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1974-02-19 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十九日(火曜日)     午後二時四十二分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       伊東 正義君    今井  勇君       上田 茂行君    小沢 一郎君       金子 岩三君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    佐々木義武君       中尾 栄一君    本名  武君       粟山 ひで君    井上  泉君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    美濃 政市君      米内山義一郎君    諫山  博君       瀬野栄次郎君    稲富 稜人君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         林野庁長官   福田 省一君         林野庁林政部長 平松甲子雄君  委員外出席者         議     員 芳賀  貢君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 二月十八日  農林年金制度改善に関する請願(三池信君紹  介)(第二二二三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措  置法案芳賀貢君外十名提出、第七十一回国会  衆法第一七号)  森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正す  る法律案内閣提出、第七十一回国会閣法第一  一九号)      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  第七十一回国会より継続審査となっております芳賀貢君外十名提出、国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措置法案、及び内閣提出森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
  3. 仮谷忠男

    仮谷委員長 両案につきましては、第七十一回国会におきましてすでに趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 仮谷忠男

    仮谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  5. 仮谷忠男

    仮谷委員長 両案について審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今井勇君。
  6. 今井勇

    今井委員 私は、ただいま議題となりました両案につきまして、若干の質疑を行ないたいと思います。  最初に、芳賀貢君外十名の提案にかかります法案につきまして質疑を申し上げたいと思います。  森林の果たします役割りは、木材生産のほか、国土の保全あるいは水資源の涵養、自然環境保全などの機能を通じまして、国民生活に深く結びついております。しかも、その造成にはたいへん長い時間を要しますので、この森林の持つ多面的な機能の調和をはかりながら、長期的な観点からその整備をはかることによりまして、今後のわが国国民生活の向上及び国民経済発展に寄与することが強く要請されているところであります。  木材需要動向につきましては、さきに政府が発表しました「「森林資源に関する基本計画並びに「重要な林産物需要及び供給に関する長期の見通し」」によりますれば、昭和四十六年では、総需要約一億立方メートルのうち、国産材で四千七百七十万立方メートル、外材で五千六百万立方メートル、すなわち、国産材の占める割合が四六%で、外材が五四%であると示されております。これが十年後の昭和五十六年度では、総需要が一億三千四百八十万立方メートルにふえる一方、国産材は四千九百七十万立方メートルで、全体の三七%にすぎず、あとの六三%、すなわち八千五百万立方メートル余が外材にたよらざるを得ないというふうにいっております。この外材輸入情勢は、すでに、わが国木材輸入量世界の総輸出量の三〇%を占めておりまして、しかも、世界各国におきましても、資源政策及び環境保全の両面から輸出に対する規制が強化されておりますし、さらに、最近のような石油問題等を契機といたしまして、国内的にも、外貨の調達という面から、外材輸入に対してよりきびしいものと覚悟せざるを得ないのであります。したがって、わが国におきましては、森林資源を整備し、これを活用していくことが従来にも増して重要な課題となってきております。このような森林資源充実基盤となるものが造林であることは申すまでもありません。  一方、わが国におきます森林面積及び素材生産量を見ますと、民有林の占めるウエートが非常に高いのであります。すなわち、面積で申しますれば、全体の森林面積の五七%に当たります千四百六十五万七千ヘクタールが民有林でございまして、また、素材生産量におきましても、全体の六〇%を占めておるのであります。このように、非常にウエートの高い民有林につきましては、政府が示しました「森林資源に関する基本計画」でも、資源充実基本的な目標を設定いたしまして、民有林につきましては、昭和四十六年現在約七百十万ヘクタールの人工林を、昭和六十五年度までには一千三十一万ヘクタールにしようというふうにしておるのであります。しかし、最近の民有林造林動向を見てまいりますと、昭和四十五年以来の木材価格の低迷あるいは国産パルプ需要量鈍化傾向などからして、伐採面積が減少いたしております。また、林地開発の進展に伴いまして、土地利用が非常に不安定であります。また、造林対象の位置がだんだんと奥地へ進んでまいりました。加うるに、労働力が不足いたしますなどの原因が複雑に重なり合って、昭和三十六年の三十三万八千ヘクタールをピークにいたしまして、減少の傾向にありまして、昭和四十六年では、二十五万六千ヘクタールというふうに、まことに憂慮すべきものであります。  私どもは、政府を督励いたしまして、小規模の保有層対象にした、計画的しかも集団的な造林あるいは保安林などの公益性の強い地域での造林などに対しまする助成の強化をはかるほか補助単価引き上げ等をやってまいっておりますが、先刻申し上げておるとおり、造林、特に民有林造林停滞をいたしておりますことはいなめない実情でございます。  このようなもろもろ原因が重なり合って停滞しております現在、今後の情勢を踏まえます場合に、この停滞をしておりますもろもろ原因をつぶさに検討して、きめのこまかい施策を講じなければならないと思うのでございます。  そこで、芳賀貢君外十名の提案によります国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措置法案ということでは、直ちにこの民有林造林に国がかわって行なおうというふうに言っておられますが、はたしてそれでこの停滞状況民有林造林の問題が片づくであろうか、私は、若干の疑義を持つものでございます。  したがいまして、以下二、三の点について具体的にお伺いをいたしてみたいと思いますが、まず、第一番目でありますが、これは、森林を持っております人たちが、一体どんな形でわが森林を育成し、育てて、そして、伐採に至るまでにどのような気持ちでこれを行なっているだろうかというふうな基本的な問題でございます。私は、言ってみれば、わが子を産み育てる母親にも似た愛情というふうなものが農民の根底にありまして、自分の持っている森林を毎日いつくしみながら、自分らの手でこれを守り育てるという、いわゆる愛情基本であろうと思います。したがって、今後のいかなる施策につきましても、そういった農民の素朴な感情というものを無視してはできないであろうと思います。  この場合、わが国林業者の多くは、実は、経営規模が非常に小さいものが多いわけでございまして、したがって、個別に経営をします場合には力不足ということがあります。そのような場合には、現在におきましても、森林組合など、林業者組織する団体の自主的な努力によって補完をし、さらに、場合によりましては、市町村、府県あるいは造林公社森林開発公団などの、いわゆる公営の手によって行なっている場合もありましょうが、いずれの場合でも、自分の山は自分の手で育てるという、林業者の自主的な意欲を、しかも、その基盤に立って行なわれていることをたてまえとしておると思います。このことは、林業基本法の第七条にも「国及び地方公共団体は、」として、林業の「施策を講ずるに当たっては、林業従事者又は林業に関する団体がする自主的な努力を助長することを旨とするものとする。」というふうにうたってあります。ところで、今回提案になりました国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措置法案では、林業者との自由な契約を基礎として国営の分収造林を進めるたてまえにはなっておりますが、先国会での提案理由説明によりましたら、国有林野事業組織、技術、労働力及び資金を活用して民有林造林を行なうんだというふうに述べられております。このことは、先ほど私が申しましたところの、みずからの山はみずからの手で育てたいという農民の素朴な感情というものからしますと、なかなか受け入れがたいところがあるように思うのであります。しかも、同法案の第三条の立て方を見ますれば、「農林大臣は、森林法第四条に規定する全国森林計画に即して、昭和四十八年度以降十五年間において実施すべき国営分収造林契約に基づいて行なう造林事業に関する計画」をまず立て、そして、国営分収増林計画におきましては、「国営分収造林契約に基づいて行なう造林目標及び造林事業の量について定める」となっております。しかも、提案理由によりますれば、今後十五年間に百万ヘクタールの造林を行なうのだというふうになっております。これは、民間の協力なくしてこういう計画ができるはずはないわけであります。こういう第三条の立て方からいたしましても、林業者が不安にかられるのもゆえのないものではなかろうと思うのでありますが、御提案になりました方は、民有林造林推進をする主体のあり方について、一体どのような基本的認識を持っておられるのか、まず、その点からお伺いをいたしたいと思います。
  7. 芳賀貢

    芳賀議員 社会党提案のいわゆる国営分収造林法案趣旨並び内容については、すでに、前国会におきまして、衆議院本会議並びに当委員会において詳細を説明してありますので、今井委員においても十分御理解のことと思うわけでございます。  ただいま御指摘のありました、わが国林業の置かれた現状等については、今井さんの認識も私どもの判断もおおよそ一致しておる点があるわけでございますが、ただ、一番大きな問題は、人口、食糧問題にいたしましても、あるいは森林資源の問題にいたしましても、わが国農林業のになうべき重要課題としては、いかにして資源政策を強力に進めて、国民経済に関係ある食糧の供給あるいはまた木材生産供給を高度に高めるかということが重要な任務であるというふうに考えるわけでございます。その意味において、公有林を含めた民有林の、特に森林生産力増大施策につきましては、何としても、その基盤をなすところの造林事業というものを、あらゆる角度から可能な施策を講じて実行するということは論を待たないところであります。特に、わが国における二千五百万ヘクタールに及ぶ森林の総面積のうち、七百五十万ヘクタールの国有林面積を除きましても、おおよそ千八百万ヘクタールの民有林が現存しておるわけであります。この民有林の持つ最も弱点とするところは、蓄積においても、毎年の成長量におきましても、国有林との比較においては非常に低下しておるわけであります。したがって、これらを、個人が所有する民有林造林を通じての生産力を拡大するということになれば、もとより、今井委員が言われたとおり、自分の山については、所有者である自己が最大の生産努力を注いで、そうして高度の森林の形成をやるということは最も望ましい状態でありますけれども、しかし、それにはいろいろな隘路があるわけでございます。結局、これを達成させるためには、国としても、十分な林業政策を通じて民有林生産拡大をはかっていく、その一つの最も効果的な適切な手段といたしまして、今回、民有林に対する国営分収造林制度というものを法制化するために御審議を願っておるわけであります。  そこで、この分収造林の歴史的な経過を申しますと、いま初めて国が行なう分収造林制度というのではなくて、たとえば大正九年には、公有林対象にした、いわゆる官行造林制度というものが制度化されまして、自来、五十数年にわたって、歴史的な変遷と、所期の目的達成の相当大きな成果をあげていることは御承知のとおりであります。これは、当時公有林に限定されておったわけでありますが、その後、公有林の施業地に隣接する部落有林、あるいはまた個人の所有する水源林等についても官行造林対象を拡大するということで行なってきたわけであります。現在は、昭和三十六年に国会において官行造林法が廃止の運命に立ち至って、まことにわれわれは残念に思っておるわけでありますが、それにかわるものと言っては、いささか質的な相違がありますけれども、いわゆる政府の出資あるいは政府資金によるところの森林開発公団法が、これは昭和三十一年に成立いたしまして、特に、官行造林制度が廃止されてからは、水源林を中心として、公有林対象にして分収造林事業を今日継続的に行なっておるわけであります。  もう一つの分収造林の形態といたしましては、昭和三十三年の国会において私どもが分収造林特別措置法の成立をはかりまして、この分収造林特別措置法が、今日、都道府県段階におけるいわゆる造林公社等法律上の根拠をなして、相当大きな成果をあげてきておることは御承知のとおりであります。ですから、この分収造林制度というものは、わが国において、歴史的にも五十年以上の経過というものを持っておるわけでありますし、分収造林の持つ特徴といたしまして、森林所有者である所有者の場合においては、自己費用負担をしない、みずから造林を行なわないという形の中で、いわゆる分収方式で、国あるいは公的な造林公社あるいは森林組合等が、いわゆる費用負担者あるいは造林者の立場の上に立って、二者契約あるいは三者契約の中で、所有者に対しては直接的な生産努力を期待しない形で造林事業というものは進んでおるわけであります。こういうことは、個人所有林に対しまして分収造林方式というものを全面的に当てはめるということについては、今井委員が申されたとおり、いささか問題はあるといたしましても、森林の持つ公益的な機能あるいは国民経済的な重要性というものを考えた場合においては、国といわず、地方公共団体といわず、個人の持つ民有林に対しても、国の一定の方針に基づいて、特に長期計画に基づいて、これを達成するための助長あるいは誘導政策というものがどうしても今後も必要になるわけであります。そういう意味において、現存する各種の造林制度というものはありますけれども、それに加えて、かつての官行造林制度というものの範囲を広げて、しかも、今後行なう場合においては、既設の造林公社等の分収造林事業というものに対して圧迫を加えない、その分収造林事業を行なうことが困難であるというような条件の個人林地に対しても積極的に国が分収造林を行なう、そういうことが目的になっておるわけでありますからして、御懸念されるような問題というものはすでにもう解決済みとわれわれは考えておるわけでございます。  それから、次に申し上げたいことは、今後、造林計画を立てまして、十五年間におおよそ百万ヘクタールの分収造林を進めることになっておるわけでありますが、この分収造林全国計画の設定に上から押しつけるような欠点があるではないかというような御指摘でございますが、これは、御承知のとおり、全国森林計画にいたしましても、たとえば昭和三十九年に成立いたしました林業基本法の第十条においては、森林長期的な基本計画樹立並び林産物長期需給計画を立てて、これを公表しなければならぬとなっており、それを受けて、現在の森林法の第四条におきましては、全国森林計画を、中央森林審議会意見を聞いて、樹立をして、公表をする、その全国森林計画策定の中に、たとえば造林に関する事項、あるいは林道に関する事項等必須事項として必ず策定されなければならぬということになっておるわけであります。したがって、本法案の持つ分収造林の十五年間にわたる全国計画というものは、この林業基本法並び森林法の定めるところに基づいて長期計画を設定しておるわけでありまして、国営分収造林計画自身がひとり歩きをするというのとはいささか違うわけであります。この点は、本法案を十分読んでいただけば、この一連の森林基本法並び森林法計画策定に歩調を合わせて、その一環としての十五年計画——これも、全国森林計画が五年ごとに十五年計画を立てるということになっておりますので、本法案におきましても、十五年計画で百万町歩の分収造林をやるということになっておるわけであります。したがって、地元森林所有者林地所有者皆さん方がこの制度を十分理解されまして、国営分収造林制度によって自分の持ち山の造林をぜひ進んで進めたいというような場合には、今井委員指摘のとおり、これは下から積み上げるという方式で、都道府県知事地域の分収造林計画を立てる。その場合には、都道府県森林審議会並び関係市町村長意見を聞いて地域計画を立てて、農林大臣に実現のための申請をする。そういう運びになっておるわけでありますからして知事関係市町村意見を聞いて策定して農林大臣に申請する。その計画立案の中で、地元対象者であるところの林地所有者皆さん方の御意向が十分反映されるようにしていかなければならぬというふうに考えておるわけであります。  もう一つ指摘のありましたことで、国が直接的に分収造林事業を行なうということになれば、この法案提案理由の中におきましても申しておりますように、つまり、国営分収造林事業でありますからして、この国の責任事業体としては、国有林野特別会計に裏づけされた国有林野事業が直接この事業を担当するということになるわけであります。もちろんこれは直営事業ということになるわけでありますが、現在の国有林野事業においても、方式はもちろん国営直営事業でありますけれども、その事業実行方法については、いわゆる直用方式によるところの直接の事業、あるいはまた請負方式によるところの直営事業というふうにこれは内容が分かれておりまして、この二つをあわせて直営事業と総称しておるわけであります。  問題は、この十五年間に百万ヘクタールということになれば、年間平均にいたしますとおおよそ年六万六千ヘクタールの造林事業を行なうということになるので、これは最近の公社造林あるいは公団造林の実績が年間それぞれ二万ヘクタール程度でありますから、これをはるかに上回る事業ということになるわけであります。  ただ、現在の国有林野事業の包容するいわゆる基幹労働力、実際に現場において事業を担当する国有林基幹労働力状態がどうなっておるかということについては、すでに御承知と思いますけれども、たとえば実例といたしまして、常用作業員と称する——これは日給制のもとに置かれておるわけでありますが、常用作業員がおおよそ一万七千人、それから季節的に反復雇用される定期作業員、もちろんこれも日給制でありますけれども、これらの作業員が一万六千人であります。この二者を合わせましても三万三千人というのが、これが国有林事業現場基幹労働力ということになっておるわけでありますが、この三万三千人の貴重な基幹労働力をもととして現在の国有林野事業全般事業というものが、いわゆぬ直用直営方式で実施されておるかというと、なかなかそうではないわけであります。たとえば立木素材生産にいたしましても、四十八年はおおよそ一千八百万立米素材生産を行なったわけでありますが、そのうちの一千万立米というのは、これは山の現場におけるいわゆる立木処分ですね。立木の売り払い処分による生産が一千万立米、残り八百万立米というものが、これがいわゆる素材生産ということになるわけでありますが、これに対しましても、その六〇%がつまり直用生産です。国有林労働者が直接生産するのが八百万立米のうちの六〇%、あとの四〇%は、これは請負生産方式で行なっておるというのが実態でございます。  あるいはまた、この造林事業にいたしましても、年間七万ヘクタールに及ぶ、いわゆる新規造林を行なっておるわけでありますが、この造林事業についても、全面的に直用方式で実行しておるわけではないわけであります。たとえば新植の事業にいたしましても、あるいは植林した森林下刈りを毎年保育事業として行なう場合においても、おおよそその四〇%程度請負作業ということで行なっておるわけであります。  こういうような現在の国有林事業に対する国有林野基幹労働力就業構造ということになっておるわけでありまして、今後、法律が通りまして、新たに民有林に対する分収造林というものを——もちろんこれは国の責任でありますけれども、全面的に、国有林の直接の作業員が一年間に六万ヘクタール以上の造林を完全に行なうことができるかということになりますと、現在の事業だけでも十分労働力が確保されておらないで、三万人の職員がいまだに日給制状態あるいは季節的な雇用関係に置かれておるわけでありますから、こういう問題を根本的に解決しなければならぬというような重大な課題をかかえておる中において、それを半ば放任するような形で、国有林労働力を新しい分収造林事業に集中的に投入するということはなかなか至難のことになるわけでございます。これが現況であります。  したがって、この事業を行なうということになれば、もちろん、全国に十四の営林局あるいはその下に必要に応じて多数の営林署あるいは担当区というものが散在しておるわけでありますから、重点的には、営林署所在あるいは事業場所在市町村等においては、直接的に分収造林事業に参加して行なうことも可能であるといたしましても、全国民有林所有者皆さん方から積極的な御要望が出る場合においては、責任所在を明らかにした形で、その実施方法としては、あるいは地元森林組合に対する事業の委託を行なうとか、あるいはまた、最近だんだん増加の傾向にある森林組合労務班がおおよそ六万人を数えるに至っておるわけでありますから、こういう生産に取り組む現場労働組織等についても、その内容というものを、質的にもあるいは雇用関係面等においてもその所在を明らかにした形の中において、りっぱな山林労働者としての、労働力としての育成を行なう中において、地元労働力を、地元民有林生々発展のためにいたす仕事でございますから、十分な御協力をお願いするというようなことをわれわれとしては展望いたしまして、予定いたしまして、この事業の完全な遂行というものが、むしろ過疎にだんだん追い詰められておる地元の農山村の労働力林業発展の中において十分に協力してもらう、むしろ雇用の場を拡大する、あるいは地元労働者としての労働に対しての十分な位置づけと評価を行なう中において、山を守る、そういう労働というものが社会的に発展するようにしていきたいというふうに考えておるわけであります。  少し長くなりましたけれども、十分御理解を願うために、つとめて御説明を申し上げたわけであります。
  8. 今井勇

