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1973-12-18 第72回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十八日(火曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 平林  剛君    理事 稲村 利幸君 理事 木部 佳昭君    理事 倉成  正君 理事 坂村 吉正君    理事 橋口  隆君 理事 井岡 大治君    理事 松浦 利尚君 理事 野間 友一君       上田 茂行君    加藤 紘一君       片岡 清一君    高橋 千寿君       羽生田 進君    三塚  博君       粟山 ひで君    山崎  拓君       山本 幸雄君    吉永 治市君       金子 みつ君    中村  茂君       米田 東吾君    増本 一彦君       有島 重武君    石田幸四郎君       和田 耕作君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         経済企画政務次         官       竹内 黎一君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         通商産業審議官 森口 八郎君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君     ————————————— 委員の異動 十二月十八日  辞任         補欠選任   粟山 ひで君     高橋 千寿君   山中 吾郎君     米田 東吾君 同日  辞任         補欠選任   高橋 千寿君     粟山 ひで君   米田 東吾君     山中 吾郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民生活安定緊急措置法案内閣提出第三号)      ————◇—————
  2. 平林剛

    平林委員長 これより会議を開きます。  国民生活安定緊急措置法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野間友一君。
  3. 野間友一

    野間委員 覚え書き独禁法との関係についてお聞きをしたいと思いますけれども公取通産省ないしは経企庁との間に覚え書きをかわしておられます。このことについては、何度も論議をされたわけでありますけれども覚え書きをどういうふうに見るかということについて、独禁法解釈として当然出てくるものなのか、あるいは安定法があるからこれは違法でない、こういうことになるのか。この点について公取委員長から答弁を願いたいと思います。
  4. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 通常、非常に簡単にカルテルといわれていること、共同行為ともいっていますけれども、違法な共同行為、こういうふうなことをあらためてここで——私は、どうもなかなか私どものあれが通じませんので、法律でどう書いてあるかということを、これはおわかりかと思いますが、読んでみます。「この法律において不当な取引制限」これはカルテルをさすわけです。「とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義を以てするかを問わず、他の事業者共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共利益に反して、一定取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」たいへんこれは丁寧に書いてあるわけでございますが、共同行為ということは、それは確かに必要な要件でありまして、共同行為は、とかくカルテルにつながるということも言いますけれども、この結果として、公共利益に反して、一定取引競争を実質的に制限することだ、こういうことでございますから、私どもがこの条文解釈するにあたりまして、たとえば末端価格政府がきめたといたしまして、それを守らせるために、共同行為ということではなくて、それぞれのメーカーに対しましてそれを末端業者が守るようにしてもらいたいということを要望し、それをメーカー、元卸が守るといたしますと、この条文にあるような、これはいわば事業者が他の事業者と一緒に組んでやる行為である、それは自分たちの意思で行ない、自分たち価格を決定する、こういうことを含んでいるわけでございますから、政府がきめた価格を守る、守らせるという協力行為というものは、それ自体何らこの条文に該当しない。ですから、この条文解釈は、ある程度抽象的ではありますけれども、大体きまっておるわけでございまして、そういうときに何が違法性があるか、不当な取引制限でございますから、わかりやすくいえば、違法なそういう取引制限するような競争制限行為である、こういうふうに解すべきでございまして、政府施策協力すること自体はこの条文には該当しないものであるということを特に確認したというだけでありまして、事実を確認——事実といいますか、私ども解釈を確認しただけでございますから、あえて新しくこうだということをきめたわけではございません。
  5. 野間友一

    野間委員 そうしますと、端的にお聞きしまして、安定法があるから、安定法前提として考えた場合に、その覚え書きのようなものは共同行為に当たらない、こういうことでなくて、独禁法そのものから、独禁法をどのように解釈しても、この覚え書き、このような行為についてはこれにかからない、こういうことになるわけですか。
  6. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 そのとおりでございます。ただし、法律に基づかない、法律になくて行政指導だけでカルテル行為を行なわせる場合がありますが、これはたとえば操短の例にはかつてあったわけです。勧告操短官庁指導が入ってカルテルを行なわせる、これは数量制限カルテルでございます。これは違法でございます。たとえ勧告があったとしても、それに名をかりてかってにやるのは独禁法違反である、こういうふうにかつては見のがされておったことを、その途中から、それは違法行為になるのだ、こういうふうに認定されますから、私は、今回の法律に基づいておやりになる行為であれば、その法律が認めている範囲で必要やむを得ないと考えられる行為については違法性はない、こう申し上げているわけです。かってな勧告ではだめなわけでございます。
  7. 野間友一

    野間委員 その点をもう少しはっきりしていただきたいのですが、私がお聞きしているのは、もう何度も言いますように、安定法とは全く関係なしに独禁法として当然出てくるものなのかどうかということなんですね。いま委員長言われるのは非常にあいまいで、最後のほうの答弁では、法律があって法律に基づく指示勧告ですか、そういうものがあるから、この覚え書きのような共同行為をしたってこれは違法ではない、こういうような趣旨の発言にも聞こえたわけですけれども、その点、少しはっきりしてください。
  8. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 この法律は、御承知のとおり緊急な事態に対処する法律であります。したがいまして、この法律の内容を見ましても、すべてについて行為といいますか、官庁のなすべきことが非常に事こまかに書かれておるわけではございません。私はしかたがないと思います。それは当然緊急の場に間に合わせるためにつくった法律でございますから、政令にほとんど全部委任しておるものもございます。しかし、その官庁の行ないますところの一種指導でございますから、指導ではありますけれども、それは法律に基づいて当然認められる行為である、こういうことになりますれば、一般的に不況になったから勧告して操短独禁法を免れるというのとは性質が違う、こう申し上げておるのでありまして、その辺は私どもは全く全体を通じてしゃくし定木にのみ問題をとらえておるわけではありません。独禁法解釈自体につきましても、やはりそこは違法性があるかないか、違法性が全くない、こういうことになれば、文句の上でもってある部分にはかかりましても、全体としてはそれは適法なものであるということで認めておるものもあるわけでございますから、不問に付しておるものもありますから、ですから、その限界というものはどこにあるか、こう事こまかに突っ込まれましても、私は、いま読み上げました条文に照らして違法性ありやなしや、不当であるか不当でないか、この認定は私ども委員会認定にかかっておる。しかし概略のことはいま申し上げたようなことでございまして、その共同行為というものはもちろん好ましくありませんが、極端な例を申し上げますと、火災保険会社共同して金を出し合って消防車を買ってただで自治団体にくれたりする行為がございます。これは明らかに共謀してやっております、共同して行なっておる行為でございますが、そのような行為は違法なカルテル行為とは全く関係がない。共同して行なっておることはたしかでございますけれども、さりとて競争制限するということではございませんから、やはり実質的に競争制限につながってそれが違法性がある、こういうふうに見るべきものを私どもは違法なカルテルと呼んでおるわけでございます。
  9. 野間友一

    野間委員 どうも答弁がすっきりしないわけですけれども、私がお聞きしておるのは、覚え書きのような行為、これは全く安定法とは無関係なのかどうかということですね。あなたの答弁によりますと、安定法があって政府はそれに介入してやるのだ、だからこそ覚え書きのような共同行為をやってもこれは差しつかえないのだ、こういうように私はあなたの答弁を聞いて感ずるわけですけれども、その点もう少しはっきりしてください。つまり私がお聞きしたいのは、安定法有無にかかわらず、安定法がなくても覚え書きのような行為は本来的に独禁法には抵触しない、そういう趣旨なのかどうかということです。
  10. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 そのとおりであります。つまりこれは安定法有無とは関係ありません。ありませんが、私は、そこで安定法関係あるのは法律に基づく主務官庁の当然の行為といいますか、それは違法性がないということをはっきりさしておくことが、民間業者政府施策協力する場合に——共同行為ではございませんですよ。共同行為といっているのではないので、協力する行為、一方的に協力政府が求めるのですが、それに協力する行為だけならば、これは違法性はないと言ったので、この覚え書きに書いてあること自体は、確かにその法律そのものがなくたって、早くいえば覚え書きがなくたってこれは変わりないのです。ないのですが、そのことを明らかにしておかないと、民間は何をやっても独禁法違反に問われるおそれがあるからそれでは協力もいたしません、うかうか協力するとカルテルでもって摘発されては困る、こういう不安を持つ。それならば、その点は限界は抽象的ではあるけれども明らかにしておいたらいいだろう、こういうことでありますので、安定法それ自体とこの解釈とは何も直接には関係ありません。その解釈解釈として常に変わらないわけでございます。一般的に法律との関係でございます。
  11. 野間友一

    野間委員 当然に出てくるとすれば、ことさら覚え書きをつくる必要はないと思うのです。覚え書きをなぜつくったのかということがそこで問題になってくると思うのです。最近のいろいろなLPガスであるとか、あるいは石油を原料とした中間製品であるとかいろいろな行為がございます。石連の公取であげられたあれもまさにカルテルなんですね。ですから、特段にこの独禁法、これから当然この覚え書きのような行為は違法じゃないというなら何もいまの時期にこういうものをつくる必要はないと思うのですよ。なぜこういうものをいまの時期になってつくったのかということ、この点、私は釈然としないのですよ。なぜいまの時期にこういうものをつくったのかということについてはっきり答弁願いたいと思うのです。
  12. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私どもは、問題が非常に微妙である、解釈上どちらになるのかというふうな場合、あるいは民間を積極的に指導する場合、独禁法運用につきまして基準をつくって発表いたすことがございます。たとえば並行輸入等に関する基準でございますね。輸入の政策に関連して、かくかくのものはこれは認めない、この種のものは認めるというふうな運用基準でございます。独禁法運用基準をきめてこれを公表いたしております。そうしないと、業界民間の方が困る。どこまでがいいんだかわからない。持っていってみてからこれは拒否されるということでなくて、大体この線に沿っていればよし、沿っていないものは認めないという運用基準を定めることがあるわけで、何といいますか、私どもからいわせれば一つ限界を示すと同時に一つ基準でございますから、よくわかりやすくしておくことがむしろ親切なことだ、こういうふうに思いますので、今回の場合もまあ行政指導が先行しておったわけですね。法律以前の段階においても、法律が通った場合には当然標準価格になるでありましょう価格行政指導価格で三百八十円とか、千三百円というものはこれからきめるのですけれども、いずれにしても法律施行前になるかもしらぬ、そういった三百八十円がすでに行なわれているという事態に対処して、一体これはいわゆる勧告操短と同じように扱うのかという問題もあります。しかし、それはもう一向差しつかえないんだ、緊急やむを得ないものとしてそれはもう必要である。末端価格をきめる、それをまた上の段階にどう守らせるかということについての協力を求めるとか、それから物の需給の突き合わせという面についても民間協力が全くないとしたならば、法的根拠がないわけですから、法的根拠なしに人間も何もおらぬ、余分な人間がおらぬ段階で、一切のいわゆる政府に対する協力拒否を、協力行為をなしに済ませろというほうが私は無理じゃないか。ですから、これはいずれ法律に盛られてくる行為でございますから、それらのことについては覚え書きをもってこれは違反としないということを確認しておいたほうが親切であるし、かつまた私たちのほうからいえばやみカルテルを続発させるようなことはもう絶対にお断わりである、そういう意味において、注にカルテルではないんだということはもうはっきりうたってあるのですけれども共同行為協力措置ということばを、早くいえば混同されているともいえるわけでございまして、私ども共同行為ではないということを、カルテルじゃないということを宣明しておるのに、協力がすなわちカルテルだというふうに評価されたといいますか、そういうふうな扱いを受けたというところに問題があるわけでございまして、私はこの覚え書きをつくったこと自体何らおかしなことではないと思っております。
  13. 野間友一

    野間委員 それじゃ質問を変えますけれども昭和二十七年、東洋レーヨン株式会社外十二名に対する審決、これありますね。これは出荷生産調整についての審決でありますけれども、これによりますと、これは政府介入しても、これは大ワクをきめてやったわけですけれども、しかしこの場合でも違法な行為である、こういう審決を出しておりますね。これはこのとおり現在でも維持されるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  14. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ただいまの御指摘のケースは確かに協会に対しては違法であるという審決を下しているようであります。この点は、ですから私申しました勧告操短というふうな形は、この場合通産省が総生産量の目標を指示しまして協会各社別減産基準を定めまして、会員はそれに従って減産するよう伝えてほしい、こう依頼した、それで協会各社別減産率を示した、それに対しましてこれは違反であるということになっておりますが、業者間の共同行為認定されないで、いってみれば事業者団体法の適用によって違反であるということになっております。ですから私がそれを申し上げたのは、これは勧告操短の例である。勧告操短といっております。主務官庁勧告をしまして、こういうふうにやるという指示をするわけです。ですから法律根拠に基づかないでそのようなことを行なえば、それはたとえ官庁指示があったとしても違法になりますということでございますから、まさに先ほど私が申したとおりでありまして、各社がかってにやっただけでなくて、官庁のそういう指導的な行為があったとしてもいかぬ。今回の覚え書きは、法律がつくられることはもうはっきりわかっておったわけでして、国会をいつ通過するかというのは別にしまして、それに先立って、いってみればそういう勧告、この場合勧告操短ではないのです、いかに必要な品物を増産する、出荷をふやせ、この方面に対して出荷をふやすかという、そういううしろ向きではない、前向きの政策に対していかに協力するかというふうなことでありますから、この場合とは違う、法律前提とした行為であるという点において私どもはそれを前段階における行為をも中に取り入れた、こういう点は若干特色がございます。
  15. 野間友一

