○角屋
委員 私は、ただいま議題となりました
漁業災害補償法の一部を改正する
法律案、
漁業近代化資金助成法及び
中小漁業融資保証法の一部を改正する
法律案、及び
沿岸漁場整備開発法案に対する附帯
決議につき、自由民主党、
日本社会党、
日本共産党・革新共同、公明党、民社党の五党を
代表して、その趣旨を御
説明申し上げます。
案文はお手元に配付したとおりでありますので、その朗読は省略いたします。
まず、
漁業災害補償法関係について申し上げます。
今回の法改正は、過去二カ年に及ぶ
漁業共済制度検討協議会において行なわれた検討結果をまとめた答申に盛られた全項目にわたり、これを取り入れ制度改正の実現をはかるためのものでありまして、長年
漁民をはじめ
関係者の強い要望のものばかりであります。
本
委員会の六日間にわたる質疑によりまして、本改正案に対するさらに改善を要すべき問題点が明確になってまいったのであります。
以下それぞれの項目について御
説明いたします。
その一は、漁獲共済における共済限度額と養殖共済及び漁具共済における共済価額の定め方についてであります。
現行制度におきましては、共済対象
漁業を契約者ごとに漁獲金額の変動の態様に応じ、安定型、一般型、変動型、
上昇型に分類し、この限度額率をそれぞれ九〇%、八〇%、七〇%、九〇%と定めておりましたものを、今回の改正案におきましては、
漁業種類別に一律に定める金額修正係数を乗じたものを基準漁獲金額として九〇%、八五%、八〇%、七五%、七〇%と定めることといたしたのであります。これによりまして契約者ごとに限度額率を算定するという煩瑣な従来の事務処理が相当合理化、単純化されるものとなるのでありますが、最近の
物価の
暴騰が
漁業用燃料油をはじめ諸
資材価格に重大な
影響を与え
漁業経費を圧迫している実情にかんがみまして、共済限度額及び共済価額もこの
物価変動に応じ適正な水準に維持されるようにしなければならないと思うのであります。
その二は、今回漁獲共済のうち二十トン以上の漁船
漁業を除く
漁業につきましては、義務加入制を導入しているのであります。
二十トン以下の漁船
漁業は、そのほとんどが
漁業協同組合の所属
漁業者の所有漁船であります
関係上、今回は二十トン未満の漁船
漁業を義務加入の対象としているのであります。しかしながら、二十トン以上の漁船
漁業につきましても義務加入制を認め共済事業の発展と漁船
漁業の経営の安定をはかるべきであり、また養殖業につきましても集団契約方式及び連合契約方式を採用している
現状にかんがみ、義務加入制の導入を検討すべき段階にきていると思うのであります。
その三は、純共済掛け金に対する国の補助の拡充と補助限度率の撤廃であります。
純共済掛け金に対する国の補助率は、全数加入の場合でも、今回の改正で六五%から三〇%となっており、半数以上の加入においては、最高三〇%から一五%ときわめて低率の補助となっているのであります。これに加えて補助限度率で補助率をさらに低く圧縮しているのであります。補助限度率は最高六五%から四七%となっておりまして、この率をこえて加入しても、そのこえる部分は全額自己負担となるため加入金額が必然的に押えられる結果となり加入の阻害となっているのが実情であります。純掛け金率が低率であることからして補助限度率を早急に撤廃し、加入者の契約金額を引き上げるような
措置を講ずべきであると思うのであります。
その四は、養殖共済においては今回赤潮による被害についても共済金を支払うという特約制度を採用しているのであります。異常な赤潮は、その発生の態様、被害の大きさ等から見て、いわゆる異常災害に属すべきものでありまして、
漁業者の相互救済の範囲を越えるものであります
関係上、本来の共済事業に取り入れて取り扱うべきものではないと考えられるのであります。したがいまして、その掛け金につきましても