    今井委員 たいへんじゅんじゅんと御説明をいただきましたが、私は、いまの十五カ年百万ヘクタールのものにつきましては、これから申し上げる二つの点でまだ納得ができないのであります。  一つは、いまお話しのありましたように、小さい林業者自分ではできないようなもの、いわゆる資金不足により造林が円滑にできないような場合には、公的機関による方法が開かれておる。おっしゃるとおりでございます。その実績を見てまいりますと、私は、けっこう円滑に実施されているのではなかろうかという認識を持っております。たとえば、民有林におきます分収造林の実績、これは民有林の全体の造林面積停滞ぎみで、むしろ減っておりますが、分収造林の実績はこのところ微増をいたしております。しかも、昭和四十六年度では約四万五千ヘクタールでありました。この実績は、先ほどお話しがありました官行造林が戦後最も多く行なわれたといわれます昭和三十四年の一万三千ヘクタールに比べまして約三・五倍あります。また、府県におきます造林あるいは林業公社によります分収造林は、現在、三十三都道府県、三十六公社が実施しておるようでありますが、年々造林面積もふえてまいりまして、昭和四十六年度には約一万八千ヘクタールというふうに私は理解をいたしております。また、森林開発公団につきましては、もう御存じのとおり、全額国の出資あるいは融資により実施されておりますが、これが実施されました昭和三十六年以降四十七年に至ります十二年間に二十一万九千ヘクタールやっておりますが、これは、旧官行造林が、御承知のとおり、大正九年に発足以来三十六年に終わりますまで、約四十年にわたって行ないました面積が約三十一万ヘクタールでございまして、これに比べますと決して見劣りのできない数字であろうと私は思うのです。そこで、このように公社、公団等の分収造林がうまくいっておりますゆえんのものは、それぞれの造林費用は公社、公団が負担をし、実際の造林行為は地域森林組合などの労務組織によって行なわれているところに負うところが多いんじゃなかろうかと私は思います。すなわち、非常に地域に密着した形で労働力が確保され、公社、公団の計画性と相まってうまくいっているんじゃなかろうかと私は思う。  そこで、先ほどのお話しでありますが、このように地域の密着性が非常に強いものでございますから、私は、国有林野面積を調べてまいりますと、地域別に見ますと、北海道、東北で約六八%でございます。約七割。それを除きます地域で三割でございますが、一方、民有林野の拡大造林対象地というのを調べますと、東北、北海道で約三割、その他で七割になっております。ちょうどその逆でございます。そういたしますと、適地が逆の傾向にあり、しかも、その労働力というものは流動性はあまりないんだろうと私は思う。非常に地域に密着した労働力であろうと思います。特に、先ほどのお話しのとおり、営林署間の二署間流動でもなかなかうまくいかないという実態を踏まえますと、はたして十五年間で百万ヘクタールというものができるのであろうか。先ほどの御答弁でありますと、摩擦を起こさずにうまくやれるのだというお話しでございましたが、私は、これはどのような地域分布に百万ヘクタールがなっておるのか存じませんが、少なくとも、法案を読む範囲内におきましては、いまの私が申し上げた二点の理由からでも非常にむずかしいと思います。さらに、こういうことをやりますと、現在やっております公社、公団等が造林いたしますものと、場所によっては当然競合をいたすと思います。また、国営分収造林が、お話しのとおり、国有林みずからの労働力というものを活用して実施するということになりますれば、せっかくいま育成強化されつつある民有林造林のにない手というものに混乱を与えやしないだろうかというふうなことで、私はたいへん懸念するものでございます。この点についてはいかがお考えか、御答弁を願いたいと思います。
  9. 芳賀貢

    芳賀議員 ただいまのお尋ねでありますが、もとより、私どもといたしましても、現在動いておる公団分収造林あるいは公社造林の実績を過小評価するものではありませんが、どうして伸展の状態にあるかという大きな原因としては、これに対する国としてのてこ入れが相当強力に行なわれておるということを見のがすわけにはいかぬと思うのです。たとえば民有林に対する造林の補助制度、あるいは補助造林とか融資造林と言われるわけでありますが、それでは現在の公社造林に対して、県の造林公社が分収造林を行なう場合において、公社が、費用負担者として、造林者としての立場に立って、森林所有者である個人との間において分収契約を締結するわけでありますが、費用負担の面においても、決して、公社自身が自まかないの費用費用負担者としての使命を果たしているわけではないわけであります。それは、最近の民有林の、特に拡大造林に対する補助制度等を見ても、昭和四十二年から団地造林の補助制度が相当拡大されまして、現在におきましては、三年間に一団地が二十ヘクタールと、一年間で十ヘクタールの施業団地を対象にいたしまして、これに対しては国の造林補助率はおおよそ六八%——公社の行なう団地造林については造林費の六八%、おおよそ七割の造林補助というものが、特にこれは国の予算から支出をされておるわけであります。そういたしますと、造林費用の七割を国が造林補助として支出をしておる。実際に造林する場合の新植の費用等については、公社が三割分だけの調達をすれば実行ができる。まあ、極端な例でありますが、手抜きというわけではありませんが、その七割補助の範囲内において造林を施業するということも、決して、絶対にできないんではないという実例をわれわれは承知しておるわけであります。  さらに、また、補助残の費用については、現在は、農林漁業金融公庫から九〇%限度の三十五年償還、二十年据え置きというような、そういう長期制度資金が出されておるわけでありますからして、いま今井委員が言われたとおり、公社造林が実績をあげておるではないかと言われましても、国の大きな資金面における、財政面におけるてこ入れがあってこそようやく一年間に二万ヘクタール程度の分収造林を行なっておるということになるわけでありますからして、十分な成果ということにはならぬと思うわけですね。  そこで、国が七割も助成をしておる、あるいは必要な資金の融通を行なっておるということであれば、この際一歩進めて、国が直接行なう分収造林制度、かつての官行造林制度民有林分野を大幅に取り入れた形で、国の直接の責任で一大造林政策を実行するということは、決してこれは避けるべき道ではないというふうにわれわれは考えておるわけです。  もう一つ森林公団の行なう公団造林にいたしましても、この森林公団の発足の当時の実情というものは、各委員の皆さんもすでに御承知のとおりであります。最初は、熊野・剣山の大型の優良林道の開設事業というものを、世界銀行の融資を得て、そうして実施機関として公団が発足したという経過、あるいはまた、官行造林制度を廃止することによって、公有林の水源造林等については公団の分収造林を行なう、あるいはまた、そのあとでスーパー林道の開設事業、あるいは、今度は、大規模林業県の事業等に取り組むというように、一貫性がないわけです。公団の延命策のために、場合によっては新しい事業を公団に付与しておるんではないかというような疑問さえわれわれは常に持っておるわけであります。しかも、事業資金というものは、今年度の予算においても、昨年度においても、それぞれ七十億ないし七十二億円の国の出資、これは総額で四百三億円の国の出資が行なわれておるわけであります。あるいはまた、事業をやる場合の借り入れ金につきましても、公団自身が全然苦労をしないで、政府として資金の確保をやって仕事をやらせる。そうして公団は何ら事業の実行能力というものはないわけです。四百人程度の職員を擁しておりますが、これは、現場においての林道の開設あるいは造林事業、それらを実際に実施体として行なう体制というものは全然とられておらないわけでありますからして、計画地域に対して必要な資金をおろすだけの仕事、あるいは調査を進めて新しい契約を確保するというような仕事だけに公団の仕事の内容というものは終わっておるわけであります。そうなれば、公団の分収造林にいたしましても、造林公社事業にいたしましても、結局は、国の財政的な事業上、あるいは事実的な大きな援護というものがあって初めて達成ができるわけでありますからして、これを否定するわけじゃありませんけれども、この際、直接的に国が行なう分収造林事業というものを新たに実行するというところにねらいがあるわけであります。したがって、分収造林契約締結の場合においても特別の規定がありまして、これこれの規定に該当する場合においては、それは国営分収造林の採択対象とはならぬというような規定も設定するわけであります。特に、公団、公社の分収造林との競合の問題等においては、公団造林公社造林において実施困難であるということが認められた場合において初めて国営分収造林対象地にするということも、これは法文の中に明記しておる。それほどわれわれは慎重な配慮をしておるわけです。これは可能な、これはいいと思われるような積極的な造林促進の方法については、あらゆる角度から英知を集中して、そうしてその道を開くというところに重点があるわけでありまして、国が、国有林がこれらの事業を一人占めする、地元に御迷惑をかけるというような考えは毛頭ありません。むしろその逆であるということは先ほど御説明申し上げたような次第でございます。
  10. 今井勇

    今井委員 労働力の流動性については御答弁がなかったようですが、それはいかがですか。
  11. 芳賀貢

    芳賀議員 これは、これからどうなるということよりも、実例として、たとえば五十年の歴史を持っておる……(今井委員「すみませんが、時間がないので、短かくお願いします。」と呼ぶ)それじゃ、わかってもらえないような点が多いので、無理に私は時間をかけて説明しておるわけですからして、その点は、決してあなたの質問時間を取るわけじゃないですから御了承願いたいと思います。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  いままで行なわれた五十年の官行造林というのは、すでに主伐期に入っておることは御承知のとおりであります。ただ、いままでの官行造林、現在、面積的には二十三万ヘクタール分布しておるわけでありますが、この分布状態というものが、はたして、国有林が占有率の高い地域においての官行造林面積が多いかというと、決してそうではないわけであります。これを十四の全国の営林局の管轄区域別に比べると、一番国有林面積の少ない大阪営林局の管内においては、官行造林面積が五万二千ヘクタールに及んでおるわけです。二十三万ヘクタールのうち五万二千ヘクタールが大阪営林局、これは近畿四県と中国六県の十県にまたがっておるわけでありますが、この近畿、中国における地域というものは、御承知のとおり、国有林の占める割合というものは非常に少ない。したがって、民有林の割合が高いところでありますが、かつての官行造林は、こうした国有林の占有率の低い、民有林の占有率の高い地域において官行造林制度というものが十分に理解されて、大きな成果をあげている。こういう厳然たる実績があるわけでございますので、今後行なう分収造林にしても、結局、国有林の多い東北、北海道地域だけにこれが偏在するというような懸念はいささかもないと私どもは確信しておるわけであります。
  12. 今井勇

    今井委員 いまの問題はまたの機会にいたしまして、私は、次に、国民経済的に見て、いま御提案のような方法がはたして経済的だろうかどうかという問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  先ほど、国の補助率が六八%程度、約七割ならば、もう一歩進めて、国が直接したらどうだというお話しがございました。その点についてちょっとお尋ねしたいのですが、今度の法案を拝見しますと、分収造林の分収割合というのは五分、五分だと書いてあります。一般では、それが費用負担者が六、それから土地の所有者が四であるというのが通常のようでありますが、そういう意味では、土地の所有者が優遇されておるように思います。このように土地の所有者を優遇しておるというのは、まさか、大地主といいましょうか、そういうものを擁護しようというつもりではないだろうと思います。たぶん、零細な土地の所有者というようなものを擁護しようというお気持ちであろうと思うのですが、このような零細土地所有者を擁護しようというつもりで国営分収造林をもし進めようとしますならば、零細で、あっちこっち散らばっておるわけでありますから、そういうものを対象にいたしまして、たとえば作業員一人に管理部門の人が一人おるというふうな国営の林野の実態から考えまして、こういう国有林野事業において分収造林をするということは非常にコストの高いものになるのじゃなかろうかと思うのです。たとえば——これはたとえがいいかどうかわかりませんが、小さな町村道の工事に日本で有数な大建設会社が乗り込むようなものであって、割り高になるおそれが多分にあると私は思う。したがって、分収割合を少しふやしても、結果的にはあまりプラスじゃない。また、国民経済的に見ても、私は、マイナスの点が多かろうと思います。そういうことからすれば、むしろ、そういう直接投資する金ならば、それをさらに公社、公団等のそういうものに助成をする形でバックアップするほうがより生きた金の使い方になるのではなかろうかというふうな気がいたします。この点について御見解を承りたいと思います。
  13. 芳賀貢

    芳賀議員 この民有林造林事業というものを、単に経済ベースだけで考えるというのは間違いだと思うのですね。だから、採算が合うとか合わぬとかいうことになると、これは二者分収の場合において、費用負担し直接造林を行なう国が二分の一、それから所有者である林家が二分の一ということになれば、第一、この分収割合そのものが問題ではないかということにもなると思うわけであります。これは、やはり、森林の持つ公益的な機能あるいは国土保全のいわゆる社会的な重要性——もちろん、民有林個人の所有する財産であっても、これは国土の六八%を森林が占めておるわけでありますし、特に、今井さんの言われたとおり、資源的に非常に窮迫しておる状態でありますからして、その所有形態が国有林であろうと、公有林であろうと、私有林であろうと、全面的に森林の持つ社会的な機能というものを発揮させるということになれば、弱体である部面に対してはむしろ国が責任を持って、それを十分に前へ押し上げるということが政治の要諦であるというふうに考えておるわけであります。  それから、国がそれほど積極的にやるんであれば、公団あるいは公社に対して費用の全額を助成してやらせればいいではないかというお話しでありましたが、そうなると、負担能力、実行能力のないものに国がトンネル的に金だけ流して仕事をするというような、そういう大きな矛盾と社会悪が生ずるわけでありますから、せっかく大幅な財政負担をするのであれば、国有林野事業という国の公共事業体があるわけでありますからして、その事業体事業というものは末端の民有林にも及んで、非常に条件が悪い零細林家あるいは散在しておる林地対象にして普遍的に分収造林事業を進めるということは、これは当然国がやってやらなければ、ほかににない手がないとわれわれは考えておるわけであります。したがいまして、そういう角度でこれを進める。余談になるかもしれませんが、たとえば、農林省が発表しました森林の持つ国土保全機能あるいは自然環境保全等に果たしておる役割りというもの、これを評価した場合においては、おおよそ一年間に十二兆円に及ぶということが、これは農林省自身が評価をして、すでに発表しておる点であります。ですから、こういう大きな自然環境保全するために、あるいは緑のダムとしての十分な保水機能を果たすために、あるいは森林が大気を浄化して国民の健康と生活を守るというような、そういう大事な役割り、金額的にはこういう十二兆円もの役割り全国森林が果たしておるわけでありますからして、その機能を低下させないようにますます機能を発揮するということになれば、やはり、資源政策というものを重点に置いて、まず、造林から森林生産力の拡大をはかるという点は、国民経済的にむだであるとか不必要であるということには決してならぬ、これはもう優先的に行なうべき国の経済的な任務であるというふうにわれわれは考えておるわけであります。
  14. 今井勇

