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1974-02-26 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十六日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    小沢 一郎君       金子 岩三君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    佐々木義武君       本名  武君    粟山 ひで君       井上  泉君    角屋堅次郎君       島田 琢郎君    竹内  猛君      米内山義一郎君    諫山  博君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君    小沢 貞孝君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         林野庁長官   福田 省一君         林野庁林政部長 平松甲子雄君  委員外出席者         林野庁指導部長 松形 祐堯君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     笹山茂太郎君   津川 武一君     田代 文久君   瀬野栄次郎君     岡本 富夫君 同月二十三日  辞任         補欠選任   笹山茂太郎君     愛野興一郎君   田代 文久君     津川 武一君   岡本 富夫君     瀬野栄次郎君 同月二十六日  辞任         補欠選任   神田 大作君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     神田 大作君 同日  理事津川武一君同月二十二日委員辞任つき、  その補欠として津川武一君が理事に当選した。     ————————————— 二月二十二日  肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第六〇号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正す  る法律案内閣提出、第七十一回国会閣法第一  一九号)      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任の件についておはかりいたします。  理事津川武一君が去る二十二日委員辞任されましたので、理事が一名欠員となっております。その補欠選任つきましては、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 仮谷忠男

    仮谷委員長 御異議なしと認め、委員長は、理事津川武一君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 仮谷忠男

    仮谷委員長 内閣提出森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  5. 井上泉

    井上(泉)委員 この法案審議にあたって、きょう大臣出席するということを承知しておったのですけれども、大臣出席をしないわけですが、委員会審議よりも重要な会議が他にあっての欠席であるのかどうか、そのことをお伺いしたいと思いますが、どなたか、大臣欠席をする理由と、そして、委員会審議よりも優先をするということを説明していただきたいと思います。
  6. 仮谷忠男

    仮谷委員長 井上泉君に申し上げますが、二十五、二十六、二十七日の三日間は、予算委員会参考人を呼んで集中審議をするので、予算委員会大臣は出る必要がない、そこで、二十六日は参議院のほうへ大臣にぜひ出席をしてもらうようにという参議院からの要請が前にありましたものですから、衆議院のほうでは、それじゃ二十六日は参議院のほうへ大臣出席することを了解し、明二十七日は法案の採決をする日でありますから大臣出席を求めるというようなことが、理事会として、これは正式じゃありませんけれども、一応の申し合わせ等になっておりましたものですから、そういう意味で、大臣はきょうはこちらへ出席しないような日程ができておるのじゃないかという感じがいたしました。別に確認はしておらぬわけでありますけれども、経過はそういうふうになっておったのでありますので、本日大臣出席ができなかったのではないかと思います。御了承願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  7. 井上泉

    井上(泉)委員 私もあながち事大主義ではないのでありますから、大臣でなくとも、農林省の機構の中で優秀な政務次官も配置をしておることでありますし、そういう点で、政務次官、きょうここで答弁をされたことその他については、青嵐会でマスコミをにぎわすのでなしに、政策の面でマスコミに取り上げられるだけの十分なファイトをもって答弁を願いたいと思います。大臣同様の責任をもって答弁願いたいと思うのですが、その心づもりはいいでしょうか。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 そのつもりでおります。
  9. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、お尋ねするわけですけれども、森林法及び森林組合合併助成法の一部改正法案で、日本の山というものを——山の問題につきましては、森林法林業基本法に基づいて、全国森林計画あるいは「森林資源に関する基本計画並びに重要な林産物需要及び供給に関する長期見通し」というふうなものが策定をされて、この全国森林計画というものに基づいて日本林政というものが進められていくものである、と、こういうふうに承知をするわけですが、この点については間違いないでしょうか。
  10. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  11. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、昭和四十八年二月十六日の閣議決定で定めたものに基づく全国森林計画というふうなものがあるわけですが、昨年の石油危機、そうしてこの資源問題というふうなもの等を考えた場合に、今日、これからの日本森林政策というものは、昭和四十八年、去年の二月のこの決定とは異なるものでなくてはならないという客観的な条件が生まれておると私は思うわけですが、これについての政務次官見解を承りたいと思います。
  12. 福田省一

    福田(省)政府委員 ただいま御指摘林業基本法に基づきます林産物長期見通し、あるいは森林資源に関する基本計画は、いま先生がおっしゃいましたように、四十八年の二月に改定されたわけでございます。で、その前は四十一年に初めてこれを策定されたわけでありますが、四十一年に策定されました以後、いろいろと経済条件なりあるいは森林に対する公益的な要請というふうなものが出てまいりまして、まさに、先生がおっしゃるような、そういう情勢変化がございましたのを踏まえて、四十八年の二月にこれを改定し、閣議決定を見たものでございます。したがいまして、その後においては、その当時の考え方に基づいた行き方でいきますならば、いまの情勢変化には対応していけるものというふうにただいまのところでは考えておるものでございます。
  13. 井上泉

    井上(泉)委員 四十八年というと、去年の二月ですよ。去年の二月の時点と今日とで、日本経済情勢、そして日本の中におけるいろいろな資源問題これについての変化がない、特に木材関係においては、そのことについての改定をする必要がないと、そういう判断をされるところの根拠というものをお示し願いたいと私は思います。いま、予算委員会で物価問題の集中審議をしておるけれども、去年の二月と今日とは、もう比較にならないような経済界変動状態であるし、その上に立って考えた場合には、去年の二月に策定したものが今日もなお生きておるというような、それほど見通しのよいような計画ではないと私は思うのですが、それについて納得のいくような説明を承りたいと思います。
  14. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 これをつくったときには、もちろん石油危機ということは考えておらなかったわけであります。しかしながら、当時から山が荒廃をして、過剰流動性にまかせてあっちこっちむやみに伐採をされる、あるいは森林規制がないからといってやたらに買い占めをされる、開発をされる、こういうことは困るというふうなことで、全国森林計画をつくったり、あるいは地域別森林計画をつくったりして、そういうような乱開発を押えていこう、山を守っていこう、あるいは伐採する場合においても計画的に、一方において自然を保護しながらそれをやっていこう、と、こういうことでこの計画がつくられたものであって、そこへ突然石油危機というものが出てきて、私は、やはりこの法案をこしらえておいたのは先見の明があったなというように思うのであります。結局、やたらに伐採をされたり何かすることは資源が枯渇することですから、そういうことを押えていくということは、石油危機が起きても、これは一そう必要なことであると思うのであります。幾ら石油危機が起きても、たとえば公益的な機能を失ってもいい、山を切ってもいいということにはならない。こういうふうに考えるから、現在の段階でも、この法案が考えておることは一つも矛盾をしていないし、むしろ一そう必要である、こういうふうに思います。
  15. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、この法案が必要でないということを言っておるわけではないのです。世界的な木材需給関係需給事情の中において、昨年の二月の時点にこしらえた策定は、前年度の策定に比較して、外材輸入に依存した率というものが非常に高くなっておるでしょう。その高くなっておるということが、いま次官の言われるような論拠でいきますと、ますます外材輸入にたよっていくような日本木材需給体制ということにならないのですか。そういうふうなことで、この計画で定められておるような外材輸入というものが期待できるかどうか、その点について伺いたいと思います。
  16. 福田省一

    福田(省)政府委員 資源基本計画つきましても、あるいは木材需給計画つきましても、四十八年の二月に決定いたしました案は五十年間の計画長期計画でございます。したがいまして、五十年後における日本森林資源状態をどのように持っていくかという案が資源基本計画でございまして、そこから産出される国内生産量というものを十年ごとにおおよそ見通しをつけておるわけでございます。なお、また、需給計画つきましても、五十年の見通しを立てているわけでございますが、これも十年ごと国内産の割合を見て、では、それが需要に対応してどれだけ足りないか、足りない部面は外材でもってこれを補うということについての見通しを立てておるものでございます。そこで、ただいま政務次官からもお答えいたしましたように、そういう長期計画に基づいて全国森林計画を定め、それに必要ないろいろな実行できるような措置森林法の中で改正しようとしておるわけでございます。  いま御指摘のような、たとえば木材価格が暴騰したではないかというふうな四十七年の暮れから四十八年にかけての状態、あるいは昨年の石油ショック後における木材価格のある程度の暴騰というふうなものにつきましては、一つ短期政策としてこれに対応していかなければならないというふうに考えておるわけでございます。一応、長期見通しとしましては、御承知のように木材資源造成というものは、これを単木的に見るならば数十年を要する問題でございますので、やはりあの考え方に沿っていく。短期のそういった需給変動なりあるいは価格変動に対しましては、それなりのたとえば備蓄制度であるとか、そういったいろいろな対応策を講じてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  17. 井上泉

    井上(泉)委員 木材需給関係が、将来の日本の山の開発関係の中において、あれによりますと、自給率昭和三十五年ごろからだんだん低下している。三十五年が八九%の自給率であったものが、四十五年では四五%に低下しておる。こういうふうな状態の中で、また外材を輸入する速度を強めようとする傾向にあるわけですが、これは、大体何年度ごろから外材輸入率というものを低下さすようなことになっておるのか、そのことを説明してください。
  18. 福田省一

    福田(省)政府委員 大体、昭和六十三年ころまでは外材需給率が上がってまいります。と申しますのは、現在、国内民有林国有林を通じまして、造林地の大部分というものは戦後植えたものでございます。現在は、伐採したあと地造林というものは昭和三十年ころには解消しておりますので、ほとんど造林はされておりますけれども、ただ、それが非常に若い造林であるということでございます。利用のできます、つまり、四十年生以上の造林木というものはその中できわめて少ない比率をなしておるのでございます。国有林民有林とではそれぞれ違いますけれども、四十年生以上で利用のできるものは一割程度しかございません。したがいまして、さらにこれを十年ないし二十年というものは少なくとも置かなければならぬという情勢にございます。したがいまして、ただいま申し上げました六十三年ころまでは、いまのところでは外材比率というものは高まっていく、そして、それ以後は徐々に国内自給率がふえていくということでございますけれども、一〇〇%の自給率にするということは、現在の見通しでは不可能ということでございます。
  19. 井上泉

    井上(泉)委員 六十三年までは外材輸入率がふえていって、六十三年を転機としてある程度外材輸入率というものが低下していくが、一〇〇%の自給ということは困難である。これは、常識的にもその判断は成り立つわけでありますけれども、いま、森林計画に基づくいろいろな山の造林計画というようなものを、たとえば昭和六十三年——木材というものは単年作物ではないですから、これはやはり長期にわたっての計画というものが必要なわけであるので、外材需給率が低下することにまで持っていくためにはかなり労働力というものが山に投入されなくてはならないと思うわけですが、この計画に基づく労働力需給関係というようなものはどういうふうに把握しておるのか、その点の説明を承りたいと思います。
  20. 福田省一

    福田(省)政府委員 現在のところでは、山村地域におきますところの労働力というものは、先生御存じのとおり、非常に低下してまいっております。国有林の場合ですと、ある程度の常用化あるいは定期の長期化ということでそれぞれ対策を講じてまいっておるところでございますけれども、民有林の場合におきますところの山村地帯からの労働力の減少ということは、数字的にはもちろん、あるいは老齢化の現象、あるいは女性化というような形で非常に問題があるわけでございます。そこで、これらの労働力を、将来、いま申し上げましたような施策を遂行するために確保してまいる必要があるわけでございまして、そのことに対しましては、長期化についての年間雇用長期化という問題とか、あるいは、一つ地域から別の地域に流動できるような形のそういう流動化対策であるとか、その他環境の改善対策等つきまして、従来それぞれ助成措置を講じてまいっておるところでございますが、さらにこれを強化してまいりたいと思っておるところでございます。  最近の傾向としましては、労働力調査によりますと、四十七年の実績は十八万ということになりまして、前年の十七万よりは一万ふえておるわけでございますが、四十八年の統計につきましては、まだ確定はいたしておりませんけれども、ただいま私たちのとった速報によりますと、二十万をある程度出るであろうというふうに予想されておるところでございます。ということは、その内容が、個人的に見るならば相当長期化傾向になっております。また、雇用専業化という形になってまいっておりますので、従来やっておりましたところのそういう施策をさらに強化いたしまして、必要労働力の確保につとめてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  21. 井上泉

    井上(泉)委員 その山で働く林業労働者が現在非常に少なくなっておる。その少なくなっておる原因というものは、その原因をここで探索せずとも明らかなとおり、山では食えない。山で働いておっては食えない低賃金だ。そういうふうな中でこの林業労働者というものは少なくなっておる。それから、いま長官が言われてはおりますけれども、林業労働者が非常に高年齢層化しておる。そういう中で、これからふえていく要素というものは、いまのままの状態ではなかなか期待ができないじゃないか。そういう点からも、いわゆる林業労働者日本のこれだけ広大な山林を守っていくために、国有林民有林合わせて二十万というふうな状態だということは、日本の山を守っていく上についても、たいへん寒心にたえない労働力の現状ではないかと私は思うわけですが、この点について、森林組合法あるいは森林法の一部改正というように、いろいろ法律の条文ではきめますけれども、しかし、結局、山を守っていくものは労働者であるし、山を育てていくのは労働者である。そういう点からも、山林労働者に対する考え方というものをここで思い切って変えないと、山林労働者老齢化していくだけであって、若年の労働力というものが山に育つということにはならないと思うわけですが、その点について、これは今後の政策的な面になるわけなので、私は、政務次官の御見解を承っておきたいと思います。
  22. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 確かに山林労働者を確保するということは重要なことでございます。そのために、今回の改正案でも、森林組合を強化して労務班を育成する、そして雇用の安定をはかっていく、あるいは待遇改善をはかる、あるいはまたいろいろな機械化近代化を進めて、一人当たり生産高を高めて、生産性を上げて、一人当たり労働者待遇をよくする、こういうようなことなどいろいろな方策を講じて、ともかく山林労働者を確保していく、こういうふうな基本的な考え方であります。
  23. 井上泉

    井上(泉)委員 けさ、偶然、NHKの「明るい農村」という朝の六時半のニュースで白ろう病のことをやっておったのですが、あの白ろう病を見ては、「明るい農村」という表題にふさわしいイメージを想像することはおそらく不可能だと思います。いわゆる暗い農村の実態というものをあの白ろう病というもので映し出しておると思いますが、そのことについて、林野庁長官あるいは政務次官は、ごらんになっておったならば、その感想を承りたいと思います。
  24. 福田省一

    福田(省)政府委員 私も、けさ六時に起きたものですから、六時半からの放送を見ておりました。確かに、あの中で、国有林関係つきましてはいろいろと具体的な措置も講じておりますけれども、それは必ずしも十分だと私は申し上げておるわけじゃございませんけれども、特に民有林の場合におきます白ろう対策ということについては、相当大きな問題があるというふうに感じたわけでございます。国有林の場合ですと、これを認定した者が約千五百人くらいおりますが、民有林はまだ五百足らずという状態でございます。作業をしておりますところの人たちの数に比べれば、民有林関係にはまだ相当あるのじゃなかろうかというふうに推定もされます。しかし、国有林と違って、いろいろな作業を実施しているという面もございますので、必ずしも仕事の量に比例して民有林に多くあるだろうというふうには考えておりませんけれども、民有林対策つきましては、労働省等ともいろいろとよく連携をとりまして、国有林ともども白ろう病対策に努力を傾倒してまいらなければならぬというふうに感じたわけでございます。
  25. 井上泉

    井上(泉)委員 けさテレビでも、検診をした者の七〇%以上が白ろう病の患者で、白ろう病が認定される。これほどの状態に出ておるわけですが、民有林関係におきましてチエーンソーを使っておる者は国有林よりは数が多いわけですから、そうすると、かなりな者が白ろう病におかされておると想像せざるを得ないわけでありますが、そのことについては、林野庁長官もそういう想像をされることができますか。
  26. 福田省一

    福田(省)政府委員 私も、そうは思います。ただ、いま申し上げましたように、仕事の量に比例して、というふうには単純にまいらぬかもしれません。と申しますのは、国有林の場合ですと、チエーンソーを持つ者はチエーンソー専門に持つという傾向がございますし、民有林の場合は伐採以外のいろいろな仕事を組み合わせてやっておるという問題もあるので、単純にはまいらぬかもしらぬのですが、そのいずれの形がいいかということは別問題といたしましても、まだ相当民有林にはあるだろうというふうに私も想像はいたしております。
  27. 井上泉

    井上(泉)委員 チエーンソーを使用する数量というものは、民有林の場合は国有林の場合よりも圧倒的に多いですから、民有林で働いておる労働者については、そういう白ろう病におかされておる者が非常に多いわけで、これをどうやって防ぎ、どうやって治療し、また、それにかかっておる者に対する補償措置をどうやって講じていくのか、こういうことは山で働いておる者に対する当然の対策として考えられなくてはならないと思うわけですが、その点についての取り組み方について御説明願いたい。
  28. 福田省一

    福田(省)政府委員 確かに、一番大事なことは、まずかからぬように予防することが大事だと思います。その予防方法としましては、いろいろとその仕事のやり方について考えてまいっております。国有林の場合ですと、たとえば、まず、使用する機械を振動の度合いが少ないような防振装置つきにするとか、あるいはエンジンを普通のピストン式エンジンでなくてロータリーエンジンにするとか、これもある程度完成いたしております。そういった機械改良が第一でございましょう。その前にそういう機械を使わぬということが前提にあるわけでございますが、日本の場合は外国と違って、トラクターによる伐採というようなことは、地形上そう徹底できないと思いますので、防振つきくらいが機械改良であり、あるいは振動しないようなロータリーエンジンを使うということであろうと思っております。  それから、使用いたします場合に、その使用する時間を規制する問題がございます。けさテレビでも、二時間がいいのか三時間がいいのかというような議論がございましたが、国有林の場合にはこれを二時間というふうに規制いたしております。また、それを一週間に使用する時間数だとか、あるいは一月間に使用する時間数であるとか、あるいは連続使用する時間数というぐあいに、二時間ということを中心にしまして、そういう時間の規制をまずいたしております。  それから、機械を使う場合のいろいろな作業の仕組みのあり方であるとか、あるいは予備体操であるとか、そういったいろいろな方法をまず予防対策としては考えておるわけでございます。  次に、病気にかかった場合にどうするかという問題があるわけでございますが、これは労働省等とも連絡をいたしまして、まず診断基準をつくる必要があるわけでございまして、これはかねがね労働災害防止協会等に委託しまして、労働省との関連で予算を持ち、実施いたしておりますが、先般、これについて検診項目増加という形でこれができ上がったわけでございます。その検診項目増加というのは、白ろう病についての検診項目をきめたということでございますが、なお、その中でA、B、Cとまた区分をいたしまして、全然差しつかえのない者、もう一つはある程度規制をする必要がある者、第三段階としては、これを使用させてはならない者、これは公務災害として認定するわけでございます。そういう基準もつくっております。そういう形でこの予防対策あるいは治療対策ということに、いま関係省庁とも連絡をいたしまして、具体的な措置を進め、また、予算措置を進めつつあるところでございます。
  29. 井上泉

    井上(泉)委員 昭和四十八年でチェーンソーを使用する労働者に対する健康診断を実施するということがきまって、予定人員も定めてやってきておるのですが、現在それの実施状況はどうなっておるのですか。
  30. 福田省一

    福田(省)政府委員 ただいま、その点につきましては労働省が実施しているというふうに聞いておりますが、その詳細については、ただいまのところ承知いたしておりません。
  31. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは労働省の方に、その実施状況についての説明を願いたいと思います。——それから、労働省から係官が来る前に伺いたいのは、私はけさ林野庁の方に申し上げたのですが、高知県で十二人、白ろう病の方についての損害賠償の訴訟をしておるが、訴訟をしておる人の退職時の給与あるいはその労働条件、そういうようなものを委員会の質問が始まるまでに、わずか十二人だから出してくれと言ってお願いをしてあったのですけれども、まだ手元に来ていないのですが、そちらのほうに資料が届いておれば回していただきたいと思います。
  32. 福田省一

    福田(省)政府委員 正直に申し上げまして、午後の御質問というふうに承っておりましたので、まだ準備ができておりませんが、ただいまわかりましたところでは、原告高知営林局退職者十二名から一億四千八百五十万の請求額が出ております。被告の責任事由としましては、営造物の瑕疵あるいは安全義務違反、使用者責任というふうなことになっておりまして、第一回の公判が三月の予定というふうに聞いております。
  33. 井上泉

    井上(泉)委員 そのことはわかっている。ところが、そういう損害賠償の訴訟を起こしたときの、その人たちの労働条件がどういうものであったかということを示していただいて、そのことによっていまの林業労働者の実態というものがどんなものであるかということがわかるわけですから、そういう意味からも私はその資料をお願いしておいたわけです。それは午後ということではなしに、十時半からということで私は申し上げておいたのです。
  34. 福田省一

    福田(省)政府委員 一時間ほど前にそれを承って、ただいま作成中でございますから、早急に提出させます。
  35. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、その実施状況労働省でやっておるからということでありますが、けさテレビでも、長官がたまたまごらんになっておったなら理解がいったと思うのですが、それほど、検診をした者の七〇%も白ろう病におかされておるということ、これはほんとうにゆゆしき事態だと思うわけですが、これに対して、労働省の調査をまつまでもなしに、すでに調査したものがそういうことになっておるから、これについては、対策というものを昭和四十九年度においてももっと積極的に進めなければならぬと思いますが、その点についての予算を見てみますと非常に貧弱なんですが、これで山林労働者の健康管理ができるかどうか、それについての林野庁長官見解を承りたいと思うのです。
  36. 福田省一

    福田(省)政府委員 民有林関係つきましても、御指摘のように、金額については少ないのではないかといういまのおしかりではございますけれども、四十九年度に新しくいろいろと模擬訓練施設も設けることにいたしておりまして、具体的にそれぞれの県にモデル的に実施をするという考え方でございます。そこで、先ほど申し上げましたように、いろいろと基本的な動作であるとか、そういう特殊な機械の扱い方であるとかいうことをよく教えまして、それの予防対策を講じてまいるということにいたしております。なお、国有林におきましてもまたそういったようなことについては従来もやっておりますが、さらに積極的にこれを拡充してまいりたいと思っておるところでございます。
  37. 井上泉

    井上(泉)委員 いまの医療の施設としても、ことし九百万か何か予算で設けておるようですが、九百万で一体どんなものができるのですか。いまどき、治療の機関として、九百万ぐらいで何ができますか。
  38. 福田省一

    福田(省)政府委員 白ろう病の治療の対策として、あたためるということも一つ方法でございますし、また、物理療法としていろいろほかにもございますが、たとえば温泉治療というのが非常に効果があるということも医師に言われているわけでございます。そこで、そういった関係つきまして、国有林関係におきましても、特に山地帯にはそういった施設もございますので、それを活用して、現在あるところをある程度修理して使うということを考えているわけでございます。具体的には、一例を申し上げますと、そういうぐあいに温泉治療による一つ対策ということでございます。
  39. 井上泉

    井上(泉)委員 高知県で、私が昭和四十九年度の予算を新聞で見た中に、白ろう病対策費として二百五十二万円計上して、そして、各保健所を中心にして、民間の労務者を中心に白ろう病の治療予防検診をやって方法を講ずるということが書いてあったが、こういうように、地方の貧弱な自治体ですらこれだけの金額を計上してやっておるわけですが、それに比して、国のこれに対する予算というか、取り組み方というものがいかに冷たいものであるかということをうらはらに証明をされるわけです。そういうことについて、この予算というものについて、たとえばそういうように高知県の自治体でやっておることに対して、これにもっと国が予算的に追加をして、継ぎ足しをして、もっと徹底的な治療対策あるいは検診をやっていくというような考え方はとられないものかどうか。地方自治体がそういうことをやっておっても、林野庁のほうで、白ろう病に対する抜本的な予防、治療、補償という、この三つの体系づけた対策を総合的に立てるべきだと私は思うわけですが、どうですか。
  40. 福田省一

    福田(省)政府委員 その点に関しましては、まさにいま御指摘のとおりでございまして、私も同感でございます。予防、それから治療対策といったようなこと、あるいはまた補償につきましても、白ろう病は林業におきますところの唯一の——唯一というのは、一つしかないのでありますが、そういう職業病でもございますので、特に重点的に実施してまいりたいと思っておりますが、また高知県、それから熊本関係等、全国的に見ましても非常に多いのでございます。そういった点も配慮しまして、先生指摘の線に沿って最善を尽くしてまいりたいと思っております。
  41. 井上泉

