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1974-05-16 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十六日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 津川 武一君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    小沢 一郎君       吉川 久衛君    熊谷 義雄君       島田 安夫君    井上  泉君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    馬場  昇君       美濃 政市君    横路 孝弘君       諫山  博君    瀬野栄次郎君       稲富 稜人君    小宮 武喜君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         農林大臣官房技         術審議官    遠藤 寛二君         農林省構造改善         局次長     杉田 栄司君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         食糧庁長官   三善 信二君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         人事院給与局給         与第三課長   斧 誠之助君         経済企画庁総合         開発局管理課長 鶴  哲夫君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 宮沢  香君         運輸省船員局労         政課長     増井 正治君         運輸省船員局労         働基準課長   吉末 幹昌君         気象庁予報部長         期予報課長   内田 英治君         郵政大臣官房電         気通信参事官  石田  彪君         労働省労働基準         局監督課長   岸  良明君         建設省河川局水         政課長     佐藤 毅三君         建設省河川局開         発課長     宮内  章君         自治省財政局指         導課長     高田 信也君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 五月十六日  辞任         補欠選任  米内山義一郎君     横路 孝弘君   神田 大作君     小宮 武喜君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君    米内山義一郎君   小宮 武喜君     神田 大作君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横路孝弘君。
  3. 横路孝弘

    横路委員 きょうは水産行政についてお尋ねしたいと思うのですが、初めに、ことしの日ソ漁業交渉の際にソビエト側からサケマス共同増殖提案があったということで、場所がピオネール川、カムチャツカ半島クリル湖、クロノツキー湖ということですけれども、具体的な向こう側提案の内容と、現在どんなことに話がなっているのかということについて、初めにお答えをいただきたいと思います。
  4. 内村良英

    内村(良)政府委員 ソ連極東地方において、日ソ共同サケマス増殖事業実施する問題につきましては、先生案内のように、北洋サケマス漁業の長期安定をはかる見地から、かねてからソ連に対し、その実現を強く働きかけてきたところでございます。特に、一昨年の八月には、その実現のための日ソ専門家間の予備会議が開催されておりますし、昨年十月の日ソ首脳会談あるいは櫻内前農林大臣の訪ソの際も、本事業早期実現について話が行なわれまして、その具体化のための専門家会議の開催について合意が得られたわけでございます。日本側といたしましては、右の合意に基づきまして、本年の日ソ交渉の機会を利用して、ソ連側と話し合うことといたしまして、ソ連具体案の提示を求めましたところ、交渉最終日ソ連から提案があったわけでございます。  その提案概要でございますが、ピオネール川につきましては、シロザケマスギンザケ及びサクラマス総合増殖施設、これは三千万粒のふ化工場施設等をつくるわけでございますが、経費といたしまして、約二千万ルーブル、円にいたしますと約七十二億円の経費がそれにかかるという説明があったわけでございます。次に、クリル湖につきましては、シロザケベニザケギンザケ及びマスノスケの総合増殖施設、これは五百万粒のふ化工場等でございまして、経費といたしましては三千万ルーブル。それからクロノツキー湖につきましては、ベニザケ総合増殖施設、これは約千五百万粒のふ化工場等でございますが、経費ソ連からの提案がございません。いずれにいたしましても、このような提案がございましたので、今後政府といたしましては、ソ連側から提案のあった具体案を早急に検討の上、できるだけ早期にまず日ソ専門家会議を開催しまして、本事業実現に積極的に努力してまいる所存でございます。
  5. 横路孝弘

    横路委員 その協力をする事業の形態とか費用の分担等についての話にはまだ入っていないわけですか。その辺のところはどういうようにお考えでしょうか。
  6. 内村良英

    内村(良)政府委員 それらの点につきましては、日ソ専門家会議を開催いたしまして、その会議でいろいろ検討するということになるわけでございます。
  7. 横路孝弘

    横路委員 そこで、問題は、ことしの六月には海洋法会議も開かれ、日本漁業あり方自身も非常に大きくこれから変えていかなければならないという新たな局面に当面しているだろうと思うのですが、日本国内でも、沿岸漁業対策といいますか、それからなおかつこのサケマスの点で向こう側にもこれから協力をしていくという面で、ふ化事業体制というものを強化していくべきじゃないかというように考えるわけですが、現状を見ますと、研究体制も非常に弱いし、予算も少ないわけですね。具体的にはこれからお尋ねをしていきたいと思うのですけれども、基本的には国内サケマスふ化事業の方向についてどのように水産庁として考えているのか、基本的な方針をまずお伺いをいたしたいと思います。
  8. 内村良英

    内村(良)政府委員 現在、先生案内のように、北海道におきましてサケマスふ化放流事業実施しているわけでございます。これはもちろん、わが国沿岸漁業資源のみならず、サケマスでございますから、国際的な資源維持にも大きな役割りを果たしているというふうに考えておるわけでございます。  北海道ふ化場は、昭和二十七年に設置されましてから今日まで、わが国サケマスふ化放流事業の全般について指導的な役割りを果たしてきておりますし、特に、近年におきましては、健全なる稚魚の放流放流時期の調整等により、三十八年には約三百七十万尾でございましたシロザケ沿岸回帰量が、四十八年には約八百万尾となっております。これはかなりの事業的な成果をあげているというふうに私ども考えております。ふ化放流事業につきましては、サケマス類に対する需要の増大に対応いたしまして、資源増大をはかるため、今後とも充実強化する必要があると考えております。  それではどういうような目標でやっているかということでございますが、このため昭和五十五年のシロザケ沿岸回帰量を約一千万尾を期待するような計画を持っておりまして、これを達成するため、国の増殖施設整備充実をはかるとともに、北海道及び民間団体等増殖体制強化確立及び施設整備を行なうよう、今後努力してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  9. 横路孝弘

    横路委員 私のほうも幾つかふ化場事業場を回ってみて、いろいろ話も聞いてきたわけですが、いまもお話しがあったように、サケの再生産効率というものが、そういう意味では現場職員苦労で最近非常に上がってきているわけですね。回帰率を見ても、いまもお話しがあったように、いまから十年ほど前に比べますとほぼ倍ぐらいに回帰率がなっているわけです。私の手元にあるものは、一九六六—六七の回帰率が二・〇四%で、その十年前の五六—六〇のやつを調べますといち・〇九%です。現実に、いまもお話しがありましたけれども、十年前に比べて、サケが七三年で八百万尾ですから、事業量にしますと大体三・五倍から四倍ぐらいにふえているわけですね。カラフトマスが二百万尾ということで、やはりこれも同じようにふえているわけですね。そんな意味で、大体水揚げを計算してみると、百五十億から二百億ぐらいの沿岸河川を含めた水揚げ量になっているわけです。事業量を拡大すれば水揚げそのものも非常にふえるわけですし、そういう意味では投資効果も非常にいいんじゃないかというように思うわけで、その辺のところの五十五年を目標にというやつを、実はもう少し早めてやるべきじゃないかという観点から少しお尋ねをしていきたいと思うのです。  事業量を拡大するためには、その体制が確立することがまず第一だろうと思うのです。それで、体制ということになりますと人と予算という問題があるわけですけれども、現在は百五十五名の定員で、中の島のふ化場、それから六つの支場、四十一の事業場ということで、現在サケマスの遡上し得る河川というものを調査してみると二百十二河川ある。ところが、そのうちの半分しか人工ふ化放流事業がまだ行なわれていないわけですね。いま五十五年一千万尾というお話しでしたけれども放流し得る河川事業場そのものをもっともっと拡大していくべきじゃないかというように考えるのです。いま、サケの場合、五十五年一千万尾を目標施設整備充実をはかるというお答えでしたけれども、もう少し具体的にお金と人さえつけてやれば幾らでも事業そのものを拡大することができるわけで、そんな先の計画を立てなくても、もうちょっと急いで整備することができるんじゃないかというように考えるわけですけれども、その辺のところはどのようにお考えでしょうか。
  10. 内村良英

    内村(良)政府委員 北海道全道には千四十二の水系がございますが、これらの水系の中で、従来サケマス類の遡上が見られましたのは、先生も御指摘がございましたように二百十水系でございます。この中で、これまでにサケカラフトマスサクラマスのいずれかの魚種が千尾以上遡上した実績を持つものは、オホーツク海区が二十五、根室海区が十二、襟裳以東海区が六、襟裳以西海区が七、日本海区が二十九、合計七十九水系でございます。  ふ化放流事業実施につきましては、北海道さけますふ化場予算施設等現状から見まして、最大の増殖効果をあげるべく、サケマス増殖上、全道的ないし海区的に重要な河川といたしまして、オホーツク海区十七、根室海区二十、襟裳以東海区八、襟裳以西海区十九、日本海区九、合計七十三水域を選定いたしまして、現在事業実施しているわけでございます。  そこで、先生指摘のように、この事業を拡大していくためには新たなる河川においてふ化放流事業実施する必要も確かにございますので、現在、実施河川としての可能判定のための調査を全道二十二水系について実施しております。したがいまして、この可否判定を得た後に、私どもといたしましては未利用河川利用というものを拡大していきたいと考えておりますけれども、その点につきましては、実施河川としての可否判定に待ちたいと思っておるわけでございます。
  11. 横路孝弘

    横路委員 私のところに、四十三年の報告書とか、四十四年の報告書があるのですけれども、それはいま調査中というより、もうかなり前から計画的に、どういう状況かという非常に詳細なデータというものが各河川ごとにできているんじゃありませんか。私の聞いている範囲では、その二百十二河川が可能だということで、あとはもっぱら人と予算の問題で、これは具体的にあとからお尋ねしていきますけれども、その体制皆さんのほうが思い切ってとるかどうかということにかかっているんじゃないかと思うのですね。国の事業で、人件費そのほか含めて、四十九年度で要求しているのが大体七億程度お金ですね。これで成果としては百五十億ないし二百億ぐらいの成果をあげているわけですから、投資効果というものは非常にいい分野にこれは入るんじゃないか。しかも、これから日ソ漁業交渉なり海洋法会議というような点を含めて考えてみますと、やはりこの際このサケマスふ化事業を飛躍的に増大させていかなければならないという面から言うと、もうすでに調査は終わっていて、あと水産庁の決断にかかっているというように、現場職員はみんな言っているわけですが、その辺のところはどうでしょうか。
  12. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から経済効果の点の御指摘があったわけでございますが、私どもといたしましても、この事業は非常に経済効果をあげているというふうに確信しております。すなわち、回帰魚一尾当たりの放流経費は平均約五十円三十九銭でございますけれども、四年後に遡上してきた場合、これが千六百五十円というようなことで売れておりますから、経済効果としては非常に効果の高い事業であるというふうに見ております。  それからさらに、昨今のいろいろな遡河性魚類をめぐる海洋法中心とする国際情勢等にかんがみましても、この事業の拡充は私どもとしても非常に必要を痛感しておりまして、毎年いろいろ努力はしているわけでございます。したがいまして、今後、事業実施できる河川につきましては極力早く実施するよう努力したいと思っておりますけれども現状ではそのようなことになっているわけでございます。
  13. 横路孝弘

    横路委員 ですから、この五十五年一千万尾というやつは、ある意味では、いまの漁業をめぐる環境変化以前の状況で立てられた計画なんですよ。特にこの一、二年、いまもお話しがあった海洋法会議中心として、しかも日ソ漁業交渉関係も毎年毎年きびしくなる。こういうことの中では、先ほどの話によっても、ソビエトのほうから提案があったサケマスふ化事業が、ピオネール川で七十二億、クリル湖で百八億で、これは向こう側のそれだけの予算ということですから、どの程度日本側協力するかというのはこれからの話なんでしょうけれども、ただ、しかし、北海道のこのサケマスふ化事業全体にかけている一年間の年間予算というのは人件費を含めてわずか七億ですね。ですから、そんな意味ではやはりこの際いまの時点に立って考え直して——しかも、可能な河川というのが、いままでの調査でいまのほぼ倍あるわけでありますから、それは何もいまやっているばかりではなくて、毎年毎年、ずっと地域ごとに分けながら河川調査をまず行ない、具体的な計画を立てるということを少ない予算の中から現場人たち苦労してやっているわけですよ。したがって、この際ソビエト側協力するのはもちろん協力するが、同時に、国内のほうの資源育成といいますか、そういう観点に立ったふ化事業をこの際飛躍的に前進させるべきではないかというのが私の意見なわけですけれども、その辺のところはいかがですか。
  14. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもといたしましても、最近の漁業をめぐる情勢にかんがみまして、ただいま先生から御指摘のあった線で努力したい、努力しなければならないと思っておるわけでございますが、御案内のように、定員増加等にはいろいろ問題がございますので、そういった現実考えながら、ステップ・バイ・ステップと申しますか、具体的な措置を前向きにとっていかなければならぬというふうに考えておるところでございます。
  15. 横路孝弘

    横路委員 確かにその定員の問題は、定員法のワクがありますよ。しかし、これは説明すれば幾らだって説明のつくことなんですよ。皆さんのほうがきちんと計画を立てられて、そのためにこれだけの予算人員が必要だということになれば、それは決して筋の通らない話じゃないのですね。したがって、私どもで要望しているのは、従来の計画、五十五年一千万尾というのをもうちょっと——大体河川についてはもう調査は終わっているわけですから、事業量そのものは、あとは人と予算関係さえつければ飛躍的に前進できる。しかも、沿岸漁民のほうもいままであまり理解がなかったけれども、最近ちょっと回ってみると、このふ化事業場に対しては非常に協力の姿勢を示しているのですね。つまり、非常に効果のあるものだということがわかってきた。しかも、これはお金になりますしね。そんな意味では、これからの対ソ交渉漁業交渉をやるにあたっても、日本側でこれだけ予算人員を投じてやっているのだということを向こう側に示すことは、政府にしたってそれは大きな手になると私は思うのですよ。それを従来怠っている。そして、ソビエト側から養殖事業をやるから協力してくれと言われて、その予算規模を見てごらんなさい。日本は一年間わずか七億で、向こうピオネール川だけで七十二億、ふ化場施設そのほかをつけてやろうというわけでしょう。だから、これはよその国に向かってあまり大きな顔のできるようないまの国内ふ化事業体制ではないと思うのです。したがって、その辺のところを、私たちのほうも応援することは応援しますからひとつ——たとえば人の問題を見てみても、三十七年から四十一年に比べて、事業量はほぼ二倍ですよ。定員のほうは二名減っているのですね。それから施設費のほうは、三十七年から四十六年にかけて大体三・五倍から四倍にふえているんですよ。ところが、人のほうはお話ししたように二名減っている。投資効果のほうはどうかといえば大体二十五倍、こういう数字が出てきていますわ。それぐらいふえてきているわけですね。非常にそれには苦労をされているわけですよ。研究員というのはわずか九名でしょう。しかし、この研究員人たちはもうほんとうに専門家ですから、ソビエト側に招かれていったり何かして、非常に一生懸命やっておられるわけですね。だから、その辺のところを、従来のような惰性で少しずつふやしていくというのではなくて、これからのそういう変化に対応して、もう一度きちんと現状考え計画を立てられる、飛躍的に前進をされるということを水産庁としてもぜひ検討していただきたいというように思うのですけれども、いかがでしょうか。
  16. 内村良英

    内村(良)政府委員 先ほどから申し上げておりますけれども日本漁業をめぐる国際的情勢は非常にきびしいものがございます。一方、動物たん白質としての水産物の供給ということを考えますと、生産量をふやしていかなければならぬということで、水産庁といたしましては、今後、海洋法会議あるいはそれ以後の情勢におきましても、わが国遠洋漁場確保につきましては、二国間交渉あるいは低開発国に対する技術援助資金援助等を通じまして漁場確保をはかっていくと同時に、沿岸振興ということをはからなければならぬということを考えておりまして、この国会でも沿岸漁場開発整備に関する法律を御審議いただき、法律として成立したわけでございます。そういったことをてこにして今後沿岸漁業整備をはかって、生産力をあげていかなければならぬ。  その場合に、確かに、このサケマスふ化放流事業というものはサケマス国内資源の増強に非常に役立つわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、来年以降、沿岸漁業の見直しという問題に大いに力を入れていかなければならないというように思っておりまして、その場合に、そういったサケマス人工ふ化の面につきましても極力努力をしなければならぬというふうに内々検討している段階でございます。  しかし、定員等の問題につきましてはなかなかむずかしい壁もございますので、その辺のところは現実的に問題を解決していきたいというふうに思っております。
  17. 横路孝弘

    横路委員 定員のほうは、だから、われわれのほうでも応援してやりますから、ただ、基本になる計画だけはちゃんと水産庁のほうで立てないと、事業をどうしていくかということなしに人をよこせと言ったって、人というものはつくものじゃないのですよ。その辺のところが皆さん方にないから、人のほうだけどんどん減らされてくるわけですね。  そこで、定員の点についても、事業がこれだけふえながら定員が二名も減っておる。しかも、欠員も若干おるようですね。そういうことでは困るので、その辺のところもひとつ皆さんにぜひ検討していただきたいというように思うのですけれども、いかがですか。
  18. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまも御答弁申し上げましたように、沿岸漁場振興につきましては、今後十分計画的にこれを進めたいと思っておりますので、そうした計画の一環として、このふ化場の問題も計画を立てて事業を進めたいというように思っております。
  19. 横路孝弘

    横路委員 それと、この四十九年度のサケマスふ化事業予算概要を見ますと、調査試験費というのがわずか七百万ちょっとですね。研究者が約九名おって、そちらにはそのほかの予算もつくんでしょうけれども、これではいずれにしても圧倒的に少ない。七億足らずの予算の中で半分が人件費でありますから、施設整備関係——道内さけますふ化場へ行ってみますと、私は二月の冬のさなかにちょっと行ってきたのですけれども、これはもうたいへんなところもあるわけです。いま一応屋根がついて、その屋根のもとで仕事をするところもありますけれども、そうじゃなくて、雪かきをしながら、冷たい水の中に手を入れて仕事をするというように非常に苦労されているわけですね。だから、そういう関係試験研究費とか、施設整備費関係についても大いに努力をしてもらいたいというように思うのです。  そこで、四十一年度から皆さんのほうで要求しているこのサケマスふ化事業に従事している職員特殊作業手当の問題ですけれども、四十九年度予算にあたって皆さんのほうでどういう要求をされて、それがどうなったのか。そのいきさつを初めに農林省のほうからひとつ…。
  20. 内村良英

    内村(良)政府委員 四十九年度の水産庁特殊勤務手当要求といたしましては、一日百五十円で、十月から二月まで百十九日、六十四人で百十四万円という予算要求をしたわけでございますが、これが遺憾ながら認められなかったという経緯がございます。
  21. 横路孝弘

    横路委員 その認められなかったのはどういうことになるのでしょうか。これは人事院のほうでお答えいただきたいのですが、これは要求としてはたしか四十一年から出ている要求ですね。これが毎年だめになっているのはどういうことでしょうか。
  22. 斧誠之助

    斧説明員 お答えいたします。  先生がおっしゃいますように、さけますふ化場ふ化作業特殊勤務手当につきましては、四十一年以来要求がございます。われわれのほうで検討いたしておるわけでございますけれども、御承知のように、特殊勤務手当と申しますのは、著しく危険、不快、不健康という、そういう作業について手当をつけておるわけでございます。大体、現在つけておりますのは、非常に直接的にそういう危険とか不健康とかあるいは不快感が伴うというようなものでございまして、たとえば爆発物を扱いますとか、あるいは有害物を直接扱いますとか、あるいは自動車が走行しております道路上で作業を行ないますとか、そういうふうに非常に直接的なものであるという観点から評価しておるわけでございます。  それで、サケマスふ化作業につきましては、要求の趣旨は、採卵にあたりまして行ないます熟度選別業務であるとか、あるいは採卵、採精、それからその後の卵の管理であるとか、そういう際に非常に冷たい水の中で素手で作業をすることが多くて、しかもそれが秋から冬の作業である。まあ、神経痛というような病気も長いことそういう作業をやっていると起こるというような趣旨であるわけですが、いま申し上げましたような特殊勤務手当の非常に直接的な危険とか不健康とかというのにはちょっとまだ当たらないのではないかということで、特殊勤務手当をつけようという結論をまだ得ていないわけでございます。なお今後も検討はしてまいりたいと思っておりますが、ほかの要求もたくさんございますわけで、それらとの均衡を見ながら考えていきたいと思っております。
  23. 横路孝弘

    横路委員 要求自体だってわずか百五十円でしょう。一年間の予算が、四十九年度に要求されたのがたしか百十四万ですね。まあ、百五十円というお金だって、いまの時期から見ればほんとうにスズメの涙にも達しないお金で、しかも仕事自身が、これは東京におったんじゃちょっとわからないだろうと思うのですよ。サケマス事業そのものは、これは農林省のほうに説明してもらったほうがいいのかもしれませんけれども、六月ぐらいからずうっと秋にかけて上がってくるのをとっておいて、そしてこれを採卵して、そして一番仕事のきついのは実は冬期間なんですよ。冬期間の大体十月ぐらいから二月、三月ぐらいがちょうど稚魚にかえって、これを育てて、それで放流してやるという時期で、その作業を私も行って見てきたのですけれども、大体ふ化場のある場所自身が北海道の中でも非常に寒いところが多いんです。そうですね。大体十月から二月ぐらいまでの平均の気温がやっぱりマイナスになっているところが多いですね。たとえば北見あたりですとマイナス一・九度とか、十勝支場なんかは十月から二月ぐらいは平均でほとんどもうマイナスですね。天塩の支場管轄の事業場もほとんどマイナスですね。若干あれなのは渡島支場管内ですが、それでも平均温度が三度とか四度とかいうような程度のところですよ。外の気温が、ですよ。そして、作業は水の中に手をつけてやる作業なわけです。これは先ほどの議論を聞いておったと思うのですけれども回帰率が高まったというのは、職員人たちが非常に苦労をされて、親のサケからとった卵を一つ一つほんとうに大事にしながら、たとえばぐあいの悪くなったものを全部はずしていくわけですよ。水の中に手をつけては、ね。さいてやる作業そのものもこれはたいへんな作業で、一人一日大体五百匹ぐらい処理をするのですけれども、そんな意味で、投資効果そのものは非常にいい仕事に従事していながら、場所は山の中で、しかも一人で作業している。そして、非常に冷たい水の中に手を入れて作業せざるを得ないという状況にあるわけです。もちろん危険な点だって、これはないわけじゃないのでして、最近は大体全体の施設の、私の調査した範囲では、二八%程度は外のふ化している場所の上に屋根をつくって、一応雪がかからないような仕組みにしています。ところが、全体がそうかというと、まだまだそうじゃなくて、残りの八四%というのは外にあるわけですよ。そうすると、外に地下になっておって、下のほうに水槽をつくって、そこに入れておく。上にふたをしてあるわけですね。そうすると、雪が降るとそれを全部除きながら、かがんで手を突っ込んでやらなければならぬという仕事なわけです。  ですから、その辺のところは、たしか人事院でも調査されたことがあるだろうと思うのですけれども、天塩とか、北見とか、根室とか、十勝あたりが中心になっているふ化事業であるだけに、そういう寒さというものは、東京でデスクワークされておったんではなかなかつかむことのできないものがあるんじゃないか。私も二、三行って見てまいりましたので、いまこれからふ化事業そのものが非常に大きく前進しなければならぬというところで、全体でわずかの人間で一生懸命いままでだれにも認められないで苦労しながらやってきている仕事であるだけに、ぜひ人事院のほうの努力を願いたいのと、それから農林省のほうも、これをもうちょっとまじめに、と言ったらおこられるかもしれませんけれども職員から言われて、何か形だけ要求しているというようなぐあいにしか見えないので、もう少し真剣に人事院のほうにも話をし、大蔵のほうにも話をするという姿勢をぜひとっていただきたいというように思いますので、水産庁長官のほうと人事院のほうから御答弁をいただきたいと思うのです。
  24. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どものほうも、真冬の非常にきびしい寒さの中で素手の作業をしているということは十分承知しておりますので、まじめに予算要求してきたわけでありますが、今後におきましても極力実現するように努力したいというふうに考えております。
  25. 斧誠之助

    斧説明員 院といたしましては、水産庁のほうからもよく事情を詳しく御説明いただきまして、なお検討を続けたいと思います。
  26. 横路孝弘

    横路委員 ほんとうは時間さえあれば、少し寒いところを寒いときに調査に行ってもらいたかったのです。皆さん方、夏に調査に行ったってだめなんです。ふ化場のほうというのは、ある意味では、仕事が一段落する時期はこれからちょっとの間ですね。夏のサケが上がってくるところを見て——それは、上がってくる風情なんというのは、行ってみたってなかなかいいものですよ。しかし、それじゃ苦労はわからぬのです。大体皆さん方がやる調査というのは、北海道へ行くのは夏でしょう。ぜひ冬に行って、寒い水の中で仕事をしている状況を、できれば現地で調査をしていただきたい。これはお願いですけれども、ひとつ検討していただけませんか。
  27. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもといたしましては、できるだけそのような調査人事院協力してやりたいと思っております。
  28. 横路孝弘

    横路委員 そこで、最後にもう一度水産庁のほうに念を押しておきますけれども、ともかく非常に大事な仕事だろうというように思うのです。沿岸の漁民も非常に期待をしているわけです。そこで、ひとつ長期的に——河川調査は、大体二百十二河川というのがもうあがってきておるわけですから、それに対してどういう体制かということを基本的にお考えをいただくという点が第一点ですね。まずこれを、ちょっとくどいようですが、もう一度確認をしていただきたいと思うのです。
  29. 内村良英

    内村(良)政府委員 可否判定につきましては、専門家の意見等も十分聴取し、かつ、実際問題といたしましては、先ほどから申し上げておりますけれども定員その他の関係もございますので、そういったことを見定めて現実的な計画を定めたいというふうに考えておるわけでございます。
  30. 横路孝弘

    横路委員 そこで生産をあげていき、仕事をふやしていくために一番大事なことは何かというと、河川の環境が非常に大きくいま変わりつつあるわけです。サケマスの生産にとって、河川環境が変わるということで障害になるものは、一つは渇水ですね。流水量が減少するということが非常に大きな問題ですね。それから、水量そのものの量が不安定だ。減ったり多くなったりするということも、これは困るわけです。それから、水質の汚濁ですね。とりわけ河川改修の関係をへたにやられると、これはもうそれで終わりということになるわけです。  それから、ダムそのほか森林伐採というような問題があるわけですけれども、そこで一つお尋ねしたいのは、たとえば千歳川ですね。これは石狩川につながっていって、ふ化事業の一つの拠点になっているのですけれども、たとえば東部苫小牧の開発に従って千歳川の水の切りかえをして、夕張川のあのきたない水を途中で流して千歳川の水は東部苫小牧の工業開発の水にするというような計画が一方で進んでいるわけです。こういうような点は農林省のほうに相談はあるものなんですか。皆さん方水産庁のほうでこれの相談を受けておりますか。
  31. 内村良英

    内村(良)政府委員 相談を受けておりません。
  32. 横路孝弘

    横路委員 たとえば、これはもう致命的な問題なんですね。これは支笏湖のすぐ周辺にふ化場があって、かなり大々的にやっておる。石狩川は最近、少しずつではあるけれども、だんだん水質の汚濁がとれてきまして、サケの上がってくる遡上が相当ふえてきておるのです。したがって、そういう重要な問題なんです。きょうはそれを議論するのが中心ではありませんからほかの関係を呼んでおりませんので、これはまた別の機会にやりたいと思うのですけれども、これはもうともかくそこで水が切りかえられてしまって、千歳川の水はみんな東部苫小牧の工業開発に使う。夕張川の水を途中で切りかえをして、千歳川に持ってきて石狩川へ、ということになるわけですね。そうするとふ化事業場は、あそこの事業場は少なくともだめになるわけですよ。  ですから、その辺のところは、河川改修にしても、そういう基本的な問題について、水産庁としてもほかの省庁との連絡をとってといいますか、こういうことについては皆さんのほうの立場からものを言う機会にはものを言う。いまそういう機会がなければ、そういう機会をぜひつくってもらいたいということを要望したいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  33. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま御指摘のあった点でございますが、一般論的に申し上げまして、開発につきましては知事の権限のものが多いわけでございます。たとえば埋め立てをとりましても、埋め立ての免許は知事がやる。その場合、従来の動きを見ておりますと、県の中で開発関係の部局の人たちのほうが先に走ってしまう。そこで、その場合に、同じ県でございますので、中で十分調整してもらえばいいわけでございますが、水産関係がそれを知らない。そこで、現場で問題が起こってから水産関係者が知るというようなことがかなりあるわけでございます。  そこで、水産庁といたしましては、今後沿岸漁業振興をはかっていくためには、そういった問題についてもあらかじめ事前に知って、十分水産関係の意見も入れてもらって、沿岸漁業振興に遺憾ないようにしなければならぬということを実は最近痛感しておるわけでございます。したがいまして、すでに科学技術庁とは原子力発電の問題でそういう話をしておりますけれども、ほかの省庁ともそういった話をいたしまして、十分水産関係者にも事前に知らせてもらって、こちらの意向というものを入れてもらうというような形で今後処理しなければいけないんじゃないかということを実は痛感している段階でございまして、ただいま具体的に先生の御指摘がございました事項につきましても、同様の精神で対処したいというふうに考えております。
  34. 横路孝弘

    横路委員 そこで、現場ふ化事業に当たっている人たちは、各河川についてもいろいろな意見を持っているのですよ。河川改修についても、こういうぐあいにやってもらいたいとか、いろいろ意見を持っています。それはあとで知ってしまうんではおそいというような事情もあるようですから、水産庁としてもサケマスふ化場のほうに指示をしていただいて、いま問題になっているものがどういう点なのかということをまず調査をされて——これは各事業場なり市場なりの現場人たちは知っているわけですから、人が足りなくてたいへんだろうと思うのですけれども、その辺の調査をされて、必要なものについては他の官庁に対しても意見を述べるという機会を、このサケマス事業という場に限ってでもけっこうでございますので、やっていただきたいと思うのですけれども、よろしいでしょうか。
  35. 内村良英

    内村(良)政府委員 そのように取り計らうようにいたしたいと思います。
  36. 横路孝弘

    横路委員 そこで、もう一つ問題は、これもやはり水産行政の基本にかかわる問題なんですけれども、北水研が余市から釧路へ移転をするということで、これは余市の研究者の反対を押し切って釧路での計画というものが進められているわけですけれども現状はどういうことになって、どこまで進展をしているのか、その内容はどうかという点についてお答えをいただきたいと思います。
  37. 内村良英

    内村(良)政府委員 北海道の水産研究所の移転問題につきましては、わが国北方海域の重要資源に関する調査研究を効率的に推進するために、北海道の水研を、現在地でございます日本海側の余市市から北方海域の主要漁場に面する道東の太平洋岸の釧路市に移転整備する方針で、四十八年度に研究所の用地の取得を終了し、四十九年度から施設整備に着手することとしております。  そこで、研究所用地及び宿舎用地、合計二・五ヘクタールの売買契約につきましては、今年の三月に終了しておりまして、四十九年度に用地の整備と庁舎、研究施設等整備に着手する予定になっております。
  38. 横路孝弘

    横路委員 その四十九年度予算というのは、どういう内容になっていますか。
  39. 内村良英

    内村(良)政府委員 四十九年度の予算は三億八百三十九万円でございまして、この予算によりまして宿舎と共同研究施設の建設にかかるということになっております。
  40. 横路孝弘

    横路委員 その共同研究施設というのは、庁舎とは別ですか。
  41. 内村良英

    内村(良)政府委員 庁舎でございます。そのほかに、庁舎といたしまして、特殊研究施設というものを将来つくることになっております。
  42. 横路孝弘

    横路委員 北水研のほうから施設整備計画書というのが四十七年の二月に出されているのですけれども、この内容と比べてみて、これは現地のほうの調べなんですけれども施設費が当初よりも単価が上がってしまって、住宅のほうが当初よりも少なくなって、施設費のほうに回されているというふうに聞いているのですけれども、その辺のところは、具体的に住宅は同月四十九年度通して幾ら予算施設費のほうは幾らというように分けて、少しこまかいことで恐縮ですけれどもお答えいただきたいと思います。
  43. 内村良英

