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1974-03-26 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十六日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    上田 茂行君       小沢 一郎君    片岡 清一君       金子 岩三君    熊谷 義雄君       小山 長規君    近藤 鉄雄君       佐々木義武君    染谷  誠君       中尾 栄一君    丹羽 兵助君       八田 貞義君    本名  武君       井上  泉君    角屋堅次郎君       島田 琢郎君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    美濃 政市君       諫山  博君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省構造改善         局次長     杉田 栄司君         農林省畜産局長 澤邊  守君         林野庁林政部長 平松甲子雄君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         農林大臣官房文         書課長     松浦  昭君         参  考  人         (全国漁業協同         組合連合会専務         理事)     池尻 文二君         参  考  人         (漁業信用基金         中央会会長) 高橋 泰彦君         参  考  人         (全国漁業共済         組合連合会専務         理事)     中里 久夫君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   島田 安夫君     河本 敏夫君   稲富 稜人君     小宮 武喜君 同日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     島田 安夫君   小宮 武喜君     稲富 稜人君 同月二十六日  辞任         補欠選任   吉川 久衛君     近藤 鉄雄君   白浜 仁吉君     八田 貞義君   粟山 ひで君     片岡 清一君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     粟山 ひで君   近藤 鉄雄君     吉川 久衛君   八田 貞義君     白浜 仁吉君     ————————————— 三月二十二日  肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第六〇号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第四九号)  漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法  の一部を改正する法律案内閣提出第五〇号)  沿岸漁場整備開発法案内閣提出第七〇号)  農用地開発公団法案内閣提出第四八号)      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  漁業災害補償法の一部を改正する法律案漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案、及び沿岸漁場整備開発法案の各案を一括議題とし、審議を進めます。  本日は、まず各案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、全国漁業共済組合連合会専務理事中里久夫君、漁業信用基金中央会会長高橋泰彦君、全国漁業協同組合連合会専務理事池尻文二君、以上三名の方でございます。  参考人各位に申し上げます。  御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。ただいま、本委員会におきましては、漁業災害補償法の一部を改正する法律案外二件について審査をいただいておりますが、各案につきまして参考人各位のそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、中里参考人には漁業災害補償法の一部を改正する法律案について、高橋参考人には漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案について、池尻参考人には沿岸漁場整備開発法案について、それぞれ御意見十分程度で順次お述べをいただき、その後各委員から質疑がありますので、それにお答えをいただきたいと存じます。  御意見開陳は、中里参考人高橋参考人池尻参考人の順序でお願いをいたします。  それでは、中里参考人お願いをいたします。中里参考人
  3. 中里久夫

    中里参考人 私は、全国漁業共済組合連合会専務理事といたしまして、漁業災害補償法の一部を改正する法律案について所見を申し上げたいと存じます。  まず、最初に、漁業災害補償制度についての漁協系統団体考え方を申し述べます。   〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席〕  漁業という本来自然力支配下にある産業を、漁業者の団結の力、すなわち共済事業によりまして、陸上にある産業のようにできるだけ安定させて漁民経営と暮らしを守るということは漁協系統組織の最も基本的な目標であり、この目標が逐次達成されるならば、漁業協同組合の不動の基盤も整備可能となり、その向上発展が期し得られるものであるということでございます。すなわち、漁業共済不漁や天災に基づく損害実情を立証することがまず必要でありますので、どうしても漁協共販体制を一そう拡充強化していかねばなりません。このことは、当然信用事業発展を促し、これらが相互作用しつつ共同購入事業利用事業への発展ともなり、さらには漁業の生産及び管理面への事業伸展へとつながるものであります。かくて、本来組合員のためにある漁業協同組合の使命が達成されるものとなるわけでございます。したがって、不漁災害という自然力支配から脱しようとする漁民宿願漁業共済制度で実現することは漁協系統運動の長年の宿願でございました。  ところで、この課題は今日着々実現しております。すなわち、漁協系統運動の力によりまして、まず、昭和三十二年から七年間の試験実施を行ない、引き続き昭和三十九年から漁業災害補償法が制定されて、漁協組織はみずから共済事業団体組織し、出資をいたし、これを全国的に組織化して共済事業を本格的に開始するに至ったのでございます。  さらに、昭和四十三年には国がこの共済事業を保険することとなり、国も保険者として漁協系統団体による共済事業の一方の当事者となったのでございます。ここにおいて、漁業共済は、法律の名称のとおり名実とも漁業災害補償制度となったといえます。このことは、系統団体を主体とする漁業共済事業において、漁業に不可避な異常災害に対し国の財政力うしろだてになるという意味であって、農業災害補償制度と同様な異常災害に対する国の補償制度漁業者のための事業として確立したことであり、特に銘記すべき意義を有しております。  顧みまするに、漁業共済事業の発足以来、漁業者は、この事業系統組織の本来的事業として国に要請して制度化したからには、この種の制度に伴う不十分さを当然のこととして受けとめまして、みずからの手で育てていかねばならないという決意と努力を重ねてきております。事実、漁業者は、制度が不十分であるから加入しない、加入しないから事業実績が伸びない、事業実績が伸びないから制度改善できないという悪循環におちいることなく、むしろ加入して制度改善をかちとっていきたいという心がまえで前進してまいりました。政府においてもわれわれの熱意に毎年こたえていただきまして、法律範囲内における制度の手直しを行なってきたことも特筆すべきことでございます。  さて、われわれ漁協系統団体では、制度開始以来の事業実施実績経験を踏まえ、漁業者のこの制度に対する改善要望にこたえるため、法改正内容とする抜本的な改善を目ざして根本的な検討をすでに四年前から開始してまいっております。政府側におかれても、やがてわれわれの要望に応じまして、学識経験者及び関係業界のおも立った人々に委嘱して、まる二カ年をかけて検討のための会合を熱心に行なったのでございます。その結果得られた報告書においては、われわれ系統団体改善案として鋭意積み重ねてまいりました要点がほとんど採用されることとなり、われわれは心から歓迎したのであります。  以上のような経緯でございますので、今回国会政府提案されております改正法案においては、系統団体側が取りまとめた改善案がほとんど採用されております。  すなわち、その要点を申し上げれば、第一は漁獲共済制度の抜本的な改善事項でございます。その内容は、まず、漁業近代化、水産物の価格上昇及び漁業経営費実態に即応して補償水準である共済限度額引き上げがはかられていること。しかも、いままでよりは簡単でわかりよい方法によっていること。次は、てん補方式選択制が採用され、漁業者のいわゆる危険感覚に現実的に対応できるように、いままでの漁獲皆無の場合までも想定したてん補方式のほかに、さらに二つ種類契約の型、すなわち事故が比較的軽い場合を予想した契約事故が非常に重い場合を予想した契約とを用意し、これらを、漁業者が、その経営に対する危険感覚、換言すれば共済需要を考慮し、あわせてその掛け金負担率をも考えて自由に選択できるようにしたこと。次は、加入義務制が導入されていること。すなわち、採貝、採藻及び二十トン未満の漁船漁業定置漁業には、区域ごと漁業区分ごと特別議決による加入義務制が採用されていることであります。これはかねて系統団体側から、この制度の趣旨にかんがみ要望してきた考え方であり、義務加入が及ぶ範囲も当面きわめて現実的なかつ実際的なものと考えられます。次は、共済掛け金率漁業種類規模、地域に応じて区分され、合理化されていること。これは事業実績積み重ねにより次第に一そう細分化されてゆくのが当然であり、公平であると考えます。次は、以上の改善により、必然のこととして、掛け金率が高くなります。これを漁業者負担に可能な限り転嫁しないようにという配慮から国庫助成が一段と強化されていること。以上が漁獲共済に関するおもなる改善点であると考えられます。  第二は、養殖共済制度改正でございますが、そのおもなものは、まず、ノリの養殖共済について、いままでの物の保険方式のほかに、漁協共販を基礎とする収穫金額方式を当分の間試験的に実施すること。この試験実施は当面適当と考えられますが、可及的すみやかにその結論を得られるよう希望いたしております。次は、人為的な原因によると考えられる赤潮による被害をてん補する特約を設け、この特約にかかる掛け金漁民負担としない措置がされていること。その他、小損害てん補割合の合理的な改定などでございます。  以上るる申し述べたとおり、改正法案の目的とするところは、実施時期こそわれわれ系統団体要望よりは若干おくれることになりますが、国の掛け金補助についての補助限度率の撤廃が実現しなかったほかは、われわれの改善要望に沿ったものと考えます。  なお、この補助限度率法律事項ではありませんが、近い将来撤廃することを御努力いただきたいことを申し添えて、私といたしましては、この改正法案に積極的に賛意を表するものでございます。  終わりに、法改正が実現した後は、漁業共済団体としては、漁協漁連信漁連等の各系統団体及び業種別系統団体の援助を求め、新制度の早急な普及徹底につとめ、事業量拡大し、万一の場合の対策全国漁業者にできるだけ広範囲に行き渡るよう努力する決意でございます。また、今後、事業実施経験積み重ね及び漁業実態の変化、なかんずく栽培漁業進展等により、近い将来いろいろな制度改正要望をなさねばならぬことも考えられますので、どうか、今後とも、この制度についての一そうの御理解をお願いする次第でございます。  以上で私の所見開陳を終わります。ありがとうございました。(拍手
  4. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 次に、高橋参考人お願いいたします。
  5. 高橋泰彦

    高橋参考人 私は、社団法人漁業信用基金中央会の副会長高橋泰彦でございます。  本日この席で意見を述べる機会を与えられまして、感謝申し上げます。  今般政府より提案されておりまする漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案は、わが国中小漁業振興をはかるためには適切な改正案であると考えられますので、すみやかに実施されることを願うものであります。  以下、主要な項目に触れて意見を申し述べます。  漁業近代化資金制度は、昭和四十四年に制定されて以来、主として資金ワク拡大によって改善されてまいりましたが、今回、それだけにとどまらないで、法改正によって、資金種類貸し付け限度額貸し付け対象者などにつきまして、範囲拡大または引き上げをはかろうとするものでありますが、これらは制度実情に沿うものでありまして、適切な措置であると考えます。  なお、改正案では、都道府県の基金協会へ出資するもののうち、近代化資金にかかわるものに対しましては新しく国庫助成ができることとしております。この助成の道は農業関係ではすでに実施されていることでもあり、今回漁業関係にもこの措置が講じられることになるわけでありますが、基金協会基盤を強化するためにもなりますし、また、ひいては利用者負担軽減を実現することが可能となるわけでありまして、きわめて適切な改正と考えます。  次に、中小漁業融資保証法改正案について申し述べます。  この法律が制定されましてから約二十年以上を経過しましたが、この間、中小漁業者信用力を補う役割りを果たしてまいりました。しかし、最近の資金需要大口化多様化の傾向に対処することがこのままでは次第に困難となってまいりましたので、当局とともに学識経験者、われわれ関係者も参加して、制度改正検討会を三年にわたって開催いたしました。そしてここに基本的な法改正をしようとすることは、まことに意義の深いものであることを感ずる次第であります。   〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席〕  改正案を見ますと、基金協会業務会員資格について拡大措置がとられておりますし、保証保険対象資金範囲拡大てん補率の一部引き上げなど、各方面の改善が講じられております。  以上のような業務関係改善措置のほかに、新しい組織として、中央漁業信用基金の設立をいたしまして、融資保険を新しく行なうほか、漁業信用基金に対し低利資金を融通する制度を創設することとしております。このことは、制度全体の仕組みについても、基本的な改善をはかろうとするきわめて適切な方策であると考えまして、賛意を表します。  さて、二つ法律改正案を総括して考えますと、漁業近代化資金制度充実を柱とし、中小漁業者負担軽減融資保証機能向上とを期するものであり、ともにすみやかに制定されることを希望するものであります。  最後に、若干の希望を申し述べたいと存じます。それは、今後の漁業の動向を考えますと、漁業に対する融資対策、ひいてはこれを補う融資保証保険制度についてのわれわれの期待は一そう深まることになると言えましょう。今後の情勢に対応するためには、今回の制度改正の裏づけとなる来年度以降の国の予算措置につきましては一そうの充実を期待するものでありまして、保証保険機能と機構についても、さらに私どもとしても検討を進める必要があると感じております。私ども関係者は一そう努力してまいりたい所存でありますが、各位の何ぶんの御指導を今後とも賜わりますようお願いする次第であります。  御清聴ありがとうございました。終わります。(拍手
  6. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次に池尻参考人お願いいたします。
  7. 池尻文二

    池尻参考人 全漁連池尻でございます。  私は、目下本委員会に御提案になっておりまする沿岸漁場整備開発法案につきまして意見を述べさせていただきたいと思います。  この法律は、私ども多年の念願でございまして、全漁連といたしましては、その必要を提案をしてまいってすでに五、六年の年数をけみしております。私どもは、この問題が将来の沿岸、沖合いの漁業者に大きな福音になるであろうということを確信をいたしまして、すでに、昭和四十五年になりまするが、先生方のお手元にも、いわゆるグリーンレポートというものを提案をいたしまして、「沿岸漁業資源漁場開発の背景と対策」というものを出しまして、政府並びに皆さま方の御鞭撻を願ってきたわけでございます。このレポートは、私ども技術的に専門家ではございませんので、私どもが考えておる方向というものが、はたして科学性があり、正しいのかどうかということを点検するために、たとえば前に水産庁次長をされていた、本日ここでいま意見を述べられました高橋さんだとか、その他優秀な技術屋さんの方々で、水産庁をおやめになりまして民間でお働きになっていらっしゃる方だとか、そういう方々を動員いたしまして、俗なことばで申し上げますと、お役所におられるときには、予算制約だとか、いろいろな役所制約があって、みずからの夢というものがなかなか政策の上に実現することができなかった、そういう野心をこのレポートの中に取りまとめていただきまして、私ども念願が決して空想ではないということを実証してもらいました次第でございます。幸いにいたしまして、本委員長をしていらっしゃいまする仮谷先生手元で、相当の月日をけみしまして、いろいろと議論をし、お役所とも議論をしてきました結果、ようやく法律案となりまして、今度の国会提案されましたということにつきまして、漁業者念願であるこの法律を、与野党を含めて十分御審議の上、ぜひともこの国会で成立をさせていただきたいということを、あらためて漁業者にかわりましてお願いを申し上げる次第でございます。  そういう前提に立ちまして、若干の希望意見なり私の考え方を申し述べてみたいと思います。  まず、第一に、法案第二条に、この沿岸漁場整備開発事業の「定義」がうたわれておりまするが、ここに非常に注目すべきことは、まず荒廃漁場復旧を重視しておる点でございます。最近の沿岸漁業の停滞の原因一つが、埋め立てであるとか、あるいはその他の外部要因による漁場荒廃と喪失にあるということは申し上げるまでもございません。残念ながら、この荒廃した漁場に対して、従来は全然と言っていいほど手が打たれておりませんでした。御案内のとおり、海面の埋め立て面積にいたしましても、私ども調査によれば、昭和三十九年から四十三年までの時点を見てみましても、埋め立て面積がすでに二百十五平方キロメートルに及んでおりまするし、また、新全総の計画では、昭和四十四年から六十年にかけて十万ヘクタールの埋め立て土地を造成するという計画を見ましても明らかなとおり、そういうことによって、すでに沿岸漁場が失われ、かつ公害等によって荒廃をしているという事実に着目いたしまして、法律は勇敢にこの問題と取り組む姿勢を見せておりますことを、私は特に注目をしたい、かように考えておるわけでございます。  それから、第二の点は、もう言わずもがなですが、漁場整備事業の大々的かつ計画的な推進の必要性でございます。従来、沿岸漁業対策といたしましては、漁場対策としては、わずかに漁場造成事業が唯一の手段として行なわれてまいりました。ところが、この漁場造成事業も、その規模に至りましては、あまりにも小規模と言うほかはございません。たとえば、わが国沿岸の大陸だなを含む漁場面積はざっと二十六万平方キロメートルでございます。これに対して、昭和三十七年から四十五年、つまり、九カ年間に約九十億円が投資をされております。大体大型魚礁で六十億、並み型魚礁で三十億程度の金がつぎ込まれております。それに用いられたコンクリートプロッター立米平均価格をかりに四千円として計算をいたしますれば、ざっと二百二十万個のブロックを海の中に入れたことになります。そこで、それに用いられたものをざっと平均に海に並べたといたしますれば、その面積は、計算をいたしまして二百二十五万平方メートルにすぎません。二十六万平方キロの全体面積に比すれば、約八百五十万分の一にしかすぎません。いまは平均に並べたわけの話でございます。コンクリートブロックは六面体でございますので、かりに五面体は漁場造成に寄与するといたしましても、約百七十分の一のウェートにしかなりません。魚礁効果云々ということが財政当局その他の方々からときどき言われるわけでございますけれども、いわゆる岩礁類似構造物構築による魚礁効果ということは、すでに、今日、水産学者その他の生物学者がだれも否定しないりっぱな一つの定説でございます。にもかかわらず、いつも予算がチェックされる前提に、わずかそういうちっぽけな投資をしてはたして魚礁効果があるということが言えるのかどうかということで、この点が私どものかねがねの心配でありましたし、政府に対する呼びかけでございました。そこで、私どもは、このグリーンブックで、少なくともさしあたって日本周辺海岸線の二万七千キロメートルの約五分の一程度、つまり五千キロメートルにわたって日本列島周辺培養魚礁帯を造成して、積極的に魚族資源をふやすべきではないかという提案をしております。しかも、この魚礁設置事業というのは、単にコンクリートブロックを投下することだけではございません。御案内のとおり、いま日本陸上では、毎年毎年車の古いタイヤが、昭和四十五年度の統計によれば二万七千本も捨てられておるというような実態でございます。それから、すでに役に立たなくなった廃貨車あるいは廃船とか、そういういわゆる産業廃棄物を無害なものにして——タイヤもそのまま捨ててしまえば公害になります。しかし、あのタイヤを組み立てて魚礁として利用するというところまでくふうをして、それから海に投下すれば、一挙両得の漁場資源の増大に寄与し得るではないかというようなことをこのグリーンレポート提案をいたした次第でございまして、第二条の開発整備事業対象に、一つ漁場復旧一つは積極的な資源開発、この問題を堂々とこの法律が掲げておりますることを私どもは高く評価するわけでございます。  それから、もう一つは、従来確かに沿岸漁業にもいろいろな施策が講ぜられてまいりましたが、ただ、顧みまして、いままでの沿岸漁業対策一つの欠陥と申しますれば、個々の沿岸漁業対策にそれぞれ相互の有機的な関連づけをしてなかったことではないかと思います。たとえば種苗の放流事業漁場造成事業漁場造成事業改良普及事業改良普及事業というように、すべての事業が密接に相互の有機的な関連の上に相乗的な効果を発揮するようにはたして仕組まれたかどうか。この問題が従来の沿岸漁業対策に大きく欠けておった点ではなかろうかと私は思うのでございます。したがいまして、本法案では、いわゆる栽培漁業振興魚礁帯設置というようなものをシステムとしてとらえて、今後の沿岸対策の柱にしようということをねらっておるわけでございまして、これは当然のことであろうと考えるわけでございます。したがいまして、いよいよこれから沿岸漁場整備開発事業を法制のもとに計画的に実行していくということでございまするので、法文の条章にはいろいろの点で皆さんから御指摘がございましょうけれども、むしろ、これは、政府がやる気さえあれば十分に漁民に対する大きな福音になり得るということを私は確信をしておるものでございます。  最後に、これは非常に老婆心でございますが、この点も自由民主党の仮谷委員長の前でも、あるいはお役所とも相当議論をいたしましたが、要は、いわゆる国の立場から、今後日本列島周辺に大規模資源の涵養の事業を行なうという大前提に立ったときに、日本の行政の特色から来る府県中心主義というものと、国の意欲と申しますか、国のそういう今後の展望と申しますか、そういうものとがよほどうまく組み合わされませんと、この事業がたとえば単なる経済効果の追求のみに終わって、事業がきわめてこま切れ的に、あるいは小規模的になり得る心配があるということが一つの大きな点ではないかと思います。たとえば日本海に栽培漁業センターを設置する、あるいは太平洋岸にもいよいよそういう栽培センターをつくっていくというとき、それが県の施設であったときには、県知事さんは自分の県の漁民のことを考えるのが当然でございます。ところが、魚は県境を越えて自由に泳ぎ回る性格を持っておりまするので、そういう国家的見地から資源をふやそうということが県の意欲にまで期待をするということにはおのずから限界があるということも、今後の運用におきまして非常に注意をしなければならない点ではないかと思います。この点は法律もやや明確を欠いておりまするが、やがて技術が相当に進歩をし、なお科学的な究明ができて、いわゆる大規模資源涵養事業というものがある程度事業として定着をしてくる段階には、その辺の整理というものをはっきりして、いわゆる国主導型の魚族資源の涵養事業ということにこの法律が実質的に踏み切っていくということを私どもは近い将来に期待しなければならないのではないか、かように考えておる次第でございます。  いずれにいたしましても、私どもの多年の念願でございました沿岸漁場整備開発法という、従来のいかなるものにも増して沿岸漁業者にとって十分大きな福音となり得るこの法律がいままさに皆さま方の手によって成立をしようとしておりますることを私はまことに喜ばしく存じ上げる次第でございまして、今後とも十分御審議の上、ぜひともこの国会で成立をさせていただきたいということを申し述べまして、私の意見開陳にさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。(拍手
  8. 仮谷忠男

    仮谷委員長 以上で、参考人からの意見開陳は終わりました。     —————————————
  9. 仮谷忠男

    仮谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  10. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本日は、漁業災害補償法の一部を改正する法律案漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案、並びに沿岸漁場整備開発法案の、提出法案としては三案でありますが、実体法案とすれば四法案改正並びに新法がすでに本委員会で真剣に御論議が行なわれておりまして、きょうは、全国漁業協同組合連合会専務理事池尻さん、漁業信用基金中央会会長高橋さん、全国漁業共済組合連合会専務理事中里さんのお三方の参考人をお呼びいたしまして、ただいまたいへん貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。  若干時間をおかりいたしまして、お三方の参考人にそれぞれ重点的な点についてお尋ねをいたしたいと考えております。  この三法案議論するにあたりまして、私ども社会党といたしましては、国際的にも国内的にも漁業は非常に重大なピンチに今日来ておるという認識をしているわけですが、これはいまだかつて、戦後経験しなかったような重大なピンチである。国際的には、国連の第三次海洋法会議の行くえがどうなるかというふうな問題に加えて、昨年の秋以来の石油危機の問題が御承知のように漁業に大きな影響を持っておるわけでありますし、また、沿岸漁業の関係から言えば、公害漁場荒廃等の関連からの問題等も含めて、この際三法案議論を決着する段階においては、本委員会の意思として、沿岸、沖合い、遠洋漁業も含めたわが国漁業の根本的な振興対策に対する姿勢をどうするかということを本委員会の単独決議として内外に明らかにする必要があるということで、私どもの構想についてもすでに提示をしておるところであります。いま三参考人からお話しのあったように、漁業災害補償法の一部改正の問題については、かねて検討会等で検討されました問題を今回の改正の中で大幅に取り上げて改正が行なわれておるわけでありますので、われわれ社会党といたしましても、この改正の方向については基本的に賛成であるが、十分論議をして附帯決議等の注文をつけて処理するのがいいだろうというふうに考えておりますし、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案についても同様の趣旨に考えておるわけであります。ただ、池尻参考人からもお話しの出ました沿岸漁場整備開発法案は、今後の沿岸漁場沿岸漁業振興の立場から見ますと非常に重要な法案でありますので、与野党相談の上で若干必要な点に対する修正等も含めて処理をいたしたいというのが私どもの党の考え方でございます。  そこで、まず池尻参考人沿岸漁場整備開発法案に対する陳述の問題と関連をして二、三お伺いしたいと思うのですが、時間が限られておりますので簡潔にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほどもお話しのように、全漁連を中心にいたしまして「沿岸漁業資源漁場開発の背景と対策」ということで、昭和四十五年十一月に沿岸漁業開発対策研究会、全国漁業協同組合連合会の連名によりまして、グリーンプランが出されておるわけであります。これでいきますと、いろいろな資源培養のことが書かれておりまして、最後の結びとして、いま池尻さんからもお話しが出ましたように、こういう事業実施する「実施体制と機関」というところで、従来の都道府県中心主義から国が責任をもって沿岸漁場整備開発をやるべきであるという基本的な認識のもとにおいて、いわゆる大規模事業の問題については、この提言の中では、沿岸漁業振興事業団というふうな機構を新たにつくって、総合的、計画的にこれを実施する必要があるということを言っておるわけでありますが、私どもは、過般の党の全国大会においても、同じような趣旨になると思いますが、国連第三次海洋法会議の行くえによっては、国際漁業の関係から、沿岸を中心にした漁業振興の関係に相当振り向けなければならぬ陣容が必要になるんじゃないか等々のことも含めて、私どもの立場からも沿岸漁業育成振興事業団というふうな構想を打ち出しておるわけであります。  ここで法律との関係になりまするけれども沿岸漁場整備開発法案のほうでわれわれが修正点として相談を申し上げたいという法文の内容からいきますと、第二条の関係で、沿岸漁場整備開発事業というものを推進するいわゆる責任母体として、「政令で定める者が実施する」ということに相なっております。これは当然、「国、都道府県その他政令で定める者」というふうな形に法文上ではいたしたいというのがわれわれの基本的な考え方でございまして、その「政令で定める者」のわれわれが考えておる中には、漁連とか、漁協とか、そういったものが中心になってやるべきだろうというふうに考えておるわけでありますが、いわゆる沿岸漁場整備開発をこれから本格的に実施していくためには、やはり国の責任というものを明らかにしていく必要があるし、また、国自身が責任をもってこういう問題の推進に当たるべきであるというふうにも考えておるわけでありまして、いまの意見とも関連をしますけれども、グリーンプランとも関連をして再度この点に触れていただきたいと思います。  同時に、沿岸漁場整備開発法案の本法の考え方の中には、いわゆる沿岸、すぐ近くの沿岸漁場整備開発というところに今回は主点があろうと思いますけれども、内水面問題をどうするかということがやはり一つの今後の問題であろうかと思います。河川、湖水あるいは陸地に、養魚場等のそういう資源培養等も含めた諸施設等も考えていかなければならぬ。単にここで言うているいわゆる沿岸漁場整備開発というんじゃなしに、この中に、今後の問題としては、内水面問題等も含めた広範なそういう漁場整備をやる必要があるだろうというふうなことを考えておるわけでありますが、これらの点についての池尻参考人の御意見をまずお伺いしたいと思います。
  11. 池尻文二

