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1974-02-15 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十五日(金曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君       伊東 正義君    今井  勇君       上田 茂行君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    佐々木義武君       島田 安夫君    染谷  誠君       中尾 栄一君    丹羽 兵助君       本名  武君    角屋堅次郎君       島田 琢郎君    竹内  猛君       馬場  昇君    美濃 政市君      米内山義一郎君    諫山  博君       中川利三郎君    瀬野栄次郎君       林  孝矩君    稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲富稜人君
  3. 稲富稜人

    稲富委員 私は、わが国農業の基本的な問題について、農林大臣に、質問とかいうようなかた苦しい意味でなくして、一体どうしたらいいかということを検討するというような意味からお尋ねをいたしたいと思います。  私がまず最初にお尋ねいたしたいと思いますことは、昨年、私は、農業白書に対する質問を本会議でいたしましたが、そのときに、私は、現在の農業基本法が空文化しているという事実にかんがみまして、空文化している農業基本法改正をやる必要はないかということを総理にただしましたところ、総理は、改正の必要を認めないということをはっきり答弁されておりました。また、昨年の暮れ、農林大臣の就任のあいさつに対する質問をいたしたときも、農林大臣、あなたも、農業基本法が示しておる方向で、欧米に遜色のない日本農業をつくり上げたいという考えだということを申されておったのであります。また、昨日は、瀬野委員質問に対しましても、農業基本法目標で今後日本農業をやっていくんだ、農業基本法目標としていることに沿って日本農業をやっていくんだ、と、こういうような御答弁がありました。私は、その大臣考え方が悪いと言うのではございませんし、また、それで、私たちが申し上げたいと思うことは、現在農業基本法改正の必要はない、また、農業基本法が示しておる方向日本農業というものを打ち立てていこうという考え方というものは、農業基本法が成立した当時の考えから言って、その決意に対しては高く評価してもいいと私は思うのであります。  ただ、ここで申し上げたいことは、それならば、現在農業基本法が空文化しているという点です。これをいかにして満たしていくか、そして、いかにして農業基本法を空文化しない、生きたものとして存在せしめるかということ、ここに重点を置かなければできないと私は思うのでございます。そういう意味から、私は、冒頭に申し上げましたように、どうしたら農業基本法を生かしていけるような、空文化しているところを埋めていけるような方法考えられるのかということを承りたいと思うわけでございますが、まず、最初に申し上げたいことは、御承知のとおり、農業基本法は、その法を制定した当時、「農業従事者が他の国民各層均衡する健康で文化的な生活を営むことができるようにすることは、農業及び農業従事者の使命にこたえるゆえんのものであるとともに、公共の福祉を念願するわれら国民の責務に属するものである。」ということをはっきりうたっております。これに対して農民は非常な期待を持って、その農民期待の中に農業基本法が制定されたことは、これはもう大臣も御承知のとおりでございます。ところが、その第一条に、「農業従事者所得増大して他産業従事者均衡する生活を営むことを期することができることを目途として、農業の発展と農業従事者の地位の向上を図る」ということを明記いたしておるにもかかわらず、農業は、逆に毎年衰退の一途をたどりまして、農業従事者は、他の産業従事者所得均衡するどころか、農業だけではやっていけないような、農外所得に依存しなければならないような現状になっておるのでございます。これはきょうの毎日新聞等によっても、今回、四十七年度の勘定を昨日農林省から発表されておるのでございますが、この見出しにも、「農家栄えて農業ほろぶ」ということが書いてあります。私たちは、こういう点から見まして、ほんとう日本農業の将来を考えると、憂うべき状態であると思うのでございます。ここでお聞きしたいことは、それでは、空文化しておる農業基本法の第一の目標でございますところの、農業に従事する者と他の産業に従事する者との所得均衡をはかれるような具体的な対策をどういう方法政府考えて、今後処していかれようとするのであるか、この点を承りたいと思うのであります。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農業はもちろん、ほかの産業でも、その他の一般社会情勢等影響を受けることは、どの産業もそうであろうと思います。わが国経済が今日のようになりました過程——しかも、いまから十三年ほど前に、あの当時の経済成長状態を見ながら、将来の農業はこうあるべきであるというのが国会できめられた農業基本法であると私ども考えておるわけであります。したがって、その目的を達成するためには、非常に長期的な計画を立てていかなければいけないと思っておりますが、その間に幾多の変遷が一般経済社会情勢にございますので、所期の目的に到達するにはなかなか時間もかかることだろうと思いますけれども、現在、いまお話しのございましたような農家所得は、最近上昇傾向にございます。勤労者世帯にほぼ匹敵する家計であることは御存じのとおりでございますが、しかしながら、農家所得は、一時、農業生産の停滞、それから農産物価格の低迷などがございましたこと等もありまして、私どもお互い期待いたしておるような状態になるには、なかなかいろいろな曲折があったわけでありますが、最近のほかの産業の伸びに比べまして、わが農業はおくれがちでございました。確かにそうであります。このため、兼業農家の割合が高まっているということも事実でございます。農家がほかの産業従事者均衡のとれた所得、それから生活水準確保できるようにいたしますには、何よりも、やはり、生産性の高い農業を確立することであるとわれわれは考えております。このために、今後とも農業生産基盤整備を推進するとか、農業団地の育成をするとか、あるいはまた、現在行なっております第二次構造改善事業の推進をするとか、それから、農地の流動化というようなもろもろの施策を進めてまいりますとともに、農産物価格政策についても、その充実につとめてまいりたいと思っております。  そこで、兼業農家につきましていまお話しがございましたが、農作業、農業経営受託等を行なう集団的生産組織の中にこの兼業農家を位置づける等、実質的な経営規模拡大による生産性の高い農業を確立してまいることを通じて、農業所得確保をはかってまいりたい。また、先般もうすでに法律ができております農業地域への工業導入を積極的にはかりまして、安定的に就職機会増大することによって、兼業所得確保をはかってまいりたい。わが国農村の仕組みから考えますと、これはわが国だけの特徴ではありませんけれども兼業というものがかなり大きなウェートを持っておりますことは御存じのとおりでございます。そこで、規模拡大して、農業基本法が差し示しておりますように、農業それ自体として他産業に匹敵できるような所得を得られる農業というものをいたしますためには、いま申し上げましたように、どうしても生産規模拡大していく、経営規模拡大していくということが必要だろうと思っております。したがって、わが国のような比較的狭隘な国土で、しかも生産性の上がる農業を維持してまいりますためには、どうしても規模を大きくしてまいるという必要がある。そのためには、小さな面積耕地だけを持っていらっしゃるようなお方には、いま申し上げましたように、生産規模拡大する協業であるとか、あるいは合理化法人等を通じて、受託なりあるいは生産規模を大きくするものに対して土地を供給してくださるなりして、農業それ自体というものが他産業に比較して所得の劣らないものにしていくということがわが国農業にとって大切なことではないかと、このように思っておるわけであります。
  5. 稲富稜人

    稲富委員 いま、大臣の御説明を承ったのでございますが、私が最も遺憾に思いますことは、農業基本法が三十六年に制定されて、その後、いかにも人為的に、日本経済のいろいろな情勢の中で、農業というものがだんだん後退したのだというようなことのように私はいま聞き取ったのでありますが、これは、政府みずからが、農業基本法制定以後とってこられました農政に対して率直に反省すべきことがまず第一でなくてはいけないと私は思う。なぜこういうことを申し上げるかというと、これは大臣ももう十分御承知だと思いますが、農業基本法が制定されて、池田内閣高度経済成長政策を提唱した。その池田内閣高度経済成長政策によって、財界のほうから農業国際分業論が強く提唱されたことは御承知であると思うのであります。その財界の提唱した農業国際分業論政府は非常に忠実であって、農産物海外依存ということに方向を変えられた。日本農業が非常に衰退した原因はここにあるということをまず私たちは認識して、今後日本農業を一体どうすればいいかという観点に立たなければいけないと私は思う。ところが、どうも政府にその反省がないということは、私は最も遺憾に思うのであって、日本農業がこれほど衰退したのはそこに大きな原因があるということをまず謙虚な気持ちで反省すべきだと私は思いますが、これに対する大臣のお考えを率直に承りたいと思うのでございます。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 率直に申し上げたいと思います。たいへん大事な点でございますが、経済成長が著しい勢いで行なわれた。そういうことの結果、とにかくわが国経済の今日の事態があるわけでありまして、そのことはお認めいただけると思うわけであります。そこで、この経済成長の中において、わが国農業はどうあるべきかというと、もう申すまでもないことでございますが、他産業農業と切り離して考えられるものではないのでありまして、やはり、わが国経済全体として、その中に私ども農業が厳然として存在するような考えを持って農政を進めていかなければならないことはもちろんのことだと思います。  そこで、ただいまのお話しは、経済成長の中で、いわゆる国際分業的な考え方でやってきたことが間違いのもとではないかという御意見のようでございましたが、私どもは、ずっと続いて、国民生活に密着しておる食物の自給度を逐次高めていくという考え方においてはちっとも変わっておらなかったわけでありまして、いまもまた同じような考え方に立っておるわけでございますが、国民食生活がだんだん高度化するに従いまして、私ども子供のころ育ちましたような時代とだいぶ違いまして、一人当たりの米の需要量が低減してまいるとか、あるいは西欧化していくというか、近代化していくというか、肉類果実等需要が著しい勢いをもって、米の低減に反比例して上昇してまいったことも御存じのとおりでございます。そういうものをわが国で培養いたしてまいりますために必要な飼料等につきましては、遺憾ながら、一生懸命で自給をしようとしてもなかなかうまくいっておりませんので、その限りにおいては、一方において、輸出産業において獲得した資金をもって、われわれの必要とする飼料原料等の輸入を外国に待たなければならないというのが今日の現状の姿でございます。したがって、できないものはできる国から買えばいいんだといったような意味のいわゆる国際分業論であるとすれば、私どもはそういうことはとらないのでございまして、必要なものについては、やむを得ず多角的に諸国から買うのは当然であるけれども、その中でも、可能な限り自給度を高めていこうということでございますので、私どもがいま考えて実行しようとしております農政は、基本法のさし示しております方向をたどりながらやってきておるというふうに理解しておるわけであります。
  7. 稲富稜人

    稲富委員 私も、高度経済成長政策をとられた結果、日本経済が成長したということを認めることにやぶさかではございません。ただ、日本経済が非常に成長する陰に、日本農業というものが大きな犠牲になされているということ、この点もまた率直に認めなくちゃいけないと私は思うのでございますが、これは大臣、いかがでございますか。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これはいろいろな見方があると思うのでありまして、どのようにでも解釈ができると思うのですが、少なくとも、政府はそういう意思ではありません。御存じのように、たとえばEC諸国をとってみましても、農業の面においてはなかなかむずかしい問題がたくさんございます。しかし、いずれにしても、経営規模はだんだん大きくなっていっている。そして、総就業人口の中に占める農民というものの比率は低下してきておりますが、それにもかかわらず、農業それ自体生産はかなり堅持しておりまして、農業に対して非常な力を入れております。そこで、私ども、やはり慎重に考えて対処しなければならないと思いますのは、比較的わが国で多い零細な農民方々をどういうふうにしていくかということが、大事な政策の中の非常に大きな問題だと思うのでありまして、農業それ自体と、農民農村と、こういうものについて立ちおくれのないようにするのが私ども任務であると理解しているわけであります。
  9. 稲富稜人

    稲富委員 そこで、先刻の大臣の御答弁の中に、農業所得兼業農家等によってふえたとおっしゃっておりますが、農家所得はふえているだろう、しかしながら、農業所得というものはふえているとは私は思いません。その結果が、ほとんど農外収入等によって農家はまかなっている。堅実な農家生活がよくなるように、こういうようなことが大切だといまおっしゃいましたが、それはもちろん大切でございます。しかしながら、私たちの希望することは、農家兼業農家になって農家所得をまかなうのじゃなくして、農業所得によって農家所得というものが増大するというような方向にいくことが一つ農政のねらいじゃないか。農政として、ただ農家経済さえ増大すればいいのではなくして、ここに農政としての目標を置かなければいけないのじゃないかと私は思う。農家所得だけふえたのではいけない、農業所得をどうしてふやすか、ここに農政の基本的な考え方があらなければならないと私は考えるのでございますが、これは大臣はどうお考えになるか、承りたいと思います。
  10. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そこのところがたいへんむずかしいところでございまして、わが国農家人口八百何十万、それを平均していまの耕地を割り当ててみるといたしましょうか。そこで、かりに、そこから出てくる農産物を、一番堅実な米をとって計算いたしてみましても、その所得については御存じのとおりでございます。それから、また、わが国の一戸当たり平均耕地面積、これは一・一あるいは一以下の平均になるでございましょうか、そこから出てまいります所得で他産業に劣らない所得をということは、これはなかなかむずかしいことであることはもうすでによく御存じのとおりであります。そこで、私どもといたしましては、農業産業としてりっぱに成り立つようにいたさなければなりませんので、規模を大きくして、農業というものがりっぱに成り立つように育成していくために最善の努力をいたしますと同時に、先ほど申し上げました零細な土地しかお持ちにならないような方々が、合理化法人等を通じて、委託なりあるいは売却をして、規模を広げるものに協力していただくなりして、そして、農業というものがりっぱに成り立つようにやっていきたい、こういうのが一つ考えであるということを申し上げました。そこで、しからば、そういう零細な土地を出していただいた方々、これの労働力というものをどのようにして効率的に現金所得を得られるようにするかというようなことを考慮いたしました結果、先ほど申し上げましたように、農村工業導入法律を通して、こういうものを、公害の伴わないようなものを地方にできるだけ分散して、そして、そういうところでりっぱな生活をしていっていただけるように全力をあげる、こういうようなことがいいんではないか、そして、規模を大きくすることによって農業それ自体がりっぱなものとして進んでいかれるようにいたしたい、こういうふうに考えているわけであります。
  11. 稲富稜人

    稲富委員 この問題では、先般も私は農林大臣質問したのでありますが、田中総理農工一体だと言ってらっしゃるのはそういう点があるらしゅうございます。櫻内農林大臣もそういうことを言われておりました。ほかの人が農工一体ということをそういうことに持っていくのはいいけれども農林大臣考え農工一体というものは、農業が他の産業に寄生して農工一体として並び立っていくということよりも、農業農業自体として立っていくということをまず基本的に考えるということが農業工業というものが対等な立場で成り立つ、こういうことでなければいけないと私は考えます。いまおっしゃったような部分的な問題、特殊な問題、こういう問題は、農家経済を守るためにはいろいろな便法もあらなければいけないが、そういうことに甘んじて、これで農業はいいんだということであってはいけないのじゃないかと、かように私は考えます。しかし、これに対していろいろ御答弁になられますが、この問題ばかりにかかっておりますと長くなりますので、ここで、この問題に対して、さらに最後の結論として私が申し上げたいことは、農業基本法を制定いたします時分にも、われわれは強く政府に要望したことでありますが、農業基本法は、すなわち農業従事者所得増大をはかるんだということをうたってある。所得増大をはかるとするならば、農産物に対する価格対策をとらなければ所得増大にこたえるわけにいかないと私は思う。ただ生産性を向上して、農家生産を高くしたばかりでは、やはり従来のような豊作貧乏というものがやってくるので、これはやはり価格対策というものをうたわなければ、何とか方法をとらなければ、ほんとう所得増大にはならないと、私たちはかように考えるのでありますが、これに対して、あわせて大臣のお考えを承りたいと思います。
  12. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私ども同感でございますが、ただ、その場合、私どもといたしましては、国会の御賛成も得て、野菜野菜畜産畜産、乳価、その他ほとんど政府行政機関が参加をいたしましていろいろ助成措置を講じておることは御存じのとおりでございます。しかし、その農家でつくられる作物価格は、すなわち同じベースで消費者家計に響くものを生産していただくわけでございますので、その間の調整がきわめてむずかしいことでございます。ことに、今日のような時節におきましては、物価を安定して一般需要家方々生活家計を安定させるという大きな目的も一方に政府は持っておるわけでございます。しかし、一方においては、電力、石油等影響農業経営の資材の騰貴も来ておるので、生産費が上がってきている。こういう中に立って、どのようにその間を調整して明日への生産意欲農家の人に持っていただくかということを考えることが、たいへんむずかしい問題でもありますが、私どもに与えられた任務であると考えておるわけでありますが、御指摘のように、農家経済に、農家生産意欲を持っていただくように、家計の安定するような価格政策というものはもちろん必要であると思っております。
  13. 稲富稜人

    稲富委員 この問題に対しましては、私は、農業基本法のときにもこういうことを注意したのですよ。農産物価格というものに対する責任体制をとらないと、現在の時点においては——現在の時点というのはその当時なんですが、現在の時点においては、価格に対して国が責任を持っているものは米麦だけである、そうすると、当然米の生産ということに移行するという傾向があるじゃないか、こういうことが非常に心配されるんじゃないか、それで、米のみならず、重要農産物に対する価格対策というものをとらなくちゃいかぬじゃないか、と、こういうことをわれわれは強く言った。ところが、そのときに、価格対策をうたわなかったがために米に非常に偏在したという、この事実を私たちは認めなくちゃいけないと私は思う。そういう点から、今後価格対策に対しては何らかの手を打って、その生産物に対する、農民が安心してやれるような方向もとらなくちゃいけないじゃないかということも考えるわけでございますが、いかがでございますか。
  14. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農産物の中で、米に非常にウエートが置かれたことは確かでございます。しかし、ほかの、先ほど来申し上げております国民食糧の中の、ことに、近代的になってまいりました食生活の中では、くだもの、野菜肉類というものの需要が非常にふえておりますので、そういうことのためには、価格政策はもちろん大切なことでありますけれども一般消費者のことも考慮いたしまして、私どもとしては、その農産物生産のコストが高くならないように、そういうことも考慮をいたさなければなりませんし、それからまた、農業が安んじて安定した生産が行なわれるように、たとえばかんがい排水であるとか、基盤整備その他の事業をいたしまして、農家方々生産が安定してできるような、そういう国費をかなり計上しておることも御存じのとおりでございます。そのようにいたしまして、他の、米以外の作物につきましての価格についても、おっしゃるとおり、私どもは十分注意してやってまいるつもりであります。
  15. 稲富稜人

    稲富委員 価格問題につきましては後にまたお尋ねするといたしまして、第二に申し上げたいことは、農業基本法の第二条に、「需要が増加する農産物生産の増進、需要が減少する農産物生産の転換、外国農産物競争関係にある農産物生産合理化等農業生産選択的拡大を図ること。」となっておりますが、これに対する、第二条に適合したような実態というものが実際に具体化していないということなんです。それがために、農産物選択的拡大といいながらも、不安ながら、その当時、その成長農産物というものは、あるいは果樹であるとか、あるいは畜産であるとか、こういうことを政府は示した。にもかかわらず、これに的確な方法をとっていないがために、不安ながらこの第二条に沿った農家経営がやられているというのが現状でございます。これに対しても何らかの手を打たなければできないのではないかと私は思うのでございますが、政府は、これに対してはどういうようなお考えを持っておられるか、承りたいと思います。
  16. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 選択的拡大は、もう現実に国民食糧の選好が変わってまいりまして、何べんか申し上げることでありますが、需要されるものが非常に多くなってまいりました。たとえば野菜等、これは八百数十カ所特に産地を指定をいたしまして、そして流通までめんどうを見て、これのまた価格政策もやっておることは御存じのとおりでございます。いろいろな事情でなかなか思うように大いに伸びておらない面は肉類等にございますけれども、まあ、御存じのように、豚肉、鶏等については安定しておるわけであります。私どもといたしましては、国民食糧の選好に応じて需要の多いものにウエートを置いていくという考え方からは、いま申し上げましたような施策を講ずることによって、大体いわゆる選択的拡大方向をとっておるというふうに思っております。
  17. 稲富稜人

    稲富委員 それで、私がここで申し上げたいことは、この選択的拡大でございますが、これに対しましては、第二条に示しておりますような、いわゆる需要が増加する農産物の増進、需要が減少する農産物生産の転換、こういうことをうたっておるからには、その需要関係を十分見た上での生産計画というものが必要じゃないか。生産計画をやる場合には、いま大臣も言われましたように、野菜の指定地区をつくるというような主産地形成をまずやらなければいけない。主産地形成をやって、その上に立った計画的な生産というものをやらないといろいろの問題にぶつかってくる。現に、昨年から非常に困っておりますミカンの問題、これは、農業基本法が、選択的拡大として、非常にミカンを奨励いたしました。昨年はミカンが生産過剰になり、価格が暴落いたしました。昨年のこの委員会でも、ミカンの価格の暴落に対してはずいぶん論議されましたが、そのときの政府答弁というのは、ことしミカンが非常に生産過剰になったということは、天候に恵まれたからミカンは過剰になったのだという、いかにも天候に責任を転嫁した政府答弁だった。しかしながら、現にことしもミカンは非常に生産が余っております。私はそのときも申し上げたのですが、ミカンがこんなにふえたということは、農業基本法ができて以来、ミカンの作付面積が倍になっているからじゃないか、これだけの作付面積が多くなったということは、やはり、選択的拡大という名において政府が取り組ませたからだと申し上げた。現に、私の郷里もミカン産地でございますが、従来のタケノコやぶを開きまして、盛んにミカンをつくっている。その当時、私は、そこに行きまして、やめなさいと言った。いまにミカンは生産過剰になりますよ、タケノコは、だんだん住宅地になって、タケノコの生産基盤がなくなってくるから、タケノコは将来少なくなるのだ、だからやめなさいと言ったけれども、いや、これのほうがいいと奨励されておりますからと言って、みんなミカンをやった。タケノコをやらないでミカンをやった。ところが、ミカンをやったところは、いまでは身を滅ぼしている。何カ所か思いとどまってタケノコをやっておったところは、先日行きましたら、私は非常にお礼を言われました。おかげでございましたと言われました。こういう点を見ますときに、これは、主産地形成をして、計画生産をやらなければいけないのじゃないか、ここにこの問題に対する重点があるのじゃなかろうか、こういうことを私は強く考えるわけでございますが、いかがでございます。
  18. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのとおりだと思います。大体、私どものほうでも指標を示しまして、そういう方向に進んでいただくように指導いたしておるわけでありますが、御存じのように、一昨年、農林省は、今後の生産見通しを発表いたしました。それは、五十七年度を目標年次とする需給の展望について発表いたしたわけでありますが、これに沿うて農業生産の誘導をはかってまいりたいと思っておるわけでありますが、また、国全体の生産目標方向に沿って各地域の分担する生産方向を明確にいたしますため、先年、農業生産の地域指標を作成いたしまして、生産の誘導をはかることが必要であると考えておりましたが、いまでも、あの地域指標というものは、地方の農家においても、農協等においても、かなり参考にしておっていただくようであります。それで、こういう観点に立ちまして、県別、県内の主要農業地域別の生産目標を作成することにいたしまして、現在、都道府県、それから農業団体等の協力を得ながら調整を進めておる次第でありますが、お話しのございましたような地域別の生産目標に沿って年産の誘導がはかられるように、生産基盤の整備、それから農業団地の育成等をはじめとして、生産構造、流通の各般の施策を進めることにいたしておるわけであります。  いま、ミカンのお話しがございましたが、ミカンにつきまして私ども考えることの一つは、一流国と申しますか、そういう国々でなまのくだものを食べるわけですが、そういう点においては、日本人は多いほうだそうであります。このごろの生活状態から見まして、多くの国々では、御存じのように、ジュースのかん詰め、しかも濃度の非常にりっぱなものがかなり愛好されております。私どももそういうことを勘案いたしまして、同時にまた、いざというときのために、果汁工場を四十九年度予算にも新たに六カ所指定いたしまして、全体でいままで農協等が経営しておられるものまで含めますと、四十九年度予算のものができ上がりますと、およそ全国に三十カ所の工場があるわけで、これはもちろんミカンだけのためではありませんけれども、主としてこれからやっていくのはそういう果汁の工場、そういうようなふうにいたしまして、まあ、いざというときの用意もしておりますけれども、ミカンの栽培等につきましては、いま申し上げましたようなおよその目標を立てて、それを計画的にやっていただくように誘導をいたしておるわけであります。
  19. 稲富稜人

