運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-05-08 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月八日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    小沢 一郎君       片岡 清一君    熊谷 義雄君       島田 安夫君    白浜 仁吉君       染谷  誠君    丹羽 兵助君       本名  武君    粟山 ひで君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    美濃 政市君       諫山  博君    瀬野栄次郎君       林  孝矩君    稲富 稜人君       宮田 早苗君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林政務次官  山本茂一郎君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君  委員外出席者         参  考  人         (農林漁業団体         職員共済組合理         事長)     土岐 定一君         参  考  人         (農林年金中央         共闘会議事務局         長)      春日  昉君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 五月八日  辞任         補欠選任   金子 岩三君     片岡 清一君   神田 大作君     宮田 早苗君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     金子 岩三君   宮田 早苗君     神田 大作君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第七八号)  農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す  る法律案湯山勇君外七名提出衆法第二八  号)      ――――◇―――――
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案及び湯山勇君外七名提出農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、審査を進めます。  本日は、まず、両案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、農林漁業団体職員共済組合理事長土岐定一君、農林年金中央共闘会議事務局長春日昉君、以上二名の方であります。  両参考人に申し上げます。  御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとう存じます。  ただいま、本委員会におきましては、ただいま議題といたしました両案について審査をいたしておりますが、両案につきましては、両参考人のそれぞれの立場から忌揮のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、議事の都合上、まず、御意見をお一人十五分程度で順次お述べいただき、その後委員からの質疑がありますので、これにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  御意見開陳は、土岐参考人春日参考人の順序でお願いをいたします。  それでは、土岐参考人お願いをいたします。
  3. 土岐定一

    土岐参考人 ただいま御指名いただきました農林年金理事長土岐でございます。  諸先生方には毎々いろいろとお世話になっておりまして、厚く御礼を申し上げます。  なお、農林年金法改正につきまして、御審議にあたりまして、直接運営を担当いたしておりまする私に対しまして意見開陳させていただきます機会をお与えいただきましたことを厚く御礼を申し上げます。  この農林年金法改正でございますが、これは、厚生年金並びに国民年金法の大幅な改正がありまして、それに伴いまして、農林年金内部におきましても、四十七年の末から法改正検討会を設けました。さらに、四十八年に入りまして、農林年金組合会議員が、団体側十三名、組合員側十三名、合計二十六名によりまする財政審議会をひんぱんに開きまして、内部意見取りまとめを行なったのであります。なお、組合会議員全員地区別に集めまして、さらに意見をも徴しまして、今回の年金法改正についての意見取りまとめをいたしたのでございます。その結果に基づきまして、農林当局とも十分連絡協議をいたしてまいったものでございまして、農林当局ではわれわれの提案をおおむねいれていただきまして、今回の法改正案としてまとめられてまいったのでございます。農林年金共済組合でございまするので、他の共済組合との関連もございまするので、その均衡上からいたしましても、今回の政府提案の法案の内容については、十分満足のいけるものであるというふうに私どもは考えておるのでございます。  しかしながら、問題点がないわけではないのございます。法改正を行ないまするというと、同時に共済組合財源率にも影響をしてまいるのでございまして、特に、農林年金全国に約一万五千の対象団体を持っておりまして、これには大きいものから小さいものまでいろいろございまして、最近の情勢からいたしまして、特に経営困難な状況がこの一万五千の組合のおおむね全部にあると考えてもいいのでございます。でございまするので、政府補助金増額並びに、新たに他の公的機関によりまする財政援助措置要請をしてまいってきておるのでございます。  ところが、今回の政府提案の中には、公的機関財政援助の点についての法制化措置が抜けてまいっておるのでございます。これは何も農林省事務当局が怠慢なのではございませんで、農林省当局関係各省非常に御努力を願いまして、いろいろと御協議を願ったわけでございますが、結果といたしましては、これが法制化に至らなかった、政府提案の中に入るに至らなかった、ということになってまいったのでございます。まことにその点遺憾に存じておる次第でございます。  それと申しまするのも、農林年金法改正を行ないますというと、先ほども申し上げましたように、掛け金に影響するわけでございまするが、農林年金掛け金率というのは、他の共済組合に比べまして非常に高いのでございます。一例を申し上げまするというと、私学共済組合掛け金率が千分の七十六、国家公務員共済組合掛け金率は千分の八十八で、これに対しまして、農林年金掛け金率は千分の九十六というふうに、非常に高率なのでございまして、今回のような法改正は――これは今回に限らず、ここ数年毎年大なり小なりの法改正をいたしてまいっておりますが、今回の法改正はかなりの大幅な法改正でございまして、こういう法の改正といいますのは掛け金率とうらはらの関係にあるのでございます。  ところが、法改正をする、したがって掛け金率引き上げるということが、農林年金にとっては、先ほども申し上げましたように、他の共済組合に比べまして非常に高率であるだけに、引き上げが非常に困難であるという現状に立ち至っておるのでございます。こういう状況でなかなか引き上げも困難だということは、先ほども申し上げましたように、全国に一万五千あります対象団体経営の困難という問題で、団体としてもなかなか負担し切れない。また、農業団体経営上非常に困難な状況に立ち至っておる関係から、そこにつとめます職員でありまする農林年金組合員の諸君の賃金がまことに低位に据え置かれておるのでございます。  こういうようなことで、組合員団体も、掛け金増高ということについてはなかなか賛意を表することができないという状況になってまいっておるのであります。こういうことのために、機会あるごとに政府補助金増額の問題について、先ほども申し上げましたが、私学共済組合にございますように、都道府県補助ができるようにするということの法制上の新設をかねがね要望してまいっておるのでございますが、今回の政府提案の中に、都道府県補助の点につきまして法制化が抜けておることは返す返すも残念に存ずる次第でございます。  去る四十八年の暮れの、四十九年度の政府予算決定の段階におきまして、農林大蔵大臣の話し合いの結果、農林年金制度内容は、他の共済組合均衡をとるように大幅に改善をする、しかし、掛け金率は当面据え置きにする、しかし、次期の再計算期に――次期の再計算期と申しますと、四十九年度末の実績をもって再計算をするということに相なるのでございますが、その次期の再計算期財源率の再計算をする、その際に、財政方式のあり方であるとか、掛け金負担の問題であるとか、あるいは各種の補助金の問題であるとか、いうものを総合的に検討して、将来あるべき掛け金率を決定する、と、こういう申し合わせがあった。表現はそういうふうに具体的ではございませんけれども、そういうふうな内容申し合わせ農林大蔵大臣のところであったのであります。われわれといたしましても、現在から四十九年度末の検討に対処するために、おいおい準備を進めてまいっておるような次第でございます。  そういうことでございますので、何度も繰り返しますが、私学並み都道府県補助の項が抜けておるということにつきましては、まことに残念にたえない次第でございます。  終わりに、今回の法改正につきましては、農林年金関係いたします地方の団体組合員方々から、この実現の要望が再々参っております。特に、すでに年金を受給いたしまして、それをもって生計を立てておる者にいたしますと、今回の年金給付計算基礎の新しい計算のしかたというものに絶大な期待を持っておりまして、首を長くして待っておるような次第でございますので、この点を御報告申し上げまして、何とぞよろしくお願い申し上げます。  これをもちまして私の意見開陳を終わりたいと存じます。  まことにありがとうございました。(拍手)
  4. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次に、春日参考人お願いをいたします。
  5. 春日昉

    春日参考人 御紹介をいただきました農林年金中央共闘会議事務局長をやっております春日でございます。  きょうは、農林水産委員会の特別のお計らいをもって、私たち農林漁業団体労働者実態意見を述べさせていただく機会を得ましたことを厚く御礼を申し上げたいと思います。  最初に、土岐理事長との約束で、私のほうが若干時間が延びるということに相なっておりますので、冒頭御了解をいただきたいと思います。  最初に、すでに、農林大臣をはじめ衆参農林水産委員方々に、昨年私たち農林年金受給者実態のアンケートをとりました冊子を昨年の秋お配りを申し上げてありますので、それをごらんいただいた方々は、農林年金受給者は今日いかに切実な声を持っているかということを御理解をいただいておろうかと思うわけでありますが、時間の関係でその実態をつぶさに申し上げる時間を持ち合わせませんけれども、たとえば意見の中に、「老後の福祉事業として大きな期待をかけていた年金が、物価の上昇により、反比例的に値打ちが低下してしまう。七年過ぎると半額の値打ちとなり、十年過ぎると三分の一の値打ちとなる。老年になればなるほど不要となる。物価に並行したスライド制実現を強く要望する。これが実現できなければ、年金としての価値がない。」という声がありますが、これは六十八歳の年間三十六万受給されておる人の訴えであります。また、「高齢により勤め先がなく働くことが出来ない。日々諸物価が高くなるので僅かの年金のため老人との交際並老人クラブの旅行に参加が出来ないので非常に淋しい余生を送って居りますので是非とも、物価の高騰に対応して年金を上げて下さることを念願して居ります。よろしくお願いします。」と言っているのは、これは六十七歳の十三万四千円もらっておる男性の方でございます。なお、遺族年金受給者は、だんなさんがなくなりますと半額ないしは――現役の労働者のうちになくなられた未亡人の方々訴えは、涙なくして読まれないような切実な御意見を寄せられているところであります。  多くの方々意見を大ざっぱにまとめてみますと、まずは、物価高に対するスライド制実現自民党政府は五万円年金実現を盛んにうたったが、いよいよ実現の暁になってみたら、実際は五万円にならないというふんまん、病気になったときの不安、農村地帯老人のつとめ先がないために全く年金にたよらざるを得ないという不安、また、農協運動の美名のもとに低賃金の末路というものがいかにあわれであるかという訴え、他の年金者、たとえば役場、国鉄、郵便局、学校におつとめになられた先生方と比較をして、農林年金生活保護よりも低いという訴え等々があり、中には、もうすでに政府自民党ではだめだ、革新政党の政権をつくることが大事ではないかという訴えも出ておるところであります。  次に、農林漁業団体労働者実態について、きのうも何人かの議員方々から政府に対する質問なり意見で出されておりましたが、とりわけ農林経済局長答弁にもありましたので、事実はどうかと、このことに触れてみたいと思いますし、なお、あわせて、農林漁業団体労働者賃金実態、あるいは労働条件に触れるには、どうしても農林漁業政策に若干触れざるを得ないと思いますので、御了承をお願いしたいと思います。  まず、ことしの三月までのいわゆる春闘と言われる賃上げがなされる前には、単位農協に働く方々はおおむね五万円から六万円、これも地帯ないし県によって違いがあるわけでありまするが、おおむね五万円ないし六万円、平均年齢にして大体三十歳が中心になっておる。こういう中で、きのうは農林経済局長から、絶対額ではまだ他産業に追いついていないけれども、率で見るならば年々追いついてきておるという答弁がなされておりましたが、これはあとで御質問等があれば詳細に申し上げたいと思いますけれども、五万円の単位農協労働者賃金がかりに三〇%上がりましても、実態として一万五千円ないしは一万八千円程度賃上げにしかならない。したがって、ことしの七四年の春闘相場から見て、再び一万円前後の賃金格差が生まれてきているというのが実態でございます。さらに、初任給におきましては、四万五千円から五万二千円の範囲にとどまっております。きょうは大臣がお見えになっておりませんのでたいへん残念でございますけれども、倉石農林大臣の選挙区の飯山市の富倉農協というところでは、この七四年春闘賃上げをなされた、その結果の中でさえ、十八歳高卒初任給が何と二万五千五百五十円という、お話しにならないような実態が今日あるわけであります。  なお、御参考までに申し上げますと、農協労働者、あるいは他の林野、漁業に働く労働者も同じだと思いますけれども、昭和四十七年の生活保護実態から見まして、たとえば最低の四級地のところをとりまして、当時、四十七年には、四十八年度の政府予算で計上された増額の見込みを含めて、三十七歳の五人家族で見た場合に、六万三千五百四十一円になっておりますが、たとえば北海道のホクレンという連合会に働く労働者平均賃金が六万八千九百二十七円、京都の経済連の連合会に働く労働者賃金が七万一千八百八十三円、石川県の単協に働く労働者賃金が五万九千円、富山単協に働く労働者賃金が六万五百三十二円というように、まさに働きながら生活保護を下回った賃金実態にあるというのが、これは二年経過した今日といえどもあまり変わっていないというふうに私たちは見ているところであります。  それから、きのうは、諫山議員のほうから、労働基本権の問題について政府に対する質問指摘がございましたが、長野県のある農協で、私がその農協におじゃまをしたときに、労働組合賃上げ要求のときに理事会は何を言ったかというと、団体交渉の申し入れに対してこれを拒否したわけでありますが、私が理事者に対して、団体交渉に応じないことは労働法違反になりますよと言いましたところが、ある理事いわく、立法府である国会において、政府自民党ですら今日憲法や法律も守らないという社会なんだから、わが農協理事会労働法を守らないというようなことはさしてどうということはないじゃないか、と、こういう言い方をされるのでございます。また、ある農協理事者は、大体労働基準法そのものが間違っているんじゃないかと言う。こういう理事者もございました。おしなべて言えることは、労働基準法なんか守っておったら農協はやっていけないんだという思想背景が、遺憾ながら、良識ある理事者を除いては大方の理事者の中に共通してあるところにきのうの問題が出ておるというふうに思っておるところであります。  こういう状況の中で、農業政策との関連で見てみるならば、すでに御案内のとおり、ことしの二、三月にかけて、多くの畜産農民が、しかも若い後継者であるべき青年畜産農民自殺が相次いでおります。また、あの減反政策のときに多くの米作農民自殺をしております。また、ミカンが暴落をしたときに、くだもの農民がずいぶん自殺をしておるという事態があります。また、これはあまり新聞にも大きく報道されておりませんが、この二月に、福岡県で一名、新潟県で一名、農協下級職制自殺している。これはいわゆる生産資材値上がりによって、生活資材値上がりによって、契約した価格よりも農機具の価格が実際には上がってしまったということで、農民から文句を言われて、これは本来その職員一人の責任ではございませんけれども、もう一つは、低賃金のみずからの生活の苦しみの中から、二名の農協労働者が命を断っておる。こういう事態が生まれているわけであります。  いまや時の日本国家財政をあずかっております方が、かってだれよりもだれよりも農民を愛するとおっしゃられた方が大蔵大臣の今日、このような農民自殺や、関連する農協職員自殺が出るということは――小野田さんがフィリピンで救出されるのにばく大な金を使い、また、フィリピン政府に対して日本政府が金を渡されたことは、それはそれなりきに重要だと思いますけれども、命にかけては、こうした農民労働者の命と軽重の差はないというふうに私たちは思っておるわけであります。特に、申し上げるまでもなく、いままで高度経済成長の中で重化学工業中心であったために、たとえば近海漁業の漁民が泣かされ、あるいは山林や農地が荒らされていくという中からこういう農業問題あるいは漁業問題等が出ておるところに、今日、農民とそこに働く労働者の悲惨な状態が生まれておると思います。  なお、また、この賃金問題を解決するために、いままでの内村農林経済局長は、賃金を上げるための方策として農協合併の推進をはかっておるというふうに何度か国会答弁をされてまいりましたが、農協合併すれば、はたして農協労働者賃金問題が解決されるかというと、決してそういうものではない。合併の時点で労働者の低いところが高いところに合わされますから、その限りでは一時的に上がりますけれども、これが四年たち、五年たちますと、かえって合併農協賃金が上げられない要因がいろいろと生まれてきて、そこから農協経営経営主義化するという方向がたどられておる。こういう実態でございます。これは、内容につきましては、あとで御質問等があればお答えを申し上げたいと考えております。  なお、いま、農協の中にどういう問題があらわれておるかというと、労働協約解約という経営者側からの攻撃全国的に特徴的に出ております。もう一つは、退職金制度解約が出ております。年金が幾らかよくなってきておるから、退職金はもうこの程度に引き下げだとか、あるいは退給対象にならない第二基本給を入れてもいいではないかという経営者攻撃でございますけれども、これは前段に申し上げました労働基本権との関連から申し上げて、今日持っておる労働協約解約するということは労働基本法を守らないことと相共通するものであるというふうに考えますし、なお、これは農協経営者に私たちは望みたいことでございますけれども、いわゆる農協法には、農民社会的経済的地位を向上し、もって国民生活経済の安定に寄与するというふうにいわれておりますが、言うなれば、農民営農生活権利を守るために農協がつくられたというふうに私たち理解しておるわけであります。もし、そういう農民立場に立つとするならば、農協経営者は、そこに働く労働者生活権利を同時に引き上げていくという姿勢なくしては、真の農民営農生活を守ることにつながらないというふうに私たち理解をしているところでございます。  次に、年金掛け金給付の問題でございますが、これはきのうも指摘がありましたし、あるいはきょうも議員方々からそれぞれ指摘がございますでしょうから簡単に申し上げたいと思いますが、一口に申し上げまして、最高に高い掛け金で低い給付だというふうに私たちは言っておるわけであります。なお、私たちは、昭和三十四年に分離をされて以来、農林省大蔵省を中心にして要請に参りますと、とりわけ厚生省のお役人の方々は、もし農林年金で問題があるならば厚生年金に再度戻ったらどうだと言われる。あるいは一部国会議員方々にもそうおっしゃる方があったわけでございますが、これは私たちにとってたいへん遺憾な対応である。本来、厚生年金よりも優遇させようという趣旨があって分離をされた経過の中で、文句があるなら厚生年金に戻れということはたいへん冷酷な対応のしかたではないかというふうに私たちは考えているところであります。しかも、全体から見れば厚生年金よりもいいじゃないかというふうに厚生省の官僚の方々はおっしゃられますけれども、よいのはあたりまえであって、それは国庫負担厚生年金より低いにもかかわらず、事業主本人負担厚生年金よりはるかに高いという実態からして、総合的に見ていいのはあたりまえなわけだというふうに考えております。  次に、負担割合の問題について触れてみたいと思いますが、まず、私たちは、昨年の秋ごろからことしの春にかけまして、いわゆる労使折半負担割合を三、七に変えていただきたいということを経営者側要求をしてまいりました。経営者対応は、法律だからそれはできない、労働基準法は守らないけれども、こういうことはなかなか慎重に守ろうというのが経営者姿勢でございます。しかし、労働組合ストライキ等によりましてずいぶん変わってまいりました。きょうは大臣はおいでになりませんけれども、たとえば単位農協で見れば、倉石農林大臣長野県の第一区におきましては、ほとんどの単位農協がすでにことしの春、四対六に掛け金が変わっておりますし、中央におきましては、全共の全額会負担、全農、全中、全漁連、農業会議全国森連というようなところでは三対七の掛け金負担割合に変わっておりますし、なお、単位農協では、長野県をはじめ北海道、岩手、石川富山三重等におきましては、ずいぶん多くのところが三、七ないしは四対六の掛け金負担割合に変わっております。したがって、少しオーバーかもしれませんが、すでに法律が形骸化されておるということからして、ぜひこの掛け金率負担割合を御変更いただきたい。前回の国会農林年金法審議のときに、内村農林経済局長は、合併をしたような大型農協はいいが、小さな農協ではそれができないのだというふうに答弁をされておりましたが、今度の掛け金負担割合実態は、むしろ合併をしないような農協が四対六ないしは三対七に変えて、合併農協経営者が難色を示しているというのが実態でございます。  なお、これをかりに現在十万円の賃金の人が折半負担を七、三に変えた場合にはどうなるかというと、四千八百円ずつの掛け金が、事業主が六千七百二十円、本人が二千八百八十円、その差が千九百二十円でございます。これを一人当たり十二カ月で見ますと二万三千円、内村農林経済局長は小さなところではたいへんだとおっしゃられましたが、年間にしてたった二十三万円、合併した二百人規模の農協になりますと、四百六十万円という金になるために、経営者がたいへん拘泥をする。こういう実態でございます。  もう一つ重要なことは、掛け金負担割合は、他の公的共済組合年金の場合は、初期債務部分は、すべてこれは事業主負担になっております。ところが、わが農林年金に限っては、初期債務まで含めて労使折半だということになっておりますので、これは当然法律を変える内容のものに値をする、かように考えております。  さらに、私たち要求につきましては、きのう冒頭に野党四党案が出されておりますので、私はこれには深く触れるつもりはございませんけれども、与野党の先生方が一致して真に農林漁業を育成しようというお考えがあるならば、このことは当然実現できることではないかと思いますし、また、農林漁業の先頭に立って働く人の身分と生活を保障していただくことから、野党四党案の実現のために、与野党一致して成立がされることを御期待申し上げたいと考えております。  なお、政府提案問題点につきましては、時間の関係で深くは触れられませんけれども、たとえば今日の積み立て制度ですと、物価値上がりをすれば、それに伴って積み立て金の減価がされていくという実態がございますので、当然これは賦課制度に改めていただきたいと思いますし、なおまた、今回の政府提案の中に賃金スライド制が入っておりますけれども、これは、四十八年の公務員賃率が一年六カ月おくれた今日実現しようということは、あまりにも時宜に即さないスライド制であると思いますので、当然これは去年とことしのものを含めて物価賃金スライド制実現していただくことを御期待申し上げまして、私の陳述を終わりたいと思います。  たいへんありがとうございました。
  6. 仮谷忠男