    池尻参考人 開発整備事業の国の責任をどうするかという問題につきましては、私ども法案提案の前にいろいろ議論をしたところでございます。先ほども私は公述をいたしましたが、まさに、観念的には、何だか国の責任の明確化というものが足りないではないかということでいろいろ水産庁とも議論をいたしましたけれども、残念ながら、国がみずからやるいわゆる直轄事業というものが、いまの段階で、グリーンレポートだとか私どもの頭の中では想定されるわけでございまするけれども、はたして国が日本海あるいは太平洋で直轄の事業に一体するのかどうか。国の責任においてだれかに委託さして、どういう事業をどこまでというところが明確になっておりませんので、その点は、国も含めて「政令で定める者」ということに役所法案の原案はなったのではないだろうかということで、その点では整備事業実施主体の問題でございまするので、やや国の責任とは離れて、いわゆる実際的にだれがやるかという問題がきまれば、それでもいいのではないか、かように私は考えておるわけでございます。  それから、第二番目の内水面等も含めて、いわゆる栽培漁業の施設ということでございますか、それもやはり整備事業の中に加えるべきではないかという御指摘でございましたと思いますが、第二条では、いわゆる基盤整備といいますか、海の復旧あるいは積極的な生産基盤の造成、そういうものを端的にさしておるわけでございまするので、その点の施設については、構造改善事業の補助の対象だとかいうようなことで別途措置すれば十分ではないか、私としてはそういうふうに考えておる次第でございます。
  12. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 先ほど池尻参考人が触れられた第二条の関係で特に強調されましたところの荒廃漁場復旧問題に関連してでありますが、法案の第二条の中では「沿岸漁場としての効用の低下している水面においてその効用を回復するために行うたい積物の除去その他の政令で定める」云々というふうにつながっておりますけれども、これは、御承知のように、昨年の夏場の水銀、PCB等による海洋汚染の問題で、本委員会でもたいへん真剣にこの問題に取り組んだ経過がございます。そして、私ども提案等も含めて、こういうものに対する緊急融資の法案が各党満場一致でまとまって処理された経緯もございますが、その際に私どもの提唱で附帯決議が付せられた中に、いわゆる漁場の点検を常時やっていく、そして、人間がそこでとれる魚を食べるときに危険だということが判定される場合における漁獲物の採捕の制限、禁止の問題、あるいは、これは汚染漁場であって回復しなければならぬという漁場の回復事業というもの全体を含めた立法的な措置をすみやかに整備する必要があるだろうということ、そういう注文を政府につけた附帯決議をつけたわけでございます。問題はPPP原則との関連におきまして、沿岸漁場整備開発法の第二条でやろうとしておる沿岸漁場整備開発事業の中で言っておる荒廃漁場の回復の問題と、本来発生源が明定され、それに基づいてPPP原則で漁場の回復をやっていかなければならぬところの、汚染度のきわめて深刻な事態にあるもの、そういう問題との関連をこれからの法案の運営の過程でどういうふうに考えていくのかという問題がいまの第二条の「沿岸漁場としての効用の低下している水面においてその効用を回復するために行う」云々というところにあり、そこに基本的に問題があるわけであります。去年の本委員会における附帯決議等とも関連をして、全漁連としては、第三条で言っておる荒廃漁場の回復問題にしろ、あるいは有明であるにしろ、徳山湾にしろ、その他いろいろと去年大騒ぎをした問題で、今後汚染漁場の回復事業を根本的に考えていかなければならぬ問題との関連をどう受けとめておられるのか、この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  13. 池尻文二

    池尻参考人 公害におかされた漁場復旧する問題は非常に広範であろうと思います。具体的な例は、いま水俣湾で問題になっています水銀ヘドロの除去の問題は公害費用の負担法、ああいう法律でやらなければならぬと私は思います。それから、いま角屋先生が御指摘になりました昨年の水銀、PCBでの漁獲の禁止の問題、それから、現に有害物質がたまっておるところをどうするかという問題などは、そういう汚染源を断つという意味で、別個に一つ法律的な手当てが要るのではないかと私は思いますし、また、本委員会でもそういう方向で決議を賜わっているのが線だろうと思います。  そこで、一般的に、そういう有害物質だとかいうことではなくて、たとえば瀬戸内海をごらんになるとわかりまするが、各種産業からの廃棄物あるいはヘドロ——これは申しにくいのですけれども漁業者の養殖漁業でヘドロが堆積して漁場の価値が非常に落ちている。そういうものは積極的にこの法律によって実施をしなければならないのではないだろうかと私は考えておりまするし、なお、水産庁におきましても、本年度の予算で、いわゆる第二次公害を起こさないようにヘドロをどうしたら除去できるかという一つの実験実施予算等も組まれておりまするので、そういうものに大いに期待をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  14. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 池尻さんに対して第三条以下の法文の内容まで入ってお尋ねするのはいかがかと思いますが、参考までに、若干の点についてお伺いしておきたいと思います。  御承知の第三条では、農林大臣は沿岸漁業振興審議会の意見を聞いて、しかも、閣議の決定によってオーソライズしながら、いわば長期計画的性格ということで沿岸漁場整備開発計画を立てることに相なっておるわけであります。問題は、この長期計画というものを国並びに地方自治体関係でどういうふうにこなしていくかということで、その点については、第五条のところで、「国は、沿岸漁場整備開発計画の達成を図るため、その実施につき必要な措置を講じなければならない。」というふうに、きわめて抽象的に書いてあるわけであります。問題は、今後の実施過程の中では、沿岸漁場整備開発計画を、長期的なものを国がつくれば、それを受けて県段階の実施計画というものが必要かどうかという問題が当然含まれてまいるわけだと考えております。  さらに、第六条の「特定水産動物育成基本方針」ですが、これを見ますと、これは国との関連ではなしに、都道府県が都道府県内の海区漁業調整委員会意見を聞いて、都道府県プロパーとして特定水産動物育成基本方針というものをつくるという形に法文上はなっておるわけでありますが、やはり、国が、沿岸漁場整備開発の全体的な観点から、都道府県のこの基本方針との関連においてコネクションが必要かどうか。たとえば国が全般的な基本方針をつくって、それを受けて都道府県が都道府県自体の基本方針をつくるというのも方法論としてはあろうかと思いますが、むしろ、これは都道府県におけるところの下からの積み上げ、自主的創意性によって、都道府県における特定水産動物育成基本方針をつくらせようということにねらいがあるとするならば、そのねらいを尊重するとしても、国が全体的な立場から助言なり指導なり、しかるべき措置でコネクションする必要があるだろうというふうにも判断いたしておるわけであります。海は一つでありまして、隣府県との関係という問題も場合によってはでき得るかもしれないし、あるいは、国が全体的な観点からそういう基本方針についてしかるべきサゼスチョンをする必要があるだろう、あるいはサポートする必要があるだろうということ等も含めた点については、やはり法文上明らかにすることが必要だろうというふうに判断をいたしておるわけでありますが、さらに第八条関係で、漁業協同組合または漁業協同組合連合会が特定水産動物の育成事業をやろうということがうたわれておりまして、この面に関しては、第八条から第九条、第十条、第十一条、第十二条、第十三条、第十四条までこの法文はまたがっておるわけであります。いわゆる実施法だ、事業法だという、その事業法の性格的な法文はここでやはり相当詳しく書かれておりまして、他の点はきわめて抽象的にこの法文では書かれておるわけであります。これは、やはり、本来、沿岸漁場については、漁業者の団体、協同組織である漁協あるいは漁連がみずからの手で行なうように特定水産動物育成事業はなっておりますが、いずれにしても、みずからの手で魚族の培養を積極的にやっていこうということはこれから当然考えていかなければならぬ方向だろうと思いますが、この場合に、いわゆる漁業団体の指導的立場にある全漁連として、特定水産動物育成事業というものについて、この法文の実施過程でどういう構想とどういう情熱に基づいてこれに取り組もうとするのかという点にウエートを置きながら、いま言った問題についての御意見を聞かしていただきたいと思います。
  15. 池尻文二

    池尻参考人 私は、第一点の、第三条の農林大臣が定める整備計画というものに非常な期待を置いております。これの内容がぼけてまいりますと、この法律はいわゆる仏つくって魂が入らぬということになりかねない、したがって、県とも十分相談をして、五カ年を一期とする計画の中身の問題というものにつきまして私どもも積極的に参画をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  それから、特定水産動物の育成基本方針につきましては、私も、いま角屋先生が御指摘のとおりの実感を持っておるわけでございます。お役所としてもこの点は十分わかっておることでございまして、たとえば本年度の予算に、瀬戸内海の五カ所の栽培センターの設置事業が当初水産庁から提案されたときには、国主導型の国営事業として予算要求をされたのでございます。ところが、先ほど私が口述で申し上げましたが、日本の府県行政のワクというものはなかなか根強いものがございまして、予算獲得のさなかに、府県知事が熱心のあまりに、おれのところにくれ、くれというようなことになりまして、むしろ水産庁が当初予定しておりました国主導型の瀬戸内海方式というものが、補助率は高まりましたけれども、県主導型になったといういきさつがございまして、いわゆる栽培漁業の今後の展開というものにつきましては、先ほど口述いたしましたとおりでございまして、あくまでも国が教育、指導というものをやってほしいということを考えておる次第でございます。  なお、府県系統のやるこの事業は、先生はいま事業法とおっしゃいましたけれども、実は、この法律の中で、いわゆる事業法と同時に、制度に関する法律というのが育成水面と系統の関係の問題でございます。したがいまして、今後有用の水産物を管理する漁連あるいは系統の体制というものにつきまして、私どもも情熱を持って——この生産の分野は、従来、そういう生産の分野に取り組む系統のあり方というものは必ずしも満足すべきものではございませんけれども、御指導を得てこの問題を十分にこなしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  16. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますので、次に、漁済の中里さんに数点お伺いいたしたいと思います。  漁業災害補償法につきましては、いまも御意見の中でもありましたように、これは三十九年の十月に発足をしたわけでありまして、本年度はまさに十周年を迎えようとしております。これには私も非常に思い出がございまして、三十九年に政府から漁業災害補償法案が出されたときに、私どものほうから、私が提案者として漁業災害補償法の党案を提案した経緯がございますが、ここにおられる仮谷農林水産委員長とこれの最終段階で修正の話し合いをいたしました。そして附則検討ということで、政府の保険事業実施を目途とした附則第二条第一項、第二項に関連する附則を法文上につけたり、あるいは政府助成その他の問題に関連して、必要な場合に予算その他の必要な措置を講ずる意味の法文修正を加えたりした等、取りまとめの責任の一翼をになった記憶がございます。同時に、附則第二条の第一項、第二項を受けて、昭和四十二年に政府の保険事業実施がなされるという法改正政府みずからの手で出てきて、それで今回のいわば抜本改正という時期を迎えたわけであります。  そこで、二、三お伺いをいたしたいわけでありますが、まず、第一は、いわゆる漁獲共済に関連をいたしまして、第一号漁業あるいは第二号漁業、第三号漁業を含めまして義務加入制が取り上げられるということに相なりました。これは私の提案法案の中でもすでに取り上げておった点が今日導入されるわけでありますが、このいわゆる一号、二号、三号にまたがりまして、採貝、採草、あるいは三十トン未満の漁船漁業、定置等について義務加入制を導入する場合に、二十トン以上の漁船漁業についての義務加入制という問題については今後に残されたわけでありますが、この問題について漁済連としてどういう希望を持っておられるかという点が一点であります。  それから、この事業実施以来十年になるわけでありますが、事業種類別の推定加入率を見てまいりますと、昭和四十七年の資料によりますと、採貝採草業が五八・九%、漁船の十トン未満が九・四%、十トンから百トンまでが一一・四%、百トン以上が四・九%、大型定置が二七・二%、小型定置が三・八%、あるいは養殖共済におきまして、ノリが三八・三%、カキが一四・七%、真珠が三・五%、真珠母貝が八・八%、ハマチが非常に高くて五九・七%、以下定置、まき網、流し網等についても漁業共済についてのデータが出ておりますが、漁業共済の流し網については八九・七%、全体としては、一割をちょっとこえる程度の推定加入率ということになっておるわけでございまして、まだまだこれからこれらの問題についてはなるべくたくさんの関係漁業者が入ることによって、危険分散あるいはまたモラルリスク等の問題について対処していかなければならぬというふうなことを考えるわけでありますが、ここで、第二点としてお聞きしたいのは、今回の第一号漁業、第二号漁業、第三号漁業についての義務加入制の導入によって、いわゆる推定加入率がどの程度今後前進するという予測を持っておられるかという点、これが第二点の問題であります。  あまり長々とやるといけませんから、その点からまず伺っていきましょう。
  17. 中里久夫

    中里参考人 第一点の義務加入制度の及ぶ範囲の問題でございますが、当面は、二十トン未満の漁船漁業、採貝採藻業、定置等が、漁業協同組合義務加入制の事業の推進の主体となるという見地からすれば、最も現実的な実際的な一つの割り切り方というふうに私どもは考えております。しかしながら、この制度が、事業実施につれて制度の中身もよくなり、この制度の理解が深まるにつれまして、近い将来において、少なくとも首トン未満まではこの制度、つまり義務加入制度が及ぶことをわれわれは期待しております。  それから、加入率の問題につきまして御指摘がございましたが、御承知のように、特定の種目を除きましては、加入率はきわめて低うございます。しかしながら、今回の改善、すなわち制度の中身の改善並びに制度の加入方式の改善等によりまして、私どもといたしましては、この加入が相当程度広がり得るというふうに考えておりますけれども、具体的にどの程度の加入率になるかはわかりませんが、少なくとも号漁業及び二号漁業につきましては、ほとんどの漁業者が参加し得るようにわれわれはいたしたいと思っております。  それから、十トン以上の漁船漁業、いわゆる三号漁業につきましては、逐次その加入を広めまして、将来百トン未満に加入が広まることにつきましても、その理想を達成いたしたいというふうに考えております。
  18. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの加入率が将来さらに伸びるであろうというのは、共済全体の改善問題と関連するわけでありますが、先ほどもお触れになりましたように、漁獲共済の共済金の支払いに関する特約ということでてん補方式選択制が導入されるというふうなことによりまして、従来の全事故比例てん補方式に加えて、約定限度内てん補方式あるいは低事故てん補方式というのが特約で選択できるようになったわけでありますから、そういうこと等によっても前進が期待できるだろうというふうに私どもも予測をいたしております。  さらに、共済限度額その他の改善等もありまして、漁獲修正、これは私の法案の中でも漁獲修正はすでに呈示しておった問題でありますが、今回これが取り上げられて、あるいは限度額率等の実態に即する改正というふうなもの等も相当効果を持つであろうというふうに思います。  そこで、ノリ養殖業に対する特定養殖共済試験実施ということが、「当分の間」ということで、収獲保険方式で新しく実施をされる。問題は、五年以内にこれが本格実施に切りかわり得るのか、あるいは三年以内をめどにして切りかわれるのかということが今後法案議論の中では議論しなければならぬ問題でありますけれども、共済を過去十年間実施してきた団体として、ノリ養殖業に対する特定養殖共済試験実施というものについては、今回三年をめどにして実施をしてみて、そしてこれを本格共済に切りかえるというふうな自信があるのかどうかという点はいかがですか。
  19. 中里久夫

    中里参考人 ただいまのところは、われわれの努力目標といたしましては、おおむね三年をめどにいたしたい。努力目標としては三年をめどにいたしたいということでございます。
  20. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この養殖共済に今度赤潮特約の創設がなされるわけでありまして、ここで、従来本委員会でも議論がありましたように、国のほうがこれに対して三分の二の助成をやり、地方自治体が三分の一の助成をやることを国としては期待をしておるわけでありますが、問題は、これが漁業者なり漁業共済団体等にかぶらないような手を考えていかなければならぬ。そういう問題がこの問題については今後の問題としてございます。それと、従来から、共済団体等の事業の運営、あるいは漁業者等がなるべく掛け金の増高にならないような配慮のもとに漁業共済事業が運営されていくという面で障害になっておる補助限度率の撤廃問題というのがございます。これは仮谷委員長が中心になられてまとめられた自民党自身の小委員会案、いわば自民党案の中でもはっきり補助限度率の撤廃ということをその構想の中では示しておった問題でありまして、今回はそれが実現に至らなかったという形で提案されておることはまことに残念な問題でありますが、これは政令の二十三条別表の中で詳細に補助限度率の問題が書かれておるわけでありますけれども、これが撤廃されるということになりますれば、ことしの場合におよそどれぐらいのプラスになるかという計数整理の問題がもしおわかりになればお伺いしておきたいと思うわけであります。  さらに、時間の関係もありますからもう一点だけまとめてお伺いをしておきたいと思いますが、今後の問題として、漁業共済制度、漁船保険制度及び任意共済制度の問題については、関係者漁民であり、漁業団体であり、そういう関係の問題でありますから、今後すみやかな機会にこれを統合していくということが前々から本委員会としても論議をされており、またお互いの共通意思の中にあるわけであります。この今後の統合問題に対しては、漁業共済団体としてどういうふうに受けとめられるか、あるいは全漁連の立場から、漁業共済制度、漁船保険制度及び任意共済制度の統合問題についてどう考えておられるか、こういう点についてお答えを願いたいと思います。
  21. 中里久夫

    中里参考人 補助限度率、すなわち掛け金に対する国庫の補助の限度でございますが、われわれといたしましては、これは撤廃すべきものというふうに考えております。その線で努力してまいりましたけれども、今回は法律事項ではございませんですが、できないことになりました。今後ともわれわれとしてはこの撤廃ということで努力して、近い将来実現をはかりたい、こういう決意でございます。  それで、補助限度率が撤廃になった場合にどのような契約の増に結びつくかということでございますけれども、これはなかなか推定が困難でございますが、私のきわめてとらわれない予測によりますれば、いまの契約割合が補助限度率のために天井打ちになっておりますので、まあ、補助限度率がかりに撤廃になって、一〇〇%契約しても、国の補助はついていくということになりますれば、いまの契約割合は一割ないし二割ぐらいは当然上がり得るのではないかと私どもは期待しております。  それから、次の点の、漁業に対する保険事業あるいは共済事業のために、漁船保険なりあるいは漁業災害補償制度なり、あるいは任意事業があるわけでございまするけれども、いずれも対象漁業者のための制度でございまするので、私の立場からいたしましても、三事業はもっと連携をよく保ち得るように統合整理という方向に進むのが当然筋ではないかというふうに考えております。
  22. 池尻文二

    池尻参考人 漁村における災害補償制度の総点検という前提に立ちまして、いま角屋先生から御指摘の生産手段としての漁船あるいは漁獲物その他乗り組み員の生命共済、それから漁村の火災共済、そういう漁村の共済事業というものの将来の一つのビジョンというようなことを掲げまして、昨年から私ども内部で、漁船保険、全漁連、それから漁済連、全水協を含めまして、漁村の共済事業推進センターという一つの機関をつくりまして、目下点検をしておるところでございます。私の夢といたしましては、将来こういうものが一体化する時期は必ずくるであろうということを考えておる次第でございます。
  23. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 持ち時間も迫ってまいりましたし、せっかく高橋参考人もお見えでございますから、これに対して一、二点聞いて終わりにいたしたいと思います。高橋参考人にお伺いをする問題はある程度でございますけれども、問題を一、二点にしぼりたいと思います。  法改正内容は相当多岐にわたっておるわけでありまして、その方向については私どもは基本的には賛成でございますが、一つの点は、いま高橋さんは社団法人漁業信用基金中央会の立場にあるわけでありますが、今回、御承知のように法改正を通じまして新しく中央基金がつくられるわけであります。この相互関係を今後どういうふうに考えておられるかという点が一点であります。  それから、従来の漁業信用基金協会の不振協会が必ずしも少なくございません。そこで、こういう不振協会対策というものにどういう注文を持っておられるかという点が第二点であります。  それから、新しくできます中央基金は、後ほどに法文と関係して出ております法改正の中では、いわゆる農林年金には入らない。従来の漁業信用基金協会だけが従来どおり年金に入る。したがって、農林年金の条項の中では第二章という書き方をしてあるわけでありますが、この点についてどういう希望を持っておられるか。  この三点についてだけ御質問をして終わりたいと思います。
  24. 高橋泰彦

    高橋参考人 お答えいたします。  まず、第一点は、今度新しく設立されるであろう中央漁業信用基金と、私の所属しております漁業信用基金中央会との関係、相互の関係がどうなるかという御質問でありますが、これは、今回設立される予定の基金の性格から考えまして、下部の——四十一ございますが、その下部の、県にありまする基金協会その他の意見が十分中央に結集される組織とは必ずしもなっていないような感じがいたします。したがいまして、当分の間、中央会とこの中央基金は併存させるべきであろうというのが私の考えであります。特に、中央基金の設立が十月に予定されておりますし、それまでの準備、その後における改正に対する業務指導その他については、私の所属しております中央会のいろいろな細部にわたる指導がかなり必要かと思いますので、少なくとも当分の間は両者は併存すべきものであろう。しかし、将来の問題としては、なるべく組織というものは簡素化される必要がありまするので、将来の点については検討をするのにやぶさかではございませんけれども、当分の間は両者は併存すべき性質のものであろうというふうにただいま考えておる次第でございます。  第二点は、基金協会の中で不振な協会があるが、その対策はどうかということでございますが、御指摘のとおり、過去二十年のいろいろな業務の中で、天災あるいはその他の理由によりましてかなり基金協会が働いた結果、結果として不振になった協会が見受けられるのであります。この問題につきましては、基金協会の保証能力を向上させるということ、それからさらに基盤を強化する必要があるということで中央基金をこのたび設置することに相なっておりまするので、この機能の中で、当然のことながら不振協会対策実施してまいりたいというふうに考えておるものであります。  第三点の農林中金の関係でございまするが、農林中金の融資を県の協会のほうで保証いたしておりまするので、本来ならば農林中金は県漁連と同様に県の協会のほうに出資してはどうかということもいろいろと私ども検討して……(角屋委員「農林中金ではない。農林年金」と呼ぶ)ああ、そうでございますか。わかりました。御質問の点を誤解しておりましたので、それでは新しく答弁いたします。  農林年金の問題は、確かに県の基金協会は農林年金に所属しておりまするので、したがって、今度できまする中央基金のほうも農林年金に加入することができますれば、県と中央との人事交流その他について、職員の立場から申しますとたいへん好都合の点になろうかとも思いますけれども、何さま、農林年金に中央のこの基金が加入していくという問題については、ほかの類似の中央のもろもろの団体とのバランスの問題がありまするので、さしあたりは不可能というふうに考えておりまするが、将来の問題として私どもも考究してまいりたいというふうに考えておるものであります。
  25. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 どうもありがとうございました。
  26. 仮谷忠男

    仮谷委員長 津川武一君。
  27. 津川武一

    ○津川委員 きょうは三人の参考人さん、ほんとうに御苦労さまでございます。  最初に池尻参考人にお伺いしますが、皆さんの「全漁連情報」によりますと、最近の理事会で皆さんが当面次の五つの点をやり抜くというふうな、困っていること、また、やらなければならぬことをきめたようでございます。その一つは、「当面する漁業経営の窮状を打開するため、とりあえず緊急に、融資条件の変更、金利負担軽減などを内容とする金融対策。」二は、「漁業生産活動に必要な、漁業用石油類の確保と、漁業経営にとって、適正妥当な価格での供給の保証。」三が、「漁業生産活動に、必要な漁網綱、漁業機器などの生産資材を確保し漁業経営にとって、適正妥当な価格での供給の保証。」四が、「漁業経営費の増大に対処することのできる抜本的な魚価維持政策。」、そして五は、「これらの措置を実効あらしめるために必要な財源確保の措置を講じ、漁業経営安定に必要なあらゆる施策の具体化。」というふうなことがきめられておりますが、沿岸漁場整備開発法案が法になっていっても、基本的にこういうことが片づかないとたいへん混乱するんじゃないかと私は思うのですが、これをきめたことについての、ここいらの御説明をもう少し内容をお知らせ願えればと思うわけであります。
  28. 池尻文二

    池尻参考人 当面、今般の石油問題から漁業は異常な波に洗われておることは御指摘のとおりでございます。もちろん、A重油の漁業生産の中に占めるウエートというものは非常に大事なものでございますので、この価格の適正化というものを考えなければなりませんけれども、何せ、石油というのは国際商品でございまするので、特別漁業者だけに低価格の石油を恒常的に供給するという政策は、たとえば農民はどうするのだとか、その他いろいろな問題とのバランスで、言うにやすく行なうになかなかかたい問題であろうかと思います。資材も同様でございます。しかし、現に、昨年の暮れから石油が三倍になっておるということはもう事実でございまして、こういう経費増大というものをどういうふうにはね返していくことができるかということになりますと、いま、畜産の問題で諸先生の皆さん方には非常に御苦労でしょうけれども、畜産問題より以上にこの水産の経営打開対策というものはむずかしゅうございます。しかしながら、私どもは、日本の水産業というものがこういう事態にあることによって食料供給の使命を果たすことのできない事態に立ち至るということは厳に避けていただかなければならぬという立場から、いまの五項目につきまして要望を申し上げておるわけでございます。  なかんずく魚価支持の対策にいたしましても、石油の価格の問題にいたしましても、端的に直ちに手の打てるしろものではございませんので、まず、第一番目に、とりあえず金融対策と申しまするか、そういうものを講じていただきまして、償還期限の延長なり、あるいは金利の低減なり、そういう融資条件等につきまして特段の御配慮を賜わり、しばらくの間漁業経営というものを何とかそこにクッションを置いていただきまして、次に漁業に対する恒久対策というものを講じていただきたいというのがその五項目の趣旨でございます。
  29. 津川武一

    ○津川委員 私たちは畜産を非常に重大に考えていると同時に、いま漁業がこういうふうになっていることについては全く同じ気持ちですが、近くそういうことのために何か大会も開かれるというふうにお伺いしておりますけれども、これは魚価をどうなさればよろしいのでございますか。何らか方針なんかはないものか。どうしていいか私もわからないので、そこいらをお尋ねするわけです。
  30. 池尻文二

    池尻参考人 日本の国民の魚の食生活は非常にデリケートなものでございまして、種類も非常に多うございます。したがいまして、いわゆる農産物にありまするような価格支持制度というものを端的にとれと言ってみましても、品質の差はありまするし、季節的にいろいろ違っているものについてそういう単純な政策はとれないと私は思います。ただ、これは、半ば私どものみずからの努力でもやっていかなければならないと思います。いわゆる魚価をはね上げて消費者物価というものについてのリアクションを起こしてはならぬということも事実でございまするので単に私どもが市場にほうり投げて、あとは知らないというような態度はもう許されないのじゃないかと思います。そういう見地から、たとえばマグロのごときものは、やはり、生産者の管理販売というような線をもっと進めていく必要があると思います。そのためには冷蔵庫も要るでございましょうし、私どもの生産者の方面の努力を基調といたしまして、そういう努力の線に沿って適時適切なる政策を講じていただくということが水産物の魚価対策ではないか、かように考えております。  現に、冷凍のイカという問題でも、ある一定の管理販売というような見地から、消費者価格を上げないで生産者の手取りを多くするというようなことは、ある品目によってはできる可能性がございます。全般の問題としましてはなかなかむずかしゅうございまするけれども、そういう見地で取り組んでいかなければならないのではないかと、かように考えております。
  31. 津川武一

    ○津川委員 私は青森県出身なんですが、おととい、大畑のイカ釣りの方たちに非常に責められまして、とにかく牛乳には、豚には、不足ながらも価格があるし、お米にも価格がある、マグロならマグロ、イカならイカあたりも生産費・所得補償方式というものを一度考えてみてもいいんじゃないかということを言われたわけです。いまはしなくも池尻さんがおっしゃってくれたように、マグロだとか、イカだとか、それで特定に専業にしている業種についてはやれるんじゃないかというふうなことを言われて、私たちも検討してみますが、御検討お願いできればと思うわけであります。  もう一つ池尻さんにお伺いしたいのですが、心配になりますのは、ことしの海洋法会議のほうでどうなるだろうかなということもまた心配なんですが、皆さんとしては、どんなふうな御認識で、どうされたいということをお考えになっているのでしょうかしら。
  32. 池尻文二

    池尻参考人 カラカスの会議がファイナルに決着ができるかどうか、この見通しは別といたしまして、すでに開発途上国を中心として起こっております線、あの線というものは、私どもがどうじたばたしても現実のものになってくるであろうというふうに認識をしております。その場合に、今後の日本漁業をどういうふうに継続していくかという問題は非常に重大な問題ですが、南半球の問題でございましたならば、合弁なりその他いろいろな協力なりというような提携のもとである程度解決ができると思いますけれども、問題は北半球の問題ではないかというふうに想像しております。  そういうものが現実になったときに、はたして日本漁業というものがどうなるかという問題はなかなかむずかしい要素を含んでおると私は考えておりまして、カラカスの会議がどういうふうな決着を見るか見ないかにかかわらず、この線はある程度現実のものになりつつあるというふうな認識でおるわけでございます。
  33. 津川武一

