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1974-05-22 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十二日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 津川 武一君       伊東 正義君    上田 茂行君       小沢 一郎君    熊谷 義雄君       佐々木義武君    中尾 栄一君       本名  武君    粟山 ひで君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    美濃 政市君       瀬野栄次郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林大臣官房予         算課長     渡邉 文雄君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省構造改善         局長      大山 一生君 委員外出席者         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十七日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     稲村 利幸君   上田 茂行君     島村 一郎君   島田 安夫君     浦野 幸男君 同日  辞任         補欠選任   稲村 利幸君     愛野興一郎君   浦野 幸男君     島田 安夫君   島村 一郎君     上田 茂行君 同月二十一日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     天野 公義君   伊東 正義君     島村 一郎君   小沢 一郎君     稲村 利幸君   金子 岩三君     田中 榮一君   島田 安夫君     越智 通雄君 同日  辞任         補欠選任   天野 公義君     愛野興一郎君   稲村 利幸君     小沢 一郎君   越智 通雄君     島田 安夫君   島村 一郎君     伊東 正義君   田中 榮一君     金子 岩三君     ――――――――――――― 五月十六日  農林水産業の経営安定に関する陳情書  (第五七二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第八四号)      ――――◇―――――
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湊徹郎君。
  3. 湊徹郎

    湊委員 農振法の改正に関しまして、一番最初に、事実並びに事実の認識に関してお互いに食い違いがあるとまずうございますから、その確認のために二、三質問させていただいて、そのあとで総論的なことをお尋ねし、あと時間がありましたら、各論的なことの中で重要な問題についてお聞きをしたいというふうに思っております。  第一番目にお尋ねいたしたいことは、今度この改正法案を出すに至った直接的な要因といいますが、動機といいますか、それについては、当然農業外部からのいろいろな誘因もございましょう。同時に、農業内部においてもさまざまな事情があると思います。便宜上ある程度くくって申しますと、経営規模拡大と、農用地をできるだけ流動化して、しかも集団化していくのだということが農政の大きな眼目の一つになってきておりますが、実態ははかばかしく進んでいない。いろいろな阻害ないし停滞の状況を示しておるというふうに思います。  それから、二番目には、反面、農地転用に関しては、数の上でも非常にふえてまいっておりますし、しかもそれが都市地域からだんだんと地域的に拡散状態を示しておる。その原因というのは、農業外部誘因、特に、買い占めあるいは乱開発ということに示されるような農業外からの土地需要に押されて、一般的に地価が非常に高くなった。それにつれて農村内部においても相当地価の高騰が起きる。そのことだけではないのですが、それが資産保有的な傾向を非常に促進して、その結果農用地がなかなか取得しにくくなる。そこで、従来のように、農業内部だけの関係ではなかなか決着がつかぬので、各種の土地利用競合関係をある程度さばいていく必要が出てくる。こういうふうなところから今度の改正法が行なわれたのではないかというふうに思っておりますし、一面、法制度的に言えば、国土利用計画法という全般的な法律が、きょう通過するのでしょうが、きめられてくる。それに対応して農業地域土地利用をどうするというふうな一つ法体系上の関係もあってお出しになられたんだろうというふうに思うのでありますが、いかがでございますか。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農業振興地域整備に関する法律改正趣旨につきましては、その背景はただいま御指摘のとおりでございまして、御質問の御趣旨は全くそのとおりでございます。  そこで、農業外土地需要が全国的に強まりましたことに伴いまして、農村地域で、地価上昇や他部門への土地利用との競合を生じまして、また農用地利用度の低下や、経営規模拡大が進んでおらない等の事態を生じておる次第でございます。このような事態に対処いたしまして、農業用土地確保いたしますとともに、その効率的な利用を促進して経営規模拡大をはかりますために必要な措置を講ずることが急務であると思いましてこの改正案を提出した次第であります。  なお、今回の改正案がそういう意味でぜひ必要な時代に直面いたしておりますので、これはなるべく早期にぜひ成立させていただきたいということが私どものほうの基本的なお願いでございます。
  5. 湊徹郎

    湊委員 第二番目に確認しておきたいことは、今回の改正法内容でございますが、枝葉を一応払ってみますとポイント六つあるように思います。  その第一は農業用施設用地、これは最近の畜産あるいは施設園芸等施設用地としてかなり広い土地を使う面がふえてきましたので、それに対応して農業用施設用地農用地の中に組み込もうということが一点。二番目には、土地改良法だけでは農業外とのお互い土地交換が限界があるので、新たに優良農用地を一方では集団的に確保して、一方では農業外土地需要に対応するというふうな形での土地交換分合が農振法の中できめられたということが第二点。三番目には、農用地利用増進事業という名前で言われておるように、借地農業を広めていく。所有権の移転がなかなかむずかしいから、借地権利用権という形で農用地全体の利用を増進しようということが第三点。第四点が特定利用権ということで特に、耕作権放棄休耕田等対象にして、それで協議もしくは知事の裁定によって特定利用権を取得することができるというふうにしたということが第四点。第五点が、開発許可に関する点。第六番目には、以上のことに関連して農地法特例を設けたいということ。  大体この六つの点がポイントじゃないだろうかと思いますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 今回の改正案内容につきましては、御指摘のとおり、農用地利用計画内容の充実、交換分合農用地利用増進事業特定利用権設定開発行為制限の五項目でございまして、これに関係農地法特例を加えますれば、御指摘の六項目となる次第であります。これらの措置は、最近の土地事情から見まして、いずれも緊急に必要であると考えられるものであります。特に優先順位重点項目考えておるわけではございませんが、今回の改正案の重要なねらいであります農業用土地確保のためには、農用地区域内における開発行為制限は緊急に必要でございまして、また、地価上昇等の最近の土地事情等から見まして、農業政策の課題であります農用地有効利用経営規模拡大を進めますには、農用地についての利用権設定の方式を推進することが当面ぜひ必要であると存じております。  なお、特定利用権制度農用地効率的利用に資するものと考えておりますが、さらに、農村地域における土地計画的利用のため農業用施設用地農用地区域に加えますとともに、農用地利用計画の変更と関連して行なう交換分合制度を設けることが必要であると考えております。
  7. 湊徹郎

    湊委員 先ほど、六つ問題点の中で特に優先順位考えておるわけではないということで、つまり、いずれも重要だからお出しになったわけであろうと思いますが、ただいまの御説明から言いますと、特に、特定利用権設定等に非常に大きな御期待を持っておられるように感じたわけでございますが、この政策目的を達成するために、いまの特定利用権設定ということが実際上どの程度効果を持つかということについてはどう御判断になっていらっしゃいますか。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは私ども農政基本にいたしております規模拡大自立経営農家育成等、そういう基本の問題を実施してまいりますためには、今回のような考え方を御承認願って、そういうことを推進していくのが農政展開にまずもって非常に緊急の要務である、このように考えておる次第であります。
  9. 湊徹郎

    湊委員 この点は、いまの六つポイントに即して、いずれ個別の問題としてそれぞれお尋ねしたいと思っておりますが、今度は、局長さんに伺いますが、いままでこの法案をつくる過程で、これはほかの省庁関係する分野が非常に多いわけでありまして、特に、法制局審議段階においては憲法上の問題等もいろいろ問題になったやに聞いております。  そこで、この法案作成過程での他省庁との関係において、あるいは農林省内部において、さらには法制局審議段階において問題になった点を、一つは理論的な問題点と――これは憲法問題等が主になるでしょうが、それから第二番目には実態的な問題点と、これに分けて簡潔に御説明を願います。
  10. 大山一生

    大山政府委員 この法律を作成する段階におきます経過を端的に申し上げますと、開発行為制限に関する問題でございます。先ほど先生からも御指摘がございましたし、そしてまた大臣からも御答弁いたしましたように、農用地開発事業実施地域あるいは農業利用に供しようとする山林原野農外者に取得されたりあるいは他用途に開発されるということから、農用地土地確保が困難になっているということから、どうしても開発行為規制を緊急に実施する必要がある。それは農林省内部においては一致した見解であったわけでございます。  他省庁との関係で申しますならば、現況が農用地でない土地について開発規制するということについて反対があったわけでございますが、この場合に、農用地区域内にある農地についてすら、単に農用地区域にあるからということだけで開発規制するということはどうであろうかというふうな意見もありました。また、さらには、ましてや農用地区域外土地を農振法で開発規制することについて、法制上というようなことも含めていろいろな問題点があったわけでございます。それから、特定利用権設定の問題に関しましては、これがいわば財産権に対する制約であるということから、一体認められるものであるかどうかという点が問題になったわけでございまして、結果といたしましては、市町村なり農協が共同利用に供するために正当な補償を、逆に言いますならば、通常考えられる借賃を払ってやるという限りにおいては憲法に違反するものではないだろうというふうな結論になりまして、特定利用権設定結論として本国会に提出するに至った、こういうふうな次第でございます。まだ、そのほかにも、たとえば利用権設定をしますのを市町村事業というかっこうでする限りにおいて、いわばそれが安定性を持つという意味におきまして、特定組合等が持つのではなく市町村が持つ限りにおいては農地法との関係においても抵触することはないであろうということも法制局との間においては話し合われました。それで現行法の今度の改正法に至った次第でございます。  端的に申し上げまして、以上三点が各省との関係においてあった問題でございます。各省との関係において当初われわれが考えました範囲から多少後退したところありとすれば、農用地区域以外におきます開発規制に関する部分でございますけれども、この点につきましては、農用地ということの法的手続、詳細な縦覧、公告等を経て、そして農用地として活用すべき区域として定められた農用地においては、これはその農用地区域内の本来の目的を達成する限りにおいて、開発規制をするということについては最終的に決定したわけでございますけれども農用地区域外のところにつきましては、それがいろいろな他用途目的に使われているというようなことから、農振法というかっこうにおいて規制することは問題があるということで、その部分につきましては、この改正案といたしましては提出するに至らなかったというわけでございます。
  11. 湊徹郎

    湊委員 さっき申しましたように、ただいまお話しのありました三点についての個別問題は後ほどお尋ねすることにして、とりあえず確認だけをやって先に進みたいと思います。  確認をいたしたい第三番目の点は、この農振法そのものができて以来、県がつくっております農業振興地域整備方針、これは若干のおくれが大阪とか沖繩には当然あったわけですが、現在全部できておるはずだと思います。ただ、それに続く農振地域指定、それから整備計画の樹立、こういうことになりますと若干問題がありそうに思います。農振地域指定は現在約三千二十地域、これで大体一応終わったものと了解してよろしゅうございますか。
  12. 大山一生