    仮谷委員長 以上で、参考人からの意見開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 仮谷忠男

    仮谷委員長 参考人に対する質疑の申し出がありますので、順次これを許します。美濃政市君。
  8. 美濃政市

    ○美濃委員 土岐理事長さんに、私の時間は三十分でありますから、主として財源問題についてお尋ねしたいと思います。  私は、第一点としてお尋ねしたいのは、今回の法改正にあたって、私は財源問題をずっと調べてきたのですが、たとえば生命保険であれば、インフレに対して、生命保険は、契約額という、額で契約がされ、支払いも金額でありますから、インフレによって、満期して契約金が入っても、たとえば三十年満期というような長期契約になりますと、加入したときの期待と、それが満期したときに受け取る金との金の価値が大幅に開いておりますから、これは加入者が選択すれば、契約上あるいは保険上の問題は出てこないのであります。保険事業体としての経営上の問題は出てきません。ところが、いわゆる年金の積み立て方式というものの設計の中には――これは、インフレは、計数の中に変動性がないわけですね。したがって、インフレと積み立て方式年金の矛盾というものが大きく露呈してきたと私は思います。ですから、たとえば掛け金についても、当初のこの年金設計からいけば、数理保険料千分の七十で、インフレがなければ当初約束した給付を開始していけるわけですね。ですから、いずれもこの年金のいわゆる整理資源問題が出てまいりますが、これはいずれもインフレに伴っておるわけですね。一つは、給付というものは、インフレ下においては全く実情に合わない。これは額で契約しておる生命保険じゃございませんから、社会保障でありますから、どうしても給付がスライドをしていかなければならない。それはもう積み立て金の計算外に給付責任がこの制度改正によって起きてくる。もう一つは、ベースアップが行なわれるたびに、過去の積み立て部分が、ベースアップによって給付責任が増大する分の積み不足が起きてくる。それが累積して、きのうも担当局長の話を聞いておると、四十八年度末において五千億のいわゆる給付責任準備金の積み不足である。五千億に達したというのです。この設計からいけば、この五千億が積み不足でなくて、今日農林年金に七千億円の責任準備金が積まれておれば問題はないと私は思うのです。それはもう原則の設計に合致しておりますからね。そうすると、五分五厘利回りで計算しても、五千億に対して二百七十五億円でしょう。現実に年間のこの収支の中において、四十八年度末が五千億ということになると、四十九年度中に二百五十億円の単年度不足額が生じるわけですね。設計上予定した積み立てが行なわれていないわけであります。その積み立てが行なわれて、それに五分五厘の利回りがある。その利回りがこえた分はさらに予定支払い率が増加していくわけでありますけれども、最低五分五厘は確保しなければならぬ。その根っこが五千億も積み不足ですから、五分五厘で計算すると二百七十五億円の収入減ということになる。大きな問題ですね。それに今回の改正ですよ。今回の改正が、掛け金率にして一四・六二というのですね。また、ことしのベースアップは、春闘相場から見ても――五十年度以降はどういう経済動向を示すかちょっとわかりませんが、ことしは春闘の相場から言っても、民間もきまって、おそらく人事院勧告がもう三〇%近いものが出るだろうと私は思います。三〇%は出るんでないか。ことしはまた大幅ないわゆる責任準備不足の――今度はいままでのように大体標準が一〇%ぐらいのアップじゃございませんから、一拳に膨大な責任準備金の積み不足がベースアップによって発生する。計算をしてみませんが、四十九年度末における積み不足はおそらく二千億以上増加するのでないでしょうか。七千億円ぐらいになってくるんじゃないですか。これに対して、公務員年金から見ておると、こういうものの調整をやっておるわけですね。これは私の計算では、たとえば厚年並みの――もうこの段階では、国庫補助金を百分の十八を二十に引き上げたぐらいではおっつかない問題だ。このままほっとけば――私は、こういう大幅な改正は、これは当然だと思います。改正に反対するものじゃありません。経済の実情から見ればまだ低いぐらいですね。既裁定年金者給付の改定にしても文句を言いたいんです。経済の実情に合うスライドだとは考えられません。  それから、先ほど来お話しがありましたように、農協労働者賃金は、他よりも非常に格差があるという中でありますから、すべての改正が当然であり、また、低いと指摘せざるを得ないわけですね。その中において起きてくる問題はどうなってくるのか。今回の法改正の中で、掛け金率にして一四・六二、これが給付責任として加算されてくる。それに、何ぼ農協のあれが安いといいながらも、安い基本が改正されないで、率から言うと、農協職員も少なくとも二〇%以下ということはないでしょう。三〇近いベースアップが行なわれるんじゃないですか。もとの根っこが低いから、それが修正されぬ限りいつまでも格差は続いていくわけですね。そうすると、思い切った手段を講じなければ、このままで推移していくと、十年くらい経過すると、今度積み立て金減少の傾向があらわれるんじゃないですか。一〇%ぐらいの経済の変動率で、ベースアップが一〇%ぐらいで推移して、昭和六十六年くらいからおおよそ掛け金、積み立て金の減少が起きてくるだろう、こういうふうに想定されるのだが、しかし、いま起きてきた現象は、そういう経済対応して、既裁定年金も改定しなければならぬし、大幅ベースアップが行なわれるということになれば――なればじゃなくて、なるのでありますから、そうすると、その速度でいきますと、十年後には、今度は実際に掛け金で積み立てた額に食い込んでくる。さらにそれから五年ないし七年くらい経過したときには、食いつぶしてしまって、積み立て金がゼロになってしまう。ですから、いま直ちにその五千億を――経済事業の収支とは違いますから、一刻も猶予ならぬというものではないのですけれども、そこで私は考えまするに、これはとんでもない矛盾だ。この矛盾をどう解決していくのか。これは理事長だけの力では及ばぬと思うのですけれども、政治的にも、このあらわれてきた矛盾というものをどう解決するのか。保険審議会の連中ももっと頭をきちっと整理して、きちっとした体制をとらなければ――この問題が出てきておるのは、この年金だけではないと思うのです。この関係があれして出てくる問題は同様だと思う。これは、私に言わしめるならば、こういう積み立て方式そのものが、この制度が、年金としての計算上、あるいは制度上、インフレに対応性のない根本的なあやまちをおかしておると思うのです。話にならない制度が組み立てられておるのだ。インフレがなければまだこういう問題は露呈しませんけれども、こういう経済動向を示す以上においては、この制度というものは根本的に対応性のない制度である。抜本的に制度を改めなければ、小手先ではこれはどうにもならぬだろうと私は思うのですね。  たとえば、政府補助金を百分の十八を二十にしたとか、三億や五億の目くされ財源調整補助金等で追っつくものじゃ根本的にないと思うです。何千億という差がすでに発生しちゃったわけですからね。さらに、現況起きてきた状態は、これが今度は大幅に急激な速度で拡大していくわけですから、そんな三億や五億の目くされ財源調整補助金や、政府補助率の二%アップぐらいじゃどうにもならぬですよ。こんなことで推移していったら、積み立て金をゼロに食いつぶす年限が二年延びるか五年延びるかぐらいの問題であって、どうにもならぬ状態が起きたと思うのですね。  繰り返しますが、こういう問題はやはりいまから――こういう年金の仕組みでありますから、手形の不渡りだとか、経済取引や経済事業の中で派生した大きな赤字とかで、もう直ちに切開手術をせなければどうにもならぬということではありません。だからといって何年もほっておける問題ではない。ここで基本的な方向を見出さなければ、このままで運用できるものではないと思うのですが、いかがですか。
  9. 土岐定一

    土岐参考人 まことに重要な問題でございます。単に農林年金だけでは片づかない問題でございますが、いまのお話しの点、一々まことにごもっともの点がございます。インフレが増進したり――さらには、ここ数年給付制度内容をよくいたしておりますが、おそらく今後数年もそれは続くだろうと思います。そうしますと、それに対応するだけ掛け金を上げれば、そこに均衡がとれるわけでございますけれども、そうはいかないというようなことで、お話しのような積み不足がだんだん出てくる。これがふえていくということになると思います。これはそのとおりでございます。  それで、現在、各共済組合もおおむねそうですが、その中でも特に農林年金は、ばか正直に完全積み立て方式というたてまえを堅持してまいっておるわけであります。かといって、私は、それを賦課方式に切りかえるということも、また後代負担との関係もありますから、これはなかなかそうはいかぬのではないかと思いまするが、四十九年度予算編成の際に農林大蔵大臣の話し合いにもありましたように、総合的に検討するということは、そういう財政方式に手を加えるということであるというふうに私どもは考えておるのであります。したがいまして、現在のような完全積み立て方式のたてまえどおりでなしに、どういうふうに合理的に財政方式を変えていくかということが苦心の要るところだと思いまして、四十九年度末で再計算をいたしまする際にあわせまして、その点の検討をいまから進めたいと考えております。
  10. 美濃政市

    ○美濃委員 いま、掛け金率の問題が出ましたが、そこで、私は、こう考えるのですね。これはさっきも申し上げたように、インフレを起こしたものは、この制度で言えば、農協職員がインフレを起こしたものではないわけですから――その時期その時期には、低い労賃の中から、しかも千分の七十で保険料が数理計算されて、制度として発足しておるわけです。そのインフレの被害を、すでに整理資源率として千分の二十六背負わされておるわけですね。組合員は、掛け金率からいけば、その半分の十三というのは、インフレの責任を背負わされておるわけだ。これ以上背負わせられないのです。しかも、繰り返しますが、その時期その時期には、たとえばベースアップがあれば、率でかけられるわけですから、給与の上がった率で負担をしていくわけであります。その時点その時点ではこの制度にのっとった負担をしてくるわけなんです。負担をして推移するが、インフレによってまたそれが上がる。上がった部分を、積み立て方式ですから、整理資源不足、すなわち給付責任準備金不足というのがもう年々発生して出てくるわけですから、それまで負担せいということはすべきじゃないですね。現況における可能な自己負担をして、その上インフレによる整理資源不足をみな掛け金率にしょわすとなったら、どうなるのですか。インフレを起こした責任は農協職員ではないはずですね。そういうばかなことは考えるべきじゃないです。掛け金率によってこれを始末するなどということはとんでもないことです。その負担を求めたときは、老後の保障もさることながら現況の生活に大きく響いてきますから、老後の生活保障のために餓死する生活をしたんじゃどうにもならぬでしょう。死んでしまって、死亡脱退見舞い金をいささかもらう程度になってしまうわけです。そういう残酷なことが掛け金率の裏にあるわけですね。そうすると、掛け金率引き上げるなどということは、もうすでに整理資源率千分の二十六をしょわしているわけです。組合員は折半としたら、インフレ部分を一三%しょっているわけですから、この上無限大に五千億、八千億となってくるような状態を放置すべきではない。  それから、もう一つは、たとえば給付改定というものが行なわれるが、それがいわゆる給付保障の実質改善であれば、多少負担増が伴うということについても将来の期待が持てますけれども、そうじゃないわけで、給付改善そのものがインフレ率よりも、あるいは賃金のベースアップ率よりも低い条件で行なわれていく。ですから、給付の改悪だ。しかし、ものすごく経済事情と違った改悪条件になるから、いささか改善しなければならぬという状況で進行しておるわけですね。ですから、給付の改善じゃなくて、インフレに対する補完措置、その補完措置がインフレの影響を一〇〇%行なわれておるものでもないわけです。六〇%ぐらいの率ですね。既裁定年金者で六〇までいかぬのじゃないですか。そういう価のある金を何十年も積み立てて、そうして既裁定年金給付者には、このインフレによって、約束した金の価値、効果率から見ればまことに残酷な給付が行なわれる。それらのしわ寄せ、あるいはインフレにより、ベースアップによって、積み不足が起きる分はあげて掛け金率に持っていくなどということが行なわれたとしたら、これはもう現在の生活を破壊してしまいますよね。現在の農協職員生活を破壊する料金が設定されていくわけです。これはとんでもない問題になっておると思うのです。ですから、これに対応する措置ですね。このままの制度では対応できない。対応できる制度にちゅうちょなく思い切って変えるべきだ。これは仕組みそのものがインフレに対応できない仕組みの中で発足しておるところに問題があるわけですね。ですから、この仕事に従事する方々は、農林年金理事長さんはもとより、この仕事を担当しておる役所ももとより、全部の衆知を集めてこの矛盾する制度を打開する方策をとらぬ限り、小手先でごまかそうとして推移したら、将来とんでもないことになると思うのですね。思い切ってこの仕組みそのものを変えなければいけない。この制度の中のいじくりじゃないのですよ。現行制度の中で補助率を若干上げるとか、国庫負担を若干ふやすなどという小手先作業ではこの不満は解決できない。こういう対応できない矛盾点は思い切って現制度を突き破っていく。新しい制度のもとに対応できる制度ができますからね。  たとえば、欧州諸国へ行ってみなさい。欧州諸国の年金制度はインフレに対応できる程度になっておりますから、ECも資本主義国家ですからインフレがあるわけですが、こんなばかげた矛盾は起きておりませんよ。あの社会保障の進んだ先進国が、矛盾のない制度を採用してきちっとやっておるわけです。あの制度にしなければこの問題は解決できないと私は思うのだ。現制度の仕組みを根本的にやめて、新たなものにつくりかえてしまわなければ解決できない。それはあるわけですから、新たに発見しなくたって、まねすればできるんですから、そのぐらいのことをやらなきゃだめだと私は思うのです。どうですか。
  11. 土岐定一

    土岐参考人 給付制度内容をよくしたり、それからインフレが増進しますと、掛け金そのものの率は、財源率は非常に高くなるわけであります。しかし、私は、それをそのまま現在の組合員にかぶせるというふうなことはできないと思っております。過去におきましても、将来におきましても、掛け金にはね返らないように、できるだけこれを押えていくような努力をしてまいりたいと思います。そのためには、先生のお話しにございまするような財政方式の問題、これをまず第一に検討しなければならぬということが重要なことでございまするが、目くされ金と言われまするけれども、国庫によりまする負担の問題、補助金の負担の問題、あるいは新しい都道府県補助の問題等、これやあれや集めまして、そういうふうな掛け金率増高を来たさぬような努力をいたしたいと考えておりますので、その方面はあまりあっさりとさじを投げられないで、よろしくお願いいたしたいと思います。
  12. 美濃政市

    ○美濃委員 最後に、御答弁は要りませんが、重ねて申し上げておきますが、私の申し上げたことも、制度の中では、農林年金農林年金でこうなければならぬというようなことを真剣に考えてもらいたい。やはり、国民の世論あるいはこういう団体の世論として起こしていくところに制度は直るのであります。割れなべにとじぶたでは始末がつかないと申し上げて、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  13. 仮谷忠男

    仮谷委員長 諫山博君。
  14. 諫山博

    諫山委員 春日参考人にお聞きします。  農林年金中央共闘会議の「今後の農林年金闘争のすすめ方」という文書に次のようなことが書かれています。「四九年度法改正と四八年度一部法改正によって生ずる不足財源については掛金の大幅引上げで対処しようとしていることが明らかになりました。」こういうことが懸念される根拠が何かあるのでしょうか。
  15. 春日昉

    春日参考人 農林年金当局が言われる財源不足からして、とうてい年金運営がやっていけない、このことはただいま土岐理事長から説明がありましたように、正直にばかがつくほどちゃんと給付に要する積み立てをしていきたいという基本理念の中から、昨年、農林年金組合会の中に財政審議会という委員会がつくられて、そのときに、年金当局は、掛け金の負担をどう考えていくかというような問題の提起のしかたで、言ってみれば、その思想的背景は、掛け金引き上げざるを得ないという内容の提起のしかたがありましたので、そういう点で、私たちは、年金共闘会議としては、本来、政府に対する運動等のときには、多少の要求の違いがありまして問題はありますけれども、基本的には同じ立場であるという中で、内部の中でこういう問題をあまりいさかいをしたくはなかったわけでありますけれども、基本的にはインフレから生ずる財源不足なり、あるいは賃上げなり、あるいは整理資源費の増高による負担を現役の人たちにかけるということはいけないという立場で、政府当局並びにきょうおいでになります土岐理事長も、日時ははっきり記憶しておりませんけれども、昨年の年末ぎりぎりごろようやく、皆さんの掛け金負担増高しないということで政府に運動をしていきたいということで発言をなされ、同時に、農林大蔵当局におきましても、ことしは掛け金は上げないということでございますので、さっきも土岐理事長から説明がありましたように、四十九年決算、来年の春でございますが、ここで再度掛け金問題がクローズアップするということで、私たちは、いままでの経過から見て、そういう危険性が多分にあるということでそう申し上げておる次第でございます。
  16. 諫山博

    諫山委員 土岐参考人にお聞きします。  いま農林年金中央共闘会議の側から、掛け金引き上げについての考え方が説明されました。農林年金適用労働者賃金が非常に低いということがずっと問題になっているわけです。ところが、掛け金がさらに引き上げられるということになれば、これはもうたいへんです。  そこで、共闘会議の側からはいまのような意見の表明がありましたが、理事長としてはこの点どういうふうに取り組んでいかれるつもりなのか、どういう対策を講ずれば当分引き上げなくて済むということになるのか、見解をお聞きしたいと思います。
  17. 土岐定一

    土岐参考人 先ほど春日参考人から話がありましたが、農林年金内部財政審議会で、大幅引き上げをするというふうなことで提案したことはないのでございます。ただ、先ほど美濃委員のお話しの中にありましたように、現状計算をするとこれだけ足らないんだという資料として出したのでございます。これが大きく反響を呼んだかと思いますけれども、いまも申されましたように、農林年金対象団体につとめます職員の給与は非常に低いのであります。これをさらに掛け金を大幅に引き上げるということになりますと、一そう生活に困難を来たすということになりますので、できるだけこれを押えていくというふうな努力をいたしてまいりたい。これには、先ほど美濃委員の御質問に申し上げましたように、財政方式の合理的な内容を現在にとらわれないで検討するということと同時に、各種補助金増額、それから現在の積み立て金によります運用益の投入等あらゆる努力をいたしまして、掛け金増高を極力押えるようにいたしたいと考えております。
  18. 諫山博

    諫山委員 さっきの御説明で、農林大臣大蔵大臣の間に合意が成立したようなお話しでしたが、何の問題について、どういう合意があったのでしょうか。
  19. 土岐定一

    土岐参考人 これは年末の四十九年度予算編成の際の農林大蔵大臣の折衝のあとで記者会見がございまして、その発表の内容でございまして、多少私は私なりの受け取り方で申し上げておりまするから、そのとおりの内容ではありませんが、総合的に検討をする――当面は掛け金引き上げないが、次期計算期において総合的に検討するというような内容でございます。
  20. 諫山博

    諫山委員 総合的に検討するというのはなかなか幅の広い表現ですが、たとえば農林年金に対する政府補助金をふやすべきだということは、農林省も予算要求の段階で主張しているようだし、また、当然の要求だと私たちは考えております。この点について大蔵省はことしは認めなかったようですが、どういう見解をとっているとお考えですか。
  21. 土岐定一

    土岐参考人 私はその折衝の場におりませんので、大蔵省の見解はよくわかりませんが、総合的に検討するということばの前段は、掛け金増高をできるだけ来たさないようにするために総合的に検討するということですから、補助金増額をも含んだ、あるいは財政方式のほうも含んだ幅広い検討であるというふうに考えております。
  22. 諫山博

    諫山委員 掛け金増額をしてはならないという点では私と理事長意見は一致すると思いますが、やはり、そのためには財政的な措置を講ずるということが必要なわけで、ぜひその面で努力をいただきたいと思います。  そこで、春日参考人にもう一ぺんお聞きしますが、農協労働基準法がなかなか守られない。この実態農林省も労働省も認めておられます。ただ、なぜ守られないかというと、農協の業務の特殊性があるからだという認識が農林省の中に非常に強いように思うのです。あなたたちから見ると、農協業務の特殊性によって労働基準法違反というのは避けられないものか、それとも、なくしようと思えばなくされるはずのものなのか、どうなんでしょうか。
  23. 春日昉

    春日参考人 結論から申し上げますと、なくされるものだというふうに確信を持っております。なぜならば、農協と同じく、そういう地域の中にあります市町村役場も、地域住民とのかかわり合いではやはり同じ状況にありますし、あるいは郵便局にしてもしかりでございます。そういう点で、農協だけが特殊性があってできないということは理由にはならないと考えておりますが、一言つけ加えて申し上げまするならば、一つは、私たち農協のつくられておりますところの労働組合の弱さにも原因があるでありましょうし、労働組合がないところは格別にひどい状態にありますし、もう一つは、農協経営者もおおむね三年が一期になっておりますので、ある程度労働基準法理解をしたところでまた選手交代というようなことで、全然法律のわからないような人が交代をしてくるので、これは絶えず監督機関が手をゆるめることなくやってもらわないと、一定期間だけやればいいというものではない、かように考えております。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  24. 諫山博

    諫山委員 農協の特殊な仕事の一つとして、金融とか共済、購買の推進活動というものがあります。私はきのうの質問でも指摘したのですが、ある農協で、推進活動があるから農協をやめたいという回答をした人が非常に多かった。これを見て驚いたわけですが、これについて労働者はどういうやり方をしてもらいたいという希望を持っているのでしょうか。
  25. 春日昉

    春日参考人 基本的には日常の業務外のそういう推進はやめてもらいたいということで、一語に尽きると思いますけれども、しかし、いろいろなことでやらざるを得ない場合には、労働基準法に基づく時間外の割り増し賃金をきちっと払うということが原則だと思います。ただ、逐次改善はされつつありますけれども、まだまだノルマをかけられた――たとえば共済の手数料を、本人に、契約をとってきた出来高によって、報奨金のような形で与えられておる。ところが、私も単位農協におりましたときに、営農指導員でございますが、営農指導員などの場合は、とりわけ農家と日ごろ仕事を通じて――しかも、農家の方に喜ばれるような仕事をしておるので、そういうときには案外出来高が上がるわけですが、直接そういうところに関係のない職員あるいは初めて入ったような職員は、ノルマをかけられても、なかなかノルマが達成できない、そこで、報奨金もつかない、こういうことでは大きく問題がある、かように考えております。
  26. 諫山博

    諫山委員 きのう私は農協労働者権利を守るという観点で質問をしましたが、この問題で、農林省に要望することがあったらお聞きしたいと思います。
  27. 春日昉

    春日参考人 農林省といいますか、特に私は労働省にお願いをしたいと思うのですが、ずいぶんあちこちの県で、労働組合がみずから職場点検をして、労働基準局ないしは監督署で交渉をいたしますと、最近、農協労働組合は監督署なり基準局へ通う率がなかなか多くなったけれども、実は、労働基準監督官が無尽蔵にいるわけではないので、監督官それ自体が、いま、国の労働省の予算のワクの中で皆さんの要望にこたえようとするならば、われわれも時間外勤務で、場合によればわれわれ自身が残業手当がつかないというような実態があるので、ひとつ皆さんからもっと監督官をふやすような運動も起こしてもらいたいということを監督官から言われておるわけでありまして、そういう点で、特に労働省にはその点をお願いしたいし、農林省につきましては、農林漁業団体の監督行政機関として、絶えず手をゆるめることなく行政指導はお願いをしたい。  実は、昭和四十二年、当時も倉石さんが農林大臣のときだったかと思いますが、各都道府県知事を通じて、地方事務所まで、単位農協労働基準法の摘発をされたことがあるかどうかという調査がされましたときに、たまたま私は長野県でございますけれども、地方事務所の農政課におります団体係、言うなれば農林漁業団体団体係をしております役人が、私に、「こういう調査がありましたけれども、この調査をまともに報告をすると農協経営者に傷をつけてもいけないので、私の管内ではありませんという報告を県知事に提出をした」ということを私にまじめに言ってくれたわけでありますが、そういう点で、当時農林省へあげられた調査も、必ずしも十分な適切な調査であったかどうか、私の行政区域ではそういう事態もありましたので、疑いを持っておるというのが事実  でございます。
  28. 諫山博

    諫山委員 労働基準法違反をなくするということは非常に重要だと思います。この仕事は使用者の責任でもあるし、監督官庁の責任でもあるし、また、私のように共産党の議員の責任でもあると思います。しかし、同時に、労働者自身がこの問題を解決していくという立場が何といっても中心になると思いますから、ぜひ努力していただくことを希望します。  最後に、きのう農林省答弁で、農林年金適用労働者賃金とそれ以外の労働者賃金の格差は、比率としては少なくなりつつあるという指摘があったのですが、さっきのあなたの御説明では、金額の開きはむしろ大きくなっているのではないかというふうに受け取られたのですが、実情はどうでしょうか。
  29. 春日昉

