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1974-03-14 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十四日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       伊東 正義君    今井  勇君       小沢 一郎君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    染谷  誠君       角屋堅次郎君    馬場  昇君       諫山  博君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         農林省構造改善         局次長     杉田 栄司君         農林省畜産局長 澤邊  守君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局審査部第         一審査長    妹尾  明君         農林大臣官房審         議官      二瓶  博君         農林大臣官房審         議官      下浦 静平君         農林省構造改善         局農政部構造改         善事業課長   関口  尚君         農林省農蚕園芸         局肥料機械課長 前田 耕一君         通商産業省機械         情報産業局次長 野口 一郎君         郵政大臣官房電         気通信参事官  石田  彪君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 三月十三日  農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第七八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  3. 馬場昇

    馬場委員 私は、具体的な事例を取り上げて、国営事業のあり方について質問をいたしたいと思います。   〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席〕  熊本県の天草河浦町と牛深市にかかわる国営羊角湾総合開発パイロット干拓事業について具体的に質問をいたしたいと思いますが、まず、第一に、この国営事業目的を具体的にお聞かせ願いたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 私は一般的なことについてお答えをいたします。  羊角湾事業目的でございますが、これは羊角湾の一部を締め切って、これを淡水化することによりまして、かんがい用水確保締め切り堤内干拓による農地造成並びに羊角湾周辺丘陵地農地造成、それから既耕地畑地かんがいの各事業を総合的に実施して、農業経営規模拡大、畑作の振興をはかっていく、そしてまた離島農業振興に寄与する、こういうことが目的でございます。  また、具体的にどこの地域がどれくらいこれによって便益を受けるかといったようなことについては、技術当局から答弁をいたさせます。
  5. 馬場昇

    馬場委員 具体的なことについてはあとで逐一質問をいたしますが、いま次官が一部羊角湾を締め切って淡水湖にするのだ、そして干拓をやり、周辺開拓をするのだ、こういうことをやって農業経営規模拡大をして農業振興に資するのだと、こういうぐあいにこの事業目的を言われたのですが、地元ではそう言っていないのです。  ここに地元河浦の町が出しております広報河浦」というのがございますが、これによりますと、「飲料及び工業用水確保目途とした「淡水湖造成による水資源開発」」というぐあいにこの事業目的を位置づけられております。私も現地に四、五回行きまして、住民の人と話をする機会も多かったのですが、住民に対しては、この事業を始めますときに町当局等は次のように説明をしております。締め切って水を確保して隣の天草大江地区に誘致する原子力発電所に使うのだ、さらに、牛深市が飲料水に困っているので、牛深市の飲料水に使うのだ、また、水があれば工場誘致に非常に都合がよいのだと、こういうぐあいに説明をしておるわけでございます。この地元説明といまの次官事業目的とは食い違っておるわけでございますが、この事業というのは、地元では、羊角湾締め切りによって水資源開発をするのが主であるのだ、開拓とか干拓というのは、国から補助を受けて国営事業にするための方便であるというふうに言われておるのです。  これについての農林省当局の御見解を承りたいと思います。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 これはよくそういうふうなことを言うことがありますが、本来の目的はここで書いてあるとおりで、私が言ったようなことが目的なんでありますけれども、この水資源開発ということは、これは事実だと思いますね。それは、この高台に水を揚げるのには、海水を揚げるわけにはいきませんから締め切って、淡水ができて、淡水を揚げるということで水資源開発をする。それから一部分の、ここに一工区とか二工区とかがありますが、干拓もするという本来の目的農林省は持っておるのです。地元の町村としては、そういうことで水ができれば、できた水に余裕でもできたときにはというような、何か、その先々のことまで考え、想像してそういうようなことを言っているのではなかろうかと思いますが、別に、農林省と相談してそういうことをやると言っておるわけでも何でもありません。
  7. 馬場昇

    馬場委員 事実、天草のこの地域には原子力発電所誘致期成会というものができておりまして、それはこの河浦町の隣の天草町の大江に誘致するわけですが、普通、誘致するときには、その地元町長なんかが期成会会長になると思うのですが、ここの場合は天草町の町長ではなしに、羊角湾締め切り工事をやりますところの河浦町の町長期成会長になっております。ところが、国営事業として認められたあと原子力発電所の「原」の字も言わなくなっておりますし、さらに、誘致期成会も昨年解散をしております。いま次官はいろいろ想像して言ったのだろうということをおっしゃいますけれども、地元の人はそれを信じてこの事業にまず最初協力し始めたわけです。  そこで、具体的に聞きますけれども、原子力発電所だけにしぼって言いますと、この事業目的には、過去も、現在も、将来にわたっても、原子力発電所の問題は関係ないんだというぐあいにはっきり言えますか。
  8. 杉田栄司

    杉田政府委員 原子力発電所の誘致問題というのは、過去に確かにあったことは聞いております。聞いておりますが、農林省計画といたしましては、過去において原子力発電所を考慮に入れたことも全くありませんし、将来もそういうつもりはございません。
  9. 馬場昇

    馬場委員 そうなりますと、農林省の意図ははっきりいたしました。しかし、住民は結果としては町当局からだまされたのだということがいまの答弁によりますとはっきり残るわけでございます。  さらに、この事業計画されます時期は、食管会計の赤字で減反政策というような議論のあった最中ですし、農林省としては干拓原則として認めないという態度をとっておったんじゃないかと私は思うのです。そして、また、地元はそう言っております。しかし、この干拓異例中の異例として認められたんだということを宣伝いたしておりますが、この点についてはどうですか。
  10. 杉田栄司

    杉田政府委員 この羊角湾干拓事業着工をいたします四十四年は、確かに先生のおっしゃいますように減反政策等がとられようとしておる時期でございまして、干拓事業については非常に強い財政当局の意見があったことは事実でございます。しかし、この羊角湾干拓につきましては、三十九年度から調査をやっておりまして、すでに四十二年度には全計に入っており、四十三年度にはもうすでに着工寸前になっておったわけでございます。しかも、地元並びに熊本県におきましては非常にこの事業を熱望されておる経緯がございまして、また、離島農業振興という観点からもこれは一つの大きな意味があるというようなことが認められまして着工したわけでございまして、この羊角湾だけが何かの別な理由で着工したということは決してございません。
  11. 馬場昇

    馬場委員 時間がございませんので、先に進みますけれども、この工事による営農計画について一点お伺いしたいと思うのですが、この国営事業によって住民生活はどれほど豊かになるのか、こういうことを数字で示していただきたいと思うのです。  四十二年に着工します前に、これまたこの広報で出ておりますのを見ますと、工事完了の暁には反当たり十五万ないし二十万円の収入があるんだ、一町歩の経営年間百五十万ないし二百万の収入があり、夫婦二人で月平均十三万から十五万の収入になり、他の産業との格差が是正され、豊かな生活ができるのだというぐあいに力説されております。この部分について、現在はいま言った部分だけでけっこうですから、こういう数字の上ではどういうぐあいに農林省営農計画を持っておられるか、お尋ねしたいと思います。
  12. 杉田栄司

    杉田政府委員 羊角湾事業は、御承知のように、干拓農用地造成というようなことで規模拡大をはかるというようなことになっております。計画をいたしましたのは、計画決定をいたしました四十三年度時点で考えてみるわけでございますけれども、その時点におきまして、この地帯の平均経営規模というのが一町六畝ぐらいでございます。その中身は水田が五反、普通畑一反一畝、樹園地が四反五畝というような零細規模でございますが、計画後、これが平均規模でございますけれども、農地開発による増反あるいは干拓地の配分というようなことがございまして、二町三反余りになる計画になってございます。  農業所得の面で見ますと、現況は農業所得だけで見ますと八十一万九千円ぐらいというふうに見積もられておりますが、計画後は二百十二万九千円というふうに——これは標準的な受益農家を現在の価格で見た場合でございまして、粗収入でいきますと三百万をこえるというふうに現時点では考えられます。なお、これをいわゆる生産費調査等で検証してみましても三百二十万くらいに粗収入がなりまして、農業所得としては二百四十万ぐらいになるというふうに見込まれております。
  13. 馬場昇

    馬場委員 あとでその点について質問いたしますが、次に、現在の工事の進みぐあい、投じた国費、それから完成までの見通し等についてお尋ねいたしたいと思います。  まず、工事進捗状況を各工事ごと予定パーセントでお答え願いたいと思うのです。干拓予定の何%進んでおるか、開拓が何%か、締め切り工事は何%いっているか、パーセントだけでけっこうです。  次に、今日まで要しました経費、投じた国費について、干拓幾ら投じたか、開拓幾らか、締め切り工事幾らか、国費の額だけでけっこうでございます。  さらに、いつ完成をするのか、完成までの総事業費開拓幾ら干拓幾ら締め切り工事幾らトータル完成までにこの事業国費幾らと見込んでおるのか、数字だけでけっこうですから、お答え願いたい。
  14. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 四十八年度までの事業進捗状況は、農地開発事業については三十六億九千二百四十万円、進捗率五二%であります。そして、すでに三百七十七ヘクタールの農地造成しております。なお、今後の予定は、昭和五十一年度の事業完了を目標に事業の推進をはかろうとしております。  二番目には、干拓事業のほうでありますが、干拓事業は四十四年度に着工して、やはり五十一年度の事業完了目途にいま事業を進めておりまして、四十八年までの事業進捗状況は十一億五千万円かかっておりますから、全体の四八%の進捗率ということになっております。  参考までに、いまおっしゃいました総事業費は何ぼかかるのかということを申しますと、農地開発事業の総事業費が七十億五千六百万円、昭和四十九年度の予算が七億二千万円の予定をしております。干拓事業のほうは、総事業費が二十三億八千万円でありまして、四十九年度の予算に見込んでおるものが三億五千万円を予定しております。締め切りのほうは干拓事業費の中へ入っております。
  15. 馬場昇

    馬場委員 そういたしますと、今日まで約五十億ぐらいの国費が投入されておるわけですし、完成年度までは百億円程度の大事業という、こういう大きい事業になるわけでございますが、今度は具体的に、開拓開墾という項目について、事務的になりますから事務当局でもけっこうですから、お答え願いたいと思います。  この開拓事業、これはミカン園にするという目的であるわけでございますが、まず、最初に、受益参加者土地提供の構成の比率を教えていただきたい。個人土地がどれだけ提供されておるか、あるいは財産区、区有林幾らか、あるいは町有林とかの公有林幾らか。この開拓事業に対する受益参加者土地提供のそういう所有の区分の比率について数字をお示しいただきたいと思います。
  16. 杉田栄司

    杉田政府委員 農用地造成九百七十七ヘクタールを予定しておりますが、その所有別の明細はちょっとここにいま数字がございませんので、直ちに取り寄せて、後ほどお手元に出したいと思います。
  17. 馬場昇

    馬場委員 これはきのう、おとついと、ちゃんと調べておけというようなことを通告してあるのです。これが出ていないというのは、勘ぐれば意図的だという感じも私はします。  では、その前に、こういう土地改良事業というものの原則というのは、個人土地を提供するというのが土地改良法による原則ではないかと思いますが、これはどうですか。
  18. 杉田栄司

    杉田政府委員 開拓制度は、いわゆる旧制度未墾地買収時代は、国で未墾地買収をいたしましてやった経緯はございますけれども、その後、開拓パイロット制度になりましてから、いわゆる個人相対売買というのが原則になっております。したがって、土地取得相対でやりまして、その土地個人個人が提供してやるのが原則でございます。しかし、土地取得が資本その他によりまして非常に困難なことが多うございますので、そのための公庫の融資措置などをとると同時に、農地保有合理化法人という制度もできております関係で、県の開発公社等土地を一括取得いたしまして農地造成した上で、それを売り渡す、あるいは貸すというような措置をとるということもあるということに現在なっております。
  19. 馬場昇

    馬場委員 私の調査によりますと、河浦町では、開墾地の九〇%以上が財産区有かあるいは町有地というぐあいになっております。土地改良法にいう所有権者、個人参加というものはここは非常に少ない。このことは非常におかしいのではないかというぐあいに思いますが、その点についての御見解をお伺いしたいと思います。  それから、次に、受益参加者見通しはどうなっているか。発足当時七百九十八人の希望者がおりました。それが今日百七十四人に減っております。そうして、事実、この計画をきめますときにこういうぐあいに言われておるのです。原子力発電所にこの水を使うんだという問題と、水不足に悩む牛深飲料水に使うんだということ、これが非常に強く主張されて、これに協力を求められまして、果樹園というものはあまり力説されていないんです。そうして、とにかく判こだけ押してくれ、参加は二の次だというようなことを言われながら判こだけ押した、だから、あれは判こだけでよかったのだから、おれは希望しないんだといういうことで、現在七百九十八人の希望者が百七十四人に減っている。こういう事実がございます。だから、この希望者は現在どうなっているのかということについてお聞きしておきます。この二点です。
  20. 杉田栄司

    杉田政府委員 最初に御質問のございました、公有地が多いということは事実でございます。ただ、開拓パイロット等は、先ほど申し上げましたように、原則は、個人がそれぞれ未墾地を出しまして参加いたしまして、それを農地にするというのが原則ではございますけれども、国公有地あるいは共有地というものがそれぞれ土地として出されて、それが農家農地として配分されていくという方式も、旧制度開拓未墾地買収経緯からももちろん当然あり得るわけでございますし、また、今日の土地利用状況からいきまして、いわゆる薪炭林のような形あるいは共有林のような形で共有地なり公有地として残っておったものが今日の時代農地として造成されるということは決して悪いことではない、けっこうなことだというふうに思っております。ここの場合も、御説のように国有地公有地、それから共有地あるいは会社の有地組合有地というのがそれぞれ数字が出てまいりましたけれども、ほとんどでございまして、全体の六〇%ぐらいが私有地ということになって、四〇%が国公有地あるいは組合有地ということになっております。   〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席〕  それから受益の、いわゆる農家の問題でございますけれども、農用地開発のほうには当初七百七十九戸という希望があったわけでございます。それから、また、いわゆる水を受けるほうのかん排事業についての受益農家というのは七百十一戸ございましたが、かん排既耕地についての七百十一戸は別といたしまして、いわゆる農地開拓の、ミカン植栽したいという農家は、確かに一昨年のミカンの暴落以来希望が非常に減っておるということは聞いております。しかし、何ぶん、農用地造成については、まだその一部しかできておらない関係もございまして、全体として最終的にどのくらいになるかというようなことにつきましては、いろいろアンケート調査等現地のほうでやっておるようでございますけれども、正確な数字が現在手元にございません。確かに、先生がおっしゃいますように七百七十九戸から相当に減っておることは事実だと思います。
  21. 馬場昇

    馬場委員 公有地が多いというのは、五百ヘクタールにしなければ国営事業にならない、補助対象にならないということで、無理やり開墾できないようなところの公有地財産有地というものを出しておる、無理やり面積を広げた、こういうことを私は聞いておるのです。それから受益農家の数が減っているというようなことは、先ほど言いましたように、判こだけ押しておいてもらえばいいんだ、あと植栽しなくてもいいんだというようなかっこうで判こが押されておる。そういう結果がこういうことになっておる。これはまたあとで詳しく申し上げますが、そういうことがあるのです。  だから問題は、開墾は千三百ヘクタールと予定されておりますが、先ほど次官が言いましたように、現在三百数ヘクタールが進んでおるわけでございます。これが五百ヘクタールまで達するのかどうか、千三百ヘクタールはもちろんのこと、五百ヘクタールまで達するかどうかという心配もございます。それでも、植える者がいなくてもつくるだけはつくるのだということで押し通されるのかどうか知りませんけれども、そこで、開墾地が五百ヘクタールにもし満たない場合には国営事業はどうなるのかということについて質問をしておきたいと思います。  それから、もう一つ、現在開墾しておりますところの植栽率です。現在三百幾ら開墾しておりますが、これにミカンを植えているのは何ヘクタールで、開墾したけれどもまだ植えてないというのが何ヘクタールあるのか、お尋ねします。
  22. 杉田栄司

    杉田政府委員 最初の御質問国営規模五百ヘクタールの確保の問題でございますが、地域の全体の状況からいきまして五百ヘクタールを欠けることはないというふうに確信しております。また、本事業を進めるにあたりましては、当然、土地改良法によります地元の申請あるいはその事業参加者の同意については二回にわたってチェックをいたしておりますし、土地についてもチェックいたしております。その後いろいろな事情で若干面積の変動はございますけれども、五百ヘクタールは切ることはないというふうに思っておりますし、五百ヘクタールを大きく切るということになれば、これは県とも相談いたしまして、その処置をきめていきたいというふうに思っております。  それから、現在までの造成状況でございますが、全体の計画といたしましては、農地造成九百七十七ヘクタールということになっております。そのうち、四十七年まででございますが、実施をしました状況は三百十七ヘクタール。植栽面積は、これは非常に地形が急峻なところでございます関係で、いわゆるのり面に非常に面積をとられるわけでございます。しかし、植栽面積は百七十一ヘクタール現在できておるわけでございますが、そのうち植栽したものが九十四ヘクタール、百三十二戸に仮配分されておるわけでございます。未植栽面積は七十七ヘクタールございます。
  23. 馬場昇