    今井委員 いまちょっと誤解があるようでありますが、私の申し上げているのは、経済的な面だけを強調しろと言っているのではないのです。いまのような零細分散的な造林事業をやります場合に、だからこそ国が補助をして公社、公団等に資金を援助する。やらしているわけですね。しかも、それで順調な伸びを示している実態から見ても、むしろ、それを、いまのお説のように国で実施するということは非常に機動性が乏しく、しかも、作業員が一人に管理部門が一人といわれるように、非常に管理部門が大きくなっております国有林野事業でやることがはたしていいのかどうかということを私は言っているのです。林野事業が持つ公共性等については、もちろん、芳賀議員認識と私は何ら異なりませんが、いまのように考えて、国の国有林野事業としてそれをやることが妥当なのかどうかという認識において、私はやや違うものがあるということを申し上げておるのであります。誤解ないようにいただきたいと思います。  もう時間が過ぎておるようでありますが、最後に一つ申し上げたいと思いますが、私は、最近の造林事業停滞の大きな理由の一つに、林地の開発の問題があると思うのです。すなわち、最近の調査結果から見ましても、高速道路あるいは新幹線がつく、あるいはゴルフ場ができるというふうなことになりますと、すぐに目をつけられるのが林地でございます。そういうところで、林地の開発が著しいところにおきましては、それと全くうらはらに、造林が非常に面積が減っております。これは、その山を持っておられる方々が、いつどうなるかわからない——と申しますのは、山をつくりますのは非常に超長期的な投資でございますから、いまごろこういうところに投資しても、それがどうなるかわからないという不安を持っていたのでは、そこに投資をすることが行なわれないのは当然なことであろうと思います。そこで、私は、この際、政府提案森林法にもありますが、土地の利用区分を明確にすること、それから普通林につきまして、その開発を規制をすること、この二つをしっかりやらなければ、民有林造林事業というものの停滞を打破することが非常にむずかしいと思います。そういう意味で、この森林法の持つ意味というものをたいへん大きく考えるわけでありますが、たとえば、現状の林地開発状態のままでもしかりに国営分収造林というふうなものを実施するといたしましても、長期にわたり、分収契約によって私権を制限されるような、そういった林地を提供する地主はたぶんなかろうと思います。こういう問題についての認識はどういうふうにしておられるのか、御意見を承りたいと思います。
  15. 芳賀貢

    芳賀議員 ただいまの森林に対する社会性を持った認識いかんということでございますが、これはごく簡単に結論的に申し上げますと、たとえば昭和四十六年の三月二十五日に、当委員会におきまして、林業振興に関する決議を、これは各党一致で、委員長提案で特別決議を行なったことはすでに御承知のとおりであります。この議決を受けて、参議院の農林水産委員会においても同様趣旨の議決が行なわれておるわけであります。この内容は六項目からなっておるわけでありますが、六項目のうちの第一項目においては、いま審議をいただいておる資源問題、特に、森林資源の培養あるいは森林生産力の増大の問題等については、国の責任において、あらゆる角度から努力しなければならぬとして、その一つの方法として、政府は国が行なう民有林の分収造林制度等についても鋭意検討して、その実行に当たるべきであるということが第一項の規定であります。以下、自然環境保全の問題にいたしましても、先ほど来御心配のありました地元の農山村の林業労働力の確保の問題、単に確保だけでなくて、林業労働に取り組む地域住民の皆さん方雇用の問題にしても、あるいは所得の向上の問題にいたしましても、あるいはまた社会保障の拡大の問題等にいたしましても、民有林で働く人たちに対しても、人間的な尊厳性というものを十分認識した角度で協力をしてもらう、というような点も出ているわけです。あるいはまた、外材に対する取り扱いの問題とか、六項目にわたっておるわけでありますが、この点は、今回の法案にいたしましても、単に社会党だけが恣意的にこのような分収造林法案というものを提出したわけではないわけです。われわれの希望としては、せっかく超党派的に決議をした重要な林興決議の実行であるからして、これらの制度については、政府提案で行なうか、しからずんば各党一致の委員会提案のような形で実行に当たるのが至当であるというふうに実は考えておるわけでありますが、なかなかそこまでいかぬのでありますので、この際、社会党として推進力を買って出て、この実現をはかりたい、こういう気持ちから提案に至ったわけでございますので、この点は十分な御理解を願いたいと思うわけでございます。
  16. 今井勇

    今井委員 もう時間もないようでありますので、次に、政府に二点ほどお聞きしたいと思います。  一つは、ただいま話題になりました労働力の問題であります。民有林発展に必要な労働力、これを確保することは確かにいまなかなか困難な時代でありますが、その労働力の養成確保をはかるためには、まず、林業労務者の賃金あるいは安全衛生とか、社会保障などの各方面にわたって、その処遇の改善を進める必要があると思うわけであります。この場合、民有林業につきましては、作業の季節性、あるいは経営規模の零細なものが多いというふうなことも加わりまして、就労が非常に不安定なのですね。だから、まず、第一に、就労の安定化をはかることが必要だと私は思います。そこで、今度の森林法の改正の中では、この問題についてどう対処をしようとしておられるのか、見解をお聞きしたいと思います。
  17. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 確かに、御指摘のように、今後の林業の振興にとりましては、林業労働力の確保ということはきわめて重要な問題でございます。したがいまして、従来とも、この労働力の確保につきましては、その長期の就労化ということをねらいました措置、あるいは流動化についての措置、あるいはまた環境の保全対策ということについての助成措置を講じてまいったところでございます。今回の森林法の改正の中におきましては、特に、この森林組合の強化の問題を大きな柱の一つとして考えておるわけでございます。特に、この森林組合の中で、労務班の結成状態というものはきわめて顕著な状態で強化されてまいっておるところでございます。この労務班を中心としまして、この林業労働力の確保ということを考えてまいりたいというふうにこの改正の中で措置しておるところでございます。
  18. 今井勇

    今井委員 もう一点、森林法の中で、今度の法改正では、森林計画制度の中で、森林の整備に関する基本的な事項を明らかにすることとしておりますが、私は、森林の整備というのは、ただ単に植えればいいのだということではないと思います。その後の保育、管理を十分にやってこそ初めてはかられるものでありますが、その保育、管理の中で、間伐の問題をちょっと取り上げてみたいと思います。  これは、資料によりますれば、もう間伐が必要な森林がだんだんふえておりますし、私の選挙区であります愛媛県のようなところでは、間伐の必要な森林が三割にも達していると言われております。そこで、この間伐がうまくいかないのは、主伐の材料に比べまして人手がかかるということ、また、少量の集材でありますのでコストが割高になる。一方、市場価値はどうかというと、価格が安いというようなことで、経済的に引き合わないためにやらないということであろうが、悪循環が繰り返されているように思います。そこで、こういう問題は法律制度だけではなかなか解決つかないのでありまして、間伐材の利用分野の開発をはかるというような積極的な姿勢がなければできないだろうと思いますが、この点について、林野庁は一体どう考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  19. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 確かに、戦後造林しました若い造林地が非常に多くなっておりまして、したがいまして、保育を必要とする、まだ利用期に達しないもの、あるいは若干利用できるような状態になったもの、そういった間伐を必要とする林分がきわめて多くなってまいっておるところでございます。したがいまして、この点につきましては、四十九年度予算の中におきましても、こういう間伐を促進するために、その助成措置を新しく講じたところでございます。この点につきましても、今国会に四十九年度の予算の御審議を願っておるところでございます。また、これは、そういう助成措置ばかりではなくて、研究の面におきましてもこれを強化する必要があると思っているところでございます。そこで、国立林業試験場を中心としまして、その他都道府県の試験研究所におきましても、この間伐材をいかに建築材に利用していくかということで、たとえて申し上げますならば、その細いものを接着剤を使って組み合わせて強化木をつくる。フィンガージョイントというのも一つの例でございますが、そういったようなものにつきましての研究を強力に推進してまいりたいというふうに措置しておるところでございます。
  20. 今井勇

    今井委員 これで、私の質疑を終わります。
  21. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、安田貴六君。
  22. 安田貴六

    ○安田委員 ただいま、同僚の今井委員から、分収林の問題あるいは森林法の改正に関する問題についてそれぞれ御質疑がありましたが、私は、まず先に、森林法に関連いたしまして二、三の御質問を政府側、農林省側に申し上げまして、そのあと芳賀先生に、分収林の問題について若干の質問をいたしたいと存ずる次第であります。  冒頭に、今井委員からも、現下におけるわが国林業に対しまする基本的な課題、問題点というようなお話しがございましたが、したがって、私はこれを重ねて申し上げようとは存じませんが、いずれにしても、いわゆる森林資源の持つ公益性、あるいは所有者の強く追求しなければならない経済性、そういうような問題から見ますると、わが国森林は、あるいは国有林、あるいは公有林、あるいは民有林とを問わず、いずれもいろいろな問題をかかえておるのでありまして、したがって、私は、この林業行政、林野行政というものが、わが国政の中におきましても非常に重要な地位にあることを、われわれ議員としても、委員としても強く認識を新たにしなければならないのが現在ではないか、こういうふうに実は考えておるわけであります。そういう観点から、政府におきましても、昨年の四月に森林法の一部改正等の法案提出して、これに対応する、いわゆる政府の政策の基本となる制度の改正に踏み切りましたことはきわめて賢明な措置であると、かように私は存ずる次第でありまして、その点に対しましては敬意を表する次第であります。  ただ、具体的に、あるいはもっとしさいにと言ったほうがいいのかもしれませんが、いま林野庁で行なっておる林野行政の一端をうかがい見まするのに、何か、いま世間的に問題になっておる課題に対する取り組み方が、若干積極性が足りないところがあるのではないかという感じもまた私は持たざるを得ないのであります。そういう観点から特に目につきまするのは、今井委員も御指摘になっておりましたけれども、いわゆる林地の乱開発の問題が一点あると思うのであります。これは、国土の有効利用、あるいは物価の抑制、あるいはまた土地利用の高度化等いろいろな観点に立って政府側が提案されておりまする国土総合開発法なり、あるいはこの森林法なり、これらは——森林法関係の法案については、幸い近くこの委員会におきましても決着を見ることができるような見通しにあるように仄聞いたしておりますが、いずれにいたしましても、政府側で考えておるところのいわゆる国土の高度利用、あるいはまた物価の抑制、地価の抑制、あるいはまた農業や、林業や、あるいは都市計画等、あらゆる面から見て、必要な場合には強力な規制を考えられておる法案が軒並み国会において渋滞をいたしておるわけでありまして、これは、現下におけるわが国の経済事情、国民生活の実情から見ますると、私は残念に思えてなりません。  しかし、この場合におきまして、特に私の指摘したいのは、いわゆる林地の乱開発の問題であります。これも、新しい森林法によるところの林野庁の行政指導あるいは規制ができない状態に現在ではあるわけでありますが、この場合において、都道府県等におきましては、やむなく条例をつくったり、あるいはまた要綱をつくったりして、現実に起きておる混乱、あるいは住民のこうした面に対しまする都道府県責任者に対しますいろいろな批判、そういうようなものを受けて立ちながら、現地なりに解決をいたしておるのが現在の都道府県の姿でないかと私は思うのであります。したがって、私は、現在まで、こういうような情勢に対して、林野庁が、都道府県やあるいは市町村までも具体的に手が届いておったかどうかはわかりませんけれども、少なくとも、都道府県段階までに対して、こういう面に対する、具体的な面におけるどういうような御指導をなさってきているのか、その点をまず一点お聞きいたしておきたいと存ずる次第でございます。これは長官からひとつ御答弁いただきます。
  23. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、森林約二千五百万町歩のうち八百万町歩が国有林、残りの約一千七百万ヘクタールの民有林のうち、規制いたされておりますものは約七百万ヘクタールぐらいございます。残りの一千万ヘクタールは、規制の措置は法律的にはございません。七百万ヘクタールと申し上げましたのは、一つは自然公園法によるもの、あるいはまた保安林制度によるものでございます。したがいまして、この残りの約一千万ヘクタールに及ぶ普通林につきましては、ただいまのところは、法律的な規制の措置はないのでございます。したがいまして、この森林法の中におきますところの乱開発規制の考え方によって、一定の基準を設けまして、都道府県知事に、許可制を設けまして、その規制をしてまいりたいと考えているところでございます。
  24. 安田貴六

    ○安田委員 現段階における林野庁の見解はわかりましたが、ただ、とにかく、具体的には、この問題に取り組む各都道府県なりの立場においては、それぞれいま申し上げましたように、条例なり要綱なり規則なりによってやっておるんだが、その内容についてはお調べになっておられますか。
  25. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 ただいま私どものほうで調査した結果によりますと、土地利用に関します条例、要綱を持っております都道府県の数は四十三県ございます。一つは、開発行為の規制条例が四つでございまして、群馬県、山梨県、岡山県、沖繩でございます。次は、宅地開発規制条例が五つございまして、茨城、千葉、山梨、岐阜、三重でございます。取引を含む要綱が十八、開発のみの要綱が十七、かようになっております。なお、条例、要綱ともにないものが四県、長野、滋賀、京都、島根でございまして、大部分はこういった措置を持っておるわけでございます。  なお、次に、自然環境保全条例等を持っています都道府県の数は、自然環境保全条例が三十八、自然保護条例七、三月議会で予定しておるというものが一つ、当面予定していないというのが一つで、やはり、これにつきましてもそれぞれの都道府県は条例等を準備しておるところでございます。
  26. 安田貴六