    稲富委員 いまミカンの話が出たのですが、大体政府がやるのは、行き当たらなければそう思いつかない。ここに非常に責任があると私は思うのです。やはり、すべての問題がもっと長期の見通しの上に立った指導というものが必要じゃないかと私は思うのでございます。いま、大臣からミカンのジュースの問題をおっしゃったのでございますが、これはもう十数年前ですよ。私は、ミカンのジュースをやったらどうかということを委員会で言ったことがあります。その時分に、ジュースの問題で厚生省の食品衛生課長を呼んできまして、ちまたにはんらんしておるオレンジジュースというものは一つもミカンの汁が入っていないじゃないか、あれは砂糖水に化学染料で色をつけたもので、これをどういうわけでオレンジジュースという名で売らせるのかと言ったところが、規格がないから、これは単なるオレンジジュースと称する清涼飲料水として扱っているだけだと、こういう話がありました。オレンジという意味は、日本語に訳せばミカンであるし、ジュースというのは果汁なんだ、オレンジジュースというのはミカンの果汁でなければいけない、そのミカンの果汁が一つも入っていないものをオレンジジュースというレッテルをつけるということは間違いじゃないかと言ったところが、検討すると言ったのです。ところが、その後、オレンジジュースというレッテルをはずしまして、バイオレスオレンジと名を変えただけなんです。その時分から、私は、ミカンのジュースというものをつくれば、これのほうが売れるんだ、コカコーラとか、そういうような清涼飲料水が駆逐されるくらい売れるんだと言ったけれども、その時分は一つも思い立たなかった。ようやく最近ミカンが余ってきたところが、これはとんだことになったんだ、ミカンによるジュース工場をつくらなければいけないと右往左往している。こういうことで、やることがすべて後手後手なんですね。行き当たらなければわからないなんていうことは政治じゃないと思うのです。政治というものは、一歩前進して国民を指導していくんだ。これだけの迫力と情熱をもってやらなければいけないと私は思うのです。そういう点から、選択的拡大等に対しましても、長期見通しの上に立った主産地形成をやる。この主産地の形成をやるということは、御承知のとおり、農産物というものは土壌、風土に支配されるところが非常に多いんだから、適地適作というものに立った主産地形成をやって、そして、いま申しましたような計画生産をやらなければいけないと私は思うのです。  私が今日一番心配するのは、たとえばお茶です。お茶というものは、御承知のとおり、非常に土壌に影響されるものであるし、また、その地方の気流がお茶の味というものに対して非常に影響する。ところが、そのお茶をどこでもやっている。こうなりますと、ミカンは生産過剰になりましたらジュースぐらいできますけれども、お茶が生産過剰になりましたら、これは何にもならないのですよ。そういう点から考えても、やはり、われわれは、こういうような選択的拡大としていろいろなものを農家に奨励する以上は、見通しの上に立った生産計画を立てる、主産地形成をやるという、こういうことを伴った取り組み方が必要ではないか。私はかように考えますので、特にこの点は、今後十分検討した上で、注意をして指導してもらわなければいけないという考えを持つわけでございますが、これに対する大臣の決意を承りたい。
  20. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御同感でございまして、私どもも、主産地形成をいままでもそういうつもりでやっておるわけでありますが、なお、今後も注意してそういうふうに誘導してまいるつもりであります。
  21. 稲富稜人

    稲富委員 次にお尋ねしたいと思いますことは、農業基本法の第十五条にこういうことを書いております。これは農業基本法の三本の柱の一つでございます自立経営農家の問題でありますが、この第十五条には、「できるだけ多くの家族農業経営が自立経営になるように育成するため必要な施策を講ずるものとする。」と明記してあります。しかも、その「家族農業経営が自立経営になる」ということはどういうものであるかということを、ちゃんとこの中にはっきり明示しておりまして、「正常な構成の家族のうちの農業従事者が正常な能率を発揮しながらほぼ完全に就業することができる規模の家族農業経営で、当該農業従事者が他産業従事者均衡する生活を営むことができるような所得確保することが可能なものをいう。」となっていて、この点は、はっきりと、農業だけでやっていけるということが自立経営農家だということも明示しておるわけでございます。ところが、この自立経営農家が、先刻も申しましたように、年々減少しているというような状態でありまして、この問題につきましては、昨日瀬野委員からも質問いたしておりまして、大臣からも御答弁があったのでありますが、ここに表もありますが、表は申し上げませんが、ただ、自立経営農家を育成するためにはどういうような的確な考えを持っておられるのか。先刻は、自立経営農家じゃなくして、兼業農家によって農家経済を守っていくんだというような御答弁がございましたが、自立経営農家としての育成方法に対しては、具体的にどういうようにお考えになっておるか、承りたいと思うのであります。
  22. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 しばしば申し上げておることでございますが、自立経営農家というのは、専業でそれをやっていかれる経営体を申すわけでございましょうから、そのためには、どうしても規模を大きくするということが前提になるのではないかと、私どもはそのように理解しているわけであります。  そこで、この自立経営育成を目的といたしまして農業経営規模拡大をはかりますためには、農地流動化の促進をいたさなければなりません。これは先ほど申しました。それからまた、農用地開発の推進には大いに努力をする必要があると思うのでございます。そういうことのために、農業委員会によります農地の移動、流動化、移動の適正化あっせん事業等について、引き続いてこれを実施させるようにいたしたいと思っております。  それから、先ほど申し上げました合理化法人等の活用も加えてやります。しかし、こういう方々がその経営を促進し、円滑にやってまいりますために必要な基盤整備その他の事業もあわせて推進してまいって、その生産能率をあげるようにしていかなければならないというふうに考えて、自立経営農家が、それ自体経営が成り立っていけるように、あらゆる施策を講じてやってまいらなければいけないと思っております。
  23. 稲富稜人

    稲富委員 自立経営農家をやるということは非常に困難な問題だろうと思いますけれども農業基本法が示しておりますので、いまおっしゃったような方向でいかなければいけないだろうと思いますが、ここで私がお尋ねしたいと思うことは、農業基本法の第十六条に、「国は、自立経営たる又はこれになろうとする家族農業経営等が細分化することを防止するため、遺産の相続にあたつて従前の農業経営をなるべく共同相続人の一人が引き継いで担当することができるように必要な施策を講ずるものとする。」ということがうたってあります。これに対して政府は、それじゃその自立経営農家を育成するために、この第十六条をどういうように生かしてこられたか、この点を承りたいと思うのでございます。
  24. 大山一生

    ○大山政府委員 自立経営農家育成といいますか、細分化防止のための方法といたしまして、税法上の優遇措置を講じております。簡単に申し上げますと、生前贈与というかっこうにおいて経営規模拡大をはかる、そういうふうな場合におきまして、相続人の一人に一括贈与する場合、この場合におきましては、贈与税の特例といたしまして、死亡したときまで納付を延ばし、そうして、死亡した場合においては、相続によって取得したものとみなして課税する、こういうかっこうによりまして、いわば、贈与税の場合に比べるとはるかに有利な税制上の措置を講じておる、こういうことであります。  なお、農業者年金制度というのも、これの一環ということでございます。
  25. 稲富稜人

    稲富委員 この点は、もちろん、いま局長から御説明のありました点をやっていらっしゃることは私も承知しております。ところが、こういうことでは、実はなまぬるいのですよ。ほんとうに後継者というものは、これではいけません。  たとえば、こういう例がある。私の知ったところに、二町歩の耕作をしている家族がおりまして、きょうだい四人おる。弟が二人おって、一人は女の子だ。長男は、そのおやじの農業経営を自分が継承しようと思って、弟二人には大学を卒業させた。その長男は、苦労しながら弟を大学を卒業さしている。その弟二人は奉職をしました。ところが、たまたまその二人が帰ってきておやじに言うことには、「おとうさん、われわれも相続権があるんだから、あなたが生きいるうちに相続さしてもらいたい」と言った。ところが、今度は、お嫁に行っておった娘がまた帰ってきて、私にも一口くれろと言う。いよいよおやじは困ってしまった。ところが、長男は何と言ったか。「自分は、おやじのつくっておった二町歩を全部自分が相続できるものだと思って、苦労しながら弟二人は大学にやったんだ、それを分散相続をしなくちゃできないというならば、私は何のためにいままで苦労したか、私は一体どうしてくれるんだ」ということになって、おやじが非常に困りまして、私のところにかけ込んできた。こういう例は各地方にあるのですよ。ただ、生前贈与のときにこれを猶予しておいて、そうして死んでから相続するというような、こういうなまぬるいことでは、もう現在は救えません。やはり、これに対しては何か手を打って、もしもいま申したような状態が起こったならば、あるいは長期の金を貸してやるとか、無利子の金を貸してやるとか、そういうようなことによってこれを解決してやるというような特殊な方法をやらなければ、自立経営農家の育成にはならないと思うのです。こういうことに対しても、もっと具体的な親切な態度をもって、この法に従って——法にも、「農業経営をなるべく共同相続人の一人が引き継いで担当することができるように必要な施策を講ずるものとする。」と、国はこういうことをしなくちゃできないということを命じてあるのですから、国は、単に生前贈与を相続にかえるというようなことでなくて、もっと積極的にこれに対しては取り組まなければできないと思うのです。これはもう現在支障が起こっておりますから、これに対する大臣考え方を承りたいと思うのです。
  26. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 戦後のわが国における民法の相続編では、御存じのように、分散相続等は、いろいろな社会情勢に対応してむずかしい問題を投げかけておる方面がかなりあると思いますが、いま御指摘のような点につきましては、これは大事な問題でございますので、慎重に勉強してみたいと思っております。
  27. 稲富稜人

    稲富委員 これはもう実際に各地方に起こっておる問題でありますから、この問題は、十分安心して相続のできるような方法で御検討願いたいということを特に申し上げたいと思うのであります。  次に、もう一つ農業基本法でお尋ねしたいことは、農業基本法の第十四条に、これは、この前も私は櫻内農林大臣にも質問したのでございますけれども、「農産物の輸出を振興するため、輸出に係る農産物の競争力を強化するとともに、輸出取引の秩序の確立、市場調査の充実、普及宣伝の強化等必要な施策を講ずるものとする。」ということをはっきり明文化してありますが、これに対しましても、今日まで政府は、農産物の輸出というものに対しては、対策はほとんどなおざりになっておった。あまりにも輸入に狂奔しながら、輸出の問題をおろそかにしておったというような、こういう憂えがあると思うのでございます。日本農業を今後ほんとうに育てていくためには、今日、この輸出の問題に対しては、この基本法に示すがごとく真剣に取り組む必要があると私は思いますが、これに対する大臣の心がまえを承りたい。
  28. 岡安誠

    ○岡安政府委員 政府が現在までとってきておりますような施策につきまして、私からお答えいたしたいと思っております。  御指摘のとおり、いま現在におきますわが国の農林水産物の輸出額につきましては、毎年九%ぐらい程度伸びておりますけれども工業製品のほうが毎年二〇%をこえるような伸長をいたしておりますので、全体的にはウエートが三%台だというように、非常に低い割合に推移いたしております。政府といたしましては、これまで、農産物の輸出の増大をはかるという観点から、日本貿易振興会、いわゆるジェトロでございますけれども、それを通じまして、輸出先国の需要の動向調査とか宣伝事業等につきまして力をいたしております。ただ、結果的にこのようなことになっておりますのは、先生御承知のとおり、農産物につきましては、国内の需要が非常に大きいというようなこと、それから、価格につきまして、国内外の差が非常に大きいというところもございまして、必ずしも伸びておりませんが、将来やはり加工品等につきまして可能性もございますので、生産性の向上その他をはかりまして、私どもは、今後とも輸出農産物等につきましての伸長をはかるように努力いたしたい、かように考えております。
  29. 稲富稜人

    稲富委員 ただいま、農業基本法の各般の空分化した問題について私もいろいろお尋ねし、大臣のこれに対する心がまえ等も十分承ったのでございますが、まだ非常にむずかしい問題がたくさん山積をしておると思います。  ここで、私は、率直に私の考えを申し上げて、これは大臣の御批判を仰ぎたいと思うのでございますが、私は、現在の日本農政の実態の中から将来の日本農業のあり方を考えるときに、日本農政というものは、もう自由主義経済では限界に来ているのじゃないかという感を非常に深くする。それで、私たちは、ここに、先刻申し上げましたように、価格対策であるとか、あるいは生産計画であるとか、こういうような対策を規制するとか、あるいは取り入れるとかいうような立場で、日本農業というものを、なるがままにするのじゃなくして、立て直すんだという、こういう観点から再検討する必要はないかと、かように考えますが、これは私の考えが間違っておるかどうか、率直にひとつ大臣のお考えを承りたいと思うのでございます。
  30. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どもは、基本的に自由な社会を期待することは当然でありますが、その中におきましても、やはり、行政がかなりの誘導をして、そして生産、消費を円滑にできるようにしてまいるということが必要でございますので、一がいに自由主義ではいけないのではないかというようなことに対してお答えできるかどうか知りませんけれども、自由な社会においても、もちろん行政が関与いたしまして——たとえば、先ほどミカンの話が出ましたけれども、そういうことについて、需要、供給の関係はこうなっているので、このようにおやりになったらどうだとか、また、それに必要な、先ほど来お話しのございました野菜であるとかその他のものについても、かなりの財政負担をいたして誘導しておるわけでありますから、そういう点においては、そういう意味であるならば、ただいまのお話しにつきましては、私はまことに同感でございます。
  31. 稲富稜人

    稲富委員 私は、なぜこういうことを申し上げるかといいますと、日本農業のあり方というものは、先刻のことを繰り返しますが、主産地形成をして、そして計画生産をやる、計画生産をやる場合の一切の農業資材というものは、これは国が責任を持つのだ、そして、生産された農産物に対してはやはり価格保障をしてやるんだということになりますと、国の支出というものが非常に多くなるという問題が起きましょうが、今日のような経済組織のもとにおいては、農村経済というものは他に流れていくというのがその基本的な状態にあると私は思う。そうすれば、農村に対する保護とかでなくして、農村への経済の還元だ、こういうように私は積極的な農業対策をやっていいんじゃないかと思います。  私は、西ドイツに行きましたときに、西ドイツの農林大臣に会いました。そのとき、西ドイツは農業基本法をつくって、農業というものを一つの社会保障としてわれわれは考えていくんだと、これほどはっきり西ドイツの農林大臣が言っておったことを記憶いたします。日本農業においても、やはりそれほどの思い切った対策をやらなければ、安心して農民農業経営に当たるということは困難じゃないか、これがためには、国の財政支出も必要であろう、これはやはり農村経済の還元であるし、こういうことが国民経済の調和をとる上において政治的にやるべきことではないか、こういうこともわれわれは考えるので、そういうことを頭に入れながら今後の農政というものを打ち立てる必要があるんじゃないか。こういうことをいますぐできるできぬは別として、そういうことを考えながら日本農政を打ち立てるということが非常に必要じゃないかと私は考えますが、いかがでございますか。
  32. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 貴重な御意見でありますので、十分参考にいたしまして勉強したいと思います。
  33. 稲富稜人

    稲富委員 それで、いま申しましたような点から申し上げて、やはり、この価格対策の一環としては、生産コストを下げるということも必要であります。その生産コストを下げるためには、先刻もお話しがありましたように、構造改善事業を行なうというようなことも当然行なわれる。ところが、その構造改善事業が、地元負担が多くなっては生産コストは安くなるものではございませんので、国がこれをやるんだという問題。さらにまた一つは、今日農業の近代化をやりますと、農業の機械化が起こってまいります。今日の農村農家経済というものは機械化貧乏なんですよ。御承知のとおり、牛馬を使っておりましたときには、牛馬を売れば幾らにかなる。しかし、機械というものは、売りますときにはスクラップで、ただなんです。ところが、年々歳々機械はよくなりますが、半年遊ばしておけばさびつきます。そうして、よくなったものを隣のむすこが買ってきて、その機械を使用いたしますと、うちのむすこもその機械がほしいということになる。機械を買ってやらなくちゃ農業をやらぬと言うから、しょうがないから、おやじは、やむなく、またその機械を買ってやらなければいけない。機械屋に御奉公するために農業をやっているというのが今日の農家経済なんです。  そういう点から言いますと、生産コストを下げるためには、機械化センターというようなものをつくって機械を貸与してやるとか、そういうような方法も講じてやることが必要ではないか、農村への経済一つの還元の対策として、これは考えていい問題じゃないか、こういう問題もまじめに政府が取り組むべき問題ではなかろうか、かように私は考えますが、いかがでございますか。
  34. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのような機械化センターを持っている国は、よその国にもございますようです。しかし、機械というものは、やはり、機械を使うことによって労働時間をかなり節約できる。その節約された時間でテレビを見ておったんじゃ話になりませんけれども、ほかに何か生産的な仕事が増強されるならば、これはやはり経済的に見て有効なことではないかと思うのでありますが、いずれにいたしましても、農村における機械に対する負担が多いということは私どもも聞いております。そういうことにつきましては、これを効率的に行なえるようにしたい。私どもは、いまのところ、機械センターというふうなものまでは考えておりません。
  35. 稲富稜人

    稲富委員 この問題につきましては、農業生産コストを安くするという意味から、十分検討して取り組んでいただきたいということを強く私は要望いたしておきます。  次に、私は先刻農産物価格の問題を申し上げたんでございますが、何といいましても、農産物価格決定というものは、生産費を補償するという価格決定であらなければ、つくっても損をするということは過酷だと私は思うのです。そういう点から申し上げまして、本年度の米価の問題についてお尋ねいたしだいと思いますが、昨日、瀬野君は、本年度の米価決定は田植え前にやれと言っておりました。大臣は、生産状態を見た上で収穫前にやるのがいいんじゃないかと言われておりました。そのどちらかという点は別といたしまして、私がここでお尋ねしたいと思いますことは、御承知のとおり、食糧管理法の第三条の二項によりますと、「政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」ということになっておりますので、本年度米価を米価審議会に諮問される場合には、この経済事情、物価上昇、これはおのずから生産費というものは高くなっておりますので、こういう点を十分参酌しながら、しかも、毎年同じようなことを繰り返さぬで、できれば、この米価を米価審議会に諮問をされる前に、農業団体等の意見も十分大臣がお聞きになって、ちょうど春闘に対して総理大臣が労働組合の幹部と話し合っているように、この農業団体の代表と十分協議されて、生産者が再生産確保し得るような、かような米価決定のためにやっていただきたい。こういう点を、私は特にこの際希望を申し上げたいと思うのでございますが、いかがでございますか。
  36. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまお読みになりましたような趣旨、方針でいつでもきめておりまして、その方針に基づいて米審に御審議を願ってきめる。こういうことでありますが、そのもろもろの計算の数値をきめます前には、当然、事務当局におきましては、それぞれの団体などと常に緊密な連携を保っておりますので、そういうことが反映するようにいたしたいと思っております。
  37. 稲富稜人

    稲富委員 もう時間がありませんので、かいつまんで申し上げていくのでございますが、次にお尋ねしたいのは、本年度の消費者米価でございます。  消費者米価は六カ月でしたか、六カ月の据え置きがなされているのでございますが、食管法の第四条の二項には、「政府ノ売渡ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」ということになっております。それで、現在の物価高で、消費者家計というものは苦しい。こういうような事情の中から、これを据え置きにされたということは非常に当然の処置だったと、かように私は考えますが、ここで申し上げたいことは、その当時より、今日の消費者家計というものは好転いたしておりません。物価高等によります、あるいは資材不足等によります生活の不安定な状態というものはますます強くなってきております。こういう状態でございますので、据え置き期間というものは大幅に延期する必要があるというふうに私は思うのでございますが、これに対する大臣のお考えを承りたい。
  38. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これはまだ、政府においても、現在、一応半年間延期するということを決定いたしただけでありまして、これから先のことは、いずれまた政府部内で相談をいたしたいと思っております。
  39. 稲富稜人

    稲富委員 この点は、御相談なさいます場合に、いま申しましたように、その当時よりも消費者家計はもっと苦しくなっていると思いますから、十分実情を御調査の上で、私の希望しましたような方向で御決定を願いたいという希望を私は強く申し上げておきたいと思うのであります。  ここではしょってお尋ねしたいと思いますことは、非常な物資不足から、農業に取り組む農民が今日不安に思っているのは、本年度の肥料の見通し、あるいは農薬の見通しで、一体肥料がどうなるのだ、農薬がどうなるのだという不安が非常にありますので、これに対する農林省としての現在の見通しをまず承りたいということが一つと、さらに、ことし、油というものですべての国民が非常に脅威を感じたと私は思いますが、これが食糧であったら一体どうなったであろうかというのがすべての国民の不安でございます。そういう点から、ことしは食糧は十分だと言っておりますけれども、もしもここに不安を生じて、すべての国民が食糧の買いあさりをするというような問題になりますととんだことになりますので、やはり、将来に備えるためには、将来食糧の備蓄対策というものをこの機会に政府はやるべきではないかと、私はかように考えますので、この肥料、農薬の見通しと食糧の備蓄対策に対しての考え方を承りたい。
  40. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 肥料につきましては、私どもは十分に生産当局と話をいたしまして、確保をいたしております。輸出の話等もしばしばあったようでありますが、内需を優先するというのは政府の決定した方針でございますので、この点は十分でございますが、農薬につきましては、御存じのように、ナフサのような輸入原料が基礎になりますものについては、通商産業省とも十分な連絡をとりまして、これの原料供給に万全を期するようにやっております。  それから、その他の機材につきましても、やはり石油の関係がございますけれども、これは製造について、これも通産省と十分な打ち合わせをいたしまして、きのうもここで資材のお話しで質疑応答がございましたけれども政府当局が、政府委員が申し上げておりましたように、これも十分な対策を講ずるように、通産省はわれわれのほうに約束をいたしておってくれるわけであります。
  41. 稲富稜人

    稲富委員 それから、備蓄の問題は……。
  42. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御審議を願っております四十九年度予算でも、備蓄の必要なことを強調いたしまして、備蓄対策の予算を組んでおるところでありますが、これは私どもといたしましては、備蓄可能なものについて、ことに飼料、食糧等について備蓄政策をだんだん強化してまいるつもりでございます。
  43. 稲富稜人

    稲富委員 次に、もう時間がありませんので、はしょりましてお尋ねしたいと思いますけれども畜産対策についてお伺いしたいと思うのであります。  これはすでに大臣も御承知だと思うのでありますが、最近、飼料価格がここ一年間に約二倍に高騰している事実は御承知だと思うのであります。その原因がどこにあるかという問題ですが、もちろんこれは国際的ないろいろな問題もあると思うのでございますが、一部には、やはり、売り惜しみあるいは生産者の値段引き上げ等があったのじゃないかということも憶測されておりますので、この点に対して、どういうような事実の上にあったかということを承りたいと同時に、この事実の上に立って、政府は、飼料需給安定法をどういうように活用されたかということ、この点を承りたいと思います。
  44. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今回の配合飼料価格の値上げにつきましては、ただいま御指摘のございましたように、各メーカーとも、工場渡しの建て値で平均一万一千円ないし二千円、部分的には二千円をこしておるものもございますが、その値上げがおおむね二月から行なわれたわけでございます。今回の値上がり要因は、主として、一部飼料穀物価格の値上がりという要因もございますけれども、その主要なるものは、円為替レートの低落ということと運賃その他の値上がり要因が主でございまして、いわば国際的、一般的要因であるというように見られるわけでございます。  昨年の年末ごろから、一部のメーカーにおきまして値上げの動きがございまして、われわれといたしましては、種々事情を聴取いたしまして、値上げの時期の延期と値上げ幅の抑制に極力つとめてまいりました。一月の値上げも見送ることになったわけでございますが、その後の情勢もいよいよ変わりませんので、二月から必要最小限度の値上げはやむを得ないものということで指導をいたしたわけでございます。これに伴いまして、ただいま御指摘がございましたように、昨年、約一カ年前に比べまして二倍近い値上がりをいたしておりますので、畜産経営につきましては、かなりの大きな影響を与えておると思います。これに対します対策といたしましては、前二回の際は、緊急飼料対策といたしまして、補てんあるいは低利融資という対策を講じてまいったわけでございますけれども、今回は、先ほど申し上げましたように、その要因、原因が非常に一般的であり、しかも、国際的な要因が主であり、さらに、ごく短期的なものではないというように認められますので、従来と同じような対策を講ずることは非常に困難ではないかというように考えておりまして、基本的には、農産物価格飼料の値上がり要因を適正に反映さして農産物価格を形成していくという努力が必要ではないかというように考えております。  それでは、具体的な方法いかんということになりますと、三月末に、例年のように、行政価格といたしまして、加工原料乳の保証価格と豚肉の、安定価格を決定することになっておりますので、ただいま言いましたような諸要因は適正に反映さして決定するように措置すべきものというように考えておりますが、そのような行政価格のもとにない畜産物につきましては、法律制度ではございませんけれども、民間の自主的な卵価の安定制度、さらに子牛価格の安定制度等もございますが、これは、現在国会で御審議をいただいております四十九年度予算におきまして、それぞれ、機能の拡充あるいは基準価格の引き上げにつきまして必要な予算を提出しておりますので、これの成立を待って、そのときの需給動向、価格動向に即した措置をとってまいりたいというように考えております。  さらに、鶏卵のごとく、ここ二、三年来生産過剰ぎみでまいっておりますような畜産物につきましては、生産者団体等を中心といたします自主的な計画的な生産、出荷の調整措置というものを足並みをそろえてやっていただく、それによりまして、価格の上昇分を織り込んだ適正な畜産物の価格形成に努力をするという必要があろうかと思いまして、現在、生産者団体と、その具体的なやり方につきまして検討をいたしておるところでございます。  さらに、肉牛経営につきましては、輸入牛肉の増大畜産経営に、肉牛経営に圧迫を与えているという点がございますので、事業団の牛肉輸入につきまして必要な調整措置を講ずることといたしたわけでございます。
  45. 稲富稜人

    稲富委員 私はそれはあとから聞こうと思ったのを、先に答弁してしまったのですが、問題は、私は、飼料需給安定法をどう活用されたかを聞いているのです。今回のように意外に飼料が非常に上がったということなんですが、きょうの毎日新聞の社説も掲げているのでございますが、業者が品不足状態をつくって値上げを強行したというようなことも一部−は流布されておるわけなんです。この需給安正法の第九条に、「農林大臣は、この法律目的を達成するため特に必要があると認めるときは、省令の定めるところにより、輸入飼料の輸入業者、倉庫業者、販売業者若しくは加工業者又は第七条第一項の規定により条件を附されて小麦の売渡を受けた者」と書いてあって、「事務所、事業場、倉庫その他必要な場所に立ち入って調査させることができる。」という権能があります。こういうように異常にえさが上がった、しかも、これには業者が価格操作をやったということさえも流布されているのでございますが、こういうときにこそ、政府は、その法律の定めるところによって、立ち入り検査等をやって、その実態をつかむというようなことをやるべきだと思うが、そういうことをおやりになったかどうかということを私はお聞きしているわけなんです。
  46. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 政府操作の飼料につきましての御質問でございますけれども、現在、政府は、食管物資であります小麦と大麦につきまして、年間の飼料の需給計画に基づきまして、必要な数量につきまして、生産者の中央団体等に安売りをするということによりまして価格安定をいたしておるわけでございますけれども、これは主として小麦と、小麦から加工されますふすま、それから大麦でございますので、単体飼料が中心になっておるわけでございます。これにつきましては、昨年も、四十八年度……
  47. 稲富稜人

