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1974-04-02 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    小沢 一郎君       吉川 久衛君    熊谷 義雄君       佐々木義武君    島田 安夫君       丹羽 兵助君    本名  武君       粟山 ひで君    井上  泉君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       美濃 政市君    諫山  博君       中川利三郎君    瀬野栄次郎君       林  孝矩君    稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         外務省アジア局         次長      中江 要介君         外務省欧亜局外         務参事官    加賀美秀夫君         厚生省公衆衛生         局栄養課長   安西  定君         運輸省港湾局技         術参事官    大久保喜市君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 三月二十九日  辞任         補欠選任   瀬野栄次郎君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     瀬野栄次郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第四九号)  漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証  法の一部を改正する法律案内閣提出第五〇  号)  沿岸漁場整備開発法案内閣提出第七〇号)      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  漁業災害補償法の一部を改正する法律案漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正するほう立案、及び沿岸漁場整備開発法案の各案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。瀬野栄次郎君。
  3. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 沿岸漁場整備開発法案等水産三法について関係当局質問いたします。  第二条に、「この法律において「沿岸漁場整備開発事業」とは、優れた沿岸漁場として形成されるべき相当規模水面において水産動植物増殖又は養殖推進するために行う魚礁設置、消波施設設置及びしゅんせつ並びに沿岸漁場としての効用の低下している水面においてその効用を回復するために行うたい積物除去その他の政令で定める沿岸漁場整備及び開発事業で、政令で定める者が実施するものをいう。」となっておりまして、この第二条にあらゆる定義が含まれています。水俣病関係ももちろんそうでありますし、水俣病漁場整備問題等、いろいろ含まれておりますが、冒頭、私は、この沿岸漁場整備開発法をいろいろ検討してみましたところ、まさに、この法案拙速主義でやっていると受けとめざるを得ないのであります。国が実施するとき、政令でいろいろこういうことを書くのはどうかと私は思う。もっと具体的に書くべきではなかったかと指摘せざるを得ないのですが、この点について当局見解をまず最初に明らかにしていただきたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 法案拙速主義ではないか、政令なんかにゆだねないで、法案の中にやるべき仕事をもっといろいろ列挙しろというようなことでございますが、御承知のとおり、たん白質の五〇%を漁業が提供しておる。ところが、遠洋漁業等は各国のなわ張り争いというか、自分の領海をうんと広げるというようなことを言っておるし、ソ連等においても、サケ・マスの漁業規制をなかなかきつくやってきておる。だから、どうしても沿岸漁業にたよらなければならない。もっと沿岸漁業をふやさなければならない。ところが、現実には、公害等の問題で沿岸漁業が伸びないという現状にあります。そこで、そういうふうなものを抑制し、かつ、栽培漁業というものを本格的に進めていくということが必要であります。また、漁場整備開発というものをはかって、それで魚礁あるいは消波施設しゅんせつというようなものをやっていくことが緊急の課題じゃないかというふうに考えて、それではいつまでたったらいいのかと言っても、なかなか何月何日になれば一番いいということでもありませんので、そういうような大きな目的のために、一日も早くこの法案を通して、総合的、計画的に沿岸漁業というものを振興していくということが日本国民食料の確保という点からも必要だ、こういうふうに判断をいたしまして提案をした次第でございます。
  5. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 そこで、「たい積物除去その他の政令で定める沿岸漁場整備云々として、「たい積物除去その他の政令で定める」ということで、政令にゆだねてありますけれども、事業種類というものはどんなものを考えておられるか。これはせっかく国が行なう法律でありますから、こういうことについて当然明記すべきではなかったかと思うのですが、しからば政令ではどういうものを事業種類として考えておられるか、その点を明確にしていただきたい。
  6. 内村良英

    内村(良)政府委員 第二条の「たい積物除去その他の政令で定める沿岸漁場整備云々でございますが、これは個別の事業の概要を書きまして、たとえば、水域の状況によって、一例をあげますと、外洋で魚礁をやるということが技術的に可能であれば、そういったことをやるというようなことを書くわけでございまして、いずれにいたしましても、ここの「政令で定める」で、国が補助対象とするものを明確にするということで政令を書きたいと思っておるわけでございます。
  7. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 第二条でもう一つ、その次の行に、「及び開発事業で、政令で定める者が実施するものをいう。」と、また出ておるわけですが、この場合の「政令で定める者」というのは、地方公共団体のほか、国、漁協漁連も含むのか。さらに、国が事業主体となる理由は、二県以上の事業、すなわち大規模事業実施する場合に必要であるということで「政令で定める者」をいろいろ検討されておるのか。この辺はどういう検討をされておるのですか。
  8. 内村良英

    内村(良)政府委員 この二条の「開発事業で、政令で定める者が実施するものをいう。」という、この「政令」でございますが、先般から御答弁申し上げておりますように、沿岸漁場整備開発計画対象となる沿岸漁場整備開発事業内容、その事業量等につきましては、都道府県にこの計画策定のための調査を委託いたしまして、この調査結果を受け、また沿岸漁業等振興審議会その他関係方面意見を十分聞いた上で決定することになるわけでございます。したがいまして、事業主体につきましても、法律上画一的に定めることなく、事業内容に適した実施主体政令で定める。すなわち、だだいま先生から御指摘がございましたように、各県にまたがるような大型魚礁、それを技術的にも国の直営でやるべきであるし、社会的にもそうしなければならぬというような場合には、当然国がそういうことをやるということを政令で書くということになるわけでございます。  なお、それらの点につきましては、さらに技術的に解明すべき問題もまだ多々ある現状でございます。
  9. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 こういったところが、私が冒頭に申しましたように、この法案そのもの政令にゆだねる事項が多くて、実際に国がいよいよ実施しようという段階でこういったことが明記されないのがどうも納得がいかないわけです。  以下、質問段階でこういったことを指摘してまいりますが、次の三条を見ますと、この三条にも、「農林大臣は、沿岸漁場整備開発事業の総合的かつ計画的な実施に資するため、沿岸漁業等振興審議会意見を聴いて、政令で、定めるところにより、沿岸漁場整備開発事業に関する計画(以下「沿岸漁場整備開発計画」という。)の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。」となっておりますけれども、この場合の「政令で定めるところにより」というのは、これまたどういうことを定められるのか、その点を明らかにしていただきたい。
  10. 内村良英

    内村(良)政府委員 第三条の政令では、計画につきまして、「五年を一期とする」というようなことを書くつもりでございます。
  11. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 「五年を一期とする」ということでありますが、そうしますと、地方公共団体漁協とか漁連事業主体となる場合においては、国から補助を受けて行なう場合に限るものである、というふうに理解していいのですか。
  12. 内村良英

    内村(良)政府委員 補助と、それ以外に制度資金融資というようなものを受けてやる事業も含まれてくるわけでございます。
  13. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 私の質問は、この法案の条文から見まして、地方公共団体とか漁協漁連事業主体となる場合においてのみ国から補助を受けて行なう、と、こういうふうに限られるのか、そういうふうに私は理解をしているが、その点はどうですかという意味なんですがね。
  14. 内村良英

    内村(良)政府委員 地方公共団体がこの計画に基づいていろいろな事業をやる場合におきましては、ただいま御答弁申し上げましたように、大部分はそれについて国が助成する、しかし、場合によっては制度融資だけで仕事をするということもあり得るということでございます。
  15. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 そこで、沿岸漁場整備開発法位置づけの問題に関連してお伺いしますけれども、御承知のように、まず、沿岸漁業等振興法があるわけですが、いわゆる基本法実施法関係になるわけですけれども、沿岸漁業等振興法は、言うまでもなく、生産性が低い沿岸漁業及び経営が不安定なものが多いところの中小漁業発展を促進するためにあるわけで、かつ、また、これら漁業従事者が他産業の従事者と均衡する生活を営むことができるようにするために国の基本的施策の方向を示し、そして、重点的な具体策が明らかにされておるように理解をしておるわけですが、今回提案沿岸漁場整備開発法については、従来から沿振法海洋水産資源開発促進法、それから水産資源保護法と、大体この三つがあるわけで、今回の沿岸漁場整備開発法との関連をいろいろ見ますと、従来の海洋水産資源開発促進法の中の開発区域開発計画というものと水産資源保護法保護水面管理計画というものは、これはまさになきにひとしいというか、空文化しているように見受けられますけれども、この二つはどういうふうに機能しているか、当局では、今回の沿岸漁場整備開発法との関連で、これをどういうふうに検討して今回の法案提案に及んでおられるか、その点をまず明確にしていただきたいと思います。
  16. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、最初に、本法案沿岸漁業等振興法との関係でございますが、沿岸漁業等振興法は、第三条に、「国の施策」として、水産動植物増殖による水産資源維持増大漁場整備及び開発等を掲げておりまして、本法案は、沿岸漁業振興のための基本法たる沿岸漁業等振興法のいわば実施法たる性格を有するものでございます。  次に、海洋水産資源開発促進法との関係でございますが、本法案海洋水産資源開発促進法とは、増養殖推進により沿岸漁場生産の拡大をはかることをねらいとしている点については共通しているわけでございますが、それぞれ制度仕組みが異なっておりまして、これらが相まって運用されることによって初めて効果的な漁場整備及び開発が実現し得るわけでございます。すなわち、促進法に基づきます開発基本方針は、漁業生産基盤整備開発について基本的な事項を定めまして、一方、この沿岸漁場整備開発計画は基本的な事業の目標及び事業量を定めることになっているわけでございます。さらに、先生案内のように、本法案の附則第三項におきまして、促進法の一部改正を行ないまして、開発基本方針沿岸漁場整備開発計画調和をとらなければならないというふうな規定が入っておりますけれども、そういったことで両者の調和をとりながら運用していきまして、矛盾がないと申しますか、遺憾がないように運用したい、こういうふうに考えているわけでございます。
  17. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 水産庁長官はいろいろ理由づけをされますけれども、われわれが本法をずっとワンパッケージで検討してみますと、先ほど申しましたように、沿岸漁業等振興法海洋水産資源開発促進法水産資源保護法というような法律がもうすでにあるわけで、この三つと今回提案されている沿岸漁場整備開発法とのかね合いというものが、いずれも法律のための法律みたいになっていくように受け取れるわけです。すなわち、今回の本法はレベルの低いものになっているというそしりを免れないと思う。  そこで、他の三法を有機的に進行させていけば、本法提案に及ばなくても絶対に整備ができたんではないかというふうに私は思うわけです。なぜかなれば、これは計画的な有機性に欠けておりますし、国が総合的計画を樹立して主体性を持つという点において欠けているということを私は指摘せざるを得ないわけです。そういう意味で根本に触れる問題でありますが、その点を踏まえて、沿岸漁場整備開発法位置づけというものをどういうふうに検討して出されたのか、さらに答弁を求めたいのであります。
  18. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のございましたように、沿岸漁場につきましては、沿振法以下法律があることは御指摘のとおりでございます。一方、さらに、沿振法に基づきまして構造改善事業が進められている。しかも、構造改善事業もすでに一次が終わりまして、二次に入っているというような段階で、このような法律は必要がないのじゃないかという御質問かと思いますけれども、先ほど政務次官から御答弁がございましたように、わが国漁業としてたん白質食料国民に供給していくということのためには、沿岸漁業振興ということが今後どうしても必要になってくる。その場合に、問題は、今後沿岸漁業振興する場合には、栽培漁業等養殖増殖というようなことを大いに進めなければならない。さらに、資源培養ということもございます。沖合い資源遠洋資源になりますと、なかなか簡単に資源培養はできない。ところが、最近における魚礁のいろいろな技術の発達その他浅海開発等によりまして、沿岸では資源増殖がかなりはかり得るということが技術的にもはっきりしてきたわけでございます。そこで、構造改善事業でそういったことを進めておりますけれども、構造改善事業は、国がイニシアチブをとるというよりも、それぞれの都道府県の実態に基づいて知事イニシアチブをとってやるというような仕事になっております。ただいま申し上げたような観点から、漁場整備ということを今後本格的にやるためにはもう一つ大きな国の計画が必要だということは関係者意見が一致しておりまして、全漁連等はかねてそういうことを要望してきたわけでございます。ところが、現行法の中ではそういったことができないという面がございますので、今度この沿岸漁業漁場整備計画をつくるということにいたしまして、それに基づきまして、従来やっていた事業をさらにかなり大規模にやって、すみやかに漁場整備をはかりたいということがまず第一点でございます。  それから、第二点は、栽培漁業をやっていきますと、やはり、そこで放流した幼稚仔保護されなければならない。現行漁業法その他の法律体系あるい水産資源保護法もございますけれども、水産資源保護法でも十分な保護ができないという面がございますので、育成水面というような考え方を入れてきたわけでございますが、いずれにいたしましても、この二つの点につきましては、現在の既存の法律ではカバーできない面であり、かつ、水産業が直面しておる現実から見ると、非常に重要な事業であるということで本法案提案をしたわけでございまして、これまでございます沿岸漁業振興に関する各種の法律とこの法律とをかみ合わせまして運用していけば、さらに沿岸漁業振興対策というものが充実するという観点から本法案提案している次第でございます。
  19. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 そういうことであるので、私は、法律のための法律みたいな気がしてならぬのですけれども、本法提案してあるのですから、引っ込めることはまず無理としても、漁連においてもいろいろとこれには問題がある。私は、これは今後の政治課題として検討すべき問題であるということを実は指摘せざるを得ないわけです。いまにわかに本法を引っ込めるというようなことにはまいらぬにしても、実施内容等を見ましても、実施法であるならば、政令にゆだねずに、もっと具体的なものを出してやるべきではなかったか、そういったことからどうしても拙速主義になっている、こういうふうに思うわけです。漁連幹部にもいろいろ協議をしましたが、漁連幹部もそういうことについては、いろいろきびしい批判を持っておるわけで、水産庁長官がおっしゃるようなことばかりではないわけです。いずれにしても、漁連が言っておりますグリーンレポートの構想からいきましても、水俣湾の問題をはじめとして、日本沿岸がいろいろと荒らされていくということで、今後整備をするために、少しでも前進するようにということで、本法に対しては、いろいろ前進をすることを申し入れて今日提案に及んでおると思うのですが、実際の根本的な考えとしては、これには相当批判があるということを十分承知してもらわなければならぬと私は思うのです。  そこで、具体的な問題に逐次入ってまいりますが、まず、私は、本法提案にあたっての、沿岸海域における水産動植物増殖及び養殖推進というような問題でお尋ねをしたいわけですけれども、過去十数回この委員会水俣湾問題その他で私は指摘をしてまいりましたが、通産省があまりにも企業を発展させたために、御承知のように日本沿岸が汚染されてきた。瀬戸内海にしても、あるいは九州の洞海湾にしても、また、日本でも最大の沿岸漁業としての発展をしてきた水俣湾にしても、さらには東京湾にしても同じことでありますが、ずいぶんと海が汚染されてきた。私はかねがねから、日本沿岸は全部栽培漁業をするようにきれいな海にして、日本動物性たん白質を供給する海にしなければならぬということで指摘してまいりましたが、水俣湾の汚染が大きな一つの問題となって、通産省においても今日かなりきびしい工場規制等をしておることも事実でありますが、いまだにそのあとを断たないことも皆さん御承知のとおりであります。そういったことで、沿岸海域における水産動植物増殖とか養殖推進ということは当然必要でありますけれども、これには、通産省もさることながら、運輸省との関係があってなかなか話がつかないのが実情であるように思うのです。すなわち、運輸省港湾局との関係で、かなりいろいろとクレームをつけるために、いままでこういった増殖養殖の問題で水産庁でいろいろ法案をつくって取り上げてきても、やっておるわりにはなかなかこれが進んでいないし、効果があがっていないのが実情であります。指定促進をやるべく体制もいろいろ考えておられるようではありますが、この点について、水産庁としてはどういうふうに指定促進をやり、体制をつくるようにしておられるか、また、運輸省ともどういうふうな協議を重ねておられるか、沿岸漁業発展のためにまず明確にしていただきたいと思います。
  20. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまの先生の御質問は、海洋水産資源開発促進法開発区域指定がおくれておるのではないか、そのためには、関係省との調整が必要であり、特に、運輸省との調整が必要なんじゃないかという御質問かと思います。  沿岸水産資源開発区域指定するには、御案内のように、まず都道府県知事策定をいたしまして、関係市町村意見を聞きますと同時に、農林大臣協議することになっております。そこで、農林大臣がその協議に応じようといたしますときには、関係行政機関の長の意見を聞かなければならないという仕組みになっておりまして、ここで関係省との調整の問題が出てくるわけでございます。現在、知事から農林大臣協議のある具体的な指定対象区域は一道三県の十三区域でございます。このうち北海道の六区域につきましては、関係各省との調整が終わりまして、すでに指定が完了しております。残りの七つの地域につきまして目下関係省協議中でございます。  そこで、どういうことが問題になるかと申しますと、先生から御指摘がございましたように、運輸省港湾局との話では、向こう側は原則として港湾区域及び開発保全航路というものを除外してくれというようなことを言っております。しかし、そういたしますと、開発区域指定意味がなくなるところもございますので、そういった点につきまして、現在、鋭意関係省との協議を急いでいるところでございまして、私どもといたしましては、海面利用の総合的な調整等をはかって早期に解決をはかりたいということで、いろいろ努力している段階でございます。
  21. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 運輸省大久保技術参事官がきょう見えておると思いますが、ただいま水産庁長官から答弁がありましたところの都道府県指定する開発区域は、制度実施後三年近く経過しておりますけれども、指定水域手続が終わったものが、いまおっしゃったように北海道だけの六地域に限られておる。だから、あとは、その他の地域にあっては、指定水域手続中のもの、または全然進んでいないものなどがありまして、開発計画を樹立するところまでなかなか準備が整わない。さっき長官答弁なさったように、これは運輸省関係があるわけです。そこで、実効があがっていないということで、いわゆる北海道だけが一応六区域指定されましたけれども、内地のほうは全然これが進んでいない。これには運輸省関係があるので、たいへん体制がおくれてきておるというふうに指摘してきておるわけですが、いまの長官答弁に対して、運輸省当局はどういう見解をお持ちであるか、この席で明確にしていただきたいと思います。
  22. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  ただいまの水産庁長官の御答弁のとおり、若干の区域につきまして、港湾区域とあるいは開発保全航路との関係調整がまだ済んでいないというところがございます。御承知のように、港湾行政の立場からいたしますと、この港湾管理者地方公共団体でございます。それで、何ぶんにも海域水産の場であると同時に海上交通の場であるというようなことで、どうしても空間利用上の競合が出てまいるわけでございますが、しかし、いずれも、ただいまの開発区域指定も、都道府県がまず第一次の主体になるわけでございますし、また、港湾行政の面におきましても、地方公共団体港湾管理者でございます。そういうことで、各地域で十分調整されることを期待しておるわけでございます。  それで、水産庁のほうから御照会のありました件につきましては、港湾局といたしましては、港湾管理者の意向を徴しまして、それで御意見を申し上げるというようなことにしておるわけでございまして、港湾局といたしましては、水産庁の御当局によく事情をお伺いいたしまして、それで港湾管理者と、それからこの開発区域指定するといいますか、開発区域に一番関与されておる都道府県知事、そこの間の調整のあっせんに努力いたしておりますし、また、今後も努力いたす所存でございます。
  23. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 大久保技術参事官よ、あなたからいまいろいろ答弁がありましたが、本法提案にあたって、おそらく最近水産庁からもいろいろと協議あるいは打ち合わせをなさったと思うのだが、最近は水産庁とこういった問題についていつどういうふうなことで話を進めて現時点に来ておられるのか、その点をもうちょっと詳しく説明していただきたいと思う。
  24. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  ただいまの御指摘の点につきまして、私ここにいつという日にちの資料を持っておりませんが、この問題と非常に関連のある問題といたしまして、実は、港湾法の改正に伴いまして、開発保全航路指定という問題も一つ出てきております。そういうようなことで現在も事務的には水産庁のほうと担当者がごく最近にも——たしか先月末でございましたか、今月の初めの予定でしたか、ちょっとつまびらかにしておりませんが、お打ち合わせをする機会も持っておる次第でございます。
  25. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 政務次官並びに水産庁長官、私たちも、答弁したくらいのことはわかっておるのですけれども、公開の席でもっとはっきりしておかねばならぬと思って申し上げたわけですが、いずれにしても、農林行政は、特に水産関係については、通産あるいは運輸関係に弱いというか、いつもしてやられている。そして、苦しむのはいつも漁民だ。しかも、漁民がとっている魚は、日本国の食料としてなくてはならぬものである。ましてや、いまの一千万トンの漁獲の中で、二百海里説等が海洋法会議等でだんだん問題になってくると、漁獲量はおそらく四百万トンぐらい減ってくるのじゃないかという心配がされる。片や、畜産問題では、農業はピンチに追い込められ、動物性たん白質はだんだん窮地に追い込められて、最近では牡讀が殺され、あるいはまた、はらんだ母豚が芝浦の屠殺場で相当数屠殺されるというような状況を見ましたときに、再生産が将来だんだんあぶなくなってくる、これが心配だということが言われております。かといって、水産にたよろうとすれば、今後の日ソ漁業交渉にしても、日中漁業協定にしても、かなりきびしいものをわれわれは予期せざるを得ない。そういったことで、沿岸にどうしても力を入れねばならぬということはだれしもが考えておることでありますが、いま答弁がありましたように、運輸省当局も、開発航路の新しい指定等をめぐったりして、なかなかもたもたしておる。この協議を最近やったかというと、どうもつまびらかではない。強力に運輸省あたりとも折衝をして、日本の漁民を守り、日本国の食料を守るためにも、もっと強い姿勢で臨まねばならぬと私は思うのですけれども、その点が、運輸省通産省にいつもしてやられておるような感じがしてならぬのだが、その点については、今後どういうふうな交渉をして、どういうふうに進めていかれるのか。こういうように三年たって指定水域北海道地域で、全然内地のほうには及んでいないということを見ても、さっぱり成果があがっていないように思えるが、その辺について、水産庁長官なり政務次官なりから、決意をどういうふうに持っておられるのか、明らかにしていただきたいと思う。
  26. 内村良英

