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1974-04-23 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十三日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 坂村 吉正君 理事 湊  徹郎君    理事 安田 貴六君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 津川 武一君       愛野興一郎君    伊東 正義君       上田 茂行君    小沢 一郎君       金子 岩三君    熊谷 義雄君       島田 安夫君    粟山 ひで君       野坂 浩賢君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省構造改善         局次長     杉田 栄司君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第三課長   西野 襄一君         厚生省年金局企         画課長     持永 和見君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 四月十二日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     大石 千八君   上田 茂行君     越智 伊平君   井上  泉君     中村  茂君   馬場  昇君     川崎 寛治君   瀬野栄次郎君     鬼木 勝利君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     上田 茂行君   大石 千八君     愛野興一郎君   川崎 寛治君     馬場  昇君   中村  茂君     井上  泉君   鬼木 勝利君     瀬野栄次郎君     ————————————— 四月十一日  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第八四号) 同月十日  畜産業経営安定等に関する請願(有島重武君  紹介)(第四一九七号)  同外八件(有田喜一紹介)(第四一九八号)  同(稲村利幸紹介)(第四一九九号)  同(大平正芳紹介)(第四二〇〇号)  同外二件(金子岩三紹介)(第四二〇一号)  同外二件(木部佳昭紹介)(第四二〇二号)  同外五件(小島徹三紹介)(第四二〇三号)  同外一件(小濱新次紹介)(第四二〇四号)  同外四件(塩谷一夫紹介)(第四二〇五号)  同(柴田健治紹介)(第四二〇六号)  同(千葉三郎紹介)(第四二〇七号)  同外一件(渡海元三郎紹介)(第四二〇八  号)  同外十一件(中曽根康弘紹介)(第四二〇九  号)  同外十二件(丹羽喬四郎紹介)(第四二一〇  号)  同外六件(橋本登美三郎紹介)(第四二一一  号)  同(伏木和雄紹介)(第四二一二号)  同(水田三喜男紹介)(第四二一三号)  同外六件(小澤太郎紹介)(第四二三二号)  同外十八件(加藤紘一紹介)(第四二三三  号)  同(倉成正紹介)(第四二三四号)  同(中澤茂一紹介)(第四二三五号)  同外十五件(中村拓道紹介)(第四二三六  号)  同(原健三郎紹介)(第四二三七号)  同外十一件(藤本孝雄紹介)(第四二三八  号)  同外二十二件(松本十郎紹介)(第四二三九  号)  同外二件(山口鶴男紹介)(第四二四〇号)  同外一件(足立篤郎紹介)(第四二七五号)  同外一件(坂口力紹介)(第四二七六号)  同(松本忠助紹介)(第四二七七号)  同(安田貴六君紹介)(第四二七八号)  同外一件(渡辺紘三君紹介)(第四二七九号)  農山漁村における有線放送電話育成強化に関  する請願小澤太郎紹介)(第四二三一号)  同外八件(林百郎君紹介)(第四二八〇号) 同月十六日  畜産業経営安定等に関する請願赤城宗徳君  紹介)(第四三三五号)  同(伊能繁次郎紹介)(第四三三六号)  同(石野久男紹介)(第四三三七号)  同外四件(小川省吾紹介)(第四三三八号)  同(仮谷忠男紹介)(第四三三九号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第四三四〇号)  同(田邊誠紹介)(第四三四一号)  同(堂森芳夫紹介)(第四三四二号)  同外一件(伏木和雄紹介)(第四三四三号)  同(水野清紹介)(第四三四四号)  同(宮崎茂一紹介)(第四三四五号)  同(石田幸四郎紹介)(第四四六二号)  同外二件(鬼木勝利紹介)(第四四六三号)  同外二件(小川平二紹介)(第四四六四号)  同(大西正男紹介)(第四四六五号)  同(大野潔紹介)(第四四六六号)  同(金子みつ紹介)(第四四六七号)  同(小林正巳紹介)(第四四六八号)  同(戸井田三郎紹介)(第四四六九号)  同(鈴切康雄紹介)(第四四七〇号)  同(中尾栄一紹介)(第四四七一号)  同外八件(中垣國男紹介)(第四四七二号)  同外一件(中澤茂一紹介)(第四四七三号)  同外十一件(羽田孜紹介)(第四四七四号)  同外十四件(羽生田進紹介)(第四四七五  号)  同外十六件(松野幸泰紹介)(第四四七六  号)  同外十七件(武藤嘉文紹介)(第四四七七  号)  同外七十件(森美秀紹介)(第四四七八号)  農山漁村における有線放送電話育成強化に関  する請願外四件(大橋武夫紹介)(第四三四  六号)  同(小坂善太郎紹介)(第四三四七号)  同外五件(佐々木義武紹介)(第四三四八  号)  同(竹下登紹介)(第四三四九号)  同外五件(神門至馬夫君紹介)(第四四五〇  号)  同外三件(笹山茂太郎紹介)(第四四五一  号)  同(島田琢郎紹介)(第四四五二号)  同外四件(下平正一紹介)(第四四五三号)  同外四件(堂森芳夫紹介)(第四四五四号)  同(中澤茂一紹介)(第四四五五号)  同(羽田孜紹介)(第四四五六号)  同(原茂紹介)(第四四五七号)  同(美濃政市紹介)(第四四五八号)  同外一件(安井吉典紹介)(第四四五九号)  同(山田芳治紹介)(第四四六〇号)  同外五件(米田東吾紹介)(第四四六一号)  農業用資材確保等に関する請願多田光雄君  紹介)(第四三五〇号) 同月十七日  畜産業経営安定等に関する請願鬼木勝利君  紹介)(第四五四三号)  同外一件(江崎真澄紹介)(第四五四四号)  同外一件(竹中修一紹介)(第四五四五号)  同(多田光雄紹介)(第四五四六号)  同外一件(藤井勝志紹介)(第四五四七号)  同外四件(村山達雄紹介)(第四五四八号)  同(保岡興治紹介)(第四五四九号)  同外一件(山本幸雄紹介)(第四五五〇号)  同外四件(安倍晋太郎紹介)(第四六二八  号)  同(稲富稜人君紹介)(第四六二九号)  同(受田新吉紹介)(第四六三〇号)  同外三件(江崎真澄紹介)(第四六三一号)  同外十一件(小沢貞孝紹介)(第四六三二  号)  同外一件(小澤太郎紹介)(第四六三三号)  同(神田大作紹介)(第四六三四号)  同(小平忠紹介)(第四六三五号)  同外三十二件(近藤鉄雄紹介)(第四六三六  号)  同(島田安夫紹介)(第四六三七号)  同外四件(高見三郎紹介)(第四六三八号)  同外一件(田澤吉郎紹介)(第四六三九号)  同(竹内黎一君紹介)(第四六四〇号)  同(林大幹君紹介)(第四六四一号)  同外三件(林義郎紹介)(第四六四二号)  同外十三件(渡辺栄一紹介)(第四六四三  号)  同外八件(松澤雄藏紹介)(第四六四四号)  同(吉田法晴紹介)(第四六四五号)  同(和田耕作紹介)(第四六四六号)  同外三件(長谷川四郎紹介)(第四六四七  号)  同(山村新治郎君紹介)(第四六四八号)  同(大久保直彦紹介)(第四六八八号)  同外一件(木島喜兵衞紹介)(第四六八九  号)  同外三件(佐々木良作紹介)(第四六九〇  号)  同(島田安夫紹介)(第四六九一号)  同外一件(瀬野栄次郎紹介)(第四六九二  号)  同(田村良平紹介)(第四六九三号)  同(広沢直樹紹介)(第四六九四号)  同(松尾信人紹介)(第四六九五号)  同(美濃政市紹介)(第四六九六号)  農山漁村における有線放送電話育成強化に関  する請願小沢貞孝紹介)(第四六二六号)  同(吉川久衛紹介)(第四六二七号)  同(小沢辰男紹介)(第四七二九号) 同月十九日  昭和四十八年度生産者米価追加払い等に関す  る請願芳賀貢紹介)(第四七七九号)  昭和四十九年度産麦に対する生産振興奨励補助  金の支給に関する請願中川利三郎紹介)(  第四七八〇号)  養蚕農家の経営安定に関する請願鈴木善幸君  紹介)(第四八七六号)  基本農政確立に関する請願鈴木善幸君紹  介)(第四八七七号)  漁業の経営安定のための緊急対策に関する請願  (鈴木善幸紹介)(第四八七八号)  農山漁村における有線放送電話育成強化に関  する請願下平正一紹介)(第五〇三八号)  同(堂森芳夫紹介)(第五〇三九号)  同外七件(中澤茂一紹介)(第五〇四〇号)  同外九件(中村茂紹介)(第五〇四一号)  同外四件(原茂紹介)(第五〇四二号)  同外五件(平林剛紹介)(第五〇四三号)  昭和四十九年産生産者米価の引上げに関する請  願(小沢辰男紹介)(第五〇四四号)  農林漁業用資材緊急確保に関する請願小沢  辰男紹介)(第五〇四五号) 同月二十日  農山漁村における有線放送電話育成強化に関  する請願外一件(伊藤宗一郎紹介)(第五一  一七号)  農業者年金制度改善に関する請願天野光晴  君紹介)(第五三三四号)  農業振興地域整備に関する請願天野光晴君  紹介)(第五三三五号)  農業経営の安定に関する請願天野光晴君紹  介)(第五三三六号) 同月二十二日  牛の流早死産、奇形子牛発生原因究明及び防  疫体制の確立等に関する請願橋本龍太郎君紹  介)(第五八六一号)  農山漁村における有線放送電話育成強化に関  する請願外一件(小平忠紹介)(第六二六〇  号)  畜産業の経営安定のための緊急施策確立に関す  る請願津川武一紹介)(第六二六一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五二号)      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についておはかりいたします。  すなわち、社会労働委員会においてただいま審査中の雇用保険法案雇用保険法の施行に伴う関係法律整備等に関する法律案国有林労働者雇用の安定に関する法律案及び、失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関する法律の一部を改正する法律案について、連合審査会開会申し入れを行ないたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 仮谷忠男

    仮谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時等は、社会労働委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。  この際、午後一時より再開することとして、暫時休憩いたします。    午前十時三十五分休憩      ————◇—————    午後一時四十四分開議
  4. 仮谷忠男

    仮谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農業者年金基金法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田茂行君。
  5. 上田茂行

    上田委員 農業者年金基金法の一部を改正する法律案につきまして、一時間程度、若干の質問をさせていただきたいと思います。  一昨年の、食料の問題が非常に話題にのぼった年でございますけれども、特に、日本にとりましては、大豆等の穀物の問題が大きく響いたわけでございますけれども、そのあと、農林省中心に、食料確保自給制度というものを整えていかなくてはならない、という見地からいろいろな報告がなされ、また、目標が定められておるわけでございます。そういう食料確保というものを一つの大きな農業の柱とする上で、農基法あるいは総合農政が、かつてから農家の新しいにない手というものを確保しなければならないという姿勢から、いままでどのようなことをやってこられたかということ、また、今後の処置につきましても、まず第一にお尋ねをしたいわけでございます。  特に、兼業農家割合を見ますと、その中の特に第二種兼業農家が六一%にも達しているという状況でもございますし、また、農基法が非常に重視をしておりますような、いわゆる中核的な自立経営農家というものが年々減って、四十年に九・一%であったものが、四十七年の統計を見ますと六・一%と、いかに農林省が努力しようともこのような結果に終わっているわけでございます。こういうこれからの近代的な農家のにない手というものをいかにしてこれから農林省育成しようとしているか、また、どのようにその対策を考えていらっしゃるか、この点につきましてまず第一にお伺いをしたいと思います。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 農業のにない手をどうしていままで養ってきたか、はぐくんできたかという御質問でございますが、従来から総合施設資金等農業金融を大型化し、あるいは充実するというようなことで、中堅農家としてやっていく希望を持たせるということに一つは力を入れてまいったのであります。また、自立経営育成というための経営技術の指導というものを強化したり、あるいは農業団地育成というようなことで、集団的な生産組織育成することにつとめてまいりました。  もう一つは、第二次農業構造改善事業というものを推進し、生産基盤整備や、あるいは農畜産物価格安定等を行なって、安定的な農業、しかも合理的な近代的な農業というものができるようにやってきたのであります。  しかし、それだけでは、こういうような高所得水準の中で農家にとどまって営農をやろうという人がだんだん少なくなって、営農を放棄したまま他産業に流れていく、これをどうして食いとめるんだ、と、こういうふうな次の御質問だと思いますが、これにつきましては、何と申しましても、農産物価格の引き上げということだけで農家所得水準というものを大幅に引き上げていくということは、実際問題として非常にむずかしいのであります。そこで、農林省としても、農業振興地域関係法令改正、農振法の改正案というものを今回も上程をいたしております。これはとりもなおさず、現在の農地制度というものが非常に硬直的であって、農地の貸し借りというものがなかなかうまくいかないために、零細な、あるいは非合理的な農業を営んでおる方が近代的農業を営む方に土地を貸そうとしても、現実の問題としてなかなか貸せない、そこまで踏み切れない。そこで、こういうものを直すために、ともかく土地流動化促進させようというようなことで、同じ村の中の土地の貸借ということについてはいままでの農地法のいろいろな規制というものから解放して、かなり自由化をしていくという、こういう方向を打ち出したわけであります。それによってともかく近代経営を営める農家の反別というものが大幅にふえるということを期待をしておるわけであります。  それらに関連する一連の法案の中には、今回提出された農業者年金基金法の一部改正法案というものも入っておるわけでありますが、これは離農または経営移譲というようなものに対する対策という形で、その補完的な役割りを果たしておるものであるとお考えをいただきたいと存じます。
  7. 上田茂行

    上田委員 政務次官の御答弁を伺いまして、農林省側として、効率のよい近代的な農業を営ませるために、自立経営農家育成というものについての努力をいかにはかっていらっしゃるかということの一面を伺ったわけでありますけれども、現在、農基法が失敗に終わったのではないかというような批評があるわけでございます。と申しますのも、規模の大きい農業を営ませるために、農業人口というものを引き下げていかなくてはならないという、その一面は成功したと思うわけでございますけれども、しかし、農家戸数というものは残念ながら減らなかった、また、規模拡大されなかった、かようなことがいまの現実でございます。  そこで、兼業的な農家というものがいまの日本農家の中の大多数を占めているという現状でございます。そして、その兼業的な農家というものをどうして育成し、また、それを長期的な観点から自立経営農家へといかにして転換させていくかということがこれからの農政の大きな目的であろうと私は思うわけでございますけれども、現在、そういう兼業農家兼業状態を見てまいりますと、一ヘクタール未満の農地を持っていらっしゃる層の六三%が一応は恒常的な勤務に従事されておるわけでございますけれども、二ヘクタール以上の層では、この割合が三九%と、ずっと低くなっております。そして、その人たちのほとんどの層が出かせぎや日雇い人夫等、非常に不安定な職業についていらっしゃるというのが現実でございます。こういう兼業農家の、農業以外の一方での所得が非常に不安定である。そういう人たちに対する対策、また雇用の機会、そのようなものはいままでどのようなことをやってこられたのか。また、農村地域工業導入促進法という法律の中にいろいろな成果が見出されたとは思いますけれども、その成果の一端なりをお聞かせ願えればありがたいと思います。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 御指摘のとおり、農村の方が自分の郷里を離れて、あるいは六カ月とかあるいは七カ月というような相当長期間出かせぎに出るというようなことは、いろいろな家庭不安を起こしたり、いろいろな問題を起こすのであります。そこで、農林省としては、御承知のとおり、農村地域工業導入促進法という法律をこしらえて、農振地域といいますか、そういうような純農村地域に、普通では採算ベースだけでは工場がなかなか進出しないというようなところにいろいろな助成措置を講じて工場を誘致して、一方では農閑期等にその工場に働きに出られるという道を開いておるわけであります。その具体的なケース等につきましては事務当局から経過の説明をさせたいと存じますが、それと同時に、通産省においても、工場地方分散とか再編成というようなことをやらせるために公団等もつくって、地方都市への工場進出をやりやすくしておるというようなことであります。なお、農林省としては、大型農道等整備して、農村とそれらの工場との連絡網整備して、農家の方が農村におりながらバイクや軽自動車で工場につとめられるというような道を開いておるわけであります。  それから、いま、就労人口は減っておるけれども、農家戸数というものは減らないではないかというふうな御指摘がありましたが、確かに、農家戸数の減り方が足らないと思っております。しかし、私は、必ずしも農家戸数が減る必要はないと思う。ただ、農家農作業から解放されるということによって、一方において合理的な農業が営まれるようになる。農家というものでなくなって、人に土地を貸しておつとめに出たい人はそれでもけっこうだけれども、農林省農業機械銀行というものをやっております。これはドイツのマシーネンリングに類似した方法でございますが、自分土地を持ちながら、農作業からは解放され、しかも、その土地には何を植えたいという意思決定権を持つ。つまり、経営権を持ちながら営農ができる。自分では農作業に手出しをしない。だれかに頼んで営農をやらせるということになれば、やはり農家戸数の中に入ろうかと存じますが、現実には、営農労働からは解放される。こういうことによって浮いた労働力が他産業に向けられ、あるいはその種目以外の種目に従事することができる。こういうような道もとれるわけでございまして、農家戸数が減らないという現実だけをもって、農業近代化というものが中途はんぱであるというようにはわれわれは必ずしも解釈をしておらないのでございます。
  9. 大山一生

    大山政府委員 御質問のございました農村工業導入による現在までの成果といいますか、実施状況の御質問でございますが、四十六年以来四十八年までに、農村地域工業導入促進法に基づきます実施計画を策定したのが六百十四ございます。その中で、すでに導入されました企業として操業しておりますのが二百四十一社ございます。そこで雇用されております人間のうち、地元雇用者が八一・五%を占めております。さらに、その中で、農業に従事している家庭からの雇用者ということになりますと、全体の約五〇%というようなことで、先ほど先生が言われましたような、いわば雇用の安定というようなことにおいては、農業との関連におきまして、かなりの成果をあげているのではないだろうかというふうに思うわけでございます。  それから、導入されました企業におきます雇用者数といたしましては、平均いたしまして七十五名ぐらいでございますけれども、中には五百人以上というようなところもございます。平均してみると二、三百程度というようなところがかなりふえてきているというような情勢にあるわけでございます。  なお、こういうふうな企業農村工業センターに対します立地相談の件数も、石油ショックのときに多少減った傾向はございますけれども、最近また戻ってきているというようなことで、大体昨年平均いたしまして三十件程度から四十件ほどの相談があるというような状態でございます。  企業産業別状況といたしましては、一番多いのが輸送用機械器具関係でございます。それから電気機械器具関係、それから金属製品というようなもの、それから衣服その他の繊維製品、こういったようなものが中心になって進んでおりまして、今後この導入をさらに積極化するために、関連基盤整備事業というようなことも促進する中で、こういう問題をさらに積極的に進め、雇用の安定に資したい、こういうふうに考えるわけであります。
  10. 上田茂行

    上田委員 次に、この法律の内容に移らせていただきたいと思いますけれども、この法律の「目的」という項に、「農業者老後生活の安定及び福祉の向上に資するとともに、農業経営近代化及び農地保有合理化に寄与することを目的とする。」と載っておるわけでございます。一つ老後保障の項、並びに近代化、この二つの問題は、それぞれ福祉政策の問題であり、また、経済政策の問題であり、そして、そのどちらもがこの法案によって農業政策一環としてやられるというふうにうたわれておるわけでございますけれども、農林省側は一体このどちらのほうに——すなわち、近代化をするほうか、それとも老後保障のほうか、そのどちらに重点をより置いてこの法案の作成に当たられ、また、今回の改正に当たられておるのか、かような点についてお伺いをしたいと思います。
  11. 大山一生

    大山政府委員 現在農業構造改善をはかるということによりまして優秀な経営担当者確保する、あるいは経営移譲促進する、あるいは経営規模拡大をはかるというような施策を、構造改善のために必要であるという観点からいたしまして、その一環というかっこうで、この法律を先般制定し、また、今度改正をしようとしているわけでございます。しかしながら、いま申し上げましたような優秀な経営者確保でありますとか、あるいは経営移譲促進経営規模拡大というような施策を行ないます場合におきまして、やはり、どうしても、農業者老後生活の安定ということと密接な関連を持ってまいるということでございますので、後継者への移譲を含みました経営移譲ということを年金の支給要件とする農業者年金制度というかっこうで仕組みまして、農業者老後生活の安定と、そして先ほど来申し上げます農業経営近代化農地保有合理化という農政上の要請にこたえたい、こういうふうなかっこうで仕組んでいるような次第でございます。
  12. 上田茂行

    上田委員 いまの局長の答弁を伺いまして、私自身は、経済政策、特に経営の近代化というようなものは、こういう法案によってはなかなかなし得ないのではないかというふうに感ずるわけでございます。と申しますのも、この法案によりますと、六十歳までにできるだけ経営移譲をしてくれ、そうしたら経営移譲の年金を支給する、あるいは六十五歳以降は、その経営移譲年金のほかに老齢年金あるいは国民年金の付加、あるいは定額の年金というようなものが与えられるというふうになっているわけでございます。私は、この法案をぱっと見た場合に、六十五歳までにできるだけ農業はやめてしまえ、そして、それによって若返りをはかっていこうというふうに感ずるわけでございます。  老齢者の方々も多様な能力を持っておられるし、特に、老齢人口がこれから非常にふえるわけでございますし、老齢者の方々でも農業に十分携われると私は思うわけでございますけれども、そのような場合に、ただ単にこの法律によって老齢者の方々が先に経営移譲をしてやめてくださいと言えば、一方で若い人たちが入ってくるかというと、そういう法律の趣旨ではないわけです。年寄りの方々はどいてくださいということは、この法律によってある程度成功するかもしれないと思うのですけれども、しかしながら、一体その移譲をしたあとにどのような若い人たちが入ってくるかというような保証というものを、この法律とあわせて何かの形でやっていかなくてはならないというふうに感ずるわけでございます。  また、この法案を見ておりまして私自身が思うのは、ただ単に年齢というものを一つの要件にしてこの法案がつくられておるわけでございますけれども、もしこの法律によって経営移譲をし、そして近代化をし、そして合理的な農業というものを行なっていこうという意思があるならば、もっと積極的にこの法案の中に盛り込むような要素というものが多分にあったと思うのです。たとえば、規模別に、これくらいの階層の農業所得をあげているというような層をほかの職業につかせるための法律のくふうもあったと思いますし、また、規模別にこれぐらいの反、あるいはこれぐらいのヘクタール、町を持っている人たちを特に経営移譲させようというようなこともこの法律の中に盛り込めたのではないかというふうに感ずるわけでございます。  また、もう一点私が思いますのは、この法律が四十六年度にできてから、五十一年まで、何ぶんまだ給付が始まっておらないということもございますけれども、この法律の中に、この基金でいわゆる農地の買い入れや売り渡しというものを積極的にやるという目的もうたわれておるわけでございます。しかし、最近農林省からいただいております統計を見ますと、農業構造の改善のための買い入れや売り渡しを積極的にやってきたという節は全く見られないわけなんです。  私はここでいま数々の問題点をあげましたけれども、その幾つかの問題点につきましてお答えを願いたいと思います。
  13. 大山一生