    ○安田委員 私は、この際、この問題について林野庁にお願いしておきたいこと、要請しておきたいことは、森林法の改正は通ると思いますが、通った場合において、この改正されたそれぞれの条文の趣旨が末端にまで、法律をつくったことによって浸透できるというものではないと私は思うのでありまして、問題は、具体的な内容、項目等について、この法律を受けて、林野庁がどのような指導を都道府県なり市町村にするかということが一番緊要な焦点だと私は思うのです。したがって、いまお話しを聞きますると、それぞれ法律には根拠がない内容のものについても、都道府県等において、必要に迫られて、場合によってはやむなくやっているところもあると思いますが、必要に迫られてとにかくやっておるような条例なり、あるいは指導要綱なり、そういうものを長官においては御承知のようでありますから、これをひとつ十分に御検討おきをいただきまして、そして、森林法の改正が通過いたした暁には、各府県の実態に隔離しないような、即するような内容によって、林野庁としてのきめのこまかい指導方針を確立していただきたい。そうしなければ、法律をつくっても何にもならないので、法律そのものが、条文が直ちに行政の中に生かされていくためにはそういう行政的な配慮というものが十分に必要になってまいるわけでありまして、私は、この点を強くこの機会に要請をいたしておきたいと存ずる次第であります。この委員会においても、先般来野党の諸先生からもたいへん御指摘を受けておりますが、そういうことによって、こういう乱開発に対するいわゆる行政的な措置、政治的な配慮というものを政府において十分に行なっておるのであるということを末端まで理解せしめなければならぬと私は考えるので、くどいことは申し上げませんが、そういう観点に立って、遺憾のないように、十分に御処置をお願いしたいということを要請いたしたいと存ずるのであります。  それから、第二点としては、いまの今井委員芳賀委員との間における質疑応酬の中からもうかがえまするように、日本の林地というものは、特に、現在は、国民生活のレベルもアップいたしまして、まきやあるいは木炭をたくというような日常生活はわれわれ国民生活の中から非常に影をなくしてまいりました。したがって、石油に依存したり、あるいは一部分石炭に依存したりする生活が多いと思いますが、しかし、わが国は、古来、薪炭林というものを、農家なら農家、あるいはその他の一般の商家等においてもみな持っておりまして、そうして、この薪炭林によるところの恩恵というものは、私の記憶では、われわれ国民生活から見ますると非常に大事なものであったというふうに考えておるのであります。ところが、現在は、その薪炭林に対しましては、あまり有効な活用というものが、政府側におきましても、あるいは場合によっては個人所有者の方々も同様かもしれませんが、どうも認識が薄らいできておる。聞くところによりますると、経済性の低い旧薪炭林というものが約三百万ヘクタールくらいあるのではないかというふうに林野庁方面でもお考えになっておるようでありますが、こういうような、いわゆる里山と言われるような林地は、林業面ばかりでなく、あるいは農業面に——農業の中にはいろいろありますけれども、畜産面も含めまして、いろいろな活用方法があると私は思う。これは、その土地の状況なりあるいは土地条件、土質条件あるいは地形の問題、いろいろな要素が織りなしておりますけれども、こういう土地の利用、特に、里山と言われる平地に近い林地の活用というものに対しては特別の配慮を払うべきではないかと考えるのでありますが、こういう面に対して、林野庁としては、現在どういうようなお考え方に立っておるか、あるいはまた、行政的にはどういう措置を講じられておるのか、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  27. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 御指摘のように、従来、薪炭林として農家の大きな収入源になっておりましたものは、最近非常に問題になっておるわけでございます。最盛期には約二百万トン近く生産されておった木炭も、最近では十万トン台になっておるという状態でございます。そこで、この薪炭林につきましては、もっと有用な針葉樹に樹種更改をすることで、いわゆる拡大造林施策を進めておるところでございますが、なお、いま御指摘のように、そのほか農業との関連におきましていろいろと検討しなければならない問題もございます。したがいまして、これにつきましては、たとえば混牧林の問題であるとか、あるいはシイタケの生産の問題であるとかということをあわせて、農家のそういった副業収入になるような面についての施策もそれぞれの関係部局と連携をとりながら進めておるところでございます。  なお、いま申し上げましたが、これを拡大造林いたしますにしましても、きわめて零細な所有の人たちが多いわけでございまして、これにつきましては、できるだけ共同経営の形でこの造林を進める方策、それに対する助成ということも考えておるところでございます。
  28. 安田貴六

    ○安田委員 長官のおっしゃっていることは一応わかるのですが、そういうように十分に林地としての効果をあげ得るように利用されておらない、いわゆる薪炭林用地あるいは里山地帯における林地、こういうものをもっと活用するための具体的な施策というものを農林省、林野庁が立てて、ただキノコをつくっておるとか、あるいは食用に供せられる野草をどうしておるとか、そういう問題ではなしに、林業政策的な観点に立った活用方針というものをお立てになられて、これに対してしばらくの間は重厚な助成政策を講ずるとか、そういうことによって、いま有識者によって云々されておるいわゆる緑の造成、ひいては公益性の拡大、あるいはまた経済性の向上、こういう山の持っておる特質というものを生かすための施策に対して一段と御努力を払っていただくべきではないかというふうに私は実は考えておるのでありまして、そういう意味におきましては、今後私は特にお願いをいたしておきたいのでありますが、こういう土地に対しまして、都道府県なり市町村の力、あるいは森林組合の力をかりて林野庁が計画を立てて、そして、これをほんとうに理想的な山野に、林地に立て直す、再建するというような施策を立てるためにひとつ計画を立てていただきたいと思うのですが、それに対してはどういうお考えですか。
  29. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 御指摘のとおりでございます。その御趣旨に沿いまして、私たちこの計画を立てます場合には、いま具体的に申し上げますと、国有林の場合におきましては地域の施業計画、また、民有におきましては地域森林計画というものがございますので、その中におきまして地元の方々の意見を十分に聞き、また、関係の県とも、あるいは市町村とも十分連絡をとって、具体的にその内容を盛ってまいりたいと考えます。
  30. 安田貴六

    ○安田委員 その長官のお考え方はよろしいのですが、長官のいま考えておられる国有林の施業計画なり民有林の施業計画というものと政府のやっておる林業政策というものが、現地において完全にかみ合うようになっておるかおらぬかというところが問題点の一つだと私は思うのですよ。だから、こういうことを政策的にやっているから、あなた方土地所有者はその中から選択していいようにやりなさいよという形ではなしに、やはり、その施業計画というものの中から、造林する面積は、計画的にはそうやっておるのでしょうが、そういう点をかみ合わせるような点を配慮していただきたいということを特に要請をいたしておきたいと思います。  それから、もう一つは、さきの国会で通過せられまして、現在生きておるといいますか、現在あるところの国有林野活用法でございますが、この活用法がはたして十分に生かされておるのかどうかという点に私は疑問があるのであります。それで、この委員会でも、各委員の方々から、農用地の拡大という観点に立って、たいへん強い意見がいままでもしばしば出ておることは御承知のとおりでありますが、私は、林地といっても、林地に使うよりは、農業用に活用したほうが、土地の利用度から見るとはるかに経済性も高く、また、所有者としても喜んで土地を利用できるような土地が非常に多いと思うのです。あるいは、林地のままで畜産にこれを活用するというような道もありましょうし、そういうような活用法の持っておる精神、趣旨というものを十分に生かして、そして農業経営の拡大にこの法律をもっと活用するための林野庁としての十分な御配慮、御措置は、私の見るところでは、とられておるとはどうも考えられないという感じを私自身が持っておるのでありますが、そういう点で、ひとつさらに御再考を願いたい。そして、長官のところでは、この法律の制定の趣旨を十分に御了解の上に指導されておるのかもしれませんけれども国有林なんかの場合になりますと、現地の営林局に行くとまことに冷たい。これがもう現実の姿なんでありまして、こういう点、この法律制定後から今日までの間における林用地、現在林地となっておる土地と農業との関連性というものを御再考いただいて、御検討をいただいて、もっと円滑に、しかも、地域からいろいろ要請があった場合には、すみやかにこの国有林野活用法の活用ができるようなことをお考えいただいて、勇断を持って断行していただきたい、こういうことを心から私はお願いいたしたいのでありますが、どんなものでございましょうか。
  31. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 国有林の活用法が通りましてから、ここでは数字を一々申し上げませんですけれども、できるだけそれぞれの地域の要望を受けて、この趣旨に沿うて協力してまいりたいと考えておったところでございます。ただ、最近、若干その傾向がにぶっておるところがある点もございますが、それにはいろいろ理由もございましょう。たとえば、一つには、草地につきましては、これは貸し付けを原則としたというふうなことであるとか、あるいは適地が、いま、従来よりはさがし出すのに非常に困難になってきておるとか、いろいろあるかと思います。しかし、御指摘の点はごもっともでございますので、できるだけ関係局とも連携をとりまして努力してまいりたいと思います。
  32. 安田貴六

    ○安田委員 次に、私は、森林組合の問題についてちょっと御質問いたしたいと思いますが、この森林組合というのは、先ほどからも話題にのぼっておりますが、私は、たいへん大事な末端における共同組織体だと思っておるのであります。しかし、今回の森林法の改正の中では、この森林組合の強化策についても御苦心を払われておったあとが明瞭でありまして、その点は政府側に対して敬意を表しますが、しかし、現状においては、森林組合というものは弱小組合が非常に多いのでありまして、極端な言い方をするようでありますが、何もできない組合が多いということが、一口に言って、森林組合の現況ではないかというふうに私は考えておるのであります。しかし、先ほどの今井委員芳賀委員との間における応酬の過程から考えてみましても、この森林組合というものの負う使命、あるいはまたこれを活用するためのいろいろな課題、これは林業振興の上から見て非常に多いと私は思うのです。ところが、この森林組合に対して、いまのところでは、私の見るところでは、政府側の措置としても、これを育成強化する、あるいは弱いところは強める、あるいは、組合員の小さいものは大きいものとして、合併か何かによってそういう強化策を講ずるというような努力というものが必ずしもない、ないと言うと語弊がありますが、非常に乏しいという感を私は感じざるを得ないのでありまして、したがって、現在もいろいろな仕事をやっておりますが、何といっても、森林組合の母体そのものを強化するということが先決だと私は思うのです。そういう点から言うと、これは農林省そのものの大きな仕事となると思いますが、林野庁、特に林野庁長官責任は重いと申し上げてもよろしいと私は思うのでありまして、いまにおける農業団体、あるいは漁業団体、これと一々比較しようとは思いませんけれども、これらと比較してみました場合においても、森林組合の強化策の遂行、断行ということは非常に急を要する問題だと私は思うのであります。こういう点から言うと、次に述べるような問題に対して、林野庁については十分に急速に御処置をいただきたいということを私から要請をいたしますが、これに対する長官の御見解を承ると同時に、現在一体どのような強化策がとられておるのか、その点についてもお触れをいただきたいと思うのであります。  まず、一つ、何といっても、政策を立てるためには、林野庁が現在における森林組合の実態というものを承知しておらなければ、政策的に立案できません。統計的には数字や何かは出ておると思いますけれども、それだけではだめなのでありまして、現在の森林組合がやっておる機能が、この森林法の期待するような機能をはたして発揮できるような状態にあるのかどうか。これは、単に人数がどうであるとか、組合員がどうであるとかというものでなしに、もっと立体的にこれを解剖してみる必要があると思うのですが、そういう解剖をするための一斉調査をやり、そして、これに対するところの合併促進の助成政策を積極化するための政策立案をはかってはどうかと私は考えるのであります。また、現在、信用事業等は行なっておりません。これは、わが国における林業金融の脆弱性がこういう状態に放置されておる要因ではないかとすら考えておるのでありますが、信用事業を導入するだけの力が一体あるのかないのか。力を持たせるべきではないかと私は思いますが、持たせるためには一体どういう組合をつくるのか、組合のビジョンはどうあるのか、そういうことによって、合併促進の進捗度合いによっては、信用事業というものを導入して、そうしてほんとうに森林所有者から信頼される信用組合というものの建設を積極的にやるべきではないかと私は考えておるのであります。さらに、農業の場合、あるいは漁業の場合等に比較いたしますと、森林組合経営の安定に対する助成というものは林野庁の政策の中にはほとんどないのであります。全然ないと言ってもいいくらいない。これで一体いいのか悪いのか。私はこれではいかぬと思うのでありまして、したがって、前段まで、いま申し上げたような幾つかの課題との関連において、こういうような経営安定のための助成政策、あるいは融資政策というものを、これまたある程度の期間でいいのかとも思いますけれども、理想的な組合像というものが実現できるまでの間でも、特別な補助政策を考えるべきではないかというふうに私は考えるのでありますが、先ほど申し上げましたように、これに対する長官の見解と、あるいはまた、現在どのような指導をなさっておるのかという点に対する長官の御見解を承りたいと思います。
  33. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 ただいまの安田先生からの御質問にお答えいたしたいと思います。  まず、森林組合の実態を林野庁は十分把握しておるかどうかというお尋ねでございますが、森林組合及び連合会につきましては、森林法の規定によりまして、常例として検査をするということになっておりまして、事業の実態というものについては、この常例検査を通じまして把握するということをいたしておりますし、また、統計的な数字といたしましては、毎年定例的に調査をする。この両者をかみ合わせまして森林組合の実態の把握につとめておるということでありますが、何ぶん、先生御指摘のように、森林組合基盤というものが脆弱であるということでございまして、おっしゃるような形での森林組合の脆弱さというものはおおうべくもございませんので、その強化について私どもとしては努力をしてまいっておるところでございます。  それで、森林組合の強化の一つの対策といたしまして、現在の、市町村単位が大半でございますような森林組合の規模がいいのかどうかという点について反省を加えまして、数年来広域協業体制という施策を講じてまいっておるところでございまして、その中に合併ということも一つ施策として考えておるわけでございますけれども、合併に至らないでも、数組合が協業をやるというような形で経済的基盤を強化してまいるというような体制をつくっていく、それに対して私どもとして助成をするというようなことで考えておりますし、合併につきましては、合併組合について、合併が進むようにというような形で、協議会についての助成であるとか、あるいは合併が進んだ組合について連合会で巡回指導をやるとか、そういうようなものについて助成をするというようなことを考えてまいっておるところでございます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  そういうような形で森林組合の強化を考えてまいりますかたわら、今回の森林法改正の中では、森林組合の権能を強化すると申しますか、森林組合事業範囲を拡大するということを企図いたしまして、そのことによりましてさらに森林組合の経済的基盤の強化をはかってまいるというようなことを考えておるわけでございます。その際、先生御指摘の信用事業を追加するということにつきましては、今回の森林法改正では行なっていないわけでございますが、先生御指摘のとおり、信用事業につきましては、森林組合経営基盤の強化という要請もございますけれども、また、信用事業というものは、預金者と申しますか、利用者の保護ということが非常に大事な問題でございまして、信用事業を実施いたしますためには、森林組合の経済的基盤が強固であって、利用者の利用に耐え得るというていのものでなければならないであろうという、そういう意味におきまして、現在の森林組合経営基盤がはたして十分であるかどうかとか、その他、地域における他種の協同組合との競合の関係その他もろもろのことを考えまして、今後、どういうふうな状態にまで森林組合の経済基盤が強化したときに信用事業をやらせるような形にするかというような形について、引き続き検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。森林組合の強化について、経営安定について、林野庁はどういう対策を講じておるのだというお話しでございますが、第一次林業構造改善事業、第二次林業構造改善事業を通じまして、森林組合経営基盤の強化、これは組合員の経済的な地位の強化ということをあわせはかることになるわけでございますけれども、そういう対策を講ずることによりまして、森林組合の経済的な安定に資するような施策を講じてまいったところでございますが、今回の森林法の改正によりまして権能が増大いたしてまいりますと、その増大いたしました権能に対する融資なり補助なりというようなものを今後施策として講じてまいるというふうに考えていきたいと思っております。
  34. 安田貴六