    内村(良)政府委員 私といたしましても、この指定がおくれておるということにつきましては、非常に遺憾に思い、早くやらねばいかぬと思っておるわけでございます。  そこで、水産庁の担当でございますが、沿岸漁業課というものがこれを担当しております。そこで、一月ばかり前に課長がかわったわけでございますが、その課長の就任に際しましては、私は課長に対して、この問題を早急にやれということで、就任後運輸省といろいろ交渉をしておるように聞いております。私も彼が何日に何時にどこで会ったということまで資料を持っておりませんけれども、交渉しておるように聞いております。  そこで、それではどういうことでこの問題を解決しようかということでございますが、いずれにいたしましても、かなり現実的な問題でございますから、具体的に、たとえば開発保全航路計画の具体化していない区域開発区域に含める等の、そういったことを何か考えられないかとか、いろいろ現実的なケースに合わせて運輸省と了解をとるということで、一生懸命われわれとしても努力をしておるところでございまして、水産庁といたしましては、通産省運輸省に対して泣き寝入りになっておるようなことは決してないように行政を運用しておるつもりでございます。
  27. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 農林大臣にかわって政務次官、その点は、あなたも、指定水域指定については強力にやってもらいたいと思うのですが、決意を伺いたいのです。
  28. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 よくわかりました。
  29. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 次に、今回の沿岸海域における本法制定の趣旨から言いましても、漁業公害ということがどうしても問題になってくるわけでございまして、この機会に水俣関係の問題を若干お伺いしたいと思います。  先般、二月の予算委員会で私はいろいろ運輸省当同等に質問をし、運輸大臣からもいろいろと答弁がございましたのですが、熊本県水俣湾の水銀ヘドロ処理について、環境庁のあっせんで、三木環境庁長官、徳永運輸相、沢田熊本県知事は、三月四日、東京霞が関の総理府内で三者会談を開いて、事業主体や費用負担問題等について話し合いました。その結果、水俣湾ヘドロ処理問題に関する政府と熊本県の基本的合意事項が一応合意されたわけで、この点については、いままでもたもたしておった本問題が一歩前進ということで、私たちも一応は評価しましたけれども、御承知のように、工事実施主体等の問題がありますし、また、ヘドロ処理工法についてもたいへんな問題をかかえておりますし、また、事業の施工に要する費用が熊本県にかなり過重な財政負担となるということでいろいろ指摘をし、問題になっておるわけです、この費用負担については県側が最大の心配をしております。チッソ水俣工場が費用負担が多くなれば工場を閉鎖して撤退するのじゃないかということで、地元の皆さん方も、補償をぜひやってもらわねばならぬ、撤退なんかけしからぬということで、いろいろと地元では心配がされて今日に至っておりますが、三月四日の合意がなされて、その後三木環境庁長官もしばしば熊本においでになって、年度内着工ということでいろいろ言ってきたにもかかわらず、遂に四月に新年度を迎えました。四月には少なくとも早々に着工を急いでもらいたいし、そして、また、基本的な水俣湾ヘドロ処理計画等、青写真を早く作成するということでわれわれは進めてきておるわけですが、その点について、その後どのような進展をしているか、また、どのような状況になっているか、運輸省当局大久保技術参事官から、その後の経過と、現時点におしてどういうところまで進んで、どういう見通しになっておるかということをまず明らかにしていただきたい。
  30. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  三月四日の三者会談の後、先生から御質問がございましたときに、たしか、三月中にはというようなことで三木長官もお答え申し上げたように記憶しております。私どもといたしましても、何とか三月中にその委員会を開いて、それで発足させるということに努力しでまいったわけでございますが、いろいろの県の事情等もございまして、委員の人選等に手間どりまして、現在の時点ではまだ委員会のスタートが見られておらないという、非常に遺憾な状態でございます。しかし、現在までのところ、一応事務的に考えられます対策案、その中で一時囲うという締め切り堤の建設がございますが、その場所と、それから一部埋めるところがございますが、そこの構造物をやる場所、そこのボーリング等を県当局は三月中をめどにいたしまして実施してまいりました。それが完了したかどうかという点については、昨日の段階でまだ確認いたしておりませんでしたが、そういうことの準備作業は進めております。  それから、県当局に昨日問い合わせましたところでは、もう二、三日うちに正式な委員会のメンバーも発表できる予定である、そして、できるならば今月の半ばには委員会をぜひ開きたいということで、その委員会に出します事務的な案を県当局と第四港湾建設局とでいま打ち合わせをしておるところでございます。現在の段階では、その排水のための構造物の設計とか、そういうような作業を鋭意やっておるというような報告を受けている次第でございます。
  31. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 この委員会がずいぶんおくれておるけれども、運輸省としては、なぜこんなにおくれたかという点についてはどういうふうに認識しておられますか。
  32. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  一つには、ボーリング等の調査結果を見てからという事務的な面と、いま一つには、たまたま年度末で県会等がございまして、県の幹部の方々のそういう人選とか、関係者委員に参画してもらうためのお願いとか、そういうような事務作業が思うように進められなかったというような事情を私ども聞いておる次第でございます。
  33. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 そうしますと、われわれも早く委員会を発足してもらいたいと思うのですが、この委員会の人選が手間どって、スタートがおくれているというのだけれども、知事も急いでおるので、おそらく今月半ばには委員会ができる。そうしますと、第四港湾建設局としても、三者会談の合意事項に基いて、構造物だとか、一部締め切るとか、埋めるとか、どうするとかということについて、さっそく具体的なことが提案されて、いろいろ検討されると思いますが、運輸省としても、今月、いわゆる四月半ばには、ぜひそういう方向でいきたいということで鋭意準備を進めておることは事実でありますか。
  34. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  運輸省といたしましては、これにつきましては、これまでのお約束もございますし、何とか早くしたいと思いまして、鋭意努力しておる次第でございます。この委員会の発足とは並行いたしまして、工事を受託するための事務的な準備作業をいま関係者の間でそれと並行してやっておる次第でございます。
  35. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 そこで、運輸省に伺いたいが、この水俣湾は、九州でも、高級魚から大衆魚に至るまで、沿岸漁場としては宝庫とされております。漁民は、いま、防護さくをつくったことによって、水俣水銀汚染による魚をとらないということで一まず安心しておりますけれども、実際に、過日運輸大臣に指摘しましたように、その防護さくも約千八百万くらいかけてやったわけですが、これがだんだんだんだん日にちがたちますと、網にノリがついたり、また、いろいろな浮遊物がひっかかったりして、相当重みがかかってくる。台風シーズンがやってきて、もし台風で大きな波を立てるということになりますと、この防護さくが一挙にして崩壊してしまう。そうすれば、せっかく防護さくによって魚が遊泳しないように締め切った処置が、一瞬にしてまたこれがもとのもくあみになるという心配等を私たちは持っておるわけです。これは一刻も早く水俣湾のヘドロ処理、港湾計画をせねばならぬと私は思っておるわけですけれども、そういった意味で、この水俣湾は、地元にとっては、処理計画上の問題で、年間五十億をこす貿易港でもありますし、長期閉鎖をしますと市の経済にもたいへんこれは影響する、また、漁民も打撃を受ける等のことで、いろいろな問題等が今後に残されてくるわけです。だから、水俣湾の今後のヘドロ処理と同時に、港をつくるという問題等について今後いろいろな問題を検討しながら進めなければならぬと思っておりますが、いずれにしても、四月の中ごろには委員会が発足し、具体的な問題が委員会で検討され、スピーディーに検討が進んでいくかと思いますけれども、そういったことに対しては当局でもいろいろと構想を練っておるとは思いますけれども、この水俣湾の締め切りによって受ける貿易上の支障の問題とか、あるいはまたそれに伴う漁民の生活上の問題とか、いろいろな問題が起きてくる。さらには、貿易港をつくるということになりますと、どういうふうな構想でやったら有機的にこれができるかというような問題等、いろいろと次の問題がまた出てくるわけですが、そういった点については現在どういうふうな方向で検討されているか。そうして、四月半ばに委員会ができてから出したのでは間に合わない。おくれているのですからその前にどんどん準備を進めて、委員会ができたら一刻も早くそれを検討されて今後進んでいかなければならぬと思う。運輸省としては第四港湾建設局を督励していると思いますが、現在どういうところまで進めつつありますか、そして、どういうふうな方向で検討されておりますか、その点も明らかにしてもらいたいと思います。
  36. 大久保喜市

    大久保説明員 お答え申し上げます。  水俣港の計画でございますが、現在のところ、汚泥処理の工事によって二次公害を起こすようなことがあってはなりませんで、その工法の検討も必要でございます。それと同時に、先生の御指摘のように、港湾としての将来の機能を確保できるような形で、たとえば汚泥の埋め立てをする範囲というところもきめなければなりません。それで、現在の段階では、水銀濃度の高い範囲のところを埋めまして、その埋めた範囲の全面は港湾施設として将来使えるような形でやるべきではないかというようなことで、平面的な計画案を練っております。それから、そういうような形でやります際に、二次公害の発生するおそれがないようにということで、汚泥をしゅんせつしなければならない範囲のところを全部一たん締め切ってしまうということを考えておる次第でございます。それで、締め切りましたところは、きれいにしたあとは一部その締め切り堤を撤去いたしまして、残ったところは防波堤としての機能が残りますし、それで、開いたところを航路として使うというような形での平面計画案をつくっておる次第でございます。  なお、この汚泥を埋め立て地に投入いたしました際に、流れ出る水がまた有害物を含んでいるようではいけませんので、その有害物が、どろのつぶが沈澱してしまって、きれいになった水として流れ出るような水路の長さが必要でございます。それで、その水路の長さが十分とれるような形で、埋め立て地の面積も若干広くとらざるを得ないという状況にございます。  それから、いま一つ、この有害ヘドロの中にありますところの水銀がもしも有機化するようなおそれがあってはいけませんので、そういうことのないように、汚泥が干上がらないような範囲で、要するに水の中で始末する、そして、その上をきれいな土でふたをしまして、それで土地にするということを考えておる次第でございます。  それで、そこいらのところの原案はほぼできてございますが、デテールの設計をいまさらにやりまして、そういう原案で港湾計画上はたしていいであろうかということと、処理工法として二次公害のおそれがないかどうかということを専門家の方々に御検討いただく、そういう委員会を持つということで準備を進めております。  それから、いま一つ先生の御指摘のように、その工事期間中、現在港を使っている人たちが仕事ができなくなってしまうということと、それから漁民の方々がその区域漁業が営めないという問題がございます。それで、それらにつきましては、やはりそれなりの補償の行為が必要であろうと思います。そこいらにつきましては、県当局が具体的な補償をしなければならない範囲とか額とかを調べなければなりませんが、そういうこともその計画の固まることと並行して取り組むというような体制をいま整えつつある次第でございます。
  37. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 ただいまの答弁で現時点における進め方は一応わかりましたが、港をつくることによって、一時的に貿易上のいろいろな支障を来たす、その補償問題、それから、また、現地の漁民が魚をとる上で、港をつくるといろいろと漁業に支障を来たす、その補償問題、こういったことも委員会等で十分検討していくということでございますので、ぜひそれはそういうふうにしていただかなければなりませんが、もう一つさらにお聞きしておきたいのですが、現在平面的な計画案をつくっており、ほとんど原案はできたということで、かなり意欲的に進んできたというふうな印象を受けるわけですが、これは政府当局見解もあったわけですから、ぜひ強力に進めてもらいたい。と同時に、委員会ができましたならばすぐにでも出せるように、あと細部にわたっての検討等も十分していただくわけでしょうが、委員会ができたならば、平面的な計画案、いわゆる原案というものをすぐ出せるということに理解していいかどうか、その点をもう一回明らかにしておいていただきたい。
  38. 大久保喜市

    大久保説明員 お答え申し上げます。  委員会には、事務的に検討した案をまずお示しいたしまして、それで委員の方々の御検討をいただくということになろうかと思いますが、その委員会で検討すると申しましても、一回の委員会で説明を聞いただけで判断するということは非常にむずかしいと思います。それで、最初委員会では、その素材をこれからどういうようにして検討するか、何が問題かということを明らかにしまして、その問題点をできるだけ早く解決する、検討するという、その方法までも御相談いただくことこまろうかと思います。したがいまして、その段階で案というものが外に出せるようになるかどうかということにつきましては、私はここで何とも申し上げかねるわけでございまして、それは委員会委員長におまかせするしかないと考えておる次第でございます。
  39. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 三木環境庁長官との約束から見てもずいぶんおくれておるわけですし、一ころ騒いだときにはずいぶんエキサイトしておりましたが、だんだん延びてきて地元も焦燥感で連日過ごしておりますので、委員会を早く開かれて、いまおっしゃったようなことで具体案が検討されるように、運輸省当局の第四港湾建設局等の強力な指導とともに、積極的な推進方をさらにお願いしておきたいと思うわけです。  水俣湾の問題については以上で一応終わりまして、さらに、この沿岸漁業対策に関連する問題で、日ソ漁業交渉がかなりきびしいものがある。私は、水産三法に入る前に、日ソ漁業交渉について、一般質問で、つい二週間ほど前に十数点指摘をしておいたわけですけれども、御承知のように、今日の状況を見ますと、西カムチャッカのタラバガニまたはその他のカニの漁獲についてかなりソ連はきびしい規制案を示してきておりまして、全面禁漁を提示するなど、漁期の直前までかなりこれはもつれ込むのではないかということで、たいへん心配しております。おそらくソ連の考えとしては、日本の漁獲量をだんだんだんだん減らしていって、なしくずし酌に、最後はソ連の漁獲量と日本の漁獲量をパーパーにしようというような考えであろうかとわれわれは推測せざるを得ません。日ソ漁業交渉が三月四日から第六回としてソ連のモスクワで開かれておりますけれども、これに対しては当局はどういうふうな見通しを立てておられるか。もしこうなりますとかなりの打撃を受ける。よほど強い姿勢で臨まないと、先日も指摘しましたように、これは重大問題になってくる。いまの水俣湾にしろ、日本近海にしろ、沿岸漁業はたいへんきびしいものがある。こういうことから、日ソ漁業交渉の成り行きいかんによっては日本の一千万トン漁獲量に重大な影響を及ぼすというふうに思うのですが、この点についての当局見解を承りたい。
  40. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 日ソ漁業交渉については、瀬野委員がおっしゃいましたとおり、きわめてきびしい提案を出しておりますので、わがほうとしてはとうていこれは受け入れることができません。したがいまして、今後も、北洋漁業の安定した操業を確保するというようなことと、適正な量を確保するというような観点から、継続してねばり強く交渉を続けていくつもりであります。
  41. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 向こうのほうから外電なりいろいろ入ってきていると思いますけれども、新聞紙上で知る程度しかわれわれにはわかりませんが、私は新聞報道以上にきびしいというように聞いておりますし、今度はいよいよ漁期まぎわまでもつれ込む、そのどたんばでどういうふうになるか、実に心配なんですけれども、その点は、もう一歩突っ込んだ内容等を発表できればぜひ聞かしてもらいたいと思うのです。
  42. 内村良英

    内村(良)政府委員 先週末にソ連側から今年のソ連の規制案につきまして、原案の提案があったわけでございます。これは毎年ソ連側はかなりきびしい案を原案として出してくるわけでございますが、本年のソ連側提案の特徴を若干申し上げますと、まず、第一に、従来からも休漁区がカムチャツカ半島の東のほうにあるわけでございますが、本年はベニ、シロザケの保護を名目にいたしまして、かなり広い休漁区等の設定を要求しております。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 特に、従来のソ連側当初提案では、母船式の中央漁場休漁区の東限が東経百六十八度であったわけでございますが、これを東経百七十度へ拡大してきておる。すなわち、日本のいわゆるA区域漁場がさらに狭まるというような提案が第一点でございます。  次の点は、昨年もソ連の当初提案にあったわけでございますが、現在十船団ございます日本の母船式の船団を一船団削除しろということでございます。それから、漁獲量自体につきましては、ソ連は具体的な数字の提案はいたしておりませんで、昨年もそうでございますが、本質的に削減する。この「本質的に」というのはロシア語では「大幅に」という意味なんだそうでございますが、本質的に削減するということを主張しております。と申しますのは、ソ連は従来から、先ほども先生から御指摘がございましたけれども、日ソの漁獲量を五〇・五〇にしようということを言っておりますので、そういったことをバックにしながら大幅削減ということを言ってきておるわけでございます。当初提案を見ますと、昨年よりも特に休漁区の拡大等が総じてきびしいということになっております。  次に、ニシンでございますが、ニシンにつきましては、オホーツク索餌ニシンの漁獲割当の設定を主張してまいりました。これは従来そのような主張はしておりませんので、これは新しい主張でございます。と申しますのは、過去の漁獲実績を固定化いたしまして、日本の漁獲がこれ以上ふえないようにしようというのがソ連側のねらいかと思います。それから、北海道・樺太ニシンにつきまして、期間を限りまして抱卵ニシンの禁漁を主張しております。それから、わが国が調査漁船を送っておりますけれども、この調査漁船の隻数の強化ということをいっております。  次に、カニでございますが、カニにつきましては、一番大きな問題は、西カムチャツカのタラバガニの全面禁漁ということを主張しております。これは昨年わが国はこの海域で六万箱とっておりますが、これを全面禁漁しようということを言っております。その他のカニにつきましても、樺太東方のアブラガニについては全面禁漁ということを打ち出しておりまして、ソ連側の規制案はかなりきびしいということになっておりますが、ただ、去年の交渉におきましても、西カムのタラバガニ及び樺太策方のアブラガニにつきましては、当初提案では向こうは全面禁漁というものを打ち出してきたわけでございますが、交渉によってそれを打開したという実績もございます。したがいまして、先ほど政務次官から御答弁がございましたけれども、われわれといたしましては、わが国の漁業の立場、国益を考えて今後強力に交渉し、このような原案の修正を強く求めるということで交渉をやりたいと思っておるわけでございます。
  43. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 政務次官、いま水産庁長官から具体的な問題の答弁がございましたが、私も二週間ほど前にこの水産三法でいろいろ予定した問題を当委員会指摘をしておいたわけですが、いろいろな私たちのほうの情報によっても相当きびしいものがある。この間も指摘しましたけれども、B地域のみならず、いまの水産庁長官の話ではA区域にもこれを狭めてくるというような動きがある。そして、十船団のうち一船団は減らすということで、結局、ソ連と日本の漁獲量を大体一緒にしようというねらいであることは明らかであると思うのです。こういったことを見ましても、今後、日ソ漁業交渉の結果いかんによっては、日本水産業界にはたいへんな問題が起きてくると私は思う。政府としても原案修正をなすべくいろいろと検討をしておられると思いますけれども、これは強力な働きかけをしないと、並みたいていのことではいかぬと私は思う。ことしこうであれば、来年、再来年が思いやられる。農林大臣はきょう出席されておりませんけれども、農林大臣も十分事情は知っておられると思うのですが、政務次官、そういう点は農林大臣にもよく意見を申し上げて、強力なてこ入れをしてもらいたいと思うのですが、これに対して今後どういうような姿勢で、どういうようなてこ入れをしていく考えであるか、その点についてもう少し当局見解をお聞きしておきたいのです。
  44. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 もちろん農林大臣も事情をつまびらかに知っております。したがいまして、非常にこれは深刻に受けとめておるわけでありまして、外交上のいろいろなかけ引き等もございましょうけれども、これは農林省だけでなくして、いろいろな多国間の外交の問題等もありますから、政府が一体になってこの漁業問題を解決するように、これから鋭意努力をしてまいりたいと考えております。
  45. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 十分対処していただくべく、重ねて要求をいたしておきます。  時間の関係もありますので、次の問題に入りますが、日ソ漁業のみならず、私が先日暫定予算の総括質問で取り上げる予定にしておりました問題をこの機会にいまから質問してまいりたいと思う。すなわち、日中漁業協定の問題でございます。  最初に、水産庁長官にまずお伺いしますけれども、日中漁業協定は、かつて中国による日本漁船への発砲事件や拿捕事件が続出していた際に、こういう事態の解決のため、東シナ海と黄海における安全操業や水産資源保護を目的として昭和三十年に民間ベースで結ばれたことは御承知のとおりです。その後一時的に中断されたこともありましたが、関係漁業者自身の努力によって何とか今日まで続いてきたわけでございます。しかし、この民間協定締結以後では、現地での事件や紛争の発生は以前よりはるかに減少してきたとはいえ、いざ事件が発生したとなりますと、やはり、現在の民間協定レベルでは、その話し合いに困難を来たし、また、話し合いのために訪中するにも、その旅費は関係漁業者の自己負担ということなどもあって、関係者の中からは、政府間ベースによる協定締結への願いは切実なものとなっております。特に、九州においては、この問題を今後の漁業の新しい発展とともに重大視してながめておるわけでありますが、その切実な願いが、日中国交回復時における日中共同声明の中でようやく日の目を見て、漁業についても民間取りきめをも考慮しつつ政府間協定のための交渉を行なうという合意に達したものと私たちは見ておりますが、政府間協定への移行の時期は、当初民間協定の期限切れである昨年六月二十二日を予定しておりましたが、ついに実現できず、民間協定がまたもそのまま一年延長されることとなり、いよいよ今年の六月二十二日をまた迎えるわけであります。やがて一年がまたやってくるわけですが、昨年はなぜ政府間協定が実現されるまでに至らなかったのか。これは農林大臣に伺いたいところでありますけれども、水産庁長官から、その理由を簡潔にお答えをいただきたい。
  46. 内村良英

