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1974-05-14 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十四日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    小沢 一郎君       熊谷 義雄君    佐々木義武君       染谷  誠君    粟山 ひで君       井上  泉君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    美濃 政市君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省構造改善         局次長     杉田 栄司君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         林野庁長官   福田 省一君         通商産業大臣官         房審議官    兵藤 節郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君  委員外出席者         経済企画庁総合         開発局管理課長 鶴  哲夫君         農林省農林経済         局統計情報部長 吉岡  裕君         建設省河川局開         発課長     宮内  章君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 五月十日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     三原 朝雄君   粟山 ひで君     田村 良平君   稲富 稜人君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   田村 良平君     粟山 ひで君   三原 朝雄君     伊東正義君   永末 英一君     稲富 稜人君 同月十三日  辞任         補欠選任   瀬野栄次郎君     坂口  力君 同日  辞任         補欠選任   坂口  力君     瀬野栄次郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第八四号)  肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第六〇号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。倉石農林大臣。     —————————————     —————————————
  3. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農業振興地域整備に関する法律は、農業振興をはかるべき地域を明らかにし、土地農業上の有効利用農業近代化のための施策を総合的計画的に推進することを目的として昭和四十四年に制定され、本法に基づく農業振興地域の指定及び農業振興地域整備計画作成は、昭和四十九年度には全国に行き渡ることになっております。  最近における農業振興地域土地利用状況を見ますと、農業以外の部門の土地需要が全国的に強まっていることから、農業の用に供する土地開発保全農業経営規模拡大は困難な事態となっております。  このような事態に対処して、需要に応じた農産物の安定的な供給生産性の高い農業経営の育成という農政基本目標達成するためには、土地利用調整に留意しながら、土地農業上の利用確保とその効率的な利用の促進をはかるとともに、農業経営規模拡大をはかることがきわめて重要であります。  政府といたしましては、このような観点から、農業振興地域における土地計画的効率的な利用を一そう促進するのに必要な措置を講ずるため、この法律案を提出いたした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一は、農用地利用計画対象となる土地に、従来の農用地等のほかに農業用施設用地を加えることでありまして、これにより総合的かつ計画的な土地利用をはかろうとするものであります。  第二は、市町村は、農業振興地域整備計画作成または変更に際して土地交換分合を行なうことができることとしたことであります。  市町村農業振興地域整備計画作成または変更をする場合に、当該農業振興地域内の農用地等の一部が農業以外の用途に供されることが見通されるときは、土地利用調整に留意して、農用地等として利用すべき土地農業上の利用確保をはかるため、当該農業振興地域内の土地対象として交換分合を行なうことができることとするものであります。  第三は、農用地区域内における農用地利用増進事業制度新設であります。この事業は、市町村農用地区域内の一定区域内にある農用地について、所有者等意向に基づき、その効率的な利用農業経営規模拡大をはかるため、計画的に利用権設定するものであります。この場合、市町村都道府県知事認可を受けて、農用地利用増進規程を定めるとともに、農用地所有者等の全員の同意を得て、利用権設定内容とする農用地利用増進計画を定めることといたしております。  第四は、農用地区域内にある農用地についての特定利用権設定に関する制度新設であります。  市町村または農業協同組合は、農用地区域内にある農用地耕作等がなされていないため農用地としての利用が困難となると認められるものについて、これを住民または組合員共同利用に供するため、耕作等目的とする賃借権である特定利用権を取得する必要があるときは、都道府県知事承認を受けて、その設定について農用地所有者等協議を求めることができることとしております。また、この協議がととのわないとき等は、市町村または農業協同組合都道府県知事裁定申請をすることができることとし、都道府県知事がその農用地共同利用に供することが農業振興地域整備計画達成のため必要かつ適当であると認めて裁定をしたときは、特定利用権設定に関する協議がととのったものとみなすこととしております。  第五は、農用地区域内における開発行為制限に関する制度新設であります。  農用地区域内において土地形質変更または建築物その他の工作物新築等開発行為を行なおうとする場合には、国または地方公共団体が行なう行為等一定行為を除き、都道府県知事許可を要することとしております。この場合、都道府県知事は、その土地農用地等として利用することが困難となるため農業振興地域整備計画達成支障を及ぼすおそれがある等の場合はこれを許可してはならないものとしております。  以上のほか、農用地利用増進事業または特定利用権設定について、これによる権利設定及び賃貸借について農地法特例を設けることとしております。  以上がこの法律案提案理由及びその主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  4. 仮谷忠男

    仮谷委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  引き続き、本案についての補足説明を聴取いたします。大山構造改善局長
  5. 大山一生

    大山政府委員 農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  第一の農用地利用計画内容の充実につきましては、最近における畜産施設園芸等の発展に伴い、畜舎、温室その他の農業用施設農用地とを適切に配置して農業振興地域における総合的かつ計画的な土地利用をはかることが必要と認められますので、農用地利用計画対象となる土地耕作または養畜の業務に必要な農業用施設用地を加えることとしたものであります。  第二の農業振興地域整備計画作成または変更に際して行なう土地交換分合につきましては、農業振興地域整備計画作成または変更により土地利用区分を定めるのに際し、農業振興地域において農用地等農用地等以外の用途に供されることが見通される場合に、土地所有者等意向に即して土地交換計画的に行ない、農用地農業上の利用確保するための措置として設けるものであります。  このような場合に、市町村は、農用地区域内にある土地を含む農業振興地域内の一定土地に関し、都道府県知事認可を受けて交換分合計画を定め、交換分合を行なうことができることとし、この交換分合計画は、農業振興地域内において農用地等として利用すべき土地農業上の利用確保するとともに、農用地集団化その他農業構造改善に資するように定めなければならないこととしております。この交換分合については、土地改良法規定を準用するほか、農用地以外の土地について関係権利者同意を得たときは、その農用地以外の土地を含めて交換分合計画を定めることができることとし、また、土地所有者申し出または同意があったときは、交換分合計画において取得すべき土地を定めず、清算金の支払いをすることができることとしております。  第三の農用地区域内における農用地利用増進事業制度新設につきましては、近年、地価の上昇傾向耕作権保護の影響によって売買または賃貸借による農業経営規模拡大があまり進んでいない状況から見ますと、農用地所有者等意向に基づいて計画的に利用権設定する方式により農用地の効率的な利用農業経営規模拡大をはかることが必要となってきております。そこで、市町村は、農用地の保有及び利用状況農業経営者意向等から見て必要があると認めるときは、農用地区域内の一定区域内の農用地について、農用地利用増進事業実施区域基本方針利用権設定に関する農業者要件利用権存続期間、借賃の算定基準等内容とする農用地利用増進規程を定め、都道府県知事認可を受けて農用地利用増進事業を行なうことができることとしたのであります。この認可を受けた市町村は、利用権設定を受ける農業者及び利用権設定する農用地関係権利者のすべての同意を得て、利用権設定内容とする農用地利用増進計画を定めるものとし、これを公告したときは、その計画の定めるところにより利用権設定されることとしております。  第四の農用地区域内における特定利用権設定に関する制度新設でありますが、農用地区域は、農用地として利用すべき土地区域として定められたものであることから、区域内の農用地については農用地としての効率的な利用確保するための措置を講ずることが必要でありますので、現に耕作等目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作等目的に供されないと見込まれることにより農用地としての利用が困難になると認められる農用地がある場合において、市町村または農業協同組合がこれを地域農業者共同利用のため活用することを必要とするときには、耕作等目的とする賃借権としての特定利用権設定を認めるものであります。  この場合、市町村または農業協同組合は、都道府県知事承認を受けて特定利用権設定についてその農用地所有者等協議を求めることができることとしておりますが、都道府県知事承認は、その農用地耕作等目的に供されておらず、かつ、これを共同利用に供することが、農業経営改善のため必要かつ適当である等の一定要件に適合するものである場合に限り行なうこととしております。  市町村または農業協同組合は、特定利用権設定に関する協議がととのわない等の場合には、都道府県知事裁定申請することができることとしておりまして、この申請を受けた都道府県知事は、その農用地共同利用に供することが農業振興地域整備計画達成のため必要かつ適当であると認めるときは、特定利用権設定すべき旨の裁定をするものとしております。この場合、特定利用権存続期間は五年を限度とするものとしております。  都道府県知事裁定の公告があったときは、裁定の定めるところにより当事者間に協議がととのったものとみなされますが、特定利用権を有する者が正当な理由がなく引き続き一年以上その農用地をその目的に供しなかった場合には、特定利用権にかかる賃貸借を解除することができることとしているほか、特定利用権譲渡等の禁止の規定等を設けております。  第五の農用地区域内における開発行為制限に関する制度新設につきましては、現在、農用地区域内にある農地及び採草放牧地農地法による転用規制の適用を受けておりますが、山林、原野などその他の土地については、農用地等として開発し、または利用するものとして農用地区域に含めた場合であっても開発行為制限されていないため、その農業上の利用確保が困難となっております。このような状況に対処し、農用地区域内にある土地農業上の利用確保するため、農用地区域内において土地形質変更等開発行為を行なおうとする場合には、国または地方公共団体が行なう行為等一定行為を除き、都道府県知事許可を要することとしております。この場合、都道府県知事は、その土地農用地等として利用することが困難となるため農業振興地域整備計画達成支障を及ぼすおそれがある場合または周辺の農用地等において、土砂の流出等の災害が発生し、もしくは農業用用排水施設の機能に著しい支障を及ぼすおそれがある場合には、これを許可してはならないものとしております。  また、都道府県知事許可を受けないで開発行為をした者等に対し、都道府県知事は、その行為の中止または復旧をすべきことを命ずることができることとしております。  最後は、農地法上の特例でありまして、交換分合農用地利用増進事業または特定利用権設定に関する制度による農地または採草放牧地についての権利設定または移転については、農地法第三条の許可を受けることを要しないこととし、また、農用地利用増進事業または特定利用権設定に関する制度により設定された賃借権にかかる賃貸借については、農地法第十九条の法定更新規定は適用しないこととしております。  以上をもちまして農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案提案理由補足説明を終わります。
  6. 仮谷忠男

    仮谷委員長 以上で補足説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  7. 仮谷忠男

  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  肥料価格安定等臨時措置法は、昭和三十九年に制定され、その後昭和四十五年の法改正により延長されて、今日まで国内需要に対する供給確保肥料価格の安定、肥料輸出調整等について、おおむね所期成果をあげてまいりました。  この法律は、昭和四十九年七月三十一日までに廃止することとされておりますが、最近におけるわが国農業事情肥料国際需給状況及び肥料価格動向にかんがみ、なお、この法律を存続する必要があると考えられます。  すなわち、農業基礎資材としての肥料重要性はいまさら申すまでもありませんが、特に今後の農政におきましては、最近における国際的な食料需給動向から見まして、国民の基礎的な生活物資である食料については、国内生産が可能なものは極力国内でまかない、自給度維持向上をはかることを基本として各種施策を推進することとしているのでありまして、それに伴って肥料国内需要は増加する傾向にあります。加えて、最近の石油供給削減に伴う原材料価格上昇等背景として肥料価格上昇要因が増大しておりまして、肥料価格安定措置及び国内需要に対する供給確保措置継続をはかる必要性は従来にも増して高まってきていると考えられるのであります。  一方、肥料国際需要は、各国食料増産施策を反映して増加しており、特にアジア諸国中心としてわが国に対する輸出要請が強まっている状況にありまして、国内需要に対する供給確保をはかりつつ、適正かつ円滑な肥料輸出を行なうため、輸出調整措置が引き続き必要であると考えられるのであります。  以上申し述べました理由から引き続き国内需要に対する供給確保肥料価格の安定、輸出調整等措置をとることとし、この法律を廃止する期限をおおむね五年間延長して、肥料年度に合わせて昭和五十四年六月三十日までとすることとし、本法律案を提出した次第であります。  以上が本法律案提案理由及び内容でありますが、なお、政府といたしましては、本措置とあわせて石油事情等肥料を取り巻く諸情勢に対処して生産確保及び供給円滑化をはかり、肥料対策に遺憾ないよう配慮してまいる所存であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  9. 仮谷忠男

    仮谷委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  引き続き本案についての補足説明を聴取いたします。松元農産園芸局長
  10. 松元威雄

    松元政府委員 肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  肥料価格安定等臨時措置法は、臨時肥料需給安定法及び硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法のいわゆる肥料法廃止後の措置といたしまして、国内需要に対する供給確保国内価格の安定及び輸出調整を骨子として定められた法律であります。第一の国内需要に対する供給確保措置といたしましては、国内需給上混乱が生じないよう需給見通しに基づき輸出調整することとし、国内農業者に不安を与えないようにいたしているのであります。第二の国内価格の安定をはかるための措置といたしましては、この法律に基づき肥料生産業者販売業者との間で自主的な価格取りきめを実施できることとし、政府は、この取りきめに必要な資料を交付すること等によって価格取りきめが円滑に行なわれるよう措置いたしております。第三に、肥料輸出調整をはかる措置といたしましては、日本硫安輸出株式会社にその輸出を一元的に行なわせることによって輸出が適正かつ円滑に行なわれるよう措置しているのであります。  肥料価格安定等臨時措置法は、昭和三十九年に制定され、その後昭和四十五年の法改正により延長されており、今日までおおむね所期成果をあげてまいりました。  この法律に基づき生産業者販売業者の間で取りきめられた硫安及び尿素価格につきましては、農業者の強い要望と生産業者合理化努力が反映して、この十年間一貫して引き下げが行なわれたのであります。昨年十二月に、最近の石油事情背景とする原材料価格上昇に伴い初めて引き上げがなされたのでありますが、政府といたしましては、この法律により、関係者を強力に指導いたしまして、その引き上げ幅を極力抑制したところであります。  また、肥料需給につきましては、需給見通しの適切な運用により、需給上何ら問題なく推移し、国内需要に対する安定的供給と秩序ある輸出振興に寄与してきたところであります。  この法律は、昭和四十九年七月三十一日までに廃止するものとされておりますが、最近におけるわが国農業事情肥料国際需給状況及び肥料価格動向にかんがみ、なお存続する必要があるものと考えられます。  まず、肥料需給事情といたしましては、最近における国際的な食料需給動向から見て、国内的には、国民の基礎的な生活物資である食料については、国内生産が可能なものは極力国内でまかない、自給度維持向上をはかることを基本に、米、野菜、果樹等に関する諸施策のほか、特に麦、大豆、飼料作物生産奨励等各種施策を行なうこととしておりまして、それに伴って肥料国内需要は増加する傾向にあります。  加えて、肥料価格動向といたしましては、最近に至りまして、石油供給削減に伴う原材料価格上昇等背景として、肥料価格上昇要因が増大しております。このため、主要生産資材としての肥料国内需要に対する供給確保措置及び価格安定の措置継続する必要が従来にも増して高まってきていると考えられるのであります。  また、肥料国際需要は、各国食料増産施策を反映して増加しており、特にアジア諸国中心としてわが国に対する輸出要請が強まっております。このような状況のもとでは、国内需要に対する供給確保をはかりつつ、適正かつ円滑な肥料輸出を行なうため、輸出調整をはかる措置継続が強く望まれるのであります。  以上のような諸情勢のもとにあっては、国内需要に対する供給確保肥料価格の安定、輸出調整等の諸措置が引き続き必要と認められるところであります。したがいまして、昭和四十九年七月三十一日までに廃止するものとされておりますその期限をおおむね五年間延長することとし、肥料年度にあわせて昭和五十四年六月三十日までとした次第であります。  以上をもちまして、肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案補足説明を終わります。
  11. 仮谷忠男

    仮谷委員長 以上で補足説明は終わりました。
  12. 仮谷忠男

    仮谷委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。染谷誠君。
  13. 染谷誠

    染谷委員 肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして質問をいたします。  肥料生産、流通につきましては、昭和二十九年に制定された肥料二法があったことは、御承知のとおりであります。これは、内需の確保を前提といたしまして政府需給計画を策定し、これに基づいて必要な生産指示調整保管指示等ができることや、硫安最高価格バルクライン生産費方式で定めることなど、あるいは、輸出会社による硫安一元的輸出体制整備等措置を定めたものであります。これは、昭和三十九年七月末で期限が切れることとなったわけでありますが、当時の肥料をめぐる情勢は、御存じのように、一方では激しい国際競争のもとで肥料出血輸出が続くとともに、アンモニア生産については、新たな国際的技術革新の波がわが国肥料生産メーカーを襲った時代であります。  肥料価格安定法はこのような情勢のもとで、輸出の赤字が国内肥料価格に転嫁されることを防止して、肥料価格を低位に安定させるとともに、国内需要確保及び輸出体制の一元化をはかり、あわせて肥料メーカー技術革新合理化をも促進していこうという趣旨で制定されたことは周知のとおりであります。  この法律制定後も、ヨーロッパの肥料輸出カルテル輸出攻勢等肥料をめぐる国際環境は依然としてきびしい情勢で推移してまいったことはすでに御承知のとおりであります。しかし、この法律の果たしてきた役割りは、その後の硫安尿素価格が一貫して引き下げられてきたことや、また、国内需要に、いささかも不安を与えることがなかったことなどを見ても、その存在意義はまことに明らかでありました。  ところが、最近の肥料をめぐる諸情勢は全く一変しております。まず、第一には、肥料国際的需給が著しく供給不足の状態を呈し、国際価格が暴騰していることであります。第二には、アンモニアの原料たる石油類が高騰していることであります。さらに、第三には、わが国アンモニア工業の大型化が終了し、技術革新がすでに一巡したことであります。そして、肥料生産メーカーの寡占化が進行するとともに各メーカーが総合化学会社に脱皮して、肥料部門のウエートがわずかに一割を割るほどに小さくなっているという現実であります。第四には、アンモニア用途が工業用として広く開拓されたこと等をあげることができるかと思うのであります。  そこで、このような情勢を踏えて、今後の肥料行政のあり方等について、以下二、三の問題点に触れてお尋ねいたしたいと思います。  まず、第一に、肥料需給見通しの問題についてお尋ねいたします。  肥料需給関係が、現在、国際的に非常にタイトであることは御存じのとおりであります。そこで、食料をめぐる世界情勢が当面基本的には変わりそうもないであろうし、また、世界各国とも食料生産の増大に政策のウエートを置いてきているところからいたしまして、ここ当分は需給の基調はタイトに推移するであろうと思われるのであります。しかしながら、長期的観点から見ますと、発展途上国等が自給体制を整備しつつありまして、特に、わが国肥料輸出の半ば以上を占める中国が鋭意自給体制のテンポを早めつつあると言われております。  このような現状からいたしまして、政府は、今後の肥料需給につきましてどのような見通しを持っておられるか、通産省、農林省、それぞれのお立場から御所見を伺いたいと思います。
  14. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 肥料をめぐる国際、国内状況等については、ただいま染谷委員からるる御説明があったとおりでございますが、今後における肥料需給の見通しということについて一言所見を申し上げたいと存じます。  まず、国内需要の問題でございますが、わが国肥料の消費というものは、四十四肥料年度以降四十六肥料年度までは毎年減少傾向にあったわけでございます。しかしながら、昭和四十七肥料年度に至りまして増加の方向に転じまして、前年対比おおよそ七・一%程度三成分合計で増加をいたしておるのであります。  このことは、御承知のとおり、四十五、六、七というような米の生産調整、特に休耕制度というようなもの等もありまして減少してきたわけでございますが、本年から米の生産調整においても休耕制度をなくする、したがって、水田はできる限り転作または米に復帰するのもやむを得ない、こういうようなことになりましたし、一方、麦、大豆、えさというようなものの生産振興策というようなものを講じまして、自給度の向上というものをはかっておりますから、四十八年、四十九年、今後とも極端にふえるというふうには考えておりませんが、安定的にやはり多少なりとも需要はふえていく、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、輸出需要につきましては、これもただいま染谷委員からお話しがございましたように、わが国におけるアンモニア系窒素肥料の総需要のうち約七〇%近いものが輸出に回されておったということは事実でございます。現在の石油問題等もからみまして、低開発国からの肥料輸出してくれという需要は非常に強い要求がございます。しかしながら、一方において、ただいま御指摘のように、日本の肥料輸出の半分以上を消費しておった中国等においても、これは自前で肥料をこしらえるというような体制になってきつつあるわけであります。しかし、これとても早急に全部まかなえるというような状態にはならないだろう、したがって、この輸出の問題等についても、全体とすれば、当分の間はいままでとそう大きな変わりはないのではないだろうか、こういうように見ておるわけであります。したがいまして、肥料需要というものは、やはり漸増的に安定的に増加をするというふうな見通しを立てておるわけであります。  一方、供給の問題でございますが、この生産の点に関しましては、まず、窒素肥料の件について申し上げますと、窒素肥料につきましては、昭和四十六年肥料年度までに完成をしたアンモニア及び尿素の第二次大型化計画による大型設備を中心とした生産が行なわれてまいったのであります。これは国内生産を大幅に上回るというような状態であったわけであります。したがいまして、国内の消費に対しまして輸出調整をするということになれば、国内需給が逼迫するというようなことは考えておりませんし、また、幾らでも調整によって国内需要確保することができる、こういうふうに思っております。  燐酸肥料につきましては従来とも国内需要に見合った生産を行なってきておりますが、今後さらに燐酸肥料工業の合理化、原料燐鉱石の安定的な輸入というような措置を講じまして、この問題についても国内需給支障のないようにやっていけるという考えを持っております。また、カリ肥料につきましても、全量輸入にたよっておるのでございますが、安定的な輸入措置をとってまいりたい。したがって、これも国内的に非常に逼迫をするというようなことのないように総合的なもろもろの施策を講じてまいるつもりでございます。
  15. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 通産省におきまして、窒素肥料その他の肥料につきましての生産面についての責任を持っておるわけでございますが、ただいま政務次官からお話しがございましたように、窒素肥料につきましては、従来行なってまいりました第一次並びに第二次大型計画が完了いたしまして、現在の設備能力のうち七割が輸出に回っておるわけでございますので、少なくとも当分の間、窒素肥料につきまして内需に心配があるということは万々あり得ないというふうに考えておるわけでございます。  なお、燐酸肥料等につきましては、燐鉱石の安定的な輸入の確保につきましていろいろ心配すべき点はございますけれども、現在のところ、価格の問題につきまして相当大幅な上昇がございますけれども、量的な確保につきましては、まずいまのところは心配はない。したがって、国内の燐酸肥料につきましても、生産面で内需に影響を与えるような生産の減少ということは起こり得ない、かように考えておるわけでございます。
  16. 染谷誠

