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1974-03-20 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    上田 茂行君       小沢 一郎君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    佐々木義武君       中尾 栄一君    丹羽 兵助君       本名  武君    角屋堅次郎君       島田 琢郎君    竹内  猛君       馬場  昇君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      杉原 真一君         外務省欧亜局外         務参事官    加賀美秀夫君         厚生省環境衛生         局乳肉衛生課長 岡部 祥治君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第四九号)  漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法  の一部を改正する法律案内閣提出第五〇号)  沿岸漁場整備開発法案内閣提出第七〇号)      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  漁業災害補償法の一部を改正する法律案漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案、及び沿岸漁場整備開発法案の各案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川利三郎君。
  3. 中川利三郎

    中川(利)委員 沿岸漁場整備開発関係についてお聞きしたいのでありますが、これまでも沿岸漁業等振興法あるいは海洋水産資源開発促進法、あるいはそれらに基づいた第一次構造改善、第二次構造改善事業というものがずっとあるわけでありまして、いまさらなぜこの新法屋上屋を重ねるようなかっこうでつくらねばならないのか。これは専門家に聞きましても、何のためにこういうものをつくるかわからないと言っているわけでありますので、そこら辺の経緯についてお聞きしたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 中川委員がおっしゃいますように、確かに、沿岸漁業等振興法という法律昭和三十八年につくられております。この法律は、この「目的」にも書いてありますとおり、平たく言えば漁業の基本的な方向を示す法律だと思います。農業で言えば農業基本法のような法律であって、具体的な施策について、必ずしも明確に計画的にきめておるわけではございません。確かに、この法律にも第三条に「国の施策」という条項がございまして、「漁場整備及び開発漁業技術向上等によって、生産性向上を図る」ということが掲げられておりますが、これは具体的な施策というよりもむしろ方向を示しておるものだというふうにわれわれは解釈しておるわけであります。したがいまして、今回出されました沿岸漁業整備開発法案につきましては、沿岸漁場整備開発を推進して、水産物供給増大沿岸漁業の安定的な発展に寄与することが現時点における緊急の課題になっておるというふうな考え方から、沿岸漁場整備開発計画制度及び特定水産動物育成事業制度を実施しようということで、この基本法たる沿岸漁業等振興法の言うならば実施法というふうに解釈をいただいてけっこうだ、かように考えておるわけでございます。
  5. 中川利三郎

    中川(利)委員 沿岸漁業等振興法基本法で、今回の新法がそれの実施法だというお話しでありますが、そうするといろいろ疑問があるわけですね。今回の新法は、一つ漁場整備開発、もう一つの柱は特定水産動物育成のための養殖、この二つの柱があるんだね。実施法がこのたったの二つの柱です。漁場整備はいいとしても、もう一つ特定水産動物の問題しかないのですから、こんな実施法がありますか。法のたてまえからしても、実施法であるならば、まだまだもっと多面的でなければならないわけですよ。そういう点で、これは法の不備だと私は思いますが、どうですか。
  6. 内村良英

    内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま政務次官から御答弁がございましたように、沿岸漁業等振興法では、第三条の「国の施策」というところで、「国は、第一条の目的を達成するため、沿岸漁業等について、次の各号に掲げる事項に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講じなければならない。」ということで、その二号といたしまして、「漁港の整備漁場整備及び開発漁業技術向上等によって、生産性向上を図る」ということが沿岸漁業振興基本方針として書いてあるわけでございます。さらに、第五条は「財政上の措置等」なんでございますが、「政府は、第三条第一項の施策を実施するため必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。」という規定がございます。  そこで、こういった各号に書いてあることにつきまして、とにかく現在のわが国漁業の直面している状況から見ますと、最近、漁場整備と、それから種苗大量生産、それの放流による栽培漁業振興という点が非常に最重点的に重要だということでございますので、それらの面につきましての法制的な手当てとして今般の法律を提案しておるということでございまして、私どもといたしましては、沿岸漁業振興法と今般の法律との関係基本法実施法関係であるというふうに考えておりまして、その実施法も、この漁場整備及び育成水面という最近の新しい栽培漁業進展に関連して出てきた問題についての法制上の措置をとる、こういうことでございます。
  7. 中川利三郎

    中川(利)委員 振興法という基本法を受けた実施法がこれだと言う。しかも、漁場開発はわかるといたしましても、もう一つ特定水産動物育成事業ですね。これは何かというと、クルマエビだとかガザミだとか、まず二つ三つしかないでしょう。実施法であるならば、それだけでなくてもっともっとたくさん範囲があるはずなんですが、この二つを無理に結び合わせてこれが法律だといって出してくることは、法の体系からいたしましても、つくり方からいたしましても、これは何かおかしいなと私は思うわけでありますが、あなたは、これは全くまっとうなものだという御理解なんですか。次官から御答弁をいただきたい。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 ただいま中川委員がおっしゃいましたように、漁場整備開発ということはわかる。実際に漁場をどれくらいのところをどういうふうに開発するかということについては、これは実施法としてわかる。しかし、もう一つの柱として、言うなら特定水産動物育成事業というような柱があるんだが、そのほうはさっぱりだめじゃないか、クルマエビマダイだけなのか、そいつの種苗大量生産放流というだけで特定水産動物育成事業にならぬじゃないか、と、こういう意味だろうと思いますが、しかし、現在のところ、このクルマエビマダイ等種苗生産放流というのは、瀬戸内海中心として実際に行なわれている。四十九年度は、瀬戸内海、九州のほかに、日本海その他の諸地域において、適当な地域を検討した上で十カ所ぐらい育成水面の個所を選定してやろうじゃないか、そして、これだけでもう終わりだというのではなくて、今後は各地域の要望をよく聞いて、それにこたえて種苗大量生産放流技術開発を進めて、本事業の対象になるようなものは秋田県のほうにももっといいのがいろいろあるだろうから、それは知恵を拝借をして、それが適当だなというようなものなどはひとつやっていこうじゃないか一どんなものがあるのか、私はしろうとでよくわかりませんが、いろいろあるようであります。あと五つ、六つ、何か適当なものがあるようだけれども、いまの段階では、これが御推奨銘柄だとまでは農林省もはっきりと言う自信がまだないということなので、いい知恵を貸してもらって、この二つだけでなくて、もっと多くのものについて種苗育成放流というものをやっていこう、と、こういうふうに考えておるわけでございます。
  9. 中川利三郎

    中川(利)委員 そんなことでしたなら、別に新法をつくらなくたって、第一次構造改善事業から第二次構造改善事業を引き続いてやっておるわけですから、これだって十分間に合うでしょう。現にそういうかっこうでやってきたわけですね。だから、今回どうしても新法でなければならないという必然性といいますか、そういうものは出てこないのですね。どうですか、次官
  10. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、最初に第一次構造改善事業をやってきた、それから現に第二次構造改善事業をやっておる、それで漁場整備等は大体いいんじゃないかということは、確かにそういう面はございます。しかしながら、現在の漁業が直面していて、特に栽培漁業振興及び沿岸漁場漁場整備が必要だということに立って見ました場合に、第二次構造改善事業につきましては、先生案内のように、第二次構造改善事業の要綱には、「本対策は、このような施策の一環として、一定の地域ごと漁業者自主的意向を尊重して樹立された統一的な計画に基づき、沿岸漁業生産の拡大、生産性の高い沿岸漁業経営育成等構造改善に関して必要な事業を総合的有機的に実施しようとするものである。」と書いてあるわけでございます。そこで、今般の法律考え方としては、第二次構造改善事業を現在やっておりまして、これによって沿岸漁業生産力はかなり上がるということは期待されるわけでございますが、しかし、国がさらにもう一歩力強くこの沿岸漁場整備計画をやろう、したがって、国が都道府県知事あるいは関係者の意見を聞きまして、これはあくまで自主的な面も十分尊重しなければなりませんから、そういうことをしながら、一方国自身一つ計画を立てて、それを閣議決定して基盤整備を大いに進展していこうということでございますから、従来の構造改善事業をさらに強力にやる、こういうようなかっこうになってくるわけでございます。  それから育成水面につきましては、これは法定する必要はないじゃないかというようなお考えかもしれませんけれども、この事業漁協等の内部的な申し合わせとして行なわれる事業でございますが、漁場の総合的な利用を確保するという観点からいきますと、何らかの適切な一つの、規制ではございませんけれども計画が必要である。  それから、さらに、利用料徴収ができるようになっておりますけれども、その額、徴収方法が、非組合員である漁業者とかあるいは遊漁者にも課するわけでございますから、これがそれらの非組合員たる漁業者とかあるいは遊漁者を不当に制約するものであってはならぬというようなこともございますので、そういった観点から、これも法制的な措置が必要だということで、法制的措置を講じているわけでございます。
  11. 中川利三郎

    中川(利)委員 第二次構造改善をもっと強めるものだと、言い方はたいへんいいのですね。そうすると、第二次構造改善ではどうしてもだめだった、失敗だった、これは十分行き届かなかったという、そういう結果が生まれて、これはどうしても新法でなければならないということになったのですか。そっちが成功しておったら問題はないはずなんですがね。
  12. 内村良英

    内村(良)政府委員 先生案内のように、第二次構造改善事業は現在進展中でございます。最初に四十六年度に指定したものが四十九年度に完成するということで、現在鋭意進展中でございまして、二次構のいろいろな成否について判定する段階にはございません。一方、二次構につきましては、かなり拠点主義的なやり方で、いま全国百八の地域をやるということになっております。そこで、今度の沿岸漁場整備計画に基づきます沿岸漁場整備は、もっと広い範囲につきまして国が力を入れてやろうということでございまして、二次構が失敗だったというようなことは私どもは全然考えておりませんし、そういうことは関係がないわけでございます。
  13. 中川利三郎

    中川(利)委員 それなら次官に聞きますが、二次構は関係ないと言われるが、ところが、この基本法である振興法昭和三十八年にできていますね。それを十何年たっていまごろ実施法をやるんだということは、これこそ怠慢じゃありませんか。十何年たっていますよ。いまは昭和四十九年ですからね。それをあなた方は、基本法は出したけれども実施法はこうしてぶっ飛ばしておいた。これこそたいへん問題じゃないですか。どうですか、次官
  14. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 そういうことではないのでありまして、これは実施法でございますが、いままでは構造改善事業そのほかのことをやってきておるわけです。方向一つつくって、部分的に構造改善事業というのをやっておるんだけれども、これを総合的に計画的に全体としてもっと進めていこうじゃないかというのが今度の法律のねらいでございます。したがって、沿岸漁場整備開発計画制度というものをつくった趣旨を考えていただけばよいわけであります。この趣旨というのは、近年の沿岸漁場をめぐるきびしい情勢に対処して、水産物供給増大沿岸漁業の安定的な発展をはかるために国が漁場整備計画を作成する。そして、沿岸漁場の大規模整備開発を総合的かつ計画的に進めようということでございます。ともかく、いままではいままででやってきかんだけれども、もっとよく総合的、計画的にやろうということで、いままでは基本法だけつくって何もやらなかったじゃないかとおっしゃいますが、そうじゃない。やってはきておるんだが、もっと総合的、計画的にやるためにこの法律をこしらえようと、こういうふうに御理解をいただきかいと存じます。
  15. 中川利三郎

    中川(利)委員 もっと総合的、計画的にやるために十何年もブランクがあった、その間実施法なぶん投げてきたということですね。いま次官から新法をつくる国際的なあるいは国内的な要因のお話しがございましたが、そうすると、新法の目千は一体何なのか、国際的な規制が強化されてきたからこれをつくったのか、需給ギャップがなかなか埋まらないということでこれをつくったのか、沿岸漁場の喪失がどんどん進行しておるということでつくったのか。もっとよくということでありますから、そういうふうにも考えられるわけですが、この新法目玉はこの三つのうちの一体何に当てはまるのですか。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 それは、いま言ったような二つの大きな目玉があります。ただ、いまあなたがおっしゃったように、国際的な事情というものもかなり変化をしてきておりますし、大洋ではなかなか魚がとりづらいというような問題もある。一方、高級魚の需要も非常に多いということになれば、沿岸漁場を、手の入れ方によっては振興できるのでありますから、もっと総合的、計画的に振興するための法律をこしらえてやろうということです。それは経済でありますから、国際の動きや何かに敏感に順応していくということは当然なことではないかと私は思っております。
  17. 中川利三郎

    中川(利)委員 そんなにすばらしい新法でありましたならば、それによって漁民の暮らしはこれからよくなるんですね。漁獲もふえるんですね。それをはっきりさせてください。そういう見通しがちゃんとあってあなた方は出したということでしょう。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 ですから、先ほど来言っているように、今度水産三法を出しておるわけです。その中では、漁家が大型化すれば資金のワクも大きくしてやろうとか、あるいは、災害補償等の問題についてももっと手厚くしてやろうとか、また、稚魚を生産して放流するとかいうことで、魚というものがふえるようにすればとりやすくなるわけですから、この三つ法律がつくられて、これがうまく運用されれば、いまよりは必ずよくなる。常識的にもそういうことはだれでもわかると思うのです。
  19. 中川利三郎

    中川(利)委員 そういう特定の魚を放流して魚がふえれば、常識的にみな景気がよくなるのだ、漁家のふところはよくなるんだとおっしゃるが、しかし、いまあなたがおっしゃったように、たとえば特定水産動物育成に対して十カ所つくるとして、この十カ所の予算を聞いてみましたら百四十万円というのだな。百四十万円で十カ所ですから、千四百万円だ。そこで、日本漁業がものすごい発展をするという保証がどこにあるのか。これは今年度だけで、来年からまた別にやるのだと言うかもしれませんが、裏付けはこういう状況なんだ。日本水産が、あなたのおっしゃるようなかっこうで、これで国際的に影響を及ぼすようなすばらしいものが現出してくるという根拠としては、農林次官の発言としてはいささかさびしいどころじゃない、乏しいと言わなければならないと思いますが、どうでしょうか、次官
  20. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 その部分だけを取り上げて、それだけしかないというようなことをおっしゃればいろいろな議論が出ると思いますが、この法案三つワンパッケージみたいなもので、それは三つそろってますます相乗的にその効果を発揮するというふうにわれわれは考えておるわけですよ。したがって、四十九年度は確かに十カ所で、その管理費については少しの予算でございますが、何も予算だけが多くなければならぬというわけじゃない。しかし、そのほかのところは予算がふえておるところはたくさんふえておるわけです。では、こういう法律はないほうがいいのか、あったほうがいいのかという議論になってきてしまうわけですが、これだけのものでは、あなたから見ればまだ不十分だというふうな御指摘はあるでしょうが、われわれとしても、これで完璧であって、絶対にこれは直す必要はないというふうなことは全然考えていない。しかし、とりあえずこれくらいのものはつくらなければならぬということで今度は始まったわけでありまして、これだけで全部終わりだということでもなんでもないのです。これはいまよりもっとよくしようということで、そういう情熱のもとにこれを始めたということをあたたかく御理解をいただきたい、かように考えます。
  21. 中川利三郎

    中川(利)委員 あたたかく理解することにはやぶさかではございませんけれども、それにしても、あまりにひどいじゃないか。  そこで聞くけれども、あなたの言う二つ目玉のために、新法ではどれだけの予算を用意していらっしゃるのですか。
  22. 内村良英

    内村(良)政府委員 沿岸漁場整備開発計画は、昨日も御答弁申し上げましたけれども、今年調査をいたしまして、計画をつくって、五十年を初年度といたしまして、五年計画くらいでやりたいということで、現在鋭意努力しておるわけでございます。したがいまして、四十九年度の予算におきましては、調査費と、それからただいまお話しのございました育成水面事業をやる管理費がございます。それ以外に育成水面の場合には種苗が必要だということで、その種苗につきましては、たとえば瀬戸内海のセンターでつくった種苗を国と県が補助してそういうところに持っていって放流するとか、また、別の補助があるわけでございますけれども、この事業調査費育成水面管理費では約八千五百万円の予算を計上しております。
  23. 中川利三郎

    中川(利)委員 何だかんだ言っても、八千五百万円を初年度として日本漁業にたいへんすばらしい影響を与えるのだということなんですね。わかりました。  そこで、そういうすばらしいものでありますならば、特定水産動物補助率なんかも一応ここで聞いておいたほうがいいと思うのだな。百四十万円を十カ所国が出すというのだが、その補助率はどの程度のものなんでしょうか、この際お聞きしておきましょう。
  24. 内村良英

    内村(良)政府委員 育成水面事業補助金は、県に対する補助率が二分の一、団体に対するものは三分の一でございます。
  25. 中川利三郎

    中川(利)委員 いま、基本的なこの法案の性格についていろいろお聞きしたわけでありますが、ことしは海洋法会議がある予定ですが、二百海里説なんというものがいま出ておりまして、これが非常に有力なように伺っているのですね。そうしますと、そういうものがもし通ることになりますと、日本沿岸漁業あるいは日本漁獲にどのような影響を与えるか。これは皆さんのところで試算されていると思いますから、この際御披露いただきたいと思います。
  26. 内村良英

    内村(良)政府委員 海洋法会議の結果、将来の世界の漁業規制がどうなるかということは、現在まだ会議の前でございますし、どういう結論になるかわからない段階で明確なことを申し上げることはできないわけでございますけれども先生の御指摘のように、特に最近開発途上国中心といたしまして二百海里経済水域説というようなことがかなり強く出ております。そこで、私どものほうの試算で、一応外国距岸二百海里の中の水域日本はどれぐらいの漁獲をあげているであろう州ということを昭和四十六年の数字で計算いたしてみますと、約四百七十八万トンを外国距岸二百流里の水域漁獲しております。しかしながら、海洋法会議の結果についてはどういうことになる州わからないわけでございますが、このもの自身が全部なくなるというようなことはあり得ないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  27. 中川利三郎

    中川(利)委員 海洋法会議でどうなるかわからないからというお話しですが、確かにそのとおりです。しかし、水産庁はこれに対する試算も当然しておることだし、そこで私が聞きたい問題は、そういう内外情勢を踏まえてみるに、いまの新法ではそれにある程度太刀打ちできるようなかまえというものが全く見られないということですね。そういう内外情勢のきびしさを趣旨説明の中では云々しながら、新法自体の内容を見ると、そうした国際情勢のきびしさにこれがどれだけ太刀打ちできるようにやっているのかということが全く見られないが、そういう面の試算なりがございましたならば、承っておきたいと思います。
  28. 内村良英

    内村(良)政府委員 まさに、そのような漁業の直面している客観情勢があればこそこの法案を提案しているわけでございます。と申しますのは、現在のわが国漁獲高でございますが、四十七年の数字によりますと、沿岸漁業漁獲高は全体の漁獲高の二五・四%でございます。それから沖合いと申しますか、中小漁業漁獲高が四〇・八%、大規模漁業が三三・八%ということでございます。そこで大規模漁業遠洋漁業が多いわけでございますが、今後の海洋法動向いかんによりまして、一番影響を受けるのは遠洋漁業でございます。したがいまして、遠洋漁業漁獲量が将来減ることが全くないということは言えないわけでございます。その場合に、沿岸漁業の場合にはわが国が完全に管理できる資源でございますので、この沿岸漁業振興、すなわち単に自然的な資源の保全をはかるだけではなしに、資源をふやしていくような栽培漁業振興あるいは養殖振興をはかるということは、そういった客観情勢があればこそ必要でございますので、今般法案提出している次第でございます。
  29. 中川利三郎

    中川(利)委員 そういうりっぱなものだということをいま初めて伺ったわけでありますが、ところで、もう一つの柱の特定水産動物育成事業でありますが、これは十カ所云々という話が先ほどありましたね。この十カ所については、いま皆さんが選定していらっしゃるのはどことどこなのか。そこら辺についてお聞きしたいと思うのです。
  30. 内村良英

    内村(良)政府委員 具体的にどこにするかということはまだきめておりません。現在いろいろ各県から希望を聞いております。しかし、事柄の性質から見て、大体瀬戸内海、それから一部日本海等の海面において行なうということになると思います。
  31. 中川利三郎

    中川(利)委員 各県から希望を聞いている段階だと言うが、各県からどの程度希望が来ていますか。
  32. 内村良英

    内村(良)政府委員 いろいろの県から希望が来ております。たとえばクルマエビにつきまして申し上げますと、兵庫県、石川県、高知県、山口県、福岡県、大分県というようなところ、それからマダイにつきましても、広島県、大分県その他愛媛県、和歌山県、岡山県等においてはいろいろ検討中のようでございますが、いずれにいたしましても、瀬戸内海それから九州、一部日本海、こういうことになるだろうと思います。
  33. 中川利三郎

    中川(利)委員 いろいろなところから来ているという話でありますが、法案を審議するわけでありますから、そういう具体的なことをここへお出しになっていただかないことには困るわけで、それはまだ全くきまっていないということですが、きまっていない段階でどういうところから具体的に来ているのかというような資料は出していただいたほうが私たちも審議するために非常にいいことなわけでありますね。それでなくても新聞なんかでは見ておるわけでありますが、条文だけ出して中身がわからないということでは、私たちもなかなか容易に審議することができませんので、そこら辺については、たとえ決定しておらなくても資料として出すとか、こういうことについてはいかがでしょうか。
  34. 内村良英

    内村(良)政府委員 予算が成立いたしましてから正式にいろいろきめるわけでございますけれども、ただいま申し上げましたような県からいろいろ要望が来ております。その他の県も検討中だと思います。したがいまして、この段階で県の名前まであげて——国会の御審議のことでございますから、出す必要があればもちろん出しますけれども、各県との関係を考えた場合に、具体的に県名を出して御審議の参考にすることはどうかなという感じがちょっといたしておりますが、なお検討してみたいと思います。
  35. 中川利三郎

    中川(利)委員 なお検討するということでありますが、私の手元にはいろいろなところから具体的な事例があがってきておるのですよ。たとえば育成水面の事例としては、広島県の倉橋町から倉橋本島と大情島、小情島と鈴鹿島を含んだ百二十万平方メートルの水面、ここは水深が五十一メートルのところですが、ここからタイの養殖の問題でいろいろおたくのほうに申請が来ていると思うのですね。しかし、ここでも四つの漁協の漁業権が入り組んで非常にわからなくなっている。調整がとれないという問題もあったり、あるいはせっかくそういうものをつくっても、普通の釣りマニア、魚釣りのファンの連中が入ってきたときはどうしたらいいのかとか、あるいは飼い付け漁業権、つまりこっちでえさなり何やらやるわけですから、そういう点をあわせて設定できるようなルールをつくる方法はないだろうかとか、こういうようなことで具体的に私たちのほうへ問題提起があるわけですね。皆さんのところではいまこれから検討すると言うけれども、実際は、下のほうでこういうふうに問題があがってきている状況の中では、検討するということよりも、この法案審議の中へそういう状況を含めて御提出なさるほうが賢明ではなかろうか、そのほうがいいのではなかろうか、と、このように私は思いますので、あわせて重ねて御質問いたします。
  36. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生からお話しがございました広島県の例は、私どものほうまでまだあがっておりません。したがいまして、そういうようなケースがまだたくさんあるんじゃないかと思います。この際私どものところまで届いているものを県名まで、場所まであげて出しますと、ただいま先生からお話しのありましたようなケースは、自分たちのところは無視されているんじゃないかというような誤解も招くおそれがあると思いますので、もうちょっと時間をかしていただきたいというふうに考えているわけでございます。
  37. 中川利三郎

    中川(利)委員 いろいろ話してきましたが、この法律をつくるからりっぱに沿岸漁業が守られ、発展するというよりも、いまやらなければならないことがまだまだたくさんあるんじゃないかというような感じが私はするわけですね。この法によって保護されるという部分と、いまの現状の沿岸のたとえば漁港その他で、さっそくでもやらなければならない既存漁港をどう守るかということ、あるいは漁場をどう守るかということ、こういう点を全部抜きにしてこの新法によって一切解決するというようなことは、新法の各条文から見ても、私は非常に疑問に思うのですね。  そこで、具体例として少しお聞きしたいわけでありますが、私は秋田県の人間でありますが、私のところに男鹿半島という国定公園がございます。この男鹿半島のつけ根に船越という漁業協同組合がございまして、組合員が九十七名おりまして、ノリの養殖事業をやっているわけであります。大体、この辺の漁民の方々はもともと出かせぎ漁民でありまして、冬場はずっと出かせぎに行っておった。そういう状況ですが、いま、ノリの養殖を手がけましてから出かせぎをしなくてもいいようになってきた。たとえば一人で五十枚から三百枚のノリ網を持って、全体で一万五千枚のノリを生産しているわけですね。最近ようやく軌道に乗りまして、漁家の粗収入で二百万から四百万という状態に達してきておるわけです。ところが、御承知だと思いますが、列島改造計画路線に乗ったところの秋田湾の大規模工業開発が進みまして、木材コンビナートが船川にできたりして、そこの木がどんどんノリ網にぶつかって被害を与えているわけですね。輸入の外材量がふえることに比例して、流木によるノリ被害がふえております。それが昭和四十六年には約一千万円、四十七年には千三百万円、四十八年には千五百万円、四十九年の一月だけでも六百万円の被害を与えているわけです。木材輸入会社である日本通運あるいは地元の秋田海陸運送という会社と交渉をやっているけれども、一〇〇%補償されたためしがないということなんです。しかも、県当局ではこれに対して全く関知しないという態度をとっておるわけであります。  少し説明になりますが、ことしは沖流し、つまりべた流しというものを始めたのに、十二月の流木で全くぶちこわしになってしまった。しかし、だからといって漁民は悲観しておらないですよ。一生懸命がんばって将来の展望を持っているのです。なぜかというと、自分たちが一生懸命やれば見通しがあるんだということですね。国にも、県にも、十年間制度資金も何も一切の世話を見てもらわないで、自分たちでりっぱにやっているのですね。そういう自信と確信がそうさせているのだと思うのです。とりわけここのノリはスサビノリという種類のノリで、荒海の中ではえるわけですね。したがって病気にも強いということで、宮城県や岩手県や北海道はもとより、本場の三重県からさえも種網を買いに来るし、最近では秋田県の水産試験場もここから種苗を買っていく、こういう状況が生まれているのですね。  そこで、まずお聞きしたいことは、せっかく皆さん方が一生懸命やっているところに流木が流れてどんどんこわしていく。だれもそれを援助する者はいない。自分たちの負担で被害を何とか食いとめたり、補償の要求に行ったりするわけですけれども、それが非常に不十分だ。こういう状態になっているわけでありますが、こういう事例を水産庁は知っておりますか。
  38. 内村良英