    大山政府委員 先生指摘のように、農振地域指定すべき地域ということにつきましては、沖繩を除きましては全部終わったというふうに御理解いただいてけっこうだと思います。
  13. 湊徹郎

    湊委員 それから、次に整備計画策定でありますが、これは知事が認可するということで、現在約二千六百の地域が認可になっておるということになると、残る四百二十程度がまだ整備計画ができていないということに裏返しをすればなるわけであります。  そこで、未策定地域計画策定がおくれておる理由について確かめておきたいのでありますが、おそらく、推測するところ、一番多いのは、都市計画等ほかの部門との調整関係でなかなか立たないというふうなところだろうと思いますが、あるいは、地域によっては、どうせこの整備計画をつくっても実際の効果はたいして期待できないからと、ややサボタージュと言うと言い過ぎなんでありますが、そういうことでおつくりにならない地域もあるかもしれませんし、あるいは地元が非協力であるということからなかなか整備計画がまとまらないというふうな地域もあるんじゃなかろうか。特に、一番懸念するのは、最後の地元の非協力原因する整備計画の未策定ということなんでありますが、そういう地域、荒っぽい数、あるいは割合でもけっこうですが、それは大体どのくらいになっておりますか。
  14. 大山一生

    大山政府委員 整備計画策定がおくれておる理由先生の御指摘のとおりでございます。都市計画等の他の利用との調整関係でおくれておるところ、あるいは農用地利用計画案に対しまして、地元農業者の間の意見が対立していてまだ調整に時間を要しているところ、あるいは乱開発買い占め等予想外に進んだところ、あるいは事務体制が必ずしも十分でないとか、あるいは農振地域メリットに対する何となしのサボタージュ的な感覚とか、こういうようないろいろの事情が錯綜しておりまして、どの事情によるものが何割ぐらいということはなかなか申し上げかねるわけでございます。ただ、昨年、いわば農振法の農振計画メリット通達と申しますか、四十九年以降は長期的な効果を持つ施策は農用地区域に原則として限定する、それから、たとえば流通関係等の問題については農振地域に限定する、と、われわれといたしましてはこれをメリット通達と称しておりますけれどもメリット通達出しましたようなこともございまして、最近はかなりのスピードで上がってきております。われわれといたしましては、四十九年度の前半中にはおおむね完了し得るのではないだろうかというふうに期待しておるわけでございまして、いまの段階では、先ほどの先生の御指摘原因別に何割かということはちょっと集計いたしかねるというような状態がございますので、御了承いただきたいと思います。
  15. 湊徹郎

    湊委員 それでは、以上の点を確認した上で総論的な事項に入りたいと思いますが、第一番目に農林大臣お尋ねをしたいのは農政ということ、これはお互いにそういうことばを使って議論し合っておりますが、農業政策も略すれば農政農業行政も略すれば農政両方ちゃんぽんにしたような使い方になっておるような気がいたしてなりません。そこら辺がはっきりしませんと、非常に間口が広いだけに議論の幅がとめどもなく広がって、そして毎回毎回同じ繰り返しの議論が行なわれるということになる。外国語でありますと、農業政策ならアグリカルチュラルポリシー、ということでぴしっとするし、行政のほうはアグリカルチュラルアドミニストレーションということでちゃんと仕分けが立つのでありますが、日本の場合は、行政府のやっておるかなりこまかい念の入ったことまでもやはり農政と呼ばれ、また、ぼくらが担当しておるはずの基本的な農業政策に関しても、これも農政ということで、そこら辺のけじめをはっきりしていくことがこれからの農政をきちんとさせる前提だと私は理解をいたしております。その点が一点。  それからそれに関連して、当然立法予算関係が出てくる。立法のほうは国会立法の府でございますから、当然、国会のほうはできるだけ行政がかってなことをやらぬようにチェックしようということで、なるべく法律でもって縛りをかけようというふうな思考を持つことは、これは理の当然だと思う。一方、行政のほうはできる限り予算中心執行フリーハンドを持ちたいというふうな願望がおのずから働きます。そうしますと、最近の法案を見ておりますと、農業政策という点からは、まさにほんとうは行政内部で処置していいようなこまかいことまでも法律の中に書き込まれたり、政府には提案権がありますから、それに予算が関連して、たとえば稲転のような、それに関連する事業費が二千億円にもなるようなやつだって、これは根拠法規が何なんだというとちょいと首をひねらざるを得ない。予算措置でもって二千億という金を出す。一方、こまかい経費でも、法律がないと予算執行のレールが敷けないから、ぜひ法律を通してくださいなどと言って農林省の皆さんが頼みに来る。そこら辺、どうも割り切れない点が多いのでありますが、その立法予算執行ないし立法事項の実行に関する行政府の持つ役割り立法府の持つ役割りとのけじめというものをどういうふうにお考えになっておるか。  以上、関連した二点について農林大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  16. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのございました点は、国政全般に対する基本的な大きな問題でございまして、いまお話しのありましたいわゆるアグリカルチュラルポリシーというのは農政推進基本となるべきものでございまして、その基本的な方針のもとに行政が行なわれるべきものであると考えております。したがって、いわゆるアグリカルチュラルポリシーというものに対しては、政府意見も十分に取り入れてこれを決定して、これに即して予算措置等農政を推進していくというべきものであって、両者は明確に区分しがたい面もありますけれども、そのけじめをつけるように配慮いたしていくべきである。  終戦以来、国会の運営につきましては、国会法制定当時からこういう点についてずいぶんさまざまな意見が出、またその取り扱いについては推移をしてきておりますが、立法権行政権というものは画然たる区別がありまして、混淆しないようにつとめてまいるべきであると私は思いますが、やはりポリシーを尊重して、それを基本にしてアドミニストレーションが円滑に進んでいくことが大事なことであろうと考えております。  それから、法律予算関係につきましてただいまお話しがございましたが、農業政策展開にあたりましては、法律予算もその手段となるものでございまして、基本的には、御指摘のとおり、予算措置によりまして、広範多岐にわたる農業政策対象に対してきめこまかく対策を講じてまいっておるのであります。農業政策基本を宣言いたしましたり、制度として国の予算支出を義務づけたりする場合には法律が必要になると思いますし、行政府の権利であります予算につきましては、編成は政府がいたしますけれども、やはり、国会においてこれを承認するという義務が課せられておるわけでありますが、いまお話しのございましたように、いわゆる終戦前と終戦後の行政及び立法府状況を見ますと、非常にこまかな手続まですべて法律によるような形になっておりますことは御指摘のとおりでありまして、こういう点については、立法府行政府も大いに検討をする必要があるとは思っております。今後とも、個々の農業政策必要性に応じまして予算なり法律なりを準備して、国会の承認を得て、行政の円満な遂行を期してまいりたい、こういうふうに考えております。
  17. 湊徹郎