    馬場委員 五百ヘクタールに満たない場合は県と相談して措置をするということは、これは国営事業県営事業になすということか、その辺の内容をもう少し説明してもらいたいと思いますが、いま言われましたように、現在植栽可能開拓をしてあるところに、大体半数近くがまだ植えてないという現状になっておるわけでございます。これは、私が見てまいりましたところによりますと、大体九団地ミカン団地がありますが、その中で植栽してあるのは二つの団地ぐらいです。あと七つ団地には植栽してございません。こういう状況地元ではっきりしておるのです。  そこで、具体的にお聞きいたしたいのですが、この植栽してあります団地が、通称地元で言う、ころの路木団地というところと中村団地というところに植栽してありますが、あと七つ団地にはあまり植栽してないのです。この植栽してあります路木団地のことですけれども、ここは、農林省も十分御承知かもしれませんが、土地個人提供者が少なくて、区有林、これは杉林ですが、この杉林を提供したわけです。この区有林は出永幸之助さんはじめ七名の権利になっておりますが、そこで路木果樹生産組合、これは出永さんが組合長ですが、これをつくりまして、ここは六郎次山という山ですけれども、二十二ヘクタール開墾をしてできた八・八ヘクタールの園のうちに六・五ヘクタール、四十六年に一万本、早生温州ミカンがここに植栽をされております。  その路木果樹生産組合経営状況をお聞きしたいのですが、これは土地購入資金にすでに八百下借金をしておる。植栽資金に二百六十五万借金をしておる。育成資金に百七十六万借金をしておる。合計千二百四十一万円この組合借金をしております。この年間利息だけで大体五十万円くらいになるわけでございます。この上に、四十七年度試算をしたわけですが、受益者負担金が千三百万円ぐらいまた来るのではないかということです。これはもちろん着工当時は五十一億円ぐらいの規模で、一反当たり三万四千円ぐらいだと言われておりましたが、四十八年ではもう九十四億円になり、一反当たり三倍の九万三千円ぐらいの受益者負担があるんだと言われておりますが、いずれにしても、千三百万円ぐらいの受益者負担完成の暁には来るのじゃないかと思われる。こういう事実がございます。それで、五十万も利子だけは毎年払っていかなければならぬ、これじゃ自滅するということで、この果樹生産組合並びに農家は、これ以上深みにおちいりたくない、だからこういう事業は中止してもらいたいと農政局に相談をやっております。農政局は受け付けておりません。話にも乗ってきてくれておりません。そういうことを新聞に出しましたら、天草羊角湾事業所課長が飛んできて、でたらめな新聞発表はするな、道路の舗装はしてやらぬぞと圧力を加えて、そうして組合長にはあらゆる各種会合出席通知もない、当局からも村八分的にされておる、こういうふうな状態がございます。この路木果樹生産組合植栽状況はいま言ったとおりですし、借り入れ、借金状況もいま言ったとおりです。農政局にもこういうことは言っております。こういう点について農林省はどういう考え方を持っておられるか、この事実についてお聞きしておきたいと思います。
  24. 杉田栄司

    杉田政府委員 最初の五百ヘクタールの問題でございますけれども、従来、開拓パイロット事業、特に、果樹の、ミカン開拓パイロットが全国に相当たくさんございますが、いずれも今日まで当初計画の五百ヘクタール以上を切った例がございません。農林省としても、もしこの羊角湾地区でそういう事態が起きるとすれば、初めてでございますので、十分研究してまいりたいと思っております。しかし、私どもとしては、五百ヘクタールを切るということはないだろうという見通しで現在進めておるわけでございますので、具体的に五百ヘクタールを切った場合は、たとえば県営に落とすのか——一つのこれは方法でございます。したがって、補助率の差額も出てまいりますし、いろいろな問題も出てくると思います。これはただ単に数字だけで処理できる問題でもないというふうに思いますので十分検討させていただきたい、また、仮定の問題でもございますので検討させていただきたいというふうに思います。  それから未植栽の問題でございますが、この未植栽の約七十七ヘクタールにつきましては、大部分が四十六年度並びに四十七年度の造成地でございまして、造成工期の関係で、いわゆる一次利用の指定がおくれまして、そのおくれたために四十八年度の植栽適期を逸したというような報告を受けております。これにつきましては、ごく最近に一次利用の指定を完了いたしまして、植栽するということに、地元とも話がついております。なお、今後につきましては、御指摘のとおりに、こういう植栽時期を逸するような一次利用の指定などということは厳にしないようにしていきたいというふうに考えております。  それから、路木団地の問題でございますが、路木団地につきましては、確かに先生御指摘のような事実があることはそのとおりでございます。また、償還利息、借金の利子でございますが、これももう五十万円ぐらいかかっておるというのは事実でございます。しかし、国といたしましては、この生産組合が、いわゆる土地取得にあたりましては三分五厘、償還期限が据え置き期間十年を含む二十五年というような、非常に長期、低利な未墾地取得資金を融資しておりますし、また、果樹の植栽は、ミカン植栽してから本格的にとれるまでには大体七年ぐらいかかりますので、その間の経営資金というような形で、これも利率が五・五%、据え置き十年の償還二十五年というような、そういう資金も提供しておるわけでございます。その利子が年間五十万ということになるわけでございますが、これは八人——たしか八人だと思いますが、八人もおられますので、将来の発展のための投資として、ぜひ遅滞なく利子の償還はしていただきたいというふうに思っております。  この路木団地につきましては、現在、土地代金八百万円を含みまして千四百万円ぐらいの借金があるというふうに聞いておりますけれども、これは、いま申し上げましたように、国としては相当手厚い措置もしておるわけでございますので、その辺は御了解いただいて、将来に希望を持ってこの事業参加していっていただくようにお話し合いをしたいというふうに思っておるわけでございます。
  25. 馬場昇

    馬場委員 いまのお話しによりますと、この路木団地の人たちは実際に五十万も利子だけ払っており、このままではほんとうに自滅だと言っておるのです。これに対して、将来に希望を持っていくように指導しておるというようなことを言われますけれども、農政局に相談に行ったらそういうことは全然相談に乗ってくれないというのですよ。  だから、次に質問しようと思いますけれども、この路木団地で三十ヘクタールを最近売却しております。これは買い主は名古屋の人ですが、鉄工会社をやっている人ですが、この人に、これを持っておって自滅するよりもということで、一万本のミカンを植えたものを泣き泣き売っておられるのです。そして、その売った代金で借金を返済しておられる。こういう事実がございますが、これを売却したという事実を認めるか認めないかということですね。  国営開拓事業の途中において、しかも、その目的であるミカンも植えておるものを経済的な行き詰まりによって売却せざるを得ない。国費もたくさん使って、さっき言ったような額を突っ込んでやっておりますが、これを売却されている。しかも、相手は農家ではなく、熊本天草の者でもなく、名古屋の鉄工会社をやっている人に売っておるわけですが、このことがいいのか悪いのか、また、そういう事実があるのかどうか、こういうことについて、まずお尋ねしておきたいと思います。
  26. 杉田栄司

    杉田政府委員 そういう事実があるようでございます。しかし、これは関係法律から言っても違反になりますし、非常に遺憾なことだというふうに思っております。
  27. 馬場昇

    馬場委員 これは遺憾なことだ、遺憾に思っておると言うのだが、売らざるを得ないということを農政局なんかに相談しているのです。持ちこたえ切らないのです。事実、ここに私は登記簿謄本持ってきておりますが、ちゃんと売却した登記がしてございます。三十ヘクタール、三十町歩です。これは違反であるということですが、その違法行為が行なわれた。国が金を突っ込んで、事業して、開拓して、ミカンが植わっているところが違法にも売り払われた、このことについての責任はどうなっているのかということをまず聞きたいと思います。  そして、また、ここを買った人がここを見に来て言うことには、大体私は別荘地をさがしておったんだということを言っているんです。そして、ここはいいところだということで買っている。事実、売った団地の写真がここにあります。ここにある写真の団地が売られた団地です。景色も非常にいいのです。そして、買った人たちは、別荘地を造成して売りたいということを言っておられる。それで、大体山ですけれども、三反くらい平面なところがございます。ここには大体ホテルを建てたい、そしてまたレジャーセンターでもやりたい——三十町歩ですからゴルフ場にはいきませんけれども、もう少し周辺を買い足しますとゴルフ場だって考えられるわけです。こういうことが国営事業の途中で大切な国費を突っ込みながら行なわれた、しかも農政局なんかと相談をしておるということについて、農林省はどういうぐあいに責任を感じておられるのか、今後これにどう対処していきたいのか、お尋ねしたいと思います。
  28. 杉田栄司

    杉田政府委員 農政局の指導に多少遺憾な点があったようでございまして、まことに申しわけない次第でございますけれども、農政局の意見を聞きますと、なぜ相談しないのかというようなことも言ってみたようでございますが、相談すると売れなくなるというような話が返ってきたりいたしまして、その問に意思の疎通がうまく行なわれていないということは事実なようでございまして、まことに遺憾に存じます。  なお、この地域につきましては、農業振興地域の指定をいたしまして、いわゆる農用地区域ということにもなっておりますし、また、参加されますこの方々は、いわゆる公有地を森林組合から低利融資を受けて買って、そして参加されたということもございます。したがいまして、自分たちが買ったんだからということで、この事業に途中でちょっと悲観的な見通しが出たからといって、この事業参加を辞退をして他に転売するというようなことはほんとうに遺憾なことだというふうに思っておりますし、また、お話しのように、非常に景色のいいところではございましょうけれども、それが別荘地になったりあるいはゴルフ場になるということは、国が相当多額な投資をしております点からいきましても許すわけにはまいらないというケースになろうというふうに思います。
  29. 馬場昇

    馬場委員 これはほんとうは大臣がおれば大臣に聞きたいのですが、次官に聞きたいのですけれども、結局、もともとこの計画に無理があったんですよ。だから、そういうことで自分の土地を出さなくて、そういう共有地とかなんとかを出して、土地取得資金まで出している。こういうことがあって、いまでは自分の土地を出して、自分が資金を持って、そうしてミカンをつくってでも、非常に困難な経営状態の時期に、こういう個人土地じゃなしにそういう共有地なんかを出して土地取得資金まで出さなければならぬ。そうしてまで無理に開拓事業をやり始めたというところに原因があると思います。それで、農家の人は決して悪気があって売ったわけではないのです。売らなければどうしても生活が破壊するということで売ったわけですよね。こういうことについて、これは違法だ、そうしてまた買った人が農業をやる人でもない、こういうことが行なわれるということは非常に大問題だと私は思うし、農林省もこんなにたくさんの国費を使いながらやるのは問題だと思うのですよ。これについて農林大臣の代理としての次官はどうお考えですか。
  30. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 これは非常に重大な問題ですが、これはいまおっしゃっておる地区だけじゃなくて、調べてみたらかなりあるだろうと私は思うのです。現に、私の知っているところでも、一つ計画地域をこしらえて、まだ事業は始まっておりませんが、国営計画が始まった。ところが、そういうことがわかっておって、やはり不動産屋が入り込んで、やれ別荘地だとか、やれゴルフ場だとかいって、たくさん土地を買い占めてしまった。そのために事業の執行ができない、実設計ができても着工ができないというようなところはかなりあるのです。  だれが悪いのかというような話なんですが、ミカンが暴落をした、そのためにどうも営農意欲がわかないというような点も確かに一つあるでしょう。これは間違いない。さらに、水田をつくろうという計画国営事業が始まったところが、途中で水田はだめだ、牧草畑か何かつくれ、それじゃ話が違うじゃないか、じゃ売ってしまうというようなことになった例もほかにはあるのです。これは、そういうような農業の将来に対する自信が持てないという原因も一つあったでしょうが、買う人がなければ売らないわけですからね。だから、買う人が、そういうような国の計画があり、あるいは農地として造成をされて、それはもう農用地であるということを承知の上で買っているかどうか。しかし、私はいまの話を聞いておって、事実関係をよく知りませんが、農地として造成されているものならば、そう簡単に所有権の移転ができないはずだと思うのですね。仮登記はできますけれども、どういう手続でそれが転売されたのか。あるいはまた農地であるとするならば、かりにそれを大阪の人が買っても、不在地主でもあるし、あるいはそれを別荘地に分譲するという場合には、なかなかそう簡単なわけにはいかないだろうと思います。これは一つ土地関係の規制が非常にあいまいだからで、はっきりと農地法上の農地になっているものはしっかりしていますが、それ以外の山林原野等の規制というものがいいかげんだから——いいかげんと言ってはなんだが、しっかりしていないから、そのために、そういうところが、事実上は農地だけれども法律上は農地じゃないんだということで盲点があるのかもしれぬ。それにつけ込んでどんどん土地の買いあさり等をやっておるという事例もたくさんあります。ですから、そういうふうな両方の面がからみ合ってこういう事態が起きたんだと私は思います。だから、そういうことになれば、やはり、国営事業をやるからには、やる人が一つの展望を持って、いまでもできるような方途を国は講じてやらなければならぬということと、そう思っておっても、もっともっともうかるぜということで扇動されればやはりぐらつきますから、そういうような不動産屋なんかが入り込んで農地造成をやろうというところを、やたらに買い占めすることのできないような規制というものを強化していくことが大事だと思う。  これから食料自給率を高めるの、やれえさをつくるのと言っても、問題は土地でありますが、その土地が新しくこれから造成されるようなところと言えば原野、山林というようなところになります。それが野放しになっておる状態はいかぬので、これは何か規制を考えていかなければならぬと思います。
  31. 馬場昇

    馬場委員 次官はえらいゆうちょうな話をしていますよね。先ほどの答弁でも申されたが、ここは実際に農用地区域になっているのです。それが売られたというわけだが、これはばく大な国費を投じていま仕事をする最中なんですよ。これは行政の怠慢以外の何ものでもないのです。きちんと監督をし、相談にも乗っておけばこういうことは起こらなかった。そういうことについてはきちんと責任を感じてもらいたいと思うのです。この路木団地というのに植栽がしてあります。これがいま売り払われているのですよ。  もう一つ植栽されているところに中村団地というところがございます。ここへの進出企業にパールナイロンという会社があるのですが、この会社が、名義は職員名義にしていますよ。事実この会社がここでミカンをつくっている。農家じゃないのです。そして、私が農政局なりによく聞きますと、いやあれは地元の農民ですよと言うけれども、会社につとめている農民であることは間違いない。事実、この会社は専任の果樹技術員を雇っております。そして、現在も二名ちゃんと研修所に行って研修もさせております。ここに雇われました運転手の人が、パールナイロンに雇われておりながら毎日ミカンをつくるところに人夫を運んでいる。おれはそんな仕事に雇われたんじゃないからと言ってやめたという事実もございます。そして、また、ここで土地取得金の貸し付けをするときに、農協で、名前は農民の名前になっているけれども、これはパールナイロンがやるんじゃないかといって非常に問題になったこともございます。そうしながら一応中村団地に植わっているのですよ。こういうことはやはりおかしい。植わっておる二つの団地が、片一方は売り払われて、片一方はパールナイロンという会社が実質的にやっているのだ。そういうことで、とにかく入ってミカンをつくろうという者は現在いないのです。ほとんどいないと言っていいくらいです。これはもともと発足のときに、印鑑だけ押せば入らぬでもいいんだからという形で発足したところに問題があると思うのです。  もう一つ、久留団地というのがありますが、これは植わっておりません。開いてみたところが、ここは実際に岩が多くて植えたって採算が合わないといって植わっていないというようなところもございます。  こういうことを見ますと、このミカン園造園の開拓というのは全く農民を苦しめておるだけです。事実、また、入ってつくろうという希望者も現在はほとんどいない。そして、また、世間をごまかしてつくってみたり、あるいは売り払ってみたり、まさに国営事業をやる意味がないと私は思います。  そこで、いま継続中ですけれども、ここで一ぺん全住民と話し合いをして、はたしてこれでいいのか、どうすべきかということを再検討する時期にきているのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  32. 杉田栄司

    杉田政府委員 確かに、ミカン、果樹というものは効果があがるまでに時間がかかりますので、その間参加者は非常に苦しいことは事実でございます。しかし、将来の天草離島の農業のいわゆるパイオニアとしての開拓者魂を持ってやっていただく必要もありますし、また、国はそのためにできる限りの相談にも乗る必要があろうかと思います。  それから、いまおっしゃいましたパールナイロンでございますけれども、確かにパールナイロンの従業員が四名事業参加しておりますけれども、これは資金面、営農面で会社の援助も受けていないというふうに聞いておりますし、また、何といいますか、会社ぐるみでいろいろと働く上においてのそういう便宜をはからってもらっておるかもしれませんけれども、パールナイロンの従業員が共同でミカン園経営したり借金もしておるという事実から見まして、この参加者は相当意欲的にやっておるのではないかというふうに思います。この問題は町議会でも質疑があったというふうに聞いておりますけれども、特に問題はなかったということでございます。内容は伺っております。  それから、将来の問題といたしまして、ミカン農家が非常に意欲を失っているというのは事実でございまして、その辺の将来の参加者等につきましては、現地の事務所あるいは農政局等が積極的に今後前向きに相談をしていくようにしたいというふうに思います。
  33. 馬場昇

    馬場委員 全く現状認識が甘いですね。開拓者魂を持ってやってくれと言うけれども、日本精神だけじゃだめなんですよ。まさに生活が自滅をする、破壊をするというところまで追い込まれておるのですよ。そういうときに開拓者魂でやってくれなんて言ったってだめなんですよ。まさに現状認識が甘いですよ。ほとんど入植希望者もないのですよ。事実の把握が非常に不十分です。だから、私が質問しましたこと等についてはもう一ぺん現状を詳しく調査して、現状のきびしさというものを認識してもらいながら、将来の展望を含めながら、この時点でもう一ぺん計画を洗い直すということをぜひ考えてもらいたいと思います。  次に、時間があまりございませんので、漁業の問題について質問したいと思いますが、この羊角湾というのは、多数の入江が羊の角みたいなかっこうの地形をなしております。そういうことで羊角湾と言うのですが、魚介類の産卵とかあるいは稚魚の育成にはここは非常に最適な海域です。そしてまた東シナ海に面しておりまして、遊泳魚類の回遊も顕著でございますし、加えて海藻の宝庫とも言われているのです。そして、魚類の種類も非常に多い、プランクトンの発生の絶好地であるということで、言うならば有数の沿岸漁場でございます。ところが、この有数の沿岸漁場が、いま言った目的のないミカン園づくりとかあるいは干拓というような事業のために締め切りということになり、これによりまして、この漁場の三分の一を漁民は失うことになるわけでございます。そして、また、四十四年にこの漁業権放棄に伴う補償が行なわれましたが、この補償の行なわれ方というのは強行採決ですよ。そして、また、町長に言わせますと、補償なんかはもらわぬところが一カ所くらいあってもいいじゃないかというくらいな考え方で実際に押し通されておりますし、原子力発電所とか、あるいは牛深に水をやるのだからとか、こういうような形でもって漁業権放棄とかが一方的に押し切られておるという状況もございます。そうして漁民らには、十二億円くらいの補償要求に対して、調査もしなくて一億円くらいで打ち切られておる。一方、九州真珠という会社がございますが、ここには千二百三十四万という多額な補償金も支払われており、農政局はこれを払うときには五百万は町に渡してくれという約束をしておったという話さえもございます。そして、また、補償金を払うときに、きまったら日曜日に議会を開いて、町が一億円借りるということにして、そして月曜日には漁協長に一億円払っておる。その利子は地方自治体が負担しておるが、国営事業に地方自治体が利子を負担するのもおかしい。とにかく、漁業権放棄の問題についてもたいへんおかしい問題がございます。  そういうことで、結局訴訟がここで二つ起こっております。四十四年七月六日の総会決議というのは、農政局と漁協がやりました補償協定は無効だということで、各人に補償しろという訴訟が四十四年に一つ起こっております。現在また第二次訴訟が起こっておりまして、これは去年起こりましたが、漁業権放棄のときに賛成した人が、この意思表示は無効であったという訴えをしているのです。それから、工事に伴いまして非常に海がよごれております。沈でん物が出て漁業被害が出ておるのです。この沈でん物を除去しろということです。この二つの訴訟までも漁民の中から起こっておるという状態もございます。こういうときには十分話し合いをすればもともと訴訟なんか起こらなくてよろしいのにこういう訴訟を起こさなければならなかった行政の怠慢というものは強く責められなければならないと私は思います。  そこで、問題は、現在工事途中で、非常に海底の砂を掘りました。漁場の砂を掘ったから底がにごり、沈降剤を二千トンぐらい使っている。それがヘドロ状にたまっている。そして、締め切り工事をやりますから、そこで、海がよごれておるということで補償要求が出ております。これに対しても農政局は非常に誠意がなくて、今度は漁協一任派とか、漁場を守る会とか、二つか三つに分かれてまた交渉もやって、うまくいっていないという状況もございます。だから、裁判に対するものの考え方と、それから漁場がよごれたということに対する補償について、誠意をもって漁民と話し合いをして早急に解決すべきだと思いますが、もう時間がございませんので、一言ずつ、誠意をもってやるということだけでもけっこうですから、これについて誠意のほどを示していただきたいと思います。  それからもう一つは、最近沿岸漁場整備開発法も出るという段階ですから、沿岸漁業をどう振興するかということが当面の大きい日本的課題です。農林省の課題であります。水産庁の課題であります。これについて、締め切り工事もこの辺でもう一ぺん洗い直しをしてみて、あるいは計画を変更してみて、国民のたん白源である漁業をどう振興するか、漁民の生活をどう安定させるかということを重要な位置づけにして、漁業振興のあり方ということも含めながら、締め切り工事を中止しながら——いままでの計画はまさにミカン山、干拓のサイドでした。これを漁業振興というサイドも含めながら、締め切り工事等の問題についてもう一ぺんここで洗い直して検討し直す必要があるのではないかと思うが、こういうことについての御見解を承りたいと思います。
  34. 杉田栄司