    染谷委員 次に、内需用の肥料確保問題につきましてお尋ねいたします。  一昨年以来の世界的食料需給の逼迫から、各国食料増産に意を注ぎますようになりまして、肥料国際需給も一転してタイトとなっていることは周知のとおりであります。  ところで、この国際的肥料供給者としてのわが国の今日までの実績や役割り等について考えてみますと、今日のような国際需給関係がタイトなときこそ一そう国際的な肥料供給者としての重要な役割りを果たす責務がわが国にあろうことは当然だろうと思います。田中総理が昨年東南アジア諸国を歴訪いたしました際にも、フィリピンをはじめとして、各国首脳から肥料輸出に対する強い要請があったと聞いております。このような国際環境のもとでは、輸出重要性もさることながら、この肥料安定措置法の目的とするところのいわゆる内需用肥料の安定的確保という重要な問題との関係を政府といたしましてはどのように調整するのであるか。換言すれば、わが国農業生産に不可欠の基礎的生産資材であります肥料の内需優先確保の原則という基本的な要請課題に対する具体的な措置政府としてどのようにお考えになっておられるかにつきましての見解をお尋ねしたいと思います。
  17. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 御承知のとおり、肥料関係、特に窒素肥料関係は輸出が非常に多い。四十七年度の生産輸出というものを見ましても、硫安におきましては輸出が五割五分、また、尿素においては八割五分も輸出をしておる、こういうような状況であります。したがいまして、石油の削減等によって非常な不安感を与えたわけではございますが、これにつきましても農林省、通産省がいろいろと相談をいたしまして、石油や電力の供給確保をするということで肥料生産確保するようにいたしておりますから、内需についてともかく話し合いがつかない、内需の必要量が確保できないというような状態ではございません。したがって、内需については心配ない、こういうふうに申し上げたいと存じます。  具体的にどういうふうなこまかい措置を講じてきたかということにつきましては、事務当局から説明をさせたいと思います。
  18. 松元威雄

    松元政府委員 ただいまの輸出の関係におきまする内需の確保の問題でございますが、その仕組みといたしましては、この法律にございますが、本法に基づきましてアンモニア系の窒素肥料需給見通しを立てるわけでございまして、そこで内需量を確保する。そういたしました上で生産と合わせまして輸出承認をするという仕組みになっておりまして、したがいまして、内需を確保する上に疑問があれば承認はしないというふうに運営いたしているわけでございますから、生産能力も十分余裕はございますし、いまの需給見通しの策定と、それに基づく輸出承認制によりまして、内需確保にはいささかも不安はないというふうに措置いたしたわけでございます。しかしながら、同時に輸出要請も強うございますから、要は生産量を極力ふやすということも必要でございまして、ただいま政務次官が答弁いたしましたとおりに、今回の場合も、原材料についてはいろいろな措置を講じまして、全体の生産をふやすということもあわせていたしておる次第でございます。
  19. 染谷誠

    染谷委員 次に、硫安尿素等の肥料価格問題につきましてお伺いいたしますが、第一点は、この肥料安定措置法が硫安尿素中心として肥料価格の低位安定化に果たしてまいりました役割りにつきましては、これらの価格が一貫して低下してまいったということから見ましても十分に評価することができると思います。また、昨年の石油事情背景とする原材料価格の急上昇に伴いまして、硫安尿素価格引き上げというようなものが行なわれたわけでありますけれども、この法律によりまして引き上げ幅というものが極力抑制されましたことも、この法律存在意義というものをあらためて認識することに十分であろうと思うのであります。  そのような中で、原材料価格上昇や国際的肥料価格の高騰という情勢のもとで、今後の肥料国内価格の推移につきまして、政府はどのようみ見通しを持っておられるのか、また、肥料工業の合理化対策といたしましてどのようなことを考えておられるのか、これらにつきまして通産省当局の御説明をいただきたいと思います。
  20. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 肥料の原材料につきまして最近著しい値上がり傾向にあることは御指摘のとおりでございますが、特に、昨年の末の石油危機を契機といたしまして、原油の値上がりに伴いまして、アンモニアの原料でございますナフサの異常な上昇があるわけでございますが、現在、国産のナフサにつきましては、政府の強力な措置によりまして、昨年に比べて約八千円の値上がりということで押えておるわけでございますが、しかし、国産のナフサ以外に輸入のナフサも使っておるわけでございますが、この輸入のナフサのほうは、国際的なナフサ不足を反映いたしまして、現在国産のナフサが二万円ちょっとでございますけれども、輸入のナフサにつきましては、二万五千円から二万八千円ぐらいに上昇をいたしておるわけでございます。こういうふうな原料の上昇ということは非常に私ども心配しておるわけでございますが、また、燐酸肥料につきましても、モロッコ並びにアメリカの燐鉱石の価格の異常な上昇ということが燐酸肥料価格のコスト上昇をもたらすわけでございまして、この点も非常に私ども問題にしておるわけでございます。したがって、今後の肥料のコストの面を考えますと、従来よりは、原料価格上昇に伴いまして、その分だけでも肥料コストのアップということはどうしても避けられないというふうに見ざるを得ないかと思うわけでございます。  かたがた、先ほども先生から御指摘がございましたが、窒素系の合理化問題でございますが、従来まで第一次、第二次の大型合理化を行なってまいりましたが、この合理化計画というものはほぼ完了いたしておりまして、今後さらに大型アンモニア設備の増設をするということは、いまのところ企業側としては計画がないようでございますが、ただ、旧来の設備がまだ全体として一七%程度ございますので、この分をできるだけ早くスクラップ・アンド・ビルドで大型設備に切りかえると同時に、この旧型の設備をスクラップ化することによって、なおまだ若干の合理化の余地はあるように考えるわけでございますが、しかしながら、先ほど申しました原料の値上がりを補うに足るだけの合理化になるかどうかは非常に疑問でございまして、やはり、全体として考えますと、生産費のアップということは避け得ないのではないかと思うわけでございます。  肥料工業は総合化学工業が実施いたしておるわけでございますので、化学工業の今後のいろいろな新分野への発展ということはあるわけでございますので、経営の多角化等を通じまして化学工業の合理化をはからせ、これによって、全体として肥料の原材料値上がりによるコストアップ分というものをできる限り吸収させていくように指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  21. 染谷誠

    染谷委員 この肥料価格安定等臨時措置法目的は、つまるところは、国民食料の安定確保という重大な使命をになっている農業者に対しまして、できるだけ低位かつ安定価格肥料供給できるようにしようとするものであろうと思います。  そこで、一般論で申しますと、このような競争制限行為が長期にわたりまして続けられることとなりますと、生産面や流通面での合理化というものがなおざりになりがちであることは非常に憂慮すべきものではないかと思うわけでありますが、政府は、これらの問題に対しまして、特に流通面の合理化対策についてどのような行政指導をされてまいりましたか、この点について当局の御説明をいただきたいと思います。
  22. 松元威雄

    松元政府委員 流通面の合理化問題でございますが、御案内のように、肥料の流通は農協系統と商人系統と二つがあるわけでございまして、量的には農協系統がずっと大きいわけでございますが、それぞれの分野で適正競争を行なっておるわけでございますし、また、農協系統の場合は系統手数料等がきちっときまっておるものでございますから、そういう面で流通面の整備は行なわれているというわけでございますし、特に、この流通の仕組みといたしまして、商的な流通と物としての物的流通が分離いたしておりまして、現物といたしますと、肥料というものは安くてしかも重いものでございますから、現物は生産業者から直接消費地に送るというものが多いわけでございまして、流通体系の整備は進んでいるわけでございます。  ただ、問題は、生産面のほうでは、先ほど来お話しがございましたアンモニア工場の大型化ということでかなり合理化も進んだわけでございますが、流通面におきましては、特に最近流通経費が増高する傾向にあるわけでございまして、御案内のように運賃あるいは包装費、労務費等値上がり要因が多いわけでございます。したがいまして、何とか極力節減をはからねばいかぬということで、まず、生産段階におきます流通の合理化ということで保管とか持ち込みの省力化をはかる、あるいはまた交錯輸送を排除する、あるいはまた肥料の早取りということで年間の輸送の平準化をはかる、こういうことをいろいろ努力いたしておりまして、少しでも生産面におきまする流通経費を削減いたす。これは、従来は、肥料供給がかなり過剰傾向にございましたから、そうは申しましてもなかなか進まなかったわけでございますが、今回のような石油問題を契機といたしまして、こういう流通合理化が受け入れられます素地がふえてまいりましたので、さらに推進をはかってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、また、末端の流通の合理化問題、特に、国鉄の貨車の集約化に伴いまして末端の輸送問題が大きな問題になっておるわけでございますが、これにつきましても、ほうっておきますると小口運搬賃その他で経費がかかるわけでございますから、従来は単協が末端流通の主体になっておりましたが、県の経済連が消費地のもより倉庫から末端農協までの流通を一元的に扱うというような仕組み、持ち込み制度と言っておりますが、こういう仕組みを活用いたしまして、少しでも増高します流通経費の節減に資してまいりたいというようなことをいろいろ指導している次第でございます。
  23. 染谷誠

    染谷委員 先ほども申し上げましたが、硫安尿素生産費は、技術革新あるいは設備の大型化に伴いまして、最近年を追うごとに低下しておると思います。しかしながら、遺憾なことは、農家が購入いたします肥料価格につきましては必ずしも現実に安くなっていないという末端需要家の声を聞くわけであります。そこで、はたしてこういう実態というものがどういうものなのか、政府といたしましてはこの点をどう承知しておるかをお尋ねいたしたいと思います。
  24. 松元威雄

    松元政府委員 硫安尿素につきましては、御指摘のとおり、メーカーと全農との価格は下がっている。それに比べまして、小売り価格も、これは大体傾向としては下がっておりましたが、どうも下げ幅が小さいということは事実でございます。これは、何と申しましても、先ほどの御質問にも関連するわけでございますが、流通経費がこのほうはなかなか合理化が進みにくいものでかさんでいるということで、販売関係の人件費あるいは小口運搬賃といった末端流通経費が値上がりいたすものがあるものでございますから、ある程度はやむを得ないんじゃなかろうかと思っておるわけでございます。しかしながら、これもほうっておきますと、せっかくもとの価格が下がりましても末端にさっぱり反映しないということでは困りますから、なからかむずかしい問題でございますが、先ほども申しました流通合理化の指導をさらに強化いたしまして、少しでも末端価格のほうに引き下げが反映するようにさらに推進してまいりたいと思っておるわけでございます。
  25. 染谷誠

    染谷委員 最近の農家の肥料購入形態は、硫安尿素等を単体で購入することは少なく、大半が複合肥料であります化成肥料となっております。そうして高度化成肥料につきましては、例を見ますと、農家購入価格でありますが、昭和四十三年肥料年度で、二十キログラム当たりが七百一円、四十七年の肥料年度におきましては七百七十四円、四十八年の肥料年度におきましては八百円以上と逐年上昇しているのが現状でございます。  そして、このようなことが農家の実感となっているのではないかと思うのであります。それは、燐鉱石や塩化カリ等の輸入価格というものはそれほど上昇していないにもかかわらず、化成肥料が値上がりしている原因は一体どのようなところにあるかということです。硫安尿素価格取りきめにいたしましても、この化成肥料というものが一つの抜け道になっているのではないかと懸念されるものがあるわけでありますが、政府としてのお考えを伺いたいと思います。
  26. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 化成肥料が農家の購入肥料中心になりつつあることは御指摘のとおりでございまして、昨年の末のメーカーと全農との交渉によりまして、本年一月から化成肥料が約三割の値上げになったわけでございますが、これは、一番大夫な原因は、実は、燐鉱石の輸入価格の大幅上昇によるわけでございます。そのほかに、先ほども話が出ましたが、ナフサの上昇あるいは重油、それから包装資材の値上がりといったようなものがこの化成肥料値上げの原因でございます。  それで、燐鉱石につきましての最近の実績を見ますと、本年二月の状態について見ますと、昨年の二月に比べまして、アメリカ産のものが二・四倍、それからモロッコ産のものが二・六倍、これはCIF価格でございますけれども、こういう異常な値上がりになっておるわけでございます。  それから、また、塩化カリにつきましても、輸入価格がカナダ産のものが二七%アップ、それからソ連産のものが一七%アップというふうに、これも燐鉱石ほどではございませんけれども、相当な値上がりを来たしておるわけでございます。  こういう事情を踏まえまして、実は、本年一月の化成肥料の値上がりということが行なわれたわけでございますので、先ほどの先生の御指摘のように、燐鉱石、カリの価格がそれほど上昇していないという御指摘でございましたけれども、最近の状況につきまして詳細に調べてみますと、いま私が申し上げましたように非常に大幅な値上げになっておるのが実情でございます。
  27. 染谷誠

    染谷委員 肥料問題に関連いたしまして、さらに二点ばかりお尋ねいたしたいと思いますが、公害防止費用のかかり増しや、あるいは人件費の上昇その他の原因もあると思われますけれども、それらのおのおのの要因がどの程度この肥料価格上昇につながっているのか、政府はその内容をどの程度把握しておられるかについて伺いたいと思います。  また、先ほど言及いたしましたような抜け道を防ぐためには、硫安尿素以外の燐酸肥料、カリ肥料並びにこれら複合肥料につきましても、この肥料価格安定等臨時措置法を適用される考えはないかどうかにつきまして、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  28. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 それぞれの値上がりの原材料、包装代、運賃等がどんな割合で肥料価格に反映をしておるか、この件については事務当局から答弁をさせていただきます。  ただ、あなたから御指摘のありました尿素や窒素については、本法を適用して、行政指導で、価格値上がりを一六%というようなことで押えておるけれども、非常に需要が増大をしておる複合肥料、高度化成肥料というようなものが野放しになっておっては何もならぬじゃないかということ、それについては私も実は同じような疑問を持ったわけであります。  染谷委員の御指摘のように、四十七年肥料年度における高度化成の使用割合というものを見ると、大体、肥料の出荷高八百二十八万七千トンの中で二百六十七万五千トン、約三分の一に近いものが高度化成等である。金額ベースで見ると、大体肥料の総生産高の約半分、約一千億円、これが高度化成ということになって、そこの部分が非常に値上がりしているんじゃないかということについて、実は、私もあなたと同じような疑問を持ちまして、事務当局に対して特にその点をよく調査をしてほしいということを言っておるわけでございますが、御承知のように、燐酸とかカリ肥料というものは、いま通産省が言ったように、輸入原料が大部分であって、非常に高くなっておる。しかし、反面、この原料の輸入はだれがしているんだというと、これは農業団体の代表である全農がその燐鉱石とかカリ塩の過半の輸入をしておるということですから、全農等は当然そのコストというものはわかっておるわけであります。したがって、だんだん調べてみると、片っ方で押えられたから複合肥料のほうに便乗値上げでおっかぶせておるというような疑いはあまりない。全農自身が自分で原料を仕入れておるものですから、どれくらい高くなって、それがどれくらいの割合で入っておるかということを買う人が一番よく知っておるために、それは大幅な値上がりをしておるけれども、やはり、最初に疑ったものとは違っておるということが最近わかってきておるわけであります。しかしながら、いま言ったように、その取り扱い量というものが非常に大きくなってきておるという現状にかんがみまして、これを本法外に置くことがいいのかどうか、これはよく検討する必要があるだろう、慎重に検討してみたい、このように考えております。
  29. 仮谷忠男

    仮谷委員長 事務当局、何か、——いいですか。
  30. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 ただいま政務次官からお話しがございましたように、高度化成の農家購入肥料の中のウエートが非常に高まってまいりましたので、これを本法の対象として取り上げるかどうかということにつきましては、私ども農林省のほうと一緒になってこの問題を検討いたしたいと考えております。
  31. 染谷誠

    染谷委員 次に、流通部門の合理化対策について二点ばかりお尋ねしたいと思います。  まず、第一点は、肥料の流通量の七割以上のシェアを占有いたしております全農に対しまして、いわゆる流資部門の合理化という見地から政府はどのような指導措置をとっておられるか、このことにつきましてお伺いいたします。  さらに、第二点として、現行の化成肥料は銘柄数も多く、その内容もまことに複雑であります。その理由は、かつて以前に土壌条件や作目などによりまして、そのおのおのに適する多種類の複合肥料をつくってきたことが今日の状態を招来している原因と思われますが、一方において、かつて肥料需給緩和時代にとられたメーカー側の販売政策のための銘柄乱造というものがその原因の一つでもあると必われます。  そこで、全農としては、これを大幅に整理して、包装費の軽減あるいは計画出荷の引き取り励行、あるいは交錯輸送によるロスの軽減などをはかって、経営合理化路線を強く推進すべきではないかと考えるのでありますが、もちろん、この際、特殊なものなどはむしろ商人系にまかせて、できる限り流通費用の圧縮をはかるような適切な指導をしていくべきではないかというような考え方をしております。  そこで、政府は、これらの問題に関連してどのようなお考え方になっておられるか、この二点についてお尋ねしたいと思います。
  32. 松元威雄

    松元政府委員 御指摘のように、全農が肥料の流通の七割のシェアを占めている。したがいまして、この流通の合理化は非常に大きな問題でございますので、先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、流通の合理化につきまして、まず、生産面におけるいまの仕組みでは、末端の消費地もより倉庫渡しという価格条件になっておるわけでございますから、そこまでの流通面につきまして、保管申し込みの省力化とか、あるいは交錯輸送の排除とか、あるいは年間輸送の平準化とか、こういったことで極力その段階の流通経費の節減をはかるということ。  それから、末端流通につきましては、いまの消費地もより倉庫からさらに末端の単協までの小運般等の経費等なかなかかさむわけでございますが、これにつきましても、従来は単協主体でございましたが、経済連が主体になりましてその流通を担当するというような仕組みも始めておりまして、これをさらに進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、また、実験段階でございますが、たとえばバラ輸送、これはもちろん受け入れ側の体制によりますから、なかなか簡単には進みませんが、そういうことも実験的にやっているということで、少しでも流通経費節減に役立つような努力を全農に対しましても指導し、全農も一緒にやっておるわけでございます。  それらと関連いたしまして、第二の御質問にございました例の銘柄整理の問題でございますが、これは流通面、生産面、両方の合理化に資することになるわけでございますが、全農は従来から商系扱いに比べましておおむね銘柄当たりの生産量が多い。いわば大きな銘柄のものを扱っておりまして、取り扱いの銘柄はかなり整理をされているわけでございます。しかし、商人系におきましてもそういった大きな銘柄を扱っているものもございますものですから、銘柄整理は全農も商系も同じように進めていかなければならぬと考えておるわけでございます。ただ、生産量が少ない特殊な銘柄は、配合肥料メーカーとか中小二次メーカーがつくっている、それから、また、その取り扱いは商系とか末端農協がやっているという場合が多いわけでございますから、これはお話しのように、いわば専門分野と申しますか、それにまかせまして、全農は大きなものを対象にしていくという方向に進めるのが適当であろうと考えておるわけでございます。  そこで、全農も従来から銘柄整理ということにいろいろ努力してまいったわけでございまして、もちろん、銘柄につきましては、需要面の要望もあるわけでございますし、土壌問題とかあるいは施肥のやり方の問題で農家の方の希望もあるわけでございますから、それには即応しなければならない。しかし、いわば販売シェアと申しますか、そういう面から不必要に多いということは、生産量が少なくなりますとコストもかかるわけでございますから、そういう面は排除してまいりたいということで、特に今回の石油問題にも関連いたしまして、全農も農林省の指導のもとに、従来は全農扱いの銘柄は六百四十二銘柄ございましたが、これを二百九銘柄に整理するという方向をすでに打ち出しているわけでございますし、今後もその方向でさらに進めてまいりたい、かように考えております。
  33. 染谷誠