    ○津川委員 私たちも十二海里説に賛成してよろしいんじゃないかと思っているのですが、ただ、歯舞・色丹で十二海里をやられたときには——いま三海里だから、まだどこか歩けるのですが、十二海里になってしまったら、もうあそこはどうしようかと思っているわけなんですが、そこいらあたりはどうなればよろしいのでございますか。
  34. 池尻文二

    池尻参考人 領海の問題は、日本漁業には二つの面がございます。ことばは適切でございませんが、いわゆる攻める立場と守る立場と両方持っておるわけでございまして、私は、三海里ではもうぐあいが悪いと考えております。ただし守る立場から見ますと、十二海里というものですべてが解決できるかという問題は、いま御指摘の地域の条件によっては必ずしも当てはまりません。それから、かりに十二海里という問題をとるにいたしましても、いまソ連船団と問題を起こしているようなことはなかなかこれで解決できる問題でもございませんので、そこら辺で、新しい海洋制度で、日本沿岸の立場というものはどういうふうになるかということも、今後私どもも十分詰めていかなければならないんではないかと考えておる次第でございます。
  35. 津川武一

    ○津川委員 そこで今度は法案ですが、多少心配になることもないわけではありません。この間からこの委員会で問題になっていたのですが、四十九年度で全国十カ所、一カ所百四十万程度で、これでやれるのか。皆さんどんなお気持ちですか。私はもっともっと規模が大きくなければならないんじゃないかと思っているのですが、ここらあたりのお考えはいかがでございますか。池尻さんにお願いします。
  36. 池尻文二

    池尻参考人 質問の内容がちょっとわかりにくかったのでございますが、もう一ぺん言っていただけますでしょうか。
  37. 津川武一

    ○津川委員 今度の漁場開発法案によって漁場開発をやるでしょう。特に、育成水面をつくられるわけです。農林省の水産庁予算を聞きますと、四十九年度は十カ所、一カ所百四十万。そうすると、これでほんとうに開発になるのかどうかという、そういう規模のことですね。国の投資のしかたです。これに対して御意見がありましたらお聞かせください。
  38. 池尻文二

    池尻参考人 調査費ではございませんでしょうか。——この法律に基づく予算は、実際上の事業の着手というのは五十年度からになるというスケジュールで進んで、ことしはそれに準備としての調査費を組んでいるはずだと思っておりまするので、私、その一カ所百四十万というのはまだよく存じておりませんけれども、おそらく調査の段階ではないか、かように理解をしております。
  39. 津川武一

    ○津川委員 いま、試験研究でも調査でもそうですが、人件費一人百万かかるのですよ。そこで、百四十万でどんな調査ができるか、こういうことを正直なところお伺いしているつもりなんですが、まあ、よろしいです。  もう一つ、この法案で私が非常に心配になるのは、先ほども話しましたけれども、例の水俣湾、有明海、周防灘、瀬戸内海、田子浦とあげてくると、たいへんな公害で埋まってしまったのですが、そこのところで責任者の態度を明らかにしないで何かものをやっていくのじゃないか、公害を起こした人の免罪をする法律じゃないかなどという疑念も多少漁業者も持っているわけなんですが、よごれた海に対する基本的な考え方とこの法案との関係をいかが考えておられるか、お願いしたいわけです。
  40. 池尻文二

    池尻参考人 角屋先生の質問にもございましたが、水俣湾における水銀ヘドロの除去の問題、それから水銀、PCBで見られましたような、あるいはカドミウムその他の有害物質の除去の問題、こういう問題は、汚染源の負担というものをきびしく明らかにして臨むべきであると私は考えております。しかしながら、先ほど申し上げましたように、また、いま御指摘のところでも、一般的な産業活動によって相当の海が汚れておるわけでございますから、これを放てきするということもできませんので、この法律によりまして積極的に漁場復旧事業というものをやるべきではないか、かように考えておる次第でございます。
  41. 津川武一

    ○津川委員 この点で中里参考人にお伺いしたいのですが、それは赤潮です。人的な災害漁業共済制度対象を持ち込んだことを中里参考人は非常によかったとおっしゃっていて、私もそれなりに意味はあるかと思うのですが、このことによって赤潮対策から手がだんだん抜かれていくんじゃないか、もう漁業災害で片づけたからというふうになりはしないかという心配を持っているわけですが、その点はどうされたらいいのか。赤潮に対する漁済の側からの考え方をお聞かせ願えればと思います。
  42. 中里久夫

    中里参考人 御指摘のように、漁済で赤潮を取り上げることになりましても、私どもといたしましては、これは赤潮対策ではない、本格的なものではないと考えております。たまたま漁済に入っている業者が共済制度という狭いワク内で救われるというだけにとどまるのでございまして、われわれといたしましては、ほかの本格的な対策をぜひともやるべきであるというふうに考えております。
  43. 津川武一

    ○津川委員 これも角屋委員の質問に出たのですが、補助限度率と組合の加入、これは今度強制になるのですが、ほんとうは強制しないで補助限度を上げることによって達すべきだと私は思うし、一〇〇%になればもう二、三割方上がるといまおっしゃってくださったのですが、ここらあたりは具体的に端的に水産庁政府に皆さんのお考え方を申し上げていましょうかしら。どうかしら。
  44. 中里久夫

    中里参考人 私どもは、補助限度率の撤廃、あるいは撤廃にならなくても、とにかく補助限度率を上げるということにつきましては、率直に政府筋にも強く要望しております。われわれの要望もいろいろな形で取り上げられつつある過程にあります。ですから、決してわれわれは遠慮しているという姿勢ではございません。
  45. 津川武一

    ○津川委員 最低で四七%、最高で六五%、これを強制すると法を破壊する心配があるかと私は思うのですよ。やはり、強制でなく、補助率の一〇〇%でやるのがほんとうじゃないかと思うのですが、こういう基本的な態度はいかがでございますか。
  46. 中里久夫

    中里参考人 私どもは、できるだけ国の補助率を上げる、それから契約割合一〇〇%でも、国の補助率はスライドしていくということが理想であると思います。ただ、共済制度が基礎になりますから、漁業者の本来的な負担も、若干は拠出せねばならないだろうということで、このかね合いでございます。結局、制度の普及と、それに対する漁業者負担ということのかね合いでございますが、われわれとしては、制度の普及の実態を通じながら、利用者負担のどの程度がいいであろうか、どの程度ならば一〇〇%加入することについて耐えられるだろうかということにつきましても、十分制度の普及、推進をはかりながら考えて、そして、国に要求すべきことは遠慮なく要望したという姿勢でございます。
  47. 津川武一

    ○津川委員 最後に、高橋参考人にお伺いいたします。  漁連理事会での、とりあえずの緊急の融資条件の変更、金利負担軽減ということを池尻参考人からもお伺いしたのですが、今度の法案近代化資金の利率が五厘上がる。この間上がったばかりでまた五厘上げていって、結局、何やかやといって手数料を取られていると、漁業者は九分から一割くらいの金利になってしまうわけなんですが、いま池尻参考人も言ってくださったように、漁業がこんなに危機なので、せめて国民のたん白質源をとる漁業について何とかならないものでしょうかしら。このまま私たちにのめと言ってもちょっとめんどうなのですが、この金利のことについてお伺いしておきます。高橋参考人池尻参考人に伺います。
  48. 高橋泰彦

    高橋参考人 金利の問題は非常に重大でございまして、保証する上においても、絶えずこの問題は関心を持っているものでございますが、この問題につきましては、全漁連のほうで研究、検討いたしておるのでございますので、あわせて池尻参考人からも御聴取くだされば幸甚だと思います。
  49. 池尻文二

    池尻参考人 津川先生御指摘のとおりでございまして、私ども、系統金融で一番の悩みがいまその点になっておるわけでございます。  御承知のとおり、農業の近代化資金が農協の貯金その他ファンドの中に占める割合と、私どもの系統資金の中に近代化資金の占める役割りというのはもう七割程度になっておるわけでございますが、ときに金利の体系が高金利時代になりまして、いま御指摘のとおり、やたらに漁民サイドに負担を課せられない。しかし、それにある程度固執をしておりますと、漁信連の経営と申しますか、金融機関としての経営の問題にぶつかっておるわけでございまして、その辺が今度の予算要求のときにも問題になりまして、あくまでも農協並みというようなぐあいにはいかないのではないかということで、新しい予算もちょうだいいたしまして、なるべく漁民に金利のしわを寄せないように努力をしておるわけでございますが、金利体系というものはなかなかたいへんなものでございますので、私どもの系統金融で一番の悩みがその点になっておるわけでございます。
  50. 津川武一

    ○津川委員 これも一つの実例ですが、九十九・九トンのイカ船を近代化資金で一億四千万円でつくって、さあ出ようと思って、今度はほかの設備について、特に重油と人件費の分だけ農林中金から借りようとしたが、これがちょっとめんどうだそうですが、非常に困っておって、よく聞いてみたら、その漁港の漁業協同組合の預金高に比例して融資が来るというふうなかっこうですが、必要なものが非常に値上がりしてしまっていて、昔のものだととうていだめだということで非常にこぼしているのです。それが一つ。もう一つは、返済が、イカだと二年続いて不漁なためにちょっといけない。そこで元利払いがされない。したがって、新しい装備、新しいしたくのものが金融が途絶してしまっているということなんですが、これは何か打開する方法というものはあるのでございましょうか。
  51. 池尻文二

    池尻参考人 系統金融といえども本質はきわめて合理的なものでございますので、いまの事態については非常に困難があろうと私は思います。したがいまして、できれば、いわゆる保証の措置というようなことで、中小漁業の融資保証制度を活用するなり、また、私ども系統でございますので、単に経済的な問題だけの視点からではなく、系統金融の中でくふうをこらして、そういうものについての手当てというものをする必要があるのではないだろうか、かように考えておる次第でございます。
  52. 津川武一

    ○津川委員 いままでの預金したときの物価といまの物価は、去年からけたはずれにはずれてしまって、その人の言うのには、魚網が四・九倍、重油が二・九倍、船の消耗品、食料品などというものは、これがまた二・二倍ぐらいになっておる。いままでの預金の度合いに応じての融資だと間に合わないとおっしゃるのです。ここらあたりを打開していただくような道があればと思いまして、もう一回答えていただいて、せっかくおいでになった参考人の皆さんに対する私の質問を終わらせていただきます。
  53. 池尻文二

    池尻参考人 農林漁業金融公庫の融資もございますし、補完的な信用制度の問題では、いま問題になっております中小漁業融資保証制度の問題がございます。私も、あくまでも、預金の目減りに応じて現実に必用な金融ができないという態度はよろしくないのではないだろうかと思います。しかし、金融でございますので、それはそれなりの解決の道というものを見出して、たとえば系統金融全体の問題で中金の原資を仰ぐなり、あるいは、そういうように全体で困りましたときには国から原資の供給を仰ぐなりして乗り切っていかなければならぬ大きな問題ではないかと、かように考えております。
  54. 津川武一

    ○津川委員 どうもありがとうございました。終わります。
  55. 仮谷忠男

  56. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 漁業三法について、きょうは参考人の皆さんにはたいへん貴重な御意見開陳していただきますわけで、ありがたく感謝申し上げます。  沿岸漁場整備開発法案について、まず、最初に、池尻参考人にお伺いをいたしたいと思います。  本法は、端的に申しますと、一つには漁場をつくる、二つには公害で悪くなった漁場の回復をはかる、三つには、つくった漁場で人工ふ化をして養殖をする、こういうことであろうかと思うのですが、全漁連としては、先ほどからのいろいろな意見開陳の中でも若干出ましたが、本法に対してどういう点を盛り込んでもらいたかったか。たくさんおありだと思いますけれども、特に盛り込んでもらいたかった点について、かいつまんで、簡潔でけっこうでございますから、参考までにお聞かせいただきたいと思います。
  57. 池尻文二

    池尻参考人 五年間ばかりお役所のほうとも論議をしてまいりましたので、ほとんどがこの法案の趣旨の中には盛り込まれておると確信をいたしております。ただ、先刻申し上げましたとおり、法案は現実の姿から出発をしておりますので、私ども民間といたしましては、もう少し理想的な立場からの接近というものができないかどうかというようなことで検討しましたが、先ほどの整備計画内容あるいは第六条の特定水産物の栽培漁業のあり方の問題等、こういったところにつきましても、私どもの注文と現実からの出発の点がやや食い違っているといえば食い違っておりまするけれども、大半は私ども要望が入れられている法律でございます。
  58. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいま栽培漁業の問題が出ましたが、先ほど池尻参考人からは、日本列島周辺漁場をつくって、府県中心主義から国主導型の漁業開発に期待をするというような御意見がございました。もっともであります。特に、全漁連では数年前からグリーンレポートを発表されておられますが、われわれも日本列島周辺は全部栽培漁業にすべきであるという見解を持っております。  そこで、最近各県で栽培漁業センターを設置しておりますが、県知事がみずからの県のことを考えるのは当然で、魚は県境を越えて遊泳する、県の意欲に期待することは限界がある、と、こういったことを申されました。全くそのとおりです。私も、四十八年に、当委員会で、櫻内農林大臣の時代にこれをきびしく取り上げて追及したのでありますが、御承知のように、栽培漁業振興施設整備事業によりますと、昭和四十八年度には新潟県、石川県、福井県、島根県、山口県がありまして、櫻内農林大臣が島根県出身という関係もあってか、知事の要請があって島根県が入ったために、ついに日本沿岸は五県とも全部栽培漁業振興を各県でやるということになりまして、予算が二億五千万ついて、二カ年でやるということで、一年が一億二千五百万ということで進めています。物価、資材の高騰のおりからもこれはたいへんでありますが、ことしなんか、この五カ所もたいへんであろうと思う。昭和四十九年度の着手予定を見ましても、熊本県をはじめ宮城県、神奈川県、富山県、愛知県、佐賀県、長崎県が予定されておりますが、現に、長崎県野母崎経営栽培センターの例を見ましても、これは長崎県水産試験場増養殖研究所が行なっているわですが、この野母崎の研究所では三億円の予算をつけておるけれども、現在ではおそらくこの四倍か五倍くらい経費がかかるんじゃないかと言われている。ことしの七カ所については、資材等の値上がりから、昨年並みの予算ではおそらく困難であると思う。そうすると、参考人がおっしゃるように、これはもうますますこま切れになって、経済効果があがってこない。当時、櫻内農林大臣にも、あなたは生涯の悪政を残した、汚名を残したと言って私はきびしく糾弾しました。当然瀬戸内海と同じように国営にすべきであった、国営センターにして日本海についてやるべきであったというふうに私は言ったわけですけれども、これは残念であります。  そこで、この栽培漁業センターについては、今後資材の値上がりからたいへん困難で、ますますこれはみみっちいものになってくるということを考えたときに、漁連としても政府には相当強く要請もなさっておると思いますけれども、この要請のしかたが弱かったんじゃないかとも私は思うが、その点の経緯と今後の考え方を、漁連を代表してさらにお聞かせいただきたいと思う。
  59. 池尻文二

    池尻参考人 栽培漁業センターの運営の費用が、資材等の値上がりによりまして効果が薄れるのではないかということは、確かにそういう面があると私は思います。しかし、漁業開発並びに栽培漁業事業というものは、栽培センター一つの運営に限らず、そこがこの法案のねらいだろうと思いまするが、システムとして種苗をつくり、放流をし、そしてそれを受ける魚礁をつくるという一つの全体的な有機的な関連というものが必要でございますので、栽培センターそのものは、たとえば資材費だとか、そういうようなものの観点はそう心配ないんではないだろうか、むしろその他の試験研究をおもにしていくべきではないかというようなことで、まだ勉強は不十分でございまするけれども、一般的な先生の御見解は十分わかりますので、その点につきましては実態をもう少し勉強してみたい、かように考えておる次第でございます。
  60. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この問題については、本法の内容から見ますと、これは農業の土地改良法の水産版ということを言われるわけであろうかと私は思います。そういった意味からも漁民は強く沿岸漁場整備を叫んでおりますし、率直な関係漁民の声は、沿岸でなく沖合いに魚礁をつくるもの、すなわち国で直輯事業をやってくれ、そして、次の段階で都道府県でやっていただきたい、あとは団体営で沿岸ものをやっていただきたい、こういうような順序でいろいろ要望していることは事実であります。そういった意味からも、今後に残された問題でありますが、われわれも国会の場でこれをきびしく指摘してまいりますが、今後いよいよ二百海里説等が海洋法会議等でもいろいろ言われようとしているようなときにもなっておりまして、一千万トンの漁獲量がだんだんきびしくなってくる。農産物の食糧においてもきびしさがますます深刻になってきているときに、動物性たん白質を供給する水産業界もいまから険しい道を歩かねばならぬ、と、かように思っています。そういう意味からも、こういうことについては強力に漁連のほうからも働いていただくと同時に、われわれもまた国会の場で努力してまいりますが、十分その辺を認識されて、今後勉強していただきたいと思います。  次に、時間の制約があるのではしょって若干お聞きしておきますが、沖合い、遠洋海域における新漁場開発のための調査を行なうために、海洋水産資源開発センターが昭和四十六年七月に設立され、四十六年以来新漁場開発企業化調査実施しているところでございます。すなわち、海洋水産資源開発促進法の制定がなされたわけでございますが、現段階でずっと見てみますと、たくさんある中で、ニュージーランド沖合い周辺海域のイカと、それから南極海のオキアミ、これは小さいエビですけれども、こういったものをことし六十万トンぐらいとったらしいのですが、この二つがいまかろうじて計画の中で希望が持てることになっておりますけれども、実際に何が企業としてなり得るかと言うと、もう目ぼしいものがないというのが実情であるというふうに思っております。いわゆる国際環境上または資源上、日本国の一千万トンの漁獲量等を見ましたときに、たいへんむずかしい時代がやってくるので、この海洋水産資源開発促進法の制定によるセンターの活躍にはわれわれもずいぶん期待をしたものでありますが、現在はこういうことでなかなか企業化できないというふうに考えておりますけれども全漁連ではどういうふうにこれに期待をし、また評価をされておるか、参考までにお聞かせいただきたいと思う。
  61. 池尻文二

    池尻参考人 先ほども海洋法の話が出ましたけれども、海洋法で従来の漁場に制限が来るということになりますれば、開発センターの今後の任務というものはますます重大になってくるのではないだろうかと私は考えております。  探査漁場にいたしましても、深海その他の問題にはまだまだ未開拓な面も残されておると聞いておりますので、開発センターの新しい漁場開発にはさらに積極的に期待をかけていきたいと私どもは考えております。
  62. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私からも油問題をちょっとお聞きしておきますけれども漁業の燃料はA重油がほとんどでございますが、四十八年度においては、国内補給油が六百万トン、保税油、海外補給油が百万トン、計七百万トンを必要とするということで、燃料油の確保並びに価格の動向いかんで漁業経営の死活問題になるというようにわれわれは心配をいたしております。油が三倍になって、また、製品は横ばいで、カツオ、マグロは二割以上が油代で一番響くわけです。また、さらに、漁網とかロープも上がった。これはナフサの値上がりから当然ですが、こういったことで経営が成り立つかどうかということが一番問題になっていますれども、この点について今後対策はどういうふうにしていかれるのか、また、どういうふうに政府に強く要請なさっておられるか、その点をさらにお聞かせいただきたいと思うのです。
  63. 池尻文二

    池尻参考人 非常にむずかしい問題でございます。石油の価格は過去十何年全然値上がりをしなかったわけでございます。したがって、三万円の価格が過去二十年の間に徐々に上がってきたならば魚価の対応性もあったと私は思いますけれども、昨年の年末からわずか二、三カ月の間に急角度に三万円価格になったこと、ここに非常に問題があろうと思います。やはり物価でございますから、最終的には魚の価格というものに徐々に転嫁をさしていくということは長期的には可能でございますけれども、いまの時点で計算をいたしてみますと、いろいろな試算があると思いますけれども、業種によりましては償却はできない、赤字が非常に大きいというようなことが非常に普遍的でございますので、これにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、とりあえず金融対策でしのいでいただいて、そして、魚価対策あるいは石油の価格の対策を一体どういうふうに実現をさしていくかということを詰めてみなければならないと考えておる次第でございます。
  64. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、高橋参考人にお尋ねしておきます。  漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案についてでありますけれども、時間が迫ってまいりましたので、二点だけお伺いいたしたいと思います。  第一点は、今回の法によりますと、附則第九条に、「農林漁業団体職員共済組合法の一部を次のように改正する。」ということで提案されておりますが、この附則第九条で同法第一条第一項第九号の規定を新たに加えて、農林年金の対象としては従来の協会に限り、今回新たに組み入れられる中央基金は農林年金の対象から除外することとしているというふうになっておりますけれども、これは御承知のように基金協会の条文でございますが、年金は入れませんよ、と、こういうふうなことでございます。これをこのまま通すと、これは御存じのように国会の一事不再議の問題にかかってくるわけでございますが、この問題は皆さんのほうではどういうふうな見解をお持ちであるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  65. 高橋泰彦

    高橋参考人 今度設立される中央基金も、ある意味では農林漁業の団体かもわかりませんけれども、これは他の同種の性格を持ついろいろな団体とのバランスの問題があろうかと思います。したがいまして、今度つくられる基金が、将来の問題としては農林年金に加入していく道が開かれるのが望ましいとは思いまするが、ただ、いま、ほかの同種同類の団体とのバランスでそれが不可能だということはやむを得ないことでありますので、将来の問題として検討してまいりたい、このように考えています。
  66. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一点高橋参考人に伺いますけれども、先ほどもちょっと他の委員から触れられましたが、不振協会の対策でございますけれども、ハマチ、まき網の事故が起こりますと協会が代位弁済をするということになっております。今回の法では全部取り入れられておりますけれども、この不振協会の問題が今回やられておりません。この問題が将来かなり問題になってくると私は思いますけれども、大体どのくらいあって、これに対してはどういうふうな処置を今後考えておられるのか。今後の審議でまたいろいろと政府に考えをただしてまいりますので、御参考までにお聞かせいただければ幸いです。
  67. 高橋泰彦

    高橋参考人 ただいま先生から御指摘のように、ハマチあるいはまき網というものの代位弁済を通しましてかなりの漁業権がいわゆる不振といわれる状態になっていることは事実でございます。その協会の数でございまするが、いろいろな考え方がございまするけれども、約四分の一ぐらいがいわゆる不振協会といわれる協会じゃないかと思います。  それで、対策でございまするけれども、これは今度の改正基金協会基盤を増強しようということと、それから保証能力を高めていこうというために、中央に新しく基金を設けて低利融資をするということでございまするので、そのような政策の中で不振協会のことも考えて、これがうまく作動するように低利の融資がなされるべきだというふうに考えておりまするので、そのように当局にもお願いしておるのでございます。
  68. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、漁業災害補償法の一部を改正する法律案について、中里参考人に、これまた二点ほどお伺いしたいと思います。  第一点は、養殖共済に赤潮の特約が設けられました。今回の改正で、どんな赤潮でもこれが対象となるということでありますが、異常災害だから本人に掛け金をさせるのは不合理だということで、国がその掛け金の三分の二を負担する、残りの三分の一は県、市町村が持ってもらいたい、と、こういうことになっております。そこで、この県、市町村の負担がいろいろ問題であろうと思いますが、今後これはまた委員会で詰めていろいろと検討するわけですが、全漁連としてはどういうふうな見通しを立てておられるか。その点と、指定水域がこれによって定められることになりますけれども、皆さん方としてはどういったところを指定水域に考えておられるのか。その辺をお聞かせいただければけっこうでございます。
  69. 中里久夫

    中里参考人 赤潮特約にかかる掛け金負担漁民に転嫁しないというために、国並びに国以外の公共団体がそれを負担するということで措置が進められておりますが、問題は、国以外の県、市町村の負担が可能であるかどうかということで、この問題につきましては、実は、私どもといたしましては、必ず負担をしていただけるという自信なり確信を持っております。われわれ系統団体といたしましても、必ずそのような方向で力を尽くしていきたいというふうに考えております。  それから、問題は、赤潮特約の適用になる水域の問題でございますけれども、私どもの期待するところは、まず、瀬戸内海は必ず指定されるであろうというふうに考えておりますが、それ以外の関連水域につきましては、私ども必ずしもまだ十分に研究はしておりませんので、水産庁なりあるいは府県の御調査と合わせてさらに実態に即した指定水域がなされるように努力いたしたいと思います。
  70. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 参考人の皆さん、これは勉強不足で困るが、ここではっきり皆さんの考えを言ってもらいたかったのですけれども、いろいろ検討された結果はまたいずれお知らせいただきたいと思います。  次に、ノリのことで最後にお聞きしておきますけれども、ノリ養殖業に対する特定養殖共済試験実施が行なわれるということでございます。その中で、お尋ねしたいことは先ほど若干出ましたので、一点だけお伺いしておきますが、いまの共済保険の制度では、ノリが一枚とれても保険は出されぬというふうにわれわれは理解しておるわけです。したがって、網が全滅の場合以外は共済を払わぬ制度となっているわけでありまして、法律の目的は、いわゆるノリ生産者が再生産に見合うということで規定されておりますが、ノリ一枚とれても対象にならぬということではけしからぬと私は思うのです。そこで、少なくとも労働賃金くらいは払うべきであるというふうにわれわれは考えているのですが、この問題についてもまた次の委員会でいろいろと政府に姿勢をただすわけですが、皆さんはこれに対してはどういうふうに見解をお持ちであるか、お答えをいただきたいと思うのです。
  71. 中里久夫

    中里参考人 制度のたてまえはそのように解されますが、ノリの生産というものは非常に特殊でございまして、一枚でもとれれば払わないということは、たてまえ上はそうでございますが、実際の生産は、とれるときにはたくさんとれるし、とれないときには全部とれないというのがノリの生産の実態ではないかと思います。でありますから、一枚でもというおことばでございまするけれども、そのような生産の実態というものはまずないのではないだろうかというふうに私ども考えております。  それから、そのような判断をする時期でございまするけれども、御承知のように、ノリには適採期というものがございまして、たとえばいまでは適採期は三つぐらいに考えておりますが、それぞれ適採期ごとの判断でございますから、適採期ごとに、とれなかったときには払わない、とれるときには払う。そういうことで、一適採期にとれない場合は払わないけれども、次の適採期にとれれば払うということで、適採期ごとの判断でございまするから、われわれとしては、制度としてはそうむちゃな制度ではないと思うわけです。しかし、率直に申しまして、利用者側にとっても、共済団体側にとっても、いまの保険方式というものは、たてまえ上からも、あるいは漁民からもあまり合理的ではないということは率直に認めざるを得ないと思います。  そこで、かねてわれわれが要望いたしておりましたように、収獲金額方式というやり方、つまり漁獲共済方式でございますが、そういう方向でやるのがいいのではないかということで、今回お願いしておる試験実施ということになったわけでございます。そういうふうに御理解願いたいと思います。
  72. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本会議のベルが鳴りましたので、以上で質問終わりますが、参考人には忙しい中を貴重な御意見をいただき、たいへんありがとうございました。
  73. 仮谷忠男

    仮谷委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  午後は二時三十分より開会いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後三時一分開議
  74. 仮谷忠男

    仮谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農用地開発公団法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  75. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農用地開発公団法について、先般来いろいろと質疑を続けてきましたけれども、なお農林大臣あるいは関係者に確かめたい点がありますので、その点についていまから質問を申し上げて、お答えをいただきたいと思います。  第一の問題は、事業対象地域でありますところの茨城県、福島県、栃木県の三県にまたがる阿武隈・八溝地帯から、今度の法案に関して広域農業開発事業畜産基地建設事業実施要領、要綱等に対する要望事項が提起されていることについては御承知と思いますが、この点は御存じでしょうか。
  76. 大山一生