    内村(良)政府委員 承知しております。
  39. 中川利三郎

    中川(利)委員 承知しておるそうですね。承知しておったら、御指導なり何かしたことはございますか。
  40. 内村良英

    内村(良)政府委員 流木の所有者がはっきりしておる場合には、所有者に対して損害賠償を請求すべき民事上の問題でございます。したがいまして、水銀その他の場合にも、そういった問題は原因者が補償するという原則があるわけでございまして、水銀その他の場合にはなるべく県が仲に入ってあっせんするようにという指導をしております。こういったケースにつきましても、それが非常に大きな被害になってくるという場合には、県に入ってもらって合理的な補償の話し合いができるというようにするのが望ましいと思っております。ただ、具体的に幾らにするという裁定は県ではできませんので、損害の補償の最終的な額については、やはり民事上の問題として決定さるべきものと思っております。
  41. 中川利三郎

    中川(利)委員 こういうことは民事上の問題だということで、当事者にまかせておる。当事者はそのために大きい損害をこうむっておるわけですね。これに対して県も、直接には私のほうは関係ないんだということで、いまのお話しだと、水産庁も直接私のほうには関係ないんだということだ。しかし、ここに実態として、漁民が受けている大きな被害というものの事実があるわけですね。ですから、これに対しては何らかの指導なり口添えなりを——相手は大会社ですから、あるいは相手は漁民より強い立場のものですから、当然民事上の責任だからその部分で解決せよということだけではなしに、一応御指導というかっこうでいろいろと助言して、皆さんの立場に立って御指導していただくということが大事じゃないかと思うけれども、その点はどうですか。
  42. 内村良英

    内村(良)政府委員 私ども水産行政を担当しておる者といたしましては、そういった産業と申しますか、工場の汚水の問題、あるいはただいまお話しのございました流木の問題によって漁民が非常に損害を受けておるという場合は、基本的にはただいま申し上げましたように民事上の問題として取り扱われるべき問題ではございますけれども、やはりそこで漁業者が迷惑しているということもございますので、そういった場合には県が極力仲介に入るように指導はしております。現に、水銀等につきましては、県が仲に入っていろいろやっているケースもございます。秋田のことにつきましても、一般的な指導はそういうふうに出しておりますが、なおよく県が実態を調査して、必要があれば指導するように指導したいと思います。
  43. 中川利三郎

    中川(利)委員 ひとつ、よろしく頼みますよ。  そこで、この感心な漁民の方々に対して国や水産庁はどういうことをしたのか。一つの例を申しますと、たとえば区画漁業権ですね。一定の区画の中で漁業を営むノリのような場合、この区画漁業権は三年間で更新ということになるわけでありますが、秋田県の場合は、船越漁協の方々のノリ養殖に対して、三年の実績があっても漁業権を認めておらない。四年目にやっとしぶしぶ認めたということがあるわけですね。しかも、その隣には脇本という、やはり同じ漁民のおる漁協があるわけでありますが、おっ、あそこの船越もりっぱな成績をあげた、おれたちのほうもそれをまねしてノリの養殖をやろうじゃないか、ということになりまして、その申請を県に出したら、県ではその申請は受け付けてくれないというんだな。なぜそうなのか。せっかく漁民が自発的な力でそこまでたどりつこうとし、またたどりついているのに、それを育てるんじゃなくて、むしろうまくいけば困るということで漁業権を認めないというようなやり方は問題だと思います。それについてはあなたのほうで御指導を強くしていただかなければならないと思いますが、どうでしょうか。
  44. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁業法の規定によりますと、「漁業上の総合利用を図り、漁業生産力を維持発展させるためには漁業権の内容たる漁業の免許をする必要があり、かつ、当該漁業の免許をしても漁業調整その他公益に支障を及ぼさないと認めるときは、」都道府県知事は当該水面につき漁場計画を立て、漁業権の免許をしなければならないということになっております。したがって、単に埋め立て計画が進められているという理由で漁業権の免許が行なわれないということはないわけでございます。  そこで、ただいま先生からお話しのございました秋田県のケースにつきまして、実態はどうなっておるかと、私どものほうで県に照会したわけでございますが、県の報告によりますと、ただいま申し上げました漁業法の規定に基づきまして、従来から養殖の実績のある船越漁協については県が漁業権の免許をしております。しかし、脇本漁協の地先海岸につきましては、県当局の見解によりますと、相当部分が岩礁なんだそうでございます。したがって、ノリの種場の漁場としては適当でなく、現在は免許していないということでございます。私どもといたしましては、漁業権の免許の問題につきましては、今後とも県とも十分協議して、こういった問題についても沿岸漁業振興に支障のないようにやりたいと思っておりますけれども、県の見解では、どうもノリの種場漁場としては適さないところだということで免許していないということになっております。
  45. 中川利三郎

    中川(利)委員 その脇本地域というところは適当じゃないから免許を与えていないというお話しでありますが、現実にノリの養殖をやっておるわけですね。しかも、申請を受け付けておらないということですね。申請を受け付けて、そこで審査して、漁民が納得する形で、ここはこうだからだめなんだというならまだ話はわかりますけれども、申請を受け付けておらないということは、何かほかの意図があるんならともかく、妥当な指導のしかたではないというふうに私は思いますが、いかがですか。
  46. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁業法によりますと、漁業計画を立てまして、それに基づいて免許するということになっておるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、受け付けているか受け付けていないか報告を受けておりませんので、なお県に照会をいたしまして、遺憾のないようにしたいと思っております。
  47. 中川利三郎

    中川(利)委員 どうか、それも頼みますね。  この船越の場合ですけれども、これだけ一生縣命やって、これだけの成果があがっているわけですが、実際は系統資金も何も借りておらないんですよ。借りられないんですよ。貸してくれないんですな。そこで、市中銀行から三百万だ、五百万だといってノリ加工のいろいろな機械を買っているという事実があるのですね。これについても系統金融機関のほうで尽力していただきたいわけでありますし、外材の流木等の被害については強力に指導するという話が先ほどありましたから、せめてそういう金融問題についても指導を強化していただきたい。このことをお願いしたいわけですが、これに対する御見解をお聞きしたいと思います。
  48. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁協が信用事業をやっております場合には、当然近代化資金は借りられるわけでございます。それから、漁協によりましては信用業務を行なっていない漁協もございますが、その場合には、漁協が直接その原資を信漁連なり自分の金でやるということはできませんので、農林中金から資金を借りまして近代化資金を貨すという制度になっております。したがいまして、制度といたしましては、近代化資金が必ず借りられるというたてまえになっておりますけれども、信用事業をやっていない漁協の場合にはいろいろ問題がある面もございますので、遺憾のないようにその点についても指導したいと思っております。
  49. 中川利三郎

    中川(利)委員 このほんとうの理由なり原因については、私はあとで申し上げたいと思います。  次に、漁港の問題ですけれども、八郎潟の周辺に江川という漁港があるのですが、この江川地区の漁港というのは、八郎潟を干拓したために代替漁港としてつくったところなんですね。ところが、つくられた当時の十年前の状況では、漁港そのものは百年間保証つきの設計だと言っているのです。ところが、ショートカットしたところにできていますから、毎年流砂がどんどん入り込んできて、せんだっての地元の新聞を見ましても、「しけのたびに流砂被害 船越水道の船入れ場」「埋まる恐れも十分 本腰上げぬ国や市」という見出しの写真入りの記事が出ていますが、漁民が非常に難渋しておるわけですね。これは国が、農林省が、特に八郎潟干拓をして代替をつくってやったという経緯もありますが、現在は、昭和三十八年に事業団から男鹿市に移管になっておりますが、干拓工事が原因でこういう状況がいまも引き続いて起こり、漁民に損害を与えているということでありますから、何度かにわたりまして東北農政局に陳情に行って、国の責任で何とかしてもらえないだろうかということを要請しておったわけでありますが、まだ実現しておらないし、非常に困っている。こういうことでありますが、さっそく水産庁のほうで実情を御調査の上しかるべき措置をしていただけるかどうか、お答えいただきたいと思うのです。
  50. 内村良英

    内村(良)政府委員 県ともよく相談いたしまして、しかるべく措置をしたいと思っております。
  51. 中川利三郎

    中川(利)委員 これもよろしく頼みます。同時に、漁港といったって第一種漁港にもなっていないんですね。そういう点で、みんな成績をあげて、そして有望で、張り切ってがんばればわれわれは魚でめしが食えるんだ、出かせぎしなくてもいいんだという自信を持っているから、それを前向きで育てるようなかっこうでやっていただかなければなりませんので、そういう第一種漁港にしていただくことやら、漁港の修築等についてもいろいろめんどうを見てあげていただきたい。第一種漁港に該当するわけでありますから、その点できれば極力がんばっていただきたいが、この点を重ねてお聞きしたいと思うのです。
  52. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁港を第一種漁港にするかどうかにつきましては、いろいろ基準その他の問題もございまして、ここで簡単にそういたしますということをお答えできる性質の問題ではございませんが、なおよく検討してみたいと思っています。
  53. 中川利三郎

    中川(利)委員 それで、おかしいことに、秋田県の状況を見ますと、県の水産課長さんが太鼓判を押して、この数年間でどんどん発展している漁港は、いま言った江川だとかあるいは船越だとか、ああいうところが発展していると言うんですね。つまり、あまり県にめんどうを見てもらえなかったところだとか、国にめんどうを見てもらえなかったところ、そういうところで独自に漁民の皆さんががんばって前向きに発展しているという状況があるわけでありますから、そのことをとがめるのじゃなくて、そういう点について、あらためて認識し直して御指導していただきたいと思うわけであります。  そこで、今回の法案とも関連するわけでありますが、浅海漁場開発の問題について私はいろいろお伺いしたいと思うわけでありますが、日本海の中で、男鹿半島の突端に戸賀湾というのがございまして、この戸賀湾を浅海漁場開発のために政府がいろいろ御援助なさっているということを聞いておるのでありますが、簡単にその経過を御説明いただきたいと思います。
  54. 内村良英

    内村(良)政府委員 第一次構造改善事業でやった事業でございますが、そのこまかい内容につきましては、実は質問のあれがございませんでしたので、資料はちょっと持ってきておりません。
  55. 中川利三郎

    中川(利)委員 この戸賀湾は、昭和四十二年から四十七年にかけまして調査を行ない、四十八年、去年から五十一年にかけて四カ年計画で総計十億円をかけて消波堤をつくる、漁港を整備する、漁場整備する、こういう計画水産庁がいろいろ御指導なり財政的な裏づけ、援助をもってやられている事業なわけであります。  そこでお聞きしたいのは、このような戸賀湾の浅海漁場開発によって恩恵を受けるのは一体だれなんだということですね。戸賀の漁民なのか、それともほかの人なのか、そこら辺について御見解のほどを承りたいと思います。
  56. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま一次と申し上げましたけれども、一次の後半から二次にかけてやる計画でございまして、事業調査費は四十六年が五百万、それから四十七年が八百万、こういうことになっております。  利益を受けるのはだれかというお話でございますが、当然その地区の沿岸漁民が利益を受ける、こういうことになると思います。
  57. 中川利三郎

    中川(利)委員 私はここに昭和四十八年三月に秋田県が出した「戸賀湾の浅海漁場開発調査事業報告書」というものを持っておるわけですけれども、「水産庁をはじめ関係機関のご指導とご協力のもとに基本調査を終り、実施設計にもとづき昭和四十八年度から工事を実施する運びになりました。」と書いてあるわけですね。そこで、この浅海漁場開発を行なうということはたいへんいいことだと思うのですが、ただ問題は、ここでだれがどのように恩恵を受けるのか、一体だれがここで漁業を営むのかということが一つ気がかりなわけであります。いまあなたから、地元の方々、つまり戸賀の漁民が恩恵を受けるのだというお話しがございましたが、そうではないのです。なぜかといいますと、たいへんなことがこれには書いてあるのです。「戸賀湾に導入する漁業者については、秋田湾地区大規模工業開発によって漁場を喪失する者の一部代替漁場として活用させる。」ということが書いてあるのです。つまり、先ほど申し上げました船越だとか、江川だとか、その他のこれから伸びるというところのあれを全部なくして、この連中の漁場なり漁港なりをつぶして、その戸賀湾に一部を集中させて、あとは切り捨てる、こういうことを水産庁が指導した浅海漁場開発調査事業報告書にちゃんと書いてあるのです。これは大問題だと思うのですが、どうですか、こういうことを御存じですか。
  58. 内村良英

    内村(良)政府委員 先生案内のように、浅海漁場開発事業につきましては、漁場の外郭、消波堤の設置、しゅんせつをして、海水交流の促進のための水路を掘ったり、それに関連する施設を整備していくというものでございます。したがいまして、そういったことによって漁場生産力が非常に上がっていくということは、過去のいろいろな事業の成果を見てもはっきりしておるわけでございまして、そういった事業によってその地区の沿岸漁民が利益を受けるということは先ほど申し上げたとおりでございます。  なお、そういった地区に漁場を喪失した他からの沿岸漁民に移ってもらうということも計画一つに入っておるということは、私、実は、必ずしもつまびらかにしておりませんでしたけれども、そういったことも、生産力に余力が出てくれば、県としては、県の行政として当然考えることはあるのではないかと思います。
  59. 中川利三郎

    中川(利)委員 だから、私が申し上げたいのは、いま沿岸漁業をどう守るかということは一いま工業優先の中でどんどん埋め立てられておりますね。秋田湾の大規模工業開発計画というのは、五千ヘクタールの海面を埋め立てするというのです。そこへ鉄鋼だとか石油だとかいう大企業を持ってくるという計画なんですね。そういうものに対して全く無抵抗で、むしろそれを前提として浅海漁業のいろいろな計画を立てるとするならば、水産庁はこういう大企業の工業進出に対して、つまり海面荒らしに対して、一枚かんだ役割りを果たしているのじゃないか。あなたは先ほど、船越漁港については一種にするということも検討しなければならないと言った。しかし、そういうことを検討しなければならないと言い、また、ノリの養殖をやっておる船越の人たちがこれから見通しを持っておるのだと言いながら、こういうものがつぶされていくという計画水産庁が協力してつくった計画の中に入っているということです。これでどうして沿岸漁業が守られていくのかということ、この根本問題を離れてどこに沿岸漁業発展策があるのかということですね。この点について、これはあなたのほうには大きい責任があると思いますので、農林次官から御答弁いただきたいと思うのです。
  60. 内村良英

    内村(良)政府委員 第一次構造改善事業と第二次構造改善事業とやや違う点は、第二次構造改善事業の場合にはいわゆる拠点主義をとって、同時に、知事が計画をつくります場合に、他の産業と申しますか、工業との調整を考えろということを言っているわけでございます。と申しますのは、漁業の立場から見ればどんどん漁場がつぶされていくということは確かに問題でございますけれども、また、一方、日本経済の現状から考えますと、そういったこともやらなければならぬ面もあるわけでございます。したがいまして、そういった産業開発と申しますか、埋め立て事業漁業との調整をはかって、一方、拠点的に漁業育成するところは育成するという考え方が第二次構造改善事業考え方の中に入っているわけでございます。したがいまして、二次構の中でそういった問題を全然扱えないということにはなっておりませんので、県は県の中のいろいろな産業開発漁業との調整ということを考えてそういった措置をとったのだと思います。
  61. 中川利三郎

    中川(利)委員 県がそういう措置をとったものだと思うということでありますが、水産庁はいやしくも魚を守り漁民を守る総元締めなんだね。国がどんどん開発する、埋め立てをするということに対して、その計画の中に水産庁も一枚入って、その分を除外して拠点的にやっていくことについて賛成しているという事実、この中で日本沿岸漁業はどんどんすたれてきたのだろうと思うのです。まして、いまお話ししたように、船越だとか、江川だとか、その他の漁協の方々がせっかくいま希望を見出して、三重県からでさえもノリの種を買いに来たり、県の水産試験場も買いに来たり、そういう状態になって、粗収入も出かせぎに行かなくたっていいだけになっているのに、それをいまつぶすことについて、代替漁港をやるからいいのじゃないかと言う。しかも、場所はずっと離れていますね。しかも、それも、そこの漁民が全部行けるのじゃなくて、一部の方にそれを差し上げる。あとの人はどうなるのかということは何も書いてないのです。これはいまの沿岸漁業の根本的な問題であろうと私は思うのですが、とりあえずこれは自分の地元のことでありますので私は黙っておれないです。水産庁の責任が当然問われなければならないだろうと思うのですが、この点について重ねてお聞きしたいと思うのです。
  62. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもといたしましても、埋め立て工事によって沿岸漁業漁場が喪失されていくということは非常に遺憾なことだと思っております。と申しましても、一方、国全体の産業開発という点から考えれば囲め立て事業もある程度やらなければならぬ面があるということもまた肇実だと思います。そこでそういった点の調整をはかるという意味から、二次構の計画をつくるときには、そういった他産業との調整を十分考えてつくれということにしているわけでございまして、埋め立てが無計画に進むことは、もちろんこれは全く好ましくございませんし、水産庁といたしましては、そういった無計画な埋め立ての進行に対してはいろいろと関係方面に話をするということをやっておりますけれども、ある程度計画的に漁業と産業開発との調整をはかっていくということは、国民経済の現状から見て妥当なのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  63. 中川利三郎

    中川(利)委員 いま男鹿半島の六つの漁協というか、漁港といいますか、そのうち三つがつぶされようとしている。しかも、秋田湾というものがございまして、これは広大なすばらしい湾なんですね。そこへ五千ヘクタールの埋め立て地をつくる。五千ヘクタールというのはものすごい面積だと思うのです。あの例の鹿島コンビナートでさえも一千ヘクタールなんですね。五千ヘクタールものものを埋め立てするということになると、魚族資源は一体どうなるかということが水産庁の中でも大問題になって、そういう大問題をいろいろと集約した中でこうだという経過があるならともかく、何にもその経過がなくて、県がそういう方針であれば当然そういうこともあり得るという一ぺんのあなたの御答弁では私は全く納得できないと思うのです。
  64. 内村良英

    内村(良)政府委員 県がいろいろ県内の事情を考えましてそのような計画を立ててきて、私どもに協議をしてまいったわけでございます。そこで、私どもといたしましては、秋田県の現状から考えて、そういったことが秋田県自体の経済発展にもなるのではないかという観点を考慮したわけでございます。
  65. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなたは秋田県の現状から考えるという人じゃなくて、水産行政をどう守るかという立場からものを考えなければならない人じゃないですか。秋田県から言ってきたから、当然それは県が必要だろうと思って私はそっくり賛成しましたということだったら、水産庁なんか要らないじゃないですか。何のために水産庁があるのですか。水産庁だったら、水産行政をどう守るかという立場から十分あなたはものを考えるべきです。五千ヘクタールも埋められるのですよ。これに対して論議の煮詰めも何もなくて、そういうことで日本水産行政や沿岸漁業を守ることができますか。このことを私は聞いているのです。
  66. 内村良英

    内村(良)政府委員 私ども水産行政を担当する者といたしまして、日本水産業の発展振興のためにベストを尽くさなければならないことは、ただいま先生からおっしゃいましたとおりでございまして、私どももそのつもりで仕事を担当しているわけでございます。しかし、他産業の発展漁業との調整という問題は秋田県の県民の所得の問題とも関係がございましょうし、県の産業振興その他の問題とも関係があるわけでございます。したがいまして、県が考えておることに対して水産庁はこうだと言って、沿岸漁業のために埋め立てば絶対やってはいかぬということを言うことは行き過ぎではないか、そこは県の行政の実態、県の経済、それから日本経済水産業との調整ということを考えて行政をすべきもので去る、こういうふうに私は思っております。
  67. 中川利三郎

    中川(利)委員 県の実態については、私は県人ですし、県民に責任を負う立場の者がこう言っているのですからね。あなたの言う県というのは、県当局の話でしょう。私は県民の立場からものをしゃべっているのです。だから、たとえ他産業との関連云々と言ったところで、五千ヘクタールものものを埋め立てるにあたって、地元が、そういう計画だからしようがないということで簡単に納得するかどうか。それだけの埋め立てが漁業資源にどれだけの影響を与えるかというデータだとか、いろいろなものをとって、その結論として同意したかどうかということがこの際問題だと思うのですが、そういう蓄積なり論議の経過が一体あるのですか、ないのですか。
  68. 内村良英

    内村(良)政府委員 県の計画は出ております。それについて協議を受けておるわけでございますが、ただ、どこを埋め立てるかということは、県から水産庁のほうに報告がまだ来ていないわけでございます。
  69. 中川利三郎

    中川(利)委員 水産庁もよくよくなめられていますな。計画は五年も六年も前から発表されていますよ。どこを埋めるかという図面も持たないで、何であなたは賛成したのですか。水産庁の御指導で、と、ちゃんと書いてあるでしょう。水産庁が金を出しておるのでしょう。その図面も何もわからないで、五千ヘクタールが埋められるのかどうかも、何もわからないであなたは賛成するのですか。冗談じゃないよ。
  70. 内村良英

    内村(良)政府委員 浅海開発事業をやっている地域と埋め立てる地域とは違うわけでございます。したがいまして、私どものほうといたしましては、浅海開発事業につきましては十分にいろいろなデータをとってやっているわけでございますが、埋め立てにつきましては、その結果一部の沿岸漁民はそこに移るという計画で、その事業が完成してからその辺は検討しなければならぬ問題もあるということで、埋め立てについては必ずしも十分なるデータは県からもらっていないということになっております。
  71. 中川利三郎

    中川(利)委員 水産庁の指導の中でやったのだから、これはいまの答えでいいでしょうが、そうすると問題は、秋田湾を五千ヘクタールも埋め立てることについて、あなたのほうには計画書も来ておらないし、図面もわからないし、そのためにどれだけ漁業資源影響を与えるのかということにも何にも関係ないということなんだな。そうすると、水産庁関係ないということなんだな。こんなことで沿岸漁業を守れるかと聞いているのです。
  72. 内村良英

    内村(良)政府委員 埋め立ての免許を出しますのは知事でございます。埋め立てをします場合に、当該地域漁業との関係あるいは漁民に対する補償その他を知事が考えることは当然でございます。したがいまして、それについていろいろ問題があれば水産庁に協議してくると思います。ただ、知事が県の行政の責任者といたしまして、県のためにそれが一番いいのだということで判断してやっているということであれば、私どもといたしましては、県のそういった行政責任者の立場は尊重しなければならぬということになるわけでございます。もちろん、水産行政全体の立場から私どもは関心があるわけでございますが、県からそれをどうしようかという相談があった場合には、水産庁として直接行政的な問題として取り上げることができる、こういうことになるわけでございます。
  73. 中川利三郎

    中川(利)委員 私は、この前の荒勝水産庁長官のところへ、そこの関係漁民を連れてどうかしてくれと何回も行っているのです。たとえば男鹿の船川というところに日本鉱業という会社が新たに埋め立てしているのですね。このことをやればみんな住民は困るからということも含めて、荒勝さん時代に陳情にも行っているのです。そうしたら、どう言ったかというと、それは水産庁関係ないと言うんだ。それは漁業法だか何かによって、三分の二の漁民の反対があればなかなか埋め立てすることはできないのだが、水産庁は、そのように沿岸漁業自体に対する影響がたいへんだという状況が明らかになっても、これに対しては指導も何もしない。こういうあり方が今日の沿岸漁業の衰退をもたらした大きい原因じゃないかと思います。したがって、それでいいのかどうかということを含めて、農林次官からお聞きしたいと思います。
  74. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 法制上、埋め立て問題等について水産庁が権限をもって発言することはあまりできないということになっております。したがって、今度は、こういうような整備計画等をつくれば、当然その計画については農林省と相談することになるから、やはり、その足がかりにもなるし、この法律を通せばいまよりは発言権があるということになるわけであります。  また、各県の知事の権限内で行なわれたことについて、水産行政とたいへん重大な衝突をするようなことについては、農林省は当然行政指導をいたしますが、法制上、水産関係の許可権その他相当大幅に知事に権限を委譲してありますから、その中で知事が住民の意思を聞き、県の議会の意見も聞いて行なうことまで一々こまかいことを農林省がくちばしをいれるというのもいかがなものであるかと思います。地方自治体がそれぞれの権限をもって独立して権限委譲をされてやっておる点については、それはそれなりに、地方自治の自主性というものもある程度尊重しなければならぬと思っておるわけでございます。ですから、あなたのおっしゃるような問題はむしろ秋田県議会で大いに取り上げてもらったほうがもっと効果的であろうというふうに考えます。
  75. 中川利三郎

    中川(利)委員 そうすると、水産庁は要らないわけだ。県会だけでやれば、あとは水産庁は何も役に立たないということを次官おっしゃったような気がしますが、それはともかくとして、あなたは、この法案が通ればいままでよりも発言権があるというようなことをいま言いまして、それなりの理由らしいことを言いましたが、私はちょっと聞き漏らしたので、どういう意味でどういうものに対していままでより発言権が強くなるのか、ちょっとお知らせいただきたいと思います。
  76. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 それは漁場整備計画等をいろいろこしらえるわけですから、全体的な基本計画をつくるし、県からもいろいろ計画を聞いて一緒につくっていくわけです。だから、その計画が農林省に無断でつぶされていくようなことはあり得ない。そういう点において、農林省は県との間でもっと密接な連絡がとれるし、法制上、行政指導上そういうことがやりよくなるという意味でもっと発言権が出てくる、こう言ったのです。
  77. 中川利三郎