    染谷委員 長期的観点からは、アンモニア肥料の将来というものは、開発途上国の自給体制の整備への努力にも見られるように、必ずしも明るいものではないであろうと思うのであります。先ほどの御答弁からもそれらのことは承っておりますが、わが国肥料生産業界は、このような情勢を踏まえて、アンモニア肥料設備の拡大合理化にははなはだ消極的だと言われております。そこで、通産省は、これらの問題につきまして、将来どのような方向に指導していこうとしているのか、お尋ねいたします。  また、このような現状で推移をいたしますと、人件費のアップや原料価格上昇に伴いまして、肥料価格の低位安定というこの法律の本来の目的が達せられなくなるのではないかという懸念も持たれるわけであります。このような点につきまして、農林省からもあわせて考え方についてお答えをいただきたいと思います。
  34. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 アンモニア関係の設備につきましては、先ほども簡単に御説明申し上げましたけれども、昭和三十九年から四十二年までの間、第一次アンモニア合理化計画といたしまして、これは大体日産五百トンプラントの建設を指導したわけでございます。その後、第二次合理化計画といたしまして、四十三年から四十六年までの間におきまして、日産千トンプラントの増設を指導したわけでございます。第一次、第二次ともほぼ当初の計画どおりに工事は完成いたしまして、現在完全な稼働体制に入っておるわけでございます。ただ、これも先ほど申し上げましたが、全体の設備のうち一七%ぐらいがまだ旧型の設備によって操業を行なっておるものがあるわけでございますので、この分について将来どういうふうに合理化をするかということが一つの問題かと思います。  御承知のように第二次の合理化計画が済みまして、いまのところメーカーは積極的に大型計画に取り組むという計画はございませんので、あるいは産業界がこの合理化について消極的であるというふうにお考えにおなりになられたかと思いますけれども、これは消極的というよりは、四十六年までの間に一応合理化計画が完了したので、いまのところ一服状態にあるというふうに見るべきかと思います。それから、一番問題なのは、ナフサ、燐鉱石その他の化学肥料についての原材料の大幅値上がりによるコストアップでございますが、これも今後の石油情勢の推移等を見ますと、OPECの攻勢というものが弱まるということは今後もあまり期待できないかと思いますが、そのために価格上昇というものは不可避ではないか、その結果、国産のナフサにいたしましても、それから輸入のナフサにいたしましても、ある程度の上昇ということは今後もまだ続くのではないか、かたがた、公害防止投資費用の増加に伴いますいろいろな経費、あるいは包装材料、運賃、人件費等のコストアップ要因もございますので、コストで見る限りは、今後も上昇することは遺憾ながら不可避ではないか、と、このように考えるわけです。  ただ、化学工業なんかで、アンモニアにつきましては、肥料のほかに工業用としても用途があるわけでございますので、今後、繊維あるいは合成樹脂原料等にも積極的にこのアンモニアを、つまり多角的な利用をはかることによりまして、できる限り肥料のコストの軽減に努力させると同時に、化学工業全体が総合化学工業として発展していくことによりまして、肥料のコストアップ要因を可能な限り化学工業の経営全体の中で吸収していくように私どものほうは指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  35. 松元威雄

    松元政府委員 ただいま通産省から答弁申し上げたところでございますが、従来は、硫安尿素は、設備の大型、合理化ということで、非常に大きなコストダウンのメリットがあったわけでございます。そこで、一般物価が上昇する中でも硫安尿素価格が下がったということは、いま、合理化計画が一応完了いたしまして、一服と申しますか、そういう状態がございますから、今後はそういうような大幅なコスト低下はなかなか望みにくい。しかも、かたがた、原料費からの価格上昇要因も大きいということは、確かに従来に比べますと価格圧力が強くなっておるということは事実であるわけでございますが、しかし、従来ほど大幅なコスト低下のメリットは見込みがたいといたしましても、なお、古い設備のスクラップ・アンド・ビルドと申しますか、そういうことの余地があるわけでございますし、経営全体の合理化の余地もあるわけでございますから、これにつきまして企業のほうに強く要請いたしまして、今後の上昇要因をこの法律の適正な運営によりまして極力抑制してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  36. 染谷誠

    染谷委員 先ほども申し上げましたように、現在の肥料メーカーはすでに総合化学会社でありまして、肥料部門の売り上げ比率が一割を割っておる。いわば肥料部門はサイドビジネスといいますか、片手間的な仕事にすぎなくなっておるではないかということを言われております。さらに、アンモニア用途が広く開拓されまして、生産を企業の自主性のみにまかせておいてはアンモニアは採算の有利性に従いまして資源配分されるということになり、肥料価格の低位安定というものはあるいは期せられなくなるんではないか。このような意味から、肥料価格安定等臨時措置法継続につきましては賛成でありますが、農業生産重要性というものを考えますと、今後さらにメーカーに対します政府生産指示等も織り込んだところの恒久立法を前向きで検討すべきではないかと思われますが、政府の見解につきまして伺いたいと思います。
  37. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 今回の肥料価格安定等臨時措置法を、生産指示権も盛り込んだ恒久立法にすべきではないかというような御質問でございますが、御承知のとおり、わが国は原則的に自由経済主義をとっておるわけであります。したがいまして、肥料につきましても、一般の取引と同様に、基本的には自由な取引をさせるというのが望ましいわけでございます。しかしながら、終戦後、非常な物の逼迫というような観点から、肥料生産においてもいろいろな困難がございまして、いろいろな統制を続けておったわけであります。それと同時に、マル公制度というようなものを一緒につけた、いわゆる肥料二法というようなものがあったわけであります。その肥料二法というのは、臨時肥料需給安定法硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法で、こういうふうなものがあってやってきたわけでありますが、それを昭和三十九年でやめて、現在の肥料価格安定等臨時措置法ということで、十年間ということで切りかえて、統制的な色彩というものを非常にゆるめて、ただ計画によって政府が行政指導をしながら、お互いに量の確保価格の安定をはかっていくということをやってきたわけであります。  その結果を見ますとたいへんいい結果をもたらしておることも事実でありまして、たとえばアンモニア系の窒素肥料等の生産高というものを見ましても、硫安等においては、昭和三十九年で四十九万五千トンくらいのものが——アンモニアは四十七年でそれよりも五万トンほどやや生産は減りましたが、そのかわり、同じような尿素に至りましては、約五十万トン程度のものが、この十年間で約三倍の百五十万トン近い生産が行なわれる。値段の点につきますと、現在、今回の第八回の肥料取りきめで非常に値段が上がったと言われておるわけでありますが、それでも、肥料二法時代の昭和三十八年には硫安が四十キロ当たり七百三十八円七十一銭しておったものが現在の第八回取りきめ、つまり四十九年一月一日の取りきめでは七百二十六円七十一銭ですから、実は、十年前よりはまだ上がっていないということであります。  年々下がってきて、ここで上がったのだけれども、十年前よりは尿素においてもまだ五%くらい安いということで、たいへん効果があるからこの法律を恒久立法にしろという御意見も一つのりっぱな意見だと私は思います。しかしながら、先ほど申し上げました日本の経済原則から見て、これをいますぐしなければならないものかどうか、非常に問題点もありますし、肥料の国際の需給状況輸出動向あるいは原料の入手状況等をもう少し見きわめた上でなければこれは何とも言えない。そうかといって、これを廃止するという状態ではない。特に、石油の大幅な値上がりあるいは輸出の規制というような問題にもぶつかったこの時期において、期限が来たからこれを廃止してしまったらどうなんだという議論も一方にございますが、これも、現在の段階ですぐ廃止に踏み切るということはどうも危険が伴うというような点を考えまして、恒久立法にもできないが、廃止もできないので、とりあえず暫定的に五年ほど延長するという結論に落ちついたということで御了承をいただきたいと思います。
  38. 染谷誠

    染谷委員 次に、価格の取りきめ問題につきましてお尋ねをいたします。  価格の取りきめにあたりまして、政府が提出されます資料がきわめておそいというふうに言われております。したがって、価格の交渉が実際には早い時期から行なわれておりましても、価格決定というものがおくれぎみになるとともに、実のある交渉ができないのが実態であると思います。そういうことから考えますと、政府資料の早期の提出というものができないものかどうか、どのような事情が存在するのか、その点について伺いたいと思います。
  39. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 価格取りきめに際しまして、政府生産費その他の資料を交付することにいたしておるわけでございますが、生産費等の資料の交付につきまして、その交付する時期がおそいという非難がありますことは先生御指摘のとおりでございますが、実は、たとえば来肥料年度価格取りきめの際には、四十八会計年度の生産費についての実績を調べて、それを交付することにしております。すなわち、本年の三月末で締め切った数字をまとめて出すわけでございますが、これがまとまりますのはどうしても四月ないし五月になってしまいますので、それを出してくると、どうも資料の提出時期がおそいということで非難を受けるわけでございます。私ども、実は、この点につきましていろいろ検討いたしまして、たとえば四十八会計年度ではなくて、四十八暦年、つまり、四十八年の一月から十二月までの生産費についての実績を調べて、それを提示すればわりあいに早く資料の交付ができるのではないかということで、会計年度ではなくて、暦年についての算定ということも考えて検討したわけでございます。  ところが、そうしますと、四十九肥料年度価格交渉の際に、去年の一月から十二月というかなり前の時点のコストをもとにしたのではどうも実勢を把握するのに適当でないという意見もありまして、実は、この点で非常に頭を悩ましておりますけれども、結論といたしましては、最新時点のコストをとって、それを交渉の資料に使わしめるということで、やはり、四十八会計年度の資料をもとにするよりいたしかたないのだ、それも、従来わりあいに時間をかけておりますけれども、これはひとつできるだけ早くそれを取りまとめをして両当事者の便宜をはかっていきたい、かように私は考えておるわけでございます。
  40. 染谷誠

    染谷委員 次に、硫安につきましては、現在では合成硫安というものがほとんどなくなっております。大半が副生品としての回収硫安でございますが、これらの生産費というものはどのように算定されるのか。考えようによりますと、原価はゼロとしてもよい性質のものではないかというような考え方にもなるわけですが、これについての御見解を賜わりたい。
  41. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 先生御指摘のように、現在、硫安の中で回収硫安の占めるウエートが七七%と、非常に大きなウエートを占めているわけでございます。生産方式の中には、たとえば合成繊維でございますカプロラクタムの生産から出てくるもの、それから、酸化チタンの生産から出てくるもの、合成樹脂生産から出てくるもの等々ございまして、その生産工程はいずれも違うわけでございます。したがって、この回収硫安につきまして、そのコストを幾らに見るかということは理論的には非常にむずかしい問題でございます。と申しますのは、これは硫酸を触媒とかあるいは反応試薬として一回使ったあとの、まあ言ってみますと廃液でございますので、極端なことを申しますと、御指摘のように、それはゼロでもいいんではないかという議論もあるわけでございます。しかしながら、現実問題としては、これはやはり経済価値があるものでございまして、各社によって評価の考え方は違いますけれども、かなり各社によってばらつきがございまして、現に、酸化チタン等から出てまいります廃酸については、会社によってはゼロという評価をしているところもございますが、逆に、カプロラクタム等から出てまいりますものは液としても非常にきれいなものでございますので、外から買う硫酸と全く同じということで、一〇〇%というような考え方をとっておるところもございます。それらを全部平均してみますと、硫酸を新たに買う価格に対して、大体三割くらいの評価ということに結果としてはなっておるわけでございます。  現在のところは、各社で評価しておりますものをまとめて、結果として、全体としては三割の評価ということになっておるわけでございますけれども、御指摘のように、理論的には、これを生産方式別に一つの統一的な基準というものをつくるべきかと思いますけれども、それでは一体どういう統一的な基準をつくったらいいかということは慎重に研究をする必要があると思います。前々からこの点についてはいろいろ議論もあるところでございますので、私どもは、来肥料年度価格決定の際には、この問題について真剣に検討してみたい、かように考えておるわけでございます。
  42. 染谷誠

    染谷委員 もう時間も迫りましたので、最後に一つだけお尋ねさせていただきますが、最近、農業生産に関連いたしまして、地力維持というものがまことに大きな課題として取り上げられております。これは、労力を要する堆肥、厩肥の使用をやめて、安易に使えます化学肥料にたよった結果問題になってきたものと思います。そこで、この問題の底辺には、農村の労働力の不足あるいは出かせぎ等、農業をめぐりまする根本的な諸問題がからんでおるのであります。したがって、この根本的解決をはかるためには、まず、もろもろの問題の解決が当然必要でありますけれども、当面応急的な解決策として、農林省はどのような施策を講じようとしておられるか、お尋ねいたします。また、これらの地力の維持対策は化学肥料需給計画の中にどのように組み込まれているか、あわせて政府の見解をお尋ねしたいと思います。
  43. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農林省では、昭和三十四年以来、各都道府県に助成いたしまして、全国的な地力、土壌悪化の要因等につきまして原因を把握いたすようにしてまいっておるわけでありますが、地力保全基本調査をいままでもずっと実施いたしております。さらに、昭和四十一年から、都道府県に助成いたしまして、地力診断施設を設置いたしまして、土壌の状態に即応した合理的な施肥、有機質の施用、土壌改良資材の施用等について関係農家を指導するなどの措置を講じてまいってきております。  いまお話しのございましたように、近年、農業労働力の減少等に伴いまして、労働集約的な地力維持対策は行なわれにくい傾向にございますので、水田におきましては、機械収穫と同時に行なう稲わらの施用、それから、生産組織等によります能率的な堆厩肥の生産、施用等の施策を推進しております。また、畑地におきましては、畑作部門と畜産部門の結合によります有機物の土壌への還元等の対策を推進しておる次第でございます。  ただいまもう一つお話しのございました肥料需給計画において、化学肥料との関係において地力維持対策はどのように考えているかということでありますが、この需給計画の策定に際しまして、国内需要量の見込みは、過年度の肥料需要の趨勢、都道府県における肥料需要の見通し、それから作目別の積み上げなど、各種の予測方法によりまして総合的判断を行なっておる次第であります。この国内需要量の見込みに関しまして、化学肥料の施用と堆厩肥料等の自給肥料の施用との間には直接的な代替関係がございませんので、自給肥料の施用につきまして、化学肥料需給計画の中に織り込んではおりません。
  44. 染谷誠

    染谷委員 終わります。      ————◇—————
  45. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。ただいま審査中の肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、参考人の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 仮谷忠男

    仮谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出席日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 仮谷忠男

    仮谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  48. 仮谷忠男

    仮谷委員長 質疑を続けます。竹内猛君。
  49. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、肥料の法案に関して中心的な問題を質問すると同時に、それに関連をして肥料と深い関係のある自給肥料の問題、そして、また、なおいま現地で起こっている問題にもちょっと触れて答弁をいただきたい、こういうふうに考えております。  そこで、最初に、この法律を五十四年まで五年間延長するという根本的な理由ですが、五年間で問題は解決するのか、なぜ五年という日にちをきめたかということをまず明らかにしてもらいたい。
  50. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この法律は、内需を確保いたしますことと、国内価格の安定、それから輸出体制の一元化の三点を骨子といたしておりまして、これらの措置によりまして農業肥料工業の健全な発展に資するということを目的といたしておることは御存じのとおりであります。そういう目的昭和三十九年に制定されまして、四十五年に五年間の延長ということで本法の改正が行なわれております。そこで、昭和四十九年七月三十一日までに廃止するということになっておるわけでありますが、最近の肥料事情は、国内的には、自給度維持向上をはかることを基本とする農業生産振興に関する各般の施策の推進に伴いまして、肥料国内需要は増加の傾向にございます。また、国際的にも、各国食料増産施策を反映いたしまして、需給はきわめてタイトになっております。  そこで、アジア諸国中心肥料輸出は要請がきわめて強い状況にございます。こういう状況のもとで、国内農業の重要な生産資材であります肥料の内需の確保、それから国内価格の安定、輸出体制の一元化をはかることが一そう強く要請されておる次第でございます。そういうことで、本法に基づく諸措置を引き続いて講ずる必要がある、こういう考えであります。それから、また、お話しのございました本法を恒久法化することにつきましては、今後の肥料国際需給状況、それから輸出動向、それから原料の状況等、各要因の推移を見きわめることが必要でございまして、現在なおそれを判断することは困難な状況であると判断しております。  肥料国際需給について見ますと、中国の大型尿素プラント、それから各国で進められている肥料プラントの建設が完了いたしまして本格的に稼動するまでのおおむね五年間は、やはり、今日のようにきわめてタイト化する傾向が続くものと考えられております。この間、内外の肥料政策の一体的計画的な遂行に万全の措置を講ずる必要があると存じますので、このためには、本法の延長期間を大体五カ年として、肥料年度に合わせて五十四年の六月三十日までとすることを決意いたした次第であります。
  51. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いろいろな理由で五十四年まではやる、そして、それを恒久化することについてはまだきめていないと言うけれども、それじゃ、五十四年ということになったときに、また延ばすかなんとかということをやられるのかどうか。これは農民のために、このことが価格が安定をし、内需が優先であり、しかも農業の発展のためにいいものであるならば、何も時限立法にしなくても、恒久立法にして、なお内容を改めて、そして存続をさせていくということのほうがいいのじゃないか。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 なぜ一体五年なんかという区切りをするのか、五年間に特別に何かの施策をしようとするのかどうか、その辺をもう一度大臣から答えてもらいたい。
  52. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま申し上げましたように、いまわが国がとっております施策を考えてみますと、やはり、輸出を伴うということで生産が増大されておりますので、コストダンをする利益がそこに生まれてくるわけでございますが、ただいまも御報告申し上げました中にありますように、世界の各国でもやはり大きなプラントを建設中であります。いろいろな状況を判断いたしてみますというと、その時代になってどういうふうに推移してまいるかということを見きわめた上で本法に対処することがやはり必要であろうということで、今回も五年間ということにいたした次第であります。
  53. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 五年間の問題についてはまだ問題があろうと思うのです。これから質問しますけれども、いまの場合、外国に輸出をする価格のほうが安くて、国内の農家が使っている価格のほうが高い。この問題は、国際関係とかいろいろの関係があるわけだけれども、そういうような国際関係というものも違ってきて、国内需要者の価格輸出する価格も五年間で大体うまいぐあいになるという見通しがあって五年というものをきめたのかどうか。五年ということについてこだわるようだけれども、それについてなお私は質問をしたい。
  54. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 先ほど大臣からお答えになりましたのと同じでございますが、私ども、肥料の国際的な需給の問題につきまして、実は大きな関心を持っておるわけでございますが、肥料につきましては、内需優先という大原則があることは当然でございますが、この内需をまかなってなおかつ、たとえば窒素系の肥料につきましては七割のものは輸出されておるわけでございますけれども、現在のところ、東南アジア各国中心としまして、日本に対する肥料の要望というものは非常に強いわけでございまして、この状況というものは、先ほど大臣からもお話しがございましたように、中国がアンモニアプラントの大型のものをかなりの数建設するという計画がございますけれども、この完成時期はおそらく五年程度かかるのではないかと考えるわけでございますが、それまでの間というものは現在のような需給のタイト化状態は続くというふうに考えるべきであろうと思っておるわけでございます。こういう時期におきましては、内需優先、それから肥料の可能な限りの低位安定という面から見まして、従来の法律の存続というものはやはり必要があると考えておるわけでございます。  なお、これから五年先の状況につきましては、その時点におきます国際的な需給状況等を考え、かつ、わが国の農民にとって不安のないような肥料供給ができるかどうかという状態も十分見きわめた上で、この法律の扱いについて検討すべきではないかと考えておるわけでございます。
  55. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 わが国肥料産業は国内農業に対して不可欠のものであるだけでなしに、海外に対しても、特に発展途上国に関しては——並びにアメリカでさえも、ある種の肥料については輸入をしなければならないという状態にあるわけです。したがって、重要な位置を占めているわけであるが、その必要量をきめる基準、それからその方法というもの、これを農業の方面で見ると、米麦が大体三七・四%、野菜と果樹、たばこ等で四一・二%と、この使用量がきまっている。したがって、米麦、野菜、果樹、たばこ等においてほとんど八割以上の肥料を使っている。この際、国内需要を満たすためには、必要肥料にどれくらいな量が必要なのか。  また、農林省が五十七年を展望をして農業生産計画を立てている。その試案をつくっています。現在農政審議会にかけられているといいますけれども、私はあれに対しては疑問を持っているのだけれども、物をつくるほうだけに対しては目標を立てておきながら、肥料生産は、その物をつくるために用意されているのかどうか。その農業政策と通産省との間には何かの連絡をとって、そして、そのために生産の準備がされているのかどうか。この辺についてぜひ関係者から聞きたい。
  56. 松元威雄

    松元政府委員 ただいま肥料需給見通しの策定の基準につきましての御質問でございましたが、まあ、需給見通しという要素はいろいろございますが、特に、そのうちの国内需要量、需給見通しをきめるべき要素としますと、在庫量とかあるいは生産見込み量、需要見込み量、輸出見込み量、いろいろあるわけでございます。特に、その中心となりまする需要見込み量についてまずお答え申し上げたいと思いますが、これは、年々の需要見込み量につきましては、農林省におきまして過去の肥料需要の趨勢があるわけでございます。それから、また、毎年県から肥料需要見込み量を報告をとるわけでございます。それから、また、ただいまお話しにございましたように、作物別に一種の原単位と申しますか、米ならば十アール当たりこの程度が要るという標準もございます。そういうものから計算してとるというようなことで、過去の趨勢と、それから関係の都道府県等からの見込み、それからまた作物別の理論的な所要と申しますか、そういうことをいろいろ聞きまして、さらにまた関係業界から需要の見込みをとるということにいたしまして、年々この見込みを立てているわけでございます。  さらに、ただいま、需給見通しについて、農産物の生産との関係で、五十七年の生産見通しの関係で御質問があったわけでございますが、もちろん、五十七年の生産見込みにつきましては、作物別の面積と、それから十アール当たり収量、これが肥料需要量に非常に大きな相関があるわけでございますから、それにつきましても私ども計算をいたしておりまして、さらに、その場合、収量をあげますにつきまして肥料がどの程度必要かということ、これはいろいろ見方がございますが、大づかみに申しまして、私たちの目下の試算では、収量の上昇、アップに応じて肥料の量も必要であろうというような前提を置きまして計算をいたしておるということで、五十七年までの肥料需要見込み算定もいたしておるわけでございます。
  57. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 通産省。
  58. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 肥料需給の問題につきましては、農林省のほうで五十七年の国内向けの肥料需要の見通しをつくっておられますが、これにつきましては私どものほうでも御連絡を受けまして、これに見合う供給は絶体確保するという前提で考えておるわけでございます。  窒素肥料につきましては、現在の生産設備から申しまして七割が輸出でございますので、国内需要の増大は十分まかない切れる道がございますし、また、燐酸系の肥料につきましても、現在のところ、燐鉱石等の原料価格上昇がございますけれども、燐鉱石の数量そのものの確保につきましてはまず心配はないというようなことも考えておりまして、いずれにいたしましても、農林省の需要見通しにつきましては、通産省も供給面でこれに即応できるような体制をとるということで、両者の間で緊密な連絡をとりながら今後の需要見通しについて相談をすることになっておりますし、現に、そういたしておるわけでございます。
  59. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この際、農林省に要望しますが、「農産物需給の展望と生産目標」という、これをいま検討していますけれども、これは作物のほうの数量の見通しは立ててあるが、それを生産するために必要な肥料であるとか、農薬であるとか、農機具であるとか、そういうものについてはほとんど触れられていない、説明を聞かなければわからないということでは、これはどうにもならない話です。農家の人がこれを見て、なるほど農林省はこういうふうに努力をされるんだ、それならひとつ力を入れてやろうかという、こういうものにならなければ政策としてはお粗末だと言わざるを得ない。  そこで、この際、この肥料の問題についても、化学肥料をこのためにどれくらい使うのか、自給肥料というものはその中でどういう役割りをするのか——あとで自給肥料についてはいろいろ質問をしますが、そういうような形で、現在の日本の農村の地力がこのままで一体いいのかどうか、地力というものは万全を期しているのかどうか、技術会議のほうから地力の状況についてこの際聞いておきたいと思います。
  60. 小山義夫