    杉田政府委員 漁業権の消滅もしくは制限に関する、いわゆる係争中の問題につきましては裁判所の判断にまちたいと思っておりますが、私どもの考えといたしましては、適法に消滅の手続が行なわれたというふうに考えております。  なお、汚濁補償につきましては、御承知のように、崎津漁協の中におきまして幾つかに意見が分かれております。でき得ればその意見を統一していただきまして、不公平にならないように、公正な補償の解決をしたいと思っております。この問題につきましては、今後とも誠意をもって解決に当たりたいというふうに考えております。  それから、水産庁の問題は別にいたしまして、締め切り堤はもうほとんどでき上がってまいっておりまして、湾内の締め切りにつきましては、計画変更をするということはなかなか困難でもこざいますし、また、開発されます農用地の問題あるいは既耕地の畑かんの問題等を考えますと、この事業としてはぜひ必要な淡水湖であるというふうに考えております。
  35. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 羊角湾を含む天草北西地域は、先生御指摘のとおり非常にいい漁場でございます。そこではアジ、タイ類、ボラその他、それから真珠、カニ、イカ等、漁業資源が非常に豊かなところでございまして、このため、沿岸漁業構造改善事業といたしまして、昭和四十八年度に指定いたしました。そこで、四十八年、四十九年と二年間調査を行ないまして、その結果に基づいて今後どういう構造改善を進めるかということになるわけでございますが、昭和五十年度より事業を実施することになっているわけでございます。こうした措置をとって、私どもといたしましては、あの地域の漁業振興に大いに力を貸したいというふうに思っております。
  36. 馬場昇

    馬場委員 構造改善局の次長と話をしておったってしょうがないのです。たとえば裁判に訴えられているが、訴えられるということは、やはり、行政にどこかミスがあるわけですよ。あるいは住民の意思を尊重していないというところがあるわけです。だから、訴えられたならば裁判の判断にまかせるということと、なぜ訴えねばならなかったかという行政の反省をして、漁民が訴えておっても、これを裁判で争わなくとも解決する方法はないかということをあなた方は誠意をもってやるべきだと私は思うのですよ。  それから、また、この汚濁補償についても、現地の人が意思を統一して持ってくれば誠意をもってやるとか——実際、分裂させたのは農政局のあり方にあるのです。私は詳しく知っておりますよ。だから、そういうことでなしに、あなた方がこういうぐあいに分裂させておるのです。誠意がなかったことがこういうかっこうになっているんです。たとえば九州農政局長なんかは、私は二回ぐらい行って、現地に行って話し合いをしなさいと言ったら、行きますと約束しましたが、行っていないのですよ。それから催足をいたしましたら、来週は忙しいから再来週行きますと言った。それでも農政局長は行っていないのです。地元の人と私が一緒に行って、国会議員も含めまして地元の人と約束したことを実行もしない。そういうことがたくさんございますよ。そういうことがこういう混乱の原因をつくっているんです。そういう点について、あなた方の行政に対する反省というものはまさに非常に不足しておる。私はここで強く言いますけれども、この事業というのは、少なくともミカン山造園というのはもう目的を失っているんです。干拓をしてイグサをつくるとかレンコンをつくると言ったって、イグサをつくる休耕田もありましょう。そして、また、この労働力なんかをどう確保するのか、これはたいへんな問題がございます。だから、ミカン山の問題も意義を失ったし、開拓干拓も意義を失っているんです。締め切りして漁業被害も出ているし、締め切り問題も目的を失って、まさにこれは目的を失った国費のむだづかいの事業だと私は思います。計画中止ということを地元は要求しておりますが、いずれにしても、中止するとかしないということは言えないと思いますが、現在の段階ですべての問題について住民の意思をもう一ぺん統一して、先に見通しのあるような国営事業にしなければならぬと思いますので、ぜひそういうぐあいにやっていただきたい。これは抽象的ですが、特に次官のほうから、いまの意見に対してぜひお答えを願いたいと思います。  最後に、あと四、五分もしますと時間が来ますので、災害問題について申し上げておきたいと思うのですが、あそこは、一昨年上島というところが大災害がございました。これはもう御承知だと思うのですけれども、現在地元の人は何と言っているかといいますと、一昨年みたいな雨が降ったならば、今度は上島じゃなしに下島だと言うのです。ここは下島というところですが、ミカン園で乱開発されて山が全く裸になってしまっております。だから、今度ああいう雨が降ったならばこの下島が被害を受ける、これはもう常識だというぐあいに言われておりますし、事実、本渡の水防区本部の水防計画書によりますと、この地域は山津波の危険個所が百九カ所で三千五百戸、がけくずれが二十四カ所で千五百戸そして、また、この地域は台風常襲地帯でありまして、急傾斜の山の下に学校とか民家がございます。そういうところであるのに、広大な林野を切り開いて、山はだがあらわれて自然破壊になっているんですが、ここは雨が降ると大災害を起こす可能性がございます。事実、現在ももう災害が起こっておりまして、久留川という川がございますが、毎年荒れるのですけれども、その上流も開墾してしまってございます。実際問題として、ある農家の水田がもう土砂で埋まってしまいました。これを復旧してくれと言いますと、災害復旧には自己負担が要るんだぞとおどかされて、そのままになってしまった。それから、ある人の土地をかってに切り開いて通路を通しておる。そして、そのミカン団地の下に樹齢十数年の杉の植林地があるんですが、ここも土砂で埋まって、その数千本がもう枯れようとしておる。こういうような災害も実は出ております。  そこで、私が現地に行って聞きましたら、いや、あそこは七十五ミリ降ったってだいじょうぶのように設計してありますと言うのです。上島が大水害を起こしましたときには百三十ミリの雨が降ったんです。こういういっ大災害が起こるかわからぬというような工事方法が現在行なわれておる。これに対する対策についてお伺いをしておきたいと思います。
  37. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 全般的なことについてお答えを申します。  この事業は当初計画からかなり年数もたっております。しかし、私が聞いた範囲では、干拓あるいは締め切り淡水湖をつくることが不要になったというようには考えておりません。  ミカンの将来の問題については、確かにいまのような不安定な状況で、農民が不安を持つのは当然でございますが、これなども、農林省の施策として、ジュース工場の建設等をことしからかなりやっておるわけでありますから、これによってミカンの需要というものは伸びると私は思う。特に、ジュースを飲む習慣が日本ではポピュラーでありませんが、これを習慣づければ、ミカンはもう頭打ちでこれ以上つくらぬでよろしいというようにはまだ言い切れないんじゃないか。しかし、いまあなたがおっしゃったように、年数がたった中でいろいろな不安があり、あるいはいろいろなトラブル等があるようでありますから、こういうようなものは解消するように農林省としては万全の努力をしていかなければならぬ。ことに、地元民の理解、納得ということは非常に大切なことでございます。したがって、地元関係市町村あるいは関係機関等とも十分に協議をして、地元民の意向も十分に配慮をし、事業の推進に吸収できるように努力をしてまいりたいと考えております。誠意をもって交渉に当たらせます。
  38. 杉田栄司

    杉田政府委員 災害対策の問題でございますが、本地域は非常に急傾斜地が多いということから、私どもも防災対策についてはかねてから気にしておるわけでございます。ことに、先年の天草の災害のときも非常に心配をいたしました。先ほど先生から七十五ミリという話もございましたが、これら等につきましても、いわゆる既往最大雨量に対しても対応できるような設計施工というものをもう一度十分に考えるように指示し、検討しておるところでございます。
  39. 馬場昇

    馬場委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、いずれにいたしましても、この国営事業というものはもう目的を喪失した国費のむだづかいだというぐあいに私は思います。これは農林省見解も少し違うようでありますけれども、地元に不安、動揺、悩みがあるわけですから、十分話し合いをして、この際地元住民の納得するような国営事業にしていただきたい。  さらに、水産庁もおられますが、これで三分の一も漁場を失われるということですから、この人たちが生活できるように、漁場振興についても格段に考えていただきたいと思います。とにかく、現地は、いまや山も川も海も自然も全く破壊され、人の心まで破壊されようとしておる状況でございますので、十分検討を加えていただいて、この事業の推進に——ぼくはこれはもう中止してもらいたいのですけれども対処していただきたいということを申し上げまして、少し時間を超過いたしましたが、質問を終わります。
  40. 仮谷忠男

    仮谷委員長 午後二時より再開することとして、暫時休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  41. 仮谷忠男

    仮谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中川利三郎君。
  42. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は先月の十三日、十五日、農機具の問題でいろいろお伺いしたのでありますが、あれからちょうど一カ月、その間農林省や通産省が全国にわたって実態調査をされたという話でありますが、その調査の結果、どういうような成果をあげて、どのような到達点に達しているのか、そこら辺の事情について、まずもって簡単に御報告いただきたいと思います。
  43. 二瓶博

    ○二瓶説明員 調査の結果でございますけれども、昨日までに二十四県から報告が出てまいっております。現在、その内容につきまして検討を進めておるところでございますけれども、販売店から文書をもちまして契約更改を農家に要請したという例につきましては、東北なりあるいは北陸、その辺の地域のほうが目立っておるということが出ております。  それから、中身の問題ですが、いまの口頭で農家に要請をした例とか、あるいは契約更改を求めなかった例もかなり見られます。  その処理状況でございますけれども、旧価格で取引され、解決した例、それから農家との話し合いで解決した例等も相当多くございますが、まだ未解決というような事例も見られます。  以上でございます。
  44. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 通産省。
  45. 野口一郎

    ○野口説明員 通産省といたしましては、主要農業機械四社がございますが、この前の席でも申し上げましたように、その後もその四社を呼びまして、既契約は尊重するということを強力に指導いたしました。もちろん、そのメーカーのみならず、そのメーカーの系列販売店あるいは特約店に対しまして、メーカーのほうからそう指導するように要請をしております。その後の結果をトレースいたしましたところ、各メーカーはそれぞれの販売系列に対しましてそのような指導をしているという報告を受けております。当省におきましても、産業機械課の担当官が、われわれのほうにはそれぞれ地方に通産局がございますが、それぞれの通産局の担当官と協力をいたしまして現地の実情を調べ、同時に、指導に当たらせたわけでございます。たとえば福島県、秋田県、千葉県というところに派遣をいたしまして実情を調べたわけでございますが、それと同時に、問題の生じているケースにつきましては、先ほど申し上げたような趣旨に従って指導をいたしました。
  46. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いまそれぞれからお伺いしたわけでありますが、一つ確認しておきたいのは、いま通産省のほうでおっしゃっておりましたが、メーカーがそれぞれの系列販売店その他の販売店に対して文書を流したが、そんな悪いことはしてはいけませんよ、既契約を破棄するようなことはけしからぬぞと指導したということは事実でありますか。農林省のほうからお答えがなかったので、いま一つ確認しておきます。
  47. 二瓶博

    ○二瓶説明員 お答え申し上げます。  ただいま通産省のほうからもお話しがありましたように、先ほど私が申し上げました都道府県に対する調査のみならず、これと並行いたしまして、久保田とかヤンマーとかいう主要メーカー個別に、既契約を守るようにということを強く指導いたしまして、各メーカーのほうからも、この意を体しまして、それぞれ各支店なり特約店というところに対しまして、文書で既契約を守るようにというような指導をやっておるということでございます。
  48. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、先般の質問で、メーカーこそ犯人でないか、そこのところをはっきり追及してほしいということを要求したわけでありますが、いまのおたくの答弁の中で、メーカーを指導した、メーカーがその下々の系列その他の販売店に対して、そんなことをしてはいかぬというふうに指示したということであれば、どろぼうがどろぼうをするなということを指示したようなもので、まさに偽善にひとしいやり方だと思うのですね。  そこでお聞きしたいのは、こういうやり方についての皆さんの調査の実態、内容についてお聞きするわけでありますが、実際はメーカーから話を聞いて——あるいは販売店ぐらいは回ったかもわからぬけれども、農民やら理事者の方々のところへ実際に回ったという形跡は、皆さんの報告の中では一つも感じられないわけであります。しかし、それで時間をとってもなんでありますから、さっそくお聞きしたいわけでありますが、農林省でありますが、たとえば皆さんが回った中で、特に農林省が回った中での県の例として、富山県があげられると思います。富山県に皆さんの係官が行ってきましたからね。ここでは既契約を破棄して追徴金を取ったという事例はどういう状況であったか。おたくはたしか十四件調べたはずでございますが、そういう事故はなかったのかどうか、この点についてお聞きしたいと思うのです。
  49. 前田耕一

    ○前田説明員 私からお答え申し上げます。  私ども農林省の職員が現在まで回っておりますのは、秋田地区と北陸地区でございます。そこへ参りまして、県が実際調査している調査と並行いたしまして綿密な調査をいたしたわけでございますが、先生御指摘の北陸の県につきましては、各販売店を回りまして調査いたしましたが、北陸地区におきましては、全部じゃございませんけれども、大部分は販売店と農家との間にいろいろ話し合いが行なわれておりまして、解決している例が多かったようでございます。
  50. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 富山県では皆さんが十四件調べた結果、そのような事例はあったかどうか、このことを聞いているのです。あったならあった、なかったならなかったでけっこうです。
  51. 前田耕一

    ○前田説明員 先生御指摘のように、メーカーが販売店に対していろいろ値上げの要請をしているという事実はございまして、こういったメーカーの要請に迫られて、販売店が農家に対しまして既契約の更改を求めたという事例は確認いたしております。
  52. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうしますと、あなたの御発言と富山県が農林省に出した報告とは食い違いますね。私は、手元に、富山県が農林省から指示を受けましておたくへ提出した資料を持っています。ヤンマーその他各社についての十四件の資料ですが、どの項目を見ましても、既契約の取り扱い状況として、既契約のものについて新価格をもってあらためて契約を結んだ事実があるかないかという皆さんの調査項目に対して、この事実は見当たらなかったという報告でしょう。富山県がごまかしているのでしょう。もう一回やり直しされますか。どうですか。
  53. 前田耕一

    ○前田説明員 そういう県の報告に対しまして、農林省は別の立場で調べたわけでございまして、農林省としましては、各販売店の事情聴取を経まして販売店からそういう事実の報告を受けているということで、県の調査につきましては、あらためて事情聴取をしましてやりたいと思っております。
  54. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、この限りにおいては、県の調査がでたらめだということをお認めになりますね。
  55. 前田耕一

    ○前田説明員 私どもは、県に対しまして厳密に事実を調査するようにと指示をいたしておりまして、県もその意を体してやっているはずでございますけれども、ただいま申しましたように、私ども実際に行って調べた場合と若干違う点がございます。この点は認めております。
  56. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、富山県には何にもそういうことがなかったということの資料を持っているのですよ。しかし、ちょっと言いますと、これは名前は差し控えますから、かりにA店といたしましょう。このA店では、昨年十月ヤンマーディーゼルの金沢支店と田植え機六十台の売買契約をしたのですね。それに対して手形で支払いを終わった。ところが、ことしの一月になりまして、三十台だけは契約価格で出して、あとの三十台については一万円上乗せしてほしいと言う。これは販売店とメーカーの関係ですよ。さらに、その十日後に三万五千円のアップを通告したために、やむなく追加の九十三万円を支払ったという、こういう事例があるわけであります。こういうことはまだあるということをあなたはお認めなんですね。
  57. 前田耕一

    ○前田説明員 先ほど申しましたように、県に対しましては、事実を調査するようにという強い指導のもとに調査しておりますけれども、実態がなかなかっかめない点はあったようでございますが、私どもの別途の情報収集によれば、そういう例がほかにあることを知っております。
  58. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 その点について、富山県に、そういう形式的なおざなりのやり方については厳重に注意するように指図をしていただきたいと思います。  ところで、これは農林省とあわせて通産省にもお聞きしたいのでありますが、メーカーが各支店や販売店に出した文書というものの特徴は、私が調査した限りでは、一つは、いずれもこの問題がこの前の私の質問以来社会問題として発展してきている。二つには、ヤンマーなんかの各支店に出した文書を、私の調べた範囲で特徴を拾いますと、特約店、販売店に責任を持てと言っているが、自分の責任には全く触れておらない。それから、メーカーの出した値上げの通告文についてのそういう責任には盲も触れないで、撤回するということも一言も言っていない。この三つぐらいがさしあたっての大きい特徴であろうかと思うのですが、通産省、これについての御意見はいかがでございましょうか。
  59. 野口一郎