    野間委員 どうもすっきりせぬわけですね。歯切れも悪い。いまあなたは最初棒読みされましたけれども、これによりますと、これは通産省が、いまの操短ですけれども、総生産量を十五万コリと厳密に限定した。そして一定基準によって各生産者に割り当てて各生産者ごと生産量を決定しているわけですね。そしてこれにより生産制限すべきことを個々の業者あて書面をもって勧告した、こういうケースなんですね。つまりここまで行政官庁介入をして、一定ワクをきめて割り当てしておるわけです。そこまで行政庁介入しておるわけですね。これでも違法なんです。ですからいまあなたあたかも背景が違う、これは生産の縮小と申しますか制限であり、今度は物をふやせということである、違うとおっしゃいますけれども、これはふやす場合でも減らす場合でも、これによって効果が違ってくるというようなことではないと思うのです。それは当然なんです。こういうケースの場合、これでも違法なんですよね。これが違法だということをあなた認めるわけでしょう、いまでも。維持するわけでしょう。違うのですか。
  16. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 その場合はおそらく、私はこまかい点までは見ておりませんが、これは勧告操短によって不況の対策をはかった、こう思います。一種不況カルテルを実際はその手続を経ないでやったと思います。二十七年の事件だとすると、不況カルテル事項が入った一ちょっと私いま確かめませんが、そのころに不況カルテルの条項が入ったわけです。ですから法律がすでにあったかどうか、なかったとすれば、それは当然不況カルテルも申請しても認められない時期でございます。それから不況カルテルそのもの法律があったとしても、その手続によらないでかってに行なった行為違反になりますから、いまでも私はその審決は間違ってないと思います。しかしいま今度の場合に、そういう趣旨ではない。いま言ったように、業界利益のために、業界自分の損を免れるために操短を行なったわけですね。そういう行為はこれは初めから違法性があると思う。ですから先ほどの条文を申しましたときに、あの中であまりにも多くよいカルテルなんということばを使われますから、私はいままでなるべくそういうことばを使わないできたんですが、「公共利益に反して、」という文句も入っているわけです。ですから、何が公共利益かということについては私どもが判定すべきことであって、かってに民間業界自分たち公共利益に沿うつもりでやったんだ、こう言われましても、それは私どもで認めなければ違法性があることになります。ですから、全くしゃくし定木に解するということではないということを私は先ほど申し上げたつもりでございます。
  17. 野間友一

    野間委員 できた法律はきっちりやってもらわなければ困るわけですよ。  それでは質問を変えますが、これでは確かに勧告になっています。しかし、大ワクをきめて個別的にやっていますね。今度の覚え書きにいう行政官庁指示監督ですね。これは指示監督があるから違法じゃないとおっしゃるわけでしょう。だから、この二十七年の審決とこの覚え書きにいういまの行政官庁指示監督、これとは一体どう違うのかですね、これが別れ道なんでしょう。指示監督があるから覚え書き共同行為にならない、こういうふうに言われるわけでしょう。だから、この二十七年の審決とこの覚え書きとは一体どこにどう違いがあるのか。それを明らかにしていただきたいと思います。
  18. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 二十七年の分は、これは明らかに違法な共同行為でございます。今回の場合は、共同行為ということばは、私どもは絶対にそういう用語は使っておりません。用語は使わないのみならず、「注」において「カルテルを意味するものではない。」協力ということと共同行為とは、同じことばであると言われてしまえばそれまででございますが、私ははっきり区別して使っているつもりでございます。
  19. 野間友一

    野間委員 いや、私が言っておるのは、この覚え書きには「主務大臣指示監督に基づいて」云云、こうありますね。つまり、行政庁指示監督をするのだ、だから違法じゃないのだ、こういうことじゃないのですか。とすれば、この指示監督というのと、二十七年の勧告、これも行政庁介入ですね。これとは一体どういうふうに違いがあるのかということをお聞きしているわけです。
  20. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 指示監督の点について、たいした違いはないだろうと思います。しかし、その勧告において行なわせた行為カルテルやみカルテルそのものである。違法なカルテルやみといいますか、これは半ば公然たる違法カルテル勧告したわけですね。だから、官庁勧告があっても介入があってもいけない。今度の場合に、私はたびたび繰り返しますが、どこにも共同行為勧告するというふうな、指示するというふうなことはございませんから、その点で区別しているということを言うほかない。だから、これはいわゆる経済犯でございますが、経済犯であろうが何であろうが、およそ犯罪的行為というものには構成要件というのがございまして、その構成要件一つの重大な要素を欠けばその犯罪は成立しない、これは当然のことだと思います。ですから、協力ということは文字どおり協力であって、いわば一方的な協力だと解釈すべきものでございますから、横に連絡をとって、そしてカルテル行為をするということになれば、それは全く覚え書きには書いてない事項である、こういうふうに申し上げているわけでございます。
  21. 野間友一

    野間委員 それじゃ少し具体的に聞きます。  たとえば生産あるいは出荷についてお聞きしますけれども生産あるいは出荷について、これは今度の法律案では生産計画等と規定がありますけれども、たとえば生産あるいは出荷において政府が具体的な事業者に対して、つまり事業者がかってにこういうような生産あるいはその出荷に対していろいろな措置をとる、これはぐあいが悪いわけでしょう。事業者がかってにやることはぐあいが悪いわけですね。それに対して政府指示監督するからいい、こういうふうになるわけですね。そうすると、具体的にどの程度、この関与の程度ですけれども、具体的、個別的に政府がこのとおりせよときめて、そのきめたものの中で業者がそれぞれ協力する、こういうことならいいんだということになるわけですか、これは。わかりますか。
  22. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 原則的に抽象的に申しますれば、ただいまのようなお話になります。しかしながら、たとえば業界のある一部の者を呼んで、全体の意見をまとめて持ってこいじゃないで、これは何をやるにしても、自分でデータを持っていない場合にはある程度話を聞くというふうなことは行なっても、これは必要な協力行為に入りますから、いま言ったように事こまかに全部官庁できめることは必要ですが、きめるときにはそうであっても、きめる過程において一切協力的な行為を否認するというわけにはまいりません。ただし、それはあくまでカルテルにならないようにということを厳に警戒しながら扱っていただきたいという趣旨でございますから、その辺についていえば、あくまでこうなければならないというふうに一つ一つ具体的に縛ってしまうということは、いろいろなケースが考えられますから私はむずかしいと思いますが、いずれにしても共同行為はいかぬ、こう申しておるわけでございます。
  23. 野間友一

    野間委員 ですから、その共同行為の点なんですけれども、人的あるいは物的に行政官庁が具体的な企業の実体そのもの全部をマスターすることはできないわけですね。ですから、事業者が出してきたものをそのまま追認するということは、実際的にはそれ以外しようがないと思うんですね。そうじゃありませんか。通産省なら通産省が具体的個別的にいろいろなデータを握って全部これを指示していく。その指示に沿って業者が単に協力の点において話し合いをするというようなことが実際できるかどうかですね。公取はそういう体制が行政官庁にあるというふうに考えておりますか。つまりこういう体制にない。あるということを前提とすれば、あなたのおっしゃるのはあるいは意味が通るかもわかりません。しかし、実際ないわけです。ないとすれば、行政庁がいかにどうやっても、結局業者業者だけでいろいろきめていく、それを政府が追認するということ以外に考えようがないと思うのです。
  24. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 お話が少し極端になるのですが、いまおっしゃられたようなことにはならなくて十分やっていけると思います。  というのは、私いろいろ行政の経験を通じまして、確かにあらゆる資料が、ただいま現在での一番新しい資料が手元にあるわけじゃありません。統計を出す義務を負わされておるものでさえ、一定期間経過してから出てくる。それから一番新しい統計といったって一月前がせいぜいだというようなものがあるわけです。ところが緊急に、たとえばある物がここで不足したという場合に、それに対して出荷をしていかなければならないという緊急事態が現に起こっているわけです。緊急に手当てをしなければいかぬという場合に、統計にたよってやっておるなんということは仕事にならぬわけですから、したがってこれぞとおぼしき業者を呼んで、どれくらいストックがあるのか、生産能力があるのかということは当然聞くでしょう。そういう具体的なケースも私は十分あり得ると思います。しかし、これは何もカルテルをやれというのじゃないのでして、どういうふうなことができるか、増産はどの程度可能かということを聞く。そうしておいて過去のいろいろなデータというものは、これはモデル的に分析して持っているべきだと私は思います。それによって、できない、できないと言っておるが、しかしこれだけはできるだろう、出荷は、在庫がない、ないと言っておるけれども、前からの趨勢から見ればそんなはずはない、だからどうしても出せと言えば、業者のほうはしぶしぶそれに応ずるといいますか、実際はそうでしょう。これからだってますます石油の供給量は減るのですから、そういう事態が発生しないわけじゃないので、業者の言ってきたものをそのとおり認めるということではやりくりも何もつかないし、価格の面でもそれでは国民が絶対に納得いたしません。ですから、向こうのほうからどのような希望を持ってこようと、自分として推定される原価——原価といっても厳密なものはすぐにはじけないけれども、私はモデルケースでつくれると思うのですね、過去のモデルケースがあるわけですから。したがって、原料がこれだけ高くなったという事実は把握しておる。それに対してそれをどういうふうに価格に織り込むべきかということはできるわけでございまして、業者の言い分をそのまま認めて判こを押してしまうというふうな行政は避けられると思います。これはたいへん苦労を要しますけれども、その気になればどの官庁でも業者に振り回されるというふうな事態はなくて済ませるはずである、私はかように信じておるわけでございますが、私はそういう官庁の責任者じゃありませんから、ただ過去における私の経験からそういうことを申し上げるだけでございます。行政の統制の経験も私は持っておりますか、業者の言い分など聞いておったらそれこそ全然コントロールになりません。そういうことはわかっておるわけでございますから、各省の方もそれだけの権限を持って、権威を持って行動されることを私は信じております。そうなるだろうと思います。
  25. 野間友一

    野間委員 だから、業者が寄ってやることはそんないいことやらぬわけですよ、もう幾つかあなたのほうで摘発されておりますけれども。しかも各官庁にはそれを正確に把握する資料はない。資料を出せ、あるいはいろいろなものについて政府があるいは行政庁がきめるということについては、あなたがおっしゃったように十分なデータ、資料はないということになりますと、結局は業者から出してきたものをのむ以外にしょうがないんじゃないですか、実際に。政府は正確にそういう実態を把握して、個別的に業者に対して指示することが実際には可能ですかどうですか。可能じゃないでしょう。
  26. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 何事にも私は満点ということはないと思うのです。そういうことは望んでもできないことでございますが、しかしおおむね適正、おおむね妥当であるという線ならば、これは努力すればできると思います。いま灘なたは資料がなければできないだろうとおっしゃったけれども、過去の資料はあるわけですね。それからあとの変動要因というものは、これは理屈で最近のデータ、最近の変動要因を持ってくる。たとえば現在保有量は幾らかという場合に、その在庫量を出すためには生産と蔵出しの量をあれする、あるいは原料の段階においてもどれだけ買い入れた実績があるかとか、こういうことで最近の、つまりきのうのデータというのはないわけですが、しかしそういうことは前のデータを把握しておればその中のモデル的なものをつかまえてやっていけば、私は大体の見当というものは出てくるだろうと思います。ですから不可能ではないと思います。
  27. 野間友一

    野間委員 大体の見当では困るのですよ。正確にやらなければならぬわけでしょう、正確に。しかも過去のデータ云々と言われますけれども、それが正確であるかどうかを担保するものは全くないわけですよね。そこを問題にしているわけです。何が正確なのかどうか、どうやって担保するのですか、正確性の担保は。
  28. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私、公取委員長でありますけれども、いまのお話を聞いているとどうも何か私が行政官庁の主管者みたいな立場になりますが、しかし先ほど申しましたとおり百点満点ということを望むというのは、その事態の緊急性というものとにらみ合わせてやらなければならぬことである。これはほかの科学関係、ほんとうの意味のサイエンスの問題でありましたら、少しでも狂ったら大事に至るわけでございますが、しかし経済問題については、私は九〇%あるいは九五%程度当を得ておればそれは許されるべきことであるし、やらないよりははるかにましであるという場合がある。ぐずぐずして事態を遷延して、そうしてほんとうの有効な措置をとれなかったという場合に比べれば、私はそういう措置をとったほうがいいと思います。  ただいま行なわれておりますプロパンガスの千三百円というふうな問題ですね。これだって厳格な原価計算をしてああいうまるい数字が出てくるわけはないのです。原価計算を詳しくやっておればおそらくきめられません。千二百九十九円とか千二百八十円という数字も出るかもしれませんし、あるいは何十円か上回る場合だってあるでしょう。しかしそこは、これはこの場合黙ってほうっておけばどんどん上がってしまうというプロパンガスの状態を見て、これに対してとにかく一つの歯どめをするという点からいっておおむね妥当な線であれば、厳格な原価計算に沿っていなくてもその程度のことは私は当然必要な措置に入るのではないかと思うわけでございまして、私がこれ以上やりますと主管大臣の権限を何か侵すことになりますので、どこまで正確にやれるかというふうな問題につきましては、ひとつ私でなく主管大臣のほうに御質問いただきたいと思います。
  29. 野間友一

    野間委員 なぜ私が執拗にお聞きするかといいますと、公取は独立の権限を持っておられるわけです。そしてこのような行政官庁、これらが業者サイド、こういうことをチェックする機能ですね、これを十分発揮しなければならぬわけです。そういう任務を持っているわけです。その公取が、あなたがいみじくも先ほど言われたけれども業者は寄って悪いことをするやつがずいぶんあるわけですよ。そういうことに道を開くような覚え書き、これをつくられた姿勢そのものを私は問題にしているのです。事業者が寄って、政府指示監督すればいいのだ、何でもいいのだ、こういうような形の中で、あなたのほうでこういう覚え書きを結ばれた、そういう姿勢を問題にしているわけです。だからこれはやはり破棄して、そして厳格に独禁法を守っていく、こういう姿勢にどうして立たなかったのか。これをすぐ破棄する、そういうことをあなたここで約束していただきたいと思います。私は強く要望したいと思います。
  30. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ただいまこの覚え書きを破棄する考えはございませんが、もしもこの覚え書き根拠としてそして違法な行為が頻発する、つまりたびたびそういうことで、むしろこれを悪用するという事例がたび重なるようなことがございますれば、私どもはこの破棄を求めたいと思います。ただし相手のあることでございますから、十分当該官庁と話し合いをいたした上でそうするつもりでありますが、しかしそういう覚え書きをわざと曲解しない限りにおいては、これによってカルテルが促進されるものとは私は考えておりません。いまのところはそういう考えでございます。
  31. 野間友一

    野間委員 そうしますと、あなたのほうで厳重に、私はこれは即時に破棄すべきであるという強い主張なんですけれども、あなたのほうで厳重に、いま現にずっとこういうのがあるわけですから、私はそれをすぐ破棄すべきであると思いますが、あなたのほうで厳重にこれを監視して、そういう事態があれば直ちに検討して破棄する、そういう強い姿勢をもって臨むかどうかということを最後にお聞きしたいと思います。
  32. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 いずれにいたしましても、私ども公正取引委員会は、こういう時期にカルテル等の違法な行為をもっていろいろ世の中の人に迷惑をかける者に対しては、能力のある限り厳格に対処する、その気持ちにおいてはもう非常に強い決意を持っておりますから、覚え書きの点につきましてもいまから直ちにどうこうとは申しません。しかし目に余るような状態が頻発して、それが覚え書きによるものである、こういうふうなことがわかれば、そのときになってしかるべく対処いたします。
  33. 野間友一

