○
藤田参考人 大
日本水産会の
藤田でございます。
本日は、
石油不足に伴う
農林水産業に及ぼす
影響問題等、これの御審議にあたりまして、水産業界の
立場から
意見を申し述べる機会を与えられましたことについて、衷心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。
本日は、水産
関係から私のほかに全漁連の
及川副
会長、日鰹連の
増田会長もお見えになっており、それぞれ後刻陳述があることだと存じます。
私は、まず、水産業全般の
立場から申し上げまして、
石油配給の現状がどうなっておるか、また、これに対する
影響がどういうふうにあらわれておるか、さらに、こういう問題に対する水産業界の
要望はどういうものであるか、また、現在国会で御審議中でございます
石油需給適正化法案、こういう問題についても若干
要望を申し上げたいというふうに考えておる次第でございます。
私ども水産業界は、現在、業界一体となりまして、水産用
石油緊急
確保対策本部というものを設置をいたしておりまして、当面する水産
対策に腐心をしておるところでございますが、現在国会にかかっております適正化法案につきましては、これは、現在の
石油事情から申しまして、緊急性及び必要性は痛感をいたしております。これは賛成をしておる次第でございますが、早急にこれが実施されんことを私どもは希望をいたしております。しかしながら、私どもは、かつての戦時中及び終戦後に行なわれました
石油配給制度実施当時の古い経験からいたしまして、率直に申しまして、このたびの新しい制度の実施にあたりまして、主として
運用の面において、水産業界としてはいろいろの不安の念を持っておることも事実でございます。したがいまして、現状にまで達しておる不安、
影響等も申し述べながら、今後この法律が実施されます場合にも、水産業の特殊
事情ということを十分御理解、御認識をいただきまして、私どもの持っておる不安を解消していただきたい。そうして、本法案の趣旨に沿った適正な
配給の実現されるように心から
お願いしたいというふうに考えておりますので、これをまず第一点に申し上げておきたいと思います。
私どもが現在当面しております
影響その他に
関係いたしまして、水産業界の
要望の第一点というものは、
わが国民の食
生活確保のために必要な水産用の
石油というものは優先
供給をしていただきまして、その所要量が絶対
確保できるようにどうか
お願いをしたいということが第一点でございます。
現在、
わが国の漁業
生産は、年間で約一千万トンに達しております。重要な動物性のたん白質給源として、
わが国の
食糧政策上大きな比率を占めておりますが、一方、
需要の面を考えますと、
わが国経済の高度成長に伴いまして、
国民の食
生活というものが著しく向上をいたしました結果、この
生産量をもっていたしましても、年々増加する
需要の伸びに追いつくことができません。水産業の使命達成のためには、さらに一そうの
生産量の増加を
要請せられておるというのが現状でございます。
しかも、この使命を達成いたしますために、現在、年間で約七百万キロリットルの
石油を必要としておりますが、これは、国内における各種類、A
重油、B
重油、その他揮発油、
軽油等各種類の
石油及び内地積みだけではなくて外地で積んでおりますもの、そういうものをいろいろ全部含めまして、七百万キロリットルの
石油を必要といたしておるのでございまして、その内訳は、お手元に御配付を申し上げました
参考資料がございますから、それでごらんいただけば詳細におわかりになるというふうに考えております。
これは、
わが国の総
石油消費量が大体二億七千五百万キロリットルとかなんとかいうようなことがいわれておりますが、それらに対比いたしますと大体三%
程度、ことに、国内用のものだけ考えてみますと、もう三%をずっと切ってしまう、三%弱になる、こういうふうなものでございまして、このわずか三%の
石油の
確保ということが現在の水産業をささえておる。そして、それの
確保いかんによっては水産業の死活が左右されるということについて、どうぞ皆さまの深い御理解をいただきたいと考えております。
政府におかれましては、水産業の重要性はつとに御認識をいただきまして、去る十一月十六日の閣議では、漁業用の燃油につきましては、これを優先的に取り扱う、削減することなく、その適正な必要量を
確保するという旨の
閣議決定をいただいたことは、非常に私どもは感謝をいたしておりますが、率直に申しまして、
末端における
配給の現状は、決してこの
閣議決定どおりにはまいっておりません。こういうふうな
