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1973-12-13 第72回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十三日(木曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 平林  剛君    理事 稲村 利幸君 理事 木部 佳昭君    理事 倉成  正君 理事 橋口  隆君    理事 井岡 大治君 理事 松浦 利尚君    理事 野間 友一君       上田 茂行君    加藤 紘一君       片岡 清一君    羽生田 進君       三塚  博君    粟山 ひで君       山崎  拓君    山本 幸雄君       吉永 治市君    金子 みつ君       中村  茂君    山中 吾郎君       増本 一彦君    有島 重武君       石田幸四郎君    和田 耕作君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君         経済企画政務次         官       竹内 黎一君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    喜多村治雄君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         中小企業庁指導         部長      栗林 隆一君  委員外出席者         参  考  人         (経済団体連合         会副会長)   堀越 禎三君         参  考  人         (全国消費者団         体連絡会顧問) 中林 貞男君         参  考  人         (全国地域婦人         団体連絡協議会         副会長)    大友 よふ君         参  考  人         (日本消費者連         盟創立委員会委         員)      竹内 直一君         参  考  人         (協同組合連合         会日本商店連盟         専務理事)   三浦 正義君         参  考  人         (全国社会福祉         協議会常務理         事)      牧  賢一君         参  考  人         (東京都副知         事)      磯村 光男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民生活安定緊急措置法案内閣提出第三号)      ————◇—————
  2. 平林剛

    平林委員長 これより会議を開きます。  国民生活安定緊急措置法案を議題とし、審査を進めます。  本案審査のため、本日午前十時より御出席参考人は、経済団体連合会会長堀越禎三君、全国消費者団体連絡会顧問中林貞男君及び全国地域婦人団体連絡協議会会長大友よふ君、以上の方々でございます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。  すでに御承知のごとく、本委員会において審査中の国民生活安定緊急措置法案は、国民的関心の深い、しかも緊急を要する重要な内容を持つ法案でございます。本委員会におきましては、昨日も学者及び労働者代表から意見を聴取し、連日にわたり鋭意審査を進めておりますが、本日はまた経験豊かな各位に、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、本案審査参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いをいたします。  なお、議事の進め方といたしましては、最初堀越参考人中林参考人大友参考人の順序で、おのおの一人十五分程度に要約して御意見を賜わり、その後委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは堀越参考人お願いいたします。
  3. 堀越禎三

    堀越参考人 堀越でございます。  きょう、所用のため十二時に退席さしていただきますので、あしからず御了承願います。  約二年ほど前でございましたか、まだ国交が回復いたしておりませんときに、財界のある有力者が中共を訪問いたしました。そのときに周恩来首相にお目にかかったのですが、周恩来首相から、世界に限度のある石油という資源日本は非常にたくさん使っていらっしゃいますが、日本だけで石油をそんなにお使いになっていいんですかという質問を受けまして、答えに窮したという話を私は聞いております。それだけ、もう石油をこんなにふんだんに使える時代がいつまでも続くと考えていたわれわれは、またたいへんな誤りでありまして、当然、われわれといたしましては、石油をそんなに使わない産業構造に改めなければならないということは、すでに識者が早くから見ておったところでございますし、われわれといたしましても、今度の石油問題につきましては、非常に、いわゆる災いを転じて福となすといった日本経済生活全体、産業も含めました経済生活全体における一つのよき反省期が来たものである、こう受け取っておるわけでございます。したがいまして、資源節約浪費抑制型の産業にこれから改めていかなければならないということを強くわれわれとしては感じておるような次第でございます。したがいまして、今度の問題につきましては、国民にもよく理解を得まして、そしてこれは全国的な形でもってこの実態に対処し、そしてまた再びよき日本を建設していくということに持っていかなければならないというふうに私は考えております。  ところで、最近アンケートをとりますと、電力の一〇%削減というようなことは、大口電力使用者が負担すればいいんで、われわれ消費者が負担する必要はないといったような御意見が非常に多いわけであります。またある県では、自分の県ではたくさん電力を発電しておる、したがって、自分の県では電力を節減する必要はない、われわれの県から電力を送ってもらっているほうで節減すべきではないかといったような、非常にエゴの強い御意見が非常に多いわけであります。私は、これは非常に憂うべき現象だと思っております。そうしたエゴを除いて、ほんとうにすべての人がこの危機に対処しなければならないと感じるわけでございます。つまり電力大口のみに限って節減いたしますれば、これはすなわち物資不足、この間のトイレットペーパーのような騒ぎを消費者の間で再び起こさなければならないようになるのだという点を国民みんながよく理解をしていただかなければならないと感じるのであります。そしてその辺のバランスというものはやはり政府がよくとって、そして非常な物不足の生じないよう適当な配分を考えなければならないのじゃないかと私は思うのであります。当面、生活に直結した方面に対しましては、当然、十分な緊急の配給をいたすべきであります。しかし非常にむずかしい問題は、戦争中と違いまして、不要不急ということは、今日言えない。いわゆる福祉社会のためには、あらゆるものが必要でございます。ごく端的にたとえを申し上げますると、配給いたします場合にも、非常に大切な問題は、生活物資に直結ということは確かに言えるのでありまするが、もう一つ大事な問題は、生命の問題であります。この間、私のほうの会合で、ある方がこれを問題にされました。ということは、つまり自動車にいたしましても、最近は、もう石油削減によりましてタイヤが非常な減産に入っております。したがいまして、新しいタイヤのスペアをつけることがこれから非常にむずかしくなるのじゃないか。そうしますると、古いタイヤをつけて、そしてパンクしたときに、その古いタイヤと取りかえて走ったならば、これは生命の問題になるわけであります。非常に危険であるわけであります。そうした思わざる面に非常な問題を含んでおるということは、今日、戦争中と違いまして、非常にむずかしい問題がある。いわゆる統制が一そうむずかしくなっておるという点を私は強調いたしたいと思うのであります。さらに民間といたしましても、設備投資を自粛し、また資源節約をやるということについては、強く覚悟いたしております。  よけいなことでございますが、私は、通産省産業資金部会を預っておりますが、この間九月現在でもって民間設備投資、これは通産所管産業だけでございますが、調べましたところ、非常に投資額がふえております。それはおそらく物価値上がりが入ったものだと思うのでありますが、二月に調べましたときよりもまたさらに一割近くもふえておりました。そして今度は、これを十一、十二月以降のものは全部切る、十一月、十二月に着工したものでも半分は切るといったことで、できるだけ設備投資を押える方針で、いま作業をいたしておる次第でございます。  さらに、物価抑制ということは、これは非常に大事な問題でございます。したがって、この法律標準価格をきめるというようなことが出ておりますことは、たいへん適切なことでございますが、しかし統制に入りましたならば、これは非常にやっかいな問題、統制統制を生むということは、どこまでも考えてやっていただきたい。したがいまして、いよいよ統制に入るときの歯どめと申しますか、今度の法律を拝見いたしますと、その歯どめが少し不十分なような感じがいたします。どういう場合に統制に入るかという歯どめをしっかりとしておいていただきたい。私は、終戦直後に、経済安定本部の副長官をいたしました。現実に一年八カ月にわたりまして物価統制をやりました。いわゆる統制官僚としての経験を持ってつくづく私の感じましたことは、統制官僚のところへはまともな考えを持った財界人は近づいてまいりません。みんな統制におんぶしてもうけているような連中がちやほやといって統制官僚のところへ集まってまいります。早く統制をやめてくれ、自分統制がなければもっと仕事ができるのにと考えておるような、ほんとう財界機能、いわゆる産業界ほんとう機能をよく知っておるような人は、統制官僚のところへは一度も顔を出してくれません。また意見を求めても、話してもくれません。そういう面で統制官僚というものは、非常に誤った観点を持つようになるということを非常に強く私は感じたわけでございます。特に今度は、もう長いことにわたりまして自由経済で進んできた今日、この標準価格をきめるという場合におきましても、うっかり官僚だけで標準価格をきめ、そしてそれがマル公だということになりますと、直ちに類似品が出る、またやみ価格が横行するということは、終戦直後のやみ市場を御記憶の方はみな御承知だと思うのでありまして、その点で、統制に入るときにはよほど注意をしていただきたい。特に、何か審議会で、統制を始めるということを論じるような御意見があるようでございますが、これはいよいよ統制に入るという場合には、やはりひとつ責任を持った人が独断ですみやかにやることが、これまた必要だと思うのであります。価格をきめるかきめないかというようなもたもたしたことをしておりますれば、必ずそこに思惑が入ってまいりまして、もう統制するときには最高価格統制したというようなことに入っていくようなおそれがございます。また、価格をきめます場合におきましても、これはやはりコンセンサスを得なければなりませんので、いま公取委員長の言っておられますような、いささかでも相談すればカルテルだということは私は少し行き過ぎじゃないかと思うのであります。よく業界で相談をいたして、そしてみんなが納得した正当な価格、それこそみなが守り得る価格というものをきめなければ、結局やみ価格の横行ということになると思うのであります。  さらに、私は、むずかしいのは、一たび統制に入りましたならば、これをはずすタイミング、これが非常にむずかしいと思うのであります。  池田勇人君が——君とあえて申しますのは私の友人でありましたから申し上げますが、先生述懐をいたしております。これは通産大臣をいたしておるときに、自分は、統制をはずしてそして自由にしなければ日本産業は成長しない、この際思い切って自由にすべきだということを言ったところが、通産省原局から、いまそんなことをされた日には業界はみなつぶれちまいます、やはりもっと統制しなければ、こんな業界はもう一ぺんにつぶれちまいます、国際競争力のないこんな業界を自由にしたらたいへんですというので、非常にやかましく言われたのですが、断固として統制をはずした。ところがどうだ、一年たった今日どこもつぶれてないじゃないか、会社でつぶれたところは一つもないじゃないか、みんなうまくやっているじゃないかということを言って自慢をしておりましたが、私は全く、統制をはずすときも、ほんとうにだれか責任者が全部責任を背負って統制をはずすというようなことにしなければ、タイミングを失すると私は思うのであります。まあ一つの脱線したようなお話をいたしまして恐縮でございますが、そういう池田君の述懐を申し上げまして、御参考までに申し上げておきます。  とにかく、この際私は非常に心配いたしておりますのは、米騒動のようなあんな不祥事が絶対に起こらないように、うまくこの法律を運用していただきたく、またこういうある点は統制をしなければならない面も今後起こると私は思います。したがいまして、それだけに運用を非常に上手にやっていただきたい、その点を十分皆さまにもお願いいたして、私の話といたしたいと思います。(拍手)
  4. 平林剛

    平林委員長 次に、中林参考人お願いいたします。
  5. 中林貞男

    中林参考人 私、御紹介をいただきました中林でございます。実は私は消団連会長を昨年の暮れまで、創立以来十年余りやっておりましたが、現在は顧問ということで、消団連会長制をなくしていまやっているわけです。そして、私は現在は日本生活協同組合連合会会長という立場消団連にも参加をしているわけでございますが、その点だけお断わりして、申し上げたいと思います。  そういう立場でございますので、私は生活協同組合仕事中心にずっと消費者運動をやっているわけでございまして、この委員会で現在審議されております国民生活安定緊急措置法案について、私らは大きな関心を持っております。したがって、そういう消費者立場から、皆さん方が御審議になっておりますこの法案についての意見を述べさせていただきたいと思います。  ただ、私は、冒頭に一つ申し上げたいと思いますことは、どうも最近石油問題というものが飛び込んできて、そうして日本経済危機になったのだ、物価問題はたいへんだというように言われる傾向が非常に強いということを私は憂えております。  私は、現在の物価とかインフレの問題は、石油問題があるから重大なことではなくて、ずっと最近まで、国民インフレ物価ということで悩み続けてまいっているわけでございます。現に十月中旬の卸売り物価は前年に比べて二〇%をオーバーした、また十一月上旬の米価審議会では、私も米審委員をしておりますので、米価審議会では、現在日本経済にとって一番重大な問題は物価問題だということで、私ら当時の小坂経企庁長官にも米審にお出かけを願って、物価についてのいろいろなお話をお伺いしたという経験を持っております。したがって、私は、石油の問題と現在のインフレ物価の問題というものを十分区別して問題を考えないと、石油の問題で、その最も究極の、基礎になっているインフレとか物価の問題の解決なり責任というものをすりかえるようなことになってはたいへんだというふうに思っております。  もちろん、現在の日本経済にとって、石油は私たち人間の血液のような位置にありますので、石油問題の重大なことは私らは百も承知をいたしております。したがって、石油削減ということで今後日本のGNPも非常なダウンをしていく、そういうところで、生産が全面的に減退するということで、いろいろな問題が起きてくる。そういうような点から、この法律に盛られているような考え方というものも私は必要かとも思います。  私は、本来的には統制ということはあまり好かないのでございますけれども、今日のこの事態においてはそういうこともやむを得ないかというふうに私は思いますけれども、ただ、この非常事態に対処していくのに、この法律に盛られていることだけで十分かといえば、まだまだいろいろな点で問題を含んでいるというふうに私は考えるわけであります。そうして、現にこの石油問題が起きましてから、なるほどトイレットペーパーがなくなった、あるいはまた洗剤がなくなった、あるいはお砂糖がなくなった、そうしてまた歯みがきがこうだ、それから私らもびっくりしたのですが、塩までがないというような大騒ぎがあったことも事実であります。ただ、そうして政府が緊急にそれらの中のトイレットペーパーとかお砂糖の放出という緊急措置もやりました。ところが、そういうようなことがやられて、そうして品物が出回る、出回って主婦たちがむなしく思ったことは、値段が高いところで凍結されている。高値安定と申しますか、安定ということばがいいかどうかわかりませんが、そういう形になって、物価が高いところで落ちついているという、その事実というものは私ら消費者にとっては非常に残念なことだと思っております。そうしてまた、私は非常に驚いたことは、この十一月の末から十二月の初めにあたって、もう各商品についての値上げが全面的に行なわれたということであります。  実は、十二月三日の月曜日だったと私記憶しているのですが、私たち生協商品仕入れをやっておりますので、仕入れ担当者会議をときどきみんなやっておりますが、三日の月曜日に仕入れ担当者会議をやった。組合から商品を全面的に上げてくれという申し込みがきているということを各商品について担当者から述べられたということで、それで私たちのところへも電話がありまして、とんでもないことだ、こんなに各商品が上がったんでは、一体消費者生活というものはどうなっていくんだということで、私のところへも連絡が実はありまして、私、三日の夕方だったかと記憶しているんですが、実は経企庁担当の方に、こういうような異常事態が起きている、そうしてこの安定法がつくられる、あるいは物統令が発動になるというような情報が流れて、そうして十一月の値段物価は凍結されるというような情報が流れたということで、各問屋なりメーカーのほうでは大騒ぎをして、十一月中に上げるものは上げとかにゃいかぬということで値上げをやったということで、それはもう一、二の商品ではなくて全面的にそういうような動きがあったということでございます。私は、そういう点が一番現在の日本経済の中において問題だということでございます。  そうしまして、最近見てみますと、たとえば九月ごろまでトイレットペーパーが四ロールで百円前後から百三十円ぐらいしていたものが、現在トイレットペーパーは二百円前後から二百五、六十円。高いものでは四つで三百円しているものもあるというような状態で、ほとんど倍になってしまっている。それからまたお砂糖も九月ごろまでは百円前後、百円を割って売られていたところもあります。そのお砂糖が、生協では、政府とのいろんなお話し合いで百八十五円ということで現在やっておりますけれども、そのお砂糖も二百円以上しているところが現在ほとんどだという実態でございます。したがって、ごくわずかの間にそういうふうにいろんな物価がつり上げられて、そうして高いところで現在落ちついている。私は、この石油問題のどさくさで物価がこんなふうになったということは非常に問題だ。私、こういう仕事をしておりますので、よく婦人団体皆さん方講演会とかいろんなところへ引っぱり出されるわけでございますが、きょうは御婦人の議員の方がお二人で、ほか皆さん男性の方ばかりですが、男性会合よりも奥さんたち会合、しかもほんとう生活をあずかって家庭を守っておいでになる奥さんたち会合にいったら、一番ラジカルな意見奥さんたちがお持ちになっている。これは奥さんたちは毎日の買い物を通じて、御自分のはだで、こんなに物価が上がっていて主人から預かる給料ではたして家計を守り、子供の教育ができるのかということを、毎日、毎日買い物を通じて感じておいでになるということです。私は、非常に失礼ですけれども、おそらく先生方奥さんも、先生方以上に現在の物価のこの値上がりなりむなしさに非常な嘆きを皆さんお持ちなのではないだろうかというふうに考えるわけであります。  私は、ぜひそういう、ほんとう家計をあずかっているという主婦中心にする消費者立場から、この安定法ほんとう商品が確保でき、物価の安定を確保することができるのかどうかということをひとつ十分御審議をいただきたいということを、最初ほんとうお願いをいたすわけでございます。  それからもう一つ。私は生協で事業をやっておりますので、この石油問題が起きてから特に心配でならないことが一つあります。これは、私ら生協では、有害食品の排除とか品質の問題を非常に重要にいたしております。生協運動というのはそもそも発足以来、商品品質、純良な商品ということが私らの一番重要な問題だと思っておりますし、日本においても、ここ数年、生活優先とかあるいは消費者サイドということが盛んにいわれて、企業の側においてもそういうお考えをだんだんとお持ちになっていた。ところが、この石油問題が起きましてから私らのところへおいでになる業界方たちは、物がだんだんこう不足をしてくると、生協のようにむずかしい、添加物がどうだ、品質がどうだと言われたら、とてもお引き受けすることができませんということを皆さん、実はおっしゃるわけでございます。したがって、長年、私ら消費者運動をやり、あるいは消費者行政というものもここ数年非常なことでやられてまいっているわけでございますが、その間に消費者立場消費者保護ということでみんなが努力してきたことが、このどさくさの中でそれがほごにされる危険性が現在出てきているということを、私らは商品を取り扱う仕事をやっている立場で非常に心配を実はしております。この点もぜひ私は重要な問題として、この法案審議の中においてお考えをいただきたいというふうに考えるわけでございます。  その点から申せば、統制というのは、本来、品質とかそういうものになじまないものだと思います。したがって、との石油問題からある程度の統制がやむを得ないという場合においても、私は、その商品品質というものをどう確保していくのかということについては十分御配慮をいただかないと、それがネグレクトされていったらたいへんなことになるということを、私は、自分たち仕事をやっている立場からの考え方として一つ申し上げたいということでございます。  それからもう一つ、私は基本的にひとつこれは述べさせていただきたいと思いますことは、私ら見ておりますと、企業皆さん方は、九月の決算がよかった、しかし石油問題が起きて来年の三月の決算はどうなるんだ、その配当をどうするんだ、企業の利益をまず先取りをするという考え方で、現在のこの非常事態に対処しておいでになる。それだから、生産がダウンするんならやっぱり物価を上げて、製品の価格を上げて、そうして企業の収益を確保しなくちゃならないという考え方、私は、現在の資本主義社会において企業皆さん方がそういうことをお考えになるということはまたやむを得ないことかと思いますけれども、国民全部がいま非常に苦しみ悩んでいるときの企業の姿勢なり考え方として、私はこのことは非常に重大な問題だ。そういうような、企業の収益ということをまず先取りして、そうして物価の問題を考えるというようなことであっては、私は、どんなに政府法律をおつくりになって生活の安定を確保しようとなされても、国民の同意を得ることが困難なのではないだろうかということです。このことも、この法案の御審議の過程において私は十分ひとつ御配慮をいただきたいというふうに考えるわけであります。  そうして、私は、この石油問題でこういうようなある程度の統制も、といいますか、そういうことはやむを得ないということを申し上げましたが、この法律の中で一番中心は、やはり何といっても標準価格の問題が一番重要なポイントだと思います。それで、標準価格というものは緊急事態に対処してきめるわけでございますから、これは敏速にその事態に応じてきめなくちゃならないというものだと思います。事前にいろいろなことを相談をしてやるといっても、その点は堀越さんがおっしゃいましたように、かえって混乱を招く。それだから、その標準価格の決定は迅速にやらないと、外部に、十一月末から十二月初めのように、先ほど申しましたような形のことが流布されるようなことがあってはたいへんだ。したがって、これは緊急にやるということだと思いますけれども、ただ、その際に非常に重要なことは、標準価格をそういう形できめても、事後に、その標準価格の決定が不合理であったかどうか、正しかったかどうかということをチェックする機能をぜひお考えをいただきたい。それは、消費者中心にする各方面の方による委員会というものを御活用願って、そうしてそこで、そのきまった標準価格というものが妥当であったかどうかということを十分審議をして、その審議の結果、標準価格の決定において行き過ぎがあったら委員会で建議をするというような形で、標準価格の決定が必要以上の統制、あるいはまた高値でものがきまっていくというようなことのないように、ぜひそういう委員会によるチェック機能というものをお考えをいただきたいというふうに私は考えるわけでございます。  そうしまして、もう一つこの法案の運用にあたって非常に大事なことは——独禁法との関係だと思います。今日の日本経済における物価の高騰ということはやはり日本経済そのものの現在の病根にある——物価が上がっているということには国際的な関係のいろいろな問題もあるでしょう。いろいろありますが、やはり寡占化の進む中におけるところの管理価格、あるいはまたカルテル、あるいはまた再販制度、そういうようなものが現在の物価を上げる、あるいはまた下方硬直というような形になっている一番重要な問題ではないだろうか。したがって、物価問題の解決ということを考える場合においては、何としても独禁法の運用というものとこの法律とのからみ合いをどうしていくのか。現在の時点においては、消費者立場から物価問題を考えました場合には独禁法の強化ということが必要だと私は思っております。  そういう立場から考えました場合において、新聞にも発表されておりますところの覚え書きというあの内容を見ますと、カルテルを容認していくというような結果になって、せっかくの標準価格というものも業界の意向を基礎にしてつくられていって、へたをすると、業界全面的にカルテルが形成されるという結果になる危険性を多分に持っている。そういうようなことになった場合においては物価問題の解決というものはできなくなっていく。したがって、この覚え書きが締結されているということは、この法律を制定するにあたって非常に重要なことであって、できればこの審議の過程において覚え書きをなくするように、こう言ったらあれでございますが、むしろはっきりといろいろな条件をつけて適用除外の規定で何かやるように、こういうような全面的にカルテルが結ばれる危険性があるのなら、適用除外のことをきびしくして考えたほうがいいのじゃないかとさえ思います。  いずれにしても、独禁法の強化と、そうして私、この間まで公正取引委員会の独禁懇の会にも実は参加していたのですが、はっきりした記憶からいったらちょっとあれなんですが、私は、二十七年か八年ごろおしょうゆの価格協定とかあるいは化繊の協定というときに、公取の審決で、政府の指導があってもカルテルであれば違法であるという審決が出ているように記憶をしております。それからまた、そのもっと前には、外国貿易管理令ですか、何かそういうときに、やはり公取の位置づけ、権限ということがきちんと論議をされているように私は記憶をいたしております。したがって、この法律の運用と独禁法、公取の位置づけというものを先生方に十分お考えをいただきたい。  それからもう一つ、この法律において標準価格制なりいろいろなものが国民のコンセンサスあるいは消費者の気持ちというものとからみ合って運用されていくためには、やはり広範な消費者モニターというようなものの活用、そうして奥さん方は物の動きなり物価の問題について一番具体的ないろいろな材料をお持ちでございます。それですから、主婦のモニター制というものを全面的に活用していただく。現在も経企庁にモニター制というものはありますけれども、私は、現在のようなモニター制では、この法律の運用にあたって消費者意見というようなものをうまく組み合わせてやっていくということについては、まだまだ不十分だと思いますので、そういう消費者モニターというものをぜひ広範にお考えをいただきたい。  それから先ほど申しました品質の問題、標準価格制を制定していく場合に、品質の問題がやはり非常に重要な問題になってまいると思います。そうして標準価格というのは、やはり物価のガイドラインというようなものに今後定着を、そういうものが発動されたらしていくことになるかと思いますが、標準価格そのものとは多少違っておりますけれども、現在生活協同組合で、ユニットプライスというもので主婦皆さん方に、このものの中身が何グラムあって、値段がこれだけになっている、一グラム単位は幾らなんだということを、これは奥さんたちから、あいまいな形のことではなく、はっきりわかるようにしてくれと言われて、そういうユニットプライス制を採用しております。そうして、それにあたっても、その商品品質については私らは厳密にやっておりますので、標準価格制というものを制定されるときに、そういう品質などとの関係、主婦皆さん方にはっきり内容なりそのことがわかるような制度をぜひあわせてお考えになる必要があるのではないだろうか。  そうして特に私は最後に申し上げたいと思いますことは、最近石油問題がだんだん深刻になってまいりますと、物価値上がりということが商品そのものばかりじゃなく、輸送だとかいろんな問題が出てまいっております。品物があっても、油がなくてトラックで遠方へ輸送できないというような場合なり、あるいは輸送賃がみんなかさんでくるとか、石油問題がいろんなところへ波及をして、今後そういう形も各面に出てくるかと思います。そういうような点についても、この法律標準価格制ばかりじゃなく、輸送だとか保管だとかいろんなことも規定されておりますが、そういう点についても十分お考えをいただきたい。それからまた、緊急なものの輸入というような場合においては、ぜひ消費者の割り当て、現在輸入の物資とか全部は業界の割り当てになっておりますが、それから過去の実績ということがありますが、そういう場合においても価格の安定、品質の確保というところから、消費者に対する割り当てというようなこともぜひお考えをいただきたいということを申し上げまして、私の意見を終わらせていただきます。どうも失礼しました。(拍手)
  6. 平林剛

    平林委員長 次に、大友参考人お願いいたします。
  7. 大友よふ

    大友参考人 ただいま御指名いただきました全地婦連の大友よふでございます。  よく男性の方々にお目にかかりますと、大友さん、あんたは地婦連なのか主婦連なのかと、こういうふうに、どっちの流れなんだということを聞かれるわけですが、おそらく先生方の中にも地婦連と主婦連の区別のつかない先生方もいらっしゃるんじゃないだろうかということを考えるので、ちょっと団体の性格を申し上げたいのですが、主婦連の場合は目的団体でございます。全く正真正銘の消費者活動を専門にしておられますけれども、私どもの地婦連は全国津々浦々に会員が六百万おりまして、そして地縁集団でございます。したがって、教育程度その他あらゆる年齢層までバラエティーに富んでおりまして、消費者意識を啓蒙するのにもなかなか容易じゃない団体でございます。そういう団体でございますが、最近プロパンガスの問題あるいはカラーテレビの買い控え運動で、初めて、ははあ地婦連というのはあの団体かなあとおぼろげながら皆さん方に御理解いただけるようになったということなんでございます。  さて、現在御審議中の国民生活安定法案でございますが、これはわが国経済異常事態を何とかして切り抜けて、国民生活を安定させたいという親心に発しているものだということは重々承知いたしております。しかし、それにもかかわらず、この法案は、私から率直に言わせれば、効果よりも弊害のほうが多いのではないかという不安を持っておるものでございます。  その理由の第一点は、高騰する生活関連物資や経済上重要な物資については、政府標準価格をきめるというたてまえになっているようでございますが、この価格決定の基礎資料というものは、おそらく官庁が一々御存じはないはずですから、どうしても業界が提出したものにたよることにならざるを得ないのではないか。当然そうすれば高物価安定ということになりまして、底辺層や谷間にある層にとっては高物価の極限となるのではないか、こういう心配をいたすものでございます。ですから私どもは、ただ官庁と業界との間できめた値段というものは、これはとてものめない。やはりこれは第三者による審議会というような形で、消費者の参加によるものでなければならないということを常日ごろ考えております。  特に、今度の法案は、標準価格とそれから特定標準価格という二段がまえになっているように拝見いたしましたけれども、これは買占め売惜しみ防止法がさきの国会で成立しながらも、どうも死文化にひとしいような感じがするのでございます。この法律を強化して活用することによって、十分使命は果たせるものと信じております。  第二点の理由でございますが、当面石油を除けば、全体としてはまだ物不足経済という状態ではないはずでございます。その石油でさえ今年程度、いや悪いとしても昨年程度の輸入の確保が可能なのですから、その石油ほんとうに公平な配分であり、ほんとうに必要なところに重点を置いた割り当てが可能であるとするならば、その与えるショックもそれほど大げさではないはずだ、こう考えております。ところが現実の騒ぎはどうでございましょう。これは石油メーカーが先行きの品不足を見込んで、備蓄をむやみにふやして品物を市場に出さない。あまりもうからなかった電力向けとかあるいは通運向けとか、ある意味では国民経済上最も重要な部門であるにもかかわらず、利潤を優先基準として、そうした部門がカットされたといううわさも耳にしております。  以上のような企業側の判断や姿勢を排除し、公平な配分、重点的割り当てを可能とするために、国が介入することが必要と思われますので、石油需給適正化法案の成立には賛意を表したいと存じます。  御存じのことと思いますが、全地婦連はここ数年にわたりまして、LPガスの実態調査をもとにして、保安と適正な取引を実現させることが業界及び消費者双方のメリットに通ずるという信念のもとにメーター化の推進運動を進めてまいりまして、ようやく省令改正に成功いたしました。そして本年の二月実施の運びになったわけでございます。一応私たちはこの運動の成果を非常に喜んだわけでございます。ところが業界がこの機に乗じまして便乗値上げをしましたが、今回の石油不足にさらにまた便乗、便乗と重ねまして、ただいまでは十キログラム千五百円から千八百円というおそろしい値段になっております。しかも品不足を理由に価格協定をしているという報道もございますし、末端小売り店では抱き合わせ商法あるいは配給拒否戦術などもございまして、厳寒季を迎え、不安を訴えております。ここにおきまして、やはり私は独禁法の強化を強く強く求める次第でございます。と申しますのは、今年の春に福岡の県婦連がLP業界のカルテルの事実を指摘いたしまして、目下福岡公取委で係争中でございます。その他の各県婦連からも疑われる事実の報告もございます。これは公取委が持っている機能を十分に発揮していないという証左にほかならないと思うわけでございます。  また、触れておきたいと思いますのは、新聞の報ずるところによりますと、公取委と通産省並びに経企庁がいわゆる三者間の覚え書きを取りかわ・しまして、業界における自主カルテルを容認したことは業界サイドの高価格を支持する結果となりますので、消費者としてはこの覚え書きをぜひ廃棄してほしい、こういうふうに思います。  前にも申し上げておりますところの買占め売惜しみ防止法は、一部改正いたしまして、地方の市町村段階まで監視ができるように国から地方公共団体に大幅に権限を委譲する案が提出されているというようにも伺っておりますが、この際思い切って知事の権限に移し、県民の苦情とかあるいは要望にこたえさせることが、むしろ政府の信頼をもたらす結果になると考える次第でございます。  実は私、埼玉県に住んでおります。ところがある市の主婦から、私のうちではお米屋さんから石油をとっておりました。ところがおまえさんのうちにはもう石油はやれないよ、こういうふうに言われたので、どうしたのと聞いたところが、お米と抱き合わせをすれば売ってあげるけれども、石油だけじゃだめだと言われた。それで市役所にそれを申しましたら、私のところはそういうものは権限がないからだめだ、行政監察局に言いなさい。言われてその主婦は行政監察局に電話をしましたら、それは大友さんに言いなさいと言われたというのです。それで、私のうちに二回も三回も何とかしてくれないか、私は田中総理じゃありませんからできませんよと冗談言ったんですが、たいへん困りましたので、知っている石油屋さんに頼みまして、ようやく別のところからとれるということになったんです。だから、いま私どもはどんなにこの混乱の中で不安を持っているか。やはり政府は信じたい。信じたいけれども、率直に言って信じられないというのがほんとうの声じゃないかと私は思うわけでございます。  以上、たいへんにくどくど申し述べて、この法案がなくとも十分やれるんではないかという意見を吐露いたしました。しかしながら、毎日の報道を見ておりますと、野党修正案も出ております。そういうことでございますから、おそらくこの法案は通過するであろうということを予測いたしております。そういう場合に、いままでは野党の意見は全部取り入れないし、また与党の言うことは野党も妥協しないということをわれわれはふだに非常に悲しく思っているんですが、いいことは敵であろうが味方であろうがやはりとるべきじゃないか。そして、ほんとうにわれわれ国民がなるほど政治というものは信頼していいんだということをこの目の前で見せていただく機会はこれ以外にないんじゃないか。そういう意味で、ぜひひとつこの際、何が何でも通すのであれば、われわれ消費者のためになる法案を通していただきたい。  最後に政府お願いしたいのでございますが、私たちは血みどろになってこの浪費節約運動をやっておりますけれども、政府自体が総需要の抑制をやっていただかなければこれはどうしても効果はないだろう、特にこれを要望いたします。  たいへん短い時間でございますが、またお答えできるかもしれません。(拍手)
  8. 平林剛

    平林委員長 これにて参考人からの御意見の開陳は終わりました。
  9. 平林剛

    平林委員長 これより質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉永治市君。
  10. 吉永治市

    ○吉永委員 参考人の諸先生方にはたいへん有益な御意見、ありがとうございました。二、三質疑を申し上げますが、時間がきわめて僅少でございますので、簡明率直にお答えを願いたいと存じます。  最初堀越参考人にお伺いを申し上げますが、この法案審議するにあたりまして私たちが非常に痛切に感じてまいりましたことは、日本経済は外的な事情、資源の面からも、あるいは内的な人の問題公害の問題等、いろいろなものを勘案をいたしまして、いずれは当然大きく方向転換をしなければならない時期だ、またその時期はおそかれ早かれ、当然来るべきものであった、むしろおそきに失した、そのような考えを持って審議をしておるわけでございます。このことに関しましては、政治もあるいは経済も何もやらなかったと申しますよりか、おそきに失したという感じを非常に強く持っておるものでございます。特に経済面あるいは一部の企業等に関しまして、私はこの感を深くいたしております。自由放任で、競争原理あるいは市場原理にとらわれて、エコノミックアニマル的な不覇奔放の行き方ということに非常に強い反省が加えられなければならない現況ではないか、そのように考えております。私たちは、自由なる世界、自由なる生活、自由なる信条というものを守ることに必死でありますし、責任を感じております。そうした意味におきまして、これから産業構造ももちろん大きく変わらなければならない状態になっておりますが、この時点、こういう時局に際会いたしまして、企業家の企業的、社会的責任と申しますか、企業の社会的責任、そういったことに関しまして率考に御所見を承りたい、このように存ずるわけでございます。  それから中林参考人お願いをいたしますが、先ほど高値安定の現象、これを非常に残念だということをおっしゃいました。特に企業の側における企業の利益を先取りするという、こういう姿勢こそ一番関わるべきだというような御所見だったと思います。この問題に関しまして、参考人は流通の問題にお触れにならなかったのでございますが、流通のある部面を管掌、責任者としておられるお立場から、流通の問題でどのような状態にどのような反省が必要であるかということもひとつお答えを願えたらと、このように考えます。  最後に、大友参考人に対してのお尋ねでございますが、非常に有益なお話でございましたが、この時局、この難局にあたりまして一番大事なことは、国民個々が、これはもちろん政治も経済もあらゆる分野においてそうでございますが、国民個々の自覚と国民個々のほんとうの現状認識、それからくるところの国民的自覚、そういうものが非常に必要じゃないか。そういう運動、そういう勢いというものが何か非常に等閑視されておるんじゃないかということを考えますが、そうした個々の自覚という問題についても御所見を承りとうございます。
  11. 堀越禎三