    ○大山政府委員 正式には聞いておりません。
  77. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 現地ではこの問題について重要な関心を払っておりまして、何項目からの要請事項があります。  その一つの中に、地区採択の条件、補助対象事業の問題、融資及び償還条件の問題、用地調達に関する件、事業の申請の問題、その他国有林の活用あるいは課税等々について、かなりこまかく、これは法律をどうこうするということではなくて、今後の運用についての注意と、要望すべき点があるわけでありますが、そういう点に関してはどういうぐあいに取り扱われるかという点について、まずお答えをいただきたいと思います。
  78. 大山一生

    ○大山政府委員 法律が通りまして、実施要綱なり実施要領をつくるわけでございますが、その際に関係方面の意見は十分に聞いてやってまいりたいというふうに考えております。  それで、いま先生が申されましたことは、そういう要綱、要領に入るもの、あるいはもっと先の運営に関する問題等いろいろあるような感じがいたしますけれども、それぞれの段階において極力地元の要望に沿うように弾力的にやってまいりたいと考えております。
  79. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この点は強く要望しておきます。  第二点は、農地開発機械公団の職員の取り扱いについてでありますが、この点については前回来いろいろと質疑を続けてきたところでありますが、整理をして、大体六つの点に問題がしぼられるかと私は思いますので、六つの点について項目だけを質問して、それに対するお答えをいただきたいと思います。  第一の問題は、公団に働く労働者から絶対に犠牲者を出さないということ、これについまず第一にお伺いをしたい。第二点は、準職員を一括して定員化するということについてのお答えをいただきたい。第三点は、現業を存続させるという問題。第四点は、賃金格差の是正に関してどのように取り扱われるかということ。第五点は、新公団移行に関する労働条件についての事前協議に関して、どのような取り扱いをされるかということ。第六点は、公団運用の民主化に関して。以上の点をまずお伺いしますが、これは局長から答弁をもらって、大臣からさらに詰めていただきたいと思います。
  80. 大山一生

    ○大山政府委員 六項目につきましての御質問でございますので、私からまずお答えをさせていただきたいと思います。  第一点といたしまして、農地開発機械公団に働く労働者から、新公団移行にあたって犠牲者を出さぬようにすること、これは御存じのように、法律の附則におきまして一切の権利義務を承継するということになっておりますので、そういう問題はございません。  それから、第二点は、準職員の定員化に関する問題でございますが、準職員につきましては、ここ三年を目途といたしまして、当分の間は従来業務を継続するわけでございますが、その継続する中におきまして、研修、訓練等によりまして職種の計画的な転換につとめたいというふうに考えるわけでございます。そして、まず、その当分の間におきましては、新規事業につきましては、その当分の間の終了時点を目途といたしまして、現在全計地区に採択しているところ、あるいは精査地区としてやっておりますところの事業化を進めまして、事業量拡大につとめますとともに、新規事業は原則といたしまして正職員で対応することを旨といたし、事業量の増大に見合った、新規事業に必要な定員数を増加するようつとめてまいりたいと思います。  以上申し上げました措置の過程におきまして、準職員で将来とも新事業に継続して従事することが見込まれる職員につきましては定員内職員とするようにつとめてまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、第三点の、現在機械公団にある現業の問題でございますけれども、この点につきましては、先ほど申し上げましたように、権利、義務を承継するわけでございますけれども、その長期的な展望に立つ中におきまして、基本的には研修等を通じて新たな業務に従事するような職員というふうにしてまいりたいというふうに考えるわけでございますが、職員等の中におきまして現業的な業務を望む者がいるということでありますならば、それは新規事業の分野の中におきましても、必要限度の範囲内で与えていくことは可能ではないだろうかというふうに考える次第でございます。  それから、賃金格差という問題でございますけれども、この点につきましては、機械公団の職員というものの給与は、他の発注公団とは、その業務内容が、あるいはその他の条件が種々異なっておりますので、一がいに比較しがたいところでございますが、こういう問題が組合から提起されているということもございますので、業務の性格が切りかえられることでもございますし、新事業に適応するための職種転換をはかっていく等の過程を通じまして、適正な給与となるようにつとめてまいりたいというふうに考えるわけでございます。  それから、新公団移行に伴います労使関係の問題でございますけれども、この点につきましては、現公団の立場から言うと、移行後の問題については必ずしも約束しがたい面があることは事実でございます。したがいまして、移行までに解決すべき事項、あるいは移行後において新理事者との間において交渉して解決すべき事項、こういうふうに分かれるわけでございますけれども、その移行後において正式に交渉して解決すべき事項ということにつきましては、少なくとも問題事項の整理をした上で、でき得べくんば、改善方法等を調整いたしまして新公団の理事に引き継ぐというようなことが適当であろうし、また、農林省に対しまして善処方を要望するといったようなことも、あるいは国会審議の経緯というようなことを尊重して、移行後の交渉の足がかりの合意をはかるといったような方法も考えるわけでございまして、こういうことを通じまして信頼関係の確保につとめるということであろというふうに考えるわけでございます。  それから、公団運営の民主化という問題につきましては、これは適所適材という中におきまして、いわばプロパーというものも相当育ってきておるというような中におきまして、幹部の中にもそういった職員を極力採用するようなことも考えてまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  81. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府委員のお答えいたしましたような方向でやってまいりたいと思っております。
  82. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最後に申し上げておきますが、いまお答えがありましたように、この問題は非常に重大な問題でありますから、この法案が通った直後から労使関係等々に関しては交渉を始めて、いい慣行というものをぜひつくってほしいということを申し上げると同時に、人間の問題でありますから、お互いに誠意を持ち、誠実にこれを実施するということをどうしても約束してもらいたいと思います。なお、公団の役員に関しては、この公団の性格と任務にふさわしい役員の配置が望ましい。ただ単なる古い役人の振り分け的な天下り人事はぜひ排してもらいたい。こういうことを強く要望して、私の質問と要望を終わります。
  83. 仮谷忠男

    仮谷委員長 柴田健治君。
  84. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 大臣に御質問を申し上げますが、同僚委員からたびたび出されたのですが、きょうは公団法を上げるかどうかという大詰めを迎えたわけでありますから、大臣が答弁をきちっとはっきりしていただくことが早く法案が上がることだということをお考え願いたい。そういう意味で簡単に御質問を申し上げますから、明瞭にお答え願いたいと思います。  まず、農地開発機械公団から今度農用地開発公団に移行するということで、職員の皆さんの身分の保障ということについては、同僚委員から何回となく問題点を出されております。しかし、当局の答弁はどうも不明確であいまいな点がある。そこで、この身分保障については、大臣の責任において処置する、職員の皆さんには不安を与えないという答弁を願いたい。そして、賃金格差も責任をもって是正するということを大臣から明確にお答え願いたいと思います。
  85. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいま竹内さんに政府委員がお答えいたしましたところに、ただいまの案件がすべて入っております。そこで、そのお答えに対して私にまた念を押されましたので、そのとおりに考えておりますというお答えをいたしましたが、簡単率直と申しましたから、そのように御了承を願います。
  86. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 責任をもってやるということですね。もう一度確認をしておきます。
  87. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど竹内さんにお答えいたしましたことで尽きておると思いますので、そのとおりにいたしたいということを申し上げておるわけであります。
  88. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 次に、大臣、この公団法は相当長期にわたるという考え方にも立つのだが、農林省のやり方を見ると、どうも思いつきや場当りが多く、また、いろいろ変化が多過ぎるし、転進が多過ぎる。こういう農政のいままでのあり方から見て、この公団法を育成強化すると同時に、この公団の運用については、これを農民のものにしていくんだぐらいな気持ちでこれからの運営をやってもらわなきゃならぬと思うのだが、それと同時に、この公団法をいつまで続けるつもりか、存続の期間というものは無期限でやるのか、この点をお答え願いたいと思います。
  89. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 新公団の仕事は、もうすでにしばしば申し上げておりますように、広域な未利用、低位利用の土地がただいまなお広範囲にわたって存在いたしておりますので、この地域を対象として、畜産を基軸とする農業開発を行なうということを目的といたしておりまして、広域農業開発事業対象とされる四地域におきましては、調査の結果適地と考えられる地区より、当面十年間において六万五千ヘクタール程度事業量が見込まれております。また、畜産基地建設事業におきましても相当の事業量が考えられておる次第でありますが、現在、農業基盤整備事業は原則として土地改良法の体系に即して行なわれておりますし、新公団の業務は、現行制度では円滑に対処しがたい事業、すなわち基盤整備のみならず施設整備等の事業をもあわせて一体的に行なう必要のある地域の開発事業対象といたしておる次第でございますので、これはかなり長期にわたってそういう計画のもとに進めていかなければ成功しないものではないかと、このように考えております。
  90. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 ただ長期にわたるということだけで、いまのところは期限や期間というものは考えないということですな。
  91. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 さっき申し上げましたお答えにもありますように、当初の計画を完成していくだけでも大体十年間、五万何千ヘクタールというものでありますからして、かなり長期の計画を立ててやるべきではないかと思いますし、また、その間にも逐次新しい計画等も地方でもお考えになってまいるでありましょう。そういうことでありますので、これはかなり長期にわたってやるべき重大な仕事であると、このように考えております。
  92. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 相当長期にわたる事業として取り上げていくものは相当計画性も必要なんですが、ただ、いままでの現行制度で、土地改良法であるとか、その他いろいろな制度基盤整備事業をやっている部分があるわけです。基盤整備事業で、他の制度でやっておる農民負担、要するに受益者負担の原則論が日本の場合は強過ぎて、どうも農民の負担区分が多いということで、なかなかうまくいっていない地域もある、暗礁に乗り上げておるところもあるということで、いろいろ悩みがあるわけでありますが、この公団でやっていく事業は、農民にとっては魅力的になるんではなかろうかという気がする。そうすると格差が出てくる。これは畜産の基地だということだけで割り切れるものではない。畜産であろうと、果樹であろうと、一般農業であろうと、米づくりであろうと何であろうと、基盤整備事業というものは農民の立場から言えば同じである。だから、国、県、市町村の金、受益者農民の負担軽減するという中から基盤整備事業をどんどん進めていくということにならなければならぬ。要するに、国営と県営と市町村営でやる、将来そういうことで基盤整備をやっていくという方向でこの公団の運用も考えなければならぬのではなかろうかという気がいたしますが、大臣、その点の判断はどうでしょう。
  93. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 わが国の農政を推進してまいるのに一番大事なものは幾つかあります中でも、基盤整備はぜひ必要なことでありますから、われわれは長期の計画を立てて長期に土地改良計画を推進しているわけでありますが、これを実行してまいりますためにも、公共団体、市町村等の御理解、御協力がなければもちろん成功するものではありません。したがって、今回の農用地開発公団の仕事などでも、市町村の十分な理解、御協力を得るということが大前提であろうと思っております。
  94. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 大臣、それは次の段階の答弁で、答弁の順序が間違っておるのじゃないです。そういう質問をしたんじゃないんですよ。あなたは原稿だけ与えられて、それだけ答弁しておればいいと思っておるのじゃないですか。そうではなくして、基盤整備事業というものは、できる限り農民の負担軽減していくことが大事で、それが将来の日本の農業を発展させる政策の一つの重要な部分だという判断で、基盤整備事業については、米づくりだろうと、果樹だろうと、畜産であろうと、国営、県営、市町村営という三本立ての柱で将来考えるべきではないか。その中で、公団の運用については、重要な役割りをしていくということでわれわれは賛成している。こういう判断に立っておるわけですから、将来の基盤整備のあり方というものについては、現行の土地改良法でいけば受益者負担の原則が強く出て、農民負担が多いから、それを何とか解消する方向で、この公団法の出発と同時に考えたらどうですかと言ったのだが、そうしたら、あなたはとんでもない答弁をした。
  95. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 よくわかりました。したがって、いまは団体営その他ございます。それによって負担もございますけれども、いままでの計画基盤整備をやってまいりますのは一応そういうことでありましたが、あなたのおっしゃいますことはたぶんそういうようなことではなくて、もっと非常にむずかしい地域を開発するには、国が力を特に入れるべきではないかというような御趣旨だとも思いますが、私どもといたしましては、今度の場合でも未利用地、低位利用地等の開発をやってまいるのでありますけれども、これは採択基準のきめ方だと思うのであります。国といたしましては、地域を十分調査いたしまして、それによって採択基準をきめてまいるわけでありますから、いま申し上げましたような長期計画に基づく基盤整備というものは、そういう基準でやってまいるのは当然なことだと思います。
  96. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 どうも十分かみ合わないのですが、この公団法は通さなければならぬということで、時間が迫っておりますから時間的に省略させていただいて……。  いま採択基準のことを言われたんですが、いまの構想から言うと、百五十町歩を基準にしてある。実施要綱は、いつごろ出るのか知らないが、これは事務当局できめるのだろうと思いますが、この採択基準の幅というもの、弾力性というものをどの程度持たせるのか。地域においてはある程度考慮してやらなければならぬ地域があるのではなかろうか。それから、この公団でやるところは、受益者ということよりか、新たな開発ということで、そうすると、土地を持っておる者は入れるかどうかわからないし、また、入らない、土地だけは売ってあげましょう、山林は売ってあげましょう、原野を売ってあげましょうということになる。そうすると売らないという場合がある。そういういろいろのいままでの土地改良法でやる基盤整備というものは、受益者農民が自分らの土地を出して基盤整備をやるのですから、これは直接の農民ということになるわけです。今度の公団でやる畜産基地の開発は、土地を持っておる者と、入って基地で営農をやる者と違うということになる。その場合に、土地を売らないとか、おれいやだと言った場合には、土地の収用法もかけられないということになる。その場合に、やはり規模の問題が出てくるのではなかろうか。この点が第一点。  それから、もう一つは、市町村にもう少し任務を持たせないとうまくいかぬのではなかという気がいたします。この法案が出しておられるこの任務では十分と言えない。ほんとうは市町村にもう少し責任を持たせて、土地のあっせん、取得も全面的に認めないと、公団が前面に出てやる。そのために役員がたくさん要るんだという説明だったのですが、公団の役員が土地の取得に前面に出て交渉するなんていうことは、人間的なつながりという面で問題があるというか、見たことも会ったこともない者が、私は公団の役員です、理事ですと言って土地の交渉ができるはずがないと私は思う。やはり、市町村がこの基地の造成にはよほどの責任を持つべきだと私は思う。ただ負担金を集めるとか、ただあっせんだけをするというような、そういう任務では成功しないと思うのですが、大臣、どうでしょうか。——いや、大臣だよ。
  97. 大山一生

    ○大山政府委員 前段のほうの問題を私からお答えさせていただきたいと思いますが、採択基準の問題につきまして、畜産基地百五十ヘクタール、それから広域のほうが五百ヘクタール、この基準については、いまのところ変えるつもりはございません。ただ、その百五十ヘクタールの中に含まれます小団地の取り扱いにつきましては、地域、地域によって相当変わっているような状況にございますので、極力弾力的な運用をいたして、団地の形成という問題の観念を弾力的に進めてまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  98. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 こういう事業をやりますのに、地元住民の協力がなければうまくいかないことは当然なことだと思っております。そういうことでありますから、各地域の実態に即応いたしまして、関係団体との連係を緊密にしてまいらなければいかぬ。そこで、新事業制度におきましては、都道府県の申し出で、事業実施方針の決定と、それから事業実施計画の作成の各段階で市町村長への協議を要することといたしておることは御存じのとおりであります。そこで、そういう市町村長、つまり地元の町村長を代表するものとして、この事業内容が適切なものとなるように、地元関係団体、関係者の指導や、その意向の取りまとめを行なうことも実は考えておるわけであります。いまお話しのように、新しくできた公団の者が行って土地云々と申しましても、地元公共団体並びに市町村との緊密な連係があることがやはり必要でありますので、そういうように地元の意見をくみ上げることのできる機構に当然やってまいりたい、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。
  99. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 土地を持っておる人の同意というものが、非常に時間的な労力が要るだろうと思うのですが、たとえば土地の所有者が北海道に土地は持っておるけれども、その所有者は大阪に住んでおるとか、東京に住んでおるとか、あるいはブラジルのほうに行っておるとか、全国的にそういう例が多いわけですね。農地法の適用を受けておる地域はいままでに処置されておるけれども、農地法の適用を受けていない土地は、だれが持っておるやらわからぬ場合がある。日本の場合は正直に言ってそういうことです。それから、農地用以外の土地は、固定資産台帳を調査していくと、ああ、あの人は何代か前におらぬようになっておるとか、いや、あの人はもうブラジルのほうへ行っておるのだとかいうような場合がある。そういうときに、公団の職員なり役員が一々手続ができるはずがない。ダムの建設の立ちのき補償や買収なら、それは最善のことをやるだろうけれども、こういう場合は市町村長の土地の取得に対する全面的な協力がない限り成功しない。一カ所や二カ所は成功するかもしらぬが、おそらく成功しない。それだから、市町村長の任務というものはそれくらいあるのだから、一方において開発した市町村に相当の恩典を与えていくという考え方にならなければいかぬ。任務と、そしてまた恩恵というものを十分考えてやらないとこの公団の開発は成功しないとわれわれは判断するのですが、大臣、どうでしょうか。
  100. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 市町村長の御協力をできるだけ得ることが非常に必要なことであります。ことに、今度のような問題で、土地取得の問題等もありますが、そういう場合、たとえば合理化法人が土地を取得するような場合に、市町村長に中へ入ってやっていただくとか、いろいろ地元の意見をくみ上げてやってまいるようなことが必要な事柄ではないかと思っております。
  101. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 終わります。
  102. 仮谷忠男

    仮谷委員長 芳賀貢君。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際、農林大臣にお尋ねいたしますが、まず、第一の点は、政府が一昨年の四十七年十月に閣議決定を通じて明らかにされた新土地改良長期計画の十カ年計画と、ただいま審議を行なっておる農用地開発公団が行なう事業の長期計画との関係について、基本的な点についてお尋ねいたします。
  104. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは長期計画の一部分であると考えております。
  105. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この十カ年計画内容は、大きく区分いたしますと、第一が、国が行ない、または補助する事業といたしまして、農用地総合整備事業、基幹農業用揚排水施設整備事業、防災事業、農用地造成事業、これを合わせて十カ年間で十二兆九千八百億。第二の点は、これを達成するための融資事業について六千億円の資金を確保する。合わせて十三兆五千八百億ということになっておるわけでありますが、当面するわが国の食料危機の実態から見て、今後、国土の中の広大な農用適地の未墾地を対象にして、国の責任で農用地の開発造成を行ない、それを基礎に今後畜産農業の一大発展を期するということについては、根本方針としてはわれわれ社会党としても別に異論を持つものではありませんが、問題は、この政府計画内容が非常に貧弱であるという点であります。社会党の農用地開発計画についてはすでに明らかにしておるわけで、御存じと思いますが、十カ年計画をもって百万ヘクタールの農用適地の開発造成を行なうという計画を持っておるわけでありまして、これに比べると政府の土地改良計画というものは非常に貧困きわまりないものがあると思いますが、これに関しての農林大臣の所見のほどはいかがですか。
  106. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 十三兆円にのぼる十カ年土地改良計画については、いまいろいろ御意見がございましたが、私どもといたしましては、食料の自給度の確保と、それから、その中に占める畜産その他の飼料対策等を考慮いたしまして、とりあえず草地四十万ヘクタールということを長期計画の中で計上しておるわけであります。私どもは一応そういう計画を立てて進めておるわけでありますが、先ほどもお話し申し上げましたように、未利用地、低位利用地というふうなものにつきましては、なお新たな観点に立ってできるだけの活用をしていくべきであるという考えは持っておるわけであります。
  107. 芳賀貢

    ○芳賀委員 まず、法案の目的についてでありますが、開発して農用地とすることに適当な未墾地等が広大な面積を占めておる地域を特定して、開発公団が農用地の開発事業を行なうことになっておるわけですが、この法律の目的も、決して農用地の開発造成だけを究極の目的にしておるわけではないと思うのですね。造成された生産性の高い土地を中心にして高度な畜産基地を建設するのだから、したがって、開発された土地から畜産業を通じて大きな生産を期待するわけでありますが、結局は、酪農を通じて乳が生産され、あるいは養畜を通じて畜肉が生産される期待に対して、ほんとうに意欲を持った生産農民がこの地において農業生産に取り組める条件というものは、単に農用地の開発造成だけではないと思うのですね。いまのように、長年にわたる政府の保証乳価にいたしましても、畜肉の基準価格にいたしましても、むしろ農業や酪農畜産を破壊する方向の低価格政策をずっと続けてきておるわけでありますからして、いままでのような政府の政策態度から言うと、今度は、このような特定の地域に高度の生産を期待できる畜産基地が建設されるということになれば、いまの自民党政府としては、まず第一に、この地域というものはモデル的な生産性の高い農業を行なうことができて、生産費ということになれば、結局、生産された牛乳や畜肉のコスト計算ということになって、ますます低減したコストの畜産物が生産されるから、従来よりもそう低価格政策を強く進めることができる、そういう基準としてこういう建設を考えておるのではないかという危惧が非常に強いわけです。  たとえば、昨日農林大臣が畜産審議会に諮問をされた豚肉に関する政府試算の内容を見ても、従来の低価格政策から一歩も抜け出していないわけです。ですから、この点について、今後の畜産の発展を期する場合において、畜産物を主要な食料と位置づけをして大きな生産の拡大を期待するということになれば、やはり、一番大事な点は、価格政策並びに土地基盤等の、国の責任で行なう事業の完遂であるというふうに考えておるわけでありますが、この際、当面する三十日にきめるところの加工原料乳の価格あるいは豚肉の基準取引価格、あるいは液卵公社に買い上げを期待する卵価の基金制度の維持等については、農林大臣としては、この法案との関係でどういうような熱意を持っておられるか、この際、委員会において明らかにしてもらいたい。
  108. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農業も、畜産も、酪農もそうだと思いますが、できるだけ規模を大きくして、ロスを省くことがまず第一に必要だと私は思っております。そういうことのために、集団的な畜産基地、酪農基地というふうなものを可能な限り育成して、なるべくそういうところに集約されることによって経済効果を期待し得るのではないかと思いますし、そういうことは優先的に一つは必要なことでありますが、そういうことに至ります前に、諸外国と比べてわが国の畜産、酪農が比較的——いろいろこのごろは大きいものも出てまいりましたけれども、それでも規模が小さい。そういうところの方々がいま製造されておる牛乳、豚肉というようなものを今度きめるわけでありますから、いわゆる酪農基地、畜産基地というふうなことばで表現されておりますものを現実にいろいろ考えてみますと、さまざまな原因もありましょうが、一番大きな原因としては、やはり、畜産を育てるための飼料が非常に高騰してきている。こういうことは外からの原因でありますけれども、とにかく価格が高騰してきている。それから、また、石油問題等に端を発しまして、かなりなフレートの上昇を見ておりますし、為替レートの関係からいっても、従来より価格が高騰してきた。さまざまな悪い条件が重なってきておりますけれども、全体の農政の中で占める選択的拡大と言われる中の酪農、畜産に対しましては、これはやはり生産者の再生産の確保を楽しめるようなものでなければ続くはずはないのでございますが、それが続かなくなったらどうなるかと言えば、まず、一般に生産者もたいへんお困りになることであるが、消費者もまた非常に困ることで、国全体の不利益でありますから、そういう角度から考えてみますと、いま申しましたいろいろな状況を踏まえて、この環境の中における経済事情を十分にくみ取ったような価格体系をつくっていく必要があるのではないかというふうに見ておるわけであります。したがって、いまお話しのように、今月末に答申の出ますものをよく見まして、それによってそういう趣旨を尊重して決定いたしたい、このように考えておる次第であります。
  109. 芳賀貢

    ○芳賀委員 当委員会においても、これは理事会の中の発言の一部でありますが、今月の下旬には保証乳価あるいは畜肉の価格が決定されるが、特に、公団法を成立させるかさせないかということは、これは政府の今後の政策態度がどうだということを見きわめなければならぬのではないか、そうであれば、今月下旬にきまる保証乳価あるいは畜肉の価格の決定を待って公団法案の取り扱いをきめてもおそくはないという、こういう率直な意見も実は出ておるわけであります。政府がそういうインチキをやるということも考えられないし、きょうはまともに大臣が出席しましたので、われわれはこの法案審議を進めることにしてあるわけですが、しかし、昨日畜産局長審議会において説明をした政府の豚肉価格の試算の内容等を見ても、この公団法を成立さしたからといって、別にわが国の畜産が一歩前進するというようなものではないと考えますが、どうですか。
  110. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 釈迦に説法みたいなことで失礼でありますが、いままでやっておりましたわが国全体の様子を見ておる中で、今回の公団というふうなものができて、比較的規模の大きな基地ができるというようなことは、わが国の畜産にとりましてたいへんなプラス面ではないだろうかと思っておるわけであります。
  111. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第一、畜産局長がいま出席しておらぬでしょう。私は、けさ質疑に入る前には、必ず畜産局長出席するように要求しておるわけですよ。農用地の開発造成は構造改善局の所管であっても、造成された農用地に入植して、実際に畜産経営を行なうということになれば、その指導、所管というものは畜産局所管ということになるのじゃないですか。われわれがきょうはできるだけ協力して法案審議を進めるというかまえでおる場合において、何のために大事な畜産局長がきょうは欠席しているわけですか。これを見ても、いかに農林省というものが熱意を持って法案を進める考えがないかということが明らかになっておる。これは一体どういうわけなんだ。——それでは、さっそく畜産局長を呼んでおいてもらいたいと思います。  次に、大臣にお尋ねしますが、今回の公団法案内容を見ますと、この法案の骨格上非常に問題になる点があるわけですね。たとえば未墾地の特定地域を設定して、国の責任で公団方式をもって未墾地の開発を行なうということであっても、対象の土地というものは国の権限に属する土地だけに全部限定されておるわけではないと思うんですよ。それは、今後事業を進める場合においては国有地もあるでしょうが、それ以上に民有の未墾地等が特定地域の対象の土地となるというふうにわれわれは判断しておるわけです。そうなれば、国の方針で特定して農用地の開発事業を進める場合においても、大事な土地の権利関係等については、これはやはり慎重に権利関係の調整をする必要がある。あるいは、また農用地の造成事業を進める場合においても、その地域において事業に参加する資格を持った農民の自発性の上に立った申請あるいは合意というものを事前に十分反映させる手順というものは、公団法についても、それを簡略にすることはできないと思うんですよ。こういう点については、基本的な既存の法律としては、農地法あるいは農用地の開発造成等を行なう場合においては、土地改良法というものは現存しておるわけでありますからして、それらの重要な基本をなす法律の体系というものを基礎にして事業を行なう公団法の策定をするのが当然であると思いますが、私どもが先般来検討いたしましても、大事な土地の権利関係あるいは地元の事業参加資格者の申請もしくは同意というものは、必ず行なわなければならぬ法律上の手続としてこの法案には明確にされていないわけです。このような、国が単に都道府県知事の申し出だけを受けとめて、農林大臣が事業実施方針あるいは事業実施計画等を策定して、公団を通じてそれを下へ押しつけるような形というものは、これは大きな誤りをおかすことになると思いますので、この基本的な点について農林大臣から明確にしてもらいたいと思います。
  112. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話しのように、この地域には国有地もありましょうし、それから民有地もあるだろうと思っております。そこで、新公団の事業を円満に遂行してまいりますためには、開発用地があらかじめ確保されていることがきわめて重要なことでございますので、いまのお話しのような点につきましては、農地保有合理化法人の農地保有合理化促進事業等によりまして詳しく精査をいたしまして、その所有権の明確なものを調べ上げて、そういうものについて地元の協力を得て買い入れるなりして、その開発地帯に組み入れる。そういうことになりますためには、地元の方々の十分な理解と協力を求めなければならぬことは当然でありますが、御指摘のように、そういうこれから組み入れようとしておる地域の実態を十分に把握して進まなければならぬことは、当然公団としてはやらなければならぬことだと思います。
  113. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いま大臣が答弁された大事な事項が、この法案の中には、その根拠になる規定がないわけですね。そういう大きな手落ちというものを法案修正の形で整備されるという御意思であるのか、あるいは、この法文上の有力な根拠の上に立って間違いない運用をするというのか、その点はどうなんですか。
  114. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この点はたいへん大事なことでございますので、私どもといたしましては、法律にそういうことを書きませんでも、法律が発効いたします前に政令をきめるわけでございますので、その政令でただいまのような点を明確にいたしたいと思っております。
  115. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとえば法案の第二十条は「事業実施方針」の規定になっておるわけでありますが、ここでは、ただ、「都道府県から、区域を特定して公団が前条第一項の業務を行うべき旨の申出があった場合において、」ということにしかなっていないわけですね。土地改良法の規定によると、この法案二十条にある規定の場合には、事業参加資格者の申請に基づく、あるいは申請によらない国営事業をやるような場合においても、その地域の事業参加者の完全なる同意というものが事前の手順として必要であるということになっておるわけですが、その点がいずれから見てもこれは欠如しておるわけですが、百歩譲って、政令のいずれかの根拠に基づいてそういう点を明確にするということになるとすれば、どういうような政令事項によってこれを補完するか、その点を明らかにしておいてもらいたい。
  116. 大山一生