    稲富委員 時間がかかるから、私が質問している点だけ答弁すればいい。ただ、立ち入り検査したかせぬかということを聞いているのだから……。
  48. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今回の値上がりにつきましては、その法律を発動いたしましての直接の立ち入り検査はいたしておりません。
  49. 稲富稜人

    稲富委員 私は、こういうような点こそ、やはり法律で定めているんだから、立ち入り検査をして、そういう不当な値上げとならないように、常に見守る必要があると思う。これが非常に行政的に弱いと私は思うのですよ。いろいろな答弁をするけれども、今後、政府は、法で定めているんだから、その点を十分にやるべきだと思うのです。それは怠慢ですよ。大臣、どうですか。
  50. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 昨年来、飼料の問題につきましては、ずいぶんいろいろめんどうを見ましたことは御存じのとおりであります。そこで、飼料輸入の会社は、農業団体であります全農が大部分を占めておる大手であります。その他群小商社もありますが、今回の飼料について、畜産家からもいろいろ私どもに御陳情もございますので、いま稲富さんが御指摘のようなことについては、十分私自身が考慮して対策を講じたいと思っております。
  51. 稲富稜人

    稲富委員 ただいま申しましたように、大臣、えさというものは非常に高くなっております。ところが、逆に、畜産生産物というものは安くなっております。こういうような状態で、だれが畜産に取り組んでいくかという問題でありますが、口に畜産振興をはかるということを言うならば、生産者が引き合うようなことにしてあげなければだめだ。損をするような生産をさせておきながら、振興しようとか、振興対策だとか言ってもだめだ。振興対策は、やはり採算の立つような畜産をやらせることが振興の第一義であらなくちゃいけないと、かように私は考えます。  そういう意味から、私は結論を申し上げますが、いま申しますように、飼料は非常に高騰しておる。ところが、畜産物の価格というものは、輸入の圧迫であるとか、あるいは政府のとられた低価格政策とか、こういうような状態で、両方からはさまれて困っているという状態でございます。それで、この際大臣にお尋ねしたいことは、畜産物の価格安定等に関する法律の第四条に、「農林大臣は、物価その他の経済事情に著しい変動が生じ又は生ずるおそれがある場合において、特に必要があると認めるときは、安定価格を改定することができる。」ということになっております。今日のような畜産物の価格、あるいは飼料の高騰という点から考えて、この際、これは当然必要があると認められると思うのでございますが、安定価格を改定するということに踏み切る御意思があるかどうかということを承りたい。
  52. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 畜産物というのは、御存じのように、いろいろな品目がございますが、御存じのような事情で、飼料の原料が高騰して、したがって、その飼料が値上げをされるというふうな結果によって生ずるその結果は、やはり生産物に響くわけでありますので、そういうものは十分に考慮いたしまして、その点は勘案して対処していきたいと思っております。
  53. 稲富稜人

    稲富委員 こういう問題は、生産者の切実な問題で、もう現に上がったということがわかっているのですから、そのつど早く政府は手を打って、しかも大臣は、これを「改定することができる」という権限を与えられているのですから、その権限を生かして、これに対する対策というものは、時宜に沿うて直ちにやらなくちゃいけないと私は思う。いまのようにほうっておきますと、畜産業者というものはそのうちにだんだん元を割って売ってしまうということになって、だんだんやっていけないようになってくる。だから、これが政治だと私は思うのですよ。もっと生きた政治をやってもらわなくちゃいけない。この第三条の第五項に「農林大臣は、安定価格を定めようとするときは、あらかじめ畜産振興審議会の意見を聞かなければならない。」ということになっておりますから、ただいまのような問題に処するために、直ちにこの畜産振興審議会を開いて、その意見を聞くことが今日必要だと私は思っておりますが、大臣、いかがでございますか。
  54. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 必要な措置を講じて、畜産家に安心してやっていただけるように最善の努力を尽くします。
  55. 稲富稜人

    稲富委員 大臣の気持ちはわかるのですよ。ところが、現在の実情というものは、大臣がそう思っておるんだということでは、まのろくてがまんができないというところまで来ているのですよ。私は、これは、大臣は今日の畜産の実態というものを十分把握していらっしゃらないのじゃないかと思う。これは畜産局が悪いんですよ。もっと大臣が十分認識されるように、実態を大臣に話さなくちゃね。それで、大臣は、御存じないから、将来そうしょうと思っておるとおっしゃると思うけれども、もう、そういうようなのんびりした時期ではございません。これはもう直ちに行動に移してもらわなければ、あすの畜産対策がどうなるか、あしたの畜産家がどうなるかという問題でありますから、これに対しては、直ちにそれによって対処してもらうという決意を承りたいと思いますが、いかがでございますか。
  56. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私の郷里にも畜産がいろいろございまして、この人たちが先日来上京しておられますが、当事者にお目にかかりまして、大体こういうようなものでありますよという原価計算的なもののお話し生産者からいろいろとよく承っております。私は、あまりそういうことを申し上げなかったのでありますが、私なりに十分に事情を知っておるつもりでありますので、そういうことを考えながら対処していくと、こういうことをお答えいたしておるわけであります。
  57. 稲富稜人

    稲富委員 いまもお話しが出たのですが、ともかくも、これに対しては、いま大臣はいつやると言うと責任ができるから、審議会をいつ開くとか、あるいは安定価格を改定するとかとはお言いにならぬかしらぬ。大臣としては、これは所管の局長なんかの意見も聞かなくちゃいけないということで、そういう即答はされぬかもわかりませんけれども、これは直ちにそれに対する行動に移していただきたい。そうすることによって、畜産農民は、政府がこれに対してそういう手を打ってくれるんだという希望の一端が持てると私は思う。これをいつまでもやらないで、困っている事情は知っておるんだと言っても、知っておるばかりでは、ほんとう生産の衝に当たっている人たちは満足できないわけなんでございますから、この点をこの際やっていただけないとするならば、事情を十分その関係から聞いた上で早急に対処するぐらいのことは御答弁をしていただかなければ、みんな納得いかないだろうと思いますが、もっとはっきりした御答弁がほしいと思います。大臣、いかがでございましょうか。
  58. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御熱心なお話しでございますので、あまり申し上げる必要もないことだと思っておりましたが、自由民主党の農林部会におきましては、専門家たちが非常な検討をいたしております。私どももよく打ち合わせをいたしておりますので、事情を十分承知しており、その上で対処しておるわけでありますので、まあまあ、あとのことはひとつ御信頼を願いたいと思います。
  59. 稲富稜人

    稲富委員 自民党に相談してやると言っておるから、大臣、これはひとつ責任を持ってやっていただきたいと思うのです。  それから、飼料対策の恒久対策として、きのう瀬野委員からも質問しておりましたが、海外協力事業団ですか、これに対しては、未開発地に対する恒久的な対策がやられると思うのでございますが、これは御承知のとおり外務省の所管であるが、聞くところによりますと、すでに商社がこれに割り込んでいこうというような動きもあるということを聞くのであります。商社がそういう問題に入っていきますと、やはり、金もうけの材料になると思う。私は、以前もこの問題はこの委員会で希望したのでありますが、いろいろな農産物事業団でやられては困るのであって、特に、えさというものは、外国から安いえさを持ってくるということが一番妥当であるならば、えさに限ってはひとつ事業団を通じてやってもらいたいと思うのですが、これに対しては、どこまでも農林省の関係において、このえさ対策の一環としての事業団の運営をやっていただきたい。商社あたりの金もうけの対象にならないように、この運営に対しては十分注意していただきたいということを申し述べて、これに対する大臣考え方を承りたいと思います。
  60. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは国際協力という立場でやってまいるわけでありますから、もちろん、政府間ベースで話し合いをして、その上でどういうふうに取り運ぶかというようなことになるでありましょうが、これは法律案を提出する直前でございますし、これから部内でも打ち合わせるわけでございますので、ただいまのようなお話しも十分尊重して承っておきたいと思います。
  61. 稲富稜人

    稲富委員 最後に、もう一点だけ、麦対策に対してお尋ねしたいと思います。  御承知のとおり、国際的な麦価というものが相当に高騰を来たしておりますし、逆に、日本の麦作というものはだんだん減少いたしております。そういう点から、本年度は麦に対する奨励金もお出しになるということは十分承っておるのでございますが、これに対して、麦価の問題も考えると同時に、麦の品種改良等には取り組む必要はないかどうか。御承知のとおり、今日の日本のパンというものについては、外麦でできるようなパンの機械になっておりますので、それに沿うような麦の品種の改良を検討する必要がないかということが一つと、さらに、また、日本の麦でつくるパンが一般に普及するかどうか、こういうこともあわせながら検討する必要があるのじゃないかと思いますので、麦生産にひとつ積極的にやってもらうと同時に、あわせて、品種改良の問題に対しても取り組む必要があるのじゃないかということを特に申し上げたい。それがためには、現在の麦作に対する奨励金を増額するということ、あるいは、これに対する免税措置をとるということ、こういうこともあわせて考えて、麦作の振興のためにこの際取り組むことが必要じゃないかと思いますので、この点を特にお尋ねして、政府の善処方を希望いたしたいと思うのでございます。
  62. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 麦作の大切なことを十分農林省も心得ております。試験場におきましても、ただいまお話しのような品種改良についていろいろ研究いたしておりますことを、先日、技術会議から私に報告がございました。そういうことでございますので、御趣旨を尊重してやってまいりたいと思っております。
  63. 稲富稜人

    稲富委員 免税の問題はいかがでしょうか。それから、奨励金を増額する問題ですね。
  64. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま、予算を御審議願っておる最中に、私の口からそれと違う話を申し上げるわけにはいきません。したがって、よく皆さまの御意見を拝聴いたしましたということでございます。  それから、奨励金もそうでございますが、免税のことにつきましては、まだ、私ども——研究に対する免税ということでございましょうから、これは大体御存じのように、麦の減ってまいりましたのにはいろいろな事情もございましょうけれども、稲と麦が交錯しておって、耕地の利用について都合が悪いというふうなことで麦をつくらなくなった地方もかなりあります。そういう点において、稲と麦の種の研究を一生懸命でやっておる次第でございますので、それから先のことは、またぽつぽつ考えていきたいと思います。
  65. 稲富稜人

    稲富委員 それでは、時間が来ましたので、これで質問を終わりますが、いま質問を通じまして私の希望した問題につきましては、今後十分御検討の上で善処していただきたいということを最後に希望を申し述べまして、私の質問を終わります。
  66. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際、午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十八分休憩      ————◇—————    午後一時十五分開議
  67. 仮谷忠男

    仮谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。諫山博君。
  68. 諫山博

    ○諫山委員 私は、きょう、わが国畜産問題、とりわけえさの問題に限って質問します。  いま、全国の畜産農民が、えさの深刻な値上がりのために重大な危機に直面しているということは大臣も御承知だと思います。ことしの一月二十八日、栃木県で、坂本治一君という青年が養豚場で自殺をしました。この人は二十六歳で、まだ結婚後一年半しかたっていないのですが、真岡農業高等学校を卒業して、アメリカで近代的な畜産経営を学ぶというような、畜産経営に非常に熱意を燃やしていた人です。そして、百頭からの豚を飼育していたわけですが、えさの値上がりのためにとても経営が成り立たないということから、前途を非観して自殺をしたと言われております。また、いま、全国各地で畜産農民の決起集会が行なわれております。私の住んでいる福岡県では、一昨日、千五百人の人が集会を開いた。きのうは東京で全国的な集会が行なわれた。いまも、茨城県の畜産農民が東京ですわり込みをしている。こういう深刻な事態が全国的にあらわれたわけです。こういう事態を生み出した原因というものは幾つかあると思いますが、しかし、いますみやかに解決をしなければならないのは、何といっても飼料の問題です。  午前中、農林省のほうから、現在の飼料危機を招いた主たる原因というのは外的なものであるという説明がされましたが、しかし、外的なものが今度の畜産危機の主たる原因だという立場をとる限り、農林省が本気でこれを打開しようという姿勢は出てこないと思います。なぜ外的な要因が日本に深刻な飼料危機をもたらしてくるのか、まさに本質はここにあるわけです。そういう観点から、外的ないろいろな要素があることは私は否定いたしませんが、しかし、こういう外的な原因がストレートに日本農民に危機としてあらわれてくるという事態を生み出したことに対して、農林省としては反省はないのか、大臣に見解をお聞きします。
  69. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 飼料の原料が値上がりをした原因はどういうところにあると思うかというお尋ねに対して、事務当局から——いろいろな原因考えられますが、まず第一に、去年は国際的に品不足になりました。そういうこと。それから、輸送のフレートが非常に上がってきたこととか、あるいはまた、ドル高、円安で、為替関係でこちらの引き取り価格が上がってきたこととか、それからまた御存じのように、いままであまり大きな買い付けをしなかったほかの国からアメリカに対して非常に大きな小麦等の買い付けが行なわれて払底をしたこととか、いろいろなことがありますことは、もういま諫山さんがおっしゃったとおりであります。その点はお認めいただいておるわけでありますが、私どもとしては、飼料の最も多くの分量を外国に依存いたしております立場から、そういうことの原因で、外国から品物を入れております飼料メーカーの——これは八〇%以上は農業団体である全農でありますが、その他大小の商社がこれを取り扱っておりますけれども、その人たちの構成する原価計算が非常に上がってきたということで、昨年は、政府におきましても特段の措置を講じたことは御存じのとおりであります。二百十一億の基金を融通いたして金融をいたしたり、それからまた、食管でかかえております古米の非常に低廉な払い下げ等までいたしまして値上げを防ぐことに協力してきたのでありますが、同じようなことは、今回はなかなかむずかしい、こういうことを先ほどお答えいたしたようであります。しかしながら、これをそのまま放置しておくのだと言っておるわけではないのでありまして、われわれといたしましては、一方において食糧の問題をいろいろお話し合いをいたす中で、国内で生産のまかなえるものはできるだけ自給度を高める、しかし、必要ではあるが国内生産の乏しいものは安定的にこれを供給することに最善の努力をするのだと申し上げておりますが、そういうものの外国から入ってくるものが大部分の飼料として使われる畜産関係に大きな影響がございますことは当然なことであります。そこで、このわが国の食糧にとって非常に大事な畜産関係がそろばんが合わないでやめなければならぬというようなことを放置しておくわけにはいかないのでございますから、そういうことにつきましては、政府といたしましても、いろいろな面でこれが成り立っていくように最善の努力をしなければならない、こういうぐあいに考えているわけであります。
  70. 諫山博

    ○諫山委員 いま、大臣の説明で、国内で自給できるものはできる限り自給方向に持っていきたいという趣旨の発言がありました。現在、日本で使用されておる飼料の大部分というものは、技術的には日本国内で生産できるものだと私は思っております。畜産局長、いかがでしょうか。価格の問題を抜きにして、技術的には、ほとんどすべてのものが国内で自給できるのじゃないでしょうか。
  71. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 技術的に国内で生産ができるかという御質問に対しましては、それは、ほとんどできるものが、現在輸入しておるものの中では多いと思います。
  72. 諫山博

    ○諫山委員 問題は、農林省が従来とり続けてきたいわゆる国際分業論の立場を、いまに至って改めないのか、それとも、深刻に反省して改める道を選ぶのか、農民が非常に関心を持っておるのはこの点です。いまの答弁にもありましたように、日本の風土、日本の気候から見て、ほとんどすべての飼料というものは、日本でつくろうと思えばつくれるわけです。ところが、誤った国際分業論というような立場が今度の危機を招いたということは、石油の場合も同様だし、飼料の場合も同じことです。たとえば大麦とか裸麦、こういうものは日本で本気でつくろうと思えば、相当増産することができる。そして、この二つが大幅に増産されただけでも、日本飼料は飛躍的に自給率を高めることができると私たち考えますが、技術的な面からはたしてそのとおりかどうか、局長に御説明願います。
  73. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 先ほどお答えいたしましたのは、経済性を考えずに、純技術的に見て、現在輸入しておる穀物については生産が可能であるということを申し上げたわけでありますが、現在輸入しておる飼料穀物を、しからば全量わが国内において生産することが可能か、しかもそれを技術的な面に限ってという御質問の趣旨かと思いますが、経済問題は別にいたしまして、技術的に見ましても、現在の大麦なり小麦等につきましては、減少しておる理由が種々ございます。けれども、稲作との作期の競合という技術的な問題がございますので、小麦とか大麦の冬作だけを考えれば、技術的には、さらに生産を一そう大幅にふやすことがあるいは可能かと思いますけれども、表作の稲作との競合その他、経済問題を考えればもちろんでございますが、そういう点を考えれば、現在輸入しておる食糧を含めた麦類を一切国内において自給するということは、技術的にも相当むずかしいと思います。
  74. 諫山博

    ○諫山委員 念のために申し上げますが、飼料のすべてが国内で自給可能だ、飼料のすべてを自給すべきだと言っているわけじゃないのです。  そこで、主として、飼料自給問題というのは技術的な問題ではなくて、価格の問題だということに帰着すると思います。この問題を解決するためには、自然のままに放置するのではなくて、政府がもっと積極的な保護政策をとる、具体的には、生産農民からは生産費を償う十分な価格で原料を買い入れる、畜産農民には畜産経営が成り立つような安い価格でこれを売り渡す、こういう内容の二重価格制度を実施することが国内の飼料自給率を高める決定的な原因だと私は考えておりますが、農林大臣、この点はいかがでしょうか。
  75. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 飼料に限らず、あらゆるものがそうだと思いますが、国際的に非常に安いものが存在して、そういう安い原料を購入してきて、これに加工をして、かなりの高価な金額で海外に輸出できるというふうなこと、そういうことがはっきりわかっておれば、およそそういう産業は非常に伸びていくのではないかと思います。わが国は、御存じのように、資源の乏しい国でございますので、たとえば、鉄鉱石などをアメリカから入れて、製鉄をして、それによってつくり上げられたものを海外に輸出するというふうな経済構造で今日まで経済的に伸びてまいりました。農業だけの面でなくて、全体の日本産業構造、経済面から考えてみて、太刀打ちのできるようなものがやはり勝ち抜いていくのでありまして、そこで、私ども農業も、できるだけそういう競争力を持たせるような農業にしてまいりたいと思っておったわけでありますが、これはできるものもあり、なかなかむずかしいものもございますので、その間の調和が国家としてはたいへんむずかしいのではないかと思っております。  先ほど来お話しのございました飼料穀物等、これを国内で生産すればできる余力がありますし、また、先年は、小麦などもわが国でかなり生産されてまいりましたけれども、時勢の変遷に伴って、よそからああいう安いものが入ってくる可能性があるときには、消費者の側から見れば、価格の安いほどいいのでありますから、そういうものとの競争も行なわれたりして、逐次麦は生産が減退してきたことは御承知のとおりであります。そこで、しかし、今日の情勢から見まして、非常に経済的に無理でない限りは、ある程度政府が介入をいたしまして、四十九年度予算でお示ししておりますように、麦その他、大豆、飼料作物等については特段の助成をして、わが国自給度をできるだけ高めていこう、こういう考えで私どもはやっておるわけであります。
  76. 諫山博

    ○諫山委員 もちろん、飼料穀物の自給率を高めるためには、価格保障さえすればいいというふうにも私は思っておりません。たとえば、大麦とか裸麦というような、日本の気候風土に適したものについてさらに研究し、改良を加えるというようなことも必要です。さらに、たくさんの飼料穀物をつくるためには土地が必要になります。これは、大企業が買い占めている膨大な土地を放出させるとか、あるいは国有の林野とか原野を開放するとか、自衛隊の基地あるいは米軍の使用しているところを農民に渡すとか、土地問題も解決しなければなりませんが、しかし、どうしても私たちが直面するのは価格保障です。その点で、農林大臣としては、日本の穀物を基本的に自給していくという立場から、たとえば大麦とか裸麦というようなものについて、いま私が述べたような意味の二重価格制度のほうに前進するつもりはあるのかないのか。これがないということであれば、幾ら自給率を高めますと言ってみたところで、これはから念仏に終わらざるを得ないのではないかというふうに思いますから、結論だけお聞きします。
  77. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 やはり、全体の国の財政の立場、それから経済上の問題を考慮してまいらなければなりません。いまさっき申し上げましたように、一つのものについてだけ考えれば、いろいろな議論が成り立つと思いますが、わが国経済、財政を総括的に見て、わが国の中でわれわれの期待しておりますような方向をどの程度やり得るかということが問題だと思うのであります。それがほかの産業との調整をはかる大事なところだと思うのであります。私は、いま申し上げましたように、麦、飼料作物等については、当分の間、今回四十九年度予算で御審議を願っておりますような方策を続けてまいり、着々そういう方向自給度を高めていきたいが、しかしながら、さらに不足が生ずるのでありますから、これは多角的に長期安定的な輸入をしっかりやることによって、日本畜産は必要とするだけぜひ増強してもらいたい。  そこで、しかし、当面の問題になりますが、飼料価格は上がってきた。それを食べさして生育した畜産物が、原価計算をしてみて上がっていくのは当然なことでございます。それをどう処置していくかということで、いままで種々の方策を講じてやってまいりましたことは御存じのとおりでありますが、当面の問題につきまして、私どもは、えさの価格はなるべく上げないようになお最善の努力、指導はいたしますが、なおかつやむを得ない分がはね返ってくる畜産物の価格につきましては、いろいろ行政が介入をして、畜産家が成り立っていくように努力をすることは当然なことでありますので、そういうことについて、いま、各方面と協議をいたしまして、鋭意検討中であります。
  78. 諫山博

    ○諫山委員 午前中の説明と、さらにいまの答弁を聞いておりますと、えさの異常な値上がりについて、農林省は抜本的な解決策を講ずるのではなくて、これはしかたがないから肉の値上げをすればいいじゃないかというような、安易な方法しか考えていないというように聞こえます。これは、農業政策の放棄であります。そういうことなら、だれでもできるし、何もしなくてもできることです。この点では、もっと根本的に日本畜産をどうするのかということを考えて、さらに畜産農民経営を安定させるとともに、日本の物価問題も解決するというような立場から、積極的な取り組みを期待したいわけですが、しかし、いまのような立場でありますと、輸入問題というのはなかなか簡単に解決しないと思います。  そこで、午前中の質問にも出たわけですが、飼料需給安定法の問題について聞きますが、この法律に基づいて農民の手元に渡されている飼料というのは、農民が使っている飼料の中の何割を占めているのか、御説明ください。
  79. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 粗飼料を含めまして、約八%でございます。
  80. 諫山博

    ○諫山委員 飼料危機の深刻になったこの二、三年、増加の傾向にありますか、減少の傾向にありますか。
  81. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 毎年若干ずつ増加しておると思います。
  82. 諫山博

    ○諫山委員 この法律は、第一条の目的に明示されているように、「飼料の需給及び価格の安定を図り、」ということを目ざしております。そして、第七条には、飼料の需給が逼迫しその価格が著しく騰貴した場合の緊急措置を規定しております。だとすれば、いまのように、飼料の需給が不安定になり、価格が異常に暴騰するときにこそ、積極的に発動すべき法律だと思いますが、なぜこれが発動されていないのか。大臣、いかがでしょうか。
  83. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そういうことについて、いま鋭意検討中でございます。  それから、畜産家の方々には、ずいぶんいろいろな方に私も直接お目にかかって御意見を承っておりまして、いろいろ陳情書に御希望のことが述べられておりますが、重点的にはこういうところであるとか、いろいろな御意見の御開陳がありまして、われわれもよく理解いたしておりますので、そういうことに対処するために、できるだけ早く安心していただけるように処置をいたしたいと検討中でございます。
  84. 諫山博

    ○諫山委員 畜産局長にお聞きしますが、この法律に基づいて畜産農家の手に渡っている飼料価格は、全農なんかできめられている価格に比べてどうなっていましょうか。高いのか、安いのか、安いとすればどのくらい安いのか、説明してください。
  85. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいまのお尋ねの、全農等が販売している飼料と、政府が操作をしておる小麦ないし大麦の販売価格とどのように違うのかという御趣旨の御質問でございますが、政府が操作をしております飼料は大麦、小麦でございまして、小麦からふすまを加工いたしまして、ふすまを、支持価格で適正なマージンをとりながら末端の農家に行き渡るというようなことをやっておるわけでございまして、そういう単体飼料そのままを、大麦なり小麦から生産されましたふすまということで、配合せずして使う飼料が大部分でございます。全農等がやっております飼料は、ほとんどが配合飼料でございますので、他の成分、トウモロコシ、マイロ、魚粉、大豆かす等、いろいろ混入をいたしまして配合をしておるわけでございますので、飼料の種類が違いますので、いま直ちに直接比較することは非常に困難かと思いますが、一般の単体としてのふすま価格に比べますれば、政府が小麦を売り渡して、製粉メーカーがふすまを生産して、政府が支持する価格で売り渡している価格はかなり安くなっております。
  86. 諫山博

    ○諫山委員 どのくらい安くなっていますか。比率で説明してください。
  87. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいま申しましたところの、政府が売り渡しております小麦から生産されますところの、いわゆる専増産ふすまと言っておりますが、これは、現在、指示価格、工場の置き場渡しの、政府が指示しております価格が、包装込みで七百五十五円。これは三十キログラムでございます。それに対しまして、現在一般の市場で出回っておりますふすまの価格は、政府が特別に販売をいたします小麦から生産されますもののほかに、一般の食料用として販売いたします小麦から小麦粉ができ、さらにふすまもできるわけでございますが、その一般のふすまの価格は、約九百円から千円の間で現在形成されていると思っております。
  88. 諫山博