    堀越参考人 いまのお話は全く私も御同感でございます。少し財界といたしましても、いままで金さえ出せば石油が入ると考えておったことは大きな間違いでございますと私が申し上げたとおりでございます。   この五月、経団連といたしましても総会におきまして、企業の社会的責任ということを強くうたいましてみんなに訴えたわけでございますし、さらにアンケートをとりまして、みなに社会的責任担当する重役を置くようにいま勧めております。アンケートの結果も、大体九〇%までは社会的責任というものを強く感じて担当重役を置くというところへ来ておるようでございますが、ただ問題は、これをどう受け取るかの問題が非常に大きくあると思います。われわれといたしましては、企業の社会的責任というものは、良質の、良心的ないい品物をつくってこれをできるだけ安く社会に提供し、そうして一切公害を出さぬ工場をつくる、そこがまず第一歩じゃないかと思います。それから先には、今度は地域社会との融合、あるいはさらにはいろいろな社会福祉に対して貢献をするという点もあると思います。あるアメリカの学者が、大企業の経営者というものは今日一番強い力を持っておるんだ、そしてスタッフもいい者をかかえておるんだ、したがって、その責任をさらにもう一歩感ずるべきであるということを言っております。それで、あるアメリカの会社では、地域の都市づくりに二十億ドルという金を出しまして、五年にわたって病院から学校までつくった会社まであります。これができる会社ならいいんですが、それで破産してしまえば何にもなりませんですが、そういう点で、やはり企業の社会的責任は、まず第一歩は公害を出さない、そして良質の安い品物を社会に供給する、これを、まず責任を果たした上でさらにやるべきことはたくさんあると私は思っております。
  12. 中林貞男

    中林参考人 ただいま流通の問題にあまり触れませんでしたが、私、日本の流通機構は非常に複雑で前時代的な要素をたくさん持っている。その近代化を急がなければならない。その日本の流通機構の中にも、物価を高くしている幾つかの原因があると思っております。私は、そういう形の中では、現在の中央市場制度というものにも問題があると思っております。しかしながらまた一面、最近、大手メーカーの流通支配、また系列化というものも進んでおります。そういう中で、再販制度というものはやはりその代表的なものだと思っております。そういう中で、日本で一番ヨーロッパ諸国と比較して欠けていることは、この流通機構あるいは日本経済の中において、消費者がどこにも発言権を持っていない。近代的な国家で、ヨーロッパなどを見ました場合において、経済機構、流通界の中において消費者がネグレクトされているというのは私は日本だと思っております。  私は、そういう点で、消費者価格の形成あるいは商品品質、いろいろなところで発言をしていく、その具体的な活動をやっているのが、非常に失礼ですけれども、私ら生活協同組合は、生活協同組合運動を発展させることを通じて価格の形成あるいは商品品質なり値段を一般の私企業価格と、生活協同組合消費者が管理している運動ですから、生協でやっている商品価格品質と比べさせる、そういうような機能をぜひ日本経済の中、特に流通機構の中に取り入れていくべきだ。これは、ヨーロッパは全部そうなっております。  その点は、生協運動をやっている私たち責任でもあるし、力が非常に不足している。また、時間がありませんので申し上げませんけれども、先生方も御承知のように、現在の消費生活協同組合法の中に生協運動の発展を規制する条文がたくさんある。そういう点で、ぜひ消費者が流通機構の中、経済構造の中で発言をしていく、そしてフェアな競争を通じて価格の安定に参加をするという仕組みをぜひ皆さん方にお考えをいただきたい。私はそのことのために日夜飛び回っているということでございますが、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。  どうも失礼しました。
  13. 大友よふ

    大友参考人 お答えいたします。  ただいま、こういう難局に処して国民的自覚を高めるにはどうしたらいいかという御質問でございましたが、私どもはこの国民の自覚を高めるためにあらゆる方途を講じております。その一つは、各県で、消費者の個々の権利意識を高めるために、それぞれ幹部の研究集会を持ちまして、あるいは大学講座を開きまして、個々の会員が自覚を高めるように、そしてその受講された者がまた地域に帰ってリーダーとなって個々の会員を啓蒙する、そういうことをやっておるわけでございます。しかしながら現実を見ますと、経済成長に伴い私どもの生活は確かに向上しましたために、金さえあれば何でもできるんだという風潮がたいへん強くなりまして、このごろは会員もやや減ってきている、そして働こうということになっているわけなんです。しかし、こういう状態になってみるとそれではいけないということで、あらためて私たちは勉強に取り組んで、一人一人を何とか意識改造しよう、いまやらなければもうおそいんだ、いままでのはかりそめの豊かさであったので、浦島太郎二十年の夢を見ていたので、これからがほんとう日本生活だということをみんなに感じとってもらうために、それぞれの地区でまた研修会をやっております。実際、私たちはいまになってようやくこの消費者の権利というものを自覚してまいりました。確かに中林参考人さんが申されたように、この安全ということを求める権利がある、こういうのですけれども、業界は一にも二にも利潤というものを先にして 欠陥商品が次から次と出てくる。これをチェックすることはとてもわれわれだけではできないから、これはやはり政治に要望したいということをみんな考えております。また選ぶ権利があるということを認識しましても、横縦のカルテルあるいは管理価格、何々というふうに次から次に新たな手が出てくるために、私たちは現実それをどうやってやったらいいのか。先ほど独禁法を強くしてほしいというのも、それはやはりみんなの声なんでございます。それと、確かな情報を知らせてもらう権利はありますけれども、大体業界情報というのは売らんかなの情報が多い。ことに欺瞞広告や誇大広告が多いのでございます。そういうものをやはりわれわれだけが努力をしてもだめなので、お願いしたいということを私は考えております。その他、自分の言う権利もあって、政策に反映する権利でもあるのですけれども、それを言ってもなかなか政治は取り上げてくれない。幸いにきょうはこういう壇に立たせていただきましたので、私たちの正しい意見がありましたらばぜひひとつ政治に取り上げていただきたい。そういうことによって、一人一人がやはり言えばそれは成就できるのだという強い信念になるのではないか。したがって、皆さん方にもお願いいたしますが、ぜひわれわれが正しく一人一人が自覚できるような御援助を願いたいと思うわけでございます。
  14. 平林剛

    平林委員長 加藤紘一君。
  15. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 時間がありませんので、中林参考人に一問だけ御質問させていただきます。  石油ほんとうに一六%とか二〇%のカットということを来年じゅう続けられますと、結局四十七年度の物の経済つまり生産の上に四十九年度の金が乗るというわけで、必然的にインフレは避けられないということになってくると思うのですが、そういう段階になりますと、ある一定のものは値上がりを認めていく、不要不急のものは認めていく、しかし生活を守るためのものは押えていくという形をしなければ、生活必需物資の値上がりというのは非常に避けられないように思うのです。そういう観点から、最近非常におもしろい提案ですが、朝日新聞の「声の欄」に都留重人さんが基礎的需要というものと任意的需要というものに世の中の物を分けて基礎的需要というものについては、これは非常に社会化するまで考えて、そして任意的な物については高くなろうがそれはほっておくような考え方にしなければいかぬのじゃないかということを言われておりまして、それがいろいろ論議を呼んでいるようであります。しかし、問題は、何が基礎的であり、何が任意的かということになりますと、これはもうたいへんな論議になる。これを一つのプロジェクトでいえば、たとえば本四架橋なんというのは急がなくてもいいというのはわかりますし、老人ホームの建設は急げということでしたらこれはプロジェクトで考えれば非常に判断がつくのですけれども、しかし、さっき堀越参考人が申されたように、不要不急の物質というものは実は非常に少ないんだ。たとえばガソリンというものを、私たちはマイカーなんというのは必要ないじゃないかという意見もあれば、せめてこんなにせちがらい世の中に、土曜、日曜日に一般庶民がドライブに行くぐらいは許さなければかえって世の中のフラストレーションは高まるんじゃないかというような議論があったり、アルミは押えておけ、と言えばアルミサッシのマイホームがつくれないじゃないかという議論になったり、区別がつかないように思うのです。そういう観点から任意的需要とそういう不要不急の物と物を分けることが、いまのいろんな消費生活なんかでできるだろうかという点についてお伺いしたいと思います。
  16. 中林貞男

    中林参考人 いまのお尋ねの点ですが、都留先生が朝日新聞に書いておいでになって、私は切り抜きをして、まだ実は読んでないわけであります。その後投書欄でいろんな論争をされていることも先生のおっしゃったとおりですが、ただ、私は、いまの石油問題現在の日本経済は、必要以上にやはり石油万能でやってきて、そしてまたそういう中で、浪費は美徳だという形で非常に生活なりまた商品が多様化してきているということで、石油があらゆるところへ、先ほども言いました人間の血液のような関係で、私らが知らないところも、ついていってみると、やはり石油問題でこれはなくなっているんだということもいわれますので、私はやはり先生御質問になりました不急不要の物とほんとうの必要な物とを分けることができるかどうかといえば、現在の日本経済の体質、また日本の私たち生活というものを考えました場合には——私はよくここ十数年人間は飼育されてきているんだと、私は商品をそういうふうに仕分けする前にやはり人間が消費者としての自覚をみんなが持って、自分生活自分考える、私らはその基礎は家計簿だということで、家計簿運動をやっているわけです。やはり消費者自分生活自分考える人間になろうじゃないかということを先にしていかないと、物だけで不急不要ということの仕分けをすることは、現在の実態の中ではなかなか私個人は非常に困難だ。それよりも以前に、やはり日本人が飼いならされた人間じゃなくて、自分生活自分考える。それですから、私はよく政府委員会なりほかでも、この時代には私らは人間として生きることを強く叫ぶ人間になろうじゃないかということを、そのほうが私自身は先だというふうに思っているということを申し上げまして、先生の御質問にお答えになったかどうかわかりませんが、私は、日本人はより基礎的には人間らしく生きる道を追求する人間になるということが先決だというふうに、消費者運動をしている者としては思っているということを申し上げておきたいと思います。
  17. 平林剛

    平林委員長 金子みつ君。
  18. 金子みつ

    ○金子(み)委員 金子みつと申します。参考人の方々にはお忙しい時期にきょうは長い時間いろいろと御意見をいただきましてありがとう存じました。与えられた時間が十分でございますので十分お尋ねして聞かせていただくこともできないかと思いますが、それぞれの参考人の方々にお一人一問ずつ聞かせていただいて、きょうは私の時間を埋めたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  初めに堀越参考人にお尋ねしたいと思いますが、先ほど御意見を承っておりまして、私の聞き方が悪かったのかもしれませんけれども、何か統制に入るのが前提になっているようなお話に聞こえたのでございます。もしこれが間違っていましたらお許しいただきたいのでございますが、そのような場合でありましてもあるいはそうでない場合でございましても、今度のこの法律の中で中心になっておりますのが御意見のように価格を規制するという問題でございます。この価格を規制するのに三段がまえになっておりますね。標準価格、特別標準価格、そして公定価格になっております。そのいずれの場合もでございますが、特に統制が前提になるようなもしお考えがあるとするのでございましたら、この価格を規定するきめ方についてどのようにしたらばよいとお考えでいらっしゃいますか、お尋ねしたいと思うのです。  それから中林参考人にお尋ねしたいと思いますことは、先ほど来何回か強調しておっしゃっていらっしゃいましたが、商品を取り扱っていらっしゃる立場から、商品品質を確保すること、これがネグられているからこれをぜひ確保してほしいということを盛んにおっしゃっていらっしゃいましたけれども、具体的にどういうことなのか、ちょっと例をお示しいただきたい。そしてどんな商品をお扱いになっていらっしゃるのかということもあわせて聞かせていただければ幸いだと考えております。  それから大友参考人にお尋ねいたしたいと思いますことば、参考人が最後におっしゃいました総需要の抑制の問題でございます。節約節約といま盛んに政府国民に呼びかけておりますけれども、主婦をはじめとして消費者はこれ以上節約できないぎりぎりの線まで来ているということで、政府自体が総需要の抑制をしなければいけないとおっしゃっていらっしゃったのですけれども、たとえば具体的にどういうことを特に御要望になっていらっしゃるのか、伺わせていただければありがたいと思います。  どうぞよろしくお願いいたします。
  19. 堀越禎三

    堀越参考人 非常にむずかしい御質問をいただきましたが、実は私、安定本部にいましたときの経験を申し上げますと、ある業界におきましての価格をきめるということになりますと、私は、今度の標準価格というものは一定の一つ標準価格でありますからわりあいにきめやすいのじゃないかと思いますが、ほんとう価格をきめてそれを  マル公にするというような場合でございますと、業界にいろいろな会社がございます。非常に能率の悪いのから非常に能率のいいの、それをどこで区分するか、結局一番能率の悪いものを基準にいたしますと非常に高い金額になります。したがいましてすそ切りをしなければなりません。すそ切りは非常にむずかしい問題でありますが、私は、これをある程度の常識でやっていけるのじゃないかと思います。したがいまして、今度の標準価格ということにつきましては、ある程度コンセンサスが得られやすいのじゃないかと思っておりますが、もちろん資本主義及び自由経済というものの根幹はお守りいただけるのだと思いますので、適正利潤ということはやはり考えなければいかぬのじゃないかと思います。ただ適正利潤を見ますときに、私の申し上げましたように、能率のいいものと悪いものとで非常な相違がある。ここに一つのバルクラインを引くということは非常にむずかしいと思いますが、私の先ほど申しました池田勇人君は、そこを勇敢にやったわけであります。したがいまして、バルクライン以下のもの、そんな価格をきめられたらつぶれるかもしれぬという会社も非常な努力をして国際競争力をつくった。そうして今日の国際競争力の基礎ができた。非常にタイミングがよかったと私はいまでも思っております。その辺に一つの勇断の問題があると思います。
  20. 中林貞男

    中林参考人 私たち生活必需品はほとんど扱っております。そして、私らのところで、特にメーカーなどと御相談をして、その中で約二百種類の商品をつくっております。そしてCO・OPというマークをつけて生協では取り扱っております。たとえばその代表的なものは、洗剤のハード系洗剤が非常に有害だということで、七、八年前問題になりましたときに、私らはハード系洗剤の追放運動をやりまして、国会の皆さん先生方のところへも陳情したりなどしてやりまして、そういう形の中で奥さまたちのいろいろな研究の結果、高級アルコール系の洗剤を現在セィフターという名前をつけてつくっております。そして、その洗剤でいえば高級アルコール系の洗剤は、現在の日本における科学技術の水準では一番いい品質のものだと思って非常に好評を博しております。しかしながら、高級アルコール糸の洗剤は高くついてなかなかつくりにくい。また、材料もいろいろむずかしい問題があって、それで高級アルコール系の洗剤をつくるということについて、その原材料の確保とか何かで、最近いろいろ問題が出てまいっております。それで、そういうむずかしいことを言わずにということなどもいわれております。それから、たとえばトイレットペーパーでも、私らは生協でやはり再生紙ではない一番品質のいいトイレットペーパーをつくって供給しております。しかしまた、そのトイレットペーパー品質のいいものも、現在、ごく最近になりましてからその原材料の問題でやはりメーカーからいろいろ言ってきている。そのほかあらゆる商品についても、私らば品質は有害であってはならない。試験室も私らは本部に持っておりますし、全国の奥さんたちでその商品をきめるための委員もたくさんきめて、そしてそういうただ試験室のテストだけではなく、奥さんたちの活動によっての日常的なテストを組織的に経るということをしております。そういう商品をつくるときに一番注文が出、私らは奥さんからしょっちゅうつるし上げを受けるわけです。その立場でメーカーの方と御相談すると、そんなむずかしいものはつくれないということを軒並み現在言われておって、私らはやはり日本において一番大事なのは商品品質の問題だということで、いま具体的に各商品についてメーカーの方とお話し合いをしておりますので、その実例について申し上げたわけでございます。
  21. 大友よふ

    大友参考人 お答えいたします。  国民はぎりぎり詰められるところまでは詰めて——詰める余裕はないと申し上げましたけれども、まだあると私は思っておりますから、今後その点は十分気をつけて浪費を慎む運動をやっております。また現にむだを見直そうということで全地婦連が主になりまして、各県でむだをなくす運動をしているわけでございます。  しかし、国のほうの総需要が抑制されなければ効果が上がらない。たとえばどういうことでありますかというと、いつでも私たちががっかりするのは、衆議院の選挙があるとかあるいは参議院の選挙があるというとおおばんぶるまいの予算を組んでございます。まずそれをやめて、やはり生活優先というからには、そういうほうに予算を組んでいただくのはいいんですけれども、業界からの圧力に屈して、業界にやたらに予算を流すということば、やはりこれはいけないのではないか、こういうふうに思っております。  それともう一つは、日本が非常に技術革新されておりまして、いろいろな技術を研究するための費用、予算というものは膨大なものだと思うのです。ところが、私から言わせれば、アポロの計画をやって月の世界を見たけれども石ころだけだったということでしょう。  私たちばいまわれわれの生活で困っているのは何かと申しますとビニールの公害でございます。農村がいま促成栽培、ビニール栽培や何かやっていますけれども、農村の方々があのビニールの処置に困っておりまして、川の底へ沈めたら出てきたとか、土の中へ埋めたら、またそこが何もできなくなったとか、どうしてくれるんだという声が地に満ちていると言ってもいいくらいなんです。ところがそういうものは企業はやりません、もうかりませんから。そしてシートピアとか何々ピアとかいうことで、非常に大きな先々のことを、——それはいいことでしょうけれども、いまのことのほうに予算を取るべきじゃないか、そして研究してくれるべきじゃないか。それは企業ではできない。やはりこれは国の予算でそういうほうに多く取っていただきたいというのが、これは一例でございます。短い時間でしゃべれという御注意がございましたから……。
  22. 金子みつ

    ○金子(み)委員 どうもありがとうございました。
  23. 平林剛

    平林委員長 増本一彦君。
  24. 増本一彦

    ○増本委員 日本共産党・革新共同の増本一彦でございます。きょうはどうも皆さんほんとうに御苦労さまでございます。  時間がございませんので、三点にわたってまず堀越参考人にお伺いしたいと思うのです。  財界皆さんは今日まで、この異常な物価高の状況を解決するために、業界の自主的な調整で価格を安定させるのが望ましい、こういう趣旨のことをおっしゃってまいりましたね。そこで先ほどのお話をも勘案しますと、国民生活安定緊急措置法案業界の自主調整による価格安定がはかれる法律とお考えなのかどうか。  それからもう一つは、もしそうだとしたら、標準価格や特定標準価格の決定に際して財界はどのような対応をなさるのか、この点をまずお伺いしたいと思うのです。
  25. 堀越禎三

    堀越参考人 新聞でよく、業界内部で安定価格がつくれるということをいっておりますが、これは鉄鋼がわりあいにまとまりがいい。それで鉄鋼業界ではある程度そういうことはできますが、他の業界はなかなかできにくい業界もたくさんございます。したがいまして、みんなが必ずそういうことがやれるかとなりますと、それは非常にむずかしいと私は思います。  それから、標準価格などをつくりますときに、財界といたしましてはもちろん正確な資料を通産省へ提出するということになると思いますが、その点につきましてはもちろんみんな、この際こういう時勢でありますので、従来のような考え方を捨てて、ほんとうにまじめな気持ちでやらなくちゃならないということは、今日みな自覚していると思いますが、ただ先ほどもお答え申し上げましたように、やはり行政をやる立場におきましての見通しと断というものがそこになければ、適正な価格というものが出てこないのじゃないかと思います。
  26. 増本一彦

    ○増本委員 先ほどのお話ですと、標準価格をきめる際に国民のコンセンサス、中でも業界のコンセンサスを得る必要がある、そういう趣旨のお話があったと思うのです。これはそのとおりに承っておいてよろしいですか。
  27. 堀越禎三

    堀越参考人 やはりある程度の納得はなければならぬじゃないかと思いますが、しかしみんな納得させるわけにまいりません。やはりすそ切りということがどうしても必要になってくる、こう思っております。
  28. 増本一彦

    ○増本委員 業界の自主的な調整とかあるいは業界のコンセンサスを標準価格の決定の際に得るようにするということになりますと、独禁法の価格安定カルテルに結びついていくというように考えられますけれども、その対応策といいますか、これはどのように財界としてはお考えになっているのでしょうか。
  29. 堀越禎三

    堀越参考人 これも業界によっていろいろ違うと思うのでございます。ある業界においては、そういうある程度ほんとう価格安定カルテルというものをやらせれば、できる業界もありますけれども、またできない業界もあります。したがいまして、私は先ほど中林さんがおっしゃいましたように、消費者に非常に不安を与えるような、つまり間違った方向へいくようなカルテルは、やはり公取としては十分監視すべきだと思います。
  30. 増本一彦

    ○増本委員 先ほどのお話ですと、公取の委員長か、カルテルにわたる——業者がいろいろ協力をする、あるいは業界のコンセンサスを得るのはカルテルになるというように言うのは行き過ぎではないか、こういうようにおっしゃっていましたので、そうすると自主的な調整とかあるいは業界のコンセンサスを得る、そして標準価格を決定していくという、これとの関係で、では先ほどの御意見というのはどういうところからおっしゃったのか、その点をもうひとつ明確にしてください。
  31. 堀越禎三

    堀越参考人 これは新聞で見ましたので、私、公取委員長がそういう発言をされたのかどうか知りませんが、新聞では相談をすることもカルテルだという、それは少し行き過ぎているんじゃないかという感じで先ほど申し上げたわけでございます。
  32. 増本一彦

    ○増本委員 私たちはいまのこの標準価格の決定あるいは特定標準価格の決定に際しまして、業界との間のいろいろなコンセンサスを得るということがさらにカルテルに結びついていくという、この辺を非常に懸念を持っているわけですね。  実は堀越さんの所属していらっしゃいます経団連の週報の十一月二十九日号を拝見させていたださましたら、経団連と日商・東商、日経連、経済同友会の共催で十一月の十九日に中曽根通産大臣ほか通産省首脳部と懇談会を開いた、こういう記事が出ておりまして、その中で中曽根通産大臣のあいさつの要旨として、一つは、当面の危機対策の実施にあたって、「弱い立場にあるものを助けてゆく考えであるが、石油の確保と国民生活の安定確保を二本の柱としてゆきたい。」二番目は、「統制は極力避け、業界の自主的調整によってこの危機を打開するよう産業界の協力をお願いしたい。」三番目に、「石油の供給削減に伴う物価暴騰を防ぐためには、価格安定カルテルを結べるよう独禁法の運用を再検討したい。」こういうような記事が載っておりましたけれども、この懇談会の席上での中曽根通産大臣のあいさつは、この記事のとおり間違いございませんでしょうか、その点だけちょっと確認させてください。
  33. 堀越禎三

    堀越参考人 最初のあいさつでそういうごあいさつをなさいました。しかしながら、業界といたしまして価格安定カルテルのできる業界もあればできない業界もあるということはみんな承知しております。しかしながら、できる業界につきましてはやらせていただきたいという気持ちが非常に強いわけであります。
  34. 増本一彦

    ○増本委員 それから、この十二月六日の同じ経団連週報の中で、十一月の二十九日に総合対策委員会、植村会長委員長になっていらっしゃる、これを開かれて、その中の物価対策の中で「物価統制令による直接統制には限界があり、種々の弊害をもたらすおそれもあるので、業界の自主調整によって価格の安定をはかることが望ましい。その意味で「国民生活の安定確保のための緊急措置法案」においても、政府の認める価格安定カルテルは独禁法の適用除外にすべきである。」こういう御意見をまとめられているようですが、この点もこのとおり承っておいてよろしいか御確認いただきたいと思います。
  35. 堀越禎三

    堀越参考人 大体けっこうだと思いますが、ただ政府と相談をしながらやるようなものについてはそういう趣旨でやっていただきたい、こういうことであります。
  36. 増本一彦

    ○増本委員 では、最後に。先ほど財界では企業の社会的責任が非常に重大である、一つは良質で安いものを国民に供給をする、これが基礎的なものだ、公害の問題もお話しになりましたけれども、そういうお話があった。そうしますと、今日のこの重大な情勢のもとでは、やはり価格をきめていく上で、私は原価の公開ということが非常に重要だと思うのです。それで、この法案の運用にあたっても、標準価格がどのくらいきめられているかというような点でも、国会を通じての審査ということも非常に重要になってくるし、そのことが皆さん方の懸念している統制になるかどうか、行き過ぎないかというよう、問題に対して、やはり国会がチェック・アンド・バランスを保っていくということにもなると思うのですね。そういう意味でひとつ御意見をお伺いしたいのですが、国会、特に当物価対策特別委員会や商工委員会などの必要な委員会の要求があるときは原価を国会に明らかになさるお考えがあるかどうか。また、必要な場合には国民にもその原価を公表すべきだと思いますが、この点はいかがか。この二点について最後にお伺いしたいと思います。
  37. 堀越禎三

    堀越参考人 いま有価証券取引法できめられております有価証券報告書、大蔵省に出しております、これには包括的な原価計算が出ておるわけでございます。しかしながら、個々のこまかい商品につきまして——あの報告書につきましても世界に例がない。あれを悪用されまして国際競争力上の問題がすでに起こっておるわけでございますが、個々のこまかい商品につきまして、ある会社の原価となりますと、これは非常にむずかしいのではないかと思います。非常に各社が競争に立っております。これは会社の非常な秘密事項でございます。したがいましてこれを公表するということは、つまり業界全体としてのどの程度の原価でやっているかということくらいなら出るのではないかと思いますけれども、個々の会社のある商品の原価となりますと、これは国際競争力の問題もあってなかなかむずかしいのではないかという感じがいたします。
  38. 増本一彦

    ○増本委員 先ほど、安くて良質な商品を供給する。そうすると適正な利潤とか、今日の事態ではそこもがまんしてやらなければならないというお覚悟を企業の社会的責任を果たしていくという立場から、やはり内外に明らかにしていくという上から、ぜひともこの点は私は踏み切るべきときだ。ノーハウまで出せというように私たちは申し上げているわけではない。国民への公開はともかくとして、国会で審議をし、やっていく上で、国会にはせめてそういうものを明らかにするように検討なさるお気持ちがおありかどうか。最後にもう一度、失礼ですが、確認をさせていただいて終わりたいと思います。
  39. 堀越禎三

    堀越参考人 一にかかって秘密の問題でございます。秘密が十分保たれるということであれば私はあえてできるのではないかと思います。つまり、国際競争力の問題でございますから。
  40. 増本一彦

    ○増本委員 では、時間ですから終わります。
  41. 平林剛

  42. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 堀越参考人にお伺いをいたしますが、先ほど来覚え書きの問題がしばしば話題に出ているのでございますが、現在公取委員長は、政府価格介入というような問題があっても、業界側の価格への状況を聴取をした場合には当然これは独禁法違反であるという見解もすでにお示しになっておるわけでございます。政府もきのうの発言ではそういうことを認めておるように思うのでございますけれども、先ほどの堀越参考人の御意見をお伺いいたしますれば、価格の問題について相談をすればカルテルというのでは困る、こういうような御見解でございましたが、すでに公取委員長はそういう見解をお示しになっているということについては、独禁法の運営上そういうことは解釈が違うのだというお立場でおっしゃっているのか、あるいは公取委員長の解釈はそのまま当然順守しなければならないとお考えになっているのか、この点についての御見解を最初に承りたいと思います。
  43. 堀越禎三

    堀越参考人 公取委員長は公取法の最高責任者でございますから、もちろんそういう解釈であればそれに従わざるを得ない、そう思います。私はその希望を申し上げたわけです。
  44. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それから適正利潤の問題で、標準価格設定の場合に非常に大事な要素になりますので、お伺いをするわけでありますけれども、こういうような一部物資不足が起こった場合に、ある会社においては販売量が減少するかもしれません。そういう事情。あるいはまた十一月、十二月のたとえば仕入れ値段が安くとも、三月、四月ごろになるとばかに高いものを買わなければならぬというような問題もおそらく起こってくるでありましょう。そうしてみますと、まあ企業は大体半年決算、一年決算でございますから、一年をトータルをして考えた場合、企業はどうしても赤字を避けなければならないという本質的な性格を持っておると思うのです。そうしてみますと、やはり営業利益というものを大きくしようというようなことにならざるを得ないのじゃないか、こういうふうに思います。いわゆる先高不安ということを考えますれば、そういうような現象も出てくると思うのですが、いま政府のいう適正利潤というのは、いわゆる業界と相談をした上の適正利潤というふうにはならないような見解が出ておるわけなんでございますけれども、しかしながら、この適正利潤というものがまさに適正でなければ企業そのものが壊滅してしまうというような、赤字になって倒産をしてしまう、こういうような要素も出てくるでありましょう。そうしますと、いわゆる高値安定になります。逆に消費者サイドに立って考えてみれば、政府のいう適正利潤というものは、ある程度企業の利潤というものを削らねばならぬ、こういうような立場が出てくると思うのでございますけれども、これについての御見解を承りたいと思います。
  45. 堀越禎三

    堀越参考人 いまの御質問の要点がちょっとよくわからない……。
  46. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それではもう少し申し上げますけれども、先ほど、企業の社会的責任ということに触れられましたけれども、こういうことにも関連するのじゃないかと思うのです。財界全体の石油の見通しを誤ったというその反省を皆さんお持ちのようでございますけれども、それに伴って企業の社会的な責任を果たす、その具体的な内容としては、先ほど公害問題をあげられました。また安いものを供給するということもあげられましたけれども、私たち、まあ今日の状況からいいますれば、このような物資不足の状況下における比較的安いものといいますか、適正な値段で販売をするというようなことは、当然それはあり得るでしょうけれども、逆に考えてみますと、私たちは、それは過去にさかのぼってみればかなり高い値段のものを設定せざるを得ないんじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。そういうような過去の見通しの誤り、そういうようなものの責任まで加味した場合に、この緊急事態を乗り切るためには、やはり企業におきましてもそういう利潤というものを圧縮するというような考え方に立つべきではないか。一時的に一年なら一年という一つの期間を設定してもけっこうでございますけれども、そういう意味で、この適正利潤の問題を考えなければならぬと思っているわけです。これについての御見解を承りたいわけです。
  47. 堀越禎三

    堀越参考人 私も御同感でございます。そのとおりでございまして、こういう際にはやはり不当に利益を得るような者はかなり制裁を受けるべきだと私は思います。ですから、適正利潤はやはり適正利潤としてできるだけ少ない利潤を取るという覚悟でいかなければいかぬという考えを持っております。
  48. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 ありがとうございました。  中林参考人一つだけ伺いますが、先ほどの標準価格設定につきまして、この価格の合理性をチェックする消費者中心委員会を設置すべきである、こういうような御意見を述べられておるわけでございますが、野党提案にありますように、いわゆる消費者代表あるいはまた学識者、労働団体等の代表、もちろん業界も含めてというあれは意味なんでございますけれども、野党提案はそういうような形で事前におけるチェックを考えておるわけでございますけれども、先ほど申し述べられましたこの消費者中心委員会というのは、合理性をチェックするということは、いわゆる事後の問題なのかあるいは事前の問題なのか、そこら辺を含めて、もう少し具体的な形で、どういう形でこれを設定すべきなのか、御見解を承って、私は終わりたいと思います。
  49. 中林貞男

    中林参考人 この野党の皆さん方でおつくりになっている案の中における委員会というもの、私もその案は事前か事後かよくはっきりしなかったのですが、ただ私は、緊急事態に対処して標準価格を至急きめるというタイミング考えた場合は、やはり委員会を開いて審議しているということですとタイミングが合わなくなったり、あるいは生活安定法なりあるいは物統令云々ということで、十一月を基準にしてこうだという情報が流れたということで一斉に価格が上がりましたが、そういうことがあってはならない。そうしますと事前チェックということができればいいんですけれども、なかなかむずかしいというふうに私は思っているわけです。それですから私は事後ということを申し上げて、標準価格がもしも高値できまっているということが、この委員会で資料を出してもらって、原価の計算なりいろいろなことを見てこれが高いということがわかったら、引き下げの勧告を委員会がして、標準価格の引き下げをやるようにひとつぜひしていただいたほうが、実際の経済の動きというものとの関連で私はそのほうが実際に即しているんじゃないかというふうに思いまして、ああいうふうに申し上げたということでございます。
  50. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 終わります。
  51. 平林剛

    平林委員長 和田耕作君。
  52. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 時間もありませんから端的に御質問申し上げたいと思います。  中林さん、いまの点なんですけれども、まあ問題の性質上きめることは迅速にやる。しかし迅速にやればやるほどいろいろな問題もあるだろうから、それをチェックする機関を置け、それがまあ審議会あるいは委員会というような形の御示唆、私はこれは非常に重要な示唆だと思うわけですからお聞きしたいと思いますけれども、堀越さん、いまの中林さんの、標準価格をきめるきめ方ですね。まあ事前に迅速にきめる場合にどういうふうにするかということはあとにしまして、この手続というものをどうお考えになるでしょうか。
  53. 堀越禎三

    堀越参考人 やはり担当大臣が勇断をもってきめられるのが一番いいんじゃないかと思います。中林さんのおっしゃいましたように、それが高過ぎればあとで委員会で訂正する。審議会でもけっこうでございますね。そこで審議して訂正する。やはりそうでございませんと、どうしても思惑が出ます。この間の十一月の終わりごろに起こりましたような、物統令が出るというのでたいへんな騒ぎが起こりました。ああいうことが起こってまいります。やはり担当大臣が責任をもってやるということじゃないかと思います。
  54. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大友先生、この問題、感じとしてどういうふうにお考えになるでしょう。
  55. 大友よふ

    大友参考人 標準価格のきめ方でございますか。——私は、この前通産大臣石油価格を三百八十円にというような指導価格をお出しになったとき、すでにもう県内では私たち業界と話し合いをしましたときに四百円をこしてしまって五百円という高値になっているのです。そうしますと、政府は一体われわれの生活を知っておられてこういう値段を出されたんだろうかという疑問を持つわけですね。ですから、急を要する場合でも、やはりある程度第三者の意見をお聞きになるほうがよろしいんじゃないか。ただ隠れみのにするのでは困りますけれども、そうではなくて、急に開く場合でも、その県内の情勢を持ってこいとか、あるいはおまえの団体の内部からの声を聞いて持ってこいというふうにして、ある程度の資料を持って集まれば、私はわりあいにいいんじゃないか、そんなふうに考えます。
  56. 中林貞男

    中林参考人 いま和田先生の御質問で、私ちょうどこの前の戦争統制に入るころ新聞記者を実はしておりました。それでそのときじだんだを踏んだ経験があるわけです。あす統制に入るということで前の晩に役所できめて、次の朝発動するということだったら、夜中のうちにトラックで商品が持ち出されたということで、役所も新聞記者もけしからぬことだといった苦い経験を、かつて戦争に入る前、私新聞記者をしていてそういう苦い経験を持っているということ、今度の過程においても私はそういうことを感じましたので、それで事前チェックよりも事後で引き下げの勧告をするなり、建議するということが具体的じゃないかと思ったということでございます。
  57. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いま堀越さんは大臣が責任を持って、勇断を持ってきめるという御提案なんですけれども、中林さん、その問題、つまりだれがきめるかという点について何かいい知恵ないですか。
  58. 中林貞男

    中林参考人 私はやはり責任者というか役所で、行政的には通産大臣、農林大臣だと思いますけれども、ただ、大臣に行く途中いろいろな経過を経ますから、外部に漏れたりいろいろなことをするとなかなか問題だ。それだからどうしてもチェックだけは委員会で事後でもしなければ高値で落ちつくというふうに思っております。
  59. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 堀越さん、いまの中林さんの提案は、事後に効果のあるチェックができるということを主眼にしていると思うのですけれども、その場合にやはり審議会あるいは委員会というものが必要ですが、いままでのいろいろなそういう種のものは形だけで効果のないものが非常に多かったわけですけれども、効果のある審議会、つまり間違いであれば迅速にこれをチェックして直していけるような審議会というのはどういうふうにしたらいいとお思いになるでしょうか。
  60. 堀越禎三

