運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-03-05 第72回国会 衆議院 内閣委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月五日(火曜日)     午前十一時三十九分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君   理事 加藤 陽三君 理事 小宮山重四郎君    理事 中山 正暉君 理事 野呂 恭一君    理事 服部 安司君 理事 上原 康助君    理事 大出  俊君 理事 中路 雅弘君       近藤 鉄雄君    竹中 修一君       藤尾 正行君    三塚  博君       吉永 治市君    川崎 寛治君       吉田 法晴君    鈴切 康雄君       受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君  委員外出席者         法務省入国管理         局次長     竹村 照雄君         外務大臣官房審         議官      杉原 真一君         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         外務省アジア局         外務参事官   中江 要介君         外務省情報文化         局文化事業部長 堀  新助君         文部省大学学術         局留学生課長  植木  浩君         農林省畜産局衛         生課長     信藤 謙蔵君         通商産業省通商         政策局北アジア         課長      内田 禎夫君         通商産業省通商         政策局経済協力         部長      森山 信吾君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   笠岡  喬君     千葉 三郎君   三塚  博君     河本 敏夫君   吉永 治市君     中垣 國男君   木下 元二君     紺野与次郎君   受田 新吉君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     三塚  博君   千葉 三郎君     笠岡  喬君   中垣 國男君     吉永 治市君   紺野与次郎君     木下 元二君 同月四日  辞任         補欠選任   安里積千代君     小平  忠君 同月五日  辞任         補欠選任   小平  忠君     受田 新吉君     ————————————— 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第三八号)      ————◇—————
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 実は大臣、大きく分けて問題が二つあるのであります。  一つは、アジア卓球団体ができておりまして、大臣も御存じのことだろうと思うのでありますけれども、このアジア卓球をめぐりましての——これは隔年、一年おきにやっているわけでありまして、二十七のアジア諸国加盟をいたしておりまして、アジア卓球連合正式名称はこういうようでありますが、ATTUというふうに書いております。  これは、第一回大会は一昨年の夏に北京で開かれまして、一年おきに、世界選手権大会のない年に、各国で持ち合って大会を開いていこうということで、本年は、日本ということになっているわけでありますが、たまたま横浜市が、上海その他といろいろな交流を持っております関係で、本年は横浜が、主催国主催地になってもらいたいという話が久しい以前からございますし、次回は、五十一年に北朝鮮平壌でやる、こういうふうな筋道になっているようであります。  それで、四十三カ国に招待状を出しましたが、これは、もちろんアジア卓球連合として出したわけでありますけれども、これに対して、アラブ諸国を含めまして、三十一の国から四百人前後が参加するという回答が来ているわけであります。これは、第一回大会には、中国と国交のないタイども参加をしている国際的なスポーツ団体でございます。  今日、スポーツ大会ということでありますけれども、ある意味では、政治的な交流というものも側面的にはあるわけでありまして、そういう意味では、これは非常に重大だというふうに考えているのでありますが、この催しにつきまして、横浜市長等からも、何回か政府要路方々お願いを申し上げているところでございますけれども、なかなか困難な問題がおありになるようでございます。   〔委員長退席加藤(陽)委員長代理着席〕  新聞紙上の報ずるところによりますと、どうやら北朝鮮、つまり朝鮮民主主義人民共和国等に関しましては、平壌市長入国もお認めをいただけるというような色合いの政府方針が出てきているように見受けられますけれども、この問題について、どういうふうに御認識を賜わっておるのかという点を、まず承りたいのでございます。
  4. 穂崎巧

    穂崎説明員 いま御質問の点は、こういう選手団方々入国の問題というふうに考えますが、この問題につきましては、現実にまだ査証の申請も出ておりませんし、政府としては、その手続を始めておりません。われわれといたしましては、そういう申請が出ました段階検討いたしたい、こういう考えでございます。
  5. 大出俊

    大出委員 では、大臣に承りたいのですが、私は、日本外交一つのあり方として、経過を振り返ってみますと、中国の問題にしても、あるいは北朝鮮の問題にいたしましても、あるいは北ベトナムの問題をめぐりましても、今回の提案されております在勤法の中でも、北ベトナムの問題もこの中に入っているわけでありまして、旧来、全く違った角度からものを見ていたものが、非常に大きな変化を最近は見せておりまして、朝鮮民主主義人民共和国問題などにいたしましても、昨年の国連総会動きどもございまして、同時招請をする、こういう結果になりました。  従来、一番中心点でございました、国連との関係における南北に争いがあるようなものは、避けて通るという大会の雲行きでございましたが——したがいまして、こういう四十数カ国が集まりまして、アジア一つのまとまった組織体をつくっているスポーツ団体、こういうふうなものに対して、基本的にスポーツとは申しながらも、一つ外交姿勢背景にはなければなりませんが、そこらのことを、日本外務省は一体どう考えているのかという基本的なものの考え方をひとつお聞きしたいわけでございますが、大臣、いかがでございますか。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 アジア状況は、御案内のように、一方において緊張緩和が定着をしつつあると見られる部面もございますけれども、底流におきまして、依然として不安定の状況を脱却し得ない、非常に微妙な状況であることは、大出さんも御案内のとおりであります。  したがって、アジア外交の展開というものにつきましては、私ども非常に細心、周到な配慮が必要であると考えておるわけでございます。  それから、朝鮮半島におきましても、あるいはインドシナ半島おきましても——朝鮮半島には、二つの政権対話を持っておるといっても、対立状況にある対話でございまして、実のある成果をまだ生んでいないという状況でございます。   〔加藤(陽)委員長代理退席委員長着席インドシナ半島おきましては、ややそれと趣を異にいたしまして、南北の間に、パリ協定を媒介といたしまして、一つの了解ができまして、わが国といたしましても、北ベトナム人民共和国というものを承認することに相なりましたことは、御案内のとおりでございます。  こういう状況を踏まえて、現実の問題である、これはスポーツであろうと、学術であろうと、あるいは経済取引であろうと、いろいろな交流をどのように規制してまいるかということでございまして、一口に言うとケースバイケース、慎重に考えていこうということに尽きるわけでございますが、基本方針をしいて言えとおっしゃいますならば、そういう慎重な態度を維持しながらも、政治的な色彩を持たない人の交流というものはできるだけ拡大して、アジアの安定をそこなわない範囲におきまして、拡大していくという方向はとってみたいと考えておるわけでございますが、出てまいりました案件につきましては、厳密に申しますと、ケースバイケース判断させていただくということでございます。
  7. 大出俊

    大出委員 私は、横浜選出だからという意味ではなくて、この問題は、非常に重要に考えているわけでございます。  いま、たいへん前向きな御答弁をいただきまして、ありがたいのでありますが、ケースバイケースで、基本的に慎重に考えていく、したがってケースバイケース判断をしていきたい、だが、政治的な背景を持たない、つまり、それが学術文化の面にわたる問題であっても、あるいはスポーツというような問題であっても、こういう人的交流は、できるだけ見ていきたいのだ、そういう意味の御答弁でございまして、それが基本的な考え方である限りは、私、全く賛成なんであります。  そうあっていただきたいとお願いをしたいのでありますけれども、いま、私、たいへん重要だと考えていると申し上げましたのは、この四十七カ国が加盟している、つまり、先ほど申し上げましたATTUアジア卓球連合と申しますものが、一昨年北京大会を開きました際に、加盟している各国が、ある国で主催をする、そして大会を開くというときに、認められない国が幾つか出てきた場合には、最終的にわれわれも出席をしない、このことが正しい方向だということで決定を見ているわけであります。  したがいまして、アラブ諸国などにいたしましても、参加するという通知が来ておりますけれども、もし認められない国々が出てくるということであれば、われわれも参加はできないのだということをあらかじめ言うてきているわけであります。  したがいまして、先ほどお話がございましたが、まだ手続が行なわれていない、手続が行なわれたら、それに基づいて審査をする、こういうわけでありますが、開催時期が四月二日でございまして、期間はそうございません。各国それぞれに手続を全部したが、結果的に取りやめになったということになるとすると、主催国主催者側という立場からいたしまして、たいへんに各国に迷惑をかける結果になる。何かが残る感じにもなります。  そういう意味で、できるだけこれは時間のある間に、どういうことになるのかという点は詰めていきまして、その上で日本政府のものの考え方を基礎にして判断ができる、そういう形にしていただきませんと、日本の国内の団体が集まるわけではございませんから、あとにどうもぐあいの悪いことが残りかねない、実はそういう心配をするわけであります。  私は、これは新聞に出ましたから、実は質問をする気になったのでありまして、本年二月十八日の読売新聞等に、政府考え方が載っている。「政府は、四月二日から横浜市で開かれる第二回アジア卓球選手権大会参加者のうち、米承認国地域からの役員選手団入国問題の予備検討をしているが、」、こうなっているわけでありまして、手続が出れば、その時点で審査する、こういうお話でございますが、予備検討が行なわれていることが新聞に報ぜられている。  この中で朝鮮民主主義人民共和国、一般的にいう北朝鮮方々は、こう言っているわけであります。平壌市長である姜希源さんの入国も、これは前からいろいろ懸案がございまして、たくさんの国から、この方には——日本からも、そうでありますが、美濃部都知事が参りましたころから、招待状を出している方でありまして、この方の入国、これが予備審査段階で、国連動き、その他変わった国際情勢アジア情勢等検討なさったのでしょう、たいへん柔軟な姿勢をおとりになる方向が出てきているというふうなニュアンスの記事が、実は出ているわけであります。  したがいまして、予備審査段階、つまり手続が行なわれていない段階だとはいいながらも、予備審査が行なわれているわけでありますから——いや、予備検討でございますね。そこらのところで、新聞に出たことがございますので、その真偽のほどを、せめて言っていただかなければならぬ、こう思っておりますから、質問をするのでありますが、この新聞に出ております、予備的な検討段階という前提がございますけれども平壌市長さんの入国等についての記事は、このとおり受け取ってよろしゅうございましょうか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 今度の卓球大会の問題につきましては、主催者側からもお話を伺いましたし、また与野党の先生方からもお話がございまして、問題の所在という点は、一応心得ておるつもりです。  しかし、これは申すまでもなく、御案内のように、法務省の所管でございまして、法務省外交関係おきまして、私どものほうと御協議をいただくことになると思うのでございまして、この問題が出てまいりましてから、法務省おきましても、外務省おきましても、予備審査というおことばでございますが、まあ、こういう問題について、あれやこれや考えていることは、事実でございますけれども、まだ法務省から、正式の協議を受けていないわけでございまして、新聞記事は、まだ私、責任を持ちかねます。
  9. 大出俊

    大出委員 先ほどの基本的な御答弁がございますから、わかる気がするのでありますけれども、ただ、これは、いま法務省の話も出ましたが、旧来、多少法務省外務省の意見の違いが、実は見られた場面がございまして、パリで、昨年の一月二十七日でございましたか、平和協定の調印をめぐるいろんな問題がございましたが、その際に、南ベトナム臨時革命政府の問題が表に出てまいりました。  北ベトナム方々とともに日本に来たい、こういう、実は、これはわが党の田さん等が行ったときにも、そういう話があったようでありましたが、参議院における田君の質問だったと思いますが、これに対しまして、法務大臣が非常に前向きな答弁をされておられました。田中伊三次さんでございました。  ところが、おやめになりましたが、法眼次官以下外務省、非常にかたい姿勢で、とんでもない話だという形の談話等が、実は新聞に出まして——これは国際的にパリ平和会議で認められている南ベトナム臨時革命政府でございます。北ベトナム旅券の形で南ベトナム臨時革命政府の方を入れているケースも、実はかつてあるわけでございます。今回、はたしてそういうことが可能かどうかという問題がございますけれども、すでにこれは、国際的な視野から見て認められている筋道のものであります。まして北ベトナムと合わせて、先般は解決をしている問題であります。今回は在勤法で、北ベトナム公館設置の問題が出ているわけであります。その後そういう発展を見ている。  したがって、やはりこの辺のことも、新聞記事の真否のほどは別として、先ほどお話しになっている政治的な背景がない、スポーツ選手代表である、こういう形である限りは、私は、先ほどの基本的な外務大臣姿勢と合わせまして、前向きで御検討いただいていい筋合いではないかという気がするのであります。  先ほどの平壌市長さんの場合も、当然、これは先般の国連総会オブザーバー出席をしている国であります。これは国連加盟国全部が認めて、オブザーバー出席をしているわけであります。そういう意味で、当然認めていい筋合い、つまり基本的な線に照らして、前向きで御検討いただいていい筋合いではないか、こう思っております。  北朝鮮の、民主主義人民共和国代表選手役員、それと南ベトナム臨時革命政府選手団役員、こういう方々については、前向きで御検討をいただきたい。検討段階でございますから、こういう表現にさしていただきたいのでありますが、前向きで御検討いただきたい、こういう気がするのでございますが、いかがでございましょう。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど政府委員から御答弁申し上げたとおり、まだ手続に入っておりませんので、御申請がありまして、おそらく法務省から御相談を受けると思いますので、その段階で考慮さしていただきます。
  11. 大出俊

    大出委員 確かになかなかむずかしいところだとは思うのでありますが、ここでひとつ、外務省方々に承っておきたいのであります。  カンボジア王国民族連合、こちらの方も、ATTUのほうの組織加盟をしているわけです。この問題をめぐりまして、いまプノンペンをめぐるいろいろな問題がございますが、ロン・ノル政権、ここからシアヌーク政権選手あるいは役員日本入国した場合、国家に対する反逆者という理由身柄引き渡しの要求が来ている、日本にですよ、こういうふうにこの記事の中にございます。  ここらのところは、外務省には一体どういう手続で、どういうふうな感触でものを言うておるのか、少し承りたいのですが……。
  12. 高島益郎

    高島政府委員 ただいまの大出先生お話の件につきましては、外務省といたしましては、何もまだ聞いておりません。
  13. 大出俊

    大出委員 聞いていないとおっしゃるのですが、慎重であることは、私は別に反対をするわけではないのですが、ここに記事がございまして、カンボジアの場合、たいへん複雑な様相になっている。王国政府、つまりロン・ノル政権から、「日本政府に対し、カンボジア王国民族連合政府シアヌーク政権)の選手役員入国した場合、国家に対する反逆者という理由身柄引き渡しの要請が来ているといわれる。」、こうなっているんですね。このあとに、「昨年秋の国連総会カンボジア問題が議題に採択されそうになったとき、日本アメリカとともに反対側に回った経緯もあり、」、こうなっているんですね。  これは、新聞に載っている記事信憑性がないということを前提にお考えになるなら、問題は別であります。私も、それとなく聞いてみましたが、もちろんニュースソース云々なんということを言うことはないのでありますけれどもそれなりに確証があってお書きになっているようであります。したがいまして、全く承知しておりませんと、こうすっぱり言われると——いや、いろいろあるけれども、ここで答えられぬというならわかりますが、全くないと言い切られると、私も、もう少し調べてみて、あったじゃないかと言いたくなるわけでありますが、そこのところは、いかがでございますか。
  14. 高島益郎

    高島政府委員 正直に申しまして、ほんとうに私存じないのです。さっそく調べてみます。もし、そういう場合に何か申し入れがあるとしたら、どういうことになっておりますか、ひとつ調べてみます。
  15. 大出俊

    大出委員 全くないということなら、かえってありがたいんで、ないんならば、これは別に、一つの障害が出てくるというようなことではない、技術的に考えようも出てくる、こういうわけであります。あるとなれば、あるようにせなければいかぬわけでありますから、そこで承ったのでありますが、二、三お聞きいただいて、全くないならない、はっきりしておいていただきたいのです。いかがですか。
  16. 高島益郎

    高島政府委員 調査の上、そういう事実があるかないか、先生に直接御連絡いたします。
  17. 大出俊

    大出委員 そうすると、あるともないとも、この席では言えないということですか。
  18. 高島益郎

    高島政府委員 私に関する限り、全く承知しておりません。
  19. 大出俊

    大出委員 いまのお答えからすると、そういうことをお聞きになっていない、つまり、その限りでは、そういうことは言ってきていないということになるわけでありますが、念のために調べてみる、こういう筋合いでございましょう。まあ、なければ、これは、むしろたいへん幸いでございまして、日本政府立場として、そういうことがあるとすれば、またそれなりのことが必要になってくるわけでございましょうから……。  そこで、ここでひとつ、法務省に承っておきたいのでありますが、最近の法務省基本的なものの考え方として、さっき外務大臣は、慎重に考えなければならぬ、国際的な情勢動きも、テンポが非常に速く動いている、慎重に考えなければならぬのだが、しかし基本的なことを言えと言われれば、政治的な背景が特にないというふうな方々については、できるだけひとつ認めていきたいという方針はとっている、それが文化であれ、学術であれスポーツであれ、そういう趣旨のお話があったわけでありますが、私は実は、先ほど例にあげました南ベトナム方々の問題をめぐっての田中法務大臣の当時の答弁外務省答弁がたいへん食い違って、国会で問題になったことがございますけれども、たいへん前向きな動きを示してきている最近の法務省のお立場でございますから、外務大臣がおっしゃっていたような方向と受け取っていいのか、そこのところを、念のために承っておきたいのです。
  20. 竹村照雄

    竹村説明員 そのような方向検討しております。
  21. 大出俊

    大出委員 それでは、時間もないところでございますので、冒頭にるる申し上げましたように、この団体が、二十七の国あるいは地域加盟するアジア卓球連合ATTU、すでに第一回大会北京で行なわれておりまして、このときには、タイ国などまで実は出席をしている。アラブ諸国ども多く入っておりまして、今回の場合にも、三十一カ国、四百人前後が参加する、こういう回答を寄せていることでありまして、特にアラブ地域あたりは、出席をするといって回答を寄せた国々の中で、入国が認められない国々が出てくるとすれば、われわれも参加をしたくない、こういうことなども特につけ加えられているのでございます。  非常に速く動いている国際情勢でございまして、特にアジア情勢米中接近あるいは日中国交回復を機にいたしまして、昨年の国連総会における南北朝鮮同時オブザーバーとしての出席というふうな国際的な動きの中で、私どもからすると、非常に大きく緊張緩和方向に動くという好ましい状況にあるわけでありまして、そういう時期でございますだけに、この問題は、ぜひひとつ、先ほどの基本線に基づきまして、政治的な背景というものを分けていただきまして、ケースバイケースとはいいながらも、学術文化あるいはスポーツ、こういう面にわたってできるだけ認めていきたいのだという大臣方針を、ひとつお進めいただきますようにお願いをしておきたいと思うのでありますが、最終的に大臣の御答弁をいただきたいと思うのであります。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのような方向でいろいろ手続が始まりますと、法務省と御協議の上、善処してまいりたいと思います。
  23. 大出俊