    ○野口説明員 メーカーと販売店の関係でございますが、販売店は全国に何百もあるわけでございますので、メーカーと販売店との間に実際の問題としてはいろいろな場合が起きているかと思いますけれども、基本的に申しますと、いままで問題になりましたような販売店とユーザー、農民との関係において守るべき原則としての既契約の尊重ということは、当然メーカーと販売店の間におきましても守られなければならぬ原則というふうに考えております。したがいまして、メーカーの側におきまして一方的に販売店にそのしわを押しつけるということはないように今後とも指導していきたいと考えております。
  60. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 しかし、通産省や農林省のいろいろなお考えを聞きましても、今回の問題の発端はメーカーが仕組んだものだというふうに私はこの前も述べたわけでありますが、いま通産省の次長のお話しを聞きますと、農民と販売店との問の問題なんだ、しかし、間接的にいけばメーカーにも責任があるらしいんだというふうな言い方なんですね。だれが原因でこういう状態をつくり上げたかということについて、通産省の基本的な見解は一体どうなんですか。
  61. 野口一郎

    ○野口説明員 昨年の秋以来の石油危機を契機にいたしまして、石油製品及びその関連する製品の値上がりが著しいものがございまして、それが波及してまいりまして、結局、農機具、農業機械をつくるのに必要な原材料、資材、あるいは部品等も値上がりせざるを得ない羽目になったわけでございます。そういうことから、結局農業機械の価格を引き上げざるを得ないという動きはメーカーのほうから出てきたものと思っております。
  62. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農林省
  63. 二瓶博

    ○二瓶説明員 農家と販売店との間の既契約の更改という問題が出ておるわけでございますが、ただ、この問題が出ます背景といいますか、原因といいますか、その辺につきましては、さらに販売店とメーカーとの間の契約の問題等があるわけでございますが、この契約の中身がどうかという問題については、またいろいろ問題がございます。それは別といたしまして、そもそもこういう問題が出た根本原因は、やはり、メーカーのほうが値上げをするというようなことで、販売店等に値上げの関係を通告したり要請をしたりというようなことが発端になっておる、これが基本的な原因になっておるというふうに理解をいたしております。
  64. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 けさほど来、あるいはきのうからでもけっこうですが、いまの御発言はどっちもずっと変わっていますね。きのうまでは、私が担当を呼びますと、これはもうまさにメーカー性善説で、農民性悪説だったな。これをがんとして唱えて譲らなかったんだな。きょうはどういうわけで変わったのか知りませんけれども、それはさておきまして、どちらもメーカーにほんとうの根源があるということをお認めになるということですか。この点を確認したいと思いますので、両方にお聞きいたします。
  65. 野口一郎

    ○野口説明員 今回の価格値上げの原因は、農業機械メーカーがその販売する価格を引き上げざるを得なかったということに起因すると思います。
  66. 二瓶博

    ○二瓶説明員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、今回の農家と販売店との契約関係につきまして既契約の不履行の問題等が生じておるということのそもそもの発端というのは、石油危機以来のいろいろな部品の値上がりとかいうようなこともあるでしょうが、メーカーのほうで農機具そのものの価格の改定をするというようなことで、販売店のほうに通告をしたり要請をしたりというようなことが発端になって起こったものと考えるということでございます。ただ、問題は、その販売店とメーカーとの問の契約関係ないしは法律的な問題というものにつきましてはいろいろ契約内容にはよろうかと思いますけれども、そもそもの発端はそういうところからスタートを切っておるものと理解をしておるということを申し上げたわけでございます。
  67. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 次官に聞きますが、いまお話しのとおりですね。今回の不当な契約更改ですが、既契約を更改して追徴金を課するという事態が明らかになれば、これはメーカーの責任として解決させるべきであると思いますが、次官の御意見はいかがですか。
  68. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 私は個別的な具体的なケースは知りませんが、一ぺん契約をして、頭金を払って、幾ら幾らで売りますというようなことになっておったものは、商業道徳的に考えても、多少損をしてもそれで売るというのが常識だろうと私は思います。しかし、契約がどういうふうになっているか、これは取引の話ですから、契約の内容が、金も何も払わないで口契約だけしておいたというようなところまでなかなかそれはできないかもしらぬ。しかし、いずれにしても、農林省としては、既契約のものについては、農家がそのつもりで、二十万なら二十万、十万なら十万ということで計算をして、金を一部払って契約をしっかりしてあるというようなものについては、もうそれで品物を渡しなさいという指導はします。しかし、メーカーが販売店に統一的にそういうような値上げの指導をしたという証拠はなかなかっかまらないのですよ。あったら教えてもらいたい。統一的にそういうことをやっておれば、販売店から手形をとってちゃんと契約したものを、今度は途中でそれをかってに値上げするんだよというようなことを、向こうの了解なく一方的にやることはいかぬことだ。人情論としてはこれはわかりますよ。それは、たとえば土木工事等でも、国が契約をしておっても、資材の値上がりになった分は、何%以上上がれば追加払いしますというように、ともかく国でも今度は規則までつくってやっているような異常な事態ですから、それは人情論としてはわかりますが、メーカーはそれでばかりもうけているわけじゃないので、多少損することはあってもほかでもうかることもあるのだから、ともかく、農民としっかりした契約をしたものについては販売店までできるだけ全部流せという指導は厳重にやらせております。もし徹底していないところがあれば——こっちがよく見張ってはいるのだが、なかなかあなた方のようにうまく情報が入らない。ですから、あなた方にうまい情報が入ったら、国家、国民のために教えてもらいたいと思います。
  69. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 メーカーの仕組んだ今回の値上げ騒ぎだということ、このことについてはっきりするならば、その解決はメーカーに責任を負わせるべきだという、このことの確認としていまの御返答を了解してよろしいですね。
  70. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 いま言ったように、それは契約の内容によりましょう。しかし、農家の方がちゃんと正式な契約を販売店と結び、そして手付まで打って、販売店はまたそれを信じてメーカーときちっと契約を結んで、手形まで渡して、代金の決済も済んでいるというようなものは、メーカーはもとの契約どおりのものを渡せと言うのはあたりまえだと私は思っております。
  71. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 では、一つお聞きしますが、この二月に農機具の値段が改定されましたね。この値段というのは全農とメーカーとの交渉できまるということを聞いておるわけでありますが、二月の値段がきまったのはいつの時点なのか、これをお知らせいただきたいと思うのです。  また、もう一つは、全農とメーカーの話し合いできまった価格というものが商人系のそういう販売店の農機具の値段にもなるのかどうか、大体そういうことにもなるのかどうか、そこら辺をお教えいただきたいと思います。
  72. 二瓶博

    ○二瓶説明員 二月の値上げの際の全農とメーカーとの価格交渉がいつごろきまったのか、その時点はいつかというお尋ねでございますが、二月の価格改定の交渉は、十一月下旬に主要メーカーから全農のほうに対しまして値上げの要請がございまして、十二月に入ってから各社別にそれぞれ交渉が持たれました。十二月の二十日までに大手メーカーとの問では妥結をいたしました。その後なお一月に至るまで、その他のメーカーもたくさんございますので、そういうものとの交渉が行なわれたわけでございます。  以上でございます。
  73. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 全農は、農民に対しては、いつの値上げの場合もメーカーとはけんか腰にきめているんだ、そのときのぎりぎりの決着まで価格で戦うのだということを言われておるわけでありますが、いまのあなたの話を聞きますと、十二月の二十日ごろに二月の価格を全農さんがもうきめておるということになりますと、あなたの御発言が間違いなければ、これはたいへんなことだと思うのですね。私がかねて前田肥料機械課長からお話しを聞いているところによれば、いや、全農がそんなことをするはずがない、二月の価格というのは一月ぎりぎりまでかかっているんだということですが、私が全農に行ってこの点を確かめたら、やはり同じようなことを言っておりましたな。そうしますと、あなたの御答弁だと、全農さんの性格から見ても一つの問題はあろうかと思いますが、もうそんなに早くきめているんですか。ちょっともう一回お答えいただきたいと思います。
  74. 前田耕一

    ○前田説明員 お答えします。  全農とメーカーとの価格取りきめは、農業機械につきましては七月と十二月が定例の価格交渉でございまして、この二月に行なわれました価格取りきめは、例の石油ショックに基づくいろいろな諸資材の値上がりに基づくコストアップによる価格交渉でございまして、異例なことであったわけでございます。そして、全農は、十二月に価格は取りきめられまして、一たん、十二月から来年の六月までの価格を一応末端に流しております。しかし、そういったメーカーからの強い要請がありまして、二月に上げざるを得ない情勢になりました。そういうことで、一たん末端まで情報を流しておりますので、こういった異例の処置につきましては、早目に末端に流して流通の混乱をなくしたいということから、特に、大手メーカーにつきましては集中的に交渉をやりまして、内定という線で、決定ではございませんで、こういう交渉が行なわれているという情報を末端に早く流して混乱を防いでいこうという趣旨でやったものでございまして、農林省にもいろいろ相談を受け、最終的に価格交渉の結果がきまったという報告がありましたのは一月の下旬でございます。
  75. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうしますと、たとえば十二月二十日ごろに四大メーカーと全農で話がきまって、それが末端に今度の価格はこれだぞというふうに行き渡る。その十二月二十日段階というものは、一応全農さんと丁々発止でやって、やっと話が煮詰まったということだと思うのですね。それがこの農機具のプライスとして正規に行き渡るにはどれくらいの時間がかかるものですか。つまり、それからがほんとうの値段として下部に理解されることになるわけでありますので、その点をお聞きしておきます。
  76. 前田耕一

    ○前田説明員 全農のいまの二月のものは、二月からの値上げでございまして、二月からこういうふうな値段に上がりそうで、上がる傾向にあるという情報を流したわけでございまして、十二月の時点に流した情報は、即そのときの価格ではないわけでございます。それで全農は別途経済連に対しまして数量割り当てをやっておりまして、全農は指図価格でやっておりますので、メーカーからその二月以前に経済連に出されるものにつきましては、当然十二月の時点にきまった価格が守られているという状況にあります。
  77. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 では、私のところに資料が少しありますので申しますが、三菱機器販売株式会社取締役東京支社長の毛塚武さんが、昭和四十八年十二月二十日に、つまり、きょうきまったという、その日ぐらいに各販売店や系列に出した文書があるのですが、これは「石油及び電力消費制限に伴う田植機価格並びに出荷変更の件」という題名なんです。中を読みますと、何が書いてあるかというと、「価格及び出荷台数につきましては全面的に改訂せざるを得ない状況に立ち至りましたので、不本意乍ら初号機(四十九年度MP二〇四型)に遡り改訂させて頂く事になりましたので」と書いてあるのです。しかも、そのあとに、「尚、既に顧客との間に代金の受授、商品の引渡、契約完了等で困難な面もある事と存じますが、貴店から事情を篤と御説明申し上げ、下記価格で再契約願う様格段の御協力賜り度」と書いてある。すでに十二月二十日に、この東京支店の取締役さんがそういう混乱やトラブルを予想して、そういうことについては特にうまくやれという指示をしておるわけです。そして、その指示文書がここにあるわけですが、これは一体どういうことですか。既契約を破棄することをちゃんと指示しているでしょう。どうですか。
  78. 前田耕一

    ○前田説明員 先生御指摘の田植え機につきましては、全農取りきめ価格につきましては、十二月は上がっておらないわけです。ですから、ただいまのような文書は私は知りませんでしたけれども、ぜひいただきまして、メーカーから事情を聴取して善処いたしたいと思っております。
  79. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、田植え機なんかは十二月は上げていないのだよね。そうでしょう。それなのに、ちゃんと責任ある文書が、田植え機の値上げについてはこういうふうにするのだということでやっている。その文書がここにある。こういう事実があるということに対して、あなたのほうでは、ただ調べるからなんということじゃなくて、はっきりした態度をとらなければならないでしょう。明らかにメーカーの責任だ、明らかに既契約破棄を意味するものだ、こういう御理解になれるかどうか、お聞きしたいと思います。
  80. 二瓶博

    ○二瓶説明員 ただいま先生からのお話しのその文書の件でございますが、こちらとしてはまだ把握してございませんので、その辺の文書をこちらの面でも把握をいたしまして、もしそのとおりであって、その文面の中に、ただいまお話しがありましたように、既契約を破棄して再契約するようにというようなことが明確にうたわれておるというようなことでございますれば、その面は当初の契約を守るようにというようなことに指導をしたいと思います。
  81. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そういうことが明らかになれば、既契約を守るようになんというなまやさしいものではなくて、メーカーが仕組んだことだということを私は言っておるのです。これほど明らかなことはないでしょう。  しかも、もう一つついでに申しますと、同じく三菱機器販売株式会社の取締役東京支店長毛塚武さんが、昭和四十八年十二月二十九日にこういう文書を出しておる。「三菱テイラー、耕転機改訂価格に係る件」というやつですが、それを見ますと、その中に、「この程四十九年二月、三月度の価格が決定致しました。」となっている。これはちゃんと決定したのです。そして「尚」というのだね。「尚、標準小売価格につきましては四十九年一月一日より適用実施くださいます様御願い致します。」と書いてある。いいですか。二月、三月度の値段はもうきまった、販売店へおろす値段もみんなきまった、しかし、小売りだけは、農民に売るやつだけは一月一日からやってしまえという、こういう指示文書です。これはマル秘文書です。ばんと判を押してあるやつです。ここへ来てごらんなさい。こういうことをやっておるのですよ。これは明らかに契約破棄でしょう。不当でしょう。
  82. 前田耕一

    ○前田説明員 三菱機器につきましては、先ほど審議官から御答弁がありましたように、私ども個別に指導いたしまして、メーカーに対しましては、そういった既契約の更改を求めるようなまぎらわしい文書が出ているものは撤回しろという指導をいたしております。三菱は、よくわかりました、そのようにいたしますということを私には申しておりますので、そういう文書をいただきまして、その点さらに強く三菱に指導いたしてみたい、かように考えております。
  83. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 これらの三菱にしろ、何にしろ、御自分で各販売店に、おまえたちそういう悪いことをしているのか、そんなことをしてはいけないよという通達を出しておる御本人がちゃんと陰でこういうことをしておるということが問題なんです。二重にも三重にもあくどいじゃないですか。  では、三菱はこうだとあなたは言うから、ほかの機械の会社で言いましょう。これはヤンマーですが、ヤンマーはどうだというと、ヤンマーではこういう事例がある。これは長野県の例でありますか、十二月の初旬に各地区の主要販売店を集めて、二三%値上げ断行を通告していますな。販売店側では、その通告に対して、みんなおこっちゃって、すでに予約契約をしてあるし、あるいは現物引き渡し済みのものもあるし、契約金を取ってもいるし、または現物を受け渡したものもある、それであるから値上げは承認できないということで、このときに会社の非を鳴らしておるわけですね。ところが、会社側はどう言っているかというと、非常事態であるから協力の意味で承諾せい、会社は法の上からも非であることは承知しているが、しかし、もし販売店がこの際値上げに応じないならば、非協力店については今後の出荷を差し控える、おまえたち今後の営業についてどっちをとるほうが有利なのか十分考えよ、と、こういうことをはっきり言っておるのですよ。そこで、四十九年の一月から二月にかけて、販売店は困っちゃって、すでに契約した方々に対して、田植え機の三万三千円の値上げ分に対して——価格の割り振りまでメーカーが指示しているのですね。どういうふうに指示したかといいますと、販売店は既契約者に対して二万円の値上げを要求し、これにこたえたものには現物を渡しなさい、それまでは現物の引き渡しを差し控えよと言っている。残りの一万三千円は販売店が負担せよというやり方をちゃんと指示しているのですよ。このために二万円を上乗せさせられた農家もあり、あるいは、一たん契約を破棄させられ、新しい価格の二十三万六千円で売りつけられた農家もいるわけであります。一月二十六日に、これじゃ困るじゃないかということで、長野ヤンマー販売店は東京支店に押しかけたのです。ところが、中間の係が、いないとかなんとか言って絶対支店長に会わせないのです。こういう問題の事例もあるわけですね。しかも、これを裏づけるように、去年の十二月十日に、ヤンマー農機株式会社東京支店が特約店各位にあてて、「田植機価格改訂について」という文書を出しているのですね。何が書いてあるかと思えば、「積極推進継続中の四十九年度田植機価格に於いても此度二三パーセントの卸価格アップを断行せざるを得なくなりました。突然の事ゆえ、諸事多難とは存じますが、」と書いてある。十二月十日だよ。これは一体何ですか。まだ交渉も何もきまっていない段階で、これは十二月十日の発信ですよ。そういうことはあまりにあくどいというか、これでもなおかつメーカーに責任がないとあなたはおっしゃいますか。通産省と農林省の両方から答えて下さい。
  84. 野口一郎

    ○野口説明員 昨年の秋以降は、石油危機を契機として、いろいろ諸物価値上がりという状況でございますので、メーカーの生産計画あるいは販売計画等もいろいろそれの影響をこうおりまして、若干の混乱もあったのではないかというふうに推測されるわけでございます。私どもの基本的立場は、繰り返して申しますように、契約をはっきりときめたものについて、契約の更改をするとか、あるいは引き渡し期限をきめたものを延ばすとかというようなことは好ましくないことでございますので、そういうような文書も一部のメーカーから出ているやに聞いておりますが、そういうものは回収、撤回するように指示をしております。
  85. 二瓶博