    中川(利)委員 たいしたことないね。そこで、では、話を次に進めさせていただきます。  男鹿に秋田県の水産試験場がございます。ここの同じ戸賀というところに水産試験場の戸賀分室というのがあるわけでありますが、これは第一次構造改善事業で、昭和四十一年に日本海最初種苗センターとして皆さんの手によってつくられたものです。これは今日県に移管されまして水産試験場ということになっているわけでありますが、ここの人員は、本所、分室を含めまして、全部で三十八名おるのですね。技官、技師が二十八、補助が五、事務員が四ですね。ここの予算で、種苗生産状況を見ますと、増養殖研究が三百万円なんだな。種苗生産研究が二百三十二万円なんです。両方合わせて五百三十二万円です。浅海漁場開発だとか言って、すさまじいかけ声で国がつくった日本海初めての種苗センターなんというところの中身がこういうことなんですね。ところが、この五百三十二万円という研究費の中でも、半分以上が歳入費ですね。物を売った金をちゃんとそこへ組んであるわけですね。歳入費を組んであるわけですね。こういう貧弱なといいますか、問題にならない状況が現実の姿だということです。これは、国の立場からしますと、どうせいまは県のほうへ移管したんだからおれは知らないと言うかもわかりませんけれども、そういうことではありませんね。そして、県内のいろいろな漁協から、アワビの稚貝とかいろいろな注文が来ます。去年なんかの話によりますと十五万個の申し込みが来たそうですけれども、実際需要にこたえることができたのはわずか三万個だというのですね。しようがないから、あとは他県から高いものをどんどん買っているという状況が現実の姿なんです。こういう状況に対しては、県まかせということではなくて、県もいろいろな都合があるでしょうし、国も責任をもってやったといういきさつ、経過もありましょうから、もう少し実のある、恥ずかしくないような状況に御指導なり御援助をいただきたいというのが地元やら私たちの意見なわけでありますが、どうでございましょうか。
  78. 内村良英

    内村(良)政府委員 県の水産試験場の場合には、責任は県が負っておるわけでございますが、国といたしましても、都道府県の行なう水産試験場の試験研究に対しまして援助をしておるわけでございます。これは国全体の数字でございますが、四十八年度は一億二千五百万円の助成をいかしまして、四十九年度はさらに一億三千四百万円の助成をすることになっております。どういうものに助成をするかと申しますと、試験研究でございますから特定の試験研究——まあことしはこういった課題をひとつやろうじゃないかというようなことについての総合助成と、それから特定技術開発に対する助成というようなことで助成措置を行なっております。その他、海況調査に対する助成を行なっております。  それで、秋田県の試験場につきましては、四十八年度約百九万円の助成をしておりますが、四十九年度、これはまだ予定でございますので確定はしておりませんけれども、指定調査といたしまして、マダイ種苗生産技術に対する補助金を五十万円、それから漁況海況調査に対する助成を百万円出そうと思っております。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  それから、人工のアワビの種苗育成でございますが、これにつきましても国は関係の県の試験場の助成をしておりますけれども、現在のところ秋田県は助成の対象になっておりません。その他の県で助成をいたしましてつくり出しました技術をまたそこで活用していくということでいいのではないかということで、試験研究自体につきましては秋田県は入っておりません。他の茨城、千葉、神奈川の三県でそういった研究をさせるということになっております。
  79. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなたはいろいろおっしゃいましたが、何ぼ何でも、とにかく国がつくった日本海で初めてのモデル的なものとしての種苗センターの中身が五百三十二万円で、これが魚類増養殖の企業化資金のすべてだ。しかも、この中身の半分以上の六〇%は、四十八年度予算で言いますと歳入費なんですね。こういうことでは、秋田県の責任だと言いながらも、それでは済まされない日本水産行政の全体の姿をそこに見るような気が私たちはするわけですね。今度の法案でも、十カ所の特定水産動物のそれが一カ所百四十万円で、十カ所千四百万円しかないんだな。その程度のもので、法律でございます、日本沿岸漁業はこれによって一定の方向を切り開く力がございますなんていうことは、もちろん漁場整備の問題もありましょうけれども、そんな水産行政というものは、秋田県のことばで言いますと、けねというかな、かいしょうもないということばがあるのですが、全体としてそういうことであるわけであります。  そこで、水産庁全体の予算もたいへん少のうございますけれども、これでいいのかということを結論的に私はお伺いし直さなければならないし、自分でも問い直しをしなければならないと思うのですけれども、長官、どうでしょうか。
  80. 内村良英

    内村(良)政府委員 先ほどから繰り返して申し上げておりますように、昨今の日本漁業が直面している問題から考えますと、国民食料の安定的供給確保、特に動物たん白質の確保という点から見ましても、沿岸漁業振興ということは非常に大事なことでございます。そこで法案を提案いたしまして、御審議をお願いしているわけでございますが、と同時に、私どもといたしましては、もっと予算をふやしたいとは思っております。現在、水産庁予算は国全体の予算の〇・五%でございますが、これをもっとふやしたいと思っておりますので、今後一そう予算面の拡充については努力したいと思っておるところでございます。
  81. 中川利三郎

    中川(利)委員 まあ、何を見ましても、これぞといったものが水産行政の中に見当たらないということは私もさびしいです。あなたは今度新しい長官になったわけですから、水産庁の役人の人を含めて、もっと生き生きと働いて、働いたことがすぐ効果が出るような、また、漁民がそれによってああよかったなと思えるような状況をこの際あなたの手によってぜひともつくり上げていただきたいし、われわれもそれについては側面から御援助するのにやぶさかではないわけであります。  時間もそろそろ参りましたので結論に入るわけでありますが、ちょっと先ほど聞き落としたことが一つあります。それは特定水産動物育成事業でありますが、これを今度本格的にやるといいましても、先ほど言いましたように、クルマエビと、あと何があるのですか。いま日本開発できるものはタイぐらいなものじゃないですか。ガザミかな。それだって自信がないという状況だと思うのですが、先ほど言ったように、これでははなはだ心もとないというような感じもいたしますので、そこら辺の確信のほど、あるいは見通しのほどをお知らせいただきたいと思うのです。
  82. 内村良英

    内村(良)政府委員 十五年ぐらい前に日本クルマエビの人工ふ化と、それに基づく放流等のことが始まったわけでございますが、当時、今日までにこれほど事業として確立するとは何ぴとも思わなかったと思います。現在、クルマエビマダイ、ガザミぐらいは、大量の種苗生産放流の試験その他をもって、これは事業的にできるという自信をすでに持っております。そこで、今後、栽培漁業の伸展ということを考えました場合には、国内で需要の強い水産物、魚類について栽培漁業を拡大していかなければならぬ。それはいますぐには何であるかということは、技術的な問題でもございますのでなかなかむずかしい問題でございますが、カレイとか、ヒラメとか、そういったものまで栽培漁業の対象の中に入ってくるということになってくれば、栽培漁業というものはずいぶん広くなってくるのじゃないかと思います。したがいまして、私どもといたしましては、そういったクルマエビマダイ、ガザミ以外の魚類につきましても、栽培漁業のベースに乗ってくるような試験研究というものを大いにやらなきゃならぬというふうに考えているところでございます。
  83. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなたのほうの特定水産動物というのは、つまり、第一種共同漁業権の対象となるような、そういう底棲性の魚なのか、そこら辺を泳いでいる一定の魚なのか、それとも浮き魚が含まれている魚なのか、そこら辺はどっちなんですか。
  84. 内村良英

    内村(良)政府委員 放流しました場合に、たとえば、放流した結果、泳いでどこか非常に遠くへ行ってしまうというようなものは対象になりませんけれども、大部分の魚種というものは、放流すればその海域で生きており、それを大きくしてとろうというのが育成水面のねらいでございます。したがいまして、放流した結果四散してしまうというようなものは対象にならないわけでございますけれども、相当の歩どまりがあるというものについて考えたい、このように思っておるわけでございます。  それから、水産植物等につきましては、第一種漁業権の対象になっておりますので、漁業権行使規則その他で、それは同じような効果が発揮できるということで除いているわけでございまして、相当の歩どまりがあるというものを対象にしたいと思っておるわけでございます。
  85. 中川利三郎

    中川(利)委員 特定水産動物を特に育成する、そこへ放流するということになりますと、従来の底棲性の魚と生存の場所を奪い合うという結果になるわけですね。あるいはそのことが生態系そのものに変化を与えていく、ほかの魚の生存そのものに脅威を与えていくというたいへんなことにならないかということをひそかに心配するわけでありますが、この点はどうでしょうか。
  86. 内村良英

    内村(良)政府委員 そういった問題が全然ないとは私も申し上げられないと思います。ただ、現在までのいろいろな知見によりますと、瀬戸内海でもとにかくクルマエビ自体がふえている。これは自然のものもふえているのではないのかというようなことも考えられるわけでございます。
  87. 中川利三郎

    中川(利)委員 私は、昨年の漁業白書に対して本会議でも質問しているわけでありますが、その際も御指摘申し上げたと思うのですけれども日本沿岸漁業をそういう局部局部にいろいろな施策をすることは決して悪いとは言いませんけれども、いまの大企業の埋め立てのような、こういうものに根本的に手をつけない限り、あなたが一生懸命やっても、次から次へとだめになっていくわけですね。そういう点で、水産庁は、埋め立てはおれのほうには関係ない、おれのほうはその計画の中でも——つまり、残地農業論ということが列島改造論の中にありますけれども、余り地農業のかわりにあなたのほうで、埋め立てをしたあとの残りで余り地漁業をやる。漁港でもみんな代替漁港を余ったところにつくって、そこで何か細々〉やる。こういう筋書きになっておるように私は思うのですね。その限りでは前向きの漁業発展は出てこない。だから、こういう漁業と最も敵対するむやみやたらな工業開発が妥当かどうか。あなたはいま五千ヘクタール埋められる秋田湾の話をしましたけれども、これが妥当かどうかということだって、当然水産庁として苦情を出していいところだと私は思うのですね。そういうことに全然触れないで漁業発展させると言ったって発展できないと私は思うのです。  いろいろと法案を出してきていますけれども、この問題に対してあなたは何と考えておるのか。内村さん、あなたは水産庁長官としてほんとうに責任を果たしているのか。あなたも政府の役人ですからなかなか言いにくいこともあると思いますが、しかし、これは根本的に考えなければいけないというふうに私は思うのですが、この点に  ついて御所見を承りたいと思います。
  88. 内村良英

    内村(良)政府委員 先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては、日本水産業の発展のために大いに行政的な力をいたさなければならぬというのは当然でございます。その場合に、埋め立ての問題が、漁場汚染の問題あるいは漁場喪失の問題とからんで重大問題だというのも先生のおっしゃるとおりでございます。しかし、一方、水産行政も国の行政の一環でございますから、他の行政との調整をはかり、その中において水産業の利益を十分に守っていくという態度でやりたいと思います。何が何でも埋め立てば絶対反対、一切反対という立場ではできない面が行政としてはやはりあるわけでございまして、その点につきましては、二次構におきましても十分調整をするように配慮されておりますが、なお今後十分そういった点に配慮して行政を進めたいというふうに考えておるわけでございます。
  89. 中川利三郎

    中川(利)委員 何が何でも絶対反対せいと言うのではないのですよ。漁民が直接それによって被害を受け漁港を奪われるという現実があるにもかかわらず、あなたのほうでは、埋め立てば私のほうは関係ないのだ、たれ流しは関係ないのだと言う。漁民はその中に含まれているのですから、この漁民をどうするかということですね。漁場がなくなれば漁民は困るわけですからね。そういう点でもう一歩突っ込んだ手を差し伸べない限り、幾ら新法をつくっても、絵にかいたもちになるということを私は申し上げたわけであって、漁民がその中にいるのですから、ここの観点についての御決意をもう一回お伺いして私の質問は終わります。
  90. 内村良英

    内村(良)政府委員 そこに漁民がいるとおっしゃいました先生のおことばもそのとおりだと思います。そこで漁業権の消滅の問題になるわけでございますが、その場合には漁業者の意思というものはいろいろな形で反映できることに制度上なっております。しかし、よりもっと大きな立場から調整すべきではないかというお話しでございますが、私どもといたしましては、現地の漁民の意向が第一に尊重さるべきであり、さらにそれをいろいろな形で行政的に指示していくというのが水産庁の行政推進の基本的立場だと思っております。
  91. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時七分休憩      ————◇—————    午後一時十八分開議
  92. 仮谷忠男

    仮谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林孝矩君。
  93. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ただいま上程されております法案に対して質問するわけでありますが、最初に、水産物の国民食料に占める地位に関して基本的な見解を伺っておきたいと思います。  水産物の国民食料に占める地位というものは、人口の増加に伴って非常に重大な地位を占めるようになってまいりました。そこで、農林省としては、他の食料と比較して、この水産物が国民食料にどういうウエートを持っておるものか、それをどのように評価されておるか、将来にわたって見通しをどのように持っておられるのか、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  94. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 御承知のとおり、たん白の五〇%を供給をしている水産業というものは、日本にとって非常に重要な地位を占めておる。いま日本で食料危機というようなことが言われておりますが、これは動物たん白をとるために外国からばく大なえさを輸入しておるということだと思います。動物たん白一カロリーをつくるのに穀物を七カロリー必要とする、こういうふうなことのために、えさが一千万トンも輸入をされる、こういうようなことで、船腹が非常にふくそうする、あるいは油が高い、しかも外国の値段が高いというようなことから非常な問題を起こしておるわけでございますが、水産業の場合には、これはそれほど膨大なえさを与えなくても済むということであります。したがって、遠洋漁業あるいは沿岸漁業の維持発展というものは、資源のない日本にとってはきわめて重要なことである。でありますから、遠洋漁業振興策あるいは今回の三法案提出したわけでございますが、沿岸漁業においてもいろいろな施策を講じ、また、漁家規模拡大ができ、経営の合理化ができてやっていけるようないろいろな措置を講じてまいりたい、かように考えております。
  95. 林孝矩

    ○林(孝)委員 さらにもう一歩具体的に数値をあげて、他の食料と比較して答弁を願いたいと思います。そして、この件に関しては、将来に対する問題も含めてお伺いしたいと思います。
  96. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま政務次官から御答弁がございましたように、動物性たん白質の五〇%以上は魚介類によって供給されているわけでございます。そこで、四十七年の実績について数字を申し上げますと、総たん白質は、一人一日当たり七十八・四グラムでございます。そのうち植物性が四十四・七グラムございまして、動物性たん白質が三十三・七グラム、そのうち畜産物が十六・四グラム、魚介類が十六・六グラム、さらに鯨肉が〇・七グラム、こういうことになっております。  そこで、将来はどうなるかということでございますが、この数字はなかなかむずかしいわけでございますが、一応個人消費支出が八%伸びるだろうということを前提にいたしまして五十七年を試算した数字がございます。それによりますと、一人一日当たりのたん白質の必要量は九十グラムぐらいになるのではないか、そのうち四十二・二が植物性、四十七・八が動物性、そのうち二十三・四グラムは魚介類で供給したい、こういうふうに考えております。そうなりますと、現在の漁業生産高は、御案内のように四十七年が約一千二十一万トンになっておりますが、これを一千二百万トン程度に引き上げなければならない、こういう計算になるわけでございます。
  97. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この四十七年度の数値というものは、これはたとえば四十六年、七年、八年、九牛と、こういう流れで見た場合に、その増減はどういうパーセンテージを占めるようになっていますか。
  98. 内村良英

    内村(良)政府委員 御質問の意味がちょっとはっきりしないのでございますけれども、増減と申しますのは……
  99. 林孝矩

    ○林(孝)委員 年度別にこのパーセンテージがどのように変化しているかという質問です。
  100. 内村良英

    内村(良)政府委員 先ほど申し上げましたのけ四十七年の実績でございまして、それが一応五十七年という目標年度を置きまして、その目標年度における数字を推算するとただいま申し上げたような数字になるわけでございます。  なお、もう一ぺん申し上げますと、総たん白質が九十グラム、それから植物性がその場合四十二・二グラム、動物性が四十七・八グラム、そのうち畜産物で二十三・六グラム、魚介類で二十三・四グラム、鯨肉が〇・八グラム。これは五十七年を置いて計算しておりますので、その間の途中の年度の数字はございません。
  101. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの説明によりますと、魚介類二七・四%五十七年度見込み、こういうことであります。そして生産高におきましては千二百万トンということでありますが、これだけの魚介類身確保する、たん白源を確保するということになりますと、現在の日本漁業の現状というものと非常ににギャップを感ずるわけです。  もう一つは内水面の魚をもって得るたん白量、それ以外のたん白量、こういうふうに分けて考えた場合に現状はどうなっておるのか、それから五十七年試算はどのような見通しを立てておられるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  102. 内村良英

    内村(良)政府委員 たん白質の数字はちょっとございませんけれども生産数字で多少推定したいと思いますが、四十七年の実績でいきますと、千二十一万トンの漁獲量の中で内水面は十六万五千トンでございます。したがいまして、内水面によるたん白質の供給というものは、グラムにいたしますと非常に数字が小さくなるのじゃないかと思います。  それから、五十七年にそれがどれぐらいになるかということでございますが、全体が千二百万トンぐらいに伸びていく中で内水面は二十万トンぐらいになるのではないかというふうに推計しているわけでございます。
  103. 林孝矩

    ○林(孝)委員 千二十一万トンの中で十六万五千トン、五十七年見込み千二百万トンの中で二十万トンということでありますが、この内水面に力を入れていくという姿勢を前提にして考えた場合、現在の状態が五十七年度において自動的にこういう形をとるであろうということが前提になって考えられた場合、この二十万トンというのはもっとふやすという方向をとり、かつ、その可能性があるのかどうか、それとも、二十万トンというこの数値はわが国のたん白を供給するという意味から考えて妥当な適切な数値であるのかどうか、この点に対してはどういう評価をされておりますか。
  104. 内村良英

    内村(良)政府委員 四十七年の実績を申しますと、沿岸漁業が二百五十五万トンでございます。この中には、沿岸でとります漁船漁業と浅海増殖が入って二百五十五万トン、それから沖合いと遠洋で七百四十九万トン、内水面は、これはコイやフナでございますので、アユなんかもございますが、十六万五千トン。そこで、五十七年におきましても、沿岸漁業、沖合い、遠洋、それぞれ伸ばさなければならぬわけでございますし、内水面もマスの養殖その他伸ばしたいわけでございますが、内水面漁業は湖水や沼の漁業でございますから、伸びるのにはやはり限界があるわけでございます。
  105. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの伸びるのには限界があるという説に対する問題あるいは内水面にしても、ウナギも内水面ですし、非常にたん白を供給しているわけでして、そういうものに対する見方というもの、これは私と長官の考え方には非常に違いがあるような気がするわけですけれども、そういうように伸びるのに限界があるけれども、世界の一つの行き方として、いま内水面に対する力の入れようというものは、ソ連の漁業だとか、あるいはドイツの漁業だとか、いろいろな面を見てみますと、非常に積極的に取り組んでいる政府の姿勢があるわけです。そういうことを踏まえて農林省として考えられておるのかどうか、世界の資源確保という問題、資源を保存していくという一つ国際的な流れの中にあって、内水面に対する施策というものが考えられておるのかどうか、私はこういう点について伺っておきたいと思います。
  106. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまソ連あるいはヨーロッパの国の話が出ましたけれども日本の場合は四面全部海でございまして、それに比べて、ソ連とかヨーロッパの内陸の国はある程度沼や湖水の漁業に依存せざるを得ない。川の漁業も入るわけでございますけれども。それに対して、わが国といたしましては、海の資源には非常に恵まれているわけでございますから、やはり、主流は海の漁業を伸ばしていく。もちろん内水面の漁業も国民の需要から見て必要なわけでございますから、これについて手を抜くということは決して考えておりませんけれども漁獲高全体を伸ばしていくという立場では、やはり海の漁業中心に考えなければならないというふうに考えているわけでございます
  107. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、次に、カツオ・マグロ問題についてお伺いいたします。  まず、最初の問題は漁業用燃油の問題ですが、漁業用の燃油というのはA重油がほとんどなんですが、その消費量が、四十八年度において国内補給油六百万トン、保税油、海外補給油百万トン、計七百万トンというふうに伺っております。ところで、最近の価格の動向というものについては、昨年の十一月、十二月から今日に至るまで、価格の暴騰というものに対して盛んな議論がなされ、また、最重要課題として今日もまだ議論をされているわけでございますが、この漁業用燃油の価格の動向はどうなっておるか、説明を願いたいと思います。過去五年間にわたっての説明をお願いしたいと思います。
  108. 内村良英

    内村(良)政府委員 四十五年からの数字を申し上げますと、A重油の卸売り価格でございますが、四十五年がキロリットル当たり一万八十八円、それから四十六年が一万一千四百七十円、四十七年が一万一千三百九十七円、四十八年は、八月まではほぼ四十七年と同じ水準でございましたけれども、九月以降騰貴いたしまして、十二月には一万六千九百七円となっております。最近さらにそれが上がったわけでございますが、先般の発表によりますと、元売り仕切り価格は二万五千八百円ということになっております。
  109. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、次に、漁業用資材の価格の動向について説明していただけませんか。
  110. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁業用資材の中で一番重要でございます漁網綱のメーカー販売価格を通産省の繊維統計によって調べてみますと、一キログラム当たりで、四十六年が千百六十一円、四十七年が千九十六円、四十八年は、十月ごろまではほぼ四十七年と同水準でございましたけれども、十一月ごろから上昇しまして、十二月は千三百四十七円になっております。その後につきましては、まだちょっと統計ができておりませんのでわかりませんけれども、小売り価格は昨年に比べて一・五倍から二倍くらいになっておるというふうに聞いております。
  111. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま、漁業用燃油と漁業用資材の価格の推移というものをお伺いしたわけでありますが、特に、漁業用燃油の価格暴騰が著しいということが明白になっておるわけであります。したがいまして、この安定供給というものがそれだけに重要になるわけでありますが、現在あるいは将来の見通しということにおきまして、この漁業用燃油の安定供給に対する対策はどのようになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  112. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 漁業用の燃料の安定供給対策はどうなっているかという話でございますが、漁業用の石油の確保ということが一番大切なことであります。去年の暮れにいわゆる石油ショックというものがあって、石油削減ということで非常に大騒ぎをしたわけでございますが、まず、われわれとしては量を確保することを最重点にいたしました。したがって、十二月に、農林、通産両政務次官の協定に基づきまして、中央に農林、通産両省並びに関係漁業団体及び石油業界団体によるところの漁船用石油需給中央協議会というものを結成し、また、各県に同様の県協議会をつくって、その適切な運営を通じて漁業者の石油の円滑なる供給を確保するというような特別の措置を講じたところであります。  そのほか、漁業用石油の円滑な供給をはかるために、各県ごとに置かれておる石油製品あっせん相談所を活用、指導いたしますとともに、中央地方を通じて、通産省と共同して苦情の適切な処理に当たっておるわけでありまして、今後ともこれらの措置を通じて、漁業用石油の安定的供給の確保につとめてまいりたいというように考えております。  また、海外において補給を制限された遠洋漁業船に対しましては、国内石油の積み出しによる洋上補給、外交ルートによる相手国への給油確保の要請、漁場の変更等の指導をしてきたところであります。  石油を使ったいろいろな漁網綱等の価格の問題につきましては、石油のコストが上がりますとこれらのものが上がるということになってまいりますが、これの便乗値上げは極力やらしてはいけません。したがって、われわれは、その価格を低水準に押えるために、通産省と協力をいたしまして、メーカー、販売業者等の行政指導を行なっておるところでございます。
  113. 林孝矩

    ○林(孝)委員 カツオ・マグロ漁業の経営という立場は、先ほど指摘いたしました石油価格の暴騰、さらに生産資材の高騰、さらに金融引き締めの影響、そして需要の減小という形で非常に危機的な状態にあると私は認識しておるわけでありますが、いま、政務次官のほうから、この対策として、確保最重要視という面からの対策が述べられました。確保における問題と価格の問題と、二つが大きな問題であると思います。  そこでお伺いいたしますけれども、このカツオ・マグロ漁業生産費に占める燃油価格の割合、これが非常に問題だと私は思うのです。したがいまして、この割合が過去五年間どのように推移してきたか、明確にしていただきたいと思います。
  114. 内村良英

    内村(良)政府委員 わが国のカツオ・マグロ漁業の主体をなしております二百トンから五百トン階層の遠洋マグロはえなわ漁業生産費を調べてみますと、燃料費の割合は、過去五年間おおむね一〇%程度で推移しております。  なお、数字をちょっと五年間について申し上げますと、四十四年が一〇・三、四十五年が九・三、四十六年が九・九、四十七年が九・四、四十八年が九・三ということでございますので、おおむね一〇%程度に推移しておるわけでございます。
  115. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、諸生産資材並びに人件費、これがまた非常にアップしておるわけでありますが、生産費に占めるこのアップ率はどうなっておるか、この点についても説明していただきたいと思います。
  116. 内村良英

    内村(良)政府委員 油、それから資材、人件費、これはコストの中のほとんど大きなものでございますので、これ全体では大体七割になっておるわけでございます。特に人件費が大きいわけでございます。そこで、今後、四十九年にはそういったものの価格が上昇するだろう、したがって経費もふえるだろうということで、燃料費が大体昨年に比べて三倍ぐらいになっております。資材費はいろいろ物がございまして、えさのごときは一・二倍くらいにしかなっていない。しかし、えさも資材の中では相当大きいということもございますので、ひっくるめてこれが倍になるだろうというふうに計算し、人件費については、これはまだどれくらいになるかわからないということもございますので、まあ従来どおりの程度で上がるのではないかというふうに想定いたしますと、昭和四十八年にそれらのものが全部で生産費の中で六八・八%あったわけでございまして、それが八四・二%ぐらいに上がるのではないかと思われますが、これはそうした前提を置いての計算でございます。
  117. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、たとえば燃油価格については、ただいま昨年の三倍ということのお話しがございましたし、諸経費においては六割大幅アップになっているという見方があるわけでありますが、生産者価格はどういう推移を示しておりますか。
  118. 内村良英