    ○安田委員 私の申し上げたことは二度と申し上げませんが、とにかく幾つかの課題を解決して、森林組合を飛躍的に強化するような政策を強く林野当局に要請をいたしておきたいと私は思います。これは、われわれ自民党自体の問題でもありますが、政府が先に立って十分にその点を検討しておいていただいて、そして、それとあわせてわれわれも努力を払ってまいりたいと考えておるわけでございます。  次に、私は、これは私の持論なのでありますが、この機会に——政務次官がいないようですが、政務次官は帰ってくるのにだいぶ時間がかかるのですか。——それではあとにします。  林野庁長官がおいでになりますから、長官に質問する事項を先にやっておきますが、私が質問いたしたいのは、後ほど若干触れますけれども、いま議題になっておるところの、社会党の先生方が提案されておるところの、国が行なう民有林の分収造林法案が提起されてまいりました動機は、これは言うまでもなく、四十六年の農林水産委員会において、林業振興のための決議として与党、野党合わせてこれは決議されたものでありますが、そこから出発しておる。遠因を申し上げればもっと古いのでしょうけれども、直接的にはそういうことが言えると私は思うのであります。その決議案の内容を見れば、当面する林業振興に関する諸課題がほとんど網羅されておる。これに対しては、これは国会委員会の決議でありますから、林野庁としても、政府側としても、この決議に基づくところの施策の前進が相当あったと私は思うのであります。時間の関係もありますから、あまりこまかく説明は要りませんが、どういう項目に対しては政策的にどういう前進を見てきたかということを、概要でけっこうですから、あまり時間をかけないようにして説明をしておいていただきたいと思うのであります。
  35. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 詳しく申し上げますとたいへん時間がかかりますので、ごくかいつまんで申し上げたいと思います。  第一点は、造林の振興に関する問題でございますが、これにつきましては、四十八年度特に変わった点を申し上げますと、従来は、植栽しましたときについては補助という制度がございましたけれども、植えたあとの保育というものにつきましては、何らのそういった補助政策がなかったわけでございます。したがいまして、これにつきましては、むしろ、植えたあとの管理ということがなかなかたいへんでございますので、これに対する助成を講じたということでございます。それから、四十九年度に至りましては、そのほかに保育の——いま申し上げましたのは保安林等を重点とする下刈りが重点でございますけれども、さらに、先ほど来問題になっております間伐に対する助成も講じたというところが大きな点でございます。  それから、第二の項目といたしましては林道の問題でございますけれども、林道は外国に比べましても非常におくれておるという点が特徴的でございますが、この林道の強化につきましては、ただ単に密度をあげるばかりでなくて、林道をつくったあと保全管理についての助成が非常に欠けておった点がございます。したがいまして、すでにつくった林道に対する保全についての助成を新しく四十八年度に見た点でございます。なお、また、四十九年度からは、農免林道ではございますけれども、舗装についての補助率をアップしたというふうなところでございます。それから林道、造林ともに、補助率であるとか、あるいは単価というふうな点につきましても、それぞれ修正をいたしておるところでございます。  第三点は、自然環境保全の問題でございます。これにつきましては、特に治山事業につきましては、国有林事業におきまして、一般会計からの導入を大きく四十八年度からふやしております。それから、なお、施業の方法といたしまして、従来の能力一点ばりの皆伐ということを修正いたしまして、択伐なり禁伐なりをふやし、また、皆伐する場合におきましても、小面積で、しかも分散する、しかも保護樹帯を設けるというふうに施業方法を変えておるところでございます。  その次は、外材の問題でございます。ただいまのところは、四十七年度の実績は、すでに約六割の外材が入っておるわけでございますが、四十八年度におきましても、さらにこれが増加する見通しでございます。外材につきましては、すでに、原料のまま輸入するということはなかなか相手国も承知しないような状態になってきております。特に、あと地の緑化の問題であるとか、その国の加工業を興すとか、その他その国のためにひとつ考えてもらわなければ困る、そのための技術的あるいは資金的な援助がほしいという要請もございますので、四十九年度は、そういった面で、海外の開発についての協力、そのための事業団ということは、ほかの事業と一緒に新しく盛られたところでございます。なお、また、これは外材を中心としまして、将来は国内材も考えるべきであると思っておりますけれども、備蓄制度を四十九年度から発足さしたのでございます。  その次の問題といたしましては、労働力の問題でございますが、先ほど来いろいろ御議論願っておるところでございますけれども、特に、国有林労働問題につきましては、定員内の職員と定員外の職員と、いわゆる内務に従事する職員と現場に従事する職員との間に非常な差があるという問題がございました。これにつきましては、逐次改善をはかってきているところでございます、なお、民有林労働力につきましてもこれ以上に問題があるわけでございまして、それにつきましても、いろいろと通年化あるいは流動化対策等を考えて、その措置をとってきているところでありますが、この点につきましては、国有林民有林を通じて、最も基本的な大事な問題でございますので、関係省庁ともさらに今後具体的に問題を詰めてまいりたいと考えておるところでございます。  それから、次は、一般会計から国有林に導入する問題でございますけれども、先ほど治山事業について申し上げましたが、しかし、今後は、治山事業のみならず、ほかの部門におきましても、たとえば、公益的な面と企業的な面との経理区分の問題であるとか、あるいは、林道等につきましてもそういった公益的な性格もございますが、その点につきまして、今後いろいろと具体的な検討を重ねてまいりたいと思っておるところでございます。  かいつまんで申し上げますと、以上でございます。
  36. 安田貴六

    ○安田委員 概要でありますから、詳しくお聞きするわけにはまいりませんが、総じて、感触を申し上げますと、この決議の趣旨に沿った林業政策の前進がはかられておると言い切るのには、私自身自民党の議員でありますが、やはり、まだまだ不十分の感を抱かざるを得ないのであります。四十六年の決議でございまするから、まだ三年くらいしかたっておらないという点もありますが、冒頭にも申し上げましたような、あるいは今井委員が冒頭にも申し上げましたような、わが国における森林資源の持つ公益性あるいは経済性というものを考えました場合に、私は、この決議は、もっと政府において尊重せられ、そしてまた、それに伴いまする政策の上積みが急速に行なわれるべきものであるというふうに考えざるを得ないのであります。そういう観点から申しますると、今日までの御努力に対しましては、これを多といたしますけれども、さらに一段と、長官を中心として、林野の皆さま方が、国有林あるいは公有林民有林の関係者の期待するような林業振興のための政策の前進にぜひとも御努力をいただきたいということを私はお願い申し上げておきたいと思います。  特に、これは労務者の問題ですが、いま、失業保険法を見ましても、あるいは雇用保険法というようなものを考えましても、第一次産業の生産部面に従事する労務者に対しまする手当てといいますか、配慮といいますか、そういうものが非常に薄いのでありまして、この点を十二分に考えて、抜本的にそういう処遇改善の対策を講ずべきであると私は考えております。きょうはこの点に対する御質問は申し上げませんが、そういうような点に対しても十二分に御配慮いただきたいということを私は強調いたしておきたいと存ずる次第であります。  なお、政務次官の都合を聞きますと、何か、少しくおくれるような気配もありますので、私は、いま長官から御説明のありましたような決議に対して政府側のとってまいりました施策との関連において、私の考えておりますることの一端を一つだけ申し上げて、長官の御判断をいただきたいと思いますが、国有林野特別会計というものは、これは、国有林を維持管理され経営されておるわけでありまするから、大きな財産の経営者であります。この経営体の中においていま行なわれておる姿は、治山部面においては、一般会計から四十八年度において百億、四十九年度において百億五千万というような金額が繰り入れられておるようでありますけれども、林道におきましても、いま長官のお話しになりましたように、一般会計の負担によるところの国有林野の中における、いわゆる一般会計の負担関係、国有林野特別会計と一般会計との負担問題というものは、いろいろな面においてこれから検討しなければならぬ問題を含んでおると私は考えるのでありまして、率直に言いますと、大体、林道といいましても、基幹林道などというものは公益的な道路でありますから、林業経営だけについて設けられている道路とは限らないのであります。そういう考え方がありますから、現在でも、国有林野の中を走ると、自動車を通さない場所があったりする。ちゃんと鎖でかぎを締めて、ここから一般の自動車は通ってはいけません、と、相当大きな道路であるにもかかわらず、そういうような道路の管理が行なわれておる。それは林道という名において行なわれておるわけであります。これを具体的に指摘しようとは思いませんが、やはり、国道と国道なり、都道府県道と都道府県道なり、あるいは都道府県道と国道なり、少なくともそういう幹線的な道路については、一般会計が原則としては負担をするんだというようなたてまえをつくるべきでありますし、治山問題についても同様だと思うのであります。そういうようなことを林野庁の中から力強く——私は、検討した結果によって、政策の変更を、農林大臣なり、それぞれ関係方面に要求をして、この国有林野会計の持っておる脆弱性というものを是正する、改善する、こういうことを考えるべきでないかというふうに考えておるのでありまして、そのことは、しいて言えば国有林の払い下げの問題にも、原木のコストにも関係してまいるわけでありまして、そういうような林産業全体にからまる問題でありますから、そういう点をひとつお考えいただいて、十分に御検討賜わりたいと思います。  政務次官がおいでになったようですから、いま申し上げたことをもう一回繰り返しませんから、長官からちょっとお話しいただいて、そうして、できれば政務次官の御見解を承っておきたいと思います。
  37. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 安田委員から、森林における大規模開発の問題や、あるいは公益的な機能に対して、公費でかなりのものを投入すべきであるというような御意見でありますけれども、御承知のとおり、治山に対してはいまでも一般会計を入れておるわけでありますが、国有林野経営の改善ということに目下最大の努力を払っておる最中であります。したがって、まず、それはそれとしてやって、将来どうしても国費で入れることが正当であると思われる部分については、そのように努力をしたいと考えております。
  38. 安田貴六

    ○安田委員 政務次官の御答弁によって、私は、現段階において了承いたしますが、国有林の持っておる公益性とは一体何なんだという点から見て、林道なりあるいは治山の問題については一般会計がもっと負担してしかるべきではないかという見解でございますので、十分に御検討の上、ぜひともその実現を期していただきますようにお願いをいたしておきたいと思います。  次に、私は、芳賀先生をはじめとする社会党の諸先生の御提案にかかります分収林の法案について若干の御質問を申し上げたいと存じますが、時間もありませんから、まず、この分収林法案に対しまする私の率直な感じと申しますと失礼でありますが、考え方なりを先に申し上げまして、そして具体的な問題の二、三について御質問いたしたいと存じます。  この法案を御提案になられました経緯等については、先ほど御説明のあったとおりでありまして、これは私も十分に理解をいたしておるつもりであります。さらに、また、非常に重要な問題について、社会党の諸先生がこういう法案を検討、整理せられまして、御提案になられました御熱意に対しましては、私は、高くこれを評価し、敬意を表したいと思いますが、ただ、何といっても、この法案の中で一番ポイントになるのは、この法案の附則で見るとわかりまするように、民有林野造林のために、国有林野企業の組織、技術、労働力及び資金を活用しようとすること、そこにこの法案の一番の問題点があるのではないかというふうに私は考えておるのでありまして、その他の内容については、いずれも私は深い敬意を持って、むしろ賛意を表したいと思うところも相当多いのであります。したがって、問題点は、この国有林野の企業体を使うという点に焦点があると思います。ところが、この国有林野事業特別会計の内容は、具体的に申し上げる必要はありませんけれども昭和四十八年の後半から、原木の高騰によりまして、会計自体の収入も相当ふえたようではありまするけれども、この企業体の持っておる弱体性といいますか、脆弱性といいますか、これは大体木材伐採量が年々減ってきており、人件費は年々高騰してきておる。その中で、私も公務員の経験がございますけれども、国民から一口に言われることばに役所仕事ということばがありますが、役所仕事の持ついわゆる非能率性ですね。これは能率的な人もいます。しかし、総じて非能率的であると言われておる。そういうような企業会計の持っておりまする体質的な弱さと申しますか、弱点と言うと言い過ぎになると思いますが、そういうものがもしそのとおりであるということが是認されるならば——収造林というのはもともと、土地を持っており、山を持っておる人方のところに、あと伐採したときに配分がたくさん来なければ意味がないわけです。たとえば十分の五ずつに分けるといっても、結局育成経費が一番少なくて、そうしてあとになってからの分け前が、投資に対しまする利益率といいますものが相当高くなって、土地所有者も、また国有林会計のほうでも、両方とも喜ぶようなものでなければならぬのではないかと私は考えるのでありますが、そういう点から言うと、いまのいわゆる国有林野会計の持っておる弱さといいますか、そういうものの中からこういう仕組みをつくり上げることによって、はたしてほんとうの林地所有者の経済性の追求というものが満たされるのかどうか、こういうことを私は考えざるを得ませんし、そういう点を考えてみますると、現在でも、先ほども芳賀先生からお話しがありましたが、各営林局では直用直伐事業というのをやっておる。営林局によって違いまするけれども、大体二〇%から三〇%くらいの伐採量の中身を占める割合がこの直用直伐事業でやっておる造林事業もある。そういう点はやっておるわけでありますけれども、これがはたして妥当なのかどうか、基本的に私は疑問を持っておる。むしろ、いま国有林のやっておるようなこの直用直伐事業を廃止して、あるいは少なくして、そうしてこれを民間にやらせたほうがコストは低くなるのではないか、それによって得られるところの利益というのは、木材業者にも、地域の住民にも、働く人方にも分け与えることができるのではないか、私はこんなような考え方を持っておるものですから、以下に申し上げるような質問を申し上げたいと思うのでありまして、時間もございませんので、私も簡潔に申し上げたいと存じまするので、芳賀先生のほうにおきましてもなるべく簡潔に御答弁を賜わりたい、かようにお願いを申し上げておきたいと存ずる次第であります。  一つは、まず、この国有林組織、技術、労働力——資金ということばもございますが、資金ということは入れてもいいのですが、資金を活用しても、その結果、先ほど言いましたような森林所有者に還元される——この十分の五という比率の問題ではなくて、十分の五という比率によって分けられたところの収益というものは、現在の民有林における造林制度に対して、この決議案の趣旨に沿ったような国の政策がもっと重厚なものになるならば、これを改善しながら、いまやられておるところの造林の仕組みというものを伸ばしていくほうがむしろ有利ではないかと私は考えておるのでありまして、その点国有林という企業体にやらせることのほうが、土地の所有者林地所有者が木が生育して、その利益還元を受ける場合に、いまの仕組みよりもより有利なんだというふうにお考えになられる理由といいますか、そういう御感想というものを私はまずお聞かせいただきたいと存ずるのであります。
  39. 芳賀貢

    芳賀議員 お答えいたします。  第一の点は、国の公共企業体である国有林野事業が、今度は民有林事業にまで行動範囲を拡大するということの是非についてのお尋ねでありますけれども、なぜ、民有林に対して国有林が、その費用負担者として、造林者として民有林造林事業を促進しなければならぬかということは、この背景は安田委員もすでに御承知のとおりであると思うわけであります。ただ、いま国有林が持っておる事業の実施能力というものは、地方公共団体とか地方の公団、公社等に単に資金だけを流して、それによって一定の成果を期待するということでなくて、やはり、費用負担すると同時に、直接、国有林野事業造林当事者として的確な造林事業を実行し、それによって、三十年あるいは四十年の成長期間を経た後に主伐期に入るわけでありますからして、その場合の収益というものは二者契約でありますからして、費用負担造林者が全体の二分の一、所有者である土地所有者が二分の一の分収を受けるということになっておるわけであります。だから、これは、公社造林等に比べると、土地所有者の分収割合は十分の四、費用負担者造林者は十分の六ということになっておるので、この零細な林家にとりましては、収益の分配上から言っても、これは多分に有利性があるということは間違いのない点であります。  それから、直接事業責任を持つということが、国の公共企業体としての本来の使命でありますからして、国有林事業といわず、国鉄の事業にいたしましても、郵政あるいは電電公社の事業とか専売公社の事業にしても、これはいずれも国の公共企業体でありますからして、その行なう事業というものは、すべて、直接的に直用、直営の形で事業の実施を行なっておるわけでありますからして、それを事業実施の面については請負方式に切りかえるということについては、公共企業体としての本来性にもとるという基本的な問題が確かにあるわけでございます。ですから、今度の分収造林制度については、既存の公団、公社等が行なっておる分収造林事業の実績あるいは領域に対して、特に国有林事業というものはそれを拡大しないということを前提にいたしまして、そして、この契約の選定にあたりましても、その対象地がすみやかに造林を行なわなければならぬところであるとか、あるいはまた、その費用負担の能力とか実施能力がないと、どうしても国の分収造林制度に依存しなければならぬという場合、それからまた、既存の公団造林公社造林によっても実行が困難であるという場合、この三つのすべての条件を満たした条件の対象地域というものは、この国営分収造林事業契約対象地ということになるわけでありますからして、結局、国以外になかなかやり手がないというような場合に限るということで、これは国の責任で進めるということになるので、これは非常に貴重な事業であるというふうに考えるわけであります。ですから、安田委員の言われたように、結果として、事業の非能率とかコスト高というものは、そういう劣悪な条件の林地造林を進めるわけでありますからして、経済ベースから言うと、これは当然好んで実行すべきところではないが、先ほど言いました森林の持つ公益的な機能を十分に普遍的に発揮させるということになれば、これらのところについては国が重点的に行なう必要がある。  それから、資金投下の問題でありますが、これは法律にもありますとおり、この分収造林事業の経費は、初年度は、四十八年にいたしますと百三十一億円、平年度百七十三億円というふうに、四十八年ベースで計上したわけでありますが、これは十五カ年に及ぶわけでございますからして、この資金国有林野事業の収益の中から支弁するということは、先ほど御指摘のあったとおり、国有林事業の体質をむしろ弱体化させるというようなおそれがありますので、この分収造林の経費についてはすべて国の一般会計から繰り入れをして、そして、事業国有林事業の一環としてこれを行なうというようなことにしておるわけであります。  それから、もう一つは、国が行なう事業であるからして、造林作業等についても、その労働力は現有の国有林の保有しておる基幹労働力をもってすべて充てるかというと、先ほど申したとおり、なかなかそこまでは手が回らないわけですね。したがって、そうなれば、国の事業を完全に達成させるために、信用のできる事業実施体ということになれば、やはり、現在森林法の改正も行なっておるわけでありますが、当然これは森林組合の本来的な任務でもありますので、これに対して国が押しつけるわけじゃありませんが、地元森林組合が分収造林事業を国の委託を受けて行なうという積極性がある場合においては、これに委託をする。それから、実際の事業実施にあたっては、現在も、公社造林の六〇%は森林組合が請け負って、それを労務班事業をやらせておる、公団造林についても、四〇%は森林組合が請け負っておるというような実態もありますが、これについては、まず前提として、森林組合の体質の強化が必要である。私も安田委員のお話しを聞いて同感する点が多かったわけでありますが、まず、森林組合の体質というものを、欠点を是正して、十分任務に耐え得るような、そういう、森林対象にした共同体というものを育成する。それから、事業の作業当事者である労務班についても、一体、森林組合と現在の労務班というものはどういうような事業上の雇用関係におかれておるか、雇用契約に基づいて仕事をするとすれば、それは労働者としての位置づけの上に立ってどういうような制度上の処遇というものを完全にやっておるか、あるいは賃金の保証にいたしましても、作業の通年化の問題等にいたしましても、こういう点は、労務班に対する社会性を通じての対策というものは全く欠如しておるわけでありますからして、まず森林組合の体質の強化——労務班というものは、ほんとうに地元林業に取り組む基幹労働力としての社会的な地位を確保した上に立って十分な仕事を協力してやってもらえるような、そういう前提条件というものを十分に整備いたしまして、そして、地元がこの国の分収造林に対して協力して事業を分担してくださるというような場合においては、進んで国がそういう仕事を委託してやってもらう、こういうことで進んでいきたいというふうに考えておるわけです。
  40. 安田貴六