現実からいたしまして、私どもは、将来の水産用
石油の
配給確保の問題についていろいろと不安を持っておるのであります。現在、
石油がどういうふうな
配給の
実情にあり、どういうふうな
状況であるかということは、全漁連の
及川副
会長、日鰹連の
増田会長もおられますので、そういう方から詳しくこれは御説明があることだと思いますので、私は、あえて重複は避けまして、詳しくは申し上げませんが、一般に申しまして、国内におきましては、従来取引をしていた
石油販売業者から二〇%、さらにひどいのは三〇%の
供給削減を申し渡されております。一月以降のものについては見当がつかないというふうな
状況で、その
対策に苦慮しております。
ことに、これは水産の特殊性として考えるべきだと思いますが、海外の漁業基地を根拠とする遠洋漁業について、現地でもやはり
石油不足のために燃油の補給を拒絶されておるという
事態が漸次ふえております。遠洋のこの
影響を受けますのは、これはあとで
増田会長から詳しく御説明があるかと思いますが、遠洋マグロ漁業が一番
影響が大きい。それから、遠洋トロール漁業におきましても、約九十隻の漁船が、豪州の基地を除く北米、中南米、アフリカ、アジアという各基地において、これまた
供給不能もしくは困難となっております。現地における油の補給ができませんために操業をすることができずに、多数の漁船が海外の基地において立ち往生しておる、そして非常に困っておるという
実情でございます。先ほど来、
農業及び林業の方々からも、行きの油はあるけれども、帰りの油がないので困るというお話でしたが、まさしく、われわれ漁船は、現地におって、帰りの油もない、操業することもできない。そういうことで、これは国内における
状況よりもさらに深刻な
状況を呈しておるのでございます。
以上、水産業界に対する
石油配給の
実情の一例を申し上げた次第でございますが、この
石油事情が、私どもの伺っているところでは、十一月から十二月、また十二月から来年一月と、月を追うにつれてだんだんとますます窮屈になっていくんじゃないかというふうなことを心配をいたしております。漁業に対する
石油の
確保というのは、御
承知のとおり、漁業はいわゆる水ものでございまして、漁況、海況に
対応して、必要な時期に必要な場所で必要な量を
確保するということができなければ、漁業は成立をいたしません。また、
石油の需給の
状況も、配付の
参考資料でごらんいただけば十分わかりますように、月ごとに
需要の量が変わっております。つまり、漁業にはそれぞれの漁業の漁期というものがある。そういうふうな漁期から、月別の
需要量というものがいろいろ変わっておりまして、
参考資料でごらんいただいてもわかりますように、漁業の燃油の一番必要な月といいますと、大体十月、十一月、十二月、それから四月、五月、六月というところが、大事な
石油の
需要を一番必要とする時期でありまして、もしもこういう時期に必要とする量が
確保できませんと、いたずらに漁期を失して、あとで
石油をもらったって何にもならない。こういうふうな
事情が出てくるわけでございます。したがって、こういう漁業の特殊性というものを十分御考慮いただきまして、この
配給が名実ともに現物の裏づけをもって保証せられるということが必要でございますので、こういう漁業の特殊
事情を十分御理解いただきまして、さらに一段ときめこまかい
施策をやっていただくことを特に
お願いをいたす次第でございます。
それから、
要望の第二点は、水産用の
石油価格の安定の問題でございます。漁業
生産を
確保するための所要量の
確保は必要でございますが、それと同時に、漁業経営の
立場からいたしまして、採算上おのずから購入
価格に限度がございます。それで、漁業
生産を維持するためには、漁業者にとって購入可能なものとして、安定化していただきたい。それでなければ何ともならない。最近は、もはや
石油の値段はどんどんと暴騰いたしておりまして、数量の
確保のためには
価格を言っておられないということで、売り手の言い値で、その値次第で買っておりますが、水産業というものは、高い
石油を買って、それが水産物の
価格に全部転嫁せられるものであれば簡単でございますけれども、そうはまいりません。水産物の
価格というものはおのずから
一つの限度があるわけでございまして、もしもそれを割って高くなるということになれば、漁業者としては油は使えない、漁業経営では油は使えないというふうな
事情になるわけでございます。特に、私ども、この点で心配しておりますのは、漁業者にとって一番たくさん使う油、必要な油というのはA