    内村(良)政府委員 日中漁業協定につきましては、先生指摘のとおりでございまして、政府といたしましては、昨年中国側に対して、早く漁業協定をやりたいということを再三申し入れをしたわけでございます。その結果、昨年の六月に、資源評価等からまず入ろうではないかということで、専門家会議を持ったわけでございますけれども、結局協定締結に至らず、残念ながら民間協定を一年延長した、こういうことになっておるわけでございます。すなわち、わがほうといたしましては、再三にわたって協定の締結を申し入れいたしましたが、向こう側の都合で協定ができなかった、こういう状況になっておるわけでございます。
  47. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 中江アジア局次長と加賀美外務参事官がきょうおいでだと思いますが、いまの件について、本年の一月初頭には大平外務大臣が訪中し、また、一月半ばから二月の初旬にかけては、中国の飽光宗中国農林水産局副局長の一行が来日されておるわけでありますが、この二回にわたる接触の中で、漁業交渉については、両国政府間においてどういう話し合いがかわされたか、その点を明らかにしてください。
  48. 中江要介

    ○中江説明員 本年一月の大平外務大臣の訪中の際には、日中国交正常化後一年余りを経過した日中関係発展一般について意見の交換があったわけでございますけれども、具体的な話といたしましては、先生が先ほど御指摘の共同声明第九項に掲げられておりますいろいろの実務協定の締結交渉の進捗ぶりにつきましても意見の交換がされまして、ただいま問題になっております日中漁業協定につきましても、できるだけすみやかに締結しようということについて原則的は了解ができたというふうに聞いております。それの具体的な発展といたしましては、中国側は、久しく日本側から希望しておりました第二回目の実務専門家の会議を開く準備ができたという連絡を、三月の半ばにわがほうに知らせてまいりまして、現在の予定では、四月の半ばごろから、北京で日中両国の第二回目の日中漁業協定に関します専門家会議が開かれる段取りになったということでございます。  もう一つの、一月中旬から二月にかけて日本にやってまいりました中国の漁業協会の代表団は、民間団体の招待を受けて向こうからやってまいりました民間の団体でございましたので、相互理解の増進には役立ったわけでございますけれども、政府間の協定締結について直接話し合うということはそもそも予想されていなかったわけでございまして、ただ、この民間団体代表団の団長の飽光宗とおっしゃる方は中国の水産局の副局長の地位にある方でありましたので、水産庁長官を表敬訪問されたということはございますけれども、具体的な日中漁業協定交渉についての政府レベルの話というものは行なわれなかった次第でございます。
  49. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 漁業者、すなわち漁業関係者は、せめて今年の六月二十二日までをめどに何とか話し合いをつけていただきたいというのが偽らざる気持ちであります。そこで、先日マスコミなんかの報道したところによりますと、来月の中旬から北京で——来月というのはいわゆる四月ですが、四月の中旬ごろから北京で専門家会議を開き、本交渉の段取りを協議するというようなことでございますが、これについて政府は、政府間協定の実現をいつごろと見て取り組んで進められるつもりか、また、どの時点を大体の目標にされておるか、こういうことについての今後の見通しと、あわせて政府の決意のほどをお伺いしたいのであります。
  50. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 御指摘のように、四月中旬ごろに専門家会議をやろうということになっておりますから、その結果を踏まえて、なるべく早く、できれば民間協定の期限の切れる前に本交渉が妥結されることが望ましいと思っております。
  51. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 外房省もいまと司じような考えで進めておられますか。
  52. 中江要介

    ○中江説明員 外務省といたしましても、全く同じ考えで臨むつもりでおります。
  53. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 それでは、この交渉を進めるにあたって、民間協定の実績をどういうふうに評価しておられるのか。また、どのように生かしていこうとされるのか。規制内容というものを従来の民間協定の内容よりも緩和させるという方向でぜひ取り組んでもらいたいと思うが、その点はどういうふうに考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  54. 内村良英

    内村(良)政府委員 今後締結されます日中の漁業協定の内容につきましては、これはいずれにいたしましても交渉事項でございまして、中国側と話し合ってきめなければならないわけでございますから、わが国がどういう立場で臨むかということは、交渉開始前にここで意見を申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、御案内のように、現在の民間協定は、長期期間にわたって実施されてきたこともございます。また、日中の共同声明の第九項におきまして、各種実務協定の締結にあたっては必要に応じ民間取りきめをも考慮する旨うたわれておりますので、このような事情も十分踏まえて交渉に臨みたいというふうに考えておるわけでございます。
  55. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 その点はそうであると思いますので、一応わかりますが、そこで、最初の問題とも関連するのですが、この日中漁業交渉を進めていく場合に、御存じのように軍事ラインの問題が起きてくる。すなわち、韓国、台湾等との関係ということがいろいろまた問題だと思うのですけれども、こういうことについてはどういうふうな見解を現時点でもって臨まれる方針であるか、その点も見解をお聞きしておきたいのであります。
  56. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま御指摘の軍事警戒ラインとか軍事入域禁止区域とか言われております区域が公海上に存在しているのではないかという情報は、従来われわれも持っておるわけですけれども、具体的にそれがどういう性格のもので、どういう体制のもとでそういうものが設けられ、かつ運営されているのかということについては、中国側から責任ある説明はまだ得ておらないわけでございまして、これは専門家会議あるいはその後に予想されております漁業交渉の場面で、日本政府としては中国側の正式見解を確かめてまいりたい、そして、その内容は、それを見ましてから、あるいはその説明を聴取しましてから対策を考えなければいけないと思いますけれども、一般論としては、先生も御高承のとおり、公海における漁業の自由というものは一般国際法上保障されておるわけでございますので、一般国際法の原則に照らしまして、わが国の水産利益というものも踏まえて、水産庁とも緊密に協議いたしまして、安定した漁業発展のためにいい協定を結ぶようにいたしたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  57. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 交渉を前にしていろいろ公開の席で言えないこともあろうかと思いますが、いずれにしても、いま指摘しましたように、特に九州関係では、日中漁業協定についての問題を昔からずいぶん見守っておりますし、こういった日本水産資源がだんだんだんだんきびしい状態にあるときでありますので、これらも強力に進めていただきたい、こういうように思っておるわけです。そういったことから問題意識を持って指摘したわけでございまして、水産資源の問題で日中漁業交渉にあたっても、共同調査とか技術協力関係とかいうものについてもいろいろ論議されると思いますが、十分検討していただきたい。そして、政府間交渉については、関係漁業者からも切実な要請がなされておるわけでございますので、今後の政府の積極的な取り組み方を強力になさるよう重ねて要望いたしておきます。  そこで、本題のほうへまた返りますが、漁業をめぐる国際環境等の変化という問題でございますけれども、これはさらにまたきびしくなってくるわけです。そこで、六月の二十日から十週間の予定で雪米カラカスで自主的な第二回会期が催されます。すなわち第三次海洋法会議でございます。これも先日私はいろいろと指摘をしたところでございますが、御承知のように、わが国の漁業生産の約八〇%を占める遠洋漁業及び沖合い漁業はいずれも公海で行なわれる漁業でありまして、これらの漁業をめぐる国際的環境及び条件は今後きびしいわけでございます。私がいろいろとお聞きするところによりますと、現在、参加国百二十カ国、中南米、AA諸国では、この問題について、意見統一のためのレクチュアがすでにいろいろと始まっている。また、アフリカ等では四月から五月の間に準備会議を開く考えのようで、三分の二の議決は取れるというようなこともお聞きしておりますし、片や、先進国は、この議決は全員の議決がなければならぬというように言っておるようでありますが、こういったことを思いますときに、いろいろとますますきびしい状況を感じております。  この第三次国連海洋法会議に対して日本もいろいろ準備を進めておられると思いますが、どういう考えでこれに対処されるのか、まず、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  58. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 国際関係漁業の問題はわが国にとって非常にきびしいものであるということは御指摘のとおりでございます。したがいまして、日本としては、低開発国等については、相互に漁業発展をはかろうという立場で、海外の漁業協力というものを通しながら、相手国にもためになり、わが国の漁場の確保もできるというようなことで共存共栄をはかっていこうじゃないか、と、こういう方針で進めたいと思います。また、北大西洋等先進国との間におきましては、いろいろな機会を通して、相互の理解を深めて、関係国の間の話し合いをやって、遠洋漁業の長期的な安定をはかる、こういう考えで進んでまいりたいと思っております。
  59. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 先般も、これに対しては長官からもいろいろ答弁をいただいたわけですが、この第三次国連海洋法会議の結果によっては、だんだんだんだん日本漁場が締め出されてくるということにもなりかねない。二百海里説等がいろいろうわさされておりますし、これに対しても相当強力な姿勢で臨まないと、日本水産業界はまた打撃を受けることになります。一千万トンが四百万トン此減って六百万トンになる可能性がもう目の前にくるんじゃないかということでわれわれも憂慮しております。  そこで、この問題について、領海、漁業水域問題等にからんで、これらの海洋法会議に対する今後の対応のしかたでは日本の主張がかなり通っていくし、また、通るように努力せねばならぬと私は思っていますけれども、一つには、経済的な援助をすること、すなわち経済的に協力をしていくこと、また、現在南米等では業界が入漁料を払っているという例もございますので、日本においても入漁料を払う——現在漁連等では一部払っておりますけれども、こういったことを明確にすること、または港をつくってやるとか、学校、病院をつくってやるとか、そういういろいろなことで、今後の対応のしかたによっては日本の考えを理解してもらえるとも私は思っておるわけでござますが、この点についてはどういうふうに政府は考えておられるか、この点も明らかにしていただきたいと思う。
  60. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 政府は十二海里という主張をしているわけですから、一応はそれで押すというような原則であります。しかし、低開発国等はともかく漁具は悪いし、技術は劣っておるし、そこへ持っていって、日本が、低開発国の近海に至っても大量に高度の技術で魚をとるということになれば、どうしてもトラブルが起きるわけです。でありますから、いま言ったように、漁業協力をいたしましょうということで、お互いがいいような方法をまず考えることも一つの案として考えられます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  入漁料の問題等最初から考える問題ではありませんで、これは交渉の問題であって、われわれとしては、その場その場、そのときそのときに応じてお互いがよくなるようなことを考えることがいいのじゃないかと思うのでありまして、あらかじめどうする、こうするというようなことまでここで申し上げるわけにはいかないと思います。
  61. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 次に、遡河性の魚種について一点お尋ねをしておきますが、御承知のように、サケ・マス等の遡河性魚種については、先進国であるアメリカ、カナダ、ソ連等により、産卵河川の所有国が独占的または優先的に漁獲を行ない、あるいは公海漁獲は禁止すべきであるということを主張されておりますが、私たちはこれはけしからぬと思うのです。これに対して、わが国は、これらの魚種は関係国が限定されており、さらに局地的問題であるから、日ソ漁業条約、日米カナダ漁業条約で管理しているように、関係国に、地域的機関に管理をゆだねるということを主張しておるようでありますが、こういったことがますますきびしくなってまいりますと、この遡河性魚種に対しての今後の日本漁業問題は、これまたきびしいことになってきて、いよいよ八方ふさがりになってくるのじゃないかというふうにも思われて、たいへん心配をいたしております。スケトウダラにしてもまた同じことが言えるわけですけれども、この遡河性魚種に対する対策、また、今後の日本国の基本方針について、簡潔でけっこうですから、明確にしていただきたいと思う。
  62. 内村良英

    内村(良)政府委員 遡河性魚類につきまして、カナダ、アメリカ、最近ではソ連が、ただいま先生から御指摘のございましたような主張をしていることは事実でございます。特に、カナダは、沿岸国が優先的な管理権があるということのほかに、二百海里の経済水域を言い、さらに公海漁業の禁止をはっきり打ち出しているのでございます。アメリカ、ソ連は必ずしも公海漁業の禁止というところまで言っておりませんけれども、沿岸国に優先的な管轄権があることを言っております。それに対してわがほうは、サケ・マスの公海魚業というものは、現在、日米加魚業条約あるいは日ソ漁業条約等で関係国と委員会をつくり、そこで話し合いをやって漁業をやっておるいまの姿でいいんだということを主張しておりますけれども、こういった姿を続けていくためには、わが国が主張すると同時に、わが国の漁業秩序と申しますか、あまり違反などはしないというようなことでやらないと、わが国に対する不信感が増加して、そういった条約の継続がなかなかできないというようなことになるおそれもございますので、水産庁といたしましては、わが国の漁業活動が、たとえば現在条約できめられております暫定線を越えまして去年日本のサケ・マス漁船が四隻アメリカに拿捕されたわけでございますが、そういったことが起こらないように十分監督をしながら、漁業秩序を保ちながら漁業操業をし、さらに、一方、関係国とは強力に交渉をいたしまして、わが国の実績というものを基礎にしながら、サケ・マス漁業、公海漁業を継続しなければならないというふうにかたく決意しているわけでございます。
  63. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 もう一つ当局にお尋ねしたいことは海外漁業協力財団の問題ですが、これも理事長が欠員になっておりましたけれども、荒勝理事長が今回就任して、先日あいさつ状等が来ておりましたが、この海外漁業協力財団は、一口にして言えば、経済協力をしながら漁場を伸ばしていこうということであろうかと思うのですが、四十八年度補正後の国際漁業振興協力事業費の補助金等を見ましても、十一億九千九百二万五千円という膨大な補助金、さらに四十九年度は二十六億一千五百三万二千円というような予算が計上されておりますけれども、さっぱりこれは実績があがっていない。もちろん、昨年始まったばかりだからと言えばそれまでかもしれませんが、それにしても効果が出ていないが、当局はこれに対してはどう評価しておられますか。
  64. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生からお話しがございましたように、この協力財団は昨年の六月二日に設立をしたばかりでございます。現在、いろいろこれから仕事が始まってくる段階でございまして、確かに、貸し付けができましたのは、モーリタニアに対しまして約五億円の貸し付け決定ができただけでございますけれども、現在のところ、さらにオーストラリア、ガイアナ、パプアニューギニアその他から非常に貸し付けの申し入れがございまして、現在専門家を派遣していろいろ調査しているものもございます。いずれにいたしましても、四十九年度になりますと、専任理事長もきまりましたし、この跡目の活動というものは非常に活発になるのではないかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、まだ創業九カ月ぐらいの話でございまして、新しい組織ということでございますとなかなか仕事が軌道に乗らぬのですが、それが最近ようやく軌道に乗り出しまして、四十九年度は活動状況が非常に活発になるのではないかというふうに私どもは考えているところでございます。
  65. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 そうしますと、この金はモーリタニアに五億円やっただけで、あとはどこの国にやったんですか。これ一カ所だけですか。
  66. 内村良英

    内村(良)政府委員 四十八年度に貸し付け決定いたしましたのは、西アフリカの水産開発に対しまして五億円決定しただけでございます。ただ、その後、申し上げましたように、ただいまオーストラリアのカツオ、ガイアナの南米北岸の水産開発、これはエビのようでございますが、それからパプアニューギニアの海外漁業の冷凍加工施設に対する貸し付け、それから、さらに、モーリタニアで水産試験場の機材をさらに貸し付けてほしいというような申し入れがございまして、それらについて審査中でございます。
  67. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 時間がもう参ったようですのではしょってやっておりますが、短い時間で十分審議ができませんが、いまの件についても、いろいろ異論があるわけです。二百海里説がいまいろいろ唱えられておりますけれども、わが国はこういったことは承服できないわけで、こういった二百海里説等が海洋会議等で具体化してきますと、そういった中におしてどういうようにこれに対応できるかという問題とか将来の条件があまりはっきりしていないので、対応策等をどういうふうに考えているかというような問題等も私は指摘しておきたいわけですが、しかし、これはまた後日質問等をやることにします。  もう一点お伺いして質問を終わりたいと思いますけれども、遊漁対策については私はどうしても一曹申し上げておきたいわけです。と申しますのは、御承知のように、沿岸漁業を考えていく場合に、遊漁問題を抜きにしては考えられない状況になっております。昭和四十三年から四十四年の間に調査したいろいろな実績によりますと、すでに千七百七十二万人ぐらいの人が遊漁しており、現在ではおそらく二千万をこしているのではないか、日本人口一億として、五人に一人の、五分の一の人がいわゆる遊漁に関係しているのではないか、かように私は思うわけでございます。そこで、世界の状況を見ましても、スポーツその他、すべていろいろと法律ができておりますが、遊漁法については、日本は何ら対策がなされていない。御承知のように、最近では、波にさらわれて岩場から落ちたり、あるいはまた、標識がないためについ遭難するというような問題もありますし、岩場には鎖なんかをがっちりつけて、波にさらわれないような、危険がないような施設もしたり、またいろいろと標識もしたりしなければならぬ。どうしてもこういったことをやらなければたいへんだと私は思うのです。ところが、一方、御存じのように沿岸漁業からいきますと、沿岸漁民には遊漁がいろいろと障害を来たす。最近ではアクアラングのいろいろな漁法が発達して資源を荒らす。または漁網をいためる。最近こういったことが活発になってきたために、漁民あるいは全漁連としては遊漁を禁止せよということを言っておりますけれども、実際問題として、国民の娯楽あるいは健康の上からも、またはいろいろなレクリエーションというようなことからも、遊漁の禁止はとてもできないと思うし、また、今後ますます発展していく段階にあると私は思うわけでございます。  こういったことから、この遊漁対策については、沿岸漁業とのいろいろな摩擦等も今後ますます多くなってくることを私は懸念するわけでございますし、世界を見ましても、スポーツとかフィッシングなどの法律もいろいろとあるわけでございますので、政府としても、この機会に、遊漁対策について、日本でも早急に法を制定してこれに対処していかなければならない、むしろおそきに失しているのではないか、こういう法律を早く提案すべきではないか、かように私は思うわけですけれども、当局のこれに対する対処方針はどう考えておられるか、また、法制定についてはいかなる考えを持っておられるか、それらについて御見解を承りたいのです。
  68. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 御指摘のように、国民所得の増大に伴って、遊漁者が技術的に非常に進歩した漁具を使ったり、大型化したりしているというような面があります。レクリエーションとして健全なレクリエーションですから、遊魚者がふえるのはけっこうなんですが、一方、瀬野委員が御発言になったように、沿岸漁業漁業者と利害の対立を生むということも事実であります。このため、現在のところ漁場利用調整中央協議会というものがありまして、その中でいろいろ御審議を願って、その結果に基づいて、都道府県にいろいろなそういうトラブルの起きないような指導というものを行なっております。都道府県都道府県として、漁業調整規則あるいは海区漁業調整委員会というようなものを持っておりますから、それによって適切な指示を行なって、そういうトラブルの回避につとめておるところでございます。  それだけでは足らないから遊漁法をつくりなさいというのも、これは一つの貴重な御意見でございますが、いまのところ直ちにつくるというところまではいっておりません。外国の制度なども調査しながら、わが国のそういうような実態に即応して、どういうふうな調整をはかっていったらいいか、法が必要であるならば法をつくるべきでありますから、そこらのところは慎重に検討をしてまいりたい、かように考えております。
  69. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 ただいまの遊漁法の問題については、当局も十分に重大な関心を持っておるようで、貴重な意見であるから実態に即応して法等も考えていきたいというふうな御見解のようでありますが、だんだん時代が進んでまいりますとこれはほうっておけない問題だと思うので、世界のいろいろな慣例等も取り寄せて十分検討された上で、早急な検討を進めていただきたいということを強く要望しておきます。  私の質問の時間が終わりましたので以上で終わりますが、水産三法は膨大な問題がありまして、時間が相当かかりますものですからはしょって質問をいたしましたが、残ったあとの二法の問題とはしょった分については、後日また機会を見て質問をするということと、それから、大臣に対する質問が全然できなかったわけですけれども、これもまたあとの機会に譲ることにしまして、一応本日の質問を終わることにいたします。  御協力ありがとうございました。
  70. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————    午後一時三十七分開議
  71. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野坂浩賢君。
  72. 野坂浩賢

    ○野坂委員 せっかく大臣においでをいただきましたので、大臣にお尋ねをいたしますが、食料供給源としての水産業との位置づけについてまずお尋ねをしたいと思います。  動物源の食料は最近世界的に次第に不足の傾向にあると思われます。それを補うために、各国それぞれ水産物を重視しておるというのが今日の現況でございますが、特に、わが国におきましては、国土が狭隘でございますから、そういう関係から見て、水産資源確保という点については、その必要性は非常に高いと思うのであります。したがって、この原則を確認して、いま漁獲高というのは大体一千万トン程度と考えておりますが、今後この一千万トンをさらに上昇させるのか、確保するのか、それらの見通しと対策についてお尋ねをしておきたいと思います。
  73. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 水産資源がわが国の食料にとりまして大切なものであることは申すまでもございませんが、その水産資源につきまして、いろいろな環境がたいへんむずかしくなってきておることも御存じのとおりであります。しかし、いまお話しのございましたように、遠洋にしても沖合いにしても、とにかくわが国は世界第一の漁業国でございますので、いろいろ困難はありましても、その困難に対処して現状の状況を維持してまいるということに私どもは最大の努力をいたさなければならぬと思っておりますが、ことに、沿岸につきましては、まだこれからさらに伸ばしていく必要があります。そのためには、技術的にも予算的にも大事な施策、なすべき施策があるわけでありますが、そういうことのためにわれわれはさらに一そうの努力をいたしまして、ただいまのような水産日本を維持してまいりたい、こういう決意のもとに諸施策を進めてまいりたいと思っております。
  74. 野坂浩賢