    湊委員 ただいまの問題は議論すると相当時間を食いますので、問題点指摘だけにとどめて、次に、農政のあり方に関して若干お尋ねをしてみたいと思います。  三年ほど前に、私は、私自身の農政基本的な考え方として、私案めいたものを御提案申し上げたことがございますが、いろいろな問題点はありますけれどもポイントは大体五つぐらいあるんじゃないかと思います。抽象的な言い回しですが、たとえば農業基本法の中で、「自立経営育成」と「協業の助長」ということばがあるが、では、その自立経営とは一体どういうものなんだ、協業というのはどういうスタイルで、どういう形で動かされていくんだということになると、その後具体的にそれが明示されたということをあまり多く聞かないのでありますが、もう少し具体的に農政展開していく必要がある。その場合に、ポイント五つほどあるんじゃないかと思う。  第一番目には、最近食料問題が非常にうるさくなって、いわば食料戦略というふうな名前でさえ呼ばれるようになって、いよいよますますこの需給関係というものは非常にむずかしくなってきた。その場合に、需給には、国内における自給と、それから海外に依存する部分とが当然あるというふうに思いますが、そういう目標について、実は二年ほど前の十月に「農産物需給の展望と生産目標の試案」というやつを農林省はお出しになって、いま農政審議会でその見直しが進められておるようでありますが、その需給目標というものをやはりきちっと明確にするということが第一点。第二点は、そういう農産物が、北は北海道から南は沖繩に至るこの細長い列島の中で、どういう地域にどういうふうに展開されていくかというガイドポストをおきめ願うということ。これについても、かつて十四ブロックに分けて農産物地域分担指標が示されたことがあるわけでありますが、ちょっと目が荒過ぎるという点が一つと、それからもう一つは、言ってみれば、こういう傾向になっておりますと、遠隔地域においては、たとえば九州とか東北とか北陸とか、これは米の主産地としてどんどん伸びてまいっておりますし、また、酪農やなんかもわりあいに遠隔地においてふえておりますし、都市近郊においては、施設園芸であるとか、豚鶏中心にした畜産がかなり伸びておりまして、今後もたぶんそういう傾向をたどるであろうと思いますが、しかとした、第一に申しました需給目標のような形にはなっていない。そこで、目の荒いところをもう少しきめをこまかくしてもらう必要があるんじゃないか。  二番目には、もう少しきめをこまかくした中で、はっきり地域的な目安というものを明示する必要があるんじゃないか。そういういわば一種の地域指標みたいなものを第二番目に具体化していく必要があると思っております。  三番目には、農業のにない手の問題であります。これについても、ときに自立農家と言い、今度の白書では中核農家と言うということで、その中身もなかなかこれは具体的に示し得ない点もある。日本のようなピンからキリまである農業でありますから、これはあることはよくわかるのでありますが、このにない手に関しても、もう少し明確にしていく必要があるのじゃないか。  それから四番目には、各種農産物の中で、いま行政価格の網をかぶっているものが大体七割余あるはずでありますが、それぞれのいきさつ、経緯がございまして、算定方式をはじめ、行政価格の形成のルールというものがみんなまちまちであります。これは、それぞれの農産物の特性に即して画一的に一つの目安をつくれなんていうことは無理にしても、同じ農家がつくっており、しかも、農業経営の大半が複合経営であるというふうな実態から見ますというと、農産物相互の間の相対的な価格関係というものをもう一ぺん全体として見直して、ある程度の荒っぽい相互の関連というものをいまよりははっきりさせる必要がありはせぬか。いつも米価の節になると米価だけが問題になり、乳価のときになると乳価、ビート価格はビート価格ということで、単品ごとに一々問題にされておったのでは農業政策としてはいかがなものであろうというふうな感じがいたしますが、それが第四点。  第五番目は、農林予算は大体一兆八千億ございますが、そのお金をどういう農産物にどの程度割り振ったらいいか。それから今度政策手段ごとに見た場合に、たとえば構造政策にどのくらい使うのが望ましいかっこうなのか。これは、生産対策にはこのくらい、あるいは価格政策にはこのくらい、流通対策にはこのくらいというふうな融資も当然含まってきますし、ものによっては補助政策が中心になるものもあれば、融資政策が中心になるものもおのずからございましょうが、そういう予算全体の財政指標と申しますか、これも荒っぽいガイドポストが必要じゃないだろうかというふうに私は思います。  そこで、いままで述べましたところの需給目標地域指標、それからにない手――これは集団的な経営組織等を含めた農業生産のにない手、それから価格指標、財政指標、以上、五つについての農林大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  18. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農産物需給見通しと生産目標の試案につきまして、今後の農業生産は、農産物需給の長期の展望を基礎といたしまして長期の生産目標設定し、これを目標として各般の施策を推進する必要のあることは御指摘のとおりでございます。  このような観点に立って、農林省は、四十七年十月に、農業団体等の意見も聞きながら「生産目標の試案」を取りまとめた次第でありますが、これは現在農政審議会においてさらに御検討を願っておるわけでありますが、この試案を指針といたしまして各般の施策を実施いたしております。  なお、この「生産目標の試案」につきましては、作成後に生じた農産物をめぐる国際情勢の変化等を踏まえまして、当初は本年三月までに一応の結論を得たいと思っておりましたが、内外の経済情勢の変化を織り込んで検討を進める必要があると存じまして、結論はまだ出ておりませんけれども、これらにつきましては、ただいまの御意見も十分にしんしゃくいたしまして、私どもはなるべく現実に合うようなものを最近似値をとって決定してまいりたい、このように努力をいたしておる最中であります。  また、先年発表いたしております地域指標につきまして、生産目標は全国ベースの目標でございますので、これを地域にとってより具体的なものとするため、各地域ごとに地域と作目の特性に即した長期の生産目標設定いたしまして、これに沿って農業生産が展開されるよう各般の誘導策を講じてまいる必要があると考えております。  農業生産の地域指標としては、農林省は、四十五年十二月に全国を十三ブロックに分けました「農業生産の地域指標の試案」を作成いたしておりますが、その後四十七年十月に全国ベースの「農産物需給の展望と生産目標の試案」を作成いたしましたため、この「生産目標の試案」を各地域の実情に即した地域別の生産目標として具体化する観点から、新たに都道府県及び都道府県内農業地域ごとの生産目標を作成することといたしまして、現在、都道府県、農業団体の協力を得ながら作業を進めている次第であります。いずれにいたしましても、今後の農業施策推進の指針となるよう留意してまいりたいと存じております。  農業のにない手のお話しでございますが、総農家戸数五百十万戸のうち、男子農業専従者がおります農家は、四十七年度において百六十三万戸ございます。これらの農家は、戸数割合では全農家の三二%でございますが、農業粗生産額の割合では六五%を占めております。  今後のわが国農業の中心となる自立経営育成いたしますとともに、わが国の食料自給を強化するためにも、これらの農家を農業生産の中核的たにない手として広く育成確保してまいる必要があると考えております。  このため、従来から総合施設資金等の農業金融の充実をはかるとか、構造改善事業の推進等各般の施策を講じてまいったのでありますが、この際、国民食料の安定供給をはかる上からも農業生産のにない手を育成するための施策を充実強化してまいりたいと思っております。  また、その一環といたしまして、農地の賃貸借等を促進して中核となり得る農家の耕作規模の拡大を進める制度を確立する必要があります。農業振興地域整備に関する法律改正案の御審議をお願いいたしておるのも、いま申し上げましたような目的を含めた今度の改正案でございますので、この改正案を成立さしていただくことによりましてこれらの目的を達成するために必要な活動ができるとわれわれは考えておる次第であります。  価格政策のことにつきましてのお話しでございますが、現在、農産物行政価格の決定にあたりましては、農産物ごとの生産事情需給事情等の実態に応じて、生産費、パリティ価格または需給実勢価格等を基準として算定することにいたしておりまして、物価その他の経済事情をも勘案いたしまして、毎年度それぞれの農産物ごとに適正な価格水準の形成につとめておる次第でありますが、御指摘のような価格政策のガイドポストの導入につきましては、わが国の経済の動向や今後の農産物の国際需給見通し、農業の生産構造の変化などが明確に把握しがたい現状におきましてはなかなかむずかしいと思われますが、長期的な視点に立って考えますれば、作目別に適正な経営条件を具備しているにない手がそれぞれ他産業と均衡する所得の大部分を農業で確保できるように配慮すべきではないかと考える次第であります。そこで、御指摘のような作目間の収益性の不均衡の是正もこういった点から考えられていかなければならないと存ずるのであります。  したがって、今後とも、価格政策の運営にあたりましては、構造政策や生産政策の進捗状況、経済事情需給事情等のほか、農産物相互の価格関係にも配慮しながら需給の動向に即応した再生産の確保がはかられるようにつとめてまいりたいと思います。  また、農業に対する財政のガイドポストについてお話しがございましたが、予算の編成にあたりましては、農政全体の中での各政策の重要性あるいは農産物の種類ごとの当面する問題等に常に十分な考慮を払いながら慎重に対処しておる次第でありますが、このような農産物の種類ごとあるいは政策目的ごとにあらかじめのガイドポストを設け、これに従って予算編成をすることは一つの望ましい方向であるとは考えられますが、反面、農業のように生産自体が天候によって左右されるもの、あるいはまた国際的な需給の動向に国内の価格関係が強い影響を受けやすいものにありましては、あらかじめ妥当なガイドポストと思われるものをつくることは、それ自体きわめて困難であると存じますし、あるいは弾力的な予算編成を妨げることにならないような配慮も必要であると存じますので、今後の検討課題ではなかろうかと思っております。  いずれにいたしましても、予算編成にあたりましては、今後とも農政の長期的展望を踏まえまして、かつ、そのときどきの農業をめぐる諸情勢にも十分即応したものとなるようにつとめてまいりたいと思っております。
  19. 湊徹郎

    湊委員 四番目と五番目の価格関係及び財政関係の問題は、ただいまおっしゃられたように非常にむずかしいことは私どもも痛感をいたしております。それで、このことを除きまして、前の三つについて、若干内容に立ち入って御質問申し上げたいと思うのですが、批判を含めて申しますならば、「農産物需給の展望と生産目標の試案」について、第一番目には、需要と消費に対する分析が非常に不足しているのではないかというふうな感じが率直にいたします。需要のほうは年間これだけ消費されましたということで、その消費がどういう形で行なわれておるかというところまで突っ込んだ検討調査というものはあまり進んでいないように率直に言って思います。それで、需要と消費の問題は当然流通の問題ともからまってくるわけで、そのために食品流通局が実はつくられたのだと思います。  端的な一、二の例をとって申し上げますと、たとえば肉牛ですが、いま畜産が非常にむずかしい局面を迎えておりますが、お肉といった場合に、われわれの年代層だとすぐにすき焼きを連想する。ところが、二十代、三十代の若い諸君の嗜好調査を東京都でやったやつを見てみますと、お肉というとビフテキと実は反応する。あるいはハンバーガーと反応する。同じ肉でも非常に消費の層が違う。それと、もう一つ、もっと言えば、日本の家庭の台所は、肉料理をするような台所の構造になっていない。だから、肉を食うときはできるだけ外食をするとかということに自然となってしまいますし、自分の家でやらないために、そしてまた肉がほんとうに食生活の中に根っこをおろしておりませんから、牛肉を食べたいとは思うんだけれども値段の関係がべらぼうに上がってしまうということになると、それじゃ豚肉で間に合わせよう、ブロイラーでがまんしようということになり、相互の肉間の需要、消費の変動というものが非常に多い。そのことが農業政策一つのネックにさえなっていると思います。  牛乳やなんかでも、一合びんというやつがすぐ連想される。冷蔵庫やなんかができても、一合びんしか大体入らないしかけになっておる。そうすると、冷蔵施設があればリットル単位で消費も可能だし、ヨーロッパやなんかは大体リットル単位で消費をしている。こちらは幾ら消費を伸ばそうとしたって一合びん、まして、人手不足で配達やなんかもだんだんきかなくなる。また、コカコーラその他の飲料との相対関係で、牛乳を売っている店は手数料が少ないものだから店頭には置きたがらない。国鉄でさえも、なまの本物の牛乳を売っている駅があったらお目にかかりたいぐらいに、実は、飲みたいと思っても、そういう飲むような消費の形態ないしそこに持っていくような流通のシステムになっていない。こういうところをはっきりさせて――これは消費の規制とか消費の誘導というものは問題だと思いますが、しかし、そこまでいかなくても、流通行政過程でそういう方向にある程度誘導するような施策というものはもっと強化していいのではないかというふうに思います。  第二点は、生産目標といいますと、物量的な量でもって常に表示されてしまう。だけれども、問題は、生産性目標といいますか、生産目標と同時に、どういう農業経営を母体にしてそれだけの数量が生産されるのかということについてもう少し突っ込んだ検討が必要ではないか。欲を言えば、農産物の量の問題だけでなしに質の問題まで踏み込めればなおいいのでありますが、それは実際問題としてむずかしかろう。そこら辺で、生産目標という数量的な表示以外に、何か生産性目標というふうなものをきめ得ないのかどうかということが第二点。  第三点は、最近外国からの輸入農産物が非常にふえてまいっております。当然、その農産物ごとの輸入調整基準というようなものもはっきりきめる。むしろおそきに失したぐらいに私は思っておるのでありますが、これをきめる必要があるのではないか。そのチェックのしかたあるいは国内農産物との調整のやり方、あるいは国内保護政策とのかね合い、輸出先の選択、こういう点について、もう少し輸入農産物ごとに個別に調整基準をつくる必要があるのではないか。これに対する所見。これが第三点。  それから、需給を実際にコントロールするという場合に、これもまた一例をとって申し上げますと、私は金融問題を担当しておりまして痛切に感じたのでありますが、農業後継者育成資金というものが改良資金制度の中にございます。これはどんどん借り手がふえまして、たぶんもう一万二、三千名ぐらいになっておるだろうと思います。農林漁業金融公庫の中にも総合施設資金制度がつくられ、年ごとに借り手はどんどんふえております。言ってみれば、片一方は若鳥であり、片一方は親鳥だが、その間に全然関連がないということが一つ。二つ目には、借りた人が一体何のためにその金を使うかということの中身を洗ってみますと、一番大きなのが豚鶏資金、両方とも豚鶏資金なんです。それから施設園芸、花卉草花、酪農ということであります。それで、融資のための申請書の中から、一体こういう農家がこういう経営を実現した場合にどれだけのものができるかということを今度は逆に全国のものを推計してみますと、いずれもいま申したようなものは五年を出ずして過剰生産になるという答えがどんぴしゃっと出てきちゃう。そういう段階でもやはり需給調整というものが必要なんじゃないだろうかというふうに思うわけであります。  とりあえず以上四点についてお答えいただきたいが、これは大臣でも、あるいは局長でも、あるいはお分けになってでもけっこうでございます。
  20. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  第一点は、農産物需給の見通しなり生産目標設定する場合に、消費なり需要の分析が不十分ではないかという点でございますが、われわれといたしましても、一昨年の「需給の展望」についてただいまなお再検討しておりますけれども、この点につきましても、過去の需要なり消費の動向というようなものにも配慮をいたしますし、今後の食生活等のあり方等についても可能な限りの検討はしたつもりでございます。たとえばちょっと問題はずれるかもしれませんが、将来の目標カロリー等につきましても、単純に欧米水準の三千カロリーというようなものではなくて、日本人の体位とか風土というようなものに見合った目標カロリーをきめるとか、あるいはたん白質の摂取の形といたしましても、殻物の比率を非常に高く考えておるというような点につきましては、あたうる限りの検討をいたしたわけでございますが、お話しのとおり、たとえば肉類一つとりましても、価格の相対関係で需要の代替関係がある。これについてどうするかというような問題については部内でもいろいろ検討したところであります。したがって、御案内と思いますが、生産目標では表向きには肉類一本でその需要量なりを出させていただいたというようなことも、実はその経緯を踏んまえてのことでございますが、なお今後十年の需要なり生産目標を固める場合におきましては、単純に過去のトレンドの引き伸ばしではなくて、今後における食生活の変化のあり方というものについては十二分に吟味して、実行性のある目標なり見通したり得るように努力をいたしたいというふうに思うわけでございます。  それから、流通加工部門の問題でございますが、実は、生産目標というものの性格上、原材料の実量ベースでやらざるを得ないという制約がございまして、先生の流通加工問題についての御指摘は、むしろ消費者が支払う食料品価格のうちで農家の手取り額が、やはり、消費者の取り方が、非常に加工食品を多くとるとか流通加工段階を多く要するというようなことから、今日三分の一程度しか農家庭先に帰属しないというような問題、これについて流通なり加工部門の合理化によって農家の実質手取りを高めるという点の配慮について一段のくふうをこらすべきだというふうに受け取らせていただいたらというふうに考えるわけでございます。
  21. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 もう一つは、輸入の調整基準をはっきりすべきではないかというお話しでございましたが、これは国民生活の基礎的物質であります食料でございますので、その安定的供給を確保することはきわめて重要でありまして、そのためには、国内生産が可能なものは生産性を向上させながら極力国内でまかなうとともに、国土資源の制約等から輸入に依存せざるを得ない農産物につきましては、国内生産との調整をはかりながら需要の動向に即応した安定的輸入を確保することが重要であると考えております。  こういう立場に立ちまして、主要農産物であります米、野菜、果実、牛乳、乳製品、肉類、鶏卵等につきましては、完全自給ないし八割以上の自給率を確保することにつとめ、その実現に必要な施策を総合的に実施いたしますとともに、必要な農産物輸入に関しては、産品のそれぞれの事情に即応して、食管制度による輸入、事業団による一元輸入、輸入の量的制限、関税制度を活用いたしまして、国内農業との合理的な調整に今後とも力を入れてまいりたい、このように思っております。
  22. 岡安誠

