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1974-05-21 第72回国会 衆議院 内閣委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十一日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君   理事 加藤 陽三君 理事 小宮山重四郎君    理事 野呂 恭一君 理事 箕輪  登君    理事 上原 康助君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       奥田 敬和君    竹中 修一君       旗野 進一君    林  大幹君       三塚  博君    吉永 治市君       木原  実君    和田 貞夫君       鬼木 勝利君    小濱 新次君       鈴切 康雄君    受田 新吉君       永末 英一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      小坂徳三郎君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房総務審議官  佐々 成美君         総理府賞勲局長 吉原 一眞君         総理府恩給局長 菅野 弘夫君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君  委員外出席者         総理府恩給局恩         給問題審議室長 海老原義彦君         環境庁自然保護         局企画調整課長 新谷 鐵郎君         法務省刑事局参         事官      吉永 祐介君         大蔵省主計局共         済課長     鈴木 吉之君         厚生省年金局年         金課長     坂本 龍彦君         厚生省援護局庶         務課長     河野 共之君         厚生省援護局業         務第二課長   横溝幸四郎君         社会保険庁年金         保険部国民年金         課長      金瀬 忠夫君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 五月二十一日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     奥田 敬和君   鈴切 康雄君     小濱 新次君   受田 新吉君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   小濱 新次君     鈴切 康雄君   永末 英一君     受田 新吉君     ————————————— 本日の会議に付した案件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  四四号)      ————◇—————
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 大蔵省あるいは厚生省方々がお急ぎのようでありますから、最初に、この恩給審議にかかわります厚生年金あるいは共済という問題につきまして、要点を幾つか承っておきたいのであります。  そこで、昨年この委員会平川恩給局長に、私は最低保障をなぜ出さなかったのか、共済のほうには最低保障がついたじゃないかということでだいぶ粘りまして、恩給を採決するわけにまいらぬということで、恩給局も早急に検討して答弁をし直すということになりまして、数日かかりまして、来年はということでのお約束をいただきまして、それでも、たいへんに生活にかかっている問題でありますだけに不満でございましたが、やむなく実は恩給を、この委員会で採決をいたしたわけであります。いわば、いわく因縁が実はあるのであります。  そこで、まずこの厚生年金でありますが、厚生年金推移というのは、一体四十六年、四十七年、四十八年、この三年間どういうふうな動きになってきているかということを、大事な問題でございますので、お互いわかっているようなものでありますけれども担当の部門である厚生省から、ひとつ御説明をいただきたいのであります。  で、中身といたしましては、まず定額部分プラス報酬比例部分、こういう分け方で厚生年金計算をされているわけであります。そこら一体、二百四十月なら二百四十月というところの対象になる定額部分あるいは報酬比例部分というふうなのが、四十六年、四十七年、四十八年、どういうふうに動いてきているのか。そしてもう一つ物価との調整という問題がございまして、おそらく、本年じゅうにどこの時点かでこれまた調整を要することになる。これは昨年の国会手直し部分もございますから、当然そういうことになる。まあ一六・八なら二八・八、全国物価統計でいきますと、総理府消費者物価上昇率は、暦年で年間平均いたしまして一七%くらいになっておりますか。そこらとからめまして、これから先どういう手直しが出てくるのかという、そこらのところまで、時間がありませんから一ぺんに承りますので、お答えを願いたいのであります。
  4. 坂本龍彦

    坂本説明員 厚生年金につきましてお答え申し上げます。  四十六年、四十七年、四十八年三年間で、大体この年金定額部分報酬比例部分関係と申しますか、そういうものがどのように変わってきたかというような御質問であると理解いたしたわけであります。四十六年に法律改正がございまして、それまでは、定額部分につきましては、四百円という額に被保険者加入月数をかけるということになっておりましたが、四十六年の改正で、この四百円を四百六十円に改めております。それから、四十七年にはこの部分改正がございませんで、昨年でございますが、四十八年に四百六十円を千円に引き上げることにいたしております。報酬比例部分につきましては、従来いろいろ変遷ございましたが、昭和四十六年当時から申しますと、過去の加入期間における標準報酬平均額、これに千分の十をかけ、さらに加入月数をかけるという方式でございますが、昭和三十二年九月以前の報酬は、切り捨てて計算をするようにしております。そして四十八年に至りまして、この過去の標準報酬が、現在から見ますと非常に低い額になっておりますので、これを改正時点における賃金水準との関係で、昔の報酬額に一定の率をかけて再評価をし直す、こういう手法を用いまして、年金の額を引き上げるというような改正をいたしたわけでございます。  次に、物価との関係でございますが、御承知のように、昨年の改正物価自動スライド制という仕組みが取り入れられまして、四十七年度の全国消費者物価指数基準にいたしまして、その後一年度の、あるいは引き続く二年度以上の全国消費者物価指数が五%をこえて変動した場合には、その変動した率を基準として年金の額を改定するという規定が入ったわけでございます。ちょうど、先般発表になりました昭和四十八年度の全国消費者物価指数は、四十七年度のそれに比べまして一六・一%上昇したという結果になりましたので、今年度初めてこの物価スライド規定が働きまして、年金の額がこの一六・一%というものを基準にして引き上げられるということになっております。その具体的な措置につきましては、政令で定めることになっておりまして、現在その政令の作成を検討中でございますが、この時期といたしましては、昨年の改正法におきましては、厚生年金では十一月から年金額を引き上げる、これが、先般衆議院社会労働委員会におきまして、これを八月に修正をされたわけでございまして、現在、参議院でこの法案審議中でございます。  大体、経過は以上でございます。
  5. 大出俊

    大出委員 十一月からの引き上げを八月に繰り上げたとなりますと、何カ月繰り上げでございますか。
  6. 坂本龍彦

    坂本説明員 三カ月でございます。
  7. 大出俊

    大出委員 だから、たとえば四十八年度が、皆さんがお出しになった原案でいきますと九百二十円に加入月数、ですから九百二十円かける二百四十月、二十年、最低見ましてね。そこでいろいろ計算方式ありますが、切り上げて最低標準報酬は二万円ですね。したがって、二万円かける千分の十かける二百四十月、加入月ですね、という計算になっているという中身をいまお話しになった、こういう理解でよろしゅうございますな。
  8. 坂本龍彦

    坂本説明員 私が申し上げましたのは、四十八年の改正で四百六十円が千円に上がったと申し上げました。これは結果だけ申し上げましたので、途中の経過を申しますと、政府原案としては九百二十円で提案いたしまして、衆議院で千円に修正をいただいたわけでございます。そういたしまして、定額部分は千円に二百四十月をかける、こういう金額になったわけでございます。
  9. 大出俊

    大出委員 つまり、この手直し法律で、一般論としていえば物価スライド方式が入れられている、したがって、厚生はそういう意味物価調整が行なわれていくようにできている、それで十一月というのを八月に繰り上げた、三カ月の繰り上げになっている、こういうわけであります。  それから、もう一つ承りたいのでありますけれども国民年金でありますが、老齢福祉年金というのは無拠出でありますから、これは別な考え方がございますけれども、こちらのほうはどういう取り扱いに今日なっておるのですか。
  10. 坂本龍彦

    坂本説明員 国民年金につきましても、昨年度大幅に年金額を引き上げたわけでございまして、現在すでに年金が出ておりますいわゆる十年年金、十年間納付して受ける年金、これを昨年月五千円から月一万二千五百円に引き上げたわけでございます。と同時に、その他の年金も引き上げたわけでございますが、あわせて物価スライド制を導入いたしまして、先ほど厚生年金で御説明しましたのと同じように、全国消費者物価指数年度平均上昇率によりまして年金額を改定するという仕組みでございます。ただし、実施時期につきましては、昭和四十九年度の場合は五十年の一月からということに規定上なっておりますが、これも先般の社会労働委員会で、四十九年九月からというふうに修正がなされたわけでございます。
  11. 大出俊

    大出委員 五十年の一月を四十九年の九月となりますと、これは四カ月短縮、こう考えてよろしゅうございますか。
  12. 坂本龍彦

    坂本説明員 そのとおりでございます。
  13. 大出俊

    大出委員 実は、私も調べてわからぬわけではないのでありますけれども、事が事でございますし、私も修正案をこの委員会に提出する立場でございますので、お忙しいところ恐縮でございましたが、お運びいただきまして御説明を願ったわけでございます。ありがとうございました。  それから、大蔵関係の方に、共済に関しましてあわせて少し承りたいのでありますが、共済扱いの中で、厚生年金部分を取り入れてまいりまして計算基礎に置いて、最低保障の形をとっておるわけであります。これは四十六年、四十七年、四十八年とどういう推移を見せておるかという点を、まずお答えいただきたいと思います。
  14. 鈴木吉之

    鈴木説明員 ただいま厚生省からお答えございましたとおり、昨年厚生年金が、定額部分について大幅な改正が行なわれたわけでございますが、従来共済年金は、厚生年金最低保障に該当する金額をもとにいたしまして共済年金最低保障額をきめてきたという経緯がございますので、昨年定額部分が大幅に改正されたのに伴いまして、最低保障額もそれにならって改定が行なわれたわけでございまして、その金額は、退職年金について申し上げますと、三十二万一千六百円という金額になっておるわけでございます。
  15. 大出俊

    大出委員 前年はどういうことになっておりましたか、昨年といういまお話でございますから。これは四十六年に手直しをされているわけでありますが、それは幾らになっておりますか。
  16. 鈴木吉之

    鈴木説明員 手元にいまございませんが、記憶で申し上げますと、たしか十五万円になっておったというふうに記憶いたしております。
  17. 大出俊

    大出委員 十五万円にはなっていないはずでありますが……。厚生年金が四十六年の十一月から定額部分四百六十円の二百四十月、十一万四百円、それから報酬比例部分が一万円の千分の十かける二百四十で二万四千円、したがって十三万四千四百円。これを持ち込まれて、扶養加給がございますから、扶養加給一・五人で一万二千円に七千二百円の二分の一で一万五千六百円、これに十三万四千四百円を足す、したがって、いまのお話の十五万円、こういうことですな。よろしゅうございますか、ちょっとお答えください。
  18. 鈴木吉之

    鈴木説明員 そのとおりでございます。
  19. 大出俊

    大出委員 これでいきますと、ここに共済恩給の違いが——つまり恩給最低保障が一年ずつおくれている。これは、いまのお答えで明確になったわけであります。これは委員会扱いでございますけれども、大体共済年金やあるいは恩給が、厚生年金手直し最低保障として導入する、これはおかしな話でございまして、厚生年金というのは、戦争中にできたのでありますけれども共済年金というのは、恩給共済部分を足していますから、その意味でいえばこれはそれ以前からあった。なぜ一体共済年金厚生年金最低部分最低保障で取り入れる必要があったのか。つまり、こうしなければ、共済年金受給者厚生年金受給者最低を下回る人がたくさん出てしまう、だから、その最低までこの最低保障で引き上げる、こういうことだろうと思うのですが、いかがでありますか。
  20. 鈴木吉之

    鈴木説明員 先生十分御存じのとおり、恩給制度あるいは古い時代共済制度を引き継いで現在の共済制度ができておるわけでございますが、共済年金制度社会保険の一環でございますので、社会保険の大宗をなしております厚生年金にその基準、よりどころを求めて、現在の最低保障を設けているということでございます。
  21. 大出俊

    大出委員 これは、実は私が全逓という労働組合書記長時代に、横川永岡参議院議員から議員立法出してもらった。岸本さんが大蔵省給与課長おいでになるころです。ということもこれあり、二つの国会にまたがったから、このあたりで政府提案共済年金に持っていきたいという人事主任官会議等の話もありまして、政府立法でお出しをいただいた。あわせて数年ずれて地方共済の形になった経過がございます。したがって、私どもに言わせれば、歴史的に本来なら恩給共済が基軸になって社会的な公的年金といわれるものがきまっていかなければならぬ筋合いです。どうもさか立ちをしている感じがする。言いかえれば、それだけ共済年金なり恩給なりが低過ぎる。インフレの中で問題になっております社会的弱者が多過ぎる、こういうことに結果的になる、こう私どもは実は考えております。参議院内閣委員会がおありだそうでございますから、たいへんきょうはありがとうございました。  いま厚生省大蔵省担当皆さんから、厚生年金共済年金について、また国民年金についての説明をいただいたわけであります。国会手直しをしたりいたしまして、改正をしてきている現実が明らかに述べられまして、議事録に残ったわけであります。  そこで、総務長官に承りたいのでありますけれども、あまりといえば今日の恩給制度は悪過ぎる、あまりといえば受給者皆さんが苦しい生活におちいり過ぎている。生活保護を受けている方々が、年金受給者にあるなんというばかなことを認めているわけにはまいらぬという気が実はいたします。ここのところ数年間、私はこの点を強調し続けているのでありますが、いまだにこれはといったところにこない。たいへん実は少ない年金をもらっていることになる。残念なわけです。  そこで、まず承りたいのは、昨年私は、共済年金のほうが最低保障を引き上げた、厚生年金最低保障が、十五万円というものが上がったということで、最低保障を思い切って引き上げた、にもかかわらず、何で一体恩給最低保障出してこないのかという点で、実はたいへん長い質問をしたわけです。とうとう来年は間違いなく何とかいたします、それでごかんべん願いたいということになりまして、私も実は泣き寝入りをしたわけであります。ことし出してこられましたが、出してこられるにあたりまして、総務長官、この一年間のズレというのは、恩給受給者にはつらい一年であるというふうにお考えいただきたいのであります。なぜならば、最低保障に該当する対象方々が三十二万一千人、これだけおいでになる。三十二万一千人の方々が、この一年間、最低保障が十五万というようなことでございましただけに、最低保障に該当いたしませんでたいへんに苦しんできたことになるわけでありますが、そこらのところを、実はどういうふうにお考えなのか。まして低い恩給です。いかがでございますか。
  22. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 大出委員のただいまの御指摘は、最低保障の問題でございますが、たてまえとして、やはり退職時の俸給勤務年限をかけて恩給計算していくというたてまえでございますので、最終退職時の俸給が低い、しかも勤務年限が非常に少ないという場合には、計算的に見るとどうしても低くならざるを得ない。私は、そういうようなことから、現在の恩給がややもいたしますと、一般物価上昇の中で取り残されつつあるという現実が起こってきたものだとも考えられるわけでございまして、私も、前国会の御審議の内容につきましては、議事録等においてよく拝見いたしておりますが、今回のただいま御審議をいただいております法改正の大きな目玉といたしまして、前回、大出委員はじめ各委員から適切な御指摘をいただきました三十二万人の方々に対する最低保障制度改善を御提案申し上げているわけでございます。総額は、すでに御承知のとおり大体二十一億円でございます。いままでの六十五歳以上の方あるいは六十五歳未満の方であっても、長期在職者につきましては三倍ないし二倍に最低限度を引き上げておるとか、あるいは短期の在職者の方で六十五歳以上の方々に対しましては、従来は最低保障がなかったわけでありますが、それぞれ在職九年以上の方々には二十四万一千二百円、それ以下の方々に対しては十六万八百円という保障をするということで、現在御提案申し上げているわけでございまして、前国会における諸委員の当委員会の御要望に対して、できる限りの努力をしておこたえしたというのが、今回の改正の重点でございます。
  23. 大出俊

    大出委員 共済年金は、昨年は最低保障幾らでございましたか。
  24. 菅野弘夫

    菅野政府委員 共済は、最低保障は十五万から三十二万一千六百円という改正をしたわけでございます。
  25. 大出俊

    大出委員 つまり一年前に、共済のほうは三十二万一千六百円の最低保障がついておったわけでしょう。総務長官、いかがでございますか。一年間これずれたわけでしょう。はっきりしておいていただきたい。
  26. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 御指摘のとおりでございます。
  27. 大出俊

    大出委員 そのズレについてはお触れにならぬで、御要望等があったから、適切な御指摘があったから三十二万一千円にいたしましたというだけでは、恩給受給者の困窮の度合いというものがどうも頭から抜けている感じがする。また、たいへんに低いところをもらっている方々だから、最低保障が要るのでありまして、それが共済年金のほうは——共済というものは、さっき私が申し上げましたように、当時私の手元でつくって、横川正参議院議員永岡光治参議院議員議員立法で共同で出していただいた。二国会にまたがって継続審議になった。その時点で、全逓からの提案もこれありという前書きを書いた文書を各省に流して、大蔵省岸本給与課長のところで政府提案にする、そういう各省間の打ち合わせの席上での提案をした、それで政府立法で出てきた、こういう、かっこうになっておる。その前に、国鉄と専売がいち早く共済年金に変わっていった。これを追っかけて電電公社も変わっていった。五現業については、いま私が申し上げたような議員立法出して、政府がこれを取り上げて政府立法に、継続審議にしておいて直した、こういう経過が実はあるわけなんですね。  だから、そういう趣旨からすれば、本来恩給そのもののほうに最低保障を先につけなければいかぬ一共済のほうに先に最低保障をつけておいて、一年たってからこの恩給のほうに持っていく。それじゃこの一年間一体どうしたのだ。受給者にすればたまったものじゃない。十五万の最低保障ですから……。十五万からこの三十二万一千六百円までの間の人というのは、三十二万一千六百円までもらえるのにもらえないで一年過ぎてしまった。こういう不見識なことを政府がやるということは、全くもってもってのほか。自今あってはならないこと。ほんとうに恩給受給者は、共済よりもはるかに悪い条件でこの一年間推移した。厚生年金のほうが先に上がっちゃっている。これに比べても、たいへんに悪い条件で一年間ほうり出されてきた。厚生年金部分を何で一体最低保障に持ち込むかといえば、厚生年金が上がってしまえば、それ以下の人が山のように出てしまうからなんです、共済恩給も。  これは、はっきりさしておきたいのでありますが、いま総務長官が答えられた三十二万一千六百円の基礎というのは、共済年金改正案政府が四十八年国会にお出しになった。これは定額部分が九百二十円かける二百四十月、これが国会修正をされて千円かける二百四十月になった。政府提案でいえば九百二十円かける二百四十月、二十二万八百円、これが千円に国会修正されたので、この部分が二十四万円になった。二十四万円に引き上げられた。これに足す最低の二万円、標準報酬であります。最低の二万円かける千分の十かける二百四十月、これが標準報酬比例部分、これが四万八百円。これと九百二十円を千円に手直しをいたしました二十四万円、これを足しますと、この部分が二十八万八千円になる。これに配偶者手当という形で二万八千八百円、これに子供さん、これを入れまして九千六百円の二分の一、これを称して扶養加給部分と、こういう。これが三万三千六百円になります。これを足しまして総計三十二万一千六百円。これが実は、昨年共済年金における最低保障になった。つまり昨年、厚生年金においてこの手直しが行なわれていた。これが実は恩給のほうには適用されない。一年間ぶん投げっぱなしで十五万という最低保障で泣かされた。こういう不合理を放任しているのですから、三カ月短縮せいというのはあたりまえであります。当然の要求であります。これは、はなはだしく公平の原則を欠くことになる。こういう筋道でありますが、いかがでございますか。
  28. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 最低保障額を、御指摘のように共済年金のあと追いをしているということも、これは私、やはりいいことでないということはよく理解できます。他の公的年金受給者との均衡を考慮しながら、戦没者遺族傷病者処遇改善を含めて、今後恩給制度全体としての打開策をひとつ考えたいというふうに考えておりますが、さらにこの問題につきましては、ひとつ真剣に検討していきたいという考えでございます。
  29. 大出俊

    大出委員 総務長官、いいことではないなんて、あなた、いいことでなければ悪いことでしょう。何で裏返していいことではないなんていうことを言うのですか。悪いことにしてくださいよ。あなた恩給担当じゃないですか。恩給受給者おこりますよ、総務長官けしからぬ、将来の総理が何だなんて。衛生上よくないですよ。  ところで、恩給受給者というのは、このインフレの世の中でとても生きていける状態ではない。したがって、何が一番まずいのかという点、これは、はっきりさしていただきたい。皆さんに例をあげていただきたいのでありますけれども、昨年、私はやかましく言ってあなた方に計算をしていただいて、ここに最低保障共済並みにした場合に、文官、教育、待遇、警察、軍人、こういろいろ分けまして、皆さんに資料を私、要求した。これをおつくりになった。皆さんが調べて、サンプル調査もしていただいて、皆さんもお認めになった。私は、ここで一つはっきりしていただきたいのは、例の二万円ベース、三十四年の二万円ベース恩給仮定俸給表における二万円ベース、このころと今日の推移、どういう流れ方をしているかということ、少し例をあげていただきたい。  仮定俸給表で八十二号、これは行政職の(一)でございまして、行政一表であります。一等級の七号該当であります。一等級七号といいますと、当時これは局長クラスであります、二万円ベースのときに。この方々が今日、昭和四十九年までに、途中で俸給表の変遷がございましたが、仮定俸給表で八十二号の方、一番てっぺんであります。この方々が今日、現職の指定職の七号というのは、年間収入で一体これは俸給で申しまして幾らになるのか。そして仮定俸給表のほうで一体幾らになっているのか。ここらはひとつ、皆さんのほうで、どういうことになるかという御説明がいただきたいのであります。  それから、仮定俸給表の六十七号、これは行政一表で二等級の四号。二等級の四号といいますと、これは次長クラス、局長の次。この方々が、四十九年の今日まで変遷がいろいろございましたが、二等級の四号の方、これが三十九年に行政職でいうならば一等級の四号にかわった。さっきの一等級七号の局長クラス方々は、昭和三十九年に指定職乙七号に変わっている。四十一年で指定職の乙の九号、四十四年で指定職乙の七号、こういう変化をしてきている。そして四十九年、指定職の七号、これは甲乙一緒にしましたからね、昨年。指定職の甲乙を一緒にしました。仮定俸給表六十七号のほうも同様に変化がございますが、一体今日、年間幾らになっているか。つまり、仮定俸給表でいうところの俸給総額と、それから現職公務員のほうの俸給総額との開きというのは一体どうなっているか。  それから、もう一つ仮定俸給表の六十号、これは二万円ベースと私、申し上げましたこの時期には、三十四年でありますが、この時期には行政職の一表の三等給の五号、ここが課長でございます。これは三十九年に行政職一表の二等級の四号になっているという変化をいたしまして、今日四十九年、この時点で現職の公務員、つまり課長クラスの年間俸給幾らであり、仮定俸給表の六十号というのは一体幾らになるか。どういう開きを見せているか。  私の手元にあります資料からいきますと、ここまでは、つまり課長さんのところ、六十号、ここまでは現職公務員の年間の俸給よりも、恩給をもらうようになっている退職公務員の局長、次長、課長、こういう方々退職した方は、仮定俸給表の面では現職の公務員の局長、次長、課長よりは高くなっている。つまり有利になっている。二万円ベースから比べて有利になっている。  ところが、これは明らかにしていただきたいのでありますが、さてこの下、仮定俸給表の五十号、これは課長補佐であります。課長補佐、二万円ベースの当時は、これは四等級の六号であります。これが三十九年に三等級の二号に変わり今日に至っている。四十九年、これは現職と比べて一体どっちがどうなっているか。仮定俸給表と現職の課長補佐の年間俸給額。  それから、四十号というのは、行政職の一表で五等級の四号であります、二万円ベースで。これは課長になっていない方で、長年勤続をされている。この方が五等級四号、仮定俸給表の四十号、この方が今日持っておられる仮定俸給表と、この五等級の四号の方々が今日持っている、つまり現職の公務員が持っている年間俸給額、これは一体どっちが高いか。  それから三十号、六等級の二号であります、二万円ベースで。この方、これは長年まじめに働いて、えらくなれなかった方です。この方が今日、当時の仮定俸給表と今日の六等級二号の現職の年間俸給と比べたときに一体どうなっているか。つまり、六十号以下のところ、五十号、四十号、三十号、こう申しましたが、仮定俸給表の五十、四十、三十というところは、実は現職の公務員に比べて仮定俸給表がうんと低くなってしまっている。低い恩給である上に、なおかつ現職の公務員の持っている同じ等級の俸給表、年間の俸給総額に比べて仮定俸給はこんなに低い。この現実一体どう見るかという点を、明らかにしていただきたいのであります。  まずもって、いま私が例をあげましたが、四十九年という時点で、仮定俸給表の面で申しまして八十二号、六十七号、六十号、ここがいま今日、現職に比べてどうなっているかという点、それから五十号、四十号、三十号、これが今日、現職と比べてどうなっているかという点、あとから申し上げたのと前に申し上げたのは、そこで分岐点がありまして逆になっている。低いところはとことんまで落ちてしまっている。こういう不合理がなぜできたかということ、根本でありますから、恩給の問題の基本でありますから、あなた方のほうからひとつ御説明願いたい。
  30. 菅野弘夫

    菅野政府委員 急な御質問でございますので、その額の対比等については、まだできておりませんけれども、一般的に申しまして、各等級号俸、その当時の号俸と現在の各現職の方々の等級のつながり等につきましては、先生御存じのとおりに、俸給表の体系なりあるいはその後の給与制度のいろいろな手直しがございますので、必ずしもぴしゃりと結びつかない面が多々あるのじゃないかというふうに思います。  ただ、全般的につきましては、上のほうの改善が平均的に……。
  31. 大出俊

    大出委員 何を言っているのだ一体。そんなの答弁になりはせぬじゃないか。答弁やるんなら、そんなことはだめだよ。時間のむだだ。何をあなたは答えているのだ。具体的に例をあげているじゃないですか。仮定俸給表五十号といったら一体今日幾ら、そんなことば、そこの恩給法をあけてみなさいよ、書いてあるだろう。そうでしょう。変化もあるもないも——四等級六号という号俸は、それは直近上位だ何だという手直しはしているけれども、どこに移ってどうなった、全部移っているのは、はっきりしているじゃないですか、そんなことは。そうすると、それは今日、給与法を見たら一ぺんでわかるじゃないか。給与法に一体何号に該当するか、そんなことは一ぺんで出るじゃないですか。そのぐらいのことが、私は六つしか例をあげていないのに、とっさの質問だからなんと言っていたのじゃ、どこまで恩給を一生懸命あなた方やっているのですか。商売じゃないですか、あなた方は。何を言っている。だれでもわかっている人、答えなさい。冗談じゃない。
  32. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いま申し上げましたのは、制度として通し号俸制の廃止等がございますので、いま言われましたそれぞれの号俸の対比というのが、なかなかむずかしいということでございます。
  33. 大出俊

    大出委員 むずかしいで済みはせぬじゃないですか。あなた方、二万円ベースのときからいままでの間の不合理、不均衡を直すという意味でこの半分だけ、一四・七の半分の七・三五だけ半年で埋めるんでしょう。それならば埋める計算基礎はどこから計算したか。当時から今日まで二万円ベースにさかのぼって、現職の公務員と比べてみたら一四・七%差があったから、その半分の七・三五をことし埋めるというんでしょう。一五・三に七・三五足したんでしょう。それが二三・八になるんでしょう、老齢者の優遇を含めて。そうでしょうが。そういう法律出しておいて、二万円ベースにさかのぼって、二万円ベースから今日までの現職公務員と退職者の不合理があって、退職したほうが少ない、その差が一四・七%ありますと書いているじゃないですか。それじゃインチキなんですか、それは。何で計算したのですか。それじゃ、その計算基礎出してください。
  34. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いま先生御指摘のとおりに、三十四年当時の二万円ベースの給与を一〇〇といたしました場合の今日までの給与の上がりと、それから、同じくその恩給の二万円ベース基準にしました場合の今日までの上がりと、その差が一四・七ということでございまして、これは、いま言いましたように公務員給与、恩給のそれぞれの全体の平均を出しておりますので、そういう数字が出たわけでございますが、いま先生の言われました個々の号俸ごとの問題につきましては、いますぐその数字を申し上げられないのが遺憾でございます。
  35. 大出俊

    大出委員 菅野さんは、恩給局長におなりになってから間もないのだから、あなたを責めるわけじゃないんだけれども、平均を出した限りは、個々のものだって平均が出てくる。そうでしょう。この仮定俸給表の八十二号、一番てっぺんから始まって——この八十二号というのは、まぎれもなく当時は一等級の七号、局長ですよ。それは通し号俸廃止だ云々だありましたよ。私も長らくこの時代から給与をやっているんだから、人事院ができるころから一緒にやっているんだからわかっている。そのときの切りかえというのは、どこがどこへいったと明確になって切りかえているじゃないですか。そのときに損した得したというのは多少ありますよ、ばらつきが。ありますが、中心はどこからどこへいくとちゃんと全部切りかえ表をこしらえて、切りかえているじゃありませんか。だから、個々のやつをあげてみなければわからぬじゃないですか。もしばらつきがあるなら、ばらつきもとって出したらいいじゃないですか、そんなことは。そうでしょう。だから、私がちゃんと例をあげたのだ。八十二号というのは、現実にいまあなた方が提案している法律の中に入っているのだ。仮定俸給表の一番てっぺんだ、これは。それと、これは局長クラスだから、それに次長クラスを入れれば六十七号、こうなる。課長クラスを入れれば六十号、こうなる。だから、それが今日どうなっているかと聞いている。多少の違いはあったって問いはしません、そんなことは。そのくらいのことが出されていなければ、平均もヘチマもありはせぬじゃないですか。怠慢だ、恩給局長。毎年そうなんだ。あなた方、それを出してくださいよ。答えられないとしようがないのだ。見にくい、比べにくいというならどこが見にくい、どこが比べにくいのか、ここで言ってくださいよ。  時間がもったいないからそれはあとで、私の質問の終わるまでに、うしろのほうで計算して出してください。審議にならぬじゃありませんか。何にもわからない。そういうことになっているのだ、これは。六十号のところまでは、現職の公務員に比べてやめた人のほうの仮定俸級は高いのだ。それから六十号以下のところは逆なんだ、これは。現職の公務員のほうの給料と比べてはるかに低いのだ。なぜそうなるか、ここが問題なんだ。去年私が指摘をいたしてあります。それは人事院勧告の、たとえば一五・三九なら一五・三九というものをとった場合に、これは四十八年の勧告ですが、一五・三九をとった場合に、中身俸給表の面における配分は、一番てっぺんから一番下までの間を一律配分はしていない。一五・三九という勧告が出ても、その中身は一律に配分しているのじゃない。上厚下薄あるいは上薄下厚、上が薄い場合、下が低い場合いろいろある。だが、おおむね俸給の高い局長さんや何かに比べて、下のほうの方々の給料の安いところをよけい上げているんですよ、人事院の配分というものは。そうでしょう。ところが恩給はそうじゃない。恩給の場合には、  一律に何%というものを全部にかけてしまう。局長でやめた人も、次長でやめた人も、課長でやめた人も、補佐でやめた人も、一般でやめた人も、かまわずに一律に仮定俸給表の引き上げ率をかけてしまう。ずっとそれをやってきた。ところが現職の公務員は、上のところの上げ幅は小さくて、下のほうの上げ幅を高くしている。だから、てっぺんのほうは現職の局長よりも、やめた局長の仮定俸給のほうが高いのだ。一方、現職の当務者に比べてやめた人の仮定俸給はこんなに低いのだ。人事院は毎年一生懸命下のほうをよけい見て、上のほうを縮めているのだ。恩給は一律なんだ。だから、恩給の低いほうの部面というものは、浮かばれなかった、日の当たらぬところで働いた人というのは、どんどんどんどん恩給の仮定俸給の引き上げをやるたびに、現職よりもますます低くなってしまう。ここに原因がある。そこのところはいかがですか。
  36. 菅野弘夫

    菅野政府委員 先生御指摘の点はそのとおりだと思いますけれども、なぜ一律アップを続けてきているかということでございますけれども、このことは、恩給の場合には三十四年なり三十七年なり、そういう時点でおやめになった方のその当時における恩給の実質価値というものを維持していこうという、その指標といたしまして使いますのが公務員給与の平均アップ率でございまして、そういう指標を使います上におきましては、やはり根拠のある、権威のあると申しますか、そういう数字を使っていかなければならないということもございますし、それから実質価値の維持でございますので、すでにその十数年前におやめになった方々恩給の実質価値の維持でございますので、一律アップをするのが最も妥当であるということで今日まで続けてきたわけでございます。
  37. 大出俊

    大出委員 そんないいかげんなことを言ってはだめですよ。実質価値といったって、食えなければしょうがないじゃないですか。だから下のほうはますますもって低くなってしまっているから、最低保障が出てくるんじゃないですか。実質価値の維持というなら、最低保障を何で必要とするのですか。答えてください。
  38. 菅野弘夫

    菅野政府委員 最低保障の問題は最低保障の問題として、また別の角度を含めましてあるわけでございますけれども、一律アップの方式そのものが、特にこういうふうに重なってまいりますと、御指摘のようにいろいろな問題がある、あるいは特にベースアップが大幅になればなるほど、そういう問題があるということでございますので、そういう点につきましては、私たちも検討事項であるということを十分認識しておりまして、御指摘の点を含めまして、十分検討したいという気持ちを持っております。
  39. 大出俊

    大出委員 あなたはいま、何だかわけのわからぬことを言うけれども、昨年の平川さんの議事録を読んでごらんなさい。もっとあっさり理論的に平川さんはお述べになって、予盾ですと認めているじゃないですか。実質価値の維持だ、経済的な減耗の補てんだなんということは、恩給法のイロハのイだ。欧州の論理からいっても、やめた人というものは、やめるまで働いて社会的価値を創造しながら俸給をもらっているけれども、自分が生み出した価値の全部を俸給でもらっているのじゃない。みんな置いてきてしまっている。一部しかもらっていない。その遺産が今日の文化、文明だという。だから、一定の年限でやめた人、年寄りは休息の権利があるというのだ。その休息の権利を満たすのが恩給だというのが欧州の論理です。あなたのようなことを言って、実質価値の減耗を防ぐのだ、だから、やめたときの俸給であくまでもいくのだというなら、最低保障も何も要りはせぬじゃないですか。  これを見てごらんなさい。一昨年、四十七年の一〇・五%の人事院勧告、これは一等級のところは、一〇・五%の勧告が出ているのに、八・三しか上げていないのだ。二等級が八・八、三等級が九・四、四等級が九・七、五等級が一〇%、六等級が一〇・六、七等級が一二・九、八等級、一番給料の低いところが何と一五・七%引き上げているのだ、現職の公務員は。一等級、一番上の官職の高い人、給料の多い人は一〇・五%の勧告をしているにもかかわらず、八・三%しか上げていないのだ。一番下の八等級、入ったばかりの人、給料が少ない、この人には一五・七%人事院は上げてやっている。四十六年は一一・七%の勧告が出ています。出ていますが、一等級は九%、二等級は九・七、三等級は一〇・四、四等級は一〇・七、五等級は一一・一、六等級は一一・八、七等級は一四・二、八等級は一六・二%上げているのだ。給料の少ないほうに明らかな傾斜配分をしているんですよ。現職の公務員がこうなっているのに恩給はいつも一律だ。これで現職と合うはずはないじゃないですか。  だから、現職の公務員に比べて、仮定俸給の六十号以下というものは、こんなに開いてしまって少ない。本来少ない恩給は一律、現職は、上が比率が少なくて下が高く上げてきているから、だから、ますます現職の当務者とはこんなに違ってくる。そうだとすれば、厚生年金手直しをすれば最低保障をせざるを得ないんですよ。これは明確な予盾です。  今回の人事院勧告一五・三だってそうだ。仮定俸給表でいってこれを見たら一目瞭然だ。八十二号という局長クラスのところは、これは甲、乙が一緒になったから、今回は一五・六。指定職甲、乙がなくなったから。六十七号一三・一、六十号一三・九、五十号一四・八、四十号というのは五等級の四号、四十号一五・八、六等級の二号一六・七、今回の勧告だってこれだけ違う。一六・七も上げている、六等級二号当務者のところで。これだけ上が少なくて下が大きくなっている。今日の給与の理論というのは、そう変わってきているのです。うちの中の家族手当という給与の構成をし、通勤という手当の構成をし、住宅という手当の構成をし、生活に即した形に変わってきている、給与理論というのは。それが人事院勧告の配分にも出てきている。にもかかわらず、恩給というものは、昔からいままで何でもかんでも、幾らよけいもらっている次官でやめた人であっても、局長でやめた人であっても、一般当務者でやめた人であっても、二〇%なら二〇%一律にかけておる。こんなばかなことを何年も何年も続けてくれば、まして少ない恩給だ、恩給もらいながら生活保護を受ける人が山のように出てくるのはあたりまえですよ。九千人から生活保護基準以下がいる。そんなばかなことがありますか。生活保護基準が上がったから、いまもっとふえている。  そこで、もう一ぺん承りますが、この八十二号という方は、仮定俸給表の八十二号、一律に三十年勤続といたします。三十年勤続でおやめになった八十二号の方は、いま今度の仮定俸給表改正恩給年額幾らもらえますか。年額を月額に直して月幾らもらえますか。三十年勤続八十二号の人。それから次長クラスの六十七号の人、三十年勤続で一体いまの仮定俸給表恩給年額幾らもらえますか。六十号の人、これは一体今日幾らもらえますか。課長です。五十号の人、四十号の人、それから仮定俸給表三十号の人、これは今度の改正恩給年額、月額で幾らもらえますか。
  40. 菅野弘夫