    ○野坂委員 よくわかりました。特に、これからの重点はわが国の沿岸漁業で、その漁場開発のために開発法案提出をしたということであろうと思います。  その前に、午前中にもお話しがございまして、日ソの漁業交渉の問題について、水産庁長官からも御答弁がございましたが、重ねて重複を避けながら大臣にお尋ねをしたいと思いますが、お話しのとおりに、現在モスクワにおきまして日ソ漁業交渉が行なわれております。さきのカニの規制案に引き続きまして、三十日に北洋漁業のサケ・マス、ニシン、カレイ、エビ等に大幅な規制提案が行なわれております。私たちがいただいております資料をよく読んでみますと、たとえばカムチャッカ半島のタラバガニあるいはイバラガニ、こういうものは全面禁漁なり約半減をされるという提案であります。特に、樺太東方水域につきましては、アブラガニ等は全面禁漁、ズワイガニ等につきまして、約四分の一にするという提案でありますが、これらにつきましては、前任の櫻内農林大臣がおいでになったり、あるいはその前に田中総理がソ連を訪問の際にもお話しになったところでありますが、今日、これの一番の基礎は、まず資源の評価の問題について意見が分かれておるのかどうかということ、その点が一つ。それから、いままではいろいろと交渉はされておりますけれども、最終的にわが国の主張が相当通ってまいりまして、二年おきといいますか、隔年ごとによけいとったり少なくとったりしておりますが、そういうことに最終的にはわが国の主張が通るというふうな楽観ムードといいますか、そういう考え方が底流として流れておるのではなかろうかというふうにも思われますが、現状の分析と見通しについて、腹づもりなり見通しがあれば、この際お聞かせをいただきたいと思うのです。
  75. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 両国の間で、いまお話しのございましたように、資源の評価についてのかなりの格差があると私どもも見ております。したがって、これはもう少し専門家の間で詰めてやらなければいけないことであろうと思っておりますし、それから、まだ時間もございますし、もう少し両者の間で詰めて妥当なところで締結したいと思っておりますが、いまのところ、そういう点でまだ十分詰まっておらないようでありますから、さらに当方は最大の努力をいたしまして、両者の意見がまとまるようになお一そう努力をしてもらうようにいたしたいと思っております。
  76. 野坂浩賢

    ○野坂委員 努力をされるのはよくわかるのですが、いままでの日ソ漁業委員会の経緯について、一九七二年、昭和四十七年ですか、あるいは四十六年の実績程度ですね。四十五年は少なくて、四十六年は多くて、四十七年は少ないわけですが、そういう四十六年実績程度は確保できる見通しでしょうか。どうでしょうか。
  77. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま大臣から御答弁がございましたけれども、まだソ連の第一次規制案が出た段階でございまして、私どもといたしましては、わが国漁業漁場の確保及び漁獲量の維持のためにベストを尽くすというところで、見通しその他についてここで申し上げるのはまだ時期尚早と申しますか、ちょっとむずかしい段階でございます。
  78. 野坂浩賢

    ○野坂委員 むずかしいと思いますが、農林大臣水産庁長官も計数には明るいし、計画は非常に緻密でありますから、そういう点については万遺漏なく、自信があろうと思いますが、どうでしょうね。
  79. 内村良英

    内村(良)政府委員 もちろん、わが国の国益を守るためにベストを尽くすことは当然でございまして、従来どおりの——とにかく、科学評価については、先ほど大臣から御答弁もございましたけれども、ベニザケとシロザケにつきましては両国の科学者の意見が分かれております。日本は、大体前の不良年程度の、すなわち四十七年程度の資源はあると言う。それに対して、いやもっとずっと悪化しているということをソ連の科学者は言っております。そういったことを基礎にして議論を始めるわけでございまして、わが国といたしましては、わが国の科学者が提示した意見に基づいて必要な漁獲量を確保するということをやるのは当然でございまして、その方針で対処するつもりでございます。
  80. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それぞれ漁期、期間、その他の問題があるわけですが、それまでには決着はっける見通しですか。
  81. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁期の始まる前には当然決着しなければわが国の漁業はできませんから、漁期前にもちろん決着するように努力したいと思っておるのでございます。
  82. 野坂浩賢

    ○野坂委員 急ぐあまり不利な条件をのむというようなことはないというふうに考えてよろしいんですか。
  83. 内村良英

    内村(良)政府委員 急ぐあまり不利な条件をのむということでございますと、わが国のサケ・マス漁業に非常に悪い影響を与えますから、そのようなことがないような形で——まあ、日ソ交渉は、ある意味ではがまん比べみたいな面もあるわけでございますけれども、十分わが国の国益を守るためにやりたいと思っております。
  84. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、これも先ほど話がございましたが、本年の六月二十日からですか、南米のカラカスで第三次の海洋会議が行なわれます。わが国は領海水域を三海里をとっておりますが、アジア、アフリカ、中南米等は、大勢として、排他的経済水域といいますか、漁業水域を二百海里を主張して、それが大勢となっておるというふうに私どもは承知をしております。したがって、この会議は、今後わが国の水産業にとりまして非常に大きな影響を持ってくるであろうと思います。この前の会議は、わが国はこれに反対をして、一応何もきめないで済んでおるわけですが、今度の会議の見通しとしては、全会一致制でいくのか、あるいは、先ほど申し上げました国々が主張しておりますように、三分の二で可決をすれば効力を発効するということになるのか、その見通しと、わが国は十二海里説というものを主張していくのか。四〇%も二百海里になれば影響が出てくるという重要な問題でありますから、それらの点についてはどのように考え、どのように今日まで推移をしておるのかということをまずお伺いをしておきたいと思います。
  85. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、第一に、海洋法会議の議決のやり方が全会一致になるのか、あるいは三分の二の特別議決になるのかという点でございますが、先生指摘のように、六月からベネズエラのカラカスで海洋法会議が始まるわけでございますけれども、そこに至るまでにおきまして六回の準備会議を四十五年以降やっております。しかし、そこでも表決方式については話がついておりません。したがいまして、カラカスの会議が開かれました場合において、少なくとも最初の二週間ぐらいは、そういう表決その他の手続問題に費やされるのではないかというような見通しになっているようでございます。そこで、先進国の多くは、こういう領海の幅員といったような大問題は全会一致でやるべきであるということを主張しております。これに対して、開発途上国の多くは三分の二の特別議決、あるいは単純多数決ということを言っている国もございます。と申しますのは、最近は開発途上国の数が非常にふえておりますから、特別議決のやり方あるいは単純多数決でやったほうが開発途上国の主張を通すには有利であるというような背景もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、最初の二週間ぐらいはそういった問題でもめると申しますか、いろいろ議論されるだろうということになっておりますので、これについてもどうなるかということは、会議のことでございますから、ただいまのところなかなか予見しがたい問題でございます。しかし、いずれにいたしましても、過去六回の準備委員会で話がつかなかった問題でございますから、なかなかむずかしい問題でございます。  それから、海洋法会議全体について、一体カラカスでまとまるのかどうかという点でございます。この点も、これは国際会議のことでございますから、ここでいろいろ意見を申し述べることはなかなかできがたい問題でございますけれども、普通の国際会議の場合には、さらに次の会場を予定しているということはまず大体ないわけでございます。ところが、この海洋法会議の場合には、カラカスで話がつかなかった場合には、来年オーストリアのウィーンで会議をやるという場所まできまっておるわけでございますから、その辺のところを考えれば、大体、まあ、ことしはなかなかまとまりにくいのではないかというふうに考えていいのではないかと思います。  それから、開発途上国が二百海里に及ぶ経済水域を主張しているということは御指摘のとおりでございますが、そうなった場合におきましても、わが国といたしましては、一応沿岸国のある程度の優先権は認めながら、わが国の実績というものを主張して漁業をやらしてもらうようにする。特に、開発途上国につきましては、技術協力、資本協力等と結びつけまして、沿岸国の漁業発展を援助するということを大いにやりながら、同時にわが国の漁場も確保していこうと思っているのであります。  それから、かりに二百海里経済水域というものが認められたとすると、一番影響を受けるのはわが国の北洋の漁業でございます。そこで、北洋となりますと、関係国はソ連、アメリカ、カナダというような国でございますので、これは開発途上国ではございません。そこで、今日までソ連とは日ソ漁業条約、アメリカ、カナダとは日米加漁業条約ということで、漁業上かなり密接な関係を持ってやってきているわけでございます。すなわち、日ソ漁業委員会、日米加漁業委員会というものがございまして、毎年一回年次会議をやっておるというようなことにもなっておりますので、そういった実績を踏まえながら、北洋のわが国の漁場をそういった関係国と話し合いながら維持していくということでやっていかなければならぬというように考えておるわけでございまして、海洋法会議自体、どうなるか帰趨が非常にはっきりしない。しかし、いかなる場合におきましても、わが国は関係国と話し合って、わが国の実績を背景にしながらわが国の沿岸漁業漁場を維持していくということに努力したいと思っておるわけでございます。
  86. 野坂浩賢

    ○野坂委員 理論的に説明をいただきましたが、最初の二週間ぐらいは表決問題をめぐって議論があるだろう、したがって、見通しとしては明確に言うこともできないし、むずかしい面もあろう、しかし、最悪の場合、沿岸国の優先権というものは認めるが、いままでの漁業の実績がわが国にあるわけですから、そう大きな影響はない、また、まとまりにくいから、来年の会議場までつくっておるわけだから、ことしはまとまらないだろう、こういうふうに言われ、私どももそう思うわけです。そういう設定のしかたもあるわけです。しかし、来年もこの問題が提起されることは必定でございますが、もしそういうことになってまいりますと、いままでの実績というものは相当生かされてわが国の漁業権というものは確保できる、こういう点については、そう考えてよろしいでしょうか。
  87. 内村良英

    内村(良)政府委員 かりに二百海里の経済水域というものが国際的に是認されたということになった場合におきまして、わが国の水産業に与える影響の問題になってくるわけでございますが、そこで、わが国が外国の距岸二百海里でとっている魚の量は四百万トン以上になっております。約四十数%のものがそういった海域でとっているわけでございます。そこで、二百海里になりますとそういうものが完全になくなってしまうのじゃないかというふうな議論もございますけれども、私どもは、ただいま申し上げましたようなことを努力していけば、多少の影響はあったにしても、実質的な漁獲がひどく減るというようなことはまず考えられないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  88. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまの日ソ漁業交渉にいたしましても、この海洋法会議にいたしましても、非常にきびしい現実の情勢でありますが、特に、わが国の食料の確保、動物たん白源の確保のために全力を傾注してわが国の水産業発展と確保のために御努力をいただきたい、こういうふうに思います。  そういう状況を受けて、漁場開発ということも一面その漁獲高の確保のためにも進めていかなければならぬということは当然であります。それについて、それぞれ調査船をチャーターして、漁場の条件なり、商品価値なり、漁獲方法等を十分調査をしておられると思うわけでありますが、その調査の結果ですが、大体どの地点とどの地点という点と、漁獲高、魚種というものを、今日まで調査されました段階での御説明をいただきたいと思います。
  89. 内村良英

    内村(良)政府委員 新漁場の開拓につきましては、先生も御案内のように、昭和四十六年七月に海洋水産資源開発センターというものができました。新漁場開発というものは、いわゆる商業ベースではなかなかできがたいものでございますから、商業ベースを離れてやる一つの機関を法律に基づいてつくったわけでございます。  そこで、それではそれはどういう事業内容かと申しますと、漁場といたしまして未利用または低利用の段階にありながら、潜在的に相当量の有用水産資源が存在すると推定される海域におきまして試験操業を行ないまして、それらの漁場が企業的な漁業操業に適するものであるかということを調べるということをやっているわけでございます。  そこで、センターは設立以来三年目を迎えたわけでございますけれども、どういう海域調査をしたかということでございますけれども、代表的なものを申しますと、海外トロールにつきまして、ニュージーランド周辺でタイあるいはイカ等の資源開発をやっております。それから、最近、オキアミという相当大きな資源が南極海にある。これは従来は鯨のえさになっておったものでございまして、サイズは日本の小さなエビぐらいのものでございますが、そのオキアミの開発ということを四十七年と四十八年、南極海ウエッデル海域で試験操業を実施しております。それから、まき網につきましてはアフリカ中部とか、それからオーストラリアの海域とか、あるいはサンマの棒受け網の漁業、イカつり、沖合い底引きその他いろいろ新漁場調査をいろいろな地域についてやっておりますが、大きなところはただいま私が申し上げましたようなところでございまして、特に、オキアミの開発というものは、日本漁業界あるいは世界的に非常に注目されているところでございます。
  90. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私たちも資料をちょうだいしておりますが、調査海域は、それぞれ試験船といいますか、調査船が出されまして、お話がありましたように、海洋水産資源開発促進法の制定に基づいてやられた。私たちが手元にいただいておりますのは大体三十四個所程度の水域調査されまして、いま長官がお話しになりました南極海のオキアミ、これはエビですが、あるいはニュージーランド沖合いのイカ、タイというものが引き合うんではないかということが調査の結果明らかになっておるように承っておりますが、それらを合わせますと、これは大体何トンぐらいになるのでしょうね。大体何トンぐらいとれるか。たとえばいま海洋会議で四百万トン、あるいはソ連の場合は九万一千トンですか、それだけとれておるわけですが、これはどの程度に数量としてはなるでしょうか。
  91. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、新しい資源として注目されるオキアミでございますが、これは資源の量は相当大きいというふうに私どもは聞いております。そこで、何トンということは数字的に申し上げられるところまでいっておりませんけれども、資源量はかなり大きい。ただ、問題は、それをどうやって利用するかというところに現在問題がございまして、私どもも一生懸命研究しております。つくだ煮になるのか、あるいはつぶして使うのかとかいうようなことをいろいろ研究しておりますけれども、資源量自体は非常に大きいというふうに聞いております。  それから、ニュージーランドのタイ、イカでございますが、これはかなり本格的な漁業が開始された段階でございまして、これも資源量はかなりあるのではないかというふうに見ておりますけれども、何十万トンとか何百万トンとかいうような正確な数字的なことを申し上げられるところまでのデータは、まだございません。
  92. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、いま質問をしたことを受けまして、水産物の需給の動向についてちょっとお伺いをしたいと思いますが、農林省のほうから沿岸漁場整備開発法案の参考資料をちょうだいいたしておりますが、これによると、国内の生産は、四十七年が九百六十五万三千トンであります。輸入は七十九万八千トンで、需要は、「国内消費」あるいは「輸出」と書いてございますが、この中で、北海道でとれますシシャモあるいはニシンですが、これは輸入ものもたくさんございまして、ニシンはソ連から、シシャモはノルウェーから一万五千トン程度入れておりますし、あるいは、アイスランドからも一万八千トン、合計いたしますと三万三千トン入っております。これは一月に入札をされると思いますが、これにつきましては、はといいますか、大洋漁業あるいは三菱、そういうところで入札がされております。このシシャモを水産庁長官はお買いになったことは、えらい人ですからないかもしれませんが、奥さんはお買いになったことはあるかもしれませんが、干ものが、市価で一匹大体八十円から百円しておりますね。これが買われるときには、はその他は船ごとにキロ当たり二百円程度でお買いになっておるようです。一キロ当たり入る量というのは大体二十匹から二十五匹だと思いますが、それが北海道産として売られておるようであります。そういうことから考えてみますと、いまの消費者物価指数その他の問題から考えてみまして、ずいぶん高いじゃなかろうかと思うわけですけれども、それについて、水産庁としては、そういう商社といいますか、大手漁業者といいますか、そういう方々たちに対してどういうふうに御指導をなさっておるのか、聞いておきたいと思うのです。
  93. 内村良英

    内村(良)政府委員 私は、シシャモのケースについては必ずしもつまびらかな知識を持っておりませんけれども、一般的に水産物の流通につきまして中間経費が高い、あるいは、大手の企業がそれを買い占めてしまって、消費者価格が非常に高くなっているじゃないかというような問題がございます。そこで私どもといたしましても、水産物の流通の合理化につきましては、これはずっといろいろと努力してきたわけでございますけれど、まず、第一に、基本的に非常にいままでむずかしかったのは、水産物というものは本来生鮮食品でありまして、腐りやすいというような商品としての特殊性から、いわゆる農産物のような価格支持政策がとてもできない。それから、品質が非常にバラエティがございます。それから、同じ魚でも、たとえば大きなカジキなんかになりますと、魚の部分によって値段が非常に違うというようなこともございますし、技術的に価格支持政策ができないというようなことで、市場のメカニズムによって価格が決定される。その場合に、かなり流通段階が複雑であったというような問題もあるわけでございます。基本的なパターンと申しますか、型としては変わっていないわけでございますが、最近注目すべきことといたしまして、非常に冷凍技術が発達してまいりました。そこで、かなり品質の保持ができるということになりまして、ものによりましては、いわば出荷調整的なことがかなりできるようにここ四、五年なってまいりました。そこで、水産庁といたしましては、産地、消費地あるいは中継基地に冷蔵庫をつくりまして、できるだけ水産物の出荷調整ということをやろうということで、今日までかなりの予算を助成してまいりましたし、なお、今後におきましてもこの面の拡充をはかろう、こういうふうに考えておるわけでございます。  次に、大手の漁業会社、これはいわゆる一部上場の五社か六社をはじめといたしまして、大手の水産会社と言われるものがございます。大手の会社は大体自分で漁業をやっておりまして、その、自分のとってきたものを売る、あるいは海外で合弁会社をつくりまして、そのものを輸入してやるということで、あまり国内のほうには手を出さないようにということで従来指導してきておるわけでございます。場合によりましてはそれが守られていることもございますし、あるいは、いずれにいたしましても商業活動のことでございますから、守られていないこともございますけれども、水産庁といたしましては、大手の漁業会社に対しては、なるべく中小のやっておりますところには手を出さないようにしてほしいということを従来から指導はしております。しかし、必ずしも全部そういっていないという面があるのは、これは商業活動上やむを得ないということでございまして、非常に弊害が起こっているような場合にはある程度注意をするということをやっておるわけでございます。
  94. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私が質問をしておりますのは、名前をあげて質問をしております。いまお話しをいただきましたように、冷凍技術が進行して、弱い漁民の皆さん、特に生産者の皆さんの立場を守るという点については、出荷調整その他について中小零細のものについては十分理解をしております。しかし、私が申し上げておりますのは大手の業者をさしておりますから、たとえばシシャモ等も一キロが二百円として、一キロ当たり二十から二十五入るということになれば、一匹が五円なり四円ということになります。それが八十円から百円になるということについては、常識的に言ってもそれはもうけ過ぎだと言わざるを得ないと思うのです。しかも、それは輸入物が非常に多いのだが、それが北海道産だとして売られておる。これが現実なんですから、そういう点については、やむを得ないということではなしに、単なる注意ではなしに、厳重に注意をして、消費者の食ぜんにものぼりやすいようにしなければならぬ。そして、利益をより以上に取るというようなことは反社会的行動だとして、きょうも参議院で集中審議をされておりますが、そういう点については厳に注意をして、そのような措置をとらないようにすることが新任水産庁長官としての責務でもあろうと私は思いますが、それらについては対処されますか。十分調査をして対処していただくように私は要求をいたしますが、どうでしょうか。
  95. 内村良英

    内村(良)政府委員 いつごろの時期であるか、その他先生からこまかく伺いまして、調査をしてみたいと思います。
  96. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、いまの動物たん白源の問題について、これはわが党の竹内猛議員が何回も質問しておりますが、カロリーですね。わが国の国民は一日当たりのカロリーはどの程度とるのが妥当か。これは水産物のたん白源にも関係がありまするし、特にあなたはそういう数字的には最もベテランでありますから、カロリーはどの程度とって、たん白源はどれだけとればいいか、そして、魚はどれだけとっておるというのを、今日の段階あるいは来年の五十年、この二カ年についてのお考えといいますか、現実と考え方をお聞きしたいと思うのです。
  97. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、一人一日当たりのカロリーの供給状況でございますが、四十七年の実績速報値によりますと、総熱量は二千五百十五カロリーでございます。そのうち、動物質によって供給されておりますものは三百三十四カロリーでございまして、うち、水産物が九十五カロリー、鯨肉を入れますと約百カロリーということになるわけでございます。現在の数字は二千五百十五カロリーということになっておりまして、私どもといたしましては、なお水産物による供給を今後ふやすようにしたいと思っておるわけでございます。
  98. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういたしますと、今日の二千五百十五カロリーというのは、これが日本人としては適当なカロリーであると言うのですか。あるいは、これより伸ばすのか、下げるのか、これについてはどうお考えですか。
  99. 内村良英

    内村(良)政府委員 日本人の適当なカロリーというのは、日本人の体位の向上その他の問題もございまして、何カロリーが適当であるかということは、厚生省のほうが私どもよりも正確な知識を持っておるのではないかと思います。
  100. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは厚生省に聞けということでありますから、厚生省はこれについてどのようにお考えになっておりますか。
  101. 安西定

    ○安西説明員 御説明いたしたいと思います。  国民に必要な栄養摂取量、これを栄養所要量と言っておりまして、あるいは国民一人当たりのパーヘッドの栄養を各種食料からとるのを栄養基礎量と言っておりますが、そういうものをどのようにしてどういう食品を組み合わせてとるかということを食料構成と言っておりますが、いずれにしましても、そのようなものを一括いたしまして、一応従来の実績から言いますと、五年に一度そういうものを栄養審議会に諮問いたしまして設定していくということで今日までまいっておるわけでございまして、現在できておるものは、昭和四十四年に策定されました昭和五十年目標の国民の栄養に関する各種基準量等の設定ができておるわけでございまして、私どもは、このように定められました所要量あるいは基礎量等を目標値として、国民にこれを満たしていただくように行政努力をしておる、こういうことでございます。
  102. 野坂浩賢

    ○野坂委員 御答弁をいただいたのですが、私はよくわからぬのですが、今日二千五百十五カロリ一ですね。厚生省が考えておるカロリーとしては、昭和五十年には幾らを考えておるのですか。そして、五年ごとだったんですから、昭和四十五年には幾らだったんですか。それを明確にしていただきたい。
  103. 安西定

    ○安西説明員 昭和五十年を目標といたしました栄養所要量、国民一人当たりの一日の平均でございますが、カロリーとしては二千百五十でございます。現在、昭和四十六年度の調査成績では二千二百八十七カロリーでございまして、若干上回っておるという現状にございます。  なお、たん白質につきましては、昭和五十年の目標の栄養基準量が七十グラムでございますが、現在、昭和四十六年の成績でございますが七十八・一ということで、やはり、同様に若干上回っておるという現状でございます。
  104. 野坂浩賢