    大山政府委員 御指摘の点はいろいろございますけれども、基本的に、この法律の中におきまして、農業者といえども老後生活を安定させるということにつきましては、一般国民というかっこうで、国民年金制度の充実によって措置すべきものであるというふうに私たちは考えるわけでございます。  しかしながら、農業の場合におきましては、そのほかに農政上の問題といたしまして、優秀な後継者を育成するとか、あるいは経営規模拡大するといったような、農業近代化と申しますか、構造の改善ということが必要であるわけでございまして、先ほど政務次官が申し上げましたような各般の構造政策を講じているわけでございますけれども、それの一環といたしまして、いわば年金手法を通ずるかっこうにおいてそれを促進するというふうなことがこの法律のねらいになっているわけでございます。したがいまして、六十歳から六十五歳までの間において経営移譲年金の支払いをする。そして、六十五歳からは老齢年金というかっこうになるわけでございますけれども、もしかりに経営移譲をされなかったという方についても、これはやはりある程度の老齢年金は支給する。こういうふうな中におきまして、老後生活もそういう農業政策というものとの関係において考えていくというのがこの法律であるわけでございます。  そこで、いま、後継者の問題が出たわけでございますが、本日資料を持っておりませんので、あるいは数字が若干違っておりましたら御訂正させていただきたいと思いますけれども、統計情報部のほうで、中高年齢層におきます農業経営主がどの程度において後継者を保有しているかという調査をいたしたことが、たしか四十六年であったと思いますけれども、あったわけでございます。その調査の結果では、約八割が後継者を保有しているという報告があったわけでございます。ただ、その八割の全部がすでに農業を主としてやっているということでは必ずしもありません。しかし、最近の情勢のように、若者がuターンしているというような傾向も、そういうこととの関連においてもあり得るのではないだろうかというふうに考えるわけでございます。いわば、後継者というものも、相当程度において経営主としては保有しているというような意識調査の結果もあるようなわけでございます。  そのほかに、農地法におきます耕作権の問題でありますとか、そういったようなものも、第三者に対する経営移譲のかっこうの問題として、所有権の移転だけではなく、その他の方法も講ずるという趣旨において行なわれておるわけでございます。  それから、後継者との関連におきましては、相続税の生前贈与というかっこうにつきまして、税法上の優遇措置を講じておりまして、考え方といたしましては、いわば死亡するときまでその税は免除して、待って、そして死亡したときに相続税並みの課税をするというふうな、生前贈与に対します税法上の特例措置も講じておるようなわけでございます。あれやこれやでもってその辺の問題を処理してまいるということに相なろうかというふうに考える次第でございます。
  14. 上田茂行

    上田委員 いまの質問の中でもう少しお聞かせ願いたい点があるわけなんですけれども、この法律近代化をはかるということが一つ目的になっておるわけです。そのために、六十歳までにできるだけ経営移譲してください、そうした場合に、六十歳から六十五歳の間に経営移譲年金というようなものをお払いいたしましょうというふうになっておるわけでございます。いわば、年齢というものを一つのめどにして、六十歳ぐらいの年齢になればできるだけ農業をやめていただいて、そして若返りをはかっていただこうという趣旨になっているというのは、いま御説明にありましたようによくわかるわけでございます。  しかし、ここで法律の一部改正ということが行なわれるわけでございますけれども、農業構造改善というものをもっとより以上はかっていこうとするならば、どの規模農家に標準を合わせて経営移譲をさせたいとか、あるいは兼業割合をどれくらい持っているような農家に対して経営移譲をさせたいとかいうような仕組みを今度の一部改正の中に取り入れたほうが、構造改善をより以上はかる上で、この法律の大きな一つ改正点になったのではないかという気がするわけなんですが、その点について、もう一度局長にお答えを願えればありがたいと思います。
  15. 大山一生

    大山政府委員 確かに、六十歳を過ぎても非常に意欲的な農業経営をやっておられる方があることは事実でございます。しかしながら、最近の農業の事情を見てまいりますと、非常な創意くふうを持った、企業性を持った若い力というものが各地において相当出てきている、そして、そこに新たな農業近代化への萌芽があるということ、これもまた捨てがたい事実であろうというふうに私は考えるわけでございます。  そこで、過去において多少調査した結果で申しますと、六十歳から六十五歳までに経営移譲していた過去の実績というのは三〇・二%ございます。われわれは、この法律によりましてそれが三八・九%まで伸びるであろうというふうな想定を、四十六年の法律制定時においていたしたわけでございまして、まだ五年たちません。したがって、経営移譲の実績というものも出てこない段階でございますので、それを小計していろいろの計算をしているような次第でございます。  そこで、先生の一番重点として言われました階層制の導入の問題でございますが、国民年金審議会あるいは今度の法律改正のための農業者年金の研究会等におきましても、これは確かに、いろいろとその問題についての御要望なり御意見が出たわけでございます。ただ、その階層という問題になってまいりますと、途中におきます経営規模の変化といったようなものとの関連の問題でありますとか、非常に技術的にむずかしい問題もございますので、いま、この制度ができていまだ三年しかたたぬということで、現在の法律が一応農家らしい農家ということの対象を五反以上というところに——北海道の道南を除きますほかは二ヘクタールですか、ともかく、その五反以上というところに置いている現状の中で、今後の研究課題として今後とも研究してまいりたいというふうに考えて、今回はこの階層制の導入というようなことは一応見送ったというのが現実でございます。  したがいまして、将来の問題といたしまして、この階層制の導入問題についてはさらに慎重に検討してまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  16. 上田茂行

    上田委員 次の質問に移らせていただきたいと思います。  まず、これは確認をとりたいわけですけれども、今回の法律改正の要点は、まず第一は年金額を引き上げること、それとともに、保険料を同じように二・二倍引き上げること、そして第二番目がいわゆるスライド制を導入すること、そして三番目が出かせぎ者に対する対策を講じたということ、なお、最後に国庫助成についての改正を行なったこと、こういう四点に理解してよろしいでしょうか。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  17. 大山一生

    大山政府委員 そのとおりでございます。
  18. 上田茂行

    上田委員 それでは、私が四点あげた問題につきまして順次質問を続けさせていただきたいと思います。  まず、第一に、五十一年の一月からこれが実施されるという見込みになっておるわけでございますけれども、その前に、今回二・二倍、保険料また年金、両方引き上げたわけでございますけれども、この二・二倍にした根拠等につきましてお伺いをしたいと思います。
  19. 大山一生

    大山政府委員 年金給付額を二・二倍にした理由ということでございますけれども、この年金制度発足の当時におきまして、農業者年金制度のあるべき姿ということにつきましては、厚生年金並みの水準ということが必要であろうというふうなことになっておりまして、それを背景といたしまして年金制度というものができたような次第でございます。したがいまして、今回の改正にあたりましても、その制度発足時の考え方に立ちまして給付水準を決定することといたしたような次第でございます。  そこで、具体的に申し上げますと、この改正制度が最初に適用されるであろう四十九年度におきまして、当然加入者の農業所得というものがどうなるであろうかという推定を保険的に見ます場合には、ある程度の傾向値というかっこうで見ていくのが最も適当であろうと思いますけれども、その当然加入者の農業所得というものを最近の農業所得の実績等からいたしまして推定をいたしまして、そして、その所得をもって厚生年金に加入するということにしたら年金が幾ら給付されるであろうかという計算を行なった次第でございます。この農業所得の推計のしかたにつきましては、これは直線回帰でありますとか、あるいは三次曲線でありますとか、あるいは米価の据え置き前の所得の伸びといいますか、こういうようなことによる場合であるとか、いろいろの方法があるわけでございますが、こういういろいろな方法を使ってまいりますと、四十九年の農業所得の月額がおおむね五万七千円から八万三千円ぐらいというふうに推定されるわけでございます。これによりまして、年金額を厚生年金の例によりまして推算するということになりますと、二十五年加入の場合でおおむね三万三千円から四万六千円ということ、逆に言いますと、現行水準に対する引き上げ率で言いますと、一・七倍から二・三倍程度の水準ということになるわけでございます。そういうことと厚生年金の引き上げ率というようなことを総合勘案いたしまして給付水準を現行水準の二・二倍にしたというわけでございます。  なお、この農業所得の推定の方法といたしましては、最近におきましては、いわば生産調整というようなこともあるわけでございますので、その生産調整奨励金というものを加えるといったような措置をいたしております。
  20. 上田茂行

    上田委員 厚生年金におおよそ見合うような年金というものを農業者に与えなくちゃならないということなんですけれども、ところが、この計算の基礎になっております勤労者の所得の伸びというものと農業所得の伸びというものは違うわけでございます。特に、過去の例を見てまいりましても、最近十年間を見てまいりましても、都市勤労者の所得の伸びというものは毎年毎年必ず伸びているわけです。ところが、農業者の方々の所得というものを見てまいりますと、年によって前年に比べて伸びる年もありますけれども、かえって減っておる年もあるわけです。たとえば四十年から四十二年、これは一八・二%農業所得は伸びておるわけです。四十二年から四十五年は〇・九%減っておるわけです。また、四十六年度をとりますと、前年度より七・六%減っておるわけです。四十七年度は幸いにして二四・六%ふえておるわけでございますけれども、農業所得というようなものは天候にも左右されますし、また、価格が非常に不安定ということもございますので、伸びたり、あるいは前年に比べて伸びなかったりするわけでございます。また、これから十年、二十年先をとってまいりますと、そういうことについて確たるものはないわけでございます。かえって勤労者所得よりはますます乖離するのではないかというような不安もあるわけでございますけれども、そうした場合に、この年金の、いま局長の御説明にありましたような説明でもしやってまいりますと、厚生年金とこの農業者年金というものがますます乖離し、また、その差が大きくなるのではないかというような懸念もあるわけなんですけれども、その点についていかが農林省側はお考えになっていらっしゃるかということについてお伺いをしたいと思います。
  21. 大山一生

    大山政府委員 いま先生の御指摘になりましたのは、農業所得の伸びと、それから製造業の賃金の伸びという点につきましての農家経済調査の結果だと思います。これを私のほうの農業者年金ということで、五反以上の層の問題につきまして、現在加入しております人間の加重平均というようなウエートで出してまいりますと、いま言われました伸びよりはまだ大きな伸びというのが実は出ておるわけでございます。しかしながら、いま言われましたような傾向ということは、まさにそのとおりでございます。確かに四十五、六年度といったようなところにおきましては、これは伸びは非常に低い、少ない、あるいはむしろ逆転しているということはあるわけでございますけれども、たとえば四十七年等につきまして、あるいは今度四十八年というようなことをとってまいりますと、むしろ製造業の賃金の伸び率を上回っているというようなことも現実化し、あるいは見込まれるような次第でございまして、水準の改定の基礎となります農業所得にはこういったような傾向を反映するような方法というようなことを加え、また、先ほど申し上げました米の生産調整の奨励金を加えるといったような所要の調整を行なっておりますので、一応適正な給付水準であり、また、それによりまして、今後の問題といたしましては、本制度というものが農家らしい農家を対象としているというようなことからいたしまして、当然加入者の農業所得というものを基礎にして、そして、また、他の制度の上げ幅ということも考慮して決定していくといういまの行き方でいいのではないだろうかというふうに実は考えるわけでございます。  先生の言われました趣旨が、あるいは農業所得じゃなくて、むしろ農家所得にしたらどうだということを踏まえての御議論であるようにも感ずるわけでございますけれども、実は、農家所得ということになってまいりますと、いわば兼業農家、それから専業農家というようなことによる問題もある。しかも、兼業収入、農外収入という中におきましては、実は、被用者年金というようなことの対象になる資金もあるということで、これは二重に年金を支給するという問題が中に入ってくるというようなことから、なかなか農家所得をとるというわけにもまいらぬのではないだろうかというふうに実は考えているようなわけでございます。  いずれにいたしましても、今後の問題といたしましては、他の制度におきます引き上げ幅ということも十分に考慮して進めてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  22. 上田茂行

    上田委員 今回の改正にあたりまして、いわゆる農業に従事され、また、この年金に加入されていらっしゃる方々にとりまして最も興味のあることは、どのくらいの年金が何十年後かにもらえるかということだと思うのです。  そこで、これは試算でございますけれども、六十五歳以上の給付で、この計算で見ますと、二十年間加入した場合、国民年金ももちろん足してのものでございますけれども、四万三百二十円、そして二十五年の場合には四万八千四百円、また、三十年の場合には五万六千四百八十円というような金額が計算をされておるわけでございますけれども、いま現在の時点に四万三百二十円なり、四万八千四百円なり、五万六千四百八十円なりをもらうとして、一体どれくらいの生活ができるということを農林省側は考えていらっしゃるか。これくらいの金額で、年配の方々が二人で、お孫さんに少しお菓子でも買ってやったり、あるいは子供さんやお孫さんに何かやってあげたいというのにも十分なものか、そして、安心して老後生活を送れるような金額であるのかどうか、そういうようなことは非常に疑問だと思うのですけれども、その点はいかがお考えでしょうか。
  23. 大山一生

    大山政府委員 先ほど申し上げましたように、老後生活という問題だけをとるならば、やはり、国民年金全体の問題であろうと実は考えるわけでございますけれども、いま改正案としてわれわれが御提出申し上げております標準的な被保険者の年金金額、これを四万四千円ということにいたしまして、その辺の生活との関連という問題でございますけれども、被保険者が経営移譲後に在職するであろうと思われますところ、これは人口五万未満の市町村ということに相なろうかと思います。そういう市町村におきます勤労者の世帯一人当たりの家計費というのは、これは四十七年でございますが、二万四千円というふうな結果が出ております。したがいまして、その水準から言うならば約二倍近いということにもなります。そして、今度は、配偶者が六十五歳以上になりますと、さらに配偶者の国民年金の給付が追加されるというようなことから言いますならば、まあまあ、先ほど申しました人口五万未満の市町村在住の勤労者世帯の一人当たりの家計費の二倍近いというようなことでもあり、そしてまた、今度の法律で入れておりますように、スライド制の導入というかっこうによって、物価の変動にも対応するということにも相なっておるようなわけでございますので、普通の生活は一応営めるのではないだろうかと考えるわけでございます。
  24. 上田茂行

    上田委員 その点に触れてまいりますと非常な異論もあろうと思いますけれども、二万円ぐらいの金額で大体生活ができるということですけれども、政府の統計はいつも低いような気がするわけです。いま東京で下宿している学生がどれくらい使っているかという、その金額と比べてみられれば、すぐ現実の問題として浮かび上がってくるんじゃないかと思うのですけれども、次に質問を移らせていただきたいと思います。  今回、年金の引き上げと同時に保険料も引き上げるわけでございます。二・二倍引き上げるということになっておるわけです。そこで、国民年金の部分、あるいは御夫婦の場合は奥さんが出される国民年金の部分も含めて全部計算いたしますと、一月に四千二百五十円という金額を農業者の方々が払わなくてはならないというふうに計算されるわけでございますけれども、この四千二百五十円の負担というものは、農家の方々にとって一体どれくらいの負担になるかというようなことについて、どのような感じを農林省側は持っていらっしゃるわけでございますか。
  25. 大山一生

    大山政府委員 保険料の負担能力という点でございますけれども、今後の農業所得の推移というような、非常に予測しがたい問題もあるわけでございます。したがいまして、農業者年金というものと密接な関連を持っております厚生年金等の他の公的年金とこれと一応比較してみるといたしますと、本人負担分だけで申し上げますと三千百五十円ということになりまして、当初に比べまして、この農業者保険料負担としては二倍になるわけでございます。確かに、今回給付水準を二・二倍上げるわけでございますので、それが農業所得月額と比較してどの程度になるかということを試算してみるために、四十七年度の農業所得というもの、これは月額七万四千円くらいでございますが、それと比較してみますと四・二%というふうなことでございます。ほかの公的年金の本人の負担料率というのを見てまいりますと、大体三.八%から四・九%であるというようなことを見れば、まあまあ、高いものではないのではないだろうかというふうに考えるわけでございます。  妻の国民年金ということを含めてまいりますと、先生の御指摘のように四千二百五十円ということに相なるわけでございます。この負担額の農家所得に占めますウエートとしては二・七%程度というふうなことでございまして、他の公的年金と比較しても、まあこれならばがまんし得る保険料ではないかというふうに実は考えている次第でございます。
  26. 上田茂行

    上田委員 いま、農業所得の四・二%ぐらいの比率だということを言われたわけなんですけれども、私は先ほどからずっと伺っておりまして、この法律というものが、農業らしい農業を営んでいらっしゃる方々に線を引いて、当然加入というものを設けていらっしゃる。五十アール当たり経営していらっしゃる方々が、その経営主は当然加入であるということになっておるわけでございます。そういう方向で考えてまいりますと、この法律というものは、農業らしい農業を営んでいらっしゃる方々、いわゆる農業所得というものに観点を当てて考えていらっしゃるというふうに理解をするわけなんですけれども、農業所得の中で——農家所得じゃなくして農業所得の中でどれくらいの負担になるかということが大きな問題になるんではないかと思うのですけれども、いま資料があってわかるならば、農業所得の中でこの負担がどれくらいのものであるかというようなことについてお伺いしたいと思います。
  27. 大山一生

    大山政府委員 先ほど本人の負担ということで四・二%と申し上げましたのは、実は農業所得月額七万四千円というつもりで申し上げたつもりでございましたが、もしか農家所得と申し上げておりましたら訂正させていただきたいと思います。それで、後ほど申しましたのは、確かに農家所得に対しまして二・七%程度ということでございますので、農業所得といたしましては、これは四十七年ベースでございますが、かりに四十七年にいま当てはめてみるとすれば四・二%ということでございます。
  28. 上田茂行

    上田委員 次に、スライド制の問題に質問を移したいと思うのですけれども、率直に言って、これは、たとえば物価がその間に八%上がった場合には、八%に見合うような年金を引き上げると、簡単にそう解してよいわけでございますか。
  29. 大山一生

    大山政府委員 かりに物価が八%上がったということであれば、八%というふうに御理解いただきたいと思います。端数の問題は多少の異同はあり得るかと思います。
  30. 上田茂行

    上田委員 次に、出かせぎ者に対する対策というような面もこの法律の中に盛り込まれておるわけでございますけれども、実は、農業者年金制度研究会という研究会の報告の中には、今回の法律の趣旨に盛り込まれておるような改正の方法じゃなくして、そのほかに、出かせぎ先での厚生年金加入を任意とする方法もあるのではないか、あるいはまた、農業者年金と厚生年金等の二重加入を認める方法もあるのではないかというような議論もなされたわけでございますけれども、その中でそうした二つのものを除去して今回の措置をとられた、その理由につきましてお伺いをしたいと思います。
  31. 大山一生

    大山政府委員 確かに、出かせぎ者に対する考え方といたしましては、出かせぎ先の被用者年金を任意するという方法も考えられるわけでございます。また、確かに、研究会のところでそういうふうな意見も議論されたわけでございますけれども、原則的に、被用者年金というものにつきましては、公的年金制度が一般的に一定の条件に該当する者はすべて加入者とするという、強制加入のたてまえをとっているということからいたしまして、被用者年金への加入を任意加入にするということは、制度のたてまえ上非常に困難であるというふうに考えられるわけでございます。  それで、しからば、被用者年金との二重加入を認める方法はどうだということになってくるわけでございますけれども、出かせぎ者が被用者年金に加入している期間ということにつきましては、これらはいわば通算老齢年金が保障されるという仕組みになっているわけでございまして、さらにそこに農業者年金への加入を認めるということになりますと、いわば年金給付の面から、あるいは保険料負担の面から非常に適当でないというようなことからいたしまして、結局、いまのかっこうの、出かせぎ期間も資格要件として通算するというかっこうが現在の諸制度の中においては最もいいわけではないかというような結論になりまして、こういうかっこうをとるようにいたした次第でございます。
  32. 上田茂行

    上田委員 次に、現在ここに加入をしていらっしゃる方の人数でございますけれども、四十八年度末で百五万人という方々がこの年金に加入されているわけでございますが、当初の予定でございますと、二百万人ぐらいをこの制度に加入させていきたいというふうに予定されていたと伺っておるわけでございますけれども、この百五万人は五八・二%ぐらいで、あとの四〇%近くがまだ加入をされていらっしゃらない。その原因はどのようなところにあるかということを、農林省側はいかがお考えでしょうか。
  33. 大山一生