    菅野政府委員 仮定俸給の月額は、それぞれ出ておりますけれども、いま申し上げましたように、恩給年額なり恩給月額ということになりますと、いま計算をいたしますので、お時間をいただきたいと思います。
  41. 大出俊

    大出委員 計算してください。話にならぬ、少な過ぎて。  まず、下のほうから言いますと、三十年勤続をして課長でやめた人、この人の計算のしかたは、皆さんが御存じのとおり恩給法納金を払っている人、つまり恩給法適用者でございました場合は、十七年つとめまして百五十分の五十でございます。十七年で百五十分の五十でございますから、三十年つとめると十三年残ります。毎年百五十分の一ずつふえてまいりますから、百五十分の十三でございます。百五十分の五十に百五十分の十三を足す、合計百五十分の六十三になります。百五十分の六十三というのは四二%、この人は課長でやめたときに仮定俸給の四二%をもらう人だ。この人を計算すると、三十年勤務して課長でやめた人の仮定俸給表改正をして恩給年額は六十八万九千九十四円、これを十二カ月で割っていただけば明らかだ。月、一体幾らになりますか。一カ月五万七千円です。三十年勤務して、課長でやめた人が一カ月五万七千円しかもらえなくて、これは最低保障も何もかかりゃしませんよ。六十八万、これは六十号の人。ところで五十号の人、課長にもならなかった人、仮定俸給表の五十号の人というのは四等級の六号、二万円ベースのときでいえば。これが三等級の二号になっている。三十九年の俸給切りかえで三等級二号。この人が三十年勤続をしてやめて、仮定俸給表の五十号に格づけをする。年額幾らもらうかというと、四十八万六千九百六円、月四万円です。四十号の人、五等級の四号、三十年勤続年額三十四万四百六十二円、月額二万八千円。三十号の人は、三十年勤続年額、二十三万九千七百三十六円、月約二万円です。  ところで、今回は最低保障三十二万一千六百円にしたから、三十号の人は最低保障で救われる。四十号の人は五等級の四号の人、一般当務者で長くつとめた人、三十年、この人は最低保障はかからない。月額二万八千円、最低保障はかからない。これで一体社会的弱者でないといえますか。  ところで、承りたいのだが、生活保護基準というのは、一体今日手直しをして幾らになっていますか。
  42. 菅野弘夫

    菅野政府委員 生活保護基準はそれぞれの条件がございますので、一がいには申せませんけれども、老人の単身世帯一級地、それで男という条件で置きますと、保護基準は、大体年額で約二十七万円くらいになると思います。
  43. 大出俊

    大出委員 年はとっても奥さんがいれば二人、二人なら幾らになりますか。
  44. 菅野弘夫

    菅野政府委員 ちょっと計算しておりませんが、月額で大体三万七千円くらいですから……。
  45. 大出俊

    大出委員 それは東京ですか。
  46. 菅野弘夫

    菅野政府委員 そうでございます。月額で三万七千円でございますから、約四十万くらいになると思います。
  47. 大出俊

    大出委員 それじゃこれはあなた、奥さんがいて、年とってやめて奥さんだけめんどうを見ていたら、生活保護基準以下の方々がざらざらと出てきちゃう。最低保障だと言ったって、いま私が例をあげたように、四十号の人は最低保障にひっかかりゃしない。三十四万円、月額二万八千円。奥さんをかかえて、生活保護が三万七千円ですよ。生活保護基準よりはるかに低い。こういうばかげたことでは……。あとで計算してくれればいいです。さっきの私が言った変遷を含めまして、計算出してください。  時間がありませんから進めますが、こういうばかげたことになっている。総務長官に承りたいのですが、これは兵のほうは、兵隊さん、軍人、こっちのほうは一体どういうことになりますか。軍人の場合に、兵ならば十二年が最低資格要件、十二年兵、十三年将校、こういうふうになっています。そこで百五十分の五十、九年ならマイナスをしなければなりませんが、百五十分の五十から百五十分の三・五かける三、三年分を引く、百五十分の三九・五、こういう計算になる。そうすると、兵の十八号を例にとると、一体今度の引き上げで月額幾らになりますか。——全く話にも何もならぬ。あなた方は少し抜けているんじゃないですか。何をやっているんですか。いいですか、ここに最低保障で書いてるじゃないですか。九年未満の人は、十六万八百円という最低保障出したでしょう。九年未満という限りには、九年の人は一体どうなるかくらいは計算しておかなければ、何でこんなものをこしらえたかはっきりしないじゃないですか。——もういい。扶助料というのはこの半分なんだ。月額八千円だよ。つまり兵の十八号で年額十万七十二円ですよ。そうなれば、月額八千円じゃないですか。それがつまり最低保障とする理由はなんです。だから、十六万八百円にしたんだ。それでも十六万八百円しかない。遺族ならばこの半分なんです、扶助料だから。そうでしょう。これじゃ食ってはいけないじゃないですか。だから、私は例をあげている。あなた方のそれは、計算の不備であればいいですよ。ほんとうならば、そのくらいのところは計算すべきだ。三年マイナスをするのならば、いまの私の計算で、百五十分の五十から百五十分の三・五かける三を引いて、百五十分の三十九・五になりますよ。だから十万七十二円が出てくる。そこらのところは、計算して表にしておかなければおかしいのだ。  それはそれでいいけれども、こういうべらぼうな安い軍人恩給恩給。私は総務長官に承りたいのだけれども、軍人恩給なんというのは、これでおしまいなんだ。恩給だって年寄り一代制と一緒なんだ。いまいる人たちが死んでしまえば、なくなっちゃうのです、みんな共済に行っちゃうのだから。そうでしょう。いかがですか総務長官恩給共済に切りかえちゃったんだから、もうないんだから、現在恩給をもらっている人たちが死んでしまえば、そして遺族になって残った人が扶助料をもらってしまえば、恩給法該当者はゼロになってしまうんですよ。軍人恩給だって、これから日本国憲法が生きていて、戦争をしない限りは、できっこないのだから、いまいる人たちが死んでしまえばなくなっちゃうのです。ゼロになってしまう。その方々をこんなことでほっておいたのじゃ、靖国神社もヘチマもないのです。だから、あなた方は、制度が違うのちょうちんの、そんなこと理屈にならない。これだけ低い恩給や軍人恩給だからこそ、私は繰り上げろと言うのです。総務長官、いかがでございますか。   〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕
  48. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 恩給自体の低さ、それは先ほども、簡単でございますが、今度の改正の中で九年未満の人たちにも十六万出そうというようなことで、逐次改善していく方向は私はとっているつもりでございます。持に、これは御指摘のように、当委員会での非常に強いいろいろな御要請もありますので、私はその方向の中で問題を解決していく努力をしておるわけでございますが、財政当局との関係の中で、予算額そのものにいろいろの制限もあること、御承知のとおりでございます。  同時にまた、今度も公務員給与にスライドということも、人事院勧告においては上薄下厚と申しますか、そうした傾向がすでにとられてきておるわけでございまして、先ほど御答弁申し上げたとおり、そうした問題をこの恩給最低保障の場合にも考えていかないと、最低保障額だけをどんどんかさ上げをしていかなければならないわけであると思うのでございます。そうしたような問題は、ぜひ真剣に取り組んでいきたいと思いますし、また兵の、これは一時恩給という形になるかどうか別といたしましても、やはり非常に少ない恩給生活している方々をもっと保護していくという考え方を、今年度はこのような程度でございますけれども、今後はさらに引き続いて、基本的な方針の中に入れながら改善をはかっていきたいというふうに私は考えます。
  49. 大出俊

    大出委員 総務長官は、一定の年限で次々とおかわりになります。昨年私が質問したときにも、坪川さんが総務長官で、全く御指摘のとおりで、私も経験があることで何とかいたします。それでさっとおかわりになって、今度は小坂さんおやりになって、また同じ答弁になるわけですね。恩給局長さんも、私は菅野さんを責めるのは無理があるのは百も承知で、ただ坪川さんの時代から次長をおやりになっておって聞いておられたのだから、だとすれば、今日一般の給与理論というものが変わってきておりまして、生活給中心になってきておるわけです。そうすると、一律にぶっかけただけで済みはしない。ほんとうをいえば、給与の絶対額が低いからこそ、結婚手当をよこせだとかいうことになる。手当なんというものは本来邪道なんで、要らないんだ。給与の絶対額が高ければそれでいい。ところが、官庁に入って三年くらいたつとなれてきて、仕事は若いから人一倍できる。若いから同じ職場の年寄りどもの三倍も仕事する。するけれども俸給は半分ももらっていない。不満が出てくる。そこに、やれ労務手当だとか何だとか一ぱい手当をくっつけて、試験制度か何かやって、受かれば手当がもらえる。それでやっと気が済んで、若い人はがまんしいしい安月給の官庁暮らしをする。これは本来邪道なんです。  だから、恩給というものは、やめてしまった人は仮定俸給一本なんだから、てっぺんのほう、これは、あなた方出しておられる法律なんだから、六十号で線を引いてごらんなさい。仮定俸給表の。六十号以下というのは、現職の公務員よりも全部低い。著しく低い。六十号以上というところは、現職の公務員よりも、仮定俸給表はやめた人は高い。これはいま総務長官が口にされたような、上薄下厚という方式を人事院はずっと一貫してとり続けておるが、事恩給に関する限り、一律にかけてしまうから、こういうばかげた、極端な現象が出てくる。これは捨てておけないのです。最低保障をしたところが、さっき私が申し上げたように、最低保障には四十号の人はもうかからない。そこから六十号までの方は、間違いもなく谷間になって、現職よりみんな低い俸給表で最低保障をもらっておる。そうでしょう。そういうかっこうで放任しておくわけにはいかないのです、皆さん年とっていくのだから。だから、この矛盾はいま総務長官おっしゃいましたが、何としても検討を要する。方法は幾らでもありますよ。必要ならそんなことは幾らでも提案します。去年も言ったはずだ。  実は、そういう恩給の今日的事情だ。しかも厚生年金は、さっきここで述べていただきましたように、三十二万一千六百円の最低保障にしようというので、昨年の国会ですでに三十二万一千六百円最低保障になってしまっておる。一年ずれておる。共済も、昨年三十二万一千六百円の最低保障をしてしまっておる。恩給のほうは一年ずれて、これからやろうというわけだ。そんなばかなことがありますか。恩給が本来初めからあったんだ。途中から共済なんかできた。厚生年金だってそうです。昭和十七年にできた。そうすると、恩給のほうは、これから入ってくる人はないのだからといってぶん投げておく、そうとしかとれぬ。それでは、この間の裁判ではありませんけれども、ばかな話で、この間からいろいろ聞いていると、恩給というものは厚生年金国民年金制度が違う、そんなことは一つも理由になりはしない。  だから、この際どうしてもこれは繰り上げ措置が必要である。さっきのお話のように、国民年金は四カ月短縮している。厚生年金は三カ月短縮している。ならば、せめて三カ月短縮はすべきである。私は、法制局のほうにお願いして、修正案を用意しておりますが、けさ理事会に出したとおりであります。この点は、総務長官いかがでございますか。
  50. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま御指摘最低保障制度を、今回は従来のものに比べて大幅に引き上げて努力をしておるわけでございますが、なおかつ、ここに御指摘のような、他の社会保障制度との間の格差が出ているということも事実だと思います。  それで、こういう問題を、支給日を繰り上げるということだけで解決できるものとも思えないわけでございますが、もちろん、貴重な御意見としてわれわれよく理解はできます。  同時にまた、一般にこうした最低保障を要するような方々に対して、私は、恩給なら恩給という面だけの改善ももちろん努力いたしますけれども、もっと全般的に社会対策としての保障の大綱をつくって、その中で、いわゆる弱者救済という問題を取り上げていくことのほうが——同時にまた、問題をこの恩給のところだけにしわ寄せしない方向というものも、十分考えられなくてはならぬというふうにも考えます。  これは、何も弁解をして逃げるために申し上げているのではないのであって、今日のような物価騰貴の中において、一定の国家予算の中からだけ保障を受くるという恩給制度そのものには、やはり私は一つの限界がやむを得ずあるだろうと思います。同時にまた、先ほどから御指摘のように、上薄下厚というような一つのプリンシプルを恩給の総額の中の配分の中で考えていくことは、これは当然今後も十分検討してまいりたいと思いますが、やはり、そうしたことだけでは解決し得ないような問題もまだ多々あると思います。したがいまして、この恩給問題ということだけにこの委員会におきましてはしぼられるわけでございまして、御趣旨はよく理解できますが、さらに政府としては、最低保障という国民生活の谷間の方々に対する配慮というものを、ぜひ来年度においては色濃くこれを出していくというような方向をとって、総合的な解決をはかるという方向もひとつ検討をしていきたいというふうに考えております。
  51. 大出俊

    大出委員 承りたいんですが、社会政策全体とおっしゃるんだが、それは一体いつどう出すんですか。それと恩給とどう関係するのか答えてください。
  52. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 それは恩給問題で、この今年度の予算で一応概定しております三百三十一億円の配分の問題の中で解決し得る問題、これは、いま御指摘の問題だと思います。それについては努力を申し上げるということをお答えしているわけでございますが、さらにまた、その分だけではなかなか解決し得ないような幅広い深い問題があるので、そうしたことは、恩給という問題だけでなしに、さらに社会全般の問題として前向きに取り上げたいというふうに私は考えておるということを、率直に申し上げておるわけでございます。
  53. 大出俊

    大出委員 社会全体の問題で前向きに考えるというのは、具体的にはどういうことをやるのか。
  54. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 具体的になかなかすぐここで申し上げるわけにまいりません。(大出委員「それなら意味ない」と呼ぶ)でございますが、しかし、考え方といたしまして、五十年度というものは、そうした方向に努力を、政府は大いにしていく必要があるという私の考え方を申し上げたわけでございます。
  55. 大出俊

    大出委員 形のないことを言ったって、この席では三文の価値もない。現実に食えないと言っているんだ。食えない人は困っているだろうといったのでは事は済まない。痛いだろうというのと痛いというのは違うんだ。三十二万の最低保障をしたと大きなことをおっしゃるが、言われたって迷惑だ。去年、厚生年金が三十二万一千六百円の最低保障をしちゃっている、共済も三十二万一千六百円の最低保障をしちゃっているのに、何でそこまで持っていかないんだとさんざんこの席上で言ったんだ。できません。できなきゃ法案通さない。とうとう、来年は間違いなくやります、そういう回答があなた方から戻ってきた。これは去年の約束。かくて一年間、恩給受給者は、共済受給者はみんな最低保障三十二万一千六百円だというのに、最低保障三十二万なし。厚生年金のやつは上がっちゃっていてもこっちはなし。一年間泣かされている。  今度は中の予算の配分と言ったって、あなた、いまここで上薄下厚に直せますか、これは一体一つずつ聞いてみて答えも出てこぬのに、そんなもの簡単にあなた方に直せますか。不勉強きわまる。そんなその場のがれの話はだめですよ。現実に一年間ずらされて、最低保障三十二万もらっていないんだ。ないしはその損失は一体どうしてくれる。共済というのは、恩給期間と共済期間を足したのが受給金額です。恩給基礎になっている。その共済のほうに昨年、三十二万一千六百円の最低保障をやっちゃって、恩給にやらないじゃないですか、去年から本年まで。いま初めてこれから通ればやるんじゃないですか。一年間の損失はどうしてくれるのですか。そんなもの放任できませんよ。
  56. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 そうした、ただいまの御主張のような損害という考え方については、なおわれわれもよく詰めて考えてみたいと思いますが、今度の改正でお願いしておりますのは、先ほどもいろいろと御議論いただきましたが、一五・三%の公務員ベースアップにスライドしていくという方式と同時に、従来からの差額を二年間で埋めようじゃないかというような努力と、さらに最低保障を拡充するという方向を、今年度の御審議をいただく素材に提供しているわけでございまして、全く従来のものを捨ててしまっているということではないと私は考えるものでございまして、どうかその点につきましても御理解をいただきたいと思います。  また同時に、ただいま御主張の諸点につきましては、繰り返して申し上げますが、十分検討をさせていただきたいというふうに思います。
  57. 大出俊

    大出委員 そんなものは答弁にも何にもならぬ。二万円ベースにさかのぼって一四・七%の差をとったというのは、この不合理はいままで当然やっておくべきことであって、さんざっぱら言っているのに、ようやくここへ来て、あなた方はそういうことをやるようになっただけの話。段階的に上がっているのですから、そのたびそのたびに恩給受給者は損をしてきている、長年。お年寄はほんとうに気の毒ですよ。それも、二カ年に分けてやる。前からさんざっぱらぼくら言っているのに。  おまけに、実施月を見てごらんなさい。恩給は本年の十月からでしょう、この提案は。公務員は昨年の四月に上がっているんだ、一五・三というのは。これは人員ウエートで計算するから一五・三になる。それはそれで計算上そうなるんだからいい。だけれども、現職の公務員は昨年の四月にもらっているんだ。何でことしの十月にしなければいけないのですか。現職の公務員から一年半ずれているじゃないですか。  フランスには、文武官の恩給に関する法律という法律がちゃんとある。アメリカには一九六八年法がちゃんとある。しかも日本の場合には、恩給審議会の答申が新居委員長の手で出て、恩給法二条ノ二の調整規定というのは一体いかに考えるか、三本立て仮定俸給表というものを一本に直せ、直して法的にスライドをさせるべきであるという答申を出したじゃないですか。時の総務長官は何と答えたか。新居参考人に来てもらって私が質問をしたら、政府が御諮問なさったんだから、審議会で審議してくれと政府が言ったんだから、それに対して答申を出して、三本立て仮定俸給表を一本にしなさい、その上で法律改正してスライドさせなさい、私のところはそういう答申を出したんだから、よもや政府が実施しないというそんなばかなことはないでしょう。そうしたら政府は、三本立て俸給表を一本にする努力をして法律化しますと答えた。答えて一体何をいまやっているのですか。公的年金制度調整連絡会議なんて一言で言い切れないような長い名前をくっつけて調整にばかり時間がかかっている。何年たったって結論が出やせぬでしょう。出ないから法律改正しない。ああいうでたらめばっかりじゃだめですよ。信用できぬ。こんな法律は通せない。
  58. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いま先生からいろいろ御指摘をいただき、また大臣からも御答弁を申し上げたわけでございますけれども、先ほどの最低保障が一年おくれたという問題につきましては、確かにそういう指摘されましたような点がございますけれども、四十一年に最低保障制度をつくりましたとき以来入っておりませんでした短期在職者に対する検討もございまして、その短期在職者に対する新しい制度として、この検討の結果、ここに御提案申し上げるような制度の新設を見るに至ったわけでございます。  そういう改善もございますし、それから先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、確かに実施時期の公務員給与とのズレはございますけれども、これも従来は、三年なりあるいは四年に一回改正をしていたものが、審議会答申以後においては約二年半のおくれ、それを四十八年からさらに一年縮めまして一年半のおくれというふうに改善をしてまいった経過がございまして、その実施時期のズレ等につきましては、なお問題を含んでいるとは思いますけれども、そういう改善のあとを踏まえ、今後とも私たちの力でできる限りのことをしてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  59. 大出俊

    大出委員 そんなものは理由にも何にもなりはせぬじゃないですか。そんなことを言って、短期在職者対象人員は一体何人ですか。短期在職者は、拾い上げるのはあたりまえのことです。だからといって、いまの恩給受給者一体生活できるのですか。生活保護基準以下の者がたくさんいるというのに、片一方はみんな三カ月、四カ月繰り上げているというのに。最低保障三十二万一千六百円だって、昨年平川氏は何と答えたか。実はこの国会に間に合わなかった、明らかに矛盾でございますと。政府の責任じゃないですか。そんなばかなことを言ったって通用しませんよ。繰り上げをやりなさい、繰り上げを。
  60. 菅野弘夫

    菅野政府委員 実施時期の繰り上げの問題でございますが、これは、たいへん役人的な答弁で恐縮でございますけれども、現在十月実施ということで御提案を申し上げ、予算もそういうふうに認められているわけでございますので、私の御答弁申し上げます限りにおいては、原案でお願いしたいという以外にはないわけでございます。
  61. 大出俊

    大出委員 金がたいへんかかる、そんなものは全部計算してわかっている。一カ月繰り上げれば百十億、二カ月繰り上げて恩給だけで二百二十億、援護は二十七億だから援護を入れて二百四十七億、はっきりしている、そんなことは。  二、三関係する問題をついでに承っておきますけれども、今度の改正で一時恩給にかかわる改正が行なわれておりますが、これは一体どういうことでこういうふうに直されたわけでございますか。
  62. 菅野弘夫

    菅野政府委員 一時恩給部分改正でございますけれども、これは下士官クラスにつきまして、一時恩給を出すという改正が、昭和四十六年に行なわれたわけでございます。引き続く実在職年が三年以上七年未満の下士官以上の旧軍人に対しまして、四十六年の法改正によって一時恩給を支給するということになりましたが、その場合には、これは条件がございます。これは戦前からもそういう条件があったわけでございますけれども、下士官以上三年と申しましても、その中で一年以上は下士官以上として在職しなければならないという制限があったわけでございます。こういう制限が戦前からあったわけでございますけれども、終戦によりまして、軍隊制度そのものが消滅するという未曽有の事態が介在したことをいろいろ考えますと、その間で戦前と同じような制限をどうしてもつけておかなければならないというのは、必ずしも適当でないということで、前国会でもいろいろ御審議をいただいたわけでございますけれども、この一年という条件を半分に緩和して御提案申し上げているわけでございます。
  63. 大出俊

    大出委員 これは二十年の九月一日に二等兵曹になりまして、二十年の十二月二十八日に復員をした。その間に下士官期間が十カ月、こういうわけであります。したがいまして、実在職年数三年四カ月、そういうような例がここにあります。正式に言いますと、この人は十七年の九月一日に横須賀海兵団に入団したんですね。それで昭和二十年五月一日に水兵長になった。それから昭和二十年の九月一日に二等兵曹になった。それから二十年の十二月二十八日に帰ってきた。こういうわけでありまして、この間に下士官になったのは、いま申し上げたようなことであります。したがって、十カ月が下士官在職年数、したがいまして入団以来通算三年四カ月くらいになるのでありますが、一時金の場合にこういうのは該当しますか。   〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  64. 菅野弘夫

    菅野政府委員 ただいまあげられました例は該当すると思います。
  65. 大出俊

    大出委員 これは昨年、私が取り上げました磯崎敏郎という人なんです。この場合に、一時恩給幾らになりますか。
  66. 菅野弘夫

    菅野政府委員 最終階級が二等兵曹でございますので、現行法におきましては、三年でございますと一万七千百円ということになると思います。
  67. 大出俊

    大出委員 念のために承りますが、一ぺんそれを払って終わり、こういうわけですな。
  68. 菅野弘夫

    菅野政府委員 一時恩給でございますから、そのとおりでございます。
  69. 大出俊

    大出委員 これは神だなに上げて、それこそかしわ手でも打たなければならぬですな。三年四カ月兵隊に行ってきて、一時恩給で今度改正をいたします、幾らくれるのですかと聞いたら一万七千百円。これは昭和十七年から兵隊に行きまして、二十年九月一日にやっと二等兵曹になって、二十年十二月二十八日に帰ってきた。三年四カ月。今度は一時恩給を支給するようにたいへん有利に改正したわけでありますが、じゃ一体、その一時恩給幾らくれるのですかと言ったら一万七千百円。一時恩給ですから一ぺんですかと言ったら、そうでございます。一万七千百円いただくということになる。これは一体どういう形で支給するのでございますか。裁定通知書かなんか出すのですか。証書でも出すのですか。せめてでっかい額にでも入れて出さなければいかぬのじァないですか。
  70. 菅野弘夫

    菅野政府委員 それは裁定通知書を出しまして支給をいたします。
  71. 大出俊

    大出委員 裁定通知書でございますか。これは、うっかり一万七千百円もらったって、一ぱい飲めませんですよ。昭和十七年に天皇陛下の命によりといって入団をして、さんざっぱらひっばたかれてきて、戦艦陸奥に乗る。陸奥が沈没する寸前におかに転勤になった。陸戦隊四十二警備隊に配属、かろうじて九死に一生を得た。そのあとポナペ島の予定が悪くてトラック島に行った。たいへん苦労されておられる。それで今度一時恩給でございますというわけで、やっと該当するようになりまして一万七千百円。恩給というのは、軍人恩給を含めましてかくのごとく過酷なんですよ。遺骨の問題で私はよく言いますけれども、これはほんとうにがまんならぬことだらけ。  だから、軍人恩給というのは、これで終わりなんですから、一代限りなんですから、もう少し前向きでお考えをいただくという気にこれはおなりいただきたいのですが、総務長官、いかがでございますか。
  72. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 特に兵に対する調査をしなければならないというので、今回一千万円の調査費を計上しておりますが、やはりこうした問題は、引き続いてわれわれの業務の中で解決する方向で努力していかなくてはならぬというふうに考えております。
  73. 大出俊

    大出委員 繰り上げというのは、菅野さんにこれ以上ものを言うのは、予算がきまって御提案になっていますから、無理からぬところでありますけれども、私は、以上申し上げましたようなことで、ともかくこのままでほっておける筋合いではない、厚生年金国民年金おのおの三カ月、四カ月と繰り上げているわけでありますから。しかも、いま私、一例あげましたように、三年四カ月戦地まで行って、戦艦陸奥にまで乗っていた、九死に一生を得てトラック島に行った、やっと帰ってきた、こういう方々が軍人にもたくさんおいでになる。ようやく一時恩給に該当するようになった。なったから幾らかと聞くと、一時恩給で一ぺんですから一万七千百円だとおっしゃる。すべてこの種の調子になっているわけでありまして、ほんとうは、こういうところに軍人遺家族の方々おいでになって——軍人恩給遺族扶助料で生活をなさっているわけでありますから、それは半額なんですから、だから、そういう方々がほんとうの意味の弱者でございまして、社会的な弱者の救済が必要な今日の事情の中で、これは放任できない。たまたま厚生年金国民年金のほうは三カ月、四カ月繰り上げをしている。しかし、そのもとになっている一番古くからあるこの恩給が繰り上げられない。最低保障も、すでに去年厚生年金は三十二万一千六百円になっている。ところが、恩給はこれが法改正に出てこない。恩給よりあとからできて、共済期間、恩給期間足して受給資格を生ずる共済年金についても、昨年三十二万一千六百円の最低保障ができている。それ以下の人はだからない。この最低保障がなくて、一年間苦労させられたのが恩給受給者であります。またその遺族であります。だとすれば、これは理屈抜きで恩給については国民年金厚生年金に右にならえするのはあたりまえだと思います。このことをつけ加えまして、終わります。
  74. 徳安實藏

    徳安委員長 中路雅弘君。
  75. 中路雅弘

    ○中路委員 短い時間ですから、二、三この問題についてお尋ねしたいのです。  今度の改正案最低保障の若干の改善がありますが、この問題は、私も昨年の恩給法の改正の時間に質問をしたわけですが、当時の平川恩給局長は、これは非常にむずかしいという答弁だったわけです。一つ在職年が短くてもらえるということ、もう一つは文官と軍人のように、非常に勤務内容が異質のものを一緒に含んでいるようなことを述べておられたわけですが、今度の改正案でこの最低保障改善の問題を出された。昨年は非常にむずかしいというお話だったわけですが、このようなことがどう検討されたのか、最初に簡潔にお伺いしたいと思います。
  76. 菅野弘夫

    菅野政府委員 昨年来御審議いただきました最低保障の問題でございますけれども、いわゆる長期在職者と申しまして、普通恩給の最短年限に至っている者については、昭和四十一年以来最低保障制度があったわけでございますが、それが逐次上げられてまいりましたけれども、昨年厚生年金あるいは共済組合のほうの大幅な引き上げのときに、恩給がすぐはならえなかったことでございますけれども、それにつきましては、先ほど来お話がございますように、普通恩給の最短年限以下でありますいわゆる短期在職者について、従来なかった制度をつくるべきではないかということを含めまして、検討の時間がかかったわけでございます。そうしまして長期在職者につきましては、普通恩給で例を申し上げますと、十三万四千四百円が三十二万一千六百円、六十五歳以上でございますが、そういう改善が行なわれました。六十五歳未満の者については省略をいたします。短期につきましては、六十五歳以上で実在職年が九年以上の者と以下の者と分けまして、それぞれ二十四万一千二百円及び十六万八百円というふうに、普通恩給の例で申し上げましたけれども改正をするようになったわけでございます。
  77. 中路雅弘

    ○中路委員 この問題に関して、幾つかあとで御質問したいと思いますが、もう一つ最初に、二三・八%アップの根拠ですね。それとあわせて説明の中に、恩給のほうは四十八年、公務員給与は四十七年をとっておられるわけですが、公務員給与の四十八年をとれば、もう少しアップしていけるわけですが、その点のお考えについても、あわせてお伺いしておきたいと思います。
  78. 菅野弘夫

    菅野政府委員 二三・八の根拠でございますけれども、まず、昨年度の公務員給与のアップが一五・三でございまして、その一五・三と、従来いわゆる審議方式というもので、公務員給与と物価のまん中で調整をしてきた時代が何年かございますので、その間の格差と申しますか、そういうものが、三十四年で両方の水準が合っておりました時期から比べますと、累積して一四・七%になりますので、それを二年間でその格差を埋めたいということで、その半分の七・三五、すなわち一五・三と七・三五を掛け合わせまして二三・八という数字が出たわけでございます。  それから、最後の御質問の公務員給与ならば、もう少し大幅なんじゃないかというお話がございましたが、よくわかりませんけれども、公務員給与のアップが一五・三九でございますけれども、こちらが一五・三を使っておりますのは、いわゆる恩給俸給本俸を基準にして改善をいたしておりますので、その手当等を除きました部分改善が一五・三でございましたので、それを使っている次第でございます。
  79. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの年度の問題ですが、この説明のところで、「今回の恩給法改正案においては、恩給年額の改定は、昨年と同様、公務員給与を指標として、昭和四十八年度給与の改善率一五・三%、により増額する。この措置によるほか、」云々と書かれまして、「その後昭和四十七年度までの改善指数を比較すると、」というところがありますね。この点で、この指標が四十八年度の値をとれば、もう少しアップはできるんじゃないかと思うのですが、この四十八年度と四十七年度までの改善指数というこの関係のことで先ほどちょっとお聞きしたのです。
  80. 菅野弘夫

    菅野政府委員 これは公務員給与のアップ、結局一年おくれとか二年おくれとかそういう問題にもからむわけでございますけれども恩給改善というのは、昨年までの改善を含めまして、昨年の二三・四%のアップを含めまして二八四ということになっておりますけれども、そのときに比べられた公務員給与というのは、四十七年の四月に行なわれました公務員給与の改善率一〇・五%を含めました改善率が三二五・六八ということでございまして、それと対比をいたしまして、要するにベースとしては、そこで合っておるわけでございますので、実施時期のズレの問題がございますけれどもベースとしては、そこが合っているものでございますので、その待遇をしたわけでございます。
  81. 中路雅弘

    ○中路委員 今度最低保障改善の問題が出されておるわけですが、先ほどから大出議員の質問でもありますように、恩給もやはり最低保障がどうしても必要であり、そういう点では、社会保障的な性格も持つものになってきていると思うわけです。恩給の発足当時の問題は別としまして、現在のように物価が非常に上昇してきている、生活が苦しくなってきている中で、恩給受給者の圧倒的多くの人たちは、これによって生活をささえているわけです。  しかし、先ほどお話しのように、実情は、かなり多くの人たちが、生活保護あるいは生活保護すれすれという状態にあるわけなんで、今回の改正でも、この点では私は非常に不十分だと思うわけです。最低保障額を引き上げるべきだというふうに考えますが、この点についてのお考えも一言お聞きしておきたいと思います。
  82. 菅野弘夫

    菅野政府委員 ただいまの御意見は、最低保障改善されたけれども、なおもっと必要なんじゃないかという御意見と承りましたけれども、私たちが、最低保障というのは、恩給には従来なかったわけでございますけれども、それを四十一年につくり、徐々に改善をしてまいったわけでございまして、この金額が三十二万一千六百円ということになりますと、そして短期の在職者を含めるということになりますと、従来までは二千数百人しか該当しなかったものが、一挙に三十二万人が該当するというふうな、かなり大幅な底上げであるというふうに思っております。  ただ、この額自体も、もちろん永久にこの額でいいというわけでございませんで、いま御指摘のいろいろな経済事情の変化等も参考にいたしまして、将来、この制度の発展につきましても、考究をしてまいりたいというふうに思っております。
  83. 中路雅弘

    ○中路委員 いずれにしましても、恩給自体も最低保障額をきめていかないと、現状にマッチしなくなってきているし、また、生活をささえるためには、この最低保障のアップがどうしても必要だという事態になっていることは事実だと思うのです。  そういう点で、この恩給自体が社会保障的な性格に変わっていかざるを得ない、私はそういうように思うのですが、この点について前回、昨年の改正案審議のときにも御質問したのですが、いまの特にこの最低額をきめていかないといけないということについてはお認めになっておるわけですし、また現状は、この点はさらに改善をしていかなければならないということも事実ですが、そういう点で、性格がやはりはっきり変わってきておると私は思うのですが、お考えをお聞きしておきたいと思います。
  84. 菅野弘夫

    菅野政府委員 恩給と社会保障あるいは社会保障的な考え方というものは、なかなかむずかしい問題でございますけれども、ただいま御指摘いただきましたように、従来そういう考え方が非常に薄かった恩給ではございますけれども、現在の社会経済事情等を考慮いたしますれば、そういう社会保障的な機能というものを十分営んでいかなければいかぬというふうに考えております。
  85. 中路雅弘

    ○中路委員 最低保障額を設けたということですね。結局、最低保障の適用を受けた人は、アップ率が他の人と違ってくるわけですね。いままでと、その点で違ってくるわけです。すると、恩給局がいままで言ってきた恩給というのは、公務員が国家に忠実に奉仕をし、また奉仕したことに対して、その公務員の遺族に国が保障する、あるいは奉仕した人に対して国が保障してやるという給付だということになっていたわけですが、この説明が、こういう点ではつかなくなってきているのは事実ではないか。これだけでは説明がつかなくなってきている。いわゆる忠実に国に奉仕してきたという度合いが、退職してから変わるということはあり得ないわけです。これは、こういう最低保障額を設けていくという自身の中に、皆さん自身が恩給を社会保障の一環として考えざるを得なくなってきているということを、やはり事実によって認めざるを得ないということになっているのじゃないかと思うわけですが、この点ははっきり、やはりお認めになる必要があると私は考えるのです。そうしないと、いままでの説明が矛盾を持って、説明がつかなくなってきていると思うわけです。どうですか。
  86. 菅野弘夫

    菅野政府委員 恩給が、社会保障かそうでないかというむずかしい議論でございますけれども、広義に解すれば、これも社会保障一つであるというふうにいえると思います。ただ、従来普通いわれている狭義の社会保険なり公的扶助によりまして、そういう方式をとりながら一定の、一般の方について、一般の水準を維持していくという社会保障に、狭義の意味では必ずしも当たらない部分があるというふうにお答え申し上げてきたのではないかと思いますけれども、いま言われましたような、いずれにしましても、定義のいかんを問わず、社会保障的な機能というものを恩給もかなり持っていかなければならないということは事実でございまして、そういう面における中身の充実ということも、これからは一そう推進していかなければいけないというふうに思っております。
  87. 中路雅弘

    ○中路委員 厚生省の方お見えになっておりますか。——これは先日も、野呂委員質問されたときに引用もされましたが、例の宮裁判の被告である国の答弁及び主張の中で、このように述べているわけです。「戦争公務による公的年金給付は、戦地等酷烈な環境下において、生命の危険にさらされつつ公務に従事し、これに起因する負傷又は疾病により廃疾となり、又は死亡した旧軍人等又はその遺族に対して支給されるものであるが、これと、これらの災禍を受けることなくして老後に至った軍人又は文官に対して支給される普通恩給その他の公的年金給付との間には本質的な相違がある。すなわち、前者は、戦争という異常な事態によって夫や子を失った者あるいは傷ついた者に対する国家補償としての性格が強く、殊に、階級の低い者にかかる公務扶助料は、その全部が国家補償であるとみなす方が妥当であるとも考えられる。これに対し、後者は、社会保障の一環として位置づけられるものである。」、この中で、「社会保障の一環として位置づけられるものである。」というふうに述べておられますが、厚生省は、このお考えで間違いありませんか。
  88. 金瀬忠夫

