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1974-02-14 第72回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十四日(木曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 平林  剛君    理事 稲村 利幸君 理事 加藤 六月君    理事 木部 佳昭君 理事 橋口  隆君    理事 山下 元利君 理事 井岡 大治君    理事 松浦 利尚君 理事 野間 友一君       上田 茂行君    片岡 清一君       羽生田 進君    粟山 ひで君       山崎  拓君    山本 幸雄君       吉永 治市君    金子 みつ君       中村  茂君    山中 吾郎君       小林 政子君    有島 重武君       石田幸四郎君    和田 耕作君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君  出席政府委員         総理府統計局長 川村 皓章君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         経済企画政務次         官       竹内 黎一君         経済企画庁長官         官房参事官   有松  晃君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    喜多村治雄君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         通商産業審議官 森口 八郎君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岸田 文武君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局審査部第         一審査長    妹尾  明君         外務大臣官房人         事課長     浅尾新一郎君         通商産業省生活         産業局紙業課長 村岡 茂生君         運輸省港湾局倉         庫課長     増田 信雄君         消防庁予防課長 永瀬  章君     ――――――――――――― 二月二日  物価値上げ反対に関する請願鬼木勝利君紹  介)(第一五四一号)  同(北側義一紹介)(第一五四二号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一五四三号)  同(鈴切康雄紹介)(第一五四四号)  同(松尾信人紹介)(第一五四五号)  同(矢野絢也君紹介)(第一五四六号)  同(大野潔紹介)(第一六四三号)  同(小濱新次紹介)(第一六四四号)  同(坂口力紹介)(第一六四五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一六四六号)  同(松尾信人紹介)(第一六四七号) 同月四日  物価値上げ反対に関する請願有島重武君紹  介)(第一七二三号)  同(坂口力紹介)(第一七二四号)  同(伏木和雄紹介)(第一七二五号)  同(松本忠助紹介)(第一八一〇号)  同(松本忠助紹介)(第一八五四号)  同(正森成二君外五名紹介)(第一八五五号)  生活必需物資価格及び公共料金値上げ抑制  に関する請願關谷勝利紹介)(第一八一一  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十三日  物価安定に関する陳情書外四件  (第二一〇号)  木材、建設資材等異常価格引下げに関する陳  情書外一件  (第二一一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ――――◇―――――
  2. 平林剛

    平林委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤六月君。
  3. 加藤六月

    加藤(六)委員 先般経企庁長官公取委員長、また各省物価に関するそれぞれの行政に関する報告を承ったわけでありますが、総論的にはわが党の橋口委員が御質問申し上げると思いますが、時間の関係上、私、先に部分的な問題についてやらせていただきたい、こう思うわけであります。先般の大臣公取委員長運輸各省行政的に行なった問題の報告を承り、また当委員会としましては、戸田地区並びに横浜の保税倉庫関係を視察に行きました。輸入物資、特に生活関連物資がどういう流れをし、どこで停滞をしておるかといった問題について目下鋭意行動中であります。いずれ当委員会においてそういった問題、それぞれにつきましてのはっきりした方針結論が出てくると思いますが、そういう問題にからみまして、先般も短時間、十分間ほどでありましたが、倉庫業法に関連するいわゆる物の流れと、流通過程における物の流れあるいはそれに伴う貯蔵という関係を御質問申し上げたわけでございます。きょうも相当時間をかけてこの問題について御質問申し上げたい、こう思っておったわけでございますが、きょうもまた時間がございませんので、非常に簡略な質問になっていくと思うわけであります。  いまここへ経企庁物価局長有松参事官等が来られておるようでございますが、先般の報告を聞き、買だめ法法律その他を読んでみまして、主務大臣という名前任命——物価調査官指定と数の問題についてお伺いいたしておきたい、こう思うわけでございます。  先般の報告書をもらいますと、物価調査官は、経企庁はもちろんでありますが、通産、農林、厚生等に置いておると思うわけでありますが、私は、物の流れあるいは最近の便乗値上げの大きな要因をなしておるのは、その流通過程におけるいろいろな業者値上げという問題が強くなってきておると思うわけであります。そうして端的な例として、先般来倉庫をあちこち視察したわけでございますが、倉庫業法あるいは運輸省関係にはこの物価調査官というものを置く制度もなければ、また倉庫業法立ち入り検査をして悪徳なる倉庫業者を摘発する権能もないと思うわけでありますが、売惜しみ法案を審議した過程と、今日物価の問題で究明していきますと、流通過程におけるメスの入れ方というものが非常に欠けておると思うわけであります。  小島局長にまずお伺いしたいと思いますが、流通過程における物価調査官というものは各省ばらばらで、いま物価調査官を置いておる役所ではたして完全にこれが行なわれるかどうか、その見解を承っておきたい、こう思います。
  4. 小島英敏

    小島政府委員 ただいまの価格調査官任命状況は、経済企画庁が二十四名、厚生省十名、農林省二百六十九名、通産省四百十九名、合計七百二十二名でございます。これは地方支分部局も含めた数字でございますが、確かにおっしゃいますように、いままで買占め法というものが立法されました当初の段階というものは、主として大きな企業のそういう行為を規制するということを目的として法律がつくられたわけでございます。ところが最近の状況はなかなかそういうところだけでは相済まなくなってきて、トイレットペーパーとか合成洗剤とかいうようなものはむしろ流通中間以降のところに問題があるのではないかということもございまして、また今後なおそういうものが出てくるおそれもございますので、この間の生活法の一部改正におきまして附則で買占め法のほうの改正もお願いいたしまして、特に地方に対する権限委任をいたしたわけでございます。現在企画庁が中心各省一緒になりまして地方に対する各種の研修その他をようやく終わりまして、またなおブロック別に現在そういうことをやっておるわけでございますけれども、幸い地方団体のほうも一般的にかなり熱意がございまして体制整備が進んでおります。  現在までの自治省調査によりますと、二月一日現在の調査でございますけれども、名前は一定しておりませんが、価格調査員等任命状況が、都道府県が五千七百三十一名、それから指定都市が三百九十四名、合計六千百二十五名というものが同様の機能を果たすべく任命されているわけでございまして、その意味からは、地方団体に対する権限委譲と、それから今回本省関係におきましても地方支分部局をはじめとしてかなり増員をいたしまして、また専任の調査官も設けるということで、おっしゃるようにいままで比較的ウィークと見られておりました流通面に鋭意努力を傾注いたしつつある段階であるというふうに申し上げられると思います。
  5. 加藤六月

    加藤(六)委員 この問題を議論しておると長くなって、私がきょう質問したいと思った問題ができなくなるわけでありますが、いま局長答弁を承りますと、もちろん当委員会においてもすでに理事会権限委譲した地方公共団体のいろいろな問題についても調査を進めていこうということは検討いたしておりますが、私が御質問申し上げましたのはそうでなくして、流通過程における調査官は、各省のなわ張り争いか、各省が、砂糖はそれなら農林省でやります、洗剤、はい、それは通産省でやります、しかしそれが実際流れて、メーカーから消費者の間に流れ行く過程流通過程というものはなかなか把握しにくい。その間に問屋があり、その問屋あるいはメーカーあるいは中問屋の業務を補完的に行なうところの倉庫というものがそこにある。そこにストックされておる場合がある。そこに隠されておる場合がある。それを摘発し——摘発するということばはよくありませんが、立ち入り調査をし、物を出す、そして物価の引き下げに寄与さすという場合に、いま局長答弁された中央官庁調査官並びに権限委譲した地方皆さん方だけの間でできずに、逆に、私は運輸省という名前を出したわけですが、運輸省のこういう関係流通分野物流、こういう関係でのベテランのそろっておる、ここに調査官を置く必要はないかどうかという問題を提起したわけでありますが、この問題についてあまりやっておくとどうかと思いますので、まあきょうはこの程度にいたしておきます。  消防庁予防課長おいでいただいておるようでございますが、先般われわれが自家用倉庫という問題について戸田地区を視察しました。私自身も別に海老名地区その他問題になっておる地区も見てきていろいろいま考えさせられているわけでありますが、自家用倉庫が現在のところ建築基準法によるところの届け出で済むということになっております。もちろん都市計画法が施行してあり、都市計画法指定地域というものは八種類に分かれておる、その一種と二種の住宅地域にはこの自家用倉庫は建てられないけれども、それ以外の地域には自家用倉庫はだれが建ててもかまわないということになっておるようでございます、各市役所に建築届けを出して、使用地域を誤ってさえいなければ。そしてまたあまり膨大な構築物でない限りにおいては、構造上の検査もそう行なうことなしに許可しておるということでございます。それで、先般来われわれは経企庁中心にこの自家用倉庫を含む倉庫に対する各省実務者会議を招集してもらってこれに対するいろいろな施策問題について検討してもらいたいということをお願いしておったわけでございますが、消防庁予防課長にお聞かせ願いたいと思うわけですが、現在消防庁としてはこういう倉庫に対してどの程度月例検査あるいはまた規制というものを考えておられるかどうか、もちろん消防法上だけの立場であって、中に入っていろいろな立ち入り検査はできないと思いますが、消防法を読んでみますと、外からだけ見たのでは消防は完全にできない。もちろん中に入らなくてはならないわけでありますが、その中にある品物がだれの品物で、どういう内容の品物であるということはわからぬと思いますが、倉庫そのものに対する検査消防庁はどの程度やっておられるかということについてまず承っておきたいと思うのです。
  6. 永瀬章

    永瀬説明員 御指摘倉庫立ち入り検査のことでございますが、危険物でない一般倉庫ということに相なりますと、これは市町村がそれぞれ立ち入り権限を持っておりまして立ち入りすることになっております。もちろんこれはいま先生お話しになりました火災予防上の見地から入ってまいりますが、人員等関係で現在平均的に見ますと、一年に一ぺん程度平均値になっております。土地によりまして、あるいは時期によりまして対象を変えていきますので、場合によってはもう少しふえたりあるいは減ったりということはございます。大体その辺の見当だとわれわれ把握いたしております。
  7. 加藤六月

    加藤(六)委員 建設省建築指導課長まだおいでになっておられませんか。——それでは都市計画法立場からの私の質問というのは、おいでになってないので、時間の都合で変更させていただいたのでやめます。  大蔵省輸出課長——おいでになってない。  それでは運輸省倉庫課長おいでになっておられるようでございますので、倉庫課長にお伺いします。先般も質問いたしたわけでありますが、現在の倉庫業法では、立ち入り検査あるいはこの荷物はだれのものであるか、あるいはこの荷物はどこへどうやって流れていくのかということを今日の倉庫業法で期待するような線が出るとお考えでしょうか。お考えでないでしょうか。その倉庫業法の解釈について、ひとつ意見を承りたい、こう思います。
  8. 増田信雄

    増田説明員 お答え申し上げます。  現在の倉庫業法法律目的がきわめて限定されております。そこで、先生指摘のような物流そのものに対しましての調査権はわれわれ発動し得ないと考えております。つまり荷主の名前あるいはそういう荷物の動く理由その他について倉庫業法で確認することはできないというふうに考えております。
  9. 加藤六月

    加藤(六)委員 先般私は有松参事官倉庫業法関係と売惜しみ法五条の二の問題についてお尋ねいたしたわけでございますが、倉庫業法だけで今日の問題になっておる自家用倉庫というものに手が加えられるか加えられないか。そしてまた倉庫にも各種ありますが、いわゆる倉庫業法に認められておる倉庫の中の物の、倉庫を経由していく物の流れというものについての究明という問題についてはなかなか把握しにくい。一つ自家用倉庫をどうやっていくか、一つ営業用倉庫の中をどうやっていくかという問題、もう一つは先般われわれ物特委員会が視察したいわゆる輸入物資、特にそれが、生活関連物資がどのような経過をとって流れていくかという場合の保税倉庫保税上屋、こういった問題が出てきたわけであります。そしてそれにからむはしけの問題等があるわけでございますが、こういうところに、たとえば私が例をあげて、これは有松さんに御質問したいと思いますが、たまたま民間人協力あるいはわれわれ国会議員活動自家用倉庫に大量の品物があったという場合にこの品物調査し、あるいは民間需要に回すように市場に出してくる方法は今日の法律、売惜しみ法あるいは倉庫業法その他でどういう手続きでできるかできないかということについて御説明願いたいと思います。局長でけっこうです。自家用倉庫に限って説明してください。
  10. 小島英敏

    小島政府委員 自家用倉庫ですと、やはり現在の買占め法の四条の規定の施行に必要な限度において五条一項を適用して立ち入り検査を行なうことができるということでございますから、やはりたとえばある貸し倉庫がある特定企業にそのまま貸されているような場合には、その企業五条立ち入り検査を受けます場合には当然それに準じて立ち入り検査ができると思いますけれども、結局企業のほうから入っていくわけでございますから、一般的にどこかに貸してあるものをそのまま直ちに立ち入り調査をするということは不可能ということに相なると思います。
  11. 加藤六月

    加藤(六)委員 いまの四条を受けた五条の一項であなたが言われたのは、企業があって、その企業自家用倉庫へ膨大な品物を入れておるということがわかった場合のみにそれができる、こういう説明ですね。そうすると私が御質問申し上げたのは、企業には関係なしにここに大きな自家用倉庫がある。この自家用倉庫の中に洗剤なら洗剤が非常にたくさん入っておるということが民間人やあるいはわれわれの活動によってわかった。しかしこの倉庫がだれのものであるかということはわかりますわね。ところが中のものはだれのものかわからない。建物所有者に聞いたところが、建物所有者はそれに対して非協力であった。黙否権を行使したという場合にどうなるかということと、その品物がはたして流通過程に正常なものに乗れる法的な手続は何々であるかということを質問したわけですから、それに対してもう少しわかりやすい答弁をしてください。
  12. 小島英敏

    小島政府委員 やはりその持ち主が協力的にどこから預っていますということを言ってくれればいいわけですけれども、もしそれを言ってもらえない場合には法律的にはやはりいかんともしがたいのではないかというふうに思います。
  13. 加藤六月

    加藤(六)委員 私は売惜しみ法やあるいは昨年暮れ成立した石油二法、いろいろな問題が、先ほど一番最初に御質問申し上げましたように、一つの大きな企業とかあるいはメーカーとかあるいは商社とかいうものが外国から物を買いあるいは品物をつくり、そして最終の末端の国民の手元に入る、その系統的にあなた方は物価を引き下げ、売り惜しみ買いだめをさせないような方法をお考えになっておる、ところが、その中間にいま申し上げましたような倉庫なら倉庫というものがある。これは入り乱れておる。そこにどういうメスの入れ方をして物価を下げさすかということで、私は倉庫業法あるいは保税倉庫、そういった業法による倉庫あるいは自家用倉庫という問題を追及していきたい、こう思っておるわけです。したがって、これはまたひいては物価問題の大きな要因にもなるのですが、系統的に追っていくのと、その中間にある、そういう交錯したものというもの、設備というもの、倉庫というのはそういうものに該当すると思うのですが、それをどうやってメスを入れて、国民生活を安定させ、物価を引き下げ、売り惜しみ買いだめを防ぐかというところに私はいまの行政上の、ミスといったら言い過ぎかもわかりませんが、悩みがあるのではないかと思うのです。そういう点について先般来私が倉庫中心とする自家用営業用を含むものについて実務者会議を開いてこの問題について検討してもらいたいということをお願いしておったわけですが、何か実務者会議のようなもの、あるいは検討会議のようなものはやっていただいたでしょうかどうでしょうか。
  14. 小島英敏

    小島政府委員 有松参事官が前回そういうお話を承ったそうでして、これはいま各省と検討いたしております。ただ、なかなか難問でございまして、いまの段階では、まだこうしたらよかろうという結論に到達していないというのが現状でございます。
  15. 加藤六月

    加藤(六)委員 私の時間は来ました。きょうは建設省建築指導課長大蔵省輸出課長等にいま申し上げたよりか詳しい問題で御質問申し上げよう、こう思っておったのですが、時間が参りました。  最後に一つ要求しておきます。それは、ひとつ経企庁中心にいま申し上げましたような問題についての各省庁にまたがる主務者会議でも何でもよろしいですから一日も早く開いて、縦の線におけるところの輸入業者メーカー商社という線だけでなしに、それを越えて存在するところの倉庫という問題について、いろいろな倉庫がある、これらについて早急に検討していただきますようにお願いして、私はきょうは実は保税上屋保税倉庫、倉ばしけの問題をもう少しやっておきたいと思ったのですが、次回に譲ることにしまして、きょうはこの程度にさせていただきます。  ありがとうございました。
  16. 平林剛

  17. 橋口隆

    橋口委員 経済企画庁長官にお伺いしたいと思いますが、今回、再開壁頭の本会議、それから先般の物価委員会において、長官物価政策に関する基本方針をお述べになったわけでございますが、それについて若干の質問を試みたいと思います。  総理あるいは大蔵大臣、うちの経企庁長官、みんな口を開けば政治の最大の重要課題物価政策である、インフレ抑制である、こういうことを強調されているわけであります。その政府努力にはわれわれも敬意を表するものでありますが、そういう政府の累次の努力にもかかわらず物価はどんどん高騰を続けている。しかもきのう発表されました日銀の指数を見ますと、実に一月の卸売り物価指数は三四%に達しておって一昨年の二月以来連続二十四カ月間も高騰を続けているという実情であります。また消費者物価も二〇%を一月はこえておる。これもずっと続騰を続けておる、こういう状況でございます。  そこで私は、これは政府は口を開けば海外要因によるものであるとかあるいは石油危機によるそういう影響だとかこういうことを言われるわけでありますが、何か政府の施策に非常に重大な欠陥があるのではないかということが一般にも指摘されている。与党であるわれわれもそういう感を深くするのでありますが、それについて長官は一体どうしてこういうふうに物価上昇は絶えず、しかも加速度的に上がっているのであるか、まずその点についての御所信を承りたいと思います。
  18. 内田常雄

    内田国務大臣 私も政府物価問題を担当いたしておる者といたしまして、今日のようなまことに異常なあるいは狂乱的な物価上昇のことを見ましてまことに遺憾に思っておるわけでありまして、その原因を探求し、またそれに対する適切なる対策を打たねばならないことを痛感いたしておりますことは橋口さんと全く同じでございます。率直に申しまして、やはり物価が上がってきておりますものは、これはまあ私はやがてそう遠くなくおさまるとは思いますけれども、これまで物価が上がってきておりますのはやはり三つぐらいの原因があろうかと考えます。  一つは、何と申しましても総需要過剰購買力というものが、政府は引き締めてきておりますけれども、まだまだ一昨年来の過剰購買力というもの、過剰流動性というものが残っておるのではないかと思われる節、これは橋口さんもよく御承知のように日本銀行券の残高、あるいはそればかりでなしにマネーサプライの状況などもこの一月に入りましてからその増勢は衰えてきてはおりまするし、金融の引き締めも、これも御承知のように昨年一年間、しかも数カ月の間に五回も公定歩合を引き上げるというようなことをやりました。昨年の四月の段階では公定歩合四歩二厘五毛でありましたものを、これは省略いたしますけれども、五回目にはとうとう九%まで上げてきたというようなやり方やら、あるいはまた予算の編成とか財政投融資などの運営につきましても、総需要を締めてきてはおりますけれども、何と申しましても一昨年までの輸出超過並びにその他の海外から入ってくる外貨資金見返りとして出されました円資金が何兆と出ておりましたことは御承知のとおりでございますので、一昨年ごろのたとえば輸出超過で見ましても八十数億ドル、その他の外貨の流入などを見まするとおそらく百億ドル近い外貨が入ってきたと思われるわけでありますが、その見返りの円が、これは外為特別会計なりあるいはその他の仕組みなりを通じて出ておったこと、その残りがまだ一部の国内経済機構の中には預金の形等で残っておったり、また何しろ一昨年はニクソン・ショック以後の不況になるというような状況でございましたから、私は、ありていに考えますと、やはり国内景気振興対策というものを一昨年までは政府はやっておったと思います。それによって輸出増勢というものを押え込もうというようなことをやっておりましたから、そういう過剰購買力の根が今日に至るまでまだ残っておるということと、それからもう一つは、石油海外からの輸入の見込みが、われわれの当初の四十八年度あるいは四十九年度の計画に比べますと、これは経済成長を想定いたしておりましたし、いろいろの計画もございましたから、そういうものに比べると、石油の昨年の十一月段階においてわれわれが一時考えましたところよりも、供給は多少ゆるめられたとはいえ、いま申しましたように、計画に対してはやはりショートいたしておりますために、それに関連する物資の需給が全体的にタイトになってきておるというようなこと、一方まだお金のしっぽが残っておるけれども、供給面はタイトであるというような面が残っておること。それからもう一つは、やはりそういう情勢を自由主義経済のもとにおいてメーカー流通業者等が見越して、便乗値上げと申しますか先取り値上げと申しますか、そういうようなことも私はやらなかったとはいえないのではないか。これは大いに糾弾し成敗しなければならないものだと私は考えますが、そういったような要因、それからさらに四つ目には、全体的に食糧などにつきましてはもう顕著にあらわれておるわけでありますが、食糧ばかりではなしに、その他の世界における物資の需給というものはタイトになっておって、日本への輸入価格の影響というものが非常に大きくあらわれている。そういったような状況が幾つも重合しまして、今日の物価の騰貴が起こっておると私は考えるのでありますから、それを一つ一つ押える努力を続けたいと思います。
  19. 橋口隆

    橋口委員 いま長官が言われましたような各種の事情が錯綜して上がっていると思いますが、私は一番の欠陥は、これは私どもにも責任があるわけでありますけれども、政府の総需要抑制策はいつも徹底していなかったのではないか。またこれは反省しておるわけでありますが、いつも手おくれであって後手後手に回っておる。しかも出す場合にも、たとえば公定歩合の一例をとってみても、いつも小出しにちょくちょくやっている。そういうような点が錯綜して今日のような連続物価暴騰というような状況を呈しておると思う。  そこで一番大事な問題は、政府がみずから公共事業費の削減というような措置をとることがまず先決でございまして、累次とったわけですが、一月から三月という一番重大な時期に、政府は公共事業に対しては何らの手を打っていないわけですが、長官としては今後公共事業費についてはもう少しこれを繰り延べるとか再繰り延べをするとか、あるいはカットするというようなお考えはありませんか。
  20. 内田常雄

    内田国務大臣 それは実は私は正直に申して的確にはその状況をつまびらかにいたしておりませんけれども、しかし公共事業に対する施行あるいは四十九年度に対する公共事業予算の組み方というものにつきましては、御承知のとおり昨年の途中からでございましたけれども、予算に乗せられておる事業の契約を繰り延べるとか、あるいは予算そのものの使用を翌年度に繰り延べるとか、あるいは公共事業ばかりではなしに、民間の設備投資や、民間の五百平米でございましたか三千平米でございましたか、それ以上の大きな建物につきましては、建築基準法等を用いまして届け出をさせて、政府関係各省の協議会でそれをチェックしてまいるというようなこともやってきておるところでございます。来年の予算につきましても、それはお金の面では昨年に比べますとごくわずかふえておると思いますけれども、しかし物価の上昇を考えますと、実態施行の面では昨年よりも何%も減っておる。ことによると一昨年の段階と同じか、それよりも少し減るかもしれない程度にまで締めておるはずでございまして、最近、昨年十二月ぐらいから企業の倒産がかなり目立ってまいりましたが、そのうち特に目立っておりますのは、これも御承知のとおり建築業であるというようなこともあらわれておりますので、いまこの段階でさらに四十八年度の予算をもう一ぺんどの程度に締める体制ができているかどうかというようなことにつきましては、これは申しわけありませんが、むしろ建設省なり大蔵省なりからしかるべき機会に説明をしていただきたいと考えておりますが、気持ちは私は橋口さんと同じでございます。
  21. 橋口隆

    橋口委員 私は経済企画庁長官というものは物価抑制については全面的に権限があり、また発言にそういう力を持っていると思う。だから大蔵大臣なり建設大臣はわれわれも質問をいたしますが、長官もひとつ経済企画庁長官としてぜひ推進をしていただくように、再検討していただくようにお願い申し上げます。  そこで次に、政府の今後の姿勢について伺いたいと思います。  総理も長官大蔵大臣も、この物価危機に対しては短期決戦をいどむ——参議院選挙もありますから、その国民的審判の前にわれわれは立っているわけなんです。それを前にして、どうしても物価を短期に抑制したいというのが政府の決意であり、たびたび公言をされております。ところが、われわれが考えてみますと、一月の一日からすでに原油は倍に値上げをしております、昨年末に比べまして。それがやがてだんだん日本にやってくる。また、春闘を控えている。春闘では三〇%以上の値上げも要求されるんじゃないかといわれている。そしてやがてそれに基づくベースアップ。また、六月の末には大きなボーナスが出てくる。そういうような状況考えてみますと、短期決戦によって解決すると言われるけれども、はたしていかなる手段をもってすればそのような危機が回避できるのか、それを具体的に簡潔にひとつお答えいただきたいと思います。
  22. 内田常雄

    内田国務大臣 なかなかむずかしいお答えになるわけでありまして、短期決戦ではありますけれども、大蔵大臣も総理大臣も、この夏ごろまでには物価の今日のような上昇は鎮静し得る、こういうことを申しておりますこと御承知のとおりでございます。現に一月の卸売り物価は数字の上では三四%、前年同期に比して上昇ということになっておりますけれども、市況商品等につきましてはかなりの低落の傾向が見られるようになってまいってきておりまするし、またある種の資材等については、日本の国内は卸売り物価は下がっておる、しかし、外国への輸出が上がっておるというもので、それを平均するとやはり上がっておるというようなものも出ておるというような状況でありますので、この機会にさらに総需要の抑制、この総需要も、さっき申しましたように、まだ一昨年のしりが残っておりますので、いろいろなやり方、操作があるようでございますけれども、それらの操作をも通じまして、総需要の抑制をはかってまいるということと、いま御指摘のように、これから高い石油がいよいよ精製されるような段階に入りますと、それでまたもう一ぺんコストプッシュになってはたいへんでありますから、それらの状況を踏まえまして、そして、私は諸悪の根源ということばは使いませんけれども、諸物価高騰の根源である石油製品、それからその二次製品というようなものにつきましては、この際政府は思い切ってそこに手を入れまして、価格形成等にも新しい状況のもとに手を入れまして、新しい物価上昇要因というものを押え込む、これらの方途を通じまして、冒頭に申しましたように、比較的短期の間に鎮静させることができると私は考えております。
  23. 橋口隆