    ○野坂委員 長官、いま厚生省の話によりますと、カロリーはあまりとらなくてもいいと言っておるようですね。昭和五十年は二千百五十でいいのだ、現実は二千五百十五だ、四十八年の現状は二千二百五十だ、こう厚生省は言っておるんです。魚の場合、来年は、八十グラムとっておったものが七十グラムでよろしいと言っておるんですが、あなたもそうお考えですか。
  105. 内村良英

    内村(良)政府委員 農林省の食料需給表によりますと、国民一人当たりの供給純食料で、一日当たりの実数の供給量でございますが、魚介類の場合は四十年が八十・三グラム、それが四十六年は九十一・一グラムになっております。一人当たりがずうっと毎年増加しておりますので、国民所得が増加していく限りこの傾向は今後も続くのではないかと考えております。
  106. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私もそう思うのですが、厚生省はできるだけ食うなと言っておるようですね。八十グラムの七十ですからね。しかし、いま農林省の水産庁長官が言われたように、漸次九十一・一というふうに伸びております。あなたの場合は、カロリーはできるだけ少なくとれ、だんだん働かなくなってきた、そういうような統計を出されておるのですが、これについては、各省庁と話し合ってそういうものを出されたんですか。なぜこのようにカロリー計算というものが少なくなってくるのですか。
  107. 安西定

    ○安西説明員 お答えいたしたいと思います。  栄養基準量の策定にあたりましては、先ほども申し上げましたように、審議会の議を経て設けておるわけでございますが、いまの御疑問にできるだけ端的にお答えしたいと思いますが、この三十八年にきめられました各種所要量あるいは基準量等につきましては、かなり努力目標的なものでございまして、それが、国民の食生活の実態が急激に変わってまいっておる、あるいは栄養学的、医学的な研究開発もなされてまいっておるというようなこと、あるいはさらに、国民の人口構成の老人がふえるなど、変わってまいっておる、あるいはさらに、国民の一次産業就労人口の減少あるいは稼働日数の減少などで、国民全体の労働力、労働量というものが減ってまいっておる、あるいは、さらには、三十八年に設定した所要量等によりまして、そのような中から肥満者が出てまいっておる、つまり、オーバーカロリーの人が出てきているというふうな、そういうふうな実態も出てまいておるわけでございます。こういうふうな理由がございましたので、昭和四十四年に、あらためて三十八年のものを実態に即応するように改めたということごございます。  なお、たん白につきましては、いま申し上げましたような理由以外に、三十八年では、いわゆる一般たん白質を言っておるわけでございますが、そのうち良質のたん白質に置きかえて七十グラムというふうにきめられたのでございます。そういう意味では、いま水産庁のほうからお答えいただきましたような九十六二グラムというのは、私どもが昭和五十年に定めました七十グラムは、三十八年にきめましたような、いわゆる一般たん白質に置きかえますと九十五グラムになるわけでございまして、そういう意味では、この厚生省の審議会の御答申を得て私どもが定めました基準量と、その実態といいますか、水産庁からお話しのありました数字とほぼ合致しておるというふうにも考えられるわけでございます。  それから、なお、いまと非常に関連するわけでございますが、魚の量を、三十八年から四十五年のきめる場合に、食料構成基準の策定にあたりまして、審議会から数字が七十五を七十にというふうに御答申があったわけでございますが、この理由の大きいことは、やはり国民の食生活が非常に変化してきたということと、それから栄養学的な実態から、同じ動物性たん白をとるにしても、肉だとか、あるいは卵とか、そういうほかの動物性たん白質とのバランスという問題もございまして、したがいまして、魚とその他動物性たん白質のバランス等が配慮されて、魚介類以外の動たんについても、これを従来よりはよけいにとるべきであるというふうな考えが示されたものであるというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  108. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これをやりますと時間がございませんから多くを申し上げませんが、現状水産関係で動物性のたん白質をとっておる魚というのは大体五十二ですから、あなたのおっしゃっておる鳥獣、卵、乳というものをもっと思い切ってとって、魚は十グラム減らせということについては、それはあなたのほうが考えておられて出されるだけであって、各省はそれに十分歩調を合わしておるということは現状では言えないわけです。だから、もっと深く掘り下げてもらわなければならぬが、一般的に言って、日本人というのは働きの度合いが少なくなったから二千五百を二千三百にすればいいとか、あるいは二千三百を今度は二千百五十にすればいいというようなことについては、非常に問題があろうと思うのです。それについてはさらに関係各省と十分調査をし、話し合って、一定のものを出してもらわなければ、われわれは二千六百五十カロリーというのが日本人の摂取カロリーの目標だというふうに考えておるわけですから、はっきりしてもらわなければ困ると思うのです。  そこで、もとに返しますが、遠洋漁業なり近海漁業沿岸漁業といいますか、それについて、沖合い漁業等を見ても、この水産庁の資料によりますと魚が小型化してきたということがありますが、これは資源が枯渇し始めたというふうに理解をするのか。この小型化については、水産庁としてはどういうふうに理解をしていらっしゃるわけですか。
  109. 内村良英

    内村(良)政府委員 魚が小型化していくということは、資源について、ダイダイ色ぐらいの信号が出たということと同じだというふうに考えております。すなわち、資源が多少減ってくる傾向がある。というのは、漁獲力が加わっていって資源が減る場合、必ずまず小型化するという現象が起こるわけであります。
  110. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、いままでお話しを聞きますと、海洋国日本漁業日本は、水産業の将来を展望してみるとなかなかきびしい、漁場開発は相当あるけれども、周囲としてはなかなかむずかしい状況にあるということで、そのためには、沿津漁業というものを振興して魚をつくっていかなければならぬということになってくると思うのです。そのために沿岸漁場整備開発法案というものが沿岸漁業振興法の計画法と実施法というふうな姿で出てきたというふうに理解できると思います。この点については議論があるところでありますが、時間の関係から先を急ぎます。  その沿岸漁業振興について、今後どのような魚種を伸ばしていくのかという点については、たとえば国民の嗜好の関係がございますから、水産庁としては、それらの伸ばす魚種についてはどのようにお考えか、この際承っておきたいと思うのです。
  111. 内村良英

    内村(良)政府委員 御指摘のように、沿岸性の魚介類に対する需要は伸びておりますが、生産が伸び悩んでいる。一方、沖合い漁業等についてもいろいろな問題があるから、沿岸漁業振興していかなければならぬということで、一体どういうものについて振興するのかという御質問でございますけれども、まず、第一に、漁業者の所得というものを考えました場合に、将来とも需要が伸びる魚介類でなければ困るわけでございます。たとえば、よけいとって需要がないということでは漁業者が困りますから、需要が伸びる魚介類をまずとらなければならぬわけでございます。そうなりますと、ブリとかタイ、それからカレイ、ヒラメ、メバルというような漁業を伸ばしていくと同時に、さらに、今般提出しております法案にも盛られておりますように、栽培漁業振興ということを考えておりますので、養殖技術がすでに確立されておりますもの、あるいは人工ふ化をいたしまして、放流技術が確立されているもの、すなわち養殖ではブリそれからカキ、アワビといったようなもの、それから人工ふ化に伴って放流するものといたしましては、クルマエビ、マダイ等が現在すでに技術的に確立しているわけでございますが、さらに、今後におきましては、メバル、カレイ、ヒラメ等につきましても、栽培漁業の面でも大いにこれを伸ばしていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  112. 野坂浩賢

    ○野坂委員 前後しまして、まことに申しわけないですが、いまの質問の前段として聞かなければならなかったのですが、私のところにも中海という地域があります。先ほど公明党の瀬野さんが水俣湾の話をしたのですが、戦後、農地の造成事業あるいは工業の配置の問題等を加えまして、干拓事業が非常に行なわれました。これは戦後ざっと総計をいたしますと二万五千ヘクタール程度あろうと思いますが、これに要した漁業の補償と、これにかわる漁場というものが十分でき得たかどうか。そういうことがあっても今日漁獲高は減っていないと言えばそれまででありますが、先ほど長官がお話しになりましたように、魚も小型化しておるし、とれるだけはとってきたということもございますし、最近の公害その他から考えて、それだけを考えると漁獲高というものはどの程度減少しておるだろうかということがわかっておりましたら教えていただきたいと思うのです。
  113. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、最初に、先ほどの小型化の話でございますけれども、沖合いの漁業の全部が小型化しているわけではございません。その魚種によってそういう話が起こっておるわけでございます。  それから、次に、埋め立て等によります漁場の喪失状況でございますが、私どもの承知しているところでは、埋め立て面積は戦後七戸六千ヘクタール、うち、海面が五万五千ヘクタールにのぼっているわけでございます。その結果、いわゆる魚の卵、稚魚の生育場所でございます藻場が失われておるわけでございまして、全国の数字はございませんけれども、私が持っております瀬戸内海の数字によりますと、瀬戸内海では、昭和四十六年の十二月には、昭和二十六年当時の六五%の藻場等が消滅しているということになっております。さらに、それ以外に、最近では、いわゆる油濁、汚染その他の問題が起こりまして、漁業被害が四十七年には約百十六億円に達するというような被害が生じているというような問題がございまして、確かに、埋め立てによりまして、漁業上優良な藻場が相当失われているということは数字上もはっきりしているわけでございます。
  114. 野坂浩賢

    ○野坂委員 水産業を守るという立場で、今後はそういう点については十分配慮されるという考え方に立つというふうに考えてよろしゅうございますか。
  115. 内村良英

    内村(良)政府委員 水産庁といたしましても、こういった漁業被害に対しましては、海洋汚染防止法、水質汚濁防止法、瀬戸内海環境保全臨時措置法、公有水面埋立法等公害関係法律によって——これはここ二、三年急速に整備されてきたわけでございますが、そういった法律の厳正な運用によりまして漁場の環境の悪化の防止をはかることが重要でございますので、これらの法律を担当している省に対しまして、これの厳正な運用ということを常に申し出ているわけでございます。と同時に、水産庁自体といたしましても、汚染状況調査あるいは公害防止の資器材の設置に対する助成、それから公害防止調査指導体制整備、あるいは海底の堆積物の除去等をすでに進めておりますし、公害による被害防止をはかるために、さらに、水銀等の汚染被害漁業者に対しましては特別融資をすでにとってまいりましたし、さらに、今後、特に最近東京湾、伊勢湾等で発注しております原因者不明の油濁による被害漁業者の救済あるいは赤潮の被害等につきましては、ただいま提案しております漁業災害補償法の一部改正で、赤潮特約ということで赤潮対策も入れておりますけれども、そういったことで、水産庁団体も、そういった面の漁場環境の改善というものには最善の努力を尽くしておるところでございます。
  116. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、赤潮対策なり、そういうことを水産庁が積極的にやられるわけですし、沿岸漁場開発等も先頭に立ってやられ、あるいは栽培漁業、魚の栽培センター等も積極果敢に指導して、中心になって進めるというふうに確認してよろしいわけですね。
  117. 内村良英

    内村(良)政府委員 水産庁が中心になりまして、都道府県、市町村あるいは水産関係の諸団体の協力を符まして、ますます水産の環境をよくし、漁業生産力をあげていくというふうに努力したいと思っております。
  118. 野坂浩賢

    ○野坂委員 まことにりっぱな御答弁をいただきまして、新任の水産庁長官としては上できですが、それでは、沿岸漁場整備開発法の二条の関係なんですが、後段のほうで、「たい積物除去その他の政令で定める沿岸漁場整備及び開発事業で、政令で定める者が実施するものをいう。」と書いてございますね。先ほどの長官の御答弁によりますと、遠洋漁業あるいは沖合い漁業というものを考えて、沿岸漁場開発なり整備なりをして、あるいは栽培センターをつくって魚の育成に努力をするのだ、しかも、水産庁がその先頭に立って指導、育成をして、県市町村の自治体の協力を得てやるのだということで一貫して御答弁をいただいたわけですが、これを私たちがよく見ますと、「政令で定める」ということがたくさん出ておるわけでありますが、この政令で定める者というのはどういうことをお考えなんですか。
  119. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁場整備計画につきましては、繰り返して御答弁申し上げておりますけれども、四十九年に都道府県調査を委託いたしまして、その調査が出てきたところで現実的な計画をつくり、五十印を初年度といたしまして、五年計画程度を目途に事業を進めたいと思っておるわけでございます。したがいまして、事業主体がどこになるかということでございますが、現在までのところ、構造攻勢事業その他におきましては、大体地方公共団体主体となってやってまいったわけでございます。そこで、今後におきましても、事業の性質上、地方公共団体が中心となってやり、さらに、それに漁協等がやる事業も入ってくるというようになってくるかと思います。しかし、大型の事業については、現在はそういうものはございませんけれども、たとえば二県、三県にまたがる漁礁の設置というようなことで、これは当該都道府県事業としてはとても規模が大き過ぎるというようなもの、あるいは技術的に問題があるというようなものについては将来国がやることもあり得るわけでございます。そこで、今後の技術発展その他との関係も待ちながら、将来国がやる必要があるものが出てくれば当然国がやるわけでございまして、その政令の規定で「国」というものを入れるということになるわけでございます。  そこで県からの調査結果が出てこなければ正確なことは申し上げるわけにはまいりませんけれども、私どもといたしましては「地方公共団体その他漁業団体」ということをとりあえず政令で書きまして、将来国がやらなければならぬというようなことが出てくれば国が主体となってこれをやるということを政令に書き入れるということを考えておるわけでございます。
  120. 野坂浩賢

    ○野坂委員 あなたはなかなかじょうずですから、そういうことも言えるでしょう。いま調査を委託していらっしゃるわけですから、その結果を見て、都道府県なり市町村だ、政令に定めるものはそれなんだ、しかし国が将来やらなければならぬものが起きてくる場合は当然国がやるんだ、と、こういうお話しでありますが、この法律そのもの、あるいは政令そのものを直視しますと、国が逃げたように見えますね。いわゆる実施するものは都道府県や市町村だ、国は知らぬ、こういうことになるわけです。あなたの答弁を聞くとそういうことになるけれども、具体的には国が指導し、育成をするんだ、また当然やらなければならぬというようなものについてはやるんだ、こういうことでありますが、いまの水産日本を取り巻く情勢というものは、都道府県や市町村だけにまかしておくというような段階ではなしに、あなたが先ほど決意を表明されましたように、国が積極的に指導し、これを実施する道を開くというのは当然だと思うわけです。だから、それを初めから入れたらどうですか。やってみて、国がやるべきことがあったらということではなしに、当然あるのはわかり切っておるわけですから、いまから入れたらどうですか。
  121. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、国の姿勢でございますが、第三条に、「農林大臣は、沿岸漁場整備開発事業の総合的かつ計画的な実施に資するため、沿岸漁業等振興審議会意見を聴いて、政令で定めるところにより、沿岸漁場整備開発事業に関する計画(以下「沿岸漁場整備開発計画」という。)の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。」とありまして、従来、構造改善事業魚礁設置あるいは浅海開発等がいろいろ行なわれておるわけでございますけれども、これは県知事計画に基づきまして、それに国が助成しているという形でやってきたわけでございます。  そこで先ほどからお話しが出ておりますように、先生の御指摘のございますような日本水産業が直面している現実から、この際、沿岸漁業振興のために沿岸漁業整備を大々的にやろうということで、農林大臣がこのような計画をつくるということにまず三条でなっているわけでございます。  そこで、実施も国でやったらいいじゃないかということでございますが、実は、私どものほうも、この計画をつくる過程におきましていろいろ議論をしたわけでございますが、そこで問題になりましたのは、とりあえずの大きな問題は、全漁連等日本中を漁礁で取り囲め、魚礁というものは漁業資源培養には非常にいいんだということで、かなり大型の魚礁を平らな海につくったらどうか——従来の魚礁というものは、大体自然の魚礁を補完するというような意味で入れてきているわけでございますが、そうじゃなくて、平らな海に大型の城のような魚礁をつくってみたらどうか——ただ、これは流れてしまうという問題も出てきますし、そういった基盤に入れていいかどうかとか、技術的に研究しなければならぬ問題がたくさんあるわけでございます。そこで、水産庁でも外の関係者とも協力いたしまして、漁礁の研究等は大いにやっておるわけでございますけれども、これは国の事業としてやったら大いに漁業生産力の発展にも役立つし、漁民の所得上昇にもいいんだということは、必ずしもまだ技術的に解明されていないというような問題もございまして、私どもとしましては、いずれにいたしましても、そういう技術的な問題の解決に全力を尽くして、将来国が主体となってやるのにふさわしい事業が出てくればもちろん国が主体となってやる。ただ、現在のところでは、大体各県の規模でできますし、それは県の事業としてやったほうが現実的なんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  122. 野坂浩賢

    ○野坂委員 農林大臣にお尋ねをしますが、いま水産庁長官からお話しがあった第三条に関連をするわけですが、この法律には、「沿岸漁業等振興審議会意見を聴いて、政令で定めるところにより、」云々と書いてあるわけです。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  これは五年一期ですね。これについてはいろいろと各県に委託調査その他をされておるわけですし、ことしの予算にも六千六百万円ですか、たしか書いてあると思うのですが農林省でお考えになっておるこれの大体の事業量あるいる個所数というものが腹案としてもう積み上げられておるだろうと思うのですが、こういうきわめて緊迫した情勢でありますから、それをどの程度にお考えになっておるのか、お伺いをしたいと思うのです。
  123. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これはまだ県のほうの調査を待ってからで、いま詰めておる最中であります。
  124. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それではいつごろできますか。
  125. 内村良英

    内村(良)政府委員 四十九年度において調査をすることになっておるわけでございますけれども、私どもは、なるべく早くそれをまとめまして、できれば、五十年度を第一年度としてやるために、秋ぐらいまでにはまとめたいと思っておるわけでございます。
  126. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それから、先ほど水産庁長官がお話しになったのは、栽培漁業センターをつくってこれから魚をつくるのだ、種苗もやるのだというお話しでありますが、三十八年から四十二年につきましては、瀬戸内海の栽培漁業センターというものをおつくりになっておるわけですね。これは大体全額国費ですが、四十八年から五十年に至る間は四分の三になっておるわけですが、これはなぜ——たとえば私たちのところでも、町村合併等の問題があったときに、港やそういうものを持っておるとずいぶん金を食うのでなかなか合併してくいということがよく論議の中心になるわけなのです。これは余分な話ですが、これから漁業振興し、沿岸漁業発展させていかなければならぬ、さらに、そのためには栽培漁業もやっていかなければならぬということで、補助率が普通は高まってくるのに、下がってくるというのはどういうことですか。水産庁長官なり、あるいは農林大臣もせっかく決意を新たにしてそれぞれに就任しておられるわけですから、これはもとに返したらどうですか。
  127. 内村良英

    内村(良)政府委員 瀬戸内海の漁業センターは現在社団法人でできておりまして、県等もそれの社員として入っているわけでございますが、事業自体は全額委託事業として国民の負担でやっております。ただいまの四分の三というのは、四十六年から県のセンターをつくっておりますが、その助成の率が四分の三になっているわけでございます。
  128. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その事業団でやるといっても、その前まではずっと十分の十だったのですよ。各県の場合は四分の三と言いますけれども、これは上限が二億五千万なのですね。しかし、三億から五億かかっておりますよ。それで四分の三と言いましても、この物価高のときに上限がきめられておるということであれば、補助金は五割にも満たぬじゃないですか。だから、上限というものをはっきりともっと上に上げていかなければ、ほんとうの意味の国の補助として、思い切って自治体がやるという段取りにならぬのじゃないでしょうか。
  129. 内村良英

    内村(良)政府委員 補助率の問題もございますけれども、物価騰貴の中で事業費も足りなくなってきているという問題もあるのだろうと思います。そこで、私ども予算要求をいたします場合には、なるべく現実に合うような形で要求しておりますので、センターの予算につきましても、五十年度の要求の場合には、現下の物価騰貴等を考えて要求するということになってまいるわけでございます。
  130. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま現実にたとえば五億円かかれば、四分の三はもらえますか。  それから、もう一つ、立ったついでですから伺いますが、県のところも大体十分の十の予定だったんじゃないですか。四十六年から、新潟や、石川や、福井や、島根や山口というところも、ですね。櫻内前農林大臣が、いまの倉石さんの前に大臣になられて、島根県をやれということで、予算規模はきまっておったのに、これが入ってきたから四分の三になったのと違いますか。私たちはそういうふうに理解しているのです。今度倉石さんがなられたので十分の十になるんだというふうに私は理解しているのですが、やっぱり四分の三ですか。
  131. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、最初に、現在の補助の問題でございますが、これは国のやり方といたしまして、標準的な事業費に対して四分の三の助成をしておるわけでございます。それから、県営センターにつきましては、当初から四分の三ということで助成措置を講じておるわけでございます。
  132. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま聞き漏らしたんですが、上限二億五千万というのはとっていただけるわけですね。それは事業費として絶対に要ったものの四分の三というふうに理解していいんですか。
  133. 内村良英