    大出委員 法務省外務省と同じような方向でと、いま御答弁ございました。この種の大会をやるとなりますというと、国際的な関係各国との連絡をはじめといたしまして、たいへんな規模の準備が要るものであります。したがいまして、たいへんなそうした苦労の積み重ねの上に今日まで進めてきている。次回は、朝鮮民主主義人民共和国で、隔年でございますから、五十一年になりましょうが、やるというふうなことまで進められているわけでありますので、どうかひとつ、格段の前向きの結論が出せますようにお願いをいたしまして、この問題については終わりたいと思うのであります。  次に、大陸だなにかかわる日韓共同開発、この問題と中国の抗議という問題をめぐりまして、いろいろ問題が出てまいっております。日韓閣僚会議をたいへん急がれた背景などからいたしまして、どうも、私どもの見る限りは、金大中事件というようなことも、いまになると、実はそこらのいろいろな関連があったのではないかという気がする節々がございます。そういう意味で、この際幾つか承っておきたいことがあるのであります。  まず一つは、金東祚という韓国の外務大臣が、「韓国政府が金大中氏の出国を許す見通しは暗く、金氏が申請した旅券が発給される可能性はほとんどない」という言明をされている記事が、先般載っておりました。また「金氏は日本人でもなければ米国人でもない。彼は韓国の一市民で、韓国の国内法に制約される」と、大平外務大臣に東京で会った際、はっきり言っておいた、こういう記事を見たわけであります。  この辺のところ、私も、大平さんに、あるいは田中さんと御一緒に、何べんかこの点の質問をいたしてまいりましたが、原状回復ということが、当時法務省の一貫した考えでございました。主権の侵害、こういう問題も国民世論としてございました。こういう中で、粘り強くこの点を韓国との間で詰めていくのだという、いわば待ちという形で外務大臣答弁をされておりましたが、どうも振り返ってみると、もう少しはっきりした政治姿勢日本と韓国と相互の間に話し合われていたのではないかという気がするわけであります。  したがいまして、いまの二つの記事、ここらについて、当時、ほんとうのところ、どういうことになっておったのかという点を、まず承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘のような記事が、先月ニューヨーク・タイムズに出ましたことは承知いたしております。それで、私どもも不審に思いまして、韓国側に照会をいたしたのでございますが、私と金外相との間の話し合いに変わりはないということでございました。  私と金さんとの間の話し合いは、どういうことであったかと申しますと、金大中氏の出国の件につきましては、金大中氏なるがゆえに、特に早く手続を進めるということもしないが、金大中氏なるがゆえに、特におくらせるというつもりも毛頭ないということでございまして、そういう話し合いの筋に依然として変わりはないということでございました。
  25. 大出俊

    大出委員 いま外務大臣みずからおっしゃいましたように、リチャード・ハロラン氏、この人は、いろいろなことをお書きになっている著名なジャーナリストの一人でございまして、私もよく知っているわけでございますけれども、この人がニューヨーク・タイムズにここまでお書きになった。私は、実はなるほどと思い当たる感じのするところが幾つもあるわけでございます。だから、あらためて聞いてみたわけであります。  外務大臣と金外相との間の話し合いが、特に金大中氏なるがゆえに早めるということでもない、また金大中氏なるがゆえにおそくするということでもない、こういう言い方をされたということであっても、リチャード・ハロラン氏のこの記事のような、つまり韓国側は、繰り返して申し上げるまでもないが、「韓国政府が金大中氏の出国を許す見通しは暗く、金氏が申請した旅券が発給される可能性はほとんどない」と言い切っている。そうであったかどうかは別として、大平外務大臣に会ったときにも、国内法の制約を受けている一市民なんだ。いまおっしゃる外務大臣の発言は、金大中氏なるがゆえに、早めるということでもない、おくらせるということでもない。実はこれと相通ずることなんであります。  これが正直のところ、韓国側の真の意図であった、あるいは今日もそうであるということになるとすると、旧来日本の外交路線、つまり原状回復という考え方——これは私も念を押しましたが、その考え方は食い違いがあるのですかと二人の大臣に当時聞いたのですけれども、そうでないと言う。そこのところだけは、はっきりしておられたわけでありますけれども、それが一番日本の国民の世論に沿う方向である、したがって、時間がかかっても、その方向に努力をする、こういった点とどうもぴったりこないのであります。  この論点からして、金大中氏の問題は、日韓閣僚会議も終わり、重工業化という中での資本の投入もどんどん進んでいる、大陸だな協定も結ばれる、中国反対声明があっても、なおかつこの国会に提案をしたい、こういう動き、これは国民の側からすれば、人のうわさは七十五日といいながらも、質問を重ねてまいりました私どもからすると、どうもこれは釈然としない。  したがって、一体、金大中氏問題というのは、当時の政府の原状回復の方向等からいたしまして、今日、どういうことになっておるのか、まさに韓国側との間はどうなっておるのかという現状を、ひとつ御説明いただきたいわけでございますが、いかがでございますか。
  26. 高島益郎

    高島政府委員 金大中事件をめぐりましての日韓両国間の関係、現状いかんという御質問でございますが、これは、昨年十一月二日に金国務総理の来日がございまして、田中総理と金国務総理との間で話をしまして、それによって外交的決着をつけたということでございます。しかし、他方で、事件そのものの解決は、まだ済んでおらないということでございまして、今後も、日韓両国において捜査を続ける。金大中氏の自由につきましては、韓国の一般市民と同様に、出国を含めて自由になったという先方の確認を得まして、この事件についての一応の外交的決着をつけたわけでございます。  ただ、将来、捜査の結果主権侵犯という事態がはっきりした段階においては、この事件につきまして、韓国政府の責任をあらためて追及することあるべしという留保を付しまして、外交的な決着をつけたというのが現状でございます。  したがいまして、そういう観点から申しますと、主権の侵害という問題につきましては、あったともないとも、いずれの結論もないままに、外交的には結末をつけたというのが現状でございます。したがって、両国の政府とも、今後、引き続いて金東雲氏その他の捜査を続行するというのが現状でございまして、金大中氏の出国につきましては、その後、日本政府のあらゆるレベルにおきまして、先方に対して、出国の希望を再三にわたって申し述べておりますが、いまだに実現しないのは、非常に残念でございます。
  27. 大出俊

    大出委員 そうしますと、金大中氏が市民としての自由、出国を含む自由を与えられる、これが金首相と田中総理の間の最後のやりとりであるというふうにいまお話がございました。そうすると、金氏が外国に行きたいという申請をなさっておるようでありますけれども、これはオフレコだということを前提にして話したという記事でありますから、私もそのようには考えておりますけれども、後宮大使が、これは去年の話でありますけれども、ソウルの日本人記者と懇談をしておりますときに、これはオフレコですぞという注文をおつけになったようでありますが、金大中氏は絶対に国外へは出ない、このことは、いろいろな記者の方から、私、耳にいたしております。  日本の、つまり韓国駐在の大使後宮さんから、オフレコであるとしても、記者の諸君との懇談の中でこういう発言が行なわれるということは、私は、いま客観的にここで質問をしているわけでありますけれども、私の主観というのは別として聞いているわけでありますが、先ほどリチャード・ハロラン氏の記事を申し上げましたが、これとこれまた符節を相合わせている感じがする。  日韓両国のうちで、これは、まあしようがないんだということになっているんではないかという気がするのでありますが、それならそれで、やはり私は国民に対して、相手国があるんだから、ここから先は何ともいたし方がないならないと言わない法はなかろうという気が実はするわけであります。  あれだけ国民も憤慨した面もあり、主権の侵害だという筋論が出たり、私のように、どうもこういう不当なことをと、私は一つの正義感を感じまして、そう思って質問をしたのですけれども、両国の経済的な関係あるいはアメリカがかぶせている、安保における日米共同声明の中にいわれている問題を知らないわけではない、だが、それは、その時点における国と国との間の関係ですから、冷静に考えるとして、ただ、この問題捨ててはおけない、こういう実は気持ちだったわけです。  そうすると、その気持ちが、どうもしかたがないんだということで、うやむやで消えていくということは、やはり私はあるべきではない、けじめをつけなければならぬ、こう思っておるわけであります。  そういう意味で、この後宮発言というものが、オフレコではあるとしても、いたし方のない現状を述べたのだということになるとすれば、ここらあたり、私は、外務省からもう少し説明があってしかるべきであろう、こういう気がするのです。いろいろな人に聞いてみましたが、どうしてもこれだけははっきりさせていただきたい、こう思いますので、はっきりひとつ、これはお答えをいただきたい。
  28. 高島益郎

    高島政府委員 ただいまの大出先生の後宮大使に関する事実は、私どもとしては、もう全く心外なことでございまして、たとえオフレコにしても、そういうことは聞いたことも、また新聞等からも、間接的にしろ聞いたことも全くございません。もし、それが、かりにほんとうだとしますと、これは大臣はじめ私どもが、韓国に対しまして、金大中氏の出国についての要請を再三にわたって行なうということは、全く茶番にすぎなくなってしまう、とんでもない話だと思います。私は、ほんとうに私の良心にかけてそういう事実はないと思います。
  29. 大出俊

    大出委員 ありがたい御発言で、この後宮さんが言うようなことが伝えられておりますが、これがほんとうだとすると、まさに茶番劇でございまして、私どもも、また、これは何をやったんだということになる。法務省外務省、両方の立場あるいは警察庁含めまして何を騒いだんだということになる。全くのいなか芝居、サル芝居になってしまう。  もう一つ、ここに外務省筋の話としての記事がございます。韓国側がいまなお、たいへん高姿勢であるので、大平外務大臣も、金大中氏の問題については、まだ静観を続けていかざるを得ないのだ、こういう記事が実は一つございます。これは、いまの御答弁に非常に似たところでございます。  念のために、もう一ぺん承りたいのですが、だとすると、外務省あるいは外務大臣としては、金大中氏の問題は、やはりこれは相手国の立場もございましょう、あるいは党内事情もおありになるかもしれない、だが、やはり国民の大多数がこういうことがあってはならぬ、金氏の問題は何とかしなければというふうに感じた時期がございました——やはりすなおにその線に乗って、何としても、これは時間がかかっても解決をする。国と国との間の、金首相と田中総理との話し合い、これは、あるところで一区切りをつけにゃならぬとしても、残った問題について片づけなければ、国民感情としてすっきりするはずはない。あるいはあれだけのことを言われた警察庁としても、あるいは外務省としても、法務省としても、それでいいということには対国民という意味ではならない。  だから、これは大臣に承りたいのですが、何としてもこの問題は、国民世論に基づいて決着をつけるという気持ちがいまなお強烈にあってほしいわけでありますが、ここのところ、いかがでございますか、大臣に聞きたいのであります。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 この問題につきましては、金大中事件が起こりました去年の八月以来、この問題の収拾の中での一つの焦点は、金大中氏の安全と自由の問題であるということを、われわれは念頭に置きまして、その後、鋭意韓国側との折衝をやったつもりでございます。  残念ながら、被害者たる金大中氏は、韓国におるわけでございまして、日本の法域内にいないわけでございますので、私どもといたしましては、韓国政府を相手にせざるを得ないわけでございます。したがって、この問題をうやむやの形にするということは、この事件を収拾するにつきまして、政府立場から申しましてもできないことでございますし、国民世論から申しましても許せないことであることは、あなたの御指摘をまつまでもなく、われわれは、そういう問題意識を終始持ち続けておるわけでございます。  日韓両政府の首脳が外交的決着をつけた段階おきまして、金大中氏は出国を含めて、市民としての自由を保障する、別件逮捕はしないという確認を取りつけたのでございます。この種の国際刑事事件では、往々にして被害者の運命というものは、あなたも御承知のとおり、行くえ不明になったり、殺害されたりした例が多いわけでございますけれども、私は、まずそこまで、自分の掌握下にある金大中氏についての安全と自由を韓国政府自身が認めたということは、一つの前進であったと思っておるのでございます。  問題は、そういう確認されたことを、いつどういう姿で実行されるかということでございますが、これは韓国政府判断にかかることでございます。したがいまして、私どもは、その後も機会あるごとに、あらゆるレベルでわれわれの関心を先方に伝えて、できるだけ早くその実行を期待いたしておるわけでございます。その態度にただいまも全然変わりはないわけでございます。
  31. 大出俊

    大出委員 立ち入ったことで恐縮なんですが、宇都宮さんの問題が新聞に出ましたときに、立場は違いますが、心配しておりましたが、外務大臣がたいへんお骨折りになったようでありまして、私ども非常に喜んでいるわけでございます。  むずかしい問題には違いないわけでございますけれども、ソビエトのソルジェニツィン氏を国外に出したいきさつなどの国際評価もございますし、ある意味では、みごとなことを、きれいなことをやるというようなこともいわれておりますが、実は韓国の状況をいろいろなもので見ております限り、どうも一月八日の緊急措置、韓国におきまして、これ以後、政治家あるいは作家、学生、記者、百五十人ばかり逮捕されたという記事が載っております。延世大学の学生なども、軍法会議にかけられて、五年から十年の刑が宣告されたという記事もあります。  そういう点で、心配をするのは、私だけではないと思いますが、大臣がいま非常にはっきりした御発言をなさいましたので、ぜひひとつ、これは潜在的にいま日本の国民にある気持ちでございますから、前に進めていただきますように、あらゆるレベルの努力をお願いしておきたいわけであります。  そこで、かくて閣僚会議が開かれまして、対韓援助というふうなものが非常に大きく前進をしたわけでありますが、まず承りたいのは、この日韓閣僚会議で取りきめられました対韓援助というのは、大筋どんなことだったのかということを、あらためて承っておきたいのであります。
  32. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 昨年十二月二十六日、東京で開かれました日韓定期閣僚会議の席上におきましては、その当時発表されました両国間の共同コミュニケの第九項でございますが、そこにおいて、経済協力について意見の交換をした、それから第三次五カ年計画について説明して、引き続いて農業開発をはじめとする経済、社会基盤施設の整備拡充に対する日本政府の協力を期待すると向こう側から述べた、日本側は、それを理解して、具体的案件については、所要の検討を行なった上、適切なものについて協力を行なう、それからもう一つは、第三次経済開発五カ年計画が終了する時期においては、日韓間の経済協力は、主として民間ベースの協力に移るだろうということが話し合われた、こういうことになっております。  先生御承知のように、従来、閣僚会議の席上におきまして、いろいろなプロジェクトの問題につきまして、討議が行なわれて、共同声明の中に、金額とかそういう問題が含まれたのが常でございましたが、今回は、一日だけの会期でもございましたし、いま申し上げましたようなことが話し合われただけでございまして、その前に、担当者が日本へやってまいりまして、私どものほうと事務レベルで折衝をいたしまして、その閣僚会議の前日に発表されておりますが、農業開発プロジェクトにつきまして、若干の援助をするということ、それから浦項の製鉄所につきましては、だいぶ前に約束されておりますが、延べ払い融資を行なうということの二点につきまして、若干の合意を行なっておりますが、これはタイミングが示しておりますように、閣僚会議の席上に至るまでに相談されたことでございまして、閣僚会議の席上では、ただいま申し上げましたようなことが討議されておるというわけでございます。
  33. 大出俊

    大出委員 私、実はおかしなことにここで気がついているのでありますが、通産省にお出かけいただきましたので承りたいのですけれども、今度の十二月二十六日の閣僚会議、第七回になるわけでございますが、実はここに浦項の製鉄所第二期計画、これが入っていたはずであります。これは第一期計画のときには、世界銀行も断わったり、西ドイツも断わったり、アメリカまで断わって二転、三転して、日本も一ぺん断わって、さて日本が今度は認めたというわけでありますから、私は筋違いだが、この席でこまかく質問したことがある。  今回の第七回の閣僚会議は、まず第一に、浦項製鉄所第二期計画、これとセマウル運動の計画、あるいは緊急商品援助、あるいは船舶借款、あるいは墨湖港の拡張計画、それから六番目がソウル地下鉄工事、七番目が輸出産業育成等々で四億二千三百万ドル、相手側の要請の最大の焦点は、重化学工業計画への援助要請だったはずであります。これをどういうふうに落としたかということが、今度の場合は何も書いてない。ですから、声明だけ見たのではわからない。第六回のときには、だいぶこまかくいろいろ書いてあった。今度何もないのです。これは、どこかで一ぺん聞かなければいかぬと思っていたのですが、事務的に聞くよりは、公に聞いたほうがいいと思って、この席で申し上げたのです。  そこで、これは、これからいろいろなことになっていくのじゃないかという心配があるのですが、一昨年の第六回閣僚会議、ここで韓国側は、第二期工事への援助を一億三千五百万ドル要請したんですね。これは御承知のとおりであります。日本側は、調査団を送った上で検討するという約束をしておるんですね。ところで、これは確かに一昨年十二月に、鉄鋼調査団が送られました。つまり、この間の十二月の閣僚会議も待たないうちに、去年の八月、援助要請のうち四千五百万ドル、これが民間の延べ払いへの輸出入銀行の融資という形で、両国政府、つまり韓国、日本政府首脳の間の合意という形で出ていってしまった。  私は、実はアメリカの対外援助の例を、最近調べ始めておるのですければも、アメリカは、日本でいえば会計検査院、ここらが対外援助問題や何かについては、ずいぶんこまかく検査までしておるんですね。日本がどうであるか聞いてみたいのですけれどもそこらの問題等とあわせて——こういう形の検討をするとなっていたのだからということで、両国首脳の合意で調査団をぽんと派遣しておいて、八月にぽっときめてしまう、しかも金大中問題とかいろいろあるのに。しかも第七回閣僚会議が大きな問題になっておるのに。それで、第七回閣僚会議のほうは、今度の場合にはまるきり何も出てない。一日か半日かでぽんと片づけておる。こういうやり方は、たいへん疑惑を招きますよ、私のみならず。この点、私は、たいへん不明朗だと思うのですけれども大臣どうお考えでございますか。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 まず、基本的に御理解いただいておきたいと思いますのは、わが国と複数閣僚の定期会議を持っておりますのは、御案内のように、アメリカとカナダと豪州と韓国、四カ国であります。この経済閣僚会議という、複数の閣僚が双方から出まして、会議を開いておりますのは、事柄をきめるためではないのでありまして、双方が隔意のない意見の交換を遂げまして、理解を深めるということが任務でございまして、そのとおり実行いたしておるわけでございます。  しかし、いま政府委員から御説明がありましたように、従来、この閣僚会議おきまして、プロジェクトベースのネゴシエーションというようなものが、日韓閣僚会議の場合には行なわれておったわけなんでございます。そのルールは、私は決してよくないことと考えたわけでございます。したがって、日韓閣僚会議というものも、他の閣僚会議と同様に、両国の閣僚が複数集まりまして、今日、両国が共通に関心を持つ諸問題につきまして、隔意のない意見の交換を遂げる、理解を深める、その深められた理解の上に立ちまして、両国の関係調整に寄与するような方向で機能するというようにいたしたいと存じまして、第七回閣僚会議からそういう方式をとったわけでございますから、いま共同コミュニケを御紹介申し上げましたように、それ以上のことはやっていないわけなんでございます。  それから第二点として、御了解を得ておきたいのは、あなたは、いま浦項製鉄所の問題、セマウル運動の問題等について、閣僚会議前にきめたじゃないかということでございますが、それは、いまから見ると、一昨年の第六回閣僚会議おきまして、日本政府が協力を包括的に約束をして、それで、あれは調査団を派遣して、調べた上だとか、いろいろ留保はついておりますけれども、そういう約束いたしましたことを、事務レベルにおきまして、念査いたしまして、実行に移すということでございまして、第七回の閣僚会議とは関係のないことなんでございまして、これからは、そのような姿でやっていくわけなんでございまして、あなたの言う、これは非常に不明朗だというのでなくて、逆に非常に明朗にいたしたつもりなんでございます。
  35. 大出俊

    大出委員 時間の関係で、こまかく承れないことになりそうで、残念なんですけれども、私が申し上げているのは、いま簡単にしたというようなことをおっしゃいましたけれども、先行きを見ると、これは浦項の製鉄所を一九八〇年までに七千万ドルに拡張する。だから、これは第二期工事も含めて、所要外資が六億四千二百万ドル、たいへんな金です。ほかに五百万トン規模の第二総合製鉄所、これの所要外資が何と七億四千六百ドルなんですね。これを設立して、重化学工業計画の中核とするというわけですね。  この計画でいきますと、韓国は、アメリカのUSスチールへ協力を要請しておりますけれども日本の鉄鋼資本、これも公害等の騒ぎが国内にありますから、韓国の製鉄所の建設、半製品輸入という形を非常に大きく期待している。こういうことで、韓国の長期経済計画、この資金調達は外資百億ドルなんです。重化学部門には外資が五十億ドル。内資つまり韓国自体の資金が十億ドル。だから、これは、たいへんな外資依存なんですけれども、その外資の半分が日本。これは公共借款を中心とする資金供与。だから、これが閣僚会議の焦点になるのは当然であります。  ここに日本の資本、これは政府資本あるいは民間資本が、一斉にたいへんな金を投入して、なだれ込もうという感じですね、ぼくらが見ると。それだけに、どうもいまのお話を聞いていると、閣僚会議というものは、形だけあって中身はない、そういうことになってしまったという感じになる。  これだけのものを、政府にしろ民間にしろ、投入しようというのですから、これは日本の国民にとったって容易ならぬこと。それが何か閣僚会議では、きわめて簡単な、ものがぽんと出るだけで、あとは、いずこかできめられて済んでしまう。どうも、それでいいはずはなかろうという私は気がするわけであります。  そこを一体どう考えているのかを聞いておきたかったわけでありまして、これで八〇年までの計画をしてあるのですから、たいへんなことです。まず、そこらのところ、大臣、どうです。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたが、いまおっしゃっていることは、韓国がそういう計画を持っておるということじゃございませんか。日本政府がそういう計画を持っているわけじゃないのですから、私は、その数字に責任を持つわけにはまいらぬわけでございまして、日本政府は、日本政府の協力いたす場合の能力をはかりながらやってまいるわけでございまして、そういう計画の数字に対して、私が御答弁申し上げる立場にはありません。
  37. 大出俊