    橋口委員 結局、いま長官が言われましたように、総需要の抑制策を徹底的にこれから強化して油断をしないということが大事じゃないかと思うのです。最近やや石油供給の削減が緩和されたというので、財界にも国民にも安心感がある。それがまた仮需要を呼ぶものではないかという懸念があります。一次的には主要製品については値下がりの傾向も見られますけれども、しかし、なかなか油断ができない。そうなりますと、たびたび大蔵大臣、日銀総裁も言われておりますが、金融の引き締めは今後とも続けていく、こういうことを強調されているわけであります。しかし、それだけでは足りないのであって、できるならば、第六次の公定歩合の引き上げも必要ではないか。これは、場合によってはそうしてもいいということを日銀総裁も言っておられるようでありますが、ことしのこの六カ月というものを見渡してみますと、どうしてもやはり経済企画庁がみずから総需要抑制を提唱されて公定歩合の第六次引き上げに踏み切ることが必要ではないか、こう考えるわけです。長官の御意見を伺いたい。
  24. 内田常雄

    内田国務大臣 公定歩合の第六次引き上げにつきましては、いま私がここでその言明をいたし得る限りではございません。しかし、総需要抑制の第一の有効な手段はやはり金融の引き締めでございますし、その金融につきましては、先ほども触れましたように、経済機構のある部分にはまだ過剰購買力過剰流動性というものが残っておりますし、これはやや詳しくなってしまいますけれども、そういう企業状況を見ますと、借り入れ金もあるし、いつでも動員し得る預金もある。両建て制のような形にもなっておりますので、そういうところをひとつよく金融関係の方面で洗ってもらいまして、そういう残っておる過剰購買力を押え込むことがまず先決問題だということに、先般の政府関係機関における会合、経済閣僚協議会等の場面でも話を進めております。そういうことと並行して、公定歩合の引き上げというものは検討をしていかなければならない課題であって、いま私がここで、まずそれをやるのが一番有効だということは、申し上げ得るところではないということを御承知いただきたいと思います。
  25. 平林剛

    平林委員長 木部佳昭君。
  26. 木部佳昭

    ○木部委員 長官にお尋ねしますが、御承知のとおり、われわれは昨年の暮れ国民生活安定緊急措置法案を昼夜を分かたず成立させたわけです。予算委員会その他でも一応議論はされておりますけれども、経済企画庁長官として標準価格もきめられたわけですし、その他運用の面では非常に努力はされていると思いますが、きょうは、いえば長官の所信表明に対する初めての委員会質問でございます。長官自身も、また役所のほうでも、この異常な物価高に対して大きな使命感を持って挑戦はされていると私は思いますが、運用状況ないしその他につきまして具体的にいろいろ国民の前に、いままでの成果といいますか、またある意味ではこういう点に問題があるとかいうようなことについて、率直な政治家としての御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  27. 内田常雄

    内田国務大臣 昨年の暮れに委員会の皆さま方の非常な御協力のもとに、国民生活安定緊急措置法並びに買占め売惜しみ緊急措置法の改正強化もやっていただいたわけであります。この生活関連物資等の買占め売惜しみ緊急措置法の改正強化に関連いたしましては、あの法律改正強化ができました後に、幾つかの品目、ことに直接国民の日常生活に関連の深いものを追加指定いたしまして、今日では法律上の項目から数えましても二十四品目が買占め規制法の対象になっております。これを細別いたしますと、たしか二十七品目ということになっておりまして、これらの物資につきましては、隠退蔵というような事態を牽制いたしますために、これは木部さんをはじめ委員の皆さんも御承知のように、一月十六日から、総理大臣の特別な指図もございまして、通産関係物資六品目、農林関係物資六品目、合わせて十二品目につきまして全国一斉の立ち入り調査をいたしてまいったところでございます。現にそれはまだ最後の、残った部分の執行中でございまして、これらは、直接に大きな隠退蔵を発見して、売り渡しなり放出を指示したとか命令したとかいう事案の有無にかかわらず、大きな意義のあったやり方であったと私は考えておるところでございます。これにつきましては、御承知のとおり、いままでの価格調査官の数が比較的少ない。のみならず専担者がないというようなことでございまして、国会の皆さま方からも非常におしかりやら御激励をいただいてまいりましたので、先般二月四日にはこの価格調査官の、中央と申しますか国の機関における総員を従来の三百四十名程度から一応六百何名にふやしましたが、さらに通産省等におきましてはその後もふやしまして、今日では七百何十名になっております。その中の専任を置くたてまえにいたしまして、これも一応中間段階を経ましたが、今日では九十名以上の者が専任価格調査官ということになっております。かつまた、関係各省には統括価格調査官というものを置きまして、そして経済企画庁並びに各省が統括価格調査官会議というようなものをやりまして、物資の移動といいますか需給の状況価格の推移等も常に打ち合わせをいたしまして、有効な活動を今後においても期するというたてまえになってまいりましたことをまず御報告をいたします。  次に、国民生活安定緊急措置法における各種の措置でございますが、これには生産増加の指示というような規定もございますが、政令を発動はいたしておりませんけれども、その生産指示の規定を背景といたしまして、需給のタイトであると考えられる物資につきましては幾つかの品目につきまして生産増強の行政上の指示をいたしてまいりまして、トイレットペーパーをはじめとして幾つかの物資につきまして、あの法律がうしろだてになりまして効果をあげてきておると私は考えております。  標準価格の制定につきましては比較的少ない。御承知のとおり四つの通産関係物資についてのみ行なわれておりまして、私は正直に申しますと、もっと必要なところにさらに積極的に標準価格の設定を行なってまいるべきではないかと考えておりますが、これには二つの理由がございまして、いまの段階では四つにとどまっておりますが、今後増加する見込みであります。  二つの理由というのは、一つにおきましては、それの取り締まり体制の整備がようやく緒につかんとしているところでございまして、特に地方に対する権限の委譲、これは標準価格消費者に直結する分野が非常に多いと思いますので、どうしても地方公共団体の取り締まりについての協力が得られなければなりませんが、これは知事会議あるいは担当官会議というようなものを二、三回やってまいりまして、そしてようやく緒につき、ことにまた地方におきましても価格調査員というようなものあるいは価格指導員というものが今日何千名かにふえつつあるという段階でございますから、それの整備と歩調を合わせながら、今後標準価格指定物資をふやしてまいるということが一つであります。  もう一つは、これは私は率直に申しますと、先ほども橋口さんが御指摘になりましたような石油の最後の高い原油が現在到着しつつある。それを精製をした段階において石油製品あるいは石油製品の二次製品等にどのような影響を与えるかという面と、もう一つは、これは私先ほど触れましたように、非常に需給がゆるんでまいったり、あるいは総需要抑制がきいてまいりまして、いろいろな物資について値くずれの現象も起こっておりますので、その辺の状況を見きわめる間は、法律上の標準価格というものをいきなりくっつけて動きのとれないことにするよりも、もうちょっとの間はこれは物資の主務官庁において行政指導で価格の引き下げを指示をしたり、標準価格形成の準備の期間を持ちたいというような、そういう関係、以上の二つの関係がありましてややおくれておるような状況でございます。しかしこれも行政上の価格引き下げ指導をいたします場合に、まごまごしたら標準価格をくっつけるというようなことが法律上のたてまえになってうしろだてにもなっておりまして、私は効果はあげておることと確信をいたすものであります。
  28. 木部佳昭

    ○木部委員 時間がありませんから、公取委員長にお尋ねしたいと思いますが、私いま、長官とちょっと考え方が違う点もありますけれども、まあ長官の御意見を承らしていただきます。  先ほど来公取委員長もお聞きになったと思いますが、長官も非常な決意でやっていらっしゃる。公取委員長も、非常な熱意を持って国民生活を守るために大きな使命を果たしているわけですが、最近企業を見ておりますと、やみカルテルや便乗値上げというものが国民に非常に大きな圧迫感を与えておることは事実だと思うのです。公取委員長も、ある場合には命令権も、独禁法改正もというようなお考えもあるようであります。われわれ生活安定緊急措置法を成立さしても、やはり便乗値上げというものに対して、ある意味では独禁法の改正もして、それをむやみに発動することが決して得策とは考えませんけれども、そろそろ早い機会に法改正を検討すべき時期にきておると私は思うのですが、公取委員長の率直なお答えを聞かしていただきたいと思います。
  29. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 まず、いまおっしゃられました点は、まさに私どもがいまの独禁法を運用するにあたって非常にもの足りないと考えている点について、改正したほうがいいのじゃないかという御意見でありまして、従来野党の皆さん、野党と申し上げては失礼ですけれども、社会党、公明党などからも、私どもはそういう面で法律改正をしたほうがいいのじゃないかという示唆を強く受けております。いまのお話で、木部さんは与党のり方でございます。実は私ども法律改正するにあたりまして一番考慮しなければならぬのは、もちろんこれは全体の国民的なコンセンサスを得る、そういうことでないと、独禁法というものは、ある方々にとってはたいへん迷惑な存在でございます。ですから、早く言えば財界等については非常に好ましくないものなんです。それは体質上そうなると思います。ですから、そういう点についていま木部さんのおっしゃった、与党の方からも、そういうふうにやったらどうか、こういうことを言われますが、私どもたいへん心強い次第でありまして、それを伴えば、私どもむやみに乱用する気持ちはありません。あらゆる場合に引き下げ命令を発動しなければならぬかどうか。私はそれほどのことはないと思います。いわば便乗値上げ的なものについてはそれを排除するということ。とかくカルテルによる場合のほうが引き上げ率が高くなります。個別にやる場合に比べてそれだけたちがよくないということでございますので、ただいまの御趣旨の方向に沿ってぜひとも早く成案を得るように努力したいと思います。
  30. 橋口隆

    橋口委員 長官に、先ほどの問題について引き続いてお聞きいたします。  いま一番重大な問題になっているのは、消費購買力、特に預金の目減りの問題だと思うのです。いままで国民総支出のうちで財政とか民間設備投資、そういうものについてはいろいろな施策も講ぜられ、また議会でもいろいろ論じられているわけでありますが、一番手が加えられていないこの消費部面について、これを何とか考えなくちゃならぬというのがこれからの一番の関心事だろうと思います。そういう点で預金金利が列国に比べてわが国は非常に低い。そして預金者は非常な損害を受けている、これが実情だろうと思います。そこでこの目減りをばどうしても政府としては補償しなければならない。そしてまた同時に、あり余る購買力を吸収するという立場から、預金金利の大幅引き上げというのは非常に大きな課題であろうかと思います。それについては、大蔵大臣や日銀総裁は、前向きの姿勢で検討して、場合によっては新種の定期預金も考えるというようなお考えもあるようですが、これは物価担当の経企庁長官としてもぜひとも推進をしていただかなければならない問題だろうと思いますが、非常に簡単でけっこうでございますが、結論だけをひとつお聞きしたいと思います。
  31. 内田常雄

    内田国務大臣 橋口さんのお説に私は賛成でございます。これは昨年中に二度ぐらい預金金利の引き上げはあったわけでございます。定期預金でも五分五厘ぐらいから現在では七分五厘ぐらいまでの定期預金ができておるはずでありますが、しかし私は橋口さんのお説に賛成でありまして、そういう意見をすでに政府の中においては出しておりますので、私の言うとおりに、そのとおりになるかならぬかは別といたしまして、ひとつあなたの御意見で一そう激励された気持ちがいたします。
  32. 橋口隆

    橋口委員 これはぜひとも前向きの姿勢で御検討いただきまして、国民のために御尽力いただきたいと思います。  そこで、公取の委員長に今度はお伺いしたいと思います。  先般、石油連盟並びに石油業界に対しまして、やみ協定についての破棄の勧告をされましたですね。これについては確かな証拠があるかと思うのでございますけれども、業界の言い分としては、これは通産省行政指導に従ったのである、そういうようなことを言っておる。特に原油処理量の制限の協定については、通産省の指導に従ってやっているというのですが、これはまず通産省から聞きたいと思うのですが、エネルギー庁としてはそういうような指導はされたことはありますか。簡単でいいですから、結論だけ言ってください。
  33. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  昨年の石油危機が本格化いたしました十一月、十二月の時点におきまして、私どもは業界に対しまして、当時非常に逼迫をいたしておりました、たとえば灯油、軽油、A重油、いろいろ各油種がございますが、そういったものにつきましては、各社に対しまして直接増産を要請するという形の指導はいたしておりまして、原油処理量につきましての業界のほうの言い分というのは、昨年の危機の時代においてはいわゆる各社ごとの配分といった考え方、横のカルテルでございますが、そういうものが作用する実態にはなかったということをおそらく言っておるのじゃないかと存じております。その時点で、私どもは行政指導として、個々の会社に対する指導というものは、危機の時代、十一月、十二月の時点では直接にいたしていたことは事実でございます。
  34. 橋口隆

    橋口委員 そうすると、念のためもう一回聞きますが、確かに原油処理量のその制限協定については通産省行政指導をした、こういうことですか、結論だけ言ってください。
  35. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 個々の業者がカルテルという形におきまして協定をその間にやっていたかどうかにつきましては私どもは承知はいたしておりません。そういう事実が公取のほうから御指摘がございまして、もしそういう事実があったとすれば、まことに遺憾なことだと考えておりますが、私どもは全体の需給の調整につきまして、石油業法に基づきます行政指導はいたしておるわけでございまして、特に十一月、十二月の時点におきまして、個々の会社に対しまして、必要に応じまして行政指導を行なっておるわけでございます。
  36. 橋口隆

    橋口委員 公取委員長、いま通産省の意見をお聞きになったとおりだと思いますが、公取は独自の立場からこれをひとつ厳密に調査されまして、もしそういうような事実があればこれはきわめて重大なことでございますから、原油処理量のいまのカルテルの問題、それからあとガソリンの販売の数量協定の問題、また、価格引き上げについての協定、こういう問題については、国民が非常な疑惑を持っておるところでありますから、徹底的に調査されて、あしたおそらく応諾するかどうかの回答があるはずでございますが、これに対しては十分な対策を講じていただきたいと思います。  また、申し上げるまでもなく、公取では独禁法の改正案によって引き下げの権限も持とうというような動きがあるようでございますが、これについてはひとつぜひともこれが実現するような方向で進んでいただきたいと思いますが、簡単に、やるかやらぬかというお答えだけをいただきたいと思います。
  37. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 石油関係の一連の問題については、私のほうで調査を済ましたから勧告を行なったわけです。受諾はきょうあす中に行なわれるかどうかということでございます。ですから、いいか、げんな調査をしてやったわけじゃないので、簡単に申しますが、業者別のシェアというふうな点は、非常に厳密な計算方法がつくられております。これは四十七年度下期からの分は把握しております。四十八年度に入りまして、途中からその計算方式を変えております。それで、その計算方式によって各社別のシェアが固定化される、これが実情でございます。  なお、引き下げ命令権について重ねて御激励をいただきましたことは、私どもにとって与党の皆さんからそういうあれをされるということは非常にその可能性が強くなったというふうに思いますので、ぜひともよろしく御後援のほどをお願いします。
  38. 橋口隆

    橋口委員 これに関連いたしまして、さて石油の引き下げはする、しかし同時に、通産省としては重大なテーマをかかえているわけですね。一月一日から原油が昨年末に比べて倍以上に値上がりをする。そうしますと、現在の原油の在庫量、製品の在庫量、それから海上の第一船が到着する時期、そういうものを考えると、どうしても三月上旬あたりには製品は値上げをしなくちゃならぬという羽目になると思うのですが、一体いつごろから、どの範囲にわたって石油製品の値上げをやられるか。またそれは、先ほどからお話がありましたが、標準価格をそれについて設定されるのか。もう時間がありませんので、簡単に御答弁を願います。
  39. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 原油の価格が昨年十二月に対比いたしまして二・二倍程度上がるという公示価格の上昇でございますが、すでにアラビアのほうからは一月の下旬着ということで現に入着をしているわけでございます。また、インドネシア原油につきましては一月十日ごろからすでに新しい価格での油が入着をしている。  現在、私どもとしましては、物価に与える影響の重大性を考えまして、値上げについては当分見合わせるようにという指導をいたしまして、新しい価格への適応はいたしておりませんが、このままいつまでも据え置くということになりました場合に、基幹産業でございます石油産業が破滅をするという事態になるわけでございまして、私どもとしては適当な時期に値上げはやむを得ないというふうに考えておるわけでございますが、その内容につきまして、幅と時期について現在精査中でございます。  先生指摘のように、いわゆる在庫の状況等を考えますと、三月上旬という計算もあるかとは存じますが、会社の会計原則はいろいろ区々でございまして、そういった在庫状況も念頭に置きながら、早く妥当な価格というものを私どもとしては精査をして、何らかの形で業界の指導を行ないたい、かように考えております。
  40. 橋口隆

    橋口委員 ただいまのように石油製品の値上がりも予想され、また春闘も迫っておるときでありますから、経企庁長官あるいは公取委員長はどうしてもこの物価高騰をどんなことがあっても押え込むという決意をもって、これから断固たる態度で施策を進めていただきますようにお願いを申し上げます。  これで終わります。
  41. 平林剛

    平林委員長 松浦利尚君。
  42. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大臣の所信表明並びに公正取引委員会委員長の事業説明について、この範囲内において質問をさせていただきたいと思います。  まずその第一点は、それこそ物価を最大の目標にして、今国会では、田中総理に言わせれば四−六月ごろには安定をさせるんだ、こういう約束をしておられるわけであります。ところが、四十八年度の予算案を審議いたしました昨年の予算委員会あるいは当特別委員会におきまして、当時の大蔵大臣、あるいは当時の経済企画庁長官、あるいは本委員会における田中総理、すべての皆さん方がわれわれの質問に対して何と答えたかといいますと、昭和四十八年度の物価見通しについて、卸売り物価は二%、消費者物価は五・五%に必ず押え込むことができますと断言をされたわけであります。ところが事実はどうであったかといいますと、もうすでに目標値の改定を二回やっております。二%であった卸売り物価を、御承知のように一七%に修正をいたしました。そして今日では、御承知のように二〇・二%に修正をしておるわけであります。消費者物価については二二%から一四%と修正をしておるわけであります。一体経済見通しというのは政府にとって何なのか。消費者物価指数卸売り物価指数というのは一体国民にとって何なのか。たいへん国民は裏切られ続けておるわけであります。そこで、予算委員会でも議論されたことでありますが、ひとつ長官考え方をお聞かせいただきたいと思います。  その一つは、今度の経済見通しにおいて卸売り物価が修正をされておるわけであります。どういうふうに修正をされたかというと、御承知のように卸売り物価を当初政府は一一・九%と見ておったわけであります。消費者物価は九・六%と見込んでおったわけであります、四十九年度の経済見通しで。ところがこれを修正いたしまして、卸売り物価を一四・六%に改めました。大蔵大臣の言をかりますと、これは微調整だ。だから九・六%の消費者物価は変える必要はない。一一・九、九・六の見通しに対して、卸売り物価を一四・六に変えたにかかわらず、消費者物価は九・六の据え置きであります。私はふしぎに思いまして総理府のほうに問い合わせてみました。ところが総理府で、そういった調整した、比較をしたものはありませんけれども、従来のパターンで見ますと、卸売り物価が比較的安定をしておる段階では、卸売り物価が一上がれば、タイムラグがありますが、必ず消費者物価に一%のはね返りがある、こういう返事だった。ところが今日では、卸売り物価が急上昇しておる、三〇%近くも上昇しておる。逆に消費者物価は二三、四%にとまっておる。逆になってきている。こういう場合にはどうなのかと聞いたら、一対一のバランスがくずれて、一卸売り物価が上がったら必ず消費者物価にも〇・何%かの影響があるはずですという総理府の答弁だった。ところが、昭和四十九年度の経済見通しで卸売り物価を修正したにかかわらず、消費者物価を九・六にとめておる。一〇%以下に押えている。これは私はまさしく国民を愚弄するやり方だと思うのですね。卸売り物価が修正されておるのに消費者物価を修正しない。こういうところに政府物価問題に対する本質があると思う。経済見通しというものは、消費者物価指数あるいは卸売り物価指数というものはあくまでも政策目標だ、だめなときはだめでいいや、適当に青空でいけという四十八年度の感覚と全く同じことがこの計数の中からいわれると思うのですね。長官、一四・六に修正しておきながら消費者物価九・六、動かさなくてもだいじょうぶですか。絶対にこれでいけるという見通しがあるのですか。簡単に言ってください。
  43. 内田常雄

    内田国務大臣 絶対ということは私にも申せません。それは松浦さんが御指摘になりましたように、昭和四十八年度の経済見通しというものは、その年度が始まる前に立てました卸売り物価にいたしましても消費者物価にいたしましても、私どもでさえも驚くほどのけた違いの状況がございましたので、そのときの政府が、私は決してうそを申したとは思いませんけれども、内外の情勢に予測以上の事態が起こったということであのような物価の異常な上昇が起こったと思います。しかし明年度につきましては、これはもう国をあげて、あるいはまたわが国ばかりでなしに世界の各国あげて物価の抑制政策をとっておりますので、私はあの四十八年度のような物価のけた違いの異常な見込み違いが私どもの四十九年度の経済見通しに起こるとは考えておりません。
  44. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 あなたがいまそう言われた。ところが予算委員会で与党の議員も質問をした。私ももちろん質問をした。それは、こういうパニックの状態が起こらない前に、すでに四十七年度のげたが四十八年度に食い込みまして、四十八年度の政策目標というのは非常に狭まったのですよ。その時点でもうすでに狭まっておった。だから修正したらどうかという質問をした。きょうの状態じゃない。四十七年度から四十八年度繰り越しのげたがすでに五・五%に食い込んでおるわけです。年度中物価上昇率の政策目標が下がっておる。そのときに、いや私たちはだいじょうぶですと、こう言われた。なるほど、そのときに石油その他のパニックはなかったでしょう。しかし、現実に石油パニックが起こる前に、修正せざるを得ないほど物価が上がっておった。それに石油パニックが来て上がっていったわけですね。そのときにも、だいじょうぶだ、だいじょうぶだと言われた。結果的にはだいじょうぶでなかった。そこでもう一ぺん同じことの繰り返しでお尋ねをいたします。  今度の経済見通しで、政府の卸売り物価見通しは一四・六%、年度中の卸売り物価の上昇は四・八%、差し引き九・八%が四十八年度から四十九年度繰り越しのげたであります。消費者物価は九・六%、年度上昇率は五・二と見ておりますから、四十八年度から四十九年度に繰り越されるげたは四・四%しかありません。それしかない。ところが現実に卸売り物価は、すでに一月で三四%暴騰しております。消費者物価は十二月末現在においてすでに二〇%近く上昇しております。おそらく一月には二七%上昇するだろうという推定消費者物価指数が出されております。一体この九・八%のげたの中に四十八年度の物価はおさまりますか。卸売り物価は九・八、消費者物価は四・四というワクの中にはまりますか。はまらなければまたげたが政策目標に食い込んでくるわけですから。その点だいじょうぶですか。大臣どうですか。
  45. 小島英敏

    小島政府委員 今度実は初めて年度中上昇率という概念を政府見通しの中に入れましたために、やや誤解を招きやすいわけでございますけれども、この年度中上昇率と申しますのは、年度の初めから年度の終わりまでの間の上昇率でございます。したがって、いま先生のおっしゃった一四・六という年度上昇率から四・八を引いたものがげたということには必ずしもならないわけでございまして、これは非常にややっこしいことなんですが、後ほど図をかきましてお届けいたしたいと思いますけれども、直線的に上がるといたしますと、実は年度中上昇率を半分にしたものを前年度からのげたに足した場合に、それが対前年度の上昇率になる、そういう関係がございます。どうも非常にややっこしい話で恐縮なんでございますけれども……。したがいまして、先生のおっしゃるよりはげたの余裕というものがもうちょっとあるということは事実でございます。ただ、それにいたしましてもげたが非常に高くなってまいりまして、基本的に非常に苦しい事態になっているということは、先生おっしゃるとおりでございます。
  46. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大臣、計数的なものはあとで整理さしていただきますけれども、実質的にはそのげたの余裕が私が言ったよりもまだあるのだ、こういうお話ですね。しかし、率直に言ってこれだけ暴騰してきておる、それに石油価格が上がる、そういう状態の中でこの政策目標を維持していくという自信がありますか。この政策目標をほんとうに維持していくという自信があるのでしょうかね、先ほどはあなたは言われましたけれども。またいまの局長答弁でもおわかりのように、非常に苦しい状態ですね。苦しい状態だと局長自身が認めておられる。大臣としてはその苦しい状態の中でもなおこれで政策目標については必ずやっていけるのだ、もう修正しなくてもだいじょうぶだ——今日石油問題がありますよ。石油が製品価格に転嫁されるかもしれない。いまわれわれは法律三法を持っておる。いろいろ法律三法をもって駆使しておる。あるいは独禁法で駆使しておる。そういった法律的な立場でやり、あるいは総需要抑制をやる、そういったことをやりながらなおかつ苦しいというその苦しい政策目標について、物価担当大臣として、国民に向かいまして、必ずやっていけるのだ、だいじょうぶだ、安心してください、四、六のがまじゃありませんが、四−六月ごろにはだいじょうぶ物価が安定しますよ、こういうことを国民の前にここで明確にお答えできますか。それで明確にお答えいただいたあと、もしそれがそのとおりでなかったときのあなたの責任についても明確にしていただきたい、こういうように思います。
  47. 内田常雄