    大山政府委員 農業者年金の被保険者調査というものをいたしまして、当然加入資格者で、これは四十七年でございますけれども、加入していない理由を別に調査をしたものがあるわけでございますが、その場合に、制度なり制度の内容を知らないというのが四五%も占めていたわけでございます。また、そのほかの理由といたしましては、農業の将来が不安であるというようなことも一五%程度ございますけれども、やはり、一番大きな理由は、ここに、四五%という、いわば制度ないし制度の内容を知らないと答えた方があったということであろうかというふうに考えるわけでございます。確かに発足当初におきましては、基金の末端業務を委託します農協なり市町村というものの事務処理体制がまだ整備されていなかったということも一つの原因であろうというふうに思います。  それから、最近の兼業化が進んでいるという中で、出かせぎ等で他産業に短期従事される方々というものが最近ふえる中において、それらの人々が被用者年金に入るというようなこと、それは逆に言うと国民年金資格を失う、農業者年金の資格を季節的に失うというようなことからして、いわば加入しないということがあったであろうということで、当初二百万を予定した中におきまして、現在のところ、当然加入者で見ますと六六%の加入率ということになっているようなわけでございますけれども、いまや事務処理体制も整備されておりますし、今回出かせぎ者に対する措置も講じようというような中で、そしてまた、給付水準も国民、厚生年金並みに上げるというようなことをいたします機会に、未加入者の加入促進にはさらに努力してまいりたい、そして、できるだけ多くの農業者が加入するようにつとめてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  34. 上田茂行

    上田委員 これは私の県の例でございますけれども、私の県は郡部の人口が半分、九十万のうちの四十五万、そして、都市部の人口が四十五万くらいの、それほどの純農村というところでもございませんけれども、都市型の県であるというふうなこともないという、いわば中間的な県でございますけれども、その県のある町村に参りますと、二万四千くらいの人口の中で、わずかに四人程度しかこの年金の制度の中に入っていらっしゃらないということを聞くわけです。そして、その理由はと申しますと、いま数々の点をあげられましたけれども、半分以上の方々がこの年金の制度の仕組み自体を知らない人たちがおるのでこの年金に入る人が少ないのだということも農林省側のいまの調べのとおりだと思うのですけれども、しかし、たとえこの制度を知ったといたしましても、経営移譲をしないでおこうという人たちにとっては、ほとんど魅力のないものだと思うのです。と申しますのも、六十五歳以上になってやっと経営移譲あるいは老齢年金のわずかの金額だけしかもらえない。福祉の面に重点を置かれる。その福祉の面があまりたいしたこともないので、だから、経営移譲をしようと思わない方は、入っても全く意味がないというようなことを言われるわけでございますけれども、そういう不満点をどのようにして解決していこうという姿勢でおられるわけでございますか。
  35. 大山一生

    大山政府委員 確かに、御指摘のように、都道府県別に見た場合におきましても、加入率は非常に千差万別があるわけでございます。ただ、通観して、概略と言いますか、大体の傾向として申し上げるならば、北海道であるとか、あるいは東北であるとか九州といったような農村地帯におきましては、加入率は相当程度において高い。まあ、それらの県の中におきましても差はございますけれども、一つの傾向としてそういう傾向も出ているようなわけでございます。  先生の滋賀県は、加入対象者に対する加入者数というのは、大体平均並みの六五・一%というものが、これは四十八年五月三十一日現在でございますが、出ているような次第でございますが五万円年金というものが一方においてある中で、二万数千円ということでは、やはり、国民の関心といいますか、農民の関心も確かにないと思います。ただ、そこで、この際それを五万円に上げるとか、あるいは、過去におきまして制度を知らなかったから加入できなかったという人に対します時効救済というような措置も講じますとか、また、出かせぎ者に対する措置も講ずるというように、いまの制度のこの三年間の運用から見た欠点もこの際直そうとしているわけでございますので、それらを通じて、この問題の不満を極力解消してまいりたいというふうに考える次第でございます。
  36. 上田茂行

    上田委員 さきに齋藤厚生大臣が衆議院の社会労働委員会において、厚生年金について、年金額の大幅な引き上げをはかることを検討しているというふうに言われておるわけでございますけれども、これが実現された場合、厚生年金並みの年金を農業者に与えようという趣旨のこの農業者年金も当然変えていかなくちゃならないと思うのですけれども、五十一年度を待たずに今回の改正をどうしてもやらなければならないというような根拠はどこにあったかということについて再確認をしたいと思います。
  37. 大山一生

    大山政府委員 確かに、大幅な改正ということも検討される、あるいは検討しようとしているというような話も聞くわけでございますけれども、御指摘の点につきましては、制度が発足してまだ三年を経ているだけにすぎませんけれども、その意味におきまして、経営移譲年金の支給というものが五十一年の一月であるということでありますから、それはまさに先生の言われるとおりであろうというふうに考えるわけでございます。  ただ、現実の問題といたしまして、すでに出かせぎ者に対するようなことに対する問題もあり、また、先ほど申し上げましたようないろいろな問題もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、厚生年金ですでに五万円年金というものが実現しているという事態の中におきましては、それとある程度のバランスをとるという意味におきまして、農業者年金における給付水準を引き上げるべきであるという農業者の要望ということには早期にこたえる必要があるということがございます。  また、スライド制の導入とか、あるいは出かせぎ者に対する措置というふうなことも当然それらの問題になってくるわけでございますけれども、さらに言いますと、給付水準の引き上げの実施をおくらせるということになってまいりますと、これとの見合いで設定されることになっております離農給付金の額の引き上げの時期をおくらさざるを得なくなるということが現実の問題としてあるわけでございます。そういうことからいたしまして、五万円年金というものが一応実現している中におきましては、ぜひこれも早急に実現する中で、とりあえずの問題としては、離農給付金の額の引き上げ時期を早くしたい、こういうことがねらいでございます。  さらに、われわれのほうの技術的な問題として言いますならば、給付水準の引き上げの実施時期をおくらせるということになりますと、保険料の引き上げ幅がさらに大きくなるというふうなことも実はあるわけでございまして、この法律によりまして、五十一年一月一日から、いま実現している他制度との均衡におきましてもぜひ実施したい、こういうふうに考える次第でございます。
  38. 上田茂行

    上田委員 最後に大臣にお伺いをしたいわけでございますけれども、この法律が、一つ老後保障ということ、いわゆる福祉政策であり、一つ近代化をはかっていこうということ、その二つの趣旨を盛り込んだ法律であるわけでございますけれども、私は、この法律のいままでの感じを申し上げますと、六十歳以下までに経営移譲をして、お年寄りの方々は早く農業から去りなさいというような印象を受けるわけでございます。この前も人口統計が新聞で発表されておりましたけれども、現在ますます老齢人口がふえる中にあって、お年寄りの方々の生きがいの場を与えなくてはならないという議論が非常に盛んになっておるわけでございます。また、国全体の立場から見れば、いろいろな産業がございますけれども、ひょっとしたら農業というようなものはお年寄りの方々に向く産業ではないかというようなこともある学説で言われておるわけでございますけれども、そういうことを考えるならば、この法律の趣旨というものをもう一度考え直さなくてはならないかもしれないと感じておるわけでございます。  また、そこで、この中に、特に経営の近代化なり構造改善というような面を重視する政策が盛り込まれておるわけでございますけれども、その中にあって、いま基本的に、農林大臣なり農林省側はどのような農政に対するこれからの立場をとられるかということを私は確認しておきたいと思うわけでございます。  と申しますのも、最近自給というものが非常に大きな問題になっております。いわゆる農業の過剰生産というよりは、足りない時代がいま訪れようとしているというような時期に来ております。もしそういう認識に立つならば、農業というものは国の安全を守るための一つの重要な産業であるのだから、新しい農業観点から、新しい国政の観点から、農業に対して、多少の国民の犠牲を払っても大きな力を費やしていかなくてはならないというようなことも考えられるわけでございます。もしそういうことを考えていくならば、国の税金によって、たとえば価格支持政策というようなものをもっといろいろな品目に及ぼしていくということも考えられるのではないかと思うわけです。米の食管制度が設けられておりますけれども、もっと多品目にわたるような総合的な食管制度というものが将来考えられるべきであると思うのですけれども、その点についていかがお考えであろうかということについてまずお尋ねをしたいと思いますし、また、第二点は、と申しましても、ただ単に価格を引き上げ、そして安易な農業をさせるというようなことでは済まないと思います。そこで、構造改善的な政策というものをやっていかなくてはならないと思うわけですけれども、私は、この法律を見ておりまして、少し急ぎ過ぎではないかというような懸念を持つわけでございます。  いま、兼業農家が非常にたくさんございます。その兼業農家に、いま経営移譲年金を上げるからやめてしまいなさいというようなことではなくして、世代交代を通じてこのような政策をやるべきではないか。兼業農家から自立経営農家という、短期から長期への一つ観点をもって政策を進めていかなくてはならないと思うわけでございますけれども、この法律によってそうしたことをすぐに急ぐよりは、長期的な観点から——六十歳に年齢を引き、年齢を重視してこの法律の趣旨を全うさせるということよりは、世代交代を通じての利用権や保有権の合理化というものをはかっていくほうが、いまの日本農業にとって重要なことではないかと思うわけでございますが、その点につきまして最後にお伺いをいたしたいと思います。
  39. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 たいへん大事な点のお話しがあったわけでありますが、農業者年金の考え方につきましては、これは政府委員からもるる申し上げておるようでありますが、私ども、農業者年金制度の発足を考えましたとき、全国の農業団体の諸君が非常に喜んで賛意を表してくれました。それで、一つには、国民年金、いわば老後保障のようなものでありますが、これに至らない年齢層の人たち農業をやってこられた人——ことに農業というものは、いまはだんだん省力が行なわれるようになりましたけれども、実際の肉体労働は非常に激しいものであります。したがって、こういう方々が六十歳になりましたならば、六十五歳の老齢年金の需給に至る前に何らかの方法が講ぜられるべきではないかという考え方が一つと、もう一つは、六十五歳になって国民年金に移ってまいりますときにも、その上に、上のせといいますか、そういうものが加わるということ、そして、同時に移譲年金というようなものも加わっていくという考え方、これはいろいろな研究会の方々をはじめ、現在農業をやっていらっしゃる農業団体の方々の御意向も承りましてこういう制度を採用することになったわけでありますが、そういう制度を考えます主たる考え方の中には、やはり、日本農業一つのりっぱな産業として成り立っていくようにすべきであるという考え方があるわけで、そうでなければわが国の農業というものは零細化していって、そして、いまお話しのありましたような国民食料の安定的供給というようなことにも支障を生ずるようになる。そうなっては困ることでありますので、したがって、規模拡大してまいる。そして、産業として成り立つようなものを育成していくという基本的な考えを一方において持っておりますのと同時に、この法律を最初制定いたしますころにも、たくさんの若者たちが、われわれの世代になったらこういうようなことをやりたい、こういうような構想でやっていきたいというような、そういういろいろな希望をたくさん申し入れてまいりました。世代を交代して、りっぱな農業として自立経営の成り立つようなものを育成していくのには、こういう若い世代の活力を活用するということが必要であると同時に、小さな規模農家の方々には、事情の許す限り規模拡大のほうに協力をしていただくことが必要である。そして、いま私が申し上げましたようなことが一つの方向として打ち出された、その一つのあらわれが農業者年金制度である。こういうようなことに相なっておる次第であります。  そこで、この法律そのものの内容につきましては先ほど来質疑応答があったわけでありますが、今回は他の年金と匹敵するような改正が年金制度に加えられましたので、そういう同じような趣旨で二・二倍に引き上げるという考え方をもって御審議を願っておるわけでありますが、農政の基本としては、どうしても他の産業と匹敵し得るような産業——これは生産性が低いものでありますから、希望はそうであっても、そういうことを実現することはなかなか困難でありますけれども、規模拡大して、安定した生産力を持ち、安定した経営のできる農業というものを育成していきたいということがわれわれの農政の基本的な考え方でございます。その一環としての農業者年金制度というものは、そういうものを助長していく原動力になるのではないかというふうに考えておる次第であります。
  40. 上田茂行

    上田委員 どうもありがとうございました。
  41. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、野坂浩賢君。
  42. 野坂浩賢

    ○野坂委員 できるだけ重複を避けますが、質問に入る前にただしておかなければならない点がありますので、再度お聞きをしたいと思うのであります。  まず、一番初めに、これは局長でもどちらでもいいのですが、農業者の年金加入者は当初何名くらい計画をしたか、それから実績はどうなのか、現在の農業者は、農家戸数は一体何戸なのか、その点を聞きたい。
  43. 大山一生

    大山政府委員 当初考えましたのは約二百万程度、こういうふうなことでこの法律発足時には考えていたような次第でございます。  そこで、四十七年の八月だったと思いますけれども、この年金の被保険者調査ということを行ないました結果といたしまして、加入資格を有する農業者は約二百二十万程度というふうに現在見ているような次第でございます。  そこで、現在加入している農業者でございますけれども、四十八年の十一月末現在でございますが、百五万五千人ということでございます。  以上でございます。
  44. 野坂浩賢

    ○野坂委員 当然資格者、いわゆる五十アール以上、あるいは三十アールから五十アールまででも年間七百時間農業に従事をする方々、そういうものを含めて二百二十万戸ですか。  それから、今日わが国では五百万農家と言われておりますが、その他の農家の皆さんのはどのようにお考えになりますか。
  45. 大山一生

    大山政府委員 いま、先ほど申し上げました二百二十万戸の内訳を申し上げますと、農家数につきましては、新しいセンサスが来年行なわれるということで、七〇年センサスでございますが、これで五百三十四万でございます。その中での面積要件ですが、御存じのように、三反未満が百十二万ございまして、残りの三反以上というのが四百二十三万、これが一つの要件になってまいります。  そこで、その中で、年齢要件といたしまして、〇・三ヘクタール以上の農家四百二十三万の中で、五十五歳未満が二百七十五万でございます。  もう一つ、これの加入要件といたしまして、国民年金に加入しているかどうかという点があるわけでございますが、その二百七十五万の中で、国民年金に加入し、したがって、こちらの年金の加入資格を持っているというのが百六十七万でございます。したがいまして、そういう中にございます。  それから、もう一つは、今度は任意加入的なことになるわけでございますけれども、年齢要件の五十五歳以上の方は、先ほど申しました四百二十三万の中で五十五歳未満が二百七十五万ということを申し上げた、その残り百四十八万が五十五歳以上になるわけでございますけれども、その中で、農業後継者で農業あるいは主として農業に従事するという方が約三十万、それから、五十五歳未満の方の中で、国民年金に加入していないという方百八万の中で、後継者の就業状態が、農業のみあるいは業農を主としているというのが二十三万でございます。  したがいまして、先ほど申し上げました面積要件、年齢要件、国民年金に加入している要件、この三つの要件を具した方と、それから後継者ということで先ほど申し上げました合計が二百二十万、これが農業者年金に加入されるべき人であろうというふうに考えるわけでございます。  そこで、その中をさらに当然加入と任意加入ということに分けてまいりますと、百三十二万が当然加入、任意加入が八十八万、こういうことに相なるわけでございます。
  46. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大臣は、いま、最後の御答弁で、規模拡大して安定した農業をつくる、むずかしいことではあるけれどもこれを進めるというお話しがありました。いま、構造改善局長は、それぞれの資格者の点について、国民年金に加入しておる者とか、あるいは五十五歳未満である者とか、そういう資格要件を整えて二百二十万ということを明らかにされたんですけれども、この年金の法案そのもの、制度そのものは、政策目的を持っておる。それは経営移譲ということに力点を置いていることは間違いありません。それであるならば、今後の農政を考えていくならば、これに入らない皆さんについてはどのような方式をとって日本農政を進めるかということ、いま入っておる人たちよりも、むしろ入っていない人たちのほうにどのような農政をやるかということが今後の大きな問題ではないか、入っておる人に対する経営移譲とか離農とかということではなしに、加入していない方々のほうが、日本農政から見て、もっと大きな問題点をはらんでおるじゃないか、このように私は思うのですが、その点はどのようにお考えになっておるのか。  入らない人たちに対して、日本農業にどのように協力をさせるか、あるいは、生産意欲をどのようにして振興させるか、そして、どのようにして農業を発展をさせるかということについては、どのように措置をしたらいいのか、この点をお聞きをしたいと思うのです。
  47. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 こういう制度をつくりまして、私どもできるだけ後継者を育成していこうという考え方でありますけれども、こういう制度のあることをまだ知らないという人がかなりおられるようであります。これは、私どもとしては、なるべく農業団体等にも協力していただきまして、やはり加入していただくことが非常にいいことであると思って、そういう努力はいたしておるわけであります。  こういう農業者年金制度というものは、御存じのように、日本人の発案ではございませんで、諸外国でもかなりやっております。私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように経営規模拡大してまいって、経営のロスを省いて、生産性をあげて、りっぱな農業として成り立っていくように、中堅農家育成していくということは大事な農政の基本であると思って、その一環としてこういう制度が必要であるということで、先ほど上田さんにもお答えいたしましたように、農業に従事していらっしゃる方々が六十五歳になって入っておれば——一般の老後保険は当然加入されるわけでありますけれども、六十五歳になる前にこの制度に入っていただいて、それから六十五歳になりましたら、その上にこの移譲年金等が積み重ねられるということがいいではないかということで、こういう制度を当時の国会においてきめていただいた、こういうわけであります。
  48. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大臣、私が言っておりますのはこういうことなんです。日本には五百三十四万戸あります。当然加入者は二百二十万です。目標は当面二百万です。それからはみ出しておる農家の方が三百万ある。これを一体どうするかということは農政の重大課題であると思うのです。これは時間がありませんから一応おきますが、いま大臣がお話しになったように、これから入ってもらわなければならぬ。いわゆる仕組みや、PRや、農協の事務や、役場の事務がおくれたために入っていない。今度この法案でできておるわけですね。今度、それも救う道ができました。できましたが、積極的に加入をしてもらうなら、今度の法案によりますと、いままで七百五十円取っておったものを千六百五十円にする。二・二倍にする。いままで入っていなかった者は入れてやるが、過去二カ年分千六百五十円で入れ、こういう法律ですね。私たちが考えるならば、積極的に加入を推進する政府の責任においてやるということであれば、皆さんと同じように七百五十円払ってくれば入れてやるというかっこうにならなければ、これは筋が通らない。二・二%倍のものでやる。もっと言えば、七百五十円では、それはほかの者と引き合わないというならば、それに一年間ないし二年間の利息をつけて、それだったら入ってもよろしい、入れてやる、と、大臣のいまの発言から考えれば当然そういうことにならなければならぬ。それを、この際入れてやるが千六百五十円だよというのは、農林省のPRがちょっと不足をしておった、あるいは、事務当局がそういう点については怠っておった、できていなかったという、そういう反省点をあげられるならば、私の言っておるのが筋じゃないか、これには問題があるのじゃないか、こう思うのですがどうでしょうか。
  49. 大山一生

    大山政府委員 四十七年時点におきまして、先ほど調査した結果、いわゆる制度を知らない人がかなりおったということは事実でございます。したがいまして、そういう事態を踏まえまして、われわれといたしましては、末端事務体制の整備というふうなことを極力進めてきたようなわけでございますし、また、二年間の保険料納付の猶予期間というようなことを利用いたしまして、加入には四十七年以降は大いにつとめてきたような次第でございまして、きょう現在におきまして未加入者があるということにつきましては、本人みずからの何らかの理由によるものがかなりあるというふうに考えざるを得ないようなわけでございます。したがいまして、一がいに、制度の普及なり窓口の整備がおくれているということを現段階においては理由とすることはできないというふうに考えるわけでございます。  そこで、未納保険料の納付のしかたの問題につきまして、前の保険料でいいではないかというふうな御意見でございますけれども、この未納保険料を納められるということになりますと、今度、将来は改正後の年金給付があるというようなことでありまして、新しい水準の給付をまかないますためには改正後の保険料の額が必要とされるというようなことからいたしまして、改正後の保険料の額を納付していただくというふうな制度の仕組みにしたような次第でございます。  なお、これはあとで御質問になるのかもしれませんけれども、七百五十円という問題につきましては、これはやはり給付水準との問題があるわけでございまして、給付水準を二・二倍に上げるということをもっていたしますならば、保険料のほうは過去におきます積み残しというようなこともありますので、平準保険料としては二・七倍必要である、こういうことに相なるわけでございます。そういうことでございますけれども、一気に二・七倍まで上げるということもどうであろうかということで、初年度につきましては二・二倍の額にとどめた、こういうふうなことでございます。
  50. 野坂浩賢

    ○野坂委員 あとのことはまたあとで聞きますよ。あなたには非常にまとまらぬ答弁をしていただいております。最初あそこにはPRが不足だったとか、役場や農協の事務が発足がおくれたとか、こう言ったのですよ。いまの答弁は、入らなかったのは本人の理由だと言う。第一に矛盾がありますね。これはこういうことでは困るし、今度は新しく上がって千六百五十円になれば、今度変わった、三十年つとめれば五万六千円ですか、こういう年金になるから千六百五十円だというのは、これは当たりませんね。いいですか。いままで入った過去三年間の方は七百五十円を払って、今度この法案が通れば千六百五十円になるわけですよ。そして、あなた方は、積極的に入れなければならぬ、農林省のPRが不足しておったということであれば、これはみんなと同じように七百五十円であれば、それにたとえば五分五厘でもかけて、それを出す、こういうのが筋じゃないかと私は思うのです。いままで入らなかった罰だ、だから千六百五十円だと言わぬばかりじゃないですか。それは、そういう仕組みにしたと言いましても、農業者年金に加入しておる農業者の皆さんの意見でも聞きましたか。負担はできるだけ少なくせよと、研究会も、この農林水産委員会もちゃんと決議しておるのじゃないですか。それを過去二年間分はさかのぼってそれぞれ新しい金額だというのは、私は、あなたのいままでの答弁と非常に矛盾があると思います。私の言っておることが間違っておりますか。
  51. 大山一生