    内村(良)政府委員 住宅につきましては、四十九年度に実は十八戸整備する予定にしておりましたところを、諸般の事情からこれを四戸にいたしまして、残りの十四戸につきましては五十年度以降にこれを建設する、その経費施設の建設のほうに充てる、こういう計画になっております。
  44. 横路孝弘

    横路委員 その完成と、開始はいつなんですか。
  45. 内村良英

    内村(良)政府委員 完成は五十年度に完成したいというふうに思っております。開始は今年度から開始するわけでございます。
  46. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、当初の十四戸ができないが、四戸で、ともかく施設のほうは先にやって始めるということになると、実は、この問題の根っこというのはだいぶ昔からなんですね。四十二年から始まっておって、当初、皆さんのほうも、職員のほうも小樽に移転ということで一致して進められてきたのがだめになって、急に釧路ということになったわけです。そのいろいろなやりとりの中に、実は、これも非常に問題があって、私も行ってみてびっくりしたのですけれども、あんなものは、中身そのものはとても研究所なんて言えるしろものじゃないですね。実験室だって何だって、物置きとかわりないようなひどいところで、予算もわずかでやっているわけですよ。したがって、きちんとした研究体制をつくるということが要求なわけですね。ところが、その辺の話が、きちんと一たん小樽にきまっていたやつが、皆さんのほうで御破算にして、釧路に強行移転という形になって問題が出てきているわけです。  そこで、たとえば去年の一月にも、そういういろいろないままでの経過を踏まえて、北海道の水研の所長がわび文を入れているわけですね。「庁舎の移転整備について、この問題提起から政府原案決定にいたる間、分会との話合いに不十分な点のあったことは、双方の立場上の認識の相違があったとはいえ、甚だ遺憾に思いますので、今後この問題を推進するに当っては、誠意をもって十分に分会と話合いを行なう所存です。」というような一札まで入れておきながら、そういう意味での十分な話し合いというものが継続されないで、いまお話しを聞けば、住宅だって、十四戸の予定を削ってしまって四戸にしてしまって、そうしてともかく開始をするのだということでは、やはり問題が大きく残る。研究していく場合には、問題は、これもやはり人と予算の問題ですね。いい研究者が十分研究できる体制予算をつけるということでなければ、それこそ、先ほど来長官が言っているような、きびしい国際環境に対処して、これからの日本漁業をどうしていくのかという研究もできないし、しかも、ある意味日本漁業中心をなしている北部太平洋一帯を担当する北水研を強化充実していくことにはならぬのではないかというように考えるわけなんですが、その辺の話し合いは十分行なっているのですか。
  47. 内村良英

    内村(良)政府委員 移転の場所として釧路が選ばれましたことは、先生も御案内のように、今後北洋の資源研究というものが非常に大事になっていくわけでございまして、そこで、余市にできましたときには、日本海側のニシンその他の資源が、当時非常に沿岸漁業が重要であって、北海道漁業中心であったわけでございますから余市に一応研究所ができたわけでございますが、最近では北洋の研究ということがわが国漁業自体にとっても非常に重要な問題になっておりますので、移転の場所として釧路が選ばれたわけでございます。  そこで、この問題につきましては、研究員の方方にとっては、自分たちの住む場所もかわるわけでございますから、確かに非常に重要な問題でございます。そこで、昭和四十七年以降、所内で所長が職員及び全農林労働組合余市分会に対しまして繰り返し繰り返し説明し、理解を求めてまいりましたし、職員の代表が移転予定先の釧路について実地調査も行なったというふうに聞いております。それから、水産庁からも担当の部課長が数回にわたりまして北水研に出かけまして、水産庁本庁の考え方を説明すると同時に、私どもも全農林労働組合に対しまして、北水研の移転整備の必要と、移転に伴う労働条件、生活環境整備等の問題に関する考え方を説明し、理解を求めてきているわけでございまして、ことしの四月にも、現地において所長がまた繰り返し組合側と懇談した、職員と懇談した結果、理解がかなり進んでいるというふうに承知しております。
  48. 横路孝弘

    横路委員 それがあまり進んでいないんですよ。私も、ことしのいつでしたか、二月か三月ですか、ちょっと呼ばれていって、いろいろ話を聞いて、中の施設も見せてもらってきたんですけれども、一たん小樽合意ということが廃棄されてから以降の経過の中では、どうもまだまだ話し合いが詰まっていない。皆さんのほうとしては、形としてはやっているとおっしゃられるかもしれないけれども、不十分な点が幾つかあるわけで、さらにこの問題は十分に話し合いをしていっていただきたいというように要請をしておきますが、いかがでしょうか。
  49. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもが承知しておりますところでは、いろいろな関係から余市から釧路に移れないという方があるようでございますが、そういった方々につきましては私どもは分室をつくるつもりでございまして、そこに残っていただくというようなことにしたいと考えておりますし、一人一人の具体的な問題についてかなり具体的な話し合いが行なわれ、了解が進んでいるというふうに聞いておりますが、なお、近く水研の所長会議もございますので、その際等に十分に北海道水研の所長の意見等も聴取して、問題がないように事を進めなければならぬというふうに考えるわけでございます。
  50. 横路孝弘

    横路委員 そこで、北水研の研究の内容なり体制の問題なんですけれども、四十六年の三月に、北水研として、「今後の研究推進構想」というものを発表しましたね。これは四十六年の時点です。その骨格は、日本漁業をめぐる国内情勢というものを主要な問題にして、かなり詳しくいろいろ検討はされていますけれども、結論的に言うと、漁民の所得向上と新漁場の開発ということで、水産物の需要に生産が十分に対応していないというような問題を提起して、その問題を解決するための漁業の技術的基盤の発展に責任を持てるような研究の組織の改変というような問題になっているわけですね。ところが、この四十六年当時と現在とを考えてみると、これはともかく最初から議論されているように、ことしの六月にベネズエラで国際海洋法会議も開かれるし、それから、日ソ関係そのほかを含めて、日本漁業の対象水域というものがこれからの非常に大きな問題になっていくわけですね。そういう状況の中で漁業政策自身も変えていかなければならぬ。去年、水産庁の設置法のときにもそんな議論を二、三したわけなんですけれども、そういう中での試験研究機関の位置づけというものは、四十六年の「今後の研究推進構想」といわれるものについて一つ一ついろいろ議論していくと時間がないわけなんですけれども、少なくとも、いまの時点で考え直すべき点がもっと十分あるのじゃないだろうか。  つまり、この構想のままでやるということじゃなくて、いまの時点の中で考えるべき点があるのじゃないかというように思うのですけれども、この北水研の四十六年の「今後の研究推進構想」というものについてどうお考えになっているのか。そして、いまの時点で、このことが理由になって、一つは釧路移転ということになっているわけですから、その辺のところを考え直す必要があるのじゃないかと思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  51. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、今後の日本漁業の問題と研究体制の問題につきましては、確かに先生の御指摘のような問題があるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、従来水研所長会議というのは定期的にやっているわけでございますが、実は、ことし六月の上旬に特別の会議を持仏まして、そういった問題について各水研の所長の意見を聞き、また、本庁の考え方を述べまして、研究体制整備というものを今後のわが国漁業の動向等に照らし合わせて考えていきたいというこうに考えているわけでございます。  もちろん、水研は八つございまして、そのほかに真珠研究所があるわけでございますが、地域の海区によりまして問題点が違うわけでございます。したがいまして、そういった問題等も踏まえながら、特に、北水研につきましては、北方資源研究と、さらに今後は増養殖というものが北海道漁業につきましても重要なテーマになってまいりますので、そういった面の拡充、それから、これはどういうことで進めていくかという問題がございますが、これまでの水研の研究というものはやや生物学的な研究に片寄っておりまして、経営的な面が抜けているわけでございますが、こういう点を今後どういうふうに考えていくかという問題がございます。これにつきましては、従来のスタッフその他の問題がございまして、そう簡単に片づく問題ではございませんけれども、今後漁業経営の問題というような問題もある程度研究をしていかなければならぬというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、そうしたことの一環として北海道水研の研究のあり方という問題も再検討しなければならぬ問題があることは先生指摘のとおりでございます。
  52. 横路孝弘

    横路委員 そうおっしゃいますが、たとえば去年の水産庁設置法で、機構改革を、遠洋の関係、それから公害対策の充実というようなことでやったでしょう。ところが、研究機関の北水研そのものというのは、では機構がそれに伴って変えられるなり強化されたかというと、海水汚濁の調査というのは海洋部でやっているようなんですけれども、実際は、その水産庁の機構改革に伴う整備というものは全く研究機関ではやっていないわけですよ。国からとった公害対策費用という形では、一応海水汚濁調査というようなことでお金はおりてきておりますけれどもね。だから、その辺のところを、口でおっしゃるだけじゃなくて、現実にそういう機構の整備なりをしていくと同時に、たとえば公害対策等も、沿岸なり増養殖を強化するというならば、そういう調査というものは必要でしょう。いまの漁業経営というようなことで即効性だけ求めて、ともかく売り上げのあがるような、生産増加に結びつくようなものだけと言っても、いまの漁業をめぐる環境というものは決してそんな甘いものじゃないわけですよ。海洋の汚濁だって、これは相当進んでいるわけですね。だから、そういう基本的な調査というものをやりながら、なおかつ、たとえば増殖部みたいなところではそういう増殖の研究もする——北海道の水研あたりはホタテあたりで相当大きな成果をあげているわけですし、たとえば水産庁設置法でそういうものが変わったら、それに伴って研究機関の体制整備するとか、具体的な策をとられないといけないんじゃないかと思うのですが、その辺のところはどのようにお考えですか。
  53. 内村良英

    内村(良)政府委員 昨年水産庁の機構改革があったわけでございまして、研究所につきましても、研究員の配置等につきましては多少の変更を加えたわけでございますが、なお、先ほども申し上げておりますように、今後のわが国水産業の直面しているきびしい情勢に対応いたしまして、研究分野及び研究員の配置等につきましてもなお再検討を加えていきたいというふうに考えているわけでございます。
  54. 横路孝弘

    横路委員 この北水研の状況については、研究機関というものはどこでもそうなんでしょうけれども、ともかく予算も少ないし、人が足りなくて、臨時雇用だけで、この小さなところで二十数名おるわけですね。みんな六カ月雇用ですよ。二十数名もおって、標準予算というのですか、研究員一人当たりの予算というものもあって、一応おりてはくるらしいのですけれども、そういうところにみんなとられてしまって、実際は研究員一人当たりの予算というのは十万程度だという現状になっているわけですね。したがって、そういう人の問題なんかは、建物だけりっぱにしたってだめなんで、その辺の基本的な問題、つまり、研究費をどうするか、人員をどうするかという点では、この余市の北水研のいまの人の状況なんというものはみなさん方のほうで掌握されているのでしょうか。
  55. 内村良英

    内村(良)政府委員 北水研の年間予算額は、四十八年度の総額が二億九千万円でございまして、人件費が一億七千二百万円でございます。  なお、研究員一人当たりの経常研究費が少ないじゃないかという御指摘でございますが、残念ながら、そのような面がないわけではございません。しかしながら、私どもといたしましては、一人当たりの経常研究費の増額には努力しておりまして、数字で申しますと、四十八年度八十万円であったものが、四十九年度には八十六万円に増額しております。それから、四十九年度には調査船の船員三人を増員したほか、研究員につきましても、四十七年、四十八年度に各一名の新規採用で研究員を配置しておりますので、現在、所員八十一人のうち研究職が二十九人ということになっております。  したがいまして、額は少ないじゃないかという点については御指摘のとおりでございますが、私どもといたしましては、いまの予算の範囲の中で調査研究費の増額には努力はしておりますけれども研究の重要性にかんがみまして、今後一そう予算額の増加につとめたいと思います。
  56. 横路孝弘

    横路委員 それは、一人当たりの国の予算としてはそうであっても、現実問題としては、職員が足りないから臨時職員を採用するでしょう。その費用というものはそういうところからどんどんいくわけですよ。そうせざるを得ないわけですね。したがって、現実に使えるお金というのは圧倒的に少なくなるという状況にあるわけです。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 このわずかなところで臨時職員が二十三人もいるのですからね。研究員とほぼ同数というわけじゃないけれども、三分の一をこえるようなことになっているわけです。したがって、そういう基本的な問題を解決をして、そして、いま言われたきびしい国際環境の中に対処していくような研究機関の充実ということを基本的な方向としてお考えをいただきたい。北海道サケマスふ化事業の問題もそういう流れの中で考えていただきたい。  この二つの問題というのは実はそういう問題なんでありまして、時間が参りましたからこれで終わりにいたしますけれども、北水研のほうの問題は研究員人たちと十分話をしながら、研究課題、予算人員の問題等を含めて話し合いを進めて、皆さんのほうで一方的にまず強行するということのないようにしていただきたい。これについて、最後にこれからの方向を御答弁いただいて、私の質問を終わりにしたいと思います。
  57. 内村良英

    内村(良)政府委員 研究所の運営その他につきましては、私のほうの研究開発部のほうで、常に現場の北水研の人たちと接触いたしまして調整をとりながらやっておりますので、本庁が独断的にこれを押しつけるというようなことはございませんけれども予算額の増加につきましては、これは全体予算の問題もございますが、もちろん研究の重要性につきましては私ども十分認識しておりますので、今後増額につとめたいというふうに考えております。
  58. 横路孝弘

    横路委員 終わります。
  59. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、竹内猛君。
  60. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、きょうは、農村の有線放送電話の問題と、それから米価に関する若干の資料の問題と、それから休耕田の善後処置の問題と、それに、前回質問をしてまだ解決はしておりません茨城県霞ケ浦の塩害をめぐる諸問題について質問をいたします。  まず、最初に、これは郵政省に関する問題でありますが、社団法人日本有線放送電話協会というものがあります。この設立の経過と現状についての報告を重点的にお願いをしたい。
  61. 石田彪

    ○石田説明員 お答えいたします。  有線放送電話に関する関係指導団体といたしましては、従来、全国有線放送電話協会、日本農村放送事業協会及び日本農事放送推進協議会という三団体がございました。しかし、この三団体の間の連絡が不十分である。それから、また、有線放送電話に関します関係官庁も、郵政省、農林省、自治省という三省にまたがっております。したがいまして、施設者の信託に真に合致した施設指導なり、あるいは行政に対する対応が不十分であるという御認識から、昭和四十六年にこの三団体は解消されまして、そして、先生が先ほどおっしゃいましたような日本有線放送電話協会が設立されております。  なお、この協会の業務内容といたしましては、有線放送電話の発展をはかり、農林、漁村地域における事業振興並びに経済文化の発展という観点から、種々の事業を行なっております。
  62. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでは、合併をして協会ができて、その協会を三つの省によって管理しておりますが、自治省、農林省、郵政省はどういうような角度からそれぞれこの団体に対して管掌し、指導しておられるか、そのポイントはどこか、この点を明らかにされたい。
  63. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 有線放送は、農業の近代化あるいは災害の防止措置、あるいは生活の改善というような点で共同作業をやったり、あるいは緊急に災害が来ることを知らせたり、それに対する手段、措置を講じたり、あるいはまた生活改善等のいろいろな普及事業をやるというようなことで、現在のテレビとか個別の電話とかでは、ある一定の小地域に統一的なPRや指導をするということがなかなかできないという場合に非常に効果的であるというふうに考えまして、農林省としては、その施設の健全な育成をはかるために適切な助成を行なってきておる、こういうことであります。
  64. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 郵政省、自治省はどうですか。
  65. 石田彪

    ○石田説明員 協会に対します指導、監督につきましては、郵政省、農林省、自治省の三省の申し合わせによりまして、郵政省が中心になってこの監督、指導を行なっておりますが、しかし、それぞれの所管の部分につきましては、それぞれ各省でもっておやりになるということでございまして、郵政省につきましては、有線放送電話業務の適切な運営とその健全な発展という観点から指導を行なっております。
  66. 高田信也

    ○高田説明員 有線放送電話の行政面の指導につきましては、自治省の行政局のほうで所管をいたし、私ども財政局のほうでは、有線放送が一般的には山村僻地その他財政力の非常に弱い市町村で設置をされる場合が多うございますので、過疎対策事業債なり辺地債というような起債でもって主として財源措置をいたしておるわけでございます。起債で財源措置をいたします場合には、当該市町村が有線放送業務を行なう場合だけではなくて、団体等が有線放送業務を行ないます場合に市町村がこれを助成するという場合につきましても財源的な措置をいたしておるわけでございます。
  67. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 現在一千七百二十五施設があり、加入者が三百万世帯になっておるということは認められるかどうか、事実かどうか、この点はどうですか。
  68. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 現在、市町村あるいは農林漁業団体その他の法人組織等で、施設の数が千七百二十五、加入数が二百九十六万四千ということになっております。
  69. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 二百九十六万四千ということになると、私ども調査したものよりも若干減っている。そのこともありますが、大体数字が合っております。  そこで、この電話は、その管理上一元化しろという意見があり、そういかない事情があってこういうふうになっていると思うのですが、その一元化できない根本的な理由というものはどういうことか、その点について郵政省のほうから伺いたい。
  70. 石田彪

    ○石田説明員 有線放送電話は、地域共同体の内部の通信手段といたしまして、まず有線放送から出発いたしました。それから通話機能がそれに付置された。したがって、その施設は放送と通話と両方に使えるわけですが、逆に言えば、制約の大きいものでございます。  それから、発生的には、電電公社の電話の普及のおくれた農山漁村において、まず地域内の通信手段、情報伝達手段として発展してまいりました。したがいまして、発生的には一つは電電公社の電話の補完的な意味を持っておりました。現在になってみますと、電電公社の電話はかなり普及しております。一方、先ほども申しましたように、有線放送電話はあくまでも放送と通話と両方に使われますので、放送が行なわれております時間においては通話はできない。それから、また、発生的にも簡易低廉な通信手段という見地から多数共同の通信手段になっております。大体一回線当たり七ないし八ぐらいの加入者が現在いらっしゃると思います。そういう観点から、他の人が通話に使っている場合には別な人は使えないという、いわゆる通話上における制約がございます。こういった問題がございますので、この地域の通信手段ということと、それから、いつでもどこにでも通話ができるという通話本来の機能との間の調整を現時点においてどこに求めるかということがあります。さらに、最近農協の合併あるいは広域行政圏ということで、生活圏あるいは経済圏も拡大しております。一方、また、過密、過疎といったような問題も社会問題として発生しております。こういった問題を結局どこでもって調和を求めるかといったことがございます。
  71. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その理由はまだよく理解はしませんけれども、つまり、そういうことで一元化が不可能であるということであるとすれば、電電公社の電話と有線電話とが競合しないように範囲をきめるなり、いろいろな手段によってその協調性を保っていくことはできないかと思うのですが、そのことについてはどうですか。
  72. 石田彪

    ○石田説明員 有線放送電話の機能は、先ほど申しましたように、放送と通話の両方の機能を持っておるということであります。一方、電電公社の電話は通話だけでございます。そういう観点から申しますと、機能が異なっておりますので、両者間における本質的な競合というものはないであろうと存じております。現在、有線放送電話の加入者の約半数の方は公社電話に加入していらっしゃいます。そして、遠距離の通話は電電公社の電話を使い、近距離の通話並びに有線放送については有線放送電話を使うというように、機能面での分化が現在行なわれております。そういった意味で、先ほど申しましたように本質的な競合はないかと存じますが、しかし、過去にも若干問題がありました経緯もございますので、そういった意味での指導は十分しておるところでございます。
  73. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最近、地方を回ってみますと、この問題について、県の境を越えた場合には通話は一切できないということになっている。それで接続端子といいますか、そういう範囲を拡大して、出かせぎ——たいへん農村の出かせぎの人が多い。あるいは農村から学校に出ている者が多い。こういう人たちが自分の家あるいは農協、役場というようなところへ連絡する場合にはこの電話はほとんど使えないという形になる。県の境を越えれば使えない。そこで、いまのお話しのように、長距離の電話は電電公社、近距離は有線という形のお話しがいまあったわけですけれども、こういう問題に関して、もっと便利をよくするためにこの接続端子というものの範囲を拡大して、出かせぎや集団就職の者が十分に使えるようにすることはできないか、それができない理由はどういうことにあるのか、この点はどうですか。
  74. 石田彪

    ○石田説明員 有線放送電話は、発生的には地域共同社会内の通信手段として発展してきております。したがいまして、県を異にしましても、経済的に社会的に密接な関係にある場合には、大体一つの市町村程度の範囲でございますが、通話は現在でも可能でございます。が、しかし、先生の御指摘のように、たとえば出かせぎで出ていて隣接県以上に離れているというような場合につきましては、現在の制度では通話できないこととなっております。  それで、この接続通話の問題に関しましては、一つにはこの施設が低廉簡易な施設として出発いたしておりますので、技術基準上のいろいろな問題もございます。が、しかし、すぐれて有線放送電話のあり方、一つの国における通信体系のあり方、こういった問題にも関係してまいりますので、昨年の六月、郵政省に地域通信調査会を設けまして、通信事業者、地域開発の関係者あるいは学識経験者の方々からなる調査会で現在審議をいただいております。したがいまして、その調査会の結論をまちまして慎重に検討したいと存じております。
  75. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 調査会を設けて調査をするということになっておるようですが、それならば、その調査会というのは大体いつごろまで議論をし、その結論を出すのか。私の地域の者もその調査会のメンバーとして参加をしているが、茨城県の場合も六十数施設があるわけでありますから、その点についてはいつごろ結論を出されるのかということについて、その展望はどうですか。
  76. 石田彪

    ○石田説明員 調査会は昨年の六月に設置いたしまして、大体一カ月に一回程度会議を開催し、現在十回まで終わっております。あと二ないし三回で会議が終わり、報告書が郵政省に提出されると存じております。
  77. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、なお、この有線放送電話の業務区域について質問いたしますが、農業協同組合の合併等により、その地域が町村の区域をこえた場合があります。そういう場合に、この施設の業務区域とすることはできないかどうかということが一つと、また、町村合併がありまして、その町村合併でも同じようにその地域を越える場合があるけれども、その町村合併をした町村が単位になるかならないかという問題があります。これが二つ目です。まず、その二つについて伺いたい。
  78. 石田彪

    ○石田説明員 有線放送電話の業務区域につきましては、現行法制では、原則として同一市町村内になっております。したがいまして、町村合併が行なわれまして一つの市町村になりました場合には、現行法制の中において、それのすべてを業務区域とすることは可能でございます。が、しかし、市町村の区域はそのままであって、農協合併ということで農協の業務区域が拡大した場合につきましては、現行法制では業務区域とすることはできないということになっております。それで、この点につきましては、有線放送電話の地域共同社会体内部での通信手段といった性格と、それから最近の経済圏もしくは生活圏の拡大という問題との調和点ということで、現在、地域通信調査会の中でいろいろ論議されております。農協合併の問題も当然そこで論議されておりますので、調査会の結論を待ちまして、慎重に検討したいと存じております。
  79. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 有線放送の電話の制限などを撤廃して、個別目的に沿った方向にできないかという問題ですね。いままでの話を聞いていると、有線放送というのは、放送と通話というものが同時にできる。一方、放送があった場合には通話はできないという形になっているわけです。それを個別に切り離して実施する方向はとれないかということが一つ。それから、もう一つは、有線放送電話に、放送と通信のほかに、新たに多目的な任務を与えて、たとえば地域の総合情報センターのようなものにすることはどうか。こういう二つの問題についてお答えをいただきたい。
  80. 石田彪

    ○石田説明員 有線放送電話は、発生的には有線放送から出発しまして、それから、その施設に通話の機能が付置されたということになっております。したがいまして、現在、有線放送電話は、放送と通話が一つの線で行なわれるということになっております。そして、このために、すなわち放送と通話のための線を二本引くことなく施設が設置できるということもありまして、その施設は比較的低廉な価格でもって設置され、そして、現在まで普及してきております。したがいまして、こういった経緯を考えますと、通話と放送の機能を分離した場合に、そういった施設現状どおりの事業体ではたして維持できるかどうかといった問題も基本的にあろうかと存じますが、この問題も、地域通信調査会でもって現在論議されております。その結果をまって検討したいと存じております。  それから、多目的利用につきましては、有線放送電話が単なる通話、放送だけではなく、地域の情報伝達手段として、多目的に多元的に使われることが望ましいと存じます。したがいまして、郵政省では、地域情報通信システムという観点から、多目的に使われる技術的な方法について現在検討中でございます。  それから、また、そういった制度的な問題もしくはそれから発生する種々の問題につきましても、やはり調査会のほうで検討され、特に、技術的な分につきましてはすでに報告書も出ております。したがいまして、それらすべてにつきまして調査会の報告を待って検討したいと存じます。
  81. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 郵政省は、四十六年、四十七年、四十八年に、有線放送から公社が年内に幾ら通信料を徴収したか、それを調べたことがあるか。発信料のほうはわかるけれども、受信のほうは、またこれはかけるほうが払うわけですから、それについて幾ら料金を徴収しているのか。また、接続を拡大したほうが便利がよく収益も高まるのに、なぜそれをやらないのかということ。  それから、最後に、県外接続ということは、確かに、われわれの調べたところによると法律を改正しなければならない問題であるけれども、それ以外のことについては、法律の改正なしにやろうとすればできるはずだ。だから、調査会の結論を待つということで、あと二、三回でこれは結論に到達するというわけですから、そうなれば、勢いこれは投資をされて、何がしかの変化を求めなければならない問題になってくる。そうすると、いま私が質問したものの中で何カ所かは現状の中でもやろうとすればやれないことはない。直ちに法律を改正しなくてもよろしい問題がある。そういう点について、いまここで答えられる点を答えてもらいたいし、なお、今後整理をして報告する場合においては、直接報告を私のほうへしてもらいたい。  この点についてのお答えをいただきたい。
  82. 石田彪

    ○石田説明員 電電公社の回線に接続しております接続有線放送電話の施設から電電公社のほうに支払いました受信料についての調査は、郵政省ではいたしておりません。  それから、第二番目の問題につきましては、現在の有線放送電話が同一県内への市外接続だけに範囲を限定しておりますのは、昭和三十八年当時、現在の有線放送電話を使いまして、そして市外接続の実験をいたしております。そこでの結論を踏まえて、技術的な限界から同一県内と限っておるわけでございまして、主としてそちらのほうに問題があろうかと存じます。  それから、最後の問題につきましては、郵政省は、有線放送電話がその地域の需要に合致する限り、その健全な育成発展をはかるということを基本的な考えといたしております。したがいまして、法律によらない事項につきまして措置できることにつきましては、現在も検討中でございますし、検討した結果については直接にお答えいたしたいと思います。
  83. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 郵政省に要求しますけれども、公社というか、協会から幾ら料金を徴収したかということについては、ぜひ調査をして、これをあとで報告をしてもらいたいと思う。管理上、それはよろしくないじゃないですか。調査をしないということは、そんなことはよくない。これはぜひやってもらいたい。きょうでなくてもよろしい。そこで、今度は農林省要求しますけれども、有線放送は確かに新農村建設事業の一つとして設置されたものだと私は記憶しております。そして、これは第四条によって、営利を目的としてはならないということになっておる。それにもかかわらず、五年に一ぺんは機械の検査をしなければならないし、大体十五年ぐらいしかこれはもたない。そうなると、回収しなくちゃならない。営利を目的としてはならない、住民の便益には供さなければならない、そういうような状態の中で、これは農林省だけではなくて郵政省にも関係あるが、これの経理、運営というものは一体どういうふうになっておるのかということについての調査をして、これは財政上の問題、経理運営はどうなっているかということについて調査をしてもらいたいし、それから現在の段階においては——新農村建設事業があったときには確かに補助、援助をしてきた。その後四十三年から四十七年の間にはだんだん農林省の補助も減って、一年間に、いまや五百万円を割っておるという状態なんです。自治省に至っては、三十五年で補助を打ち切ってしまって、全然補助をしない。そして、先ほど話があったように、多少の融資なり起債を認めているという程度のことである。あるいは郵政省にしても、四十一年から四十二年が五百万円、四十三年から四十七年で四百六十五万円と、だんだん打ち切られて、最も使っているのは防衛施設庁だ。こういう状態になっておるわけですが、少なくとも農林省日本における過疎地帯というものに対するいろいろな情報の伝達、交換、連絡というようなことをやる場合においては、もう少しこれはあたたかい方向をとったらいいのじゃないか。しかも、最近の状況を見ると、融資をしても金利を引き上げておる。年率六分五厘のものをさらに引き上げておるというように私は聞いておるのですが、こういうぐあいに一般の物価が高まっているときに、五百万円ぐらいの補助を出して、そうして地元でやれ、もうけてはならないなどと、そういう経営をさせることは無理じゃないですか。このようなことについて、それを放置しておくということがおかしい。もう少ししっかり調査をして、これについては住民が必要であり便益のものであるならば、そっちのほうへ少しあたたかい手を回してもいいんじゃないかと思うのだけれども、これは要求するほうが無理なのか、それとも、黙っているほうがいいのか、これはどうなんですか。両方全部、農林省、通産省、自治省から答えを求めたい。
  84. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 有線放送につきましては、これは営農上の問題も含めまして、農林省としては非常に有用性を認めておりまして、これが機能の更新等についても関心を持っておるところでございまして、また、御指摘の経理上の問題につきましても、コンサルタント活動等を通じまして、その経理の適正化を期するというふうに指導しておるところでございます。  なお、御指摘のように、三十一年からやりました新農村等で設置したものは、相当の年数を経て更新の時期にも来ております。そういう施設の更新につきましては、いわゆる近代化資金あるいは公庫資金等をもちましてその更新に当たっておりますし、また、山村振興の一環といたしまして、振興山村の特別開発事業というようなことで、その施設の機能増強だとか、あるいはまた改良のための補助も行なっておるところでございます。  金利につきましては、本年特に一般金利が系統資金を含めまして高くなった関係もございまして、近代化資金も七%になりましたし、あるいはまた公庫資金も金利が上がったというような実態でございます。
  85. 高田信也

    ○高田説明員 先ほど、市町村が有線放送業務を行なう場合または団体等が業務を行なう場合に、市町村が助成をしている場合、過疎債なり辺地債で融資の措置をしているとお答えをいたしたわけでございますが、御承知のように、過疎債、辺地債は、特に山村僻地に対する措置として全額政府資金でございます。  なお、元利償還金につきましては、辺地債におきましてはその八〇%を、過疎債におきましては七〇%を地方交付税の基準財政需要額に算入をいたしますので、融資措置ではございますが、実質上は非常に補助的な性格の強いものでございます。そういった面で、私どもは、有線放送電話の設置につきましては相当な財源措置を講じておると考えております。
  86. 石田彪

    ○石田説明員 先生の御指摘のとおり、現在の有線放送電話施設の経営のうち、かなりの部分が赤字経営となっております。特に、有線放送電話が地域内の通信手段として、しかも、過疎地域においてその機能を有効に発揮しているという観点から、その経営のあり方という問題を、地域通信調査会で現在検討しております。したがいまして、その結果を得まして関係省庁とも協議したい、このように考えております。
  87. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この電話に関する問題はこれで質問を終わりますが、いまもるる話があったように、これは電電公社の公社電話との間では必ずしも競合しないし、発生の過程から一元化できない要素を幾つか持っている、だから、これはやはり存続が必要である、と、こういうことになるとすると、この管理、運営ということについては十分に検討を加えながら、同時に、営利を目的としないわけでありますから、そうであるならばそれなりに関係各省はこれに対する十分な手当てをしていく必要がある。こういうふうにやってほしいと思うし、やがて調査会の答申も出るだろうから、そのときにはまた新たな方向が出ると思いますけれども、いずれにしても、これは経営だけが問題じゃない。これを使うところの山村僻地の住民並びにそこから東京なりその他の都市に出かせぎに行っている者、あるいは学校へ出ている者がこれを使う場合に、その便益に値するようなものにしていかなければ意味がないと思う。経営だけが中心ではない。近ごろ経営中心の傾向が非常に強いけれども、経営だけでものをとらえていくということでなしに、人間の便利のためにそういうものが必要なわけだから、そのためにどういうふうにしたら一番いいのかということについて、なお一定の時期において私はもう一ぺんこのことについては質問することにして、この点はきょうは終わります。  続いて、米価の決定の問題に関連して、私は事務局のほうに若干資料を要求したい。ここで直ちに答弁ができないことになるかもしれないから、これはあとでけっこうですが、資料を要求したいわけですが、その第一は、米価審議会の発足当時から今日まで、米価というものは、いつ、どんな価格で決定されたかということについての資料、決定された日にちと価格、この資料が第一。  第二は、昭和二十二年から二十八年の間には、追加払いやいろいろな米価に対する措置がとられているはずであります。そのことに対してとった措置についての点が第二点。  第三点は、昭和三十五、六年と四十七、八年の輸入農産物の価格、特に、国内価格との関係と数量についての資料。  この資料をつくってほしいということを私は要求します。これは委員会でなしに、私に出してほしい。このことについて……。
  88. 三善信二