漁業者の負担に帰すべきものではない性格のものでありますので、今回の改正法案にあっても、国がその三分の二、地方公共団体がその三分の一を補助することとしているのでありますが、地方公共団体すなわち都道府県または市町村がどのように補助するか一律に定めがたい点もありまして、地方公共団体が「純掛け金に相当する部分で特約にかかわるものについて財政上の援助につとめるものとする。」と規定したのであります。したがって、全額補助するという確約がないことになっているのであります。このような異常災害に対する共済事業については純共済掛け金は加入者の負担とすべきでないと思うのであります。
その五は、
漁業者を対象とする各種共済保険制度の統合についてであります。
現在、
漁業者を対象として共済または保険の事業を行なう制度としては漁獲共済、養殖共済及び漁具共済を共済事業とする
漁業災害補償制度、漁船保険を保険事業とする漁船損害補償制度並びに厚生共済及び火災共済を共済事業とする任意共済制度の三つの制度があり、おのおの別団体によって運用されているのであります。この三制度は、漁協段階にあっては、おおむねその契約、支払い等については窓口が一本化されているのでありますが、都道府県段階にありましては、
漁業共済と任意共済は窓口が一本化されており事務の合理化がはかられているのでありますが
漁業共済と漁船保険の双方には依然窓口の一本化がはかられていないのが
現状であります。この二つの制度には大型漁船所有者が漁協組合員でないこと等もあり、その一体化にはなお検討すべき点はあるにいたしましても、都道府県段階の事務の一体化すなわち窓口の一本化は
漁業者のために早急に行なうべきであると思われるのであります。また、中央各団体においても
漁業者のためのおのおのの事業であるという同一の目的を持つ制度であることにかんがみまして、三者が統合して、総合的な運営を行なうべきであると思うのであります。
以上が
漁業災害補償制度についてであります。
次に、
漁業近代化資金助成法関係について申し上げます。
漁業近代化資金の利率は、年七分以内と法定されており、具体的には政令で六分と七分の二種類とされているのであります。本制度資金の利率は前述のとおりでありますが、融資機関が受ける実質的な利率すなわち基準金利は九分とされ、その差額を国及び都道府県が助成しているのであります。しかしながら、基準金利を九分とすることについては問題の存するところであります。特に漁協系統金融機関は、農協系統のそれに比較して規模等の
関係から
コスト高となること等特殊事情を考慮して、
漁業近代化資金にかかわる国及び都道府県の利子助成額の増大をはかり、適正な水準に基準金利を設定することにつとめて漁協系統金融機関の経営の安定をはかることが不可決であると考えられるところであります。
次に、
中小漁業融資保証法関係について申し上げます。
今回の改正案により、新たに融資保険及び低利融資を行なうため中央
漁業信用基金を設置することとしているのでありますが、この場合、保証保険を行なう中小
漁業融資保証保険特別会計は従来どおり存続されることとしているのであります。
しかしながら、同種の制度である農業信用保証保険制度の仕組み等を考慮する場合、中央基金の仕組みについて特別会計との関連を含めて検討する必要があると考える次第であります。
また、中央基金の資金の充実についてであります。
四十九年度予算におきましては、国は、七億九千七百万円を計上し中共基金へ出資するとともに、農林中央金庫、
漁業信用基金協会が出資することとしているのでありますが、これらの出資の
確保につとめるとともに、次年度以降においても中央基金の業務の拡充実施に必要な基金造成をはかるため、
政府の出資を継続実施する必要が痛感されておるところであります。
さらに、新設される中央基金は、改正案附則第九条によって、いわゆる農林年金制度の対象から除外することとしているのでありますが、
農林水産業における同種の団体の取り扱いと関連して検討する必要があることはもとよりであります。
次に、沿岸漁場整備開発法
関係について申し上げます。
本法案に対しましては、すでに二点について修正議決したところでありまして、修正事項との関連等をも考慮して、次の三点につきまして附帯
決議を行なおうとするものであります。
その第一は、閣議決定に基づく五年を一期とする沿岸漁場整備開発計画が、今後におけるわが国沿岸
漁業に対する
国民の期待とその将来の発展を約束する重要性にかんがみ、特に必要な事業量が十分