    野間委員 最後に通産大臣、いまの公取委員長の発言に対してお答え願いたいと思います。
  34. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど来御議論を拝聴しておりましたが、高橋公取委員長という人はなかなかがんこな潔癖な人で、私はかねがねその人格に傾倒しておる人です。そしてこの独占禁止法を守るためにはからだを張って必死になってやっておられることを何回か経験しておりまして、高橋さんのいまの御答弁につきましては私は全幅的に敬意を表して、その考えに従っていくつもりでおります。
  35. 野間友一

    野間委員 終わります。
  36. 平林剛

  37. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私はまず主として通産大臣にお伺いするわけでありますが、その前に経企庁長官に具体的な問題をお伺いいたしたいと思います。  きょうの新聞発表によりますれば、政府は国鉄、消費者米価を十月まで半年凍結というようなことをおきめになったように発表になっております。その国鉄、消費者米価の半年凍結というものが、当然郵便あるいは私鉄等の運賃にもブレーキがかかるであろう、こういうふうに報道されておりますし、また大蔵大臣の談話といたしましても、記者会見におきます談話は、政府がこれだけの決意を示しているのだから、他の料金値上げも当然考え直してもらわねばならない、こういうふうに語ったといわれております。  前回の連合審査のときに、私は航空運賃値上げの申請が行なわれておる、しかもその航空各会社の状況を見ますと、相当な利益が上がっているし、あるいはボーナス等のあれもかなり高額のものが出ている。さらにまた、四十七年度において値上げがすでに行なわれておるわけでございますから、そういうもろもろの条件を含め、今日の物価鎮静という角度から当然、この政府決定から見れば、航空運賃の値上げ申請というものもブレーキがかかるべきであるというふうに考えるのでございますが、簡潔にひとつお答えを願いたいと思います。
  38. 内田常雄

    ○内田国務大臣 けさの新聞に報道せられておりましたのは、いまだ政府決定というわけではございません。政府と自民党首脳との間で、来年の予算の編成あるいはこの法律施行に伴う物価の安定等の見地から、公共料金についてはあのような方向で検討を進めるということで一致をいたしたわけであります。これは国鉄運賃にいたしましても、すでに法律できまっておる点などもございますし、それらの法律上の措置もございましょうが、しかしいずれにいたしましても、石田さんが仰せられましたように、私どもの強い物価なり料金に対する決意を示したものに相違ございません。  航空運賃のお話がございましたが、これは所管の運輸省から経済企画庁にまだ合い議がまいっておりませんけれども、同じ一環として、当然これは慎重に処理すべきものであると私自身は考えております。
  39. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 その問題で時間をとるわけにまいりませんので、逐次法案の問題並びに基本的な問題についてお伺いをいたしますが、まず法案の問題になりますので、経企庁長官にお伺いいたします。  この法案の第四条、第九条によりますれば「標準価格」並びに「特定標準価格」は改正することが、当然可能であるようにできておるわけでございます。しかし、その基本的な問題はあくまでも価格安定というところに主眼があるわけでございますので、そう再々改定をされたのではたまったものではない。そういった意味におきまして、この標準価格や特定標準価格改定の条件というものがある程度明確にならなければ、何の歯どめもない、そういうわけで改定の条件いかんということを、お伺いをするわけであります。  例をあげてお伺いをいたしますが、このようなインフレ状況下にありましては、当然明年の春闘には大幅な賃金値上げ、いわゆるインフレ手当を含めたものの要求になるであろう、こういうふうに考えるわけであります。さらにもう一つの例をあげますれば、石油の原油の場合でございますけれども、従来の平均価格は五ドル四十セント、こういわれております。ところが、最近は十七ドルというような、そういうような高値の原油の輸入というようなことも報道されております。そういうような場合、いわゆる個別にこれは考えるものか、あるいは標準価格の改定のときには相対的な問題としてとらえて考えていくのか。ここら辺のところを明確にお答えを願いたいと思います。
  40. 内田常雄

    ○内田国務大臣 標準価格というものは、この法律の第一条、二条にもございますように、物価の安定を通じて国民生活を安定させることが目的でございますので、むやみにたびたび変えるべきものではないと私は考えます。ただし、いま賃金のお話などもございまして、春闘につきましては、毎年、春闘によって賃金ベースを変えるという法律制度はございませんけれども、しかし公務員べースなどをとりましても、社会における他の賃金との関係において、一定の状態があらわれた場合には人事院から国会に勧告がある。その勧告に従って賃金ベースを直すというような、そういう法律上の仕組みがあることから考えましても、私ども標準価格によって物価の安定をいたします場合にも、とれ、凍結ということではない。やはり賃金の要素が加わりましたり、あるいは為替のレートが変わりましたり、あるいは海外における輸入価格を通ずる原材料の価格などが大きく変わりました際には、スライド制という意味ではございませんけれども、そういう価格構成の主要な要素というものは取り入れて考え直すことがあってしかるべきであろうと思います。
  41. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それではこの法律が発動することになりますと、本日あるいは本会議にかかるかもしれない。この十二月半ばでそういうものは発動して、実際にことしじゅうに何品目か決定をされる。それが来年の春闘においては賃金が上がるので、そうするとわずか四カ月ぐらいでこの標準価格は変わるものと、こういうふうに理解をされるわけでございますけれども、これは間違いありませんか。
  42. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは必ず変えるとも必ず変えないとも私は申し上げられないわけでございまして、物価の著しい騰貴等によりまして、国民生活が破壊されるということを防止するわけの目的の法律でございますし、たびたび申しますように所得政策に踏み込むという法律でもございませんので、これは逆なお答え、間接なお答えをいたしますと、この法律によって、春闘による賃上げ等を規制するというものではございませんので、状況に応じて私は判断してまいりたいと思います。
  43. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そうしますと、賃金改定必ずしも標準価格、特定標準価格改正の条件にはならぬ、こういうことでございますが、さすれば、少なくとも一年程度はこういうものは変えないというのが原則なのかどうか、この点もお伺いいたします。
  44. 内田常雄

    ○内田国務大臣 一年ということを申し上げるわけにもまいりません。私が先ほど述べたことにつきましても、賃金が春闘等で上がっても、標準価格を変えないということではありませんで、この席で変えるとも変えないとも私は申し上げかねる。そのときのわが国における経済全体の状況に即して、標準価格のきめ方あるいは変更等についても対処をすべきものである、こう申し上げたわけでございます。
  45. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この問題ばかりやっておられませんけれども、これの条件的なものは何一つ出てこないわけでございますけれども、少なくともやはり原則的にこのぐらいの期間というものを設定しておかなければ、賃金が上がったあるいはコストが高くなった、そのたびに改正をしたのでは何にもならぬじゃないですか。だからその意味で、私は歯どめの意味で申し上げているのでございまして、もう少し標準というものを明らかにしなければならない責任が政府にはあるんじゃないですか、どうですか。
  46. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これ、いろいろ申し上げますよりも、冒頭に石田さんが仰せられましたように、国鉄料金でも消費者米価の価格でさえも引き上げを予定しているときから六カ月間は据え置くというような大決心を政府がいたしておりますことからも、そういう公共料金のみならず、一般の物資の価格につきましても、むやみにそれを引き上げる方向で改正するつもりではないということはお察しいただけると思います。ただし、これ、賃金を押える意味でもございませんし、また海外からの原材料等の引き上げ要因や、また万一そういうことは、いま為替が変動相場制にございますから何とも言えませんが、為替レート等の大きな変更のある場合には、それはいろいろ私は考慮、判断の要素になるべきものであるということは申し上げておかないと、これ、すべての価格一年凍結というふうにもなるまいと思いますので、御理解をいただきたいと思います。
  47. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いまのような見解ではさっぱりわかりませんけれども政府の苦悩もそこら辺にあるのだと思いますので、これ以上追及はしません。  次に通産大臣に、安定カルテルの問題が先ほどから話題になっておりますので、これに関連をしてお伺いをいたします。  前回の参考人の意見聴取のときに堀越参考人は、標準価格設定あるいは統制問題は業界と相談をしてやってもらいたい、そういうような意向を強く漏らしておられたわけであります。この問題に対して通産政務次官にお伺いをいたしましたけれども業界の意見を聞いて標準価格をきめるのはよくないけれども、参考程度は当然あり得るんだ、参考意見は聞いていいんだ、こういうようなことを彼は答弁をしておられたわけであります。それに対して高橋公取委員長は、標準価格設定は政府独自においてやるべきである、独自の決定である、業界の意見聴取は好ましくない、これは同意できません、こういう非常に相対立した意見をお述べになったわけでございます。一体通産大臣は、この価格決定について業界の意見も聴取してきめなければならないとお考えになっているのかどうか、この点についてお伺いをいたします。
  48. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 標準価格の決定には、法律にも書いてありますように、いろいろな手続、つまりこういうことを考えてやれということが書かれてあります。そういう中の一環として業界の意見を聞くということも悪いことじゃありません。消費者の意見も聞く。決定は政府がいたします。決定が政府の責任において行なわれる、そういう形で行なわれるならば、それは業界共同行為とかそういうものではもちろんないし、政府の行政行為を行なうための一つの資料として政府が聞くということは決して悪いことではないと思っております。
  49. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 ちょっとニュアンスがはっきりいたしませんけれども、当然資料の提出要求等は求めなければ標準価格はきまらぬ、これは筋であります。その程度なのか、あるいは業界の意見も聴取するのか、それによってこの取り扱いは大きく分かれるわけです。しかも覚え書きにございますように、さらにきのうですか公取委員長答弁をしておられますけれども業界が悪用すれば撤回をするというようなことになっております。先ほど申し上げましたように、公取委員長は明快に、業界の意見聴取は好ましくない、こういうふうに仰せになっておるわけでありますから、そこら辺の見解が大きく分かれているんじゃないかと思うのですけれども、再度御答弁をお願いしたい。
  50. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いま公取委員長にお聞きしましたら、業界が固まって業界の意見として通産省に持ってくる、そういうようなことは好ましくない、そういうことをおっしゃった由です。私もいま申し上げましたように、決定は政府がする、政府がするについてはいろいろな人の意見を聞く、その中に参考として業界の意見も聞く、そういうこともあり得るということであります。
  51. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私は字句にこだわるわけではございませんけれども業界となりますれば、これはいわゆるある程度まとまった、団体めいたニュアンスが生まれてくるわけであります。あるいは一企業の意見を聞くということであれば私は了といたしますけれども、そういう団体めいた意味での業界と使われるのであれば、これは覚え書きに対して大いなる違反である、いわゆる独禁法違反の疑いが明らかであると思いますけれども、どうですか。
  52. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 業界というといろいろな連想が起こりますけれども業者の意見を聞く、そういうことでもけっこうです。
  53. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そういうお答えでもなお問題はあろうかと思いますけれども、こればかりやっておられませんので、次の問題に移りたいと思います。  経企庁長官にお伺いをいたしますが、これは課徴金の問題にも関連をするのでございますけれども、現在の物不足の状態におきましては、小売り段階標準価格を設定されて物品を販売するときに、上の業者からどうしてもこれこれでなければ売れないというようなことで、小売り業者としてはやむを得ず標準価格以上の価格で売ってしまったというようなケースも起こり得る、こういうふうに私たちは考えておるわけでございます。小売り業者は実際に標準価格を守りたかったんだけれども、上の業界あるいは業者の圧力が強くてどうにもならなかった、これは明らかに卸売り段階によって特定標準価格を守るべき責務を破らされておるわけでありますから、責任は小売り業者の上に来る。その場合の措置はどういうふうにされるのですか。
  54. 内田常雄

    ○内田国務大臣 石田さんがもうすでに御承知のように、最初のソフトの標準価格をきめます際には、小売り価格につきましては標準価格をきめましても、直接上部段階の卸売り価格につきましては標準価格をきめない場合も、現在私どもが出した法律では、必ずしも卸売り価格はきめません。一番最初の蔵出し価格は小売り価格とともにきめてまいります。まん中の卸売り価格というものは、いろいろ卸売り段階がございますので、上と下のはさみ打ちで、標準価格はきめないけれども、あるべき卸売り価格の姿がきまるから、それでいいではないかということになっておるわけでございます。しかし、いま提案をいたしております法律案におきましても、課徴金の対象となる特定標準価格をきめます場合には、小売り価格のみならず、直接上部段階の卸売り価格もきめることになっておるわけでございます。したがって、その特定標準価格違反を卸売り業者がいたしました場合には、小売り業者へ来る前に卸売り業者自身が課徴金を取られる、こういう仕組みになるわけでございます。ただし、最初に申しました課徴金の対象にならない一般の標準価格をつくります場合にも、やはり卸段階で小売り人が困ることにならないように、卸売り標準価格というものをつくったほうがいい場合にはつくり得るように法律を修正すべきではないか、こういう御議論を与野党の間でなさっておることも承っておりますので、そういう意味からいたしますと、それはごもっともの考えだとして、私どもはすなおにそういう修正を受け入れる場合もあり得る、かようにも考えております。
  55. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 その意見は前にもすでに伺ったわけでございまして、与野党の接触の段階におきましても、卸売り価格というものは、いろいろな流通段階もありますから、全部にきめるということは無理があろうというふうになっておるのです。私は、そのきめない場合のことをいまあなたに申し上げているわけでございます。幾つも流通段階がありまして、卸売りの標準価格というものが設定できない。だけれども、小売り段階のすぐ上の業者に圧力をかけられた場合に、標準価格は守れないわけでしょう。その場合に、卸売り業者に対してどういう措置があるんだということを伺っておるわけです。
  56. 内田常雄

    ○内田国務大臣 そういう場合にも法律は、卸売り段階標準価格はなくても、小売り標準価格から類推して卸売り業者の売るべき価格が高過ぎる場合には、引き下げの指示もできますし、また公表もいたされます。またそれが課徴金の対象になります特定標準価格の場合には、小売り人いじめになって、小売り人から無理な課徴金を取らないで済むように、特に課徴金をきめました第何条かの第二項に、そういう特別の場合のこともうたってありますこと、石田さん御承知のとおりでございます。
  57. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そういう標準価格をきめない卸売り業者に対しても公表等の措置を講ずることができるとあなたおっしゃいますけれども、これはどこの条文にありますか。そんな条文見たことないじゃないですか。その説明は聞いてない。
  58. 小島英敏

