○
中林参考人 私、御紹介をいただきました
中林でございます。実は私は
消団連の
会長を昨年の暮れまで、
創立以来十年余りやっておりましたが、現在は
顧問ということで、
消団連は
会長制をなくしていまやっているわけです。そして、私は現在は
日本生活協同組合連合会の
会長という
立場で
消団連にも参加をしているわけでございますが、その点だけお断わりして、申し上げたいと思います。
そういう
立場でございますので、私は
生活協同組合の
仕事を
中心にずっと
消費者運動をやっているわけでございまして、この
委員会で現在
審議されております
国民生活安定緊急措置法案について、私らは大きな
関心を持っております。したがって、そういう
消費者の
立場から、
皆さん方が御
審議になっておりますこの
法案についての
意見を述べさせていただきたいと思います。
ただ、私は、冒頭に
一つ申し上げたいと思いますことは、どうも最近
石油問題というものが飛び込んできて、そうして
日本経済は
危機になったのだ、
物価問題はたいへんだというように言われる傾向が非常に強いということを私は憂えております。
私は、現在の
物価とか
インフレの問題は、
石油問題があるから重大なことではなくて、ずっと最近まで、
国民は
インフレ、
物価ということで悩み続けてまいっているわけでございます。現に十月中旬の
卸売り物価は前年に比べて二〇%をオーバーした、また十一月上旬の
米価審議会では、私も
米審委員をしておりますので、
米価審議会では、現在
日本の
経済にとって一番重大な問題は
物価問題だということで、私ら当時の
小坂経企庁長官にも
米審にお出かけを願って、
物価についてのいろいろな
お話をお伺いしたという
経験を持っております。したがって、私は、
石油の問題と現在の
インフレ、
物価の問題というものを十分区別して問題を
考えないと、
石油の問題で、その最も究極の、基礎になっている
インフレとか
物価の問題の解決なり
責任というものをすりかえるようなことになってはたいへんだというふうに思っております。
もちろん、現在の
日本経済にとって、
石油は私
たち人間の血液のような位置にありますので、
石油問題の重大なことは私らは百も
承知をいたしております。したがって、
石油の
削減ということで今後
日本のGNPも非常なダウンをしていく、そういうところで、
生産が全面的に減退するということで、いろいろな問題が起きてくる。そういうような点から、この
法律に盛られているような
考え方というものも私は必要かとも思います。
私は、本来的には
統制ということはあまり好かないのでございますけれども、今日のこの
事態においてはそういうこともやむを得ないかというふうに私は思いますけれども、ただ、この
非常事態に対処していくのに、この
法律に盛られていることだけで十分かといえば、まだまだいろいろな点で問題を含んでいるというふうに私は
考えるわけであります。そうして、現にこの
石油問題が起きましてから、なるほど
トイレットペーパーがなくなった、あるいはまた洗剤がなくなった、あるいはお
砂糖がなくなった、そうしてまた歯みがきがこうだ、それから私らもびっくりしたのですが、塩までがないというような
大騒ぎがあったことも事実であります。ただ、そうして
政府が緊急にそれらの中の
トイレットペーパーとかお
砂糖の放出という
緊急措置もやりました。ところが、そういうようなことがやられて、そうして品物が出回る、出回って
主婦たちがむなしく思ったことは、
値段が高いところで凍結されている。高値安定と申しますか、安定ということばがいいかどうかわかりませんが、そういう形になって、
物価が高いところで落ちついているという、その事実というものは私
ら消費者にとっては非常に残念なことだと思っております。そうしてまた、私は非常に驚いたことは、この十一月の末から十二月の初めにあたって、もう各
商品についての
値上げが全面的に行なわれたということであります。
実は、十二月三日の月曜日だったと私記憶しているのですが、私
たち各
生協で
商品の
仕入れをやっておりますので、
仕入れ担当者の
会議をときどきみんなやっておりますが、三日の月曜日に
仕入れ担当者の
会議をやった。
組合から
商品を全面的に上げてくれという申し込みがきているということを各
商品について
担当者から述べられたということで、それで私
たちのところへも電話がありまして、とんでもないことだ、こんなに各
商品が上がったんでは、
一体消費者の