    春日参考人 中央春闘共闘委員会では、各産業別に、現在、妥結をした労働組合賃上げの額と率をそれぞれ算出をされておりますけれども、これは全産業にわたっており、たいへんたくさんございますので省略をいたしますけれども、私たち農協の、とりわけ県の連合会で働いております人たちの平均で、妥結をしたところだけでありますが、額で見てみますと、単純平均で二万二千百二十四円、なお、率に直して三二・三%、それから加重平均にしまして二万二千五百九十八円、率に直して同じく三二・三%。なお、他産業と比較をした場合に、全体的に見て、率でも落ちておりますし、加えて、額ではなおさら格差が開いておる、これが実態でございます。  したがって、きのうの農林経済局長答弁は、何の理由と根拠をもって答弁をされたのか、私たちの調査の範囲ではたいへん遺憾な答弁をされておるというふうに理解をしております。
  30. 諫山博

    諫山委員 午後私は農林大臣質問をする機会がありますから、この点をぜひ農林省にあなたの立場として説明をして、改善に努力したいと思います。  質問を終わります。
  31. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、瀬野栄次郎君。
  32. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案について、土岐参考人春日参考人より貴重な御意見開陳していただきまして、厚く感謝を申し上げます。  昨日、本法に対する質疑を私も約二時間近くいたしたわけでございます。その質問の過程でいろいろ明らかになってきたわけですけれども、本法は、一口にして言えば、最高に高い掛け金で最低に低い給付ということで、われわれも、例年のこととはいいながら、農林年金改正にあたっては重大な関心を持ち、このままではけしからぬということで、将来早急に改正をせねばならぬ数点を昨日は指摘したところでございます。  そこで、昨日のいろいろの質問を踏まえまして、まず、せっかく両参考人おいでいただきましたので、お伺いしますけれども、本法の提案にあたって、農林年金中央共闘会議としても、また、農林漁業団体職員共済組合も、理事長をはじめ政府にいろいろと折衝されてきたと思うのですが、その経過の上でいろいろ問題点があったわけでしょうけれども、今後さらに交渉していく過程において、どういうところに大きなネックがあったのか、どういうところがたいへん交渉の過程で問題になったのか、かいつまんで簡潔に経過と問題点をまず参考までに述べていただきたい、かように思うのです。
  33. 土岐定一

    土岐参考人 直接大蔵との折衝に当たっておりませんので、正確に申し上げるというわけにいきませんが、農林年金といたしますると、農林省といろいろ協議をするということになっております。その協議の中で、一番大きな問題は補助金の問題でございます。農林年金の定率補助の額が現在百分の十八でございます。これは一昨年、先生方の御努力を賜わりまして、百分の十六を百分の十八に引き上げてもらったわけであります。そのころから補助率を厚生年金並みに引き上げてもらいたい――厚生年金並みといいますと百分の二十でございますが、そういう補助金の定率補助の問題と、それから財源調整費といたしまして、現在百分の一・七七をいただいておるのでありますが、これを百分の三にしていただきたいということ、これは農林年金に所属いたします団体なり組合員の現状におきます経営並びに給与等の関係の問題から、地方公務員並みに均衡をとるために百分の三にしていただきたいというふうなことを折衝いたしてまいったのでありますが、農林省としてはそのとおりで折衝に当たられたのでございますけれども、なかなかその点が実現を見なかったという点がまず第一点でございます。  それから、第二点といたしましては、先ほど春日参考人からはちょっと触れられましたが、国家公務員あたりでは、現在の共済組合が恩給部分を引き継いでいまの共済組合に入っておるわけであります。そういう恩給部分等、これを初期債務と言うのでございますが、初期債務に当たる部分は全額事業主である国が負担をしてまいっておるのであります。農林年金では、それとぴったり同じではございませんけれども、厚生年金から分かれて昭和三十四年に設立されたわけでありますが、厚生年金から分かれました際に、その厚生年金部分の初期債務をそのまま引き継いでまいっておりまして、それをそのまま折半で組合員団体とが負担をいたしておるのでございます。この初期債務部分について、その半額を国で補助してもらいたいということの内容で折衝してまいったのであります。これも農林大蔵でいろいろ折衝されまして、実現を見なかったのでありますが、そういう点があるのでございます。  いま申しました二点は、昨年暮れの四十九年度政府予算決定の際のいきさつでございますが、さらに、その予算の数字とは関係ございませんが、私学共済並みに都道府県補助を可能ならしめるような条文を、私学共済組合法にあるように入れてもらいたいというのが第三点として大きな問題になっておるわけであります。これは、この法制化の段階で、先ほど申し上げましたように、農林省当局は一生懸命関係省庁を回られまして協議されたのでありますが、だんだん上に行くに従いましてしりすぼみになってまいったというような状況になっておるのでございます。
  34. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 土岐参考人、そこで私学共済ですけれども、都道府県補助できるように法制化せよ、これが法制化できなかったことは残念である、遺憾であるという意を表明されましたが、私も昨日この問題に触れていろいろ質疑をしたわけですが、土岐参考人は、昭和四十九年度からおいおい準備に入っておる、私学共済並みにせよということでいろいろ準備をしておるということの意見開陳がございましたが、どういう準備をしてこれに臨んでおられるのですか、その見通しとお考えを述べていただきたいと思うのです。
  35. 土岐定一

    土岐参考人 この私学共済法と同じように都道府県補助をもらうということは、いろいろ予算の関連もございますので、法律を直しますと将来の予算の関係もございます。おそらく、地方交付金というものが県へ行きまして、それから県でそれを組み込んで、その県下の農林年金対象団体に対して補助金が出るということになろうと思いますが、そういうようにいずれは金に結びつく問題でございますので、この問題はいろいろ準備をすると言いましても、粘り強く熱心に根気よくやるという以外には準備のしようがございませんので、要望し得るところには十分理解を求めるような努力を重ねていく、こういう一点に尽きるのではなかろうかと思うわけでございます。
  36. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、春日参考人に伺いますが、先ほど意見開陳の中で、若い青年が自殺をしているというお話しがありましたが、私も、北海道をはじめ静岡においても、あるいはまた九州においても自殺者が相次いでおることはよく承知しております。生産地帯農民からいろいろと各種の強い要請が出ておることも承知しておりますが、農業労務者の実態というものがたいへんであるということをいろいろ述べられました。われわれもわれわれなりに承知しておりますけれども、その内容について、簡潔でけっこうですから、もう少しこの機会に述べていただきたいと思います。
  37. 春日昉

    春日参考人 最近の農協は一これは農協に限らないと思うのですが、漁業協同組合においてもしかりだと思うのですけれども、経営の基盤となる農民の農業なり、あるいは漁業の場合は近海地帯が公害等で荒らされておりますから、漁民や、農民それ自体の農業がだんだんたいへんになってきておって、農業が、あるいは漁業が破壊されれば、その基盤の上に立つ農協経営が逆に豊かになるということは当然あり得ないわけであります。しかし、一見、農民あるいは漁民の表向きの現象面だけ見れば、カラーテレビも入っておるとか、あるいは電気洗たく機も入っておるとか、車も入っているじゃないかとか、そういうことは言えると思いますけれども、一歩内容に入ってみれば、これはもう先生方も御案内だと思いますけれども、出かせぎ農民なり、あるいは家から通っておる人にしたって、安定した職場じゃなくて、絶えず不安定な職場で働き、そして、そのために奥さんまで農閑期には働きに出るというようなことから、いま教育問題もだいぶクローズアップしておりますけれども、問題はやはり、勢い家庭の中における家庭教育というようなものもないがしろにされるとか、あるいは出かせぎのために家庭的な悲劇を起こすとか、あるいはだんなさんの給料が出先でもらえなかったとか、いろいろなことがあるわけでありますが、そのことはともあれ、農業なり漁業だけでなく、そういう農外収入にたよった農家経営の上に成り立つ農協ですから、最近の農協経営は、生産共同体の性格から勢い生活協同組合的な性格が強くなる。しかも、一方、合併等によりまして、農協職員農協組合員の親近感が失われていく。こういうようなことから、勢い、では農協職員賃金も上げるということになれば、これはノルマをかけて強制的に農民に共済加入なり貯金の吸収を――貯金の原資も、農業生産の高まりの貯金じゃなくて、出かせぎの金なり、あるいは農外収入にたよったこういうものの貯金を農協が吸収をしていく、こういうことで、年度は明確にいつからとは言えませんが、大体昭和三十六年を境にして、農協の運営のあり方、あるいはそこに働く労働者労働条件なり、そういうものがおのずから大きく変わってきているというふうに言えると思います。
  38. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 土岐参考人にお尋ねしますけれども、先ほど春日参考人から、農林年金掛け金負担割合の問題で、労使折半負担である、これを三、七に変えろ、経営者姿勢を変えていただきたい、単協ではすでに四、六に変わっているところもある、ぜひともこういったことをお願いしたいという話がありましたが、法律が計画されておるということでございましたが、土岐参考人は、この点についての見解はどうでございますか。
  39. 土岐定一

    土岐参考人 組合員方々のその気持ちはよくわかるわけでございますが、これは単に農林年金のみならず、各種社会保険全部が折半という原則でできております。したがいまして、共済組合はどこもみな折半ということになっております。農林年金だけがこの割合を変えるということはなかなか困難であろうと考えております。ただ、私は、七、三に変えるという前に、先ほども申し上げましたが、初期債務の部分について、国家公務員共済組合では、事業主である国が全額負担いたしておるわけでありまするから、この点について、これを事業主が負担できないものであろうかどうかというようなことで、四十八年の財政審議会におきましても、この七、三の割合の問題から、いまの初期債務の事業主負担の問題等につきましていろいろ意見を求めたのであります。七、三の割合の問題につきましては、団体側といたしましては、これは全面的に反対というようなことでございます。初期債務の事業主負担についてはある程度理解を深めたものであるというふうに私は考えております。そうしますと、実質的に比率が多少変わってくるということに相なるわけでございます。数字的に七、三にするということよりも、そのほうについてだんだんと団体側理解を深めまして実現にもっていくようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  40. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間がもう迫ってきましたので、最後にもう一点お伺いしておきます。  土岐参考人にお尋ねしますけれども、農林年金組合員の給与が一番低い、そのためになかなか人材が確保できないという問題があるわけです。これはもう例年指摘してきておるところです。他共済制度との年金の支給額の格差もあるというようなこともいろいろ問題になるわけでございますが、こういった意味から、組合員の待遇改善ということについては理事長としてはどういうふうに考えておられるか、また、どうすれば待遇改善ができると思うか、そういったことをかねがねいろいろ土岐参考人もお考えであろうと思うが、この機会に最後に御意見を承っておきたいと思います。
  41. 土岐定一

    土岐参考人 農林年金理事長といたしますと、その農業団体経営の責任、あるいは指導する立場にございませんので、実態を申し上げる以外にはないわけでございます。  確かに、実態は、農林年金の統計によりますると、四十七年度末ですから、四十八年三月現在の数字では、農林年金対象団体につとめまする組合員の平均給与は五万九千幾らということに相なっております。それから、厚生年金関係はちょっと数字を忘れましたけれども、七万ちょっとこしておると思います。そのうち地方公務員の関係が一番高いのですが、これも七万をかなりこしておるという数字になっております。  そういうようなことで、かなり低い実態にあるのでございます。したがいまして、その実態を見ますと、農林年金対象団体組合員の給与がかなり引き上げられることを私は要望いたしたいと思っております。ただ、どうすれば引き上げられるかということについては、何ともちょっとお答えの申しようがありませんので、ごかんべんを願いたいと思います。
  42. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまいろいろ理事長からお話しを承りましたが、なぜ私がこれを聞いたかといいますと、もともといわゆる農業団体職員の給与が低いということ、これが一つの大きな問題でもあります。そういったことに対してあなたはどのくらい関心を持っているか。共済年金として関係ないわけではないんですから、今後の農業の発展をはかるために――農業はいまたいへんな窮地に追い込まれておる。この曲がりかどに際して、第一線で働く職員の給与にもあなたもいろいろと重大な関心を持ち、今後の農林年金のより発展をはかってもらいたい。そして、昨日も私は指摘したわけですが、財政健全化の道、これが一番問題であります。そのためにも、他制度職員の給与の額くらいはちゃんと知っておいてもらって、そして、こうだからこうだと言わなければ、なかなか政府も乗ってこないし、強力な交渉もできないし、全組合員を代表する理事長としてもっと強力に折衝しなければいかぬ。そういったところが抜けておるというか怠慢というか、力が足らぬ、かように私は思うがゆえに、あなたにあえてこれを聞いたわけです。それくらいのことはもうわれわれでも数字はわかっておる。そういった意味で、けさほどからの開陳を聞いていても、何となく迫力に欠けるというか、熱意というか、力がないような感じがしてならぬから私は指摘をしたわけです。  どうしても財政健全化をはかるというならば、国庫補助増額、あるいは掛け金増額、あるいは経営努力によってやるという、この三つしかないけれども、経営努力もすでに困難な問題が山積しておるし、先ほど意見開陳されたように、農林年金の千五百の団体があり、しかも、財源はたいへんなところに来ているということも指摘しておるところでありますし、掛け金増額にしても限界があることはわかっておることですから、そうなれば、先ほどいろいろと論議されましたように、根本的な基本的な問題もあるけれども、国庫補助増額、これ以外にないわけです。こういったことに対して、他年金との関係、また、職員の平均給与の問題等あらゆるものを踏まえた上で、もっと迫力ある折衝を今後やって、農林年金の前進のために力を尽くしてもらわなければならない。どうも努力が足らない、熱意がないというような感じがしたので、あえて最後に私は指摘しておくわけであります。  今後の農林年金の発展を祈って、両参考人からの貴重な御意見をありがたく拝聴し、私の質問を終わることにします。
  43. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  この際、午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ――――◇―――――    午後一時十七分開議
  44. 仮谷忠男

    仮谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲富稜人君
  45. 稲富稜人

    ○稲富委員 本法第一条の二に「この法律による年金たる給付の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられなければならない。」ということをはっきりうたってあります。もちろん、今回の法改正はこういう点を十分勘案しての法改正だと思うのでございますが、今後の改正に対する参考にもなりますので、その「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合」という点をどの程度政府は認識をされておるか、承りたいと思うのでございます。
  46. 岡安誠

    ○岡安政府委員 「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動」というのは何を指標にして考えるかということはなかなかむずかしい問題だと思っております。  そこで、従来この法律の運用としてどういう措置がとられたかという点についてお答えをいたしたいと思いますけれども、従来の既裁定年金の改定等は、国家公務員の給与につきまして人事院の勧告があり、ベースアップがなされるというような指標をとらえまして、おおむねその指標どおりに既裁定年金の変更をいたしているわけでございます。ただ、かつてにおきましては、国家公務員のベースアップのうち物価変動部分はまるまる見ますけれども、それ以上の部分につきましては、生活給にかかる部分ということで、差額の六割分だけを加算をいたしまして改定をいたしております。ただ、ここ数年におきましては、国家公務員のベースアップをまるまる既裁定年金にはね返らせるというような措置をとっているわけでございます。
  47. 稲富稜人

    ○稲富委員 それで、特にここで法改正に対して頭に入れてやらなければいけないことは、農林年金の場合、厚生年金より厚い給付を行なうことにより、農林漁業団体に優秀な人材を確保する目的で、厚生年金から分離独立したものであるという点を十分勘案して処置をとらなければいけないと思うのでございます。  それで、この改正はどの点が厚生年金より有利に給付されているという考え方を持っておられるか、この説明を承りたいと同時に、さらに、他の地方公務員共済、公共企業体共済、国家公務員共済、私学共済等との比較をどういうふうに見ておられるか、退職年金、障害年金遺族年金等に対して、この点の実情を承りたいと思うのでございます。
  48. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず、農林年金制度厚生年金制度との比較について申し上げます。  まず、給付金の算定の基礎となります平均標準給与の算定期間につきまして、農林年金は、今回の改正によりまして、退職時前一年間の平均ということになるわけでございますけれども、先生御承知のとおり、厚生年金につきましては全期間平均、大体これは三十二年以降の平均になりますけれども、そういうようなことになっております。これは、最近の給与の動向等を考えますれば、農林年金のほうがはるかに有利になっているというふうに言えると思います。  それから、給付開始年齢につきましては、農林年金は五十五歳以降、厚生年金は六十歳以降ということになっております。  それから、退職一時金の支給期間要件でございますが、これは、厚生年金につきましては脱退手当金ということになります。農林年金は一年以上でございますし、厚生年金は五年以上というようなことで、全体といたしまして、厚生年金よりも制度として非常に有利であるというふうに私どもは思っております。  また、実態から見ましても、今回、低額年金に対します優遇措置といいますか、新しい方式を導入いたしました結果、厚生年金給付水準より下回る給付金を受ける者がほとんどいなくなる。もちろん、形式的には九%ぐらいの方々が下回りますけれども、これも受給開始以降の余命年数期間全給付金の額を考えますと、厚生年金よりも有利であるというふうに考えております  それから、他の共済制度でございますが、これは農林年金とおおむね同じような制度になっておると考えております。
  49. 稲富稜人

    ○稲富委員 確かに、厚生年金との比較によりますと非常に有利になっているということは私たちも認めるのでございますが、他の年金との比較では、われわれも、いささか有利だとは見受けるわけにいかないのでございます。  それで、今回の法律改正社会保障制度審議会の答申に基づいて行なわれたものであるとわれわれも解釈をしているのでございますが、今回の改正法案に対しまして、共済年金としての独自の改善がなされるという趣旨の前向きの答申を行なっておりますが、そのとおりであるかどうか、この点を承りたいと思うと同時に、その改正項中特に独自の改善として評価をされているという点はどの点であるか、承りたいと思います。
  50. 岡安誠

    ○岡安政府委員 共済組合制度独自の改善としておもな点を申し上げますと、一つは、給付計算の基礎となります平均標準給与の算定期間を退職時前三年を一年にしたこと、これが第一点でございます。それから、低額年金受給者に対しまして、通算年金方式に準ずる方式を導入いたしまして、いずれか高いほうというような給付の改善をはかったということが第二点でございます。それから、扶養加算につきまして新しく制度を設けたということ、これがおもな独自の改正点だと思っております。
  51. 稲富稜人

    ○稲富委員 社会保障制度審議会は、これまで、年金制度の中において、共済組合制度自体が持っている問題点については、その抜本的改正の必要を繰り返し繰り返し今日まで述べてきております。しかるに、今回の改正においてもなおこれに対する積極的な姿勢が見られないということは遺憾であるということを表明いたしております。「被用者年金における給付水準のバランス、国庫負担の問題その他国際比較等を考慮し、すみやかにその解決を図るよう強く要望する。」と、こういうことを言っておるのでございます。もちろん、このことは、農林年金改正に対するものばかりじゃなく、共済年金の中核である国家公務員共済、地方公務員共済の動向等からそういうようなことを申しておると思うのでございますが、これに対してはやはり遺憾の意を表されておりますので、この年金制度に対しましても特別の計画というものを進めなければいけないだろうと思うのでございますが、これに対してはどういうような見通しというのか、将来の計画を持たれておるか、承りたいと思うのでございます。
  52. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに、共済組合制度一般につきまして、社会保障制度審議会から抜本改正の必要ということが言われております。そこで、各共済制度担当省庁が集まりまして非常に協議を重ねてきたわけでございます。こまかい点につきましては意見の一致を見、それぞれ改善がなされた点もございますけれども、基本的な部分につきましては、それぞれの共済組合制度独自の仕組み等もございまして、共通の問題として処理するために非常な困難があったということから現在まで結論が出ていないわけでございます。ただ、基本的な問題の一つといたしまして、自動スライド制の導入等につきましては、今回関係省庁の連絡会議の中間答申を受けまして、社会保障制度審議会ができるだけ早く結論を出すというような体制にもなってまいりましたので、私どもも、ほかの関係省庁と協議いたしまして、早い機会に根本的な手入れをいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  53. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの答弁の中にも触れられたのでございますが、このたびの改正の主要な事項として、給付の基礎となる平均標準給与を退職時前一年の基準給与の平均とするということと、並びに、低額年金の改善策として、通算退職年金の額の算定方式に準ずる新たな算定方式が導入されております。これは何ゆえに新法年金のみ適用されるのか。全年金者に適用する必要があるのではないか。こういう点に対するもっと公平な処置をとるべきであると思うのでございますが、これに対してはどういうような解釈をしておられるのか、承りたい。
  54. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず、平均標準給与の算定にあたりまして、三年を一年にしたことを旧法に及ぼさないのかという御質問でございますが、旧法につきましては、すでに退職時前五カ年間の給与の平均もしくは退職時前全期間の給与の平均のいずれか高いほうをとりまして、それに一・二倍をいたしたものを給付の算定の基礎となる平均標準給与にいたしております。一・二をかけるということによりまして、ほぼ最終給与に近いものというふうになっておりますので、これは旧法はそれなりに措置をされているものというふうにまず考えております。  次に、低額年金の改善措置でございますけれども、これは確かに旧法だけでございます。このような扱いにつきましては、旧法においてまず試みてみる。特に、旧法は、厚生年金を一応の見合いとして、といいますか、その水準を見まして、それより水準が下がらないようにという配慮をいたしておりますので、そういうようなことからこの低額年金の改善の措置を新法に導入いたしたわけでございまして、旧法は、現在ございますのは絶対保障額と言われます下ざさえの制度、これらの拡充によって措置するということを私どもは考えておるわけでございます。
  55. 稲富稜人

    ○稲富委員 将来は、この問題に対しては、まんべんなくすべての年金者に適用するという、不公平でないような取り扱い方をするように前進さすべきである、かようにわれわれは考えるので、これに対しては、やはり将来のこととして念頭に置いていただきたい、かように特に申し添えておきたいと思うのでございます。  さらに、通算退職年金について、今回、ある程度までは財源がなくても支給できるということになっているようでございますが、それでも厚生年金被保険者における額より不利となるということがまだ残されておるのであります。もちろん制度の違いがあるといたしましても、現実に高い掛け金を払っている農林年金のほうが低額であるということは、先刻も述べましたように、非常に問題ではないかと思うのでございますが、この点をどういうふうになさるつもりなのか、承りたいと思うのでございます。
  56. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまの御質問の、通算退職年金におきます割り落としと言われております措置についての御質問でございますが、これは今回、御指摘のとおり、八割に満たないときはこれを八割とするというような措置をいたしております。それは厚生年金がそういうことをしていないのにおかしいではないかという御質問だと思いますけれども、厚生年金につきましては、これも先生御承知と思いますけれども、退職一時金という制度がございません。厚生年金としましては、通算退職年金の対象となるような場合におきます留保分は、別途掛け金率に算入いたしまして徴収をしているというような制度の仕組みが違うわけでございまして、その関係から、厚生年金におきましては割り落としの制度がないわけでございます。これは、もし今後割り落としの制度をなくすということになりますと、整理資源といいますか、それがそれだけふえることにもなるわけで、現在この共済組合制度は共通のこととして措置をいたしておりますが、整理資源の問題ともあわせて、将来検討はいたしたいというように考えております。
  57. 稲富稜人

    ○稲富委員 ついででございますが、この機会にお尋ねしたいと思いますことは、すでに局長も御存じのように、しばしばわれわれが論議もした問題でありますが、通算退職年金制度遺族年金の創設をやるべきであるという問題があったのでございますが、これに対しましては、今後どういうような考え方をもって臨まれるか、承りたいと思うのでございます。
  58. 岡安誠