    井上(泉)委員 その最善を尽くすということばでなしに、どういうふうに最善を尽くしますか。その具体的な構想というものが考えられないですか。現実に、この白ろう病対策というものをやろうとしておる。地方自治体もやろうとしておるし、林野庁もやろうとしておる。それを一本化して系統立ったものにできませんか。いわゆる検診にしても、これはたとえば高知県で、保健所の医者でやるというたところで、二千四百人の検診ということについてはなかなか手間どると私は思う。で、そういうようなものに対しては、林野庁検診計画、調査の計画とミックスさせてやるとか、そういうふうなことは考えられないものか。おまえのところはおまえのところでやれ、おれのところはおれのところでやるということではなしに、そういうふうに各自治体でも要求しておるもの、やろうとしておるものに対して、何か指導、助成をするようなものを林野庁の機関において考えられることはないかどうか。
  42. 福田省一

    福田(省)政府委員 民有林関係つきましては都道府県、国有林関係つきましてはそれぞれの営林局、署ということではございますけれども、これをやはり御指摘のように一本にしまして、特にその点については、林野庁が、都道府県に対しては、いろいろな指導員なりその他を通じての技術普及あるいは施設についての助成というふうなことを考えてまいりたいと思いますが、その点につきましては、林野庁と都道府県、林野庁と局署、あるいはまた局署と都道府県というように連絡を密にしまして、具体的に促進してまいりたいと思っております。
  43. 井上泉

    井上(泉)委員 昭和四十七年度で、白ろう病で、林業労働災害防止協会で特別の検診をやっておるわけですが、この検診の結果はどうなっておるか、承知をしておれば御報告を願いたいと思います。
  44. 福田省一

    福田(省)政府委員 その点につきます検診は、労働省のほうで実施いたしておりますので、そちらのほうからよく事情を聞いてまた御説明申し上げたいと思います。
  45. 井上泉

    井上(泉)委員 これは別段おこるわけではないわけですけれども、労働省で、林業労災協会で調査をしてもらうというのは、そういう必要が生じたのは、こういうことをやろうと発意したのは林野庁じゃないですか。これは労働省が、山で働いておる労働者についてはどうも振動病の調査をせなければいかぬということで始めたのですか、それとも、林野庁要請をして始めたものですか、どうですか。
  46. 福田省一

    福田(省)政府委員 林業労働に関する問題につきましては、基本的には、国有林民有林を通じて林野庁がいろいろ配慮していかなければならぬと思っております。従来、国有林についての日ろうの対策については、相当具体的に私たちもそれを掌握し、その対策に鋭意つとめてまいったところでございますが、民有林関係つきましても、やはり、都道府県に対するいろいろな助成措置の中で、その実態の把握につとめてまいったところでございます。これは、先ほど申し上げましたように、国有林の白ろう認定に比べますと、民有林の認定の数というのは三分の一くらいしかないわけでございまして、その辺について、私も、先ほど申し上げたようにいささか疑問を感じた点もありましたので、私のほうと労働省と十分その点を連絡いたしまして、特に、民有林白ろう対策については、労働省にその検討、対策等をお願いした経緯もございます。
  47. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、四十八年度の調査のことを聞いたけれども、それもわからない。だから、せめて四十七年度なら調査をしたことがあるだろう、労働省がやっておるにしても、この林業労働災害防止協会で調査をしてやっておるのだから、それはもうあなたのところへ報告が出ておるものだろう、こう思うわけですけれども、そういうことも頼んだら頼んだなりで、林野庁のほうには別段これについての報告はしないのですか。それから、また、林野庁は、そのほうは労働省でやっておるのだから関知せぬと、こういうことになっておるのですか。
  48. 福田省一

    福田(省)政府委員 現在私たちのほうで調査したところは、聞き取りでございますけれども、検診を実施しました人員は五百三十五人でありまして、その罹災者の数は二百六十九でございますので、この検診の全体に対する罹病者のパーセントというのは五〇・三%、こういう数字を私たち労働省のほうから聞いておるわけでございます。  それから、先ほどちょっと申し上げましたように、検診項目の追加であるとか、あるいはまた、その治療対策についての区分であるとかいうふうなこともやはり労働省のほうから私たちが聞きまして、先ほどお答え申し上げたような内容となっておるものでございます。
  49. 井上泉

    井上(泉)委員 それは、あなたもまじめな方だから、ふまじめに意識的にずるけておるとは私は思わぬですけれども、こうやって林業労働災害防止協会という林業労働者の災害防止の団体をつくって、その団体にいろいろ調査を頼んでやっておる。やっておったものを聞いて、それに対して対策を立てていく、こういうことが行政としての筋ではないかと私は思うわけですけれども、どうもそのことが抜かっておるような気がしてならないわけです。五百三十五人やった中で二百六十九人も出た。約六〇%出たわけですから、かなりな数の振動障害というものを生じておると思います。そういう点について、林災の協会と林野庁との間には何にもつながりはないのですか。
  50. 福田省一

    福田(省)政府委員 林災協との間につながりはないかという御指摘でございますが、この問題につきましては、林災協からもよくいろいろと情報を聞き、また、こちらからも労働省と相談しながらいろいろお願いしているわけでございまして、いま申し上げましたような結果が出たからどういう対策を考えておるのだということにつきましては、一つは、四十九年度予算の中で、チェーンソーを扱う民有林におきますところのそういう作業をされる人たちでありますが、そういう人たちに対しての訓練施設というものも設けまして、そこで、機械の取り扱い方とか、その作業の動作でございますとか、その他のいろいろな訓練をする、そしてそれで予防していくということの対策費も、その結果私たちのほうで予算に計上しておりますが、これは四十九年度実施したいと考えておる一例でございます。
  51. 井上泉

    井上(泉)委員 そういうことなら、この調査の内容と実施状況がどういうものであったかということの説明はできはせぬですか。ただ、振動障害のある者が二百六十九人とかいうことだけではなしに、それなら、それに対しては、これはこういう状態で何時間使ったからとか、これはこういう労働条件だったからこういう状態が起こったとか、せっかくこれは金もかけて調査したのですから、その調査報告書というようなものは——北海道、岩手、栃木、静岡、奈良、島根、宮崎、この五百三十五人の人員についての調査報告書というようなものはいただいておるでしょう。
  52. 福田省一

    福田(省)政府委員 そういうことについての御連絡は受けておりますが、ちょっと繰り返して申し上げますけれども、一番そういう対策が……(井上(泉)委員連絡というのは調査報告書ですか」と呼ぶ)そういうものを受けております。  そこで、先ほど申し上げましたけれども、大事な点は、一つは、白ろうについて、お医者さんがそれを見ます場合に、こういう点とこういう点とこういう点を調査しなさいということの検診項目をまず決定したわけでございます。それをもとにしまして全部検診しました場合に、この人は全然何も異常はないのだという人がいる。また、この人に対してはある程度の規制をしなければならぬ、つまり、先ほど申し上げました時間規制をするとか、その他いろいろな注意が必要な者がいた場合、それをB種とします。いまの何にもしなくていい者をA種とし、それからB種とする。それからC種につきましては、入院させなければならぬとか、何か仕事をさせてはいかぬとかいう人。そういう管理区分というものを一応労働省のほうできめていただきまして、それに基づいてそれぞれ具体的に措置をとるということについての決定を、少なくとも年度内くらいには出していただくような手はずになっておるのでございます。
  53. 井上泉

    井上(泉)委員 何かりこうに答弁されるから理解がしにくいわけですけれども、こういう調査を依頼して先生方が一生懸命やられたのですから、その調査報告書というもの、検診をして、その実施状況の報告というようなものは林野庁に報告する義務のないものであるのか、そのことを承りたいと思います。
  54. 福田省一

    福田(省)政府委員 林野庁で報告は受けております。それの概略はいま申し上げたとおりでございますが、この点につきましては労働省が実施をするようになっておるところでございます。
  55. 井上泉

    井上(泉)委員 労働省がやると言うけれども、林野庁がこういう報告を受けて、林野庁としては、これに対してはこういうことをやるのだという対策を立てて、それで労働省なりあるいは厚生省なりと相談をするということになるのでしょう。やはり、林野庁だけですか。
  56. 福田省一

    福田(省)政府委員 いま申し上げましたような内容の管理区分が確定いたしますというと、それに基づいて、医師の健康診断に従って林野庁のほうで予防措置を講ずるわけでございます。注意すべき者はこういう点を注意しろ、あなたはもう仕事をやってはいかぬから休んで治療しなさいというふうなことも、したがって林野庁としてもできるわけでございますが、そういう点が近く決定される見通しでございます。
  57. 井上泉

    井上(泉)委員 四十七年でやったのです。いまは四十八年度が終わりです。それだから、その四十七年でやったことが、四十八年度の終わりになった今日でもまだ十分な掌握がされていないようなことでは非常に遺憾に思うわけです。これは、われわれとしても、そのことについてもっと早く林野庁のほうに督促をしなければいかぬと思いましたが、この検診実施状況の報告書のようなものを提出をしていただくことはできるでしょうか。
  58. 福田省一

    福田(省)政府委員 その点につきましては、労働省のほうにございますので、私のほうからも連絡いたしたいと思います。  いずれにしましても、検診の項目につきましては、昨年の十月に決定いたしまして、くどいようでございますが、それによって管理区分をいたしまして、近くそういう基準労働省との間にきまりますれば、それに基づいて健康診断を定期的に実施して、それによって、仕事をして差しつかえない者、それから注意すべき者、治療措置を講ずべき者というふうに十分管理をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  59. 井上泉

    井上(泉)委員 それは、私の言うのは四十七年度の調査実施状況ですから、去年の十月は関係ないじゃないかと、こんなふうに思うわけですけれども、それと同時に、労働省から提出をして、もうすでにいただいておるのですから、別段労働省にまで言わぬでも、あなたのところに来ておる報告書の写しをコピーに焼いて配ってもらったら、これは簡単ではないかと思うのですけれども、えらいやっかいなものですね。
  60. 福田省一

    福田(省)政府委員 手元にございますから、簡単でございますから、コピーに焼いてさっそく差し上げます。これは労働省の諮問に対して林災協のほうから答えた内容のものでございますし、私のほうでも手持ちがございますので、さっそくコピーに焼いて差し上げます。
  61. 井上泉

    井上(泉)委員 山林の経営をしていく上については、やはり、山林で働いておる人たちをまず第一に安定さすということ、これの、心配のないような労働条件をつくっていくということ、これが一番のかなめでないと、どんなりっぱな法律を何ぼつくったところで、それでは山で働く魅力というものは生まれてこないし、そしてまた山へ定着をしないわけです。  そこで、林野庁長官国有林のことだけに頭が集中をしておるわけですが、日本の山全体の管理の役所というものは、国有林民有林を問わず、林野庁にあるのでしょう。どうですか。
  62. 福田省一

    福田(省)政府委員 林野庁におきましては、現在、国有林は面積にいたしますと約三分の一、民有林が三分の二でございますが、蓄積の内容は大体同じぐらいだという状況でございまして、それの管理につきましては、国有林におきましては、林野庁の中に業務部と職員部というものがございまして、国有林に対する管理、経営はそちらでやっております。また、民有林つきましては指導部、また林政部というものもございまして、民有林に対する指導行政をやっております。各都道府県にはそれぞれ林務部なり林務課というものがございまして、民有林行政をやっておりますし、国有林については、それぞれの地域に十四、各営林局がございますし、また、三百五十一の営林署もございます。そういうことで、国有林民有林ともに、林野庁は、管理、経営なり、あるいは指導行政をそれぞれ行なっておるのでございまして、国有林だけを管理、経営しておるというものではございません。  ただ、先生指摘のように、従来、民有林に対する指導行政が薄かったのではないかという御指摘は、そういうことについては十分反省してまいらなければならぬと考えておるところでございます。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  63. 井上泉

    井上(泉)委員 その民有林について、民有林の管理、指導というものについて、法律的に何か障害になるようなものがあるのですか。私は承知をしていないので、そういうものがありとするなら、御指摘を願いたいと思います。
  64. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 林業に関する法律といたしましては、林業側からのものといたしましては、大きなものとしましては、林業基本法森林法ということになるわけでございますが、林業経営に関する点から申しますと、森林法の中では、森林施業に関しての規程というふうな形でございますし、労働条件に関するものといたしましては、労働三法に基づく労働者保護と申しますか、そういうような形のもので対処しておるというのが現状でございます。
  65. 井上泉

    井上(泉)委員 日本の山の管理というか、これについては全部森林法で規定をされておる。それなら、いわゆる森林法に基づく監督は農林大臣がやることになっておる。そうすると、民有林関係のことについて林野庁がいろいろ指導助言をすることについての法律的な障害というものは全然ないと私は承知をするわけですが、そのことについては間違いであるのかどうか、御指摘を願いたいと思います。
  66. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 民有林の経営について役所が指導をしていくということについて、法律上の制約と申しますか、そういうものは森林法ではないということで、先生指摘のとおりでございます。  民有林に働いておられる労働者の処遇改善という点でお話しを申し上げますと、御承知のように、日本森林の所有形態というものは非常に零細でございますし、その零細な所有形態が、さらに、経営としてはそれがまた小団地に分かれておるというようなことでございますから、経営として見ますと非常に小さな規模で行なわれておる。そういうことから、森林の経営者が労働者を処遇するにいたしましても、経済的な基盤がないというふうな状態にある。そういうことを解決することが必要であろうというようなことがございますので、あるいは林業構造改善事業を予算的に行なってみたり、あるいは法的な措置といたしまして、森林組合による労務班というものによりまして、労働力の組織化といいますか、効率的な森林経営と申しますか、通年的に就業ができるような形に持っていき、そして、より長期的に、より安定的に就業ができるというような形で組織化することによりまして労働者の処遇を改善していくというような方途を講じておるわけでございまして、今回の森林法改正の中にもそういう点を幾つか織り込んでおるわけでございます。
  67. 井上泉

    井上(泉)委員 大体、森林というもの、山というものは、山主があって労働者があるが、そこの労働者の存在というものを忘れた形で森林というものを見ておるのじゃないかと私は思うのです。そこで、忘れていないとするならば、現在の民有林労働者の労働条件というものと国有林野で働いておる労働者の労働条件とを対比していただいたらよく証明ができると思うわけですが、民有林労働者の労働条件国有林労働者の労働条件と比較をして遜色がないと考えられておるのか、あるいは非常に不十分だとお考えになっておるのか、その点についての御説明を願いたいと思います。
  68. 福田省一

    福田(省)政府委員 国有林で働いております作業員と民有林で働いておりますところの作業員と比較いたしまして、やはり相当差がございます。しかし、国有林で働いておる者がそれで十分だということを私は申し上げておるのではございませんで、ほかの作業に比較しましていろいろとまだ劣っておる点があるというふうに私は思っております。しかし、国有林民有林だけを比較してみましても、賃金水準は相当低いのでございますし、それからまた、その他の条件としましては、休日、休暇の制度であるとかいうふうなことについても国有林ほどに認められておりませんし、そのほか、社会保障制度につきましても、国有林作業員に比べると相当劣っておるというところがございます。その点に対する強化対策というものを急ぐことが緊急の問題であるというふうに考えております。
  69. 井上泉

    井上(泉)委員 長官指摘しているとおりで、私も、国有林野で働いておる労働者のほうが待遇条件がいいとかというわけで言っているのではないわけです。これにしてもいろいろ改善をせなければならないものがたくさんあるわけですけれども、その不十分な国有林野の労働者に対しても、まだ及びもつかないような状態の中にあるわけです。その中の一例としては、たとえば白ろう病の認定を受けて、それで、国有林労働者のほうには八〇%か一〇〇%の補償とかいうような形のことがとられておるけれども、民有林労働者はほとんどが労務災害、いわゆる災害補償法の範囲内の六〇%だけでやっておるわけですが、民有林で働いておる労働者の処遇改善について、林野庁はどんな具体的な取り組み方をしたのか。具体的に処遇改善に取り組んだ事例があれば、御報告を願いたいと思うのです。
  70. 福田省一

    福田(省)政府委員 国有林の場合ですと、白ろう病になりました場合の補償というのは徐々に改善してまいりまして、いまでは全額補償いたしておりますが、民有林の場合におきましては、そういう制度はまだないわけでございます。そこで、そういった点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、民有林におきます白ろう病対策つきましては労働省が所管官庁ではございますけれども、こちらのほうからいろいろとその実態について御説明もし、あるいは国有林との比較等においてさらに改善をしてもらうように要請もしながら、労働省とともにその改善施策をとってまいりたいと思っておるところでございます。四十九年度の予算措置といたしましては、新しくそういう予防のための訓練施設というふうなものを設けたというところでございますが、今後もそういった点につきましては十分に改善強化してまいりたいというふうに考えております。
  71. 井上泉

    井上(泉)委員 国有林労働者のほうは、林野庁という一つの機構の中で把握をしておるわけですけれども、民有林労働者については、そういうふうな掌握の機関というか、掌握の方法というものが非常に不明確である。民有林で働いておる労働者を何とか掌握して、その処遇改善をはかるところの具体的な措置がとられるような体制というものが、法的にもあるいは機構の面でもできないものかどうか。そのことは政策的なものだと思いますから、政務次官の御見解を承りたいと思います。
  72. 福田省一

    福田(省)政府委員 現在のところ、機構の面におきましては、民有林労働対策は、森林組合の中でそういう班を設けて実施いたしております。と申しますのは、民有林労働力の基幹的なものは森林組合の中におきますところの労務班でございまして、森林所有者でありながら、かつまた山の仕事に従事するというふうなことも内容としておるものでございます。そこを中心としまして、現在のところいろいろな施策を講じてまいっておるところでございますし、また、そうしてまいりたいと思います。
  73. 井上泉

    井上(泉)委員 いや、いま地方自治体の中では、林務課とか森林労務課とか、いろいろなもので民有林関係をやっておるわけですけれども、林野庁の中で、森林組合あるいは民有林で働いておる労働者の問題等を行政的に掌握して指導するような機構というものがとられないものかどうか。あるいは、この森林法改正あるいは森林組合法改正等の機会に、そういう民有林労働者の身分を法的に守るような法の改正の手だてはできないものかどうか。これは、私はしろうとでありますから、専門家の林野庁長官に、そういう措置がとれるなら、そのことについての取り組みをしてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  74. 福田省一

    福田(省)政府委員 ただいま、しばしば申し上げましたように、特に民有林労働力対策ということに重点を置いてまいらなければなりません。そうしたいと思っておるわけでございますが、その行政につきましては労働省労働省と申し上げておりましたけれども、労働省だけにお願いして林野庁は何もしないというわけじゃなくて、林野庁におきましても、いま申し上げた森林組合課の中でそれを中心にやっておりますけれども、なおまた、最近こういった林業労働力つきましてのいろいろな改善策を検討するために、林政審議会の中にその部門を一つ設けて御検討願っております。そういったことの結論を得ながら、御指摘の線に沿って、具体的にそういった施策を樹立いたしたいと思っております。
  75. 井上泉

    井上(泉)委員 政務次官、お目ざめですか。お目ざめなら、ひとつ質問いたしますが、いま、日本の山を守っていくためには何といっても労働者が大切であるということ、これはだれも常識として考えておることだと思うのですが、国有林野の労働者は、いわゆる林野庁というりっぱな役所があり、そうしてまた全林野という組合があって、いろいろ労働条件の話し合いをしていく。ところが、民間の民有林関係労働者のそういう労働組合的な組織の率というものは非常に低いし、経営者もばらばらである。それを森林組合一つの集約をしておるという面もあるわけですけれども、それにしては不十分だ。だから、その労働条件改善向上をはかるためにも、そういう民有林労働者の実態を把握し、指導するような一つの行政組織というものが林野庁の中でも不十分なようだから、それについての整備と、そうしてまた法的にも、森林法なりあるいは森林組合法の中にそういう労働者の身分関係を明らかに位置づけるような措置がとれないものかどうかお教えを願いたいということで、いま、林野庁長官答弁を求めたわけです。そうすると、林野庁長官は、林政審議会の答申の経過等も待ってというふうなお答えでありましたが、やはり、これは政治的にかなり強力にバックアップしないと、労働者の問題は労働省だからとか、あるいは医療関係の問題は厚生省だからというようなことでは、山を守っていく役所としての林野庁としては非常に弱いと私は思うのです。そういう点について政務次官としてはどう考えて、いまの林野庁長官の御意見をどうバックアップをされるか、見解を承っておきたいと思うのです。
  76. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 御指摘のように、労務者の確保ということが非常に重要な問題で、今後の林政の振興上も欠くことのできないことでありますから、いろいろな面で労働者の問題は考えていかなければならぬ。したがって、特に、その安全問題あるいは補償の問題、あるいは待遇の問題等いろいろございますが、全体的な問題として関係各省とも十分連絡をして、林政審議会にもはかって、万全を期していくようにしたい。役所の仕事はどうしてもおそいという御指摘がありますから、これはわれわれのほうからも督促をして、なるべく早く結論が出るように努力をしてまいりたいと存じます。  なお、私は寝てはおりませんでしたから、ひとつよろしくお願いいたします。
  77. 井上泉

    井上(泉)委員 日本山林面積の中で、民有林が圧倒的に多い。その圧倒的に多い民有林のいわゆる監督、指導、助成をしていく体制としては、林野庁のいまの機構の中では非常に不十分だと私は思うのですが、これは政務次官は十分だとお考えになっておるのか、その見解を承っておきたいと思います。
  78. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 民有林に対する指導というものが足らぬじゃないかということですが、これは、われわれも、森林組合などから、林野庁国有林野庁じゃないか、民有林のめんどう見が足らぬというようなおしかりをちょいちょい受けておったのでありますが、私は現在で十分だとは思っておりません。今後、国有林の問題については、木の伐採という点についてかなりの制約を国有地が受けるというふうに私は考えておりますが、したがって、里山の再造林の問題をはじめ、どうしても民有林において生産を高めてもらわなければならぬ仕事が多いのでありますから、今後、この森林法改正を通して森林組合の内容を充実をしながら、一そうの民有林の指導あるいは助成を強化してまいりたいと、かように私は考えます。
  79. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、国有林労働者の問題に返るわけですけれども、いまの国有林労働者の身分関係、その待遇関係、これは予算委員会でも稲葉先生からずいぶん論議をされ、指摘をされた問題ですが、常用作業員、定期作業員、そして臨時作業員というふうな形で労働者が区分されておるわけですけれども、たとえば定期作業員にいたしましても、この定期作業員がなかったならば山の維持、管理、経営というものはとても成り立たないわけで、しかも、この定期作業員の人たちは平均して十年も勤続をしておる。十年も続いておる。そういうふうなものが早く解消する解消すると言いながらも遅々として進まないわけです。こういう常用作業員あるいは定員内の職員に繰り入れるとかいうようなことは、山で働いておる労働者の身分安定の上で不可欠なことだと思うわけですけれども、具体的にいつごろまでにこういうふうな差別的な労働条件というものをなくするつもりであるのか、長官の御説明を承りたいと思います。
  80. 福田省一

    福田(省)政府委員 定員内の職員と定員に入っていない定員外の職員と、御指摘のように二種に分かれておりまして、同じ国家公務員ということでありながら、その処遇には差があるわけでございます。特に、定員外の職員の中で常用の作業員が約一万七千人くらいあるわけでございますけれども、この処遇につきましては、従来その改善に努力してまいったところでございますけれども、その内容を見ますと、まだ不十分な点があるわけでございます。  また、御指摘の定期作業員につきましては、基本的には、できるだけこれを常用化する方向でいろいろとその対策を講じてまいったところでございます。たとえて申し上げますならば、いろいろな職種を組み合わせてそれを実施する。伐採事業と造林事業と、それぞれ季節的な差がございますので、それを組み合わせをしてできるだけ常用化をはかる、あるいはできるだけ地域間の流動化に応じてもらうという方法をとってその常用化につとめるということにいたしまして、昭和四十一年以降約一万一千名の常用化をしたところでございますけれども、全面的な常用化ということについては、林業のいわゆる季節性ということの制約もございまして、まだ困難な状態になっておるところでございまして、常用作業員も約一万七千名おるわけでございます。  これらの問題を踏まえまして、昭和三十六年に決定されました閣議決定の常勤化防止の関係に基づくいろいろな各政府関係省庁間の統一見解昭和四十六年に出されたのでございますけれども、これらの問題につきまして、その結論を得るために、各省庁間とさらにこの検討を進め、積極的に林野庁のほうからその具体的な案を提出しまして、早期にこの問題の解決をはかりたいというふうに考えておるところでございます。
  81. 井上泉