    ○二瓶説明員 二月の価格改定ということで、十二月にいろいろメーカーと全農で折衝していて、まだ本ぎまりする前に価格改定が実施されたような意味合いでいろいろな文書を出しておるということにつきましては、非常に不謹慎な面があろうかと思います。なお、問題は、その際の流した文書の中での、既契約の分についてどうというような具体的な問題になりますれば、この辺になればまた法律的にどうというような問題がございますけれども、一般的に、その時点において、先生のおっしゃるような姿で指示の文書を出しておるということについては、きわめて不見識な問題であろうと、かように思います。
  86. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 通産省の次長さん、あなたのようなずれた答弁をするから通産省はなめられるのですよ。通産省は、いま、私が、メーカーがこれだけあくどいことをしているじゃないかと言っても、問題をそらして、販売店と実需者との契約関係に話をそらすようなとんでもない答弁をする。そういう答弁のしかたというのはまことに不誠実なものだと思うね。同時に、農林省にいたしましても、非常に重大な問題だということはいま言いましたけれども、契約の中身にかかわるなんというようなことですが、こうなれば契約の中身もヘチマもないでしょう。実際に手形も払ったり、いろいろなことをやっておるのを、それをみんな更改せいということを会社自体が指示しておるのですから、契約の中身がどうのヘチマの、何がどうのなんて、そんなことは関係ないことです。これほど歴然としている事実はないでしょう。  そこで、もう一つ出しますけれども、久保田はどうだ。あなた方の言う日本の代表的な農機具メーカーの久保田鉄工ですね。これは一体どういうことをしているか。特に、この久保田は、去年の十二月十四日に、「販売会社、特約店社長殿」にあてて、取締役、内燃機器営業本部長内田重一なる者が、「非常事態下に於ける諸連絡並びに御願いの件」という文書を出しているのですね。どういうことを書いてあるかといいますと、「田植機に就いては、現在限月価格にて受注済のものに就いても、誠に恐縮乍ら改訂実施月度より価格改訂をせざるを得ませんので何卒御理解と御諒承を賜り度く」云々と書いてあるのですね。つまり、限月受注済みのものについても改定するというんだな。こんなひどいことがあるかということですね。これこそ、下の販売店やら何やらはこういうふうに言われたら、みんなそれにならわなければならない。ああいう非道なことの張本人がやることでしょう。しかも、この久保田の一番悪質だというのは、系列販売店とぐるになってうまくやっているということなんです。どういうことかといいますと、自分でこういう文書を流しておきながら、たとえば山形クボタなんか——私の秘書が二月の二十五日に、山形で起こった事件について久保田の本社に行ったのですよ。そこでは営業統括部長の川本さんという方が、会社では絶対そういうことをやらせないということで自分の系列販売店を説得している、しかし、現地の販売店はなかなか本社の言うことを聞かないという、こういう言い方をしているんだね。ところが、その言うことを聞かないはずの現地の山形クボタはどういうことを言っているかというと、ここに得意さまにあてた株式会社山形クボタの小林という社長の文書がありますが、「農機の契約価格更改の御願い」というものですね。どう書いてあるかといいますと、「実はこのたびこのような事情による久保田鉄工(株)よりの値上げ通告に接しはなはだ不本意ながら契約変更の余儀なきに到りました。メーカーの指示価格でご契約申し上げたのですが急上昇する原料高に追付けずこのような」云々というふうになっているんだな。二人ともなれ合って、どっちもいい子になって農民にしわ寄せしているというようなやり方ですね。こういう事例もあるわけですね。こういうことについてはどう思いますか。重ね重ねではなはだ恐縮でありますが、……。
  87. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 私は、先ほど申し上げましたように、いま言われたような具体的な手紙の証拠資料というものは持っていないのですよ。実際、あなた方がそういうものを入手できて、われわれが入手できないというのは、おまえのほうがぼやっとしているじゃないかと言われれば、まあそういうふうなことにもなるかもしれないが、直接農林省がメーカーを管理監督する立場にもありません。そういう立場にはありませんが、これは非常に重大な関係があるので、実際に皆さん方がそういうことを知っておれば、ここで言う前に政務次官のところへ持ってきてくれて、こういうものがあるがけしからぬじゃないか、ぶっちめろと言えば、私も自信をもってもっとやれるのですよ。ところが、突然ここで言われましても、それはもちろんほんとうのことでしょうが、事実関係をよくつかんでいない上に、お役人さんも国会の場で答弁をするのだから、もし万一問違ったことでも言ったらたいへんだということで、どうしても歯切れが悪いというのが真相であろうと私は思います。しかし、いまあなたのおっしゃることが真実であるということなら、それはけしからぬ話だと私は思いますよ。ことに、すでに契約をして銭を取っちゃって、そうして機械も渡してしまって、その渡したものまであとから追加払いで金を取れなんというのは、普通の契約の常識ではありませんね。ですから、私は、特別な条項でもない限りは、そういうものには応じる必要はないと思います。また、農林省としても、販売店いじめとか農民いじめになるようなことはけしからぬことだから、既契約のものについては契約を守ってほしいということの強い行政指導はさせておるし、そういうものの文書があれば、これはもちろん撤回をしろということで行政指導を進めていきたいと思っております。
  88. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 久保田鉄工の社長さんというのは、農機具メーカーの日本の工業会の会長ですね。この男が何を言ったかというと、二月四日の流通懇談会の席上で、もしそういう不当なことをメーカーがしたならば即刻言ってきてくれ、直ちにそういうことをやめさせると言っている。この男はこういうりっぱなたんかを切った男なんだ。それは認めていますね。農林省の局長もおったのですからね。  そういうことで、陰ではそういうことを自分で仕組んでいるんだ。ここにメーカーの本質があるわけだ。このメーカーから、たとえば富山県の販売店筋にはどう言ってなだめているかというと——通産省、よく聞いていてくださいよ。メーカーは良心的だなと通産省からおほめをいただいていますよと言って回って歩いているのですよ。通産省はそういうことを知っていますか。だから今回の問題でも先ほどのようなピンぼけのような答弁が出るわけでありますが、以上出たようなことについて、メーカーに責任があるということがはっきりしたと思うが、通産省、どう思いますか。
  89. 野口一郎

    ○野口説明員 先ほどの山形クボタの件でございますけれども、販売店のほうにおいて、本社からの通知により値上げをせざるをやむを得ないというような趣旨のお願いの文書が出ていることは存じております。しかし、われわれのほうといたしましては、たびたび申しておりますように、既契約は尊重すべきであるということで久保田を指導いたしました。久保田もそのことは了承いたしました。既契約は守るということで、あらためて販売店にその指示を流しております。そのことにつきましては、私ども確認をしております。
  90. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなたの問題の立て方がそうなんだ。既契約は尊重すべきだということは、商業をやっている者からすればあたりまえの話です。問題は、自分方が仕組んでいてそういうことをしたつらの皮の厚さというか、こういう問題をあなた方がはっきり認める立場に立たなければ、根本的な解決はできないでしょう。  こういうようにはっきりとうそだということがわかったのですから、これは証人喚問でもしなければならないということになる。私は後ほど申し上げたいと思っておりますけれども、それであるならば、行政指導の中で具体的措置をはっきりしていただかなければならない。たとえば、私はいま考えているのですが、メーカーの責任を農林省、通産省が認めるならば、具体的な処理の方法としては、これが社会的問題に発展しているという以上、メーカー自体が社会の中にはっきりと、今回はこうだ、したがって、犠牲になったり、下のほうにしわ寄せを受けて泣いている人がおったならば、直ちにおれのほうではこうするんだからということで、そういうものをたとえば日本国じゅうの新聞にばんとした広告で載せるとか何かして、リスクはおれのほうが持つのだという具体的なはっきりした措置を出すべきだ、また、そのように行政指導をすべきだというように私は思いますね。現に、北海道あたりはそういうふうに指導しているという話も聞いておるわけであります。  具体的措置としては、メーカーが全部のリスクを持つことは当然でありますが、同時に、共犯的な立場に立った系列販売店も同じようにリスクを持たなければならないということですね。また、契約破棄で農家や販売店や特約店を泣かせて実施したものについては、さかのぼって精算して金を払うということですね。あるいは、この分のリスクも当然メーカーや共犯的な系列販売店が持つ、このことをはっきりさせることが行政指導の中でいま今日の最低の必要事ではなかろうかと思いますが、この点の御見解をお伺いしたいと思うのです。
  91. 野口一郎

    ○野口説明員 契約としてはっきりしているものは、先ほどから申しているように、その契約に従って処理をするということでございますが、問題は、契約が契約としてはっきりしていないような予約とかなんとかいう形のものもあるわけでございまして、その点につきましては、そのケースに応じてメーカーあるいは販売店等の間で話し合って、合理的な解決に達すべきものだというふうに考えております。  ただ、現実の問題といたしましては、何と申しましても、メーカーは大きな力を持っているわけでございます。販売店は地方に数百あるわけで、いわば弱い立場にございます。したがって、今回のようなことが起きましていろいろ困った場面に逢着する販売店等もあろうかと存じますので、そういう事実を十分参酌いたしまして、力の弱い販売店等が不当な打撃をこうむることがないように合理的な解決を目ざしてメーカー側を指導していきたい。何と申しましても、メーカーは力が強く大きな組織でございますので、メーカーが合理的な範囲内で負担をするように、そういう方向で解決をはかりたいと存じております。
  92. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 メーカーは大きいから負担するんじゃないんだよ。私の言いたいのは、メーカーは自分が悪いことをしたから負担せいということですよ。カが強いから負担するというような恩恵的なものじゃなくて、悪いことをした者がそれを償うのはあたりまえだという観点に立たなければいかぬと思うのだな。  そこで、あなたは、契約がはっきりしているものについては云々とか、実際予約もあるんだとかいうような言い方だが、しかし、農機具の販売店とメーカーの関係は契約関係で成り立っているのじゃないという商慣習については、あなたは一番わかっているはずなんだ。予約の中で、契約のかわりにちゃんと手形でその分を全額出されているでしょう。手形でメーカーへ払っているでしょう。これこそ、契約書というものはかわさないけれども、メーカーと販売店の間は、長い間の商慣習としてこれが成り立っているんでしょう。そういう実態が明らかになっておりながら、あなたはそこに全然触れないで、予約もあるからと言う。いかにも予約自体が不当なものであるかのように、契約書とは全く異質なものであるかのように描き出そうとしている。しかし、商慣習としてそうじゃないのですから、この不当な問題については、メーカーが全面的に負うべき責任の所在については社会的にもはっきりさせるんだという行政指導をお約束できるかどうか、この点をはっきりしていただきたいと思います。
  93. 野口一郎

    ○野口説明員 私が契約と申し上げましたのは、何も、書きものにしてお互いに判をついたというようなことではございません。まさに先生が御指摘になるような、長い間の商慣習から積み上げられて、これは契約と認められるというものにつきましても当然含んでいるわけでございます。したがって、いま先生がおっしゃったように、たとえば多額の手付金を払ったとか、あるいは前金を払ったというようなものは、これは当然契約があったものと考えて、既契約尊重という線で、その間の負担はメーカーが負うべきものというふうに考えております。  ただ、問題は、この商慣習上もはっきりしない場合、もちろん書きものでもはっきりしないような場合が、まだこれは千差万別でいろいろあろうかと思いますが、あろうと思います。そういうものにつきましては、先ほど申し上げたような精神で、具体的なケースに即して合理的な解決をはかりたい、こういうことでございます。
  94. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 千差万別であることはわかっています。しかし、問題の主流は、千差万別ということばの中で解消できないということですね。だから、それに対してはっきりした行政指導を、社会的な問題である以上社会的に明らかになるように——先ほど私は広告の問題も言いましたけれども、そういうかっこうで、だれでもが納得できるという御指導を強めるのかどうか、この点をもう一回はっきりさせていただきたいと思います。
  95. 野口一郎

    ○野口説明員 この点につきましては、私どものほうから局長名をもって通達も流しておりますし、先生がおっしゃるような方向で合理的な解決をはかるよう強力に指導いたします。
  96. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農林次官、そういうような事情でありまして、こういう事態がいま生まれているわけでありますから、農林省としての今後の徹底的な姿勢というか、不当なメーカーを決して許さないという姿勢がほしいわけです。先ほど通産省からも、不十分だとは思いますけれどもああいう決意の披瀝があったわけでありますが、あなたからもいただきたいと思います。
  97. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 法制上、直接農林省がメーカーを規制するということはできませんが、同じ政府の中ですから一おそらく、あなたの文書が一〇〇のうちの九九%真実だと私は思いますが、あと一つは現物を見ないのだからわからない。ですから、真相を確認して、その上でそれがそうだということになれば、厳重にこれを取り締まってもらうように、通産大臣に対して農林省は強く要求をするつもりです。
  98. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは、今度は価格改定の問題でお伺いするわけですが、私は、二月に価格を改定したことに対して疑惑があるという問題をこの前も御指摘申し上げたのでありますが、通産省も農林省も、二月の値上げはやむを得ないのだというふうな判断の基準をお示しいただきました。しかし、そのために、これは思い出すまでもないことですが、それなら通産省は原価を握っているのかと聞くと、原価を握っておらない、原価を握っておらないで何でやむを得ないなんということを言えるのかということで私はいろいろ論議した経緯があるわけでありますが、そのこと一つ一つについてはいま時間がありませんのでやりとりはしませんが、公取がきょうここにおいでになっていると思いますので、公正取引委員会にお伺いしたいと思うのです。  何か、私はよくわかりませんが、公取が農機具メーカーに手入れをしたというようなことがふっと先ほど耳に入りましたのですが、何で手入れをして、いつ手入れしたのか、その原因は一体何なのか、おわかりの範囲内でお知らせいただきたいと思います。
  99. 妹尾明

    ○妹尾説明員 お答えいたします。  農業用機械メーカーに対しましては、本日、価格協定の疑いで立ち入り調査を行ないました。立ち入りました先は、久保田鉄工をはじめとする主要な農業用機械メーカー二十一社及びメーカーの団体である日本農業機械工業会の事務所、合計三十五カ所でございます。  容疑の内容でございますが、農業用機械製造メーカーまたはこれらの団体が、耕うん機、バインダー、コンバイン等の農業機械の販売価格を、昭和四十八年十二月から平均一四%引き上げて、さらに、四十九年二月から平均一四%引き上げることを申し合わせ、実施している疑いがあるということでございます。  関係法条は、独禁法の三条後段または八条一項一号でございます。
  100. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 通産省、農林省、私は、この前二月に、価格カルテルの疑いがあるということを御指摘したわけです。しかも、値上げは不当だ。しかし、通産省はあのときどう言いましたか。値上げはやむを得ないものだと言った。さっきもそういうことを言いましたね。二月価格はやむを得ないと言う。農林省もやむを得ないという見解をとりましたね。何ですか。いまの公取の方のお話しによれば、きょう手入れしたというじゃありませんか。しかも、カルテルの疑いだというじゃありませんか。こういうことが、私の指摘を待つまでもなく、もう一般の常識になっておったことなんですね。きょう手入れをした以上、公正取引委員会はおそらくよほど前から御調査をなさっていたものと私は思うわけです。知らぬは亭主ばかりなりと言うけれども、知らぬは通産省、農林省だけだ。こういうことがいまはっきりしたじゃないですか。特に、通産省は全く何もわかっておらなかった。このことについて非常に遺憾に思うのでありますが、農林次官はいませっかくおるわけでありますから、こういう事態がいまの実態だということについての御見解を承りたいと思います。
  101. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 農林省がそういうことを知らなかったということはまことに勉強不足ということでございますが、公正取引委員会がその疑いの端緒をつかんで手入れをしたわけですから、いずれ明らかになることでしょう。われわれとしてはまことに遺憾なことであると思います。
  102. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 まず、この二月の値上げの根拠というものは、いまの公正取引委員会の手入れでもわかるとおり、これはほとんどない、全くないわけですね。たとえば先ほど私が三菱の例でお話ししましたとおり、四十八年の十二月二十九日に、三菱機器販売取締役の東京支社長が、この段階で二月、三月の値上げがもう決定いたしましたということを書いているんだ。これは先ほど言いましたね。しかも、問題なのは、「尚標準小売価格につきましては四十九年一月一日より適用実施くださいます様御願い致します」と書いてある。これはおかしいわけですわね。二月度、三月度の値上げに対して、農民いじめの、農民に高く売る分はさかのぼって一月一日からやっちまえということでしょう。これには二月値上げの根拠というものは全くないのです。ほんとうに農民いじめだ。このことだけしか出てこないわけですね。この点はあまりにひどいといいますか、私はもう憤慨にたえないわけであります。  さらに、同じ三菱の中でもいろいろ事例がたくさんあり過ぎて、どれを言っていいかわかりませんけれども、こういう状態が一般的にあるということですね。全農と交渉して丁々発止とやりとりしたなんと言うけれども、こういう値段がそのまま全農の値段になって認められているということは、全農自体がどういうやり方をしているのかということをあらためて私は首をかしげなければなりませんが、こういう先取り価格みたいなものを全農が一体認めているのか。結果としてこういう価格そのものが出ていますからね。たとえば三菱田植え機が、十二月二十日に、二月、三月の値段として、MP二〇四が二十三万六千円という価格となって出ているわけですね。これが今日の価格、三月の価格も二十三万六千円ですから、田植え機というのはほんとうは十二月に値上げしてないわけですから、明らかに便乗値上げなんだな。二月値上げの根拠が何もないということを表明したものと私は思います。この点について、全農の関連も含めて、農林次官はどう思いますか。
  103. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 事実関係がよくわかりませんが、あなたの話を聞く限りにおいては、まことにけしからぬ話である。ことに、末端の商店がすでに売ってしまって、代金も取ってしまって、追加払いでその人にメーカーが金をよこせと言うようなことは、これは道義的にもけしからぬし、法律的にも少し逸脱しているのじゃないかというように私は思っています。  全農の問題は、これも農林省の監督が足らないと言えばそういうようなことになるのだろうと率直に思います。これからはもう少し厳重に監督をしなければならぬと考えております。
  104. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 全農もさることながら、これほどひどい便乗値上げはないと思うのですね。二月価格なんというものは何ら根拠がないわけですね。通産省自体がそういう根拠もつかんでいないことも含めて、ですね。  特に、いかにひどい便乗値上げかということを証明するものとして、これはかりに富山県のB店としておきますが、ヤンマーの第一次特約店の具体的な例を私はお話ししたいと思うのですが、田植え機YP二を百台、すでに去年の十月十六日にヤンマーと契約して手形を切った。十一月十七日ごろ田植え機を売ることに重点を置いていたので、一台十八万五千円の値段を示して、三百枚のチラシをつくり、宣伝を行なった。ところが、十月十六日の契約時点のYP二田植え機は、仕入れ値はちょっと略しますが、小売り標準価格で十九万三千円であった。ところが、十一月二十日ごろ三万一千円の値上げ案内が電話で来た。そこで、二十三万六千円の定価小売り値に値上がりしてしまった。注文を受けた農家を説得して納得してもらった。ところが、このとき、百台のうち三十台は十二月二十七日に物は到着したけれども、これに対して十二月二十八日に三十台分の割り増し手形をよこさなければならないと言われて、そして、実際にはことしに入ってから二十三万六千円で売るわけにはいかないで、二十万円から二十一万円で売っている。こういう実例があるわけでありますね。ひどいと言うか、たいへんな状態ですね。こういうことは、もう特に値上げの根拠なんというものは何もないのだということを明らかにしていると思いますが、どうですか。便乗値上げそのものだということですね。農林省、どうですか。  では、別のことで言いましょう。ここにこういう広告がある。これは何だと思いますか。ヤンマー何々と書いてある。これは東北、仙台ですね。「燃料報国農機展示会」「さあみんなで行こう今がチャンス」となっている。これは農機具を買えというんだな。「特典」は飯坂の聚楽だ。「じゅらく一泊招待、参観者全員記念品進呈」ということだ。これは何ですか。広告ですよ。四十九年三月一日だから、せんだっての話だな。「四十九年三月一日〜七日まで一週間のロングラン」ということで、この期間に農機具を買った人は飯坂温泉聚楽に御招待のほか記念品を進呈するというんだな。これはいま禁止されているでしょう。通産省、どうですか。禁止というか、仲間の中でも、こういうことをしてはいけない、こういうことをするならば農機具を安くせよということが全商連の申し合わせでもできているということを御存じですか。
  105. 野口一郎