重油でございます。このA
重油について、特に御
配慮を
お願いいたしたいと考えておるのでございます。
現在、漁船が使用をいたしますA
重油は、全体の
消費量の約三〇%を占めております。私どもの不安の
一つは、
石油不足の
状況がだんだんとひどくなるにつれまして、A
重油全体の
生産量が減少をし、そして、各
部門間の取り合いがひどくなるということで、しかも、その
価格が上昇いたしますと、水産業は三〇%のウエートでありますが、七〇%のウエートを占めておる陸上産業
部門のほうが、水産業に比べましてはるかに牽引力が強く、また魅力がございますので、そういう方面に流れていく。つまり、所要量が食われていくことはないかということを私どもはひどく心配をしておるわけでございます。
私は、この際、特にあえて申し上げたいと思いますが、万一水産用の
石油の
不足がひどくなれば、これが
生産の減少につながる。ひいては大切な
食糧の
不足を招くことになるという点でございます。
食糧問題というものは、私がいまさら申し上げるまでもなく、
国民生存の基本要件でございます。もしも
食糧不足によって社会的
混乱が起こるとするならば、その社会的
混乱というものは、
石油不足以上に深刻なものになろうということでございます。したがいまして、私どもの申し上げますことは、
石油不足の
影響というものは、ひとり水産業だけに
影響するのでない。もちろん、水産業がつぶれるかつぶれないか、困るか困らないかということはわれわれとしては大きな関心事でございますが、これはひとりそれだけの問題にとどまるものではない。
石油の
不足によって減産が来、
食糧の
不足を招来し、その
食糧の
不足が大きな社会的
混乱を導くのでありまして、これはひとり水産業の問題ではない。ひいては、これは民生安定の問題に
影響する重大な問題であるということを深く御認識をいただきまして、この点について十分な御
配慮を
お願いいたしたいということを申し上げておきたいと思います。
以上が、私ども水産業界といたしまして、憂慮し、そして
要望をしたいと思う基本的
要望でございまして、これの実現をいたしますために、以下、この適正化法案に対する問題に、御
参考までにこの際若干触れておきたいと思います。
その第一点は、
石油需給適正化法案の第四条に規定してございます「
石油供給目標」を定めることに関して、水産用
石油の所要量の
確保、特に水産用
石油消費の大宗をなしておりますA
重油の
供給量を
供給目標において安定的に
確保せられたいということでございます。今後いろいろ
石油の
消費規制がきびしくなるにつれまして、国が、この法案の第四条においていろいろの
供給目標を定められる。こういうふうな場合におきまして、水産のそういう
事情から、どうぞ優先的にこれを
確保していただき、そして、こと欠かないようにさしていただきたいと思います。
特に、この際、やはり得率の問題というものを私どもは非常に重要視しておる次第でございまして、ことに、A
重油等につきまして心配をしておりますので、その維持向上について、特段の御
配慮を
お願いいたしたいというふうに思います。
それから、第二点は、適正化法案の第十条におきまして、農林漁業者等に対する
石油の円滑な
供給を
確保するために、
通産大臣が必要と認めるときには、
石油販売業者の団体に対しまして、
石油供給のあっせんの
指導を行なうことができるということが規定してございます。
末端におきまして、漁業者をはじめとする水産
関係者の
供給確保についての苦情というものが相当私どもの耳にも入っておりますし、また、現地にもだんだんと強くなると考えられますが、そういう苦情が、現地において、ことに、一番弱い零細な漁民の層において、完全かつ円滑に処理されるように
供給あっせんの
体制を整えていただきまして、
末端の漁業者からそういう苦情あるいは要求等が出てきました場合には、これが
現実に必要な現物が行き渡るようなくふうをしていただきたいということでございます。
大体以上が、この法案に
関連いたしまして私どもが
お願いをいたしたいという点でございますが、さらに、この法案の実施に
関係いたしまして、この際ぜひとも国策として実現をしていただきたいというふうな問題がございますので、この点を次に申し上げたいと思います。
第一点は、海外漁業基地における操業をしております漁船の
石油の
確保の問題でございます。これは、先ほど来申し上げましたとおり、私どもとしてはいろいろと苦慮をいたしております。その
方法については、なかなか名案がないので、非常に苦慮をしておりますが、この海外漁業基地操業というものは、私どもにとっては非常に重大なこのであって、現在、これらに対する