    井上(泉)委員 白ろう病関係のことについて、十二人のものはまだできないわけですね。私の質問の持ち時間がなくなるので、なくならぬうちに出してもらったら非常にありがたいですが、それはいただいたときに質問することにします。  同じく労働災害として、腰痛症というものが大きく山林労働者の中で問題になっておるわけですが、この腰痛症の問題について、いま林野庁としてはどうお考えになっておられるのか、御説明願っておきたいと思います。
  82. 福田省一

    福田(省)政府委員 白ろう病に次ぎまして、最近腰痛の問題が出ております。特に、この腰痛の現象というのは、定員内職員の事務職を行なっておる者にもございますし、あるいはまた、現場においてそれぞれ作業に従事しておる人にもあるわけでございます。腰痛の訴え者の比較的多いのは、主としてトラクターの運転とか、あるいは集材機の運転とか、そういう機械作業に従事している人の中に訴え者が多いという傾向が見えておるのでございます。  これにつきましては、公務災害という原因がはっきりしたことによって起きた腰痛につきましては、それなりの措置を法的にとれるわけでございますけれども、原因のはっきりしない点で腰痛が起きたという現象につきましては、診断については非常にむずかしい問題があるわけでございまして、今後は、腰痛の問題につきましては、なお一そう検討を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  83. 井上泉

    井上(泉)委員 腰痛症を訴える者は、重機械を取り扱っておる者にほとんど大半が出ておるので、原因がはっきりしておるわけですから、その原因がはっきりしていれば、その結果に対して国が対策を立てるのは当然であるわけですが、その原因がまだはっきりしていない面があるということであるのか、まだ十分その原因を究明をしていないというのであるのか、どっちですか。
  84. 福田省一

    福田(省)政府委員 腰痛につきましては、もう少し詳しく申し上げますと、外傷、それから既往症の疾患、それから退行変性、要するにこれは老齢化によるものですが、それから内科的な疾患、それから失天性の偏奇などの原因と、それから職場環境あるいは作業条件、日常生活、それから身体的条件など、そういった相関関係によって発生されると言われておるのでございますけれども、災害性の腰痛につきましては、外傷等によって率生することが多いので、発生原因の究明、それから公務との因果関係を明らかにすることは比較的容易でございますけれども、非災害性の腰痛につきましては、外傷等の明らかな判断資料がないために公務上の認定ということはきわめて困難な問題なのでございます。  国有林野事業に従事しております職員について行なった腰痛に関するアンケート調査によりますと、腰痛の訴え者は事務系統、技術系統を問わず発生しておりまして、いま申し上げた自動車運転手、それからトラクター運転手等に多いという調査結果があるのでございますが、特定の業務に従事するという理由でもって腰痛を職業病とすることは非常にむずかしい問題でございます。個々のケースについて、各種の判断資料を総合的に検討して公務上災害の認定を行なっているところでございます。
  85. 井上泉

    井上(泉)委員 腰痛症にいたしましても、また振動障害にいたしましても、やはりこれは一つ仕事の中から出てきたところのいわゆる公務災害ですから、この公務災害に対して十分な手当てを加えるのは当然であるし、まして、退職したあとにおいてもこの振動病障害によって苦しんでおる方に対してしかるべき措置を講ずるのは、林野庁としては当然のことではないかと私は思うわけですけれども、退職をした障害者に対しては、その当時の手当とかあるいはその当時の零細な年金とかいうようなことだけで、生活保障的なものは何もなされていないということは問題だと思うわけです。その退職をした者に対する補償的なものは訴訟までして争わなければ林野庁としては考えられないものかどうか、その点の見解を承りたいと思います。
  86. 福田省一

    福田(省)政府委員 退職した場合におきましては、そのときの公務災害の補償の百分の六十という制限が現在のところあるわけでございます。一〇〇%ではございませんので、遺憾な点ではございますが、そういった状態でございます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  87. 井上泉

    井上(泉)委員 たとえば、これは損害賠償の請求事件において訴訟をいたしておる原告で、松本勇さんという方が、五十七歳で、伐木の造材所で三十一年三カ月勤務して、それで三百十五万七千円退職金をもらっておる。そして年金額は二十七万三千五百三十五円、この二十七万三千五百三十五円で、白ろう病の治療もしながら、そうして苦しみながら生活をせよといっても、これは常識的に無理だ。人間ならこういう判断がつくと思うのですが、どうですか。これでも当然生活できるとお考えになるのですか。
  88. 福田省一

    福田(省)政府委員 年金につきましては、いま御指摘の松本さんの場合は二十七万三千五百三十五円というわけでございます。ほかに休んでいる間の療養補償につきましては、国が直接支給しておるものでございます。
  89. 井上泉

    井上(泉)委員 それは、長官、休んでおるときには補償するのはあたりまえで、何も恩典じゃないですよ。休んでいるときに労務災害で休業補償を受けておるのを、何か特別の恩典と考えておるのでしょうか。私どもはあなたの考えがわからぬが……。
  90. 福田省一

    福田(省)政府委員 国家公務員災害補償法に基づく一つの支給の基準でございまして、御指摘のように、全体的に見ますならば、いろいろと他と比較して問題点があるかもしれません。それらにつきましては、林野庁限りで決定できない問題でもございます。先ほど来申し上げましたように、林業労働者に対するこういったような問題につきましては、林政審議会の部会においても十分検討していただきたいと考えておるところでございます。
  91. 井上泉

    井上(泉)委員 たとえば松本さんにしても、三十一年三カ月働いて、白ろう病にかかって、もう働けなくなって、それで治療を受けておる間は補償は受けておった。ところが、退職したら、その退職金と年金だけしかもらえないわけだ。そういう国の仕事をやった結果受けた災害に対して、この二十七万三千五百三十五円の年金でこれから一生苦しんで生活せよというのは、あなたは酷とは思わぬかどうか。それは非常に気の毒だけれども、法律できまっておるからしようがないとお考えになるのかどうか、お考えを聞かせていただきたい。
  92. 福田省一

    福田(省)政府委員 二十七万円で、それで十分なんだ、法律できまっているからしかたがないんだというふうには私は申し上げたくないのでございますが、最近のいろいろな社会情勢変化によりまして、給与水準の問題であるとか、こういった社会保障制度に基づく給与の体系というものにつきましては、林業労働力の減少傾向の中においてきわめて重要な問題でもございますので、いま申し上げましたように、賃金水準の問題であるとか社会保障制度の問題等につきましては、基本的にこの制度改正については御検討を願っているところでございますが、林野庁としましても、そういった意見を尊重しながら積極的に改善施策を確立してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  93. 井上泉

    井上(泉)委員 それは現在働いておる人、その人に対して考えておることだ。いま退職した方、つまり、白ろう病でどうにもならなくなって退職した方が、今日やむにやまれず訴訟、賠償の訴えを提起をしておる。なぜ提起をしたかといえば、二十七万三千円でこれからの老後の生活をしなければならぬのですから、これでは耐えられぬから訴えを起こしておるわけだ。だから、そういう状態が生まれておるということ、これはまことに気の毒なことだな。振動障害を起こさぬように林野庁がもっと予防措置を講じてやっておったら、この人たちにそんな障害を与えずに済んだのに、そしてまた、五十七でかりに円満退職しても、その人はどこででも働けるのに、振動障害で手がしびれて、まっ白くなって、働けなくなっておる。まことにこれは気の毒なものだ。こういう考え方というものは生まれないですか。林野庁のやり方が悪かったがためにこういう障害が起こったのだ。いまは予防措置を講じておるから発生率が非常に低下しておるわけですから、これから先のことと現在受けておる者と区分して問題を考えていただかなくてはならぬわけですからね。
  94. 福田省一

    福田(省)政府委員 ただいまは一般的な今後の対策についての私の考えを申し上げたのでございますけれども、御指摘の問題につきましては、当然皆さんがこれは御不満で訴えを起こされたということは私も十分わかるところでございます。これにつきましては、裁判の結果を待ちまして、それを尊重して措置していかなければならぬというふうに思っております。  御指摘の点は、確かに、予防関係についての措置が十分であって、その結果こういった白ろう病という現象が出なければよかったわけでございますが、すでにこういった現象が出たということに対して、過去におけるそういう指導行政の手抜かりがあったことは私も十分反省しなければならぬと思っておるところでございます。
  95. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、率直に、端的に申し上げまして、こういう国有林野で働いておる労働者に対する国の措置が不十分であったがためにこういう振動障害を起こして、退職して、たとえばこの中の下元一作さんなんかは十三年八カ月働いて、退職金は二十八万四千円、一時金は二十万二千円もらって、そうしてあとは手がしびれて動けない状態に置かれておるわけですから、だから、この訴訟というものはやむにやまれない訴訟だと思います。その裁判の結果に対して従わなければならぬという見解を披瀝されたわけですが、これは私は当然だと思います。そういう気の毒なという気持ちの中に対処されておるなら、やはり、裁判の結果が出たらそれに従うということは当然だと思います。そこで、これは問い詰めるようですけれども、裁判の結果が出て損害賠償しなければいかぬということになったならば、これは先の話ですけれども、控訴とかいろいろなことはしないということの約束ができるかどうか、承っておきたいと思います。
  96. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 判決が出ていない状態において、判決が出た際に控訴をしないという約束をしろという話でございますけれども、私どもといたしましては、長官から私どもの気持ちは申し上げたところでございますけれども、判決の結果がいかがであれ、判決の理由によっては、私どもとしてはやはり控訴せざるを得ないという面もございますので、控訴をしないというお約束はいたしかねるものでございますけれども、ただ、長官からお話しを申し上げましたように、私どもとしては、誠意をもって解決に当たりたいという気持ちを持っておることだけ申し上げておきます。
  97. 井上泉

    井上(泉)委員 林政部長がこれの担当だとするなら、あなたに聞いておかぬといかぬです。あなたの件なんですからね。  あなたは、こういう状態で、つまり、白ろう病にかかってもう働けなくなって、そうして、たとえば下元さんのように、二十八万四千円の退職金と一時金二十万二千円、合計して約五十万円ぐらいの金で、五十歳の年で仕事から一切去らなければならぬ、労働から一切去らなければならぬ、そうしてあとは非常に暗い生活を送らなければいかぬというようなことについては、林野庁がもっと振動障害を起こさないような配慮をしておったら問題はなかったなという反省はないですか。
  98. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 私の所掌であるからという先生のお話しでございますけれども、たまたま法律問題になったものでございますから私が答弁に立ったわけでございますけれども、国有林労働者の問題については職員部で所掌いたしておりますけれども、いま先生のおっしゃるような形でのお話し、そういう点につきましては、私どもも十分御同情申し上げておりますし、また、私どもがはたして十分な配慮をしておったかどうかということについては大いに反省をする必要があろうというふうに考えておるわけでございます。ただ、先ほど長官からお答えを申し上げておりますように、白ろう病にかかった方でやめられた方、そういう方々に対する年金なり何なりというものの適用ということにつきましては、林野庁だけで処理ができる話ではございませんで、関係各省との協議ということも要りますので、私どもとしては、いま先生の御指摘のようなことを頭に置きまして、できるだけ前向きで検討をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  99. 井上泉

    井上(泉)委員 時間的な制約がありますので、あまりくどくどと申し上げることは遠慮しますけれども、たとえばこの下元さんのようなことについては——これは政務次官ですな。政務次官、あなたは政治家ですからね。この下元さんが十三年働いて二十八万四千円しか退職金がもらえぬ、二十万しか一時金がもらえぬという状態で、これはもう一生仕事からほうり出される、いわゆる労働もできないという状態について、どうですか、非常に気の毒だという感じを抱くですか。
  100. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 私は、あなたの御指摘になった個別案件についてはいろいろな事情がありましょうから、詳しくはわかりません。わかりませんから、個別的なことについてはお答えできませんが、一般論として私が思うのは、白ろう病と認定されて、年間二十七万円程度の年金で暮らせということは非常にお気の毒である。これは事林野庁だけの問題ではなくして、業務障害等で退職をされた方等に対する年金制度の問題あるいは補償制度の問題等は、福祉国家を目ざす日本としてもっともっと充実をさしていかなければならぬ、そういうように努力してまいりたい、かように考えます。  それから、裁判の問題でありますが、これはあなたのおっしゃるように、私も二、三そういう事例を知っておりまして、役所は官費で裁判をするのだからいつまででも裁判をやれるかもしれませんが、原告のほう、民間のほうは私費でやることでありますから、十年も十五年もやられたら、そのうちに死んでしまうというようなことになってしまうのであって、そういうことはメンツにとらわれる必要はない、やはり謙虚に反省をしてみて、裁判の決定が正しいと思えば、控訴する権利があるから控訴をするというようなことは絶対にやめるべきである、内容によってそれは控訴すべきものであって、ただいたずらに控訴すればいいのだ、それで責任者が退職するまで裁判をやっていればいいんだというふうなことはあってはならないことだ、かように私は思います。
  101. 井上泉

    井上(泉)委員 私の質問は終わりますけれども、これはまた次の機会にこの措置についていろいろな観点から御見解を承っておきたいと思いますけれども、要するに、山というものは、労働者があってこそ山が守られておるという理解というか、認識というもの、これがどうも林野庁は不足をしておるように私は思うのです。何ぼ日本が山国であっても、その木は自然にほうっておいてどうこうなるものじゃないですから、山で働いておる者が安心して働けるような労働条件を、これは国有林あるいは民有林を問わずやらにゃならぬわけですが、それについて非常に消極的だ。労務災害にいたしましても、これは労働省がやることだからということではなしに——補償関係労働省がやることであるけれども、たとえば国有林の中で働いている白ろう病患者、これが白ろう病で認定を受けた者が一〇〇%の補償を受けるならば、それと同じように民有林で働いておる労働者にも一〇〇%の補償を受けるように労働省のほうでも考えて指導してください。そして、これを統括しておる森林組合、大体山持ちというものはかなり経済的に強い者ばかりですが、そういう方に対しても、やはり、振動障害で受けた者には六割という補償とかいうことでなしに、これを行政指導するとかいうような措置というものを打ち出していくべきだと私は思うのです。そういう点について林野庁長官の御見解を承って、私の森林法に関する一部の質問を終わりたいと思います。  最後に、委員長にお願いをしたいんですけれども、この白ろう病、それから腰痛症、これが山で働いておる労働者のいまの最大な課題だと私は思います。森林法及び森林組合法の一部改正のこの法律を採決するにあたって、私は、この問題についての委員会としての調査なりあるいは方法というものの具体的な意思統一なり、そういうふうなものを取り計らっていただきたいということと、その前段の事項としては、そういうけさの北海道の振動病の患者の訴えとか、あるいはまた高知県にある振動障害者の悩みとか、そういうふうなものについての現地調査を、この法案を上げる前にして、理解を深め、そしてそれに対する対策を打ち立てていきたい、かように私は思うわけです。いろいろと日程の関係もあろうと思いますけれども、まだそれだけの調査をする時間的なものは十分あろうと思いますので、理事会等ではかって、その措置をお考えになっていただきたいということを要望して私の質問を終わりたいと思います。  それぞれ御見解を承っておきたい。
  102. 福田省一

    福田(省)政府委員 先生の御指摘のように、林業の問題は、いろいろ国有林民有林を含めまして、ただいまその改善計画に鋭意努力しているところでございますけれども、中でも、やはり基本的な問題は、その山で働く人たちの環境をよくしてあげるということが一番大事な問題であろうと思っております。従来、その点に関しましては、それぞれ関係官庁等ともよく連絡をしてまいったところでございますけれども、やはり、林野庁みずからがその問題についての具体的な積極案を出していかなければならぬというふうに、先生の御指摘のように考えております。今後、誠意をもって一そうその点について検討してまいりたいと考えております。
  103. 仮谷忠男

    仮谷委員長 委員長に対する御要望にお答えをいたします。  御理解を願いたいのは、森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案は前国会からの継続審査になっておるのでありまして、しかも、閉会中には、この法案に基づいて実質的な委員会調査も行なわれておるわけであります。そして、本日と明日でいよいよ質疑終了をして採決にしようという理事会決定にもなっておりますのでいこの法律案と結びつけてただいまの御趣旨の問題を取り扱うことは、はたしてどうかと思います。これは検討する余地がありますが、ただ、労働災害問題について十分に現地調査をする必要があるというなれば、理事会と相談の上そういう日程をつくることを相談することにやぶさかでございませんから、相談の上で決定することにいたします。  この際、午後一時再開することとして、暫時休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ————◇—————    午後一時十五分開議
  104. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林孝矩君。
  105. 林孝矩

    ○林(孝)委員 森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案に関して質問いたします。  七十一国会にすでに質問をしておりまして、それに関連しての質問、また新しい問題としての質問、大体三点にしぼって、重複を避けながら質問したいと思います。  まず最初に、この森林法改正に関して、当委員会でもって国政調査を行いました。そのときにいろいろ現地の事情というものを伺ってまいりました。特に、森林法改正とともに、現地で非常に強く要望しておった中の一つにマツクイムシの問題があったわけであります。そこで、その問題をまず最初にお伺いしたいと思いますが、時間が限られておりますので、質問も簡単にします。答弁も明確に、簡単にお願いしたいと思うのですが、マツクイムシによる全国の被害件数、被害量、被害額がどうなっているか、国有林民有林に分類して説明願いたいと思います。
  106. 福田省一

    福田(省)政府委員 国有林つきましてこれを見ますというと、四十五年は八万九千立方、四十六年が十万五千立方、四十七年が十二万三千立方、四十八年が十二万五千立方というふうにふえてまいっております。民有林について見ますというと、同じように四十五年が三十万一千立方、四十六年が四十万立方、四十七年が六十一万五千立方、四十八年が六十七万立方メートルというふうにふえております。これを合わせまして全国の被害総量を申し上げますと、四十五年が三十九万立方、四十六年が五十万五千立方、四十七年が七十三万八千立方、四十八年が七十九万五千立方というふうになっておりまして、これを被害額にいたしますというと、四十五年が十八億円、四十六年が二十一億円、四十七年が三十一億円、四十八年は見込みでございますが、四十億円というぐあいにふえてまいっております。全国的なトータルではございますけれども、この中で特に被害の大きい県を申し上げますというと、兵庫県、和歌山県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県でございまして、特に瀬戸内海周辺、九州全県というふうな状態になっております。
  107. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま御説明がありましたように、被害が非常に増加しておる。この原因についてもうすでに研究の結果が発表されました。そのときに、当委員会におきましても、同僚議員から質問がございました。林野庁長官は、原因がはっきりしたことであるから、必ず減るという確信を持って減らすことができる、絶滅することができるという、そういう御説明をなさっておるわけでありますが、現実は非常にふえておる。そういう現実を見ましたときに、いまの状態ではたして駆除することができるのであるかどうかということを、いま御説明のありましたところの、特に西日本、瀬戸内海周辺の府県におきまして非常に強く憂慮されておるわけでありますが、この点に関する長官の解答をお伺いしたいと思います。
  108. 福田省一

    福田(省)政府委員 いま申し上げましたように、非常にふえてまいっております。その発生した原因の特に特徴的なことを申し上げますと、四十六年度以降、その年にありました台風の影響もありまして、増加したということが一つございます。それから、四十八年度は西日本、特に瀬戸内海沿岸、九州地方におきまして、非常に高温で雨が少なかったという異常気象の関係もございまして、被害が非常にふえてきたということが気象的な原因によるものであるというふうに考えられるのでございます。  いま先生の御指摘がございましたこの原因と申しましたのは、このマツクイムシのからだに付着しておりますところのマツノマダラカミキリというマツクイムシの一種がございますが、それに付着しておる材線虫、非常に小さい線虫でございまして、肉眼ではなかなか見えにくい状態のものでございますが、これが何万というぐらいに、マツノマダラカミキリというマツクイムシについておって、これが葉っぱを食ったときに、そこから、この材線虫が松の中に入っていって、それで水分の上昇ができないという状態になるわけでございます。そこから枯れる原因が出てくる。これが一つ原因であるというふうにお話ししたところでございます。こういう原因がわかったので、これに対しましては、一つの薬剤防除の方法でもってこれを絶滅する可能性がまず発見されたわけでございまして、四十八年度から特にこの点について予防に関する予算を重点的に考え、四十九年度もさらにそれを増加するというふうにして対策を講じてまいっておりますので、今後はこれに対する絶滅を期して、強力な措置をとってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  109. 林孝矩

    ○林(孝)委員 予算の面が出まして、先ほどの林野庁長官答弁の中に、絶滅を期して全力を傾けるということでありますが、傾けられるという意欲は評価できても、具体的にその効果あるいは行動というものをはたして起こせるかどうかということに関して非常に心配であります。というのは、そのマツクイムシの防除について、すでに被害を受けてしまったところに対する手当てをどうするかというような点に関して、これは民有林国有林も含めて広域的にやらなければならないことだと思うのでありますが、その際に起こってくる問題は、一つは、所有者の同意を得るためにどうすればいいかということ。たとえば現行の防除法によりますと、森林資源の保護ということを目的としておるわけでありますが、その駆除は森林所有者に義務づけられておる。したがって、民有林の場合、特に、片一方ではその駆除というものは社会的要請になっておるわけでありますけれども、片一方では費用負担の問題が非常に重大な課題となってあらわれておるわけであります。こうした両面を調整しながら、このマツクイムシを駆除するために対策を講じ、かつ実行していくかということになるわけでありますけれども、現在の段階では、それは非常に困難な、また、なかなかむずかしい点があるわけであります。たとえば、なるほど先ほど御説明がありましたように、被害は非常にふえておるわけであります。岡山県の例をとりますと、被害の増加というものは、四十六年は三万八千六百六十二立米に達し、四十八年は十六万立米という、そういう形に被害が発生しておるということであります。ところが、それに対する補助というものを見ますと、国が六分の二、県が六分の一、その他六分の三で、これはその他の森林所有者ということになるわけでありますが、現実問題として、被害地というものは自然環境の保全という面からきわめて重要な地位を占めておるわけであります。したがって、社会的な経済的な理由から考えても、そういう立地条件は非常に保全をしなければならないし、保護をしなければならない。そういうところから保護をしたいという気持ちがあるわけですけれども、県だとか市、ましてやその他の森林所有者の段階になりますと、その経費負担というものはきわめて因難な状況になっておる。そこで、国できめられておりますところの、国が六分の二、県が六分の一、個人が六分の三というこの負担の率も、現実の問題として現場でどうなっておるかといいますと、県の六分の一を何とかかさ上げをしなければ、個人負担というものでは、とてもではないけれども、それはまかなえない。そこで、県の六分の一はそのままにして、市町村を六分の二という負担率に置きかえて駆除を進めておるというのが現状なのであります。こういうことが実際行なわれておるわけでありまして、財政的な負担というものが下部構造に進むに従って非常に大きくなっておる。いま、たとえばこのマツクイムシ駆除に対して、四十九年度予算でどのような措置を講ぜようとされておるのかという点が一点と、そして第二点目は、そうした個人の所有によるところの森林と、それから国有林、こういう民有林国有林とに分けて、両面にわたって広域的な駆除をしなければならないという性質上、財政負担というものに対する根本的な姿勢というものを確立しておかなければ、今後の協力というものもなかなか得られないのではないかということ。そのような心配をするわけでありますが、この点について、この際明快な答弁をお願いしたいと思うわけであります。
  110. 福田省一