    ○安田委員 時間もありませんから、わが郷土の先輩である芳賀委員に対する質問はこの程度で打ち切りますが、ただ、私の意見として、御質問申し上げなかった部分に若干触れまして、締めくくりをいたしたいと思います。  いまの芳賀委員の御説明は、私もわからぬわけではありませんが、私の質問申し上げたようなところに一つの疑問を持っているという点が一点ございます。それから、国有林野特別会計という企業体がこの分収造林を実施するに至った場合には、労務者の中での相当の方々は、いわゆる公務員として採用せざるを得ない形になるのではないかということ、これも私の疑問点ですから、疑問点としてだけお聞きしておいていただきたいと思いますが、そういう形、結果になるのではないか。その場合、一体、特別会計そのものの持っておる——これは新しい事業をやるわけですから、新しい経費がかかるということは当然でありますけれども、いわゆる一般会計からだけの繰り入れによって特別会計の収支というものが償い得るような計算が成り立つのかどうか。この点が私の疑問点の二点であります。それから、もう一つは、公務員としない場合、現在の民有林の労務者よりも優遇のできる事業計画なり経営が成り立つかどうか。この点が三点。それから、次に、もう一点は、民有林にかかわります造林の維持管理その他林業労務者の地域的な偏在を誘発しはせぬかという点、これが次の問題であります。それから、もう一つは、民有林労務者の確保ということでありますが、この分収林の実施に伴いまして、国有林野がどうしても労務者を確保しなければなりませんから、その結果、それが、民有林のほうでいまやっておりますいろいろな造林事業その他の林業関係の労務者の確保のための阻害要因になりはせぬかという点を私は心配をいたし、疑問を持っておるものでございます。これについては、もし私が御質問申し上げれば、芳賀委員からは心配ないぞ、という御答弁があると思いますが、もう御質問は申し上げません。しかし、そういう点を一つの問題点として私は考えておるものであります。  したがって、この法案に対して端的に申しますと、これは非常にお考えになった法案ではありますけれども、さらに御検討をいただきたいことと、それと同時に、政府側に対して、この場合、これに関連して私は指摘を申し上げておきたいことは、こういうような法案が野党のほうから出てこなければならないような事情というものを、政府側としても、われわれ与党側としても反省する必要があるのではないかということ、こういうことを私は率直に感ずるのであります。  現在の分収造林制度なり、あるいは民有林造林に対する保護政策なりというものが、いまの木材資源の涵養、増産あるいは公益性の増進というような要請に対応するだけのものにはたしてなっておるのかどうか。長く林野庁におられまする長官におかれては、長く同じ場所におられますから、あるいはかえってそれは痛感されないかもしれませんけれども、もう一回もとに戻った形で、そういう面をほんとうにお考え直しをいただいて、そして、さきに行なわれたところの、この委員会における与野党一致の決議というものが十分に生かされるような、そういう政策の前進をされるように、私は心から御期待を申し上げてやみません。  私も与党の一議員でありますから、そういう観点に立って、これから十分に努力を払ってまいりたいと思いまするので、私の信念の一端を申し上げ、強く政府側に対しましても御要請を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  41. 仮谷忠男

    仮谷委員長 島田琢郎君。
  42. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 限られた時間でありますので、通告をいたしました部分の半分ぐらいしか、この時間内に消化をすることはおそらくできないと思いますが、要領よく質問を申し上げてまいりますので、どうか端的な御答弁をいただきたいと思います。  主として、私は、今回わが党から出しました国営分収造林法を中心にして政府の見解を聞いてまいりたいと思うわけでありますが、まず、最初に、前二者の質問に対して、提案者からきわめて明快にこの法案に対する精神とか目的というものが明らかにされておりますが、たいへん重複して申しわけないのでありますけれども、この法案を出すに至った経過と、その意義について、提案者からもう一度御説明をいただきたいと思います。
  43. 芳賀貢