    ○大山政府委員 ただいま農林大臣が答弁されました趣旨は、二十条の第一項の「政令で定めるところにより、」というところを受けまして、その第一項の政令の中におきまして、「都道府県は、法第二十条第一項の申出をするには、申出書に」「次に掲げる書類を添付してしなければならない。」ということにいたしまして、その中に、「当該申出に係る事業に参加することとなる者の当該事業に関する意向を明らかにした書面」というものを政令事項として要件づける。そういうかっこうによりまして、申し出にかかる地区の審査の際に十分配慮する材料にしたい、こういうことでございます。
  117. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、その程度じゃわからぬじゃないですか。われわれはこの法案審議をできるだけ促進するという立場に立っておるわけですが、ものの限界というものがあるのですからね。政令に基づいてやりますと言っても、いま局長の読み上げた程度のものでは政令ということにならぬじゃないですか。はっきりしたものを用意してあるんであれば、第何条のどの政令にゆだねるという事項に基づいてこういう政令を用意してありますということを完全に説明しないと、抽象的な政治的な答弁で過ごすというわけにいかぬですよ。こういう大事なことは、あなたがわからなければ、その担当者でもいいですよ。
  118. 大山一生

    ○大山政府委員 三十条の第一項におきまして、「農林大臣は、政令で定めるところにより、」云云、「申出があった場合」というふうになっております。そこで、御趣旨の点につきましては、都道府県の申し出の段階以前におきまして地元の意思をなお十分に確認するように、先ほど大臣が申し上げましたようにもちろん指導いたしますとともに、都道府県の申し出講の中におきまして地元の意向を明らかにする書面を添えるということを、この申し出の方式を定めております二十条一項の「政令で定めるところにより、」という政令に規定するわけでございます。そして、その政令の中に記載する事項といたしまして、いま申し上げましたように、都道府県が出してまいります申し出書の中に、「当該申出に係る事業に参加することとなる者の当該事業に関する意向を明らかにした書面」を添付させる、こういうふうなことを政令に書くつもりでございます。で、政令の書き方といたしましては、「都道府県は、法第二十条第一項の申出をするには、申出書に、同条第三項の意見を記載した書面のほか、次に掲げる書類を添附してしなければならない。」というかっこうの中に、ただいま申し上げました「書面」ということを記載する、こういうことでございます。
  119. 芳賀貢

    ○芳賀委員 元来、大事な点を審議する場合は、政令でその根拠をつくるということになれば、政令というのは閣議決定ですが、法律が成立した場合においてはこの二十条の政令によるという規定に基づいてこういうような政令案というものをあらかじめ用意してあるならありますと言うのが当然じゃないですか。あなたがはっきりできなければ、文書課長でもいいですよ。
  120. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生のお尋ねになりました政令の案でございますが、読み上げますと、次のような案になると思います。条数はまだ入りませんが、  第  条 都道府県は、法第二十条第一項の申出をするには、申出書に、同条第三項の意見を記載した書面のほか、次に掲げる書類を添附してしなければならない。   一 区域の地積及び現況   二 当該申出に係る事業に参加することとなる者の当該事業に関する意向を明らかにした書面   三 当該区域の周辺の地域の現況   四 当該区域の概要図  以上でございます。
  121. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣にお尋ねしますが、ただいま松浦文書課長から明らかにされた政令案というものは、われわれといたしましては、これは土地改良法に基づく大事な、事業参加資格者による申請、同意と同一の手続であるというふうに解釈してもよろしいわけですか。この点を大臣からはっきりしてもらいたい。
  122. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま申し上げましたものは、確実に政令に入れることを私ども了解いたしておるわけでございます。
  123. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、いま尋ねたのは、土地改良法によるところの事業参加資格者の申請、同意と同等のものであるというふうに判断して差しつかえはないのかということを聞いておるわけです。
  124. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 このできました公団の事業の手順といたしましては、その段階で地元の意思を十分にくみ取ることとしておりますので、ただいまの政令を出します、その政令の中には、地元の意思を十分くみ取るという趣旨で発令する政令でありますので、ただいまお話しのような趣旨と同一の趣旨でこれを政令に盛り込む、こういうことでございます。
  125. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣、そういうものがあらかじめ用意してあれば、最初から率直に持ち出してもらったほうがいいのですよ。  それからもう一点法案上疑義のある点は、法案の二十一条の第三項の規定ですが、「第十九条第一項第一号イの事業実施に係る区域内にある土地についての事業参加資格者は、その者に係る土地につき所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者(当該土地についての事業参加資格者を除く。)が他に存するときは、前項の同意又は不同意を公団に表示する前において、農林省令で定めるところにより、当該事業実施につき、その使用及び収益をする者の意見を聴かなければならない。」となっているが、この点は土地改良法の第六条に根拠がありまして、それを全部じゃありませんが、一部準用した法律規定ということになっておるわけでありますが、この「当該事業実施につき、その使用及び収益をする者の意見を聴かなければならない。」ということだけでこれは終わっているわけですね。ところが、土地改良法の第六条においては、この者の意見を聞いた場合に同意が得られない場合においてはさらに努力して、たとえば農業委員会からの資料の提出、最終的には都道府県知事の調停、あっせん、最後には勧告の規定が明確になっておるわけです。この点は同意、不同意について、「その使用及び収益をする者の意見を聴かなければならない。」ということで終わっておるわけでありますからして、同意ということであればそれはいいわけですが、中には不同意という者も当然あることを予定しておかなければならぬわけです。全員の同意を求めなければならぬというのが必須条件になっておる中において、数名の不同意者が出たという場合において、意見を聞いただけでこれを終わらしてしまうわけにいかぬと思うのですよ。だから、こういう点は一体どういうふうに所期の目的が達せられるような手続を進めるかということになるわけです。この法案は、奇妙なことに、土地改良法何条の準用準用ということが三十カ所ぐらい出ておるわけなんですよ。だから、そういうふうにほとんど土地改良法の内容を準用するということであれば、こういう単なる小手先だけの効果の薄い条文だけを列挙しても何にもならぬのじゃないかと思うのですよ。この点の詰めを公団法においては一体どうするかということですね。これを大臣から明らかにしておいてもらいたい。
  126. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 新公団の事業は都道府県の申し出によりまして行なわれることになっておりますし、また、申し出以降の事業開始手続におきましても、地元の都道府県と常時協議し、また、調整を行ないながら地域の取りまとめが行なわれることとなっておりますし、われわれもそういうことのつもりでおります。したがって、このような手続の過梶におきまして、地元の都道府県は、この事業の発意者といたしまして主体的な役割りを持つということでございます。  そこで、あっせん、調停等の事実上の行為を含めて、その申し出にかかる区域内の土地で権利関係の調整がつかないものにつきましても取りまとめを都道府県が行なうことは当然なことでございまして、このような趣旨から、特段の法律上の規定を設ける必要はないと考えておるわけでありますが、運用上の問題といたしまして、都道府県があっせん、調停等に類する行為を積極的に行なうよう指導いたしますとともに、必要に応じて草地利用権制度の活用をはかってまいりたい。こういうことでございまして、都道府県があっせんをして主体者としてやります立場でありますので、ここで取りまとめを都道府県に期待をいたしておるという趣旨でここに書いてあるわけであります。
  127. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点がだいぶ不十分だと思うのですよ。この際土地改良法を引用しますと、事業参加資格者の申請によらない国営並びに都道府県営の土地改良事業というものが、土地改良法の第八十七条にその規定があるわけです。この場合には、地元の参加者の申請は必要はないわけですが、しかし、事業実施する場合においては、国営の場合には農林大臣、都道府県営の場合は当然知事が、その特定の地域における事業参加予定者の同意を完全に取りまとめなければ事業実施ができないということになっているんですよ。しかも、この八十七条の二の行なう、申請によらなくてもいい事業というものはごく限定されておるわけですね。たとえば国有地とか、農地法の四十四条に基づいて国が買収した未墾地であるとか、あるいは農地法施行法第六条に基づく未墾地買収と同等とみなされる土地とか、こういうものに厳格に限定された土地に対して、大臣あるいは都道府県知事が申請によらない事業をやる場合においても、これは完全な同意の取りまとめということが必須条件になるわけです。ですから、知事が発意者であるとしても、結局農林大臣が実施計画を定めて、公団を通じて事業実施を行なわしめる。その場合に公団が事業実施内容というものを公告して、それから事業参加予定者の全員、さらにまた三分の二の同意を取りまとめなければならぬということになっておるわけでありますからして、申し出人は知事であっても、実際にその同意を取りまとめるという担当者は公団ということになるわけですね。だから、公団が取りまとめを進めていく場合において、結局一部の不同意者が出た場合において、申し出人が知事であるから知事の権限であくまでもそれを取りまとめるということは、やはり、立法の趣旨から言ってもそこまではいかないと思うのですよ。ただ、そういう場合には、土地改良法の大事な規定をほとんど準用しておるわけでありますから、それに準じた公団法上の規定というものがなければいかぬと思うのですよ。土地改良法の何条何項というものが三十カ所も載っておりますが、それに類する根拠というものは準用規定の中に全然ないわけですから、この点は手続上の問題として手落ちがあるのではないかということをわれわれとしては考える。われわれは立法府ですから、われわれは法律をつくる側です。法律は皆さん役人がつくるんじゃなくて、われわれ立法府において審議してつくるわけですから、いささかでも手落ちがある場合においては、簡単にオーケーを出すわけにいかぬわけですからね。
  128. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えいたします。  ただいま先生のおっしゃられました土地改良法六条の規定でございますが、この規定は、農用地の造成事業を目的といたします土地改良区の設立に際しましての設立の申請者、これは十五人以上の申請者であることは先生のおっしゃられたとおりでありますが、その申請人が行なう事業参加者の同意等の取りまとめにあたりまして、都道府県知事がこれを側面から援助するために、都道府県にあっせんあるいは調停をこの申請人の方々が依頼をなすった際に、それができるようにした道を開くものでございまして、この規定がなければ、都道府県につきましては、このような援助を法律上依頼することができないという趣旨からこの規定を設けてあるものであるというふうに解しておるわけでございます。  先生が御引用なさいましたところの国県営の土地改良事業につきましては、おっしゃられましたとおりに、申請が出てまいりました場合には、これは相対の関係で同意を取りまとめる段階において、都道府県によるあっせん調停の道が確かに準用されておりまして、第六条の準用があるわけでございますが、一たび国県営の事業として採択されました後におきましては、つまり、土地改良事業計画の変更の段階でございますが、その際は、申請者がございませんので、その事業主体である国、県が事業の円滑な遂行をはかるための措置といたしまして、あっせん調停に類した行為を事実上当然いたすという前提に立ちまして、特に準用いたしておらないということでございます。  先ほど大臣から御答弁を申し上げましたように、このような前提に立ちますれば、この都道府県が主体となりましてこの公団の事業実施に当たってまいるわけでございまして、このような場合には、この土地改良事業計画の変更と同様に、むしろ当然その都道府県がそのあっせんあるいは調停といった事実行為を行なっていくということから、この法律の案の中には六条の準用をいたさなかったという、かような経緯でございます。
  129. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、結局、先ほど大臣から示されました第二十条の「政令で定めるところにより」の規定に基づいて、事前に都道府県知事が農林大臣に対して申し出を行なう事前手続として、政令案というものを用意して、それを実行するという、そういう説明があったわけですが、それを十分強化して、あとで不同意者に対して完全な同意を成立させるということに憂いのないようにするという、そういう意味ですか。松浦君を局長にでもしなかったら、政府委員として答弁する者がいないのですか。
  130. 松浦昭

    ○松浦説明員 御答弁申し上げます。  先生がただいまおっしゃられたとおりでございまして、まず、事前の手続で、政令上、当該地域の地元農民の方々の十分な意向をこの政令の段階の手続で、つまり都道府県の申し入れの際にとることによりまして、地元の意向というものが十分くみ上げられ、かつ、自後の手続にそごがないようにするということを前提にいたしまして、さらにその後当然行なわるべき事実上の行為でありますあっせん調停を都道府県に期待し、かつ、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、さらにこの都道府県のあっぜん調停行為を強力に指導することによりまして遺憾のないようにいたしたい、これがこの法案提出いたしました際の考え方でございます。
  131. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣にお尋ねしますが、いま松浦文書課長が説明したような趣旨でいいですか。これは大臣が理解して、そのとおりだとか、そうでないとか言ってもらわなければ困るのです。
  132. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま御説明申し上げましたような趣旨で政令も考えてやってまいるということでございます。
  133. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私がこの際なぜそういうことを強調するかというと、実は、いまから十年前の三十九年四月に土地改良法の大幅な改正を行なった際にも、いま論議しておる全員の同意を取りまとめるというような問題についても、当時の改正点であったわけであります。それで審議をした結果、採決をして、そのあとに農林水産委員会として六項目の附帯決議を付したわけでありますが、その中にこういう点が強調されておるわけです。ちょっと読んでみますと、「政府は、農用地造成事業の推進をはかるため、事業施行区域内にある農用地外資格者の全員同意が得られるよう都道府県知事のあっせん又は調停を指導促進するとともに必要あるときは、農地法の未墾地買収等の適用を講ずる等の処置をとること。」となっており、いま指摘しました公団法の同意の取りまとめと、基本においては大体通ずるものになっておるわけでありますから、こういう点については、過去における土地改良法あるいは農地法というものは、どういう経過を経て立法府の審査を経て今日に至っておるかというようなことについても、大臣に対しては釈迦に説法ということになるが、特に、農林省の担当者諸氏においても十分そのことを肝に銘じてやってもらわぬと困るわけで、思いつきで政府内閣法制局に法案の策定を依頼して、与党多数に安易に寄りかかって、何でもかんでも通せばいいというものではないと思うのですよ。苦言を呈するようなことになりますが、大臣の所信があればお伺いしておきたいと思います。
  134. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 過去の実績についてお話しがございましたが、私ども、今回は、先ほど来申し上げておりますように、政令をもって地元の意思をきちんとくみ上げるようにいたしたいというのが初めからの念願でございます。
  135. 仮谷忠男

    仮谷委員長 芳賀君に申し上げます。畜産局長が見えましたから、質問を続けてください。
  136. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、この開発事業を進める場合においては、地域内における換地計画、その事業あるいはまた交換分合計画実施等が当然必要になるわけでありますが、法案では公団自身がこれを行なうというふうに解釈されるわけでありますが、大臣も御承知のとおり、土地改良地域内においても換地計画、交換分合計画というものは非常に複雑多様な内容を持っておるものでありますから、単純に公団が行なうとしても、これは実施困難の場合が出てくるんじゃないかと思うわけです。ですから、そういうような場合は、この換地あるいは交換分合計画を完全に実施するためには一体どういうような実施体制でこれを成功させるかということについても、あらかじめ明らかにしてもらいたいと思います。
  137. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういう場合に、関係農業委員会と市町村等が中心となって、農家の考え方の把握をして、部落懇談会等において関係農家の意見交換等が行なわれるように、その運用面で配慮してまいる考え方でございますが、たとえば換地、交換分合事業の一部を事務委託するといったようなことをやってまいりたいと思っております。
  138. 芳賀貢

    ○芳賀委員 事務委託する場合は、どこへ委託をする考えなんですか。
  139. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは農業委員会とか市町村にしたいと思っております。
  140. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、今後の運用上の問題について二、三尋ねておきたいと思いますが、たとえば昭和四十五年の農地法改正の場合に、農地保有合理化法人の規定を農地法第二条の中にうたったわけでありますが、今度の公団事業等をやる場合においても、その対象になる土地が民有の未墾地であるというような場合においては、現在の制度の運用というものは、農地法の未墾地買収の規定を眠らしておいて、相対売買方式で対象地を確保して事業を進めるということになっておるわけですが、今後広大な未墾地の開発あるいは草地の造成等をするような場合においては、現在ある農地法上の未墾地買収の規定、あるいはまた農地法の七十五条の二に規定されておる草地利用権の設定に基づいた農用地の造成等については、十分にこの農地保有合理化法人の機能等を活用する。合理化法人が十分機能を発揮できるような、そういう体制というものを政府においても具体的に確立する必要があるんじゃないかというふうに考えるわけですが、こういう点が今度の公団法には全然顔を出していないわけですね。非常に遺憾なことでありますが、今後の運営上の問題として、農林大臣はどのように考えておるか、伺いたい。
  141. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 本公団をつくりますときの大事な問題だと思いますが、これは、いまお話しの農地保有合理化法人の農地保有合理化促進事業を強化してまいるつもりでありますが、農地法の未墾地買収の制度は、ただいまもお話しがございましたように、最近の社会情勢のもとでは、この制度を過去と同様に運用することは問題があると考えられますので、用地の取得につきましては、市町村等の地元の自主的な調達によることといたしたいと考えておりますし、また、草地利用権の制度につきましては必要に応じてこれを活用してまいりたい、こういう考えでございます。
  142. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいことは、実施計画というものは、告示して、この事業参加者の全員の同意を求めることになるわけですが、それと同時に大事なことは、その地域における営農上、農業を経営する上の営農類型等についても、その地域に最も適合する営農類型、あるいは営農計画というものをあらかじめ策定して、そういうものに対しても事業参加者が同意して、これならもうだいじょうぶだ、やりましょうというような、そういう事前の計画設計というものを明らかにして、そうして全面的な同意、協力を求める必要があるんじゃないかと思うわけですが、その点はいかがですか。
  143. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまお話しのことを、そういう方向で進めてまいるつもりでおります。
  144. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、この事業を実行する場合には、ほとんど財政投融資計画に依存するということになっていますね。資金の確保あるいは公団事業として予定されておる家畜の売り渡し、あるいは機械の売り渡し等の資金についても、ほとんど財投資金を公団が導入して運用するということになっておるわけですが、この財投資金の導入ということについては、財投から公団までは、他の公団、公庫等においても当然そういうことをやっておるわけですが、公団から下ですね。たとえば家畜導入をする、機械の導入をして売り渡しを行なうというような事業については、個々の農家に対して財投資金を直接流すということは、これは制度上できがたいと私は考えておるわけです。そういう点については、この財投の運用というものについて十分な配慮がなければならぬわけですが、その点はいかがですか。
  145. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これはもちろん直接流れるわけではございませんで、公団が財投資金を受けて、公団の責任においてこれをやるわけで、そのとおりでございます。
  146. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、公団が財投資金を確保して、それから下は、公団の運用資金として、融資の形で機械導入とかあるいは家畜の売り渡しをするのか。運用の規定によると、これは三年据え置き、二十年償還で売り渡した代金というものを回収するということになっておるが、融資の形でこれを貸し付けして回収するのか、現物を売り渡した代金というものを分割で回収するというのか、その辺が先般の局長答弁でも全然明らかになっていないわけなんです。
  147. 大山一生

    ○大山政府委員 家畜なり農機具等の種類なりは、農協なりその他の経験者の意見を十分に聞いてやられるわけでございますけれども、農家においてそういう機械なり家畜を買いたいということでございますならば、それは融資のかっこうはとれません。公団が買った、そして売ったという経理上の手続の中において問題を処理してまいる、こういうかっこうになると思っております。
  148. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうも局長の説明というのはわかりがたいんですよ。  それじゃ、たとえば業務方法書等にこれは明らかにするということですか。答弁だけじゃわからぬです。当然これは業務方法書を策定して……。
  149. 大山一生

    ○大山政府委員 業務方法書に明確にいたします。
  150. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣、それでいいですか。財投資金の運用については、細目を業務方法書の中で明確にするということでいいですか。
  151. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいま政府委員からお答えいたしましたとおりであります。
  152. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その場合の貸し付け条件ですね。これは目下検討中ということになっておるので、たとえば本日おそくなってもこれの結論を出すということになれは、やはりそれまでに——財投を家畜あるいは機械購入の資金として貸し付けるというような場合においても、償還年限あるいは利率等についての条件というものは、法案審議の中ではあらかじめ明らかになっていないと、あとで考えてできるだけ不利にならぬようにしますじゃ、これは済まぬわけですね。
  153. 大山一生

    ○大山政府委員 いまの先生の御質問でございますけれども、結局は、財投の借り入れ条件というものと一致するかっこうで地元から償還をさせてもらう、こういうかっこうになるわけでございます。したがいまして、財投の借り入れというもの、そしてそれの償還条件というもの、こういうことによって左右されるわけでございますけれども、償還条件は、償還期間を極力長期のものにするようにいたしたいということで、現在のところ据え置き期間三年を含みます二十年の元利均等年賦ということを考えておる次第でございます。
  154. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは、財投の原資のコストが変われば、公団の運用資金のコスト、貸し付け条件も変わるという、そういう意味なんですか。
  155. 大山一生

    ○大山政府委員 財投の借り入れ金利でございますけれども、これは御存じのように、最近非常にフラクチュエートしているということでございます。そこで、この公団におきましても、他の事業団なり公団と同じように、借り入れ時点の水準できまるということに相なるわけでございますから、したがいまして、できるだけ効率的な資金繰りをして、資金コストの実質的低下ということをはかっていかなければならぬと思いますけれども、農民からの金利というかっこうにおきましては、それらの金利の加重平均ということになるわけでございます。
  156. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣にお尋ねしますが、現在各種の農林の融資制度というものがあるわけですけれども、それは、目的とするところは、農林水産業の持つ経済的あるいは所得上の不利益性を融資政策で補完するために、できるだけ低金利の、返還条件の緩和された、そういう資金というものが制度資金として運用されているわけです。ですから、たとえば財投の原資がコスト上金利引き上げ等で変化を示しても、農業者に貸し付け資金としての金利あるいは償還条件等については、それをあまり変動させないということが農林水産についての制度資金の目的でなければならぬと私は思うわけです。そういう点を全然考慮に入れないで、たとえば財投の一番の原資である郵便貯金から——ことしの財投の七兆九千億のうち三億円がこれは郵便貯金ですからね。厚生年金から一兆五千億、それから農民年金、国民年金から大体四千億程度でしょう。それから、簡易保険積み立て金から一兆円。昨年、貯金金利等は一年間に四回金利引き上げ等が行なわれておるわけです。こういうものは、悪性インフレの時代ですから、貯金の目減りがしないようにするためには、金利で調整するということはやはり当然だと思いますが、それを原資にした農林金融というものは、貸し付け条件の中で、そのたびごとに農民に対する金利負担を重くするというようなことであってはならぬと思うのですね。ですから、この点を十分政策的に調整して、固定した一定の貸し付け条件の中で今後も運用する、その分については政府が行政的に補完をするというようなことでいくべきだと思いますが、その点はいかがですか。
  157. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 趣旨はお説のとおりだと思います。私どももなるべく低利がいいのでありますが、ただいま財投の持っております資金コストが御存じのように非常に高くなっておりますので、一率に貸し出しは七分五厘に引き上げた次第であります。したがって、右へならえということになりましたので、やむを得ないことだと思っておりますが、緊急にいたしますようなもの、たとえば昨年やりました飼料対策等のようなものにつきましては特段の措置をやりますけれども、今回のようなときにはやはりやむを得ないのじゃないかというふうに思っております。
  158. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、この公団法が成立した場合においては、従来の機械公団の役員職員の全員を新公団に引き継ぐということに法律上なっておるので、この点にはいささかも疑義を持つわけではありませんが、この際明らかにしていただきたいことは、今度は、いままでの機械公団の全職員が新公団の職員ということに位置づけされるわけでありますから、その場合の、引き継いだ職員の今後の身分の保障というようなことについては心配のないようにしてもらわなければならぬと思うわけです。  それから、先般の審議の中においても出たことですが、機械公団の職員の中で、百五十五名の国の公務員に準ずる職員の諸君がまだ定員外の職員としての取り扱いを受けておるわけです。ですから、これは、新公団においては、定員内繰り入れの措置をすみやかに実現する必要があると思うわけです。この点については、先般の大山局長に対する質疑の中におきましても、一年に全面的にというわけにいかぬとしても、機械公団の存続期間が「当分の間」であって、その「当分の間」というのはおおよそ三年だということも明からにされておるわけでありますからして、長くても三年ぐらいをめどにして、この百五十五名の定員外の定員内繰り入れの問題等の解決をはかるべきではないかというふうに考えるわけです。  もう一つは、他の公団職員との間において賃金上の格差が相当顕著な点があるわけでありますからして、これらについても、国の機関に準ずる特殊法人であるとしても、各公団間における賃金の格差等については、今後鋭意すみやかに是正する必要があるのじゃないかと思うのだが、この点については、農林大臣が出席された際に当委員会において明らかにしてもらうことになっておるので、この際その点を明確にしておいてもらいたいと思います。
  159. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 開発機械公団の役員は継承いたしませんけれども、職員は継承いたすというたてまえであります。  それから、職員の待遇につきましては、これはいままでいろいろな歴史的な事柄があるかもしれませんけれども、やはり、同じ場所で働くということでもありますし、逐次改善をしていくようにいたすことは当然なことだということは、先ほど竹内さんにお答えいたしたとおりであります。  定員外職員のことにつきましては、私はまだよく事情を聞いておりませんけれども、これらにつきましても事務当局においては十分考慮いたしておることだと思いますが、これらの制度全体としての定員外職員の取り扱いとも関連があると思いますので、そういうことについて、私どもといたしましては、新しい職員のためも考えて十分考慮してまいりたいと思っております。
  160. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの大臣の説明でおおよその点は了解できるわけですが、これ大事な問題ですから、直接担当された大山局長から、いま大臣の言われた発言内容を具体的に解明しておいてもらいたい。
  161. 大山一生