    ○三善政府委員 いま先生から御要求のありました資料をまとめて提出させていただきます。
  89. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、米の休耕問題について私は質問をします。  休耕のときにとられた措置について、その面積、それからその地域別の状況、どういうような地域が休耕になっていたかということを調べているはずだ。この点についてが第一。  それから、休耕奨励金を出すときにどういう指導をされたか。現在これを復旧しようというとぎに、あの奨励金の中には休耕田の管理費が含まれているのだ、だから、それを荒らしておるのは、休耕したほうが管理をすべきものを荒らしたのが悪い、だから、今度休耕のものをもとに復旧するには自分の手でやれ、こういうふうなことになっているわけですね。  この点の全体の面積の推移、それから各地の状況、それから指導をするときにどのような指導をどういう形でやられたかという点について、関係者からお答えをいただきたい。
  90. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 御承知のとおり、昭和四十四年、四十五年と非常な豊作であって、米の置き場もないというようなことから、いわゆる生産調整をやることになりました。御承知のとおり、全部転作をしてもらうということが一番いいのでございますが、急にそんなことを言われてもなかなかできるものじゃないので、したがって三年間に全部転作のほうに持っていこうということで、まずやむを得ざる措置として休耕を認めたわけであります。しかし、休耕して、ともかく休んでいるところに何でお金を払うんだというような素朴な反論も世論としてあったことは事実でございまして、これについてわれわれといたしましては、それは何としてもいままでそこで米をつくっておったんですから、そのたんぼを荒らしておくということは将来のためにならない、だからといって、別なものをいますぐつくる余裕もないというような場合に、そのたんぼを管理をしたり、あるいは虫の発生を防いだり、あるいは草を取ったり、こういうようなもの等の手当てといいますか、実費、そういうものもすべて含めて、ともかく三万円というものを休耕補助金という形で支払いをするということになったわけであります。したがって、最初の出だしからいたしますと、休耕田のものにつきましては、それは年々ともかく草ぼうぼうにしない、こういうようなための管理費を含むというふうなことで発足をしたわけであります。
  91. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それは非常に無理な話だ。休耕をして、そしてそこで三万円の銭を出して、そこのところで草を取れと言ったって、そんな話は無理だ。実際できる話じゃない。だから、三年たった今日そのたんぼはどうなったかといったら、最も悪質な草がはびこって、そうしてそれが根を張って、これをもとのところに復旧するには三万から五万の金がかかると言っている。しかも、それを取り除いたあとのたんぼというのは、これまた生産力が低くなる。こういうふうな状態になっている。せっかく土地改良をやっていい土地になったものに対してそういうことになっているから、どうしようもない。だから、これは非常にまずかったと思いませんか。いいことだとは思わないですね。どういうふうにしたらほんとうに納得できることになるのか。これはどうなんですか。
  92. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 これはいいことだと思いませんが、緊急やむを得ざる、言うなら緊急避難みたいな話でありますから、ともかく休耕料三万円というのは、世界のどこに比べても、これはもう五倍とか八倍とかということで、アメリカやカナダなんかと比べてけた違いに多い数字を出しているわけです。  そのことについて、転作をする人が三万五千円で、休耕する人が何で三万円なんだという話がいろいろあったわけですが、早い話が、米が七俵とれると、当時とすると八千円ぐらいですから、五万五、六千円の収入で、そこで経費がかかりますから、実際はその半分ぐらいしか所得はない。一反歩当たり二万五千円かせいぜい三万円の所得ですね。そうすると、ともかく失業保険的なものの考え方をすれば、さらに三万円の七掛けないし六掛け、失業保険は大体六掛けぐらいですから、そうすると一万八千円ぐらいが適当じゃないかという意見も当時あったのです。  それからもう一つは、一万八千円でも高過ぎる、一般の勤労者は失業保険をもらうときにはただでもらっているんじゃないんだ、ちゃんと掛け金を掛けて、それで万一失業した場合に失業保険をもらっているんだから、一般の勤労者から比べれば一万八千円でも高い、と、こういうふうな議論も実はあったわけでありますが、しかしながら、先ほど言ったように、それは転作をしてもらうのが目的であって、一ぺんに転作できないし、一ぺんに野菜を全部つくっても、これは価格安定その他の問題で非常に困ることになりますから、したがって、臨時やむを得ざる措置として休耕を認める、そのかわり休耕田についてはともかく草もはやすなと言っても、それは無理だ——確かにそれは無理でしょう。無理でしょうけれども、ともかく水をかけて、荒くれをかいておくというようなことを一回やっておけば非常に草のはえ方も違う。全然何もしないでかんからかんにして、シノでもはえた日には——新開拓地なんというのは、シノどころか木がはえてしまうということなんで、そういうようなものの維持管理費も含めて、ともかくまるめて三万円ということで実はきまったのであります。  でありますから、休耕田の復活に対して金をよこせという要求があることも知っています。知っていますが、出だしはそういうことをやってきたし、また、農家によってはちゃんと管理をしてやってきているところもあるんです。そういう管理をやってきたところもあるし、あるいは別に輪作的なことをやったところもあるし、いろいろあるわけです。ですから、これはその当時のスタートからすれば、ともかくおれのところは管理しなかったのだ、そのためによけい草がはえるようになっちゃって、荒れ地になっちゃって、いまさらもとへ戻すのには、新規開拓みたいな話なんだから開拓料まで払えというようなことを言っている人もありますが、それは最初の出だしということと平等という問題を考えると、政府としては、ともかく現在の段階で休耕田を復活するための開墾補助みたいなものを出すというつもりは持っておりません。
  93. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 三万円が安かったか高かったかという議論があったことも知っているし、それから、カナダやアメリカや外国より高いのもわかっている。しかし、それは、日本の場合には外国よりは面積が少ないんだ。所有面積が狭いんだからこれはしょうがない。そんなものを比べることがおかしい。大体、こういうこと自体がおかしいですよ。おかしいけれども、やったことだからやむを得ないのでね。  そこで、いまここで国内の食料自給を高めようというときに、一方においては海外に開発輸入をしようじゃないかということで、海外にも食料を求めようというときに、国内においては草をはやして、そこに補償金を出している。こういうことをして、そうして今度は草がはえてしまって、これでどうにもならなきゃかってにしろということでは、これは政治としてはほんとうに下の下だ。土地改良をやって農家は負担しないと言うけれども、土地改良の費用は実際負担しているんだ。そういうところだってちゃんと休耕しているでしょう。八郎潟だって休耕させたじゃないですか。そういうぐあいにちゃんと平等に休耕をさせている。土地改良費の負担なんというものは、農家はちゃんと払っているんだ。そういうことから言ってみれば、いまの話はだめだ。そんな話は聞けない。そうでしょう。だから、こういう矛盾したことは、悪ければ悪いということで、そのあと始末については、国がやったことだから、やはりそれは国が責任を持ってやらなきゃならない。  では、どういう指導をしたのですか。その金を出すときに、あと始末についてどういう通達を出したのですか。三年後にはこれはやめるから、そのときにはまたもとへ返るんだ、もとへ返る場合には、この三年間、九万円の中にはこれくらいの復旧費が入っているんだ、これだけはちゃんと横のほうへ置いて、これで今度もとへ返すんだよ、と、こういう親切な通達があったかどうか。それはわからない。そんなことは聞いていないと言っている。そうして今度は、その休耕したたんぼをいま復旧した場合に、一体どこへ何に使おうという指導をされるのか、また米をつくれというのか、それとも大豆にしろというのか、飼料作物をつくれというのか、何をつくれというのか、その指導はどうですか。
  94. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 あの休耕制度というのは、私がやったんですよ。昭和四十五年、四十六年、倉石農林大臣、渡辺政務次官、ちょうどぶつかっちゃった。それで、実際問題として、休耕に補助金を出すということについては、一般の方からは非常に非難を受けたんですよ。何で遊んでいて金をくれるんだというふうな非難を受けたんですが、やはり、それだけの農耕地を確保しておくという必要がございますから、先ほど言ったように、できるだけ転作をしてくださいということで、もう転作を一〇〇%も一五〇%もやってもいいんです。だけれども、そうは言っても、それはやはりつくりつけたものがいいんであって、一ぺんに転作と言っても、それは地形上の問題もあるし、市場との関係もあるし、なかなか思うようにいかぬということで、三年間に全部転作に回そうという努力はしてきたのです。それでかなり転作もふえてきたわけです。ふえてきたけれども、休耕も確かに残った。それからもう一つは、全体的に見ると、やはり、自分の持っているたんぼの中で一番いいところを休耕したという人は案外少ないのですよね。水口を休耕したとか、それから沢であって、ともかくあまり米はとれない、米はとれないけれども、面積だけは休耕しなければ悪いんじゃないかというようなことで休耕したとか、それから、ともかく植林とか何かで永年休耕といいますか、永年転作といいますか、そういうものにはさらによけい五千円やるからそういうものをやってもらいたいとかというようなことでやって、その当時としては、確かに土地改良の話やいろいろ出ました。土地改良の負担金だってどうしているんだとか、どうするんだとかという話は出ましたが、そういうものはこの中に入っていますということの一応のことは通達はちゃんとしてあるのです。ただ、一番問題なのは、美田地帯で休耕をしたというようなところがやはり問題が出ているんだろうと私は思いますが、農家によっては、これは自分のたんぼで人のたんぼじゃないものだから、政府に言われなくたってちゃんと手入れはしているんですよ。しかし、していない人もあるということも事実なんです。ですから、ともかく休耕した人には一律に休耕の復活奨励金を出すということは、そのいきさつからして考えておりません。まあ、何と悪口言われるかしらぬけれども、実際のいきさつからすればそういうことであります。こういうわけなんです。
  95. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いきさつはわからないことはないけれども、いきさつがこうだから、現在の結果について、それは知らないということでは非常にまずい。どうしたってそれはまずいし、これは事務当局のほうで調査をしてもらって、休耕面積というものがどういうふうに移ったか、それから、各地でどういうところが休耕したかという資料をつくってもらいたい。  それから、これはわれわれも調査をしますけれども、いまのこの問題の中で、通達が個々の農家のほうにほんとうに理解できるように行っていたかどうかということだって疑問だ。休耕して出かせぎをしなければならぬ人間だってたくさんいたわけなんだ。とてもそんなひまはないですよ。隣のたんぼが一生懸命田植えをして——田植えというか、いろいろなことをして努力をしているときに、今度は自分のたんぼだけ水をかけて草がはえないようにしようなんで、そんなことはできない。できないことはないが、こういうこと自体がどだい無理なんだ。無理なことを押しつけておいて、そしてこれに対して、洋の東西になかったようなことをして補助したんだからまあやむを得ないのだというようなことでもだめだし、それはよくない。よくないことはよくないように率直に認めてもらいたい。倉石大臣と渡辺政務次官だからちょうどいい。ちょうどいいときだから、それは大いに反省してもらって、新しい時代に再出発してもらいたい。  それから、次の問題は、復活をした場合に、何を植えてどうするかという問題に対する指導はされていないでしょう。それはかってにしろということじゃないですか。そうすると、米が一番いいわけだから、これは米を植えることに当然なりますよ。そうなれば、今度はまた米がふえて困るということになるのじゃないですか。何を植えたら、どうするかという先のことについてもちゃんと指導しなければ、これは親切な農政とは言えない。渡辺農林政務次官にしてそんなことじゃ、日本の農政は思いやられるね。専門家なんだから、もう少し親切にしたらどうですか。それだけでいいです。
  96. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 日本を十四ブロックに分けまして、そうしてその地域指標というものをこしらえて、大体どういう地域はどういうふうにしたらいいじゃないかというおおよそのガイドはつくったわけです。それで、ともかく牧草をまいてください、あるいは大豆をまいてくれ、その中で牧草をまけと言ったのは一番成功したようです。これは喜んでいる。喜んでいて、今度は、その当時は転作なんかけしからぬなんて言っていた連中も、最近は、ともかくこの制度はいい制度だからあと二年でやめないでもっと永久にやってくれないかなんて言って、実際問題として、酪農家なんかは陳情にも来ているくらいなんです。(竹内(猛)委員「そんなことは聞かないな」と呼ぶ)いや、確かに聞いているんだ。それは四万何千円という金をもらって、中には人のたんぼも一緒になって牧草をまいているという例もたくさんあります。大豆が一番失敗しました。大豆は、高知県の大豆を持っていって富山県でまいたらさっぱりはえなかったというのです。大豆の場合は、場所を移転すると、いい大豆の品種でも土地が変わるとなかなかうまくはえないというようなこともあって、これは富山県かどこかでは非常に失敗したという実例もあります。  したがって、どういうものをまくかということについては、国としては大まかなガイドラインは示したけれども、しかし、そうかといって、それぞれの県の事情もありますし、あるいは町村の事情もありますし、あるいは農家自身の労力その他の事情もございますから、それはそれぞれの事情の中で一番いいものを転作をしてください、やむを得ざるものは休耕でけっこうでございます、と、こういうような措置をやってきたわけであります。でありますから、決してかまわないというのでなくて、それは農家の方から見ればいろいろなことを言われたが、一般の農家でない方から見れば、それは政府の過保護ではないかと言う。中小企業なんというものは、それじゃおれらのことは、店が多くなってなにしたら三年間休ませて、それの六割の補償を払うのかというような逆な議論もかなり出ておることも事実であるし、そういう非難もわれわれは受けました。受けたけれども、何が何といってもやはり地力保全をして、ともかく三年ぐらいのうちに生産の標準化といいますか、均衡のとれた各作物の生産を確立するということで努力をしていくのですからしばらくごかんべんを願いたいということで、農家の方には休耕補助金というものを出してやってきたということなんでありまして、これは、やはり、いま自分のところでは、あまり出かせぎに行ったために全然かまわなかったのだ、だから、おれは今度米をつくるんだから全部開田資金をよこせと言われても、それはいますぐオーケーだというわけにはなかなかいかない。かりに、自分ができないということになれば、隣の人に貸して、そしてそれは牧草をまいてもらったっていいのですから、そういう道もあったわけであって、だから、休耕したもので、うんと荒れちゃったんだから、それをもとに戻すための補償をさらによこせと言われても、それはそうばかりの農家ではないので、政府としては一律に補償金を出すという考えには目下なっておりません、と、実はこういう正直なお答えをしておるわけであります。
  97. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 時間がないから、この問題はまた別に調査をしてやるけれども、事務局のほうとしては、さっき言ったようなことについて資料を整えておいてもらいたいし、それから、そのときに、どういう指導をしたかということについても明らかにしておいてもらわないと、末端では非常に政治不信というものがあります。  そこで、時間がありませんから、霞ケ浦の問題について伺いますが、これは私はこの前大臣並びに関係者に質問いたしました。そして、そのときに、構造改善局のほうからは、出先の機関を通じて調査をして、これらに対して農民が心配のないように措置をしますという答弁がありましたが、その後それはどのような調査をし、どうしたかという点についてお聞きしたいし、それから、建設省に対しての質問は、常陸川の逆水門というものは何の目的でつくられたのか、その目的がはっきりしないとこれはやりようがないということです。  私たちは、現在、茨城県も、知事も、十四日に調査に入った。そして、地元の町村をあげてこの問題の解決のためにいろいろ努力をしております。しかしながら、この努力というものはしてはいるけれども、なかなか簡単に解決をしない。したがって、霞ケ浦というものを今後どういうぐあいに取り扱っていくのか。特に、水の問題をどうするのか。一体魚が住めるようなことにするのか、それとも、もう魚も住めないようにして、漁業権を補償して、漁業者を陸に引き揚げてしまって、そしてこれは濁ってもしようがないということで、一部は工業用水に使って、もう一つは土地改良をしたあとのかんがいに使おうというふうにするのか。どうも、もうそこまで来ておるようですね。だから、これはたいへんな問題でありますから少ない時間では何とも言えませんが、いまのところ、農林省調査がどういうことになっていて、一体今後米はとれるのかとれないのかという問題が一つあります。そのときにはどういう補償をするのか、天災の補償をするのか、農業災害補償でいくのか、こういう国の責任なり県の責任等々についてもやらなければ、農家に責任はない。少なくともこれは農家には何の責任もないはずです。したがって、こういう問題について明確にしてもらうということが一つと、それから、建設省のほうは、常陸川の水門というのは何のためにつくったのか、そして将来霞ケ浦の水というものをどういうぐあいにきれいにしていくのか、それとも、もうきれいにならないなら、漁業権を補償して魚をとることはやめさせてしまうというようにするのかという、そういうせっぱ詰まったようなことを問題にしなければならない段階に来ているように思いますので、この辺についてのお答えをいただきたい。
  98. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 先日の御指摘に基づきまして、特に、被害状況調査あるいはまた水質の調査というものを行ないました。結果として、相当広範囲にわたる被害が発生しておりますし、また、その水質からいきまして、今後の被害もさらに予想されるということで、実は、憂慮しておるわけでございます。  そこで、その原因がどうかというようなことが一つその補償の問題ともからむわけでございますが、昨年の暮れから本年の冬季間における長期間の異常な干ばつというものが、北浦を中心にいたします流出量が極度に減る原因になりまして、今回の問題が発生してきておるというふうに思います。  なお、対策といたしましては、やはり、真水をかけるのが一番いいわけでございまして、その真水がなかなか水源が得られないという問題がありまして、残された手段は、いわゆる浅井戸もしくは深井戸を掘りまして真水をかけるということで、県が中心になってたくさんの井戸を掘りまして、場合によっては、北浦の水を、塩分を希釈して水稲にかけるというようなことをいたしております。なお、これは利根川の流量とも関係がございますけれども、豊水時には、河川管理者であります建設省に両県からお願いをして、茨城、千葉両県でございますが、横利根を通じて北浦に真水が入るように、塩分濃度が少しでも希釈できるように措置するより、現況としては方法がないというふうに思います。  将来の問題といたしましては、先生の御指摘のような事態は確かに考えられるわけでございますけれども、やはり、各種権利との調整をはかりまして、水門の操作を適切に行なって、農業が順調にできるように持っていく必要があるというふうに思います。そういう点につきましても、建設省をはじめ、各県とも、農林省も入りまして十分協議を進めてまいりたいというふうに考えております。
  99. 宮内章

    ○宮内説明員 常陸川の逆水門の当面の設置目的でございますが、これは前にも御説明いたしましたように、利根川本流に洪水が出ました場合に、本流の洪水が霞ケ浦に逆流しないために設けたものでございます。そういうことでございますので、現状におきましては、常陸川の水門の操作というのは、主目的が逆水どめということになっているわけでございますが、前にも御説明いたしましたように、知事の要請によって、それ以外の時期においても、塩水防止ということのためにかなりの運転もしているわけでございます。ただし、それはそういう形での運転でございますので、究極的には、常時あの水門を締めまして、塩水が霞ケ浦に入らないようにするということが霞ケ浦の塩害防止の基本になるものでございます。これにつきましては、現在、霞ケ浦総合開発という事業を起こしまして、水資源開発公団で事業を鋭意進めているわけでございます。  その事業の進め方におきまして一番問題になりますのは、先ほど御指摘がございましたように、漁業の問題でございます。常時あの水門を締めるということになりますと、霞ケ浦が淡水化してくる。淡水化すること自体、農業用水その他の用水の目的には非常に大きなプラスがあるわけでございますが、漁業については相当大きな打撃があるわけでございます。それで、私どもとしましては、漁業の受ける損失は十分に補償し、あるいは新たな淡水に適合した漁業振興策も講じつつ霞ケ浦の淡水化をしていこうということで、現在事業を進めておるわけでございます。
  100. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 政務次官から、さっきの補償の問題について——いまの話から言えば、干ばつだと言うのでしょう。干ばつだということになれば、これは天災ですよ。天災であれば、天災融資法なり、天災に対する法的処置を当然とらなければならない。それから、一般の災害であれば農業災害補償法ということになる。いまからそれは調査し、準備しなければいけない。そういう点について農林省としても、現実調査をして、被害の状況なり原因を確かめていかなければいけないことになるだろうと私は思う。これだけ大きな問題になっているのですから、またよその党のほうからも質問があると思うのです。現地へ行っているようですからね。だから、そういう点についてしっかりした答弁をもらっておかないとどうにもならない。
  101. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 竹内君からそういう話が出るというので、もっともなことだから、天災だから何とか補助でも出せないのかということも実は調べさせたのです。ところが、天災融資法とか激甚災害とかいうと、法律で一応要件がきまっておって、被害金額とか面積とかいうふうなことで、特に、被害の総体の金額というようなことで、国が直接乗り出すのにはどうも該当しないようだ。ということになると、小部分の地域的な問題になるから、それは国として、いまの法律の体系では何ともしかたがない。そこで、茨城県に何とかめんどうを見るように国のほうからも話をしたい。それから、茨城県自身も、やはりお役人さんは法律を知っていますから、これは茨城県としてできるだけのことをやりましょうということで、県執行部及び議会等がその井戸に対する助成その他をやろうとしておるのか、もうやる方向で検討しているという話を私は聞いております。ですから、ほかのどこの党が言ってこられても、いまの段階では、国が直接それに助成を出すということは非常にむずかしい。竹内さんからの話だから何とか特別扱いでもできないかと言ったのだが、なかなかむずかしいというのがいまの結論でございます。
  102. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでは、この問題は、この段階の問題はこれで終わりますが、これはやはり、個人が、おれが言ったから、竹内が言ったからということではなくて、農民が言っているのであって、関係の農民が叫んでいるのだから、その叫びに対して誠意のある答えをしてもらわないと、これはたいへんなことに今後もなっていくのではないかと思う。確かに、面積は五百十ヘクタール、三千二百ヘクタールというような状況もあります。だから、そういう点については調査を十分にしてもらわなければいけない。調査が不十分であれば——補償の方法だってこれはいろいろあるだろうと思うのです。  きょうはこの辺にして、時間が来ましたから、これで終わります。
  103. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ————◇—————    午後一時三十七分開議
  104. 仮谷忠男

    仮谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬野栄次郎君。
  105. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和四十九年産米の米価並びにAF2問題について、農林省及び厚生省当局に質問いたします。まず、最初に政務次官にお尋ねしますが、政務次官はしばらく農林委員会に出席しておられませんでしたけれども、きのうから私は政務次官の元気な顔を見て、いよいよ審議に本気に加わっていくという決意を見たわけでありますが、まず、冒頭に、政務次官は、重大な農業の危機、米価問題を控えて、決意を新たに当委員会に出席をして今後臨んでいかれると思うのですが、その辺の決意をひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  106. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 諸般の都合によりまして欠席をいたしておりましたが、ただいまおっしゃるような御趣旨で、そういうような決意でしばらくの間やってまいるつもりであります。
  107. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農業の危機とも言われ、また亡国農政とも言われて、農家もたいへん心配しているときであります。重要な役職にある政務次官でありますから、農家の窮状を踏まえて、以下質問することに対して真剣に取り組んでいただいて、日本農業の今後のためにせっかく努力をお願いしたい、かように冒頭申し上げる次第であります。  そこで、昨日、要求米価実現全国農協代表者大会が、日本武道館で、全国の都道府県農協代表者一万一千名を結集し、かつてない盛り上がりの中に全中主催のもとに行なわれました。その後、雨の中をデモ行進をし、私たちも議面でその悲壮なデモの状況をまのあたりに見、また、要請、陳情を受けました。昨日から今日にかけて、各県がほとんど各県の選出国会議員に要請をなされて、けさから私も数件の要請に出て、さらにきびしい決意のほどを承ってまいったわけであります。昨日のあの熱気のこもった大会の感激もきめやらぬ中に当委員会が開かれておりますので、私は、冒頭、昨日の米価大会を踏まえて質問を申し上げたいと思います。  最初に政務次官にお尋ねいたしますが、かつてない昨日の要求米価実現全国農協代表者大会をどういうふうに受けとめておられるか、その辺の所見から最初に承りたい。
  108. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 要求米価大会は例年のことではございますが、諸般の賃金、物価の高騰、というような情勢のもとにおいて、これらを四十九年産米価に適切に反映してもらわなくては困るという強い意思表示のあらわれであるというように受け取っておるわけであります。
  109. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官からでも食糧庁長官からでもけっこうですが、昨日の米価大会の決議、また、米価大会で行なわれたいろいろな様子について、新聞並びにテレビ等でもよく承知しておられると思いますが、これに対してどういう決議がなされ、どういうことでいろいろなハプニングが起きたか。いわゆる議事が中断したわけですが、それはどの程度当局は踏まえておるかお尋ねしたいわけです。  御承知のように、こういう重大な時期に重大な大会が行なわれて、農林省当局としても、最大の問題を目前に控えて重大な関心を持っておられるので、かりに大会に出席はしていないとしても、その状況については十分な把握をしておられると思うので、その認識のほどを私は承りたいと思うわけです。
  110. 三善信二