供給の
確保ができませんければ、せっかくこれまで苦心をして築き上げてまいりました遠洋漁業というものが大きく全面的に後退をしなければならぬのではないかということを私どもは非常に心配をしておる次第でございます。
御
承知のとおり、現在、国連で海洋法
会議というものが行なわれておりまして、海洋法
会議の内容というものは、従来の海洋法とはきびしく違ったところの、沿岸国優先の
立場に立ったものでございまして、たとえば十二海里の領海の外に、さらに、沿岸国の優先的な、あるいは管轄権を持っておる経済水域あるいは専管水域というものを二百海里まで引こうというふうな
状況になっておるのでございまして、これがだんだん国連の海洋法
会議の大勢を占めてきておる経緯になっております。
わが国は、従来、遠洋漁業の重要な部分を持っておりますので、もしこういうふうなことになりますと、非常に大きな
影響をこうむるわけであります。これに対しては、
政府ないし業界も心配をし、
会議で主張をしておりますが、大勢は、対日本側にとっては非常に不利な方向に動いておるということでございまして、したがって、
国民生活に必要な動物性たん白質の給源である水産物の
供給確保のためには、この海外漁場の
確保ということが非常に大きな問題になっておるのであります。したがいまして、今後ますますこれを発展さしていき、安定さしていくということが現在の水産業界の大きな課題でございまして、これがいま
石油不足の
事情から後退を余儀なくされるというような
事情に立ち至っておりますが、御
承知のとおり、国際問題というものは、一たん後退をいたしますと、原状にまで戻ることは非常にむずかしい問題でございます。そういうふうな事柄からいたしまして、われわれはどうしてもこの海外漁場をぜひとも
確保しなければならないということを考えておる次第でございまして、現在困っております海外漁業基地の漁場を何とか守りますために、その
石油の
供給確保のために、外交ルートを通じまして何とか現地で
確保できないものか。これについてまた特段の御
配慮を
お願いいたしたいと思います。
さらに、この外交ルートによるそういう問題は時日を要します。
現実はもう非常に困っておる
実態でございますから、緊急な状態として、それらのものの燃油を
確保するために、洋上補給船を場合によっては出さなければならぬ。現在もそれを日鰹連なんかは考えておられますし、トロールについてもそういう問題が起こってこようと私どもは思いますが、そういうような洋上補給船の
石油というものも、現地では積めませんから、国内で
確保するということを、ぜひとも何とか緊急的な措置として
お願いできないかということを私どもは考えておる次第であります。これについて特段の御
配慮を
お願いいたしたいと思います。
それから、第二点は、先ほども、
農業関係でございましたか、
お話しがございましたように、
石油の
不足からいたしまして、
石油を
原料とするいわゆる塩化ビニール
製品、つまり漁網綱その他の
資材がだんだん
不足をしてきておる。
石油不足に次いで、われわれ水産業界は、いわゆる漁網綱その他の水産用
資材の
確保にだんだんと困っておる、
価格が暴騰して困っておる、数量も
確保できないということで困っておるというのが
実情でございます。
石油は、せっかくの骨折りで
確保できましても、今度は網がない、あるいはロープがない、その他の
石油資材がないということになると、やはり水産経営はできない。操業は非常な打撃を受けるわけでございますからして、この問題についても、今後当然起こるべき問題でございますので、どうぞ何ぶんの御
配慮を
お願いいたしたいと考えておる次第でございます。
それから、第三点は、
生産の面のみならず、鮮魚の
加工処理、あるいは産地から
消費地に送りますところの
輸送用の燃油等についても、あわせて一貫して
確保していただきたい。それでございませんと、先ほど
農業のほうからも
お話しがございましたが、せっかく魚がとれましても、現地で腐る。現地で何ともならない。現地安の
消費地高というふうな現象がやはり生ずるわけでございまして、この
生産、流通、
加工処理というものの一貫した
施策が行なわれませんければ、水産業が
国民生活安定のための大事なお役を果たすことができないというふうなことになる次第でございますので、この点につきましても、どうか特段の御
配慮を
お願いしたいと存じます。
以上、私の陳述を終わらせていただくことといたしますが、どうぞよろしく
お願いいたします。(拍手)