    ○小島政府委員 第六条の第一号に「標準品目標準価格」とございまして、「取引の態様又は地域的事情その他の事情が」とございますが、この「取引の態様」と申しますのは、いわゆる取引の形態といいますか、卸、小売り、あるいは卸の中でも一次卸、二次卸というような段階がございますが、そういうものを含めて取引の態様といっております。したがいまして、標準価格が定められておりませんでも、その上の段階の卸売り価格が合理的な水準よりも高く売られている場合には、いま大臣が答えられましたように、卸の段階に対しても引き下げの指示ができるというふうに解釈いたしておるわけでございます。
  59. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 引き下げの指示ができるということになりますけれども、それは、たとえば五つの流通段階がありました場合に、全部にかかるわけですね。さらにその課徴金の問題について、どうしてもそういうふうに圧力によって小売りが標準価格をこえて売らざるを得ない場合、いわゆる課徴金を支払わなければならないその原因が上の業者に基因するときには、その上の業者から取り得るわけですか。
  60. 小島英敏

    ○小島政府委員 そのとおりでございます。
  61. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 じゃ、了解いたしました。  次の問題に移ります。  物資指定の問題についてお伺いをするわけでございますが、十二月の十四日の閣議において内田経企庁長官は、指定品目候補、これは消費者物価指数あるいは卸売り物価指数の構成品目から季節商品を除いた生活必需品に重点を置いて幅広く選んでほしい、こういうことを各大臣に要望し、これが了承を得た、こういうふうにいわれておるわけでございますけれども、この真意についてお伺いをしたいのでございます。いわゆる幅広く選んでほしいというようなことになりますと、この法案が発令をする段階においてはかなりの品目が、数品目ということではなくて、数十品目というような、そういう想定に私どもの考えとしてはなるのでございますけれども、この真意について簡単にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  62. 内田常雄

    ○内田国務大臣 それは、閣議で私が口頭で関係各大臣の御協力を求めた趣旨のあの発言をさされたことと思いますが、直ちに幅広くという表現ではございません。せっかくこの法律案委員各位の御協力によりまして成立をいたしましても、物資の指定なりあるいは指定された物資についての標準価格というものがなかなかきめ得ないというようなことになりまして、まあ俗なことばでいいますと、この法律が当面、から振りをするようなことにならないことを私は一番熱心に考えておるものでございますので、消費者物価指数を構成する品目あるいはまた卸売り物価を構成する品目等の中から、いまおことばがありましたように、標準価格をきめるのに適さないものを除いて、価格の著しい高騰があり、また高騰のおそれがあるものについてはでき得る限りすみやかに、またでき得る限り国民の生活の足場を安定させるために、品目を選んで、そしてこの法律標準価格の設定、運用についての各大臣の協力をあらかじめ求めた、こういう次第でございます。
  63. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 通産大臣にお伺いをいたします。  いまの御発言を聞いておられたと思うのでございますけれども、いままでの通産大臣の御発言を新聞等で拝見をしておりましても、安定法が施行された場合におきましても、これはいわゆる抜かずの宝刀だからそう簡単に品目指定はしないのだ、まずそういうような法律をつくって、その権限でいつでもできるんだぞということを示すことが、いわゆる行政指導の上に大きな力になるんだというような御発言をしばしば繰り返しておられるわけでございますが、この安定法が施行された場合に、通産大臣のほうはもう幾つかの品目をこの中に発令させるように、いわゆる政令で定めるということになっておりますが、そういうふうにおきめになるお考えはあるのですか。
  64. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この法律が成立する前と成立したあとでは、政府の立場は著しく違います。法律ができましていつでもやれるという体制になりますと、かなりきき目があるという情勢になると思うのです。そういう意味でこの法律の成立を一日も早くこいねがっておるものでありますが、私としましては、まあできるだけ行政措置でいってみる。それでどうしてもやむを得ないというときにこの法律を発動しよう、そういう考えに立っておりますので、できるだけいわゆる指導価格、やる場合でも指導価格あるいは行政指導による数量調整、そういうことを続けていきたい、そう考えております。  いっそういうやむを得ないときがくるかということは情勢判断の問題で、これはほかの閣僚とも相談してみたいと思っております。
  65. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この前の物価局長のお考えでは、いわゆる投機防止法案の対象となった二十一品目、こういう中からまず第一段階としては品目指定が行なわれるのではないだろうかというようなお話でございました。私も、全部というふうに受け取ってはおりませんけれども、この法律が施行された段階におきまして、この二十一品目の中で直ちに考えられるものはあるかどうか。いわゆる通産関係でございますれば丸太、製材、合板、印刷用紙、トイレットペーパー、医療用のガーゼですか、綿糸、それから綿織物、その他の品目があげられております。それから石油に関する品目五つというふうにあげられておりますが、現在のこういう物価高騰の状況から見て、一体この二十一品目の中で通産省所管のものとしては本年中にこの安定法の指定物資になるものがあるのかないのか。あるとすれば具体的な品目をあげていただきたいと思います。
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 本年中に指定するかどうかということはまだ、先ほど申し上げましたように行政指導でできるところまでやりたい。私、前から申し上げているようにソフトランディングという形でやっていきたい。しかしやむを得ずという事態になった場合には法律を発動するという態度でありますから、時期をいま明言するわけにはまいりません。しかし、いまおあげになった二十数品目の中には有力候補はあると思います。
  67. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 まあなかなかこの名前があげにくいだろうと思います。これはいわゆる便乗値上げとの関係があって、これをあげますれば法律違反してまでもどんどん上げてしまうんじゃないかというおそれもあるわけでありまして、一がいに言えない原因はそこにあろうかと思います。この品目指定が行なわれない段階においても、毎日の新聞で御存じのとおり、かなり値上げが行なわれておるわけでございます。この問題を同法案に規定してある標準価格設定という条件からいろいろいままで話を詰めてきたのでございますけれども、まあ内田長官は、物資指定を行ない、標準的な生産費、輸入価格、適正利潤を計算していけば、たとえそのときの売り値が高いものであっても適正なものになる、こういう表現をしていらっしゃる。また物価局長は、法律施行段階標準価格を計算して、それが正しいとすれば低い価格できめられるであろうと、こういう意味のことをおっしゃっております。また標準価格を決定するときに高い価格をつけているとすれば、さかのぼって原価に対し高い利潤をつけていることが明らかになるというようなことで、低くすることも可能であるというようなニュアンスの発言をしていらっしゃるわけでございます。通産大臣は、具体的にそういうような品目指定をなさって、標準価格等についていろいろ計算をなさるわけでございますけれども、このように、いまの発言のニュアンスのように、一カ月先、二カ月先にさかのぼって価格を引き下げというようなところまで可能である、そういうこれが法律なんだというふうにお考えになっていらっしゃるかどうか、この点についての御意見をお伺いしたいわけであります。
  68. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これはケース・バイ・ケースで、その品物の性格やら因縁、将来の見通し等も考えてみませんと、一がいにお答えすることはむずかしいと思います。
  69. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 なるほど。一般的な例としては申しにくいということでございますが、さすれば特定の場合は当然引き下げもあり得るというふうに、いまの大臣の御答弁ではそういう論理になるわけでございますが、いかがですか。
  70. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 必ず引き下げるとも言えませんし、もちろん引き上げるというようなこともなかなか言いにくいことで、すべてケース・バイ・ケースでやるよりしようがない。物価の問題は私が一言言いますと、すぐざわめきが起こるものでありますから、無用なざわめきを起こさないために、品目やらそういう問題については慎重を要すると思っておるのであります。
  71. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この問題は確かに非常にむずかしい問題かと思います。しかし大臣も御存じのとおり、現在ではこういった便乗値上げに対して全く対策というものが立てられないわけでございます。それでこういうような標準価格決定の安定法というのが出てきているわけでございますが、何といいましても現在の物資に対する便乗値上げというものは、これはもう実質的にインフレ助長の犯人であるし、インフレマインドを国民の間に定着させる犯人であります。   〔委員長退席、稲村(利)委員長代理着席〕 また、この間起こりました豊川信用のパニック問題、ああいうようなことに対しても、私は潜在的な犯人はこの便乗値上げであると思うのです。そういった意味におきまして、いまの大臣のお答えでは、できるともできないともなかなか言えないようでございますけれども、じゃ一体この便乗値上げに対して通産省のほうはどういう対処の方法があるのか。何らかのそういった対処のしかたがなければ、私は今日のインフレ傾向を押えていくことはできないと思う。それはいろいろな条件があってむずかしいことはわかりますが、しかしむずかしいからといって現在どんどん行なわれている便乗値上げというものに対して歯どめができないというようなことではどうにもならぬ。しかもこの安定法が施行になりましても、実際に指定物資になるかどうかはわからぬのですから、わからぬうちにどんどん便乗値上げが行なわれていくというようなことが現在の状況の中からは十二分にこれは推測できるわけでしょう。それらの問題に対しては一体どういうようなことをやりますか。
  72. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 便乗値上げは断じてこれは許しません。このいわゆる標準価格等をきめる場合におきましても、安定していた過去におけるある時期の値段というものを一つ基準にして考えて、一つの資料として考えて、それから諸般のいろいろなコストのアップとか変化等も検討する材料になっております。そういうような立場でこれは考えて扱ってまいりますから、便乗値上げを許すという考えは毛頭ございません。
  73. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 大臣、便乗値上げを許さないとおっしゃっても、いまの御答弁の流れを聞いておりましても、そういうような値上げを現実に押えることはできないじゃないですか。この際、経企庁長官はそういうものに対して業界全体に対する警告を発せられたわけでございますけれども、これとて業界全体のことでございますから、私ども関係がないというふうにお考えの業者はそれきりのことでございます。   〔稲村(利)委員長代理退席、委員長着席〕 やはりそういった問題に対して、上げ幅があまりにも大きいような場合は、ある程度その特定業者に対しても警告ぐらいはしてしかるべきじゃないか、こういうふうに考えますが、それとてもむずかしいでしょうか。
  74. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは通産省の持っておる行政措置といたしまして、物価抑制という面から便乗値上げをやるようなものはもちろん警告も発しますし、呼んで注意ももちろん与えてしかるべきであります。
  75. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは最後に一問通産大臣にお伺いいたしますが、これはこの前からいろいろ問題になっているのでございますけれども、実際に物資指定をしまして標準価格を設定する場合に、生産費、販売費、適正利潤、こういうものを一応概念規定をしていかなければならないと私たちは考えております。といいますのは、通産省の中におきましたっていろいろな関係局があるいは課があるわけでございますから、その作業をやるのはそれぞれの担当係官でございましょう。したがって、あるいはまた経企庁においても行なわれるでありましょうから、そういった意味におきまして生産費、販売費、適正利潤のいわゆる大ざっぱな概念規定だけでもしておかなければ実際の運行はできないでしょう。これらの問題についてはどのようにお考えになっていらっしゃるのですか。
  76. 小島英敏

    ○小島政府委員 これは現在企画庁を中心にいたしまして、はっきりした概念規定を定めるように準備中でございます。
  77. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いつごろまでにこれが決定をされますか。
  78. 小島英敏

    ○小島政府委員 明確に何日ということはちょっとお答えいたしかねますが、極力急いでおります。
  79. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは私の質問はこれで終わるわけでございますけれども、経企庁長官に特に御配慮を願いたいと思いますのは、われわれはこの国民生活安定緊急措置法というのはあくまでも一般消費者の生活を守るというところに基本的な理念がなければならないと思うのでございます。にもかかわらず、この法案についてはそういった消費者の生活を、被害を受けるのは消費者でございますから、その被害を受けた消費者がどこに苦情を持っていけばいいか、あるいはまた受けた損失をどうしてくれるのかということに対しては基本的にこの生活法案はお答えがないのであります。そういった意味におきましてどうか十二分に、その運行にあたっては消費者の立場をまず第一にお考えになって運行をしていただきたい。これだけを要望いたしまして私の質問を終わります。
  80. 平林剛