    ○三善政府委員 私は昨日の大会に出席いたしておりませんでしたが、先生がおっしゃるように、新聞その他で状況は承っております。また、大会に出てこられ、参加されました地方の代表の方々の陳情も二、三受けましたので、その内容等は承知いたしております。  具体的に言えということでございますから申し上げますと、先生御承知のように、四十九年産米の米価の要求は、現行の政府買い入れ基準価格に対して、農協の団体の要求は六四・七%アップということで決議をしておられます。  それから、もう一つ大きな点は、四十八年産米に対する追加払いを支払えということで、稲作で一俵当たり二百九十四円であったかと思いますが、昨日の大会で、この点につきまして、一部の地方の方々から、これを増額しろといって、たとえば三千二百何十円ですか、増額の動議が出た。それに対して、議事中断をして、運営委員会で相談の結果、今後この点については検討するということになったように聞いております。  さらに、現在概算払いは一俵当たり千円払っておりますけれども、これを三千円に増額するという点が決議で行なわれております。  それから、一番基本的には、米価を早くきめろということで、農協で言っておられますのには、田植え前に米価を決定すべきである、しかも、物価その他を反映して大幅な引き上げをすべきであるという要求であったかと思います。
  111. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大どころを食糧庁長官が答弁されましたが、もちろん、大会の決議はほかにもいろいろとあったわけでありますけれども、概していま答弁なさったようなことが中心的な問題であったわけです。食糧庁長官が四十八年度産米に対する追加払いを、二百九十四円であったのを、三千二百六十何円とかとおっしゃいましたが、三千二百六十三円であります。あれだけ騒いであれだけ真剣に討議した問題でありますので、数字ぐらいは食糧庁長官もきちっと覚えておいて御答弁いただきたかった。そういうところが農民のああいう真剣な姿を当局がどう受け取めておられるかということで、この問題は何も委員会で時間を費して聞く必要はないかと思ったのだけれども、当局の熱心さを試みるために私は質問したわけであります。  私たちも毎年の大会に出席しておりますけれども、ことしの大会はまた変わった意味で、内容といい、また意見の発表といい、従来に増して真剣そのものでありました。それだけ米価大会も年を追うごとに熱が込もってきております。このまま推移すると、来年、再来年、四、五年後の大会を思ったときに、相当移り変わる姿を思い浮かべます。そういった中から、基本農政の転換、また、農業の基本の発想の転換ということと真剣に取り組まなければならぬということを真剣に受けとめてもらわないと、私は、党派を超越して日本農業の危機ということを思ったときに、たいへん心配であります。昨日も熊本県の中央会会長杉本議長が特に冒頭に発言をいたしまして、「今回の大会は農政の攻防戦である。また、生活防衛の戦いである。そして、歴史的なかつてない大会となるのだ」ということを宣言しておりましたが、まさにそのとおりであったわけでありまして、この十分な認識の上に立って、以下いろいろとお尋ねしてまいりたい、かように思います。  いま、食糧庁長官から、きのうの大会の決議の内容でいろいろ申されましたが、昨年の物価の値上がりまたは労賃の値上がり等から見まして、ことしの生産者米価を、六十キロ当たり六四・七%、一万六千七百四円ということで農業団体は要求しておりますが、政務次官はこれに対してどういうふうな見解を持っておられるか。もちろん、いずれ米審に諮問をして、その答申を待って政府が最終的にはきめるということになることも十分承知しておりますが、いろいろな昨年からの物価の値上がり、労賃の値上がりとかを見まして、ことしの農民のこの要求に対しては、あなたも農業を基盤として国会に出てきておられる一人でありますが、農民の立場に立ってどういうふうにこの要求に対して見ておられるか、その辺の政務次官のお考えをお聞きしたいと思います。
  112. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 私が答弁することはあなたがもう言ってしまったから、形式的な話は抜きといたしまして、六四%がいいのか、何十%がいいのか、それは数字の上での話であります。したがいまして、われわれの基本的な考え方は、現在の物価の値上がり、それから春闘等による賃金の値上がり、こういうようなものが当然に統計で出てまいります。したがって、なるべくこういうような上がった状態のもとで、それらが適切に米価に反映されるようにしなければならぬということで、目下米価を計算するために必要な資料の収集に懸命に作業をしておるという段階であります。したがって、結論的なことはまだわかりません。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 去る四月二十五日と五月九日に、当委員会で米価問題について私も政府考えをただしました。その節も同じような答弁が食糧庁長官からなされたわけです。また、おとといの本会議でわが党の林議員が農業白書の質問をし、その中で田中総理並びに大蔵大臣の見解も聞いて、一応の政府考え方というものは私たちも承知しておりますけれども、あえてそれを踏まえて、農家が切なる訴えをしておるところの昨日の大会の状況等を見ましていろいろお尋ねをしておるわけでありますが、いま申されたように、農業団体の要求についてはいずれ諮問をして、その答申を待っての政府の決定ということになろうと思いますけれども、私たちは、諸物価の値上がりその他を見ましても、この米価は決して高くはないと思う。かりに一例を申しますと、いまの米価でございますと、十キロ当たりと言いますと、昔の度量衡法によれば、約七升です。一升が三百六十円としますと一合が三十六円、小さいお茶わんで御飯をたいて盛りますと約三ばい、一ぱいが十二円ということになる。こういうふうに考えてみますと、確かに米価というものは安い。もちろん、消費者米価の据え置きということは当然でありますが、生産者の米価そのものは、小さい茶わんで一ぱいが十二円ぐらいに当たる。コーヒー一ぱいが百円、百五十円もする、ケーキ一つにしても百円もするという時代に、何といっても米は安い。最近は肉やら魚が高いということから米を食べる方が多くなって、かなり消費量が伸びておることも事実であります。そういったことから考えても、米が安いということの証左であると私は考えておるわけであります。そういった意味で、農家が要求している六十キロ当たり一万六千七百四円というのはぎりぎりの線であり、一歩も引けないということで、自民党の政調会のほうでも、あるいはまた農林省でも、また、自民党党本部はじめ各党でも、皆さま方も要請を受けられて、よく承知しておられることだと思う。こういったことを踏まえて、ことしの米価決定にあたっては、昨年来の石油パニックによる諸物価、労賃の値上がり、また、春闘の労賃の値上がり等を十分参酌して適切な諮問を早くして、決定をしていただくように、重ね重ね強く当局に要請をするところであります。  そこで、先ほど食糧庁長官からもお話しがありましたように、昨日の問題の中でも、四十八年産米の追加払いの問題が出ました。昨年の米価要求は一万三千百四十円でしたか、要求をした中で、中央会その他が決定した価格が二百九十四円。この算定の基礎がはっきりしていないので、われわれもいろいろと疑問を持ったわけですが、あにはからんや、きのうああいった大会の途中で強い要請があり、食糧庁長官は、三千二百六十何円かに今後検討するようになったとかということですけれども、事実、昨日は緊急動議で三千二百六十三円の追加払いということで決定をしたわけです。その辺も少し認識が足らないように思って残念に思うのですけれども、これに対しては、私の五月九日の質問の際にも、食糧庁長官は追加払いの考えはないと言われ、また、おとといの本会議における田中総理の答弁の中でも、追加払いは考えていないということが明確に言われましたけれども、やはり、農民の要求であり、われわれはまた、昨年来の物価、労賃の値上がり等を見ましても、何としてもこの追加払いをすべきであると思えてなりません。政府においても十分これは検討していただくと同時に、また、今後も、米価決定後においての物価の高騰その他ということが必ず予想されるところでありますから、そういった意味でも、途中で米審等を開いてさらに検討するというようなことが当然なくてはならぬと思う。  こういったことから、追加払いということについての農協大会の要求に対して政務次官はどう考えておられるか、あらためて御意見を承りたいと思います。
  114. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 瀬野さん御承知のとおり、米価を決定をする場合には、現在は、再生産の確保をはかることを旨として生産費及び所得補償方式によって算定をしておる。しかしながら、この考え方によりますと、米価の水準というものは物価及び生産費だけを織り込んでおるのではありません。そのほかに需給事情というようなものもしんしゃくをいたしまして米価をきめておるわけであります。去年は基本米価で一五%、奨励金等を入れて一六・一%というようなものの決定をしておるわけであって、これはかなり大幅に実は引き上げておるわけであります。  したがいまして、米価イコール賃金ではございません。賃金はもっと高いところの水準でございましたし、農家の一日労働報酬というものは、統計がまだきちんと出ておらないかもしれませんが、昨年度は米価については約三〇%程度上がっておるというようにわれわれは推計をいたしておるわけであります。  それはどういうところからそういうことが来るがということは瀬野さんは専門家だからわかると思いますが、米価の基礎となる労働賃金と労働時間で、労働時間というのは、実は、その年の実労働時間をとっておるものではありません。過去の労働時間の三カ年の平均をとっております。したがって、百時間とか、九十五時間とか、九十時間とか、八十五時間とか、毎年下がってまいりましても、過去の三カ年平均ということになりますから、現在のように生産性がどんどん進んでおるという中ではかなりのゆるみがある。そういうところから、労働報酬というものは米価のアップ率よりもかなり高いものになってくるということなのであります。したがいまして、そういうような事情や、あるいはまた現在はいまだに過剰基調にあるという需給事情、こういうものもありますけれども、それでもなおかつ去年はいろいろなことを考慮して、基本米価で一五%というような実は異例の米価決定をしておるわけであります。  したがいまして、バックペイの問題につきましては、総理大臣が本会議において答弁をいたしましたように、われわれといたしましてはバックペイのことは考えておりません。これは米価だけでなくて、政府の決定する農産物というものは、さらにビートの問題もございましょう、加工原料乳のこともありましょう、でん粉もありましょう、あるいは砂糖もありましょう、なたねもありましょう、麦類もありましょう、こういうふうに政策価格でたくさんのものを決定をいたしております。したがって、その大本となるところの米価についてバックペイをかりにするということになりますと、全体の農作物との問題というものが出てまいります。いずれにいたしましても、総合的に考えまして、目下政府としてはバックペイのことは考えておらないということであります。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、バックペイのことは考えておらぬとおっしゃるけれども、バックペイに対しては、きのうの大会を踏まえて、切なる全国の農協代表者の要請があったわけでありますから、政府考え農林省としては正し、そして、こういったことを何らかの形で考えるなり、また、追加払いを考えるなり、いろいろ検討をして、さらに大蔵省並びに関係当局とも折衝していただきたい、このことを私は強くお願いするわけです。  そこで、もう一つ問題になっております米価審議会の問題でありますけれども、去る五月九日、私が食糧庁長官に当委員会で質問した際も、食糧庁長官は、米価審議会は七月が通例となっているというようなことで、あらゆる労賃あるいは物価等の動向を見て、データをそろえた上で考えると言うから、参議院選後かと言うと、政治的な配慮からやるんではない、いずれにしても農家にふさわしいデータをそろえた上で七月以降に何とか諮問をして答申を得たいという意味の答弁がございました。おとといの本会議でもこういう問題についてわが党の林委員がいろいろ質問した際に、田中首相は、米価については従来から七月ごろ行なうのが通例だ、データをそろえた上で対処するというふうに答弁しておる。さらに、福田大蔵大臣も、米価については従来から七月ごろ行なわれておるので、最も新しいデータによって賃金の動向、物価の動向を考えてきめたい、本年につき例外を求める考えはない、と、こういうふうに答弁をしております。私はこれを聞いてまことにけしからぬと思った。農林省のほうからこういうような答弁の内容等を打ち合わせをしたから大臣がこう言ったのか、それとも、田中総理は十分承知の上で言ったのか、私は本会議場で疑問を持ったわけでありますけれども、私はさっそく従来からの米審の経緯を調べてみました。ちなみに申しますと、昭和三十五年は七月の十一日に諮問されておる。三十六年が七月の十二日、三十七年は六月の二十日、三十八年は六月の二十日、三十九年が七月の二日、四十年が七月の五日、四十一年が六月の二十九日、四十二年が七月の十日、四十三年が七月の二十二日、四十四年は六月の四日、四十五年は六月の三日、四十六年は四月の二十六日、四十七年が七月の二十四日、四十八年が八月の一日。昨年は、あの暑い盛りに、国会休会中でありましたけれども、三番町にわれわれも十日余り詰めまして米価要求をしたことはまざまざといまだに記憶に新たなところでありますが、こうして見ますと、確かに七月きめたことも従来三十五年以来七回ある。また、三十五年以来六月にきめたことが五回、中でも、おととしの四十六年には四月の二十六日に諮問をして、答申は無答申でありましたけれども、五月の一日に米価決定をしておる。こういうように作付前に決定したことが数年前あったわけです。それが昨年といい、ことしといい、政局に左右されて、七月、八月に米価を決定することがいかにも当然視されるような状態になってきておる。そういったことを既成事実かのように踏まえて、総理にしても、福田蔵相にしても、本年につき例外を求める考えはないとか、従来から七月ごろに米価決定を行なうのが通例だとか、こういうふうにおっしゃるということは農民を無視した言い方であり、けしからぬ問題であると思う。  政務次官も農業のことはよく御承知のとおりでありますが、米価は作付前にきめるということは当然のことであります。そういった意味から総理、福田蔵相の前言は取り消してもらわなければいかぬとも私は思っておるわけですけれども、こういったことに対して政務次官はどういうふうな見解をお持ちであるか、お答えをいただきたい。
  116. 三善信二

    ○三善政府委員 私から先にお答えいたします。  いま先生がおっしゃった米審の諮問の日付は大体そのとおりでございます。ただ、ここで先生に御理解していただきたいのは、私どもが申し上げておりますのは、四十六年は四月二十六日に諮問をして、五月一日に決定した、この四十六年は例外的にこういうこともしました、それから四十五年は六月三日に諮問しました、四十四年は六月四日に諮問しました、こう申し上げておりますけれども、これはむしろ例外で、米価は実質据え置きのときでございます。ちょうど生産調整が始まる直前ないし直後の問題で、米価据え置きという答申といいますか、諮問をいたしているわけでございまして、そういう例外的なものを除けば大体七月に諮問し、決定しているのが大体通例でございますというようなことを申し上げているわけでございます。
  117. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 田植え前に米価をきめろというのは、私は一つの見識だと思います。ところが、田植え前にきめろということは、現実にいまごろきめろという話じゃなくして、いまはもう田植えが非常に早くなりまして、たとえば関東等を見ても、五月中にはほとんど田植えが終わる。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 一カ月ぐらい昔と違って田植えが早まっております。したがって、いまごろ田植えを終わらすというためには、もう一月ごろからその計画を立てるわけでありますから、ともかく肥料はどれぐらい使うか、どれぐらい植えるか、どういう種もみをそろえるか、あるいは人をどこから頼むか、こういうふうなことなので、まあ米価は十二月ごろきめたらいいじゃないかという意見が実はあることは事実であります。しかしながら、こういうように物価等がかなり変動をするというようなときにおいては、葉たばこでやったことがございますが、中途である一定の限度以上に物価が上がった場合には再計算をするというような複雑なことにもなってまいります。したがって、そういうふうなことを避けるということになりますと、できるだけ新しい物価、賃金の春闘相場等も織り込み、特にことしのように石油の値上げというものに関連をして諸物価の動きというものもあるわけでございますから、やはり一番新しい物価、賃金というものをとっていったほうがいいだろう、こういうふうな議論もまた一方にあるわけであります。  したがって、われわれといたしましては、田植え前にといっても、非常に中途はんぱな話になってしまいますものですから、むしろ新しい物価や賃金の水準、高い水準になりますから、それをとって米価をきめることのほうが米作農家に対して親切ではないかというように考えておるわけであります。中途で例外的にきめたことはありますが、それはただいま食糧庁長官が言ったように、減反政策を非常に強烈に推し進めるというような状態の中で、ともかく米価の据え置きということはあらかじめはっきりさせたほうがいいじゃないかということで、五月中に実質米価据え置きというようなことでやったことがございますが、今回は米価の据え置きを考えておるわけではありませんで、それらの賃金、諸物価の高騰を適正に反映させよう、こういうようなことでございますから、むしろそれらが出そろったところでやることがよろしい、かように考えております。
  118. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 四十四年または四十五年ないし四十六年は例外だ、こういうように食糧庁長官または政務次官はおっしゃるけれども、例外ということをおっしゃれば、三十七年や三十八年、四十一年、四十四年も、四十五年についても六月にきめておる。これはみんなまた例外かということになる。例外のほうが多いじゃないかというようなことにも理屈はなるわけで、つまり、そういったことは答弁のための答弁で、実際に農民をほんとうに思っての農政の立場から言っているのじゃないと私は思うのです。  私は、こんなことをおっしゃるから、大蔵省にも先日このことでいろいろ当たってみました。名前を言うわけにいきませんけれども、大蔵省の役人も、農林省は実際方向性がない、大言壮語はするけれども、なかなか農民の望むビジョンがないじゃないか、失礼な言い方でありますけれども農林省は農業収穫予想課だ、と、こういうように言っているのです。最近は世界的に少し視野を広げてきたので若干は是正されつつあるけれども、米価にしても、あらゆる農産物にしても、まさにすべてがあと追いであって、農業収穫予想課みたいなかっこうになってしまっている、これではいかぬということを、事実大蔵当局なんかも指摘しております。こういうことを思うにつけても、農林省はこういうことについてもっとはっきりとした方針を立ててやっていただかないと、ここで幾ら答弁されても、事実政局に左右されて、そして米審がいつもおくれる。こういうあり方というものが今後ずっと定着していくとたいへんな問題であると思うわけです。今年のみならず、将来を考えたときに、こういうことはけしからぬ問題である。あれだけ農業諸団体あるいは農民が真剣に作付前にきめてくれと言っている。また、個人的に会えば、与党の皆さん方も、当然だ、ひとつきびしく委員会でも言ってもらいたいということを言っているのをよく聞くわけです。そういったことから、皆さん方も十分わかっておりながら、立場上いろいろそういった答弁をなさっておるものと思うけれども、私は、農業の将来を思ったときに、この米審のあり方というものは真剣に考えなければいかぬと思う。  そこで、先日来何回となく当委員会で私も政府考えをただしてきましたところの米審のあり方そのものについても、現在の米審のあり方ではほとんど形骸化されて、これはまさにあってなきがごとしだというふうに言われ、信頼を失墜しつつあります。すでに米審の否定論さえ出てきております。国会で米価をきめろときのうも血の叫びがありましたし、われわれもかねがね、こういうことは国会できめるべきである、少なくとも米審が存続するならば国会議員もこれに入ってきめるべきであるというようなことを主張してきたのも事実であります。そういったことから、米審そのものをいまにわかにここでどうのこうのと言ったってどうしようもないことでありますけれども、将来の問題として、米審のあり方についてはわれわれも政府考えをただし、これの改革については十分対処してまいりますけれども、米審そのもののあり方について、存在する以上は、当面作付前に米価を決定したならば、物価、労賃の請情勢の問題でまたいろいろと社会情勢が変わってくれば、年に四回、四半期に一回は開け、それが無理ならば、少なくとも一年に二回ぐらいは米審を開いて、いわゆる是正をすべきであるということを私は主張したい。そうすれば追加払いの問題等も当然検討されるということになります。そういった意味で、作付前に米価を決定し、労賃、物価の値上がりその他でいろいろ問題があるならば、また秋に米審を再び開いて検討するというようなことであって当然しかるべきだと私は思う。それが農林大臣としての、また農林省としての、農民に対するところのほんとうの考え方でなくちゃいかぬと私は思うのです。  そういった基本問題について、米審のあり方等を考えて、あわせて御答弁をいただきたい。
  119. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 米価審議会は、御承知のとおり、生産者代表、消費者代表、学識経験者等の三者構成によって運営をされておるわけでありまして、それぞれの主張を聞いて、そうして答申が出されるということになっておるわけであります。したがって、政府といたしましては、米価審議会の意向というものは十二分に尊重して米価を決定するという意向でございますし、現在までも極力そのようにしてまいってきておるわけであります。  作付前にきめろという話は、もう先ほど私が見解を申し上げましたからあまりくどいことは申しませんが、現段階においてきめるということは、作付前にきめたことで必ずしも農家のために親切になるというようなことではありません。したがって、先ほど私が言ったように、十二月ごろきめて、そうしてある一定の物価、賃金の移動があった場合には、それをこえた場合についてだけ直すとかいうようなことも、それは考えられるわけでありますが、これについては予算米価になるというようなことで、実は非常な強い反対等もございまして、なかなかそれにも踏み切れないというようなことでありますから、現段階において作付前にきめろと言ってもそれは不可能なことでありますので、したがって、やはり、一番親切なきめ方は、物価、賃金のこの三、四月の高騰というものが正しく反映をされるということが一番いいじゃないかと思う。  それで、ことしの秋以降はどうかということ等につきましては、政府としては、金融の引き締め、総需要の抑制というようなことを極力はかっておりますから、この石油等の値上がりというものについて、上がるものはもうここで上がりますけれどもあとはもうずっとこれは押えていくということなので、それほどの大きな値上がりというものはやらせないという方針でございます。  したがって、現在、いろいろな事情で上がったものについては、それをできるだけ直近まで取り入れて米価をきめるということが一番よい。こういうふうなことでございますので、いますぐに米価をきめるという考えは持っておりません。
  120. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、予約売り渡し制度における概算金の増額ということが昨日の大会でも決議されて、強い要請があったわけですが、先ほども食糧庁長官からこういうことに若干触れられましたが、御承知のように、予約売り渡し制度における概算金というのは事前の売り渡し申し込み制度でございまして、作付前に米価を決定し、売り渡し申し込みをするたてまえになっておることはもう皆さん百も承知のとおりであります。  そこで、売り渡し契約締結後に米価を決定するということは、これは生産者を無視するいわゆる農民不在のあり方であると、かように私は指摘せざるを得ないのです。今回、予約売り渡し制度における概算金を千円から三千円ということで農業諸団体は要求しておりますが、これに対しては政府はどういうふうに考えておられるか。また、いま申しましたように、売買契約締結後に米価を決定するということは農民の立場を無視したやり方であるというふうに私はかねがね指摘しておるところでありますけれども、この点については当局はどういう見解をお持ちであるか、お答えをいただきたい。
  121. 三善信二

    ○三善政府委員 予約概算金の増額の要求がございますが、御承知のように、予約概算金は現在一俵当たり千円払っております。昭和三十年に現在の予約申し込み制に移行した際にこの制度ができたわけでございまして、このときに、先生御承知のように、集荷を促進するという意味から、予約減税とか、申し込み加算とか、そういう制度も一緒にできたわけでございます。しかし、こういう最近の米の生産状況を踏まえまして、予約減税と申し込み加算はもうすでに廃止をいたしております。残っているのはこの予約概算金の制度だけでございまして、そういう経緯が実はございますし、特に、この概算金の額を増額するということは、一面から言えば、この概算金なんかもう要らぬのじゃないかというような意見もまた従来からあったのでございまして、そういういろいろなことを踏まえて検討しなければならないかと私どもは思っております。現在、特にこれを増額しなければならないというような意見は持っておりません。  それからもう一つの問題は、米価を早く決定して、そのあと概算金の支払いをするのがほんとうじゃないか、筋ではないか、というお尋ねだと思いますが、しかし、これは先ほど申し上げましたように、四十四年、五年、六年、と、このときは米価を据え置きましたが、そのときを除いては、あとは大体米価がきまる前に概算金の支払いだけは別途に期日をきめてやっているわけでございまして、農民の方の要望も、その概算金の支払いは予約申し込みと同時に早くやってもらいたいという意向もありましたし、そういうことで処置しております。ただ、その予約申し込みの受け付けば、米価決定後まで延ばして措置しておりますので、その最終的な考え方としては、決定後に予約申し込みをすることも制度的には可能にいたしておりますので、先生の御指摘のような点はなかろうかということでございます。
  122. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上、米価問題についていろいろと質問してまいりましたが、いまや、日本の農業はかつて経験したことのない重大な危機に直面しております。いわゆる亡国農政とまでいろいろ批判されるときにいまは立ち至っておることを当局も十分認識していただきたいと思う。世界穀物価格の暴騰、また石油危機、通貨不安、日本経済の混乱、さらにはインフレが国民生活に深刻な影響を与えているという現状を踏まえたときに、農業者は、いま、生産資材の高騰に加えて農畜産物価格の低迷というダブルパンチを受けてたいへんな危機にさらされております。  結論的には、かねがね私が申しておりますように、日本農業を救う道は基本農政の発想の大転換をはかり、さらに食料自給率の向上をはかること以外にない。こういうぐあいに端的に私は結論づけておりますが、本年度の米価決定が今後の日本農業の進路を決定するとも言うべき重大なものになるわけであり、さらに、日本農業の危機を突破するためにも、国民食料確保の基本農政確立のためにも、今回の米価決定が大きな岐路に立たされておるのであって、それがまた大きな焦点になっているということを当局にも十分認識していただきたい。  先ほど来いろいろと私は当局に質問してまいりましたが、本年度米価を、生産費・所得補償方式によって、六十キロ、六四・七%、一万六千七百四円、農民はこれはびた一文まけられないと言って叫んでおります。この諮問にあたっては十分検討していただきたいし、さらには、四十八年産米の異常物価高に対する追加払い三千二百六十三円の検討をぜひ再度お願いしたい。さらには、いま申し上げた予約売り渡し制度における概算金の千円から三千円の増額についても検討していただきたい。そして、先ほど申しました米価審議会のあり方についても、作付前に早急に開き、また、必要に応じては少なくとも年に二回米審を開くということで農民の期待にこたえていただきたい、かように私は思うわけです。  これが平年のときであれば年に一回でもこと足りる場合もあると私は思いますけれども、こういう異常なときであり、農業危機に直面したときには、米審は当然二回開くべきであると私は言いたいわけです。せんだっても、米価審議会の会長を当委員会に招致して参考人としていろいろ聞いた際にも、米価審議会の会長も、米審のあり方については、年に数回開くべきだということを私の質問に対してはっきりとここで答弁もされており、われわれもその期待にこたえたいと言っております。しかし、政府のほうがなかなか諮問をしてくれないのでわれわれは応じられないのだというふうに会長が言っておるわけですから、政府のかねがねのデータ整理または物価、労賃の検討をせいぜいやられて、農家の必要に応じて米審の開催をやっていただくように重ね重ね強く要請をいたしておきたいと思います。  本日は農林大臣が参議院のほうの委員会に出席のために当委員会に出ておられませんけれども、国会の今後の審議のあり方を見ましたときに、米価シーズンに入り、米審までに農林委員会のこういうことについての一般質問がはたしてできるかどうかを私は懸念しましたので、農林大臣の代理として出ておられる政務次官、また、政府食糧庁長官に対して、きのうのあの熱気のこもったところの全国米価大会の血の叫びの零囲気を踏まえて、その意思の一端を伝え、あえて政府の今後の再検討をお願いするという意味で私はきょう質問した次第であります。  以上で米価問題についての質問を一応終わりまして、質問通告をしておきましたAF2の問題について、ただいまから農林省並びに主として厚生省当局に質問を展開してまいりたいと思います。  AF2といいますと、これはニトロフラン系の化合物でございます。主としてとうふ、魚肉、ハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺんといったものに合成殺菌料としていろいろ入っておりますところの食品添加物でございます。この添加をしていい種類は数種類に限定をされておりますけれども、食品公害が叫ばれておるおりから、AF2の使用について、これが人体への影響に強い疑念を持たれておるということで私は指摘するわけですが、このAF2を使っているところのこういう種類のものを食べておりますと、染色体及び遺伝子を破壊して催奇性の子供ができるということで、最近は流産がとても多くなったとか、奇形の子供が生まれてくるということで、実は現在社会問題になっておるわけです。また、肝臓ガンの発生地域では、AF2の使用量に比例して起きているという事実がございます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 こういったことを思いましたときに、AF2を使用しているいろいろな食品については、国民の健康保全上から私たちは重大な関心を持って心配をいたしておるところです。神経性の障害が起きたり皮膚炎が起こったという例もたびたび聞いておりますし、過日三年にわたっていろいろと裁判が行なわれてまいりましたが、四月二十五日に一応結審が出ているとはいうものの、この内容についても、これはいろいろとその過程において問題があるわけです。  それらをここで一々やっていたのでは時間も早りませんので、さっそく本論に入ってまいりますが、AF2は去る四十年七月に食品添加物として厚生省から認可されまして、とうふや魚肉、ハム、ソーセージなどの防腐剤として広く使われておりますが、昨年秋国立遺伝学研究所の学者グループの研究によって、AF2は、人間の細胞を破壊し突然変異を起こさせる有害物質であるということが指摘されたのをはじめ、発がん性や催奇性などのさまざまの毒性が報告されておるわけですが、厚生省にお尋ねする前に農林省にお聞きしますが、肉にしても、魚にしても、さらには練り製品等を大量に出荷して市場でせりをしているわけでありますが、そういった関係から農林省もこれは全然関係なしではないわけでありますし、こういう問題についてどういうふうに農林省は受けとめておられるか。その点、農林省の検討しておられる認識のほどをまず冒頭に承りたいのであります。
  123. 池田正範

    ○池田政府委員 御指摘のAF2、すなわちアクリルアミドでございますが、これは御承知のように日本で発明されました特別の殺菌剤でございますが、食品の腐敗、変質等を防止するために、食品添加物として、食品衛生法上はその使用を現在許可されております。先生御承知のように、あん等については禁止されている面もございますけれども農林省といたしましては、現段階で許可されております範囲内での殺菌剤ということで、その最小限度を認めるということでございますけれども、しかしながら、ものは食品、食用でございますから、したがって、許されておると言いましても、それを入れなくても済むものまで入れる必要はないということ、これは農林省としての一つの基本方針でございます。  これは技術会議のほうから御説明申し上げたほうがよろしいかと思いますけれども、技術会議のほうでは、昭和四十六年度から三カ年計画で、プロジェクト研究として、AF2を含む食品添加物の添加効果の確認、あるいはできるだけ添加しないための食品の加工処理、それから保存技術の別のもっと安全な開発技術はないかということ、それから、やむを得ず添加する場合は一体どういう適正使用法があるかということ、そういうようなことを別途技術会議のほうで現在検討されておるわけでございます。  私どもといたしましては、ただいま申し上げましたような食品添加物につきましては、とにかく安全性が第一であるというふうなことから、食品衛生法の規制に従っていることはもとよりでございますけれども、かりに食品衛生法で許されておりましても、使わないで済むもの——たとえば最近よく問題になっているのはとうふでございますけれども、こういうふうに生鮮食料品で加工食品と違ったJASの規格等に載らないようなものは、最近実は地域食品認証制度といったような新しい制度、準JASのような制度をつくってやっておりますけれども、当日売りで済むような一般のとうふにつきましては、その製造にはAF2は使用しないというような指導基準を設けておりまして、別途ハムとか練り製品とかとうふとかいったもので一応認められておりますものの中でも、いま申し上げましたように必要ないものはなるべく使わせないという方向で指導をいたしたいと思いますし、今後もその方向を続けてまいりたいと考える次第でございます。
  124. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林省の見解を一応お聞きしましたが、ただいまからはしょって厚生省に若干の質問をしますが、AF2の製造量、使用量、使用状況等について簡潔に御報告ください。
  125. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  AF2の生産量でございますが、これは通産省のほうで把握しておりまして、それから聞いたところでは、大体三トンを若干切れるという程度の生産でございまして、先ほど先生から御指摘のように、AF2は殺菌剤として、魚肉練り製品とか、食肉練り製品とか、あるいはとうふといったようなものに必要最小限度に限って使用を認めております。
  126. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 厚生省では、細菌に対する突然変異性などが最近明らかとなったために、昨年九月から突然変異性研究班をつくって再評価を進めておられると聞くが、どの程度進んでおりますか。
  127. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。実は、この突然変異の問題につきましては、以前から世界各国で問題になっておりまして、特に、国際機関でございますWHOあるいはアメリカの科学アカデミーのメンバーなんかでもいまでも続けて検討はしておりますけれども、問題が分子レベルのところまでおりて非常にむずかしいということで、まだはっきりした結論は出ておりません。ただ、現在、世界的には、こん虫とか細菌類で出た変異というものがそのまま哺乳動物の安全性の評価に外挿できるかどうかということについては幾つかの異論もございまして、やはり、添加物の安全性については、哺乳動物を使ってがっちりと安全性を見るべきだということに私どもではなっておるわけでございます。  しかしながら、先生御承知の国立遺伝学研究所の諸先生方が、いろいろな形で、こういうさまざまなバクテリアとかあるいは蚕などを用いて、突然変異が起こっている、非常に強いということで、AF2の安全性について警鐘を鳴らしたわけでございまして、私どもはこれを受けとめまして、食品衛生調査会の専門家先生などと協議をいたしまして、こういうむずかしい問題についでただ外国にまかせておくだけではいかぬということで、そういう遺伝学者の参加もお願いしまして、先ほど先生がおっしゃられました遺伝を中心とした研究班を九月に設置いたしまして、ガンなりガンの専門家、あるいは病理なら病理の専門家、そして遺伝の専門家というように、それぞれの分野で突っ込んだ研究を実はお願いしておるわけでございます。  この中間報告につきましては、去る三月十五日に私どもは中間報告を受けたわけでございますか、その結果は、やはり突然変異性はバクテリアとか蚕等には強く起こる、しかし、哺乳動物に大量投与してみた場合に、特に遺伝に原因を持つであろうと思われる性腺に対してはそれほど大きな障害はほとんど見られないということで、どうしてこういうものには見られないのだ、それじゃどうしたらそういった点が確認できるんだろうかというような点について、さらに先生方に突っ込んで今後も研究を続けてもらうことになっております。
  128. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 厚生省は、この食品添加物の使用を必要最小限にするという基本方針で、現行使用基準の再点検五カ年計画に今年から着手するという考えのようでありますが、殺菌剤AF2についても初年度の再点検対象になっておるわけでありますが、その危険性が指摘されておる今日において早急にこれは行なうべきである、これだけ世間的に騒がれておる問題であるので一刻も早くやるべきだ、かように思うのですが、その点はどういうふうな考えでおられますか。
  129. 宮沢香

    ○宮沢説明員 全く先生の御指摘のとおりでございまして、私どもも、使用基準を、食品添加物の、特に殺菌剤のようなものは大量に使えば人体にも有害だということで、その使用量を、安全であっても、それよりも量が少なくて済めばそれにこしたことはない、あるいは食品加工技術等が進歩してくればそういうものを使う必要がないというふうに、技術的に進歩が見られればそれはやめていく、害がなくてもやめていくという、こういう方針は私どもとっておりまして、四十九年度から、ただいま先生の申されましたところの以前からつくっておりました使用基準も、最近の食品製造工業の発達と申しますか、技術的開発によってすでに使わなくて済むような状態にあるいはなっているかもしれないということで、食品製造の実態を十分に調査いたしまして、特に、そういった殺菌剤とかあるいは酸化防止剤のようなもの、生理的作用の強いような、そういうものから早急に取り上げて強力にこの施策を推進していきたい、かように考えております。
  130. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私たちは、AF2についてはすみやかに製造、使用禁止をすべきだということを結論的に言いたいわけですが、厚生省もいろいろ慎重な態度で臨んでおられるのであえて申し上げるけれども、この使用基準再点検計画に基づいて早急に検討すると同時に、再点検の結果が製造、使用禁止に踏み切らなければならないという結果になるべきだと私は思うのですが、どういう結果が出るか、実は不安に思っております。結果が製造、使用禁止をすべきであるという結果に出れば当然踏み切るべきだと思うのですけれども、その辺の見通しといいますか、考えはどうですか。
  131. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  食品添加物につきましては、一応その国際機関でございますWHOとかFAOで専門家が集まって、どういう方法で安全性を再検討したらいいかという原則をすでに十年以上前からつくっておりまして、私どももその線に沿って安全性の再点検を進めておるわけでございます。  しかし、こういった科学的な技術というものは、先生指摘のとおり非常に進んできております。特に、突然変異性なんかについても、非常にきめこまかな解明も行なわれるようなふうに進んできております。したがって、私どもは、国民が絶えずそれを食べているという食品について、それに保存の目的とかあるいはその他の目的で加えられている添加物は万が一にも危険であってはならない、これは必ず安全性を確保されたものでなければならない、しかも、突然変異というものは、私どもの代から次の代、その次の代というふうにいって、そこで突如として出てくるという危険さえも考えられるということで、そういうようなことから、十分にその新しい学問レベルを私どもは取り入れまして、徹底的にそういった安全性を追求していく。そして、その新しい技術を導入して検討した結果、そのものがやはり疑問が持たれるというような結果が出れば、私どもとしては即刻そういったものは禁止していく、こういう気持ちを持っております。
  132. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が迫ってきたし、結局はしょっての質問なので前後の関係が少し入り組みますけれども、いま、安全性の問題についていろいろ申されましたが、齋藤厚生大臣も、AF2の安全性については、食品衛生調査会で再検討したいということを前に答弁しておられます。ところが、この食品衛生調査会というものがいろいろ問題があり、われわれはなかなかこれを信頼できないわけですけれども、こういう疑惑のある調査会に再度検討させるということは国民としてなかなか納得いかない、別の方法を考えるべきじゃないか、こうふうに思うのですが、その点の見解はどうですか。
  133. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  食品衛生調査会は各分野の専門家で構成されておるわけでございます。そういう専門家でございますし、また、ここで審議をするような資料については、その大部分がすでに学会誌で報告されたものであるとか、あるいは学会で討議されたものなどが対象になっておるわけでございます。そういうようなことでございますので、私どもとしては、この問題で再調査をしても意味がないというふうには考えておりません。  ただ、ただいま先生おっしゃったように、一部の消費者の声として、あるいは一部の学者等から、どうもおかしいというようなことも聞いております。そこで、こういう先生の貴重な御意見というものを十分参酌いたしまして、将来食品衛生調査会というもののあり方あるいは組織をどう考えるかということを十分検討させていただきたいと思います。
  134. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 あと二点、簡単にお伺いして質問を終わりたいと思うけれども、これは重大な問題で、いろいろ問題があるわけですが、安全性に疑問が出たならば、まず使うのをやめて安全性を徹底的に検討するのが当然だと私は思うのです。アメリカの食品・薬品及び化粧品法にデラニー条項というものがありまして、どんな動物を使っても、いかなる方法でも、発ガンの疑いが出たら即刻使用禁止をして安全性を確認するということになっております。事人体または命にかかわる安全性に対する問題であるから、このようなきびしい姿勢で臨むべきであると私は思う。だから、厚生省が企業に癒着しているなどということを言われて、いろいろ指摘されるわけです。私はこの点についてはいろいろやりたかったわけですけれども、時間がないのでその点は省略しますが、そういったところから厚生省の姿勢を正すべきであるということを指摘したいわけです。  もう一つは、PCB汚染のときにも、その危険性が数年前から指摘されていたにも一かかわらず、厚生省はなかなか生産を中止しようとしなかったわけです。そのあいまいな態度によって、一億人の恐怖ということで、未曽有のPCB禍をもたらしたのは御承知のとおりですが、私たちもこの問題を重視して、党内にもAF2対策特別委員会を設置して調査を開始しておりますけれども政府は食品公害から国民の生命、健康を守るために、あくまでも疑わしきは使用せずとの原則に立ち、安全性が確認されない限り、AF2の製造、使用を即刻禁止すべきであると思うのです。その点について、きょうは大臣はおいでにならぬけれども、厚生省当局の見解はどうか、お伺いしたいのです。
  135. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  実は、いま私どもの使っておる食品添加物につきましては、世界的な原則に沿って十分やって安全性を確めておるわけでございます。ただ、ただいま先生指摘のように、突然変異というようなことが将来孫あるいはその次の孫の代にも出やしないかというような疑いも持たれておるので、したがってこれは即刻やめるべきじゃないかというふうにおっしゃられておるわけでございますが、殺菌作用のあるようなものについては、強い、弱いは別でございますが、突然変異作用を一応持っておるというようなことでございまして、そこで、私どもは、ことしから新しい予算を計上いたしまして、使用の実態を調べて、いまの学問的な研究の結果から見れば安全ではあるけれども、しかし、使わないで済むにこしたことはないということで、使用実態を調べて、不必要となったような添加物は排除していくということを始めたわけでございます。そして、いまの疑問の提起について、まず、突然変異については、諸外国でもいろいろと研究をしておるし、それがそのまま哺乳動物に当てはまらないというのが現状でございますし、また、ある学者の、肝臓にガンができるじゃないかという示唆なり、厚生省の食品衛生調査会の審議がちょっとおかしいじゃないかというような点等については、さきに厚生大臣も、そういった指摘をされた先生の論文と、それから指摘をされた各当事者の先生方のその辺の見解を提出してもらうようにいま先生方にお願いしておりますが、それが提出されましたら、それを再度食品衛生調査会にはかって、その指摘が誤りなのか、あるいはやはり取り上げるべきなのかどうかを意見として聞いて十分に慎重に対処していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  136. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に一点お伺いして終わりにします。  いまもお話しがありましたように、東大の高橋教授とも私はこの問題で数時間論議をして、数カ月前から検討してまいりましたが、たいへんな重大な国民の健康に影響する問題であります。きょうは時間が限られた範囲でありますので、その内容の数点に限って申し上げましたが、いずれ機会をあらためて、この内容についてもっと詳しく、裁判の結果等を踏まえて論議をしてみたいと思っております。  AF2あるいは石油たん白の問題を通じて、消費者の間には厚生省はたよりないという不満が少なからずあることは御承知のとおりです。AF2問題ではっきりしたことは、メーカー側の立場で厚生省はものを言っているんじゃないかということで、厚生省がそういう企業癒着の態度では困るということが国民の声であります。あくまでも国民の健康を第一義に考え、メーカーの抵抗があっても押し切るだけの力がなければならない、それが国民のための厚生省である、かように私は訴えたいわけであります。  そこで、具体的な提案として一つ申し上げたいことは、学者、消費者の方からも主張されておりますように、遺伝問題に関して専門の研究所を設け、遺伝衛生研究所というようなもので研究をして、今後国民の健康を守るために積極的な姿勢で取り組むべきじゃないか、かように訴えたいわけですが、こういったことについて厚生省の見解をお尋ねして、私の質問を終わりたいと思うのです。
  137. 宮沢香