    ○岡安政府委員 国内の農産物需給ないし生産目標と金融との関係でございますが、長期的には私どもも政策の手が及ぶ金融につきましては、長期の生産目標とのかね合いといいますか、それは考えているつもりでございますけれども先生指摘のとおり、短期的には需要が急激に伸びたり、衰退をしたりということで、必ずしも私ども考えているようなぐあいに金融が行なわれているというふうには言えない節がございます。少なくとも、公庫融資その他ワクでもって規制できるような融資につきましては、現在毎年度予算である一定のワクを設定いたしておるわけでございますけれども、このワクも弾力的に生き生きと運用されているかという点につきましては問題があるのではなかろうかというふうに考えております。  そこで、私どもは、少なくとも短期の見通し、少なくとも確実にわかるような見通しができました場合には、それに即応するような、もう少し実態に即応する融資ワクの設定という、流動性のある融資ワクの設定、運用というものをぜひ考えていきたいということで、現在、従来の政策金融についての見直しをいたしたいというふうに考えている次第でございます。
  23. 湊徹郎

    湊委員 だんだん時間がなくなってきましたので先に進ませていただきますが、次に、地域分担の関係で一、二お尋ねをしたいわけであります。  先ほどの農林大臣お話しですと、ブロックごとのやつをさらに府県段階におろして、そこでもっていろいろおつくりになっている。そこで、進捗状況を最初に、これは局長からお聞きをしたいということが一点。  それから、国のものさしと県のものさしは必ずしもイコールじゃございませんし、私も幾つかの県に当たって見たわけでありますが、県には県のそれぞれの地域の分け方に対する伝統的なしきたりがございまして、それをいきなり寄せ集めて、これが国の目標なりなんということでストレートにはいかない。それを市町村におろせば、なおのこと現在の姿にどうしても市町村ほど引っぱられますから、ちょうどカニが穴を掘るときに甲らに似せるのと同じように、現状を中心にした地域分担で、おれのところでは先祖代々こういうことをやってきた、現状においてこういうことをやっている、だから、おれのところはこういう主産地として伸ばしたいのだというふうな答えが、下におろせばおろすほどそういう答えがはねかえる。だから、単純にそれを集めたところが一つガイドポストにはなるまいというふうに私は思っております。さっきのように金になるとかならぬとか、一日当たりの労働報酬が何ぼになるかというようなことで、ある意味では府県ごとの計画をそのまま寄せると、ある作目にだあっと集中してしまう。北海道のような亜寒帯地帯、あるいは沖繩のように亜熱帯地帯、そういう地域指標というものはわりあいにつくりやすいと思いますが、内地になりますと、適地適産と口では言いますけれども考えようによってはどこも適地適産である。稲転のときに痛切に感じたのですが、一体何に転換したらいいんだと相談をかけられたときに返事に困るというのもやはりそういう事情があるわけでございますから、そこら辺の国のものさしと府県ごとに積み上げた計画とどういうふうに御調整なさるのかということが第二点。  そのことに関連して、最近のように、消費地帯が都市化とともに非常に集中して一種の消費圏、生活圏というものが固まってきますと、そこを中心にして農産物のような重量のかかるようなもの、また、がさばるようなものは、これは輸送コストが非常に問題になる。だから、消費圏を中心にして、逆に、ある程度、どこからそういう消費地には供給するのだというような計算機を回すようなきめ方のほうがむしろ適切ではないだろうかというふうな感じがするのでありますが、その辺に対する大臣の所見。  以上三点をお尋ねいたします。
  24. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  第一点の農業生産の地域分担のブレークダウンがどうなっておるかという現状のお話しでございますが、十三ブロックに分けました生産目標を、その後国が一応県別のものさしをつくりまして、各県と御相談申し上げ、県においても十二分に御検討を願いまして、調整につとめまして、県段階生産目標についてはほぼ作業が終わった段階でございます。  お話しのとおり、この場合に、長い農業生産の歴史と特徴を持っております県なり、それ以下の地域の生産の目標とナショナルベースで見通しました生産目標との調整という点についてはいろいろ困難があり、また、機械的な割り切りもなかなか困難であると思うわけでございます。われわれといたしましては、この点については国のものさしを一応示して、十二分に末端のお話しを承りながら、むしろその論議の過程で、その地域における農業生産のあり方、長期のあり方をどうするかという問題をある程度浮き彫りにさしていただいたらというふうに考えて、現在最大限の努力を払って取り進めておるというのが実情でございます。  それから、第二点の産地と消費地の関係における輸送コスト等の問題から、主産地等の育成等については配慮すべきであるというお話しでございますが、これはややおことばを返すようでございますが、実は、青果物、特にトマト、ピーマン、キュウリ等に見られるように、消費が全国的に平準化しておる、また、地域的にも平準化しておるという場合におきましては、たとえばそれは高知だとかあるいは宮崎というような施設園芸の供給基地から供給されるというようなこともございまして、必ずしも消費県と生産県について輸送コストだけできめられない面もあるかと思いますけれども、やはり、合理的な生産、流通、消費ということから考えますと、この点については輸送コストが大きなファクターであると考えておりまして、現在、野菜指定産地等の新規の生産地を旧産地の都市近郊地帯が逐次つぶれてまいりますので、新しい指定産地を育成していく場合においても、ただいま先生の御指摘の点については十分配慮して行政としては進めていくべきであるというように考えております。
  25. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いわゆる適地適産、生産調整のときのお話しがございましたが、こういうことにつきましては、私どもも、生産の地域指標をもう少し掘り下げて検討してほんとうの指標にすべきであるということで、当初からそういう意気込みで始めたわけでありますが、今日なお御指摘のように十分ではございません。  農業生産を推進してまいりますためには、全国的な調整のもとで各地域ごとに長期の生産目標設定いたしまして、これに沿って農業生産が展開されるように各般の誘導策を講じてまいる必要があると考えております。こういう考え方に立ちまして、全国を十三ブロックに分けました農業生産の地域指標をすでに作成いたしまして、さらに、先ほどお答えいたしましたように、都道府県、それから都道府県内の農業地域ごとの生産目標を作成することといたしまして、現在、都道府県、農業団体の協力を得ながら作業を進めておりますが、しかしながら、この都道府県との間での数値の調整等につきましてなかなかむずかしい問題がございますので、作業の取りまとめにはなおある程度の時間を要するものと考えておりますが、これをずっと下におろして、実際の状況を把握した上で、さらにわが国の生産目標を作成していくということはぜひ必要でございますので、そういう方向に基づいて努力をいたしておる次第であります。
  26. 湊徹郎

