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三善政府委員 いま
お話しがありましたように、ことしの九月から十月にかけまして、
農林省としまして、北米、南米、欧州、東南アジア・大洋州、この四地域に対する
調査団を派遣しました。構成は、単に
農林省だけの人でこれを構成して出したわけじゃございませんで、気象庁、それから経済企画庁、大蔵省といった関係の各省の人員で構成をいたしまして、
調査をしたわけでございます。
報告書は、相当詳しいものを出しておりますけれ
ども、かいつまんで大体の概要を
お話し申し上げますと、一つは、当面の国際
食糧需給の見通しは一体どういうふうになっているかという
調査をしたわけでございます。
そして、私
ども概括的にそれを申しますと、一つは
供給面の問題でございますけれ
ども、アメリカは、御
承知のように、相当
増産に踏み切っておりますし、カナダ、
ソ連——ソ連等も気象条件に恵まれて、相当の
生産があがるというようになっておりますし、こういった
農産物の主要
生産国における
生産というのは、来年度にかけてかなり増大はしていくだろうというふうな見方をいたしております。
しかし、もう一つは、
開発途上国における
生産がどういうふうになっているかということですが、たとえば東南アジアのインドネシア、インド、フィリピンといった国も
生産意欲を燃やしておりますけれ
ども、なかなかそう簡単には一いろいろな
生産基盤の問題等がございまして、現在、御
承知のように、相当
食糧の不足国になっているというような
状況でございますが、やはり、こういった
世界の
状況にかんがみまして、
生産の増大の
対策は推進いたしているという
状況でございます。
そういうことで、
世界全体としては、
供給の増加というのは当然見込まれるであろうと思われます。
一方、
需要の面はどうかと申し上げますと、主要な
輸出国、たとえばアメリカ、カナダ、特にアメリカなどは、
在庫が非常に少なくなってきております。小麦の過剰
在庫をかかえて悩んでおったわけでございますが、昨年からことしにかけて、アメリカの
在庫が半分ぐらいになってきている。数字を申し上げますと、七十二年の九月末が、二千三百万トン小麦の
在庫を持っておりましたが、七十三年の九月末、ことしはすでに一千百万トンに減っているし、来年の九月末は、おそらく六百万トンぐらいに減るのではなかろうかというふうに、この
在庫は非常に激減をしているというような
状況でございます。そういうことで、この
在庫の復元というためには、
数量的にも相当の必要があろうと思います。
それから、もう一つは、中国やインド、インドネシアといった国の輸入の増加というのが引き続き続いているというような現実でございます。そういたしますと、その
供給面、
需要面、あわせて全体として、
世界の
食糧需給というものは、先進国ではかなり
増産に踏み切ってやっておりますけれ
ども、やはり、
価格は非常に高いのではないか。しかも、
在庫復元等の問題もございまして、不安定な
状況が、当面の
食糧の
国際需給の見通しとしては続くであろうというような感じがいたします。
それをもう一つ、多少長い目で、長期的に見てみますと、
供給面では、先ほど申し上げましたように、アメリカ、カナダといった主要の
生産国の
生産は増大しておりますけれ
ども、これまで過剰
在庫で、国の財政負担は非常に多額に上り、悩んでおったわけでございますが、そういった苦い経験を持っているわけでございまして、過剰にならないように、確実な
需要に見合った
生産ということをやっていくのではなかろうかというのが、大体の、私
どもが調べてきた一つの見通しでございます。
それから、ブラジルとかオーストラリアといった国は、
土地資源は広大な
土地資源があるわけでございますが、今後
増産に踏み切って相当力を入れていくとしましても、その
開発にはやはり相当の巨額の投資が要るということは当然のことでございまして、そういった面で急激な
増産が可能であるかどうかということは、かなり問題があろうというふうな
考え方を持っております。
他方、
需要の面でございますけれ
ども、
ソ連、中国といった共産圏の諸国は、
農産物の大量な輸入ということは、かなり継続的にやっていくのではなかろうか。
ソ連も、相当、
増産といいますか、天候条件に恵まれて、去年からことしにかけたような大量の輸入ということは来年度
考えられるようなことはないと思いますけれ
ども、やはり、気象条件の問題で、そういった問題が非常に起こりやすいということはあろうかと思っています。
それから、中南米、アジアといった国、それから、現在問題になっております
石油の産出国、こういった国では、やはり所得が増大しているという面がございまして、その
需要の増加というようなことは相当
拡大していくであろうという感じがいたしております。
それから、また、長い目で見て一番問題になりますのは、やはり、
開発途上国の地域の人口の増加、それに基づく
需要の増大ということが相当問題になろうと思っております。
そういった点で、
需要の面もかなり増大していくということが
考えられるわけでございますが、これはEC、ヨーロッパ諸国等に出しました
調査団の報告等を見ましても、やはり、何を申し上げましても、
ソ連とか中国といった国は、気象条件で、非常に急激な大量な輸入というようなことも
考えられるし、
世界の
食糧の
需給を見通す場合には、こういった国の動向ということを非常に注目しないと、簡単に楽観はできないのではなかろうかというような意見は、ヨーロッパの諸国はそれぞれ持っているというのが事実でございました。
そういったことで長期的に見ましても、
食糧の
需要はだんだん
拡大していくということで、全体としまして、私
ども、
食糧が不足するというようなことは、そう簡単には
考えられないと思っておりますが、従来のように、先進国間の貿易、取引ということで、比較的安定した
状態が続いたわけでございますけれ
ども、今後は、昨年来の国際的な
需給の
変動に見られますように、長期的に見ましても、
変動幅が大きい、不安定な
需給の
状態が続くんじゃなかろうかというような結論を出しておりますわけでございますが、そういうことで、詳しいことは国別にあるいは主要な
農産物ごとにまとめた報告書がございますので、もしよろしかったら、
あとで差し上げたいと思っております。