    ○野口説明員 私、寡聞にしていまのことは知りませんでした。
  106. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 時間の関係もありますから、もう一、二問でやめますが、こういうでたらめなことが行なわれているということですね。そこで、一つは二月価格を撤回せよということです。何ら根拠がないのですからね。二つ目には、原価を徹底的に調査して公開しなさいということです。通産省はこの前私に、問題があれば原価を調べるのだという言い方をいたしましたが、こういうふうに問題を指摘された以上、原価をはっきり調べる必要があると思うがどうかということと、農林省に対しましては、この二月価格を撤回させるように強力に指導していただかなければならない。この点についてお聞きしておきたいと思います。
  107. 二瓶博

    ○二瓶説明員 二月価格を撤回するようにということについてのお尋ねでございますが、二月に平均一四%の価格アップがあったわけでございますが、これにつきましては、例年は七月と十二月という定例の価格改定がありますが、そのほかに、石油危機を契機といたします部品あるいはタイヤ、ベルトというようなものの値上がり等もございまして、部品が上がっております関係上、これを組み立てた製品である農機具を上げざるを得ないというようなことで、メーカーと全農とで十分話し合い、折衝もいたした結果の果てにこういう形になったわけでございますし、また、その間におきまして、農林省といたしましても、全農等に対してもできるだけの指導はしたつもりでございます。そういうような結果の上に成り立ってこの二月からこの価格改定というものができまして、現実にこの価格をもちまして現在取引等も取り進められておる、こういう状況でございます。したがいまして、この二月価格をさらに旧に復するようにということにつきましては、これはきわめて至難であろうかと思います。ただ、今後、この二月価格の改定というのが大体二月、三月に適用される価格だというようなものの言い方もございますので、四月からまた上がるのじゃないかというような向きもございます。したがいまして、農林省といたしましては、今後の価格改定の問題につきましては、十分その辺は抑制をするというような線で強く臨んでまいりたい、かように考えております。
  108. 野口一郎

    ○野口説明員 二月の値上げにつきましては、前回の委員会でお答えいたしましたように、農業機械のもとになっておりますところの燃料、資材、部品、外注加工費等々が、昨年の秋以降大幅な値上がりがありましたものでございますので、そういう点を考慮に入れますと、好ましいことではございませんが、大筋としてはやむを得ないものというふうに判断した次第でございます。  しかしながら、いま農林省のほうからの御答弁にありましたように、われわれとしても、このままでほっておいていいということは毛頭考えておりません。したがいまして、当省といたしましては、近く価格の事前監視制度というものをとる予定で、現在検討を進めておるわけでございますけれども、その中に主要な農業機械は入れる。それで、今後の問題につきましては、厳重にウオッチ、監視をするということで、できますれば当分の間値上げは認めないというくらいの強い方針で臨む所存でございます。
  109. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 最後に、二月値上げの理由は、先ほども言いましたように、メーカーが仕組んだもので、客観的な根拠は一つもない、きょう公正取引委員会調査に入って、立ち入り調査している、それはカルテルの疑いだということを言っているでしょう。あなた方は、そういう客観的な事実については何一つ認めないで、やむを得なかったということばにすがりついている。石油が何だとか、ばかの一つ覚えみたいに、いつもみんなそう言うけれども、そこの中にだけすがりついて同じことを繰り返している。いまの段階でまだそういうことを言っているのか。この際断固として二月価格の撤回をさせるという強い姿勢を示すことが公正取引委員会調査に見合うものだと私は思いますし、同時に、四月に値上げをやめさせるなんということはあたりまえでしょう。こういう事実がわかっている以上、四月にはやらないのはあたりまえの話ですが、戻すということを最後に農林次官にお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。
  110. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 私の所管ではございませんが、その便乗値上げは絶対に困りますから、便乗値上げをさせないように、通産大臣に強く申し入れをしたい。  それから、値上げの問題とカルテルの問題は、それは値上げをしたからカルテルだというのでなくて、値上げの申し合わせをしたというところであろうと思います。専門的なことは、公正取引委員会がいるから、それに聞いてもらいたいと存じます。
  111. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 では、終わります。
  112. 仮谷忠男

  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産危機突破対策、日ソ漁業交渉問題、蚕糸業危機突破対策並びに都道府県有線放送問題等、当面緊急を要する問題について、農林省、郵政省、関係当局質問いたします。  本日午前十時三十分から、日本武道館において、全国農家の代表五千余名が結集し、全国農業協同組合中央会及び畜産一酪農対策中央本部主催のもとに、畜産危機突破全国農協代表者大会が行なわれ、午後一時前に終了、ただいまデモ行進が行なわれておるところでございます。また、十一日から始められた畜産振興審議会に対し、各部会の開催日及び月末の畜産価格決定告示まで強力な要請活動が続けられることになっております。私は、先ほどの大会で激励のあいさつを送ってまいりましたが、本日の大会は、かつてない畜産の非常事態をひしひしと感じた次第でございます。国民の基本食料たる畜産物の再生産ができるよう政府は重大決意をすべきときが来たと、さらにさらに痛感する次第であります。  本日の大会で、北海道から鹿児島に至る各代表から決意の発表がありましたが、政府当局をなぜ呼ばなかったかといって中央会がつるし上げられる一面もございましたし、また、政務次官も、政務のために本日の大会には欠席したということを先ほど伺いましたので、畜産振興審議会が開かれているときでありますので、その一端を皆さま方に十分反映していただくために、あえてこの席で申し上げる次第であります。  一つは、本日の大会はまさに農民一揆の大会であるという決意の表明がございました。さらに、静岡県浜岡町の松下正名君が養豚の前途を悲観して自殺されたという悲惨な報告がございました。さらに、全中はいまこそ佐倉宗五郎になれという意見もございました。また、これほど農民がたびたび大会を開き、たびたび強い要請をしているにもかかわらず、与野党とも真剣に対策を行なうと言うにもかかわらずどうして緊急対策ができないのかという疑問が投げかけられておりました。また、国会はそんなに無能であっては一体信頼できるのかという血の叫びもございました。さらには、官僚はどうして理解しないのか、国会の決議をどうして聞かないのかといった声もありました。また、政治のからくりを明らかにしろという叫びもございました。また、農民を生かすのか、殺すのか、はっきりしろという絶叫もございました。そして、かくなる上は実力行使もあえて辞さないという決意の発表がございました。私は、これらの緊急事態を考え、各農家代表がこの問題は超党派で解決しろという声をあげているのを聞き、この悲痛な血の叫びを耳にし、これはほんとうに畜産の重大な危機に直面しているということをいまさらながらさらにさらに脳裏に強く焼きつけて帰ってきた次第でございます。  先日の危機突破大会においても、政務次官から、自分は大臣と同じであるからというような一言があって、力強い決意も述べられました。また、与党においては、本朝の八時半から、大会前に、農業団体からの強い要請もあったはずであります。こういったことから見まして、時あたかも農畜産物の価格問題について真剣な審議をしなければならないことを痛感し、また、畜産審議会が開かれておるときでありますので、次官も、大臣も、みずから当局と真剣にこれを検討し、取り組んで、諮問案に本大会で決議された四つの決議を十分反映していただきたいと思うわけですが、政務次官から、今日の畜産危機と本日の大会を踏まえてどう対処していかれるか、畜産振興審議会に対してどういうふうに期待をしていかれるかという点についてまず見解を承りたい。
  114. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 きょうの畜産大会に実はお呼びがあったのでございますが、御承知のように、農林水産委員会、本会議というようなことで出席ができなくて、たいへん申しわけないと存じております。  今回の畜産危機はまことに異常なものでありまして、瀬野委員も、私も、いずれも同様に真剣にこれに対処をしなければならぬと考えておるのであります。特に、本日のこの要求につきましては、私も決議文をもらっておりますし、実は、きょうの午後六時半から、宮脇会長をはじめ十数名の代表者の方と大臣室でお会いをして、きょうの要求について承ることになっております。したがいまして、関係者の御要求については、十分これを考慮して頭に入れて畜産審議会に臨んでまいりたいと、かように考えております。   〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本日六時から、農協中央会、つまり全中の代表等といろいろ協議をするということでありますが、それはそれなりに十分意見を聞いてさらに対処してもらいたいと思いますが、さらに、私は、本日の大会でいろいろ議案が出された中での要点四、五点について申し上げて、政府を督励し、そして十分これを反映していただきたい。また、膨大な経費を使って、全国の代表があれほど忙しい中に集まって血の叫びをしており、しかも、今月末まで連続して要請活動を続けるというさなかにあって、国民のコンセンサスを得るためにも真剣に検討をしてもらいたい。このことを重ねて強く要望する次第ですが、その中での緊急対策の事項としては、二月以降の配合飼料の値上がりによりまして畜産農家の赤字が日増しにふえて、先ほどから申し上げますように、自殺者も出るような悲惨な状態にあります。聞くところによると、最近の屠場では、十数%に及ぶ妊娠した豚、すなわち母豚が屠殺されており、牛もまた同じように、妊娠した牛が屠殺されているということで、これは今後の生産に重大な影響を及ぼすんじゃないかということが心配されます。そこまで農家は切り詰められ、飼料によって苦しめられ、経営が成り立たないということで、そのような悲惨な売却をしている状況が報告され、われわれも日々そういうことを耳にいたしております。こういったことになりますと、将来の国民食料確保の上から重大な危機になってくると思っております。当局もこれは十分承知であろうと思いますが、そういった意味で、私は、当委員会でも、もう十回近く先月からこの委員会で叫んでまいりましたが、昨年の二百十億円の基金補てんにしても、これを返さねばならない。交付にはならなかった。だが、今回は、二月、三月の飼料値上げに対する手当てとして三百二十九億の金があれば手当てができる。そこで、まず、緊急対策として政府に強く迫って、三百三十九億のいわゆる配合飼料安定基金への特別補てんを交付していただきたいというのが何といっても第一の叫びでございましたが、これについては政務次官は十分わかっておられると思うが、今後どういうふうに対処されますか。本日の大会のあとでもありますので、さらに決意を承りたい。
  116. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 ただいま瀬野さんのおっしゃることですが、九月の値上げの際に一トン一万円上がったわけでありますが、そのときに二百十億円を補正予算で一般会計から基金に組み入れて、それによって大体飼料トン当たり約三千円程度の援助をしたことになるわけでありますが、これについては、御承知のとおり、その資金は返済をするということになっております。それは昭和五十八年の三月までに返済をするというのですから、十年先という話であります。そこで、同様なことで、この二月の値上げについてトン当たり一万一千円値上げをするわけだから、それを同じことをやれというわけなんでありますが、これは三月と言いましても、あと二週間ですでに四月ということになってしまうわけであります。したがって、基金に組み入れても、いますぐ金が入るというわけではないのでありまして、時間がかかる。それならば、それよりもすぐに効果のあることは、やはり、適正な価格水準にするということのほうが効果があることでございますので、その間、経営資金については、二月からつなぎ資金としてそれは出しましょうということを言ってあるわけでありますが、根本的には、これらのものは、えさの値上がり分は価格で吸収をしてもらうということが適当なことだと考えております。したがって、今回配合飼料の価格安定基金に新たにいますぐ組み入れるといっても、これはすぐに、今月中に効果が出るものでもないので、それなら四月一日から効果の出るような方法のほうが手っとり早いじゃないかというように考えております。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それはすぐに基金に入れても効果があがらぬということをおっしゃるけれども、おそらく、四月以降もまた飼料の場合は値上げが起きるであろうということは推測できるところであります。先般の委員会でも、当局は、少なくとも秋までには飼料の値下げはないということをはっきりと答弁をいたしております。そういったことから見ましても、基金に補てんしておけば将来必ずこれはいろいろと使える道も開けてくるわけでありますし、こういったことについてこういった機会に農林省は大蔵省に強い要請をして、この窮状を訴えて基金の拡充をはかるということも一つの方法であるし、さらには、四月からは価格に吸収するというような方法もとられますけれども、それにしても、飼料が値上がりすれば、さらにまた四月以降も基金補てんのことが起きてくるであろうと私は思う。そういう意味でも、こういったことは大蔵省に強く迫ってもらいたいというふうに私は申し上げたい。  農協の代表者の皆さん方の声を聞いても、何としてもこの基金補てんをやってもらいたいということを叫んで、第一項目にこれを訴えております。与党のあいさつを聞いても、たびたびのいろいろなあいさつの中にも、こういう強い対策をやるという声があるにもかかわらず何ら手を打たれないということで、不信感を抱いております。大蔵省に対してもっと強い姿勢で農林省は臨んでいただきたいということを強く申し上げるわけです。  さらに、本日の議案の中で特にまた強い要請があるのは、加工原料乳保証価格の問題です。現在は一キロ当たり四十八円五十一銭でありますけれども、この加工原料乳保証価格を生産費及び所得補償方式によって算定方法を改善して、一キロ当たり八十八円四十三銭以上にしてくれというのがきょうの大会の決議の強い要請でございました。新聞等によっても、この価格の値上げについてはあらゆる場面に強い要請が出ておりますが、この価格についてはわれわれも全面的に支持して政府に強く迫ると言って決意を述べてまいりましたが、皆さん方は、この中央会の試算については検討しておられるのか、また、この価格については妥当であるというふうに認めておられるのか、十分これを含んで反映してもらいたいと思うが、その点、当局の考えはどうですか。
  118. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 当面の緊急対策として二月、三月分の問題については、畜産振興審議会委員懇談会の要請もございますから、それを踏まえて、約六百億程度の特別低利融資の金融というものを検討いたしております。基準金利が九%のものを四%程度で特別低利の融資をしてこれを切り抜けていくということを考えておるわけであります。それで、四月からは、御承知のとおり、価格問題にこれを吸収させるということでございます。  ただいまの加工原料乳の保証価格の問題につきましては、えさの値上がり、人件費の値上がり、諸物価の値上がりというものは、当然、直近まで適正に反映をさせるようにしてまいります。  食管と同じような所得補償方式をとれという御要望がございますが、食管は直接国の管理物資でありますし、加工原料乳は、その乳を全部加工原料乳に売らなければならないというようなものでもなくて、これが市乳に回るところは、有利な市乳のほうにもどんどん回っておるというような現状でもございますので、全国の他産業の勤労者と同じような賃金を全労働時間についてとるという、いわゆる所得補償方式は加工原料については考えておりません。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 六百億の融資のことを考えておるということでありますけれども、お金というものは借りたら、据え置き期間が長くて低利であっても、いずれは必ず返さなければならぬ金なんです。それでは農家はなかなか納得しないし、また、返す金はなかなか借りようとしない人も多いのです。そういったことで、根本的には、こういった問題については基金を設けて基金に繰り入れてやるとか、あるいはまた今後の飼料対策をどうするかというようなことで、政府はもっと強い姿勢で臨んでもらわなければ困るわけで、飼料そのものも、原価計算の中身がどうも釈然としないので、中身の公表をするとか、あるいは、なぜ上げたか、上げた理由をはっきりしろというようなことで、きょうも農民代表から悲痛な叫びで意見が開陳されておりました。こういったところに、農民の不信があるわけです。そういった面でも今後明らかにしていただきたいと思うわけです。  そこで、この生乳生産の絶対量はだんだん減少して、異常事態になりつつありますが、こういった意味からも、生産者はかねがねから言っており、また、本日の大会でも、いわゆる保証価格に生乳の生産回復の特別加算をぜひ加えていただきたいということが強い一つの要請でございます。この点については当局はどういうふうに検討して、今回の畜産審議会等にも諮問してやられるのか、その点、見解を明らかにしていただきたい。
  120. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 ただいま瀬野議員からおっしゃったことは、趣旨がよくのみ込めないのだけれども……(瀬野委員「生乳の特別加算」と呼ぶ)きょう農協で配ったパンフレットの七ページの「畜産物政策価格の大巾引上等に関する決議」の中の「加工原料乳保証価格等」という中に書いておることだろうと思ってお答えをいたしたいと存じますが、この二番目の、「生乳生産の絶対量が減少している異常事態にかんがみ、保証価格に、生乳生産回復の特別加算を加えること。」という、このことですね。(瀬野委員「そう」と呼ぶ)  このことにつきましては、特別加算というようなことばをとるかどうか知りませんが、従来と同じような計算方式ということでなくて、ある程度手直しをして、それが特別加算に事実上なるような方式を考えて審議会にかけよう、こういうふうに目下思っておるわけでございます。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官は公式の場であるからそういうふうにおっしゃったかもしれぬけれども、特別加算ということは、常に団体のほうからも要請しておるわけです。政府のほうは役人の独特のことばがあって、その使い方にはニュアンスの違う表現をいろいろするわけですけれども、われわれとしては、生乳の生産が減退して今後ますます農家の意欲が減ってくるということではいかぬので、何としても農家の意欲を盛り上がらすために、そして生産に安心していそしむことができるように、こういう特別なプラスアルファの加算をせよという意味でございます。別途検討して審議会にはかるというふうにおっしゃっておりますので、ことばはどうであろうと、そういった農家が再生産に見合う希望を持てる施策、加算を十分していただきたい、こういうことです。  次は、豚肉安定価格の問題ですけれども、基準価格は、これも生産費及び所得補償方式によってやってくれというのが生産団体の強い要請でございます。現在上物で三百八十円でございますけれども、今回大会でも決議され、団体が要請しているのは上物五百六十八円、しかも、一キログラム当たり平均が五百二十四円、この上物五百六十八円に見合って上位価格も決定してくれというのが強い要請でございます。いままで要請した価格になったためしはないですけれども、農家はこれらを決定しなければなかなか再生産ができないということで、きょうは具体的な例をあげての報告等もございました。時間の関係で内容は省略しますけれども、この豚肉安定基準価格についても諮問にあたっては十分反映してもらいたいと思うが、政府の見解をこの機会にお伺いしておきたいと思います。
  122. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 ただいま御質問になりました豚肉の価格安定の問題については、去る十一日に畜産振興審議会に諮問をいたしたところでありますが、これら畜産物の再生産を確保することを旨として、生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮して定めることになっておるわけであります。でありますから、あなたがおっしゃるように、生産の事情、現在のような異常な経済事情等を十分に考慮して、そうして最近における配合飼料価格の上昇等、生産費の動向を適正に織り込んで、生産農家が再生産ができるように考えて、必ずこの御要求どおりというわけにはまいらないかもわかりませんが、できる限りこれは有利に価格決定をしてまいりたいということで、目下与党、政府の中でもいろいろと相談をしておる最中でございます。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 豚肉安定価格については、政務次官答弁のようにわれわれも十分期待をし、また、監視をしてまいりたいと思いますが、これまた十分反映していただくように重ねて強くお願いをしておきます。  もう一つは、これまた鶏卵の買い上げ価格でありますけれども、従来、この鶏卵の買い上げについては液卵公社に二万トンの買い上げのワクがありましたけれども、このワクをもっと大きくして一しかも、現在は、三重県なんかの例によりますと、キログラム当たり百五十六円ぐらいということで、もうとても成り立たないと言って、大会後私のところにもたくさんの方が来て、きょうの委員会でもぜひこれをはっきりしていただきたいという要請がございました。そこで、液卵公社の買い上げ数量の拡大のための予算措置をやっていただくと同時に、一キログラム当たり二百八十八円の値上げをぜひやっていただきたい。そして価格をきめていただきたい。こういうようなことで鶏卵については価格が示されることになっておりますけれども、農家の再生産がいまのようなことでは優等生だった養鶏業者がまず第一に壊滅するのではないかということで、これは悲惨な状態になっております。そういった意味で、この鶏卵買い上げ価格についての考えは当局はどういうように思っておられるのかということと、さらに、液卵公社に対する今後の買い上げ数量について、拡大をする、予算措置をするということについては、どういう方向で進むように全国の畜産農家におこたえになるのか、そういう点を明らかにしていただきたいと思います。
  124. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 実際問題として、ここのところ十円ぐらいずつ卵価が下がっておる。二百四、五十円というところまで下がった。これは実際たいへんなことであります。採算割れをしておる。ところが、一方、卵価安定基金の基準価格が二百二円ということでございまして、これは去年きめた値段であります。そこで、どうしてもこれは下がった原因というものを究明しなければならぬ。いろいろ原因はありましょうが、供給過多といいますか、そういうことがやはり一番大きな原因だ。そこで生産調整をやらせなければならぬ。計画的な生産、出荷、これが一番欠けておる。したがって卵価が暴騰、暴落をするということですから、計画的な生産、出荷をやらせるためには卵価安定基金を強化をすることがどうしても必要だということで、その強化をして、加入者がいまのように全農系が一六%で商社系が一〇%というようなことでは、まじめに生産調整をした人だけの犠牲の上の卵価安定ということになるので、そういうことは好ましくない。だから、八、九割の人が加入できるような、あなたがこの前おっしゃったような、魅力のある基金協会というものをつくる必要がどうしてもある。そのためにはどういうことがいいか。一つのアイデアがありまして、いま事務当局でそれを詰めてもらっておるわけであります。  もう一つは二百二円という基準価格、これはやはり実情に合いませんから、かなり大幅に引き上げるということがよいと考えております。  それから、液卵公社の買い入れの価格というものは、卵価安定基金で買うものよりも十円くらい低く買っておるということでありますが、これもいま百七十三円ということで、とてもこれは実情に合うものではございませんので、これは連動をして上げざるを得ないというように考えております。また、液卵公社の数量の増大をはかるために、四十九年度においては三億円の追加出資をして、液卵公社を強化するようにいたした次第であります。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 きょうの大会でもいろいろと問題点がたくさんある中でも、特にこういったことが緊急の中の緊急事で、今回の畜産振興審議会にもぜひこれをいろいろと審議していただいて、政府の最終的価格決定の告示をしていただくために織り込んでいただきたいということでございました。いまおそらく作業中だと思いますけれども、何回となく繰り返して申し上げておるようでありますが、全国の農業者代表の皆さんが貴重な経費を使って、全国から集まられて、しかもデモ行進までして、ああいうふうに切実に訴えられて、あすにでも各県の選出国会議員に強い要請がまた行なわれることになっております。われわれも常に言われて申しわけなく思っていることは、農業問題はこれほど超党派で、与野党をあげてやっており、しかも、大会においても、個人的に会えば何とかする、たいへんだ、必ず期待にこたえると言っていながら、政府当局はこういったことに対してどうして対策をとってくれぬのか、緊急にやってくれぬのかと言われるわけです。われわれもやっていることはわかっているけれども、そういうことを反省したり何かしているひまはない、もうきょうあしたの問題だ、生きるか死ぬかの問題だということで悲壮な叫びが日々つのっております。政務次官をはじめ当局は十分わかっておられると思うけれども、わかっていても、結果が出なければどうにもならぬことです。いまの液卵公社の問題等についても、いま検討している、そのうち結論を出すということでありますけれども、もっと早くやらなければならぬと思う。  そこで、政務次官、どうでしょうか。私たちはいつも思うのですが、大蔵省あたりと折衝なさるのであろうけれども、そんなに大蔵省はわけのわからぬことを言うのか。それともどこかに問題があるのか。大蔵省あたりを説得するために必要ならばわれわれはどんなことでもいたしますけれども、その点はどういうように大蔵省に折衝されているのか、どこにネックがあるのか。政務次官はどういうふうにその点は理解しておられますか、御発言いただきたい。
  126. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 われわれが施策を打ち出す場合には、当然、農林省だけで打ち出すわけじゃないのでありまして、大蔵省ともよく相談をして打ち出すわけです。農林省が考えておることに特別に大蔵省がクレームをつけて反対をしておるという状態では現在はございません。ただ、みなさんがおっしゃるように、わかりやすい話が、えさがうんと上がったからえさの補助金を出せというような要求があるのですよ。これは一面そうも考えられますけれども、臨時的に日本だけばっと上がって、またすぐ下がるんだというようなことならば当然考えるに値することなんだが、このえさの問題というものは日本だけじゃなく、世界じゅうの値上がりであります。そしてまたすぐに下がるというようなことでもなさそうである。しかも、世界じゅう高いということなんですから、日本だけ補助金を出して安くするということはできそうでなかなかできない。  もう一つは、えさにそういうふうなことで補助金を出すということになれば、えさは自由に販売されておるが、石油はどうなんだ、石油もともかく二倍以上に上がるということなんで、そのために電気料の話まで出てきておる、それじゃそれらの補助金を出すのか、砂糖も、いままで五万四千円で入っておったものが十三万だ十四万だというところまで、たった半年もたたないうちに上がってしまった、これは世界じゅうの話で、日本だけの話じゃないが、やはり砂糖にも政府が一般財政で穴埋めするのか、日本だけ特別に、世界の中で一番安い価格に全部の輸入品についてやるのかという、こういう議論に発展をしてしまう。そこで、どうしてもその補助金を出してすぐに引き下げろという要求はいたしかねる。世界じゅうの話なんだから、残念ながら価格でそれは調整をする以外にないというふうに考えておるわけで、真剣にこれは考えておるわけであります。
  127. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、この問題の最後の質問として当局にお伺いしますけれども、この畜産振興審議会のあり方ですが、私ももう数回ここで提案をし、政府の見解をただしてきたわけですが、きょうの大会で初めて四半期ごとに政府価格の決定をしていただきたいということが打ち出されまして、私も大会の席で、中央会も腰が弱いじゃないか、全国農民の代表なんだから出しなさいと言って、きょうはずいぶんぼくは宮脇会長にも気合いをかけておきましたけれども、普通の平年のときであれば、畜産振興審議会も従来のように三月に定例的に開くということも一応わかります。しかし、このような激動期の、しかも畜産危機、ましてやいまだ経験したことのないきびしいときに遭遇しまして、こういったときには少なくとも三カ月に一回、四半期に一回ぐらい畜産振興審議会を開いて検討する、どうしても無理であれば半年に一回は開くということはぜひしてもらいたいということを私は強く訴えてきたのです。たまたまきょう大会に参りましたところが、議案の中にそのことがうたってありまして、中央会も、また団体もいよいよこのように決定したかと思って、実は私は大会でもいろいろ発言しておきましたけれども、これは当然のことであります。これは年じゅうやれと言うのではないのです。そういった意味で、畜産振興審議会がいま開かれておりますが、こういった審議会は四半期に一回、または少なくとも半年に一回は開くべきだというようなことで、畜産振興審議会の回数等についてはどうお考えですかということを各委員の皆さん方から当局は聞かれたのか、委員からその発言は全然ないのか、また、総会を開いて今後部会が次々に開かれていくので、いまから話すつもりでおられるのか、その辺のところは話題にも出ないのか、出ているのか、どういうように当局は各委員に意見を聞いてみるつもりでおられるのか、その点を明らかにしていただきたいと私は思います。
  128. 下浦静平

