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田中(正)
参考人 私は、
日本化成肥料協会の
常任委員長をいたしております
田中でございます。
化成肥料の
立場から、この
肥料価格安定等臨時措置法につきまして
意見を申し述べたいと考えております。
御
承知のとおり、
化成肥料、
別名複合肥料でございますが、これはもう十分御
承知かと存じますけれ
ども、窒素、
燐酸、
カリをまぜまして、それに、場合によりましては若干の
微量要素を加えて造粒したものが
化成肥料でございます。それで、
現状におきましては、
国内肥料のおそらく七〇%から八〇%が
複合肥料でまかなわれております。また、そのうち七〇%以上が
高度化成でまかなわれておるという実情でございます。したがいまして、
国内の
肥料の
需給関係を述べますときには、どうしてもこの
化成肥料を論ぜずにはおれないということでございます。
そこで、この
化成肥料の
需給関係が昨今はどうなっておるかということ、そして、また、それを
生産する
原料資材についてはどういうふうになっているかということを申し述べたいと存じます。
過去、
減反政策、あるいは場合によりますと
農業生産の分割といいますか、
分業論ということで、
農業関係に対する姿勢が消極的であったために、一時、五、六年前から
肥料はむしろ
需要は減退してまいりました。しかしながら、昨今、
世界的な
食料逼迫の
事情とか、あるいはそれに伴いましての
減反政策の修正とか、あるいは
飼料作物等が非常に
高騰いたしましたために、
国内においても
飼料作物をつくるとか、あるいは裏作をこの際つくっていこうというようなムードになりまして、ようやく四十七
肥料年度以降に至りましてやや
需要がふえるという傾向になってきております。一方、
メーカーにおきましては、五、六年来非常に不採算であったために、一部
工場は閉鎖もしくは縮小というような
事態になりまして、
需給がだんだんに均衡してきたという
状態でございます。そのときにあたりまして、昨年の秋以降、
石油の問題あるいは
複合肥料の
原料でございますところの
カリ、
燐鉱石等の
輸入あるいは
電力の
制限等がございまして、
生産上に重大な
影響があるのではないかということが懸念されたわけであります。これに対しまして、
業界といたしましては、まず
——これは
微量要素を入れた
複合肥料を入れますと三千に近い
種類がございます。
日本全国の七割を
供給いたしております
全農の取り扱いにいたしましても六百に近い
種類の
化成肥料がございます。この
化成肥料をつくりますと、どうしても、ある二、三日つくりますと
銘柄を切りかえるために
工場を一時停止するということで、数時間もしくは半日、一日というものを停止して、これを洗い、整理した上でまた別の
銘柄をつくるということで、まことに非効率的であったわけであります。したがいまして、
メーカー、
業界といたしましては、これを合理的に整理いたしまして、大体三分の一くらいに整理して
生産効率をあげるということをやる。それから
在庫ですが、従来は、大体
肥料年度の終わりますときに、三カ月ぐらいの
在庫を持って越しておりましたけれ
ども、これを極力払い出しまして
需要にこたえる。それからまた、場合によりましては単肥を使っていただく。単肥と申しますと、
窒素肥料を使っていただく。私
どもの
工場におきましても、船をもって取りにまいっても、ちょうど
化成肥料が現在のところないという時期におきましては、
十分理解を得た上で
硫安とか
尿素を持っていっていただくというような対策を講じました。それから、
生産につきまして重要な
原料であります
硫酸でございますが、これは非常に
逼迫いたしました。これにつきましては、
硫酸の
業界に依頼いたしまして極力
増産を願った。それからまた、
当局に
お願いいたしまして、
石油あるいは
電力等を増配願って、そういうことで
硫酸を
確保する。それからさらに、直接
化成肥料をつくります
電力、
石油等につきましても、特に
優遇措置を
お願いするということ。それからまた、
当局におかれましては、
例年二十四、五万トンの
輸出をいたしておりますけれ
ども、これを極力押えることで
国内需要に回す。それからなお、
全農につきましては、各県あるいは各
農協に対して
計画配給を行なうというようなことで、この四十八
肥料年度を何とか
——現在五月でございまして、ほぼ
最盛期を終わったことでございまして、ようやく愁眉を開くというような
状態になったわけであります。さらに、
春闘等の問題もございましたが、これらにつきましては、極力船で回航いたしまして、場合によっては
長距離トラック輸送というような
非常事態で切り抜けてまいりました。
こういうことで、何とか四十八
肥料年度を切り抜けたわけでありますけれ
ども、それでは来年はどうかと申しますと、
一つは、
在庫は
例年に比べて非常に減っておる。それから、