    ○諫山委員 この法律は、飼料農家に安く渡るようにするための法律ですから、当然大幅に安くならなければならないわけですが、これが飼料の八〇%ぐらいしか占めていないというのはなぜですか。局長、説明してください。
  89. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 飼料需給安定法に基づきまして政府飼料操作をしておるわけでございますが、現在操作をしております対象飼料といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、食管物資である小麦と大麦、しかも、単体用として、主として大家畜向けに使用される飼料を重点といたしまして、買い入れ、販売の操作をしておるわけでございます。それでは、トウモロコシあるいはマイロというような、配合飼料の原料といたしまして最も多量に使っております飼料をこの法律において実施をしておらないのはなぜかと、こういう御疑問かと思いますけれども、これは、従来、飼料のトウモロコシあるいはマイロの価格といいますのは、国際的に見まして非常に価格が安定をいたし、また、安定した数量を輸入することができましたので、そのような需給安定法の対象にするまでもなく、民間貿易によりまして十分安定的に確保することが可能であったわけでございまして、そのような理由もございまして、現在対象品目にしておらない、これまでは対象品目にしておらない、こういう事情でございます。
  90. 諫山博

    ○諫山委員 いまの局長の説明でもわかりましたように、この法律に基づく飼料というのは、幾らか畜産農家に安く手に入っている。これは法律の趣旨から見てあたりまえのことです。ただ、マイロとかトウモロコシがこれに適用されていなかったのは、従来外国で安定的に供給できた、外国から安く買えた、だからこの法律を適用する必要はなかったという説明のようです。しかし、そういう状態というのは現在では完全になくなっております。だとすれば、この法律をもっと幅広く運用していくということが、安く飼料を手に入れるための非常に簡単な近道だと思うのですが、大臣はこの点積極的に検討される気持ちはないのかどうか、お聞きします。
  91. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほど稲富さんにもお答えいたしましたように、今回の、ただいまの状況にかんがみて、徹底的に検討いたしたいと思っております。
  92. 諫山博

    ○諫山委員 さらに、実際に畜産農家飼料が渡るルートについていろいろ質問します。  農家の人たちが非常に不満に思っているのは、飼料がどういう原価でつくられているのか、全農とか商社が飼料によってどの程度の利益を納めているのか、現在のような高額な値上げがどうしても避けられ得ないものであるのか、こういう点がさっぱりわからない、こういう不満を持っております。問題は、政府が、たとえば商社の輸入原価とか、輸入数量、製造原価、あるいは販売の諸経費、さらにこれによって得ている利益、こういう点を掌握しているのかどうかということが問題だと思います。  局長にお聞きしますが、商社と全農系と分けてみまして、そういう原価の実態というのは、政府ではつかんでいるのでしょうか。
  93. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今回の配合飼料の値上げに際しましては、全農並びに大手メーカー約十五社から、値上げの要因に関する各種の資料を徴取いたしまして、各項目別に説明を聞き、審査をいたしまして、適正な上げ幅にとどめるように指導をしたわけでございます。  ただ、配合飼料は、御承知のように、種類、銘柄が非常に豊富でございますし、畜種別に各メーカーの生産割合を異にしております。飼料の原料の配合割合も千差万別でございます。さらに、今回の値上げに伴いますコストアップという要因をいろいろ聞いてみますと、買い付け方法によって、どのような価格で契約をしておるか、また、フレートにつきましても、長期契約をしておる場合としておらない場合と、いろいろ差異がございます。国内的な包装資材の手当ての問題等におきましてもいろいろ違いがございますので、各社一律に画一的にこうならなければいけないというような考え方では無理が出てまいりますので、農林省といたしましては、コストの各アイテムごとに、最近のデータを用いながら、この程度ならばやむを得ないのではないかというようなことを指導をいたしたわけでございます。  なお、お尋ねの飼料会社あるいは商社の利益がどの程度あるかということは、そのつど農林省において聞き取りをいたしまして、資料等につきまして承知をいたしております。
  94. 諫山博

    ○諫山委員 その資料は、後日でけっこうですが、私に見せていただけますか。
  95. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 全商社あるいは全メーカーということではなしに、代表的なものにつきまして、必要なものは、われわれの掌握しているものは提出をいたしたいと思います。
  96. 諫山博

    ○諫山委員 さっき私が例示しました仕入れ数量とか仕入れ価格、あるいは製造原価、販売までの諸経費あるいは損益の実態、こういう問題を全農及び幾つかの代表的な商社について、後日資料として見せてもらえるというふうに聞いていいですか。
  97. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいま申し上げましたのは、全体の利益がどの程度あがっておるかというような点についての、すでに公表されております資料については、われわれ提出することができると思いますが、個々の原価計算等につきましては、それぞれ企業から資料をとります場合に、他に公表はいたさないというような趣旨でとっておりますので、直ちに提出をするというのは困難だと思います。
  98. 諫山博

    ○諫山委員 公表されている資料は、ことさら要求して見せてもらわなくてもけっこうです。公表してはいないけれどもあなたたち承知しているという問題について質問しているわけです。あなたはいま企業秘密ということを言われましたが、これは全農についても当てはまる考え方ですか。
  99. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 全農も約四〇%の配合飼料、販売シェアを持っておりますが、他の七十数社と激烈な販売競争をいたしておるわけでございますので、この点につきましては、一般のメーカーの場合と全農の場合と、企業の秘密といいますか、そういう点については同様に考えていいのではないかと思います。
  100. 諫山博

    ○諫山委員 それは競争商社との関係の秘密ですか。それとも、農民に対しても一切説明はできない、議員に対しても説明はできないという性質のものですか。
  101. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 全農内部のことはわれわれ直接関与できないと思います。対外的に公表することはできないというように判断をしております。
  102. 諫山博

    ○諫山委員 これでは、農家がこのたびの値上げがはたして妥当かどうかと疑問を持っているのに対して全く答えないという結果にしかなりません。たとえば、全農、経済連、単協、それぞれの段階で、飼料農家の手に渡るまでに手数料が徴されているようですが、この手数料が、たとえば全農とか経済連について、はたしてやむを得ない金額なのかどうかということが畜産農家の集会で非常に議論されていますけれども、こういう疑問に対しても、農林省としては答えようとはしないわけでしょうか。
  103. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 全農という組織の特殊性から言いまして、今回の値上げに際しましても、各地域におきましてブロック会議をやり、資料の説明もした上で、最終的に役員会において決定したというように聞いております。  なお、マージンにつきましては、それぞれ全農あるいは経済連、単協等におきましてきめておるわけでございまして、必ずしも全国、全組合一律ではないと思います。それぞれの事情によって違いますけれども、適正なマージンを取るということについては、農林省といたしましても日ごろから指導をしておるところでございます。
  104. 諫山博

    ○諫山委員 あなたたちは適正だと言う。農民はどうも疑問だと言う。そして、これを解消する資料は、あなたたちは握っているかもしらぬが、組合員には知らせない。これでは、ほんとうの民主的な運営というものはできないと思います。  そこで、いま全国幾つもの経済連で起こっている問題ですが、全農にしても、経済連にしても、単協にしても、値上げによって手数料の額が非常にふえた。値上げというのは畜産農家にとってはたいへんな事態だけれども、全農とか経済連などにとっては利益がふえることになる。これは不合理だから、価格値上げによる手数料の増加というものは農民に還元すべきではないかという動きが広がってきておりますが、こういう状態が出てきていることは御承知ですか。
  105. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 農協系統の場合、それぞれの段階で手数料を取っておるわけでございますが、われわれの把握しておりますところでは、先ほど申し上げましたように、経済連あるいは単協、それぞれの事情によりまして若干幅はございますが、各段階を通じまして、配合飼料の場合、約六%前後というのが平均ではないかというように承知をいたしております。なお、今回の石油危機等に伴います中間の輸送経費等がかなり値上がりしているという点がございますので、それに伴います末端での販売価格の差というものはある程度は出てきておるというように考えております。  なお、マージンは、大体何%という比率でやっておりますので、配合飼料価格が上がりますれば、それにつれて若干上がるという場合は当然あるわけでございます。
  106. 諫山博

    ○諫山委員 私は、そんなことを聞いておりません。飼料値上がりによる手数料の増加を農民に還元すべきだという動きが出てきているようだが、知っているかと聞いているのです。どうですか。
  107. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 個別的にそういう意見が地方によって出ておるという話は聞いております。
  108. 諫山博

    ○諫山委員 そういう意見が出ているだけではなくて、そういうことが県段階で次々に決定されているというのが現在の段階です。たとえば私の地元である福岡県、あるいは栃木県、長野県、青森県、そういうところで、やり方には幾つか違いがありますが、この利益というものは本来農民に還元するのが筋だということがきめられているでしょう。どうですか。
  109. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 そのような動きがあるということは承知をいたしております。配合飼料価格の値上がりによりまして、畜産農家経営上大きな打撃を受けておるということは事実でございますので、手数料につきましても、いろいろ引き上げの要因はあるものの、経済連あるいは単協におきましてできるだけ圧縮をするということは好ましいことだと思います。
  110. 諫山博

    ○諫山委員 大臣にお聞きしますが、いま私が取り上げたのは、全農とか、経済連とか、場合によったら単協とか、こういうところの手数料を全廃しろという動きが出ているのではないのです。飼料価格が値上がりした。それに従って自動的に手数料の金額がふえているから、このふえた分は農民に返そう、具体的には、二月分、三月分の飼料の値上がりからこれは控除しようというようなことがきめられているわけです。動きが出てきているというどころではなくて、たくさんの県段階で決定されています。これは局長の説明でも望ましいことだという評価のようですが、大臣、いかがでしょうか。
  111. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私はまだ詳細な報告を聞いておりませんけれども、あなたのお話しを承って少し奇異に感じますのは、全農、経済連、単協いずれも農業者の団体であります。御自分たちの団体でありますが、御自分たちの団体が成り立っていくために、そのそれぞれの機関で若干の負担を組合員がすることは当然あり得ることだと思う。しかし、今回の値上げというのは、先ほど来ここでお話し合いのございましたようなことが原因になって、価格の上昇もやむを得ないというふうに聞いておるわけでありますから、そういう価格の値上げによって利益がよけいに出るという筋合いのものではないんじゃないかと思う。輸入価格が一定しておって、販売価格が上昇したというなら利益は出てくるはずでありますけれども、輸入価格だけが上がって、その販売について不当な利益を得るのでなければ、利益金というものはふえるはずはないと思うのであります。これは一般論でありますが……。  そこで、値上げ、つまり販売価格を高くした、利益があるから、それを組合員に返せ、そういう話が一体どういう根拠で出てくるか。もしそうであるならば、値上げをしないほうがいいと思うのであります。しかし、先ほど来のお話しのような事情で値上げがされた。でありますからして、その利益を還元しろというお話し、どうもそれがよくわからないのでありますけれども、そのことはちょっとおくといたしましても、農業団体は金もうけのために存在しておる企業ではないわけでございますから、したがって、適正な手数料を払うということであって、しかし、販売事業どもやっておりますから、単協でも、御存じのとおり店も持っておりますし、いろいろやっていて手数料を取っておりますから、そういうものについては、それぞれ組合員総会でいろいろな処分の方法をきめておるのは諫山さんよく御存じのとおりだと思いますが、今回の値上げによって利益がふえたから、その分を還元しろというふうなことは、どうも、そういう利益を出されるような販売のしかたをされては困るのでありまして、だからして、私どもは、その輸入原価が上がってきたというならば、それを経営の合理化その他でなるべく上げ幅を少なくしてやってもらいたいというような要望はしておりますけれども、このために大いに全農等が利益をあげるというふうなことはあり得ないことではないかと思いますし、それから、組合員自体が自分たちで構成している農業団体でありますから、そういう使命を持っております団体というものは、やはり、それなりに組合員に奉仕する義務を持っておるのでありますから、今回のような場合には、価格安定について特段の努力をしてもらうように、私どもからも強く要望しておるような次第であります。
  112. 諫山博

    ○諫山委員 大臣は、私の提起した問題を正確には理解しておられないと思います。  そこで、局長にもう一ぺん聞きますが、利益をどうこうじゃなくて、農民の中からそういう運動が出てきておる。そして、この運動にこたえて、私が掌握している幾つかの県の経済連では、その利益は農民に還元することを正式にきめている。たとえば栃木県経済連の場合には、二月分、三月分の飼料の値上がりに伴う手数料の増加約五千五百万円を農民に還元する。具体的には、値上がり分からこれを控除するという措置が行なわれている。そして、私たちの計算によりますと、こういう金額が、全農では、昨年一月から十二月までの間に約十億円、県経済連では十二億二千万円、単協では三十七億円、こういう金額になるようですが、局長のほうでは計算したことがありますか。
  113. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 そういうような計算はいたしておりません。ただいまの御質問の趣旨でございますが、おそらく、マージンが上がれば単価が上がるので、おのずからマージン額が、金額が、率は同じであってもふえるという点を利益とあるいはおっしゃっておるのではないかというように思うわけでございますが、この点につきましては、確かにそういう計算は成り立つと思いますけれども、反面、先ほど言いましたように、運賃なり、その他金利なり、値上がり要因も途中の流通段階でございますので、必ずしも、それが利益であるというように一律に断定はできないと思います。  それから、経済連あるいは単協等で価格を引き下げるというようなことが利益を還元すると先生はおっしゃいましたが、そういう動きがあるといたしましても、経済連なり単協なりは、それぞれ総合的な経営をやっておるわけでございまして、えさだけをやっておるわけではない。したがって、その経理状況を見ながら、苦しいときにサービスをするというようなことはあり得ることであり、その限りにおいてけっこうなことではないかというように思いますけれども、やはり経営体でございますので、コストを割ってまで販売するということは困難ではないか。一時的なことは別にいたしましても、それは長続きすることではないと思いますので、適正なマージンの範囲内において流通段階が販売をしていくということが望ましいと思います。
  114. 諫山博

    ○諫山委員 念のためにお断わりしますが、これは私が新規に提起している問題ではなくて、全国で自発的に農民から起こっている問題なんです。そして、幾つかの県では、農林省とは違った、もっと農民の立場に立った観点から具体的にこれに結論を出しておる問題です。この点では、残念ながら、農林省のほうがまだ実態をつかんでいないように思います。この点は、すみやかに実態を調査して、たとえば青森県ではどうなっているか、栃木県ではどうか、長野県ではどうか、福岡県ではどういうことがきめられたかということを掌握して、これが好ましい事態であるとすれば、いまの、まさに危機に瀕した畜産経営を守るために行政指導すべきではないかということを言っているのです。大臣、いかがでしょう。
  115. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しを承っておって、ちょっと私も気がついたのでありますが、取り扱っておる物資の価格が上がって、取り扱った金額がふえた、金額によって、その割合で手数料がふえるということはあり得ることだと思う。そういうものはひとつ農家に、組合員に返せ、還元したほうがいいじゃないかという御主張があるならば、これはあり得ることだと思いますが、真相をよく調べてみまして——どもといたしましては、要するに、全体の農家及び農業協同組合が安定的に農業を進めていかれるように願うわけでありますから、いろいろ取り調べてみます。
  116. 諫山博

    ○諫山委員 いま大臣が要約されたような趣旨です。いまの要約で正しいわけです。だから、それが農民の要求で実現しているわけですから、これは、推奨すべきものであれば広げるべきではないかと思う。  同時に、これは新たに提起したい問題ですが、全農とか経済連でこういうことが行なわれているわけですから、もう一つの大手である幾つもの飼料取り扱いの商社、この商社に対しても、何らかの同様の行政措置を講ずべきではなかろうか。これは私の新たな提案ですが、いかがでしょうか。
  117. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは、やはり、農業家のほうがお使いになるために私ども農林省として取り扱いをしてもらっておる業者でありますから、そういうところでは、今日の事態に即応して、適切な手段でやってもらうように誘導してまいることは当然なことでございます。
  118. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、全農系の取り扱っている飼料については、現にもう幾つかのところできまっているわけだから、これは調査して前向きに善処する、そして商社系の取り扱い飼料についても同様の趣旨で検討するというふうに聞いていいのでしょうか。
  119. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 このことばかりじゃありませんで、いまのような時節でございますので、みんなが自粛自戒してやらなければならないことでありますので、私どもの関係しておる物資に携わっておられる業界についてはそういう意味で行政指導をいたしておりますから、商社に限らず、私どもの関係には十分そういうことを伝えて、自粛をしてもらうように誘導するつもりでございます。
  120. 諫山博

    ○諫山委員 商社というのが一筋なわでいかない存在だということは、もう天下周知の事実です。どういう方法で誘導されるのでしょうか。私は、もう少し具体的に誘導のやり方をお聞きしたいと思うのです。
  121. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これはいろいろあるのでありましょうが、要するに、今日の事態に即して適切な取り扱いをしてもらう。私は、どういう業界がどういうことをしておるということをあえて肯定するわけではありません。具体的なことをいま知っておるわけではありませんから……。しかしながら、さっきの全農のお話しにもありましたように、やはり、取り扱い額が多くなれば手数料が多くなるから、それを組合員に還元すべきではないかというような、そういうお話しと同じようなことであって、今日の時代におきましては、適切な価格で適当な経済安定に全部が協力していただかなければならないときでありますので、私どもが関係をしておりますいろいろな業界がございますが、畜産関係のほうのことはもちろん、漁業もありますが、そういうところには、従来もそうでありますが、なお一そう自粛自戒するようにいたしたいと思います。また、実際的によくいろいろ調査してみたいと思っております。
  122. 諫山博

    ○諫山委員 いまの問題は、後日もっと大臣のほうと私は話し合いをして、ほんとうに商社にメスを入れていただきたいというふうに希望いたします。  さらに、実際の現場の農民に単協から飼料が渡る場合に、一定の手数料が徴されている。これは一つの商業ですから当然なことだと思いますが、数日前に千葉県の畜産漁民が全農の人と交渉いたしました。それには農林省側も立ち会ったわけですが、その席で、うちの場合には指導価格というのがきめられていて、この価格飼料が売られている、どうも一定の手数料で渡されているのと違うようだという指摘がされて、農林省のほうでも、そういうやり方というのは千葉県以外にも行なわれているようですという説明があったようですが、そのとおりでしょうか。
  123. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいまの御質問は、末端の単協におきますところの、あるいは途中の経済連における販売価格を全農が指導しておるというような御趣旨の御質問かと思いますが、そのような事実は聞いておりません。
  124. 諫山博

    ○諫山委員 それは、千葉県について調査されましたか。
  125. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 現在調査をいたしております。
  126. 諫山博

    ○諫山委員 そういう事実がないというのじゃなくて、いま調査中だから、まだ正確な事実はつかんでいないという趣旨になりますか。
  127. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 全農のほうにそのような事実について問いただしましたところ、ないということでございますので、一応ないものと理解しておりますけれども、そういうお話しをこの前伺いましたので、現在調査をしておる、こういう意味でございます。
  128. 諫山博

    ○諫山委員 飼料の内容を明示してくれということは、長年にわたる農民の要求です。そして、昨年の当農林水産委員会で、共産党の中川利三郎議員が質問したのに対して、櫻内農林大臣は、それは積極的に前向きに検討するということが答弁されております。その後農林省から通達が出されて、飼料の内容を品目によって表示するようにということがやられておるようですね。実際にそのとおり行なわれておりましょうか。
  129. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今年の一月に、行政指導として、原料の表示をするようにという指導をいたしました。大体そのとおりに行なわれているものというふうに理解しておりますが、全部直ちに現段階で行き渡っているかどうかというところまでは、全面的にはまだ把握しておりません。
  130. 諫山博

    ○諫山委員 実際はやられていないのじゃないですか。どういう方法飼料の原料が農民に知らされていますか。その内容ですね。
  131. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 包装用の袋に表示をするということをやるように行政指導をいたしております。
  132. 諫山博

    ○諫山委員 行政指導しているのはけっこうですが、実際にやられていますかという質問です。
  133. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 一月にそのような行政指導をしたわけでございますが、御承知のように、包装資材の不足というようなこともございまして、古い資材等を使っておる例もございますので、したがいまして、全面的にその行政指導が徹底しておるというところまではまだいっていないのではないかというふうに思いますが、かなりの部分は実行されておるというように把握をいたしております。
  134. 諫山博

    ○諫山委員 昨年の九月にも同じような指導をしたのじゃないですか。違いますか。
  135. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 先ほどお答えしました点、若干誤りがございましたので訂正したいと思いますが、九月の段階で通達を出して、一月から実施という意味の行政指導をいたしておるわけでございます。
  136. 諫山博

    ○諫山委員 これは、飼料の原料及び飼料添加物の名称をすべて表示せよということになっていますね。実際にこれがやられているところがありますか。
  137. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 全部というわけにはまいりませんけれども、われわれのほうで、検査所等で検査の際あわせて指導しておるところによりますれば、かなりの部分が行なわれているというふうに聞いております。
  138. 諫山博

    ○諫山委員 あなたたちの通達によりますと、外国でもこういうことはやられているから日本でもやるんだということが書かれておるし、また、こういうことをしないと飼料の品質低下が懸念されるからだということが書かれております。ところが、去年の九月に通達を出して、いまに至るまでそれが徹底していない。その理由は、何か、紙の袋がもったいないからみたいなことを言っておりますが、しかし、そういう場合には、たとえばほかの紙を張りつけてでもやれとこれには書いてあるでしょう。なぜそれをさせませんか。
  139. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 法的根拠に基づかない行政指導でございますので、すぐに徹底できない面があるのは残念だと思いますが、そういう点も考えまして、現在の飼料の品質改善に関する法律等の改正問題の一環といたしまして、そのような表示義務を法律的に基礎づけるというようなことも現在検討いたしておるわけでございます。
  140. 諫山博

    ○諫山委員 大臣にお聞きします。  飼料の内容を明示せよというのは、長年にわたる農民の要求です。そして、どうやら農林省がおみこしをあげた。ところが、おみこしをあげたけれども、実際それが貫かれていない。その弁解として、法律的に強制できないからというような言い方をしているわけです。しかし、農林省の通達にもありますように、こういうことをしないと、飼料の品質低下も懸念されるという状態です。私は、大臣から、いつごろまでに必ずこれを徹底させるという言明をいただきたいと思います。
  141. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 前大臣お話しもあるそうであります。事務当局の答弁を承っておりましても、そのことをよく承知して指導しておるようでありますが、これは、私どもといたしまして、法律的根拠があろうとなかろうと、やるべきことはやらなければいけないと思っております。しかし、事務当局がどういうふうに、どういう経路でやっておるか、私もまだ聞いておりませんので、大事なことだと思いますので、よく聴取いたしまして、私は、けっこうなことだと思いますので、進めてまいるように努力をいたします。
  142. 諫山博

    ○諫山委員 大臣に重ねて聞きますが、これはすみやかに実現できるように取り計らうというように聞いていいですか。——そうだそうですから、速記に書いてください。ことばに出ませんでしたが。
  143. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ことばで申しますが、そのとおりであります。
  144. 諫山博

    ○諫山委員 最後に、もう一つ局長にお聞きします。  これは、内容を明示しろとは書いてありますが、内容の数量について書いてありません。数量まで明示させるつもりはないのですか。
  145. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 配合割合まで表示させるということは現在検討をいたしておりますけれども、実情、問題といたしましては、配合割合がときどき変わるといいますのは、原料価格その他の動きによりまして、各メーカーとも、配合割合を変えるということは、従来からこれまで行なわれておることでございますので、それを一律に全部いま直ちに配合割合まで明示するようにということができるかどうかという点に若干問題があるわけでございますが、したがいまして、現在の指導通達につきましては、その配合割合まで明示するということは指導はいたしておりませんが、できるところは好ましいということで、一部の飼料メーカーについては、すでにそのようなことをやっておるところもございます。これも今後の問題として、現在研究会等で検討を進めているところでございます。
  146. 諫山博

    ○諫山委員 あなたは、いろいろ新しい品目が加わったような場合には、ゴム印で追加して、判こを押してもいいじゃないか、張り紙してもいいじゃないかということまで通達しているでしょう。このやり方を採用すれば、簡単にできることなんです。問題は、大臣のほうが前向きの答弁をされましたが、法律的に義務づけることはできないからというような態度で臨む限り、いまの問題は解決できません。  私は幾つかの問題を指摘したわけですが、しかし、一番大事なことは、やはり、えさを日本生産すること、そして、外国の事情で振り回されるようなことを基本的に解決するということが中心だと思っております。  なお、残りの時間は、中川委員から関連質問させていただきます。
  147. 仮谷忠男

    仮谷委員長 諫山博君の持ち時間の範囲内において、中川君の関連質問を認めます。中川利三郎君。
  148. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 先ごろ、私は、この委員会におきまして、農機具に関連して、実際契約破棄が農民対販売会社の間で行なわれておる、ところが、前に契約したものが、それがもうその金ではだめなんだということで、前の契約を破棄する、これがだんだん調べていった場合に、メーカーがそうした疑いがあるということについて、全国的にその例をあげて質問したわけでありますが、これに対して、特に、集中的にバーゲンについては今週中に調べて返答するということでありましたので、当局のとった措置並びにメーカーのとった措置について御報告をいただきたいということと、時間がないようでありますので、メーカーが、自分のやった不当なやり方を認めたのかどうかということ、このことを、二つ合わせて、一回で聞きたいと思います。
  149. 松元威雄

    ○松元政府委員 お答え申し上げます。  前回の答弁で、極力早急に調査をいたすと申し上げたわけでございますが、その中で、会津の具体的な件につきまして御報告申し上げます。  これにつきまして、まず、メーカーのほうでは、メーカーが統一的に指示はいたしていないというふうに申しております。また、メーカーからのそういった文書も、まだ確認はできておりません。そこでございますが、会津の件の処理につきましては、役所といたしまして、メーカー、系列会社に対しまして、強く文書の撤回を求めまして、現在回収中であるという報告を受けております。このように文書を撤回いたしますので、既契約はそのまま適用されるということになるわけでございます。したがいまして、すでに価格をきめて契約を済ましているものにつきましては、その価格で履行するよう、メーカー、系列会社に強く要請をいたしまして、これを了承いたしました。したがいまして、超過分を農家から取った分につきましては、これを戻す。それから、まだ未履行の分は前の価格で提供するということに相なるわけでございます。
  150. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、メーカーはそれを認めておらない、こういうことでありますが、好意的に、自分のほうのメーカーの品物だから、そういうものをもとに戻すのだというふうに理解してよろしいかどうか。
  151. 松元威雄