    湊委員 ただいまの、地域指標について今後努力をしていくことについては、これは非常にむずかしい問題だと率直に思います。思いますけれども、さっき申し上げたように、農産物ごとの需給と並んで、地域展開ということはどうしても必要な最小限のガイドポストであろうというように私は思っております。  そこで、今回の農振法の農振整備計画と、それから需給目標ないし地域指標のかね合いの問題でありますが、どちらかというと、農振整備計画農用地が当然中心でありますから、入れものの関係になります。ところが、地域指標のほうは、どこでどういう農産物をどれだけつくるかというようなことでありますから、中身の問題になってくるわけであります。したがって、両方はたてまえが違うと言ってしまえばそれまでなんでありますが、今度は市町村段階農用地利用計画をこれから立てるにあたりましては、市町村のほうでは、実は、各種の農業に関する計画というものはもう役場に積んでおくほど今日までできておるわけであります。それがみんな共通の調査項目で、どこの部落では大体こういうものをつくっておる、あそこの部落ではこうなんだ、わが市町村としてはこういう計画でいくんでございますよというようなことは、市町村段階ではもう常識化してしまっております。畑が大体どのくらいで、そこでは当然米をつくっておるわけだが、そのほかこちらでは野菜をどのくらいとか――野菜は変動が多いと思いますが、果樹園なんというのは大体もうきまっておる。それから、たばこをここでは幾ら、あるいは養蚕をここではどのくらいと、これはもう全部町村ごとにはわかっておるわけであります。  そこで、せっかくそういう市町村単位の農業振興整備計画をおつくりになるならば、そういう中身を入れものに入れるようなところまで配慮していいのじゃないだろうか。ただ、制度のたてまえは、農用地あるいはそれに付設するいわゆる上もの、これが中心整備計画が立てられることになっておりますが、しかし、中身もセットしないと、実際の市町村段階における有効な農振制度の運用というものはむずかしいのじゃなかろうか。こういうふうに思いますが、そういう地域ごとの作物別の生産目標というものと、それから、土地と施設を中心とした農振計画というワク組み、これをどういうふうに組み合わせてそのワクの中に中身を入れていくかということについては、たてまえは違っても、行政指導の段階で両方合わせて一本というかっこうの運用をしなければいかぬのじゃないかと私は思いますが、いかがでございますか。
  27. 大山一生

    大山政府委員 先生が御指摘のとおり、農振整備計画は、農用地あるいは施設というようなものの整備に関するものということになっております。  そこで、農業生産の内容等については定めていない。これは先生指摘のとおりでございますが、しかし、これは裏から見るといいますか、逆に言いますならば、その農業生産に必要な土地利用なり施設整備のワク組みを定めるというふうな機能を持っているという点からしますと、農業生産の地域指標といいますか、あるいは長期的な農業生産の誘導方向というものとの調和が保たれたものでなければならぬことは当然のことでございますので、各地域におきまして、将来にわたる生産の方向というようなものを、いまのところは市町村ベースで、あるいは県ベースにおいて予定する、それに即して計画策定する、こういうかっこうになっておるわけでございますけれども、農業生産の地域分担の方向というものがより明確になってくるとともに、それとの間においては、やはり種々の調整が行なわれるように逐次改善していかなければならぬだろうというふうに将来の問題としては考えていくということであろうと思っております。
  28. 湊徹郎

    湊委員 それから、次に、にない手との関係で、さっき農林大臣は、五百万余の農家のうち大体百六十三万戸の農家に男子専従者がいて、そして、農作物全体のウエートから見ると六十数%の生産をあげております、そういう中核農家をこれから育てるために全力投球をしていきたい、と、こういう趣旨のことをおっしゃられたわけでありますが、また、反面から考えますと、最近のようにどんどん機械や施設が大型化してまいりますと、そういう個別の中核農家が、たとえば小型の田植え機であるとか、二条刈りないし四条刈りのバインダーのようなちゃちな農機具をめいめいが持って、そしてそれが中核農家でございなんていかれたんじゃこれはかなわぬ。昔の豆トラのまねを繰り返してもらいたくないという気が非常にするわけであります。そうしますと、大型の機械がフルに稼働し得るような別な育成の単位というものが団地構造であったりするんだろうと思います。高能率生産団地というのはまさにそうだろうと思います。だから、むしろ、そういうワクの中での中核農家の果たす投割り、特に兼業農家やなんかがどんどんふえている現況でございますから、そういうものとのかね合いで中核農家というものの考え方の力点をどこに置くか。個別農家としての中核農家を個別なりに育てていくのでございますと言うのと、集団的生産組織と従来農林省が言っておるようなものをもう少し具体化して、そしてそういう中の中核になる農家でございますと言うのではだいぶやり方が変わってくるというふうに思いますが、それについて再度お尋ねをいたします。
  29. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私ども、農業白書で申しております農業に、ほぼ完全に就業いたしておると目されます基幹的な男子農業専従者のあります農家を農業生産の中核的にない手として取り上げておるわけでありますが、自立経営農家はこれら農家群の頂点の部分に存在いたしておりまして、他産業従事者と均衡する農業所得をあげておる農家をそのように称しておるわけであります。また、基幹男子農業専従者のおります農家は、技術革新に伴う機械、施設の利用等に関連いたしまして、生産組織のリーダーやオペレーターなどになっている者が多うございまして、組織の中核農家としての役割りを果たしております。したがって、これらの農家群を農業生産の中核的なにない手として着目いたしまして、その経営発展を支援することが農業基本法で申しております自立経営育成にもつながるものと考えているわけであります。  農業生産のにない手の育成につきましては、経営規模が大きく生産性の高い農家の育成と、これらの農家を中核といたしました兼業農家を含んだ集団的生産組織の育成、こういうものをはかることによりまして規模拡大を進めてまいりたい、生産性の高い生産単位を広範に育成することといたしたい、こういう考え方でございます。そのためには、農業委員会のあっせんとか、農地保有合理化法人の事業の促進、それから農地等取得資金、総合施設資金の融通等によりまして個別農家の規模拡大を促進いたしますとともに、第二次構造改善事業、農業団地対策を通じまして農業生産性の向上をはかりますとともに、自立経営を指向いたします農家を中核とする集団的な生産組織体の育成につとめてまいりたい。こういう場合に、農業機械化につきましては、地域の実情を考慮いたしながら、小型機械に比べて労働生産性の向上に寄与する程度の高い高性能な農業機械の導入をいたしまして、その有効利用を重点といたしまして推進しておりますし、今後とも、集団的生産組織の育成及び農業機械銀行方式等の導入等によりまして、中核農家を中心とした高性能農業機械の導入促進とその有効利用をはかってまいる、こういうような考え方のもとに進めようといたしておるわけであります。
  30. 湊徹郎

    湊委員 時間がだんだんなくなってまいりましたので、以上の農政基本問題に関連して、農振制度とのかね合いについて次に質問を進めたいと思います。  第一番目には、この農用地のとらえ方なのでありますが、これは各種の計画で数字が非常にばらばらのようであります。経済社会基本計画そのものには農用地面積が幾らということは示されておりませんが、あれをはじき出す過程においては、前提として、当然そういう一定の農用地というものが想定されておったのだろうと思います。これははっきりしておりませんから、わからなければわからないでけっこうでございます。  次に、全国総合開発計画が四十四年にできて、これは六十年目標でもって、その中では農用地は六百五十ないし七百万ヘクタールという想定を行なっております。ところが、今度の農業白書を見ましても、現実の農用地は五百六十万ヘクタールということで、すでに百万ヘクタール余が全総計画の六十年目標より少なくなってしまっておるのが現況であります。そういうことになると、両計画の基礎の農用地というものをある程度調整する必要があるだろうというふうに思います。それから、土地改良の長期計画ができましたときに農林省がお調べになった開発可能面積、これは大体百五十万ヘクタールと聞いておりますが、実際にこの長期計画に乗っかっておるのは、農地、草地合わせて七十万ヘクタールということになっております。ところが、生産目標の試算によりますと、耕地が五百二十万ヘクタール、草地が六十万ヘクタール、合わせて五百八十万ヘクタール、これが生産目標を達成するために必要な基礎になる農用地の必要面積なんだということになっておりますが、その五百八十万ヘクタールさえもすでに現況は下回ってしまっておる。それから、農振計画の中では、農振地域全般ということになると千七百万ヘクタールという広大な面積ですが、大半が山林原野になりますから、農用地区域だけの面積で、今後開発可能な山林原野が大体八十万ヘクタールであると書いてございます。これは土地改良計画の七十万ヘクタールと似ているといえば似ているのでありますが、十万ヘクタールのズレがある。各種の政府の行ないます計画ないし施策の前提になる農用地の面積がこういうふうにばらばらであっては困るじゃないか。それを調整しながら、農振法をせっかくつくる機会に、国土利用計画法案も通る見込みのようでありますから、そういうものを中心にしてもう一ぺん再調整をする必要がありはせぬかと思いますが、いかがでございますか。
  31. 大山一生

    大山政府委員 先生指摘のように、いろいろな数字があるわけでございますけれども、まず、経済社会基本計画の前提としております農用地面積、これは「農産物需給の展望と生産目標の試案」におきます生産目標達成のために必要な当方の需給見通しに基づく五百八十万ヘクタールの農用地というものが検討の基礎となっておるわけでございます。新全総の場合におきまして、昭和六十年を目標年次といたしまして六百五十万ないし七百万というふうな農用地を予定しておるわけでございますが、これは四十年というものを基準ベースに置きまして、きわめて意欲的な姿勢のもとでつくっているわけでございます。われわれといたしましては、むしろ土地改良長期計画というものは、「農産物需給の展望と生産目標の試案」というものをベースといたしまして土地改良の長期計画をつくっているわけでございますが、その長期展望の際におきましては、昭和五十七年におきまして必要な面積を、先ほど、新全総といいますか、経済社会基本計画の際に申し上げました五百八十万ヘクタールという線を――農産物需給の長期展望の中におきまして、五百八十万ヘクタールというものを五十七年における面積というふうに把握しておるわけでございます。この五百八十万ヘクタールといいますのは、耕地五百二十万ヘクタールと草地六十万ヘクタールということでございまして、これを受けまして、土地改良の長期計画におきましては、現状の耕地五百八十万ヘクタールからある程度の壊廃ということを予定して、なお耕地については三十万ヘクタール、それから草地につきましては現在がたしか二十四万だったと思いますが、二十四万ヘクタールに何がしかの壊廃を入れてプラス四十万ヘクタール、この三十万と四十万を合わせた七十万ヘクタールを土地改良長期計画におきます五十七年までの目標数字というふうに把握しているわけでございます。したがって、全国ベースといいますか、ナショナルベースにおきますわれわれの姿勢といたしましては、現在のところ、農産物需給の展望ということを前提といたしまして、五十七年に必要な農用地面積五百八十万を確保する。そのために、土地改良長期計画におきましては、農用地として七十万ヘクタールの開発をいたす、こういうふうなかっこうで固めておるわけでございます。  ところで、農振地域について現在どういうふうな指定状態になっているかということにつきましては、農振地域におきましては、総面積は先生の御指摘のように千七百万ヘクタール、そして、その中に含まれます現況農用地は五百四十万へクタールということでございますが、その中で、農用地区域の面積につきましては、まだ計画が全部は成り立っていないという段階でございます。したがいまして、確定的な見通しということは言いがたいわけでございますが、やや控え目に見ましても、その中で農用地区域の中に含まれるであろう農用地は四百四十万ヘクタール、そして、いわば開発予定地というのは約百万ヘクタールというようなことで、農用地としては五百四十万ヘクタール程度が入ってくるのではないだろうかというふうに考えているわけでございます。  そこで、この農用地となります農用地区域内にあります面積というものは、先ほど土地改良長期計画で申し上げました五百二十万ヘクタールに対して約九〇%のシェアということでございますので、したがって、この農振計画に基づきますおおよその面積というものの中で農用地として利用すべき地区とされておる面積というのは、土地改良長期計画で言い、あるいは需給見通しで言います面積との関連においては、土地改良長期計画趣旨とおおむね一致するものではないだろうかというふうに現在考えておる次第でございます。
  32. 湊徹郎