    内村(良)政府委員 キハダ、メバチ等の一般の生食用に供されますマグロの水揚げ量は減少傾向にございます。これは資源の問題その他もございまして減少傾向にございますが、これを反映いたしまして生産者価格は上昇傾向にございます。  そこで、数字をちょっと申し上げますと、石油需給の悪化が顕在化した昨年の秋以降について見ますと、昨年末は需要期にあることもございまして、水揚げ量の増加にもかかわらず、生産者価格は対前年比一割ないし物によっては五割ということで非常に上がったわけでございます。ところが、本年に入ってからは、一月というのはマグロの需要減退期でもあるわけでございますが、そういったこともあって、一月は水揚げ量が対前月比半分に減ったわけでございますけれども生産者価格が下がったという事態が起こっております。二月は水揚げ量が一月よりも一・五倍ぐらいふえたわけでございまして、それが加わってさらに価格は一月の八三%程度に下がっているということであります。これは水銀ショックで非常に影響を受けたわけでございますが、昨年の秋になってそれから立ち直って、昨年の暮れには非常に価格が上がった。ところが、ことしの一月以降、まあ需要期でないということもございますが、生産者価格が低迷しているというのが現状でございます。
  119. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ただいままでの答弁を総括して申し上げますと、いわゆる生産費は非常にアップしておる。生産に非常に金がかかるということです。ところが、生産者価格というものはダウンをしておる。これは何を意味するかといいますと、カツオ・マグロ漁業に取り組んでいる漁民の人たちの経営が非常にダメージを受けているということだと私は思うのですが、農林省はどのような見解でそれを受けとめられておりますか。
  120. 内村良英

    内村(良)政府委員 当面の事態を見ますと、ただいま先生から御指摘がございましたように、経費が上がっている、値段が下がっている、経営が苦しくなっているということは、もうそのとおりだと思います。ただ、ただいま申し上げましたように、十二月までは非常に値段も高かった。対前年比で五割ぐらい上がったというようなこともございますので、一、二月低迷しておりますが、四月の花見どき以降マグロの価格がどうなるかということも、今後の問題に非常に大きな影響を持ってくるわけでございます。コストが上がったものを価格に転嫁できれば、経営としてはそれによって収支が償うということになりますので、私どもといたしましては、今後のマグロ価格の動向というものには非常な注意を持って注視しているところでございます。
  121. 林孝矩

    ○林(孝)委員 コストの上がったものを価格に転嫁するということは、どの段階の価格に転嫁するかということにおいて非常に問題があると思うのです。どういうことかといいますと、生産者価格というものがいま上がらないが、しかし、消費者価格というものは非常に上がっているわけです。あとで私はその点についてもお伺いしたいと思いますけれども、どういう時点の価格に転嫁するかということによっては、これは非常に問題があるということを申し上げておきたいと思うのです。  それで、私がいまなぜこれを取り上げたかといいますと、いま日本で畜産危機という問題が一つ起こっておるわけですが、これは配合飼料の高騰という問題があるわけです。ところが、このカツオ・マグロ漁業というものは、この配合飼料と同じウエートを持っている漁業用燃油の暴騰というものが与える影響というものが非常に大きいわけです。したがって、マグロ・カツオ漁業の中での漁業用燃油の占めるウエートというものは、畜産業界におけるところのえさの占めるウエートと同じである。漁民あるいは畜産農民においては、これは同じ影響を持って受けとめておるわけです。そういう意味から言うならば、政府が畜産の飼料値上げの対策として二月から七月分まで六百億の融資をするという話が現実問題としてあるわけでありますが、いま私が申し上げましたように、また、一番冒頭にお伺いしたように、たん白源五〇%以上が魚介類であるという政務次官答弁にもありましたように、この比率から考えても、畜産と同じ考え方で取り組んでいかなければならないんじゃないかと思うわけです。そこで、動物性たん白質を二分する畜産と魚介類であるならば、この水産の面におきましても、先ほどから申し上げておりますように非常に漁業用燃油が暴騰しており、特に、カツオ・マグロ漁業というものは、漁業用燃油を主体としており、それが生産費に占めるパーセンテージが高いわけですから、それだけに、こうした状態になってきますと経営が非常に苦しくなるということを私は憂えるわけなんです。したがいまして、水産一般に対しても、畜産の危機と同じく水産の状態というものを重要視されて、長期低利の資金融資あるいは緊急財政措置というものを新たに考えていかなければならないんではないかと私は思うわけでありますが、政務次官はこの点に関してはどのような考え方を持っておられるか、答弁を願いたいと思います。
  122. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 水産業の重要なことについてはあなたと同じ見解でございます。ただ、畜産関係では、えさの占める割合が平均して五割とか、あるいは鶏のようにもっと高い七割とか、そういうふうな高い比率のものもあります。豚もそれに次ぐが、漁業のほうは、御承知のとおり油がえさみたいなものでございますが、それは全体の価格の中では大体一〇%ということであります。したがって、えさの値上がりが畜産物に及ぼす影響と全く同じ影響があるというわけにはなかなかいかぬであろうと思うが、しかしながら、水産物日本のたん白資源の中で重要な役割りを占めておることは間違いのないことでございますし、特に、カツオ・マグロと同様に、沿岸漁業においても同じでございますから、何とかしなきゃならぬということで、当面差し迫った問題としては経営の合理化あるいはいろいろなものの節約、漁場の変更等いろいろやっていただいておりますが、やはり、価格に吸収をしてもらうような創意くふうというものを業界においてしていただく必要があろうと思うのであります。  なお、畜産関係と違って漁業関係の協同組合には案外金がない。農業関係では系統資金というものを使って緊急融資というようなものをやっておりますが、水産関係ではなかなかそれだけの資金の調達が困難であるということも事実であります。しかし、農林中金等では農業その他のところから集まってきておる金を水産関係に回しておるというような例もございます。したがって、何かもう少しうまく農林中金を活用できる方法はないかというようなことなど、あなたのおっしゃることは私も考えておるようなことなのですが、いますぐここで結論的なことは申し上げられません。この金融というのは非常にむずかしい。一ついじるというとあっちこっちいろいろなケースが出てくるものですから、責任ある政務次官として、いまここで直ちにお約束はできませんけれども、こういうふうなこともあわせて検討をしていかなければならないような事態が来たときには当然それは考えてみたいと思っております。
  123. 林孝矩

    ○林(孝)委員 長官に確認しておきますが、いわゆるカツオ・マグロ漁業生産費に占める漁業用燃油のパーセンテージが一〇%ということでしょうか。
  124. 内村良英

    内村(良)政府委員 先ほど申し上げましたように、過去の数字は一〇%前後ということになっておるわけでございます。
  125. 林孝矩

    ○林(孝)委員 現状はどうですか。一番最近は何月度のデータですか。
  126. 内村良英

    内村(良)政府委員 四十八年が一〇%前後でございますから、そこで、四十八年に比べて油の値段が三倍になれば、三〇%近くにはなる可能性はございます。ただ、ほかのものも上がりますので、全体の中で占める割合がどうなるかということは言えませんけれども、油が三倍になっておるということははっきりした現実でございます。
  127. 林孝矩

    ○林(孝)委員 一月の二十日ごろから新しい価格の油が入っておる。しかし、昨年の十一月、十二月からすでに油が三倍になっておる。この油が三倍になっておるということで、カツオ・マグロ漁業の燃油というものが生産費に占めるパーセンテージは当然一〇%から三〇%、四〇%、五〇%と、このようになっておると私は思うわけです。そのこと自体を水産庁長官がきちっと掌握されておるのかどうか。現在、カツオ・マグロ漁業生産費の中には、先ほど私が指摘しましたように人件費あるいは資材の高騰というものがもちろんありますが、それ以外に、遠洋漁業においては漁業用燃油というものが、これは何回も言いますけれども、畜産における飼料と同じウエートを持つものです。それが御存じのようにもうすでに油が三倍になっておる。したがって、生産費の中でそれ以上の影響を受けているのが現状ではないかと考えるわけです。そして、もしそうした事態が起これば、いまここで約束はできないけれども財政上あるいは金融上の措置を考ええなければならないという政務次官答弁でありましたが、そういう事態が超こっているという認識の上に立っているのが私の質問でありまして、水産庁としても、カツオ・マグロ漁業の実態というものがいまどういうところに置かれているかということはもっと詳しく掌握していかなければならないのではないかと私は感ずるわけでありますが、水産庁として、現時点で生産費の中でどのような状態に漁業用燃油がなっておるのか、掌握されておりましたら、この委員会において明確にしていただきたいと思うわけであります。
  128. 内村良英

    内村(良)政府委員 油の値上げによりまして影響を受けるのは単にマグロはえなわ漁業だけではなしに、すべての漁業影響を受けるわけでございます。したがいまして、水産庁といたしましては、これには重大関心を払っております。現に、今般の石油製品の値上げにつきましても、通産省と連日連夜交渉いたしまして、漁業に一番使われるA重油の値上げ幅は極力低くしてくれということを申し入れて、現実にもある程度低くしてもらったというようなことをやってきたわけでございます。  そこで、それでは数字的にどう把握しているのかという問題でございますけれども、コストの中で何%−すなわち、四十八年は一〇%前後だったわけでございますが、何%というのは他のファクターもございますので、正確な数字がなかなか出ないわけでございます。たとえば油が三倍になる、しかし、ほかのものがどうなるかによって比率は変わってまいりますので、何%ということはなかなか言いにくいわけございますけれども、私どものほうで主要な漁業について計算したものがございますので、その数字を申し上げますと、漁業収入に対する油代の割合というものを遠洋底びき以下沿岸漁業に至るまですべての漁業について調べたわけでございます。その結果、四十七年におきまして、マグロはえなわ漁業漁業収入に対して八・九%のウエートを占めていた。さっきの一割というのはコストでございますから、コストに対して一割が、漁業収入に対しますと八・九%になる。そこで、他のものは例年並みしか上がらない。油だけ三倍になったという計算をいたしますと、これが二一・七%になります。すなわち、八・九%であったものが、ほかのものが例年並みしか上がらない、油だけ三倍になったという計算をいたしますと二一・七%になります。ただ、コストの中の何%ということになりますと、ほかのものの値上がりも関係ございますので、現在のところまだ何%という正確な数字は申し上げられませんけれども漁業収入との割合をただいま申し上げましたような前提で計算いたしますと、八・九%が二一・七%になるわけでございますから、相当な影響であるというのは事実でございます。他の漁業につきましても水産庁といたしましては全部影響度を把握して、油代の値上げに伴う水産業に対するいろいろな影響その他は十分把握しておるつもりでございます。
  129. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その把握のしかたですが、他のものは上がらないという前提で、油だけが三倍になったという場合に、漁業収入の中でそれが二一・七%を占めるということでありますが、他のものも上がっているわけですね。先ほど申し上げましたように、人件費も資材も上がっておる。そうして油も上がっておる。ですから、これは決して計算できないものではなしに、これは計算できると思うのです。そして、生産費が上がっているのにかかわらず、生産者価格というものが上がっていない。一番大事な時期に下がっておるということは、漁業収入の面においても、決してこれは安定をしているという状態ではなしに、不安定な、むしろ漁業収入の上においてもマイナスの状態になっておる。そういう状態になっているからこそカツオ・マグロ漁業の漁民の人たちの生活が非常に逼迫しているということになるわけであります。したがって、そういう一つのパターンが現実の問題としていま生まれているわけでありまして、その中身をきちっと納得のできるように説明をしてもらわなければ、漁民の人たちもこれはわからぬということになります。何でこのような逼迫した状態になるのだろうということに対する答えは全然出ないわけでございます。出ないということは、それに対する対策が幾らことばの上で述べられたとしても、将来漁業をやろという人たちにとっては阻害条件ばかりがふえてくるわけでありまして、この点を水産庁としても適切に処置をしてもらわなければなりませんし、私がいま質問しております点に関してもきちっと納得できるような説明をしてもらいたい。まず、生産コストの中で数値がわからないならばわからないということで、その漁業用燃油の暴騰と資材、人件費のアップによって、生産費がどの程度になるべきものがいまなっていないからこうなんだ、その結果漁業収入はこういう状態に置かれておるんだという点について、きちっと数字を示して答弁を願いたい。もし、いますぐそれが計算できないようでありましたら、後ほどでもけっこうですから、その点について説明を願いたい、このように思うわけであります。
  130. 内村良英

    内村(良)政府委員 他のものも動くわけでございますが、先ほども申しましたように、資材が約二倍だとして——資材の中には、えさだとかいろいろなものがございまして、漁網綱その他がございますが、二倍だとして、油が三倍、人件費につきましては、現在春闘のさなかでございまして、幾らになるかわからないわけでございます。そこで、例年程度上がるだろうということを前提にして、これは全くの仮定計算でございますけれども、計算いたしますと、四十八年に、生産費を一〇〇にいたしまして、九・三%であった燃料費が一九・八%になるという数字がございます。ただ、これもそういった前提を置いての計算でございます。  それから、マグロの値段が、ただいま申し上げましたように数字が下がっておるということで、先生指摘のとおり、現時点をとってみればコストが上がり、さらに製品価格が下がっているということで、マグロ漁業の経営が非常に苦しいということは私ども十分わかっております。現に関係者からも話を聞いておりますし、その点は十分わかっておりますけれども、いずれにいたしましても、十二月までは価格が非常によかったわけでございます。それが一、二月に非常に下がってしまった。下がってしまったことの基本的な原因としては、不需要期であるということが第一の原因ですが、二月に水揚げが少し多いというようなこともございまして、三、四月、花見どきにかけてマグロの値段がどうなるかということが今後のマグロ経営に非常に大きな影響を持ってくるわけでございます。極端なことを申し上げますと、マグロの価格がいまの倍になれば——そういうことはあり得ないと思いますけれども、倍になれば、これはもう十分コストが引き合っておつりが来るということになりますし、その辺のところをわれわれとしては非常に関心を持って見ているわけでございます。
  131. 林孝矩

    ○林(孝)委員 春になると価格が倍になる、そういうことを関心を持って見ておるということですが、先ほど申しましたように、生産者価格というのは生産者が出荷するときの値段です。消費者が買うときの値段じゃないわけですね。ですから、もう一つ私はここで問題を指摘しますが、生産者価格は落ちておるが、消費者価格は落ちていないわけですね。ここで、流通という問題が一つそこに起こってくると思うのですが、漁民の人は生産するために非常に動力を使い、金がかかるけれども、売るときに値段が今度は下がっている。こんな商売はないということは漁民の人の声であるわけです。ところが、今度は、消費者の立場に立って考えますと、そういうふうに安い値段でカツオ、マグロが出ておるのにかかわらず、魚の値段は全然下がらないで、さらに上がっておる。これは一体どういうことかということですね。なぜ生産者価格が消費者価格に反映されないのか、こういう流通上の問題が一方にはあると私は思うわけです。いまの長官の説明の、いわゆる漁業収入、あるいはコストの中における資材あるいは人件費、また油の影響というもの、これに対してはそれなりの見解をお持ちになっているわけですけれども、また、私もそういう面についても意見があります。新しい——新しいというか、片一方の方面から見た場合に、流通問題というものがある。この流通問題を考えますと非常に理解に苦しむわけでありますが、私がお伺いしたいのは、この流通機構というものは一体どうなっておるのかということで、まずこの点を確認しておきたいと思うのです。
  132. 内村良英

    内村(良)政府委員 確かに、先生の御指摘のとおり、産地価格が下がったにもかかわらず消費地価格が下がらなかったじゃないかという問題があるわけでございますけれども数字について若干御説明申し上げます。  産地価格を見ますと、これは前月についてどれぐらい価格が変わったかという対前月比の価格の数字でございますが、産地のほうでは、四十八年の十月は一〇一・三でございますから、大体九月と同じ値段であったわけでございます。それが十一月になりますと、十月に比べて一五八・〇ということで、一・五倍も上がった。十二月は、十一月にがんと上がったものがさらに八・八%上がったというところで、先ほど申しましたように、十一月、十二月にぐっと値段が上がったわけでございます。それが一月になりますと八一・七で、十二月に対して八割になってしまった。それから二月になりますと、一月に比べてさらに八割に下がったということで、十二月に比べますと、六割ぐらいに産地の価格は下がってしまったわけでございます。  それに比べまして消費者価格のほうはどうなっているかと申しますと、消費者価格のほうは、四十八年の十月が、小売り価格が九月とほとんど同じでございます。十一月はこれが一〇七になり、十二月は一一六ということで、産地の上がりぐあいに比べまして消費地の小売り価格の上がり方はそれほど大きくはございませんが、とにかく上がっているわけでございます。一月になりましても、小売り価格のほうは、産地価格がすごく下がりましたけれども、十二月に比べて一割さらに上がるというようなかっこうになっておりましたのが、二月になりますと、それが一月に比べて九一%になる。キロ当たりで約二千二百五十円でございますけれども、こういうふうに下がったということで、二月になりますと、小売り価格のほうも多少下がりかけておるということで、これが単なるタイムラグであるのか、あるいは何らかの原中があるのかは、現在水産庁において鋭意分析、検討中でございます。
  133. 林孝矩

    ○林(孝)委員 産地価格と消費者価格を並べて五ますと、流通機構の問題というものを非常に裏づけているような感じがするわけでありますけれども水産庁長官のほうではいま分析中であるということでありますが、その結果はいつごろはっきりしますでしょうか。
  134. 内村良英

    内村(良)政府委員 これは主として関係者の意見を聞いているわけでございますが、私どもの聞いておるところでは、たとえば東京の卸の連中は、小売り価格がこういうふうに下がってきて、全体に価格が低迷してきたのは、二月から小売り価格がちょっとまた下がってきたわけでございますけれども、やはり、総需要抑制というか、節約ムードというか、とにかく消費者がマグロを食わなくなってきたんですよというようなことを言うわけでございます。一方、二月は確かに水揚げが非常に多うございますから、これが二月の価格低落の原因になって、それが逐次小売り価格のほらに及んできたのか、人によっていろいろ言うことも違いますし、その辺のところをもう少し検討、分析してみたいと思っておるわけでございます。
  135. 林孝矩

    ○林(孝)委員 分析というものはもう少し科学的なものでなければいかぬと思うのです。  私は先ほど質問の中で、流通機構がどうなっておるかという質問をしたわけでありますが、その点の説明を願いたいと思うのです。
  136. 内村良英

    内村(良)政府委員 先生も御案内のように、カツオ・マグロ等の水産物価格の安定と流通の改善をはかりますために、従来から水産物産地流通加工センター形成事業等を行ないまして、主要な産地におきます冷凍冷蔵施設等の流通施設の整備につとめると同時に、市場情報の把握、入出荷の計画化、合理化等をいろいろ進めてきたわけでございます。すなわち、産地、消費地面におきまして、特にマグロの場合には最近冷凍品として流通することが非常に多くなってきたものでございますから、そういった施設の助成と、さらに取引の情報の提供、整備等をやってきたわけでございます。そこで、四十九年度におきましては、これまでやってきましたようないろいろな施策を充実いたしますとともに、新たに主要消費地に大規模なストックポイントを置きまして、水産物の需給調整機能を強化したいということで予算を要求して、それを計上しておるわけであります。  さらに、そういった流通面の合理化に対する施設面の助成をいたしますと同時に、われわれといたしましては、水産物につきましても、冷凍品の流通が五割ぐらいになってまいりましたので、出荷調整と申しますか、そういったことをやれるように逐次指導していって、価格の安定をはかりたい。これまでは、水産物は腐敗してしまうのでそういったような出荷調整はできなかった。したがって、市場のせりできまる値段が最も合理的なものである。その点は、生魚については今日も変わっておりませんし、私どもといたしましては、市場のせりできめるのが、供給者も非常に多数でありますし、買う者も多いわけでございますから、最も合理的な価格形成方法だと確信しておりますけれども、冷凍品が非常にふえてまいりましたので、今後、魚価の安定につきましては、冷蔵庫の整備その他出荷調整がだんだんできるように持っていって魚価の安定をはかるということをやらなければならないと思っております。もちろん、その場合におきましても、単なる生産者サイドだけの考え方ではなくて、消費者価格の安定ということも含めまして価格の安定をはかりたいというふうに考えておるわけでございます。
  137. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまいろいろお話しを伺ったわけでありますが、マグロ・カツオを例にとってみましても、いわゆる産地価格と消費者の末端価格との間には、三倍だとかあるいは四倍、五倍というようになり、六百円のもの、が三千円になっておる。こういう市場調査のデータだって出ておるわけでありまして、これはやはり流通機構に抜本的なメスを入れない限りにおいては、何がそこに原因してこういうふうになっておるのかということも水産庁の立場でもわかっておられないのじゃないかという気がするわけです。したがいまして、私は現在の時点でものを考えておりますが、いわゆる生産者が出荷する価格が三百円のものが末端消費地で千五百円になっておるとか、あるいは六百円のものが三千円になっておるとかいうような五倍、六倍もの開きがそこにある。これは、どういうことがどうなってこういうふうになっておるのかということを当然つまびらかにしていかなければならない。これは漁業のいわゆるカツオ・マグロ漁民の人たちにとっては、先ほどから申し上げました諸経費の暴騰というものがあって、生産に非常に金がかかるのにかかわらず産地価格がというものが安定していない。一方、国民の生活を防衛するという立場に立ってものを考えますと、そのような値上がりをしていない魚が実際に消費地の末端価格においては非常な値上がりをしておる。その差があまりにも開き過ぎておるというものの考え方が一方にある。したがいまして、水産庁としても、あるいは農林省としても、この際この問題を非常に重要視されまして、流通機構に抜本的なメスを入れて、どういう原因でそれがこうなっておるのか、それに対してこういう対策を講じなければいかぬということを早期にやらなければならぬのではないかと思うのですが、こういう問題に対する水産庁長官の見解と政務次官の見解を伺っておきたいと思うのです。
  138. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生からお話しがございましたように、確かに、水産物の場合に、産地価格と消費地価格に値の差が大き過ぎるのではないか、流通改善が必要ではないかということは、これは古くして新しき課題でございます。私どもといたしましても、この問題は、ものによりましては、どういう段階でどうなってどうというような追跡調査がすでにできておるものもございますし、今後やらなければならぬ問題もあります。  私どもの考えておりますところでは、一番問題は、やはり、小売り段階水産物の場合には一番大きな問題ではないかということであります。と申しますのは、腐敗食品でございますから、すべてのリスクが最後は小売り屋さんにかかってしまうというところに一つ大きな問題があるのじゃないかと思います。なお、その他の産地市場の問題、それから中央市場の問題等、なお改善すべき問題は多々ございますので、私どもといたしましては真剣に流通改善には取り組みたい。しかし、基本的には、従来腐敗食品であって出荷調整などはなかなかできないと言っていた水産物の流通形態が、最近の冷凍冷蔵技術の発達によってだいぶ変わってまいりましたので、従来よりも需給調整がやりよくなってきている面はございます。そうした客観情勢の変化等を踏まえながら、冷凍冷蔵施設の大幅拡充をやるとか、その他さらに、冷蔵庫をつくるだけじゃなしに、つくった冷蔵庫の管理をどうするかというような問題とか、いろいろな問題がございますので、これは総合的に検討しなければならぬと思っておりますし、真剣にそういう問題に取り組むつもりでございます。
  139. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 ただいまの水産庁長官からの答弁で大体要約をされておりますが、あなたの御指摘のとおり、水産物によっては生産者価格の三倍以上に売られておるというようなものも中にはあります。ある水産会社の社長が、私のところがとったエビが店頭で三倍にもなっており、しかも、冷凍のエビがそうでないような形で並んでいるが、これはけしからぬじゃないかと私のところに言ってきたことがあるが、内容を調べてみるといろいろなことがあるようであります。したがいまして、その流通経路の問題には相当抜本的なメスを入れて、いやしくも途中で便乗値上げのようなもののないように監視をさせてまいりたい。なお、相対取引の問題、それから産地冷蔵庫の問題等、総合的に生産者がこれらの難局に処していくために必要な防衛措置というものをあわせて考えてまいりたいと思います。
  140. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この件につきましては、その経過を見ましてまたお伺いすることにいたします。  次に、カツオ・マグロ漁業について、これは漁業法五十二条によって「指定漁業」というふうになっておりますが、これは大臣の許可漁業でありますから、だれでも漁業ができるというものではないわけです。したがって、日本の商社は対象外になっておる。ところが、その法の趣旨を度外損して、あるいはその法の盲点をついて商社が、日本ではそうした漁業ができないので、パナマ等の海外の漁場で現地人の名義を用いてカツオマグロ漁業を行なっているという報告があるわけでありますが、政府はその実態を掌握されておるかどうか、掌握をされておりましたら、その実態について明らかにしてもらいたいと思います。
  141. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のあったような事実がございます。  そこで、船の輸出ですが、古い船でございますが、その数字を見ますと、四十二年にはパナマに一隻、韓国に十四隻でございました。それが三年後の四十五年にはパナマに十隻、韓国に四十二隻、四十七年にはパナマに三十九隻、韓国に四十二隻、四十八年にはパナマに五十七隻、韓国には四十八隻というふうに古い船の輸出がふえております。これは日本漁業者が新しい船をつくるという場合に、古い船を売りたいが、ところが、なかなか国内では売れないということがございまして売っているという面もございますが、それを商社が仲立ちいたしまして韓国なりパナマに売って、向こうの漁業会社の船にして、向こうの人たちが乗って、マグロをとって、それを日本に輸出してきているという問題はございます。  そこで、輸入、がどうなっているかということでございますけれども、輸入の数字を見ますと、四十七年はパナマからは八百七十四トン、韓国からは二万一千六百九十八トンで、四十八年がパナマからは四千七百三十九トン、韓国からは二万五千六百十九トンというふうにふえておりまして、ただいま先生から御指摘のあったような事実はございます。商社活動の完全なこまかいことにつきましては必ずしもつまびらかにいたしてはおりませんが、私どもといたしましては、ただいま先生から御指摘のあったようなことがあるというふうに思っております。
  142. 林孝矩