    大山政府委員 釈明するわけじゃございませんけれども、先ほど、相当程度において制度の中身を知らぬ人間がおったと申しましたが、これは確かに、四十七年の調査の結果出てきた次第でございます。そこで、その当時におきましては、確かに、農協等につきましての委託契約も完全には終わっていなかったというような事態もあるわけでございまして、その後は、委託先につきましても、現在は、四十八年には一〇〇%、全部委託契約もできた、こういうようなわけでございます。したがいまして、その後加入していただいている方もあるわけでございますが、現時点で考えますならば、加入しておられない方は、本人の何らかの理由というものが相当大きなウエートを占めるのではないかということを申し上げたような次第でございます。
  52. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大臣、そういう点については若干の猶予期間を設けて、積極的に加入をしてもらうような方策をとるのが政策年金として当然じゃないかと私は思いますが、どうでしょうか。
  53. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 おっしゃることもごもっともな点もありますけれども、先ほども私がちょっとお答えいたしましたように、ほかの年金がスライド制を採用したり、それから改善をされておりますので、同じような性質を持っておる農業者年金もそれに歩調を合わせることがいいんじゃないかということで、この改正案をお願いしておるわけであります。  そこで、いまお話しのように、実際に当初二百万あまりの予定者でありましたのがそれに行っていないということにつきましては、こういうものの存在をすら御存じないような方もあり、また、あるいは、われわれのほうのPRや団体等のPRも間に合わなかったのかもしれませんが、この制度それ自体というものはやはりりっぱな制度でありますし、私はこれを完成させていきたい。ところで、受け取るべき金額がふえていく、それに合うような掛け金をということで、今回掛け金も上がっているわけでありますので、その辺のところは、こういう年金等を扱います状態を勘案していただきますならば御理解がいただけるんじゃないかと思います。
  54. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまの御答弁では、厚生年金や国民年金、いわゆる公的年金並みにやるんだからやむを得ないということなんですが、私がいま問題にしておりますのは、そう公的年金並みよりもよくしてくれということは言っていないわけです。同じことじゃないですかと言っているのです。だから、この問題については保留をしまして、時間があればあとでまた論議をさせていただきたいと思いますが、大臣は、六十五歳以上になれば、これも国民年金の上積みをするんだよ、だからいいんだ、と、こういうお話しでありました。六十歳から六十五歳までやれば、経営移譲として政府も相当出す、年金も高い、六十五歳になれば一割だ、こういうことでありますが、老後の安定という意味と、それから経営移譲という政策的な問題と、二つとも両立をするんだということですから、六十五歳以上になった年金受給者は積み立てをして、政府は、六十五歳以上の人に限ってどの程度補助金を出しておるか。おかげがあるか。おかげがあるかというのは、政府の金でその年金者たちは恩恵を受けておるんだろうかということですが、こういう点については、農業者年金という老後の安定という意味を切り離して、六十五歳以上はどの程度恩恵に浴しますか。
  55. 大山一生

    大山政府委員 いまの御質問は、老齢者年金にだけ限ってというふうな御質問でございますので、端的に申し上げますならば、三割の国庫補助ということに相なると思います。
  56. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そんなことはないですよ。それは移譲年金が入っておるからそういうことであって、たとえば五十歳から二十年なら二十年、三十年なら三十年ずっと積み立てて、六十五歳になりましたときには、自分の積み立て金に年五分五厘を掛けて、それと足したものを七十七歳までもらうと、ちょうど自分で終わる。平均寿命でわれわれが死んでいくのは、男は七十二歳、女は七十七歳ですから、そういうことになれば、政府のほうからは一銭ももらわないという計算になるんじゃありませんか。
  57. 大山一生

    大山政府委員 御指摘でございますけれども、農業者年金の国庫補助につきましては、給付時におきます国庫負担というものと、それから拠出時における国庫負担ということになるわけでございまして、老齢窮屈ということになりますと、拠出時負担ということに相なろうかと思います。  そこで、拠出時の補助でございますけれども、農業者年金のすべての給付に要した費用というものから、経営移譲年金によります給付時の国庫補助を差し引いた額の十分の三ということになっておりますので、したがって、農業者老齢年金については、三割の国庫補助が行なわれるということに相なると思います。
  58. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それは納得ができませんね。計算をしますと、ちょっとここに——それでは、この問題も、そういう詳しいデータをあとであなたのほうから求めます。それに対するきちんとしたこと、つまり、そうなっておりますかというデータを資料として要求します。  この農業者年金基金法の一部改正をする法律案は、大臣の提案理由によりますと、また、いまもお話しがありましたが、昨年の厚生年金保険をはじめとする公的年金制度の改善が行なわれたこともあって、本制度についても年金給付の水準の引き上げが必要になっておるということで私たちに説明をいただきました。  そこで大臣に確認をしておきたいのですが、先ほども私に御答弁もありましたし、厚生年金や国民年金の給付あるいは保険料というものについては、それと同じような措置、いわゆる並みの措置をとるというふうにお話しになったと思いますが、そのとおりでございますか。それ以下になるというようなことはないというふうに考えてよろしいですか。
  59. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 金額においては必ずしも一致しないかもしれませんが、他の公的年金並みに訂正をしてまいりたい、こういうわけです。
  60. 野坂浩賢

    ○野坂委員 農業者の皆さんは、金をもらうのはやはり金額だと思いますね。並みというのは、金額ではいろいろあるけれども、まあ並みなんだということは、頭の悪い私にはよくわからぬのです。問題は金額だ、年金を幾らもらうか、だから入る、少なかったらやめだ、こういうことに私はなると思うんですが、いわゆる厚生年金、国民年金の同等以下にはならぬ、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  61. 大山一生

    大山政府委員 先ほど大臣が申し上げましたように、いわば、その五万円年金ということでございます。厚生年金におきます五万円年金というものの考え方、これは御存じのように平均加入期間を二十七年といたしまして、そして、再評価後の平均標準報酬を八万四千六百円ということでやってみて、その結果、妻の加給を入れまして五万二千二百四十二円、これがいわば五万円年金の考え方でございます。  そこで、わがほうにおきましてもそういうような考え方をそのまま承継いたしまして、結果といたしましてはおおむねこれに近い数字がこの農業者年金において期待できるということによりまして、いわば厚生年金で言いますところの五万円年金という思想は、この法律改正の趣旨におきまして達成しているものというふうに考えるわけでございます。
  62. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま局長がお話しになりましたように、厚生年金は定額部分がたしか九百二十円が修正をされて千円になった。それで、標準報酬月額というのは八万四千六百円だ。それで、九百二十円の定額部分が千円になりましたから、五万二千二百四十二円でしたか、たしかその程度になった。農業者年金を考えてみますと、千七百六十円になっておりますね、今度、四十一条の一項ですか、それで、その千七百六十円に二十七年かけてみると、四万七千五百二十円ということになりますね。妻の二千四百円を引いても、五万円と四万七千円で、相当違うじゃないか。ざっと二千五百円程度。これは並みじゃないじゃないですかと私が言えば、金額でものを言えば違うじゃないですかと、こういうことになりますが、どうでしょうか。
  63. 大山一生

    大山政府委員 先ほど申し上げましたように、その平均標準報酬というものを八万四千六百円と押えた場合に、いま言いました妻を除けば四万九千八百四十二円ですか、ということに相なるのが厚生年金でございます。しかしながら、厚生年金の考え方というものは、すべての人が五万円をもらえるということではもちろんないわけでございます。そこで、それに対しまして、私のほうでは、四十九年度の農業所得の推計が、先ほど申し上げましたように五万七千円から八万三千円ということで、いわば七万五千円——千七百六十円に二十七年をかけるというかっこうで、先ほど申し上げました四万七千五百二十円というものの年金額に見合います農業所得ということで申しますならば七万五千円、こういうことになるわけでございます。五万円年金というのも、そういう意味におきまして、すべての人が五万円をもらうということでもないわけでございまして、したがって、われわれといたしましては、五万円年金の考え方はこの思想において十分に貫かれておるというふうに考えるわけでございますが、なお、厚生省のほうからも同様……。
  64. 野坂浩賢

    ○野坂委員 厚生年金の場合は、お話しがあったとおり、五万円年金をもらえない人たちがたくさんあるだろうと私は思うのです。標準報酬八万四千六百円で平均だと言っておるのですね。うちのほうは全部なんだよと、こう局長は言いたい。しかし、うちは段階別は設けないんですからね。三町以上は幾らだ、二町は幾らだ、一町は幾らだ、五反は幾らだ、こういうことじゃないですか。込みですからね。だから、平均だ。みんなもらう。それだけは上のものもおりてくるのですからね。そういう考え方では並みだと、農林大臣はいいことを初めからちゃんと言っていらっしゃるのです。並みだ、それに見合う、比肩するものだ、それは五万円年金になっておるから当然農業者年金も五万円だ、こういう点は私は正しいと思っているのです。  そこで、四万七千五百二十円というものをあなたがおっしゃったのですが、農業の推定所得は七万五千円だということですね。その推定所得の出し方というのは、五万七千円から八万三千円で平均したものなんだという思想ですか。こういう考え方ですか。七万五千円というのは、八万四千六百円に見合うとすれば、農業所得は安いじゃありませんか。まず、これが質問の第一点です。
  65. 大山一生

    大山政府委員 七万五千円というのが安過ぎるかどうかという御質問であるわけでございますけれども、この農業者年金の給付水準というものの前提といたします四十九年度の農業所得の考え方につきましては、先ほども申し上げましたように、直線回帰でありますとかあるいは三次曲線回帰でありますとかあるいは米価の据え置き前の五年間におきます平均伸び率でありますとか、こういったいろいろの考え方、あるいは最近の五年間の平均伸び率、こういったようなことからわれわれは農業所得の推計をいたしたわけでございます。農家らしい農家ということで、加入者につきましていたしたわけでございます。その結果につきまして、先ほど申し上げましたようなことで、これを年金並みに当てはめてくるというかっこうをとった結果が一・七倍から二・三倍になる。そこで、二・二倍ということを、厚生年金のアップ率というようなことも総合勘案して出したということでございまして、いま申し上げました金額を平均した額を七万五千円というふうにしたわけではございません。
  66. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ちょっとわかりにくかったですが、七万五千円というのはいわゆる農家ではなしに、農業所得の推定額ですよ。厚生年金があるからそうだったら、厚生年金と同じ金額をそこに、推定所得のところにすぽっと入れて計算をすれば一番いいじゃないですか。農業所得の推定額というものの出し方をもう一ぺん……。
  67. 大山一生

    大山政府委員 先ほど申し上げましたようなことで、農業所得の推定月額を、勤労者の場合にはサラリーといいますか、ボーナスもございますので、一五・七という実績で割ってまいりますと、月額といたしましては五万七千円から八万三千円という幅の中に入ってまいるということで、先ほど申し上げました千六百五十円ということをきめた結果を逆に農業所得のほうで出してみると七万五千円になるということを申し上げたわけでございます。
  68. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかりました。これはそういう逆算方式で出すわけですね。所得とは具体的にはそう関係はないということだと私は思います。  そこで、年金のこれからの問題ですが、これからは、給付水準の基礎となるのは農業所得ですね。「農業所得の算定にあたっては、本制度のもつ政策的な課題をも十分考慮して調整を行なうとともに、負担の増加の点からも検討を行なう必要がある。」と農業者年金制度研究会は述べております。この農業所得の推定は、今後厚生年金が上がっていくものにあわせて推定をされて、並み、いわゆる厚生年金や国民年金と違わないような方向で出しますかということを私は聞くのです。というのは、先ほどもお話しがありましたように、生産性の向上を製造業と農業ととった場合には三割しかありませんね。したがって、所得もこれから格差がついてくるという可能性と危険性があろうと私は思うのです。その場合に、農業所得の算定というものは非常に重要な要素を占めてまいりますが、それらの点については、厚生年金並みという水準を下がるようなことは絶対にないか、また、その方式はどのような考え方で、どのような算定基準でやられるか、教えてほしい。
  69. 大山一生

    大山政府委員 専門家の野坂先生でございますので、われわれの答弁が必ずしも十分でないかもしれませんけれども、いまわれわれが四十九年度の農業所得をはじきます場合におきまして、いわば直線回帰よりは、三次曲線回帰のほうがより現実といいますか、四十六、七と下がったという事態を踏まえた場合においては、そういう線ということも一つの線として当然考慮しなければならなかったというふうに考えるわけでございます。  そこで、先生の申されましたことは、いわば今後の他の所得の伸びあるいは厚生年金水準と、それから農年の水準との基本的な考え方であろうというふうに考えるわけでございますけれども、われわれといたしましては、農業所得の出し方につきましてはいろいろの方法を今後とも使ってまいりたいというふうに考えるわけでございますけれども、そのほかに給付水準をきめるということになりますと、他の制度の引き上げ幅というようなことも当然十分考慮して決定してまいるということが今後の方向であろう、こういうふうに考えるわけでございます。
  70. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうしますと、農業所得の推定額というのは、今後厚生年金の引き上げなどと見合って、その水準から落ちることはないというあなたの答弁でありますが、そのとおりですか。
  71. 大山一生

    大山政府委員 農業所得の水準ということだけをとってまいりますならば、これは予測しがたい要件がいろいろございますので、これはその時点、時点によって異なってくるであろうと思います。したがって、常に一致するような結果が出るような計算をすべきものとは考えておりません。とにかく、筋の通った計算をしてみる、こういうことであると思っています。
  72. 野坂浩賢

    ○野坂委員 筋の通った計算というと、どういうことですか。
  73. 大山一生

    大山政府委員 こういう年金制度におきまして将来の所得を推計するわけでございますので、短期的な動きということだけではもちろん推計できない。長期的な推計ということにならなければならぬわけでございますので、その長期的な推計のしかたについては、これはいろいろの考え方があろうというふうに申し上げたわけでございます。
  74. 野坂浩賢

    ○野坂委員 筋が通ったとか、いろいろな方法があると言われても、私にはよくわからぬのですよ。それで、大臣がお話しになったように、あるいはここにも書いてありますように、厚生年金をはじめとして公的年金の大幅の引き上げ、改善があったのだから、農業者年金を直したのだ、だから提案したのですよ、と、はっきり書いてあるのですね。だから、この提案理由の趣旨、法案の趣旨というものを考えて、いろいろな方法や筋の通った方法がありましょうが、それらの公的年金の水準よりも下がることはない。したがって、結論は、たとえば四万七千円になりますから、それを逆算して、七万五千円というものと同じように、農業所得の水準というものは厚生年金の標準報酬と比べて何ら遜色のないものが規定されるのです、と、こういうふうに考えてよろしいですか。非常に単純ですが、そうですと言えばいいですよ。
  75. 大山一生

    大山政府委員 非常に端的に言われるわけでございますけれども、結果的に、今度の四十九年の農業所得という問題については……(野坂委員「将来のこともずっと考えられますか」と呼ぶ)四十九年度の農業所得というものを推計した結果につきましては、先ほど申し上げましたような幅の中におきましてきめました、こういうことを申し上げているわけでございます。  そこで、将来の問題ということになりますと、たとえば凶作が何年も続くというような事態がかりにあったという事態を踏まえて、すぐ直後というようなことがかりにあったということになった場合には、これは必ずしもそういうことになり得ない場合があり得るというふうに考えるわけでございます。
  76. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その辺が問題なんです。そうすると、雨が降っても、雪が降っても、風が吹いても一応上がりますね。労働者の賃金というものは上がっていく。生産性も上がっていく。そうすると、凶作等があって下がったということになれば、その厚生年金からもらう金と、それから農業者が得る農業所得の推計によって違ってくるということになれば、給付水準、給付額が違ってくるということになりませんか。
  77. 大山一生

    大山政府委員 給付水準という問題につきましては、いわば保険料と、それから国庫負担、こういったものによって構成されるわけでございます。したがいまして、将来いかなる事態においていかなる結果が出るかということになりますと、ここで非常に明確なことは申し上げかねるわけでございますけれども、かりにそういう凶作というようなものにつきましては、たとえばこれは水の計算の場合なんかで申しましても、異常渇水年とか異常豊水年というのははずしてものを考えるというようなことによる推計の方法もあろうかと思います。それからまた、それにもかかわらず、ここのところ異常渇水年というようなもの、あるいは異常豊水年と言えないような事態でずっと進むというような事態があった場合においては、そのときにおいては、それは給付水準というものの一つの展望ということが一方にはあるわけでございますので、そこにおいては別の方法も考えていかなければならぬだろう、こういうふうに考えるわけでございます。農業者年金の問題につきましては、これが発足してまだ三年ということでございますので、今後の推移によって、われわれもまた、厚生省も含めまして、いろいろ経験を踏んでいかなければならぬ問題があろうと思います。しかし、それとまた別に何かの委員会というようなもので、その種の問題については、あらゆる場合に対応するような研究は今後とも続けてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  78. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私は研究される必要はないと思いますね。原則ですよ。他の公的年金と比肩をして遜色のないように農業者年金をやる。佐藤総理は当時何と言ったのですか。農民にも恩給をと言って、このものがいろいろ考えられて昭和四十二年にできたんじゃないですか。そうすれば、そういうところと比肩して何ら遜色のないようにしますということでなければならぬ。あなたの答弁を聞いておると、何か、将来はずっと差がつくような感じさえ受けます。そういうことはどこにも書いてないですよ。私が質問すると、そういうことを何かあるのじゃなかろうかというような錯覚を起こしてあなたは逃げようとする。そういうことは絶対ないわけですから、それは確認しておいたほうがいいじゃないですかということを私は言っておるわけですから、厚生年金、国民年金、他の公的年金と比肩して、農業者年金は損をしたりするようなことはない、と、こういうふうにやらなければ、農業者の皆さん入ってくださいということをあなたは言う資格はないじゃないですか、どうですか。
  79. 大山一生

    大山政府委員 御指摘の点につきましては、確かに、ほかの年金制度におきます引き上げ幅というものが給付水準決定の一つの大きな要素になるということは否定できないことでございますし、先ほど申し上げましたように、今度の場合におきましても、国年なり厚年のアップ率ということも十分参酌して今度の決定をしているような次第でございますので、そういうふうな意味におきます所得という問題と別の問題として考慮すべき要素として、他の年金との均衡ということは当然考えなければならぬことだというふうに考えるわけでございます。
  80. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、次に進みます。  今度この法案が提案をされておるわけですが、保険料が二・二倍になっておりますね。これは給付額が二・二倍になっておるのだから保険料も二・二倍だということが理論的な根拠だと思います。  そこで、私はちょっと厚生省に聞いてみたいと思うのですが、いま何回も論争しました厚生年金、国民年金、それから石炭産業でとられております石炭鉱業年金基金というものがありますね。この制度について、保険料はどれだけ上がって、給付額はどれだけ上がっておるか。昨年の厚生年金の問題とからめてどういうことか、まずお話しをいただきたいと思うのです。実際に必要な保険料は幾らで、現実にはどの程度になっておるのかということです。先ほど局長がお話しになりましたように、ほんとうは二・七倍なんだけれども二・二倍だ、実際必要なのは二・七倍だけれども、いまは二・二倍にして、これから考えるんだ、こういう意味の絶対に必要なものですね。そういう点についてはどうですか。
  81. 持永和見

    ○持永説明員 まず、給付の点から申し上げたいと思います。  昨年度の厚生年金、国民年金の改正でございますけれども、厚生年金につきましては、先ほど先生からお話しがございましたように、老齢年金を例にとってみますと、定額部分につきましては、単価を四百二十円から千円に上げました。それから、報酬比例部分につきましては、過去の低い時代の標準報酬、これを再評価いたしまして、現実の経済実勢に合うような形で再評価して計算をする、こういうような手法をとりました。その結果、現に年金を受けている人の平均的な年金額、これを二十年以上加入していた人について見ますと、従来大体一万九千円であったものが四万三千円程度ということで、平均的に申し上げますと、厚生年金は現実の受給者が二・二ないし二・三倍程度上がっているというのが実態でございます。  それから、国民年金でございますが、国民年金は厚生年金の改正との均衡をとるという意味で、いわゆる二十五年加入で夫婦ともに付加年金に加入していた人が五万円年金を受けられるような形で制度の設計をしたわけでございます。  それから、次に、保険料でございますが、保険料につきましては、御承知のように、厚生年金の保険料は標準報酬に保険料率をかけるという仕組みになっております。その関係で、まず標準報酬を、従前一万円から十三万四千円であったものを、二万円から二十万円まで拡大をいたしました。  保険料率でございますが、保険料率につきましては、一般男子について申し上げますと、千分の六十四を千分の七十六に引き上げております。  次に、国民年金でございますけれども、国民年金につきましては、保険料の改定を、昨年は月額五百五十円から九百円にいたしました。  国民年金の保険料につきましては、今回国会のほうに九百円を千百円というふうにさらに引き上げるような法律案を出している次第でございます。  次に、石炭年金でございますけれども、石炭年金は、御承知のように、石炭鉱業事業所の事業主を会員といたしまして、その財源はすべて事業主の負担のもとに行なうものでございます。給付は、厚生年金の老齢年金に上積みして老齢年金を出すということでございますが、これは四十二年に制度が始まりまして、四十七年から給付が開始される、こういうことになっております。たまたま四十七年が財政再計算に当たっておりましたので、その際に、現実に発生いたします短期の年金、五年から十年未満で発生する年金につきまして六〇%の引き上げを行なっております。  具体的に申し上げますと、坑内員、坑内で作業をされておる方の場合に、五年以上十年未満が月額二千五百円でありましたものを四千円まで引き上げております。坑外員、いわゆる炭鉱に関係はあるけれども、坑内ということじゃなくて坑外で働いておられる人、そういう人に対しましてはその半分でございます、五年以上十年未満の年金は、千二百五十円を二千円まで引き上げるというような改正をいたしております。
  82. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ありがとうございました。私の質問のしかたが悪かったと思うのですがね。完全積み立て方式ということを頭に置きましてこれを計算しますと、それで埋めていかなければならぬ。そうすると、報酬に対して何%という率が出てまいりますね。それが実際に必要な保険料ということになりますね。たとえば私が言うと、男子は一一・八%が必要な額だ。しかし、実際に払っておるのは七・六%ですということですね。国民年金は五百五十円が九百円になった。それから、石炭の場合は経営者のほうが見る。その経営者の見る分は、たしか四十八年度は九十二億か百億程度、それを補助金で出して、実質的には政府が見ておる。具体的に言いますとこういうかっこうになってはおりませんか。そういうふうに考えてよろしいかということです。
  83. 持永和見