    平林委員長 松浦利尚君。
  81. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私が一番最後の質問者になりましたが、いままでほとんどの方が質問をして、政府答弁もそれぞれ出たわけでありますが、具体的にいま問題になっておるものを通産大臣にお聞きをいたしまして、この法案が通ればこういった問題が解決するのかどうかということを具体的にお尋ねをいたしたいと存じます。ただ、私がほかの用事で追われておりましたために事前に質問の内容通告をしておりませんでしたから、あるいは大臣が答えにくいことがあるかと思いますけれども、その点は前もってお許しをいただきたいと思うのであります。  御承知のようにいまプロパンガスを千三百円という指導価格で供給するように指示されたわけでありますが、実はプロパンガスの流通経路を調べたわけであります。ここにわかりやすいように図面を書いてきたわけでありますが、これが元売りであります。それからスーパーディーラー、一次問屋、二次問屋それから小売り店というこの流通が通常LPガスの常識的な流通経路、こういわれておるわけであります。ところが、それにバイパスができておりまして、元売りから直接小売りに流れていくもの、あるいはスーパーディーラーから直接小売り店に流れていくもの、こういうバイパスができ上がっておるわけであります。当初このルートで流れるのが六五%、このバイパスで流れるLPガスが三五%、こういっておるのが常識になっておるわけであります。ところが、最近この常識が変わってきたわけです。どういうふうに変わってきたかというと、従来六五%流れておったLPガスが、逆にこのバイパスのほうによけいに流れ出したわけです。こちらのバイパスのほうに六〇近く流されておる。従来の流通経路には四〇ぐらいしか流れておらない。そのために、この流通経路におる小売り店の皆さん方がLPを買おうとしても買えない。逆に、バイパスのほうに行けば買えるという、そういう状況が今日の流通経路の中に生まれてきております。現に私は日石ガスを調べました。日石ガスの報告によりますと、払い出し先別の比率は、スーパーディーラーが四〇%、こっちの経路が六〇%という報告がきておるわけであります。いまなぜLPガスのこういう問題が出てきたかといいますと、流通経路が変わってきた。従来六五%流れておったからここで買っておったのだけれども、それぞれの元売りが、自分の系列店、直接小売り店のほうがかわいいから自分のお客さんのほうによけいに流す、自分のお客さんのほうに優先に流す、そのために従来の流通経路が消えていっておるという事実が今日の実態として出てきておるわけです。石油法が通りました、国民生活安定法案が通りました、こういった問題は、たとえどこの流通末端であっても平等に分配される、こういう保証がこの二つの法案によって保たれるのか、守られるのか、その点を通産大臣から明確にお答えいただきたいと思うのです。
  82. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 現在でもわれわれは、業界業者指導いたしまして、相互融通ということをやらして、例のタクシーの問題等の場合におきましてもそういう緊急措置もやらしたわけでありますが、法案が通れば融通というようなことはさらに指示しやすくなるだろうと思います。
  83. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 指示しやすくなるというのではなくて、指示に従わない場合が出ておるのです、現実に。いまそういうふうに指示しておっても、現実に末端には指示されたように流れておらない。特約店のほう、バイパスのほうにはたくさん流れておるが、ほかのほうには流れておらない。現実にこの法案が通ったあと指示ということで保たれますか。指示に従わなかったときはどうしますか。
  84. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 要は、消費者の利便、消費者のためにいかに便利になるようにやるかということであるのでありまして、そういう意味においてわれわれはできるだけ行政措置でやりたい、法律を発動するときはもうほかに方法がないというときにやろう、そういう考えでおるわけであります。したがいまして、法律が通れば、そういう権限を得まして、指示からさらに強い命令的な方向までわれわれが行動できるわけでございますから、われわれの行政措置というものはいままで以上にエフェクティブに行なわれるだろうと思うわけです。しかし、それでも事態が改善されないという場合には法発動、そういうことになりまして、さらに事態は改善していくだろうと思います。
  85. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 さらにお尋ねをいたしますが、こういう状態ですから、直ちに法を発動すべき段階にきておるのじゃありませんか、通れば。
  86. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 経済状態全体はもう法を発動していい状態にはある、そう私は思っております。しかし、いつ具体的にどうするかということは、これは通産大臣が諸般の情勢を考えて物資について個別的にきめていくべきものであると思います。
  87. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 このLPG、プロパンガスについて私はもう発動する段階にきておるのじゃないか、そういうふうに具体的に申し上げておるのですが、そういう時期ではないとまだ御判定なさいますか。
  88. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは運輸省とも相談してみなければいけませんけれども、われわれはできるだけ行政指導でできるところまではやりたいと思っておるので、いますぐ発動するにはまだ適当な時期ではないのではないか、われわれがもっと努力する余地があるのではないか、そういうように思います。
  89. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いままで行政指導でやっても守られておらない。現実にこの流通の流れを、日石の場合に従来どおりにこの流通に流せということが行なわれておらないのですね。逆にこっちのほうがどんどんふえておる。私は、この法が通っても、こういう状態になってもなおかつLPの流通についての流れを正規に戻そうとしないのなら、この問題は解決しないと思うのです。  さらにもっと具体的にお聞きしたいのでありますが、この日石ガスの川崎スタンドにおける輸入販売の状況がここに出されておるわけであります。ところが、当初オート、自動車に使うガス、これが川崎スタンドで四百五十トン実際には十月末で出荷されておったものが、十一月末には百九十四トンと下がっておる。逆にブタン、オート用のガスとそんなに変わらない工業用のガス、ブタン、これは十月が七千八百二十七トンに対して、十一月には一万三百六十七トンとふえておる。こういった販売のあり方、あるいは生産のあり方、こういったものについて、大臣のほうでは、現在これだけの騒ぎが起こっておるわけでありますから、現にまだその問題は解決されておりません、こういった問題に対して、法律が通ったあと直ちに生産命令なりあるいはオートに対する出荷命令等の手続が発動できるのかどうか、それとも一たん行政指導という今日行なっておるような姿をそのまま継続して、どうにもこうにもならぬ段階でなければ、法の運用、適用はやらぬ、オートのガスについてそれでは具体的にこういう状態でありますからお尋ねをしておきたいと思う。
  90. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 最近のLPGの不足の場合には、工業用に回しておるのを切って民生用のほうへ回したはずであります。いまのお示しの日石ガスの場合はどういう事情でそういうことが起きたか調査をしてみます。私らとしては、先ほど来申し上げますように、できるだけ行政指導でやって、そうして万やむを得ないというときに法の発動を考えておりまして、いまの場合でも、もしそういう事実があれば行政指導でやってみたいと思います。
  91. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは横浜製油所の問題でありますが、家庭用プロパン、十月に一千三百九十トン出荷しておったものが、十一月には九百五十トンと落ちておる。ところが、現実に生産されておる量というのはふえておる、こういう事実も指摘されるのですね。ですから、今日の流通末端における混乱というのは、一つはインテグレーション、垂直的な統合を行なうというバイパスができたために、従来からの流通機構が混乱をされておるわけですね。さらにメーカー側が従来オートに回しておりたガスを工場のほうに回す、そういったことが、末端で絶対量が足らない上にそういう操作が中間段階で行なわれておるために、下部末端のたいへんな混乱が起こってきておることは、私たちしろうとが見ても明らかなんです。しかも、そういう経過というのは今日の行政指導をもってしても依然として解決されておらない。にもかかわらず、大臣は、この法律が通ってもそういうのは適用せずに行政指導でやっていけるんだ、こういうふうに言っておられるわけですけれども、そうであるとするならば、私は行政指導ですべてが行なえるんではないかという気がするのです。国民はこの石油二法が通ったらあした直ちにこういう問題が解決すると思っておる。ところが、いま大臣のことばを聞いておると、この法律が通る通らぬということは、これは関係ない、要は行政指導で努力をするということによって解決をする。通っても、ぎりぎりでなければやらぬのだ、ぎりぎりの状態がどういう状態かわかりませんけれども、今日の状態は行政指導段階であると、こう言っておられるのですね。それじゃ一体この法律が発動される時期、LPGに対し、あるいは家庭用のプロパンに対し、この法律が始動する時期は、ガス製品に限って、一体どういう状態のときだと大臣は考えておられるのか、その点をひとつ国民の前に明確にしていただかないと、国民に誤解を生むと思うのです。行政指導でできないからこの法律があると思っていたけれども法律が通っても実質的には状態は変わらないわけでありますから、異常な時期とかこういった表現ではなくて、具体的にどういうときをもってこの法律の適用時期と判断をされるのか、そのことをひとつ通産大臣からお答えをいただきたい。
  92. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国民の権利義務を拘束するような法律はできるだけ適用については慎重でなければならぬのであります。したがいまして、できるだけ行政指導でやってみて、それではもうできないという万やむを得ざる場合に法律にたよる、そして強権を発動するというのが政府としての穏当な態度であると思いまして、LPGの問題につきましても同様に努力してみたいと思っております。
  93. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は大臣の言っておることに賛成なんです。何も法律をすぐ適用することは必要ないと思う。だとするなら、私は非常にいろいろあるこの法案についてなぜそんなに政府は急がれるのか、もっと慎重審議でやるべきじゃないかという気がしてならないのです。いま大臣は、本法が通っても依然として行政指導が続いていく状態と、こう言っておられるわけでありますが、経済企画庁長官、プロパン、オート、こういったものに限定して、具体的に一体これがどういう状態になったときをもって本法の発動時期と御判断になるのか、その点をひとつ明らかにしてください。
  94. 内田常雄

    ○内田国務大臣 一口に石油二法案と申しますが、国民生活安定緊急措置法のほうからは、石油につきましては石油法のほうに譲っている部分が大部分ございます。ことにいま松浦さんがお触れになりましたのは、私などの胸に浮かぶこの法律の規定を見ますと、国民生活安定緊急措置法の系列に入ってくる物資については法律第二十五条の発動ということになります。ところが、私のほうといいますか、国民生活安定緊急措置法のほうは、いまの事態を緊急事態と認めて、公布と同時に施行をいたしますので、その指定物資の指定とかあるいは標準価格の設定とかいうものはでき得る限り早くやりますけれども、二十五条というものは、もうたびたびここで御説明申しましたように、いろいろな手段を尽くして万やむを得ない場合に発動して、配給とか割り当てとかいうような問題について政令で必要な事項を定める。しかし、その二十五条をちょっとごらんいただきますと、他の法律に定めるものを除きと書いてございまして、その二十五条からは石油需給適正化法の規定を実ははずしてあるわけであります。他の法律に規定するものを除きというのは石油法のことを主としていっております。そこで、石油法のほうへ戻りますと、これは経済企画庁もちろん関係がないわけではございませんけれども、主として通産大臣が運営をせられる石油という物についての動かし方——価格については国民生活安定法のほうに移ってまいりますけれども、物についての、松浦さんがお尋ねのような動かし方はもっぱら石油法のほうへいくわけです。ところが、石油法のほうは、それを発動するときには一つのある種の事態を宣言するということになっておりますから、そこを御理解いただきたいと思います。
  95. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私があなたに聞いたのは、流通問題は通産省でしょう。私の質問が足らなければ訂正いたしますが、末端で価格の問題が混乱して、そのために流通が乱れて、そして、さっき言った従来の流通で買おうとすれば、ここは上がっておるのです。行政指導が届かぬのはここなんですよ。従来の流通機構に従来どおり流れておれば、ここは何も騒ぎが起こらない。この流れがこっちに移ったために物がここにないのです。だからこれが上がるのです。物が上がるというのは、故意に上げるという場合もあるし、流通によって上がるという場合もあるでしょう。ですから、何も割り当てその他のことを言っておるのじゃない、こんなことはたいへんなことですから。われわれはこういう割り当てというようなことを、マル公にするときには国会の議決を要求しておるわけですけれども、われわれの修正案は政府に受け入れられておらぬわけですから。私たちはそういうことは重要な段階だと思っています。しかしそうじゃない、現状認識として、そういう状態はこの国民生活安定法を発動する時期になっておるのかどうかと、こう言って聞いておる。
  96. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私の説明が少し足りないのかもしれませんが、そのLPガス十キロ千三百円という行政指導価格は、これは通産大臣と私が相談の上で、国民生活安定緊急措置法が通りました後におきましては、これを標準価格の方向に持っていくことにおそらくなるだろうと思います。その場合には私の行動というものが発動しますが、しかしそのルートをどうするかということにつきましては、私のほうが直接どうするというわけではございませんので、これは石油法のほうによって、石油法の十一条あるいはそうでなくてもその前の各条のいろいろな条項によって、通産大臣がいろいろおやりになる、こういう法律の仕組みになっておりますので、通産大臣が先ほど御答弁になりましたところで御理解をいただきたいと存じます。
  97. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大臣、物価というのはばらばらでやったらだめでしょう。いま私がなぜ長官にお話ししているかというと、長官も知っておられることを申し上げて恐縮ですが、流通というものの操作によって価格が上がってくるということになれば、LPGであれ、ガスであれ、あるいは軽油であれ、それは流れの問題についてやはり通産省と話をしなければいかぬ。同時に、価格の問題はこの国民生活安定法でしょう。そうなってくれば、あれはこっちです、私のほうはこれですでは、物価という問題の根っこは解決しないのじゃないですか。そうじゃありませんか。私はそういうところにやはり政府の考え方の問題点があると思うのです。なわ張りがあると思うのです。だから物価問題は一つも解決しない。正直な方ですから、いみじくもそういうお答えをなさったんだと私は思うのですけれども、それはほんとうに政府の物価に対する姿を浮き彫りにされたと思うのです。そういうことはぜひ改めていただきたいと私は思うのですね。   〔稲村(利)委員長代理退席、委員長着席〕  それから同時に、いま大臣は十キロ千三百円が、これが通ったら大体標準価格になるだろうと、こう言われましたが、ところがこの標準価格というのは、この国民生活安定緊急措置法のほうでいきますといろいろもっともらしいことが書いてある。ですから、連合審査でいみじくも通産大臣が御答弁なさったように、標準価格というのはぶった切り価格なんでしょう。いろいろもっともらしいことを書いておるけれども、要するに行政措置で何かばっとやらなければいかぬ。だから算出根拠とかなんとかというのはあまり考慮せずに——もちろん考慮せずにと言ったら語弊があるでしょうが、要するにぶった切る、このぶった切ったものが標準価格だと、こういうふうに国民全体が理解しなければならないものが標準価格だというふうに理解したほうが手っとり早いと思うのですが、そうでしょう。経済企画庁長官、どうでしょう。
  98. 内田常雄

    ○内田国務大臣 事は石油の問題でございますし、もちろん石油価格は、その石油の動くルートによりましていろいろな態様というものを考えなければ、標準価格をきめますときにも不都合が生ずると思います。しかし、せっかく石油の所管大臣であります通産大臣がお見えになってお答えをいたしておりますので、私は石油関係ないとは言いません、何しろ経済企画庁でございますから、石油でも材木でも何でもとつつかまえてこうあるべきだということを申しますけれども、せっかく通産大臣がお答えになっておるのを後輩の私がこうだ、ああだと、こう言わないほうがよろしゅうございますけれども、同じ内閣におりますから、十分それは通産大臣と打ち合わせをいたしまして、松浦さん御指摘の配給ルート、それに関連する価格などにつきましても、事態に即するような処置を御相談をいたしてまいりたいと思います。
  99. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 さらに通産大臣にお尋ねいたしますが、商社の日商岩井、この日商岩井ガス株式会社の末端でこういうことを言っておるのです。これは向こうが言ったことですから、もう全く間違いないんですよ。個人タクシーの皆さんに対して、系列店の要求が完全に入ってきていない。だから要するに物が不足してきて、私たちのバイパスにも物が流れてきておらないのだから、十二月は三〇%ぐらいの自然増が見込まれておるけれども、こういったものに対しては配給をすることができません。もう一つ、タクシー業界、特に個人タクシーは行儀が悪い。一番行儀の悪いお客さんだ。まず買いたたく、仕入れ先を転々とする、最初にしわ寄せが行くのは当然じゃありませんか、商売上やむを得ないことだ、こういうように日商岩井のほうは言っているのですね。  それから三井物産のカマタ株式会社というのがありますが、これも同じようなことを言っておる。タクシー業界は、いままでの商売態度があまりよくなかったので、品不足になって一番最初にしわ寄せを受けるのはあたりまえだ、こう言っている。  三菱液化瓦斯の下部である堀川産業、これも系列店そのものには不足はないけれども、その他の人についてはそのときどきにしか配給できないじゃありませんか。結局、すべては従来のお得意さんを優先する。その優先確保のために、もうどうにもならぬのだ。いまさら個人タクシーの皆さんが来て、くれくれと言っても、そういうものにはやれませんと、こう言っておるわけですが、こういうのは商売慣行としてあり得ることですが、これはこの法律の中で、附則六条の改定がありましたが、附則六条というのは、政府提案の投機防止法の修正でありますが、これは売り惜しみの対象になると通産大臣なり経済企画庁長官はお考えになりますか。
  100. 小島英敏