    ○岡安政府委員 通算退職年金遺族年金制度を導入したらどうかということでございますが、これは、私どもも、いわゆる基本的な問題の一つとして検討をしなければならないと思いまして、厚生省中心関係省庁集まりまして検討いたしている事柄でございます。昨年厚生大臣がやはり国会におきます質問に答えたのでございますけれども、できるだけ早い機会に結論を出したいというふうにお答えになっておりますので、私どもも、厚生省と相談をいたしまして早く決着をつけたい問題であるというふうに考えておる次第でございます。
  59. 稲富稜人

    ○稲富委員 この問題につきましては、もうすでに局長も御承知のとおり、しばしば論議されておる問題でございますので、われわれは、この際、法の改正をすると同時に、こういう問題に対して取り組んでもらいたいという期待をしておったのでございますけれども、この問題については、将来早急に何とか対策を講ずるような方法をとっていただきたいということを特に私はこの際強く希望申し上げておきたいと思います。  さらに、今回、遺族年金についてだけは扶養加給制度が新設されておりますが、他の年金、すなわち退職年金、障害年金等についても扶養加給制度を設けることが当然ではないかと考えるわけでございますが、これに対してはどういうような考え方を持っておられるか、承りたいと思うのでございます。
  60. 岡安誠

    ○岡安政府委員 厚生年金におきます老齢年金は、農林年金におきます退職年金相当の年金でございますけれども、社会保障という見地に立ちまして、比例報酬部分により報酬の程度を反映されるほか、定額部分によって所得の再配分を行なうということが一つと、それから、加給年金額によりまして扶養手当の要素を加味して算定をするというたてまえになっているわけでございます。ところが、農林年金のほうは、ほかの共済組合制度と同じように、長く勤務いたしますと、それだけ額が多い年金が受けられるというような長期勤続奨励的性格が強いわけでございまして、原則として、報酬比例に基づきまして年金を算定するということになっているわけでございます。  したがって、今回特に遺族年金についてだけ扶養加算を行なうというふうにいたしましたのは、子供のある遺族の方、またはきょうだいのある遺児等につきましては特に手厚い保護が必要であるというふうに考えて新たに措置したものでございまして、このような制度をほかの年金にまで広げるということにつきましては、相当基本的な問題も含んでおりますし、また、他の共済組合制度とのバランスも考える必要がありますので、これも非常にむずかしい問題ではございますが、検討をさせていただきたいというふうに考えております。
  61. 稲富稜人

    ○稲富委員 さらに、今度は、税金の問題をお尋ねしたいと思いますが、所得税法第二十九条第一項の規定によりますと、農林漁業団体職員共済組合法による年金は給与所得とみなされて、課税対象となっております。年金については給与所得の対象から除外して非課税にすることが当然だと思うのでございますが、これに対しては農林省としてはどういうような考え方を持っておられるか、承りたいと思います。
  62. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに、年金の収入は所得税の課税対象ということになっておりますけれども、すでに、四十八年度の税制によりましても、大体年間百四十五万円程度までは非課税になっております。さらに、四十九年度の税制改正によれば、百六十七万円程度までは非課税ということでございますので、農林年金受給者はおおむねこの範囲に入るのではあるまいかと思っております。もちろん、他に相当大きな収入があれば別でございますけれども、大体非課税の取り扱いを受け得るのではあるまいかというふうに考えているわけでございます。
  63. 稲富稜人

    ○稲富委員 最後に一つ農林年金制度財政状況について承りたいと思うのでございます。  今回の社会保障制度審議会の答申においても、特に、農林年金制度については財政基盤の強化をはかるべきであるという趣旨を強調しておられます。毎年の制度改正や著しいベースアップ等によって相当の不足財源が出ていると思いますが、この実情に対する処置をどういうふうになされておるか、承りたいと思うのでございます。
  64. 岡安誠

    ○岡安政府委員 農林年金にとって最大の問題は、従来の経過の積み重ねの結果でございますけれども、不足責任準備金が昭和四十七年度末で約三千六百億円、四十八年度でもおそらく約五千億円程度になるのではあるまいかというふうに思っておりまして、このような財政に対してどう対処するかということが最大の問題でございます。私といたしましては、昭和四十九年度末を基礎といたしまして農林年金財源率の再計算をいたしたいというふうに考えておりますので、その結果によりまして総合的な対策を講じたい。もちろん、なかなか容易なことではございませんけれども、私どもといたしましては、あらゆる手段を講じまして適切な対策を講ずるべく努力をいたすつもりでございます。
  65. 稲富稜人

    ○稲富委員 今後の調査の結果によって対処されるということでありますが、御承知のとおり、農林年金組合員掛け金率というものは最高の部類に属しておると言われておりますけれども、この不足財源を家計に取り組ませるというようなことになると非常に困難であると思いますので、この点に対しては、その組合員に負担のかからないような方法で十分対処すべきであると思うわけでございますが、これに対して何か腹案があるなら承りたいと思うのでございます。  こういうことに伴いまして、今後のこの運営に対して私たちが考えることは、御承知のような私学共済のごとく、都道府県にこれが負担をさせるべきことが必要ではないかということも考えるわけでございますが、これもなかなか問題があると思うのでございます。そうなりますと、おのずから当然国がその財源措置をやるべきであるということもわれわれは強く考えるわけでございますが、これに対してはどういうような考え方を政府は持っておるか、承りたいと思うのでございます。
  66. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに、財源率の再計算をいたしますと、従来方式であるならば相当な掛け金率の増大になると思いますし、したがって、組合員の負担も増高せざるを得ないというふうに思います。ただ、御指摘のとおり、現在の農林年金掛け金率組合員負担部分は相当多額になっておりますので、できることならば、私どももこれ以上組合員の負担を増高させない措置を講じたいと考えます。しかし、非常にむずかしい問題なので研究をいたしておりますが、御指摘のとおり、それに対する措置一つといたしましては、国庫補助の充実とか、都道府県による援助とかいうものも含めまして検討をいたすつもりでございます。
  67. 稲富稜人

    ○稲富委員 これに対しましては法第六十二条に、「国は、毎年度、予算の範囲内において、次の各号に掲げる経費を補助することができる。」ということがはっきりうたってあります。給付に要する費用の百分の十八に相当する額を負担することになっておりますが、国庫補助をやるということになりますと、この百分の十八という補助率をもっと上げるということも当然考えなければできないと思いますが、これに対する増額等に対してはどういう考え方を持っておられるか。私たちは、今日のこの組合に従事している各職員の報酬あるいはほかとの比較ということを考えますときに、それに負担が少なくかかるためにはどうしても国庫補助増額が当然必要であると考えますので、これに対しては特段の考え方を持たなければいけないと思いますが、これに対してどういう考え方を持っているか、承りたいと思う。
  68. 岡安誠

    ○岡安政府委員 この国庫による援助の増大につきましては、われわれといたしましても従来から努力してきたところでございますが、今後も私どもといたしましては最大の努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  69. 稲富稜人

    ○稲富委員 要するに、この法が制定されております目的というものは、優秀な職員をこういう農業団体に定着せしめるということがこの法律の骨子であると思うのでございます。それがためには、老後においても安心してその職に挺身されるような方法を講じてやることが最も必要であると思いますので、この法の立法の趣旨から申し上げましても、政府は特段の考え方をもってこの共済制度を生かし、この共済制度が、職員がみんなよることのできるようなものにする方法を講じてもらうように、十分前向きに処していただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  70. 仮谷忠男

    仮谷委員長 柴田健治君。
  71. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 簡単にお尋ね申し上げますから、簡明にお答え願いたいと思います。  同僚議員からこの法案に対していろいろ御質疑がございましたが、私は、何としても農業団体職員の給与改善をまずしなければならぬという気がいたすわけでありますが、いま中身を見ると、団体別の給与格差、そしてまた地域的な給与格差というものがあるわけであります。こういう格差をなくすることが当面の緊急課題であるし、そして、また、農業団体職員の優秀な職員の確保、定着ということを考えた場合には、思い切って給与改善をすることが大事だと思っておるのでありますが、この二つの点についてお答え願いたい。
  72. 岡安誠

    ○岡安政府委員 農林団体につきましては、それぞれ末端の団体都道府県単位にある団体中央団体がございまして、賃金等の格差もございますが、さらに問題なのは、御指摘のとおり、同じ地域等にある団体と比べましても賃金の格差があり、一貫して低位にあるわけでございまして、そういうような格差の是正ということは、できるだけ早い機会に改善がなさるべきものというふうに私どもは考えております。  それから、おっしゃるとおり、優秀な人材を農林団体に確保するためには、基礎となります待遇の改善、これなくしてはなかなかむずかしい問題でございます。ただ、私どもが考えておりますのは、職員の待遇改善につきましては、まず、職員の雇用主である団体自身があらゆる努力を払わなければならないというふうに考えておりますが、ただ、団体自身では必ずしも容易ではないという場合には、国なりその他の機関ができ得る援助はいたすということで従来対処いたしてきているわけでございます。今後とも、私どもといたしましては、農林団体職員の給与水準の引き上げに対しまして最大の努力はいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  73. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 抽象論的で要領がよくわからないのですが、それなら、具体的に事業主に対してどういう給与改善を今後――たとえば今年度中にはどういう指導を具体的にしていくのか。格差については具体的にどういう行政指導で格差是正をやっていくのか。具体的なことを言ってもらわないと、ただ私の申し上げた点に賛意だけを表してもらったんじゃ困るので、具体的にどうするのか。これは農林省の任務だと思ので、それのお答えをお願いしたい。
  74. 岡安誠

    ○岡安政府委員 これは先生十分御承知と思いますけれども、農林漁業団体職員の給与というものにつきまして一定の水準をきめ、それを確保するというわけにはまいらないというふうに思います。これは政府関係職員でもないし、また、私どもが他の行政の必要からやっておりますような補助職員でもないわけでございます。したがって、やはり第一に必要なことは、農林漁業団体職員を雇用している団体自身の力をつけるということ、これを抜きにしてはすべての施策が抽象化されてしまうわけでございます。  では、団体の力をつけるのには何がいいかということでございますけれども、これもいつも同じことを言うと言われますけれども、基盤を確立すること以外にはないわけで、零細規模の団体につきましては、規模を大きくするということ以外には、経済的な基盤の確立はなかなかおぼつかないというふうに思っております。中には、もちろん、組合の規模が小さいほうがいろいろ問題に対処しやすいという御意見もあるかと思いますけれども、具体的なこまかい事案ではそうかもしれませんけれども、長い目で見た場合には、やはり、規模の大きい基盤のしっかりした組合というものでなければ、最終的に職員の給与の改善をなし得ないのではあるまいかというふうに考えまして、私どももそういう措置を進めておりますけれども、農林漁業団体中央機関におきましても、そういう方向で現在もなお合併の推進につとめておるところでございます。
  75. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 農業団体は国の法律に基づいて法人組織になっているわけですが、たとえば農業協同組合法なら協同組合法の精神ですが、これをもっと農林省が徹底をして、あの法の精神を、事業主、要するに役員諸君がもっと守れば、もう少しこの給与改善というものが真剣に考えられてくると私は思うのです。たとえば、この協同組合営農経営改善という面については、もっと賦課金を取る指導をしたらいいじゃないか。その賦課金も取らない。当然賦課金を取らなければならぬのに、賦課金も取らずに、ただ信用事業や販売事業、購買事業だけの利益で全部まかなうという考え方自体が、どこにしわ寄せがいくかというと、やはり職員の給与にしわ寄せする。そういう点の指導は農林省はあまりしていない。当然、営農経営改善事業というものは賦課金を取るべきだ。中には、畜産振興についての一頭当たりで多少何ぼかの賦課金を取っておる組合がある。また、ただ反別割りにして賦課金を取っているところもある。ばらばらなんですよ。だから、そういうばらばらな賦課方式でなしに、協同組合法の精神をもっと周知徹底させて、この職員の給与改善はどうあるべきかということをもっと明確に指導していけばこれはできないことはないと私は思うが、これはどうですか。
  76. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに、御指摘のとおり、たとえば農業協同組合等におきます指導事業の経費につきましては、賦課金を取るということが本筋だというふうに考えております。ただ、これも先生十分御承知と思いますけれども、指導事業の成果というものはなかなか短期間にあがらないわけでございまして、長期に見なければ成果があがらないというようなたぐいのものにつきましては、組合員である農家から賦課金をなかなか取りにくいという面も確かにございます。そこで、勢い他の事業部門から経費を回すということがあるわけでございますが、これはもちろん限度がございます。そこで、私どもは、本来の形に戻ればよろしいとは思いますけれども、経過的には現在のような措置もやむを得ないのではあるまいかというふうに思っております。  それにいたしましても、繰り返すようでございますけれども、結局は、一定の規模がなければ、先生のおっしゃるような賦課金によって指導事業の経費をまかなうことも不可能でございますので、やはり、農業協同組合におきましては、特に規模の拡大ということが要請されるのではあるまいかというように考えているわけでございます。
  77. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 それで、農林省は、法の精神を生かしていくような指導は一方ではしないし、あまりにももちはだんごという方式で、そういう規模拡大をすれば何でもよくなるんだということにあなたたちの考え方が集約されておる。規模拡大だけでよくなるとは思えない。それも必要ではありましょう。規模拡大も大切な面だろうと思いますけれども、それだけで解決するとは思っていない。  それから、農協職員の給与が歴史的に低い。その理由はいろいろあると思うのです。その持っておる古い体質というか、保守的体質というものが依然として根強く残っておる。それから、もう一つは、たとえば組合員の出資に対する配当は、法的に七・五分だ、それ以上は配当はいけませんぞな、ということになっている。組合員の出資に対する配当を法的に押えている。そういう面を片一方で持っておるから、職員の給与だけ、役員の給与だけをどんどん上げるというわけにいかない。そこにいろいろな法的な制約というものを受けておる。そのしわ寄せは職員の給与にはね返っておる。こういうことは、たとえばある農協なら農協へ行って、もう少し給与改善をしてあげなさいよと言うと、ところが、出資者である組合員の配当も法的に押えられておるのです、七分五厘より以上配当はできませんのだ、そういう協同組合の法的な制約から言えば、組合員の感情として、職員の給与だけ上げるわけにまいりません、と、こういう言い方をする組合長なり理事があるわけです。だから、そういう点も一つの要素になっておる、給与改善ができない弱い面を持っておる、こういうことを言えるのですが、そういう点についてのあなたたちの認識はどうなんですか。
  78. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに、先生の御指摘のような環境はあると思います。と申しますのは、農業協同組合というものは営利企業ではないわけでございまして、組合員である農業者のためにある団体でございますから、組合員である農家等の収入が増大をしまして、そのはね返りとして農協の運営が楽になるというのが本筋であると考えられているわけで、これもまた一つの真理であろうというように考えているわけであります。  ただ、昔は、お互いに情熱を持った者だけが集まりまして、俸給等は当てにしないで、奉仕の精神だけで産業組合等を運営をしてきたという歴史はありますけれども、最近のような複雑な社会になりますと、それだけでは農業協同組合の運営がうまくいくものとも考えておりません。やはり、正当な労働に対しましては正当な給与が支払われるということでなければ永続性もないし、また、新しい人材を確保することも不可能だというふうに考えております。私どもは、何も農協はもうけを第一にする団体ではないと思っておりますけれども、必要な活動をするために必要な経費につきましては、できる限り合理的な形において生み出すという努力はしなければならないと思っておりますし、また、そのような指導もいたしておるわけでございます。  これは、役員は別といたしましても、職員の給与と、それから配当の制限があるということとはおのずから別であるというふうに思いますし、そのような指導もしてきたわけでございます。
  79. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 局長は、給与改善がなされない、給与の格差是正もできないということは十分知っておりながら、本気でやる意思がないというようにわれわれは考えているのです。本気でやったら、これは思い切って改善できますよ。農林省は、あれだけ農民がいやだと言うた生産調整を、部落座談会を開かせて、農協職員、役場の職員を動員して強引にやったじゃないですか。農民は生産調整はいやだ、減反政策はいやだと言うのに、あなたたちは強引にこれをやらせた。やろうと思えばやれないことはないのですよ。やろうと思えばどんなことでもあなたたちはやれるのだ。それをつべこべ言うて、変な理屈をつけているのは、やる意思がないということですよ。本気でやりなさい。大幅な賃金格差を是正するということはやれないことはない。いまあなたが言われたように、営利企業ではないという認識があるとするならば、地方公共団体財政負担というものは自治省と農林省と話ができるはずだと私は思う。私学振興には財政負担がある。私学振興も大事だ。農業振興も同じであって、どちらも民族的な問題なんです。これは長期にわたる問題なんです。あらゆる農業団体――それは森林組合だってそうですよ。森林資源の公益的機能論から言うと、長期の展望に立った場合には、これも教育に匹敵するような重要な課題だと思うのです。それから、私学振興も大事だが、農業振興も大事だ。一方、私学振興のほうは、地方公共団体が負担をしておる、農業団体のほうはやらないというのはおかしいのであって、営利が目的でないという認識の上に立てば当然話し合いができる。同時に、私学振興のほうは、中央段階において私学振興事業団がある。その私学振興事業団のほうからも財政援助しておるわけですね。都道府県のほうにこの財政援助ができないということになれば、そこは生活の知恵ですよ。農林省は知恵を出して、農業振興事業団か何かこしらえて、そこに国の財政援助をして、そこから出してもいいじゃないですか。そういう方法の知恵が出ませんか。
  80. 岡安誠

    ○岡安政府委員 私どもも、都道府県からの農林年金に対する援助が全く不可能であると考えなかったからこそ、四十九年度予算並びに今回の法律改正にあたりましても自治省等と協議をいたしたわけでございます。ただ、先生がおっしゃるように、農林団体が営利企業ではないということだけで私学と同様な援助を期待し得るかということにはなお問題があると私どもも考えているわけでございまして、これらにつきましては、なお関係当局とも相談を煮詰めていく必要があるというふうに考えております。  次に、私学には私学振興財団があるので、農林年金もそういうものをつくったらどうかというお話しでございますけれども、問題は、要するに、組合員掛け金負担を軽減する方法は何かということでございまして、それは、詰めれば、掛け金率につきまして、組合員以外の事業主か、国か、県か、その他の機関か、または組合の財産運用による利差益によって補てんをするか、それぐらいの方法しかないわけでございます。したがって、組合員以外の者からの掛け金負担分を増大する方策としまして、私学振興財団のような機関をつくったほうがいいのか、それとも別の方策がいいのか、これは私どもも真剣に検討するに値すると思っておりますが、しかし、ただ、私学と同じような財団をつくればいいというわけにもまいらないというのが現在の考え方でございます。
  81. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 同僚議員からこの点についていろいろ質問があって、職員の方からこんなに掛け金をたくさんとるなんということは――どうも、日本では、ほかの年金制度と比べて一番高いし、世界最高に高いということになる。給与は低いわ、掛け金は世界最高に高いわということは自慢にはならぬと思うのですね。これは局長の責任において早急に是正しないと、あなたたちが将来、いまの食料政策、農業政策の大転換をやらなければならぬという動きになって、食料はもはや商品ではない、国際的においても戦略物資的な要素になってきたというときにおいて、農業団体職員の給与改善なり年金掛け金のこんな制度では、農林省が本気で農業政策を進めるということになっても、手足になってくれる者がおらないということになったらたいへんだと私は思います。これはもう思い切って早急に変えなければならぬと思うのですが、そういう点についての考え方を明らかにしてもらいたいと思います。
  82. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御指摘のとおり、累次の制度改正を経まして、農林年金財政も相当困難な事態に立ち至っておりますので、四十九年度末を基準点といたします財源率の再計算の結果が出ますれば、根本的に対策を講じなければならないと私も思っておりますし、その際は御指摘の点等もいろいろ考え合わせまして総合的な対策を講じたいというふうに考えておる次第でございます。
  83. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 時間がありませんから簡単に申し上げます。  この年金法法律はあまりにも複雑怪奇である。新法と旧法があり、特例法、附則、と、とにかく、金をもらうほうの側も、どう説明を受けて、どう理解していいのかわからないという、まことに入り組んだ法律なのですね。また、この説明をされる農林省側も困るのじゃないかという気がするわけですよ。この法律の複雑さというものは、ちょうど、お医者さんが診断をして、患者は何もわからずに金を払うのと一緒ですね。もらう者も、中身がどういうものかわけがわからぬということになってくる。それではいけないので、もう少し簡素化することはできないのか。   〔委員長退席、安田委員長代理着席〕  私のところへ来た手紙を一応読んでみますから、政務次官、これをよく聞いておってください。  私は昭和三十四年四月一日農協組合長として就任、昭和三十四年七月一日農林漁業団体職員共済組合に加入、昭和三十六年四月一日農林漁業団体職員共済組合法の改正と同時引き続き組合員となった更新組合員であり、昭和四十八年五月三十一日任期満了により退職、十三カ年十一カ月の間組合員の義務を履行し、退職と同時に退職年金の請求をいたしましたるところ、退職一時金決定書に十四万三千七百三十四円の年金決定通知をもらった。あまり僅少なるために組合発行の法令集及び実務必携の例示等により参酌検討したるところ、全く法外の方法により給付されており、今日まで組合と照会数度に及ぶも納得がいかず追認決定もされないので公訴する以外に道なしとして公訴する次第であります。  一、以下記述を略すために農林年金共済組合を(組合)と称し、組合発行の法令集昭和四十七年十一月発行のものを(法集)、また組合発行(昭和四十五年版)実務必携を(実必)と、それぞれ略し記述し参考といたします。  一、私は、法集第一条、この法律は公布の日から施行し、この附則に特別の定めのあるものを除き昭和三十六年四月一日から適用する。(法集九四ページ)  一、私は、法集第四十二条により、次の表の上欄に掲げる者で昭和三十六年四月一日以後の通算対象期間を合算した期間がそれぞれ下欄に掲げる期間以上であるものは、改正後、農林漁業団体職員共済組合法第三十七条の三の適用については同条第二項第一号に該当するものとみなす。(法集九五ページ)すなわち、法三十七条の三の第二項第一号は二十五年である。(法集三七ページ)大正五年四月一日以前の生まれの者は十年をもって二十五年とみる。(法集九五ページ)  一、私は、明治四十四年四月一日以前に生まれた者で、昭和三十六年四月一日以前の通算対象「対象」期間である組合員であった期間と同日以後の組合員であった期間とを合算した期間が十年以上であるもの(法集第四十二条三の二項、法集九六ページ)  一、小生は、法律第四条第三項に該当する更新組合員である。私に対する更新組合員であることは組合も確認済みであり、第四条三、四、五、六、七、八、九、十項おのおの更新組合員の該当事項記載(法集一〇二ページ)  一、組合は、私に対しては法律第三十七条の三の三項の適用による年金の算定するところ。ただし、小生のごとき更新組合員にありては附則法第九条によるとあり、新法三十七条の三第三項に規定する通算退職年金の年額は、同項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる期間に応じ当該各号に掲げる額の合算額とする。   一、旧法組合期間 新法第三十七条三の第三項中(組合員又は任意継続組合であった期間)とあるのは(旧法組合員期間)と、(平均標準給与の月額)とあるのは(旧法の平均標準給与の月額)として同項の規定の例により算定した額   一、新法組合期間新法三十七条の三第三項中(組合員又は任意継続組合員であった期間)とあるのは(新法組合員期間)と、(平均標準給与の月額)とあるのは(新法平均標準給与の月額)として同項の規定の例により算定した額(法集一〇九ページ)  一、実必一三七ページ六項に更新組合員の通算退職年金の算式事例をもって説明してあり、また、同一三九ページにも私とやや同勤務年数の事例を数字をもって説明してあり、間違いない。  一、組合は、法第十一条(附則)更新組合員に係る退職一時金の額に関する経過措置、更新組合員に係る新法第三十八条第二項第一号に掲げる額は、同号の規定にかかわらず、次の各号に掲げる期間に応じ当該各号に掲げる額の合算額とする。   一、旧法組合期間 旧法の平均標準給与の仮定日額を基礎として旧法三十八条第二項第一号の規定の例により算定した額 こういう文書が私の手元にある。みなは読みません。それで、法令集をいろいろ出して読んでみたが、正直言うて、請求する者が間違っておるかどうかは別として、これではわからない。新法、旧法、特例法、附則法と入り組んでいて、判断をしなければならぬというこの法体系を、次官、いいと思いますか。一口で言うてください。
  84. 山本茂一郎