    ○持永説明員 先生がおっしゃいましたように、厚生年金について申し上げますと、男子の場合、平準保険料率は二・八でございます。これに対して、先ほど申し上げたように七・六%という保険料率であります。それから石炭の関係は、確かに、トン当たりの中で産出量に応じて掛け金を出すというような形になっておりますが、その残余分はすべて国の負担で整理しておるというかっこうでございます。
  84. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは農林省のほうにお尋ねをしますが、あなたは一番初めに、私が質問をしないのに、いままでの穴を埋めれば二・七倍の二千三十円が必要なんですよ、それをいろいろ考えて二・二倍の千六百五十円にしておるのです、と言って胸を張ってお答えになったのですね。しかし、いまも厚生省からお話しをいただいたように、石炭の鉱業年金の場合は全部業者が持っておる、裏打ちは政府がしておる、そういうことなんです。国民年金の上積みということになれば政府が持つべきではないですかということを私は言いたい。それから厚生年金も、穴埋めをするということになれば、もらっておる給料の一一・八%払わなければもたぬのに、七・六%ですよ。こういう非常な差がある。国民年金の五百五十円が九百円になったときをごらんになりますと一・六三倍ですよ。他の年金よりも引き上げ率が高いじゃないですか。農林省として、農業者を守り、経営規模拡大とか、これから農政を振興するという立場に立って、補完的な農業者年金と言いながら、むしろほかのものよりも水準並み以下になるんじゃないですか。どうですか。
  85. 大山一生

    大山政府委員 この農業者年金の制度につきましては、各方面のいろいろな審議会がございますが、その審議会の一つといたしまして、社会保障制度審議会等におきまして、この法律を出すにあたって、農業者年金というもののいわばメンバーの構成要素、逆に言いますと、後世だんだん農業者が減ってまいるということも踏まえてみた場合においては、保険財政については特別の配慮を要するというようなことを付して答申がなされている、こういうようなことがあるわけでございます。われわれといたしましては、この農業者年金につきましては、他制度におきます国庫補助に比べますと、はるかにと言えるかどうかわかりませんけれども、かなり高率の国庫補助をもらっている。今度の改正におきまして、いままでが平均いたしまして四二・二%の補助だったわけですが、今度四二・九%まで上げたわけでございます。そういうかっこうで国庫補助も大幅にもらって行なっているわけでございますけれども、考え方といたしましては、先ほど言いましたような後代負担をある程度防ぐというようなことも踏まえまして、いままで完全積み立て方式ということを当初からとってきた、こういうふうな制度でありますので、いま申しました数理保険料と申しますか、二千三十円を取らねばならぬことになるというわけでございます。ただ、しかしながら、さればといって、初年度からそこまで上げるということも、これはやはり農民負担との関係がございますので、とりあえず初年度におきましては千六百五十円、二・二倍まで上げるということにいたしたというのがいまの法律のかっこうになっているわけでございます。
  86. 野坂浩賢

    ○野坂委員 保障制度審議会とか、研究会とか、いろいろなそういうものがあったから出したということは通らぬのですよ。あなたが提案をされるのですからね、農林大臣が提案をされるのですからね、政府のものとして。だけれども、保険料はほかのところよりも条件は悪いでしょう。悪いですね。ほかのところは一二%と七・六%ですよ。  まず問題になりますのは、いわゆる完全積み立て方式であるということです。厚生年金や国民年金は修正積み立て方式ですね。だからこういう措置がとれる。なぜ農業者年金だけ完全積み立て方式でなければならぬのですか。ほかの水準並みじゃないじゃないですか。
  87. 大山一生

    大山政府委員 われわれの考えといたしましては、先ほどもお答えいたしましたように、今度出ました負担ということが、いわば農家の現在の農業所得との比率において見る場合に、ほかの年金の負担比率と均衡がとれているということが一つあるわけでございます。ただ、いま申し上げましたように、完全積み立て方式をくずすということは、逆に言いますと、後代負担という問題を非常に多くするということとの均衡におきまして、われわれといたしましては完全積み立て方式をとらねばならぬ、こういうふうな考え方に立っているような次第でございます。
  88. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、厚生年金や国民年金並みじゃないですね。
  89. 大山一生

    大山政府委員 厚生年金なり国民年金におきましては、修正積み立て方式という現実になっていることは否定いたしません。
  90. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは困るんじゃないですか。それ並みに合わしてもらわなければ困る。これが原則ですからね。だから、こういうふうに農業者だけ完全積み立て方式であるがゆえに穴を埋める。ほかのところは一・六四倍で、二・五倍も給付金をもらえる。農業者年金は、給付金は二・二倍、保険料も二・二倍ということは全く合わないということになりませんか。どうですか。
  91. 大山一生

    大山政府委員 おしかりを受けるかもしれませんが、制度というかっこうもさることながら、要するに、後代負担との関係から言うならば、なるべく均衡をとっておくほうがいまの段階においては好ましいのではないだろうかということが一つあるわけでございます。そして、今度の負担額というものを国民年金の負担ともあわせて考えましても、農業所得との比率で言うならば、他の公的年金の本人の負担保険料率の中ほどにあるというようなことから、さまで高いものでないのではないだろうか、こういうふうに考えているような次第であるわけでございます。  しかしながら、今後の問題ということに相なってまいりますと、これは今度スライド制というようなものもとってまいるというようなこともございます。いろいろな事態というものは将来の問題としては起こり得る可能性はあると思いますけれども、われわれの精神といたしましては、後代負担を極力少なくしたい、こういう趣旨からいまの提案を申し上げているような次第でございます。
  92. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、これは局長でも大臣でもけっこうですが、たとえば、この委員会の決議というものは、執行部としては当然尊重されると思いますが、尊重されますか。どなたでもけっこうです。大臣でもけっこうです。
  93. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは尊重すべきものだと思います。
  94. 野坂浩賢

    ○野坂委員 四十五年五月六日の衆議院の農林水産委員会では、「国は、保険料の改定にあたっては農業者の負担能力を勘案し、」「国庫の助成について十分配慮すること。」という決議をしておるわけです。だから、できるだけ国庫の助成を高くするということが本委員会の全体の意思だと私は思っておるわけです。そのためには、われわれは、農林水産委員会として、農業者の発展あるいは農政の進展、自給率の向上ということを政策以前の問題として考えなければならぬということでやっておるわけです。これは大臣から言わせると、大臣がおっしゃっておるのをそのまま引用すると、それらを進めるための補完的な措置だ。だから、厚生年金や国民年金並みにやるのだと言われるのは、私はそういう意味だと思っていたんです。二・二倍は、他の年金と比べて非常に保険料率は高くなっております。衆議院の委員会の決定もそれに合わせろということをおっしゃっておるのに、それもしないということです。それについて、あなた方の考え方は間違っておりませんかということが一つ。二番目は、今度はまた虫のいいことに、このあとから値上げの問題については政令でやる。この委員会でがたがたやるとめんどくさいから、農林省が考えて、来年はたとえば二百円上げて千八百五十円にする、その次五十一年はまた上げて二千百円にする、こういう魂胆が隠されておる。これでは、保険料の問題についてはいよいよ差がつくばかりじゃないですか。どうですか。
  95. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど、厚生年金その他、厚生省からお話しがありました。それから石炭の関係のもの……。ああいう答弁を聞いておりましても、御存じのように——まあ、釈迦に説法のようでありますが、国民全体に対する年金制度というものはかなりの沿革を持っておりますし、それから、石炭は石炭なりに、ああいう業界の今日の状況ということについてのそれぞれの事情があるわけであります。これは政府としてもできるだけのことはいたしております。  農業者年金は、先ほどもお話しがありましたように、当初私どもが制定いたしましたときは、大体二百万から二百二十万ぐらいな加入者を予想しておりましたけれども、先ほど来お話しのありましたようなことで、いま百五万そこそこだと思いますが、こういうものが保険としてやっていかれるには、やはり、もう少し努力と経験とを積み重ねていくことが必要だと思うのであります。したがって、原則としてはもちろん国会の御意思は尊重して、行政府もそのようにすべきではありますけれども、したがって、私どもといたしましては、この保険の内容については今後ともできるだけ事情に応じて充実をしていくことに努力はいたしますが、現在のところでは、非常な努力をしてこういうことであるということについて御了解願いたいと思います。
  96. 野坂浩賢

    ○野坂委員 努力をしてこの程度だということですが、この金額をきめるのに、政令で簡単にきめるということよりも、いまは農家の負担能力というものが国会でも非常に問題になりまして、できるだけその負担を少なくするようにという趣旨の決議も行なっておられるわけですから、政令できめるということについてはちょっと問題があるんじゃなかろうか、皆さんの衆知を集めて、討議をしてきめることのほうがむしろ民主的じゃないか、と、このように私は思うのですが、その点についての御見解はどうでしょうか。
  97. 大山一生

    大山政府委員 「保険料の額は、政令で定める。」ということは、現行法の六十五条ですでにそうなっておるわけでございます。そこで、保険料のきめ方でございますけれども、確かに、国が管掌しております厚年とか国年というような場合においては法律できめているわけでございますけれども、また、一方、国家公務員の共済組合でありますとか農林漁業団体の共済組合といったような各種の共済組合、これは組合の定款によってきめている。こういうような実態の中におきまして、農業者年金というものも、その実施体が農業者年金基金であるというようなことからいたしまして、そして、そういうことを前提といたしまして、国会において、「保険料の額は、政令で定める。」という法律が先般のこの法律施行の際に認められたものというふうに考えているわけでございます。  なお、この六十五条の三項によりまして、費用の予想額でありますとか、あるいは予定運用収入あるいは国庫負担の額とか、そして、将来にわたって財政の均衡を保つというようなこと、つまり、給付水準なり、国庫負担の割合なり、それから収支均衡の原則といったような、保険料をきめるにあたりましての基準というようなことはすべて法律に明確になっているということから、こういう基準のもとにおいて政令で定める、こういうことになっているものというふうに考えるわけでございます。  なお、この六十五条によります「政令で定める」という事態が出てまいりましたときにおいては、この法律におきますすべての基準、法律上明確になっております基準に照らして適正にきめてまいるということにいたすというのがこの六十五条の精神であろう、こういうふうに考えるわけでございます。
  98. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その六十五条の精神は、まず完全積み立て方式で穴埋め方式をとるということになりますと、二千三十円が、今日のいわゆる二・七倍がその穴埋めに適当な保険料だということになりますけれども、それを五十一年に二千百円にするというのは、そこまでしなければ完全積み立てにならないということで引き上げるわけですね。ですから、そういう基準になってまいりますと、保険料は、他の修正と比べてだんだん非常に問題が出てくるということが一点言えるということを私は言うのです。農林大臣は、とにかく努力したんだ、これからよくするということですが、これから他の公的年金並みに、農業者年金についても、そういう積み立て方式についても十分配慮するんだというふうに農林大臣はほんとうにお考えになっておるかどうか、両者からお尋ねをしたいと思います。
  99. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話しのありましたように、農政は非常に大事なものであって、自給度の維持向上等、それぞれ農村の人々に大きな期待を持っておることは申すまでもないことでありますが、先ほどお話しのありました経営移譲というふうなこと、それから規模拡大というふうなこと、それともう一つは、農業で働かれました方の老後のためというふうなことでできております年金の制度と、それから厚生年金とか、いろいろな年金等の社会保障制度的な意味とは、同じ年金の中でもいろいろな意味があると思うのであります。  しかし、農業者年金も、それぞれ大事な国の施策に協力をしていただく方のことでありますので、私どもといたしましては、可能な限りこれはいいものにやってまいりたいということを考えるのは当然な義務ではなかろうかと思っております。したがって、いまはもう農業者年金基金というものの財政の状況もよく御存じのとおりでございます。これからはだんだん加入者がふえて、積み立て金もふえてくれば、内容も充実されるのでありますので、そういう状態が早く来ることを待望いたしますし、また、そういうふうになりますれば、逐次この運営の内容についても改善をしてまいりたい、このように考えておるわけであります。
  100. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、もう時間が参りましたので、この際確認をしておきたいと思うのですが、いま大臣からお話しがありました農業者年金基金の積み立て金ですが、これはどういうふうに運用されておるか。といいますのは、先ほども確認をして、この決議を尊重すると大臣がお話しになりましたように、保険料の積み立て金の運用にあたっては、農業近代化農業者福祉向上のため十分還元されるよう措置させよ、特に長期低利のものだと、こう言って、一〇〇%農民還元のために運用されておると私は確信をしておりますが、どのように積み立て金は運用されておりますか。どこに貸しておりますか。
  101. 大山一生

    大山政府委員 農業者年金基金のいわゆる積み立て金、これは農家の大事なお金を預かっているわけでございますので、安全、効率的に運用しなければならぬということは当然でございます。それとともに、農村還元に意を用いて運用するというふうな精神で、具体的な運用の方法といたしましては、農業近代化のために——これは両院の附帯決議もございましたが、十分還元すること、あるいは基金の行ないます農地等の買い入れ売り渡し業務、あるいは農地取得資金の融資業務につきましては、年金の勘定資金の二割以内にすること、それから、余裕金の利率は五分五厘を下回らないようにすること、この三つを基準といたして現在運用しているわけでございます。  そこで、四十八年の三月現在におきますこの積み立て金は三百二十八億あるわけでございまして、その中で、農地の売買なり融資勘定に入れておりますのが十八億、それから、これは農林債券が中心でございますが、有価証券が二百四十九億、それから貸付信託が六十一億、こういうふうな運用をいたしているような次第でございます。  そこで、農村還元の状況というお話しでございますが、いま申し上げましたように、農地売買勘定と融資勘定を合わせました十八億と、有価証券の二百四十九億の中で農林債券が百三十六億ということで、合計いたしまして百五十四億円というものがいわゆる農村に還元されている総額であるというふうに考えている次第でございます。  なお、この農林債券につきましては、この金が農村に還元するという意味からいきますと、旧債を買うということではなくて、新規発行債を買うというかっこうにおいて農村に還元させる、こういうふうな趣旨で運用しているわけでございます。
  102. 野坂浩賢

    ○野坂委員 三百二十八億のうち百五十四億、ほとんどは農林債券である。間接的に農業へ還流する。しかし、その農林中金等は、それではどういうふうにその資金運用をされて、農民のほうに還流されておりますか。何割農民に直接還流されておりますか。
  103. 大山一生

    大山政府委員 農林債券の購入ということから後の金のルートということになりますと、これは農林中金の運用ということに相なりますので、われわれのほうで農家にどうひもをつけるというわけにもまいらぬわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、先ほど申し上げました積み立て金総額の三百二十八億という中には、国庫補助その他も含んでおりますので、その中に含まれております保険料積み立て金、保険料部分だけということになりますと、これが百五十三億ということでございまして、いわゆる積み立て金の農村還元として、私が申し上げました約百五十四億ということを上回って、いわば農村のほうに還元される性格のものに貸し付けている、あるいは離農に伴います一括購入等の資金に充当されている、こういうことでございます。
  104. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その債券の行く手、その金はどういうふうに動かされておるかということを、あなたは農業者年金の最高責任者なんですから、よく留意をして、一ぺん見届けてほしいと思いますね。大手のほうにずいぶん流れておるということは本委員会でも何回となく問題になったのですからね。  そこで、率直に言って、農地の直接の貸し付けといいますか、そういうことに使われておるのはわずかに一・二%です。一体なぜこれだけ農地が動かないのか。あなた方は、ある程度流動化をはかっていきたいということを何回もおっしゃったのですが、このとおり動かない。こういう現状分析をして、日本農業というものをもっと考え直してもらわなければならぬ。いわゆる四百万農家というものを含めて、入っていない諸君も含めて、日本農業というものをもっと考え直してもらわなければならぬということを言っておきます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  時間がありませんから、最後に大蔵省に、この生前一括贈与問題についてお聞きしたいと思います。  この農業者年金の制度につきましては、御案内のように、いわゆる専従義務を——たとえばあなたのほうの租税特別措置法で言うと、私のおやじが年が寄って私に渡す。それがすぐには税金をかけないで、おやじが死んで六カ月後まで延期をするということになっておるわけです。そのかわり、私が農業をしなければならないという専従義務がありますね。ところが、農業者の移譲年金の場合は、御案内のように専従義務を課していない。そこで、たとえば自分は農協につとめておる、私は役場につとめておる、しかし家内が農業をしておりますというような場合であったらいいじゃないか。あなたの場合は絶対農業をしなければならぬ——いまの世の中の情勢からして、弾力的な運用で経営移譲年金で措置されていくような方向を、今日の段階ではとらなければならぬじゃないかと私は思うのですが、大蔵省といいますか、国税庁はどのようにお考えですか。
  105. 西野襄一

    ○西野説明員 お尋ねでございますので、お答えいたします。  ただいまお話しのございました農地等の一括生前贈与の特例でございますが、これはいまお話しもございましたように、農業後継者の育成確保、それから農地の細分化防止といったことを政策目的として特に認められております特別措置でございます。一方、農業者年金基金法のほうは、農業経営者の老後生活の安定、福祉の向上を目的としているというふうに考えております。したがいまして、農地等の一括生前贈与の特例の場合におきましては、受贈者が農業後継者であるということ、言いかえますと、農業に従事し、農業を経営しているということが、この制度の趣旨からしますと必須の条件であるというふうに考えております。  ただ、いまお話しもありましたように、どのような場合に農業の従事者であり、かつ経営者であるかという認定でございますが、これはいま先生も言っておられましたように実務の問題でございまして、国税庁のほうでどういうふうに認定通知しているかということでございますが、この点につきましては、最近の農業経営の変化の状況に対応いたしまして、農業後継者が他に職を有する場合におきましても、農業経営を行なっているという限りにおきましては、この特例を適用する方向で検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  106. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、こういうふうに確認していいんですか。いままでの租税特別措置法の通達によりますと、専従義務を課しており、その人は絶対に農業をしなければならぬ、役場や農協につとめておったのじゃいかぬということでしたが、その人が農地を引き継いで、受贈者が直接ときどき農業をして経営をしており、奥さんや子供さんがそれに協力をするということの弾力的な運用と解してよろしい、こういうふうに承知していいんですね。
  107. 西野襄一

    ○西野説明員 従来の取り扱いにつきましては、後継者が贈与税の申告期限におきまして会社、官庁に勤務しているなど、他に職を有している場合にはこの要件に該当しないという取り扱いになっていたところでございますけれども、先ほど申し上げましたように、農家の経営面においても変化が見られるというようなところから、農業後継者が他に職を有する場合におきましても、農業経営を行なっている限り、この特例を適用するという方向で検討したいということでございます。
  108. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もう時間が参りましたので、質問はこれでやめるわけでありますが、いま幾多の問題を申し上げましたように、大臣及び局長は、厚生年金なりあるいは国民年金の公的な年金と同じように取り扱っていくということを言明しながら、具体的には——たとえば二年間さかのぼって、七百五十円を千六百五十円取っていく、資格を有するためのそういう措置、あるいは二・二倍の保険料というものは、先ほども厚生省からお話しがあったように、国民年金はわずか一・六四倍である、厚生年金も実際の保険料率というものは非常に低い、こういうことが明らかにされて、大臣は、今後勉強してそれらのものは改善をして、その他の公的年金とかね合いをとっていくということでございますから、今後の農政の問題等とからみ合わせて考えてみても、多くの問題点があります。特に、政令で千六百五十円を五十一年までに二千百円にするというようなことば、今日の世相から言い、また、先ほども話がありましたように、昭和五十年には農業者が四千二百五十円も負担をしなければならぬという負担能力の問題については、本農林水産委員会は、昭和四十五年に、負担能力を考えて国の補助金というものを勘案すべきであるということも指摘をしたところであります。そういう点を十分配慮され、検討されて、このことを改善してもらいたい。また、給付額についても、六十五歳以上の老齢者については、まさに国の恩典は皆無であると言っても過言ではありません。そういう点を十分考え直していただきまして、改善をしていただきますように強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  109. 仮谷忠男