    福田(省)政府委員 第一点の予算の点について申し上げますと、四十九年度におきましては、防除方法に、一つ予防の事業がございます。これは薬剤散布でございますが、四十九年度は三億九千六百万ということで一応御審議を願っておるわけでございますが、四十八年度に対比しますというと二八四%で、約三倍近くにふえておるわけでございます。一方、立木の駆除、つまり、すでに被害にかかって枯れておるものを駆除する経費でございますが、これが五億一千一百万で、これは四十八年度予算に比べますと、一四四%になっておりまして、これを合計いたしますと、四十九年度が九億七百万円、四十八年度に対比しまして、一八三%と、約倍に近い予算を計上しておるものでございます。  なお、いま御指摘のございましたそれぞれの負担の割合でございますけれども、一応私たちがこれに対する対策としまして考えておりますことの内容を申し上げますというと、第一は、被害木の伐倒の駆除の場合でございますが、この場合には、被害木の径級やあるいは地理的な条件などによりまして利用ができないという場合、または保安林などで重要な制限林の場合、こういう場合には国庫負担を三分の二、県負担を三分の一としておるのでございます。  次に、利用ができる場合、この場合は、これは販売できるわけでございますので、その御本人にも負担を願っておるということでございまして、国庫負担が六分の二、県負担が六分の一、森林所有者が六分の三ということにいたしております。  なお、薬剤のいわゆる予防という場合には、国の負担が四分の二、それから県負担が四分の一、森林所有者の負担が四分の一といたしておりますが、国営で防除をするという場合におきましては、全額国庫負担ということにしているわけでございます。  御指摘のように、個人的な負担をすることをたてまえといたしておりますが、しかし、森林の取り扱いについては、公益的な機能が重視されている現在、全部個人の負担にするということは、これはなかなか問題があるのじゃないかという御指摘もございます。と同時に、実勢単価と非常に離れているという問題もありまして、実際は個人負担というものに対しては市町村が肩がわりするとか、あるいは県がその負担をかさ上げして持っているという場合があることを聞いておるのでございます。特に、先生の御指摘の岡山県の場合におきましてもそういう問題があるということを承知いたしております。この点につきましては、できるだけその負担が国の助成によって緩和できるように、関係省庁ともその対策についていま協議いたしておるところでございます。
  111. 林孝矩

    ○林(孝)委員 政務次官が来られましたからお伺いしますが、いま議論しておったのは、マツクイムシの被害というものが非常に増大しておるので、それに対する解決のしかたとして、原因がはっきりしたということで、それを絶滅するためにどうしたらいいかという点が一つです。それから、その予防事業だとか、あるいはすでに被害にあっているところに対する薬剤散布等によるところの駆除のしかたがあるわけでありますが、国有林民有林というふうになっておって、非常に広域的な駆除のしかたをしなければならないわけであります。民有林の場合に、個人負担ということが現行法で義務づけられておるわけでありますけれども、そのような考え方で進むとしますと、非常にお金がないもので駆除できないというような問題が現場で起こっておる。いま、林野庁長官からそれに対する考え方の概要が述べられて、前向きにそれを解決するために検討しているということでありますが、政務次官としての、こういう問題に対するとらえ方ですね。いわゆる公害だとか、あるいは災害だとか、人為的なものではなしに、自然現象によるところのそういう被害を考えた場合、これを個人で負担するということは非常に酷である。個人が空中散布をやるなんということはなかなかたいへんなことでもありますし、この際発想を転換して、抜本的に考え直す必要があるのではないか、したがって、現行法の改正というものも、法律でもってそれをきちっと明確にする必要があるのではないか、これが私の提案でありますが、政務次官考え方をお伺いしたいと思います。
  112. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 まことにけっこうな御提案だと私は思います。御承知のとおり、四十八年度は、西日本、特に瀬戸内海沿岸、九州地方におきまして、高温寡雨等の異常気象というようなことから、特に被害がひどかった。そこで、農林省としても、ともかく緑を守り、森林を守っていくというためには、この大敵であるマツクイムシはもう徹底的に防除しなければならぬと考えております。特に、その防除の対策としては、最近の研究の成果から考えまして、春に薬剤予防を実施することのほうが非常に効果があるというふうなことがわかってきたものですから、マツクイムシがつく前に、ある特定の地域を定めて、そこで空中散布等の防除作業を行なう。そのための予算といたしまして、四十九年度は、大体面積で二・五倍になりますか、四十八年度が五千六百八十ヘクタール、四十九年度は一万二千ヘクタール、予算では三億九千六百万、大体去年の三倍程度の予算を計上いたしております。そして、個人で飛行機を頼んでやることはむずかしいんではないかということも、全く私どもその通りだと思います。そこで、森林組合等がそういうふうな大面積については事業主体に当然なってくる。それに対して個人でその費用をみんな持てということも、これもたいへんなことだと私は思います。そこで、ともかく国庫の助成というものをさらに強化する。いまのところケース、ケースによってみんな補助率が違いますが、これは非常に公共的な伝染病の予防みたいなものでありますから、補助率を高めていくことがいいだろうと私は思う。ただ、マツクイムシから財産を守ってやるということは、結局、裏返しに言えば個人の財産を守るということにもなりますものですから、全部国でもって——ともかく、個人でも何百ヘクタールも持っている人もあるし、五十ヘクタール持っている人もあるし、あるいは一ヘクタールの人もあるし、いろいろございますが、一律に、たくさん持っている人まで全部国で財産をみんな見てやるというのもいかがなものであるか。そこらの点もございますから、方向としては、そういうふうに伝染病に対して国の補助率を高めるということは大賛成です。したがって、それは前向きで、あなたの御趣旨に沿うように今後も努力をしてまいりたいと思っております。
  113. 林孝矩

    ○林(孝)委員 もうちょっと発想の転換をしてもらいたいとことがあるのですがね。それはどういうところかと申しますと、現行の防除法では、いわゆる自然環境ですが、その山林を持っておる人が、所有者が、資源保護という立場から、自分で保護しなければならないという義務づけの思想になっておるわけです。ところが、個人を守ると言いますけれども、もし守れなかった場合に、やがてそれは大きく広域的なマツクイムシによる被害という形になって発展することは、これはもう間違いないわけであります。当委員会でもって調査に行ったときも、これが去年の状態です、ことしはこういうふうになりましたということを言っていましたが、その対比をした写真を見ますと、一年間で膨大な面積に被害地が及んでおる。そうして薬剤散布した場合は、これは今度は逆にこういう形になりましたというカラー写真で示されたわけでありますけれども、そういうのが現実の問題でありまして、個人を守るということは事実でありますけれども、それは個人を守ると同時に、それを守るということが結局その地域全体を守るということにつながっていくのでありまして、そういう点を考えますと、やはり最終的には社会を守ることであって、全体を守ることに通ずると、こういう考え方の発想を私は申し上げた次第ですが、いかがでしょうか。
  114. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 大乗的な見地から、そういうふうな考えは一つのりっぱな考えであると私は思います。しかし、個人の財産ということで、国が全部守ってやって、その人が負担を全然しないというのも——自分の財産を守り、自分の所得がふえるのですから、そういうことを森林だけでやれば、それじゃたんぼや畑の病虫害防除も全部国がやり、全部国で金を出すかというと、そういうところまではたんぼでもいっておりませんので、山でそれが非常に広がるという場合には、大臣名で義務的に災害防除をやらせるということもいま法律でできるのです。問題は、要するに、薬剤散布をやってその病源体を断ち切れば——病源体といいますか、マツクイムシを根絶させれば目的を果たすのですから、それが第一義であって、その金をだれが持つかというのは、まあ二番目の話になってくるのではないか。したがって、あなたのおっしゃるように、個人の財産を守ってやることがひいては国家社会のためになることだということは、その点においては、まさしくそのとおりだと私は思います。しかし、これは極端なことで、例としては適当ではないかもしれないが、たとえば大山林地主の山の消毒を全部やってやって、一つもそこから費用をとらないのだ——その財産がなくなることは国家の財産の損失だということは、それは間違いない。そこまでは間違いない。だけれども、一つも費用をとらないで、国が全部めんどうを見るということについては多少抵抗を感ずるものですから、そこらのところのかね合いをどうするか。いずれにしても、一般的な考え方としては、そういうふうな病虫害というものの退治には国費で大部分を負担してやるというのはけっこうなんで、私はそういう方向で今後も努力してまいりたいと思います。
  115. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、次に伺いますが、七十一国会でこの森林法改正に関して質問をし、そしてすでに一年を経過しようとしているわけでありますので、その後の事情の変化と、さらに農林省のサイドでの事務の進行というものもあると思いますので、確認の意味から二、三質問をしたいと思いますが、一つは、保安林整備臨時措置法でありますが、昨年の当委員会での答弁を総括してみますと、大体三月三十一日で有効期限が切れることになっておるわけでありますが、それまでにどういう方向で、どのような内容で、この有効期限の切れる法律をどうするかということが前国会でも議題になったわけであります。その内容に関して具体的に説明をしていただきたいのが第一点。  それから、その内容の中に、保健保安林の制度の導入という意向が示されておるわけでありますけれども、この保健保安林の制度の導入ということによってどれだけの予算が必要になるのか、具体的に説明をお願いしたい。これはもう一つは私権の制限とのかね合いがありますので、この保安林整備臨時措置法と私権の問題に関してどういう見解を持っておられるか、こういう点についてお伺いしたいと思います。  それから、時間がありませんので質問を先に続けて行ないますが、昨年の六月に、林野庁のいわゆる保安林解除の問題、特にゴルフ場開設に関する保安林解除の問題について通達を出されておるわけでありますが、現在の時点での、そのゴルフ場開設に関する保安林解除の申請状況と、また解除の内容と、もう一点は一この森林法がやがて法律となって効力を発揮した後における保安林解除の扱い、この点についてお伺いしたいと思います。
  116. 福田省一

    福田(省)政府委員 保安林の問題につきましては、御指摘の保安林整備臨時措置法は期限が切れるのでございまして、この制度はぜひまた今後延ばしていきたいと考えておりまして、さらにこれを十年間延長する法案を別途御審議を願いたいと思っております。その中で、特に今後保安林を拡大してまいりたいと考えておりますのは、水源涵養保安林であるとか、あるいは土砂流出、土砂崩壊などを防ぐための、そういった国土保全に関連する保安林の問題のほかに、保健保安林というものを積極的に拡大してまいりたいというふうに考えておるところでございます。  それから、次に、昨年の三月、参議院の決算委員会におきまして黒柳先生から御指摘のございました保安林内におけるゴルフ場の問題でございますが、この問題につきましては、六月の二十六日に通達を出しまして、四十七年度中に申請書を受理したけれども、現地で県が受理したか、あるいはまた現地で県が具体的に指導中のものに限定いたしまして、一定の条件のもとに解除手続を進める。これに該当して、本日までに解除を予定しておりますものは、百数件ございましたけれども、わずか十八件でございまして、その条件と申しますのは非常にきびしく制限しておるわけでございます。それで、これに該当するものはなかなかしぼられてくるわけでございますが、一つは傾斜二十五度以上のものは解除しない、それから全体区域に四〇%以上の森林を残す、それからホールとホールの間に二十メートル以上の森林を残す、それから治山事業を実施したあと十年以上経過しないと解除しない、それから代替施設、つまり防災施設でございますが、これを先に行なわせる、従来はそういう計画があればよろしいということにしておりましたけれども、必ずこれを行なわせる。それから地方森林審議会の意見を聞く、それから農地法その他法令の手続等を並行して進める、こういうふうな制限を加えておるのでございます。  これは保安林だけの問題でございますけれども、普通林については、現在は何ら規制はないわけでございます。今度の森林法が通りました暁には、普通林の問題も含めまして、ゴルフ場はもちろん、宅地造成その他につきましても、一定の基準を設けまして、それでもって規制をしてまいりたいというふうにいま要求しておるところでございます。
  117. 林孝矩

    ○林(孝)委員 第一点目の中で、保安林整備臨時措置法についてでありますけれども、改正内容の柱といいますか、そういうものについていま説明がございましたが、その新しく導入されるという保健保安林の制度によって起こってくるところの影響についてお伺いします。  一つは、その制度を導入することによってどの程度の予算が必要なのか。あるいは、これは私権との関連を申し上げたわけでありますが、たとえば税制の面でどのような影響を与えるものなのか。こういう具体的な影響について、もう少し具体的に説明をお願いしたいと思います。
  118. 福田省一

    福田(省)政府委員 実は、四十九年の予算の中でございますけれども、保安林の中で、いま申し上げました保健保安林をぜひ各県ごとに設定したい、そして乱開発規制したいという要望が非常に強うございまして、知事会議等でもそれが提案されまして、慎重に検討されたいきさつもございます。四十九年度予算の中におきまして、都道府県がそういった保健保安林を乱開発防止のために買うという場合におきましては、それに対して国が三分の一を補助するということをすでに入れてございます。なお、保安林改良についていろいろな事業がございますが、それに対しても二分の一の補助を考えるというふうに、四十九年度予算の中に「考える」と入れてあるわけでございます。そういったようなことによりまして、保安林の規制を今後きびしくしてまいりたいというふうにいま考えておるところでございます。  それから、税制につきましては、相続税の問題あるいは財産税の問題等につきましては、それぞれ免税あるいは減税というふうな措置を考えておるところでございます。
  119. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、その次に、国有林野事業の特別会計において、四十八年度の収支見通しをまず説明をしていただきたいと思います。それから四十九年度の国有林野事業の推定、この二点をお願いします。
  120. 福田省一

    福田(省)政府委員 四十八年度の見通しについて申し上げますと、最近、新聞等にも発表されてございましたけれども、現金収支差におきましては五百億、損益計算におきましては六百十三億というふうな見通しになっておるのでございます。これは昭和二十二年に特別会計が発足いたしましてから最大の収益でございますし、最大の利益になるわけでございます。過去において非常に大きかったのは四十二年でございまして、現金収支差二百十四億、損益百九十七億でございました。しかし、この額は、過去三カ年の収支差の累計が大体五百億の赤字でございますので、それで大体埋まるという状態ではございます。  なお、今後の経営の状態を考えますと、人件費率は七割になっておりまして、これは今後は、相当長期的に見ますとまだまだ心配な状態でございます。これが上昇しました原因は、経営改善その他一般会計から百億の治山費導入等もございますけれども、大きな原因は、やはり、木材価格が四十七年の暮れから八年にかけて上がったということが一番大きな原因なわけでございますので、そういう状態ではございますが、過去における赤字、今後における経営の状態を見ますと、決して楽観を許さないという状態でございます。  四十九年度予算つきましては一応大蔵省に対して要求し、今後御審議願っておるところは、収支差につきましては百億の赤字ということで要求いたしております。これはやはり一般会計から治山費について約百億以上の導入をはかった上での結果ではございますけれども、国有林の経営の状態というものはまだまだ楽観を許さない状態であることをつけ加えて申し上げておきたいと思います。
  121. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、具体的にお伺いいたしますが、まず、インフレによるところの土地価格の暴騰と建設資材の高騰、そして金融の引き締めということで、いわゆる住宅にしても、あるいはその他の建築にしても、一般的に考えられますことは、木材需要が減少しているということだと私は思うわけであります。そういうように木材需要が減少している中で六百十三億という収益が得られたということは、林野庁長官がお示しになっておりますように、木材価格が高騰しているということが大きな原因であると私も考えるわけであります。  そこで、この木材価格というものに対して、国会における議論もいろいろと各委員会でなされておるわけでありますけれども、非常に資材が不足しているという点が一点あります。それから、いまお話しがあったように高くなっている。特に、外材需給状況を見ましても、非常にパーセンテージは高いわけでありますけれども、価格も高い。こうした非常に高い価格の中で、昨日は、物価集中審議の中で、木材の輸入に関して、つくられた物価高というものが解明されたわけであります。そうした価格操作というものが一方にあり、そして、国有林野事業の中で六百十三億という黒字が出た。これも木材の高値ということが大きな原因になっておる。こういうふうになってきますと、国民感情として、物価安定に寄与してもらえないものかという素朴な感情が生まれてくることも事実なんです。ただ、ここに言われておりますところの国有林野事業の占めるパーセンテージが低いものですから、日本木材価格に与える影響がどれだけ大きいかということになってきますと、そこまでコントロールするところまでいかないかもしれません。しかし、将来の展望に立って考えた場合に、この国有林野事業に関して、たとえば木材の備蓄という政策を導入して価格の安定に寄与するとか、その他いろいろそういう価格安定政策というものがこのあたりで考えられてもいいのではないかという気がするわけでありますが、そうしたことに関して政府の中では検討されておる事実があるか。あれば、その内容についてお示し願いたいと思います。
  122. 福田省一

    福田(省)政府委員 一応、木材需給あるいは価格、こういった安定対策というものについていかなる考え方でやっているかという御質問でございますが、基本的には、昨年の二月に閣議で決定いたしました資源基本計画、これは国内森林資源をどのようにふやし、どのように整備していくかという五十年間にわたる計画でございますが、それに基づきまして、現在持っております蓄積二十億立方を将来は倍近い三十六億立方にふやし、それで供給量も倍ぐらいにふやそうと、簡単に申し上げるとそういう考え方でございます。ところが、国内需要は今後だんだんふえまして、ちょうどいま、一億の国民に対して一億立方メートルでございます。一人当たり一立方メートル、世界水準から非常に低いのでございますけれども、これがだんだんふえまして、将来は一億五千万立方ぐらいに需要がふえるだろう。木材の住宅に使われる率は下がりますけれども、総体の需要量はふえていく。紙ももちろんでございます。ですから、そういう状態で五割ぐらいふえます。そうなりますと、六割の外材比率、四割の自給率が現在でございますが、将来はそれを逆転しまして、六割の自給率、四割の外材比率と、こういうことに考えております。これはまあ長期的な一つのものの見方でございますけれども、短期的に見ますというと、いま申し上げましたような、一昨年以来の価格暴騰の原因がございます。これはやはり需要が非常に伸びた。具体的には、金融の緩和によって住宅ローンの緩和が非常にでき、それで住宅需要が対前年二割以上も伸びた。二割以上伸びますと、過去の例を見ますと、非常に木材が上がっております。それが極端にきたということでございます。もちろん、流通段階におきまして、いろいろな仮需要等の問題もあったと思いますが、基本的にはそういう背景があったと思うわけであります。したがいまして、四十九年度予算の中で一つの備蓄計画を出してございます。これはただ、価格が急に上がった場合にすぐ放出できるようなものでなければならぬので、立木とか素材では間に合いませんので、製材品と考えております。製材品の中でも、すぐこれが使え、しかも比率の高い、主としてアメリカ、カナダの米材を考えているわけでございます。それは柱とか土台に使いますもの、それから板のかわりに最近使われ出した合板、この二種類を備蓄いたしまして、価格の上がりました際にこれを放出し、平時はこれを備蓄しておくという考え方で、そういう機構を四十九年度に発足させることにしたのでございます。そういう形の中で、将来は備蓄だけでは需給価格安定対策に一〇〇%なるとは私ども考えておりません。やはり、需給の安定対策というふうなものにつきまして、いま申し上げた国内の問題、海外資源の問題、いろいろ組み合わせまして、一つの法体系というものが必要だというふうに私は考えております。いずれこの点につきましては御審議願いたいというふうに希望しておるのでございますが、そういうものの中にやはり国有林材の問題も将来は含めて考えていく必要があろうというふうに思うわけでございます。  ただ、先般価格高騰しました際には、国有林材の供給につきましては、だからといってすぐ増伐もできませんので、自然保護等を配慮していかなければなりませんし、基本計画に沿うていきますので、販売の時期を繰り上げるとか、持っていますものを早期に放出するとかいうふうな販売措置は講じてまいりましたし、また、国内資源の内容を見ますというと、間伐材であるとか、そういったものがふえております。そういった間伐材の利用促進についてもいろいろ研究、くふうを重ねていくとかいうふうな対策を講じてまいるという予算も四十九年度考えておりまして、短期的にはそういうふうな措置もとっていかなければならぬというふうに考えておるところでございます。
  123. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間が過ぎているそうでありますので、最後に一点だけ、これは政務次官にお伺いしておきたいと思うのでありますが、今日まで、当委員会におきまして、いろいろとこの森林法改正に関する質疑がなされてきました。そして、林野庁の行政の姿勢並びに具体的な政策等も盛られておるわけでありますけれども、一つは人口問題ですね。いわゆる労働人口の問題であります。林業に従事する労働人口の減少というものは、行政が拡大する方向にあるのに、逆比例してだんだん減少しておる。こういうことが顕著になっているわけでありますけれども、これが解決されなければ、林野行政というものに大きな支障が必ず起こってくる。また、それを解決するためには、林野行政あるいは山林業務に対する夢というもの、希望というものがなければこれは増加しないわけでありますから、そうした根本的な基本的な考え方といいますか、そういう点について——いまなぜ少なくなったかということはもう議論されているわけです。今度はふやしていかなければこれができないわけですから、増加させていくためにはどうしたらいいかという点についての考え方を明らかにしておいていただきたい。この点を質問しまして、終わりにしたいと思います。
  124. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 山林労務者労働力の確保、これは非常に大事なことであります。そのために今回も森林法改正案を出して、その中で、森林組合の強化あるいは合併助成法による合併による内容の充実ということを考えておるわけです。これは、やはり、何といっても、非常に待遇が悪いとか、あるいは非常に不安定な職場であるとかいうことなら、幾らかねや太鼓をたたいたってなかなか人が集まるわけはない。したがって、森林組合労務班等を編成して適正規模の組合になって、そうして近代的な事業ができるだけの施設等も持ってやれるようになれば、労務班の編成というものはやりやすくなってくる。だから、大きな方向で言えば、やはり、森林組合を強化していくということが民有林における林業労働力を確保する上においての一番大切なことであろうと考えております。そういう点で、なるべく御審議の促進をお願い申し上げます。
  125. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  126. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に米内山義一郎君。
  127. 米内山義一郎

    ○米内山委員 この法案について後段に若干の質問をしますが、その前に、この法案を見ましても、これは言うなれば乱開発からどういうふうにして森林を防衛するかという趣旨もありますが、青森県はむつ小川原開発というものを進めておるわけです。この内容は、簡単に申し上げると、あそこに二百万バーレルの石油精製工場をつくる。二百万バーレルというのは、いまさら私から申し上げるまでもなく、年に直すと一億キロリットルということですから、昭和四十五年ごろの日本の総石油輸入量の半分、四日市の五倍半というような規模です。さらには、石油化学を年四百万トン、これは日本の総生産高が三百八十五万トンぐらいですから、これ以上のもの。さらには、火力発電一千万キロワット。よって、ここに五千ヘクタールの土地を買収しなきゃならぬ。まあ、こういうふうなことを中心にして第一次基本計画というものをつくり、そうして十一省庁会議というものが政府内部にありまして、四十七年の十月に、農林部内では、いまは構造改善局ですか、当時の農地局長がこの十一省庁会議に出るという仕組みになっている。これが一応開発計画というものを認めた形になり、そうしてこれは閣議で口頭了解された。それを根拠にして山林原野ないしは農地の買収が進行中です。この中に国有林を含んでおります。開発地点の重要な部分に国有林があるわけです。これは海岸に発達した砂丘の上に植林された保安林になっておりますが、これは国有林です。六十年ほど前に、当時これは帝室林野の財産でしたが、帝室林野でこれを自然環境を保全する意味で植林したのが、現在六十年余りの成木になっている。これが開発地域のまん中にあるんです。したがって、これも工業開発の中に当然含んでいるわけですが、この辺の事情について、きょうの段階——林野庁としては当然これは売るか売らないかの問題があるわけですから、どの程度にこのむつ小川原開発について内容を御存じであるかどうかをまず承っておきたい。
  128. 福田省一

    福田(省)政府委員 どの程度とおっしゃいますというと、私もあまり詳しくは承知はしておりませんですけれども、農地局の時代から陸奥・小川原沼においてこういう開発計画が進んでおるんだという話が出まして、その中に国有林も含まれておるので、その国有林利用等については協力してもらうようなことになるかもしらぬから、そのときにはひとつ頼むという程度の連絡があったのでございます。現在の段階におきましては、直接林野庁のほうにはそういう話はございません。で、青森営林局に対して青森県のほうからその辺の事情について若干の問い合わせがあった、その辺の森林の実情について問い合わせがあったということを営林局のほうから聞いておるという程度でございます。
  129. 米内山義一郎

    ○米内山委員 わかりました。  では、次に、この法案の提案の趣旨で、「経済的機能と公益的機能とを総合的かつ高度に発揮させるため、」この法案が出た、つくった、こういう御趣旨の説明があったわけですが、そこでお聞きしたいことは、経済というのも終局的には公益に帰一しなければならないものだが、ここで森林について特別に経済的機能と公益的機能というものを別々にする理由はどういうわけなんですか。
  130. 福田省一

