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大平国務大臣 在外公館の定員その他につきましての御心配をいただいて、感謝をいたします。わが国全体、
外務省の私の配下にある定員は、約二千七百名でございまして、独仏が四千名ないし六千名ございますし、英米に至りますと一万名をこえておるのに比較いたしますと、要員が不足がちでありますことは、申すまでもないことでございまして、毎年毎年財政当局の御理解を得まして、定員の増強をはかっておるわけでございますが、まだ十分の充員を見るに至っていないわけでございます。今後一そう努力をしてまいりたいと
考えております。
ただ、われわれといたしましては、与えられた予算定員の中で最善を尽くさなければなりませんし、また定員をふやすことだけが芸じゃないので、できるだけ有能な方を登用しなければならないわけでございますので、その辺を
考えながら、逐次実のある充実をはかってまいりたいと
考えておるわけでございます。
それから第二に、御指摘がございました開発途上国とわが国との間の間柄に
おきまして、以前はたいして問題がなかったけれ
ども、最近になりまして、いろいろ問題が出来しておるじゃないかという御指摘でございますが、仰せのとおりでございます。これは、
一つには、開発途上国とわが国のような先進工業国との間の格差が、年々歳々拡大しておるという事実でございまして、いろいろ努力はいたしておるのでございますけれ
ども、開きがますますひどくなる。しかも開発途上国の多くは、第一次産品資源を先進諸国に供給いたしまして、それが先進諸国の頭脳と労働と
組織によりまして、加工されて経済の成長を見、繁栄を招来するということになるわけでございます。
したがって、開発途上国の国民から見ますと、そこに非常な違和感というものを感じるのはやむを得ないわけで、最近に至りまして、資源保有国の主権問題というものが、
国連等を中心にしてやかましい問題になってまいりましたことにも、また最近の石油危機が如実に物語っておりますように、資源保有国の
立場が強くなり、主張が強くなってまいっておるということにも、歴然とあらわれておると思うのでありまして、この
関係を、そういう
基本的な構造を変えるということは、これは容易ならぬことでございまして、私は、遺憾ながら、この嫉妬といいますかジェラシー、違和感というようなものは、この
基本的構造が変わらない限り、なかなか
あとを断たないのじゃないかと
考えております。
経済協力を進め、また資源保有国側、開発途上国側におかれましても、国づくりのために壮大な計画を立てられて、それが実を結んで、だんだんとわれわれとの間に平準化が実るようにしていくためには、相当時間がかかるわけでございますので、急速にこの違和感というものを解消するということは、私はむずかしいと思っておりますが、精一ぱい努力をしなければならぬ道標であることは、間違いございません。
第二に、しかしながら、わが国の国民のマナー、エチケットというものから、いま吉田
先生御指摘のような、いろいろな問題が出てまいっていることは、よく承知いたしておるわけでございます。外交、これは国と国との交際は、根こそぎ国民と国民との間の
交流になってまいり額して、一部の特権階級の社交界における交際なんという、ゆうちょうな時代ではなくて、いまは広い国民大衆の間の接触になってきておりますので、いまの外交は、そういう
意味で、非常に国民的な外交であると申し上げなければならぬと思うのであります。
したがって、その国の
文化、道徳の水準、知識の水準、マナーのあり方、そういったものが、そのまま輸出されるわけでございまして、これは根本には、やはり
日本自体がりっぱにならぬと容易ならぬことでございまして、ひとり
外務省だけに責任を負わされたのでは、とてもやり切れない仕事であろうと存ずるわけでございます。
しかしながら、それで放置しておいていいという問題で決してないことは、申すまでもないことでございまして、どのようにこれを規制してまいるかということでございますが、これは官民の間でも、いろいろ御相談申し上げて、たとえば独身社員のマナーが問題になるということでございますならば、これは会社の人事計画で、ちゃんとした御家族を持った、安定した
方々に御進出をいただくようにしないといけない問題であろうと思いますし、また
日本人自体が、非常に閉鎖性を持っておりまして、われわれ初めそうでございますけれ
ども、外国に参りまして、
日本人のサークルだけでおつき合いをして、あまり相手の国になじまない、相手の商慣習に慣熟しない面があると思いますので、そういった点は、十分官民とも努力して、現地との融和をはかってまいらなければならぬと思います。
それから第三に、第一に申し上げたこととも関連するのでございますけれ
ども、わが国の進出しておる経済人の
方々の給料が非常に高い、現地の人は、相当能力がありましても、非常な格差があるというようなことから生ずる違和感があるわけでございまして、これは、わが国が明治、大正、昭和を通じまして、痛いほど感じたことでございまして、われわれも学生時代に、外国の教師がおりましたけれ
ども、これは普通の
日本人の教師よりずっと高い給料を、そう能力があると思わぬけれ
ども、とっておったことを思い起こすのでございますけれ
ども、そういう落差というものは、避けがたいことだと思うのでございますが、これをどのように解消していくかということも、また官民の間で長い道標として追求していかなければならない課題だと思うのでございます。
いずれにいたしましても、御指摘の問題は、たいへん深い問題でございまして、的確なお答えがなかなかできないわけでございますけれ
ども、しかし、そういったお声が出て、そういう批判が出て、そして、それに対しまして対応した策が、
政府に
おきましても、民間においても、とられるということにおいて、漸次事態は改善されてまいるわけでございますので、外に対して責任を持っている私
どもといたしましても、そういう問題意識を常に持ちながら、外交活動を続けて、御期待に沿わなければならぬと
考えております。