    大出委員 私が言っているのは、そういうことではなくて、これだけ大きな計画があり、浦項の第一製鉄所のときだって、さっきもうすでに申し上げましたが、国際的にあっちもこっちもみな断わった。日本も一ぺん断わった。ところが、認めざるを得ない立場になったのでしょう、認めた、というところから出発している。これだけ大きなものを相手方が考えている。これに対応してくれと言ってきているわけでありますから、そうなれば一体どこまで日本政府が、いまお話がありましたが、経済能力に応じてということになるのはあたりまえでありますが、どれだけ対応するのかということは、これは、われわれの側あるいは国民の側から見れば、相当神経を使って見ていなければならない筋合いのものであります。  そういうものだから、もう少しこれは閣僚会議なら閣僚会議——いままで比較的詳細にものを言ってきている。ところが、そういうシステムをとらなくなる。じゃ、閣僚会議なんかやったってやらなくたって一緒じゃないかということになる。それではどうも釈然とせぬじゃないかというのが私の考え方。  ところで、通産省に承りたいのですが、今日まで、これは台湾政府の場合に私は聞いたことがあるのですが、国交が表街道でなくなっていく、そうすると、政府ベースあるいは民間ベースでどのくらいの日本の資金投入が行なわれているのかということを当時承りましたが、同じ形で、一体どのくらいのものが韓国には入っていっているのですか。あとで、それは私こまかい資料を含めて、いただきたいのでありますが……。
  38. 森山信吾

    ○森山説明員 ただいまの御質問に対しまして、お答え申し上げます。  投資の分野で見てまいりますと、昭和四十一年から昨年の九月までの分でございますが、件数にいたしまして五百五十二件、金額にいたしまして二億九千二百万ドルの投資が、韓国に対して行なわれておるわけでございます。  それから、延べ払い実績でございますが、これは昭和三十八年から昭和四十八年の七月末までの実績でございますが、輸出承認ベースで六億一千八百万ドル、こういう結果になっております。
  39. 大出俊

    大出委員 相当なことになっているわけでございますね。  そこで、あわせてここで承りたいのですが、きのうも外務委員会で質問が出ておったようでありますが、大陸だなをめぐりましての話し合いというのは、第七回閣僚会議でも行なわれたわけでございますか。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 大陸だなの問題は、今度の第七回閣僚会議では議題になりませんでした。
  41. 大出俊

    大出委員 この一月三十日でございますね、大陸だな問題の領有権等についての最終的な合意に達したというのは。二つの協定に調印をなさったわけですね。  それで、中国が二月の四日に、外務省スポークスマン声明を出しておりますが、この問題をめぐりまして、幾つか疑問の点を承っておきたいのであります。  まず一つは、この境界の確定と申しますか、それには幾つかの方法があるわけであります。大体、中間線なんという方式をとっている英国なんかもありますが、そこらのところ。また、これは六月の二十日から、ベネズエラのカラカスで開かれる第三回海洋法会議、ここでも大陸だな問題等をどういうふうにきめていくかということについて、非常に大きな問題になっているわけであります。最大の問題でございます。水深だとか、あるいは岸からの距離だとか、あるいは大陸だな延長だとかいろいろ議論があるわけでありますが、ここらは、まず外務省はどう考えているわけですか。
  42. 杉原真一

    ○杉原説明員 現在、一九五八年の大陸だな条約に基づいて、いろいろ大陸だなの幅あるいは境界線のきめ方についての考え方もございますし、また、いろいろな学説が出ておること、御案内のとおりでございますが、そういうふうな現行法の不明確さをはっきりさせるという趣旨で、ことしの六月からカラカスで行なわれます海洋法会議に向けて、非常にたくさんの提案がなされておるわけでございます。大きく分けまして、四つぐらいの考え方が出ておると考えます。  一つは、御承知のとおり、開発途上国を中心にいたしまして、大陸だなの資源のみならず、上部水域における魚の資源も、全部ひっくるめて沿岸国に大幅に取り込んでしまうという、いわゆる開発途上国を中心といたします二百海里の排他的経済水域の主張でございます。それから、それでは、あまりにも大きく資源をとり過ぎるというふうな観点から出ております考え方に、第二のものとして、これはソ連が出しております水深五百メートル、距岸百海里。それから、内陸国等が出しております距岸四十海里、水深二百メートルというふうな中間的な説もございます。それから、さらにもう一つ、今度はもっと大きく取り込もうという国々でございますが、これは豪州とかカナダとかアルゼンチンとかいう国が持っております考え方でございますが、距岸二百海里の外に、地質的な意味での、大陸だなの張り出しておる場合には、それも沿岸国のものにするんだというふうな提案も出ております。こういうふうな広い大陸だなを持っております国、世界に約十ばかりございますが、これが三つ合わせて、大体非常に大きく取り込もうというふうな考え方に基づいた提案だと思います。  しかし、それではあまりにひど過ぎるというので、内陸国あるいは、これはアメリカも出しておるのでございますが、国家主権が及ぶ海底資源と、それから完全に国際社会に帰属する海底資源というその中間地帯を設けまして、沿岸国が開発することができるけれども、その収入の一部を国際社会に還元するというふうな制度を設けようという中間的な考え方を持ったグループがあるわけでございます。  わが国は、現在の国際法でございます水深あるいは開発可能限度といったような、必ずしも明確でない定義をはっきりさせて範囲をきめたらいいだろうという趣旨で、距離基準一本で、まだ距離は明示いたしておりませんが、Xマイルの大陸だなの範囲とすべきであるという提案を昨年いたしております。
  43. 大出俊

    大出委員 私は、これは少し甘くはないかというふうに考えているのです。ということは、開発途上国が沿岸から二百海里、こういう主張をしていることは、周知の事実でありまして、中国も開発途上国と同様に、二百海里説をとっている国であります。これは、だれも知っているとおりであります。  だから、そうなると、東シナ海というのは、中国の経済水域であるという見解をとっている。いまに始まったことじゃない。それからもう一つ、先ほど申しました二月四日の中国側の声明、この中身に、いまもちょっとありましたが、地質学的な大陸だなの延長、それをそのまま沿岸国の主権範囲と規定する自然延長論、これを中国はとっているわけですね。  だから、声明の中身は抗議声明です。「大陸だなは中国大陸の自然の延長であり、東シナ海大陸だなの分割は中国を含むその他関係諸国間の協議を通じて決定されるべきである」と一項入っているのです。これは私、中国旧来からの主張からすれば、当然そういうことになると思うのです。英国の、例の北海の開発の問題だって、国際司法裁判所にかかって、長い時間かかって結論が出ている。英国は、その他幾つかの争いがあって、いまだに手のつかない大陸だなを持っている。だから、カラカス会議が出てくるわけです。  そういう時期に何で一体、私どもからすれば、えらいあわてて大陸だな協定を二つ、ことに韓国とだけ結ばなければならぬのかという問題、理解に苦しむところでありまして、あわせてこれは尖閣列島などとの関係も実は出てくる。尖閣問題だって容易ならぬ問題であります。ところが、六九年のエカフェ報告にありますように、「世界でもっとも有望な石油貯蔵所の一つであろうという高度の蓋然性が存在する」といっているところなどから——これは台湾政府の側のものの考え方も出てきている。ここで一つ大陸だな協定をつくるとすれば、それはいろいろな問題にからんでしまう。  ここに私は図面を持っておりますけれども、今回、日韓の大陸だな共同開発区域というのを、済州島−福岡−奄美大島ですか、そのまん中のところに考えておられて、協定調印されている。だが、これをやるとすれば、当然、これはいま申し上げた幾つかのほかの問題とからんでしまう。大陸だなのきめ方、境界は、基本的に一体何が正しいのかという、ここらのところの結論もあいまいに——いま距離が明示してないとおっしゃっている。そのままでやることになるとすると、何かそこになければできない。  つまり、ここから聞きたいのですが、外務大臣は一月に中国においでになっている。中国の声明が二月四日に出ている。そうすると、これは中国との関係をどう判断して韓国とだけ二つの協定をお結びになったのか。また台湾との関係はどう判断をしてお考えになったのか。これらのことがはっきりしないままに、この協定を、さて国会にお出しになるのだとすれば、これはそう簡単なことじゃない。そこらのところはどうお考えになられますか。
  44. 高島益郎

    高島政府委員 中国に対しましては、大平外務大臣訪中の際に、非常に異例のことではございますけれども、交渉中の日韓大陸だな共同開発に関する協定の内容につきまして、あらましの御説明をいたしました。その後、調印と同時に、さらに詳細に協定の内容につきまして、中国側の了解を得るように説明に努力をいたしました。もちろん中国側には中国側の立場がございまして、先生御指摘のとおり、いわゆる自然延長論という立場がございますので、そういう立場からいろいろな疑問点はあろうかと思いますけれども、その疑問点に対しましては、わがほうは、先方の要請に応じまして、いつでも説明をするということを特に申し出てございまして、その後、特に先方からは、具体的な質問はございません。  ただ、先ほど先生御指摘のとおり、二月の初め、四日に、外交部スポークスマン声明という形で、この大陸だな協定についての立場を示しております。これは将来、いろいろ日中間で、私ども、いつの日か、必ず大陸だなの境界、幅員に関する合意をしなければならぬと思っております。ただ、現在、直ちに日中間でそのような合意をできるとは思いませんし、先方もまだそういう態度を示しておりません。  ただ、基本的に申しまして、わがほうとしましては、中国側との間に合意するための話し合いにいつでも応ずる用意があるという立場でございまして、そのために、いろいろ海洋法会議の動向その他について、日本の態度を決定するにあたっても、慎重な考慮が必要だろうというふうに思っております。
  45. 大出俊

    大出委員 簡単にお答えいただきたいのですが、いま中岡側に説明をした、あるいは調印をしてから説明をされた、こうおっしゃるのですが、それは二月四日の中国側の抗議声明の前でございましょう。そこはいかがですか。
  46. 高島益郎

    高島政府委員 もちろんその前でございます。
  47. 大出俊

    大出委員 大臣お話しになったというのも、その前でございましょう。
  48. 高島益郎

    高島政府委員 これは一月の初め、大臣訪中の際のことでございます。
  49. 大出俊

    大出委員 そうだとすると、この二月四日以後は話し合っていないということですね、中国側と。いかがですか。
  50. 高島益郎

    高島政府委員 私の記憶では、署名の日と同時に説明をいたしまして、その後、たしかもう一回言っているように思いますけれども、特に先方のほうから、具体的な質問等が出まして、それに対する説明ということではございませんでした。
  51. 大出俊

    大出委員 そうすると、皆さんのほうが話をしたあとで、中国側が二月四日に抗議声明を出した、こういうわけですね。  そうすると、日韓両方で調印した二つの協定、それに対して、中国側は、ちょっと待て、それは違うぞ、わがほうの態度は、先ほど私が申し上げましたように、東シナ海の大陸だなというのは、これは中国の主権の侵害だ、つまり「大陸だなは中国大陸の自然の延長であり、東シナ海大陸だなの分割は中国を含むその他関係諸国間の協議を通じて決定されるべきである。」、つまり、延長方式をとっているわけですね。だから、これはもってのほかだという声明になっておる。  そこらのところの中国との話し合いも何もつかずに、つく見通しを、いま直ちにお持ちになっていないで、この国会に提案をする、外務大臣はそうおっしゃるんですか。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 大陸だなの境界がどうあるべきかという問題が、世界的なコンセンサスを得まして、定着するというようなことは、いつになるか私はわからぬと思うのです。  それから、大陸だなの境界をどうすべきかについて、各国がそれぞれの考え方を持つことは、これはあり得ることだと思うのであります。そのことと、国と国との間の友好関係というのは、私はまた別だと思っておるわけでございます。あなたのおっしゃるように、すべての法的な問題がみな片づいて、関係国の協議が行なわれて、問題が一つもなくなってやるということになると、いつまで河清を待ったらいいのか、これは大出さんといえども、はっきりしないだろうと思うのであります。  問題は、いま日韓双方の間で共同開発水域というものを設定いたしますゆえんのものは、このままほうっておきますと、先方でどんどん開発されるということでございまして、その場合に、日本政府は一体何しておったのだということが、必ず国民から問われるに違いないわけでございます。また、石油資源というものは貴重な資源でございますので、でき得れば、近海において石油資源が確保されるということが望ましいことに違いないわけでございます。  したがって、私どもといたしましては、各国の権利は権利として留保していただいてけっこうでございますけれども法律的な決着が全部つくまで問題を待つわけにいかないという立場でございますので、協定面におきまして、そういった配慮を十分規定上加えた上で、共同開発水域というものを設定して差しつかえなかろうと思っております。  ただし、このことは、日本はかってにやるということであってはならないわけでございまして、関係国には十分了解、合意はあるいはできないかもしれぬけれども、十分の理解は得ておく必要があると私は考えまして、そういう努力は、いままでもやってまいりましたけれども、今後も惜しまないつもりでおるわけでございまして、十分こちらの立場——ただいまの国際法並びに国際慣例に照らしまして、これは、いま非常に流動的でございますけれども日本立場というものは理解できないわけじゃないという、賛成はできないかもしらぬけれども、理解できないわけじゃないという境を私どもは探求しながら、現実の問題の処理をしなければ、政府の責任は全うできないのじゃないかという考えでおるわけでございます。そういった点を御了解いただければしあわせと思います。
  53. 大出俊

    大出委員 先に手をつけておこう、簡単に言ってしまえばこういうこと、だからやるのだ、こういうわけであります。だが、これをやるとなりますと、相手は一体どこになるかということですね。  ここにあります限りでは、日本側は日本石油開発、それと帝国石油、西日本石油、そうでございますね。これは、すでにきまっているのでしょう。韓国側はどうなるのですか。
  54. 高島益郎

    高島政府委員 私ども承知しているところによりますと、韓国側はガルフオイル、シェル、テキサコ、それとウェンデル・フィリップスという会社でございます。
  55. 大出俊

    大出委員 これは私、たいへんな利権にからんでいるのじゃないかと思うんですが、韓国側はテキサコが入ってきております。それにガルフ、シェル。コアム、これは韓国アメリカ石油ですね。だから、これは、まさにメジャーの資本が大量に入ってこなければできない。福島県沖の、例の常磐の、あそこの帝石の石油の試掘、これなんかも国際資本が入ってきているわけであります。日本周辺は、ほとんど大陸だな開発の先願地域といいますか、これは日本法律でいえば先願権があるわけです。ほとんど全部大陸だなというのは、どこかから何かが出ているわけです。これは日本の資本だけでやりきれない。となると、国際石油資本が大量に流れ込んできて、日本周辺は、まさにメジャーに占領されまじき状況になりかねない、こういう気がいたしますが、そこらのところは、どういうふうにお考えでございますか。  いまの韓国のということも、実際にはアメリカ資本ですね。韓国は日本からの援助を期待している国でございますが、これは国際石油資本です。したがって、その間の、韓国との間の取りきめはどうなっているわけですか、開発したあとの。
  56. 高島益郎

    高島政府委員 この協定の立て方では、各鉱区につきまして、日本側と韓国側とそれぞれ開発権者を定めまして、その両者が事業契約を結ぶたてまえになっておりまして、もちろん、その事業契約の内容に従わなければなりませんけれども、韓国側の会社は、韓国側のほうの法律に従って採掘をするということになろうかと思います。
  57. 大出俊

    大出委員 その比率はどうなるのですか。たとえば太平洋側の大陸だなは、帝石が五〇%、エクソンの子会社であるエッソアブクマなんというのが三五%、それから東亜燃料とゼネラル、これが一五%費用負担、こういうふうなことで権利調整をやっていますね。いまおっしゃった、鉱区をきめてというのだから、韓国とそれから日本との間はどういう比率になるのですか。それと国際石油資本との比率の関係はどうなるのですか。
  58. 高島益郎

    高島政府委員 先生の御質問意味がよくわかりませんけれども、各鉱区について、それぞれ折半ということではないかと思いますが、特に韓国側と日本側で比率が違うということは、考えられないのではないかと思います。
  59. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから、簡単に聞いているのですが、韓国と日本の側で折半をする、そうすると資本はどうなるのですか。
  60. 高島益郎

    高島政府委員 要するに、この協定では、試掘及び採掘に伴う必要な費用とそれから生産物、これをすべて折半するというたてまえになっております。
  61. 大出俊

    大出委員 韓国が費用を折半するといったって、出せるわけはないですから、それは、つまり国際石油資本だということになる。そこを私は聞いているわけです。そうすると、半分近いものは、とにかく国際石油資本、つまりメジャーが握ることになる、引き続き大陸だな開発をやれば、そういう方式がまた出てくる、こうならざるを得ない。  ところが、私が非常に心配するのは、時間がありませんから多く申しませんが、一昨年のニクソンのエネルギー教書がそうなんですね。いま考えてみれば、今日のつくられた石油危機というのは、非常に遠大な——ニクソンというのは人が悪い、悪人かもしらぬけれども、その点は筋が通っていると思うんです。エネルギー教書というのは、アメリカ国民に対しても石油危機というものを非常に強く印象づけた。この中で、産油国である国々は、石油の価格を上げて、国営という形に持っていこうという意思が非常に強烈に出てきている。  そうなると、どうしてもメジャーの側が、東南アジアやアラブ各国を相手にした場合には、自由になる石油ではなくなる。だから、メジャーは、この石油の値上げにみごとに乗った。これは、たいへんな利益をあげておる。アメリカの国会で追及されておるとおりであります。その利益は、一体何に使うのかといえば、まさに新しい地域に巨大な投資が必要である。つまり、東シナ海の大陸だななんというのがそうであります。尖閣列島周辺もそうであります。ばく大もない資金投入をそこに必要とする。その利益は、今回の国際的な石油危機で出てしまっておる。メジャーはたいへんにかせいでいる。まさにエネルギー戦略は、アメリカ考えたとおり進んでいるのかもしれない。そうすると、この地域にメジャーの大きな資金が入ってきて、その上で新しい石油を確保する、そういう動きが、私は目に見える気がする。  そうだとすると、ここのところは、それこそ日本の主権にからむ。安保のワクの中ではなくて、まさにメジャーのワクの中で日本経済が動いていることになりかねない。けさの新聞にございますように、場所が違うから、そこまで触れませんけれども、メジャーが、日本の石油の各種製品の値上げをもっと大幅にやれ、そうでなければ供給を削減する、こう言うと、とたんに大騒ぎが起こってしまう。とにかくメジャーの原油生産のシェアというのは、資本主義国全体についていえば世界中の六三・八%ある。日本の原油というのは九一・四%、そうだとすると、ますますもって、日本近海の大陸だなについても、そういう方向に進んでしまう。私は、これはゆゆしき問題だと思っている。そこへもってきて、尖閣列島等もありますから、これまた国際的な争いが起こる可能性もある。慎重を要する問題であるような気が私は依然としてするのであります。  そこで、あわせて承っておきたいのでありますが、時間がないので結論にいたしますが、通産省の方に、とりあえず承っておきたいのですが、サンシャイン計画が今回は大きく出てきていますね。そしてもう一つ、もしもここで大陸だな開発をやろうということになるとすると、そのやる主体は一体どこかということです。サンシャイン計画でも総額約二十三億円、大陸だな開発関係でいえば、これは具体的には石油開発公団の業務じゃないですか。いかがでございますか。  ついでに聞いておきますが、石油開発公団の業務だとすれば、これは公団法の改正をしなければならぬことになるんじゃないですか。公団法の改正も要るんじゃないですか。  それから、もう一つ、ついでに聞きますが、いま日本法律でいえば、石油の開発というのは、さっき申し上げた先願権——ところが、この先願権に基づく鉱区の出願、これは法的に言いますと、陸上を対象にしておりますから、三百五十ヘクタール以下というワクがございます。きわめて小さい。だから、大陸だな開発のような大きな面積を鉱区とするならば、国内法からすれば、三百五十ヘクタールで全部切らなければならぬ。これは出願できないのです。そこで、あなた方のほうは、大陸だな開発促進法案なんというようなことも検討しているんじゃないですか。そこまで進んでいるんじゃないですか。そこらはいかがでございますか。
  62. 内田禎夫