    ○小山(義)政府委員 近年、化学肥料が多く投下されておりまして、御指摘の自給肥料の投下が非常に少なくなっております。稲わらは若干ふえておる傾向も見られますけれども、何といいましても、問題の堆厩肥の投下が減っておりますので、こういう状態が続きますと、土壌の中のカルシュウムとか、あるいはマグネシウムといった塩基類の溶脱がどうしても進んでまいります。したがいまして、土壌がどうしても酸性化することは避けられないというふうに思われます。また、土壌の中の有機物がだんだん消耗してまいりまして、そういったことから地力の減退が非常に心配をされておるわけであります。  私どもも、そういう状態を確実に把握するために、以前に調査をした地点と同じ地点について、現在土壌の状態がどうなっておるかということを、いま予算の裏づけをもって調査を進めておる状況でございますので、的確な数字で土壌の状態がどのように変わってきておるかということを申し上げることは、その実態把握が終わりませんと申し上げられないわけでありますけれども、いずれにいたしましても、いま私が申し上げましたような土壌の酸性化の促進、あるいは土壌有機物の消耗といったようなことから地力の消耗が心配されるということは間違いない事実であるというふうに思われます。
  61. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題もたいへん重要な問題だと思うのです。農業生産力を高めるのには地力が非常に健全でなければいけない。それを、日本の土地には金肥を多く使い過ぎる。農薬を入れ過ぎる。その結果酸性化して生産力がかなり落ちているということが現実の状態なんです。これは農政の貧困から来ておりますね。早く金肥をやって出かせぎをしなければならない、あるいは農機具を入れて、馬や牛を田畑から引き揚げてしまう、堆厩肥が入らない、こういう状況になってきておるわけです。こういうことも含めて、地力の状況も含めて、五十七年の目標というのをいま検討中でありますから、農林省としても——通産省これに加わっておると思いますが、通産省のこの肥料生産計画というのは、その方向について万全を期しているのかどうか。これ加えていずれ明らかにされることを私はこの際要望しておきたいと思います。  そして、次の段階ですが、わが国は、中国をはじめとして、インド、インドネシア、スリランカ、ネパール、フィリピン、マレーシアあるいはオセアニア地方、北・中・南米に肥料をかなり輸出しております。それはさらに伸びると思いますが、その輸出を見るときに、この輸出価格国内価格より安いわけですね。この輸出価格国内価格との関係と、特に、中国からの要望が強いわけですけれども、中国に対しては今後どのような方針をとられるかということについて、これは通産省にお聞きしたい。
  62. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 ごく最近時点におきます肥料輸出状況についてまず御説明申し上げたいと思いますが、四十八肥料年度輸出量を従来の契約ベースをとにしまして推定してみますと、硫安につきましては八十九万トンちょっとでございます。それから、尿素につきましては二百三十三万トン強と見込まれるわけでございます。  価格につきましては、実は、四十六年を底といたしまして、最近の国際的な需給のタイト化を反映いたしまして、逐次上昇いたしておりまして、最近におきましては、その上昇幅というものはかなりなのになっておるわけでございます。硫安につきましては、FOBの平均価格が四十六年当時はトン当たり二十一ドルであったのが、最近の、本年の一−六月の契約の状況につきまして見ますと、五十三ドルというように上がっておるわけでございます。それから、尿素につきましては、四十六年当時の五十ドルが本年の一−六月には百四ドルということで、倍以上になっておるわけでございます。  各国と、特に、東南アジア諸国につきましては、日本に対する輸出の要請というものは非常に強いのがございまして、特に中国につきましては最その要請が強いように考えておりますけれど、中国につきましては、硫安につきましては、四十八肥料年度をとって見ますと、全体の輸出量の約六四%弱のものが中国向けでございまして、それから尿素につきましては五五%弱程度のものは中国に向けて輸出されておるわけでございます。四十九肥料年度について、中国はじめ東南アジア市場、あるいは最近は中近東諸国等日本に対する輸出の要請がございますが、こういう要請に対して一体どこまでこたえ得るかという問題でございますけれども、実は、原料面その他の制約ございますので、従来に増して大幅な増加ということはなかなか期待できないかと思いますけれども、少なくとも四十八肥料年度におきまして行なわれました輸出量というのは確保するように努力をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  63. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その肥料の原料の問題でありますが、肥料の原料は石油であり、燐鉱石であり、そういうものはすべて外国からの輸入にまたなければならない。しかも、その生産過程においては電力を使うということで、これ石油がやはり大きな位置を占めておりますが、いずれこれが値上がりをしている。特に、先ほどから染谷委員に対する説明がありましたように、フロリダにおける燐鉱石は全生産量の三分の二を占めるし、モロッコにおけるところのそれやはり三分の一を占めておるというわけで、しかその価格が大きく値上がりをしておるという状態であり、そういう中で生産費が高くならざるを得ない。その場合に、肥料生産原価というものをどういう時点でどういう方法で把握をして、なるほど原価はこういうことなんだということを農家に理解をさせるような形の原価がつかめるかどうか。もちろん、あるものは、いろいろなのを生産する中から出てくる副産物のようなものあるから、それはなかなかむずかしいかしれないけれども、少なくとも原料が明らかになり、輸送料が明らかになり、金利あるいは工賃が明らかになったものにおけるところの原価は明確になっているはずだが、こういうようなのについて原価というものをなるべく明確にして理解を求めるということはできるかどうか。この点について、通産省並びに農林省のほうは、この肥料原価を明らかにするということについての努力、方法はどういうふうにされておるのか、伺いたい。
  64. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 アンモニア系窒素肥料につきましては、メーカーの生産原価につきまして、四十九肥料年度価格交渉に際しましては、具体的に四十八会計年度の実績原価を集めまして、その中で異常なのにつきましてはもちろん査定をいたしますけれども、それをベースにして、価格交渉の際の生産費を見る際の参考にしてもらうということにいたしておるわけでございます。したがいまして、四十八年度につきましては、実績について正当なのを把握できるわけでございますが、問題は、原材料の値上がり等につきまして、この四月以降の値上がり見通しがどういうことになるかという点でございますが、先生の御指摘のように、ナフサ、燐鉱石の他原材料は今後上昇が見込まれるのがあるわけでございますが、同時に、包装資材あるいは運賃等々値上げ要因というのはあるわけでございますけれども、これらの中で明確にわかるのは今後の価格の際に計上していかなければならないと思いますが、こういうものについて便乗的なものを乗せるということは非常に問題でございますので、これは厳格に査定をする必要があると思いますけれども、少なくともいま現在の時点において明らかに値上げがあり、しかもその幅が明確なのについては、私どもとしては、これは外部に対してその点をはっきりさせる必要があるかと考えております。  なお、原価がこれだけ上がるということについては、やはり、一般農民に対して正確な情報を流す必要があると考えておりますが、この点につきましては農林省と十分打ち合わせた上でその対策を講じてまいりたい、かように考えております。
  65. 松元威雄

    松元政府委員 基本的にはただいまの答弁と同じであるわけでございますが、御指摘のとおり、今後は原材料価格による肥料価格上昇圧力と申しますか、それが確かに強まっているわけでございます。したがいまして、原価を正確に把握するということはますます重要になってまいるわけでございまして、この点につきましては、原価計算の技術論と申しますか、そういう問題ももちろんございますけれども、極力正確に把握しなければなりません。  これにつきましては、硫安尿素の場合でございますと、この法律に基づきまして原価を把握いたしているわけでございまして、今後これをより一そう正確に把握するように努力をしてまいりたいと思いますが、ただ、問題は、あとの燐酸肥料とか、カリ肥料及び窒素肥料を合わせましたいわば複合肥料につきましては、現在は直接この法律対象になっていないものでございますから、したがって、生産費調査を厳格な意味ではいたしていないわけでございます。そこで、これらの価格につきましても、もちろん適正な価格計算は必要でございますし、これにつきましては、農業者、いわば需要者という農業者の立場を代表いたしまして、全農が各メーカーと価格取りきめを行なって、それが基準になっているわけでございますが、私ども、その場合、全農に対しまして、メーカーから正確なコストの情報をとるようにということを指示いたしまして、極力コストの把握をするように努力している次第でございます。
  66. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、問題になるのは、農産物の価格との関係なのです。これは大臣にぜひ答弁をしてもらいたい。  それは、米にしても畜産物にしても、あるいはその他の農産物は全部そうですけれども、肥料が値上がりをする、農機具が上がる、生活費が上がる、そういうことは明確にわかっている。それにもかかわらず、農産物の価格というものは、それに応じて上がったためしがない。大会をやり、デモをやり、要請をやり、陳情をし、至れり尽くせりの努力をしなければ、幾らかでも上がらない。それでもまともなことにはならない。工場がつくる肥料とか農機具とか農薬というものは、もうすでに値上がりを予測して、そうしてそういう価格で大体農家に売りつけをしているわけですね。しかし、農民の意思というものはそこにはあまり入らない。こういうときに、農畜産物の価格の決定の方式は、現在のような方式を万全なものと思うかどうか、農林大臣、これについて明確な答弁を願いたい。
  67. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 肥料価格は本年一月から、本肥料年度の当初に対しまして約三割、前年対比約四割上昇となりますが、ほかの生産資材の価格上昇しておりまして、全体として農産物の生産コストに影響が及ぶことはもう免れないことであると考えております。これがわれわれのほうの農産物に対してどういうふうに反映するかということを慎重に検討しなければなりません。まあ、産業連関表等もございますけれども、今後ともこの農業用資材の価格の高騰をできるだけ抑制して、便乗値上げ等ももちろんなからしめるように抑制をいたしますが、生産構造対策の強力な推進等によりまして、そういうコストアップの原因をできるだけ緩和していくということが私どもにとっては一番必要なことではないかと思っております。  そこで、今後の個別農産物の行政価格の決定にあたりましては、生産費の動向需給事情等に見合いまして、そのときの経済事情に応じて指導してまいる必要がありますけれども、今日の状況はもう申し上げるまでもないことでございますけれども、いろいろな要因が加わって上昇過程をたどっておりますので、そういうことが当然農産物の生産費にはね返る部分につきましては、いま申し上げましたように、原材料等の価格の高騰を防止することについての最大の努力をいたしたり、生産費の高騰を防ぐための農政上の諸施策を講じてまいることは当然なことであります。しかし、それがある程度農産物の価格に反映してくることはやむを得ないことである。したがって、これはやはり農産物の生産意欲を阻害しないような方法をその間においてとっていかなければならぬ。したがって、諸資材の高騰と、それを受けて生産される農産物との消費価格に対する調整について私どもが努力をしなければならないというところにむずかしさが存在いたしておると考えておりますが、いま申し上げましたような方向で最善の努力をいたしてまいりたい、このように思っております。
  68. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 肥料を多く使う農産物で、しかも生産量の多いものは米であります。これは、その米の四十八年度の生産費の調査の中で、食糧庁が去年の米価の決定について出したものでありますけれども、その中で、十アール当たり七万五千五百七十八円の中で、家族労賃が直接、間接で三万八千四百六十一円、物財・雇用労賃が二万九千六十四円、物件税及び公租公課が七百七十四円、地代四千七百二十二円で、合計が七万五千五百七十八円となっております。なぜ一体肥料とか農薬とかというものを雇用労賃と一緒にして出すのか。家族労賃は家族労賃として計算がされ、肥料、農薬その他は物財として雇用労賃の中に含まれていて、これが分離されておらない。こういうことはおかしいと思いますね。この辺は一体なぜ分離をしないのか。農林省が出した去年の生産費調査の中に、肥料というものは一体どれくらい入っておるのかということを明らかにしてもらいたい。
  69. 吉岡裕

    ○吉岡説明員 御質問の昭和四十七年産米の生産費でございますが、私どもの生産費調査におきましては肥料費という項目がございまして、その中に購入部分と自給部分がございます。購入部分は金肥でございまして、もちろん、農家の支払いました金額を記帳いたしておりますが、自給部分につきましては、これは費用化計算と申しておりますが、その自給、たとえば堆肥に使いました麦わら等はそれを市価評価をいたし、それに必要といたします労働費は労働時間を記帳いたしまして、これを臨時農業労賃によって評価をしておる。こういうことで自給部分の肥料費というものを出しまして、購入肥料に対する支払い部分と合わせまして肥料費として計算をしておるわけでございます。
  70. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農家にわかりやすくするためには、自分たちの労賃というものは家族労賃として計算がされているけれども、家族労賃は支払わないから、それはそういう項目ができたかもしれないが、支払ったから支払い項目の中でそれを計算をしたと言うけれども、それじゃ、肥料には幾ら払ったのだ。七万五千五百七十八円の中で肥料に支払った金というのはわかるはずですね。それは幾らなんだということを聞いているのです。
  71. 吉岡裕

    ○吉岡説明員 四十七年の米の生産費調査で、第一次生産費として出しております生産費の合計が十アール当たりで四万七千八百六十七円でございます。その中で肥料費が四千二百八十六円ございまして、うち、購入部分が三千九十五円、自給部分が先ほど申し上げましたような計算によりまして千百九十一円、こういうことになっております。
  72. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そうすると、大体、米の生産費の中で肥料が占める割合というのは一割と見てよろしいかどうか。
  73. 吉岡裕

    ○吉岡説明員 正確に申し上げますと八・六%でございます。ほぼ一割でございます。
  74. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、この自給肥料をつくるための労賃計算なり、あるいは米をつくるための労賃のとり方なり何なりについてはこの場所では議論はしませんけれども、これは米価のときに大いに議論することでありますが、ともかくここで求めたいことは、農畜産物の価格の中に、特に農産物の価格の中に肥料が占めるパーセントといいますか、それはどれくらいあるかということを大体確かめたいということでいま質問したわけですが、大体八%から一〇%と見てよろしい、大体こういうふうに考えてよろしいということになりますか。
  75. 吉岡裕

    ○吉岡説明員 これは生産物、物によりましていろいろ変化がございますが、水稲でございますと、先ほど申し上げましたように八・六%でございます。
  76. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この法律の第十六条には、「農林大臣又は通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、肥料生産業者若しくは販売業者に対し必要な事項の報告を求め、又はその職員に、肥料生産業者の事務所、工場若しくは倉庫に立ち入り、その帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」となっていますが、最近の異常な肥料の値上がり状態は、あるものは五割も上がっているし、少なくとも三割以上みんな上がっているはずですが、こういう状態のときに、これに基づいて立ち入り検査をし、いろいろなことを調べたことがあるかどうか、もし調べなかったとしたら、なぜ調べないのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  77. 松元威雄

    松元政府委員 まず、十六条に基づきまする報告、検査でございますが、これは本法に基づきまして、政府は、硫安及び尿素のコスト調査資料を、生産業者販売業者との価格取りきめ交渉に際しまして、交渉当事者の要求に応じまして必要な場合には交付する、ということになっておるものでございますから、したがいましてこのコスト調査をずっといたしているわけでございます。これは硫安尿素原価報告書作成規程というものをきめまして、それに基づきまして、所定の様式によりまして、各会計年度におきまする硫安尿素の実績原価につきまして生産業者の報告をとっている。これが基本でございますが、その場合に、コスト調査の正確を期するために、農林、通産両省の係官を派遣いたしまして、実際に生産業者の事務所、工場等に入りまして、帳簿資料を検査いたしまして、このコスト調査は正確かどうかということをチェックするということを、従来、毎年やっているわけでございます。  今回の場合でございますと、これは一月に価格改定が行なわれたわけでございますが、その場合には、これは年度途中でございまして、従来のような会計年度単位のコスト調査ということはなかなかむずかしいし、時間もかかるわけでございます。そこで、今回の場合は、原則的には一番直近の四十七会計年度のコスト調査がまず基本にあるわけでございまして、さらに、今回の硫安尿素価格引き上げにおきましては、要素を非常に限定いたしまして、原料のナフサ、重油、包装というふうに限定いたしましたものですから、全面的にコスト調査をもう一ぺんやり直すということまでいたさなくても、四十七会計年度におきますコスト調査を基準にして、かたがた主要な原材料の価格動向を把握できれば適正価格の判断にはだいじょうぶであろうという判断をいたしましたものですから、今回あらためまして立ち入り調査はいたしたわけではございませんが、従来、年々生産費調査の方向をとります場合には、それの正確を期するために立ち入り検査をいたしている、こういう次第でございます。
  78. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は地元のある農協でいろいろ話を聞いてきましたが、昨年の十二月のときに肥料計画をやるときには、過燐酸石灰が二十キロ一袋三百八十五円だったものが、今度は三月ごろになると五百四十円というふうに値上げをした。これは大体四三%の値上げですね。これは一例ですけれども、こういうふうな例がある。そういうふうに四〇%も値上げをするというようなときにおいて、立ち入り検査なり何なりをして、農家の皆さんにも、これはこういう理由で値が上がったからということを明らかにして了解を求めるような努力をなぜしなかったのか、一体何のためにこの法律はあるのか、こういうことがされなかったら法律があったって意味がないじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、これはどうですか。
  79. 松元威雄

    松元政府委員 ただいまの御指摘の四三%の値上げは、これはおそらく高度化成肥料だと存じますが、御指摘のとおり、今回肥料価格は全般的にいろいろ上昇いたしたわけでございます。その場合、この法律対象といたしておりますのは硫安及び尿素でございまして、これにつきましては生産費調査をいたしまして、その原価を把握して、それを全農とメーカーとの価格交渉の資料に使っている。そういう意味で全農は把握いたしているわけでございます。  それから、また、その他のものにつきましては、燐酸肥料、カリ肥料及び高度化成肥料等の複合肥料につきましては、これは直接的にはこの法律対象外でございますから、硫安尿素のような生産費調査は従来いたしていないわけでございます。  そこで、これにつきましてどのように原価を把握するかということでございますが、これは全農が価格交渉をいたします場合に、相手方のメーカーから極力生産費についてのデータをとるようにという指示をし、指導をいたしておりまして、おおむね全農はそういうことを把握いたしまして価格交渉をやっている。こういう実態がございまして、その結果、四三%というものにつきましては化成肥料でございまして、その原料たる硫安尿素、窒素質肥料、それから特に燐酸質肥料が非常に大幅に上がったわけでございますし、それからカリ肥料、その複合結果といたしましてこういう結果になったわけでございます。その過程におきましては、硫安尿素はいま言ったように法律に基づいて生産費調査を行なっている、その他につきましては、全農が価格交渉に際しまして相手のメーカーから聞き取りをしているということで極力コストの把握につとめている、こういう次第でございます。
  80. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはそういう状態で説明がつくかもしれないけれども、現実に肥料を使っている農家にとってみれば、たまらないほど痛いですね。だから、肥料の法案に対して対象にならないからやらないと言ったら、これは対象にできないものかどうか、これが第一ですね。  それから、もう一つは、いま全農の話が出たけれども、肥料の場合においては、全農の持つシェアは非常に大きいと聞いております。そこで、この流通過程における全農の役割りというものを農林省なり通産省はどのように評価をし、そして、これをどういうぐあいに位置づけておるのかということについてお答えをいただきたい。
  81. 松元威雄

    松元政府委員 お答え申し上げます。  ちょっとその前に、先ほど私は四三%の値上がりと申し上げましたが、これにつきまして、おそらく高度化成肥料だと申し上げましたが、実は、これは、対前年同期で四三%上がったのが高度化成肥料でございまして、それから燐酸肥料は七月も値上げがございましたから、もしも肥料年度当初に比べて四三という数字でございますれば、これは過燐酸石灰でございまして、まあいずれにせよ相当上がったということでございますが、もし間違ったらいけませんので申し上げました。  そこで、御指摘の問題は、硫安尿素はこの法律対象にしている、それに対してはほかの肥料対象にしていない、それでは肥料全体から見た場合にはいかがかということでございますが、これにつきましては、従来からこの法律は二つ目標がございまして、一つは、輸出調整との関係におきます内需確保と申しますか、輸出との調整ということが一つの問題でございまして、もう一つは価格の安定、この二つがあったわけでございます。したがいまして、従来は、輸出のウエートが高い、しかも内需の基幹的なものであるということで、硫安尿素対象にいたしてまいったわけでございます。その他の肥料はしからばほったらかしかというと、そうではございませんで、これにつきましては、直接この法律対象にいたしておりませんが、従来から、需要者たる農業者の組織といたしまして、全農が各メーカーと価格の交渉をして、いわば基準内の価格をきめている、こういう次第であるわけでございます。しかも、燐酸質肥料の原料たる燐鉱石、それからカリ肥料というものは、過半は全農が輸入をしている。したがいまして、原価も把握しやすいということになりましたものでございますから、この全農がそういうことで原価を把握いたしましてメーカーと交渉してきめる価格を基準にする、この仕組みによってまいったわけでございます。  それから、また、化成肥料につきましては、これは原料は窒素肥料と燐酸肥料とカリ肥料でございますから、それぞれの価格を適正にきめればおのずから適正にきまるということであったわけでございますものですから対象内にしていなかったわけでございますが、確かに、最近の動向を見ますれば、肥料全体の中の量といたしますと化成肥料の量なんか非常に多くなっておりますし、農家の方が実際に使うのはむしろそのほうが多いという実態でございますので、これにつきましてはいろいろと技術的にむずかしい問題がございますが、これをこの法律対象にするかどうか、特に価格取りきめの対象にするかどうかにつきましてはいろいろ技術的問題もございますし、それらをあわせまして今後慎重に検討してまいりたいと存じております。
  82. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 高度化成をこの法律の適用対象とするかどうかという問題につきましては、ただいま農林省からお話しがございましたように、技術的な問題等についてはいろいろと検討すべき問題はあるかと思いますけれども、やはり、高度化成の重要性にもかんがみまして、この問題については早急に真剣に検討してまいりたい、かように考えております。
  83. 松元威雄