    ○林(孝)委員 漁業資源が枯渇してはならないということにおきまして、民間の間にもアジア・カツオ・マグロ会議というようなものもありますが、そういうところでは何が討議されておるかといいますと、お互いに自粛してマグロ・カツオの資源を確保しようということが主題となっておるわけであります。そして、わが国の方針も、そういうアジア各国と同じ立場で、同じ方向で進んでいるわけであります。ところが、いま水産庁長官から説明のあったような商社活動というものは、日本の国の法律規制されるということになりますと、法があまりにも不備であるということも言えると思いますけれども、少なくともアジアの各国の行き方や日本の国の方針と逆行しておるという感じを私は持っておりますが、政府みずからがどのようにその実態を掌握し、これに対してどういう検討を今日までし、また、考えを積み重ね、討議をされてきたか、そして、こういう問題に対してどのように対処されようとしておるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  143. 内村良英

    内村(良)政府委員 先生の御指摘のとおり、カツオ・マグロ漁業資源はやや低下状況にございます。わが国漁獲量で申しますと、一九六三年にカツオ十六万トン、マグロ五十三万トンというのが過去の最高の数字でございまして、一九七二年には、マグロが三十六万トンに下がっております。世界的にそういう傾向はございまして、マグロはもう満限状態で、今後開発の可能性はきわめて少ない。しかし、カツオはまだ未利用資源があるんだということで、開発可能資源量として約百五十万トン程度のものがあるだろうということになっております。  そこで、それではこのカツオ・マグロをどうとっておるかということでございますが、日本が五十五万トン、アメリカが十八万トン、台湾が十万トン、韓国が九万トン、スぺインが七万トン、フランスが五万トンというようなところが主たる漁業国でございます。  さらに、これにつきましては国際的な漁業規制がございまして、御案内のように、全米熱帯マグロ委員会というのが太平洋のアメリカから中南米の海域にかけて規制措置をとっております。それから、大西洋マグロ委員会というのもございまして、若いマグロの漁獲を禁止している。日本も南マグロの実施規制措置をとりまして、オーストラリア、アフリカ南方沖合いの水域特定期間には操業禁止をするというようなことで、一生懸命資源保護にわが国も協力しているわけでございます。  そこで、ただいま申し上げましたように、韓国も九万トンぐらいマグロをとっておるわけでございますけれども、それらの国の漁業関係者はもちろん資源保護の重要性を感じておりますので、協力しておるわけでございますが、何せ、漁業者というものは、海に出て漁業をやっている以上どうしてもとりたいというようなことがございまして、漁獲努力がある程度非常に強くなっている。そこで、わが国わが国として隻数の制限もし、一応いろいろな漁業規制をやっておるわけでございますが、商社の手で外国に渡って、外国がそれをやるというのは、これは全体の国際規制の問題として話し合って解決していかなければならぬ問題じゃないかと思うわけです。そこで、海洋法会議の結果二百海里というようなことが出てくれば、私どもはそういうものはとても同意できませんけれども、マグロ漁業にも影響が出てきますけれども、現在いろいろな国の間で話し合われているのは、マグロのような回遊漁業についてはやはり国際規制の中で処理していくということで、現在熱帯マグロ委員会とか大西洋マグロ委員会でやっているようなことを全世界に広めてやるべきじゃないかということが議論されております。そういった形で資源保護というものを考えていかなければならないので、個々の漁業者の取り締まりで資源保護をやろうとしても、そこには限界があるんじゃないかというふうな感じを持っているわけでございます。
  144. 林孝矩

    ○林(孝)委員 漁民はとりたい。このとりたいという気持ちをたくみに利用しているのが商社活動だと私は思うのです。そして、非常に安い賃金で労働者を現地で雇い入れることができる。そういう現地の置かれている立場というものをほんとうにたくみに利用して行なわれているわけですね。それに対しては何ら規制する方法がない。それで、国際規制という問題でいま話があったわけでありますが、それに臨む日本の姿勢というものは、こういう問題に対してわが国が積極的に対処して国際規制を提案するのと、自分の国の商社の行為に対して何にも口を開かずに国際規制を叫ぶのとでは、国際間の外交上の問題としても大きな違いが結果として生まれてくるんではないかと私は思うわけです。したがいまして、いま現実にこれだけのことが行なわれておるということを農林省で掌握されておるわけでありますから、これに対して、たとえば輸入規制という問題について、これは主権という問題ともかかわり合ってくるわけでありますけれども、その辺をどうすべきかということに対して取り組んでいかなければならないんじゃないか。私は、これは重大な問題だと思うのですが、その点について政務次官はどういう見解を持たれておるのか、まずお伺いしたいと思います。
  145. 内村良英

    内村(良)政府委員 政務次官の御答弁の前に、一つ事実だけを申し上げておきますが、そういったような事態になりましたので、水産庁としては、もうこの事態は無視できないということで、昨年から古い漁船の輸出規制措置をとっております。すなわち、ワクを設けまして、その一定のワクの中でしか出せないということにしております。それからマグロ船につきましては、新造船もそれに入れるというようなことでワクをきめております。ただ、非常に問題なのは、こういうことでワクをきめましても、これは日本が出さないということでございます。過去にそういう例があったわけでございますが、日本が押えますと、まあ一例を申し上げますと、韓国がたとえばイタリアの造船所に頼んで、非常に早くて性能の速い船をつくってしまって、一そうそれが漁獲努力の強化になるというような問題もございます。そういうことで、これは技術的に非常にむずかしい問題がございますけれども、いずれにいたしましても、水産庁といたしましては、事態は放置できないということで、昨年から船の輸出規制をとっておるわけでございます。
  146. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 ただいま御指摘の点は非常に重要な問題でございます。国民サイドから見ると、安くていいものが入ってくるのをとめるということは、あまり表に出せば商社の反発を招く、そうかといって、放置しておけばカツオ・マグロ業界が困る、こういうようなことになるわけであります。何とかそこらの調整はしなければならない。そこで、日本の商社等が常識の範囲を越えてそういうような脱法行為を大がかりにやるというような具体的な事例があれば、その商社を呼びつけて、そういうことは自粛をするように申し渡しする。それで言うことを聞かないという場合は、これは水産庁では手に負えません。農林大臣なり政務次官がその商社の社長なり何なりを呼びつけておいて、農林省の言うことを聞かなければ、ほかのことで、農林省は小麦をはじめずいぶんいろいろな輸入をさせているんだから、そういうところで少しハンデをつけるぞというようなことを——これは言うか言わぬかは別としても、何かなければ言うことを聞きませんから、何か言うことを聞くような方法を考えたい。しかし、日本だけが締めても、いま水産庁長官が言ったように、今度は外国の船を買ってきてやられたのでは、これまた、いま自由化になっておるから非常に困るので、そこらのところはいろいろ見ながらやりたいと思っていますが、公明党のほうでもいい案をお持ちでしたら採用いたしますから、ぜひともいい案を出して御協力をいただきたいと存じます。
  147. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私が言っているのは、外国がやればしょうがないということではなしに、まずみずから範をたれるべきであるということを言っておるのであります。  それで、古い船あるいはマグロに関しては新造船も輸出規制をしておる。それが行なわれてから出ているものはないですか。
  148. 内村良英

    内村(良)政府委員 輸出ワクがございますから、その輸出ワクの中では出ているわけでございます。
  149. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私が申し上げたかったのはそれなんです。輸出ワクをこれまた巧みに使うわけですね。ですから、今国会においても、商社のやり方については各方面から反社会的行為であるということで追及をされておるわけでありますけれども、こういう漁業のことに関してはいままであまり話題にはのぼっていなかったわけです。しかし、現実は非常に問題を持っておるわけです。  さらに、もう一つ申し上げますと、冷凍倉庫の系列化という問題があるわけです。運ばれてきた魚が、いわゆる商社扱いに関するものについては冷凍倉庫にすぐ入る。しかし、それ以外の一般漁業者の場合は、運んできても二週間も十日も入れることができない。こういう市場支配というものが行なわれておることも現実なんです。こういう実態について農林省として掌握されておるのかどうか。されておるとしたら、いままでそれに対するどういう対処をされておったのかということもお伺いしたいと思います。この点について、この際明確にしていただきたいと思うわけであります。
  150. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまのお話しはマグロのいわゆる一船買いのお話しではないかと思います。この一船買いの問題は非常にむずかしい問題でございまして、私どもとしても実はいろいろな角度から検討しなければならぬ問題だと思っております。と申しますのは、従来マグロ漁船が水揚げして市場に出すという場合には、売るのに、一週間から、場合によったら二週間ぐらいかかって少しずつ出して売るということをやっております。そうすると、そこに船を置いておかなければなりませんし、それだけ船員にとりましても時間もかかるし、手間もかかるという問題がございます。ところが、一船買いになりますと、二日間ぐらいで冷蔵庫に入ってしまうという面から、漁業者がそれを望む面もございます。それから、さらに、最近は非常に航海日数が延びておりまして、マグロを遠くまで行ってとっておるわけでございます。そうすると、マグロの業者としてはなるべく高く売りたいというところで、日本まで持ってきてそこで売ったのではその日の相場でどうなるかわからぬ。そこで、沖でいろいろ情報をとりまして、いい値で、これで大体経費も引き合うし、もうけも出る、それじゃ売ろうというようなことで、マグロ業者のほうである程度一船買いのほうがいいということを言っておる面もございます。しかし、一船買いは、これまたいわば将来の投機につながってくる問題もございますし、運用いかんによりましては、社会的に非常に大きな問題になるような面も持っておるわけでございます。  そこで、私どものほうといたしましては、一船買いについては、すでに三崎ではいまのところもうやめております。それから清水、焼津等でも最近の金詰まりで一船買いはだいぶ減っているようでございますが、この一船買いの問題というのは長短両方ございまして、漁業者の立場からいけば確かにそういった面もございます。一方、消費者価格の安定ということを考えた場合に、その一船買いをしたものを定期的にうまく市場に出してくれるということになれば、これはまたある意味では産地直結に似たような面も出てくるわけでございます。そういった面も含めて、これをどういうふうに評価していくかということは現在いろいろの角度から検討しておりますけれども、ただいまのところでは、三崎ではすでになくなり、焼津、清水では少しはあるようでございますが、従来に比べれば非常に減ってきているという状況になっておるようでございます。
  151. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この問題に関して政務次官はどのように評価されますか。
  152. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 水産庁長官と同じ考えであります。
  153. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私が先ほど来指摘してきました問題に関して、いま検討中ということが非常に多い。正直言って私はこういう印象を受けております。また、政務次官から先ほど、そういうことをやればこっちでやっていることを取り下げるぞとかいうやり方もあると言われましたが、そういう行き方もあろうかと思いますけれども、もう一つは、たとえば外国に籍を置いておる船の規制は現在のままでいいかどうか。現実の問題として起こっているそうした事態に対して法的規制というものが考えられないかどうか。あるいは、国内法における商社のそうした行為に対する規制を考えることができないかどうか。こうしたことをやるということが大事ではないか。そうした地域において対日感情だとかの問題が起き、国際漁業会議等において日本漁業に対する叱声なんというような問題が出てくると、日本のイメージというものが非常にダウンするわけですから、そういうことがないように、国際間における信頼というものを大事にする意味からも、日本の国がみずからこういうふうにしてそうした問題に対処しておるという姿勢を示さなければならない。そういう意味も含めて政府として考えなければならないと思うわけですが、いかがでしょうか。
  154. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 法律をこしらえるというようなことはなかなかむずかしいのです。たとえば、では外国から入る輸入マグロや何かに関税をうんと高くぶっかけろというようなことも、これも一つ法律ですね。だけれども、関税をぶっかけるというようなことになると、日本だけが何かやれば報復措置がすぐ出てくるわけです。ですから、国際関係のものは法制で何かきちっと締めろということになると、波及するところが非常に大きい。輸入制限といえば、いま自由化しているものを輸入制限するということになれば、それじゃそのかわりほかのものをうんと自由化しろとかいう話がすぐ出てくる。したがって、議論としてはやさしいんだけれども、現実問題は非常にむずかしい。  そこで、手っとり早いことは、これは邪道と言われるかもしれぬが、常識論として行き過ぎがあるというものについては行政指導である程度言うことを聞いてもらう、それに協力しない場合には別なことも考えざるを得ませんよというようなことが一番現実的ではないのか。しかし、これとても、相当な発想の転換と決断実行をやらなければなかなかできないです。たとえば、水産庁水産庁で自分のほうを守ろうとするし、食糧庁のほうは食糧庁のほうで、自分のシェアは手をつけさせたくないから一生懸命かばうということにたる。この間、豚肉の関税を脱税したということで、今度は牛肉の割り当てを、その脱税した業者だけは半年間オミットですということをやったのですね。これは異例なことなんです。異例なことで、たいへんなことなんです。だけれども、これをやった。ついでにほかもやってやるかと言ったら、なかなかほかまで言うことを聞かせない。それから、何とかいうやつがやみ米を買って、食管法違反でぶちあがった会社がある。では、そんなものは小麦や何か輸入しているんだから、全部とめちまえということになると、いや米の登録と麦の登録は別だとか、法律をたてにとっていろいろなことを言ってくる。ですから、こういうようなことは法律だけでやろうとしても、実はなかなか容易にできるものではない。やはり、それは為政者の良識と、場合によっては勇気と正義というもので、それぞれのケース・バイ・ケースに応じて対処していくというような、わかったようなわからないような話になるが、実際はそういうことが一番きき目があるんじゃないかというふうに私は思っているのです。あなたのおっしゃることはまことにもっともなことでもあるし、日本遠洋漁業がすたれてしまうということではだめなんですから、そういうことは避けなければならない。だから、あなたのおっしゃるような趣旨をよく尊重して、さらに部下を督励して、四方八方からそういうものを規制するように、コントロールが自然につくように努力をしてまいりたい、かように考えております。
  155. 林孝矩

    ○林(孝)委員 政務次官は良識と正義感と勇気をもってやると言い、それがなければできないという話でありましたが、この問題に関してはそれをもってやるべきだと思いますので、その結果を示していただきたいと思うわけです。  それから、今度は話が変わりますけれども、もう一、二点お伺いしておきたいことがありますが、それは中小漁業融資保証制度における日本かつお・まぐろ漁業信用基金協会についての問題であります。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 これまでの政府答弁をずっと見てみますと、何か非常になまぬるい、手ぬるいというような感じを私は議事録を読みまして感ずるわけであります。カツオ・マグロ漁業の先行きというものは非常に暗いものがあると思いますし、また、かつお・まぐろ漁業信用基金協会の存立基盤というものも次第に弱くなってきているんではないかと私は思うわけであります。  そこで、協会の付保率についてお伺いするわけでありますけれども、協会の付保率が七割であるためには地方公共団体の出資総額が四分の一以上でなければならないということになるわけでありますけれども、この理由を示していただきたいわけであります。
  156. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のございましたとおり、融資保証制度では、基金協会に対する地方公共団体の出資金が一定率、四分の一以上あるものにつきまして保険の付保率を七割としております。その地方公共団体の出資が一定率までないところは五割ということなので、かつお・まぐろ協会の場合には地方公共団体の出資がございませんので五割になっている。今後マグロ漁業が非常に危険になってくる、将来なかなかむずかしいということは、私もある程度そう思っております。マグロ漁業の前途はたいへんであるというふうに私も思っております。  そこで、七割にすべきではないか、あぶないのだから法律も上げてやるべきじゃないかということでございますが、これは過去のいきさつがあるわけでございます。というのは、かつお・まぐろ漁業信用基金協会ができましたのは昭和三十七年でございまして、ビキニマグロの被害に対する漁業振興費として国から交付された補助金の一部を充当してつくりまして、それに関係者が出資したということで、そのできたときの経緯がほかの基金協会とは違ったこともございまして、地方公共団体の出資がないわけでございます。しかし、制度的には可能でございますので、地方公共団体が今後、たとえば静岡とか、高知とか、鹿児島とか、三重とか、マグロ漁業に非常に関係のある県が出資してくれるのが一番望ましいわけでございますが、現在のところそうした出資がない。そこで五割になっているわけでございますが、これを七割にいたしますと、いままで七割の付保にするために地方公共団体の出資を非常に求めてきた他の協会とのバランスがございまして、現実問題として直ちにこれを七割に引き上げるということはむずかしい。むしろ、マグロ漁業の現状を考えれば、主要マグロ県では県の行政にも非常に関係があるわけでございますから、県の出資を求めて資金ワクを大きくするというほうが非常に大事ではないかというふうに思っております。
  157. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間が来ましたので、私の残余の質問は留保いたしまして、きょうはこれで終わりたいと思います。
  158. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、稲富稜人君
  159. 稲富稜人

    ○稲富委員 まず、今回の漁業法案のうち、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案、及び漁業災害補償法の一部を改正する法律案の二法は、私たちがかねて希望いたしておりましたようなことをおおむね取り入れられて改正をされていると私たちは思っております。さらに、沿岸漁場整備開発法案も当然の立法処置であると思いますが、ただ、これらによってわが国漁業をはたしていかに振興せしめるかという点です。特に、現下国際的な食料危機が憂慮されております。また、国内におきましては畜産危機ということが言われておりまして、国民の必要といたします動物たん白源を大きく要求される漁業の重大性というものを私たちはあらためてここに確認をしなければいけないと思います。そういう意味から、漁業としてわが国のなさなければいけない国民に対して供給すべきこと、これをこの法律によって万全を期することができるかどうか、こういう点をまず頭に置きながら、私は若干の質問をいたしたいと思います。  第一にお尋ねしたいと思いますことは、わが国漁業は、遠洋漁業、沖合い漁業沿岸漁業あるいは海面養殖漁業、内水面漁業及び内水面の養殖漁業というものでなっておることは御承知のとおりでございますが、その中におきましても、従来、遠洋漁業は、すでに農林省の統計でも示しておりますように、四十七年においては三百九十万五千トンで、その年の生産量の三八%を占めております。また、沖合い漁業生産量は、四十七年においては三百五十八万八千トンで、これまた総生産量の三五%を占めておりまして、わが国漁業全体から申し上げますと、遠洋漁業、沖合い漁業が九三%を占めておるというような状態であるのであります。ところが、御承知のとおり、これは非常に国際的な問題にぶつかっている問題が多いのでございます。  ここで次官にお尋ねしたいことは、遠洋漁業及び沖合い漁業の将来というものをどういうように見通しをつけられておるかということ、この点をまず承りたいと思うのであります。
  160. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 具体的な数字の話は事務当局から答弁をさせますが、御指摘のように、漁業の問題は、日本のたん白資源にとってきわめて重要なことであります。現在一千二十万トンというようなものを捕獲しておる。しかしながら、これは沿岸と沖合いと両方あるわけでありますが、弧岸方面では公害問題そのほかのことでなかなか角がとりずらくなっているという現実があるし、遠洋漁業等では、いま言ったような二百海里説というようなことで領海説がとられておって、日本の、言うならば結果的には締め出しみたいな話がちらちらとあちこちに出ておるということが事実なのであります。  しかしながら、何と申しましても水産業というものは重要なことでありますので、われわれは国際会議等を通して、いままでの日本の既得権というか、歴史的な漁業の事実というものを強く認めてもらうという主張をして、そして、遠洋漁業漁場というものを確保するということが一つ。それから、沖合いでなくて沿岸漁業の問題については、公害の防止というようなことを徹底をさせで魚族の繁殖を促すということは、これは消極的か施策でございますが、まず、何が何でもやらなければならぬ。同時に、ただ単に魚の泳いでくるのを待っているというだけでなくて、今回のような沿岸漁業整備法というものを出して、魚の住みかをつくってやるとか、あるいはもっと積極的に養殖を広げるというようなことで、ともかく沿岸漁業というものを振興させたい。そのためには、いままでのようにばらばらではだめですから、ともかく沿岸漁業を総合的計画的に計画を立ててやらなければならぬ。また、漁家に対しましても、漁家規模の拡大をはかり合理化を進めていくという上において、助成なりあるいは制度なりをつくってやる必要があるということで、今回水産三法を出したということであります。われわれはどこまでもこれは前向きで漁業振興のために取り組んでいくんだという固い決意を持っておるということを、まず御理解をいただきたいと思います。
  161. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの農林次官からの御答弁の中におきましても、国際的な、特に、国連海洋法会議等の今後の影響というものは非常に大きいということは農林省としても十分認識されております。  それで、ここで私は外務省にお聞きしたいのですが、昨日も竹内委員からちょっとこの問題には触れてお尋ねいたしておったのでございますが、去る三月一日でございますか、国連海洋法会議の準備委員会が終わっておりますが、外電の報ずるところによりますと、非常にこれは将来を暗くしたんだというようなことを報道いたしておるのを拝見いたしたのでございます。それで、六月になりますとまたカラカス会議が開催されるわけでございますので、将来におけるカラカス会議の見通しというものに対しての外務省の見解があるならば、参考になることでありますので、この機会に率直に承りたいと思うのでございます。
  162. 杉原真一

    ○杉原説明員 ただいま先生から御指摘がありました三月初めの準備会議と申しますか、正確にはこれは議長の非公式協議だったわけなんでございます。と申しますのは、昨年の末に第三回国連海洋法会議は正式に発足したわけなんでございますが、第一会期、昨年の暮れにニューヨークで行ないました会期では、役員の選挙と、それから条約を採択するときの手続規則をきめる会議になったわけなんでございます。役員の選挙は何とか片がついたのでございますが、手続規則ということになりますと、条約を採択するのに、ほとんど全員が同じような見解に到達するまで交渉を続けるということを主張いたします先進海洋国側と、それから通常の条約採択方式、すなわち三分の二の多数決あるいは手続問題については単純過半数というもので条約の採択を行なうという発展途上国側の主張とがまっこうからぶつかり合いまして、十二月の会議ではついに一カ条の採択もできなかったわけなんでございます。  それで、議長がとりなし役をやろうというので、二月の終わりから三月の初めにかけて主要な関係国の代表が出まして、ニューヨークで議長が開催する非公式の協議をやったわけなんでございます。ところが、この会議でも全く結論を得ることができなかった。したがって、手続問題についての審議も、六月二十日から行なわれますカラカス会議で再び取り上げられて、これが妥当な規則として採択されるかどうか、その点、先進海洋国側としてははなはだ心もとない状況なんでございますが、一応手続規則の採択は、六月の二十六日、開会後一週間日にはもう採択するのだという決定が十二月の第一会期のときに行なわれておりますので、そのときにはあるいは強行採決が行なわれる可能性もないわけではないわけでございます。  その手続規則が終わって、今度は初めて実質審議に入るわけなんでございますが、従来、九十カ国余りで新しい海洋法の条約案づくりをやる拡大海底平和利用委員会というものが国連で設けられて三年ばかり審議してきたのでありますが、これについては一カ条の条文案すらできないという状況でございました。それから、今度は百五十カ国でありますから、従来に比べて六十カ国ばかり新しい国が入ってまいります。これらの国もそれぞれ立場と考えを持っておるわけで、その連中もおそらく考えを述べ、かつ、いろいろな提案をしてくることだろうと思います。と申しますと、基礎になる条約案すらない状況で、しかも各国がすべて現在のところ腹一ぱいの考え方を述べ、提案をいたしております。今度の海洋法会議かっこうこそ国際法をつくるという形式をとっておりますが、実際には、昨日もお答えいたしましたとおり、世界に残されているどの国にも属していない海というもののほとんど四割前後をどこかの国が分奪してしまう領土分割会議、あるいは海とり会議とでも申しますか、そのような激しい領域主権にかかわる会議なものでございますので、参加するすべての国がきわめて慎重であり、かつ、自分の利害に対してきわめて強い意見を出しているのが現状でございます。したがいまして、今度のカラカスでの二カ月半の会議で、項目にいたしましても、大項目で二十五項目、小項目にいたしますと八十項目以上の項目があるわけで、何百条という条約にならざるを得ないのでございますが、これができ上がる可能性はほとんどないだろうと見通されております。したがって、すでに来年、その次の会期にオーストリアのウイーンが場所として立候補いたしておりますので、おそらくウイーンに持ち越され、ウイーンでできなければさらにその先に持ち越される可能性すら排除されないと考えますが、ただ、一つ開発途上国が、これは先ほど申し上げましたように、現在すでに三分の二以上の数を占めております。したがって、これらの国がもし何かのきっかけで早くとにかくつくってしまおうというふうな態度に出た場合には、いま私が申し上げましたなかなか解決がつかないだろうという見通しも、票によって解決されてしまう可能性も完全には排除できない、このように考えておる次第でございます。
  163. 稲富稜人

    ○稲富委員 その当時の外電の報ずるところによりますと、海洋法会議で新国際ルールの作成がおくれればおくれるほど、沿岸国の主権の拡大で、開発ラッシュが起きるというか、正面衝突をする危険性が高まるというように国連筋は指摘しているのだと、こういうことを伝えておるのであります。私たちがここで知りたいことは、そういうようなことが日本にプラスになるのか、あるいはマイナスになるのかということ、この点に対する率直な見通しを承りたいと思うのであります。
  164. 杉原真一

    ○杉原説明員 日本は、御案内のとおり、伝統的な海洋自由の原則というものを最大限に利用し、活用してまいった国でございます。したがって、現在のように海に関する、特に領海の幅あるいは漁業専管水域等に関する法秩序が乱れているという情勢は、わが国の海運にとっても、あるいは漁業にとっても、いかなる海の利用部門にとっても、はなはだ困る情勢であるということははっきり申し上げなければならないと思います。したがって、すみやかにこのような混乱した海の秩序が回復されて、新しい海洋法ができ上がることが最も望ましい方向であろうと考えます。  先ほども申し上げましたように、今度の条約の場合には、従来の国連その他で行なわれております単なる決議とかあるいは宣言というものとは田なりまして、法ができるわけでございますから、日本がいやだから入らないと言っておりましても、他国がたとえば二百海里の経済水域を設定いたしました場合には、それに従わざるを得ないという情勢が起こるわけでございます。もし今度の海洋法会議が不成功に終わった場合にはどういう事態が起こるかと考えますと、これまた同じように、開発途上国側としては一方的にこのような広大な海域に対する管轄権の設定を行なうことが必至だろうと考えられておるわけでございます。専管水域の拡張というのは、発展途上国側を中心にしてすでにどんどん行なわれておりますし、一部の沿岸国的性格を持った先進国でも、そのような二百海里等の漁業専管水域を早く設定しろという国内世論が強まっているということもいろいろ新聞で報ぜられておるとおりでございまして、非常に不都合な法ができるということは非常に困るのでありますが、しかし、早く安定した妥当な法ができなければ、これまた非常に困るという事態であろうかと考える次第でございます。
  165. 稲富稜人