    芳賀議員 これは、島田委員も提案者の一人になっておるわけですから、(「八百長だな、これは」と呼ぶ者あり)詳しくお話し申し上げる必要はないと思いますが、先ほど与党の委員の皆さんからもお話しがありましたとおり、その根拠は、昭和四十六年三月二十五日の当委員会における林興決議というものが基礎をなしておることは言うまでもないわけです。あの時点におきましても、政府において、民有林造林を促進するために、その一つの方法として国営分収造林制度というものを設定して、そして森林資源の拡大に当たるべきでないかということで、この点について政府は鋭意検討して、そしてこの実現に当たるべきであると——時の農林大臣は倉石農林大臣でありまして、大臣としても、ただいまの決議の趣旨を十分尊重して努力しますという、そういう政府としての意思表明をしておるわけでありますが、その後、政府側において、真剣にこの問題を検討して、積極的に制度化するということについて、時間的にも、熱意の面においても、どうも欠ける点が多々あるわけでございますので、そういう点から、社会党として、まず率先して、この制度化に当たり、推進役を買って出たというようなことになるわけであります。  以上のとおりであります。
  44. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 ただいま提案者から、この法案を出すに至った経過についてお話しがあったわけであります。そこで、私は、政務次官にお尋ねをいたしますが、ただいまもお話しにありましたように、昭和四十六年の三月に、林興決議というものをこの委員会においていたしております。さらに、また、引き続いて参議院においても、同じ三月に「林業の振興に関する決議」がなされている。これはいまさら私がここで申し上げるまでもなく、委員各位においても十分わかっていることでございます。ただいま「八百長」という不規則発言もあったわけでありますが、私は、わが社会党こそ、今回、いま提案者から説明のあったごとく提案をしているというのは、まさに、責任政党として一番責任を果たしたというふうに私は自負している一人であります。したがって、私は代表してここで質問申し上げますけれども、ここにおられる委員各位は、全部その提案をする責任があると考えて今日までこの問題に私は取り組んでまいりました。しかるに、こうした重要な決議がなされているにもかかわらず、今日までほとんどたなざらし同様にされてきたというのは、どこにその原因があったのでしょうか。また、政府は、四十九年度の予算編成にあたっても、こうした決議に対して全く一顧だにもしないというふうな現況下にあります。きわめて残念だと思います。しかも、今日この決議をひっさげて、全国各町村から、たいへんな数の、これを推進せよとの意見書が出されております。ごく最近においても、相当数の意見書が政府に寄せられているはずであります。この辺の実態を明らかにしながら、こうした重要な決議がなされながら、今日までなぜこれが具体化してこなかったのか、具体化しようとしなかったのかということについて、その辺の経緯について、次官から端的なお答えをいただきたいと思います。
  45. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 林業の振興決議があるにかかわらず、なぜそれが具体化されないかというふうなお話しでございますが、詳しいことは先ほど林野庁長官が答弁したように、政府は、その林業の振興決議の内容を年々少しずつ充実させるようにやってきております。ただ、分収造林法の問題については、私どもといたしますと、これは言うならば、直用直営というものを民有林にまで広げていこうと、こういうふうなものの考え方であります。まあ、政府のやっておる事業というのは、制度的にもなかなか生産性を高める、能率をあげるということについてはむずかしい点がたくさんあります。それは、何も国有林野ばかりではありません。国鉄の問題にしても、その他の問題にいたしましても、お役所的な機構、制度法律というようなものになかなか押えられて、事業をやる上においてフリーハンドが与えられていない。まあ、生産性をうんと上げたからその人にはよけいに月給をくれるとか、人よりよけいにどんどん昇給させるとか、そういうようなことは、実際問題として、なかなか民間のようにできない。こういうような観点から、私は、やはり、その政府の直営の事業というものは、どんどん広めていくということには、基本的にあまり賛成できません。したがって、この分収造林法というようなことについては、民間で、公団なり、あるいは公社なり、あるいは森林組合なり、そういうようなものがやったほうがもっと要領よく能率的にできるだろうというような判断に基づきまして、せっかくの御提案でございますが、それに賛成しかねるということであります。
  46. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 政府側の考え方というのはわかったわけでありますが、しかし、先ほど国会において附帯決議をしたという内容を見てまいりますと、この中に明確に、一項目の最後のほうに、「「国が行なう民有林野の分収造林等に関する制度的措置」を検討し、」というふうに実は言っております。先ほど、提案者からも、時の農林大臣倉石さんが、この点については真剣に取り組みますという国会答弁がなされていると言っておられるが、そうすると、いま、次官から、これを具体化する点については反対であるということが表明されましたけれども、しかし、いままでの過程において、林野庁みずからがこうした決議をひっさげて、具体的な検討を一体されたのかどうか、この辺がきわめて不明瞭で、私は、次官みずからの私的判断に基づいての反対だというふうに聞こえるのであります。一体、林野庁は、この具体的な問題についてどのように検討なされたのでしょうか。その点をひとつお聞きしたいと思います。
  47. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 この問題につきましては、たびたび私もこの場におきまして御質問を受けまして、お答えしておったところでございますが、この民有林造林の振興につきましては、林業振興決議の一番最初に出ているわけでございまして、まことに重要な問題であると私も考えております。この問題につきましては、一応私たちの考え方を申し上げますと、たびたび申し上げましたように、林業基本法の第七条に基づきまして自主的な努力を国が助長するんだという、簡単に申し上げると、そういうふうな考え方に立ちまして、それで、現在あります制度、つまり林業公社なり、あるいは造林公社なり、あるいはまた、水源地帯につきましては森林開発公団が行なうそういった事業、あるいはまた、森林組合労務班等が行ないます事業、そういうところに対して、国ができるだけいろいろな助成制度を講じてまいっているところであります。しかし、先ほど芳賀先生から御指摘がございましたように、そういったような問題でできないところを検討していくべきだというお話しもございましたが、そういう意味におきまして、この分収造林法案にございますような考え方に基づいて、いま申し上げたいろいろな制度との間で、その足りないところはどういうところにあるかということにつきまして具体的に検討を進めておるところでございます。確かに、造林は、最近、きわめてきびしい情勢の中で伐採が進まないという原因もございますけれども、むずかしい情勢でございます。でございますので、この、いま申し上げた制度でなお足らぬところについて、具体的にどういうところがあろうか、そういうところと競合しないでできるところはどこなのかということについて、私たちは、なお誠意をもって具体的に検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  48. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私は、以下、これから申し上げてまいりますけれども、前段として、どうしてもこれは次官にもう一度御答弁をいただかなくちゃなりませんが、この種のいわゆる国会論議のあとで、法案に対する附帯決議をつけるというふうなことがよくあります。しかしながら、この附帯決議をきめる段階で、各党の意見を調整するのにたいへんな時間と労力を費やして、一字一句の間違いでもたいへんな問題になりながらこの決議文というものをつけるのであります。われわれの側は、政府に対してこの決議文を出すということはたいへんなことなんでありますが、ややもすると、この林興決議ばかりではなくて、大体が、昨年一年間私、経過を見ておりますと、つけられた決議に対する政府側のいわゆる前向きの姿勢というものが出てこない。私はきわめて残念であると思うのであります。これは、言ってみると、国会軽視ではないかという感じさえ私はしているのであります。しかも、もう三年越しこの大事な決議がたなざらしになってきた。そして、いまの林野庁長官からの、これにかわるいわゆる具体的な方向で努力をしているが、まだ目下検討中であるなんて、こんなとろくさい行政ってあるのでしょうか。私はその辺が非常に不満なんであります。  だから、これから以下ずっと申し上げて、その全貌を明らかにしてまいりますが、今日の造林の実態は、一体計画どおり進んでいるかというと、決して進んでいない。先ほどいろいろ議論のありました森林組合強化育成の問題だって、私に言わせれば遅々として進んでいない。こういう状態に今日置かれている。これをわれわれは考えたときに、どうしてもこれは単独立法をわれわれが出して、具体的にこれを進めていかなければ、今日のいわゆる森林行政はもはや壁にぶち当たっているということで、それを認識して、勇気を持って今回この提案をしているということなんであります。この辺、次官、この国会における議論の中で出てきた附帯決議あるいは決議の取り扱いについて、きわめて不満足だと私は考えているのですが、いかがですか。
  49. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 国会における附帯決議は、政府としては、できるだけこれは尊重をするというふうな態度でいまでもやっております。したがいまして、この前の昭和四十六年の林業に関する決議というようなもので、六項目にわたることが出されたわけでありますが、 これにつきましても、大臣は、政府として、この決議の趣旨を尊重して努力してまいる所存であります、と、こういうことなんです。これは決議を政府とほんとうに詰めて出したというわけではもちろんないので、国会のほうは国会のほうで、政府に対してそういうことをやりなさいという要求のようなものだと思います。したがって、この中でもずいぶんいろいろと、その後政府としてはその趣旨を尊重して実現をするように、予算措置その他つけておるものもあります。これは御承知だと思います。ただ、この分収造林の問題につきましては、皆さんのほうでもよくそれを検討して実現につとめてくださいということですね、書いてあることは。われわれはもちろんそれを検討してきておるわけでございますが、まだ検討の結果がはっきり出たわけではないが、いまの段階においては、私が先ほど答弁をいたしましたように、国の直営を民間にまで拡大していくということにはどうも踏み切れないというのが現在の段階でございます。
  50. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 それでは、以下、私のほうから若干の考察を試みながら、提案も含めて意見を出していきたいと思います。  その前に、先ほど、全国から出されている決議、そうして意見書、こういうものが政府側に寄せられているはずでありますが、その実態はどうなっているかという質問をしております。お答え願いたいと思います。
  51. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 現在までに出ております件数を申し上げます。  この中身を少し分解して申し上げますが、振興決議につきまして、県会で決議されましたものが二十七件、それから、国営分収造林単独について決議してきましたものが五件、それから、市町村段階における決議で、林業振興決議全般につきましては六百三件、それから国営分収造林法案、それを明記しておりますものが百六十八件でございます。それから、国営分収造林だけについての意見書というのが四十一件でございまして、これらをすべて合計いたしますと八百四十四件というふうになっております。
  52. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 たいへんな数の地方公共団体における決議がなされ、それが政府に実現を迫っているわけであります。私は、このように多数の公共団体意見書もしくは決議文を寄せているということは、この国営分収造林をはじめとする今日の置かれている森林の持つ公共性というものに対してきわめて関心が深く、そして、一刻も早く今日のこうした状態を打開しなければならないという熱意が末端に浸透しているものと受け取っております。したがって、こうしたたくさんの人たち意見が出てきておるということは、言いかえますと、この実現を一日も早くやってくれということでありますから、こうしたものに対してこたえていく政府側の責任もあると思います。単なる決議文だ、意見書だということの取り扱いでは私は困ると思うのであります。そして、また、今日こういうふうに地方公共団体がたくさんの意見を寄せる、その背景には、森林の持つ公益的機能ということももちろん一つの大きな目標であり、ねらいでありますけれども、今日、造林状態一つをとらえてみても、末端では非常に心配される実態にあるということを反映しているものと思います。したがって、ここで数字を明らかにしてほしいのはいままでの造林実績、本年を含めて五カ年くらいのものでけっこうでありますが、ひとつ発表願いたいと思います。特に、四十八年度はまだ数字が具体的にまとまっておらないでしょうが、見通しはどうなのか、そして、また、四十九年以降における造林のこうした計画の推進状況というものはどのように見通されるのか、この点を明らかにしていただきます。
  53. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 造林のいままでの実績について申し上げたいと思いますが、拡大造林の総数について申し上げます。  四十五年が二十三万三千ヘクタールでございます。四十六年が二十二万四千ヘクタール。四十七年が十九万四千ヘクタール。四十八年はこれから造林するところもございますので、四十八年度は見込みでございますが、二十万ヘクタール。四十九年度は、予算に計上しておりますのが二十万ヘクタールということでございます。このほかに、伐採しましたあと造林する再造林というものも数万ヘクタールあるわけでございますが、主として拡大造林について申し上げました。
  54. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 これは、あなたのほうで造林計画をお立てになっている、森林資源基本計画における目標人工林面積というのがありますが、これと対比して、その進捗状態というのはどのような評価になるのですか。
  55. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 お答え申し上げます。  計画と申しますのは、「森林資源に関する基本計画」に基づきまして、全国森林計画に基づいて立てたものでございますが、四十三年度、再造林と拡大造林と分けて申し上げます。計画に対しまして、実績を申し上げたいと思います。  四十三年度を申し上げますと、拡大と再造林では、計画に対しまして八一%となっておりますが、再造林は五〇%、拡大造林が九三%でございます。四十四年が両方で八五%、再造林が四三%で、拡大造林が一〇一%でございます。四十五年は八五%で、内訳は、再造林が四〇%、拡大造林が一〇三%。四十六年は八二%でございまして、再造林が三六%、拡大造林が一〇一%。四十七年は両方で七三%でございますが、再造林三四%、拡大造林九〇%。この五カ年間を合計いたしますと八一%の実績でございますが、内訳で、再造林が四一%、拡大造林が九八%、こういうふうな実績になっておるのでございまして、拡大造林はおおむね計画どおり実施されておりますけれども、再造林計画から見るときわめて低位にあるということが申し上げられるところでございます。
  56. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 いま長官が発表されたごとく、造林というのは問題を非常に残している。まあ、拡大造林で一部一〇〇%をこえる年もありました。しかし、そのほとんどは、再造林においては三〇%台という状態である。これはどこに原因があるとお考えですか。
  57. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 問題は、いま数字で申し上げましたように、再造林にあるわけでございます。なぜ再造林計画どおりに進まないのか、いま、きわめて問題でございます。一口に申し上げますと、戦後昭和三十年ごろにおいては、すでに未立木地というものは解消いたしまして、造林はいたしております。その成績については若干の問題はございましょう。しかし、いま再造林がなぜ進まないかということは、要するに、伐採計画どおりに進まないということに一番大きな原因があるわけでございます。伐採の進まない理由と申し上げますと、これはやはり原因はいろいろございましょうが、たとえば労働力の不足の問題であるとか、あるいはまたいろいろな、そのあとの新植に要する経費が非常に増加するということを懸念しての問題であるとか、あるいはそれぞれの市況に基づく判断であるとかいうふうなことがいろいろございますけれども伐採が進んでいかない、計画どおりいかないということが直接的な原因であるというふうに考えております。
  58. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 伐採が進まないから再造林計画どおりいっていないのだということを言いますけれども、私は、そればかりではないと思うのです。実際には、伐採されても二、三年放置されているという状態は現地で幾つも私たちは目にしております。したがって、それを主たる原因としてあげるのは、私は、きわめて現状認識が乏しいと思うのであります。しかしながら、結局は、今日現在までにこのような造林状態になっているというのは、やりやすいところが造林されて、これからの、いわゆる社会的、自然的あるいは経済的ないろいろな条件がありますが、そういうところが落ち込んでいる。すなわち、平易に言えば、非常に造林しにくい悪いところが残っているということが言えるのではないかと私は思うのですが、その点はどうですか。
  59. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 確かに、御指摘のような点はございます。最近私たちの調査した結果を大まかに分けて申し上げますと、従来非常に造林の進んでおったところが比較的ピッチが鈍ってきているということであります。それはまさに、先生が御指摘の、むずかしいところが残っているということになると思います。  それから、もう一点は、特徴がございますのは、非常に大都市の近くでございまして、いわゆるゴルフ場であるとか、住宅造成であるとか、そういったことが盛んに行なわれている地帯におきましては、計画的な造林が進んでいない。大きく見ますとそういう点が特徴的でございます。
  60. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 都市に近いところ、あるいはいわゆる平地造林という部面でお話しがありましたから、私はこの機会にちょっとお尋ねをしておきますけれども、かなり早く、もう七、八年の実績になるのではないかと思いますが、イタリア改良ポプラが植えられたことがございます。これは非常に取り扱いがむずかしいのです。これは私が言うまでもありません。われわれでは、農地の転用という問題にからんで、これが十九本を限界にして二十本植えられると、無断転用だと言う。こういう取り扱いがずいぶん末端で騒がれたものであります。同時に、水田の生産制限という問題にからめて、かなりの水田が山林転用をされたという実態もあると思いますが、そういうものはいまおっしゃった面積の中に含まれているのですか。拡大造林ということになるのかどうかわかりませんけれども……。
  61. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 御指摘の畑等からの転用というのは入ってございます。約三万町歩ぐらいだったと記憶しております。
  62. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 イタリアポプラはどうなんですか。
  63. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 イタリアポプラは入っておりません。イタリアポプラであるとかユーカリというようなものが非常に成育がいいということで、一時そういったことを試験的にやった例はございますけれども、いろいろ問題がございまして、いま、そういった点については、まだ研究をし直す必要があるというふうに考えておりますので、それは入っておりません。
  64. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私は、イタリアポプラの問題は、私自身も多少の経験を持っておりますので、これはまた別の機会に譲りますが、たまたまいま造林面積の問題が出ましたのでお尋ねをしたわけであります。  さて、先ほど前二者の質問の中にもありましたが、公団と公社の関係がありました。それで、先ほどのお話しの中にも出ておりましたが、公団造林四〇%、公社造林六〇%ということで分担をしている。そこでお尋ねしたいのですが、公社、公団の契約する場合の最低面積というものは幾らですか。
  65. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 これは公団、公社の場合ですと、はっきりとこれ以上でなければならぬとか、これ以下ではいかぬということにはなっておりませんが、おおむね五ヘクタールでございます。一応実績を、いままでの実例で申し上げますと、公社につきましては、契約一件当たりの面積が約十五ヘクタールでございまして、造林の一施行地当たりの面積にしますと、平均しまして約八ヘクタールになっております。公団の場合は、一件当たりの契約面積は五十ヘクタールでございまして、一施行地当たりの面積は約十五ヘクタールでございます。
  66. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そこで、公社、公団の造林実績というのはどうなっていますか。特に、四十七年には、かなり個人造林が減少したようでありますけれども、この数字はどういうふうになっておりますか。
  67. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 公社造林公団造林と合計して申し上げますが、四十五年が三万七千ヘクタールであります。四十六年が三万六千ヘクタール、四十七年が三万八千ヘクタール、四十八年は見込みでございますが、三万七千ヘクタール、四十九年は予定になっておりますけれども、三万三千ヘクタールであります。
  68. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 これは両方ひっくるめてですか。
  69. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 さようでございます。
  70. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 結局、いま発表になりましたように、公社も公団も、ある一定の規模以下は手がつけられないという実態にありますね。
  71. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 先ほど冒頭に申し上げましたように、少なくとも五ヘクタール、平均は先ほど申し上げたとおりですけれども、ある程度まとまったものでなければむずかしいということでございます。
  72. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 これは、そういう規定になっておるわけですか。
  73. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 規定というわけではございませんけれども、そういう指導方針にしておるわけでございます。
  74. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 それじゃ、公団のこれらに要する費用というものは、どれくらい出ていて、どこから出ているのですか。
  75. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 森林開発公団に要します費用は、一部は国有林特別会計からの直接出資でございますし、一部は財投からの借り入れでまかなっているものでございます。  公社につきましては、一つは国の補助もございますし、それから公庫融資、あるいは県からの融資というふうな組み合わせでございます。
  76. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 四十八年度は、金額において、公社、公団に出されました国有林特別会計並びにまた公社に出されております国の助成額というものはどれくらいになっておりますか。
  77. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 森林開発公団に出資いたしましたものは、四十八年度は七十億でございます。ちなみに、四十七年度は五十九億となっております。
  78. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 いまのは公団の話ですね。公社の助成金はどれだけですか。
  79. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 補助金は二十五億になっておりまして、総額では百億でございます。
  80. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 国は、これら公団、公社に対して、たいへんな助成金もしくは国有林特別会計からの繰り入れをやって造林を促進しようとしているんですね。ところが、先ほどお話しのあったように、ある採算線以下の面積だとこれはできない。やって悪いことにはなっておらぬのだけれども、現実問題としてできない。こういうお話しでありました。せっかく国がこれだけのことをやって裏づけをしておりながら、そこまで手が伸びていっていないというのは、これは一体どういうことなんですか。採算が合わないからだけでは片づけられない問題があるんではないかと私は思いますが、長官はどういう見解をお持ちですか。
  81. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 非常に零細な山林所有者が御承知のとおり多いわけでございます。五ヘクタール未満というのが九割を占めておる状態でございます。この造林の振興につきましては、先ほども申し上げましたけれども、その山を持っている人たち自分の力で造林をするという考え方を基本に置いているわけでございます。したがいまして、零細な山を持っている方々——補助なんかはきわめて小さく、〇・一ヘクタール以上というところから出発しておりますけれども、一町歩とか、二町歩とか、あるいはそれ以下の、そういう小さい面積を持っている人たちはできるだけ自力でこれを造林するという考え方でございます。それでできないところは何人かがそれを共同してやっていく、それに対しては助成をするという考え方に立っておるわけでございます。そういったようなことがなおできぬところは、つまり大きくまとまったところは、いま申し上げた公社なりあるいは森林開発公団というところでそのめんどうを見ていくという考え方に立っておるものでございます。どこまでも基本的には、みんな小さい山持ちですから、できるだけ自分でやりなさい、それに対していろいろな助成をしましよう、一人でできなければ何人か共同してやっていけばいい、そうしたならば助成しましょう、なおできぬところは、まとまっておれば、公社あるいは公団でやってあげましょう、こういう考え方に実は立っておるわけでございます。
  82. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 ところで、公団、公社が手がけている造林事業のうち、森林組合が行なっている比率というのはどれくらいになりますか。
  83. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 御指摘の公社の場合でございますが、公社の場合は、そのうち八四%は森林組合が委託を受けて仕事をやっております。公団の場合は、全体の仕事のうちの四四%を森林組合が委託を受けて造林をいたしております。
  84. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 先ほど、小さい山持ちはなるべく個人でやれ、そこもできないところは共同の力でやれということで、すなわち、共同の力というのが森林組合責任の範疇に入る部分ではないかと私は思うが、それはそういう仕組みじゃないんですか。全く個人で寄り集まって共同化してやるという仕組みですか。
  85. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 数人と申しましたことは、一つはこういうことがございます。少なくとも、数人というのは二人から出発するわけでございますけれども、また、三人でも、四人でも、五人でも、数人共同して、自分の持っている山を全部出して、それで計画的に仕事をやろうというときには、それに対する助成がございます。しかし、これは、一人の持っている山というのは分散しておりますので、なかなかむずかしいので、なかなかそう計画的にいきません。たとえば親戚関係であるとか、会社の関係であるとかならできますが、四十九年度からはそれを少し変えまして、一部を出してもいいけれども、少なくとも団地としてまとまった三十町歩とかいったものを、まとまって計画を立てて仕事をした場合には、それに対して助成をするという考え方に立ってやっておるわけでございます。山を持っている人というのは、やはり、森林組合にも実は加入しているわけでございますから、みずからは山を持っていながら、また労務班員でもあるわけでございます。したがいまして、私が申し上げたのは、できるだけまとめて計画を組みなさい、そうして計画的に仕事をしなさい、そうしたらいろいろな助成措置を講じてあげますよということで、そのまとめ方に、いま申し上げたように、全部出し合ってまとめる方法と、一部出していく、団地としてまとめる方法と、二種類ございます。そうしてやっていく場合に、今度は森林組合労務班としてそこで仕事をしていくようになるわけでございます。二人ぐらいなら別に組合ということでなくてもできる場合もございましょう。そういったことでございます。
  86. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そういうように個人ではできない、また、何戸かまとまってやるとしてもなかなか手がつけられないという実情というのは、末端にたくさんあると思うのです。それで、森林組合というのは、従来分収造林をやっていますね。これは林野庁指導のもとに行なわれているのですか。そして、その場合、森林組合の行なう分収造林方式というものは何らかの規定があり、そして約束ごとがきちっとなされて、その分収割合などもきちっとされてこの方式が末端で進められているのかどうか。その辺、林野庁はこの全貌を承知していると思いますが、どうですか。
  87. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 お答えいたします。  森林組合が分収造林の当事者となっております分収林の面積の総計は、現在、組合が造林者となっておるものというふうな形のものが二百六十二組合で、二万六千ヘクタールほどございます。それから、展示林といたしまして、森林組合造林者費用負担者というような形の法的地位を持ってやっておる分収林が二百八十一組合で、約六千七百ヘクタールほどございます。この当事者となっておる分収造林のあり方につきましては、分収造林特別措置法及び分収造林推進要綱という次官通達が出ておりますが、それに基づいて適正な実施がなされるようにということで指導いたしておりまして、事業計画は組合の総会において承認を得ること、契約対象は組合員の所有する森林とすること、森林組合造林者として位置づけるようにというふうな形のものを指導いたしております。
  88. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 このいわゆる森林組合が行なう分収造林には、結果として非常に問題が出ているのですね。いま、次官通達で規定にかわるものが示されているというお話しでありますが、これは全国統一しているかどうか、私は非常に疑問があるのです。しばしば分収が行なわれたあとにおける問題がいろいろ出ております。たとえば造林費用の持ち方とか、それに対する助成金の持ち方、いわゆる配分のしかた、こういったものが非常に問題になって出ておるわけです。私は、森林組合が行なう分収造林そのものでは、先ほど言っておりますようないわゆる小林化、零細林化の造林事業というものの目的は達成されていないというふうに思います。それが今日全国的に造林が非常に落ち込んでいて、計画どおり進んでいないという大きな原因になっていると私は思う。これは、長官の、いわゆる伐採計画どおり進まないから再造林が進まない、その部分が落ち込んでいるという説明では、私は納得できないのであります。現地にはそうしたいろいろな問題があって、組合には、分収造林で委託をするというようなことには難色を示す組合員もたくさんおる。したがって、自分でもなかなかできない。隣と力を合わせてといったって、家こそはくっついているけれども、山全体の伐採計画というものは、その個々の考え方と計画によってずいぶん違うものですから、実際には、協力して造林を進めるということも、言うべくして、現地ではなかなかそのとおり進んでいないというのが実態なんであります。したがいまして、そういった面を救い上げていく手だてというものは今日非常に必要であるし、また、急がなければならぬと思うのです。やりやすいところはだれでもやります。やりにくいところ、経済的にもあるいはそのほかの条件などでも非常に落ち込んでいる地帯の造林こそ急いで進めていかなければ、今日の造林計画どおりの進捗を見るということはきわめてむずかしいと私は思っているのであります。そういう点について、もっと十分に現地の実態というものの調査をされた上で、具体的にそれらを進めていく手だてというものを末端に示していく林野庁としての責任があると思っているのですが、その考え方についてはどうですか。
  89. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 先ほど御説明いたしましたように、現在森林組合が分収造林の当事者となっておるわけでございますが、これは、現在行なっておりますものは、先ほども申し上げましたように、指導事業として実施しておるものでございまして、今度の森林法の改正によりまして、森林組合森林経営をすることという権能が与えられますので、当然、分収造林の当事者となる権能を持つということになるわけでございますから、いままで指導事業として実施しておりました分について、先生御指摘のような問題点ありといたしますならば、今後、新しい法律に基づいて分収造林を実行してまいります場合には、その点について特に留意をいたしまして、指導をしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  90. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そこで、森林組合の問題について少し言及したいと思います。  その一つは、先ほど来前者からも森林組合の強化、育成について意見がございました。私も、今日、全国的に見た森林組合のあり方については、非常に多くの問題を持っていると思います。それあるがゆえに、森林組合合併助成法をつくって助成までして合併を促進しながら、なかなかこれは進んでいない。これも、言うべくして非常にむずかしい問題だと私は思うのです。先ほど具体的に、長官、お考えはどうかという質問がありました中でも、私は答弁を聞いていて、これは具体的な御答弁だとは受け取れない面がたくさんある。何か、精神訓話をしているようにしか聞こえないところがございます。これは、末端の森林組合の持っている、あるいは置かれている実情というものは、あなたが考えているような状態にはなかなかなっておらぬところに大きな問題があると思うのです。  私は、先ごろ、昨年の十一月に、国会派遣で、次官のおひざ元の栃木県をはじめとして、群馬、福島の三県の実態を調査をさせていただきました。相当優秀な森林組合を見せてもらったわけでありますが、私は、ああいう森林組合というものは、今日あれをレベルに考えて全国森林組合の実態を推しはかるということはきわめて危険だと思う。特殊な組合だというふうに私は判断をいたしております。この当事者、特に理事者は、なかなかにたいへん真剣な考え方と一つの識見を持ってやっているということについては、私は、一応の評価をして帰りました。確かに、ああいう森林組合になることが望ましいと思うのですが、あそこに至るプロセスは、言うべくしてなかなか簡単なものじゃないと思うのです。ですから、森林組合の今日置かれている状態というものをもっと具体的にこまかに分析をしていただきたい。  具体的なことを申し上げますと、これは、私の近くの町村にもそういう実態がございますが、町村長が組合長で、職員が二人くらい、いわゆる役場の片すみに机を並べているような、そういう森林組合がまだざらにあるのですよ。それは、統計数字によっても明らかであります。こういう森林組合の実態というものを一つの企業体としてとらえて、労務班編成を押しつけ、あるいはまた、将来の大事な造林事業の大半の責任をここに負わせるとしても、それはきわめて困難だと私は思うのです。この辺の事実認識というものは、長官、きわめて甘いと思うのです。特に、この栃木県の状態というものは、次官のおひざ元でありますから、私は、つぶさにあの県については調査をさせていただきましたし、また、いろいろな意味で私なりに勉強もしてまいりました。しかし、全国的に見ると決してそういう状態になっておらぬし、また、栃木県自体でも非常に問題のある点を組合幹部から私どもに話がなされまして、興味ある話として、私は非常に謹聴してまいったのであります。こういう実態というものを十分おわかりになっていて、森林組合というものの強化、育成をはかっていくのでなければ、私は、絶対に森林組合の問題については解決しないと思うのです。  それから、もう一つ労務班編成というようなことを盛んに言いますけれども、今日置かれている森林組合のいわゆる組合員と称する人たち、そうしてまた臨時雇いのような人もこの中に入っていますが、給与ベースというものをはじめとして、いわゆる雇用の条件というものが、ほかの団体に比べて非常に安いんです。低いんです。こういう状態をまず改善しなければならぬ。これが重要な一つ課題だと私は思うのです。先ほど、森林組合に対して、組合自体の強化、育成のために助成金を出しているとか、いろいろなことがありましたが、しかし、今日、こうした労働者の確保というものは、これまた、言うべくしてまことに至難なわざと言わなければならない。それはもうここで数字が——今回の国会論議のために必要な資料というものは昨年の四月に出されておりますが、これを見ても、森林組合の実態というものは、私に言わせれば、これはほとんど改善されていないと思うのです。これは言うべくしてまことにむずかしいということを端的にこの数字は物語っていると私は思うのです。そして、また、森林組合自体がそういういわゆる機能ある組合として生きていくために、強化されるために必要なのは、いま言ったそういう給与ベースの改善ももちろんですけれども、もう一つは、特殊な作業範囲を持つ職場が多いという、この実態を的確に踏まえて、健康管理をはじめとする労務管理というものについては、国、林野庁が相当指導、強化をしていかなければならぬ部面というものはやはりたくさんあると思うのです。その辺を置き忘れておいて、森林組合の強化育成ばかり言ったって、これは絶対前に進まぬと思うのですが、私のいまのこういう指摘に対してはどうですか。まず、地元の栃木県の話を出しましたから、次官、どうお考えになっておりますか。
  91. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 御承知のとおり、あなたがいまおっしゃったように、非常にいい組合もあれば、役場の片すみに二人くらいいる組合もある。これは事実であります。そこで、合併助成法によって、適正な規模に森林組合の合併というものをできるだけはかっていくこと、これはまず大事なことであります。  それから、また、給与ベースが悪い。これも事実であって、なかなか労務班編成どころじゃないというものもありますから、これも、やはり、規模が小さいというところに問題があります。したがって、これらも規模を大きくするような指導、助成というものをやっていかなければならぬ。  労務管理の問題、健康管理の問題についても、あなたの御指摘になったようなことがございます。したがって、それはいずれも森林組合内容というものを充実させていかなければならぬ。もう、そこに尽きるだろうと私は思う。やはり、森林組合の仕事の分野というものももっと広げて、事業の範囲の拡大というものをはかってやるということで、活動できる分野を森林組合にもっと与えてやるというのが今回の森林法の改正であり、合併助成法の改正というようなことになっておるわけです。でありますから、確かにあなたのおっしゃるようなことがございますので、それを解消するために目下努力中である。こういうことで御了解いただきたいと存じます。
  92. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 なかなか、一つの城を守るという意識は強いものであります。これは、農業協同組合の合併においても同じようなことが言われますし、また、見られました。特に、古今を通じて、山持ちというもの、山を持っておる者はえらくなったように、財産をたくさん持っておるから、ある意味ではそれはえらいのかもしれませんけれども、どうかすると、山をたくさん持っておる者がその町では幅をきかす。そして、また、町長になるなんていうのも、意外と山の多い人が町長になっておるというケースがたくさんあります。そういうところに限って、森林組合というものに対してきわめて関心が低い。そのくせして、ろくなこともやれぬくせして、他の町村から合併などという働きかけがあっても、おれはおれのところでちゃんとやっておるから、そんな、おまえさんのほうに心配してもらわぬでもいいと言う。こういう事実なんかもたくさんあって、私は、農業協同組合の合併促進よりもさらに至難だというのがこの森林組合の合併の実態ではないかと思うのです。次官は、いま、一生懸命努力するとおっしゃるから、それ以上お話しをしたって、具体的にどうということは出てこないと思いますが、しかし、そういうものを含めて、林野庁は大いに責任を果たしていただかなければならぬと私は思うのです。そして、今日、そういう森林組合の実態にありながら、国営分収造林法というものを私ども提案いたしますと、それぞれ、そんなに皆さんから心配してもらわぬでも、わが民有林は、森林組合を中心にして、造林もりっぱに責任を果たして見せると言って、胸を張って、わが党案に対してもかなりきびしい反対をしておる空気があります。しかし、私は、前二者の質問に答えて提案者の芳賀委員からも明快に答えておりますように、今日、落ち込んでいるそういう状態を一刻も早く計画どおりの線に乗せ、さらに計画を上回るような状態にしていかなければ、今日の日本の森林行政、森林政策というものは問題にならぬということを指摘し、その補完の意味を含めて、国営分収造林法という、いわゆる単独立法を今日われわれは提案をした。ですから、私は、ほんとうに天下に胸を張って、この法案こそ、まさに、今日の日本の森林の、特に造林部分を推進していくための大きな推進力となり、役割りを果たすものだと言えると考えているのです。  そこで、八百長だなんていう声が出るかもしれませんけれども提案者もせっかくそこにおすわりでありますし、国民の皆さん方に、われわれがこういう分収造林法というものを出してきた一つのねらいと、その背景と、持っている意義というものはおおよそ理解されていると私は思いますし、きょうの議論を通しても明らかになったと思いますが、いま、政務次官と私、あるいは長官と私の間にいろいろな議論がかわされましたが、それを踏まえて考えてまいりますときにも、私ども提案しているような制度というものは、次官が冒頭に、これには問題があるので反対だとおっしゃったこととはうらはらに、私は絶対必要だというふうに考えるのですが、提案者からもう一度この法案趣旨を明快にしていただいて、政府側を叱咤勉励する意味でひとつ御答弁をいただきたいと思うのであります。
  93. 芳賀貢