    松元政府委員 後段の御質問でございまして、いわば全農の役割りについてどう考えるかということでございますが、これにつきましては、肥料と申しますものは、御承知のとおり農業生産資材の中でも非常にウエートの高いものでございまして、これは全国的にいわばあまねく使用されているというものであるわけでございまして、したがって、その価格も全国的に平準化され安定した価格が必要であるわけでございます。そういう意味において、やはり、これは、たとえば商人でございますとか、あるいはまた同じ農協の中でも単協と申しますか、そういった地域的なものがばらばらに扱うよりも、その全体の組織としての全農が統一して扱ったほうが全国ベースで安定的な価格供給し得る体制にあるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、流通の中で全農の占めるシェアが非常に高いということは望ましい。全農が価格交渉をして価格をきめますれば、それはおのずからほかのものが扱う価格の基準になるという意味で、この肥料の流通におきまして、いわば全農の役割りというものは、そういう大きな意味を持っておるというふうに考えておるわけでございます。
  84. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 二つのもの以外に考慮するということでありますが、やはり考慮してもらって、なるべく農家が安心をして肥料が使えるようにするために、ぜひそれは早急に検討をしてほしいということを要望すると同時に、これは、全農の役割りは確かに非常に大きいと思います。それが一方的にならないように、農民との間に理解と納得がいけるように農林省は十分に指導してもらいたい。そういうことを要望します。  そこで、次に、この法案のねらうところは輸出調整と内需の優先というところにあると言われますが、われわれの調べたところによると、国内の農民が使うところの価格よりも外国に出ている価格のほうが安いということが常に問題になっている。これは海外の事情やいろいろの事情があってやむを得ないと言えばそれまでだけれども、しかし、このことについては、戦後一貫してわれわれはこの矛盾について考えさせられてきている。国内の農家の皆さんからしてみれば、外国に安く売れるのに、なぜわれわれはより高いものを買わなければならないのかということについていつも感じているわけです。これを克服して、外国に出す場合にも国内で使う場合にも変わりがないということにするためには、一体、どのような努力をいつごろまでにやられるのか、こういうことがない限りにおいては依然として農家の批判というものはぬぐい去られないものである、こういうように私は思いますが、どうでしょうか。
  85. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 肥料国内価格輸出価格の問題につきましては、御指摘のように、実績から見ますと二十数年来輸出価格のほうが低かったわけでございまして、最近は、先ほども御説明申し上げましたように、輸出価格が国際的な需給関係を反映いたしまして、国内価格にかなり近いものになっておりまして、四十九肥においては、あるいはこれが同等もしくは輸出価格のほうが高いというような情勢も出てくるかと思います。したがいまして、輸出価格国内価格との問題は、そのときどきの需給の関係によりまして、どっちが高いということは一がいになかなか言いにくいかと思いますけれども、従来の実績から見ますと、御指摘のように輸出価格のほうがはるかに低い時期もございましたし、長期間にわたって低い時期が続いたわけでございます。これは、御承知のように、国内価格につきましてはメーカーと全農との間で価格交渉を行ないますけれども、その際に生産費というものをベースにして年々の価格をきめていくわけでございます。ところが、輸出につきましては、その当座当座の国際的な需給状況を反映いたしまして、常に価格の変動があるわけでございます。  いままでのところは、需給関係が比較的緩和されておったために、輸出価格のほうが安かった。今後は需給関係がタイトでありますので、輸出価格国内価格に近いか、あるいは場合によると輸出価格のほうが高くなるということもあるわけでございます。これは、御指摘のように、農民の率直な感情から申しますと、輸出に安い価格で売って、どうして国内で高い価格を押しつけられなければならぬのかという率直な疑問はあるかと思いますけれども、立て方としまして、先ほど来申しましたような仕組みの違いがあるわけでございます。  それから、国内価格をきめます際に、肥料工業というものは装置産業でございますので、輸出の量がふえますとアンモニア等の操業度が上がるわけでございますが、操業度が上がりますと、当然コストは下がってきて、これが国内価格の引き下げにもいい影響を与えるわけでございます。したがって、輸出が多いときのほうが、すなわち、国内の設備がフル稼働に近い状態のほうがコストの面から見ましても国内価格にいい影響を与えるという点はあるかと思います。  なお、御指摘の点の締めくくりとして申し上げますと、輸出価格にさや寄せして国内価格をきめますと、そのときどきの価格によって国内価格もまた常に変動するという心配もございますので、国内肥料価格につきましては、地域的にも時期的にもフラクチュエートすることは農民に大きな不安を与えるわけでございますので、この国内価格はできる限り低位で、かつ、地域によっても期間によっても安定をしているということが望ましいわけでございますので、そういう意味で、輸出価格と同じような価格の仕組みで国内価格をきめるということについては、農業政策の上から言っても問題があるかと思いますが、いずれにいたしましても、今後の問題としては、輸出価格のほうが安いという状態ではなく、むしろ、場合によると輸出価格が高くなるという心配もあるわけでございますので、私どもとしては、そういうことと無関係に、国内価格については、コストの引き下げによって相対的に可能な限り低位でかつ安定した価格国内供給をはかりたい、かように考えておるわけでございます。
  86. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題については、たくさんつくって輸出をすれば国内価格も安くなるという組み立て論理というものは——これはまた仲間の委員があとの質問で詰めますから、私は先に行きますが、問題は、農家が肥料を使う場合に、農産物価格の中で、農家の所得の中に支払うべき肥料代というものはどれくらいが妥当かということが問題なわけなんです。この点についても時間がないから先のほうに行きますけれども、こういう二点については、これは懸案事項であります。今後も、農業経営の中で肥料なり農薬というものが農家支出の中に占める割合というものは確かに作目別に違うでしょうけれども、多く使うものは米麦であり、それから野菜であり、果樹であり、たばこであり、そういうものでありますから、そういう中において占める割合というものはわかるはずです。この点は統計のほうで十分に調査をして、いずれこのことについてはまたいろいろ討議をしたいと思います。  そこで、先ほども私は質問をしましたが、日本の農業の現状を見る場合に、非常に重大なことが忘れられているという感じがします。それは、冊力の減退というお話しが先ほど小山事務局長のほうからありましたが、そのとおりでありまして、すでに、東北や北陸の単作地帯においては、地力が消耗し、減産をしているところがあります。これは金肥を使って、早くやって出かせぎをする。そのために機械も買い入れる、その金も払わなければならない、と、こういうことで出かせぎに行きます。そして、行くと同時に、牛も馬ももう農家から離れてしまっている。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 そして機械化になってしまっている。こういうことで堆肥が入ってこない。このような一つの経営があります。これは専業といわず兼業といわずそうです。その一方において、今度は豚でも鶏でも酪農でも企業化し、集団化している。そういうところではたくさんのえさを使い、ふん尿が出てまいります。しかし、この結合がない。そういうう状態の中で何とか地力を培養し、有機質を入れて、酸性の土壌をアルカリに変えて生産力を高めていくために、自然肥料というか、自給肥料というものをもっと考える時期に来ているのではないか。特に、現在食料の自給体制というものをつくって、一粒でも多くの食糧をつくっていこうという段階のときに、このような問題に取り組むという基本的なかまえ、姿勢を持っておるかどうか、まず、農林大臣にこの辺のことをお伺いしたい。
  87. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまお話しがございましたように、わが国農業生産力を高め、自給率を維持向上していくということを考えますと、まず第一に土地生産力の増強が一番重要であります。そこで、いまお話しがございましたように、有機物の土壌への還元、土壌改良資材の投入など、地力培養対策を積極的に推進する必要がありますことは申すまでもないことで、これらに関連いたします土壌と作物生産、施肥改善などにつきまして試験研究を充実してまいることに大いなる力を入れてまいる必要があるというふうに私どもは考えております。
  88. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、わが国の場合に、大家畜のふん尿というものはいまどれくらいの量が出ているのか、そして、わらはどれくらいの量が出て、どのように使われているのかということについて、大筋の説明をできるならばしてもらいたい。
  89. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 家畜ふん尿の総排せつ量といいますか、これは各畜種合計いたしまして、四十八年度の推定でございますが、五千七百万トン程度出ているのではないかというふうに見ております。その中で特に大きいのは乳用牛、肉用牛、豚で、この三畜種が主要なものでございます。
  90. 松元威雄

    松元政府委員 わらの使用されます総量につきまして、ただいま資料を持ち合わせておりませんが、大づかみに申し上げられますことは、従来はふん尿とあわせましてわらは堆肥類に使われており、これが施用は年々減っているという傾向は確かにあるわけでございます。他方、それに対しまして稲わらを直に使う——堆肥、厩肥までつくることが労力の関係でなかなかむずかしくなったものでございますから、なまわらの施用ということを進めておりまして、その分は多少ふえているという傾向はございます。しかし、全体といたしましたならば、わらがどれほど地力に戻っているかという計数につきましては、目下資料を持っておりませんものですから、なお調査いたします。
  91. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この点については、地方においてはかなり進んだ研究と努力がされているわけです。たとえば私のところの茨城県新治郡玉里村では、農林省の構造改善局の関係もありますけれども、養豚の団地ができております。そして、そこでふん尿の固形分解をやっているが、その七五%くらいは水分で、それを取り除いた部分を乾燥して、これを今度は堆厩肥としていろいろなところに施していくという形をとっております。あるいはまた、玉造、麻生の方面でも、イチゴをつくっている人々がやはりそのような方向で努力をしているが、そうすると、生産量が約三割くらい金肥だけに依存しているものよりは上がっているという事実がある。こういう幾つかの事実というものが明確であります。しかも、調査によると、濃厚飼料を食べた中で、大体六割が栄養として残り、あとの四割はほぼ体外に出てしまう。したがって、そのふん尿の中の四割の中にはまだいろいろな栄養分が残っている。これが使えるわけですから、こういうことを考えると、いまここで畜産局長の答弁の中から五千七百万トンという量が出ましたけれども、その四〇%というもの全部と言わないまでも、これを利用するということは不可能じゃないということを考えていく必要がある。このために農林省としても新たなる角度からこれに取り組んでいくという決意をして、もっともっと土壌をよくしていくための予算をちゃんとつくってきっちりやってもらいたいということを私は要望をしたいけれども、その点はどうでしょうか。大臣、どうですか。先ほどから決意は何べんも聞いているけれども、もう一度大臣なり局長なりから伺いたい。
  92. 小山義夫

    ○小山(義)政府委員 畜産経営の形がだんだん変わってまいりまして、御指摘の家畜ふん尿の問題が出ております。私どもも数年前からこの問題手がけておりますが、当初は家畜のふん尿をどうやって処理するかということに重点を置いて考えていったわけですけれども、ただいま御指摘がありましたように、現在では、それをどのように利用していくかということをあわせて考えていくというところに研究の重点を移しております。  現在予算の裏づけをもって進めております大型のプロジェクト研究といたしましては、昭和四十八年度から五カ年計画でこの問題に取り組んでおりまして、約一千六百万円の研究費をこれに投じておるわけでありますが、一つは、先ほどお話しがありました土壌にこれを還元するという方向と、もう一つは、えさにどこまで使えるかという、この二点であります。  土壌に還元する場合には、できるだけ汚物感をなくしまして、取り扱いやすくするというところから入っていって、お話しがありましたような、乾燥の技術あるいは運搬の技術、さらには土の中に注入をする機械化といったようなことも取り組んでおります。ただ、この場合にもう一つ問題がありますのは、どこまで土の中にふん尿をつぎ込んでいいかということで、これは連用いたしますと、ちょっと障害が出るおそれがございますので、いま、いろいろな各作物につきまして、飼料作物中心でありますけれども、その他水稲あるいは畑作物について、毎年反当何トンまでつぎ込んでも障害がないかという試験を始めております。これは四十八年度から始まりましたので、連用試験、連年の試験でありますので、しばらく時間をかけませんと結果が得られませんけれども、そういうことを一つやっております。これは飼料作物支障がないかという点と、もう一つは、そのえさを食べさせた家畜に支障を生じないかという、この二点について実は問題があるわけです。こまかく申し上げますとちょっと時間がかかりますので、細部は省略をさせていただきますが、あるいは御要望があればこまかく御説明をいたしますけれども、その二点についていま試験をしております。  もう一つ、えさにどこまでできるかという点につきましては、六〇%消化されて四〇%排せつされるというのは比較的鶏等に多いわけでございますので、鶏ふんを使いまして、これをもう一度鶏に食べさせるということと、それから反すう動物のほうが消化吸収がよろしいわけでございまして、牛に食べさせるということをやっております。まだ初年度でございますからはっきりしたことを申し上げかねますが、鶏のふんをもう一度鶏に食べさせてもなかなか成績がうまくいかない。これは当然のことのようでございますけれども……。ただ、牛の場合には、可消化養分量で約三〇%くらいの消化吸収があるようでございます。これは見方によっては低くだめだという評価もありましょうし、もう一度食べさせるものだからそれくらいでもいいじゃないかという見方もありますが、三〇%そこそこといいますと、わらをえさにします場合の養分よりも若干低い——ほぼ近いのですけれども、若干低いというくらいの程度というふうにお考えいただいてよろしかろうかと思います。  それから、豚のふん尿あるいは活性汚泥法でやりましたときの余剰汚泥、こういったものを家畜に食べさせてもなかなか消化吸収が悪いのですけれども、いま一つ私どもが試みておりますのは、養殖のコイのえさにするということをやっておりますが、これについては、ほかの使い方に比べて利用の可能性が若干明るい見通しが持てそうであります。  いずれにいたしましても、四十八年度から始めました大型研究の初年度でございますので、なお引き続き予算の充実をはかりながら、御指摘のこういった面での試験研究を進めたいというふうに考えております。
  93. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 研究しようということで、けっこうなことだから、これは前のほうに向いてやってもらいたいと思うし、大臣もこれを応援してもらいたいと思います。第一は資源の利用、それから公害対策、もう一つは有機質を入れて地力をつくるということですから、これはたいへん重要なことになります。だが、しかし、この問題は、相当な国なり県なりの予算を投入しなければできません。かなりの予算を必要としますので、十分に研究をして、その結論を、中間でもいいからすみやかに出して、実行していくようにされたいと思います。  それから、通産省については、こういう問題に関して、たとえば一キログラムの肥料をつくる場合に必要な電力であるとか油であるとかいうものがどのくらいかかっているのかということと、それから、排尿というようなものを加工する場合にどういうものがかかるかということについても、同時に研究をして、一緒になってこういう問題については努力をするということを私は要望をしたいと思います。この問題はこれ以上私は言いませんが、鶏ふんについては島田委員のほうからあしたなおいろいろ質問が出ると思いますから、それに対しては十分御親切なお答えをいただきたい。日本の農業を前に向けるためにあえてそういうことを要望しておきます。  さて、これは直接肥料法案とは関係ありませんが、肥料をたいへん使っていま田植えをしようとしているときに、霞ケ浦の水が濁って、そこに塩分が入ってきて田植えができないというところと、田植えをしたけれども、同じ日に植えた稲が一方は伸びており、一方は伸びないで縮んでしまっているというものがある。これを見ればわかる。この実態がここにあるのです。肥料をたくさん入れてやっているたんぼの中にこのような事実がある状態がいまできております。  そこで、農林省のほうでは、霞ケ浦の塩害によって生じている被害の実態についてどのように把握をされているか、お伺いしたい。
  94. 松元威雄

    松元政府委員 茨城県の神栖町及び鹿島町地区の水田のうち、かんがい用水の塩分濃度が高いため約五百十ヘクタールの水田におきまして水稲の生育遅延を生じているという事実があるわけでございまして、通常では葉数で七、八葉となるべき水稲が四、五葉程度の生育にとどまっている。こういう塩害の実態がございます。このように生育が遅延しているわけでございますから、これに対しましてどう対応するか、技術的にどういう方法があるかということでございますが、そういたしますと、結局は塩分を含まない真水のかけ流しかんがいをするという方法が技術的にはある。もちろん植え直しという方法もございますけれども、この地帯は早場地帯でございますから、いますでに植わっているものを植え直すということは、実際問題として一おそらくなかなかなさらぬであろう。そういたしますと、生育遅延を少しでも是正するには、真水のかけ流しかんがいが必要だというように考えているわけでございます。
  95. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先般米価の大会があったときに、あそこの地区の農家の皆さんが集まって決議をいたしました。その決議というものはたいへん重大なものでありますけれども、いま報告があったように、五百十ヘクタールというようなものではないですね。大体その六倍くらい、三千ヘクタールくらいのものが対象になっている。  きょう岩上知事が現地に入られるということになっておるようでありますけれども、実際にこの問題については、去年霞ケ浦のコイが死んだときにも——私は、先般四月二十五日のこの委員会でも、このことはたいへん心配だから、建設省も農林省も、水の問題については、何とか田植えができるように、塩分が含まれないようにということでいろいろ質問をしてまいりました。そのときに県のほうからも話があって、利根川の水が入るようになったら大体田植えはだいじょうぶだというような回答がありましたけれども、現実にいま田植えのできないところ、田植えをやったところがこのような状態のところがある。この問題の根源、あるいはこれに対する対策、補償、こういうような問題についてはどのように考えられているのか。こういう点はどうですか。
  96. 大山一生

    大山政府委員 御指摘の北浦関係の塩害の関係でございますけれども、用水の支配されている面積が三千二百ヘクタールほどございます。そのところで揚水していないところもあるわけでございますけれども、また、揚水して使っているところにおいても、井戸等によって希釈して使っているところもある。こういうことで、現実にはどの程度の被害になるか調査してみなければならぬわけでございますけれども、基本的にこの問題の対策ということになってまいりますと、常陸川水門の管理のしかたの問題——現在暫定取水、暫定規則といいますか、暫定的な取り扱い規程のもとで操作されているわけでございますけれども、最近の水の事情は、河口ぜきの問題においても同じような問題があるわけでございますけれども、その辺の問題についてさらに詰める中において、操作規程のあり方を再検討ないしは前進する方向で考えなければならぬだろう、こういうふうに思っております。  ただ、当面の問題というかっこうになってまいりますと、現在県でやっておりますように、利根川から豊水時に緊急に導水する、あるいは北浦に流入しております小河川をせきとめて導水利用する、あるいは深井戸を掘る、こういったような対策しかない。こういうことでございますけれども、いずれにいたしましても、豊水時に利根川から入れる、あるいは深井戸を掘って地下水を利用する、こういうふうな対策を講ずるということがとりあえずの対策であるというふうに考えている次第でございます。
  97. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その大山局長の前段の問題に関しては、この前も建設省のほうにいろいろ要望をしたのです。それは、那珂川の水を霞ケ浦に入れてくるということ、横利根川から入れるというようなことも考えられるという案もあるが、いずれにしても、昨年の水資源立法によって霞ヶ浦は一級河川という形に包括をされているわけです。そして、総合開発をやろうという段階ですね。だから、これは建設省にこの水の責任がある。そして、常陸川水門の基本的な管理は建設省がやり、それの開閉については知事が委任をされてやるんだ、こういうような回答があった。したがって、その後建設省で、霞ケ浦の水をきれいにするために一体どういうぐあいに努力をされたかということを、まず建設省から聞きたい。  それから、深井戸の問題については、地元のほうでも深井戸を掘るためにいろいろ要求をしておりますが、一個の深井戸に対して五百万くらいかかるのですね。その負担というものを地元が半分以上しなければならないという状態になっている。いままで長い間こういう事態がなくて、最近になってからこういうような問題が陸続として起こる。これは明らかに鹿島工業開発の問題であり、あるいはその他の水の高度利用という問題が来て起こったことである。これを天災という形で逃げるのでなくて、この問題の起こる原因は、いろいろな工業施設やそういうものが水を取っていく中でできてきたものであるから、したがって、これに対して国なり県なりというものが応分の艇力をしなければならぬことだ。地元ではとてもやり切れません。  この二点について御回答をいただきたい。
  98. 宮内章