    堀越参考人 たいへんむずかしくて、ちょっと私もいま思いつきませんが、やはり従来のような、ああいう役所の出したものをそのまま認めるような審議会じゃ何にもならぬと思いますが、やはり相当権威者及び消費者なんかも入れて承るべきだと私は思います。
  61. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いま物価安定政策審議会というのがあるのですが、こういうふうなものもそういう機能を持たすようなことを考えてみたらどうかと私思うのです。したがって、そのためには、大体問題になりそうな品目はいまからでも大体わかっているんです。だから、その品目について十分調査をして、事前の調査を十分やっていく。そうしてこれはいずれにしても早くやらなければ意味がないわけで、早くやって間違いがないようにという、いろいろな調査機能をフルにしながら、いま中林さんのおっしゃる間違いを早く、しかも効果があるように訂正できる機関、これができれば、私はこの制度は生きてくるんじゃないか。いずれにしても、業界に相談したって、業界でまとまる話じゃないですよね。いまの優秀な企業と不良の企業との場合が、たくさんいろいろな比重であるわけで、業界と相談したって、大部分の業界がきまるもんじゃないと私は思います。したがって、過去のいろいろな石油問題が起こらない前の正常な状態の値動きがあるわけです。そういうものなんかも参考にする。したがって、標準価格をきめる場合に、原価——生産費用だとか適正利潤だとかいうことはありますけれども、過去の実績というふうなものも当然私はあの中に入れていく必要があると思うのです。つまり、こういう事実があるから文句は言えないのだというものがないと、こういう場合価値評価が入りますとなかなかきめることはできないのですよ。そういうような意味で非常に有益な御提案をいただいたと思っております。  ありがとうございました。
  62. 平林剛

    平林委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、お忙しいところ長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べくださいまして、まことにありがとうございました。  ここに委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  午後一時に再開することとし、この際休憩をいたします。    午後零時六分休憩      ————◇—————    午後一時八分開議
  63. 平林剛

    平林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国民生活安定緊急措置法案審査を続行いたします。  本日午後一時より御出席参考人は、日本消費者連盟創立委員会委竹内直一君、協同組合連合会日本商店連盟専務理事三浦正義君、全国社会福祉協議会常務理事牧賢一君及び東京都副知事磯村光男君、以上の方々でございます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。  すでに御承知のごとく、本委員会において審査中の国民生活安定緊急措置法案は、国民的関心の深い、しかも緊急を要する重要な内容を持つ法案であります。  本委員会におきましては、昨日は学者及び労働者代表、本日の午前中は経済団体等の各参考人から意見を聴取するなど、連日にわたり鋭意審査を進めておりますが、本日午後からはまた、経験豊かな各位にそれぞれのお立場から忌憚のない御意見を承わり、本案審査参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いをいたします。  なお、議事の進め方といたしましては、最初竹内参考人、三浦参考人、牧参考人、磯村参考人の順序で、おのおの一人十五分程度に要約して御意見を賜わり、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは竹内参考人お願いいたします。
  64. 竹内直一

    竹内参考人 竹内でございます。  ただいま議題になっております国民生活安定緊急措置法案につきまして、私は基本的に反対でございます。その理由を以下に述べさせていただきます。  まず第一に、私たち国民理解できないことが数々ございます。その第一は、政府石油危機だと発表したとたんになぜ物が一斉に値上がってきたのか。その原因、理由について、政府もそれから関係の業界も一向にわれわれ国民が納得するような説明をしてくれていないということです。  それから第二番目に、私たちが知ったことは、公正取引委員会が最近続々と石油をはじめ重要物資の業界によるやみカルテルあるいは出荷制限、そういったものの独禁法違反を摘発しているということ。  私たちなりにこの一斉の値上がりの原因を解釈をしてみますと、次のようになろうかと思うのです。  石油危機を必要以上にあおって、これに悪乗りした買い占めや売り惜しみ、それから業者間の談合、カルテルですね。それから不公正な販売方法、不当な価格のつり上げ、こういったものが横行しているんだということだと思います。もう少し具体的に申しますと、私どもが、トイレットペーパー騒ぎ以後、砂糖にしろ洗剤にしろ、いろんな物が小売りの店頭から姿を消した、それについてそれぞれの業界に質問を出したわけです。いまの需給の状況はどうなっているのだ、はたして物があるのかないのか、どうなのか、今後の見通しはどうかということを聞きましたところが、石油を除きましてほとんどのものが生産、在庫ともに順調である。特に砂糖に至っては、来年の夏ごろになれば世界の砂糖生産国が増産をする結果国際価格が下がる、心配ないということを言っております。そのほかの商品についても同様でございます。特にマッチに至りましては、マッチ業界始まって以来のブームだというのですね。だから、ああいうものが買い占めされるというのはふしぎでしょうがない。そのブームの原因は第三次産業にわたる広告マッチのものすごい需要が多いからだ。これはいまの経済状態の一端を示しておるものだと思いました。そのほか紙にしましても、紙の業界はいままでの生産の伸び率を大幅に上回って増産をしているんだけれども、それをはるかに上回る強い需要があるために品不足の状態が起こっておるということを答えてまいっております。そういうように見てまいりますと、最近騒がれたような一見物が不足しているかのような現象は、物の絶対量が不足しているのではなくて、つくられた物不足ではないか、そういう感を非常に強くしたわけです。  それから、次にふしぎでならないことは、十一月の中旬に、あの消費者が右往左往しておるさなかにこの法案の構想が政府から出てまいりました。そうしたところが、鉄鋼業界やそのほかの基幹産業のリーダーの方々が、価格カルテルですか、これを公認しろというような要求を出されておる。そういたしますと、最初のこの法案要綱の中には独禁法適用除外の規定が入っていた。そういうことからいたしますと、この法案がなぜ突如としてこの際に出てきたかというその意味がわかるような気がするわけです。その後、公正取引委員会の必死の抵抗で法案の条文からは消えましたけれども、やはり覚え書きという形で残っている。そういう事実からいたしますと、非常にきなくさいものを感じる、私はそういうように見ているわけであります。  それからもう一つ、この法案が十二月の初めに出てまいりましたけれども、与党も野党もこれについてあまり十分な議論もしないで、もうこれは急いで通すんだというように態度をきめていられるように漏れ承っているわけですけれども、どういう根拠でそういう判断が出てまいるんでしょうか、私たちにはとんとわからないのです。  それは別といたしまして、この法案の中に盛られている統制の中の一つ価格統制について申し上げたいと思います。  この価格統制というものを、この権限を申し受けた役人がはたして本気でやるつもりでいるのかどうかということを非常に疑問に思います。というのは、私自身、実は昭和二十一年から二年半の間、物価庁という役所で公定価格の改定作業に従事した一人でございます。その経験から申しますと、価格統制というものは一たんやり出しますと、永久にらせん状の段階を上がるような運動を開始してとどまるところを知らないという結果になります。  具体的に申しますと、まず最初に石炭の価格を改定いたします。これはすべての基礎物資です。その次に電力、それから鉄鋼の価格改定の作業が進む、その次には機械の価格改定が進む、あとどんどんとあらゆる物資について行き渡ります。食糧に至る。といたしますと、労賃も上がる。それから今度はぐるっと一回りいたしまして、石炭を掘るための電力コストが上がる、機械のコストが上がるということで、再び石炭の価格改定の作業が始まるわけです。そういうようにぐるぐる永久に運動を始めてしまってとまるところがないのです。私たち物価庁という役所へ入って二年半、それの繰り返しをやってまいりまして、一体これは何のためにわれわれはやっているんだろうと職員一同非常にむなしい思いをした経験がございます。  その経験からもう少し掘り下げて申しますと、役所というところは資料の収集能力がないということです。なるほど数字は集まってまいります。ですけれども、それの信憑性についてはチェックする能力も何もございません。非常に数少ない人間でもって非常に多くの物資の価格計算をする、原資料を集める、それだけでたいへんです。時間もかかります。そういうものをうまく処理する能力を役人が持っているとは思われないのです。現に複式簿記の知識を十分に持ってない職員が大半です、公務員というのは。そういう連中がそういう原価計算の資料になる材料をこなせる能力がないのです。  それから次は、原価というものは一体どう認識したらいいかということです。  一つ企業にいたしましても、きょうの原価とあすの原価とは変わるものです。時々刻々に原価というものは変わるはずです。そういったものをいつの時点で押えたらいいか。決算でありますれば、ある時点で押えて、それは二月かかろうと三月かかろうと半年かかろうと、ゆっくり計算してよろしいと思います。だけれども、こういう価格統制の数字を押えるための計算となれば、今後に通じるものでなくてはいけない。であるのに、過去の数字を幾ら正確に出してみたところで、それが出た時点においては役に立たないものになっている。これはもう言うまでもないことであります。そういうものを、たった一企業についてもそういう困難があるのに、非常に多くの限界要素の違う企業があるのに、それの全部を集めて一体どう処理しようというのかということです。おそらく膨大な人間が集まってやっても、それはとてもこなし切れるものではない。また企業が出してきた資料の信憑性についてチェックする時間も能力もない。たいへんなどろ沼におちいってしまうということであります。  それから次は、私たち経験によれば、あらゆる業界は毎日のように価格改定の要求を物価庁につきつけてまいりました。応接にいとまがございません。まじめに仕事をやろうとしている職員はノイローゼになるのは当然であります。まじめにやらない人間は汚職におちいる。現に私たちの先輩同僚で汚職にひっかかってやめざるを得なくなったという実例もございます。  最後に、そういうように苦労してつくった公定価格を業者は本気で守ろうといたしません。やみ価格が横行いたしました。当時は司令部がありましてずいぶんうるさかったわけですけれども、それですらやみが横行していた。今日のこのたるんだ世の中でそういうものをまじめに守る企業があるかどうかという点は、これは非常に深刻な問題だと思います。  それから、最後に、役人というのは、一たん手にした権限、権力というものは絶対死んでも放さないという体質を持っているということを皆さまよく御承知いただきたいのです。  そこで、これから提案に入りますけれども、まず第一点は、過去の日本の不幸な統制の歴史、これはおそらく失敗の歴史の連続であったと思いますけれども、その統制の歴史を徹底的に皆さまで調べていただきたいということです。そしてこれから審議されようとするこの法案に当てはめてみて、一体どこが違うのか、同じ点がどうなんだ、その当時の役所の機構といまの機構とはどこが同じでどこが違うのか、よく比較をしていただきたいということです。そういうように実証的に調べ上げていただきませんと、こういうものを簡単に通した場合にとんでもないことになってしまうということを申し上げたいわけです。  私は、こういうように自由私企業を前提にして、官僚統制によって何かしようとするような発想よりも、現在ある、現行のいろいろな法律制度、そういうものをフルに活用する、あるいはそれが不十分な点があるならばそれを補強するというような形でやってみるという努力を、なぜまずしないのかということを申し上げたいのです。  その一つとして、まず第一点で私が申し上げたいことは、この前の国会で成立した買占め売惜しみ防止法でございます。これはあまり働いていないということでありますけれども、しかし、これを補強いたしまして、悪徳業者を摘発する、そして隠しておる品物を出させるということに重点を置くこと、それからそういうように法律違反を犯した企業に対して非常に重い罰則を加える。それは下手人だけでなくて、会社の経営者全部を連座制にする。それから、不当利得に対しては非常に重い罰金を科する。そういうような、ペナルティを重くすることによって法規を守らせるということ、外圧を加えるしか方法がないのではないか。それから、国民ぐるみでそういう悪徳企業を監視する体制をつくるということがぜひ必要だろうと思います。  二番目には、独禁法の強化でございます。その中身としましては、時間がありませんので、列挙的に申します。  まず第一は、カルテルの構成要件を、業者が積極的に共謀して契約を結ぶ場合だけにとどめないで、リレー式にお互いに通知し合って同一歩調をとる場合、それから官庁などの第三者が仲介して同一歩調をとらせる場合など、およそ共同行為と見られるものはすべて違法とする。  第二、現行法で合法とされている不況カルテル、合理化カルテル、この規定を削除する。  第三、現行法では共謀の具体的証拠をつかまない限り事件にできないということになっているわけですけれども、たとえば、ほぼ一斉に値上げが行なわれたといったような状況証拠に基づいて立件をするわけです。そして事業者側がカルテル行為をやっていないという立証ができない限りこれを違法とする、そういうようなたてまえに持っていく。  それから第四、再販売価格維持行為の規定を削除する。  第五、現行法では、やみ再販は、独禁法十九条によりまして、不公正な取引方法として禁止されておるわけですけれども、しかし罰則の適用がないのです。ただ差しとめ命令ができるということだけです。これでは全部しり抜けになっておりますから、このやみ再販も縦のカルテルとして横のカルテルと同じようにきびしく規制をするということにする必要があります。  それから第六は、公正取引委員会は独占禁止法の犯罪行為の告発を怠っております。法規では義務づけがあるにもかかわらず、ほとんど告発をやっておりません。これはすべて告発するようにきびしく監視をする必要があるのではないか。  それから第七点は、現行法では、カルテル等の独占禁止法違反の犯罪は、公正取引委員会だけが告発権を握っております。専属告発権と言います。これを一般の刑事訴訟法と同じように、何人でも告発できるように改める必要がある。  それから第八点、以下は罰則の問題ですが、現行法ではカルテル行為等の犯罪は三年以下の懲役または五十万円以下の罰金となっているわけですが、懲役刑を詐欺あるいは窃盗、業務上横領の罪と同じように十年以下とする。それから罰金刑は、カルテルによって得た利得額の三倍、これは西独の例と同じにする。  それから第九点は、現行法では刑罰を受けるのはカルテル行為などの行為者となっておる。下手人ですね。その範囲は狭く解釈されているわけなんですが、これを広く解して、権限の委任関係、決裁の有無に関係なく、社長、専務、担当重役等、企業経営の中枢にある者を、連座制をとること。  それから第十点は、カルテル行為等による被害者に対して、事業者は無過失損害賠償責任を負うこととなっております。これは独占禁止法二十五条です。これを損害額の三倍まで請求ができるように改める、これもアメリカの立法例でございます。  第十一点、カルテル行為によって価格をつり上げた事業者に対し、公正取引委員会は引き下げ命令を出すことができるようにする。  第十二点、これは管理価格の問題ですが、たとえ単独であっても、不当な価格の引き上げあるいは価格の維持行為を行なった疑いがあるときは、公正取引委員会は報告を取って立ち入り検査ができるようにしまして、その結果不当な価格操作を行なったと認めたときは引き下げ命令を出すことができるようにする。  それから第十三点は、これらの権限を公正取引委員会だけでなくて、地方公共団体にその権限を与えて、数多くの人間が独占禁止法違反を監視することができるようにする。  それから第十四点は、現在もございますが、公正取引委員会のモニターです。これは民間の人が参加しておるモニターですが、このモニターの制度を大幅に拡充をして、国民も一緒になって独占禁止法違反を監視するという体制をつくるというようにすべきだということを提案したいわけです。  それから、これは金の問題として、総需要抑制というようなことが言われておりますけれども、緊急に必要な問題として、私は税法の改正をぜひ早急にやっていただきたい。  その第一点は、法人税の改正です。法人税についても累進税率を適用する、租税特別措置を全廃する。それから社内留保をいまのようにたっぷり取るような税制を改める。それから資金所得の優遇措置というものは廃止してしまう。そういうことによってだぶついている金を吸い上げる。  それから、第二点は、われわれ庶民が将来の生活のためにリザーブしてある貯金ですね、具体的に言うならば郵便貯金、これの金の目減りがないように、郵便貯金の利子を物価にスライドさせる、金の価値を保障するということをして、庶民の金を集め、それを保護するということです。  それから三番目には、そういうようにして集まった金の配分についてのルールである財政投融資計画、これを国会の議決事項にする、国民が広くタッチできるようにするということにされたいということであります。  大体、具体的な提案事項は以上でありますけれども、最後に申し上げたいことは、これほど日本経済の根幹に深く大きな影響を与えるような法案、そればかりでなくてわれわれの日常の生活にも大きな影響を与えるようなこの法案審議を、非常にばたばたとこの年末にわずか数日で上げてしまうというようなことをなさるということは、われわれ国民として非常に残念でございます。過去にも国家総動員法の非常に暗い記憶がございます。ここでわれわれが判断を誤った場合には取り返しのつかない事態が起こりかねない。それはひいては政治不信につながり、われわれ国民一同にとって非常に不幸なことでございます。ぜひこの際思いとどまっていただいて、事態は非常に緊急であるということでありましょうとも、急がば回れということわざもございます。先ほど私が提案の第一番目に申しましたように、少し実証的に、こういうことができるのかできないのか、よくお調べの上で御判断をいただきたい。そうしてそういう審議をなさっている間に、いま私が具体的に申し上げた買占め売惜しみ防止法それから独禁法の改正を早急にやっていただいて、このほうを早急に実行に移していただきたいということをお願いいたします。  終わります。
  65. 平林剛

    平林委員長 次に、三浦参考人お願いをいたします。
  66. 三浦正義

    ○三浦参考人 時間の制約もございますので、商品の販売を直接担当実施しておりまする、すなわちこの法律の施行にあたって最も関係の深い小売り業者の立場から簡単に意見を申し上げたいと存じます。  まず大筋としては、このような法律の制定という措置がとられなければならない情勢につきましては、われわれ国民の一人として理解できないこともございませんが、はたしてこの法律を実施してみて、これがいわゆる実施の段階で円滑な運用がされるだろうか、あるいはこの法律の目的であるところの国民生活の安定と国民経済の円滑化が一体達成できるのであろうか、この点に私ども小売り業者も大きな不安と疑念を持たざるを得ないのでございます。  私ども小売り業者は現在全国で約百五十万店舗、これが全国津々浦々にくまなく張りめぐらされておりまして、本年度の販売額はおそらく三十兆円にも達しようとする膨大な物資を扱っておるのでございます。個々の商店には、上は年商三千億をこえるところの百貨店から下はせいぜい数百万円にも達しない雰細店までその規模の大小はさまざまであり、その流通経路も複雑多岐にわたっております。  これらを対象といたしまして政府標準価格あるいは特定標準価格などを設定して守らせる、また各商店には別に帳簿を備えつけさせて、いつでも立ち入り検査に応ずることができるように準備させておくといったふうな体制が、一体この百五十万店舗に対して実施できるだろうかどうだろうか。当事者の一人として私どもは、ほんとうに不可能に近いんじゃないだろうかという気がするのであります。しかも、これが運用にあたっては、新しい行政機構の設置やあるいは担当要員の増員などは予定していないように報道されております。といたしますれば、関係業者の良心に期待するあるいは利害関係の当事者であるところの消費者の監視にこれをゆだねるといったふうな手段をとらなければなりません。まさに正直者がばかを見るかあるいは一億密告制度による暗い社会が実現するという不安を禁じ得ないのでございます。したがって私は次の二、三の点について立法面でまた運用面での配慮を希望するものでございます。  まず第一は、生活関連物資の価格が高騰しあるいは高騰するおそれがある場合には、標準価格を設定し、これを守らせるということになっており、さらに特定標準価格制度も設けまして、きびしい罰則のもとに価格の高騰を押えようとするたてまえになっておりますが、私は、そういう状態が発生した結果に対して手を打つということはきわめて技術的にもむずかしいし、効果が期待できないのではないだろうかというふうに考えるのでございます。むしろそのような状態をできるだけ回避する、つまり原因に対して手を打つということが重要だと思うのでございます。  そこで、法律案の第三条以下おおむねこれは結果に対する対策になっておりますが、この三条以下十二条までのほうはできるだけ発動しない。発動しないような状況をつくり上げていくということが大切でございまして、むしろ第二条の物資指定条項と第十三条以下の生産輸入、保管等の条項を連動活用する、こういうことが必要じゃないだろうかと思うのであります。  すなわち生活必需物資とは何か、これだけは絶対生活に欠かせないという品目と、その品目で高騰またば高騰のおそれのあるものを早急に選別いたしまして、この商品生産、輸入については他の不急商品やあるいはぜいたく商品の製造等に回っておりますところの資材、エネルギーを削ってでも十分にこれを生産せしめておく、そうすれば国民の不安感は解消され、あるいは買いだめ、買いあさりもおさまり、異常な価格高騰も押えることができるのでございまして、ひいては第三条以下のよけいな発動をする必要がなくなるのでございます。  私は法律の立法技術についてはしろうとでございますから何もわかりませんが、この法案を見ますと、いきなり第二条から小売り商末端の標準価格の設定あるいは立ち入り検査、罰則あるいは課徴金の徴収、最後には税務署への通報——相互通報になっているようですけれども、通報といった非常に技術的な困難なこと、しかもやや威圧的な条項が先行いたしまして、より大切な需給のバランスという法律条項のほうはむしろお添えもののような形になっている。ちゃんとあるからいいじゃないかという御説もございましょうけれども、このような法律の組み立て方が、ひいては行政の執行面でもそのまま出てくるのじゃないだろうか。ウエートの置き方、考え方というものが、標準価格や罰則の適用や課徴金の適用といったほうが先行して、実際に物資の流れる根本というものに対する手だてのほうがあと回しになる心配があるのでございます。  たとえば先般のトイレットペーパー事件にいたしましても、幾ら政府心配要らない、たくさんあるんだと言いましてもおさまらないのですけれども、緊急配送して大量にこれを店頭に陳列いたしましたら、顧客はむしろ振り向きもしない。業者の方に聞いてみますと、お一人さま一個にお願いしますと書きさえすればいまは幾らでも物は売れるんだ、一人の客が何べんでも行列に繰り返し、巻き返し入ってきて、一日じゅうでも買って帰っていく。さあどうぞといって大量に陳列すると、今度はさっぱり売れないなどと笑っておりましたけれども、まさにこれが消費者の心理ではないだろうかと思うのでございます。  標準価格や特定標準価格の設定と公示などは、むしろ天下に不足物資を公表し、値上がりを促進、保証するようなものでございまして、これによって取り締まるとすれば、指定品目と類似品目に購買が集中し、混乱を増大させる懸念がむしろ大である。まさに伝家の宝刀という標準価格あるいは特定標準価格といったふうな最終段階の活用はむしろしないほうがいい。それが私は政治の妙諦ではないだろうかというふうに感ずるのでございます。   〔委員長退席、井岡委員長代理着席〕  第二番目には、それにいたしましても、標準価格や特定標準価格の設定が行なわれましょう。その場合の標準的な仕入れ価格というものは一体何なのか、標準的な販売費用というものは何なのか、適正利潤という適正の内容は一体どういうことなのかなどの算定につきましてはきわめて困難ではないだろうか。生産段階はわれわれのタッチするところではございませんけれども、商品仕入れにいたしましても、取引の数量あるいは支払いの条件あるいは配送センター、倉庫、トラック等の有無あるいは中間卸団体の数あるいは大都市、地方都市といったふうな地域差あるいは仕入れ先との平素の接触の密度等でその仕入れ価格は千差万別でございます。これを全国一本の、一物一価の価格設定をしよう、しかもそれをしなければ課徴金との差額の算定ができない。そこで課徴金を取る以上は、全国一物一価の標準価格をきめざるを得ない。たばこみたいな形にしなければ実行できないのじゃないだろうかという気がするのでございます。さらにまた販売経費や適正利潤にいたしましても、小売り資本の形態あるいは地域差によって相当の差のあるのは明瞭な事実でございます。それを一本化しようとすれば、そこに無理が生ずる。その無理をあえてこの非常時であるからというので強行する。強行するところに、納得のいかないのが、やむを得ずこれに従おうとするその心理の底に、この法律は守れるかと——かつてのたとえば米のやみ行為のように、これはしかたがないんじゃないかと、取り締まるほうでもやるほうでも罪悪感がないというふうな現象がむしろ起こるんじゃないだろうかという気がするのでございます。かりにあえてこれを実行しようとするならば、私は学識経験者やあるいは業界消費者、労働界の代表等によって審議会を設けるなどいた、しまして、小売り商にも消費者にも国民の納得のいく価格設定というものをしなければならないだろうと思うのでございます。  第三には、この法律を実施するためには、著しく複雑化しておりますところの流通機構、特に中小零細店の実態を十分に把握していただき、実情に沿った運用をお願いしたいのでございます。  わが国の小売り商の中で、年商五十億円以上の大型店の販売シェアは約二〇%になっておりまして、あとの八〇%が中小零細店でございます。このような統制的な方法を実行しようとする場合には、企業の数が少なければ少ないほどやりやすい。大型店のほうではあるいは日本百貨店協会あるいは日本チェーンストア協会といったふうなグループを設立いたしまして、そこで傘下の各店への連絡も容易であり、指導も行き届くように仕組まれておりますが、企業数では九〇%以上、販売額では八〇%以上を持っておりますところの、しかも国民大多数に接触いたしております一般小売り商は、このような組織がきわめて脆弱でございます。したがってこの法律の趣旨の徹底あるいは内容の説明、最低限度どのような帳簿を置かなければならないか、店頭の表示というものはどういう方法でやらなければならないか、やらなかった場合にはどうなるのかといったふうな、そういう十分なる指導ということがなかなか容易にできません。もちろん政府も地方行政機関等の活用をはかりまして万全を期しているとは思いますけれども、しかし一方においては、戦時中にも行ないましたように、ある程度業種別の団体あるいは地域的の団体といったふうな団体、現在も相当数ございますけれども、これらをさらにもっと内容を充実し、組織を強化いたしまして、このような事務の受託がある程度分担できるように育成せしめておくことが大前提になるのではないかというふうな気がいたすのでございます。このような組織に対する政府の十分なる配慮をお願いしたいと思います。  さらに大切なことは、業者に対するところの公平の原則を貫くということでございまして、先般のたとえば小麦粉やあるいはトイレットペーパー等のように、緊急物資の配給等が一部大型店のみに集中いたしますと、これはもちろん消火作業でございますから不公平になってもやむを得ないではございましょうが、これが法律のもとで今後恒久的に繰り返されるということになってきますと、しかも常にそれば一部の大型店に片寄る、一番消費者がほしがっている、一番消費者が集まるという品物は一部の大型店にしか集まらないといったふうな事態が生じますと、これは一般小売り商に大きな不平不満が巻き起こり、かえって私は別の形での社会緊張を引き起こすものではないかと憂えざるを得ません。つまりこの法案第二十五条の発効の場合に、こういう事態に対処するためにも、私は地域別、業種別、各種の小売り団体の育成、助長こそ本法運用の大前提になるものでないだろうかという気がいたします。  最後に、第四には、法第二十二条以下の設備投資抑制措置でございますが、もちろんいたずらに店舗の増設は差し控えるべきであり、すでに大型店グループでは、通産当局の行政指導によりましてこの法案制定前にすでに自粛規制に入っております。しかしながら物価安定のためには、流通機構の整備と近代化がきわめて重要でございまして、ついせんだって国会で制定されました中小小売商業振興法でも、中小商業の近代化のために、店舗の共同化、大型化を一つの有力な柱として推進しようといたしております。本法施行にあたって、主務省令の制定の場合、十分この点は配慮されるとは思いますけれども、物価の安定に深い関係を持つこの法律とあるいは振興法との関係等につきまして十分なる配慮をお願いしたいと考えるのでございます。  以上、要点について申し上げましたが、わが国の経済が戦後最大の危機に直面している、かように報ぜられておりますが、これに対処するためには、やはり基本的には国の経済政策そのものの見直し、転換あるいは国民生活意識の変更あるいは環境保全、限りある資源の有効的活用等々といった基本的な問題がその大前提になるのでございまして、単に小売り店頭での小細工ではいかんともしがたい状態になっているのではないかというふうに私は感じます。  また本法制定が報道いたされますや、すでに原料部門、生産部門での大幅な値上げ工作が実施されていると新聞では報道しております。   〔井岡委員長代理退席、委員長着席〕 と同時に、メーカーに拠る小売り商の系列化も非常に強化されておりまして、小売り商部門への、特に零細小売り商部門へのしわ寄せはすでにひしひしと迫っております。重ねて生産段階あるいは商社、大型卸部門等への強力な指導と監視を本法制定とともにぜひ厳重に実行していただきたい、かように念願するものでございます。  以上、簡単でございますが、小売り商の立場からの意見を開陳させていただきました。(拍手)
  67. 平林剛

    平林委員長 次に、牧参考人お願いいたします。
  68. 牧賢一

    ○牧参考人 御紹介いただきました牧でございます。私は全国社会福祉協議会の常務をいたしております。したがいまして、仕事の関係から申しましても経済立法のようなことには全くしろうとでございます。しかし、私どもに関係いたします多くの非常に弱い立場にあります国民大衆あるいは社会福祉の対象、こういった者たちの非常に悲惨な現在の状態を見ますときに、とにもかくにもこの法律をすみやかに成立をさせていただきたい。それにはもちろんいろいろまだ時間の関係もございますので不完全なところもあり、問題も少なくないとは思うのでありますけれども、それらはまず実際に当たりまして、その場合に改善すべきものは勇敢に改善をしていただく、そういうようなことにしていただいて、とにかく今日非常に悪性なインフレが急騰しておりまして、国民生活は窮乏、混乱におちいろう、こうしているさなかでございますので、一日も早く、いっときもすみやかに本法を成立させて、これを敢然と断行していただくことが急務であろうと思うものでございます。  さて、私は社会福祉の分野を代表して参りましたので、この社会の底辺に苦しい生活を現在いたしております多くの方々、たとえば生活保護世帯あるいは心身障害者あるいは乳幼児、児童、老人等の方々、またそのお世話に当たっております社会福祉事業施設等の立場から意見を申し上げ、また現状を申し上げて御理解を得たいと思います。  たまたま昨日は都道府県会館で、全国から社会福祉の関係者の中から代表の者が約六百人ほど集まりまして、社会福祉の置かれましたあるいはそういう階層の置かれました現在の状態に対して、いかにしてこの危機を突破するか、こういう意味で非常に熱烈な会合が持たれたのでございます。社会福祉施設及びその対象者たちが当面しております深刻な諸問題がつぶさに報告をされました。また、すみやかな解決を求めて悲痛な訴えを聞いたのでありますが、事態の予想以上にひどいことにわれわれもまた驚いた次第であります。  いまわが国には全国で保育所を含めまして約二万六千ほどの公私の社会福祉施設がございます。そこに収容あるいは利用をいたしております対象者は約百六十万人くらいでございます。そのほかに、各地域には施設に入ることができないでいる方々がたくさんございまして、たとえば全国に百三十五万といわれます生活保護を受けております人たち、あるいは孤独あるいは寝たきりの老人、心身障害者等が家庭においてあるいは社会福祉のいろいろと世話になって、この苦しい生活に耐えているのでございます。これら多数の社会的弱者といわれる人たちが、現在すでにこの寒空の中で時局の波をもろにかぶっているのでございます。どこの施設におきましても、政府から月々受けておりますぎりぎりの経費で対象者のお世話をし施設の運営に当たっているのであります。したがって、そういうような事情の中で、お金も物資もこれをたくわえておくといったような余裕は全くございません。そこにこの思いがけないインフレの急襲であります。  すでにどこの施設も早くもまず暖房の問題にたいへんな困難を来たしております。北海道、東北の寒冷地におきましても、石油の供給が十分にまいりません。一日に七、八時間は暖房をとめる、またその残りの通す時間でも非常に低い温度で、たとえば十五度とか二十度とか、そういったようなところでかろうじて保温をしておるという状態でございます。中にはまた昔に返りまして、煉炭や豆炭を求めまして併用しているところもございますけれども、これまた今日では非常に品数も少なくまた高価でございます。  このような寒さの中で年寄りや心身障害者また乳幼児などが、やむなく終日ふとんの中にもぐってかろうじて暖をとる、これ以外に方法がないというような状態でございます。多数の対象者をかかえまして、先般のトイレットペーパーでございますとか、おしめでございますとか、衣類あるいはガーゼ、包帯、薬、こういったものの品不足値上がりは申すまでもなく、食料品はいずれも昨年に比べまして一〇%以上の値上がりでございます。国からくるわずかな措置費でまかなうのでありますから、実質的には内容は昨年よりも一〇%以上のダウンをしておる、こういう実情でございます。  また、施設の増改築などに至りましては、申すまでもないのでありますけれども、突然の資材の不足あるいは急激な値上がりということで、工事はいずれも途中でストップをいたしております。かろうじてこれを完成したところでは、いずれも国からもらいますところの補助金の倍額に近いものを自己負担あるいは借財でこれを補ってかろうじて完成をした、こういう状態でございます。  さらにそれよりも悲惨なのは、たとえば身体障害者の手足も同様でございますところの自動車、これもガソリンの関係で使用がほとんどできなくなってしまった。また車いすも大幅な値上がりでなかなか手に入らない、そういう状態でございます。  またこの人たちの義手義足といったようなものも、あの義手義足をつくりますには、約二十四種類の資材が必要だということでありますけれども、すでにプラスチックでございますとかゴムでございますとか軽金属板などのいずれもが入手ができませんで、この義手義足の製造が思うにまかせな、非常におくれてまいりまして、身障者たちがこれを買い入れることができないわけでございます。  また盲人の方々も、この人たちの唯一の意思を伝達いたします、あるいは学習をいたします手段でございますところの点字、この点字を刻みますためには、特殊な厚手の上質の用紙が必要なのでございますけれども、これがもうすでに入手が思うようにまいりません。供給されなくなってまいりました。したがって、点字の刊行物というものが大小にかかわらず非常に困難になってまいりました。  そのほか、乳幼児のための牛乳とか粉ミルクも同様に値上がりで栄養がとれないでおります。また各施設とも、暖房のほかに調理、食事の準備でございますとか、洗たく、入浴、こういったようなことに欠かせない重油の供給がほとんどとまっておりますために、入浴や洗たくなどの回数を減らしてこれに耐えておるというような状態でございます。  このような実情を申し上げておりますと、きりがございませんけれども、これらのほかにさらに深刻な問題は、施設の職員たちがいずれも手不足でございます。重労働と薄給に心身をすり減らしながら、ただいま申し上げましたような社会福祉事業の非常に困難な、悲惨な現状をかろうじてささえておる。この職員たちがいつまでこれから続けて働いてくれるのか。このようなときにこのような困難な仕事に進んで新しく就職をしてくれるような人材を得ることは非常に困難でございます。社会福祉の職員対策は、まさに緊急な根本的な解決を迫られております重大な問題の一つでございます。  わが国の社会福祉事業並びにその対象者、社会的弱者たちが現在どんなに困難な苦しい状態に当面しているか、どうぞ御推察を願う次第でございます。  そこで、本法案におきましては、生活関係物資について、指定物資でございますとか標準価格でございますとか、いろいろの重要な問題がいずれも政令にまかせるという形になっておるように見られるのでございます。そこで、特に公共性の強い、いま申しましたような意味の社会福祉の施設の運営あるいはこれの整備、こういった問題をぜひ優先的に御考慮くださいまして、これに要する物資はもちろんのことでございますけれども、抑制のワクからはずして、指定物資あるいは特別指定物資の中に加え、配給、割り当て等の強力な御措置を講ぜられますようにぜひともお願いをいたしたい。業界をあげての希望でございます。  わが国の社会福祉事業は、従来長い間、御承知のように日陰の存在でございました。最近になりましてようやく福祉国家などということばも生まれまして、先進国に準じます日の目をようやく見るようになってまいりました。ところが、今日のような非常時局にこそ社会福祉の後退を来たすようなことが絶対にありませんように、名実ともに福祉優先の政治行政がこのときこそ行なわれるべきである、そう考えまして、特段の御配慮をお願いをしたい次第でございます。  以上、簡単でございましたけれども、関係者一同にかわりまして、この席をかりて皆さま方の御理解と御協力をお願いしたい。よりよい立法をお立てくださいますように心から期待をするものでございます。たいへんありがとうございました。  (拍手)
  69. 平林剛

