に奉仕をする。従来は、やはり貸し出し面につきまして、なるべく中小企業さんに安くお貸しするとか、あるいは個人の方の住宅ローンを安くするとか、地方公共団体は低くするとか、そういう面にわりあいにウエートがかかっておったのですが、あるいはバランスとして、今後預金のほうにバランスをかけていくというふうな考慮も十分にしなければならないというふうに思います。しかし、何ぶんにも、半期、半期だけで判断いたしますのは、なかなか根本的な問題でございますので、ちょっと腰を落として考えなければならないというふうに存じております。
  159. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 残余の問題はまた次の機会にお伺いをいたしたいと思います。ありがとうございました。
  160. 平林剛

    平林委員長 和田耕作君。
  161. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 最初にお聞きしたいのは、最近、土地の取引が非常に激減をしておる、そして住宅の取引も減っておる、にもかかわらず、土地の価格が下がっていない。東京あたりではマンションが非常にたくさんあるんですけれども、たくさん余っておるにもかかわらず、マンションの価格が下がっていない、これはどういうわけでしょう。
  162. 伊部恭之助

    伊部参考人 非常にむずかしい問題でございまして、私も実は、土地がなかなか売れない、売りたいと思っても売れないという声が非常にある。事実、その土地が動いておらないのでございます。しかし、では、地価のほうにどう響いておるかといいますと、全く先生のおっしゃるとおり、動いていない。一体これはどういうことかということでございますが、まだ土地を持ち続ける力があって、値を下げても売らなければならぬ状態でないのかどうかということでございますが、一般的に申しまして、私ども関係取引先に関しましての印象では、それほど金がまだ流動性が高いというふうにも思えないのでございますから、あるいは土地によりましては異なると思いますが、場所によりましては、やはり値下がりという現象も近く出るのではなかろうか、こういうふうに見ております。
  163. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 伊原参考人はいかがでしょう。
  164. 伊原隆

    伊原参考人 私どもも、窓口から見ておりますと、土地の売買がぱったりとまりまして、変な話でございますが、土地の代金を預金にいただくというふうなことに従来、相当力を入れておったほうも、あまり入らないということでございます。しかし、大体の方が、地主さんなどは、税制の関係とか、それからこれからの土地対策等を見ながら、まだ土地を持っていようというふうなお考えなんじゃないかというふうな気がいたします。ただし、一般にデベロッパーが持っておられた土地は、なかなか苦しくなってきておるのが実情のようでございます。
  165. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 増田参考人も同じような意見ですか。
  166. 増田庫造

    増田参考人 私の見解を申し上げますというと、土地は、買った者は高く処分しなければ手放さないというような既成観念があるんじゃないかと思っておりますので、そうなかなか安くならないということでございますけれども、この金融の逼迫によりまして、土地を手放すという傾向も多少出るんじゃなかろうか、そのことは、土地が幾らか安くなるようなものも出てくるんじゃないかというように思うのでございます。  それから、マンションにつきましては、これは建築価格が非常に高くなっておるというようなことで、非常に高い価格が近ごろつくようでございます。御承知のマンションになりますと、近ごろは非常に設備がよろしゅうございまして、もうからだだけ一つ持っていけば入れるようなマンションでございますから、付帯設備が非常にかかっておりますので、非常に高く価格をつけているようでございますけれども、一体にそうした建築価格が高くなる、それから中に入れます什器、備品にしましても高くなる、それに何%かかけて売ろうとするのが業者のしかたでございますし、かかるもとが付帯設備まで入れますので、高額になる。それに、その利益が乗っかるというようなことで、非常に高いものになっているといったことが実情じゃなかろうかと思っておりますのですけれども、場所にもよりけりでございます。
  167. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私もこの問題はほんとうにふしぎな、いまに土地が下がるんだという感じもあったのですが、なかなか下がらない。また、下がりそうにもない一つの大きな原因は、土地の担保力という問題と関係しているんじゃないかと思うのですけれども、おそらくいまの銀行さんでは、担保という面から見ると、やはり最優先のものはいまでも土地じゃないですか、その点いかがでしょう。
  168. 伊部恭之助

    伊部参考人 いや、土地が最優先ではございませんで、非常に流動性の高いものをやはり担保としては一番銀行としては望んでおるわけでございます。
  169. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 もう二十年ほど前ですけれども、朝日新聞の笠信太郎さんという人がおりまして、「花見酒の経済」という有名な本を書いております。あのころから日本のインフレーションの問題を憂える人がいろいろ検討しておったのですが、結局、笠信太郎さんが指摘したことは、いまの土地の担保、つまり土地担保でたくさんの信用力が働いて、そうして日本の経済に流れ込んでおる、この問題を指摘した人だと思うのですけれども、現在、こんなに土地の取引が少なくなってほとんど半年ぐらいになっているわけですが、にもかかわらず、ほとんど下がっていない、上がりさえしている。マンションもそうです。これは、私は金融機関がいつまでも土地を担保にしてたっぷり金を貸している、このことと関係あると思うのです。はなはだ相済まぬ話ですけれども、各関係金融機関の土地担保で融資をしておる資料をひとつお出しいただけませんか、これいかがでしょう。
  170. 伊部恭之助