    ○山本(茂)政府委員 お答えをいたします。  一言で言えということでございますが、元来、いろいろの法律にはそれぞれの歴史と環境の相違があると思いますけれども、国家の一つの思想によってこれを統一せなければならぬということも事実だと思います。そういう意味におきまして、この問題は、私の少ない経験によりましても、きわめてわかりにくい複雑なものがあると思うわけであります。したがって、これを統制しようということになりますと、おい立ちの違うものをあるところに統合していかなければならぬという関係上、なかなか容易にこれが実行し得ないことがあることは御承知のとおりだと思います。  また、国の予算そのものを国から出していただくことを一例といたしましても、国としては、何年かに一回しかこれを改正しないのだとか、慣行そのほかいろいろな事情がございまして、たとえばこの農林年金法そのものを見ましても、なかなか純理論的には動けないところもございます。また、実行しようと思うと、ほかの似た法律との関係をも考慮しながらやっていかなければならないということで、農林省等の事務関係においてはきわめて熱心に努力をされまして、関係方面と協議いたしたはずでございますけれども、そういう事情で、一挙に自分らの希望のとおりにいき得ないということを御了承いただきたいと思うわけであります。  私どもは、今度改正されましたことについては一段の進歩であるとは存じますけれども、これが理想の姿に今後大いに努力をして早く持っていきたい、こういう念願で措置をいたしたいと考えておるわけであります。
  85. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 局長、いま政務次官は、正直に言ってわけのわからぬ答弁をしたのですよ。だから、これは、年金を掛ける人と、それから老後でもうもらえる人が、自分のことがすぐ計算ができて、すぐわかるように、そういう法体系の簡素化というものをほんとうに早急に関係機関と話し合いをして解決するというふうに、簡単にお答え願いたいのですよ。もうぼくはこれでやめますから……。
  86. 岡安誠

    ○岡安政府委員 簡単にと言ってはむずかしいのですけれども、なるべく簡単に申し上げますけれども、私も、結論としては、法律内容というものはなるべく簡単明瞭でわかりやすいことが望ましいと思っております。  一言だけ弁解させていただきますと、年金関係法律は、いろいろ権利義務に及ぶような規定がたくさんありますので、これはどうしても法律に書き込まなければならぬということが一つあります。それから、もう一つは、新法、旧法、その他がございますけれども、簡単にしますと、いわば不公正になるという点があるわけで、公正にものごとを処すためには、複雑な組織もやむを得ず入らなければならなくなるという点があることは御了解をいただきたいと思っております。  しかし、私ども、努力いたしまして、なるべくわかりやすい方向で法律は書きたいと思っております。
  87. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 終わります。
  88. 安田貴六

    ○安田委員長代理 島田琢郎君。
  89. 島田琢郎

    島田(琢)委員 今回の法改正にあたって問題になる点が、昨日からの議論を通してほぼ明らかになってまいりました。限られた時間でありますから、総体的な問題について、重複することを避けて、ごく二、三点に限定して、特に局長中心にお尋ねをしてまいりたいと思います。  一つは、いま柴田委員から指摘がありましたが、この農林漁業団体職員共済組合法という法律の複雑さについては、実は私も辞易している一人であります。どうしてこんなにむずかしいのだろうか。あるいは、むずかしくなくて、私の頭が悪いのかもしれませんけれども、どうも理解しにくい法律であるという感じがしまして、私は、先般連休を利用してくにに帰りましたときに、農業協同組合職員の皆さんともいろいろ話をしてみましたが、結論的に言いますと、大かたの職員の皆さん方は、やはりむずかしくてわからぬという結論になっております。本来、毎月もらう給与と、退職年金あるいはそのほかの退職金というものを含めて、非常に生活にかかわりの深いものでありますから、この面に対する関心というものは当然強くありますが、ところが、実際問題は、中身がよくわからなくて、この年金の中で、たとえば十五年つとめておられる方に、あなたはいまやめられたら一体どれくらい退職金をもらえると思いますかと端的に質問をしましてもわからない。あるいは本人はわかっているのかもしれませんが、とにかく、説明を聞いている範囲では、私自身がどうもよくわからぬところがある。そこらを何とか整理できないかという感じを強く持って実は国会に戻ってまいりましたが、いま柴田議員からも指摘がありましたけれども、新法だ、旧法だ、特例法だ、附則だというわけで――附則というのは旧法を包む法律だということで理解をしておりますけれども、それにしても、よくむずかしくつくったものだなあという感じがする。いま局長のお話しを聞きますと、何もかも網羅的に入れようとすると、しかたがなく、むずかしくならざるを得ないということでありますけれども、これはもっと整理をする必要があるというふうに思います。  重ねて前議員に続いてのしつこい質問でありますけれども、私は、端的に旧法と新法というものを一本にしていくことができるのではないかというふうに思うのですが、これは私がしろうと考えで申し上げることになるのかどうか。私は、これを一本化すべきだというふうに昨年の改正以来一貫して考えてまいりましたが、これはむずかしくてどうしてもできないのですか。
  90. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに、農林年金一つとりましても、旧法の適用を受ける組合員と、それから新法の適用を受ける組合員とがございますし、また、組合員の中には、更新組合員ということで、旧法の計算を一部取り入れていろいろ計算をしなければならない組合員もいるということでございます。  その原因は、おっしゃるとおり、旧法と新法があるということから発生するわけで、これを取っ払ったらどうかという御質問でございますけれども、これは毎度御説明申し上げておりますけれども、それぞれ発足のときのいわく因縁がございまして、旧法といいますのは、発足当時の国家公務員共済組合制度に準ずる制度として発足しまして、いわば恩給にならってできた制度でございます。その後の新法というのは、新しく改正をされました国家公務員共済制度に準じてできたもので、その違いがあるわけでございます。これがかりに国の一方的な給付であるならば、それは簡単に両方の一本化ということも可能であるかもしれませんけれども、やはり、相互扶助の体系としてでき上がっている関係から、既存の経緯というものは尊重しませんときわめて不公平、不均衡が生ずるということから、はなはだ残念ながら複雑な体系になっているわけでございます。   〔安田委員長代理退席、笠岡委員長代理着席〕 このことは、ひとり農林年金制度だけではございませんで、すべての共済組合制度がそういう事態をかかえているわけでございまして、私どもも、できるだけ簡素化の方向に努力いたしますと同時に、要は、やはり組合員に御理解をいただくということであろうと思います。  法律が複雑である一つの原因は、あらゆる場合を想定いたしまして、すべて書き込んであるということから複雑になるわけでございまして、先ほどの柴田先生の御指摘の例は、個人的にも相当複雑な例でございますけれども、一般的には、組合員個々人に対します法律の適用というものはそんなに複雑ではないわけで、そういう点を御理解をいただきまして、少なくとも組合員個々はどういう法律関係になっているかということを御理解をいただくように今後ともPRはつとめてまいりたいと考えております。
  91. 島田琢郎

    島田(琢)委員 局長のおっしゃっている点については、わからないわけではありません。加入者の皆さん方がよく理解をするということが大事だということは私もよくわかるわけであります。ただ、旧法の該当者というのは、全体を通じてあまりたくさんいないのではありませんか。一体どれぐらいおりますか。
  92. 岡安誠

    ○岡安政府委員 農林年金の場合、いわゆる旧法年金者と言われますのは二千十九人でございます。
  93. 島田琢郎

    島田(琢)委員 二千十九人というお話しでありますが、金額にすると、財政的に新法並みにやっていくとしたら、どれくらいの金額が必要になりましょうか。
  94. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先ほど申し上げました旧法年金者二千十九人の内訳をちょっと申し上げますと、退職年金を受ける者が二百九人、障害年金を受ける者が二百七十四人、遺族年金を受ける者が千五百三十六人というふうになっておりまして、これらの方々を新法で計算をし直しますと、平年度ベースにいたしますと、給付費の増額が約二億六千八百万円でございます。
  95. 島田琢郎

    島田(琢)委員 これは加入者の皆さん方に負担をしてくれということはたいへんむずかしいと思います。この部分くらいを毎年国庫で負担をしていくというようなことを考えればこれは解決すると思うのですが、その道はなかなかむずかしいですか。
  96. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに、農林年金の場合だけを考えますと、平年度ベース二億六千八百万円、これが今後増大するとは思いますけれども、そんなに大きな金額の負担ではありません。ただ、このことは、先ほど申し上げましたとおり、ほかの共済組合制度共通の問題でございますので、それの扱いも考えなければならないということで、農林年金だけで対処し得ない問題であろうと実は考えております。
  97. 島田琢郎

    島田(琢)委員 ほかとのかね合いがあるというお話しでありますけれども、農林年金が本来厚生年金から分かれたときの発想というものが、歴史的経過、経緯があるというおっしゃり方を岡安局長がしばしばなさるんですけれども、政策年金だというふうに局長も言い切っていますし、われわれもそう理解しております。ですから、ほかの年金との関係があるということではなしに、あくまでも政策的な配慮のもとにこれを考えていくということがあって不都合ではないと私は思っているんです。  さらに、また、農業団体年金加入者の皆さん方というのは、賃金一つ見ても、あるいは社会的に置かれている責任の立場から言っても、非常に大事な立場に置かれてがんばってこられた人たちばかりなんです。それなのに、いま非常に不遇な状態に置かれているということが、一般的にみんなから指摘がされている点であります。その点は局長もきのうから認めておられる。そういうものを救い上げていくために思い切った政策措置をとるということは、ほかの年金制度にそう大きく影響するものではないという理解は得られると私は思うのです。  きょうは限られた時間ですから、農政上の問題に触れるということは避けますけれども、一言で言えば、今日の食料問題一つを考えてまいりますときにも、生産者である農家と、この実務を担当しておられる職員の皆さん方とが今後果たしていかなければならない役割りというものは非常に大きいわけです。それを考えるときに、あるいは一面では現地の事情などを考えていきますときに、これは相当大きな政策的措置を講じてまいりませんと、大事な職場の人材確保ということすら非常にいま困難になりつつあるという点、あるいはまた、一生懸命やっても報われない職員の皆さん方のこの問題というものは解決しないと私は思うのです。ですから、これは思い切っておやりになるということが今後の日本の農政を進めていく上にたいへん大きな役割りを果たすと思いますが、これっぽっちのお金のことで、あるいはまたよその年金の顔色を伺うなんということをおっしゃるのじやなくて、思い切ってやるんだという姿勢が示されてしかるべきだと私は思うのですが、重ねてお考えをお尋ねいたします。
  98. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに、農林年金厚生年金を離れて独立いたしました経緯につきましては、先生御指摘のようなことがあったかと思います。したがって、私どもも、厚生年金に劣らない給付水準を確保するように努力をいたしておりますし、ほぼその目的は達成していると思っております。  ただ、現在の農林年金は、御承知のとおり相互扶助の共済組合制度でございますけれども、先生の御指摘のようなもっと農林年金の性格を変えろという考え方を取り入れますと、もはやそういう性格は失われて、全然別の施策ということになるわけでございます。そこまで農林漁業団体職員年金制度を踏み切ることができるかどうか、これはなかなか大きな問題であろうと思います。  また、別の観点からいたしましても、相互扶助の共済組合制度を離れて大幅な国庫補助を導入することになりますと、農林漁業団体というものはきわめて民主的、自主独立の団体であるにもかかわらず、国から直接に相当多額の金が導入されるということがはたしてどうか――これは便宜主義ではございませんで、基本的に問題もあるのではなかろうかということも考えられます。  そこで、私どもは、従来からの相互扶助の共済組合制度のワク内で農林年金給付内容の改善ということにつとめてきたわけでございまして、制約はありますが、できるだけそういうワク内で努力をいたしたいというのが私どもの考えでございます。
  99. 島田琢郎

    島田(琢)委員 局長がいまおっしゃっていることの中で、二つほど私と考え方の違うところがあるのです。  一つは、きのうからの議論を通じて幾度かおっしゃっているように、厚生年金並みだということをおっしゃる。それに追いつく――追いつくといいますか、それ並みに持ち上げていくことに目標を置いている。私は、その厚生年金並みということが気に入らぬのです。厚生年金以上にすべきじやないかということが、いままで質問に立った各質問者の言い分なんです。ところが、局長は、常に、厚生年金並みだ、そうなりゃ目的は達せられたんだと言われる。もう一つは、相互扶助だから、あまり国なんかがお金をつぎ込んでいくと自主独立を侵すことになるとおっしゃるが、これも、もう一つ私は気に入りません。いまの農林年金制度は、もはやそのお金の問題でもかなり行き詰まりが来ているという事実がありますし、ですから、財政立て直しという面からも、先ほど午前中にも美濃委員からもこの問題が鋭く出されておりましたが、そういう点を国が措置するということがないと、正常な年金制度というものが運営されていかぬという心配が裏面にあるのです。あなたのおっしゃり方を聞いておりますと、お金を出すとやはり文句を言うのも強いぞ、ひもつきになるぞという前提があっておっしゃっているのではないかと思うのです。これは、資本家だとか財閥だとか、特定なだれかがお金を入れたんであれば、それはひもつきだということになるのですが、国がおやりになることについて、ひもつきにするなんという考え方が前提にあって、自主独立がそこなわれるなんという考え方を持っておられるとしたら、それは私としてはまことに気に入らない答弁と言わざるを得ないわけです。そうではない実態というものが裏にあるから、先ほど美濃委員が触れた点は非常に大事な点でありますから、そういう面も含めて、農林年金制度の運営の正常化をはかるという面が一つにはありますし、その面は別にしても、いまの状態の中で、新法、旧法を一本化して、わかりやすくして、そうしていままで一生懸命働いてこられた人たちも新法並みに救い上げていくという措置は、これは相互扶助の中でやれということはむずかしいということについては私は十分理解できますから、その面は国がやるべきだというのが私の主張なんであります。どうでしょうか、私の言っていることは無理ですか。
  100. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いや、先生の御意見に全面的に反対ということを申し上げたわけではございません。  先生のおっしゃったことの中で多少気になりますのは、農林漁業団体職員が構成をしている農林年金だけは特別に扱ったらどうか、これは農林漁業をささえている団体職員であるから、と、こういうお話しがございましたので、それを推し進めてまいりますと、農林年金が相互扶助の共済組合組織であるというワクをはずれてしまう、それは全然別の新しい国の施設になるという点、それが問題ではあるまいかということを申し上げたのでございます。  先ほど美濃先生が言われましたところの、農林年金財政が非常にピンチである、何とかしなければならないということは、これは私どももそう考えておりまして、そのピンチを救うために国の助成をさらに充実するとか、そういう方向はできるだけ私どもいたしたいというふうに考えているわけでございます。ただ、農林年金の仕組みそのものを大幅に変えてしまうということは、もはや相互扶助の共済組合制度ではなくなるので、それははたしてどうだろうかということを申し上げたわけでございます。  もう一つは、農業協同組合等は、法律の精神から言いましても、農民がみずからつくり、みずから運営をするということを基本にした団体でございます。もちろん、特定の目的のためにいろいろ御助力を願うためには、国から委託費その他を流しておる例もございますけれども、本来はやはり国の補助というものを基盤にした団体ではないはずでございます。  そういうことを申し上げたわけでございまして、私どもは、現在の農林漁業団体の性格は維持しながらも、その団体職員が構成しております農林年金の健全な運営とその発展のためには最大の努力をいたしたいということを申し上げておるわけでございます。
  101. 島田琢郎

    島田(琢)委員 財政上の問題が出てまいりましたから、この実態についてある程度掌握をしたいと思います。  今日の農林年金制度財政上に非常に問題があるという点が午前中も指摘をされていた点でありますけれども、一体、中身としてはどういう実態になっておりますか。
  102. 岡安誠

    ○岡安政府委員 問題は、昭和四十四年度末に財源率の再計算をいたしまして、現在の千分の九十六という掛け金率を設定し、運用いたしておるわけでございますが、その後の制度改正並びに現在お願いをいたしております制度改正等が積み重なりますと、不足責任準備金が相当大幅にふえるということが最大の問題でございます。昭和四十七年度末におきまして約三千六百億円の不足責任準備金がございますし、四十八年度末におきましても約五千億円程度になると考えられるものがあるわけでございまして、これらが今後もさらに増大をするということになりますと、農林年金の円滑な運営並びに今後の発展について支障が起きるのではあるまいかということを心配をいたしておるわけでございます。
  103. 島田琢郎

    島田(琢)委員 たいへん憂慮すべき財政上の実態にあるということになるわけであります。  さて、年金制度の加入者の実態を見ておりますと、年々減っているようであります。この資料によりますと、現在の該当者数が示されておりますが、全体の傾向としてはさらに減っていくのではないかというふうに考えられるわけであります。組合員数は、四十年度末から四十七年度末までの統計数字が出ておりますが、それによりますと、現在大体四十二万人くらいの該当者がいる。こういうふうに、状態がある一定の水準を維持していくことができれば問題ありませんけれども、それが先ほど財政運用と表裏一体になっての問題になるわけでありますけれども、組合員の拡大というようなことについては真剣に考えておかないと、実際問題としてじり貧状態におちいるという心配が出てくるわけであります。  そこで、今回の法案の中でも出ておりますように、農林中金あるいは保険協会のようなものの立場にいらっしゃる皆さん方の加入を今後道を開いていくということが出てきているようであります。しかし、実態はもっと深刻だと私は思うので、もう少し網羅して拡大をしていくという必要がありそうに思うのですが、この考え方に対してはいかがですか。
  104. 岡安誠

    ○岡安政府委員 農林年金の、まず加入団体の数が減りましたのは、これは組合合併その他によるものでございまして、問題は組合員の数でございます。組合員の数で問題でございますのは、減ってはおりませんけれども、最近その伸び率が鈍化をしておるということが年金財政上やはり問題となるところだと思っております。  ただ、先生の御指摘ではございますけれども、この組合員を今後大いにふやす努力をしたらどうかという御指摘につきましては、農林年金組合員となり得る農林漁業団体職員の範囲を限定をいたしております。したがって、むやみにこれを勧誘によってふやすというわけにもまいらないわけでございまして、やはり、組合員の数が将来ある程度減少する見込みがあるということに対しましては、別途組合財政計算財政方式の変更等によりまして対処しなければならないのではあるまいかというふうに考えております。
  105. 島田琢郎

    島田(琢)委員 ただいままでのところの統計上の動きを見ておりますと、加入団体数は減ったけれども、組合員数はふえていくという実態にあるから、そのことをとらえておっしゃっているのだろうと思うのですが、私は、いつまでもこういう状態が続くとは思えない。ましてや、昨日からの議論の中にも出ておりますように、農協職員の給与の問題の中では非常に問題があるが、その対策についてはどうお考えになっているかという質問に対して、やはり合併を促進していく、合理化をしていく、と、こういうふうにおっしゃっているわけであります。そうすると、合理化でありますから、当然職員の数が減っていくということが常識的には想定されるわけです。だから、私は、現段階の範囲で考えておるとじり貧状態になるのではないか、だから、この際もう少し加入団体をふやして、組合員数もふやしていくべきだ、そういう対策にいまから取り組むべきではないかという考え方があって申し上げているわけであります。  そこで、先ほど財政上の問題に触れるわけでありますけれども、午前中の参考人の御意見の中では明確になっておりませんでしたけれども、さすれば、現段階での五千億という赤字は、処理を誤りますとえらいことになってしまう。幸いにしていまは大量に退職をするなんという人はおりませんから、財政上の運用の上では何とかあまり大きなそごを来たしておりませんけれども、しかし、だからといって、この制度の健全性から言えば、これは非常に問題になる点でありますから、毎年毎年相当の額でこの不足責任準備金が赤字になっているという状態はどこかで解消しないといけないと思うのでありますが、具体的には、局長はどうしようとお考えになっておられますか。
  106. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに、累増します不足責任準備金をどう処理するかということはたいへんな問題でございます。現に、農林年金は完全積み立て制度というふうに言われておりますけれども、実際は、不足責任準備金につきましての処理は、それから生じます利子部分についてこれを処理をするというような計算で現在運営がなされているわけでございます。  では、この不足責任準備金をどう処理するつもりかと言われますと、私も、現在、これを完全にかつ短期間に直ちに処理する目当てはございません。問題はこのような形というものは、大なり小なり各共済組合制度を通じて存在する問題でございますので、他の共済組合制度の財源対策等もあわせ参考にいたしまして、先ほどから申し上げておりますように、四十九年度末現在を基礎といたします財源率の再計算を機に総合的な対策に取り組まなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  107. 島田琢郎

    島田(琢)委員 この際、団体でかなり金を持っている団体もあるのです。たとえば日本中央競馬会だとか、これなどはずいぶん金があって、あっちこっちに金を貸しておるわけでありますが、こういうところを積極的に入れるということはいけないのですか。
  108. 岡安誠

    ○岡安政府委員 一つの案だとは思いますけれども、何ぶんにも不足責任準備金が五千億というような膨大な額でございますので、その処理方針というものをはっきりいたしませんことには、幾らかでも金をもらえばそれで助かるという筋合いのものではあるまいというふうに考えております。
  109. 島田琢郎

    島田(琢)委員 まあ、大体七千億くらいのうち五千億赤字ということになれば、あと回転できる資金というのは二千億で、これは金利を相当もらってやってみても大した額になりませんが、実際には利子部分というものはどれくらい一年間に入ってくるのですか。
  110. 岡安誠