    内村(良)政府委員 二億五千万円を基礎にして助成をするわけでございます。それは、補助金の交付として大体そういうやり方をしております。
  134. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは困ると言っておるのです。あなたは先ほど決意表明をされて、これから国が積極的にやるのだ、委託もして調査をするのだと言っているわけですから、相当大型の漁礁なりあるいは栽培センターをつくるということになれば、そういうちゃちなものではなかなかできないというのが現状なんです。それから、県は、クルマエビとか、地先のところからあまり移動しないものをどうしてもつくりたがるが、たとえばタイなどのように、広いところを回遊するひれものの魚をつくって、どこでも回遊するというようなかっこうになってこなければ魚はふえてこないわけです。そういう面からすると、二億五千千万円の根拠は、今日の段階ではすでにくずれたと私は思うのですよ。だから、国は絶対額があるからというようなことではなしに、水産庁長官としては、実態をよく把握して、二億五千万というものはやっぱりやめていくということにしたらどうですか。事業費が五億かかれば、五億の四分の三ということでなければ意味がないと思うのです。非常に金額がかさむわけですからね。あなたはもういままでのように局長ではなく、この上のない長官なんですから、その辺については、もっと漁民の立場に立って、魚を守る、魚をつくるという立場に立って、もっと大胆にそういう決意をしてもらいたいのです。二億五千万ではだめだと私は思っているのですが、それについてはどういうお考えか、もう一度お聞きしたいと思うのです。
  135. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、最初に、沿岸漁場整備計画と栽培センターの問題でございますが、沿岸漁場整備計画で考えておるところの——先ほど国、地方公共団体というようなことをいろいろ申し上げましたけれども、その場合の計画の中に入ってまいりますのは、いわば海の中の施設の整備ということが漁場整備対象になってくるわけでございます。そこで、栽培センターの整備というのは、これはおかの施設でございまして、これにつきましては、現在もうすでに助成をいろいろやっておるわけでございます。そこで、事業費が物価騰貴等によって上がっていく。要するに、補助金の交付を考えた場合には、考えられなかった物価騰貴等があって、資材が上がっていくから足りなくなってくる。そこで、四分の三の助成として実額に、ということでございますが、これは国全体の補助金交付の問題と関係がございまして、私どもといたしましては、予算の執行上は、標準的なものに対して四分の三ということで、実額の四分の三ということは、国全体の補助金交付の体系の問題とも関係があって、これはなかなかむずかしい困難な問題だというふうに考えております。
  136. 野坂浩賢

    ○野坂委員 むずかしいからこういうところでただしておるわけですが、あなたは、やる気はありませんか。
  137. 内村良英

    内村(良)政府委員 これはさらに今後予算措置というものはずっと続いていくわけでございますから、次の年度の予算要求のときに、現実的に合わせていくということでこの問題を解決していく以外に方法はないのではないかと思っております。
  138. 野坂浩賢

    ○野坂委員 努力をしていただきたいと思います。  それから、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法関連してお尋ねをしたいと思うのですが、この近代化の資金を貸し付けるのに、長い間借りますのに、大蔵省等のいまの金利の問題もございまして、六分五厘を七分にするとか、五分五厘を六分に引き上げるというようなことになったわけでありますが、この中で保証料というものがございますね。漁業信用基金協会がそれぞれ県にありますが、この保証料をもっと下げてもらわなければならぬということが一つと、それから、近代化資金と相まって、漁協の金をそれぞれ吸い上げて、農協と違って九割以上還流をしておるというふうな実態もございますが、この基準金利の九分という根拠を、国が差額の二分の一、県が二分の一というものを利子補給として出しておると思いますが、全国的にそのことは徹底をしておるかどうか、まず聞いておきたいと思うのです。
  139. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、保証料の話でございますが、近代化資金につきましては、保険料の〇・七%を〇・三五%に下げますので、それに合わせまして保証料も下がってくるということで、近代化資金についてはそういった措置がとられることになるわけでございます。  次に、基準金利の問題でございます。その基準金利の九分というのは、系統の資金コストとして無理があるのではないかということの御質問かと思いますが、御承知のとおり、漁業近代化資金の金利は末端金利が年六%、共同利用施設については七%となっております。これは昭和四十四年に制度ができましてからずっと同一の金利できたわけでございますが、非常に金融が緩和されました昨年の四月に、これを農業と一緒に〇・五%下げたわけでございます。ところが、その後金融情勢が急変いたしまして、非常に金利が上がってきたということもございますので、本年二月一日に再び金利を〇・五%引き上げて、もとに戻したわけでございます。ということで、末端の金利を一度は金融緩和した。すなわち、資金コストが下がってくることによりまして下げたわけでございますが、最近はまた金利が御案内のように上がってきておりますので、これを二月に引き上げたわけでございます。  そこで、現在の基準金利九%が漁協系統の資金コストの面から見てはどうかということでございますが、私どもの見ておりますところでは、確かに、漁業の系統金融のほうが農業の系統金融よりも資金繰りその他の面において非常に苦しいわけでございます。と申しますのは、農業の場合には、いわゆる農民の売った土地代金等が系統に入ってまいりまして、その結果かなりの資金が系統に上がってくるということになっておりますけれども、漁業の場合にはそういった金もございませんし、もともと農業に比べて系統の資金規模も小さいわけでございますから、現在のところ、漁業系統の系統金融というものは、農林中金から千五百億くらいのローンを受けてやっておるというような状況になっておるわけでございます。そういったことを考えますと、確かに、漁協の系統のほうが経営その他の面におきまして農協よりも苦しいという面があるわけでございますが、現在の金利水準でいきますと、基準金利九%ならば何とか経営ができるだろうというふうに見ております。ただ、今後公定歩合の引き上げその他がございまして、かりに預金金利がいまより上がるということになれば、私どもとしては、これを慎重に検討しなければならぬ問題が起こってくるというふうに考えておる段階でございます。
  140. 野坂浩賢

    ○野坂委員 確かに資金繰りはたいへんだと思うのです。それから、還流の伏況としても、漁民の預金は全部漁民へと、こういう姿になっておると理解しております。しかし、そのために保証料は、漁業信用基金協会等の保証料を考えてみましても、全国的にばらつきがありますね。たとえば日本かつおまぐろ協会というようなものについては〇・五〇ですね。そうすると非常に楽だ。しかし、一以上の基金協会といえども七つ八つございますね。総じて言うなれば、不信協会ということも言い得ないとは言えないと思うのです。それらについては抜本的に保証料を下げるような指導なり、あるいは国の思い切った助成なり、県と話し合うというような姿が今日望ましいではなかろうかと思うのですが、一以上のものについてはどういうふうにこれから指導される考え方か、お伺いをしたいと思うのです。
  141. 内村良英

    内村(良)政府委員 御指摘のように、一以上の保証料の協会がございます。これは代位弁済が多いとか、いろいろ経営上の問題があってこういう形になっておるわけでございまして、私どもといたしましては、従来からも経営の合理化あるいは事故の低減等については指導しております。これにももちろん限界がございますので、今度つくります中央基金が近代化資金等を融資することになっておりますので、その際、そういった資金の配分について、こういった協会については実態を十分見ながら考慮したいということである程度対処したいと思っております。しかし、いずれにしましても、これは基本的には漁業の経営の問題に返るわけでございますけれども、そういう問題もここにからんでいるわけでございます。
  142. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、時間が参りましたので、最後に漁災法について、補助限度率の問題だけについてお尋ねをしたいと思います。  これはそれぞれ国庫補助率が十トン未満は五五だとか二五だとかいろいろありますが、補助の限度率というものがございますね。六〇%、あるいは四七、五〇、ということになっておるわけですが、これを撤廃しないと十分な給付が受けられないことになると思うのです。百万円のものは六十万円までというような点については、今後これはやはり撤廃をすべきだ、そうしなければほんとうの漁業振興にならない、また、漁災法としての真の意味に到達しないのではなかろうか、こういうふうに思うのですが、どのようにお考えですか。
  143. 内村良英

    内村(良)政府委員 先生案内のように、毎年予算の時期におきまして、この漁業災害補償制度の予算の問題をめぐって、常に漁業関係団体から要望があり、私どももそれに向かって努力しているわけでございます。ただ、これは、類似の漁船保険とか、家畜保険とのバランスとか、いろいろの問題がございまして、漸次一生懸命改善するように努力したいと思っておりますけれども、横並びの問題もある問題でございまして、なかなかむずかしいわけでございますが、将来にわたって努力したいと思っております。
  144. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これで終るのですが、いまたまたまお話しになりました漁船保険、これは比較的安定していますよね。しかし、漁業共済とか任意共済というのはまだまだ日も浅いわけですから不安定なんですね。だから、おっしゃるように、その限度率の問題あるいは窓口の問題等も含めて、今後、あなたの在任中に積極的に限度率を撤廃するように努力をされることをお願いして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  145. 仮谷忠男

    仮谷委員長 柴田健治君。
  146. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 先般も御質問申し上げて、引き続いてお尋ね申し上げたいと思います。  きょう、資料として、漁業協同組合の規模、職員数、そして、いろいろとその内訳の明細をいただいたわけでありますが、漁業協同組合の組合の、団体を育成するというのでなくして、その団体が持っている任務を完全に遂行さしていくという、そういう立場から申し上げると、どうしても専門技術員というものを十分配置していかなければならぬ、とる漁業というのではなくして、これからは飼う漁業だという立場から考えると、相当高度の技術者が要る。ただ一ペんの講習会や研修会程度ではほんとうの専門技術員にはならないという判断に私は立っておりますので、この点を将来どう改善していこうとするのか、大臣の所信を聞きたいと思うのであります。
  147. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、その前に、きょう提出いたしました資料のことでございますが、資料の中で「指導事業等部門」というのがございまして、そこで一組合平均一人となっておりますけれども、これは農協の農事指導員といいますか、いわゆる技術指導員のようなものではなくて、むしろ販売、購買事業との結びつきのほうが強い指導員だというふうに考えております。そこで、正確に技術員が何人要るかということは必ずしも統計からつまびらかではないわけでございますが、私どもといたしましては、技術指導は、やはり改良普及員というものを中心にしてやっていったほうが現実的なんじゃないかと思っております。すなわち、普及員の場合には県の試験場のほうとも結びついておりますので、普及員が中心になってそういった指導事業をやったほうがいいんじゃないかということで、この前もそういった趣旨の御答弁を申し上げましたけれども、そんなふうに考えているわけでございます。もちろん、漁協がそういった技術指導員を持つということは、先生指摘のとおり大事なことでございますが、現在の漁協も、経営状態はいろいろございますけれども、おしなべていまの漁協に全部指導員を置きなさいと言うのは、かなり無理ではないかと思います。したがって、国が県と一緒になって大いに手助けをするという意味において、普及員にそういう面で大いに活動してもらうようにしたほうがいいのではないかというふうに考えているわけでございます。
  148. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 大胆の所信を伺いたい。
  149. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 水産庁長官が申し上げたとおりであります。
  150. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 大臣がぶっきらぼうで、人柄がはっきり出ておると思いますから、そのつもりでわれわれも判断をしていきます。  技術員の養成をしなければならぬときにただ改良普及員制度を活用していくという、その程度の技術員で十分だと思っているのでしょうか。日本沿岸漁業を飼う漁業へ大転換するという路線を敷こうとしておるときに、ただ改良普及員程度の技術でやれるという自信をあなたが持っておるというところに、本気で日本沿岸漁業振興を考えているのかどうか疑わしい点がある。たとえば、遠洋漁業であるとか沖合い漁業というものはまた別でありますが、沿岸漁業というものは、単に漁場を開拓してやったらいいではないかという軽い気持ちを持っているということは、長官のものの考え方が非常に浅いと思うのですね。もっと一歩踏み込んで考えたらどうかという気がするのですが、長官、どうですか。  それから、その点に関連してもう一つ見解を聞きたいのですが、第一次産業をはねのけて別の産業の発展をはかるために、御承知のように、文部省は高等専門学校を各県に一校ずつつくる、今年度から各県に技術大学院をつくると言っております。この技術大学院は、重化学工業その他高度の技術開発に寄与さしていくということで、そういう技術大学院までつくって、企業がやらなければならぬ仕事を肩がわりして、国民の責任においてやっていく。たとえば各都道府県に職業訓練校を持っておるが、この職業訓練校も、個人が技術を身につけるということもねらいでありますけれども、どちらかというと、これは企業が技術者を養成しなければならぬのにもかかわらず、国なり県の金で技術者を養成して、企業が受け取っておる。そういうことを考えたときに、第一次産業をもっと高度に技術開発をすることを考えなければならぬときに、ただ単なるそういう発想で第一次産業が、特に水産業発展するとは、私たちには考えられないのだが、長官、その点はどうですか。
  151. 内村良英

    内村(良)政府委員 現在、普及員の数は、技術員が百八人、改良普及員が四百二十九人、合わせて五百三十七人の普及員がいるわけでございます。  そこで、従来の普及員の活動を見ておりますと、いわゆる魚をとるといいますか、漁労の面につきましては漁業者のほうも非常に進んでおりますし、また、個人である程度いろいろな問題を解決していくことについてはアドバイスをしているわけでございますが、どちらかというと、養殖あるいは栽培漁業というものは、私どもの見ているところでは、一番普及員の活動に適している分野ではないかというふうに思っておるわけでございます。  そこで、これまで普及員が一部行政事務に使われておるとか、いろいろなことがございますけれども、今後栽培漁業振興をはかるためには、たまたまそういったことに適した人間がおりますことでございますので、私どもといたしましては、まず、普及員の活動を通じてそれを大いにやりたい。それから、漁協が専門の技術員を持ってやることは、もちろん私どもとしては望ましいことだと思いますし、そうしなければならないと思いますけれども、漁協の経営状態が、現在すぐ全漁協技術員を置けるところまで必ずしもいっていない。したがいまして、普及員の指導によって、栽培漁業主体になって漁協がやっていく。その結果、漁協にも相当余裕が出てきて技術員を置くということになってくれば、それはもう理想的でございますし、また、そのように持っていかなければならない。しかし、いま直ちに漁協技術員を全部置いてやれといっても、漁協の経営上なかなか無理な面があるので、いままであまり置いていない。一方、養殖技術の普及には一番適している普及員がいるというような現実もございますので、私どもは、まず、現在手先として持っておりますそういった普及員というものの活動を広げまして対処する。それから、漁協のほうのいろいろな技術面の拡充ということはもちろん必要だと私は思いますし、そうしなければならぬわけでございますが、そういう現実もございますので、そういったふうにステップ・バイ・ステップでいきながら栽培漁業振興をはかろう、このように思っておるわけでございます。
  152. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 それでは、いまの普及員をどのように増員するのですか。普及員の増員計画はないのですか。そして、いま水産関係に携わっている普及員の平均年齢は幾つですか。
  153. 内村良英

    内村(良)政府委員 現在の普及員を養殖部門等にさらに再トレーニングするとかということをやりまして、現在の普及員でそういった活動をやらせたいと思っておるわけでございます。場所によりましては、現在、普及員が多少公害防止等の行政事務に追われているような面もございますので、そういった点はなるべく手を引いて、養殖とか、そういった本来の漁業活動のほうに普及員の活動を持っていきたい、こういうことで申し上げておるわけでございまして、とりあえず私どもの持っておる現在の普及員を使いながらそういった面の活動を広げていきたいと思っておるわけでございます。普及員の増員ももちろん望ましいわけでございますが、なかなかこれは現実的にむずかしいという問題もございますので、当面とりあえずは私どもの持っておる普及員の——これは県の職員ではございますけれども、その普及員の活動によって、そういった面をやっていきたいと思っておるわけでございます。
  154. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 年齢は……。
  155. 内村良英

    内村(良)政府委員 水産の専門技術員の場合の平均年齢は四十三歳でございます。
  156. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 農業でも、林業でも、漁業でも、改良普及員の平均年齢が非常に高くなっておる。行動力が鈍っておるとは言えないけれども、ほかの行政事務に追われておる。あなたは、行政事務はなるべく排除する、やらせないような方向でやると言うが、これは間違いないのですね。行政事務は普及員にはやらせないということは確認してよろしいですか。
  157. 内村良英

    内村(良)政府委員 行政事務は、普及員のほかの一般職員のほうでなるべくやっていただくようにいたしまして、普及員は、そういった行政事務じゃなしに、現場の指導と申しますか、特に養殖漁業等の推進の中心になってもらうように極力持っていきたい、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  158. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 いまの普及員活動は、本来の任務からはずれた行政事務が多過ぎるので、どうもみんな弱り切っているのですね。十分手が回らない、人手が足りない、自分で勉強する機会も少ない、研修にも行けないという大きな悩みを普及員そのものがたくさんかかえておる。その悩みをどう解消してやるかということが水産庁の任務じゃないかという気がするがわけで、この点については最大の配慮をしてもらわなければならない。そして、いま普及員を採用するのを押えておるのですよ。定員が少ない。定員で押えているから、もう断層ができておるのです。今度退職するときにはごそっと退職して、あとの補給がないからたいへんな混乱が起きるという可能性が出てくるわけですが、その断層を埋めるのにはどうしたらいいのか、その点についてはどうですか。
  159. 内村良英

    内村(良)政府委員 普及員の補給につきましては、県の水産担当の職員の中から普及員に充当しているということで、必ずしも定員がほかのほうに振り向けられているということにはなっていないと思います。(柴田(健)委員「断層を埋めるのはどうするのか」と呼ぶ)  県の水産関係の中から補充していくわけでございますから、その場合に、人事交流等を通じて普及員になるべく若い人を登用していくというようなことは必要だと思いますけれども、これは県の人事管理とも関連する問題でございまして、私どもといたしましては、極力若くてはつらつとした人にこういった仕事をやってもらうように努力をしたい、努力しなければならぬと思っておりますけれども、ただ、県の人事の問題とも多少からんでくる問題ではないかと思います。
  160. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 漁業発展させていくということは、施設改善も大事でありますけれども、要は人の問題なんですよ。問題は、この人の養成をどうするかということです。現在漁業従事者が三十五万八千人で、年々減っています。年々漁業従事者が減っている。  それから、漁業従事者の後継者育成というか、あと継ぎを養成しなければならぬと思うのですが、このあと継ぎの養成をどういう方法でやっておられるのか、それを聞いておきたいと思います。
  161. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、漁業に従事する労働力は年々減っております。特に、若年労働力の確保ということは、農業その他の産業と並んで、漁業にとっても非常に大事なことでございます。  そこで、なぜ漁業から若い者が出ていくかということになるわけでございますが、いろいろ話を聞いてみますと、所得の点、つまりかせぎからいけば、何といっても漁業は他産業に決して劣らない、農業に比べれば漁業のほうは若い人にとって十分なかせぎがある、しかし、どうも職場として魅力がないというような声を聞くわけでございます。と申しますのは、これも一つの話でございますが、昔でしたら船があまりよくございませんから、一ぺん航海に出て、天候が悪くなってくればまた帰ってくる。ところが、最近は非常に船がよくなりまして、島陰で休んでまたすぐ漁に出ていくというようなことで、かなり労働強化の面があるというところから、若い人たちがなかなか寄りつかないというようなこともあるようでございます。  そこで、私どもといたしましては、いずれにいたしましても漁業というものを魅力ある産業にしなければ青少年が残らないだろうというふうに考えているわけでございまして、そのためには、所得の増加をはかることはもちろんでございますが、漁船の居住条件をよくするとか、その他のいろいろな問題に十分努力していかなければならぬと思っております。この点につきましては漁業者の方々もいろいろ考えておられまして、最近ではむしろ居住施設を非常によくするというようなことになっております。  そこで、それでは水産庁としてはどういうことをやっているかということでございますが、まず、沿岸漁業について、魅力ある漁業とするためには所得の増加をはからなければならぬということもございますので、これにつきましては、かねがね構造改善あるいは栽培漁業推進というようなことをやって経営の近代化をはかっているわけでございます。それから、また、技術をある程度若い人たちにつけてもらわなければならぬということもございますので、漁村青壮年学級の開設、漁業技術研修会の開催などの指導活動もやっておるわけでございまして、いずれにいたしましても、水産庁にとって一番必要なことは、漁業を魅力ある職場にしなければならないということで、そのためにはいろいろな施策を展開しなければならないというふうに私は考えているわけでございます。
  162. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 長官は魅力あるということを盛んに言われるんですが、魅力あるということは、抽象論ではなしに、具体的にはどうするつもりか。予算を見、後継者に魅力を持たせるような予算措置はどこにあるのか。
  163. 内村良英

    内村(良)政府委員 私が魅力あると申しましたのは、第一に、やや抽象的でございますが、快適な職場であって、しかも相当なかせぎがあるということが青年にとって魅力ある職場ではないかと思っております。もちろん、銭金だけで人間が動いているわけではございませんから、一つの自分の仕事として、何らかの使命感を持って仕事をしてもらうことは必要だと思いますが、一方、経済の問題も考えなければならぬということで、両々相まってやらなければならぬという意味でございます。  それから、予算上、後継者育成対策についてどこにあるのかということでございますが、漁村青壮年育成指導費ということで、四十九年は五千七百三十八万円の予算を要求しております。これには、青壮年指導協議会費、活動実績発表会、技術研修会、先進地技術導入費、それから漁船技術の修練会、それから協同組合の職員養成費等も、ごくわずかではございますがこれに入っておりますし、さらに、青少年の実践活動の促進事業費というようなことで五千七百三十八万円の予算を組んでおります。そのほか、漁業技術講座放送事業費あるいは漁業労働力対策事業費等で四千五百万円ぐらいの予算が組んでございまして、直接的な後継者育成対策費といたしましてはそのような予算があり、さらに、魅力ある職場にするための施策といたしましては、漁業構造改善事業に始まって、漁港の整備その他漁業基盤の整備に関する費用が予算上計上されているわけでございます。
  164. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 予算措置の説明を聞くと四、五千万だが、ほんとうはどの程度の人数にこの魅力ある研修をさせるのか、われわれは疑問を持っておるわけです。漁村に行って若い人の意見を聞いてみると、国も県も漁業に対する理解が非常に浅いというか、あまり理解してくれないんだ、おまえたちはかってにとってやっていけと言って、公害が起きても、何回となくお願いに回ってもまともに取り上げてくれないと言うのです。こういう悩みを持っておる。まあ、それは漁業組合の幹部がやっておるんだからということで、われわれが独自にこのお願いに上がっても取り合ってくれないと言う。こういう若い層の不満というものが非常に多いわけですね。この若い層の不満をどうとらえて、どう解消してやるかということを聞きたいわけだが、ただ漁協組合という組織の代表者だけで話をしたら事足れりというような考え方でなしに、もう少し若い層の意見をくみ上げていくというような行政指導ができないものか、そういう点の行政指導について、もっと大きく窓口を広げて、そういう方々の意見も聞いていくというような方策はとれないものか、こういう気がするのですが、長官、どうですか。
  165. 内村良英

