○増本
委員 私は日本共産党・革新
共同を代表して、
内閣提出の
国民生活安定緊急措置法案並びに自由民主党提出の同法修正案に反対して討論を行ないます。
今日の異常な物価急上昇とこれと並行してつくり出された物不足は、生活保護者、年金生活保護者はもとより労働者農民、漁民、中小零細
業者に深刻な打撃を与えています。しかも
石油危機にあらわれた今日の
事態は、今日までの
政府の超高度成長、資源浪費という大企業中心の産業
政策の破綻を明白に示すものであります。このような
事態を招いた田中内閣の責任は重大であると言わなくてはなりません。
ところが
政府提出の本法案は、今日の異常な物価上昇を押えると言いながら、次のような重大な問題点を含んでおります。
その第一点は、本法案が物価を下げろという国民の要求に反して、ますます物価をつり上げるものになるという点であります。
政府のいう
標準価格、特定
標準価格は、標準的な
生産費、輸入
価格もしくは仕入れ
価格に標準的な販売費用と利潤を加えた額が内容となりますが、この標準的な
生産費や輸入、仕入れ
価格やまた標準的は販売費用、利潤とは単に市場の実勢を資料として判断するというものでありますから、大企業を先頭に物価値上げを競い合っている今日の
事態では必然的に高値にきめられてしまうのであります。わが党などの主張してきました
指示価格との違いの根本的な対立の
一つはこの点にあります。私
たちの主張する
指示価格は、適正な
生産費、輸入
価格、仕入れ
価格と適正な販売費、利潤を加えた額をあくまでも
基準とするものであります。すなわち、いままで市場原理のベールのもとで
価格形成に正しくメスを入れることができず、大企業の不当なもうけが野放しになってきたのを、原価計算に基づき適正な
価格をきめるものであって、このような立場に立ってこそ国民の理解と納得が得られるのであります。わが党は、このように適正な
価格をきめるために原価を国民に公開するとともに、必要な資料を得るために
生産、輸入、販売、輸送、保管の
業者に対する資料提出命令の権限を認めることをも主張してまいりましたが、このわが党の主張に反対する
政府、自由民主党法案のもとでは
価格の決定はますます
価格つり上げの市場
競争に追随せざるを得ないのであって、国民の危惧する高値安定を確実なものにしてしまうと言わなくてはなりません。
本法案に反対する第二の理由は、国民生活に必要な物資の安定供給の確保が保障されていない点であります。何よりも国民の生活必需品の安定した十分な供給の確保をはかることこそ、この法案の最大の目的でなくてはなりません。そのためには、わが党が主張するように、
生産、輸入、保管、保有などにも必要な場合には命令
措置をもとる必要があります。特に地域的な物資の欠乏に対しては、売り渡し、保管命令によって緊急
事態を解決する手だてをとらなくてはなりません。わが党などがこうした立場から、一般消費者、中小企業及び農業、漁
業者並びに
公共交通事業、通信事業、教育事業、医療事業、社会福祉事業、言論出版事業その他の国民生活の円滑な運営に重大な影響を及ぼす事業に対する物資の優先的確保を
政府に義務づけることを提案しておりますのも、
政府案、自民党修正案ともにこのような立場に立たぬこととの比較においても、これらの
政府提案に反対しなければならない理由はきわめて明白であると言わなくてはなりません。
第三の理由は、本法案が憲法二十二条の営業の自由、憲法二十九条の財産権の保障など国民の基本的人権を侵害する重大な疑いがあるからであります。今日の異常な物不足のもとで割り当て、配給をしなくてはならぬ
事態が起こり得ることは認めるものでありますが、この割り当て、配給は憲法の保障する経済的民主主義に深くかかわる重大な問題でありますから、国権の最高機関である国会の議決を経なくてはならぬはずであります。これを一片の政令によって
政府の裁量にまかせろという態度は、田中内閣のファッショ的な態度をあらためて証明したものといわなくてはなりません。
本法案に反対する第四の理由は、消費者や国民各層を代表する審議会による本法案の実質的な運営を保障するものになっていないからであります。自由民主党修正案も国民の要求もあって審議会を採用するようになりましたが、この審議会は、私
どもが主張する内容と比べて明らかなとおり、名ばかりの審議会であり、国民の要求とあまりにもかけ離れたものだと言わなくてはなりません。
なお、わが党は、これまで申し上げましたような内容を盛った本法案に対する修正案を用意し、その提案の意思を
委員長にお伝えいたしましたが、成規の
手続をとり得る時間的余裕を持つこともできずに終わりました。これはまことに遺憾のきわみであります。
私
どもはさらに野党間の結束を強めて、今後とも法案の改正のために努力をするものであります。
以上のとおり、
政府原案、自由民主党案に反対の態度を表明して討論といたします。