    ○岡安政府委員 現在農林年金が持っております資産の運用によります収益は、約七・三%くらいに当たると思っております。
  111. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私は、財政上の処理について非常に懸念をし、不安を持っている一人でありますけれども、きょうの議論を通しても、局長自身も全くギブアップで、いま名案がございませんということで、これじゃ議論になりませんが、これはたいへん重大な問題なんで、国会においてわれわれも責任をもってこの問題はもっと詰めていかなければならぬ点があると思います。しかしながら、きょうは時間がありませんので、これは一つの課題としておきますが、局長自身も、これから再計算期に十分この問題を詰めたいと言っておりますから、それを見守っていきたいと思っております。  そこで、附則八条の問題でありますけれども、先ごろ衆議院の内閣委員会あるいは社会労働委員会でも議論がありまして、ただいま国民年金厚生年金について三カ月繰り上げるという問題が処理されております。この八条によりますと、厚生年金でそういう事態が出てくれば、本法もまた自動的にそれにならうんだという条文になっております。そうすると、当然本法は十月からでありますし、厚生年金は十一月からでありますから、三カ月繰り上げるとなると一カ月のズレが出る。三カ月そのものを繰り上げていけば、片や七月、片や八月ということになるのでありますが、この法律によると厚生年金並みにということになるわけだから、そうすると二カ月しか繰り上がらぬということになるのでありますが、この第八条というのは、そういう意味で、今日の経済事情を背景に考えますと不都合だと私は思うのです。ですから、この際、第八条の厚生年金保険法の一部を改正する法律に準拠するといったようなこの条文ははずすべきだと思うのです。そして、単独年金法のこの農林年金法の中に、政令によってこうした当該措置を講ずるというふうにもっと単純に改めていくべきだと思うのですが、いかがですか。
  112. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先生の御指摘の附則第八条の規定でございますが、これは、従来から厚生年金の改定時期に合わせまして改定を行なってまいりました通算退職年金と最低保障額につきまして、厚生年金年金の改定が行なわれました場合には、その改定額、それから実施時期等を勘案いたしまして農林年金も取り入れたいということを書いているわけでございます。  これをもう少し繰り上げたらどうかという御指摘でございますけれども、本来は、この規定は、厚生年金と合わせまして十一月に改定をするということになっておりますので、これをさらに繰り上げるということは、厚生年金改正措置と比べますとむしろバランスを失するのではあるまいかと思うのでありまして、やはり、厚生年金が繰り上がる八月期まではさかのぼりまして、適用といいますか、措置をいたすつもりでございますけれども、それ以上の繰り上げはちょっと問題があるというふうに思っております。
  113. 島田琢郎

    島田(琢)委員 これも高度な政治判断というものが一つなければならぬという趣旨の御答弁だと私は受けとめますけれども、実際には政治判断ができないようにきちっと第八条で明記されているから、この法律そのものを変える、八条を変えるということに政治判断がなければできないわけですけれども、いつまでも厚生年金厚生年金と言って、厚生年金はもとの本家だからということで、分家はその本家の顔色を常にうかがって運用しなければならないということは、農林年金というものは非常に高度な年金にしていかなければならないという目的を持っていると私自身は思っているから、あまり厚生年金にこだわるというようなことはいかぬと私は思うのですよ。きのうからの議論を通して見ても、常に厚生年金の、本家の顔色をうかがっている。きょうは厚生省を呼んでおりませんけれども、そんなになわ張りというものはうるさいのでしょうか。厚生省がやっていることと農林省がやっていることにき然とした一線を画して今日の農政問題に対処するという姿勢は、むしろこの年金法の中で明確に示していくべきだと思うのですが、どうやっても話し合いがつかぬのですか。
  114. 岡安誠

    ○岡安政府委員 実は、その附則八条の規定というのは、厚生年金にならうというよりも、厚生年金制度の中の道具を一部借りているというかっこうになっているわけですから、道具の模様が変わったから、その変わった道具を借用するというような関係にあるわけでございます。  先生のおっしゃる厚生年金を越えられないかという御趣旨は、むしろ農林年金制度全体の問題でございまして、これは私の説明が間違っていれば訂正いたしますけれども、今回の制度改正実現いたしますと、大部分の農林年金受給者方々はもはや厚生年金を越える。水準並みではございませんで、むしろ越える年金を受けられるというふうに私どもは考えております。ごく一部、九%ぐらいの方々は、形式的には厚生年金水準よりも下がる方もございますけれども、それ以外はすべて厚生年金水準を上回るような年金を受給できるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  115. 島田琢郎

    島田(琢)委員 厚生年金以上の給付を受けられることになるという説明でありますけれども、給付そのものはあるいはそういうふうになるのかもしれませんけれども、しかし、掛け金率だとかそのほかの負担などを入れていきますと、決してそのようにならぬのではないかというふうに私は見ているわけであります。ただ、今回の法改正が、昨年の年金法改正以来政府当局としてかなり前向きに取り組んだという点について、出てきたものそのものは別として、私は、その姿勢については一応の評価をいたします。せっかくの機会だから、本来の農林年金というき然たる制度にするために思い切ったことをやれということで私どもは叱咤激励をしているわけであります。  したがって、今後いろいろな問題が出てまいりますけれども、特に、今日、私が先ほどちょっと触れたように、一番心配されますのは、農業協同組合のいわゆる財政上の問題一つ取り上げてみましても、全国的に大きな格差が生じつつあります。私どものところのような農協は総合農協でありますけれども、一年じゅう四苦八苦、火の車の運営をやっている。農家のふところぐあいがよくないものですから、職員の皆さん方のふところにまで大きな影響を及ぼす。つい先ごろまで私も農協理事者の一人でありましたが、いろいろと皆さん方の窮状を知りながらも、現実にはそれにこたえることができないという悩みを持って農協運営を続けていかなければならない。片や、農協職員の人材確保という問題については、あまり銭こはないけれどもいい人間を集めたい、能力のある人たちに来てもらいたいとは言ったって、なかなかそのとおりになっていかない。しかし、現実にいま農協でお働きの皆さん方は、高度な使命感に燃えて、給料のことは言わないで一生懸命やってくださっている。しかし、これは、いつまでもこういう状態に置くわけにはまいらぬと私は思うのですね。そういう点を心配しているものですから、せめて年金の問題については心配がないぞというようにわれわれは思い切った制度改正をしたいし、また、いたしますという約束も今日までしてまいりました。ですから、私どもは、それぞれ代表がこもごもその実態訴えながら、このせっかくの機会年金法改正によって末端の組合職員の皆さん方が安心して仕事に専念していただけるようにしたいという願いをこめているわけであります。  今日のこういう職員の給与の格差という問題については、これまた思い切った国の政策的な措置がないとできないという現場の悩みが一つあります。これも局長から、何といっても自主的におつくりになっている組合のことですから、まず自力で何とかしていただくことが前提であると言われるが、これはもうおっしゃるまでもない。私たち農協単協理事者も、何でもかんでも国によりかかってやろうという考え方で考えてはおりません。また、職員の皆さん方もそうは考えておらぬのであります。しかしながら、どうしてもそこに解決し得ない問題が生じてきているわけでありますから、国としては、せっかくのこういう機会を何としても前進させるという立場に立って、積極的な財政援助、あるいは行政上のてこ入れなどをやるべきだという考え方を持って強くわれわれはこの席から局長姿勢をただしているわけであります。ところが、もう一つわれわれのはだに触れるような答弁がさっばり聞き取れないということはきわめて残念な点であります。御答弁としてはまことにしにくい点だろうということは私はよくわかるわけでありますけれども、こういう重大な問題をなおざりにして、今日の農政担当者が、農業の実際の現場における職員の皆さん方にから手形で一生懸命やれと言ったって、これはできない。それは農政上の責任の一半であるというふうに私どもは考えておりますが、この問題についても積極的に取り組むという姿勢がほしいと私は思うのです。  この際政務次官に伺いますが、あなたはきのうから率直に、実は私は農林年金はあまりよくわかりませんとおっしゃっている。その政務次官をとらえて、あなたのお考えを聞くというのはきわめて酷ですけれども、しかし、いまはあなたも農林省の政務次官としての立場にいらっしゃるわけですから、きのうからの議論を通して、置かれている農協実態あるいは漁業組合実態、そのほかの諸団体実態についてはおぼろげながらもおわかりになったと思うのです。これは捨てておけないという意味の発言もございましたが、この際、この農林年金法等とあわせて今日の農林漁業団体の置かれている立場というものについて十分対策を進めていくべきだと考えますが、次官、あなたの所見をこの際ぜひ承っておきたいと思います。
  116. 山本茂一郎

    ○山本(茂)政府委員 先ほども少し触れましたが、日本年金法そのほかの共済関係の問題につきましては、まだ立ちおくれた一つの分野があると私は考えるわけであります。   〔笠岡委員長代理退席、安田委員長代理着席〕  先ほども申しましたように、国としてはこの点に力を入れておることは事実だと思います。ただ、行政の関係でいろいろそれが思うとおりにならぬことも十分おわかりのとおりでございますが、私どもとしましては、農林行政をやるという、その前提に立ちまして、この種の制度については個々に検討を重ねまして、また、関係各方面と十分な意思の疎通をはかりまして、そして、自分らの理想としておる年金制度に持っていくように十分なる努力をいたす覚悟をいたしておるということだけをここに申し上げて、回答にかえたいと思います。
  117. 島田琢郎

    島田(琢)委員 時間が参りましたから、これで私の質問を終わりたいと思いますが、いままで各委員がこもごも指摘をしてまいりました点は、今日の置かれている農政上の問題に大きな基礎があるということを踏まえながら、そこで働いている農林漁業団体職員の皆さん方の身分保障という問題が今日非常に谷間に落ち込んでいるから、それをすくい上げていかないと大事な日本の食料確保という問題にも大きなそごを来たすという、そういう趣旨のもとに強い発言が次々となされているわけであります。局長は、所管のこの法案だけ通せばおれの責任は事足りるのだという考え方であってはいかぬと私は思うのです。  いま政務次官はまじめにおっしゃったと私は受け取っておりますが、この点については今後われわれも一緒になって真剣に解決するように努力をしていきたいと思いますので、農林省をあげて、先日からの議論を通してのこの問題の全般にわたるところの解決に鋭意取り組んでいただくことを特に最後に要求申し上げて、私の質問を終わります。
  118. 安田貴六

    ○安田委員長代理 諫山博君。
  119. 諫山博

    諫山委員 局長質問します。  あなたは、きのうから、農林年金適用労働者とその他の労働者賃金格差は狭まりつつあるということを何回も繰り返されました。きょう、農林年金中央共闘会議春日事務局長の説明では、格差が狭まりつつあるどころか、逆に広がっている、たとえば農協、県連のことしの春闘のベースアップは、妥結している分で言えば平均して二万二千円程度だ、金額の差も開いてきたし、比率も開いてきた、と、こういう説明がされているのですが、きのうのあなたの話と全く違うのですが、どうしてああいう答えになっているのですか。
  120. 岡安誠

    ○岡安政府委員 私が昨日来お答えいたしておりますのは、農林年金対象団体職員の平均標準給与の推移、それから、国家公務員共済組合組合員の給与の推移、地方公務員の同じく給与の推移等を比べて申し上げたわけでございまして、数字が四十年から四十七年までということでございますので、最近の数字はとっておりませんけれども、簡単に申し上げますと、農林年金の場合、四十年のベースを一〇〇といたしますと、四十七年が二四一というような伸び率を示しておるのに対しまして、国家公務員は四十年対比四十七年が二二四、地方公務員が二二五というような数字がありますので、確かに給与水準そのものはまだ低いわけでございますが、差は縮まりつつあるということを申し上げたわけでございます。  ただ、最近の春闘の結果等につきましては、私どもまだ正確にすべてを把握いたしておりませんので、最近の数字を入れますとどうなりますか、これはまた別途集計ができましたならば、その節にお答えをいたしたいと考えております。
  121. 諫山博

    諫山委員 もともと賃金が非常に少ないわけですから、同じ比率でベースが上がっても、賃金の開きというものは絶対額においてはますます大きくなりますね。そういう点では、賃金の差というものはむしろ広まっているのじゃないですか。
  122. 岡安誠

    ○岡安政府委員 同じ比率で伸びればおっしゃるとおりだと思いますけれども、少なくとも四十年から四十七年までの傾向を見ますと、伸び率が農林年金の場合のほうが大きいわけでございますので、差は縮まりつつあると言えるというふうに考えております。
  123. 諫山博

    諫山委員 とにかく、農協、県連の労働者の場合に二万二千円程度のベースアップだということであれば、世間の相場に追いついていないことは明らかです。あるいは公共企業体労働者なんかの賃上げを見ましても、これよりもはるかに大きいわけです。ですから、格差が狭まっていると言うと、何か、いかにも追いつきつつあるように聞こえるのですが、賃金額の差というものはますます広がっているということは否定できないと思うのです。この点はことばの問題ではなくて、賃金の差が実際はどんどん開いているんだという現実を認識してもらうことがいま非常に大切だと思うのです。  そこで、社会保障制度審議会が昨年農林年金に対して出した答申では、厚生年金が今回改正されたので、農林年金受給者が著しく不利になるおそれがある、皆年金下における公平の原則をそこなうので、財政基盤の強化その他根本的な検討が必要であるとしています。ことしの答申では、「将来の財源について確たる見通しを立て、これに応ずる計画を策定することが必要不可欠である。」としています。この趣旨で農林年金改正しようとするなら、今度の改正程度ではどうにもならないはずです。今度の改正案に盛り込むことはできなかったけれども、この答申の趣旨をこういう方向で生かしていきたいという抱負が局長にあるはずだと思いますが、どういう方法で解決するつもりですか。
  124. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに、昨年の段階におきましては、厚生年金給付水準に及ばない農林年金受給者の割合が五〇%をこしておりました。したがって私どもは今回の制度改正を試みているわけでございますが、今回の制度改正ができますならば、農林年金給付を受けている者の水準の大部分、九〇%以上は厚生年金の水準をこえることになるというふうに考えております。  それで、厚年水準に達しない九%の方々につきましても、給付の開始の時期の差、その後の余命年数等を考えた場合には、給付総額につきましては厚生年金を上回るというふうに考えておりますので、昨年指摘されました厚年水準との格差は、今回の改正によりましてほぼ埋まっているというふうに考えております。  それから、ことしの二月の社会保障制度審議会からの答申の中の、財源対策等について長期の見通しを立てろということにつきましては、私どもは、昭和四十九年度末時点で財源率の再計算をいたすつもりでございますので、その結果を踏まえまして、財政方式の再検討、国庫補助の充実その他総合的な対策を講ずるつもりでございますので、その結果によりまして対処をいたしたい、かように考えております。
  125. 諫山博

    諫山委員 「将来の財源について確たる見通しを立て、」ということが言われているわけですが、いろいろな方法があると思います。しかし、労働者がいま非常に懸念しているのは、これを口実にして掛け金引き上げられるのではなかろうかということですが、この点についてはどういう見通しを立てていますか。
  126. 岡安誠

    ○岡安政府委員 現在でも農林年金掛け金率は千分の九十六ということで、国鉄共済に次ぐ高位の水準を示しているわけでございますので、したがって、組合員掛け金負担も相当高いというふうに考えております。もちろん、財源率の再計算の結果いかんによりますけれども、私どもといたしましては、できることならば組合員の負担の増高を招かないような方向で対策を講じたいというふうに考えておりますけれども、なかなか困難な問題でございますので、今後ほかの共済制度の対処方針その他を参考にいたしまして、慎重に検討いたすという心算でございます。
  127. 諫山博

    諫山委員 遠い将来については予測は立てにくいと思いますが、たとえば、これから少なくとも三年間あるいは四年間は絶対に掛け金を上げないということは約束できますか。
  128. 岡安誠

    ○岡安政府委員 これは私の考えでございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、四十九年度末時点を基礎といたしまして財源率の再計算をいたすわけでございますので、その結果が出るまでは現在の掛け金率を上げたくないというふうに考えております。
  129. 諫山博

    諫山委員 それは当然なことですが、それから先のことは約束できませんか。
  130. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まだお約束できるような段階にはないというふうに考えております。
  131. 諫山博

    諫山委員 大臣質問します。  私は、きのう、農協労働基準法があまり守られていないということを具体的に質問いたしました。   〔安田委員長代理退席、委員長着席〕 そして、労働省の説明では、労働基準法が守られていない日本の三つの職場の一つ農協をはじめとした農林団体であるという指摘がされております。そして、労働基準法違反が広範囲に行なわれているだけではなくて、実に初歩的な違反がたくさんあるという点が明らかになったし、労働省、農林省からそれぞれ反省の意も表明されたと思います。これについて、農林大臣としてはどうお考えか、質問します。
  132. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 遺憾ながら、農協において、労働基準法違反について監督署から指導されるケースがあると承知いたしております。こうしたことの原因の一つとしては、農協理事等使用者側の責任者がそういう基準法等について習熟していない、理解が十分でない点があると思いますので、これらの者を対象として労働基準法等の労働関係法令についての研修を行なったり、そういうようなことについて都道府県を指導いたしておる次第でありますが、この措置とあわせまして、全国農協中央会、全共連等の系統組織の全国団体に対しましても、単協における労働基準法等の順守など、労働条件の適正化の指導を行なってまいりたいと思っております。
  133. 諫山博

    諫山委員 きのうの農林省の説明では、農協における業務の特殊性ということが非常に強調されています。私は、労働基準法違反の問題を議論する場合に、それを指導する官庁がこういう特殊性を持ち出すというのは全く正しくないと思うのです。なぜなら、特殊な業務については法律上特別な規定があるからです。そして、いま農協で問題にされているような労働基準法違反が、業務上の特殊性を理由に免責さるべきものでないことはきわめて明らかです。そして、適正な行政指導がされるなら、たとえば労働基準法第三十六条に基づく協定がないのに残業をさせるとか、女子に深夜労働をさせるとか、あるいは残業手当の計算法律どおりしない、ごまかすというようなことが起こるはずはないと思うのです。そういう具体的な問題についてまですみやかに行政指導を徹底さしていただくということを私は再度農林大臣に御説明いただきたいと思います。
  134. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは、どんな職場におる者でも、基準法はやはり守っていくべきであります。いろいろ習熟しない面もあるかと思いますが、いま申し上げましたように、よくそれらのことを注意するように指導をしてまいりたいと思っています。
  135. 諫山博

    諫山委員 きょうの午前中の農林年金中央共闘会議春日事務局長のお話しでは、長野県のある農協の役員が、政府法律や憲法を守っていない、だからおれたち労働基準法に縛られる必要はないじゃないかと言ったという話がありました。そういう点を考えますと、農協で広範囲に労働基準法違反が行なわれているというのは、農協だけを責めるわけにいかぬ、政府姿勢、とりわけ農林省の行政指導の態度というものが非常に重要だと私は思います。  この問題で直接責任を負う局長から、そういう点についてどうしていくつもりかということを御説明願います。
  136. 岡安誠

    ○岡安政府委員 昨日もお答えしたと思いますけれども、私どもは、農協労働基準法のみならず諸般の法令は厳正に守らなければならないというふうに考えております。御指摘労働基準法につきましても、やはり違反の事態をなからしめるように今後とも努力はいたしたい、かように考えております。
  137. 諫山博

    諫山委員 終わります。
  138. 仮谷忠男

    仮谷委員長 美濃政市君。
  139. 美濃政市

    ○美濃委員 いろいろ質疑もかなり進んでおりますから、主として財源問題について若干の質問をいたしたいと思います。  この農林年金の設計は、当初数理的保険料千分の七十となっておるのですが、これは、制度改正やあるいはベースアップというようなものがなければ千分の七十で運営できるという見通しで設計されたものと思うのですが、そういう解釈は間違いありませんか。
  140. 岡安誠

    ○岡安政府委員 数理的な保険料は、いわば農林年金給付につきましての基本的な設計部分について計算をされた保険料だと思いますけれども、それ以外に整理資源率等が加わりますのは、発足当時に厚生年金に入っておりました職員を引き継いでいる、いわば当初の不足資源率があったり、それから通例のベースアップ以外のベースの改定があったり、それから制度改正があったりというものが積み重なりまして、整理資源率としてこれに加算をされる。それから、国庫補助等を引いたのが掛け金率の千分の九十六ということになっておるわけでございます。
  141. 美濃政市

    ○美濃委員 そういたしますと、現在の料率、現在の掛け金率の中で整理資源率が千分の二十六ですが、この二十六というものは、いわゆるインフレによるベースアップや、あるいは制度改正でも、インフレによって給付というものが非常に実情に合わない状態になって、それを改正する――そうじゃなくて、この二十六と計算されているものは、純然たる制度改正によって中身がよくなった、そういうインフレによる名目的なものでなくて、それと引き継ぎ、つまり厚生年金から農林年金にかわったときの計算上の不足、そういうものだけをピックアップして、整理資源率として千分の二十六掛けておる、こういうことなんですか。
  142. 岡安誠

    ○岡安政府委員 美濃先生がおっしゃっておること、大体そのとおりだと思いますけれども、多少数字的に申し上げますと、現行の財源率のうち、純数理的保険料というのは七〇・〇四ということでございまして、整理資源率は三二・二〇になります。合計をいたしますと一〇二・二四になりまして、これから財源調整費による補てんとか利差益による補てんその他を差し引きますと、掛け金率が九五・九七ということになるわけでございます。整理資源率が発生いたしました原因は、先ほど申し上げましたとおり、当初の引き継ぎによります整理資源率のほかは、設計に入っておらないベースアップ部分とか制度改正部分等が積み重なってこのような数字になったというふうに理解をいたしております。
  143. 美濃政市

    ○美濃委員 そこをもう少しはっきりしてもらいたいのです。もちろん、この設計をしたときに、ベースアップとかあるいは著しい経済の変動によって給付率を改定しなければならぬという、そういう計算は入っていないはずですね。その部分も転嫁されたのですか。その部分もこれを改定したときに入ったのかどうか。
  144. 岡安誠

    ○岡安政府委員 ちょっと私の発言が正確でございませんでしたけれども、定期昇給は、これは一定の予想をいたしまして数理的保険料の中に組み入れられておりますが、いわゆるベースアップというものは入っておらないので、この部分は整理資源率のほうのかさ上げになるというふうに理解しております。
  145. 美濃政市