  110. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農業者年金は、あと継ぎに経営移譲をさせて、規模拡大をはかるということがねらいだとされているわけでありますが、このあと継ぎの卵であるところの農業高校の卒業生についてですが、秋田県の能代という農業高等学校で、卒業生に対する親子契約の調印が行なわれたわけです。親子契約というのは、御存じだと思いますが、おやじがかまどを握って放さない場合、それじゃ息子もなかなか農業をやらないわけでありますから、それぞれの分野について、息子に一応の権限を譲るとか、月給を払うとか、こういうやり方であります。これについて、親子契約にはだれも応じる者がなかったというのですね。秋田県の能代の農業高校の実態を、新聞が、「親子契約ついにゼロ」「農業情勢の厳しさひしひし」という表現で書いておるわけですが、このような情勢についての農林大臣の御見解を承りたいと思うわけです。
  111. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は内容がよくわかりませんのでお答えのしようがないのですが、もう少し御説明を願えますか。
  112. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 親子契約の理由というのは、農業高校を卒業しても卒業生が農業に定着しないということで、親が営農をまかしてくれない、あるいは親がさいふを握っていて経済的な独立を認めてくれないということで、親と子の間に——秋田県は農業県ですから、こういうことが最も進んでいるのですが、労働報酬契約だとか、経営参加契約だとか、あるいは経営部門の分割契約だとか、いろいろな契約をして、親と子の間で賃金を契約したりして、水稲、畜産、果樹など各部門について一部の収入を受け取るというかっこうの非常にすぐれたやり方をやっているんですよ。これはおたくのほうの指導かどうか知りませんけれども、そういうことをやっている。ところが、四十六年度は、この学校は卒業生が百二十人おったけれども、親子契約をしたのは四十九人おるんです。四十七年度は百五人のうちで十四人おった。ところが、ことしはついに親子契約をしたのはゼロだというんですね。これはゆゆしい問題でしょう。あなた方は、農業経営移譲をさせてあと継ぎにやらせるんだと言うけれども、肝心なあと継ぎの卵がだれも見向きもしないという状況が、秋田県という米どころの農業高校の、しかも、あと継ぎである長男のところでおもにこういう状態が起こっているということについて、農林大臣の御見解を聞かせていただきたい、こういうことなんですよ。
  113. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまの中川さんのお話しによりますと、まだ高等学校を出られたばかりの若い方のお話しのようでございますが、私は、御家庭の都合でそれをおやりになるなら、それはけっこうなことだと思いますが、大体、農業者年金制度は、御承知のように六十歳からの方で、六十五歳になれば国民年金に自然に入られるという仕組みであることは先ほど来ここでお話しもあったわけでありますが、要は、後継者が、自分の努力、自分の発明、くふうで、自分がやればもっとこういう新しいやり方もあるのだがなというふうなことを研究して——たとえば朝日新聞が毎年全国の若い御夫婦の中から、その経験しておられる若い人たち営農について、模範的なものを数十名集めて表彰されたりなどして、農林省でもそういう方々の御意見を承る機会をつくったりしておりますが、そういうような若手の人々はなかなか農業についての見識を持っておられるし、意欲も持っておられますので、私どもが期待しておりますことは、もし可能ならば、できるだけそういう方に移譲してもらって、そうして移譲された方は年金の恩典に浴する、こういうことで後継者を育成しようではないかということが一つのねらいでありますことは、先ほど来のお話しのとおりでございます。  したがって、秋田県のような、農業県として進歩しておられる地域でいまお話しのございましたようなことがあったことについては、あるときには希望者があり、あるときにはないというふうなことで、これは土地土地の事情でありますので、何とも私ども判断のしようがないのでありますが、後継者育成ということにつきましては、先ほど来お話しのございましたように、われわれは大いに期待をいたしておるところでありますし、先年、後継者資金を、五十万円でありましたのを今度は百五十万円まで増額をいたしたというふうなことで、お若い人が先祖代々の農業を承継していただく情熱をお持ちいただくということはありがたいことだと思いますので、そういうようなことはできるだけお手伝いをいたしたいと思っておるわけであります。
  114. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農林大臣、この子供たちは普通の高等学校じゃなくて、農業高校のことしの卒業生ですよ。しかも、農家の長男が八割を占めるのですよ。そして、その後継者の卵の連中が親子契約を拒否した。つまり、農業を希望しなかった。これは希望があるときもあるし、ないときもあるだろうなんて、そういう一般的な問題にすりかえることはできないと私は思うのです。また、土地土地の事情によってそういうことがあり得ることだというようなことにも解釈できないことだと思うのだ。つまり、いまの農業農業政策が全く魅力を失っているのだということの集中的な何よりのあらわれじゃないかと私は思うのです。現に学校側も、大ショックだ、せめて十人くらいは親子契約をする人がいるんじゃないかと思ったということで、そこの校長の談話も載っておるのですが、「各農家とも農業には不安を抱いており、親も子も農業への意欲が薄れてきたためだと思う。しかし、ある程度予想はしていたが、まさかゼロとは思わなかった。」「来年度以降はこの制度についての積極的な指導は出来ない」ということで、もうさじを投げましたと言っているんだな。農林大臣の先ほどのような御答弁ではこの問題の答弁にならないと思うのです。そういう問題でいま農業者年金をやっているわけですが、特に、あと継ぎの卵でさえもこういうことであったら、どうしておたくの所期の目的を達成することができるのか、その点についてもう一回御答弁をいただきたいと思うのですね。
  115. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもといたしましては、所期の考え方をいま変える必要はないと思っておりますし、そういうふうに農業に関心を持ち、興味を持っていただく後継者を育成するということはぜひ必要なことであるので、そういうことのためには万難を排してその傾向を醸成していくように努力をしなければならぬのではないかと思っているわけであります。
  116. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなたのことばはわかるのですよ。農業に関心を持つ後継者をぜひ育てなければならないということはわかりますけれども、問題は、関心の持ちようがないということです。つまり、あなた方がいろいろと口の先で、と言うと失礼だけれども、あの手この手をやるが、しかし、そのたびに日本農業が破壊されていっておる。端的に言えば、農業をやったって魅力がないからこういう事態が起こるんじゃないですか。あなたはせんだって秋田県の大曲に来て、何か政談演説をやっておったようですけれども、あそこだってみんな農業をやっていてはめしを食えないから出かせぎに出ている。それが集中的にたいへんなところなんですね。もっと農業自体を魅力あるものにするならば、いやだってたくさんの青年が集まってくるでしょう。そうすれば、後継者の問題もおたくなんかが何も心配しなくたっていいんだけれども、いまのあなた方の選択的拡大ですか、総合農政ですか、それそのものの失敗というかな、これはそういう状況のあらわれだと言う以外に何とも説明のつけようがない。私は事実の上からそう思うのですけれども、大臣はいまのやり方は成功したとでも思っていらっしゃるのですか。
  117. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 成功したなどとうぬぼれるものはないと思うのでありますが、いまあなたから、私が秋田県へ参上いたしたというお話しがございましたが、大曲と横手に行って、農業団体の大ぜいのお方にお目にかかりまして、秋田の農業についていろいろ参考になるお話しを承ってまいりましたが、ともかくも、ことしの災害を復旧することと、同時に、これからの新規の稲作の取り組み方等について熱心な御要望がございました。あなたのおっしゃるようなそういうことではありませんで、皆さん非常に熱心に農業に励んでおられるし、また、御希望等を承ってまいったわけであります。私どもは、現在までの農政については大ぜいのお方の御意見を拝聴いたしまして、改めるべきは改めるのでありますが、既定の方針で最善の努力をいたしたい、国民大方の御期待に沿うようにいたしたい、こういうことで努力を続けてまいるつもりであります。
  118. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農民はみんな熱心です。熱心というか、血みどろな生きる戦いをしているくらいですね。だから、そういう熱心さなり勤勉さなり、その汗とあぶらの戦いにこたえる農政でなければ生きた農政とは言われないわけですね。それが、いまの場合は、熱心であるということを逆に利用したようなかっこうの農政となっているところに問題があるし、その根本は、やはり基本法農政そのものの反省から出発しないとほんとうに農民は救われないではないのかということを私は言いたいわけです。  そこで、私はいま秋田県の例だけを言いましたけれども、たとえば宮城県も米どころですが、宮城県の農業会議がまとめたところの「四十八年度農業高校生の就農志向に関する調査」を見ますと、農業をやりたいという人が卒業生にほとんどいないのですね。ちょっと簡単に言いますと、「現在の農業経営で希望が持てる」という答えはわずか七・九%です。これは宮城県全体の農業高校生の就農志向ですよ。また、その理由を聞くと、「生活が成り立たないから」というのが二二.八%で、中でも、農業科の卒業生では、「生活が成り立たないから」というのが三九・三%を占めており、四十一年の調査に比べると二倍以上にふえているというんだな。  そうしたら、何ぼあなたがかねや太鼓で、いまの農政はこういうことだからおまえたち熱心にやれ、ぜひともやらなければならないと言ったって、これが現実の姿だということから、あなたのほうで何か反省をされるところがなければこれからの農業は育っていかないと思うのです。それでもなおかついまの農政を続けておやりなれば、一体これはどうなるのですか。農民を地獄行きのバスへ追い落とすならともかく、あなたはそうじゃないということを言っているわけですから、根本的に改めるところは一体どこなのか。そういう反省はどういうふうになっているのですかな。
  119. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 何か御指摘をいただくならば、それに対してお答えもできるものでありますが、何しろ、私どもといたしましては——もちろん、及ばざるところは最善の努力をして修正するのですが、とにかく、いまは、国民大方の御期待に沿うような農政をやってまいることに最大の努力をいたしておるわけであります。
  120. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農林大臣、そういうことをいつも言っている中で、いまこの時点でも、たとえばあなた方が最も花形だと言う畜産農家の方は自殺しているのですね。及ばざるところはどうだと言ったら、及ばざるところがわかったらさっそくそれを直していくのが政治でしょう。いまの日本農業は、稲作であれ、何であれ、もう全く——あなたの長野県だって例外なく同じ状況が起こっておるわけですからね。それで、万年一日のように及ばざるところを直すとかなんとか言っていますけれども、いまの基本法農政の中でこういう状況が起こったということについての反省がおありになるのかどうか。この点をはっきりしていただかないことには——その点は何にも触れないで、ただ小手先だけであれを直す、これを直すということでは、いまの農業は救われないだろう、こういうことで私はお聞きしているわけですから、もう一回御答弁いただきたいと思います。
  121. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ですから、さっきも申し上げましたように、こういうところがいけないのじゃないかという御指摘がありますれば、それが議題になりましょうけれども、新聞の記事だけお読みいただいて、これでどういうふうなものかと言われても、なかなかこれは返事の申し上げようがないわけであります。
  122. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それならば、ひとつ中身でいきましょうか。  あなたのほうの農業者年金も、すべて構造政策あるいは総合農政を補完する役割りとして政策的に出されたものだね。したがって、その限りで見るならば、農業のにない手というものは一応どんどんふえていなければならないわけだ。  そこでお聞きしたいのは、農業のにない手の傾向ですね。先ほどは高校生の、卵のことを言いましたが、つまり根幹的というか、基幹的農業のにない手の傾向はどうなっていますか。これは局長だな。どれだけふえていますかということを聞いているのです。
  123. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 中川先生の言われるところの、卵と申します新規卒業者の農業就業状況につきましては、十年前の三十八年では九万人でございますが、四十八年では一万八千人ということに相なっております。
  124. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 卵のことは、先ほどで私の質問は終わったんだ。それにしたって、卵でさえも九万人から一万人に減っておるのでしょう。基幹的な農業をいまささえておる人たちの傾向は、おたくの総合農政、基本法農政の中でそれをやればどんどんふえなければならないことになるのですから、いまどれだけふえたかということを聞いているのです。何万人から何万人にふえたのですか、この点をはっきり言ってください。
  125. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 にない手につきましてはいろいろな手法があるかと存じます。たとえば専業農家なり、あるいは第一種兼業農家までを含めて、これがおおよそわが国農業をになっておるというような見方からのにない手という考え方もございますし、また、それだけではなくて、基幹的な男子の農業専従者がいる農家、何と申しますか、男一匹働いて、主として農業でその生活確保しておる、社会的にもバランスのとれた生活確保し得るというものをもってにない手と見るというようなことで、先生御案内のとおり、本年の農業白書等におきましても特別な視点から解析いたしまして、百六十三万戸ということに相なっております。ただ、この分析は今回初めてでございまして、年次的な推移までわれわれは追っておりませんことをお断わり申し上げます。
  126. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 何戸あるか聞いたのじゃなくて、どういう推移でどれだけふえたかということを聞いたわけですよ。しかも、年次的なものをまだつかんでいないと言うけれども、あなたのほうの農業白書に書いてあるのですよ。この二二ページの図表の「基幹的農業従事者」の推移を見れば、毎年減っているでしょう。四十年から四十五年は年率四・六%減り、その次の年は〇・二%ふえ、その次の年は六・六%減り、四十七年−四十八年は五・三%減っていると書いてあるじゃないですか。どうしてあなたはうその答弁をするのですか。
  127. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 先ほどもお断わり申し上げましたように、にない手という場合にもいろいろな手法があるということを申し上げたわけでございまして、私が申し上げましたのは、経営としてのにない手ということで、基幹男子農業従事者がおります農家が百六十三万戸ということでございます。先生御案内のとおり、農業白書の二二ページにございますのは従事者でございます。その従事者の減少の度合いは、ただいま先生が御自身で数字をお述べになったような書き方をしておるわけでございます。
  128. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、それ一つ見たって、従事者を見たって、あなたのほうの総合農政が成功していればこんなに毎年減るわけはないでしょう。どんどん減っているから、何か欠陥があるのでしょう。その欠陥に対しては全く手をつけないで、及ばざるものは何とかだとか、具体的に指摘していただければ直しますなんて言ったって、そんな小手先の問題で何も救われないでしょう。しかも、あなたはいま何だかんだといろいろおっしゃったって、二三ページを見れば、ちゃんとここに書いてあるでしょう。「農業の基幹的な担い手である世帯主やあとつぎの転職者が増加しているため、農業の基幹的な従事者の年齢構成は、四十八年には六十歳以上の者が二一%を占め、老齢化の傾向を強めている。」と書いてある。だから、これ一つ見たって、あなたのほうの農業政策はちゃんと成功したのですか。成功どころじゃない。たいへんな状態を逆に生み出しておる。このことに対してどう考えているかということを聞いているのです。
  129. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣もお答え申し上げましたように、三十年来の高い経済成長の中で、他部門の大きな雇用需要に対して労働力の移動が行なわれて、農業におきましても、多年にわたる過剰な人口に伴う零細経営の様式を脱却できるというような契機があったわけでございますが、農業自体も、選択的拡大なりあるいは生産性の向上なりというようなことから、相当な努力をし、発展をしたわけでございますけれども、他部門の経済成長と申しますか、成長率があまりにも高く、また、その所得の伸びも大きく、やはり、農業自体よりも他部門の伸びによる労働力の流出、特に、先ほど先生からお話しがございましたような若年の新規学卒者等の移動が大きいということから、基幹的な、と申しますか、新規学卒者の農業への就業なりあるいは農業就業人口の減少というようなことに相なったわけでございまして、いずれにいたしましても、それらの経済成長に伴う地価の問題とか、あるいは兼業化の問題とかということを踏まえまして、新規学卒者、特に農業としてやっていけるような経営のあと継ぎが残り得るような経営をつくっていくということのために諸施策を進めていく、これが眼目であるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  130. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなた、総理府が言うようなことを農林省の官房長が返事をしていたのじゃ農業は守られないですよ。ほかのほうがどんどん高度経済成長したから農業はだめになったとか言うが、農業自体をあらゆるものに対抗するだけの魅力あるものにするためにどうするかということで、あなた方は総合農政だとか基本法農政をやったんでしょう。それをいまさら人のせいにして、あれが変わったからこうだとか、これが変わったからこうだとか言っているが、それをほかの総理府の人が言うならともかく、あなたの口からそんなことを言ったんじゃ、みずから自分の失敗を認めておるようなものでしょう。事実関係として、あなた方の当初のねらいはどうであれ、現実にはもう後継者が育つどころじゃなく、老齢化というのは白書でも認めておるように、二一%も六十歳以上の年寄りで農業をささえている、残っている婦女子でささえている、こういう状況でしょう。選択的拡大だからやむを得ないなんてあなたはおっしゃるけれども、とんでもない話なんですよ。  そこで、そういうおたくの農政の結果、国民食料の自給率というものは年々低下しておるんだな。年々ふえるかと思ったら低下しておる。たとえば総合自給率の低下として白書も指摘しておるのは、これは政府の統計ですけれども、昭和三十五年には九〇%もあったのが、昭和四十七年には七三%に下がったというんですね。おたくの基本法農政だとか総合農政からいけば、下がるはずがないんです。上がらなければならないわけです。なぜこんなに下がったんですか。では、簡単に聞きましょう。
  131. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 自給度ということは、農林省が言っております統計についてお話しがあったのだと思いますが、これは年々国民の食べものの嗜好が変わってまいりまして、たとえば昔よりも鶏、卵をよけい食べる、あるいは肉類をよけい食べるということになりますと、それを育てるために使います飼料はそれだけよけい使われるわけでありますので、いままでの生産では間に合わないから、自給度という計算から言えば下がってくる傾向であります。したがって、国民の嗜好がふえるのにマッチしただけの飼料穀物等の生産が行なわれて、初めて自給度がとんとん、こういうことであります。  そこで、いま、日本の自給度というのは、米は御存じのとおりでありますが、その他野菜、くだもの、肉なども——肉それ自体から申せば七、八〇%自給度があるような形になりますが、それを育てるための飼料を外国から買わなければならないということで、自給度から申せば低いというわけでありますが、国際的ないまの逼迫を伝えられておる状況でもありますので、何といっても、極力自給度を高めるという生産のためにわれわれが全力をあげるのは当然なことでありますが、そういう意味で、御審議を願いました予算案等でも、あるいは麦、飼料穀物等に特別な助成をいたしまして、その自給度を高めることに力を入れておる。なおそれでも足りないものについては、これはもう安定的な輸入を計画する以外にない、こういうことでやっておるわけでありますが、私どもは、国民全体の食料の自給度についてはなお最大の努力をして、その維持向上につとめてまいることは当然なことであります。
  132. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いま、一般的な時期じゃなくて、まさに食料危機だという状況まで追い詰められているんだな。あなたは、ほかのほうがいろいろな高度化をして、食料に対する需要がふえたから追っつかないだけだ、と、こういうとらえ方なんですね。しかし、そうではなくて、今日の日本の現状は、おたくのそういう総合農政の破綻の結果、もう救いがたいほどにたいへんな状況になってきたというのが現実の姿でしょう。だから、それに対して、皆さんの責任は決して言わないで、単にほかの状況の変化の結果としてのつかみ方しかしないということだったら、農林省は要らないということにならないでしょうかな。しかもおたくは、選択的拡大の花形だなんて言って、畜産などというものはどんどんやったわけですね。その畜産農家から自殺者まで出るというのは、あなた方の農政自体が決して成功だとかりっぱだとかじゃなくて、根本的に改めなければならない、農民の生活営農のためにプラスになるどころか、全く反対の役割りを果たしておるんではないか、こういうことだと思うのですけれども、この点についてはどうでしょうか。
  133. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまの国会の運営というのは、法案を出しておる政府に質問をおやりになるというやり方だものですから、こっちから御意見を伺うことがなかなかできないで残念でありますが、おまえたちのやったことが失敗であるからこういうふうになったんだということについていまお話しがありましたが、そういうことについてお話しをいただけるならば、そういうことについてお答えができるわけであります。  たとえば米のことを考えてみましょう。米についてはあんまり議論がないようでありますが、その他の問題について、国民の食生活の嗜好がだんだん変化してくるに従って、それらの部門の需要が伸びてくるのはもう当然なことであります。したがって、私どもは、そういう国民の嗜好の伸びに従って、それに必要なるものをととのえるということに力を入れてまいったわけでありますが、いわゆる畜産の危機とかなんとか言われましたのは、だんだん突き詰めてまいりますれば、消費がなくなってしまったということじゃなくて、消費は強いが、それを生産していくための経営がなかなか困難になったということであります。そうなりました理由については、いろいろなことを申し上げるよりも中川さんがよく御存じのとおりで、したがって、それに対応するような措置を講じておるのであります。同時にまた、非常に高騰いたしてまいりました飼料を使って育てたものの畜産物等の価格には、できるだけその生産費に見合うだけの価格決定をして今回けりをつけたのであります。  まあ、いろいろ御批判があるでありましょうけれども、私は、さっきあなたがお話しの秋田県へ行きましたが、よくあそこまでやってもらったということを私どもとお会いになった農家の方々がおっしゃっていらっしゃいました。私どもといたしましては、最善の努力をして、そしてまた——先ほど来、総合農政についてえらい御批判があるようでありますが、私ちょっと席をはずしておりまして、官房長のお答えを聞いておりませんでしたけれども、官房長が申し上げましたことも、おそらく、日本経済の発展に伴ってわれわれのほうの農村から労働力もかなり吸収されておったということのいろいろな影響等についてもお答え申し上げたと思うのでありますが、現実日本全体の経済を考えてみましたときに、今日のような状況になってまいることはもう大体わかっておりますので、私どもとしては、やはり効率のよい農業育成していくことが必要ではないかと思うわけで、わが国が世界で有数な経済国に成長をいたしましたゆえんのものも、その反面において、私どもが農業を考えると同時に、これらの工業に非常な力を与えたればこそ今日の日本経済の発展があったのでありますから、全体的に見てわが国の経済政策はむしろ成功しておったとわれわれは思う。しかし、その反面においてやはりひずみが出てきておる。それがわれわれの農業のほうにもしわ寄せをしてきておりますので、それをどうやってカバーするかということが農政の大事な問題じゃないかということで真剣に取り組んでおるのが現状の姿である、こういうことであります。
  134. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いま大臣はそうおっしゃるけれども、よくお考えになっていただきたいことは、たとえば皆さん方政府が選択的拡大だとか言って、非常に選択して、これがこれからの農業だとして位置づけたものの一つに畜産なんかがありますね。その畜産の中に自殺者を出している農政というものは、これはやはり農政の名に値するものではないだろうと思う。これは重大な欠陥があるからだ。これが現実のいまの状況なわけですけれども、ただ一般的なことばのあやで済ますことはできない。皆さんがそういう位置づけをしたものがすでにそういう破滅的な状況になっている。われわれは最大の努力をしていると言うけれども、最大の努力の中身がそういう状態を呼び起こしているということについて、あなたのほうは、何かこちらの質問のしかたが非常に一般的過ぎるという言い方のようなお返しでありますけれども、その点は私は非常に不満であります。  しからば具体的にお聞きしますけれども、その選択的拡大のいろいろなおたくの位置づけの中で、これはなぜそういうことをやったかというと、労働報酬の比較有利性ということが一つの側面になっていますね。選択的拡大ということは、労働報酬がほかのものに比較して有利だからこのものを選択してやるということにもなるわけですが、しからば、これがどのようにいま皆さんの暮らしに対して、営農に対して貢献しているのか、こういうものをデータ的に資料的につかんでいらっしゃるのですか。
  135. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  御質問は相当広範なお話しかと思いますけれども、われわれといたしましては、それぞれの作物について、主要農産物の家族労働報酬の一日当たりなり時間当たりというようなものについては、それぞれの行政価格決定の際なり、あるいはそれぞれの施策展開の際に検証をしておるわけでございまして、必要がございますれば、それらは公表されておりますので、整理いたしまして、資料としてお手元に差し上げたいというふうに考えております。
  136. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は意地の悪いような聞き方をするわけですけれども、総合農政の破綻というか、これを根本的に改めない限り、あなた方が幾らこの道を追求しても日本農業はよくならないのだ、いまこそこれを根本的に転換しなければならぬのじゃないかということを現実の中で申し上げているわけです。たとえば皆さん方は、基本法農政の中で自立経営農家をたくさんつくるのだと言うが、自立経営農家というのは、皆さんの資料によれば農業収入が百八十二万円以上ということになっているのですが、この傾向は一体いまどうなっているか。皆さんが一生懸命がんばったということからすれば、こういう農家がどんどんふえていなければならないはずなのに、実際はどうなっているのですか。
  137. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  農業白書でも明らかにしてございますように、それぞれの年の下限所得、すなわち他産業部門の勤労者の所得と比べまして、それを農業所得のみで確保しているいわゆる自立的経営につきましては、たとえば生産調整その他とか、あるいは不作の年とか、そういうような年による農業生産の面と、あるいは農産物価格の変動がございますが、価格変動が比較的低位に推移した年ということによりまして自立的な経営の全体農家に占める割合は変わってきておるわけでございますが、最近の三カ年につきます手元の資料によりますと、四十五年におきましては、下限農業所得は御案内のとおり百五十万円でございましたが、戸数割合が六・六%で、四十六年は、米生産の停滞その他米価の過剰抑制のために、米価が従来のアップ率より比較的低かったというようなことから、戸数割合が四・四%でございますが、四十七年は、生産の伸びなりあるいは農産物価格の総体的な上昇ということから、自立的経営の構成割合は六・五%というふうな推移をたどっておるところでございます。
  138. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 自立経営農家、つまり百八十二万円以上のものがことしはそうだからその中身がどうだかと聞いたのじゃなくて、皆さんのあれでいけば、自立経営農家がどんどんふえなければならないんでしょう、実際はふえていますか、ということを聞いているのです。
  139. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 同じお答えを返すようでございますが、その自立的な経営の全体農家に占める構成割合は、四十五年では六・六%、四十六年では四・四%、四十七年では六・五%というような傾向をたどっておりまして、その推移といたしましては、特に増加しておるというような傾向がないということは、この数字でも明らかでございます。
  140. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、ジグザグがあるとか言うけれども、おたくの白書にちゃんと書いてある。もっとも、書いてあることを質問するということは皮肉だと言うかもわかりませんが、そんなことは言っていないのですよ。白書には、「自立経営農家戸数割合は長期的には低下の傾向にある」と言っているでしょう。この点だって、皆さんの所期するもの、皆さんが当初ねらっていたものと全く相反する結果が出ているということ、この点を指摘しているわけです。いままでずっと質問したのですけれども、あなた方の言ったこととみんな反対の結果が出てきているのでしょう。この点について、あなた方はまだ全然何も反省しないで、それはほかの理由によるものだなんて言うようなことでは農業を守っていかれないでしょう。  それなら最も端的な問題、就農率でひとつお聞きしましょうか。就農率というのは農業に就業する率ですね。これだって、昭和三十八年には一五・四%ですね。昭和四十八年にはたったの四・九%になっておるのです。これなんかだって、一体どうなんですか。どうしてこうなったのですか。皆さんの一生懸命がんばったことが効果あるとすれば、これもまたほかの原因ですか。
  141. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 ただいまの御質問は、先ほど冒頭に先生の御質問にございました新規学卒者等の就業ということについてのうち、特に高卒者のうちの就農率の割合について、本年の農業白書でお示し申し上げております数字は、たとえば四十六年では六・九、四十七年では五・五、四十八年では四・九ということでございまして、この点については、先ほど来いろいろ御議論のとおり、農業についても後継者が積極的に就農し得るような経営を今後つくり上げていくというような問題として、先ほど大臣がお答え申し上げたとおりでございます。
  142. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 とにかく、どんどん下がっていっているのだな。反対なんだな。裏目、裏目というのは、偶発的にそうなっているのじゃなくて、  一つの必然性、一つの法則性を持ってこういう状況が各分野にあらわれているということです。だから、何ぼこんなことを言っても同じことしか答えないからあれですけれども……。  そうすると、たとえば農業が、もう農業自体じゃなかなか成り立たない。そこで、兼業化の傾向というか、そういうものをずっと強めているわけであります。この兼業状況なんかを見てみますと、兼業といいながら、たとえば二種兼業であっても、いまの農業生産に占めるシェアというか、役割りというものは非常に大きいと思うのです。しかし、皆さん方は、二種兼業なんというものはじゃまくさい、こういうものはなくしてしまわなければならないというようなことが基本になっているようでありますけれども、兼業化というかっこうにいかざるを得ない状況を一方でつくりながら、そこへ参りますと、これは淘汰し、くずしてしまわなければならないという状況に対して農民自体は頑強に反抗している。こういうことで、いま農家戸数やその他も減らないということになると思うのです。こういう状況について、特に二種兼業というものに対する皆さんの認識なり取り扱いなりについて御所見をお伺いしたいと思うわけです。
  143. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  第二種兼業につきましては、その構成割合が非常に高まっておるという点につきまして、農政上いろいろ問題であるわけでございますが、これにつきましては、農家経済調査等によって示しております兼業所得の質の問題等におきましては、基幹的な男子が農業に拘束されるような第一種兼業に比べまして、相当安定的な兼業、いわゆる安定兼業と申しますか、俸給的な兼業収入を得ている面が数字で明らかでございまして、われわれといたしましては、二種兼業の制約された規模だけで、そこからあげられる農業所得だけでは、他産業部門との均衡のとれた所得水準がなかなか確保しがたい。したがって、一方では、本日もいろいろ御議論がございましたように、たとえば農村地域の工業導入その他安定した兼業機会をさらにつくり上げて、それによって、農家所得としては、他産業に働く方々と同様な生活水準を確保していくというような一つの方向がございますし、さらに、今日の現状では、お話しのように、やはり、農業生産にも相当なシェアを占めておりますので、農業のにない手と申しますか、中核農地中心といたしまして、集団的な生産組織というような形によりまして、農業の面でもその効率性、生産性の向上をはかられて、その面でも、その生産の面なり経営の面でもプラスになるというような施策を両者並行して進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  144. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 二種兼業ですね。ほかのほうで農外所得をとるからいいじゃないか、そのほうを万全にすると言うけれども、先ほどお話しがありましたように、たとえば農業粗生産額でも二九%、約三割、稲作生産額でも四一%、四割一分です。こういう大きいシェアを占めておるわけです。しかし、皆さんの対策というものは二種兼業に対しては全くないにひとしい。つまり、農外のほうの状況整備してやるというようなことだけで問題をそういう方向に持っていっているから、農業自体として守っていくというかっこうのものがほとんど見られないということがいまの農業の大きい破壊につながっているものだと私は思うわけです。  同時に、皆さんの資料を見ましても、いま二・五ヘクタール以下まではみんなめしを食えなくなっているんだな。また、二・五ヘクタール以下の層までは農家の減少がどんどん起こっているのです。これは現在の農業がいかに不安定であるか、そして、全くはしにも棒にもかからないほど、未来に対する夢だとか希望だとかの持ちようがないほどに破壊されてきているということのあらわれだというふうにわれわれ思うわけですけれども、これはどうですか。昔は大体二ヘクタールくらいあれば、私のほうではちょっとしただんなさんだったんですよ。いまは二・五ヘクタール層でどんどん減少しているのです。それで、二・五ヘクタールあってもめしが食えないというような状況が皆さんの家計費調査の中にも出ているんだな。一体何ヘクタールあればめしを食えるのかな。おたくの農政の中では、もう全く目標も希望も持てないということが現実の姿としてあるということについて、どうお考えか、お聞きしたいと思うのです。
  145. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  経営規模による家計費充足率というような点からいろいろな御指摘があるわけでございますが、農業白書なりあるいは農家経済調査等でも明らかなように、経営規模としては零細な農家も、一方では兼業の機会等がございまして、農家所得としては、あるいは世帯員一人当たりの家計費は高いという面があるわけでございます。もちろん、それは、農業で食えると申しますか、それが問題であるというような御指摘があるわけでございますが、とれについては、食える食えないという問題については、他産業部門の勤労者等の所得との相対関係、生活水準も社会的な一つの水準でございますので、それらとの関係で、他産業部門の賃金が最近までのような大きな上昇をいたしますと、規模としてもこれは逐次大きくならざるを得ないという面があることは事実でございます。
  146. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農業担当者としてはまことに自信のないような御答弁に聞いたわけでありますが、いまなぜ長々とこういう問題を私が聞いたかと言うと、つまり、農業白書の中に「我が国農業が激変する内外諸情勢の変化に対応しつつ食料の安定的供給という役割を果たしていくことは、ますます容易でない状態になりつつある。」という指摘があるわけだな。つまり、皆さんの総合農政の行きつくところがこういう状態に追いやった、ここのところがまことに重大だと思うから、いまいろいろと例を引いてこの問題を出したわけであります。  しかし、それだけで農業者年金の問題に入らないわけにはいきませんからあれですけれども、何から何までみんなそういうふうに裏目裏目に出るということは、根本的にこれに手を入れない限り——農業者年金にしてもしかりだと思うのですが、あらためてこの農業者年金についてまずお伺いするとするならば、この年金の政策目標といいますか、この年金の目的といいますか、これをあらためてお知らせいただきたいと思うわけです。
  147. 大山一生