    ○内田説明員 お答えいたします。  私、実はその関係の資料を用意してまいりませんので、詳しいことは、また別途お答え申し上げたいと思いますけれども先生お尋ねのまず第一点の、今回の日韓大陸だな共同開発、それが石油公団法の改正を必要とするかどうかという問題につきましては、私、その必要はないかと思います。今回の開発に参加いたしますのは、民間の日本側の鉱業権者が参加するわけでございますので、石油開発公団が直接にそこに参加することは予定しておりません。  それから、サンシャイン計画につきましては、ちょっと私、専門でございませんので、ここでお答えいたしかねますので、後ほど、また担当のほうからお答えを申し上げたいと思います。  それからなお、一般的に、今回の日韓大陸だな共同開発協定にからみまして、国内法の改正が必要になることは確かでございます。現在、事務当局のほうで、その準備を進めておる状況でございます。
  63. 大出俊

    大出委員 それは違いますよ。あとのほうの答弁はいいんです。つまり大陸だな開発促進法案というようなのを検討しなければ、実際問題としてやれやしないのです。だから、それを検討しているというのは、それはそれでいいですが、実は石油開発公団の業務が拡張されて、公団の事業規模が四十八年度五百二億円です。ところが、四十九年度八百十五億円にふえているのです。六二・五%のたいへんな拡大ですよ。一体これは何ですか。そのうち大陸だな開発への投融資額は、四十八年度は五億六千万円なんです。四十九年度は何と五十六億円で、十倍ですよ。そんなことを言うなら、これは一体何に使うのです。これは公団法を改正して、大陸だな開発を石油公団の投融資の対象とする、こうしなければこの金は使えない。つまり従来、大陸だな開発は公団法に規定された業務ではないのです。こんな五億六千万円だったものを五十六億も組んで——これは石油開発公団の投融資の対象でしょう、そうでしょう。それを、一体どこへ使うのですか。大陸だな開発じゃないですか。  そうだとすれば、公団法の業務の中に大陸だな開発は入っていない、入っていないものを使えやしないじゃないか。それなら大陸だな開発を入れるということで公団の業務にしなければならぬ。だれが考えたってあたりまえじゃないですか。そうでしょう。
  64. 内田禎夫

    ○内田説明員 ただいまの答弁、不十分な点がございました。石油公団法の改正につきまして、いま検討いたしておりますことは事実でございます。ただ、これと日韓大陸だな開発条約とは、直接の関係はないということを私申し上げたかったわけでございます。
  65. 大出俊

    大出委員 直接の関係はないが、間接の関係がある。つまり、そこまで事態は進んでいるから、大平さんは党内のいろんな反対意見があっても何でも、ともかく中国側から抗議声明が来ただけになっているんだけれども、それでも先に掘ってしまっておかなければということで、万般の準備が進んじゃっておる。  いいですか、ここがポイントなんだ。大陸だな開発促進法案は検討中、石油公団法だって、直接の関係はないというけれども、これは関係がある。いま私が説明したとおりだ。ここで公団法の改正をして、大陸だな開発を、公団法に、公団の業務として法的に入れておかなければ、五十六億の金は使えやしないじゃないですか。これは二つの協定を調印して、これを国会にかけなくても、やがて何とかしようというわけですから、国家間で結んだんだからというので……。そうでしょう。中国と話をもっとするとかいろいろなことはありましょう。国際海洋法会議の結論が出るまで待ってみるということもありましょう。あるけれども、公団法は、この国会で変えておかなければ、この協定が通って、さてというときに五十六億——五億六千万円を五十六億円、十倍じゃないですか。使えやしないじゃないですか。  だから、そういう意味でいえば、協定をこの国会にかける、かけないということと公団法の改正は違う、関係がない、おっしゃるとおり。関係はないが、この国会にかけたときには、公団法の改正が一緒に行なわれていなければ、金が使えない。その意味で、大きな関係を持っている、こういうわけです。  だから、私の言いたいのは、つまり日韓、両国の利権というもの——韓国は金がないんだから、すべてメジャーの金です。さっき申し上げたように、アメリカのエネルギー政策というものは一貫している。ニクソンのエネルギー政策、エネルギー教書が出て、日本も大騒ぎになったのです、石油の問題で。以前から仕組まれていたことがアメリカ国会で追及されているじゃないですか。この石油危機でメジャーはたいへんにかせいだ。かせいだ金は、何でかせいで、どこへ持っていくのだ。アラブ各国は民族意識も強い。サウジをはじめ減ってきている。将来は石油価格を上げてきてメジャーの自由にならない。四の五の言うなら国有化をする。もう自由にならない石油になっている。この戦争はメジャーの負けなんだ。  そうだとすると、アメリカ考え方というのは、大陸だなその他に、どんどんメジャーの資金を投入してくる、かせいでいるんですから。一九六五年ですけれども、アイゼンハワー大統領の時期に、アメリカでは石油の割当制をしいた、アメリカ国内の石油開発のために。だから、アメリカの石油価格は、アラブの石油よりも高い。今度アラブが石油の値段を上げたことによって、日本の石油とアメリカ国内の石油の価格ととんとんだ。そうなれば、輸出競争の面で同格です。よほど労働者の賃金でも押えて、ダンピングをやれるようにしなければ、輸出できやしません。そこまでの一貫したものがある。  そうだとすると、この大陸だな開発という問題は、そう簡単ではない。だがしかし、陰でどんどん準備は進んでおる。背景にメジャーがある。ゆすぶられれば、にっちもさっちもいかない。けさの新聞にあるとおり、メジャーが石油を削減するようになったら、日本じゅうひっくり返る騒ぎになるんだから。石油ばかり食っている日本経済なんだから。そうでしょう。  だから、そういう意味で、党内に異論があっても何があっても、中国から抗議が来ても、この国会にかけるという、その姿勢を私は非常に心配しておる。大臣いかがですか、結論だけ。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 私、先ほど申しましたように、日韓の間で取りきめをいたしまして、共同開発水域を設定いたしましても、日本側として関係各国に十分説明ができるということが第一に必要だと考えております。  それから第二に、韓国側が、こういう協定がなくて、一方的に探査採掘が進むというようなことになりました場合に、わが国といたしまして、そういう事態を傍観することはできないんじゃないかと考えるわけでございます。  したがって、こういう段階に処して、政府は何をなすべきであるか、何をなすべきでないかという決断を迫られた場合に、やはりこういう姿において協定を結ぶべきであると私は考えておるわけでございます。  メジャーの問題というのは、これは、また石油問題ばかりでなく、エネルギーあるいは石油以後の問題にもからみまして、非常に重要な問題であることは、十分承知をいたしておりますが、そういうこととこれとの関連において、これはこうしなければならないという発想のしかたではないのであります。
  67. 大出俊

    大出委員 この問題は、いま通産省の方々が大陸だな開発促進法というふうなものも考えよう——これはもう一つ、大きく漁業権の問題もあります。ただ担当が違いますから、申し上げませんが……。それから石油開発公団、これは通産省の担当でございますが、これがこれだけの予算を組んだ。だが、国民は知らない。この石油問題がいろいろ問題になっているけれども、一体どういうことなのかということはなかなかわからない。だがしかし、そこに一貫したエネルギー政策がなければならぬ、外交の分野だって。それが背景になっていなければならぬ。これは間違いない事実。  その場合に、メジャーとの関係というのは一体どうなんだ、これもはっきりさせておかなければいけない。これは時間がないから聞かないのですけれども、消費国会議の席上で、アラブ寄りというよりは、むしろ石油寄りの方針をおとりになった日本ですから、フランスのジョベール外相なんかと一緒になって、しきりにDD原油の形のものを主張されていたはずであります。だがしかし、メジャーにゆすぶられれば、一ぺんでこういうことになる。メジャーは金をかせいでいる、どんどん韓国のほうに、大陸だな開発を向こうから促進をさしてくる。  そうすると、日本のほうは、いま大平さんが言ったことが正しければ、むしろメジャーのほうが先なんだ、韓国政府にどんどんやれという、たいへんな金を持ち込んで、やれという、受けて立たざるを得ない、こうなったということなんです、これは。ここまで、メジャー支配の手というものが日本周辺にはっきり入ってきているということになる。  そうすると、日本の主権を踏まえて、われわれは将来の日本経済を考えて、どうするのだということを、石油というものについて、あるいはエネルギーというものについて考えなければならぬ時期にきている。ただ単に、どうも先に手をつけられちゃ困るからということだけ答えられたんじゃ、日本の外交路線はどっちに向くのだということになる。そこらが心配で実は聞いたのですが、これは時間がありませんから、もう一つだけ承ってやめます。  これは、みんなからむのですけれども、例の日中航空協定の問題が一つございます。大平さんの党内にいろいろな問題がありますが、そのことに触れるわけではありません。だが、年間二十万の乗客を、いまだに運び続けており、七十五億の売り上げをあげている、つまり日本と台湾を往復している台湾機、一日三便、これは、たいへんな盛況であります。今日まで、そのとおり続いている中華航空公司であります。垂直尾翼に、青天白日旗の標識がいまだにそのままであります。そして中国側と一月以来ずっとこの交渉が続いている。つまり日中航空協定というのは、日中問題の一つの出発なんですね、私に言わせれば。  この問題は、いろいろなことが新聞に載っておりますが、ずばりここで——時間がありませんからですが、これからどういうふうにお進めになるおつもりなのかという点を、基本的に触れて、ひとつはっきりさしていただきたいのであります。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 政府としては、日中航空協定を急ぎ締結しなければならぬと考えております。また日台間の航空往来、航空需要というものは維持してまいりたいと考えております。これは民間協定の姿で、安定した姿で将来も維持していきたい。この両方を、両立達成せよというのが自由民主党の党議でもございます。したがいまして、私どもといたしましては、台湾との間で民間協定の交渉に入っております。近く北京とも本交渉を進めたいと考えておりまして、両方が両立するような姿で達成したいと懸命の努力を傾けておるところでございます。
  69. 大出俊

    大出委員 念のために、もう一つだけ言っておきたいのですが、青天白日旗の標識を掲げているとか、つまり中華航空公司——台湾は中国領土の一部、こういうことに日中共同声明でもなっているわけでありますが、そこらとのからみ合いで、中国側の態度というものが、最近ははっきりしてきているわけでありますか。いま両方をまとめるとおっしゃいましたから、念のために、この点を再度承っておきたいと思います。
  70. 大平正芳

    大平国務大臣 中国側の考え方というものも、基本的には理解しておるつもりです。同時に、台湾側の態度というものにつきましても、私ども、間接ながら承知いたしておるつもりでございまして、この間に立ちまして、日本政府といたしまして、両方が成り立つようなくふうを、せっかくいたしておるところでございます。
  71. 大出俊

    大出委員 これで終わりますが、たいへん外務大臣が御苦労なさっていることは、新聞紙上等で重々承知しておるわけでありますが、先ほど中国側との交渉を近く始めたい、こういうお話でございましたが、これは、どなたかが中国に行くとか、あるいは中国側から人がこちらにおいでになるとかいうふうなことが近く考えられておって、その辺から具体的な詰めをやっていく、こういうことでございますか。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 もちろん外交ルートを通じてやるつもりでございます。
  73. 大出俊

    大出委員 では、時間がなくなり、大臣がおいでになるということでありますので、この辺で打ち切らしていただきたいと思います。
  74. 徳安實藏

    徳安委員長 午後二時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十二分休憩      ————◇—————    午後二時三十五分開議
  75. 徳安實藏

    徳安委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田法晴君。
  76. 吉田法晴

    ○吉田委員 法律案に関連をして、若干御質問を申し上げたいと存じます。  具体的にこの法律案に盛られております名称位置あるいは給与について、直接関係いたしませんが、在外公館での外交官の活動を、わずかではございますが、私もインドあるいは欧米諸国で多少見ました。それから、ごく最近、アラビア諸国の大使館を訪問いたしました人の話も聞いてまいりました。  そこで、在外公館に勤務しております日本の外交官の姿勢とそれから人員、待遇については、もとより法律の精神ではございませんが、できるだけ十分な活動の資金を裏づけしていただくことを、外務大臣お願いしなければならぬところでありますが、姿勢と人員について、多少感じたものがございますから、お尋ねをいたしたいと思います。  ごく最近のアラビアの、これはクエートでありましたか、どこでありましたか、具体的な国の名前は覚えておりませんが、日本の大使館員は数人、中国の大使館員は五百人とか六百人とか申しました。そして、その中国の大使館の館員のほとんどがアラビア語ができる。九十何%かはアラビア語ができる。日本の大使館の中では、これは数人にならなかったと思うが、その中でアラビア語のできるのは、さらにきわめて少数である。ほかでも見ましたけれども、大使、公使が対外的に折衝しておられるのは、これはわかります。館員の中で、その国のことばができ、そして、その国の人たちと、官民を問わず実際に交流ができて、外交活動ができているのは少ないような感じが私いたしました。  そして、大半の仕事は——これは十年以上前の話ですから、いまは違っておるかもしれませんけれども、その国の新聞を見て、新聞の切り抜きをして、その国の情勢だということで外務省に連絡しておられるのが、中心的な活動であったようなのを拝見をいたしました。いまは違っているかもしれません。アラビアの特定の国で数百人の大使館員、そしてアラビア語ができて、交流ができておるその中国大使館に、日本の大使館が太刀打ちできぬのはあたりまえじゃないかという話等を承りました。  私は、自分で経験をしたことですけれどもアジア諸国会議というのが、一九六四年にインドのニューデリーで行なわれた。そのときに、日本も、これは民間外交でしたが、日本代表で参りましたが、五十人近くでありましたが、そのときに中国からは郭沫若先生を団長にして参りまして、飛行場での第一声は、これは英語でなくてヒンズー語であいさつをされました。  そういうのを見て、外交姿勢というものを考えさせられたわけでありますが、在外公館の待遇をよくすることについて、私どもも賛成ですが、いわば外交活動における姿勢といいますか、あるいは外務省外務大臣からいえば、在外公館員の教育指導ということになろうかと思いますが、これらの点については、いま一段の努力が要るのではないかという感じがいたしますが、どう考えられましょうか、お伺いいたします。
  77. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 先生の御質問の中の事実関係について、初めに私のほうから御説明させていただきます。  在外公館のうちで中近東、特に先生の御関心のあるアラブ地域の公館が、人員的にも弱体ではないか、かつアラビア語をできる人員が少ないではないか、さらにそういうことが理由で、特にこの地域在外公館の情報活動なりなんなりが不十分ではないかという御質問であったと思いますけれども、それについて、まず事実から申し上げます。  現在、日本がいわゆる中近東地域ということで持っております在外公館、実館が十六館でございますが、その中でいわゆるアラブ国に属するものは十一館でございます。イラク、クウェート、サウジアラビア、シリア、レバノン、アルジェリア、エジプト、スーダン、チュニジア、モロッコ、リビアでございますけれども、それに、今度の予算でお願いいたしております公館が二つございまして、ジョルダンとアラブ首長国連邦、それが二館加わりますので、十一館に二館加わる十三館が今度できるわけでございます。  確かに先生の御指摘のとおり、四十八年、すなわち現在の配置で見ますと、先ほど私が十一公館アラブの国があると申しましたけれども、それにさらに、五カ国非アラブの中近東の公館がございますので、それを十六館ということで御説明いたしますと、十六公館に対して、九十六名定員の配置があったわけでございます。それに対しまして、先ほど申しましたようにジョルダンとアラブ連邦の二公館をふやすと同時に、定員の増強を、全部で十六名はかりまして、来年度から百十二名になるわけでございます。  その中で特に大きな大使館といいますのは、エジプトの十人、それからレバノンの十人ということでございますが、レバノンは従来八人であったのを、来年度十人に増強するわけでございます。  確かに、それ以外の公館は、従来から五名というような定員でございまして、これは今後、強化すべきだと考えておりますけれども、たとえばクウェートにつきましては、四十八年度定員六に対して三名の増強をはかりまして、四十九年度は九名にいたしたいと考えておりますし、サウジアラビアにつきましては、五名のところを二名増員いたしまして、七名にしたいと考えておるわけでございます。  この中で、アラビア語のスタッフがどのくらいいるかということを申し上げますと、まず外務省全体として、アラビア語の専門といわれるのが、一番大きい数で数えますと五十三人ございます。それは上級が九人、中級、語研を合格した者が二十五人で、ほんとうに通訳などができるスタッフというのは、この三十四人でございますけれども、さらに、そのほかのアラビア語を勉強して、相当できる人数が十九名ございますので、五十三人となります。  この五十三人も、本省と在外と分けるわけでございまして、現在、アラビアの大使館におきましては、二名、小さい公館では、場合によると一名という場合もございますけれども、これは、さらに先ほど申しました定員の増強と相まちまして、訓練を強化することにより、公館におけるアラビア語のスタッフを強化したいと考えております。  最後の御指摘の点の、情報の収集でございますけれども、これは、やはり国柄により、非常にむずかしいところと比較的容易なところがございます。たとえばサウジアラビアの大使館は、場所がジェッダというところにありまして、首都にございません関係と、それからさらに、この国が非常に閉鎖的と申しますか、非常に情報のコントロールのきびしい国でございますので、なかなか情報がとりにくいわけでございます。しかし在外の大使及び館員に訓令いたしますし、あるいは大使館員のイニシアチブに基づきまして、先方の政府の要人、あるいは王家の一族の有力者、あるいはそのほか、あそこでございますと、アラ石の関係者などに接触いたしまして、電報なり、あるいはエアメールで情報が参っております。  比較的情報のとりやすいのは、この地域ではレバノンでございまして、ここは、いろいろな情報収集を商売にしている、そういう人もおりますし、新聞のレベルも比較的高い。特に、ここには、石油の情報ばかりでなく、中近東の全般の情報、特にアラブの、いろいろな意見の違う、ニュアンスの点も含めました情報がございますので、先ほど申しましたように、レバノンの大使館を強化して、この情報活動をさらに強めていきたいと考えている次第でございます。
  78. 吉田法晴