    ○松元政府委員 これにつきましては、前回申し上げましたが、メーカーが販売店と、これまた契約を結んでいる。そうしますと、既契約の履行は当然のことでございますから履行する、こういうことでございます。
  152. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 メーカーがカルテルを結んで、自分が隠れていながらそういう疑いがあるんだということで、この前私は指摘したわけでありますが、メーカーが犯人だということを、あなたのほうでは何ら手がかりはとられなかったのですか。また、どうすれば、どういう状況でメーカーが犯人であるということが明らかになるのですか。そ  こら辺のところをちょっとお知らせください。
  153. 松元威雄

    ○松元政府委員 私のほうでは、メーカーの本所の直接担当者と申しますか、それを呼びまして事情をいろいろ徴したわけでございます。そういたしまして、御指摘もございましたからいろいろ聞いたわけでございますが、メーカーのほうからは統一の指示はいたしていないという答弁でございますし、また、それを裏づける文書がないわけでございまして、したがいまして、現在におきまして、統一的に指示をしたというふうには受け取れないわけでございます。
  154. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私の手元には、販売店とメーカーの関係を示す文書があります。ちょっと言いますが、一つは早期契約書というやつですね。簡単に言いますとね。早期予約契約書というやつですね。これは名前は申し上げられませんが、正式には予備登録予約書というものです。これはメーカーから、何月にはおまえのところに何台、何月には何を何台というふうに、各戸に早目に予約契約をしたものです。それから、もう一つ、それに基づいて当初契約書というものがございます。当初契約書ですね。これは、正式の名称は、田植え機なら田植え機の予約特売契約雷というものですけれども、これに基づいて、おまえの店は何月には何十台の田植え機なら田植え機をやるのだということで、総計何千万の金を払えということによりまして、その販売店は、その総額に対して、もう全額の手形を出させられておるわけであります。この方は三回に分けて手形を出させられておりますが、手形を切った残片がこれであります。さらに、新しい契約を押しつけられたという、つまり、旧契約が破棄されたという証拠に、ここに新しい納品書が入っています。新納品書ですよ。このこと自体、明らかに契約を破棄されたということを示す何よりの証拠じゃないかと思います。しかも、これをだれが返しに来ているかというと、前の契約はだめなんだということで、各メーカーの担当者が来まして、おれのほうの会社だけそんなことをしているのじゃないのだ——ここに正式の話の中身が出ていますが、ヤンマーだけではない、ほかのメーカーも契約破棄をやっているのだ、だから当社もやるのだということで、もちろんこれは会社の指示によるのだということをはっきり言っておる。つまり、皆さん方がこれを調べようと思えば、系列以外の販売会社に行けば、そこの領収証や、前の契約書といまの新しいやつと比べてみれば、明らかにこれがはっきりしているでしょう。このことは、メーカーが指示をしたということの証拠になりませんか。
  155. 松元威雄

    ○松元政府委員 メーカーと販売店の間におきましては、御指摘のような——それは、予約とか、あとの価格がございます。ただ、私が申し上げましたのは、メーカーが文書をもちまして旧契約を破棄するというふうな文書はございませんということを申し上げたわけでございます。したがいまして、依然として契約が残っている、メーカーのほうから文書をもって旧契約を破棄いたしますという、その文書がないということを申し上げたわけでございます。
  156. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 この時節柄、みんなの目が光っているときに、メーカーみたいなさかしいものが、証拠になるような文書をわざわざ残すとあなたはお考えなんですか。そんな甘いものではない。客観的なものを調べていけば、メーカーがやったということが明らかになるでしょう。その文書がない限り、メーカーが犯人じゃないのだ、明らかに、販売店がかってにやったのだということを、農林省の立場として、あなたは断言して言えるのですか。
  157. 松元威雄

    ○松元政府委員 したがって、冒頭に私が申し上げましたが、メーカーは覚えがないと言っているということを申し上げたわけでございます。メーカーは覚えがないと言っているというように私は御説明申し上げました。  したがいまして、全体の状況から、私のほうは、メーカーと販売店との間の契約については、これは一方的破棄はできませんから、その旧契約は履行すべしということを指導いたしたわけでございます。
  158. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 メーカーは、何も言うていない、販売店との関係において、自分のほうはそういうことはさしていないと言うけれども、販売店とメーカーの関係を示す書類がここにあるでしょう。手形の控えもみなあるわけでしょう。契約書もあるでしょう。最初の契約書と次の契約書と、それに従ってやった手形のあれもありますよ。新しい領収証を持っておる。このことを一体どう思いますか。
  159. 松元威雄

    ○松元政府委員 それは、従前の契約書あるいは申し込み書でございましょうか。それと、新しい価格にしたいということでございますが、旧契約を破棄しますということを統一的に指示はしていないということを申し上げたわけでございまして、メーカーの要望ないし希望としますれば、新価格を適用したいということはもちろん想定はされますが、それをもって旧契約を一方的に破棄するということを統一的に指示したという段階までは、まだ判断しかねるということを申し上げたわけでございます。
  160. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 この前、私は、会津の、カルテルの疑いが強いという、農家に流したあの文書を、二月一日に皆さんにあげておるのですね。それなのに、あなたのほうでは、ほとんど手をつけていない。調べなかった。二月四日の流通懇談会の席上で、日本のメーカーの団体の会長である久保田の宮地さんが、そういう不当なことをするやつがおるならば、すぐ名前をあげてもらいたい、すぐ取り消させるということを言っている。あなたも出席した中で、彼はそう発言しているでしょう。それにもかかわらず、あなたは一つも調べていないでしょう。メーカーが、おれのほうじゃないけれども、しようがないからおれのほうで責任を負いますよというような程度だという話をいましているだけですね。そうすると、早急にあなたは調査する、そして、ここへ報告すると言ったけれども、どういうやり方で調査したのですか。久保田に対しては直接出かけたのですか。あるいは井関、ヤンマー、三菱に対してはどうしたのですか。具体的に報告してください。どういう調べ方をしたのですか。
  161. 松元威雄

    ○松元政府委員 御指摘のように、二月四日に、私も直接出まして、こういう文書は適当でない、撤回せよということを私ども強く指示いたしたわけでございます。その席上云々のお話しはございました。そこで、さらに、私のほうは、日農工とそれからメーカー団体を呼びまして、実態を調べて報告せよということを言ったわけでございます。それは、それ以外にもそういう意見を聞いておりましたから、全体について至急調べて報告せよと言ったわけでございますが、それにつきまして、報告が直ちに出なかったものでございますから、一方並行いたしまして、メーカーについてもさらに聞いたわけでございますが、なかなか明確な返事が得られなかったわけでございます。したがいまして、さらに呼びまして、特に会津の件につきまして、こういう指示をするぞということをしてさらに調べた、そういう事情でございます。
  162. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 メーカーが疑わしいということは、あなたは十分に認めていらっしゃる。また、こういう状況もわかりましたね。あなた自身、そういうメーカー待ちの回答ではなくて、そういう販売店に乗り込めば、こういう証拠は百でも二百でも全国的にたくさん出てくるということはすぐわかる。これはだれでもわかりますね。そういう点で、系列以外の販売店が泣くようなことがあってはたいへんなわけでありますから、そういう点をあなた方はさらに調査して——今月中に御報告すると、この前あなたは何回も言いましたな。これをはっきりさせるかどうか、最後にお伺いしたいと思います。
  163. 松元威雄

    ○松元政府委員 御指摘のように、前回も御答弁申し上げましたが、こういう問題は全体的にございますから、極力早急に、全国的に調査をいたす。その場合、調査のしかたは、やはり、地方農政局、さらに県の協力を得てやるというやり方でありますものでございますから、若干時日はかかりますが、そういうことで調査をいたします。
  164. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは、お願いします。
  165. 仮谷忠男

    仮谷委員長 島田琢郎君。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  166. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私は、櫻内大臣にかわって四度目の農林大臣になられた倉石さんとは、実は初めてきょう議論をするわけであります。したがって、中身につきましては、若干事務当局から答弁をしたほうがいいというような場合も出てくるかもしれませんが、しかし、全体について大臣からお答えを願うということをまず約束を願いたいと思うのであります。よろしゅうございますか。
  167. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私で間に合う答弁なら、私がいたします。
  168. 島田琢郎

    島田(琢)委員 農林大臣で間に合わないなんというようなことじゃ、大臣、きょうひとつ辞表を出していただかなければならぬと思うのでありますが、なぜ私がそういう念を押すかというと、従来、倉石農林大臣には一つの定評があります。数字的なことになると全く答弁をしていないというふうになっているそうであります。というのは、従来の大臣のおやりになってきた足あとを私どもがずっと見てまいりますと、きわめてきびしい言い方でありますけれども、今日の日本農業の実態がこういうふうになったのは、歴代大臣はたくさんおるけれども倉石大臣が一番責任がある、倉石さんは日本農業を踏みつぶしてきた張本人ではないかというような批判さえ実はあるわけであります。したがって、きょうで三日間大臣のいろいろなお話しをわれわれは聞いているわけでありますけれども、今日の日本農業の危機というものについて、いま一つ真剣にお考えになっているかどうかという点を非常にわれわれは危ぶむものであります。したがって、この重大な日本農業の危機に直面して、大臣みずから従来の考え方を変えて、本気になって日本農業の大転換をはかるという決意のほどを私はきょうは伺いたい。そういう考えを持っているものですから、きょうは大臣とひとつお話しをしたいということを前提として、お約束を願うということを申し上げたわけであります。  さて、大臣は、就任にあたりまして、就任の弁でこういうことをおっしゃっておられる。農林省は、その役割りにおいて、もはや食糧省という性格でなければならなくなった、したがって、日本農政というものはそういう考え方に立って進めなければならぬという趣旨の就任の弁を実は述べておられるわけであります。ところが、今回、国民に示されました大臣の所信表明の中では、一体、大臣がそのように考えておられることが具体的に出ているかというふうに見てまいりますと、私は、従来の農林省としての性格の域を一歩も出ていないというふうに判断せざるを得ないのであります。特に、食糧政策の基本という問題の中では、従来の農林大臣の所信表明演説と少しも変わっていない。特に、最近における国際的な食糧需給事情の動向というものをどういうように見ているのか、きわめて疑わしいとさえ思います。  したがって、第一点の具体的なお尋ねを申し上げますが、国際的な食糧需給事情というものを大臣はどのように判断をしておりますか。
  169. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 国際的な需給事情につきましては、たいへんきびしい傾向にある。国連などで発表いたしております将来への人口の増加の見通しなどを私ども考えてみますと、一九九〇年ごろになれば、地球の人口は六十億人になるだろう。そういうことを考えてみますと、大体、地球の上の可耕面積に一人分の食糧を計算してみれば、それだけでもなかなか大問題である。そこへもってきて、気象の変化等もときどきはありますし、それから、開発途上国の人口がいわば爆発的に増加をして、同時に、この人々もまた、経済の好転に伴ってバラエティーに富んだ食料を要求されるようになってくるわけでありまして、あれこれ考えてみますと、これは人ごとではなく、大きな人口問題であるかもしれませんし、そういう意味で、国際的なこともさることながら、われわれ一億の日本人のためにまずわれわれは考えてみなければならないとかいう角度で考えてみましても、わが国の食糧生産も、しばしばここで今日までお話し合いのありましたように、なかなかむずかしい段階に来ている、全力をあげて生産にいそしんでもらうようにしむけていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  170. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どうも、私の質問に対しての大臣のお答えが的確でないと思うのでありますが、お尋ねをした国際的な食糧需給事情というのは、単にいまお話しに出ている開発途上国の食糧動向というものばかりではなくて、重要な供給国の実態も非常に大きな変化をしつつある。それは、量的にも、あるいはまた価格の上でも非常に大きな変わりようなのであります。そういうことを考えますときに、従来の日本農業の進め方とは非常に大きな考え方の変更をしてまいりませんと、それこそ、いま大臣が、一億国民の命を預かっている、大事なことだから真剣にやらなければならぬと言われたことだけでは済まされないほど、国内外の食糧の状態というものが深刻になっていると思うのであります。特に、私どもが常に国会論議を通して言ってまいりましたのは、農基法農政というものは完全に破綻をし、失敗をしているということで、これに手直しをするべきではないか。これは午前中もこういう議論がありました。それに対しても、大臣から、率直に申し上げるがと前置きしながら、実は、私は、率直なお答えではなかったと思うのであります。  私がまず第一点に申し上げたいことは、農基法農政の失敗を率直に認めて、これを変えていく、新しい日本農政の展開をしていくという具体的なものをこの機会に示していただかないと、一生懸命やる、真剣に考えなければならぬとおっしゃっても、それだけでは国民は不安でしかたがないわけであります。しかも、一億国民の命を預かっているのは、率直に言って農林大臣、あなたなんです。総理大臣でもなければ、ほかの大臣でもない。食糧のすべてを取り仕切っている責任ある立場にいる農林大臣が、一億国民のいわゆる生殺与奪の権さえ持っているのであります。そう考えてまいりますときに、私は、以下、これから具体的にお話しを進めてまいりたいと思いますけれども、そういう認識をまずきちっと国民に向かって明らかにしていただかなければ、一国の農林大臣として失格であるとさえ私は思うのであります。したがって、この農基法農政の失敗をあなたは率直にお認めになりますか。先ほども、率直にお答えをするということでありましたから、今度もう一度、この農基法農政についてのお考えを述べていただきたいと思います。
  171. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほどお答えしたのが率直でありまして、農業基本法を制定されました当時の日本経済社会の状況と今日では、若干の狂いが生じてきておることは御存じのとおりで、ああいうふうに経済成長がこれから大いに伸びていこうというようなときに、農業においてはかくあるべきであるという考え方で、これは国会で成立しておる法律でございますので、一つ一つの点について御反対の御意見の方もありましたけれども、やはり、私どもは、この法律を成立せしめて、この方針に従って農政をやってきたわけでございます。したがって、農基法がそもそもいけないのだというお考えと、それからまた、それに従ってやってまいりました農政が悪かったのだということを率直に認めろというお話しでございますが、私どもは、なるほど、いままでやってまいりました中で全部が全部成功しているなどとうぬぼれているわけではありません。たまさか一般方々に御不満を抱かれるようなこともあったかもしれませんが、全体としては、あの当時以来、わが国農業は伸びてきております。私は、従来やってまいりました方針の上に臨機応変の措置を講じて、農業生産を堅実に伸ばしていくということがわれわれの使命であると、このように考えておるわけであります。
  172. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私は、農基法農政は完全に失敗であったというふうな前提に立って申し上げてまいります。  一つは、実は、当時二百万戸の自立育成農家をつくるというキャッチフレーズであったのでありますが、その後、それらを補完していく政策の中で、三年もたたないうちに、わずか十八万戸しか、一割に満たない程度の自立農家しか育成できなかった。そして、同時に、それとうらはらに、兼業農家がどんどんふえていった。農家経済もまたそれに伴って非常にたいへんな破綻を来たし、今日においては、すでにもう幾度か指摘をしているとおり、農業そのもので食えなくなっているという実態というものは、もう全国的に広がりつつあります。北海道においては比較的自立農家が多いと言われたことはもう過去のことでありまして、私に言わせれば、おそらく、九五%は農業以外に所得を求めなければ経営が成り立たないという状態におちいっている。この一事をもってしても、農基法農政はまさに破綻を来たした、失敗であったということが言えると私は思うのであります。しかも、今日、昨年以来、非常にこれらを裏づけるようなできごとが幾つも起こってまいりました。米だけとらえてみてもそういうことが言えますし、いわんや、戦略的分野だと言われます畜産、果樹においては、今日たいへんな状態に追い込まれている。これをもって、大臣が農基法農政は成功したというふうにおっしゃるのだとしたら、これは大いに反省していただかなければならぬと私は思うのであります。そうでなければ、今日農家がこれほど苦しい状態に落ち込まなかったはずであります。少なくとも十八万戸の農家を含めて、自立農家だと言われる人たちを含めて、今日の実態は私が指摘をしたとおりになっていると思うのであります。これは否定なさいますか。
  173. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほどもお答えいたしたわけでありますが、経済政策とかいろいろな政策、もちろん農政もそうでありますが、ことに農政などは非常に長い目で計画を立てて見ていかなければ、性急に考えてもなかなかうまくいきません。御存じのとおりであります。  そこで、私ども考えております、農基法が第二条でいっておりますように「農業技術の向上によって農業生産性の向上及び農業生産増大を図る」ということ、生産増大というところに特に力を入れております。私がきのうどなたかにお答えしたときに、この農基法の前文を読んでみると、実に文章としてりっぱなものだと申しましたが、あまりりっぱ過ぎるというお話しでありましたが、この法律は、私は非常によくできていると思うのでありますが、私ども農業は、この農業基本法施行以来、一貫して食糧需要の高度化、多様化、ここでも選択的拡大のことを申しておりますが、そういうことに対応して、農業生産選択的拡大生産性の向上を実現しながら、農業従事者所得生活水準の向上等を果たしてきた、思っておるのでありますが、しかし、御存じのように経済成長がきわめて高度でございましたために、これに必ずしも対応し得ないところもあった。すなわち農業と他産業との生産性の格差の拡大、自立経営農家のシェア等の低下も見られました。それからまた、今日のように経済が伸びてまいりまして、いろいろなひずみが出てまいりますというと、過剰流動性みたいな問題もあり、地価の高騰による規模拡大の困難等の状況があらわれてきておることも否定することのできない事実でございます。わが国農業をめぐる諸情勢はそういうことでございますので、おっしゃるようにきびしくなっておることも、私どももそのように感じております。  そこで、いまお話しの最近の世界的な食糧需給の状況から見まして、国民の基礎的な生活物資でございます食糧については、その安定的な確保をはかってまいることがきわめて重要であると考えますが、そのために御審議を願っておる四十九年度予算にありますように、農業基盤の整備、麦、大豆、飼料作物等必要なものであるが、生産のおくれておりますこういうものについての生産奨励措置、未利用地域における畜産等の大規模生産基地の建設などを進めてまいりたいと思っておるわけであります。  また、飼料穀物、大豆等海外に依存せざるを得ない農産物につきましては、備蓄政策、国際協力の一環としての海外農林業開発、貿易安定化のための取りきめなどを進めまして、わが国の輸入の安定的な確保をはかってまいりたい、こういう考え方が基本になりまして農政をやってまいりたいと思っておるのでありますが、この方向というものは、やはり農業基本法の精神にのっとって、私どもはこういう方向でいくべきであると考えて立案いたしておるわけであります。
  174. 島田琢郎

    島田(琢)委員 農基法農政の、いわゆる法に盛られていることばなりあるいは精神というものは、それなりに評価のできる部分もあるのでしょうけれども、しかし、私は、それではその法律どおりに日本農政というものはなされてきたのかという点が一つ問題になってくると思うのであります。しかしここで、この農基法の精神とか条文をめぐってやりとりをしていく時間がございません。したがって、具体的に私は、農基法農政が破綻をしている、手直しをしなければいけない、こういうふうに申し上げていることの次の点は、それでは大臣がそのように自画自賛されるのであれば、日本国民食糧自給率というものがなぜこんなに落ち込んだのですか。一昨日、竹内委員の質問に対して大河原官房長は、価格において六五%、オリジナルカロリーにおいて四一%しか国内における自給率はございませんと答えているようであります。これは一体何を物語るのですか。この自給率というのは、それなりに日本国民の食糧の安定的供給のバロメーターであります。なんとなれば、昨年、足りない分はよそから買ってくればいいという国際分業論は、まさに破綻をいたしました。たいへんな事態にまでなったのであります。そう考えますときに、よそから買ってくることのできるものも含めて国内食糧の自給率を考えるということは、もはやナンセンスであるということも言うまでもありません。なぜこのように自給率が落ち込んだのか、その原因はいろいろあるわけでありますけれども、その事実は率直に大臣お認めになっているのでしょう。
  175. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先般の機会に事務当局から申し上げましたことを、たぶんことばがへただったのかもしれませんが、真実にお受け取りいただいておらないようでありますが、米を除いてどのくらいかというお尋ねがありましたときに、官房長は六五%というふうなことを申し上げたかと聞いておりました。私ども御存じのように四十五年を起点にして、五十七年までにどのように自給度を高めていくか、維持していくように努力するかということを、つまり長期見通しというものを出しておりまして、いまも農政審議会で御審議を願っておるわけでありますが、これで私ども期待いたしておりますのは、米を含めて七三、ないし七七というわけでございます。この中に、やはり必要であるにもかかわらず、たいへん落ち込んでおるのは小麦、大豆、そういうものでございます。ところが、だんだんわが国国民食生活も変化してまいりまして、米が中心というよりも、米の消費量はやや横ばいか、若干低減しておる傾向でありますが、それに逆に果実、野菜、それから肉類等の需要が増強しております。したがって、これをまかなうために必要な飼料作物等はできるだけ自給度を高めていくために、四十九年度予算でも、大豆や麦あるいは草などについての助成措置を講じて御審議を願っておるわけでありますが、急には参りませんので、いままでの相手国からの輸入を、安定的価格で一定量を輸入し得るように、もうすでに手配をいたしておるわけでありますが、そういうことのほかに、やはりわが国が多角的にそういう相手をつくっておく必要もあるし、同時にまた国際協力という立場から、東南アジアや中南米の諸国とも話し合って、先方も御希望になっておりますので、そういう国々との協約のもとに、一定量の飼料作物等をわが国に持ってまいるということについて構想を描いて進めておる、こういう次第でありまして、自給度を高めていくための努力は引き続いていたすことはもちろんであります。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  176. 島田琢郎

    島田(琢)委員 食糧自給率を割り出していく基礎になるものの一つに、国民のカロリー摂取量という問題があります。日本は言うまでもなく、盛んに宣伝されておりますように、GNP世界第二位である、こういうことが言われております、しかしながら、国民のいわゆるカロリー摂取量というのは、世界で十四番目という低さです。最近農林大臣官房の調査課から出されました資料によりましても、国民の一日一人当たりのカロリーは二千五百十五・九カロリーである、こういうふうに発表されております。これはアメリカあたりと比べますとたいへんな低さでして、わずか二千五百十カロリー程度では、日本人の今日のいわゆる栄養を保持していく上ではぎりぎりであって、二千六百カロリーを割ってはだめだということがいままで通説になっているわけであります。ところが、実際には二千六百カロリーに達していない。ですから、こういうカロリー価計算をして食糧の自給率というものを割り出していかなければならないわけでありますけれども、いまのこのカロリー価計算でいって四一%というのも非常に大きな問題があるわけですが、先ほどのは私の思い違いであって、官房長は米を除いてというふうに答えたそうでありますけれども、それでは一体米を入れたら幾らになるのですか。
  177. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私は数字のことを申さないというお話しでございましたから、数字のことは事務当局のお答えのほうがいいかもしれませんが、いわゆるカロリー計算で申しますと五五という数字を発表しております。いま島田さんのお話しがありましたけれども、アメリカ人のようなああいう体格の国民が一日必要量とするカロリーと、私ども日本人のような体格のものと、同一のカロリーが連日必要であるということにはならないのじゃないか。これは将来さらにもう少しカロリーを上げていくという考え方はあるようでありますが、いずれにいたしましてもよく御存じのように、カロリーから申しますと、たとえばくだもの、野菜などというものは、国民食糧として欠くべからざる日常必要品でありますが、そういうものはカロリーの計算でいくときわめて低いものであることは御存じのとおりであります。オリジナルカロリーで自給率を計算するということをおっしゃる学者もございますけれども、いま世界農業食糧会議などで各国の自給率をいろいろな角度で発表しておりますのは、わが国と同じように、これを金額に換算して、そして統計をとっておることも御存じのとおりでございまして、私はそういう意味で、少ないものの自給度を高めることには一生懸命でやっておるわけでありますが、大体自給率につきましては、そういうふうな考えを持っておりますということを申し上げたいと思ったのであります。
  178. 島田琢郎