    伊部参考人 ただいまの件に関しましては、監督官庁と御相談いたしまして、もしできれば御要望に沿いたいと思います。
  171. 伊原隆

    伊原参考人 土地の値が、しかし呼び値は高いのですけれども、実際の売買はだんだん下がってきたのもありますし、それからもう土地を担保にしてといいますか、土地を買うためにはお金をお貸ししないという基本方針をどんどん貫いていただけば、適正な価格に下がるのじゃないかと思います。  なお、土地担保の融資につきましては、ただいま伊部さんのおっしゃいましたように、ひとつ大蔵省と打ち合わせをいたしたいと思います。
  172. 増田庫造

    増田参考人 土地担保の貸し付けの資料をというお話でございますが、ある程度の資料は大蔵省に出しておりますので、大蔵省の命令さえございますれば、総体の貸し付けのうち、土地に対して幾ら出ているかというようなことを調べ出すことは決してやぶさかではございません。
  173. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまの問題について大蔵省、感想でけっこうですが、一口、土地担保という問題がいまの土地の価格の値上がりや値下がりと関係があると私は思うのだけれども、あると思われるか、たいしたことないと思われるか、あるいはないと思われるか、それだけでけっこうです。
  174. 米山武政

    ○米山説明員 なかなかむずかしい問題でございますが、確かにこれはある程度あると思います。ただどの程度かちょっとわかりませんが、あることはあると思います。
  175. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この問題はつまり土地を持っておりましても、それを担保にして相当有利な形でお金が得られるということがあると、やはり持ちこたえる力も大きい、あるいはそのお金でもって他のもうける仕事へ出すということになりますから、いまのせっかくの政府あるいは金融機関協力なさって地価を押えようという形の発想ですけれども、そこのところにやはり一くふうしないと、なかなか土地というものは下がらない、こういうふうに思いますので、ぜひともひとついまの資料等がありましたらお教えいただきたいと思います。
  176. 伊部恭之助

    伊部参考人 先生のお話、よくわかりましたのですが、銀行融資の担保としてやはり一番好ましいのは、流動性のあるものであるということは、われわれ商売上の常道でございますが、しかし不動産担保、土地担保と申しましてもいろいろございまして、たとえば大きな工場財団というふうなことに相なりますると、これもやはり土地も入っておるわけでありますし、それから中小企業の方で長期の金をお借りになるという場合には、やはり不動産というものが担保になる例は、これは非常に多くございます。したがいまして、統計的にどういうふうにこれを区別するのか、いま先生の御指摘になりました、土地の価格関係のあるような担保をつけた貸し付け金がどのくらいあるかということをさがし出すことが、どうなりますか、概数ぐらいしかあるいはわからないかも存じませんが、とにかく御当局とよく御相談しまして、できるだけ御満足のいくようにひとつ……。
  177. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 断わっておきますけれども、土地担保はいけないということを言っているわけじゃありません。ただ、いまの少しわけのわからないインフレーションの一つのわからない点として、解明するものは解明する必要があるということで申し上げておるわけです。  その次の問題は、選別融資ということを先ほど日銀総裁もおっしゃられたのですけれども、そして皆さん方は非常に御苦労なさってやっておられると思うのですけれども、いままでは当然のことですけれども、もうけるところへ金を貸すということで、これは基本原則ですね。ところが、もうけるところでも、国民生活の面から見て困ったところには金を貸しちゃいけない、そういうふうにいたしましょうというので選別融資をやっておられるわけですね。午前中も日銀総裁は、電力は非常に重要な事業だし、国民生活関係があるから、これには援助したいと思う。しかしそのあとで私が、じゃその土地とか建物業者が一番困っておるのだけれどもどうかといえば、これは絶対助ける意思はないのだというお考えを出されたわけですけれども、こういう状態というのは私まだしばらく続くと思うのですね。つまりスタグフレーションの問題との関連もありますけれども伊部さんはスタグフレーションという御意見を出されたわけで、相当続くと見なければならないのですが、こういうことになりますと、銀行というものの一つの基本的な性格が相当変化してくると私は思うのですね。この問題が一つ。  もう一つは、やはり先ほど来問題になっている預金の目減りの問題ですね。あるいは社会福祉的な観点から見た勤労者の住宅ローンの問題ですね。あるいはまた教育投資等の問題ですね。これは、いずれも、採算的な立場からは、なかなか困難な、いままでの私企業の営利を基本とした立場銀行という目から見れば、非常に困難な問題ですね。しかも、これは、皆さん方の御意見を聞きましても、何とかそういうふうな面にも目を開いていきたいという御意見があるわけですけれども、こうなりますと、国との協力あるいは地方公共団体との協力という問題が当然出てくる。また、こざるを得ないと私は思うのです。そういうふうな面を、つまり自由経済が大事だから、そういうふうな方向への発展は好ましくないと思われるのか、あるいはこれは相当積極的に国、地方公共団体との協力関係強化していかなければならないと思われるのか、いずれでしょう。三人の方々の簡単な御意見を伺っておきたい。
  178. 伊部恭之助