    平林委員長 次に、磯村参考人お願いいたします。
  70. 磯村光男

    ○磯村参考人 東京都副知事の磯村でございます。地方自治体あるいは東京都というような立場から私の考えを述べさせていただきます。  最近の生活関連物資の異常な高騰、物不足は、都民の生活を非常に大きくゆさぶっているわけでございます。ただいま牧参考人が社会福祉事業に携わる者の立場といたしましていろいろ御意見を述べられましたが、全く同感でございます。自治体には残念ながら、物価対策につきまして迅速かつ適切に対応する権限が皆無といってもよろしいのではないか。しかしながら、私どもといたしましては、いわゆる石油危機以前から全庁的な組織といたしまして物価対策本部を設置いたしております。それから、御案内のとおり、私どもの権限でできる範囲内で、生鮮食料品の価格安定、キャベツあるいはジャガイモ等、ささやかな事業を実はやっているわけでございます。しかしながら、この石油問題を契機とする荒波にそういった事業も押し流されようとしているような状態でございます。このような中で、この法案国民生活の防衛のいわば基本的な理念に立ちまして、公平かつ実効ある運営が行なわれ、そして都民あるいは国民の期待にこたえてほしいということをまず申し上げたいと存じます。  このような前提に立ちまして、この法案についての考え方を申し述べたいと存じます。  まず第一条の目的でございますけれども、物価の問題その他異常事態のしわ寄せを最も強く受けますのは常に一般消費者、それから小零細企業、とりわけ低所得者層の人たちでございます。いわば社会的な弱者の方々でございます。したがいまして、この法律の運営にあたりましては、これらの人たちを第一義に考えていただきたいということでございます。法案の目的に関する第一条の規定は、いわばこの法律の顔でございまして、特に本法案の性格にかんがみまして生活最優先の原則を法文上明示していただきたいということでございます。  それから第二条の関係でございますが、これは情報の問題と非常に密接に関連しておると思いますけれども、価格が著しく上昇し、あるいは上昇するおそれのあるときは、政令で特に価格の安定をはかるべき物資として指定することとされておりますが、現実の問題といたしましては、実態把握がおくれております。結果的には価格が高騰してからその対策がとられる、こういうあと追い行政の危険があるように考える次第でございます。したがいまして、指定物資の指定にあたりましては、実情を最も把握しやすい地方自治体の声を、現地の声を優先してほしいということでございます。そのためには、政府部内におきましても諮問機関として審議会を設置していただきたい。また、都道府県には国に準じた諮問機関を設置することも明文化していただきたい、かように考えております。ただ、実際問題として、緊急を要するため種々の困難があろうかと思いますが、少なくとも都道府県知事の要請があればすみやかに指定をとるなどの方途を考えていただきたい、かように考えるわけでございます。  現在東京都に消費生活審議会がございます。また、小さい問題かもわかりませんけれども、入浴料金を決定するための審議会がございますが、これは業界消費者、中立委員、こういった三者の方々を集めて決定していただいております。これをさらに知事が、若干下回った段階で入浴料金を決定している、かような経過でございまして、少なくとも価格の指定をする段階においては、消費者が納得できるような、あるいはあとでもかまいませんけれども、消費者理解と批判に耐えられるような一つの組織の中でこの問題の決定をお願いしたい。価格決定の根拠と申しますか、そういったものは常に公開されなければなりませんし、そのためにはやはりこういった機関がぜひとも必要である、かように考えておるわけでございます。  次に販売価格の表示、第五条の関係でございますけれども、この監視の指示、それから公表は、この法案におきまして一番基本的かつ重要な問題だ、こういうふうに考えます。いま小売り商団体の方からも意見がございましたけれども、そのためには、この措置というのは、第三十条にございます立ち入り検査とも関連いたしまして、これはぜひ公共団体の長において行なわしていただきたい。都道府県が都民あるいは市民の立場に立って十分機能できるような最大限の措置をとっていただきたいのでございます。  たとえば私ども、石油の問題について、この問題が起きる以前から、東京都の石油の購入価格はおそらく全国で一番安いはずでございます。競争入札いたしまして落札いたします。あるいは私どものほうの希望する価格に入らない、それで一番安い業者の方々と話し合いまして、この値段で入れる、こういう一つの話し合いができて契約をいたします。ところがその業者は、名前を出さないでくれということを申します。なるほどその業者は石油を入れてくれますけれども、今度はそのあとで、元売りでございますか、あるいは仲売りのほうからきびしいお小言がある。これは公取の問題にもなりまして、数年前にかなり紙面をにぎわしたと思いますけれども、実はそのような問題があるわけでございます。  それから、その次の標準価格等の指示、公表についてでございますけれども、生活関連物資の所管というのは、御案内のように、物資によりまして各省庁に分散されております。したがいまして、指定物資の指定はもちろん、業者への指示、公表にあたりましても各省庁の独自の判断にゆだねる、こういうことになりますと、それでなくても、いまでも強い消費者の不信をさらに高める、こういう場合が考えられなければならない。こういった点で、先ほども申し上げましたような情報と関連いたしまして、都道府県知事の意見を十分に尊重していただきたい。あるいはたいへん適切な表現ではございませんけれども、過日のトイレットペーパーの問題につきましていろいろな報道がございました。私は、関東大震災におきまして、あの時点でたいへんいまわしい、人命をそこなう多くの事件があったことでございますけれども、これはもちろん情報不足による一つの悲しいできごとであると思います。あれからすでに数十年たちまして、これだけ情報の発達した中で、なおああいったことが起きるということを考えますと、何も物価の問題ばかりでなく、的確な国民に対する指示、情報の公開、こういったものがやはり非常に重要な問題になってくるのではないか、かように考えているわけでございます。  それから、第三十条の関係でございますけれども、若干の権限が地方公共団体へ委任される。具体的には五条、六条の販売価格標準価格等の指示等に関する主務大臣の権限、それから第八条の地域ごとに標準価格を定める場合の大臣の権限、それから十条、十一条の課徴金の賦課、徴収、こういった権限は当然委任されなければ、法の運営というのは非常に形式的なものになるのではないか、かように考えております。  それから違犯事案の調査についてでございますけれども、都道府県知事の権限は通常行政区域に限定されております。このために必ずしも十分な調査ができない。先ほど小売り商の団体の方がいろいろおっしゃっておりましたけれども、私ども——もちろん小売り商の中にも問題なしといたしません。しかし一番消費者の監視の目が届きやすいのは小売り商でございます。消費者のほうからいろいろな情報が上がってまいります。これはもちろん小売り商の方々に関するいろいろな情報が私のところへ参っております。私どもはその小売り商に対して、あるいは法の権限に基づきまして立ち入り検査、帳簿の検査、これはできるかもわかりませんけれども、問題はそういったいわゆる零細企業の小売り商、この方々の指摘だけで済むかという点でございます。いろいろな物の流れの中には、現在流通機構の中にいろいろこぶが方々にございまして、そのこぶを取らない限りは物の流通というのはうまくいかない。たとえば先ほどの都が行ないました嬬恋キャベツとの安定供給の問題にいたしましても、少なくともこれは従来になかった例でございますけれども、農協が消費者の地域の、都でございますけれども、それと協定いたしまして、一定期間一定の量を毎日供給いたしましょう、しかしこれにはやはりいろいろな品物がございますから、そのためには価格のアンバランスがある、これは認めましょう、それはどうぞせりによって価格を形成してください、しかし上限は幾らでございますよ、これから上は切りますよ、これから下は私のほうで保障しますよ、こういった画期的な事業を行なったわけでございますけれども、端的に申し上げまして中間の流通機構の排除というものにつきまして成功したわけでございます。  また現在やっておりまするジャガイモの買いつけにいたしましても、少なくともこれは定価売りをすることによりまして中間マージンを排除することができる、かようなこともやっておるわけでございます。そういった点で、いささか物価問題につきましては国があまりにも権限をお持ちになり過ぎているのではないか。これは思い切って地方自治体に落としていただきたい。そういった点で権限の委譲の問題につきましても、いわゆる機関委任ということがおそらくこの法の大きな体系になっていると思いますけれども、これはむしろ住民監視が一番きびしいところの地元の県会、市会あるいは都議会等の、こういった住民の意思々基底として自主的に判断できるような機関委任ではない、団体委任にむしろしていただきたい、かように考えているわけでございます。私どもは末端の監視だとか、あるいは指示価格に対するいろいろな調査は十分これに対応する用意はございますけれども、問題はそれを追跡してどこまでこれを追及するかという問題でございます。小売り商ばかりいじめてもこれは何にもならないのでございまして、仲卸の段階あるいは元卸の段階まで都道府県がもしも入るということができるのだったならば、国の施策に対して十分お手伝いできる。いわゆる機関委任という下請じゃなくして、地方自治体が独自の力でもっていろいろな問題を提起する、それを国が解決をしていただく、ひとつかような考え方に立ってこの法案の御審議お願いしたい。  たいへんざっぱくでございますが、時間を超過いたしましたので、以上をもって発言を終わりたいと思います。
  71. 平林剛

    平林委員長 これにて参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  72. 平林剛

    平林委員長 これより質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。片岡清一君。
  73. 片岡清一

    ○片岡委員 先ほどから参考人各位からたいへん貴重な御意見を賜わりまして、まことにありがとうございました。  この御意見の中でわかりますように、この法律にまっこうから反対をされる方、これはやむを得ないだろうという方、それからまた社会福祉の関係で一番お困りになっておる牧参考人からは、これはぜひ早くやってほしいという声、いろいろございます。おのおのの立場において違うことはやむを得ないと存じますが、最初竹内参考人は、御自分で古い統制の衝に当たられた関係から、官僚統制の非を大いに糾弾をしておられ、再びこういうことをやってはいかぬということを強く仰せられましたことはたいへん参考になると存じます。しかし、これはやはり緊急の必要であり、そしてまた今後いろいろ物資問題を考えましたときに、この価格の問題とどうしても不離一体の関係になる、こういうことからこれはある程度必要であることは、これは非常に大事な点であると存じます。  そこで、私はいわゆる官僚統制にならない。この法も、私は官僚統制になるべく持っていきたくないというために三つの段階をつくっておると思うのでございます。  第一段階は何と申しましても例の指示に従わない者に対しては公表して、そして社会的制裁によってこれを押えていこうという、これは非常に新しい民主的な考え方だと思うのでございますか、これに対して竹内さんは——あなたのおやりになった官僚統制、あのときにはこういうことはなかったと思います。これに対してあなたはどういうお考えを持っておられるか。それからまたさらに他の参考人から、例の住民及び消費者をこの問題に参加させる、いわゆる住民参加といいますか、国民参加の方法を講じてくれということがございましたが、これに対して竹内さんはどういうふうにお考えになりますか、ひとつ簡単にお願いします、時間がございますから……。
  74. 竹内直一

    竹内参考人 いまのお尋ねの点でございますけれども、官僚統制にならないための手当てはどうしているのだ、それから公表ということによって社会的制裁が加えられるではないかというお話でございますけれども、いままでたとえば物価統制令違反であの当時も警察にあげられたということは新聞記事にも載りました。だけれども、そういうことによって自分たちが恥ずかしいとかまずいことをしたというような反省をしたという実績はないと思っております。それから現に、現在でも公正取引委員会がああいう形でいろいろやっております。それが新聞に載ります。けれども、あれでもって非常にまずいことをしたと心から反省している業者があるということは聞いた覚えがございません。  それから私たち自身が直接消費者立場から企業を摘発しております。そしてそれをマスコミに発表いたします。ですけれども、そういうことによって売り上げが落ちるというそろばん上のマイナスがない限り、痛くもかゆくもないということでございます。企業というものはそういうものだと認識してかからないと、こういうものはうまくいかないと思います。  それから国民参加ということにつきまして、たとえば米価審議会消費者代表が入っておる、いろいろな政府の諮問機関に消費者代表が、たとえばJASの規格をつくるために入っておりますけれども、そういう場合に、はたして消費者意見が十分に反映されるかどうか、いままでの運用を見ておりますと、非常に疑問でございます。すべて少数意見として否決されます。そういうことが多うございます。ですから、特にこういうように非常に複雑多岐にわたるような物価統制の問題で、かりに何人の人が参加するか知りませんけれども、とてもじゃないけれども、そればかりにかかりきりのお役人が手に負えないものが、はたしてそういうことが可能であるかどうか、非常に疑問に思います。
  75. 片岡清一

    ○片岡委員 ただいまの竹内さんのお話は、人間はまさにエコノミックアニマルだということの真髄を言っておられるのでございますが、私は、人間はそういう一面もあるが、やはり社会的なそういう制裁を恥ずかしく思い、そしてみんなの連帯感を振起して協力していこうという一面もあると私は思うのでございますが、その程度の問題でございます。その点で、先ほど三浦参考人から、小売り商の立場からいろいろ御意見がありました。こまかい取り締まりをするよりも、もとを押えろ、そして、物をちゃんと出すようになればその問題はないんだというお話でございましたが、いまの問題ですね。もし小売り商で標準価格を提示しなかったとか、あるいは何かいろいろの場合に公示されることになっております。そのときに、それが幾らか小売り商の方々に精神的な一つのチェックをする要因となるものでございましょうか、どうでございましょうか、その点を御意見承っておきたいと思います。
  76. 三浦正義

    ○三浦参考人 お答えいたします。  要するにこの点について、標準価格のきめ方あるいは表示のさせ方といったふうな点について、やはりそれを実行しなければならない立場の方が納得のいくような内容になっているかどうか。いわゆる罪悪感というか、社会的に恥ずかしいというようなものでなしに、みんなやっておるんじゃないか、おれ一人じゃないんだというような考え方とか、あるいはこんなむちゃなことを言われたってだれができるんだ、食っていけないんだというような非常に単純な考え方で判断いたしますと、あまり効果は期待できないんじゃないだろうか。しかし、大型の百貨店あるいはスーパー等でそういう新聞等に発表されますと、これはやはり消費者信用といいますか、たいへんなことになるという気は経営者並びに幹部は一同持っておりますし、また中小商店にいたしましても、きわめて近隣の、非常にむしろ顔なじみの親しい方たちがお得意さんでございますから、その人たちの前に恥ずかしい思いをさせられるということは相なるべくは避けたいという気持ちは十分持って、若干心理的効果はある、かように思います。
  77. 片岡清一

    ○片岡委員 もう時間がございませんから、私は希望だけ申しておきたいのですが、この法律はみんながこんなものつまらぬ、こんなことできるかという気持ちに全部がなるなら、やはりこれはなかなかうまくいかぬと思います。何としてもこういう非常時を切り抜けるときは、何とかみんなで協力してやるという態度がなければならぬ。消費者消費者、小売り商は小売り商、元売り商は元売り商で、またメーカーはメーカーでですね。そういう一つ関心を喚起するという意味でこの法律はやはり大事なので、みんなが協力してこれを役に立つようにしてもらいたい、こういうことをつくづく思うのでございますが、どうぞひとつよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
  78. 平林剛

    平林委員長 上田茂行君。
  79. 上田茂行

    ○上田委員 参考人の方には非常にお忙しい中をまことに御苦労さまでございます。順次参考人の方々に御質問をさせていただきたいと存じます。  まず竹内さんにお伺いしたいのでございますけれども、この意見に対しまして反対だというようなことを言われまして、そしてその中で独自の立場からいろいろな生産者の方々に取り調べをし、そしてその中でほとんどの生産在庫というものについて心配はないというようなことがいま言われたわけでございますけれども、特に紙あるいは灯油の問題につきまして、特に灯油の問題につきまして、それでは一かん三百八十円という値段で一応きめたわけでございますけれども、そのことについてどう評価されているのでしょうか。これをきめたことによってある程度灯油の値段が上がるのを押えられたと竹内さん自身思われているのか、あるいはそれをきめないほうがかえって灯油の値段を押えられたのではないかと思われているのか。どちらか、お伺いしたいと思います。
  80. 竹内直一

    竹内参考人 いま灯油のお話が出ましたけれども、この三百八十円という数字が妥当であるかどうかというのは、率直に申しまして私どもはわかりません。ただ、それまでの全国の灯油の末端価格、これは配達つきでございますが、それが大体四百五十円前後で全国そろっていたという事実ですね。これは価格協定があるのかないのか存じません。だけれども、ふしぎに価格は四百五十円というのが一番多かったという事実、それから逆算をいたしますと、三百八十円というのは何か無理のないような、そういう数字であるのじゃないかという気がしてしようがありません。というのは、九月末でもって民生用の灯油の価格は凍結してあるというように通産省は発表なさいましたけれども、小売り業者の言い分によりますと、凍結になった分は全体の二割の民生用だけだ、あとの八割の産業用というのは凍結になっていないから、それはその後どんどん上がっている、そういう話でございまして、卸から入ってくる油がその凍結になった安い価格だけではないから、そんな価格では売れないということを申しております。どれが真実でどれが真実でないか、私どもはほんとうにわかりませんです。ですから、あの三百八十円によってそれが安定の効果があったかどうか、これも判定できませんです。ですから、私どもは非常に現在戸惑っておるのです。なぜこういう法律が出て、それがうまくいくのかいかないのか、まるっきり見当がつかないのです。
  81. 上田茂行

    ○上田委員 実はいま三百八十円という問題を出したのは、こうした三百八十円という灯油の値段標準価格一つのモデルケースだというように私たちは思っているわけなんです。それで出したわけなんですけれども、竹内さんが先ほどから、独禁法のより強い公取の姿勢が必要であるというようなことを言われまして、それには賛成であります。また、買い占め売惜しみ防止法の補強についても述べられたわけでございますけれども、そうした買占めあるいは売惜しみ防止法の補強というような観点から見ますならば、当法案はそうした補強をした法案でないかと思うわけでございますけれども、そういうことについてどう思われるでしょうか。
  82. 竹内直一

    竹内参考人 私が独禁法を強化してほしいということを申しました理由は、かりに——これは単なる仮定の問題としてお聞きいただきたいのですけれども、かりに業者の協定によってある水準に灯油の価格がなっているといたしましたらば、それは独禁法の強化によって徹底的にその価格協定を調べ上げて、それを破棄させて、そのもとの値段に引き下げるための命令を公正取引委員会が出す、それによって妥当な価格が維持できるではないか、私のねらっているところはそういうところでございます。
  83. 上田茂行

    ○上田委員 もう一点。いまお伺いしたのですけれども、この法案自体についてその独禁法の問題ではなくして、売惜しみ買占め防止法というような法律の補強になっているという感じがするのですけれども、その点についてはどう思われますか。
  84. 竹内直一

    竹内参考人 買占め売惜しみ防止法ですか、あれの補強になっていると思うがという御質問と理解してよろしゅうございますか。——それでは、あの法律はとにかく抱いているものを摘発するということが目的だろうと思います。それによって物の供給をふやすということが目的だろうと思いますが、その際に放出命令を出すなら出す。その場合に一定の価格で売り渡せという命令が出せるとした場合、その場合にはある一定の算定基準がなくてはいけないと思いますけれども、それと今度のこの国民生活安定緊急措置法案による標準価格というものは別個のものじゃないかと思います。
  85. 上田茂行

    ○上田委員 次に、もう一点だけお伺いしたいと思います。先ほどから、当委員会が始まって以来いろいろな方々から審議会というものが問題になるわけであります。財界とまた官僚との密着があるんではないかというような観点から、特に審議会を設置すべきであるというような意見がよく取り上げられるわけでございますけれども、ある意味で審議会の設置ということはぜひ必要だと思うのですけれども、その反面、すぐさま迅速にやらないとかけ込み値上げというようなことで、きょうの新聞にも、生協が調べたところでは千二百品目ほど二〇%から五〇%程度の値上げをすぐに要求をしておるというようなことが載っております。  そこで、きょうは地方自治体の方もおいででございますので、こうしたたとえば審議会等の機関について、あるいはまた審議会を離れまして直接的に国の金ではなくして地方自治体独自の権限でどれほどまで課徴金を取ったり、あるいはまたそれのための取り調べをするような意気込みがあるのかどうかということについてもお伺いしたいと思います。東京都副知事殿、よろしくお願いします。
  86. 磯村光男

    ○磯村参考人 審議会の問題につきまして、私たいへん困難だということを付言して発言しておりますけれども、困難だからといってこのままでよいとは思っておりません。一番大事なのは、やはり消費者の買い急ぎをどうやって防ぐかというのがいまの段階では一番重要な問題だ。そのためにはやはり消費者の納得を得るような、そのためにはあとでもよろしいのではないか。やはりぜひ審議会というものは必要じゃないか。もちろんこれは急場を切り抜けるためにいわば専決で大臣の権限でおやりになるということはけっこうだと思いますけれども、その後におきましてやはり審議会の批判というものを受けたほうがよろしいのではないか。一番わからないのは、結局は価格形式までの流通過程が一般国民にはほとんどわかっていない。私どもにも実はわかっていない。そういったものが全部わかれば消費者というものは納得するのではないか。私は基本的な問題はそこにあるのではないかと思います。もちろんこの法案の効果というものはそれは国民の一人として期待いたしますけれども、これがやはり永久的に効果があるとするならば、審議会というものはあと追いでもけっこうですから、ぜひ設けていただきたい。  それから課徴金云々の問題でございますけれども、地方自治体としてどの程度の決意があるか、かようなお尋ねかと思いますけれども、権限の御委譲があれば国民の消費生活を守るために懸命の努力をする、そういう決意は常時持っております。
  87. 上田茂行

    ○上田委員 それでは、時間の都合がございますので、これで終わらせていただきます。
  88. 平林剛

    平林委員長 中村茂君。
  89. 中村茂

    ○中村(茂)委員 社会党の中村でございます。参考人の方から非常に参考になるお話を聞いて、これからの審議の役に立てたい、こういうふうに思っております。  そこで、まず一番先に竹内参考人にお聞きしたいわけですが、先ほどから竹内参考人の言われていることを私なりに要約してみますと、いまの物価高並びに物価に対するいろいろな品物の不足等の混乱は、この法案で末端の価格をいろいろきめて操作するよりも、もっと根元のほうをきちっとさせることのほうが重要じゃないか、こういう意味で独禁法をもっと強化するとか、公取の権限をもっと強化するとか、または買占め売惜しみ法案をもっと適用する、こういう趣旨だと思います。  そこで、この法案をつくらないで現在の独禁法それから公取、それから買い占め売り惜しみ、この買い占め売り惜しみは少し権限が強化されて、いままでよりも売り渡しに関する指示及び命令が加わることになっているわけですけれども、これは少し強化されるとして、この程度で、新しい法案をつくらなくもきちっと姿勢を正して運用していけばいまの体制でできるというふうにお考えですか。それとももう少しいろいろな面を強化しなければならないとお考えですか。そこら辺のかみ合わせをひとつお考えをお聞かせ願いたいというふうに思います。
  90. 竹内直一

    竹内参考人 私が冒頭に申し上げました趣旨は、いまの独禁法でいいとは毛頭申していないのでありまして、いまの独禁法は、できた当時はまだまだよかったわけですけれども、その後大骨小骨が抜かれまして、いまや破れがさでございます。ですから紙の張りかえをきちっとして、きちっとできるようなものにした上でとにかく全力をあげて独禁法を振りかざしていまの経済秩序の乱れを直す、それに全力をあげるしかないのではないかということを申し上げたつもりでございます。
  91. 中村茂

    ○中村(茂)委員 次に、三浦参考人にお聞きしますが、末端の販売価格または小売り価格標準価格ということできめていくようになっているわけでありますが、先ほどのお話で、そういうふうに末端のものをきめるよりも、もっと上の生産段階の価格をきちっときめていったほうがスムーズにいくのではないかという意味のくだりがあったと思うのですけれども、そこら辺のところをもう少しお考えを詳しくお話し願いたいと思います。
  92. 三浦正義

    ○三浦参考人 私の申し上げましたとおり、標準価格あるいは特定標準価格というものを決定いたしますと、一つは自由競争というものが依然として残されております。そして幾ら品不足と申しましても、必ずしも全国一律で売らなければならないことはないので、その間あるいは良心的にあるいは経営の合理化によって標準価格としてきめられたもの以下で売る、これはおそらく上限ということになると思うのですが、この上限価格以下で売るという業者もあらわれてしかるべきだし、そこに自由競争の余地が残るじゃないか、こういう意見もあろうかと思いますけれども、しからば政府はなぜ特定標準価格をきめたのか。以下で売っておるとするならば、ずいぶん高い値段をきめて、そして以下で売れておるではないか。以下で売れておるにもかかわらずこんな高い値段をきめて、一体何を原価だとか何を販売の経費だとかいっているのだということで、非常に国民の疑惑を招くのじゃなかろうか。あるいはまた逆に自由競争の余地が全くなくなってしまうと、全部その上限価格に張りついてしまうのではないか。そこまで持っていかぬでも売れたものも全部そこに張りついてしまう。そうしますと非常に有利な立場で取引のできる業者と、そうでない業者との格差というものがさらに一段と広がっていくというふうなことが当然発生いたしますので、私は全国画一価格、しかもそれをベースにしてのその差額の課徴金の追徴というようなことへ転嫁していく場合にたいへんむずかしいんじゃなかろうか、やはりこの辺は地方の事情やその間の情勢も考えて、扱い業者も消費者も納得のいく、若干時間がかかってもやむを得ないから納得のいく方法できめなきゃならぬことと、ましてそれらの生産業者に対してこれを幾らで出せと、千円なら千円で出しなさいという、そこで締めあげておけば、あれは暴利をむさぼっておる暴利をむさぼってない、暴利と思うけれどもこれはかくのごとき経費がかかっておるのだという、それぞれの実情に応じた方法がとれるのじゃないだろうか。この場合は元売りといいますか、蔵出し価格といいますか、そことそれから末端価格とをきめる、こういうことになっておりまして、その中間の卸には標準価格のほうはそれをきめるというようなことは考えていないようでございますけれども、その辺がむしろ非常に重要ではないだろうかという気がいたします。
  93. 中村茂

    ○中村(茂)委員 重ねて三浦参考人にお聞きしますが、私もそこらのところをこれから省令にゆだねられておりますけれども、標準価格をきめていく場合に生産段階のところできめられる場合と、それから輸入品について販売のところできめ、なお販売価格標準価格の中できめていく、ほうぼうできめられる仕組みになっているわけなんですよ。ところがいまお話ありましたように、その標準価格のきめ方が上限できめた場合には、やはりそこでいろいろな問題も起きてくる。しかし下限できめられた場合にはやはりそのしわ寄せが小売り店に相当しわ寄せされていくのではないか、こういう心配が実はあるわけなんです。そこでなお帳簿の記載とかそれから立ち入り検査とか、こういうものはその事務がほとんど販売業者に集中されているわけですね。先ほどのお話のように相当な店舗が全国にこまかくある。そこへそういう業務まで加えられてこの制度が施行されていくと、確かに先ほどのお話のように小売り業者の振興という面と、それから事務的にもなお連合的に大きくしていかなければ、これらのものが消化できないような実態ができてくるのではないか。ですから、この法律そのものは相当販売業者にいろいろ集中されている、こういうふうに見た場合に非常にこの小売り店の立場というものが微妙な立場になってくる。こういう立場でいまお尋ねしたわけでありますけれども、そこでもう一つ。はたして小売り店の立場でこれを受けて立つことができるいまの小売り店の状態にあるかどうかということを御見解を承りたいと思います。
  94. 三浦正義

    ○三浦参考人 実際この法律を施行し運用する場合に、十坪や二十坪の夫婦、じいさんばあさんで経営しているというふうなのが、若干高く売ろうが安く売ろうが、あるいはまた商品を隠匿してみても置くところもないというようなところで販売しているというような程度のものを締め上げてみても、何ら実効はないのだから、したがってそういったふうなものは目こぼしするのだという、そういう前提で、一応緊急を要するから法律はつくるのだ、こういうことも考えられないことはないのですけれども、実際に法律が実施されまして、法律というたてまえでこれが全国に施行されますと、これはやはり末端の行政官や担当のお役人さんたちにとっては、小さいの大きいのということは言っておれない。そういう政治的判断やそういうことで手心というわけにはいかないのではないだろうかという気がいたします。そこで、実際、現在青色申告でなしに白色で大ざっぱな、生計と分離ができていない、経営と生活の分離もできていないといったふうなものが、全国の百五十万の小売り商の中で実に四八%に達している。そういう人たちにさらにきちっと帳面をちゃんとつけなさいというふうなことは、よほど指導やあるいは協力をしてあげないとできないのではないだろうか。その辺にある町の商工会やあるいは大きなところの商工会議所あるいは協同組合等がその記帳は代行してあげるとか、相当な努力と配慮がなければ、私はこれを消化でき得ないものであろうと、現状ではそういうふうに判断しております。
  95. 中村茂

    ○中村(茂)委員 次に、磯村参考人にお聞きしますが、東京都で行なっておりますキャベツの、先ほどもお話ありましたけれども協定というかこの形というものが、趣旨なり方法は若干違いますけれども、一応上限、下限の価格をきめて、価格をきめた上に立って出荷を一定数を持続的にしてもらう、このことは、非常に今度のこういう法律をきめて、標準価格を一応定めた中で、なお需要供給の関係が起きてくるわけですけれども、参考になるのではないかというふうに私は思うわけですけれども、そこで、いままで行なったその経験の中から、どういう点が改善されなければいけなかったか。それから長所はどんなところにあったか。端的でけっこうですから、一、二でお答え願いたいというふうに思います。
  96. 磯村光男

    ○磯村参考人 嬬恋キャベツの問題についての長所と申しますのは、やはり生産者の意欲というものを尊重しながらある程度の価格の幅を持たせたというところに一つの長所があったと思います。それから、まだはっきりした評価は出ておりませんけれども、ジャガイモの買い付けの問題について、現在実施中でございますけれども、これは都が買い付けたほうがよろしいのかあるいは卸売り人に買い付けさして、それで一定マージンで販売さしたのがいいのか、この問題は今後の研究課題であろうかと思いますけれども、短所とまではまだ考えておりませんが、そういった感じがいたします。  それから、参考にと申し上げたのは、同じ指示価格にいたしましても、品物によりましては、非常に千差万別でございます。これはある意味におきましては、生鮮食料品がピンからキリまで同じ品目でもあると同じでございますから、そのような価格の指示をどういうふうにお考えになっているのかなと、こういった疑問が実はございましたので、御参考に申し上げた、こういうことでございます。
  97. 中村茂

    ○中村(茂)委員 最後に竹内参考人にお聞きしますが、言われる趣旨は私もよくわかるのです。独禁法を強化して、もとのほうをきちっと整理しておく、そうすれば末端のほうも、いまそこのところが一番混乱しているわけでありますし、したがって、趣旨はよくわかるのですが、独禁法をいますぐ変えてというふうにもなかなかいかないいろいろな事情もあるわけなんです。したがって、先ほどもお聞きしたわけですけれども、いまのそれぞれの法律または公取等の機関でそれを強化し、きちっとその法律どおりに運用されていけば、この法律をつくらなくも、相当流通段階においても、または品物の不足の問題等についても、それから物価というか価格の問題等についても根元のほうをきちっとさせて正常な形に、そこさえきちっとやっていけばなるというお考えですか。端的にひとつお答え願いたいと思います。
  98. 竹内直一

    竹内参考人 独禁法の現状の法律とそれから現状の運用のままでは、いまの状態はこれは改善は非常にむずかしいと思います。  それから独禁法について、そのもとのほうというお話でございますけれども、たとえば小売り業者の価格協定とかそういうようなのはもとではなくて末端なんでございまして、こういうものに対してぴしぴしと踏み込めるような独禁法の強化でないとうまくいかないということを申し上げたつもりでございますから。  それから独禁法を変えるということは、いま非常にむずかしい事情もあるということでございますけれども、いま出されているこの国民生活安定緊急措置法案に比べれば、これは法律上の問題ですし、それから外国に立法例がございますし、またそれの運用の実績も、ございますし、その資料をとってくればできるかできないか簡単に判定のつく問題だと思います。それよりも、すでにみじめな歴史を持っている価格統制あるいは配給統制、そういうものを調べもしないでもう一ぺん持ち出しておやりになろうというのは、どう考えても私は理解できないのでございます。
  99. 中村茂

    ○中村(茂)委員 終わります。
  100. 平林剛

    平林委員長 増本一彦君。
  101. 増本一彦

    ○増本委員 共産党・革新共同の増本でございます。きょうはほんとう皆さんお忙しいところ、ありがとうございます。  初めに竹内参考人にお伺いしますけれども、先ほど売惜しみ買占め防止法の改正を至急やるべきだ、こういう御発言がありました。私たちもそう思うのです。私たちは、いまどうしてもまず第一に生産者や販売者それから輸送する者、保管する者、こういう業者が売り惜しみや買い占めをしたり、それに加工して不当な利益を得てはならないということをはっきりと禁止条項を設けたり、その義務をしっかりと守っているかどうかをいつでも点検できるように立ち入り検査権についてもきちんともっと法整備をするとか、あるいはこうした業者と取引関係にあるものについてもいわゆる反面調査までできるように仕組みを変えていく必要がある。こうして隠されているものの放出をはかり、やはり供給の安定をはかっていくということが必要だというように考えているのですが、参考人のほうの先ほどおっしゃった改正の内容について、時間が限られていますから、ひとつ簡潔にお答えいただきたいと思います。
  102. 竹内直一

    竹内参考人 先ほどは時間の関係ではしょりましたけれども、これも項目別に列挙的に申します。  第一点は指定品目の拡大。第二品は物資所管官庁の業界寄りの体質のもとでは実効をあげることがむずかしいと判断されるので、この法律の主務官庁を公正取引委員会と行政管理庁にする。通産省や農林省ではどうも信用できないという前提でございます。第三点、買い占め物資の放出を勧告したときは公表すること。第四点、勧告に従わなかったときは放出命令を出し、これを公表すること。第五点、立ち入り検査等を行なったときはその事実を公表すること。第六点、何人もこの法律に違反する事実があると認めたときは、主務官庁に対しその事実を報告し適当な措置をとるべきことを求めることができることとし、主務官庁はこれに応じて必要な調査をし、適切な措置をとることを義務づけること。第七点、地方公共団体への権限委任を行ない、消費者行政担当者に実務をやらせること。第八点は、罰則の強化、これは省略いたします。
  103. 増本一彦

    ○増本委員 もう一点は、価格がここまで引き上がっている。この中に不当な利潤が隠されているという疑いも非常に強い。これは特に大企業製品にそういう問題がある。だから私たちは原価の公開ということを制度としてもきちんと位置づける必要があるのではないかというように考えていますが、その点について竹内参考人は言及をどうもされなかったようなんで、お考えがありましたら簡潔にお答えいただきたいと思うのです。
  104. 竹内直一

    竹内参考人 先ほども申しましたように、原価計算というのは非常にむずかしいということが前提にございまして、そういうものを公表というのはたいへんなことだろうと思います。むしろ、それよりも現在ある有価証券報告書、あれを徹底的に整備して、あれを見れば大体その企業が何をやっているか、どういう状態になっているかがわかるというようにしておけば、それを材料にしていかようにも加工して、それから原価計算もできましょうし、そういうことであるほうが望ましいと思います。それは大いにやっていただきたいと思っております。
  105. 増本一彦