    島田(琢)委員 カロリー論争をやると、私は大臣とまた少し違った考えを持っているのでありすすが、きょうはそれが質問のねらいではありませんから、これはまた後刻に譲りたいと思います。  ただ、体力、体重、こういうものから考えて、がさを食うだけではいけないので、特に日本人のように、平均欧米人に比べて体力の小さい国民は、やはりたくさんものを食べるというよりも、カロリーの高いものを少なく食べるという方向考えられなければならないということを、前に私はある学者の説を伺ったわけであります。また、そういう方向にいま実は向かっている。だから、畜産であるとか、あるいは果樹とか、こういうものが要求されてきているということも、こうしたカロリーの問題に大きな一つの根拠があるということを私どもは主張しているわけでありますけれども、そういう議論はきょうの本題ではありませんから私はやめますけれども、ただ、大臣は、七三%の自給率をもって一応の目標の目安にしている、こういうお話しでありますが、しかし、それなら米を入れて、おそらく大河原官房長は七三%くらいの自給率になっているとお答えになるでしょう。そうなんですね。——それでは現状のままでいいというお考えなんですか。国内の食糧の自給率を高めていく、こういうふうに食糧政策の基本で触れており、いま大臣のお話がありましたけれども、七三%の目標というのは、将来に向けてもその自給率でよろしいというお考えに立っているのですか。
  179. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御存じのように、ただいまはほうっておけば米の生産は一〇〇%を上回ることになるわけであります。そこで稲作転換対策農村方々に御協力願って今日まで進めておるわけであります。したがって、七三年をめどにするときには、それが一〇〇%に計算をしてまいるから、いまよりも米の生産量を少なく見て、ほかのものが増強されて、七三ないし七七にしたい、こういうもくろみでございます。
  180. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私は、農林大臣が四十九年度のいわゆる農業政策をお進めになるにあたって、いまのようなお考えで進めていくということであるならば、こういう重大な食糧の危機に面面している日本農政としては、大いに反省をしてもらわなければなりませんし、またいまのままでよろしいというふうな印象にしか聞こえないような農林大臣の態度であるとすれば、私はまことに日本国民は不幸だと思うのであります。食糧の自給問題一つを取り上げてみましても、従来と何らかわった考え方がない。しかもまた足りない分については、国内における資源を開発するという考え方を依然としてお持ちになっていない。そして海外に安易に資源をたよろうとする、あるいは食糧を求めようとする、こういう感じにしか聞こえません。したがって、私どもが求めているのは、世界的にも、日本の国内においても、たいへんな事態を迎えたこの食糧問題、これは石油問題以上に深刻であるし、また一たび石油と同じようなパニック状態が食糧において起こるとしたら、日本国民は一体何カ月命を保つことができるだろうかという不安さえ私は持っているわけであります。そういうさなかにあっての農政に対する大臣のお考えというのは、何としても私は納得ができぬのであります。したがって、これから具体的に、それでは当面起こっている問題の二、三点を申し上げまして、それらに対する具体的な取り組みの姿勢をお聞きしたいわけであります。  一つは、物価問題でも非常に深刻に起こってまいりました砂糖の問題であります。すでに大臣の手元にも、生産者の段階あるいはまた砂糖の企業の立場からもいろいろな意見が出されていると思います。特に、この四月十日は、北海道における砂糖ビートの原料価格決定の時期でございます。従来ですと、来月に入りますと、活発にこうした動きが出てくるわけでありますが、ことしは、大臣承知のとおり、昨年の秋から、あるいは夏から、砂糖のいわゆる原料価格についての改定要求が中心になって、いろいろと砂糖の問題についての議論が沸騰してきたところであります。われわれも、今日の物価問題あるいは砂糖の置かれている国際的な立場、そういうものを考えたときに、国内産のいわゆる甘味資源確保というのはきわめて緊急にして重要な問題なので、四十八年当初においてきめられた原料価格についても、このままだと重大ないわゆる砂糖の危機が訪れるということを指摘して、まず原料価格の改定を求めたわけでありますが、これらについては何ら打つ手なく今日まで推移をしてまいりました。  その結果が今日、北海道においては、いわゆる生産農家を中心にして、四十九年度の砂糖ビートの耕作拒否という実態が起こっているのであります。これは何のことはない、きわめて答えは簡単であります。四十八年度の原料価格八千五百六十円では、昨年のビートの経営は全く赤字であって、成り立たなかったという、そういう一つの明瞭な答えになっていて、しかも砂糖の、いわゆるビートの原料価格の決定は、従来において五カ年間の合理化目標価格をもとにして、非常に低くこの原料価格が据え置かれてきたという経過を、生産農民はみんなよく知っているからであります。したがって、昨年、この年度途中における改定を求めても、なかなかそれが実現しない。そうしてまた四十九年度になって、新しいビートの価格決定もまたぞろ同じような形でしかおそらくきめられないだろうというふうに、もうあきらめ切っているのであります。  そこで、ビートはとても営農計画の中にペイする作物にはならない、いわゆる営農計画書を立ててみても、とても採算のとれる作物にはならぬというところから、いかに国内あるいは世界的な砂糖の状態というものが逼迫していようと、農家自身は、砂糖をつくってはみずから首を締めるような結果にしかならぬからとてもつくられないということを、いま訴えているのであります。  そういう砂糖の状態というものをひとつ考えてみますときに、せっかく大臣、先ほど自分で、国内における重要な食糧の確保については真剣に取り組むというお考えを示されたのでありますから、この機会に砂糖の実態というものをよく理解をしているはずでございますし、真剣な砂糖の増産あるいは甘味資源の確保という立場からお考えになっているとすれば、具体的に、この砂糖ビートの原料価格の決定にあたって、前向きの姿勢で取り組んでいただきたいという願いを私は実は持っているわけであります。まず前段で、ことしの、四十九年度の価格決定にあたっての具体的なお考えをひとつお示しをいただいて、そのあとで国際的な動きなどを一つの論拠にして、私は私なりのいわゆる国内自給体制の確立という問題に言及していきたいと思います。  まず、第一点、当面するこうした生産者段階における動きに対応して、政府みずからどのようにお答えになろうとしているのかをお聞かせいただきたいと思います。
  181. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 砂糖のお話しでございますが、これも大事なものでありますので、砂糖類の自給率の向上をはかるためには、北海道、それから鹿児島県南西諸島、それから沖繩県、それぞれてん菜の生産振興地域、それからサトウキビ生産振興地域に指定をいたしまして各種の施策を講じておりますが、その生産振興につとめると一緒に、糖価安定事業団によります国内産糖の売買等を通じて、てん菜及びサトウキビの保護育成をはかっておりますことは御存じのとおりでございます。  そこで、このために砂糖の自給率は昭和三十年代は一〇%そこそこでありましたが、現在は二〇%台へと高まってきておりますし、さらにまた昭和五十七年度を目標に約百六万トン——四十五年で六十四万トンの生産でございますが、五十七年には百六万トンの生産確保して、自給率を二六%ないし二八%の水準にまで高めるように、甘味資源作物生産振興対策施策の強化につとめてまいる所存でございます。  そこで、この間、いつでありましたか、南西諸島及び沖繩等のサトウキビのことにつきまして価格のごめんどうを見た次第でありますが、てん菜の最低生産価格は、砂糖の価格安定等に関する法律に基づきまして、農業パリティ指数に基づいて算出される価格を基準といたしまして、てん菜の生産費、それから競合作物の状況、物価その他の経済事情を参酌して、てん菜の再生産確保することを旨として定めることといたしておりますことは御承知のとおりであります。  本年産てん菜の最低生産価格の上昇額が例年程度でございますれば、作付面積が大幅に減少するのではないかとの見方がありますことは、私どももよく承知しておりますが、本年産てん菜の最低生産価格の決定にあたりましては、最近における肥料、農薬等の生産諸資材及び賃金の上昇等につきましても十分参酌して決定することといたしたいと存じております。  それから、従来、パリティ基準価格は、前年の最低生産価格に、前年の四ないし十月平均に対する当年二月のパリティ指数の比を乗じまして算定しておりますが、これはてん菜の主要生育期間であります四ないし十月に対する価格算定時における最近似値の二月のパリティ指数を採用しておるものでございまして、この方式は、価格算定技術上やむを得ないものであると考えております。  それから、決定時期につきましては、毎年四月十日までに決定、告示することになっておりますけれども、最近、生産価格の決定にあたりまして必要な生産費等の資料整備を早めることにはおのずから限界もございますので、決定時期をこれまで以上に早めるということはきわめて困難ではないかと考えております。
  182. 島田琢郎

    島田(琢)委員 従来と一つも変わらない、こういう考え方を述べられていると思うのであります。私は、たいへん情けない気がいたします。大臣も御承知のように、世界の砂糖の状態というものは、昨年のいまごろとはずいぶん違った状態になっている。これは私がここで長々申し上げる必要もないと思うのであります。特に食品流通局長は、年頭のごあいさつの中でも、昨年の国際糖価をめぐりますいわゆる砂糖協定の動きについて触れております。また、最近に至っての砂糖の、いわゆる粗糖の輸入価格の暴騰というは、もはや常識で判断することのできない状態である、このことも大臣、おわかりだと思うのです。  そういう中にあって、私は先ほど少しばかり長いお話しを申し上げて、北海道の生産地の、いわゆる生産者の間に起っている問題点を前段で並べて申し上げたのであります。国内的にも国際的にも砂糖がたいへんな事態になっているということをおわかりになっている大臣としては、従来方式の域を一歩も出ないというふうな、国内産糖に対する姿勢というのは、それで一体、この緊急な砂糖の事態というものを乗り切っていけるとお考えなのでしょうか。ちまたにおいては砂糖が姿を消してたいへんな騒ぎが起こり、昨年十二月に至って、農林省はこの指導に乗り出したではありませんか。この背景というものは根深く、そしてきわめて深刻だということを物語っているのであります。いまお聞きする範囲においては、四月十日の告示期日を変えるわけにもいかぬ、それぞれ物価も上がっているから適当にそれは考えていきます。これは従来、毎年同じことを決定の段階では政府側として答弁されていることであります。私が前段で大臣に、ことしは特別なお考えを持っておられるのではないかという推測のもとに、まず取り組む姿勢をお尋ねいたしたいということで申し上げたのは、そんな毎年毎年同じような答弁をいただくために申し上げたのではないのであります。いまのお答えの範囲では、今日のきびしい砂糖の情勢を十分認識されていないように思いますけれども、おわかりになっているんでしょうか。
  183. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 どなたもよく御理解なさっていらっしゃることであるから、よけいなことは言わぬほうがいいと思いますけれども一つのものを取り上げて、そのものの価格生産者から見た価格、そういうようなことだけ浮き上がらせて存在する問題ではないのでございまして、生産されれば消費がございます。それを取り巻く社会経済全体の機構がございます。その中で大事な砂糖生産者が翌日への生産意欲を燃やしてもらえるような価格決定もやり、保護政策もやりと、こういうことでございますので、先ほど私の御説明にも申し上げましたように、なるほどパリティ方式を採用してきめていくということについては変わってはおりませんけれども、その資料になるものはすべて、いま申し上げましたように、最近似値をとって計算をいたしますということでありますから、あなたの御指摘になりましたような物価高騰、機材高騰等、それらのことをすべて勘案いたした上で決定をいたしたい、こう申しておるのでありますから、これほど理解のあるわかった考え方はないんじゃないか、こう思っているわけです。
  184. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どうも聞いておりますと、ますます大臣の真意が私はわからなくなったんであります。少し私なりに調査をしたものを申し上げてみたいと思います。  大臣はわかっていない。私は、わかっていないと思うんです。四十九年一月の輸入の状態を商品別で大きく三つに分けてみました。いかに輸入価格というものがたいへんな事態になっているかということを調べてみたんであります。食料品というのは前年同月比で二・四倍になっております。それから原燃料、これが二・三倍、繊維品で一・七倍と、おそらく戦後これだけの大幅な値上げになっている時期はないと思います。特に品目別で大きく上がっているのは、銅鉱石が四・七倍と上がっている、原油が三・九倍、そして大事な肉類や調製品というのは四倍であります。次いで砂糖が非常に高くて二・五倍。こういうふうに、外国に依存をしようとしても昔と違って安く入ってこないという状態にいまなっております。これはまだまだ、これから下がる要素がなくて、上がっていくという状態は引き続いて起こっていくだろうというふうに付帯説明の中で述べられております。  そう考えてまいりますと、日本の輸入政策というものは、すでにこれも昨年の秋から非常に問題になっておりますように、外貨というものはどんどん減っていって、すでに赤字が百億七千万ドルに達したというふうな総合収支の発表がなされているわけであります。こういうふうに考えてくると、砂糖を買おうにも外貨が一体あるのかという心配が出てまいります。同時にまた、何も長々申し上げる必要はありませんけれども、国際砂糖協定は事実上パンクをした。生産国においては、いままでのようにいわゆる買い手市場ではありません。ロンドンの市況にいたしましても、仲間相場にしても、ニューヨークの砂糖の動きにしても、もはや国内産の砂糖よりも高いというのが今日の実態であります。  しかも、わずか国内において二〇%しか自給されていない砂糖が、今日作付段階で、私の調査によって推測するところでは、昨年北海道において六万一千ヘクタールの耕作がなされていたのが、このままで推移をいたしていきますと、私は六割の面積確保が非常に困難ではないかとさえ思います。何とか努力をしてみても、五万ヘクタールの確保は非常に至難な状態ではないか。もちろんここで大臣が、思い切ってこの原料価格について生産拡大をはかる努力をしようと政府自体がお考えになるなら、私は六万ヘクタールの昨年並みの確保は、これはできると思いますけれども現状のままほっておいたら、もう面積確保はほとんど至難のわざといわなければならぬと思います。  特に、御承知と思いますけれども、近年のてん菜の耕作法というのは、従来のように五月になってから作付をするとか、あるいは四月の末に種をまくとかというふうなことはほとんどなくなりました。みんな三月に入りますと雪を掘り割って、ビニールハウスを建てて、種まきが始まるのであります。従来、四月十日に価格決定がなされますと、もうそのときにはビニールハウスの中にビートがこういうふうに青々となっているのであります。幾ら価格が不満であっても、せっかくできたビートの苗を、どぶに持っていって捨てたり川に持っていって捨てるようなことは、農家の心情としてそれは絶対にできません。したがって、きめられた値段で、不服不承であっても、しぶしぶでもつくっていかなければならないというのがここ数年来の実態であります。そういうことを見越して、そんなばかげたことをことしはやりたくないから、どうもいまの感触だとさっぱりビートの値段も上げてもらえそうもないというふうな、従来のこの価格を決定する仕組みから言えば、当然常識的にはそういう判断にならざるを得ないわけであります。したがって、大臣の手元にも要請が行っているとおり、何としても来月のビートの種をまく以前に、四十九年度の価格の少なくとも見通しぐらいでもいいからひとつ発表願いたいというのが、これは耕作農民としては当然の要求だと私は思うのであります。それをパリティがどうの、やれ法律がどうのなんというようなことでは、国内の重要な甘味資源の柱である北海道の砂糖ビートは、私は地上から消えてしまうと心配している一人であります。六万ヘクタールの面積確保によって、ようやくいま九工場、これが成り立っているのであります。六割に落ち、五割に落ちるような実態になりましたら、ひとりこれは耕作農民ばかりではなくて、糖業者自体にも大きな操業上の問題が出てまいります。せっかくいままで積み上げてまいりました国内産糖というものが、北の一角からくずれてくるわけであります。  こういうふうに考えますときに、私は、重大なビートのピンチだ、砂糖のピンチだと考えているわけであります。したがって、従来のそうした価格決定のパターンを破るという政策的な思い切った措置というのが今日非常に必要だ、そういう観点に立って私は大臣考え方を聞いたのであります。幾ら聞いてもおそらく前と同じようなことしかお答えにならぬと思うのでありますが、そうした実態について大臣は現地の声をどのように理解をされているのですか。たいしたことない、だいじょうぶだとお考えになっておられるのでしょうか。
  185. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 砂糖の問題は、ただいまお話しがありましたように、甘味資源として国民生活に大切なものであることはもちろんでありますが、御指摘になりましたように、国際協定も実質的に価格の協定ができませんでしたから、これはもうないと同じような結果になりました。しかし、その後の国際的な動きを見ておりますと、お話のありましたようにロンドン相場がかなり高くなってきております。しかも、開発途上国のような後進地帯でも、かなり砂糖の需要が、逐次増加している傾向にあります。そういうときでありますので、われわれとしては内外の情勢を勘案して国内のビート及びキビの増産については力を入れておるわけでありますが、やり方を変えなければ生産者のためにうまくいかないという考えについては私はどうも一致しないのでありますが、さっきから申し上げておりますように、いまの申し上げたような国際情勢の中において甘味資源食物をつくっていただいておるのでありますから、先般も御存じのように沖繩や奄美大島のものにつきましては一万一千円の価格の引き上げをやって差し上げてたいへんに喜ばれた。これはやはり生産意欲の増強にもなることでありますが、この構造改善と、これから大いに生産の能率をあげるようにお手伝いをいたすことはもちろんのことでありますが、価格決定にあたりましては、やはり先ほども申し上げましたように、一番その決定時に近い経済事情等を勘案してきめてあげるほうが、生産者のために親切ではないかと私はいつでも思っているのであります。ずっと早くやれば、そのときの労働賃金なり、そのときの一般経済事情が材料としてとられる。いまの客観的情勢をお考えいただいて、農林省が申し上げておりますように、例年どおりの決定ではあるけれども、その間の事情を十分勘案して、内心私どもといたしましてはやはり甘味資源食物に精を出していただきたいというのが心からの念願でありますから、そういうために生産者の利益になるように考えて私どもは対処いたしておるわけでありますから、この辺をひとつ十分御理解を願いたいと思います。
  186. 島田琢郎

    島田(琢)委員 大臣は、いま、一昨日の竹内委員の質問の中で生産者米価の決定時期に触れてお話しをされたことの繰り返しを言われたわけであります。ビートにもこれを適用するというお考えですか。
  187. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほど申し上げましたように、例年どおり四月に決定したいということでありますから、そのときの一番近い数値をとって資料にしたい、こういうことをお答えいたしておる。また、そのときには、石油危機とかいろいろ叫ばれまして諸物価が高騰いたしておりますことも、もちろん考慮に入れなければなりません。それらのことを考えまして、どういうふうに対処したらいいかということを、私ども生産者のためにも十分考慮しておりますということを申し上げているわけであります。
  188. 島田琢郎

    島田(琢)委員 大臣の持論としては、収穫のときにきめるのが、一番物価あるいは諸資材の値上がり等を的確に反映することができるという主張のようでありますけれども、その御主張からいえば、私は四月十日というのはきわめて中途はんぱな時期なんだということを御理解願いたいと思うのです。おそらく大臣のいまおっしゃっているのは二月パリティということに固執をされての御発言と思うのです。ところが、私は先ほど強く言いましたように、来月、三月に入ったら雪が終わってもう種まきが始まるのです。今月中にきめるということが一番生産者に対する親切ではありませんか。それを否定されて、十月のビートの——十月に入ってから収穫が始まりますが、十月ごろに価格決定をするというのとはわけが違うのであります。四月十日というのはきわめて中途はんぱな告示期日なんです。いま農家は営農計画書を前にして鉛筆をなめている時期なんです。もうこれは過ぎましたけれども。私は年来の主張からいえば、この営農計画を立てるときに、ことしのビートは幾らなんだ、そういうことがはっきりしていて営農計画書を立てるということができたら、どんなに一年間の経営というものはうまくいくだろうということを、私自身も計画書をつくりながら常々考えておる。率直な話が、たとえば八千五百六十円、従来のあれからいうとまずこれに六、七%せいぜい、昨年は四%いかないわけでありますから、三%か四%の価格上積みをして単価をきめて書いていく、こういうやり方を繰り返してきたわけであります。ところが、大臣は一体どこをもって親切なやり方だとおっしゃるのか、私は理解に苦しむのでありますけれども、四月十日というのは、きわめて不親切な時期のきめ方なんであります。お考え直しをされるつもりはございませんか。
  189. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは、きめるときにはただきめるわけじゃありませんで、いろいろなデータに基づいて今日の客観的情勢を判断をいたしましてきめるのでございますから、なるべくきめるときに近いところのほうがいいのではありませんかということを申しているのでありまして、ただ、私どもいままで、御存じのようにほかの行政が参加してきめておるもの、大体例年きまっておりますことは御存じのとおりであります。従来ビートにつきましても四月にやっておりますので、それをあえて変更することは特に必要ではないじゃないか、なるべくそのときに近い数値で取り上げるということがいいのじゃないか、こういうことを言っているのであります。
  190. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どうも私ども生産者の立場というものを十分御理解になっておらぬようでありますが、実態というものは大臣がおっしゃるようなことではないのであります。  そこで、先ほど沖繩サトウキビの価格決定の問題についてお触れになりました。一万一千円でたいへん喜ばれている。私の耳にはたいへん喜んだというふうには聞こえておらぬのであります。大臣はどこからお聞きになって一万一千円はたいへんありがとうございましたというふうに聞こえているのかわかりませんが、しかし、砂糖ビートの原料価格決定にあたっても、昨年サトウキビをきめたときと同じような考え方に立ってきめるというおつもりですか。具体的には一万一千円のサトウキビに見合うような、あるいはそれ以上の、従来は差があるわけでありますから、いまは逆になってサトウキビのほうが高くなったのであります。そうすると、サトウキビ一万一千円をベースにして四十九年度の砂糖ビート原料価格決定をしたいというおつもりにいま立たれているのですか、そこをひとつお聞かせ願いたいと思うのであります。
  191. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 沖繩のような新しく返ってまいりました地域には、特段のめんどうな問題がたくさんございますので、そういう意味で沖繩のキビは別な扱いをいままでいたしておったことは御承知のとおりであります。黒糖などについても特別な扱いをしてまいっておる。そういうことでありますので、ビートとキビにつきましては同じようにやるというふうなことを考えておるわけではありません。
  192. 島田琢郎

    島田(琢)委員 しかし、砂糖の状態というのは、繰り返しますけれども、世界的にも、もちろん日本もたいへんな状態にあるということはこれはお認めになったわけですね。従来とは違うということは、大臣も十分御理解になっているわけですね。だとすれば、従来の壁を破るような思い切った甘味資源確保対策が必要だ。それはいろんなことをごちゃごちゃ言う必要ない。農家がつくって十分ペイする原料価格にさえすれば、六万ヘクタールの従来の面積確保もこれはさして困難ではございませんし、二八%という将来の甘味資源確保政府考え方にも十分農家は対応していってもいい、こういうふうに生産農家は言っているのであります。きわめて答えは簡単、構造改善だとか基盤整備だとかいったようなごちゃごちゃしたことを言う必要はないほど答えはきわめて簡単明瞭であります。農民の要求というのは、この八千五百六十円という現行価格を四十九年度耕作に間に合うだけの価格に引き上げてくれるかくれないか、それにかかっているのであります。どうもかんで含めるようなたいへん失礼な言い方でありますけれども、答えはきわめて簡単なのであります。この簡単な答えにお答えになってくれるかどうか、それを私はもう一度お尋ねをいたします。
  193. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 生産意欲を高めていただくように考えながら、担当者に十分資料を検討させた上で答えを出すことが妥当だと思います。
  194. 島田琢郎

    島田(琢)委員 しつこいようですが、私は四月十日の告示は、当面ことしに限ってはその時期というものを変えるということにあまり固執はいたしません。将来の希望として、二月一日に告示すべきだ、こういう私の考え方の主張を申し上げておきます。しかし、二月中におおよそ四十九年度の価格はこれくらいだというくらいのものは出せるじゃありませんか。また、出していただかないことには、いまから皆さんがおつくりになって十分ペイするように努力をしますといったって、そんな手形みたいなもので私どもは納得をして耕作するわけにはまいらぬのです。きょうは全国——全国というか、北海道のビート耕作農民の皆さんは、大臣がどんな考え方とビートの四十九年度の耕作に対する前向きの考えを示してくれるかということで、耳をそばだてて実は聞いているのであります。こういう価格でわれわれは考えているから安心してつくれという、そういう明確なお答えというものは出ないのでしょうか。
  195. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 さっき島田さんが御指摘になりましたように、また私が御説明申し上げましたように、二月のパリティを基礎にして計算をして、そして四月十日に告示をする、こういうことを申しているのでありまして、ただしかし、生産者のために生産意欲を増強していただけるようにできるだけ努力をいたしたい、こういうことは申しておるわけであります。
  196. 島田琢郎