    金瀬説明員 社会保障というものの定義については、確定的なものはないようでございますが、その問題につきましては、いま恩給局長からお話がございましたように、社会保障制度審議会では、恩給制度を広義の社会保障ということでいわれているようでございます。私ども国民年金制度におきましては、恩給厚生年金等の他の公的年金と同列、一環のものという考え方をとられておりまして、その意味におきまして、この恩給受給者につきましては、国民年金の強制適用からはずして考えておりますし、また、恩給受給を理由といたします通算老齢年金を認めるというような形で措置を講じておるのでございます。これは国民年金制度が、他のいかなる公的年金の受給対象にもならない人を対象とし、あるいはまた個々の制度単独では受給権に結びつかないという人を、通算して年金の受給資格を発生させようという国民皆年金を目ざすために創設されたということから、そういうふうに成文化いたしておるわけでございます。
  89. 中路雅弘

    ○中路委員 厚生省の御見解をいまお聞きしたのですが、先ほど恩給局長も、社会保障の広い意味で機能を持ってきている、その中身を今後は充実さしていかなければいけないという御答弁ですけれども、この点について、私は恩給の性格といいますか、こういう問題について、やはり皆さんの中で統一した見解が必要じゃないかというふうに考えるわけです。この恩給も社会保障の一環として位置づけられるということは、宮裁判の中で厚生省も主張されておることですが、この問題に関して、長官はどのようにお考えですか。
  90. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 恩給そのものを社会保障制度として考えるかどうかということについては、まだわれわれの間で意見の統一されたものはございません。あくまで一応の見解としましては、恩給というものは、国家が、永年勤務した忠実なる公務員に対して保障する給付であるということでありまして、その保障する給付そのものが、生活というものの意味合いを非常に強く持つようになったのは、特に最近の通貨価値の不安定ということからきていると私は思います。したがいまして、通貨価値の不安定ということが将来も長きにわたってそうであるというようなことであります場合には、同時にそれが、ただいまの中路委員の言われるような方向というものが強く加味されなければならぬと思います。しかしまた一方、現在の物価騰貴あるいは通貨価値の減少というようなことが一時的なものである場合には、やはり私は恩給が、即社会保障制度的なものにならなくてはならないということにもまた結ばないのではないかと思います。  したがいまして、今年度の予算において、またわれわれがただいま御審議をいただいておるようなこのような最低保障制度も含めて、なおかつまた一般公務員のベースアップにスライドして恩給考えていこうということを申しておりますのは、やはり今日の事態に即応した体制でございまして、したがって、それには同時に、やはり一種の社会保障的な意味合いもわれわれとしては考えていかなければならないというふうに考えておるわけであります。
  91. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほど大出委員からも、この一律アップするために、ますます上厚下薄、これが大きくなってくるという矛盾についてお話しになりましたけれども、この恩給の性格が、今度最低保障を若干改善されているという中にも、現実にはっきりとこれは社会保障としての性格を持たざるを得ない時代になってきているわけですし、そういうことが一そうはっきりしてくれば、この恩給の問題についてどこを改善していくかという点についても、中身も一そう明確になってくるんじゃないか。その点で、事実としてそういう性格をすでに持ってきているわけですけれども、私は政府の部内でも、この問題についてより統一的な考え、見解をもって今後の改善の方向をはっきりさしていただきたいということも、あわせて要望しておきたいわけです。  現実に、いま社会保障的な機能をますます持たざるを得なくなってきているし、そういう方向での中身の問題も検討していくというお話ですので、この点については、より政府としての統一的な見解をひとつはっきりさしていただきたいということを要望しておきたいと思いますが、いまの……。
  92. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ちょっと……。いま私がお答え申し上げましたことについての中路委員の御認識は、私はそれで十分だと思いますが、同時にまた、社会保障的なものも加味しなければならないということになりますと、私は、全般の社会保障政策というものの中にもう一回恩給ということの——恩給そのものが社会保障政策あるいは社会保障制度というものになっていくというふうに、すぐ端的に考えていいものかどうかということについては、なお十分検討しなければならぬ点があると思います。先ほども大出委員お答え申し上げましたが、私は、そうした時代的な要請の中で、社会保障的なあらゆる施策に総合的に前向きに取り組んでいくということは、きわめて重要なことだと思うので、恩給だけにその任務をことさらに強く与えるのがいいのか、あるいはもっと他の社会保障制度を拡充強化することによって、恩給というものの本来的な意味合いというものはそのままにしながらも、他の施策によってこれを補って、全体として国民の困窮しておられる方々生活を守っていくというような方向も、同時に考えていかなければならぬ問題だということをつけ加えて申し上げたいと思います。
  93. 中路雅弘

    ○中路委員 少し具体的なことで関連してお聞きしたいのですが、先ほどの宮裁判の宮さんの恩給の受給額は、今回の改正案の二三・八%プラスしてもたしか四十三万くらいですね。これが憲法二十五条で保障された、すべての国民は健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有するということを裏づけられる金額かどうか。夫婦ですから、最低限度生活さえこれでは維持できない、このことは明らかだと思うのですが、せっかくお見えになっていますから、厚生省のこれについてのお考えもお聞きしておきたいと思うのです。
  94. 金瀬忠夫

    金瀬説明員 ただいまお話しの恩給の額でもって最低生活を維持できるかどうかというお答えにつきまして、恩給局のほうからの御説明が正しいのかもしれませんが、こうした年金というものにつきましては、私ども国民年金の例で申し上げますならば、この年金そのものによって最低生活保障する、直ちにそれだけでもって保障するというふうに考えてはおりません。最低生活保障には、いろいろ他の諸制度がございます。そういうものをつなぎ合わせると申しますか、そうしたものの総合関連をしながら、最低生活保障をはかっていこうというふうな仕組みにいまなっておると考えております。そうした中でも、なお最低生活が十分でないという場合には、御承知のとおり、生活保護というようなことになりまして、その保障をしていくというふうな仕組みに現在なっておるわけでございます。
  95. 中路雅弘

    ○中路委員 私のところにも、いろいろ訴えやはがきも来ているのです。これはその中の一枚ですが、これは共済組合年金関係なので、厚生省関係ですが、年金生活者の非常に苦しい実情を訴えています。  私は元国家公務員、六十四歳、旧制中学校卒業、某省勤務約三十年足らず、共済年金は年額五十二万円、妻と二人だけでもいまのインフレ、諸物価の高騰の中で、一日二食、下着類も買えず、新聞配達を申し込みましたが、老人のため断わられて困惑しています、くつみがきもショバの関係でできません、共済年金の増額をぜひ実現してほしい、共済年金をもらう者は、生活保護も受けられないという実情の訴えもあります。ここにありますように、国家公務員として三十年くらいつとめても、このような生活しかできない額であるわけですね。こういう訴えが幾つか来ていますが、こういう現状、実情についてどうお考えですか。
  96. 金瀬忠夫

    金瀬説明員 ただいまの五十万で最低生活保障できるかどうかというふうな議論につきましては、いろいろ考え方、議論があろうかと思います。いわゆる憲法でいっております最低保障の額というのは、それぞれそのときにおきます経済情勢なり社会情勢なりというものを勘案した形で、国で基準がきめられていくというような性質のものでございますし、高いとか低いとかといろいろ議論はあろうかと思いますが、現時点では、生活保護最低限度基準というのは、一つ最低生活というふうに考えざるを得ないというふうに考えております。
  97. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、この宮裁判、これは裁判待ちでなくて、国民年金との併給を含めて、生活実態からもう一度金額をとらえ直して考えていくべきでないか。かりに宮さんに恩給年金を併給したとしても、私、計算しましたら、いまのはがきの人の額とあまり変わらないということになります。いまのはがきの人は、実際に夫婦で非常に苦しいということの現状ですが、宮裁判の宮さんが恩給年金を併給して、いま読み上げたはがきの方と大体同じような現状にしかならないということですから、文官恩給と無拠出の年金の併給禁止というのがありますが、実際問題として、これは再検討されなければいけない時期に来ていると私は思うわけです。しかし、それがすぐということが不可能なら、それにかわる処置をいろいろ考えていかなければならない、これだけ背景の物価上昇も続いているわけですから。そういうふうにも思うのですが、この点についてのお考えも、一言お聞きしておきたいと思います。
  98. 金瀬忠夫

    金瀬説明員 国民年金の場合に、公的年金と福祉年金の併給を禁止しているということでございますが、御承知のとおり、国民年金制度は他のいかなる公的年金も受けられない者に対して創設されたものでございまして、拠出制をたてまえといたしております。しかしながら、制度発足当初すでに高齢であった者については、保険料の拠出の時間的余裕がございませんので、それにかえて経過的、補完的な福祉年金を支給することになっております。そうすることによりまして、いままで年金の支給対象外であった者にも年金を支給いたしまして、皆年金の受給体制を整えるということでございますが、この福祉年金を他の公的年金受給者にまで併給することになりますと、かえって福祉年金のみしか受けておりません多数の老人との不均衡という問題があって、いまのところ直ちにこれを撤廃するという考え方はございません。  しかしながら、公的年金の中には額の低い方もございます。そういう意味におきまして、現在一定の限度を設けまして、双方の併給をするという形で進んでおりますし、この併給の限度額につきましては、御案内のとおり、毎年改善をはかってきておるというのが現状でございます。
  99. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、併給禁止というこの問題についても再検討すべきだと思いますが、いずれにしても、いまこういう訴えのあるのが現状だと思いますから、それにかわる改善の処置をいろいろ考えていただきたいと思うわけです。  普通恩給受給者で、旧軍人及び警察、監獄職員を除いた人、教育とか、普通の公務員だった人たち約七万二千人のうち、計算してみますと、半数以下ぐらいが四万円以下、先ほどもお話ありましたが。二十年、三十年つとめて退職して恩給生活している人が、先ほどの宮さんのように切実な訴えをしているわけですし、いま読みましたはがきのような人たちは、おそらく普通の国家公務員だった人の七割ぐらいになるのではないかと思います。  この点でも、先ほど大出委員からもお話がありましたが、日本の社会保障制度がいかに貧困かということを示している実証だと思います。かつて国家公務員として一生懸命働いた人たちが、このような実情にあるという点で、今度若干の改善はありますけれども、この問題についての改善策を、一そう具体的に検討しなければいけないと考えるわけですが、さらに今後の改善についてのお考えを、簡潔にお伺いしておきたいと思います。
  100. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いまのお話が、恩給お話でございますれば、恩給全体の改善についていろいろな面で努力をしていかなければいかぬと思っておりますけれども、特にいま私が思いますのは、何といいましても低額恩給の底上げと申しますか、そういうものに一番配意していかなければいかぬのではないかと考えております。
  101. 中路雅弘

    ○中路委員 特にこの中で、先ほどもありましたように、中の格差が非常に大きいわけです。少し私も計算してみましたが、一律二三・八%アップの中で、たとえば旧軍人の仮定俸給をもとにして一律アップの処置をとると、一部分最低保障がされますから、これは計算していませんけれども、だから、若干倍率は変わりますけれども、一応今度の最低保障のあれを除きまして、一律アップで計算してみますと、兵でとってみますと、改善のアップが七万三千百円から八万三千二百円ぐらいですね。大佐でとりますと、三十万三千九百円から三十一万五千四百円。中将でとると四十六万八百円から四十七万一千円ぐらいのアップになります。このように、旧軍の将校と兵とを見ますと、金額に四倍から六倍ぐらいの大きなアップの違いが出てくるわけです。  こういう点で、先ほど大出委員も言っていましたが、ますますこの格差が開いてくるという点では、受給者最低を明確にして、最低の低額部分保障を中心にして改善考えるべきじゃないか。旧職業軍人の高級将校が非常に優遇されていることは変わっていませんし、一方で赤紙で召集された兵が依然として低額だ。こういう差別は私はなくすべきだと考えますし、先ほど御質問しましたように、恩給現実には、全般的な社会保障の一環としての性格あるいは機能を強く持ってきているわけですから、もっと下を厚くし、生活保障していくべきだと考えるわけです。今後の改善の方向として、このような措置が中心にとられることが大切だと私は思いますし、このことを強く要望したいわけですが、この点について、長官から一言、これからのお考えもお聞きしておきたいと思います。
  102. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いまの御意見でございますが、旧軍人だけについての階級差を全然なくしてしまえということは、やはりたてまえ上できないのではないか。非常に困難だということを私は率直にいま考えております。ただ、先ほど来の各委員からの御意見もございますので、さらに今後は、最低保障を今回初めて新設をしたわけでございますが、こうした面を強化拡充していくという方向で、恩給の配分を十分考えていったらどうかというふうに考えております。
  103. 中路雅弘

    ○中路委員 きょうは時間が限られていますから、なるべく短く終わりますが、あと二、三、具体的な問題でちょっとお聞きしたいのです。  施設庁お見えになっていますね。これは総理府じゃなくて施設庁らしいので……。昨年も若干御質問しましたが、連合国占領軍の行為による被害者に対する補償の問題ですが、戦後特に昭和二十一、二年ごろ、米軍によって殺されたり傷つけられた人たちへの補償の問題です。すでにこれは二回にわたる時限立法があって、少額の補償は行なわれてきたわけですが、補償額は二回で死亡者が三十五万五千、傷害者はそれ以下という非常に少額なものでありますし、また、これは、いろいろ比較のとりょうもありますが、沖繩と比較しても、昨年の私の質問についての御答弁で見ますと、沖繩の死亡者が五十九万五千二百九十六円、第一級障害者が百三万七千円ということで、沖繩の人たちの場合にも非常に低いわけですが、それよりも不当に低い補償額になっている。  サンフランシスコ条約で、アメリカへの被害補償の請求権を放棄しているわけですから、政府がこれらの人たち、おそらく一万数千人以上いると思いますが、生活保障しなければいけない責任があると私は思うわけです。すでに時限立法で補償は終わっているというたてまえになっているわけですけれども現実にこのような人たちから、また私たちのところにも、いろいろ障害者あるいはその遺族の皆さんから訴えも来ております。いまの状態で、生活が非常にたいへんですし、現に治療をしている人たちが、治療費がなかなか払えない。たとえば、昨年も私、取り上げた方ですが、両足切断、片足切断等でたいへんな被害を受けた人、死亡者で三十五万円ぐらいの補償で終わりということとか、あるいはたしか菊地さんという方だったと思いますが、急所を撃たれまして、いまもまだ治療に通っているのだけれども、治療費がなくて十分な治療ができないというような訴えも来ております。  いままで二回補償していて、これで一応終わりだというお考えなわけですが、私は、この点について、やはり対米請求権を放棄した政府には補償の責任があるわけですから、この問題で、もう一度実情をよく調べていただく必要がある、そして、やはり何らかの対策を検討していただく必要があるのではないかというふうに思うのです。いままで時限立法でこうなった経過ということは十分承知しておるわけですが、なおその上で、私らのところにも、いろいろ手紙や実情の訴えもあるものですから、皆さんのほうでもう一度、そういう方々がどういう現状にあるのかということは、お調べになっていただく必要があるのではないかというふうに思うのですが、こういうものに関連して、ひとつ御答弁をお願いしたいと思うのです。
  104. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 いま実例をおあげになりましてお話しいただきますと、私もたいへんに胸が痛むものなのでございますけれども、これは、いまお話ありましたように、占領期間中に閣議決定をしたり、閣議了解をとって見舞い金を支給した、それから時限立法があり、また、それのかさ上げの法律をつくって、そして見舞い金という形ではございますけれども、それぞれの方にお見舞い申し上げたという経緯がございます。  それで、沖繩との関係でございますけれども、沖繩の場合には、確かにある意味では本土よりも高い見舞い金が支払われたという部面もございます。しかし、これは計算の立て方が違っておりまして、本土が一律であるというのに対して、沖繩が職業別といいますか、年齢別といいますか、それぞれの賃金をもとにして補償額、見舞い金というものをきめております関係で、高い方も低い方も出るというのが実情でございます。  これは、技術的な面から申し上げますと、いまさかのぼって本土のそういう方々をもう一度考え直していった場合でも、当時の職業なり収入というものがどうであったかというようなものをつかまえることが、非常にむずかしい問題が一つございます。それからもう一つ一律に本土のを上げてしまうというような問題になりますと、沖繩での低い方がいらっしゃいますから、その差額がよけい増大してしまうという問題が起こります。もう一点は、これは本土だけの問題でございますけれども、実はこの給付金は昭和二十七年、要するに講和の発効直前のところの賃金をもとにして計算したものでございまして、占領期間中の一番終期のところでとったわけでございます。その後講和になりましてからあと、このような同種の被害を受けました方々は、地位協定に基づきまして正式に補償されております。しかし、その補償は、その年度その年度の賃金をもとにして計算しておるわけでございますので、もし占領期間中の方々の給付金を、時限を引き上げていくという形になりますと、占領終了直後からの実際に被害にあわれた、正式に補償金の出た方よりも上がるという結果が生ずるかもしれません。そういう意味において、本土内でもまたアンバランスが生じないか。そうしますと、一度地位協定十八条で正規で補償した方をも、また何らかの方法を講じなければならぬという問題にも逢着するのではなかろうか。いろいろ技術的な問題といたしましては、そのようなむずかしさがございます。  そこで、いろいろ考えたわけでございますけれども、この種の給付金というものの性格は、やはり事故にあった方々に対しての一つの見舞い金といいますか、であって、本質的に長くスライドしていく性質のものではない、そうして、その打ち切られた形での補償があって、あとは一般的な国の、たとえば身体障害者に対する問題というような形でいくのが行政の体系なのではなかろうかというふうに思う次第でございます。したがいまして、この問題だけを特に取り上げて、もう一度やり直すという問題は、非常に技術的にもむずかしいということになりますので、現状をとらまえての話ということになりますと、この法律なりこの手当てといいますか、それからは角度を変えた問題になるのではなかろうかというふうに判断するわけでございます。  そういう意味もありまして、昨年末、十二月の二十七日でございますが、国会に対する請願がありまして、それに対する処理意見といたしましては、この給付金に関しては、政府としては一応済んだという考えであるということを御回答申し上げておるのでございまして、私ども事務当局といたしましては、ちょっといまのところは、これをどうするという方法が見つからないというのが実情でございます。
  105. 中路雅弘

    ○中路委員 いま事務当局の皆さんに、どうするかという具体的なことで御質問しても、お答えしにくいと思いますが、どうなっているか、実情をもう一度ぜひお調べ願いたいと思うのです。その上で、どういう対策を立てるかということは、また具体的に検討もしていただかなければいけないと思いますけれども、その後もいろいろ、先ほど一、二例をあげましたけれども、そういう訴えも私たちのほうにも来ていますし、これは与党の皆さんのところにも、たびたびお伺いしているという話も聞いていますので、ひとつ実情を調べていただいて、検討をもう一度していただきたい、どうするか、どういう対策が考えられるかということについてですね。これは要望としてだけお話ししておきます。  最後に、もう一点だけですが、今度の改正案の中で、戦後の軍法会議処刑者で恩赦を受けた者に対する恩給権の回復というのがありますが、この中身を一言、簡潔に御説明願いたい。
  106. 菅野弘夫

    菅野政府委員 恩給の立て方といたしましては、たとえば在職中に禁錮以上の刑に処せられた者には恩給権がなくなるというふうな立て方になっていたわけでございますけれども昭和三十七年の改正におきまして、その中で、恩赦になられた方、しかも罪そのものが非常に軽微な方については、永久に恩給権を奪っておくということはいかがかというようなことがございまして、現在あるような法律改正がなされているわけでございます。  今回改正をしようといたしますのは、その中で、特に戦後の軍法会議で罪になられた方々の中で恩赦になった方に着目をいたしまして、戦後のいろいろな混乱期に、軍隊そのものも制度としてなくなっていく過程においていろいろありました問題につきまして、特にその中で恩赦になった方については、いま言いました二年とか三年とかいう限度のことをはずしてもいいのではないかということになりまして、改正案提案申し上げているわけでございます。
  107. 中路雅弘

    ○中路委員 そうすると、御存じかと思いますが、例の戦後、厚木航空隊で起きました事件、抗命罪ですか、その人たちも、今度の場合対象に入るのですか。
  108. 菅野弘夫

    菅野政府委員 厚木航空隊の方々全部、はっきりしたあれを持っているわけではございませんけれども、一般的には、いわゆる年金である恩給をもらっている方々は、小園大佐だけというふうに聞いておりますが、小園大佐につきましては、いま言いましたような趣旨で該当することになると思います。
  109. 中路雅弘

    ○中路委員 私も、ちょっときょう手紙を持ってこなかったのですが、この航空隊の事件に関係したもと大尉の田中悦太郎さんといいますか、週刊誌にも出ていましたが、神奈川県の藤沢に在住ですが、その方からも訴えの手紙を昨年いただいていたわけです。私たちは、戦争の継続について、これを肯定するとか、あるいは政治的な名誉回復という立場から取り上げるわけにはいきませんけれども、こういう混乱時に起きた問題での皆さんの、いまの生活の問題やあるいは家族の皆さんの現状を考えてみた場合に、そういう点では、やはり何らかの形の救済が必要ではないかというふうにいままで考えていたわけです。その点で、今度のこの改正案の中で、いま御質問したような戦後の軍法会議処刑者で恩赦を受けた者に対する恩給権の回復という問題もありますし、こういった中で、このような皆さんの家族を含めて、現状の中での生活の問題がこの中にありますから、こういう点をやはり十分考慮されていかれるように、特に要望しておきたいと思うわけです。  いまの点につきましては、ちょっと私も具体的な資料を全部きょう持っていないので、質問が具体的でないかもしれませんけれども、御存じでありましたら、終わりに一言、この事件についてお答え願いたいと思います。
  110. 菅野弘夫

    菅野政府委員 先ほど申しあげましたようなことでお答えが尽きると思いますけれども、このことによって、従来恩給が支給されないような方々についても、年金である恩給については、回復をする方々があるということでございます。
  111. 中路雅弘

    ○中路委員 一応約束の一時が過ぎましたので、終わります。
  112. 徳安實藏

    徳安委員長 小濱新次君。
  113. 小濱新次

    ○小濱委員 時間の制約を受けましたので、問題点を追ってこれから御質問をしていきたいと思いますが、まず、総務長官恩給局長、賞勲局長、それから厚生省の横溝課長さん等に御質問をしていきたいと思いますので、よろしく御答弁を賜わりたいと思います。  まず、総務長官に御質問いたしますが、今回の恩給法改正案の第二条関係で、昭和二十八年法律第百五十五号の附則に加えられた、第四十七条から第四十九条に関連をする問題であります。  御承知のように、終戦時、首都防衛の使命を負っていた厚木航空隊の事件でありますが、この事件は、厚木航空隊司令海軍大佐小園安名氏が中心となり、ポツダム宣言の受諾に反対し、徹底抗戦を主張し、積極的な抗戦活動を続けた事件なのであります。この行為に対し、昭和二十年十月二十六日及び十一月に、横須賀鎮守府臨時軍法会議は、主犯小園氏に無期禁錮刑、外七十名に対し禁錮八年ないし一年の判決を言い渡しておるのでございます。その後、新憲法の公布を機会として、昭和二十一年十一月三日、大赦令が出され、特赦基準において党与抗命罪も含められ、厚木航空隊事件関係者は、主犯とされた小園氏を除き赦免され、小園氏は無期禁錮から禁錮二十年に減刑され、昭和二十五年九月四日、特別上申により禁錮十年に減刑、昭和二十五年十二月五日熊本刑務所を仮釈放されて、その後病を得て、この世を去ったのであります。  厚木航空隊事件関係者の名誉回復については、いままでに国会並びに政府に対し、請願並びに陳情がなされており、新聞、テレビなどにおいても、幾たびか取り上げられ、また、相良俊輔氏の著作による「あゝ厚木航空隊」に詳細に記述されている問題でもあります。  今回、恩給法の改正によって、この種の恩給失権者が権利を回復されることになったことは、これは、政府または関係各位の御努力によるものと、深く謝意を表する次第であります。この法案が成立しました際には、一日も早く事件関係者または遺家族に対し、恩給が支給されるよう政府は努力すべきであると考えます。  また、本件に該当する人員は、約百人くらいと聞いておりますが、正確には対象人員は何人か、また陸海軍別にそれぞれ何人か、おわかりになればお示し願いたい。また、所要経費についても伺いたい。
  114. 菅野弘夫

    菅野政府委員 まず、該当者の数でございますが、これは、はっきりした数がわかりませんので、一応予算積算上百人ということで御提案を申し上げておるわけでございます。したがいまして、陸海軍別その他詳細な内訳は持っておりません。  それから、金額でございますけれども金額は、今度の改正によります予算所要額は、六百万というふうに計上いたしております。
  115. 小濱新次

    ○小濱委員 私どもは、経過をいろいろなことから伺っておりますが、大体陸海軍人含めて二千余名と聞いておったわけでありますが、どうして対象人員を百名と出したのか、これは、やはりはっきりしなければならない問題であろうと思うわけです。ところが、局長の御答弁ですと、はっきりしたわけではないと言う。先ほどの答弁もこれでありました。  しからば、この百名という対象人員のこの数字は、厚生省出してこられたものなのか、その辺、ひとつ厚生省の横溝業務第二課長から、御承知ならばその経緯について伺いたい、こう思います。
  116. 横溝幸四郎

    ○横溝説明員 私ども、かつて終戦後の受刑者を調べたことがございます。その結果が先生御指摘のような約二千三百名、こういうことでございまして、この二千三百名は、非常に若い方あるいは応召して直ちの方、こういう方が全部入っているのでございます。したがいまして、その中から、恩給局のほうとかつて相談したと思いますが、年金受給者を約百名と推計された、こういうふうに了解しております。
  117. 小濱新次

    ○小濱委員 そうすると、罪名別にあるいは計数別に推定をしての予算で、正確には不明だが一応の積算である、こういう形になるわけですか。御答弁願います。
  118. 菅野弘夫

    菅野政府委員 一応の推定をしてということでございますが、その推定も、いま厚生省のほうからも、お話がございましたけれども、非常に荒っぽい推定でございます。
  119. 小濱新次

    ○小濱委員 初年度六百万、平年度二千四百万と伺いましたけれども、この予算で、人員の増減がたとえあったとしても、その扱いには差しつかえはない、こういうふうに理解していいわけですね。
  120. 菅野弘夫

    菅野政府委員 一応の積算が、いま申し上げたものでございますけれども恩給費は全部まとめて予算の計上をされておりますので、差しつかえはないというふうに思います。
  121. 小濱新次

    ○小濱委員 これは総務長官にお尋ねしたいんですが、いま私がいろいろと当初、経過についてお話を申し上げました。お聞きになっていただいたと思いますし、よく御理解をいただいたと思いますが、いまやわが国は、戦後半世紀を経て経済大国に発展し、さらに新しい福祉国家へ転換しようとしており、終戦時の厚木事件のごときは、歴史の一こまであったと追憶するにすぎないほど時が流れておるわけであります。しかしながら、いまなお遺家族は、その罪名によって精神的のも経済的にも今日まで苦労させられてきているわけであります。ことばには言い尽くせない苦労があったことを、私どもは拝察をしているわけでございますが、終戦処理の一つとして、このような事件のあることに対し、政府は現在どのようにお考えになっておられるのか、これは担当大臣でありますので、ひとつ御所見を承りたいと思うわけであります。
  122. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 軍法会議の問題について、私が担当だとは考えておりませんが、恩給に関連してのことでございましたら私、お答えを申し上げなければならぬと思います。  いま小濱委員が御指摘になりまして、また長年この小園大佐の名誉回復の問題について、たいへんな御尽力をいただいたことは、よく承知しておるわけであります。そうした意味で、この小園大佐の名誉回復がなされたということは、たいへんけっこうなことだと考えるわけであります。
  123. 小濱新次

    ○小濱委員 今回の法案の中に、要綱の内訳の第九、「戦後の軍法会議処刑者で恩赦を受けたものに対する恩給権の回復」という見出しがあるわけです。ですから、その該当者の人たちを、これからいろいろ申し上げて、見解をあるいは御所見を承るわけでありますから、どうかひとつ国務大臣として、これは当然大いなる関心を持ってもらわなくちゃならない問題でありますので、そのような立場に立っての御答弁を特にお願いをする次第であります。  どうもお伺いしておりますと、正確な人員もつかんでいない、あるいはまた陸海軍人のそういう縦分けもできない、予算は一応計上してある、こういうことで、さて、どこまでこの問題を、この法案を通していただいた自後救済することができるかという目安も立たないわけです。該当者は、もう三十年もたっておりますからあきらめておるでしょう。何らそれらしい積極的な通知なり呼びかけがなければ、本人たちは無関心のうちに、もう申請もできないで、そのまま終わっていくんじゃないかという、そういう憂いも出てくるわけであります。戦後三十年たっているわけですから、当然そのような心境になるであろう。こういう立場から、何としてもこの際、この戦後処理といわれる一つの問題点の解決を、私はいま申し上げておるわけでありますので、どうかひとつそういう立場でこれからも御答弁をお願いしたい、こう思います。  次に、今回特に問題にもなっております恩給の実施時期の繰り上げについて質問をいたします。  恩給と公務員給与との実施時期を比較すると、あまりにも著しい開きがあり過ぎるわけです。公務員給与の場合は年度当初の四月から実施されており、恩給の場合は翌年の十月から実施され、一年六カ月のおくれがあります。恩給改善方式は、公務員給与の改善率にスライドさせているが、その実施時期も、年度当初の四月から実施すべきであると考えるわけでありますが、特に、この軍法会議処刑は戦後三十年も経過しており、その遺族の年齢も相当高齢者になっており、恩給の実施を遡及させて実施してやるべきと、こう考えるわけでありますが、この点はいかがでありましょうか。ひとつ総務長官から御答弁をいただきたいと思います。
  124. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 小園大佐の名誉回復の問題に関連して、小園大佐の恩給の問題に限定して御答弁申し上げますが、ただいまのように長い間御苦労をいただいたという事実も、よく理解できますけれども、小園大佐に限って支給時期を大幅に繰り上げ、その補償をいたすということについては、なお他の一般の恩給受給者の処遇の問題についても、よく検討してみなければならないと、われわれ、いま考えておるわけでございます。したがいまして、特例を設けることは、いまの時点ではなお困難であるというふうにお答えせざるを得ないわけでございます。
  125. 小濱新次

    ○小濱委員 当時の党与抗命罪の、いわゆる数多い犯罪者の中での中心人物ということで、非常に広く問題を取り上げられた方が小園安名海軍大佐であったわけです。私もちょうど江田島海軍兵学校におりました。そういうことで、よくこの問題については承知をいたしております。総務長官もたしか海軍出身であるはずです。これは知らないはずはないのです。そういうわけで、その関係者全体を厚生省総理府も、先ほども二千三百名と横溝課長はおっしゃっておりましたけれども、これだけの人を長い年月かかって調査に調査を進め、最後にそのふるいに残った人たちが百名、それに対する初年度が六百万、平年度二千四百万という数字が出てきたわけです。  私は、小園さんだけ救えと言っているわけじゃない。当時一緒に処刑された人が七十名、隣の航空隊にいまなおその名誉回復ができないでおる人たちがたしか十三名、その他国の内外で相当の人がいたはずです。そういう実態がいままでに明らかにされなかったわけですけれども、今回、恩給法の改正点で、これは、もう総理大臣も確かにこの問題については確約をしてくださいました。あるいは防衛庁長官、法務大臣あるいは総務長官厚生大臣もそうでありますが、とにかく五省庁の各国務大臣も、この件については御努力を賜わったことを私は心から感謝をしておるわけでありますが、ここまで来て、いわゆる決着の段階に来て、この問題に対する政府の答弁、御所見というものは、やはりはっきりさしていただきませんと、この問題の決着が、また今後に持ち越すような形になるのではないかということで私は心配しているわけであります。どうかひとつ、そういう立場から、いま一度総務長官の御答弁を希望いたします。
  126. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 先ほども恩給局長から概数で百名ということをお答え申し上げましたが、恩給の受給該当可能年齢四十五歳からでございまして、当時この一連の事件に巻き込まれて、軍法議会において処刑をされた方々の中から四十五歳以上の人を大体選んで、百人という数字を出したものと聞いております。   〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕
  127. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いま長官お答えいたしましたけれども、要するに、二千何百人という数の方は、確かに終戦後の軍法会議で処刑された方々でございまして、その中で、要するに年金である恩給の受給権を持っている者を想定いたしますと、百人ぐらいになるのではないか、先ほどお答えしたとおりでございます。そういうことを今回改正をするわけでございますけれども、そういう該当者に、実際この改正によって受給権を得られる人が漏れることのないように、私たちとしてもいろいろな手だてを講じていきたいというふうに思っております。  また、実施時期の問題は、長官先ほどお答え申しましたように、これはほかのいろいろな恩給改正の時期とやはり飛び離れるわけにはまいりませんので、事情はよくわかりますけれども、現在のところ、そういうことで御提案を申し上げているわけでございます。
  128. 小濱新次

    ○小濱委員 戦後三十年も経過して、その遺族の年齢も相当高齢者になっているわけですね。恩給の実施を遡及させて、そうして実施をしろということは、これは当然のことだと思う。いろいろとこの時期の問題については、御検討賜わっておるようであります。私は、そういう立場から、もう各委員もこの問題については、御質問があろうかと思いますし、これからの当委員会の活動にかかわるわけですけれども、やはり政府としてもそのお考えの上に立って、そして委員会の意見というものをよろしくそんたくをして、そうしてこの遡及実施に努力をしてもらいたい、私どもはそういうふうに考えておるわけであります。もう一度ひとつ局長から御答弁いただきましょう。
  129. 菅野弘夫

    菅野政府委員 実施時期の問題につきましては、先ほど来いろいろ問題になっておりまして、総務長官お答えを申し上げているところでございます。いろいろな考え方、いろいろな見方というものがございまして、私たちとしても、十分関心を持っておるところでございます。
  130. 小濱新次

    ○小濱委員 よく御存じのはずでありますが、少し申し上げさせていただきますが、当時としては神州不滅の信念に徹しという、この一身を捨てて憂国の至情に出た行為が、身をささげた国家によって罪に問われるということは、これは何という悲劇であろうかという、私ども考え方を持っているわけであります。今日、一人の生命は地球よりも重いと、こういわれておりますが、当時の軍人にとって、名誉は命よりも重かったはずであります。政府は、このような個人の名誉に対する棄損行為については、あらゆる方策をもってその名誉回復に応ずるべき義務が私はあると思うわけ  です。ただ恩給だけを復活させるからそれでいい  じゃないか、それも名誉回復の一つになるかとは  思いますけれども、それだけでは、まことに心さびしい措置といわざるを得ないと私ども考えておるわけです。  名誉回復という問題について、非常にこれは複雑な悩みを持っておりますから、答弁もしにくいかとは思いまするけれども、この問題については、もういろいろと各国務大臣の御意見もそれなりに伺ってまいりまして、ようやくここまで法改正に踏み切ることができたいまの時点ですから、やはり締めくくりのそういう立場で、決着をつけるというそういう立場で、政府の心あたたかい答弁というものが出てこなければならない、こういうふうに私は考えて御質問をしているわけであります。ひとつ再度、国務大臣の御意見を承りたいと思います。
  131. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 小濱委員の御心情はよくわかります。そうしてまた私らも、今日までの政府がこのような形で恩赦、大赦を行なったといういきさつも十分踏まえて、今後恩給問題につきましても、十分検討をしてまいる所存でございます。
  132. 小濱新次

    ○小濱委員 大臣の御心境あるいはお立場というものを、私は推しはかっていないわけではありませんが、非常に責任の重いお立場にある総務長官でありますので、御無理な御答弁を要求しているようになるかとは思いますけれども、三十年間待ちに待った、きょうはその最後の政府の御心情というのが、ここに出てくるわけですから、どうかひとつ、これからも、なおそうした心情の上に立って御答弁をちょうだいしたい、こういうふうに思います。  それから、総務長官にお尋ねを申し上げますが、この厚木事件を顧みますと、長い間、海軍において教育された軍人の、いちずな国を憂える至情から端を発した行為であって、一片の私心があったものとは思われないわけであります。私、戦後三十年間保管されていた判決文を発見することができました。昨日、総務長官に御提示していただくように依頼をしておきました。私の調べたところによると、旧軍事裁判にあっては、佐官が被告である場合は、弁護人が二人つくのが規則であったはずですが、小園氏の場合は、一人もつけられなかったと聞いております。裁判というには、あまりにもお粗末であり、また小園氏に対する臨時軍法会議は、終戦時の昭和二十年八月十五日を過ぐること二カ月後の十月十六日に無期禁錮刑を言い渡しております。そして翌日の十月十七日の大赦令においても、軍刑法による党与抗命罪は該当されないこととされたのも、連合国側に対する思惑があったということであります。  このようなきわめて政策的な措置によって小園氏は、当時、従五位勲三等功四級海軍大佐という、本人の名誉並びにこれに伴う諸権利を失権しました。そして遺家族は、その罪名によって精神的にも経済的にも、今日まで苦労されてきたわけであります。戦後約三十年にして、今日やっと恩給権の復権を得たのであるが、さらに、この叙勲制度の復活なども考慮して、このような人たちの失権した勲等についても復活させてはどうか。叙勲制度の復活は、戦後の功労者を対象としているが、政府行政措置であるから特例を設けて、勲等を失権したこのような人たちに復権させることを考えてはどうか。この点についての政府の所見を承りたい。
  133. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。  小園氏の勲記、勲章につきましては、いわゆる定例叙勲によりまして、昭和十八年五月十一日付をもって勲三等瑞宝章が発令されておりました。小園氏は、昭和二十年十月十六日、横須賀鎮守府臨時軍法会議で有罪の判決を受け、当該勲記、勲章は取り消されております。  今回、恩給法の一部を改正する法律案によりまして、小園氏の恩給が復活されるといたしましても、すでに戦後死亡されているので、取り消されました勲三等瑞宝章の勲記、勲章の回復に関しては、恩給と栄典とはその性格を異にしておるというような考えに立ちますれば、非常に困難な問題であると存じます。しかし、今後この問題につきましても、慎重に検討いたしてまいりたいと考えております。
  134. 小濱新次