    ○吉田委員 アラブ諸国が例にのぼりましたけれども、その他の国々についても、大同小異だろうと思うのです。日中国交回復をして、中国大使館に私、去年初めて参りました。アラビアの、これはレバノンであったか、クウェートであったか、どこであったか、そこのところは、はっきりいたしませんけれども、いまの説明で聞いても、大きいところで大使館員が十名、その中で、アラビア語のできる人が二名とか、はなはだしいところは一人。中国では、数百名、しかも、その大半がアラビア語ができる。そしてアラビアの人たちの中で、友だちができる、交流ができる。口で話をするだけでも、太刀打ちできぬじゃないかという話をしておりましたが、そのことを一つ指摘したいのです。  それからもう一つは、姿勢と申し上げましたけれども、これは外交方針に関連をすると思いますが、石油がほしいからということで、経済協力をするということで、ほんとうのアラビア人の友人になれるかどうか。私は、きょうは時間がございませんから、これだけを専門にやるつもりはありませんが、中国との間に平和五原則を認められた。その平和五原則を、アジア・アフリカあるいは中近東等についても貫かれることが、私は、今後の日本の外交の道じゃなかろうかと思いますが、時間がありませんから、詳しいことは申し上げません。  ただ、先般、田中総理が参られました東南アジアの国、特に問題の起こりましたタイだとかインドネシア。私は、インドネシアには、バンドン会議がありました年に参りました。そして私ども、おくれて参りましたから、商工会議所の役員のところに泊めてもらった。いわば民宿をさせてもらったのです。その後、何年間かたいへん交流がございました。最近、聞くような空気はなかった。ほんとうに互恵平等といいますか、相互に尊敬をし合いながら、何年間か交流を続けました。最近では、音信はとだえておりますが、しかし心は通っておると思っております。  それが、なぜああいう、田中総理が行かれたときに焼き打ちが起こるか。あの中に、私は、当時読み漏らしましたけれども、その後、聞きますと、日本の社員の独身寮が焼き打ちをされたということがある。その独身寮には、一人ずつインドネシアの女性がついておった、こういうことがいわれておる。韓国を訪問する人の中の大部分が妓生を目当てに行く、あるいは台湾に旅行する人の目当てに台北の近くの温泉での女性の問題があるということは御存じだと思います。  インドネシアにしても、あの独立の父スカルノ大統領がどうして失敗をしたか、これは御存じのところであります。あのスカルノ大統領の失脚については、私、この計画を推進した者は、国をこえてあると思いますけれども、これは、やはり情報活動、アメリカのCIAに関係があると私は思っておりますけれども、そのことをいま言おうと思っておりません。思っておりませんけれども日本のあのスカルノ大統領に対する態度等に、これは、やはり一半の責任があったと思う。同じような外交のやり方が、インドネシアにあったのではないかと、この独身寮の焼き討ち問題で感じますだけに、これは外交方針の問題について、アラブの諸国に対しても、そうでありますが、いま申し上げた平和五原則を、ほんとうに実践するという気がなければ、アラビア諸国との間の友好関係、あるいはその石油の面を含めてないのではなかろうかと思いますが、この点については、これは事が外交方針に関しますだけに、外務大臣に所見をお尋ねしておきたいと思います。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 在外公館の定員その他につきましての御心配をいただいて、感謝をいたします。わが国全体、外務省の私の配下にある定員は、約二千七百名でございまして、独仏が四千名ないし六千名ございますし、英米に至りますと一万名をこえておるのに比較いたしますと、要員が不足がちでありますことは、申すまでもないことでございまして、毎年毎年財政当局の御理解を得まして、定員の増強をはかっておるわけでございますが、まだ十分の充員を見るに至っていないわけでございます。今後一そう努力をしてまいりたいと考えております。  ただ、われわれといたしましては、与えられた予算定員の中で最善を尽くさなければなりませんし、また定員をふやすことだけが芸じゃないので、できるだけ有能な方を登用しなければならないわけでございますので、その辺を考えながら、逐次実のある充実をはかってまいりたいと考えておるわけでございます。  それから第二に、御指摘がございました開発途上国とわが国との間の間柄におきまして、以前はたいして問題がなかったけれども、最近になりまして、いろいろ問題が出来しておるじゃないかという御指摘でございますが、仰せのとおりでございます。これは、一つには、開発途上国とわが国のような先進工業国との間の格差が、年々歳々拡大しておるという事実でございまして、いろいろ努力はいたしておるのでございますけれども、開きがますますひどくなる。しかも開発途上国の多くは、第一次産品資源を先進諸国に供給いたしまして、それが先進諸国の頭脳と労働と組織によりまして、加工されて経済の成長を見、繁栄を招来するということになるわけでございます。  したがって、開発途上国の国民から見ますと、そこに非常な違和感というものを感じるのはやむを得ないわけで、最近に至りまして、資源保有国の主権問題というものが、国連等を中心にしてやかましい問題になってまいりましたことにも、また最近の石油危機が如実に物語っておりますように、資源保有国の立場が強くなり、主張が強くなってまいっておるということにも、歴然とあらわれておると思うのでありまして、この関係を、そういう基本的な構造を変えるということは、これは容易ならぬことでございまして、私は、遺憾ながら、この嫉妬といいますかジェラシー、違和感というようなものは、この基本的構造が変わらない限り、なかなかあとを断たないのじゃないかと考えております。  経済協力を進め、また資源保有国側、開発途上国側におかれましても、国づくりのために壮大な計画を立てられて、それが実を結んで、だんだんとわれわれとの間に平準化が実るようにしていくためには、相当時間がかかるわけでございますので、急速にこの違和感というものを解消するということは、私はむずかしいと思っておりますが、精一ぱい努力をしなければならぬ道標であることは、間違いございません。  第二に、しかしながら、わが国の国民のマナー、エチケットというものから、いま吉田先生御指摘のような、いろいろな問題が出てまいっていることは、よく承知いたしておるわけでございます。外交、これは国と国との交際は、根こそぎ国民と国民との間の交流になってまいり額して、一部の特権階級の社交界における交際なんという、ゆうちょうな時代ではなくて、いまは広い国民大衆の間の接触になってきておりますので、いまの外交は、そういう意味で、非常に国民的な外交であると申し上げなければならぬと思うのであります。  したがって、その国の文化、道徳の水準、知識の水準、マナーのあり方、そういったものが、そのまま輸出されるわけでございまして、これは根本には、やはり日本自体がりっぱにならぬと容易ならぬことでございまして、ひとり外務省だけに責任を負わされたのでは、とてもやり切れない仕事であろうと存ずるわけでございます。  しかしながら、それで放置しておいていいという問題で決してないことは、申すまでもないことでございまして、どのようにこれを規制してまいるかということでございますが、これは官民の間でも、いろいろ御相談申し上げて、たとえば独身社員のマナーが問題になるということでございますならば、これは会社の人事計画で、ちゃんとした御家族を持った、安定した方々に御進出をいただくようにしないといけない問題であろうと思いますし、また日本人自体が、非常に閉鎖性を持っておりまして、われわれ初めそうでございますけれども、外国に参りまして、日本人のサークルだけでおつき合いをして、あまり相手の国になじまない、相手の商慣習に慣熟しない面があると思いますので、そういった点は、十分官民とも努力して、現地との融和をはかってまいらなければならぬと思います。  それから第三に、第一に申し上げたこととも関連するのでございますけれども、わが国の進出しておる経済人の方々の給料が非常に高い、現地の人は、相当能力がありましても、非常な格差があるというようなことから生ずる違和感があるわけでございまして、これは、わが国が明治、大正、昭和を通じまして、痛いほど感じたことでございまして、われわれも学生時代に、外国の教師がおりましたけれども、これは普通の日本人の教師よりずっと高い給料を、そう能力があると思わぬけれども、とっておったことを思い起こすのでございますけれども、そういう落差というものは、避けがたいことだと思うのでございますが、これをどのように解消していくかということも、また官民の間で長い道標として追求していかなければならない課題だと思うのでございます。  いずれにいたしましても、御指摘の問題は、たいへん深い問題でございまして、的確なお答えがなかなかできないわけでございますけれども、しかし、そういったお声が出て、そういう批判が出て、そして、それに対しまして対応した策が、政府おきましても、民間においても、とられるということにおいて、漸次事態は改善されてまいるわけでございますので、外に対して責任を持っている私どもといたしましても、そういう問題意識を常に持ちながら、外交活動を続けて、御期待に沿わなければならぬと考えております。
  80. 吉田法晴

    ○吉田委員 ここで日本の外交の問題について深く論議しようとは、実は思っていないのですが、いま三つの点をあげられましたけれども、私は、第一にあげられました発展途上国と先進国との間の違和感というとらえ方自身に、一つの問題があるような気がいたします。  日本を先進国と考え、あるいは東南アジア、あるいは中近東の諸国を発展途上国と考え、あるいはアフリカ等は、その考えによると、もっと発展途上国の、おくれたほうだということになるかもしれぬと思いますが、先ほど申し上げましたように、ほんとうに平和五原則というのが、アジアにおけるあるいはアフリカにおける諸国民の間の原則だというならば、そこにあげられておる互恵平等あるいは平和共存というものが、ほんとうに大平外務大臣なり、あるいは日本の外交の基調にならなければならぬのではなかろうか、そういう意味で申し上げておるのです。  これ以上、深く申し上げるつもりはございませんが、国と国との関係、あるいは経済援助をしておる国で、アフリカにおいて中国がザンビア鉄道をつくっておりますこの援助のしかた、返すことができなければ、返せるまでいつまでも待ちましょう、あるいは困っておるときには返還を求めない、いわば、こういう態度と、援助をしたけれども、武器援助は、その武器が古かったり、あるいは武器援助を、やはり借金として、相手国がどういう事情にあろうと徴収する、それでは、その国が同じような国であっても、その援助を受けた国の感情がやはり違います。これは現実であります。  ほんとうに平和五原則、互恵平等、あるいは平和共存——それぞれの民族の発展をはかるためにする援助については、それは無条件でその国だけでなくて、関係国の共感を得ることができるのではなかろうかという意味で、平和五原則を、ほんとうに実践さるべきではないかということで申し上げておるわけであります。  それからもう一つ、マナーとかいろいろ言われましたが、それらの点について、私が先ほど申し上げたのは、外交官の姿勢ということで申し上げましたが、いままでのやり方について、日本民族が封鎖的だという見方をされる、しかし私は、外交官ならば、ほんとうに友人になることが外交ではなかろうかということを申し上げた。そして、それらの点についていえば、従来の日本の外交というのは、外務省のおえら方というのですか、やはり外務官僚を中心にした外交であったと思います。それでは、ほんとうの外交はできぬのではないかという意味で、アラビア語を、話ができる人がどれだけあるのか、あるいはアラビアの、それぞれの国の国民との間に友好交流ができているかどうか、こういう意味で申し上げた。あるいは、いまの外交の弊害を直すのには、ほんとうにその国の友人である人を嘱託するとかいうように、方法はあるだろうと思います。  その辺も、こまかく申し上げているのではなくて、いわば外交官の給与を上げることは、もっと上げてもらいたいと思いますけれども、その姿勢については、やはり外務省で、外務大臣、官房長も出ていただいておりますけれども、これは、やはり外交方針として、あるいは具体的には教育のことになるかもしれません、あるいは姿勢のことになるかもしれませんが、これをひとつ御留意を願いたい、私どもの望むところは、そういうことでございますということで、平和五原則なりあるいは外交の話を申し上げた。  ただ、基本的に、いま言われましたものと関連をする問題として、あとでお尋ねをいたしますが、いま日本中国との間の国交回復を実現されて、世紀の事業をなし遂げられて、航空協定をはじめ諸協定を締結する段階、それが、いわばもたついておりますが、そのことについては、私どもは協力をし、激励もいたしたいと思うのですが、そのことと、あるいは大陸だなの開発について、韓国と日本とで協定も結ばれ、柔軟な態度をおとりになって、中国から協議を求められれば、協議をするにやぶさかではないという姿勢のようですけれども、これらの基礎になります、いわば二つの中国問題だけではありませんで、いま共同声明の中で平和五原則を確認されたならば、それをアジア・アフリカあるいは中近東等との——どもがおりますこのアジアの外交の中で、ほんとうに互恵平等、平和共存が進められなければならぬのではないか、そういう点からいうと、この二つの協定の問題は、私は矛盾するのではなかろうか、こう思うのです。その点について、大平大臣の御所見を承りたいと思います。  あとで、航空協定の問題についての所信を承りたいと思いますが、問題は、やはり基本姿勢に関連をいたしますだけに、外相の御答弁お願いいたします。
  81. 大平正芳

    大平国務大臣 基本姿勢は、仰せのとおり相手国との間の相互の理解と信頼を確立していかなければならぬことでございまして、先般、アラブ各国に特使を派遣いたした場合も、私どもは、特にそれを——われわれは、これを油外交ではないのだ、本来、日本は、欧米諸国に比べまして、たいへんアラブ外交がおくれておるわけでございまして、朝出た旅人になかなか追いつき得ないわけでございますけれども、せめて本格的なおつき合いを長きにわたってしなければならない。当面の石油問題も、大事でありますけれども、そういう基本の信頼を打ち立てることが大事であるということを、第一の目標にいたしましてやったわけでございます。  国内におきましては、これは油外交じゃないか、資源外交ではないか、油ほしさの企てではないかというようにとられて、ずいぶん御批判を受けたわけでございますけれども、そういうような点は、日本国内におきましても、すなおに理解を持っていただいて、日本の外交の基本姿勢というものを、国民とともに打ち立てるということに御協力願いたいものと私は思うのでございます。  平和五原則についての御言及でございましたけれども、これも、きわめてあたりまえなことをうたわれておるわけでございまして、互恵であれ、平等であれ、内政不干渉であれ、そういった一連の原則は、外交で心がけていなければならぬことでございまして、わざわざうたうまでもない当然のこととわれわれは考えておるわけでございます。  先進諸国ばかりでなく、開発途上国との外交におきまして、とりわけそういった精神、姿勢で当たらなければならないことは、御指摘のとおりと心得ております。  第二に、日中間の外交案件の処理と日韓の大陸だな共同開発問題とは、矛盾するのではないかというような御指摘でございますが、私は、そう考えないのであります。大陸だなの問題につきましては、境界線をどう引くのが国際的に定着した定説であるかというような点は、まだきまっていないわけでございますし、いつそれがきまるという目安もついていないわけでございます。  さればこそ、各国おきまして、それぞれの事情によりまして、大陸だな資源に対する主張は違っておるわけでございまして、日本中国の間に、御指摘のようにたいへん違った主張を持っておるわけでございますが、そういう点、持っておってもいいと私は思うのであります。お互い違った意見を持っておるから、友好関係をそこなうのじゃないかなんて考える必要は、一つもないと思うのでございまして、違った意見は違った意見としてあっていいわけでございまして、問題は、違った意見を持っておる場合に、なぜわれわれはそれを主張するか、われわれは、その主張に基づいてどういう措置をとるかということについて、相手方の同意は得られないかもしれませんけれども、相手方が理解をするというところまでの外交的努力はしなければならぬと思っております。  したがって、中国に対しましても、日韓の間の大陸だなの協定調印の前に、近く署名をするつもりであるということは知らしてありまするし、署名後は、詳しく内容も説明いたしてあるわけでございます。日中の間で意見の違いがあることは、歴然といたしておりまするけれども日本がそういう措置を講ぜざるを得ないということにつきましては、少なくとも中国側の理解を求めていく必要があると思うのでございまして、そういうような方向でわれわれ努力いたしておるわけでございまして、そのことと日中間のもろもろの外交案件の処理と矛盾するということは、私はみじんも考えておりません。
  82. 吉田法晴

    ○吉田委員 矛盾問題は、これは当事者ですから、外相が矛盾しないと思っておられるのは、当然だと思うのですけれども、いろいろな問題、航空協定なら航空協定につきまして、賛否両論がある中で、どういう方向を外交として指向しておられるのか。あるいはアジア・アフリカあるいはラテンアメリカ等も含めまして、世界の国の中で、日本がどういう位置を占めようとしているのか。  これは、憲法の問題ではありませんけれども、憲法は原則的な問題、戦争を、手段と脅威とに利用しないで、諸国民の平和を愛好する、これに信頼をしながら日本方針を立てようとする、こう憲法の前文に書いてございますが、これは原則の問題。原則の問題ですが、外交の問題については、日本が将来、世界の中でどういう位置を占めようかということが関連をするだけに、基本方針関係があると思い——私は、アジア諸国会議からバンドン会議を傍聴したせいもあるかもしれませんけれどもアジアの将来というのは、これは古い植民地主義はもとより、新しい植民地主義、日中共同声明の中には、「覇権主義」に書いてあるが、新しい植民地主義にも加担をしないで、アジア国々あるいはアジア・アフリカあるいはラテンアメリカ国々の間に、それぞれの発展としあわせを築いていくために、お互いに協力をし、そのじゃまになるものについては、排除していこうというこの協定のもとにつき合ってきた、あるいは指向をしたと考えている。  先般の、先ほど触れましたインドネシアの友人との間の関係も、私もそうと思いますだけに、その後の変化、悪い変化についても、それは基本精神が関連するのではないかという意味で、外交方針に論及をしたわけです。  そこで、こまかくそれらの点を、ここで、外務委員会ではありませんから、追及をしようとは思っておらぬのです。ずいぶん経過も承知をしております。あるいは若労しておられることも知っております。しかし航空協定について、この年頭に訪中をして、相互了解を得て帰られた、航空協定の問題については、大平外務大臣としても責任をもって話をしてこられた。そこで、国内的にも経過がございますけれども、ここで決断を下さるべき段階だと思いますので、外相の所信を伺いたいと思います。
  83. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほども大出さんの御質問にお答え申し上げましたように、政府としては、日中間の航空協定は早く締結しなければならぬと考えておるわけでございます。ある意味において、日中間の象徴的な仕事となっておりますわけでございますので、これがもたもたするというようなことは、相互の信頼関係を維持する上から申しましてよくないことだと思うのでありまして、できるだけ早く締結を急がなければならぬと考えております。  同時に、日中共同声明発出によりまして、台湾との間に外交関係は切れたわけでございますけれども、日台の間の濃密な実務関係というものは維持したい。それに対して、中国側も理解を示したわけでございますが、日台間の航空路の維持というものも、いま無協約の状態で飛行が行なわれておりますけれども、これを、民間協定を政府が認めるという形において、より安定したものにして、日中航空協定と両立するような姿でいたさなければならぬと考えておるわけでございまして、この二つの命題を同時に解決しなければならぬのがわれわれの重い責任でございまして、すでに日台間におきましては、民間の交渉を開始いたしておりまして、近く北京とは、政府間の交渉を始めようといたしておるゆえんのものも、そこにあるわけでございます。  事ここに至るまでの間におきまして、北京側の要請というものも、われわれは直接聞いておるわけでございまするし、台湾側の基本的な要請というようなものも、間接ながら承知いたしておるわけでございまして、これを両立させるには、両立させられるような条件をつくり上げなければならぬということで、せっかくこれまでも努力してまいりましたが、この交渉の過程を通じまして、さらに努力を続けまして、なるべく早く二つの協定を仕上げたいということで、いま懸命になって努力中でございます。
  84. 吉田法晴

    ○吉田委員 日中共同声明が出て、国交が回復されて、去年の一月でございましたか、二月でございましたか、お伺いをして、日中航空協定をはじめ諸協定の締結を急いでいただきたい、これは日中関係団体の一人として参りましたが、そのときにお話しいただいたことと、いまの御答弁とは、少しは違いがあります。その後の経過から見ますと、少しは違いがありますけれども基本的にはあまり変わりがない。もっとも、基本的に変わりのあるはずはありませんけれども……。  そこで、私ども西日本におります者として、あとに続くものがある。漁業協定の政府間協定の締結という問題があります。それから、日中の定期航路の復活、これは私の住んでおります北九州では、大連航路だとか、あるいは上海航路だとかいうものがございまして、日中の人と物との往来がずいぶんございます。いまでも不定期には行き来をしておるわけです。これを、やはり定期化したい。それから、長崎には長崎−上海航路というものがありまして、これの復活というものを、長崎県会、知事さんをはじめ、全県民あげて願っている。それから漁業協定というのは、避難協定も伴っておりまして、これが切れますと、遭難をしたり、たいへんなことが起こるわけです。それを、国交が回復したら、政府間協定として早く実らしていただきたい。年々、たくさんの関係者が集って大会を開いたり、あるいは陳情に来たりもしております。  この間も、漁業代表が来られましたときに、日中の漁業協定の問題が、歓迎実行委員長の徳島さんからも出ております。それから国際的にいっても、航空協定が早く締結されなければ、だんだん不利になることは、私が言うまでもございません。これは西日本が主だと思いますけれども、各県あるいは各市町村の議会で、航空協定や諸協定、それから平和友好条約を早く締結してもらいたいという意見書が出ておることも、御承知のところだと思います。  私どもも、だいぶその御努力ぶりを見てまいりましたけれども、一向にはっきりしないと考えられるものですから、日中関係の諸団体は、今月の終わり、三十日には、日中航空協定、諸協定の締結促進と日中平和友好条約締結促進のための中央集会を開かざるを得ないだろう、こういうことで、たいへん失礼ですけれども、鞭撻をしようと思っているところです。  そういう段階で、たいてい気の長い大平外務大臣かしらぬけれども、これは決意を願わなければならないのではなかろうかと考えております。総理も、先般、閣議でですか発言かあったということを聞いたりいたしますけれども、この段階ではっきり、時期等も含めて、去年の一月か二月の御発言でなしに、今日の決意をひとつ承りたいと思います。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 鋭意努力いたしまして、ぜひとも今国会には御審議をいただかなければならぬと考えております。
  86. 吉田法晴