    ○小島政府委員 やはり程度問題だと思います。かなり供給力に余裕があるのにそういうことを言っていれば、これは一種の売り惜しみでございますけれども、そこ自身が、先行き非常に入手が苦しいということが見込まれる場合には、ある程度そういう動きが出てくる面もやむを得ない。必ずしもこれを、すぐに買占め法の対象として摘発するということにはならないと思います。
  101. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 商社の系列にあるこういった会社が、自分のところの系列店に流すガスすら不足をしておるんだから、飛び込みのお客さんやら、あるいは従来のお客さんでない人たちには差し上げられませんと、こう言っておることは、商慣習上当然だというふうにお認めになった。だとすると、この問題を解決するのに、この法律石油法が通りました、あるいは国民生活安定法が通りました、一体この二つによって、絶対量が不足していくわけでありますから、従来行なわれておる商慣行そのものが実は障害になってきておるような状態に対して改善することが可能なものなのかどうか、その点をひとつ御説明いただきたいと思う。
  102. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先般来、プロパンにつきまして個人タクシーの皆さんがたいへん迷惑を受けまして、いろいろ騒ぎがありました。そこで行政指導いたしまして、大体十二月は十一月の九割、十一万五千トンのLPをそちらのほうに配当いたしまして、そして個人タクシーのほうにも回すように運輸省を通じてやっておるところであります。だから当然、これは個人タクシーであろうが会社のタクシーであろうが、商売としてやっている以上は、同じような生活上の問題をかかえておるのでございますから、政府としてはこれを一視同仁に扱ってやるべきであって、会社のほうで自分の商業慣習とか利害関係から、多少政策的に考慮するようなことがあることは、これは考えられますけれども、そういう自我を抑制させて、みんなに均てんするようにやるのが政府の立場でありますから、そういうことはやっております。それは、個人タクシーの騒動がなくなったのを見てもおわかりだと思います。
  103. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 個人タクシーの騒動がなくなったとこう言われておるのは、並ぶ人がおらなくなったんですよ。依然としてやはり自殺者が出たり、翌日のプロパンをさがしに懸命に走り回っておるんですね。それは認識が違うと思うんです。政府が努力なさったことは認めます。しかし現実にタクシーの運転手さんたちは、オートガスをさがすのに今日たいへんな苦労をしておるわけですね。ということになりますと、現実にこの法案が通っても根本的な解決にはならない。行政指導という行為によって行なわれる以上は、すぐには解決しないということを大臣は言っておられるんだと思うんです。これは発動しないわけであります。
  104. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 すぐ発動しなければ解決しないと結びつけられるところは、私は無理があると思うんです。やはりいままで懇切丁寧に一つ一つ解決していくということでやってきて、いろいろな問題をおさめてきたわけです。トイレットペーパーの問題でも、塩の問題でも、砂糖の問題でも、そういう懇切丁寧に一つ一つ解決していく。若干時間がかかりますけれども、皆さんに安心してもらうような措置をやってきておるわけですから、御信頼願いたいと思うんです。ただし、この法律ができればいつでも発動できるぞ、命令できるぞ、そういう根拠政府は得ますから、そういう体制さえ整えておけば、かなり有効な指導が行なわれると見ております。
  105. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 結局、この法律は発動せずに、従来の行政指導に力をかす程度のものであって、従来の行政指導を続けていく、こういうことでありますね。そのことで、そういうふうに理解をいたします。最終的にこれを使うことはわかっておりますがね。何かありますか。
  106. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この法律が発動せずに済めばけっこうで、こんないい話はないと思っているんです。しかし、発動する事態に至るという危険性と可能性がありますから、出しておるわけであります。
  107. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでこの法案が通ったら、あしたにでもこの問題は解決するという国民の願いです。それは、いや違うんだ、行政指導でやっていくんだということが、ここで明らかになったということなんです。そのことを私はくどくどとお聞きをしたわけなんです。国民の皆さん方は、これが通ったらすぐあしたにでも解決すると思っていられる。しかし政府はこれが通ったとしても、従来続けてきた行政指導で行なうんだ、こういうことがはっきりしただけでけっこうだと思うんです。  それでこの法案の内容について、もう時間がありませんから肝心なところだけお尋ねをしておくのでありますが、通産大臣と先ほど経済企画庁長官にお尋ねをいたしましたが、標準価格というのはぶった切りですね。ですから、プロパンも千三百円というぶった切りが大体標準価格になるだろう、こういう御想像、御推定なさった。ところが、この標準価格についてさらに困難があったときには、この標準価格を施行しておる物資を特定標準価格ということで、一ぺんぶった切りの価格で押えておるから、今度はそのものが妥当かどうかという検討を加える。逆にいうと、いまの行政指導価格が妥当かどうかということを特別標準価格というもので検討を加えて、このぶった切りの価格根拠のないものでありますから、精査をしてみたら、千三百円は確かに高かった。国民の皆さんが、政府がやることはトイレットペーパーをやっても、確かに緊急放出したが全部高値安定になっておるじゃないか、全部高いところで安定してしまっておるじゃないか、これが非常に不満があるわけですね。それはぶった切りだからやむを得ないと国民は理解をしたとして、それじゃそれをさらに精査をするための特定標準価格というものに持っていった段階で、これは非常に高過ぎたというときには、業者に対して、価格を下げなさい、標準価格以下に下げなさいという特定標準価格というものが存在するのかどうか、その点をひとつ経済企画庁長官からお答えいただきたいと思います。
  108. 内田常雄

    ○内田国務大臣 標準価格というものは、まあぶった切りという表現がいいかどうか、とにかく先導的、主導的の標準品目についての価格でございますが、特定標準価格というものをつくる段階になりますと、これはそれに違反をいたしますと課徴金を取られるわけでありますから、おっしゃるとおり、より厳密な価格をつくることになります。しかしそのつくり方は、標準価格のようなものは、標準品目を幾つか選びまして、まるめて何千円とか何百円とかいうことになりますが、特定標準価格ですと、これはもう取引の態様というものを考慮に入れて、標準品目よりもさらに特定品目を限定して、そのものについて取引の態様に即して、こういう規格でこういう取引のものは幾らである、こういうきめ方をいたしますので、厳密審査をしたならば必ず特定標準価格のほうが一般的に安くなるとか高くなるとかいうことは、私は言えないと思います。より正確な、ある態様に即して、ある特定品目についてやる、こういうことになるとお考えをいただきたいと思います。
  109. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いまの千三百円とか、標準価格指導されましたね。その価格もこれで移って標準価格になるわけでしょう。そうすると、トイレットペーパーや何かでも高値安定になっておるわけですよ、高値安定に。だから、たとえばトイレットペーパーならトイレットペーパーの特定標準価格、物資に指定された特定標準価格を調べた場合に、ああこれは高過ぎた、安くしなければならぬといったときには、この特定標準価格のほうが標準価格よりも安くなるということがそれじゃ一般論としてあるのかないのか。いいですか。標準価格を三百円できめた。よく調べてみたら、特定標準価格で調べてみたら、二百円が妥当な価格だった。そうすると、特定標準価格を二百円に下げることが可能なのか。業者に対して、値段を下げなさい、こう言って指示することが可能なのかどうか、こういうことを具体的にお聞きしておきたいと思うのです。
  110. 小島英敏

    ○小島政府委員 この前お話し申し上げたと思いますけれども、理論的にはやはり特定標準価格のほうが厳密な計算をいたしますから、低くなるケースが多いと思います。その反面、標準価格をきめた段階よりも時期的に特定標準価格をきめる時期のほうがおそくなるわけでございますから、その間にコスト事情等が上がっている面も当然あるわけでございますから、この時期的な点に着目いたしますと、特定標準価格のほうが高くなるケースもあり得る。したがいまして、一般的に安くなるか高くなるかということは申しにくいと思います。
  111. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それじゃ通産大臣にお尋ねいたします。経済企画庁長官でもけっこうですが、標準価格というものを通らずに、本法ですぐストレートに特定標準価格にいけるものがありますね。たとえば石油関係製品は、これはもう非常に簡単なんですから。石油精製過程から出てくるものは非常に簡単。灯油だってA重油、B重油、すべて簡単ですね。価格の構成も非常に簡単。こういうものはストレートに特定標準価格ということで直ちに精査して、特定標準価格というものに持っていくことの努力をいたしますか。やはりこういうものも標準価格、特定標準価格という段階を経ますか。
  112. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いまここで何ともお答えができないのですが、先ほど私が述べましたように、また松浦さんが言われましたように、またうちの政府委員も言いましたように、精査をした結果が、標準価格からさらに進んだ特定標準価格に反映する場合もございますけれども、私が申しますのは、標準価格というものは、いろいろな品目があります中で、標準品目、中間的なものを幾つか選びまして、まとめて幾ら、こうきめることになると思いますが、特定ということになりますと、そのうちの規格なんかも厳重なもの、また取引の態様なんかも、さっき松浦さんが例にあげられました、従来の取引ルートでいくのか、あるいはバイパスみたいなのができたのを認めるのか、その取引の態様というようなものも頭に入れまして、そしてきっちりしたものをきめるということになると思います。でありますから、石油製品が、直ちに標準価格段階を経ないで特定標準価格をつくるのに最も適したものであるかどうかということは、石油製品の種類により、また取引のルート等により、他の物資についても同様でありますけれども、検討をいたしました上特定標準価格というものをつけることになろうと思います。
  113. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 この法案は非常に手続がややこしくて国民にはわからないですよ。だから千三百円なら千三百円という指示価格がありますね。プロパン十キロ千三百円という指導価格がある。これを先ほど標準価格と言われましたね。だからこの標準価格を、今度は混乱をすればさらに特定標準価格にして精査する。精査をしてみたらその価格が下がる場合もあるということはわかりました。そのことはわかりました。それじゃ非常に物が高騰するからストレートですぽっと特定標準価格に入るというものは、非常に簡単な物資しかないわけでしょう。石油というもの、こういうものは非常に簡単だから。流通経路にして複雑だと言われたけれども、元売りははっきりしておる。元売りの特定標準価格をきめようと思ったら、非常に簡単にぽんときまる。小売り店の標準価格をきめようと思ったら、通産省行政指導しておるように、ぽんと簡単にきまる。どちらも簡単にきまるわけですよ。そういうものは標準価格などという手続をとらずに、ストレートに精査して特定標準価格に入ったほうがむしろ国民のためにプラスじゃないですか。ちゃんとデータもある、正確である、ぶった切りでない。ある程度根拠を持った価格ということになるんじゃないですか。だからそういうものは特定標準価格にストレートで持っていったらどうですか、こうお聞きをしておる。
  114. 内田常雄

    ○内田国務大臣 石油というものは、松浦さんがおあげになった一つの例でございましょうが、いまの三百八十円とか千三百円というものはおおむね、たとえば地域的にも全国一本みたいな形で通産大臣がおきめになっておると思います。もっともプロパンガスについては北海道は千五百円だ、こういうような地域の差を設けられておるようでありますが、特定標準価格を設けます場合には、特定品目あるいは取引の態様を考えることは先ほど申したとおりであります。その価格も必ずしも全国一本ではありません。地域的の価格を設けるということでないと、一本にしておいて、よけいな費用がかかるところの人が高く売ったら直ちに課徴金ということも不公平でございますから、ちゃんと地域に分けてきめなければならないということにもなる。それらの点もございまして、いま石油製品は松浦さんのおっしゃるとおり、すぽっと特定にいくのだということ、これは通産大臣にもいろいろお考えがございましょうし、もともとは通産大臣、主務大臣がおきめになって私のほうに御相談があることでございますから、私がここで通産大臣のお考えを差しおいて——一般論はいいです。一般論はいま申しましたとおりでありますが、これ以上のことは申し上げません。
  115. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それぞれの各官庁でやられることはわかるのです。しかし基準がなければだめでしょう。一定基準がなければ、通産省のやつはこういうものは特定標準価格ですぽっといくが、ほかの農林省なんかはいかなかった。混乱が起こりますね。その基準をきめるのは経済企画庁じゃないわけですか。そういうやつは全部各省の大臣にまかせられておるわけですか。全部そういうふうにまかせてかってばらばらに各省やれ、こういうことですか。それじゃ、私たちは通産大臣に質問することは失礼だったから聞かなかったのですが、通産大臣に御質問することになりますがね。通産大臣が基準をつくられることになるわけですよ。いまのその点、小島物価局長答えてください。
  116. 小島英敏

    ○小島政府委員 特定標準価格生産費の計算がしやすいからということではございませんで、この第一段階標準価格というものをやってみても効果がなかなか出ないという場合に、特定標準価格に移るというのがたてまえでございます。
  117. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 法律解釈でそんなことはわかっておるのですよ。そういうことはわかっておるのですよ。だから私は石油を例に出してお話ししておるのですよ。そういう簡単なもの、しかも非常に精査しやすいもの、しかも国民に非常に重大な影響を与えるもの、しかも価格がだんだん高騰しつつあるもの、そういうものは特定標準価格にストレートにぱっと入れるんじゃないですか。そういうことの基準もないのですか。
  118. 小島英敏

    ○小島政府委員 技術的に、特定標準価格になりますとなかなか厳密な計算をしなければいけませんから、そういう意味では、おっしゃるように比較的生産費の計算などやりやすいものは特定標準価格に移りやすいということは言えると思います。しかしながら、そのたてまえとして、先ほど来通産大臣もおっしゃっておられますように、なるべく強い措置にいかないで効果をあげたいというのが本法の運用上の基本方針でございますから、やはり第一段階をできるだけやって、それでもどうにもならぬときに第二段階に移っていくということが基本的な方針でございます。
  119. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そういうことはわかっているのです。ただ、本法にそういうことが書いてあるから、だからそういったものは特定標準価格に移っていく。それは具体的に石油のこういう例じゃないかということを示しましたけれども、それについて明確なお答えがございません。きわめて残念だと思うのですね。一般論としては理解できましたが……。  それから、これは通産大臣にお尋ねをいたしますが、これも通産大臣の所管であります。これももうわかっておられるのですが、大臣には説明しやすいようにちょっと図示したのですが、実はこの法律標準価格なり特定標準価格をきめ得るものは、元売り価格かあるいは末端の小売り価格かめいずれかなんです。ある場合は両方、ある場合は元売り、ある場合は小売り、こういうことで標準価格なり特定標準価格をきめれると、こういうシステムになっておるのですね。この流通段階のまん中は全然標準価格の対象にならない自由競争なんです。いまかりに末端の小売り店が特定標準価格をきめられた、百円なら百円ときめられた。ところが、だんだんこういう流通経路の卸段階が自由競争をやって、逆に百円で売らなければならないものを百十円で売ってきた。じゃしようがない、ここは百二十円で品物を売らなければならないから百二十円で売ったら、これは課徴金を取られる。この中間段階がないために、いつもしわ寄せを受けるのは、末端の小売り店の皆さん方が課徴金という形で金を取られるのですね。こういうことを通産大臣としてお認めになりますか。やはり通産省が中小企業を育成助長するのか。この流通段階のもとと末端だけがきまって、中がない。しかも中は自由競争でどうでもやりなさい、ですから複雑な流通経路に同じものがどんどん流れていくのですね。おれのところにくれ、おれのところにくれといって、問屋を通じて流れていく。しかもその経路をたどっていった品物がいつの間にか特定標準価格よりも高くなっておった。これは課徴金を出せ。しかし、その上のほうは幾ら高く売ってもかまわぬわけですから、全然課徴金の対象にならぬという小売り店泣かせという問題が起こってくるのです。こういうものについて通産省は事前に経済企画庁に対して、本法にこういう不備があることについて御相談をなさっておられたのかどうか。私は明らかに不備だと思うのですが、こういう問題についての通産大臣の御見解をまず承っておきたいと思うのです。
  120. 小島英敏