    大山政府委員 この法律目的、ねらいと申しますと、これは法律が四十六年にできました当時と全く変わらないわけでありますけれども、やはり、日本農業土地なり資本においてきわめて零細性を持っている。いずれにしても、その問題を克服しない限りにおいては日本農業は成り立たぬというふうな基本的理念の中におきまして、各種の構造改善事業でありますとか、団地対策でありますとか、あるいは農地制度でありますとか、ざらに今度出しております賃借権の集積による農振法の改正でありますとか、諸般の政策をいろいろと遂行しているわけでございますけれども、その中におきまして、いわば農家経営移譲なり、優秀な後継者の育成あるいは規模拡大ということを年金手法を通じて実現させるということを本来的なねらいとしてこの年金法が成立されているわけであります。したがって、年金の基本的なかっこうといたしましては、経営移譲年金ということが中核になるわけでございますけれども、ただ、それらの問題が老後生活と結びつくというようなこともありまして、かりに経営移譲をしない方についても老齢年金も支給する、こういうふうなかっこうでこの法律の制度ができているわけでございます。
  148. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、年金を通じて経営移譲をして、規模拡大をはかる、あるいはこの年金を通じて農業政策の考え方も十分に生かす、そしてりっぱな農業をつくるのだというふうに理解していいですね。一言で言えば、そういうことですね。
  149. 大山一生

    大山政府委員 そのとおりでございます。
  150. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 ところで、私の手元に、いまの資料としては古いのですが、昭和四十七年八月一日の、つまり農業者年金が発足して間もないころの、「農業者年金当然加入資格者の未加入理由」という農林省が調査したアンケートがございます。農業者年金に入りたくないという理由を調査したアンケートがあるわけですが、それを見ますと、「制度又は内容を知らない」というのが四四・九%ある。約四五%ですね。当時は、先ほどの質問のお答えにもあったように、まだ十分内容を知らなかったのかもわからない。だから、この部分が四五%あったにしてもふしぎではないと思うのだな。ところが、この四十七年の時点で、入らない人の理由を各項目に書いてあるのですが、どういう理由かというと、「いずれは離農する」だから入らないのだというのが三・八%ある。それから、「農業の将来が不安だ」というのが二・四%、「どんないいものをやられても保険料の納付ができない」というのが六・五%、「出稼があり給付の見込がない」が三・八%、「経営移譲ができない」というものが六・五%。そうすると、入らない人たちが当時として三四%もある。こういうことを見れば、四十七年から今日まで何年かたっていますから、制度をわかった人たちが——あの当時はわからない人が四五%もおったわけです。いまの農業者年金の中身がわかればますます入らないという人がふえるのじゃないかと私は心配しておるのです。しかも、この時点ですでに農業の危機がこういうかっこうであらわれておる。このことについて、おたくの御見解をお伺いさせていただきたいと思うのです。
  151. 大山一生

    大山政府委員 確かに、あのときの調査の結果、これは先生の御指摘と数字的には何ら異なるものはないわけでございます。しかし、最近の加入状況を見ておりますと、あるいは基金において行なわれます農地の一括移転といいますか、売買といいますか、こういうふうな実態を見ておりましても、農業地帯と言われております北海道なり東北——東北の中でも、たとえば青森等は非常に低いわけでございますけれども、あるいは九州といったようなところにおきましては加入率が比較的いいというふうな問題があるわけでございます。われわれといたしましては、農業者年金というものは、農家らしい農家ということを頭に置いてやっておるというようなこともあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、いままでの加入の実態というものが、農業地帯を中心にして加入率が高いということに一つの意味があるというふうに考えるわけでございます。しかしながら、それ以外の地帯におきましても、それなりにこの加入率の向上には最善の努力を尽くさねばならぬというふうにわれわれとしては考えるわけでございますけれども、先生の言われましたような意味づけというようなことで言うならば、やはり、いまの時点においては農業地帯において意識が非常に高い、この点を強調するわけでございます。
  152. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 すでに四十七年段階で農業の破壊と農業への不安を訴えて、せっかく政府がこういうものをつくったから入りなさいと言っても入らない人がだいぶおったということですね。それからさらに年月を経過する中で、農業が一そう深刻に破壊されてきておるという経過を踏まえると同時に、この年金の中身もいまはだいぶわかっておるわけでありますから、そういうことを見れば、この農業者年金というものは、いま皆さんが法案として提出された程度の手直しで、はたして農民が魅力あるものとして飛びついてくるかどうか、私は、非常に疑問があると思うわけであります。  先ほどの質問にもありましたように、掛け金の問題、あるいは給付の問題、そういう点で根本的に考え方を改めていくということでなければならないと思うわけでありますが、質問としてお聞きしたいことは、そういう状況の中で、今回皆さんが法案で出された給付額の算定の基礎というか、これは一体どういう算定をしてきまったのか、また、その方式はどのように計算されたのか、実績として出されたのか、そこら辺についてお聞きしたいと思うのです。
  153. 大山一生

    大山政府委員 四十六年にこの法律ができたわけでございます。そしていままでに三年の経過を経ている、こういうふうな中でございまして、現実の離農、経営移譲年金というのは五十一年の一月から支給される、こういうふうな事態の中にありますので、われわれは、先ほど来申し上げておりますように、法律改正ということにつきましては、給付水準を上げるとか、あるいはスライド制を入れるとか、あるいは出かせぎ者に対する対策を講ずるとか、こういったようなことを重点にしているわけでございます。したがいまして、年金額のアップの考え方につきましても、当初この法律ができましたときの思想を継承しているわけでございます。  具体的に申し上げますと、要するに、農業者年金制度ということにつきましては、制度を効果あらしめるためには厚生年金並みの水準ということが必要であろうというような国民年金審議会の答申もあるわけでございます。そこで、今度の場合におきましても、この改正が最初に適用される四十九年におきます当然加入者の農業所得というものを、最近におきます農業所得の実績から推定いたしまして、この所得をもって厚生年金に加入するとすれば幾ら年金が支給されるかという計算を行ないました。その結果出てまいりました水準というものと厚生年金の引き上げ率といったようなものを総合勘案いたしまして、給付水準を現行水準の二・二倍に引き上げる、こういうふうにいたしたわけでございます。
  154. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農業所得の実績の中から給付額を割り出したというお話しでありますね。そうすると、農業所得の出し方が問題なわけでありますが、たとえば農業所得というものは、われわれの一般的見解では、農業の粗収入というか、粗収益ですね。それからいろいろな経費を引いて、残ったものが農業収入だというふうに理解するわけですが、そういう農業所得であるならば、その中にいろいろな要素、ファクターが計算の中に入っていなければならない。たとえば農業資材というものを農業所得の中にどれだけのアップとしておたくが計算の中に見込んだのか、そういうことがいろいろこの数式の中に出てこなければならないだろうと思うのですね。そういう実態は何となっているか、お知らせいただきたいと思うのです。
  155. 大山一生

    大山政府委員 ものの考え方といたしまして、年金等の問題といたしましては、長い一つの傾向値というものから農業所得を推定する。これはほかの場合の所得も同様の方法をとるはずでございますけれども、そういうことからいたしまして、直線回帰でありますとか、あるいは三次曲線の回帰でありますとか、あるいは米価据え置き前におきます平均の伸び率でありますとか、あるいは最近の平均伸び率でありますとか、こういったようないろいろなかっこうにおきまして一つの傾向線をはじき出しまして、その傾向線の中から、四十九年度は大体どれくらいになるかというふうなことをはじいてみたわけであります。  そこで、その場合に、最近の事態といたしましては、生産調整奨励金という問題があるわけでございますので、それを含めた場合、あるいはそれを含めない場合——われわれは含めた場合で考えているわけでございますが、それに生産奨励金を含めたようなことを前提といたしまして、先ほど申し上げましたようないろいろの方式を使いまして、そこで一つ所得をはじき出す。そして、その所得につきまして、先ほど申し上げましたように厚生年金に加入すれば、と、こういうことでございますので、最近のボーナスというものも入れると、大体年間十五・七カ月分になるわけでございますので、それを十五・七で割ると月額が出てまいる。その月額が先ほど来申し上げておりますようにおおむね五万七千円から八万三千円、こういうふうなことになりまして、それから二十五年加入の場合というかっこうで年金を出してまいりまして、現在水準と比較してみると一・七倍から二・三倍の範囲に入る。それで、先ほど申し上げましたように、厚生年金の引き上げ率等を入れて二・二倍というふうな上げ方をしたわけでございます。この上げ方なり考え方というのは三年前の考え方と同様でございます。
  156. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、農業所得と言うから、農家のそういう実態に見合ったものだと思っておったのですが、農業所得というものはいろいろな考え方でどんどん変わるのですか。
  157. 大山一生

    大山政府委員 農業所得をはじく場合に、たとえば直線回帰でもって傾向を見る場合、あるいは三次曲線で傾向を見る場合、これはおのずから当然変わってくるわけでございます。直線回帰は、過去の所得というものが直線的に引き延ばされるということになりますので、そういうふうなことが一つの方向として適当なときもありましょうし、あるいは三次曲線というように、初期は上がり、中期が横ばいになり、そしてまた最近は上昇しているというようなことがあるならば、そちらのほうが現実に近い線も出てまいる。いずれにいたしましても、過去の傾向値というものから将来を推計する方法として、直線回帰なり、三次曲線なり、こういうものを使っているわけでございます。
  158. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、それは机上の空論というか、机上の計算ですな。実態に即しないもの、つまり、傾向線だとか、形似線だとか、そういう状況の中であらわれた指数であって、お役人さんの机上の計算だということですね。だから、したがって、そういう農家の実態のいろいろな諸掛かりだとか、そういうもののアップ率だとか、そういうものは全く入っておらないということでいいですね。
  159. 大山一生

    大山政府委員 こういう年金の問題として所得を考えますときに、特に豊かな年金と言えますか、どうですか。そういうものを考える場合に、一つの傾向値で示していく場合に、極端なものは当然はずされるというかっこうで出されてくる結果というものについては、年金というような相当長期にわたる問題への一つのアプローチのしかたとしてはこれ以外の方法はないんじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。
  160. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それではついでに聞きますが、保険料の算定の基準というか、基礎というものは一体どうしてはじいたのですか。
  161. 大山一生

    大山政府委員 保険料につきましては、ただいま申し上げましたように、当初と考え方は変わっていないわけでございますが、給付水準が二・二倍に上がったということでございます。そして、これにつきましては、本来的には過去の積み残し分があるわけでございますので、完全積み立て方式をとって考えるならば当然二・七倍に上げなければならぬということでございます。ただ、二・七倍まで最初から上げるということについては、これは農家負担に及ぼす影響も大きいであろうということで、とりあえず初年度は二・二倍に据え置いた、こういうことでございます。
  162. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、給付額が二・二倍だから、保険料も二・二倍だ。しかし、支払い能力というような面から、農業収入によって給付のあれをきめるわけですから、たとえば家計費だが、われわれは保険料なんかを出すときは、農家の家計費だとか、その増加率、それがどれくらい加味されたか、そういう中で保険料が何ぼだと適当なのかというようなことが当然出されてこなければならないと思いますが、そういう家計費の増加率だとかというものは、これも全く考えておらないということですか。
  163. 大山一生

    大山政府委員 いまわれわれの考えております二・二倍に引き上げた場合、これは月額にいたしまして千六百五十円ということになるわけでございます。それで、そのほかに国民年金の定額分が千百円ございます。さらに、付加給付分としてのものが四百円で、本人の負担というかっこうでものを見ますと、三千百五十円を負担するということになるわけでございます。  この負担というものにつきまして、農業所得との関係で言って大体どの程度のウエートを占めるかということを試算してみますと、これは実態的な問題として比較したほうがいいということで、四十七年度の農業所得月額は七万四千円でございますけれども、いま申し上げました本人負担額というものがどの程度のウエートを占めるかというと、四・二%に相なるわけでございます。各種の公的年金というものの本人負担の保険料率というものが、現状におきまして大体三・八から四・九という範囲に入っておるということから言って、われわれといたしましては、これが他と一応均衡のとれたものであろうというふうに考えた次第でございます。  いま申し上げましたのは本人負担という場合でございますけれども、御存じのように、妻の国民年金も含めました農家といいますか、いわば農家という意味の保険料負担ということを見てまいりますと、要するに、負担といたしましては四千二百五十円になるわけでございますけれども、この負担額が農家所得月額にどの程度占めるかということになりますと、四十七年度の農家所得は月額が十五万五千円でございますので、二・七%程度である。それならば、この意味においても十分負担し得るであろうというふうなことで判断したような次第でございます。
  164. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、家計費やその増加率というのは保険料の算定の中には考慮されたというのですか。全くされていないのですか。どっちですか。やはり同じく机の上でおたくがはじいただけにすぎないものですか。そこをはっきりしてください。
  165. 大山一生

    大山政府委員 先ほど来のあれにもございましたけれども、家計費ということとの関連において出るならば、農家所得あっての家計費であるというふうな意味におきまして、農家所得というものを、先ほど申し上げたようなふうに比較したわけでございます。
  166. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 給付は農業所得が基準で、この掛け金は農家所得が基準だということはおかしいじゃないですか。
  167. 大山一生

    大山政府委員 先ほど申し上げましたように、本人負担分につきましては、農業所得と対比して、これが他の年金とどうであるかということを見ているわけでございます。それに妻の国民年金も含めたいわゆる農家という保険負担ということでございますので、これは農家負担、農家所得といいますかそれと比較した、こういうことでございます。
  168. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は頭が悪いからよくわかりませんけれども、たとえばいまの掛け金が、国民年金を合わせれば、この新法でいきますと年間五万何ぼになるね。それですと、いまの農家の実態からして払えるとあなたは思うのですか。これは簡単に支払いができるという状況の掛け金ですか。
  169. 大山一生