    ○増本委員 あなたのおっしゃったことも公開の一つの手だてだと思うのですね。  次に三浦参考人にお伺いしますけれども、やはり小売りの皆さんが安くてよいものを消費者に渡すという、これは御商売の念願だと思うのです。そのためにはどうしても元売り価格を引き下げるというような手だてをとらないと、これはやはりまずいですね。いま皆さんの一番御心配なのは、標準価格にしても特定標準価格にしても、それが上限で張りついて、しかも今度の場合ですと中間の卸についての規制もない。これだと薄利多売どころか、薄利小売で、小売り業者いじめの法律だということは明らかですね、いまの法律は。そこで一つは、いまお話ししました元売りの価格を引き下げるという手だてをとる。そのためにやはり原価の公開ということが一つ必要だというようにも思うので、この点については小売り業者の中ではどういうようにお考えなのか、教えていただければと思います。
  106. 三浦正義

    ○三浦参考人 原価計算そのものは、先ほど竹内参考人のおっしゃるとおりたいへんむずかしい問題ではありますが、しかしこれは可能な限り、今度の標準価格等を設定する場合には、それがなければ実際国民が納得がいかないのじゃないだろうか。いわゆる勘で千円であるとか千二百円であるとかいって、標準価格をこのとおりきめたといっても、なぜこうきまったのかぐらいのところまでは納得のいけるような方法が講ぜられなければ、守るほうでも守りにくいという状態が起こるのじゃないかと思います。  それからもう一つ、小売り商としては確かに、物を売るということは商売でございますから、売りたいのはやまやまでございますけれども、十日ほど前に仕入れてきょう売っている値段、そのきょう売っている値段がいまや仕入れ値段にかわっていくというぐらい、ものによっては最近非常に値上がりが激しいわけなんですね。私はこれはまさに非常に激しいインフレ状態だと思うのですけれども、そういう中でやはり卸あるいはメーカー段階で、私の先ほど申し上げましたとおり、量の確保ということと、それから系列化等によって偏在しないで、公平に全国的に行き渡るような方法と、そして価格についても政府並びにいろいろな手段によって、原料並びにエネルギー等の配給によってそれを確保するという方法で、まずもとを正していただきたいというふうに考えております。
  107. 増本一彦

    ○増本委員 牧参考人にお伺いいたします。  私も、この緊急な事態、深刻な事態で、何カ所かのいろいろ福祉施設に行って実態を見させていただきました。ほんとうに涙の出るほど深刻だと思うのです。身体障害児の皆さんのいらっしゃる施設へ行ったときに、ほんとうによくことばもしゃべれない小さな子供が私に、灯油を下さいということを、それだけを言ったのですね。私は涙が出ました。手を握りましたら、十一月の末だというのにもうおまんじゅうのようなしもやけができているのですね。夜は早くからふとんにもぐって寝かせてしまうのだと、そこにいた職員の人も言っていました。だから私は、こういう灯油とか福祉施設に必要なものは優先的に確保し配分する、これはもう政治の基本でなければならないというように思うのです。そういうお気持ちから、いまの事態を解決するためにおそらくこの法律が何がしかの役割りを果たすならばという、こういう御期待があるんだろうと思うのです。しかし率直に、この法律を客観的に、冷静に見ますと、福祉施設とか福祉を重視して、その施設にあるいはそういう気の毒な人たちに優先的に物資を配給するとか供給を確保するというようなことは一つもない。それはよく御承知だと思うのです。窮状もよくわかっている。それにもかかわらず牧さんが、この法律が一日も早く成立するようにというお話をなすったんですが、この法律のどこに皆さんの期待を込めていらっしゃるのか。そこのところを率直にお話しいただきたいと思うのです。
  108. 牧賢一

    ○牧参考人 お答えいたします。  われわれは、先ほど申し上げましたように、法律の技術的な専門的なことばよくわかりません。ただ、いまのままでは、従来からいろいろ法律も、お話がありましたようにございますけれども、それが少しも働いていない、生かされていない。そういたしますれば、何かここに新しいものができて、少しでも望みのあるものがほしいんだ、率直に申しますと、そういう気持ちでございます。  そこで、特に今回の立法の中で、物資の指定でございますとか、あるいはその他割り当てでございますとか、そういったことについてある程度強硬な措置をとるということを伺っておりますので、私どもそういった面から、とにかく何もしないでほっておかれてはかなわぬ、ぜひひとつその辺でやっていただきたい。そのためには、今度できます法案の中には、ぜひ何らかの形で——まあこれは社会福祉だけではございませんでしょうけれども、社会福祉の面について特段の扱いをすることをおきめ願えれば非常にしあわせだ。特にそういう問題が、これを読んでおりますと全部政令にまかせるということで、私どもによくわかりませんのでありますけれども、政令でそれがきめられるものならば、ぜひその中でこのことをきめていただきたい。そうしていろいろな機会に、そういうような無力な者たちがこれ以上に苦しむことのないようにひとつ早く手を打っていただきたい。早く手を打たないと、ますます事態は深刻になるんじゃないか、そういう心配、あせりの気持ちでございます。
  109. 増本一彦

    ○増本委員 お気持ちはよくわかるのです。だからこそ、これはもうこの法律ができるできないにかかわらず、当然そういう施設に一番優先的に保証する。何といったって、このインフレで一番直撃を受けている、最も悲惨な状態にあるのは福祉関係の人たちだ、これはもうよくわかります。  最後に磯村副知事さんにお伺いしますけれども、東京都は非常に積極的に物価対策を限られた権限の中でやっていらっしゃる。先ほどもその中で、原価の公開それから正確な情報の収集と都民、国民に対する提供ということをおっしゃいましたけれども、原価の公開ということをお話しになりましたが、それをどういうような仕組みで、またどういうような手だてで、またどういう内容のものをお考えになっていらっしゃるのかという点が一つと、それから正確な情報の提供についてどのような御意見なり施策をお持ちになっていらっしゃるか、このことをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  110. 磯村光男

    ○磯村参考人 原価の公開の問題について何か考えを持っているか、かようなお尋ねがあったと思いますが、私どもがなし得る、あるいはいままでやってきたこと、それは一つは、入浴料金の決定の問題につきましては、厚生省より若干先ばしりまして、総括原価方式というものを採用しておる。これは原材料、人件費あるいは適正利潤、そういったものを一応勘案いたしまして、消費者と業者代表がかんかんがくがくの中で一つの合意に達する価格をきめている、これはやはり消費者としては納得のできる一つの問題だ、そういった考え方でやっております。  それから今度の嬬恋キャベツの問題につきましても、やはり生産原価というものを生産者と話し合いまして、その上に立ってせりの上限、下限の価格をきめた、こういうような考え方でございます。  それからもう一つ、恐縮ですが、もう一点は何でございましたか。
  111. 増本一彦

    ○増本委員 正確な情報の提供です。
  112. 磯村光男

    ○磯村参考人 情報の問題については先ほど来るる申し上げておりますけれども、お答えが重複するかもわかりませんけれども、最終的にはやはり、消費者が安心するのは、一体どういう流通過程で、どこにどういうものがあって、それでわれわれの手にはどういうふうに流れてくるんだという、この情報がもしも正確にあれば、消費者は買い急ぎだとかそういったことはしないで安心するのではないか。こういう意味ではやはり正確な情報というものが一番ほしい。特に今回の問題が起きまして、私ども消費者センターがございますが、そのうちの大体五〇%近いものは全部やはりトイレットペーパーあるいは灯油に関する情報の要求でございます。残念ながら、私どものほうとしてはこの問題は新聞紙上で承知する以外には持ち得ない、あるいは各関係省庁にお尋ねした結果をお伝えするだけで、自主的な一つの、積極的なあるいは迅速な情報の提供ができない、こういった点でお願いしているわけでございます。
  113. 増本一彦

    ○増本委員 では終わります。
  114. 平林剛

    平林委員長 有島重武君。
  115. 有島重武

    ○有島委員 時間ももうだいぶ過ぎておりますので、私、要点だけ伺いますので、簡単に答えていただきたいと思います。  竹内参考人に伺いますけれども、竹内参考人の陳述されました、いまの国民生活安定法については反対である、これは統制への足がかりをつくってしまう、そのほかに実効がない、そういうような御意見、これは一面、非常にもっともであると思います。それで、それについて独禁法を強化する、破れがさを張りかえるのだというようなお話がございましたけれども、現在は、この独禁法ができたときとだいぶ世界的に経済の状況は変わっているのじゃないだろうかと私は思うわけなんです。たとえば石油だとか鉄鋼だとか農産物資につきましては、カルテルという名前ではないけれども、国際的に割りつけ制であるとか、そのルートの調整であるとかいうようなことが、すでにもう避けられない状態になっておって、これが国内にも非常に大きな制約を持ってしまっているのではないかというふうに私は認識しておるわけでありますけれども、いまおっしゃったような、あらゆるカルテルについてどんどん摘発できるような法律をつくるということだけでもってこれを取り締まることができるのかどうか、その辺はどのようにお考えになっていらっしゃるか、これだけ伺っておきたい。
  116. 竹内直一

    竹内参考人 確かに御指摘のように、国際的にこういう重要な物資が価格の面でも供給の面でも人為的に操作されているということは私は否定いたしません。それでいま独禁法の学者の間で、国際的な独禁法というのですかね、そういったものを何とかしなくてはということで研究中であると私は承知しておりますが、それはそれといたしまして、国際的にはそうであっても、せめて日本の国内に入ってきたものについてはそういうものを排除するという、そのために最大の努力を払うという義務があるのではないのかと思います。国際的にそうだから国内で同じようになったってもうお手あげだ、それでいいじゃないかというわけにはいかないと思います。そして独禁法をいろいろいじってみたって、この事態は改善しないのではないかというお尋ねでございますけれども、私は私的企業の活動を認めておきながら、こういうように官僚統制によってそれを秩序立てるということは、これは繰り返し申しますけれども、不可能であるわけであるし、またそれが大きな弊害を生むということを私は申し上げたいので、それを規制するのが自由経済体制のルールである独占禁止法を強化する、これしか方法がないのではないかということでございます。
  117. 有島重武

    ○有島委員 次に三浦参考人に伺います。  値上がり等の結果に対して手を打つよりも、さかのぼって原因に対して手を打つべきだ、まことにもっともな御意見なのでございますが、現在のこの値上がりに対して小売り店としてその被害者意識が非常に大きいと思います。消費者のほうから見ると、小売り店もまた加害者ではないかというふうに見ている面も非常に多いわけであります。特に元売りのほうは大体値段がおさまっておる。いまのはこまかい流通段階の中に非常に吸収されてしまっておるのではないかというふうに見ておる面もあるわけでございますが、その小売り店自身の加害者意識についてどのようにお考えになっていらっしゃるか。あるいはどのような申し合わせをしていらっしゃるか、その点について承っておきたい。
  118. 三浦正義

    ○三浦参考人 物価の異常な値上がりに対して矢面に立って消費者に弁解を迫られているのはわれわれ小売り商の立場でございます。そこで先ほどもたとえば原価の公表はきわめて困難であるという事情もございますけれども、小売り商側ではむしろ消費者に対してなぜこの商品はきのうまで千円であったものがきょう千百円にしましたのか、それはこのような仕入れ原価でございます、八百円なら八百円で仕入れいたしまして、その前は七百円でございましたが、それに人件費や家賃やあるいは金利やそういうものを乗っかけてみますと、実は二五%あるいは二七%いただかなければやっていけませんけれども、急に上げるわけにもいきませんから、実は二〇%ぐらいにとどめまして千百円になりましたというふうに、むしろそのつど原価を公表しながら消費者に御納得を得ているということではまさに被害者の立場でございますが、消費者側から見ますとおまえはかってに急に上げたじゃないかというような加害者の地位に転落して非常に苦しいインフレの板ばさみになって経営が困難になっているというのが実情でございます。だけれどもできるだけ消費者にはそういうような実情を御納得願うように努力し、あるいは町々でときどき消費者懇談会といったふうなものも開催しながらその実情をわかっていただけるというふうに努力いたしております。  それから小売商相互で申し合わせをしてこれくらいにしようじゃないかというようなことは実際上不可能でございます。互いに非常にたくさん同業者がございますし、非常に近接地にもまたどちらへでも行けるというような消費者の選択の十分整った業界でございますから、とてもとても全体が申し合わせでこれくらいずつは、マージンは三〇%は確実に確保しようじゃないかなんという申し合わせば絶対に事実不可能でございます。
  119. 有島重武

    ○有島委員 磯村参考人お願いしたいのですけれども、たとえばいまLPGであるとか灯油であるとか、もし東京都に取り締まり権限を移したならば実効があがるであろうかどうか。そのためにはどのような権限を移してもらったらばいいであろうか、そういうようなことについて、まあこれは想定でございますけれども、お考えになっていらっしゃれば承っておきたいと思うのです。  それからさらにそれを広げまして、いま買占め売り惜しみ防止法の指定品目二十一種でございますね。これは二十一種がすべてかりに今度のこの法律によってもし指定された場合に、これを地方自治体に権限委譲した、東京都に委譲された場合に、どのくらいの人員が必要になるであろうか。そういった点についてもお考えがあったらば承っておきたい。
  120. 磯村光男

    ○磯村参考人 二点についてお答え申し上げます。  石油なりLPGの問題で権限が都道府県に委譲された場合、どんなことを考えているか、こういうことだろうと思います。灯油や何かは比較的品物の品質が均一でございますから、末端の小売り段階における調査というのは比較的容易ではないかと思います。ただ問題はやはり先ほどもお答えいたしましたように、どこまでさかのぼっていくかという問題でございまして、たとえば仲卸しと小売りの段階において、仲卸しの価格がもしも表示されてあればこれは別でございますが、はたして最終価格だけでもって問題が解決するかといったならば、私は解決しないのじゃないか、やはりもとまでいかなければ問題の根源は解明できないのだ。したがいまして私どもがもしも権限をちょうだいするならば、一つの物の流れにつきまして、もとまで追及できるような権限を与えていただきたい、こういうことでございます。それから買占め防止法の関連で従来私どもに権限委譲はなかったわけでございますけれども、今回はやはり立ち入り検査が許される、これまた同様でございまして、一つの物の流れを都なら都、県なら県という行政区域だけでもって取り締まれというのは、もうすでにいまの長いあるいは遠い物の流れの中では、意味がないということでございまして、この意味においてはやはり都と隣接県あるいは他県の協力関係というものがやはり必要になってくる、かように考えております。
  121. 有島重武

    ○有島委員 前段の、地方自治体は区域に縛られているわけでございますけれども、その区域を越えても一つの品目についてそれをさかのぼって追及していかれるような権限を与えてもらえばそれは実効があがるであろう、そういうお話でございましたね。じゃ人員の点について、現在動員できる人員はどれくらいであるのか、またそういった権限を与えられたときにはどのくらいの人員をふやさなければならないのか、これまた実際には大きなことであろうと思うのです。二十一品目程度に限ったといたしまして、大体概算どのくらいの人員が必要になってくるのであろうか、そういうことについてはお考えがありますでしょうか。
  122. 磯村光男

    ○磯村参考人 現在消費生活対策の関係で私どもが配置をいたしております人員は約四百名ございます。このうち二百名は計量検定関係でございまして、実質二百名が現在動いているわけでございますけれども、ただいまのお尋ねのような権限が委譲された場合に、私どもが現在考えておりますのは、おおむね五百名は都としては必要だ、かように考えております。
  123. 有島重武

    ○有島委員 どうもありがとうございました。
  124. 平林剛

    平林委員長 和田耕作君。
  125. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 竹内さんに最初に御質問申し上げたいと思います。  戦前あるいは戦後の統制経済ですか、つまり価格統制中心とした統制についての評価は、あなたのおっしゃるとおりの面が多いと思いますけれども、しかしあの状態はもしそういうものがなければもっと大きなマイナスがあったということも見なければならね状態だと思うのですね。それは統制統制を生む、そしていろいろなスキャンダルが出る、非能率が出る。これは天下周知の事実ですけれども、しかしそういう弊害の多いものであっても、それがなければ何とも国民生活の問題を曲がりなりにも持っていくことはできなかったというような評価もできると思うのですけれども、いま私どもが取り上げておりますこの石油法案というのもそういうふうな面もあると私は思うのです。確かにこれは特に標準価格の問題を中心としては非常に困難な課題だと思います。したがって、衆知を集めるといいますか、できるだけ弊害を少なくするような努力が必要だと思います。また、この法案の中には、ないものを生産をさす、輸入をさす、あるところからあるところへ強制的に移させる、あるいは建築そのものを制限さす等の重要な面もあるわけですね。こういうふうな課題を持っておる現在の状況に対して、独禁法の強化、これは必要な面が多々あると思います。また買占め売惜しみ法案の強化ということも、この法案自体にも載っておりますけれども、必要な面がありますけれども、この二つの法案はどっちかといえば起こった、間違った事実をチェックするということであって、積極的に、いまの起こりそうな間違いをチェックするという法律じゃないわけですね。つまり、価格をあるところで安定させなければならないというような積極的な要請のためには、売惜しみ法案あるいはあれの法案というのは現在のままでは役に立たない。ほとんど役に立たない。そうしてまた、あるところからないところへ移す、あるいは生産命令を出す、輸入の命令を出す等のことについては全く権限を持たない法律、こういうことですから、買だめ売惜しみ法案とそれから独禁法の強化というものは必要ではありますけれども、それでもっていまの事態をカバーするということは無理ではないか、私どもはそういうふうに考えているわけで、いまあなたがいろいろ申された論点についてはもっともな点が非常に多いので、これを回復しようと思っておるわけですけれども、そういう意味で、この二つの法案は非常に注意して修正をしなければならない、その修正点をいま検討しておるんですけれども、しかし、こんなものは必要でないと言うことは私、できないと思うんだけれども、その点ひとつ竹内さんも御意見を聞かせていただきたい。
  126. 竹内直一

    竹内参考人 なるほど戦争中及び戦後の配給統制価格統制は、特に戦後は物の絶対的な不足のもとにおけるインフレ、それに対するほんとう緊急措置でありました。それといまとは事情が違うことは、これはもう言うまでもないことだと思います。ですから、私が申し上げるのは、あの絶対的な物不足時代の統制の再現を云々しているのではございません。  そこで、さっき私が冒頭に申したことは、いまの買占め売惜しみ防止法と独禁法、この二つだけでもってそれを補強すればすべて順調にいくということを申し上げたのではないのでありまして、現在存在するすべての法律制度、財政制度も含めまして、誘導政策として、たとえば物が不足ぎみであるならば外から輸入する方法を誘導的に考える、それに何か関税が支障があるというならば、それを操作するとか、いろんな方法が考えられるはずです。だからあらゆるそういうものを総点検をして、総動員をして、それによっていまの状態を何とかして防げないかということをお考えいただきたい。それは物の面ばかりではございません。お金の面でも同様にいろいろ考えればやることがあると思います。そういうことをやった上で、直接的にいまのこの法案に関連が一番深いのはいまの二つの法律ではないのか、それを補強して、そうして総合的にやっていけば、こういう弊害の多い官僚統制にたよる必要はないのではないのかという、そういうことを申し上げたつもりでございます。
  127. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは昨日からきょうの午前、午後と参考人の御意見を承っておるわけですけれども、いままでいろいろな法律のところで参考人意見を聞いた経験がありますけれども、今回の三回の参考人の御意見は、私、非常に参考になったと思います。というのは、役所も、むろん与党も野党もこういう事態は初めてだもんですから、確信があるあれというものはないわけですよね。したがって、与党の諸君も政府のほうも、虚心たんかいに問題点を直していかなければいかぬと私は思っています、この法案については。特に問題の多い標準価格の問題等、あるいはその運用についてはそういうふうな気持ちをたぶん持っておられると思いますが、いろいろな御質問聞いておりますと、そういうふうな時期ですから非常に私自身も参考になりました。なりましたけれども、この法案が必要でないというような結論には、私はどうしてもならない感じがするわけでございます。そういうことでございまして、今後ともいろいろとお教えいただきたいと思うのですが、最後に、けさ、標準価格の問題、非常にむずかしい、しかし、これは急を要するんですね。ここでもたもたしておると、いまの十一月の段階、きょうの生協で発表しているようにかけ込み値上げという問題が出てくるのでもたもたするわけにはいかない。したがって、これは十分準備した上——まあいろいろ値上がりの起こりそうな問題はわかっていますから、十分準備をした上で、ある時期がくれば主務大臣が責任を持って標準価格を決定する、しかしそのあとで効果のある審議会、まあいろいろな意見を聞く会で、決定したものを間違っておれば直せるような審議会が必要だという御意見がけさほどありました。先ほど磯村さんから、あとでもいいからそういうものが必要だという御意見があったことと関連をして、磯村さん、そういうふうな審議会はどういうふうな構成にしたらいいと思いますか。
  128. 磯村光男

    ○磯村参考人 具体的な考え方はございませんけれども、まあ即答でごかんべん願いたいと思いますが、やはりまず消費者代表を入れること、それから関係業界、これは入っていただくこと、それから都道府県の代表を入れるということ、それからまあ中立委員と申しましょうか、あるいは学識経験者、この四つはやはり必要の条件だろう、かように考えております。
  129. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 消費者代表と業界代表と都道府県代表と、あと何でした。
  130. 磯村光男

    ○磯村参考人 学識経験者です。
  131. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 ああ、そうですか。この問題は、今後いろいろ検討しなければならない問題だと思いますけれども、ぜひともこれはとにかくまともな標準価格をつくらないと、かりにそれが効果がわりあい少なくても、私はこれは大胆にやったらいいと思いますのは、物価がずっと全体として上がり基調です。したがって、かりに間違ってある高目のところで標準価格がきまっても一月たてばそのところへくる、これから上へ上がるところを押えることはできるということもありますので、その問題をあまり、ある段階で高目だからこれは高値硬直だというような気を使うことも、ぐっと上がっているときにはあんまり心配する必要はないんじゃないか。それよりも状況に合わないような状態、間違っているものを効果があるように直せる権威ある機関というものをこれは絶対置く必要がある。また、きめた標準価格の、生産費用がどれくらいで、そして適正利潤がどれくらいで、その他の諸費用が何ぼだという内訳の明細は、何らかの形で消費者に明らかにしていくということが必要だと思います。  そういうようなこと、たいへん貴重な点、私自身教えられたことも、感謝のかわりに申し上げまして、御質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  132. 平林剛

    平林委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位にはお忙しいところ、長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べくださいまして、まことにありがとうございました。  ここに委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。(拍手)  午後六時三十分に再開することとし、この際休憩いたします。    午後三時三十一分休憩      ————◇—————
  133. 平林剛

    平林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。国民生活安定緊急措置法案について審査を続けます。  この際、内田経済企画庁長官より発言の申し出がありますので、これを許します。内田経済企画庁長官。
  134. 内田常雄

    ○内田国務大臣 本法案に基づく標準価格、課徴金制度等の活用と物価統制令第四条の発動との関係につきまして、昨日の山中委員の御質問に対する答弁を補足をさせていただきたいと存じます。  法律解釈といたしましては、本法案に定めるもろもろの措置によっては事態が克服できないような緊急非常事態におきましては、これらの措置を講じていない場合においても物価統制令の発動が可能であります。しかしながら、政策運営のあり方としては、物価統制令の発動はきわめて慎重であるべきであり、発動をいたす場合にも事前に十分に種々の措置を講ずるよう努力すべきであるとの趣旨で申し上げた次第でございます。  右、御了承をお願いいたします。
  135. 平林剛

    平林委員長 山中吾郎君。
  136. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 いまの長官の御答弁は、法制局長官の意見を聞いてお答えになりましたか。
  137. 内田常雄

    ○内田国務大臣 法制局長官をも交えて協議をいたした結果でございます。
  138. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 大体、昨日の長官の答弁を実質的に修正をされて、この法案の発動と物統令の発動は独立のものであり、運営についてはいろいろと慎重にすべきであるが、法的には違った条件のもとに発動するということをいまの答弁で私は理解しておるのでありますが、これは確実に確認をしておきたいので、もう一度お答え願いたいと思うのであります。  本法案は、発動の条件は、「物価が高騰し又は高騰するおそれがある場合」、物統令においては、「物価が著シク昂騰シ又ハ昂騰スル虞アル場合」。したがって発動の条件が違います。それから、この法案については、生活関連物資に限定をされております。物統令はそういう限定はありません。したがいまして、この法案は、インフレのおそれがあるという、政府があまり好きでないことばを国民がわかりやすいように申し上げたいと思うのでありますが、インフレのおそれがある場合、物統令の場合は、「著シク」ということばの中に、悪性インフレのおそれがある場合と私は一応解釈をしてもいいのではないかと思うのであります。したがって、物統令の場合には、標準価格、特定標準価格というような手続をとるいとまがない、また、生活物資に関連しなくても基幹産業に重要な影響を与える物資についても、国民生活の極端な不安を除去するために、急速に統制価格を設定しなければならぬという趣旨からきておる。したがいまして、この法案、すなわち本法と物統令は、どっちが先、あとでなくて、発動の条件が違い、発動の対象も違うのであって、お互いに物価抑制する機能を持ちながら、独立の立場において、状況に応じて発動するという法案である。これは明確に確認をしておかないと、政府自身も、また、関東大震災に準ずるような大事件が起こり、あるいは近東戦争が再発をし、激化をして、石油の五〇%も輸入しないというふうな状況があるような場合について、まずこの法案を、そしてあとでというふうな考え方でない考えを確認しておかなければ、政府も、また国会においても、責任を持つことができない事態が出るのではないか、そういうことを考えるので、その辺を明確にしてください。
  139. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いま補足をさせていただきました私の発言で御理解をいただきたいわけでございますが、山中さんの御発言の中で、インフレ、悪性インフレ、こういう表現がございましたが、これは山中さんも御承知のとおり、私どもは物価の騰貴を中心とする異常な事態、こういうことに今回の緊急措置法の条件を考えておりまするし、また、物価統制令の発動をいたします場合は、ただいま申し上げましたように、本法案に定めるもろもろの措置によっては事態が克服できないような緊急、非常な事態である、こういうふうに、これもまたあらためて御理解をいただきとうございます。そして、この緊急措置法の附則第二条におきまして物統令の四条をわざわざ改正をいたしまして、お手元にございますように、「物価が著シク昂騰シ又ハ昂騰スル虞アル場合ニ於テ他ノ措置二依リテハ価格等ノ安定ヲ確保スルコト困難ト認ムルトキ」こういうことを現在ありますところの物統令にわざわざ加えました意味も、私が読み上げました先ほどのことばに関連してお含みをいただきたいと存じます。
  140. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 だんだんまた論議をしておるとわからなくなりそうでありますので、端的に法律解釈——法制局長官の意を徴して答弁をされたので、私がいま申し上げたように理解をしておきたいと思います。また、そうでないと政府責任を持てないような事態が発生すると私は思うので、念のために記録に残しておきたいと思うのであります。  いずれにしましても、この法案を提案された責任者である長官がこの法案自身の附則において物統令の改正の内容を盛っておる、そして投機規制法と本法と物価統制令と、おのおの物価抑制機能を、別々の発動の条件のもとに、相関連しながら、また独自の発動のしかたによって、相補いつつ、非常の場合において、いろいろの場合を想定をして物価抑制しようとする物価三法であると私は思うのであります。それをある法律が他の法律に従属するような解釈は、これはある事態があらわれたときに、その機能を発揮するに必ず障害になるだろうということを思うのでありますから、少なくとも法解釈において昨日のような解釈をされるようでは、不勉強である。提案をされた責任者として、今後十分に勉強していただきたい。  以上申し上げて、いまの長官の答弁を了承いたします。
  141. 平林剛

    平林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子みつ君。
  142. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私は、まず長官にお尋ねしたいと思っておりますことは、現在のこの状態についてどのようにお考えかということをお尋ねしたいわけでございますが、御承知のように昨年の秋以来ことしの春にかけ、さらに夏までにかけて大手の商社の買い占め売り惜しみ等がございまして、人為的に物資の不足が招来し、伴って物価値上がりが非常にございました。そのことが非常に激しく著しくなりました時点で、買占め売惜しみ防止法はつくられたことになったわけでございます。あの法律ができましたけれども、政府はあまり発動をなさらなかったようでございますし、またあの法律ができました時点ではすでに一応落ち着いた状態になっていたように私どもは記憶いたしております。後手後手となった法律であったと記憶しているのでございますが、それがその後、今回の石油危機という一つのきっかけがございまして、再び物がなくなったりあるいは値上がりが激しくなったりということになり始めてまいりまして、最近では毎日のように新聞、テレビ等で報道されておりますように、ただいま審議されております石油法案と、ここで審議いたしております生活安定法とが、この暮れに迫ってとにかく成立されるんではないだろうかという見込みが一般国民の間にもあるようでございまして、それが成立された場合にこの法案の中にございます価格安定、価格の指定などというようなことを考えあわせて、いわゆるかけ込み値上げの状態にいまなっているというのが現状でございます。けさの新聞にも、凍結に備えて千二百品目かけ込みの値上げがあったというのが生協が調べました調査で報着されております。これは生活法案が引き金になっているんだというようなことも書かれているような次第でございます。非常に国民は不安でございますし、そして政治への不信というものが一そう高まってきているというふうに私は見なければならないと思っております。  それで、この前のいわゆる買占め売惜しみ法律をつくらなければならなくなったようなあの大手商社の投機的行為でございますが、あのときは大手商社が投機行為を行なって利潤を得たものだと一般に理解されております。今回は大手商社でなくて流通機構の次の段階の、いわゆる中間仲売りの人たちが利潤を得ようというような考え方で、ただいま小売り並びに消費者には物資が回らないというような状態になっているのではないかということが考えられるわけでございます。  私どもは先般、寒さに向かって一番問題になっております家庭用の灯油、それから私たちの足の一つでありますタクシーのLPガス、こういう問題の不足について実態を知りたいと思いまして元売りの調査に参りました。三つの施設を調べましたのですけれども、その三つともが、私どもが調べました範囲ではLPガスもプロパンガスもですけれども、ことしの四月からせんだって見てまいりました先週の時点に至りますまで、輸入も輸入による入荷も全く順調で一つも変わっていない。それから元売りから出します出荷についても一つも変わっていない。だから物がないということは実にふしぎであるとそこで言われていたのです。ところが新聞紙上等ではLPガス、自動車のガスがない、家庭の灯油がないという実態がありますので、これがないということが事実であるということもはっきりいたしております。それから元売りが変わらなく供出していること、順調に出していることも事実でございます。そうするとどこがどうなっているのかということはおのずからわかってくるわけでございますが、今回はこの中間的な仲売りが買い占め売り惜しみの形をとる、あるいは家庭用、自動車用に回さないで高値で買っていく工業用にそれを振り向けるというような事実があったということも調査でわかっているわけでございます。  いずれにいたしましても、このような事態になりますと、いつも被害を受けるのは消費者国民なのでございます。元売りがもうけようと仲売りがもうけようといずれの方法がとられましょうとも、困るのは消費者国民でございます。その極点に達しているのが現在ではないかと思うのでございますが、このような生活不安、年の瀬も迫ってまいります。暮れからお正月へかけて、あたたかい正月を迎えたいと思っているような時期にこのような状態になっているということに対して、物価の調整役をみずから任じていらっしゃる企画庁長官となさいましては、この状態をどういうふうにごらんになるのか、どのようにお感じになっていらっしゃるのか、どのように責任をとりたいと考えていらっしゃるのか聞かせていただきたいと思います。
  143. 内田常雄

    ○内田国務大臣 金子委員がおっしゃいましたような事態を私どもも耳にしばしばいたしておるわけでございます。これはいろいろの事情もあるようでございますが、ここで私が申し上げることよりも、御心配になりましたようなあの事態によりまして、国民にいろいろな不安を起こさせないようにいたすために、今回石油の需給の安定のための法律と、また国民生活安定のための緊急措置法を提案いたした次第でございますので、御審議の上、一日も早く御可決をいただければ幸いに存じます。
  144. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私どももそのつもりで一生懸命に審議をしようと思っているわけなんでございますけれども、いま申し上げましたような事態一つも好転していっておりませんし、この法律が成立した暁にどれだけのメリットがあるのかということについてもはなはだ疑問がございます。これにつきましてはまた後ほど質問させていただきますが、ただいまから具体的に一つずつお尋ねしたいと思いますので、御所見を伺わせていただきたいと思います。  先般、私どもの社会党の松浦委員からも質問がございまして御答弁をいただいた問題の中に、第一条の「異常な事態」ということばの使い方がございまして、「異常な事態」というのはどういうのかという質問をなさったことについての御答弁がございましたが、これはダブりたくないと思いますけれども、私がお尋ねしたいのは、その先に続いてまいりますことで「国民生活との関連性が高い物資」という表現がございます。「国民生活との関連性が高い物資」というのはどういうことなのか、具体的に教えていただきたいと思います。
  145. 小島英敏

    ○小島政府委員 「国民生活との関連性が高い物資」と申しますのは、生活必需物資がまず入るわけでございまして、大体これは買占め法における生活関連物資と同じ概念でございますけれども、生活必需物資を中心にし、さらにそれの原料になりますような生産財、たとえば羊毛のごときものは生産財ではございますけれども、その行き先がもっぱら消費財の生産に使われる。そういう意味で羊毛のごとき生産財はこの生活関連物資に含めて考えているわけでございます。
  146. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私は非常にものわかりが悪いものですから、同じようなことを何べんもお尋ねして申しわけありませんけれども、いまの御答弁ではやはり抽象的で、私がお尋ねしたのは具体的に品目をあげていただきたかったわけなんですが、それはどういうものを頭の中にお考えになっていらっしゃるのでしょう。
  147. 小島英敏

    ○小島政府委員 概念といたしましては、買占め法の概念と同じでございますから、たとえば買占め法でいま指定されております二十一品目のようなものは具体的にこの「国民生活との関連性が高い物資」という概念と一致すると思います。
  148. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そういたしますと、ここにあがっていない物資の場合も考えられると思うのですが、それ以上には広がらないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  149. 小島英敏

    ○小島政府委員 そうではございませんで、同じような性格のものでございましたら、現在買占め法に指定されておりませんでも当然こちらの物資として考え得るということでございます。
  150. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それでは続いて同様の趣旨の御質問ですけれども、「国民経済上重要な物資」というのはどういうことになりますか。
  151. 小島英敏

    ○小島政府委員 「国民経済上重要な物質」とは基礎資材等のごとく国民経済におけるウエートとか使用範囲の広さなどから見まして重要な物質を指すものと考えております。したがいまして、鉄鋼とかセメントとかいうものが入ってくるわけでございまして、いままでの生活関連物資だけの概念でございますと、鉄鋼の場合になかなか先ほどの羊毛のように行き先が大部分消費財生産ということでございませんで、もちろん家庭用の建設資材、くぎとか針金とかというもののためにも鋼材というものは使われますけれども、大部分は機械類とか建築物とかいうふうに使われるものでございますから、その意味で鋼材というようなものを生活関連物資というふうに見ることはなかなかできなかったわけでございます。今回はそういうことにこだわらずに「国民経済上重要な物資」という概念で重要な生産財その他を含むということになったわけでございます。
  152. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そういたしますと、御答弁を伺っておりますと、何でも入ってしまうように考えられますけれども、そういうふうに何でもなるのだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますでしょうか。
  153. 小島英敏