    ○吉田委員 あまり時間がございませんので、あとは少し急ぎますが、先般、中国の漁業代表が来られました。これは、日本関係者の中には、漁業協定という問題がありますし、歓迎会の席上でも出ましたが、共同声明にかかわらず——あのときに漁業代表が、山口県の下関市か市外か知りませんけれども、漁網をつくっている会社に参りましたら、地図が、まだ依然として二つの中国を示しておったということで、その漁網会社に訪問をする予定が取り消されたという新聞記事を見ました。  そこで、それを言っておりましたところが、いや、それは地図だけじゃありませんよ、教科書の中にも、まだ幾らでも残っておりますよという話がございました。文部省は、きょうは来ていただいておりませんから、この問題は、別に文部省との間で討議をいたしますけれども日本の中にも、まだ一つ中国になっていないところがたくさんある。これは航空協定締結の中でも、御経験になったことだと思いますけれども、少なくとも日本政府方針がきまった以上、教科書等々にまだ残っておるということは、外務大臣としてもお困りだと思うのです。そこで、どういうぐあいに考えられますか、どういうぐあいに処置されますか、ひとつ承りたい。
  87. 中江要介

    ○中江説明員 日中国交正常化が、一昨年の九月二十九日に行なわれました際に、日本政府の対中国観といいますか、中国に対する態度がどのように変わったかということにつきましては、関係部門には徹底いたしたわけでございますけれども、その後も、ただいま先生御指摘のような類似の問題がたびたび起こっております。その中には、確かにわがほうの不注意によるものもございますし、あるいはまた、印刷物その他が、国交正常化前につくられたものであったために、そのままになっておるものとか、すでに一般に領布されておりまして、全部を回収して訂正するということもできない、そういう事情のあるものもあるわけでございます。わがほうの手落ちがはっきりいたしましたものにつきましては、そのたびごとに、中国側にわがほうが即刻訂正して、誤りなきを期するという手段をとっておりますし、また、もういまとなっては、いかようにもしようがなくて、すでに一般に流布してしまっているようなものについては、国民の認識が正しくなることについて一そう努力する、こういうことだろうと思います。  ただいま具体的に御指摘のございました教科書につきましては、実は私、ちょっとまだその事実について承知しておりませんので、さっそく御指摘いただきました分につきまして調査して、もしそれが、最近発行されております教科書について、引き続き重大な誤りがあるということでございましたら、これは文部省とも十分協議いたしまして、善後措置をとらなければならない、こういうふうに思っております。
  88. 吉田法晴

    ○吉田委員 最後にもう一つ、農林省の関係者に来ていただいていると思いますけれども、これは外務大臣のいわば指導、助言を願いたいと思う問題でございます。お願いをしますが、中国の牛肉の輸入の問題です。これは所管が農林省だということで、農林委員会で同僚議員が何べんか取り上げました。専門家を含んで、農林省の代表ということで、正式代表ではございませんけれども、畜産関係の人が行っておられる。櫻内農林大臣のときに、入れるという方針が一ぺんは出たのです。ところが、農林大臣がかわられましたら、この方針が変わりました。  国民の中、特に婦人の間には、牛肉が高くなったり、豚肉が高くなったりいたしましたら、中国の安い牛肉を入れて、ぜひ安い牛肉が食いたいということで、署名連動もずいぶんやられました。あるいは地方の議会で決議もなされました。(「共産党がやったんじゃないか」と呼ぶ者あり)まあ、やじに答弁をしようとは思いませんけれども、これは、そういう党派に関係なしに、超党派で決議がなされたところもございますし、残っておるのは、私は政府方針だと思います。  それだけに、ここは農林委員会ではございませんから、外務大臣にお尋ねをするわけでありますが、政府方針として、中国の牛肉を入れる道を講じていただけるかどうか、国内の意思統一を願えるかどうかを承りたいと思います。
  89. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま御質問の、中国からの食肉輸入の問題は、これは中国の食肉であるかどうかということよりも、むしろ食肉一般の扱いといたしまして、私どもが承知しておりますところでは、家畜伝染病予防法に基づいて、中国産の偶蹄類の動物、牛とか豚とか綿羊、そういった動物のなま肉の輸入は、禁止せざるを得ないということでございまして、生体の輸入は禁止されておらないことは、御承知のとおりだと思いますが、なま肉になりましたものについては、これは家畜衛生上の問題として検討していかなければならない問題だ、こういうふうに承知しております。  ところで、中国のなま肉につきましては、現在までのところ、国際連合の食糧農業機構、FAOの「年次衛生年報」を見ましても、それから累次わがほうから派遣されておりました民間の調査団の報告に徴しましても、まだ中国という地域を、  口蹄疫の汚染地域からはずすという段階にはなっていない。口蹄疫の汚染地域からはずれない限りは、これは相手国のいかんを問わず、家畜伝染予防という見地から禁止せざるを得ない。西ドイツ  とかフランスにつきましても、禁止されておるわ  けでございまして、そういう国は、ほかにもあるわけでございまして、中国のなま肉が輸入できるようになるためには、中国が口蹄疫汚染地域でないということについて確信を得なければならない、そういう技術的な問題、こういうふうに私どもは承知しておるわけでございます。  その面につきましては、専門家を派遣いたしまして、中国の専門家との間で十分意見を交換し、かつ、その汚染地域としての指定が適当であるかどうかということについて、はっきりした結論を得るまでは、やはりやむを得ないものである、こういうふうに思っております。
  90. 吉田法晴

    ○吉田委員 時間がありませんから、要望だけをしておきます。  いままで三回も調査に行って、口蹄疫がないということはわかっておる。残っておるのは、政治的な判断だけです。それで、向こうで口蹄疫がないという宣言がなされたということは、国交回復前までは聞いておらぬがとかいう、いわば向こうの事実について信頼するかどうかという問題だと思うのです。そういう意味で、政治的だと私ども申し上げるのです。  国交回復はしたし、櫻内農林大臣でしたか、あるときには輸入に踏み切られた。それが変わったりいたしましたから、これは結局、政府方針の問題に関連をいたしますから、外務大臣にお答えを願いたいということで尋ねたのです、反対の説明をされるものだから。  そこで、外務大臣として、努力しましょうということは言えぬと思います。ですから、私もあとでよく説明をいたしますが、閣内で御努力を願いたいということを、要望だけ申し上げて、質問を終わります。
  91. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ちょっと……。先ほどの吉田さんの御質問に関連をいたしまして、外務省から地図の問題について御説明があったわけでございますけれども、これは、たいへんな問題になるであろう。えらいことになる。  そこで、もう一ぺん確認をさしていただきますが、先ほどの吉田委員質問に対する外務省答弁は、それでよろしゅうございますか。
  92. 中江要介

    ○中江説明員 先ほどの答弁の、どの部分という具体的な部分にかかわりませず、私が答弁いたしました基本的な考え方は、日中国交正常化のあの共同声明の精神にのっとりますれば、日本政府にとりまして、中華人民共和国政府中国における唯一の合法政府と承認しましたそのときから、中国代表する唯一の政府が、中華人民共和国政府でございますので、その国名は中華人民共和国である、こういう認識のもとに、政府及び政府関係当局者は、すべてのものを処理しなければならないという考え方に基づいて答弁したものでございまして、この考え方は、私は、日中共同声明の精神から見て妥当なものだ、こういうふうに思っております。
  93. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私は、ただいまの中江参事官のお答えは、それなりにわかります。これは、そのとおりでございましょう。しかし事、台湾、澎湖島並びに金門、馬祖、これを地図であらわしますときに、どのようにされますか。
  94. 中江要介

    ○中江説明員 先ほど私が御答弁しました質問は、中国のところの国名が、中華民国となったままになっておる点を指摘されたのが妥当でないかという質問に対して、私、お答えをいたしたわけでございまして、台湾及び澎湖諸島につきましては、これはサンフランシスコ条約で明らかなわが国の立場、最終的にはポツダム宣言第八項の立場を堅持するということで、日中共同声明におきましても確認された、その立場に変わりはないわけでございまして、台湾、澎湖諸島について、日本政府として、それがどこに帰属すべきものか、あ  るいはどういうふうな表示をするかということについて、国際法上の帰属を意味するような表示と  いうものは慎まなければならないというのが日本政府立場だ、こういうふうに思っております。
  95. 藤尾正行

    ○藤尾委員 よろしゅうございます。
  96. 徳安實藏

  97. 受田新吉

    受田委員 初めに、この法案に直接関係する問題を取り上げまして、お尋ねをいたします。  毎年のごとく、国会にその改正案をお出しになる政府、今回の改正趣旨、われわれ一応ごもっともであると考えます。在外公館の設置と諸手当関係の改善、特に在勤手当の額についての弾力的な調整措置など、一応ごもっともであると了承するものであります。  そこで、私、昨年大平先生にお尋ねしたのですけれども中国の広州という町は、日本とのつながりが非常に深くなって、中国における日中国交の一応の拠点になる、こういうところに総領事館の設置というものは、当然すみやかに考えるべきであると提案したのでございます。もちろん、あちらに総領事館ができれば、こちらにも中国の総領事館が適当な町にできるわけです。  日中国交回復後、二年に近い日月がたっているわけですが、そろそろこのあたりで、せっかくこの法案が提出された機会に、関連する一番身近な国の拠点とわが国との間における在外公館の設置を交換するなどというようなところへ多少でも考えを持っておられるべきじゃないですか。ことし、この改正案に盛り込んでもらいたいと去年注文をつけたわけですが、改正案に出ておりません。御答弁を願います。
  98. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 受田先生御指摘の問題でございますけれども、日中正常化後、大使館を設置いたしまして、先方と、この問題についても、非公式でございますけれども、出先で話をした報告が参っておりますが、先方の中華人民共和国のほうでは、まだ相互に総領事館を交換するという強い意向はございませんで、特に広州に外国の公館、この場合ですと、日本の総領事館を設置するということについては、その必要はないのではないかというような係官の意向でございますけれども、非公式な意見が参っております。  われわれとしては、将来の問題として、相互に総領事館を交換するということを、真剣に検討すべきであると思いますけれども、この法案で、この国会に御審議を願うというところまで双方の考え方がまだ歩み寄っていないということでございます。
  99. 受田新吉

    受田委員 これは非常に近いお国で、急速に国交が進展しつつある段階で、総領事館の設置を交換するというのは、国民の要請でもあるし、旅行者にとっても生命、身体、財産の保障をしてくれる公館があるということは、非常に心強いことなんです。  従来の台湾にありました在外公館、総領事館、これはどういう形になっておりますか。
  100. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 従来、台湾にありました大使館、それから高雄にありました総領事館は、先般の在外公館名称及び位置法の改正にあたりまして、法律上、北京に大使館を正式に設置いたしましたと同じ時期に消滅をいたさせております。
  101. 受田新吉

    受田委員 台湾に在外公館は、大使館はもちろんですが、総領事館、領事館、何にもありませんか。
  102. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 ただいまのところございません。
  103. 受田新吉

    受田委員 台湾に在留する日本人の生命、身体、財産の保護は、だれが扱ってくれておりますか。
  104. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 外務省と通産省の認可で、財団法人として設置いたしました交流協会の支部が、それぞれ台北と高雄にございまして、これに在留邦人の保護の任務を委嘱しております。
  105. 受田新吉

    受田委員 それは民間団体であって、公的機関でない機関で、生命、身体、財産の保障をする場合は、いかなる保障ができるかということです。
  106. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 お尋ねの保障という意味の点が、私には必ずしも十分に理解し得なかったわけでございますが、(受田委員「保護」と呼ぶ)保護でございますか——これにつきましては、政府の補助金によりまして、保護のための費用を、その交流協会に交付いたしまして、交流協会の東京の本部から、台北、高雄のそれぞれの支所に、さらに配付されておりまして、その経費によりまして、在留邦人の保護、さらに日本人学校の保護等をいたさせております。
  107. 受田新吉

    受田委員 台湾に在住する日本人は何人おりますか。また中国に在住する日本人は何人おりますか。外務省調査の数字をお示し願いたい。
  108. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 台湾全部でございますと、最近、非常に数がふえて、四千人に近くなったと承知いたしております。
  109. 受田新吉

    受田委員 中国……。
  110. 中江要介

    ○中江説明員 ちょっと、ただいま手元に資料を持ってまいりませんでしたので……。
  111. 受田新吉

    受田委員 大まかでけっこうです。最近、相当出かけていらっしゃると思うのですが……。
  112. 中江要介

    ○中江説明員 往復をしております日本人の数が、大体三千七百人ぐらいというふうなことは聞いておりまして、これは昨年の第一・四半期でございますが、一九七二年一年間で、出入国いたしましたのが八千七百人、それから常時滞在しております数になりますと、戦前から東北地方その他におられる日本人もおることでございましょうし、的確な数は、ちょっとむずかしい……。(受田委員「国交回復後」と呼ぶ)回復後は、向こうに永住した人はないと思います。
  113. 受田新吉

    受田委員 永住でなくて、在留している邦人です。
  114. 中江要介

    ○中江説明員 大使館員が家族を入れまして四十人ぐらいだと思います。それに新聞関係が数人でございまして、それに商談その他で滞在しておられる商社の方が、数十人はおられるかと思いますが、これは時期的にどの時点をつかまえるかによって違うと思いますけれども、およそ——これは私の勘でございますけれども、それぐらいじゃないか、こう思います。
  115. 受田新吉

    受田委員 約四千人の邦人が台湾におり、本土には百名そこそこという関係の邦人、その四千人という、中国におる人の四十倍もいる邦人は、公的機関による保護は一切受けることができないで、民間団体で保護されておる、こういうことでございますが、これだけの大量の邦人が台湾にいる、台湾にこれだけの人が現に行っておる、その人々の生命、財産の保障というものが、日中国交の上で何かの形でされるということであるならば、それは一応道が開けておるということになるのですが、台湾にそういうかっこうで在留している皆さんが、何か事件でも起こった、つまり台湾に住む邦人が略奪されたとか殺人事件が起こった、こういうときの法的措置はどうなるわけでございますか。
  116. 中江要介

    ○中江説明員 日中国交正常化後の日本と台湾との関係につきましては、先ほど一部、官房長も御説明いたしましたが、外務省といたしましては、中国が、台湾もそれから中華人民共和国も、ともに一つ中国というたてまえ、原則を譲らずに、その国を保っております関係上、日本と国交正常化前の中華民国との関係は、遺憾ながら、維持、継続することができなかったわけでございます。  しかし、だからといって、ただいま先生も御指摘のように、日本にとりまして、また日本の国民にとりまして、非常に濃密な関係にございました台湾との関係を、すっかりなくするということは、これは許されないことであったわけでございまして、日本と台湾との関係につきましては、国と国とのつき合いは、遺憾ながら継続はできないけれども、実務関係は維持するということで、この実務関係の中には、日本の台湾に対する関心があると同時に、台湾の日本に対する関心もあったわけでございまして、この双方の利益を守るために、大使館というものが継続できなくなった事情を踏まえまして、わがほうでは、交流協会というものをつくり、台湾側では亜東関係協会というものをつくりまして、この両協会の間で、これは日台双方の了解のもとに、合意によりまして、国と国との関係が切れたあとも、日本と台湾の従来の関係を、いかして維持していくかということについての仕事を引き受けていく。  もちろん引き受けると申しましても、御指摘のように、大使館のような特権免除その他はないわけでございますけれども、これは台湾も、日本に人のみならず財産その他の権益もあるわけでございまして、相互がこれを守っていこうということで、結局、その国における利益の保護と申しましても、その国の政府の権限によって、その保護を全うしてもらうことを迫っていくという形での保護でございますので、この交流協会なり関係協会というものが、それぞれ所在地の当局と密接に関係を持って、その自分の利益を感ずる人間及び財産について、十分な措置をお互いにとっていこう。  それによりましても、なおかつ、外交関係がないために、もう一押しというところが守りきれないような場合、そういう場合には、幸いにしていままでのところ、双方の理解によりまして、避け得られたわけでございまして、今後とも、そういう状態が続くことを期待するわけでございますけれども、万が一、そういうことが起きました場合には、日本と台湾当局の両方に関係のある第三国に依頼して、あっせんを頼むという道もございますし、あるいは事柄の性質によりましては、国際赤十字委員会とか、そういった国際機関をわずらわしてものを処理するという場面もあるかと思いますけれども、私としましては、御指摘のように、引き続き重要な利益の存在する台湾でございますので、この地域にある日本人の生命、財産の保護については、あらゆる手段で守っていこう、こういうことを常日ごろ念願に置いておるわけでございます。
  117. 受田新吉

    受田委員 直接の外交関係の保護でなくして、間接な保護、まわりくどい保護、台湾に住む皆さんは、非常に不幸な立場に立っておりますね。
  118. 中江要介

    ○中江説明員 保護の態様が、まわりくどい方法になりますことは、これは日中共同声明にのっとりますれば、まことにやむを得ないことだ、こういうふうに思っております。
  119. 受田新吉

    受田委員 台湾にある日本人学校は、どうなっておりますか。
  120. 穂崎巧

    穂崎説明員 台湾には二つ学校がございまして、台北と高雄にございます。具体的な数字を申し上げますと、昨年十月現在で、生徒の数は、台北については小学校二百七十三名、中学校は三十九名。高雄につきましては小学校三十五名、中学校は二名であります。
  121. 受田新吉

    受田委員 外国にある日本人学校の教職員は、公務員の資格を持って派遣されている、そうですね。
  122. 穂崎巧

    穂崎説明員 派遣されます教員は、公務員の資格ではございません。大体、府県の公立の学校の先生が参りまして、通常の場合は、身分は現職のままという取り扱いが多いわけでございます。  ただ、学校自身は、大使館が学校をやっているという形になっておるものが多いわけでございますので、したがいまして、その先生方は、対外的には大使館の職員である、その現地にありましては、大使館の職員であるという形で現地で仕事をやってもらっているわけでございます。
  123. 受田新吉

    受田委員 私、いま指摘したのは、以前は公務員を退職して出かけた。それが数年前から、公務員の資格を持ったままで派遣されている。だから、公務員である。退職してまる裸でいくのじゃないのです。こちらで公務員の身分を保障されながら派遣されるわけですが、台湾に勤務される先生方は、どういう形になるかが、ちょっと疑義が起こったわけです。どういう形ですか。
  124. 穂崎巧

    穂崎説明員 いま申し上げましたのは、一般の日本人学校のことを申し上げたわけでございまして、台湾との関係おきましては、これは身分的には、おそらく地方公務員の形を——府県によって扱いが違いますが、保有しておりますが、向こうへ参りますにあたりましては、普通の私人の資格ということで現地に参っております。
  125. 受田新吉

    受田委員 はなはだ不幸な立場で勤務されるわけだが、しかし母国に身分が残っておるというのでせめてもの救いがある、こういうことですね。御答弁を願います。
  126. 穂崎巧