    大山政府委員 先生の言われました年額五万一千円、これはまさに先ほど私が申しました月額四千二百五十円ということでございまして、先ほど来申し上げたような趣旨におきまして、これは十分負担に耐え得るものというふうに考えるわけでございます。
  170. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だって、あなたのところで発表した「年次経営耕地規模別にみた農業所得家計費の推移」というデータを私は持っていますが、これで見ますと、昭和三十五年以来、二ヘクタール以上を除いて、どの農家農業所得で家計費をまかなえない状況があるわけですね。ところが、昭和四十三年から四十四年以降は、二ヘクタール以上でも家計費だけで農業所得をオーバーしているのですね。そうですね。四十七年なんかは、たとえば農業者年金の該当者〇・五ヘクタールから一ヘクタールの方が、農業所得では三一・八%しか占めない。家計費のほうがずっと多くなっているのですね。一ヘクタールから一・五ヘクタールで五六・六%しか占めない。一・五ヘクタールから二ヘクタールで七〇・五%でしょう。二ヘクタール以上で八六・一%なんだな。これによると、五万何ぼというのは、おたくで出した資料で見る限りにおいては払えないでしょう。だから、その分は農家所得で見ろと言ったって、農業所得で食えるようにするというのがおたくの基本的な考え方でしょう。それが基本法農政の柱だし、だから、ここの部分だけおかしく言い変えるのはおかしいじゃないですか。
  171. 大山一生

    大山政府委員 先生の言われます点を突き詰めてまいりますならば、農業者年金に階層制を入れろというお話しに相なろうかと思います。ただ、ある程度大きい規模で、農業だけで専業するというかっこうというものを一つ考えるならば、年金の場合におきましても、階層制を入れるというかっこうにおいてこれに対応する必要がある、あるいはそれとの関係を考えるべきである、こういう御意見に終局的にはなろうかと思っております。  そこで、農業者年金につきましても、小委員会等におきまして、この制度改正にあたって各方面の御意見を承った中におきましても、その階層制の導入という問題については確かに御意見があったわけでございます。ただ、その問題につきましては、保険技術的に非常にむずかしい問題も含んでいるというようなことで、将来の懸案事項ということにいたしたようなわけでございまして、現在のところは、当然加入につきましては五反以上ということに、一応農家らしい農家というふうにして、現在は平均してものの考え方をしている、こういうことでございます。
  172. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 別に階層制の導入なんということを私は言っていませんよ。いま、農家らしい農家が全部だめになっているでしょう。標準農家なんか見ましても、農業収入が家計費の半分にも満たないでしょう。こういう状況の中で、そういう実態を考えないで、掛け金を、給付が二・二倍だからこっちも二・二倍だなんということは、実態をまさに無視したものと言わざるを得ないのじゃないでしょうか。
  173. 大山一生

    大山政府委員 先生の言われますようなことでいくならば、逆に給付率を下げろという御意見にもなろうかというふうに思いますけれども、いずれにいたしましても、われわれといたしましては、先ほど来申し上げましたような、要するに本人負担についての他の公的年金とのバランスというようなことから、この程度はやむを得ないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  174. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなたは、言うにも事欠くということばがありますけれども、私の質問になればどうして給付率を下げなければならないのか。国庫の負担を大きくせよということを言っているのでしょう。それはわが党のいままで質問を展開してきた経緯から見たって、国がこれをもっとめんどうを見る以外にないのじゃないかということを申し上げているのです。日本農業を今日の破壊に持ち込んだのもみんなそこに原因があるから言っているのですよ。それを何ぼ政府は頭がいいか知らぬけれども、逆にそうすれば給付率も下げなければならないなんという論法に展開していくことは、あなたのほうは全く正直じゃない。お役人さんの独自の発想といいますか、好んでそういうふうな考え方をする中において日本農民がいま苦しめられてきている、そういうことを申し上げておきたいと思います。  そうすると、あなたの発想から言えば、規模が何ぼになれば飯が食えるのですか。何ヘクタールあればこれからの農業は飯が食えるのですか。現状の中ではみな食えなくなっているんだ。おたくの家計費のこれから見たってそうです。農業所得で飯が食えるというのは何ヘクタールあればいいのですか。ひとつ、はっきり教えてください。国民に全部私は知らせますから。
  175. 大山一生

    大山政府委員 考え方といたしましては、先ほど私が申し上げるときに、要するに給付というものの中身の中で、いわば料金といいますか、掛け金というものと給付という関係だけを申し上げてちょっと誤解を与えたことは恐縮でございますけれども、もちろん国庫補助、助成ということも当然考えなければならぬ問題だと思っています。ただ、現在の制度におきましても、今度の場合に四二・九%の補助に相なるわけでございます。これはいままで四二・二%だったということから言いますと上がっておりますし、他の公的年金から比較いたしましても、これはかなり高率ということが言えるのではないだろうかというふうに考えるようなわけでございます。  たとえば公的年金の国庫負担率というかっこうで見ますと、厚年の場合には二〇%、あるいは国家公務員共済組合とか、あるいは公共企業体職員等共済組合、地方公務員等共済組合、これが一五%、あるいは農業団体共済、あるいは私学、これが一八%、あるいは国年の場合に定額分が三分の一、それから付加分二五というようなことから見るならば、これはかなり高い補助率であろうということで、われわれのいま現在におきます努力の限界としては、ことしの制度としてはこの程度でまずがまんしなければならぬだろう、こういうふうに思うわけでございまして、これを前提といたしますと先ほど言ったような結果にならざるを得ないということでございます。
  176. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、農家の実態なんということはてんで頭にないということですね。  そとで、いまの御答弁を聞いておれば、ほかの国庫補助よりも農業者年金は非常に高い、これは最高なものだというような言い方ですけれども、私は、むしろ、逆に、低いものを上げて、これにならわしていくということがたてまえとして当然であるというふうに思うわけです。しかし、そのことだけで論議しているわけにもいかないわけですけれども、さっき言ったように、農業所得だけで飯を食っていくことができるようにするのだということが基本的な政府の立場であるが、今日こういう状況をつくり上げているわけでありますから、そうすると、一体何ヘクタールなら飯を食えるのか。皆さんのほうではこれを明らかにする責任があると思うのです。
  177. 大山一生

    大山政府委員 何ヘクタールで飯が食えるかという御質問でございますけれども、これは非常にむずかしい問題だと思います。  自立経営農家論が先ほど来出ているわけでございますけれども、自立経営農家の中で現在拡大傾向にあるのは、施設園芸とかいうようなものを中心にして起こっている。そして、土地農業というか、そういうものについては、それが現状においては規模拡大現実の問題としてなかなかできないというところから、自立経営農家というもののウエートが高くなっていないという現状にあるわけでございます。  そこで、何反、何町あれば食っていけるんだという話でございますけれども、これはなかなかむずかしい問題でありますし、また、作物によっても違ってまいるというようなこともございますので、いまの段階で何ヘクタールあればあらゆる時点における自立経営たり得る面積であるかという御質問に対しましては、いまのところ明確な御答弁をする材料を持ち合わせておりません。
  178. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、いままでの経過の中ではもう全然だめなんだ、二ヘクタール以上も農業だけじゃ飯が食えないんだという状況が出ていますね。そして、だから農外所得と合わせればその程度保険料は払えるんだという発想というか、言い方でありますけれども、「農家の経済の動向」という農林省の資料を見ますと、たとえば農業年金の当然加入者の平均の所得農業所得農家所得とみんな書いてありますが、それを含めて一町歩から一町五反の層ですが、これの農家経済余剰が四十七年度は三十七万一千円あることになっているのです。三十七万一千円だと、農機具一台買えば吹っ飛んでしまうようなものなんですね。これが農家経済ですよ。これが農家収入ですね。だから、非常に貧しいものだ。おたくは、農業収入が少ないところは農外収入と合わせて農家収入としてはこれだけりっぱになったと言うけれども、平均した農業者らしい農家で、経済余剰が年間三十七万円しか出ていないという状況の中で五万何ぼも年間保険料を取るということはどれだけひどいことだかということをお考えになったことがありますか。
  179. 大山一生

    大山政府委員 四十七年におきます経営規模別の農家経済におきます五反以上の層における農家経済余剰ということならば、三、四十万というような結果が出ているわけでございます。それで、現金収入と現金支出というかっこうの話としてつかまえる場合においては、たとえば農機具を現金が支払うということになれば、確かにこれはたいへんな問題でございますけれども、その辺の問題については、大半が融資ということで行なわれているというようなこともあるわけでございまして、年間五万円という負担がこれによって不可能であるというふうにはわれわれ考えないわけでございます。
  180. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 考えるか考えないかは、それはあなたのかってでありますけれども、実態から言って、農業所得ではもうすでに家計費の半分もまかなえない状態ですね。農家所得は、農外を含めて、しかも経済余剰というものは非常にわずかなものだ。あなたは四十万円とか言うが、四十八年度は四十万円あったかもわかりませんが、それにしたって、いまの経済のこの狂乱の中ではどれだけの位置づけを占めるか。その中から五万一千円持っていかれるということは、二・二倍だから二・二倍としゃくし定木に言えばそれだけだけれども、ほとんど農家の実態から割り出していないというところに大きな問題があると私は思うのです。  そこで聞くわけですけれども、しからば、今度の保険料として千六百五十円という額が出ているのですが、これがいま妥当だということですか。妥当だとするならば、妥当だという理由は一体何ですか。
  181. 大山一生

    大山政府委員 千六百五十円の妥当性という話で、また先ほどの話に返るわけでございますけれども、この農業者年金の保険料千六百五十円に国民年金の定額分あるいは付加給付分を入れて、本人の負担分は三千百五十円になる。そこで、四十七年の農業所得が七万四千円でございます。その後の伸びということもございますけれども、かりに、絶対値として出ております農業所得の月額ということで対比しますと四・二%になる。先ほど来申し上げましたように、農業所得の伸びがあるということになりますと、この四・二はさらに下がってまいるということになるわけでございます。  一方、他の公的年金の本人負担保険料率というのは三・八ないし四・九というパーセントであるということから見るならば、これは均衡のとれたものであろうというふうに考えるわけでございます。
  182. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなた方は、農業の問題では、農業所得だけで食える農家をつくるのだと言っているのですね。その一方では、農外所得を想定して保険料をきめていくのだというような考え方は、だれに聞かしてもやっぱり説得力を持たないと思う。だから、私は、少なくとも農業所得の成り立ち得る範囲内で、つまり、農業所得の範囲内で保険料を考えるべきだということを申し上げたいわけです。したがって、それをもう少しまともなことばで言うならば、農家の置かれた現状から給付額を二・二倍に引き上げることは当然だが、保険料の引き上げは認められない、政府がみずから政策としてつくった年金であれば、このことは、農民が最低望んでいるところの食える年金、大幅な国庫負担、すなわち少なくとも月額七百五十円を据え置くべきであろうということ、これを私は申し上げたいわけですが、この点についてはどういう御見解を持っていますか。
  183. 大山一生

    大山政府委員 国民というかっこうにおいて、老齢年金といいますか、老後生活を安定させるということであるならば、農業者であろうと、そうでなかろうと、これはやはり国民年金全体で考えるべき問題であろうというふうに考えるわけでございます。  そこで、農業者年金につきましては、先ほど来申し上げましたような政策的な問題を踏まえまして、経営移譲ということを支給要件とする年金制度というふうに仕組んでいるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、老後生活ということと結びつくというかっこうから言うならば、政策的なものであるといっても、本人の負担はやはりあってしかるべきであろうというふうに思うわけでございます。  そこで、その本人の負担でございますけれども、現在のものを据え置くべきであるという御意見でございますけれども、これは非常にむずかしいことであろうというふうに考える次第でございまして、給付が上がれば本人の負担もやはり上がらざるを得ない、また、上がってもやむを得ないことであろうというふうに考えるわけでございます。
  184. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いままで、保険の給付と保険料についていろいろ質問したわけでありますが、何やらすっきりしないものが残るわけですね。何やらどころじゃなくて、一つの大きな問題がまだ残っているというふうに私たちは考えておるわけでありますが、時間の関係でこれ以上詰めるのは省略いたします。  先ほどの質問者も話しておったのですが、この年金の運用ですね。従来からの運用状況の中に多分に問題がありそうだというお話しがあったのですが、私もそんな感じがするのですけれども、問題みたいなものが何もなくて、全く円滑にいっているのかどうか、そこら辺をお答えいただきたいと思うのです。
  185. 大山一生

    大山政府委員 先ほど申し上げましたような運営方針のもとで、この基金の積み立て金は現在運用しているわけでございます。いずれにいたしましても、農家から預かっている金、拠出された保険料ということでございますので、安全かつ効率的に運用するということであるとともに、農村農業近代化等のために十分に還元するという方針で現在運用しているような次第でございます。  先ほど申し上げましたように、現在、農林債券も含めまして、いわば農村に還元している額というものは、農民の積み立てております保険料を上回っているわけでございます。これの運用をめぐりましていろいろの話があるというお話しでございますけれども、われわれとしては、そういう話を聞いておりません。会計検査院等における検査におきましてもそういうふうな指摘はないわけでございます。
  186. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 先ほどの質問者に対する答弁の中にも、たとえば農地を売買する農地売買勘定への貸し付けとか、あるいは融資勘定への貸し付けとか、両方合わせて五・四%であったということがあったようでありますが、そうすると、ほかのやつは一体どういうふうに貸しているのでしょうか。
  187. 大山一生

    大山政府委員 実績といたしましては、先ほど申し上げましたように、十八億という金がそういうふうな売買勘定を通じまして貸し付けなりに回っているわけでございます。それで、あとの金につきましては、農林債券の購入といったような、有価証券による運用というかっこうにおきまして、安全かつ効率的な運用をはかっていくということでございます。
  188. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農林債券等の有価証券に回して安全かつ効率的に運用しているんだと言うが、農林債券等と言うからには、ほかのものもあると思うのですが、農林債券というのはいま何ぼあって、ほかのものはどのようにあるのですか。ちょっとお知らせいただきたいと思います。
  189. 大山一生

    大山政府委員 農林債券が百三十六億あるわけでございますが、そのほかに興銀、長銀、それから不動産債券あるいは電電債、こういうものもあるわけでございます。  お断わりしておきますけれども、農林債券というのは農村に還元するということで、新規発行ものを購入するということでございますが、それ以外の債券につきましては、いわば安全かつ効率的に運用するということで、それによって運用益というものが、後ほどの再計算期のときにおきます負担の軽減になるということもございますので、期近ものといいますか、そういうものによって運用する、こういうことでやっているわけでございます。
  190. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農林債券に百三十六億か何か、農民のためになるかっこうでやっているということですが、この百三十六億というのは、いまの総資産の何%に当たるのですか。
  191. 大山一生

    大山政府委員 ちょっと聞きそこねたのでございますけれども、資産がいま申し上げましたように三百二十八億、その中で農林債券が百三十六億ということでございますので、約三割ということでございます。
  192. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 約三割ですね。そうすると、残りの七割が農民の利益の外側に使われている。興銀債券、長銀債券その他、これは効率かつ安全だというお話しでありましたが、興銀債券だとか長銀債券というのは、大体どういうところに金を出しているということになるのですか。これは大企業の貸し出しのほうじゃないかと、私はしろうと考えで思いますけれども、どうでしょうか。
  193. 大山一生

    大山政府委員 先ほど、農林債券は新規発行ものを買いますということを申し上げたわけでございまして、それ以外の債券につきましては期近ものを買うわけでございます。市場に出ている期近もの、逆に言うと、それによって効率的な運用をはかるということを趣旨としているわけでございます。
  194. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いや、私が聞いたのは、興銀債券の性格は一体何か、長銀債券の性格は一体何かということを聞いたのです。
  195. 大山一生

    大山政府委員 興銀でなければならぬことは一つもないわけでございまして、とにかく、確実な債券の期近ものを買う中で効率的に運用する手段としてたまたま興銀があったというだけでございます。したがって、興銀債券を買わねばならぬ理由は全然ございません。われわれのほうといいますか、基金のほうといたしましては、とにかく有利に回転させねばならぬということからこういうふうな運用をしているわけでございます。
  196. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私の調べたところによりますと、有価証券の中に興銀債券が四・四%、長銀債券が一一%、不動産債券が五・六%ありますね。あるいは電電債が一一・一%ですね。つまり、農民のためにこれを使えということ、当初からおもにそうするということが、国会の決議ですか何ですか、そういうものにあったけれども、実際は、使われておるのが三十何%で、あとはいまはやりの列島改造路線に乗るようなものに、期近ものであろうと、短期であろうと、長期であろうと、使われている。これは運用の正しいあり方という面から見るならば、また、われわれがこれを国会で決議した立場から見るならば、ただ単に効率的な運用ということだけで解消することができるものだろうかというようにあらためて疑問に思うのですが、この点についてはどうですか。
  197. 大山一生

    大山政府委員 この法律ができましたときの両院の附帯決議は、保険料積み立て金の運用にあたっては、農業近代化等のために十分還元しなければならぬということでございます。保険料の積み立て金は百五十三億でございます。農林債券を含めました農地売買勘定その他を入れますと百五十四億でございまして、その意味から言いますならば、何らこの附帯決議に反するものではないと思っております。  ただ、先ほど来しつこく申し上げますように、なるべくそういうかっこうで保険料の積み立て金というものが農村に還元されるようなかっこうをとる。これはもちろん、われわれとしてといいますか、基金として当然やらねばならぬことでございますけれども、それとともに、なるべく効率的にも運用するかっこうの中で、将来財政町計算期のときに農民から出していただく金を減らすということのために利用しなければならぬということから言いますならば、その他のことに使う、それも安全なものであるならば許されることであろう、こういうふうに考えるわけでございます。
  198. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農林債券のほうが七割で、あとは三割というのだったら何ぼか話はわかるのですが、逆なんだね。しかも、長期的に見れば、あるいは大局的に見れば、そっちのほうが農民のためになるんだという言い方というものは、この趣旨から見ればやはりはずれているんじゃないか。効率的な方法あるいは運用の妙を発揮したいというならば、最もこれにつながるのは農民に貸すことだと思うのです。ところが、農民なんというのは信用がないのかどうか知りませんけれどもね。あるいは農業団体でもけっこうですよ。そういう機関が政府に別にあるからそんなものは要らないと言えばそれまでですけれども、いま農業は、たとえば畜産の例を見ても、たいへんな状況におちいっているわけですね。これは効率が悪いから貸さないのか、大資本のほうがよりうまく運用できるからというのか、そこら辺はどうなんですか。
  199. 大山一生

    大山政府委員 先ほど総額で申し上げたので、ちょっと誤解を与えたと思いますからもう一ぺん申し上げますと、有価証券としての運用は二百四十九億でございます。その中で百三十六億が農林債券ということでございますので、五割五分から六割ぐらいのところが農林債券でございます。
  200. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、農民並びに農業関係者のほうに、農林債券もさることながらいろいろな債券もあると言うけれども、直接に援助する手だてをいまいろいろ講ずる必要がある情勢ではないだろうか。それはやはり不安でそういうことをしないのかというようなことを聞きたいということと、たとえば興銀だとか長銀というのは利子も非常に高いだろうと思うのですね。これはあなたのほうで回すわけですからね。これは何分くらいの利子になっているものですか。ちょっと参考までにお知らせいただきたいと思うのです。
  201. 大山一生

    大山政府委員 興銀のものはちょっとわかりませんけれども、要するに、ここでやるのは期近ものを買うわけでございますので、発行金利が何分であるということは直接関係なく運用するわけでございます。  それから、先ほど、農民に返せ、全部農村に貸し付ければどうだというお話しでございますけれども、その点につきましては、農地等の買い入れ、売り渡し業務につきましては、全体の中の二割以内ということに財務会計令でなっておるようなわけでございますし、やはり、安全であるとともに、ある程度は効率的な運用ということも、究極的には、農民負担といいますか、農民の掛け金にはね返ってくる問題でありますので、ある程度はそういう効率的な運用ということによる部分もあってしかるべきではないかというふうに考えるわけでございます。
  202. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いまいろいろ当面の問題を質問したわけでありますが、ちょうど私の質問時間が来たようでありますのでこれでやめるわけでありますが、せっかくの農業者年金でありますけれども、やはり加入者が少ないですね。五百何十万戸の農家の中に現在百万戸だ。だから、掛け金も非常に高くつくということもあるでしょうし、それに対して国庫補助は思うにまかせない。むしろ、保険料を安くすれば給付を減らさなければならないなどと、あたかも共産党が、私がそんなことを言ったような言い方までするという発想ですね。これは非常に問題があると思うわけです。あわせて加入できないのが三百万戸もあるという事実も含めて、これからの社会状況の中ではほんとうに社会保障を必要とする人たちがどんどんふえておるし、この人たちはどんどん老齢化しておる。政策年金という名に値するものとしては、いまの法案というものは望むべくもないというか、実質を伴わないものだというふうに酷評するつもりは私はありませんけれども、実情はほど遠いものであるというふうに考えているわけです。  御承知かと思いますが、日本共産党は、この年金を、農業者年金だとか、あの年金、この年金と八つもあげるようなことでなくて、ほんとうに国民年金と労働者年金の二本建てにして、大幅に企業主の負担と国庫負担をふやして、社会保障を一そう充実させなければいけないということをかねがね主張しているわけでありますけれども、これに対する当局の御見解をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  203. 大山一生

    大山政府委員 いろいろの意見があると思います。年金につきましても、年金通算法というような法律もあるわけでございまして、各種年金の間の均衡をとるということはやはり今後の一つの課題であろうというふうに考えるわけでございます。いずれにいたしましても各種年金については、今後とも各方面の意見を聞く中において改善すべきものは改善してまいりたい、こういうふうに考えるわけでございますが、何ぶんにいたしましても、発足後まだ三年しかたたぬということでございますので、基本的な考え方につきましては、現在の考え方を踏襲してとりあえず進めてまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  204. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 では、終わります。
  205. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は、明二十四日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時五分散会