    福田(省)政府委員 森林の持っております機能を考えますというと、先生指摘のように、経済的な機能、つまり、木材を生産する、あるいは木材以外の副産物を生産するという機能はもちろんございますが、同時に、水源を涵養するとか、土砂の流出、崩壊を防ぐとか、そういう機能も現にあるということは事実でございますが、ただ、過去におきましては、森林に対する全般からの要請というものは、木材が足らぬからもっと増産しろ、特に国有林は切り惜しみしているんじゃないか、もっと増産しろというふうな要請が、たとえば戦争中とか戦後とかいう時代にあったのは事実でございます。そういった森林に対する要請というもの、要するに、木材の生産あるいは木炭の生産、まきの生産ということに重点が置かれた要請というものは行き過ぎではないか、森林本来の持っておる経済的な機能のほかの公益的な機能をもっと重視すべきじゃないかという要請が最近ようやく出てきたわけでございます。ですから、本来持っているそういう機能を総合して発揮させるようにするということをはっきりとこの法律の中にうたい込んだのもそういう理由からでございます。
  131. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そうしますと、たとえばこの経済的機能というものは、今後は別ですが、薪炭林というようなものがたくさんあるわけですね。ところが、プロパンガスが一般化すると、炭が売れなくなる。薪炭林というものの経済的機能といいますか、そういうように資源あるいは商品として見る場合には低下するわけですね。そうすると、それよりもゴルフ場をつくったほうがいいとか、こういうふうになるのを高度利用と考えるか、それとも、この地域は、自然環境保護のために、樹林地帯としてさらに樹種を変えるなり、積極的な植林政策でやっていくかという、こういう点で、単純に経済と公益というものを分離すると不十分な点が出てくると感じられるんだが、その点はいかがですか。
  132. 福田省一

    福田(省)政府委員 まず、冒頭に申し上げたいのは、森林は、確かに日本は七割も森林があって、非常に豊富なような印象を与えるわけでございますけれども、人口が一億でございますので、一人当たりにするときわめて少なくて、世界じゅうでもたしかびりのほうでして、百四十六カ国のうち百十番目ぐらいの量になるわけです。面積にしましても、蓄積の量にしましても。ですから、決して豊富だとは言えません。したがいまして、林野庁としては、できるだけ森林状態を維持し、その内容を豊富にしていくという考え方から、基本計画なり需給計画というものができているわけでございます。ただ、いまお話しの出ましたように、いろいろなレクリエーションの場として森林利用するとか、あるいは住宅のためにいろいろそこを利用したいという要請も出ることは事実でございます。ですから、そういう場合の要請にこたえてどの程度に森林利用していくかということは、そのケース・バイ・ケースによってそれを判断していかなければならない問題でございますから、そういう判断基準法律の中で、あるいは法律に基づいて政令その他の通達で明らかにしていきたいという考え方に立っているものでございます。
  133. 米内山義一郎

    ○米内山委員 ちょっと話は先に飛ぶが、そうしますと、この法律には乱開発を防止する機能を持つわけですね。乱開発を防ぐ機能がある。たとえば東京近郊なり、日本じゅうに——青森県のようなところにもゴルフ場の計画が七つも八つもあるそうですが、これは政務次官の近所だと思うが、私は、あの近所にゴルフ場が九つも十一もできるんだそうだといって半日自動車で見て歩きましたが、ああいう状態をもこの法律が防げるんですか。ああいうふうに、植林するならば当然林地になり得る場所も買い占めされて、ゴルフ場という名目で、土が赤裸になって、自然破壊も当然起きるような事態ですが、ああいう状態をこの法律で防げるんですか。
  134. 福田省一

    福田(省)政府委員 森林全部で二千五百万ヘクタールございますが、二千五百万ヘクタールのうち、保安林とか自然公園法とかその他で規制できないような状態民有林の中に一千万ヘクタールございます。これは何にも取り締まる方法がないわけでございますので、改正森林法の中で、一定規模以上の開発をしようとするときには必ず都道府県知事の許可を得なければならないというふうにこれを定めているわけでございます。そういう方法によって乱開発規制してまいりたいということでございます。
  135. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そこで、一定の条件に合った申請があれば都道府県知事は許可しなければならないという条文になっていますでしょう。間違いありませんか。
  136. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 改正法案の十条の二に規定いたしておりますように、三号をあげておりますけれども、そのおのおのに該当しない場合は許可しなければならないという規定をいたしております。
  137. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そこで、選挙されて出る知事だから、そんなばかばかり知事になっているわけはないですが、知事の主観にそれをゆだねるということは非常に危険が伴う。いま政府みずからが狂乱物価なんということばをつくり出したんです。あれはもともと「お夏狂乱」とか何とかいうことばはあったが、政治、経済の中に政府のほうから狂乱物価という造語を新しく流行させてきた。こういう時代なんです。「お夏狂乱」ならば、男にほれてとかいう程度だが、いまの経済の狂乱というのは、あんな程度のものじゃなくて、きのう、きょうも予算委員会でしぼられているとおり、ああいう力を持った連中が狂っているんだから、これは女の問題じゃなくて、いまの事態は気違いが乱暴しているようなものでしょう。そうすると、県知事の中にもそういうのも出る。手も足もつけられるもんじゃないですよ、気違いが権力を持って乱暴するのだから。と申しますのは、むつ小川原開発というものは、そういう架空な構想の中に広大な土地を、地方権力も、財界も結託して買い占めしようとするもの以外の何ものでもない。特に、三億キロリットルぐらいを将来のめどにしようというのでしょう。あそこに一億キロリットルなんということは物理的にも不可能なんですね。こういうふうな狂乱状態開発狂というような者が自分の主観でこれはよろしいと言ったら、これは歯どめがかからない。したがって、これを開発していいかどうかということは主観的なものじゃなくて、きわめて客観的に判断する必要がある。この法律には別な規則等も出るでしょうが、そういう開発をすべきか、林地として残すべきかということを客観的に歯どめをかける何ものかが用意されていますか。
  138. 福田省一

    福田(省)政府委員 その点はほんとうに御指摘のとおりでございまして、一番大事な点であると思います。知事さんが自分の自由の裁量で適当に許可するというようなことでは、これは弊害が出ますので、一応基準としまして三つの柱を立てております。その一つは水の問題でございます。その開発によって水の出方に影響を与えるということになると、これは地域人たちにも、また下流の人たちにも大問題でございますから、そういう影響があるかないかということを判断することが一番大事な問題でございます。第二点は、そこを開発することによって、集中豪雨等によってよく見られる例でございますけれども、土砂の流出、崩壊によって人あるいは家屋に被害を与えるというふうなことがしばしば出る問題がございます。そういう土砂の流出、崩壊、つまり国土の保全に影響を与えるかどうかということをまず判断しなければならぬというのが第二点でございます。それから、第三点は、最近特にいろいろ要望も出ています環境の破壊の問題がございます。周囲の環境に非常な悪い影響を与えるというふうなこと。たとえば、従来その近辺の人たちがそこをレクリエーションの場としていろいろ利用しておったという事実があるかないかというふうなこともございましょう。そういう水の問題と、国土保全の問題と環境の問題、この三つの柱を立てまして、それにどういう影響を与えるかということでございますが、御承知のように、日本列島の中を見ますといろいろなケースがあるわけでございますから、一律にこれをきめるということになりますと非常に形式的に流れるおそれもございますので、一つのそういう考え方に基づいた指導の基準をつくりまして、その基準によって知事さんに判断していただくということを考えておるところでございます。
  139. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そうすると、県知事などが、そういう狂乱の開発で、やってはならない許可をしたときに、住民としては、当然自分たちの生存権なり生活権を守らなければならない場合があります。いま私が話したところの、この六ヶ所のむつ小川原開発の保安林というものは、これが成木して防風林としての効力が出たとき、その背後地が水田になり、その背後地に人が住めるようになってから四、五十年、七、八十年になるわけだが、これが工場用地にして整地されると、その背後の稲作農業ができないし、稲作農業ができなければそこに人が住めなくなる。われわれから見れば、住民から見れば、こういうふうな乱暴なことが許可処分になったときに、これに異議を申し立てるなり、それを取り消させるような法律的な歯どめがあるのですか。
  140. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 森林法の規定上から申しますと、今度の改正森林法では、一応都道府県知事の許可にかからせるということでございまして、その都道府県知事の許可につきましては、先ほど長官からも御説明いたしましたように、許可する際の基準というものを示して、その基準にのっとって許可をやっていただくというふうなことを考えているわけでございます。  あとは一般論になるわけでございますけれども、機関委任を受けた都道府県知事の行政行為が妥当でないという点につきましては、行政組織法なり、あるいは地方自治法なりというものの規定によりまして、国によっての強制措置というものが規定されておりますから、一般的なそういう規定の採用ということになろうかと思います。
  141. 米内山義一郎

    ○米内山委員 わかりました。この点は、まだ、林野庁が正式にこの土地を買収に応じてくれという折衝も受けていない段階ですから、これ以上きょうは質問はいたしません。  そこで、次の問題ですが、戦争中、日本森林というものは非常に荒れたわけです。たとえば私の村などでも、何百年もたったようなお宮の宮木までも献木だ、供木だというふうなことで切り倒されておる。しかし、いま戦後三十年近くにもなって、日本は世界の工業先進国になった、国力がついたと言いながら、森林だけは逆に崩壊しつつあると私は見る。単なる木材需給関係からだけではなしに、だんだんに森林としての機能を失いつつあるのじゃないかと思うのです。そういう心配があるからこういう法律も必要とされると思うのですが、大体どういうふうな状態ですか。これは林業白書を見ても若干わかりますが感じとして、このままでいけば日本森林というものはどうなるか。国土の中の緑の問題あるいは酸素の供給の問題等があるわけですが、この森林の現状についてどういうふうにお考えですか。
  142. 福田省一

    福田(省)政府委員 どういう感じかという御質問でございますが、数字的にあげてお答えするのはなかなかむずかしい問題でございます。ただ、こういうことが言えると思います。二千五百万ヘクタールのうち、全然いま規制できずに、いわゆる白地の状態と申しましょうか、そういう状態にある民有林が一千万ヘクタールあるわけでございますから、これは何とか規制していかなければたいへんな問題になると私は思っております。特に、いま御指摘のように、各県の様子を見ますと、ゴルフ場がずいぶんふえている問題と、今後計画されているものもずいぶんあるようでございます。あるいは住宅についての開発の問題であるとか、その他単純なる買い占めの状態とかいうことが非常に進んでおります。いまのうちにこれを規制することをいたしませんと、森林というのはどんどん減少いたしまして、取り返しのつかぬことになるというふうに思うわけでございます。特に、普通の畑作と違いまして、森林を元の状態に戻すのは、これは五十年、百年とかかる仕事でございますから、この点については相当ふんどしを締めてかからなければならぬというふうに感じておるところでございます。
  143. 米内山義一郎

    ○米内山委員 こういうふうに森林というものは荒廃の方向をたどっているわけだ。その元凶は何かというと、これは具体的に見定めないと対策がとれないんですよ。先ほどマツクイムシの話も出ていましたが、確かにマツクイムシも山荒しの一つだが、特に、経済が高度成長する段階で、森林の荒廃というものは、新たに伸びる木よりも切る木が多い、さらに、林地、山そのものが荒廃している、乱開発が起きるという、こういう現象の根元をはっきりしなければ、この対策は立たぬじゃないか。ここまで来たのは政治の問題じゃなかろうかと私は思うのです。林政というものの弱さというか、不十分さが、今日この日本森林そのものの危機を招来しているものと思う。林野庁自身に、客観的にものを見て、そういうふうな反省といいますか、いままでの林政にこの点が不十分であったというようなことが明確でない限り、対策も十分な対策は立たぬと思うのですが、政務次官ないしは長官、この点についてはどういう御感想ですか。
  144. 福田省一

    福田(省)政府委員 確かに、御指摘のとおりだと思うわけでございます。林業関係林政に関する唯一の法律というものは森林法でございます。明治四十年にできましてからしばしば改正されておるわけでございますけれども、最近は昭和二十六年に改正して以来、ほとんど改正らしい改正をしていないわけでございます。そういう意味で、この森林法の骨格を立て直しまして、この辺をまずしっかり締めていかなければいかぬと思うわけでございます。一方、最近は、御承知のとおり、林業基本法に基づきまして、いろいろと、将来の見通しなり、あるいは資源のつくり方、あるいは需給のあり方という見通しをつくって閣議決定もされておるわけでございます。そういったことも始められたのもつい最近でございます。  特に、日本森林行政について非常に欠陥があると私が思いますのは、そのときどきの行政需要によってしょっちゅう方針を変えるということでございます。外国の例なんか見ましても、百年ぐらい前の法律をそのまま使っているという事例も実はあると聞いております。私は、やはり、森林行政について、五十年の見通しというものを今度立てたならば、ちょっとやそっとのことじゃそれを変えないように持っていかなければならぬというふうな考え方を持っております。
  145. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 森林が荒廃をする原因は何だ、政治的な要因がかなりあるじゃないかというお話しですが、私はこう思っているのですよ。一つは、非常に経済成長が早かったために非常に需要がふえたということ、これが一つあると思うのです。それから、伐採はするけれども、二十年、三十年、四十年待たなきゃ、植林をしてもなかなか利益が戻ってこない。世の中はインスタント時代になっちゃって、投下した資本をすぐに回収したいというような気持ちが非常にびまんをしておる。だから、造林をするというような意欲があまりない。それから、造林をしても非常に費用がかかる。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 それから、地価が非常に高騰をして、林業としてもうけるよりも、その他のものに土地を利用したほうがもうけが強い、そこへ過剰流動性の問題等、いろいろそういうような複雑な問題が介在をし、日本造林とかあるいは森林の育成というようなものに暗い影を落とした、こういう見方を私はしております。
  146. 米内山義一郎

    ○米内山委員 実は、私は、その国の森林状態を見ると、その国民なりその国の政治の性格がわかるんじゃないかという感じがするんです。五、六年前ですが、偶然に西ドイツへ別な用で行きましたら、シュワルツワルトというところへ行って、実は、私はびっくりした。その森林のみごとだということですね。あとで聞いたら、そこは世界の林学の発祥地だということを聞いて、なるほどなと思いましたが、しかし、あのドイツの国を飛行機で見ても、森の中にドイツがあるという感じがするのです。日本との違いは、これは技術的な問題でもあろうが、どんなに成木した山でも、これを皆伐して山を坊主にするというところは、気をつけて見たが、つい一カ所もなかった。こういうふうな点もあると思うのです。一体、成木したものを間引きするように切って、また新たなものを植林すれば、木材は生産されるが山は崩壊しないわけですが、日本では、国有林自体も、切るときは山を坊主に切るという理由は何でしょうか。結局、経済性といいますか、経済的機能だけを重要視する。山を坊主にすれば、なるほど手間賃がかからないで、機械で整地してやれるが、そのかわり、あとから伸びてくる苗木はかなり長い間難渋するわけですよ。そういうふうなことだから、一貫して国有林自体も経済的機能を重視するあまり、近ごろ、合理化とかなんとかいって人減らしまで考えて機械化するから白ろう病なんというものも出るので、あんなものはもとの営林署にはなかったのですよ。こういうふうな経済的機能を重視するのあまり山も荒廃しているということをお感じになりませんか。
  147. 福田省一

    福田(省)政府委員 お説のとおりでございます。先ほどもちょっと触れました戦争中のいわゆる軍用需材の伐採とか、戦後の復興用材の増産とか、とにかく国有林だけを取り上げてみますと、増産命令、増産命令が追いかけてきておる。それにこたえて、とにかく能率のいい仕事をやっていこうということに重点を置き過ぎた、つまり、経済的な面だけを重視したということがあったことは、私もはっきり認めざるを得ないと思います。したがいまして、この点を修正しまして、公益性を重視した森林施業をやっていく。いまお説のように、大面積の皆伐はやらないんだ、皆伐するにしてもごく小面積にして、しかもこれを分散させる、択伐なりあるいは禁伐林を、国有林の場合にはそういう必要に応じてできるだけふやしていく、というふうに新しい施業方針をきめまして、それを昨年の二月に決定していただいた今度の基本計画考え方の中に入れております。それに基づいて今度森林法の中で全国森林計画を作成してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  148. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そこで、資料によると、日本森林面積のうちの七〇%は民有林で、三〇%は国有林というのだが、青森県のような場合はその逆なわけです。森林だけじゃない。全地積の七〇%ぐらいがあるいは国有林かもしれない。しかも、そのうちの二つの半島、津軽半島と下北半島というのは、全地積の九〇%ぐらいは国有林だ。だから、下北、津軽半島に国有林があるというのではなくて、国有林の中に何々市があったり何々村があるというような実態です。ですから、小学校の数よりは多くないけれども、役場と同じ数の営林署があるというような実態です。そこでは、その地域の住民と国有林の存在というものは非常に関係が深いわけです。国有林を何とか活用しない限り、この住民というものは、主として海岸部にいるわけですが、磯のアワビみたいに、海にだけたよっているわけです。うしろには広大な国有財産の木材資源もあるし、土地もありながら、実に、いまの世の中に、こんなに不公平なものの存在というもの、偏在というものはなかろうと思う。  そこで、人間はみな平等に生きる権利があるのですから、今後、そういう住民のことについて、単に営林署で働く労働者のことだけではなしに、これにすっかり包まれている地域全体の振興のためにも、国有林として果たすべき責任がなければならぬはずだ。いままでは、こういうものは、藩政時代と同じように、山は国のものだというだけでして、わずかに宣撫工作的になだめる程度の住民対策しかないわけですよ。今後は、この国有林をそういう意味で活用すべきだと実は私は思う。現に、林野庁自体も、岩手県あたりで牛の牧場などをつくってやっておられるようですし、かなりの成績も上がっておると思うが、ああいう制度についても、何も牛だけに限らず、林野庁が土地を提供し、技術を提供し、あるいは別に制度的に資金を供給するという道が開けるならば、地域の住民というものは、林野庁を、国有林を、ほんとうにありがたい存在として考えるかもしれない。こういうお考えに今後立つ可能性があるのですか。いままでどおりで、ああいうふうに苦しめて、いじめて、発展の芽をふさいでいっても、国有林の存在というものをとうといものとお考えになるのですか。
  149. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のように、国有林は全森林の中で約三割を占めているわけでございます。だが、その大部分は北海道、東北で、特に下北半島、津軽半島には国有林比率が高いのでございます。  私も、実は、昭和二十一年から二十五年まで、むつ、横浜と大畑の営林署長をしたことがございましたが、佐井営林署は国有林が九割以上を占めておって、軒先国有林と言われておったのを覚えておるわけでございますが、そういう極端な例もあるわけでございます。したがいまして、これは先生承知のように、国有林の成立の歴史のしからしむるところではございますけれども、やはり、そういった場所におきましては、地元の人たちは、国有林を離れては海しかたよりにならぬわけでございますから、できるだけ国有林がこれに協力してやらなければならぬと思うわけでございます。特に、働く場所の提供につきまして、伐採事業なり、造林事業なり、その他のいろいろな仕事は、やはりその地元の人たちに参加していただく。あるいは林産物の供給につきましても、できるだけその便宜をはかってあげる。昔は薪炭林があって、まきとか炭が主体でございましたけれども、いまはもうそういった形態はなくなってきております。したがいまして、そこから出てくるキノコの原木であるとかパルプ用材といったものは、地元の人たちを通して供給していくとか、あるいは、いま御指摘の混牧林の問題とか牧野の問題については相当考えてあげなければならぬと思うわけであります。そういう制度も現にあるわけではございます。共用林野制度もございます。また、先般できました国有林の活用法に基づきまして、この地域人たちが農業を営もうとする場合、できるだけこれには土地を提供してあげることも考えていきたいと思うわけであります。ただ、この点につきましては、過去においてあまりかんばしくない実績もあるのでございまして、その辺は慎重に配慮していきたいと思うわけであります。  いずれにしましても、この国有林の経営につきましては、計画をつくります場合に、特に地元の方々の意見、市町村あるいは直接の部落の人たちの御意見も十分に聞き、その人たちのことを考えた経営計画をつくるように指導する考えでありますし、それをさらに強化してまいりたいと思っておるところでございます。
  150. 米内山義一郎