    内田国務大臣 まあ松浦先生は算術的のことでなしにいろいろ立体的なお考えをお持ちになる方だと私は思いますので、私が申し上げることも御理解いただけると思いますが、いま数字をあげて御指摘になられましたように、来年度の経済見通しにおける卸売り物価の年平均の前年平均に対する上昇率というものを私どもは一四・六%と見ておるわけなんです。つまり平たく言うと、来年は卸売り物価で、前年に対して、四十八年に対して一四・六%上がるということでございますが、これは卸売り物価でありますから、従来のところではせいぜい初めは二%とか一・三%とか非常に低かったことも御承知のとおりでありますが、昨年はそれが狂って、御指摘がございましたように、今日でも三四%というような、これは年度と年度の平均の比較ではございません、一月対一月の比較でございますから、年度対年度で比べればもっと低いものになるわけでありますが、非常な変わり方をしております。それから比べますと、来年の卸売り物価の上昇率は、一四・六というものは自信があるかということでございますが、これは四十八年度は別にいたしますと、従来の日本の物価の動きから見ると、かなり私もひのき舞台から飛びおりたくらいの大きな幅のものを、これは最高は幾ら努力してもこのくらい残るだろうということで実は踏んだわけでございまして、来年の一年間に予測せざる事態が生じない限り私どもの政策努力、これは皆さま方の御協力も得なければなりませんが、私は、いけるというよりも、ぜひいきたいというような気持ちも入れましての一つの見通しであると御理解をいただきたいと思うわけであります。  それから昨年のことにも触れますが、私はごまかしがいやでございますから、昨年の十一月下旬に就任いたしますと、四十八年度の経済見通し、したがってまたその中の物価の見通しというようなものも、これはやはりあとの国の政策をリードするためにも、また国民の理解を得るためにも、ここで思い切った改定を発表すべきだ。それは石油だけでばっと上がったわけではありませんで、卸売り物価のごときは、松浦さんが御指摘になられましたように、四十八年度の経済見通しをやったときから、いま来年を見るよりももっと無理のような数字もあったのかもしれないというあなたのおことばが私はうなずけるのでありますが、現にもう去年の春というか一昨年の秋くらいから卸売り物価はどんどん上がってまいりまして、私が就任する十一月まで経済見通しをそのままほっておけるといったような、またほっておかぬほうがいい状態でございましたけれども、私は思い切ってかぶとをぬいだつもりで、着任早々でもございましたが、改定をしたくらいの私でございますから、決してうそ偽りでここへいいかげんの数字を載せるというつもりは私はございませんので、御理解いただきたいと思います。
  48. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 物価問題を議論する場合に基本になるのは、やはり何といっても経済見通しだと思うのです。その経済見通しからくる消費者物価卸売り物価指数というのがいま国民一つの指標になっておるわけですね。ところがずっと見てきますと、小島物価局長が御存じのように、大臣も御存じのように、いつも裏切られるのは国民の側なんです。泣くのは国民のほうなんです。いつもそれでしゃあしゃあとして目標値をぱっと上げて、こうでございました、ああでございましたと言いわけして逃げるのが政府なんです。もう全く物価に対して信用しておらないのですよ。  そこでもう一つ具体的に聞きますが、これは小島局長でけっこうでありますが、四十九年度の卸売り物価を移動させて数字を変更さして消費者物価を変更しなかった理由は何ですか。こういう数字の魔術をやると、もう基本そのものを疑って国民は見ておるわけですからね。なぜそれを移動させなくてよかったのですか。
  49. 小島英敏

    小島政府委員 卸売り物価消費者物価関係につきましては、前から非常にいろんな説がございまして、今度のような異常事態が起きる前、卸売り物価が上がり始めましたおととしの八月以降、そのころは世間で言われていたことは、卸売り物価が一%上がると消費者物価が三%上がるということが言われておりまして、これは過去の十年間くらいの平均上昇率で見ると、確かに消費者物価のほうが三倍くらい上がっていたということからそういう単純な予測が言われたわけでございます。しかしこれが誤っていたことはその後の動きで実証されておるわけでございまして、最近は、先ほども先生おっしゃいましたように、むしろ卸売り物価の上昇率に比べると消費者物価の上昇率のほうが少なくなってきております。これは卸売り物価というものが何によって上がっているかということによって消費者物価への影響というものは非常に大きく変わるわけでございまして、昨年の一−三月ごろの卸売り物価は、繊維関係、それから食品関係、それから雑品関係、そういうものが中心で卸売り物価が上がりまして、こういう場合には非常に早く、しかも大きく消費者物価に影響いたします。物が結局消費財の原料的なものでございますから……。ところが非鉄とか鉄鋼とか機械とか、そういうものが卸売り物価上昇中心である場合には、消費者物価には影響するところが比較的少ないということがございまして、どうも一律に卸売り物価消費者物価関係を論ずることはできないわけでございますが、最近の動きは、昨年の一−三月におけるような内容ではございませんで、比較的生産財関係が強い。繊維原料のごときは最近、大臣も申しましたように、むしろ下落しておるわけでございまして、食品がややえさの関係なんかで今後も心配されておりますけれども……。したがいまして、卸売り物価は、確かに石油関係で影響が強く出ますから、ある程度修正せざるを得ないわけでございますけれども、消費者物価のほうは、そういう関係から申しますと非常に関係が間接的になってまいります。しかしながら全然影響ないということはない、先生おっしゃるようにゼロということはあり得ないと思いますけれども、やはり消費者物価というものが経済見通しの中で最もいわゆるゾルレン的な要素の強いものである、私どもは万難を排してやはり消費者物価の安定につとめなければいけない。卸売り物価ももちろん安定が必要でございますけれども、それ以上にやはり消費者物価は極力低く押えなければいけない、そういう政策努力を織り込みまして消費者物価は改定をいたさなかった、そういう事情を御理解いただきたいと思います。
  50. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は明らかに数字の魔術だと思うのです。結局四十九年度の予算案を地方交付税交付金を一千六百八十億吸い上げることによって二〇%以下に押えた。それと同じ魔術をやっておるのですよ。消費者物価を動かして九・六を一〇%にすると心理的に与える効果は非常に激しい、だから卸売り物価だけは修正するけれども、理屈にならない理屈、一%卸売り物価が上がったら三%消費者物価が上がる、そういう理屈をつけて移動させなかったと思うのです。必ずこれは失敗をする。いま出発点でありますから、結果が出てこなければ、また私の言っておることが正しいか政府の言っておることが正しかの判定は出ませんけれども、必ず私が言っておることが正しいと思う。必ずそういう結果が出てくると思う。そのときに——小坂長官も責任をとりますと言ったはずですが、内閣改造でやめられたわけで御本人が責任をとってやめられたわけではなかったのですね。結局そういう政策目標の中で物価高という押しつけを受けておるのは国民だけであって、政府は何ら関係なくただ数字的なごろ合わせみたいなことで終わってしまっているというのが実情だったのです。そういう結果が出てくるということを私は非常におそれます。しかし、大臣は先ほど自信をもって言われましたので、これから、この物価指数中心とした物価の動きをわれわれは十分監視をしていきたい、国民とともに監視をしていきたいと思います。  そこで、これは一月二十五日の所信表明でありますが、この所信表明で大臣は「石油供給の削減と、原油価格の大幅引き上げという事態が加わり、物価の」云々と、こういうふうに言っておられるのです。経済企画庁は、現在までも依然として、一月二十五日現在石油は削減されておるというふうに思っておられるわけでありますか。これはいただいた所信表明の二ページの五行目「アラブ産油国による石油供給の削減と、」云々と、こう書いてある。いまでも経済企画庁は、石油は一月二十五日現在削減されておった、こういうふうに理解しておられるわけですか。
  51. 内田常雄

    内田国務大臣 御理解いただきたいのは、その削減の意味に二つあると思います。松浦さんが御指摘になられたのは、昨年の十一月当時、政府のだれもが考えておったあの数字は、たとえば四十八年度全体の石油の入着数量というものは、それは一昨年の数量程度かあるいはそれよりも少し多いぐらいの程度考えられておった。つまり、二億五、六千万キロリットルくらいに考えておったのかもしれませんが、それは、その後わが国の外交政策等の転換あるいはその他の努力がございましてふえてきておりますが、しかし、昭和四十八年度も、御承知のように、そのときの私どもの石油の受け入れ、需要計画というものは三億五百万キロリットルくらいでございました。しかし、それは四十八年度の、最近ゆるんだという実績に比べましてもかなり多い数字でございますから、私がさしているのは、四十八年度のその当初からのいろいろの生産、需給の計画から比べると少ないのだと、こういうふうに御理解を——これは詭弁ではございませんが、そういうふうに考えていただきたいと思います。これは四十九年度につきましても同じでございまして、最近需給の状況がかりに緩和をいたしたといたしましても、わが国の経済計画における石油の需給計画というものは、毎年二割ないし二割五分くらいよけいな石油考えておりますから、当然昭和四十九年度の計画が、今度の石油危機がなければ、私は三億五、六千万キロリットルくらいには計画を組まざるを得なかったことから考えますと、私どもは、いま想定をいたします、三億に欠ける二億七、八千万キロリットルというものはまだ少ないので、来年の経済見通しにおきましても、実質的には昨年の伸びとか、それ以前十年間の伸びの半分以下くらいに見ておるというところはここにあるわけでございます。
  52. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大臣の言っておられることは、いまそういうことだということがわかりました。しかし、これは経過としてこうだということを言っておられる、先のことを言っておられるのではないのです。一そう強まったことは御承知のとおりでありますと過去形なのですよね。将来のことではない、過去形なのです。物価がこれだけ上がっておるのはこういう状態だったということを言っておられる。ですから、私が言ったようにすなおにとれば、そういう所信表明にとれるのです。私が質問しなければ、大臣は誤解されておったわけでしょう。少なくとも、所信表明というものはもっと正確に書くべきですね。いま言われたようなことなら、いま言われたように報告なさるべきが正しいと思うのです。そうでなければ、私が質問しなければ、この所信表明では国民はわからないですよ。石油は現実に入っておったわけですから、対前年に比べてふえておるわけですから。ただ、当初予定見込みに比べたら少ない工とは事実です。三〇%増加がなかったことは事実です。しかし、対前年度に比べて伸びておったと国民は理解しておるわけですからね。だから、そういうことはもっと正確に言われたほうがいい。これは何もこのことを追及するつもりで言っておるのではない、正確を期するためにお聞きをしたわけであります。  そこで、公正取引委員長にお尋ねをいたしますが、実は本委員会でも再販問題はたいへん議論になったのです。私も質問をいたしました、各委員全部質問をいたしました。公取委員長は再販の見直し、廃止と、それから廉売規定をつくるということの抱き合わせで実は対処するという方針を示された、その経過で、いま再販を取り下げておる石けん業界あるいは薬品業界、いま再販の指定を受けておる業界が盛んに政府あるいは与党、自民党に圧力をかけて、再販をやめるのはけしからぬということで、再販の見直しで、再販の整理実施期日が本年の九月に延びたのですね。この延びたことは事実です。現実に、再販を廃止してもらっては困るという業界の働きかけがあったことは事実でございましょう。公取委員長どうですか、そういう動きが自民党の内部にあったことも事実でしょう。その点ひとつ明確にお答えいただきたいと思うのです。
  53. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 再販問題については、昨年の八月の終わりごろに私どもの方針が実は表へ出たわけです。そのあとの業界、業界と申しましても、私は主としては化粧品及び医薬品等であったと思いますが、業界の反対も非常に強く、また確かに自民党の一部の方からも、廃止は困るというふうな強い意見が出たことも事実でございます。
  54. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 経済企画庁長官、実は公取が、いまお聞きのとおり再販の見直し、整理ということを発表したときに、いま公取委員長は自民党の一部と言われた、業界としては薬品業界と化粧品業界とこう言われた、それが再販を廃止してもらっては困るといって公取に圧力をかけた、これは実際に公取に圧力をかけたのです。ところがその再販は残せといって圧力をかけた団体が、十二月一日を契機としてばらばらと、便乗値上げをするための再販取り下げという行為を行なったのですよ。こういう行為について大臣どう思われますか。公取の委員長は九月、この事業報告について、本年九月から実施することにいたしますと言って、報告しておられる。ところが、実質的にはもう大半のものが、ばらばらばらばら再販を取り下げておるのですね。こういう行為について大臣がどう思われますか。現実に国民が再販を廃止してくれといって要望して、公取がそれにこたえたときに、再販を残せと圧力をかけた団体が再販をおろす、やめる。再販を残せと言った与党の人たちが実質的には再販をおろす形になってしまった、こういうものについて大臣どのように思われますか。こういう行為についての大臣の所感を承りたいと思います。
  55. 内田常雄

    内田国務大臣 まあすなおに判断いたしまして、やはりどうも、私もすっきりしない気持ちがいたします。矛盾があるように思います。しかし、それとも、公取がやめると言ったので、やはりもう公取にさからってはいかぬということで考え直して、その公取の意見に従ったのか、いずれか——そういう点があるかどうか知りませんが、何となく私も気持ちがすっきりしないことは松浦さんと同じです。
  56. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それは、私は一つ問題があるのは、公正取引委員会に対して、政府から独立しておる行政機関に対して政府が介入をするということは、私はけしからぬと思うのですね。これは例の石油二法をつくるときにも私は申し上げました、あの念書の問題ですね。公正取引委員会通産省が呼びつけて覚え書きを結ぶ、逆に公正取引委員会が、それでは通産のほうの意見を聞いてと、公正取引委員会の指導のもとに覚え書きを結ばれるというならこれは別ですよ。これは再販のときもしかり。いま大臣は、公取の意見に従って再販をおろしたとこう言われましたね。この前予算委員会で公明党の正木さんが質問をされました、医薬品の一部をおろして値上げをしたものを言われましたが、私たち社会党が調査した内容を見ますと、一月一日あるいは二月一日、たくさんの数量ですが、一月の十五日あるいは昨年の十一月一日再販をおろして値上げをしたのが何と一番最高は一二〇%値上げをした。最高は一二〇%。八〇%以上値上げをしたのが一件、七〇%以上値上げをしたのが一件、六〇%以上が二件、五〇%以上が七件、四〇%以上が十五件、三〇%以上が十八件、二〇%以上が十九件、一〇%以上が六件ですね。厚生大臣はこれらのメーカーに対して一〇%の値下げを命じたけれども、実際にはこんなに再販を取り下げて値上げをしたとこうある。  それから歯みがきですね。これも再販を取り下げて直ちに十二月一日、一月七日、十五日に値上げをした。一〇〇%値上げをしたのが一件、六〇%が一件、五〇%が二件、四〇%が三件、三〇%が二件、二〇%が九件ですよ。再販を取り下げて値上げをしたのですよ。  それからまだひどい。これはあとで言いますが、いまのように再販を取り下げてぱっと値上げをしたのですね。これは明らかに大臣が言っておることとは違うじゃありませんか。値上げをするためにこそ再販をおろしたわけなんですよ。こういう行為に対して厚生大臣は一〇%ということを言っておられますが、私は一ぺん再販売価格の時点に引き戻すべきだ、そういう指導をやるべきだ、このように思いますが、大臣どうですか。この品名は申し上げません、あまり多いですから。
  57. 内田常雄

    内田国務大臣 御指摘になりましたような商品が大幅な値上げをいたしましたことにつきましては、私もまことにけしからぬと思いまして、これは、たとえば医薬品に対しましても、化粧品に対しても担当の大臣に私のほうからああいう状況としては物価担当大臣として見のがせない、物資の主管大臣から厳重にひとつ引き下げの指導をやれ、できたらば標準価格もつくってほしい、こういうような申し入れをいたしておるわけであります。そればかりではありません。これは新聞にも出ておったこと、皆さま方のお目にもとまったと思いますが、二月の四日に総理がいろいろな企業の首脳を総理大臣官邸に数十人集められまして、いろいろな話し合いをいたしました際に、私は特に発言を求めて、便乗値上げは絶対にするべからざること、もし万一した者があったらば、それは値下げの形をもって返すべきである。さらにまたさような利得をもって配当の値上げ等は——こういうことを言うと皆さんのお気に入らないかもしれないが、それはやるべきではない。さらにまた賞与の繰り上げ支給というか、大入り袋的支給のことについてもまことに適切でないからああいうことはすべきでないということを私は実はその憎まれ役でありますけれども、述べましたことをもっていたしましても私は松浦さんのお気持ちもわかるし、また私は政府でその方面を担当する者といたしましてもそれだけの強い姿勢を示しておりますので、下げ方の多い少ないの問題はいろいろございましょうけれども、さらに私はこの姿勢をくずすつもりはございません。
  58. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 しかも業界が発表しておる数字を調べてみますと、値上げをしたもののごく一部なんですね。  また再販に関連をして公取の委員長にお尋ねをいたしますが、浴用石けんですね。実は浴用石けんを再販をおろして製造を中止しておるのですね。製造を中止しておる品目はたくさんありますから、もうことさら読み上げませんが、非常に小売り価格の小さいやつですね。もちろん大きいのも若干ありますが、小売り価格の小さいやつがほとんど再販を廃止して製造中止に踏み切っておりますね。この製造中止した安い浴用石けんの流通に占める量、シェアですね。この廃止した、製造中止した安い石けんのシェアは、全体の浴用石けんの四十七年度で四七%だと聞いておったのですが、間違いありませんか、公取は。
  59. 後藤英輔

    ○後藤(英)政府委員 昨年の十月から本年の一月までの四カ月間に浴用石けんでもって再販を廃止いたしました商品数にいたしまして約二〇%でございますけれども、金額にいたしますと、これは四十七年度の総売り上げに対してとっておりますので、それで見ますと先生指摘のような約四六%になっておりますけれども、これは高額商品が現在ふえておりますので、おそらくこの比率は、若干下がるかもしれないと思いますけれども、四十七年度の販売金額で見ますと、御指摘のようなシェアになっております。
  60. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま長官お聞きのように、今度は浴用石けんは逆に再販をおろさなかったのです。再販をおろさずに、再販をおろしたやつは全部製造中止したのですね、値段の安いやつを。いま御報告がありましたように、値段が安くて総体の金額に占める割合が四七%だから、いかに国民に親しまれておる石けんだったかということがわかるはずですね。ところが、これを製造を中止して今度は高値再販ですね。高いものだけしか製造しませんから、国民はその高いものにいかざるを得ない、こういうからくりもやっているのですよ。しかも洗剤は全部再販をおろした。その洗剤をおろした花王とか、ライオンとか、そういったメーカーが浴用石けんでは逆に安いものの製造を中止して、高いものを再販として維持していこうとしておるのですよ。全く国民は踏んだりけったりでございましょう。こういう業者はもっときびしく糾弾しなければいけないのじゃないですかね。こういう業者は国会に呼んで、それこそ国会に証人として呼んで、何でこういうことをするのか、きびしくやらなければだめでしょう。いま予算委員会物特委員会で証人、参考人でもめておりますけれども、こういう悪質な再販というものを利用して国民を犠牲にして、片一方は再販をおろして大もうけする、片一方は再販を維持しておいて、その再販によってまた下方硬直価格、高値価格というものをつくり出して、それでまた収奪をする。この物価高に政府に対して挑戦をしておる企業でしょう。こういうものに対してきびしく国会が糾弾するのは当然だし、政府もこういう業者はきびしくやるべきだと思うのです。大臣は私の言っていることに御意見ありますか、賛成でしょう。ひとつ政府物価担当大臣としてこういう企業に対する私の考え方についての御意見を聞かせてください。
  61. 内田常雄

    内田国務大臣 自由主義経済だからかってだということで私はあってしかるべきではなしに、やはり企業には社会的責任というものがあるべきであると私は常に思っております。また私などがしばしばごあいさつ等や所信表明の中でも申し述べておりますように、今日の物価問題の解決というものは、政府はもちろん一生懸命でやりますけれども、国民各位の御協力をお願いを申しますということを言っておりますのは、いま松浦さんが言われたような国民の代表である国会につきましても私は御協力を求めておる次第でございまして、ついせんだっての私のこの国会再開における当委員会における所信表明でも当委員会における御協力、御支援、御支持をお願いをいたしますと、こう申しておるわけであります。でありますから、それは証人であるか参考人であるかというところまで私が入りますと、これまた往々に国会に対する干渉になるかもしれませんが、その辺はひとつ国会で御議論いただきまして、少なくともそのような事情につきましてよろしく御究明をいただいてしかるべきものだと思います。
  62. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私はけしからない企業の代表だと思うのです。しかも決算は今度ぼろもうけです。こういう業者についてはいま言ったような再販というものを利用したやり方、からくり、こういうことすらやる業界ですからね、政府もただ単に呼んで値下げを陳情するくらいでは解決しない、二〇%下げなさいというくらいでは解決しないのですよ。逆に言うと、せせら笑っておるのです。  そこで私は法律的な効果として公取の委員長にお尋ねをいたします。  その一つは再販を取り下げる規定がどこにあるのか。いままでは再販でもうかっておって、下方硬直的な価格で廉売を阻止する。ダンピングを防いでおいて、もうかっておいて、今度は便乗値上げがやりにくくなったというので、さっと再販の指定を取り消す。その規定はどこにありますか。
  63. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 再販制度は、法律でいえば二十四条の二にあるわけですが、そこに書いてあるのは、二十八年の改正で新たに挿入されたものだと思いますが、書いてあること自体は、指定をする、指定を受けた物、だから公取に届け出まして、公取が受理すればいいというふうな形になっております。それには、消費者の利益を害してはならぬとか、いろいろ、外から見て一見して同じような質のものだとわかるものだとかいうふうな条件がついておりますが、指定を取り下げる規定はありません。法律規定としてはありませんが、事実上は届け出をしまして、こちらが一定の要件に合致しておれば受理しなければならないようになっておる。向こうが自発的に取り下げるといえば、こちらがそれを差しとめる規定もありませんから、したがって、いずれの法案も非常に自由な形になっております。ですから取り下げる場合に、私のほうがそれをけしからぬといってとめる権限がない、こういうふうに解されます。
  64. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、その不備について改める御意思がございますか、まず第一点。それから第二点は、再販をおろしましたから、おそらくこれから洗剤とか、再販をおろした薬とかというのが、今度は全部スーパーその他の目玉商品になると思うのです。おとり商品になったり、あるいは安売りの対象になる。客集めの対象になるのです。それをしないために再販があったわけですね。洗剤のようなものがいまは高値でいっておりますが、しかしおそらく消費者が買い控える、そういった消費者の力によって暴騰、暴落する場合が逆に出てくるのですね。そのときにまた再販申請をする。そうすると、その再販を選別する規定もないのですね。俗にいう出戻り再販のついている規定が、この中にあるかどうかをひとつお聞かせいただきたいと思う。
  65. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私どもは、告示ですでに出しておりますように、医薬品と化粧品を除けば、九月一日からは他の三品目は再販商品になりません。ですから、これを受けつけることがない、こういうことが告示で指定されております。  それで、その点について問題ないので、他の二品目、化粧品と医薬品、この医薬品の中にもずいぶん値上げを大幅にやるために、これは私のほうでは全然値上げ認めてないわけではないけれども、大幅な値上げを目して、一たん、自分で自発的に再販を取りやめた、あるいは製造中止という形をとった。ところが、製造中止というのは表の名目でありまして、その後別に、ほかの製品だといって届け出る例があります。これはどうも非常に判別が困難ですけれども、ラベルをかえてくれば新製品になってしまう。届け出を拒否するという規定がないのです。ですから残る問題は、この二品目について届け出てきた場合に、もちろん疑わしきものは出戻りだといって、事実上押えるようにはしています。それからいますぐ出てきていません。まさか、いますぐには出ませんが、いまおっしゃられたように、もう一ぺん値くずれ現象が起こることもあります。不況がもし相当進んだ場合には、たいへんな値くずれも起こるでしょう。そうすると、今度はあわてて再販にしてくれということになる。ですから、私は、再販制度というものは、一部特殊なもののケースに当てはまる商品にだけ認められる。他のものはどんなに不況になっても、そういう再販という制度は認められない。これは制度自体が好ましくないじゃないかというふうに思います。だから、趣旨として、さしあたりそういう法律改正を行なってまで出戻りを防ぐとかいうても、これは私は審査上たいへんな困難を伴う問題でもあるし、それよりも制度自体を根本的に洗い直していく。洗い直すということは、つまり廃止の方向に向かっていかなければならぬし、せいぜい私に言わせれば、これは西独並みに出版物という範囲に限るべきではないかと私は思います。そこで中途はんぱな改正ではなしに、これもやはり私は皆さんのいろいろな御支援を得て、なるべく早くそういう改正を行なうべきじゃないか、こう思います。中途はんぱな改正でなしに……。
  66. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大臣お尋ねしますが、物価担当大臣として、いま公取の委員長が再販はもう書籍に限定すべきだ、出版物に限定すべきだ、こう言っておられる。そうしないと今度のように悪用される。出戻り再販が出たり、また都合が悪くなったら下げるとか、いまの公取委員長の言われたことを、長官は側面的に行政立場で公取を支援するというお考え方があるかどうか、この再販の問題をいま全部私説明しましたから。どうですか。
  67. 内田常雄

    内田国務大臣 公正取引委員会というのは、他の行政機関と違う仕組みで設けられておること、言うまでもありません。独禁法の中に規定された役所でありますので、私はあまり干渉いたしませんが、しかし私が物価の基本問題を担当いたしますのは、物価を上げるために担当いたしておる職務ではないと考えますから、物価を下げる方向で公取がやることにつきましては、私はこれを大いにエンカレッジして協力すべきであると考えております。おまえ、それをやれとかやるなとかいう干渉はしないが、エンカレッジする立場をもって協力をいたしてまいります。
  68. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 経済企画庁物価値上げするところになったんじゃこれは困るので、大臣ちょっとことばが過ぎると思うんですよ。あなたがそういうことを言われると……。(内田国務大臣「でないと……」と呼ぶ)でないと、こういうふうに言っておられることを裏返ししますと、でないはずの経済企画庁が逆に物価を上げるお手伝いをしておるようなものですよ。逆に言うとね、結果がそうなっているから。一つも実効はあがらぬでしょう、調整機関だけで。何も能力ないでしょう。ただ通産や何かに要望するだけ。だから私は、いまの公取の委員長にまた政治的な圧力がかかるのをおそれるから——政治的な圧力がかかったんですよ、この前再販の議論があったときは、さっきから言うように。前の大臣の時代に、公取にかけたんです。そういうことをしないようにやってもらいたいというのが、私の言っておる大臣に対するお願いなんです、再販問題については。
  69. 内田常雄