    ○小島政府委員 昨日もお答えいたしましたかと思いますけれども、「国民生活との関連性が高い物資」という場合は先ほどのような概念でございますから、これはレジャー用品みたいなものは入りにくいということがございます。ところが「国民経済上重要な物資」と申しますと、いま例にあげましたような重要な生産財は当然でございますけれども、大体たとえば化学品などというものも非常にこまかく細分されまして、やはり生活必需物資をつくるためには何らかの意味で関連している物資が大部分でございますので、そういう意味から申しますと、やはりそのウエートがかりに大きくなくても、そのものがないと生活必需物資がつくれないというような場合には、やはりそういう化学品等も「国民経済上重要な物資」と読まねばいかぬのじゃないかと思います。したがいまして、おっしゃるようにかなり結果的には広く考えるということになるのではないかと思います。
  154. 金子みつ

    ○金子(み)委員 幅広く考えてよろしいわけでございますね。そういたしますと、品目などの数量はどうなりますでしょう。いま生活必需物資の問題、それから「国民経済上重要な物資」というのを説明していただいたわけですが、非常に幅広く該当させられるというふうに解釈できるわけですね。そういたしますと、あれも入るだろう、これも入る、この場合これも入ると、いろいろ出てくると思いますが、その場合に数に限定なく、数は幾らでも対象としてふやしていくことができるというふうに理解できるのでございましょうか。
  155. 内田常雄

    ○内田国務大臣 物価局長が言うのと私が言うのと結局同じでありますが、これが通りますと私はこの法律運営の責任者に立つわけでございますが、どういう物資をこの二条によって指定されるかということはお読みくださるように、法律的には物価全体が高騰する中で、しかもその物品が著しく値段が高騰し、また高騰するおそれがある、こういうところにしぼられるわけであります。ですから、値段が比較的安定しているようなものは、それが生活関連物資でありましても、あるいは「国民経済上重要な物資」でありましても、その限りでは指定はいたしませんが、値段が非常に上がってきている、上がりそうなもののうちからとりあえずそれがなければ国民生活が守られないというものをまず重点的にしぼりまして、そうしてこれは行政能力もございましょうし、標準価格をつくるといっても、これはやはりいろいろ苦労もございましょうから、そういう行政能力と国民生活をささえていくのにこれだけはぜひやらなければならないというものを集中的、集約的にまず選んでいくことが一番いいのではないかと考えます。  いまたとえば買占め防止法のほうでは二十一品目ございますが、いま御論議をいただきましたように、これは二十一品目に限られるものでは決してございません。もっと数が多くてもいいわけでございますし、また漫然といろいろ物資を指定したけれども、標準価格が遅滞なくつくれないというようなことでもいけませんので、その辺の両面から考えて品目を選んでまいるつもりでございます。
  156. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いろいろな事態が想像されるわけでございますけれども、いま長官お話ですと漫然とじゃないということはよくわかるのですけれども、そうだと考えられた場合にはそれを指定し、品目を指定して、そうして価格をきめていくということになると思いますが、先ほどの話のように幅広く対象になるということが考えられるということになりますと、ほとんどすべてのものに全部価格が規定されてしまうという事態が起こるんじゃないかというふうに思われますけれども、そういうことにはならないのでございましょうか、そういうこともあり得るとお考えでございましょうか。
  157. 内田常雄

    ○内田国務大臣 そういうことに私は当面しないほうがいいだろうということを実は申し上げたつもりであります。家庭生活、人間生活をしていく上にこれだけは物の需給も安定し価格も安定させなければ不安でしようがないというものをまず優先的に選んでいくのがよろしいかと思います。さらにまた、生活必需物資または家庭生活などの中でなくてはならないものでも、季節的に価格が当然変わる、また天候によって支配されるようなものを指定することはこれはいかがかと私は考えております。つまり野菜のようなものをいきなり取り組んでみましても、これは季節商品としまして値段が始終変わることも当然でありますから、そういうものにつきましては、これは一応別に考えて、しかる上指定物資にすべきではないかというふうに考えます。
  158. 金子みつ

    ○金子(み)委員 たいへんにむずかしいことだと思います。いま長官の御答弁を伺っておりましても、非常に抽象的で、ものをきめる場合にきめ手がないように伺えるわけなんですね。ですから、非常にむずかしいと思いますけれども、時間がかかってしまいますので、この辺でこの問題は打ち切りたいと思いますけれども、お選びになるとき、おきめになるときのそのきめ方の問題はいずれまた討議させていただきたいと思いますが、非常にむずかしいということを考えていただきたいことと、きまりました暁には、それは政令の中にうたい込まれる予定でございますか。それとも政令の中にもうたわないで告示か何かで済ましておしまいになるのでございましょうか。その点を聞かしてください。
  159. 内田常雄

    ○内田国務大臣 条文の二条に書いてありますように、その物資は政令できめることにいたします。というのは、これは農林省のものは農林省告示できめる、あるいはまた通産省所管物資は通産省告示できめることも考えられるわけでありますが、それでは各省てんでんばらばらになりますので、やはり各省一緒になって私どももその調整役というか指導役になりますためには、その各省ごとの告示のきめ方よりも政令できめるのがよかろう、こういう考え方でおるわけでございます。
  160. 金子みつ

    ○金子(み)委員 少しわかりました。  今度政令でおきめになって品目が書かれるということになりますが、国民は非常に心配しています。ですから、たとえばこういうようなものというふうに例示をして説明していただければ——この法案の説明がかりに新聞なり何なりにもつと十分出なければいけないと思いますけれども、その場合にもわからないわけですね。ですから一般の人がわかりやすいように、たとえばどういうようなもの、どういうようなものというのを、ただ日常生活に非常に必要なものだというような言い方でなくて、具体的にたとえばトイレットペーパーであるとかあるいはYシャツであるとかというふうなぐあいにお書きいただきたいということをお願いしておきたいと思います。
  161. 小島英敏

    ○小島政府委員 私が先ほど非常に広く読めると申しましたのは、第一条の「国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資」、この物資の意味で御説明いたしたわけでございまして、いまの御質問は今度二条の標準価格の指定に何が考えられるかということでございますけれども、現在具体的に何を指定するかということば各省と準備中でございますのであまりはっきりしたことは申せませんけれども、先ほど申しましたように、大体たとえば買占め法の品目というようなものが当然一つの候補としては考えられるのではないかというふうに思います。
  162. 金子みつ

    ○金子(み)委員 次に、標準価格の問題で少しお尋ねしたいと思います。  この法律の内容では、標準価格と特定標準価格、そしてさらにその先には公定価格という三段がまえで価格を規制するというふうになっているわけでございますが、「物価が高騰し」と二条に書いてございますが、標準価格をきめるんだ。さらに今度は著しく高騰した場合にそれが指定価格になっていくのだ。その指定価格でもあるいはこの二つの方法によってもなお物価の安定ができないときには、公定価格をきめるのだ。こういうふうに理解できるのでございますけれども、この三段がまえの相違というものをはっきりしていただけないでしょうか。
  163. 小島英敏

    ○小島政府委員 まず標準価格のほうは一般的な要件といたしまして、「物価が高騰し又は高騰するおそれ」ということで、その当該品目だけでございませんで、一般の物価水準がやはりかなり「高騰し又は高騰するおそれがある」という必要があるわけでございますが、そういう事態のもとで、あるものの「価格が著しく上昇し又は上昇するおそれがあるとき」に政令で品目を指定して標準価格をきめるわけでございます。当然この場合は先ほど山中先生もおっしゃいましたように、全部の品目ではなくて、この法律の一条に出てまいります「国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資」、これが対象になるわけでございます。  それで、まず標準価格といいますのは、ある意味でソフトな形の、マル公というようなものではないソフトな形のものでございまして、禁止価格ではない、ある意味で指導価格と申しますか、代表的な品目を選んで、そのものについてはこのくらいの値段がよろしいというような性格のものでございます。したがいまして、これを守らなかった場合にすぐに罰則というようなことでございませんで、引き下げの指示をしたり、合理的な理由がないのに言うことを聞かない場合には公表するというような、間接的強制と申しますか、社会的なペナルティーと申しますか、そういう形で担保いたしておるだけでございます。ところが、これが第一段階でございますけれども、第二段階が第七条にございます特定標準価格の決定でございまして、「第三条から前条までに規定する措置」つまり標準価格に関連する措置を講じましても、「なお指定物資の価格の安定を図ることが困難であると認められる場合」、ここも「認められる」ということでございますから、普通の場合でしたらやはり標準価格がまず出まして、それからあまり効果がないというような場合にその次の段階に入るわけでございますけれども、必ずその標準価格の段階を通らなければいけないかといいますと、そうではございませんで、事態が非常に進んでいる場合には、認められるということでいいわけでございますから、いきなりその特定標準価格ということに入ることもあり得るということでございます。これは一そう強いペナルティーと申しますか、罰則ではございませんけれども、いわゆる課徴金の徴収ということで、特定標準価格を上回って売りました場合にはその差額を課徴金として徴収をするということによって、標準価格よりも一段と強い力をもって守らせる体制になっているわけでございます。事態が非常に進みまして、「物価が著シク昂騰シ又ハ昂騰スル虞アル場合二於テ他ノ措置二依リテハ価格等ノ安定ヲ確保スルコト困難ト認ムルトキ」というのが今度の物価統制令第四条の修正文案でございまして、したがってこれは非常に強いしぼりをかけておるということでございます。  これの一段階目の標準価格、二段階目の特定標準価格物価統制令、第三段目の措置との関係は、先ほど大臣が読まれましたように、普通の段階ではやはりそれは第一段階、第二段階を通って、どうしてもそれで効果が及ばない、さらに事態が最悪の事態になったような場合に、この物価統制令の四条の統制額を指定するということになるわけでございますけれども、必ず第一段階、第二段階を通らなければいけないかというと、これもそうではございませんで、この二六ページの第二条「物価統制令の一部を次のように改正する。」というところにございますように、その三行目のところに「価格等ノ安定ヲ確保スルコト困難ト認ムルトキ」ということでございますので、これはやはり最後の場合には、第一段階、第二段階を通らなくても、直接この措置をとり得るということになるわけでございます。それから先ほど申しましたように、物価統制令の場合は物資の限定がないという点が第一段階、第二段階と非常に違うということと、それからこれはマル公最高価格でございますから、これに従わなかったときには罰則がかかるということでございます。
  164. 金子みつ

    ○金子(み)委員 ことしの十月の全国消費者物価指数は前年同月比一四・二%、これはほんとうに異常だと思うのですけれども、これは常識的に申しましたら単なる高騰ではなくて著しい高騰、こういうふうに考えていいのじゃないかと私は思うのです。そうだといたしますと、現在の状態は著しい高騰になっているわけですね。そうしましたら、もし政府の御判断が、いまのような状態である場合に、二つの段階を経なくても第三段階へも進み得るというふうに理解もできるわけでございますが、二つの段階でもとてもどうにもならないというふうにお考えになった場合には、いまでも物統令が発令できるというふうにも理解できるのですけれども、それはどうでございましょうか。
  165. 小島英敏

    ○小島政府委員 確かに十何%というのはただの高騰ではなくて著しい高騰ではないかというおっしゃる意味は、そういう言い方もできるかと思います。ただ物統令の発動要件は、先ほど読み上げましたように、そういう場合において「他ノ措置二依リテハ価格等ノ安定ヲ確保スルコト困難ト認ムルトキ」ということでございまして、今度の石油事態が出てまいりましたので、一般的に事態が非常に深刻化しつつあるわけでございますけれども、十数%程度の値上がりの場合には、やはりこれは総需要抑制策とかその他有効な物価対策を適切に行なえば、これは決して戦後の事態に値するような異常事態というふうには言えないと私どもは思っております。したがいまして、消費者物価が一年前に比べて十数%上がったという程度では、なかなか物統令の発動というような要件は満たしていないというふうに考えております。
  166. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それはぜひそのように実現していただきたいと思います。  次に物価価格をきめる問題でございますけれども、これは非常にみんなが関心を持っておりますし、同時に非常に不安と期待みたいなものも錯綜しておると思うのですけれども、物価価格を決定いたしますに際しましては、だれがどこでどのようにしてきめるのかということをはっきり教えていただきたいのですか……。
  167. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは法律のたてまえがそうなっておるわけでございますが、政府標準価格をきめる、あるいは特定標準価格をきめる。しばしばこの委員会でも論議されましたように、物の生産者、販売者の方々が自分たちのカルテル行為等で共同して値段をきめて、それを政府のほうに持ち込んできて、これを標準価格にしてほしいというようなことを持ち込まれても、私はそういうものを認めるつもりは全くないわけでございます。しかし、政府がきめますときにはいろいろの資料も必要でございますから、その限りにおいては生産者とかあるいは卸売り業者、小売り業者等の実際のコストなりあるいは販売費なり、あるいは世上に行なわれている通常の価格というようなものを資料として調べますけれども、きめるのは政府がきめる。しかもそのきめ方は、手段、方法は別といたしましても、国民の納得するような価格としてきめてまいる、こういう考え方をいたします。
  168. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それは確かに、最終的には政府がおきめになるには違いないと思います。ですけれども、おきめになるに際してなんです。いま長官がおっしゃいましたように、関係業界の人たち意見もあるいはデータもそろえてということになるんだと思うのですけれども、ただ関係業界の人たち政府だけでおきめになるということになりますと、やはり独善的なにおいがしないわけではないと思いますし、業界の人たちとの話し合いの中には、必ずしも業界の人が満足したような線にきまるとも考えられないわけでございますね。ですから、そうなりますと、結果的には業界の人たちが満足できるような形で線が引かれるというふうに常識的に判断できるのですが、そうなりますと、決して業界は損はしないし、結局高い線が出てしまって、国民は非常に困る、こんなことになるんじゃないかというふうな感じがいたしますが、そういうことはみじんもないというふうに断言なされますでしょうか。
  169. 内田常雄

    ○内田国務大臣 全くおっしゃるとおりにいたしたいと私は思っております。
  170. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いま一つ、同じ問題でお尋ねしたいと思いますのは、先ほど長官が御答弁くださいました中に、国民が納得するような線でというふうにおっしゃっていらっしゃいました。まさしく、国民が納得しなければ、きめられたあとでまた問題が起こるわけでございますから、国民が納得するということは一番大事だと思います。国民が納得するような線でということになりますと、私なんか考えますのには、やはりこれは政府業界だけでなくて、そこに第三者的な機関を存在させて、そうしてここでガラス張りの形で審議をされて決定されるということのほうが国民は納得いたしますし、安心もいたしますと思います。たとえば、性格は全く同じではありませんけれども、米価審議会のような形をおとりになるとか、何かそういった第三者的な機関を設けて決定するというお考えはおありにならないでしょうか。お考えになったことはないでしょうか。
  171. 内田常雄

    ○内田国務大臣 そういう御論議が他の委員の方からもすでに出されておるわけでございますが、私どもはこの標準価格のきめ方というものは、いま米価審議会の例をお出しになりましたが、たとえば三者構成というようなことできめようといたしましても、その物資を指定して遅滞なく標準価格をきめるという、機動性と申しますか迅速性と申しますか、それになじまないものであると考えますので、私どもの考え方は、これはまあ政府国民から納得をいただけるような、そういう何らかの方法はとってまいりますけれども、具体的な審議会を設けるという考えは持たないで進むつもりでございます。
  172. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そういたしますとやっぱり疑問が残るわけですね。ですけれども、いまここでそれをやりとりしてもしかたがないと思いますが、百歩譲って、長官がおっしゃるように、とにかく迅速果敢にぱっぱっとやらなければならぬのだから、審議会なんかにかけていたら時間がかかってその間にどんどん値段は上がってしまうからだめなんだという意味の御発言なんではないかというふうに考えたわけでございますけれども、それは審議会の運営のやり方次第だと私は考えるのです。審議会を通すから時間がかかるというものではないと思いますが、しかし長官は、審議会を持つ考えはないといまおっしゃったわけです。それはそのように覚えておきます。  いま一つですけれども、それでは、なしでおきめになってぱっぱっと時間的に間に合うようにおきめになってそしてお出しになった、そうしましたら、そうやっておきめになったその価格が適正であったかどうかということは、その後でなければわからないわけですね。そうですね。ですから、きめられた価格が適正であったかどうかということについてチェックをするということのために、第三者か何かの機関をお持ちになるということはお考えになりませんか。
  173. 内田常雄

    ○内田国務大臣 具体的にあとからのチェック機関としてこういう仕組みのものを考えるということは、ただいま申しませんけれども、ただ私が抽象的に、国民の納得のいくものをつくる、政府を信頼しろと言いましても、それはかけ込み価格の引き上げというようなものが現にある状況の中においての作業でございますので、口先だけのことで済まし得るとも私は考えません。何らか、金子さんのようなこういう問題についていろいろ御経験もお持ちの方でございますから、いまの御発言につきまして、どういう方法がいいかということも、それは私は考えさしていただきたいと思います。
  174. 金子みつ

    ○金子(み)委員 十分お考えになっていただきたいと思うのです。そういうようなことに関して、前向きの姿勢で国民が納得するような民主的な方法できめていこうという姿勢におなりになりますときには、どうか、私どものほうにも考えがございますので、御一緒に考えさしていただきたいと思います。  関連いたしまして、引き続いて質問させていただきたいと存じますが、それは、今回のこの法律案の中では、第二段階の特定標準価格を守らなかった場合に課徴金を徴収するということになっておりますですね。これは一つの、罰則ではございませんけれども、まあ罰金に類するものだと思うのでございますけれども、この課徴金の徴収のしかたと申しますか、内容なんですけれども、特定標準価格よりも高く売った部分だけが課徴金として適用されるというふうになっておりますですね。これは業者にはたいへんに親切ですね。たいへんに甘いと思うのです。もともと、この標準価格をおきめになるときに、先ほどの長官の御発言ですと、民主的な、国民が納得できるような組織を通さないで、関係業者と業界政府だけでぱっとおきめになってお出しになる金額ですから、私ども国民側から考えますと、決して業者に損をさせないような内容できめられるものではないかなというふうに考えられますから、もともとこの価格自体が決して損しないようにできているところへ持ってきて、課徴金はその上へ出た分だけしか対象にされないというのでは、私は、罰則的な意味は全然ないと思うのでございますけれども、その辺はいかがでございましょう。
  175. 小島英敏

    ○小島政府委員 価格といいますものもやや動態的に考えていただくといいと思いますのは、たとえば一般的になかなかこういう物価水準が上がりつつある段階でございますし、賃金その他のコストも少しずつは上がりつつある過程でございますから、何もそういうものをきめない場合には非常にアトランダムに商品がどんどん上がっていくということが考えられるわけでございます。ところがこういう標準価格をきめます場合には、確かに初めのそのきめ方というのは非常にむずかしい問題があると思いますけれども、一度設定されますと、これが一月や二月でどんどん変えるというものでございません。やはり極力長い時間維持するように行政指導もするわけでございまして、どうしてもコスト事情等が大幅に変わってくればこれは改定しなければいけませんけれども、そういう意味でやはりきめたとき一〇〇%適正なことをやるというのは非常にむずかしいかもしれませんけれども、少し長い目で見ていただきますと、やはりこういう標準価格というものをきめるということは非常に意味が出てくるというふうに私は思っております。  それからいまおっしゃいましたように、そういう点から申しますと、特定標準価格を越えた分だけを課徴金を取るというのは、やはりこれは課徴金の制度というものは罰則ではございませんで、行政的な一種の制裁でございますので、なかなか越えた額の何倍かを取るというようなことはできないわけでございまして、やはりこれは法制的に越えた部分に限って取るというのが限度であるというのが法制局のほうの見解でもございます。ただこれは税の取り扱い上損金に算入いたしませんので、実質的には一・五倍ぐらいのものを取られることに結果的になるということがいえるわけでございまして、決して業者にそう甘い制度というふうには考えておらないわけでございます。
  176. 金子みつ

    ○金子(み)委員 たとえば同じに考えられるかどうかわかりませんが、罰則でなくて行政的制裁ですか、というふうな考え方からいきますと、乗りものですね。電車ですけれども、これも不当な乗車をいたしますと、始点から終点まで乗った区間の三倍は徴収されるわけですね。一・五倍じゃないのです。三倍取られるのですね。それだからこっちも三倍にしたらいいというような言い方はするつもりはございませんけれども、それくらいが標準になってるということを考えればやはり甘いというふうに考えられます。  それから、いまのは税金ではないし、罰金ではないというふうにおっしゃいました。そうすると何でございますか、これは。
  177. 小島英敏

    ○小島政府委員 罰金でもございませんで税金でもございませんで、まさに行政的な課徴金という非常に新しい制度でございます。
  178. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そういうことかもしれません。ですけれども、そうするとその課徴金というのはどういうものなんでございますか。課徴金の定義か何か概念づけがございますでしょうか。
  179. 内田常雄

    ○内田国務大臣 罰金ではない。これをもし罰金にいたしますと、三倍ということをきめたり、あるいはまた禁錮一年とかいうことにきめるわけではないので、結局それは三倍以内とかあるいは禁錮一年以内ということで、あとそれぞれ幾らにきめるかは、これは裁判所がきめる、こういう性質のものになるわけでございまして、一応そのような形で起訴をいたしましても、幾らになるかということは裁判の結果でないときまらないことになります。しかしこの場合はたくさんの必需物資につきまして、せっかく特定標準価格というものをかなり正確にきめるわけでございますから、それより高く売った者は公表して指弾するばかりでなしに、高い部分は全部取り上げてしまう。しかもそれは税制上の利益には計算するけれども、課徴金の額は経費には見ないということで、先般もここで申し上げましたように、また条文が、その中でわざわざ所得税法並びに法人税法の改正をうたっておりますのはその意味でございまして、結局税金の分を加えますと、裁判によらなくても一倍半になってしまう、こういうことになるわけでございます。
  180. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そのことは先ほど局長に伺ったのでわかったつもりでございます。私がお尋ねしたのは課徴金の定義あるいは概念づけがあったら教えていただきたいと申し上げたのでございます。
  181. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは行政課徴金といいますか、つまりそういう刑法上の、刑罰上の罰金ではない、行政上の差額課徴金である、こう申し上げる以外にないわけでございます。
  182. 金子みつ

    ○金子(み)委員 すみません。いまこれをここで時間的にできないかと思いますけれども、法律用語になるわけですから、それで私はしつこくお尋ねしたわけなんでございまして、これがただ一片の通達ならともかくも、法律用語でございますから、はっきりさせていただきたいと思ったわけでございます。もしいまお答えいただけないとすれば、これはペンディングにいたしまして、返事を、きょうは、法制局長官だいじょうぶですか——統一見解を出していただくようにお願いをして、保留させていただきます。委員長お願いいたします。
  183. 平林剛

    平林委員長 では、この課徴金の法律上の定義をひとつ政府で統一をして、後日回答するようにお願いをいたします。
  184. 小島英敏

    ○小島政府委員 そのように取り計らいます。
  185. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それでは次に移ります。  物価騰貴の大きな原因と考えられ、また基本的なものじゃないかというふうに考えられますものに公共料金の値上げがございます。それで来年になりますと、石油の事情も非常に悪くなるというふうに私どもは新聞情報などで聞いているわけでございます。三木副総理が特使でお出かけになっていらしゃいますけれども、サウジアラビアの国王の発言などを聞いておりましても、決して明るい見通しではないように聞こえるわけでございます。それでまたまた来年はそういう非常に困った時期になるのじゃないかと思われるのですが、卸売り物価がいま二〇%をこえておりますね。そうしますと、これは当然のことながら一、二カ月あるいは三カ月ぐらい後に消費者物価へのはね返りというものは必ず起こってくると思いますが、それがたまたまちょうど悪いことに同じ時期にぶつかるのじゃないかというふうな予感がいたします。そういたしますと、たいへん悪性インフレがいよいよ猛烈をきわめるのが来年に入ってからじゃないかなというふうな気がするのでございますけれども、このような非常な事態のときに、政府は公共料金を思い切って凍結させるというような決意をお持ちになっていらっしゃらないでしょうか。もしそうでありますれば、公共料金を凍結するということは非常にむずかしいということもわかりますし、それから政府が困られることもわかりますけれども、公共料金の値上がりが諸物価値上げの大元凶だというふうに理解されております今日、こんなにみんなが困っている、極端に困ってくる時期が、いまよりもっとひどい時期が来るということが見通されているときに、政府がそのような果敢な措置に出てくださいますと、国民は非常に不安が解消されて、国民生活が安定できると思うのですけれども、それをあえてなさっていただける御決意はございますでしょうか。もうすでにきめられた国鉄の運賃値上げ、四月から上がることになっておりますね、三月三十一日でしたか、あれも含めて郵便料金が上がるということも、もううわさされておりますし、いろいろいわれております公共料金の値上げをこの際思い切って押えてみる、そういうことをお考えいただけるというふうに私どもは期待しているんですが、長官、いかがでございますか。
  186. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いまお話しの国鉄料金の値上げは、申すまでもなく、長い国会論争を経て、法律としてきめられておりまするし、もう一つ私どもが大きな関心を持ちますのは、米の売り渡し価格もございますが、これらのきめられたものにつきましては、それを変更する考えはございません。  しかし、そのほかに公共料金がいろいろございますが、これは、私はもう取りまとめて申しますと、どれをどうする、これをこうするということはいまここでは申しませんけれども、でき得る限り抑制的な態度のもとに慎重な処置をしていくように、政府の中においても私は努力をいたしておりますことだけを申し上げておきます。
  187. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いまと同じような御答弁を前小坂長官もなさったんです。それで私どもは非常に期待したんですけれども、結局全部上がっちゃったわけですね。非常に失望したんです。内田長官になりまして、お人がかわりましたが同じだと、私はそんな失礼なことは申し上げませんけれども、内田長官のいまの御発言でもたいへんに抽象的でよくわかりません。できるだけ努力をするということをおっしゃってくだすったんですけれども、それはどなたもそのようにおっしゃると思うんです。具体的に、せめて何か一つぐらいお示しいただければ非常に安心できると思うんですけれども、いかがでございましょう。
  188. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私の考えを率直に申し述べたわけでありますが、一口に公共料金と申しましても、政府自身の事業あるいは政府自身の会計できめておりますものと、それは、すなわち内閣そのものの大決心のもとに、大蔵大臣等をも含めまして、そして非常の処置をとろうとすれば、それは絶対にできない性質のものでもない。しかし、政府の会計ではなしに、たとえば私鉄のごとく、たとえばタクシーのごとく、こういうものは一体どうして押え込むか。これは今日、公共料金というものは、消費者物価の中でかなりの要素を含むものでございますけれども、物価の上がる原因のうち、いわゆる総需要が多いから公共料金が上がる。つまり、バスに人がたくさん乗り過ぎてバスが上がるとか、あるいは私鉄に人がたくさん乗るから私鉄が上がるというのではない。ほかの物価値上がりするのとは違いまして、これは全くコスト構成から上がるわけでございますので、それをいつまでも押えておりますと、結局、その分野に対しまして、資源の配分というものができなくなる。公共料金を構成するそういう事業がだんだん破壊のほうにいくという問題もございますから、これを押えるためには、またいろいろの特別の考慮が要るという、きわめて複雑困難な点がありますけれども、そういう問題をも含めまして、まあ小坂長官がやれなかったことを私がやれると断言できるものではございませんけれども、しかし、世の中は進んでおりますから、それはもう皆さんからそれだけ御要望があれば、私は小坂長官の努力にさらに一そうの努力を積み重ねるぐらいのつもりで、御激励を身に受けてまいるつもりでございます。
  189. 金子みつ

    ○金子(み)委員 ぜひがんばっていただきたいと思うんですけれども、お願いをしておきます。  いま長官お話で、長官だけにお願いを申し上げても無理だということもわかりましたから、大蔵大臣と一緒に御相談くだすって、そういう問題は、内閣全体の問題として考えていただく発火点を長官からお出しいただきたい。そして御一緒に御相談して、いい線を出していただきたいと思いますので、国民のために、国民生活を安定させるためにぜひお願いしたいと思います。いかがでございましょう。
  190. 内田常雄

    ○内田国務大臣 御激励をよく了承をいたしました。
  191. 金子みつ

    ○金子(み)委員 しかとお願いを申し上げます。  続きまして、政府は、いまのような状態になったのは、総需要を抑制しなければだめなんだということをよくおっしゃっていらっしゃいますですね。国民には節約節約ということをたいへんに奨励してくださるんでございますけれども、政府自体が総需要を抑制するということをやっていただかなければどうにもならないと思います。  それで、時間がたいへん迫ってまいりましたので、政府としては、どのようなことを総需要の抑制としてお考えかということを一つずつお尋ねしたいわけでございますけれども、いろいろとそろそろ示されてもおります。  たとえば、本四三架橋とかあるいは新幹線とかをいますぐやらないで、繰り延べるというようなことも一つの方法だとして方針をお示しになっていらっしゃいますし、きのうきょうの新聞では、公定歩合を引き上げるとかあるいは預金金利を引き上げるとかというようなことも考えておられるようにもうかがえるんでございますが、その内容については不十分で、私どもが考えておりますような引き上げ率ではないのでございますけれども、そのことをいまここで論議している時間もございませんので、それはさらに一そう、少なくとも——私も抽象的な言い方をいたしますれば、少なくとも物価にスライドする分だけの引き上げは預金金利などにはしていただきませんと、貯金をすれば損をするというのがいまの時代でございますから、そんなことでは絶対に国民は納得できないと思います。ですから、引き上げの幅は、物価にスライドしていただくということをぜひ考えていただきたいと思います。  いま一つお尋ねしたいと思いますことは、非常に大きな需要口であるところの自衛隊でございますね。自衛隊がどれくらい需要を節約しているかという問題なんですが、新聞等の情報がもし正しいとすれば、一〇%削っているということはわかりましたが、それが事実で、それでよろしいとお考えでございましょうか。
  192. 内田常雄

    ○内田国務大臣 総需要の抑制ということが、物価の上昇を押えるためにぜひ必要であるとは、おっしゃるとおりでございます。  この総需要の抑制のためには、私は、政府みずからがまず範をたれて、あるいはまた、地方公共団体にも同じような歩調でお願いをいたしまして、そしてそういう公の需要、購買力、資材の消費というものをまず押える。また、こういう時代でございますから、企業設備投資などにつきましても、直接国民生活物資をふやすことに関係のないような分野につきましては、これも極力いままでも行政指導で押えておりますが、今度の国民生活安定緊急措置法案の中にもその一部が出ておりますこと、こういうことにつきましても一そう強めてまいりますこと、もちろんでございます。  さらに、やはりいまの金融の問題も、これはいろいろの分野におきまして需要の抑制に最も関係のあるところであると考えますので、国民の預金に対する非課税の範囲をこの十二月から広げることにいたしたり、また、比較的短期でありながら、預金の利子歩合をよくするような定期預金の制度を設けたりというようなこと、まあそれはほんの一端でございましょうけれども、そういうこともやりなから、総理大臣自身、金融の引き締め——もっとも、これについては、中小企業等に対する金融につきましては十分な配慮をいたしながらやってまいる、こういう考えをさらに強めていく方向にございます。その上に、今度のこの御審議をいただいておりまする国民生活緊急措置法によりまして、各物資ごとの個別対策というもの、これも絶対に必要だ、こういうことで、両々相まちまして、物価抑制上最大の努力を重ねてまいりたいと思います。
  193. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いま御発言のおことばの中にちょっと気になったことがあるのですが、金融引き締めの問題で、総理がそれをなさるとおっしゃったのですね。総理がそれをなさるとおっしゃいましたね。それ、ちょっと私もよくわからないのですね。そういうことがあるのでございましょうか。
  194. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いや、ちょっともし速記が抜けておりましたらお直しをいただきたいのでありますが、総理をはじめ政府が一体となってその金融の対策も一そう強めてまいる、こういうことを申したつもりでございます。
  195. 金子みつ

    ○金子(み)委員 公取委員長がお見えになっていらっしゃいますので、一つお尋ねしたいことがございます。価格安定の関係でございます。  この問題は、先ほど来討論していたのでございますが、公取委員長にお尋ねしたいと思いますことは、先般公取委員会が覚え書きをお結びになりましたですね。あの問題なんでございますけれども、元来、公取委員会となさっては、むしろ立場が第三者的な立場におられるのであって、通産省経企庁なんかと一緒に価格の安定、価格をきめる場合の話し合いの中に参加なさるというようなことや、あるいはさらに、それを覚え書きに署名なすったかどうか存じませんけれども、協力をなさって、同じ考え方でそのことをおきめになったということについて、どうしても納得できないわけです。国民は非常に失望したと思いますし、そして不安を感じていると思うのですけれども、あのいきさつを、そして、なぜあのような結果になったのかということをわからせていただきたいと思うのですけれども。
  196. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 どうも私ども、いまだにいまおっしゃいましたような誤解が払拭されないというのは、まことに残念だと思います。  実際私は、結論といたしまして、業界などがいっておりました価格安定カルテル、民間に自主的にまかせればうまくやっていくんだ、こういうようなことは、私どもは絶対に採用しがたい、これは反対であるということでありまして、法案の作成過程においては、数量でございますが、購入する側あるいは販売する側に、数量に関する共同行為を認めたいというふうな原案になっておったわけです。これは最初、もちろん石油のほうが先行いたしまして、それから国民生活法の法案があとからこれにならったのでございますが、国民生活安定法案の中にも共同行為という文句が入っておったわけです。私どもは、これは共同行為というものを正面から認めて、そして適用除外値するということはきわめて有害である、何となれば、一たん共同行為を認めてしまえば、たとえばそれは数量のためだといっても、数量のための話し合いは大手を振ってできるわけですから、会合して十分に談合する機会がある、そういうことを認めるということは、まあ独禁法の立場からももちろんそうでありますけれども、そういうことは実際に役に立つのか。それはかえって国民の疑惑を招くだけでございますね。民間業界がかってにきめたものをただ追認するというような形になったのでは、これはよけいなことかもしれませんけれども、何ら役に立たない。きわめて緊急なことでありまして、それがほんとうにこの事態を解決するのにきわめて有効な手段であるというなら、話はまた考え直さなければいけませんけれども、これは有害無益である、私どもはそう考えました。ですから、正面からそういうものをうたうのはまっぴらごめんであるということで、それはやめていただいて、そして、そのかわりといってはなんですけれども、どこまでがじゃ独禁法に触れないのだという点について覚え書きをかわしてくれないかということでございますから、それならば独禁法の解釈を公表するだけです。解釈を公表することは、決して私はおかしなことでもない。こういう場合において、とかく非常にゆるい感覚でものを考えられると困るから、むしろ私のほうとしては、これは制限的に厳格にカルテルを排除するという意味でありまして、文言の中に、ちょっとそれだけを読むと、たとえば価格標準価格等云々に対して協力するというふうな措置がありますが、これは単独にそういうメーカー価格をきめたものを、協力するとか協力させるとかということじゃない。末端価格をつくった場合、これは灯油の問題で当時すでに出ておったわけです、三百八十円という数字が。ですからそういう措置を認めなければならぬ。これは、ですから、通産省の場合には法律の施行等という字が入っていますのは、そこにある等の字は事前措置を意味する。事前措置においても、その点はしかたがないであろう。そういうことをやる必要が非常に緊急なのでありまして、いまやプロパンガスにも同じような末端価格をきめなければならぬような状態になっておる、これに対して出荷停止をする、出荷停止をするというようなことも、別に違法とは見ない、その程度の見解を示したわけでありまして、すべてこれは政府の施策に対する善意ある——善意といいますか、全く業界エゴとはかかわりのない行為である限りにおいては独禁法に違反するものでない、ただし、共同行為を認めるものではないということをはっきりさせておるわけでございます。  いまのようないきさつで、このことがほかで誤解されているという点が私はちょっと残念でありますけれども、私どもの真意はそういうことでありまして、独禁法に抵触しないというぎりぎりの見解を示したものである、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  197. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いまの御説明、きょう時間がございませんので一応承っておきまして、また次にさせていただきたいと思います。  カルテルの配慮をしてというような御発言は、ちょっと気になるのでございますけれども、それはまた後ほどにさせていただきたいと思います。  また前に戻りまして法案に戻りますが、あと一、二点伺わせていただきたいと思います。  その一つは、この法案は、緊急措置法ということでございますですね。緊急措置法ということでございますから、ほんとうに緊急の場合だけに発動するもの、こういうふうに理解ができると思います。ですから、そういたしますと、いまのような状態は、非常に緊急事態であるからこういうものをつくったのだというふうに言えると思うのでございますけれども、こういう事態が長々と続くとは考えられないし、長く続くようなことであったらたいへんなことだと思いますし、それこそ政治の問題になると思いますので、こういう事態が長く続くということは前提に考えられないと思います。ですから緊急措置法ということになったのだと思いますが、そうだといたしますと、ほんとうに緊急でここ一、二年ぐらいの段階で事態を解決させなければならない、そのための法案であるというふうにも考えられますので、この法案は、そういたしますと、いわゆる期限を限ってつくられる法案、時限立法という性格を持っているのだというふうに理解してよろしゅうございますでしょうか。
  198. 小島英敏