    島田(琢)委員 大豆、そして小麦の増産対策の中では、大豆の従来の価格決定の時期あるいは小麦の価格決定の時期、こういうものを抜きにして増産しなければならないという一つ考え方に立ってその方策を示されたではありませんか。今日の砂糖の状態というものは、大豆や小麦並みに、あるいはそれ以上にたいへんな危機だと私は思っているのであります。政策措置の必要なときだと思うのです。ですから、耕作する場合に、十分ペイするような価格というものは、おのずからいまはじき出しても出てまいります。二月パリティがなくても出てくるのです。だから、私はしつこいようですけれども、この二月中に、少なくとも事務当局は、この大かたの目安なるものでもけっこうだから出して、耕作農民が安心して来月に入ったら種まきができるようにしていただきたい、そういう主張とお願いを私は言っているのであります。繰り返してどうもしつこいようでありますけれども、事態はきわめて深刻であって、このビートの持っておる重大な使命からいって、私は今日まさに政策措置が必要なほど深刻な事態だということを繰り返し訴えているわけでありますから、大臣答弁では私は納得できないし、また安心できないのであります。信用しないで悪いのでありますけれども、従来のやり方からいいますと、どうしてもこれは信用ができない。だから、ひとつ思い切ったビートの生産振興をやります、そのためにはこういう一つの目安を持っているということを、きょうはお答えできないでしょう、おそらく用意はないと思いますから。今月中その努力をするぐらいのことはどうですか、大臣、事務当局に命じていただけませんか。
  197. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 どうも話がすれ違っているような感じがするのでありますが、私ども生産意欲を増強していただくために、できるだけのことは考えますということを言っているのであります。あなたのは、日付を中心に言っていらっしゃいますが、いろいろな生産費その他を計算いたしますにも、やはり四月になりませんといろいろなものが整理されてまいりませんので、そこで従来どおりにやる、こういうことを言っているのでありまして、先にやるかあとでやるかということでありますが、生産意欲を出していただくようなことについては、私どもはできるだけのことを考えなければいけまい、こう思っている次第であります。
  198. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それでは、私も大臣の前向きに対処したいという御答弁を信じまして、後ほどまたビートの問題については、それだけの時間をとってこまかに議論をしてまいりたい、また私ども考えている価格についても、説明を申し上げていきたいと思いますが、当面は北海道のビート耕作者の要求価格一万五千円以上ということの要求があった。私どもはいろいろな角度から検討し、国際的な糖価の動きあるいは国内の甘味資源確保という立場から考えて、この要求価格は妥当として受けとめております。したがって、後ほどこの一万五千円という要求価格をめぐって議論をしてまいりたいと思いますので、きょうは大臣から安心して耕作してもらえる前向きの価格を今後検討していきたいということを、私は一応のお答えとして受けとめて次の問題に移っていきたいと思います。  大事な問題がもう一つあるのでありますが、少し時間が足りなくなってまいりましたから、これもひとつ的確な、簡明なお答えをいただくということで次に移ってまいりますが、これも一昨日から各委員からそれぞれ触れてお話のありました畜産の危機という問題であります。特に畜産危機の中でも当面の飼料問題、これは先ほども諫山委員からお話しがありましたし、私はこれを重複してお話申し上げることをできるだけ避けたいと思うのでありますが、特に昨年から問題になっております加工原料乳の価格、これがまた御承知のとおり、来月末ぎりぎりにはきめて四月一日に告示しなければならない、こういう時期的な問題がございます。これも長々大臣に申し上げる必要がないほど、今日の酪農というのはたいへんな危機を迎えております。どんどん高騰していく飼料をはじめとする生産諸資材、そして労賃、そういうものを一つの背景にして、日本の国内における加工原料乳をはじめとする牛乳の生産というのは非常に停滞をし、停滞をしているばかりか、前年度を割るという、これまた戦後そうたくさん経験したことのない重大なピンチに立たされているわけであります。四十八円五十一銭、もはやこんな価格というものはきわめてナンセンスだということは、大臣みずからもお気づきになっていると思うのでありますが、昨年われわれは、中間において乳価の改定を要求いたしました。改定の前提となるための畜産審議会の開催を要求いたしました。その結果は三十六銭、コスト幅がまだ残っているなどというとぼけたいわゆる諮問と答申がなされて、われわれは、真剣になって一体政府は今日の酪農の振興考えているのか、そのいわゆる取り扱いについて、非常に多くの疑問と不信の念を持ったのであります。あらんかな、いわゆる加工原料乳の主要生産地帯においては、この低乳価によって今日たいへんな経営の危機を迎えております。これは口で言うようなそんななまやさしいものではありません。ほんとうにのるかそるかという状態に昨年の価格決定の時期でさえなっていたのでありますから、それからもう約一年間、どんなに苦しい思いで、歯を食いしばって酪農家ががんばってきたのかということは、もう私が申し上げるまでもないほど深刻であることは、いかに大臣といえども御想像いただけると思うのであります。ですから、こういう機会にこの酪農の問題をいろいろ真剣に取り上げていくという立場に立って、まず第一点、これもきわめて簡単明瞭な話でありますけれども、四十九年度の価格決定にあたって、思い切った価格政策を中心にした原料価格の決定をやっていただかなければなりませんが、その決意はおありですか、また、そのお考えはお持ちでしょうか。まず大臣にそのことを伺ってから、次の質問に入りたいと思います。
  199. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 四十九年度の加工原料乳の保証価格につきましては、加工原料乳の主産地の皆さん、そういう主要な生産地域の再生産確保することを旨として、牛乳の生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮いたしまして、本年の三月末までに定めることにいたしておりますが、諸般の情勢を適正に反映してまいるように最善の努力をいたしたい、このように考えております。
  200. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どうもビート価格の問題にしても、乳価の問題にしても、これは議事録をおそらく十年ぐらい前からひっくり返してみても、同じお答えしか政府側としてはしていないのではないでしょうか。そういう感じで、まことに心細いのであります。それは真剣に考えているので、決してふまじめに考えていないと言われるのかもしれませんけれども、私は、これまたほんとう日本の酪農の危機ということを、はだで受けとめておられないのではないかというふうな感じがいたします。第一、酪農の情勢をどういうふうに踏まえておられるのか。これは農林省が発表しておる数字でありますから、私があらためて言うまでもありませんけれども、念のために申し上げますと、四十八年の生乳生産量というのは戦後初めて前年を割ったというふうに報道されております。四百九十三万九千トン、これは昨年の実績でありますけれども、それを〇・五%割って、四百九十一万二千トンというのがことしの三月を含めての一応の生産見通しであります。これはもう重大ないわゆる酪農の危機である。しかも、酪農近代化基本方針によれば、昭和四十八年度においては、たしか第一次の酪近計画の中では、六百七十万トンぐらいの牛乳が生産されていなければならなかったはずであります。ところが、それが三年目にして破綻をし、途中で手直しをして第二次酪農近代化方針というのを出された。それによっても、五百六十五万二千トンの生産目標を持っていたはずであります。目標に遠く及ばないのであります。これはもう完全に酪農の危機であります。  しかも、飲用向け牛乳の原料価格に比較して、これまた、戦後おそらくこれぐらい大きく差が開いたことはないと思います。簡単にいって、キロ当たり三十円という大きな開きであります。一物一価の方式からいって、同じ牛乳を生産するという立場に立っている、用途が違いこそすれ、白い牛乳を生産している立場で、一キログラムで三十円も差があるなんというばかげた話は、ほかの作物にはないのでないでしょうか。そう考えますと、思い切って加工原料乳の価格を上げるという措置は、いままで申し上げました三点からでも、明らかに御理解がいただけると思うのであります。  大臣はこの飲用乳価格との差というものについてどのように考えておるのか、その辺実は大臣の真意のほどを聞きたいのであります。このまま放置してきた農林省として、政府として、いつもお話をしますと、この問題については、たいへん困ったことだ、こんなに開くのはやはり問題である、こういう答えは返ってきますものの、これを具体的に詰めていくという姿勢は何ら見られない。どういうふうに大臣はお考えですか。
  201. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほど申し上げましたように、生産地の生産者の所得確保されるようにということを念頭に置いてごめんどうを見ることは当然なことでありますが、いま申し上げましたようなつもりでありましても、やはりお話しのように、牛乳につきましては、飼料の高騰であるとかいろいろな面がございまして、私ども畜産家のそろばんにつきましては十分理解ができるわけでありますが、いまお話しのございました飲用向け牛乳価格でございますが、これは地域的な需給事情によりまして、自由市場で売っておるわけであります。御存じのとおりでありますが、加工原料乳の保証価格は、政策価格として、国が、加工原料乳確保の補給金等暫定措置法、この法律に基づきまして、適地における、つまり、酪農家を育成すべき主要な加工原料乳地域における再生産確保することを旨とした、つまり、これは法律の文句でございますが、その地域における生産量を基礎として算定するものであることは御存じのとおりであります。このように、飲用向け生乳と加工原料乳とでは、価格形成のしかたに差異があることは御存じのとおりであります。飲用向け市乳を主として生産しております地域は、加工原料乳の生産地域に比べまして、都市に近く、また地価、労賃、それから飼料等もやや高騰いたしておることから、飲用乳と加工原料乳向けの価格差が出ることはやむを得ないことであると思っておりますが、これはさっき数字についてもお話がございました。われわれも牛乳の生産について憂いを同じゅうしておるわけでありますから、こういうことについてもできるだけ検討いたしまして、生産意欲を阻害しないように、最善の努力をいたしたいと思っております。
  202. 島田琢郎

    島田(琢)委員 いま大臣がおっしゃっている、加工原料乳については法律で取り扱いをしている、飲用乳はそのらち外にある、アウトサイダーである。ところが、今日こうした不足払い制度という法律があるがために、逆に酪農家が、手かせ足かせになって、苦しんでいるというのが実態である。だからこの制度の洗い直しをせよ、こういうふうな意見さえそこから出てくるわけであります。一方では政治的に低価格に押えるということをやって、片方は、これはもう法令以外のものであるから、わが行政の及ばざるところだなんていうふうなことで済まされるのかどうか。しかしながら、飲用乳価の要求というのは、私はこれまた当然の要求であって、決してそのこと自体は高いものであるとは思っておりません。  問題は、いわゆる加工原料乳の価格を政治的に低く押えているというところに問題があるわけですから、これはもう繰り返し繰り返しいままで指摘をされてきた点でありますから、いまさら申し上げる必要もないことなのでありますけれども、そこでこの現行制度の中で政府価格を決定するにあたって非常に大事な点がある。特に思い切って抜本的な改正をしなければならぬ部分がある、こういうことを私どもは指摘をしてまいりました。一部には、省内においてこの問題について検討を始めたというふうに聞いております。  前大臣のときに、私どもは社会党の案として価格改定の方式を変えるべきだということの主張を四、五点にわたって具体的にそれを並べて、しかも数字をくっつけて意見として出したのであります。前櫻内農林大臣は、検討に値します、こういうふうに言っております。新しい大臣だからあらためて申し上げますが、その大事な第一点というのは、従来のいわゆる家族労賃評価に当たっての評価がえの問題であります。これまた一物一価の方式からいえば、同じ酪農の、牛乳を生産する仕事に携わっていて、片や直接の管理労働に携わっている者の労賃と、それからその飼料をつくっている者の労賃の評価というものがかわるということはおかしいという議論は、多くの人たちも指摘をしてきたとおりなのであります。ひとり農林省だけがこの問題についてかぶりを振って頑迷にこれを直すことを拒否してきたわけであります。これは今日の実態ばかりじゃなくて、早くから指摘をされていた点でありますし、わが党としては当然この価格改定にあたっての試算方式例改定の第一条件としてこれをあげたのであります。  それから、もう一つは、その単価のきめ方でありますけれども、われわれは同じ牛乳に携わっている乳業の従業員の一日当たり、一時間当たりの単価と農民の単価とは同じであるのが常識ではないかという主張もいままでしてまいりました。ところが法律では、その主要な生産県の五人以上規模の製造業労賃をもって評価がえをすると、こういうふうなことを言っております。これもきわめて不都合でありますから、これを第二点に改定すべきという主張をいたしました。  それから、米で採用されております間接労働というふうに目されております部分を全時間の一割を上積みせよという主張をいたしました。  それから副産物の点については、費用価計算方式を持ち出しているわけでありますけれども、私どもは、いわゆるこの費用価計算の出てきた結果というものはきわめて実情にそぐわない不都合なものだから、これを削除せよということを主張いたしました。その一つは堆肥の費用価計算の問題であります。それからもう一つは、子牛といいますか、肉価格の暴騰等を理由にしてその価格を織り込んだ副産物価格の算定になっておりますから、これは一時的な現象であって、従来はほとんどとるに足らない単価の中で、むしろこの肉価格というものは経営の上では重荷になっていたというきらいさえあるから、一時的にこういう現象が出たからといって、それを取り上げて試算をするということは不都合であるという主張を盛り込みました。当然以下物価高騰の要因を背景にしたそれぞれのいわゆる手直しをすべきだ、土地資本にしても、利子にしても、あるいはまた手数料にしても、現状価格あるいはそれらを背景にした費用に見合うような盛り込み方をすべきだという点を主張いたしました。結果として七十七円四銭は、十月三十一日現在において、加工原料乳の保証価格としては妥当な価格であるということをわれわれは具体的に示してきたのであります。この作業について省内においてどのように進んでおるのか、また大臣はこうしたわれわれの提案に対してどのように受けとめておられるのか、この機会に明確にひとつお聞きをしておきたい、こう思います。
  203. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いろいろ御意見を拝聴いたしました。  なお、お話しの算定方式でありますが、これにつきましては、昨年の十月の畜産振興審議会酪農部会委員懇談会などでいろいろな意見も出ております。特に乳価と肉価との関係において、どのような方式が適当であるかといったようなことも出ております。ただいま御意見いろいろございましたので、私どもこれらの御意見等を十分検討してみたいと思っております。
  204. 島田琢郎

    島田(琢)委員 もうあれから三カ月、四カ月たったのであります。当時の櫻内農林大臣は、直ちに前向きに検討したい、こういうふうにわれわれと約束をいたしたのであります。その後、大臣がかわったというふうなこともありますけれども、これから検討するというようなことでは、私どもがせっかく建議をした精神というものはいままでたなざらしにあっていたということになってしまうわけであります。きわめて私は残念であります。  背景はまさしく、私が先ほどから幾度も言っておりますように、酪農の深刻な危機の中にいまあるということを考えますときに、そういう重大な提案に対して、その内容の検討もされていないということは、きわめて私は不満であると同時に、当局は怠慢ではありませんか。当時これは一つ考えであるというふうな簡単な受けとめ方ではなかったのであります。櫻内前大臣は、検討すべきたいへん重要な問題を含んでいるので、直ちに事務当局で省内において検討いたしたい。必要ならばこれらのいわゆる専門の会議を設けてもいいという意味の御発言までされているのであります。それをいま大臣にお聞きすると、これから検討するというようなことであります。私どもは、われわれ国会議員が真剣になって議論をしたことを集大成して、特にわが党としてはこの意見を出すのにたいへんな時間をかけて検討いたしたものであります。決して一人か二人の人間が思いつきで計算をしたりあるいは試算方式例について建議をしたのではございません。もっと真剣にひとつわれわれの提案を受けとめていただきたい。あれだけの提案をしたにもかかわらずそういうことであるとすれば、今日私どもはこうやって国会で議論していることも、ただきょうが終わればもうそれでいいのだ、そういうふうなことになってしまうではありませんか。私はそういうことではたいへん残念でありますし、また、検討されていないということであれば、これは幾ら押したってそれは検討していないのでしょうけれども、まずそうした無責任な態度に対してきびしく私は注文を申し上げておきたいと思いますし、直ちにただいまから畜産局において、この問題を具体的に詰めていくということで取り組んでいただきたいと思います。それはどうですか。
  205. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 検討いたしますと申したのは、私が検討いたしますということを申したのでありまして、事務当局のほうでは、こういう御提案につきまして、学者諸君にも意見を聞いたりして、もう前から検討いたしておるわけでありますが、私は就任早々国会が開かれておりまして、毎日予算委員会等でその時間もございませんでした。そういうことでありますので、私が検討いたします、こういうことを申し上げたのでありまして、農林省ではもう事前に検討しておるようであります。
  206. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それでは畜産局長、その検討の経過をお示しください。
  207. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま検討をしておる最中のようであります。専門家等にも意見を差し上げて御研究を願っている、こういうことだそうであります。
  208. 島田琢郎

    島田(琢)委員 大臣がかわったときに、担当の畜産局からは、こういう問題について具体的に大臣に説明をしていないのですか。私どもの提案をどういうふうに受けとめたのか。これは私は聞いてなかった、こういうふうな大臣のお話のようでありますが、ほんとうは、私がこれから検討するというふうな言い方をしておりますけれども、私に言われて初めて社会党の提案というものをいま御承知になったのではないかというふうな感じであります。これは事務当局は怠慢じゃありませんか。
  209. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは違うのでありまして、まず閣僚がかわりますといろいろな事務の報告をいたしますが、その中で日本社会党の御提案になっております農業政策の基本方針、これらも十分御説明をいただきましたし、私の友人の皆さんのほうの御同僚の方にもいろいろ問いただして勉強させていただきました。畜産局の事務報告の中にもございましたが、いま申しましたように、何しろ忙しいものですから、そう手が回りかねておるということを率直に申し上げたのでありまして、私が十分これから検討いたしてみます。
  210. 島田琢郎

    島田(琢)委員 新任の局長、あなたはこの検討の具体的推進をしなければならぬ責任ある立場にいるわけです。あなたは前任者からの引き継ぎで、この問題についてどう対処しておられるのですか。
  211. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 昨年秋、乳価値上げ問題が出ました当時、社会党の考え方について御提示がございまして、われわれといたしましても、先ほど大臣が申し上げました畜産振興審議会の懇談会におきます意見とともに鋭意事務的に検討いたしております。まだ結論を出すまでに至っておりませんけれども、当時から、関係の学者の御意見等も承りながら、種々検討を急いでおるという段階でございます。
  212. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私は、きびしく政府当局の怠慢を追及したいと思うのであります。何となれば、もうあと一カ月しかこれをきめるのにないのですよ。まだ検討中だ、結論に達していない。しかも要求は、昨年の八月に乳価の改定をしてもらわなければ今日の酪農の経営はもう成り立たないという訴えが全国各地から起こってきたのであります。時期が来なければやらないという姿勢は、今日の酪農の危機というものを真剣に感じ取っておらないのじゃありませんか。私どもは血を吐く思いで、今日の酪農の危機を回避するためにこうあるべきだということを、いままで繰り返し繰り返しこの農林水産委員会国会の論議を通して訴えてきたのであります。私どもは一年間、何のためにこれをやったのかわからぬ。しかも櫻内前大臣から、皆さん国会でいろいろ議論されておるが、それを集大成したら社会党としてはどういう案になりますか、それを示してもらえば、私は私なりに検討を加えて、ひとつしかるべく皆さん方にも御返事しますとまで言ったのでありますよ。どこかのたなの上に上がってほこりをかぶっているのじゃありませんか、それは。  そこで、一体いつまでにその検討の結果を発表するお考えですか。
  213. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま申し上げましたように、審議会の先生方にもいろいろな御意見を聞いておりますので、そういう意見もしんしゃくしてきめたいと思っております。
  214. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私どもは、社会党の提案は直ちに審議会にかけてもらわなければならないとさえ思ったのであります。審議会というのは、政府からの案もさることながら、われわれから大臣のいわゆる手元に重大な提案をしたのでありますから、大臣はそのことを審議会に諮問をする責任があるのだ、私はこう思っていたのであります。ところが、今日まだその問題は具体的になっていないばかりか、審議会の委員の手元に渡っているというのも、どうも私はちょっと信憑性を疑うのでありますが、そこまで疑うのはどうかと思いますけれども、どうもきょう言われて初めて気がついたような感じにしか受け取れません。私どもは、ほんとうに真剣になってこの乳価算定方式の改定について議論をして、党内の意見としてまとめて、成田委員長名をもって農林大臣にこの考え方を出したのでございます。決して一酪農対策委員会の思いつきでやったのではありません。それだけ今日の日本の酪農というのは深刻な危機にさらされているという背景があったからであります。  どうも残念であります。私は時間の関係があって……(「時間なんかいいよ」と呼ぶ者あり)どうも皆さん方の叱責もありますから、具体的にこの問題についてひとつ続けていかなければならぬのでしょうけれども、これは一体いつ具体的に省内の意見としてまとめるお考えですか。審議会の審議委員の皆さん方から意見を求めて、政府考え方としてわれわれに回答するのは時間的に一体いつできるのですか。大臣、それひとつあなたのお考えによって指示してください。
  215. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 大事なことでありますから軽率には述べられませんので、十分これは検討して、専門家の意見も聴取したいと思っております。
  216. 島田琢郎

    島田(琢)委員 これだけのお約束をしたのでありますから、よもや不用意な扱いはしないと思います。しかしながら、私は十月三十一日の時点においてわが党が出した七十七円四銭、これをベースにして四十九年度の保証価格を決定するとしたらどれぐらいになるかというのをあらためて計算をいたしました。結論を申し上げますが、四月一日の告示価格は九十四円五十銭以上なければ今日の物価あるいは飼料の高騰、そうした諸条件を加味した価格にはならない、こういうふうに判断をしております。もちろん、あのときに出した七つ、八つにわたる重大な修正項目についてはそのまま取り入れたものであります。今日一口にいいますと、乳価四十八円五十一銭、これは倍近くなければ酪農が成り立たないというのは、もう常識的にいえる点であります。たまたま私の計算と現状のいわゆる感触とが一致したということにすぎません。そういう状態でありますから、私は具体的に九十四円五十銭の中身については、きょう時間がありませんからまた別な機会に譲りますが、こういう要求が、今日の酪農の危機を回避していくために必要な価格であるという断定を持っておるのであります。ひとつ政府当局としては、四十九年度の保証価格決定にあたって、私がきょう九十四円五十銭という提案をしたということも踏まえて、十分昨年の秋に農林大臣に対して建議をした私どものこの内容等を勘案の上、早急に四十九年度価格決定に取り組んでいただくように要望を申し上げておきます。  さて、再度時間が来たという通告がございましたから、まだこのあと質問者がいるようでありますから、残念ながら言い足りないところがたくさんあってやめなければなりません。きょうは大臣との議論になったのでありますが、後ほどそれぞれ事務を担当しております立場の皆さん方とも、こまかに詰めた議論をしていかなければならないと思っております。  ただ、最後にひとつ大臣のお考えと決意のほどを聞きたいのでありますが、私は従来こういう主張をしてまいりました。石油というのは決して無限のものではない。有限である。この事実を無視して、今日石油産業を中心にした日本工業というものが進められ、この工業を発展させるために日本農業は踏み台にされ、犠牲にされてきたことはまぎれもない事実であります。これは大臣がどんなに農基法を評価されようと、まぎれもない事実であります。大臣は四度目、四回この大事な時期に農林大臣をおやりになった。私はきわめて辛らつな言い方でありますけれども倉石農林大臣日本農業をつぶしてきた張本人だということを一番最初に申し上げた。失礼を顧みずそういうことを申し上げたのも、今日幾ら抗弁されようと、日本農業の置かれている立場から考えてまいりますときに、この農政は私は失敗であったし、また重大な転換を迫られているときだと思うのであります。有限の石油の上に乗っかったこのいわゆる日本経済政策というものの反省の上に立って、私たちは長い間守り続けてきたこの農地、ここに水をくれ、肥料をやり、種をまいて耕していけば、一億国民の命の源泉ともなる食糧というものは、いままでも無限にそこから出てまいりましたし、またこれから先、無限にこれをとることのできるいわゆる無限の資源であることに間違いはないのであります。思い切ってひとつ四十九年度、新しい農政の転換を目ざして、それこそ罪償いのような気持ちで取り組んでいただきたい。私ども大臣が真剣にそういう取り組みをされるのであれば、絶対の協力を惜しむものではありませんし、今日これ以上日本農業、とりわけ食糧政策というものが落ち込んでいくというようなことに相なりますと、それこそあなたに一億の人間の命が預けられているというこの重大な事実にかんがみ、私は大臣責任というのはきわめて重いものであって、その責任が果たせないとすれば、私どもは徹底的にあなたの立場というものに対して追及をしていかなければならないというふうにいま考えておるのであります。  きょうのわずかな時間の議論を通して、私の感触としては、どうもいまひとつ理解ができない、食い足りないという感じで終わらざるを得ないことをたいへん残念に思います。これからこの国会を通して、私の考えておりますことをひとつ申し上げ、大いに議論をしていかなければならないと考えているわけであります。きょうは言い足りないところがたくさんありながら、時間が参りましたのでここでひとまず私の質問を終わりにいたします。
  217. 仮谷忠男

    仮谷委員長 林孝矩君。
  218. 林孝矩

    ○林(孝)委員 先ほど来の議論、さらにこの三日間の議論を通して共通の問題、これは簡単に申し上げますとやはり日本農業が今日いろいろな課題をかかえ、また将来にわたって非常に暗い見通しというものに立たざるを得なかった大きな原因が、今日までとられてきた政府高度経済成長政策、そういうものにあるということも大臣も一部事実認識として認められておったとおりでありますし、私もそうした共通の考え方に立つものであります。  そこで、重複を避け、いまから数点に関して質問をしたいと思います。  最初に、漁業問題についてでありますが、日ソ漁業問題、これでこの一月二十八日から二月の八日までモスクワで行なわれた日ソ漁業専門家会議、この経過について簡単に最初に説明していただきたいと思います。
  219. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 本年一月二十八日から二月八日まで日ソ漁業専門家会議がモスクワにおいて開催されまして、昨年十月の前農相とイシコフ・ソ連漁業相との間の合意に基づきまして、サケ・マス、カニ及びツブの漁獲量の二年間にわたる取りきめの具体的実施の方法並びにB区域の取り締まりの強化問題について協議を行ないました。この会議において日本側としては、わが国北洋漁業の長期的安定をはかることを主といたしまして、各問題について合意を得るべく努力いたしましたが、これらの問題はいずれも長年にわたる日ソの間の懸案事項であり、双方の原則的立場に対立もありまして、会議は難航いたしました。このため三月からの日ソ漁業交渉を控えて、時間的制約もありましたので、今回の会議は一応打ち切って、三月からの本交渉の際、これらの問題を継続して協議することといたしました。  なお、政府といたしましては、三月からの本交渉の際の協議においても、これらの問題が、わが国北洋漁業の長期的安定という線に沿うて具体化されるよう、引き続き最善の努力をとってまいる所存でございます。
  220. 林孝矩

    ○林(孝)委員 B区域の取り締まり監視問題、それから契約問題、この二つの問題が大きな焦点であるといういまの答弁であったわけでありますが、その具体的な内容、それから本交渉が来月行なわれるということで、それに対していま大臣が御答弁されたように、善処したいということでありますが、その善処の中身、対応策というもの、本交渉にあたってどのような案をもって臨むのか、この二点について具体的に明快に御答弁願いたいと思います。
  221. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 本年の漁業交渉は、いま申し上げましたように、例年にもないきびしい交渉になると考えております。本年の交渉は、いずれもモスクワにおいて行なわれることとなっておりますが、わが国北洋漁業の長期安定を確保するという基本的立場に立って、円滑かつ早期の交渉妥結のため、できる限りの努力を払うつもりでありますが、B区域の問題、それからその他の問題につきまして、いろいろな話し合いが出ただけでありまして、これといってきめたものは何もないわけでありまして、先方の要求がいろいろな意味で非常にきびしい、こういうことの報告だけでございました。
  222. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私の質問の第二点目に対してお答え願いたいと思います。
  223. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 どういうことでございましたか。
  224. 林孝矩