    内村(良)政府委員 直接若い人の声を聞けという先生のお声ですが、あるいはそれにマッチしているかどうかはわかりませんけれども、私どもといたしましては、いろいろな機会に青少年の経験を発表する会とか——これは中央まで来まして、東京でやっておりまして、そこで優秀な者を表彰するというようなこともやっております。そういったところでの若い人たちの体験談なり報告を読んでみますと、養殖事業について、ノリ養殖について、こういう技術的な改善を自分はしたというような発表をしているとか、いろいろな現実漁業活動の中からの発表ばかりでございますけれども、そういうようなことで、若い人たちのいろいろな体験を発表する機会もかなり与えられておりますし、私どもといたしましても、そういうことに注意を払ってその報告を読んだり、あるいは会場に参加したりして、いろいろ協力はしておるわけでございますが、そういう形で、若い人たちの意見を一応いろいろな機会に発表するチャンスはあるわけでございます。
  166. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 将来そういう点に十分配慮してもらいたいと思うのです。  あなたはいま、魅力ある職場ということで、漁港もよくしていくと言うが、それはそのことも関連はあります。そういうことでそういう予算が組んであるから魅力がある、希望を与えていくという割り切り方は、あまりにも飛躍的な高度な考え方だと私は思うのですね。これは逃げ道だと思うのです。私は、基本はやはり所得の問題だと思うのです。  そこで、いまの魚の流通の取引条件、取引の実態ですが、これはどういう方法で取引をされておるのか。長官から具体的に説明を願いたい。
  167. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、魚が港に水揚げされますと、そこから産地市場に出されるものが多いわけでございます。ものによりましては直ちに倉庫に入ってしまうものもございますけれども、産地市場に出されまして、そこで、加工用として、その場所にある工場が買う、あるいは地元の消費者向けのものに卸から売られるというようなことでありますが、そのうちの三分の一くらいは今度は大市場のほうに出荷されて、大市場の中央市場に出て、中央市場から卸売り人がそれを仲買いに売り、さらに小売りに売るというような形で流れておるわけでございます。最近では、冷凍もの等につきましては、直接港から加工工場に入るもの、あるいは、直接港から産地市場に入らずに消費市場に送られるもの等もあらわれてきておるわけでございますが、大宗は産地市場、それから消費市場を通じて消費者に流れておるというようなかっこうになっておるわけでございます。
  168. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 流れの方向はあなたの言うとおりでありますが、漁民に支払われる代金ですね。魚の代金の支払いはどういう方法で支払われるのか、そして、取引をされた時点から金が漁民のふところに入る期間、つまり、時間的というか、期日的にどういう日数がかかっておるのか、それの説明を願いたいと思うのです。
  169. 内村良英

    内村(良)政府委員 現金支払いまたは組合の貯金口座の支払いで、大体当日払われているというふうに聞いております。
  170. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 間違いありませんか。
  171. 内村良英

    内村(良)政府委員 大体においてそのように扱われております。
  172. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 あなたたはよく確認して答弁してもらわなければ困るのです。取引をされて、結局代金が入ってくるのは、すべて経費を差し引かれた後ですよ。目減りも手数料もすべて差し引かれて漁民の手に入ってくるのですよ。当日それらのものが全部清算されるはずはないのですよ。長官、間違った答弁をしてもらっちゃ困るのです。どうですか。
  173. 内村良英

    内村(良)政府委員 そういったものを差し引きまして、大体においてはその日のうちに支払われておるわけでございます。
  174. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 あなたは、取引の関係をもう少し合理化してやるということを真剣に考えてやらなければいかぬのじゃないかという気がするわけですね。大体大体ということばはおかしいのであって、ちゃんと実態を知ってもらわなければいかぬと思うんですね。  それから、いまの取引を見ておると、ほとんど伝票操作で、あとから金が入ってくる。漁民の手取りをふやしてやるのじゃなくて、いろいろな手数料から、目減りから何から全部漁民にかぶせてしまっておるんですね。これでは手取りがふえるはずがないです。品物と同時に価格がきまったら、買った者が目減りであろうとどうあろうと、その場で負担しなければならぬ。それを漁民にかぶせるところに、漁民のほうからいくと手取りが少かいということになるんです。この点は十分考えてもらいたいと思います。  それから、今度の予算で消費地の大規模冷蔵庫施設ということで、新しく二億八千四百九十六万四千円というのがあるが、これはどこにつくられるのですか。
  175. 内村良英

    内村(良)政府委員 冷蔵庫につきましては、産地、消費地、中継地につくるわけでございますが、二億八千万円は消費地の大型冷蔵庫でございます。
  176. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 場所はどこですか。
  177. 内村良英

    内村(良)政府委員 場所といたしましては、大体六大都市につくる予定になっておりますが、四十九年度はまだ具体的にきまっておりません。
  178. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 これは六大都市六カ所で二億八千万ですか。大規模冷蔵庫にならぬじゃないですか。場所がきまっていないというのは、どういう予算の要求をしたのですか。
  179. 内村良英

    内村(良)政府委員 これは合計一万二千トンの収容能力のある冷蔵庫をつくるわけでございまして、どこへつくるかという場所はまだきめておりません。
  180. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 そういう予算要求のやり方というものは初めて聞くんですね。どこにするやらわからぬけれども、一応要求だけしてとっておけというのは、これはどういう考え方なんですか。水産庁はそういう予算のとり方をいつもするのですか。一万二千トンの冷蔵庫をつくるとどのくらいの経費がかかるのですか。積算の根拠は何ですか
  181. 内村良英

    内村(良)政府委員 これは四十九年度の新規要求でございまして、四十九年度中にはもちろん場所もきめて、建設も始めるわけでございます。ただ、現在まだ予算も通らない段階でございますから、場所といたしましては、大体六大都市の中での東京、大阪、名古屋の三カ所をとりあえず考え、それで、今後三カ年計画で冷蔵庫をつくっていくわけでございます。初年度でございますから、まだ予算も通らない前で、場所は必ずしも明確になっていないわけでございますが、六大都市のうちとりあえず四十九年度はその三カ所くらいをつくりたいということで考えておるわけでございます。
  182. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 三カ年で結局一万二千トンといったらどの程度かかるのですかと言っておるのです。積算の根拠です。
  183. 内村良英

    内村(良)政府委員 約十億金がかかるわけでございます。そのうち二億八千万円を補助する、こういうことになるわけでございます。
  184. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 個所は大体三カ所ぐらいというのは初めからわかっておるのに、長官はもたもたした答弁をするものだな。もう少し簡単に、東京、大阪、名古屋で、具体的な場所はまだきまっておりませんと言ったらわかる。結局、十億かかるのに二億八千万でやれというほうがおかしいんですね。本気でこの流通機構の改善をやっているとは思えない。漁民の手取りをふやし、利益をふやしていくという、要するに、消費者の立場も考えるが、生産者というか、漁民の利益をどうふやしていくかということを原則に踏まえてこの流通機構の改善をしないと、流通業者だけがもうかる。先般函館の人が私に言ったところによると、冷凍倉庫をつくってくれるのはいいけれども、消費者も困る、漁民のほうも、大量に捕獲されたときは安くたたかれて買われて、そして消費者のほうには一つも安くいかないようになっていると言うのです。だから、冷凍倉庫をつくるにしても、漁民の手取りがふえるような、消費者の価格が安定して供給できるような、そういうことを考えないとほんとうの流通機構の改善にはならないと思うのですが、長官、これはどうですか。
  185. 内村良英

    内村(良)政府委員 流通機構の改善は、ただいま先生から御指摘がございましたように、生産者の手取りをふやし、同時に消費者価格は、消費者には安く安定した価格でこれを供給するということにするということ、これが流通改善のねらいでございます。したがいまして、流通経路については、これを極力合理化するということが必要になってくるわけでございます。
  186. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 そういう点を十分配慮してやってもらいたいのですが、ことしはこの水産予算があまりふえなかったというのはどういう理由ですか。
  187. 内村良英

    内村(良)政府委員 水産の予算の伸びでございますが、非公共では、対前年比一三四%になっております。公共事業費は、全体的に総需要抑制という国全体の政策もあり、七%の伸びになっておりますが、公共事業抑制の中で水産関係、特に漁港の予算は伸び率のいいほうでございます。したがいまして、水産庁の予算が特に伸びていないということはまずないというふうに私どもは考えております。
  188. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 それで、ことしの予算の浅海魚礁設置補助が昨年より減ったのはどういうわけですか。
  189. 内村良英

    内村(良)政府委員 浅海漁場の予算が減りましたのは、すでにでき上がったところがございまして、補助する必要がなくなってきたところがございますので、減ったわけでございます。
  190. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 これはもうだんだんなくなるのですか。
  191. 内村良英

    内村(良)政府委員 昭和五十二年までに完成するということで予算を執行しておるわけでございます。
  192. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 それから、大型魚礁もふえていないのはどういうわけですか。
  193. 内村良英

    内村(良)政府委員 大型魚礁設置は、構造改善事業とあわせてやっておりますけれども、事業としては公共事業でやっておりますので、総需要抑制という国全体の政策に合わせて伸びが減っている、こういうことになっているわけでございます。
  194. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 それなら、今度の沿岸漁場整備は、これもだんだん減っていくのじゃないですか。
  195. 内村良英

    内村(良)政府委員 沿岸漁場整備につきましては、これから計画をつくってやるわけでございますが、その計画に基づきまして毎年必要量が出るというふうにするつもりでございますので、大いに予算といいますか、助成をふやしていかなければ、こういった制度をつくる目的を達成することはできないわけでございますから、その点につきましては前向きに大いに努力しなければならぬ、こういうふうに考えているわけでございます。  なお、具体的な計画につきましては、現実性を持たなければなりませんので、県からの報告を待って計画をつくりたい。その計画が閣議決定になりましたら、その閣議決定の線に従って毎年予算の執行をするということにしたいと思っておるわけでございます。
  196. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 私たちの立場から見ると、大型魚礁設置補助も毎年ふやしていく、浅海魚礁設置補助もうんとどんどん伸ばしていく、そして、今度の沿岸漁場整備についても思い切って取り組んで、沿岸漁業振興発展をやらしていくという考え方に立たなければおかしいと思うのですよ。こっちを減した、今度はこっちをふやすのだということになると、一歩前進の率というか、進歩性がないじゃないですか。ただ、長官がかわるたび新しいものを一つふやす、前のやつはだんだん減していくということですね。本気でやっているとは言えない。全体をずんと伸ばしていくという考え方ならば沿岸漁業振興をやっているなという感じを受けるわけですが、予算の中身を見ると、あちらを少し削る、こちらを少しふやすという程度で、どうも見ばえがしない。こういうことでほんとうに沿岸漁業振興をはかる気持ちでおるのだろうかという疑問が起きるのですが、長官、どうですか。
  197. 内村良英

    内村(良)政府委員 魚礁設置、浅海増殖等は、現在も構造改善事業でやっておるわけでございます。そこで、本法案を御提案申し上げておりますのは、現在日本漁業が直面している問題の解決、すなわち、沿岸漁業振興ということに資するためにそういった事業をもっと大規模にやりたいというところから法案提案いたしまして、第三条で農林大臣計画をつくるということまで考えておるわけでございます。したがいまして、従来は毎年毎年予算の範囲内でこうきまってきたということでございますが、今後は一応五年計画といたしまして、閣議決定になりますれば、それに基づいて毎年予算の執行をしていくということで、従来よりもずっと計画的になるわけでございます。  さらに、私どもといたしましては、片っ方をふやすために片っ方を引っ込めるというようなことは考えておりませんで、やはり、全体として沿岸漁業振興の予算がふえる、その中で、漁場整備については特に力を入れていきたい、と同時に、栽培漁業振興その他の沿岸対策も、これとあわせて予算措置等も十分に充実していくようにしたい、というふうに考えておるわけでございます。
  198. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 海洋法会議ですが、二百海里説で相当追い詰められて、いま遠洋漁業で捕獲している約四百万トンの漁獲高が二百万トン、半分に減ったら、これはたいへんなことになると思うのですが、そういうものが減るということも考えなければならぬ。二百万トンが遠洋漁業で減ってくると、沖合いか、沿岸か、内水面漁業かで魚介類のたん白資源を確保しなければいかぬ。いまのような考え方で、財政投資計画というか、財政投資の方向で、二百万トンの遠洋漁業で減る分をどこで埋めようとするのか。沿岸漁業で埋めていくとするなら、いまの率から言うとたいへんなことだと思うのですが、長官、この点はどうですか。
  199. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもといたしましては、海洋法会議がどうなるかわかりませんけれども、いずれにいたしましても、わが国の遠洋漁業を維持するためには最大の努力を払っていかなければなりませんし、私どもは、急に四百万トンが二百万トンになってしまうというような事態にはならないのではないかというふうに見ております。しかし、いずれにいたしましても、遠洋漁業をめぐる国際環境というものは今後かなりきびしくなってくるということで、従来のように自由に伸ばせるかというと、多少問題が出てくるかと思います。そこで、今後魚自身の需要も伸びていくという面もございますので、私どもといたしましては、ここ十年ぐらいの間に、少なくともいまの漁獲高の一千万トンをさらに一千二百万トンに、一千三百万トンにと伸ばしていかなければならぬと思っておるわけでございます。そこで、そういった場合に、一番国民の需要の強いのは沿岸漁業の中級、高級魚でございますから、そういったものを極力供給するような体制をつくっていかなければならぬというところから、漁場整備その他沿岸漁業振興についての法案提案しておるわけでございます。しかし、ただいま先生から御指摘のございましたように、沿岸漁業でさらに百万トン、百五十万トンをつくるというのはたいへんな仕事でございます。私どもといたしましては、沿岸漁業はもちろん、いろいろとそういった施策をとりながら国民の需要に合ったものを供給するという体制に持っていくと同時に、一方、沖合い漁業あるいは遠洋漁業につきましても、これを振興し、漁獲高を維持し、場合によっては沖合い等については上げていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  200. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 先ほど申し上げたように、百万トン減るか、百五十万トン減るか、二百万トン減るか、それはこれからの問題だと思うのですが、沿岸漁業を伸ばすといっても、正直に言って、そうびっくりするほど伸びないと思うのですね。だから、ほんとうに伸ばすならば、思い切って養殖漁業という飼う漁業へ持っていかなければならぬ。そうすると、たとえば栽培漁業センターから放流して、放流したら、直ちにとるということはしないということを考えなければいかぬ。禁漁区というものを設ける必要があると思うのですよ。そういう点についてはどういう考えを持っているのか、伺いたい。
  201. 内村良英

    内村(良)政府委員 今般の育成水面の考え方も、放流したものが大きくなってからとるというために漁協に規則をつくらせまして、一定の規制をやろうという考え方をしておるわけでございます。禁漁区につきましては、藻場等におきまして、現在、水産資源保護法で六十数カ所禁漁区を設けております。そこで、そういった水産資源保護法の考え方とあわせて、今般の法律によってできます育成水面の考え方とからませながら、あまり小さいうちにとらずに、大きくなったらそれを採捕するというような形に持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  202. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 禁漁区をつくるというと、そのうらはらのことを考えなければならぬのですね。たとえば、漁民に当分の間休んでもらうことになるのですね。そうすると、漁民の生きていく生活の保障というものを考えなければならぬ。だから、禁漁区を設けて一年なり二年なり考える場合に、どういう処置で漁民の生活を守ってやるのか。たとえば休業補償というか、失業保険というか、そういう制度を考えておられるのかどうか。長官、どうですか。
  203. 内村良英

    内村(良)政府委員 いずれにいたしましても、関係漁業者の納得を得ずに禁漁区をつくるわけにはいかないわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、禁漁区をつくる場合におきまして、関係漁業者にこういうことでこの地域漁業に非常に役立つんだということをよく説明して、関係の漁民の同意を得て禁漁区の設定をやっております。したがいまして、漁業者から、そこを禁漁区にした場合には、ほかの地域漁業をやるという要請があった場合には、極力そういうことができるようにしておりまして、関係漁業者の同意を得て大体仕事を進めており、そのほうがその地域漁業のためにもなるということでやっているわけでございます。
  204. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 同意を得てやるということは当然のことであります。  それから、食うためには他産業へ一時就職するとか、または出かせぎをするとかいうことで他の職に転じた場合、再び戻って漁業をやるという気持ちになるだろうかという気がするのです。一たん転進をしたらなかなかもとへ戻らぬというのが通例なんですよ。だから、相談をしてやっておるのだからだいじょうぶだという長官の考え方自体がおかしいと私は思うのですが、その間、他の、たとえば漁業関係をする栽培漁業センターをもっとふやして、そこに従事さしていくとか、休んでおる間にいろいろ魚のことについて研究をしてもらうとか、そういう方法を講じなければいけないと思うのですが、どうですか。
  205. 内村良英

    内村(良)政府委員 現在、水産資源法に基づきまして六十数カ所に禁漁区を設けているわけでございますが、まず、第一に、それほど広い面積ではないわけでございます。ただいま先生から御指摘があったような問題は、たとえば、埋め立てをやるために漁業権の消滅をやるというような場合におきましては、転業とかいろいろな問題が出てくるわけでございますが、現在、水産資源保護法に基づきます禁漁区の場合には、藻場の保護というようなことが多い関係から、それほど広い海域ではございません。したがいまして、そこにおる漁業者はほかの海域漁業ができるというようなことで、特に大きな経済的な損失を受けるところまでいっていない。むしろ、一時そういうところをやめたほうが資源の回復、資源の増大に非常に役に立つということでやっておりますので、そういった転業の問題とか社会問題が起きるほどの大きな禁漁区というようなものは現在まだ設定してないわけでございます。
  206. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 あなたの答弁を聞いておると、沿岸漁業をほんとうに本気でやるのだろうかという気がするわけでありますが、時間がどんどん進みますから、それはおきます。  いま沿岸でいろいろ問題が起きるのは漁業権の問題、それから海区の問題ですが、これらについて、漁業権、特に入り会い漁業権ということでいろいろ紛争があるわけです。そこで、これらの問題に対処するための再検討をする必要があると私は思うのですが、どうですか。
  207. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁業権に限らず、いろいろな条件も非常に変わってまいりますし、今後の日本漁業につきましては検討しなければならぬ問題がいろいろあるわけでございます。そこで、水産庁といたしましては、ただいま提出しておりますような沿岸漁場整備開発法に基づきまして沿岸漁業振興をどんどん進めると同時に、あわせて制度自体の検討ということも考えております。そこで、四十八年から漁業制度自体の検討会を設けまして、現在、漁業法の改正問題を含めていろいろな制度問題を研究しております。これは大体二年ないし三年計画でやろうと思って、その検討会は、学識経験者等を中心としてすでにスタートしております。そこで、私どもといたしましては、現在の漁業法を再検討する気が全くないということでは決してなしに、あらゆるいろいろな客観情勢の推移に即応できるような漁業のいろいろな制度整備ということもやらなければならぬ時代が来る、そういう時期が来るということを考えながら、いろいろ準備をしておる段階でございます。
  208. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 漁業組合、これは内水面でも言えるのですが、どうも白たび組が多い。ほんとうに命がけで魚をとるというような組合員ではなくして、自分の趣味でたださおをかついでいってつってくるという漁民も、組合員としてはある。これらが中に入っておるものだから、養殖業漁でも、なかなか新しく思い切ってやれないという悩みがあるわけですね。そこで、そういう方々がそんなことをしなくてもいいじゃないかという意見が出るわけです。それから、思い切ってやろうとしてもなかなかできない内部構造というか、組合員組織というか、それがあるわけだが、この組合員としての資格という条件をもう一ぺん考えてやる必要があるんではなかろうかという気がするのですが、どうですか。
  209. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもといたしましては、その検討会で水産業の協同組合の問題も検討することにしております。そこで、現在、農業のほうでも、農協というものは農業者に純化しろという、いわゆる農業純化論というのと、地域社会の組合になれという地域社会の協同組合論と、二つございますが、水産のほうにつきましても同様な考え方がございまして、水産業のほうに純化していくべきだという考え方と、ある地域におきましては、地域の協同組合として機能していくべきではないかというような考え方もあるようでございます。そういう基本に関するきわめて重要な問題でございますので、そういったことも含めまして現在制度の検討会では、これはまだそこまでいっておりませんけれども、一つの検討すべき課題にはなっているわけでございます。
  210. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 この点は十分検討してやらないと、漁業振興について非常に弊害を起こしてくるので、大いに検討してもらいたいと思います。  次に、内水面漁業のことなんですが、内水面漁業はいま十六万五千トンだが、これを将来どの程度伸ばしていこうとするのか、構想があれば聞かしてもらいたいと思います。
  211. 内村良英