生活というものはどうなっていくんだということで、私のところへも
連絡が実はありまして、私、三日の夕方だったかと記憶しているんですが、実は
経企庁の
担当の方に、こういうような
異常事態が起きている、そうしてこの
安定法がつくられる、あるいは
物統令が発動になるというような
情報が流れて、そうして十一月の
値段で
物価は凍結されるというような
情報が流れたということで、各問屋なりメーカーのほうでは
大騒ぎをして、十一月中に上げるものは上げとかにゃいかぬということで
値上げをやったということで、それはもう一、二の
商品ではなくて全面的にそういうような動きがあったということでございます。私は、そういう点が一番現在の
日本の
経済の中において問題だということでございます。
そうしまして、最近見てみますと、たとえば九月ごろまで
トイレットペーパーが四ロールで百円前後から百三十円ぐらいしていたものが、現在
トイレットペーパーは二百円前後から二百五、六十円。高いものでは四つで三百円しているものもあるというような状態で、ほとんど倍になってしまっている。それからまたお
砂糖も九月ごろまでは百円前後、百円を割って売られていたところもあります。そのお
砂糖が、
生協では、
政府とのいろんな
お話し合いで百八十五円ということで現在やっておりますけれども、そのお
砂糖も二百円以上しているところが現在ほとんどだという
実態でございます。したがって、ごくわずかの間にそういうふうにいろんな
物価がつり上げられて、そうして高いところで現在落ちついている。私は、この
石油問題のどさくさで
物価がこんなふうになったということは非常に問題だ。私、こういう
仕事をしておりますので、よく
婦人団体の
皆さん方の
講演会とかいろんなところへ引っぱり出されるわけでございますが、きょうは御
婦人の議員の方がお二人で、ほか
皆さん男性の方ばかりですが、
男性の
会合よりも
奥さんたちの
会合、しかも
ほんとうに
生活をあずかって家庭を守って
おいでになる
奥さんたちの
会合にいったら、一番ラジカルな
意見を
奥さんたちがお持ちになっている。これは
奥さんたちは毎日の
買い物を通じて、御
自分のはだで、こんなに
物価が上がっていて主人から預かる給料ではたして
家計を守り、子供の教育ができるのかということを、毎日、
毎日買い物を通じて感じて
おいでになるということです。私は、非常に失礼ですけれども、おそらく
先生方の
奥さんも、
先生方以上に現在の
物価のこの
値上がりなりむなしさに非常な嘆きを
皆さんお持ちなのではないだろうかというふうに
考えるわけであります。
私は、ぜひそういう、
ほんとうに
家計をあずかっているという
主婦を
中心にする
消費者の
立場から、この
安定法で
ほんとうに
商品が確保でき、
物価の安定を確保することができるのかどうかということをひとつ十分御
審議をいただきたいということを、
最初に
ほんとうに
お願いをいたすわけでございます。
それからもう
一つ。私は
生協で事業をやっておりますので、この
石油問題が起きてから特に
心配でならないことが
一つあります。これは、私
ら生協では、
有害食品の排除とか
品質の問題を非常に重要にいたしております。
生協運動というのはそもそも発足以来、
商品の
品質、純良な
商品ということが私らの一番重要な問題だと思っておりますし、
日本においても、ここ数年、
生活優先とかあるいは
消費者サイドということが盛んにいわれて、
企業の側においてもそういうお
考えをだんだんとお持ちになっていた。ところが、この
石油問題が起きましてから私らのところへ
おいでになる
業界の
方たちは、物がだんだんこう
不足をしてくると、
生協のようにむずかしい、
添加物がどうだ、
品質がどうだと言われたら、とてもお引き受けすることができませんということを
皆さん、実はおっしゃるわけでございます。したがって、長年、私
ら消費者運動をやり、あるいは
消費者行政というものもここ数年非常なことでやられてまいっているわけでございますが、その間に
消費者の
立場、
消費者保護ということでみんなが努力してきたことが、このどさくさの中でそれがほごにされる
危険性が現在出てきているということを、私らは
商品を取り扱う
仕事をやっている
立場で非常に
心配を実はしております。この点もぜひ私は重要な問題として、この
法案の
審議の中においてお
考えをいただきたいというふうに
考えるわけでございます。
その点から申せば、
統制というのは、本来、