    ○大山政府委員 二つの問題がございます。  一つは給与の問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、職種が、業務が転換する中におきまして、その改善につとめてまいりたいということでございます。  それから、定員化の問題でございますけれども、これは三年をめどといたしまして従来業務を継続する中におきまして、研修、訓練等によりまして職種の計画的変換につとめてまいります。また、一方、新規事業につきましては、「当分の間」の終了時点、つまり、三年をめどといたしております。「当分の間」の終了時点を目途といたしまして全計地区なりあるいは精査地区というものの事業化を進めまして、事業量拡大につとめますとともだ、その新規事業は原則として正職員で対応するということを旨といたしまして、事業量の増大に見合って、新規事業に必要な定員数を増加するようにつとめてまいります。この過程の中におきまして、準職員で将来とも新事業に継続して従事することが見込まれる職員については定員内職員とするようつとめてまいる、こういうことでございます。
  162. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に一点お伺いしますが、今度の公団法による役員人事の点なんです。従来の機械公団に比べますと、まず、副理事長を新たに一名設ける、それから監事を、従来一名のものを二名に増員する、それから、理事については従前どおり四名でありますが、そのかわり、現在の機械公団の理事のうちから二名を当分の間残任させる、そういうことが役員の規定の中に出ておるのでありますが、われわれが検討いたしました結果、副理事長というものを新たに設ける必要はないんではないか、それから理事は四名であれば、機械公団の事業を全面的に引き継ぐわけだからして、新しい四名の理事の中で十分任務が消化できるんじゃないか、したがって、当分の間さらに二名というのは必要がないのではないか、こういうことを思うわけです。それから監事の点については、一名制がいいか複数がいいかということは、これは理論的に非常に重要な点でありますからして、あえて一名がいいということを固執するわけではありませんが、副理事長とか、理事を当分の間さらに二名というような点については、すんなり同意しかねる点があるわけです。特にそういう必要があるという理由があれば、任命権者である大臣から明確にしてもらいたいわけです。
  163. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 新公団におきましては、機械公団に比べまして、副理事長一名、監事一名、暫定的な理事二人を増員することといたしておりますが、副理事長を設けることといたしましたのは、他の公団を見ましても、副理事長を置いているところが一般的でありますことと、また、新公団事業は、農家経営に直接かかわりのある度合いがきわめて強うございまして、このため、特に責任ある体制を必要とするとともに、関係権利者をはじめ、関係地方公共団体との多くの調整を要すること、また、新事業内容を分担いたします各担当理事の横の調整も必要でありますので、やはり、副理事長というものを置いて総括させるほうがいいんではないかということであります。  また、監事を二人以内といたしましたのは、新事業は地元の実態もいろいろでありますし、仕事の数もなかなかいろいろ多岐にわたっております。そういう事業費の調達と、それから回収も複雑でありますこと、それから複数制のほうが相互にチェックが働いて、業務監査の適正を期し得ることになるではないかということ、こういう考え方であります。なお、当分の間は、監事のうち一名は非常勤といたすことを考えてまいりたいと思っております。
  164. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、私は、機械公団発足以来今日までの歴代の理事長あるいは理事、監事の諸君の個々の評価とか批判をする考えはありませんが、開発機械公団にしても、今度の新公団にしても、公団の事業目的というものは明らかにされておるわけですね。ですから、その事業を十分に達成するということになれば、それに最も適合する理事長あるいは役員の選任がされなければならぬと思うわけです。ところが、いままでは、たとえば理事長にしても、現在三代目でありますが、初代から今日まで、農林行政あるいは農業開発に何ら関係のない無縁な人物が理事長に常に就任しておるということになれば、いま大臣が言われたところの、事業を完全に遂行するために最もふさわしい人物の選定ということになっていないですね。こういう点があるから、天下り人事とか、あるいは与党内の、自民党内の派閥人事というようなことが起こり、牢固たる官僚機構の中においての特権官僚がそういう地位を占有するというような弊害が随所に見られるわけであります。ですから、それはどうしても必要な最小限度の大事なポストであるとするならば、今度の新公団の事業というものを国民の期待にこたえて完全に運営するためには理事長も要るし、副理事長も要るし、あるいは理事、監事もどうだというような、そういう一貫した方針に基づいて、新たに農林大臣が任命される理事長その他についても人選すべきではないかと思うのですよ。単に天下りだけやればいいというものじゃないのですね。  部内からの登用論も出ておるときでありますから、そういう点については、任命者である大臣自身から聞かなければ安心ができないところですから、だれを予定しておるとまでは聞きませんけれども、人選上の根本にかかわる問題については、この際できるだけ明確にしておいてもらいたいと思います。
  165. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 人事につきましては、まだ何も考えておりませんけれども、諸方面の御意見を十分に承りまして、この公団が円満に進行できてまいりますようなよい人事をいたしたいと思っております。
  166. 芳賀貢

    ○芳賀委員 以上で、公団法に関する農林大臣に対する質問を終わります。
  167. 仮谷忠男

    仮谷委員長 諫山博君。
  168. 諫山博

    ○諫山委員 この法律に基づいてつくられる団地を畜産農民が利用するかどうかということは、農民にとっては非常に重大な問題です。なぜならば、この団地に入るためには、膨大な資金と膨大な借金が伴うことが避けられないからです。   〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席〕  そこで、私が農林省からいただいた「事業参加者の償還の可能性について」という文書がございますが、これを見ると、根室地域での酪農経営の入植経営状況は、牧草地五十ヘクタール、成牛五十頭、そして、農家負担は三千二百四十万円という規模の農家で、年償還額が二百九十万円、農家所得が六百二十万円、償還差し引き可処分所得が三百三十万円。こういう数字が試算されているわけですが、これは入植後何年ごろの計算になるのでしょうか。
  169. 大山一生

    ○大山政府委員 入植いたしまして五年ないし七年たったであろうときのことを想定しておるわけであります。
  170. 諫山博

    ○諫山委員 阿蘇・久住飯田地域についても、標準類型の畜産農家について同じような試算が発表されております。これを見ると、何かバラ色の夢が描かれているような感じを受けるわけですが、そこで、計算をするにあたって、たとえば飼料価格が五年後にどうなるのか、七年後にどうなるのか、どういう計算をされたのでしょうか。
  171. 大山一生

    ○大山政府委員 われわれが一つ経営というもの、営農計画というものをつくりまして、ものを判断するときにおきまして、将来の問題というものは非常にわかりにくいわけでございますが、われわれのほうの営農計画のつくり方といたしましては、最近時点の実績ということによって行なっておるわけでございます。いま申されました根室あるいは阿蘇、これは四十七年の十月から四十八年の九月までの間の実績をベースにしているわけでございます。
  172. 諫山博

    ○諫山委員 実は、農林省が試算の基準にされた四十八年九月以後に急速に飼料価格が暴騰したわけですね。そうすると、こういう見通しは立たなかったのでしょうか。
  173. 大山一生

    ○大山政府委員 われわれが営農計画をつくる場合におきましては、将来どうなるであろうかということは、これは確かに問題であると思います。しかしながら、将来の問題というものはあくまでも予測のベースになりますので、その時点におきます事態ということをもとにしてやらざるを得ないわけでございます。特に、最近のような経済の変動期ということでありますだけに、将来の見通しということは、こういうふうな営農計画を策定するという点から言うと非常にむずかしい問題があるというふうに考えております。
  174. 諫山博

    ○諫山委員 少なくとも、私がいただいた数字はバラ色の数字になっていると思いますが、この数字の中には、現在の異常な飼料暴騰は考慮に入れられていないというふうに聞いていいですか。
  175. 大山一生

    ○大山政府委員 先ほども申し上げましたところの、四十七年の十月から四十八年の九月までの間の数字でございます。
  176. 諫山博

    ○諫山委員 政府は、現在の物価高を狂乱状態だと言っておりますが、飼料の値上がりというのは、一般的な物価値上がりに比べても、まさに狂乱怒濤というような状態です。そして、この異常な飼料値上がりが四十八年九月以後にさらに激化している。さらに将来においても激化するであろうということは農林省も否定されていないと思います。それを単純に四十七年十月からの平均をとったと言うのでは、将来の見通しが正しくないどころか、むしろ見通しが狂う可能性が非常に強いという気がしますが、いかがでしょうか。
  177. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 飼料価格が昨年の九月、ことしの二月以降大幅に値上がりしておりますことはお説のとおりでございますが、われわれといたしましては、ちょうどいま四十九年度の牛乳なり豚肉の政策価格あるいは鶏卵の安定基準価格を、これは政府が直接きめるものではございませんけれども、協力してきめることにいたしておりますが、それらの価格を決定するに際しましては、ただいま御指摘のございましたような配合飼料を中心といたします飼料価格の値上がり、その他物価等の値上がりも適正に織り込んだ上で決定いたしたいということを考えておりますので、先の見通しは、先ほど構造改善局長から申し上げたように、的確な見通しは困難かと思いますけれども、生産費の値上がり分は価格あるいは生産の合理化等によって極力吸収していくように努力をしてまいりたいと思っております。
  178. 諫山博

    ○諫山委員 畜産農民が入植するかどうかということは、実際死活をきめるような深刻な問題です。その場合に、昭和四十八年九月から現在に至るまでの異常な飼料価格の暴騰が農林省の青写真の中に入っていない。さらに、これからむしろ急速に予想される飼料価格の暴騰もこの青写真の中に入っていないということになりますと、はたして農林省が考えているように借金を返すことができるのか、農家の所得が向上するのかということが疑問になってきます。そして、この計画どおりいかなかった場合には、その責任はすべて農民が負わされる。農林省のほうは責任をとろうとしないというのが現在までのこの種の事業の共通したやり方だと思います。もし農林省の予測が狂った場合に、農民だけに犠牲をかぶせない、政府が何か責任をとるというようなことは考えておられるのでしょうか、農林大臣にお聞きします。
  179. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまお話しのございました四十八年度のお話しは、これは、わが国の事情というよりも国際的な事情であることは御存じのとおりであります。つまり、一昨年はアメリカが非常に天候不順であった。同時に、いままではアメリカからあまり大口の買い付けもしなかったソビエト・ロシア、それから中国大陸、こういう突然の大手の買いがあらわれて、ソビエトにおいては大体二千万トン、中国大陸では米国とカナダを合わせて、小麦だけでも七百五十万トン、従来予想もつかなかった大手が突然あらわれてまいりましたために、われわれの予約をいたしておりました麦類等の確保にもどうかなあと思われるほどの状況になってまいった。幸いにして、昨年は、新聞の報道するところによっても、アメリカ合衆国は史上まれに見る豊作だと言っております。数日前私がソビエト大使館に招かれていろいろな話をしましたときにも、本国からの報道によれば昨年は非常な大豊作であった、今年もあまり異常は見られない、と、こういうお話しでありました。私どもの見るところでは、石油その他の事情でアメリカから買い付けをいたしますもののフレートが非常に上がってまいりましたことと、円安のドル高というようなことでの為替関係等も取引に大きな影響もありまして、輸入物資が非常に高騰した。しかし、これからこういう状態でいつまでも続くというものではないと思います。まあ、商売人の話によれば弱含みであるとも言われております。しかし、何にいたしましても、私どもは現実に即して計画を立てなければなりませんが、やはり若干の高騰はやむを得ないのではないかと思っておりますが、その品物の確保をするということが一番大事で、その次は価格でありますが、品物の確保につきましては、私どもはすべて計画を完了いたしておりますので、そういう点は不安を感じませんが、そこで、いまの農用地開発公団の仕事をやっていただく方々も、やはり、計画いたします時期にそろばんをとっていろいろ御検討なさるわけでありますので、いま御指摘のように、将来飼料の高騰等の場合に一体どうなるか、これはもちろん事業をやっていらっしゃる方々、御自分たちもいろいろな経過を見ながらおやりになるでありましょうが、現在の乳価、豚価等をきめますにあたりましても、飼料作物の輸入品が非常に高騰しておるということと、それからまた、そういう高いものを買ってつくられる作物がどうしてもコストが上がっているのは当然なことでありますので、われわれといたしましても、そういう価格決定にあたりましては、そういう経済事情を織り込んできめることは当然であります。したがって、そういうときにはそういうときに応じた措置を講じて、日本で大事な畜産関係等につきましては、これはもう再生産を確保できるような状態にやってまいるということは当然なことでありまして、先行きにつきましては、私どもは、そういう考え方で生産を増強していただく方に大いに御尽力願いたいと思って計画を進めようといたしておるわけであります。
  180. 諫山博

    ○諫山委員 現在の畜産危機の主たる原因が外国の飼料の値上がりにあることは私も否定いたしません。問題は、外国の飼料価格が上がればなぜ日本の畜産農民が深刻な立場に立たされるかということです。しかし、私はここで飼料問題に深入りしようとは思いません。ただ、政府のこの計画がうまくいかなかった場合には、残るのはここに入植した人の借金だけだというような事態が出ることを最もおそれているわけです。そして、この点については、たとえば畜産物の価格で云々というようなこともありましたが、現在までのやり方を見ていますと、とてもそれだけで安心はできないという気が強くします。なぜならば、ミカン農民がどのくらい深刻な事態におちいったか、あるいは干拓地なんかに入ってどのくらい借金で困っている人がおるかというような実情があるからです。だから、まずはっきりしなければならないのは、農民にバラ色の夢だけを描いてやれやれとすすめるんじゃなくて、やはり、うまくいかなかった場合には政府が何らかの形で責任をとる、補償するというようなことがないと、とても農家は安心できないと思うのです。そういうことが考えられているのかと伺っているのですが、いかがでしょうか。
  181. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもはバラ色の絵を描いてすすめておるわけではありません。机上で空論をいたしており、いろいろ筆で書いている人もありますけれども、それよりも、現実に農業をやっていらっしゃる方、酪農をやっていらっしゃる方のほうが切実に、御自分のことでありますので、十分な検討をしておかかりになるはずであります。そういう御決意のない者はお入りになるはずはないのでありまして、そういうことのためには、私どもとしてはこまかい手配をして御心配をしてあげることは当然なことでありますが、たとえば八郎潟の今日までの入植者をみてみましょう。一人もあそこで不満を述べて脱退する人はありません。私どもはそういうことを考えてみまして、むずかしい酪農でありますから、できるだけのことをいたしてこの計画を一緒になって考えてあげる必要はございますけれども、御自分がおやりになる仕事でありまするし、先ほど来ここで質疑応答がありますように、県当局や市町村長とも十分な連絡をとった上で計画を進めてまいるのでありますから、十分に御納得のいくように研究を進められて、そして参加していただくことを希望いたすわけであります。
  182. 諫山博

    ○諫山委員 八郎潟の実情については一番実情を知っている秋田県選出の中川議員からせき払いの声が聞こえたんですが、ここではいま農民組合が急速につくられて、いまの状態を改善するという戦いが始まっております。しかし、これは別としまして、この団地に商社系あるいは大企業が入ってくればたいへんだというような声が聞かれるわけですが、これを規制する措置はどういう方法で考慮されていましょうか。
  183. 大山一生

    ○大山政府委員 われわれは一般企業のこういう方々をこの事業事業参加者とするつもりはございません。これは先般来申し上げているとおりでございます。  そこで、先生の言われますのは、今後この開発事業をやる中で、あるいはやったあとでそういう企業が乗っ取りに入ってきやせぬかということだと思われますが、その点につきましては、われわれといたしましては、農地法の厳正な運用あるいは農振法によりまして農用地区域に入れるといったようなことをもって——あるいはまた、どうしても転用される場合においては特別徴収金というような制度もございます。いずれにいたしましても、それらの制度をもって、そういう一般企業の問題は——一般企業といいますか、農業者以外の方が入ってくることは阻止してまいりたいと思っておりますが、実は、今後、農用地についての開発規制といったようなことを含みます農振法の改正も、そういったことを阻止することを可能にする一つの手段というふうに考えて今国会提出申し上げているような次第でございます。  いずれにいたしましても公団事業といたしまして実施計画を作成するまでには、その区域は農用地区域の中に編入させる手続をとって、そうして同意の申請を求めるといいますか、県からの届け出を求める、こういうふうなことで進めてまいりたい、そして、これらのことを通じまして、いわばそういう外部的資本の導入を阻止してまいる、こういうことにいたしたいと思っております。
  184. 諫山博

    ○諫山委員 この前の委員会で、私たちの党の津川委員が、阿蘇・久住飯田地域におけるところの、三井系の電気化学の会社が畜産のために土地を相当広範囲に買い占めたという問題を指摘しました。そして、大企業、大商社が畜産に手を出せば、ブロイラーに典型的にあらわれているように、資本主義の法則に従って、普通の農家が太刀打ちできなくなることはもう当然だと思います。そこで、そういう人たちはこの団地には入れないのだという説明がありましたが、それは法律の中にどういうふうに書かれているんでしょうか。
  185. 大山一生

    ○大山政府委員 事業実施参加者というものにつきましては政令で定めるわけでございますが、その政令で定める中におきまして、合理化生産法人以外の法人は入れるつもりはございません。
  186. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、法律の中にはいま説明された趣旨は盛り込まれていないけれども、政令の中に説明されたとおりのことを記載するつもりだという趣旨ですか。
  187. 大山一生

    ○大山政府委員 法律の上から、株式会社を除くというようなことは書いてございません。
  188. 諫山博

    ○諫山委員 後半の部分はどうですか。さっき説明したとおりのことを政令に盛り込むつもりかという点は……。
  189. 大山一生

    ○大山政府委員 生産法人に限る旨を書くつもりでございます。
  190. 諫山博

    ○諫山委員 生産法人に限るという場合の生産法人というのは、具体的にはどういうものをさすんですか。
  191. 大山一生

    ○大山政府委員 農地法で言う生産法人でございます。
  192. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、たとえば農民が入植した。ところが、飼料がどんどん値上がりしてとてもやっていけない、これを手離したいというような問題が起こった場合にはどうすればいいのですか。
  193. 大山一生

    ○大山政府委員 二つの方法があると思います。一つは、合理化法人がその土地を買って、他に、希望する人にそれを売る場合。それから、もしかその方が農業者年金の対象になっている方である場合においては、農業者年金基金を通じて他の農業者年金の被保険者に一括譲り渡す場合。こういうふうなかっこうにおきまして、これらの制度を通じて他の農民に移す、逆に言うと、やめる人はそういうことを通じてやめていかれる、こういうかっこうになると思っております。
  194. 諫山博

    ○諫山委員 その場合に、公団が買い上げるというようなときの条件というものはきまっているのですか。
  195. 大山一生

    ○大山政府委員 私が申し上げましたのは、合理化法人あるいは基金の金というかっこうにおいてやるということでございまして、この公団を経由してその譲渡をするということは考えておりません。ただ、公団との間の債権債務は、その新たに承継する人に移っていく、こういうかっこうでございます。
  196. 諫山博

    ○諫山委員 それから、標準類型ということばが農林省で使われていますが、この標準類型に基づいていろいろな施設はつくられるのでしょうか。
  197. 大山一生

    ○大山政府委員 標準類型という、営農の類型でございますが、こういうことを地元におきまして実施計画なりをつくる場合に置き、あるいは、その場合の精査段階におきましてこういうふうな類型ということを一つの参考にいたしまして、地元民の意向を参酌してそこに決定してまいる、こういうことでございますので、その類型でなければならぬということはございません。
  198. 諫山博

    ○諫山委員 たとえば標準類型として、根室地域では牧草地五十ヘクタール、成牛五十頭というようなことが記載されているのですが、この半分ぐらいなら自分でもやれるというような場合には、半分ぐらいでも何らの支障なく入れるのですか。
  199. 大山一生

    ○大山政府委員 先般の質疑の際にも申し上げたわけでございますけれども、現在根室中部として公団事業で考えておりますのは、酪農入植の場合には五十ヘクタールずつ配分したいということでございます。ただ、その五十ヘクタールの配分された土地を一挙に五十ヘクタール利用するか、あるいは三十ヘクタール程度をまず利用していくか、それは個人の自由ということもあり得ると思っております。
  200. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、二十ヘクタールだけ買い受けたいといっても、それは無理なんですか。
  201. 大山一生

    ○大山政府委員 これは、場所によっていろいろ事情があると思いますけれども、根室の場合でございますと五十ヘクタールずつ配分したいというふうに考えておりますが、たとえば内地のところでございまして、公共牧野的な利用のしかたをするというようなところでは、零細な土地の供給を求めるというような方は、草資源との関係においてはそういうかっこうで利用してもらわねばならぬ場合もあり得るかと思います。
  202. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、どういう規模の農民でも入れるといいますが、根室地域については、入る人は五十ヘクタールの土地を入手しなければならないとなれば、結果的には標準類型の農家でないと入れないことになるのじゃないですか。
  203. 大山一生

    ○大山政府委員 入植の場合、いま申し上げましたように、五十ヘクタールというふうな配分をいたしますけれども、増反の場合でございますと、たとえば現在の二十五ヘクタールのところをあと二十ヘクタールで四十五ヘクタールにするというような、二十ヘクタール分だけ増反というかっこうでふやすということは可能でございます。
  204. 諫山博

    ○諫山委員 入植の場合はどうですか。
  205. 大山一生

    ○大山政府委員 入植の場合においては、現在、五十ヘクタールずつ配分するというふうにきめております。
  206. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、入植する場合に、農家の規模に差はつけてないと言ってみたところで、それは詭弁じゃないですか。五十ヘクタール買い受けて、牛を十頭しか養わないというのでは経営が成り立つはずがありませんから、やはり、入植しようとすれば、根室地域ではどうしても牛を五十頭やっていかないと、政府計算による採算は合わないということになるのでしょう。
  207. 大山一生

    ○大山政府委員 あそこの草の生産状況といいますか、生産力等から言えば、五十ヘクタールで五十頭というのが最も適当な規模であるというふうにわれわれは考えているわけでございます。先ほど申し上げましたのは五十ヘクタールだけれども、すぐに五十ヘクタールやらねばならぬことを義務づけるのかという意味であるならば、それを義務づけているわけではございませんということを申し上げたにすぎないわけでございます。
  208. 諫山博

    ○諫山委員 もちろん、五十ヘクタールの土地を買ったから五十ヘクタール全部使わなければならないという義務はないでしょう。しかし、全部使わなければ経営がやっていけないことは明らかです。だとすれば、入植の規模に大小の差はつけていませんというような言い方はやめたほうがいいと思うのですが、どうですか。
  209. 大山一生

    ○大山政府委員 もしもそういうふうに受け取られたとしたら、訂正いたします。いずれにいたしましても、五十ヘクタールずつ配分するということでございます。
  210. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、この五十ヘクタール、成牛五十頭というのは、根室地域で現に行なわれている畜産規模から見たら相当大きなほうでしょう。
  211. 大山一生

    ○大山政府委員 現在の根室地区は、平均してたしか二十五ヘクタールぐらいであったと思っております。
  212. 諫山博

    ○諫山委員 何しろ、ここに入るためには三千二百四十万円の金が要るそうですから、相当大規模な畜産農家だけを対象にした計画だというふうに理解されるわけですが、それでいいですか。
  213. 大山一生

    ○大山政府委員 現在、根室の平均いたしまして二十五ヘクタールのところの方々が、いわば間引きといいますか、新地域に入植いたしますので、平均的な規模が五十ヘクタールというふうに考えております。
  214. 諫山博

    ○諫山委員 そうしたら、さっき私が言いましたように、土地は二十ヘクタールでいいというような人は、これには事実上入れないということですね。
  215. 大山一生

    ○大山政府委員 そのとおりでございます。
  216. 諫山博

    ○諫山委員 それならそのとおり宣伝したほうがいいと思いますよ。規模に制限はないというよう言ない方をすれば、少しでも土地を分けてもらって、小規模な入植でも可能なように聞こえますからね。  そこで、別な問題ですが、昭和四十九年度の予算を見て、私が非常に驚いたことの一つは、農用地開発事業費が減っているということです。たとえば昭和四十八年度の農地開発予算は四百三十九億円、四十九年度は四百四億円、三十五億円の減です。草地開発については、四十八年度が百四十六億円、四十九年度が百四十億円、絶対額において六億円の減少です。草地開発とか農地開発ということがことばではいろいろ言われますが、予算の面では伸びが少なくなるどころか、実際に減少するというのは、政府のかけ声とはだいぶ違うように見えるのですが、どうしてこういうことになったのでしょうか。
  217. 大山一生

    ○大山政府委員 御存じのように、四十九年度の公共事業につきましては、総需要抑制ということから、抑制を余儀なくされたわけでございます。そして、土地基盤整備全体といたしましては一〇〇・九%ということに相なったわけでございますが、その中で、たとえば農道でありますとか、畑振でありますとか、圃場整備あるいは総合モデルといったようなことに重点を志向したわけでございますけれども、大型プロジェクトということはそういうこととも関係があり、また、公共事業抑制というかっこうから前年よりも下回ったということに相なったわけでございます。ただ、したがいまして、そういうふうなことしの情勢下にございますので、ことしの予算といたしましては、農用地開発につきましても、たとえば新規地区の採択は、長期的展望に立って可能な限り採択するというようなことをいたしておりますし、また、制度面においても、こういった公団というような制度をつくりまして、将来の長期的な展望に立ってことしの予算に対処したということに相なった次第でございます。
  218. 諫山博

    ○諫山委員 大臣に質問しますが、公共事業費の抑制と言いますが、防衛予算はことし一兆円を突破いたしました。国鉄の新幹線あるいは高速自動車道の予算というのは、やはり非常に大きな勢いでふえております。ところが、農地開発とか草地開発が絶対額において減少するというのは、どう考えても、農林省がこういう事業を本気に前進させようとしていないことのあらわれだというふうにしか受け取れませんが、そうじゃなかったのでしょうか。大臣、いかがですか。
  219. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 総需要抑制というのは、至上命令として、ただいまの社会で物価を安定し、インフレマインドを抑止するということが何よりも重大な必要なことであるという方針に基づいて四十九年度予算を編成したわけでありますが、その中で、やはり基礎資材等を一番多く使う公共関係にメスを入れた、こういうことであります。そのことはよく御理解できると思いますが、しかし、私どもの関係の農業につきましても、やはり一応そういうことの影響を受けて、基盤整備等について、長期計画につきましても伸びが例年より低かった。しかし、十年計画でありますので、十年計画、十三兆円という計画のもとに、ときには伸縮があるかもしれませんけれども、われわれは十年間の間に所期の長期土地改良計画を完成して、そして、予定どおりの農業の自給度を高めてまいりたい、こういうことでありますので、たとえばいま申し上げました土地改良、公共、それから食管の繰り入れ、これを二つ合わせまして、全体の農林省予算からこの二つを引きますと、前年対比三二・一%だけ増加されております。これは政府が農業生産に対して、こういう時局であるにもかかわらずかなり力を入れておるということでありまして、私どもは、土地改良が先ほどのお話しのようなことであおりを食いましたことは残念ではありますけれども、やはり、長期の計画としては所期の目的のように遂行してまいりたいと思っておるわけであります。
  220. 諫山博

    ○諫山委員 私はいろいろな予算を分析しますが、伸び率が少なくなったというのはありますよ。ただ、絶対額が減少したというのはきわめてまれだと思います。ところが、いま農民が最も深刻に求めている農地開発とか草地開発においては、前年度に比べて金額が減少する。これは総需要抑制とか公共事業抑制というような一般的なことばだけでは説明できません。ほかの公共事業の伸びと同じ程度の伸びだったらそういう説明で理解できるわけですが、そうじゃない結果がここに出ています。  そこで私が疑問に思ったのは、今度の法律で目ざしているのは大規模の畜産農家の育成、そして、切り捨てられようとしているのは、むしろ零細農を含めた一般の農民、こういう結果があらわれてきているのではなかろうかと思ったわけです。農地開発とか草地開発はどんどん予算が削られる、そして、ここに新たに新しい事業計画されるということの背景には大農中心主義というのがあったのではなかろうかということを感じたから比較して聞いたのですが、いかがでしょうか。
  221. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 基盤整備が昨今の農政の中で一番大事な部面を占めておることは、私ども考え方でもあり、どなたも御賛成をいただけることだと思いますが、基盤整備に計上いたしております予算は、昨年度に比べてあまり伸びてはおりませんけれども、若干の伸びを示している。私は、今日のような時代の予算としては、私どもの大事な点にはそれ相当にかなりの力を入れておるものであるということを考えておるわけであります。御存じのように、今度の予算の編成に際しましてもそういう目的でやっておるのでありますが、ただ、その中で土地改良、いわゆる公共関係においては若干の伸びにとどまった。しかし、これは、御存じのように、停滞していくということじゃなくて、たとえば前年度と同額、あるいは若干少ないにしても事業量はそれだけ継続してふえていくのでありますから、そのふえ方が予算面において若干縮んでおるということだけでありまして、事業は継続されて進めていくわけでありますから、私どもとしては、十分とは申せませんけれども、現在のような状況のもとではやむを得ないのではないか、こういうふうに理解しておるわけであります。
  222. 諫山博