    ○稲富委員 この問題はこれで最後になりますが、それでは、この海洋法会議に臨むにあたりまして、わが国といたしましては、領海の幅員あるいは経済水域という問題に対してどういうような基本的な方針で臨もうとするのであるか、臨むにあたっての基本的な方針について承りたいと思うのでございます。
  166. 杉原真一

    ○杉原説明員 まず、領海の幅員の問題でございますが、過去の一九五八年及び六〇年の第一回及び第二回の国連海洋法会議が領海の幅員をきめることができなかった。そのことが現在の海洋法秩序の混乱の発端をなしているという事態にもかんがみまして、わが国としては、現在一番多くの国が採用している領海についての十二海里の説と、これについての国際的合意ができるならばわが国も十二海里に領海の幅を定めることに異存はないということを海洋法の準備会議の場ですでに表明いたしております。ところが、問題は十二海里だけでは済まないという問題でございまして、たとえば先進国の側にいたしましても、領海が十二海里にふえますと、従来公海として自由に航行できた百以上の海峡がそれぞれの国の領海の中に入って自由航行ができなくなる。海峡通過の自由の問題という、これまた日本を含め、その他の海洋国にとっては死活の問題を生じてくる。片や、開発途上国側にいたしますと、十二海里では資源の十分な囲い込みができない。したがって、十二海里を承認する条件として、二百海里の資源管轄水域というものを設けなければならないという主張をいたしておるわけでございます。  きょうは漁業お話しが主たることだろうと思うのでございますが、実は、二百海里の資源管轄水域は、漁業とそれから海底鉱物の双方の問題が入っておるわけなんでございます。ところが、海底鉱物につきましては、国家の主権に属する領域の外の海、深い海は、これは国際海底として、国際社会の共同財産であるという原則の宣言が国連で一九七〇年にでき上がっておりますので、海底資源に関する限り、世界に自由なところはもう全くなくなっておるわけなんでございます。ところが、漁業に関しましては、現在のところまだ領海の外は自由であるという伝統的な国際法が存在するわけで、ただ、沿岸国が十二海里では足りない。特に、開発途上国側といたしましては、自分たちの弱い漁業あるいは将来の食料の確保の見地からも、より広い海域を自分たちの専属的な管轄水域としたいという主張を持っておることも、これもまた一がいにそういうことはいけないのだと申すこともできない次第でございますが、ただ、二百海里という海域は、先ほど申し上げましたように世界の海の四割前後をとってしまうということで、あまりにも沿岸国の利益にウエートが置かれ過ぎている。他の国、もちろん日本あるいはソ連のような遠洋漁業国もこれに入りますが、それから海に面していない内陸国、あるいは海を持っておっても、国土のほとんどが陸の中に入っている地理的に不利な国々にとっては、その利益が十分に守られないことが明らかだという意味で二百海里——たとえばのお話しでございますが、資源に関してはかなり広範な海に対する管轄水域というものができるにしても、その管轄権の内容について他の国の利益も十分考慮されたような、バランスのとれた法秩序というものがつくらなければならない。わが国としては、二百海里というものを前提とするわけではもちろんございませんが、そういう角度から開発途上国側の広い海に対する管轄権要求に対処したい、こういう所存でおる次第でございます。
  167. 稲富稜人

    ○稲富委員 何を言いましても、この問題は日本遠洋漁業に及ぼす影響が非常に大きい問題だと思います。これを進める上におきましては、大陸だなの問題等いろいろあると思いますけれども、これは所管が外務省でございますので、苦労もありましょうが、日本遠洋漁業の重大性から考えて、今後の一そうの努力を特に外務当局にお願い申し上げたいと思うのでございます。この問題について触れておりますとほかの漁業の問題に触れられませんので、海洋法会議の問題については今後の外交的な努力を強く要望いたしまして、この問題につきましての質問はこの程度で打ち切ります。  次に、先刻林委員からも御質問いたしておったのでございますが、最近の重油の値上げの問題につきまして農林省当局にお尋ねしたいと思いますが、内地においては従来重油が二万三千円であったのが、今度一万円また値上げになると、三万三千円になる。これがさらに外地に行きますと、外地の補給というのは六万円をこすというような状態になる。特に、ニュージーランドのごときは石油基地がないという関係で、ほんとうに予測をされないような状態になるのでありますが、これがために遠洋漁業者が困る問題が非常に生ずると思うが、これに対してどういう対策を講じようとされるのであるか。場合によりましたら、この重油の値上げに対しましては助成方法等も考えなければ相ならないという問題も惹起するのではないかと思いますが、これに対する農林省としての考え方を承りたいと思うのであります。
  168. 内村良英

    内村(良)政府委員 石油危機が起こりました直後におきましては、ただいま先生から御指摘のあったようなことがございまして、特に、マグロ船は外国で補給がなかなかむずかしくなったということがございます。これにつきましては、先生案内のように緊急の洋上補給をやりまして、マグロ船に対しましては、ケープタウン沖の漁場に出漁しているマグロ船に対して六千百キロリットル、ハワイ沖漁場の出漁船に対して四千五百キロリットル、豪州沖漁場出漁船に対して六千キロリットル、それから遠洋底びきに対しましては、ケープタウン沖の出漁漁船に対して四千六百十キロリットル、イカつり船、これはニュージーランドの沖でございますが、それに一万五千キロリットルというように洋上補給をやったわけでございます。その後関係の人々からの話を聞いておりますと、だいぶ海外の状況はよくなってきたということでございます。さらに、昨日の新聞によりますと、アラブのアメリカに対する禁輸が一、二の国を除いて解除されたということで、物的な手配のほうはずいぶん緩和してきたということをマグロの関係者等からも聞いております。  ただ、問題は値段でございます。この値段の問題につきましては、単にマグロ漁船だけではなしに全漁業の問題でございまして、それによって経営が苦しくなってくるというようなことであれば、先ほど政務次官からも御答弁がございましたけれども漁家の経営安定については何らかの対策を講じなければならぬということで、鋭意水産庁の部内においても検討中でございますが、いずれにいたしましても、過去の数字を見ますと、一年に二割ぐらい魚価が上がってきております。したがいまして、経費の上昇分は魚価の上昇で吸収されれば問題ないわけでございますが、それにしても、先ほどのマグロで質疑がございましたように、いわばタイムラグと申しますか、ギャップがございますので、そこのところへ経営資金の補給その他のことがあるいは必要になってくるかもしれないということで、事態を注視しながら、なお対策についても鋭意検討している段階でございます。
  169. 稲富稜人

    ○稲富委員 この問題につきましては鋭意検討をなされておるというのでありますが、さっき長官からも御答弁がありましたように、資材、重油が非常に高騰いたしております。この高騰に対して漁家経営というものが維持されていくような価格になれば、それはそれでけっこうでございますけれども、いまも検討しておるとおっしゃいますが、それがどうしてもつり合いがとれない、ギャップが大きいということになりますれば、何らかの財政措置というものをやっていかなければいけないんじゃないか。そう言えばすぐ政府は金を貸しますとおっしゃいますが、融資というやつは返さなくちゃいけない。日本の食生活の上から食料対策として必要であるとするならば、遠洋漁業振興上、資材あるいは重油に対する助成措置を講ずるということもわれわれは具体的に考えなくちゃいけないんじゃないか。検討されると言うが、これはそういうことも含んでの検討だと思いますが、この点はいかがでございますか。
  170. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁家経営の安定ということから考えますと、やはり魚価の安定というものを一番考えなければならぬ。農産物につきましては、御承知のとおり、農産物価格安定に相当な財政支出をいたしましていろいろやっておるわけでございます。漁業の場合には、非常に腐りやすいということもございまして、従来そういった価格安定措置が非常に欠けております。しかし、先ほども答弁申し上げましたけれども、最近では冷凍品が流通の半分ぐらいになってきておるということもございまして、需給調整ができやすくなってきておりますので、基本的にはやはり魚価安定対策というもの、これは緊急事態に比べれば長期の話じゃないかということでございますけれども、そこへ力を入れていかなければならないんじゃないかと思います。  それから、資材について価格補給をやったらどうかというお話しだと思いますけれども、これはなかなかむずかしい問題だと思います。と申しますのは、永久にそういうことをしなければ漁業は成り立たないということであっては、そういった財政支出はとても認められるわけもございませんし、やはり、私どもといたしましては、基本的には漁家経営の安定のための魚価対策というものを中心にしながら、必要な場合には何らかの緊急措置をとってその間のつなぎをやっていかなければならないんじゃないかと思います。  いずれにいたしましても、今度の石油価格の値上げの問題は全産業の問題でございます。たとえば私どもが聞いておりますところあるいは新聞で読んでおりますところでは、電力などは今度の値上げで一日に相当な赤字が出る。そこで何とかしょうとか、いろいろな話が出ておりますので、漁業だけについて油の補給金を出すというのはなかなかむずかしいんじゃないかと思って、基本的には漁家経営の安定対策として問題に対処すべきであって、それに必要な緊急措置をとっていくべきではないかというふうに考えております。
  171. 稲富稜人

    ○稲富委員 先刻、次官から、遠洋漁業、沖合い漁業に対して政府は相当の熱意をもって今後対処するという決意のほどを承ったのでございますが、実際上の問題においては、非常に国際的な、先刻申し上げましたような規制の問題があるし、あるいは資材、油等の高騰の問題がある。こういう点を総合いたしますと、遠洋漁業等においては、将来は楽観を許さない非常にけわしい状態にあるんだと思うが、こういうことはどういうふうに御認識なさっておられますか。
  172. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、わが国遠洋漁業の直面しておる問題はたいへんむずかしい問題があると思います。したがいまして、その中にあって、国際的には、いろいろな国際的な交渉を通じて漁場の確保をはかっていく。特に、開発途上国に対しましては、これに資金技術等の援助を結びつけながらやっていかなければならぬとか、いろいろな問題がございます。いずれにいたしましても、漁場の確保と経営の安定策について力をいたしていかないとこれはなかなかたいへんなことになるということで、私どもも、遠洋漁業の前途については決して楽観はしておりません。そして、一方、非常に悲観論者がおりますが、四百万トン全部なくなってしまうというようなほどにはならぬというふうにわれわれは考えておりまして、そこのところは、日本の現実、さらに国際的に直面している現実を考えながら、わが国漁業の利益を十分に守ってやっていかなければならないというふうに考えておりますが、決して楽観はしておりません。しかし、一方、また、振興を一生懸命はかりたいと思っております。
  173. 稲富稜人

    ○稲富委員 いずれにいたしましても、遠洋漁業がどうあろうとも、われわれは国民の食料対策としての対策はゆるがせにすることはできないわけでございます。そして、遠洋漁業は非常に先行きが不安であるといいながらも、これに対する振興をはかっていくべきであることはもちろん当然でございます。それと同時に、一面には、沿岸漁業というものに対してもやはり考えて、困難なものはこれで補っていくのだということが必要になつてくることは当然でございます。こういう点から、今回沿岸漁場整備開発法案提出されたのも、これは午前中の答弁にもあったようでございますが、去る三十八年に制定されております沿岸漁業等振興法目的というものをよりよく達成するための一つの方法、手段としてやられたものであるということは私も解釈いたしております。でありますがゆえに、今後これが運用に当たりましては、ほんとうにこれを生きたものとして積極的に推進する必要があるのじゃないかということを私たちは考えます。  ここにおいて一番起こってくる問題は、これもしばしば論ぜられております沿岸漁業の公害の問題ですが、こういう問題に対しましても対処してまいらなければできないと同時に、積極的な整備計画等は進めてまいらなくちゃいけないと考えるわけでございますが、ここで、この整備の内容に入ります前にまずお尋ねしたいと思いますことは、これは先日も竹内委員から質問しておったのでございますが、最近日本近海にソビエトの漁船が来て非常に操業を行なっている。これがために日本の漁民に非常な悪影響を及ぼしているということはきのうも質問があって、これに対して外務省からも、これに対しては厳重な抗議をしているのだという御答弁がありましたことも承知いたしております。このソビエトに対する抗議の内容ですが、単にそういうことで操業をやってもらうのじゃ困るのだというだけの問題ではなくして、実際上沿岸の底びき網等は、話を聞いてみますと、網を引くと上がってくるものはサバの頭とはらわただけであって、網はこわされるし、これではどうしてもやっていけないということでこぼしているという現状も事実あるのでございますから、こういうような事態に対しては、抗議を申し込むと同時に、それがために沿岸漁民が非常に損害をこうむるというならば、損害賠償もあわせて当然要求すべきものではないかと思うわけでございますが、今日ソビエト当局に対して外務省から交渉なさっております交渉の内容は、そういう損害賠償等も含んでの抗議をなさっておるのか、この点に対して念のために承りたいと思います。これは外務省のほうにお聞きしたいと思います。
  174. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 この問題につきましては、昨日の竹内議員の御質問に対してもお答え申し上げましたように、ソ連側に対して、水産庁からの調査に基づきまして、厳重に取りやめてくれという申し入れをいたしております。ただ、損害賠償の件につきましては、私どもといたしましては、その損害賠償の要求が正当なものであり、かつ関係省からの要請があった場合にはソ連側に伝達する、そしてその善処を要求するという態度にいたしております。
  175. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただ、私がここで考えますことは、ソビエトに対してはサケ・マスの問題があるので、こういうような沿岸の操業に対して抗議を出すのも何か遠慮がちじゃないかという感じがどうもするのです。サケ・マスの交渉はサケ・マスの交渉として別個にし、実際に沿岸漁民に対してそういうような損害を与えるという問題に対しては、当然切り離して強く要求すべきものであると私は考えるわけです。ソビエト船団が参りましてから、沿岸はそれがためにすでに非常に収穫は少なくなってくるんだという事実はたくさん言われているのでありますが、これに対して水産庁はどういうような事態を把握していらっしゃいますか、承りたいと思います。
  176. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたけれども、私どもは、こういった沿岸の問題に対して、日ソの関係でソ連に対して遠慮するということは全くやっておりません。これはこれとして要求しなければならぬということで、外務省に頼みましてソ連に交渉しておりますし、ときどき日ソの関係があるものでございますから、私どもも、東京におるソ連大使館の大使なり参事官に会う機会がございますので、そういう機会にもこの問題は指摘し、特に、ことしのごときはソ連船団がわが国のサバの産卵場である銭州の漁場に入ってきたということもございまして、その直後には、ソ連の参事官にほかのことで会いましたときに強く私自身話したということで、これは別に日ソの関係のことは考えずにやっております。したがいまして、損害の状況につきましては水産庁として把握しておりますし、それを外務省に通報いたしまして、公式には外務省を通じてソ連に抗議をしておるという状況でございます。
  177. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの外務省の御答弁は、農林省より損害について申し出られれば外務省はそれに対して交渉するが、いまのところそれはまだ農林省としては申し出がないのだというような答弁のように承ったのでありまして、水産庁長官答弁と外務省の答弁はいささか違うと思いますが、いずれでございますか。
  178. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 関係省から損害の状況は通報を受けております。
  179. 稲富稜人

    ○稲富委員 どうも、さっきの御答弁と違うようでございますが、いずれにしましても、そういうことは、食い違った点を私は責めるわけではございませんので、損害のあった事実に対しては農林省は早く調査をして、交渉の任にある外務省に伝えて、この問題に対しては外務省も抜かりなく交渉を進めていただきたいということを特に私は強く要望いたしたいと思うのでございます。  これにかかっておると時間がありませんので、次に漁場整備の問題についてお尋ねしたいと思うのでございます。  整備の場所等に対しましてはけさからも質問なさっておったのでございますが、どうも水産庁としては、今回のこの整備計画の場所等は県からの要望があってからやるというようなことで、明らかにされないようでございますが、これは明らかにされないような理由があるのでございますか。御承知のとおり、予算書の説明書を見ますと、この中には、「沿岸漁場整備計画を樹立するため、これに必要な調査を全国四十都道府県に委託している」ということで、四十都道府県にということがはっきり予算書に説名されております。さらに、また、「栽培漁業を効果的に推進する等のため、新たに育成水面制度を創設することとし、四十九年度に全国十地域につき」ということで、都道府県は四十都道府県だ、それから育成水面制度を設立ずるのは全国十地域だということをはっきり予算書に書いてある。予算書にこういうことを説明されている以上は、水産庁としても、大体どこだということは計画があらなければ明らかにされないと思う。これをはっきりここで答弁されないということは、答弁できない理由があるのでございますか、どうなんですか、その点を承りたいと思うのでございます。
  180. 内村良英

    内村(良)政府委員 現在、水産関係者間ので、魚礁というのは非常に効果がある、極端な場合、バスを海に埋めておけばそこに非常に魚がついてくる、だから、全国日本の津々浦々まで日本の海を魚礁で包んでしまえというような意見もございます。これは確かに一つ考え方でございまして、私どもといたしましても、大型魚礁というものをこの際大いにやりたいということを考えまして、今度の法律をお願いしているわけでございます。  そこで、それでは五十年から計画を立てまして、とりあえずは五年計画でやろうと思いますけれども、どこの場所でどれだけの魚礁をやるかということは、やはりこれは海の状況もございますし、従来、魚礁というものは、大体岩があるところにさらに魚礁をつくりまして、岩を補完するというような形にしておったわけでございますが、できれば海の砂地に一つ大きな魚礁を置いてみて、お城みたいなものをつくってみたらどうか、そこへ新しい魚が集まってきて、一つ漁場ができるのじゃないかという意見もございます。そういったことになりますと、やはり現場の実情を見ながら考えていきませんと、ただ水産庁が頭の上でつくっても机上。アランになってしまうという問題がございます。そこで、四十九年度はやや迂遠でございますけれども、八千万円ばかりの金を使いまして、各関係の四十県にいろいろ調査をし、意見を出してもらう、そういうことを考えて具体的な計画をつくらないと、単なる机上計画では意味がないというところで、繰り返し御説明しておりますようなやり方をしているわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、今後の沿岸漁業振興のために、今度の措置基盤整備の非常に大事な問題だ、したがってそれを現実性のあるものにして大きな計画をつくりたい、それをもって財政当局に要求し、沿岸漁業整備をはかりたいということを考えておりまして、そういう立場から、やや迂遠ではございますけれども、まず県の調査を聞いて計画をつくりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  181. 稲富稜人

    ○稲富委員 長官、私たちが考えるのは逆でございまして、沿岸漁場整備開発法というものを制定する以上は、水産庁としてももっと自信を持って、こういうところにやるんだ、そうしてこれを充実するんだという気魄と自信というものを持って対処してもらいたいわけで、われわれは強くその気持ちを持っておるわけなんです。にもかかわらず、ただ一応示しておいて、各県が立ち上がってきてそれに応ずるのだということだと、いかにも水産庁として自信がなさ過ぎるような感じが逆にするのですよ。私は、この問題をほんとうに現実の問題として生かして、この法案を生かしてもらいたいという意味から特にそういうことを強く迫っておるわけなんでございまして、水産庁、この重大な時期でございますし、特に、沿岸漁業が重大な時期でございますから、この点に対しては、遠慮なく、積極的に、自分のほうは自信を持ってやっていくのだという態度でやってもらいたい。ただちょっと示しておいて、これにこたえてこられて、それに乗っていくのだということでは自信がなさ過ぎるようにわれわれは思うのです。そういう点から私は特にこの点をお尋ねして、もっとあなたのほうではっきりなさったらどうですかというような意味からこの点を私は強く申し上げておるわけなんでございますから、今後は、これの実施にあたってはほんとうに自信を持ってやっていただきたい。こういうことを特に私は要望しておきたいと思うのでございます。  それから、次に、近代化資金の対象を拡大された事情ですが、これはけっこうでございますが、この金利の問題でございますね。これは一時、前から安くされておって、また五厘上げられた。ところが、今日は漁業のこういうような時期でございますから、この近代化資金の金利というものはできるだけ安くすべきじゃないか。これに対しては国及び県において利子補給をやって、漁民ができるだけこれによって恩恵をこうむるような金利体制を確立することが必要じゃないかと私は思う。こういう時期にまた復元なさったといえども、この際金利を上げるということはどうかと思いますので、これに対して金利対策の利子補給等もやるということで行政的な処置をやっていこうというようなお考えはないのであるか、また、こういうことでやってもらいたい、こういうことを強く要望しながら意見を聞きたいと思うのでございます。
  182. 内村良英

    内村(良)政府委員 先生の御指摘は非常によくわかります。近代化資金の金利が漁業者の立場から見れば安いほうがいい、これは当然でございます。ただ、ここで一つ問題になってまいりますのは、近代化資金の原資が系統金融から出されて、それに利子補給をしているということと、それから、金融につきましては、公庫資金その他いろいろな市中の資金等の金利体系の問題がございます。そういう金利体系のお話しをいたしますと、それは一つの逃げ口上だという御批判をよく受けるわけでございますが、やはり、現実問題としては、金利体系の問題が争われない問題としてあるということを考えますと、近代化資金のような政策金融の金利水準の問題はどうあるべきかという基本的な問題がそこへ出てまいります。と同時に、系統金融でございますから、一定の利子補給のワクでずっとやっていきました場合には、金利が上がってまいりますと系統の経営が問題になってくるという問題もございます。この点につきましては昨日も美濃先生の御質問でだいぶ議論のあったところでございますけれども、私どもといたしましては、近代化資金のような政策金融の金利水準が全体の金利水準との関連でどうあるべきかということと、それから原資が系統から供給されているという事情がございますので、系統の経営問題もからめながらこの問題は処置すべき問題ではないかということで、一がい的に利子補給をふやしていくということだけではたして問題が解決するのかどうか、その点はなお慎重に検討すべき問題が多々あるのではないかと考えているわけでございまして、最終的にはこれは政策的な事項として決定さるべき問題じゃないかと私は思っております。
  183. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、次に、養殖漁業につきまして二、三お尋ねを申し上げたいと思うのでございますが大きな問題につきましては、いずれ大臣に質問することにいたしまして、質問を保留いたしまして、小さい具体的な問題を二、三お尋ねしたいと思うのでございます。  養殖漁業、これは現在栽培漁業とも申すのでございますが、漁業の飼料というものが御承知のとおり相当に使われるわけです。この漁業のえさ、魚のえさというものはなかなかいろいろと雑多でございますが、これに対する内容の成分等をどのくらい水産庁は把握していらっしゃるのか。また、この成分等ももっと明示するようなこともやるべきではないかと考えておりますが、この漁業のえさの問題に対しての水産庁としての考え方を承りたいと思います。
  184. 内村良英

    内村(良)政府委員 養魚用の配合飼料の成分基準に関する御質問でございますが、現在のところ、配合飼料の成分基準及び検査等については制度化されておりません。その背景としては、養殖用配合飼料の開発普及がなされてまだ日が浅いということと、完全配合飼料としての成分については目下研究開発途上の段階にございますと同時に、養魚用の配合飼料の総生産量は約十万トンと、家畜用の飼料に比べてきわめて少なく、これまで、各県の水産試験場等の試験結果等に基づきまして、各飼料のメーカーが自主的に品質の向上につとめると同時に、メーカーがメーカーの責任において成分表示を実施しているというような段階にあるわけでございます。何といいましてもまだ日が浅いものでございますから、もう少し蓄積をしてから制度化するかどうかということは研究すべき問題だと思っております。
  185. 稲富稜人

    ○稲富委員 養殖漁業をやる上におきまして、配合飼料というのは非常に大きなウエートを占めるのですよ。特に、養殖漁業をやっておりますと、ぽかの動物と違いまして、魚というものは食べれば食べるほど大きくなるのですよ。そのかわり、食べ過ぎで失敗するというのも多いわけなのです。同じえさをやるのでも、ほかの動物と非常に違いまして、これは天候に支配されて、食べる日と食べない日とある。天候のよいときは相当に食べても活動しますからいいけれども、天候の悪いときにたくさん食べると、今度は活動しないから消化不良を起こすという問題になってくる。それほどえさというものが養殖漁業には非常に大きなウエートを占めるわけなのです。こういうように養殖漁業等がだんだん大きな問題に取り上げられることになりますと、これに対しては、配合飼料の規制といいますか、こういうことも当然やらなければできないと思うのでございまして、そういう方向で進むべきだと思うのでございますが、いかがでございますか。
  186. 内村良英

    内村(良)政府委員 そういう方向で検討したいと思います。
  187. 稲富稜人

    ○稲富委員 次にお尋ねしたいのは、このえさにつきまして、漁業の薬品の問題であります。これは非常にいろいろな薬品を使っておりますが、病気を少なくするため、成長させるため、中には抗生物質等の薬品も使っております。これが人体に及ぼす影響等も相当に考えなくてはいけないと思うのでありますが、この漁業の薬品に対しては、まず、水産庁としては、どういうようなふうにこの薬品の問題を認識なさっておるか、この点を承りたいと思うのであります。
  188. 内村良英

    内村(良)政府委員 水産用の医薬品として一番問題なのは、ただいま先生から御指摘がございましたけれども、抗生物質ではないかと思います。それで、魚の場合には家畜と違いまして、体内に入りました抗生物質が通常は四十八時間以内に体外に排出されますので、食品としての魚について、これらの抗生物質の残留が問題になることはほとんどないのではないかというふうな化学的な知見を持っているわけでございまして、現在のところ、その飼料については特別な規制はしておりません。しかし、魚苗の病原菌の耐性が増加するおそれがあるのではないかというふうな問題もございまして、水産庁といたしましては、水産試験場の職員等に対しまして、病状に応じ適量を投与する等使用方法について養殖業者を十分指導するように、研究会議その他を開きまして指導している段階でございます。  それから、水産用の医薬品についての製造承認事務は、現在畜産局がこれを所管しております。しかし、水産関係につきましては、承認に先立ちまして、そのつど水産庁に合い議をしておりますので、私どもといたしましても、担当官は十分こまかく知っているわけでございます。  そこで、抗生物質について、魚の場合には、ただいま申し上げましたようにほとんど残留性の危険はないわけではございますけれども、なお、人体に影響があってはいけないので、通常出荷前五日ないし二週間程度は使わないようにしろということを指導しておりまして、製剤の際、使用上の注意としてそのことを明記させるというような指導をしておるところでございます。
  189. 稲富稜人