    ○美濃委員 私が強調したいのは、もちろんその計算に入っておりますから、定期昇給とか、そういう通常のものは整理資源率かあるいは数理的保険料に入っておることはよろしいと思います。だけれども、このインフレによるベースアップあるいは給付の改定というのは、これはもう全然当初の計数に入っていない。その原因はいわゆるこういうインフレという現象で発生するのでありますから、これは二年、三年先の問題でなくて、この制度の基本として、それを整理資源率という考え方で入れて、そして、いわゆる掛け金料率に転嫁するということは、私はこれは断じて許せぬと思うのです。三年先でどうだとか、あるいは先ほど聞いておると、四十九年に計算したその結果だとか――四十九年の結果がどうであろうと、これはもう結果は、今度の改正と、それからことしの大幅ベースアップによって四十九年度計算をすれば五千億にかなり上置きさ拠るということははっきりしておるわけです。何ぼ上置きされるかということも聞きたいけれども、これはちょっといまの時点では無理だろうと思いますからそれは聞きませんけれども、財源不足が、いわゆる責任準備金不足が、四十九年度末で計算をすれば五千億の上にかなり上積みされるということがはっきりしておるわけです。だから、そのときになってみて、先ほども話があったように、財源調整の再検討をして、総合的な財源率検討をする、その中では料率を引き上げないということは言えませんという姿勢、これは許されぬと思うんですね。原因が違いますからね。おのおの掛けておる組合員は、その時限では値のある金を、こういう年金制度としてきめられた率を強制加入で掛けておるわけです。それが泡沫のごとく五千億も赤字になる。あるいは四十九年度で計算すれば六千五百億になるのか、七千億になるのか、かなり上がることははっきりしておるわけですね。それを掛け金率に転嫁することは許されぬと思うのです。転嫁していけば、たとえば一例を所得配分、そして賦課年金制にとると、欧州諸国は全部賦課年金制ですが、これらの諸国の賦課年金に対する負担は四%を原則としております。どこの国へ行っても四%です。西ドイツでもフランスでもそうです。これを個人負担部分だけ申し上げますと、現在でも個人負担部分は、この年金は五〇%、五〇%ですから、四%をかなりこえておるわけです。その上転嫁するなどといったら、社会保障として先進国から見たら笑われるのではないですか。だから、私がここで申し上げたいことは、この種の制度にこういうインフレが起きなければいいわけですね。インフレが起きなければ、実質制度をよくしたり、あるいは当初の設計から若干漏れたものを、その後合理的にするために入れる。その程度は資源率不足となって掛け金に資源率がはね返っても、これは微々たるものなんですよ。四%か五%です。それが当初約束した給付よりも、実質中身が改善されてよくなるのであれば、それが整理資源率となって組合員負担にはね返るということも、高負担、高福祉という原則からいけば、若干のものはその時点その状態でやむを得ないという解釈になる。しかし、世界の文明国がとっておる四%の負担に対する国民生活対応性から言って、四%を逸脱して、整理資源のためだといって何ぼでも料率を転嫁していくなどということは許されない。そもそもこの制度そのものが、私に言わしたらだめなんですね。インフレに対応性はありませんよ。この積み立て方式年金というものは、インフレに対応性のない制度である。だから、五千億も六千億も出てくるのでありますから、本来から言うなら、これはもう国が財政負担でびしっと補てんすべきだが、財政上から言ってもたいへんなことだと思う。私に言わせれば、そもそも制度が根本的に誤っておるということです。四十九年度で財源調整を再検討する。そのときこの五千億という金は、企業の運用資金とは性質は異にしますから、五千億が直ちに調達されなければ、この年金が持っていけないというものではないが、しかし、四十八年度末で出ておるのでありますから、すでに四十九年度においても、本来から言うならば七・三の利回りは別としても、この制度給付を行なう基準運用益として見ておる五・五%、五千億に対する五・五%は財政調整繰り入れ金となって入って来なければならぬ性格のものだと思うのです。五・五%で計算して二百七十五億円になるわけであります。こういう大きな財政欠陥が生じて運用されていくわけですから、これを四十九年度で直ちにどういう方法で解消しようとするのか。ただ努力します、困難な問題でありますではどうにもならぬと思うのであります。私どもは、四十九年度でこの不足額が何ぼになるかということは追及しないが、基本的な方向としては、政府としてはこれをどう始末するか。整理資源率に転嫁して掛け金の増加は絶対許されない。このことについては、各歴代大臣も、この法案が出たときには全会一致で附帯意見をつけるが、そのときは掛け金引き上げは絶対やりませんということで終始してきておるわけです。  今日に至って局長から、絶対この整理資源不足を資源率に転嫁することはありませんという表現ができないということは、いままでの国会審議してきたことは何をやってきたんだと私は言いたい。その附帯意見については、歴代各農林大臣は、絶対掛け金は上げません、上げてはならぬという決議に対して、必ず決議の趣旨は実行いたしますということになっておるのでしょう。これは転嫁してはならないものなんです。いまに至って転嫁するというのではたいへんな問題だと思うのです。ないのであれば、この際ないとはっきり言ってもらえば、組合員全部が安心するわけですから、せめて掛け金が上がることはないという安心感が得られるわけです。あるのならあると言ってくれませんか。ないのならないと、これははっきりすべきです。大臣はいまそこにおいでになったわけですから、局長からまず答弁してもらって、大臣の御意見も聞きたいと思います。
  146. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いろいろむずかしい御質問があったので、答えにくい点がありますが、二、三お答えいたしますと、まず、先生のおっしゃるとおり、整理資源率の中には、制度改正によって生まれた部分と、それから物価の高騰に伴いましてべースアップしたことによる部分と、大別してございます。  先生は、制度改正によるものは、これは高福祉、高負担という考え方からも一応了解はできるけれども、物価値上がりによる部分は、整理資源率として掛け金率にはね返らせるのはどうかという御質問でございますが、確かにそういうお考えもあります。ただ、問題は、物価の高騰によります、いわば減価部分と同じような形になりますけれども、それはすべて、たとえば貯金をしている者なり積み立て金をしている者にかぶせないで、別途補てんをするということになりますと、これはたいへんな金額にもなるわけでございまして、その辺をどうするかは大問題だと思っております。しかし、詰めれば、要は先生もおっしゃっておられるとおり、回り回って組合員の負担にはね返るわけでございますので、問題は、組合員負担を今後どうするかということに要約されるというふうに考えます。私はもちろん、先ほどもお答え申し上げましたとおり、現在の農林年金掛け金組合員負担部分は相当高額でございますので、できるならばこれ以上上げたくないというふうには考えております。  ただ、こういう席でございますので、おまえは絶対上げないなという質問されますと、上げませんと答えるには、まだいろいろと私どもの検討も済んでおりませんので、そうは答えられないということを申し上げたわけでございまして、私も、できるならば上げたくない、そのための手段をいろいろ講じまして対処いたしたいということを申し上げたいと思っております。
  147. 美濃政市

    ○美濃委員 大臣のお考えはどうですか。
  148. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 現行のこの保険制度掛け金は、ほかの共済制度に比べてすでに高水準にありますことは、いまお話しのありましたとおりです。そこで、組合員掛け金率引き上げないで済めばそれにこしたことはないのでありますが、この問題は、農林年金財政の健全性の保持という問題につながるわけでございますので、他の共済制度等も十分勘案いたしまして、それからまた、関係当局とも十分な相談をいたしまして善処をいたしてまいりたいと思っております。
  149. 美濃政市

    ○美濃委員 もう一つこの際お聞きしたいのですが、前段に指摘したこの種の年金制度の中で、全然インフレに対応性のないこの制度で運用するということは、まあこれは直ちに変えろということじゃないですが、十分政府として――千分の四十の掛け金で賦課年金制をとっておるところはこの問題は出てこないわけですね。賦課年金制をとればインフレの問題は出てこないわけです。四%ですから、インフレで給与が上がれば率で上がってくるわけですから、率の上がる部分で全部その年度内の給付ができるような仕組みになっておるわけです。ですから、自動スライド制にすれば、人事院の勧告が出れば、国家公務員を基準にしたベースアップで自動的に給付をスライドしていっても、上がった分は即収入増となりますから、それは払えるわけです。積み立て方式にしまして、金をあたためておるところに問題があるわけですね。ですから、その給付水準が、インフレによるベースアップで上がると過去の積み立て金にがさっと不足が起きるところに問題がある。年度内処理をやれば、その問題は自動スライド制にして解消できるのです。ですから、日本年金は、農林年金なんかは年金ではないわけです。ですから、この問題は、いま賦課年金制をすぐとるとらぬの答弁農林大臣としてはすぐできぬと思うのですけれども、政府としては根本的に検討すべきものだと私は思うのです。  今後の課題としてはどうすればいいのか。五千億、七千億の問題は、これは簡単に始末はつかぬと私は思うのですよ。インフレ下においては、これは積み立て制度が災いをなすわけですから、こういうふうになって派生してくるものを、簡単に、財政当局は、公共事業を投げてでも、五千億あれば五千億積み不足分を一般会計から繰り込んでやるぞと言えば問題は解消するのだ。それから五千億が一ぺんにできぬということであれば明年度財政で――まあ、ことし年度末で最低二百七十五億円を政府補助金として繰り込んでくれば五千億の問題はたな上げしておいてもいいわけですから、金の出し入れに積み立て金もあるから不足はしないわけですから、ぎりぎり給付財源はそこから働く。給付財源が不足する部分だけを財政補てんをしていけば当面はやっていけるわけですね。こういう問題が出てくるわけです。こういうふうになるということはこの制度の欠陥だ。インフレというものがいわゆる設計に入っていないということだ。また、入れるといっても設計に入れようがないですね。これから先のインフレ率をここで設計し直して入れると言ったって、これは推理してみてもわからない。だれが考えてもわからない。どんなに頭のいい人が考えても、これから十年先のインフレ率をいま的確に推定することは人為的に不可能ですね。だから、いわゆる制度として矛盾があるということですよ。たとえば、先進国は矛盾のない制度をとっておるじゃないですか。その中で整理資源不足だとか何だとかいう問題はないですね。ですから、そういうことは十分今後の課題として考えてもらいたい。  年金は大切なことです。ここまで来た日本の国力から見ても、この年金制度を後退さすようなことがあったり、あるいは財政上の原因から五年先、十年先に積み立て金がゼロになってしまったなどという現象を起こしてはならぬことであります。だからといって、こういう積み立て制度をとって起きる整理資源不足は、筋の通らない――国民である組合員には、そのときそのとき打ち切って年度内に処理していけばそれで済む。先進国から見たら四%をこえる負担率を個人から強制加入で徴収しながら、それが積み立て方式のために積み立て金が値がなくなるわけです。それによって整理資源不足が起きてくる。それを掛け金に転嫁するなどということは、これは政治道徳上あり得ないことですね。どなたが考えても、イデオロギーでもないと思うのです。いやしくも一国の政治を担当しておる者としては、総理大臣以下、国民に対してあり得べからざる背信行為と言わざるを得ないわけです。ですから、ここで検討する要があると私は思います。それらをいますぐ検討してそうするという答弁はできないと思いますけれども、大臣、これは十分検討してもらいたいと思うのです。この制度ではインフレに対応性がない。この制度を維持していったらとんでもないことが起きる。そして、いささかの目くされ財政調整補助金なんかをつけて、時代を推移すればするほど、これはもう悪循環になる。将来何百億、何千億という金になってしまう。何千億じゃない。もうすでに何千億だから、何兆円という金になる。財政上の補てんのしようもない。約束どおり実行していったら、十四、五年先へいったら積み立て金はなくなってしまう。食いつぶされてしまって、それから先どうなるのですか。国民に対する強制加入で徴収した責任というものはどうなっていくのか。ここで重大な転機に立っておりますから、それを含めて検討してもらいたい。小手先の検討では、農林大臣も二年もやったら手一ぱいなんだから、何とかお茶を濁しておけばだれかがやるべえというものじゃないと思うのです。局長もそうだと思うのです。局長も大体――私が国会へ出てきてことしで七年に入ったわけですが、私が来たときの局長はもうほとんどいませんね。局長の年数も短いですよ。平均すると国会議員の一期の年数くらいじゃないですか。何とかお茶を濁しておいたら次の局長がやるべえということではまかりならぬと思うのです。政府はこの問題をきちっと処理しないと将来たいへんな問題が起きると思うわけですが、いかがですか。
  150. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私はあなたと経済理論の闘争をやろうとは思っておりませんけれども、現状がインフレであるかどうかというふうなことについても、にわかに私どもは肯定いたしておるわけではありません。しかし、物価が高騰しているということは間違いありません。そこで、物価の高騰ということにつきましては、ベースアップその他においても、いろいろな場面においてそれぞれ勘案されておることは申すまでもありません。全体として、物価高騰に伴う、美濃さんのおことばを拝借すればインフレ的傾向、こういう状況の中で、たとえばこの国会提案いたしました他の年金等につきましても、私ども立案者の間に入っていろいろ意見を聞いておりましても、やはり賦課方式を採用すべきであるという意見もありました。しかし、御存じのように、賦課方式というのは、ことにこの年金のようにわりあいに加入者の頭数の限定される傾向にありますものにつきましては、もしそういう賦課方式をとってまいりましたならば、将来加入者の負担が、個人個人の負担が非常に多くなることは御存じのとおりであります。私どもはそういう点について十分検討してみなければなりませんが、しかしながら、この年金の財源の状態を見ますというと、これはやはり改善すべき点があると存じます。そういう意味におきましては、私ども、この年金財政の健全性のためにさらに検討を加えていきたいとは思っておりますが、大体、積み立て方式によるか賦課方式によるかというようなことについては、にわかにこれはあなたのお説に賛意を表するというわけにはいきませんけれども、健全財政の意味から検討は続けてまいるつもりであります。
  151. 美濃政市

    ○美濃委員 私も、検討の中にそういう要素を加えないとならぬということを言っておるので、いますぐ私の説に同調してくれと言ってはいないわけです。ですから、十分そういう問題を検討してほしい。あるいは、私に言わせるならば、政府としては、そういう賦課年金制度をとっておる体制というのは違うわけですから、こんな業態別年金に――賦課年金というのはこんなにややこしくなっていないわけですからね。日本で言うなら国民年金一本ですからね。ですから、どこが重いとかどこが軽いとかいう問題は出てこないわけです。そういうことを十分検討してもらいたい。このままでこれをすぐ賦課年金制度にすると考えると問題が出るわけです。賦課年金というのはそういうものじゃないということは、大臣あたりは何回も外国へ行って年金問題も検討しておるはずだからわかっておるはずですね。これを即賦課年金に持っていくとなれば御説のような問題は出ますよ。賦課年金制度というのはそんなちゃちなものじゃないわけですよ。十分検討してもらいたいと思う。  それから、次に、今回も、あるいは農協法改正等が出ると、農協職員の給与の問題あるいは労働基準法違反の問題が絶えず出ますが、これは農林省としてはどの辺が多いのですか。農協としてきわめて給与水準の低いところ、あるいは全く基準法なんかなっていないところ、どの方面が多いのですか。全国全部なのか、どうですか。
  152. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず、労働基準法の問題でございますけれども、実は、必ずしも網羅的な調査がございませんので、現在調査中でございます。ただ、私ども、基準法違反につきましては、どの地域が特に多いということではないのではあるまいかというふうに思っておりますが、これはいずれ調査結果が出ますので、そのときに御報告をいたしたい、かように考えております。  それから、農協賃金につきまして、どのような地域が低いかというようなことでございますが、全国の平均ベースに比べまして、その水準よりも下がっているところは東北六県、それから中国、四国、九州、沖繩というところが全国水準を下回っているというふうに数字では出ております。
  153. 美濃政市

    ○美濃委員 その調査はいつごろできますか。
  154. 岡安誠

    ○岡安政府委員 六月末までに報告するように指示してございますので、できるだけ早く集計いたしまして御報告いたしたい、かように考えております。
  155. 美濃政市

    ○美濃委員 それができましたら、国会は終わっておりますけれども、適当な機会に私どももそれをいただきたいし、それに従ってできるだけ――何か、農協なり、農協関係のある法案が出ると、これは国会でも何年も前から言われておることです。ただ、私も現職の組合長でありますから、私自身は労働組合もつくり、労働協約の締結もやっておりますが、いささかの労働基準法の違反なんかあり得ない。職員も極端には優遇できないけれども、地方公務員を下回るという待遇はしておりません。私の地域の付近はみなそうです。私の所在地域の付近の農協は大体下回っておりませんが、ただ、本俸だけをとられると、私の農協はそうではないけれども、農協によってはベースアップがおくれて――昨年の十二月でも期末手当六十割を出しておる農協は私の所在地域にも二つも三つもあります。そういうものを加味すれば、私の所在地域で地方公務員よりもきわめて待遇が下回って、あり得べからざる待遇で職員が使用されておるということはないと私は断言できます。ですから、これは、私は現職組合長ですから、政党政派を越えて、私どものやっておる地域とはあまりかけ離れたことが出てくると、一体そんなことがあるのだろうかと思うわけですね。そういうものが一体全国のどこにあるのだろうと思うがゆえに、その調査結果の報告を求めたい。  その調査の中では、臨時給を含めて調査してくれますか。単に表面上のつらだけでは、経済団体ですから、たとえば年末調整、期末手当の決算のぐあいで――国家公務員は年度末手当は〇・五ですけれども、決算の状況で報奨制をしいておるところもあります。決算の状況によって二・五カ月分くらい出しておる農協もあります。それを全部ひっくるめて計算してくれませんか。ただ本俸のあれだけを言うと、ベースアップの食い違ったときに国家公務員はベースアップがおくれた、ある農協は年末は六十割を出して、四月一日からベースアップと考えて、その中間の一月、二月で本俸だけで対照されるとものすごく低い、こういうのが出ますから、そういうことのないように調査を完了してもらいたい。  以上で私の質問を終わります。
  156. 仮谷忠男

    仮谷委員長 芳賀貢君。
  157. 芳賀貢

    ○芳賀委員 政府提案農林年金法改正案については、すでに昨日と本日を通じまして同僚各委員が相当詳細にわたって問題点についての質疑を行なっておりますので、この際、私は、農林大臣に対しまして総括的な問題について若干の質問をいたしたいと思います。  まず、第一に、農林年金年金財政の問題ですが、これは昭和四十四年から、厚生年金から分かれて現在の農林年金制度が運営されておるわけでありますが、その当時から、年金財政の問題としては、他の年金に見られない多額の不足財源をかかえて発足した関係もありますので、結局、運営が最初から非常に窮屈になっておるわけであります。それが原因になっておって、結局、農林漁業団体職員の給与水準は非常に低いにもかかわらず、年金に対する掛け金率は最高であるというような矛盾を包蔵しておるわけであります。そこで今年政府提案される前に、総理府の社会保険審議会においても特にこの点を指摘いたしまして、今後の年金財政に対して明確な将来方針を立てるべきであるということが指摘されておるわけでありますが、その点に対しては、農林大臣として、年金財政上の健全な運営ということになればどうするかという点に対して、お尋ねいたします。
  158. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 財源調整につきましては、補助増額等、先ほど来いろいろお話しがございました。四十九年度予算編成に際しまして、わがほうといたしましてはこの希望を要求いたした次第でありますが、財源率の再計算を本年度行なわないこと等とも関連いたしまして、これを見送ることにいたしたものであります。農林年金財政の現状、現行掛け金率の水準等にかんがみまして、国庫補助引き上げの問題につきましては、その実現につき最大の努力をいたす所存でございます。また、都道府県補助の導入につきましても、今後さらに関係方面への折衝について努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  159. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま農林大臣から、年金給付に対する国庫の補助等についてのお話しがありましたが、現在の年金法の第六十二条の第一項では、給付に要する経費に対して一八%の補助をすることができることになっており、第二項では、調整財源に対して、率は明定してありませんけれども、国としての助成の道が明らかになっておるわけであります。  そこで、この一八%の国庫補助の問題でありますが、この点については、当委員会におきましても、しばしばの年金法改正の際に、現行の一八%を少なくとも二〇%以上に引き上げるべきである、調整財源の費用負担についても補助率を明定して、少なくとも四%以上に国の負担すべき限界というものを明らかにすべきであるということを、附帯決議等に付しておるわけであります。  また、農林省におかれましても、毎年度の農林省大蔵に対する概算要求の場合においても、農林年金に対する国庫補助率の問題については、必ず最後には大臣折衝まで持ち込んで、二〇%以上の実現に当たっておるわけでありますが、倉石農林大臣のごとき相当実力のある大臣が予算折衝をしながら、なぜたびたびこれが実現に至らぬかということについては、ほんとうに真剣にやっておるかどうかという疑念を持たざるを得ないわけでありますが、この点はいかがですか。
  160. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのございましたように、予算編成のたびごとに、私どものほうといたしましては最大の努力をいたしておるわけでありますが、この補助率につきましても、当初、私が存じておりますころは一六%、逐次改善されてまいりましたが、なるべく近い将来にさらにこの補助率を引き上げることに対して最善の努力をいたしてまいる決意であります。
  161. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先日、社会党をはじめ野党四党で提出いたしました農林年金制度改正案の中においても、給付に対しておよそ三〇%以上の国庫補助が必要であるということを明らかにしておるわけでありますが、ことしは、参議院選挙が終わったあとで明年度の予算編成作業に入ると思うわけでありますが、その際倉石農林大臣が引き続いて大臣を担当するという――これは仮説の上に立つかどうかわかりませんが、結局、現職大臣の意思を継いで、農林省としては、これらの問題についても積極的な予算確保に当然当たるべきであると思うわけでありますが、その点はいかがですか。少なくとも二〇%以上、法改正を通じて財源を確保する意思があるかどうか、その点であります。
  162. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どももこの年金の歴史及び経過をよく知っておりますし、ことに、いまは農政の大事なときでもございますので、お話しのような点については最大の努力をする考え方でおります。
  163. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、先ほど大臣から発言がありましたが、農林年金の特徴的な性格としては、農業協同組合にしても、漁業協同組合にしても、これは非営利法人であることは言うまでもないわけであります。だから、民間の利潤追求の企業のごとく、企業努力で大きな利益をあげて、その中から人件費等についても十分な支出をするということは、思っておっても、制度のたてまえからなかなか実現しがたい制約があることは言うまでもないわけであります。しかし、都道府県をはじめ、地域における農業、漁業の発展ということを考えた場合においては、その推進力として農業協同組合あるいは漁業協同組合が位置づけされておるわけでありますからして、この年金経営についても、当然地方公共団体が応分の行政的な支出をするということは、決して不当なことではないと思うわけであります。すでに、私学共済等においては、都道府県が私学年金に対して補助する道が開かれておるわけでありますからして、この点についても、先ほど大臣が触れられた御意思というものはそれを示しておると思いますが、いかがですか。
  164. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたが、私はこの制度改善にいままでも熱心なほうでありますが、都道府県補助の導入につきましても、今後さらに関係方面と十分折衝をいたしまして、この点の実現に努力をしてまいるつもりでございます。
  165. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、今回の改正案によりましても、いわゆる新法期間の年金と、三十九年度以前の旧法期間の年金に対する取り扱いというものは、いまだに不均衡あるいは格差が是正されておらないわけであります。昨年の改正の場合においても、やや前進は見ることができましたが、毎回の年金法改正を通じまして、いわゆる旧法期間の既裁定年金者に対しては十分な改正が行なわれておらない。この点については、われわれが毎回当委員会を通じて指摘しておる点でありますが、政府農林省としては必ず恩給法との均衡論というものを持ち出して、それを理由にして根本的な改善ができないというのが今日までの経過であります。  農林年金の発足の経過から見ても、恩給法との直接の関係というものはないわけでありますし、むしろ、厚生年金制度のしばしばの改善と歩調を合わせる、そして、発足当時の精神というものが、厚年よりも有利性を持つというところに農林年金分離独立させた発足の目的があるわけでありますから、この点についてはこの際明快にする必要があると思うわけでありますが、いかがですか。
  166. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは御存じのように他の共済等ともいろいろな関係を持っておりますが、お話しのございました旧法の年金につきましての給付内容の改善につきましては、新法年金等との均衡にも十分配慮しながら、今後その改善に努力をしてまいりたい、このように思っております。
  167. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は非常に大事な点ですから、もう少し具体的に示してもらいたいわけであります。  農林年金の場合は、三十四年の発足以来しばしばの改正が行なわれておりますが、大きな改正ということになれば、いま申し上げました三十九年の改正、その次が四十四年の改正、続いて今回の改正ということになっておりまして、これはちょうど五年、五年に行なわれておるわけですね。したがって、これは偶然の符合かもしれませんが、年金の五年ごとの再計算期の前年に相当大幅な改正が行なわれておるわけであります。したがって、四十九年末の時点で再計算を行なって、財源率の改定を行なうことになるわけでありますからして、今回の改正にこれが間に合わないとしても、今年度末の再計算期には十分この点に留意をして、長年の懸案である問題でありますからして、新旧の完全通算、不均衡の完全是正ということに対して十分な努力をしてもらいたいと思うわけであります。しかも、旧法期間の裁定年金者というのは、人員にしても、遺族年金受給者を入れても二千名を下回っているわけでありますからして、財政的に改正できないという理由はないわけですね。だから、間違った恩給法との均衡論というものを捨てて、総理府の社会保障制度審議会においても、毎回の改正において恩給法との均衡論で旧法期間の抜本改正ができないのは妥当でないという指摘意見として出されておることは大臣も御承知のとおりでありますからして、この際、新旧問題の根本改善ということに対して、いま一歩明確な大臣としての方針を示しておいてもらいたいと思います。
  168. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私自身が本法の沿革をよく承知し、また、関係をいたしてまいりました当事者でありますので、関係方面とも十分な検討をいたしまして、できるだけ対処できるように努力をいたしてまいるつもりでおります。
  169. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、今回の改正の中で、いわゆる既裁定年金に対して自動スライド制を導入するという点が昨年の改正よりもやや明らかになっておるわけであります。これは局長からの答弁でもいいわけですけれども、今度の改正案の附則の第八条に、「年金額の自動的改定措置」ということで条文が出ているわけでありますが、これはわれわれが条文を検討しても、まことに明確を欠いておるわけですね。しかも、自動スライドを実現する場合の根拠として、「政令で定めるところにより改定する。」ということになっておるわけでありますが、昨日、本日の審議を通じましても、この規定に基づいて委任される政令というものは一体どういうものであるかということがまだ明らかになっていないわけです。次の附則の第九条においても、相当重要な部分の施行について政令委任ということになっておるわけでありますが、この点をこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  170. 岡安誠