    ○宮沢説明員 今後の科学の発展にとっての先生のたいへん貴重な御発言、御提案だと私は受け取っております。  先ほども申し上げましたように、現在、国立遺伝学研究所の田島あるいは賀田両部長等にも私どもは参加をいただいて、食品添加物の安全性について、遺伝性という別の視点から新たな検討を開始したわけでございますが、こういった先生方の御意向等も十分聞いて、ただいま先生の御提言がございました構想等についても今後考えを進めてみたい、かように考えております。
  138. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上で一応質問を終わります。
  139. 仮谷忠男

    仮谷委員長 諫山博君。
  140. 諫山博

    ○諫山委員 きのう私は茨城県霞ケ浦周辺の農地の塩害状況を視察してまいりました。あの地域は日本でも一番水に恵まれた農業に適したところのはずですが、よい水が手に入らなくて、井戸を掘らなければならないという事態が発生しております。田植えをしてもなかなか稲がつかないという事態が起こりました。私は、大企業中心の自民党政府のやり方、重化学工業中心の政治がどのくらい農民を不幸におとしいれているかということをあらためて実地で見てきたわけです。こういう事態が起こった原因について、農林省などは、雨が少ないからだ、異常渇水が主たる原因だと説明しているようですが、この点で気象庁に質問します。  私は、最近の水戸気象台における降雨状況調査していただきましたが、それを見ると、農林省やその他の官庁が異常乾燥だと言って騒ぎ立てているような雨不足の状態ではなかったということがわかったと思います。この点、気象庁のほうから数字で御説明願いたいと思います。
  141. 内田英治

    ○内田説明員 お答えいたします。  昨年の十二月からことしの二月までの霞ケ浦付近の四地点につきまして、総雨量をここに持ってまいったのでございますが、大体九十ミリから百五十ミリ程度の降雨量がございました。これを平年に比べますと、大体六〇%から八〇%になっております。  それで、先生から水戸地方気象台の雨量についてのお話しがございましたが、水戸の十二月の雨量はゼロミリでございまして、これは明治三十年、この気象台が開設以来七十七年ぶりの記録となっております。  以上でございます。
  142. 諫山博

    ○諫山委員 いま十二月の例を言われましたが、一月から二月、三月、四月というのは、それほど大きな減少はなかったように見受けられますが、いかがでしょうか。
  143. 内田英治

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  水戸地方気象台の観測でございますが、一月が二十七ミリ、二月が六十五ミリでございますが、平年値が、一月が四十三・二ミリ、二月が五十四・五ミリでございます。これから見ますると、一月、二月に関してはさほど記録的という数字ではございません。
  144. 諫山博

    ○諫山委員 三月、四月も同様じゃないでしょうか。四月の場合は平年よりかはるかにたくさんの雨が降ったという記録が出ていませんか。
  145. 内田英治

    ○内田説明員 お答えいたします。  水戸の地方気象台で三月の値が七十六・五ミリでございまして、四月が百三十五・〇ミリでございますが、平年値は三月が九十七・二ミリ、四月が百五・八ミリでございますので、これと比較しますると、これもさほど記録的というわけではないと思っております。
  146. 諫山博

    ○諫山委員 十二月には雨が降らなかった。これは確かに異常なようです。しかし、一月から四月までを見ますと、二月と四月は平年よりかはるかにたくさんの雨が降ったという統計が出ています。  そこで、建設省にお聞きします。私は、霞ケ浦に一番近い利根川の流域で、水量が例年に比べてどういう状態になっているかということを調査してもらいました。結論はどうでしょうか。
  147. 宮内章

    ○宮内説明員 利根川の流量につきましては、下流部の基準点になっています布川について申し上げますと、一月から十二月の平均が四十一年で二百八十九トン、四十二年で百九十トン、四十三年が二百四十七トン、四十四年が百七十一トン、四十五年が百七十トン、四十六年が二百二トン、四十七年が二百トン。それで、四十九年について申し上げますと、これまでのところ、一月が七十三トン、二月が九十三トン、三月が百一トン、四月が二百十トン、五月が百十八トンという現状でございます。なお、四十七年まで申し上げましたものは通年でございますので、洪水期の洪水の量もすべて平均されているわけでございます。
  148. 諫山博

    ○諫山委員 ことしの三月、四月について言う限り、利根川の布川流域では、例年の流量とあまり変わりはないということになりますか。
  149. 宮内章

    ○宮内説明員 三月、四月について見ますと、先ほど申し上げましたように、約百トン並びに二百十トンでございますので、年によって相当変動はございますが、過去平均とそう大きくは変わっておりません。
  150. 諫山博

    ○諫山委員 布川の測定点は、霞ケ浦からどのくらいの距離がありますか。
  151. 宮内章

    ○宮内説明員 布川地点は、利根川本川と霞ケ浦から出てまいります常陸川と合流します地点からの距離が約六十キロ程度でございます。
  152. 諫山博

    ○諫山委員 経済企画庁に質問します。  鹿島コンビナートの計画がされた当初のころ、昭和四十四年八月ごろのあの地域の水の使用状況がどうだったかということが、経済企画庁で調べてあると思いますが、いかがでしょうか。
  153. 鶴哲夫

    ○鶴説明員 御質問の鹿島のコンビナートの計画のための調査ではございませんで、私どもが所管しております霞ケ浦の開発事業計画されます以前において調査されました昭和四十四年八月現在の利水の状況を私どもが把握しておりますのは、農業用水が最大八十一トン程度、上水道が〇・七トン程度、工業用水はごくわずかという数字を基礎にして霞ケ浦の開発計画考えておりました。
  154. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、工業用水と上水道の使用というのは合わせても〇・七五トン程度ですから、ほぼ一〇〇%に近いぐらい農業用水として使用されていたという数字があらわれています。  ところで、コンビナートが完成した段階では、これをどういうふうに変更しようとしましたか。企画庁、いかがでしょうか。
  155. 鶴哲夫

    ○鶴説明員 たいへん申しわけございませんが、  コンビナートが計画された時点における利水の計画を承知いたしておりませんので、後刻調べまして御返事させていただきたいと思います。
  156. 諫山博

    ○諫山委員 農業用水の使用というのは、半分ぐらいにする計画になったのじゃないですか。
  157. 鶴哲夫

    ○鶴説明員 御質問の御趣旨は、霞ケ浦開発事業によります新規利水量が毎秒約四十トンと考えておりますが、それがいまの農業用水の八十一トンの約半分くらいではないかという御質問の趣旨だと理解してよろしゅうございましょうか。
  158. 諫山博

    ○諫山委員 はい。
  159. 鶴哲夫

    ○鶴説明員 といたしますれば、霞ケ浦開発事業によって開発いたします水量と申しますのは、先ほど申し上げました量に上積みされる量でございます。新規に霞ケ浦開発事業によって開発される水量でございますので、これに先ほど申し上げました数字が上積みされる数量だというふうにお考えいただいてけっこうだと思います。
  160. 諫山博

    ○諫山委員 企画庁でも建設省でもいいですが、このコンビナートで工業用水に水を使う、当然そこで水が少なくなるわけですが、これをどこかで補充するという措置が講ぜられるべきはずだと思いますが、その措置は講ぜられていますか。建設省でわかりますか。
  161. 宮内章

    ○宮内説明員 鹿島開発が竣工いたしましてから工業用水を北浦から取水いたしているわけでありますが、この取水権の処理につきましては、もともと霞ケ浦全体が塩水湖なものでございますので、現状においては塩分を含む水の取水を許可するという形で処理しているわけでございます。
  162. 諫山博

    ○諫山委員 工業用水に水を取るわけですが、それを何らかの形で補充するという措置は講じていないのですか。
  163. 宮内章

    ○宮内説明員 現状におきます霞ケ浦の水につきましては、御承知のように、塩分の問題が非常に大きいわけでございまして、塩分を除去し、淡水化するということが基本的に重要でございます。これにつきましては、現在そのための総合開発事業を水資源開発公団で進めているわけでございます。それで、工業用水を取水するための水の量の補充の問題というのは、結局は質との関連があるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、工業用水は塩分を含む水を取水するという現状における状況でございますので、それに対する量としての補いの問題は特に生じてこないというわけでございます。
  164. 諫山博

    ○諫山委員 これはさんざん議論されていますから、私はここで深入りしようとは思いません。しかし、霞ケ浦、特に北浦から工業用水を取るわけで、その分だけやはり水位が下がるでしょう。それに対する補充措置は講ぜられていないという趣旨ですか。
  165. 宮内章

    ○宮内説明員 霞ケ浦の水質対策についての基本的な現状をちょっと申し上げますと、常陸川の合流口に常陸川水門という水門がございまして、これを閉鎖いたしますと霞ケ浦自身の淡水化が進んでくるわけでございます。ただし、現状においては、霞ケ浦というものが漁業等、広範な利用価値があるものでございますので、これを常時完全に閉鎖するというわけにまいらないものでございますので、いまのところは、知事さんの判断で、閉鎖が必要だという要請があった場合に、水門を管理しています建設省が閉鎖を行なっているわけでございます。そういうことでございまして、その通常時は、漁業の問題もございまして、あれを開放したままでやっているものでございますので、塩水はそういう状況においては自由に湖の中に入っていくという状況でございまして、通常の河川とかダム等で見られる水位との関係というのが、そういう操作をやっている関係から明確でないということでございます。
  166. 諫山博

    ○諫山委員 これはいま起こっている塩害問題の原因を究明するための基礎だと思いますが、きょうはむしろ緊急対策のほうが重要だと私は思いますから、農林省に次に質問します。  最初の気象庁の説明あるいは建設省の説明でもわかりましたように、雨が降らない、降らないと言っているけれども、数字を見ると必ずしもそうではない。水戸気象台では、ことしの二月、四月は例年よりかはるかに多量の雨が降っている。こういう状態がわかりました。さらに、利根川でありますが、布川流域では、三月、四月は例年と同じような水が流れているということも明らかになりました。そうすると、雨が少なかったからこういう事態になったんだという農林省説明というものはやはり再検討を加えざるを得なくなると思います。雨が降らなかったことは明治以来何回もあります。しかし、こういう事態が起こったのは初めてだということは言うまでもないことです。ですから、農林省は、たとえば水門の開閉を誤まったとか、いろいろなことも言っているけれども、コンビナートとの関係というのをやはり洗い直してみる必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  167. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 北浦に流入します流域は相当な大きさを持っております。したがいまして、十一月から一月にかけた七十一日間の連続干天というのは、流域からの流出量には非常に影響があるというふうに思っております。それから、また、塩分が遡上しましたことにつきましては、必ずしも特定のときに入ったかどうか、その辺はわかりませんが、流量が減ったときに塩分がより入ったのではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、特にこれだけの流域を持った北浦で工業用水が取られておることが、そのものが直接塩分を吸い込んだというようなことに考えるのは少し無理ではないかというふうに考えております。
  168. 諫山博

    ○諫山委員 あなたがそういう答弁をしていることは私は知っているんですが、それは再検討しなくてもいいのかということですが、再検討はしないわけですか。
  169. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 いま申し上げた点は、いわゆる数字の上から推定しておるわけでございまして、さらにこまかく数字を検討するつもりでおります。
  170. 諫山博

    ○諫山委員 雨が降らない、降らないと言うけれども、ことしの二月、四月は例年よりかたくさん降ったということは知っていましたか。
  171. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 昨年の暮れからことしの四月までの雨量の記録はございます。特に、北浦周辺につきましての数字は、出先機関等を通じて承知しております。
  172. 諫山博

    ○諫山委員 私は、農林省だけではなくて、各官庁に反省を求めたいと思います。これがコンビナートが一つの原因をつくっているということになれば、政府と県の責任は重大です。それだけに、コンビナートとのつながりを否定しようという気分になりがちなのはわからないわけではありません。大体役所というのはそういうところですから。しかし、原因を究明しなければほんとうの対策は出てこないわけです。大胆にコンビナートとの関係を洗い直すということを私は要望します。そうでなければ、いままで雨が降らなかったことは何回もあり、ことしや去年どころではないのに、昔はこういう問題は起こらなかったという、このきわめて素朴な疑問を解決することはできないからです。  そこで、きのう私は現地を見てきてたいへん驚いたんですが、たくさんのところで井戸を掘っています。すぐ横には満々たる水がたたえられているのに、この水が使えないために、膨大な金をかけて井戸を掘る。この経費をだれが負担するのか、農民に負担させるのかということが非常に大きな問題になっております。また、融資というようなことも言われているようですが、いつ融資ができるのか、それまでのつなぎ資金はだれが負担するのかというような問題は明らかにされないままです。  そこで、私は農林省に聞きます。井戸がたくさん掘られているわけですが、この経費を農民に負担させないつもりがあるのかどうか。さらに、将来負担してもらったとしても、いまの間に合いませんから、直ちに何らかの長期、低利の融資制度を適用するつもりがあるのかないのか。御説明ください。
  173. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 塩害のために深井戸を掘って用水に使用しておる、その費用を国が負担する考えはあるかということで、逆に言いますと、農民の負担にならないようにできるかどうかというような御質問と、それから、その融資措置ということでございますが、過去におきまして、異常な干天の連続によりまして用水源が枯渇して農作物に被害が増大したというような際に、水路あるいは井戸の掘さく、揚水機の設置というような、かんがいの応急対策事業が全国的に相当大きな規模で実施された場合には、臨時特例的な措置として助成をした例がございます。しかし、このたびの北浦周辺の塩分遡上につきましては、局地的な問題でもありますので、現在のところ、国の補助、助成は考えておりません。当面は県と十分連絡をとりながらその応急措置をとってまいる、そういうふうに指導いたしたいというふうに思っております。  なお、融資の措置につきましては、これは近代化資金等活用の道がございます。これも県と相談をいたしまして至急措置をとるようなことにするかどうか、やりたいというふうに思っております。
  174. 諫山博

    ○諫山委員 あなたは一般的なことを言っておられますが、話はもっと進んでいるんじゃないですか。きのう私が現地で調査したところによれば、融資のことはすでに話がついたと言われていますが、いかがですか。
  175. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 まだ、承知しておりません。
  176. 諫山博

    ○諫山委員 あなたが知らないというのは、農林省としては全く行政指導をしなかったということを自白している証拠だと思います。農林省がほんとうに事態を深刻にとらえているなら、私たち要求が一日も早く実現するように指導しておらなければならないはずですが、事態を知らないというのは、私よりか情報がおそいということになるわけです。  そこで、県としては、四割は井戸掘さくの費用を負担する、残りの六割をどうしようかというような話になっているようですが、それは御存じですか。
  177. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 県が単県で四〇%の補助を出すということは聞いております。
  178. 諫山博

    ○諫山委員 残りの六〇%について、農林省としては、農民の負担にならないように行政指導すべきだと考えますが、そういうつもりがあるかどうか、いかがですか。
  179. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 先ほど申し上げましたように、国といたしまして、いわゆるかんがい応急対策事業というようなものの実施については考えていないわけでございますが、農民負担ができるだけ小さくなるように県との相談はいたしたいというふうに思っております。
  180. 諫山博

    ○諫山委員 私は、農民の負担ができるだけ少なくなるようにではなくて、農民が負担しなくて済むように処理すべきだと要望しているのです。それに関して、コンビナートに責任の一端を負わせるということは考えていませんか。
  181. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 コンビナートの問題につきましては、所管事項でもございませんし、直接お答えしかねるのでございますけれども、農業用水の問題として農林省としてはとらえておるわけでございまして、できるだけの助成措置を講じ得るように考えたいということでございますが、現行制度でいきますと、先ほど申し上げましたように、全国的な問題で国民経済に相当な影響を与えるという場合に限り、臨時特例的な措置が過去にとられた例があるだけでございますので、非常に困難かというふうに考えておるわけでございます。
  182. 諫山博

    ○諫山委員 今度の事態は明治以来起こったことのない事態で、そうして農民に何の責任もないことは明白です。だとすれば、どこが責任を負うかということは内部でいろいろ検討するとして、農民に負担をかけないということは原則でなければならないと私は思います。そういう観点から検討していただくことを要望すると同時に、将来融資が当然出てくると思います。  しかし、問題は、いまの井戸掘りをどうするのか、いまのお金をだれが負担するかという問題です。そうすると、緊急な融資ということがどうしても必要になってきます。井戸を掘ったあとでそのお金を払うというのでは間に合わないわけです。この点について、農林省はどう考えていますか。
  183. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 過去の例でいきまして、緊急事態にすぐ即応できるような融資の措置がございませんので、結局、設置されますポンプ等について融資をするという措置があるだけでございますので、それを活用することにしたいというふうに思っております。
  184. 諫山博

    ○諫山委員 私は、国の責任でこの緊急融資の問題も解決すべきだと思います。しかし、それが困難だとすれば、たとえば県に一時的に無担保無保証の融資制度を活用させるとか、いろいろ対策があると思いますが、この点は国でやりにくいとすれば、県に対してそういう方向を行政指導すべきだと思いますが、やってもらえますか。
  185. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 これは県の判断にまたなければならぬと思います。したがいまして、この被害状況等を現在調査しておりますし、その実際の指導内容等につきましては、県と相談はいたしたいというふうに思います。
  186. 諫山博

    ○諫山委員 建設省に質問します。  いまの異常な事態で、一方的に被害を受けているのは農民です。ところが、河川法第五十三条によりますと、これは異常な渇水の場合でありますが、「渇水時における水利使用の調整」という問題が出てきます。私は、同じような観点から、たとえばコンビナートの水使用を一時調整するという——全面的に使うなというのは無理でしょうが、農民がこれだけ苦労しているのだから、企業のほうでも自主的に水の使用を規制するというようなことが当然あってしかるべきだと思うわけです。河川法第五十三条というのは、「渇水時における水利使用の調整」という項目でこのことを規定しているはずですが、建設省、どうですか。
  187. 佐藤毅三

    ○佐藤説明員 異常な渇水時におきまして、関係利水者の調整をはかるということにつきまして河川法の第五十三条の規定があるわけでございますが、現在の運用といたしましては、五十三条を直接発動するということではなくて、その前段階といたしまして、関係利水者間で協議をいたしまして調整をするというふうな運用が行なわれております。そのような運用を建設省といたしましても助長いたしますために、渇水調整のための協議会を設立するようにというような指導をしておるわけでございます。  利根川水系につきましても先般——先般といいますか、前からあったのでございますが、さらにこれを正式なものとして規約をつくりまして、利根川水系の渇水対策連絡協議会というものをつくったわけでございます。そういう場におきまして調整が行なわれるということになろうかと思います。  ただ、いまの具体の問題につきましては、まず第一次的には茨城県内の調整の問題ということになろうかと思います。そういう意味では、県において第一次的な調整をはかり、その調整の結果が他県に影響を及ぼすというようなことになりますと、この利根川水系の渇水調整協議会におきまして協議をするというようなことになろうかと思います。
  188. 諫山博

    ○諫山委員 一般的なお話しをされましたが、このたびの塩害について、コンビナートの水使用を少し規制してもらいたいという意味の調整がされていますか。
  189. 佐藤毅三

    ○佐藤説明員 この問題につきましては、コンビナートの水量を規制するという形の調整は、現在のところは行なわれておりません。塩害を防止するためにどうするかということで、渇水調整協議会の準備会的なところで話し合われました結果、御承知のことと思いますが、利根川本川から十五トンの緊急導水をするということが行なわれたわけでございます。
  190. 諫山博

    ○諫山委員 利根川本流から緊急導水することも必要だと思います。積極的にやるべきだと思うのです。しかし、河川法第五十三条というのは、お互いの水利権者の水利使用の調整の問題です。現在の場合には農民だけが犠牲を受けている。これでは一方的ですから、同じ水の利用権者であるコンビナートについても規制措置をするのが当然だというのが農民の率直な要求です。そして、河川法第五十三条によればそれができるはずです。できませんか。これはできるはずだけれども、それがやられていないというのが現状ではないかと思うが、いかがでしょうか。
  191. 佐藤毅三

    ○佐藤説明員 渇水時におきまして、関係利水者間におきまして話し合いをして水利調整をする、それを河川管理者におきまして必要があればあっせんをするということでございますが、今回の場合にどのような形で処理をするかということは茨城県内において十分検討がされ、また、先ほど申しましたように、渇水調整協議会において話し合われた結果、先ほど申し上げたような措置になったわけでございます。
  192. 諫山博

    ○諫山委員 茨城県、茨城県と言われますが、法律では、河川管理者が必要な場合にはあっせんをしたり調整を行なうということになっているわけです。河川管理者というのは今度の場合は建設省のはずです。ですから、いままではこの法律は問題にもされなかったようですが、私は、この機会に、この法律を活用して、コンビナートの水使用を幾らかでも規制するという措置に踏み切るべきだと思いますが、そういう観点で検討する意向はありませんか。
  193. 佐藤毅三

    ○佐藤説明員 先ほど来申し上げておりますように水利の調整と申しますのは、それぞれ水利権を持っておる者の間の調整でございますので、第一義的には関係利水者間において話し合いをして、互譲の精神でやるということでございます。もちろん、必要があれば河川管理者がそのあっせんの労をとるということでございまして、今回の場合、茨城県の県内行政ということがございますから、茨城県とよく相談をした上で検討いたしたいと思います。
  194. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、最初の答弁は、政府が中に入って進めるんじゃなくて、農民が住友金属なんかに話に行けという趣旨になるのですか。農民が直接企業と交渉しろということですか。
  195. 佐藤毅三

    ○佐藤説明員 鹿島コンビナートの工業用水の水利権者は茨城県でございまして、やはり、第一義的にはその利水者間で話し合いをするのが適当であろうと考えております。
  196. 諫山博

    ○諫山委員 とにかく、この深刻な事態、田植えさえできないというような事態の場合に、コンビナートに対する水規制というものをほとんどやっていなかったということはきわめて重大だと思うのです。この点は、建設省だけではなくて、農林省もあわせてぜひ検討してもらいたいわけです。  そこで、利根川から緊急に水を引くという問題も解決しなければならない一つの課題だと思います。私はきのう神栖町に行って、常陸利根川と利根川本流の間にある七十二ヘクタールぐらいの土地を見てまいりました。すぐ隣に汚染されていないきれいな利根川があるわけです。ところが、この水がなかなか使えない。そのために田植えができないというばかみたいな事態ができております。農民から見れば、土手一つ越えれば利根川があるんです。この水が利用できない、田植えもできないというようなことは放置されてはいけないと私は思うのです。水利権とかいろいろむずかしい問題もあるんですが、しかし、火事のときにはどの水でも使うわけですから、こういう場合には田植えができるように利根川本流から水を引くということはできませんか。建設省、いかがでしょうか。
  197. 宮内章

    ○宮内説明員 利根川本流からの導水につきましては、先ほど水政課長が申しましたように、横利根川という川があるわけでございますが、そこから十五トン以内ということで、四月半ばからこれまでに約十五日間導水をしてきているわけでございます。  いま先生が御指摘になりました個所は、おそらく日川干拓地区ではないかと思うわけでございますが、この地区につきましては、御指摘のように、現在常陸利根川からの取水をやっているわけでございます。それで、堤防一つ越えれば利根本川でございますので、常陸利根川の水質が非常に悪い場合には利根本川から取りたいというお気持ちは非常によくわかるわけでございます。ただし、私どもの調べました現状におきましては、常陸利根川の水質と日川地区付近の利根川本川の水質を比較しますと、利根川本川のほうが塩分的によいということは必ずしも言えないようでございますし、それから、もう一つは、物理的に、取るためのいろいろな設備の問題もあるかと思いますが、それを除きましても、塩分濃度から見た水質の比較から言って、現在お取りになっているところとその付近での利根川本川の水質は、必ずしも本川のほうがすぐれているということは言えないんじゃないかというふうに思っているわけでございます。
  198. 諫山博

    ○諫山委員 常陸利根川の水と利根川本流の水のどちらが田植えに適しているかということは農民が判断すると思います。塩水を引くようなばかなことはしないわけですが、それは抜きにして、豊民が利根川本流の水をぜひ使いたいという希望か持っているとすれば、緊急措置としてそれは何とかできますか。
  199. 宮内章

    ○宮内説明員 先ほど御説明しました横利根川の取水につきましては、水政課長が申しましたように、各県から構成している連絡協議会の中で、水利使用に関係がある他の地域、府県も含めて御了解を得て取っているわけでございます。それで、かりに利根本川からさらに取るということになりますと、やはり、本川にも農業用水はじめ非常にたくさんの水利使用者がいるわけでございますので、この関係者の同意を得る必要があるわけでございます。まあ、横利根でとっている手続を踏むという必要はあるかと思います。
  200. 諫山博

    ○諫山委員 実は、私が指摘した神栖町の場合は、もう海に近い、いよいよ河口というところなんです。ですから、ほかの水利権者に悪い影響を及ぼすということはあまりないんじゃないかと思います。それにしましても、布川流域あたりではいまけっこう水が流れているようだし、いまの問題を解決するためには、どうしても利根川の水を引くということが一つの課題だと思うのです。まだ検討が済んでいない点もいろいろあるようですが、ぜひこの問題は積極的に前向きに処理していただきたいと思いますが、建設省、いいですか。
  201. 宮内章

    ○宮内説明員 先ほども申し上げましたように、利根本川も場所によりましてはむしろ常陸川筋よりも水質が悪いという技術的な問題があるわけでございますが、かりに非常に効果的な取水ということが可能といたしましたならば、われわれも県当局その他と十分協議して検討してまいりたいというふうに考えております。
  202. 諫山博

    ○諫山委員 一昨日の農林省説明では、今度の塩害の原因の一つとして、逆水門の操作を誤ったということが言われているようです。この水門について、日本共産党茨城県委員会は、民主的な管理委員会をつくって、農民とか、漁民とか、科学者とか、いろいろな人たちの意見を聞いてこの開閉操作をきめるべきではないかという申し入れをしています。この点は、お役所が一方的に判断してきめるのではなくて、ぜひ、そういう専門家関係者の意見をくみながら運用すべきだと思いますが、これは直接的には建設省の管轄になりますね。建設省、いかがでしょうか。
  203. 宮内章

    ○宮内説明員 現在の常陸川の水門操作につきましては、先ほども申し上げましたように、洪水時利根川本川の逆流を防止するための操作は、河川管理者である建設省の責任で実施しているわけでございますが、塩水遡上防止のための操作につきましては、当面本来の目的に入っていないということでございまして、これは農業者、漁業者その他関係者からなる協議会というのが現地にございまして、そこで協議していただいて、その結果を知事さんに上げていただき、知事から建設省のほうに要請があった場合に水門を締める操作をやるという仕組みでやっておるわけでございます。  そういうことで、現状におきましても、地元の農民並びに漁民の方の意見を聞く体制にはなっていると思いますが、いずれにしろ、県の一つの組織の中での判断で進めていただいているわけでございます。
  204. 諫山博

    ○諫山委員 私たちの党は、茨城県にももちろんこのことは申し入れておりますが、何しろ、農民の利益、漁民の利益、その他さまざまな利益を調整するというようなことが必要になるわけで、現実にはこういう受益者の意向というものはまだくみ入れられていないという状態ですから、ぜひ民主的な運営委員会のようなものをつくって、ここの意向を尊重するというやり方を検討してもらいたいと思います。  次に、神栖町の神之池というのがあります。これは非常に大きな池だったのですが、工場をつくるためにその大半を埋めてしまった。そして、そのかわりに農業用水の所要水量は確保する、しかも農耕に支障のない水質を保障するということが茨城県知事と土地改良区の間で覚え書きとして結ばれております。私は、これを見てちょっとふしぎに思ったのは、農耕に支障のない水質を保障するということが覚え書きに書かれているのは、やはり、こういう事態が起こることがある程度予想されていたからではないかと思うのです。水量を確保するだけではなくて、水質を保障するというのです。農林省としては、こういう事態は絶対に起こらないと思っていたのでしょうか。それとも、もしかすればこういう事態が起こるかもわからないという心配があったから、水量保障だけではなくて水質保障という問題まで出てきているのでしょうか。どうなんでしょうか。
  205. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 詳細の事情を知りませんけれども、一般的に、利根川下流地帯におきましては、塩害問題というのは過去からあるわけでございまして、水質につきましては、非常に関心があると思います。特に、稲作の場合は、その植えつけの時期なり、あるいはまた生長期なり、それぞれ非常に塩分に弱い時期がございますので、当然そういう水質の問題が入ったものではないかというふうに考えます。
  206. 諫山博