    内田国務大臣 まあ、松浦さんと私は同じ気持ちでありまして、物価を下げるほうの役に立つことならば、でき得る限り筋が通る限り、協力を私はしてまいるつもりでおります。
  70. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは大臣、この独禁法の第七章「損害賠償」第二十五条「無過失損害賠償責任」というのがあるんです。その中に、「私的独占若しくは不当な取引制限をし、又は不公正な取引方法を用いた事業者は、被害者に対し、損害賠償の責に任ずる。」とこうある。この二十五条規定でいま争っておるのは、ナショナルのカラーテレビやみ再販の二重価格の問題がいま高裁で争われて、間もなく判決が出されるでしょう。こういった運動が、消費者団体の中からものすごく出てくると思うのです、今度の便乗値上げの結果から見て。しかもほとんどのところが、公正取引委員会の勧告を受諾していますね。それで公取のほうで審決しておるということになりますと、結果的にこの賠償責任の問題が私はだいぶん出てくると思う。そのときに消費者保護の立場で、ここにちゃんと法律にあるわけですから、経済企画庁はそういう消費者運動というものを側面的に援助されますか。そういう運動が起こってきたときに、どういう態度をとられますか。またこういう規定があるということを国民に周知させますか。どんどんやれとは言わないでしょうけれども、損害をこうむった国民に対して、これだけの保護規定が独禁法の中にあるんだというようなことについて、大臣はどのように扱われますか。
  71. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 たいへん申しわけないと思い、私が出しゃばるのはおかしいんですけれども、企画庁長官は全体の総括的な物価政策を担当しておられる。したがって、いまお話がありましたが、具体的に私のほうの例でもいままでに実はたった二件しかないんです。無過失損害賠償責任ですが、私どもが今回重点を置いて摘発といいますか、取り調べを行なったケースをごらんになるとおわかりのように、石油中心としたような製品ですね。そうしますと、元売りとか石油価格とか、こういった問題に対する被害者はだれか。もちろん、その直接のユーザーが一番はっきりしておるわけです。大衆が、消費者が直接その購買者になる、ユーザーになっているというケースの場合でありますれば、これは消費者のほうから出ます。ところが、中間製品である場合には取引先が固定しておるのです、早く言えば。そこで、損害を受けたほうが、自分も実はその価格をさらに下へ転嫁しています。次から次へといって、ですから、石油化学製品が末端のほうへいきますと、塩化ビニールの管が一ころのたとえば十倍になっているとかいうふうなケースも起こりますから、その段階において、どこを相手どってどうやって損害賠償を起こすのかというのは、そこの最終のユーザーにとってはたいへん困難な問題です。そこで、直接のユーザーが起こす場合には非常に明瞭なんです。価格がどのぐらい前よりもぼられたかということはできます。そこがむずかしいところで、お互いにいわば従来からの固定化されたような取引先になっておる。そこで訴訟が出てこない、こういうのが実態であろうと思います。カラーテレビのような場合ですと、ユーザーが直接の消費者である、それでそれが高い、不当な価格協定を行なっておったということになりますと、その訴えがある程度有効に認められることになりますが、そうでないと、何をどういう基準で請求していいかわからぬというふうなのが現状でございまして、そういう点でたいへんこれはむずかしい問題でございますから、製品別に直接の取引先をしりをたたいて損害賠償を起こせ、こう言いましても、それでは自分の従来の取引関係にたいへんな傷がつくので、そういうことはちょうど子会社が親会社を訴え出ないというケースが大部分であるのと同じようなことになっております。ですから、この条文がありますけれども、いままであまり使われていないし、今後もものの種類によって違うだろうと思います。
  72. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私はおそらくこの条項でたくさんのものが出てくると思うのです。国民はもう怒っておるわけですからね。どうにも手の打ちようがないわけですからね、現在の法律では。値下げも独禁法を改正しなければできない。これはやると言っておられるけれども、現実に間に合わない。超過利得税を取り上げる、国家が取り上げて、税の公平で再分配する。そのこともいいでしょう。しかし、現実に国民そのものは怒っておるんですね。それに対して何ら手を打つことがなければ、当然私はここにくるだろうと思うのですね。  そこで、公正取引委員長にお尋ねをいたしますが、これは公正取引委員会からいただいた資料ですが、石油業界に昭和四十一年度から石油関係して勧告なさった件数は何件なのか。四十一年以来何件なのか、お知らせをいただきたいと思うのです。
  73. 妹尾明

    ○妹尾説明員 お答えいたします。  石油に関する事件でございますが、これは石油の元売り業者あるいは石油連盟、それから石油の小売り業者の団体の事件等いろいろございますが、全部ひっくるめて数を申し上げますと、四十一年一件、四十四年が三件、四十五年が十六件、四十六年が八件、四十七年が二件、四十八年が十五件、四十八年は四十八年十二月末までのあれでございますが、それから四十九年に二件ということになっております。
  74. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 全部で合計四十七件ですね。ところがこの石油業界というのはまさにカルテル業界で、縦横無尽にカルテルが走っておるのですね。確かに末端の石商連とかあるいは県石連とかあるいは県商連の何々支部とか、それぞれ発生した場所は違うが、全部やはり石油に関連して縦横のカルテルで結ばれている事件なんです。カルテル業界ですね。通産省の事務次官が石油業界は諸悪の根源である、こう言ったのは、私はこの一事を見てもまさにそのとおりだと思うのですね。  それでお尋ねをしますが、昭和四十六年に石油連盟が石油製品の販売価格引き上げ問題をめぐりまして公取の勧告に従わずに、現在審判中でありますね。現在係争中であります。四十六年七月六日に石油連盟が行なったカルテル行為については係争中である。ところが、その係争中である石油連盟がまたぞろ今度、四十九年二月五日に勧告を受ける。これを受諾するかどうかは今明日に石連のほうから返事がある。これがまた係争になるかもわからない。こんなのは犯罪の積み重ねだと思うのですね。カルテルをやればやり得だという形にいまなっておるのですよ。カルテルをやったって勧告されるだけだ。価格も引き下げぬでいい。係争さえしておけば、何年たとうが結論が出なければまたやってもいいんだ、こういうやみカルテルの積み重ねということが雪だるま的に石油業界では行なわれているのですね。私は国民感情として——きょうの読売新聞を見ますと、公取の委員長はあまり積極的なことは言っておられないようでありますが、独禁法第七十三条の告発処分ですね。検事総長に告発をする。もう国民——独禁法にあるわけだから検事総長に——四十七件もこういう縦横のカルテルをやって、しかも係争中の石油連盟がまたやった。こういうところこそ独禁法の告発をやるべきじゃないですかね。ところが、読売新聞によると告発はあまり積極的には考えておられないですね。いまの政府のやっておるやり方というのはやり得ということですわ。こうして頭を引っ込めさえすればいいんだ、いつの間にかまた必ず時がたつよ。てんで企業に、はじらいというのがないですね。こういうものについて告発をする意思があの読売新聞に書いてあるとおりなのかどうか、その点を公取の委員長からお聞かせをいただきたいと思うのです。  そこで、きのう法務委員会でわが党の稲葉議員が法務省の刑事局長質問をした。そしたら法務省の刑事局長は、公取のほうから告発があれば法務省としてはどんどんやります、刑事局はどんどんやります、こういう発言をした。法務省の刑事局は積極的に告発するのを待っておる。公取委員長は、そういう受け皿もちゃんときのうの法務委員会ででき上がっておるこの段階において、なおこういう石油連盟についての告発ということについてはちゅうちょなさるのかどうか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  75. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これはもう松浦さんつとに私のほうの法律を御存じのように、具体的な事件についてどうするこうする、たとえば勧告の問題にしましても、不問になるんじゃないかとか勧告が適当であるとかあるいは証拠がどうであるとかということを言ってはならない。これは告発の場合も同様でございます。ですから、具体的な事件でいま御指摘のように非常に皆さんがそういう強い意見を持っておられることは私は十分傾聴しております。決して聞いていないわけじゃないのです。しかし具体的な問題になりますと、私は答えるのはどうもまずい結果になるだけで、何もそれは申さないほうがいい。そこで私は予算委員会で、やるときには黙ってやりますから、この告発論議だけはあまりいろいろ受け答えをしないほうがいいのじゃないか、していただきたくない、こう申し上げたわけでして、昨日の記者会見で——どういう記事か、私みんな読んでいないのですけれども、一般的に告発を乱用する、みだりに使うといいますか、ひんぴんと告発するというふうなことはやりたくないと、私はそう申しました。ひんぴんと告発に持ち込むという態度ではなくして、いま私どもに課されたことは、告発もさることながら、経済的ないろいろな不安定な状態の中で、さらにまた今度は、石油の値上がりという問題、これはコストがべらぼうに上がったわけですから、二倍に上がった石油が入ってきて、先ほどの御質問のようにいつかは価格に転嫁されなければこれは立っていかないですね。倒産です。そうなれば、おそらくどうにもなりませんから、どの程度にやるかというふうな問題が残されておるわけで、それは皆さんが注視しておるわけです。そういったことをあれするためにも、こういう悪いことをしておった、価格協定を行なっておったということを、できるだけこの短い期間に次々と国民の前に明らかにする。それはその直接引き下げ命令権はありませんから、効果がそんなにあったと思いません。思いませんが、それによって物価問題に対する個別対策がやはり相当必要であるというふうなことを訴えるための施策の一つの援助になったのじゃないか。そういうことをこの短期間の間にできるだけ早くどんどんやる。だから私は、いつもと違いまして、超スピードで結論を出すようにということで指導しているわけでございまして、告発本位にいくということは、いましばらく情勢を見た上でやらないと、はっきり申し上げまして、とても私のほう、手が回わりません。ですから、絶対にしないとは申しません。絶対にしないとは申しませんが、告発本位でいくというのだったら、ほかにもずいぶん累犯があるわけですから、いろいろバランス論その他を論議されますと、私どもの立場もたいへん苦しゅうございますから、ひとつ告発問題はこの程度でごかんべん願いたいと思います。
  76. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 黙ってやられることだから、ここで御返事いただかなくてもけっこうですが、そういう手続規定があるのに、黙って何もしなかったということでは国民の期待を裏切ります。私は何もそれを乱用せよと言っているのじゃない。こんなに悪質なものはやるべきだ、こう言っているのです。悪質なものに限定をして言っておるはずなんです。そうしないと、泣くのは国民だけ、カルテル行為をやったらやり得、独禁法を改正するまでは適当にしておけ、独禁法改正については相当な財界の圧力があることも事実です。そういったことを考えれば、泣くのは国民ばかりでありますから、そういった意味では、現在ある独禁法の法律運用というものを具体的に行使することによって、国民の期待にこたえられる道も、現行法の中にすらあるわけでありますから、そういう点をひとつぜひ公取の委員長、いま抜かざる宝刀の話もありましたけれども、その点の判断はぜひ私たちの要望としてお聞き取りをお願いいたしたいと思います。  私の与えられた時間が来ました。まだまだ所信表明についていろいろな問題を長官に御質問したいわけでありますが、与えられた時間が一時間でありますから、私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。
  77. 平林剛

    平林委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際休憩をいたします。    午後零時四十四分休憩      ————◇—————    午後一時三十四分開議
  78. 平林剛

    平林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林政子君。
  79. 小林政子

    ○小林(政)委員 最近の物価高騰はほとんどもう狂乱状態、このようにいわれております。     〔委員長退席、井岡委員長代理着席〕 事実また私ども毎日の生活を見てみましてもがまんできない、そこまできているのが現状だと思います。特に最近の消費者物価の異常な急上昇、一月の消費者物価を見てみましても、ほとんどその中身は毎日の暮らしに欠かすことのできないもの、ぜいたく品であれば買わなければ済むわけですけれども、これだけはどうしても買わなければ生活できないというような物価が特に消費者物価の中でも上昇しているわけです。たとえば野菜も、これは二七・二%、特にまた子供たちのための文房具、こういつたようなものも対前年比一七・八%、あるいは乳卵なども一一・四%、毎日食べなければならない主食は一〇%、このように異常な上昇を示しています。特に私は、その中でも最近、四月の入学期などを目前にして一年生に上がる子供を持っている母親たちからいろいろな話を聞きました。いなかでも実際には子供を一人小学校に上げるには最低四万円なければ子供に一通りのものをそろえてやることができない。都会の場合にはもっとそれがひどいわけです。たとえば、昨年であれば都会の場合六万四千円程度で机からランドセルから、あるいはまた子供の入学の服から、学用品から、大体何とかそろえることができたわけですけれども、ことしに入ってからは同じようなものをそろえるだけでも九万円をこえるというふうにいわれております。これらの問題一つを取り上げても、最近の物価上昇というものがどんなに私たちの生活を圧迫しているか、また毎日の暮らしにとって欠かすことのできないものが急上昇しているかということがはっきりとあらわれてきております。特にその中でも、卸売り物価の上昇のうち、石油関連の産業の製品が値上げをして、一月のこの原油の価格引き上げの影響がおそらく今後また一そう激しさを増して出てくるのではないか、このようにいわれておりますし、また、卸売り物価の上昇が消費者物価にはね返ってくることを考えますと、一体どこまで上がるのだろうか。これを何としてでも押えなければならないということがいま政治に求められている最大の課題だと思います。しかも、これら最近の物価急騰の一つの主要な原因は、企業による買い占め、売り惜しみによって引き起こされ、そして石油危機による便乗値上げ、これが実態だろうと思いますが、このことは、政府が発表しているいろいろな資料や数字を見てみましても明らかです。特に危機感をあおって、石油がない、石油が削減される、こういうことが大宣伝をされた。しかし、これがいかに欺瞞であったか、こういうことは政府の統計を見ましても、昨年十二月の原油の輸入二千四百九十八万七千キロリットル、これは前年同月比で見てみますと、六・六%上回っています。また石油製品の生産を見てみましても、二千三百三十六万キロリットルで、これも一・二%、対前年比ではふえている。いかにつくられた物不足の上に宣伝をされ、その上に価格がつり上げられてきているか、こういうことがいえると私は思いますけれども、最近軒並みに上がっている諸物価大臣、これは私は、便乗値上げというものがいま非常に大きくクローズアップされてきていると思いますが、この現状というものをどのように認識をされていられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  80. 内田常雄

    内田国務大臣 わが国の卸売り物価、これが非常な上昇率を示しておりますが、そればかりではなしに、消費者物価も非常な値上がりの傾向をたどってまいってきておりますことに私は非常に憂慮をいたしておりまして、私のみならず政府も、この物価対策を最大の政治課題として取り組んでおりますことも御承知のとおりであります。それにもかかわらず、おっしゃるとおりに物価が上がってきておりまして、これは小林さんもよく御承知のように、また総理大臣以下私どもがたびたび申しますように、海外からの要因とまた国内要因、すなわち一昨年当時の過剰流動性というものが、金融引き締めその他総需要抑制政策を昨年来重ねてまいってきているにもかかわらず、まだ残っておるというようなことに多く原因をしておると思いますが、しかしこれも御指摘のとおり昨年末からの石油危機、これは数量の問題——数量は、一時憂慮したよりも、お話しのように緩和の方向をたどっている。私は小林さんと同じ思いがありますが、しかしそれにいたしましても、価格のほうは昨年の上半期から見れば四倍ぐらいになっておるというような状況もございまして、今日までのところ御指摘のとおり、私自身が認めておりますとおり、非常な値上がりをしておりまして、私どもも国民の日常生活を考えますときに、非常に憂慮にたえないことは同感をいたしておるところでございます。その中で、便乗値上げあるいは先取り値上げというようなものも私はあるのではないかと思いますことは、小林さんと同感であります。  これは自由主義社会における企業防衛ということからしますと、いま持っている原材料は前の安い価格であった、しかし次に入ってくる原材料というものは高い値段になるということでありますと、前の持っている安い原材料を、あとから入ってくる同じ原材料の値段に再評価をいたしまして、そして製品価格をそれに基づいて上げてくるというようなことが従来はよけいありましても、それは物価がかなり安定をいたしておりますときには、企業防衛の原則であったかもしれませんけれども、しかし私は今日はさようには思いません。このような狂乱どきの物価の上昇の中におきましては、安い原材料を持っておる限りは、これはそれが上がるということで再評価する、いわゆる先取り的な値上げとしてコストの中に織り込まない方向をぜひとらせてまいりたい。いわんやまた、それらの関係ばかりでなしに、全くコストに影響されないような企業製品や、全く影響されないわけではないが、一部しか影響されないものが、非常に多く影響されたような形をとって、便乗値上げをしておるというようなことがありますならば、これはもってのほかであります。  ことに、それらが業者価格カルテルというような形で遂行されるというような場合においては、なおさら私はそれらに対処いたします強い姿勢を示して、そしてさような不合理な値上げを排除すべきであると考えるわけでありまして、政府といたしましても、物資所管官庁に私どものほうから強く要望いたしまして、行政指導あるいはあるものにつきましては標準価格の設定というような手続をもとりまして、価格を押えておりますほか、公正取引委員会も、幸い非常に強い姿勢をもっておりまして、価格カルテル等、ことにいわゆるやみカルテルといわれているものの破棄を厳重に勧告をいたしておる。またかようなものにつきましても、政府ではそれに引き続いて、法律上の規定に基づかないものではございましょうけれども、元の値段に戻す方向で指導をいたしておりますことも事実でございます。  そのほか一般的には、総需要の抑制というようなこともさらに強くいたしまして、総理大臣の言われるように、ことしの夏ごろまでには、このような物価の異常な上昇の傾向をぜひとめてまいりたいということで、私は小林さんと同じ憂いを憂いといたしまして対処してまいるつもりでございます。
  81. 小林政子

    ○小林(政)委員 いま、大臣の認識についてお伺いをいたしたわけですけれども、たいへん異常な事態であり、憂えているんだというお話でございますけれども、私は、ほんとうにこの問題が最大の問題であり、しかも物価をどう引き下げるかということを真剣に考えていられるのだったならば、現在あらゆる点で後手後手に回っているというような、こういう対策にはならなかったのじゃないだろうか。実際に標準価格問題等の中身を検討いたしましても、あるいはまた最近の便乗値上げの激しさというものが、次から次へと起こっているというようなこういう事態に対して、これをほんとうにとめていく、これをやめさせるというような規制措置、こういったようなものがあとから、上がってしまってから、後手後手と追っかけるのではなくて、事前にやはりとられるべきではなかったか、このように思うわけです。  特に、これは通産省から出していただいた資料ですけれども、通産省による原油の値上げに伴う製品価格上昇率の試算です。本来であればこのぐらい上がるんだけれども、それがこんなに上がっているという、この計算の試算を私見てみますと、四十八年六月から十二月の実績と計算値の比較ですけれども、いわゆる原油が値上げされたという石油製品です。この場合ですと、大体六月から十二月までの間で製品に三〇・三%と書いてあります。それが実際には、ナフサは七一・六%上がっているんです。また合成樹脂、非常に値上がり率が最近大きくなって問題になっておりますこの合成樹脂も、原油の値上げに伴う、いわゆる本来であれば製品の価格の上昇というのは七・六%程度であるものが、ポリプロピレンなどは四九・八%、あるいはまた塩ビ樹脂六五・三%、非常に激しい値上げですね。また鋼材なんかを見てみましても、本来であれば五・四%程度製品にはね返るというのが、鋼材の中でも小棒は六一・一%、あるいはセメントは九・九%程度であるものが三二・三%、あるいは紙は六・五%ぐらいというふうに試算されていますけれども、これも中芯原紙は五一・八%、これはものすごい値上げ率だと思います。大臣、こういうものはほんとうに便乗値上げだというふうに、はっきりと断言を私はすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  82. 内田常雄

    内田国務大臣 小林さんが御指摘になりました、また通産省の担当者から出されたこの表に関する限り、私も正直全く同じ思いをいたすものであります。しかしこれには、私が言いわけする必要は全くないんですが、この見方には若干の問題もあると思います。私は、学者でもなければエコノミストでもございませんけれども、この右側の計算値というのは、これは総理大臣なども取り上げられた一つの計量法でありますが、産業関連表というものを用いて、ある製品のコストに占める原材料が、それが上った場合には全体の製品にどういう上昇の影響を与えるかというのが産業関連表の仕組みのはずですが、しかしそれには幾つかの前提があって、他の原価項目などについての配慮は全然別にしての計算のはずでございますから、これは弁解では全くありません、私が弁解する必要はないのですが、あとからひとつ石油部長に説明もしていただくのがいいと思いますけれども、そういういわば単純な産業関連表を用いてあるということが一つ。  それからもう一つは、これは先ほど私が申し述べたことに関連をいたしますけれども、現在持っておる原材料はかつて安い値段で仕入れたものであるけれども、たとえば石油についても備蓄になっている原油というものが何十日分かある。しかしそれはあとから入ってくる、一月から入ってくるものは、何倍か上がるというようなことになっていた場合に、これは企業会計原則で先入れあと出し法とか、あと入れあと出し法とか、いろいろなやり方はございましょうけれども、あとから来るものが上がる以上はということで、おそらくはメーカーのほうは、安い手持ちのものも企業会計原則の一つの方式に従って高く評価がえをしてつくっておる。それを一体いかに批判すべきかという問題もございましょうし、またこの表の上にございますように、灯油のごときは、これは標準価格をつけるために、とにかく石油の値段が油種別にどうなろうと、灯油とかLPガスとかいうものは、もう前からの指導価格のとおり押え込む。もし値上げの必要があれば、ほかの油の種類にしわを持っていかせるような、そういうやり方もしておったわけでありまして、灯油については、石油製品の計算値からいうと三〇・三%上がるべきものがずっと低くて五・二%しか上げていない。そのしわがどこかに、ほかの油のほうへいっているという問題もございましょうが、しかしそういうことは別といたしまして、とにかくこの際の計算方法としては、消費者あるいはずっとそれにつながる石油商品なんかの場合には、関連商品が非常に多いわけでありますから、それらの値上げを誘致しないような方法で計算をさせて行政指導をするなり、あるいはそれが可能ならば、標準価格をもっと広げてつけるなりという方法をとる方向でやるべきであると考えます。  ただ石油だけにつきましては、そのほかにいろいろな国際的な課題がありますから、単純には申し上げられない面がございますが、その他のここに並べられている製品については、私がいま申しましたような見地から、こういう状態を消すような方向で処理をいたしてまいりたいと思うし、そのようなことを私からもあらためて企画庁に強く要求をいたしているところでございます。
  83. 小林政子

    ○小林(政)委員 このような便乗値上げをほんとうにきびしく規制をしていく、それをぜひやっていきたいというお話でございますけれども、私はやはり便乗値上げ対策といいますか、これをほんとうに押えるために、もっと有効でほんとうにすぐにでも手を打てるというようなことをやるべきだというふうに考えます。  まず私はその中で、政府がいままでとってきました対策の中での一つである標準価格の設定ですけれども、この標準価格の設定についても、灯油を例にとれば、元売り価格についてはキロリットル当たり一万二千八百九十八円、こういうことを設定して、そして十八リットルで大体二百六十円から二百八十円、こういう小売りの仕入れ価格といいますか、そして標準価格は三百八十円、こういうふうに設定をしているわけですけれども、私は考えようによれば、灯油の元売り価格である一万二千八百九十八円の設定も、現在灯油がだいぶだぶついてきているというような中で、あるいはまたこの間予算委員会の中で、ゼネラル石油がああいう悪徳商人の見本みたいだというような、こういうあくどいやり方をしている中で、価格を千円すでに値上げをしていたというような通達も出されてきている。一体いまの灯油の標準価格の決定というのは、こういう問題等を含めてきめられたものではないか。あるいはまたいま大臣おっしゃったように備蓄があって、そしてそれは値上げ前のものであった。ところが実際には業界は今後値上げが予想されるということで、それを見込んで、そして標準価格設定のもとになるそういう業界のいわゆる元売りのキロリットル当たりの数字が出てきたのではないか、こういうことが言えると思いますけれども、いかがでしょうか。
  84. 内田常雄

    内田国務大臣 これは通産省政府委員から正確にお答えを申し上げるのがいいと思いますけれども、灯油に関します限りは、昨年の中ごろ以来秋から、またことしの一月一日から、幾度も原油の価格が上昇する中におきまして、そういう原油の価格上昇を先取りしない計算のもとにできているはずでございます。それは小林さんも御承知のとおり、この灯油の標準価格は一月になってつくったわけでございますが、それより前に、昨年の十一月段階であったと思いますが、指導価格としてこの価格通産省行政的にやっておったものを、そのまま、原油の上昇にかかわらず、踏襲をさせてきたものでございますので、原油の値上がり等のしわは他の種類の油のほうに寄っている。ただし、三百八十円を守ってもらえば私が言うとおりでありますが、悪徳商人やあるいはまた悪徳メーカーがありまして、政府の指導価格なんかは守る必要がない、需給が窮屈であるから高く売ろうと思えば売れるのだということで、秘密の販売指令等を出して高く売っておったものがあったというような事例を知りますときに、私も国民の一人としてばかりではなしに、ことには政府物価の問題を担当する一人といたしまして、まことに憤慨にたえない思いがいたしておりますので、それは物資の主務官庁ともども、私どもがともに責任を感じて、今後に対処いたさなければならないと思っております。
  85. 小林政子

    ○小林(政)委員 通産省、いまの私の質問に対して……。
  86. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 大臣からもお話がございましたように、灯油につきましては、昨年九月の平均元売り仕切り価格でもって元売り段階価格の凍結をいたしまして、今日まで変えておりません。十二月現在で全油脂の平均元売り価格は一万四千五百円程度になっているわけでございますが、灯油は十月一日の水準で据え置いたまま今日にまいっております。これをベースにいたしまして、元売り段階では、十八リットルでは二百三十円になるわけでございますが、卸の段階で、二百六十円から二百八十円、小売りに渡す値段として想定をいたしまして、三百八十円で六%の利潤を得るということで検証的な計算をいたしておるわけでございます。  なお、灯油は季節商品でございますので、年間を通じてみますと、夏場が非常に値段が安くて、それから需要期に向かいましてどんどん上がるというのが例年の傾向でございますが、私ども指導価格といたしまして小売り段階の規制をいたしましたのが十一月の下旬でございます。この指導いたしました段階におきましては、全国十四万軒の小売り店でございますので、なお徹底しない面もございましたが、今回標準価格を設定していたがきまして、この一月の十八日から実施をいたしたわけでございますが、その後一月の末までの間におきまして、私どもが調査いたしましたところによりますと、この価格につきましてはほとんど順守をされてまいっておるという報告が、各府県のほうから参っております。今後、先生指摘のように、市況の関係で、季節が終わろうとしつつあるわけでございますので、一部には三百八十円を下回るものが出てくる、これは私ども非常にけっこうなことだと実は思っておるわけでございますが、この三百八十円の標準価格があるがために、価格がむしろ下ざさえになるというようなことがいやしくもありますれば、この標準価格は私は撤廃すべきであるというふうに考えております。現段階におきましては、この標準価格におきまして、上に上がろうとするのを下へ下げるという効果は十分働いているというふうに考えているわけでございます。
  87. 小林政子

    ○小林(政)委員 元売りの仕切り価格、いわゆるキロリットル当たり一万二千八百九十八円、これの根拠は、何を根拠にしてこの数字が出たのか、はっきりさせてください。
  88. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  元売り仕切り価格につきましては、石油業法によりまして通産省のほうへ各社から毎月当月に行なわれました仕切り価格につきまして届け出が行なわれているわけでございます。灯油の元売り仕切り価格は、九月におきます平均元売り仕切り価格が一万二千八百九十八円でございまして、これは油種ごとにそれぞれ違っております。たとえばガソリンでございますればそれよりかなり高いものでございますし、ナフサでございますれば低いということで油種ごとに差がございます。油は連産品でございますので、結局総コスト、総原価を各油種にどのように割り掛けるかという、コストアロケーションが一つの前提としてあるわけでございますが、御指摘の一万二千八百九十八円は何かとおっしゃいますれば、各社のほうで届け出ました九月の平均元売り仕切り価格である、こういうことでございます。
  89. 小林政子