    ○下浦説明員 お答え申し上げます。  畜産振興審議会は今月の十一日から開会をされましたが、その席上でも、委員の皆さま方から、懇談会でもいいからできるだけ回数を多く開いたらどうかというような御意見が出されております。私どもも、畜産振興審議会を開く前に、各部会長さん方とも段取りの打ち合わせ等をやる機会がございましたが、その場合にもそのような話が出ておる次第でございますので、今後必要に応じまして開会をいたしたいと考えております。
  129. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 審議会の各委員から、懇談会でもよいから回数を多く開けと言われて、局長のほうからも必要に応じて開くという発言がございまして、前よりもかなり前進したお答えでありますけれども、政務次官、あなたも農家のことは十分わかっておられるし、また、農業に対しては、いろいろな会合でも強い決意表明をなさっておられますし、それは必ず必要だと思われるのだが、いまの私の発言に対して真剣に取り組んでいただいて、こういう激動期には回数をもっと——年じゅう毎年やれと私は言うのではないのです。激動期にはほんとうに開くように今後強く検討していくという、また、そういうふうにしたいという決意があっていいと思うのですが、全国の農家に対して、あなたは大臣にかわってその考えを明らかにここで言ってもらいたいと思うのです。
  130. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 ことしのことは、御承知のとおり、すぐに三月中に畜産審議会を開くことになっておるものですから、ですから、何カ月も先のことじゃないので懇談会という形にしたわけです。内容は懇談会であっても、実際の討議というものは畜産審議会と同じようなことをやっていただいて、この懇談会の皆さんの御意見というものを農林省のほうが整理をして今度畜産審議会にはかろうということにしてあるわけであります。したがって、最近のように配合飼料価格の問題をはじめいろいろと環境が激変をしておるときでございますから、今度開かれておる畜産審議会については、価格の問題だけでなくて、畜産の施策全般について御意見を聞き、また、ものによっては見直しをしなければならぬというふうなことで、畜産全般の問題を踏まえて検討をお願いするというようなことで、いままでと違った異例な審議会を開いておるということは御了解をいただきたいと存じます。  なお、開催の方針は、いま審議官から言ったように、これから畜産審議会が必要があれば、何も年一回というものにこだわらないで、必要に応じてこれを開いてまいりたい、かように考えます。
  131. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本日大会がございましたときでもありますし、各党も大会でいろいろと要請にこたえて決意を述べたわけですが、たまたま本日委員会が開かれておりまして、私も畜産問題の通告をしておりました関係から質問いたしましたが、あとに控えた問題もございますので、以上で畜産問題は終わりますけれども、大会の日であり、全国から集まり、また、近郷の方はきょうは朝四時、五時に起きて来たということで、いろいろと青年たちの決意表明もございまして、悲壮な叫びがございました。そういった意味で、ちょうど大会の当日でもございましたから、私も、わかり切ったような問題をあえてなりふりかまわずに申し上げました。そして、農民の皆さん方の声をこの公開の場で政府の皆さんやら政務次官やまた大臣に伝えて、そして、さらに、ときあたかも審議会を開いておりますので、これに十分反映していただくように願いを込めて私はいま質問を申し上げた次第でございます。こまごましたことは一ぱいありますけれども、以下は、大会の決議にある四つの議案を中心に今夜六時からまた団体とも協議なさるわけですから、十分聞き入れていただいて、再生産に見合う、希望を持てる農家に今後農民が発展していくように十分対処していただくように、強く強く重ねてお願いをする次第でございます。  次に、私は、日ソ漁業交渉問題について、これまた緊急問題でございますので、当局見解をただしてまいりたいと思いますが、今年の日ソ漁業交渉は、北洋でのサケ・マス規制などを話し合う日ソ漁業委員会とカニ、ツブを取り上げる政府間交渉を含めて、三月四日からモスクワで始まっております。今回の交渉は、発展途上国の資源ナショナリズムの高揚の中で迎えるところの国際法会議の行くえから見ましても、ソ連側はこれまでになぐ強硬な姿勢を見せておるのであります。中でも、今年は、漁場の監視体制の強化をあくまでも突きつけることで日本側漁獲量の大幅削減を迫ってくるものと見られておりまして、交渉の難航は避けられないと思われます。私は、はるかモスクワの交渉の場に思いをはせて、以下、若干の点を質問し、政府の見解をただしたいと思います。  サケ・マス交渉の最大の焦点はB区域、すなわち北緯四十五度以南の中小型漁船による操業区がB区域でありますが、このB区域での取り締まりが問題となるわけであります。現在、B区域では、日本の巡視船にソ連側監視員が乗り込んできて監視を行なっております。これに対して、ソ連側は、すでにことしの一月の末から予備交渉で、ソ連の監視船のB区域乗り入れを認めるように強く主張してきておるのであります。こんなことがあってはいけないと私は思うのですが、政府はこれをどういうふうに受けとめ、どういう態度で臨まれるか、最初にこの点を明らかにしていただきたい。
  132. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 ただいま瀬野委員から御指摘のとおりなのでありますが、本年の日ソ漁業交渉はいま始められたばかりでありますので、その先行きについて判断することは時期尚早だと考えております。従来から、ソ連は、B地区の監視船乗り入れということはかねて言っておることでございますが、本年は特に最初から非常に強くそういうことを主張しておる模様であります。われわれとしてはなかなか譲れない問題でございまして、これらの問題をめぐってこれから非常にきびしい交渉がかなり続くものと覚悟いたして交渉をやり抜くという決意であります。
  133. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その決意で臨んでもらいたいが、御承知のように、昨年十月、当時の櫻内農林大臣とイシコフソ連漁業相との会談で出されたところの共同声明に、B地区で共同の漁業取り締まりを強化するという一項目があったわけです。ソ連側はこの一項目をたてにとって、この問題が解決しなければ漁獲量決定など他の議題の討議には応じないという強硬な姿勢を打ち出しているようにわれわれは受けとめておりますけれども、これに妥協するようなことが絶対にあってはならぬと思うわけです。この点はどういうふうに政府は受けとめておられるか、どういうふうに向こうから中間的な情報が流れておるか、この点もこの機会にお答えいただきたい。
  134. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 安易な妥協は絶対にできない。
  135. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もし万一これを受け入れるということになるとたいへんなことになるので、いま強い決意が述べられたので一応私も了としますが、あえて申し上げておきますと、根室沖三海里までソ連監視船が南下してくるというようなことになるわけです。そうしますと、日本海や太平洋沿岸で操業している中小漁船に停止を命じたり、臨検、拿捕をするという事態も起こり得るために、日本にとってはきわめて重大な問題をはらんでおります。漁民感情から言っても、当然これは妥協は許されない問題です。特に、政務次官の力強いことばがあったので、私も信頼をして、これはどんなことをしてでも守ってもらわなければならぬと思う。そして、現行の監視体制維持を主張して一歩も譲らぬように、モスクワとも緊密な連絡をとって臨むようにお願いをしたい。食料危機を迎え、たいへんなときを迎えておるので、こういった妥協があったのでは、また日本の食料に影響を及ぼすということを特に強く申し上げておきたいのです。  また、ことしはサケ・マスの不漁年に当たっているために、ソ連側は一つには資源保護を理由に、日本側漁獲量については、前不漁年を下回る一すなわち、四十七年は八万七千トン、昨年は九万四千トンでございましたが、これを下回る大幅な削減を言っている。二つには、大手水産会社が実施している母船式漁業が昨年は十船団でございましたが、ことしは一船団減らして九船団ということを言っておる。三つには、禁漁区の拡大を言っております。こういった強い主張を繰り返してくるものと思いますが、これに対して政府はどういうふうな決意をもってモスクワ交渉に臨んでおられるか。近く漁業三法の法案を審議するようになっておりますので、そういったことを踏まえて、時期的にもこの機会にぜひ聞いておきたいという気持ちから、これらについての考えもただしておきたいのであります。見解を述べていただきたい。
  136. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 この点もあなたがおっしゃるように、不漁年を口実として、大幅な量の削減、禁止区域の拡大というようなことを非常に強硬に言っておることも事実でございます。しかしながら、サケ・マス、カニをはじめとした北洋漁業はわが国漁民が開発をした重要な漁場で、歴史的な背景もあるわけです。これらの漁業の歴史的な実績を確保するのだというのが農林省の基本方針でありますから、この方針に即して、科学的な資源の評価に基づいて審議を尽くしていただきたい。そして、早期に円滑な合意を得るようにこれは極力努力をしておるところであります。そして、北洋漁業の長期安定をはかってまいりたいと考えております。
  137. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一方、カニ、ツブ交渉でも、ソ連側が再び西カムチャッカ沖のタラバガニ全面禁漁を強硬に主張してくることも確実と思われます。これに対してもわれわれは強硬に反対すべきだというふうに考えておりますけれども、これまた交渉の段階でありますので、これに対するわが国の主張はどういうふうに主張されておるか、私はこの機会にお考えを聞いておきたいのであります。
  138. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  カニ、ツブの交渉でソ連が西カムチャッカ海域のタラバガニの全面禁止を主張してくるであろうということは、これはまだ正式に向こうから主張してきておりません。ただ、昨年の交渉の経緯あるいはことしの予備交渉の経緯等を見ますと、そう言ってくる可能性が非常に大きいわけでございます。いずれにいたしましても、西カムチャッカ海域のタラバガニの問題は、資源評価の問題等もからんでおりますので、わがほうは客観的な資源評価の事実を十分に把握し、それを基礎にして主張していきたいというふうに考えております。
  139. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私は、カニ、ツブについては、最低昨年並みの目標を下がってはならぬ、いかなることがあっても昨年以下になってはいかぬというふうに思っておるのですけれども、政府もそういった考えを基本に置いて必ず確保すべくがんばる決意であるか、水産庁長官にさらにお伺いしたい。
  140. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 御案内のように昨年二船団があそこで操業したわけでございますが、本年も母船式操業を続けるように極力努力したいというふうに考えております。
  141. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 このようなソ連側の例年以上にきびしい態度がモスクワから伝わってきて、われわれもそれを感じております。実は、今回六月二十日から七十日間にわたってカラカスで開かれる国際海洋法会議の動き等を、現在の交渉段階のいろいろな状況等を報道その他で見ましても、ソ連はこの海洋法会議の動きを見据えた長期的な戦略があるように受けとめられてなりません。また、そうであろうと思うのです。そういったことから見まして、今回の海洋法会議では二百海里経済水域説がいろいろと話題になり、また、これが大方の支持を得るであろうというようなことも言われております。先日も水産庁長官に伺いましたら、ソ連では十二海里説というようなことであるようでありますが、わが国は、この水域説に対して、国際海洋法会議が行なわれる前でもありますので、どういうふうに見解を持っておられるか、また、見通しについてはどう見ておられるか、この点も、現時点で、公開の席で答弁できる範囲でけっこうですからお答えをいただきたい、かように思います。
  142. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ことしの六月からカラカスで海洋法会議がございます。そこでこれまで数回の準備会議が行なわれているわけでございますが、それらの会議における関係国の主張を見ますと、ただいま先生から御指摘がございましたように、多くの開発途上国が二百海里経済水域というような主張をしております。もちろん、この主張につきましては反対の意見もございます。先進国の中でもカナダ等はそれに賛成しておりますが、多くの先進国はこれに同調していないのが現状でございます。なお、今後わが国と漁業上大きな関係のできるであろう中国もこの二百海里経済水域説をとっております。  そこで、カラカスの会議がどうなるか、海洋法会議がまとまるかということでございますが、これは百何カ国が集まってやる会議でございますから、ただいまの段階でまとまるだろうとかまとまらないだろうということはなかなか予測しがたい問題でございます。わが国といたしましては、わが国は世界一の漁業国であり、多くの実績を有しているわけでございますから、わが国漁業の立場を考えて、漁業の操業に大きな支障が起こってくるというふうなことのないように対処しなければならぬということでいろいろ準備をしている段階でございます。
  143. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、政務次官、いまいろいろ論議してきましたが、日本といたしましても、これまで毎年ソ連に対しては大幅な譲歩をしいられてきたことは事実であります。また、国際海洋法会議が六月に開かれる前でもございますし、いよいよ当委員会でも水産三法の審議がいま始まっております。来週火曜日から活発な論戦を戦わせることになっておりまして、水産三法の審議にもいろいろと参考にしたいために以上質問してまいりましたが、いずれにしても、食料危機を迎えて、しかも畜産問題がたいへんな窮地に追い込められてきている。また、一方、水産においても、たん白質の供給源としての水産物の比重というものは大きくウエートが占められることも事実であります。こういったことを踏まえて、日ソ交渉が重大な転機を迎えてきておりますし、また、現在の交渉の経過をずっと見ておりまして、深刻に受けとめていかねばならない、絶対に譲歩できない面が多くあります。こういったことから、いよいよ漁期を目前にいたしまして、長丁場の交渉では困る、早期妥結をするように交渉していかなければならぬ、そのために精力的に日ソ漁業交渉を進めるべきだ、と、かように私は思っておりますが、これに対する当局の姿勢と見解について、どういうふうに当局は考えておられるか、お答えいただきたい。
  144. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 日本は海洋国家で、特に、魚は一千万トンもとっておる。そのうち過半数以上のものが遠洋漁業で、その中でもサケ・マスというようなものは大きな比重を占めておるわけであります。しかしながら、かねてからソ連は日本とソ連の取り分を同じくしろというようなことで、日本の魚種量を少なくするということで非常に強い姿勢で臨んできております。これは外交的な国際問題等もからんでおりますからなかなかむずかしい。農林省だけではほんとうはむずかしい問題なんであります。だけれども、われわれとしては、国民のたん白の確保という点から、どうしてもこれは譲れない。それはそれなりに大いにがんばってまいります。  また、世界じゅうの遠洋漁業の問題につきましても、あなたが先ほどおっしゃったように、領海を非常に広げたり、中には二百海里などというようなとてつもないようなことを持ち出す国のあることも事実なんで、世界の漁場が広がっているのではなくて、むしろ狭められているのも事実であります。したがって、われわれは、新しい漁場というものをさがすということと同時に、何といっても日本の回りであまりけちをつけられないところで漁場をつくっていかなければならぬ。そのためには海の汚染もやめさせ、あるいはいろいろな漁礁もつくったり、あるいは養殖漁業、栽培漁業をやる。それをやりやすくするために今回は水産三法を出したのであって、あなたの言っていることをそのとおり実行するために水産三法を出しておるわけですから、一日も早く御審議をして法案をあげていただきたい、それが、瀬野委員がおっしゃったことが一刻も早く地について実行されることである、私はかように思って疑わない次第でございます。
  145. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 このほか安全操業問題等いろいろ通告しておりましたけれども、あと予定した問題で若干政府の見解を聞きたいと思いますので、以下は水産三法のときに譲ることにいたしまして、水産問題は以上で一応打ち切ります。  次に、蚕糸業問題で若干お尋ねしますけれども、三月十一日に日大講堂で蚕糸業危機突破全国生産者大会が行なわれまして、全養連をはじめ七団体の主催で熱気あふれる大会でございました。二年前に輸入規制の問題で議員立法で法案をつくったとき以来の大会でございまして、特に、蚕糸関係でも従来にない危機が到来しております。時間の関係があるのではしょってお伺いしますが、要するに一番の問題は、基準糸価を大幅に引き上げてくれ、一万円以上にしてくれというのが蚕糸業関係の切なる願いであります。全養連の試算によると一万二千二百五十六円となっております。現在は八千四十四円でありますが、この基準糸価については、与党の見解を聞いても、今後のこともいろいろ考えてか、一万円は絶対下げないように、一万円は確保するということを個人的には聞くのでありますけれども、これに対する政府の見解は、どういうふうに養蚕農家にこたえるつもりで検討しておられるか。まず、それをお答えいただきたい。
  146. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 これも畜産物価格と同じように、一定の計算方法がきまっておるわけです。生産費等を基準に考えていくわけでございますが、ことしは特に後半における異常な物価高がございますから、例年と同じような方法ではやはり実勢とかけ離れるだろうと考えております。私は、この間もあなたのおっしゃる養蚕農家の大会で言ったのでありますが、政府、与党はよく相談をして、皆さんからの御意見も注文もいろいろ聞いておりますし、まずまずのところできめていきたいと思っていますから、そう思ってください。
  147. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ずいぶん新しいことを聞きまして、まずまずのところということでありますが、一万円にまずまずと言うと九千九百九十九円ということなのか。とにかく、一万円に近い数字または一万円ということでいろいろ検討するということだと理解していいのか。まずまずというのは、いまぼくが言ったような理解でよろしゅうございますか。
  148. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 これは審議会にまだはかっておりませんし、むしろ政務次官の独走みたいな話で恐縮なんでございますが、ともかく、まずまずはまずまずであります。
  149. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今後十分期待にこたえるようにお願いしたいと思うのです。  時間の関係がありますので、はしょって聞きますが、繭糸価格安定法第五条によりますと、これを適用すれば年度内変更ができるということになっておりますが、現在八千円となっておりますけれども、四十八年の四月にさかのぼって一万円を適用してくれという声が強いわけです。もちろん、繭糸年度というのは、四十九年度は六月からでありますから、まだ数カ月あるわけですが、こういったことについて政府はどういうふうに考えておられるか。簡潔にお答えいただきたい。
  150. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 簡潔に言えば、さかのぼって改定する考えはございません。改定をいたしましても、農民は売って金をもらっているのですから、それは農民とは関係のない話です。ただ、業界のほうが一万四千円とか非常に高い値段で買い込んだ糸があるので苦しいことはよくわかるので、それについては金融面で何とか援助してあげなければならぬと考えております。
  151. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今度の繭の問題は、一部の流通のやからのやる便乗値上げとかいうことによって牛耳られているということでいろいろ問題になっておりますけれども、商社の無秩序な生糸、絹織物等の輸入を許してはならないと思うわけです。そこで、海外生糸の無秩序な輸入を制限せよということが強い要請の一つであり、御存じのように、現在日本の消費は五十万俵で、わが国の生産量は三十二万俵、そして四十八年度は四十五万俵と言われておりますが、輸入が約十六万俵です。これが十七万俵とか二十万俵とかになると、養蚕農家にとってたいへん問題になってくるわけです。少なくとも十六万俵どまりぐらいで押えなければならぬと思いますが、この点についても十分政府は対処する考えであるか、お答えいただきたい。
  152. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 輸入の問題については、御承知のとおり、中国からの輸入が非常に多くて大暴落したということがあります。したがって、議員提案で皆さん方と話をして、一部からたいへんきらわれたのですが、一括輸入といいますか、窓口を一つにする輸入方式をこしらえてありますから、輸入が無秩序にふえて暴落するような場合は、当然この法律は生きておりますから、この法律を使うということでそういうような価格の暴落はさせないようにしてまいりたいと思っております。
  153. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 生糸問題でもう一点。数量調整または輸出価格等については、おもな輸出国は中国、韓国でありますが、これらの国と早急な交渉をしていろいろと調整をはかる必要があると思いますが、この点についてはどういうような対策をしておられますか。
  154. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 いまのところ、そういうようにたくさん入ってきておるわけじゃありませんから、緊急に交渉するというような状態ではないだろうと思います。
  155. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 先ほど申しましたように、生糸は、輸入商社に対する指導を厳格にしていただかねばならぬという問題と、いま申しましたように、主要輸出国の中国、韓国と数量調整あるいは輸出価格等についても十分検討していかないと、わが国養蚕農家の安定は守れないと思います。そういったことで、ともあれ近く決定される基準糸価一万円の引き上げについてはぜひ対処していただきたい。養蚕農家も総合農政の推進の上からたいへん苦境に立たされております。期待を持った養蚕がこのような価格ではどうしても生活ができないということで苦境に立たせられておりますので、十分対処していただくように、この機会に申し上げておきます。  最後に、都道府県の有線放送、電話問題で簡潔に二、三お伺いしておきます。  まず、政府当局に聞きますが、今回農用地開発公団法の審議をしておりますし、また、現在、過疎対策あるいは農山村の発展のために有線放送というものが公共性を帯びて、たいへん重要なウェートを占めておることは御承知のとおりです。これも、つい先日院内で百名に及ぶ団体からの要請がいろいろとありましたし、また、われわれの土地においても、有線放送の恩恵にあずかっておるところがずいぶんたくさんあります。全国で三百万戸が加入しておりまして、たいへん恩恵に浴しておりますが、一方、電電公社においては、公衆電気通信体系を一元的にしていくという、われわれの要望とは逆な方向で進んでおります。農村の今後の対策の上から、また、広域農業を広める上から農協合併等が進められておりますけれども、この有線放送にあずかる恩恵というものは大きいものがある。こういったことで、有線放送の今後の拡大ということについては、農林省としてはどういうような姿勢で郵政省とも折衝し、今後農家のためにこたえようとしておられるか、その姿勢についてまず農林省からお伺いしたいと思います。
  156. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 有線放送は、広域農業を推進する上において確かに非常に大切であります。天気予報はわかっておっても、急に霜が降るというときにどういうふうな対策をその地域ごとにやるかというようなことまではなかなか教えてくれない。そういうときにこの有線放送がたいへん役立っておる。あるいはいろいろな団地をつくって果実の出荷をするような場合等も、連絡が早くて非常にいい。こういうことから、農産物の生産から流通に至る広域的な体制をつくる上において非常に大事なことである。また、農家生活、文化の向上という点においても非常に大切なことでありますから、有線放送の電話施設については、今後ともその整備充実をはかっていきたい、こういう基本的な考え方であります。
  157. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間も参りましたので、はしょって急いでお伺いしますが、郵政省からもおいでいただいておるので、次の数点について簡潔にお尋ねします。  有線放送電話設備については、新設、改修に対して補助実現をぜひしてくれ。二つには、融資金利の大幅引き下げだが、引き下げワクの拡大をやってくれ。さらに、有線放送電話設備に対して、維持管理経費の助成、山村過疎辺地の大幅適用をしてくれ。すなわち、現在郵政省では一中継に限定して、県内は市町村の範囲、したがって、農協等が広域で二、三カ町村にまたがると、連絡が一町村だけになりますので、他の町村には及ばないという不合理があるということでたいへん困っておるわけです。いわゆる行政区域と業務区域が一緒になっておりますけれども、これをもっと拡大して、制限を撤廃してくれ。こういうことがわれわれの言いたいところです。  時間の関係ではしょって総まくりに申し上げましたが、これについての郵政省当局の今後の考え方、見解を、この機会に農家のために明らかにしていただきたいと思います。
  158. 石田彪