    ○小島政府委員 この法律は、たてまえは恒久法でございまして、限時法ではないわけでございます。ところが緊急措置法でございまして、これはいま先生おっしゃいますように「物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処するため、」ということでございまして、今回の石油危機のようなのは、まさにこの「異常な事態」でございますし、石油問題が出てくる前でも、実はこの前も申しましたように、消費者物価卸売り物価も二けたになるというような事態は、この法律の第一条にいう異常事態というふうに読めると思います。  なかなか、世界の政治経済情勢が不安定でございまして、今回の石油問題は、先生もおっしゃいますように、そういつまでも続くものではない、いわゆる期間が過ぎれば、石油パニックに伴う国内の問題というものも解決して、この異常な事態は解消すると思います。しかしながら、それが今後未来永劫安定的にいくかというと、決してそうではない、いつまたやはり同じような問題が起きるかということが十分予想されるわけでございますし、それから、ことしの初めにございましたような小麦をはじめとする世界的な穀物の不作というような事態、こういうことも間々起こり得ることでございます。そういう意味で、この法律は、法律自身は恒久法でございますけれども、そういう異常事態に対処するために緊急的に各種の措置をとります、その緊急事態がなくなった場合には当然その措置を解除いたします、そういう形で、個々のケースについては緊急的な措置をとりながら、法律としては恒久法のたてまえをとっている、そういう性格の法律でございます。
  199. 金子みつ

    ○金子(み)委員 非常に専門的な御説明で、理解がむずかしいのでございますが、恒久法というたてまえでおつくりになったわけですね。ですから、恒久法がたてまえだといたしますと、ただ発動するのは緊急事態だけに発動する、こういうふうなお考えでございますね。それはそうならなければうそだと思います。おかしいと思いますけれども、恒久法としてこれがいつまでも存続するということは、いまの状態、緊急の状態が恒常化するというおそれがあるんじゃないかと思います。その点、私どもは非常に危険を感ずるわけで、これはやはり時限立法としてお扱いいただいたほうがよいのではないかというふうに考えますので、意見として申し上げておきたいと思います。  それから、時間がなくなりましたので、最後にでございますけれども、実は、今回のこの法案、まだ十分審議が尽くされておりませんので、結論を出すというところにはまだいかないのでございますけれども、いろいろ考えてみますと、非常にむずかしい法案でございますし、つくったけれどもすぐ発動することはないかもしれないとか、あるいは、一応つくるということにはしてあるんだけれども、これを全面的に発動したらとんでもないことになるというような、たいへんに危険性もはらんでいるというふうにも考えられるわけでございまして、この法案の取り扱い、非常に慎重であるし、苦慮をしなければならないと考えております。  それで、実は私個人の考えではございますけれども、先般買占め売惜しみ法を審議いたしましたときに、私どもも、あの法案ではほんとうにあまり役に立たないということで、御承知のように野党四党共同の修正案を出しましたが、それはみごとにけられまして、全然修正していただいておりませんでした。しかし、今度のこの法案の中にはあれと同じものが含まれて改正するようになっているということがございます。  ですから、考えてみますれば、現在あるあの買占め売惜しみ法を私ども野党が提案いたしましたような形に改められるということをまずなさること、そして、いま一つは独禁法ですが、独禁法も人によってはずいぶんいろいろと評価されております。たとえば、きょうの参考人の方の中には、独禁法ができたときはとてもよかったんだけれども、大骨小骨を抜かれてしまって、いまは紙もばらばらに破けて破れがさになったんだとおっしゃった方がありました。破れがさになったかもしれないけれども、それでもなおかつまだ独禁法はき然として権限を持つものを持っておりますから、そういうものが正しく行使されなければならないと思いますが、一向されていない。それにまた、独禁法が弱いというのならば、改善をして、そしてもって独禁法を強化して実施するということも考えられると思います。  そのように、すでにある法律を改善し、手直しをすることによって、いまの緊急事態を切り抜けることはできると思うのですね。それをなさったほうが、時間的にも早いし、理解も早いし、むしろそのほうが効果的ではないかというふうに考えられます。  さらにそれにプラスして、先ほど討論いたしました公共料金の値上げを凍結するということや、あるいは公共投資をストップする、そしてそれを国民生活の需要に回すというふうな緊急措置をおとりいただきますならば、この危険性をはらむ本法案をいまここで無理に通すまでもなく、私はむしろそのほうが安定するのじゃないかというふうな感じがいたしております。それは私の考えでございます。  そのような考えを持っておりますけれども、長官は、いやそうじゃない、これはいまの事態を切り抜けるためには絶対必要なんで、暮れに差し迫って、かけ込み値上げじゃありませんが、かけ込み通過をさせなければならないというふうにお考えなんでございますか。もっとじっくりと考えなければならない重要な問題だと思いますので、そそくさと済ませることのないようにしなければならないというように思いますが、いかがお考えでいらっしゃいますでしょう。
  200. 内田常雄

    ○内田国務大臣 今度のこの法律案は、買占め緊急措置法を今日の事態に即して大幅に拡大改正したと考えられないこともないと私は思うわけであります。  今日、石油の供給削減を契機とする国内の経済国民生活の不安の状況、また、最近における物価の上昇等の状況が、あの七月の事態とは一変してきた様相がございますので、そこで、あの買占め緊急措置法を改正するよりも、それをより大幅に改正するような精神で、単に買い占めたものを売り戻させるとかというようなことばかりでなしに、もう一つ一つの物資について、必要がある場合には標準価格も特定標準価格もきめてまいるし、あるいは輸入の指図とか輸送の指図とか出荷の指図とか、あるいは、場合によりましては、いろいろな物資の割り当てというようなことさえも起こるかもしれないようなことも想定をしながら、事態に合うようにするとすれば、七月の法律の改正ということよりも、この法律の中に七月の買占め措置法の改正を織り込むほうがよかろう、こういう考え方で、この法律を緊急にお願いをいたしておるわけでございます。  独禁法につきましては、これもこの間も申し上げましたが、あれは公正取引委員会という政府から一応離れた機関が独禁法そのものの中で設けられておりまして、独禁法の改正につきましては、形は政府提案の形をとることになる場合がございましても、それは、他の一般の私どもが提案する政府提案とは少し違った形で国会に提案されることにもなりましょうし、あるいはまた、その改正の検討なども、政府の部内というよりも公取委員会中心とした舞台で検討されておりますので、独禁法の改正までをこれに取り込むということにはなっておらない、このように申し上げたいと思います。
  201. 金子みつ

    ○金子(み)委員 基本的に平行線みたいな感じがいたしますけれども、いま、もう時間もございませんので、きょうは、私の長官に対する質問はこれで終わらせていただきたいと思います。まだきょうは通産大臣にもと思いましたけれども、おいでになりませんし、時間もなくなりましたので、保留させていただきたいと思います。  きょうはこれで終わります。ありがとうございました。
  202. 平林剛

    平林委員長 有島重武君。
  203. 有島重武

    ○有島委員 連日にわたって同僚各委員からの熱心な審議が続けられまして、また昨十二日、本十三日には各界の代表の方々をお招きして、参考意見を承りました。  その結果といたしまして、一つには、本法案日本経済の基本にもかかわるような幾つかの重要問題を含んでおる、それから二つには、本法案を提案していらっしゃる政府の基本姿勢について一つの大きな疑惑がますます深まって、やはりこれを免れない、そういうような感を深くしております。  すなわち、国民生活安定のための緊急措置であるということでありますけれども、現に、いま打つべき手段がさらにあるのじゃないか。いま、前のお話にもございましたけれども、少なくとも本法案をこうして検討していく、この検討していく前提として、幾つかのいまできる施策を速急に施さなければならないのじゃないか、そういったことを痛感いたします。したがいまして、この法案審議は、もう慎重の上にもこれは慎重にすべきじゃないかということを私は考えておるわけであります。  かりにこれは非常に緊急なものである、これは万一速急に成立するといたしまして、経済企画庁長官は、現況を法律のこの第一条に述べられております「物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態」である、このように御判断になっておるわけでありますね。これを一点初めに聞いておきたいわけであります。
  204. 内田常雄

    ○内田国務大臣 この第一条に書いてありますとおりの事態に、今日わが国の物価の状況はあると考えております。
  205. 有島重武

    ○有島委員 そうなりますと、これは一日も早く通過してもらいたいと大臣は思っていらっしゃるに違いない。それで、通過するとたちまち指定をするであろうということになりますね、発動をするということでございますね。そうすると、すでにこの指定につきましては、相当なお考えがおありになるはずであろうと思うのです。  それで、きのうその指定物資の指定について御説明があったようになっておりますけれども、はなはだこれはお粗末な説明だと思うのですけれども、たとえばこの物資の指定はどういうものを考えておられるのか、このこともきょうの時点でひとつ言っていただきたい。
  206. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先ほどの金子さんのお尋ねに申し上げましたように、今日では私は、まあ何といっても生活関連物資、すなわち生活必需品の中でこれだけは不安のないようにしたいという、そういう品目をまず指定をいたしたいと思っております。
  207. 有島重武

    ○有島委員 そんなことはわかっておりまして、それは一体何と何であるかというようなことをここでもってはっきりさせなければ、もうこの先審議を繰り返していっても非常に抽象論議であり、お話を聞いていてもますますわけがわからなくなる。はっきりなすったらどうかと思うわけであります。
  208. 小島英敏

    ○小島政府委員 先ほども申しましたように、第一条の本法の対象とする物資というものは、「国民生活との関連性が高い物資」として、たとえばいま買占め法で指定しておりますようなものがこの関連性が高い物資でございます。それから「国民経済上重要な物資」というのは、鉄鋼、セメントその他のものでございますということを申し上げたわけでございまして、第二条の標準価格のために何を指定するかということは、いま申しましたような品目の中から準備の整い次第指定していくということでございます。  本日の段階、これはやはり各省といまいろいろ詰めておりますので、何と何をすぐに指定いたしますということは、私からお答えすることを猶予させていただきたいと思います。
  209. 有島重武

    ○有島委員 大体二十一品目の投機防止法に定められた品目、そういたしますと、基礎的な品目、あるいは鉄鋼と大きくおっしゃった、これはまた大きな範囲になります。そういうものについて指定するということについて、この準備は、これは年内にでもできますか。
  210. 小島英敏

    ○小島政府委員 これはやはり物資所管省に聞いていただきませんと、私が責任ある御回答はいたしかねるわけでございます。
  211. 有島重武

    ○有島委員 大臣、これは当面——もうほんとうに当面といいますと、この年末年始というところ、あるいは来年の二月というところ、これがいま国民生活実感として非常に心配なところであります。それで、万が一かりにこの法律が成立したならば、いまの経済企画庁の局長のお答えですけれども、これでもってほんとうに現状を鎮静することができるか、現状を安定させることができるという確信をお持ちになっていらっしゃるのかどうか。ほんとうにできると思っていらっしゃるか、断言できるか、その辺はどうですか。
  212. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は必ずしもそう簡単には考えておりません。  物価を安定させますためには、先ほどからも御論議をいただきましたように、国の予算の組み方をはじめとする総需要の抑制でありますとか、あるいはまた金融政策、そういう一般政策と相並んで、やはり物資についての個別対策というものも進めていくことが必要だという、その見地からぜひひとつこの法律を急いで通していただいて、そうして緊急を要するものから順次指定をしていくということが一番今日大切ではないか、こう思うわけでございまして、この法律が通れば、直ちに消費者物価なり卸売り物価が二けたの状態から安定する、そう簡単にも思っているわけではございません。悪い状態をできるだけ来たさないために、最善、最大の努力をさしていただくと、こういう趣旨でございます。
  213. 有島重武

    ○有島委員 もし緊急というならば、年内にでも一つの鎮静効果、安定効果を発揮できる他の手段は全然ないとお考えですか。  たとえば独禁法の改正、いまお話が出ておりました。私もそう思っております。それからまた郵便貯金法、それから関税法ですね。それから投機防止法だけをとにかくもう少し進めてみる、あるいは法人税法あるいは物統令の改正、こうしたことですね。これは、こうした法律を通して、いつ効果が出てくるかはっきりまだわからぬというようなものよりも、さらに緊急を要する課題がおありになるのじゃないだろうか。そういうことについてはお考えになりませんか。
  214. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先ほど来申しておりますように、やらねばならないいろいろの緊急施策があるわけでありますが、そのうちの最も重要な一つとしてこの法律を通していただいて、そしてこの法律による個別対策を進めていくことが私は大切であると考えるものでございます。
  215. 有島重武

    ○有島委員 そのいろいろのをひとつ言っていただきたい。政府はいまこうしております、こうしております、これとリンクしてこれがあるのですということを詳しくおあげになっていただきたい。
  216. 内田常雄

    ○内田国務大臣 まず来年の予算を引き締めてまいるべきであるということを私は考えます。それから、国と並んで地方公共団体につきましても同じような財政編成の歩調をとってもらいたいと考えます。さらにまた、民間企業設備投資につきましても、この際、直接生産の増加に結びつかないような施設あるいはまた、そのものの生産増加をはかるべきではないというような設備投資につきましては、これを思い切って先に延ばしていただくということも当然やるべきであると思います。  金融につきましては、中小企業等のものは特別の扱いにいたしますけれども、いろいろな面で金融を引き締めまして、総需要の抑制をはかるということも絶対必要であると考えます。
  217. 有島重武

    ○有島委員 総需要の抑制については、どの程度、どういうふうにしなければならないということは、経済企画庁長官としては、現況のこの異常な事態に対してお考えをお持ちだろうと思いますけれども、それをはっきりひとつお話しいただけますか。
  218. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いま申し述べたこと、それを全部やりたいと考えております。
  219. 有島重武

    ○有島委員 そうじゃなくて、金融引き締めの問題ですね。どの程度、どういうふうにしなければならないということについて、御意見をお持ちですか。
  220. 内田常雄

    ○内田国務大臣 今日の物価が上がりました原因は、有島さんが御承知のように、対外要因、輸入物価等が非常に上がった面が、わが国の物価を引き上げている寄与率が非常に大きいわけでありますが、それと同時に、やはり私は、国内の過剰流動性というものが全部吸収されているとも考えません。民間にはまだ動員し得るような購買力が、これは現金通貨たると預金通貨たるとを問わず残っておると考えますので、そういうところにも着目をいたしまして、金融上の諸措置を、これはまあ主として大蔵大臣の分野に属するわけでありまして、私がここで金利政策などを申し上げるべき立場にもございませんが、しかし、いろいろな面に着目をして総合的な効果をあげるべきであるということを私は考えに置いて、発言をしたり相談をしたりいたしておる次第でございます。
  221. 有島重武

    ○有島委員 本気でもってこの冬を乗り越えていく、そのための緊急措置である、そういう印象を大臣のお話からは全然受け取れないわけなんですね。何かよその国の遠い話のように、悪いけれども私には聞こえてくる。国民の、ほんとうにもうあすをどうしようかということとはなはだ遠い。そういうように、私は非常に残念に思います。  この法案審議と並行して、そういうような、つまり金融の引き締めについては、中小企業については、そんな原則的なことはいいのです。これはこういうふうにする、この品物はこうする、そういうようなことを、もっとこうした委員会で詰めさせるようにしていただきたい。そういうような御用意、もう少しその正確なこと、それは大蔵大臣の範囲だからわしは知らぬと言われればそれまでなのかもしれませんけれども、そういうようなことでもって、ほんとうにいま国民生活の緊急な事態を乗り切るわけにいかないと私は思うのですね。それで、まあ先にいきます。  この法案審議のために、「生産費」ということばがここに出てきますね。この生産費ということについて、これは原価計算とはどうも違うような同じような——原価計算といわれると、非常にこれはむずかしいことになってくる、そういうふうにいわれておりますね。  それで、これはもう例でもってひとつ示してもらいたいのですけれども、灯油の九月末現在のいわゆる生産費というのは、一体幾らなんですか。
  222. 森口八郎

    ○森口政府委員 灯油の小売り業者の販売価格は、現在店頭渡し三百八十円ということで凍結をいたしております。これに対応いたします元売りの販売価格は一万二千八百円ということで、同じように凍結をいたしております。生産費という概念ではございませんけれども、元売り業者の販売価格というように私のほうはとらまえております。
  223. 有島重武

    ○有島委員 生産費をいま聞いているわけです。そちらがどんどんいま準備をしていらっしゃるそうですね。そうすると、生産費というものはどういう概念のものである、それをはっきりしていただきたいわけであります。この灯油は一つのガイド的な役割りを果たしているといわれておりますけれども、ほかのまだわからないものについて聞いてもしようがないから、灯油については、いわゆる生産費というのは一体幾らなのか。
  224. 森口八郎

    ○森口政府委員 灯油につきましては、需給状況が非常に窮迫しておりまして、末端の小売り価格が、放置しておきますと幾らになるかわからないというような状況がございましたので、とりあえず元売り業者の販売価格を凍結いたしますとともに、末端の小売り業者の店頭渡し価格も凍結をしたわけでございまして、したがいまして、現在の三百八十円の店頭渡し価格ないしは元売りの価格というのは、必ずしも厳密に本法でいっておりますような生産費等を吟味したものではございません。救急の際としてやりました凍結の価格であります。
  225. 有島重武

    ○有島委員 経済企画庁から聞きましょう。生産費というのは、どういう概念であり、たとえば石油の例を引けば、生産費は一体幾らなのですか。
  226. 小島英敏

    ○小島政府委員 生産費と申しますのは、一般的にやはりその物の生産に要する平均的費用ということであると思います。石油について幾らかというのは、私のほうにはデータがございませんので、ちょっとお答えいたしかねるわけでございます。
  227. 有島重武

    ○有島委員 それがわからないとほかのものもみんなわからなくなっちゃうわけですよ。これだけは——いま二十一品目と言われましたが、こういうものが候補にあがるでしょう。それで、すでにそれだけはもう出ているわけですね。それについて生産費という概念がはっきりしないはずは絶対ないと思うのですけれどもね。大体元売り値段が幾らなんで、そのうちの生産費というのは一体何なのか、それを教えていただきたい。
  228. 小島英敏

    ○小島政府委員 これは買占め法のほうは、先ほど例として二十一品目を申しただけでございまして、その各品目について生産費が幾らということは、企画庁としていまデータとしてとっているわけじゃございませんので、これはやはり今後物資所管官庁がそういう調査をするということに御理解いただきたいと思います。
  229. 有島重武

    ○有島委員 経済企画庁じゃそういうことは関知しないのですか。それとも、責任をもって次の委員会でもってこうですということを答えていただけますか。
  230. 小島英敏

    ○小島政府委員 今後標準価格とか特定標準価格をきめます場合に、物資所管省庁が原案をつくりまして、その段階で企画庁が協議を受けるわけでございます。ですから、その段階では当然関与するわけでございますけれども、いまの段階で、たとえばこの次の機会に企画庁としてこの商品生産費は幾らであるということを申し上げるような段階ではないわけでございます。
  231. 有島重武

    ○有島委員 企画庁長官に伺いますけれども、そんなことでいいのですか。もう大臣としては一日も早くこれは上がってもらいたいわけですね。そうすればたちまち発動するわけですね。発動する品目の範囲は、大体いま言われたわけですね。そしてすでに発動したも同然のような状態でもって三百八十円の灯油、これは世間一般有名なわけであります。そして、それについていま伺っているのですよ。ここでもって言えなてとてうのはおかしいじゃないですか。
  232. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は企画庁長官を仰せつけられているわけでございますが、いま灯油の原価のすべてにつきましてここで承知をいたしておりません。いわんや、これからこの法律が通ったならば指定をいたしますところの指定物資の生産費について、すべて承知をいたしておるわけではございませんが、これはそれぞれ各省の所管物資につきまして、各省からそれぞれデータを持ち寄ってもらいまして、標準価格をきめるという作業を皆でするわけでございます。  しかし、たとえば、いま例としてお尋ねになりました灯油の生産価格につきましては、ちょうどここに担当者がおらないわけでありますけれども、それは次の機会に、有島さんからその御要請があったことを担当者によりまして十分説明をさせるようにいたします。  ただ、私が承知をいたしておりますところによりますと、灯油はもちろん、他の石油製品とともに、原油からいろいろな留分の範囲内において抽出されるものでございまして、その留分は、人為的にも動かそうと思えば動かせる範囲もございましょうけれども、灯油というものは、今日寒いときに一番必要なものでありますから、それだけはぜひ必需量をまかなうような、そういう留分を通産省石油各社に要請をして出させて、この冬の不安がないようにさせてあるはずでございます。  しかも、生産者からの蔵出し価格というものは、九月の蔵出し価格で凍結をさせておって、それ以後の諸経費を標準的に計算しましたもので三百八十円、こういうものを出しておるはずであります。でありますから、九月の段階で凍結をしております灯油の価格というものがどういう計算で出ておるかということは、私はここでそらんじておりませんし、また通産省担当官がおらないとわかりませんので、いま申すように、次の機会に通産省担当官から説明をさせるようにいたします。
  233. 有島重武

    ○有島委員 じゃ、次の機会に担当官から、灯油の九月末の値段で——その内訳をこまかくということじゃなくて、いわゆるこの法律にいっておる標準的な生産費ですね。生産費といわれるものは、どういうものであって、灯油に関していえばかくかくである、こういうことはぜひとも説明していただきたい。これは私がというよりも、国民皆さん方がわけがわからない。ぜひともこれはやってもらわなければいかぬ。いつやっていただけますか。
  234. 内田常雄

    ○内田国務大臣 明日この委員会があります場合には、さっそく通産省から説明をいたさせます。
  235. 有島重武

    ○有島委員 委員長にもそれをお願いしておきます。  公正取引委員長がまた別な委員会にいらっしゃるというので、先に聞いておきます。  現在、世界的に石油、鉄鋼それから主要農産物などが、実質的な国際カルテル化の方向に進んでいるといわれております。それでこの影響を国内が非常に受けているのではないかといわれております。このいま審議しております法案が、国内的に実質的な各種のカルテルを許容する、これは政府のお墨つきであるからいいんだとか悪いんだとかということは別にして、カルテル的な方向にいまこの法案では進んでおる。これは結局、ますます寡占体制、また管理価格というものの操作を強める。これが外国からのそういう大きなカルテルの方向への動きですね。これはまたますます大きな打撃を国民が受けるその端緒になりはしないかと、私どもはたいへん心配するわけでありますけれども、公正取引委員長としての御見解を先に承っておきたい。
  236. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 国際的なカルテルの問題とおっしゃる点については、私はよくわからない点が多いわけです。石油のメジャー——石油についてはおそらくメジャーをさすんであろうと思いますが、確かにそういうメジャーの間、これは数が限られておりますから、いろいろカルテル的な、特に価格の面において、そういう国際的な、何といいますか、平仄を合わしたような行動があるやに聞いておりますが、その他の鉄鋼なんかについては、私はそういうものはないんじゃないかと思います。  しかし、それはともかくといたしまして、今度の法律を運営するについては、主務官庁がそれぞれ業界の協力を要するということをいわれる。そこで私ども、覚え書きには、その点で許される範囲の協力というものはこういうものだということを述べたのでありますが、いまお話しのように、業界の内部において半ば公然と話し合いをするということが横の関係で行なわれるとなれば、これは確かに私は憂慮すべき問題であると思います。  ですから、標準価格をきめるとか、需要と供給のサイドを調整する措置、そういう需給関係の調整というものは、すべて監督官庁の、主務官庁の責任においてやっていただきたいということが、われわれの強い願いであります。実際問題としてどのような行為が行なわれるかということになりますと、私はすみからすみまでを承知するわけにはいきませんが、とにかく、いまの段階で、企画庁長官もおっしゃっておられるが、いやしくもカルテル的な行為はとらせない、それぞれの主管大臣の責任においてその法律を運営するということを言っておられるわけです。  そもそも、そういう問題が起こってくることの背景には産業界等の主張がありましょうが、しかし、何か少し民主的な統制措置というのが、私はその解釈のしようによっては、業界産業界に非常におんぶするような、あるいは悪口ですが——私は口が悪いですが、そういうものの力を借り過ぎるということになれば、これは明らかにいまおっしゃられたようなカルテル的なそういう行動をむしろ助長するようなことになりかねない、その点を私は強く言っておるのでありまして、必要最小限度の範囲でといえば、先ほどおっしゃられた生産費というものは、おそらく役人の机上の計算だけではできないのです。その点はやむを得ない。それは産業界から、それぞれ別の会社からとってみると、必ず違うはずであります。それは水増し計算もあるでしょうけれども、そこをにらむのが役人の仕事であり、官庁の仕事でありますから、そういう点においては、民間の協力と、それからきめたことを守るというふうな意味では、それは協力していただくのはいいですよ。しかし、そうではなくて、何となく産業界の行動を共同行為的な方面に持っていくような、そういう民間の協力の求め方、これは私は非常に警戒を要すべきことであるし、それは避けていただきたい。実際問題として、そういうことを私、いま幾ら申しましても、それに徹底しない場合もあるでしょうけれども、常に私どもはその主張を繰り返しまして、疑わしき場合があれば、カルテルとして扱いますよというような強い態度を堅持してまいるつもりでございます。
  237. 有島重武

    ○有島委員 公正取引委員会としては、従来から、たとえ行政指導がある場合でも、価格それから生産数量についての談合がある場合には、これはカルテルと認めてきた。それで、昭和二十五年の第五九号の審決というのですか、これはここに資料がございますけれども、この方針はこれは変わりないのか、あるいはこのたびの覚え書きによって公取が法解釈をやや変更したのかどうか、これは非常にはっきりとしておいていただきたい問題でありますので、お答えいただきたいと思うのです。
  238. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いわゆる行政的な指導による勧告操短のようなものは、これは私どもは認めません。つまり、そういう場合にはやみカルテルとして扱うということにおいて方針は変わりません。ただし、法律に基づいて直接とられる措置、これは法律に裏づけされた行為でありますから、単なる行政指導ではない。そういう行為であれば、これはそれに従うのがむしろ民間のあり方として当然でございますし、これに対して独禁法違反ということは言えないと思います。私が申しておりますのは、その過程において非常にまずいような扱いがあると困るのだということを申し上げているのですが、標準価格というようなものは、たとえば政府がきめる、これは、きめたものを守らせることは何らカルテルでも何でもない、当然のことでございます。
  239. 有島重武

    ○有島委員 この本法の附則のほうに、投機防止法にかかわる第四条のところがいつも問題になっておりますね。これが、「特定物質の生産、輸入又は販売の事業を行う者」これが一人いる。それから、この「売渡先」というのがいる。この「売渡先」という人は「内閣総理大臣及び主務大臣が当該特定物資の買受けにつきその同意を得た者に限る。」こういうふうになるわけですね。そうすると、まず「その同意を得た」ということについては、やはり何らかのそこに価格上の相談が先になければ、同意ということは得られないのであるということが含まれますね。そうすると、こういうものに対しては「売渡しをすべきことを指示をすることができる。」これは法律でありますけれども、法律上のその指示が出る前に、いろいろな実質的な交渉は行なわれるはずですね。これが、指示を受ける前にそういったことが当然行なわれる、これについてはどうなりますか。
  240. 内田常雄

    ○内田国務大臣 お尋ねの件でありますが、今度の緊急措置法で買占め防止法のほうの改正をいたすつもりでありますけれども、かりに買い占め、売り惜しみをしておりますものを政府が認定をいたしましたときには吐き出させるわけであります。しかし、どこへ吐き出すか、こういうことになりますと、やはり買い受け人に吐き出させる、この従来の法律のたてまえから言いますと、買い受け人を見つけて、その者に吐き出させるわけでありますから、買い受け人が、おれはそんなものは買い受けない、こういうことでは、売り渡しの指示が有効にできないわけであります。そこで、値段などにつきましては、それは政府がきめまして、それで話し合いがつかない場合には裁定というような手続まで踏むことになりますけれども、売り渡し先につきましては、いまもお尋ねがございましたような、そのしかるべき買い受け先を指定して、その者に売り渡すということにならざるを得ないと考えておるわけであります。
  241. 有島重武

    ○有島委員 どうもいま大臣おっしゃいましたけれども、そういったことの中に、その話の前後に、まだ行政指導というところにまではいかないけれども、そこでいろいろな協議が行なわれる。それが、かなりその話が成立した場合もあり成立しない場合もある。ただし、カルテル的な後遺症だけは残っていく、そういうことがこれからはたくさん出るんじゃないかと思うのですね。  それから、もう一つ、これはもうまとめて申し上げますけれども、そのあとでもって「前項の規定による命令があった場合において、当事者が支払い、又は受領すべき金額その他その命令の実施に関し必要な細目は、当事者間の協議により定める。」こういうふうになっておりますね。この「必要な細目」ということがありますけれども、この「命令の実施に関し必要な細目」とつくと、あるいは必要以上な協定というようなことも、これは判定が非常にむずかしくなると思うのですけれども、この判定は一体だれがするのか、主務大臣がするのか、公正取引委員会はこの判定に参入できるのかどうか、その点を承っておきたい。
  242. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これは私のほうの関係には全くかかわりないと思います。この条文は、つまり、売り渡しをしろといっても相手方がなければできない。だから、そういうときには、買う買い手を探すとかという問題で、売り手と買い手との関係を定めてあるだけで、それはですから、総理大臣、主務大臣がその「買受けにつきその同意を得た」というのは、政府が同意を得たというかっこうで、それから、その「細目」の問題でも「当事者」と、こう書いてありますのは、これは売り手と買い手、もうこの場合おそらく複数関係というものはそれはないとは言えませんが、しかしそれはいわゆるうその共同行為、独禁法でいう共同行為とは全く関係がないのです。ですから、あなたはたとえば買い手がたくさんあった場合どうするかというふうなことかもしれませんが、これはある程度この法律を——いまおっしゃっているのは、今度の法律で改正される例の投機防止法のほうの関係でございますから、それは私は独禁法がかかわり合うようなことはおそらくないであろうと思いますね。これはことに政府が介入しております。介入しておって、売るほうと買い手との間の話でございますから、これはカルテルというふうなものではない、かように考えます。
  243. 有島重武

    ○有島委員 いま公取委員長が、その売り手と買い手とおそらく単独のケースが多いであろうというようなことを言われました。それで、その間に複数のことはあまり含まれないんじゃないだろうかというようなことを言われましたけれども、これは必ずしもそうとは限らないんじゃないか。そこに談合というようなことが行なわれる余地が十分あるんじゃないか。そういうようなことをこれからお話ししたいわけでありますけれども、上のほうが別な委員会が、主務大臣がいなくなっちゃっていまとまっているという話も伺いましたから、この次にチャンスがあれば、そのときにまた譲って議論いたしますから、公取委員長お帰りいただいてけっこうでございます。  それでは続けます。先ほどの問題、この法案にまた戻りますけれども、すぐにこれを実施しなければならないという前提のもとにいま作業を進めていらっしゃると言いますね。先ほども課徴金の話が出ました。課徴金に対する政令については、かなりもう詰めておられるわけですね。経済企画庁から伺いましょう。
  244. 内田常雄

    ○内田国務大臣 課徴金を取る場合は、御承知のとおり、特定標準価格をきめた場合にその課徴金の問題が起こるわけでございますが、課徴金の徴収をいたしますものは、政令の中におきましては、中央官庁の場合もあるし、また中央官庁の出先の場合もありますし、あるいはまた状況によっては地方公共団体、府県の長に課徴金の徴収の権限を委任することも考えてしかるべきではないかというような方向で詰めを行なっております。
  245. 有島重武

    ○有島委員 いまそんな原則的なことを——原則にもならないようなお話でありまして、いまこの段階でもっての御答弁では非常に不満だと私は思います。いまおっしゃった政令、いま詰めていらっしゃるわけですね。課徴金についての政令、また地方自治体への権限委譲の問題、詰めていらっしゃるわけですね。
  246. 小島英敏

    ○小島政府委員 考え方を詰めておる段階でございまして、たとえばいまお話のございました課徴金に関する政令というのは、第十条の第三項の四行目にございます。これは課徴金を取る場合の業者に対する一種の宥恕条項といいますか、あまり気の毒な場合にある程度緩和をしてやろうという趣旨の部分でございまして、ここに法文上明記されておりますのは、「当該販売に係る物資が同項の特定標準価格が告示された日前において生産され、輸入され、又は仕入れられた物資で、その生産費、輸入価格又は仕入価格が当該特定標準価格を定めるに当たって基準となった生産費、輸入価格又は仕入価格に比し著しく高いものであることが明らかである場合」こういう場合は、うしろの政令というのはこれは単なる手続でございますけれども、「同項の課徴金を減額し、又は免除することができる。」と書いてございまして、そのほかに三項の四行目にありますように、「その他の特別の事情がある場合であって政令で定める場合」この内容につきまして、いまいろいろ詰めております。たとえば特定標準価格がきめられた日の直前に契約がされまして、短時日のうちに納付されるというようなものについて、あまりこのまま直に発動しては問題があるのではないかというようなことが予想されますので、そういうような場合をこの政令であらかじめ定めておきましょう、そういうことでございます。その次の行の政令は、これは全く納付の手続を定める政令でございます。
  247. 有島重武

    ○有島委員 私が一番それについて伺いたいのは、できるかという問題です。ほんとうにできるのだろうか。机の上でもって原則を詰めたりことばを詰めたりすることは、いまやっていらっしゃるのでしょう。そうやってその政令をつくっていらっしゃる段階で、これは実行可能である、そうほんとうに確信を持てるか。その実行のためにはどのくらいの人員が必要なのであるか、そのようなことについては大臣はどうお考えになりますか。
  248. 内田常雄

    ○内田国務大臣 課徴金は、特定標準価格をつくりました際に、それより高く売った業者に対してかけるわけでありますから、業者の数も相当あると思いますので、課徴金をかける権限のある職員もいままでのような買占め防止法における三百六人というようなことでは、私は決して足りるものではないと思います。でありますから、それらの範囲を国の公務員につきまして広めますと同時に、先ほども申しましたように都道府県知事に委任せざるを得ない。それがまた実際に適している、私はかように考えますので、課徴金の賦課徴収というものはできるし、またやらなければならないと考えます。
  249. 有島重武

    ○有島委員 大臣のお考えはそういうことらしい。ですから、本庁にそういった人員はいなくても、地方公共団体にそれを委譲すれば、それでもって機能するのじゃないかというようなお話しだけれども、じゃ地方公共団体のほうでは人員がいるのですか。そういった課徴金を取って歩くだけの人がいるのですか。その手段があるのですか。
  250. 内田常雄