    ○諫山委員 政務次官に質問します。  私は初めてあの地域に行って、水の多い、水のきれいないいところだと思って帰ってきました。ところが、どんどん井戸を掘らなければ田植えができないという状態ですね。私は、きれいな水で植えた田と、あそこの汚染された北浦の水で植えた田と両方見てきましたが、明らかに違うわけです。あの水の村が水不足で悩むというようなことはあってはいけないことだと思いますね。そして、いまの対策をいろいろ聞いていますと、県が井戸掘りの費用の四割を補償するということは大体きまったようですが、県はあとは知らぬと言っているのです。ところが、一方では、県はコンビナートに水を売っているんですね。そういう中で、農民にこの場合の犠牲をあらゆる形で負わせないというのが当然なことではないかと思います。どういう形で農民に犠牲がおぶさらないようにするかということは行政当局でいろいろ検討しなければならないと思うのですが、いまのままだったら、いろいろな意味で農民が犠牲にならざるを得ない。そういうことのないようにするのが農林省仕事だと思いますが、農林省として、そういうことをやっていただけましょうか。
  207. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 二つ方法があろうかと存じます。  一つは、現在自主的にやっている井戸掘りその他に対する金融その他の助成措置をどうするかということで、それからもう一つは、その水の配置の問題でありましょうが、これもいま聞くところによると、コンビナートの水利権者は県であるというようなことでもございますので、どういうような方法がいいかきわめて専門的な問題でございますし、各省にまたがっておる問題でございますから、私はここで最終結論的なことを具体的に申し上げることはできませんけれども、何とか被害を最小限度に食いとめるということでできるだけの努力をしてまいりたい、かように考えております。
  208. 諫山博

    ○諫山委員 最後に融資の問題ですが、井戸掘りが終わったころの融資というのは、大体関東農政局とも話がついたということでした。しかし、いまの金をどうするかという問題が解決していないのです。この点は政府だけでやりにくいとすれば、県にいろいろお願いするという道もあると思うのですが、何とか、農民の負担でなくて井戸掘りに着手できるという措置を進めてくれませんか。
  209. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 これは農民のために農協があるのですから、暫定期間の問題でもあるということになれば、つなぎ資金のようなものは、農協その他のものから便宜的一時的に出させるというような方法等もあろうかと存じますので、至急にそれらを詰めて行政指導したい、かように思っております。
  210. 諫山博

    ○諫山委員 とにかく、大企業中心の地域開発がいかに農民を苦しめるかという典型がこの鹿島コンビナートにあらわれておるわけです。そして、いまのところ、その犠牲の大半が農民に押しかぶされようとしておるという状態ですから、必ずそういう問題を解決して、農民が安心して農業をやれるように措置していただくことを要望して、終わります。
  211. 仮谷忠男

  212. 小宮武喜

    小宮委員 私は、まき網漁業にかかる中小漁業振興計画について、再び質問します。  現在、網船は百十一トンにトン数が制限されているために、近年建造される網船は、船の幅を広げ、深さを浅くしております。そのために船体の重心が上部に移動して、船体の復原力が悪化して、転覆しやすい状態にあると聞いておりますが、なぜ漁船員の生命まで危険にさらして百十一トンに押えなければならないのか、その理由について説明を願いたいと思います。
  213. 内村良英

    内村(良)政府委員 お答え申し上げます。日本近海におけるまき網漁業につきましては、周辺海域を、先生案内のように八海区に区分いたしまして、それぞれの海上における資源の維持及び漁業種類間の漁業調整を考慮して上限をきめているわけでございます。この範囲内においては、近年、漁労の機材及び漁網等の装備が高度化するに従いまして、積載甲板面積の拡大の必要から、幅を広くして深さを浅くする傾向が見られていることは先生指摘のとおりでございます。  そこで、船の大きさのわりあいに船の深さが著しく小さくなりますことは船の安全を阻害するおそれがございますので、漁船の建造許可にあたっては、動力漁船の性能の基準によりまして、高さと深さとの比の上限及び幅と深さとの比の上限を定めまして、著しく深さが小さくなることがないように措置をとっているところでございます。  さらに、基本的な対応策といたしましては、先般も御答弁申し上げましたけれども、昨年十月に発足いたしました操業形態合理化研究会において、過剰装備についての総点検を行ない、網船の安全性を第一義的に考えたサイドスラスター装置のモデル設計を行なう作業を進めておりますので、そういったときにおきましても、安全性ということは重視してこれをやるわけでございます。
  214. 小宮武喜

    小宮委員 現在の網船が安全性を十二分に考えてつくられておるということのようでございますが、現実に現在のこの網船は非常に転覆しやすく、現在でも船員の方々は非常に不安を感じておるわけでございますが、船体の安全性を考えるならば船のトン数をもっとふやすべきだという考え方に私は立っているわけですが、この問題については、いま長官も言われるように、今月の三十一日に合理化研究会が開かれて、そこで最終的な結論が出されると思いますけれども、その結論を出すにあたってもこういうような問題が含まれておるということを十分考えていただきたいということと、それから、それでは、この現行百十一トンの網船に漁船員が何名乗り組んでおられますか。
  215. 内村良英

    内村(良)政府委員 百十一トン型の網船には、過去におきましては三十名をこえる乗り組み員が乗船したわけでございますが、現在は、省力化施設の導入によりまして二十七名に減少しております。そのうち七、八名がいわゆる船を動かす要員でございます。
  216. 小宮武喜

    小宮委員 私は、ここの委員会でも二、三年前に漁船員の居住区の問題で質問したことがございますけれども、これは運輸省にちょっとお聞きしますが、船員の数において、船室は一人当たり幾らという基準があると思いますけれども、そういった基準があるのかないのか、そして、また、三十名から三十二名の方々が乗り組んでおられるというこの生活条件を、船員の所管省である運輸省はどのように考えられるのか、御答弁を願いたい。
  217. 吉末幹昌

    ○吉末説明員 ただいま先生指摘の船員の居住設備等、船員設備の関係でございますが、現在、御承知のように、指定漁業に従事する漁船につきましては、居住設備、居室の関係でございますとか、食堂、さらには調理室とか浴室、浴槽、洗面所というように、衛生設備関係も含めまして、そういう船員設備につきまして、私どものほうと、さらに水産庁、運輸省の船舶局と、三部局で共同いたしまして労働環境改善措置要綱というものをつくっておりまして、これによりまして一定の基準に合った船員設備を要求し、漁船の建造許可あるいは船舶検査、さらには船員労務官の監査等によりまして監督指導を行なってまいっているわけでございます。  この改善措置要綱の中で基準をいろいろうたっておりますけれども、十年ぐらい前につくりまして以来数回逐次改正をやってきておりまして、その水準の向上にはつとめてまいったわけでございますが、こういう船員設備が船内においての船員の休養その他、あるいは保健衛生の確保という点でも重要な関係を持っておりますので、さらに今後とも関係水産庁あるいは船舶局とも十分協調をとりながら、積極的な指導を進めてまいりたいというふうに存じております。
  218. 小宮武喜

    小宮委員 運輸省にはまたあとで質問します。  そこで、長官に質問しますが、今月三十一日に第七回の合理化研究会が開催されて、いまの網船にサイドスラスターを取りつけるにあたって、船を大きくするか、現状の百十一トンの網船に装備するかということについての結論が出されることになっておりますが、もし網船を大型化する、いわゆるトン数をふやすという研究会の結論が出された場合、そのトン数をふやすということになりますと、船をつくりかえるということになるわけですが、その船をつくりかえる間、建造する間は、現行の網船と作業船をそのまま使用しなければならないということになると思いますが、そういうふうに理解していいかどうか。
  219. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のように、操業形態合理化研究会におきまして、今後サイドスラスターを装備いたします場合に、どういう漁船がいいかということを、安全も十分考慮しまして現在研究しておりまして、先般御答弁申し上げましたように、今月末には大体結論が出るということになるわけでございます。  一方作業艇廃止の問題は、これは先生案内のように生産調整組合で議論されまして、この問題とサイドスラスターの装備の問題とは一応別問題である——作業艇の廃止は生産調整組合の中で取り上げられまして、経営の合理化あるいは生産調整というような立場から考えられておりまして、私どもとしては、これは一応別問題として解すべきであるというふうに考えております。
  220. 小宮武喜

    小宮委員 作業艇の問題はこの合理化研究会の問題とは別だということをこの前も答弁があったわけですが、したがって、作業艇をどうするかということは昭和五十二年度末までの目標になっているわけですから、その間に結論を出せばよろしいということにわれわれは理解するわけです。長官も、今回の合理化研究会では、現在の網船にサイドスラスターをつけるためには、船を大型化するかあるいは現行の百十一トンの網船に装備するかということを研究しております、したがって、作業船の問題についてはこれは別の問題であります、将来の問題でありますということをこの前答弁しておりますね。しかしながら、もし現行の網船をトン数をふやして大型船にするということであれば、その間は現行の網船を使用するということになることは当然自明の理ですね。その場合、現在の百十一トンの網船については、現在作業船がついているわけですね。したがって、私が確認をしたいのは、いま大型船をかりに建造するということになった場合は、それまではいまの網船を使用する、したがって作業艇も使用するというようになると確認していいですかということを言っているわけです。筋は通っておるでしょう。
  221. 内村良英

    内村(良)政府委員 灯船につきましては、御案内のようにいろいろ議論があったわけでございますけれども、昨年の十一月から従来三隻であったものを二隻にした。そこで一隻を作業艇として使っているわけでございます。そこで、御案内のように、生産調整組合というものは、経営の合理化と同時に生産調整をやってある程度魚価の回復をはかるというようなこともねらいがございますので、経営の合理化をやらなければならぬ。その場合に、灯船から作業艇に変わった一隻をこの際やめようというのが生産調整組合の多数の意見でございます。したがいまして、その問題とサイドスラスターをつけるという問題は、今後裏こぎの船をなくして、自動的に網船が、サイドスラスターでございますから、推進機をつけて、自分が復元性を確保してやるわけでございますので、その話と作業艇を減らすという話は別問題であるというふうに先般も申し上げましたけれども、私どもはそのように考えておりまして、サイドスラスターが装備されない限り作業艇を必ずつけなければならないということにはならないのではないか、これは経営の問題その他から考えての別問題である、こういうふうに考えているわけでございます。
  222. 小宮武喜

    小宮委員 灯船の三隻を二隻に減らした場合に、現在の網船の安全性が非常にそこなわれる、またそこなわれているということで、灯船の一隻を集魚灯の装置をはずして作業艇に持っていりたわけですね。したがって、いま言われておるように、網船を大型化した場合に、いまの作業艇をそのまま大型化した場合は別ですけれども——今度は百十一トンの網船を現行どおり使用する、いわゆる現行の百十一トンの網船にサイドスラスターを装備するということになった場合に、いまの作業船の問題は、それはどの船でも必ずつけなければならないというような問題ではないとしても、やはり、危険と思われる場合は作業艇をつけてもよろしいという解釈に立つのか。実際、いまの百十一トンの網船にサイドスラスターを装備してもだいじょうぶだという認識に立った場合、また、研究会の結論が出た場合は、作業船というのは一切一斉に廃止をさせるのかどうかということを聞いておるわけです。
  223. 内村良英

    内村(良)政府委員 網船の安全性を確保するために裏こぎが必要になるわけでございます。そこで、現在のところは灯船が二隻ございまして、一隻が網のまん中に入っている。あとの一隻が裏こぎに回りまして、網船の安全性というものはそれによって確保されるわけでございます。作業艇はそのまき網作業で、たとえば網が少しもつれたというような場合に調整するというようなことをやっておりまして、作業艇の存在自体は網船の安全性とは関係がないということでございます。したがいまして、作業艇を除きますと、潮流が非常に早い場合等におきましては、網の調整の関係から多少魚が逃げるというようなことは確かに起こり得るかと思いますけれども、網船の安全性とは作業艇は関係ないというふうに考えていいのではないかと思います。
  224. 小宮武喜

    小宮委員 それはおかしいですよ。いまの灯船の三隻を二隻に減船しようとした場合に、いまの網船の安全の問題がやはり論議をされて、それではその一隻はこちらのほうの作業艇に使おうということになったと私は聞いておるのです。だから、その網船と作業艇の関係が全然無関係だということではなくて、網船の安全性の問題から作業艇がついて、それで船の転覆するのを防止しておるという役割りを果たしているわけですから、船自体は別だとしても、実際の作業の実態というものは一体感を持っているわけですよ。だから、いま別問題だということは、なるほど灯船が三隻でおった、それを二はいにしたから一ぱいは持ってきた、だからそれを持ってこなくてもよかったのではないかというような意見にもなると思うのですが、しかし、親船の網船のほうがあぶないからこちらに回してきたというのが現在の網船と作業艇の結びつきだというように私は考えておりますけれども、その点はきょうは実は灯船の問題まで私は論議しようとは思っていなかったが、しかし、いま長官の答弁の中にそれが出てきたものだから私は質問しますけれども——しかし、その問題をやっているとまた時間がなくなりますので、先に進みますけれども、現行の百十一トンの網船にサイドスラスターを装備しても船舶の安全上だいじょうぶだという研究会の結論がもしかりに出た場合ですね。まさかそういうような無謀な結論は学識専門家がおる研究会が出すはずはないと思いますけれども、いまの網船でサイドスラスターを装備した場合は船の安全上問題があるという意見がかなり強いことは前回も述べたとおりですが、もしそういった結論が出た場合に、長官は、いまの網船にサイドスラスターを装備して試験操業をやってみるというお考えがあるかどうか。だから、これは三陸沖でなくて、東シナ海、黄海のほうで、一度サイドスラスターをつけて試験操業をやってみて安全性を確認するということが最も必要ではなかろうかと私は考えますけれども、そのお考えがあるかどうか、長官にお聞きします。
  225. 内村良英

    内村(良)政府委員 研究会の結論が、現在の百十一トンの船にサイドスラスターをつけてやるということになるかどうかはまだわからないわけでございます。そこで、私どもといたしましては、いずれにいたしましても、結論が出た場合に、そういったサイドスラスターをつけた網船の安全性については、その船が竣工する前に関係のところで安全性の調査というものは当然するのではないかというふうに考えております。
  226. 小宮武喜

    小宮委員 いまの説明がどうもちょっとわかりかねたんですが、たとえば研究会で船を大型化するときまった場合に、建造された船にサイドスラスターをつけて試験操業をやってみるという意味はわかりますよ。しかし、現行の百十一トンの網船にサイドスラスターを取りつけるという結論がもし出た場合に、現状の網船にサイドスラスターをつけることは非常に危険だという意見もかなり強く出ておるので、その場合に、実際サイドスラスターをつけて東シナ海、黄海で試験操業をやってみるお考えはございませんかということを聞いておるわけです。
  227. 内村良英

    内村(良)政府委員 その点、研究会でどういう結論が出るかということにかかってくるわけでございます。そこで、百十一トンでそれにサイドスラスターをつけて、かつ安全であるという結論が研究会で出た場合におきましては、やはりそれだけの科学的知見をもってそういう結論を出しているわけでございますから、私どもはそれでその結論を信用したいと思いますが、万一そういうことになりました場合に、これは船の安全に関することでございますから、試験操業と申しますか、そういうもので試験をしてみるということは、これは当然検討すべき事項ではないかと思います。しかし、結論がどういうことになるかわからない段階でございますので、これはやや仮定の議論でございます。
  228. 小宮武喜

    小宮委員 そうです。仮定の議論ですけれども、結論は二つしかないのですよ。船を大きくするか、いまの船に網船にスラスターをつけるか、二つしかないのですよ。だから、二つの問題に限られておるから、こうなった場合はどうしますかと聞いておるわけです。長官も、仮定の上の質問じゃ答えられないということでもないようですけれども、仮定と言っても、結論は二つしかないのです。これは三十一日までに結論が出るわけですが、研究会がそういうような結論をかりに出したからといって、少なくとも水産庁としてはそれに無条件に従いますということではなくて、こういうような危険だという提起が出ておるわけですし、いままで陳情も何回か受けておられるはずですから、水産庁として、こういうようないろいろな意見も出ているから、百十一トンの網船にサイドスラスターをつけるようにという合理化研究会の結論が出たけれども、これを取りつけて試験操業をやってみようではないかと言うのが水産庁としての行政官庁としての当然の措置だと私は思うのですよ。研究会のこういうような結論が出たからうんもすんも言わずにそれに従いますということでは、水産行政をあずかる水産庁としてはあまりにも不親切ではないかというような考えを私は持つものですから、その点を確認したわけですが、その点は、ぜひそういうようなことを考えていただきたい。  それからもう一つは、いま長官が言われるように、網船の問題は別だといっても、網船と作業艇とは非常に密接な関係があるわけですが、ちょうどまだその結論が出ない前に、一昨日、日本遠洋まき網漁業生産調整組合で、「付属船の規制措置について」ということで、「作業船の削減について」、「運搬船の隻数、トン数の規制について」という議題が多数決で決定されているわけですが、長官も言われるように、この問題は昭和五十二年度末までの近代化目標の一つであって、これは今月末に結論が出される網船の問題とは別問題だと言いながらも、実は、この調整組合ではその問題が先行してすでに決定をされたということについて、長官は、決定する前、前回の場合も、組合員の多数の意向によって決定されたものは尊重しますというような話だったわけですが、ところが、一昨日の十四日のこの総会が開かれるまでの、その合理化研究会の経過というものはこの総会の中でも全然報告もされていない。長官は組合員の多数の声を尊重しますということを言われておったのですが、これは具体的に一昨日になって多数の声だということが言えると思うのですが、それまでは多数の声かどうか全然わからないわけですから、そういうような意味で、多数の声ということについての反論は別段しませんけれども、大体、あの農林省告示を見ても、昭和五十二年度末までに結論を出すという目標ですから、その意味で、まだ網船の結論すら出ていないやさきに調整組合が何でこういうようなことをしなければならなかったのかという疑問を私は持つわけです。これは金田課長も行っておったはずだから、この問題について長官としてどのようにお考えかということだけをお聞きしておきます。
  229. 内村良英

    内村(良)政府委員 先生指摘のように、まき網業界は、昭和四十八年から五十二年にかけまして、中小漁業振興特別措置法に基づきまして、生産性の向上その他経営の近代化を促進して、その振興をはかることといたしまして、まき網漁業にかかわる中小漁業振興計画を定めて、これを目標といたしまして、金融財政等の措置により構造改善を現在進めているわけでございます。それは先生指摘のとおりでございます。  そこで、振興計画の基本的な考え方といたしましては、まき網漁業の体質改善を積極的に推進することといたしまして、そのため、経営規模の拡大、二そうまき網漁法から一そうまき網漁法への転換等の操業形態の合理化、さらに漁場の拡大、装備の近代化などの推進をはかることとしているわけでございます。その中におきまして、サイドスラスターをつけるということ、これも構造改善の重要な仕事でございます。  ところが、一方、最近、御案内のように、依然としてアジ、サバの価格が低迷しておりますし、まき網漁業の経営というものは非常にむずかしい問題に直面しているわけでございます。そこで経営の合理化をはからなければならないということがございまして、その経営の合理化の一環として、作業艇の廃止ということを東海黄海における長い経験を持っている業者の方々の大多数がきめているわけでございますから、私どもといたしましても、まき網の操業形態等を考えて、一そうの灯船が裏こぎに回れば網船の安全性というものは完全に確保できますから、この際、そういったまき網漁業の置かれている条件にかんがみまして、作業艇の廃止というものが組合の多数できまった以上、行政庁としてはそういった組合の意思というものを尊重すべきではないかというふうに考えているわけでございます。
  230. 小宮武喜

    小宮委員 まだ組合員多数の声ということを言うものですから、また一言反論しなければいかぬわけですが、組合員の多数の声というのは、一昨日十四日に総会が開かれて、初めてそこで多数の声ということが結果的には出てきたわけです。長官は一週間前から多数の声、多数の声と言っているけれども、何をだれが多数の声ということできめるのか。全然総会にもこれははかられていませんよ。去年の五月からは総会も一回も開かれていない。理事会だってろくに開かれておらぬ中で、どうして水産庁長官は多数の声だという認定をしますか。多数の声だ、多数の意思だということをだれからか聞かれたんですか。そうでなければわかるはずがないですよ。おとといになって初めて多数の声として総会の決定がなされたわけだが、その前から盛んに多数の声を尊重しますと言っておるけれども、その多数の声というのはどこから聞いた多数の声なのか、ぼくはよく知らぬけれども、ある少数の人から聞いた多数の声かもしれませんが、しかし、もう時間がございませんから、それはいいです。  しかし、長官、漁業生産調整組合法を見ても、この調整事業というのは、別段、漁業経営者の経営を窮乏におとしいれたり倒産に導くようなことをやれという調整法じゃないんですよ。あくまでも経営を改善して、近代化をして、中小漁業の経営の安定化をはかるという目的なんですよ。そのことを念頭に置いておってもらわぬと困るわけです。ただ、農林省告示の四項目の中の一項目だけを非常に強調されておりますけれども、問題の大前提を考えてみてもらわないと困りますよ。  それでは、運搬船の規制について質問しますが、保有隻数及び保有トン数を一カ統につき三隻以内、七百五十トンに規制した根拠についてお聞きします。
  231. 内村良英

    内村(良)政府委員 運搬船規制の根拠は、漁業生産調整組合法第十条第一項に基づくものでございます。なお、制限の具体的内容は漁業生産調整組合が自主的にこれを決定するものでございまして、日本まき網漁業生産調整組合が今般議決いたしました三隻、七百五十トン以内という規制は、組合員の運搬船所有状況の最大公約数であるというふうに私は聞いております。したがいまして、このような規制が行なわれましても、実際上制限を超過する漁業者は、隻数については一社、このほかはすべて三隻以内、トン数については、三社が七百五十トンをこえるわけでございますが、これは船を小さくすることもできませんので、これにつきましては経過措置によって当分の間超過するものが認められることになったというふうに承知しております。
  232. 小宮武喜

    小宮委員 私は、この運搬船の規制の内容そのものが、三陸沖に出漁するまき網を基準にしているのではないかというふうに考えるわけです。三陸沖の場合、漁場から水揚げ港まで、所要時間がわずか四時間か五時間です。しかし、東シナ海や黄海に出漁するまき網は、水揚げ港の長崎、唐津まで来るのに二昼夜かかるのです。したがって、運搬船が漁場を離れてまた漁場に戻るまでには、早くても五日、おそければ六日かかるのです。唐津港に入港した場合に、そのまますぐ魚を陸揚げすることができるかどうかということに一にかかってくるわけですが、最近、御承知のように、水産場でも週休二日制の問題が実施されつつあるわけですから、週休二日制ができたら、その間二日も待たなければいかぬというふうになりますと、漁場から離れてまた漁場に戻るまでに七日も八日もかかるのです。考えてみなさいよ。三隻の場合、きょうかりに一隻が水揚げ地に戻るとして、あした一隻帰る、次の一隻が帰る、したがって、次の船が戻ってくるまでには三日ないし四日は操業を中止しなければならぬというような事態が生まれるのです。そのことをよく考えてくださいよ。三陸沖だったら四時間か五時間だから、ピストンを多くすれば一日に二回も三回もできるわけです。そういうようなところは三隻でもいいわけです。しかし、東シナ海や黄海の場合は二昼夜かかる。戻るまでには、早くて五日、六日、おそければ七日も八日もかかる。その場合は、三隻でその間操業を中止しなければならぬという事態が出てくるという問題もあります。  もう一つ、もし三隻の場合に一隻がエンジン故障をした場合、二隻に減るわけですから、二隻で二昼夜かかって運搬をやったとしても、なおさら今度は、漁場でまき網が出漁しながらも、五日も六日も一週間も操業を中止して遊んでおらなければいかぬという問題があるわけです。そういうような事情は長官はよく御存じですか。
  233. 内村良英

    内村(良)政府委員 運搬船の状況、東海黄海のまき網の操業形態は、ただいま先生指摘のとおりだと思います。そこで、七百五十トンであれば、北部太平洋海区の付属船と、ここらは非常に航海日数が短いので、アンバランスになるのではないかというお話しでございますが、北部太平洋海区の運搬船の制限は三百トンになっております。その中にいわゆる魚探船が入っておりますので、実質的な運搬能力は二百五十トンくらいではないかというふうに私ども考えております。したがいまして東海黄海は七百五十トンあれば大体操業に困らないのではないかと思っております。それから、先生案内のように、運搬船は満船にならなければ帰ってこないわけでございます。きょう帰って、あした帰って、あさって帰ったというような場合には、これは非常に魚がとれた状況でございますので、その際さらにどんどん水揚げするということになりますと、やはりいろいろな問題が起こってくるのではないかというふうな——これはおことばを返すわけではございませんけれども、そういった操業の実態があるわけでございます。  それから、故障したときどうするのかということでございますが、今日まで私どもが承知しているところでは、あらかじめ故障を予想して予備の運搬船を保有しているというようなことは、中小漁業会社のいろいろな経営上ないと思っておりますので、そういったことがないように事前に十分注意してやっておるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  234. 小宮武喜

    小宮委員 長官、運搬船はなるほど満載したとき帰るんですよ。しかし、魚がとれたときは一度に二隻帰る場合もあるんですよ。そうした場合は、いま言われたように一隻しか残らぬ。それは二隻がまた帰ってくるまではまだ遊んでいるわけです。そういうような実態があるということを十分に長官が認識しておられて三隻ということにされたと理解いたしますけれども、いま満載ということばを言われました。この運搬船にも網船と同じように満載喫水線、いわゆる乾舷マークは海事協会できめられたとおりつけられているわけです。そのために、満載して帰ると海上保安部のほうにつかまって罰金を食らうわけです。だから、安全上からいけば満載するというわけにはいかぬのですけれども現実は、いま長官が言われているように、満載して帰っておるというのが現状です。これとても、満載喫水線をもうすでに二十センチも二十五センチもオーバーをして帰ってくる場合に、もししけにでもあって船が沈んだ場合には、運搬船に乗っておる七人なり八人の人たちは生命を失うわけです。だから、その意味で、それでは満載喫水線まで魚を積んだとした場合に、七百五十トンのこの制限内において何トンくらいの魚を積むことができますか。
  235. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁獲物の積載時における運搬船の乾舷を確保することは、先生指摘のとおり、安全上きわめて重要な問題でございます。そこで、水産庁といたしましては、従来からも、規定が守られるよう漁業者の自覚を促すとともに、指導、取り締まりを実施してきたところでございます。そこで、業界において現状の生産並びに運搬船保有実態を考慮して、自主的に三隻、七百五十トンと決定したものでございますので、これによって漁獲物の運搬に非常に大きな支障が出てくるとは私ども考えておりません。  それから、どれぐらい積めるのかという話でございますが、大体八割、すなわち七百五十トンであれば五百トン程度の魚獲物は積載できるというふうに考えております。
  236. 小宮武喜

    小宮委員 結局、八〇%積めるということは、七百五十トンに制限をされたということで、二〇%は魚がとれても海上投棄をやらなければならぬという問題が出てきます。そうしますと、船主はそれだけ水揚げが減ります、と、こう言いますと、長官は、水揚げが減っても水揚げ高は減るとは限りませんということをこの前言われましたね。しかし、水揚げが減って水揚げ高がふえるという保証もないわけです。それだけ魚価が高くなれば、計算どおりにいけばそうなりますよ。二〇%分魚価が上がれば、それだけとんとんになるわけですけれども、そうなるとという保証は長官もできないでしょう。特に、東シナ海とか黄海に出漁するまき網漁業というのは、アジ、サバなどの回遊魚なんです。回遊魚だから、そこに行っていつでもどれるという魚じゃないのです。せっかくとれても、七百五十トンに制限をされたために、七百五十トンの中の八〇%だけ魚を積んで、あとは海の中に捨てるというようなことは、魚をとる漁船員の方々にとっても非常に耐えられないことだと思うのですよ。したがって、運搬船まで三隻以内七百五十トン以下というような規制をすべきじゃなくて、経営の安定をはかるならば、むしろ現状に即した合理化をやっていただかないと、結局、かりに一社であろうと、二社であろうと、三社であろうと、船主の水揚げが減る。常識的に見れば、水揚げが減るから漁獲高も減る、それは経営に悪影響を及ぼしてくるというのが常識なんですね。だから、運搬船の削減についても、水産庁の指導の方針は——水産庁の指導の方針かどうかは別として、業界が自主的にきめたんだということを言われるかもしれませんが、三隻、七百五十トンに見合う魚をとりなさいということにしかならないわけです。そのことによって経営が悪化し、ひいては倒産という問題も起きかねないようなこの問題を、水産庁としては、ただ業界が多数の意見としてきめたからこれを尊重しますということだけで済まされるものかどうか。漁業生産調整組合法の中にもはっきりありますように、たとえば十二条の場合にも、「第二条第一項の事態を克服するため必要な最少限度をこえないこと。」ということが一項はっきりうたわれており、次は、「不当に差別的でないこと。」となっているが、そういうような船主の中で、あるところは非常に不当な差別を受ける結果になり、ある船主は減ったとしても少しだけだということになれば、この第二号の問題はやはり不当な差別であるということを私は指摘せざるを得ないと思うのです。特に、長官は、漁獲量は減っても漁獲高は減りませんよと言っておりますけれども、それは魚の値段を上げることなんです。したがって、そこで、第十二条の三号には、「一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。」ということで、公正取引委員会との協議についてもちゃんと八十条でうたわれているわけです。だから、長官が漁獲量が減っても値段が上がれば損はしないじゃないかというように簡単に言う論法は、この調整組合法の趣旨から言ってもおかしいと私は思うのです。  しかし、それはそれとして、この運搬船を減らすことによってもし経営が危うくなるというようになった場合に、その損害はだれが補償してくれるのか。調整組合というのは、最終的な目的は経営の安定をはかることなのです。しかしながら、そのことによって倒産というような問題まで起きるとすれば、この漁業生産調整組合法の趣旨にも反するのではないかということを私は考えるわけですが、そういった船主が倒産するという問題が起きる可能性があるということを強く訴えておるわけですが、長官としては、そういうような倒産というようなことなんかはもう全然ない、心配するなというようなことを断言できるかどうか。長官、どうですか。
  237. 内村良英

    内村(良)政府委員 運搬船の規制の問題が出ておりますので、私どもといたしましても、この運搬船の規制が実施された場合に、現実に余剰運搬船は何隻ぐらいになるのかということを調べてみたわけでございます。その結果、一隻、百二十トンということになると聞いております。したがいまして、大部分の人々は運搬船を従来より減らさなくて済む、一隻だけ、百二十トン減らさなければならぬ、こういうことになるわけでございます。  それから、今度の生産調整を実施して倒産者が出るのではないかというお話しでございますが、生産調整を行ないますのは、ほうっておけばみんな倒れるかもしれないから、みんなが協力して生産調整をやろうということで生産調整をやるわけでございますから、意図において、みんなが経営の安定になるようなことをやろうということをねらって生産調整をやるわけでございますから、その生産調整が計画どおりにいく限り倒産者が出るというようなことはないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  238. 小宮武喜

    小宮委員 長官のいまの答弁は、結局全部が倒産するおそれがあるから生産調整をやるのだということで、そのことばの裏を返せば、全部の倒産を防ぐためには一社や二社は倒産してもやむを得ないのだという意味にも通じると私は思うのです。だから、その場合に、絶対倒産はしない、倒産する懸念は御無用であるというように長官がここで断言をしてもらいたい。
  239. 内村良英

    内村(良)政府委員 これはただいまも御答弁申し上げましたけれども、最近、まき網の経営は非常に苦しいということがございますので、そういった経営の困難を克服するためにみんなが生産調整をやろうとしておりますので、それによってそういった事態を回避できる方向に組合員が努力しているということでございますので、私は、倒産者が出ないようにみんなが協力してやっているのだというふうに解釈すべきだと思います。
  240. 小宮武喜