    ○宮内説明員 常陸川の水門の操作の問題でございますが、これは前回にも御説明いたしましたように、本来機能が逆水門でございますので、現状におきましては、知事の要請によって必要なときに閉鎖していくというやり方をやっているわけでございます。それで、今年は、昨年末からの異常渇水が相続いているものでございますので、この三月の中ごろからほとんど連日にわたりまして閉鎖を行なっているわけでございます。  それから、先ほどもお話しがございましたように、これも知事の強い御要望がございましたものでございますので、四月半ばから利根川本川の水を一部導水するということを現に実施しているわけでございます。最近までに総量で約四百八十万トンの水を導水しているわけでございます。  それで、基本的に今回のような塩分濃度の上昇ということを防ぐには、先回申し上げたように、現在行なっています霞ヶ浦の総合開発を早期に完了しまして、常陸川の水門が常時自由に全閉できるという状態にしていくことが当面最も肝要だというふうに私どもは考えておりまして、現在そのための漁業組合との交渉等を鋭意進めている段階でございます。  なお、霞ケ浦の将来の水質向上の検討にあたりましては、那珂川からの導水あるいはその他の処置というものを並行して調査検討を進めているところでございます。
  99. 大山一生

    大山政府委員 後段の問題についてお答えいたします。  地元におきまして、井戸を掘ったりあるいは小河川のせきどめをしたり、こういうふうな応急対策を講じておられるわけでございます。これに対しての何らかの対処のしかたいかん、国としての対処のしかたいかんというお話しでございますけれども、確かに、過去におきましても、全国的な干ばつ等があったような場合におきまして、井戸を掘ったり、用水池を設置したり、こういうことに対して臨時特例的な措置をやった例はあるわけでございますけれども、今回の問題は、これが天災なりや人災なりやということは別といたしましても、地域で見ると非常に局地的なものである、こういうこともございます。しかしながら、現状につきましては、わが方といたしましては、利根調査事務所等もありますので、その利根調を通じましてさらによく詰めてみたいというふうに思っておりますけれども、これらの対策に対します措置といたしましては、今後とも県とさらに密接な連絡をとりまして、対策には遺憾のないようにしてまいりたい、こういうふうに考える次第でございます。
  100. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう時間がありませんから最後の質問をいたしますが、霞ケ浦の水が鹿島工業地帯の工場に現在毎日三十万トンから五十万トン送られている。これは塩分が含まれていては工場が使いものにならないから、塩分がないようなことでやっているようでありますけれども、ともかく、夏になれば魚が住めなくなるし、それから、冬から春にかければ田植えができなくなる。植えた稲は枯れてしまう。こういう状況が毎年続いておったのでは、周辺の者はいても立ってもいられるものじゃないと思う。こういう事態について、少なくとももう何べんか私はここでこの問題についてはいろいろ質問もし、要請もしているわけですから、この際農林大臣にお伺いするわけですが、いま大山局長から話がありましたが、これは農林省としても責任をもって建設省などとも相談をして、一つは水をきれいにするために早急に当面の方針を出してもらいたいし、それから、農業に対する三千町歩の被害の状況について、どういう方法をとるにしても、ともかく農家が安心できるような措置をとってもらいたい。そうでなければ、これはむしろ旗でも立てて押しかけてこなければならない。こういう状態になるわけですね。現に、現地はそういう状態ですからね。だから、この際ほんとうに食料確保し、農業生産に熱意を持って取り組めるようなあたたかい政策というものをこの辺で示してもらわなければいけないと思う。だから、そういう意味で、農林大臣、最後にこれに対する総括的な方針というものを明らかにしてほしい。また、私は別の機会に現地へ行って、こまかいことについてはなお別な機会に質問をしたいと思いますが、きょうはこれで終わりますけれども、そういう回答をいただきたい。
  101. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府委員から種々お答えいたしておりますけれども、北浦周辺の塩分遡上の問題は局地的な問題でございますので、十分県当局とも打ち合わせまして、事情をよく聴取いたしまして、その対策に遺憾なきよう指導してまいりたいと思っております。
  102. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これで終わります。
  103. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際、午後四時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三十六分休憩      ————◇—————    午後四時十二分開議
  104. 仮谷忠男

    仮谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。津川武一君。
  105. 津川武一

    ○津川委員 提案されている肥料法案に入っていく前に、田植えどきの最中で、田植えができないような、また植えたものが枯れるような状態が茨城県の一部に発生していましたので、竹内委員に続いてまずそれを質問してみたいと思います。  こういう状態であります。「田植えの終えた鹿島郡鹿島、神栖町、大野村の水田で、塩害による苗の葉枯れ被害が広がっている。十一日、神栖地区農業改良普及所のまとめでは、田植えのすんだ水田のうち約四〇%で、根が成長せず、葉が黄ばむなどの被害が出、とくに神栖町では六〇%にのぼっている。いずれも井戸掘りなどによる農業用水確保ができないまま、塩分濃度の高い北浦、常陸利根川から水田に取水した地域に広がり、場所によっては田の水の塩分が八〇〇PPMにもなった地区がでている。」「被害状況は、苗の下葉一、二枚が枯れる軽被害から新葉三、四枚が枯れる中被害、根がつかず新葉がほとんど枯れてしまう“重症”の三段階で調べたが、中被害が全面積の五〇%、軽被害が約四〇%になっている。」 つまり、被害のないところはたったの一〇%である。「とくに三町村の中で田植えが早く行われた神栖町に被害が集中、植付けの終わった七百七十六ヘクタールのうち塩害は四百七十五ヘクタール、六一%にものぼっている。常陸利根川沿いの同町鰐川、下幡木、沖洲地区では、全水田に被害が出ている。」この被害の状況は、委員長許可を得ていまここに提示いたしますけれども、大臣、いまここにあげるAというのが、これはどちらもけさとってきたのです。Aのほうは真水で実験的にやったもの、Bのほうは塩水が六二〇PPMのところなんです。いずれも五月五日に植えて、けさとってきたわけですが、被害のところは根がほとんど出ていない。真水でやったのは根が非常にすこやかに伸びておる。こういう被害の現状なので、大臣に一度見てもらいます。Aのほうが真水で、根を見てくださればわかるが、非常によく伸びておる。BのほうがそれだけのPPMのもので、根がほとんど伸びていなくて、活着しないで、やがて枯れていくという状態のものです。また、この中で、たとえば全滅されている地帯もあります。神栖町の人見嘉一郎さんは、一町五反の田が全滅してしまいまして、五月十二日、十三日、十四日と、きょうも植えかえておりますが、こに苗不足まで出てきてりおます。こんな全滅の状態までひっくるめております。  この状態を農林省は確認しているかどうか、これに対して何らかの対策を打ち出さなければならぬと思いますが、打ち出しているかどうか、まずこの二点を明らかにしていただきます。
  106. 松元威雄

    松元政府委員 ただいまの御質問の茨城県北浦周辺の塩害でございますが、これにつきましては、茨城県を通じまして報告をとったわけでございますが、茨城県の神栖町及び鹿島町地区の水田のうち、かんがい用水の塩分濃度が高いために、約五百十ヘクタールの水田において水稲の生育遅延を生じております。その状況といたしますと、通常では葉数で七、八葉となるべき水稲が四、五葉程度の生育にとどまっておる。こういうふうに稲の態様がいろいろございますが、一番典型的な形ではこのような状況になっているわけでございます。  したがいまして、これに対して、一つは技術的にどういうふうにしたら今後生育が順調にいくかという問題でございますが、生育のおくれております水稲に対する今後の方法といたしますと、塩分を含まない真水のかけ流し、こういうかんがい方法をする必要があると考えておるわけでございまして、とりあえず、まず、生育不良になっておりますものにつきまして、そういう指導を県を通じて県とも相談していろいろやっておる、こういう段階でございます。
  107. 津川武一

    ○津川委員 いま局長から聞いた被害は五百何ヘクタール、私がいま読み上げたところでは六一%、県の調査は三千ヘクタール、稲に非常に熱心な篤農家がこのままでいくと障害を及ぼすということで調べると六千ヘクタール、この現状の把握において違うと対策が違ってくる。そこで、私は、あさっての一般質問のときにまたもう一度お尋ねしますので、その時点までに農林省は直接調べて被害を明らかにしていただきたいと思うわけであります。これをひとつ答えていただきたい。  その次に、このままに過ぎるならばどのくらいの被害になるかという被害のいまの見当も明らかにしていただかなければならないと思います。この地区がどのくらいとれるか。いまのままで過ぎると七俵があぶない。農民は一生懸命になってこの犠牲を回復することにかかります。この農民の努力に報いなければならない。したがって、最終的にとれたときの収穫で事を論じてはいけない。農民は必死になってやるから、したがって、いまの予想でどのくらいになるかということをはかっておいて、農民の努力に報いることが必要だと思うのですが、現在、いまのままでの予想される被害というものの把握が必要だと思うのですが、この二点についてはいかがですか。
  108. 松元威雄

    松元政府委員 まず、前段の被害の面積と申しますか、態様についてでございますが、確かに、北浦の水がかりと申しますか、約三千ヘクタール程度ございますが、被害の態様と申しますか、被害の見方ということもございますが、私どもが県を通じて調べましたところでは五百十ヘクタールと出ておりますが、ただいまの御指摘もございますので、これはさらに県を通じまして、私たちも実態を正確に把握しなければならぬと思っております。  それから、第二段階で、このまま推移すればどの程度の被害になるかということですが、このままというのは技術的にかなりむずかしゅうございまして、もちろん、私たちは、生育遅延を少しでもよくするために、先ほども真水かんかがいのかけ流しと申し上げましたが、そういうこともしなければならないと思っておりまして、現段階でどの程度というように計数で申し上げられるか、これもしかとはわかりかねますが、これもあわせてさらに県を通じて調べたいというふうに存じます。
  109. 津川武一

    ○津川委員 局長は県について調べると言うけれども、農林省に調査機構があるでしょう。りっぱな、非常にすぐれたあの統計調査関係の調査機構を通じて調べたほうがもっと的確だと思います。この点はいかがでございますか。
  110. 松元威雄

    松元政府委員 もちろん、被害の場合に統計情報部の組織を通じて調べるということはございます。ただ、これは、タイミングと申しますか、時間の問題もございます。統計情報部のほうといたしましては一定の方法がございまして、もちろん統計情報部と打ち合わせをいたしますけれども、非常に短かい場合というより、いわば概況と申しますか、県の速報と申しますか、そういうようなものがスピードが速い点もございますものですから、これは調査の把握のしかたと申しますか、両方ございますから、双方を検討いたしたいと思います。
  111. 津川武一

    ○津川委員 そうすると、県を通じて緊急に調査するが、国の機構でも責任ある態度で調査する、こう受け取っていいですか。
  112. 松元威雄

    松元政府委員 これにつきましては、直接調査を担当いたします統計情報部とよく相談をいたします。
  113. 津川武一

    ○津川委員 相談して、やらないということになったら何にもならないので、やるという意味で調査するのか、いかがでございますか。
  114. 松元威雄

    松元政府委員 被害の実態の正確な把握が必要なことはもとよりでございます。問題は、その把握の方法でございますから、私、先ほど県の統計と申し上げましたが、この把握の方法につきまして、よりよい方法につきまして相談し、検討したい、こういう趣旨でございます。
  115. 津川武一

    ○津川委員 よりよい方法として農林省が直接持っている調査機構を使いますか。使う必要があると思いますが、いかがですか。
  116. 松元威雄

    松元政府委員 一般的に広範な被害と申しますか、その場合は統計情報部で調査いたしますが、私もちょっと細部の点をよく知らぬ点がございますものですから、なお相談いたしますと申し上げた次第でございます。
  117. 津川武一

    ○津川委員 農民が自分の愛する田を植えて、植えかえなければならぬというときに、被害が六〇%をこすというときに、範囲だけでなく質の問題があるので、私は、重ねて国の機構で調査することを要求して、問題を進めていきます。  そこで、局長はただいま真水をやるというふうに言いましたが、ぜひ真水が必要なんですが、利根川から真水を回しておりますか。井戸を掘って真水を回しておりますか。いまかけておる水は北浦からくみ上げた水なので、これは役に立たない。この二つの方法は考えているか、やっているか、いかがでございますか。
  118. 大山一生

    大山政府委員 先生の御指摘の意味がちょっとわかりませんけれども、要するに、いま水稲に支障を来たさないような方法として、地元において応急対策がとられております。そのとられております地元対策は、井戸の掘さくというようなかっこう、あるいは小さな、あの北浦のほうに流入する河川がございますので、それのせきとめ等によって水を確保すること、こういったような措置で応急対策が講ぜられておるというふうに理解しております。
  119. 津川武一

    ○津川委員 利根川から水をとって入れたことはありますか。
  120. 大山一生

    大山政府委員 利根川から豊水時に緊急に導入するという措置をとっていたわけでございますが、最近のように水位差がないということになりますと自動的に停止されてくる、こういうかっこうでございますけれども、要するに、対策の一つの大きな方法として利根川からの緊急導水という措置はとっておりました。
  121. 津川武一

    ○津川委員 四月十八日の時点ではとっておりました。いまはやめております。いま、活着で必要なときなのです。なぜ利根川からの導水をやめているのか、再開すべきだと思うのですが、これはいかがですか。
  122. 大山一生

    大山政府委員 これは建設省の所管の問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、水位差がないために停止されておる、要するに流れなくなっている、こういうことでございまして、水位差さえあれば当然に導入を続けていたであろう措置でございます。
  123. 津川武一

    ○津川委員 建設省はこれをくみ上げる装置を持っておりますか。
  124. 宮内章

    ○宮内説明員 先ほど農林省のほうから御説明がございましたように、四月半ばから利根川から一部緊急に霞ヶ浦方面に導水しているわけでございます。この導水にあたりましては、利根川自体の農業用水をはじめとする既得用水の問題もきざいますので、ある制限の中で取水をしていくというルールを立てざるを得ない。そのルールといたしまして、私ども、上流の布川地点を下流部の一つの基準地点としているわけでございますが、ここで毎秒二百トンを上回る場合に横利根川から取水するという基本的方針の中で取水しているわけでございます。したがいまして、布川が二百トンを割る日がございますが、こういう日には取水ができないということに相なりまして、現在まで延べ約十五日間ぐらいは取水しているわけでございますが、取水ができない日も何日かあるわけでござ  います。
  125. 津川武一

    ○津川委員 建設省に重ねて尋ねます。  利根川と霞ケ浦一帯について、あの付近の水系の水について、これは経済企画庁でもいいが、どんな配分になっておりますか。
  126. 鶴哲夫

    ○鶴説明員 霞ケ浦開発事業におきます新規利水量は毎秒約四十立方メートルを予定いたしておりますが、そのうち農業用水といたしましては、茨城県の石岡第一地区等の農地約一万八千二百ヘクタールに対しまして平均毎秒十五・一六立方メートル、それから千葉県の北総東部地区の農地約七千六百ヘクタールに対しまして毎秒一・四八立方メートルの水をそれぞれ供給することを予定いたしております。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  127. 津川武一

    ○津川委員 工業用水は……。
  128. 鶴哲夫

    ○鶴説明員 都市用水といたしまして、茨城県、千葉県、東京都に対しまして毎秒二十三・三六立方メートルを供給することを予定いたしておりますが、この配分につきましてはいまだ未定でございます。
  129. 津川武一

    ○津川委員 都市用水の中に工業用水は入っていますか。
  130. 鶴哲夫

    ○鶴説明員 工業用水及び上水道用水、いわゆる水道用水が入っております。
  131. 津川武一

    ○津川委員 農林大臣、聞かれたとおり、あの水系は、昔は主として農業用水として利用しておったが、今度水資源開発公団ができてから、そのうちの大部分、七〇%近いものは、農業用水でなく、そちらにとられている。農業用水が、工業用水、都市用水の二十三に対して十五、いま農民がこの緊急な状態にあるときに、取水計画に従って農地に、困っておる農民に水が流されない、これが農林省の態度である。私は、いまは、工業用水、都市用水等と相談して、一時そこのところが不自由していても、この活着のできない農民たちに真水をやるべきだと思うのですが、農林大臣、いかがでございますか。
  132. 大山一生

    大山政府委員 ちょっと技術的な問題になりますので私からお答えさせていただきますが、北浦から取水しております工業用水、上水道のほうも、塩分濃度が相当高いものが取られているという現状でございます。
  133. 津川武一

    ○津川委員 農林大臣、この活着できないで植えかえしなければならぬ農民たちに真水を差し上げること、そして、農業を守っていくこと、これが私たちの任務でもあるし、まして、農政の一線に立つ大臣の任務でもあると思うのですが、これは大臣としていかがなされますか。何か水を上げなきゃならぬと思うのですが、大臣の方針を聞かせていただきます。
  134. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 あなたのお話しと同じことが先ほど午前中に竹内さんからお話しがありまして、そこで、部分的なことでありますので、茨城県から事情を十分によく聞いて、その対策を間違えないように指導をいたしますとお答えしたのでありますが、突然のお話しで、私ども現状を全然存じませんので、お答えのいたしようがないわけでありますが、なるべく早くそれぞれ調査をいたさせるようにしたいと思います。
  135. 津川武一

    ○津川委員 大臣、調査も必要だけれども、調査の上で、水を流すという、そういうお気持ちがあるかどうか。これを重ねてお聞きします。竹内さんの質問も私は間接に聞いたのだけれども、そこのところはただ調査する、相談するというだけであるが、いま農民が求めているのは、農林大臣が水をやるんだという方針を持っているということで、これが大事なんです。いかがでございますか。
  136. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 実情のわからないものをいいかげんな返事をするわけにはいきません。よく調べてみて、その上で判断をしなければならぬと思います。
  137. 津川武一

    ○津川委員 大臣、私も実情を調べないで質問しているのじゃないのです。この間われわれは鹿島灘の付近を調査したのです。きょうは被害農民からの話を聞いて、そして被害をこのとおりあなたに報告しておるのです。そこで、あなたの方針として、調査してみて、もし突っぱねるということになったら——もし私がいま話したような状態だったら、もし、水をやる点について、それじゃ条件をつけましょうという状態だったら、水をやるためにあなたはどうされますか。
  138. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 事前に、こういう御質疑をなさることを通告しておいていただければ、事前に調査もできたでありましょう。きょうは肥料法の質疑ということで、いまの茨城県の話は聞いておりませんので、これは責任のあるお答えをせよというほうがかえって無理じゃないかと思います。
  139. 津川武一

    ○津川委員 だから、大臣、私が言ったような状態ならと、私も仮定をつけて一つ譲歩しているのです。もしこういう状態だったら、大臣、どうされますか。
  140. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 やはり、私どもは農林省でありますので、農林省のそれぞれの者がそれぞれの手配をいたして調べたものでなければ、軽率に判断をすることは間違いだと思います。
  141. 津川武一

    ○津川委員 私が現地の農民から聞いて指摘したことに対して、大臣は木で鼻をくくったような態度だというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  142. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御判断は御自由であります。
  143. 津川武一

    ○津川委員 そこで、真水の話ですが、もう一つは、井戸を掘っている。一生懸命農民がやっておりますが、この井戸を掘って真水を獲得している状況を農林省はつかまえておりますか。
  144. 大山一生

    大山政府委員 県からの報告として、一千個所ほど掘っているということを聞いております。
  145. 津川武一

    ○津川委員 大臣、あなたは先ほどわからないと言ったけれども、一千個所も井戸を掘っているのですよ。あなたは解釈は自由だと言っているが、ほんとうに適当な返事をしないでほしい。あなたの部下の局長が一千個所掘っているということを言っているのですよ。あえてこの点で私は論争を展開しませんが、あなたの態度だけ指摘しておきます。  そこで、今度は、井戸を掘っている実際の見積もり書なんですが、大洋村白鳥西改良区で、小沼住宅設備機器という会社が、四百二十八万五千二百円なりという見積もりで、そして、三分の一着工時点で払えというわけです。土地改良区がこのお金がないために井戸を掘りたくても掘れないのです。こういう井戸掘りに対して、補助、融資等、何らかの形で援助しなければいかぬと思いますが、いかがでございますか。
  146. 大山一生

    大山政府委員 午前中もお答えいたしましたけれども、地元において井戸を掘るというようなかっこうで応急対策がなされているわけでございますが、過去の例を調べてみますと、異常干ばつ等で全国的に非常に大きな被害が出たというようなときに、井戸の掘さくでありますとか揚水機の設置ということに対しまして臨時特例的な助成措置を講じたことはあるわけでございますが、このたびの北浦周辺の塩分遡上の問題につきましては、局地的な問題でもありますが、実態をよく調査いたしまして、県と連絡をとりながら対策に遺憾ないよう指導してまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  147. 津川武一

    ○津川委員 利根川から導水をするとか、井戸を掘っていまの問題を解決していかなきゃならぬという実情だと思いますので、ぜひそのようにやってくださるよう、その実施を強く要求します。  次は、枯れた苗の補給でございますが、ほんとに活着しないので、少しおくれたけれども、いまからでも間に合うということで、農民がもう一回植えかえようとしておりますが、この苗の補給はいかがなっておりますか。
  148. 松元威雄

    松元政府委員 これも県に報告を求めたわけでございますが、県の報告では植えかえの必要はみいと——この地域は本来早場地帯でございまして、これからやりますと品種も違ってまいるわけでございまして、そこで、生育はおくれているけれども植えかえの必要はないという報告を受け取ったものでございますから、もしも植えかえをするとなりますれば、それに対する措置も当然考えなければならぬと思っておりますが、目下の県の報告はそうでございますので、それと相談しながら措置いたしたいと存じております。
  149. 津川武一

    ○津川委員 それじゃ、重ねて指摘します。  局長、神栖町の人見嘉一郎さんは、一町五反歩の田が全滅して、十二日、十三日ときょう植えかえをやっております。これでもあなたは植えかえの必要はないという県の方針をのんで施策をされるのか。大臣流に言うと、わからないから調べてということになりますが、調べて、苗の不足が現実にあって、これを植えかえして——不足をしている現実を把握して、苗の援助をやるべきだと思うのですが、いかがでございますか。
  150. 松元威雄