    ○米内山委員 幸いに、長官はあの地域の状況を一応御存じであるからありがたいことだと思うが、実は、去年の秋に雨が少し降り過ぎたんです。そのために、下北半島では、あの温泉のある下風呂まで、うしろの国有林が、山が荒れたせいでしょう、伐根が流されてくる、土砂が流れてくる、家屋が倒壊するということで、人間の死ぬという事故も起きたのです。これは責任は雨だと言えばそれまでだが、うしろの山が荒れていた証拠だ。さらには横浜、あの下北線の鉄道の長大なところ、あそこはあの鉄道が通ってから五十年余りになりますが、地震で故障を起こしたことはあるけれども、いまだかって雨で故障を起こしたことはない。それがしかも、その不通期間は百五十日にも及んだのです。これはみんなうしろの山が荒れたからだ。山が十分なときには、雨が降っても水がじゅうじゅうと流れる。山が裸になって、しかも伐根の処理が不十分なために、水と一緒に伐根が流れてきて、鉄道線路をくぐっている小さな暗渠にそういうものがひっかかる。そうして、鉄道のすぐ片側は海でしょう。上全体が湖のようになる。どこか決壊する。その決壊場所が十カ所以上も出る。これは国有林の上だけに降った雨じゃないけれども、いずれにしろ、こういうふうな被害が出ると、あの地域では、これはあげて国有林のせいだと言う。評判がよくないわけです。これじゃ、ぼくが考えるに、青森県の場合には、森林面積の六割、七割を持っている営林行政をやる上において、住民が不便なばかりでなく、あなた方もやりづらい点がこれから拡大していくと思うのですが、そういう点で、地元対策と申しますか、これは当然義務としてやらなければならない。昔の地主でも、これくらい圧倒的な地主は、食えない者には食わせるくらいのめんどうは見たものです。人間だから、それは出かせぎをしても何をしても死にはしませんけれども、しかし、発展がないのです。そういう点で、くふうすればやり方は幾らもあると思うのですよ。林産物の加工というものもあると思うし、あるいは造林というものを大幅にふやして、あるいは造林地の保護にしても、地元の雇用を営林局の仕事そのものの中に拡大することもある。さらにこまかいことならば、ワサビをつくる。根ワサビ田ぐらいはつくれる場所は国有林以外にないのですから、そういうことをやっていくとかなり緩和すると思うのですが、こういうことがないのだからね。  青森県では、これまで政治家で国有林開放ということを言わない政治家はなかったのです。みんな一応は、おれが代議士になれば国有林を取ってくれるという意味の開放を言ったのですが、しかし、これは成功したことはわずかです。これはあとでひとつ追跡調査をしていただきたいが、戦後、町村合併の時代から、そういう名目で山を取ればいいという意味の開放、国有林を奪い取ればいいというような意味の政治運動が起きたのです。その中には、買った次の日に山を坊主にして、その銭で株式を買って、その会社がつぶれてしまって、そうして木も植えないで、木も植わらないうち、あるいは成長しないうちに金利に追われているという、そういう森林の開放もある。  それから、いまのむつ小川原の農地の大部分は国有林を開放したものです。これに世銀の融資が加わり、あるいは農林省の開拓事業が加わって、約二十数年たって、本州では一番りっぱな酪農地帯になったのです。ところが、その次に来るのがこの開発なんです。いわゆる狂乱開発です。しかも、畑の場合は六十七万円なんです。林地でも六十万なんです。それに立木の補償がつくのです。水田は七十八万。それが十俵も十二俵もとれるならば別ですが、五俵もとれば豊作だという低収穫地帯にこういうふうなことで買い占めが始まるのです。そうすると、二十年前の国有林の開放というのは、住民から見ると、単に札のかたまりになっちゃっている。農業じゃないのです。国民に食糧を供給することとは別になるのです。だから、やはり、こういうものは農業政策と密着してやらないならば必ずこういう結果を繰り返すと私は思うのです。  だから、今後の国有林の活用ということについては、それは仕事条件によっては所有権の移動も必要としますけれども、主として農山村において国有林を活用する場合は、所有権とは別個に活用という道を開くと資本の負担も楽になるのですよ。国有林の安い料金の借地であれば、売る不自由さはあるでしょうが、しかし、この活用の目標というものは生きていくわけですから、私は、そういうことを主張したいと思うのです。そのかわり、この活用は徹底的にやる。特に、こういうふうな狂乱時代ですし、金を持った者は気違いみたいに乱暴する世の中では、そうでもしない限り、開放というものは、数年は条件がつくかもしれないが、それが済んだあとでは保証の限りではないと思う。この点は意見として申し上げておきます。  それから、山を見れば国を見るということを私ははっきり言いました。実は、これも四、五年前の話だが、私は北朝鮮へ行ってみて驚いたのは——その六、七年前にも行きました。戦後二度朝鮮民主主義人民共和国へ行ったのですが、山の一番の頂まで全部植林が済んでいるのです。これは、あなた方のやっている実績から見ると信用できないでしょう。あそこは別に経済大国でもない。だが、山に苗木を整地して植えるぐらいのことは、やろうと思えばできることだと思うんだ。ぼくは、経済力の問題じゃないと思う。やる気があればいい。ただし、営林署や林野庁だけではさか立ちしてもだめでしょう。国民と一緒に山をつくろうということで適当な政策を立てれば、これだけ人間が余って、失業保険でめしを食っている農山村ですから、こういうふうな考えに立てば過疎の問題だって緩和するはずだし、山は、一定の計画で、五年計画ぐらいで、十年も立たないうちにやろうと思えばできるはずです。できないということは、そういうふうな観点がないからだ。やる気がないからだ。だから、私に言わせると、日本森林を荒廃させ、これを困難なものにしたのは林野庁で、林野庁がマツクイムシの一番の親方じゃないかと実は私は思っているわけだが、政務次官、これに対しては、とにかくやろうと思うことが大事なんです。やる気がないからいつまでもはかどらない。そうして、そのうちに荒れるほうが勝っていくでしょう。切るほうが先まっていますからね。いまのままだとおそらくイタチごっこみたいなものだ。  それから、もう一つは、木材関係のことは増産だけじゃ片づかないだろうと思うのです。ただし、日本で木がなくなればフィリピンに行って山を坊主にしているが、これはいつまでも続くものじゃないから、やはり、日本の山の生産を高めると同時に、増産と節約ということを両立てにしないと山の経済問題というものは片づかないのじゃなかろうか。  そこで、節約の問題なんですが、これは考え方の問題だと思うのです。朝鮮の話を重ねてしますが、あの木のないところで、国家が農家の住宅も——これはアパートじゃないのですが、全部、一〇〇%完了しましたね。それはみんな個人住宅ですよ。それから、大部分はれんがあるいはブロックです。かまちとか、そういうものは木を使っていますが、そういうふうに節約をしながら山を気長に育てるという二つの態勢がないとだめじゃないかと思う。あなた方はちょっとしか役人をしていないけれども、山というものは五十年、百年から、もっと寿命の長いものなのでして、法律もいいのですが、この辺の基本の考え方をひとつ改めてもらいたいということを私は要望したいのですが、政務次官、いまの政治体制は、その考え方に立ちがたいものでしょうか。
  151. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 私は、考え方としては米内山先生と大差ないと思うのです。もちろん、資源の浪費ということは困ることですし、いろいろな困難を押しても植林をするということは、いろいろな面で、いわゆる公益的機能を増進するという意味で、どうしてもこれは非常に大事なことだと思います。  なお、国有林活用の話を先ほどおっしゃいましたが、国有林野を活用する場合に、売り払うということは、五年とか八年とかを押えることはできますが、十年、十五年になれば、幾ら条件をつけてもなかなか押えられない。これはもう事実です。昭和二十五年から二十八年ごろに、相当各地区で牧場等に払い下げたけれども、栃木県の例なんかを見ると、何千ヘクタールというものが、開拓地まで含めて不動産屋にすでに売り渡しになってしまった。こういう実例があるのですから、ですから、これからの国有林野の活用というものは、原則として、それは売らない、貸すということがいいと私は思うのです。  それから、また、それは国が持っておっても、現実にはろくな植林もできないし、民間の人に利用させたほうがいいというようなところは、民間の人に大いに利用させるという方法がいいだろうと私は思うのです。国有林野の活用法という法律をつくったが、人によっては、あれは不活用法じゃないかということをときどき私は言われるのです。  それから、非常に借地代が高過ぎる。時価が上がったから時価にスライドするのか何か知らぬが、ともかく、現実的には、牧場等の経営に対して非常に借地料が高くて払い切れないという苦情がたくさん来ております。したがって、これらについては、もっと適正な、利用者が利用できる程度の賃貸料にしなさい、そういうことで検討しなさいということで、林野庁はその方向で料金の算定を検討しております。ですから、一方においては国民の全体の財産でありますから、どういうように活用するか、活用されたものの資源というものをどういうふうにして大切に使っていくかということについては、同じ考え方であります。
  152. 米内山義一郎

    ○米内山委員 一つ提案をしたいのですが、発想の転換なんと言うと大げさになるが、簡単なことは、人のふり見てわがふり直せということばがあるから、一度専門家なり、あるいは行政官でもいいが、朝鮮だけは見てきていただきたいと思う。ぼくは朝鮮民主主義人民共和国の社会主義宣伝をするのじゃないのですが、何も経済大国でなくても、やる気があればできているんだということです。それを日本の総合的な経済力とか、あるいは技術とかいうものでやればできないはずはない。そして、先般、韓国へ妓生パーティーを見に行った人間が帰ってきて私に報告したのですが、釜山へ上がると、ソウルまで森も林もないそうです。そうして、その男が私に言うのは、あれだと、いくさで負けると鴨緑江まで逃げなければならないだろう、なぜかというと、どこにも隠れるところがないからだと言うのです。要すれば、山を見れば国の政治がわかるということはこのことなんですよ。その点で、林業の問題は技術でもあろうし、財政でもあろうし、行政でもあろうが、そこに問題点を置いていただきたいと、私は強く要望しておく。  それから、白ろう病の話が出ましたが、これは林野庁の従業員の中に一番多く出て、ここから白ろう病という新しい名前さえ出たわけだが、治療対策がないような話ですね。温泉がきくとかいうようなことは、ちょっとぼくはおかしいと思う。一体、治療対策が立たないということは何ですか。あなた方がこの加害者とは言わないけれども、責任者としてこれを探求する熱意がない。あなた方が熱意がないから、これに対する医学者の体制も整わないとぼくは思う。要すれば、あなた方もいろいろ心配しているだろうが、これの病理というものは明らかですか。病理が明らかでないと治療対策が立たないのですから、病理というものは、いま学者の中でどういうふうに言われているのでしょうか。
  153. 福田省一

    福田(省)政府委員 白ろう病つきましては、国有林民有林を一緒にしまして、治療対策としましては、まず、診断基準をきめることが一番大事な点でございますので、労働省が災害防止協会に委託いたしまして、昨年の十月に大体診断項目がきまったのでございます。それをもとにしまして、今度は管理区分をつくりまして、A、B、Cと三区分にして、それが治療対策につながるわけでございますけれども、いままで、レイノーにかかったのだけれども、これは一体病気なのか、治療を要するのかどうかという、そういう判断基準がなかったわけでございます。ようやくそれができまして、それを受けて、年度内に、労働省のほうで大体そういった方向を出す予定になっております。それに基づきまして健康診断を実施して、その雇用区分の指導をしていきたい。つまり、差しつかえない者と、それから規制しなければならぬ者、あるいは入院させなければならぬ者というふうにしていく考え方でございます これは非常に年月をかけましたけれども、ものは病気でございますので、やはり専門家にかけなければならぬという問題もありまして、だいぶ時間がかかりましたけれども、その点につきましては、およその見通しは最近ついてまいりましたことを御報告しておきます。
  154. 米内山義一郎

    ○米内山委員 いまのこの診断基準とかなんとかいうのは労災保険を出す基準であって、病気をなおす基準じゃないんだ。予防する対策でもないわけです。したがって、この問題は明らかに社会病なんですよ。ばい菌やそういう流行病ではない。しかも、いまの状態では容易になおらないんだ。その人間は労働力を失うんです。だから、これは社会問題なんです。社会的な疾患なんだ。  そこで、考え方一つ申し上げておきたい。この原因は振動によって起きる障害だというふうなことが定説なんだ。振動の中でも、炭鉱内のさく岩とか、あるいは石灰岩を掘るところで出る率ですね。これは運動の状態、それから気候の状態——シベリアにもチエーンソーはあるんですよ。そういうところでどの程度出ているかということと、それから栄養の状態ですね。アメリカやカナダのようにビフテキばかり食っているところに多く出ているかどうか、日本の低賃金の労働者の場合には出るかということなどを当然点検していく必要があると思う。さらに、診断基準だけじゃ対策にならないんです。ぼくの言う対策というのは、出さない対策、出たらなおす対策対策と言う。結局、そこだってあなた方は金本位でしょう。人間の命を金銭で片づけようという、経済性というか、このものの考え方の幼稚さからこれは出ているんです。  それから、もう一つヒントをお与えしましょう。これは血管障害なんです。血管の中でも、手に出ます。手が振動するからです。これは生理的に見ると、動脈と静脈の吻合部といいますか、つながる場所があるんです。これは毎日できて、毎日こわれているものなんです。そうして、それが顕微鏡で見なければならない血球を通すだけの太さを持っているのです。私の友人で、この白ろう病に非常に熱心な医学博士がいて、青森県の営林局下で起きた白ろう病の患者はみんな手がけて、なぜてくれたり注射したりしているが、その専門家といろいろ話をしたのですが、先生、おまえさんは医学博士でもいまの理論じゃどうも片づかない、対症療法だけで何とかしょうとしているが、やはり、そういう生理と病理というものから出発しなければ、これは解決できない問題じゃないかと言ったわけだが、私はしろうとだけれどもそう考えているわけだ。まあ、ひとつ、そういう点で、診断基準なんというけちなことじゃなしに、日本にだって医学はこれだけ発達しているし、病理学者もいるし、生理学者もいるんだから、そこにヒントを得てやったならば案外早く結論が出るんじゃないかと私は思っています。  このことを強く要望して、きょうの質問を終わります。  何かお答えがあったら……。
  155. 福田省一

    福田(省)政府委員 非常にいい御指示をいただきましたので、特に、予防対策には重点を置きまして最善の努力をしてまいりたいと思っております。
  156. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次に、諫山博君。
  157. 諫山博

    ○諫山委員 共産党の機関誌である「赤旗」が、昨年ですが、乱開発の実状をいろいろ調査して、福島県西白川郡西郷村の開発の実態を詳細に調査したレポートを発表しています。これを見ると、西郷村では民有林が約七千ヘクタールで、そのうちの三千ヘクタールが十三の観光業者によって買い占められている。十三の観光業者が買い占めた比率民有林の四十数%であります。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 そして、きのう私が調査したところによりますと、十三の業者が買い占めた山林のうちに、すでにゴルフ場として工事が進み、近くオープンするのではないかと言われているのが一カ所、残りの十二の業者が買い占めた分については、県に申請書は出ているけれども、まだ開発は始まっていない、こういう実情だということがわかりましたが、林野庁はその実情をつかんでおられましょうか。
  158. 福田省一

    福田(省)政府委員 ただいま御指摘の福島県西郷村の森林の状況につきまして、こちらで調べましたところは、御指摘のように、森林面積七千四百十一ヘクタールのうち、人工林が四二%ございまして、福島県条例で、森林買収については県に届け出がされることになっておるのでございますが、これは四十七年十月二十日に制定されております。この条例制定後の買収面積が千二百七十二ヘクタールで、全森林面積の一七%で、利用目的別の割合は、別荘が五〇%、ゴルフ場二〇%、その他三〇%。購入した者は、大京観光、安宅産業株式会社、三幸株式会社というふうに聞いておるわけでございます。
  159. 諫山博

    ○諫山委員 福島県や栃木県などでいかに山林の買い占めが進んでいるか、乱開発が進んでいるかということは、当農林水産委員会が昨年みずから調査して、私たちにはよくわかっておるところであります。全国的に見ましても、膨大な土地が大企業、大商社あるいは観光会社から買い占められて、乱開発されておる。これもわれわれ政治家にとっては常識であります。ところで、このたびの森林法改正案はこういう乱開発を防ぐという説明になっておりますが、たとえば西郷村のように、すでに大企業が買い占めている、そして、開発計画を進めている、しかし、開発はまだ始まっていないという、こういう山林についてはどのように適用されましょうか。
  160. 福田省一

    福田(省)政府委員 一応私たちが対象とする森林つきましては、一つ森林の持っております機能が極端に低くて、ごく小面積で、分散的な森林というものが一つ。それから、もう一つは、ほかの法令などによって、公的な計画に基づいて森林以外の用途に供することがすでに確実となっておる森林、こういったものを除外する、その他は除外しないのだ、全部適用するのだ、こういう考え方でございますので、御指摘の場所につきましては、これは地域森林計画の対象外とせずに、これは対象とするというふうに考えておりますから、規制の対象とするものというふうに私たち判断しております。
  161. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、西郷村で買い占められておる膨大な山林は、この改正案で問題になっている災害のおそれ、あるいは水源枯渇のおそれ、さらに環境を破壊するおそれ、こういうおそれはない土地だというふうに理解していいのでしょうか。
  162. 福田省一

    福田(省)政府委員 いま原則を申し上げたのでありまして、もし、そういったような場合には、これはもう規制するという考えでございます。
  163. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、西郷村のような山林にはこれが適用されるのかどうか、その点はどうでしょうか。現に買い占められている膨大な山林です。
  164. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 先生の御指摘の西郷村につきましては、観光会社が買い占めをしたという事態が起こっておるようでございますが、買い占めをしたという事態におきまして、観光会社が山林の所有者であるということでございまして、森林法の適用を受けるということになるわけでございますから、その観光会社が山林の所有者として開発を行なうという場合に、十条の二に掲げておりますような条項に該当しないかするかということを具体的に判断をして、許可をするかしないかということがきまってまいるということになろうかと思います。
  165. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、本件については一応おくこととして、すでに観光業者が買い占めて開発計画を立てており、県庁に対してもその趣旨の書類を提出しているという場合も、開発が始まっていない場合には、それをこの条項に基づいて規制できるという解釈になりますか。
  166. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 非常にむずかしい問題でございますけれども、開発に着手している場合は、ということでございまして、私どもといたしましては、まあ、かけ込みで逃げるというような形のものはできるだけ押えていきたいというふうに考えておりますから、いまの御説のような場合には、開発に着手しているとはみなさないというような形で対処してまいりたいと思います。
  167. 諫山博

    ○諫山委員 一つのゴルフ場をつくるのに百ヘクタールから二百ヘクタールぐらいの土地が必要がそうです。そうすると、この土地のうちの、たとえば三十ヘクタールについて開発が始まった、それ以外についてはまだ開発の着手はされていないという場合には、この法律で未開発の部分は規制しますか。
  168. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 ただいまお示しのような事案というものは非常にむずかしい事案でございますが、ゴルフ場というのは通常九ホールとか十八ホールとかいうふうなもので一本になっておるようでございますから、三十ヘクというふうなところで開発行為が行なわれておるということでございますと、これは九ホールなり、十八ホールなりの一つの部分の着手であるというふうに見ざるを得ない。その部分をはずしてほかに何らか生きる方法があるという形で計画が考えられるというものであれば、着手しておるということにみなさないで済むということもあろうかと思いますけれども、常識的に考えました場合には、百ヘクのうち三十ヘク着手しておるというような形のものは、ゴルフ場の開設計画としては着手しておると見ざるを得ないと思いますけれども、これは具体的な事案に即して判断をしてまいる必要があろうと思います。
  169. 諫山博

    ○諫山委員 ゴルフ場全体としては開発が始まっているかもしれませんが、一筆一筆の土地については開発が全く行なわれていない部分がたくさんあるわけですね。そういう場合でも、もうゴルフ場の一部の工事が始まっておれば、開発が着手されていない膨大な土地についてもこの法律は適用されないことになるのですか。
  170. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 具体的に、そのまわりの状況がどうであるかというふうな形のものも判断の要素になろうと思いますので、具体的な事案に即して判断をしていかざるを得ないというふうに考えますが、ただ、いま先生御設例の三十ヘクというようなことでございまして、全体の計画がかりに百ヘクというようなことでございますと、すでにもう三分の一着手されておるというふうな状況の際に、残りの七十ヘクについては着手していないから、開発行為として未着手であると認定していいかどうかということについては、具体的な事案で判断せざるを得ないのではないかというふうに考えています。
  171. 諫山博

    ○諫山委員 林野庁長官にお聞きします。  すでに、わが国の膨大な山林が買い占められている。そして、何らかの開発行為の対象になっているということは御承知のとおりです。問題は、これからこういう開発を禁止するというだけではなくて、開発の目的で買い占められている。そして、開発に着手したものもありましょうし、すぐに着手しようと準備しているものもあると思いますが、こういうものについては、どういう場合に開発規制する、どういう場合に規制しないというきちんとした基準がこの法律に書かれているのかどうか。書かれていないとすれば、何らかの基準林野庁としては持っているのかどうか、御説明ください。
  172. 福田省一

    福田(省)政府委員 原則的には、開発規制する一つ基準としましては、水の涵養機能に影響を与えるかどうか、あるいは土砂の流失、崩壊に影響を与えるかどうか、環境を破壊することについての影響があるかどうか、こういう三つの基準を柱にしまして、これを規制してまいる考え方であります。そういう基本的な考え方は一応法律にあるのでございますけれども、さて、それを現実に具体的にそれぞれの一筆一筆の土地に適用してまいるということになりますと形式的に流れることになると思うわけでありますから、これを具体的に判断する場合には、さらにこれを詳細に一つの通達の形できめまして、知事が一ヘクタール以上のものについて開発の許可を与える場合の一つ基準を示してやるという考え方に立って、ただいま、その内容については事務当局において検討しているものでございます。
  173. 諫山博

    ○諫山委員 私は、こういう重大な問題ですから、基準を通達できめるというのではなくて、本来は法律できめるべきだと考えております。それにしましても、通達ということになれば、たとえば土砂の流失とか崩壊は一切認めない、しかし、水源の枯渇は少しぐらいはあってもかまわない、こういう趣旨になりましょうか。
  174. 福田省一

    福田(省)政府委員 原則的な考え方としましては、これは一般の普通林に対して規制をしている考え方でございます。で、厳密にこれを規制していくという場合には、保安林制度であるとか、その他の自然公園法等いろいろあるわけでございますが、そういう形の中で規制していくべきものであると考えます。で、普通林に対する規制つきましては、いまお話ししました水の関係、あるいは土砂の関係、あるいは環境の問題の、この三つにつきまして、できるだけその運用につきましては保安林等に入れないものでございますから、その考え方つきましては、これを許可する場合には法文の中でも許可しなければならないと言っている意味はそこにあるわけでございます。基準つきましては、繰り返して申し上げますけれども、全国一律に、たとえて申し上げますと、国有林でも経営計画というものは大きくは八十ございますし、民有林でも森林計画というものは二百五十六もあるわけでございます。それが沢の一つの単位でございますから、さらにそれをこまかに規定していく場合におきましては、現地の実態に即して・判断していかなければならないわけでございます。ですから、これを機械的に法律の中に書くということはまことに困難な問題でありますから、普通林につきましては、いま申し上げたような方法で、指導通達で規制してまいる、そして、知事にそれを示して、それに判断してもらうという考え方に立っているものでございます。
  175. 諫山博

    ○諫山委員 以前の委員会でわが党の津川委員が、十条の二の中に「著しい」という表現が使われているところと使われていないところとあるが、どうしてかという問題を提起したことがあります。この問題は、改正案をすなおに読みますと、土砂の流失や崩壊は一切認めない、しかし、水源の枯渇は少しぐらいやっても認める、なぜなら、水源の枯渇には「著しい」という制約がついているからです、と、こういうふうに理解していいのでしょうか。
  176. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 確かに、先生指摘のとおり、十条の二では、災害のおそれがあるところは「著しい」という表現はございませんけれども、環境の保全なり、あるいは水資源の保全なりというところには「著しい」という文句がついているわけでございます。災害というものにつきましては、そのこと自身が生命に危険を及ぼすというふうなていのものでございますから、これは、かりに、森林所有者がみずからの所有権なり使用権の範囲の行為として行なった場合にも、他人の生命に危険を及ぼすような形の可能性がありとするならば、そのことについての規制を受忍すべきであり、他方、水資源であるとか、あるいは環境条件の悪化という点につきましては、森林が現在水資源の涵養であるとかあるいは環境の保全であるとかいう機能を持っておるわけでございますから、森林森林でなくするということによってそういう機能を害することがないということは考えられないことでございまして、森林森林でなくすることによって、水の確保なりあるいは環境の保全なりというものについては幾らか支障が出てくるということは当然予想されるところでございます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  しかしながら、そういうふうなものが、まわりの人々あるいは水にたよる人々に受忍できないほどのものであるならば、これはいかに森林の所有者であっても、その所有権なり使用権の行使としてそういう開発を行なうべきではないということが今度の開発規制の底になっておるわけでございまして、もし、それが、先生のおっしゃるような形で、何らかの水の確保なりあるいは環境の悪化なりに影響を及ぼすようなものについては全然やってはだめだという形の制限をいたしますならば、森林法の中にはいま一つ保安林という制度がございまして、そういうものについては、そういう制限と申しますか、そういう機能の重視という点から非常にきびしい制限が加わっておりまして、それについては損失補償をするということになっておりますが、保安林の程度にまで及ばない普通森林についてどう考えるかということにつきまして、規制を行なうわけでございますから、その場合には、水の確保なりあるいは環境の保全なりという点については「著しい」という表現をいたしまして、開発行為の規制と受益者の受忍というものの調和をはかっていくということを考えておるわけでございます。
  177. 諫山博

    ○諫山委員 この十条の二というのは、三つの条件の場合には知事は開発を許可してはならない、しかし、三つの条件がなかった場合には、逆に知事は開発を許可しなければならないという仕組みになっております。保安林についてはもちろんそういう開発は許可しないでしょうが、保安林以外の地域については、少しぐらい環境を悪くしても、あるいは少しぐらい水源の涵養に支障があっても許可しなければならないというような趣旨になるわけですから、私たちは、この条件というものをもっときびしくしなければ、開発禁止のつもりの法律開発促進の法律にもなりかねないということをずっと強調しているわけです。この点はそういう観点から検討していただくとしまして、さっきの西郷村の問題にもう一回戻ります。  そうすると、西郷村については、すでに三千ヘクタールからの土地が商社によって買い占められているわけですが、開発が進んでいない地域については全部この法律が適用されていくというふうに聞いていいですか。
  178. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 先ほどの先生の御質問はなかなかむずかしい事例を引例されたわけでございますけれども、そういう事例にまで及ばないような形でいろいろ例がございますけれども、図上での計画なりというふうな形のもので、買収だけ行なわれていて、現実には開発行為は、つまり表土をはぐとかいうふうな形の開発行為は全然行なわれていない、あるいは伐採も全然行なわれていないという、こういうようなものについては当然着手していないということが認定できるわけでございますが、先ほど先生が御設例になりましたような事案につきましては、非常にむずかしい問題でございますから、具体的な事案に即して判断をしていかざるを得ない事態も出てくるのではないかということを申し上げた次第でございます。
  179. 諫山博

    ○諫山委員 長官にお聞きします。  いまの説明では、観光業者や商社がすでに山林を買い占めている、そして、レジャーランドとか、ゴルフとか、あるいはホテルをつくる計画を立てている、しかし、まだ開発には着手していない、こういうところについてはこの法律をそのまま適用するのだという御説明のようですが、これはもちろん林野庁の統一した見解として聞いていいでしょうね。
  180. 福田省一

    福田(省)政府委員 お説のとおり、私たちの立場は、保安林以外の普通林については野放しの状態にあるのでございまして、ゴルフ場等いろいろな形で開発が進んでおりますから、できるだけ早くこの法律を通していただいて、できるだけ早く規制してまいりたいという姿勢でおるわけでございますから、お説のとおりでございます。
  181. 諫山博