    ○稲富委員 厚生省に伺いますが、ただいまお聞きのように、魚の薬品といたしまして抗生物質は相当使われております。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 私たちは、これが人体に及ぼす影響等に対しては、ちょうど農薬を使って人体に及ぼす影響があったように、将来相当に検討すべき問題ではないかと思うのでございますが、これに対して厚生省としては、こういう抗生物質を使っておることをどのくらいの程度御存じでございますか。また、これはいいと思っていらっしゃるか、将来どういうようなことをやったらいいと思っていらっしゃるか、これは一番その任に当たられる厚生省としての意見を承りたいと思うのでございます。
  190. 岡部祥治

    ○岡部説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のように、水産業、特に養魚におきまして、クロラムフェニコールあるいはテトラサイクリン系統の抗生物質が使われております。それで、ただいままでの知見によりますと、ただいま水産庁から御答弁がございましたように、通常の状態におきましては四十八時間以内に魚体内から消滅するわけでございますが、この使用量によりましては、特に内臓等に残留する場合もございます。したがいまして、私どもの立場から申し上げますと、残存する可能性のある医薬品につきましては、なるべく使用量を制限し、適正な使用をいたしていただきたいと考えております。
  191. 稲富稜人

    ○稲富委員 これに対する規制をするとか、そういうようなことに対しての必要性は厚生省としてどうお考えになっておりますか。ただ行政指導だけでいいのであるか。
  192. 岡部祥治

    ○岡部説明員 食品衛生法のたてまえから申しますと、特定な場合を除きまして、食品に抗生物質が残留してはならないという規定になっておりますので、これの規定に合うような使用方法ということを——行政指導はもちろんでございますが、これが規制ができれば、それが正しく守られるようにいたしていただきたいと考えております。
  193. 稲富稜人

    ○稲富委員 次にお尋ねしたいと思いますことは、これは水産庁長官も御存じだと思いますが、最近海外よりいろいろな稚魚または魚の卵が輸入をされます。これがわが国の魚にも感染いたしまして、えたいの知れない病気が発生する例がたくさんあるのでございます。つまり、魚の中にウイルス病とかあるいは細菌病が急激にふえているという状態があるのであります。数年前フランスからウナギの白子が入ってまいりましたが、そういうことがほかのウナギにも感染いたしまして、ウナギが全滅をしたというような事例もあるわけでございます。  ところが、御承知のとおり、今日植物を外国から輸入いたしたりしますときには、植物防疫法によってずいぶん検疫も受けます。動物にしましてもやはり検疫を受けるが、ところが、魚介類だけは全然検疫を受けないで、これはもうフリーパスだ。こういうものを野放しにしておいていいのであるか。植物防疫法があるように、魚介類に対しても防疫対策あるいは検疫対策というものをやる必要があるのではないかと考えるわけでございますが、これに対してはどういうような考え方を持っていらっしゃるかを承りたい。
  194. 内村良英

    内村(良)政府委員 この問題は、確かに、先生の御指摘のように重要な問題でございます。ただ、国際的に見ても新しい問題でございまして、卵や種苗が輸出されるということは昔はあまりなかったのですが、最近は非常にふえてまいりまして、国際的にも、現在、魚苗についてはいろいろ研究が始まったという段階でございます。  そこで、私どもの調べておるところでは、魚につきまして、動物や植物と同じような検疫制度を設けている国はございません。ただ、アメリカ及びカナダでは、主要疾病について、輸出国の無病証明のないものは輸入してはいかぬというような規定もございます。これはアメリカ、カナダは国境を接しておりまして、相互にやっているのだろうと思いますけれども、そういうことがあるだけでございます。  現在、わが国でも、国及び都道府県等の公的機関が輸入する場合には無病証明をつけてくれということを輸出国の関係機関に対して要求しております。それから、さらに、入ってきたものを池に放す前にフラン剤による消毒を行なっておりますし、民間の養殖業者が卵や種苗を輸入してきた場合にも同様な薬剤措置をとるように県を通じて指導しております。  そこで新しい分野でございますが、いずれにいたしましても、こういった魚の卵や種苗の輸入というものはどんどんふえてきて、現に、日本でも、先ほど先生から御指摘がございましたように、ウナギの種苗が非常に入ってきているというようなことがございますので、いずれにいたしましても、これはいつまでも放置できない問題だと思いますが、そこで、われわれといたしましては、病気の原因でございます病因に関する研究の促進をすると同時に、魚病というのは新しい分野でございまして、診断の技術者等も必ずしも十分じゃないわけでございますので、そこで、いま予算措置をとりまして、そうした診断技術者の養成等もやっております。そういうようなことをはかりながら、逐次検疫体制を整備していかなければならぬと同時に、これは日本だけでやってもなかなか効果が確保できない問題もございますので、できればそういった国際協定をつくるのが望ましいんじゃないかということで、国際的にそういうような働きかけをすると同時に、国内の検疫制度をなるべく早くつくりたいということでいろいろ検討をしている段階でございます。
  195. 稲富稜人

    ○稲富委員 この魚の病気というものは一番なおざりになっているのですよ。それは、御承知のとおり、魚病学というんですか、そういうものもございません。魚のお医者さんはおりません。ところが、外国から入ってくる魚というものがえたいの知れない病気を持ってくる。ほかの魚にこれを感染いたします。こういうような事態が次々に起こっている。こういう問題に対しても、何とかして魚の病気対策を早く打ち出してもらいたい。いままで数年の間えたいのしれない病気だと言われていたが、えたいが知れないで何年も過ごすということも非常におもしろくない問題があるので、こういうことに対しても鋭意研究を進めて、魚病の対策を講じてもらいたい。あるいは漁病医師というんですか、そういうような専門的な知識を備えた者が魚病に対する対策を講ずるというようなこともあわせてやる必要がある。さらに、先刻から私が繰り返して申しますように一フリーパスで外国から入ってくるというようなことについては何とか考えなければ、いよいよ蔓延してしまってからでは取り返しのつかないことになると思いますので、こういう点に対しても十分今後は検討する必要があるのではないか、また、前向きでこの問題は取り組むべき問題じゃないか、かように考えますが、どうでございますか。
  196. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生指摘のとおりでございます。そこで、確かに、魚病のお医者さんというものはいまのところおりません。そこで、四十八年あたりから講習会等をやりまして、関係者水産試験所の職員にそういう魚病に関するいろいろな診断の講習をやっておりますし、それから、検疫問題を含めましてどうするかということにつきましては、四十九年度予算をとりましたので、検討会を水産庁の中につくりまして、今後この問題には直剣に取り組まなければならぬと思っておりますが、特に、栽培漁業とか養殖漁業というものを今後振興発展させなければならぬわけでございますから、その場合にフィッシュドクターの養成ということは非常に大きな問題でございます。
  197. 稲富稜人

    ○稲富委員 最後に、もう時間がありませんので一つだけお尋ねいたしますが、最近の問題といたしまして、遊漁者というのが非常にふえております。内水面及び沿岸漁業に対しての遊漁者の数は、日本でも二千万人に達していると言われております。これはほんとうの漁業者から言うと迷惑な話ということになるかもしれません。そのあたりに釣りに来まして、レクリエーションに来てかん詰めかんは捨てるし、ビニール袋は捨てていく。漁業者にはこれは迷惑な問題かもしれませんが、その二千万人の大多数の遊漁者が何よりのレクリエーションとしてやっているというこの仕事を禁止するということもまた事実上いろいろと問題があるのではないかと思います。でありますならば、これは、遊漁者漁業者が併立してやっていけるような対策というものを講ずべきじゃないか。遊漁者といえども、稚魚を放流するとかいろいろな対策をやるでございましょうが、水産庁として、遊漁者漁業者というものが併立するような一つの方策を樹立するということが必要じゃないかというように考えるわけでございますが、これに対してはどういうような取り組み方をしていらっしゃるのか、ただ、迷惑だからもう遊漁者なんかほうっておけということであるのか、この点に対する考え方を承りたいと思います。
  198. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまの点も、日本水産行政について非常に大きな問題でございます。先生からも御指摘がございましたように、今日遊漁人口は千数百万人と言われておりまして、都会の人間が自然に親しむ大きなレクリエーションになっているわけでございます。これはまた健全なレクリエーションでございますから、国としても伸ばさなければならぬ、しかし、それによって漁業者が迷惑を受けるということでは、これまた問題でございます。そこで、現在やっておりますは、遊漁者漁業者が共存し得る対策をつくらなければいかぬということで、昭和四十五年度から、各都道府県に、遊漁者漁業者と、それにこういったことの学識経験者を加えました漁場利用調整協議会というものを設置いたしまして、現地の調整に当たらせております。一方、中央にも同様の協議会を設けまして調整をやっておりますけれども、これはなかなかむずかしい問題でございます。と申しますのは、この協議会に出てくる遊漁者の代表がどの程度遊漁者を代表しているのかというような問題もございまして、とにかく、相手が千数百万人ということでございますので、どの程度の効果があるか問題があるかいうことは私ども承知しております。しかし、外国ではいろいろなことをやっているようでもございますし、そういったことを取り入れながら、現在水産庁漁業制度の根本問題の検討会をやっておりますので、これは二年計画くらいで結論を得たいと思っておりますが、その検討会の一つの大きな検討項目としてこの問題を研究したいと思っております。
  199. 稲富稜人

    ○稲富委員 いろいろ質問したいことがありますけれども、残余の私の持ち時間はいずれ大臣に質閲することといたしまして、本日の質問はこれで終わります。      ————◇—————
  200. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  ただいま審査中の三案につきまして、参考人の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  201. 仮谷忠男

    仮谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出席日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 仮谷忠男

    仮谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  203. 仮谷忠男

    仮谷委員長 質疑を続けます。島田琢郎君。
  204. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 今回政府側から提案されております水産三法について御質問を申し上げてまいります。  きょうは大臣がいらっしゃいませんので、大部分を保留することになると思いますが、委員長よりよろしくお取り計らいをお願いいたします。  最初に漁災法の関係についてお尋ねをしてまいりますが、いままでの質問の中でほとんど出尽くしているという感じがありますから、重複している部面をできるだけ省きたいと思います。しかしながら、非常に大事な点がたくさんありますので、御答弁はできるだけ簡潔にお願いをいたしますが、重複する部分についてはお許しをいただきたいと思います。  今回の漁災法の改正にあたりまして、一つ考え方として出されておりますものは補償の手厚い措置というふうな売り込みでありますし、さらに、また、負担をできるだけ合理化していき、合理化でき得ない部分については国が責任を持つ、大まかに分けますとこういうふうに分類されているように思います。しかし手厚い補償と言うけれども、手厚い補償ということはよく田中総理が口にされることですけれども、高福祉、高負担で、福祉を厚くやれば負担が重くなるのは当然だという考え方がこの漁災法の改正の中でも出ているのではないかと私は受けとめているのでありますが、手厚い補償とは、一体どこまでが手厚いのだというふうに提案された政府側としてはお考えになっているのか。そして、また、一方では、そのために漁業者の負担が重くなるという実態も出ているようでありますが、これらのバランスというものは一これは議論をするとずいぶんむずかしい議論発展するのですけれども、手厚い補償をしながらできるだけ負担を低く押えていくという考え方がありませんと、今日の漁業者の実態から見て、とても負担し切れない。何といいましても、世界で二番目の水揚げを誇る水産日本だと言われながらも、それをささえておりますのは大部分が零細漁民の皆さんでありますから、農業関係と比べてみましても、いままで比較してみます中では、漁業関係の災害補償一つ、あるいは近代化資金の問題一つ取り上げてみましても、非常に格差があるというふうに私どもは見ております。それをできるだけ埋めていくということで今回の水産三法の提案がなされているということで、その面では一歩あるいは半歩前進だというふうに私はこれを評価いたしておりますが、この漁災法というものは非常に大事な法律でありますから、まず一点で、長官から、こうした補償制度の改正にあたっての手厚い補償と、できるだけ漁業者の負担を低くするという考え方に立ってこれを進めていくべきだという私の考え方に対してお答えをいただきたいと思うのであります。
  205. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま提案しております漁業災害補償法の改正は、まさに先生から御指摘のあったような精神でやっておるわけでございます。  補償の内容の充実につきましては、共済限度額の算定方式を、従来のやり方を変えまして、過去三年加重平均でとって、それに一定の率をかけていたものを算術平均にして、そのかわり魚価の上昇率をかける。それに現実に合わして限度額率を、これまでは個々にやっておりましたのを漁業種類ごとに一律にするということで、補償を厚くすると同時にわかりやすくするというような改正をしております。  それから、てん補率につきましても、これは従来は全事故比例てん補方式一本やりでやっておったわけでございますけれども、たとえば非常に事故が少ない低事故の人の場合には、低事故の人でももらえる機会が多くなるような約定限度内てん補方式を入れるとか、あるいは逆に今度は、深い傷に深く補償するというような低事故不てん補方式というようなものを選択できる一これは第三号漁業についてそのような措置をとっておるわけでございますが、そうしたことをやりながらてん補内容の改善をはかって、てん補を厚くしておるわけでございます。と同時に、てん補が厚くなれば掛け金が高くなるじゃないかという問題がございます。確かに、計算いたしてみますると、今般の改正によりまして掛け金は高くなります。この高くなった分を国庫補助をふやしまして、それを補わなければなりませんし、さらに、先ほど申しましたてん補方式の選択制の採用によって掛け金がまた非常に変わってまいります。そういった面がございますので、実態は、今般の改正によって補償は厚くなり、掛け金は、漁業種類によっては若干高くなるものもございますが、高くなっても、できる範囲で、国庫補助の増加によってある程度そいつを下げているというような状況になっております。もちろん、補助率関係から、それは全部上げる分を是正するところまではいっておりませんけれども、かなりの面につきまして私どもは努力したつもりでございます。
  206. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 この場合の国庫補助率というのはどのくらいになりますか。
  207. 内村良英

    内村(良)政府委員 共済掛け金に対する国庫補助率でございますが、漁業経営の実態等を考慮しまして、現在の国庫補助率は、これは全数加入の場合とそうでない場合で、全数加入のほうを厚くしておりますけれども、ものによって違います。二五%から六〇%の間にいろいろあるわけでございますけれども、それを三〇%から六五%に上げております。したがいまして、低いものでも二五%が三〇%になる。上のほうは六〇%が六五%になるというふうに上げております。  それから、補助限度率についても、現行の六〇%を適用されている漁業、たとえば第一号漁業と二十トン未満の船の漁業と小型定置でございますが、そういうものにつきましては、この六〇%を六五%に上げることといたしております。  また、国庫補助の対象として、現行では基準漁獲金額が四千万円未満で、かつ漁船漁業の場合百トン未満となっておりますが、この制限のうち全額制限を緩和しまして、基準漁獲金額については、八千万円未満の分についても国庫補助の対象とするというふうに、最近いろいろ魚価が上がっておりますから、そういう点につきましてもかなりこまかく配慮しているわけでございます。
  208. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 いまお話しにあったように、五%それぞれ底上げをして補助率を高めた、また、金額にしても、倍にしててん補率を高めた、と、こういう御説明でありますけれども、そもそも、合理化し切れない部分というものは一体どういうふうにわれわれ理解すればいいのでしょうか。合理化し切れないという部分を国の補助率を高めて救っていくということでありますが、この負担の合理化ということについては先ほどいろいろ御説明がありましたから、それはわかりましたが、その限界といいますか、残る合理化し切れない部分というのは、たとえばいまのように五%上げて救っていくという、その五%部分が合理化し切れない部分だと今度の改正の中で理解していいのでしょうか。
  209. 内村良英

    内村(良)政府委員 御質問の合理化し切れないという点の解釈の問題が必ずしもはっきりいたしませんけれども数字で若干申し上げますけれども漁獲共済の場合、今度補償が非常に厚くなるということがございまして、平均掛け金率が現在五・五%であるものが今度は七・七%になります。これは平均でございます。今度はずっとこまかく漁業種類別に料率をきめますから、漁業種類によって違ってまいりますが、一応平均で申しますと七・七%になります。そのことは、掛け金が四割上がることになるわけでございます。四割上がっては非常に影響が大きいので、先ほど申しましたように、いろいろ補助率をふやす。それをまた、平均の数字でございますから漁業種類によっても多少違ってまいりますが、平均の数字でいきますと、上げ幅が四割上がるのが二九%になるということでございます。したがって、上がるではないかということでございますが、平均では確かにそのように上がりますが、しかし、その反面補償は厚くなる。それからさらに、先ほど申しましたてん補方式の改正がございまして、そこで、全事故比例てん補方式ではなしに、約定限度内てん補方式をかりに採用したということになりますと、その人たちにつきましては掛け金率が普通の水準から三割安くなります。さらに低事故不てん補方式をとりますと七割に下がる。七割、七〇%程度の引き下げとなるということもございますので、そういったてん補方式の選択制の導入というようなことを考えますと、第三号漁業についてはいままでよりも非常に補償の内容が合理化され、掛け金も低くなる、こういうような効果もあるわけでございます。
  210. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうすると、具体的にいろいろなケースがあるから、それを一律平均で聞いたってお答えになるのも一律平均でしか答えられないのでしょうけれども、少なくとも四割上がって、実質二七%の負担率の増加になる。そうすると、補償はその分厚くなるからということをおっしゃるが、それじゃ補償の厚くなる部分というのは平均して何%くらいですか。
  211. 内村良英

    内村(良)政府委員 これもいろいろ違いますからこまかく計算してみなければならぬわけでございますが、大体平均で申しますと、補償は従来よりも四割ぐらい厚くなるわけでございます。
  212. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 これはやってみた結果でないと、最終的にはほんとうに四割なのかどうかということもわからないと思うのですけれども、この辺の議論になってくると、実際に出てきた数字が  一つの根拠になっての議論をしないと、政府側のあなたのほうでは四〇%補償が厚くなるからという説明でも、実際やってみたらもっと下がるのかもしれぬ、もっと上がるのかもしれぬというような問題が出てくるので、なかなか私ども議論しにくいのですけれども、この辺が末端の漁家にしてみればたいへん関心の高いところでして、総体的にがさはふえた、えらい補償額が上がったというように思うけれども、差し引き勘定してみたら負担のほうがふえておって、従来の漁災法よりもさっぱりメリットがなかったということになっては困るものですから私はお聞きをするのですけれども、なかなか結果的な数字がないからすれ違い議論に終わっちゃうのですけれども、これはそういうことはないという確信の上に立っているのですか。
  213. 内村良英

    内村(良)政府委員 平均でお話しをいたしますとどうもなかなかあれなのでございますけれども、たとえば第三号漁業の漁船漁業の大部分はこれに入っているわけでございますけれども、底びき漁業の二十トン未満の場合には、全事故比例てん補方式でいきますと掛け金率が六・一%になる。それが約定限度内てん補方式になると五・〇になり、さらに、もう深い事故だけ見てもらえばいいというような三割足切りの低事故不てん補方式になると一・三%になるというようなことで、今度のてん補方式の改善というのは、漁業者にとっては、自分の経営実態に応じたいろいろな選択ができるということになりますので、そういった面の効果というのは非常にあるのじゃないかというふうに私は考えております。これは漁業の種類によりまして、漁業区分によってだいぶ違いますので何とも言えませんけれども、従来よりは補償のやり方が非常に現実的になり、漁家にとっても入りやすくなっているというふうなかっこうになっていると思います。
  214. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 ちょっとしつこいようですけれども、重ねて聞きますが、私どもにしても、漁業者にしても、そういうふうに宣伝をされたような中で実際やってみたら結果が違うということではほんとうは困るのです。政府としてはかなり確信を持った数字を基礎にして、やはり、われわれがうんそうかといって納得できるような内容でないとほんとうは困ると思うのですね。そこを私は申し上げているのですけれども、実際やってみないとわからぬということについても相当部分私は理解ができるからこの辺でやめますけれども、しかし、手厚い補償だと言いながら、結果としてわれわれの手出しのほうが多くなったというふうな結果にならぬようにこれは十分配慮していただきたいと思います。  そこで、今度の改正の中では義務加入制度というものを導入したことも一つの改正の大事な点になっておりますが、義務加入というのと強制加入というのとはどう違うのだろうか。確かに、定義の上から言えば、強制加入というのは一つの罰則規定がくっついていて、これはいやもおうもない強制加入である。しかし、この法のねらいから言いますと、三分の二以上の同意があった場合には、残りの者が不服があったって、あるいは参加を拒否しようとしたってできないのだ。しかし、強制は罰則があるから泣き泣きでも入らなければならぬが、義務加入ということになるとかなり精神的な面がここへ加味されていて、どうしてもいやだという者は、幾ら義務だからといって入れるわけにはまいらない。そうすると、その辺、現場での実態というものがそういうふうな形になってきたときには、この内容はどうするというようにお考えになっているのですか。
  215. 内村良英

    内村(良)政府委員 現在の漁災法の場合、第一号漁業は加入区の全員が入らないと入れないということになっております。したがいまして、一人でもいやだという人がいると、入りたい人が九十九人いても入れないということになりまして、加入の促進に非常に障害になる。そこで今般義務加入にしたわけでございますが、その場合、三分の二の人が同意すれば当然入れる。どうしてもいやだという人が三、四人いるという場合に、ほかの人が全部入れるということになりますので、その意味で入りやすくなっているわけでございます。  それから、強制加入と義務加入とどう違うのかという問題でございますが、強制加入の場合には、これは罰則が伴ってくるわけでございます。すなわち、掛け金を払わないという場合には強制徴収の規定がございまして、国税なり地方税に準じて取るというようなことになるわけでございますが、義務加入のほうはそこまではいかない。すなわち、入らなかったという道義上の不履行が残るということになるわけでございます。そこで、現在の漁村の実態等から考え、あるいは憲法の問題等を考えますと、やはり、義務加入程度が一番現実的なのではないかというふうに考えて義務加入制度にしたわけでございます。
  216. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 ほんとうは三分の二と言わず、一〇〇%の人たちが、たとえ零細な漁業者であっても喜んで加入できるという、そういう制度に窓口を広げていくべきが本来この制度のねらいであり、趣旨でなければならぬ。ですから、強制加入なんということはもちろんいかぬことだ。きわめて非民主的なやり方であるからそれはいけない。ただ、三分の二の人たちが入りたくても、従来たら一人か二人反対してももうこの制度はだめだったというものを前進させるために義務加入という方式をとったと言うけれども、それは一つの制度の改正にあたっての逃げであって、本来はみんたが入れるというような制度に持っていくのがほんとうの親切なやり方だと私は思うのですね。しかし、一歩前進しているから私はこれ以上追及しませんけれども、やはり、こうしたものを進めていかれる長官としては、私がいま申し上げたようた考え方に立って、だれでも喜んでこれに加入できるような制度をつくっていくということに全力なあげて取り組むべきだと思うのであります。  それから、特定養殖共済の実験ということでありますが、この特定養殖漁業とは従来ノリだけに限定しているようでありますけれども、ノリがなぜ特定養殖になっているのか。それから、この実験共済は何年くらいやろうというお考えか。それから、規模はどれくらいか。それから、その場合の国庫補助率はどれくらいにお考えか。長官は前も経済局におられて農業関係の共済なんかにもたしかお詳しいはずであります。農業共済にも昨年から畑作の実験共済が始まり、その前には果樹の実験共済なども経て、それぞれ一つの型というものが農業共済の場合はでき上がっています。養殖共済の場合についても、精神としては農業共済と同じような形で、同じ窓口である農林省なんですから、あまり差がないようにしていくのがほんとうだと思うのですが、この実験共済をおやりになろうとする基本的な考え方というものがまずどこにあるのか、そして、いま私がお尋ねしたような点についてはどういうふうに今後進めていこうとされているのか、その辺の概貌を明らかにしてほしいと思います。
  217. 内村良英

    内村(良)政府委員 ノリの養殖共済につきましては、先生案内のように、現在のところ物的保険としてやっているわけでございますが、いろいろ技術革新もございますし、さらに価格の変動も見られないということもございますので、収穫保険方式をやってくれという要望が非常に強いものでございますから、この際、保険でございますので、そうなりますとやはり料率その他がなければできないということがございますから、ノリの養殖について収穫保険の実験をしようというのが今般の特定養殖共済でございます。ノリ以外の養殖業につきましては、今日ノリの養殖に見られているような技術革新がまだございません。そこで、今後そういった技術革新が起こってくれば、その際に検討すべき問題だろうと思っております。  次に、実験を何年ぐらいやるかということでございますが、これは昨年の畑作共済のときもいろいろ議論がございました。私どもは、このノリの養殖共済につきましてもいろいろな資料を得る必要もございますので、まあ三年ないし五年ぐらいやってみたいというふうに考えております。  それから、対象はどうかということでございますが、現在のところノリの養殖をやっていない県もございますので、対象県は十七県、対象漁協は六十三漁協を考えております。この六十三漁協というのは大体ノリ関係の漁協の一割になっております。これも畑作共済の実験と大体同じような考え方をしております。  それから、国の補助率でございますが、これはノリの養殖共済に対する国の補助率の最高の五五%をとるということで処置したいというふうに考えております。
  218. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 この実験共済でも畑作みたいな足切りをやるのですか。この中に足切りなんていう制度があるのですか。
  219. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁災と農災とは非常に違っておりまして、この収穫共済の場合には足切りはございません。
  220. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 次に、赤潮特約制度というのを今回新しく入れた。これも皆さんの側から言えば一つ目玉だというふうにおっしゃりたいんだろうと思いますが、赤潮に限定した理由というのは一体どこにあるのでしょうか。たとえば、このほかに、昨年問題になりました水銀だとかPCBによる海面汚濁の問題などがあります。いわゆる公害による実損部分というのがあるわけですけれども、赤潮に限らず、こういう問題を全面的にとらえて——特約制度ということばがいいのかどうか、私はその辺も疑問がありますけれども、赤潮だけではなく、こういう問題についても取り組むべきだと思うのですが、これはお考えがありますか。
  221. 内村良英