    ○諫山委員 農林大臣がこの数字に満足しておられることを私は非常に遺憾に思います。たとえば土地改良事業は相当予算を注ぎ込んだと言いますが、どういう数字かといいますと、昭和四十八年が二千七百五十五億円で、四十九年が二千七百七十八億円で、わずかに二十二億の増加ですよ。高速自動車道とか新幹線の伸びに比べたらお話しにもなりません。私が農林大臣に期待していた数字は、もつとふやすように一生懸命努力したけれども、なかなか大蔵省が認めてくれなかった、けしからぬ、と、こういう発言があってしかるべきだと思うのですが、どうも、このきわめて不十分な数字に満足されておられるようですから、私は、これでは農民は救われないと思います。  そこで、次の問題に移りますが、私たちは、この事業が行なわれる場合に一番大切なのは手続上の民主主義だと思います。法案の中で、第二十条に、関係都道府県知事の意見を聞く、さらに関係市町村長の意見を聞くということがあります。二十一条には、事業実施計画を作成する場合に関係都道府県知事との協議を行なうというようなことも出てきます。これはけっこうです。ただ、この事業が進められるということは、地域住民には非常に深刻な影響を及ぼすわけです。そこで、都道府県知事に意見を聞いたり協議したりするのはけっこう、市町村長がこれに関与するのもけっこうですが、もっとこれを民主的にするために、区域内に住所を有する農民の意見を何らかの形で反映をさせるということが非常に大切だと思いますが、この点はどういう考慮をされたのか、局長にお聞きしたいと思います。
  223. 大山一生

    ○大山政府委員 先ほど先生が御指摘になりましたようなことで同意をとるわけで、意見を聞くわけでございますが、届け出の段階以前におきましては、区域がきまっておらぬということもございます。しかしながら、実体問題といたしまして、こういうふうな地区を仕組みます前には、あるいは精査地区として、あるいはそれ以前の段階におきまして、技術的な可能性のほかに、経済的なもので、あるいは地元の意向も含んだかっこうで、どういうかっこうならばここが開発できるかというようなことを詰めてまいるのが精査地区の仕事でございます。したがいまして、そういう段階におきまして、調査事務所が地元の方々と十二分に協議してまとめてくるということ、これは実体上の問題として当然やらなければならぬことであるわけでございます。そして、さらに公団が実施計画を作成しようとするときには、これは事業参加資格者から同意をとるというふうなかっこうによりまして、農民の意見といいますか、地元民の意見は、実体的にも、また法律的にも十二分に担保される。意見が十分に反映されるというふうなかっこうにしたような次第でございます。
  224. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、当該市町村の区域内に住んでいる農民の意見を十分反映させることが必要だということはお認めになって、その努力をしているつもりだという御説明になりますか。
  225. 大山一生

    ○大山政府委員 事業実施参加者となる人についての意見を十分に反映させるようにしているつもりだということを申し上げておきます。
  226. 諫山博

    ○諫山委員 事業実施参加者だけではなくて、参加しない人もこれはいろいろな影響を受けるでしょう。だから、区域に居住している農民の意見を何らかの形で反映させる必要はないのかという問題提起です。
  227. 大山一生

    ○大山政府委員 事業実施参加者以外でも、たとえばそこに飲雑用水を引いてくるというようなことになりますと、上流の水利権者との関係も出てまいります。また、家畜を飼うわけでございますので、それのふん尿処理というようなかっこうでは、下流といいますか、そういう方面の人との関係も出てまいります。こういうことは、事業実施計画を作成する段階において、そういう方々との十二分なコンセンサスということは必要であるというふうに考え、また、それなくしては実施計画もつくれないというふうに考えております。
  228. 諫山博

    ○諫山委員 事業実施参加資格者だけではなくて、そこに居住するすべての農民の意見を反映することが必要だという点では、私と局長意見が合ったと思いますが、ただ、問題は、そのことが法律のどこかに明記されているのだろうかということなんですが、いかがでしょうか。
  229. 大山一生

    ○大山政府委員 この公団が事業を行ないます場合に、河川法でありますとか、いろいろな関係する法律がおそらく十幾つか出てくると思いますけれども、こういった法律との関係におきまして、先ほど私が申し上げましたように、水利権者との同意でありますとか、あるいは環境保全からの問題でありますとか、そういった関係でのコンセンサスということが必要になってくるというふうに考えているわけでございます。そして、事業参加資格者との関係につきましてはこの法律によって担保している、こういうかっこうでございます。
  230. 諫山博

    ○諫山委員 大臣にお聞きしますが、事業実施参加資格者だけではなくて、すべての居住農民の合意が非常に大切だということはいま御説明があったとおりです。ただ、法律なり政令では、事業実施参加者の意向は反映されるようになっているけれども、それ以外の区域に居住している農民の意見が反映させられるということがどうも法律に出てないように思うのですが、これは検討の余地があるのではないでしょうか。
  231. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は、聞いておりまして、政府委員のお答えを少し誤解していらっしゃるのではないかと思うのであります。関係する方々の合意を得ることは、当然これは大事なことである。同時に、また、そういう計画を進めてまいりますためには、地元の市町村の人たちとの連絡が必要であることは当然でありますが、そのほかに、そういう事業を営む地域で、たとえば河川がありますとかいうような場合には、河川の関係の人たちとも話をする必要がある。そういう限度において住民の協力を得られるために必要な措置を講ずるということは必要だろうと思います。そういう意味でお答えしているのだと思います。  それから、先ほどあなたが私のお答えいたしましたことに対してあなたの御判断をお述べになりましたけれども、私の考えていることと少し違う点もありますから、この際私の考えを言わせていただきますと、私は、先ほど来御質問にお答えいたしまして、公共の予算の伸びが少なかったということはやむを得ないことであった、しかし、長期の計画でぜひ計画どおりに進めたい、やむを得ないということは、すなわち総需要を抑制して物価の安定という最大命題に対処するためにやむを得ない状況であると、こう言っておるのでありまして、もしそういう思想を取り入れないで膨大な予算を組んだといたしまして、国民の間に仮需要が横溢してまいりましたときに、物価は安定するでしょうか。物価が高騰いたしましたときは、つとめの方もそうでありますし、国民全体が、畜産をおやりになる方でも、やはり畜産をおやりになるために必要な機械類その他資材が高騰することによって、なお生活に困窮を感じるわけでありますので、何よりも物価を安定するということが必要なんだ、そういうときであるので、仮需要を増発するようなことは慎むべきであるという予算編成のたてまえはわれわれも尊重すべきである、そういう範囲内においては、公共が若干伸びが縮まったということについては、残念ながらやむを得ないことである、このように申しておるのでありますから、誤解のないようにお願いいたします。
  232. 諫山博

    ○諫山委員 最後に、農地開発機械公団で働いている労働者の問題について質問します。この点は他の党の委員からいろいろ触れられましたから、私は念のために二、三の点を確認しておきたいと思います。  結局、機械公団は解散するわけですが、この解散に伴って、解雇はしない、また、意に反する強制配転もしない、と、こういうことは確認していいのですか。
  233. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 どういうふうに事務当局がお答えしたか知りませんけれども、私が先ほど芳賀さんにお答えいたしましたのは、役員は継承いたしません、職員は全部継承いたします、同時に、また、その待遇等についても考えます、と、こういうことを言っておるのであります。
  234. 諫山博

    ○諫山委員 その具体的な中身ですが、解雇はしないというのは当然のことだと思います。  次に出てくるのは配置転換ですが、意に反するような強制的な配置転換はしないということも確認していただけますか。
  235. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは、機械公団の中の規程がどうなっておるか知りませんけれども、大体のところでは、政労協ではたしか協約が結ばれているのではないかと思います。そういうものがあれば、それを尊重してやるということになるだろうと思います。
  236. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、意に反する強制配転はするのか、しないのか、いかがでしょうか。
  237. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういうことは、いま協定があれば、協定に従ってやることである、こういうことを言っているのであります。
  238. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、身分は引き継ぐということは言われたけれども、意に反する強制配転をしないとう趣旨までは言っておられないのですか。
  239. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 だいぶ御熱心にお聞きになりますけれども、私どもとして答弁のできます範囲は、いままで協定がたしかあるのじゃないかと思うのです。したがって、その協定があれば、その協定をほごにするというふうなことは考えられないことだということを言っているのでありますから、そういうことについては、おそらく職員との間に協定が結ばれておるだろうと思っております。
  240. 諫山博

    ○諫山委員 協定が引き継がれることは当然なのですが、そうすると、いまの点については、事務当局もまだ考えはないのですか。
  241. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは、農林省がそういうことをきめることじゃありませんで、公団は、つまり機械公団の職員をそのまま継承するというのでありますから、継承いたします限りは、その間にもし協定があるならば、その協定が尊重されることは当然なことではないかと言っているのでありまして、私どもがよけいなことを言うことはかえって越権行為だと思います。
  242. 諫山博

    ○諫山委員 労働組合では、同種の公団の中で、農地開発機械公団の労働条件が非常に悪いということを問題にしております。さっきの局長の説明では、順次これを改善していくように説明されていますが、これは同種の他の公団よりか悪いということを前提として認めて、この悪いのを是正していくという趣旨に聞いていいのでしょうか。
  243. 大山一生

    ○大山政府委員 公団の現在の給与水準が他の公団に比べていいか悪いか、これは非常にむずかしい問題でございます。いいという説もあれば、悪いという説もございます。ただ、私が申し上げておりますのは、俸給表上の格差が、最近のベアというものが一律定率で出されている。たとえば前年に対して十何%のアップというかっこうで来ていることの結果、若年層が多い機械公団が俸給表上不利になっているという事実だけはございます。しかしながら、その問題については、最終的にはそれらの問題を通じますそれぞれの公団の利害関係がございますので、この前の労働大臣の社労委における発言ではございませんけれども、それらの問題をどういうかっこうで善処したらいいかという検討の場があるわけでございますので、そこにおける回答ということが必要になってまいります。しかしながら、今度公団が受託公団という性格から発注公団になる。いままでは、受注公団である公団と発注公団である他の公団というかっこうにおいては比較が非常にしにくい問題があったわけでございますけれども、今度は、発注公団になるという限りにおいては、そこにおいてはある程度の調整ということが可能になるはずである、そういうことから改善につとめてまいりたい、こういうことを申し上げた次第でございます。
  244. 諫山博

    ○諫山委員 終わります。   〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席
  245. 仮谷忠男

  246. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農用地開発公団法案について、農林大臣に質問いたします。  本法については、去る三月十二日に二時間余にわたって私は政府当局に質問をいたしまして、その問題点を明らかにしたところでございます。新公団のよりよき発展のために最終的に農林大臣に質問するわけでありますが、農林大臣の答弁いかんによっては、一部修正あるいは強力な附帯条件をつけなければならぬと思っておるわけでございますので、以下順次質問を申し上げる次第でございます。  さて、本法審議にあたりまして私が冒頭に申し上げておきたいことは、阿蘇・久住飯田等広域農業開発事業全国四カ所及び畜産基地建設事業二十九カ所の農用地開発を推進することは、農畜産物の安定的供給と農業経営の合理化の上からも欠くべからざるものでございまして、新公団が、予算の概算要求時と比し、その性格が従来の受注公団から発注公団と著しく変わっておりまして、将来に重大な問題を残すということが懸念されますので、この際、公団職員五百五十四名、定員外職員百五十五名、計七百九名の身分については、その保障について十分対処していただくと同時に、この七百九名の職員が実際には四十数名自然退職しておりますので若干は少なくなっておりますけれども、真に希望の持てる、人生に悔いのない生きがいある仕事に従事できるようにして、もって本事業の飛躍的発展を期するべく、私はあえて問題点を浮き彫りにして述べてきたところでございます。  そこで、最初の質問は、農用地開発公団の性格論と農林省の姿勢について、農林大臣にしかと伺いたいのでありますが、農地開発機械公団は、昭和三十年十月十日設立以来、幾多の実績を残したことはよく承知しております。しかし、民間における機械装備、技術水準の向上によりまして、数年前から民業圧迫の声が出ておりまして、すなわち、四、五年前から先が見えてきたというふうに言われておりました。受注対象事業も少なくなってきまして、大蔵省のほうからも五年前からいろいろと問題とされて、存廃がうわさされておったのも事実でございます。そういうことから、今回新公団は受注公団から発注公団になる。時あたかも、近年食料自給が問題となってきたので、時機到来ということで、世間では、機械公団は新公団に転換して乗りかえるのだ、うまいつなぎが見つかったものだとか、渡りに船だとかいうようなことを言って批判もしております。こういったことから、今後新公団は十分気合いをかけて発足してもらわねばならぬと思うのですが、今回の法案は、従来の受注公団から発注公団になっております。まるきり性格が変更されておるわけであります。そこで、農用地開発のための公団か、または公団のための農用地開発かということが一般に言われておりますので、新しい公団に発足するにあたっては、十分これを踏まえて今後対処してもらわねばならぬと思います。  そこで、新公団の性格と姿勢について、農林大臣から、今後のためにしっかりと冒頭に御答弁をいただきたいと思うわけであります。
  247. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 新公団は濃密な生産団地の建設事業をみずから仕組みまして、その事業実施の責任を負うとともに、事業団の事業費の回収も行なうべきことといたしております。暫定的には旧公団の業務を行なうことを別といたしますれば、基本的には、お話しのように、発注公団の性格に転換するものと考えられます。したがって、新公団の任務はきわめて重大でありますし、みずから責任をもって地元の調査を行ない、具体的な計画を定め、工事の設計、発注等の各種業務を遂行していくこととなりますので、これらの業務の遂行について万全を期するように指導、監督してまいりたいと思いますが、ただいまお話しがございましたように、畜産基地をつくるとか、農用地開発や未利用地開発をしてまいるとかという事業は、何ぴとがお考えいただいてもいまわれわれがなすべき重大な任務であると考えておりますので、幸いに新公団をお認めいただきますならば、この公団が多くの農業関係者に多大の期待を持っていただけるような事業を営ませるために最大の努力をしてまいりたい、このように考えております。
  248. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いまの点はそのように伺いましたが、従来からの機械公団に対しては世間からとかくの批判が出ておったわけですが、大臣はそういったことをどういうふうに受けとめておられるか。また、従来の機械公団の皆さん方がかせいだのは、定員外の職員が一番かせぎ高で、これががんばってくれたわけです。百三十億のうち九十億ぐらいかせいだと私は言いたいわけですが、その定員化の問題も起きておりますが、いずれにしても、この機械公団がいろいろと世間から批判を受けてきた。それについては農林省としてもずいぶん反省をしてもらわねばならぬと思うのですが、大臣はその点はどういうふうに受けとめておられますか。
  249. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもは、この開発機械公団をやむを得ず農用地開発公団に切りかえたんだというふうなことは全然考えておりませんで、開発機械公団はお説のようにそれなりの業績を残してまいりました。しかし、私ども政府部内でも、公団というふうなものはできる限り数を少なくして、そして能率のあがるものにしたいという基本的な考え方がありますので、従来やっておりましたああいう事業にちょうど新しくできる農用地開発公団の仕事を組み合わせてみますというとまことにうまくまいりますので、これはそのように一本にして大方の期待に沿うようにしようではないかということから発足いたしましたものであります。したがって、同時にまた、そういう歴史、沿革をもって考え出したものでありますので、先ほどお話しのありました職員につきましても、二月一日現在で六百八十名、これはこのまま継承いたしますと同時に、先ほどお答えいたしましたように、私どもとしては、これらの方々が安んじて仕事をやってもらえるように、なおまた仕事の性質や分量が違ってまいりますからして、そういうことにも対応されるように大いにやってまいりたいということを考えておるのであります。  もう一つは、定員外職員のことにつきましては、御存じのように、これは他の官庁にも関係のあることでありますので、政府としてもそれらといろいろと打ち合わせをいたしまして、待遇改善については最大の努力をいたしたいと思っておるわけであります。
  250. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、農用地開発公団は、土地の先行取得と交換分合は国の資金を使うとうまくいくんじゃないかというふうに私は思っているわけですが、そこで、新公団は政府から資金を借りて農地保有合理化法人または県、公社に貸すということを考えるべきではなかったかというふうに申し上げておるわけです。御承知のように、農林中金の場合は利子が九分でありますが、合理化法人が借りる場合は利子補給があるので四分ぐらいで借りられるということになるわけでございまして、農地の先行取得を円滑ならしめ、また、農用地の利用の高度化を促進するために農地保有合理化法人の機能を拡充して、農用地開発公団により資金を供給するというようなことを考えていくべきじゃないか。今回の法案でこれを取り上げるとなりますと、これはまた法改正で、いますみやかに問に合うわけじゃありませんけれども、将来のことも考えてこういったことに十分対処していくべきじゃないかというふうに考えて、三月十二日の質問にもいろいろ申し上げたわけですが、大臣はこの点はどういうふうに理解しておられますか。
  251. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説のようなお話しも一理あることであると思っておりますが、あそこに入植して、そしてその事業に専念していただくということのためには、今回われわれの考えておりますような方法のほうがより合理的ではないだろうか、と、こういうことでありますが、そこで、その土地の取得等につきましては、いまお話しのような合理化法人等を活用いたしまして、土地取得にできるだけの努力をしてもらうということ、またそういうことのために必要なもろもろの施策は、県それから市町村等とも連絡をとりまして、十分にやれるようにこちらから最大の努力をしてまいりたいと思っております。
  252. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この機会に農林大臣にお聞きしておきますけれども、大蔵省はかねがね農地合理化法人を将来吸収する方向で、系統金融でやれというように言っているようでありますが、この点、農林大臣はいかなる方針で大蔵省と対処しておられるか、この機会にお聞きしておきたいと思います。
  253. 大山一生

    ○大山政府委員 あとで大臣から御答弁いただくことにいたしまして……(瀬野委員「大臣、大臣に」と呼ぶ)
  254. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私、大蔵省のそういう意見というものをいまあまりよく存じませんので、政府委員からお答えいたします。
  255. 大山一生

    ○大山政府委員 現在、合理化法人につきましては、御存じのように、中金資金なりあるいは信連資金なり、これを活用するという体制になっております。と申しますのは、合理化法人というのは民法法人であるわけでございまして、その民法法人が財投資金貸し付け対象にならぬということが一番大きな原因でございます。
  256. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまの意見は、民法法人だから対象にならぬということでございますけれども、われわれはそういうふうに理解しておらぬのですけれどもね。将来の問題としてこういったことを考えると、この農用地開発公団はもっと土地の先行取得等がスムーズにいくというふうに私は思うわけで、そういうふうにこの公団も措置をすべきじゃなかったかということを将来のためにぼくは聞いているわけです。まあ、時間の制約があるので、十分それは検討していただきますように申し上げておきます。  それから、農林大臣にお伺いしますが、一昨々年通過しました国有林野活用法がありますが、実際には国有林野活用はなかなかできない。そして、事実、畜産基地としての国有林野の活用はかなり有望なところがあるわけですけれども、今回のこの農用地開発公団で国有林野の活用ということをいろいろと措置すべきではないか、また、考えるべきではないかということで私はいろいろ質問をしてまいっておるわけですが、貸し付け料が高いために、民間ではなかなかこれを借りられない。これは、農用地開発公団等で国有林野の活用を何とか進めて、安い貸し付けで行なっていくということにすればスムーズにいくんじゃないかというようなことも考えて、いろいろ検討の余地もありますけれども、そういったところを十分対処してもらいたいと思っているのですけれども、その点については、大臣は、この法案提案なさるにあたってどういうふうに検討されておるか、お答えいただきたいと思います。
  257. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この新公団の事業実施のために国有林を活用するということでありますが、これは国有林野の活用に関する法律の規定に基づきまして、適正かつ円滑な活用がはかられるように、私どもにおいて積極的に推進してまいる方針でございます。
  258. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 国有林野活用については、ぜひ積極的に推進をしていただきたいと思います。特に、北海道においてはこのウエートは大きいので、今後十分対処されるように要望を重ねて申し上げておきます。  次は、今回の農用地開発公団は、畜産基地の建設が主体と考えられるわけです。先般、三月十二日のときにも質問いたしましたが、この農用地開発公団が健全な創設を期するためには、いろいろと今後畜産基地の事業主体というものを考えていかなければならない。そこで、発注から受注公団に変わるわけでございますので、少なくとも四十九年度は畜産が事業主体となるわけですね。もちろん、当分の間という三年間は従来の機械開発公団の仕事をやっていくわけでありますが、畜産基地の発注が円滑にいくためにも、この畜産基地建設のために今後エキスパートを入れて十分対処をしていかないと、結局仏つくって魂入れずということになりかねない心配がある。そういった意味で、私は、今後の公団のあり方というものを心配しておりますけれども、農林大臣はその点はどういう決意で今後新公団の運営を指導していかれるつもりでありますか、お答えいただきたいと思う。
  259. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 たいへん大事なところを御指摘いただいたわけでありますが、私どもといたしましても、もちろん専門家を導入いたしまして、指導等よろしきを得るように最大の努力をいたすつもりでおります。
  260. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 専門家はどのくらいを考えておられますか。
  261. 大山一生

    ○大山政府委員 これは今後の組織の問題とも関連いたしますので、まだ考えておりませんけれども、畜産局からも、あるいは県の畜産関係者になりますか、その辺からも、いずれにいたしましても畜産の経営の相当の専門家を少なくとも業分の間は導入しなければならないだろうというふうに考える次第でございます。
  262. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もちろん、いまおっしゃったように、さっそくこれは必要になってくるわけでございまして、現在おる機械公団の職員のこともあるが、今度はそれらの皆さん方が指導、訓練も受けなければならぬし、今度は新しく性格が変わるわけでありますので、従来の仕事も三年間はあるといいながら、今後少なくとも四十九年からは新しい公団の発足となれば、それにふさわしい陣容も整えて専門家を入れてやっていかないと、国民の貴重な税金を使ってたいへんなことになってきて、また、看板の塗り変えだとか何だかんだといって批判を国民から受けたのでは、われわれ国会議員も国民に申しわけないということになる。新しくスタートをするわけですから、そういう面で、これに対しては十分対処できるように検討をしていただかなければならぬ。検討しておるかしらぬけれども、傍聴人がたくさんおるから遠慮して発言をしないのか何か知らぬけれども、公開の席であるから遠慮なく発言をして、今後新公団で職員も喜んで働けるように、また、国民の期待にこたえるようにしてもらわぬと困る。  この公団の問題については、私は前から、委員会その他でも指摘しておるのですが、いま畜産問題のいわゆる畜審が開かれております。実際にこれがどういう結果が出るか、三十日の告示までわれわれもいま三番町に行ったり来たりして見守っておりますが、実際に畜産価格等がこういうふうな状態では、新公団が今後畜産基地をつくっていこうとしたって、畜産を希望してくる人がいるかどうか。また、経営をしようと思ってもばく大な取得資金が要る、経営資金が要るといった場合に、一町や二町のわずかな面積じゃ済まないわけです。そういった資金面のこともたいへん心配しなければならぬし、今後新しい公団が意欲に燃えてつくっていく畜産基地についても、入れものはできたが中身がはたして来るかどうかという心配等が考えられますので、ただ引き継いで変わればいいというものじゃない。装いを新たにして一応発足するわけですから、その辺は農林大臣としても指導をされ、見守ってもらいたい、そのことを強くお願いしておくわけです。  次に、第二章の「役員及び職員」のところで、第九条に「理事長は、公団を代表し、その業務を総理する。」とありますが、今回は理事長の下に副理事長を一名置き、理事が現在四名に対して、当分の間、すなわち三年間に限定して機械公団から二名入れて六名にして、監事は現在一人だけれども、二名ということになっておりますが、御承知のように、理事は給料を四十万から取っておって、これからまたベースアップになると四十五万くらい取るのじゃないかと思うが、今度移り変わる重大なときに、また、たくさんの定員外職員をかかえて新しい出発をするときに、今後相当なお金も要る。いまは定員外職員が中心になって、相当の仕事をしてかせいできておりますが、今度はいわばプランニングといって、設計、監督というようなことが主体となってまいりますので、事実働く者はどろんこになって、机上で仕事をする者は机上で仕事をするということで、新公団発足と同時にずいぶん差がついてくる。そうして定員外職員が一番かせいでいるというような状況があるわけですが、三月十二日にもこれはるる指摘をしたところでございますが、残務整理をしていくと、現在の仕事の量も相当減ってきて、今後の新公団の運営その他には金がかかってくる。こういったことを思いましたときに、ほかとのつり合いというようなことも十分考えて——森林開発公団なんかでは、理事長が一名で、理事が三名、監事は一名となっている。森林開発公団と一緒にはいかないけれども、また、水資源開発公団なんかも職員が六千七百名くらいいるから、これはまたマンモスなんだが、理事が八名くらいおるように記憶しておりまして、これとも比較はできませんけれども、新しい発想の公団で、しかも、職員に対して希望を与えるようにするべく、新公団を大きく強化するためには、副理事長の一名は必要であろうと私も考えますが、理事は当分は四名で遂行して、監事は二名になっておりますけれども、一名は常勤、一名は非常勤ということでやるべきじゃないかと私は思っておるわけです。その点に対しては農林大臣はどういうふうに考えておられますか、見解を承りたい。
  263. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 役職はそんなにたくさんなければなくてけっこうだと思いますが、いろいろ検討いたしました結果、今回御報告いたしておりますような考え方でありまして、監事等につきましては、なお事業の運営に従って考慮してみる必要がある場合もあるかと思っております。
  264. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 御承知のように附則の十二条で、当分の間、すなわち昭和四十九年七月一日から昭和五十二年七月一日まで三年間「理事二人を置く」ということになっておりますが、これも「三年と限り」ということで条文にうたってあるから、三年で二名を打ち切るというふうに当局は考えておるようであります。しかし、実際に定員化したら、この二名も将来とも六名でいくのじゃないかというふうなことで、いろいろと一応は危惧するわけですが、政府の答弁では、それはひとつ信用していただきたいということですね。  そこで、それはそれとして、ただでさえも旧公団は事業に金がずいぶんかかったわけです。そこで、今度新公団にこういった役員をかかえていくと、今後の新公団の性格から見ましたときに、これはまたますます経済が苦しくなってくる。そうしますと、六名の理事は要らぬではないかということを私はかねがねから申し上げておるわけです。ということは、結局、この補助金の七五%から、実際にこういったことにかかる経費または理事その他の金をずっと見ますると、私たちの試算では、実効が四〇%くらいしかあがらぬのじゃないかというような不安を持たざるを得ないのであります。要するに、諸経費がかかればかかるほど農民に負担がしわ寄せされて、苦しむのは農民だけだということになるわけです。だから、理事一名の給料四十万円で三人で八十万円が、そのうちに一人五十万ずつで二人で百万になるかもしれませんが、そういった姿勢から正して、そして職員にも希望を持たせ、また、公団の内容もきちっと締めていくべきだ、こういうような考えでおるわけですけれども、その点については大臣はどうですか。
  265. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 公団でも会社でもそうでありますが、なるべく節約をすることが必要なことは当然なことでありますが、とにかく新しい公団が発足いたしまして、これは全国的に展開してみますと、そこでいろいろな事業が起こってまいります。そういうものについて国家社会に対して不安を抱いていただかないようにすることは、やはり管理者の責任でございますので、そういう意味から私どもは大いに大事をとってやっておるわけでありますが、暫定的な二名というのは、法律にも「三年を限り」と書いてありますし、その他のことにつきましても、運営してみた結果で十分検討してまいりたいと思っております。
  266. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 運営した結果で十分検討してみたいと思うということでございますが、こういったことは、私は、三月十二日の質問以来問題を提起してまいりましたので、農林大臣においても今後十分指導していただかなければならぬと思います。ただでさえも天下りということがずいぶんいろいろと言われておるときですし、必要に応じて将来十分対処するということも考えられるわけですから、私は、理事は四名でけっこうだというふうに言っておるのです。けれども、今後状況を見てということでございますが、それは一応伺っておくことにします。  そこで、監事の問題ですが、これは一名は常勤、一名は非常勤ということで、先般私はいろいろ質問して、そのあと局長からも、これは十分検討するということで、非常勤一名にしてということで譲歩がありましたので、私は一応了としておりますけれども、先ほど大臣は、監事は業務の監査の適確を期するために相互に監視し合うので、一人じゃなくて二人は必要だと言いましたけれども、それなら、いままでは一名であったわけだが、いままではこれは不適確であったのか。そうすると森林公団も人だからいかぬということになるのだが、ああいうことを言われるとわれわれはもう頭に来るわけですが、その点はどうなんですか。
  267. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 一名は非常勤でございまして、常勤の監事は一人でありますから、そういうところでちょうどいいのではないかと思っております。
  268. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 あなたは質問に全然答えていない。東京と言えば大阪のほうに行ってしまうような答弁をするが、とにかく、先ほどの答弁で、監事は二名おったほうが、相互に監査し合うので適確を期することができるとおっしゃったのです。それで今度は二名にする、一名は常勤、一名は非常勤、そこまではわかるのですが、そういう言い方をすると、それではいままでは機械公団は監事が一名だったから経理がずさんでめちゃくちゃだったということになりかねないので、私は遠慮して質問しているわけだ。そうなれば、監事が一名おるところの公団、たとえば森林開発公団、これもあなたの所管なんですが、これも一名なんだからけしからぬということになるのですけれども、そういう点ではあなたはどういうような考えで答弁しておられるのかということを聞いておるわけです。
  269. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 監査役というのはなかなか大事な立場でありまして、今度商法改正などを見ましても、監査役はなかなか大事な仕事でありますが、こういう公団みたいなものにつきましても、監査いたします立場の者の重要性はやはり認めなければなりません。そういう意味で、当初の考え方の二人を置くというのは、普通の考え方でそういうふうに考えたわけでありますが、そこで一名は常勤でやってもらう、一名は非常勤でやってもらうということでありまして、私どもといたしましては、この役員の編成につきましては、なおしばらく運営した上で、十分御趣旨のような点も考慮いたしまして検討してまいりたいと思っております。
  270. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、森林開発公団は監事一名だが、二名にしますか、どうですか。
  271. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういうことを全然考えておりませんが、あそこは、事業がこの新公団よりはわりあいに少ないように私どもは見ております。
  272. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これで論議しようとは思いませんけれども、皮肉った質問で申しわけないのですが、これは事業が少ないから問題が起きない、事業が多いから問題が起きるというものじゃなくて、多くても少なくても、監事という立場からいけば、大臣のおっしゃる論法でいけば、これは当然一名置かなければいかぬということになるのですよ。だから、あなたは、さっきから、すました顔で、監事は今度はどうしても二名必要だ、一名は常勤で一名は非常勤でも、相互に監督し合うのだからとかいうことで、一名置くことにしたというふうに言われますけれども、出たとこ勝負でそのつどそのつど調子のいいことだけ言われるので、私は、この際、質問時間もなくなっているのだけれども、あえて申し上げたわけです。  それで、時間が来ましたので最後にお聞きしますが、今回のこの新公団の発足にあたって、おそらく、理事長はまた新しく相当強力なエキスパートの方がおすわりになるだろうと思う。大臣もいろいろと御検討されておるやに聞いております。現在まだきまっていないと言うけれども、実際は腹の中ではさまっておるのだろうと思うのですが、現在の機械公団の理事長は元警視総監をやったというような経歴の方で、いろいろないきさつは皆さん御存じのとおりですが、全然エキスパートではない。いわばしろうとであります。そういった意味で、この機械公団を引っぱっていくについてはたいへん苦労もなさったと思うし、また、下の職員にしても、理事以下の皆さんにしても、いろいろと苦労が多かったろうと思う。この間も参考人に呼んでいろいろ質問しましたが、私たちも、もうちょっとてきぱきとやってもらわぬと困るという、元気がなさ過ぎるという感じがしたわけですが、今度はいよいよむずかしくなってきます。いわば二足のわらじをはくようなもので、旧公団を三年間は引っぱっていかねばならぬ。実際は、現在やっている旧公団の仕事も三年間では片づかぬ、問題のところが何カ所もあります。そうして新公団の発足も、いよいよスタイルを変えて新しく出発して、今度は畜産基地をつくるために行くわけです。こうなってきますと、相当エキスパートの人がなってくれなければいかぬ。そして、今度畜産基地をつくるについては、農林大臣にぜひ、こういう畜産危機のときでありますけれども、畜産振興のために真に畜産に打ち込めるエキスパートの農民をつくっていただかなければならぬ。そして、この公団はやりがいがあった、やったあとも指導監督をしてほんとうにうまくいっていると言われるようにしてもらいたい。先日も三月十二日の質問のときに指摘しましたが、つくるにはつくったが、あとがもうちゃらんぽらんで、結局、模範牧場になったところもあるが、反面影が消えていきつつあるところもあるというようなことではいかぬ。あとをきちっと見守って指導し、長く続くように今後やってもらいたい。また、附帯決議の中にもうたっておくようにしてありますが、こういう意味で、特に、新公団の理事長には公団を引っぱっていくに足る人を任命し、そして、今後、畜産基地建設のためのエキスパートの農民、いわゆるプロをつくっていただくように本気で取り組んでもらいたい。そうしなかったら、幾ら農用地開発公団をつくってやっても、いまのような畜産の価格ではだれも希望を持たない。入れものはつくっても入る人がいなくなる。これではまことに心配であります。  それらについての決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
  273. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御期待にそむかないようなりっぱな人物を探し出したいと思っております。
  274. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 では、時間が参りましたので、以上で質問を終わります。
  275. 仮谷忠男