品質とかそういうものになじまないものだと思います。したがって、との
石油問題からある程度の
統制がやむを得ないという場合においても、私は、その
商品の
品質というものをどう確保していくのかということについては十分御配慮をいただかないと、それがネグレクトされていったらたいへんなことになるということを、私は、
自分たちが
仕事をやっている
立場からの
考え方として
一つ申し上げたいということでございます。
それからもう
一つ、私は基本的にひとつこれは述べさせていただきたいと思いますことは、私ら見ておりますと、
企業の
皆さん方は、九月の
決算がよかった、しかし
石油問題が起きて来年の三月の
決算はどうなるんだ、その配当をどうするんだ、
企業の利益をまず先取りをするという
考え方で、現在のこの
非常事態に対処して
おいでになる。それだから、
生産がダウンするんならやっぱり
物価を上げて、製品の
価格を上げて、そうして
企業の収益を確保しなくちゃならないという
考え方、私は、現在の
資本主義社会において
企業の
皆さん方がそういうことをお
考えになるということはまたやむを得ないことかと思いますけれども、
国民全部がいま非常に苦しみ悩んでいるときの
企業の姿勢なり
考え方として、私はこのことは非常に重大な問題だ。そういうような、
企業の収益ということをまず先取りして、そうして
物価の問題を
考えるというようなことであっては、私は、どんなに
政府で
法律をおつくりになって
生活の安定を確保しようとなされても、
国民の同意を得ることが困難なのではないだろうかということです。このことも、この
法案の御
審議の過程において私は十分ひとつ御配慮をいただきたいというふうに
考えるわけであります。
そうして、私は、この
石油問題でこういうようなある程度の
統制も、といいますか、そういうことはやむを得ないということを申し上げましたが、この
法律の中で一番
中心は、やはり何といっても
標準価格の問題が一番重要なポイントだと思います。それで、
標準価格というものは緊急
事態に対処してきめるわけでございますから、これは敏速にその
事態に応じてきめなくちゃならないというものだと思います。事前にいろいろなことを相談をしてやるといっても、その点は
堀越さんがおっしゃいましたように、かえって混乱を招く。それだから、その
標準価格の決定は迅速にやらないと、外部に、十一月末から十二月初めのように、先ほど申しましたような形のことが流布されるようなことがあってはたいへんだ。したがって、これは緊急にやるということだと思いますけれども、ただ、その際に非常に重要なことは、
標準価格をそういう形できめても、事後に、その
標準価格の決定が不合理であったかどうか、正しかったかどうかということをチェックする
機能をぜひお
考えをいただきたい。それは、
消費者を
中心にする各方面の方による
委員会というものを御活用願って、そうしてそこで、そのきまった
標準価格というものが妥当であったかどうかということを十分
審議をして、その
審議の結果、
標準価格の決定において行き過ぎがあったら
委員会で建議をするというような形で、
標準価格の決定が必要以上の
統制、あるいはまた高値でものがきまっていくというようなことのないように、ぜひそういう
委員会によるチェック
機能というものをお
考えをいただきたいというふうに私は
考えるわけでございます。
そうしまして、もう
一つこの
法案の運用にあたって非常に大事なことは——独禁法との関係だと思います。今日の
日本経済における
物価の高騰ということはやはり
日本経済そのものの現在の病根にある——
物価が上がっているということには国際的な関係のいろいろな問題もあるでしょう。いろいろありますが、やはり寡占化の進む中におけるところの管理
価格、あるいはまたカルテル、あるいはまた再販制度、そういうようなものが現在の
物価を上げる、あるいはまた下方硬直というような形になっている一番重要な問題ではないだろうか。したがって、
物価問題の解決ということを
考える場合においては、何としても独禁法の運用というものとこの
法律とのからみ合いをどうしていくのか。現在の時点においては、
消費者の
立場から
物価問題を
考えました場合には独禁法の強化ということが必要だと私は思っております。
そういう
立場から
考えました場合において、新聞にも発表されておりますところの覚え書きというあの内容を見ますと、カルテルを容認していくというような結果になって、せっかくの