    小宮委員 この調整組合法の第二条にも、「一定の海域において多獲性の水産動物の採捕を目的とする漁業で、次の各号の要件のすべてを備え、かつ、時期的に過度の漁獲が行なわれることによりしばしばその漁獲物の価格が著しく低落し、その結果その漁業を営む中小漁業者等の経営の安定が阻害され、又は阻害されるおそれがあるものとして、政令で指定するものをいう。」という条文があるわけでありますが、魚価の安定を考えるならば、やはりもう一歩進んで考えなければならないと私は思うのですよ。というのは、現状は、魚を水揚げすると、その日に魚をせりにかけなければならないというたてまえになっておるから、魚がよけいにとれた場合は価格は低落して生産者も困る。そのかわりに実際に消費者のほうに安い魚が回ってくるかというと、中間の流通機構の関係で、必ずしも安い魚は回ってこないのです。そのためには、われわれが常々言っておるように、流通機構の簡素化と改善をはからなければだめだということなんです。  それで、水揚げ港に大型冷凍庫でもつくって、魚が多くとれた場合はそこに保存をしておき、そして計画的に出荷をしていくということで魚価の安定をはかるということが、消費者のためにも生産者のためにもいいわけです。そうしなければ、ただいまいろいろ問題になっておるような生産調整だけでは根本的な解決にはならないと私は思うのです。だから、そういった流通機構の問題も考えていただかないと、このような生産調整だけでは問題が解決できないし、したがって、この問題については、流通機構の問題にも特にメスを入れて改善簡素化をしてもらいたいと私は思うのですが、長官、その点はどうですか。
  241. 内村良英

    内村(良)政府委員 私は、ただいまの先生指摘のとおりだと思います。  御案内のように、A重油の価格が昨年に比べまして三倍になっております。それから、この委員会でもしばしば問題になりましたけれども、漁網綱の価格も二倍ないし二・三倍ぐらいになっております。また、春闘の結果賃金も上がるということになっております。私どもの見るところでは、漁業経営費は昨年に比べて大体四〇%から四五%ぐらい上がるのではないかと思っておりまして、二月の産地価格を見ますと、サバは昨年同月に比べて一〇五でございます。アジが一二二でございます。と申しますのは、経費が四割上がって、価格は五%か二〇%しか上がらないというのが現状でございます。したがいまして、この産地価格の安定をはからなければ、この場合はまき網でございますが、まき網の経営はみんなまいってしまうということになるわけでございます。したがいまして、今般、そういった状況にかんがみまして生産調整を組合としてはきめた。そして、作業艇の一隻の削減あるいは運搬船の制限によって経費の節減をはかる。同時に、そういうことをやっても、魚価が安定しなければ、魚価が回復しなければ経営の苦しさは変わらないということは御指摘のとおりでございます。  そこで、私どもといたしましては、現在関係方面といろいろ打ち合わせておりますけれども、とりあえずその漁業者の必要な運転資金を何らかの低利融資で確保したい、それからそれに伴って魚価の安定を——大体従来の傾向を見ておりますと、コストが上がっていく場合に、魚価の場合には半年ぐらいにおくれて上がってまいります。したがいまして、今後の魚価対策を検討する場合には、ことしのこれからの魚価の動きを見なければならないわけでございます。いずれにいたしましても、魚価の安定をやらなければ今後の水産業の安定ということは考えられないわけでございます。  最近の冷凍冷蔵技術の発達によりまして、水産庁といたしましては、産地中継基地、消費地に冷蔵庫をつくってきたわけでございますが、この政策をどんどん進めると同時に、過去におきましては魚価安定基金制度というものがあったわけでございまして、これは諸般の事情から廃止されたわけでございますけれども、あのままの形の復活は問題があるにいたしましても、私どもといたしましては、今後の状況の推移を見て、必要があれば相当強力な魚価安定制度というものを考えなければならぬと考えておるわけでございます。  したがいまして、そういった客観情勢考えました場合に、今般まき網の生産調整組合できめました生産調整というものは、現状においてはやはり必要なんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  242. 小宮武喜

    小宮委員 長官は、前回も、今回も、業界が多数の意見をもって決定したことは尊重しますということを繰り返し繰り返し答弁をされているわけですが、それでは確認をしておきますが、一昨日、先ほど言いました調整組合で、これも多数決には間違いありませんけれども作業艇の削減、運搬船の隻数、トン数の規制ということについて決定をされたということを、金田課長も行っておったのだからもう御承知だと思いますが、その場合に、この多数の意見を尊重すると言われることは、この業界が決定されたことを直ちに実行するということですか。尊重するという意味は実行するということになりますか。その点だけはっきりしておいてください。
  243. 内村良英

    内村(良)政府委員 出席いたしました金田課長からの報告によりますと、組合員が四十九名、出席組合員が三十八名、委任状が六名、四十四名で、反対は三であった、四十一対三であったというふうに聞いております。したがいまして、これは合法的に議決された事項でございますし、行政庁としては尊重しなければならぬわけでございます。  ただ、認可をいたします前に、ただいま先生から御指摘がございましたように、公取の法定協議その他の問題があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、合法的に議決された事項は行政庁としては尊重しなければならないというふうに思っております。
  244. 小宮武喜

    小宮委員 確かに、結果から見れば多数決で決定されたということになるわけですが、少なくともこの問題については、組合の内部の問題には私はとやかく言いたくはありませんけれども、いま私が指摘したような問題について、むしろ、業界自体がもしこれを規制した場合に経営はどうなるのか、この余剰船員はどうするのかという具体的な問題について、組合自身がもっと真剣に考えてこの問題に対処してもらえなかったということは私は非常に遺憾ですけれども、そういうような問題は業界として当然やるべきことだ、それをなぜわざわざこの問題だけを強行したのかということについて私はどうもふしぎでならないし、また、水産庁もそれを指導しておるようなふうには見受けられるけれども、それは別として、この問題についても、昭和五十二年度の末までにこの合理化の目標は出ているわけですから、合理化だけを先行してきめなければならなかったということについては私はまだいまでも疑問を持っているわけです。  しかし、それは別としまして、この振興計画が漁船員に及ぼす影響について質問いたしますけれども、この調整法の第十八条にも、「組合の組合員は、調整規程に従いその漁業生産活動を制限するに当たっては、その従業者に不利益を及ぼすことがないように努めなければならない。」ということがはっきり明記されていますね。そこで、この作業船の削減が行なわれた場合に、余剰漁船員がどれだけ出るのか、その雇用対策はどうするのか。水産庁と運輸省から御答弁願いたい。
  245. 内村良英

    内村(良)政府委員 作業艇が削減されました場合に、余剰船員は——乗り組み員は四百人でございます。先般も御答弁申し上げましたけれども、現在、まき網漁業につきましてはかなり人手不足の面もございますので、私どもが承知しているところでは、経営者が他の灯船あるいは運搬船に配置がえをするということで大体吸収できるというふうに聞いております。
  246. 増井正治

    ○増井説明員 お答えいたします。  ただいまの御質問につきまして、一般例的に漁船船員の需給状況から申し上げますと、現在は必ずしも特段の不足ということはございませんが、退職後、あと補充をするという面で、以前のように簡単ではない。むしろ逼迫傾向がございまして、したがいまして、ただいま水産庁お答えになりましたような員数については、十分これを吸収する4特に雇用対策上不安があるという問題はないというように考えております。  以上でございます。
  247. 小宮武喜

    小宮委員 長官、あなたは、漁船員はむしろ不足しておるということを言われたわけです。ところが、不足しておる漁船員というのは、労働条件が悪い船主のところは漁船員が不足しているわけです。労働条件が悪いから漁船員が集まらぬのです。それをさして漁船員が不足しておるとでも考えておられたならば、これは大きな問題です。だから、いまのまき網漁業の中でも待遇が悪いところは、たとえば船長でも、ある会社とある会社で年間百万違います。そういうような安いところに漁船員が集まるはずはないのです。当然でしょう。そういうことを長官はどこから聞かれたか知らぬけれども、そういうような労働条件に格差のあるところに人間が集まるはずはないし、また、余ったからそれをどこかにやろうといっても、そういうような労働条件の悪いところには集まりませんよ。むしろ、そういった労働条件の悪い会社に対しては、もっと労働条件をよくしなさいというぐらいの指導を水産庁長官はやるべきだと私は思う。  それからまた、今回水揚げが減ってくる。それは長官が何と言われようと、やはり経営が悪化することは必然です。そうした場合に、すでに困っているのは、今度の大幅春闘の中で今度の賃上げをどうしようか、原資もないというような問題と、あるいは、すでに現在もらっておるオール歩合制の中での収入というものが、水揚げが減ってきますと減収になることは明らかなんだが、そういうような船員の生活保障については水産庁はどういうように考えられておりますか。
  248. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、待遇の悪いところには船員が集まらぬのじゃないか、非常に待遇がよかったところの船員がそれだけ削減されれば困るのではないかというお話しでございますけれども、今度の作業艇の削減というものは、各組合員全体がそれをやるわけでございますから、その会社の中で配置転換が行なわれるのではないかというふうに考えております。  それから、水揚げが減って非常に経営が困るのではないかということでございますが、いまのままでいきますとみんなが困るということで、さっきから繰り返して同じことを申し上げておりますけれども、そういった趣旨で生産調整をやるわけでございますから、その面から一定の所得の確保というものは期待できる、それをねらいとして生産調整をやっておるということでございますので、私どもといたしましては、そういった組合員の決定というものをやはり尊重していくべきではないかというふうに考えております。
  249. 小宮武喜

    小宮委員 最後に一点だけ。  私も、この生産調整に反対しているものではないのです。ただ、生産調整を実施するにあたって、問題があまりにも大き過ぎるぞということです。したがって、いま言われたように、また、私が質問の中で指摘したように、たとえば船員の待遇改善どころか、待遇も悪くなる、失業の運命におとしいれられるというような漁船員の問題をどうするのかという問題がある。あるいは全体の経営が悪化するということにもなりましょうけれども、それは程度の問題であって、業者によっては、三陸沖は別として、東シナ海、黄海に出漁する船主の中では、水揚げが四〇%から四五%減るために経営が非常に倒産に近いものになってくるというような血の叫びのような訴えがなされているわけです。したがって、かりに多数意見とはいえ、総会できまったからそれを尊重してやるということでは、あまりにも水産庁としては無責任きわまるのではないか。  したがって、私は、この問題について一つの提案をしたいと思うのです。提案は、三十一日にどういうような合理化研究会の結論が出るか知りませんが、こういった問題を十二分に踏まえて、モデル船による試験操業やってみるとか、安全上の問題はどうなんだ、あるいは水揚げの問題はどうなんだというような事前の周到な準備を行なった上で、少数意見とはいえ、反対がある以上、全員の理解と納得の上で実施してもおそくはないのじゃないかということ、それを、ぜひ長官としてここで決断をしていただきたい。そのことについて最後に長官の決意をお聞きして、私の質問を終わりたいと思うのです。
  250. 内村良英

    内村(良)政府委員 安全の問題は特に重要でございますし、経営の問題その他があるわけでございますから、認可をするにあたりましては、関係の議事録を見て、場合によっては関係者の意見等を十分聴取いたしまして、認可するかどうかの判断は役所としてしなければならぬというふうに思っております。
  251. 小宮武喜

    小宮委員 質問を終わります。
  252. 仮谷忠男

    仮谷委員長 島田琢郎君。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  253. 島田琢郎

    島田(琢)委員 まず、最初に米価問題についてお尋ねをいたします。そのあと養鶏の問題について質問をして、きょうはこの二点の質問をしてまいりたいと思います。  まず、米価問題でありますが、政務次官が久しぶりに顔を出されたので、主として政務次官と、食糧庁長官にもお尋ねしますが、昨日の本会議において、各党から、米価の早期決定の問題と追加払いの問題が出されておりました。総理以下各大臣とも口をそろえてこれを否定された。私は、今日の状態を考えるときに、農業団体があげて米価の早期決定という問題に取り組んでいることについては、それなりの大きな意義と目的があると思うのであります。本来政治は世論によって十分方向を考えていかなければならない性格を持っていると思います。いま国をあげて生産者米価の早期決定という問題が取り上げられているときに、政府はなぜこの期待にこたえようとしないのか。答弁によりますと、資料がととのわないということを理由にしているようでありますが、それは理由にならぬと私は思うのでありまして、責任省庁の農林省としては、こういう問題に対して責任をもってこたえるという姿勢があらためて出されなければいかぬと思うのですが、いかがですか。
  254. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 責任をもってお答えをいたします。  先ほどもかねがね言っておったのでございますが、米価は通常例年七月前後、六月末から七月の初めにやるのが大体慣例であります。昭和四十五、六年ごろ、二回ほどそれより早くきめましたが、このときには生産調整とかち合いまして、米価を据え置くというふうなことを決定いたしました。したがって、データをとるというようなことにもあまり拘泥をしないで、ともかく実質的に米価を据え置くという方針が出されて、早くきめたことがあります。それから、ことしのような場合には、特に二月、三月にかけての異常な物価の値上がりと、それから大幅な春闘相場というものが出ておるわけでありまして、それが中小企業に及ぶというのにはやっぱり四月一ぱいかかってくるわけでございます。したがって、こういうような時期でございますから、いまやるにしても、田植えの前にやるということは現在でも不可能でありまして、関東等は今月中にほとんど田植えが全部終わるという状態でございます。したがって、これらの物価、賃金の値上り分を正しく米価に織り込むにはなるべく直近のものがいいじゃないかということで、こういうことになってまいりますと、どうしても七月ごろがいいのではないだろうか、そのほうがむしろ物価、賃金が正確に織り込めるんではないか、と、こういうような考え方でございます。  もっとも、米価は十二月にきめろという意見があります。かねてこういうふうな議論がありましたのですが、十二月にきめるということは、確かにある意味のメリットはあります。たいてい予算は、大幅な米価値上げで予算を組んだことはございません。だからといって、上げた部分を全部消費者にかけたということもありますが、そうでないこともあるので、そうすると、その差額はこれは当然予備費等の支出ということでありますから、どうせ上げるのはわかっておるのならば十二月に上げたらいいじゃないか、予算にきちっとつけたらいいじゃないか、予算米価にしたらいいじゃないか、と、こういうような議論があります。それはありますが、これは予算米価ということで、一方に反対の強い意見もありまして、大体六月末から七月に慣例的にきめてきた。したがって、ことしなどは特にそのほうがよいのでないかと考えておるものですから、田植え前という要求に対しましては、直ちにそれを受け入れるという考えを持っておらない、こういうことであります。
  255. 島田琢郎

    島田(琢)委員 次官、私は、北海道のビートの決定にあたって、早期決定をせよという主張を繰り返しいたしました。農林省は、この農民の切なる願いを踏みにじってしまいました。しかし、その結果は、私が予測をしたとおり、いま現地におけるビートの耕作面積の非常な落ち込みという結果になって出ております。私はそれを非常に心配したから、当時作付前に、種おろし前に、四十九年のビートの問題についてはおおよそ明らかにして、政策の大綱を農民に示すべきではないか、と、こういう趣旨のもとに強く迫ったわけでありますが、今回の米価の問題にいたしましても、あるいはそのほかの農産物の問題にいたしましても、当然売っていかなければならないという立場にある限り、それを一体幾らの価格でことしは売れるのかという見通しが事前につけられていかなければ安心して耕作ができないということはどの部面にも共通することであります。したがって、ビートの問題は、その後において、これまた慣例に従って、四月十日に近くなってからきめた。ところが、もうそのときは手おくれで、ごらんのとおり取り返しのつかない結果にいまなっているわけで、こういう点は、政策のミスという点ではきわめて強く指摘をしなければならぬ点だと私は思うのであります。  再びこれを繰り返すことがあってはならないという考えも強く私にあります。お考え直しをして、米価の問題に早期に取り組むという姿勢を出されるべきだと思いますので、重ねてお尋ねをいたします。
  256. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 たとえば、すぐに米価をきめると言っても、とても今月中に準備のできるものでもありません。今月かりにきめたからといって、それじゃ作付面積がふえるとか、一カ月おくれたから作付面積が減るという筋のものでもないだろうと私は思う。  確かに、ビートの場合には、あなたがビートの反別は減るであろうという御指摘をなさいましたが、それはそのとおりになりました。それじゃ一カ月早く三月にきめたら反収がふえたかというと、私は、そうは思っておりません。おそらくビートの場合は、一カ月前にきめれば一万一千百十円という値段は出なかったであろう、もっと低い値段できめられたことは間違いない、私はそう思っております。したがって、ビートをやめて別などこに行ったかということでございますが、上川地方等が案外ビートをやめたのが多いという話を聞いておりますから、これはおそらく食料問題、特に米の問題というものが大きく取り上げられて、早くからそういうふうな空気があったので、遊ばしておくはずがないので、ともかく米に戻ったものもあったのではないかというような気が私はいたしております。  したがって、いまここで米価を田植え前にきめろと言っても、すでに田植えが終わったところもかなりありますし、ともかく無理してきめるということは、物価、賃金の上昇というものを最近まで織り込むということは不可能であります。したがって、やはり、恒例に従って六月末から七月にかけての適当な時期がいいのではないかと思います。したがって、これは内閣の首脳部、総理大臣がどうお考えになるかわかりませんが、農林省としてはともかく考えを改めるという気持ちは持っておりません。
  257. 島田琢郎

    島田(琢)委員 長官、いまその資料が整わない、間に合わないということを次官は言っているのでありますが、これはやる気があればできるのでしょう。ただ、その直近時の価格決定要素の把握というものは、そのほうに近くなったほうが有利だというふうなことをおっしゃっておるわけですが、これは極論すれば、それじゃ暫定払いか何かにしておいて、もっともっと上がったときにきめて追加払いをしたほうが得だという議論にもなってしまう。それは価格決定としてはおかしいわけですから、問題は、いまの米づくり農民の皆さん方が安心して田植えに取り組めるという状態をつくっていくということが政治の責任だと私は思うのです。ですから、これほど農民が切実に早期決定を要求しているという状況考えたときに、農林省としてはそれを受けて立つべきだと私は思うのですが、長官、資料が準備できないということは、先ごろの農水でもそういう答弁が長官からもありましたが、これはやる気がないということではありませんか。
  258. 三善信二

    ○三善政府委員 やる気がないということではございませんので、この前もちょっと御説明したかもしれませんけれども、四十八年産の米の生産費の調査は、御承知のように、大体昨年公表いたしましたのが七月二十日で、それから四十七年が七月四日で、私どもは、統計情報部をできるだけ急がせまして、大体一応の算定に間に合うような概数をもらっているのであります。それが大体六月上旬にならなければそういう概数ももらえないというのがずっといままでの現状でございまして、これも急がせますけれども、統計情報部のほうでも御承知のようにいろいろと仕事がありまして、四十七年から、野菜の調査やら、そういうものもまた加わってきておりますし、急いでもらっても、こういう非常に細密な緻密なデータの整備というものはなかなかそう簡単にいくものでもございませんし、例年六月上旬にならないと、そういった大まかな生産費の調査の概数も得られない。  それから、都市近郊労賃の評価がえに使います労働省の毎勤統計といいますか、毎月の勤労統計、これが大体普通二カ月おくれるわけでございます。それで、米価のときにはいつも四月の労賃を使っておりますが、それが出るのが例年六月下旬です。  それからもう一つは物価修正、これは生産費の中では物財費等物価修正をするわけですが、それには農業パリティ指数をもとにして行なっているわけですが、五月のパリティが判明するのが、これも大体二カ月おくれるわけですけれども、麦価の米審の関係がございますので、大体麦価の米審の直前、たとえば六月二十日ごろには——これも相当急がせながら毎年統計情報部から資料をもらってつくっているというような状況でございますので、何もサボっているわけではございませんし、こういう基本的なデータに基づいて私どもは生産費及び所得補償方式の算定をやっているわけでございますから、その点は御了解できるかと思います。  もちろん、四十四年、四十五年、四十六年の三カ年は、御承知のように、先ほど政務次官も言われましたように、生産調整、減反政策のときでございまして、生産者米価は実質的に据え置きをきめたわけでございますが、その場合には多少米審も早くしております。しかし、その場合にはきちんとしたデータは整っていないというのが現状でございます。ただ、据え置きでございますから、その点、推計とかなんとかいうようなことでやった例はございますが、従来から六月の末か七月以降に米審を開いて決定するというのが大体通常の場合でございますし、これまで、この問題に対して、もっと早く開けというような話はあまりなかったわけでございますが、昨年、もう少し早く開いたらいいじゃないかという御意見もありましたし、私どももいろいろ検討はいたしてみましたけれども、そのデータの問題もあるし、実際的にはなかなか無理であるという結論に達しているわけでございます。その点は御了解を願いたい上思います。
  259. 島田琢郎

    島田(琢)委員 農林省の、特に大臣の姿勢ですが、新聞によると、参議院選挙後におれにかわった別な農林大臣でひとつきめてもらうということを一度言って、そのあとまた、場合によっては早くきめることも考えなければいけないといったようなニュアンスの態度の変更になったりしたものですから、これは巷間非常に混乱が起こったと思うのです。終始一貫していまのような説明というものはなされていない。そういう点は、今日の米価の早期決定という動きに対しても、農林省の姿勢として非常に明確でなかったと思うのです。  それでは、将来何年にわたって、いま次官や長官がおっしゃっているような方針を今後貫いていくということですか。これは固定的にそういうふうに考えていると理解していいのですか。
  260. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 特別な事情がない限り、現行のような慣例に従っていいんじゃなかろうかと思っております。  しかし、先ほど私が言ったように、それは与野党も全部一致して、また、農業団体も希望するというのであれば、予算と同時に米価をきめるというようなことも——予算の直前とか、予算編成の前というようなことも考えられないことはないだろうと思います。
  261. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私は、予算時期の米価決定までの話をしているのではないのです。しかし、今日、自民党も、ある意味においてはそれは全党的な意思決定ではないのでしょうけれども、一部米議員と言われる人たちの中には、この際農業団体の言っている早期決定という問題については考えなければいかぬだろうという趣旨のことを言っておる。おっしゃる野党は、あげて早期決定を言っておるわけであります。農業団体も、一人も漏れなく早期決定をいま言っておるわけであります。ひとり政府だけがこれに反対をしているのであります。これだけ世論が盛り上がっており、そして、いま言いましたとおりの背景があるのですが、それでもおやりになるお考えはないですか。
  262. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 私は、田植え前にきめろということが、それがともかく一月とか、二月とか、あるいは十二月とかいうのならば、作付の都合があるから田植え前にきめなさいということで、これは一つの意味があると思うのですけれども、御承知のとおり、いま田植えは早まりまして、私どものほうを考えると、昔は六月が田植えだったのが、いまはもう五月が田植えで、二十日ごろにはほぼ終わる。一カ月早まっております。したがって、いろいろな準備をするのも、三月末にはもちろん種をまきますし、それらのいろいろな計画というものも、正月あるいは二月ごろまでには、それぞれの農家では、どれくらいの面積をつくるか、それによってどれくらいの肥料の注文をするかというような準備を全部するわけです。ですから、ほんとうに田植え前にきめるということになれば、もっとずっと早くきめなければ田植え前の米価の決定ということにはならないのではないだろうかと私は思うのです。いま、この五月できめろ、田植えの最中に何が何でもきめなければならぬというのも、何のためにそうしなければならないのか、どうも私にはよく意味がわからない。正直のところ、農業団体の方にもそういうふうに申し上げておるわけであります。
  263. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どうも、押し問答でありますから、きょうの通告日程に従って、三善長官はここで解放いたします。そして、また、同僚議員が入れかわり立ちかわり、早期決定という問題については、追加払いという問題を含めてこのあとも質問をする予定であります。したがって、きょうはここで米価問題は終わりにいたします。  さて、畜産局長お尋ねをいたしますけれども、きょうは養鶏ということで通告をいたしておきましたが、なぜいまの時期にこれを取り上げたかといいますと、いま養鶏業界において非常に問題になっております生産調整という問題が、昨日から非常に話題をにぎわしております。したがって、この部分にウエートを多くして、これからの残された時間を質問してまいりたいと思います。  ところで、次官、畜産行政の中で、過去を振り返ってみますと、国民の食生活部門で一番大きな貢献をし、しかも経営的には非常な苦しみを抱きながら努力をしてきたのが養鶏農家だと私は思う。とりわけ、卵をとる採卵農家の努力というものは、今日高く評価をしなければならぬと思う。ところが、それにこたえる畜産行政が、とりわけ養鶏行政に対しては非常に手ぬるかったし、他に比べて非常に落ち込みがひどい部門だというふうに私は考えてまいりました。早くから日本の養鶏は大きな曲がり角を幾つも曲がりながらやってきたし、今日さらに零細養鶏農家については、自転車操業的経営を余儀なくされて、非常な苦しみを味わってまいりましたのに、昨年はえさの問題によって決定的なダメージを受けた。この努力に対して平手打ちを食わせるような結果になっていることについて、政府当局はもちろんですが、われわれ政治家も含めて、たいへん大きな責任を感じてまいりました。この機会に大いに反省をしなければいけないと思うのですが、私がいま指摘した点については次官はどのように考えていらっしゃるか、その点を冒頭にお尋ねいたします。
  264. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 島田委員のおっしゃるとおり、養鶏は非常な進歩、向上のあとを残してきたわけであります。大体の推計で、米は二兆円作物と言われるのでありますが、養鶏は大体五千億程度の生産高になっておる。それで、農産物全体の約一〇%ぐらいの生産高というように推計をされておるわけでありますが、畜産総額の三七・三%程度の非常に大きな分野を受け持っておる。そして、日本の養鶏に対しては、実際、ほんとうにあまり政府は金を出しておらないことも事実であります。しかも、自由化をされて、過去、いまから一年ぐらい前までは、十三年の間ほとんど卵の値上がりはしない、完全自由化である、外国からも入ってこれないという、それぐらいの競争力を持った産業であります。養鶏というよりも、むしろ鶏産業ぐらいに巨大化をした部門もあり、国民の物価あるいは安定的な供給という面に果たした役割りは非常に大きいというように私ども考えております。政府が金をかけたものがなかなか競争力が持てないで、金をかけないものが非常に競争力を持っておるという、ともかく皮肉な話でございますが、それが一つの現実であったわけであります。したがいまして、物価高というような非常な事態になってもこれがなかなか値段が上がらない、やり切れないというようなことで、あなたの指摘するような非常に困った状態になっております。  そこで、この間においても、卵価安定基金等の支持価格というものを二百円から二百七十円というように大幅に引き上げ、また、液卵公社の買い入れというようなものも、二百六十円程度までこれを引き上げるというような措置を講じてきておるところでございます。したがって、養鶏の部門につきましては、ただ、それが過保護的になることは非常に困るのでございますけれども、今後とも適切な措置を講じていきたいと思っております。  この問題で一番問題なのは過剰生産です。私が代議士になったときには、いまから約十年前でありますが、九十万トンでありました。それが百万トンになって、大過剰生産で大暴落をしたことがあるわけでございますが、いまは約百八十万ないし百九十万トンの生産が行なわれておる。幾ら何でもそれだけは消費し切れない。かなり消費をするようになりましたけれども、百八十万トン以上は多過ぎる。そこで、計画的な生産、計画的な出荷というようなもの等に特に力を入れていく必要がある、こういうふうに考えております。
  265. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私は、過剰生産という問題に入る前に、いま政府の施策として考えているえさ基金の問題、それからもう一つは卵価安定基金の問題について伺いたいのですが、まず、その前段のえさ基金について、ことしはどれぐらいの養鶏部門に対する予算をお持ちですか。
  266. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 現在の価格安定対策といたしまして、卵価安定基金によります価格の補てん、一定価格以下に下がりました場合にはその差額を補てんするということと、全国液卵公社による買い入れによる価格の下ささえという二段階の方法で対策を講じておるわけでございますが、お尋ねの基金につきましては、先ほど政務次官からお答え申し上げましたように、補てん基準価格をキログラム約二百円から二百七十円に、かなり大幅に引き上げたわけでございます。なお、液卵公社につきましても、買い入れ価格の基準となりますものを二百六十円ということにいたしたわけでございます。当面、買い入れと補てんを継続をいたしておりますが、現在鶏卵の市価はかなり下がってまいっておりますので、液卵公社によります現在の出資額でもって買い入れをすることについて当面は支障はございませんけれども、なお買い入れ量がふえる場合には資金的な手当てが必要になるのではないかというふうに考えております。基金につきましても、今後の価格の推移いかんによりますけれども、補てん財源に現在のところは不足を来たしておる状況ではございません。  なお、液卵公社につきましては、買い入れ資金に不足を生ずるような場合には、その資金手当てをするとともに、国の予算におきまして、御可決いただきました四十九年度予算におきまして二億の追加出資をいたすことにしております。県を含めて三億、なおそれで不十分の場合にはさらに出資増を検討したいというふうに考えております。
  267. 島田琢郎

    島田(琢)委員 局長、私は実はえさ基金の問題に質問を集中したのですが、次の質問をあなたはおっしゃってしまったから、それじゃついでに卵価安定、いわゆる液卵公社の関係で話題を進めていきますが、きょうの市況を見ると、ミドル級ですが、二百五十三円から二十円落ちて二百三十三円になった。あなたはいま、二億円をさらに追加出資してこれを守るとおっしゃったが、その出資もさることながら、問題はもっと別なところにあると私は思います。たとえば、実態を調査してみましたら、せっかく買い入れても冷蔵庫がないという問題が一つ出ております。その部分を含めて卵対策を考えませんと、銭こだけ出して一生懸命買い入れたが、しかし、それがきょう二十円も大暴落をするというのはそこに原因があるからだというふうに私は見ているのですが、これはいかがですか。
  268. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいま御指摘がございましたように、四月の半ばごろ買い入れを開始いたしまして以降二百五十円台で推移してまいりましたのが、五月十五日、昨日でございますが、二百三十三円に下がりまして、さらに本日、聞くところによりますと、二百二十円台に下がったというふうにただいま聞いたところでございます。  それで、四月の半ばから液卵公社が買い入れを実施いたしまして、現在までに約千八百トン買っておるわけでございます。昨年も買い入れを実施いたしまして、昨年は年間を通じまして約九百トン買い入れをしたわけでございますが、そのペースから比べると、すでに一カ月足らずで倍以上になっておるわけでございます。にもかかわらず、ただいま申し上げましたように卵価の回復が思わしくなく、逆にさらに低落をしておるという状況にございます。  その原因といたしまして、一つは割卵能力の問題がございます。割卵機を公社が持ちまして、委託で割卵をしておるわけでございますが、割卵機はいざという場合に使うだけでございますので、平生、急激に割卵をふやす場合に、機械なりあるいは人手が必ずしも十分確保できないという面もございますが、もう一つは、割卵は、買ってからすぐ即日やる必要はございませんので、買ってからしばらく冷蔵保管をいたしまして、それで割卵をしてから冷凍保管をするというやり方ができるわけでございますが、冷蔵保管をする場合のC級の冷蔵庫が御指摘のように現在やや不足をいたしております。これをいろいろ手当てするように現在液卵公社を指導いたしまして努力をいたしておるわけでございますが、これに対します今後の対策といたしましては、鶏卵を加工原料として使っておりますマヨネーズメーカー等に対しまして、これは例年でございますが、安い春の時期に割卵をして冷凍保管をして、年後半の需要期の価格が上がります際に当用買いとあわせて原料として使うということをやっておりますので、これの買い入れ量を急速にふやすように強く要請をし、本日も強く要請したところでございますので、近日中に従来のぺースよりかなりふやすものと期待をいいだしておるわけでございます。  それから五月十三日に農林省の告示を出しまして、全農等の生産者団体が調整保管を行なうこととして、それを行なう場合の基準となる価格、それから保管の期間等について定めたわけでございます。これによりまして、全農等を中心にいたしまして約二千トン程度の調整保管を実施してまいりたいというふうに思います。これも冷蔵庫の問題があるわけでございますが、冷蔵保管と冷凍保管とを合わせて二千トン実施をしてまいりたいというように考えておるわけでございます。  以上のような対策によりまして極力価格が回復するように努力をしたいと思いますが、なお、昨日、本日と急激に低落いたしました一つの理由といたしましては、全農が売れない場合には在庫を持つわけでございます。これは調整保管という意味ではなくして、通常の在庫が売れ残りとして残るわけでございまして、これがだんだん累積をいたしまして、現在かなりの量に達しております。それが最近ここ二、三日気温がかなり高いということもありまして持ち切れなくなって放出をしたということで、市場に大量に出たということも一つの原因になっておりますので、これがある程度はけますればある程度の価格の回復ができるのではないか、一時的にそのような期待は持てるのではないか、そのように思っておりますが、やはり、これから五月、六月、七月にかけて毎年季節的に価格の低落する時期でございますので、先ほど申し上げましたような方向でできるだけ冷蔵庫を確保し、また、割卵を委託加工等も考えまして、ふやしまして、価格の安定に資したいというふうに現在考えております。
  269. 島田琢郎