    芳賀議員 本案の提出の理由については、重ねて申し上げる必要はないと思うのです。ただ、立法府の委員会の議決というものは、やはり行政府において尊重さるべきであるということはもう言うまでもないわけでございますからして、それが内閣提出法案でありましても、また、議員提出法案であっても、当然、立法府自身においてこれを審議して法制化するという責任を持っておるわけでありますからして、私どもとしては、鋭意この制度の実現に当たるということは不変の方針であると言って差しつかえないわけでございます。  それから、もう一つ申し上げたいことは、本案に基づく国営分収造林を進める場合においても、この国営分収造林だけが一人歩きをするというわけではないわけです。これは法案の中にも明らかになっておりますが、順序としては、まず、国が行なうところの森林法第四条に基づく全国森林計画の中の造林計画というものが当然設定されるわけでありますからして、この造林長期目標の中の一環として、国営分収造林は、十五年間を一期として百万ヘクタールの分収造林を行なうということになるわけであって、当然これは全国森林計画の中に包括される計画であるということは言うまでもないわけであります。そして、次の段階では、都道府県知事関係市町村長都道府県森林審議会の意見を聞いて造林実施地域の指定の申請を行なうわけであります。それを今度は、農林大臣中央森林審議会意見を聞いて、全国的に造林実施地域の指定を行なう。したがって、造林の実施については、指定された造林実施地域内の林家、森林所有者一人あるいは数人が共同して国営分収造林契約を締結したいという申し出が行なわれるわけです。申し出がないものを取り上げるというわけではないわけですね。そういう申し出が出された場合においては、この法案の第五条にうたっておるとおり、この審査の要件としては、第一に、その申し出の林地がすみやかに造林を行なう必要があるものであること、第二は、所有者である個人自分の能力で造林を行なうことができないと認めたもの、それからもう一つは、その地域において実施されておる公団造林あるいは公社造林によるいわゆる分収造林事業というものが行なわれておる場合、その分収造林に依存して契約をすることが困難であること、この三つの場合のすべての要件が満たされた場合において、初めて国が分収造林契約を締結して、そして国の責任造林を行なうということになっておるので、全国どこでも、希望があればそれを取りまとめて造林を行なうということではないわけであります。  しかし、実際に行なう場合においては、先ほど来議論がありましたが、現状における森林所有の零細性あるいは分散性、あるいは技術的にも、社会条件的にも、非常な制約を受けておるというような林地が残されておるわけであります。これは公団造林にしても、あるいは公社造林にしても、経営上の理由等においてなかなか積極的にこれを取り上げるという意思がないという場合には、当然、国の行なう分収造林事業がこれを包容して、そして、国全体の森林資源の培養のために積極的にこの事業を行なうということでなければならぬと思うわけであります。  将来の問題としては、島田委員も諸外国を調査されておわかりのことでありますが、たとえば自由主義国においても、あるいは社会主義国においても、森林政策というものは次第に社会公共性の上に立って、具体的な施策を国が中心になって行なう、これが共通な現実であります。日本の森林の場合は、戦後農地改革が行なわれましたけれども森林に対する新しい改革というものは全く手が触れられないままに今日に至っておるわけでありますからして、所有形態においても、あるいは所有の階層別の分布にいたしましても、非常に前時代的なものが残っておることは、これは言うまでもないわけであります。しかし、一挙にこれを解決することはできないわけでありますからして、特に、最近の資源問題等を踏まえて、あるいはまた公害等の問題が多発している今日でありますからして、森林の持つ自然環境保全という新しい役割り、これは国有林事業で行ないましても、決してここから収益は生じないわけであります。公益的機能を発揮する事業を行なっても、そこからは収益というものは有形的に生じない。しかし、これは人間社会においては非常に大事なことでありますので、こういう面については、やはり、国の責任で、森林の持つ公益機能の発揮ということについては十分な財政の負担あるいは施策の実行を行なう必要があるというふうに考えておりますので、これを基本にして、今後、国営分収造林制度の実現に万難を排して進んでいきたいと思うわけであります。
  94. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 時間が来ましたからもうやめますけれども、いま提案者から説明され、そしてまた私がいままで議論をいたしました点を政府側としても十分理解ができたと思うのです。そして、結局は、こうしたいわゆる森林組合自体の手の及ばないところ、また各市町村から非常に希求されている部分の造林の促進、こういったいわゆる谷間にあるようなところについて積極的に国営分収造林でやるべきだという、こうした提案は、まさに、私は、どなたがこれを考えたって否定すべきものではないと思うのです。それあるがゆえに、賛成町村はそうした意思をひっさげて決議をし、あるいは意見書を政府側に出して、一刻も早くこの実現を迫っていると思うのです。こうした民意にこたえていくのは政府の当然の責任ではないかと私は思うのです。しかも、このやり方の内容については、すでに明らかにされたように、きわめて民主的で、森林組合が心配されているような領域侵犯などという事実は何らないということもこの議論の中から明らかになりました。むしろ、森林組合の育成強化をはかりながら地域に貢献していく法案であると私は思って、きわめて賛成している一人であります。もちろん、提案者でありますから賛成するのはあたりまえでありますけれども、私は、この法案は今日絶対必要だという判断に立っております。次官は、これだけの議論と内容が明らかになっても、なおかつこれは反対だとおっしゃるのですか。その点をひとつ明解に御答弁をお願いいたします。
  95. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 その零細な森林所有者にも造林をさせるようにしようという、そういう点は同じなんですよ。ですから、われわれはそういう零細なものをやるのに、国が、林野庁が出かけていってやるほどの話ではないのであって、やはりそれは零細なものは、その地域社会の中にあるのですから、森林組合を強化して、合併をさして、そうしてやればいいじゃないですか。それから方法論においては、官業というのはなかなか能率があがらないんですよ。それは別に林野庁だけではないのです。どこでもそうなんです。ですから、今回も、農林省では、あの農地開発公団をつくる場合において、今度新しい法案を出しますが、自分が直接ブルドーザー運転手をかかえてやるというのから、発注ごとに切りかえるということで管理、監督、設計というものをやらせようということなども、すべて国が直接事業にどんどん広げていくという考え方を変えておるものだ、一連の考え方だと私は思うのです。  せっかくの御提案でございますが、いろいろ検討してみて、民有林国有林の方々がどんどん入っていって、全部造林してやるよというのはたいへんありがたいお話しでございますが、方法論として私はなかなか賛成いたしかねるということの——まあ、こうなってくると見解の相違みたいなことになるのですが、それでもわからぬかとおっしゃるのですけれども、なかなかわからないというのがまあ実情でございます。
  96. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 それじゃ次官、ひとつ約束しましょう。このあと造林が、私どもの期待する、国民が期待するような状態にいかないとしたら、あなたは、いまおっしゃったことをひるがえして、われわれの提案をすなおに受け入れるという用意はありますね。
  97. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 私は、まあ計画的に造林を進めさせるという考えでおります。万一いかない場合まで、いまのところ考えておりません。やはり、これはどっちがいいかというようなことは、いろいろな条件のもとで言われることでありますから、私はいかないと思っておりませんから、そこまでの約束はいまはいたしかねます。
  98. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 四十九年度の一年間の動きの中で、私は評価が出てくると思うのです。そのときになって、なるほど社会党が言ったことをいまやっておけばよかったという後悔をしないようにしていただきたい。前向きにひとつ——われわれが心配しているのは、こういう法案をつくらなければならなかった背景、それを私ども指摘をしているのであります。どうかひとつ前向きに、いわゆる日本の森林の行政があなたの手によって大前進をするように私は期待をいたしたいと思います。  きょうは時間がないので、もう少しお話しをしなければならぬ点がありましたけれども、かいつまんだ要点のみで終始をいたしましたが、最後に私は言っておきますが、全委員を代表して、社会党十人が今回のこの国有分収造林法というものを提案した。どうもよその皆さん方は、社会党が特別なことをやったようにお考えであるようだし、また、全国各地の、特に森林に携わっている皆さん方から、まるで唐突のごとく理解をされているというのは、私はきわめて残念であります。これは政府みずからが、われわれの提案をいたしました決議の実行にあたって、具体的検討にあたっての取り扱いにきわめて不備なものがあったことの一つの証拠ではないかと思って、私は残念でならぬのであります。そういう意味で、私は最後に、わが党が中心になって出しましたこの法案というものは、きわめて評価に値するということを天下に表明をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  99. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は、明二十日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時十五分散会