    ○小林(政)委員 石油の場合は、私は、やはりそれぞれの原油から精製の過程でいろいろと違うわけですから、そういう複雑な問題はあるにしても、業界の言いなりという形で一体いま、この元売りの仕切り価格というのは大体どのくらいなんだというようなことで、原価というものからいろいろとコストその他を明らかにしてきめたということではなくして、業界がいまこのくらいだと、九月の段階ではこの程度だということでこれがきめられる。しかもそれを基礎にして三百八十円というのが割り出されてくる。こういうようないき方というものについては、私はこれはやはり問題だと思います。たとえばトイレットペーパーの例を一つとっても、実際にはやはり計算のしかたなどいろいろと通産省などからも聞いてみましたけれども、いずれも標準価格に設定しているこれらの問題は、小売りのいわゆる仕入れ価格、これをもとにして卸というものに対しては指示価格というのはきめてないんですね。小売りの価格だけは幾らだと決定する。三百八十円あるいはトイレットペーパーであれば二百二十円、あるいは二百四十円ということをきめていくわけですけれども、しかしそのきめ方が、実際には小売りの仕入れ価格というものから逆算をしていくというような便宜的なこのやり方というものは、むしろもっと生産段階からきちっと割り出して、そして価格というものは決定すべきじゃないかと私は思うのです。大体業界がこう言っている、いまこの地域での状態はこのぐらいの価格だ、こういうようなことが基礎になってこの標準価格がきめられるということに対しては、これは私は納得できないし、あるいはまた本来のあり方からいっても問題だと思いますけれども、いかがですか。
  90. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  灯油に関しましては少なくとも昨年の八月、九月、それからこれから需要期に入ろうとしている十月、十一月、先行きにつきましてはかなりの高騰ということが一般に予想されていた中で、私どもは九月の時点での凍結を指導したわけでございまして、先生がおっしゃいますコスト的な計算等から見ましてもいま平均の元売り仕切り価格が、昨年末の数字を先ほど申し上げたのですが、総体の中でかなり低い水準にこの灯油価格は押え込まれているということは事実でございます。私どももいわゆる標準原価というものをきめます際に、精細な原価計算等も当然やらなければならないという点はございますけれども、いま先生指摘のとりわけ流通段階におきますところの価格の設定というのは、先ほど申しました十四万軒の流通段階におきます販売店の各形態が区々でございまして、特約店もございますれば、いわゆる二社、三社というふうにいろいろな流通経路がございます。どの段階でこの価格を設定するかという点は非常に標準的なものが求めにくいということもございまして、私どもとしましてはこの卸が小売りに販売します価格指導を、先ほど申し上げました二百六十円から二百八十円ということで指導を現在いたしておるわけでございます。これで末端におきます三百八十円が十分に守られないというようなことがございますれば、さかのぼりましてこの卸段階につきましての指導あるいは標準価格の設定ということについても検討する必要があろうかと思いますが、現段階では私どもはその必要は感じておりませんで、指導で十分効果が果たし得るというふうに考えております。
  91. 村岡茂生

    ○村岡説明員 トイレットペーパーについて標準価格の算定方法を御参考までに御説明したいと思います。  この標準価格の算定にあたりましては、先生がおっしゃいますように、実はメーカーのコストを分析し、それに流通経費を乗せる、こういう手法を用いてございます。御案内のように、トイレットペーパー等につきましては中小企業標準工場設計というのがございまして、そこで相当学者などを動員いたしまして標準原単位を詳細に分析した資料がかつてございます。それに基づきまして、現在の各種原資材の価格を見積もりまして乗じてメーカーのコストを算定した、こういうやり方をとっております。  お説のように、標準価格として正式にきめましたのは実は小売り価格のみでございますが、その理由でございますが、御案内のように流通経路非常に複雑でございます。メーカーから出荷されたものが産地問屋あるいは消費地問屋に入ります。それが二次卸店を経由、さらに三次卸店を経由するようなケースがたくさんあるというようなことでございまして、一々その流通経費を積み上げてまいりますと、一つには標準価格が非常に高いものになってしまう、こういう結果をもたらすのが第一点。それから第二点は、いろいろ事情が違いますので、その事情に応じて標準価格をきめますと非常にわかりにくい。少なくとも消費者一般にとって全くわけのわからない標準価格になってしまう、こういうようなことでございますので、この際は標準価格としてはきめない、しかしながら小売り店いじめにならないように、都道府県、これは非常に分析能力のある職員がいるのでございますが、都道府県に対しましては当然のことながら小売り店の仕入れ価格それからメーカー出荷価格、こういう場合の値段だという標準的な場合をサンプルとして例示いたしまして御指導になるように通達いたしたところでございます。
  92. 小林政子

    ○小林(政)委員 ちょっと両方が入ってしまいましたけれども、トイレットペーパーですね。このトイレットペーパーはいわゆる標準価格のきめ方は、生産からコストその他を基礎にして決定をしてきたんだといわれますけれども、実際に昨年の三月−六月ごろ百十円程度であった小売り値が標準価格でもって二百四十円、倍になっているわけですよね。私は、実際にこんなに倍にまでトイレットペーパーがはね上がるというようなことというのはやはりつくられた状態でこんな二倍にもなったんじゃないか。この問題については予算委員会でも一体トイレットペーパーがなぜこんなになくなって、そのあと出てきたものが上がったのかということが問題になりましたけれども、実際に高値安定だと町の人たちは言っています。昨年に比べて二倍というようなこういう異常な値上げというものは私どもちょっと常識では普通は考えられないわけです。この点について明らかにしてもらいたいと思います。
  93. 村岡茂生

    ○村岡説明員 私ども、メーカーのコストを精密に算定すると同時に、昨年の一月との対比も行なっております。四十八年一月と申しますのは、四十七年に比べましてトイレットペーパーの価格が非常に下落をしてまいりました。四十七年度でございますが、当時百三十円ないし百四十円だったものが、ちょうど四十八年一月には五十五メートル故紙もので申し上げますと百円程度しておった時期でございます。これがかなり長期間とりまして、最もトイレットペーパーが安い時期、したがいまして逆に申しますと諸経費が非常に切り詰められた時期でございます。これを一つのスタンダードにしてみようということで私ども算定したわけでございます。  トイレットペーパー、いろいろ原材料がございますが、主原料となりますのは、ただいまの故紙ものでございますと故紙でございます。模造、色上、こういう二種類の故紙を混入して使っておるわけでございますが、その構成比が大体三五ないし四〇%程度のウェートを占めておりますが、この故紙の値上がりが相当ひどいわけでございます。色上について申し上げますと、この一年間約三・一倍でございます。それから模造品、これが約二・七倍。そのほか薬品類が総じて二倍前後、二倍強になっておるわけでございます。荷づくり材料費、これも二倍をこえております。  そういった各種主原料、副資材等がおよそ二倍をこえる上昇率を示しておりまして、まことに私ども残念なことではございますが、厳密なコスト計算をやった上で、なおかつ当時の市価に比べまして二倍強の標準価格を設定せざるを得なかった、こういう状況にございます。
  94. 小林政子

    ○小林(政)委員 答弁がどうしても長くなりますので、また急に聞いても具体的に数字などわかりませんので、いまのその積算の基礎なども資料として後ほど出していただきたいと思います。委員長よろしいですね、出していただくように……。
  95. 井岡大治

    ○井岡委員長代理 わかりました。
  96. 小林政子

    ○小林(政)委員 それから灯油の問題についても、このやり方は私がお聞きしたのでは、大体小売り業者の兼業率というものを五〇%に見て、男女の従業員あるいは店主を含めて三名ぐらいというふうに計算をして、そして取り扱い量というのが大体二百五十リットルくらいだろう、こういうことを仮定して、価格を小売りの仕入れ値からずっとそこいらを基礎にしてやってきている、こういうことですけれども、私はやはりこの灯油についてもきちっとした積算の基礎をぜひひとつ提出をしていただきたいと思います。よろしいですか。     〔井岡委員長代理退席、委員長着席〕  標準価格を設定した積算の基礎というものを明らかにしてほしいということです。委員長お願いいたしたいと思います。
  97. 平林剛

    平林委員長 わかりました。
  98. 小林政子

    ○小林(政)委員 だいぶ時間が経過しておりますので、私は先へ進みたいと思います。特に標準価格の設定とも関連していわゆる価格調査官の問題について、あるいはまたその権限が一部地方自治体に委譲されておりますけれども、この問題等について伺いたいと思います。  現在、私が聞いた範囲内だけでも、実際に地方自治体の場合には権限の委譲とはいうけれども、実際にてんてこ舞いをしているというのが現状だと思います。先日倉庫の実態調査のときに埼玉県のほうへまいりましたけれども、委員会として埼玉県の話を委員が全員いるところで私、ちょっとお聞きしてみたのですけれども、埼玉県ではいわゆる専任の調査官というものは百七十一名、現在おりますけれども、たいへんたくさんの問題が持ち込まれるけれども、車もない。実際には庁舎の車を四日専用に当てているけれども、タクシーでそのほかはかけ回る。あるいはまた歩いて出かけたり普通の電車や車を使っている、こういうような実態でございます。非常に負担がかかっているという話も出ておりましたし、また東京都などの実態を聞いてみましても、専任の調査官四十一名でもって一日、大体一月段階では百件ぐらいいろいろと問題が持ち込まれてきている。しかし特別の配車もない、タクシー、電車などを利用しながらいま事に当たっているのだというようなことですけれども、また職員をふやしていかなければ資料の準備も調査班の編成もなかなか困難をきわめている。こういった問題等が、予算措置の点については何ら目安が出ていない。一体この問題について地方自治体に権限を委譲したという事態の中で予算措置等については具体的にどのようなことを考えているのか、その点をまずお伺いをいたしたいと思います。
  99. 小島英敏

    小島政府委員 先生方が行かれましたときには、まだ確かに都道府県に対する予算の配賦が行なわれていなかったわけでございまして、大急ぎで各省相談してやりましたのですけれども、やや、どうもおくれました点がたいへん遺憾でございましたが、現在の段階では一−三月につきましては、主務省別になりますけれども、トータルといたしまして一−三月分として約八億二百万という金額が両法の施行のために都道府県に配賦されることになりまして、現在の段階では大体各省から都道府県別に、おたくはこのくらいという内示の数字がいっていると思います。したがいまして、お金の面では、やはり一県当たりにしてもかなりの金額のものが用意されておりますということを申し上げれるわけであります。
  100. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうすると、いわゆる超過負担などということで苦しむというようなことなく、潤沢に仕事を進めていくだけのそういう財源措置というものはある程度保証されている、こういうことですか。
  101. 小島英敏

    小島政府委員 都道府県によりまして非常に熱心に大勢の人をかかえてやられるところは持ち出しのところが決してないとは言えないと思いますけれども、平均的に申しますとかなり潤沢に予算の措置が行なわれたというふうにわれわれは考えております。
  102. 小林政子

    ○小林(政)委員 仕事の内容について、各都道府県などから出されているいろいろな要望がございますけれども、たとえば政令では主として末端小売り商に対する規制権などが移管でもって移されているけれども、現場の監視的な業務だけがきめられていて、標準価格が守られないために起こる消費者の不満というようなもの、ほんとうに何かそういうものだけを自治体に持ち込まれてきている。こういう点なども出てきておりますし、あるいはまた物資の指定、標準価格の決定という生産、輸入、売り渡し、保管の指示等について自治体の意見をひとつ十分取り入れてほしい、そしてその運営をはかってほしい、こういうようなこともいわれておりますけれども、大臣、いかがですか。
  103. 内田常雄

    内田国務大臣 御承知のとおり、あの国民生活安定緊急措置法のその個別物資対策というものは今日そのまま法令的には全部の手段が発動されておりません。当面は先ほど来お話がございました標準価格指定、それの監視事務だけでございます。しかしいまのお話の増産の指示でございますとか、輸送の指示でございますとか、輸入の指示だとかいうようなことも私は非常に大切なことであると思うわけでございまして、今後そういう事柄につきましても、地方公共団体と十分な打ち合わせをしなければならないことがあろうと思います。現に経済企画庁におきましても、各省庁におきましても、物資の需給状況を県についていろいろお調べをいたしておるわけでございまして、ある地域において物が足りない場合には、トイレットペーパーなどの例もございましたが、余っておる方面からそちらのほうに緊急の手配をするような、そういう行政上の措置は中央で講じておることも事実でございますし、また洗剤なんかのように、これは私みずからが当時通産大臣を兼任いたしておりましたので、たまたまそういうことになったわけでございますが、増産の指示などというものも、これは都道府県の意見を聞いたわけではございませんけれども、世論にこたえて、そういうことを実際にやってまいりました。これらはいま都道府県の特別の経費とか権限とかいうことの委譲にはいまのところはございません。いまのところはたびたび申し上げますように、標準価格についての公示でありますとか、公示違反に対する指導でございますとか、そういうようなことがおもでございますが、何にいたしましても、それらの問題はやはり国も地方通産局とか農政局なんかがございますけれども、やはり一番消費者に密着するのは都道府県、指定都市等でございますから、都道府県、指定都市の職員に、たいへんめんどうでも、恐縮してはおるんでございますが、いろいろ打ち合わせながらめんどうなお仕事をお願いをせざるを得ない、こういう状況でございます。
  104. 小林政子

    ○小林(政)委員 この問題等についても具体的な具体例をたくさん持っておりますけれども、時間がありませんので、大臣に最後に、この問題については早急にやはり要望として出されておりますいま二、三を申し上げたにすぎませんけれども、その問題の解決のためにひとつ十分意思統一を行なって、そして実際の実務に支障がない、たとえば小売り段階だけではなくして、事業所などまたがっている場合もありますし、そういう場合にはそこまで追及をしていかなければ実際にはわからないというような問題も出てきておりますし、こういう問題等が起こらないように、十分ひとつその点は尊重してやっていくということがお約束が願えますか。
  105. 内田常雄

    内田国務大臣 全くおっしゃるとおりの方向でやっております。この一月の間にもそのためにわざわざ知事会議をやり、また担当官会議を二回ほどもやってまいってきておるところであります。ただ、たとえば大阪府の中に大阪市という指定都市がある場合に、大阪市の職員が大阪府の管下にある工場まで指定都市の範囲を出向いて自分で行くがいいか、あるいはお互いに連絡し合って大阪府の職員がやるがいいかという問題がありますが、いまのところはそれはいろいろの責任の所在を明らかにする等の関係もありますので、お尋ねのような、おっしゃるような工場や事業所等がまたがっておる場合には、必ずしも末端の指定都市だけの仕事にしておらないということもございます。しかしこれらはいろいろな経験や打ち合わせを重ねましてやったほうがいいと思うことはやるようにしないと、せっかくつくっていただいた法律も、それによる行政措置も生きないことになりますので、十分配慮してまいりたいと思います。
  106. 小林政子

    ○小林(政)委員 公取委員長にお伺いをいたしたいと思います。  去る二月の五日に公取委員会としての勧告を受けた石油連盟、一昨年の十一月から四十八年四月、九月、十月と四回にわたって原油処理量を決定して、そして各社別のシェアを固定化していく、こういうような問題あるいはまたそれを基礎にして石油元売り十二社が一年間に数回にわたるやみカルテルを結んでいわゆるつくられた物不足というものの中で価格をつり上げてきているという現実、これらの問題について公取が勧告をいたしたわけですけれども、石油連盟は四十六年にもこのような価格協定を行なってそして現在では審判中である。そして聞くところによると、四十五年にもそのようなことが行なわれていたということが、このようにたび重なる悪質な行為に対して公取としてはこれは告発すべきだというふうにお考えになることができないのかどうなのか、委員長の見解をお伺いいたしたいと思います。
  107. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その件は先ほど社会党の松浦委員から同じような御質問がありましたので私が御返事を申し上げて、具体的なケースにつきまして告発をすべきであるかないかということはいろいろな方面からの御意見は十分傾聴いたしておりますが、私は個々の問題について意見を申し述べることはぜひともこれは差し控えなければならない法律上の責務を持っております。でありますから具体的なケースについて告発をする気があるかないかということに対しては私は何も申し上げることはできない、こういうふうに御了解願います。
  108. 小林政子

    ○小林(政)委員 再三、再四にわたってこのようなことが繰り返されるということが国民生活全般に与える影響から考えても非常にこれは悪質だと私は思うのです。一回ならよくて二回なら悪いということではありませんけれども、しかしこれだけ大きな影響力を持つ石連やあるいは石油元売りの各社が何回かにわたってこのようなことがやられているということについては、私は公取の委員長としてもっと強い態度で、絶対こういうことはもうさせない、許さない、こういうような態度でむしろ臨むべきではないだろうか。告発についてお考えになっているのかいないのか、その点だけをもう一度お伺いをいたしたいと思います。
  109. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 具体的な問題につきましては、私の答えは何べんお聞きいただきましても同じでございます。ただし一般的な考え方として、これは前にも予算委員会でも私は申しました。告発を予想させるような扱いをいたしますと、私のほうの審査部の職員が非常にてこずってしまう。いろいろな問題ございます。これは現実に告発という問題がかりに起こった場合でも、それに対して業者の態度が非常にかたくなといいますか、非常に摘発を困難にするようなふうに変わることも予想しております。かりに私どもが告発をやれば、やはり過去に何回か実績のあるようなものは、どうもこれは物騒だから今度はもうじょうずにやろうというふうになりますから(発言する者あり)これはそうなります。いままででもそういう傾向がありまして、最近になって特にはなはだしい。何人呼び出しましても一切の供述に応じません。しかし私どもは逮捕留置することはできないわけです。これはそういう権限を与えられておりません。行政処分でございますから当然のことだと思います。したがいまして毎度、そのつどお呼びいたしますが、お帰り願うわけです。したがいまして、これはもう皆さんがきょうは何を聞かれた、どうだこうだということで一切がつうつうでございますから、こういう点では私どもとして容易ならないハンデをしょっておるわけです。それでいながら証拠を固めなければならぬという点で、これからもさらに困難になるものと私どもは予想しておりますので、証拠等の問題についても何か考え直さなければいかぬというふうに思っております。いずれにしても、告発をちらつかせるということ自体私どもの調査に重大な支障を現に来たしておるという点から申しまして、もちろん具体的な問題については答弁ができないということに法律上の制約がございますが、一般的な方針としても、私どもの考えとして、ひんぴんと告発をする、回数が多ければどんどんやるというふうな考え方はとらないということを申し上げております。そのかわり、やるときには黙ってやるということを、これは前にも申しております。ですから、皆さん、いろんなところから、なぜ告発しないのかという御意見は私どもいろいろ承っております。しかし、そういう問題につきまして、私どもはバランス論は無視しても、やるべきときにはやる。これを告発してこちらをなぜ告発しないということを言われますと、私どもはやりようがなくなってしまうわけです。そういう公平論とかなんとかいうことを言われても、私どもは独自の与えられた職権に基づいて——これは専属の告発権でございます。意見はいろいろございましょうが、一般大衆は告発の権限を与えられておりません。またそれは私は不適当だと思います。公正取引委員会が判断すべきことでありますが、昭和二十二年に法律がつくられてから今日まで、やみカルテルに対する告発の例は一件もございません。それだけ私どもの態度もある程度慎重にならざるを得ないということは御理解いただけると思いますが、しかし絶対にやらないということではなくて、まあ一罰百戒というふうな感じでやることもあり得る。あり得るけれども、いま、どこでいつやるか、そういうことはきめておりません。それは発表もできません。  告発は、何も、勧告あるいは応諾すれば同意審決になりますが、審決の時期と時を同じくしてする必要はありません。これはどの時点でやりましても、違反があると思料するときには告発ができる。しなければならぬというのは訓示規定でございますけれども、これは過去の実績の示すとおりでございますが、そういう問題につきましては、私どもの専属権に属するものとして、こちらの判断でやらざるを得ないのです。いろいろ外部からの御批判のあることはわかります。ただ、お尋ねのような件につきましては、まことに申しわけないのですけれども、やる気があるかないかと言われて、あるともないとも私は申し上げかねる、こういうことでございます。
  110. 小林政子

    ○小林(政)委員 協定を破棄させるということだけではなくて、やはりもとに価格を戻すべきだということは、いまやこれは国民的な世論にまでなってきております。これらの問題について、価格をもとの段階に戻すべきだ、このようなお考えをお持ちですか。
  111. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私たちも、公正取引委員会のメンバーとしてはそのように考えております。しかし、これも前に申したかもしれませんけれども、価格をもとに戻すというだけなら非常に簡単です。私どもも処理上も簡単です、何も新しく価格を設定する必要はないのですから。もとの価格を調べてありますから、もとの価格で一定期間売買するように、売るように、こういうことはできますが、そうしますと、審判で争って——これは故意にという場合もあるでしょう。二年もかかった、それから裁判やったら三年もかかったという場合に、その原点に戻れということは、はなはだしく実情に沿わない場合もあります。最近のように、たとえば原油の価格が上がった、それを原因としていろいろなものが上がっているわけです。その場合に、原油価格が全然上がらなかった場合の状態に戻せということは、これはやはり実情に沿わないということになりますね。そうなりますと、それはもう、おまえさんは倒産しなさいというふうなことになりますから、そこでそういう場合の取りきめ方をどういうようにするかというような、非常に技術的に——技術的にといいますか、法律技術上むずかしい問題がありますので、それらの点を専門家の手によって十分検討してもらう。もちろん私どももそれに参加いたしまして、引き下げるという方法を実現させて、しかもそれをある程度うなずける、第三者が見てもそれほどおかしくないというふうにするにはどうすればいいか、こういう点を究明した上で実現したいという考えです。ですから、いまの法律の上ではこれはできないという解釈をとっております。
  112. 小林政子

    ○小林(政)委員 そのようにできるように法律を云々というお話ですけれども、一体、いつごろをめどにお考えになっているのですか。
  113. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いま独占禁止法研究会という名前の、そういう私ども委員会の私的諮問機関としてお願いしておりますが、この方々にこちらから希望といたしましては、引き下げ命令権から順に追って、寡占対策、そのほか不公正な取引方法の問題、商社の規制の方法として株式保有の問題、商社となりますとさらに今度は金融機関の問題も出てまいりますが、そういう株式保有についていかなる規制の強化をはかるべきかというようなこと、一連の問題を、これは毎年小刻みにやるというのもなんですし、いまからでは今国会にも当然間に合いませんから、私どもの目標としては次の通常国会に間に合うように、ですから、まあ内部的にはそれらの専門の方々の御意見は、十月ごろをめどにして固めていただきたい。これはみなそれぞれが実は相当むずかしい問題を含んでおります。言うのは非常に簡単なんですが、法律案としてまとめ上げるのは相当むずかしい問題を幾つもかかえておりますから、まあ十月ごろまでにできるだけ、精一ぱいやっていただきたいとお願いしているわけでございます。
  114. 小林政子

    ○小林(政)委員 いま問題になっていることはことしの秋だというようなことでは、これはとても間に合わないわけですね。  そこで私は大臣にお伺いいたしたいと思いますけれども、実際にこのような不当な行為によって価格が異常につり上げられていくこういう石油関係業界に対して、行政措置としてやはり直ちに手を打つべきではないだろうか。その問題について具体的な調査というようなものをすでにやっているのかどうなのか。これは通産省だろうと思いますけれども、具体的にその実態の調査などがやられて、そしてどこまでいま、価格の引き下げについての作業などが行なわれているのか。こういうことは直ちにやるべきだと思いますけれども、その点をお伺いをいたしたいと思います。
  115. 内田常雄

    内田国務大臣 私も同感でありまして、やみカルテル、価格カルテルをやって値段を一斉につり上げた、それを公取が発見してカルテルの解体を勧告した、しかしそれを争って審判とかあるいは訴訟とかいうことになりますと、いま公取委員長が言うように何年もかかってしまう、その間いろいろな原価要素も変わってくる、しかし物はストップしているわけではなしに売られているということになりますと、その事案が確定をしたときに、幾ら引き下げの命令権を公取が持ったところで現実に合わないという状態も出てくるわけでありますから、私は今日の緊急な物価状況に処します場合には、これは政府としては、公取ではありませんが、それを待っているわけにはいきませんので、その物資の主務官庁等にお願いをして、そうしてそのカルテルによって価格が引き上げられた状態、また引き上げた以後の原価要素等にも政府が介入して、そしてでき得る限りその引き下げの行政上の指導をする。これは法律に基づくわけではございませんが、行政上の指導をするということをやってもらっておるわけでありまして、小林さんもおおむね御承知のとおり、それはカルテル以前の価格まで下げてないじゃないかとおっしゃられる面があるかもしれませんが、それでもできる限りの引き下げの行政指導をやっておる。そのカルテルばかりではなしに、けさほどから問題になっております再販の取り下げなどの商品につきましても、同じように行政指導で価格の引き下げをやってきておる。業界もおおむねこれに応じてきておるというような状況にあるわけでありますから、同じような情勢を一そう各省で進めていただくとともに、私自身は、公取のそういう、その法律改正に対する努力を高く評価をいたしておりまして、結論が出ることを期待いたしております。
  116. 小林政子

    ○小林(政)委員 業界の協力を得て行政指導で価格を何とか下げさす努力をしているというけれども、むしろそのような違法な行為を行なってまで価格をつり上げているというこの企業の社会的責任というものをやはりもっと明確にすべきであると同時に、具体的な実態調査をして、そして価格は一体原価がどうで、あるいは標準のコストがどうで、そして幾らつり上げているのかというような点まではっきりさせた上で、価格を下げなさいということをやるべきだと思うのです。ただ業界の協力を得て、十上がったうち、少し、二つなり三つなり下げてくださいというような、こんなような態度では、問題の本質からいって、私はそれははずれると思います。むしろはっきりと調査をして、そしてその上に立った上で価格を引き下げさせていくというようなことを行政でもってぜひやっていくべきであるというふうに考えますが、長官いかがですか。
  117. 内田常雄

    内田国務大臣 そういうような同じ気持ちで各省に、カルテル等による価格引き上げのあと始末を行政上の措置で、指導でやってもらっております。
  118. 小林政子

    ○小林(政)委員 その調査の実態というようなものを私はぜひひとつ委員会報告してもらいたいと思います。委員長、いかがですか。お取り計らいをいただきたいと思います。
  119. 内田常雄

    内田国務大臣 どういうものにどういう干渉をしたかということは、もちろん御報告することができると思いますけれども、これは経済企画庁ではございませんけれども、各省について私が弁解する必要はごうもございませんが、それは通産省関係あるいは厚生省関係がそこへ乗り込んでいって、そしていまの販売価格の原価計算から分析した結果を報告することがはたして可能かどうか、その点につきましては、あなたからそういう御希望もあったことを私からもその当局の責任者に伝えて、検討をしてもらうようにいたしたいと思います。
  120. 小林政子

    ○小林(政)委員 この問題については、大臣調査をしていないのであるならば、ひとつ責任を持って直ちに調査すべきであるということを物価担当の大臣として、主務大臣に対してはっきりさせるべきだと思いますが、いかがですか。
  121. 内田常雄