    ○石田説明員 有線放送電話につきましては、地域の情報伝達手段といたしまして、電電公社の電話にない特異な機能を持っております。それは先ほど農林省のほうから御説明のありましたように、放送がその主体になっております。こういった点に着目いたしまして、郵政省では、この設備が地域の特性に合致し、その必要性がある範囲においては、その制度を存続し育成する方向でもって行政をやってまいりました。最近は、電気通信技術の革新であるとか、あるいは先ほど先生のおっしゃいましたような農協合併、あるいは広域行政権、あるいは過疎といったような社会経済的な変化もございますので、総合的にこういったものを見直そうという機運が出てまいりまして、昨年の六月以来、郵政省に地域通信調査会を設置し、現在鋭意そういった問題につきまして検討しております。この調査会はもうしばらく存続し、なおかつ審議を継続する必要がございますが、その審議が終わりましたら、その報告内容を十分踏まえまして、地域の要求に合致する方向でもって所要の措置を講じたいと思っております。
  159. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいま郵政省当局から答弁がございました地域通信調査会というのは、この審議スケジュールを見ますと、二月の末には報告書を作成して発表する、第十回の報告書の作成を行なうというふうになっておりますけれども、これはまだ出ないのですか。
  160. 石田彪

    ○石田説明員 地域通信調査会の最初の審議項目は、主として地域通信の法制面における総合的な研究を意図しておりましたが、しかし、そういった法制面の検討は、今後の地域通信における技術的なあり方、新しい地域における通信システムのあり方というものに関する検討ないしは展望を踏まえなければ結論が容易に出せません。そのために調査会に技術関係調査、審議いたします総合情報通信システム開発委員会を設置いたしましたが、これが昨年の九月でございます。調査会の設置が六月でございますので、若干祖の間の時間的なおくれがございまして、まだ現在技術的な審査が終わっていない段階でございます。
  161. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林省構造改善局構造改善事業課長の関口尚君もこの十五名の地域通信調査会の委員になっておるようでありますが、これはいわゆる米価審議会のような諮問機関と違って、大臣の補佐機関みたいなものでありまして、法的にどうこういう制限がない委員会でありますが、これにも農業関係に対する電気通信施設及びサービスの問題がたくさん項目があげてありますけれども、先ほどからいろいろ論議しましたように、農家が今後有線放送の恩恵を受けるために、また、広域農業圏等によって農協合併等が行なわれてまいりますが、これらに対処するために、反映すべく意見を述べて報告書まとめに参加しておられると思うが、その点、農林省を代表してこの委員会参加しておられるわけですから、その所見を承っておきたいと思うのです。
  162. 関口尚

    ○関口説明員 農山漁村におきます有線放送電話が農林漁業の生産面と生活面の両面にわたりまして重要な役割りを果たしておるということを強く主張し、さらに、有線放送電話は、四十二年十月の郵政審議会の答申におきまして、「その特性が農林漁業地域の要求に合致するかぎり制度として存続し、健全な育成を図るべきものである。」ということをうたっておりますので、その点を強く指摘いたしまして、今後とも健全な育成、助成をはかるべきことを主張しております。  また、有線放送電話の団体代表が要望しているところの許可基準なり、あるいは接続通話範囲等の改善につきましては、農協合併の進展等の社会経済情勢の変化に対応します所要の改善措置を講ずる必要があるということを主張してございます。
  163. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 では、最後に政務次官にお伺いして終わりにしますが、御存じのように、また、いま郵政省からも答弁がありましたように、現在電電公社等では公衆電気通信体系の一元的な方向で進んでおります。ところが、過疎対策または農用地開発公団等の発足等が行なわれれば有線放送はますます必要になってくるし、今後の農村振興のために有線放送のウエートというものは非常に大きいわけです。ましてや、農協合併等が行なわれますと一町村の中の限定で、他の町村にまでまたがった場合は連絡がとれないということであります。最近の例では、われわれが部落を歩いているときに火事があったが、有線放送によってすぐ連絡したとみえてすぐ消火ができた。そのほか、山火事の防止ができたとか、いろいろな災害救急の利便にこれが非常に役立っておりますし、また、公共的な面がたくさんあります。ところが、実際には、この施設の運営管理に赤字が出て困っているし、また、助成も補助もないということで困っているわけです。郵政省の考え方もあるわけですけれども、しかし、農村においてはこういった対策が必要であるし、今後当分こういう問題はますますふえていくという状況にございますし、現在加入者が三百万戸もありますので、政務次官もよく御存じだと思いますけれども、こういったことについて農林省は郵政省当局とも十分緊密な連絡をとられて、いやしくも圧迫を受けないように、助成または補助あるいは維持管理に対するいろいろな対策等を今後でき得る限り政府としても考えていただいて、今後有線放送の高度利用ができますように取り計らっていただきたい。このことをお願いして、政務次官見解を承って質問を終わります。
  164. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 農林省としては、この有線放送施設の健全な発展をはかっていきたい。でありますから、今後とも、有線放送として、いま言ったような趣旨に沿って、適当なものにつきましては積極的にこれを助成をしていきたい、こういうように考えております。
  165. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 では、以上で質問を終わります。
  166. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十一分散会