    湊委員 時間がもったいないですから、ただいまの問題はあとでこまかくお聞きをすることにいたします。  そこで、次に、農用地利用計画土地改良の長期計画との関係でありますが、理屈から考えますと、さっきの大臣の答弁も同様趣旨と私は受けとめておるのでありますが、一億の国民が必要とする農産物需給目標というのがまずあって、それが地域的に展開されて、そういう地域指標を前提としながら農用地利用計画が町村ごとにつくられて、さらにその土地を有効に利用するために土地改良計画がつくられてくる、こういうことが理屈の上の筋書きだろうと私は思います。  ところが、現実には前後してしまって、あっちこっちしておりますから、そのことを別にいまけしかるとかけしからぬとか言うつもりはありませんが、理屈から考えればそういう筋だし、今後道具立てが一応出そろったならばそういうふうな流し方をするのでございますというふうにお考えなのかどうか、その点が第一点。  そこで、この農用地利用計画土地改良長期計画は、そういう意味合いからすれば、当然農用地利用計画土地改良計画の前提になるのだというふうに考えられるわけなんですが、現実は土地改良十カ年計画のほうが実は先に出てしまって、さっきのような開発予定面積七十万ヘクタールというようなもので、おそらく、こまかい地域ごとのある程度のプランもできてしまっておるだろう。だから、それを現実には実施の面で調整をしていく必要があるだろう。そうなると、いままで、さっきの整備計画を大体二千六百町村で立てたというお話しですが、そういう立てたものも含めてもう一ぺん整備計画を見直しをして、土地改良計画調整をしながら、農用地計画の中に予定される土地改良計画対象地域というものは広げて入れていくというふうなことも当然必要になると思いますが、その辺はどうお考えになっておりますか。
  33. 大山一生

    大山政府委員 前段に先生が申されましたことは、現実の動きというかっこうで、先生の御指摘のとおりでございますので、私のほうからは、その事態になればそういうかっこうであるべきであろうというふうに思っております。ただ、一つ農用地利用計画土地改良長期計画との関係で、土地改良長期計画をつくりました際に補足調査をいたしております。それで、開発適地はどういうところであるかという問題を国、県、さらに町村までおりて把握いたしておりまして、その把握する中におきまして、傾斜土でありますとか、作物に応じての気象条件でありますとか、各種の条件に適応するような集団的な生産団地になるであろうかどうかというような経済条件も含めまして、いわば適地であるかどうかということを実は市町村までおりまして把握しておるようなわけであります。そういうデータというものが当然町村べースにおいてあるわけでございますので、町村段階におきます農用地利用計画のときには、大半はそれによってカバーされておるというふうな現状になっております。  したがいまして、土地改良長期計画で定めました七十万ヘクタールの対象になるであろうところは、大体農用地利用計画の中においてそういう位置づけをされておるというふうに考えていいものだろうと思っております。ただ、現実の土地改良長期計画に基づきます具体的地区の選定ということになってまいりますと、その後の情勢の変化というような問題もありますので、ときには農用地区域に入っていないところも出てまいります。そこで、最近のような土地事情というようなことを考えまして、今後新規地区を採択する際には農用地区域に必ず入れるように措置する。これは大体全国的に農振計画がカバーされた現段階でございますので、そういうふうな措置をとってまいりたいというふうに考えておりますとともに、いま申されましたような情勢の変化ということに対処する農振計画の見直しという問題につきましては、農振計画が始まりまして五年たつ現段階でございますので、特にそれを必要とするところは、そういうふうなことをやらせるような予算も実は計上いたしまして、必要があれば見直しもやってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  34. 湊徹郎

    湊委員 次に、この農振地域整備計画の中に生活環境整備が実は計画としては入っていないわけでありますが、その理由というのは一般的にはよくわかるのであります。これは道路もあれば住宅もある。あるいは屎尿施設もあれば通信施設もある。下水道もあるかと思うと、各種の環境衛生施設あるいは文化施設、体育施設等いろいろなものが理屈としては農村の生活環境施設の中に入ってまいりますから、そういうものを全部組み込むなんということは、とてもじゃないが、ほかの省庁も反対するであろうし、かつて農振法をつくる過程で、そのためにたいへんな議論があったということも承知をいたしております。しかし、昨年来農村の生活環境整備のための総合モデル事業が実際に発足をしておる。そうして、農村の生産施設だけじゃなしに、環境施設も含めたものをこれからだんだん考えていこうという趨勢にあることも一方で明らかでありますから、ある意味では、将来の問題としては、農業振興地域制度というものが農村振興地域制度に発展せざるを得ないような時期がそう遠からず来る。まさに農村こそがある意味では農業の問題であると同時に、民族の問題にもかかわる問題である。また、食料問題という国の基本的な政策にも関連を持ってくる。こういうことになってきますと、少なくとも一定の基準を設けて、モデル事業や何かで現実に整備が行なわれ、または行なわれんとする計画を持っているような地域においては、そういう生活環境施設もこの農業振興整備計画の中に入れてもいいんじゃないかというふうに思いますが、この点についてはいかようにお考えになっておりますか。
  35. 大山一生

    大山政府委員 現行農振法の二十一条におきましても、国及び地方公共団体は生活環境施設の整備につとめるというふうな規定もあるようなわけでございますが、先生指摘のように、昨年来、農村地域におきます生活環境も含め、生産基盤整備とあわせて一体的に行なう農村総合整備モデル事業を発足させまして、本年度から本格実施というような段階になってきております。これらの事業の実施につきましては、官制行政機関との間においても多少のトラブルはあるにしても、幸い相当の協力を得られるような情勢になってきております。そういうふうなことからいたしまして、本来的に生活環境整備というものが各省にまたがるということから来る抵抗はあるにいたしましても、農村総合モデル整備事業というようなことを突破口として、ある程度の、農村地帯におきますこの種の事業を総合的計画的に行なうというムードは一つ出てきているような感じがするわけでございまして、現在、われわれといたしましては、農村の振興地域整備計画に関連いたしまして生活環境施設の整備の方向を定めるという附則的なかっこうでこの問題に対処しているような次第でございますが、将来の問題としては、せっかくの御提言でもあり、また、まことにごもっともなことでございますので、今後検討してまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  36. 湊徹郎

    湊委員 次に、いろいろな農業振興のための施策、これは農林省全体の仕事として進められておるわけでありますが、それをある程度計画的に集中的にまとめて実施していくための地域として、農業振興地域整備計画というものがつくられたわけだと理解をいたしております。  さっきメリット調査の話がありましたが、私なんかもいろいろ聞いてみますというと、農振制度メリットがどうもあまり評価されていない。どこへ行っても、ざっくばらんな話を申しますと、農振制度に関して質問を受けたり聞かれたという経験は実はあまりないのであります。そうでありますから、そのメリットが評価されない理由というものはどこにあるかというと、さっきの入れものと中身の関係に帰着する。これは入れものに関する計画なんでございますということで、中身のことは別建てでございますと言うものだから、実際の地域の農家や地域市町村にとってみるとあまりメリットがありそうにも見えない。そういう点に理由があるのだろうと私は思います。具体的な農林省の各種の振興施策が計画的、重点的、集中的に実際に実施されていない。乱暴な言い方をすれば、農林省の各局、各課別の個別の事業、個別の計画、それがそれぞれ各局、各課ごとにつくられて、それがみんなめいめい独自性を持って、縦に、下におろされちまう。そうして、農振計画という一つの入れものの中にそれがすぽっとまとめて入るようなしかけに実はなっていない。だから、農家の人や農村の地域の人たちはあまり評価しないのじゃないかというふうに私は思っておるのでありますが、せっかくつくる農振計画でありますから、文字どおり農村ないし農業全体の振興のためのマスタープランとしてこれが生かされるようにぜひお願いしたいというふうな気持ちを私は強く持っておるわけであります。  そのためには、現在行なわれておる農業振興施策はいろいろあります。農用地区域対象にした補助事業だけで十六種目ございます。その中には、土地改良事業とか、あるいは二次構のような一般的なものもございますが、同時に、今度、個別的な高能率米麦作団地育成対策事業とか、落葉果樹生産振興とか、果樹栽培省力化促進事業とか、晩かん類生産出荷合理化緊急対策事業とか、特産物生産団地育成事業というふうに、みんな見る視角が違う、角度が違う、一般的にとらえている事業もある、土地に即してとらえられている事業もある、作目別につかまえて行なわれている事業もあるというぐあいで、この農用地域を対象にした事業だけで、補助事業の中に、大きな分け方をして十六種目もある。そこで、さらに農振地域対象ということになると、十五種目の事業がそれに加わる。そのほか、農振地域関係なしに行なわれるやつが九種目ある。融資事業にしてもまさに同じで、ほんとうは農林漁業金庫なんというやつは、こまかい細目ごとに見ると六十四品目も実はある。それが補助事業と融資事業とばらばらの形で実際に行なわれて、地域住民のいろいろな意向を吸い上げて準備するところの、いわば受けざらとも言うべき地域振興計画の中では中身のことはこれは別でございますということでは、実際に幾らお題目として集中的、重点的、計画的にやるのでございますと言っても、それはなかなかぴんとこない点がありはせぬかと率直に思います。  その点について最初に農林大臣の所感をお伺いして、そのあと局長さんのほうから、今後どういうふうにやるかということについてお考えをお聞きしたい。
  37. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのございました点は、われわれにとりましても非常に重大な問題でありまして、当初この農振法を制定いたしました当時、わが国の一般経済社会は、いわゆる高度経済成長に伴ってほかの産業が非常に伸びてまいった時代であります。私どもは、当時、将来の国民食料の状況等を勘案いたしまして、農地が経済発展に伴ってこういうようにスプロール化されることは将来非常に禍根を残すことになるということで、まず、農振地域ということでとりあえず大きく網をかぶせ、そこで、そのころ出てまいりましたのが新都市計画法、それで線引きが行なわれてまいりました。その当時、私どもは、将来都市計画の中に入っていくべき予定地域内に包含されておる農地につきましては農転を要さないというふうに思い切った措置を講じ、そのかわり、調整区域につきましては将来のわれわれの計画を尊重すべきであるという立場に立ってやってまいったわけでありますが、その後の経過を見ておりますと、御指摘のように、われわれの理想がそのまま遂行されてきておるとは私どもも申し上げるわけにはいきません。私どもの間で当初考えましたようなふうに進んでおらない点もいろいろ見受けられるわけでありますし、さらに、いまお話しのございましたように、農林省の内部でもいろいろな事業をその中に計画をしてまいります状況はいま御指摘のとおりでありますが、農林省といたしましては、総合的に計画的に予算編成のたびごとにそういう計画を持ち寄って立案をいたしておることは間違いないのでありまして、そういう状況が現在行なわれておる状況であるということは御指摘のとおりであります。  そこで、限られた国土の中で、限られた地域の中で私どもが将来行なうべき農政基本の大切なことの中に農用地があることは申すまでもないことであります。そこで、遠く将来を見通した場合に、この農業地域をどのようにして保持し、どのようにしてその環境の整備を整えていくかということはわれわれに課せられた重大な任務であると存じておるわけであります。したがって、将来ともにいま申しましたような前提のもとに私どもはもろもろの施策を講じてまいるわけでありますが、私ども農林省といたしましては、ただいま申し上げましたような精神を実現していく方向で将来とも施策を進めてまいるという考えでございます。  基本的な立場を申し上げたわけでございます。
  38. 大山一生