    ○小濱委員 そういう実例もなかなか少ないようであります。しかし、過去を振り返ってみると、これは実例がなかったわけではありません。これは、もう関係者よく御存じのとおりであります。過去にそういう例もある立場から、せっかく恩給の復活問題が今回取り上げられたわけでありますので、そういう点で、この叙勲制度の復活という問題も、何らかの対策を講じていただきたいと私どもは心から念願をしておったわけでありますが、いま総務長官からは、今後慎重に検討する、こういう御答弁でございました。恩給が復活されれば、当然そのあとにこの叙勲制度の復活という問題も起こってくるであろうと思います。この名誉回復ということを、陳情者の方々もあるいは遺家族の方々も申しておるわけですが、その名誉回復というのがどういうことなのか。これは、もう金のことなんかは一言も言っておりません。恩給復活の問題あるいは勲章の問題等も言っておりません。  この判決文にありますように、みごとと言ってはなんですけれども、その功績、人柄、やむを得ない当時の事情等々が、四百字詰めの原稿用紙に十四、五枚もありましょうか、私も全部読ましていただきました。それでみごとということばを使わしていただいたわけですが、そういう立場からも、当時命をささげて戦いを宣言した、そういう人たちに対する最後の政府の心あたたかい措置ということになれば、恩給は復活したのですから、できるのですから、叙勲制度の復活も当然あってしかるべき、こういうふうに私ども考えるわけです。  慎重に検討するというそのお答えを、私どもは今後期待を持って、信じて、実現をお待ちしていきたい、こういうふうに考えるわけでありますが、総務長官、そういうふうに理解してよろしいかどうか、御答弁をお願いしたいと思います。
  135. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 詰めての御質問でございますけれども、勲章褫奪令というのがまだ有効でございます。その勲章褫奪令は、御承知のとおりの形で、特に小園大佐に対しての勲章、勲位剥奪ということになるわけでございます。したがいまして、このケースだけを特別に処理するということは、きわめて困難だと思いますし、同時にまた、小濱委員から昨日ちょうだいいたしましたこの判決の中の文章を見ておりますと、「日本政府ノ聯合国ニ対スル和平交渉ノ経緯並ニ」……
  136. 小濱新次

    ○小濱委員 長官、それはいいですよ。それを読むなら全部読まなければいけませんよ。前後のことばがありますよ。
  137. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ありますが、しかし、ここにあります諸点もございまして、したがって、小濱委員の心情は理解できますが、これを一つ行政措置の中で処理するということについては、なお慎重な検討を重ねる必要があるということを、重ねて御答弁さしていただきます。
  138. 小濱新次

    ○小濱委員 いま、たいへん失礼なことを申し上げたのですが、この判決文を読んでいただくとするならば、これは前後を全部読んでいただきませんと、その人の功績というものはわからない。その罪状というものもわからない。最後にその締めくくりのことばがあるわけでして、時間の制約も受けておりますので、それを全部読む時間がないことは、非常に残念に思いますが、あえておとめしたわけです。  最後に、総務長官にいま一言御答弁をいただきたいと思いますが、多くの遺家族は、先ほども申し上げましたように、恩給の支給や叙勲制度の復活のみを願ってきたわけではないのです。ただ一筋に、厚木航空隊事件及びその他関係者の名誉回復の措置を、長い間、国会並びに政府に対し、請願及び陳情を続けられてきたわけであります。今回の法改正は、恩給の復活という問題でありますけれども、叙勲制度の復活という問題については、今後慎重に検討するということでありますが、このことで名誉回復になったというふうに私は理解をしているわけであります。遺家族の名誉回復という願いがどこにあるのかということですが、せめて恩給法の回復ができたということで、これで名誉回復になると思います。叙勲制度の復活ができれば、なおそれにプラスされるものと思いますけれども、この法改正だけであっても、名誉回復になったのだというふうに私は理解しておるわけですが、そういうふうに理解をしてよろしいかどうか、ひとつ総務長官の忌憚のない御意見を最後に承って、私の質問を終えたいと思います。
  139. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 小園大佐の名誉回復は、大赦、恩赦になりたということで十分世間は納得すると私は思います。つまり、軍法会議の判決も、過去においては、そういうことに判定をされたけれども、現在は、そうではないのだということが明確に示されておるわけでございます。私は、それに恩給の復活ということ、これも加えますれば、名誉回復は十分に社会的に認識、認知されるものと考えております。
  140. 小濱新次

    ○小濱委員 総務長官からたいへん心あたたかい御答弁をいただいたわけであります。確かに恩赦、大赦があったわけですから罪名は消えた、こういうふうに私どもも理解をしておりました。しかし、罪名が消えたということでは、遺家族の方々にとっては、汚名挽回あるいは名誉回復にはならなかったわけですね。そこで、子供さん方が学校で、あるいはその他の場所でずいぶんといやな思いをしてきた、そういう記録もございます。何としてでもこの名誉回復はしてあげたい、こういうふうに長い間願ってまいりましたし、陳情、請願も続けてきたわけです。今回こういう措置をしていただいて心から感謝をしておるわけですが、ただいまの総務長官の御答弁で、名誉回復になったという御理解あるおことばを賜わりましたので、私どもも心から喜んでおるわけでございます。  この問題については、先ほども申し上げましたように、三十年も経過をいたしておりますので、もう遺家族の人はあきらめ切っております。本人からの申請書が出てこなければ、いつまでもこの恩給の支給ということはできないことになっております。その辺の扱いも、具体的な内容になりますけれども、今後よく検討をしていただきたいし、また、名誉回復になったこういういきさつというものも、ぜひともはっきりと受刑者の家族に徹底することができたならなあ、こう念願をするわけでございます。そういうことについての最終的な具体的な取り扱いについての考え方を、ひとつ当局にお尋ねいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  141. 菅野弘夫

    菅野政府委員 ただいま御指摘のように、せっかく法律ができても、遺族の方々あるいは御本人が知らないということでは相すみませんので、そういう点につきましては、厚生省あるいは都道府県を通じまして、そういうものの周知をはかりたいと思いますし、いろいろな会議を通じまして、そういうものの促進をしていきたいというふうに思っております。
  142. 小濱新次

    ○小濱委員 長時間ありがとうございました。以上で終わります。
  143. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 午後二時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時四十八分休憩      ————◇—————    午後二時三十五分開議
  144. 徳安實藏

    徳安委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。受田新吉君。
  145. 受田新吉

    受田委員 恩給法の改正案につきまして、これに直接関連するポイントに触れていきたいと思います。  総理府は、昨年当委員会において恩給法の通過に際しまして、附帯決議を付したことを御記憶しておられると思います。その附帯決議の御朗読をお願いします。   〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  146. 海老原義彦

    ○海老原説明員 読み上げます。    恩給法案の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、次の事項について速やかに善処するよう要望する。  一 恩給法第二条ノ二について、その制定の趣旨にかんがみ、国家公務員の給与にスライドするようその制度化を図るとともに、退職年次による恩給格差の是正措置を講ずること。  一 恩給最低保障額については、他の公的年金最低保障額との均衡を考慮して、その抜本的改善を図ること。  一 旧軍人に対する一時恩給に関しては、引き続く実在職年が三年以上七年未満の兵に対しても支給のみちを講ずること。右決議する。  以上でございます。
  147. 受田新吉

    受田委員 その目玉商品ともいわれるべき附帯決議の中の、「恩給法第二条ノ二について、その制定の趣旨にかんがみ、国家公務員の給与にスライドするようその制度化を図る」ということについては、どういう考慮をされましたか。
  148. 菅野弘夫

    菅野政府委員 ただいまの御質問でございますけれども、四十八年から恩給審議方式を改めまして、公務員の給与そのものにスライドをする、公務員給与の上げ幅そのものを指標にして恩給年額を改定していくということを四十八年にとったわけでございますが、本年の改正法案におきましても、国家公務員の給与一五・三%の上げ幅を指標といたしまして改善を行なっているところでございます。また、そのほかの格差是正等もやっているわけでございますけれども、いずれにいたしましても、四十八年それから四十九年続きまして、公務員給与そのものの数字に準拠をいたしまして改正いたすように御提案申し上げているところでございます。
  149. 受田新吉

    受田委員 われわれの満場一致できめた附帯決議の趣旨は、国家公務員の給与にスライドするよう、その制度をつくるということにあるのです。したがって、これを法律的にうたうならば、年金たる恩給の額については、国家公務員の給与が改定された場合は、これを基準にして、恩給仮定俸を翌年四月より自動的に改定するものとする、こういうようなところにすかっとうたい切らなければいかぬわけですね。この附帯決議は何年も何年も付してまいりまして、最近は、公務員の給与を基準と、こう明確にうたうようになって、その他の条件はなくしてしまったほど明確に国会の意思はきまったわけです。したがって、恩給法の二条ノ二を、いま私が指摘したような方向ですかっと割り切る。最近においては、その年度年度のスライド制が事実実施されたような形になっているが、情勢はいつ変わってくるかもしれないことは、過去の事例で明確なんです。これは、われわれが一応調べておるわけですけれども昭和二十六年の八千円ベースのとき、また一万円ベース、さらに二十八年の一万二千八百円ベース、そういう段階までは、現職者給与と恩給仮定俸とがほぼ同時同率にベースアップが行なわれたという形、私自身もう二十七年この問題に取り組んでおりまするから、よく知っておるのでございまするが、そういう形であった。  しかし、高度経済成長の谷間に残されてきておる状態が、一万二千八百円から一万五千四百円べースになるのに六年間かかった。次の一万五千四百円から二万円になるのに四年かかった。次の二万四千円ベースになるのに三年かかって、非常に苦難の生活にあえぐこと十三年に及んでおる。したがって、現職者はこの十三年間に九回ベースアップが行なわれて、給与水準が三万九千円ベースになった。恩給仮定俸の水準二万四千円との間に一万五千円という格差が出ておるわけです。  そういう問題の処理を抜きにして、この数年間の改善措置をもって、あたかもスライド制が事実上行なわれたような形を示しておられるわけですが、行政措置による不安定な過去の実態にかんがみて、法律に明文化しておくということが何より大切である。しかるがゆえに、当委員会の附帯決議は明確に、国家公務員の給与を基準にしてスライド制を制度化せよと明確にうたったわけです。ここへはっきり割り切るときが来たのであり、それが国会の意思を尊重する政府の当然の責任であると思いますが、これは国務大臣として小坂先生の決断により、スライド法制化を国会の意思のとおりに——昨年特にきびしい条件をつけたわけです。国家公務員の給与を基準にせよ、制度化をはかれ、こう要望したわけでございまするから、すかっとしたお答えをいただきたい。たとえば、来年からこの方向にするというお答えをいただけばけっこうでございます。
  150. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 受田委員の御主張のみならず、昨年の附帯決議十分拝読しております。同時にまた、スライドすることをはっきりと制度化せよということでございますが、先ほども恩給局長から御答弁申し上げましたが、なおスライド制に制度化するということ北ついては、十分の附帯決議の趣旨は尊重しておりますが、そこまで政府内部においての詰めが十分になされておりません。  したがいまして、今年度におきましては、人事院勧告の一五・三%を基準にし、また過去の積み残しと申しますか、格差是正を二カ年で調整をするというふうにいたしまして、実質的には一種のスライド制を今回はとらしていただいておるわけでございまして、なお今後、検討課題としまして、十分附帯決議を尊重して勉強をしてまいりたいと考えております。
  151. 受田新吉

    受田委員 附帯決議の趣旨を一部尊重したような御発言でございます。これは当該年度に限っては、そういうお答えが出ると思います。しかし、附帯決議の趣旨は、制度化をはかれという意味であって、その年度年度の行政措置をとれという要求になっていないのです。恩給局長さんも、それは御肯定になりますか、どうでしょう。
  152. 菅野弘夫

    菅野政府委員 決議を拝見しまして、そういう趣旨であろうというふうに思っております。
  153. 受田新吉

    受田委員 局長も、その趣旨であることを御判断になっております。総務長官も、その線に沿いたいという御意思であるが、今年は暫定的に当該年度の改定を行政措置でやった、こういう御答弁です。  そうしますと、もうことしからは附帯決議をつげなくても、来年からは法律的に法律規定としてこれをうたうようにするからよろしい、ことしからは附帯決議要りませんという御答弁であるかどうかをお答え願いたいのです。
  154. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 受田委員の御主張と申しますより、この附帯決議に対しては、多少十分なお答えにならぬかもしれませんが、公務員給与に単にスライドだけで万事済むかどうか。現在は、公務員給与の人事院勧告がわりあいに高額に出ております。しかし、これとても常にそういう状態であるかどうか。むしろ、そこに行政としての選択の幅を多少持ったほうがいいのではないか。これは少し言いのがれ的にお受け取りかもしれませんが、やはり行政というものの中には、そのようなある程度の取捨選択の幅が許されるほうが、かえっていいのではないかというふうにも思うわけでございます。原則的にはスライドすれば簡単であるということ、そしてまた、現在のような人事院の仕組みであるならば、恩給の増額というものも、きわめて順調に進むであろうというふうに予測されますけれども、情勢の変化あるいはまた特に財政の組み方及びその額等々から考えました場合には、そこに二条ノ二をスライド制にする、制度化をするということを明確に書かなくても、現在のような物価の非常に高くなっておるような情勢の中で、その場合には公務員給与にスライドし、過去の積み残しを調整するというような、ゆとりのある方式を許していただいたほうがいいのではないかというふうに、現在は考えております。
  155. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、その制度化は附帯決議の趣旨に沿うべきでない、そのつどつどの政府の情勢判断でやらしてもらったほうがいいという御答弁になると思うんですけれども、そうすると、この附帯決議は聞きおく程度にとどめることなんでございましょうか。
  156. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 必ずしもそういうふうに考えておるわけじゃございません。もちろん、大いに尊重してまいらなければいけないが、先ほどからも申し上げておりますように、政府内部におきましても、このスライド制を制度化するということについて、その他の年金制度につきましても、またその他の問題につきましても、本年に入りましてからだんだんとスライド制ということが議論になり、また具体化しつつあるような段階でございまして、まだ、それが恩給法について確たる指針が十分に練られておらないという状態であることを、率直にお答えするわけでございます。
  157. 受田新吉

    受田委員 そこで私、長官、はっきりしたいんですが、物価がどんどん上がるからということでございますが、恩給法の適用を受ける皆さんは、公務員給与の実施時期よりも事実一年半おくれておるんです、いま現在は。四月実施の公務員に比べて、恩給受給者は翌年の十月となっておる。一年半おくれておる。この一年半のおくれをせめて四月実施にしてもらいたい。一年のおくれにしてもらいたいという意味でございますから、一年おくれの四月実施にするという御意思かどうか。
  158. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 この場でいま直ちに、四月実施ということには御答弁申し上げることがなかなか困難な事情でございます。  と申しますのは、もちろん受田委員よく御承知のことでございまして、財政との関係等におきましても、四月に繰り上げ実施ということにはなかなか踏み切れないいろいろな要素もございまして、受田委員の御要望、お考え、あるいは他の委員からも同じような御質問をいただいておりますので、そうしたことを十分理解しておるつもりでございますが、いま直ちに四月より実施する、繰り上げるということは、お答えできません。
  159. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、一年半のおくれ、これを、四月とか七月とかいろいろ手もあるのですけれども、事実問題として、公務員との比較論においては、一年半のズレをがまんして、いままで皆さんがやってこられておることからいったら、公務員給与とのスライド制を法制化しても、一年以上のズレがあるという点の政府側の救いがあるわけじゃないですか。そうじゃありませんか。
  160. 菅野弘夫

    菅野政府委員 先ほど言われましたような御趣旨で、公務員給与の率に準拠して、翌年の四月に法制化をすることになりますれば、いま先生のおっしゃるとおりだと思います。
  161. 受田新吉

    受田委員 恩給局長の答弁は非常に明確です。したがって、恩給受給者が非常に不利な立場に立っておるのを補う方式を、ぜひこの際採用していただかなければならぬのです。私、何回もこれを担当しながら、退職公務員の恩給を受ける額と、現役の公務員の格差をいつも比較しておるのでございますが、昨年の十月に改定された恩給仮定俸給水準の五万六千八百十二円と、昨年の四月に改定された国家公務員の給与水準の九万二千二百九十円、格差が三万五千四百七十八円もある。パーセンテージにして六二%、こういう差が現実にできておるのです。それは、いまさっき私が読み上げたような、過去十三年間において累積したものがそのまま取り残されて、最近において現職公務員の給与にスライド的な行政措置をとっただけでは、根本的に解決されないものがある。その問題をこの際すかっとするためには、さっき私が読んだような形で、恩給法の二条ノ二に改善措置を法制化する必要がある。  それから、ことしまた附帯決議をつけなければならぬのかどうかですが、つけなくても、来年あたりから本格的に考慮するということであれば、附帯決議をつけなくて済むのですが、来年あたりから、これを実施に移すように考慮するという答弁が得られればと思います。それは勇敢にやられていいですよ。大臣の発言で責任をとってやられていいですよ。
  162. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 受田委員の御発言の御趣旨はよく理解できますが、いま直ちにそのような法制を行なうことは、現在きわめて困難であって、さらに検討を要する問題だと理解しております。
  163. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、附帯決議はあまり問題にしなくてもよいのだということは、せっかく昨年、当委員会、本会議で承認された附帯決議は、政府としては取り上げるわけにいかないのだ、こういうことでございますか。
  164. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 附帯決議を取り上げなくてもいいということを申し上げておりません。ただ、「制度化を図るとともに、」というわけでございますが、制度化という意味が、今年度においても実施しておりますように、公務員給与のベースアップをベースにして引き上げをしているし、また過去における、ここ数年来の問題を、二カ年計画で断層を埋めようという努力をいたしておりますから、二条ノ二を別に変更しなくても、現在の仕組みの中でも、実質的には同じような方向を進んでおるというふうに理解しておるので、そのように申し上げておるわけであります。
  165. 受田新吉

    受田委員 それは非常に問題があるのです。実質的にはやっておる。制度化と実質的にやっておるのとは違うわけです。ここは明確にしていただきたいです。
  166. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 法律的な言い回しのことは、私のほうがあるいは十分御説明できないかもしれませんが、私は、要するに恩給は、受給者の立場を考えるということが一つの基本的なたてまえであろうかと考えます。その場合に、過去において、また現在においても、恩給が一般の受給者にとって必ずしも十分なものでないという認識も十分持っております。しかし、これは、いわゆる拠出金とか積み立て金とか、そうしたものでなしに、国家が純粋に税金の中から恩給受給者に支払うものでございますから、要すれば、これは国家財政の一つの支出項目になっているわけでございますから、そうした意味合いにおきまして、われわれとしましては、受給者の立場のみを考えるということには、やはりいささかそこに考慮を要する点もあるわけでございまして、そうした意味合い等も含めまして、御趣旨は十分尊重しながら善処してまいりたいというお答えをいたしたいと思います。
  167. 受田新吉

    受田委員 趣旨を尊重して善処するということですね。つまり、さっきの発言を、附帯決議の趣旨に沿うて善処するという答弁として了解してよろしいかどうか。
  168. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 そのとおりでございます。
  169. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、御発言の中で非常に前進した発言を得たとして了解をします。  もう一つ、この決議の中に、「退職年次による恩給格差の是正措置を講ずること。」というのが一つある。退職年次において非常な差があることは、さっき十三年間のテンポの鈍さを退職者にしわ寄せされていることを指摘したのですが、これらの問題の処理のしかたにいろいろある。いま政府案を見ると、七十歳以上の老齢者という限定のもとに、三百分の一加算措置を用意されておるようです。しかし、こういうこそくな手段でなくして、一般的格差是正方法として、一つの試案ですが、約五分の一号俸の格差を生ずるという過去の現実にかんがみまして、五十五歳で一号引き上げ、以後五年ごとに一号引き上げるという方法をとる手はないか。すなわち、五十五歳で一号、六十歳で二号、六十五歳で三号、七十歳で四号俸、七十五歳で五号俸、八十歳で六号俸、八十五歳で七号俸、九十歳で八号俸、それからさらに生きておられれば、さらにそれに加えていくという、一つの試案がございますが、そうした年齢的な処遇改善による格差是正ということ、また老齢者をいたわる、年をとるほどそうした特別措置がとられていくという、こういう試案については、局長さん、試案としてはおもしろいと思いませんか。
  170. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いまお示しの試案でございますけれども、これは確かにそういうようなお考え方があり得ると思います。現実に、昨年改正をいたしました七十歳以上というものをとらまえまして、四号俸ということを導き出しました根拠というものは、いまお話しのようなことをも踏まえまして、老齢者優遇の措置を含めそういう措置をとったわけでございますので、その他の年齢においてどういうふうな実体的な差が出て、それをどういうふうに補うべきかということについては、これは、またいろいろな角度から検討しなければならないと思いますけれども、御試案として拝聴いたしましたものは、それはそれなりにおいて非常に意味があるんじゃないかと思います。
  171. 受田新吉

    受田委員 局長さんに試案としての意味を認めていただいたわけですが、これらも参考にしながら、そういうことによりますならば、いまの四十八年十月からの七十歳以上の老齢者に対する四号引き上げとか、今度計画の中にある、七十歳以上の三百分の一増率案というようなものも、自然にその中へとけ込んで、効果的に運営されるということになると思うので、ひとつ試案に対しての御検討を願いたいと思います。  この機会に、一般公務員にあわせまして、傷痍軍人の皆さんの問題にも触れておかなければなりません。  私、去年もおととしもずっと指摘したのですけれども、増加非公死の対象になる方々の処遇でございますが、これらの方々に対しては、たとえば特項症の人は総額約二百万、また家族加給あるいは介護手当に相当する特別加給、そういうものを入れると二百三十万以上になる。その方がなくなられると、一挙に、公務扶助料の率にならないで普通扶助料の額をもらわれるわけです。これは一ぺんに十分の一以下にダウンをするわけでございまして、青春を犠牲にしたその重傷者の奥さんというものは、急に低収入で、月二万円程度の処遇でそれからの人生を暮らさなければいけぬことになるわけですね。これは非常な悲劇です。公務員扶助料というものは、公務でなくなった立場の方々であり、現に現職の公務員は、戦没者の、公務でなくなった方に比べてさらに高い率の扶助料をもらっているわけでございますので、これを、現在の公務員との比較においても検討しなければならぬ。  それからもう一つは、増加非公死の皆さん、傷痍軍人の妻であって、御主人がなくなられて急に手当がダウンするということに対しては、もしその傷痍軍人が戦死しておられたならば、一般の公務扶助料はもらえるのですから、せめて公務扶助料の率を適用する、あるいは、扶助料というものは普通恩給の半額、二分の一という原則から出てきたわけですから、そういうことになるならば、たとえば特項症の二百万もらっておられる御主人がなくなられたら百万、その半分をもらうのが筋だ。その考え方には二通りあると思うのです。つまり、戦死者の妻としての公務扶助料を傷痍軍人の死亡にあたって与えるか、あるいは増加恩給をもとにし、普通恩給を加えたそれの半額を支給するという形をとるかです。扶助料というのは、普通恩給の半額という原則論からいうならば、症度の高い傷痍軍人の死亡の場合には、その半額を支給する。しかし、それは結果論から見て、非常に高額になるということになりますので、私は当面、公務扶助料の率を増加非公死の遺族に与えるという原則を確立していただくほうが賢明であると思うのです。いかがでございましょう。
  172. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いろいろ御意見を承ったわけでございますけれども、増加恩給というものは、非常に重い傷を負われました、あるいは病気になられました御本人に対する給付でございますし、それから、その御遺族に給せられる扶助料というものは、これは、やはり性格の違ったものであるというふうに思いますので、いま互いろいろな角度から御意見をいただきましたけれども、なかなかむずかしい問題を含んでいるというふうに考えております。
  173. 受田新吉

    受田委員 私が指摘した中で、公務扶助料の額を支給するという筋は、これは財政的にも取りやすい一案だと思うのです。それに近づける検討をしていただけるような道を、いまとっておるのかどうか。全然考慮していないのか。私、これは何回も指摘しておるわけで、このあたりで公務死の妻という立場で、傷痍軍人でなくなった人の場合に特別措置をとる、その方向へ前進的検討をするというようなこと、あるいは現にもらっている額の半分ということになると非常に高額になるのですが、その考え方も一つあるわけですがね。特項症の場合は二百万ですから百万を上げる。これは他とのバランスの問題もあるから、このほうは困難であると私は思いますので、公務死の場合の公務扶助料と同額にするという前進的な検討をしてもらえるかどうかです。
  174. 菅野弘夫

    菅野政府委員 公務扶助料というものは、結局、公務のために死亡した者の遺族に給されるものでございまして、増加恩給を受給していた者が、公務といいますか、その公務である病気そのものの原因によっておなくなりになられれば、もちろん公務扶助料がいくわけでございますけれども、その公務と全く関係のない病気や傷でおなくなりになったという場合には、やはりこれは、その事由が公務外の事由になるわけでございますので、公務そのものでなくなられた方の扶助料と同額にするということは、なかなかにむずかしい問題を含んでいると思います。引き続き検討さしていただきたいと思います。
  175. 受田新吉

    受田委員 公務で負傷した、やがて公務の傷以外のもので死亡したら、公務性がなくなるという理論をいま言っておられるのですが、公務で負傷してその人がなくなったということであれば、公務障害の人がなくなったという解釈にいけばいいと思うのです。そういう寛大な解釈をしてあげるほうか——遺族にとっては、もし御主人かなくなっておられれば、公務扶助料をもらえるのだ、しかし、御主人がけがしたまま、長い間からだが不自由をして、苦労して長生きをした上に死んだときには、公務の死亡のほうではない、普通の扶助料だというのは、ちょっと人道的にも問題があると思う。そういうようなものを一緒にして検討していただきたいと思います。  次に、昨年私、ここで提案をして、恩給局も予算要求をされておったようでございますが、例の傷病年金の減額率二五%を一五%に緩和された措置がとられているのですけれども、予算要求では二五%を、減額をなくするという予算要求をされたのでしたね。いかがでしょう。
  176. 菅野弘夫

    菅野政府委員 そのとおりでございます。
  177. 受田新吉

    受田委員 それを大蔵省にやられたとなれば、このあたりで、ことしはこの減額措置を、ひとつ予算要求をしてかちとってあげるという心づかいを、長官なさってくださいませ。よろしゅうございますか。
  178. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 受田委員の、傷疾者その他に対する非常にあたたかい思いやりの気持ちはよくわかります。  いまの御提案でございますが、この減額が、二五%が一五%にとどまったことは遺憾でございますが、さらに今後努力を続けまして、もっと減額のあれを引き下げるという方向で努力をしてまいりたいと思います。
  179. 受田新吉

    受田委員 私、質問を大量にかかえてあせっているのですが、多少の遅延については、委員長においておはからいをいただきます。あと、吉田さんのほうが質問されないとなれば、吉田さんの分を割愛していただいて、私のほうに繰り上げてプラスしていただいて、それでお願いします。
  180. 野呂恭一

    ○野呂委員長代理 できるだけ御協力を……。
  181. 受田新吉

    受田委員 それではお願いします。  私、ことしは少し整理してみたのです。整理して短く質問しますから、一問一答のようなことでお答えいただきましょう。最低基準について、ちょっと伺いたいのですが、例の症状の等差の調査会の答申した中で、まだ未処理のものがありますね。あれは、どういうことにされましたか。
  182. 菅野弘夫

    菅野政府委員 御質問の問題は、昭和四十四年でございましたか、症状等差調査会が答申をいたしたものの中で未処理のものがあるということだと思いますけれども、これは毎年一生懸命勉強はいたしておりますけれども、現在のところは、昨年と同じでございまして、前進をいたしておりません。  と申しますのは、あの答申は、先生御存じのとおりに、内部疾患等につきましては、そのとおりにやったわけでございますけれども、外部疾患等におきまして上げるものと下げるものと両方のことがございましたので、そこらを、上げるものだけ上げて、下げるものは下げないというわけにもまいりませんで、また、現実に下がるということでは困るという面もございまして、現在なお検討を続けているということでございます。
  183. 受田新吉

    受田委員 私、昨年でしたか、高額所得者の恩給の一部加算停止等で、旧法を、最も受給者に有利なような方向で改善されておるが、そういう意味で、こういう問題は、本人に有利な方法をとって、改悪する分は改悪しないで、いいところをとって上げるというぐらいの心づかいを、傷を受けた人にはやってあげるほうがいいと思うのです。人間愛というところでそういう方法をとられて、下げるほうを、実際いままでもらったのを減額されたら、これは傷痍の身となった人にはたまらぬですから、下げるほうはそのままにしますよ、そして改善せよと要望された分は直してあげますよ、これが、人間愛に燃えた行政府の責任だと思います。
  184. 菅野弘夫

    菅野政府委員 症状等差そのものにつきましては、結局、全部のバランスというものがございますので、そのバランスをくずしてするということが、非常に深い問題をはらんでおりますので、なかなかむずかしい問題でございます。  しかしながら、先生が言われましたように、上げるものはすみやかに上げたほうがいいじゃないかということでございますので、そういう点を含めまして、少しでも前進できるように、これからも検討したいと思います。
  185. 受田新吉

    受田委員 わかりました。  それから、私、去年もここで論議したのですが、昭和八年当時の恩給法と十三年当時の恩給法、その中で、傷痍軍人の場合は、十三年の制度を採用しておられるんですね。そうすると、そこで八年の制度でやるならば、例の七項症と一款症の問題などは、スムーズに解決するんだがなと提案したわけです。したがって、昭和八年の制度を採用すると、この間差の問題が、一項症は同じですが、二項症以下でほんのささやかでございまするが、間差条件がよくなってくるんですね、八年と十三年を比較すると。これは、やはり有利なほうで採用してあげることになれば、そう余命幾ばくもない人もおられるし、これで戦争は二度とないのですから、戦争の痛手を受けた人に対してのはなむけとして、昭和八年の恩給法の間差適用をやるということで、問題の七項症と一款症の処理などもできることでございますし、一項症以下がほんのわずか救われるということでございますので、制度的にもいい制度だと思うのです。  局長さんも、局長になられて非常に責任を感じておられると思いますが、この私の提案は、一べつもすべきものでないのか、検討に値するものか、御答弁を願いたいのです。
  186. 菅野弘夫

    菅野政府委員 御指摘のとおり、昭和八年と昭和十三年とでは、その間差率というものが違っているわけでございますけれども、この間差率が違ったゆえんというものは、十三年になりまして、先生御存じのとおりのいろいろな改正がございまして、また新しく七項症というものができたということになりましたので、そういうように間差率が違ってきたわけでございます。七項四款という現在の制度は、まさにこの十三年の制度によっているわけでございまして、そういう歴史的ないきさつがございますので、昭和八年の間差にすぐに返るということには、技術的にもあるいは考え方においても、なかなかむずかしいわけでございます。  そこで、先ほど七項症一款の問題等で御指摘のありましたように、七項症の間差率は若干上げたわけでございますけれども、さらに、そういうものも含めまして、今後十分検討してまいりたいと思います。
  187. 受田新吉

    受田委員 検討材料にしてもらえるようでございますので、ぜひなにしていただきたい。  今度は二つ、三つ一括して申し上げます。去年も私は指摘したことですが、私、どうも納得できないのは、昭和十二年、つまり日華事変以前の戦傷病者、この戦傷病者等の妻は特別給付金の対象になっていない。これは、やはり一応の区切りをする点から、やむを得ないのだという御処置でございますが、シナ事変であろうと満州事変であろうと大東亜戦争であろうと、傷病の身となった立場の人から見たら、これは同じ条件にあると思うのです。こういう時勢になってきたので、この問題を再検討する時期が来ていないか。一ぺんもう終わった法律だから、済んだ法律だから任務完了というわけにいかない。  ということは、三十八年四月二日以後の傷病恩給等の裁定者があるわけですね、それ以後において裁定された人。その人はついにこの法律の適用を受けていない。それから、結婚して奥さんがある人と、傷病のために結婚のできない者があるのです。しかし、それを実際に世話している者への——これも私は、何回か指摘したのですか、結婚ができないようなからだの事情がある。生殖機能が喪失されて、奥さんがだれも来ないというような傷病者、それを守ってやっているおかあさん、あるいは妹が兄さんのめんどうを見ている、普通だったら奥さんを迎えてしあわせであろうその人のために、その不自由部分をせめて介抱しておる、世話をしてあげておるおかあさんなり、ごきょうだいなりにその対象を広げてあげる、これは、やはり筋として通ると思うんですね。  これは、恩給局でなくて援護局のほうに入ると思うのですが、質問の通告を、これは去年はやったがことしはやってなかったので、援護局どなたか来ておられますか。——これは、いかかでございましょう。もうおしまいの法律、終わったんだから、かんべんしてくださいということでございますか、その問題としては、いい問題が出たから検討しましょうというのか。ちょっと私、質疑の通告をしてなかった責任を感じておりますが、しかし、いままでに質問したことですからね——それでは、これは後ほど御検討していただくことにします。あとで永末君が質問しますから、その際に、私の質問に御答弁をいただくことにします。四時間ぐらい時間があるものですから、御検討いただきたいと思うのです。  それから、内地発病の勤務関連罹病者が、特例傷病恩給と特例障害年金をもらっているわけですが、戦地の場合で、証拠書類が十分でないということで非公務扱いとされた、そういう人々を何とか救う道はないか。戦地はアウトである、内地はセーフだというこの問題これも、このあたりでひとつ結論を出したらいいのじゃないかなと思います。これは、どちらから御答弁いただいてもと思いますが、やはり内地がセーフになっている法律がいま成立しておるのですから、戦地はアウトだが内地の発病の場合は、勤務関連罹病者として処遇されている。戦地の場合はアウトとされている。——それでは、これは後ほど一緒に御研究の上で御答弁願います。  幸いに、去年私、要望した例の国民金融公庫の恩給担保融資額、これが二十万円上がってきた。これは四割増してくださったのですが、せめて恩給受給の三倍程度、三年分程度の額に増額する道はないか。これは国民金融公庫以外のほうで利用できないんですね。したがって、この一本しかない制度を、もう少し幅を広げる御検討をしておられるかどうか。
  188. 菅野弘夫

    菅野政府委員 昨年同趣旨の御質問がございまして、その後における金融公庫との折衝等におきまして、いま申されましたように二十万、四割の増額がなされたわけでございますが、私たちとしましては、さらに要望を重ねまして一その額の増大ということを、恩給受給者のために努力をしたいと思っております。
  189. 受田新吉

    受田委員 総務長官、おととしごろから恩給局は非常な勇気を持って、この受給者処遇改善に積極的に取っ組んでおいでる。それから総務長官も、そういうお役所へ来られて指揮監督権をお持ちであるわけなんで、厚生年金制度などのおくれた制度がどんどん追いついて、二倍以上にもどんどん上がっていくという状態になった機会でございますので、過去の人として、これからの人生を暮らされる恩給受給者、これは在職中、異常な公務の重要性と責任の重大性のために苦労されて、報いられることが退職後に期待された人々を優遇する点においては、これはもう現職、退職者を一貫して、国家への奉仕という点では十分積極的に考えていい問題だと思いますので、長官、いま私が指摘しましたような諸問題を、勇気を持って前進的に検討する、善処したいという御答弁を仰ぎたいと思います。
  190. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 受田委員の長い議員の御生活の中から、また、特に恩給についての深い御造詣のある種々の御意見は、十分拝聴いたしましたし、また、お考え恩給受給者に対する深い愛情のことについても、決して私は否定するものではございません。今後そのような方向の中で、さらに恩給局等におきましても、そうした面に、より具体的な結論の出るような方向で努力をいたしてみたいというふうに思っております。
  191. 受田新吉