  276. 稲富稜人

    稲富委員 私は、ずいぶん時間も経過いたしておりますし、実はもう質問の必要もないかと思うのでございますけれども、大臣も見えておりますので、二、三の点につきまして簡単に要点だけを申し上げまして、政府の所信を承りたい、かように考えております。  まず、第一にお伺いいたしたいと思いますことは、農用地開発に対する政府の基本的な考え方についてでございますが、農業生産の基本であります農地というものが年々歳々減少の傾向をたどっておるということはすでに御承知であると思うのでございます。このような中におきまして、最近は、農用地の確保とか、あるいはこれに対して最も積極的に開発すべきであるというような意見というものが非常に急激に起こってまいっております。もとより、そういうことが論ぜられるということは、食料の自給化の問題、世界的な食料事情という点から、食料の必要性の上において農用地の開発等が強く言われるゆえんであると私は思うのでございます。ところが、そういうような中にありながらも、政府の農用地確保に対する態度というものが従来あまりにも消極的ではなかったかということを私は考えるわけであります。それで、この公団が設立されます機会に、特に私は政府に対して要望いたしますことは、農用地の確保ということに対してはもっと積極的に取り組む必要があるのではないかということでありますが、もちろん、そういう意味からこの法案もできたと思うのでございます。  一方におきましては、最近は優良農地が次々に転用されるという事情があります。こういう優良農地の転用などに対しましては、農地法を厳格に運用することによりまして、相当規制するんだというたてまえをとり、一方においては農用地の開発に積極的に当たる、こういうような姿勢が最も必要ではないかということを私は考えるわけでございますが、これに対しまして、政府の農用地に対する基本的な考え方についてこの機会に承りたいと思うわけでございます。
  277. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 たいへん大事な問題を御指摘いただいたわけでありますが、私どもも、農用地につきましては、食料の自給度を維持、拡大するという目的のためにも、また、比較的生産の劣っております酪農、畜産というものを考えました場合にも、かなりな農地を考えなければなりません。そういう意味で、優良農地を大切にするという考え方につきましては、あらゆる施策で優先的にそういうことを考えておるわけでございますが、ことに、規模を大きくして、農業を産業としてりっぱにやっていかれるものを広めていきますためにも優良農地というものを確保することが大切でございます。この国会にも農振法の改正案等を出しまして、小さな地主で兼業をやっていらっしゃるような方々も安心して規模拡大に協力していただけるような利用権のようなものを設定しようという考え方をしておりますのもそういうところから出てきておるわけでございます。  したがって、いま御審議願っております農用地開発公団法なども、米利用地あるいは低位利用地というふうなものを開発することによって草地の造成その他をして、不足しておる酪農畜産品の生産にうんと力を入れようということでございますので、ただいまお述べいただきました御趣旨につきましては、私どもは全く同感でございます。
  278. 稲富稜人

    稲富委員 ただいま大臣から御答弁のありましたような趣旨によって今回の農用地開発公団法というものが提案されておるということは十分わかるわけでございますが、ただ、私たちが感じますことは、従来の機械公団を単に引き継いだのじゃないかということで、そこに非常に苦しい点があるような感じがする。引き継ぐことはけっこうなんですけれども、もっと積極的に農用地開発に対しては突入していくべきではないかという感じがするのであります。そこに私が非常に苦しみのあとを見ますのは、大臣の先日のこの法案提案理由の説明でも申されておるのですが、「未利用、低位利用の土地が広範囲にわたって所在する地域において、畜産を基軸として、近代的な農業経営群による農畜産物の大規模かつ濃密な生産団地を拠点的に創設、育成することを内容とする農業開発を推進していくことが必要であると考えております。」という点はわかりますが、「このため、特に、農用地の造成のほか、関連する土地改良施設、畜舎その他の農業用施設の整備等を総合的かつ計画的に行う新しい事業実施方式を設けるとともに、」と、いかにもむずかしい漢字ばかり並べておって、これを読むと、目的がどこにあるのかわからない、こういう目的でやるのだということをもっとはっきり言いあらわせないのかということを感ずるわけで、何か、ことばの奥のほうに——こういうのが学者の文章か知りませんけれども、これを見ますと、いかにも回りくどく説明されている。もっとはっきり、こういう農用地が必要だからこうなんだという表現ができないものかどうか。これにも「一元的に実施する機関として」とか、非常にむずかしいことが書いてありますけれども、読んでおると読んでおるほど意味が広範囲にわたってわからぬようになってくるというような状態であるのであります。  それで、この公団は、農地開発機械公団を引き継いで当分の間旧公団の業務を行なうということを言っておられることはわかります。そして、この公団は、都道府県の申し出による地域を農林大臣が実施方針を定めて公団に指示して、これにより公団が事業を行なうこととしておりますが、開発で一番問題になります土地問題というものは都道府県の農地保有合理化法人等にゆだねておるということだが、これはもっと国が積極的に取り組めないものかどうか。土地の問題の一番困難なところはこういう合理化法人にゆだねるのだというようなことで、はたして今後こういう問題を積極的に解決していかれるかどうかという懸念も持つわけなんで、この点に対しても、いかにも政府に自信がなさ過ぎるような感じも私はするわけでございますが、この点はいかがでございますか。
  279. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この農用地開発公団の仕事及びその必要性については大体皆さま方御理解をいただけることと思いますが、こういうものをやってまいりますために考えたのは、予算編成に際しましては、その発足以来農用地の開発等について技術と経験を持っております機械公団の陣容を活用することがいいではないかということで、そこでこういう着想になったわけであります。したがって、新公団は単なる請負業的な機能ばかりじゃございませんで、その意味においては従来の機械公団とは少し違った面も持っているわけであります。そこで、農畜産物の生産団地を建設いたしますために必要な地元との調整であるとか、それから、また、事業実施計画の策定、工事の設計、発注等をこの公団みずからがやるわけでございまして、新公団事業量としては、現在までの調査結果から推定いたしましても、草地造成を十年間に約九万三千ヘクタールを予定いたしておりますし、こういう新土地改良長期計画の草地造成計画量のおおむね四分の一を十年間にやろうというわけでありまして、そういうような仕事をやりますためにいろいろ考えました結果、開発機械公団が一本になってやることのほうが、古い経験もありますし、運営にも非常にいいのではないかということでそういうことを考えた次第でございます。
  280. 稲富稜人

    稲富委員 大臣の言われることはわかるのでございます。ただ、たとえばこれが実施地域も、根室その他の四地域とか、あるいはその他畜産基地として二十九カ所を予定されておるが、農用地開発公団の仕事がきわめて限られておるという感じがいたすのでございまして、私たちは、これに対しましては、公団自体がお互いの公団の設置意義というものをもっと意識し、公団の持つべき役割り事業効果ということの上に立ってもっと積極的にやるべきじゃないかということを考えるわけです。積極的でないから、何だかこれは機械公団の延命策ではないかというような感じをなおさら受けるわけなんです。一方には、御承知のとおり、従来の機械公団というものはいろいろ問題がありました。最近においては、機械公団の必要がないじゃないかという声さえもありました。これは創立以来いろいろ問題のあった公団でございますので、その公団を何とかして引き受けるためにやったんだという感じがするから、なおさらその疑いを持つわけなんで、それで私はそういうことを申しておるわけでございます。これが運営にあたりましては、この公団がどういう意味の役割りを持ってやっていくんだということ、すなわち、国民食料の安定供給のための農用地開発公団であるという、積極的な将来の活動といいますか、事業の推進といいますか、こういうことに対して取り組むべきじゃないかという点から私は申し上げているのでありまして、これに対しては政府はもっと自信を持って積極的に取り組んでいただきたいという希望を持てば持つほどそういう感を深くするわけでございます。  大臣から大体の御決意のほどは承ったのでございますけれども、公団事業を将来もっと拡大させるには、その方針を明確にして、さらに、この公団の事業に対しましては国の補助をふやして、できるだけ農民の負担軽減するという具体的な方策を立てながら運営していくことが必要ではないか、そうすることが公団を意義あるものにならせるのではないかという感じがします。そういう点を念を入れてお尋ねしたわけでございますので、これに対する政府の自信と申しますか、今後の方針に対して強い決意のほどを承りたいと思うのでございます。
  281. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 四十四年以来いままで、広域の地域につきまして調査対象が四地域ございまして、まず、畜産主産地形成調査等の対象地域の中からとりあえず四地域を選びまして、これは地元のまとまりに応じて事業採択を行なうことといたしておる関係でそうなりましたが、これはたくさんの地域からいろいろな方の御要望がございましたもので、いわゆる広域四地域や畜産主産地形成調査等の地域の新公団事業の採択を将来とも厳にそれだけに限る予定ではないのでありまして、畜産の主産地地域として今後とも期待することのできる地域で、新公団事業対象にふさわしいところであれば、調査の上さらに対象地域として追加してまいるという考え方でおります。  もう一つ助成のことでございますが、これは事業の進行等を見まして、補助が順次増加できるものは増加していく考えでございます。
  282. 稲富稜人

    稲富委員 ただいま大臣から御答弁のありましたところの、希望の土地に対してこれを設置するということに対しては、お尋ねいたそうと思ったけれども、御説明がありましたので、今後適地があれば、限定せずしてほんとうにその土地を生かしていく、それから、それに携わる者の希望を満たしていく、こういう方針でこれの運営に当たっていただきたいということを私からも特にこの機会に申し上げておきたいと思うのでございます。  それから、その次にお尋ねしたいと思いますことは、農地開発機械公団の廃止の問題につきまして、一切の権利義務というものが新公団に継承されますこと、これも当分の間、三年の間に継承事務を一切終了するというようなことを承っております。これは先刻瀬野君からも質問いたしておったのでございますが、この二つの公団は、一方は発注公団であり、一方は受注公団ということになるので、おのずからその性格が異なります。ところが、従来の機械公団の職員の定員あるいは定員外の職員も一切引き継いでいかれるという。これは当然のことであり、非常にけっこうなことであると私は思うのでございますが、発注公団、受注公団というように性格も仕事も違いますので、これに対しましては、これに携わる旧公団の職員が自信を持ってやっていかれますような方針を明確にする必要があるのじゃないかというふうに思うわけでございます。それで、新公団が将来やろうとする予定量というか、今後の計画というものを明確にして、これに携わる旧公団の人たちが希望を持ってその職に携わっていけるように、不安のないように示してやることも非常に必要ではないかと思うのでございますが、これに対してはどういう態度をとっていらっしゃるか、承りたい。
  283. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 旧公団の権利義務を一切継承いたしますと同時に、職員もそのまま継承いたすわけでございます。そこで、旧公団と新公団との間には変わった面もありますけれども、似通った作業もございますので、旧公団の方々にも十分なじんでいただけるように研修等をいたしまして、十分能率をあげていただくような方法を講じてまいりたい。そういうことを考えておる次第でございます。
  284. 稲富稜人

    稲富委員 最後に、公団事業の完了後の指導に対しての政府の処置を特にお尋ねしたいと思うのでございます。  それは、今後のこの公団の経営の能力とか指導体制という方面に適正を欠かないように、そして経営の破綻を招くことのないように十分やらなければいけないと考えるわけでございますが、特に私がこういうことを申し上げるのは、畜産経営の困難ということが非常に今日言われておるからでありまして、私たちが心配しますのは、今回の畜産団地をつくる場合におきましても、まず、畜産に希望を持てるような畜産対策をやって、せっかく畜産団地をつくっても、この畜産団地が開店休業の形にならないようにしなければいけないということです。そういう意味から、この畜産に対する対策を樹立するということが並行して行なわなければいけないということを私たちは特に考えますので、今後の公団の計画に対して農民がほんとうに安心して取り組んでいけるような指導をせねばならぬと思う。それがためには農民のためにどういうような基幹作物をやるとか、あるいはどういう生産規模で取り組むとか、あるいは生産構造をどうするとか、流通施設をどうするとか等、こういうように全般にわたって安心して取り組んでいけるような方法を示して指導するということが、この公団がその目的を達成するために非常に必要なことであると思いますので、これに対する政府考え方を承りまして、私の質問を終わることにいたします。
  285. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話しの点はきわめて大事なことでございまして、引き継ぎをうまくやって指導していくことが一番大事なことだと思います。そこで、私どもといたしましては、そういうことのために営農指導には十分留意をすることにいたしております。それから、また、農業改良普及所であるとか、あるいは家畜保健衛生所など、都道府県による普及の機関がございます。私どもが都道府県とこの公団を常に密着させておるのはそういう考え方からでございまして、そういう営農の指導についてはもちろん力を入れなければならないことだと思って、そういう方向でやります。
  286. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これにて、本案に対する質疑は終了いたしました。
  287. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際、津川武一君から、本案に対し修正案が提出されております。
  288. 仮谷忠男

    仮谷委員長 提出者より趣旨の説明を求めます。津川君。
  289. 津川武一

    ○津川委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、農用地開発公団法案に対する修正案の趣旨説明を行ないます。  本法案は、最近の畜産危機、なかんずく飼料不足、飼料値上がりなどの今日的状態にこたえようとしています。また、農民がのどから手が出るほど求めている農用地の拡大にもこたえています。さらに、また、農地造成、土地基盤整備、農用施設、家畜などに至るまで総合的に整備しようとしております。この意味で、私たちも、この法案意義を積極的に認める点では人後に落ちないつもりでありますが、ただ一つ、この法案に深い心配の念を抱いております。  それは、たとえば土地改良法では、農民が発起し、発起人会をつくり、土地改良区をつくり、その計画事業を進め、農民の発意と計画事業をやり遂げております。しかるに、本法案では、知事の申し出により、農林大臣が事業計画し、公団が事業を執行するのであり、農民からの発意でない場合も十分にあり得るのです。この点が本法案における唯一の心配の問題であります。農民がせっかく事業に乗り出しても、いまのえさ高や製品安では破産するのではないかと心配しております。農民の発意と意見が求められなければならないゆえんでございます。  そこで、第二十条で事業計画する前と、第二十一条で事業実施する前に、「市町村長は」、「当該市町村の区域内に住所を有する農民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。」という追加修正をしたいのであります。どなたもこれは賛成だと思います。この修正がなければ、せっかくの法案も画竜点睛を欠くことになります。法案に対しては朗読を省略さしていただきますが、修正案はお手元に配ってあります。  何とぞ、全委員の心からなる賛成をお願いして、提案の趣旨説明を終わります。
  290. 仮谷忠男

    仮谷委員長 以上で、修正案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  291. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより、本案並びに本案に対する修正案の討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  初めに、津川武一君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  292. 仮谷忠男

    仮谷委員長 起立少数。よって、津川武一君提出の修正案は否決されました。次に、原案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  293. 仮谷忠男

    仮谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  294. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際、本案に対し、芳賀貢君外三名から、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。芳賀貢君。
  295. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表して、農用地開発公団法案に対する附帯決議の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農用地開発公団法案に対する附帯決議(案)    政府は、国際的農畜産物の需給ひつ迫の動向等に即応して可及的すみやかに国内自給態勢の確立をはかるため、積極的に農用地の開発を推進することとし、本法の施行に当つては、左記事項の実現に努めるべきである。          記  一、公団事業の開始前にその対象区域における事業参加資格者の意向が十分反映するよう適確な措置を講じるものとし、さらに適正な営農類型を策定して受益農民の完全な合意を得るよう努めること。  二、公団の行う農用地造成事業を推進するため、その対象区域内の事業参加資格者と使用収益権者の間の円滑な調整につき、都道府県知事による適切なあつせん、調停等が行われるよう指導するとともに、必要があるときは農地法の未墾地買収等の適用を検討すること。  三、農用地開発の土地取得を円滑にするため、農地保有合理化法人等の先行取得及び資金の確保等各般にわたる措置を強力に講ずること。  四、公団の行う事業の適正を期するとともに、事業の推進及び事業完了後の施設の維持管理及び営農に至るまで、国、地方公共団体及び農業団体等が一体となつて受益者等に対して濃密な助成、指導が行えるよう体制の整備確立をはかること。  五、公団の行う事業は、その効果を早期に発現させるため、短期間に完工させるとともに、農民負担軽減のため国庫補助率の引上げ、財政資金の貸付条件の緩和等につき今後とも努力すること。  六、農地開発機械公団から引き継がれる公団職員の処遇については、すみやかにその給与が他の政府関係機関と均衡するよう措置するとともに定員外職員の定員化等に努めること。   なお、公団の役員機構は極力簡素なものとすること。   右決議する。 以上であります。  この際、主要な点について趣旨の説明を加えたいと思います。  第一の、公団の事業開始前の対象地域における事業参加資格者の意向の反映ということにつきましては、特に、この公団事業対象となる土地は広大なる未墾地を対象にして開発を進めることになるわけでありますから、その前段において、土地に関する農地法第三条の規定に基づく所有権並びに権利関係者についての完全な理解と同意が必要であると同時に、さらにまた、この特定地域において参加資格者として今後の造成地域において営農に精進する、いわゆる土地改良法第三条に基づく参加資格者等の事前の申請並びに同意の行為というものは、これは民意反映の上から見ましても当然行なうべき手続であるにもかかわらず、公団法の内容においては、この明確な根拠規定というものが薄らいでおるということに問題があるわけでございますので、必ず知事が農林大臣に対しまして——特定地域における農用地の開発事業について事業実施方針を定める事前の措置といたしまして、特に、土地改良法の第五条、第六条あるいはまた土地改良法の第八十五条等における事業参加資格者に対する、そのまた権限を有する関係者に対する全員の同意等については、事前に十分民意を反映する手続を完了して、しかる後に都道府県知事が農林大臣に対しまして、その特定地域について、適正な開発事業に対する事業実施方針を策定するようにつとめるべきであるという点をここに明確にしたわけであります。  さらに、また、造成された農用地に対して営農に参加する受益農民に対しましては、その地域に最も適合した営農類型並びに営農計画というものを事前に策定して、受益農民が安心して営農にいそしむことのできるような合意体制を確立すべきであるということをここに明らかにしておるわけであります。  第二の点につきましては、この案文にも明らかになっておりますとおり、その対象区域内の事業参加資格者と使用収益権者の間における完全な権利の調整並びに同意を求める意見の聴取行為等の点については、特に、農地法の第六条の規定を完全に準用する行政的な運用というものが必要になるわけでございますので、この点につきましても、特に、申し出を行なった知事の責任におきましても、これらの問題が同意に到達する過程において、必要な場合においては適切なあっせん、調停を知事が行なうとともに、最終的な勧告措置としては、必要な場合には農地法第四十四条の規定に基づく未墾地買収等の適用を十分検討する必要があるという点であります。  第三点以降は、特に詳しく説明を要する点はありませんけれども、特に、本法案におきましても、未墾地の取得行為等については、農地保有合理化法人の機能等を十分発揮させるための措置が当然必要であるという点についても、これを軽視しておるというふうに考えられますので、今後農地保有合理化法人が行なう事業の中において、土地の取得に関する先行取得の問題、あるいはまた農地保有合理化法人の機能充実するための資金の確保等については、政府として十分その機能を発揮するように努力することを示してあるわけでございます。  第四点の問題については、法律を制定しましてから公団の行なう事業の適正な運営につきましては、特に、農用地が造成されたあとの採草放牧地等については、事後の施設の維持管理等が重要であることは言うまでもありませんので、この維持管理及び営農に関する点につきましても、国、地方公共団体はもちろん言うに及ばず、地元の農業団体等においても一体となって、受益者農民に対して濃密な助成と指導措置が行なわれるよう万般の体制を整備することを示してあるわけでございます。  第五の、公団の行なう事業効果を十分に迅速に発揮させるためには、その特定事業地域における全面的な工事の完成時期というものをできるだけ短期間に完了させるということは経済効率の上からも最も必要なことでありますので、これに対する事業の促進を講ずるとともに、特に、法案にもうたわれておるところの事業参加者に対する事業費の負担あるいは特別徴収金の措置等に対しましても、これを軽減するために、国庫負担あるいは補助率の引き上げ、財政資金の確保等に十分な努力を尽くして、受益農民の負担軽減につとめるべきであるという点でございます。  第六番目は、農地開発機械公団がいままでの実施機関としての業務を残り数年間で完了して新公団に引き継ぐことになるわけでありますが、その場合最も重要なことは、今日まで十数年の間営々として機械開発公団の事業に挺身された公団職員の引き継ぎ後の処遇の問題等についても、全員の雇用に対する安定措置は当然のことでありますが、その給与体系につきましても、従来他の政府機関、公団等と均衡を失するような賃金格差が見受けられますので、この点についても、新公団発足と同時にすみやかにこれを均衡するように措置すべきであるという点と、もう一つは、現在におきましても百五十五名に及ぶ定員外の職員をかかえておるわけでありますが、これらの職員諸君の処遇については、当然短期間に計画を立てて、その計画年次の中において定員外職員の定員化に十分努力すべきであります。  さらに、今度の法案審議を通じまして、新公団の理事長及び理事並びに監事等の定数につきましては、従来の開発機械公団に比べてやや人員が上回るという点が明らかにされておるわけでありまして、当然、これは、国の負担、国民の負担を通じて公団の役員の給与というものが支弁されることになるわけでございますので、世上天下り人事の批判等もあるときでございますので、この理事長をはじめとする役員人事の問題等については、所管の農林大臣の責任において、新たなる開発公団の事業を全面的に積極的に効果的に運営することのできるような最適な人事を行ない、その人員についても極力簡素なものにするように農林大臣においてつとむべきであるということをここに明らかにしたわけであります。  以上、決議案の趣旨について主要な点を申し述べたわけでございますが、何とぞ全委員各位の御賛同を賜わりますようお願い申し上げまして、提案を終わる次第でございます。(拍手
  296. 仮谷忠男

    仮谷委員長 以上で、趣旨説明は終わりました。  本動議に対して別に発言もありませんので、直ちに採決いたします。  芳賀貢君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  297. 仮谷忠男

    仮谷委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。倉石農林大臣。
  298. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、善処してまいる所存でございます。     —————————————
  299. 仮谷忠男

    仮谷委員長 ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 仮谷忠男

    仮谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  301. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は、明二十七日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時一分散会