    松元政府委員 先ほどから実態把握について御指摘を受けているわけでございますが、私も実態を把握いたしましてそれに応じた措置をとると——もちろん、その場合原因いかんにもよるわけでございますから、実態の把握と、そういうことを起こした原因は那辺にありやということをあわせまして、その上で県とも相談して措置しなければならぬということを申し上げたわけでございます。
  151. 津川武一

    ○津川委員 そこで、はしなくも原因は何かということが出てまいりましたが、次に移ろうと思っていて、ちょうどいいところに来ましたが、今度の原因は何でございますか。−このことに関係すると、農林省も、この水資源公団のこの地域に参加しております。通産省も参加しております。経済企画庁も参加しております。農林省、通産省、経済企画庁の順に、今度のこの事態の原因は何であるか、お答え願います。農林省からまずお答えください。
  152. 大山一生

    大山政府委員 塩分が遡上したということが今度の問題の根本的原因であるわけでございますけれども、現在、常陸川水門の操作規程というものは暫定的な規則によりまして開閉しているわけでございますが、ことしの場合には、昨年の暮れからことしにかけまして非常に雨が少なかったというようなこともありまして、結局、水深の深い北浦におきましては、塩分の滞留が多くて、そして高濃度となった。これがあそこの北浦地方におきますこの問題の起こった原因というふうに理解しているわけでございます。
  153. 津川武一

    ○津川委員 経済企画庁と通産省、建設省……。(「きょうは一般質問の目じゃないんだから、法案審議をやらないと困る」と呼ぶ者あり)
  154. 宮内章

    ○宮内説明員 先ほど農林省のほうから御説明がございましたように、昨年の暮れからことしの初めにかけましての冬季の降量が例年に比べますと異常に少なかったわけでございます。そういう、言うなれば異常渇水とでも申しましょうか、そういうものが今回の主たる原因になっているんじゃないかというふうに私どもは思っているわけでございます。
  155. 鶴哲夫

    ○鶴説明員 経済企画庁といたしましても、先ほど農林省及び建設省からお答えがございましたように、異常渇水が原因だというふうに考えております。
  156. 津川武一

    ○津川委員 どうやら自民党の理事から肥料法案で質問せいと言われる。私もそのとおりだと思うのです。はしなくもいまアドバイスしてくれたから、これはあさってまた続けるとして、そこで、農林省、建設省、通産省、経済企画庁に申し上げておきますが、水資源開発公団がこの水でやっているのは、上水道に毎秒二・五トン、工業用水に十六・六トン、農業用水に十五・二トン、合わせて三十四・三トンですが、このうち、農業用水にたったの四四%、工業用水に四八%である。いま農林省は異常渇水だと言ったけれども、この異常渇水の中で、依然として鹿島の工業団地の中には水が注がれておったわけです。そこで、こういう干ばつと同時に、この水の配分の問題に問題があります。水はだれのものかということについてあさってもう一度やりますので、通産省も、経済企画庁も、建設省も考えていただきたい。そして、この件で、逆水門の操作においても建設省に問題がありますので、あらためてそれはやるといたしまして、その次に、この被害をどういうふうに救済するか、これもあさってやりますので、それぞれの官庁で考えてきていただきたいと思います。  そこで、坂村理事が盛んにそう言うので、それでは肥料法案に入っていきますが、大臣、私たちの農業は、水田にたとえて言うと、いま機械で耕起して、機械で刈り取る、これが一つ。二つ目には、コンバインで刈ったあと、またビニールで結ぶなどというビニール、肥料、農薬——ここには石油、石油製品がかなり入ってきておる。したがって、私たちの農業というものは、鉄工機械と石油を中心とした重化学工業がかなり入り、しみ込んでおる。その結果、かりに石油資源に問題があるとすれば、田植え機の箱がだめになる。苗しろをつくるビニールが入らなくなっていく。除草剤のものが入っていかなくなる。肥料、農薬と、どこで一角がくずれてもたいへんなことになるという状態である。したがって、この機械や肥料、農薬、資材というものの確保のために私たちは全力を注ぎますが、この中で肥料について申しますと、この間農用地開発公団の法案が通過して法になって公団ができたので、私は、根室、釧路の周辺を、現地の農民がどんな態度で迎えているかとこの間調査に行ってみましたら、異口同音に出てきているものは、採草地の酸性化で土壌が衰えてきているということです。東北地方ではわら焼きが非常に盛んで、稲を刈ってしまったあと、一ぱいにわらが焼かれている。そこで、堆肥厩肥がなくなっておって、病虫害に弱い。寒冷に弱い。これを今度は農薬で埋めているという農業が始まっております。いま、私の郷里のリンゴ畑の下にはタンポポが非常にきれいに咲いております。もののみごとなんです。これがいけないのです。タンポポは酸性土壌によくはえる。したがって、タンポポの咲く年は土壌がよくないということが言い伝えられております。私たち小さいときにわれわれの郷里で言われたところの一反歩六俵が、いま十俵から十二俵あがります。これは化学肥料によって大きく前進した。これは非常に大事なことです。私たちも化学肥料の安全なる恒常的な安い支給というものに全力をあげてつとめなければならぬと思うのですが、それと同時に、地力がこの化学肥料で衰えたということが大事になってまいりました。  この間参議院で参考人の話を聞いたのですが、その話を聞いてみると、日本で有数な米をあげる人たちはかなり大量の堆厩肥を使っておる。私たちの津軽平野では十アール当たり三トンもあぶない。ところが、稲作日本一などという人たちは二十二、三トン使っている。こういう大勢なんです。だが、私たちの東北では、現金収入がなければ生産と生活ができていかない。そのためにわらを焼いて出ていってしまう。出かせぎや賃労働に出ていく。ますます悪循環が始まっております。  そこで、化学肥料を使うと同時に、地力を養うために、単作地帯ではわらを、果樹地帯でもそういう堆厩肥料を、草地、酪農畜産地帯では畜産動物のふん尿などを、ということを考えて、これを土地に返さなければならぬと思いますが、農林省の方針を聞かせていただきます。
  157. 松元威雄

    松元政府委員 土地生産性を上げますためには、化学肥料はもちろん必要でございますが、同時に、それだけではなくて、有機質肥料の還元が必要であるということは御指摘のとおりでございます。しかしながら、従来は堆厩肥の還元ということが相当あったわけでございますが、ただ、最近の情勢といたしまして、農業労働力の不足ということが基因いたしまして、いままでのように堆厩肥をなかなか投下しない、量が減っている、そういう傾向は確かにございます。  そこで、堆厩肥をつくるのにかなり労力もかかるわけでございますから、そのかわりに稲わらの施用ということも私どもは指導しているわけでございますが、これまた限度がございまして、多少はふえておりますが、従来の堆厩肥の減少をカバーするほどにはふえておらないという状況にあるわけでございます。そこで、私どもといたしますと、何とか有機質肥料を地力に還元しなければならぬと思っているのでありますが、肥料成分といたしますれば、それは化学肥料の成分が多いわけでございますし、単に窒素、燐酸カリ、その成分に置きかわるという意味だけではございませんが、しかし、堆厩肥をやりますれば、窒素、燐酸カリ、石灰微量要素、こういった養分が農作物にゆるやかにかつバランスよく供給されるという利点がございますし、それから、また、堆厩肥等が土壌中で分解して生成いたしまする有機酸が土壌の団粒化を促進する。その結果土壌に好影響を与えるということもございますし、それから、また、御指摘にございましたが、有機酸は土壌の酸性化を押える。土塊の性質悪化を防ぐ役割りもございますし、土壌中の微生物の活躍も高まる。こういう利点がいろいろあるわけでございます。したがいまして、何とか有機質肥料を地力に還元するようにというふうに思っているわけでございますが、やはり、一番むずかしい問題は、農業労働力不足に対応して、これをどのように実現していくかということだろうと存じます。  一方では、畜産のふん尿処理の問題がまたございます。したがいまして、いわば畜産のふん尿処理とあわせて地力の培養にそれを活用するということ、それから、また、なまわらの利用をもう少し進めるということ、同時に、あまり手間のかからない方法で堆厩肥をつくる方法は何かないだろうかということ、そういうことを模索しているわけでございまして、これにつきましては、まだ一般に普及し得るような技術的方法は必ずしも解明できておりませんものですから、同時に技術的な試験研究も必要でございますが、いわば簡単な機械を使いまして、まとめて、個々の農家ではなくて、農家がまとまって機械を使って堆厩肥をつくるということも部試作ができておりますものですから、そういうものにつきまして実験事業を始めるということで本年度から着手をいたしている。こういうことで、いろいろな手段を尽くしまして有機質肥料の地力還元を進めてまいろうという考え方でございます。
  158. 津川武一

    ○津川委員 そこで、北海道の酪農地帯、畜産地帯から横浜などの都市近郊農業に私は入ってみましたが、そうすると、主として豚、鶏というような酪農ですが、あのふん尿を公害処理している。大地に返すのではなくて、処理して捨ててしまっている。この公害処理のしかたというものを、逆に大地に返すような具体的な対策、試験研究やいろいろなものをやる必要があると思いますが、これが一つ。  それから、私の郷里の東北地方でなまわらを焼ているのを私はよく見ておる。なぜこれを、堆肥にしないかというと、いま言われているように、労働力がないために、かせぎに行かなければならぬために焼いている。しかし、市町村なり、農協なり、何らかの農業団体がこのわらを集めに来てくれて、それを堆肥、厩肥としてつくる装置をつくって、春になってもう一回ここに運ぶという形を整えるならば、そのための費用などというものは出かせぎや賃労働で得たもので十分払える。具体的にこういうところに来ているんです。この畜産地帯における公害の防除費用、駆除費用を大地に返すように切りかえる、いまの稲わらを、そういうふうに委託を受けて持っていった稲わらの量に配分してまた戻す、これだったらやれそうなんですが、こういったことのお考え、御検討についてはいかがでございますか。
  159. 松元威雄

    松元政府委員 御指摘のように、ふん尿は、従来は公害処理の観点のほうが強く出たわけでございますが、単純にそれだけではなくて、これを有効に土地と結びつけられないだろうかということですが、従来も、公害処理という点では、たとえば構造改善事業等におきましても、ふん尿の処理とということの事業を助成対象にしたものもございまして、うまく使っている例はございますが、さらに一歩を進めまして、いわば畜産農家と畑作農家とを有機的に結びつけまして、お互いにいいような方法はないだろうか。これにつきましても、たとえば私どものほうで畑作の団地の営農の特別事業のような助成をいたしておりますが、その中にも、そういうメニューとして組み込んでいる。そういうことで畜産と畑作とを結びつけて、有効に双方がうまくいくように活用していくという仕組みを考えまして、一部助成事業に仕組んでいるわけでございまして、それが広範に広がることを期待いたしているわけでございます。  同時に、もう一つは、水田へのいわば能率的な堆厩肥づくりと申しますか、これでございまして、その点は先ほどもちょっと触れたわけでございますが、問題は農家個々ではなかなかむずかしい。そこで、農家のいわば生産組織と申しますか、集団と申しますか、それらによりまして、たとえばマニアローダーというような機械力を使いまして能率的に堆厩肥の生産ができないだろうかということで、これにつきましては一応試作品もできているものでございますから、これを四十九年度から一つの実験事業といたしましてやるというふうにいたしておりまして、この辺の成果を見ながら、さらにそれを推進してまいりたいというふうに存じているわけでございます。
  160. 津川武一

    ○津川委員 いま私が稲わらで一つの例を出してみたんですが、これに対しては局長はどうですか。やってみたらおもしろいと思いませんか。
  161. 松元威雄

    松元政府委員 私、先生の御指摘のそれの技術的な中身は詳細存じ上げませんが、どうも、お話しを承りますと、私が申し上げましたところの、生産組織によって、稲わらについて、マニアローダー等の機械を使いまして能率的に堆肥をつくるという、そのポイントでは合っているのではあるまいかと思います。技術の中身は多少違うかもしれませんが、要は、集団的にまとまって機械力を使って能率的に堆厩肥をつくるということ、これが一般的に広まるようなことはどうやればできるかということですが、一つは有効な能率的な機械の発明、これは目下試作品がございますが、それをもっと改良することだろうと存じます。そうして、それが非常に有効だということがわかりますれば、これはおのずから広がっていく。そういうことの効果を期待いたしまして、どうもねらいは同じではなかろうかとそんたくいたしておりますが、それを技術的に固めて推進するということが大事だと存じます。
  162. 津川武一

    ○津川委員 その次に、土地改良と土壌改良の関係です。ちょうどいま津軽平野で約一万ヘクタールの国営、県営の土地改良が行なわれておりますが、ちょうど表土を取っていく、そのときに、同時に土壌改良ができないかということなんです。いまの土地改良法では、区画整理をどうするとか、農道をどうするとか、用水をどうするとか、主として物理的なものなんです。ところが、いま農民がせっかく土地改良をやるときに求めているものは、酸性の土壌を直すという科学的なもの、その地力が持っておる酵素的なもの、その地力が持っている細菌的なバクテリア的なもの、こういうことで、こういうものの同時改良が行なわれるならば非常によろしい。リンゴで言うならば、先ほど話したとおり、酸性土壌になって、いまタンポポが下に非常にきれいに咲いていて、詩人が見たらきれいだけれども、農民は泣いている。これを改植するときに酸性土壌を直す土壌改良というものが同時に入らないか。土地改良でやると国庫補助がたくさん出ていく、補助残が出ていく、長期、低利のお金が出ていく。土壌改良で今度石灰をぶち込むときには、補助があっても、ほとんどないにひとしい。資金は短期の資金、これでできない。したがって、せっかく土地基盤整備をやるときに、土地改良法の中に、科学的な、酵素的な、バクテリア的なそういう土壌改良を——リンゴ園の中で改植するときの土地改良にそういう酸性化を直す土壌改良を入れることをいま何よりも望んでおります。実際に大蔵省に当たってみると、大蔵省は、形の残る、償却のできる、財産が残るものには国が出してもいいけれども、土壌改良には出せないと言って渋っている。こういうことが実態で、この点でおそろしく土壌改良がおくれております。これに対して、土地基盤整備をやるときに同時に土壌改良をやるべきだ、くだもので改植するときに同時に土壌改良をやるべきだ、この点が一つだが、いかがでございますか。
  163. 大山一生

    大山政府委員 土壌改良の石灰とか珪酸カルシウムといったものの施用でございますが、これは耕土培養法に基づいて実施するというふうなたてまえで、したがって、農業改良資金がそれのいわば手当て資金というかっこうになっているわけでございまして、土壌改良というものが一筆、一筆の圃場で各個人が行なうことができるものであるということから、それ自体として土地改良事業で行なう性格のものではない、こういうふうに理解しているわけでございます。  ただ、では全然やっていないのかというお話しになりますと、農地開発事業でありますとか、草地の開発事業であるとか、こういったようなものにつきましては、土壌が非常に不良であるということのために、土壌改良を行なわないと作物の生育が著しく不良となるというような場合についてはいままでも行なっておるわけでございます。ただ一般の耕地の土地改良事業ということになりますと、これは原則的に見て耕地が熟田畑化しているというようなことでございますので、その場合においては、土壌改良というものは栽培管理の一環として行なわれるという性格づけのものであろう、したがって、先ほど申しましたような、農地開発あるいは草地開発といったようなもの以外は土地改良事業の中でやるわけにはまいらぬというふうに考えておるわけでございます。
  164. 津川武一

    ○津川委員 著しく不良の土地と言うが、だが、日本の農業振興するためにいま求められていることは、これだけ長いこと化学肥料を使って土地が酸性化したり、いろいろな問題が出ているときに、国政の場として、土地基盤整備と同時に土壌改良をやることがぜひ必要だと思うのです。この点は異論あるまいと思いますが、いかがでございますか。
  165. 大山一生

    大山政府委員 農地開発なり、草地開発という場合には、これは要するに作物の生育ができる様態まで持っていくというのが土地改良事業の使命になるわけでございますので、そういう場合に限っては、これは土壌改良事業も含まれてくる——土壌改良事業と申しますか、石灰だとか、炭カルだとか、こういうものの施用がその中の一つとして入ってくるということでございます。ただ、一般の土地改良の対象になるような熟田畑の場合においては、これは個人個人が本来的に行なうべき筋のものであるから、それはそれ自身として、土地改良事業とは別の問題として対処せざるを得ない、こういうことを申し上げておるわけでございます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  166. 津川武一

    ○津川委員 局長は、リンゴの畑が酸性土壌になったとき、農民が実際に土壌改良をやっている実態を覚えているかどうかわからぬけれども、いま一生懸命リンゴの手入れをしている。そして、やや手が浮いたときには七月で、そこで土壌改良するために機械で土壌をぶち込む。そして、それに今度は石灰をぶち込む。暑いときに非常な労力なんです。汗びっしょりになるんです。そこに石灰が吹き込んで、皮膚がただれてしまう。こういうことを局長は、農民個々人がやるべきものだなどと言っている。だから、やはり、改植したときなんかは、土地改良として、そういう形で土壌改良しなければならないという実態なんです。したががって、一番いいことは、日本の土壌というものをよくする意味において、土地改良法というものをこの際ほんとうに考えて、土地改良法に従って土壌改良ができるように——いままでそうだったから、土地改良法の現行がそうだからというのではなくて、これは一度検討してみる必要があるかと思うのです。ほんとうに個々の農民がやるべきだと言うなら、一度七月のねぶたを過ぎたころ、七夕を過ぎたころ、まじめな人たちがやっておる土壌改良を見ていただきたいと思うのです。現行の土地改良法というものはそうだということがわかる。そこで、何らかの考え方を変えて、土壌改良をこの土地改良法に組み入れるべきであるということを私は重ねて皆さんに要求し、また、実情を局長に一度見てもらってまた質問を続けることをここで明らかにして、次に進んでいきます。  尿素価格ですが、ナフサは四十八年十月には一〇〇であったものが——皆さんの尿素価格を上げたという計算は私もいただきましたが、昨年の四十八年十月が一〇〇で、四十九年一月の見込みは一六七。この見込みで一六・三%の値上げをやったというふうに、私は農林省と通産省からこの間の予算委員会でも説明をいただいた。ところが、日本銀行の卸売り物価指数によると、ナフサは四十八年十月は一二九、四十九年一月には一九七。四十八年十月の一二九を一〇〇とすれば四十九年一月は一五二。農林省と通産省が尿素の値上げをするときにナフサの値上がりは一六七、日銀の統計によるとこの値上がりが一五二、この分だけが便乗値上げではないかということなんです。尿素をつくるための重油は、四十八年十月一〇〇で、農林省と通産省の値上げしたときの資料では、四十九年一月一五四。同じ重油を日銀の卸売り物価指数で見ると、四十八年十月を一〇〇にすると、四十九年一月は一三二です。もう一回繰り返します。尿素の場合、ナフサは一六七と見た。日銀が一五二と見ている。重油は、農林省と通産省は一五四と見た。日銀は一三二と見ている。したがって、この分だけの便乗値上げになるわけです。農林省と通産省の言ったとおりにやると、尿素の値上げの場合、ナフサが九・八、重油で四・三、包装材料で二・九、これで一七・〇それを一一六・三%に押えた。私がいま指摘したところの日銀どおりで数えていくと、答えがかなり変わってきて、一六・三%でなく一三・三%、この間明らかに三%の便乗値上げがあって、これを尿素の実際の値段に比べてみると、二十キログラム五百七十五円を六百六十九円にしたが、これは実際十八円ばかり便乗値上げした、こういうふうに私は試算してみた。したがって、この分だけやはり便乗値上げさせた、この分だけ引き下げるべきだ、こう思いますが、農林省と通産省、この私の見解どおりであるかどうか、説明を願います。
  167. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 私のほうから先に御説明申し上げたいと思いますが、ただいまの先生の御指摘のナフサと重油の本年一月の改定の際の値上がりの見通しの問題でございますが、御指摘のように、ナフサにつきましては、十月を一〇〇といたしますと一六七になるであろうという想定で、十二月の値上げ交渉の際の尿素価格、コスト算定の基礎を考えたわけでございます。ところが、その後の日銀の卸売り物価指数が発表になりますと、御指摘のように、確かに、私どものほうが調べましても、一月で一五二・九という数字になっているわけでございます。これは、実は、十二月段階で一月以降のナフサの価格がどうなるかということにつきましては、十月の価格並びに一月以降の価格の見通しにつきましては、メーカーからこの数字を聞いた段階では、確かに、それを全部平均いたしますと十月に対して一六七になるというわけであったわけでございますが、これは一つの見通しでございます。日銀のほうは、結果としまして、一月のものをとってみたらこういうことになったということでございまして、したがって、見通しと結果の間に若干の違いがあるというのはやむを得ないことかと思います。  それから、なお、両者の数値を正確に比較しますと、ナフサの一月の見通しにつきましては、尿素メーカーからとったものでございますが、日銀の卸売り物価指数は、従来から一定のしきたりがございまして、特定の卸業者からとっておるものでございますので、その若干の違いというものもあるかと思います。いずれにいたしましても、推定と実績、尿素メーカーの推定と、日銀の卸売り物価みたいに特定の卸業者からの数字ということで、幾らか対象も違うということで、数字の違いは出てくると思います。  ただ、御指摘のように、一六七と一五二でございますが、この違いがすなわち便乗的なものではないかということは、この数字だけをとりますと御指摘のような御意見も出るかと思いますけれども、これは先ほど来申し上げましたように、一つの推定と実績との違いでありますが、なお大事なことは、一月時点におきましてかりにこうでありましても、その後ナフサの価格につきましては、御承知のように、三月十八日からキロリットル当たり八千円の値上げが認められたわけでございまして、三月十八日以降現在もそうでございますが、それにもかかわりませず、尿素価格については、その三月十八日以降のナフサの値上げというものは全然考慮しない。少なくとも今肥料年度内は、三月十八日値上げ以前のナフサの価格をもとにしたコストで生産をしてもらって、それを全農に納めてもらうということで措置いたしておりますので、かりにこの一月時点でこういう数字の違いがあって、計算上少し上げ過ぎではないかというようなことが言い得たといたしましても、その後の、三月十八日以降のナフサの値上げという実態から考えますと、その分の数字の違いはもう当然帳消しになっておるというふうに考えるべきかと思います。
  168. 松元威雄