    ○諫山委員 ということになりますと、この法律を実際に適用していく上でずいぶんいろいろな複雑な問題が出てくると思います。観光会社とか商社は、開発という名目で相当な金を出して、膨大な土地を買い占めた。ところが、この法律の適用を受けることになると開発ができなくなるかもわからない。この法律開発が許可されないことになるかもわからない。とすれば、商社とか観光業者というのは黙っておかないと思います。自分たちの最初の計画がこの法律によってチェックされますから、おそらく相当な問題が出てくるのじゃないかと思いますが、そういう点は予想しておられましょうか。長官いかがですか。
  182. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 開発業者のほうからは、そういうふうな態度に出るという事態も考え得られましょうけれども、私どもといたしましては、せっかく森林法改正案を提案いたした次第でございまして、その改正案の趣旨が没却されるような事態に対しては、いま申し上げたような態度で対処してまいりたいというふうに考えております。
  183. 諫山博

    ○諫山委員 政務次官にお聞きします。  あなたはゴルフ亡国論者の一人だそうですが、この法律が適用されることになると、おそらく、いま言ったような観光業者とか商社がものすごい圧力を農林省にかけてくるに違いないと思います。それに対してどういう態度で対処されるつもりなのか、決意のほどを聞かせてください。
  184. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 私は決してゴルフ亡国論者ではございません。ただ、一定な地域に非常にたくさんのゴルフ場が集中して乱開発をするということがいけないということを言っておるわけでございます。あなたのおっしゃったように、私は、この法律が脱法行為に利用されちゃいけないと思います。あなたのおっしゃる意味はよくわかりませんけれども、すでに着手をしたというようなものは経過規定である程度抜かざるを得ない。ところが、実際は三十六ホールつくるのだ——近ごろはセブンツーなんというもの、七十二ホールなんというゴルフ場もあるそうですが、そうすると、九ホールなり十八ホールなりが始まっただけで、それじゃその地域として七十二ホール全部をすでに着手したものと認めて除外するということになればしり抜けになるじゃないかというふうな意味にも私はとっておるのでありますが、私は、そういうようなことを申し立ててくる危険性はかなりあると思います。しかし、その地域の全体の状態から言って、それは七十二ホールというようなことを念頭に置いて始まったとしても、その七十二ホール全部を許可するということになれば、いろいろな水の確保の点に著しい支障を来たしたり、あるいは環境の面で著しい悪化をさせたり、あるいは土砂その他の崩壊等災害に結びつくような行為になるというように当事者が判断をした場合は、当然それは規制さるべきものであるというように私は考えております。したがって、これからいろいろな形で農林省に対して、いろいろな脱法行為をやろうというようなことで圧力をかけてくるかもしれませんが、そういうふうな非常に不当なことは極力排除していくという姿勢で臨みたい。しかしながら、主権の侵害、憲法違反のようなこともできないので、それらの点については、この法律をすなおに解釈せざるを得ないと思います。しかし、これを不当に拡大解釈をしたり、あるいは抜け穴を考えたりして持ってくるものは行政的措置できびしくチェックするつもりでおります。
  185. 諫山博

    ○諫山委員 いまの一連の説明で、すでに業者や観光業者が買い占めてレジャー用に使おうとしている土地であってもこの法律規制するつもりだということのようですが、ということになりますと、すでに買い占められた膨大な土地が、業者は買い占めたけれどもレジャー用に使えないという部分が出てくることがあり得ると思います。こういうところについては、林野庁としては、植林を進めていくという行政指導をする責任があると思いますが、そういうやり方をとっていかれますか。長官、いかがでしょうか。
  186. 福田省一

    福田(省)政府委員 木が植わっていないで、そこには木を植える余地があるし、木を植えるべきであるという場所がございますれば、それに対しては、現にいろいろな助成制度等もございますから、そういう方向で指導してまいりたいと思います。
  187. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 この間皆さんが視察に行かれました栃木県の喜連川地区等において、一つの村の周辺に十幾つのゴルフ銀座がすでにできかかっておる。ところが、こういうふうな不景気になってきちゃったものだから、そのゴルフ場が完成するかどうかなかなかわからないというような問題も起きております。そこで、栃木県などでは、県の農業公社といいますか、県の公社が金を出して土地を買い上げて、そうしてそこを農用地として造成するというようなことなどもやっておりますから、こういうようなものも参考にして、林野庁サイドばかりでなくて、それが森林としてどうしても置きたいものは森林として残しますが、国営事業等がその付近で行なわれておるとか、あるいは農用地の造成に適しておるというようなものについては、森林面ばかりでなくて、すでに買収された土地であっても、農業面で全体としてどういうふうに使ったらいいかということは、みんなで知恵を出して、農林省全体の問題としてそれは考えてまいりたいと思っております。
  188. 諫山博

    ○諫山委員 私たちの党の民主連合政府綱領提案の中では、大企業の買い占めた土地は国や自治体が適正な価格でこれを収用する、そうして収用した土地を民主的な配分計画に基づいて、たとえば生活用地、たとえば農用地、あるいはよい環境のための用地に活用していくべきだと、こういう提案をしております。私たちは、自民党政府にかわる民主連合政府になったら、必ずこれをやろうと思います。しかし、これは、自民党政府でもやろうと思えばやれることです。そういうことをやるつもりがあるのかどうか、長官にお聞きしたいと思います。
  189. 福田省一

    福田(省)政府委員 私は林野庁長官でございますので、先ほどもお答えしましたように、日本森林面積というものは外国に比べて非常に少ないわけでございますから、できるだけ森林を現状維持し、でき得ればこれを増強していくという立場でものを考えております。ですから、その地域地域森林計画に入る地帯であるならば、その方針に沿って造林すべきところは造林する、保育すべきところは保育するという方向で進みたいと思っております。  ただ、私は林野庁長官でございまして、いま政務次官がおっしゃったような地域の総合開発計画という立場で判断される場合におきましては、できるだけ森林を維持していくという考え方の中で協力してまいりたいと思っております。
  190. 諫山博

    ○諫山委員 私がなぜ過去の問題を、すでに業者が買い占めている問題を取り上げたかというと、わが国の森林とか農地で、いいところはほとんどすべてが買い占められており、すでに買い占められている土地にどういう規制をするかということが現実には非常に重要な問題になっているからです。この点では、まだ開発が進んでいないところについては全面的にこれを適用していく。ただ、部分的に開発が始まっているところはこれをどういうふうに適用していくのか、これから検討するというか、きまり切った基準はまだどうもつくられていないようですが、しかし、まさにこういう問題の処理こそが現在の重要な事態だという点を認識して善処してもらいたいと思います。  さらに、当然業者からの圧迫が予想されるわけですが、これは政務次官のほうではね返すというふうに言っておられますから、私はそれに期待したいと思います。  そこで、この問題に関連しまして、中央森林審議会の構成の問題です。私は中央森林審議会のメンバーの名前と現職名をいただいたわけですが、この中には、災害問題の専門家とか公害問題の専門家、環境問題の専門家というのは入っておられないように思います。しかし、新しい森林法では、しばしば強調されますような森林の公益的機能の確保ということが重要な課題になってきますから、この審議会の構成についても、そういう観点から検討し直す必要が出てきたのではないかと思っておりますが、長官、いかがでしょうか。
  191. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のとおりでございまして、中央森林審議会の委員は、先般任期の参りました人には更迭していただきまして、四十八年の二月十四日に更迭していただいた方もありますし、その内容をずっと見ますと、たとえば、まず、環境保全の問題については、環境庁ができておるのは御承知のとおりでございますので、環境庁の自然保護局長が入っておるのでございます。それから、水の問題等を中心にして、そういう土砂崩壊等の問題に関連して水利科学研究所というのがございまして、そこの理事長も入っていただいておるのでございます。あるいは、純粋な技術的な問題ということを検討する団体としまして日本林業技術協会があるわけでございますが、そこの顧問をしておられる方も入っておりますし、なお、東京農業大学の教授にも入っていただいておるということで、必ずしも、いわゆる林産業あるいはその団体、あるいはそういった担当の官庁だけということではなく、その点につきましては配慮してお願いしたつもりでございます。
  192. 諫山博

    ○諫山委員 森林法を公益的な機能という観点からとらえるというのは、私は、新しい問題提起ではないかと思います。だからこそ、十条の二という新しい条項がつくられようとしているわけです。そうすると、この森林法をほんとうにこの法律に即して運用していくためには、いわゆる公害問題の専門家、災害問題の専門家、環境問題の専門家という人たち審議会の中に入ることがどうしても必要だと思います。環境庁の人が入っているからいいじゃないかというわけにはいかないわけであります。そういう点では、まだ任期のある人をやめさして差しかえるというのは穏当でないと思いますが、これからの人選の場合には、やはり、そういう配慮をもっとすべきではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  193. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のとおりでございます。十分配慮してまいりたいと思いますが、これは具体的にいろいろと、たとえば先ほど申し上げました基準の問題であるとかということになりますと、相当こまかに検討してまいらなければなりません。そういう場合には、一つの部会を設けて検討するということも必要になってまいりますので、そういった場合に十分御意見を取り入れてまいりたい、かように考えます。
  194. 諫山博

    ○諫山委員 もう一つ改正案の十条の二に関してですが、ここで「環境を著しく悪化させる」という表現が出てきます。これはたとえば大きなレジャーランドをつくるとか、あるいはけばけばしいつくりのホテルをつくるとか、こういう場合も含んだ概念でしょうか。「環境」ということばです。
  195. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 具体的な事案に即して判断されることが非常に多いと思いますけれども、そのまわりがどういうふうな地帯であるか、文教地帯であるか、住宅地帯であるか、そういうような形のものが判断の要素になると思いますが、そういうところに即して、文教地帯であるとか、住居地帯であるとかというようなところでございますと、いま先生がおっしゃったような施設というのは、環境を著しく害するというふうに理解できると思います。
  196. 諫山博

    ○諫山委員 この法律の適用の場合に、一ヘクタール以上を対象としているということが言われております。ところが、これは法律の中には書かれておりません。もし、この面積を広げようというようなことを考える場合には、この委員会なりその他の立法機関に相談されますか。それとも、政府が一方的にきめてしまいますか。
  197. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 森林法改正案について御審議を願います際に、現在のところ、という表現ではございましても、一応の基準として一ヘクタールということでお話しを申し上げておるわけでございますから、その線について大きな変更を加えるような状態がございました場合には、当委員会に御報告をする義務があろうかと思います。
  198. 諫山博

    ○諫山委員 それは委員会審議して、委員会で反対ということになれば、その反対を無視してまではやらないというふうに聞いていいですか。
  199. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 私どもといたしまして、現在考えておりますのは、まだ法律の施行以前でございまして、いままでのいろいろな事例から考えまして、それが最適であろうというふうな判断をいたしましてお話しを申し上げておるわけでございますけれども、実施の過程においていろいろな問題が出てまいって、それを変更するという事態になりました場合には、そういう具体的な理由を付して当委員会に御報告をするということでございますから、おそらくわれわれの判断を御採納いただけるのではないかというふうに考えております。
  200. 諫山博

    ○諫山委員 いまの答弁は私の質問をはぐらかしたことになったわけですが、委員会が反対しても農林省が必要だと思えばやることもあり得るということですか。
  201. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 いまお話し申し上げましたように、私どもといたしましては、そういう変更の理由を考え、それを御説明いたしまして、御納得いただけないという事態はおそらくないと思いますけれども、御納得いただけないような事態については、改正をすることについては慎重でなければならないであろうというふうに考えます。
  202. 諫山博

    ○諫山委員 最後に一つ。私たちは、農産物の自給率を高めなければならないと主張しております。これは畜産についても同様です。ということになりますと、たとえば農民の人たちが、あるいは自治体が山林を開いて農地にするとか、あるいは牧畜ができるように形状を変更するというような必要性が起こり得ると思います。ところが、この法律によりますと、そういう場合も同様の規制を受けるのではなかろうかと思われるわけですが、長官、これはいかがでしょうか。
  203. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 現在森林である場所につきまして、林木を伐採いたしまして、あるいは表面を削り、あるいは耕起をいたしまして草を植えるというようなことが行なわれ、あるいは開拓が行なわれるということでございますと、当然開発行為に相当するということでございますので、この改正法律の条文の適用対象となるわけでございますが、ただ、畜産的利用なりあるいは農業的利用なりというふうな土地の利用の形態を見てみますと、許可をしなければならないということで三つ条件を出しております。環境の悪化なり、あるいは水の枯渇なり、あるいは災害なりという点については、ほかの開発行為とは著しくその程度を——害悪と申しますか、そのマイナス面が著しく低いというふうに考えられますし、また、地域住民の必要性というものも非常に高いということになろうと思いますので、そういうものについては、いま申し上げましたような要素を考えました場合には、先ほど政務次官からもお話しがございましたように、農林省全体としての立場で判断をするということで対処してまいりたいというふうに考えております。
  204. 諫山博

    ○諫山委員 政務次官にお聞きします。  ちょっとむずかしい説明だったのですが、そうすると、この法律をつくったからといって、たとえば農用地を拡大するとか、あるいは牧草地を拡大するというようなことの障害にはなるべくしないように運用するつもりだということでいいのでしょうか。
  205. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 私は、そのとおりだと思います。
  206. 諫山博

    ○諫山委員 いま私は短時間の間に幾つかの問題を指摘しましたが、これは、この法律の運用の上で非常に重要だと思います。ここで説明されたような趣旨に従って、これがたとえば大企業、大商社の横暴を取り締まるという方向で運営される反面では、農民が農地を拡張するというような当然の要求を押えることにならないようにというような点に十分配慮しながら運用されることを期待して、質問を終わります。
  207. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次に、柴田健治君。
  208. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 この間現地調査をいたしましたが、それに関連してお尋ねを申し上げたいと思うのです。  この間、私たちは、兵庫県、鳥取県、岡山県の三県を、開発地または森林状態、マツクイムシ、そしてまた森林組合の実態というものを中心に調査をして、調査報告を申し上げたのですが、それに関連して、今度の森林法改正に伴って私たちが感じますことは、森林組合を合併させるということ、たとえば鳥取県は現在三十組合あるが、それを五カ年後には七つにするというのです。そうした場合にちょっと疑問が起きることは、鳥取県にはそれなら県森連は要らぬのじゃないかということですね。鳥取県にたった七つの森林組合ができ、その七つの森林組合で森連をこしらえて、県段階で会長や副会長や専務理事につくる。合併をさせて、そしてうんと事業をやっていかなければならぬ、近代経営を、森林組合にふさわしい事業をやらせていこうとする、そういうねらいで合併をさせるのに、七つの森林組合で県森連の幹部にみな出てしまうということになったらどうなるのだろうかという疑問が起きるわけですね。たとえば岡山県は現在五十五組合がある。それを五年後には十六の組合にするというように、全国的にこういうことを考えた場合に、森林団体は二段階制にするのか、依然として三段階制の方針をとっていくのかという問題が出てくるわけですが、この点の考え方はどうですか。
  209. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 先生承知のように、農林省所管の農業協同組合、漁業協同組合、いずれも三段階制をとっておるわけでございまして、森林組合についても御同様に三段階制をとっているわけでございます。  ただいま先生指摘のように、鳥取の場合七つになるというようなことで、はたして連合会組織が要るかどうかというお話しでございますけれども、かりに鳥取県の森林組合が七つになるとして、これはかなり困難性があろうと思いますけれども、かりに七つになるということが実現いたしましたとして、七つの組合が鳥取県という行政単位で——つまり、日本の場合は県が行政単位として相当大きなウエートを占めておりますので、七つの組合が県の連合会というふうな組織で、県の行政と一体化した組織を持つということが必要ないかどうかという点になりますと、やはり、日本の行政が国、県、市町村というふうな形で行なわれておる場合には、県段階の連合会というものは必要ではないかというように考えられるわけでございます。ただ、全国的にそういう事態が起こってまいりまして、県段階というものはおかしい、あるいは道州単位ぐらいの連合会をつくれというふうな機運でも出てまいりましたら、その段階で検討する必要があろうかと思いますけれども、その事態というのは、相当遠い将来のことではなかろうかというように考えております。
  210. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 林政部長がそういうお答えをされたのですが、ただしゃくし定木に公式論に立って、要するに机上論で線を引いてしまう。たとえばこの一町村ごとの行政区域単位で考えた場合に、現在は、一町村ごとに合併しても森林組合の合併していないところもたまにはありますけれども、大体一町村一組合という方針で組織形態になっておると思うのですね。そうすると、たとえば山林面積——それから、あなた方は、どうも組合員数を基準に置いて合併を奨励をしておるような気がするわけです。そうすると、たとえば一町村の行政区域内における総面積のうち山林面積が五〇%以内のところ、五〇%から八〇%、それから八〇%以上の山林面積を持っておる組合というように、町村ごとに分離して考えた場合に、組合員数が少ないからということだけで合併をさせるというのはちょっと無理が出てくるのでなかろうか。その判断の基礎というものはどちらに重点を置くのが正しいのか。ただ組織防衛だけでものを考えるのか、林業政策全体の中でものを考えるのが正しいのか、この点の見解はどうですか。
  211. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 ただいま先生指摘のように、森林組合の合併を進めてまいります上でいろいろ考慮すべき要素が多かろうと思います。私どもで考えておりますのは、現在の森林組合が規模が小規模に過ぎるために経営基盤として劣弱である、そういうことを何とか克服するという意味において、少なくとも新市町村段階程度には統合するということも必要であろうし、また、あるいは、社会、経済的条件、自然的条件等から見て、それ以上の合併ができるような形であれば、それも望ましいということにいたしまして、一応の条件といたしまして、基準といたしまして、一応のめどといたしまして、新しい森林組合の経営規模といたしまして、組合員の所有する森林面積が大体一万ヘクタールぐらいで、森林組合の出資が六百万ぐらい、職員が七人ぐらいというふうなもの、新しい森林組合の型としてそれぐらいは最低規模として考えていきたいというふうなことを考えているわけでございますが、いま先生指摘の、人間に重きを置くのか、面積に重きを置くのかというお話しでございますけれども、ただ、これは、どちらかに重きを置いて、どちらかだけで律するということでなしに、やはり、先ほど申し上げましたように、森林組合の置かれておる自然的、経済的、社会的条件を総合勘案した上で判断をすべき要素であろうと思います。
  212. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 あなたが言われる大体の基準の目標というものは、面積にすれば一万ヘクタール、出資額が六百万円というように言われたんですが、たとえば岡山県を申し上げると、大体七十万ヘクタールの総面積の中で四十八万ヘクタールが原野ということに大体なっておる。いま五十五組合があるんですよ。そうすると、あなたの答弁から言うと、そうたいして合併促進しなくても山林面積はえらくいいじゃないかという数字になるわけですね。だから、その点がぼくはよくわからない。鳥取県を見てもそうですよね。鳥取県で計算してみると、山林面積は膨大な面積になっているんですね。それで七組合というと、一組合が三万七千ヘクタールから四万くらいになるわけですね。そうなると、あなたの机上論というものはどうも大ざっぱで、綿密なものじゃない。これは委員会答弁用の数字を言うたんじゃないか。もっと実態を考えなければ、非常に不合理が出てくる。岡山県でも約五十万ヘクタールほど山林原野がある。それでいま五十五組合で、十六組合にするんですから、そうすると、一組合の面積が膨大になってくるという算用になってくるわけです。そうして、先ほど私が申し上げたように、山林面積のいい山村地域、たとえば八〇%以上の山林面積を持っておる市町村は全国に幾らあるんですか。
  213. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 林野率八〇%以上の市町村につきましては、いまちょっと手元にございませんので、至急調べまして御返答いたしたいと思いますが、先ほど私が一応の基準と申し上げましたのは、最低それくらいのところにまで持っていきたいということを申し上げたわけでございまして、現在の森林の平均で申しますと、一森林組合の組合員の所有する面積が五千ヘクタール、出資金で三百万、職員が三・三というような平均でございますから、少なくとも平均の倍程度のところにまで一番低いところでも持っていきたいということを考えているわけでございまして、四十八年度に一応九十地区の合併を考えておりますが、その四十八年度の九十地区について申し上げますと、森林面積については二万二千ヘクタール、出資金については二千万、職員については十六人というようなことがめどになっておるということでございますから、先ほど申し上げましたように、その地域の社会的、経済的、自然的条件を勘案しながら、現地の情勢に即した形で、組合員の総意と申しますか、関係組合員の総意を結集した形で、現地に即した新しい組合の姿を実現してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  214. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 森林組合を合併させていく。私たち、一方では農協の合併を進めてきた経過、そして合併後における農業協同組合の運営を見ておると、合併だけさせてあとは何も指導しないという姿になっている。森林組合でも、合併だけは本気でやらせるが、多少ささやかな補助をやるということで、させたあとはどうするのかという問題に私たちは疑問が起きるわけです。合併後における指導はどうするのか。いままでの森林組合の実態を見ると、たとえば販売事業の占める比重、林産事業、樹苗生産、また購買事業、森林の造成事業というように、いろいろな事業の内容の比重が、現在の森林組合の経営の実態から言って、今後合併後には何を力点に置いて、どの部分を重点的にやらしていくのか、その点の指導要綱という目標というものが、展望というものがあるのかないのか、それを聞かせてもらいたい。
  215. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 森林組合の現状につきましては、少数割合の例外を除きまして非常に劣弱な状況にある、団体としてのていをなしていない、極論すれば、そういう言い方もできるかもしれないというような状況でございますので、組合が組合としての活動ができるような形にまず組合員の規模もふくらみ、組合員の所有する森林面積の規模もふくらみ、出資金も大きくし、というようなことで、全体的に体質を改善していくということがねらいでございまして、どこに重点を置いていくかというお話しでございますと、すべての面について、ということになろうかと思います。ただ、現在の林業の置かれております情勢の中で森林組合がいかがあるべきかということにつきましては、今回の森林法改正の中で、計画制度の一つ改善といたしまして、共同施業計画制度というものを御提案申し上げておるわけでございますけれども、現在の経営の零細性、所有の零細性というものを克服して、生産性の高い施業ができるような形で共同施業ができるように、施業計画がつくれるようにということを御提案申し上げておるわけでございますけれども、それのにない手として森林組合が登場してくる、そういうようなことによりまして、森林組合自身が森林のあるべき姿に貢献をすると同時に、森林組合労務班というような形で、森林組合労働力が通年的に安定した職場を獲得する、そういうことによりまして、森林の姿もよくなれば、組合員の所得もよくなる、あるいは組合員の労働、経済的な条件もよくなる、あわせて購買事業も販売事業も強化されていくというような形のものを、一応、今回の森林法改正を通じまして、森林組合の合併とあわせまして実現を期しておるというのが私どもの考え方でございます。
  216. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 林政部長はいろいろ多岐にわたって説明されているのですが、たとえば労働力の問題も言われました。現在、国有林を含めて、今日の労働対策というものは正直に言って、どちらかといえば投げやりで、ほんとうに完全な労務管理と、新しい近代的なセンスを持って労働対策をしておるとは思えない。国有林関係労働者すらお粗末な取り扱いをしておるわけです。ましてや、森林組合労働力を確保して、ということを言われますが、それなら、合併をして、たとえばAならAの森林組合が、林野庁の指導方針によって適正な規模、適正な運営をするために合併をした、そして労働力も確保した、その労働力をどう活用していくかということを考えたときに、現行制度の労働基準法に適用させ、またあらゆる社会保障関係法律を適用させて、完全に労務管理ができるように、労務政策がとれるように指導をするという構想があるのかないのか。
  217. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 この委員会で先ほど来論議がなされておりますように、民有林労働者の労働条件というものは、国有林労働者に比較しましても相当悪いというふうな現状にあることは御指摘のとおりでございます。そういうような状況でございますから、民有林労働者の労働条件をよくするということのため、と申しますと、それが主目的のようになりますけれども、森林組合の強化合併、権能の拡大その他によりまして森林組合の体質が強化される。その、体質が強化された森林組合によって、森林組合労務班の、あるいは森林組合の結集しておる民有林労働者の労働条件をよくしていくということを願っておるということでございまして、現在の状況でございますと、森林組合自身が存在するための行動に追われて、そういうような形のものにまで手が回らないというような、極論すればそういうような状態もあり得ようかと思いますけれども、そういうようなものからほんとうに組合員のための森林施業をやり、組合員であって林業労働に従事しておる人については、そういう方々の福祉なり経済的条件なりを向上するということができるような森林組合状態を実現してまいりたいということを考えておるわけでございます。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  218. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 抽象論の答弁だからよくわからない。具体的にどうするか、そういうものを明確にひとつ言うてもらいたいのですよ。林政部長、ありふれた抽象論はいままでもう何回も聞いてきた。林野庁答弁はもう何回となく聞いてきたのですけれども、今度は、合併させたら、労務対策は、こういうことはこうする、失業保険についてはこうするのだとか、年金についてはどうするのだとか、こういうふうに具体的に答弁願わなければ、ただ抽象論なら、何回でも聞いているのですよ。
  219. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 現在の民有林労働者の労賃を一つ例にとってみましても、国有林と相当違うということは、森林組合の組合員である森林所有者の所有規模なり経営規模なりが零細であり、しかも、森林組合の規模も劣弱であるというようなことから、林業経営として体質が弱いということで、賃金も満足に払えないというような状況でございますから、そういうふうな形のものを、ある一定の労働力雇用いたしたとしました場合、年間通して雇えるような事業量の確保ということが、まず、合併をすることによってより可能になるということが考えられるのじゃないか。そういうようなことで労働の機会が確保されますと、同時に、そういうふうなことによる収入ということから賃金もある程度向上させることができましょうし、通年雇用ということで、いままでの失業保険法でございましても、失業保険法の対象にもし得る。余力ができますと退職金の積み増しも出てくる。そういうふうなものは、やはり、森林組合が経済的に強化されてまいりませんとなかなかむずかしゅうございますので、そういう意味において、森林組合の体質を強化していくというようなことを考えてまいりたいということを申し上げておるわけでございます。
  220. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 いま、林政部長は、体質を強化する、変えていくと言われましたが、いま、日本の林業施策で当面取り組まなきゃならぬ問題は何かということですね。ただ伐採をして売り払っていくんなら、収益もあがりましょう。けれども、そういう収益性をねらうよりか、いま、山荒らしをどう押えるか、山の災害をどう押えるか、そして造林面積をどう拡大していくかということが、投資が、どちらかいうと大事なんではないでしょうか。だから、投資のほうを考えた場合には、森林組合からそう収益性が出るとは考えられない。あなたのほうの考え方は、何か合併したらすぐ収益が出てくるような、体質がすぐ変わるような、強化させていくような考えのようだが、そういうことばだけでは現実にはマッチしない。  それなら聞きますが、たとえば造林単価は幾らですか。四十九年度の造林単価、賃金、苗木代、そういう経費を全部ちょっと説明してください。どういう賃金にきめたのか。
  221. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  四十九年度の標準単価でございますけれども、拡大造林の場合は、四十九年度といたしまして、二十三万五千円でございます。四十六年で比較いたしてみますと、四十六年度が十万八千円でございまして、約二・一倍程度になっておるわけでございます。  なお、労賃でございますけれども、四十九年は二千四百円、苗木代十八円五十銭といたしておりまして、四十六年に比較いたしますと、労賃が千百五十円でございますから、約二倍強でございまして、苗木代が、四十六年が九円三十銭でございますので、ちょうど二倍ということでございます。
  222. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 明治時代の人と話をしておるような気がして、ちょっとピントが狂っておるのじゃないかという気がするのです。いままで、四十六年で、一ヘクタール十一万五千円で地元負担がどれだけ要っておったかということをあなたは知らぬのじゃないかと思う。超過負担がどのくらい要っておったか、ただ、国の机上で算定をして単価基準を出しておる。今日でも、四十九年度の予算で二十三万五千円に一ヘクタールの造林を見た。賃金は二千四百円見た。二千四百円で何人分かかって、どうなるのか。実際、二千四百円で働く労働者が今日おるのかどうか。ゴルフ場の球拾いでも、中学生のアルバイトが三千五百円や四千円と言うておるのですよ。二千四百円でどれだけ労務者が集まるのか、働けるのか。いまの物価高騰のときに、どういう基準で二千四百円を出したか。そして、それで森林組合の収益が出るのか。森林組合は、造林すれば造林するだけかえって持ち出し分がふえて、どこから財源をこしらえるか、山の木を売っていくのかということになる。結局、財産の売り払いをしながらあとの拡大造林をしていかなければならぬ。この基準自体が、四十九年度からは本気でやります、林業施策も本気でやりますということを林野庁長官大臣はこの間言われたが、私たちから見ると何だという気がするのですが、長官、どうですか。この単価であなたらはりっぱに計画を立てていけるのか。いま年々造林面積が減ってきておるが、造林計画がこの価格で伸びる自信があるかね。伸びなかったら、あなたは責任を持つかね。長官、どうですか。
  223. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘の点につきましては、たびたび単価の問題についてもおしかりを受けているわけでございますけれども、私たちが、ここで指導部長から説明しましたように、努力した結果、確かに倍率は伸びておるわけでございます。ただ、それが直ちに実勢単価そのものを反映しているかどうかということについては、必ずしも十分ではないというふうに私は思っております。できるだけ実勢単価に近づけるように今後も努力してまいりたいと思っております。また、仕事のやり方等につきましても、できるだけいろいろな改善を加えてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  224. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 山で働く人がどれだけえらい目をするかということは、あなた、林野庁は知らぬのじゃないかと思うのです。山の作業がどれだけ苦しくてえらいかということですよ。にわか雪が降る。にわか雨が降る。大夕立が来ても、かさをさしてやるわけにもいかないし、飛んで帰ってくるわけにもいかない。びしょぬれになってやらなければならぬのですよ。からだをこわす、かぜを引く、栄養も十分とれない。山林労働者がどれだけえらい目をしているかということを考えた場合に、二千四百円という賃金の出し方というものがおかしい。何が基礎だ。二千四百円で、山林労働者として働く労働者があなたらの手で集まるんなら、ひとつ集めてもらいたいと思うのです。そういう見通しがあるんなら集めてみてください。集める自信がありますか。
  225. 福田省一

