○渡辺(美)
政府委員 昭和四十九年度
農林関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
まず、昭和四十九年度
一般会計における
農林関係予算の総額は、総理府など他省所管の
関係予算を含めて一兆八千二百八十九億円であり、前年度の当初予算額と比較をして一一九・二%、二千九百四十四億円の増加となっております。
予算の内訳は、
食糧管理費七千百三十二億円、
公共事業費五千七百九十七億円、
一般事業費五千三百六十億円となっており、
公共事業費については、総
需要抑制の見地からその増額を押えましたが、一般の生産、価格、
流通対策関係の経費を前年対比二二二・一%と大幅に増額したことが明年度
農林関係予算の特徴であります。
以下、予算の
重点事項について御説明いたします。
第一に、
国民食糧の
安定的確保に関する予算について申し上げます。
最近における農産物の
国際需給の動向にかんがみ、
国民食糧の安定的な
供給確保を基本とした諸施策の積極的な展開が重要であります。このため、まず、国内で生産が可能なものについては、
生産性を高めながらできるだけ国内での生産をはかることとし、これに必要な各般の施策を強化することといたしました。また、今後とも輸入に依存せざるを得ないものについては、その
安定確保をはかるため、
海外農林業開発を推進するための措置を講ずるとともに、必要な
備蓄体制の整備をはかることといたしました。
国内生産体制の強化としては、まず、麦、大豆及び
飼料作物について、新たに、四十九年度から
一定期間、長期的な
生産目標に即して、その
生産振興をはかることとし、このため、麦及び
飼料作物の
生産振興奨励補助金の交付を中心に、総額百二十四億七千五百万円を計上しております。
次に、
農業生産基盤の整備につきましては、総
需要抑制の見地から、全体としては進度を調整いたしましたが、その中でも、
圃場及び農道の整備、
畑地帯総合整備、
農村総合整備等に重点を置いた事業を行なうこととしております。特に、
農用地開発公団を新設し、広く、未利用、低利用の
土地資源の存する地域において、畜産を基軸とする大規模な
農業開発を推進することとしており、これらを含めた
農業生産基盤整備費として、総額三千四百七十五億九千四百万円を計上いたしました。
次に、畜産の
振興対策について申し上げます。
畜産の振興につきましては、まず、旺盛な
畜産物の
需要動向に対処して、前に申し述べましたように、新たに
農用地開発公団による
畜産基地の建設を積極的に推進するとともに、引き続き、
公共事業による
草地開発を推進し、
飼料基盤の整備をはかることとしております。
また、酪農及び
肉用牛対策につきましては、大
家畜資源の
維持増大と
飼養規模の拡大をはかるため、新たに、
乳用牛の
資源確保対策、牛の
繁殖促進事業等を実施することとしており、
豚鶏対策につきましても、
養豚団地対策の拡充、
養鶏団地の育成をはかるなど、事業の充実につとめました。
さらに、
畜産経営をめぐる環境問題に対処するため、新たに、
環境保全集落群の育成、団体営の
畜産経営環境整備事業等を実施するほか、
家畜衛生対策につきましても、その充実をはかることといたしました。
畜産物の
価格対策につきましては、
肉用牛等価格安定事業の
保証基準価格の
引き上げ、卵価安定のための
全国液卵公社事業の強化をはかるとともに、引き続き
加工原料乳に対する
不足払いを実施いたします。また、
流通加工対策につきましては、新たに、
生乳流通輸送体系の整備、
食鳥流通近代化センター及び
鶏卵加工合理化センターの設置などの事業を実施することとしております。
このほか、
学校給食用牛乳供給事業を引き続き実施することとし、これらを含めた
畜産振興対策の総額は六百六十九億五千八百万円となっております。
次に、
畑作農業の振興について申し上げます。
野菜対策につきましては、まず、
生産対策として、
野菜生産出荷近代化事業を拡充するとともに、新たに、
施設野菜合理化推進モデル事業及び
加工用トマトの
緊急生産対策事業等を実施することといたしました。
価格対策につきましては、野菜生産出荷安定資金協会が行なう価格補てん事業につき、対象品目の拡大など、事業内容の拡充をはかることにしました。