    内田国務大臣 これは公取委員長からもさっき御説明、御答弁がございましたように、法律上は根拠がないことをやるわけでございますので、やることはあくまでも行政上の措置としてやるわけでございます。これは今日そういう違法なカルテルばかりでなしに、すべての物資につきまして政府が専売品のように価格形成をやっているという法律上の根拠があるわけではございませんので、そこのことも小林さんには十分御理解をいただいた上で、それは私どもに対する御激励、また企業の社会的責任というものを強調されているものと私は解して、各省を大いに督励してまいりたい、かように思います。
  122. 小林政子

    ○小林(政)委員 最後に公取委員長に要望をいたしたいと思います。  やはり独禁法のカルテルの排除ということだけにとどまるのではなくして、価格を引き下げられるようにすることを法律によって、第八条の二の排除の措置という中にこれをはっきりと明記すべきだというふうに私ども考えます。それからまたカルテルの認定の問題等につきましても、これは従来は非常に談合があったという具体的な事実、これをやはり確認をしなければ、勧告というような措置もとれない、こういう態度をとってまいりましたけれども、私は、認定の条件をやはり実情に見合ったように、同じときに価格のつり上げが行なわれたとかあるいは少し時期はずれているけれども、同時に同額の価格が上がったといわれるような同業種の場合、いわゆる状況証拠というものが、当然これはやみカルテルではないかというようなことが相当程度認定されるというような状況のもとで、カルテル認定の条件というものをもっと国民立場に立って行なっていくということが重要ではないかというふうに考えます。  さらにまた、公取の組織、構成といいますか、この中にもっと消費者の声が十分反映できるような、そして公取の機構そのものが消費者代表をその中に参加させていくというような方向でもっと運営面で検討すべきである。あるいはまた事務当局の強化というものをもっと行なっていくことが必要だ、このようなことを当面の措置として直ちに行なうということを強く要望すると同時に、委員長の見解を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  123. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 価格引き下げ命令を、早くそういう権限を法律上持つようにしなさいということは、先ほどから私がお答えをしたところで、私たちも精一ぱいそういうことに努力をしておるということはお認めいただきたいと思いますが、技術的に、そう急に簡単にきめられる問題じゃないと思います。その点は証拠の問題についても私ども自身が一番痛感しております。  先ほども申しましたように、証拠を、状況証拠といいますか、客観的な事実の積み重ねがあったらそういうものについて一応認定してしまうというふうなことがとれないか。これは私どもとしてはむしろ望むところなんでございますが、それは国民のいろいろな権利義務という基本的な問題との触れ合いがございますから、いまの司法体系の中でどれだけ、たとえ行政事件にせよ、状況証拠だけで取り扱うことが、その人権をきめつけることができるかどうかたいへんむずかしい問題があります。しかしこれも私どもの研究課題の重要な問題の一つでございます。  またもう一つ言われました、消費者代表をそのまま公取の組織の中に入れろという問題は、そういうことは私どもがむしろ消費者のためだけというのじゃなくて、日本経済の民主的な、自由な競争状態、できれば、いまのような事態はむしろ半分統制でいいと私は思いますが、なるべく私どもの法律目的である競争秩序を維持するということにすることがほんとうに国民のためにも消費者のためにもなるわけでございますから、特に消費者代表をたとえば委員に加えろというような問題については、私どもはちょっと賛成いたしかねる面がございます。これは多少御承知でしょうが、これには経済及び法律について相当な知識、経験のある者でなければ実際つとまりません、裁判所の機能を持っておりますから。私どものほうは行政官庁であるのか司法官庁であるのか、その両様の性格を重ねて持っておりますが、特に司法的な機能につきましては検察的な業務を行ない、かつまた一方で、それに第一審判決に相当する審決を行なう、こういうことでありますので、もし消費者代表を入れるということになれば、裁判官の中に消費者関係の問題だったら、全くしろうとでも利益代表を入れるべきだということになるのです。その利益代表を入れるというやり方については私どもはどうも賛成いたしかねる。しかし私どもの考え自体は完全にそういう方向を向いているのであって、そういうことから大企業に対してしばしば取り締まりといいますか、摘発の手を入れるということをやっておるわけでございますから、その点は御理解いただきたい。  最後に申し上げられました機構、定員その他の問題につきましては、これは私どもも実は非常に手薄であるということと、この際、最後に一言だけかってなことを言わしていただければ、社会党のほうからすでに文書で私どもいただいている中に、事務局長とか部長とかいうのは、他省に比べて格式がみんな低いのです。事務局長に相当する者は、これは普通の局長のほんのちょっと上、それから部長は全く他の官庁でいえば次長なんです。ということは、職員が上に上がっていく希望がないということです。職員の希望がないところには人材は集まらないのです。これは、公取がかつて昭和二十年代の終わりからなめた、十年以上にわたる冷やめしといいますか、非常に冷遇された立場、その後遺症がいまだに残っております。ですから、第一志望でもって公取に、東大卒でもどこ卒でも、出てくるような人があってほしいと思うのですが、そういうことがないのですね。次長でとまるのでは、よその官庁へ行って、同じ公務員試験を通っても局長へ行くチャンスがあったほうがいいのです。それが非常にないということ。まあ部長の数も少ないのですが、それをぜひとも局長格にはしていただかないと、われわれの次の世代のものが育たないということを考えますので、そういう点については特にこの機会を利用してお願いをいたしたいと思います。
  124. 平林剛

    平林委員長 有島重武君。
  125. 有島重武

    有島委員 時間を省略する都合から、前置きを抜きにいたしまして具体的なことを聞いていきます。  初めに、公共料金につきまして経済企画庁長官に伺いたいのですけれども、政府は、国鉄、消費者米価の値上げを半年間据え置くことになりました。半年たちまして、物価の情勢いかんにかかわらず財政的な理由から上げるんだ、そういうことになりますか。
  126. 内田常雄

    内田国務大臣 目下のところそういう考え方でおります。ただし、そのころにはいま有島さんが御心配になったような物価状況いかんにかかわらずということにはならないで、総理大臣が言われておりますように、夏ごろまでには物価の上昇は鎮静する、こういうことを私どもは目標にして努力をいたしておりますことも御承知いただきたいと思います。
  127. 有島重武

    有島委員 伺っているのは、物価がもし鎮静しない場合に、これをなお据え置く余地があるのか全然ないのか、どちらですか。
  128. 内田常雄

    内田国務大臣 それは私としては繰り返すことになりますが、二つの課題を分けて考えざるを得ない。一つは、いま計画をいたしておりますように半年間の据え置きであるということ、またその半年間に物価は鎮静させる、こういう努力を続ける、こういうことでございます。
  129. 有島重武

    有島委員 これは公共料金というものについての考え方でございますけれども、物価が鎮静しない、情勢によって左右されるということではなしに、むしろ物価の情勢を主導していく立場公共料金はあるはずですね。ですから、情勢いかんによってはこれをなお据え置くという余地があるのだ、そう考えてもよろしいわけですね。全然ないのかあるのか、どちらですか。
  130. 内田常雄

    内田国務大臣 物価の情勢いかんによってはということは、物価はそれまでに落ちつかせる決意ではおる、こういうことで御理解をいただきたいし、したがって、公共料金の引き上げにつきましては、すでにきまったものを、これは経済企画庁長官である私のというとたいへん自慢話になって恐縮でありますが、大蔵大臣をそこまで口説き落としてこれを据え置かせた、こういうことでございまして、現在私はそのあとまでそれをさらに据え置くということは考えておりません、いま私が申し上げましたようなもう一つ状況もございまして。
  131. 有島重武

    有島委員 次に行きます。高橋公取委員長は……。
  132. 平林剛

    平林委員長 委員長からちょっと注意を申し上げます。  中座し、退席するときは必ず委員長の許可を得て行なってください。有島君。
  133. 有島重武

    有島委員 きょうの委員会のさきの委員の方々からの質問とやや重複する面もあるかもしれませんが、さきにわが党が独占禁止法強化のための改正についての案をつくり、その申し入れをいたしました。そのことについて、もうすでに公正取引委員長は、次期通常国会へ改正案を提出することを確約されておりますけれども、この改正案を参考にしてすみやかに国民の前に明らかにしてもらいたいということを申し入れたわけです。その大体のスケジュール、めどについてお答えいただきたい。
  134. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 公明党の方々からいただきましたし、また社会党からも正式の書面としてではなくても、独禁法改正の要綱のようなものをいただいております。これについては先ほどから申し上げておりますとおり、昨年十二月に専門家を何名かお願いいたしまして検討中でございます。ただ、要綱のようにして柱を立てることは非常に容易なんでございますが、その中身に立ち入って法律案としてまとめ上げるとなるといろいろな問題をかかえております。そこで、そういう点について相当詰めたものとして出していくのにはこれは簡単でない。私ども公正取引委員会だけでやろうとすればできないことはありません。しかし、それは独断専行になるおそれがあるので、そういった点について何を法律事項とするか、あるいはこれは法律事項でなくて裁量でいいかというふうな点、しさいに検討を要すべき点がございますので、先ほど申しました十月ごろをめどに独占禁止法研究会の結論を待ちたいという考えでございます。
  135. 有島重武

    有島委員 先に行きます。  二月十二日にわが党でもって発表いたしました再販取り上げ後に値上げした商品についての総点検を行なったわけでございますけれども、これについての所見を承っておきたい。また、今後それについてどのように対処していくお考えであるか。
  136. 後藤英輔

    ○後藤(英)政府委員 昨日でしたか、公明党のほうで調査をいただきました再販取り上げ後の値上がりの状況について資料としていただきましてございます。私どものほうは制度に基づきます届け出をとっておりますので、それと比較しながら私どものほうで十分実際と合っているようになっているかどうかというような点などを検討いたしておりまして、それに基づきまして取り消し後の状況についての資料とそれからそれの数字をまとめまして、関係官庁等にも連絡いたしまして、その後の是正措置等をお願いしておるような、そういう事情でございます。
  137. 有島重武

    有島委員 高橋公取委員長に原則的に伺いたいのですけれども、再販指定品目であって、しかも便乗値上げをしておる、それで品薄供給といいますか、供給の制限を行なっておる、こういったような場合に、独占禁止法とのかね合いは一体どういうことになるのか。何らかの勧告を公取としては出し得るものかどうか、こういった点はどうです。
  138. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいまのお話ですと、再販の指定を取り消さずに、再販から抜け出さないで、そのままで便乗値上げをしておるというお話がございましたが、これはいま私はその件については初耳なんです。実際、調査漏れかもしれません。再販品として出ている品目が、いままだ四千何百の数字があります。その中に、再販のままで便乗値上げをしておるというのはないはずなんですよ。実は、値上げの陳情はこれはたくさんございます。値上げの陳情はもう幾らでもあるんでして、それに対しまして私どものほうでは、ある程度やむを得ざるものと認めるものはせいぜい一五%、中に私が聞いているのでは一つだけ二〇%というのがありますが、これは洗剤の例でございますが、それは半分の量で従来の洗う力があると、こういう説明だそうです。私、直接聞いたのではない。ですから、それは値上げとはいいながら、能力が倍加しておるからという理由で二割というのをたしか一件だけ認めたと聞いております。その他はずっともっとおそらく押えております。  原料の値上げの分は、その中に占める割合を計算しまして、その分しか認めない。副原料その他いろいろ資材ございます。そういうものの値上がりもあるでしょう。しかし、私どもの考えとしては、そういうものは大体不況期に値くずれ現象を防止するために再販で押えてきたではないか。ですから、こういう時代に、原料が上がったからといっていろいろなほかの資材、副資材などもみな込めて値上げを認めてくれというのは、ちょっと虫がいい、現にもうけているではないか、利益が出ているじゃないか、こういうふうな点も見まして、そういうふうにややから目に押えているわけでございますから、いまのお話のようなケースがあるとすると、私どもの実は見のがしでございます。四千何百ございますから、それを全部追跡しているわけではございませんので、もしそういうことがございましたら私のほうで追跡させます。追跡しない限りは、それは再販から出ていただく、そのかわりそういうものについては出戻り許しませんですよという考えでございます。
  139. 有島重武

    有島委員 もう一つですけれども、一たん指定を取り消してもらった、そうして値上げをしたというようなものですね。これがやや姿を変えたりして、ほぼ同じものがもう一ぺんまた再販を指定してくれと頼む。こういったことについては、これは指定すべきでないと私ども思いますけれども、こういうことについての御見解はどうですか。
  140. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 法律上の権限をやかましくいえば、それはたとい名前を変えてきましても全部受け付けないということはおかしいのですけれども、私どもは、その点は事実問題としてこれは指導と考えていただきたいのですが、そもそも再販という制度は漸次縮小し、かつ廃止にまで持っていくものだと考えておりますので、そういう虫のいいことを、出戻りですね、これを認める考えはないので、説得してその辺はやめていただく、こういうふうなことでございます。法律上の権限に基づいてうるさく争われれば、これはたとい同じものでも受け付けざるを得ないかもしれませんが、これはあまりにも反社会的であり、道義的にもおかしいのじゃないか、そう私どもは考えておりまして、そういう措置を業者に対して考え直してくれということでやめてもらう、こういうつもりでございますから、今後出戻り行為は許さないというふうに解釈していただいてけっこうです。
  141. 有島重武

    有島委員 再販指定品の価格でございますけれども、これは一体だれがきめるのか、このことについてはどういう御認識を持っていらっしゃいますか。
  142. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 そもそも再販という問題は、法律改正が昭和二十八年に行なわれて、実際上は三十年代の後半にちょっと多くなったという時期があって、またそれが漸次縮小しておるということでございますから、その値段そのものは、たてまえとしては業者自身がきめてきたものをそのまま受け付けるだけでございます。そういうことで、これに対して特にこちらが修正をしなければならぬとか修正するなんということはないたてまえでございます。  しかし、たてまえでございますが、実際上は例外規定、消費者の利益を害することとなる場合にはこの限りでないという規定がございます。つまりそれなんです。私どもの行政指導といいますか、指導といえない法律上の根拠といえば、消費者の利益を害するようなものはいかぬ。だから、前に一ぺんあったものを今度デラックスという名前に変えて、たとえば高い価格で持ってくる。政府も出してくださいというところまで最近はいっておるわけです。では、中身が前のものと比べてどこが違うのか説明してください、こういうことでございますから、消費者の利益を害するような再販は認められない、こういうことでございます。
  143. 有島重武

    有島委員 いま委員長が、業者がきめるとおっしゃいましたですね。業者というのはメーカーのことでございますね。
  144. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 原則としてそのとおりでございます。
  145. 有島重武

    有島委員 このこともメーカーの一方的なことできめていいのか。それから、そこに販売業者、これも業者でございますね。そういった小売り業者なり中の業者の意見が反映されることが望ましいのかどうか。その辺もこれは今後の問題ではないかと思います。これは指摘だけしておきます。  それから、先ほどちょっとお答え漏れだったように思うのですけれども、再販品でありながら製造制限をしておったりあるいは製造中止をしてしまうというような、こういうようなことについては公取としての態度はどういうふうになりますか。
  146. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 製造をやめてしまうという問題、これは別におきまして、業者がきめるというたてまえですね、これは十分に競争が行なわれているということが前提でございまして、競争がないような状態になっているものは再販として認めるべきでないということになります。そういうことも根拠にしまして、私ども、三種の商品、洗剤と浴用石けん、練り歯みがき、これについては寡占の状態になっちゃっている。非常な寡占の状態になっているのだから、もはや再販として認めるわけにいかないということで、廃止の方向に踏み切ったわけでございます。いまお話しの点でも、すべて競争が十分に行なわれるような状態であるかないか、消費者の利益を害することとならないか、こういうことを考えて私どもは処理していきたい。  製造中止というのは先ほども出たのですが、たとえば三十円の石けんを製造を中止する。三十円とか値段の低いものはどんどん製造をやめて、高いほうにだけ重点を置いて売る。ですから、販売する単価の比較をすれば、相当上がってしまう場合があるわけです。こういうのが現在起きております。そういう問題につきましても、どう対処するか。いずれにしても、九月からは廃止になる石けん類にしても、当面そういうものをどう指導するか。しかし、つくらないというものをつくれと命令するというのも、なかなかむずかしいのです。しかし指導としては、それは一種の値上げじゃないか。安いものは売り出さない、高いものだけそっちのほうにしわを傾けるわけですから、それが競争状態がその業界において不十分であるということから起こっているのだろうと思いますね。ほかの業者が同じことをやるかどうかによりますけれども、みんなが結束してといいますか、みんな右にならえでやるとどうにもならない。カルテルでもないというふうな状態が実際上あります。そういう点は、私どもが再販制度というものは都合のいいときには利用されるが、そうでないときは悪用されるというふうに見て、それでありながら、再販なんですから、高いものだけは再販に残しているということでありますので、どうも感心したものではない。当面すぐには役に立たないかもしれませんけれども、いずれにしてもこれは廃止の方向に持っていって、そのかわり今度は値くずれが起こったときにも再販という制度はもう認めない、こういう措置をとるのがいいのじゃないかと思っております。
  147. 有島重武

    有島委員 再販をはずして——はずしたけれども再販と同じ効果がいまある。たとえばこういったことがあるんですね。シールを送ってきて、それでシールを張れというわけですな。これはいままで再販でもうなれているわけでありますから、これが非常な規制力を持っているわけです。それからまたは商品の出荷をとめるということと同時に、従来どおりないしは再販をとられたのだから、今度は安値でもって売れるという状態になって、安値で売ろうとすると出荷どめになる、ないしは出荷どめそのものにならなくても、他の製品の出荷どめをされる、こういったような実態はやはり公取として介入できますか。
  148. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 メーカーが再販を廃止した商品について、シールを送ってきて張らせる、これはやみ再販の疑いが十分強いです。もしそういうことがわかりますれば、私どもはその疑いを持って処分を考えたいと思います。そのほかに系列がすでに強化されておる。非常に強い系列を持っております場合には、再販商品ではないのに、実質上最低価格を守らせるというふうなこともあり得ると思います。これはメーカーの息が非常に強い場合には、その点が小売り店のほうから苦情になって出てきません、メーカーが非常に強い場合に。出荷停止云々を食った場合、ほんとうにその系列を離れる意思があったような場合には、これは私のほうに通報があるはずですが、発見することが容易でありませんけれども、できるだけやみ再販の取り締まりには目を光らしていくように督励したいと思います。
  149. 有島重武

    有島委員 先日、高橋公取委員長にあてて申し入れを行なったわけでございますけれども、大体いまの内容に加えて再販指定を取り消しても、つくり上げられた系列化を利用して行なうやみ再販、それから再販類似行為に対してはきびしい措置を講じてもらう。これは再販指定を取り消しても——これはそういった方向のお考えがあるとすれば大体その期間ですね、ある一定期間、これを設けなければならぬじゃないか、そういうふうに提起したわけでございますけれども、このことについてはどうでございますか。
  150. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいまの御質問で、ある期間という意味がちょっとわかりかねるのですが、いずれにしてもいま再販を指定取り消したという品目が、その後においてもなお再販を行なっているということがあれば、当然不公正な取引方法でございます。ただし現在の不公正な取引方法は一回だけではこれは刑罰もないわけです。排除命令はします。その点にいまの不公正な取引方法が、なぜかいまの法律体系の中で排除するために必要な措置をとることができるということと、これは不当な取引制限、たとえばカルテルですね、私的独占もそうなんです。ところが不公正な取引方法についてはそれがないのです。ただ差しとめを命ずることができるというだけなんです。ところが一ぺん排除措置を受けて、実際上私どもは排除措置と呼んでいます。差しとめなんて言っていないで、排除措置をとっておる。しかしそれだけでは、一回だけでは何にも刑事罰もつきません。これは刑事罰がついているとついてないとでは心理的には違うと思うのですが、そういう点で繰り返し行為をやると、審決違反ということになります。同じことをまたやったというときには、いまの法律でもこれは審決違反として刑事罰もあり得るわけです。そういう点、法律の体系としても考え直していきたいと考えております。
  151. 有島重武

    有島委員 次に行きます。  これは経済企画庁とそれから通産省に対してまた質問していきたいと思うのですけれども、わが党が一月五日から十二日にかけまして洗剤の総点検をいたしました。それでこれはその内容を詳しく、内閣官房長官を通じて政府にそのデータを全部差し上げましたし、それから申し入れもしたわけでございます。いわゆる昨年十一月の石油危機を契機として、これらに便乗しての品不足と値上げということがこの洗剤について明らかになりまして、それでこの洗剤流通の各段階、すなわちメーカーそれから第一次の直販店、それから第二次の問屋、それから小売り、スーパーですね。こうした段階、これを二段階ないしは三段階を経て消費者に入るわけでございますけれども、この中で私どもの調査の結果、メーカーと第一次の直販店、ここに一番のネックがある。問題の所在はここに集中されているのではないか、これが結論であったわけでございます。このことについて、政府メーカーそれから第一次直販店に対しての調査をどのようになさったか、そのことを承っておきたい。
  152. 森口八郎

    ○森口政府委員 お答え申し上げます。  公明党が行なわれました洗剤流通状況調査によりますと、昨年十月に比較いたしまして、昨年十二月の入荷状況一般小売り店は激減、大手スーパーは激増、中小スーパーやや減、一次卸は激増、二次卸はやや減となっておりまして、以上から小口小売りが流通段階から締め出されつつある結果、消費者の近辺から洗剤が消え品不足状況を起こしているということ。それから一次卸店にストックされている可能性が大であるというような御報告をされております。私のほうといたしましては、洗剤の品不足状況を一日も早く解決いたしますために、従来から生産業者及び流通業者に対して、流通の円滑化の指導を行なってきたところでありますが、昨年十一月に端を発しました洗剤の品不足状況を一刻も早く解消するというようなために、一部の大手卸売り、一部の業者におきまして、大手スーパー等に流通の重点を置いて出荷を行なったというような形跡があると聞いております。したがいまして、御指摘のような点は、そういうような点も一部はあるかと存じます。しかし、御指摘になっておりますように、消費者ができるだけ近辺の小売り店から購入できるということは一番望ましい形でありますから、私どもとしてもこのような点について可能な限り配慮して指導を行なっていきたいというように考えております。  なお、洗剤状況、その他の状況につきましては、私どもは地方の通産局の担当官に一週間ごとに小売り店の店頭で品不足状況というものを現在監視させております。一番最近のデータは二月の十三日のデータでありますが、これによりますと、洗剤の品不足状況は一時に比べると著しく改善されまして、全国約千六百のサンプルのうち七店程度がまだ、たまたま調べました時間に店頭になかったということでございますが、ほとんど全部の店に洗剤が出回っておるということでございます。  御指摘になりました在庫の状況の配分の問題でございますが、御存じのとおり現在各通産局におきまして、通産省関係は六品目につきまして、在庫一斉調査を現在行なっておる最中でございます。洗剤もこの中に入っておりますので、こういう流通実態調査の結果を踏まえて対処したいというように思っておりますが、現在までに調べました調査の結果につきましては、若干私のほうの調査では、一次卸店について、従来の水準に比べ、むしろ大幅に在庫が低下しておるというような結果が出ておるということでございます。
  153. 有島重武

    有島委員 いまのお答えあるいは通産省のお答えで、経済企画庁長官としてはどうお思いになるか。こちらはメーカーと一次直販店、ここが一番の問題である、ここをお調べなさい、そう言ったわけです。それについて、ではどのような調査をしたのか。いままで何かずるずる——いろいろ言っていらっしゃる。まず小売り店を調べましてこうこう、それから次には、このごろになったらばだいぶ品物が出回ってまいりましたというまた全然別な話、いま、これは一月の状況ないしは十二月の状況についてさかのぼって話をしているわけでありますよ。こちらは、本来は政府のやるべき調査をなかなかなさらないから、それでやや不完全ながら調査を、ほんとうに地方議員なんかみんな動員して、そうしてお店に行ったり、聞き込みでもって好意ある人たちから聞いて寄せ集めたものです。それで今度どうしても踏み込めないメーカーと第一次直販店、ここに光を当ててやりなさいということは、これは経済企画庁長官も御承知だったはずですね。いまは何にもやっておらぬ。一体どうなんですか。
  154. 森口八郎

    ○森口政府委員 先ほど申し上げました在庫調査は現在取りまとめ中でありますが、この在庫調査につきましては、メーカーにつきまして十社、それから一次直販店につきまして二十三社、二次卸売り業者につきましては十九社、小売り業者については二十八社の在庫調査を実施いたしております。先ほど御指摘のありましたメーカー段階の在庫について言いますと、各業者に若干のばらつきはありますが、四十七年十二月時点で比較いたしまして、メーカー段階では平均十四・三日分の在庫があったというように考えられておりますが、私どもの調査いたしました結果によりますと、四十八年十二月現在では四・四日分の在庫であります。また一次卸売り業者につきましては、四十七年十二月は六・九日分の在庫でありますが、四十八年十二月には一・五日分の在庫というようになっておるわけでございまして、メーカー、直販店等についても在庫調査はいたしております。
  155. 有島重武

    有島委員 森口さんに伺いますけれども、では十月と十二月はどうなんですか。
  156. 森口八郎

    ○森口政府委員 先ほど申し上げました数字は、四十七年十二月と四十八年十二月の対比であります。それで十月の数字は現在持っておりませんが、十一月の数字を申し上げます。  十一月の数字は、メーカーは四十七年十一月当時は二十二・六日分、四十八年十一月当時は六・二日分ということでございます。それから一次卸売り業者は、四十七年十一月につきましては九・〇日分、四十八年十一月につきましては四・八日分ということでございます。ただ、この中にはやはり若干メーカーによってばらつきがございます。いま申し上げたのは平均でございます。
  157. 有島重武