    内村(良)政府委員 公害のように第三者の行為によりまして損害が発生したという場合には、原因者負担の原則で、やはり、原因者が被害者に損害を補償するというのが筋だと思います。そこで、水銀、PCBその他、漁業の場合にもはっきり加害者がわかっておりまして因果関係が証明できるというものは、加害者に対して損害賠償を請求していくというのがあくまで筋でございます。そこで、国がこういったものを見るということになりますと、加害者たる第三者の責任を追及するというよりは、むしろ、その行為を是認したというようなかっこうになってしまうということもございますので、やはり、公害の場合にはこういった制度で見るべきではないのではないかと思います。  それから、赤潮は御承知のとおり最近非常に大きな漁業の被害の原因になっております。赤潮につきましては、都市の下水その他に基づくいわゆる公害的な面と、それから、赤潮は、戦前から発生しているわけでございまして、自然条件によって発生する場合とがございまして、それの仕分けが非常にむずかしいということで、他の公害よりも損害発生との間の因果関係の証明が非常にむずかしいということもございます。と同時に、最近の赤潮の被害というのは非常に多発しておりまして、これをそのままほうっておくわけにもまいりませんので、今般赤潮特約ということで漁災制度の中に取り入れたということでございます。
  222. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 長官のおっしゃるとおりです。公害の発生源たる、そこの責任者は当然責任を負わなければならぬ。それはそのとおりです。ただ、赤潮とは自然に出たものばかりではないのではないか。たとえば埋め立てをしたときに出てくるどろ水による赤潮、それから砂利採取によって川から流れ込んでくる赤潮、こういうものは原因がはっきりしていますね。それでは、その場合はこの特約の中に入れないのか、こういう一つの点があると思うのですが、その点はどうなんですか。
  223. 内村良英

    内村(良)政府委員 確かに、いま先生から御指摘のあったようなものが海の富栄養化を進めるということはあると思います。しかし、だからといってすぐ赤潮が発生するという問題ではないのではないか。そこで、その場合におきましても、因果関係の証明というものは非常にむずかしいのじゃないかと思いますので、そういったケースの場合の被害も今般の赤潮特約で、補償するということにしたいと思います。
  224. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうすると、たとえば川の砂利採取によってどろ水が出て、それが海に流れ込んで、それによって魚、いわゆるサケ、マスなんかが遡上しない。北海道には私の近辺にもずいぶんこういう問題があったのですけれども、いまのお話しでは、この場合はこの特約の中でやっていくのだ、原因がはっきりしていて、だれがやったかもわかっているけれども、それはこの制度の中に入れる、こういうふうにするというお考えですか。
  225. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のあったケースは、それは赤潮の発生とはちょっと違うのじゃないかという感じがいたします。たとえば汚水が出て、そこで赤潮が発生しない限り、赤潮の被害にはなってこないということでございまして、そういった都市の下水その他によって海が非常に富栄養化する、栄養が非常によけいになりまして、プランクトンの大量発生というようなところから赤潮が出てくるということで、そういった赤潮現象は、これは自然現象として出る場合もございますので、その辺の仕分けができない。したがいまして、そういうような都市の下水による海の富栄養化の結果起こった赤潮、これについても今度は見ようということでございます。
  226. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私は、それだけが赤潮ではないのではないかと聞きたかったのでありますが、さすれば、赤潮の指定水域というのはどれくらいになるのですか。それからまた、その指定する場合の基準ですが、いまのおっしゃり方から言えば、一つの基準を設定しないことには赤潮という断定ができないという場合が出てきますが、それはどういう基準に基づいて赤潮と断定されるのですか。
  227. 内村良英

    内村(良)政府委員 その点につきましては、現在県当局と鋭意話し合いをしております。そこで、私どもは、指定する場合には、過去において赤潮が異常に発生したという県をまず重点的に指定したいと思っております。そうなりますと、一番赤潮被害が出たのが瀬戸内海で、それから三重県だとか、赤潮被害が多いところがございますけれども、まず、そういった異常な発生のあるところを指定したいというふうに考えておるわけでございます。
  228. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 次に、メニュー方式によって三つぐらいのメニューがあるようですが、それによって自由選択できるという仕組みに変えた、これは今度の改正の中の重要部分だ、こういう説明のようでありますが、このメニュー方式によって自由選択ができるということは、加入者の側から言うとどういうメリットになりますか。
  229. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁業の種類によって、非常にその被害が少ない、安定漁業があるわけでございます。カツオ・マグロ漁業とか底引きなんかがそれに当たるわけでございますが、そうした人たちにとりましては、浅い被害を広く補償してくれという要望がございます。ですから、そういうものにつきましては、事故率が約定限度以内の場合の約定限度内てん補方式のほうがいいわけでございます。と同時に、まき網のように事故を受けると非常に事故が大きいというものがございますが、そういうものにつきましては低事故不てん補方式で、これは農災のほうのことばで言いますと足切りになるわけでございますけれども、足切りをやったほうが現実に合うということで、これは保険事業漁業の種類によって違うわけでございます。浅く広くやってくれという漁業の種類と、それから、いやもうふだんはいいんだが、大きく受けたときに補償してほしいという希望がございますので、従来はそういったことに全然関係なく比例てん補方式でやってきたわけでございますが、今度こういったてん補方式の改正をやりまして、漁業者が選択できることになるということは非常に大きなメリットではないかと思います。同時に、先ほども申し上げましたけれども、これによって掛け金率が下がってくるということがございますので、二重にいい効果があるのではないかというふうに思っております。
  230. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 説明を聞いておりますとけっこうづくめで、実際やってみるとこのとおりいくかどうかということに私は非常に心配がありますけれども、ここで議論をしていても、実際やってみないとわからぬという議論になってくれば、これはすれ違いになってしまうのです。  ところで、私は去年も漁船法その他の水産三法の問題でオホーツク海の流氷対策ということについて触れたわけですけれども、これはどうも困ったものである。私も毎日流氷をながめますが、流氷の中におりますと、流氷がいいとは私どもは思っていない。あれは困ったものだと思っているのでありますが、よそからおいでになった方は、わざわざ流氷を見るために北海道までおいでくださるので、そういう点から言うと、流氷があったほうが観光に来られる人のためにはいいんだろうけれども、しかし、この流氷たるや、私どもオホーツク海で漁業をやっている者にとっては実に困った存在であります。流氷対策というのはどういうふうにしたらいいんだろうということを聞いても、昨年も、まことに困りましたという答えしか返ってこないから、これはまた重ねて同じことを聞いてもしようがありませんが、私はサロマ湖のふちで牧場を経営しておりますから、サロマ湖とともに三十年この方生きてきたのですけれども、実は、最近かつてない流氷の流入という異常現象が起きまして、そして、一月の末からサロマ湖はこの流氷に振り回されて戦々恐々という状態であります。たいへんな被害が現に出ておりますし、また、これから三月末、四月の上旬にかけて南風が吹いて流氷の移動が始まりますと、せっかくここで養殖しているホタテとかカキとか、こういう貝類が氷とともに外海に持ち出されてしまうということで、いまその対策のために現地はたいへんな大騒ぎしておるのです。長官、お聞きだと思いますが、この十七日には自衛隊のヘリコプターを頼んできまして、空の上から融雪促進のためにもみがらの焼いた粉をまきまして、そして、上に出ている部分を溶かす、また氷が浮かんでくる、そうするとまたその上にもみがらをまいて溶かす、こういうやり方で苦心惨たんしている。あるいはダイバーを海の底に入れて、その対策をどうしようかという研究をやったり、砕氷船を入れて氷を割ったり、たいへんな騒ぎをいまサロマ湖はかかえているのであります。昨年から、カキの養殖あるいはホタテの養殖についても共済対象として取り上げられているのですけれども、この流氷のこうした被害というものは、いわゆる共済対象の立場から言えば恒常的に起こってくるというふうに見るべきだと私は思うのですが、ことしのような異常な状態が起こった場合にはいこれをどういうふうな取り扱いをすればいいか。たとえば異常災害と見るべきか。前段に私が申し上げましたように、私どもにとっては流氷というものは切っても切れない悪縁の中にありまして、毎年必ず流氷の問題で悩まされているわけです。このオホーツク沿岸におけるこういうことの対策については、こういう共済制度の中ではどのように取り扱いをしていかなければならぬのか、こういう点について明確な判断を水産庁としてはお持ちなのでしょうか、それをちょっとお聞きいたしたいと思うのです。
  231. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どももサロマ湖周辺の流氷の被害については承知しております。そこで、これを現在の漁災制度の中の保険設計の問題として何とか解決できないかという御質問ではないかと思いますが、漁業共済の場合には、現在のところ、異常、通常というような区分をしていないわけでございます。したがいまして、現在の保険設計の中でこの問題を解決しようとしてもなかなかむずかしいという問題でございます。
  232. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうすると、保険共済の立場からでなくて、この際流氷は異常災害だという取り扱いにならざるを得ないという、こういう判断だと受けとめてよろしいですか。
  233. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもも、ことしの被害状況等については承知しておりますけれども、それを災害対策として、異常災害として考えるかどうかという点につきましては、これは関係方面もございますので、よく検討してみなければならぬ問題だと思います。
  234. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 政務次官、いまお話しをお聞きだと思うのですが、サロマ湖の故事来歴を少しお話しすれば、サロマ湖のカキというものはずいぶん古くからあったのだが、どんな歴史を持っておるのかと思って私が近ごろ調べてみましたら、これが実にかなり早くから取られておって、寛政十年からサロマ湖のカキというものが取られておった。そういうように非常に歴史の長いサロマ湖のカキであるようなんです。それで、一時期サロマ湖のカキというのは岩礁をなすほどたくさん海の底に折り重なって育っていたが、それがだんだんなくなって、最近、昭和二十七年になってから養殖に切りかえて今日に至っておるのですが、こういうサロマ湖のカキの養殖あるいはホタテの養殖というのは、サロマ湖の沿岸におきます漁業者にとっては、これにしかたよれないというほど深刻な状態になっておるわけですね。そういう中で今回のような事態が起こってまいりますと、まさに壊滅的打撃を受けるということになるわけであります。これから先の流氷が動き出すときのほうがよほどまだ大きな被害になるだろうということで、私自身も戦々恐々としておるのですが、いまの長官のお話しは、これを異常災害と見るべきかどうかという判断は、かなりの部分政治的判断が出てこなければならぬだろうという意味のように私は受けとめたのであります。こういう災害が発生するという問題は、ひとりサロマ湖内の問題ばかり じゃなくて、オホーツク沿岸における流氷の対策という大きな立場でこれをとらえていきませんとなかなか解決しない問題ではあるのですが、こういう対策に取り組む場合に、政務次官としては、この災害の取り扱いについてはどうすべきだとお考えでしょうか。あらかじめそのお考えをお聞かせ願いたいと思うのです。
  235. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 この共済制度というのは非常に専門的、技術的で、政治的に簡単明快に一発で言うことはなかなかむずかしいのです。これは被害の程度あるいは被害の範囲等いろいろなことがありますから、いま事務的にいろいろ検討しておるし、政治的に全体の範囲とかその程度から見て、これは異常災害に入れたほうがいいというふうに私がだんだん思ってきたときには異常災害に入れますが、いまのところまだそこまで思っておらないので、もう少し技術的な面を検討させてみたいと思っております。そういうことも十分頭に入れて検討いたします。
  236. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 長官は、現行共済法によってはとても解決できぬだろうとさっきおっしゃったですね。そうですね。だから、それじゃ政治的な解決以外にないなということで、たとえば異常災害としてとらえて対策をするのかということにならざるを得ないでしょう。いま、政務次官の御説明だと、まだあるいは制度の中でとらえられる部面があるかもしれぬから研究すると言う。これはお二人の言っていることがたいへん違うんですがね。
  237. 内村良英

    内村(良)政府委員 政務次官のおっしゃった御答弁と矛盾していないと思うのでございます。私が申しましたのは、異常、通常という保険設計で、御承知のとおり、農産物の場合には異常災害、通常災害という料率計算をやっておりますが、ああいうことはこの共済ではやっていないわけでございます。したがいまして、そういった意味の異常災害というような取り扱いはできない。しかし、ホタテなりカキが養殖共済に加入すれば、もちろんそこでカバーされるわけでございまして、ワク外の問題ではない。ただ、異常、通常というようなことばの使い方でございますけれども、そういったような区分を現在共済は制度の中でやっていない。したがって、サロマ湖の被害を異常災害として見て、他の災害対策で、これは異常災害だから異常災害として処理するということは、また別問題としてあるわけでございます。そこで、その場合に異常災害と見るかどうかということは、私の御答弁は、私も一応ことしの被害等は承知しておりますけれども、はたして異常であるかどうかということは、ほかの災害との均衡とか、そういうことを見て考えなければいかぬということで申し上げたので、私は最初に、共済の設計では現在通常と異常の区別はしていないということを申し上げたわけでございます。私がお話しを聞いておったところでは、政務次官は、異常災害と認定して、場合によってはその他の災害対策の扱いの中で異常災害として扱う、こういう御答弁ではないかと思いますので、私は矛盾していないと思います。
  238. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 政務次官はよくわからないでものを言ったんだということになればそれまでのことなんですけれども、しかし、現地ではほんとうに笑いごとではない。たいへんな深刻な事態にあるのですよ。それで、いまから、起こったときの災害の取り扱いについてさえも、どういう対策が必要なのかということを私なんかも向こうから質問を受けているのです。ですから、いまたまたま共済制度の改正という問題が出てきているものですから、はたして共済制度でこの被害というものの対策を進めるほうがいいのか、あるいは特別な災害であるという観点に立って、政治的な判断で壊滅的打撃を受けようとしているサロマ湖の養殖の問題の対策をしたほうがいいのかという、その辺の判断が私はほしいから、いま、政府側としてはこの対策はどういうふうにしたらいいんでしょうか、それをお聞かせくださいと言ったわけですが、政務次官は話の中身がよくわからぬで、突然政務次官と言ったからそういうことでお答えになったんだろうと思うのですけれども、長官、いまのあなたのおっしゃっている制度上の問題はよくわかるのです。わかるのですけれども、五十年間なかったできごとがいま現地に起こって、そのためにたいへんなお金をかけているのです。砕氷船を持ってきてやる。これは一日何万円でなんかきかないのですね。一回動かすと何百万円かかると言っておりました。それから、ダイバーを海の底に入れて、被害の実態を調査して、何とか方法がないかということで、これまたやっている。それから、雪上車を乗り入れて毎日探査をする。この間は自衛隊のヘリコプターを演習という目的で連れてきて、サロマ湖の上へ飛ばして、灰をまいて融雪促進をやる。それも一回だけではだめなんで、溶けて、また氷が上がってきたら、また上にまくというように、さっき言ったような方式を繰り返しながらいま対策をやっている。現に、毎日毎日たいへんなお金と労力をかけて、この被害を最小限度にとどめることができるかどうかということに苦労しているわけです。ですから、災害が起こったときに考えようなんというようなことはまことに不親切だと私は思うのですよ。だから、この対策をどういうふうにするかということをもう考えていただくべきではないかと思うのに、いまのお話しを聞いたら、まだこれから検討をする、まだこの制度で救える部面があるかどうかまで検討するということだが、こういう御返事ではまことに不親切のそしりを免れないのではないかと思うから、私は、しつこく、この対策をどうしてくれるのですかと聞いているわけです。
  239. 内村良英

    内村(良)政府委員 先生も御案内のように、従来ホタテは養殖共済に入っていなかったわけでございますが、それを昨年政令を改正いたしましてホタテを養殖共済の中に入れたということは、ホタテが大きな一つの産品でございますからホタテも入った。カキにつきましては、これは現在養殖共済をやっております。しかし、北海道の共済連がまだカキの事業はしていないようでございます。そこで、私どもといたしましては、確かにサロマ湖は常襲災害的な傾向があるのだというようなお話しなんだろうと思いますが、その場合に、保険の理屈で言いますと、そういう常襲災害的なところは、保険だけでいきますとあまり好ましくないということもございますけれども、そういうことは絶対にいたしません。ホタテも指定いたしましたし、どんなことがあってもそれは当然カキもどんどんやれるようにして、保険の面の補償というものについては十分それによって救済していく。しかし、全体の氷を砕くとかなんとかいう話になってきますと、これはちょっと共済の範囲外の話で、もっと大きな災害対策としてやっていただかなければならぬと思うわけでございます。
  240. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 いま申し上げたような実態にあるということは、政務次官、今度はおわかりですね。ですから、単になくなった貝の被害だけではない。そういうたいへんなお金をいまかけているのだということで、これは実損として、全部一人一人の漁家にかぶってくるのですね。こういう問題があるということを十分御認識をいただいて、政治的な立場でおやりいただく点については的確にやっていただくようにしていただきたいので、希望を申し上げておきます。  それから、第三号漁業者のトン数を二十トン未満としたのは、これはどういう理由なのか。そして、将来はどこまで引き上げていく考えなんですか。
  241. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁船漁業につきましては、義務加入の対象を二十トン未満と政令でするつもりでございますが、これは、現在の漁村社会における地縁的な共同体としての漁業協同組合の共販利用者というものを見ますと、大体二十トン未満でございますので、現在のところでは二十トン未満が妥当なのではないかと思っております。しかしながら、他の類似制度たる漁船保険におきましては、百トンまでを義務加入制度にしておりますので、今後共販に参加するものがもっと大きなものまで入っていくというような事態になれば、そういった点も十分考慮して検討したい。しかし、現在のところ、大体共販利用者は二十トン未満でございますので、これでいいのではないかと思っております。   〔委員長退席、安田委員長代理着席〕
  242. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 対象単価ですけれども、いまの物価の状態から言ったら、この単価というのはこれでいいのだろうかという気がしますが、これはどういう配慮がありますか。
  243. 内村良英

    内村(良)政府委員 先ほどもいろいろ御審議があったわけでございますが、最近漁業用燃料及びその他の資材が上がっていることは事実でございます。そこで、漁獲共済におきましては、生産金額、これは先ほど申しましたように、三年の算術平均にいわば一定の修正率をかけてきめるわけでございますが、それに経費率をかける、こういうことになります。そこで、現在の保険設計で考えているところでは、十分経費をカバーできなくなるのではないかという御質問でございますが、私どもの見ておりますところでは、現在のところ、経費率のかけ方の問題もあるわけでございますけれども漁業区分別に生産費のうちの経費はある程度カバーできるのじゃないかというふうに見ております。  なお、将来の問題といたしましては、五十年度予算等においてそういった問題もまた大いに考えなければならぬ問題になってくるのではないかと思っております。
  244. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私は、先ほどの稲富委員とのやりとりを聞いておりましても、その辺の取り上げ方といいますか、何か、現状の係数みたいなものをかけていくというやり方ですね。しかし、こういう状態の中では、これはひとりこういうものばかりではありません。たとえば乳価をきめるにしても、何をきめるにしても、物価係数をかけていくとかなんとかというあの係数というのは、われわれにとっては非常にやっかいもので、さっぱりわからないのですね。結果がまことに低い数字になって出るという、こういう数字の魔術というものがあの中に含まれているような気がする。それと同じような見方をするということは違うのかもしれませんけれども、そういう意味で、お話しのようにはすっきりと私は理解できない面があります。ですから、これはもう少し議論をしなくてはいけない点だろうと思うのですが、たとえばいまの石油ばかりじゃなくて、漁網なんかにしても、あるいは船体そのものだって、とてもじゃないが、四十七年あたりに比べたら、もう比較にならぬような値上がりになっているのです。それを一律に物価係数だの、何とか修正係数だのといったようなやり方をしても、実態にはそぐわないのじゃないかと思う。ですから、思い切った発想の転換をやらないと実態にはそぐわないというような感じがする。これは私だけじゃありませんで、現場の漁民の皆さんもそういうとらえ方をしておりますから、そういう点がどのように対象単価の部分については見られていくのだろうかということは非常に関心の高いところだと思うのであります。これはいまの私の質問に対しての答弁だけではすっきりと理解できないものがありますが、きょうは時間の関係があってこの問題だけにしぼるわけにいきませんから先に進みますけれども、そういう考え方に立ってやるべきだということ、これは私の主張であります。  それから、次は、いままでも質問に立った各委員からいろいろ指摘がされておったと思いますが、漁災法と漁船保険あるいは任意共済制度は、それぞれ東京のほうに来ると窓口が分かれている。下に行くとだんだん一本になって、最後は加入者は漁業者一人だ。昨年の漁船保険の問題のときにもいろいろ私どもはこの内容を聞いて、ちょっと疑惑に思ったのであります。ちょっとばかりじゃない、うんと疑惑に思ったのでありますが、これはえらくもうかっている。一口にもうかっているという言い方をしたら、いや、もうかっているということで言われるとちょっと困るという参考人の方からの御意見もあったし、また、前の水産庁長官の荒勝さんも私の質問に対してそういうように答えている。ところが、現実に三十五億だったと思うのですが、もうかったから返す、ところが片方漁災法はえらい苦労をしながらやっている、こういうふうな点は早急に改善すべきだと私は思うのですよ。   〔安田委員長代理退席、委員長着席〕 今度の法律改正でそれができるというふうにはなっておりませんね。したがって、この三制度は何らかの形で一本化すべきだ。そして、また、先般漁災法の関係の代表の方の御意見を聞くと、私どもは喜んで統合に応じますと言っている。それじゃどこなんだろうということになれば、昨年の質問などを通じて考えますと、もうかっているほうの漁船保険の関係がいやだいやだと言っているというふうに思います。水産庁としては、これはきちっと一つの方針を出して強力に指導すべきだと思うのですが、長官みずからもこの統合については消極的なのでしょうか。
  245. 内村良英

    内村(良)政府委員 確かに、先生指摘のような面があると思います。中央では分かれている。末端も下まで行って組合が分かれているわけでございますが、加入する漁業者は一人である。したがって、経費の節約その他から考えて一本にしたらいいじゃないかというのは、確かにそのとおりだと思います。ただ、こういうような統合というような場合には、やはり関係者の納得というものがないと、これは行政の運営の問題でございますが、なかなか強権をもって一本にするというわけにはいかない問題が実際問題としてございます。したがいまして、水産庁といたしましては、そういった問題も考えまして、四十九年度は、額といたしましては百四十万円ぐらいでございますけれども、そういったことも含めて検討する検討会をつくりました。そして、かりにそういう方向でいこうということになりましたら、関係者の説得というものに十分つとめませんと、一方的に法律制度でぱっとやってしまうのはなかなかむずかしいという問題も現実問題としてございます。したがいまして、私どもといたしましては、極力前向きの方向でそのように考えたいと思っておりまして、決して私は消極的ではございませんけれども、やはり、過去の歴史的な経緯その他もございまして、関係者を説得してみんなが納得してそういうかっこうに持っていかないと一なかなか行政的にはできないという面もあるわけでございます。
  246. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 まことに教科書的なお答えでありますが、そのとおりです。きわめて民主的にやろうとすればそのとおりなんです。私は何も強権を振りかざして統合をやれと言うのではありません。しかし、その積極的な姿勢というものがなければ、水産庁みずからが、これはもうとてもむずかしくてだめだ、手をつけたらえらいことになると思っていたら、いつまでもこの問題は解決しない。全部が反対しているのではありません。漁災法の関係者は、さっきも言ったように、これはやっぱりそうすべきだと思います、あなたの御指摘のとおり私どもも考えています、ということを言うているのですね。ところが、片やもうかっているほうは、もうかっているのだから何も一緒になってやることはないということになるのでしょうけれども、しかし、これは、国の金だっていろいろとこの中につぎ込まれているわけですから、そういう面ではむだなお金でむだな運営をさせているということがある限り、私は、行政指導をすべきだと思う。それは納得を得なければどうにもならぬということは、この例に限らず、何だって争うです。しかし、そこはやはり話し合いの中で一本にしてやっていけるのではないかと私は思うが、一本にした場合の不都合というものはありますか。
  247. 内村良英

    内村(良)政府委員 メリット、デメリット、いろいろあると思います。たとえば一例をあげますと、私ども聞いておりますところでは、漁船保険の組合のほうが職員の賃金が高い。漁災のほうは低い。さらに具体的な基準としては、漁船保険のほうは市町村のレベルをかなり上回っている。片一方は市町村のレベルより下がっている。そうすると、やはり高いほうに合わせろということになるのだろうと思います。そのほうが漁災に従事している職員の人たちにとってはいいことであり、仕事に励みが出てくる。しかし、その負担をどうするかというような問題もございますし、一例でございますけれども、そういったメリット、デメリットをよく見きわめまして、そこで関係者を説得して、なるたけ統合するような方向に持っていくというふうに私ども考えております。したがいまして、経費をとりまして、研究会というような形でそういった空気をだんだん醸成していこうとは思っておりますけれども、ただいま申し上げましたような状況になっておるわけでございます。
  248. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 もちろん、低いほうを高いほうに合わせていくのが当然ですね。それはいまのような状態の中でいつまでも放置しておけば、さらに格差が広がっていくばかりだと思うのです。漁災法の関係の職員のほうが低い、だから、高いほうの人たちがそれを拒否する、そんなことにはならぬと私は思うのです。ですから、そういう不合理を是正するためにもこの制度の一本化は非常に急がれるのではないかというふうに私は思います。  大部分残しておりますが、大臣がお見えのときに残りをお聞きしたいと思います。近代化資金関係、それから大事な沿岸漁場整備開発法の関係はどうしても大臣にお聞きしたい点がたくさんありますので、きょうはその部分を保留いたしまして、ちょうど予定の時間でありますから、ここで私の質問を終わりにいたします。
  249. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十九分散会