標準価格というものも
業界の意向を基礎にしてつくられていって、へたをすると、
業界全面的にカルテルが形成されるという結果になる
危険性を多分に持っている。そういうようなことになった場合においては
物価問題の解決というものはできなくなっていく。したがって、この覚え書きが締結されているということは、この
法律を制定するにあたって非常に重要なことであって、できればこの
審議の過程において覚え書きをなくするように、こう言ったらあれでございますが、むしろはっきりといろいろな条件をつけて適用除外の規定で何かやるように、こういうような全面的にカルテルが結ばれる
危険性があるのなら、適用除外のことをきびしくして
考えたほうがいいのじゃないかとさえ思います。
いずれにしても、独禁法の強化と、そうして私、この間まで
公正取引委員会の独禁懇の会にも実は参加していたのですが、はっきりした記憶からいったらちょっとあれなんですが、私は、二十七年か八年ごろおしょうゆの
価格協定とかあるいは化繊の協定というときに、公取の審決で、
政府の指導があってもカルテルであれば違法であるという審決が出ているように記憶をしております。それからまた、そのもっと前には、外国貿易管理令ですか、何かそういうときに、やはり公取の位置づけ、権限ということがきちんと論議をされているように私は記憶をいたしております。したがって、この
法律の運用と独禁法、公取の位置づけというものを
先生方に十分お
考えをいただきたい。
それからもう
一つ、この
法律において
標準価格制なりいろいろなものが
国民のコンセンサスあるいは
消費者の気持ちというものとからみ合って運用されていくためには、やはり広範な
消費者モニターというようなものの活用、そうして
奥さん方は物の動きなり
物価の問題について一番具体的ないろいろな材料をお持ちでございます。それですから、
主婦のモニター制というものを全面的に活用していただく。現在も
経企庁にモニター制というものはありますけれども、私は、現在のようなモニター制では、この
法律の運用にあたって
消費者の
意見というようなものをうまく組み合わせてやっていくということについては、まだまだ不十分だと思いますので、そういう
消費者モニターというものをぜひ広範にお
考えをいただきたい。
それから先ほど申しました
品質の問題、
標準価格制を制定していく場合に、
品質の問題がやはり非常に重要な問題になってまいると思います。そうして
標準価格というのは、やはり
物価のガイドラインというようなものに今後定着を、そういうものが発動されたらしていくことになるかと思いますが、
標準価格そのものとは多少違っておりますけれども、現在
生活協同組合で、ユニットプライスというもので
主婦の
皆さん方に、このものの中身が何グラムあって、
値段がこれだけになっている、一グラム単位は幾らなんだということを、これは
奥さんたちから、あいまいな形のことではなく、はっきりわかるようにしてくれと言われて、そういうユニットプライス制を採用しております。そうして、それにあたっても、その
商品の
品質については私らは厳密にやっておりますので、
標準価格制というものを制定されるときに、そういう
品質などとの関係、
主婦の
皆さん方にはっきり内容なりそのことがわかるような制度をぜひあわせてお
考えになる必要があるのではないだろうか。
そうして特に私は最後に申し上げたいと思いますことは、最近
石油問題がだんだん深刻になってまいりますと、
物価の
値上がりということが
商品そのものばかりじゃなく、輸送だとかいろんな問題が出てまいっております。品物があっても、油がなくてトラックで遠方へ輸送できないというような場合なり、あるいは輸送賃がみんなかさんでくるとか、
石油問題がいろんなところへ波及をして、今後そういう形も各面に出てくるかと思います。そういうような点についても、この
法律で
標準価格制ばかりじゃなく、輸送だとか保管だとかいろんなことも規定されておりますが、そういう点についても十分お
考えをいただきたい。それからまた、緊急なものの輸入というような場合においては、ぜひ
消費者の割り当て、現在輸入の物資とか全部は
業界の割り当てになっておりますが、それから過去の実績ということがありますが、そういう場合においても
価格の安定、
品質の確保というところから、
消費者に対する割り当てというようなこともぜひお
考えをいただきたいということを申し上げまして、私の
意見を終わらせていただきます。どうも失礼しました。(拍手)