    島田(琢)委員 冷蔵庫対策の具体的な問題についてはお答えがないのでありますが、そこで、先ほど次官からも出ておりましたが、現在の卵の需給関係は、必ずしも次官がおっしゃるように百八十万トンで生産オーバーだという現況にはなっていない。自給率は何%になりますか。
  270. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 昨年の場合二万八千トンの輸入がございますが、百八十万トンの中での二万八千トンということでございますので、自給率は一〇〇%近いという現状でございます。
  271. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それは、輸入を入れてでしょう。そうですね。現に、現在も液卵の輸入が月平均で大体千トン行なわれている。そこで、先ほどの次官のお話しに戻るわけでありますが、現在の状態で、卵は国民食料の部門から言えばもう満ぱいで、これ以上需要の伸びる余地はないとおっしゃったのです。ところが、「農産物需給の展望と生産目標の試案」によりますと、昭和五十七年度までに現在の百八十万トンを二百二十七万一千トンにするといっているのです。これは明らかに政策の矛盾ではありませんか。しかも、これは生産調整を強化されようとする。養鶏農家はたまったものじゃないです。生産調整の持っている目的については私はわかっております。別なところにあることもわかっている。しかし、この結果はどういうことになるかというと、零細養鶏家切り捨てということにつながっていく。次官が一つ心配された農外資本の進出と、やみくもに大きくなっていくインテグレーションの養鶏企業が取ってかわって、日本の養鶏界、産卵界を席巻するという状態に発展してしまう。そこに政策が手をかすとしたら、これは農林省のやる仕事ではないと私は思うのです。輸入の問題と、農林省みずから立てたこの五十七年度の生産目標をどう考えていらっしゃるのか、私はきわめて疑問に思います。いかがですか。
  272. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいま御指摘のございました、一昨年農林省が発表いたしました生産目標の試案によりますと、五十七年度に二百二十七万トンを生産目標として掲げておるわけでございます。で、その際の考え方といたしましては、基準年次でございます昭和四十五年度が百七十六万トンでございます。それに年率二%の需要増があるであろう、それに必要な供給を一〇〇%国内自給というものを原則として確保する、こういうことであったわけでございます。長期の見通しでございますので、最近のようにえさの価格あるいは諸物価といったような、そういう価格関係の激変を織り込みますとなかなかむずかしくなりますけれども、われわれといたしましては、一人当たりの消費量は確かに世界のトップレベルに近くなって年間約三百個ということになっておりますから、これはそう大幅に伸びるということは、大幅といいますか、伸びることはもうあまり期待できないというふうに考えざるを得ないと思いますが、人口の伸びが、試案をつくりました場合は一・一%見込んでおりますので、それの伸びと、それからさらに消費拡大等によります増も見込んで年率二%の増加、こういうふうに考えたわけでございます。その点につきまして、最近の事態を見ますと過大ではないかという御指摘は確かにあろうかと思います。現在、農産物の需給見通しについてあらためて検討をいたしておりますので、最近の情勢も織り込んで慎重に検討をしてまいりたいというふうに思います。
  273. 島田琢郎

    島田(琢)委員 これは卵の場合だけではなくて、私はいろいろな面で指摘をいたしました。たとえばビートのときもそうでした。農林大臣に砂糖の将来の自給率をどう考えるんだと言ったら、現在の二〇%を割っているところを二八%に持っていくんだと言った。ところが、おやりになることはみんな逆行している。自給率を低下させるという方向に農林省みずから矛盾も感じないで手をかしている。まさに行き当たりばったりの模索農政と言わざるを得ない。この目標が出た時点で——局長、これは何も古い昔に出たんでないですよ。おととし出たんです。しかも、いまから五年前にすでに卵の生産量は現在の百八十万トン近いものがあったんですね。そのときに年率二%で伸びていくであろうというふうに見通された。そうしておととしこの目標を出したから、鶏を飼っておられる農民は、よし、農林省としてはこれからの卵の問題についてはまだ前向きに考えていると正直受けとめて、一生懸命養鶏をやって卵をとる努力をした。いまになってこの目標は誤りだったから生産調整をしなければならぬと言われたら、これは養鶏農家は死ななければならない。あたりまえの結果に行き着いてしまうのであります。そういう矛盾する農政を平気でおやりになっているということであれば、先ほど来次官も局長も、こういうことをやる、ああいうことをやる、いままでの努力に対して農林省は十分こたえるだけの施策をやると言っているが、幾ら口でおっしゃっても信用するわけにはまいらぬということになってしまう。私はきびしくこの点を指摘しておきたいと思うのです。  ところで、先ほど輸入という問題について私は触れました。いま生産調整を強化しようと言っているときに輸入のほうはそのままで進めていくというのは、これまた農政の第二の養鶏に対する矛盾点ではありませんか。この規制の方法あるいは輸入に対する問題について、基本的あるいは具体的にどのように考えているのか、お示しをいただきたいと思います。
  274. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 鶏卵の輸入につきましては、すでに昭和三十七年度から自由化をされまして、それ以来増加の傾向が見られたわけでございますが、四十六年度以降は、卵黄を除きまして輸入量は減少してきておるわけでございます。農林省といたしましては、先ほどから御説明しておりますような最近の需給事情——これはごく最近ではなくして、すでに昭和四十七年ごろから生産調整の必要ということも叫ばれてきておりますので、海外からの輸入がわが国の鶏卵の需給に悪影響を及ぼさないようにということで、自主的に液卵の輸入について調整をするということを輸入商社等に対しまして行政指導をしてまいっておるわけでございます。非常に低い外国の輸出価格に対処するために、四十七年の四月に関税の引き上げを行なったわけでありまして、その後毎年その措置を延期をいたしておるわけであります。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 現在、二五%ないしまたはキログラム当たり六十円のいずれか高いほうということで関税をかけておるわけでございます。  液卵につきましては、卵の国内におきます完全自給ということをたてまえとして考えておりますので、今後とも外国の液卵が国内の需給関係等を圧迫するような形で入ることのないように、輸入商社等の指導をしてまいりたいというふうに考えております。  今回の価格の低落等にかんがみまして、価格の低落と言いましても、昨年よりは高くなっているわけですが、要するに採算のとれる価格として低過ぎるという意味でございますけれども、本年の場合も、そのような情勢にかんがみまして、去る三月の二十七日、大手の輸入商社十社に対しまして、最近におきます国内の養鶏事情を十分説明をいたしまして、極力輸入を減らすように行政指導をしておるわけでございまして、最近急激に減ってまいっておるわけでございます。  昨日もオーストラリアからエッグボードの総裁が来られまして、いろいろとオーストラリアの情勢について話をされまして、オーストラリアはわが国の一番の大きな輸入先でございますが、これの話を聞きますと、やはりえさの価格が高くて一〇%程度の生産調整をやっておるので、当分の間日本へそう出ることはないのではないかというような話もあったようでございます。したがいまして、われわれはさらに商社等に指導を加えまして、輸入卵がふえることによりまして国内価格を圧迫するようなことの絶対ないように厳重に指導してまいりたいと思います。
  275. 島田琢郎

    島田(琢)委員 次官、厳に自粛を要請するなんというのは手ぬるいことで、そんなことでは今日の卵の問題は解決しません。直ちに輸入を停止させるという強い規制を行なうべきだと私は思いますが、いかがですか。
  276. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 気分の上においては同じでございますが、現在御承知のとおり卵は自由化をいたしておりますから、日本だけで一方的にこれをすぐに禁止をするというようなことはなかなかむずかしいことであります。しかし、現実問題として、いまの行政指導で国内でも暴落をしておるという状況ですから、商社も極力入れることを控えるという効果があがっておるのであって、全体の生産量からすれば微々たるものであって、全体の価格に影響をすることではありません。それらについても調整、保管等の道を講じておりますから、やはり、輸入は極力これを押えていくという方向でその点は押えられると考えております。
  277. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どうも私は納得できないんです。自由化されているものだから、あるいは微々たるものだとか、また、関税もかけているんだからと言いますけれども、養鶏農家の心情としてこれは納得できないことじゃありませんか。国内では余って困るから生産調整をするのだと言っておきながら、たとえ一個の卵だって輸入できる余裕なんというものはこの国内現状考えますときには出てこないと思うのに、規制の措置はきわめて手ぬるいとしたら、せっかく先ほどから養鶏問題について真剣に農林省として取り組むとおっしゃったって、大事な点に手抜かりが出てくるという批判を免れないと私は思うのです。反省をしていただきたいと思う。また、直ちに輸入を中止せしめるというところまで行政指導を強化すべきだということを、重ねて私は要求をいたしておきたいと思います。  さて、そこで、今回のこの生産調整にかかわる問題でありますが、四月三十日付農林省局長名をもって四十七年の七月十五日に出されました鶏卵の生産調整にかかわる問題について、さらに今回強化通達を出しました。私は、前段のいろいろな議論を踏まえて考えますときに、このことが史上最高の豊作だというふうには私には考えられません。一つには、心配される階層分化がさらに進んでいくということに手をかしはしないだろうかということですが、たとえば三千羽基準というもののとり方でありますし、そして、また、液卵公社の運用の問題にいたしましても非常にこの問題を残すのではないかと私は思います。ただ、養鶏諸団体とかなり詰めた話をしているようでありますから、せっかく方向がきまっているものに対して水をさすというつもりで私は申し上げるのではありませんが、生産調整という問題に手をつける前に、行政当局としてもっと基本的にやらなければならない点が幾つかあるのではないかという点の指摘をしているのであります。  したがって、まずどうしてもこの機会に明らかにしておかなければならないのは、商社養鶏と言われる農外資本、特に、非常に強く進んできた養鶏部門の特徴と言われておりますいわゆるインテグレーション化の問題が非常に心配されます。したがって、この措置によって今後農外資本侵入という問題について決定的に措置することができるかどうかという点については非常に危ぶまれます。現に、この規制の方法等については具体策が出されておりますものの、これは手ぬるいという判断を私はしております。そして、また、この実態というものがどうなっているかということも知りたい点であります。最近農林省としてはこの実態を調査されたと聞いていますが、ほんとうにその実態を調査されたかどうか、されたとすれば、その実態の調査の中身について、これを公開していただきたいと私は思いますが、この点はいかがですか。
  278. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 インテグレーションの範囲、概念をどのように規定するかはなかなかむずかしい問題もなくはないわけでございますが、まあ、常識的に言いまして、インテグレーションのタイプとして二つあるというふうにわれわれは見ているわけでございます。  一つは、いわゆる契約生産で、飼料会社あるいは商社系等が生産農家に対しまして、生産量、飼育規模あるいは価格、規格等をきめまして取引をするというような契約取引によります系列的な生産をして、できましたものはその親会社を通じて販売をする。さらに、生産資材である飼料なりひな等を供給するというような形のものが一つございます。もう一つは直営農場といいますか、商社あるいは飼料会社等が、あるいはみずから、あるいは別会社をつくりまして、大規模な生産、加工、販売まで一貫した農場を持つという直営農場方式で、この二つがございます。  農林省として最近調査しておるかというお尋ねでございますが、これは、前者につきましては四十八年に調査をいたしまして、それから、後者につきましては現在調査中でございますので、もうしばらくすればまとめられると思っております。したがいまして、前者について、調査の結果の概要について、養鶏関係中心にして申し上げますと、四十八年度に契約飼育を行なっている事例は、採卵鶏で五十七、ブロイラーで二百六十一というふうになっております。事業開始年度を見ますと、昭和四十一年から四十五年に開始したものが非常に多くて、最近はやや増加傾向が減っておる。鈍化いたしております。昭和四十八年における契約飼養をしている羽数の総飼養羽数に占めるシェアを見ますと、採卵鶏の場合は六・八%、ブロイラーの場合は五四・一%というふうになっております。通常言われますように、ブロイラーの場合が特にインテグレーションが進んでおるということが調査でも明らかになったわけでございます。その中で、総合商社なりあるいは飼料メーカー等の大手農外資本による事例がどの程度あるかということは、採卵鶏とブロイラー合わせまして四十二事例がございました。先ほど言いましたように、五十七と二百六十一の合計のうちで四十二事例があったわけでございます。  さらに詳しい御要求があれば、またあらためて御説明したいと思いますが、概要は以上のようでございます。
  279. 島田琢郎

    島田(琢)委員 現在調査中のものもまとまり次第その内容を承知いたしたいと思いますので、委員長、この機会に資料要求をいたしておきたいと思います。  そこで、階層分化がさらに一そう強まるのではないかという懸念を私はいまの段階で一応持っております。したがって、これは一つの提案でありますが、先ほどオーストラリアのエッグボードの問題が出ましたが、私は、日本版エッグボードといいますか、日本型エッグボード構想が政府からもう打ち出されてもいいのではないかというふにも考えますけれども、この点のお考えはいかがですか。
  280. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 現在のところ、エッグボード方式を直ちにとるという考えはございませんので、現行の価格安定法等に基づきます価格安定措置並びに生産調整の的確なる実施等を通じて価格の安定をしてまいりたいというふうに考えております。
  281. 島田琢郎

    島田(琢)委員 もう一つ。今回の生産調整強化対策の中で、ある県によっては一〇〇%以上の生産をあげるが、ある県は一〇〇までいっていない。これも一律四月で凍結するわけでありますから、この地域間格差というものが広まっていくという心配が出ているわけですが、これに対する対策はどのようにとろうとお考えですか。
  282. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 生産調整を緊急にやるということになりますと、これは行政指導でやるわけでございまして、しかも緊急にやるということでございますので、いろいろ御議論はあろうかと思いますけれども、やはり大規模層を対象にいたしまして、小規模な養鶏農家はそれほど効果もございませんし、なお、確認等についてもいろいろ問題もあるということでございますので、三千羽以上飼養する養鶏農家を対象にいたしまして、それの四月現在の飼養羽数を当分の間ふやさないようにということを基本にして考えておるわけでございます。そのようなやり方でございますので、これまでの地域的なシェアがだんだん変わってきておると思いますけれども、その傾向を今後人為的に——この際ふやすとか減らすとかいうことでなしに、一律方式で、とりあえず緊急に凍結するといいますか、増羽数を抑制するということで実施をしていきたいというふうに考えておるわけであります。
  283. 島田琢郎

    島田(琢)委員 もう時間が来てしまいまして、質問しようと思った八割も消化をしないまま終わらなければなりませんけれども、私は、最近、私の仲間から養鶏経営に対する一つの見解を示す材料をいただきました。私は非常に涙ぐましくこれを受けとめております。  彼は、北海道の江別市で、個人経営でありますけれども、かなり大型な養鶏経営をやっておる太田道則君という私の同僚であります。彼はアメリカで養鶏を学び、帰国以来一貫して養鶏に取り組んできた、非常に真剣な養鶏農家であります。彼は、今日のこの非常事態を乗り切っていくために、千という単位はいまはないけれども、養鶏の中ではこの千を追求するということで、何としても乗り切らなければならぬということを言っております。この一つを見ても、彼らの非常に涙ぐましい努力に私は頭が下がるのでありますけれども、たとえば、北海道でありますから、断熱材を使って、この熱効力を高めていくことによって飼料の節減をはかっていくと、わずか千単位でも一年間通すと二十万円という利益にはね返ってくる。しかも、一度食わせたえさをもう一度乾燥して鶏に食わすという、二度食わす方式をとっている。これも五年以上かけて研究をして、そのことが鶏にとって害がないという研究結果を得たと彼は言っております。これは一つの例であります。そして、一グラムでも大きい卵を産ます努力をしながら、千単位の追求で経営をして、自転車操業ではあるけれども、何とかこの苦しみを乗り切りたいということを言っておる。こういう農家を大事にしないで、かりにも農外資本の跳梁にまかすようなことになったとしたら、それこそ農林省の養鶏行政はなきにひとしいと言わざるを得ないと私は思うのです。  太田君の経営の実態について、彼の考えていること、やってきたことのごくほんの一部分、一端を申し上げただけですけれども、太田君に限らず、こういう層の養鶏農家は、たいへんな苦しみを乗り越え、あるいは克服しながら養鶏をやっておると私は思うのです。この部分を農林の行政の中で十分救い上げていくというあたたかい政策が今日非常に必要だと私は思うのです。ところが、私に言わせれば、これはきわめて極論かもしれませんけれども、外国からは液卵であっても輸入をしているが、国内では生産調整をしている。大きいものに対する一つのセーブという目的はある程度これによって達せられるということもわからぬではありませんけれども、片や、一生懸命にやっているこういう農家が切り捨てられていくというような結果になったとしたら、これはたいへんなことだと私は思うのです。  きょうの質問を通して私はすべてを言い尽くせませんでしたが、しかし、冒頭に次官も畜産行政の中では鶏が一番手ぬるかったと言って反省をしておられるので、すべての機能を総動員して、日本の養鶏を、日本の卵を守るという立場で全力をあげてぜひ取り組んでくださるように、この機会に私は重ねて要請をしておきたいと思うのです。  時間が来てしまいましたので、きょうはブロイラーには触れませんでしたけれども、それらの問題を含めて、卵の問題については、これからの局長がおやりになる手のほどを十分見きわめながら問題になる点を指摘をし、ぜひともまっとうな畜産行政の戦列にまで引き上げていく努力を期待して、これからさらに私は見守ってまいりたいと思いますので、次官を含めて、農林省内部においての十分な検討と積極的な具体策の打ち出しを心からお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  284. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次に、津川武一君。
  285. 津川武一

    ○津川委員 日本の農業の情勢がかなりきびしくなり、農業所得だけで生活と生産ができなくなり、農民が農外所得を得るように懸命になっております。昭和四十年で言うならば、農業所得が総所得の四八・〇%を占めておったのですが、四十四年には四二・三%、四十六年には三六・五%、四十七年には三一・五%と、かなりの勢いで農業収入が減り、農外収入にたよらなければならなくなりました。私たちは農民の生活を守るために農外所得を守らなければならぬ、その増加のためにいろいろとくめんしなければならない、と、このように思っておるのでありますが、この農外収入を得るためには兼業があったり、地元の工場で働いたり、ときによると出かせぎに出たりしております。  この出かせぎの収入というものは東北の農民にとってはかなり大きな収入になっておりますが、せっかく出かせぎに出ても、賃金不払いになる場合があります。ほんとうに気の毒で、何のために妻子と別れて知らない空の下で働いたかわからないという状態があります。この出かせぎの賃金未払いは、ドルショックの場合もかなりふえましたが、今度の石油危機を中心とした状態においてもまたふえたのであります。私なども出かせぎ者の本場から出ておりますので、かなり賃金の不払いを扱わされましたが、いま、私の手元に、どうにもならないほどの幾つかの不払いの例が出てきております。  その一つは、青森県の森田村というところで七人、これが百万円。黒石市で二十二人で、百四万五千四百二十九円。板柳で十五人の出かせぎ者が二百四十三万八千六百五円。同じく板柳で、十人グループで来た人が百十七万三千二百四十八円。五年前に出かせぎ者八人が間組の工事で荒川放水路に水没された、あの大鰐というところで、二十八人で、実に五百八十四万八千五百円という賃金不払いが出ているのです。  私もそれなりに調べてみましたが、この森田村での七人というのは、ちょうど稲作をやらなければならないので帰るというときに、賃金を払ってくれない、家に帰ったら送ってやるからと言われたのが四月なんです。それから幾ら待ってもこない。そのままにしておった。地元の労働基準監督署に訴えるでもない。たまたまそこへ、私が、今度の農民の要求米価で、実際に農協できめたものが農民の中に入っているかどうか点検に行ったら、私にこの報告なんです。こういう状態なので、この状態は何とかしなければならないと痛切に考えたわけです。  板柳で十五人、二百四十三万八千六百五円、これはきのう労働省が私のところに来て、こういう一欄表のコピーを持っていった。何らか交渉したと思うのですが、その交渉の結果がどうなっているか、わかっていたらまた教えていただきたいと思うのです。  四番目にあげましたところの、これまた板柳で、十人で百十七万三千二百四十八円、これは三つの会社が一つの下請に仕事を頼んで、水道工事なんですが、元請が三つ、その三つを直接下請をやっているところで今度問題が起きておって、さて親元が払ってもらわなければならぬけれども、どの親元の部分が不払いの原因になっているか、かなり困難なこともあって、未決定のまま不払いになっているわけであります。  五つ目の大鰐で二十八人、五百八十四万八千五百円というのは、これはきのう労働省に話して、労働省のほうからも向こうのほうに交渉したらしいのですが、専務取締役から、名前は出さないでください、公共土木事業をやっておるので、国会でその元請が直接名ざされると、あと公共事業の指名にも影響してくるというので、ここではかりにMという会社にしておきます。これがPという下請に下請させている。Pがお金を払わないまま、もう一つAというところが下請しているわけであります。そこで、これは支払いの形態が不明確で、やはり事がめんどうになっているわけです。そして、Aという下請の下請会社では約束手形で賃金を払う。稲作で四月に帰らなければならぬ農民に八月三十日期限の手形を出している。ここには労働基準法上の相当の問題があるかと思うのです。  そこで、国会の会期もそう長くないし、私もこれだけに関係しておるわけにもいかないし、いまあげた事例を労働省は直接指導監督して受け取っていただけるかどうか、農民のほうに不払いを取り戻してくださるかどうか、これが一つ。  第二番目には、第一の例で言いましたように、不払いのまま帰ってくる。帰ってきてふるさとの地元の基準監督署にも届けないという形でいる。農民も人がいい、送ってくれると約束しているからということで、これで一カ月でも待っているわけです。こういう形で農民に出かせぎをさせていいかということですが、出かせぎしなければ食べられないから出かせぎに行く。その働く者の基本的な態度について、農林省並びに労働省は、どのようにしてここのところに遺憾のないように行政上の指導監督をするのか、これが第二の点です。三つ目には、賃金を手形でもらっていくということ、手形で払うということ、こういう体制があっていいのかどうか。しかも、四月に帰るべきものを、八月三十日付の手形で払っているということで、不渡りになることはおそらく一〇〇%間違いないと思うのですが、ここいらあたり、使用者の指導監督、働いておる労働者に対する啓蒙運動などということについて、これも農林省、労働省においてのこの点の対策が必要だと思うのです。最後の点は、下請が一つで親が三つあるということ、こういう形で賃金不払いが起きておるが、こういう体制というものを明確にして、労働者の賃金形態を明確にしていかなきゃならぬと思いますが、下請に対する指導監督体制というもの、ここいらあたりに対して農林省、労働省から答えていただければと思います。
  286. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 出かせぎの問題は、農林省にとっても非常に重要な問題でございます。自分のふるさとから離れていく場合もございましょうし、在宅のまま出かせぎをするという場合もあります。これは機械化、近代化等が普及をすれば、余った時間を他の農作業に振り向けるか、あるいは他産業に振り向けるかという選択が当然あるわけでございますけれども、人によっては、他産業に余った労働時間を振り向けるというのは、当然そういうことになってくるし、これからもふえていくだろうと思います。私は、ある意味では、それによって農家所得が増大をするということはいいことであると思う。  確かに、あなたがおっしゃったように、農外所得のほうがふえた、農業所得よりも多いじゃないかという比較の議論もございますが、その反面、農家全体としての所得が、農外、農業所得を含めて勤労者所得を上回ってきたということも事実でございます。しかしながら、農外所得を得るために出かせぎに行って、それが賃金が得られないということはたいへんなことなんでありまして、この賃金不払いの問題の監督それ自体等は労働省の所管でございますけれども農林省といたしましては、不払いをされるようなところにはなるべく行っていただきたくはない。そこで、農業委員会組織等を通しまして、従来実施はいたしておりますけれども、農業の就労近代化対策事業というものをやって、出かせぎ農業者の安定的な就労をはかるように指導、相談、活動等をやっておるわけであります。  それと同時に、公共職業安定所の協力を得て、出かせぎでの正常な就労経路による就労をするようにする。そして、賃金等についても、知らないでいると、経営内容がうんと不振で不払いをするというようなところに連れていかれますから、そういういいかげんなところではなくて、安定所の御推薦になるような、まじな心配のないところになるべく行くように専門機関のあっせんによって指導していただきたいということで連絡をしてお願いをしておるところでございます。今後ともそういう事態が起きないように、細心の注意とできる限りの指導をやってまいりたいと考えております。
  287. 岸良明

    ○岸説明員 ただいま御質問いただきました四つの点についてお答えを申し上げます。  まず、初めの御質問でございますけれども、幾つか詳細に個別の事例をおあげいただきまして、これについて解決をはかるように労働省として努力をするかという御質問でございますが、先生御承知のとおり、賃金不払いの問題につきましては、これは何といいましても労働者の家族の生活のかかっている問題でございますので、私どもは最重点の施策として、早期に問題を解決していくということで努力をいたしておるわけでございます。特に、出かせぎ、季節移動労働者の場合につきましては、いろいろな事情から家元を遠く離れられて営々と努力をされておるわけでありますし、また、非常に問題も多うございますので、その点は細心の注意を払って努力をしておるわけでございます。  ただ、個々のケースについてどうするかという非常に明確なお尋ねでございますけれども、これは、それぞれ個々の問題について、先生のほうに労働省の担当のほうからあるいは御説明に上がっておるのではないかと私は思いますが、ただ、労働省として監督をし、あるいは非常に強い指導をいたしましても、現実に中に入って賃金を取りまして労働者に渡すというようなことは、これはなかなかむずかしい問題がございます。そういうような直接的な解決はできませんけれども、こういう問題については、私どもとしてもできる限りの努力をして問題の早期解決につとめてまいりたい、かように思います。  それから、先生も御指摘になったように、現実に賃金の不払いがあっても、労働者の方々がいろいろな事情から早く郷里にお帰りになって、その問題がそのまま放置されておるということは、これは私どもが非常に悩みにしておる問題でございまして、季節移動労働者の方々がそういうような仕事につかれる場合には、むしろ、まず労働条件をほんとうに明確にされておいて、賃金の問題についても、問題があれば早急に監督署のほうに連絡をしていただくというようにして、早期に御連絡をいただければ早期に解決ができるという可能性があるわけでございます。後になりまして数カ月前の問題ということになりますと非常に問題がこじれてまいりますので、その点は、なるべく早くこういう問題については御連絡をいただくとともに、私ども努力しておりますけれども、お出になる場合にも、事前にいろいろと労働条件の明確化をしていくということが大事だと思います。私どものほうとしても、たとえば雇い入れ通知書のフォーム化をするとか、あるいは賃金支払いの明細を必ずもらうようにしなさいというようなことを機会あるごとに労働者の方にも申し上げておりますし、また、事業主のほうにも非常に厳重に監督をしておるわけでございますが、そういった点を通じて、問題がないように今後も努力をしてまいりたい、かように思います。  また、賃金を手形で払うというただいまの事例でございますけれども、これはもう御承知のとおり、労働基準法二十四条では、毎月一回、期日を定めてきちんと賃金を支払わなければならないことになっており、これの違反でございます。もちろんこれはいろいろな事情があろうと思いますけれども、そういうものについては、当然二十四条違反ということを構成するのではないかと思いますので、事実がありますならば、これは厳重に監督いたしたい、かように思います。  それから、重層下請の問題でございますが、季節移動労働者の方々が就職をされる場が建設業に非常に多い。建設業は御承知のとおり非常に重層な下請関係にございまして、特に、お働きになる場所が末端の下請業者ということになりますと、確かにそういう問題があるわけでございます。私どもとしては、そういう場合には、使われているのがだれかということ、これはまあ労働条件の明確化でございますけれども、それをなるべくはっきりさせておく必要があるということとともに、万が一そういう不払い問題が出ました場合には、直接の使用者がそれに対する責任を負うことは当然でございますけれども先生も御承知のとおり、私どもは元請のほうにも強く要請をいたしまして、問題の解決をさせるように努力をさせているわけでございます。  以上、先生の御質問に対してお答えしたわけでございます。
  288. 津川武一

    ○津川委員 ただいまの課長、私は政府委員に来ていただくように要求したのです。ところが、政府委員はいろいろな都合でおいでになれないということなので、労働省の態度として、課長が責任を持ってやってくれると言うならば、その保証があるならば課長でよろしいと私は言ったのですが、その点は上司と相談されてきたかどうかということが一つ。  それからもう一つは、第二例日なんですが、黒石というところで、二十二人で百四万五千四百二十九円を事業所へ要求に行ったら、おまえら下請したんじゃないか、そこで、事業全体として赤字になって、まだ工事をやるところがあるからおまえらのところには全然お金が払えないという形で不払いなんです。ところが、下請をやったじゃないかと言われた人は、いつも皆さんのところに賃金を持ってくるだけの仕事で、下請するといっても機具一つ持っていない。そういうのが契約書の中にちょぴっと下請もあるということを書いているだけで下請という形になっている。こういう形の、労働者を連れてきた人、雇い主と労働者の中間に入った者を下請として賃金不払いが出ているのを何回か経験しているわけです。こういう点も決してよろしくないと思うので、こういう点はいいのかどうか、この指導体制について……。  それからもう一つ、最後のこの五百何万の例ですが、ちょうどきのう基準監督署で行ってくれたが、公共事業をやっている親元は、下請の下請のところに五百十万まだ未払いがある。賃金不払いが五百八十万。それを下請が承知するならば労働者に払ってもよろしいということで、あした皆さんの基準監督署で両方を呼ぶそうですが、こういう場合に、労働省の次官通達もありますので、これまたやると、前に労働者が賃金不払いで親元へ行ったら、下請の下請に労働者に払う条件でよこした八百万が払われていない。いま労働省はそういう点で不払いを受けている労働者のために賃金の取り立てを直接やらないと言っている。実際上、下請の親元から下請のところへ行く金をとめておかないことには労働者のものにならない。この点の配慮が必要だと思うのですが、この点の見解を重ねて伺わしていただきます。  私はたくさんの事例を労働省の皆さんにお願いして、よく解決してくれている点で、ほんとうによくやってくれていると思う。この感謝の気持ちはたくさんあるが、やはり、これだけ受けてみると、国会でも一度論議してみなければいけないと思ってきょうはやってみた。特に、五百何万というもの、しかもここは前に七人も一緒に死んでいるところなんです。もう一回労働省から答えていただきます。
  289. 岸良明

    ○岸説明員 ただいま御指摘になりました点でございますが、個々の事例につきまして、もちろん私どもは私どもの役所としてのできる限りのことを、賃金不払いについては努力をいたしておるつもりでございます。ただ、先ほどの御質問が、たとえば現実に使用者のほうから不払い賃金をとって支払えということになりますと、これは役所の立場としての権限の限界でございます。ただ、ただいまの具体的な事例は、おそらく私どもの担当は承知していると思うのでございますが、それらの解決のためにはできる限りの努力を私どもとしていたしたい、かように思います。
  290. 津川武一

    ○津川委員 そこで重ねて申しますが、これは言うまでもないけれども、個々の事例でまだ連絡もしてないのがありますので、あしたにでも担当の人を私のところによこしてくださるようにお願いいたします。  最後に渡辺次官に申しますが、飯場の宿舎、労働者住宅はひどいものなんです。それから、下請が五段階になっていて、孫の孫の孫と、五つ目の下請もある。と思うと、子供の教育の問題がある。家のほうに用を足しに帰る休暇の問題もあったり、教育の問題もあったり、労働災害の問題もあったり、健康の問題等いろいろな問題が出て、一番困るのは、出かせぎの人はどこへ行けばいいかということです。ある役所に行くとあっちに行けと言われ、そこへ行くとこっちだと言う。だから、窓口の一本化ということが非常に必要なんです。したがって、出かせぎを扱う政府の窓口を一つ出しておいてほしいということです。こういう点で総合的に出かせぎの対策をやることが必要なので、総合的な援護法とでもいうべきものがつくられる必要があると思う。そこらあたりの検討を要求して、私の質問を終わらせていただきます。
  291. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時十五分散会