    松元政府委員 基本的にはただいま通産省から御答弁申し上げたとおりでございますが、一月以降、当時は石油関係の価格がかなり流動的でございました。したがって、私たちといたしましても、もちろん正確な見通しを得るために極力努力いたしたわけでございまして、先ほどの日銀卸と実際の取引価格との統計的な技術的フレと申しますか、そういう問題ももちろんございますけれども、それ以外に、関係者から極力正確な見通しを聞いたわけでございます。しかし、多少流動的でございまして、結果的には若干のギャップを生じたわけでございます。したがいまして、もしもそれが大きく累積して、非常な高い価格であったということが事後的に発見されればもちろん是正しなければならぬわけでございますが、同時に、その後の価格変動もございますし、先ほど申しましたとおり、三月以降の石油関係の値上げに際しましても、本肥料年度中は価格は上げないという措置をいたしまして、結果といたしましてこの価格でやむを得なかったというふうに存ずる次第でございます。
  169. 津川武一

    ○津川委員 畜産のえさの場合、トン一万一千百円上げて、レートの問題で取り過ぎているというので返しましたね。三月後にどうなろうかわかりませんけれども、あの物価狂乱で、国民の立場から言うと不当な値上げ、便乗的な値上げ——間違いがあっても、よけい負担をかけて物価を上げるようなことは厳に戒めなければならぬときに、結果から言って、実績から離れて上げるような試算を農林省と通産省はしたわけですね。したがって、三月以後の問題はあとでまた問題にしますが、ここはやはり一度節を正して、あのえさの場合みたいな還元措置を講ずるべきでありませんか。これがいま物価で苦しめられておる国民に虚心たんかいに農林省がこたえる態度と思うのですが、いかがでございますか。
  170. 松元威雄

    松元政府委員 御指摘のように、コストの把握につきましては極力正確を期さなければならぬということはそのとおりでございまして、確かに、一月ごろ、当時は流動的でございましたが、結果的に若干違っておる面がございます。しかしながら、それを毎月毎月きちっと精算するというのが適当なのか一そうではなくて、それが異常に累積して非常に大きいといった場合には再検討も必要でございますが、たまたまその時期に、三月以降の値上げの問題もございましたし、彼此勘案いたしまして、今肥料年度を通じまして一六・三%の値上げはやむを得ないというふうに考えておるわけでございまして、逐一きちっと計算するというのも一つの方法でございましょうが、毎月毎月の動向と全体を通じまして、コスト上からこれはやむを得ないという判断をいたしたわけでございます。
  171. 津川武一

    ○津川委員 大きな金額でなければと言うけれども、日本の農民が使う尿素十万トン、二十キロで十八円、かなり大きな金額になる。いま国民が物価高でもう頭にのぼっておるときに、あえてこの措置を見込み違いだといえどもやった、そこのところは正すべきだと思うのです。このことを私は強く要求しながら問題を進めていきます。  予算委員会の分科会で私は通産省に要求した。中曽根通産大臣は、連産品の価格構成を一つ一つ経費別に、要求があれば出してみてもよろしいと——私は出せと言ったんだが、これは通産省でどう計算しておりますか。
  172. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 硫安のコスト算定の際に、御承知のように、現在は回収硫安のウエートが非常に高まっておりまして、かつてのように合成硫安の量というものはきわめてわずかなものになっておるわけでございます。  そこで、いま先生から御指摘のように、回収硫安のコスト算定の際に回収硫酸の価格をいかに考えるかという問題でございますが、実は、回収硫酸の評価の問題というのは理論的に申しますと非常にむずかしい問題でございまして、生産工程から見ましても、カプロラクタムから出てくるもの、あるいは酸化チタンから出てくるもの、その他合成樹脂から出てくるもの、いろいろな生産工程がございまして、出てきたものはその工程別にその品質がかなり違ってくるかとも思います。そこで、実際にいまコスト算定の際に農林省並びに通産省でやっておりますのは、各メーカーから出す評価をメーカーの自主的な判断にまかせておるわけでございます。  結論から申し上げますと、メーカーによりまして、通常の硫酸を新しく買うものと同じような評価をしておるところもございますし、青酸等から出てくるものにつきましては評価をゼロにしておるところもあるわけでございます。いろいろな評価のしかたをしているメーカーがございますけれども、それらを平均いたしますと、結果としましては、大体三割ぐらいの評価ということになるわけでございます。極端なことを申しますと、一回ほかの触媒とかあるいは試薬とかで使ったものであるから、その廃酸というのはゼロでもいいではないかというような極端な御意見もあるかと思いますけれども、しかし、すなおに考えてみますと、廃酸といえども、それはそれなりの経済的な価値があるものでございますので、適当な評価をするのが妥当ではないかと考えるわけでございます。  しかしながら、これを理論的に考えて、一体いかなる評価が正しいかということは緊急を要する問題でございまして、実は、午前中も私どもお答え申し上げたわけでございますが、生産工程ごとに理論的な評価のあり方というものを少し検討する必要があるのではないかと思っておりまして、そういう方向に向かいまして着手をいたしたいと考えておるわけでございます。
  173. 津川武一

    ○津川委員 私は、ことしの二月二十二日の分科会で、原価をメーカーが自分たちの考えている恣意によって適当にきめるのはいけない、連産品の原価計算を一度してみろと要求したら、中曽根通産大臣は、原価計算というものを一度やれという指摘であるならばやってみると言ったが、これはいまおやりになっていますか。いま局長が言ったみたいに、そういうものを個々の企業なりがいろいろやらなきゃならぬ。これをやらなければ尿素硫安価格もほんとうにならない。国会の場で私に答えたことをやっているかやっていないか、これを明らかにしてください。
  174. 兵藤節郎

    ○兵藤政府委員 ただいま局長から申し上げましたように、連産品理論につきましてはいろいろの説がありまして、その使用価値によってこれを判断するとか、あるいは主産品と副産物との間でコストを割り掛けるとか、いろいろな説があるわけでございます。現在のところ、各メーカーはそれぞれの判断によって実績原価報告を出しておるわけでございますが、これらについては、われわれのほうといたしましては、統一ある考え方で出てきた報告を精査していくということで、現在、四十八年会計年度の実績原価につきまして調査をやっておるところでございます。その調査にあたりましては、いまの先生のお話しの点も十分加味しましてやっていきたいと思っております。
  175. 津川武一

    ○津川委員 そういう答弁を求めているのじゃない。連産品の価格構成を尿素硫安についてやってみると言う、やっているかと言う、これだけなんです。いかがですか。
  176. 兵藤節郎

    ○兵藤政府委員 私がお答え申し上げましたのは、先生の御趣旨を加味しましてやりましょう、と、こういうことを言っておるわけでございます。
  177. 津川武一

    ○津川委員 硫安尿素原価報告書作成規程というのがありますが、いま、局長も兵藤審議官も、向こうの報告に基づいてやっていると言う。今度の法律の中には、硫安尿素原価報告書作成規程というのがあります。そうすると、この規程はほごにされているのですか。
  178. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 連産品の評価につきまして、いろいろな生産工程から出てくるものがございまして、物はそれぞれ違うわけでございますが、これにつきまして、理論的に統一的な基準というものはなかなか出しにくいという事情がございまして、各社が評価しているものをそのまま一応是認をいたしておるわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、これは生産工程によって違ってまいりますが、その生産工程別に理論的な基準というものを考慮する必要があるということで考えておるわけでございます。ただ、会社によってまちまちではありますけれども、結果といたしましては、新しく買う硫酸の価格に対して大体三割ぐらいの評価ということでありますので、総体として見ますと、まず妥当なところではないかと考えておるわけでございます。  それから、連産品につきましては、ただいま申し上げたようなわけでございますが、その他の明確にコストの把握できるものにつきましては、当然原価表を提出させ、かつ、現場調査もやっておりまして、その段階におきまして、水増し等があるものは査定をいたしておることはもちろんでございます。
  179. 津川武一

    ○津川委員 硫安尿素原価報告書作成規程に従って、硫安尿素価格をとったことはありますか。
  180. 兵藤節郎

    ○兵藤政府委員 政府のほうといたしましては、前会計年度の実績原価の報告を各メーカーに求めているわけでございますが、その際、各メーカーは、いま先生からお話しのあった硫安尿素原価報告書作成規程によってコストを計算して出すことになっております。この作成規程によりますと、いまの連産品の評価をどうするか、回収されてくるところのアンモニア、回収されてくるところの硫安母液、回収されてくるところの硫酸、これをどう評価するかということは各社の評価による、こういうことになっています。この各社の評価によったものを政府のほうといたしましては加重平均をしまして、こうこうだというふうな結果を出しておるわけでございます。
  181. 津川武一

    ○津川委員 副産物の評価をどうするか。それから、いろいろなことで問題があると思いますが、規程があるわけです。これを各社がまちまちだという、そういう規程でいいかどうか。  局長、規程があるわけです。この規程で、回収品が、副産物がどうあってもいい——一体、各社からとったものを、国の規程であるので、秘密文書ではないと思う。その規程で各社が、大手メーカーがやったものをわれわれに公表することが、いま、国民の物価に対する気持ちをやわらげ、農民を納得せしめるための何よりの道だと思うのですが、この点はいかがですか。その規程に照らして、そういう連産品の価格をどう扱ったか、これは規程だから必ず報告があるわけです。各社によって副産物をどうしたか、回収率をどうしたかということがあるわけですが、この点、秘密文書でもないので、その規程をどうやったか、各社の報告を私たちに提示していただきたい。
  182. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 規程によりますと、連産品の評価につきましては、各社の評価によるということになっておるわけでございます。出てきたものにつきまして、これは各社別となりますと、いろいろ各社の企業秘密等の問題もございますので、それを提示することについては問題があるかと思いますが、全体を平均いたしましたものにつきまして、しかるべき形で御説明申し上げることは可能かと思います。
  183. 津川武一

    ○津川委員 国の規程でとったものが何で秘密になりますか。当然公開すべきだと思うのですが、いかがですか。
  184. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 法律に基づきましてとるものでございますけれども、その中身は各社個別の問題になりますと、これが各社の企業秘密という部面もございますので、これをそのまま外に出すということについては問題があるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  185. 津川武一

    ○津川委員 問題があるとすれば、農民に不当に高い肥料を押しつけてきているという問題があるかもわからぬけれども、農民にとって、国民にとっては、まさにこれこそ要求をしているものであります。その点はまた質問や論争が続いていくと思いますが、もう少し進めていきます。  硫安のコスト計算書、皆さんからいただいたやつ、これによると、購入アンモニアのアップ率が三・八%、製造アンモニア分が五・五%のアップ、これが皆さんのものです。ところが、購入アンモニアは四十八年の十月に対して一七七・一、製造アンモニアは一三三・四、したがって、購入アンモニアをよけい使っているところの会社の硫安が高くなる。自分で製造しているところが安くできる。  そこで、購入アンモニアを使っている企業がどのくらいございますか。
  186. 兵藤節郎

    ○兵藤政府委員 購入アンモニアを使っているメーカーがどれだけかということは、いま手元に数字を持ち合わせておりませんですが、大部分が自家製造のアンモニアを使っている、こういうことでございます。
  187. 津川武一

    ○津川委員 大部分が自家製造のアンモニアを使っておる。この大部分に対して、購入アンモニア一七七という、こう値上がりしたものを加えて硫安のコストを計算している。そうなってくると、大部分の会社がぼろもうけをしているわけです。この購入アンモニア価格構成の中に四・九プロ、五プロもぶち込んでいる。ここのところに非常に問題がある。重油は二・四%ぶち込んでいる。購入アンモニアを何にも使っていない会社に、購入アンモニア分として四・九プロ、五・〇%ぶち込んでいる。ここにも大企業への偉大なるサービス、農民に対する過酷な収奪を見るのでございますが、この点はいかがですか。何と釈明されますか。
  188. 兵藤節郎

    ○兵藤政府委員 製造アンモニアを使っているのは多いわけでございますが、足りないものについてはよそから購入アンモニアとして買っている、こういう現実があるわけでございます。その購入アンモニアについても、評価して、値上げの要因として認めた、こういうことです。
  189. 津川武一

    ○津川委員 購入アンモニアを評価することは、私は反対ではありません。だけれども、ほとんどの会社は購入アンモニアを使っていないというのがいまの答弁だ。使っていない会社に、使ったといって四・九%も、一七七%もアップ分を値上がりを認めて、硫安価格をきめているから問題だと言う。しかも、これが独禁法を排除してきめでいるから問題になるんだ。いかがでございますか。
  190. 兵藤節郎

    ○兵藤政府委員 各メーカーによりまして、購入アンモニアを買っているもの、それから自家製造でやっているもの、と、いろいろあるわけでございますが、それらを通計しますと、購入アンモニアと総コストに対する割合が三・九、こういうふうになっております。この点から見ますと、私には、その大部分が自家製だと言いましたが、ややことばが過ぎるかと思います。
  191. 津川武一

    ○津川委員 兵藤審議官が何と抗弁しょうが、購入アンモニアをほとんど使っていない会社に、その硫安の経費の中に五プロ近いものがあるとして、これを一七七%という値上げをしてサービスをしているという事実は隠し得ないと私は思います。したがって、これを今度の法律で擁護していることは、まさに大企業中のトップのトップグループをこの法律のカルテルで守っているというふうなかっこうになるので、これはたいへんな話ですし、いい話を伺いました。  その次に、内需が高くて輸出が安い。この原因は何ですか。
  192. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 輸出価格国内価格につきましての答弁を申し上げます前に、先ほどの件について申し上げます。  購入アンモニアが三・九%あることは事実でございまして、この法律を延長することによって大企業擁護になるという先生の御指摘でございますけれども、これは原価報告の査定その他についての政府のあり方の問題でございまして、購入アンモニアにつきましてはいま申し上げたようなことでございますが、その他の点につきましても、政府としては、企業から出てまいりました原価報告につきましてきわめて厳正な態度でこれを査定をし、いささかも便乗的な要素をなくするようにするというのが農林省並びに通産省の基本方針でございますので、当然、今後のこの法律の運営につきまして、コストにつきましては厳格に査定をしていくということでございます。  なお、輸出価格国内価格の問題でございますが、国内価格につきましては、全農とメーカーとの話し合いによりまして硫安尿素価格をきめておるわけでございます。その際に、生産費等の事情中心にいたしまして、両者の間で話し合いが行なわれるわけでございます。従来、アンモニア設備の大型化が第一次合理化並びに第二次合理化ということで、三十九年から四十六年の間にわたって行なわれたわけでございますが、この設備の大型化並びに合理化によりましてコストはかなり下がったわけでございます。このコスト低下分のメリットというものは肥料価格に反映されまして、これが農民への肥料価格引き下げということで貢献をしておると考えるわけでございます。  なお、輸出につきましては、国際的な需給関係によりまして価格がきまっていくわけでございます。現在までのところ、長い期間にわたりまして輸出価格のほうが国内価格よりも安かったというのは事実でございます。特に、四十六年当時は世界的な肥料需給の緩和時期でございまして、輸出価格というのは国内価格に比べまして非常に大きな差があったわけでございますが、ところが、昨年の末以降、肥料の国際的な需給情勢というものが非常に変わってまいりまして、現在でも、中国はじめ東南アジア諸国わが国に対して輸出の要請が非常に多うございまして、加えて、最近は、中近東の産油国におきましても日本に対する引き合いが多いわけでございます。かたがた、欧州、アメリカ、日本におきましてもそうでございますが、供給能力のほうがそれほど大きく伸びないということがございまして、国際的な需給関係は急速にタイト化いたしておりまして、それを如実に反映いたしまして、輸出価格というものも昨年の末から非常に急激な上昇を来たしておるわけでございます。おそらく、本年の末におきましては、輸出価格国内価格に追いつき、場合によりますと輸出価格のほうが高いという地域も出てくるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  193. 仮谷忠男

    仮谷委員長 ちょっと待ってください。  あなたの御質問に対して農林省の見解を述べます。松元局長
  194. 松元威雄

    松元政府委員 先ほど、硫安のコストにつきまして通産省のほうからいろいろ御答弁がございましたが、製造アンモニア中心の工場とか、あるいは購入アンモニアに依存する工場とか、いろいろあります。その辺の実態は通産省であれでございますが、ただ、問題は、それによって不当に高い価格でもしも農業者が買わされるといたしますと、これは大問題でございます。問題は、これは全体の加重平均でございます。工場によりまして、製造アンモニアのウエートの高い工場もございます。購入アンモニアのウエートの高い工場もございます。したがいまして、工場によりましてコストの差はいろいろあろうかと存じます。その場合に、価格のきめ方の方法といたしまして、個別原価で、安いところは安く買う、高いところは高く買うという方法もございましょう。しかし、需要者といたしますと、そいつを農家で消費する場合には、価格が違うわけにまいりませんから、これは需要に見合って、一物一価でございますから、たとえば全農がプールするという方法もございましょう。その方法をとる方法もございますが、しかし、一般的に、物の価格をきめます場合には、コストは加重平均と申しますか、総和平均と申しますか、それがやはり基準になるわけでございまして、工場ごとのコストの差はございますが、これはそれを加重平均いたしたものをベースにいたしまして、それを材料にして全農とメーカーでは工場出荷価格をきめている、こういう次第でございまして、したがいまして、かりにコストの安い工場があって、結果的にほかに比べて利潤が多い点はございますが、逆に申しますと、コストが非常に高くて不利をこうむっておる工場もあるわけでございまして、全体の平均としてものを論ずるというのが至当かと存じまして、それによって価格をきめている次第でございます。
  195. 津川武一

    ○津川委員 農林省と通産省がやっきになって私の指摘に弁明した。皆さんの態度は了承します。しかし、こういう法律のカルテルで、大企業に、ほとんど購入アンモニアを使っていないところに、購入アンモニア四・九%を使って、不当の利得をあげさせておるという、もうけさせておるという私の指摘については、これは議事録で国民が判定するから、私はいまの二人の弁明を了承いたします。しかし、現実はそうであるということを指摘しておいて、そこで、四十六年、四十七年の輸出価格はどのくらいになっていますか。
  196. 兵藤節郎

    ○兵藤政府委員 肥料年度でございますが、硫安は四十六年度二十ドル五十三セント、四十七年度二十五ドル九十八セント、それから尿素のほうでございますが、四十六年が四十九ドル八十六セント、四十七年が五十六ドル八十三セント、こういうふうになっております。
  197. 津川武一

    ○津川委員 ここに、「景気教室」の中に、「化学工業の現状と展望」という住友化学工業調査部長の堀本実さんという人の論文がございます。読んでみますと、「そのほかアンモニアの合成に必要な気圧も従来の三百気圧の半分で済む。この結果、アンモニア価格も従来の半値近く下がって一万二、三千円になる。このためアンモニア単位率の高い尿素は」——いいですか、これは硫安ではありませんよ。尿素ですよ。「日産百ないし二百トンクラスの小規模工場の集中化が進めば、今後国際的な輸出価格になると予想される三十ドルベースでも採算がとれるようになる」という。これが四十二年の論文です。皆さんのほうは四十六年で日産千トンぐらいずつつくっている。この指摘は、三十ドルでいいと言っている。そのとおり進んでいるのです。これを五十ドル、四十ドルで売っている。私は、かなりこの点で問題があると思いますが、この三十ドルベースというのは実際の原価でできているのか。これはかなり権威のある人なので、できていると思うのですが、これに対する見解を表明していただきます。  輸出で損しているということですが、この尿素の三十ドル——これは四十二年の論文だが、その後四十六年に、ここで指摘されているとおり、この大型化が進んでいる。とすれば、五十ドル、四十九ドルに対して、この三十ドルというのは何を意味しておるか。皆さんの所信をひとつ聞かせていただきます。
  198. 兵藤節郎

    ○兵藤政府委員 四十二年のその論文につきまして、私は読んでいるわけではございませんが、いまのお話しのとおりのことを言っておるとすれば、第二次大型化を進めるため、非常に意欲的な論点を展開しているように思うわけでございます。  四十六年、四十七年、このときの国内生産価格、これがメーカーが全農に対して売ったところの価格でございますが、四十六年が約四十五ドル、それから四十七年が五十ドルというふうになっておるわけでございます。為替レートの変更もこの間若干あるわけでございますが、そのときの国内価格というのは、従来何度も申し上げておりますように、コスト主義によって計算されたものに基づきまして、全農とメーカーの間で価格を取りきめている。とすれば、この国内価格というものは大体生産費に見合うものであったということからすれば、この輸出価格というものは四十六年、四十七年当時なお低かった、こういうふうに思うわけでございます。
  199. 津川武一

    ○津川委員 いまの見解に私は態度を表明しないで、これで終わりますが、日本の農業をほんとうに育てるためには肥料というものは非常に大事なものだ、これをよくやることと同時に、化学肥料によって問題の出てくる土壌に堆厩肥をも合わせてやって日本の農業振興する、この立場から言うと、何としても肥料行政はフェアでなければならぬ、この大事な食料をつくる肥料行政で、不当な利益が、便乗値上げが、乗ずるようなすきが、一つでもあってはいけない、このように私たちは主張するものです。そして、この肥料法案がそういう意味での自由競争を除外して不当に高いカルテル価格を農民に押しつけてきている、これはやっぱりこの法案は必要はない、こんなふうなことを考えて、私たちの見解を表明して、質問を終わります。
  200. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は、明十五日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十九分散会