    ○小島政府委員 特定標準価格についてきめております第八条の第二項をごらんいただきますと、「特定標準価格は、全国を通じて、又は主務大臣が定める地域ごとに定めるものとし、取引の態様その他の事情に応じて定めることができる。」と書いてございまして、この「取引の態様」と申しますのは、いま先生のおっしゃいました取引形態、つまり卸段階段階別に定めるということになっておるわけでございます。
  121. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そういうことはわかっているのです。そういうことが書いてあるけれども、事実わかりますか。何万軒とある末端の小売り店ですよ。そういうことがわかりますか。しかもAというものが、ただこれは二つの流通を流れてきておるようになっていますが、同じ物資でも五つも六つもルートを流れるものもあるのですよ。態様はばらばらなんです。ほんとうに態様のばらばらなもので、一体どこの元売り価格かわかりますか。そういう機能がありますか。確かに法律では「定めることができる」のだから、定めなくてもいい、定めてもいいと、こう書いてある。そういうことを言うなら、なぜ「定めることができる」ということじゃなくて「定める」と、こういうふうにせぬのですか。なぜ「できる」としたのですか。「できる」と書いた理由は何ですか。やらぬでもいいということを書いた理由は何ですか。
  122. 小島英敏

    ○小島政府委員 これはおっしゃるように、物によって非常に複雑な形態がございますから、あらゆる場合に全部きめるということ、きめなければならないという書き方は避けたわけでございます。しかしながら実際上、この運用において先生おっしゃるように、小売りのほうに責任がなくて上のほうに責任がある場合には、これは小売りいじめにならぬように十分注意して運用いたすつもりでございます。
  123. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そうしますと、小売り店をいじめないように上のほうにやるといったって、上のほうの取引の態様は非常に複雑でわからぬ場合が多い。だとすると、課徴金など設けても、小売り店の末端の人たちが高く売ったって、全部流通の中で高くなってしまうわけですからね。結局課徴金という意味がなくなるのじゃないですか。課徴金という意味がなくなると、逆に小売り店のほうは幾らでも高く売ることが可能である。課徴金という性格も、この前議論したようにきわめてあいまいですけれども、率直にいって、小売り店においては課徴金というのは取れないでしょう。末端の小売り店では、課徴金はほんとうに取れると思っておられますか。取れるものもある。しかし、こういう複雑な流通機構の中で取れないものがほとんどだ。そういうふうに私は理解をするのです。その点が小売り店の皆さん方は、自分たちだけが犠牲になるのじゃないかという非常に不安感を持っておられるのですね。そういう点についてひとつ経済企画庁長官、これは非常にあいまいなんですね、課徴金の取り方が。私は結果的には課徴金というのはあっても、取れないから、わからないから、取らぬと同じことになると思うのですね。大臣その点どうですか。
  124. 内田常雄

    ○内田国務大臣 答弁がかみ合わないかもしれませんが、特定標準価格につきましては、各段階ごとに特定標準価格というものをつけるたてまえをとらざるを得ないと思います。小売りのみならず、第一次卸でも、第二次卸でも、あるいはまた一番上の蔵出し価格でも。ところが、一般的に設けることになるでありましょう標準価格につきましては、御指摘のように小売り標準価格はつくるし、また一番上の蔵出し標準価格はつくるけれども、まん中の卸売り標準価格というものについては規定がしていないこと、松浦さん御発見のとおりでございます。そこが実は問題になっておりますことも承っておりまして、各党間の課題になっておる、こういうことを承っておりますので、私どもはそうであれば、すなおにそこは皆さま方の御指摘に応じるのがよかろう、こう考えております。
  125. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま各党間の修正に応ずるというようなことを言っておられますけれども、これは確かに問題があるのです。この法案全体に流れておるのは弱いものいじめなんです。具体的に申し上げますと、これは閣議で通産大臣はおそらく賛成なさったかどうかわかりませんけれども、非常に弱いものいじめです。この割り当てを発動いたしますね。二十五条で「割当又は配給等」を行ないますね。そうすると第二十六条で「帳簿の記載」をするようになるのです。それが不備だった場合には、この人は罰則規定で一年以下の懲役もしくは二十万円以下の罰金だったと思うのですが、小売り店の御主人たちは罰金を科せられるのです。  大体、中小企業の商店の皆さんには失礼ですけれども、帳簿や何かあまりつけられない。そういう小売り、末端の皆さん方が、この二十五条の発動によって帳簿をし、帳簿を整備されておらなけ、れば罰金を食らう、懲役、体刑を食らう、そういう末端の人に対してはきびしい法律体系になっておる。ところが一方、政府が、大企業に対して、輸入商社に輸入しなさい、あるいは工場に対して生産をしなさい。あるいはここからここに物を運びなさい、向こうの地域が不足をしておるからA地点からB地区に物を運びなさい、そういうことが書いてあって、その点に対して全然指示だけで、言うことを聞かなかったら公表という、たいへん軽いことなんです。ただ公表で済むのです。ところが末端のほうは、割り当てになったとたんにたいへんきびしい体刑から懲役刑、こういう状態が生まれてきますね。この法律体系というのはたいへん弱い者いじめなんですよ。末端いじめなんです。そういったものについて一体どのように運用しようとするのか、ひとつ明確に大臣から答えていただきたいと思います。
  126. 内田常雄

    ○内田国務大臣 法律論になりまして、私もそのほうはあまり名人ではございませんが、第二十六条はいま御指摘のように、その前の条文の二十五条に関連するものではございません。この第二条以下すべてに関連するものでありまして、「指定物資を販売する者」、指定物資は政令できめてまいりますが、「指定物資を販売する者」は、これは小売り業者のみならず卸売り業者でも、あるいはまた生産者の蔵出し価格などの規定がございますが、その生産者でもすべて同じようにここで「指定物資を販売する者」こうかけてございまして、中小企業だけを対象にするという趣旨ではございません。
  127. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 実質的に末端でいじめられるのは一番末端でしょう。さっきから言うように特定標準価格は末端の小売り価格が大体きまっていくわけでしょう。そうなんですよ。末端です。中はわからぬ、卸のほうは。あまりわからない。元売りはわかります。大企業はわかる。結局、これは実際に発動されるのは小売り店じゃないですか。しかもたいへんな犠牲を受ける。片一方のほうは輸送やら輸入やら何かサボつたって、これはただ単なる指示指示に従わなかったなら公表で済むでしょう。  私はそういった意味で、この法律体系というものは確かに自由経済の中の統制経済か何かわからぬようなものを持ち込もうとするから、結局統制経済的なものを持ち込もうとすればするほど一番泣かされるのは末端の小売り店であり、末端の消費者であるということがこの法律自体を見ても明らかなんですよ。私はそういった意味でこの法律はまことに国民にとって不備だ、特に弱い層にある国民に対してはたいへんな、場合によっては犠牲を起こす、問題を起こす、こういう法律だと思う。したがって、この法律運用については、やはりほんとうに国民の立場に立った法の運用、ただ単に大企業とかなんとかだけでなくて、物を流せばいいんだということでなくて、末端におる小売り店、末端の小売り店と結びつく消費者、そういう国民の利益を守るものである、そういう判断に立って適正な法の運用をやっていただきたい、これを発動する場合には。そうしなければ、私は弱い者を泣かせる法律になるということをたいへん危惧し、また危険に思いますから、その点を最後に申し上げて、もう時間が来たそうですから私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  128. 平林剛

    平林委員長 これにて国民生活安定緊急措置法案に対する質疑は終了いたしました。  この際休憩いたします。    午後零時四十四分休憩      ————◇—————    午後二時五十一分開議
  129. 平林剛

    平林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国民生活安定緊急措置法案について議事を進めます。  本案についての質疑は先ほど終了しております。  ただいま稲村利幸君外四名より修正案が提出されております。     —————————————
  130. 平林剛

    平林委員長 提出者より趣旨の説明を求めます。稲村利幸君。
  131. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員 提案者を代表し、国民生活緊急措置法案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。  修正の第一は、本法の運用にあたっての政府の基本的心がまえにつき、法律の実施にあたって、国民の日常生活に不可欠な物資を優先的に確保するとともに、その価格の安定をはかるようつとめるべきこと及び生活関連物資等について、生産、輸入、流通または在庫の状況に関しての情報を提供するようつとめなければならない旨定めることであります。  第二は、本法の運用にあたり、特に広く国民の声を聞きながらこれを施策によりよく反映せしめるため、学識経験者及び一般消費者よりなる国民生活安定審議会を設けることとすることであります。  審議会は、総理府に置き、諮問に応じ、生活関連物資等の割り当てまたは配給その他この法律運用に関する重要事項を調査審議することとし、また、これらの事項に関し建議を行なうことができることとしております。  第三に、本法が緊急事態に即応し相当広範な行政当局への授権を行なっていることにかんがみ、おおむね六カ月に一回施行状況につき国会への報告を行なう旨の規定を加えることであります。  第四に、変動の多い経済情勢にかんがみ、政府は、本法の施行後一年以内にこの法律の規定及びその実施状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずる旨の規定をも加えることといたしております。  なお、標準価格につき中間卸売り段階についてもこれを定めることができることといたしております。  以上が修正案の趣旨でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げる次第であります。(拍手)
  132. 平林剛

    平林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三により内閣の意見があればお述べを願います。内田経済企画庁長官。
  133. 内田常雄

    ○内田国務大臣 ただいまの修正案につきましては、内閣としてもやむを得ないものとして了承いたします。     —————————————
  134. 平林剛

    平林委員長 これより原案並びに修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。羽生田進君。
  135. 羽生田進

    ○羽生田委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、国民生活安定緊急措置法案及び修正案について賛成の討論を行なうものであります。  本法案は、現下の物価高騰に対処するためにはまさに緊急不可欠のものであります。昨年末以来、木材価格の高騰に始まって、鉄鋼、繊維、大豆へと価格の上昇は波及してまいりました。当初の価格上昇については、海外物価の高騰という一時的要因と、国内過剰流動性などによるもので、総需要抑制策の強化などにより抑制し得るものと考えられておりました。しかし、物価高騰の炎は、おさまる様相を示しません。特に最近に至っては、石油供給削減の影響を受け、物価は一段と暴騰するに至っております。トイレットペーパー、洗剤、砂糖、灯油、プロパンガスなど生活必需諸物資は、価格上昇に加え、物自体の出回りも少なくなり、地域的にパニック状態を呈する場合も見られるに至りました。現在は、まさに憂慮すべき事態に直面しているといわねばなりません。  このような異常事態に対処し、物価の高騰を押えるためには、もちろん総需要の抑制がはかられねばなりませんが、さらに国民生活の安定のためには、個別物資に対する対策も不可欠であります。きめこまかく個別物資の需要動向を把握し、必要に応じ特定物資につき、価格、需給両面に適時適切なる措置が求められるものであります。  本法案は、このような要請にこたえ、経済の異常事態程度に応じ緩急それぞれの手段により、適切なる対処ができるよう措置されているところであります。すなわち、価格の調整面においては、まず標準価格を設定し、これをこえて販売する者に対しては、価格の引き下げの指示及び公表の措置をとり、さらにこのような標準価格制度によってもなお指定物資の価格安定がはかられないような事態に対処しては、特定標準価格を設定し、これをこえて販売した場合には、その差額を課徴金として徴収することとしております。さらに、緊急事態に直面しては、物価統制令による統制額の設定と、これをこえて販売した場合の罰則の適用という強い措置が講ぜられておることであります。  一方、需給調整の面では、総需要抑制策の一環として、設備投資の抑制の指示、公表を行ない得るとともに、供給確保の見地から生産、輸入、輸送等の指示等ができることとされております。さらに供給が著しく不足する等、きびしい事態に対応しては、割り当て、配給等の措置をとり得ることとしております。  以上のように本法案は、まさに経済変動の実態に即応して、適時適切なる手段を講じ、国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保するための万全の措置をとっているものと評価できるところであります。  政府が本法の期するところを真に生かし、適切なる運用をはかることを期待しつつ、経済の異常事態に対処するための本法案の必要性及び緊急性を認識し、賛成を表明するものであります。(拍手)
  136. 平林剛