カリ、
燐鉱石等の
輸入につきましても、必ずしも楽観できない。それから
輸出につきましても、ことしは相当減らしてございますけれ
ども、タイでありますとか
スリランカ等におきましては、やはり
わが国を相当当てにしてやっておるということで、これも極度に減らすことは困難ではなかろうかというふうに感じております。
また、
化成肥料の
一つの
原料、これは
生産の
構造につきまして御説明申し上げませんとわかりにくいかと存じますが、われわれとしては、
燐鉱石を
硫酸で分解して、直接一貫して
化成肥料をつくる場合と、それから
アンモニアと
燐酸を作用させた
燐安と称するものを
国内もしくは
輸入に仰いで、それをさらに加工いたしまして
化成肥料にいたすものと、二
種類の
生産構造がございます。
それで、現在
わが国におきましても、
輸入いたしました
燐安を使って
化成肥料をつくるのは、約三十万トンございます。この
原料になります
燐安の
輸入につきましては、ことしはようやく十一万トン強
輸入いたしましてまかなったわけでありますが、来
肥料年度につきましては、この
燐安はなかなか手に入らぬのではないかと思います。先ほど来
末吉参考人から申し上げましたように、主として
アメリカから入っておりますけれ
ども、これが
耕地面積の拡大によりまして非常に
逼迫いたします。と同時に、この
価格が暴騰いたしまして、つい一年前は三万円ないし四万円であったものが、現在十二万から十三万円の
価格に
高騰いたしております。さようなことで、この各種
原料に相当の不安があるということでございます。
それで、なお、この
化成肥料の
生産につきましては、
年間定期修理を除きまして、ほとんどフルに
生産いたしませんと
国内の
需要をまかない得ないという
状態でございますので、各種
原料が一時的に切れたために
工場をストップいたしますと、
肥料年度、
年間を通じてどうしても
不足になるというようなことに相なります。
かような
化成肥料につきましては、
原料あるいはその他の問題で製造上絶えず不安に悩まされているわけでありますけれ
ども、窒素につきましては、
国内に十分あるということで実は安心をしておるし、また、過去十数年来安心してまいったわけでありますが、ついことしにおきましても、先ほど
末吉参考人からも申し上げましたように、この
窒素肥料の
生産工場が片寄っております。主として西に片寄っておりますために、一部、東北もしくは北海道の
化成肥料メーカーにつきましては、窒素が手に入らない。これはあえてそういうことをしたのではないのでありますけれ
ども、豪雪でありますとか、輸送上のトラブルでありますとか、そういう問題のために、主として
硫安が手に入らないということで、操業をとめなければならぬというような非常にきわどい
事態に相なったわけでございます。現在、
肥料価格等安定の
法律がございまして、各窒素の
メーカーは、それにささえられまして何としてでも
国内の
需要をまかなわなければならぬという義務感を強く持っておるわけでありますけれ
ども、それでもなおかつそうした
事態が発生しかねない
状態でございますので、もしそういうささえがなくなった場合におきましては、東北もしくは北海道の
化成肥料メーカーとしては、
原料の
確保に非常に不安が伴う、と同時に、また、
価格におきましても絶えず不安定なことで悩まされるということでございます。したがいまして、この
需給安定措置法につきましては、私
ども化成肥料メーカーとしてもぜひ続けていただきまして、そうして安定的な
窒素肥料の
確保を願わねばならぬのではないかというふうに考えております。
なお、
化成肥料につきまして、この際
お願いをしたいといいますか、先ほど申し上げましたように、
カリ、
燐鉱石等の
輸入につきましても、各国それぞれ、
資源ナショナリズムと申しますか、そういうことで、将来につきまして若干の不安がありますとともに、また、先ほど申し上げましたように
燐安を一次加工した半製品を持ってきて
化成肥料にする
工場につきましては、それが
輸入できるかどうかというような問題、不安的な
要素がございます。これらにつきましても、何とかここで、当面の問題とともに、中期あるいは長期的な対策を御
当局等にも種々
お願いして、対策を立てたい、こういうふうに考えております。
以上でございますが、いずれにいたしましても、
化成肥料の重要
原料で、しかも
国内に十分
生産が間に合っているものでございますので、
価格におきましても、数量におきましても、これを何とか安定的に使わしていただいて、そうして
国内の
需要に対して十分にこたえるということをわれわれとしては念願いたしておりますので、さような面からいたしまして、この
法律の
存続を希望する次第でございます。
簡単でございましたが、これで終わります。(
拍手)
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