    受田委員 厚生省、どなたが来ておられますか。——私、この機会に、これから提案する問題は、恩給法の適用を受けるに至っている遺家族の問題に触れていきたいのです。  靖国神社法案の問題が非常に重大化されている段階でありますが、戦没者の遺族及び戦没者の霊に報いるのには、取り急ぎ、すぐにでもやってあげねばいけぬ幾つかの問題があるのです。公務扶助料の金額というものは、今度改善措置をされて月三万円、一年間に三十六万円、これは大事な御主人をなくした遺族に対する金額として、あまりにもささやかだと思うのです。すでに三十年の日月をけみして、大東亜戦争の未期になくなられた方にしても、三十年たっておるわけでございますから、御両親ももう非常に老齢化しておられる。そうして若き奥さまであった方も、当時二十歳であったお方であってもすでに五十歳、青春を犠牲にして白髪をいただいておられる。たいへん私、申しわけないと思っておるのです。その方々に対して、公務扶助料の月三万円という金額が適正かどうか、政治的な御判断の御答弁を願いたいのです。
  192. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 月三万円というのが、現在の物価の状態から見て適切であるかどうかということ、もちろん十分ではないということは常識的にいえると思います。しかし、同時にまた、この公務扶助料そのもの、恩給そのもの、これが全部国家財政、予算、その中での取りきめになっておりまして、こうした不遇な方たちに対する配慮というものが、今回の国会におきまして、鋭く提起されておることも事実でありまして、四十九年度においては、いろいろな御批判はあっても、その中で一応予算は成立をいたしておりますが、五十年の、来年の予算におきましては、いま御指摘のような方々に対する、さらにもっと大幅といいますか。もっと手厚い政治の配慮があってしかるべきだというふうに私は考えております。
  193. 受田新吉

    受田委員 基本的に賛成していただいたわけですが、靖国神社の問題の前に、そこへ政府・与党も力を入れてしかるべきはなかったか。  それから、政府出した資料を拝見しますと、南方その他の地域で二百四十万の戦死者がいらっしゃる中で、百七万しか遺骨収集ができておらぬ。終戦後復員した方々が持って帰られた御遺骨を含めてその程度しかない。残りの遺骨収集について、先般大出委員からもお尋ねがありましたが、私もこれは、やはり十年も前からこの問題を提案しておるわけでございまして、遺骨収集については、学生の遺骨収集団、昭和四十二年に日本大学を中心とする学生たちが、南方諸地域へ遺骨収集に行きたい、金がないということで、自民党の、いま建設大臣をやっていらっしゃる亀岡さんたちとはかって、お互いが金を集め合うて、少しでもということでスタートをして、毎年毎年これらの学生たちは、現地へ遺骨を収集に行かれては毎年報告に、この前も第八次遺骨収集団が、団長以下全部がそろって私のところへ報告に来られた。去年からようやく国費で三分の二の旅費の援助をしていただくようになりました。去年から三分の二です。だが、現在まだ三分の一を自費で金を集めなければいかぬということになっている。  この南方諸地域の遺骨収集について、予算をようやく二億円台に引き上げてこられたようでございますが、これをひとつ全面的に、大量に遺骨収集団を送って、いまなお眠っておられる南方の諸地区へ総がかりで、短期間に御英霊の御遺骨を祖国へお返しいただけるような措置をとるべきだ。これは十億かかろうと二十億かかろうと、もう戦地に三十年も雨ざらしになっておられる遺骨を思うと、国家予算の二十億や三十億は問題ないですよ。たとえば、この間の高額所得者の土地成金の皆さんが、五十一億の土地を売りさばいたが、たった八億の税金で済んでおる。こういう方々には、税法を改正してもう三十億ぐらい出していただけば、お一人だけでもう遺骨収集が完全に終わるほどの予算にもなるのです。  中国は、厚生政務次官だった山口敏夫さんが行かれて、去年でしたか、八百九十九柱の御遺骨をお持ち帰りになったが、中国では、これが最初で最後ですよというお話が出たということでございますが、中国とは国交回復したのです。小坂大臣、総理にもよく話をして、国交回復した中国に眠られる御英霊たちを、ひとつこの機会に御遺骨を送還するために、外交交渉で大きな功績をあげてもらいたい。  またビルマなども、インパール作戦の犠牲者には、どうも治安が明確でないというので遺骨収集ができておらぬということ、これも外交交渉で、現地の治安を確保しながら、あの湿地帯で三十年も恨みをのんでなくなった御英霊の御遺体をこっちへお返しする。いま西イリアン等への重点的に計画を進めておられるようですが、五十年を目途に全部をやろうという御計画にしては、予算が二億円ばかりというのはあまりにも少ない。ひとつ十億、二十億、三十億、遺骨収集に予算を三十億、五十億とっても、どの党も反対する者はおりません。大賛成だと思うのです。全面的、短期間に遺骨収集に全力をささげるという大方針を閣議で、小坂総務長官担当国務大臣として、あるいは厚生大臣と共管のお仕事として御提案をいただきたい。
  194. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 遺骨収集につきましては、もちろん、私は非常に重大な関心を持っておりますし、ただいま御指摘のようなわずかな予算でやっているということについても、さらに改善をする必要があるということをかねがね考えておるものでございますが、遺骨収集に関しましては、厚生大臣が所管をしているわけでございますので、よくきょうの受田委員お話を伝えまして、善処方を強く伝えるつもりでございます。
  195. 受田新吉

    受田委員 ここに「平和への礎」として、青年遺骨収集団の持ってきた資料、この間、第八次の調査団の持ってきたこの報告書を読んでも、まだたくさんの御英霊が眠っておられる。沖繩などでも、まだ二万余柱が眠っておられるわけだ。私がこの間、内閣委員として、奥田先生たちとも一緒に視察に行ったのですが、あの海兵隊の根拠地などには、われわれが地下ごうに入っていくと、このくずれた奥に御遺体がたくさんあるのだ、こういう状況です。こういうことを考えると、靖国神社の論議の前に、国が当然やっておかなければならぬ仕事がころがっておることを、私は忘れてはならぬと思うのです。これについて、ひとつこの機会に、厚生大臣と相談して閣議を動かして、いまの私の要望、短期間に急速に全面的な遺骨収集を、外交交渉を含んでやるということでございまするので、御期待を申し上げます。  さらに、これにひっかけて、現地に慰霊碑を建てておる地域というのは、フィリピン、沖繩等少数の地域に限られておるのでございます。サイパンに南太平洋の全面的な代表をするものがあるという程度でございますが、これは、御遺骨を収集した地域で島一つ一つにその島を代表する、日本人のかつてのとうといみたまを、この丘に祭るというものが、各所にあっていいと私は思うのです。これは、外国の政府にも御理解を願って御協力を願わなければならぬ。小野田少尉の帰還についてフィリピンが協力したように、遺骨収集にあわせて現地に慰霊碑をつくるという、これは軍国主義でも何でもない。ほんとうに平和への祈りとして各地に慰霊碑をつくる建設計画を立てること、これはどうでございましょうか、厚生省のお仕事として。
  196. 河野共之

    ○河野説明員 遺骨収集についてでございますが、先生ただいま御指摘のように、厚生省といたしましても、昭和四十八年度から二億円以上の予算を計上いたしまして、すみやかな収集を行ないたい、かように考えておるわけでございます。ことに、昭和五十年は、終戦三十年に当たりますので、私どもといたしましては、明年度以降におきましても、さらにその充実、促進をはかってまいりたい、かように考えております。  それから、慰霊碑についてでございますが、私どもといたしましては、現在までに硫黄島、フィリピン、サイパンに慰霊碑を建立したわけでございます。遺骨収集と申しましても、すべてのなくなられた方の御遺骨をお持ち帰りすることはできないわけでございますので、その霊をお慰めするために、私どもといたしましては、従前の旧戦域におきまして、主要戦域に慰霊碑を逐次建ててまいりたい、かように考えておるわけでございます。これにつきましては、外国の領域内でございますので、外務省等を通じまして折衝を進め、できるだけすみやかに慰霊碑の建立を促進いたしたい、かように考えております。
  197. 受田新吉

    受田委員 これも戦後三十年たった今日ですから、積極的に取り組んでいただきたい。いままでに、これはやっておかなければいかぬわけですね。これが抜けておる。  それから、かつてシベリアで抑留された方々がなくなったハバロフスク、イルクーツク等に、ソ連に対する墓参団が二、三回、国費で代表的に行なわれました。またモンゴルにも、昭和四十一年八月二十五日から三十一日の間に政府墓参団が派遣された。そのとき、自民党の長谷川峻代議士と不肖受田新吉政府墓参団に随行して、現地であのアムラルト、ホジルブロン、スフバートル等の墓地に、祖国を離れて二十数年たった皆さんに、たくさんのお酒を持っていって、一つ一つのお墓へそのお酒をたむけて、御苦労さまでしたと、霊を慰めてきたのです。  ところが、ほかの地区に眠る方々に、遺族の墓参団というものがまだ行なわれていない。自分の肉親終えんの地に、せめてこの年とった自分が最後のはなむけをしてやりたいというお年寄りは、ついにその日を待たずしてこの世を去っておる。小野田寛郎さんのおとうさんおかあさんは、幸いに生きておってよかった。あの人ももう十五年前には、自分のむすこは死んだと思って、現地のお砂でもっていま墓をつくりましたと、私にお手紙をくださったことは、この前私が申し上げたとおりなんです。生きておってよかった。けれども、多くの人は、むすこ終えんの地に訪れることもなく、遺骨も見ないで、箱に紙切れが一つ入って戻るというこの悲惨な状態である。  平和回復して三十年、現地墓参団の大量な進出に旅費を補助して、飛行機等も日本航空の特別機を派遣して代表者を現地に送る、そして慰霊碑をつくってやる、こういうふうにすることが、遺族に対する最も大きなはなむけだと思うのです。私は、それを政府がなぜ——今日まで私は、何回かこれを指摘したことでございますが、きょうあえて強い提案をさしてもらうわけです。靖国神社法案に非常な熱意を持っておられる政府・与党としては、せめてその前になさらなければならぬ大事な仕事が抜かっているのです。これに精魂を傾けてあげるほうが、御遺族としてもお喜びですよ。靖国神社がそのまま靖国神社法案となる、それよりも、自分のむすこ終えんの地に、せめて生きている間に行ってはなむけをしたいという親心がきっとあるですよ。  沈船、三十メートルから四十メートルまでは引き揚げが可能である。陸奥が沈没したのを、先般やっと引き揚げが完了して、私の郷里にいま記念館ができている。七百余柱の御遺体に御遺族がようやく御面会できた。これには政府は金を出してはおらぬ。むしろこの際、国費で南方諸地域の、レイテ島の那智という軍艦を、最近現地政府の協力で引き揚げるとか、遺体を引き揚げることが計画されておるそうですが、そういう浅い海に沈んだ船の御遺体を揚げることに思い切って国費を使う。百億、二百億、五百億と金を使っても、こういう問題を片づけてあげることが、戦後はまだ終わらないという遺族の気持ちからいったら私は大切だと思うのです。  総務長官、私がいま提案している問題、非常に大事な問題なんですが、私の申し上げている気持ちをおくみ取りいただいておると思うのです。あなたも、いまの閣僚として最も有力な地位におられる方であるし、担当される国務大臣として、私がいま提案した各種の提案について御意見を伺いたい。
  198. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いまの御意見、遺骨の収集につきましても、全く同感でございます。一部面でございますが、沖繩について二万余柱がまだ収集されていないという事実もございますので、沖繩につきましては、厚生大臣ともすでに話をいたしておりまして、急速に遺骨の収集をはかりたいというふうに考えております。その他の地区につきまして、御指摘のとおり、やはり遺骨収集について、もっと熱意を傾けるべきであるというふうに考えます。  また、同時に慰霊塔につきましては、これは、やはりそれぞれの地区において、日本人というものに対するイメージがございましょう。御指摘のように、これは外交交渉の中でわれわれの気持ちが達せられるよう努力をするのは当然でございますが、ただ、ソ連及び中国に対しての遺骨収集及び墓参の問題でございます。こうした問題につきまして、私も、総務長官としての立場でなしに、一人の衆議院議員として何回か話をしたことがございます。この問題はなかなかむずかしいものを含んでおります。したがいまして、ソ連の墓参一つとりましても、領土問題との関連においてきわめて困難であるということは、国民もよく承知していることだと思いますが、さらに重ねて努力を傾けていくことが、戦後の日本の政治姿勢というものにもつながるかと考えまして、御指摘の諸点につきましては、十分考え、かつ国務大臣として努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  199. 受田新吉

    受田委員 抜けたのが一つある。現地墓参団です。私がお尋ねしているのは、ソ連にも二回にわたり墓参団が派遣された。遺族をお連れして、現地でたくさんのお墓に真心をささげた。モンゴルにも政府墓参団がすでに派遣された。そういう状態で、南方諸地域にも遺族を中心とした墓参団を派遣して、おい先短い御両親や青春を犠牲にして白髪をいただくようになった英霊の奥さんたちが、肉親終えんの地にお参りできて、最後の霊を慰めてあげる、こういうものを計画的におやりになる必要がある。これは靖国神社の問題の前になさらなければならない政府の仕事である。このことです。
  200. 河野共之

    ○河野説明員 慰霊巡拝団の派遣でございますが、先生御指摘のように、現在は遺骨収集の困難でございますソ連地域、モンゴルというような地域につきまして、国費でもって慰霊巡拝を行なっておるところでございます。南方地域の遺骨収集に際しまして、私どもは、昨年度から日本遺族会の青年部の方々の御協力を得まして、遺族の方に遺骨収集に参加協力していただいておるところでございますが、その遺骨収集実施の際に、おのおのの戦域におきまして、慰霊祭を行なっておるところでございます。  年老いた御両親の慰霊巡拝というような問題でございますが、私どもとしましては、遺骨収集の進捗状況を見まして、この問題についても、積極的に検討してまいりたいと考えております。
  201. 受田新吉

    受田委員 これは、遺骨収集団とあわせてというやり方が一つある。これは、もう全面的にそうした展開をしていい。むしろ御遺族の人が御一緒に遺骨収集団に入って、火葬に付する場に礼拝をしていただくような場合があったほうがいいこともあるということで、これに対する予算措置はどこかに講じておりますか。ソ連やモンゴルに行くときは、予備費か何かで出したんじゃないかと思いますが、そういう戦没者の遺族の墓参、慰霊碑等に対する予算は、厚生省で計上されておるのかどうかです。
  202. 河野共之

    ○河野説明員 ソ連墓参等につきましては、ソ連政府の了解を得次第、予備費あるいは流用の措置で実施をしておるところでございます。  それから、一般の慰霊の点につきましては、たとえばサイパンそれからフィリピンというようなケースにつきましては、慰霊碑の序幕式の際に、国費をもって遺族の代表の方に参列をしていただく、こういうことで実施いたしております。  なお、一般的な慰霊巡拝団の慰霊巡拝の点につきましては、現在予算措置は講じておりません。将来の問題として検討してまいりたいと思います。
  203. 受田新吉

    受田委員 将来の問題としてでなくて、すぐ着手していただきたい。  もう一つ、ここで墓苑のことですが、千鳥ケ渕墓苑、これは昭和二十八年に閣議決定でスタートした。当時、私は草場隆圓厚生大臣からも御相談を受けて、この無名戦士の墓苑の創立には全面的なお手伝いをした記憶を持っているのですが、これは、ただ閣議決定だけでなくして、何らかの形で千鳥ケ渕墓苑が国営の、戦没者の中の無名の方々を祭る場所として規定されるべきものではないか、こう思いますが、御意見を承りたい。
  204. 新谷鐵郎

    ○新谷説明員 現在、環境庁設置法に基づきまして、国の営造物といたしまして千鳥ケ渕戦没者墓苑の維持管理をいたしておるわけでございますが、国の営造物のそれぞれの設置目的がございますけれども、現在のところ、千鳥ケ渕墓苑は、遺族に引き渡すことのできない戦没者の遺骨を納める場所として設けてある場所でございまして、こういう設置目的の範囲内にとどまっております限りは、必ずしもそういう目的を一々法律でもって明らかにしなくてはならないものではなく、現在のような維持管理のしかたでもって足りるものではないかというふうに考えておるわけでございます。
  205. 受田新吉

    受田委員 千鳥ケ渕墓苑は、国民にどのように理解をさせておられるわけですか。
  206. 新谷鐵郎

    ○新谷説明員 千鳥ケ渕墓苑の性格につきましては、先生からお話がございました二十八年の政府の閣議決定をもちまして、無名の戦士の戦没者の墓といたしまして、毎年慰霊祭も行なわれ、そういうものとして国民の方々にも理解をいただいておるというふうに考えております。
  207. 受田新吉

    受田委員 これは無名戦士だけでなくして、有名の方の霊も祭るという形で、有名、無名を通じてのお墓という形はとれませんか。   〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕
  208. 新谷鐵郎

    ○新谷説明員 私どものほうの立場では、墓地公園といたしまして維持管理しておる立場でございますので、戦没者のそういう霊を、どういうふうに日本の国内においてお慰めするかという問題につきまして、私どもの立場でお答えしにくい面もございますけれども、先生御指摘のような問題は、むしろ、そういう問題につきまして、今後、国民全般の方々がどういうふうに考えるか、国民感情の推移を見まして、政府全体の方針としてきめていただくべき問題であると思います。
  209. 受田新吉

    受田委員 そこで、問題が発生したわけです。小坂長官、私がここで何回か指摘したことでございますが、靖国神社法案、これは、この法案そのものの審査という意味ではありませんで、その前提の問題で、私が何回かお尋ねしておるのでございまするが、千鳥ケ渕墓苑の扱いをめぐって、戦没者の霊をどう敬弔するかという問題、これは政府が、当然政府の責任でこれをなすべきである。したがって、この問題については、戦没者の霊の追悼に関する審議会のようなものをつくって、各界の良識のある人をお招きし、また遺族の皆さんもそれに入ってもらう。そういう各界、宗教界等の理解も得られるような形で、戦没者の霊をどう敬弔するかという審議会というものがつくられ、そして、靖国神社の法案というようなものが、そこから出るということであるならば、われわれ審査を十分さしていただこうという提案をしているわけなんです。  ところが、自由民主党の単独の法案提出で、そして自民党が思いつきでいろいろな人の意見を聞かれるという形であると、これは問題である。したがって、政府自身が審議会を設置して、総理府の付属機関とすれば、これはみんなあなたのお仕事になるのです。前に臨時恩給調査会というのもできたですね。そういうこともあるのでございますから、総理府の付属機関として審議会を設置して、そこで各界の良識あるお考えをいただき、そこから政府提案として法案をお出しになる。英霊は自民党の命令で第一線へ行かれたのでなく、日本国政府の名において、国家のためになくなられたという意味からは、この法案の出し方はいろいろあるが、少なくともこうした戦没者の霊に敬愛の情をささげる法案というものは、政府提案が適当である。それは党派を越えて、政府提案に対して意見がいろいろと論議されることは好ましいことであるという提案をしたわけでございますが、総務長官としては、私のその提案は非常に名案であると思われるかどうか。迷案という意味でなくして……(「これは恩給法だから」と呼ぶ者あり)つまり戦没者の霊に関係するから恩給にじかに関係するのです。これはおわかりですね。恩給法は戦没者の公務扶助料が圧倒的に大半を占めておる。したがって、遺族の立場も考えさせていただくならば、そうした遺族の側から見たら、恩給法の対象になる公務扶助料をいただける遺族は、自民党の遺族でなくして日本国民の遺族である。日本国民の靖国神社という形でなければならぬという意味から言うならば、政府案というものがここへ出てしかるべきであった。私の言うことが迷案か、あるいは非常に名案というべきかということを、いま御所見を承りたいのです。
  210. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいまの審議会設置のことは、私、寡聞にして初めて承り、したがいまして、いまここですぐ審議会設置がいいとか悪いとかということは、ちょっとお答えしにくいわけでございます。さらに、もっとよく受田委員の御所見を承りながら、その設置が適当かいなかということを、私は考えてまいりたいと思います。
  211. 受田新吉

    受田委員 この問題は、いま私が提案した精神によって総務長官の責任で——私、歴代の総務長官に、二人ほどこの問題をお尋ねしたのです。政府としてこれを提出すべき問題だということをお尋ねしたのですが、それは政府案としていくのには、法制局等でなかなか異論があるというようなことがございました。それをこなした上で法案をお出しになるという形をおとりになるべきであった。いまからでもおそくないわけでございまして、国民的規模で英霊を十分御優遇し、平和への基礎となった方々にお報いするのには、そういう意味で検討する必要がある。そこから自然に生まれた美しい機関が、千鳥ケ渕墓苑を含んだ靖国神社の今後の課題が解決される問題になると思うのです。私、あえてこの問題を提案しました。  時間が来たようでございますが、あとは、またほかの委員に足らぬところは補っていただきましょう。委員長要望において質問をただいま打ち切れという命令が来ましたので、あえて打ち切ります。  以上をもって質問を終わります。
  212. 徳安實藏

    徳安委員長 和田貞夫君。
  213. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 まず、総務長官にお尋ねしたいのですが、年金という定義です。年金というのは生活費なのか、生活の足しなのか、小づかいなのか、どっちですか。
  214. 菅野弘夫

    菅野政府委員 年金という広い御質問でございますので、あるいは厚生省のほうが適当であるかもしれませんけれども恩給というふうに問題をしぼらせていただきますれば、恩給も公務員に給する年金でございますので、お答えをさせていただきます。  恩給の場合には、別に定義というあれはございませんけれども、公務員が忠実に長い間勤務に服した、その勤務に対しまして、御本人なりあるいは遺族なりに対して、国が保障として給付される金銭であるというふうに考えております。
  215. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 国が保障すると言うけれども、国が何を保障するのですか。私の尋ねているのは、恩給とは、言われるように公務員に対する年金でしょう。年金たる恩給はとか、年金たる恩給のとか、必ず恩給年金だということをうたっておるのです。だから、私の尋ねておるのは、年金というのは、生活保障するものなのか、生活の足しにするものなのか、小づかい銭なのかということを尋ねておる。
  216. 菅野弘夫

    菅野政府委員 なかなかむずかしい御質問でございます。先ほど申しましたような一般的な抽象的な考え方が定義として言えると思いますけれども、そのものは、もちろん公務員なりあるいはその遺族の生活一つの有力なささえになるものであるというふうに思っております。
  217. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 生活のささえになるということは、生活保障するということですね。
  218. 菅野弘夫

    菅野政府委員 恩給は、御存じのとおり在職年と俸給月額というものによって規定をされておりまして、それは非常にばらつきがございますので、恩給額そのものですべての人の生活保障するという性格ではないと思います。しかしながら、先ほど申しましたような性格を踏まえて、そういう方々生活一つのささえになるというふうに思っております。
  219. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そうすると、生活の足しということですね。
  220. 菅野弘夫

    菅野政府委員 生活の足しというと、何か非常にことばが悪く聞えますけれども、それは、生活のささえの一つになるというふうに思います。
  221. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 どの程度のささえになるのですか。
  222. 菅野弘夫

    菅野政府委員 それは、一がいには申せないという感じがいたします。したがいまして、最近問題になっておりますように、低額の恩給というものは、そのささえになる力が、高額のものに比べれば弱いわけでございますので、低額恩給改善、たとえば最低保障額の引き上げ等々について、大幅な改善等を繰り返しているわけでございます。
  223. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 扶助料も同じようにいえますね。
  224. 菅野弘夫

    菅野政府委員 扶助料は、遺族を対象にするものでございますので、性格は若干違いますけれども、同じような性格を持っているということはいえると思います。
  225. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 やはり日本の年金制度の根源というのは、恩給から始まったわけですから、恩給に対するものの考え方が、他のすべての年金に波及してくるわけです。かつては、恩給というのは公務員の特権として、そのかわりに公務員というのは安い給与でしんぼうする。だから、公務員の場合は、老後のささえのために恩給制度というものを特権として保障されておった。これが年金の歴史の始まりですが、今日では、戦時中に厚生年金制度ができ、戦後、国民年金制度ができ、さらには、それぞれに該当しない方々に対しましては福祉年金制度ができて、国民皆年金制度ということになっているわけなんですが、少なくとも年金の定義といいますか、いまお答えのありました年金の性格といいますか、これは、先進的なヨーロッパ諸国の年金の定義あるいは年金の性格、こういうものに比べると、全般的に、恩給制度を含めて日本の年金制度というものは、かなり立ちおくれておるというように私は思っておるわけなんですが、これらについての御見解をひとつお聞かせ願いたい。
  226. 菅野弘夫

    菅野政府委員 各国の制度を横に並べてそう検討したことはございませんけれども、社会保障全体についていえば、日本の制度が必ずしも十分でないということは、間々巷間いわれているところでございまして、社会保障の予算額等でそういう御指摘がある場合があるわけでございますが、これは私の所管と全くはずれますので、お答えする限りではございませんけれども、各国の制度を並べてみますと、やはりこれは、それぞれの歴史なり沿革なり仕組みなり、あるいは受給者等々も対象が違いますので、いろいろございますけれども、これは、日本の恩給制度が非常に悪いということにはならないというふうに思っております。
  227. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 厚生大臣お見えになっておりませんので、これは閣僚の一人として総務長官にお尋ねいたしたいと思いますが、生活保護基準に基づく生活保護世帯に対する費用、生活保護費ですね、これは文字どおり生活費だ、こういうふうに思うのですが、これも生活費なのですか、生活をささえる費用なのですか、どっちですか。
  228. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私は、非常に単純に考えますが、生活をささえる費用だというように解釈しております。
  229. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そうすると、生活をささえる費用として同じ性格を持つわけなんですが、あなた方のほうは、そういうように解釈しているわけですが、そうすると、年金としての生活をささえる費用のウエートと、生活保護費としての生活をささえる費用のウエート、どちらのほうが高いですか。
  230. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いま、生活保護との対比で御質問があったわけでございますけれども、やはり恩給制度恩給年金というものと生活保護費あるいは生活保護制度というものは、これは観点が、あるいは制度の目的が違うわけでございますので、単純に比べるわけにはいかないのじゃないかというふうに思います。生活保護というのは、御存じのように、社会扶助の観点から、資産その他あらゆるものを活用しても、なお最低生活ができない場合に、その国民の最低生活保障するたてまえのものでございますし、恩給は、先ほど言ったようなものでございますので、これは一がいに比べるわけにはいかないというふうに思っております。
  231. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 恩給年金制度というのは、ここらあたりで、生活保障費なんだ、こういう観点に立つ必要があろうかと思うのですが、その考え方はないですか。
  232. 菅野弘夫

    菅野政府委員 現在の恩給制度は、これは御存じのように、百年の歴史があるわけでございますけれども、その仕組みなり考え方なり、それから年金額の算出がよってくるところのもの等を考えますと、そのこと自体がすぐ生活保障費であるというふうにはならないというふうに思います。もちろん、生活のための一つのささえになるものでございますので、できるだけ低額恩給は増額する等々の諸施策は必要だ思いますけれども、先ほど申しましたように、生活保障そのものではないというふうに思っております。
  233. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そこらが意見の食い違いがあるのですが、やはり恩給を含む年金制度というものは老後の生活保障する、こういうことがたてまえでなくてはならないと思う。そこらあたりが非常にあいまいであるために、なかなか根本的な解決というのはなされないで、先ほど来論議されておりましたように、公務員の給与改定と一年半もズレがあっても、それはそしらぬ顔をしておる、あるいは物価が急騰して、それが生活に及ぼす影響が非常に大であるにもかかわらず、直ちに年金の額の改定というものをやろうとしない、そういうことに終わっておりますし、それを繰り返しておる、私は、そういうように思うわけなんです。  それはそれといたしまして、少なくとも生活のささえになるということでありましたならば、その生活のささえというものは、生活費の二分の一に相当するものが妥当であるのか、あるいは生活費の八〇%を占めるのが妥当であるのか、六〇%が妥当であるのか、あるいは一割に満たない金額が妥当であるのか、これが、いろいろまちまちであるし、あいまいであるわけなんです。少なくとも生活のささえになるということであれば、かなりのウエートを占めた金額でなければ、生活のささえになるというようには思えないわけなんですが、大体生活費に対するウエートのかけ方が、どの程度で生活のささえになるというふうにお思いになるのですか。
  234. 菅野弘夫

    菅野政府委員 たいへんむずかしい御質問でございまして、どうも数字であげるわけにはまいりませんし、それから御家族の立場立場がそれぞれ違いますし、年金受給者条件も違いますので、何%だあるいは何割だというふうに申し上げるわけにはまいらないわけでございます。
  235. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 生活保護費は、標準世帯で一級地で月六万六百九十円、二級地で月標準世帯で五万五千二百三十円。もちろん生活保護費というものは、いま御答弁がありましたように、国民の最低生活保障するための政府がつくった基準によるところの金額であります。これと比べまして、どの程度の金額がそれでは生活をささえる金額になるのか、生活の足しになる金額なのだというふうにお思いですか。
  236. 菅野弘夫

    菅野政府委員 先ほどから申し上げておりますように、それぞれの恩給受給者の構成あるいは世帯構成等がございまして、一がいに金額を申し上げるわけにいかないのでございます。  それから、恩給だけで生活をささえるというのは、現行制度のもとにおいては、はなはだ無理であるというふうに思います。先ほど申しましたように、一つのささえであると思います。先ほどあげられましたのは、あるいは標準四人世帯かとも思いますけれども、老人の一人世帯等が一つの目安になるというふうには思っております。今度の最低保障額の改定等々におきまして、一般的に、年限をつとめて、その年限を完了して普通恩給等をもらう方の最低保障額というものは、そういうお一人の方の場合を比較すれば、これを上回るようになっておると思います。
  237. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 いまの年金制度なり恩給制度が、掛け金によるところの積み立て保険制度ということであるから、いま言われるような答弁にならざるを得ないわけなんです。掛け金というものは収入に応じて、収入の高い者はたくさん負担する、収入のない者は負担しない、本来所得税に相当する掛け金の掛け方は、税の中に包含されてもしかるべき性格のものであります。しかしながら、年金受給ということになりますと、これは生活の足し、生活のささえどころか生活保障する、こういう立場に立った年金制度でなくてはいけない。それは、過去において、その者の掛け金を掛けた額が多かろうが少なかろうが、あるいは極端に言うならば、まるまる掛け金は掛けておるまいが、ひとしく生活保障額として、生活費用として年金額を算定していく、こういう考え方でなくてはならないわけなんですが、そういうような考え方に立ち向かわせるために、恩給を含めた年金制度を抜本的に改革をしていくべきであるというようにお思いであるかないか、どうですか。
  238. 菅野弘夫

    菅野政府委員 御趣旨の点は、よくわかるわけでございますけれども恩給制度につきましては、先ほど来繰り返して申し上げておりますような沿革なり仕組みがございます。したがって、現在の恩給が、いま御趣旨のようなことで、さらに機能を果たすということは、やはり低額の恩給をできるだけ上げて、そういう機能を果たしていくということに、最も重点があるんじゃないかというふうに思っております。
  239. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 それは、過去の歴史をあなた方が固守する上に立って考えておられるから、そういう答弁しか出てこない。だから、先ほど受田委員のほうから質問があり、あるいは朝から各委員から質問がありましても、昨年の委員会におけるところの附帯決議、公務員の給与改定にスライドして年金の引き上げを制度化していくべきである、こういう決議がなされましても、前向きになった答弁が出てこないわけです。公務員の給与が改定されれば、直ちにそれにスライドして変えていくべきなのだという考え方に立ち向かわせるためには、過去の歴史というものをあまり固守しないで、やはり根本的に改革をすべきだという考え方に立たなくちゃならないと思うのですが、それはどうですか。
  240. 菅野弘夫

    菅野政府委員 過去の制度にこだわり続けておるわけではございませんで、かなり過去の制度にないものを取り入れたり、あるいは過去の制度と比較すると非常に大きな変化を持たしたり、そういうことをこの何年かやり続けておるわけでございまして、今度の改正案の中にも、そういう趣旨のものが幾つか入っておるわけでございます。したがいまして、歴史を固守するというような精神は毛頭ございませんで、新しい感覚を踏まえて、できるだけの前進をしていきたいと思っております。
  241. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 過去のいきさつ、過去の歴史ということに固執しないで、それでは抽象的なことじゃなくて具体的に申し上げますが、公務に携わって、そして恩給を受給する資格を得た、あるいは年金を受給する資格を得た、その人が六十五歳以上になった、あるいは七十歳近くになった、そういうような方に、子供がそれぞれ独立しているが、六十五歳以上の夫婦の方に、一体幾ら金額を支給することが生活のささえになるというようにお思いになるのですか。
  242. 菅野弘夫

    菅野政府委員 これは、先ほど来の御質問と同じ趣旨のことでございますので、それが直ちに何円であるというふうなお答えをすることは、たいへんむずかしゅうございます。  そこで、繰り返しのお答えになりますけれども、そういう方の改善ということを含めまして、公務員給与へのスライドなりあるいは過去の格差の積み上げ是正なり、その他新しい制度としての老人等に対する特別措置とか、最低保障制度の格上げあるいは新設とか、そういうものを総合してやっているわけでございます。
  243. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 六十五歳以上の者に給する普通恩給最低保障額が、今度改正されて年額三十二万一千六百円。月額にいたしますと二万六千八百円。間違いないですね。
  244. 菅野弘夫

    菅野政府委員 そのとおりでございます。
  245. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 六十五歳以上の夫婦で、東京の場合生活保護費が五十一万六千四百八十円、月額に直しまして四万三千四十円、こういう金額であります。もちろん、生活保護費と恩給ないし年金生活は異なるとはいいながら、同じ六十五歳以上の老夫婦が生活をするにあたって、ささえる費用として生活保護費よりも安い金額、その生活のささえになる金額が、この三十二万一千六百円であり二万六千八百円である、こういうようにお思いになって改定額出してこられたのですか。
  246. 菅野弘夫

    菅野政府委員 三十二万一千六百円というのは、けさほど来いろいろ御議論のございますとおりに、共済組合の最低保障制度を目安にしてつくったものでございます。
  247. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 生活保護費と見合うことを全然検討しなかったのですか。   〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  248. 菅野弘夫

    菅野政府委員 生活保護費のことを全然忘れているというわけではございませんけれども生活保護費と直接結びつけて検討しているわけではありません。
  249. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 結びつけて検討する必要がないとか、あるとかいう問題じゃなくて、同じ政府部内で、生活最低方々に対して、生活保護基準をどの程度に定めるかということを検討するにあたって、恩給ないしは年金最低保障額をきめるについては厚生省厚生省でやれ、おれのところはおれのところでかってにやるんだという姿は、これは好ましい姿ですか。政府部内としてどうですか。
  250. 菅野弘夫

    菅野政府委員 もちろん、生活保護費のことを全然頭に置かないということではありませんで、そういうものを踏まえてはおりますが、しかしながら、この制度仕組み自体あるいは対象自体、目的自体が違うわけでございますので、すぐ右と左とを比べてというわけにはいかないということでございます。  それから、二人世帯というのをあげられたわけでございますけれども、これは二人世帯で比べるのが正しいのかどうかという問題もございまして、そこら辺も一がいに言えないのではないかと思います。生活保護費のアップとそれから恩給のアップというものを総合的に比べてみますと、これはその年によって上下ございますけれども、昨年もあるいは本年も、これは恩給全体のアップのほうが高いわけでございます。また、特にいま問題にされました最低保障に至っては、これは非常に大きな額の増額でございます。
  251. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 役所や役人というのは、必ず、もとが安いか高いかということを考えないで、前年度はこうであったからこれだけの倍率になったのだ、前年度の予算はこれだけの予算だったのだから、ことしの予算はこれだけの倍率になっておるのだと言う。そのもとになることを全然、安いか高いか、低いか高いかということを考えないで、そういうような官僚的な発想でものを論じておれば、あなたの担当する恩給制度あるいは日本全体の年金制度というものは、これは何ぼたっても前進しないですよ。そうじゃないですか。現時点に立って、今日六十五歳以上の老夫婦、あるいは老人一人の生活保障する。先ほどから言われているように、生活保障するという考え方でないあなた方が、生活をささえる、生活の一部に供する、生活の足しにする、そういうような観点に立って考えるならば——もともとがこうだった、前回はこうであったので、ことしはこうしたのだというのじゃなくて、やはり今日の物価高によるところの生活費というものはどれだけ必要なんだ、だからこうすべきなんだ、そういう踏み切り方でこの最低保障額というものを出してきてしかるべきじゃないですか。どうですか。
  252. 菅野弘夫