    内村(良)政府委員 現在、内水面漁業の漁獲高は十六万トンでございます。そこで、私どもといたしましては、これははっきりした目標数字ということで、対外的に発表している数字ではございませんけれども、大体今後五年ぐらいの間になお四、五万トンの増産ははかりたいと思っておるわけでございます。
  212. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 十六万トンをもう五万トン四、五年の間に伸ばすと言うのだが、それは何を重点にやろうとするのか。
  213. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま五年間と申しましたけれども、十年間に五万トンないし六万トンぐらいふやしたいと思っておるわけでございます。  それから、何をふやしていくかという問題でございますが、マスあるいはコイ等の内水面の魚をふやしたいと思っております。
  214. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 それなら、ウナギはもうふやさないということですか。コイとマスだけで、ウナギは田なんかに入れればいいということですか。これも国際分業論かどうか知らないが、マスもコイも当然でしょうが、ウナギももっとふやしてもいいのじゃないか。そして、また、一方では、ところによって名前が違うわけですが、ヒラメという魚もある。これはいまどんどん伸びておるわけです。そういうように総合的、総体的に内水面の魚をもっとふやすことを考えたらいいのじゃないか。それなら、その具体的な施策を十年間に——いま、初めは五年と言って、今度は十年になったが、これはえらい違いなんですね。五年で五万トンなら、一年に一万トンなんだが、十年で五万トンといったら、一年に五千トンです。十年でもいいですが、もっと思い切って内水面漁業振興施策を打ち出すべきではなかろうかという考えをわれわれは持っておるわけですが、その点についてはどうですか。
  215. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもといたしましても、現在内水面漁業振興には大いに力をいたしておるわけでございます。しかし、伸びが非常に少ないじゃないか、十年間で五万トンは非常に少ないじゃないかというようなお話しでございますが、現実問題として、漁業環境の悪化というのは、沖合い漁業遠洋漁業はもちろんのこと、沿岸漁業よりもさらに悪い面も内水面についてあるわけでございます。したがいまして、そういった漁場環境の整備ということをまず大いに力をいたして、同時に、沿岸漁業と同様に種苗の生産の増加等をはかって拡大していかなければならぬという面がございます。  それから、ウナギをふやさないのか、アユをふやさないのかというお話しがございましたけれども、地域によってそれぞれ状況が違いますので、それに合わせてやっていかなければならぬ。特に、ウナギの場合には種苗の確保等にも——現在種苗を輸入している面もございますので、種苗の確保等にも問題があるということもございます。  しかし、いずれにいたしましても、実態に合わせながら生産の拡大をやっていくということを考えておりまして、現に、内水面振興事業といたしまして、各県に内水面振興のための助成をしているというようなことは大いにやっているわけでございますが、全体の生産を上げていくためには、漁場基盤の整備その他からまた始めていかなければならぬ問題がここにもあるわけでございます。
  216. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 本気でやっておると言われたけれども、われわれの目から見ると、内水面漁業については本気でやっていないですね。これは地方地方の趣味でやらしておるような気がするのです。それとも個人の努力にまっておるのか、正直に言って、国なり県は本気でやっていない。マスの養魚場については少し融資をしてやろうという程度です。本気でこの点について指導しておるとは思えない。あなたの答弁を聞いておると、いかにも本気でやっておるような答弁をするけれども、本気でやっていないから十年間に五万トンという程度の数字が出るのだと思う。もう少しこの内水面漁業に力を入れるという気持ちになってもらいたいし、予算措置についてもこれは何もないというような実態である。  そこで、全国で内水面漁業の組合がいま何組合あるのですか。
  217. 内村良英

    内村(良)政府委員 出資している組合が六百七十五組合ございます。
  218. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 きょうはこれから部会を開くということでありますので、またあしたこまかいことをお尋ねしたいと思いますが、長官、その間にもう少し総合的にいろいろとよく勉強してきていただきたいと思います。  終わります。
  219. 仮谷忠男

    仮谷委員長 諫山博君。
  220. 諫山博

    ○諫山委員 漁業災害補償法の改正案では、ノリに対する共済制度の改善が一つの中心的な柱になっています。そこで、最近におけるノリ養殖について二、三質問いたします。  ことしは、ノリは空前の豊作だと聞いているのですが、昭和四十八年度の生産量はどのくらいになる見通しなのか、お聞きいたします。
  221. 内村良英

    内村(良)政府委員 生産量は、まだ漁期が最終的に終わっておりませんが、九十億枚近くになるのではないかと思っております。
  222. 諫山博

    ○諫山委員 これは、平年作に比べてどういう数字でしょうか。
  223. 内村良英

    内村(良)政府委員 最近、ノリは技術の改良がございまして、生産が非常に急激に伸びておりますから、平年作についてということはなかなかむずかしい問題でございますが、ことしの天候状況その他から見ますと、かなり平年作を上回ったのではないかと考えております。
  224. 諫山博

    ○諫山委員 確かに、平岸作のとり方は困難だと思いますが、ごく大ざっぱに見て五割程度の増産という計算になるようですが、いかがでしょうか。
  225. 内村良英

    内村(良)政府委員 大体そんなところではないかと私どもも見ておりますけれども、正確な平年作の計算はなかなか容易ではございません。
  226. 諫山博

    ○諫山委員 ノリの大豊作というのは、自然条件に恵まれたという点もありますが、しかし、その基礎となるのは、何といっても漁民の熱心な研究あるいは努力のたまものであります。豊作自体は本来大歓迎すべきでありますが、ノリを栽培している漁民は、いま非常に深刻な事態におちいっております。先日、共産党の参議院議員の渡辺武さんが大分県の宇佐市長洲のノリ漁場でいろいろ調査したのですが、それを見ると、一月十三日の第三回のノリ入札会の平均の価格は、一枚四円五十銭で、第四回入札会の平均一枚の価格は三円で、中には一枚一円七十銭から二円五十銭程度に買いたたかれているものもあるということがあったそうです。漁民はあまりの安値でばかばかしくて売る気にならぬというので、売り控えて手持ちが非常に増加している。中には、ノリを採取するのをやめて出かせぎに行く人も出てきた。沖繩のサトウキビで収穫放棄が昨年大潟題になりましたが、同じような事態がノリ漁民についても起こっているという調査が出ているのですが、そういう事態が実際にあるのかどうか、水産庁にお聞きしたいと思います。
  227. 内村良英

    内村(良)政府委員 確かに、先生指摘のように、非常にノリが増産になりましたために、ことしは価格が下がっているのは事実でございます。ただ、その程度は県によって違いまして、大分県の場合には、一番打撃が大きいといいますか、価格の低落が大きかったほうに入っているという情報を私どもも持っております。と申しますのは、ことしの天候その他から考えまして、ノリの肥培管理が非常に問題になるわけでございまして、千葉県のごときはかなりいいノリができ、価格もそう下がっていないということもございますし、地域によって打撃が違います。大分県は、確かに相当な値段の低落があったことは事実だと思います。
  228. 諫山博

    ○諫山委員 昭和四十七毎度の生産者価格は、一枚当たり平均十五円二十銭だったと聞いています。四十八年度は幾らぐらいになる見通しなのか、わかりましょうか。
  229. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもの持っております全海苔の資料によりますと、昨年の一枚当たりの共販価格は十六円二十銭になっております。それが、ことしは、現在のところ、大体累計平均が十円九十銭ということになっているわけでございます。
  230. 諫山博

    ○諫山委員 ごく大ざっぱに見て、豊作のために生産は例年よりか五割程度ふえた、ところが、価格は昨年に比べて五割程度減少している、これが大ざっぱな見方ではないかと思います。こうなりますと、漁民としては、ノリのできがよかったといって喜ぶどころか、かえって深刻な事態におちいらざるを得ません。昨年、一昨年とミカンができ過ぎて、ミカン農民が非常に深刻な事態に直面したと同じ問題がノリで起こっているわけです。  そこで、十年ほど前にも非常な大豊作の時期があったはずですが、この当時の価格は例年に比べてどうなったか、わかりますか。
  231. 内村良英

    内村(良)政府委員 十年前のことでございますので、いま調べまして御返事いたします。
  232. 諫山博

    ○諫山委員 これは簡単なことですが、前年は一枚十二円八十銭程度だったのが、八円九十三銭程度に価格が落ちたという結果ではないかと思います。調査のしかたによって幾らかの差はあると思いますが、値段が暴落したという点では間違いないわけです。つまり、ノリの生産がふえる、そうすると価格が暴落して、かえって漁民が深刻な事態におちいっている、こういうことが繰り返されていることは水産庁は認識していますか。
  233. 内村良英

    内村(良)政府委員 ノリにつきましては、先ほど申しましたように、最近技術革新がございまして、かなり生産がふえてきたわけでございます。  そこで、かねてから、密植をやめたほうがいいとか、いろいろな技術面について水産庁は指導もしておりますし、一方、最近の傾向から見ますと、消費がまた伸びる面もございますので、そういったことを考えてノリの行政指導はいろいろしているわけでございます。ことし非常にとれ過ぎてしまったということでございますが、これは天候の影響と同時に、値段が下がったことの一つの原因として、塩分の関係等から品質がかなり悪くなって、色が茶色になってしまったものも出てきて、そういったものが特に買いたたかれているという面もあるのではないかと見ております。
  234. 諫山博

    ○諫山委員 私は、ノリの生産者価格が暴落して漁民が苦労している話をしたわけですが、反面、ことしは諸物価が暴騰して生産費が非常に高くなっているという、もう一つの問題があります。たとえば雇用労賃が高くなる、重油の価格が暴騰する、加工用資材も高くなるというように、何から何まで生産費が上がって、これが漁民の経営と生活を圧迫するという事態になっております。そこで、生産費は、昭和四十七年度は平均して幾らぐらいだったのか、四十八年度は幾らぐらいになる見通しなのか、御説明いただきたいと思います。
  235. 内村良英

    内村(良)政府委員 四十八年の生産調査はまだできておりません。しかし、私どもの推定では、やはり、コストは五割程度上がるのではないかと見ております。
  236. 諫山博

    ○諫山委員 いまの幾つかの数字で明らかになったのですが、ことしは史上空前のノリの豊作だが、ところが生産者価格が伴わない。一方では、生産費が前年に比べて五割もアップする。こういうことになると、ノリ漁民の経営と生活は空前の危機にさらされることになるのは避けられません。そして、多くの漁民が赤字のためにとてもノリ栽培はやっていけないと悲鳴をあげている実情です。これは大分県だけではなくて、たとえば福岡県の有明海一帯でも同じような事態が生じております。いま、こういうところでは、ノリをつくってかえって赤字が出るという事態になっていると思いますが、この点、水産庁調査はどうなっていましょうか。
  237. 内村良英

    内村(良)政府委員 まだ正式な調査は出ておりませんけれども、そういった地域があることは事実だと思います。
  238. 諫山博

    ○諫山委員 農林大臣にお聞きします。  ミカンの場合に、一昨年、昨年、増産に伴う価格暴落ということが大問題になりました。そして、いま、ノリについて、ある意味ではもっと深刻な事態が発生しているわけです。漁民が一生懸命研究し、努力をして、生産がふえる、ところが、そのために経営はかえって苦しくなる。こういう事態が発生するというのは、価格保障制度が確立されていないからだと私たちは考えております。また、こういう事態が放置されていいはずはないと思うのです。共済ということももちろん一つの手段として検討されているわけですが、基本的にこれを解決するための何らかの価格政策をとる必要があるのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  239. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これはさっき水産庁長官もお答えしましたように、生産技術等が進みまして、かなり大量に、そして、また、はるかの沖合いでもとれるようなことになってまいりましたので、最近非常に増産されるようになってきた。こういうことは、大体一年の需要というものはあるのでありますから、そういうことについて、生産者のほうでもそういう関係をよくお考えの上でとられることが一番いいのだと思います。そして、組合等においてもそういうことについて指導してまいる必要があるのではないかと思いますが、とにかく、いまのお話しにもございましたように、品質の低下もあったでしょうし、それから増産ということもあったでしょう。したがって、そういうことについて、これから生産者のほうでもそういうことに対処するためにいろいろ御研究をなさる必要があると思いますが、ここで価格保障と言いましても、いまそういう制度になっておりませんし、これはある程度研究に値することかもしれませんけれども、いま直ちにそういうことのできる状態ではありません。しかし、たいへん増産されて、いま水産庁長官もお答えいたしましたように、価格が低落いたしておるのでありますから、そういうことについては、どういうふうなことが一番いいか考えてみる必要があるのではないか、たとえば保管のことであるとか、いろいろ暴落を一時ささえることの必要なことは考えられることではないか、こういうふうに思っております。
  240. 諫山博

    ○諫山委員 もともと、ノリを養殖している人の中には沿岸漁業に従事していた人がたくさんあります。ところが、公害などのために沿岸漁業がうまくいかなくなる。そこで、政府も、自治体も、沿岸漁業にかわる方向としてノリを奨励するという方向を長期間にわたってとってきております。現に、大分県についても、大分県は盛んに武蔵などでノリの養殖を奨励してきております。ところが、現在になると、たとえば昭和四十六年八月十三日付の水産庁長官の通達などを見ても、供給過剰によって、ノリ価格が生産費をかなり下回るような事態の生ずることも懸念されるということを言いながら、あまり生産をふやすなという方向に転換しつつあるように思います。生産がふえたから価格が安くなる、だから、今度は反動的に生産を減らせと言うのでは、これは政治とは言えないと思います。政府の指導方針に従ってノリが増産されること自体は喜ばしいことですから、経営が成り立つようにする、あるいは消費者にも安い価格でノリが手に入るようにするということを、政府のほうでもっと真剣に考えるべきではないかと思いますが、水産庁のほうでは、具体的にそういう解決策は考えていませんか。
  241. 内村良英

    内村(良)政府委員 ノリの消費は一貫して伸びているわけでございます。したがいまして、今後におきましても、ノリの消費は非常に伸びるというような見通しを私どもは持っております。  そこで、問題は、つくられるノリの品質の問題でございます。あまり低品質のものは消費者から歓迎されないという面もございますので、私どもが指導しておりますのは、極力密植等を避けまして、品質のいいものをつくるということで指導しております。その結果、千葉などは、比較的ことしは密植を避けた肥培管理をやったわけでございますが、その結果非常に価格も高い、いい品質のものができているというようなことになっております。  そこで、水産庁といたしましては、量的な生産を押えるというよりも、より、良質なものをつくくって高い価格で売るというようなかっこうに持っていくべきではないかということで、いろいろ指導しているわけでございます。
  242. 諫山博

    ○諫山委員 大臣の答弁の中に、一つの対策として、たとえば、保管のためあるいは乾燥のための施設とか倉庫をつくるという話がありましたが、これは現在どういうふうに進行していましょうか。
  243. 内村良英

    内村(良)政府委員 昭和四十六年度から「のり保管流通施設設置事業」というものをやっておりまして、生産者団体が産地に仕入れ保管施設をつくり、消費地に消費地流通センターを設置するのに対する助成ということで、補助率は十分の三でございますが、漁業協同組合連合会を事業主体といたして事業をやっているわけでございます。その結果、四十六年は、産地仕入れ保管施設が五、消費地センターが一、四十七年は仕入れ保管施設が四、消費地センターが一、四十八年は産地の仕入れ保管施設を四つくっておるわけでございます。
  244. 諫山博

    ○諫山委員 とにかく、いま、ノリ漁民は深刻な事態に直面していますから、価格保障とかその他の方法で抜本的にいまのような事態を解決するという要求とともに、いま何をしてもらいたいかという非常に切実な要求を提起しております。たとえば借り入れ金の償還期限を延期してもらいたいとか、つなぎ融資がほしいとか、あるいは何らかの利子補給の方法がとられないのかとか、いろいろ私のところにも切実な要求が提起されていますが、水産庁としては、そういう金融面の何らかの措置というものは必要と考えていませんか。
  245. 内村良英

    内村(良)政府委員 昨今の石油製品の値上がりをはじめとする生産資材の値上がりによりまして、漁業経営のコストが非常に上がっているという問題は、単にノリ養殖だけではなしに、水産業全体の問題として出ているわけでございます。水産物の場合には、他の製造工業の製品等と違いまして、コストの値上がり分を直ちに価格に反映できないという問題がございまして、これが漁業経営上大問題になっている。しかし、一方、価格が需給できまってくる関係から、ものによりましては、最近値段が上がっている魚種もございます。そういうことで、漁業によりまして資材の値上がりの影響が多少違う。たとえば石油をとってみますと、底魚漁業とかマグロ漁業というような場合には油を非常に使いますから、その影響は強い。反面、沿岸漁業であまり油を使わないものは、網等の値上がりはもちろん多少ございますけれども、そういった漁業に比べれば影響が少ないということもございまして、漁業別に影響度が違うという問題もございます。しかし、いずれにいたしましても、こういった問題は今後深刻な問題として、漁業経営の維持のために問題になってくると思われますので、私どもといたしましては、現在、その対策を鋭意慎重にいろいろ検討しております。その場合に、金融対策として、とりあえずのつなぎ資金と申しますか、運転資金の融資ということもやる必要あがるのではないかと思って、いろいろ検討はしておりますけれども、いまだ具体的な結論を得るには至っておりません。
  246. 諫山博

    ○諫山委員 この問題を、地方自治体で何か前向きに処理している例はありませんか。
  247. 内村良英

    内村(良)政府委員 まだ私どもは正確には聞いておりませんけれども、県から聞いているところでは、先ほど御指摘のございました大分県がノリ業者の救済について県単の事業を考えている、目下これも検討しているということを聞いております。その他につきましては、県単で事業をやったというケースについては、まだ聞いておりません。
  248. 諫山博

    ○諫山委員 とにかく、ことしの事態は非常に深刻です。長官答弁にもありましたように、赤字が出ているところがだいぶあるんです。ですから、あまりこれは世間で騒がれていないようですが、水産庁としては、直接の所管庁として、抜本的な対策を検討すると同時に、いま何をしなければならないのかという点をぜひ積極的な調査もしてもらいたいと思います。漁民に対してもっと質のいいものをつくれという要求が強いようですが、しかし、それはそれとして、幾らそう言ってみたところで、なかなかそうはいかないところもとにかくたくさんあるわけですから、質のいいものを奨励すると同時に、すべてのノリ漁民が生産費を償うような収入が得られる措置を講じていただくということを希望して、次に、共済の問題に入ります。  現在の、ノリ共済は加入率が低いと思います。もっとも共済の中では高いほうのようですが、それでも推定加入率が昭和四十五年、四十六年は三六・九%、四十七年が三八・三%という数字のようです。それでは共済制度現実に機能していないのかというと、そうではありません。たとえば支払い共済金などを見ると、けっこう共済が機能しているということがわかります。それにもかかわらず加入率が四〇%にも満たないというのは、どこに原因があるとお考えでしょうか。
  249. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁業共済の加入が低いではないかということは、御指摘のとおりでございます。その中で養殖共済は比較的商いほうでございますが、昭和四十七年の数字で見ますと三二%ということになっております。私どもといたしまして、なぜこのように加入が伸びないのかということにつきましては、かねがねいろいろ検討してきたわけでございますが、どうもその制度仕組みが難解で、必ずしも漁業者の理解が十分得られていないんじゃないかと思います。これは制度ができてから十年近くなるわけでございますから、関係者は一生懸命やってきたわけでございますが、まだ、制度がどうもむずかし過ぎるという面があるのではないか、それから、次に、最近における水産物価格の上昇及び経費の増高傾向のために、現行制度では、漁業者が不慮の事故等により損失を受けた場合のてん補の内容が不十分である、それから、養殖共済におきましては、最近における養殖技術の革新等によりまして、現行養殖共済の仕組みがもう養殖の実態に適合しなくなってきているんではないか、そういった面も考えられるというふうに考えておるわけでございます。
  250. 諫山博

    ○諫山委員 まあ、手続がめんどくさい、むずかしいということが原因ではないと思います。ほんとうに漁民に利益をもたらすものであれば、手続がめんどうであっても加入するはずです。手続がめんどうだから利用してくれないんじゃないかというような理解であれば、私は、共済制度はとても改善できないと思います。もっと魅力のある共済にするということが何といっても第一の解決策です。そのためには、たとえば政府の財政支出をもっとふやすというようなことを考えながら内容を改善していくということが必要です。  そこで、ノリ共済についてお聞きしますが、新しい制度が実現するとすれば、どの程度の人が加入すると見込んでいましょうか。
  251. 内村良英

    内村(良)政府委員 ノリ共済につきましては、今般法律を改正いたしまして、収穫保険の実験をやるわけでございます。したがいまして、直ちに制度が変わるわけではございませんで、実験を一定年数やって、その結果に基づいて制度が変わる、まあ、こういうことになるわけでございます。そこで、実験は大体現在の組合の一割程度のもので実験をやりたいと思っておりますので、ノリ共済について、今般の法改正によりまして、直ちに物的保険から収穫保険に制度が変わるというものではございません。
  252. 諫山博

    ○諫山委員 漁獲共済で義務加入制が一部について採用されるようです。これも問題は加入率が非常に低いという点にあると思います。この加入率は極端に低くて、例年一〇%程度、ところが、これに義務加入制を採用することになると無理が出てくる面はないのかということが気づかわれるのです。ほんとうに魅力のある共済になれば、義務制にしなくても漁民は進んで加入してくるはずだと思うのですが、なぜこういう制度がとられるのでしょうか。
  253. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、制度を改正いたしまして、漁業者に魅力のある制度というようなことにした場合に、自発的な加入が期待できるのではないかということでございますが、確かにそういう面もあると思います。しかしながら、これは共済でございますから、加入がふえて危険の分散と逆選択の防止ということが行なわれ、さらに、それによって非常にプールが広くなれば共済掛け金の負担も低くなるという面があるわけでございます。そういったことを考えた上に、さらに、この制度は漁民の助け合い運動的な面もございますので、なるべくたくさんの人に加入してもらいたいということもございまして、義務加入制度というものを今般この制度の中に導入したわけでございます。
  254. 諫山博

    ○諫山委員 共済がなるべくたくさんの人が加入することによって威力を発揮するというのは、そのとおりだと思います。ただ、私がさっきも言いましたように、もっと魅力のあるものにすることが第一の解決策であって、共済掛け金が高いわりに共済補てん率が低いという声がいま漁民の間にあるわけです。この点を抜本的に改善することのほうがいま一番必要ではないかと私は考えております。  いずれにしましても、午前中来の討議でもありましたように、日本漁業というのはなかなか深刻な事態におちいっております。こういう問題を、たとえば一時的な措置だけで乗り切るというのではなくて、共済制度についても政府がもっと抜本的に財政を支出するというやり方で改善して、漁民がほんとうに安心して漁業ができるような状態をつくり出していただくということを期待して、私の質問を終わります。  残りは、中川委員のほうから翌日……。
  255. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は、明三日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十九分散会