    福田(省)政府委員 単価につきましては、工程との関連もございますので一がいには申し上げられませんけれども、二千数百円そのものということは、確かに、先生の御指摘のとおり、相当問題があると思います。でございますから、たびたび申し上げますように、この工程の関係、それから単価、賃金の単価の見方そのものに、予算を組む場合の技術的ないろいろな問題があるわけでございますから、実勢と遊離している点も必ずあるだろうと思うわけです。ですから、私は、基本的には実態というものを——ほんとうにその場に適した賃金、その場のほんとうの工程というものをよく見きわめた上で予算を編成しなければならぬというふうに考えます。ですから、予算書にあらわれた数字には相当問題がある、と言っては語弊がございますけれども、実勢に近づけるように、予算編成に際しては大蔵当局ともよく話し合いし、努力してまいりたいというふうに私は考えております。実際のその情勢に合った、地域地域の実態に即した、仕事のできる予算を組んでまいるというふうにしてまいりたいと思っております。
  226. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 たとえば苗木代でもそうですよ。実生でもさし木でも三年かかる。三年の間肥培管理をし、夜昼気温の条件を心配しながら、霜が降ればすぐおおいをしなければならぬ。夜でも寝ないぐらいにして育成事業をやるわけです。その苗を、三年間かかってつくるのを、十八円五十銭という単価の出し方はどういう基準で出したか。あなた、三年間肥料代がどのくらい要るのか。ことし肥料代は何%上がるか。ナスビの苗、ウリの苗でも、ことしは一本が七十円から八十円しようかとしておるんですよ。これは六十日あればできるんですよ。それを三年間かかって、一ヘクタールの苗木で、三十万本あげて、これは実際二十五万しか植えつけができないのですよ。それを、一ヘクタール三年間どれだけ資本が要る。林野庁長官説明してくれ。三年間に二十五万本の育成をするのにどれだけの人分が要るかということを、また、その経費を説明願いたい。
  227. 福田省一

    福田(省)政府委員 そういうことをいまここですぐ即答できないというのはおしかりを受けるかもしれませんですけれども、それぞれ基礎があるわけでございますから、至急調べて勉強したいと思っております。しばらくお待ち願います。
  228. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 だから、資料を読まなければわからぬではなしに、それをいつでも頭に置いてもらいたいんですよ。日本の林業を伸ばすためにはどうするかということは、林野庁長官関係者は常に頭にちゃんと置いておくことです。われわれはちゃんといつでも、杉でもヒノキでも、どの程度経費がかかり、本田へ移す運賃がどのくらいかかり、一ヘクタールにどのくらい下刈り人夫が要るなんというのはざっと頭に置いてある。そういうことが常に頭にあってこそ、そういうことを私たち——林野庁長官に私が言いたいのは、林野庁関係の試験機関はみんな孤立主義をとっていて、研究費の予算もふやしてない。岡山県の勝田郡に関西林木育種場があるが、現地を見に行くと、ああいうのはほんとうに苦労して研究しておる。職員が一生懸命やっている。もっと試験費をふやしたらいいじゃないか。ああいうところは、林野関係者のあらゆる団体がもっと研究に乗り込んでいって、もう少し外部との交流をはかれるような、一つの中心の技術センターというか、そういうものに活用できるように門戸を開放したらいいじゃないかという気がするわけですね。そういう予算一つもふやしてない。森林法改正して森林組合の合併助成をやるといっても、正直言うてこれは本末転倒だと私は思う。あなたたちがもっと現状を十分に知らない限りは、日本の林業は発展しない。  林野庁長官、これから本気でやるということを一言言うてくれ。そうせぬと、ちょっと先の質問ができぬのだ。
  229. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のとおりでございます。前向きで勉強してまいりたいと思います。  試験研究につきましても、相当長期間を要する問題でございますから、なお、御指摘の線に沿いまして努力してまいりたいと思います。
  230. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 この間現地調査をして、兵庫県の東亜の相生カントリークラブ、ゴルフ場造成の実態を見て、あれを見た者はみんなあれではいけないという感情を持ったと思うのですね。ああいうことが平気で行なわれるところに、日本のあらゆるものの考え方、感覚がおかしいところがある。日本は相当高度の技術者が生まれて、技術ができて、技術的には心配ないということを盛んに宣伝しますけれども、現地を見るとお粗末だということが言えるわけですね。ああいうものは都道府県がやるのだからおれは知らないのだ、市町村がやるのだから知らないのだということではもう通らない時代だと私は思う。そう言うと、早く森林法を通してくれと言う。森林法を通したら、これがもうオールマイティーで何でもやれるようにあなたらは宣伝するけれども、やれなかったらどうするのかという問題があるのですね。  それから、いま法案審議中であるから、法案が通ったらこれをすぐ実施に移すという場合に、いま全国でどれだけこの乱売買、乱開発というものが行なわれておるのか、その実態は——農地は林野庁関係ではないから別として、山林原野は林野庁の管轄の区域ですから、責任の庁であるから、大体何カ所ぐらい売り買いがされておるのかはっきりしてもらいたい。その個所数は大体もう確認されておると思うのです。  林野庁長官、この二、三年の間に不動産業者が日本に幾らふえたと思っているか。長官は知っていますか。不動産業者がこの二、三年の間に日本にどれくらいふえたか。約五倍ふえておる。七万あるのです。不動産業者が七万軒日本にある。それは大商社からずっとあるわけです。七万の不動産業者がそこらじゅう買いまくったのだから、それはもう目の行き届かないところはたくさんあると思う。けれども、たとえば十ヘクタール以上の山林原野は、それが民有林であろうと、公有林であろうと、国有林であろうと何であろうと、山林という名のついたもので売買されたところは、林野庁は都道府県や市町村を動員してでも確認はできておるはずだと私は思うが、確認しておられますか。
  231. 福田省一

    福田(省)政府委員 いま御指摘の、どれくらい山林がそういった形で売買されているかという御質問でございますが、五ヘクタール以上についておおむね調査したところによりますと、十九万七千ヘクタールでございますから、約二十万ヘクタールというものはそういう取引をされておるという調査ができております。
  232. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 私たちはいつもふしぎに思うのですが、たとえば岡山県に佐伯町というところがあるが、ここは兼松江商が買っておる。約五百町歩ある。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 そして、その中に保安林が七、八十町歩あるそうです。買いっぱなしですよ。何も手をつけない。ここはもう自然環境、風光明媚なところなんですね。何に使うかというと、セカンドハウスだとか、ゴルフ場だとか、レジャーだとか、いろいろな総合レジャー施設をつくるということになっておるようですが、買いっぱなしですね。こういうところは至るところにある。いま、大企業、大商社が買いっぱなしで手をつけずにやっておるところがたくさんあるわけですよ。これらをどうするか。先ほど諫山委員が質問されましたが、どうするのか。これから森林法を通して規制をやりますと言っても、規制したら買い戻しという問題が起こるかもしれない。ところが、林野庁は国有地を減さない、ふやすという方向で取り組みますということを、あなたは先ほど答弁されたのです。買い上げの価格を管理課長に聞いたら、一ヘクタール十万円ぐらいなら今後買ってもよろしいという御意見がある。一ヘクタール十万円で買えるという感覚で林野庁はおるのか。むだな山というか、金があり余って、山林所有者をだまして、どんどんむちゃくちゃに買った山があるとするなら、それを地方公共団体なり国が買い戻す、買い取るということを考えない限りうまく調整はつかないと思うのです。しかりおく程度になってしまうと思うのです。だから、一ヘクタール十万円ぐらいで買い戻すという単価を出した林野庁の頭の程度を私は疑うのですが、長官、どうですか。どういうわけで一ヘクタール十万円、坪三十三円なのか。今度地方公共団体が、健康保養林ということで県が買う場合には補助を出すといって、一億七千万余りの予算を組んだ。けれども、ほんとうに日本の山を守っていこうとすれば、そういう一ヘクタール十万円ぐらいで買うという考え方ではやらないということですよ。買わないという主義ですよ。買い取ることができない。長官、どうですか、その点については。
  233. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のように、都道府県において、そういった乱開発防止のためにぜひ購入したいというところは、大体、同じ山林といっても、比較的都市に近いところであろうと思います。ですから、平均していま申し上げたような価格で組んではおりますけれども、場所によっていろいろな差はあろうと思います。これは実勢価格に近づけたいと努力しながらも、その中できまってきた単価でございますので、できるだけ運用面で計画が達成できるようにしていきたいとは思っております。  ただ、この価格の問題につきましては、先ほど青森県の例もございましたとおり、もう一けた多い場合もございます。非常にその点については問題もあるわけでございまして、実勢単価をよく調べて、それで予算編成に全力を尽くすという基本的な姿勢は今後も継続してまいりたいと思います。ただ、こういう制度はようやく芽をふいたというところでございますので、これを少し育てていきたいと思っておるわけでございます。
  234. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 長官のいまの答弁を聞くと、いまこれからやろうとするところで、いますべり出しだから、これから本気で考えると言われたのですが、この点はもっと真剣に考えて取り組んでもらわないと、言うてみるだけでは実効はあがらない。私たちの立場から申し上げると、そういう気がする。これから本気で国有地をふやしていくという姿勢を持ってもらわないといけないと思うわけであります。  次に、私は沖繩の林業についてちょっと聞きたいのですが、林野庁長官は現地調査に行かれて、沖繩の林業の実態を見られたわけですけれども、戦後二十数年間異民族に支配された、その中で沖繩県のささやかな林業政策が進められておる。この沖繩の林業について取り組もうとする考えがあるとするならば、その点をお答えを願いたい。これが第一点です。  それから、二番目は、先般基地返還が一部なされた。しかし、基地返還というのではなくして、演習地の返還だということなんです。一部ですよ。しかし、その中で私たちが重要な関心を持っておるのは、沖繩の国頭村の、あの国有地の演習地ですよ。あれがどの程度返ってくるのか。その実態を具体的に説明を願いたいのです。  以上二つの点について……。
  235. 福田省一

    福田(省)政府委員 先般沖繩に参りまして、本島の北部の国有林、それから翌日西表島を見てまいったわけでございますが、率直に申し上げて、私は、自然保護を重視して経営しなければならぬとここではお答えしたので、相当りっぱな林相だろうと思って実は行ったわけでございますが、意に反して、その林相の貧弱なのには驚いたわけでございます。これは天然林です。遠くから見るとまことにうっそうとした天然林ですが、中に入るとほんとうに情けない林なので、これを今後どういうように持っていったらいいか、実に、これからの重要な問題だと考えたわけでございます。自然条件も非常に悪いところでございますし、気温とか、雨量とか、その他はよろしいのでございましょうけれども、そこへもってきて、西表に部分林の制度もございますし、これの契約の問題についても相手方が非常に困っておる実態も聞いてきたわけでございますから、やはり、重点的には、この地区林につきましては、自然保護ということを重点にしたきめのこまかい施業をやっていかなければならぬというふうに思っております。植えられる樹種としては、あそこでは琉球松は確かでございますが、その他の樹種については、どういうものがいいかということははっきりいたしておりません。したがいまして、研究問題についても、やはりここに相当経費を投じて、今後実用化研究を主とした研究もやっていかなければならぬとも思ったわけでございます。  第二点の演習地の問題でございますが、ほとんどこれは米軍の演習用地に使われている場所でございます。この点については、防衛施設庁とも連絡をとりまして、この森林の育成については相当配意した対策をとっていきたいと思ってはおりますが、これは私だけの考えでどうこうするというわけにまいりませんので、やはり、あの全体の森林をよくしていくという方向で、できるだけ関係官庁とも折衝をし、努力してまいりたいというふうに感じたわけでございます。
  236. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 答弁にならぬじゃないか。もっと具体的に……。
  237. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 先生からの第二問の国頭の演習地の返還地の問題でございますが、御承知のように、国頭。演習地の貸し付け地は、国有林がおおむね七千九百ヘクあるわけでございます。まだ正式の通知は参っておりませんけれども、私のほうで防衛施設庁のほうへ照会をいたしまして一応知り得たところによりますと、南のほうの福知ダム敷及びその周辺、それから新川ダムのダム敷とその周辺、それから安波というところ、この三地区でおおむね三百二十ヘク、これは実測するとまた変わるかもしれませんけれども、おおむね三百二十ヘクが返ってきておるというような状況でございます。  それから、いま一つ、先ほど先生から、林野率八〇%以上の町村の数がどれくらいあるんだというお話しでございましたが、林野率八〇%以上という条件だけでございませんで、そのほかに耕地率が一〇%未満、林業兼業農家率が一〇%以上という三つの条件を満たしておる町村の数で六百三十九町村という数字がございますが、先生がおっしゃった一つだけの条件の数字はあいにくまだ手元にありませんので、御容赦願いたいと思います。
  238. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 第二の問題なんですが、七千九百ヘクタールの中で、福知ダム、新川ダムといったら、その三百二十ヘクタールは、これはもうダムの敷地なんですね。ダムをつくっているんですから、これはもう演習には使えないわけです。こんなものが返還になるなんていうたらおかしな話で、これは本格的に沖繩の演習地の返還を交渉しないといけないと私は思うのですね。そうでないと、沖繩林業というものはいよいよ成り立たないですよ。  特に、境界線の問題がはっきりしないということで調査をやっているんですが、今度の予算で沖繩の営林署の職員を何人増員するんですか。そうして、ハブや何やかやの危険手当を出しなさいとこの前言うたのですが、そういう職員の待遇改善についてはどれだけの予算をふやすのですか。どうですか、林政部長。
  239. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 国有林の定員につきましては、現在、国有林野事業の運営改善計画を進めておる最中でございますので、国有林の全体の定数といたしましては、むしろ、定数を予定計画に従って減少してまいるという計画を持っておるわけでございますが、具体的に沖繩の営林署の問題につきましては、先生から御指摘のような案件がございますれば、四十九年度の実際の仕事のやり方を考えまして雇用をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、マムシ手当と申しますか、危険手当と申しますか、そういうような点については、この前先生から御指摘がございまして、私どもで研究いたしておりますが、これは先般の先生からの御質問の際にも林野庁からお答えいたしたと思いますけれども、林野庁だけで決定できない問題もございますので、そういう方面とも寄り寄り協議中でございます。
  240. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 林政部長、マムシはほかの機関には関係ないでしょう。山に入らなきゃだめなんでしょう。山に入るといったら、もう営林署の職員しかないじゃないですか。何でほかの機関と相談してきめなきゃならぬのか。そんなに林野庁は主体性がないんですか。どうですか、林政部長。
  241. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 私、つい内地のつもりでマムシと申し上げましてはなはだ恐縮でございますが、ハブの間違いでございますが、ハブ手当ということは、山の中に入るのだから林野庁だけでできるではないかというお話しでございますけれども、正式に役人の手当ということでございますと、役人の給与として給与するという問題につきましては、人事院その他給与関係の役所と協議を要する。もちろん林野庁独自でやれる問題もあろうと思いますが、その点はいろいろ検討いたしておる最中でございます。
  242. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 林野庁にはその程度の幅のある予算はあると私は思うのです。沖繩の営林署の職員が何百人もおるわけじゃないのですよ。ハブの手当ぐらいできるでしょう。たとえば一つの例を言うと、予算がこれしかないからということで、お客さんの接待をするのにも、ラーメンしかごちそうする予算がないからラーメンだというわけにいかないでしょう。そういう場合、一々ほかの各省へ連絡をとって、ランチにしますかということを相談しますか。そんな臨機応変なささやかな問題を処置できないような林野庁なんですか。林野庁はほんとうにそういう権限が少ないのですか。  ハブの手当ぐらいで人事院に相談しなければ出せないという、そんなぎごちない、かた苦しい、融通のきかない林野庁ですか。林政部長、どうですか。
  243. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 ハブの手当ということでございますと、これはまあ一種の危険手当ということになるわけでございますから、危険手当ということになりますと、林野庁でやっております作業の中にも危険を伴うものがあって、それに対する危険手当というものとの牽連の問題も出てまいりますし、また、林野庁だけでない、ほかの公務員のそういうような危険手当というものとのからみがあるわけでございますから、そういう意味において、林野庁独自で決定できない問題があるということを申し上げたわけでございまして、目下検討中でございます。
  244. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 林政部長、これは真剣に考えてやってもらいたいのですよ。ほんとうにあぶないのですからね。これは内地のマムシよりはあぶない。それだけに、まかり間違えば命を落とすとか、不具者になるというものだ。身体障害者を一人出したらたいへんなことになるのですよ。そういうことを考えたときには、これは人道的な問題なんですよ。だから、給与体系そのものの論理よりか、人道的な立場に立って考えないといけないと私は思うのですよ。この問題は、至急に解決するならするということで御答弁願いたいわけです。長官、部長だけではなしに……。
  245. 福田省一

    福田(省)政府委員 これはもう、協議するところがあるという話もいまわかっておりますので、至急そのように努力します。マラリアはすっかりなくなったそうですけれども、ハブはまだ残っておるそうですから、原則的にはハブをみんななくすればいいんでしょうけれども、その方法もなかなかむずかしいようですから、その手当のほうだけは至急解決するように努力いたします。
  246. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 もう一つだけ申し上げるが、長官、岡山県の奥津の森林組合を見たわけですが、あの森林組合は非常に優秀だということを見られた際評価されたのですが、あの森林組合のある町で、建設省がダムをやるというのでいま進めておるわけです。それで、調査をさせるかさせないかでは、拒否反応が強くて、立ち入り調査も実地調査もできないということになっておるのです。あそこにダムをつくられたら、優秀な森林組合が壊滅的打撃になる、そして、長い間かかって植林をしたところも、すそ野のいいところはほとんど水没してしまうという事態がいまや起きようとしておる。関係地区住民は反対だと言っておるわけです。建設省はどうしてもやると言っている。長年のモデル的なケースとして大臣から表彰された森林組合なんですね。そういう優秀な森林組合のある町村が、いまや風前のともしびとして、ダム建設で埋没しようとしておる。その場合に林野庁としてはどういう態度をとるのですか。ちょっと見解だけ聞いておきたいのです。
  247. 福田省一

    福田(省)政府委員 私の立場としましては、しばしば申し上げましたように、日本は、比率では森林は多いけれども、これは一人当たりにするときわめて少ないということをいつも申し上げておるのです。ですから、そういう問題はいま初めて伺いましたので、これは重大な問題でございますから、それはどういう目的でどういうことに使うのか、向こうの立場もございますでしょうけれども、林野庁としての立場に立ってよく実情を調べ、聞いて、折衝してまいりたい、このように思います。
  248. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 終わります。
  249. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は、明二十七日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十五分散会