確保されなければならないことは申すまでもないところであります。
その第二は、沿岸漁場整備開発事業の実施主体についてであります。当面
政府は、政令で都道府県、市町村等を定めることとしているようでありますが、当然国が事業の実施主体となり、規模の大きい、また技術的に必要なもの等につきましては事業を実施して沿岸
漁業者の期待にこたえるべきものであり、その実施体制、事業内容等について今後検討する必要があることであります。
さらに、本事業を積極的に推進するための指導及び財政的な援助につとめることが肝要と考えられる次第であります。
その三は、水産動植物の種苗の
生産施設の整備についてであります。
本案による漁場づくりとともに人工種苗を大量的に
生産する施設を整備することが、今後における沿岸
漁業振興のための重要な柱であることは申すまでもないところであります。
そこですみやかに計画的に全国的な普及をはかるとともに、適正な規模を
確保することはもとより、技術開発、施設の運営に対して国が積極的な指導助成につとめることが重要
課題であると考えられる次第であります。
以上が、三法案に対する附帯
決議の趣旨であります。
何とぞ
委員各位の御賛同を賜わりますようお願いいたします。
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漁業災害補償法の一部を改正する
法律案に対する附帯
決議(案)
政府は、本法の施行に当たりすみやかに左記事項の実現に努めるべきである。
記
一 漁獲共済における共済限度額並びに養殖共済及び漁具共済における共済価額については、
漁業実態の推移に即応して適切な
措置を講ずること。
二 義務加入制については、二十トン以上の漁船
漁業及び養殖業についてもこれを適用対象に加えることについて検討すること。
三 純共済掛金に対する国の補助を更に拡充するよう
努力するとともに補助限度率を撤廃すること。
四 養殖共済における赤潮等特約事業の実施に当たつては、共済加入者に一切の負担をかけないよう
措置すること。
五
漁業災害補償制度、漁船損害補償制度及び任意共済制度を統合し、一元化を図ることについて検討すること。
右
決議する。
…………………………………
漁業近代化資金助成法及び
中小漁業融資保証法の一部を改正する
法律案に対する附帯
決議(案)
政府は、本法の施行に当たりすみやかに左記事項の実現に努めるべきである。
記
一
漁業近代化資金に係る基準金利については、金融情勢の変化に即応して適正な水準に設定するとともに、本制度資金の融通を円滑にするため、都道府県の行う利子補給に係る
政府の助成等の増大を図る等その在り方を検討し、漁協系統金融機関の経営の安定を図ること。
二 中央
漁業信用基金の仕組みについて、中小
漁業融資保証保険特別会計との関連を含めて検討するとともに、中央基金の出資金の充実を図るため、次年度以降においても
政府の出資を継続実施すること。
三 中央
漁業信用基金を農林
漁業団体職員共済組合法に基づく共済組合の構成団体とすることについて、
農林水産業における同種の団体の取扱いと関連して検討すること。
右
決議する。
…………………………………
沿岸漁場整備開発法案に対する附帯
決議(案)
政府は、本法の施行に当たりすみやかに左記事項の実現に努めるべきである。
記
一 沿岸漁場整備開発計画の策定に当たつては、本計画が我が国沿岸
漁業の
振興に果たすべき役割りの重要性にかんがみ、本法の目的達成に必要な事業量の
確保等に万遺憾なきを期すること。
二 沿岸漁場の整備及び開発事業を実施する者については、都道府県、市町村等に限定することなく、当然国が実施する途を開くべきであり、その実施体制、事業内容等について検討を進めるとともに、本事業の積極的な推進を図るため指導助成に努めること。
三 水産動植物の種苗の
生産施設の整備については、計画的に全国的な普及を図るとともに、規模の拡充、技術開発、運営等に対する指導助成に努めること。
右
決議する。
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