    平林委員長 金子みつ君。
  137. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、いままでずっと審議をしてまいりました国民生活安定緊急措置法案並びに修正案に対しまして、修正案は多少改善を見てはおりますけれども、原則的に反対の意見を申し述べるところでございます。  昨年来の品不足、物価高は今回の石油危機が発生して以来急激に悪化し、国民生活はひしひしと追い込まれ、どこまでのぼるかわからない、日ごとに高まっていくこの不安定な物価に国民は非常な不安にさらされております。個人タクシーの運転手、また公衆浴場の経営者が先行きの不安に耐えかねて自殺をはかったということなどをあわせて、政府はどのような思いでこの事態をごらんになっていらっしゃるのでございましょうか。  個人の家庭は申すまでもなく、社会保障の貧しいわが国の社会福祉施設、特に子供や老人の施設は入浴の回数を減らしたり、おやつも半分にしてしまったり、牛乳も二本を一本に減らしだり、食事の内容もその質を落としていくばかりでございます。健康が守れないどころか健康危険な状態であって、生きていくことが精一ぱいというような現状になっております。このことは、国民生活の安定を最優先として真剣に意を用いていない政府の経済政策の失敗の表明であると私は考えるわけでございます。  そこで政府は、この状態を改善し、国民生活を安定させるためにと称して本法案を作成しようとしているわけでございますが、ただいまから本法案に関しまして具体的に数点の反対点をあげまして私は意見を述べたいと思っております。  その一〇は標準価格のきめ方でありますが、政府関係業界の意見を徴しあるいはそのデータを参考にして、そして政府のみに強い権限を与えて価格をきめようということになっておりますが、これは高値安定の危険性を非常に含んでおりますこと。  次に標準価格、特定標準価格、公定価格、この三段がまえの価格のきめ方及びその進め方につきましては、政府がその気になればそのときいつでも物統令を発動して、そして戦時中の統制経済に移っていく危険性をはらんでいるという点でございます。  さらに価格の決定に関しましては、先般公正取引委会が取りかわされた本法実施に関する覚え書きにつきましては、公正取引委員長の御説明はありましたけれどもカルテル行為を公認する危険性が多分に含まれているという点であります。  さらにこの法案は緊急措置法でございます。したがいまして、目下の危機に対処するためにあるものだと考えるわけであります。したがいまして、その時点に限って行なわれる、すなわち時限立法の性格を持っていると考えるのでございますが、これを恒久立法としてつくられるところに随時これを発動する危険性を持っているといわなければならないと思います。  政府は、従来の行政指導を強め、これを続けていく方針であるというのでございますから、それならば本法の制定はいま直ちに必要なものではないはずでございます。現行法の独禁法あるいは買占め売惜しみの投機規制法の強化あるいは改善をはかることによっても可能であると考えます。また別途、公共料金の値上げを凍結し、あるいは公共投資を差し控えることをあわせて実施することにより、今回の危機は乗り切れるはずであると考えるわけでございます。  以上、多くの危険性を含み、複雑な手続を必要とし、しかも背景として持っていたいというような性格の法律は、この際制定の必要はないものだとの結論におきまして、私はこの法案に反対するものでございます。(拍手)
  138. 平林剛

    平林委員長 増本一彦君。
  139. 増本一彦

    ○増本委員 私は日本共産党・革新共同を代表して、内閣提出国民生活安定緊急措置法案並びに自由民主党提出の同法修正案に反対して討論を行ないます。  今日の異常な物価急上昇とこれと並行してつくり出された物不足は、生活保護者、年金生活保護者はもとより労働者農民、漁民、中小零細業者に深刻な打撃を与えています。しかも石油危機にあらわれた今日の事態は、今日までの政府の超高度成長、資源浪費という大企業中心の産業政策の破綻を明白に示すものであります。このような事態を招いた田中内閣の責任は重大であると言わなくてはなりません。  ところが政府提出の本法案は、今日の異常な物価上昇を押えると言いながら、次のような重大な問題点を含んでおります。  その第一点は、本法案が物価を下げろという国民の要求に反して、ますます物価をつり上げるものになるという点であります。  政府のいう標準価格、特定標準価格は、標準的な生産費、輸入価格もしくは仕入れ価格に標準的な販売費用と利潤を加えた額が内容となりますが、この標準的な生産費や輸入、仕入れ価格やまた標準的は販売費用、利潤とは単に市場の実勢を資料として判断するというものでありますから、大企業を先頭に物価値上げを競い合っている今日の事態では必然的に高値にきめられてしまうのであります。わが党などの主張してきました指示価格との違いの根本的な対立の一つはこの点にあります。私たちの主張する指示価格は、適正な生産費、輸入価格、仕入れ価格と適正な販売費、利潤を加えた額をあくまでも基準とするものであります。すなわち、いままで市場原理のベールのもとで価格形成に正しくメスを入れることができず、大企業の不当なもうけが野放しになってきたのを、原価計算に基づき適正な価格をきめるものであって、このような立場に立ってこそ国民の理解と納得が得られるのであります。わが党は、このように適正な価格をきめるために原価を国民に公開するとともに、必要な資料を得るために生産、輸入、販売、輸送、保管の業者に対する資料提出命令の権限を認めることをも主張してまいりましたが、このわが党の主張に反対する政府、自由民主党法案のもとでは価格の決定はますます価格つり上げの市場競争に追随せざるを得ないのであって、国民の危惧する高値安定を確実なものにしてしまうと言わなくてはなりません。  本法案に反対する第二の理由は、国民生活に必要な物資の安定供給の確保が保障されていない点であります。何よりも国民の生活必需品の安定した十分な供給の確保をはかることこそ、この法案の最大の目的でなくてはなりません。そのためには、わが党が主張するように、生産、輸入、保管、保有などにも必要な場合には命令措置をもとる必要があります。特に地域的な物資の欠乏に対しては、売り渡し、保管命令によって緊急事態を解決する手だてをとらなくてはなりません。わが党などがこうした立場から、一般消費者、中小企業及び農業、漁業者並びに公共交通事業、通信事業、教育事業、医療事業、社会福祉事業、言論出版事業その他の国民生活の円滑な運営に重大な影響を及ぼす事業に対する物資の優先的確保を政府に義務づけることを提案しておりますのも、政府案、自民党修正案ともにこのような立場に立たぬこととの比較においても、これらの政府提案に反対しなければならない理由はきわめて明白であると言わなくてはなりません。  第三の理由は、本法案が憲法二十二条の営業の自由、憲法二十九条の財産権の保障など国民の基本的人権を侵害する重大な疑いがあるからであります。今日の異常な物不足のもとで割り当て、配給をしなくてはならぬ事態が起こり得ることは認めるものでありますが、この割り当て、配給は憲法の保障する経済的民主主義に深くかかわる重大な問題でありますから、国権の最高機関である国会の議決を経なくてはならぬはずであります。これを一片の政令によって政府の裁量にまかせろという態度は、田中内閣のファッショ的な態度をあらためて証明したものといわなくてはなりません。  本法案に反対する第四の理由は、消費者や国民各層を代表する審議会による本法案の実質的な運営を保障するものになっていないからであります。自由民主党修正案も国民の要求もあって審議会を採用するようになりましたが、この審議会は、私どもが主張する内容と比べて明らかなとおり、名ばかりの審議会であり、国民の要求とあまりにもかけ離れたものだと言わなくてはなりません。  なお、わが党は、これまで申し上げましたような内容を盛った本法案に対する修正案を用意し、その提案の意思を委員長にお伝えいたしましたが、成規の手続をとり得る時間的余裕を持つこともできずに終わりました。これはまことに遺憾のきわみであります。  私どもはさらに野党間の結束を強めて、今後とも法案の改正のために努力をするものであります。  以上のとおり、政府原案、自由民主党案に反対の態度を表明して討論といたします。
  140. 平林剛

  141. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私は、公明党を代表いたしまして、国民生活安定緊急措置法案に対し、次の理由により、反対の討論をするものであります。  その第一点は、標準価格の決定は標準的な生産費、販売費、利潤を加えて決定するものとしていますが、標準的生産費、販売費利潤というものがついに当委員会を通じて明らかにならず、むしろ産業界カルテルやみ再販、かけ込み値上げを公認するという高価格安定になるおそれが十分残ってしまったことであります。また、標準価格の算定根拠を公開しないのでは、国民の不信を拡大する一方であり、当然国民監視の中で価格決定は行なわなければならないのであります。  さらに政府案は、標準価格、特定標準価格の二段階方式をとっているため、標準価格は単なる目安ぐらいの意味しか持たなくなってしまうのであります。  また覚え書きによって、標準価格等の維持についてはカルテルを認めた結果になり、将来に大きな禍恨を残すことは明らかであります。  第二点は、課徴金についてであります。  標準価格を越えて販売した場合、課徴金の対象が力の弱い小売り店等の販売業者だけに負担がかかってくることは明らかであります。  第三点は、物資の需給の調整についてであります。  政府案では、生産、輸入、保管、売り渡し、または輸送に関して、あくまでも措置としては指示にとどまるだけであり、従わなかったときは公表するだけでは、この異常な事態から国民生活を守ることはできません。また資本力の弱い中小企業等が最大の被害を受けることは、石油の削減による業者間の激しい争奪戦を見ても明らかであり、きわめて遺憾であります。  第四に、割り当て、配給に関して、政府案では、政府の一方的な判断でできるような形になっていることは、配給などの国民生活に重大な影響を持つものに対して、これまでの政府の大企業優先政策から見てもきわめて問題であります。割り当て、配給等については、政府の権限をチェックするため、国会の議決によることは、国会に課せられた当然の責務であります。  第五点、資料の提出に関してであります。  政府案では、帳簿の記載、保存等を義務づけているのでありますが、報告の義務規定がございません。今日まで企業は企業秘密のベールの裏で不当な利潤行為を行なってきました。しかし、いまや企業の社会的な責任が強調され、反社会的な企業行動に国民の批判が集中していることにかんがみ、政府案でははなはだ微温にすぎません。  第六点、各項目の理由にも明らかなように、本法案は国民生活の安定を期する法律案であるにもかかわらず、最もその肝要である消費者の権利を守る条項が全くないことであります。  本法律施行にあたって、違反行為があった場合の消費者がこうむるべき損失をを政府が守るべきが当然であるにかかわらず、この欠落によって本法案に対する信頼性は全く失われてしまったのでございます。  第七点、政府案附則第六条の買占め売惜しみ規制法の一部改正についてであります。  政府案では、売り渡し命令を規定しておりますが、その価格については売り渡し買い受け両者の協議によって定めることにしており、これが物価高騰につながることは明らかであり、これでは国民生活の安定に資することはできません。  第八点は罰則であります。これを強化すべきであり、国民経済の混乱を未然に防ぐ抑制力の観点からもきびしい罰則を実現することは当然であります。ただし、価格形成の現状にかんがみ、罰則の対象はその基因者を十分に究明する立場において行なわれなければならないのは言うまでもないのであります。  以上の理由により、本法案に対し、私は、公明党を代表いたしまして反対の意を表明するものであります。
  142. 平林剛

    平林委員長 和田耕作君。
  143. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私は、民社党を代表いたしまして、国民生活安定緊急措置法案並びに修正案に対して賛成の討論をいたします。  現在の日本の状態は、石油危機という思わざる事態によって点火された異常な価格の高揚、悪性インフレという状態になろうとしておる危険な状況だと思います。このような状態に対して、本法案は、政府に誤りない対策を行なわしめるための法案だと思います。しかしこの法案を私どもが審議してくる過程において重視しましたことは、自由なお互いの経済あるいは社会生活というものの自由奔放さということからかもされた面が多いという問題と、これに対処するためには統制、計画というかなり国民の生活権利を脅かすような対策に連なる施策が必要だという矛盾した面を持っているわけでございます。また対処しようとする状態もきわめて広範なものであるし、その施策も必ずしも効果があると確信のできるものではないという特徴を持っておると思います。したがって、そのような立場から私どもは、この法案に対処してきたわけでございますけれども政府の原案をよく検討してみますと、さまざまな不備な点があるわけでございまして、私どもは、野党四党協力をして不備な点を修正さすために努力してきたわけでございます。その結果、先ほど提案されました修正案については、私は、野党各党とは違った評価をいたしております。  いま申し上げたとおり、まだ効果のさだかなものではないわけでございまして、政府の強い決意というものがその効果を左右する大きな要素であるという点にかんがみまして、この修正案に盛られた国民生活を優先にするという姿勢、そしてまたともすれば緊急事態ということで怠りがちな国民、消費者の意見を無視するような結果になることに対して、国民生活安定審議会という諮問機関を設けたという点、あるいは標準価格というものはきわめてむずかしい問題だと思います。標準価格を設定するためには、いろいろの要素、しかも相矛盾する要素を勘案しなければならないし、事前に国民の意見を聞くということが逆に価格をせり上げているような結果にもなるということですから、非常にむずかしい問題であるわけだと思いますけれども、野党の協力した努力によって、これに対していろいろの歯どめがかけられたと思います。また官僚独善の弊を避けるために国会への一定期間の報告ということを規定さしたこと等等、まだいろいろありますけれども、必要な修正点が浮き彫りにされてきたと思います。満点とは申しませんが、八十点くらいのところだと私どもは評価しておるわけでございます。  このようなわけでございまして、先ほど申し上げたとおり、まだ本法のいいと思っておる施策でも、その結果が必ずしもうまくいくとは限らないような不確定な要素を含んでおるわけでございますから、どうしてもこれはできるだけ早い機会に本法の施行の結果について再検討するという条項が必要だと思います。この修正案によりまして、一年以内にこの成果を検討して改めるものは改めるという、ここのところで私は修正のいろいろな問題点も一つの結び目を持ったと思っております。このような点が、先ほど来野党各党から申されておる反対意見に対して、民社党としてこの修正点についての評価の違う点なのでございます。  このようなわけでございまして、今後私どもは、特に政府は本気になってこの緊急事態を手おくれにならないように、しかも国民の意見を十分聞くような体制でもって一生懸命にやっていただくという意味をも込めて、本案並びに修正案に賛成をするものでございます。(拍手)
  144. 平林剛

    平林委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、稲村利幸君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  145. 平林剛

    平林委員長 起立多数。よって、稲村利幸君外四名提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  146. 平林剛

    平林委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決されました修正案について、字句の整理を必要とする場合は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 平林剛

    平林委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  148. 平林剛

    平林委員長 この際、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案による橋口隆君外三名から、本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。橋口隆君。
  149. 橋口隆

    ○橋口委員 ただいま提案いたしました附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文を朗読し、説明にかえさせていただきます。    国民生活安定緊急措置法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行にあたり、特に次の諸点について、適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。  一 国民生活の安定を旨とし、特に生活必需物資の安定的供給の確保に努めること。  二 標準価格の決定等に当たっては、その価格が国民生活に及ぼす影響の重大性にかんがみ、いやしくも高位安定となることのないよう配慮すること。  三 流通機構の一層の改善を図り、生活関連物資等の価格の安定に努めること。  四 売渡し、輸送又は保管の指示を行うに当たっては、特に国民生活及び公益に関連度の高い部門の優先を旨として行うこと。  五 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に抵触することのないよう努めること。  六 政府は国民生活安定審議会を積極的に活用し、その建議については、これを十分尊重すること。  七 地域住民の苦情処理等については、政府機関及び地方公共団体の相談所、消費生活センター等の活用、整備を図り万全を期すること。  八 地方公共団体への委任事務に対する財政負担等の問題を含め、実施体制の整備強化を図ること。    なお、地方公共団体は、委任事務の執行に当たって、消費者の意見を十分尊重するよう措置を講ずること。  九 政府は中小企業者の立場を十分尊重すること。 以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  150. 平林剛

    平林委員長 本動議について採決いたします。  橋口隆君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  151. 平林剛

    平林委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。内田経済企画庁長官。
  152. 内田常雄

    ○内田国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を尊重いたし、善処いたしてまいる所存でございます。     —————————————
  153. 平林剛

    平林委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 平林剛

    平林委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  155. 平林剛

    平林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時二十七分散会