    大山政府委員 昨年メリット通達出したわけでございますが、メリット通達出し一つの動機には、農振の整備計画を急がせようという気持ちがあったことも事実でございます。しかし、あの通達の趣旨は、四十九年以降におきましては、生産基盤整備でありますとか、農業生産の近代化に関すること、あるいは農地保有の合理化に関すること、こういったようなものは原則として農用地区域対象とするのだ、あるいは生活環境整備なり広域的流通加工の近代化といったようなものは原則として農振地域対象とするのだ、こういうふうなことをあの通達でうたったような次第でございますが、実は、ことしになりまして、まだ農振計画ができないのだけれども補助金がもらえないのじゃないだろうかという心配が市町村等から相当来ているような現状でございます。  われわれといたしましては、農振地域、特に農用地区域というものは、それこそ農業施策を重点的に、集中的に、そしてまた計画的に推進すべきところということであり、先生の御指摘のように、マスタープラン的な性格があるわけでございまして、現在までのところ、釈明いたしますならば、その中で実行可能なものから逐次実施してきたということでございますけれども、あの通達を契機といたしまして、むしろ、四十九年以降は、こういう農用地区域とそうでない区域という問題に対する採択のあり方の問題まで含めて、今後はこの地帯に集中するように、また集中するに適さないような農用地区域指定であるならば、その区域の変更をさせるというようなことも含めまして、とにもかくにもわれわれといたしましては将来にわたって確保すべき農用地でございますので、そこに重点的に進めてまいる、あの通達の趣旨を生かしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  39. 湊徹郎

    湊委員 だんだん時間も少なくなってまいりましたので、次に、土地政策ないし土地制度と農振制度との関係についてお尋ねをしたいと思います。こまかい点は省きたいと思いますが、一番基本的な点は憲法財産権と農振法との関係であります。国土利用計画法との関係は省略をいたしたす。  憲法二十九条で、絶対に近い不可侵権として所有権が認められておる。したがって、それとのかね合いで農振法の作成に非常に苦労が多かったというふうなことはさっき経過の指摘の中で伺ったわけでありますが、同じ財産権といいながら、天然自然に賦存するような財産権土地とか、水とか、空気とか――このごろは水質汚濁とかあるいは大気汚染というようなことがあるが、いまのところ空気はただのようでありますけれども、水は相当高価なものについております。そういう天然に賦存した、人がつくったんじゃない財産権、それにいろいろな付価価値が、土地改良とか何かつけられて、それなりの価値を持つということはしごく当然でありますけれども、もとの土地というものは、そもそもそういうものじゃない。そういうものと、全く人為的につくり出されたいろいろな各種製品等に対する財産権、構築物とか、建物とか、そういうものとは同じ財産権といいながらニュアンスが違うんじゃないだろうかというふうに私は考えております。  そこで、今度の農振法の場合に、ちょうど同じ憲法の二十九条の第三項で、いわゆる公共の目的のために使用してもよろしいというふうな規定がございますが、この「公共のために」という理解のしかたなんですが、これは特に共同利用目的地域の農家が使う場合、あるいは特定利用権の場合も同様でありますが、そういう場合に、結論としては、ある程度協業経営の実態なんかをいままで見ておりますと、だれかマネージメントの腕を持った人が実質上さいはいを振るい、ある場合には特定人がその共同利用目的土地を差配してしまって実際に使う。それが私欲につながるとは申しませんけれども、そういうケースが非常に懸念されるわけであります。それで今度の場合も、そういう私益と公益ということの使い分けが、特に特定利用権の場合なんかにうまくいくものだろうかというふうな懸念を一方で持ちます。それから、正当な補償のもとでそういう使用は許されるんだということでありますが、基本的には、資産的な土地保有というものと農業の生産手段としての土地保有ないし土地利用というものを考えた場合に、結論は、単に持っているということはナンセンスに近いんだというふうな状態をつくらない限り、農地の流動化とか利用権だけ設定してもほかに土地が移るということは実際問題としてはかなりむずかしいんじゃないだろうかというふうな気がいたしますが、その辺について農林省は今度の法案立案の過程でどの程度自信をお持ちになっていらっしゃるのか、そういう点を二番目にお聞きをしたい。  一番目は、一般的に財産権の問題に関する農林大臣の御所見、二番目には、いまの公共目的のために利用するという場合の農振制度における利用権ないし特定利用権というものがどれだけうまく動いていくかということについての見通し、これは局長でもけっこうですが、以上二点についてお伺いしたいと思います。
  40. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは国民の基本権利に関する重大な問題でございますが、憲法二十九条の所有権の中に土地所有権も含まれることは当然のことでありますが、土地というものに対する観念といたしましては、公共の福祉というものが優先すべきものであるという考え方を尊重することが必要なことではないか、このように考えておるわけであります。いま御審議を願っております法律案を制定いたします場合におきましても、こういう点について種々それぞれの方面と検討をいたしたのでありますが、特定利用権設定に関する制度につきまして、知事の裁定によりまして農用地について賃借権を設定することと私有財産権に関する憲法の規定との関係はどういう問題があるかということでありますが、憲法の保障いたします財産権は絶対不可侵のものではなくて、公共の福祉によって制限される。これはもう法の示すところであります。  二十九条第三項は、公共のためにならば正当な補償のもとで特定の私有財産を用いることができると規定いたしておるわけであります。特定利用権の裁定は、市町村が法に定める公告、縦覧の手続を経て定めました農用地利用計画農用地等として利用すべきものと定められた農用地区域内において、現況農用地でありながら現在もまだ引き続き耕作等がなされる見込みがなくて、これによって農業上の利用が困難となると認められるものを対象といたしまして、市町村または農協が農業経営の改善をはかるという見地から、地域農業者の共同利用に供するために賃借権を取得するのでありまして、これはまさに公共のために用いる場合に該当すると言えると存じます。また、正当な補償とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価額に基づきまして合理的に算出された相当な価額をいうというのが最高裁判所の判例でもあります。  特定利用権裁定の際の借り賃といたしましては、その地域における農用地について特定利用権と同様の内容の賃借権を設定する場合に、通常成立すると認められます借賃の額を考えておりますが、これは前述の正当な補償に該当する。したがって、特定利用権の裁定は現行憲法で許される範囲内であると私ども考えておる次第であります。
  41. 大山一生

    大山政府委員 いま大臣から申し上げましたように、われわれといたしましては、今度の改正法案趣旨は、憲法二十九条との関係におきまして、法制局も含めまして、完全に憲法との関係における問題はないというふうに実は考えておるわけでございます。  この問題はどの点において一番問題になるかというと、個人間あるいは法人との間においていろいろと契約を結ぶことについていわば話がととのわない場合に裁定をする。その裁定があれば強制的に権利が設定されたものとみなされるわけでございまして、そういうような裁定によって権利が設定されるという部分が一体二十九条三項との関係でいかんという問題であるわけでございます。当初の原案におきましては、たとえばいま大臣が申されましたような状況下にあるような、公共的に必要なところであった場合に、人と人との間において協議させて、それについて裁定できるかというような問題があったわけでございます。ですが、公共というような問題との関連からいたしますとやはり共同利用でなければならぬということで、共同利用目的に供する場合ということに限定したわけでございます。この利用権設定されます場合におきます使用収益の主体ということになりますと、これはあくまでも市町村なり農協でなければならぬわけでございます。したがって、その経営なり管理は市町村なり農協が行なう必要がある、こういうことでございまして、これを特定のものに事務委託でなくて完全に委託しちゃうということは許されない、こういうふうな制限はあるわけでございます。  しかし、この特定利用権という問題は、何といたしましても、耕作されていない、また耕作される見通しもない、そしてこのままにしておけば農用地としての利用が困難になると認められるような場合ということでございますので、そういうところについて特定利用権設定されることもやむを得ないではないか、そういうふうな理解が地域農業者間において成立していることが当然前提になってくると思いますけれども、これによりまして、たとえば種苗でありますとか、飼料作物でありますとか、桑の葉でありますとかいったような生産資材の供給あるいは共同利用草地としての牧草の栽培、こういったようなことにおきましてそういう関係農民間のコンセンサスが得られるようなことであるならば、これはそれなりに相当の機能を果たすのではないだろうかというふうに考えているような次第でございます。  いずれにいたしましても、憲法との関係におきましては、この規定について、先生のおことばでするならば確信を持っているのかと言われますと、確信を持っているというふうにわれわれはお答えいたしたいと思います。
  42. 湊徹郎

    湊委員 次に、関連して、農地法と農振法との関係でありますが、この農振法の中にもちろん農地法特例がある程度組み込まれております。農地法と農振法はそれぞれたてまえが違うということはよくわかっております。一方は、どちらかというと農地の権利保全的な側面に重点を置いておるわけでありますし、農振法というのは、農地をいかに利用するか、特に借地農ということでもわかるように、どちらかというと利用的側面にポイントを置いておる。こういう点はよくわかるのでありますが、実際上、国会の中でも、従来、一方じゃ農地法の擁護論、耕作権擁護に関連して農地法を擁護しなければならぬというふうな議論がある。一方では、極論すれば農地法の廃止論というふうな議論もある。そこら辺の中をうまくぬって二刀流を使ったような感じを受けないでもないのでありますが、この農地法と農振法の関係についての農林省の見解をお聞きしたいと思います。
  43. 大山一生