    穂崎説明員 そういうことでございます。
  127. 受田新吉

    受田委員 掘り下げてお尋ねすると、非常にややこしくなりますから、これはこのあたりでおきます。説明にはなはだむずかしいことが起こりますので、私、これでその方面の質問を終わります。  そこで、ちょっと横道に途中でそらしてもらいますが、日中関係でさっきから質問にもなっていたことですが、日中航空業務関係につきまして、大平大臣も一月二日から六日まであちらへ行って帰ってこられたわけです。日中貿易にも署名をしてお帰りになった、日中航空協定の下話もされたという段階でお尋ねしたいことがあるわけです。  日台航空業務の継続について、台湾側はどのような主張をしておられるのでございますか、御答弁を願いたい。
  128. 大平正芳

    大平国務大臣 台湾は、つまるところ現状のままがよろしいという御主張と承知しております。
  129. 受田新吉

    受田委員 台湾は、現状を維持することを主張していると、外務大臣から御答弁がございました。そうしますと、もし台湾の主張が、日中航空協定の締結を阻害するようなことがあるとするならば、政府はいずれを選ぶか、二者選択に迫られると思うのでありますが、そういう場合、政府はいずれを選択するのでございますか。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 政府としては、日中航空協定、政府間の協定でございますが、それは結ばなければならぬし、台湾との間の航空路の維持は、民間協定の姿で維持する。両方これを両立させなければならぬと考えております。
  131. 受田新吉

    受田委員 どうもあいまいなんでございますが、二者択一の答えを迫られるという段階で、このあたりですかっとしたお答えを政府自身がお出しにならないと、いつまでたっても、あいまいもこなる現状が続く、こうお考えではないでしょうか。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 いま鋭意交渉を始めておるわけでございまして、両立させるように最大限の努力をいたしますのが、私どもの責任であると考えております。
  133. 受田新吉

    受田委員 私、大平さんを大いに激励したい。あなたの率いる外務省のお役人たちも、どこかいまごろ気が抜けておる。もっとすかっと活を入れねばならぬ。そこに一つの大きな問題があるので、そこを、いまから指摘するのですが、いまの日中航空協定の問題だけでなく、いろいろなことで問題が発生しておるわけです。それを、いまから一、二の例をあげて申し上げます。  日中航空協定、これが台湾との関係はどうなるのか。今後はどういう名称になるのか。民間航空協定といたしましても、この間も議論になったようですが、たとえば青天白日旗の扱いはどうなるのか、また現に使われている中華航空という名称はどう扱っていくのか。こういう問題は、もうあまり右往左往しなくても、一応の答えが自然に出ると思うのです。どういうことになるのでしょうか。
  134. 大平正芳

    大平国務大臣 せっかく交渉を始めたばかりでございまして、交渉中の案件につきましては、ここで申し上げることは、差し控えさしていただきたいと思います。
  135. 受田新吉

    受田委員 聡明な、信頼の厚い大平大臣、非常にいまつらいところで外務大臣をやっておられるわけですけれども、ここで、あなたの手腕、力量を存分に発揮されて、ひとつ、この困難を克服する名外相としての歴史に大きな足跡を残していただきたい。そのために、まず具体的な問題を取り上げて航空関係を……。  日中航空協定が成立しないことによる一つの大きな不便があるわけですね。それは、日本以外の国、たとえばフランス、カナダ、こういう国々は、東京を経由して中国−ヨーロッパあるいは中国を経由して東京その他以遠の航空路のいま開設を求めておるわけです。日本政府が、この以遠権を認めないために、航空路の開設ができないという状態、これは御存じですね。日本政府が早急に日中航空協定を締結して、諸外国のこの航空路の開設を可能にしないというと、やがて日本が国際航空業務の発展を阻害するものとして、国際世論の批判を受けることになると私は思うのです。そういう懸念はありませんかね。これは大臣でなくても、担当者でもけっこうです。
  136. 中江要介

    ○中江説明員 これは、もっぱら国際航空輸送業務を主管しております運輸省のほうが、どちらかといえば直接の主管かと思いますが、私ども日中航空協定の交渉をしております当事者としての考え方といたしましては、これは国際的な航空輸送網に対して、現在、日中間に航空路がないことが阻害になっていて、指揮を受けているというふうには認識しておりませんで、日中航空協定は、日中間の問題として鋭意ただいま交渉を進めている、こういうことでございます。  結果といたしまして、日中航空協定を締結いたしますれば、それが突破口となって、国際航空輸送網にいい影響を及ぼすであろうことは、これは否定できないことだと思います。
  137. 受田新吉

    受田委員 それは運輸行政にも関係するが、やはり外交の問題にもつながるわけですから、外務省が逃げるわけにはいかないのです。国際世論には確かに大きな波紋を投げておると私は確信します。  そこで、日中航空業務をどうやっていくかということにつきましてのこの計画について、日本航空以外の航空会社に参加を認めることになるかどうか。これも運輸省の所管だといえばそういうようなこと、逃げればそうですが、日本航空ということで交渉しておるのか。日本航空以外の、たとえば全日空のようなのも参加できるような形でいま交渉しておられるのか、これはおわかりだと思うのです。
  138. 中江要介

    ○中江説明員 交渉をしておる具体的な内容につきましては、先ほど大臣も言われましたように、この段階でいろいろ申し上げることは差し控えなければならないと思いますが、一般論といたしまして、航空協定の中に掲げられますのは、一または二の航空企業とかあるいは二以上の航空企業というふうな形で協定そのものは表示されるのが通常でございまして、その航空企業にいかなる会社を当てるかということは、もっぱらそれぞれの国の国内問題ということでございまして、交渉とは直接関係のない事項、こういうふうに心得ております。
  139. 受田新吉

    受田委員 一または二という単数、複数の関係が生まれるわけですか。複数が生まれる可能性があるのですか。
  140. 中江要介

    ○中江説明員 私、ただいま冒頭にお断わりいたしましたように、一般に航空協定の中ではそういう扱いをされているということでございまして、日中航空協定につきましては、これは具体的な協定の内容になりますので、ちょっとここでは申し上げることができない、こういうことでございます。
  141. 受田新吉

    受田委員 一般的に航空協定は複数を含む場合がある、日中の場合も一般的なものを前提としてこれからやるのだということだが、日中も一般の例外となり得ることはないね、大体。
  142. 中江要介

    ○中江説明員 どれが原則でどれが例外ということはないので、それぞれの相手国との具体的な航空協定の中でいろいろの表現が使われておる。その中には、一の航空企業と書いてある先例もございましょうし、一または二と書いてあるのもございましょうし、あるいは二以上と書いてあるのもございましょう。私の答弁いたしました主眼点は、その数よりも、むしろ航空企業という抽象的な用語が使われるのが通例の場合である、こういうことを申し上げたかったわけでございます。
  143. 受田新吉

    受田委員 日台航空の関係ですが、日台航空業務の企業も、日航ということになるのですか。日台、これはもうおわかりだと思うが……。
  144. 中江要介

    ○中江説明員 現在、最終的にどうするということは、まだきめておりません。
  145. 受田新吉

    受田委員 現在、飛んでいるのは日本航空。そうすると、日台の関係日本航空ということに、一応常識では考えられますね。
  146. 中江要介

    ○中江説明員 これは、日中正常化後の日台路線を、どういう形で安定した形にして維持するかという大きな問題の中で、ただいま検討されているところでございまして、ちょっとにわかには何とも申し上げるわけにはまいりません。
  147. 受田新吉

    受田委員 もう早く、このような非常にあいまいもことした霧の中にある状態を、からっと晴れた大空に転換する必要がある。外務省もいつの日に、からっと晴れた日を迎えるのか。つゆ空のような関係から、この春の大空のような澄み切ったものに、一応いつごろをめどにしたいと思うのですか。  大体、こういうものができ上がって、半年間は準備が要るといわれておるわけです。いますぐできても九月までかかる。そういう時間的な計画も、当然入らなければいかぬのですが、そういうものを踏まえながら、いつごろ実を結ぼうとされるのか、御答弁を願います。
  148. 大平正芳

    大平国務大臣 できるだけ早く、からっと晴れた青空を迎えたいと思っています。
  149. 受田新吉

    受田委員 大平外務大臣の脳裏の中にも、それを描いておられると思います。いろいろと党内の御事情もおありだし、御苦労のほどは察するに余りがある。私は、国民の側から、この問題の処理を考えていくときに、大平さんが外務大臣として、あなたのような総理を目ざされる、いや世論は、総理の次期の候補者の一人とみなされておるあなたさえもできぬようなことであるならば、これは日本外交などは信ずるに足らざるものになると思うのです。少し憂うつを吹き飛ばして、いつまでも右往左往しないで、答えをすみやかに出されることによって、日本外交の信頼が巻き起こると思いますが、いかがでしょう。
  150. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん激励をいただいて、感謝いたします。なるべく早く御期待に沿いたいと鋭意努力いたしております。
  151. 受田新吉

    受田委員 一つの仮定ですが、日台間の航空は、日本航空にやらせない場合もあるか、成田は中国、羽田は台湾というような、これは、この間の、あなた方の、中国側のいろいろな御要望を織りまぜた形でそういう分類をすることも含めた検討になるのか、御答弁を願います。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 いま、何もかも申し上げたいのは、やまやまでございますけれども、いま交渉を始めたばかりでございますので、内容にわたる点につきましては、しばらく御猶予をいただきたいと思います。夜の次には朝が来るわけでございます。いましばらくお待ちをいただきたいと思います。
  153. 受田新吉

    受田委員 冬の次には春が来る。春が来ました。春来たれど、天気晴れずというかっこうでおるわけでございますが、これは国民の上に降りかかる大きな課題でもあるので、そのめどだけは一応持っていただきたい。ことしの末までには、日中間の協定の上に、飛行機が飛べるようなめどをお持ちかどうか。ことしの末までを目標にしておられるかどうかです。
  154. 大平正芳

    大平国務大臣 一日も早い実現を目ざして鋭意努力をいたしております。
  155. 受田新吉

    受田委員 その一日も早いということは、ことしじゅうということを含むかどうかです。
  156. 大平正芳

    大平国務大臣 どうも時間帯を限定して議論すると、いろいろ問題になりますので、ごかんべんをいただきたいと思います。
  157. 受田新吉

    受田委員 問題が起こるということでありますから、私、追及を避けます。しかし、一日も早いということは、いまの段階で六カ月の準備を要するということであれば、いまから三カ月か四カ月くらいの間に協定の実を結ばないと、一日も早い努力ということにならないというのが世間の常識であるということを、前提にされて検討するということを御答弁願いたいのです。
  158. 大平正芳

    大平国務大臣 ものごとの常識から、大きくはずれるようなことはあり得ないと思います。
  159. 受田新吉

    受田委員 その御答弁で了とします。  次に、外務大臣は、田中総理と御一緒にインドネシアに行かれましたかね。——行ってない。そうすると、あの現地の情勢がよくおわかりにならぬと思いますが、その後、外交関係で、総理が乗り込まれて以後の東南アジア国々の国民感情は、もう旅行された国々をすべて含めて、タイ、インドネシアでは、非常に大きな反抗があったわけですが、国民感情は、日本に帰られて後に、雨降って地固まる方式で前進しておると外務大臣判断されますか。これは、うしろの官房長でもいいのです。
  160. 中江要介

    ○中江説明員 田中総理の東南アジア歴訪が、いろいろ論評の対象になりましたことは、私どもも承知しておりますし、これは単に日本国のみならず、歴訪された五つの国においても、その後、いろいろ再評価、また今後の措置というものを検討しておるということで、日本及び相手国における今度の田中総理の歴訪についての大まかな評価といいますものは、やはりこの機会に、日本の総理を迎えて、首脳間で意見交換ができたことはよかった、しかし、それに伴って起きたいろいろの事柄については、その原因が那辺にあるかについては、これは日本側にも、随時いわれておりますように、再検討を要する面もありますけれども、相手国でも、こういうことが二度と起こらないようにどうすればいいかということについて、単に政府レベルのみならず、あらゆる階層で反省なり再考慮が行なわれておるというふうな情報に接しております。  そういう意味おきまして、長期的な日本と東南アジアとの関係を進めていくにあたって、この際、根本的に双方が反省して、これからのアジアのあり方を考えていく、このことは、やがて当時期待されましたように、雨降って地が固まっていくきざしだろう、こういうふうに思いますが、何ぶんにも根の深いものがございますので、いますぐに、これでうまくあとが固まったというにはまだ時期が早い、こういうふうに私どもは見ております。
  161. 受田新吉

    受田委員 インドネシアに起こった国旗侮辱事件、これのあと始末はよくできておりますか。
  162. 中江要介

    ○中江説明員 これは、大使館の館内に掲げられておりました正式な国旗を引きずりおろすということは、あと始末というには、あまりにも激しい行動でございますので、その場で即刻、須之部大使がインドネシア外務省に厳重な抗議をいたしまして、インドネシア側では、マリク外務大臣が、まだ続いております暴動の中をかき分けて、まず陳謝に来ましたし、また、その夜の晩さん会の機会には、スハルト大統領が田中総理に対して、深甚なる遺憾の意を表されたということでございます。  その事後の措置といたしましては、そういう不届きなことをした人間に対して、インドネシア政府がどういう措置をとったかということが、次に問題になるわけでございますけれども、その点につきましては、犯人はすぐ逮捕されたわけですが、その犯人は、すでに御承知と思いますけれども、いずれも未成年者の、まあ、それほど事柄の重大さのわからないような年齢の人間であったということでございまして、インドネシア警察では、本人はもとより、両親を呼び出しまして、厳重な説諭を行なったという報告を受けております。
  163. 受田新吉

    受田委員 一国の権威を国旗に表象して、在外公館はその任務を遂行しておる。その一番大事な権威を弊履のごとく投げ捨てられるということは、国家に対する最高の侮辱であるというかっこうにもなるわけです。いまの事後処理の話を聞きまして、一応うなずける点があるわけでございますが、今後ひとつ、この問題を、さらに十分な慎重さをもって外交を進めてもらいたい。  同時に、在外公館には、どこにも菊の御紋章が張りつけてあるのです。張りつけてあるというよりは、あれは飾りつけてあるんですね。この菊の御紋章に対する認識は、どういうことですか。
  164. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 在外公館には、もちろん国旗が、正式の国を代表するシンボルとして、公邸にも事務所にも、場所によって、事情によりまして、適当でないという例外を除きましては、掲揚してあるわけでございますけれども、同時に、先生御指摘のように、菊の御紋章を、主として公邸に使用しているところが大部分でございます。これは、公邸には大使が居住しておるわけでございまして、大使は特命全権大使として外国に代表している、そういう意味で、その権威を重くし、また建物の不可侵というようなことを、相手の国の——相手の国と申しますか、そこにある国の一般に印象づける効果もございますので、現在そうやっております。
  165. 受田新吉

    受田委員 諸外国の在外公館に、そうした紋章をつけたところがありますか。調査の結果を御報告願いたい。
  166. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 在京のアメリカ合衆国大使館にもございますし、ほかの国にも、ほとんどの国がつけておりますが、詳細は調べた上、御報告申し上げます。
  167. 受田新吉

    受田委員 そのしるしというものは、どういう性格のものでありますか、大まかにいって。
  168. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 これは国によって違いまして、憲法その他で規定している国の標識を掲げている場合、あるいは王国の場合の王家のしるしを掲げている場合、それぞれ国によっていろいろ違いますので、この点も調べました上、お答えしたいと思います。
  169. 受田新吉

    受田委員 菊の御紋章は皇室の御紋章である。それが在外公館に掲げられたということで、また見方によるならば、異論をはさむ皆さんもあるかもしれませんが、私は、それでけっこうだと思います。  ところが、その菊の御紋章をはぎ取って、焼き捨てた場合には、どういうお考えですか。
  170. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 この場合には、国旗の場合と必ずしも同じではない、法律的には同じではないと思いますけれども、いずれにしても、わが国の国民を代表して行っております大使のやかたというのは、国際法上不可侵でございますので、その財産の一部たりとも棄損する場合には、やはり国際法上の違反行為として、相手の国に厳重に抗議するわけでございますけれども、この場合には、やはり一種のシンボルとしての意味もあるかと思いますので、普通の財産が棄損された以上に、厳重に抗議をすべきであると思います。
  171. 受田新吉

    受田委員 いま法律的根拠と言われましたが、国旗の場合に、日の丸の旗の法律的根拠をお示し願いたい。
  172. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 法律上と申しましたのは、私は、主として国際法上という意味でございまして、国際法上その国の国旗を尊重するということは、慣習法上確定しております。
  173. 受田新吉

    受田委員 日本の国旗は、日の丸であるという根拠はどこから出ましたか。
  174. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 日の丸の旗の色あるいはその縦横の比率、それについてはこれは公の規定があると思いますけれども、いまその法形式については、ちょっとよくわかりませんので、お答えを省略さしていただきますけれども、日の丸の大きさから、それから色及び縦横の比率については、規定があると存じます。
  175. 受田新吉

    受田委員 日の丸を、国の国旗と定めた法律的根拠はないのです。慣例として、これを用いておるのです。  次に、私、留学生の問題に触れたいのですが、日本に留学した学生が、それぞれの国へ帰ると、どうも反日感情をあおり立てる先頭に立つ危険性があるんですね。これは、この前の委員会でちょっと触れたのですが、諸外国の留学生は、留学した国の厚い待遇によって、その国に深い感謝をささげ、また母国へ帰っても、その国との国交親善に貢献しておる。日本の場合は、なぜ日本に学んだ留学生が、国に帰って、そうした反日感情の先頭に立つようになってくるのか、外務省で御調査された結果を御報告願いたい。
  176. 堀新助

    ○堀説明員 日本へ参ります外国からの留学生は、私から申し上げるまでもなく、みずからの自発的意思によりまして、日本を留学の地と定め、数年間日本に滞在して、日本の各方面と接触し、彼らの本来の学術修得のみならず、日本との友好親善関係に寄与すべき期待が多大でございますので、政府といたしましても、留学生に対しましては、毎年、文部省及び一部は外務省に予算をいただきまして、この待遇及び受け入れに遣漏なきを期そうとしているところでございます。  そこで、ただいまお話のございました、日本から本国へ帰った留学生の中に、反日の人がいるということでございますが、私、二月の中旬に、マニラとバンコクとジャカルタへ参りまして、現地でも調べてまいったのでございますが、日本から帰りました留学生は、ほとんど全部、それぞれ専門の分野におきまして相当の職業についております。反日の学生は、あるいは大ぜいの帰国留学生の中には、たまにはあるかもしれませんが、ほとんど日本から帰った留学生が反日であるというような問題は、現地ではあまり耳にいたしておりません。  たとえば今度、田中総理が東南アジアを訪問されましたときに、タイ国のバンコク及びインドネシアのジャカルタで学生が騒動に参加し、あるいは学生が対日批判をしたことが多々ございますが、これらは、まだいわゆる学生でございまして、日本に留学して帰った人たちではなかったわけでございます。  とは申しましても、最初に申しましたように、私たちといたしましては、せっかく日本へ来てくれた留学生が、日本に対する理解と、また日本に対する感情をできるだけよくして帰ってもらいたいということで、文部省とも終始緊密な協議をいたしまして、これら留学生の受け入れ体制を、さらに改善していくように努力をしておるつもりでございます。
  177. 受田新吉

    受田委員 留学生課長、あなたは留学生業務を担当しておられるのですが、日本に来る外国の留学生が、入国管理業務関係できびしい制約を受ける、こっちへ来てから、安全な宿所が見つからないので、宿に困っている、こういうようなことについて、海外から日本に学ぶ学生にあたたかい環境をつくって、安心して勉強していただく。特に有色人種関係で、人種差別的な待遇などが流布されておるような状態を、私は耳にしておるわけでございますが、外国の留学生を引き受けている日本政府、特に文部省の態度について、もっと親切で、日本に学んでよかったというようなよい印象を与えるために、どのような配慮がされているかを御答弁願いたいと思うのです。
  178. 植木浩