また、都市近郊産地にかわる新産地の育成事業及び都市近郊の優良産地の整備を行なう特別事業、産地及び消費都市における低温貯蔵庫の設置などの事業を行なうことといたしました。
以上のほか、野菜の流通、加工対策等につきましても所要の経費を計上することとし、これらを含めた
野菜対策の総額は百九十三億四千三百万円となっております。
果樹農業の
振興対策につきましては、新たに、需要に応じた温州ミカンの生産を確保するための生産安定卒業、大規模な産地に生産流通
近代化施設の導入をはかる果樹生産流通基地
整備事業等を実施することといたしました。
さらに、加工原料用果実の価格安定事業の拡充をはかるとともに、特に、果汁工場に関する予算を大幅に拡大することとし、これらを含めた果樹対策の総額は六十二億一千二百万円となっております。
その他、養蚕、特産農作物等の
生産振興につきましては、新たに、人工飼料による稚蚕飼育の実証事業、てん菜輪作体系確立推進事業、沖繩におけるさとうきび収穫機械導入事業等を実施することといたしました。
次に、
稲作転換の推進について申し上げます。
稲作につきましては、引き続き、
飼料作物、大豆等他作物への転換を推進することとしておりますが、最近における一連の
経済情勢等を考慮し、米の需給については十分な供給余力を持たせることといたしました。このため、
稲作転換の目標数量を昨年より大幅に減少して、百十八万トンとし、ほかに、土地改良の
通年施行による調整数量十七万トンを見込んでおります。
この
稲作転換の円滑な推進をはかるため、
稲作転換奨励補助金を引き続き交付することとし、関係経費総額一千二百七十九億三千五百万円を計上いたしました。なお、
土地改良事業の
通年施行に関しましても同補助金を交付することとしております。
次に、
輸入農林産物の
安定確保対策について出し上げます。
最近の国際的な食糧需給の動向等に対処して、トウモロコシ、マイロ、大豆、木材など、今後とも輸入に依存せざるを得ない
農林産物を安定的に確保するための施策を強化する必要があります。
このため、新たに
国際協力事業団を設立して、
国際協力の視点に立った農林業開発を積極的に推進することとし、当該事業団関係の新規経費として、総額五十億円を外務省に一括計上いたしました。
また、大豆、
飼料穀物及び木材につきましては、海外からの供給の急激な減少など、不測の事態に備えて、一定量の備蓄を行なうこととし、これに要する経費として、総額九億八千六百万円を計上いたしました。
次に、農業構造の改善に関する予算について申し上げます。
まず、農地流動化の促進につきましては、四十九億九百万円を計上して、
農地保有合理化法人の行なう事業の拡充及びその運営基盤の強化等をはかることといたしました。
また、今後のわが国農業の発展のためには、
農業生産のにない手を育成することが肝要であります。このため、新たに、自立経営育成特別事業を実施するとともに、農村青少年対策の拡充、総合施設資金の貸し付け限度額の
引き上げをはかるなど、
農業生産のにない手の育成のための施策を
拡充強化することといたしました。
このほか、
集団的生産組織の育成、
農業団地育成対策を引き続き
拡充実施するとともに、農業構造改善事業につきましては、総額三百三十八億六百万円を計上して事業の推進をはかることとしました。
また、農業と非農業との土地利用の計画的な調整を進め、
農業生産に必要な農用地を確保することが肝要であります。
このため、農業振興地域整備計画についての適切な管理及び
農地保有合理化法人による
農業開発用地の
先行取得などを行なわせることにより、農用地の適切な確保と計画的な土地利用をはかることとしております。
農村対策といたしましては、
農村総合整備モデル事業の大幅な拡充をはかるほか、
農村地域への
工業導入、山村・過疎対策等につきましても所要の経費を計上いたしました。
なお、
農業者年金制度については、
給付水準の
引き上げなどの
改善措置を講ずることとし、八十六億六千五百万円を計上いたしました。
次に、食料品の価格の安定と
消費者対策の充実について申し上げます。
国民の日々の生活に直結する食料品を安定的に供給し、
消費者価格の安定をはかることは、農政の重大な使命であります。このため、さきに申し述べましたように、
畜産物、野菜、果実等についての生産、価格、
流通加工対策を
拡充強化するとともに、特に、中央、地方を通ずる
卸売り市場の
計画的整備のため、八十五億五千四百万円を計上