    ○林(孝)委員 一点目は、いま大臣が御答弁になった二つの問題点、すなわちB区域の監視、それから契約上の問題ですね。二点目の問題は、来月開かれる本交渉にあたって善処をしたいという答弁を先ほどされたわけでありますが、その具体的な内容について明快に答えていただきたい。
  225. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御存じのように、このたびのものは専門家の会議でございますから、そこであらかた、外交交渉でありますので、いろいろな点について両方ともやっぱりいろいろな意見が出たのだろうと思いますが、外交交渉でございますので、先方からも発表することを遠慮するものもあるようでありますし、こちらもそうかと思います。したがって、こまかいことは私どもにもよくわかっておりませんが、要するにB区域に対して、これは昨年も主張したことでありますが、本年も、ソ連の監視船をB区域にも入れたい、こういう要望を出してきておるようであります。これはわがほうの過去におけるいろいろな歴史、国民感情等もありますので、そういうことを言われても、それに同調するわけにもいかないというふうなことで、そういう問題についていろいろな角度から話し合いが行なわれたようでありますが、もちろん予備交渉でありますので、別に結論めいたものは出ておりません。
  226. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ですから、来月の、三月に行なわれるところの交渉に対して、どういう対応策をもって臨まれるのか、もし具体的にそういうものがなければ、ないでけっこうです。
  227. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 三月から始まるのは、いよいよ本交渉でございますので、相手方と外交交渉を始めます前に、公式の場で私ども日本考えはこうだということを申すことは、遠慮さしていただきたいと思うわけであります。
  228. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そのように答弁願えればいいわけです。  さらに、もう一点お伺いしますけれども、決意として、どういう決意で臨むかということは、外交交渉には支障がないと思いますので、御答弁願いたいと思います。
  229. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 国際間の交渉でありますので、それぞれいろいろな主張もあるかもしれませんが、私どもといたしましては、やはりことしはサケ・マスもございますし、それからツブのあれもありますし、カニもございます。これにつきましては、私ども、従来考えておりましたようなこと、これは正当な考え方であると思いますので、そういう態度で臨みたいと思っております。
  230. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、一般的な問題として、日ソ両国間の漁業問題で絶えず問題になることでありますが、その漁業の資源問題について伺いたいと思います。  漁業の資源問題ということを考える場合に、当然のこととして、資源の調査というものが前提となって行なわれなければならないと私は思うわけであります。その資源の評価に対しては、絶えず日ソ間において評価が食い違っておることも、今日までの日ソ漁業交渉における過程の中で、事実問題としてわれわれも認識しているわけでありますが、こうした問題を解決するために、日ソ間において、両国の専門家が一つ調査機関をつくって資源を調査する、そういう提案を今日までわれわれがしてきた経過も大臣御存じだと思います。そういう問題が、これは新しい機関の設立ということになりますけれども、今日まで検討されたことがあるか、あるいは、両国の閣僚会議等において議題にのぼったことがあるか、あるいは、今後そうした両国の専門家による資源調査機関というものを設置するという考えに対して、大臣はどのような見解をお持ちになっておるか、お伺いしたいと思います。
  231. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは、過去のいろいろな話し合いもあるようでありますから、水産庁長官からお答えいたさせます。
  232. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  現在、日ソ両国は、日ソ漁業委員会の定める科学的共同調査計画に基づきまして、毎年サケ・マス等の漁業資源に関する調査を実施し、その結果を相互に交換しておるわけでございます。それで、日ソ漁業委員会の最初におきましては、この資源評価につきまして、両国の専門家がいろいろ意見を交換するということで協力してやっているわけでございます。日ソ両国のサケ・マス漁業は、先生御案内のように、漁場、漁法等にかなりの相違がございます。ソ連は川の口でとっておりますし、日本は公海でとっておるわけでございます。そういったこともございますので、現状では、共同調査計画に基づきまして、それぞれの漁業の実態に応じる調査研究体制で必要な調査研究を実施することが最も効率的であるというふうに考えております。したがいまして、日本としては、特別の共同調査機関の設置を提案する考えはございませんけれども、その資源評価の方法その他につきまして、もうちょっと話し合おうじゃないかということを向こうが言っておりますし、そういった評価の方法その他につきましては、両国でなお話し合って改善する余地があるのじゃないかということで、やり方としては、大体現状でいいのではないかというふうにわれわれは考えておりますし、ソ連側も、評価の方法そのものをもう少し研究しようじゃないかというようなことを言っております。
  233. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、もう一つは、とる漁業からいわゆる養殖漁業、栽培漁業という形への転換が叫ばれているということでありますが、日本のそうしたすぐれた技術というものを、この日ソ間の水産資源の再生産のために積極的に供給していくべきであるという、こういう考え方が現実として関係者の中にあるわけであります。こういうことについては、公明党といたしましても、サケ・マスの日ソ共同人工ふ化事業という提案を今日まで行なってまいりました。この件について、私たちは、日ソ漁業問題の解決、さらに資源の再生産という、こういう非常に重大な問題に対しては、日ソ両国の間で話し合いがなされるべきであるというように考えているわけでありますけれども、こうした問題に対してはどのような見解をお持ちになっておるか、お伺いしたいと思います。
  234. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ソ連の極東地方において、日ソ共同でサケ・マス増殖事業を実施する問題につきましては、北洋サケ・マス漁業の長期安定をはかる見地からも、かねてから、ソ連に対してその実現を強く働きかけてまいったところであります。先年ソ連のイシコフ漁業相が来日いたしましたときも、私との間に話し合いがありまして、かなり先方は興味を持って、ぜひそういうことについて研究をしたいと言っておりましたが、特に、一昨年八月には、ナホトカで、日ソの専門家によりまして、この問題について予備的な意見交換が行なわれまして、具体案作成のための日ソ専門家会議を開催することに合意が得られております。その後、ソ連側の都合によりましてこれが延び延びとなっておりましたため、昨年十月の日ソ首脳会談、櫻内前農相の訪ソの際も、本問題の早期実現を強くソ連側に申し入れまして、ソ連側との間にその原則的合意を見ておる次第であります。  わが国といたしましては、この合意に基づき、早期に日ソ専門家会議を開催いたしまして、事業の実現に積極的に努力してまいりたいと存じておるわけであります。
  235. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、ことし六月にベネズエラで行なわれる第三回の国連海洋法会議について伺いますが、この会議で、当然これも必然的な問題として起こってくる、また、そのようになるであろうと予想されておるわけでありますが、排他的経済水域の問題、これは二百海里の設定ということが提案されることになっております。これが採択されるということになりますと、日本の遠洋漁業の漁場の八割を失うということでありまして、決定的な打撃を受けることになると私は思うわけであります。この問題に対して、その会議に参加する国の中においては、ほとんど、この二百海里説というものに対する見解をもう固めております。わが国の場合は、これは非常に重大な問題でありまして、結論を出すということに対してもいま慎重ではないかと思うわけでありますが、この会議に臨むにあたっての農林省の見解は、いまどういう状況であるかということをまずお伺いしたいと思うのです。
  236. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのように、これは大きな問題でございますが、国連の第三回海洋法会議は、本年六月に、大体十週間の予定でベネズエラのカラカスで開催されることになっております。漁業の問題につきましては、準備会議等を通じまして、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの発展途上国を中心として、沿岸国に最大限二百海里に及ぶ広範な排他的管理権を認めよという主張がございますことは、いま御指摘のとおりでございます。このような主張が国際的に制度化される場合には、わが国の遠洋漁業に及ぼす影響につきましては、お話しのようにきわめて重大なものでございますため、わが国といたしましては、従来から、沿岸国に漁業の優先権を認める、けれども排他的管理権は認められない、また、遠洋漁業国の実績は尊重されるべきであるという主張で対処してまいっております。今後、政府といたしましては、海洋法会議はもとより、関係国との協議等あらゆる場を通じまして、関係諸国に対してわが国の従来の主張の浸透を強力にはかる必要があると思いますし、また、そういうことで努力をいたしております。  わが国遠洋漁業の長期安定を確保するために最大限の努力を払ってまいるつもりでございますし、また、発展途上国に対しましては、昨年設立されました海外漁業協力財団の業務の拡充強化等によりまして、相互理解と共存共栄の立場に立って、わが国漁場の確保をはかってまいる所存でございます。
  237. 林孝矩

    ○林(孝)委員 優先権と実績尊重ということでありますけれども、こういうことに対する見通しはどのように考えられておりますか。
  238. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これはたいへんむずかしい問題だと思います。それぞれ利害関係のある国々が錯綜しておりますし、これによって非常に利益する面もあれば不利益を生ずる、面も、同じ国でもあるのではないかと思いますが、私どもといたしましては、いま御指摘がございましたように、開発途上国で、事実自分たちが漁業などをほとんどおやりにならない国でも二百海里説をたいへん主張している国が多くあることば御存じのとおりで、それらの国々との間をどういうふうにしたらばいいか。たとえばソビエトのような国はやはり利益する面もあれは、また、たいへん——何しろ、日本に次ぐ漁業国でありますので、いろいろなことをやっておるようでありますが、先ほど申し上げましたように、あらゆる角度から計算をいたしまして、私ども考えておることが実現するように、最大の努力を払うつもりであります。
  239. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私の質問の要点は、これは非常に早く手が打たれなければならないし、いま努力をしているということで、その努力の内容も伺いたいということであります。それと同時に、そうした努力の結果が実るのか実らないのかという見通し、これは非常にむずかしいことだと思うのですけれども、やはり、日本にとってはそれがまた非常に重大なことなんです。もう一度その点を確認したいと思います。
  240. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問は非常にむずかしい問題だと思います。と申しますのは、これから会議をやるわけでございまして、しかも、その会議には百二十カ国ぐらいの国が入ってくる。私どもといたしましては、各国がどういう主張をしているかということは詳細につかんでおります。それから、さらに、関係の国に対しましては絶えずわが国の主張を展開するということはやっておりますけれども会議の結果がどうなるかということをいまここでお答え申し上げることはちょっと無理じゃないかという感じがいたします。(「商社にまかしちゃいかぬよ」と呼ぶ者あり)
  241. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま不規則発言がありましたことを私がいま申し上げたいと思っておったのですが、これは、なぜこういうことを言うかといいますと、あとで私は質問しますが、海外の協力事業農林省の新しい政策の中の一つとして——政府全体としては、国務大臣を一人つくるという形での話が出ておるわけですね。いままでの海外協力という名のもとに行なわれてきた事業というものを見てみますと、対日感情において、また民族意識の問題において、反日あるいはエコノミックアニマルという重みが、われわれが想像していた以上に根強く残っておる。また、これは、その協力をした国の国民の繁栄とか、国の繁栄とか、国民の福祉とか、そうしたものに反映されないで、どこかえ消え去ってしまっておる。残るのは反日感情だけである。こういうことが世界のいろいろな国で起こってきておるわけであります。そういうことから考えた場合に、結論的に、この海洋法会議でも、結果は二百海里説となって決定するであろうし、そして、優先権だとか実績というものは、その実績がいい面で評価されるかというと、これはマイナスの面で評価されることが多いし、日本が優先権を主張してみたとしても、この会議の中ではたしてそれが認められるかどうかということについては非常に悲観的な見通しを持たざるを得ない。これが私の見通しなんです。そういう見通しに対して、政府農林省として、そうじゃない、こういう明るい見通しを立てられる裏づけがあるんだというものがあれば、この機会に示してもらいたいと思います。
  242. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 水産庁が把握しておるところで若干申し上げますと、現在、領海三海里説をとっておる国は十六でございます。日本はもちろんこの中に入りますし、ドイツ、オランダ等の国も同様の立場でございます。それから、四海里から十海里の領海説をとっておる国は、これには漁業水域も含むわけでございますが、五カ国ございます。それから十二マイルの国、これは領海十二マイルが四十一カ国、ソ連、カナダ、中国等がこれに入っております。それから、アメリカは、軍事上の立場とか、漁業以外のいろいろなむずかしい問題も本件には入っておりますので、領海の幅員については必ずしも立場を明らかにしておりませんけれども、漁業水域については十二海里説をとっております。この説をとっておる国が十九ございまして、大体アメリカ、イギリス、オーストラリア等のいわゆる英語国、旧英領であった国が漁業水域十二海里説をとっております。それから、十三海里から五十海里をとっておるのが十八カ国ございます。これには、南ベトナムとかモーリタニア等がそのような立場をとっております。それから、五十一海里から百五十海里が九カ国、それから二百海里以上が十二カ国、その他が四カ国。そのほか、フィリピン、インドネシア、モルジブという国は、群島内の内水宣言、群島理論というもので大きく領海と島を結んで取ろうというような意見をとっております。そういうようなことがございまして、私どもは必ずしも二百海里で話がきまるということにはならないとは思っておりますけれども、先ほど申し上げましたように、これはまだ非常に各国の利害がふくそうしておりますし、単に漁業以外にいろいろな問題がからんでおりますので、この会議の帰趨がどうなるかということはなかなか予見しがたい状況にあるわけでございます。
  243. 林孝矩

    ○林(孝)委員 万が一その二百海里ということでなくとも三海里ではない、こういうことだと思うのですよ。そうした場合に、いまからその対応策を考えておかなければ、いわゆる遠洋漁業で漁獲される魚がその分だけ——結局、どこかまた新しい漁場を求めるか、あるいは、求めても、そういう可能性がなければ、漁獲量がそれだけ減る。そして、日本需要というものに対して、供給とのバランスがくずれてしまう。それはどういう形であらわれるかというと、結局、いま供給されておる魚の量が少なくなって、またまた食糧の危機だとかあるいは物価高とかという形になってあらわれてくるということを心配するわけです。したがって、農林省としても、日本政府全体としても、そうした問題に対処するために、総合的な基本的な農業政策というもの、水産業に対する政策というものをこの際打ち立てておかなければ、再検討しなければ、またまた後手後手になってしまう。それで、海外の事情がこうなったのだからしかたがありませんというように、対外的な原因にその責任を転嫁していくようなことを言うことがもう目に見えてわかるような気がするわけです。そういうことを起こさないために、私は、いま、この委員会においてこの問題を提起しておるわけです。こうしたことに対しての農林大臣の見解を伺いたいと思います。
  244. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御趣旨はよくわかりました。そこで、いろいろなことを想定いたしまして、私どもといたしましては、四十九年度予算におきましても、沿岸及び沖合いの助成についてはできるだけのことをやってまいる。御承知のように、培養してまいります漁業をさらに育成していく、あるいは新漁場の開発をやる、沿岸の漁港の整備その他をはかりまして沿岸の漁獲の増大をはかってまいる、ということももちろん必要なことであります。そういうことで国内の需要はできるだけまかなえるようにつとめますけれども、先ほど水産庁長官からもお答え申し上げましたように、開発途上国でなおいろいろな主張をいたしております国々と、それらの国の利益を尊重しながら漁獲ができないということもないのでございますから、そういうような面においても最大の努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  245. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これは水産庁長官が専門でありますけれども、いま、沿岸と遠洋という問題があるわけです。われわれが毎日食べている魚は、日本の沿岸でとれる魚の比率とよその海域でとれる比率と比較した場合にどういう比率になっておるか、これをはっきりしたら、いま沿岸で養殖することで間に合うものかどうかということがはっきりすると思うのですけれども、その点は水産庁長官のほうが詳しいと思いますから、説明していただきたいと思います。
  246. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 四十七年の総生産高が千二十一万トンでございます。そのうち沿岸が二五・四%、それから沖合いが四〇・八%、いわゆる遠洋漁業が、大規模漁業が三三・八%になっております。沖合いの中には、これは中小漁業でございますので、あるいは遠洋でとってくるものも入っておりますけれども、そういうような比率になっております。  そこで、確かに、御説のように、この一千万トンのうちの二五%が沿岸でございますから、七百五十万トンを全部沿岸でやれと言われても、それはできないことはもうはっきりしております。ただ、沖合い漁業は、これはちょっと遠洋と違った面もございまして、大体六五%は沖合いと沿岸でとっております。そこで、私どもといたしましては、全部沿岸なり沖合いではできませんけれども、今後、養殖栽培漁業を進めまして、この生産力をどんどんあげたいというふうに考えているわけでございます。  それから、大規模漁業が全部だめになってしまうということも、これはあり得ないわけでございます。そこで、それじゃ、現実的にどういうふうに推移していくであろうかということでございますが、御承知のとおり、日本は大陸だな条約の加入国になっておりません。ところが、ソ連とアメリカが大陸だな条約を批准いたしましたために、日本は大陸だなを認めないにもかかわらず、現実には、カニとツブについてソ連なりアメリカと話し合わなければならぬというかっこうになっているわけでございます。海洋法会議の結果におきましても、何らかの条約ができるかできないかということも大きな問題でございますけれども、できたといたしましても、おそらく、漸次既成事実ができていくというような形でいくのじゃないか。それにつきましては、わが国は、遠洋漁業については相当実績を持っておりますから、何といってもその実績を排除するのはおかしいじゃないかということで、現に、いま、カニ等につきましても、アメリカ、ソ連と話し合いをいたしまして、向こうは、大陸だなの資源だから一方的に自分たちが管轄権があるのだということを主張しているわけでございますが、日本は、現にとっているじゃないかということで、協定を結びながらやっていくというようなことで、今後確かに遠洋漁業をめぐる客観情勢というものはきびしくなってまいりますけれども、その中において、日本の実績というものもございますし、関係国と協定を結びながら資源の補充をはかって漁業活動を発展さしていくという立場をとれば、そう心配するように、大規模漁業の生産高がいきなり一ぺんに半分になってしまうとか六割になるということはないのではないか。しかし、そのためには、十分関係国とも話し合わなければなりませんし、それから、わが国の漁業自体が、資源保護ということも考えながら漁獲努力を調整していくというようなことはもちろん必要だと思いますけれども、それほど一気に漁獲高が減ってしまうというようなことにはならないのではないか。その辺はよく調整をとりながら仕事を進めていかなければならぬというふうに私は考えている次第でございます。
  247. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この問題はこれでおきますが、非常に重大な問題でありますので、今後さらに具体的な問題として議論を進めていきたいと思います。  それから、次に、きょう一日、あるいは三日間議論になっておりました食糧の需給問題でありますけれども農林大臣が国際情勢をどう把握されているかという点については先ほど答弁がございました。また、国内自給の維持向上という問題に対しても、生産基盤の整備あるいは農業団地の形成だとか、また、集団的生産組織の育成だとか、あるいは未利用、低利用地の活用とか、そうしたことをやっていくのだという見解も今日までたびたび答弁の中で話されました。しかし、それ以上に問題がきびしい情勢にあり、また、解決をするためにどのようにしていけばいいかということに対しては非常に重大なことがありますので、私は、大臣がそのような答弁をされたということを前提にして、具体的な問題をお伺いしたいと思うわけです。  それは、今月の八日に、アメリカの上院で、シュルツ財務長官が小麦の輸出に対する発言をいたしました。その内容は、大臣御存じだと思いますけれども、輸出税を課すということであります。これは正確に言いますと六日という現地の上院での話でありますけれども、さらに現地の情報を見ますと、数日前に事実上の問題としてすでに検討が進んでおるということでもあるわけです。そうしますと、日本の輸入の五〇%対米依存という、そうした小麦の実情と考え合わせて、これはまた、国内の農業に対する非常に重大な影響を与えるということが明々白々としてわかるわけであります。こういうことは、いわゆる輸出状況というものをただアメリカだけに限らずに見た場合においても、各国においていまや価格が暴騰して、日本の国内で生産される価格、国内で販売される価格よりも、国外、いわゆる国際的な市況というものが大きく高騰してきた。さらに、こういう形で輸出税がかかることによって、小麦がさらに高くなって日本に輸入されるということになってきますと、先ほどから議論されておりますえさだとか、あるいはパンだとか、うどんだとかいう、そうした加工品に至るまで影響されて、そして、小麦を加工してつくられる品物が値上げされなければならないという結果を呼び起こすわけですね。こういう問題に対して、私たちは非常に敏感に見ていかなければならないし、また、今後の問題として、これはアメリカで財務長官が発言して、こういう形で実現されそうであるということだけではなしに、この波紋はいろいろな国にまた起こってくるのではないかということも考えられるわけです。これについて、農林大臣としてどう対処されようとしておるか、また、どのような把握のされ方をしておるか、お伺いしたいと思います。
  248. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまのお話しでございますが、そういう話がございましたので、いろいろ調べてみましたが、これはまだ具体的に取り上げられた問題ではないようでありまして、シュルツ財務長官のそういう御意見であったということのようであります。他の方面を調べてみますと、そういうところまではいっておらない。それからまた、こちらと接触しておるほうの側から調べましても、そこまではいっておらないようでありますが、そういうことは別問題といたしましても、お話しのように、アメリカの小麦も非常に高騰してまいっておることは事実であります。それから、また、輸入品でございますので、対ドル円比の比較から見ましても、こちらの円のほうが安くなってまいっておるというふうな関係で、輸入品が高騰してくる。それから、また、運賃においてかなりの高騰を見ております。したがって、そういう問題を考えてみますと、なかなか大きな問題でございますことは、先ほど飼料お話しもありましたけれども、同様でございます。そこで、私どもといたしましては、一カ国とだけそういうことをやっておることに非常な危険を感じますので、わが国と協定をして、そして自国の利益にもなり、われわれのほうでも一定量を一定価格で引き取るようなものができるようになりますれば、それだけ多角的に輸入口を設けることができるのでありますが、そういうことでこの国会に御審議を願おうといたしております海外農業の開発公団というものをつくろうと、こういう考えを持っておるわけであります。
  249. 林孝矩

    ○林(孝)委員 一般的な問題としては大臣がお答えになって、このシュルツ発言ということについては、私の手元に来ております情報と農林省の情報とは食い違っておって、どちらがどうであるかということは今後の成り行きを見なければわからぬわけでありますが、だいじょうぶだということでありますし、もちろんそのほうが望ましいことであるので、私は、この問題はこれくらいにしておきまして、私に与えられた時間がもう来てしまっておるようなので、あと一つの問題にしぼってお伺いしますが、先ほど少し触れました海外協力事業団の、この基本姿勢の問題についてお伺いしておきたいと思うのです。  先ほどから農林大臣も話しておられますように、国と国との間において行なわれる事業、これは、今日までのように、日本の利益のみを考えるような行き方では成り立たないことはもう当然でありますし、また、それがどういう形であらわれたかということは、先日来の総理の東南アジア訪問の中においても行動としてあらわれております。非常に問題の根は深いわけであります。したがって、そうではない姿勢で、力強い、それも強力な決意でもって臨まなければ、今日まで与えてきた悪影響というものはぬぐい去られないと私は思うわけです。したがって、まず、最初に、その基本姿勢はいかにあるべきかということについて、大臣の見解を伺いたいと思います。
  250. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 しばしば開発輸入ということばが使われるのでありますが、私、考えてみますのに、どうもあまりいいイメージを与えないような感じがいたします。開発途上国で、わが国と協力をして自分の国の農業生産を増強したいと考えて、現にわが国に申し込んでおる国がございます。たとえばフィリピン、マダガスカルの肉牛、それからブラジル等でありますが、そういう国々におきましては、日本の技術、資本協力等を求め、自分の国の農産物開発をいたしたいのだという要望でございます。私どもといたしましては、そういう国々もやはり食糧について増産を考えておるのでありますから、そういう国々のそういう希望をわが国の技術協力によってかなえるように協力をして、そして、相手方が必要なものは相手方が安定的にこれから確保する、余力をもって、わが国の必要とするものもわが国に安定的に輸入をしてもらいたい、そういうような形で、国際協力という立場でこの問題を処理していくべきではないか、こういうふうに考えているわけであります。
  251. 林孝矩

    ○林(孝)委員 二番目の問題は、相手国が要望してきて、それにこたえて国際協力をするということとは別に、日本がこういう国がどうだろう、こういう国がどうだろうということで調査をして、そしてかつ、その国が申し込みはしないけれども、要望しているという国が事実あるわけです。日本に、こういう農業をつくってもらいたい、農業ができる土地でありながら農業がないので食糧を輸入しておる、これを日本でやってもらったらほんとうにありがたいというような希望を持っている国もありますから、やはり、全体観に立って、どういう国がどうかということを調査しなければならないと思うのです。ただ、フィリピンから申し込みがあったからそれにこたえるということだけじゃなしに、ラテンアメリカにもあるいは中近東にもそういう国がありますから、そういうところまで視野を開いて対象の国を選ぶべきであると思うのですが、その点はどうでしょうか。
  252. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お説のとおりだと思います。
  253. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、最後に、きょう稲富委員からも商社等は考えるべきだという意見がありましたが、田中総理が、本会議場で、代表質問に対する答弁の中で、はっきりと商社、シンジケートというものの名前をあげておりますし、また、ジェトロの機関を使ってやるとか、いろいろな具体的な発言をされておるわけです。そういうことを発言されている以上は、やはり、政府間ベースの話し合いをどこでやらせるかということになると、商社が浮かび上がってくるのではないか。もっとほかに考えようがなかったものか、それとも、まだ決定されたことではないから、いろいろなケースを考えて、ほんとう日本の国のためにも、また、その相手国の繁栄のためにもなるような、両国がほんとうに信頼を築いていけるような、そうしたものにしていくために、今後さらに検討する余地があるものなのか。農林大臣としては、特に農林水産関係において、そうした具体的な見解というものをお持ちなのか、この点をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  254. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どもの基本的な考え方としては、相手国の政府わが国との政府間ベース、いわゆるGGベースと言われておりますが、その相互の政府間で話し合いをいたしまして、運営の方針等もそれぞれあるでありましょうから、そういうことはきちんと政府間できめませんと——相手方も安心して、しからばどれだけのものを自分の国でもらいたい、どれだけのものは日本に差し上げましょうというようなことになるのでありますから、そうなりますと政府間の話でありますので、一定の価格、一定量というものは安心してわれわれのいろいろな計画にも入れられるわけであります。そういうふうなことを考えましたので、事業団という構想が浮かび上がってまいったわけでございます。したがって、先方との話で、これをわが国に持ってまいる場合にはどういう方法が一番いいかというようなことは、これから事業団をつくりまして、その運営で十分検討してまいるのが正しいのではないかと、このように考えておりますが、とかく、従来、わが国の出先の方々がエコノミックアニマルというふうなことを言われたようでありますけれども、もちろんそういうことについては、やはり国と国とがやるわけでありますので、そういうことに慎重な態度で臨むべきではないかと思っております。
  255. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  256. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十四分散会