    有島委員 一番問題になっておりますのは、十月から十一月に石油危機があった。そうして十二月にほんとうに各家庭が困った。この間に品不足をつくり出し、そして便乗値上げの素地をつくってしまった。そこら辺のところが一番大切なところなんですね。一番大切なところが抜けているのじゃないですか。  私はここで、一次直販店、一次問屋がどんなふうにいじめていたのかということの一つの資料を公表したいと思うのでございますけれども、これは花王主力商品の入荷状態であります。これを提供してもらいましたのは、東部花王製品販売株式会社、これは一次直販店です。東京に花王石鹸KKの直販店がございまして、これが西部、東部、中部それから北部、南部、そういうふうにあるわけであります。そしてこれが四十八年の六月ごろに洗たく機用の洗剤をどのくらい扱っていたかというと、千六百三ケースです。これは単位はみんなケースでございます。この千六百ケースというのは大体どのくらいのものかといいますと、家庭にして一世帯四人の家族ならば大体一万軒というところでございます。一万軒分をまかなっている、これはそういう問屋です。ここにありますこのデータは、そこの一次直販店と取引している二次問屋のデータです。  そして、ここにニュービーズとかスーパーザブとかホワイトワンダフルというのがあります。これは普通の洗たく洗剤ですけれども、これはいまやや出回ってきていると言っておりましたけれども、おととい行って買えないのです。きのう夕方行って買えないのですね。けさ早く行ってやっと買えた。大きなお店です。これが大体四人家族でもって二月分で、一番大きいあれなんですが、これが二・六五キログラムですね。これが、見てまいりますと、十月には一千四百、こういう入荷があったわけでございます。それが十一月もそのくらい。ところが、十二月になりますと四百十ということになる。ほとんどもう出荷停止のような状態、これは一番右のほうにございますけれども、十月と十二月の比が二九%です。  それから、ビニール袋入りの合成洗剤のビックというのがございますけれども、これは去年の六月六十五箱入っておった。十月には七十五箱ですね。ふえておる。これが何とゼロになっちゃった。  それから髪洗い用のクリームシャンプー、これも平素ですと小売り屋さんなんかの普通のお得意さんに流して家庭が困らないという量が百四十ケースなんだそうですけれども、これも十月が九十三、大体百ぐらいあったものが十二月には全く出荷されなかった。ゼロであります。  それからもう一つ仕上げ剤のバスマジックリンというのですか、これもゼロになっております。  そうかと思いますと、仕上げ剤のハミングなんというのがありまして、これは十月と十二月を比べますと一七〇%、たくさん入っているわけです。これです。いまどこへ行ってもこれはあるわけです。こういうものはどんどんたくさん押しつけてくる。それで大切なものは、大切といいますか、家庭でいま一番困っているものはなくなってしまう、そういうようなことになっております。  それからマイペットというのがありまして、これなんかは大体変わらずに入っております。ただし値段は上がっているようです。  それからチェリーナというもの、これなんかは二二・九%といいますから、大体五分の一ぐらいしか入荷しなくなってしまった。これもたいへん評判がいいんだそうです。  お値段の上からいっても、ニュービーズが大体五百円であったものが十二月でもって六百円に値上げになっております。ホワイトワンダフルは六百円から七百円になった。マイペットというのが、これ三百八十ミリリットルなんですけれども、百円が百二十円に上がっている。チェリーナが百円から百二十円、ハミングが四百円から五百円、こういうふうにその間に値上げされているわけであります。  そしてもう一つベビーハイターなんというのがありまして、これはおむつの漂白剤になるのだそうですけれども、こんなのもあまり出ない。こういうものは一〇〇%近くになっておる。  こういうような入荷状況です。これはたまたま私どもの入手したものですけれども、こういうようなことは通産省としては調べようとすれば調べられるはずの話なんですね。  で、先ほど森口さんが言われたのは、在庫量だけに限って言われました。在庫量というのはどれだけ入荷してどれだけ出ていったかということが大切なんであって、どのくらいの期間そこに積まれておったかということは二次的な問題です。ですから家庭のほうでどれぐらい困っておるかということ、これは直接そこからはわからないわけであります。  それからもう一つ森口さんが言われたのは、生産量について言われましたね。それで、これは生産量についての通産省の調べでありますから確認のような形でもって言いますけれども、これは通産省化学工業統計に準拠しています。合成洗剤の粉末と液体の生産実績については、四十七年度が約七十万トン、そうですね。それから四十八年度が約七十六・五万トン、増産しているわけです。その中でも去年の十、十一、十二月をとってみますと、十月が七万三千トン、十一月が七万五千トン、十二月は六万七千トン。これは十二月と十月とを比べてみても大体九〇%です。ほとんど変わっておらない。先ほどもおっしゃったように去年から見れば増産しているわけです。それから今度は出荷ですが、洗剤をつくっいてるメーカーからの出荷についても去年の十月が七万六千トン、十一月が八万六千トン、十二月が七万一千トン、十二月は不足を伝えられておりましたけれども、メーカーからは出ておるわけです。メーカーからは出ている。在庫は少ない。あなた方が言っているのはそればっかり言っているわけです。その間に第一次直販店というのがある、それとメーカーとのつながりを究明しなければならない、それをわれわれは言ったわけだ。その点について、メーカーと第一次直販店とのつながりについて、どんな認識を持っていらっしゃるのでしょうか。
  158. 森口八郎

    ○森口政府委員 御提出されました資料につきまして、十二月の入荷の四百十という数字がございますが、これは十月、十一月に比べてあまりにも少ない数字であるというように思います。おっしゃいましたとおり、十二月の出荷は十一月に比べて二割減になっておりますけれども、それ以上の大きさで一次問屋から二次問屋流れる数量は減っておるということは御指摘のとおり非常に大きな問題であると思いますので、これは事実を調べるようにいたしたいというように思います。  それからもう一つ、推測でございますが、ちょうどこの時点におきまして、全国——と申しますより特に大阪におきまして非常な洗剤パニックが十一月に起こっておりますので、それを契機にして一次特約店、一次問屋からスーパーのほうに流す洗剤を非常にふやしております。その影響ではないかと思われる点がございますけれども、確かに私が拝見いたしましても、十二月の二次問屋の入荷量の激減は異常でございますので、これは個別事情があるかもしれませんので、取り調べまして後刻御報告申し上げたいと思います。
  159. 平林剛

    平林委員長 関連質問があります。石田幸四郎君。
  160. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いまの問題について私どもの調査をしたことについての確認をまずしたいと思うのでございますけれども、洗剤不足が深刻化した十一月、十二月におきましては、第一次問屋の入荷量というのは激増しておる、このように私たちの調査では結果が出てきたわけでございますが、これについて通産省のほうでは同じ傾向、そのような傾向があると、このように認定をされておったのかどうか、この点が一点。  それからもう一点、やはり大手スーパーにこのときに大幅な入荷の激増があるわけです。私が中日新聞で拝見をしたところによりますれば、十二月の時点で、十二月の当初、山中スーパーというところでは先年比三一九%の増の入荷があった、このように新聞に出ておったわけであります。そういうような現象を見ますと、いわゆる小売店にはさっぱり洗剤はいかないで、集中的にメーカーが意識的にそういう流通経費の節減等のことももちろんでありましょうけれども、あるいはそれによって利益を得るという目的をもってやったのかもしれませんが、意識的にそういった大型スーパーにたくさんの出荷量をしたということは事実であろうと思います。その分が小売店に回らなかったから、いわゆる洗剤パニックに輪をかけた現象になってしまった、こうわれわれは認識をしておるわけでございますが、この点の認識についての違いがあるかどうか。  それからもう一点。したがって、今後こういうような状況が起きたときには、いわゆるスーパーだけにそういうような大量の出荷をするというような状況では洗剤不足というものが再び起こった場合には、またたいへんな問題になるのではないかというように考えられます。従来は小売りに八〇%、スーパーに二〇%いっておったわけですね。それが昨年度の十一月、十二月の状況を見ますと、スーパーに四〇%、小売り店に六〇%というような、そういう比率配分になっておる、こういうものは厳正に正していく必要があると思いますけれども、どうでしょう。
  161. 森口八郎

    ○森口政府委員 メーカーの十一月の出荷は、先ほど有島先生から御指摘ございましたように激増いたしております。八万六千トンというぐあいに史上最高の出荷をいたしております。したがいまして、それだけのものが一次問屋流れたということは御指摘のとおりだと思います。その部分だけメーカーの在庫は大幅に食いつぶしておるということで、おっしゃいました第一点はそのとおりだと思います。  それから第二点は、メーカーが意識的にスーパーに流した、そのために一般小売り店の店頭在庫が少なくなったというような点も、ほぼ御指摘のとおりかと思います。洗剤パニックが起こりまして、私どもは現在でやはり若干の反省はいたしておりますけれども、数多くの小売り店に洗剤を出荷いたしますと、ばらまかれてしまってかえって洗剤があるということが外部にわからない。むしろ心理的に不安を起こすのではないかというような感じは当時持っておりましたし、したがって、むしろスーパーに意識的にたくさん流すというようなことを私どもも考えておりましたし、メーカーもそういうことを考えたのではないかと思います。ただ、結果として、御指摘のように一般小売り店に洗剤の出回りが少なくなって、かえって消費者に不安を与えたという点は御指摘のとおりではないかと思います。したがいまして、今後この洗剤に関するいろいろな教訓を生かしまして、こういう騒動がありましたときには、そういう逆の作用を起こさないように、配給方法その他について十分メーカーを指導していきたいというように考えております。
  162. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いま有島委員がこの品物等についてお見せをしながら申し上げたのでございますけれども、その申し上げた資料というのは、いわゆる東部花王製品販売株式会社の系列の大手問屋でございます。その大手問屋に対しましても、品物によっては極端にたとえばさっき指摘しました十月末現在では七十五ケース、それが十二月の段階においてはゼロというふうになっております。そういうようなことをいま幾つか指摘したわけでございますけれども、このようにメーカーのほうは問屋に対しましても、そういうような選別配付を行なっていることがこの資料から明確だと思うのです。こういうことをやりますれば、ここの系列の小売り店にはそういうような特定の洗剤が出回らないことは間違いないわけですね。そこら辺のいわゆるメーカー問屋との、そういう選別配付みたいなことをやめさせる必要がどうしてもあると私は思うのです。それを正していかない限りにおいては、特定地域のそういうような特定品目の洗剤不足はなくならないと思いますけれども、いかがですか。私はこれで終わります。
  163. 森口八郎

    ○森口政府委員 メーカー問屋との関係は一種の商取引でございます。したがいまして、これが選別取引であるかどうかということについては先ほど申し上げましたとおり、事実を調査さしていただきたいというように考えます。ただ、おっしゃいましたような選別取引というようなことになっておりますればこれは問題でございますので、そういうことのないようにメーカーを指導していきたいというように考えております。
  164. 有島重武

    有島委員 いまのそのスーパーの話、それから選別取引の話、これをもう少し掘り下げていきたいと思うのです。  いまの直販会社というものがどういうものであるか。この直販会社はメーカーと、非常に独立的な力を持っておるのかどうか。調べてみますと、花王なんかの場合はその直販会社が、花王石鹸が二〇%の資本参加をしているわけです。それで、これは資本金約四千万円くらい、ここの該当の東部花王製品販売KKというのは大体四千万円の資本の会社だそうですけれども、この二〇%は花王石鹸から出ているわけなんです。そしてこれが第二次問屋に売るわけなんですけれども、その第二次問屋の中にも、これは古いしにせであったら大きな力を持っているものもある、それからそうでないものもあるわけです。昔は直販会社がなかったのですね。それでメーカーからすぐ、いま二次問屋になっておりますけれども、その二次問屋のほうに普通は行っていたわけです。だんだんその問屋の力が強くなってくる。こうした状態が、今度はそこに一次問屋というのがあとからメーカーの資本参加によってつくられている。メーカーから非常にコントロールしやすいような、一つのトンネル会社のような形がここに形成されているのではないかと私たちは見るわけですよ。それが、二次問屋のほうに直販からおろすだけではなしに、この直販が、昔の問屋さんが持っていた小売り店の力の強いのを引っぱり抜いてきて、それで、小売り店に直販からいきなりこういうふうにおろす場合がある。そうやって問屋を牽制する。そうして今度はスーパーにも直販から持ってくる。こういう現象が起きておるわけです。まあ外側から聞きますと、直販からすぐ消費者の手元に来れば、流通経路は省かれるんだからいいんじゃないかという気がいたしますけれども、その実態は、メーカーのほうのもうけをどういうふうに大きくするかというふうにしか機能していない。しかも今度の石油パニックに乗じて、このメーカーと一次問屋の間が、国民生活を非常に乱す方向にそれが機能してしまった。この事実をはっきり究明しないで、それで一月には、もうだいぶ出回ってまいりましたからいいでしょう。そうではならない、これはさかのぼってもっとよく究明していかなければならない問題じゃないか、そう提起するわけです。  それで、これはいま花王だけあげましたけれども、この表の下のほうにございますけれども、これはまた全然別な第二次問屋です。このデータによりますと、十月には花王関係で七百二十五ケース、日本油脂関係で二百、ライオン七百、計千六百二十五という、これだけのものを扱っていたわけですね。これも大体消費者の世帯数にすれば、一万軒以上の消費生活を左右するだけの問屋ですね。これが十二月になりますと、花王が四十二、日本油脂が百五、そしてライオンが二百四十六、計三百九十三ケース、これは花王は一番極端な出荷制限をしてしまったわけでございますけれども、ほかの会社もほぼ同じ歩調をとっていることは明らかだと思うのです。いまの指摘は、実は公明党の生活防衛緊急対策本部として行なったものでありまして、その本部長は竹入委員長がやっているわけです。そしてこの申し入れは内閣総理大臣田中角榮殿あてに出してあるわけですよ。これはわれわれ、ほんとうに力を尽くしてそしてここまではできた。あと踏み込むのは、政府はもうすでにその権限を持っておる。だからやれ。そういったものを、いまのような森口さんのお答えです。こんなような扱いをして、これはほんとうにけしからぬことだと私は思う。  経済企画庁長官の御所見を最後に承りたい。
  165. 内田常雄

    内田国務大臣 商取引の流れのことを、私も実は正直に申しましてよくわからない点がございますが、せっかく貴党がわざわざ機構まで設けられて調査をした結果、総理大臣を通じて政府のほうへお出しになったわけでありますから、その結果につきましては、担当官庁である通産省におきましてもその結果を十分対照して調査をしまして、そして不合理な点、改むべきところがあれば、これは政府が直売している仕組みではないでございましょうけれども、所管物資を生産をしておる商社であり、またそれにつながる販社であり、あるいはまた二次問屋であり、そういう仕組みがございましょうから、貴党の調査を十分参考にするように、なお私からもあらためて通産省のほうに申し入れたいと思います。  実は、よけいなことでございますが、おそらく同じような時期に私も——私は調査能力はほんとうはないのですけれども、しかし姿勢を示すために、御承知かとも思いますけれども、正月の最後の日に、これは全く姿勢を示すだけの話でございますが、メーカーと一次問屋とスーパーと小売りに参りました。しかし、当時騒がれておりましたように、どこにもほとんど、小売りにもなければスーパーにもない。第二次問屋には参りませんでしたけれども、私がさわってもこれはわかるわけじゃございませんけれども、販社——いまおっしゃった直販のことを販社というらしいのですが、販社にもなければメーカーのところにも、これは正月休みで、正月の数日間は生産をしなかったようなこともございましょうけれども、品物がございませんでした。  そこで私は、これも御承知のように、どこかあるところをさがして吐き出させることも非常に大切でございましょうけれども、それよりもさらに、とにかく増産の指示をする。そのものをたくさん、三箱も四箱も買い込んでみても、煮ても焼いても食えないものでありますから、品物をある程度出回らせるためには増産をさせることが第一だと考えまして、直ちにその増産の、これは法律を発動したわけではございませんけれども、行政上の指導を、たまたま実は私が通産大臣の代理をいたしておったものでございますから、いたしたことがございます。そのとき、私が花王石鹸から聞きましたところによると、実は今日では、有島さんがおっしゃる会社に直属する販社が扱うものが、これは私の記憶に間違いがなければ、七〇%です、その七〇%を販社から直接スーパーなり小売りなりに持っていきます、二次問屋のほうへ流すものは三〇%ですというようなことを、たしか説明を受けたような気がいたします。そうなると、あなたが御指摘になったように、いまの直販会社が、いまや、花王石鹸の製品のというか洗剤製品を直接自分で扱って流す分が七〇%になって、昔の問屋、今日の二次問屋が扱う分が三〇%ぐらいまで減っているのかなと、それがいいか悪いかの判断は私にできませんが、あなたのおっしゃるような事実、そういうような状況であったことを私は記憶がありますので、そのこともまじえましてせっかく森口君がああ申しておりますので、さらに検討をさせまして、取引機構はどういうものが一番国民本位でためになるかというようなことをも調べた上、さらにまた何らかの方法で御連絡を申し上げるようにしてもらいたいと考えるものでございます。
  166. 有島重武

    有島委員 私はお答えを聞いて非常に残念に思うのですね。私どもが二階堂官房長官に申し入れしに行ったときに冗談のように言ったのは、この間内田さんがお回りになったけれども、ないところばかり行ってももうしょうがないんだ、それだからわれわれは、ここにありますよといって、今度はここをやりなさいといってその目標を示してあげるから、今度は本気でやりなさいよと言ったんです。それは田中内閣総理大臣あてにやったんです。そのときの、この売り惜しみ買い占めのすべてにかかわる一番の総責任者は内田さんだったはずですよ。私たちがそう申し上げたこと、そしてこのメーカーと一次問屋のからくりを追及すべし、このことについての申し入れは、いま初めて聞いたみたいな顔をしている。(内田国務大臣「いや、知っているんです」と呼ぶ)知っているんですか。知っていてやらなければなお悪い。(内田国務大臣「やらしている。経済企画庁がやるわけのものではないのですから」と呼ぶ)そうでしょう。やらしているのにこのざまだ。(内田国務大臣「なお督励しましょう」と呼ぶ)なお督励しましょう——ほんとにそれを私は真に受けたい。やっていただきたい。本来ならばここに二階堂さんも来てもらいたいぐらいです、あのときの約束どうしたんだといって。ぜひこれはほんとうに追及なさい。それからいま言われたように、花王石鹸に行ってみたらばこうだった、ああだった、話を聞いた、量はこうです。量の問題じゃなくて、そこの会社と会社のからくりの問題それを究明していかなければならない。こういった点も着目してもらわなければ、量ばかり追いかけて、ありませんでした、こうでした、やっと出てきました、そんなこと言っていたって、そして何を言うかというと、国民皆さん方の御協力を願います、買いだめをしないでください。われわれも、買いだめをどのくらいしているのか聞いてみました。大体一・二キロというのが平均だ、こういった箱を二つ持っている、私の見た範囲は。うんと買いだめたんだというようなことをいってもせいぜい二つですね。私の見た範囲ではそうです。そんなに買いだめていません。それは買いだめできるような所得層もいるかもしれませんけれども、いま給料平均大体十万円か十一万円という発表があるけれども、それでは暮らせぬ。十一万円ぐらいのサラリーマンの家庭へ参りました。一生懸命節約に協力しているというわけです。どんな節約の協力をしているのか。それは、水道をじゃあっと出すとメーターがたくさん上がるからぽとぽとと出すというのです。それから、おふろなんか一日朝からとぼとぼ入れる。あるいは電気も、台所でもって手順よくあまりスイッチを何回も切らないようにする、スイッチを切るたびに大きな圧が流れるんだということを聞いたからそうやって節約するんだ。そうやって不自由しながら、それでもって一カ月二千八百円とかいって光熱費を浮かしたそうです。そういうことができるんだということがわかった。ただし、それにはたいへんな神経を使いました。でも、そういうふうに神経を使えば確かにこれは節約できるかもわからぬ。じゃその二千八百円がどこにいってしまったかといえば、ほかのものの値上がりでもって二千八百円どころじゃない。それは御主人のお小づかいだってなくなってきちゃって、一家そろって今晩はラーメン、そういう日もある。そういうふうな状態なんですよ。それを通産省は何かといえば、国民皆さん方買いだめをしているらしいからそっちのほうにと、まだそんなことを言って一番大切なところに光を当てない。  このことについてきょうは指摘をいたしまして、必ずその結果を出して発表していただきたい、このことをお願いしまして質問を終わります。
  167. 平林剛

    平林委員長 和田耕作君。
  168. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 企画庁長官石油パニック、物価狂乱という三カ月を経て、事態は新しい段階に入っておる感じがするのです。つまり新しい段階というのは、物はあったんだ、またあるんだ、またある物をどこかへ出せ、そういうふうな段階にきていると思うのですけれども、ここで非常に大事なことは、つまり諸悪の根源といわれるのは、物はあったんだという事実は政府努力をすればわかるはずであったであろうに、その努力をしなかったという点にありはしないかと思うのです。つまり石油は、高度経済成長という状態からすればそれは減っておるようですけれども、去年に比べてはるかにふえておるという状態、この状態を見誤ったということが今度の物価狂乱の一番の元凶になる、こういうように思うのですけれども、これについての企画庁長官の御認識をお伺いしたい。
  169. 内田常雄

    内田国務大臣 これは、和田さんはもう一方のほうの価格の問題にお触れになりませんでしたけれども、物価狂乱の最後の大きな要因石油にある——私は石油業者ということばは使いませんけれども、とにかく石油物価高騰の諸悪のもとであったことは間違いないと思います。  それで数量の点でございますが、これはけさほど申し上げましたようにそのまま申し上げますと、昭和四十八年度の私どもの石油の消費量は三億五百万キロリットルでございまして、上期には一億四千五百二十二万キロリットル現実に入りました。ところが下期には、十一月当時の見通しでは一億三千三百万キロリットルくらいしか入らないだろうと考えておりましたが、それがもう少し、つまりアラブに対する外交姿勢等を変えましたこと等の反映もありまして、もう少しふえるという状況が出てまいりましたことは御指摘のとおりでございます。しかし世の中すべて、自動車を持つ人あるいはいろいろな生産計画企業設備等の体制からいいますと、それは昭和四十八年度の三月までの仕上げが三億キロリットルをかなり欠くという状況のもとにおきましては、やはり石油の需給はタイトであると言わざるを得ないと私は思います。しかし十一月に考え状況よりもゆるんできておりますから、私は通産大臣にもほんとうに申し入れて、これは緊急度に応じて生産面に回す石油またそれからくる電力については、最も早い時期に緩急に応じてそれを緩和することによってその物資の需給を緩和すると同時に、人心についても、物が石油原因としてますますタイトになって、したがって物が上がっていくんだというような心理的影響を払拭するようにすべきである。その時期をいつにすべきか。これは備蓄が全然ないわけにもまいりませんし、備蓄もかなり食いつぶしてきたことも事実のようでございますので、それらの関係においても通産大臣と現に十分打ち合わせをいたしております。  もう一つ価格のほうは、これは御承知のとおり、非常な値上がりでございまして、影響するところ多うございます。
  170. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 時間もありませんから、ひとつ簡単明快にお答えをいただきたいと思うのですが、今度の石油のパニックを振り返ってみて、アラブ戦争が始まって、そして産油国側は二五%の減産を通告した。そして十二月からは五%ずつアップさしていく、こういう声明か発表かありましたね。これを、政府はびっくりして、あっ、これはたいへんだとうのみにしたんじゃないんですか。その後、中東に対していろいろな使節を出したということがありますけれども、十二月の数字は中東に使節を出した結果じゃないですね、十二月に入った石油の数字というのは。そうですね。政府がアラブに対する姿勢を変えた、あるいは三木特使が行ったというのは一月のことですね。十二月の石油の入った実績にはそのあれは入っておるとは思われない。つまり私がいまここで特に指摘したいのは、中東戦争が始まって石油が大幅に減ってくる、あるいは三〇%減るかもわからないし、三五%減るかもわからない、これはたいへんだ、それをうのみにしたというそこのところが問題じゃないかと私は思うのです。  長官、今度の場合に、日本の石油メーカー、元売りというのは非常に大きな責任があると私は思うのですけれども、石油の元売りは、ごく一部の会社を除いてはメジャーと非常に密接な関係を持っている。資本金でもそうだし、あるいは融資を受けている点でもそうだし、技術を援助している点でもそうです。あの戦争が始まった二週間ぐらいの間は何が何だかわからなかったということは、私も理解ができる。しかし、大体戦争の目安がついた段階で、日本の石油の元売りはもっと実際の石油の積み出しという問題に注意をすればわかるはずです。政府も同じことです。なぜならば、産油国ではメジャーが掘っておる。技術を提供している。メジャーが見て、そしてこれを送り出している。送り出す船はメジャーが管理している。そういうことですから、戦争が始まった半月ぐらいはわけがわからなかったとしても、少なくとも十一月の末ごろになると大体の見当がつくはずじゃないかと私は思うし、この問題の消息通の人は大体そういう見当を持っておるのですけれども、そうであるのに政府は正しい判断ができなかったというところに、これはつくられた石油パニックだとか、いろいろな憶測を生むところがある。この問題については、政府はもっと真剣に考えてみる必要がありはしないか。私は結論を言いますけれども、政府の外交、資源外交にしても、外交はアメリカの判断、アメリカの情報にばかりたよって、自分で判断をするという力もなければ努力もしていない。あるいはそういう人員の配置もしていない。結局そういうところに問題がありはしませんか。今度の石油パニックが非常に大きな教訓だと私は思う。そういうことを長官、いかにお考えになりますか。
  171. 内田常雄

    内田国務大臣 おっしゃられますこと、総括的には私にもよくわかります。しかし、たとえば、私は耳が遠いほうに属するかもしれませんが、その石油の、アラブの日本への供給カットがゆるむ方向にきたということを知りましたのは、ほんとうに、ここに記録がございますが、十二月二十六日、外務省を通じて現地の大使からの電報によってで、これはもう暮れも押し迫った十二月二十六日でございました。したがって、それまでの間は、たとえば十一月五日にOAPECは石油生産を九月の水準に対して二五%削減する、さらに十二月からは削減をそれに五%ずつ上乗せするというようなことで、おっしゃるとおり、私どもはそれによって非常に驚かされたわけでございますが、その緩和の状況がかなり見込みのつくような状況を知りましたのは、いま申しますように、十二月の下旬であります。三木さんが参りましたのは十二月の終わりから正月にかけてでございますが、その前に外務大臣、官房長官を通じて、アラブに対する日本の外交姿勢の転換の声明をいたしましたのは、おそらく十二月中であったように思います。  しかし、これを総括してみますると、おっしゃるとおり、石油の供給につきましては、供給のまん中にメジャーが入っておりまして、そのメジャーがまた日本のリファイナリーについての資本をある程度持っているということがございまして、これは政策の面においても情報の面においても、靴の上から足をかくような気持ちが、和田さんお察しのとおり、私自身も実はしてならない点がございます。  したがって、情報網とかあるいは生産国との石油の取引につきましては、御承知のDDオイルの取引幅をふやしていくというようなことをも含めて、今後いろいろ改善すべき面があるのではないか。しかしこれをいきなりやると、またメジャーが一体日本に近づいてくるのか、遠のくのか、政治的にはおそれるべきではありませんけれども、経済的にはまた逆戻りの面やいろいろのこともございますので、ちょうどいまワシントンにおける、あの石油会議におけるわが国の態度あるいはアメリカなりECの態度、なかんずくフランスの態度のようなむずかしい面もありまして、なかなか一刀両断にやれない面があるのではないかということを私は感ずるものでございます。
  172. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いま長官がおっしゃるのは、政府としては、少なくとも企画庁長官としては、十二月の押し詰まった段階でどうやら石油はそう減ることはないらしいということを知ったとおっしゃるのですね。つまりそのことが問題じゃないかと私は思うのです。もう十二月の上旬には、私どもの関係ある海員組合の諸君から、タンカーの積み荷あるいは到着状態はそうふだんと変わってないという情報を私聞いたこと、がある。つまりそういう情報があれば、政府としてももっと機動的に調べるのが政府の責任じゃないのですか、こんなに大きな国民に迷惑をかけることですから。そうじゃないですか。その点いかがでしょう。
  173. 内田常雄