いたしました。また、新流通経路の開発など、流通機構の整備については、引き続きこれを推進することとしております。
また、
消費者保護対策及び食品産業等農林関連企業対策につきましても、それぞれ所要の経費を計上して施策の拡充をはかりました。
次に、
農林漁業金融の拡充について申し上げます。
まず、
農林漁業金融公庫資金につきましては、新規貸し付け計画額を三千八百二十億円に拡大し、総合施設資金の貸し付け限度額を
引き上げる等、融資内容の拡充整備をはかり、同公庫に対する補給金として三百二十一億一千三百万円を計上いたしました。
また、農業
近代化資金、農業改良資金及び漁業
近代化資金につきましては、それぞれ必要な貸し付けワクの確保をはかるとともに、
中小漁業融資保証制度の
改善等を行なうこととしております。
次に、森林・林業施策に関する予算について申し上げます。
まず、
林業生産基盤の整備につきましては、林道事業として二百八十二億八千万円、造林事業として百七十五億九千八百万円をそれぞれ計上し、助成内容の改善をはかることといたしました。
治山事業につきましては、総額六百三億四千六百万円を計上し、このうち、百億五千万円を国有林野内治山事業に充てることといたしました。
林業構造改善事業につきましては、七十億五千五百万円を計上して事業の推進をはかるとともに、新たに、
林地開発許可制度などに必要な経費を計上して、森林の公益的な機能の拡充をはかることといたしております。
また、松くい虫対策事業の大幅な増額を行なうとともに、林産物の生産流通改善対策、林業労働力対策等につきましても所要の経費を計上し、これら事業の
拡充実施をはかることとしました。
次に、
水産業の振興に関する予算について申し上げます。
まず、
沿岸漁業の振興につきましては、
沿岸漁場の総合的な整備をはかるため、新たに、
沿岸漁場整備計画の策定に着手し、
沿岸漁業構造改善事業、
栽培漁業振興対策等の拡充をはかるため、総額七十億六百万円を計上いたしました。
また、漁場環境保全対策につきましては、二十六億八百万円を計上して、漁業公害の監視指導体制の整備、漁場の浄化、赤潮対策の強化等をはかることとしております。
漁業生産基盤の整備につきましては、五百六十五億九千五百万円を計上して、漁港及び漁港関連道の整備を進めることとしております。
また、海洋水産資源の開発を促進するための各種調査を拡充するとともに、海外
漁業協力財団による
海外漁場の確保対策につきましては、外務省の
関係予算を含め、三十六億二千六百万円を計上して、事業の推進をはかることといたしました。
その他、
漁業災害補償制度につき、赤潮特約の創設等制度の改善をはかるほか、水産物の
価格安定対策につきましては、新たに、大消費地における大規模冷蔵庫の設置等の事業を実施することとし、二十三億五千三百万円を計上いたしました。
以上のほか、
農林漁業施策の推進のために重要な予算といたしましては、試験研究費として二百七十七億三千六百万円、農業改良普及事業及び生活改善普及事業として百六十七億四千八百万円を計上するほか、林業及び
水産業の改良普及事業につきましても所要の経費を計上いたしました。
また、農業災害補償制度の実施につき六百二十五億八千三百万円、農林統計情報の充実整備に九十一億三千万円等を計上しております。
次に、昭和四十九年度の
農林関係特別会計予算について御説明いたします。
まず、食糧管理特別会計につきましては、国内米、国内麦及び輸入食糧につき食糧管理制度の適切な運営をはかるため、所要の予算を計上しておりますが、
一般会計からは、調整勘定へ五千百八十億円、国内米管理勘定へ六百六十九億円、農産物等安定勘定へ四億円、輸入飼料勘定へ五百九十八億円をそれぞれ繰り入れることといたしました。
また、農業共済再保険特別会計につきましては、
一般会計から総額三百六十六億八千七百万円を繰り入れることとしたほか、自作農創設特別措置、特定土地改良工事、国有林野事業、森林保険、漁船再保険及漁業共済保険及び中小漁業融資保証保険の各特別会計につきましても、それぞれ所要の予算を計上いたしました。
最後に、昭和四十九年度の
農林関係財政投融資計画につきましては、
農林漁業金融公庫などが必要とするものとして、総額三千六十一億円の資金運用部資金等の借り入れ計画を予定しております。
これをもちまして、昭和四十九年度
農林関係予算の概要の御説明を終わります。