    菅野政府委員 言われる御趣旨はよくわかりますけれども、先ほどから申しているように、最低保障制度の歴史的沿革もございますし、これを共済制度、従来やっておりましたよりもさらによるべき制度として共済制度を用いたわけでございまして、また、短期の制度の創設ということも新しくしたものでございまして、これは相当画期的な改善であるというふうに思っております。  しかしながら、これでもちろん足れりとするわけではございませんので、今後ともこの額なりあるいはこの制度なり、そのことについては、真剣に検討を重ねていきたいというふうに思います。
  253. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 六十五歳の方々に対する恩給の額の最低が、先ほど言いました、ここに出ております三十二万一千六百円、月額にいたしまして二万六千八百円。これが、本人がなくなってその妻が、やはりこれは六十五歳以上になっておった、そうする場合に、扶助料がその半額の十六万八百円、月額にいたしまして一万三千四百円になるわけですね。それが、今度生活保護費の場合に、六十五歳のおばあちゃん、夫がなくなっておばあちゃんが単身で生活する、その場合に年額二十八万八千四百六十八円、月額にいたしまして二万四千三十九円、これが生活保護費として六十五歳のおばあちゃんに対して、老婦人に対して国が保障する金額です。これと比較いたしまして、半額ですよ。恩給の場合に、これが必ずしも老夫婦の生活の足しにするということであるかないかということは、先ほどにおわしておりましたけれども、扶助料という形になった場合に、同じ人格、一人格を持つ六十五歳の老婦人に、片方では生活保護費としては月額二万四千円、片方では一万三千円、そういうようなことが、これが最低保障額と言えますか。
  254. 菅野弘夫

    菅野政府委員 御指摘の点は確かにございますけれども、扶助料というもの、これも歴史にこだわるなと言われるとそれまででございますけれども、扶助料というものは、大正十二年の恩給法以来の沿革がございまして、普通恩給の二分の一ということに相なっているわけでございます。このことは、ほかの国を調べてみましても、そう変わっているわけではございませんで、ただ、額が非常に安い、あるいは保護費と比べてどうかという、いろいろな問題点はあろうと思いますけれども、それらの点につきましては、さらに増額は検討いたしますけれども、その最低保障の、扶助料につきます最低保障の問題等々については、さらにこれから検討したいというふうに思っております。
  255. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 それは、歴史的な過程で恩給年金というものは、扶助料あるいは遺族年金というものは、本人がなくなればその支給額の半額なんだ、そんなことに何もこだわる必要はない。いま、いみじくも局長のほうから外国の場合に例をとられましたけれども、外国の場合の金額を見なさい。十万円の半額と五万円の半額と三万円の半額と違うわけでしょう。あなたはいいところをとっているのではなくて、悪いところばかりとっておるわけだ。だから、もともとその金額が少ないということであれば、悪い部分の二分の一を、何も外国並みの例をとってくる必要はない。だから、額もさることながら、二分の一というようなこういう発想といいますか、歴史の経過といいますか、そういうものにこだわる必要なく、二分の一を三分の二にするとか、あるいは八〇%にするとか、あるいはさもなくば——扶助料というようなことば自身に私は非常にこだわるわけなんです。   〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕 年金というものは、全く生活保障されておる、生活保障費であるということであれば、その遺族に対して、その家族に対して、これは扶助というようなことばもさることながら——もともとか生活をささえると言いながら、全く小づかい銭に近い。生活をささえる部分、ささえるウエートというものは非常に低い。そういう年金額の中で扶助額二分の一、これはあまりにも形式的な金額の算出のしかたじゃないか、こういうように思うわけなんです。今後扶助料ということばは、私は使ってもやむを得ないと思いますが、扶助料ということばが使われているのだから、まずその扶助料の金額の底上げ、最低保障額の確保ということについて、金額保障するということだけでなくて、この年金額の、恩給の年額の二分の一ということにこだわらないで、これを三分の二あるいは八〇%あるいは全額というような率を積み上げていくというようなことを含めて、先ほどの検討ということばの中には含まれておるのかどうか、お答え願いたい。
  256. 菅野弘夫

    菅野政府委員 先ほど来二分の一、二分の一と申しておりますけれども現在の制度においては、いろいろな意味でその遺族の優遇をはかっておりまして、たとえば、今度改定をいたしておりますけれども、老齢者優遇がありますけれども、そういうのにも老齢者以外の、たとえば妻子などもその中に入れるとか、昨年やりました七十歳以上の四号アップというものの中にも、そういうものを加えるとか、そういうことをやっておりますので、現実的に、たとえばある人がなくなった場合に、奥さまに扶助料がいくわけでございますが、これは一人一人の場合ケースが違いますけれども、全部が二分の一というわけではございませんで、三分の二の方もあれば、八割の方もあれば、ひょっとすると、少しよけいにもらうという方もあるわけでございますので、そういう意味で、扶助料の体系がいろいろな意味改善を含めて現在進行しているということを述べさしていただきます。  いま御指摘になりました、しかし一般的に二分の一になっている、そういうのを、金額を含めて三分の二とか八〇%とかいうふうに検討すべきではないかということの御議論があったわけでございますが、もちろん、そういうものも含めまして、特に最低保障制度の問題としては、私たちも問題意識を強く持っておりますので、そういう点を含めまして検討したいと思います。
  257. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 念を押しますが、扶助料の二分の一ということに固執しないで、額もさることながら、二分の一を、たとえば三分の二にするとか八〇%にするとか一〇〇%にするとか、そういうようなことを踏んまえて、そのことを含めて検討するということになるわけですね。
  258. 菅野弘夫

    菅野政府委員 扶助料全体の額の引き上げということを含めまして、検討したいということでございます。
  259. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 額だけですか。率もですか。
  260. 菅野弘夫

    菅野政府委員 全部を含めてということでございます。
  261. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 率の引き上げも含めてですか。
  262. 菅野弘夫

    菅野政府委員 率も、もちろん含めて検討するということでございます。
  263. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 この扶助料のほうは、そういうふうに率を含めてやられる、検討されるということでありますが、この額の点についても、扶助料だけでなくて恩給年金額、これについても、かなりのウエートをかけて、生活費を基礎にして、過去にこだわらないで、前年度はこうであったからことしは何%引き上げた、物価がこうだから何%引き上げた、そういうようなことでなくて、その時点に立った生活費を保障するという観点に近い額の算定ということを、私はその検討について期待したいと思うのですが、そういうように期待しておいていいですか。ことしはもう別として、来年の場合にまた同じような議論を繰り返すのではなくて、来年改定される場合には、あなたのほうの検討の中で年金額、扶助料の額の最低額は生活保障に近い、あるいはその生活のささえというのは生活費に近い額が、検討の結果出てくるというように私はこれを期待したいと思いますが、そういうように期待しておいて間違いないですか。
  264. 菅野弘夫

    菅野政府委員 生活保障というふうに言われますと、また慎重なお答えにならざるを得ないわけでございますけれども、他の年金制度なりそれから恩給制度の持っておりますいろいろな問題点、そういうものを総合的に踏まえまして、あらゆる点から検討したいと思います。
  265. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 生活保護費というのは、生活保護基準というのは、満々なものだというふうに私たちは思ってないんですよ。だから、少なくともあなたのほうで、政府部内である部門が、生活費というものを算定するのに、基準よりも下回った額というものは、これは生活をささえる費用だというには、あまりにもほど遠いから言っておるのであって、少なくとも恩給局なりあるいは厚生省なり、あるいは公務員の共済年金をいろいろと担当されている大蔵省なりあるいは自治省なり、そういうようなところと相互の意見をはかりながら、年金というものはかくあるべきだというような結論を出してもらうように私は望みたいのですが、そういうような観点に立って、来年に向かって検討してもらえますか。
  266. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 和田委員のただいまのいろいろな御所見は、やはり恩給そのもの生活扶助というような意味合いを非常に強くお出しになっていると思います。しかし、また一方から見ますと、私らも別にそれが悪いと言っているわけじゃないのですが、恩給そのもの勤務年限と最終年次の俸給というものをベース計算しておりますので、この基本的な方針だけは曲げることはできないわけでございます。したがいまして、この基礎額の中で計算をしつつも、いま御指摘生活の問題というものも、われわれとしてはただ放置しておくわけではないのでありますから、今回、御提案もありましたように、賃金スライドというような部面やあるいは最低保障というものも新たにつけ加えるというような改善を、いまはかっておるわけであります。  私、先ほどから申し上げておるように、恩給制度一本だけで一種の社会政策、社会保障制度恩給受給者だけについて独特に、それをつまみ出してやれということはちょっとむずかしいのじゃないか。むしろ恩給恩給として、自分らの与えられた権限の中で改善、改良はどんどんはかっていくけれども、同時にやはり他の一般の、いわゆる社会保障制度というものも同時に幅広く前進をさせていくということの中から、全体のしてのレベルアップをはかっていくというようなことを、一歩一歩努力をしたいというふうに考えておるわけでございます。が、決してこれは誤解をしていただきたくないのでありますが、わりわれは何もいままでやってきたことだけに固執するつもりは全くございませんので、さらに当委員会におきましても、いろいろと御意見を拝聴して、来年度の問題に備えてまいりたいという心がまえを持っております。
  267. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 いま総務長官のほうから御答弁をいただいたわけですが、これは地方公務員も一つの公務員ですから、恩給に見合う退隠料、同じことですが、一つの例をあげますと、こういうようなデータもあるのです。二十一年間の在職期間で事務関係、事務吏員です。国家公務員でいえば事務官ですが、その方が退職して、現在年額が三十九万三千二百二十四円しかもらっていない。それから四十五年間つとめたある市の収入役、三役ですが、それが四十五年間つとめておって、年額八十八万九千百七十四円しかもらっておらない。それから、いわゆる扶助料ということになりますと、二十一年間勤務をいたしました方がなくなって、いま現在二十四万七千二百八十円もらっておる。それからもう一人の例を見ますと、十九年五カ月つとめておったその公務員がなくなって、奥さんが扶助料として年間十五万九千四十九円もらっておる。  いま、こういう四つの例をあげたわけですが、必ずしも勤続に見合っているわけではない。もちろん退職のときの給料、あるいは退職時点によって非常に過去にアンバランスがある。そういうために、いま申し上げましたような非常にアンバランスな金額も出てきておるというようなことであるわけです。先ほども受田委員も、そのようなアンバランス等の調整のことを言っておられましたが、これらももう一度調整をしてもらって、最低額をきめると同時に、過去にさかのぼって、非常に低劣な条件の中でやめられた方々についても、何とか調整をしていくというようなことも、ひとつ検討してもらいたいと思いますが、どうですか。
  268. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いろいろなアンバランスということでございますけれども、これも原因がいろいろあるのだと思います。したがいまして、その一つ一つを探求しないとわかりませんけれども退職時期によるアンバランスといいますか、格差といいますか、そういうものにつきましては、たとえば、給与制度が変わりました二十三年の六月を起点にしたいろいろなアンバランスの是正等々は何回もやりまして、ほぼ達成しておりますし、今回、いわゆるベースアップ方式の変更に伴います過去の一般的な格差というものにつきましても、今年を起点とする二年間で解消しようということでございますので、そのほかあるいはいろいろなアンバランスがあるかと思いますけれども、それらにつきましても、原因がわかりますれば、是正の措置を講ずるような広い意味の検討は、もちろん続けていくということでございます。
  269. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 時間もありませんので、あまり言いませんが、少なくともあなた自身のことについて、ひとつ考えてもらいたいと思いますが、あなた自身はまだ現職におられるけれども、あなたが過去にこの恩給制度のときにおられた、こういうふうに仮定して、そしていまあなたが六十五歳、七十歳になっておられる、そして、いま私が具体例をあげましたような金額しか年金額としてもらえない。そして、あなたがこの時点でなくなられた、あなたの奥さんが、いま具体例をあげましたような扶助料しかもらっておらない、そうすると、生活のささえとはいうものの生活のささえにもならない。かつては内閣恩給局長であったあなたが、あるいはかつては内閣恩給局長であった方の奥さんが、だからといって生活保護家庭の申請を受けて、そして生活保護費をいただく、当然の権利でありますから、それはちゅうちょする必要はないとはいうものの、現実的にあなた自身がそういうふうな立場にあったら、この生活保護法にたよっていく、あるいは奥さんがそういうような考え方になられるということになるかどうかということを考えていただきましたならば、そういう観点に立って、アンバランスの調整なりあるいは最低保障額を引き上げるということについて、あなた、自分の身になってひとつ考えていただくということで将来に向かって検討していただきたい、こういうことを強く要望しておきたいと思います。このことは御答弁要りません。  それから、時間がありませんのでもう一点お尋ねしたいのは、軍人恩給についてであります。この軍人恩給の場合に、過去の例から見てみますと、兵、下士官、将校がかなり年金額なり扶助料の額が接近しておるということはうかがわれるわけなんですが、いま現在、軍人恩給に限ってひとつお答え願いたいのです。下士官以下の恩給受給者と将校の恩給受給者は、大体何対何ぐらいになるのでございますか。
  270. 菅野弘夫

    菅野政府委員 全部の恩給で申しますと、准尉以下で大体九三%ぐらいでございます。その残りが、ですから少尉以上ということになるかと思います。
  271. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 金額の点はどのぐらいのウエートになっていますか。
  272. 菅野弘夫

    菅野政府委員 金額は、将校の平均とかなんとかいうふうにやっておりませんので、すぐには出ませんけれども、先生、先ほどちょっと申されましたように、一番上の大将と兵の格差というのが、戦前は十六、七倍あったわけでございますけれども、それが逐次改善をいたしまして、現在六・九倍ぐらいになっております。
  273. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 六・九倍ぐらい、これは兵、下士官以下と大将との間ですね。  私、もう一つ言いたいのは、受給者が九三対七だということを言われましたね、受給者の件数が。それを金額に直すと、准尉以下でも下士官以下でもいいですが、それと将校と、支給額は、大体トータルしてどのぐらいになっていますか。
  274. 菅野弘夫

    菅野政府委員 ちょっとその資料はいまございませんので、また後ほど調べてお答えしたいと思います。
  275. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 できましたら委員長、ひとついまの点資料としていただきたいのです。念のために申し上げますが、下士官が占めるウエート、それと将校、わかりましたら資料として出していただきたいと思います。予算委員会で出ております資料に基づいてもむずかしいと思いますが、できるならばそのような各階級別に金額をひとつ資料としていただきたい。委員長のほうに要請しておきましたので、よろしくお願いしたいと思います。  先ほども申し上げましたように、兵と大将との間にかなり格差を縮められたということは、非常にけっこうだと思いますが、そこでもう一つ、一時恩給ですね。この一時恩給がいろいろないきさつで、恩給を受けるというような資格があるにもかかわらず、一時恩給を受けていないというような方もありますし、あるいは恩給の年限に達しないために、一時恩給しか受給できないというような者もあろうと思うわけなんですが、具体的に一つ質問いたします。  いま、勤続は別といたしまして、かりにたとえば伍長なら伍長として、伍長の方で一時恩給をいままで支払った中で、最高額は幾らですか。
  276. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いままでのすべての中で、伍長でやめた人の最高の恩給額というのはちょっとございませんけれども、いままでいろいろ制度の変遷がございまして、現在下士官の場合には、三年以上の方について一時恩給が出ているわけでございますので、下士官以下の場合には十一年が最高でございますので、六万二千七百円というのが数字でございます。
  277. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これは、軍人恩給の復活で二十八年にきめたままの金額ですか。
  278. 菅野弘夫

    菅野政府委員 現在、二十八年のときのベースということで行なっておりますので、そのようになります。
  279. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 二十年間据え置きです、総務長官、一時恩給はね。確かに他の年金額については、いろいろとスライドしていっているかしていかないか議論は別といたしまして、かなり上昇していっているわけですが、一時恩給の場合に、昭和二十八年のこの軍人恩給復活当時から、何らこの金額が変わっておらない。二十年間、一番低率の銀行預金にしておいても倍になるのじゃないですか。どうですか。
  280. 菅野弘夫

    菅野政府委員 二十八年のままと申しますか、二十八年のベースをとっておりますのは、これは一時恩給制度がいろいろ改正をいたされましたその結果でございまして、二十八年に復活をしましたときには、七年以上の者に限るということであったわけでございますけれども、それが四十六年の改正で、これはその前に恩給審議会の答申があったわけでございますが、下士官についても三年以上ということになったわけで、四十六年にそういう改正がありました。そのときに、やはり同じ審議会の答申で、公職追放者に対する一時金の額を、追放解除時の仮定俸給によるべきであるということにされましたこととの均衡も考慮いたしまして、二十八年のままのベースで四十六年に改正があったわけでございます。
  281. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 金額改正されていないでしょう。
  282. 菅野弘夫

    菅野政府委員 金額は、ですから二十八年のベースで、三年以上の下士官にやるように法律ができたわけでございます。
  283. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 実情を申し上げますと、各都道府県を窓口にいたしまして、一時恩給の申請をなさった場合に、いろいろとこまかしいことを、履歴書をさかのぼって思い出させられて書かされて、出したところが一万円か二万円だ、そんなしちめんどうくさいことをしてぐずぐず言うようなそんなもの要らないというようなことで、一時恩給の資格があるにもかかわらず、ばかげた話だということで、申請をしておらない方がかなりおると私は思うのですが、厚生省、どうですか、そういうのは把握していないのですか。
  284. 横溝幸四郎

    ○横溝説明員 先生御指摘のように、一時恩給制度が、額はわずかでございますが、四十六年に改正されまして、それで都道府県を通じまして請求の促進方を努力いたしましたけれども、いろいろの理由はあると思いますが、進達の結果はそう芳しいものではないことは事実でございます。
  285. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そういうことなんです。ばからしくて手続するのがじゃまくさい、人をばかにするな、そういうように思っておられる一時恩給の該当者がかなり申請をしておらないんですよ、せっかくそういうような制度をもらっておるにもかかわらず。これはひとつ、額の検討をする必要があるのじゃないかと思うのですが、恩給局長なり総務長官、どうですか。
  286. 菅野弘夫

    菅野政府委員 先ほど申しましたようないきさつで、二十八年ベースになったわけでございまして、四十六年にそういう法律ができておるわけでございますし、そういういきさつなりあるいは一時金の性格ということから考えますと、なかなか困難な問題を含んでいるというふうに思います。しかし、先生の御指摘のように、額が少ないということは事実でございますので、検討しないということを申し上げるわけではございませんけれども、なかなか困難な問題があるというふうに思っております。
  287. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 検討するのかしないのかどっちなんですか。困難な問題があってもするのか。困難な問題があるからしないのか。厚生省自身が認めているように、ばからしくて本人はできませんよ。だから、あなたのほうで検討しないというのであれば、進達してこぬほうがいいのかどうかということです。
  288. 菅野弘夫

    菅野政府委員 もちろん、検討しないというわけはございませんので、いろいろな角度から検討は続けたいと思います。
  289. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 来年に向かって検討いたしますか。
  290. 菅野弘夫

    菅野政府委員 検討はいつでもやるわけでございますので、もちろん、来年に向かっても検討はいたします。
  291. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 特にこの一時恩給の該当者というのは、俗にいう赤紙による、国民の義務として召集された、職業軍人さんでない人が一〇〇%近いわけなんです。だから、そういうようなことを考えていただくならば、やはり真摯な態度で、ひとつ来年に向かって、いま厚生省のほうから言われましたように、なかなかはかどらないということでありますから、はかどるように金額の再検討をこの機会にお願いしたいということを、私のほうからあらためて強く要望しておきたいと思うのです。  さらに、この一時恩給については、法の規定によって下士官以上です。これも過去のいきさつがありますが、しかし、戦後二十九年ですが、ほら穴から出てきたり島から出てきたりする時代でございます。やはり内地勤務の人であれば、ちゃんと兵籍もこれあり、ポツダム伍長であるとかポツダム軍曹であるとかということで承認をした人もありますけれども、外地におって、そのような手続もなく、長年兵役に服しながら下士官になっておらない、今度の改正で一年を六カ月というように短縮されても、それでもなお該当しないで兵のままで終わっておる人もあるわけですね。これを下士官ということに限定をしないで、兵まで波及をさしていくという考えはないですか。
  292. 菅野弘夫

    菅野政府委員 兵にも支給すべきであるという御意見は方々にあるわけでございますので、そういう検討をしないわけではございませんけれども、かつて恩給審議会でもこの問題をいろいろ審議された結果、下士官以上が適当であるということで答申をいただいたいきさつもございます。ただ、その後兵にも支給すべきであるという御意見もいろいろ方々にあるわけでございますので、今回調査費一千万円を計上して、そういう者の在籍状況等について調査をする予定でございます。
  293. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 その結論はいつ出ますか。
  294. 菅野弘夫

    菅野政府委員 結論と申しますのが、支給するかしないかというような結論だとなりますと、もう少し先になると思いますけれども、調査自体は今年度予算でございますので、なるべく早急にやるつもりでございます。
  295. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これも、先ほど申し上げました金額改正とあわせて、同時に結論が出るようにひとつ努力してもらいたい、こういうように思いますが、総務長官、どうですか。
  296. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 兵の問題は、一千万円の調査でございますが、ぜひやってみたい、どれくらいの方たちが該当するのか早く調べなくちゃいかぬという考えでおります。  また、それらの方々に対して、どのような措置をとるかということを、部内的にもはっきりとした結論がまだ出ておらない状態でございますので、なおこうした調査に基づきまして、さらに一般の経済情勢等々もにらみ合わせて、十分検討してみたいというふうに思っております。
  297. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 兵、下士官の差別なく、ひとつ兵に波及する措置をとってもらいたいことを、さらにつけ加えて要望しておきたいと思うのです。  それからもう一つは、申請手続ですが、府県から進達をいたしまして本人に裁定通知が行くまで、大体どれくらいの期間かかりますか。
  298. 菅野弘夫

    菅野政府委員 それは、各恩給の種別によっていろいろ違うわけでございますので、一がいには申せませんけれども、いま問題になりましたような一時恩給とかそういうものでございますと、私たち恩給局手元に入りましてからは、二カ月以内で処理をしているということでございます。一番長くかかりますのは、これは事柄の性質上そうなるわけでございますけれども、傷病恩給等につきましては、半年以上かかるような場合もございます。
  299. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 府県が進達して本人のほうに裁定が行くまで約一年かかる一恩給局へ到達すれば大体二カ月ぐらいで本人のほうに裁定通知が行くというのですが、そうすると、十カ月厚生省にあるということになるのですか、どうですか。
  300. 横溝幸四郎

    ○横溝説明員 請求書の進達でございますが、当初市町村の窓口に入りましてから県に行き、主として陸軍関係の資料は県にございますので、そこで資料を整理しまして厚生省に来る。一方、海軍関係のほうは、県のほうに比較的資料がございませんので、おおむね厚生省のほうで資料を整理して恩給局に進達する、そういうかっこうになっておりますので、県段階で非常に御苦労なさったための費消時、あるいは本省でさらに補足をしようとするための費消時等がからみ合いまして、先ほど恩給局長からのお話のような一般的な経過日数になっておるわけでございます。
  301. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これは、一般的なことを私が申し上げたのですが、これも、やはり恩給受給者の気持ちとして、とにかくもう忘れ去ったときにやってくる、せっかく手続させた以上は——手続をさすまでに、御案内のとおりかなり本人も努力しておるんですよ。スムーズに申請できる者はもう過去に申請してしまっておる。いまやっておるのは、どうも真実性を伴う証処書類がないということで、書類が完成しない。だから、あちこち歩き回って、戦友なら戦友をさがし求めて、そして、ようやく資料を整えて申請するわけですね。それで、せっかく進達したのに、一年たたないと本人のほうに裁定通知がやってこない。これじゃ、あまりにも、せっかくの申請者に対して私は申しわけない、こういうように思いますので、厚生省におかれても、あまり処理を長く引っぱっておくというか、置いておくというのじゃなくて、かなりの努力をしてもらって、できるだけ早く恩給局のほうに書類が送達できるというように今後やってもらいたい、こういうように思いますが、いかがですか。
  302. 横溝幸四郎

    ○横溝説明員 いま先生の申されましたのは、主として傷病恩給のことについてと考えられますが、今後ともなるべく早くやりたいと思います。  ただ、傷病恩給につきまして、いま御指摘のように、御本人がいろいろ自分限りで苦労して資料を集められる、こういうことにある程度の時間を食ってしまう、こういうことなんでございますが、進達官庁である厚生省といたしますと、取り扱いをずっとやっておりますと、やはりここのところにもう一本補足資料がないと、まあ言うならばとっていただけないな、こういうふうに思う場合は、そのための調査に二、三カ月要する場合でも、終局イエスの線でもって努力をする、こういうような場面が往々にしてございますので、費消時の長短はもっぱらケース・バイ・ケースといいますか、そういうふうな実情でございます。  冒頭申し上げましたとおり、何せ傷病者のことでございますから、なるべくすみやかに進達できるように今後とも努力を重ねてまいりたいと思っております。
  303. 徳安實藏

    徳安委員長 和田君、もう時間がだいぶ過ぎました。あとの方がありますから……。
  304. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 わかりました。もうちょっと……。  恩給の申請者で、傷病恩給だけじゃなくて普通恩給についても、信憑性のある書類が整わないために、府県のほうであなたのほうに進達ができないという件数は、大体どのくらいありますか。
  305. 横溝幸四郎

    ○横溝説明員 ただいまのお話は、県のほうで資料が整わないために厚生省に持ってこられないものはどのくらいあるか、こういう趣旨と解しますと、これは傷病恩給その他普通恩給いろいろ含めまして、兵籍が遺憾ながら燃えたりなくなったりしたというものがございますので、平均的に三、四%あるのではなかろうか。もちろん、それは全然だめだということではなしに、手数はかかりますけれども調査して、時間がかかって進達にこぎつける、そういう実情でございます。
  306. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 長官、いま言われるように、現実に兵籍がなかったり、それから外地から戦時名簿を持って帰ることが不可能であったり、あるいは特に航空隊であるとか戦車隊であるとか船舶関係の特科部隊に所属しておった者については、いま真実性を伴う証拠書類が整わないわけなんです。それがために進達できないのは、いま言われたように三%か四%、せっかく受給資格があるにもかかわらず、本人が申請しておるけれども、そういうような書類がないために各府県に滞っておるものがあるわけなんです。これは、やはり早いこと処理しなければいかぬ。なくなった、焼却してしまった兵籍名簿をもう一度再版するということもできないし、どうにもこうにもならぬというような状況でありますので、ここらあたり、ひとつ厚生省恩給局のほうで打ち合わせしてもらって、そして、これをスムーズに進達できるような便宜的な方法、手段というものを、この機会にひとつつくり上げてもらいたいものだ、こういうように思うのですが、どうですか。
  307. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 腰だめで仕事をやってしまうわけにもいかないと思いますが、いま和田委員のおっしゃったようなことで、恩給局厚生省担当者の間で、事務促進についてもう少し話し合いをしていくのがいいことだと考えております。
  308. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 恩給局のほうと厚生省のほうと具体的に早急に打ち合わせしてもらって、すでに戦後二十九年たつのに、せっかく受給資格があるのにまだ県のほうから進達ができない、こういうものが残っておるわけですから、これの解消のために御協力いただきたいと思いますし、冒頭申し上げましたように、恩給というのは年金の一環であるし、年金というのは生活をささえるというか、生活保障するというか、それがたてまえのものでなくてはならないわけですから、先ほど来るる意見を申し上げましたように、特に最低保障額につきましては、老後の生活保障できるような、あるいはそれに近いような最低保障額を、扶助料については率の面を含めて再検討していただきたい、このことを私のほうから強く要望いたしまして、委員長のほうからせかれておりますので、この辺で質問を終わりたいと思います。
  309. 徳安實藏

    徳安委員長 鬼木勝利君。
  310. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 時間に制約されておりますから、いろいろお尋ねしたいことがあるのですが、時間の許す範囲内において二、三お尋ねしたいと思います。  今度の恩給法の改正は、この法案に書いてあるとおりで、私が申し上げるまでもないのでございますが、二三・八%を増額しようということであります。これにも書いてあるのですけれども、公務員の給与改善が一五・三%、恩給と公務員との水準差を二年計画で補てんする、だから、実際は一四・七%だが、七・三五%増額をやる、こういう説明でございます。二年計画で補てんするというのは、どういう意味でそういうことをするのか、まずその点を恩給局長にお尋ねしたいと思うのです。公務員給与との水準差を二年でそれを埋めていく、補てんするというのは、どういうわけでそういうことをしたのか、それを恩給局長ひとつ……。
  311. 菅野弘夫

    菅野政府委員 一四・七の出どころは、いま御質問がありましたことで明らかでございますが、かつて恩給と公務員給与が同額といいますか、公務員給与そのものを使って増額をしていた時代からの差が、途中の恩給審議方式等によって若干出まして、累積が一四・七となったため、これを——要するに、これは格差といいますか、そういう考え方がいいのかどうかわかりませんけれども、昨年から公務員給与そのものによってスライドをするということになりましたので、本年も続けてその措置をとっているわけでございますけれども、したがいまして、できればこの一四・七というものを埋めたほうがよろしいということで、昨年来御議論も承りましたし私たちも検討の結果そういう措置をとったわけでございます。  ところで、御質問の、一年でやらないで二年かかるのかという御質問でございますけれども、これは理想としては、もちろん一年でやるのが一番いいことだと思いますけれども、しかしながら、これは財源的な問題もございましたし、他の諸施策との均衡等もございまして、今年を初年度とする二年で実施しようという趣旨でございます。
  312. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まことにあなたの言われることは根拠薄弱ですね。財源の問題があるなんて、それはおかしいですよ。いまあなたの言われるように、公務員の給与に合わしてやるんだ、こうおっしゃっておりながら、公務員との差が一四・七%あるのを、財源の関係だなんて、冗談じゃありませんよ。これは当然の権利ですからね。それを、かってに財源が許さぬから、これは二年間でやるんだ。恩給受給者は非常な損失をこうむっておる。それじゃ納得できませんね。
  313. 菅野弘夫

    菅野政府委員 財源だけに理由をつけたわけではございませんが、この一四・七の格差というのは、先ほど来申し上げましたような審議方式をとってきたための結果生じた格差でございまして、それは、それぞれそのときそのときの法律改正をされてきたものでございますので、別に積み残しという性格のものではないというふうに思っております。  ただ、公務員の給与に今度はよりどころを求めたということから申しまして、恩給基礎俸給の水準というものと現職公務員の俸給の水準というものが差があるということはやはり好ましくない、できるだけこれを補てんしてまいりたいという趣旨のものでございます。したがいまして、財源はその一つの理由に申し上げましたけれども、われわれも、できるだけ早くということでいろいろ折衝した結果、二年ということに相なったわけでございます。
  314. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だから、できるだけ早くなんということをあなたはおっしゃるけれども、それじゃ当然その差額を一年でやるべきところを二年でやるのはどうなんだ。来年またそれをやるのだ、ところが、一年でやるべきところをまた来年、二回に分けると、その間の損失は、来年それにプラスアルファしてやるのですか。ただその差額の数だけを二等分して二回にしてやれば、それでこと足りるということは、受給者は非常に損失をこうむる。その辺のところは恩給局長、どのように考えておられますか。
  315. 菅野弘夫

    菅野政府委員 先生おっしゃる御趣旨はよくわかりますが、当然こ権利と言われました点につきましては、これはいろいろ考え方がございますので、一がいには申せないと思いますけれども、これは、それぞれの時点において最も妥当な改正をしてまいった結果でございまして、これは、一年でやれれば一年でやるのにこしたことはないと思いますけれども恩給の本年度の全般的な改善措置というものが、それを含めましてかなり大幅なものになりましたので、その部分につきましては、二カ年でやらざるを得なくなったということでございます。
  316. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 すこぶる苦しい答弁のようですが、あなたは当然の権利じゃないと、そういうことを言われましたが、これは年金であろうが何であろうが、一切がっさい、あなたの説で言えばそういうことになりますよ。しかし、国で恩給法というものがあって、そして恩給法を改正していく、そしてその差額を払っていく、これは当然の権利ですよ。それは法的にあなたがおっしゃれば、そういうあれはないかもしれないけれども、当然受くべきものなんですよ。  だったら、あなたにお尋ねしますが、公務員給与にスライドをしていくということは、これは毎たび附帯決議までつけておるのです。近ごろ恩給局長になられたから、前のことは知らぬとおっしゃれば知らぬかもしれぬが、病人の平川前局長をここへ引っぱってくるわけにはいかぬから、いやしくも恩給局長であれば、前のことくらい調べてあると思うが、附帯決議がこれについてスライドするのだということを、私どもはもう毎たびこれはやっているのです。ところが、同じようなことばかりで、附帯決議というものはただ単につければいいのだ、そして担当大臣は、皆さまのつけていただいた附帯決議につきましては、十分意思を尊重いたしまして努力いたします、必ずそう言っているのだ。だから、スライドするということが、これは恩給法の根本になっておるのですよ。そうでありますならば、あなたのように二年間でやるのだとか、だんだんしていきますとか、そういうことはおかしいですよ。そういうことは論旨徹底しないですね。  「恩給法第二条ノ二の規定について、その制定の趣旨にかんがみ、国家公務員の給与を基準として、国民の生活水準、消費者物価その他を考慮の上その制度化を図ること。」、こうした附帯決議をつけておる。公務員の給与を基準としてだ。だから、この第二条ノ二は、当然これは制度化するべきものである。「年金タル恩給ノ額ニ付テハ国民ノ生活水準、国家公務員ノ給与、物価其ノ他ノ事情ニ著シキ変動が生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定ノ措置ヲ講ズルモノトス」という、このことによって、これを制度化しなければいけない、第二条ノ二を受けて制度化しなければいけない、法制化しなければいけない、こういうことでわれわれは附帯決議をつけたわけなんです。局長はどういうお考えを持っておられますか。そういう意味からすれば、あなたのいまの答弁は、非常にあいまいな逃げ口上、何ら根拠がないと思うのです。
  317. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いま附帯決議並びに二条ノ二のことにつきまして御意見を賜わったわけでございますが、附帯決議なりあるいは恩給法の二条ノ二というのは、私も十分存じ上げております。  そこで、そういう趣旨を踏まえまして、幸いにして公務員の給与そのものにスライドと申しますか、公務員給与を基準にする改正が昨年初めて、数年間の恩給審議方式から脱してできたわけでございまして、その実績を踏まえ、本年も公務員給与そのものを基準にいたしまして増額するような案を提出させていただいているわけでございます。そういうふうなことを続けてやっておりますので、いますぐ制度化というのを法律規定するという趣旨でございますれば、まだ今回はそういうふうになっておりませんけれども、実質的な中身といたしましては、公務員給与そのものによっているわけでございますので、附帯決議の趣旨も、そういう意味においては、この中に一部かもしれませんが、盛られているというふうに思います。
  318. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ますますもって話がおかしいじゃないか。あなたのおっしゃるのは、附帯決議のついている趣旨を尊重してやったんだ、だから、あくまでこれはスライドの法制化と同じことだ、その精神に沿ってやっているんだから、皆さんのおっしゃるとおりのことでやっておる。そのようにやるんだったら、なぜ制度化をやりませんか。ところが、あなたのおっしゃることは、そのようにやっておる、やっておると言いながら、公務員との差額を二年で払おうとしているんでしょう。だったら、公務員の給与に準じてスライドする、言うとおりにやっておりますと言っても、やっていないじゃないか。そういう答弁は、私ちょっといただけぬね。大事な根本問題です。全国恩給受給者はひとしくこの点を望んでおる。総務長官は何かお忙しいようですから、御遠慮要りません、どうぞ……。局長どうですか。
  319. 菅野弘夫

    菅野政府委員 附帯決議の趣旨が一〇〇%生かされているのかというふうに問い詰められますと、そういうふうにはなっていないかもしれませんけれども、いままで先生十分御存じのように、恩給審議方式という物価と公務員給与の途中の数字をつかまえて、恩給年額の改定を数年続けてまいりました。そのやり方を、まず公務員給与そのものの手法によれという御趣旨がその中に十分含まれていると思いますが、その御趣旨の点につきましては、昨年そして本年、今度提出しております案も、そういうふうになっているわけでございます。  そこで、そういうことならば、かつての公務員給与との格差と申しますか、恩給審議方式を数年続けた結果たまった格差というものも、一ぺんにやるべきじゃないかという御趣旨かと思いますが、そこは、先ほど来申し上げましたように、それは理想ではございましたけれども、一五・三という数字と、格差自体も一四・七という数字でございまして、これは残念ながら一年ではできないということで、二年に分けてやらせていただくという趣旨でございます。
  320. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 もう同じことばかりあなた繰り返しているんですよ。ことばの表現の方法が多少違っているけれども、同じことを繰り返しているんですよ。何回言っても同じことは一つこと、ラッキョウの皮むきというんです。だから、これは悪くとれば、あなたたちが逃げ口をつくったんだ。公務員給与に対するスライド制ということを制度化する、法文化すれば、ぎっちりばったりいかぬから、ここで一ぺんにやらぬで、二年でちょこちょこやって手直ししてやっていくんだ、そういうところに逃げ道をつくっておこう。これをスライドしなければならぬぞという法刑化、制度化をすると、それで一ぺんにきまるなら、そういうことはできないというので、巧みに、精神は皆さんの精神を大いに尊重いたしております、その気持ちでございますと、そういうことにしかこれは理解できないんですよ。これは根本問題ですよ。  では申し上げますが、本来は、これから制度化することをお約束できますか。ことしもまだこのまま、法制化しない、制度化しないというお気持ちですか。  これは、恩給局長には釈迦に説法で、もうすでに御承知のとおりでございますけれども、第十二条に、「恩給ヲ受クルノ権利ハ総理府恩給局長之ヲ裁定ス」、こう書いてある。しかし、これはまた意味が違うんだ、これは恩給をどうすべきであるかということの裁定であって、法文化、法制化のあれでないとあなたはおっしゃると思う。まさに解釈はそのとおりだと思われる。ただ、恩給の申請が出た場合にあなたが裁定をするんだ、こういう条文だと思いますが、それだけの恩給の全責任をあなたは持っていらっしゃるんだから、当然これはスライドすべきだ、毎年毎年こうして附帯決議がついておるんだから、これは、やるべきですよということを、当然あなたは意見を上司にあるいは大臣に具申して、一生懸命やらなければならぬ立場にあるのです。その点の見解はいかがですか。
  321. 菅野弘夫