    内田国務大臣 おっしゃられるとおりでありまして、問題はその間のつなげ方、つまり現地の動き等に対するつなげ方、あるいは情報網というようなものを——何しろ石油は日本のすべての産業の動脈でございますから、そのくらいの仕組みは十分に、いままでそれに欠くるところがあるならば、これから先そういう線を強化していかなければ、それは日本のエネルギー問題の解決のみならず、日本経済、産業というものはいつも非常な不安の上に乗せられ、今後も乗せられていくことになるだろうと思いますので、そういう線は強化をしていくいろいろな検討をいたすべきだと考えます。
  174. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 通産省の方、お見えになっていますか。——いまの問題は通産省として、どうも石油は心配した、予想したようにたいへん大きく減るというのではなくて、相当量入るようだというような情報を得たのはいつごろですか。
  175. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  私どもも供給緩和の問題につきましては、先ほど大臣からお話がございましたように、十二月の末の正式発表によりまして、先行きの明るさを確認をしたわけでございます。  いま先生指摘の、十二月の初めごろすでに緩和の基調があったのではないか、それを察知できなかったのは政府の怠慢ではないかというような御指摘でございますが、当時十一月の下旬ごろから十二月の初めにかけまして私ども——各国の情報もそうでございますが、各国とも先行きに対する不安等から一斉に消費規制にも入りつつある状況でございました。また現実の船繰りを見ましても、船がいわゆる一港積みという形でまとまりませんで、二港、三港寄って帰ってくる、こういった状況がございまして、かなり混乱をしていたときでございます。当時、OAPEC諸国は例の二五%カットに上乗せをするという態度を相当強く打ち出しておりましたし、私どもは十二月から先についてかなりの不安を持っていたことは事実でございます。  十二月が結果としてかなりのものが入ったではないか、こういう御指摘がございますが、私ども十二月の実績を見てみますと、例月と非常に違った傾向がございます。その第一は、いわゆるメジャーから入ってきておりますものは九月に対比して、つまりOAPEC諸国は九月に対比して二五%カットあるいは上乗せ五%カット、こういうことをやっておりますので、九月に対比してみますと、メジャーを通じて中東諸国から日本に入っておりますものが二割くらい減っております。しかし、メジャーはたとえばインドネシアとかあるいはマレーシアとかそういったところを通じまして、南方地域から日本に入れておるものがふえておりますので、トータルといたしましては一割のカットにとどまっておるわけでございます。これはメジャー分といたしましては全体のウエートで大きいわけでございますけれども、きわだっておりますのは、いわゆるDD原油が十二月に大きくふえております。九月の五割増しぐらいになっております。同時にまた、商社があちこちの地域から買ってまいりましたものが相当やはりふえております。  結局、当時の状況としましては、原油の備蓄状況が非常に少ないというところから先行き不安を感じまして、あらゆるルートを使ってあらゆる地域に手を回した。その結果、十二月には思ったよりはよけい入って、これは非常に日本経済にとってはよかったと思っておりますが、そういう結果であったと思っております。結果から見ますと、これがおかしいという感じに見られがちでございますけれども、私どももそうでございますけれども、油に関係していた者は、いろいろな努力をやった結果としてこういうようによけい確保できたということで、むしろ数字を見て驚いているというのが実態ではなかったかと私は感じております。
  176. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 外務省の方、見えておりますか。——いまの問題についてはどうでしょう。
  177. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 私直接の担当官ではございませんけれども、外務省全体といたしまして、先ほど御指摘がございましたように、外交陣容が不備ではないかという点、これは年々在外公館を含めまして陣容の整備につとめてきておりますけれども、まだ十分な整備が整ってないのが現状でございます。ただ、現在御審議いただいております来年度予算におきまして、定員の増加もある程度認められておりますし、今後主として、今年度及び来年度の予算を含めまして、従来から手薄であった地域に重点的に人を埋めていく。それによって必要な情報の入手につとめたいと思います。
  178. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この問題にあまりあれしたくないのですけれども、長官通産省の方もいろいろおっしゃられますが、日本の外交機関が、あるいは日本の通産省、あるいはその他の経済、資源関係の機関が、そしてまたあなたの物価関係の機関が、日本が独立国として自分の一番大事な問題についてはだれよりも先に情報をつかんでおかなければならないという体制であれば、こういうふうな事態は起こらなかったのじゃないですか。あるいは起こったとしても、もっと適切な手が時期を失しないで打てたのじゃないか。外交に関する情報をほとんど全部アメリカに依存しておる。今度の場合は、メジャーはアメリカが主力だ。アメリカのニクソンさんとメジャーとは非常に密接だということになると、メジャーの世界政策といいますかあるいは石油戦略といいますか、そういうものの壁があって、アメリカの情報必ずしも正しくないのです。しかし、日本にとっては死活的な重要な問題なんです。つまり、こういう点の教訓を政府としてはもっとしっかりとかみしめるべきだとぼくは思う。そうでしょう。いままで何といっても、外交関係の情報というのは、そしてまた経済、資源関係の情報というのは民間の商社にまかしておるか、その以外のもっと政治的なものは全部アメリカ、その情報以外に日本が独自に情報をとってきたという形跡はない。外務省でも、いまの人事課長のおっしゃるように、そういうふうな情報はどの大使館でも非常に手薄なわけです。この問題について政府はもっと深刻な反省をする必要があると私は思う。  長官いいですか、長官の今度の施政方針の演説でもあるいは閣議決定の政府の経済見通しでも、田中総理の言明でも一番強調しておられるのは、国際物価の動向という問題をまっ先に出しておる。物価の狂乱、物価の悪性インフレという問題に対して対処するときに、国際物価高騰という問題があるのでなかなかむずかしいけれどもということを書き出しにして、国内的な問題をどの文書でも書いてある。長官のもそうですよ。政府の経済見通しの場合もそうですよ。田中総理の施政方針演説もそうです。つまり、今後とも日本のインフレーションの問題を考える場合に、国際物価の動向というものは決定的な影響があると政府は判断しておられるように見える。この認識は私どもはそう決定的なものだとは思わない。もっと国内的な要素が大事だと思うのですけれども、政府は、国際的な物価高騰というものを今後の物価対策に対して決定的な一つの要素としてあげておられる、まっ先にこいつをあげておるのですから。それだから、これはここで約束してもどうかわからないというようなことを暗示しながらの政府の言明でしょう。そういうことを言いながら、国際物価に対する正しい情報を得るとか、国際物価の変動に対してどういう体制をとるべきかという具体策は一つもない、どこにもないのです。物価問題に対する一番大事な要素としてあげておるこの国際物価という問題について、政府はこれに対する対処のしかたをどこにも具体的に書いていない。これはどういうわけですか。国際物価が上がり下がりするのはしようがないのだ、あなたまかせだというふうなお考えですか。まさかそうじゃないと思うのですが、いかがですか。
  179. 内田常雄

    内田国務大臣 和田さんでも、国際物価、日本以外の国の物価をわが国が支配せよ、こういうわけではないでございましょうけれども、しかし、日本のような海外からエネルギーをはじめ、最近では米以外の食糧あるいは飼料の多くを輸入しているような国柄にとりましては、物価のこともまたその数量確保の見通しなども、的確なる把握なくしては、物価政策はもちろんのこと、その他の経済政策の運営、あるいは国民生活の確保というものはできないということを私が思いますことにつきましては、あなたと私は全く同意見であります。それをどのようにして把握をするかという問題、同時にまた、食糧にしてもエネルギーにいたしましても、これはもちろん日本独自で確保できる問題ではない。アメリカでさえもグローバルなことを提唱せざるを得ない状況でありますから、むずかしいことでございますけれども、これはまあよけいなことを言うようでございますけれども、国内の確保とかあるいは代替エネルギーとかいうようなものの確保につきましても新しく政策を打ち立ててまいるべきだと思うことは一方、しかしそれがすべて短期間に達成できるわけではございません、外国にどうしても依存しなければならない部分がある限りにおきましてはあなたのお説は正しいと思います。これはしかし、外務省の外交官だけふやせばいいんだという問題でもございませんので、私どもも思いを新たにいたしまして、世界の資源や物価の影響を受けている限りにおきましては、それらとの連携、資料の把握等をいかに敏速、的確にすべきかということにつきましては、これは正直に申して私ばかりでできることではございませんけれども、さらに十分ひとつそれの強化の努力をいたしてまいるべきであると私は考えます。
  180. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 今度の石油パニック、先ほどから問題にしている問題でも、政府が自主的にそういう努力をする、そういう手を全然打ってなくて、せいぜい日本の石油の大手がやっている。この大手はメジャーの出店みたいな性格を持っている。つまり業界まかせの情報でしょう、せいぜいいままでのところは。業界まかせの情報で、問題のないときはいいのです。しかし今度の場合のように、石油の大手がその担当者だ。国際的な石油資本が石油価格を何とか引き上げようということがあるかないか知らないけれども、あったと見なければならない。そういう場合に、日本として一番重要な資源を業界の情報まかせにしておくということはいかがなものかということです。  今回は石油ですけれども、今後食糧でもそうでしょう。その他重要原材料、全部そうでしょう。いまのところ政府がそれを外務省にその専門のアタッシェを出すとか、あるいは企画庁長官が、期間を限ってもいい、この二年間ぐらいに経済の専門家を民間から登用してもいい、おもな重要な地点の外交機関にそういうスタッフを配置するという処置も当然とるべきだとぼくは思う。業界まかせにしておくから、今度のような問題が起こるのです。いま政府の、石油はどうやら心配するほどではなくて相当のものが入るらしいというふうに思ったのは十二月の末日だと、こう言う。(内田国務大臣「二十六日です」と呼ぶ)末日じゃないけれどもそう言う。そういう事態はなくなるわけじゃないですか。もっとふだんから出先の産油国の外交機関と接触をする、あるいはメジャーその他とも接触して絶えずそういう情報をキャッチしようという姿勢があれば私はこういう悲劇はなかったと思う。あったとしても、もっともっと対処のしやすいものだったと思う。これは今度の場合は、日本の態度は国際的な笑われものでしょう。いろんな外からくる情報はみんなそうじゃないですか。その点を政府はもっと反省すべきだ。少なくとも重要な資源について重要な国あるいは地域関係の外交機関にはそういう情報をキャッチすることのできる能力のある人を配置する必要があると私は思う。単に外交官をふやせばいいと私は考えていない。通産省にしても、ところによったら農林省も必要でしょう。あなた自身の企画庁自身が、こういうふうに国際化した日本の状態のもとにおいて、政府自身が今後の物価問題の一番の中心の大事な点は国際価格高騰だという判断をしている状態において、何らそういう手を打っていないということは怠慢じゃないですか。私はそう思うのですけれども、どうでしょう。
  181. 内田常雄

    内田国務大臣 総括的にはあなたのおっしゃるとおりであるということを私は先ほど来述べておるわけであります。しかし、石油の供給量とか価格につきましては、たとえばそれはサウジアラビアとかあるいはクウェートとかに人を出しておりましても、そこ単独できめておるわけではなしに、OPECの共同歩調あるいはまたその中におけるOAPECの動き等に関連してきめられておるんで、ある一国からの石油を高くするとか、ある一国からの石油を締めるということではないものでございますから、これはたとえばそこに外交機関があったといたしましても、なかなか今度のような場合に石油についての正確な情報を供給するということはむずかしかったかもしれません。ことに石油については、そういう場合にはOPECに加入していない地域などの石油とか、あるいはOPECに加入しておりましてもメジャーを通じない石油の取引というようなものに手を広げるということを早くやるべきだという問題を、私は否定するわけではありませんけれども、石油についてはむずかしい問題があると思います。しかしそれはそれとして、特におっしゃるような国の経済の運営の基本にかかわる問題でありますから、そういうものを日本に供給する地域には、外務省のキャリアの職員ということばかりでなしに、通産省あるいは農林省あるいは経済企画庁なりから、それは大切な使命を帯びさして、このごろアタッシェといわないで、外務省の参事官とか書記官とかいうことで外務省の中へ収容されているようですが、ぜひ出したいと思います。たとえば経済企画庁でも、私は昨今経済企画庁に参ったばかりでございますが、従来の話を聞きますと、フランスのOECDとアメリカだけにしか経済企画庁からは職員を出していないようでありまして、一足飛びにアラブに出せるかどうかは別といたしまして、私の職能を強化するためにも、ぜひひとつそういうような情報網を私の役所としても広める。通産省農林省、外務省等、あるいは総理大臣にもあなたの御意見を伝えまして、そうあるべきだと私も思うということを伝えて、一歩でも百歩でも進めたいと考えます。
  182. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 ぜひひとつできるだけ近い機会にいまの企画庁長官の意向を閣議にあるいは総理に話をして、私はこれはぜひともやるべきだと思うのです。企画庁長官はいろいろなことをおっしゃるけれども、いままでの外交、経済外交を含めて、その情報は全部アメリカからでしょう、全部というのは語弊があるかもしれないけれども。それを疑ってはいない。これは戦後の日本とアメリカとの関係から、やむを得ない状態です。現にこの十二月のときには、日本はどこからも助けられることはない、助けてもらえる国はない、こう判断した時期があったでしょう。アメリカだって、この石油の問題について日本を援助するという気持ちもなければ、その能力もないという状況があったでしょう。そういう状況になったのは、日本としては初めてですよ。いままで資源外交で、アメリカとのいろいろな問題がありました。逐次そういう状態を累積されてきたけれども、ほんとうに日本が一人で、自分で自分の国の運命を切り開いていかなければならないということをいろいろな形でわれわれが知ったのは、今度の石油パニックが初めてじゃないですか。  しかも政府は、私はこの問題をぜひとも強調したいのは、全部の政府の経済見通し、物価対策の根本に、前提の一番大事なところに、国際物価高騰の問題があるのでということを書いてある。それに対して対策を書いてないというのは、これは弁解のために書いたようなものですよ。事実、国際物価高騰というものは今後の日本のインフレに対して非常に大きなあれを与える。ほんとうに与えるものであれば、それらしい体制をとらなければいかぬのではないでしょうか。あなたの言うように日本が体制をとるったって、つくるわけにはいかない。少なくともその国々の正確な情報を常時キャッチするような体制をとる。変な動きがあれば、それに対してこまかい手が打てるような情報をとる。それだけは必要でしょう、特に日本のような国では。小さな国で、資源はない。今後ともますます世界にごやっかいにならなければいけない。そういう体制を至急にとってくださいということなんです、私が申し上げたいのは。ぜひともいまの長官の御決意を閣議に報告されて、そういう体制をとっていただきたい。これは、やる気があればそう金のかかることではないし、役人をただ横に、じゃおまえ行けというような形でやったってできることじゃないのです。民間からもその能力のあるものをどんどん登用して、少なくともこの三年間の非常な政策の切りかえときだけはそういう耳を拡大していく必要がある。中曽根さんはいつだったか、防衛問題について、日本は防衛問題について耳を拡大する必要がある、こう言ったけれども、防衛問題よりも何よりも経済問題についての耳を拡大することが必要です。自分の耳を拡大することが必要です。全部アメリカの情報をたよって安心できないというのは、今度の石油パニックが一番よく物語っておる。そのことをひとつよく御検討いただいて、ぜひとも至急に体制をとっていただきたい。つまり国際物価高騰という状況は、今後日本の経済にとって、政府の判断によれば決定的な影響を及ぼす、こういう判断をなさっておられる。なれば、その問題についての実態の把握のために、正しい情報をとるために、そして常時そういう情報の変化に対してできるだけの手が打てるように、そういう体制をとってもらいたい。重ねてひとつ長官の御決意をお伺いしたい。
  183. 内田常雄

    内田国務大臣 私はよくわかりました。しかしこれは私ばかりじゃなしに、機会があったらば、ひとつ和田さんから国会の席において総理大臣にも外務大臣にも同じようなことを言っていただくと、私も百人の味方、百倍の味方を得たような気がいたします。  もっとも、いまおっしゃることで、海外物価の影響等につきましては、それは既開発国には、外務省の出先の陣容もかなり充実しているようなところもありますし、また外務省自身が経済局を持っておりまして、それらのルートを通しまして、開発国の物価の情報等はかなり敏速に得ている面もございます。あるいはまた日本銀行等をも通じまして、私どもも海外物価の動きはわりあいに早く知ることができます。しかし今度の石油問題のように、どうも既開発国でない地域が多いところの情報については、外務省さえも一人の大使が数カ国を兼任しておる。そこには通産省からも経済企画庁からも人が行っておらないというような、そういう地域に関連ある問題でございまして、おしかりを受けるような結果であったと思います。たとえば昨年の小麦とか大豆なんかの日本に対する供給の問題など、これはアメリカとかカナダとかいうようなところが主であったと思いますけれども、それらについても私は同じことがいえることであったろうと思います。それらにつきましては、いま和田さんから言及もございませんでしたが、おそらく情報の把握はもっと敏速、的確にいったであろうと思います。  ただ、私はそんなことを言いましたけれども、私自身が、一体カナダの物価がどうなっているんだ、あるいはイタリアの物価がどうなっているんだというと、その辺についての資料の提供はわりあいにおそいのです。ほかの国につきましては、すでに一月の物価状況とか十二月の物価状況はきておりますけれども、いま私が述べましたような国につきましては、必ずしも物価の動きも十分敏速には得ていないので、私が外務省に文句言って、その辺からも同じような物価の資料を早く取れと言って、職員を激励したりしかっていたりいたす状況もございます。それらも含めて、たいへんありがたい御激励、御忠告をいただきましたので、ひとついろいろの検討や実行に向けての手段を進めさせていただきたいと思います。
  184. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私の申し上げておるのは、いまイタリアの物価とかあるいはアメリカの物価とかいう若干学者的なことを言っておるわけではないのです。学者がやるような調査でなくて、しかも通産省なら通産省、外務省なら外務省がやるということでもないのです。もっと総合的に動きをキャッチできるようなシステムを政府としてつくりなさい。そうしないと、第二、第三の石油パニックが出てきますよということなんですよ。私は、今度の場合に、石油が案外予想よりも来たということが間違っておるということを言っておるわけじゃないのです。企画庁長官物価についての責任者ですから、内閣の物価の親になる人ですから、物価政策の取りまとめの人ですから、そのためには当然情報が必要でしょう。企画庁もどんどんおもな地域にそういう実際の調べのできるアタッシェを出したらどうですか。そして外務省、通産省農林省等と協力するという体制をとったらどうですか。それだけのことをする値のあることなんです。経済の問題について、日本の情報を、耳を大きくするということは、今度の場合の教訓として、ぜひとも長官政府の責任者としてがんばっていただきたいと思います。  そして次の問題に移りますけれども、小売り物価が二〇%前後の高騰だ、卸売りが三四%、最近の日銀の調査でもそういうことですけれども、これはいろいろな委員会でも議論されておりますが、つまり物価のスライドという問題ですね。直接の法律的に問題になっておるのは年金です。年金は一つの例ですけれども、これは今後社会福祉の対象になる人たちなんか早急にやらなければいかぬ問題だと思うのだけれども、たとえば物価スライドという場合に、いま統計局でつくっておる消費者物価指数というものがあります。この指数を基準にしてスライドするということは、いかにも不備な点が多い、公正を欠く点が多いと私は思う。年金の例をとれば、お年寄りの生活状況というものは一般の平均的な国民の生活状況とは違うのです。したがって、お年寄りの生活という問題を見詰めて物価のスライドをするとすれば、お年寄りの生活にとって必要な品目というのは一般の若い者とは違うのです。したがって、ウェートのとり方も違うはずです。そういうふうな場合に、年金のスライドを考える場合に、一般消費者物価を基準にして考えれば、これは当を得たものとはいわれない。当然そのスライドの場合は、年金者に対する物価のスライドの場合は、お年寄りの生活の実情から特別の一つ物価指数というものを考えなければならぬ、こう私は思うのです。それはいかがでしょう。
  185. 内田常雄

    内田国務大臣 これはどうも私が大蔵大臣、厚生大臣と同じ立場で申し上げるわけにはいきませんが、お話はそのとおりだろうと思います。でありますから、厚生年金と国民年金につきましてはスライド制を法律上導入することにいたしましたが、しかしあなたが言われる意味よりも私が考えておるほうがもう少し先に進んでおる点があるかもしれません。それは私も厚生大臣をいたしておったことは御承知のとおりでありますが、老人に対してはたとえば老齢福祉年金というものがございますが、これはいままでの五千円を五割増して七千五百円にする、五割というのは五〇%でありますから。スライドする場合には、五%以上消費者物価が越えた場合には動かすということでございますが、老人に対しましては、そんな国民年金、厚生年金並みのスライドでは足らない。五千円を七千五百円にしているのですが、それでもまだ足りないと言ったら、来年の予算を出し直せと言われるからそれ以上のことは言えませんけれども、さらにその次の段階においては、これを物価の値上がり以上、スライドでなしに、おっしゃるとおり年寄りの消費生活というものは一般の勤労者世帯の生計費支出とはファクターやウェートが違いますから、年寄りがやっていけるように、また希望が持てるように、さらに若い私どもが——私などまだ若いつもりでおりまして、老齢福祉年金はもらわないつもりでおりますけれども、私ども若い者が年寄りをささえていくのだ。これからまた日本は老人層が非常に厚くなるわけでありますから、そういう際においてもわれわれがささえていくのだという気持ちを持たせるためにも、あの七千五百円でいいということではない。まずそれを先にやろうと思います。
  186. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 どうも大臣——私の質問している焦点は、老人対策質問しているわけじゃないのです。スライド制というのがあるのです、物価のスライド制というのが。法律としてあるのは、年金に対するスライドということが法律としてあるのです。これから私、社会労働委員会に行って、その質問を厚生大臣にするつもりです。しかし物価の問題、指数の問題ですから、ここで大臣の御意向を聞いておるわけです。老人対策を御質問しているわけじゃなくて、現在ある物価スライドという問題について、物価指数の組み方をその政策目標によって変えていかなければならないんじゃないかということを聞いているわけです。それはお年寄りに対する対策は現在の政府考えていることは全く貧しい対策であることは私もそのとおりなんです。そのことをいま言っているのじゃない。物価スライドという問題の考え方、たとえば預金の問題が大蔵委員会で出たという。預金の利子の問題ですね。これに対して大蔵大臣は、二〇%物価が上がったんだからそれだけ利子を上げるというわけにはいかない、他の政策があるからそれは非常にむずかしい、しかし何らかの方法でそれは考えよう、こう言っている。現在消費者物価が二〇%上がっていくという段階では、国民の最も守らなければならない人を守るためには、いまどうしたらいいかということを具体的に考える時期なんです。そうでしょう。生活保護世帯もそうですし、そういうふうな人に対して、つまり物価指数という問題を、特別の指数をつくって物価スライドの政策目的を達成できるようにしなければならない。その点で、きょうは統計局の方見えていますか。——いまのこの問題、つまり年金について、一般物価指数を基準にしないで、老人の生活というものを対象にした特別の物価指数をつくるという必要について、あるいは技術的にそういうことができるかどうか。これはたとえば耐久消費財が相当のウエートを持っておるとすれば、老齢年金の場合はそういうものがどういうことになるか、あるいは食料品というもののウエートのとり方がどういうふうになるか、あるいは医薬品というもののウエートのとり方がどうなるか、これは当然一般の消費支出と変わるべきものです。そういう点どういうふうにお考えになりますか。
  187. 川村皓章

    ○川村政府委員 一応お答えを申し上げます。  先生からただいま消費者物価指数につきまして御質問がございましたが、この中で、政策目的にある程度合わせて指数をつくるかどうかという政策の問題は、いわば政策自体としてきめていただきたいと私は思っておりますが、ただ、技術的な観点だけ、現に消費者物価を作成しております統計局の立場からお答えを一応いたしておきたいと思います。  先生御存じのとおり、現在作成いたしております消費者物価指数と申しますのは、全国の全消費者世帯に対する物価の動向を算定するというものでございまして、したがって、たとえば老人世帯であるとか、あるいは生活保護世帯などの特定の世帯を対象としては計算をいたしてはおりません。そこで、先生指摘の点は、いわば今後政策的にもあるいは技術的にも問題にして検討すべき問題とは実は考えますけれども、現在消費者物価指数を算定しております基礎となっておりますのは、消費構造を定める家計調査によってそのウエートをきめていることは、先生御存じだと思います。したがって、これはあくまで全世帯を対象にしていわば選んでおりますので、老人世帯あるいは生活保護世帯というようなものの特定の階層について、結果は、標本数の観点からすると、十分その意味で信頼できるかどうかという点は、私ども問題であろうかと思います。したがいまして、かりにそういう特定の階層に対する計算をしてみいということで、かりにしたといたしましても、その数値の信頼度については、いささか問題なしとしないというのがお答えでございます。
  188. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 ひとつそういうふうな、年金を一つの例にして、年金生活者の生活状態を見ながら、特別の家計調査をなすってもいいのじゃないですか。いままでの調査の中からそういう該当する人を引き出して、そうしてウエートその他をきめてもいいじゃないですか。一ぺんそれをやってみてくださいよ。
  189. 川村皓章

    ○川村政府委員 ただいまの先生の問題は、いわば政策的に役に立つということをある程度考え、技術的にもとり得る範囲というかっこうになりますと、また標本のとり方等も考えなければなりませんので、そういう問題として今後考えるべき問題と思っております。
  190. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 長官、これは最後ですけれども、いまの一つの例ですけれども、今度の物価がおそろしいほど上がってくる。国民生活に対してできるだけの防衛措置を講じなければなりません。いま私が物価スライドの問題を考えたのはその一つの例ですけれども、そのスライドという問題、これはこの前、年金の問題を審議したときに、いま厚生省で実施の細目の要領を検討しているときで、これからひとつ参りますけれども、企画庁としてもこの物価指数の問題について、物価指数というのはぼくは非常に必要だと思うけれども、これを政策的に利用する場合には、利用できるような特殊例をもっと検討する必要があるという意味でいま申し上げておるわけで、ぜひともひとつ御検討いただきたいと思います。  きょうは私公正取引委員長に再販の問題をお聞きしようと思っておったのですけれども、もう時間がございませんから、失礼いたしました、また次の機会にさしていただきます。ありがとうございました。
  191. 平林剛

    平林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十七分散会