    ○内田国務大臣 公務員をふやすことば、中央におきましても地方におきましても、これはまた国民の負担にかかるものでありますから、むやみに必要な仕事だからといってもふやし得るものではないと私は考えます。したがって配置転換、やりくりも、中央でも地方でも考えてもらわなければなりません。もちろん新規増員のものもあっていいと思いますけれども、すべて新規増員でまかなわなければならないというふうには考えないものでございます。
  251. 有島重武

    ○有島委員 もし大臣がいま言われるように、必ずしもできないものではないと思うというならば、灯油はどうなんですか。いまの灯油について、これを監督していくことが現在の地方自治体の力でもってできるのかどうか。地方自治体には当然そういった打ち合わせばおありになるだろうけれども、一品目、灯油だけでもそれはできるのかどうか、どう思っていらっしゃいますか。
  252. 内田常雄

    ○内田国務大臣 灯油をかりに標準価格をきめるべく指定品目にいたすといたしますと、中央であれ地方であれ、役人がやりますことはその標準価格を守らせること、つまりそのお店に標準価格これこれで販売いたしますという公表をさせること。そこへ公務員が行ってつき添っておるわけのものではありません。でありますから、それは中央の官庁ばかりそこへ行こうと思ったら、それは灯油を売っておるお店はスタンドもありましょうし、また昨日も申しましたように炭屋さんやお米屋さんまであるような状態でございますから、どうしてもそれに密着する地方公共団体の職員に監視の仕事を委任をするのが一番私は有効であると考えます。
  253. 有島重武

    ○有島委員 そんなようなことを私は聞いておるのじゃなくて、ほんとうにできるかと言っておるのです。できるかどうか。
  254. 内田常雄

    ○内田国務大臣 やらなければならないことであると私は思います。ここに何千何百人の人間をそろえてやるということも、それができれば一番よろしゅうございますけれども、この緊急の際でございますから、中央、地方とも現に所在の職員にその権限を与えてやっていくことが当面一番実際的なやり方だろうと私は考えます。
  255. 有島重武

    ○有島委員 できると思っておるとか、やらなければならないと思うとか、そんなことをいま言っているときじゃないわけですよ。  それでは、いま、東京都で、灯油一つだけについても、取り締まるともしきまったときに、それに動員できる人数は何人いるのですか。
  256. 内田常雄

    ○内田国務大臣 でございますから、きのうも議論になりましたような物統令等で公定価格をきめるということになりますと、それに違反した者は直ちに犯罪になりますから、経済警察官から経済検事までというようなものの手配をしなければできないことでございましょうけれども、標準価格というものは指導価格でございますから、これはできる限り網の目をこまかくして指導が行き届くようにすることがいいことでございますから、私は、地方公共団体の職員にお手伝いを願う。しかし、そのためには地方公共団体にもそれなりの費用や準備も要ることでございますので、いま自治省との間に、費用その他の問題について、この法律案の審議と同時に詰めを行なっている段階にございます。
  257. 有島重武

    ○有島委員 何人いるかも御存じないわけだ。それから、今後もし本法をほんとうにやろうとするには、どのぐらいの費用、どのぐらいの人員が要るかなんということもまだ何にもわかってない、そういうことだ。  もう時間も参りましたが、こうした、実際に何人ふやしてもできっこないというのが、これがいままでの統制統制についてはもうそういうことはできっこないということも、いままでほぼわかっているわけです。できたという歴史がいままでにあるかないか。そんなこと、ないわけです。ですから、それは机上のことであって、それを希望的観測みたいなことで押しつけられる。しかも、いまの段階に至っても、まだ、政令等についても、ほんとにそんなことまで聞かなくてもわかるような原則論しかおっしゃれないということば、ここでまじめにこの法案審議しようということよりも、白紙委任状を渡せ、そのようにおっしゃっているように私は聞こえてくる。これは重大なことでありまして、昭和十二年ですか十三年ですか、国家総動員法というのがありましたけれども、そのときでも、これはめったに抜かないとか、まあまあ悪いことはしないからというようなことで、まあまあ、まあまあといっちゃったわけだ。それがどのくらい大きな禍根を残したかということを考えますと、この法律も、ここで審議するのは、もう少ししっかりした資料といいますか、データといいますか、あるいはもう先ほどから聞いていても、ことば一つ一つが実はよくわからないことばが並んでいるわけだ。内田さんはわりとお人柄で、まあまあ、まあまあとあるので、ついその気になるかもしれないが、それはかえって今後の大きな禍根を残すということにつながるのでは、これはたいへん残念なことであると思いますので、もう少ししっかりした資料を速急に整えて審議をされるように……。それからもう一つ、この審議と並行して、もうすぐ、ことしのうちに、この年末のうちに手を打たなければならない、しかも打とうと思えば打てる、そういうようなことをさらに考えていただきたいし、われわれの意見もどんどん取り入れて実行していただきたい。  以上申しまして、きょうの質問は終わります。
  258. 平林剛

    平林委員長 委員長からもちょっと注意を申し上げておきますけれども、いまの質疑応答を聞いておりまして、この法案が成立すれば直ちに発動させるというけれども、そういう準備ができているかということになると、具体的な答えがなくて、場合によっては所管庁に聞いてもらいたいとか、次の機会に説明するとかあるいはいま課徴金の問題についてもはっきりしたお答えをしてもらえない。それから公共団体でこうした実際事務をやる場合でも、そうやらなければならないということだけでは、これは質疑を尽くすというわけにいきませんので、そういう点にはもう少し、所管庁に聞かなくても、主務官庁としての企画庁としては、ある程度の説明ができるようにして臨んでもらいたいということを御注意申し上げます。  質問者も十分意を尽くせなかったということがございますから、またあらためてそうした問題については時間をとりまして質問していただくようにいたしたいと思います。  中村茂君。
  259. 中村茂

    ○中村(茂)委員 私はまず最初に、物価についての具体的な問題について取り上げたい、こういうふうに思います。  ここに十一月三日の朝日新聞がありますが、そこに「「トイレットペーパーやちり紙は品不足ではありません。消費者は便乗値上げを招く買いだめをやめてください」——と通産省が二日、異例の事務次官談話を発表した。」こういう記事があります。特にトイレットペーパー等について、この記事だけでは、トイレットペーパーなりこういうものを通じてパニック現象が起きた、それは消費者はもう少ししっかりして、そういうものは幾らも品物があるのだから買わないようにしなさい、こういう訴えをしているわけでありますが、このトイレットペーパーなりまたは洗剤それから塩、砂糖、こういうものが次々と起きてきたわけですけれども、その起きた一番の原因はどこにあるかということを明らかにしていただきたい、こういうふうに思います。
  260. 橋本利一

    ○橋本政府委員 ただいま御指摘の次官談話でございますが、その中に、消費者も買いだめをしないように、買い急ぎをしないように御注意いただきたいという発言がございますが、これはすべて消費者責任という立場で申し上げているのではございませんで、特にトイレットペーパーの買い急ぎの騒ぎにつきましては、阪神地区におきます一、二のスーパーが販売個数を制限したということに端を発したものと見ておるわけでございますが、当方で事情を調査いたしましたところ、一つは目玉商品としての値ぎめ交渉がおくれておった、それからいま一つは、対象といいますか、取引工場が公害規制違反で操業の停止を受けておったというようなところから販売個数の制限をいたしたわけでございますが、一般的に物不足感があったということと、そういったスーパーですら個数の制限をするのじゃなかろうか、個数の制限をするようであれば品不足ではなかろうかといったような、消費者に対して不安感、焦燥感を与えたといったようなことがまた一つの要因にもなっておりますのでさような次官談話を発表し、われわれとしても需給の緩和と申しますか均衡回復に極力努力いたしますが、消費者としても御協力いただきたいといったような趣旨の発言でございます。
  261. 中村茂

    ○中村(茂)委員 私がいま質問したのは、そういう現象が起きた一番もとというのはどこにあるのか。物があるにもかかわらず買いあさる、この状況を起こしたもとというのはどういうところにあるというふうに皆さん判断しているか、その点を明らかにしてもらいたい、こういうふうに質問しているわけであります。
  262. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が承知をいたしておりますところによりますと、たとえばトイレットペーパーにつきましては、関西方面の一スーパーで従来無制限に販売をしておったトイレットペーパーをある期間販売数量を限定をしたということに端を発して、主婦の方々がこれではトイレットペーパーがなくなるのではないかというようなだんだん不安と憶測を生んで、その結果があのような買い付けパニックを起こした、こういうふうに聞いております。
  263. 中村茂

    ○中村(茂)委員 私はそこでこのところに、これは御存じのように白ちり紙です。しかもこれが大体標準というふうにいわれているわけでありますが、三百枚一たばになって、これが小たばで、これを六つ合わせて大たばとして千八百円ということで普通販売されているわけでありますが、この白ちり紙の問題をめぐってどの業者へ行ってみても大体業者の常識みたようになっている事件があるわけですが、それを一口に一億円事件、こういうふうにいわれています。その中身についてお知りであったら明らかにしていただきたい、こういうように思います。
  264. 橋本利一

    ○橋本政府委員 一億円事件ということばを初めてお聞きしたわけでございますが、私たちのほうで御指摘の件にあるいはこれが該当するのではなかろうかということで、当方で把握いたしております事情について申し上げますと、三井物産が静岡県の家庭用薄洋紙の組合を通じましてその傘下の中小メーカーに対しまして在庫金融を行なったということを聞いております。  その対象となっておりますのは、いま先生お示しになりました白ちりと称するちり紙が大半でございまして、約七百五十トン程度と承知しておりますが、トイレットペーパーが約九十トン、金額にいたしまして約九千八百万円程度と承知いたしておるわけでございますが、この点につきましては、組合のほうから在庫金融を三井物産のほうに依頼した。その背景といたしましては、例年不需要期である夏場に在庫手当てをしておきまして、需要期に対処するという趣旨でお願いしたというふうに承知しております。さような事態を私たちは九月の十八日時点において承知いたしました。組合の幹部を招致いたしまして、ことしは例年の需給動向と異なっておる、さような在庫手当てをその時点で行なうことば適当でないということで、直ちにその在庫を放出するよう指示いたしたわけでございます。その結果、一部は十一月に残ったようでございますが、大半の品物につきましては九月、十月中に放出を完了しておるというふうに承知いたしております。
  265. 中村茂

    ○中村(茂)委員 私の承知している範囲では、少しこまかく申し上げたいというふうに思うわけでありますが、静岡のそのいま言われたメーカー、それと三井物産が七月に談合が行なわれた。それでその中身は、まず一つとして、このメーカーがそれぞれ一週間の操短を計画していたわけでありますけれども、それを十日に延ばす、操短を一週間を十日に延ばすということは、三日間生産サボです。それから二番目に、在庫分について、大体この白ちりは百五十円、メーカー値段ですけれども、二十円上げて百七十円、当初の予定は二億円大体倉庫におさめればいいだろう、こういう計画であったが、最終的には一億円、先ほどの話では九千八百万円、まあ一億円です。それを、三番目の問題としては、八、九、十の三カ月間倉庫の中に凍結する。  大体、このような白ちりは、一割か二割そういうふうに凍結すれば大体店舗にある品物は薄らいでくる、価格にもいろいろ問題が出てくる、こういうことは業界で明らかになっているわけであります。それをこういう談合を行なって、しかも普通の値段よりも高い値段で、しかも生産のほうは操短を延ばして八、九、十というふうに三カ月間凍結させる。これは需要期に確保するために倉庫に入れる、こういうことではなしに、やはりこの問題を考えてみた場合に、流通の操作を行なって、価格変動、そういうものを談合によってもくろんだ。ちょうどこの時期から、八月ごろから、この白ちりでいけば百五十円のものが二百円台で、しかも二百円台といっても二百二十円から三十円程度で町に出ていたものが、三百円になり三百五十円になり、それで品不足になってどっと買いあさると、三日ほどたつとまたその同じものが店舗に出るけれども百円上がっているということで、一番上がったときはこれが八百円まで上がったわけであります。これは白ちりのことを例にとって申し上げたわけですけれども、俗にいうトイレットペーパーパニック、こういう現象が出たわけであります。  ですから私は、ここのところでどうしてもはっきりさしておかなければならないというふうに思いますのは、こういう現象について先ほども八月のときにわかった、調査をした。やはり静岡といえば紙の一番大きいメーカーがありますし、それに関連したメーカーが集中しているところでありますから、現在起きているいろいろな問題は、いま申し上げたようないろいろな操作によって起きている。それともう一つは、情報の操作というか情報源というか、そういうものが相からまって非常に混乱させる状態を起こしてきている。ですから、現在の起きているこういう状態というもとは、このような三井物産というような、総合商社の中でも一位にも数えられるような商社が、しかもこの春材木等問題になったときに、本委員会でも問題に取り上げて喚問していろいろお聞きしました。そのときに行動基準をつくるとか総合商社の社会的責任を感じていますとか、いろいろなことをいいました。そしてまた国会では買だめ売惜しみ法案をつくって対処していく。買いだめじゃないですか。せっかくつくったけれども、何にも役に立たなかったじゃないですか。しかも総合商社のそういう三井物産というところがこういうことを平気でやっている。言い方はいろいろありますよ。需要期に間に合わせるようにとっておくとか、いろいろありますけれども、中身を見ればこういう状態だということについては、いかにこんな法案審議しても、こんな問題が解決できないようでは、こんな法案を通して、どんなにやるといっても、その以前の問題としてこれらの問題についてどういうふうに対処する決意があるのか、はっきりとお知らせ願いたいというふうに思います。
  266. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は初めて承る話でございますが、そのとおりであるとすればまことに遺憾千万でございまして、せっかく夏のころ買占め防止緊急措置法をつくっていただいたわけでありますから、いまのようなケースは、あの法律の範囲内でも私はやろうと思えばやれないことではないようなことだろうと思います。でありますから、まことにそのとおりであるとするならば、せっかくある法律を生かしてどんどんやっていかなければ、それは法律をつくっただけの意味がないと私は考えるものでございます。これから先も、私はいまのようなお話がございましたことは初めて聞く話でございますけれども、そういう事態に常に対処し、監視して、そして法律の目的を達成するようにぜひ各省にもやってもらうというように、ひとつ大号令をかけていかなければならぬと私は思います。
  267. 橋本利一

    ○橋本政府委員 ただいまの先生の御指摘についてお答えいたします。  まず初めに操短を一週間から十日間に延長云々という問題につきましては、私たちとしては承知いたしておりませんが、ただ公取など調査の結果を待ちたいと思いますし、また公取の求めに応じまして、私たちといたしましてもできる限りの資料を提出いたしまして、これに協力してまいりたいと考えております。  それから第二点でございますが、値段の問題でございます。ちり白につきましては当時の相場が一枚当たり九銭、それに対しまして倉敷料が一銭ということで十銭の値段で計算いたしまして、先ほどの在庫金融を手当ていたしておるわけでございます。  それから八、九、十月の三カ月間の凍結ということにつきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、九月の中旬に私たち事態を知り、直ちに放出を指示いたしましたので、九、十月中に大半の放出を完了いたしております。  それから量的に申し上げますと、これは決してことばをお返しするわけではございませんが、ちり紙の七百五十トンという数字は、九月時点の全国生産二万三千八百四十八トンに対しまして三・二%程度、もちろん小さい数字ではございませんが、この程度の数字になっておるわけでございます。さようなところから私たちといたしましては、善意から出た在庫手当てというふうに解釈いたしておるわけでございます。
  268. 中村茂

    ○中村(茂)委員 結果的にいま話がありましたように、十一月になってもまだ残った、こういうふうに言っているわけですよ。善から出た在庫だ、こういうふうに言われているわけです。しかしいま紙業界でいわれておりますのは、こういうちり紙などについては一割か一割少しいったところで少し押えると、すぐ店舗に出るのが鈍ってくる、これが常識になっているわけです。しかも先ほど紙の一億円事件、私はこういうふうな表現をしたわけですけれども、どういうふうに言っているかというと、トイレットペーパーを上げるのは簡単なんだから、一億円くらいで簡単にこうなるのだから、もう物の上げる仕組みはわかった、これは簡単だ、こういうことが業界で盛んにいわれているわけです。私はいまここで申し上げているのは、一、二の人から聞いているのではなしに、業界の中でそういうことがいろいろ話されていることを現実に聞いて、ここでその内容を言っているわけなんです。それを善意でやったというような、いかにも業界を援護するような立場でこういう問題に対処しているから、ますます業界にこういう問題を助長させていく、こういうことになるのではないかというふうに私は思うわけです。取り消してください。
  269. 橋本利一

    ○橋本政府委員 善意と申し上げましたのは、決してさような趣旨でございませんで、例年がさような不需要期に夏場がなるものでございますから、いつもと同じような感触でやったのではなかろうかということから申し上げたのですが、当時から需給動向が例年と非常に異なって価格上昇のきざしも見せておりましたので、私たちとしては直ちに手を打った。ただそういった事実を知ったのが、先ほど申し上げましたように、九月の中旬ということであったことは、私たちとしては実態を知るのにおそきに失したという気はいたしますが、当時といたしましては最大限の努力をいたしたということでございます。   〔発言する者あり〕
  270. 平林剛

    平林委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  271. 平林剛

    平林委員長 速記をつけて。
  272. 中村茂

    ○中村(茂)委員 私は、特にいま審議している法案は、物価問題について国民生活安定をはかるための緊急措置法案です。しかも中身は、特に政府、いえば所管の一番多く取り扱うところは通産省でありますけれども、そういうところが価格をきめて国民の協力を得て生活の安定をはかっていく。ところがいま申し上げているような問題については、こういう状態が起きてくればどんなにこの法案審議してもどうにもならないわけです。そこで一番必要なことは、そういう主務所管の省がこういうものについてき然たる態度をとって対処していくという方針が、または態度がそこに生まれてこなければ、いかにこういう法律をつくってみても無意味であります。何もできません。ですから私は、いま一番必要なことは、そういう態度についてきちっとさせて、業界に対しても、もうこういう問題についてはきびしく取り扱っていくと同時に、きびしい態度で臨んでいくということをあなた方がいま見せる一番必要なときじゃないでしょうか。そのときに、放出さしたからいいとか、またこういう措置をしてきたから——まあ善意というようなことも先ほど出て、釈明がありましたけれども、皆さんのそういう態度が続く限り、これはどんなに国民が期待しても物価なんという問題は解決できません。き然たる態度をひとつとっていただきたいというふうに思います。  そういう立場からもう一回皆さんのこれに対しての対処の考え方を明らかにしていただきたい、こういうふうに思います。
  273. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私からまず考え方を申し述べさしていただきますが、中村さんのお説のとおりであると思います。  私は、こうしたむずかしい時期に、またこうしたむずかしい法律案の御審議を願っているわけでありますので、こうした物価、物資の流通または業者などに対する私どもの態度としては、き然たる態度をもって望むべきであることをここにあらためて申し上げておくものでございます。
  274. 橋本利一

    ○橋本政府委員 私が先ほど善意の在庫手当てと申し上げましたが、ただいま中村先生の御指摘のとおりはなはだ適当でない表現であったと思いますので、ここに取り消しをいたします。  それからいままで私たちのほうで調査しておる資料、さらに今後調査いたした結果の資料につきましては提出させていただきたいと思います。  家庭用薄葉紙四品目につきましては去る十一月の十二日に投機防止法に基づく政令によりまして指定いたしておりますので、今後かような事態をひき起こさないようきびしくまた厳正に監視してまいりたいと考えております。
  275. 中村茂

    ○中村(茂)委員 ひとつしっかりやってください。  それでは次に、標準価格についてお伺いしますが、この法律の三条の二項の標準価格ですが、販売価格なり小売り価格を決定する段階は、これでいくと、「標準品目の物資の生産」このところで標準価格というものを一つきめることができる。それから「輸入の事業を行う者の販売価格」ここで一つ標準価格というものをきめることができる。それから「標準品目の物資の販売の事業を行う者の販売価格」をきめることができる。そうなってくると、一番先の「標準品目の物資の生産」というところできめる標準価格は、どういうところのどういう価格か、ひとつ明らかにしていただきたい。
  276. 小島英敏

    ○小島政府委員 標準価格は二つの段階で定めることになっておりまして、一つは標準品目の物資の生産の事業を行なう者の販売価格でございます。その物が輸入品であります場合には「輸入の事業を行う者の販売価格」ということでございますから、結局上の段階では生産者または輸入業者の蔵出し価格と俗に言う表現がいいかと思いますけれども、その段階でひとつ定め得るということでございます。  それからもう一つは、「標準品目の物資を使用する者に対して」といいますのは、結局消費者でございますから、消費者に対して「その標準品目の物資の販売の事業を行う者の販売価格」これが「小売価格」でございます。したがいまして上の段階の蔵出し価格あるいは出荷価格と申しますかそういう段階、または小売り価格、これは両方独立してどちらかだけが定められる場合もございますし、両方ダブって定められる場合もございます。
  277. 中村茂

    ○中村(茂)委員 そうすると、公取の委員長にお聞きしたいのですけれども、末端の小売り価格をきめていくのについては独禁法の違反ということにならないけれども、中間、こういう段階で価格決定をしていくということについては独禁法違反の疑いがあるのではないか、こういうふうに思われるのですけれども、そこら辺の見解をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  278. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 現在ごく例外でありますけれども、たとえば灯油について三百八十円というような末端の価格を行政指導できめております。これを含めて覚え書きに入れたわけでございますが、御指摘のように今度の法律の適用に関しましては中間の価格については何もうたってありません。つまり標準価格はつくらないという趣旨のものだと読まざるを得ないわけでして、ですからその中間の価格についてもし価格協定できめるようなことがあれば明らかにカルテルでありまして、独禁法違反でございます。
  279. 中村茂

    ○中村(茂)委員 これは間違いですかどうかわかりませんけれども、これはサンケイ新聞ですけれども、この覚え書きに関連して、政府の指示する価格は末端価格であって中間段階の価格とりきめは独禁に触れる、このとりきめというふうにいっていますけれども、いずれにしても末端であろうが中間であろうが、これは業界でそれぞれきめればこれはもう違反でありますけれども、いずれにしても中間段階できめるということについてはこの覚え書き、それから先ほどの方への公取の委員長の説明では、石油の三百八十円の問題で、これは末端だから、小売り価格だからという話があったわけですけれども、いずれにしてもこの中間段階のきめ方というものについて末端のきめ方と相当違ってくるわけでありますから、これは必ず業界なりそういうものとの談合なり結び付きがなければ、中間段階のきめ方というものは非常にむずかしいんじゃないか。こういうことを考えてみた場合に、端的にいえば、中間段階のきめ方というものについでは独禁法の違反になるという疑いが非常に濃厚な実際の面が出てくるではないか、こういうふうに私は思うわけでありますけれども、そこら辺の見解があったらひとつ明らかにしていただきたい。
  280. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 末端価格を押えるということが、やはり消費者というものから考えれば一番大切なことでございますから、それのための標準価格を設けるという、これは全部の品目じゃありませんが、そういうふうになっております。中間価格をなぜきめないかということについては、むしろ主管官庁である経企庁のほうからお答え願いたいのですけれども、きめようがないというのが実態であろうと思うのです つまり、政府の側できめるにしてはあまりにも違い過ぎる。一次卸もあれば、二次、三次というふうなものもある。たいへん複雑な流通経路をたどっているものもあれば、わりに単純な経路のものもある。それを一々とらえて、中間のマージンをきめるようなことになるわけですね。結局、中間マージンをきめなければ中間価格ができてこない。そういうものに対して政府が介入し得るかというと、実際問題としては非常にむずかしいだろう。したがって、末端価格をきめ、今度はメーカー価格をきめたら、中間の段階ではカルテルをするんじゃないかという疑いを持たれることは、私はそれはお説のとおりだと思うのです。カルテル的な行為にならざるを得ないというふうなものも出てくるだろう。しかし、これは禁止しておる。私どもでは、政府の指導もなければ標準価格の設定もないものについて、協定をしていいとはどこまでも言っていないのです。それぞれがそれぞれの立場で競争をして品物を扱えばいいんです。ですから、同じ中間価格で売買するという必要は認められませんし、それぞれの土地によっても、あらゆる業界についてそれぞれ特色がある。業者によってもそれぞれ立場の相違がある。それらを横の段階で、第一次の卸は幾らにする、第二次は幾らにするというふうな業界別のカルテル行為をやるということは必要もないことである。上と下を押える、特に下を押えておけば、その間で中間においては、いかに品物が不足の時代といえども、協定価格を必要とすることはないだろう、これは有害である、こう考えますので、その点はむしろ厳重に取り締まる、そういう考えでございます。
  281. 中村茂

    ○中村(茂)委員 生産段階できめる標準価格は、先ほど蔵出しということばがあったわけですけれども、その段階の値段をきめる、これはメーカーから卸とまでいかなくとも、その向こうへ行ったところで、何か流通機構のまん中にある値段のきめ方みたいなようにちょっとなるわけですけれども、それで、両方、蔵出しの段階で標準価格をきめ、なお末端の販売価格をきめ、両方きめることもできるし、片方片方それぞれきめることもできるという先ほどのお話ですね。両方こういうふうにきまった場合には、これは再販価格を——ただ、きめる人は違いますよ。メーカーがきめて、上のほうと下のほうと、きめる人は違いますけれども、両方きめたという場合には、ちょうど再販価格と同じ——標準価格は幅も少しありますか、全く同じになるんじゃないか。そうなってくると、ますますカルテル的な行為に発展していく要素というものが非常に濃厚になってくる。ですから、この二条のきめ方について、どこでもきめることができるのだという——どこでもというか、物資の生産ですけれども、これはこれからの運用なりきめていくことの中で、一番問題になるところじゃないかというふうに私は思うわけですが、先ほどそういうきめ方ができるということで、それじゃ蔵出しのところできめるものについては、どんな品物があるのですか。
  282. 小島英敏

    ○小島政府委員 これはいまの段階でこの品目ということは、先ほど申しましたように、明確にお答えできないわけでございますけれども、灯油の場合は、先ほどのお話に出ましたように、いまの三百八十円を守らせるためのまさに蔵出し価格の凍結をやっているということになっているわけでございます。
  283. 中村茂

    ○中村(茂)委員 どうもはっきりしないのですけれどもね。どういうものをきめるかわからぬけれども、どこででもきめられるようにしておいたほうが便利だから、こういう法律をつくっておくわけですか。
  284. 内田常雄

    ○内田国務大臣 こういうことになるようでございます。公取委員長の高橋君がお話しになったところとも関連するのですが、上の蔵出し価格と、それから消費者に対する小売り価格を両方きめる。それは中村さんが御指摘のように、再販売価格維持契約に、つまり、独禁法が一般的には禁止しているところの再販維持契約にも似ているところがございますが、しかし、それはその蔵出しメーカーと小売り人との双方が私的契約として結んだものではなしに、政府自身が、それは蔵出しで幾ら、したがって末端では幾ら、その中間にはいろいろの態様の仲卸とか第二次卸とかというようなものがあるものも多いと思いますけれども、上と下をきめることば政府がきめたものであって、再販売価格維持契約ではないから、独禁法には抵触はしないし、また、私ども標準価格をきめる場合においても、そういうきめ方が実際に適している。こういう意味でいま御指摘の条文ができておるわけでございます。
  285. 中村茂

    ○中村(茂)委員 よくわかりませんけれども、こういうきめ方に関連して、これは政府がきめると言っているからきめるでしょう。それで実際に実施していった場合に、その標準価格が妥当であるかどうかというような問題や、それから業者のほうから、これではとってもたまらない、もう少し何とかしてもらいたいというような陳情、おそらくそういう問題が起きてくると思うのですよ。そして、そういう陳情など積み重ねる場合には、それじゃほんとうかということで、業者から、これで間に合わなくなったという資料を持っていかなければ、皆さんを説得するわけにいかないのだから、資料などを持っていく。それじゃ今度、確かにそうだからといって、業界の一致したような資料を持っていったものに基づいて価格を訂正する、こういうものが積み重なっていくと、必然的にカルテル行為がそこのところに現実として出てくる。こういうふうに発展していく要素というものが、きめるときには、皆さんきめる、きめると言っているから、私どもは非常に困難だと思うけれども、いずれにしてもきめると言っているのだから、きめて、あと起きてくる問題もそういう問題が出てくる。そして必然的には業界と、意識している、いないにかかわらず、現実の行為は、共同行為がそこに生まれてくる。こういうことを非常に懸念するわけでありますけれども、長官と企画庁のほうから、そこら辺のところについての考え方をひとつ明らかにしていただきたい。
  286. 内田常雄

    ○内田国務大臣 標準価格でございますから、これは簡単なことばを申しますと、標準品目についての指導的価格標準価格としてきめるわけです。類似のような品目についても、上等なものもあればあるいはそう上等でないものもあれば、寸法が違うものもいろいろございましょう、トイレットペーパー一つ例にとってみましても。そのすべてについて標準価格をきめるわけではございませんで、その指定物資の中から標準品目というものを選んで、これをきめておけば、その上下左右の品種なり寸法なりというものは、おのずからそのきめられた標準品目の価格に従わざるを得ないだろうというようなものをとって、きめるわけであります。したがって、前後左右には、価格をきめない、類推される、標準価格を基準としてきめられる価格というものが残るわけでございましょう。しかし、そういうものが、今度は標準品目以外の指定物資をつくっておる人たちが寄り集まってわれわれのほうはこういう値段を出そうといって価格カルテルをやりますと、それは当然独禁法の違反になるべきだと考えまして、そして公取の手が入ってしかるべきだと考えます。私どももそういうものを擁護して、そしてその価格を追認するようなことはいたさない、こういうつもりでおります。
  287. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいま経企庁長官がおっしゃられたとおりです。つまり標準価格を何らかの形で突き上げるためにカルテル行為を行なう。横に共同してカルテルをつくって結果的にはそれがまかり通ったという場合ですね。これは完全にはねつければ結果が起こらないのですから、それは少なくとも法律の上ではカルテルにはなりません。カルテルというのは、やはり結果がある程度出るということが要件になっております。つまり完全未遂の状態ではカルテル行為にはならない。しかし、そういう行為は最も好ましくないことでありますので、そういうことについては厳重警告を発するつもりでおります。
  288. 中村茂

    ○中村(茂)委員 私は特に覚え書きの「ハ」ですが、「標準価格法律に基づき主務大臣の定める価格を遵守するための協力措置」これがどうしても限界がわからないのです。というのは、いま言ったことに該当してくるわけですけれども、主務大臣のきめたその価格を守っていくように業界に働きかけるわけですよね。しかし、そのほかの項目についてはいろいろありますけれども、この「ハ」の項だけは標準価格についてなどとありますけれども、その関連についていずれにしても業界に協力を求めさしていく行為のわけですよ。そうなってくると、先ほど言いましたように、これではどうも協力できない。もう少し標準価格を何とかしてもらわなければ、こういうふうに上がってきている一方だと、いろいろな資料が出ている。陳情が行なわれますよ。そういう一定した資料が出てきた、それでじゃ訂正しようというようなふうになる。そうして協力させる。しかし、その結果、業界のほうではほんとうに一定した標準価格がずうっとそういうものの中から出てくる。そういう要素というのはこの「ハ」の項によってそこまで発展していく要素が非常にあるわけです。ということになると、この標準価格についての協力措置というこの限界が非常にむずかしくなっていく。カルテル行為になれば厳重に取り締まるとこういうふうに言われますけれども、こういうものを含めて覚え書きにするということについてここまではいいだろうという限界のわからないものについて覚え書きにするということがどうしても理解できない。
  289. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この「ハ」の条項、いまおっしゃられたように、ただすらっとそれだけ読みますと、これはたとえばメーカー段階でつくられる標準価格でも含まれるということになります。これは私は文言の上で不完全であると、現在になってば少なくとも私どもは反省しております。業界としては通産、経企、いずれもわかってくれておられますが、末端価格についての標準価格、これは記載すべきであったわけでございます。そうでなければ「二」は意味がないわけでありまして、「違反者に対する出荷の停止等」と書いてありますから、その他の制裁措置——その他の制裁措置は適当なものはないと思いますが、出荷の停止等と書いてあることは、メーカーがあるいは元売りがその小売りに対して、末端価格に対して制裁措置を行なう、こういう趣旨でございますので、「ハ」と「二」と実はこれはつなげて書いておいて、しかも標準価格をただこういう表現でなしに、末端価格についての標準価格等と、こういうように、標準価格の以外にも法律の上で特定標準価格というのがございますから、そのことに私は尽きると思います。「等」と書きましても、ただ通産省との間で結んだ場合には、法律に基づくというふうなあれがありませんで、次善の措置まで入れると法律が間に合わない。法律が通過するまで効力を発生するまで間に合わないから、したがいましてこの一番初めのほうの二行目、ここにありますけれども、二つの法律の「実施等に関し、」とありますのは、これは通産省との間にだけあるのです。そうして経企庁の場合にはその必要はないし、また実際問題として間に合わない。そこで「実施等」というふうなことがありませんで、「措置法の実施に関し」として、「等」はとれているわけです。しかも今度は価格の面でも「標準価格法律に基づき主務大臣の定める」となっておりますから、法律が通過しなければこれが発動しないということになっておりますが、通産の場合には、実はこのときもうすでに灯油についてそういう末端価格を指示してしまったわけです。そのことを裏づけてくれというのが御要望にありましたのでこう入れたんですが、「ハ」の条項を独立して読むようなきらいが非常にあるので、その点に対して私はまずいという感じを持っております。独立条項でありません。「二」とつなげて読んでいただいて、末端価格であるというふうにはっきりしておりますから、この点誤解のないように、私くれぐれもお願いいたします。
  290. 中村茂

    ○中村(茂)委員 では時間もおそくなってきましたから、相当残してありますけれども次に譲りたいと思います。(拍手)
  291. 平林剛

    平林委員長 委員長より政府に要求があります。  中村委員の質疑中要求のあった資料は、政府において本委員会にすみやかに提出するよう特に要求をいたしておきます。  なお、この際、内田経済企画庁長官より発言の申し出がありますので、これを許します。内田経済企画庁長官。
  292. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先ほど金子委員から御質問のありました課徴金の趣旨、性格につきまして、内閣法制局とも協議いたしましたので、補足してこの際説明をさせていただきます。法制局と打ち合わせました文言のとおり誤解のないように読みます。   一、一般に課徴金とは、国が国権に基づいて  賦課徴収する金銭負担をいうが、本法案に定め  る課徴金は、特定標準価格制度の実効性を担保  するため行政庁が行政手続によりこの制度を乱  すような行為をした者から徴収するものであ  る。   二、物価統制令を発動せざるを得ないような  緊急非常事態のもとにおいては、統制額をこえ  るような販売行為には高度の反社会性が認めら  れるので、刑罰によりその実効性の担保をばか  ることが適当であるが、本法案が予想している  ような経済情勢のもとにおいては、特定標準価  格をこえる価格による販売行為について、直ち  にそのような高度の反社会性があるとば認めが  たい。しかしながら、一時的な経済的混乱に便  乗して一般消費者の負担においていわゆる過当  な利得を稼得するような行為は、社会衡平の観  念にももとり、一般国民感情からも許されない  行為である。かかる点を考慮しつつ特定標準価  格制度の実効性を担保する手段として、行政手  続により超過価格を課徴金として徴収すること  は社会衡平の観念に合致するものである。   以上でございます。
  293. 平林剛

    平林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は散会いたします。    午後十時五十分散会