    大山政府委員 農地法というものは、御存じのように、耕作者の地位の安定と農業生産力の維持、増進をはかるという目的から、個別地縁といいますか、個別の農地についての権利権なり転用を規制するということを基調としているわけでございます。それに対しまして、農振法というのは、土地の農業上の利用というものを他の利用調整をはかりながら土地利用区分を行ないまして、その利用区分に即した有効利用をはかるということを目的としているような次第でございます。  そこで、今度の農振法によりまして農地法の適用除外ということをいたしましたのは、一番多いのは農用地利用増進事業であるわけでございますけれども、われわれの考え方といたしましては、農業者内部での利用権に限っての権利移動なり利用関係ということについて農地法の適用を排除するということでございます。そして、また、この仕事の主体が市町村であるということからいたしますならば、市町村の公的事業といいますか、あるいは調整機能の範囲内というようなことでございまして、農地法の後退というようなものではないというふうに実は考えているわけでございます。農外資本といいますか、農外者農地を取られることを防止するといったような農地法の理念との関連からいたしましても、そういう意味では耕作権保護の一般的後退でもございませんし、また、現在のような所有権が強い、耕作権も強いという中では、農地の流動化が進まず、また、進まないなりにも、請負耕作なり作業委託というようなかっこう土地利用が実際上は一部の農家のほうに移っていく傾向も見られる中におきましては、農地法の第一条の本来的なあり方のねらいということにかわる次善の策ということで、禁止ないしは抑制さるべき小作関係ではないのであろうというふうに理解をしておりまして、本質的な農地法と農振法というたてまえの違いの中におきまして、今度の問題というものを、農振地域という中の農用地区域という中におきまして、いわば地域農民の意識、意向を十分に反映させる中で、農振計画を達成するための事業というかっこうに位置づけして、その限りにおいて、農地法の観念的な後退にならぬ限りにおいてそれを推進する意味において農地法の一部の適用を排除した、こういうことでございます。
  44. 湊徹郎

    湊委員 ただいまの問題についてはいろいろ議論したい点がたくさんあるわけでありますが、あと十数分しか残っておりませんので、個別問題の幾つかについてお尋ねをしてみたいと思いますが、農業用施設関係あるいは交換分合関係は時間の関係上省略をいたします。  大臣説明の中の目玉でございます農用地利用増進事業関係について一、二お伺いしたいと思います。  なぜこういう事業が必要になったのかという背後になっておる情勢、あるいはそれに対する対応等はいろいろ先ほどからお聞きしておったのでありますが、現実の対応としてはなかなかいかぬので、正規な利用契約によらない一種の請負耕作とか、やみ小作とか、通称言われておるようなかっこうで対応している地域もずいぶんあるのだろうと思いますが、そこで、この規定の中でずっと見ますと、賃借り権について、どちらかと言うと、いま農家の人がみな資産的な保有傾向を強めておって非常に手放しにくいから、貸し手について貸しやすいかっこうにしようという配慮が非常に強く出ておるのであります。私がむしろ逆に懸念いたしますのは、借り手についての保障といいますか、そういうものがちょっとこの法律の中では弱いのではないかというふうな感じがいたします。特に利用権関係や何かでは、この一、二年のきわめて短期の間の貸し借りということになると、それを前提にして安定した経営というものを借り手のほうではたして期待できるのだろうかということが第一点。  それから、第二点には、土地をうまく使うといっても、最近のように施設、機械等が相当大型化し、そういうものに依存する資本投下がふえておる状況のもとで、そういう不安定な状態で資本投下などがはたして現実に行なわれるものだろうかということが第二点。  三番目には、そういうことであれば、今度は投下した資本の回収についての保障ということもどうもはっきりしておらぬようでございます。これは貸し手、借り手がお互いにバランスをとりながら、動かない農地を何とか動かしていこうという苦心の策だと思いますが、もう少し借り手に対する配慮というものをする必要があるのではないかというふうに思いますが、その点についてはいかがでございますか。
  45. 大山一生

    大山政府委員 この農用地利用増進事業は、先生指摘のような法定更新等がないという意味におきまして、貸し手を非常に安心させるかっこうになっておることは御指摘のとおりだと思います。問題は、労働力の事情からいたしまして、一方では縮少したい農家がある。しかし、また、一方では規模を拡大したい農家のあることも確かでございまして、たとえば都市の周辺でありますとか北陸等の中間地帯におきまして、請負耕作なり、こういったようなかっこうで、いわば農地利用が実際上一部の農家に移っていく傾向があるわけでございます。そういうふうな中において、一つ市町村のある規模の中においてそういうことが可能になるような方法はないかというようなことがこの制度考えたゆえんのものでございます。  この制度の実行ということにつきましては、市町村が増進規程をつくり、そしてまた現実の問題といたしましては、そういう農民の中の自主的な農用地利用組合といいますか、あるいは協議会といいますか、そういったような組織の中におきまして増進計画をつくって、そしてAさんの土地はBさんに、Cさんの土地はDさんにというようなかっこうで、ある一定の区域内において一定の同じような条件下において土地をある人に貸すというような、いわば市町村という安定した主体の責任のもとにおいて、そして、実質的には自主的な協議会というようなものの意向を受けた農家による自主的な調整として行なわれ、しかも、個々ばらばらにそれぞれの契約期間がきまるということではなくて、その地域においてはその地域の実情に応じて、あるいは一年、あるいは二年、あるいは三年というような期間を定めてこの利用増進事業を行なうわけでございますので、利用者側のほうから言いますならば、相当規模の面積が、実際上は安心してやれるような形態になるのではないか。そういう意味におきまして、このかっこうは、単に貸し手だけの配慮ではなくて、そういう事業主体なり、いま申し上げました手続の上で行なわれる意味におきまして、実際上の問題としては借り手にとっても安心できるようなシステムだとわれわれは考えておる次第でございます。
  46. 湊徹郎

    湊委員 時間がございませんから、あと一、二問お尋ねをしたいと思いますが、一つは、農業委員会制度があって、従来農地関係等についてはもっぱら委員会制度中心になってやってきた。今度の農用地利用増進事業は、主体が市町村と農協になる。こういうことになりますと、実際の農地制度全体から考えた場合に、管理体制といいますか、あるいは管理責任といいますか、これが二元化すると思われます。その場合、農業委員会制度あるいは県の農業会議については、運用上いろいろな配慮は当然しておることと思いますが、ただ、制度のたてまえ上そういうふうな二元化と見られるような方法をとることはいかがなものであろうかと思いますが、その点はいかがですか。
  47. 大山一生

    大山政府委員 農業委員会の位置づけでございますが、これは市町村農地行政に関する機関であるということでございます。したがいまして、その限りにおいて、市町村が各種事業、特に農用地利用増進事業を行ないます場合におきまして、非常に大きな機能を果たすことになると考えるわけでございます。たとえば交換分合につきまして知事の認可申請をする場合に、農業委員会の同意書を添付させる。あるいは農用地利用増進規程なり、あるいは計画の作成なり、あるいは知事特定利用権設定の協議の際の承認なり、こういうことにつきましては、意見を聞くということにつきまして、省令で定むべきことは定めてまいりたいと考えているわけでございます。  農業会議でございますけれども、農業会議というのは、農地行政を担当する行政機関ではないという点があるわけでございますけれども、都道府県の農業振興地域整備協議会というものに参加しておりますので、改正後の農振制度の適正な運用に意見が十分に反映されるように指導してまいりたいと考えているわけでございますけれども農地事務の上で農業会議関係の深い事項、先ほど申し上げました農用地利用増進規程の認可でありますとか、あるいは特定利用権に対する裁定を知事が行ないます場合には農業会議意見を聞くように指導してまいりたいと考えている次第でございます。
  48. 湊徹郎

    湊委員 利用増進事業関係についてもいろいろお聞きしたい点があるのですが、あと数分しかございませんから、開発許可関係について一、二お伺いしてみたいと思います。  農振法の中で開発許可制度がとられておる。都市計画の中でも開発許可制度がとられておる。また、過般成立を見た森林法の中でも開発許可制度がとられておる。そこで、実態的にいままで私どもしばしば経験をするのでありますが、そういうふうな同じ開発許可について、あるものはイコールでいいだろうし、あるものはほかのものが前提になる場合も出てくるだろうし、そういうふうに考えた場合に、国土利用計画法の中で五地域に分けてあるわけでありますが、それぞれの地域でもってそれぞれの開発許可が行なわれる場合に、片一方が片一方の条件になるとか、お互いにキャッチボールみたいにし合って、一方の林野のやつがなければこっちじゃ扱えませんとか、片一方の府県の農政担当のほうでは、今度はいまの逆になりますから、林野関係ですと、農振法のほうの許可が前提にならなければ私のほうは処理いたしませんとか、あるいは都市計画関係のほうとかね合いになったりということが実際の運用上懸念されるわけなんでありますが、相互に条件化し合うことのないように、このそれぞれの制度に基づく開発許可をどういうふうにいままで調整なさってきたか。あるいは、これから運用上調整していこうとなさっておるのか。これは実際問題として相当ございます。各種の許認可事務について、一方のものがなければ片一方はいやだよ、相手のほうは向こうがなければこっちはいやだよということで、二カ月も三カ月も半年もかかっている事例を実はたくさん知っているものですから、そこら辺についてひとつお聞きしておきたいと思います。
  49. 大山一生

    大山政府委員 問題を農用地区域内における開発規制に限って申し上げますならば、農用地区域ということにつきましては、これは農用地として利用すべき土地として、今後長期にわたって保全し、改善し、改良してまいるというところでございますので、それに支障を来たすような開発行為規制に関しましては、農林省サイドが、われわれのサイドに関連する県も含めまして、当然中心にならざるを得ないというふうになり、また、なるべきであろうと実は考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、この種の行為がいろいろの許可との関係において事務手続だけが煩瑣になる、あるいは時間を食うということは好ましくないわけでございます。そこで、都道府県等におきましても、同一の部課で所掌を担当していない場合におきましては、連絡会議を開催する等の密接な連絡を保つ中において、関係者の迷惑にならぬように措置してまいりたいと考えておりまして、この点につきましては、いまの段階で申し上げるのはあれでございますが、もしか法律が通りました暁には、その種の指導はぜひしたいと考えている次第でございます。
  50. 湊徹郎

    湊委員 その他開発関係についてもいろいろございますが、もう大体時間になったようでありますから、以上で質問を終わりたいと思います。
  51. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際、午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十八分休憩      ――――◇―――――   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