    菅野政府委員 これは、先ほど来もいろいろ御答弁申し上げて、同じことをあちこち言っているというおしかりを受けましたのですけれども、確かに、スライドを制度化するという問題につきましては、両三年附帯決議がなされているわけでございまして、先ほど申しましたように、公務員給与によるという形自体は、昨年そして今年の法案で実現をしていると思います。それを、それじゃ物価とかあるいは生活水準とか、そういうものと並べられております二条ノ二を、その中の公務員給与だけを抜き出して、それにスライドするというふうに法律的に書けということでございましたならば、その点は十分検討をいままでもいたしておるわけでございますし、今後もいたさなければならないわけでございますけれども、現段階において、そういうふうにするというふうに申し上げる段階にはないわけでございます。  しかし、先生から再三お話のありますように、また国会の附帯決議もあることでございますので、私たちといたしましては、もちろん真剣に勉強させていただきたいというふうに思います。
  322. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ほんとうは、この問題は根本ですからね。委員長、そうですよ。恩給受給者にとっては根本問題ですよ。もっと突っ込んでやりたいのですけれども、それをやると時間がなくなって困るので、その次にいきます。これは、どうせこのスライド化の制度化を今度ここでやる、あるいはやらなければ、強力な附帯決議をつけるということにいたします。われわれは、他党の先生方とお話し合いの上さようにしたいと思っておる。ようございますか、局長。  じゃ、その次の問題にいきます。その次の問題は、これも、きょうどなたかちらっと触れておられたようでしたが、実施時期のズレですね。こまかいことをお尋ねしたいんだけれども、きょうは根本的な問題を二、三お尋ねしたい。  実施時期のズレ、これがまた大きな問題で、これも過去においてたびたびこの内閣委員会で取り上げてきた。私、まことに微力、ふつつか者ですけれども参議院時代から内閣委員会一本やりで十年間やってきた。ですから、恩給問題については、毎度皆さん方に御相談を申し上げてきたわけなんです。だから、この実施時期のズレということについてもお話をしてきた。これは、どなたに言ったってわかることなんですよ。国家公務員は四十八年の四月から上がっておる。ベースアップになっておる。恩給はことし、四十九年の十月。公務員は四十八年の四月、恩給は四十九年の十月、そうすると一年半のズレがある。これは、もう子供だってこのくらいの計算はできるはずです。一年半のズレがある。おくれがある。これは受給者にとってはたいへんな損失です。非常な損失です。しかも、これは内閣委員会で毎度問題になっておる。菅野恩給局長、おれは今度恩給局長になって初めて聞いたんだとおっしゃるかもしれないが、これは局長、どういうふうに考えておられますか。これも大問題です。簡単な問題じゃない。
  323. 菅野弘夫

    菅野政府委員 先生御指摘のとおり大問題だと思います。私が申し上げますまでもなく、先生のほうが御存じなんですけれども、かって恩給と給与の時期的な問題というのは、給与が上がって今度恩給がそのベースに上がるまでに三年かかったり四年かかったり、そういう時代がだいぶ続いたわけでございますが、恩給審議会の方式が取り入れられましたあとは、毎年毎年改定がございまして、その時期においては、二年半の格差があったわけでございます。二年半ありましたのを、昨年の改正でおかげさまで二年分一緒にやりましたので、現在、先生のいま御指摘になりました一年半のズレというふうに接近はしたわけでございます。  しかし、そういういきさつがございますけれども、なお一年半のズレがあるということで、これは大問題だと言われるわけでございますけれども、このことに関しましては、昨年から公務員給与そのものにスライドをする、公務員給与を指標とするということに相なった以上は、公務員給与の時期と差が大きくあるのは好ましくないというふうには思っております。したがいまして、これも、それこそ大問題でございますので、一ぺんにまいるわけではございませんけれども、その大問題のゆえんを十分心に入れまして、検討を続けてまいりたいというふうに思っております。
  324. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまのは案外すなおな答弁で、おおむね良好と思われますが、しかし、昔のことをあなたおっしゃいましたけれども、昔はそれはそうですよ。いまのようなああいう人事院勧告なんかありはしませんしね。昔は、ぼやぼやしておる者は、二年も三年も俸給が上がらなかったような者もある。昔のことを言うのじゃなくして、今日の時点において、公務員と一年半もズレがあるということは、あなたがすなおに認められたとおり、まさに大問題だ。大問題だとあなたが認められた以上は、これに対しては、何とかこの差を縮める、あるいは一緒にするというように十分努力して、それの実現をはかるというふうにお考えですか、はっきりしてください。
  325. 菅野弘夫

    菅野政府委員 実施時期の問題につきましては、十分検討し、努力をいたしたいと思います。
  326. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなたの御答弁としては、それより以上に出られぬと思いますよ、総務長官がいないからなんですが。先ほどのお話のように、財源がどうだとか、実務処理が困難だとか、いろいろなことをよく言いますけれども、そんなことは言わせませんよ。いまあなたがすなおに認められて、そして、これは大問題だから大いに御趣旨に沿うように努力する、こう言われたのだから、あとでまた態度豹変して、これは予算の関係でむずかしいとか言わないでもらいたい。昔はよく、実務処理がむずかしいと、とんでもないことをすぐ言った。あたりまえだ。恩給をやっておる恩給局関係職員はそれが仕事だ。実務処理関係でどうだなんということはとんでもない。あなたは、そういうことはおっしゃらぬ。まことにりっぱな人だ。念を押しておきますがね、そのようにすなおに答えられると非常にスムーズにいく。  次に、局長、お尋ねしますが、恩給法の改正で増額をする。これは先ほど申し上げたとおり、今度三二・八%ですか、これはみな一律に恩給増額になっておるようですが、上も下も全部一律に二三・八%、こういうことですか。
  327. 菅野弘夫

    菅野政府委員 そういうことでございます。
  328. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そこに私は問題があるんじゃないかと思うんだな。いわゆる上厚下薄。公務員の給与は、たしか上のほうは一二%、下のほうは一八%というような割合になっておったと思うが、公務員の給与はおれらには関係ないというような顔をしておるかもしれぬが、その辺のことはどうですか、調べておられますか。ちょっとそれを参考のために聞いておきましょう。
  329. 菅野弘夫

    菅野政府委員 一五・三%という数字が使われました勧告が実施されました昨年度の公務員給与について申し上げますと、各等級別に、全部が一五・三%ではございませんで、いまお話しのございましたように、上のほうは一三%ぐらい、それから一番下の等級については一八・八%というふうな上げ幅でございます。
  330. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大体私が調べておったのに間違いないな。私はそのように解釈しておる。そうしますと、下のほうに厚くなって上のほうは薄くなっておる。ところが、恩給は一律に、全部一緒に上も下も二三・八%上がっておる。そうしますと、上のほうはべらぼうに上がります。これは、あなた方のほうからいただいた表があるけれども、ここにすぐわかるように私は上厚下薄と書いておいた。上も下もみな一緒に二三・八%上がっておる。これじゃたいへんなものですよ、恩給が一律に上がっておるのだから。これは、あなた方の書類の二九ページから三〇ページのところにずっと載っております。わからなければ私が教えてあげます。ちゃんと載っている。これでは上厚下薄ということを言われても、私はしかたないと思うんですよ。だから、そういう点はもう少し考えられるあれはないのですか。これも一律にぱっとやってしまうと事務上たいへん都合がいい、こういうことでやっていらっしゃるんですか。何か根拠があるんですか。  上のほうが二三・八%も上がるのはたいへんなものですよ。下のほうは、恩給は年間十万円ぐらいのもので、二三上がったってたいしたことはない。ところが、上のほうの恩給が、百何十万も取っておるのが二三もばんと上がるんだから。だから、多く上がるのを私は文句言っているのじゃない。多く上がるのはますます上げてもらってけっこうだが、下のほうがかわいそうだ。あくまで上厚下薄ということが私は納得いかない。これは、どういうことで恩給だけはそういうことをやるんですか。下のほうの人はずっと上げてもらって、上のほうの人は幾らか下のほうよりもがまんしてもらう。現に給与はそうなっている。上のほうは一二%、下のほうは一八%、こういうふうになっておる。
  331. 菅野弘夫

    菅野政府委員 ただいまの御質問でございますけれども恩給年額の調整というものは、結局、それぞれの方が退職当時に俸給年額と在職年数というものを掛け合わせまして、それぞれの恩給年額が得られているわけでございますけれども、その実質価値を、その後の社会経済事情の変動に応じてどういうようにして維持するか、その指標として何を使うかということがまさに問題だと思います。  そういう意味の実質価値の維持をするときの数字というものは、これは根拠のある数字でなければならないわけでございますので、人事院勧告にございます俸給のアップ率を常に使っているわけでございます。その場合に、一般的にそういうアップ率を使います場合には、一定の数字が使われるほうが、実質価値の維持という点からいって適当であるということで、長い間そういうことを続けてきたわけでございます。  ただ、いま御指摘のございましたように、率は同じでございまして、率だけいえば、別に上厚下薄でないわけでございますけれども金額そのものに着目をすれば、上厚下薄過ぎるではないかという御指摘だと思います。そして、そういうふうなことは、ベースアップの率が大きくなりますと、ますますその金額差というものは離れるわけでございますので、この問題につきましては、いろいろ御議論のあるところだと思いますけれども、技術的なむずかしさというものもありますけれども、そういうものを、われわれとしても、一五・三というものを一律に使うのではなくて、上をこうし下をこういうふうにし、どういうふうに収斂をするかというようなことも、十分今後においては検討をしてみたいというふうに思っております。
  332. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私の言う意味も御了解いただいたようですが、将来これは検討するという御答弁ですから、それより以上私は申し上げません。この問題は、またとくと研究して、いろいろお尋ねしたいと思うのです。  次に、もう一問問題を持っておるものですから、あとがないから先に参りますが、外国政府職員の恩給問題でございますが、過去におきまして、元満州国官吏等の、いわゆる外国政府職員の恩給の通算問題については処置していただきまして、皆さん非常に喜んでおられます。これは、まことにありがたい。日本から満州国に行き、満州国から日本にやってきて公務員になった、そういうような方は大体解決がついたわけですね。  ところが、満州一色、初めから終わりまで満州、こういう人たちはまだ漏れておるんですね。しかも、抑留されたとかあるいは向こうで重労働させられて拘置されたというような方々は、除外されておるんですね。純然たる満州一色ですよ。たとえば、小船で漁業をなさっている方、これは悪い賃金ではありませんよ。そういうような方が、たとえば拿捕されてそのまま向こうへ連れていかれた。今度は帰ってくれば、それに対する補償とかあるいは賠償とかいうことを国は払ってやっておる。これはけっこうです。そうしてもらいたい。ぜひ、そうしてもらわなければいけない。それがいけないというのではない。ところが今度は、片方は国のために働いて向こうへ引っぱっていかれて何もない。片方は個人で自分が商売で行っておって、拿捕されて向こうでつかまえられた、そういう人に対しては、国が手厚いあれをしてあげておる。これは、けっこう、ぜひ、そうしてもらわなければいかぬが、こういう点から考えた場合に、非常に不合理な面があるようですね。  それから、公務死亡者の遺族及び公務傷病者に対する恩給法の適用をやってもらわぬと、これがまだ該当する方が百人以上おられる。これが漏れておる。それから満州一色で、いま言った受刑、服役者の通算ができていない。これも百名か何ぼかおられる。それから日満ケースの仮定俸給、日本から満州へ行って満州から日本、日満ケースの仮定俸給改善がまだこれがほんとうに十分でない。これが三百二十名ばかりおられる。日本から満州、満州から日本というのでは、これは恩給法の適用を以前に受けるようになって、完全に救済されておりますが、こういう人たちが漏れている。それは恩給局のほうではおわかりになっておるかどうか、局長。
  333. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いまいろいろのケースを御指摘いただいたわけでございますけれども、順次お答えいたします。  満州国政府なり満鉄なり、そこだけにつとめている方の取り扱いの問題でございます。これは結局、恩給制度というものが、日本の公務員を対象にした年金制度でございますので、その方が人事交流その他で向こうに参って、また帰ってきたというようなこと等を踏まえまして、外国政府職員の期間等を通算するという例外的措置を逐次とってまいってきているわけでございます。したがいまして、満州国だけにおられた方、その方がたとえ抑留をされましても、全く日本の公務員の経歴を持たない方々は、それはお気の毒であるということについては、私ども人後に落ちませんけれども、これが恩給制度の中で処理され得る問題かということになりますと、先ほど申しましたような、恩給制度が日本の公務員制度をもとにしたものでございますので、全然公務員期間を持たない方々に、そういうものを認めていくことができるかどうかということになりますと、たいへん困難である。むしろ不可能に近いというふうにいわざるを得ないと思います。  それから、仮定俸給出し方の問題でございますけれども、これは先生が御指摘になりましたのは、いまとっておりますのが、日本の公務員から向こうに参りましたような場合に、向こうの給料をとるわけにもまいりませんので、日本の公務員の最後のところをつかまえまして、これを日本の公務員制度の、大体年間昇給率が四%でございますので、それを複利計算等いたしまして、四・五%という数字をつかまえて、四・五%ずつ増率をしているわけでございます。これは、そういう計算のしかたは妥当であるというふうに、私たちは考えております。
  334. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いま、あなたのおっしゃった恩給は、いわゆる日本の公務員に対する制度だから、純然たる外国につとめておった人々に対しては適用はできない。もっとも、おっしゃるとおりだ。これが適用できれば、ここでやあやあ言うてお願いするなんということは要らぬのだから、そんなこと言わぬでも当然だ。だけども、先ほど申しましたように、やはり戦時中、国のために向こうの外国職員として働いた人たちが、あるいはまた向こうへ抑留されたとかいうような気の毒な人たちが、今日たくさん——たくさんということはない。先ほど申し上げたとおり残っていらっしゃる。それに対して何らかの方法で、適用ができないところを考えてくふうをしてもらう、救済をするのですから。だから、これは日本の公務員に対しての恩給だから、それ以外にはできぬと言われれば、これは、もう木で鼻をくくったようなことで身もふたもないので、そうじゃなくして、何らかそういう気の毒な方々を救う手だてがあるんじゃないかということで、先ほど、的確な例にはならなかったかもしれないけれども、個人の商売で拿捕された人の場合のことを、これは一例をあげたんですが、こちらは国のためにやった人であるから、そういう点は、何らかの方法を考えるべきじゃないか。恩給局長のお考えいかんということをお尋ねした。だから、法的にもう恩給はできぬ、だめだ、それじゃ話にならぬですね。話にならぬでも、そう言われれば、しかたがないんだがということでどうですか、もう一度。
  335. 菅野弘夫

    菅野政府委員 話にならぬお話をまたせざるを得ないのですけれども、全然、一日も日本の公務員の在職期間を持たない方が、この恩給制度の中に入ってくるということになりますと、これは、いま立っておる恩給制度そのものが維持できないということになると思います。もちろん、その方々が非常にお気の毒な立場にあるということは、私も十分認めますので、もちろん、恩給の側としても先生のお話がございましたので、もう一度十分検討はしてみますけれども、むずかしいということはいえるのではないかと思います。私がお答えする限りではないのですけれども恩給制度以外の救済の道があるのではないかというふうにも、差し出がましいのですけれども、思うような次第でございます。
  336. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これは、いま恩給局長は初めて聞かれたんですか。こういうことを過去において何らかの形で、あるいは何らかの方法で、陳情かあるいは嘆願とか何か、あるいは書類ででもあるいは直接でも間接でも何でもかまいませんが、私が言ったそういうお話は、きょう初めて聞かれたのですか。過去においてそういうことがあったのですか。過去においてそういうことがあったならば、皆さんにどういうふうに御説明しておるか。しておりますとか、あるいはこういうふうなことでいままで応待いたしましたとか、何か過去のあれがあったら、ちょっと御参考までに……。
  337. 菅野弘夫

    菅野政府委員 お尋ねでございますけれども、私がいま初耳でお聞きしたということではございませんで、そういうふうな御要望なり御陳情があるということは、十分承知をいたしております。
  338. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、いままでは、これはたいへん悪いことばかもしれぬが、全部突っぱねてきたと、こういうわけですね。全然そういうことはだめだ、おまえたちが言うことは、それは筋違いだということで突っぱねてこられたのか。検討しましょうとかいうことを言われて、話はまだ続いておるのか、全然打ち切っておるのか、その辺のところはどうなんですか。これは大事なところです。
  339. 菅野弘夫

    菅野政府委員 もちろん、いろいろ御要望があるわけでございますので、突っぱねるとかそういうことはもちろんないわけでございまして、御主張なり御意見なりをそのつど十分承っておるわけでございますけれども、この問題に関しましては、先ほど来述べましたようなことで、全く満州国政府一本やりである、あるいは満鉄一本やりであるという方々恩給制度の中に入ってくるということは、きわめて困難であるというふうに思われます。
  340. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなたのおっしゃったようなほかに、何かまたこれに対して、心情においてはまことに気の毒だから、自分からはそういうことを言うべき筋合いでないかもしれぬが、何らかほかのほうでどうとかする方法はないものだろうかというようなことも考えるというお話です。そういう意味において、小坂長官にでもお聞きしたいんだが、まだ姿が見えないので、さすれば、私の時間は迫ってきているんだが、委員長どうかな。——では、いずれにしても総務長官とは、またお話をする機会もあると思いますから、時間になりましたので、これで私の質問は終わります。どうもありがとうございました。
  341. 徳安實藏

  342. 永末英一

    永末委員 私は、今回提案されております恩給法改正附則第四十七条に関連いたしまして、昭和二十年十月十六日判決されました、横須賀鎮守府臨時軍法会議における小園安名海軍大佐事件を回顧しつつ、御質問申し上げます。  その前に、個人的なことでございますが、私と小園大佐とは、小園大佐がラバウルの航空隊で歴戦しておりました当時、私もその地で戦い、また、厚木航空隊の所在地に隣接いたしました第二相模航空隊に勤務いたしたことがございます。そういう角度から、今回の改正は、そのこと限りにおいては歓迎いたすものでございますが、この際、軍人の名誉に関しまして、政府の見解を明らかにいたしておきたいというのが質問の趣旨であります。  一番初めに、古い話でございますが、西郷隆盛さんはどういう名目で、罪になったかならないか知りませんが、罪にされて、そうしてどういう姿でその罪がなくなり、名誉が回復されたか、純法律的に御見解を伺いたい。
  343. 吉原一眞

    ○吉原政府委員 西郷隆盛さんは、明治十年の西南戦争の役で反乱罪に問われまして、明治十年二月二十六日官位を褫奪されました。明治二十二年二月十一日、旧憲法の発布の際の大赦となりまして、同日付で正三位が贈られております。
  344. 永末英一

    永末委員 明治十年反乱罪に問われ、官位を剥奪されたというのは、これは裁判行為でございますか、それとも行政行為でございますか。
  345. 吉永祐介

    吉永説明員 官位を剥奪されましたのは、調べてみますと、西郷隆盛は裁判を受けた事実は全くございません。
  346. 永末英一

    永末委員 そうしますと、明治二十二年の憲法発布に関する大赦で名誉回復というのも、これも裁判の効力とは無関係な明治政府行政行為、こういうことですな。
  347. 吉永祐介

    吉永説明員 先生おっしゃいますとおり、裁判の結果というようなことではございません。一種の行政による不利益を、天皇の大権をもって救済したというふうに解しております。
  348. 永末英一

    永末委員 天皇の大権ではございますが、行政行為、こういうことで理解してよろしいですね。
  349. 吉永祐介

    吉永説明員 そのように考えております。
  350. 永末英一

    永末委員 さて、恩給法九条二項では、恩給に関する権利の消滅を規定しておりますが、今回の附則四十七条の改正は、これに見合うものだと思います。この四十七条で、恩給なりあるいは遺族扶助料なりを受ける権利、資格の取得ということがきめられておるのでございますが、九条二項に、禁錮三年ということを条件にして、禁錮三年以上の者には恩給権等の権利を消滅せしめておる。今回の改正は、その九条二項で恩給権等の資格、権利を消滅せしめておった者に対して、いろいろな条件がございますが、それに対して、その権利を取得せしめる、こういうことでございますが、それは純形式的な話なんですか。
  351. 菅野弘夫

    菅野政府委員 ちょっと質問の御趣旨がよくわかりませんでしたけれども、今度の改正は、恩給は、もともとからでございますけれども、禁錮以上の刑を在職中等に受けましたときには、その権利が消滅をさせられていたわけでございます。昭和三十七年の恩給法改正におきまして、その中で恩赦になったような方々については、永久にそのまま失権にしておくのはお気の毒ではないかというような御議論も出まして、先ほど二年、三年というお話も出ましたけれども、そういうふうな比較的軽い罪を受けまして、その中で恩赦を受けられた方々につきましては、それ以後において、年金たる恩給権を復権させるという規定ができたわけでございます。  今度御提出申し上げておりますのは、そういうふうな者の中でございますけれども、さらに終戦後の罪によって、終戦後の軍刑法によって処断をされました方々については、特殊事情があるのではないかということで改正を御提案申し上げているわけでございます。二年あるいは三年というものをはずしまして、そういう方々につきましては、恩赦を受けられました以上は、皆さんが権利を回復するという措置をしたいということで、御提案申し上げているわけでございます。
  352. 永末英一

    永末委員 当初申し上げましたように、私は、これは軍人の名誉に関係する部面が非常に多いと思いますので御質問申し上げているのですが、純形式的と申し上げたのは、あなたの答弁にお気の毒だからと言われる、そんな話かな、そういうぐらいだけの受け取り方でこういう法律改正が行なわれているのかなというようなことを感じるわけでございまして、もともと十月十六日の判決でございますが、同年十一月一日からは軍関係の刑務所は廃止されるのでございまして、それをわかっておりながら、あの時点で判決をいたしたという事件の政治的背景というものに対して、私は深甚の考慮を払っております。まあしかし、政治的な考慮の議論をいたしましても、これは場所ではございません。  伺いたいのでございますが、もちろん小園安名さんについて聞いておりますが、その背景には、六十九名の同様の罪名でもって処断をせられた人々がおるわけでございます。しかし、その象徴的な例として小園安名さんを取り上げているわけでありまして、昭和二十年十月十六日、無期禁錮に処せられ、判決が確定をいたしました。さて、二十五年九月四日に禁錮十年に軽減をされまして、それは、特にその刑を禁錮十年に軽減せられるということでございますが、理由はどういうことであったのですか。
  353. 吉永祐介

    吉永説明員 私が存じております限りにおきましては、昭和二十五年九月四日に、御本人の上申によりまして、たぶん特赦ということで禁錮十年に減刑されたというふうに理解しております。
  354. 永末英一

    永末委員 その本人の上申によって特赦が受けられたというのですが、どの点を認められたのかということを知りたい。御存じございませんか。
  355. 吉永祐介

    吉永説明員 この点は、当法務省刑事局の所管でございませんので、申しわけございません。
  356. 永末英一

    永末委員 委員長、この件はどこの所管でしょうな、こういうことを聞きたいときには。
  357. 徳安實藏

    徳安委員長 さあ、私もちょっとわかりません。——法務省でわからぬですか。
  358. 吉永祐介

    吉永説明員 法務省保護局恩赦課だというふうに理解しております。
  359. 永末英一

    永末委員 そうすると、これは出席要求が間違ったかね。法務省へ、小園安名さんの事件について質問するという通告はしておいたんですがね。困りますね、セクションが違うというのですから。来てもらえますか、さっそくでも。ここのところ聞きたい。
  360. 徳安實藏

    徳安委員長 どうでしょう、時間が六時過ぎましたから。聞いてみてもいいですけれども。——ちょっと速記待ってください。   〔速記中止〕
  361. 徳安實藏

    徳安委員長 速記を始めて。
  362. 永末英一

    永末委員 その理由を聞きたいのです。  もう一つ伺っておきますが、昭和二十七年四月二十八日、大赦令によって赦免をされました。この理由もわかりませんわね。なぜ小園安名さんが、この大赦令に該当して赦免されたか、理由があったと思う。
  363. 吉永祐介

    吉永説明員 昭和二十七年の政令第百十七号の大赦令の中に定められた罪の中に、小園さんの本刑があったということで赦免されたというふうに理解しております。
  364. 永末英一

    永末委員 そこまで御存じでしたら、罪があったというのは、何々により無期、海軍刑法第何条、これは五十五条、五十六条、党与抗命罪で無期禁錮に処せられたるものとか、特赦によってその罪の軽減を受けたるものなんてことばあったんでしょうね。どうなんですか。
  365. 吉永祐介

    吉永説明員 私の理解しておりますところでは、大赦令の中に、それぞれ大赦にかかる罪が規定されておりまして、それに該当したというふうに理解しております。
  366. 永末英一

    永末委員 この辺も、その恩赦課ですか、その人が来ないと正確なことはわかりませんか。
  367. 吉永祐介

    吉永説明員 ただいまの大赦令に関します私のお答えは、ただいま申し上げたとおり間違いないというふうに思っておりますが、ただ、先生がおっしゃいました昭和二十五年の件につきましては、ちょっとお答えしかねるということでございます。
  368. 永末英一

    永末委員 間違いなければ、なぜ大赦令に、この小園大佐が処断をされたその理由が書いてあったかというところを知りたい。全部わかりますか。どの罪、どの罪と、その大赦令で該当の罪名はこれこれと一覧表がございますか、あったら見せていただきたい。
  369. 吉永祐介

    吉永説明員 昭和二十七年四月二十八日の政令第百十七号の大赦令に該当しております罪名を見ますと、海軍刑法につきましては、以下除外ということで、たとえば暴行、上官致死、上官殺害、同条予備というような罪名がずらっと並んでおりまして、それ以外は大赦にかかるというふうになっております。
  370. 永末英一

    永末委員 特赦の話は、あとで来られたときに伺うとしまして、待っておってもいけませんから、時間の節約上進行いたします。  今回の恩給法の附則改正によりますと、この小園安名大佐の未亡人は遺族扶助料をもらえることになる、このように解釈してよろしいか。
  371. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いま私たちのところにございます資料だけでございますけれども、それによりますれば、御遺族に扶助料がまいるということになろうかと思っております。
  372. 徳安實藏

    徳安委員長 いま向こうから当該課長が来るそうですから。
  373. 永末英一

    永末委員 どうしましょう、待っていましょうか。
  374. 徳安實藏

    徳安委員長 いや、それ以外のものがあるのでしたらどんどんしてくださいよ。何しろまだあとがつかえておりますから、すみませんけれども
  375. 永末英一

    永末委員 さて、刑は無期禁錮というぐあいにきまったのでございますが、小園大佐は、そのときに従五位勲三等功四級海軍大佐でございました。西郷隆盛さんも官位剥奪になったのでございまして、この小園安名さんは、その判決がありましてから、どういう法律でこの従五位勲三等功四級海軍大佐というものがなくなったか、ひとつ御説明願いたい。
  376. 吉原一眞

    ○吉原政府委員 勲三等に関する限り申し上げますと、明治四十一年十二月二日勅令第二百九十一号勲章褫奪令というものがございます。これによりまして勲三等は褫奪されておると思います。
  377. 永末英一

    永末委員 あと従五位というのと功四級というのと海軍大佐というのは、どうなっているのでしょう。
  378. 吉原一眞

    ○吉原政府委員 海軍大佐というのは、ちょっと私どものほうではわかりかねますが、この勲章関係につきましては、勲章褫奪令でございますので、功四級というのは正確な資料もございませんが、やはりこの当時におきますところの勲章褫奪令によったものと思います。また従五位につきましては、これは位階令で、こういう場合につきましては行なうことになっておると思いますが、この位階令につきましても、所管が当時は宮内庁、いまは内閣官房人事課ということでございますが、私の知るところでは、十九年十二月一日従五位になられましたことにつきましても、取り消しがなかったように聞いております。
  379. 永末英一

    永末委員 これ、わかりませんかな。いま賞勲局長の御説明では、従五位というものについての取り消しはなかった。無期禁錮の判決を軍法会議で受けた人に対して、位階に関する取り消しはなかった。これ、重要なところでございまして、確定したものと承ってよろしいのか、あるいは確定をしていただけるのか、いかがでございましょうか。
  380. 吉原一眞

    ○吉原政府委員 いま申し上げましたとおり、勲章につきましては総理府賞勲局の所管でございまして、位階令は宮内庁から内閣官房人事課に移るちょうど過渡期のときではなかったかと思うのでございますが、その辺につきましては、先生からの御質問もございますので、至急その調査方を依頼はしてございますが、従五位取り消しがなかったのではないかというぐあいに承っております。
  381. 永末英一

    永末委員 ここのところ、ちょっと重要な点でございますので、委員長、なかったかやったのか……。
  382. 徳安實藏

    徳安委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  383. 徳安實藏

    徳安委員長 速記を始めて。
  384. 吉原一眞

    ○吉原政府委員 位階につきましては、取り消しにつきましては、私ども所管ではございませんが、内閣人事課の所管でございまして、位階令、これは大正十五年十月二十一日勅令第三百二十五号でございまして、その第七条、第八条、特に第八条に、「有位者死刑、懲役又ハ無期若ハ三年以上ノ禁錮ニ虚セラレタルトキハ其ノ位ヲ失フ」という条文がございます。したがいまして、私、念のために、先生からの御質問がありましたので、担当官を走らせまして人事課に照会しましたところ、私がここに出てまいりますまでの段階におきましては、どうも十九年十二月一日の従五位を取り消していないというふうに私は伺ってまいったわけでございます。ただし、これは責任あるお答えということはちょっとできません。  なぜ、それじゃ位だけ取り消してなかったのかということを念のために聞いてまいりましたところ、その当時位階の所管というのは、宮内庁から内閣官房人事課のほうに移って、その過渡期であり、かつ、終戦直後のかなり事務的にも混乱しているというような状況であって、そのままになっておったのではあるまいかというのが、単なる係官の個人の意見ではございました。  以上でございます。
  385. 永末英一

    永末委員 いまのように、敗戦後の混乱期の話なので、どのように行政措置がなされたのかは、なかなかお調べになってもむずかしい問題かもしれません。  さて、そういうことでございますから、最悪の場合を仮定いたしまして、従五位という位階が剥奪されておった場合、そしてまた勲三等という勲等につきましては、これは勲章褫奪令で剥奪されておる、こういう話でございました。  さて、今回の恩給法改正の精神を考えますと、なるほど判決は、最終的には大赦によってその効力を喪失した、こういうので、本人は無期禁錮の刑を果たすことなくしゃばに帰ってきたわけでございますけれども、今回その中から、いろいろの条件はございますけれども、特に恩赦に関連したものについての恩給権等、したがって遺族には遺族扶助料等を取得する権利を認めるよう、こういうことでございまして、私の感覚から申しますと、なるほど昭和二十年十月十六日に判決ということはあったけれども、それ以前に該当者が持っておった権利というものは、そのまま認めようではないかという趣旨ではなかろうかと思えるわけでございます。そうでなければ、本人はもうすでに昭和三十五年十一月四日に死亡いたしておりますから、恩給権の回復は論ずることはできませんけれども、遺族に扶助料を与えられる、こういうことにはならないと思うのです。  しかし、問題は、一体戦後の日本が、そういう金銭的な解決だけでいいのかどうかというところに、私は一つの疑義を感じております。したがって、いま執拗に伺っておりますのは、本人はこの裁判がございますまでに、数々の戦闘に従事したということによって功四級を与えられておる。また軍人としての経歴が、相当年数たっておりますこともあって、従五位に叙せられ、勲三等をもらっておるという実情でございまして、もし今回の恩給法の改正が、判決は判決としてそれは法律的事実でございますから、これを消すには法律的な行為というものはなかなかむずかしいかもしれませんが、その他の本人の事項について、いま権利回復をやろうとしておる、しかも金銭的な面において権利回復をやろうとしておるのが本法律だと考えますと、その他の面においても、何らかの方法で本人の名誉を回復する方法はありはしないだろうかということを考えましたので、位階はどうなったか、勲等はどうなったかということを御質問申し上げておるのでございます。  さて、その一つの手がかりとして、特赦の理由というものが明らかになれば、昭和二十五年段階においても、この判決に対してのある種の政府としての反省が加わったればこそ特赦が行なわれたのではなかろうか。それでその理由を伺いたい、こう思ったのでございます。ただ、与えられた時間がだいぶ進んでまいりましたので、位階のほうと勲等と分けまして、もし私の申し上げたようなことが、この法律改正の基本に流れておるといたしますと、もし剥奪されたとして、位階を回復する方法、勲等を回復ないしは、本人は相当年限その当時の海軍に勤務をいたしておりますから、それに相応する待遇を受ける方法、こういうものは現政府において考えられるか考えられないかということを、ひとつお答え願いたいと思います。
  386. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 小園氏の問題につきましては、今回の恩給法の一部改正によりまして、御指摘のように、恩給というのは金銭的とおっしゃればそれまでと思いますが、しかし、恩給で復活したということは、これは小園氏の名誉回復には具体的なあかしになるとわれわれは考えております。  また、位階につきましては、人事局の調査だと、十九年十二月一日の従五位というものは取り消されていないというわけでございます。勲章のほうは、遺憾ながら勲章褫奪令というものが現存しておりますので、これらの問題については、さらに考えていかなければならぬと思いますが、一般的に申し上げれば、小園氏の名誉回復は、今回の恩給法の改正によりまして、まず第一段階は到達されたというふうにわれわれは認識しております。
  387. 永末英一

    永末委員 小坂長官も昔、海軍に勤務されておったと伺っておりますが、歴史というものは流れとともに忘れられていくものでございます。しかし、歴史を忘れた政治というものは、必ずその国を破るのであります。私は、古いことばかり覚えておれというのではございませんが、その歴史の流れにおいて、国を守る者に対して、なるほど戦いの勝負というものはございますけれども政府、政治権力というものが一体どう遇したかということは、もうあのような戦争はないと思いますけれども政府が現存する限りにおいては、やはりそれらの日本国民の行為に対して、正当に取り扱うべきものだと私は確信をいたしております。  したがって、いま長官から、位階、従五位というのは消えていない、けっこうなことだったと思います。勲等につきましては、今回の恩給法改正で名誉回復の第一段階は終わった、やった、こういうお話でございます。だといたしますと、勲等についても、なお積極的に小園大佐の名誉回復、これは、ほかの旧軍人にも該当し得る問題だと思いますが、政府としてはお考えになる姿勢は持っておられる、このように解釈してよろしいか。
  388. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いま永末委員の御質問の御趣旨はよく理解できますが、この場で直ちにそのような行動をとるということは、なお部内的な検討を慎重にいたしませんと、申し上げられない点は御了解いただきたいと思います。
  389. 永末英一

    永末委員 慎重に答えられましたが、長官のお気持ちの中には、それは長官が言われますとやらねばならぬことになりますが、第一段階ということばの中に、第一段階をやればそれで終わりではございませんので、十三階段はいけませんけれども、第二段階も第三段階もある、このように私はことばの含意を受け取ったのですがそういう含意を受け取っておるという状態でよろしゅうございますか。
  390. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 小園氏の場合におきましては、やはりいま永末委員が申されたような、終戦時の一つの非常に混乱した時点の中における、国を守るという善意の行動であったということが認識されたわけであります。同時に、今回の恩給法改正によりまして、小園氏の名誉回復が具体的に社会的に可能になったというふうに考えております。  さらに、勲章につきましては、先ほど来申し上げておりますような勲章褫奪令というものがございまして、これの運用がこの場合にどのように適用されるか、さらにケースを十分検討いたしませんと、はっきりとしたお答えを申し上げられないということを率直に言わせていただきます。
  391. 永末英一

    永末委員 先ほど委員長にお願いをいたしておきました、昭和二十五年九月四日の特赦を受けました理由がわかるような書類の提出を、ひとつあとでぜひしていただきたいということを留保いたしまして、いま言外に総務長官の意向のあるところも、私にとっては了解できたように思いますので、質問を終わります。
  392. 徳安實藏