    ○岡安政府委員 附則の第八条の「年金額の自動的改正措置」でございますが、これはこういうふうに書いてございますけれども、いわゆる自動スライド制というものではないわけでございまして、いわば、厚生年金内容が変わった場合に、厚生年金の組織といいますか、組成の一部を使いまして、通算退職年金とか最低保障の額とかいうものを農林年金できめておりますので、それらにつきましては、厚生年金の額の変更等につきましてあわせて変更をし、農林年金に取り込むという規定を第八条にいたしておるわけでございます。現在考えておりますのは、御承知のとおり、厚生年金は、昨年度の物価の上昇率一六・一%ということで年金額の改定が行なわれるという予定でございますし、また、その実施時期につきましては、三カ月繰り上げて、八月から実施ということが予定されておりますので、私どもは、それらを受けまして、第八条におきましては、通算退職年金、最低保障額等につきましては、額の改正並びに実施時期につきましては八月にさかのぼりまして実施をいたしたいというふうに政令で規定をする予定でございます。  なお、九条の政令につきましては、現在制定をいたす予定はございません。
  171. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ附則八条は、先般農林大臣が本法案の提案説明をやったときの説明とあなたの答弁は違うじゃないですか。
  172. 岡安誠

    ○岡安政府委員 私が申し上げましたのは、いわゆる自動スライド制と申しますのは、厚生年金等に採用されておりますように、物価が上がりましたならばこれを自動的にスライドして、基本的な年金、たとえば退職年金等の額の変更をするというような制度をさしているというふうに私は申し上げたわけでございますけれども、そういうことではなくて、附則の八条は、厚生年金が自動スライドでもって上がった場合には、そのスライドを受けまして、農林年金が通算退職年金なり最低保障制度でもって利用しております額を自動的に変更いたしますということを申し上げたわけでございます。したがって、一面におきましては確かに自動スライドでございますけれども、いわゆる農林年金の退職年金そのものを物価なり賃金にスライドして上昇をさせるという意味の規定ではございませんというふうに申し上げたわけであります。
  173. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま政府委員から申し上げましたことで尽きておると思いますが、厚生年金につきましては御承知のとおりでありますが、農林年金の改定につきましてそれを採用するにつきましては、その指標として物価をとるか賃金をとるか等の問題がございまして、まだ結論を得ておらない次第であります。  そこで、この問題につきましては、共済制度共通の問題でもありますので、関係各省と十分その点を打ち合わせてやってまいりたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  174. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう答弁であればいいんですよ。もうすでに厚生年金並びに国民年金においては、物価の自動スライドの根拠をなす物価の上昇を一六・八%と公表しておるわけですからね。それは厚年、国年においては、それによって自動スライドを導入して年金額の改定が行なわれているのです。この点については、厚生年金農林年金の母法的な役割りを果たすわけですから、厚年のほうが物価の自動スライドで年金額の改定を行なうということになれば、それを基礎にして農林年金にこれを導入するということに当然なるわけです。その関連措置として附則第八条というものがここに明定されておるわけですからね。先ほど局長答弁はそうじゃないんだ。これは関係がないというような、自分が法律を出しておりながら、何が何だか全くわからぬようなそういう答弁では――いや、首をひねったってしょうがない。大臣提案説明でちゃんと明らかにしているわけだから、その指示に基づいて事務官僚というものはきちっとした答弁をすべきだと思うのですよ。こういう点は法文の中においても明らかにしておかないと、一般の年金対象者が見ても、これはどういう中身だかわからぬじゃないかということになるわけでありますからして、この点は行政運用については十分注意をしてもらいたいと思います。  次にお尋ねしたいのは、午前中の参考人意見開陳の中にもありましたが、農林年金における掛け金負担割合というものが、経営主である団体職員である組合員とが折半負担をするということになっておるわけです。各職員の毎月の給与額というものを年金法の標準給与額に置きかえて、その適用によって各組合員の毎月の掛け金の負担額というものをきめていくわけでありますが、その場合の負担区分というものは五対五ということになっておるわけです。この点についても、従来の改正を通じまして、これは国庫負担ということにはならぬので、大きな目で見れば、同じかまの中で負担区分が変わる程度ではないかというような説も出ないわけでもありませんが、しかし、賃金水準が非常に低いといういまの農林漁業団体の給与の実態を考えた場合において、せめて、年金掛け金の負担等についてはできるだけ団体側が負担をして、組合員である職員に対する負担というものを軽減するようにつとめるべきではないか、これがわれわれの年来の主張であります。  午前中の参考人の御意見を聞きましても、実態論でありますが、中央年金加入の団体にいたしましても、都道府県連合会あるいはまた全国単協等においても、経営内容にもよるわけでありますが、この点についてはすでに相当積極的な負担上の配慮が行なわれているということも承知したわけでございます。しかし、これはこの法律の五十五条の条文をそのままにして、関係の政令あるいは年金組合の定款等をそのままにして、内部操作で組合員の負担を軽減させるということは正当な方法ではないと私は考えるわけであります。そういう実態が相当普遍しているということであれば、むしろそれを取り上げて、負担区分等については実態に合致したように五十五条の所要な個所を改正する必要があるのではないか、それに向かっての検討を下す必要があるのではないかというふうに考えますが、大臣の御意見はどうですか。
  175. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この年金では、掛け金は、ただいまお話しのございましたように事業主組合員との折半負担になっておるわけでございますが、この方式は、共済制度に限らず、健康保険を含めました社会保険全般を通じます共通原則になっておることは御存じのとおりでございます。したがって、この負担割合を変更するということになりますと、社会保険制度全般にわたって大きな影響を持つ問題でございますし、また、団体、すなわち農林漁業団体経営に与える影響も大きいものがあると考えられますので、今後団体の負担能力等の実情を十分に把握することにつとめまして検討を進めてまいりたいと思っております。
  176. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点については、私ども社会党としては相当具体的な実態調査をやっておるわけですが、これは軽々にどこがどうなっていると言うわけにはいかぬわけです。しかし、われわれの承知する範囲では、特に農林大臣の御出身の長野県等においては、連合会はもちろんでありますが、各単協においても、この点については、組合員である職員掛け金負担をできるだけ軽減する点について相当な配慮をしておるということも承知しておるわけであります。これは決して悪いことじゃないわけです。そういうことが現実に配慮されておるとするならば、むしろ、それを踏まえての実態に合致するような法改正が必要ではないか。実態がどんどんそういうように全国的に広がる、法律は旧態依然として折半負担のままに残っておるということになれば、農林省としても、農協、漁協等に対する行政的な指導の立場においても、そういうことを全然知らないでおったか、あるいは見過ごしておったかというような責任論さえも出ないとは限らないわけでありますからして、この点は実態がつまびらかでないとすれば、農林省としては、鋭意実態調査を行なうとか、あるいは加入団体等について十分な意識調査等を行なうというような前向きな指導、対策を講ずべきだと思うのですよ。いかがですか。
  177. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまも申し上げましたように、そういう点につきまして十分実態把握につとめて善処してまいりたいと思っております。
  178. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、これは毎年の農林年金改正の際に論議されるわけでありますが、農林漁業団体職員の給与水準の改善について意見が出ておるわけです。これは直接的に年金制度で解決するわけにもいかぬ。農林省としても、国家財政から職員の給与改善をするというわけにはいかぬわけですね。たとえば地方公務員等においては、どんな僻村の市町村役場等においても、職員の給与等については、いずれの地においても、国家公務員の給与改善が行なわれれば地方公務員はそれに準ずるということになるわけであって、それは当該町村の財政能力いかんにかかわらぬということになっているわけですね。ところが、農協等の場合においては、相当水準の給与改善のできる農協もあり、幾ら実行しようとしても能力に限度があるから改善ができないという単協もあるわけです。そうかといって、町村役場のように、国庫から地方交付税を通じて一町村に対して四億とか十億の交付金を交付するというような措置もないわけでありますからして、結局これは年金制度との関連において、少なくとも加入団体職員の給与の最低水準というものを底上げする努力というものは農林省においても具体的に行なうべきでないかと思うわけであります。  たとえば単協等においても、毎年毎年一定額のベースアップ等をやっておるわけでありますが、たとえば昨年は二〇%台とか、ことしは三〇%台だといたしましても、公務員のように、明確な根拠のある給与規定であるとか、給与法に基づいての改定ということにはなかなかならぬわけですね。引き上げをしたあとで給与規定等の別表にそれを合致させるというような便宜的なことをやっておる単協が非常に多いわけです。したがって、こういう点についても、全国的に農協問において、組合問において凹凸があるわけでありますからして、農林省としても、もちろん模範定款のようなわけにはいきませんが、やはり、一定の給与規準、給与規程の準則というようなものを示すとか、あるいはいま問題になっておる職員の退職給与規程等についても、これは非常に多様になっておるわけで、どこを基準にしてやるのがいいかということも明確になっていないわけでありますからして、今後の問題としては、農林漁業団体に対する職員の給与規程に関する一定の基準を策定して示す必要があるのじゃないか。天下りでこれでやれと言うわけじゃないですよ。よりどころを示す必要があるのじゃないか。退職給与規程等についても、一方においては年金制度がだんだん充実しておるわけでありまするからして、この年金制度が発足する以前につくられた退給制度等というものは検討すれば実態に合わぬというような点もやはりなきにしもあらずであります。こういう点を農林省が具体的に行政的に指導、誘導するということでなければ、幾ら局長がこれらの問題については十分努力していますと言っても、その効果というものは全然あがらないわけです。だから、この点に対していままでどういうような努力をしてきたか、全然やっておらぬとすれば、これからどうしなければならぬかというような点については、これはまず局長から明らかにしてもらいたいわけです。その次に農林大臣の明確な方針を出してもらいたいと思います。
  179. 岡安誠

    ○岡安政府委員 農林漁業団体職員の給与につきましては、一般的に水準が低いということを私どもも承知いたしておりまして、その改善方につきましては、政府としていろいろ御援助、御協力ができる部分につきましてはやっていきたいと思っておりますけれども、何せ、職員の給与につきましては、事業主である団体経営の能力、基盤等が直接に反映するわけでございますので、おっしゃるとおり、現在千差万別と言い得るような状態でございます。  私どもも、第一には農林漁業団体経営基盤をしっかりするということが先決であるとは思いますけれども、先生御指摘のとおり、給与に関する規則とか退職給与規程等の模範例等につきまして、もし必要があるならば全中その他中央団体とも相談をいたしまして模範的なものをお示しするということも考えたいと思いますが、やはり、基本は団体経営基盤の確立であろうというふうに考えますので、その方向に向かいまして今後とも援助、協力は惜しまないというふうに考えております。
  180. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農林漁業団体の給与その他の待遇の改善につきましては、その経営におきまして所要の賃金原資が確保できなければならないのでありますが、何よりもまず農協経営の基盤の強化をはかることが大切なことだと存じます。  農林省といたしましては、従来から、農協合併等の推進を通じましてその経営基盤の強化をはかり、また、経営実務者の研修の助成をいたしますとか、農協検査の際の指導等を通じまして経営の改善、合理化の指導につとめてまいっておる次第であります。今後とも、この面の農協の自主的努力に期待しながら適切な指導をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  181. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの問題の一つの事例として、今回の改正によって、標準給与月額が別表の改正で大体下限が五〇%上がっているわけです。従来の二万六千円が今度は五〇%アップの三万九千円と、上限については二〇%程度引き上げですが、そうすると、下限の三万九千円というのは、これが二万円台の月額給与を受けておる職員であっても、年金掛け金の払い込みあるいは諸般の手続上から言うと、実体給与が幾ら低くても結局三万九千円の月額にこれを当てはめて、三万九千円に基づいた千分の四十八の掛け金を負担しなければならぬということになるわけです。私は、この標準給与額の引き上げというものが、すなわち農林漁業団体職員の少なくとも最低の初任給程度に合致するようにするのが当然だと思うのですよ。午前中の参考人意見によりましても、これも大臣の選挙区のある農協ですが、十八歳で高校出の女子職員初任給が二万五千五百円というような実態も実はあるわけです。だから、今回改正によって五割引き上げになるわけですから、改正前の場合には最低給与月額が二万六千円ですから、そう大きな懸隔はないが、今度は五割上がったということになれば、先ほど私が言いました給与水準等についての最低限というものをできるだけ底上げするような行政指導というものが必要だと思うのです。そうなれば、少なくとも三万九千円とか四万円というものが高校出の単協初任給ということになれば相当の是正が行なわれると思うわけです。だから、こういう点が、年金改正とあわせて農林漁業団体職員の給与水準の改善を行なうという一つの基礎にもなるのじゃないかというふうに考えるわけです。そういうことを示してもらわないと、いかに善意な農協や漁協の経営者が努力しても結局限界があるわけですから、どう思っても財源的に不足する場合においてはなかなか十分な処遇ができない。そうなると、場合によっては、農協というものはアメリカ帝国主義の手先であるとか、独占に隷属したけしからぬ団体であるというような説も昨今は出る時代ですからして、それでは善意な農協あるいは団体経営者というものはどうしていいかわからぬということでジレンマにおちいるわけでありますからして、こういう点は制度の目的というものを明らかにすると同時に、農林漁業団体が特に独立した年金制度というものを持って、そして、農林漁業の発展の推進力として担当しておるわけですから、この点はぜひ大臣においても局長に指示して、私が先ほど来提起しておる問題については迅速に善処してもらいたいと思いますが、いかがでございますか。
  182. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先生御指摘のとおり、今回標準給与の下限を引き上げましたのは、もちろん、下限に達していない職員が、ことしの十月現在でも一・四%ぐらいあるということは考えております。ただ、上げたことによって、退職一時金とか障害年金遺族年金等についてメリットがあると一いうことと、それから、先生御指摘のとおり、標準給与の下限を引き上げることによりまして、一面では農林漁業団体職員の給与の引き上げを推進する役割りを果たすのではあるまいかということを考えているわけでございます。臨時的な職務に従事している職員の給与が三万九千円以下であるということは別でございますけれども、本来の恒常的な職務に従事しておる職員の給与が三万九千円を下回っているということは必ずしも望ましい状況ではございませんので、私どもも、そういう方々の給与の引き上げにつきましては、今後とも格段の指導その他はいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  183. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に、農林大臣に一言お尋ねしたいのは、この法案とは別ですが、先々週、当委員会において十分な審議を尽くして、一部修正で成立させました農業者年金と私は比較してみたわけでありますが、農業者年金の場合の老齢年金は、今度の改正によって、月額千六百五十円の保険料を満二十年間払い込みをして、六十五歳になってようやく八千八百円の年金給付を受ける。これが農林漁業団体の正組合員であるいわゆる農業者年金ということになるわけです。それでは、二十年間かけて六十五歳になって、農林年金より老齢してからしかもらえぬわけですから、その場合にわずかに八千八百円。八千八百円というものを農林年金の算定で言うと、今度は退職時の前一年間の最低給与額が基礎になるわけでありますから、その場合、八千八百円の年金を受けるということになれば、最終給与額が二万二千円あれば、四〇%なら八千八百円ということになるのです。千六百五十円ずつ二十年間かけて、十年間たって六十五歳になって八千八百円。これでは農林年金制度もまだまだ不十分であるが、同じ農業協同組合で働く職員と、農業協同組合を形成して、協同組合の目的というものが構成組合員である農民に普遍するようにするということになれば、これは比較の問題ですが、今後、農林大臣が所管されておる農業者年金の中の老齢年金の抜本改正の問題等については、このことに思いをいたして十分な対応をしてもらいたいと思いますが、どうお考えですか。
  184. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農業者年金は申すまでもなく政策目的のございます年金でありますが、これは創定当時の状況、沿革から見まして、今日のようにあることはやむを得ないことであると存じますが、先般、あの法案の改正案につきましても申し上げましたように、私どもは、他の年金法とも比較いたして、できるだけこれの改善を心がけてまいりたいと思っておるわけであります。     ―――――――――――――
  185. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
  186. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際、理事会等における各派協議により、私の手元で起草いたしました本案に対する修正案を提出いたします。
  187. 仮谷忠男

    仮谷委員長 修正案はお手元に配付してあるとおりであります。  その案文の朗読は省略いたしまして、以下修正の趣旨を簡単に申し上げます。  本修正内容は、農林中央金庫及び農業信用保険協会を本年十月一日以降本法の適用対象団体とするとともに、これら団体職員について、その者が有していた厚生年金被保険者期間で当該団体職員であった期間を、本共済組合員の組合員期間とみなし、これを通算する特例措置を認めようとするものであります。  このような修正を行なうことといたしましたのは、まず、農林中央金庫につきましては、昨年の法律改正によって、存立期間に関する制限が撤廃される等、その農林漁業団体の恒久的な全国金融機関としての基本的な性格が一段と明確になりましたので、金庫の役職員を他の農林漁業団体と同じ年金制度に加入させ、より充実した老後保障のもとで、系統金融業務に精進できる体制を整備いたしますことは、農林漁業団体としての一体感の強化、今後の業務遂行上ますますその必要性が要請される相互の人事交流の円滑化等に資することになると考え、この際その加入を認めることとした次第であります。  次に、農業信用保険協会につきましては、その会員である農業信用基金協会はすでに本年金制度に加入しており、また、本年金制度に加入していた中央開拓融資保証協会との統合により、その職員を引き継ぐこととなっておりますので、これらの事情を考慮してその加入を認めることとした次第であります。  また、これら団体の加入と同時に加入前の厚生年金被保険者期間で当該団体職員であった期間について、これを本共済組合組合員期間とみなすことといたしましたのは、加入だけを認めたのでは、厚生年金との通算年金となるため、現在在職している者についてはかえって不利となるおそれがあり、老後保障の充実の趣旨にもとると考えたからであります。  なお、この組合員期間の通算方式は、昭和四十七年度改定法の修正の際に行なった全国農業共済協会、中央畜産会及び中央酪農会議の通算措置の例にならったものであります。  したがって、この通算措置に伴い、厚生年金保険特別会計から本共済組合への交付金、みなし組合員期間のうち、本共済組合発足後のものについてのいわゆる掛け金不足額等の納付金、その納付金についての社会保険料控除の適用等について必要な規定を設けております。  以上が修正の趣旨であります。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により内閣の意見があればお述べをいただきたいと思います。倉石農林大臣
  188. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまの委員提案の修正案につきましては、政府としては必ずしも適当ではないと考えております。     ―――――――――――――
  189. 仮谷忠男

    仮谷委員長 修正案に対して別段御発言もないようでありますので、原案並びに修正案を一括して討論に入りたいと思いますが、別に討論の申し出もありませんので、これより採決に入ります。  まず、委員提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  190. 仮谷忠男

    仮谷委員長 起立総員。よって、委員提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  191. 仮谷忠男

    仮谷委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  192. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際、本案に対し、芳賀貢君外三名から、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者から趣旨の説明を求めます。芳賀貢君。
  193. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は、ただいま議決されました農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   本制度給付内容は他制度に準じ逐次改善をみているが、本制度自体がもつ特殊性もあり、制度の健全な運営をはかるうえからも問題なしとしない。   よつて、政府は左記事項について、速やかに検討を加え、改善措置を講ずべきである。       記  一、年金財政の健全化をはかるため、給付に要する費用に対する国の補助率を百分の二十以上に引き上げ、併せて財源調整費等の一層の増額に特に努めるとともに他制度にみられる都道府県補助その他の公的援助措置等の導入について検討すること。  二、旧法年金については、新法年金との均衡に配慮し最低保障額の引上等格差是正のための制度改善に一層努力すること。  三、既裁定年金の改定については、賃金変動に応じた自動スライド制を導入すること。  四、掛金の負担割合について、組合員の負担軽減の方向で改善措置検討すること。  五、農林漁業団体職員の給与等その待遇改善について一層適切な指導を行うこと。   右決議する。  提案の趣旨については、先ほどの私の質疑を通じて尽くされておりますので、この際省略させていただきます。  以上が本決議案提案の趣旨でございます。  何とぞ委員各位の全員の賛成をお願いいたします。(拍手)
  194. 仮谷忠男

    仮谷委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本動議に対して、別に発言もありませんので、直ちに採決いたします。  芳賀貢君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  195. 仮谷忠男

    仮谷委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。倉石農林大臣
  196. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、御趣旨を十分尊重いたしまして、今後検討の上、善処してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  197. 仮谷忠男

    仮谷委員長 ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 仮谷忠男

    仮谷委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  199. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は、明九日木曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時五分散会