    伊部参考人 午前中私スタグフレーションということばを使いましたが、まあ不況下の高物価という形のきざしがどうもあるような気がいたしますという申し上げ方をしたのでございますが、それから預金の目減り問題その他等々でございますね。  銀行金融機関の性格が変わっていくのではなかろうかという先生の御意見は、私どもも実はまだ的確に未来の姿を描き得ないのではございまするが、基調は自由主義経済でございましても、だんだんと重化学工業中心設備投資を基盤とした経済発展ではございませんで、いわゆる福祉経済と申しますか、言いかえれば、いま先生のおっしゃいましたような、地方自治体あるいは国とあるいは民間の業者が一緒になったような、日本語でどう申しますか存じませんが、いわゆる第三セクターというようなことばがございますが、ああいうようないき方の仕事が、だんだんふえていくのではなかろうか。これはやはり世のおもむく趨勢でございまして、金融機関もやはりそういうものに依然としてかかわりあいがなしで、いままでのような状態でいき得るかと申しますと、先ほど申しましたように、金融機関としますのは、やはり世の動きについて、その進運の方向に金を出していってこそ、金融機関自体も生きる道でございますので、先生のおっしゃったような方向を考えておるわけでございます。
  179. 伊原隆

    伊原参考人 いま仰せのとおりでございまして、国全体が動いておる、金融機関は公共的なサービス産業でございますから、その方角に行くのは当然であると思います。ことにいままでは、預金をお集めするということは非常な努力で、貸し出しのほうは有利で確実というふうな一つの基準が、金融機関として、当然のことでございますが、ありましたのですが、そのほかに社会的の要望と申しますか、社会の方角という評価を入れた資金の運用をしてまいりませんと、お金を預ける方も、そういうふうに使うのではあすこへ預けないというふうな方角にもなりますので、今後社会性というものを十分に取り入れると申しますか、それに従っていかなければならないというふうに考えております。
  180. 増田庫造

    増田参考人 私どもの考えといたしましては、いまの伊原さんの考えとほとんど同じでございまして、金融機関が公共性という使命を持っている以上は、やはり国民の福祉のためにも、地方公共団体と協力いたしまして、そして地方の開発なり福祉の問題について行なうべきだというふうに考えております。その点御了承いただきたいと思います。
  181. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 非常にりっぱな御意見だと私思います。と申しますのは、いまの金融機関、特に中心になる銀行というものが時代の流れにうまく適応していく、あるいはリードしていくような姿勢をとりますと、妙な革命的な動き、考えなんというものは、これは失礼ですけれども、なくなると私は思うわけですね。大事な機関がそういうふうな適応力がないとこれは行き詰まると私は思うのです。自民党の諸君もそうだと思うのですね。自由経済、自由経済とあほうの一つ覚えみたいに言っていると……(「あほうじゃないですよ、あなたの意見も入れているんだ」と呼ぶ者あり)そういう問題は解決できないということだと思いますので、ぜひこの問題は——いま冗談をちょっと申し上げたわけですけれども金融機関としてはぜひともこの問題とひとつ真剣に取り組んでいただきたい。そうしますと、たとえば商社にしてもあれにしてもそういう問題は起きてこぬと私は思うのです。行政指導の問題がいろいろ取りざたされておりますけれども、私は行政指導は必要だと思っているのです。いつでも物価委員会でそういう立場から議論しておるのですけれども、正しい行政指導が必要なわけですね。癒着した変な行政指導というのはこれはおかしなものなんで、そういうことをやるためにも、民間の一番中心になる企業がそういう心がまえを持っていただく必要があるのじゃないか、こういうように思うわけで、ことさら一番最後に申し上げたわけでございました。きょうはどうもありがとうございました。(拍手)
  182. 平林剛

    平林委員長 本日の参考人に対する質疑はこれにて終了いたしました。  参考人各位には、お忙しいところ長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べくださいましてまことにありがとうございました。ここに委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十二分散会