    ○植木説明員 ただいま先生から御指摘ございましたように、私どもといたしましては、せっかく外国から留学生を受け入れる以上は、これにきめこまかい配慮あるいは十分なる教育の機会というものを提供いたしまして、日本に対する理解と、あるいは好感というものを持って帰国するように、及ばずながら年々配慮、改善をしておるわけでございます。  まず特に、いわゆる国費留学生につきましては、その待遇の改善ということが基礎的な問題でございますが、奨学金の金額も年々改善をしてまいりまして、来年度は大学院レベル八万九千円、学部レベルが六万円、さらには下宿料の補助も、来年度につきましては、現在、月額一律六千円のところを、大都市地域につきまして一万一千円、その他の地域につきまして八千円ということで、大ざっぱにいいまして、かなり、ここ数年の間に待遇の改善がなされてきておるわけでございます。  なお、宿舎につきましても、まだまだ不十分でございますし、大都市におきましては、特にまだまだ足りませんけれども、できるだけこれをふやしていく、あるいは宿舎対策を改善していくということで、宿舎の増築などにもつとめておるわけでございます。
  179. 受田新吉

    受田委員 文部省が留学生にかける経費総額は幾らでございますか。
  180. 植木浩

    ○植木説明員 留学生関係の予算を、大ざっぱに申しますと、現在、留学生の受け入れにつきましては、十四億円を計上いたしております。来年度は、受け入れの分につきましては、約十八億円ということでございます。
  181. 受田新吉

    受田委員 外務省の対外援助資金の総額は、この一年間にどれだけなさいましたか。
  182. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 外務省の予算でございますと、外務省計上の四十八年度の経済協力関係の予算の総額が三百三十三億、これに対しまして、四十九年の、いま国会に御審議願っている額が五百六十八億でございます。
  183. 受田新吉

    受田委員 留学生を遇するに十四億をもってし、対外援助資金において三百三十三億、今度それを大幅に増額するということでございますが、日本を知るために勉強に来た知日分子、これが日本の留学生。それを、ほんとうに親日分子に切りかえる努力が要るんです。知日から親日に切りかえる。  ところが、対外援助は非常に不明朗なままで、金額も、留学生の処遇に三十倍する対外援助をやっておる。そこに非常な不明朗さが行なわれて、しかも、その援助したものが、ある特定の企業と密着して、日本の企業進出——最近、中東などについても、日本の対外援助資金を、あちらへ与えるとともに、ある特定の企業が争うてその仕事をしようという、醜い競争を生み出しておるということを、われわれは知っておるわけです。  そこで、この不明朗な援助を節約してでも、その分を大幅に留学生のほうに回す、そして知日分子の留学生が、親日分子となってその国へ帰って、日本との友好親善に貢献してもらうならば、これは、たいへんな成果があがると思うのでございますが、文部省予算の留学生の対策費十四億、多少今度増額するということでございますが、これは援助資金と比べて、あまりにもささやかな現状です。  人間関係をがっちり固めるほうがはるかに——物をえさにしてつるような形で、しかも、どこかに暗い影がひそんでいる。特に中東、アジア等においては、何か企業の競争資金として、その援助資金が奪い合われるというような形、これを思うとき、精神面の親善関係に強力な手を打つときが、いま来ておると思うのです。外交の勝利は、ここであると私は思うのだが、どうぞその点について……。
  184. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 私が先ほど申しました外務省の予算、今年度でいえば三百三十三億は、大部分が技術協力の予算でございまして、輸銀とか基金において融資いたします、いわゆる経済協力の予算ではございませんので、この技術協力は、特定の企業との結びつきというようなもののないものでございますし、その中で、特に留学生の受け入れと非常によく似ております研修生の受け入れ費が二十六億三千九百万、これは、ことしの予算でございますけれども、ございます。
  185. 受田新吉

    受田委員 ますます複雑多岐になってきたわけですが、いまの技術協力……。  では、いま対外援助の融資は、総額幾らですか。
  186. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 これは、輸銀と基金とございますけれども、基金の四十九年度の資金のワクは、たしか今度で二千億くらいになっていると思います。
  187. 受田新吉

    受田委員 非常に膨大になってきた融資。大平大臣、あなたや通産大臣が海外に行かれて、あたかもポケットマネーを現地でふるまうごとくにエジプトへ、サウジアラビアへ、イランへ、多いやつは何十億の単位、それを現地でおきめになっておられますね。あれは、どういうことでございましょう。
  188. 大平正芳

    大平国務大臣 あれは、もう出発前に、関係各省で十分意見調整をやりまして、その国に対しまして、いままで政府レベルの話し合いで話が進んでおるものは、どういうプロジェクトか、民間で手を染めておるものは、どういうものかという点につきまして、調べた上で、日本の財政でもって援助し得る、協力し得る限度というものはどの程度かという点も、打ち合わせの上やっていただいておるわけでございまして、決して恣意的に、場当たりでやっているわけではございません。
  189. 受田新吉

    受田委員 しかし、その国へ行ってみて、かけ引きに使うと、この間通産大臣は言うておるのです。現地の出方によっては、十億ドルを出そうと思ったが、五億ドルに減らすとか、幅を持たされておる。こちらできめたとおりでなくして、現地の交渉の結果によって、金額が限られた範囲のうちで操作されるという答弁でございましたが、そうですね。初めから約束したのを、そのまま金額をきめていくのでなくて、あちらへ行ってから、操作によっては金額が減る場合がある。それは閣僚の意思にまかされておる……。
  190. 大平正芳

    大平国務大臣 原則として、打ち合わせたラインの中で御処理をいただくというたてまえになっております。ただ、仰せのような例外が全然ないとは言えませんが、そういうことがあった場合は、お帰りになった上で、あらためて各省レベルでもう一度調整をいたしまして、政府部内でコンセンサスを求めていただくようになっております。
  191. 受田新吉

    受田委員 三木、小坂、中曽根と閣僚あるいは特使が、相次いでこれらの国々を訪問して、援助を約束して帰っておる。その融資に基づいて事業をやる。今度は電子関係、今度は放送関係というようなもの、いろいろの研究を積み、事業をやるための融資、援助をしておる。そこで、私がいま指摘したのは、それに行き着くわけです。それがいまや二千億円。私は、どうもさっきの技術協力というもの、その金額がはなはだ少ないなと思って、いま疑念を抱きながらおったのですが、融資を含めると、たいへんな金額になってきておるんですね。低利融通資金というわけだ。  そういうことを考えると、留学生でひとつ点数をかせぐほうがいいですよ。文部省などへ、留学生のほうへ百億、二百億とって知日分子を親日分子にどんどん転換していく。そうしたら、あちらへ行っても、学んだ学生が、日本人が行くと、よくいらっしゃいましたといって大使館などへも殺到する。親切にしていただきましたと感謝する。留学生が必ず指導的地位につくのだから、あちらで非常に有力な人材になるので、それが日本を世界に紹介してくれる。これはたいへんな成果じゃないですか。文部省がもっと基本的な要求をされて、そういう外交の成果を、留学生によって大きく広げていくように努力されるべきじゃないか。  十億ドルさげて行ってよろしいときめる。向こうの出方によっては、八億ドルにしたり五億ドルにしたり、これは一閣僚によって、それが自由に操作されるような形の、非常に不明朗な融資を含めた援助、これは、私、問題だと思う。アジア外交の一環としても、そういう人的成果をあげる外交に力点を置くべきで、それがやがて五年、十年、二十年後に大きな実を結ぶと私は思うのだが、外交の大転換をやるべきじゃないかと思うのだが、大平先生、あなたは、私の説に御共鳴願えませんかね。
  192. 大平正芳

    大平国務大臣 受田君の御見識には、それなりに私は敬意を表します。ただ、あなたに御理解いただいておきたいのは、国際社会の中で日本は先進国という立場でおつき合いをいたしておるわけでございます。先進工業国では、開発途上国に対して量的にどれだけの援助をしておるか、あるいは質的にどういう条件で援助をしておりますかというようなことが、OECD、UNCTADその他で、いつも吟味されておるわけでございまして、そういう国際機関の調べによりますと、わが国の援助量そのものは、額そのものは、決して恥ずかしくない、GNPに対する比率から申しましても、決して恥ずかしくない目標額に近づいておるわけでございますけれども、質的な面におきまして、政府援助というものは、先進工業国に比べて非常に見劣りがするわけでございますし、また援助の条件というものにつきましても、まだずいぶん、他の先進国に比べまして遜色が見られるわけでございます。  したがって、国際社会におきまして、わが国が正当な地位と信用と成果をかち得ようと思いますならば、人並みのことはしなければならぬ。したがって、経済協力、経済援助というものを全然やめてしまって、あるいはそれを非常に少額にしまして、人的な留学生の援助その他に大きく転換してまいるということは、一つの大きな見識だと思うのでありますけれども、それを、直ちにそのように切りかえていくべきかどうかということについては、一つちゅうちょを感ずるのでございまして、われわれにできることは、そういう経済援助も、人並みなことはやらなければなりませんけれども、あなたの言われる留学生その他人的予算の増額、それからその適実な使用ということにつきましては、なお一段のくふうを加えて、それで増額をはかり、内容の改善をはかってまいろうという努力は惜しむべきでないと思いますけれども、根っこから全部切りかえてしまえということは、あなたのせっかくの御見識でございますけれども、直ちにそのようにはなかなかいかないということだけは、御理解を得ておきたいと思います。
  193. 受田新吉

    受田委員 外務大臣大平君としては、有力な閣僚としては、あまりにも決断が鈍いですね。私が指摘したのは、全面的に切りかえるという意味ではなくして、外交の力点を人的外交に置くという意味で、いまの留学生対策を、思い切った予算で、閣議で文部大臣を応援して、おい文部大臣、外国の例を見ても、留学生を大事にする国は、外交関係もよくできておるのだ、もう十四億を十倍ぐらいにでもして、思い切って知日分子の留学生を親日分子に切りかえることにしたらどうか、こういうような提案をしてもらいたいのです。  これは根こそぎとは私は言いませんよ。いま融資が二千億、二千億あれば、そのせめて一割くらいを留学生の対策に回すということぐらいの努力はしていただきたいものです。これは、あなたのような有力な閣僚がおる間に、これを片づけてもらいたいのです。  そこでもう一つ大平大臣、あなたは外務省の人事について、外務省の中に根強い、大臣としても思うようにならぬ古い伝統があると思われますか。いや、そうじゃない、おれの胸三寸で外務省の人事はすかっとできるんだ、先般、事務次官をやめさせ、法眼君を東郷君にかえたじゃろというようなところで片づけられるかどうかです。
  194. 大平正芳

    大平国務大臣 外務省ばかりでなく、政府各省それぞれ長い歴史と伝統を持っておりますし、そこに生涯の浮沈をゆだねて入省を決意された、すぐれた方々が多いわけでございまして、長い伝統の中で人事の現実のルールというようなものも、不文律ながらできておるように思うのです。でございますから、大臣が参りまして、胸先三寸でひとつ全部やり直そうなんという大それた考えを私は持ちません。また、できる相談でもありません。また、すべきでもないと思うのであります。そこに生涯の浮沈をゆだねておられる方々でございますから、人事は公正でなければならぬ。いやしくも感情に走ったり、好悪におもねたりするようなことがないように慎まなければならぬと私は考えております。
  195. 受田新吉

    受田委員 いま、外務省で大使その他の認証官が何人いますか。
  196. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 ことしの予算で、百人こえると思います。
  197. 受田新吉

    受田委員 ここ十カ年間に認証官が倍に近い数になったのです。他の各省を通じて認証官の総数、これは、もう全部合計しても外務省に及ばないのです。外務省一省で他の全国家行政組織関係の認証官をはるかに凌駕する数字を持っておる。それが、さらに専任の大使——いまの兼摂大使のところを専任にしていくべきだと私は思っておるのです。兼摂大使がおるところにはどこかに抜け目がある。これは、できるだけ専任大使に切りかえなければならぬ。これは官房長、そういう方針でいいですか。
  198. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 現在の兼摂が約四十二ございますけれども、このうち、必ずしも全部ということではなくて、まず来年度の予算で御要求いたしましておりますのは、アラブ首長国連邦、それからヨルダンでございますし、それから北ベトナムにつきましても、現在まだ兼摂でございますけれども、これも本任にいたしたい。  来年以降におきましても、順次、重要なところにつきましては、これは本任の大使を置いたほうがよろしいわけでございますけれども、場合によりましては、本任の大使を置くことを——先方も日本に本任の大使も置かない、こちらも置く政治上、経済上の必要をやはり認められないというところがございます。兼摂を全部例外なく本任にするというところまでは考えておりません。
  199. 受田新吉

    受田委員 公館の設置で日本へ大使を置いている国で、日本から行っているのは兼摂であるのにカタール国がある。この国はどうするのです。
  200. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 来年度は、正式の実館を置くというところまでまいりませんでございますけれども、兼摂ではございますけれども、現地に事務所を設ける予算と、それから定員の増強を認められましたので、現地に出張駐在のような形で兼摂の代理大使を置くことを考えております。
  201. 受田新吉

    受田委員 さらに、ギニアという共和国がある。ギニアも専任大使を置いておるが、日本は兼摂である。いかがです。
  202. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 ギニアについては、来年度を目途として本任の大使を置くべきであると事務当局では考えております。
  203. 受田新吉

    受田委員 ハイチ共和国は、向こうからは大使を専任しておるのに日本は兼摂である、これはどうなさいますか。
  204. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 ハイチにつきましても、御指摘のとおり、先方から大使が来ておりますし、それから実館を設置する相当の理由があると認められますので、来年度以降の時期において考えてみたいと考えます。
  205. 受田新吉

    受田委員 こうして一々あげると、大臣、あなたも気がつかないようなことがあるでしょう。おそらく部下から、こういう問題をあまり持ちかけていないと思う。あなたにお聞きしたのでは、お答えができなかったはずです。そういうふうな、向こうが大使を置いておるのに、こっちが兼摂にしておるなどという片手落ちをやっておる国があるのです。そういう国に対しては、進んで専任大使にすればいい。相互に敬意を払う必要から、当然それは送るべきである。  私は、そういうことを——あまりおそくなっては、御迷惑をかけるから、締めくくりたいのですが、外務省では、そういう問題を真剣に考えて、大使の数がだんだんふえてくる、そうしたときに、大平先生、問題がある。外務省のキャリア組だけを大使にするという古い慣例を、この際破って、新設する国家の分に対しては、キャリアの皆さんに八割やるなら、ノンキャリアに二割大使のポストを与えてもいいじゃないですか。ノンキャリアの皆さんだって、しし営々として外交のために尽くす。海外においても、一生懸命に働いておる。そうしたときに、キャリアだけが、一定の資格を獲得して以来、もうところてん式にずっといくんだという、そこに外務省の萎靡沈滞の原因が一つできる。これは官房長御自身が、そう思われませんか。
  206. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 御説のとおりでございまして、現在まだ大使としてはわずかに二名、いわゆる上級試験合格者でない大使の方を配置しておりますけれども、今後、これは能力のある限り、人格、識見のすぐれた方は、中級出であれ、語学試験出であれ、大使にしていく方針考えております。
  207. 受田新吉

    受田委員 外務省の古い伝統が——認証官たる大使が、五十名から六十名、六十四名、六十六名、だんだんだんだんふえてきて、百名をこえる豪華版になっても、依然としてたった二名のノンキャリアの大使しかおらぬ。これすなわち、キャリアの皆さんが、古い歴史と伝統の上に外交を進めていく、つまり、ところてん式で進級していく、そういう外務省の古いしきたりがある。ノンキャリアの皆さんは、営々と働いても、理事官時代が非常に長い。今度のこの在勤法のこの表を見ましても、適用号俸が大使、参事官、一等書記官、二等書記官、三等書記官、理事官、これは、みんな格づけされるんです。ノンキャリアの人は、頭がつかえておるんです。  しかし、この異常なばかりに混乱する外交の中で、ただ単に、キャリアたるの資格に合格しただけで重く用いられ、ノンキャリアの皆さんは、どのような努力をしても、先が見えているというこの大きな格差を排除して、全部というわけにはいきませんけれども、二割や三割のノンキャリアの皆さんに大使の栄位を与えてあげるべきだ。キャリアばかりが恵まれ、ノンキャリアはいつまででも下積み。それが今度、中東付近のあの外交関係で大きなミスをやっておる。外交陣が一体となって、日本のために海外で外交努力をしてくれるならば、もっと成果があがったはずだ。  そして、その国の専門の外国語のできない大使などがおって、事実は、現地採用の通訳のできる外交官あるいは現地採用の雇用者が一生懸命働いて実を結んでおるんですよ。そうして大きな国とかあるいは有名な国にかわることの努力を、ノンキャリアの皆さんがされていくというようなかっこうで、そこに外務省のマンネリズムが発生しておる。あなたは、それを、外務大臣になったら、十分認識しなければいかぬ。基本的にどうするかという問題を、私は提案しているのに、私の提案で一ぺんにひっくり返るというような——さっきから、あなたは何回か私に、一ぺんにひっくり返る、経済援助も、今度一ぺんに外交上ひっくり返るようなことはできないというようなことをおっしゃるが、私は一ぺんにやれとは言っておりませんよ。  漸次そういう改革路線をとっていって、あなたが在任中にノンキャリアの大使が、せめて五人でも十八でも簡抜される、新設の国の専任大使には、ノンキャリアの人が登用されていくように、そういう心づかいをせよ。日本外交の萎靡沈滞がそこにあり、どこか外務省の古い事なかれ主義の外交がこの悪化を生んだ、こう私は判断せざるを得ないのです。  民間からも、さらに人材をとるべきですよ。かつては民間から人材が何人も簡抜された。福島大使という国連大使もいた。那須というインドの大使もいた。安東義良という、代議士をやめたのもおる。こういう大使たちもおった。そういう時代がまた来た。だから、婦人大使にも人材を簡抜する。むしろ婦人でいい大使の国があるんですよ。そういう国には——国内に決してキャリア組だけ人材がおるわけじゃない。ノンキャリア、民間人、そういうところから人材を簡抜して、八割はキャリア組、二割はそうした方面というぐらいの水準を一応もって外交陣の刷新をはかっていくべきだと思う。  これは決してキャリアの皆さんに反感を買うという意味でなくて、キャリアの皆さんでも——いま官房長は、ちゃんとはっきり、そのとおりだと、キャリア組も言っておるのです。だから、大臣が仕事をするのに、そうむずかしいことはないのです。民間人から大使を登用するぐらいの、あなたの在任中に何人かを簡抜してみなさい。日本国民にも外交にも明るいものを与えますよ。アジアの灯台だけではなくて、世界の平和のともしびがつきますよ。日本の平和外交、婦人外交官が二人なり三人なり誕生した、日本の外交には明るい将来が期待されるぞ、私がしばしば言う、天に星あり地に花あり人に愛あり、日本の外交に夢を持たしていくべきだ。美しいものを求めていく。  別に私、演説して、あなたを説伏しようとするのじゃないんですよ。大平君とは同じいぬ年生まれで、ワンワン会の同志であるから、私はあえて言うのです。ひとつあなたが外務大臣のときに、これぞという実績を残してもらいたいのです。日本外交の萎靡沈滞に活路を見出す名外務大臣としての実績を積んでもらいたい。私のお話ししていることに共鳴をしていただければ、賛意を表していただきたい。
  208. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん御注意ありがたく拝聴いたしました。いま言われたような方向で鋭意努力したいと思います。
  209. 受田新吉

    受田委員 大臣方向でというようなことでなくて、具体的にもっと——私、これじゃ戦意がないよ。受田君の趣旨まことに同感だ、その線に沿うて鋭意急ぎ努力しようというくらいのことは、あなたの答弁から得られるかと思ったけれども、まあ、あなたの御性格で、別に悪人じゃないですから、なにしておきましょう。  それで、この問題は、具体的に法案へもしばしば触れたことでありますので、以上をもって質問を終わります。御苦労さまでした。
  210. 徳安實藏

    徳安委員長 次回は、来たる七日木曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十九分散会