    徳安委員長 上原康助君。
  393. 上原康助

    ○上原委員 もうすでに多くの先輩、同僚議員のほうから、提案されております恩給法の一部改正について質疑がなされておりますし、時間もかなり経過しておりますから、できるだけ簡潔に、四、五点お尋ねをさせていただきたいと思います。若干同じような内容の質問になるかと思うのですが、私のように純真な委員質問するとお答えも変わるかと思いますので、その点、御了承をいただきたいと思います。  そこで、昨年も少しばかり触れたのですが、いろいろ質疑応答を聞いて感ずることは、まず恩給とは一体どういうものなのかという点が非常にぼかされているような感を受けます。そこで、やはり社会保障の一環として、あくまで老後の生活保障もしくは残された遺族なり家族なりの生活保障という立場から、恩給の内容というものも考えなければいけないのじゃないかという感を強くいたします。生活保障という面からとらえますと、やはり最低限度生活費をどうするのか。一体、七十歳以上の老人の場合、あるいは六十五歳以上の老人の場合、一人暮らしの場合は、どの程度の生活費がかさむ、あるいは標準世帯の場合ですと幾らかかるというような、最低生活保障プラスアルファという概念が位置づけられると、もう少しすっきりした恩給のあり方あるいは社会保障ということが考えられると思うのですが、そういう点については、恩給との関係において、恩給局はどうお考えになっておるのか、この点をまずお聞かせをいただきたいと思います。
  394. 菅野弘夫

    菅野政府委員 恩給の性格なりあるいは社会保障との関係でございますけれども、これは恩給法そのものに定義がございませんので、法定的なものはございませんけれども恩給というものが、公務に忠実に勤務をした者、公務員あるいは遺族に対する、そういう長い忠実な勤務に対する国の保障という性格のものであると思いますので、広い意味では社会保障という概念に入ると思いますけれども、いわゆる普通使われておりますような社会保障ということになりますと、これはその範疇と必ずしも軌を一にしないのではないかというふうに思っております。  一体、どの程度のものがあれば、それは社会保障であり、あるいはそれ以上のものはどのくらいなのだという問題は、非常にむずかしい問題でございますし、われわれもさらに勉強しなければなりませんけれども、現在の段階においては、恩給の性格がそういうものでございますので、恩給金額をいろいろはじきますときに、特に低額恩給の是正というものに重点を置いて、これからもやっていきたいというふうに考えております。
  395. 上原康助

    ○上原委員 もちろん、恩給制度ができたその沿革なり、今日の時点において、直ちに社会保障制度に一本化していくということは、わが国の社会保障体系からも非常に困難があるということは、私も私なりに理解をいたします。しかし、いま局長も御答弁ありましたように、現在のような形で恩給法というものを後生大事にしていくというお考えはないかもしれませんけれども、もうほとんど軍人恩給に該当者も狭められてきているというようなことなど考えますと、やはり将来の見通しといいますか、社会保障体系の整理という面から考えますと、生活保障という概念に発想の転換というものが私は迫られていると思うのです。そういう方向づけというものを、より的確に導入していくというお考えはないのですか。
  396. 菅野弘夫

    菅野政府委員 恩給の持っております性格の中で、その社会保障的な機能というものも次第に重要性を増しておりますので、恩給の性格の中ではございますけれども、いま言いました最低保障なり、低額恩給の是正なり、その他もろもろのことがあると思いますけれども、そういう点で機能的な面を含めまして、そういう方向づけと申しますか、そういう改善を続けてまいりたいというふうに思っております。
  397. 上原康助

    ○上原委員 若干前向きの御答弁かと思うのですが、恩給にしましても、各種年金制度にしましても、問題は老後の生活保障ということによりウエートが置かれつつあることは間違いないと思うのです。  そこで、総理府はたしか老人問題の対策の窓口でもあると私は思うのです。特に日本の最近の人口動向からしまして、もう平均寿命が七十一歳をこえている。昭和六十年代になりますと九・五%ないし一〇%以上に老人人口というものがふえていく、こういう面からしても、いま福祉元年とかいろいろ言われているわけですが、国民年金にしても、厚生年金にしても、各種年金そのものが生活保障費という額に達していない、基準に達していない。そこが今日の恩給ないしは年金問題の最も大きな争点だと思うのです。そういう意味で、将来の老人対策という面——老人対策と言ったら、ちょっと失礼ですが、老人の方々がやはり安心して老後の生活を営んでいける、単に生活をするということじゃなくして、やはりそこに生きがいのある生活環境というものを考えた場合に、この老人問題を含めて年金制度というもの、恩給というものは、きわめて将末の大きな政治課題であり、また解決をしていかなければいけない問題だと思うのです。  そういう意味で、先ほど私が若干指摘をした点と関連をさせて、特に総務長官はそういった面の責任者でもございますので、老人問題なりあるいは年金制度について、どういう方向で今後より積極的に改善をしていこうとしておられるのか。私は、最低生活保障という場合に、少しばかり触れましたが、単に、たとえば七十歳以上の老人がお一人生活をするには月二万五千円要るんだという、それだけの保障をすればいいということでは、社会保障というのに値しないと思うのです。やはりそれにプラスアルファ、若干のポケットマネー的なもののゆとりがあって、お孫さんや自分の家族に対して、ときおりは老人としてのサービスもできるというようなゆとりのある保障制度という水準まで引き上げなければいかないと思うのです。そういう面をあわせて考えました場合に、いまいろいろ年金問題が言われている、あるいは弱者救済だと言われているんですが、きわめて乏しい改善にしかなっていないということなどを考えますと、これは厚生省の所管でしょうが、関連をいたしますので、長官の御所見と、今後の決意のあり方をお聞かせいただきたいと思います。
  398. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 上原委員のただいまの御所論は、私もまことに同感であります。特に、日本の社会が老人化してきた、あるいは寿命が長くなるというようなことから、六十歳あるいは六十五歳、七十歳というものの年齢層の方が、これからどんどんふえていくことは事実であります。それが、ただいま議題になっておりますこの恩給問題だけから見ましても、今年度の恩給法の改正の三つの柱がございますが、これは、前国会におきまして、当委員会において強く要望されたことの実現を目ざしての改善でございますが、御承知のように、第一点は、まず生活安定ということのためのベースアップの土台を、公務員給与ベースアップにスライドするということでありますし、また過去の差額については、それを二年間でありますが、調整をしていくということ、それからもう一つ重要なことは、三十二万人を対象にしての最低保障制度を今度新しく拡充をしたいということ、これなどは、いま御指摘の老人問題に対する恩給の持つ一つ意味合いを具体的に表示したと思います。さらに、七十歳以上の老齢者に対する対策も、同様にこの改正案の中に盛っておるわけでございます。私は、この三つの大きな改正点を踏まえて見ていただくならば、今後の恩給行政というものは、大体その方向に向く、いま上原委員指摘されたような方向に進むのだということが、性格としては明確になりつつあると思います。  これは、ほんとうの試算でございますが、現在恩給受給者の数が二百六十八万人おりますが、十年後になるとどういう変化があるかということも、一応恩給局で調べてもらったわけでありますが、十年後になりましても、恩給受給者の数は二百十七万人でございまして、なお二百万人以上の方々恩給受給者であるという事実でございます。したがいまして、四十九年におきまする一つ恩給行政に対するスタンスというものは、五年後になってもあまり変化がない、十年後になってもあまり変化がないということを踏まえますならば、いま申し上げた三つの柱を中心に、恩給の本来的なたてまえというものは、るる申し上げているように、その人の最終月給額と勤務年限を掛けたという、そうした計算方法を母体にするものでありますが、それに加えて社会政策的な配慮、老人対策的な配慮というものを今後は色濃く盛っていくということが、正しい方向ではなかろうかというふうに考えております。
  399. 上原康助

    ○上原委員 この点は、きょうは十分の議論ができませんが、大体の長官の考え方についてわかったような感をいたしますが、これからの恩給問題、私は、恩給ということ自体が、われわれ若い世代の立場からすると、非常にしっくりいかない感を受けざるを得ない面もあるんですね。社会政策、社会保障という概念で、どういう制度に当てはめられようが、最低限度生活保障されるということであれば、別に別々の社会保障体系、制度を持つ必要はないわけですね。しかし、それとて先ほど申し上げましたように、すぐ一挙に解決できない、体系を整理できない経緯がありますので、そこまでは触れませんが、問題は、老後の生活保障ということと、恩給面からしますと、特に扶助料の問題なり、軍人恩給の場合ですと、その遺族のめんどうをどう見るかということにより重点を置かなければいかない問題であるという点、そして今後の人口動向など考えてみました場合に、われわれだってあと三十年すれば国のめんどうになる。みんな人間一応は年をとるわけですから、そういう長期展望に立って社会保障全体の問題、恩給問題というものを位置づけていかないと、現在のワク内だけでいつもとらえておったのではいかないのじゃないのかという点を指摘しておきたいと思います。  そこで、きょうは長官も何か七時二十五分ごろから御用があるようですから、できるだけ私の質問もしぼって、それまでに終えたいと思うのです。ですから、ぜひひとつ御回答いただきたいのです。先ほどからいろいろ議論されておりますが、繰り返しませんが、確かに一昨年、昨年の恩給改正の方向を見て、いま長官が述べられた三つの要素といいますか、それを基礎にして恩給の内容を変えていくという方向づけは若干出てきたと思うのです。しかし、だからといって、私たちの立場からすると、今度提案された内容で満足するというわけにはまいりません。といいますのは、あてえ多くは申し上げませんが、そういう方向づけはされてきたにしましても、一体それを法制化していく、スライド制の問題にしても、あるいは物価上昇度合い、生活環境水準というようなことを考えていった場合に、やはり単なるそういう方向づけをやっていくということでなくして、明確に法制化をしていく、制度化をしていくというところまでお考えになっているのかどうか。先ほど来いろいろ議論がありましたが、まだどうもそこまでは踏み切れない、今後も検討するというようなきわめて抽象的な御答弁しか得ていませんが、私は、すぐ今年度にできないにしても、来年あるいは二年あと、三年後、そういう若干のステップは踏んでいくにしても、法制化していく、制度化していくということを確立していく姿勢というものは、明らかにしておいて差しつかえないと思うのです。その点については、どうお考えなのか、あらためて御答弁をいただきたいと思います。
  400. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。  先ほどから申しますように、直ちにこれで法制化をするということには、なお内部的にも、また政府といたしましても、十分検討しなければならない点が多々あるわけでございまして、したがって、いま私がここで、法制化をいたします、三年後にはいたしますというようなことを、はっきり申し上げるまで煮詰まっておらないことは事実でございます。その点は上原委員も歯がゆいとお思いで、いろいろと御質問いただいていると思います。  私は、もう一つの面から見て、はたして賃金スライドということがいいのかどうかということも、もう一回フリーな立場で考えてみたらどうか。一方におきましては、現在の物価上昇というものは、確かに人事院の給与勧告の中で十分検討されて給与勧告が出ておりますから、これを信用していくということは、一つの大きな柱だと思いますが、また一方からいいますと、物価上昇というものを、私らは今年じゅうに何とか鎮静をさせたい。高い水準であっても、はなはだしい動揺を来たさないような施策を全力をふるっていまやっているわけでございます。そうした面から見ますと、はたして恩給審議会において議論されましたように、賃金と物価情勢というものを両方踏まえて、そうして上昇率をきめていくという考え方が、必ずしも私は、これ全く旧式でとるに足らないという議論にはならないのではなかろうか。この点につきましても、今後の物価情勢というものを、われわれ自身としてもっと検討しながら、十分踏まえていく必要があるのではないか。  賃金スライドを法制化しますと、それではもしも成長率がとまって、そして実質成長が上がらない、したがって賃金も上がらないということだってあり得るわけでございます。私らは、そうした長期的な国の方向というものを、もう少し検討した上で恩給問題そしてまた、他方からいえば、他の所轄庁の所掌しております一般的な社会保障制度、そうしたものをじっくりと検討していく必要がある。ただ、現時点におきましては、委員が仰せられるように、物価スライドよりも賃金スライドがよろしいし、また、その格差はなるべく早く思い切って詰めてしまえばいいということは、私は異論のないところであります。  しかし、一方から申しますと、実は恩給費なるものが、今年度の予算におきましても五千二百七十七億円になっております。これは一七兆の一般会計支出の中で三・一%を占めております。こういうように恩給費が国の財政そのものにとって三・一%のウエートがあるということも、同時に今後の問題点を考える場合に、きわめて重要な一つの指標ではないか。もちろん、一般会計支出と恩給費との間のバランスというものは、多い場合は九%ぐらいあったときもございます。平均すると、ここ十年来は大体四から三というところでございます。つまり、非常に大きなウエートを占めておるということでございまして、こうした大きなウエートを占めておればこそ、先ほども、その差を二年で詰めるとは何だというたいへんにおしかりを受けましたが、財政的な面から見ますと、この三・一%の負担をしておる恩給費については、やはりそれなりの配慮が必要ではなかろうかという点も私は考えておるわけでございまして、もちろん、恩給受給者がしあわせになってほしいということが、われわれの恩給政策の基本であることはもう疑う余地もございませんが、いろいろな事情を十分勘案しながら、上原委員の仰せられるような方向、そしてまた、われわれがいま考えておる方向を実現していきたい、そのように考えております。
  401. 上原康助

    ○上原委員 私も別に、ただ増額をすればいいというだけの立場で言っているわけじゃないのです。あとでもう少し中身に触れますが、ただ、いまの長官のお答えをすなおに受けると、予算が相当膨大である、あるいは予算全体に占めるウエートもかなりのパーセンチージになっている。そういうことだけを強調されると——いまこそ法制化しておかぬと、ただでさえ公務員賃金との格差が一年半以上あるわけですからね。それをむしろ法制化しておって、少なくともその水準に完全にならしていった後にどうするかという議論であればいいわけですが、またあと戻りをしないとも限らないのじゃないかという懸念を持ちますので、その法制化、制度化を前向きにお考えになっていただきたいということを、強く要求しておきたいと思うのです。  そこで、もちろん物価にウエートを置くのか、あるいは賃金スライド両方をかみ合わせるか、これも議論の分かれるところでしょう。いろいろあると思いますが、一五・三%といっても、公務員賃金は昨年は一五・三九なんだ。〇・〇九は皆さん切り捨てた。なぜ切り捨てたかも聞きたいのですが、そういうこともあるという点も指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、内容ですが、今回、普通恩給最低保障額をあらためて設けたということ、確かに前進かと思うのです。その前に、先ほど鬼木先生も触れておったのですが、私は、いわゆる一律二三・八%を上から下までずっと画一的に増額をしたということは、やはり矛盾が生ずると思うのです。もし、いまのような方向で、今回公務員賃金が三〇%前後の勧告がかりに出たとすると、またさらに三〇%べたに上から下までやられたんじゃ、これはもう上下の、いわゆる上厚下薄というものはますます太っちゃう。これもきょうここで多くは詰めませんが、ぜひ検討していかなければいけない問題ですよ。皆さんいろいろやっておられて矛盾も感じていると思うのです。少なくとも上中下三段階ぐらいに分けて——上中下に分けるかABCのクラスに分けるか、下のほうにもつと厚くしていく。生活保障という立場から考えると、下のほうに厚くするというのが最近の賃金の改定でもあるわけでしょう。  なぜ労働組合が一律要求、いわゆる二万円要求なら二万円を全部一律に上積みしろという要求をするかというようなことなども考えた場合に、体系上そうはいかないにしましても、そのでこぼこは直していかないと、今後大きな矛盾が出てくる。今度でさえ、あえて数字は申し上げませんが、上のほうと下のほうとは、たいへんな格差が年々開いてきているわけですね。それは今後是正をしていくお考えがあるかどうか、あるいはいまのようにめんどうくさいから、そうしちゃえというような方向でやるのかどうか、その点は、ぜひ局長のほうから明確に御答弁をいただきたいと思います。
  402. 菅野弘夫

    菅野政府委員 私たちは、現段階においては一律方式というのは、それなりに非常に意義があると思います。しかも、この方式をとりましてかなり年限を経ているわけでございますが、ただ現在、御指摘のように、特に三〇%というような大幅な上昇がございますときに、それが一律であった場合にはたしてどうなるのかということは、われわれとしても重々心にとめておかなければなりませんので、この場でどうこうということは申し上げられませんけれども、あらゆる角度から検討したいと思っております。
  403. 上原康助

    ○上原委員 いまの点は、今回の改定内容を見ても、検討に値するというお考えはあるというふうに理解してよろしいですか。
  404. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いろいろな角度から検討をするというお答えを、繰り返さしていただきます。
  405. 上原康助

    ○上原委員 なかなか慎重なんですが、いろいろの角度から検討するということは、私が申し上げていることも含めて是正するという検討じゃないと、検討してみたがやっぱり一律しかなかったということになりますと、これは、たいへんな矛盾になりますので、そこは、長官のほうもぜひ心にとめておいていただきたいと思うのです。いま数字をもうあげませんが、たいへんな格差になります。  それであと一点、最低保障額を設けているわけですね。六十五歳以上の者ですと、最短恩給年限以上の方が、現行の十三万四千四百円から三十二万一千六百円になっている。これが一つ。いま一つは、九年未満の方で、従来なかったのが十六万八百円というのが出てきている。これは年額ですから、月にするとわずかに一万四千円です。一体一万四千円で生活ができるのかというと、生活保障給という面からすると、最低保障額は設けたとはいいながらも、あまりにも生活保障というには値しない。なぜこういう数字になったかということもお聞かせいただきたいし、まあ、一応今回は制度化したのだというところに皆さんはその評価を見出すかもしれませんが、先ほど私が言いましたように、こういう底上げをすることが、本来の恩給制度の改定なりあるいは社会保障という点、生活保障という面からすると、やるべき大事なポイントだと思うのです。しかも、靖国じゃありませんが、遺族を大事にしょうなんという方々が、一体この扶助料は何ですか。普通扶助料八万四百円。大体月六千七百円で生活しなさいといったってできっこない。こういうものをうんと上げろというなら、社会党も賛成だし上原も賛成なんだよ。こういうことをやらないでおいて、みたまを祭りましょうなんていって、あとは亡霊にしかならない。これは、どういうお考えでこういう根拠になったのか。今回はこういうあれなんだが、将来においてはこういう底上げをやるお考えがあるのかどうか、明確に答弁をしておいていただきたいし、先ほど私が上厚下薄を直すと言うのは、そういった点も含めてなんですよ。
  406. 菅野弘夫

    菅野政府委員 三十二万一千六百円なりあるいは十六万八百円というのは、先ほど来御議論がございますけれども共済年金あるいは厚生年金というものの最低保障額を一応参考にさせていただいた額でございまして、その額自体は、今回はかなり大幅な引き上げになっておりますし、短期在職者については、新制度の新設ということになっておるわけでございますが、ただ、その額自体が、これで理想的な数字であるというつもりはもちろんないわけでございますので、特に、先ほど来申し上げておりますように、大臣も申し上げたように、今後の恩給問題の一つのポイントは、何といいましても低額恩給の是正ということだと思いますので、先ほど来お話しのありましたものを含めまして、将来とも検討してまいりたいと思います。
  407. 上原康助

    ○上原委員 おことばを返すようですけれども、理想でも何でもないので、わずかに芽が出たというようなことじゃないですか。いまお互い自体考えても、一万四千円や月六千七百円で、これで恩給を与えていますとか、社会保障でめんどう見ていますといえないわけでしょう、実際問題として。そこに日本の政治の貧困があるのじゃないですか。そういうところは、もっと重点的に解決をしていただかないと、ますます矛盾だらけの内容の恩給になっていく。ほかの年金の内容との関連もあってそういう額になったと言うわけですが、本来は恩給が先行しておったはずなんです。何も厚生年金やほかの老齢年金とか、そういうものに右にならえする必要はない。いいことはどんどん先走っていいのだ。どっちもこっちもよそのものだけを見ておっては、いまの社会保障というのは進歩しませんよ。四次防で五兆円や六兆円使うよりは、三・一%を、三・三%、三・六%、一〇%と持っていってもいいじゃないですか。そのくらいの積極性がないと、いまの社会保障問題というのは、私は前進しないと思う。(発言する者あり)そこにもひとつ心にとめておいて、ここらでがやがや言っておる方もいるのですが、ぜひ抜本的な解決をはかっていただきたいと思います。長官、そういうことで今後改善していかれるというあれでよろしいですね。
  408. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 恩給が前は、ほかよりもたいへんよかった、最近はほかのものに追い越されたというわけでありますが、こういう社会保障的なものは、平準化ということはやむを得ないことじゃないかと思います。それが、いろいろ具体的な事例にあたって修正を要求されてくる、それに対して対応していくということになると思います。もちろん、そのテンポがたいへんにおそいという御不満はよくわかりますし、また、われわれといたしましても、財政の許す限りにおいて、その問題の解決に努力したい。またもう一つは、配分内容につきましても、今後は十分考えていっていいのじゃないかというふうにも思っておりますが、これもなお内部的にも詰めてまいりませんと、恩給法そのものの基本的な成立の長い歴史がございますので、ただそれを、現時点生活の問題だけで修正するというわけにもいかない面があることは、上原委員も御承知のとおりだと思いますが、そのような方向を決してわれわれは見失っておるつもりはないし、今後は、その方向に努力して実現に向かってまいりたい、そのように考えております。
  409. 上原康助

    ○上原委員 その点は、私も一応は理解をしながら申し上げているつもりでありますので、より生活あるいはその他の面でお困りの方々生活保障というのを、どうしていくかということに主眼が置かれないといけないということを強く申し上げているわけですから、その点、特段の御配慮を願いたいと思います。  そこで、時間がございませんのであと三点ぐらい聞くのですが、この間も宮公さんの裁判問題で、いろいろ野呂先生あたりから御質疑があったのですが、私が一点確かめておきたい点は、恩給法では、他の年金などと併給してはいけないという禁止規定はないですね。
  410. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いま御質問の点は、他の年金ということでございますので、そういうことはないということでございます。
  411. 上原康助

    ○上原委員 では、どの法で禁止をされているのですか。
  412. 菅野弘夫

    菅野政府委員 いまいろいろ頭の中で考えたものですから、変なお答えになりましたけれども、そういう意味の禁止はございません。ちょっと口ごもりましたのは、非常に多額の所得が他にありまして、恩給年額も相当多額の場合には停止ということがあるものですから、ちょっとそれが頭の中に浮かびましたものですから、口ごもったわけでございます。
  413. 上原康助

    ○上原委員 これも別に多く議論しようとは思いません。ただ、これも考え方の問題と姿勢の問題だと思うのですが、確かに年間恩給で二、三百万円ももらう、あるいはまた老齢年金も該当するというようなことになれば、社会一般通念から考えたって、どっちか一方禁止されるのはあたりまえと受け取られてもしかたがない。しかし、恩給法にはその規定はないわけですね。年金法を調べてみても、国民年金のほうで確かにそれらしいものはある。しかも、その額の調整については政令委任になっている。何も立法府のことじゃない。では、立法府がそういう併給はみんな取っ払えということをやれば政府は応ずるのか、これもまたいろいろ問題が出てくる、議論が出てくる話であって、そういうような議論の分かれることについては、たとえば、どっちを加えても年間百万円の年金にしかならない、恩給を加えても、老齢年金その他の福祉年金を加えても、その百万円という線引きをどうするかはまた議論がありますが、少なくとも五十万円ないし七十五万、百万というような線引きをして、併給も今後できるというふうに、政令委任でできるわけですから、やるお考えがあるかどうか。  これは、ほかの厚生省とかいろいろな関係調整していかなければいけない問題ですが、いまのように生活保護基準一つの線引きにして、これだけもらっているからこの格差しかやらないというのは、あまりにも冷た過ぎるのではないですか。それは調整をする上で私はできる問題だと思う。これは局長というよりも、国務大臣という立場でひとつ厚生大臣ともお話をしていただいて、どこに線を引くかというのは、議論の分かれる問題ですが、画一的に併給はできないといういまのあり方というのは、早急に改めるべきだと私は思う。この点についてもお答えを聞かしていただきたい。将来、この問題をもっと私も勉強して議論をしてみたい。非常に関心のあることなんです。ぜひひとつ、そういう方向づけでこれは善処していただきたい。
  414. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 併給禁止は、厚生省のほうで主張しているわけでありますが、私は、厚生省のほうの立場を推測いたしますが、最低保障のレベルにおいて、他との格差がその中に非常にばらばらにあるというような事態は困るというのは、行政要求としてはまた当然だろうと私は思います。したがいまして、その格差のあまり出ないような形で、マイナスをしたりするということもあっていいと思います。しかし問題は、恩給だけで生活のかさ上げをしていくというようなことは、これまた不可能なのでありまして、むしろ全般的な社会政策、保障制度の拡充を待ちながら、国民全体の最低生活レベルをもっと引き上げていくということこそ、われわれは重要な任務だと考えます。  その一環といたしまして、当面そういうことがなかなかできない場合には、ただいまも議論になっておりますが、厚生省のほうの不均衡論というものをどのように考えるか。われわれのほうは、ただふやせふやせというだけで済むわけじゃございませんので、この不均衡論についても、十分われわれのほうとしても考え、また、恩給自体の最低保障というものの格上げをしながらどこまで要望に応じていけるか、それぞれの立場において今後努力をして、そして老後の生活というものに安定感を与えたいというふうに考えております。
  415. 上原康助

    ○上原委員 いずれにしましても、そういった不均衡是正の問題と、併給を画一的に禁止をしていくということではなくして、政府部内でいろいろ調整をしてみたい、善処してみたいというお考えであるというふうに受け取っていいですね。
  416. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 繰り返して申し上げますが、私はそのように思います。しかし、これは部内で、やはり事務的な問題でございますし、方針はだれも反対はしないと思いますが、実際の行政面においてのでこぼこがひどくなっては、これは言うだけのことになりますので、そうした面も十分踏まえまして、慎重に検討してまいりたいというふうに考えます。
  417. 上原康助

    ○上原委員 これは、こういうことまで一々裁判に持ち込まれて、やれ憲法違反だどうだということ自体か——それも、もちろん大事だし、そういうこともないと、政府も腰を上げないから困るのですが、私はむしろそれ以前に行政の立場でできる問題だと思うのです。ほんとうからいうと立法禁止規定じゃないのだよ。その点はぜひ御理解をいただいて、早急に善処していただきたいと思います。  そこで、皆さんいろんなことをお聞きになるので、私も沖繩のことを少し聞かしていただきたいと思うのです。  ここで、昨年のこの法案審査の場合も私、取り上げてあったのですが、私が取り上げた点が、今回改正の中に入っております。その点敬意を表しますが、ただ、元琉球大学職員に対する恩給法の適用の問題ですが、私の手元の資料では、対象人員が十名の方々になっているのに、ここでは八名の方々だ。対象人員及び所要額も出しているのですが、なぜ十名でなくて八人になったのかということと、いま一つは、恩給法は適用するわけなんですが、今年十月一日以降恩給法を適用していくのだということですが、それは七月一日になると思うのであえて申し上げませんが、その俸給調整というのは一体どうなったのか、これもお聞かせをいただきたいし、人数の問題。要するに、全然格差なくして俸給調整もやった上での適用なのかどうか、明確にお答えをいただきたいと思います。
  418. 菅野弘夫

    菅野政府委員 先生から御指摘をいただきまして、われわれは沖繩にも実地調査等に参りまして、いろいろな調査を積んだわけでございますが、その結果八名でございまして、八名ということが確定をいたしましたので、八名になったわけでございます。  それから金額につきましては、平年度に約七十万かかりますので、本年度はその四分の一を要求しておるわけであります。
  419. 上原康助

    ○上原委員 これは数字的なことで、一々ここでお名前をあげる必要もないと思いますので、それじゃ後ほど八名の方々のお名前と——私が持っているこれはお持ちでしょう、前に陳情で出されているわけですから、これは、ちゃんと十名なんですよ。漏れた人は共済制度に移行したのか、あるいは勤務年数が足りないのか、そういうこともあろうと思いますので、後ほど御説明いただけますか。それも、もし皆さんの手違いで漏れておったら入れるということも約束すれば、そういうことであえて続けたくないと思いますが……。
  420. 菅野弘夫

    菅野政府委員 資料は後ほど提出申し上げますし、それから後段の御質問については、そういうことでございましたら、もちろん当然のこととして入れるということでございます。
  421. 上原康助

    ○上原委員 号俸調整の件は、どうなっているのですか。
  422. 菅野弘夫

    菅野政府委員 ちょっと号俸調整の御質問意味がよくわかりませんですが……。
  423. 上原康助

    ○上原委員 この該当者の、いわゆる過去において四回か六回か調整されてきたわけでしょう。この方々は復帰前にやめた方ですからね。やめた時点俸給基礎にした恩給になるのか、あるいはそのやめた時点俸給を号俸で調整をしてやったのかどうかということなんです。
  424. 菅野弘夫

    菅野政府委員 失礼しました。わかりました。先生の御質問は、こういう方も号俸調整をしてやったかどうかということでございまして、そのとおりでございます。
  425. 上原康助

    ○上原委員 これは、またやった形だけじゃないと思いますので、これも後ほど十分御説明をいただきたいと思います。この復帰前に旧琉球大学を退職した方々恩給適用については、今回の法改正で全面的に解決されたということでいいですね。先ほどの私の疑問点については、御説明をしていただく、そういうことでよろしいですね。
  426. 菅野弘夫

    菅野政府委員 はい、そのとおりでございます。
  427. 上原康助

    ○上原委員 御苦労さんでした。  そこで、あと一点ですが、これも最近出てきているのですが、これは、きょうあえて詰めた議論をしようとは思いません。ただ、総務長官もおられますので、あと五分ないし十分くらいで、約束の二十五分までには必ず終えますから、質問さしていただきたいのですが、いわゆる旧沖繩県の文官恩給受給者方々から、恩給法の適用を受けていろいろ改善はされてきたのだが、長年の損失といいますか、要するに言わんとするところは、こうだと思うのですが、もし沖繩が施政権が分離をされなかったとするならば、本土におった文官の皆さんと同じような恩給の額が受けられた、しかし分離されたがゆえに、号俸調整とかその間のいろんな面がなされずに、相当損失を受けているんだというので、この数字が正しいかどうかはわかりませんが、これだけ数字をあげてはじいているわけですから、私は正しいと思うのです。六億五千二十五万三千円、該当者は約千名だということが出されて、この点についても、何らかの善処をしていただきたいという強い要望が出ているわけですが、この点、この種の問題については、恩給局としては、政府としてはどういうふうにお考えなのか、ひとつお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  428. 菅野弘夫

    菅野政府委員 六億五千万という数字でございますので、沖繩退公連の会長から出された要請のものだと思われますけれども、沖繩の恩給問題につきましては、先生とくと御存じのとおりに、敗戦という不幸な事態によりまして、二十一年に行政権が及ばなくなったとき以来、恩給法の適用がはずれたわけでございますが、その後、平和条約が成立をし、独立を回復しました二十八年から、逐次恩給法の適用なり、あるいはその後の改善が積み重ねられてきたわけでございます。そういたしまして、一昨年の復帰時におきまして、本土の公務員の恩給と全く匹敵すべき水準にまで達することになりました。  そこで、現在の状態はいいけれども、過去においてかなり不利な取り扱いがあったのじゃないかというようなことが、この主張の論点だと思いますけれども、これは、ほかの制度でも大体そうだと思いますが、恩給改善におきましても、この琉球の問題に限りませんで、それは、それぞれそのときそのときにおける妥当な措置を積み重ねてきているわけでございますので、戦後の沖繩が置かれておりますきわめて特殊な事情というものは、十分了解できるわけでございますけれども、それを既往にさかのぼって、その差額を云々するというようなことは、なかなかむずかしい問題であるというように現在のところ考えております。
  429. 上原康助

    ○上原委員 確かに、これは、なかなかむずかしい問題であるということは私もわかるんですよ。いつもむずかしい問題しか要望もしてきておりませんので、お答えするお気持ちなり立場はわかるのですが、たとえば、これとの関連もあって、政府は、こういうことをやると波及が大きいのでということで、絶えず消極的な態度をとらざるを得ないということになっているかもしれませんが、原爆被爆者の方々の問題もあるわけです。これも直接はこれと関係ありませんが、いわゆる復帰前の原爆被爆者の医療についての保障問題というのが出てきて、厚生大臣もなかなかむずかしいのだ、そう簡単にいきませんが検討してみますということで、いまいろいろ検討をされているのです。  しかし、沖繩の場合ですと、何も物取り勝負でこういうことを申し上げているわけじゃないのです。しかも、ここに書いてあるものを読んでみますと、恩給審議会がいろいろ旧沖繩の恩給該当者の件について、四十四年か四十五年に恩給審議会の答申が出て、そこでいろいろ触れておるのです。私も持っておりますが、そういうものも受けて、この種の問題についても、やはり本来日本国民であるとして受けておったならば、こういうことになったのだという、これは該当者から見ると、そんなにごり押しでもないし、無理な相談でもないわけです。もちろん、そのことをすべてどうするかということは、これは、また話は別のことで、むずかしい問題であるというのはわかりますが、むずかしいからもうそういうことを言うことはよしてくださいというような立場でなくして、去年は重大な問題をやりましたが、これもむずかしいということでしたが、やっている間にできた。来年の恩給改正には、これも検討していただいて改善の余地があるならばやっていただきたい。これは総務長官が開発庁長官でまたかというお気持ちかもしれませんが、やはりいろいろな面で戦後処理の一環として残っているのですから、この種の問題を拾い上げて、できるだけ善処をしていただくということでないといけないと思いますし、完全に恩給法が適用されたということにはならないと思いますので、検討をしていただくということで、ひとつ十分該当者なり関係者の方々ともお話をいただいて、何か合意点が見出せる面もあるのかどうか、そこいらについて、私たちも努力をしてみますが、政府としても御努力をいただくということで、ぜひ善処をしていただきたいと思いますが、お考えを承っておきたいと思います。
  430. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 沖繩県の退職公務員連盟会長から恩給局長あてに出されております六億五千二十五万三千円という要求でございますが、いま恩給局長からもお答え申し上げましたが、恩給については、その時点時点において解決済みという形でずっと積み上げられてきております。したがいまして、たいへん残念なことでありますけれども、沖繩が占領という一つの事態の中で現実に占領されておった、日本の施政権の及ばなかったという期間があるわけでございまして、この空白期間について、もちろん、われわれは心理的、精神的には非常にお気の毒なことであったということは十分踏まえておりますし、また、それを取り返すということのために、今日、沖繩開発庁をつくり、予算もつくり、そして努力をいたしておるわけでございますが、その中から、特別に恩給に関してだけの問題を取り上げて補償するということになりますと、これは、きわめて大きな戦後処理の問題に火がつくことになるということも考えられます。  もちろん、事務的に申し上げれば、済んだことであるからひとつ目をつぶってください、今後何とかいたしますというようなことになるわけでありますけれども、私は、その空白期間に得べかりし利益というものがここでまた補償されるものであるということになりますと、これは単に沖繩だけではないわけであります。言うなれば戦災で受けた被害とか、または戦争そのものによって起こったいろいろな事態というものに対しても、すべて国が補償しなければならぬじゃないかということに必ずなると思います。そうしたことになるということは、せっかくいま一応のシステムができて、そして恩給制度もある程度安定した形で、今後は、上原委員の種々御指摘になりましたような新しい方向に向かって恩給制度を発展させてまいりたいという考えでおりますが、そこに過去の得べかりしものが補償されるということが入ってまいりますと、非常な混乱が起こる。私の答弁は、あなたには非常に御不満だと思いますけれども、率直な意見を言わせていただけば、そういう面もわれわれとして十分配慮しなければならない。したがいまして、恩給局長が申しましたように、慎重に考えたいということは、その意味でございますので、これが全然だめであるということではなしに、この持つ広がりがきわめて大きく、他の面  にも波及するのだということを慎重に検討しなければならぬというふうに申し上げているので、御理解いただきたいと思います。
  431. 上原康助

    ○上原委員 約束の時間ですから、これでもう終えますが、いまの総務長官の御答弁には、私の立場からするとやはり不満なんですね。それは波及していかなければいけない問題は、本土だろうが沖繩だろうが、戦後処理の一環としてやっていかなければいけない問題があると思います。ただ、その議論は別といたしまして、たとえば号俸調整ということも考えられるでしょう。過去にさかのぼって全額を補償するというようなことでなくて、いろいろな面で考えるに値する面がまだあるのではないかという気がしますので、そういうことも含めて慎重に検討するということだと私は理解をいたしますので、たいへんむずかしい問題であるということはわかりますが、もう一度関係者とも十分お話し合いをしていただいて、できるだけそういった方々の御要望にも沿うような行政のあり方、政策のとり方というものをやっていただきたいということを強く要求をいたしまして、約束の時間ですから、これで私の質問を終えさしていただきたいと思います。
  432. 徳安實藏

    徳安委員長 他に御質疑もないようでありますので、本案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、来たる二十三日木曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時二十八分散会